(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】搭載安全システムを備える車両シート
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20240829BHJP
B60N 2/427 20060101ALI20240829BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240829BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20240829BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20240829BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20240829BHJP
【FI】
B60R21/207
B60N2/427
B60N2/90
B60N2/22
B60N2/64
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513110
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022070556
(87)【国際公開番号】W WO2023025483
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベゾー,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】エワ,グレゴール
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B087CD04
3B087CD05
3B087DB02
3B087DB04
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054CC04
3D054CC11
3D054CC47
3D054FF16
(57)【要約】
【要約】
本発明は、背もたれ構造(3)と、シート構造(2)と、着席している人の各側でシート(1)の側面(10,11)に設置される二つの構成要素(5,6)を有するエアバッグ(4)とを具備する車両シートであって、エアバッグ(4)の各構成要素(5,6)は膨張バッグ(7)とバッグ(7)に縫い付けられる少なくとも一つのストラップ(8,9)とを具備し、シート構造(2)は空間を間に備える内筐体(17)及び外筐体(18)を各側に有し、エアバッグ(4)の各構成要素(5,6)の少なくとも一つのストラップ(8,9)はこの空間へ挿入される車両シート(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ構造(3)と、潜り込み防止ボス(14)を有するシートベース構造(2)と、着席する人物のいずれかの側でシート(1)の側面(10,11)に設置される二つの構成要素(5,6)を有するエアバッグ(4)とを具備する車両シート(1)であって、
前記エアバッグ(4)の各構成要素(5,6)は、膨張バッグ(7)と、前記バッグ(7)に縫い付けられる少なくとも一つのストラップ(8,9)とを具備し、前記構成要素(5,6)は前記車両の衝突の場合に前記シートの前部に向かって展開可能であり、それによって、前記構成要素(5,6)は前記人物を完全に囲繞し、
各構成要素(5,6)の前記少なくとも一つのストラップ(8,9)は、前記背もたれ構造(3)の上方ゾーン(12)での上部固定点と、前記シートベース構造(2)の前記潜り込み防止ボス(13,14)に固定する為の底部固定点とを有し、各構成要素(5,6)の前記少なくとも一つのストラップ(8,9)は、前記背もたれ構造(3)の側面に沿って、また前記シートベース構造(2)の側面に沿って延び、
前記シートベース構造(2)は、通路を間に形成する内筐体(17)及び外筐体(18)を各側に有し、前記エアバッグ(4)の各構成要素(5,6)の前記少なくとも一つのストラップ(8,9)は前記通路へ挿入され、前記二つの筐体(17,18)は、前記車両の衝突の場合に前記少なくとも一つのストラップ(8,9)と前記膨張バッグ(7)とをシート(1)で展開させることのできる案内トラックを構成する、
車両シート。
【請求項2】
前記エアバッグ(4)の各構成要素(5,6)は、前記構成要素(5,6)が前記シート(1)に装着された時に重ね合わせられる二つのストラップ(8,9)を具備する、請求項1に記載の車両シート。
【請求項3】
前記エアバッグ(4)の各構成要素(5,6)の前記二つの重ね合わせストラップ(8,9)は、前記背もたれ構造(3)と前記シートベース構造(2)との間の通路において実質的に90°まで折り曲げられる、請求項2に記載の車両シート。
【請求項4】
前記シートベース構造(2)の片側の前記内筐体(17)は、安全ベルトのバックルスレッドを収容する為の第1固有ハウジング(21)が設置される凹部(20)を有する、請求項2及び3のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項5】
前記シートベース構造(2)の他の側の前記内筐体(17)は、前記安全ベルトの係止部を収容する為の第2固有ハウジング(21)が設置される凹部(20)を有する、請求項4に記載の車両シート。
【請求項6】
機構(27)によって前記背もたれ(3)の傾斜が調節可能であり、前記シートベース構造(2)の片側での前記外筐体(18)の前部ゾーンが、ワイヤ(28)によって前記機構(27)に連結されて前記機構を駆動するように意図される制御ハンドル(26)を具備する、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項7】
前記背もたれ(3)は回転軸(25)で旋回するように装着され、前記二重ストラップ(8,9)は前記エアバッグ(4)の各構成要素(5,6)の前記回転軸(25)との整合状態で設置される、請求項6に記載の車両シート。
【請求項8】
前記背もたれ(3)の傾斜を制御する前記制御ハンドル(26)を具備する前記外筐体(18)は、前記シートベース構造(2)を上昇させるための機構を電気的に起動するように意図される制御ボタン(29)を具備する、請求項6及び7のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項9】
前記シートベース構造(2)の各側の前記内筐体(17)及び前記外筐体(18)は、プラスチック材料で製作される、請求項2乃至8のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項10】
剛性曲げ部材ワイヤ(30)が前記内筐体(17)及び前記外筐体(18)の末端部で前記シートベース構造(2)に設置され、前記内筐体(17)と前記外筐体(18)との間での前記ワイヤ(30)の上流において最適化した軌道を有するように、前記二重ストラップ(8,9)は前記剛性ワイヤ(30)の周りに折り曲げ部を形成する、請求項2乃至9のいずれか一項に記載の車両シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載安全システムを備える車両シートに関する。
【背景技術】
【0002】
説明を簡単にする為に、例えば別の車両であり得る外部の物体に対する車両の突発的な衝突の場合にのみエアバッグの展開が発生すると常に仮定する。それゆえ、車両の衝突後に初めてエアバッグの展開が発生することを順序立てて明記しない。
【0003】
本発明によるシートに関係する様々な部品の配置を充分に理解する為に、シートが車両に設置されると仮定して、この車両に関連する直接正規直交座標系XYZを参照して記載が行われ、Xは車両の後向きの前後縦軸であり、Yは車両の右向きの横軸であり、Zは上向きの垂直軸である。
【0004】
現在、乗員シートの直前にてダッシュボードに設置されるフロントエアバッグは、ダッシュボードのかなりの空間を占有する為、大きな制限を受ける。
【0005】
この空間問題の解決を可能にする一つの解決策は、このエアバッグを乗員シートに直接的かつ全体的に移転することにある。そこで、このような移転は、シートに設置される新型のエアバッグが、
ダッシュボードに設置される旧型の乗員エアバッグのものと少なくとも同等の保護特性を有し、
シートに既に存在する要素がこの新型エアバッグの展開を阻止するか妨げることなく、これが所望の構成での流体的な展開を可能にする為に、乗員シートに正確かつ精密に装着される、
ことを必要とする。
【0006】
幾つかの既存のシートは、シートの各側に設置されてダッシュボードに配設されたものを補完し、それゆえダッシュボードに配設されたエアバッグのものを補完する性能レベルを備える簡易エアバッグを既に具備している。さて、これらのエアバッグはダッシュボードに関して既定のシート配置を有する必要があり、使用している乗員のシートを大幅に変位又は旋回する必要がある自律車両の場合にはこれが制約となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によるシートは、シートに着席する人物の効果的な保護が可能な強力エアバッグを具備し、このシートにおけるこのエアバッグの固有の装着が流体的かつ効率的な展開を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主題は、背もたれ構造と、潜り込み防止ボスを有するシートベース構造と、着席する人物の各側でシートの側面に設置される二つの構成要素を有するエアバッグとを具備する車両シートである。
【0009】
本発明によれば、
エアバッグの各構成要素は、膨張バッグとこのバッグに縫い付けられる少なくとも一つのストラップとを具備し、車両衝突の場合にこの構成要素がシートの前部に向かって展開可能であり、そのため、構成要素はこの人物を完全に囲繞し、
各構成要素の少なくとも一つのストラップは、背もたれ構造の上方ゾーンでの上部固定点と、シートベース構造の潜り込み防止ボスへの固定の為の底部固定点とを有し、各構成要素の少なくとも一つのストラップは、背もたれ構造の側面に沿って、またシートベース構造の側面に沿って延び、
シートベース構造は、通路を間に形成する内筐体及び外筐体を各側に有し、エアバッグの各構成要素の少なくとも一つのストラップがこの通路へ挿入され、これら二つの筐体は、車両衝突の場合に少なくとも一つのストラップと膨張バッグとをシートで展開させる案内トラックを構成する。
【0010】
本発明によるシートに実装されるエアバッグは、シートに着席する人物の各側に配設される二つの構成要素を具備し、二つの構成要素は、車両衝突の場合に前部に向かって各々が展開されてこの人物を完全に囲繞する。このエアバッグの顕著な特徴は、構成要素の各々が膨張バッグとこのバッグに縫い付けられる少なくとも一つのストラップとを具備して、少なくとも一つのストラップは、
背もたれの上方ゾーンでの上部固定点とシートベースの潜り込み防止ボスでの底部固定点とによりエアバッグの構成要素をシートに係止することと、
シートに着席する人物の良好な保護を膨張バッグが保証する為に、シートでの膨張バッグの展開を案内することと、
を可能にすることである。
【0011】
さて、このようなエアバッグは、これがシートに着席する人物の周りでの効果的な展開を可能にする為に、ある種の注意を払ってシートに装着されなければならない。本発明によるシートへのこのエアバッグの組み込みは、二つの筐体によってシートベース構造の二つの側に通路を設けることを伴い、エアバッグの各構成要素の少なくとも一つのストラップがここに配置される。これら二つの筐体の実装は、
シートベース構造のいかなる他の要素をも妨害しない隔離空間でシートベース構造にストラップを保持することと、
エアバッグの構成要素の前部の方に方向づけられる展開トラックを設けることと、
を可能にする。実際に、バッグが展開され始めると、内筐体と外筐体との間に設けられた通路から少なくとも一つのストラップが出る。
【0012】
内筐体と外筐体との間に形成される通路は、あそびを最小にしながらストラップの挿入を保証するように可能な限り正確に寸法決定される。シートベース構造の各側に設けられる通路の方向付けを充分に理解する為に、そしてシートが車両に装着されると仮定して、内筐体及び外筐体は、
実質的に平行であって、車両の縦及び垂直面XZに各々が延在し、
車両の縦及び垂直面XZに延在する通路を間に画定し、
車両の水平縦軸Xに延在するシートベースの二つの平行縁部の各々に装着される。
【0013】
各外筐体は、狭い一定幅の通路をこれらの間に設けるように、内筐体の近くにあってその形状に倣ったものである。
【0014】
考えられる本発明の特徴によれば、エアバッグの各構成要素は、この構成要素がシートに装着された時に重ねられる二つのストラップを具備する。こうして、車両の衝突時にエアバッグの各構成要素が応力を受けた時に、二つのストラップは、互いから分離する前に、内筐体と外筐体との間に位置する通路から出て、前部への膨張エアバッグの展開制御を可能にし、この展開は関連する構成要素の二つのストラップにより案内される。
【0015】
考えられる本発明の特徴によれば、エアバッグの各構成要素の二つの重ね合わせストラップは、背もたれ構造とシートベース構造との間の通路において実質的に90°折り曲げられる。この事前折り曲げは、
一旦展開されるとストラップを再び平らにする為に、シートのエアバッグについて選択される展開方向によりこの折り曲げが相殺され、
二つの重ね合わせストラップは、概して互いに90°より大きく方向づけられる背もたれ及びシートベースの経路を厳密に辿る、
ので、二重に必要である。
【0016】
言い換えると、この90°折り曲げ部が設けられないとすると、保護される人物に損害を与え得る折り曲げ部がエアバッグの展開により生じる。「実質的に90°」の語は「90°プラスマイナス10°」を意味する。
【0017】
考えられる本発明の特徴によれば、シートベース構造の片側の内筐体は、安全ベルトのバックルスレッドを収容する為の第1固有ハウジングが設置される凹部を有する。エアバッグの存在は、シート、とりわけ安全ベルトの既存の機能を抑止すべきではない。内筐体は、この安全ベルトの存在を考慮して設計されている。エアバッグのストラップはバックルスレッドの外側を通り、それゆえバックルスレッドを妨害せず、それゆえ安全ベルトの動作を阻害する危険は生じない。
【0018】
考えられる本発明の特徴によれば、シートベース構造の他の側の内筐体は、安全ベルトの係止部を収容する為の第2固有ハウジングが設置される凹部を有する。内筐体は、この安全ベルトの存在を考慮するように設計されている。エアバッグのストラップは安全ベルトの係止部の外側を通り、係止部を妨害せず、安全ベルトの動作を阻害する危険は生じない。
【0019】
考えられる本発明の特徴によれば、背もたれは機構によって傾斜が調節可能であり、シートベース構造の片側にある外筐体の前部ゾーンは、ワイヤによって機構に連結されて機構を駆動するように意図される制御ハンドルを具備する。エアバッグの構成要素のストラップが背もたれ傾斜機構を被覆するので、この機構の操作によって背もたれの傾斜を直接的に調節することが可能でなくなる。それでも背もたれの傾斜の調節を可能にするように、この機構の制御ハンドルは、シートに着席する人物がハンドルを容易に操作する為に外筐体の前部ゾーンの方にオフセットしなければならない。
【0020】
考えられる本発明の特徴によれば、背もたれは回転軸で旋回するように装着され、エアバッグの各構成要素の二重ストラップはこの回転軸との整合状態で設置される。こうして、この回転軸との整合状態で延びることにより、エアバッグの構成要素の二つのストラップは背もたれの傾斜を妨げない。
【0021】
考えられる本発明の特徴によれば、背もたれの傾斜を制御する制御ハンドルを具備する外筐体は、シートベース構造を上昇させる為の機構を電気的に起動するように意図される制御ボタンを具備する。エアバッグの構成要素のストラップはシートベース上昇機構と相互作用を行ない、簡易な制御ボタンによるシートベースの上昇の調節を容易にするように機構は電化されている。
【0022】
考えられる本発明の特徴によれば、シートベース構造の各側の内筐体及び外筐体はプラスチック材料で製作される。これらの筐体はシートをそれほど重くせず、その一方でエアバッグの展開を効果的に案内することが可能である。これらの筐体は通常の車両走行段階での特定機能は有さないので、これらを不必要に補強する必要はない。
【0023】
考えられる本発明の特徴によれば、内筐体及び外筐体の末端部においてシートベース構造には剛性曲げ部材ワイヤが設置され、内筐体と外筐体との間にあるワイヤの上流において最適な軌道を有するように、二重ストラップはこの剛性ワイヤの周りに折り曲げ部を形成する。とりわけ内筐体と外筐体との間に形成される通路に対して平行にストラップが延在する為に、シートベースの片側において内筐体と外筐体との間にエアバッグの構成要素の二つの重ね合わせストラップを理想的に配置することが、この剛性ワイヤにより可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による車両シートは、奥行の再構築を行なわずに、ダッシュボードに詰め込まれた乗員エアバッグを効果的に代替するように意図される包囲エアバッグを有するという利点を提供する。実際に、簡易設計の制限数の部品によるシートへのエアバッグの的確な装着は、安全性の点でシートを特に効率的にするのに充分である。その結果は、本発明によるシートが、余分な装着時間とシートの奥行変更とを必要とせずに既存のシートから直接的かつ容易に製作され得るということである。本発明によるシートは、強力エアバッグに加えて例えば安全ベルトなどの安全構成要素の存在にも関わらず、例えばシートベースの高さと背もたれの傾斜など、全ての調節を確保できるという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明によるシートの好適な実施形態についての詳細な記載が以下に挙げられ、次の図が参照される。
【
図2】シートで展開された構成における本発明によるシートのエアバッグの斜視図を表す。
【
図4】本発明によるシートのシートベース構造の部分的斜視図を表す。
【
図5】本発明によるシートのシートベース構造の内筐体及び外筐体の分解斜視図を表す。
【
図6】
図4のシートベース構造の別の角度からの部分的斜視図を表す。
【
図7】エアバッグのストラップの為の曲げ部材ワイヤを示す、本発明によるシートのシートベース構造の部分的斜視図を表す。
【
図8】背もたれの傾斜を制御する為のハンドルを具備する、本発明によるシートのシートベース構造の側面図を表す。
【
図9】本発明によるシートの背もたれの分解斜視図を表す。
【
図10】組み立てられた
図9の背もたれの斜視図を表す。
【
図11】本発明によるシートの背もたれの側部ゾーンの斜視図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照すると、本発明によるシート1は、好ましくは、構造を備えるシートベース2と、やはり構造を備える背もたれ3とを従来通りに具備する乗員シートである。
【0027】
図2を参照すると、このようなシート1の顕著な特徴は、通常は乗員シートの直前にて車両のダッシュボードに収容された乗員エアバッグを代替するように意図されるエアバッグ4が組み込まれていることである。図式的に、このエアバッグ4は、膨張バッグ7とこの膨張バッグ7に縫い付けられる二つのストラップ8,9とを各々が具備する二つの離間した構成要素5,6を具備する。このエアバッグ4の二つの構成要素5,6は、各側面10,11でシート1に詰め込まれ、そのため、シート1に着席する人物の各側に設置される。言い換えると、これら二つの構成要素5,6は、シート1に着席する人物を包み込み、シート1が装着される車両の横軸Y上で整合されている。これら二つの構成要素5,6は実質的に同一であるので、これら構成要素5,6の一方のみが以下の記載で説明される。
【0028】
図3を参照すると、エアバッグ4の構成要素5,6がシート1に詰め込まれた時に、二つのストラップ8,9は重ね合わせられ、背もたれ構造3の上方中央ゾーン12での上部固定点と、シートベース2の潜り込み防止ボス14の中央ゾーン13の底部固定点とを具備する。シート1の外側から視認できないように、膨張バッグ7は背もたれ3の片側へ挿入される。背もたれ3の両側とシートベース2の両側とに延びることにより、二つの重ね合わせストラップ8,9は上部固定点と底部固定点との間に延在するが、それでもシート1の外側から視認可能でない。
【0029】
図2を参照すると、例えば別の車両であり得る外部の障害物に対する偶発的な車両衝突の場合に、エアバッグ4の二つの構成要素5,6は、二つの矢印15,16が示しているように前部に向かって同時に展開して、シート1に着席している人物を完全に包囲する。実際に、この展開時に、二つの構成要素5,6の二つの膨張バッグ7は互いに連続して、人物の周りに連続的な保護ビードを形成する。エアバッグ4の各構成要素5,6の展開は膨張バッグ76の膨張により誘発され、バッグ7に縫い付けられて背もたれ構造6とシートベース構造2の両方に固定されている二つのストラップ8,9により案内される。エアバッグ4の構成要素5,6が展開する時に、二つのストラップ8,9の上部固定点及び底部固定点は無変化のままであり、二つのストラップ8,9を保持し続ける。エアバッグ4の二つの構成要素5,6の二つの膨張バッグ7により人物が完全に囲繞されると、彼又は彼女は全ての空間方向において完全に保護されるだろう。
【0030】
エアバッグ4の二つの構成要素5,6がその保護目的を完全に果たすことができる為には、これらが流体的かつ効果的に所望の方向に展開されてシートの他の要素を妨害しないようにシート1にうまく組み込むことが重要である。実際に、エアバッグ4の二つの構成要素5,6のシートへの組み込みが例えば安全ベルトの動作を妨げないこと、あるいはシート1の要素が構成要素5,6の展開を阻止できないことが不可欠である。
【0031】
本発明によるシート1は、エアバッグ4の二つの構成要素5,6が組み込まれるように特に構成されているシートベース2を有する。シートベース構造2は、図のように、車両の縦軸X上に延在する二つの平行な縦縁部と、車両の横軸Y上に延在する二つの平行な横縁部とを境界とする。
【0032】
図4及び5を参照すると、シートベース構造2の各縦縁部は、内筐体17により、そして外筐体18により具現される。内筐体17と外筐体18とは、車両の実質的に垂直な縦面XZに内接する肉薄の部品である。車両の横軸Y上において二つの外筐体18はシートベース2の二つの最外部品に当たり、各内筐体17は、外筐体18と、人物が着席するように意図されるシートベース2の中央ゾーンとの間に挿入される。外筐体18は車両の縦軸X上において長尺であって中空ゾーン19を有し、内筐体18は外筐体18のものより小さい長さを有し、この長さは車両の縦軸X上で考えられる寸法である。内筐体17は湾曲部を有し、中空ゾーン19の境界を成す外筐体18の壁との接触するように意図される。
【0033】
図4及び6を参照すると、内筐体17は、外筐体18の内面に押圧されると、対応するエアバッグ4の構成要素5,6の二つの重ね合わせストラップ8,9が延びる通路を外筐体18とともに形成する。内筐体17は、安全ベルトバックルスレッドと安全ベルトの係止部のいずれかを収容する為の固有ハウジング21を受容するように意図される開口部20を具備する。こうして、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9は、内筐体17と外筐体18との間に延びることにより、安全ベルトバックルスレッドの外部にあり、それゆえ安全ベルトを妨害するリスクは生じない。同様に、安全ベルトは、外部の物体に対する車両の衝突時にエアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9の展開を妨げない。
【0034】
図1,4,5,8を参照すると、外筐体18は、筐体の本体23に対して直角に延在する端部セグメント22を有し、端部セグメント22は背もたれ3と連続して設置され、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9をシート1の背もたれ3とシートベース2との間に隠すように意図される。
【0035】
図3及び6は、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9が実質的に90°、すなわち90°プラスマイナス10°の折り曲げ部24を背もたれ3とシートベース2との間に有することを示している。このように90°の事前折り曲げは、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9の展開時に危険であることを証明し得た折り曲げ部の出現を正確に防止するのに必要である。実際に、シート1でのエアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9の展開条件は、事前の90°折り曲げ部が消えて、平らで均一であるエアバッグストラップ8,9の為の空間を残し、それゆえ
図2に図示されているようにわずかな折り曲げ部も生じないというようなものである。
【0036】
図3を参照すると、既存の車両シートの大抵の背もたれと同じく、本発明によるシート1の背もたれ3は傾斜が調節可能である。車両の横軸Y上に延在して背もたれ3構造の下方ゾーンに設置される回転軸25での回転が可動であるように装着される。背もたれ3の両側とシートベース2の両側での経路で、エアバッグ4の構成要素5,6の二つの重ね合わせストラップ8,9はこの回転軸25を通る。言い換えると、回転軸25が各側で人工的に延長された場合に、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9は回転軸25の人工的延長線と交わる。こうして、背もたれ3の回転軸25を通ることにより、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9は傾斜を調節する為のこの軸25での背もたれ3の回転を妨げない。他方で、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9は、背もたれ3の回転軸25の延長線上に通常は設置され、背もたれ3を回転及び配置する為の機構を被覆して、この機構の操作を妨げる。
【0037】
図3,4,8を参照すると、このような妨げを改善する為に、この機構27の制御要素26が設けられて、シート1のシートベース2の二つの外筐体18の一方の前方ゾーンに設置される。この制御要素は、デフォルトでは車両の水平方向縦軸X上に延在するハンドル26から成り、ワイヤ28によって背もたれ3を回転及び配置する為の機構27にハンドル26が連結される。このワイヤ28は外筐体18により隠されて、制御ハンドル26の手動回転は、背もたれ3の傾斜の調節を可能にする為に機構27に直接作用するワイヤ28に張力を加える。
【0038】
同様に、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9はシートベース2を上昇させる為の機構を被覆し、シートベース2の高さ調節を妨げる。
【0039】
図1,3,4を参照すると、シートベースの上昇機構へのこのアクセス問題は、電気モータをこの機構に追加して、制御ボタン29をこの電気モータと連動させることにより、解決された。この制御ボタンは、制御ハンドル26を支持する外筐体18に固定される押しボタン29であり、押しボタン29はハンドル26の後方に設置される。
【0040】
図7を参照すると、内筐体17と外筐体18との間に位置する通路におけるエアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9の配置を改良するように、内筐体17の内側でシートベース構造2に剛性曲げ部材ワイヤ30が固定される。実際に、エアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9は、剛性ワイヤ30に当接することによりこの剛性ワイヤ30の周りに延びて折り曲げ部を形成し、内筐体17と外筐体18との間に作られる通路にこれらが最適な形で挿入される為に、剛性ワイヤ30はエアバッグの二つの重ね合わせストラップ8,9を真っ直ぐにする。言い換えると、この剛性ワイヤ30は、内筐体17と外筐体18との間に位置する通路においてエアバッグ4の二つの重ね合わせストラップ8,9の直線状態を伸ばす。
【0041】
図9,10,11を参照すると、膨張バッグ7とバッグ7に縫い付けられる重ね合わせストラップ8,9の区分とは、シート1の背もたれ3に詰め込まれている。二つの重ね合わせストラップ8,9とバッグ7とを所望の方向に急速に解放することを可能にするように、背もたれ3の被覆材が変更された。シート1の前部に向かって可能な限り高速で展開が行われて、乗員を包囲し、車両のボデーのセンターピラーのゾーンとの接触を回避しなければならない。この結果を達成する為に、フォーム32及びファブリック33による精巧な仕上げを保ちながら、剛性の後部シェル31が背もたれ3の後面と背もたれ3の二つの側面とを被覆する。フォーム32とファブリック33とシェル31との接合部分が、シート1の構造34の一部で作り出される。この接合部分は、重ね合わせストラップ8,9と膨張バッグ7との解放を可能にするとともに、
図10及び11で矢印34により示されているようにバッグ7及びストラップ8,9の展開を前部の方に集中させてその横展開の回避を可能にする。シェル31は、バッグ7内の気体により生成される圧力の作用を受けて分離する。重ね合わせストラップ8,9はバッグ7の外側面に縫い付けられ、それゆえ、たとえそれらがバッグ7に連結されていても背もたれ3から最初に放出される。
【国際調査報告】