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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ディスプレイ用車窓および車両
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240829BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240829BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240829BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
B60J1/00 H
B60J1/02 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513127
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 CN2022119400
(87)【国際公開番号】W WO2023041060
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111102031.4
(32)【優先日】2021-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516151818
【氏名又は名称】フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シーシン
(72)【発明者】
【氏名】レン,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ユェミン
(72)【発明者】
【氏名】ハー,チャンロン
(72)【発明者】
【氏名】グァン,ジンリャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ビンミン
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA43
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC24
(57)【要約】
ディスプレイ用車窓および車両が提供される。ディスプレイ用車窓は、車窓ガラス(100)と、少なくとも1つの投影装置とを備える。少なくとも1つの投影装置は、少なくとも1本の投影光線を生成し、車窓ガラス(100)の少なくとも1つの投影領域に少なくとも1本の投影光線を対応して投射して、少なくとも1つの投影画像を対応して形成するように構成されており、投影光線は、S偏光を少なくとも90%含む。少なくとも1本の投影光線は第1投影光線(S1)を含み、少なくとも1つの投影領域は第1投影領域(A1)を含む。第1投影光線(S1)は、第1入射角(θ1)で第1投影領域(A1)に投射された後、第1投影画像(P1)を形成し、第1投影領域(A1)は、第1入射角(θ1)で投射された第1投影光線(S1)に対して少なくとも25%の第1反射率を有する。ディスプレイ用車窓は多様な機能を持つ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用車窓であって、
前記ディスプレイ用車窓は、車窓ガラスと、少なくとも1つの投影装置とを備え、
前記少なくとも1つの投影装置は、少なくとも1本の投影光線を生成し、前記車窓ガラスの少なくとも1つの投影領域に前記少なくとも1本の投影光線を対応して投射して、少なくとも1つの投影画像を対応して形成するように構成されており、前記投影光線は、S偏光を少なくとも90%含み、
前記少なくとも1本の投影光線は第1投影光線を含み、前記少なくとも1つの投影領域は第1投影領域を含み、前記第1投影光線は、第1入射角で前記第1投影領域に投射された後、第1投影画像を形成し、前記第1投影領域は、前記第1入射角で投射された前記第1投影光線に対して少なくとも25%の第1反射率を有する、
ことを特徴とするディスプレイ用車窓。
【請求項2】
前記第1入射角の範囲は53°~67°であり、前記第1投影画像の投影距離は0.5メートル~3メートルである、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項3】
前記第1投影画像は、6°~15°の水平視野角と、2°~10°の垂直視野角とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項4】
前記少なくとも1本の投影光線は第2投影光線を含み、前記少なくとも1つの投影領域は第2投影領域を含み、前記第2投影光線は、第2入射角で前記第2投影領域に投射された後、第2投影画像を形成し、前記第2投影領域は、前記第2入射角で投射された前記第2投影光線に対して少なくとも12%の第2反射率を有し、前記第1投影領域および前記第2投影領域は離間して配置されている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項5】
前記第1投影領域と前記第2投影領域との水平方向の最小距離は100mm~400mmである、
ことを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項6】
前記第1入射角は前記第2入射角と等しくなく、前記第1反射率は前記第2反射率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項7】
前記第2入射角の範囲は53°~67°であり、前記第2投影画像の投影距離は2メートル~100メートルである、
ことを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項8】
前記車窓ガラスはガラス層および増反射膜を含み、前記増反射膜は前記ガラス層に設けられており、前記増反射膜は少なくとも前記第1投影領域を覆っている、
ことを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項9】
前記ガラス層は単枚の強化ガラスであり、前記単枚の強化ガラスは、車外に向く外側表面と、車内に向く内側表面とを有し、前記増反射膜は前記内側表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項10】
前記ガラス層は合わせガラスであり、前記ガラス層は、第1のガラスサブ層、第2のポリマーサブ層、および第2のガラスサブ層を含み、前記第1のガラスサブ層、前記第2のポリマーサブ層、および前記第2のガラスサブ層は、順に配置されて前記合わせガラスを形成しており、前記第1のガラスサブ層は、背向する第1表面および第2表面を有し、前記第2のガラスサブ層は、背向する第3表面および第4表面を有し、前記第2のポリマーサブ層は、前記第2表面および前記第3表面に近接して配置されており、前記増反射膜は、前記第2表面、前記第2のポリマーサブ層の少なくとも1つの表面、前記第3表面、または前記第4表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項11】
前記第2投影領域は前記増反射膜によって覆われていない、
ことを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項12】
前記第2投影領域は前記増反射膜によって覆われており、前記第1入射角は前記第2入射角よりも大きく、前記第1入射角で投射された前記第1投影光線に対する前記増反射膜の反射率は、前記第2入射角で投射された前記第2投影光線に対する前記増反射膜の反射率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項13】
前記第2投影領域は前記増反射膜によって覆われており、前記第1入射角は前記第2入射角と等しく、前記第1投影光線におけるS偏光の割合は、前記第2投影光線におけるS偏光の割合よりも大きく、前記第1入射角で投射された前記第1投影光線に対する前記増反射膜の反射率は、前記第2入射角で投射された前記第2投影光線に対する前記増反射膜の反射率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項14】
前記増反射膜は、少なくとも一層の高屈折率層と、少なくとも一層の低屈折率層とを含み、前記少なくとも一層の高屈折率層と、前記少なくとも一層の低屈折率層とは、交互に積層配置されており、前記高屈折率層は1.8以上の屈折率を有し、前記低屈折率層は1.6以下の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項15】
前記少なくとも一層の低屈折率層の総厚さは、前記少なくとも一層の高屈折率層の総厚さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項14に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項16】
前記少なくとも一層の高屈折率層の総厚さは10nm~50nmであり、いずれか一層の前記低屈折率層の厚さは70nm以下である、
ことを特徴とする請求項14に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項17】
前記少なくとも一層の高屈折率層の総厚さは10nm~20nmであり、いずれか一層の前記高屈折率層の厚さは15nm以下であり、いずれか一層の前記低屈折率層の厚さは50nm以下である、
ことを特徴とする請求項14に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項18】
車両であって、
前記車両は、車体と、請求項1~17のいずれか一項に記載のディスプレイ用車窓とを備え、前記車窓ガラスは前記車体に取り付けられており、前記投影装置は前記車体内に配置されている、
ことを特徴とする車両。
【請求項19】
前記少なくとも1つの投影領域は、第1投影領域および第2投影領域を含み、前記第1投影領域は前記車両の助手席の視野領域に対応し、前記第2投影領域は前記車両の運転席の視野領域に対応する、
ことを特徴とする請求項18に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、発明の名称が「ディスプレイ用車窓および車両」とされ、2021年9月18日に出願された中国特許出願第202111102031.4号の優先権を主張し、そのすべての内容が引用として本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、車両技術分野に関し、特に、ディスプレイ用車窓および車両に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の車両の車窓は、風を遮るだけの単一機能を有しており、ユーザーの使用ニーズに応えることができない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記技術的課題を解決するためのディスプレイ用車窓および車両を提供することを目的とする。
【0005】
本発明はディスプレイ用車窓を提供する。ディスプレイ用車窓は、車窓ガラスと、少なくとも1つの投影装置とを備える。少なくとも1つの投影装置は、少なくとも1本の投影光線を生成し、車窓ガラスの少なくとも1つの投影領域に少なくとも1本の投影光線を対応して投射して、少なくとも1つの投影画像を対応して形成するように構成されており、投影光線は、S偏光を少なくとも90%含む。少なくとも1本の投影光線は第1投影光線を含み、少なくとも1つの投影領域は第1投影領域を含み、第1投影光線は、第1入射角で第1投影領域に投射された後、第1投影画像を形成し、第1投影領域は、第1入射角で投射された第1投影光線に対して少なくとも25%の第1反射率を有する。
【0006】
第1入射角の範囲は53°~67°であり、第1投影画像の投影距離は0.5メートル~3メートルである。
【0007】
第1投影画像は、6°~15°の水平視野角と、2°~10°の垂直視野角とを有する。
【0008】
少なくとも1本の投影光線は第2投影光線を含み、少なくとも1つの投影領域は第2投影領域を含み、第2投影光線は、第2入射角で第2投影領域に投射された後、第2投影画像を形成し、第2投影領域は、第2入射角で投射された第2投影光線に対して少なくとも12%の第2反射率を有し、第1投影領域および第2投影領域は離間して配置されている。
【0009】
第1投影領域と第2投影領域との水平方向の最小距離は100mm~400mmである。
【0010】
第1入射角は第2入射角と等しくなく、第1反射率は第2反射率よりも大きい。
【0011】
第2入射角の範囲は53°~67°であり、第2投影画像の投影距離は2メートル~100メートルである。
【0012】
車窓ガラスはガラス層および増反射膜を含み、増反射膜はガラス層に設けられており、増反射膜は少なくとも第1投影領域を覆っている。
【0013】
ガラス層は単枚の強化ガラスであり、単枚の強化ガラスは、車外に向く外側表面と、車内に向く内側表面とを有し、増反射膜は内側表面に設けられている。
【0014】
ガラス層は合わせガラスであり、ガラス層は、第1のガラスサブ層、第2のポリマーサブ層、および第2のガラスサブ層を含み、第1のガラスサブ層、第2のポリマーサブ層、および第2のガラスサブ層は、順に配置されて合わせガラスを形成しており、第1のガラスサブ層は、背向する第1表面および第2表面を有し、第2のガラスサブ層は、背向する第3表面および第4表面を有し、第2のポリマーサブ層は、第2表面および第3表面に近接して配置されており、増反射膜は、第2表面、第2のポリマーサブ層の少なくとも1つの表面、第3表面、または第4表面に設けられている。
【0015】
第2投影領域は増反射膜によって覆われていない。
【0016】
第2投影領域は増反射膜によって覆われており、第1入射角は第2入射角よりも大きく、第1入射角で投射された第1投影光線に対する増反射膜の反射率は、第2入射角で投射された第2投影光線に対する増反射膜の反射率よりも大きい。
【0017】
第2投影領域は増反射膜によって覆われており、第1入射角は第2入射角と等しく、第1投影光線におけるS偏光の割合は、第2投影光線におけるS偏光の割合よりも大きく、第1入射角で投射された第1投影光線に対する増反射膜の反射率は、第2入射角で投射された第2投影光線に対する増反射膜の反射率よりも大きい。
【0018】
増反射膜は、少なくとも一層の高屈折率層と、少なくとも一層の低屈折率層とを含み、少なくとも一層の高屈折率層と、少なくとも一層の低屈折率層とは、交互に積層配置されており、高屈折率層は1.8以上の屈折率を有し、低屈折率層は1.6以下の屈折率を有する。
【0019】
少なくとも一層の低屈折率層の総厚さは、少なくとも一層の高屈折率層の総厚さよりも大きい。
【0020】
少なくとも一層の高屈折率層の総厚さは10nm~50nmであり、いずれか一層の低屈折率層の厚さは70nm以下である。
【0021】
少なくとも一層の高屈折率層の総厚さは10nm~20nmであり、いずれか一層の高屈折率層の厚さは15nm以下であり、いずれか一層の低屈折率層の厚さは50nm以下である。
【0022】
本発明は車両を提供する。車両は、車体と、上記ディスプレイ用車窓とを備え、車窓ガラスは車体に取り付けられており、投影装置は車体内に配置されている。
【0023】
少なくとも1つの投影領域は、第1投影領域および第2投影領域を含み、第1投影領域は車両の助手席の視野領域に対応し、第2投影領域は車両の運転席の視野領域に対応する。
【0024】
以上をまとめると、本出願は、第1入射角で投射された第1投影光線に対して、第1投影領域が少なくとも25%の第1反射率を有するように配置することにより、投射装置の発光強度を向上させることなく、第1投影光線に対する反射率を向上させ、第1投影画像の輝度を向上させ、第1投影画像の品質を向上させる。これにより、従来のディスプレイ用車窓において、投影装置の発光パワーを向上させなければ、第1投影画像の輝度を大幅に向上させることができず、ディスプレイ用車窓の使用場面が制限されるという技術的問題を解決して、投影装置の光源の発光強度を向上させることを回避することができる。投影装置の光源の発光強度を向上させると、投影装置の放熱システム、光源システム等のアセンブリのパワーおよび体積の割合を大きくする必要が生じることから、投影装置の空間設計の難易度が増加し、さらには、製品の故障のリスクが増加して事故を招くという技術的問題が生じる。さらに、本出願の車窓ガラスは、少なくとも1つの投影画像を形成することができることで、多様な機能を持つようになり、風を遮る機能を有するだけではなく、少なくとも1つの投影画像を表示することができ、車窓ガラスの使用価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下、本発明の実施例または先行技術に係る技術的解決策をより明確に説明するために、実施例または先行技術の説明に用いられる図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明における図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者は、創造的な努力なしに、これらの図面によって他の図面を得ることができる。
図1】本発明の実施例に係る、第1投影光線が車窓ガラスに入射されたときの断面構造を示す模式図である。
図2】本発明の実施例に係る、第2投影光線が車窓ガラスに入射されたときの断面構造を示す模式図である。
図3】本発明の実施例に係る車窓ガラスの上から見た構造を示す模式図である。
図4図3に示された車窓ガラスの断面構造を示す模式図である。
図5】もう1つの車窓ガラスの上から見た構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決策を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得られるすべての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0027】
本発明は、車体およびディスプレイ用車窓を備える車両を提供する。車窓ガラス100は車体に取り付けられており、投影装置は車体内に配置されている。以下、ディスプレイ用車窓について説明する。
【0028】
図1を参照すると、ディスプレイ用車窓は、車窓ガラス100と、少なくとも1つの投影装置とを備える。少なくとも1つの投影装置は、少なくとも1本の投影光線を生成し、車窓ガラス100の少なくとも1つの投影領域に少なくとも1本の投影光線を対応して投射して、少なくとも1つの投影画像を対応して形成するように構成されており、投影光線は、S偏光を少なくとも90%含む。
【0029】
少なくとも1本の投影光線は第1投影光線S1を含み、少なくとも1つの投影領域は第1投影領域A1を含む。第1投影光線S1は、第1入射角θ1で第1投影領域A1に投射された後、第1投影画像P1を形成し、第1投影領域A1は、第1入射角θ1で投射された第1投影光線S1に対して少なくとも25%の第1反射率を有する。理解できるように、少なくとも1つの投影装置は、1本の投影光線または複数本の投影光線を生成することができる。第1入射角θ1は、第1投影光線S1と第1投影領域A1の中心点における第1投影領域A1の法線との間の角度である。第1反射率は、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%等であってもよく、本出願は第1反射率の具体的な値を具体的に限定するものではない。
【0030】
本出願では、第1入射角θ1で投射された第1投影光線S1に対して、第1投影領域A1が少なくとも25%の第1反射率を有するように配置することにより、投射装置の発光強度を向上させることなく、第1投影光線S1に対する反射率を向上させ、第1投影画像P1の輝度を向上させ、第1投影画像P1の品質を向上させる。これにより、従来のディスプレイ用車窓において、投影装置の発光パワーを向上させなければ、第1投影画像P1の輝度を大幅に向上させることができず、ディスプレイ用車窓の使用場面が制限されるという技術的問題を解決して、投影装置の光源の発光強度を向上させることを回避することができる。投影装置の光源の発光強度を向上させると、投影装置の放熱システム、光源システム等のアセンブリのパワーおよび体積の割合を大きくする必要が生じることから、投影装置の空間設計の難易度が増加し、さらには、製品の故障のリスクが増加して事故を招くという技術的問題が生じる。
【0031】
さらに、本出願の車窓ガラス100は、少なくとも1つの投影画像を形成することができることで、多様な機能を持つようになり、風を遮る機能を有するだけではなく、少なくとも1つの投影画像を表示することができ、車窓ガラス100の使用価値を高めることができる。
【0032】
1つの具体的な実施例では、第1投影領域A1は、車両の助手席の視野領域に対応する。本出願では、投影装置の発光強度を向上させることなく、また、より大きな体積を有する光源システム等のアセンブリを使用することなく、助手席の視野領域の第1投影画像P1の輝度を向上させ、助手席の視野領域の第1投影画像P1の品質を向上させることができる。1つの具体的な実施例では、第1入射角θ1の範囲は53°~67°であり、第1投影画像P1の投影距離は0.5メートル~3メートルである。第1投影画像P1のこの投影距離により、見る人が第1投影画像P1を比較的にはっきりと見ることができる。第1入射角θ1の具体的な値は、第1投影画像P1の具体的な位置に関連する。
【0033】
1つの具体的な実施例では、第1投影画像P1は、6°~15°の水平視野角と、2°~10°の垂直視野角とを有する。第1投影画像P1のこの水平視野角およびこの垂直視野角により、第1投影画像P1は比較的に広い範囲で表示されることができ、第1投影画像P1は高い鮮明度を有する。
【0034】
図2を参照すると、1つの具体的な実施例では、少なくとも1本の投影光線は第2投影光線S2を含み、少なくとも1つの投影領域は第2投影領域A2を含む。第2投影光線S2は、第2入射角θ2で第2投影領域A2に投射された後、第2投影画像P2を形成し、第2投影領域A2は、第2入射角θ2で投射された第2投影光線S2に対して少なくとも12%の第2反射率を有する。第1投影領域A1および第2投影領域A2は離間して配置されている。理解できるように、第2入射角θ2は、第2投影光線S2と第2投影領域A2の中心点における第2投影領域A2の法線との間の角度である。第2反射率は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%等であってよく、本出願は第2反射率の具体的な値を具体的に限定するものではない。
【0035】
本出願では、第2入射角θ2で投射された第2投影光線S2に対して、第2投影領域A2が少なくとも12%の第2反射率を有するように配置することにより、投射装置の発光強度を向上させることなく、第2投影光線S2に対する反射率を向上させ、第2投影画像P2の輝度を向上させ、第2投影画像P2の画質を向上させる。
【0036】
すなわち、本出願では、車窓ガラス100の第1投影領域A1に第1投影光線S1を投射することで、第1投影領域A1に第1投影画像P1を形成することができ、車窓ガラス100の第2投影領域A2に第2投影光線S2を投射することで、第2投影領域A2に第2投影画像P2を形成することができ、これにより、車窓ガラス100は2つの投影画像を表示することができ、車窓ガラス100の使用価値を高めることができる。さらに、第1投影画像P1および第2投影画像P2が離間して配置されているため、第1投影画像P1および第2投影画像P2が互いに影響し合わず、第1投影画像P1および第2投影画像P2が別々に表示され、第1投影画像P1および第2投影画像P2の鮮明度を向上させることができる。
【0037】
1つの具体的な実施例では、第2投影領域A2は車両の運転席の視野領域に対応する。本出願では、投影装置の発光強度を向上させることなく、また、より大きな体積を有する光源システム等のアセンブリを使用することなく、運転席の視野領域の第2投影画像P2の輝度を向上させ、運転席の視野領域の第2投影画像P2の品質を向上させることができる。
【0038】
理解できるように、第1投影領域A1は、助手席の視野領域に対応し、主に、ビデオ、ゲーム等の種類のエンターテイメント映像情報を表示する。第2投影領域A2は、フロントガラス反射型ヘッドアップディスプレイ(Windshield-Head Up Display、W-HUD)、拡張現実型ヘッドアップディスプレイ(Augmented Reality Head-up Display、AR-HUD)等の運転席の視野領域のヘッドアップディスプレイ(HUD)に対応し、主に車両の運転情報を表示し、運転情報には、計器、ナビゲーション、一部の先進運転支援システム(Advanced Driver-Assistance Systems、ADAS)情報が含まれる。
【0039】
言い換えると、本出願の車窓ガラス100は、助手席の視野領域においてエンターテイメント映像情報を表示することもでき、運転席の視野領域において車両の運転情報を表示することもできる。すなわち、本出願の助手席の視野領域に表示されるエンタテインメント映像情報と、運転席の視野領域に表示される運転情報とは、同時に表示されることもでき、またはいずれか一方が表示されることもできる。
【0040】
図3を参照すると、1つの具体的な実施例では、第1投影領域A1と第2投影領域A2との水平方向の最小距離WAは100mm~400mmである。第1投影領域A1と第2投影領域A2との間の上記距離は、第1投影画像P1および第2投影画像P2が互いに影響し合わず、かつ第1投影画像P1および第2投影画像P2が車窓ガラス100上に完全に表示され得ることを保証することができる。
【0041】
1つの具体的な実施例では、第1入射角θ1は第2入射角θ2と等しくなく、第1反射率は第2反射率よりも大きい。
【0042】
本出願では、第1入射角θ1を第2入射角θ2と等しくなく配置することにより、第1投影光線S1および第2投影光線S2がずれるようになり得ることで、第1投影画像P1および第2投影画像P2がずれるようになり得、第1投影画像P1および第2投影画像P2が互いに影響し合わない。さらに、本出願の第1反射率は第2反射率よりも大きいことから、第1投影画像P1の輝度を第2投影画像P2の輝度よりも大きくすることができる。すなわち、エンターテイメント映像情報の輝度を、車両運転情報の輝度よりも大きくすることができる。
【0043】
1つの具体的な実施例では、第2入射角θ2の範囲は53°~67°であり、第2投影画像P2の投影距離は2メートル~100メートルである。第2投影画像P2のこの投影距離により、見る人が第2投影画像P2を比較的にはっきりと見ることができる。第2入射角θ2の具体的な値は、第2投影画像P2の具体的な位置に関連する。
【0044】
図4を合わせて参照すると、具体的には、第1投影光線S1は、第1入射角θ1で第1投影領域A1に入射されて、投影距離がL1である第1投影画像P1を形成し、第2投影光線S2は、第2入射角θ2で第2投影領域A2に入射されて、投影距離がL2である第2投影画像P2を形成する。中間膜が0.2mrad~0.8mradのくさび角αを有し、投影距離L1は0.5メートル~3メートルであり、L2は2メートル~100メートルであり、θ2<θ1である。ガラス面への第1投影光線S1の投影領域は第1投影領域A1であり、ガラス面への第2投影光線S2の投影領域は第2投影領域A2である。投影画像が互いに影響し合うことを避けるために、第1投影領域A1と第2投影領域A2との水平方向の最小距離WAは100mm~400mmであり、第1投影画像P1と第2投影画像P2との水平方向の最小間隔WSは50mm~600mmである。
【0045】
図5を参照すると、理解できるように、車窓ガラス100は透視領域110および機能領域120を含み、透視領域110は機能領域120の一側に配置されており、第1投影領域A1および機能領域120は少なくとも部分的に重なり、または、第1投影領域A1および機能領域120は離間して配置されている。選択可能に、第1投影領域A1および機能領域120が少なくとも部分的に重なる場合、第1投影領域A1と機能領域120との重なる部分の大きさは0mm~30mmである。第1投影領域A1および機能領域120が離間して配置されている場合、第1投影領域A1と機能領域120との間隔の距離は0mm~200mmである。透視領域110の可視光透過率は10%~95%であり、機能領域120の可視光透過率は10%より小さく、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下である。図4において、機能領域120は透視領域110を取り囲んでいる。第1投影領域A1の下側の縁部と機能領域120との最近接距離HLは-30mm~200mm(-30mm~0mmは、第1投影領域A1の下側の縁部および深色遮蔽層が重なることを意味する)である。合わせガラスの縁部に近い第1投影領域A1の縁部と深色遮蔽層との最近接距離HWはHW>25mmを満たす。第2投影領域A2の下側の縁部は200mmより大きい水平長さを有し、0.15mmより大きい面積を有する。
【0046】
図1および図2を参照すると、1つの具体的な実施例では、車窓ガラス100はガラス層10および増反射膜20を含み、増反射膜20はガラス層10に設けられており、増反射膜20は少なくとも第1投影領域A1を覆っている。理解できるように、増反射膜20は、第1投影領域A1に投射された第1投影光線S1(S偏光)に対して強い反射効果を有することで、53°~67°の第1入射角θ1を有する偏光に対する反射率を最低でも25%以上に高め、さらには40%以上に高める。増反射膜20は、53°~67°の第1入射角θ1を有するS偏光に対する反射率Rsが25%以上であり、可視光反射率RLが16%以下である。
【0047】
本出願では、ガラス層10に増反射膜20を配置することにより、投射装置の発光強度を向上させることなく、第1投影光線S1に対する反射率を向上させ、第1投影画像P1の輝度を向上させ、第1投影画像P1の品質を向上させる。
【0048】
1つの具体的な実施例では、第2投影領域A2は増反射膜20によって覆われていない。理解できるように、ガラス層10の運転席の視野領域に対応する位置が増反射膜20によって覆われていない。このようにして、車窓ガラス100の厚さおよび設計の難易度を低減することができる。
【0049】
1つの具体的な実施例では、第2投影領域A2は増反射膜20によって覆われており、第1入射角θ1は第2入射角θ2よりも大きく、第1入射角θ1で投射された第1投影光線S1に対する増反射膜20の反射率は、第2入射角θ2で投射された第2投影光線S2に対する増反射膜20の反射率よりも大きい。理解できるように、第1投影領域A1および第2投影領域A2は、いずれも増反射膜20によって覆われている。また、増反射膜20は、第2投影領域A2に投射された第2投影光線S2(S偏光)に対して強い反射効果を有する。増反射膜20は、入射角53°~67°のS偏光に対する反射率Rsが25%以上であるが、可視光反射率RLが16%以下である。
【0050】
本出願では、ガラス層10に増反射膜20を配置することにより、投射装置の発光強度を向上させることなく、第1投影光線S1および第2投影光線S2に対する反射率を向上させ、第1投影画像P1および第2投影画像P2の輝度を向上させ、第1投影画像P1および第2投影画像P2の品質を向上させる。
【0051】
理解できるように、S偏光に対する増反射膜20の反射率は、入射角が大きくなるほど高くなる。本出願では、第1入射角θ1を第2入射角θ2よりも大きく配置することにより、第1入射角θ1で投射された第1投影光線S1に対する増反射膜20の反射率は、第2入射角θ2で投射された第2投影光線S2に対する増反射膜20の反射率よりも大きくなり、従って、第1投影光線S1の反射により形成される第1投影画像P1の輝度は、第2投影光線S2の反射により形成される第2投影画像P2の輝度よりも大きくなり、これにより、第1投影画像P1はよりはっきりと表示される。すなわち、エンターテイメント映像情報を表示する第1投影画像P1はよりはっきりと表示されることができる。
【0052】
1つの具体的な実施例では、第2投影領域A2は増反射膜20によって覆われており、第1入射角θ1は第2入射角θ2と等しく、第1投影光線S1におけるS偏光の割合は、第2投影光線S2におけるS偏光の割合よりも大きく、第1入射角θ1で投射された第1投影光線S1に対する増反射膜20の反射率は、第2入射角θ2で投射された第2投影光線に対する増反射膜20の反射率よりも大きい。
【0053】
理解できるように、S偏光に対する増反射膜20の反射率は、S偏光の割合が増加するにつれて増加する。本出願では、第1入射角θ1を第2入射角θ2と等しく、第1投影光線S1におけるS偏光の割合を第2投影光線S2におけるS偏光の割合よりも大きく配置することにより、第1投影光線S1の反射により形成される第1投影画像P1の輝度は、第2投影光線S2の反射により形成される第2投影画像P2の輝度よりも大きくなり、これにより、第1投影画像P1はよりはっきりと表示される。すなわち、エンターテイメント映像情報を表示する第1投影画像P1はよりはっきりと表示されることができる。
【0054】
1つの具体的な実施例では、ガラス層10は単枚の強化ガラスであり、単枚の強化ガラスは、車外に向く外側表面と、車内に向く内側表面とを有し、増反射膜20は内側表面に設けられている。本実施例では、ガラス層10は、背向する第1表面210および第2表面220を有し、第1表面210は外側表面として車外に向き、第2表面220は内側表面として車内に向く。増反射膜20は第2表面220に設けられている。車窓ガラス100が車両に取り付けられる場合、単枚の強化ガラスは、通常、曲げられた物理強化ガラスであり、当然ながら、曲げられた化学強化ガラスであってもよく、さらには、曲げられた射出成形のポリカーボネート(Polycarbonate、PC)ガラスであってもよい。単枚の強化ガラスの厚さは2.0mm~6.0mmであり、単枚の強化ガラスの可視光透過率は10%~95%である。当然ながら、本出願のガラス層10の厚さは、上記厚さに限定されるものではなく、他の厚さであってもよい。
【0055】
図1および図2を参照すると、1つの具体的な実施例では、ガラス層10は合わせガラスであり、ガラス層10は、第1のガラスサブ層101、第2のポリマーサブ層102、および第2のガラスサブ層103を含み、第1のガラスサブ層101、第2のポリマーサブ層102、および第2のガラスサブ層103は、順に配置されて合わせガラスを形成している。第1のガラスサブ層101は、背向する第1表面210および第2表面220を有し、第2のガラスサブ層103は、背向する第3表面230および第4表面240を有し、第2のポリマーサブ層102は、第2表面220および第3表面230に近接して配置されている。増反射膜20は、第2表面220、第2のポリマーサブ層102の少なくとも1つの表面、第3表面230、または第4表面240に設けられている。理解できるように、合わせガラスは、10%~95%の可視光透過率を有する。
【0056】
理解できるように、第2のポリマーサブ層102はくさび形の中間膜であり、くさび形の中間膜は、増反射膜20の反射像と、第1表面210、第2表面220、第3表面230、または第4表面240の反射像との二重像を矯正するために用いられ、くさび角αは0.2mrad~0.8mradである。
【0057】
理解できるように、第1のガラスサブ層101の厚さは、0.7~4.0mmであってもよく、例えば3.0mm、2.1mm、1.8mm、または1.6mm等であってもよい。第2のガラスサブ層103の厚さは、0.7~4.0mmであってもよく、例えば2.1mm、1.8mm、1.6mm、1.1mm、0.7mmな等であってもよい。好ましくは、第2のガラスサブ層103の厚さは、第1のガラスサブ層101の厚さよりも小さく、これにより、車窓ガラス100の強度要求を満たす一方で、合わせガラスを薄める軽量化要求も達成することができる。選択可能に、第2のポリマーサブ層102の厚さは0.38mm~1.5mmである。
【0058】
第1のガラスサブ層101および第2のガラスサブ層103は、物理強化ガラス、化学強化ガラス、および射出成形のPCガラスから選ばれた一種または二種である。例えば、第1のガラスサブ層101および第2のガラスサブ層103は、いずれも物理強化ガラスであり、またはいずれも化学強化ガラスであり、またはいずれも射出成形のPCガラスであり、または一方が物理強化ガラスであり、他方が化学強化ガラスであり、または一方が物理強化ガラスであり、他方が射出成形のPCガラスであり、または一方が化学強化ガラスであり、他方が射出成形のPCガラスである。車窓ウガラス100が車両に取り付けられたとき、第1表面210は車外に向き、第4表面240は車内に向く。第1のガラスサブ層101または第2のガラスサブ層103として、透明ガラスを用いてもよく、緑色ガラス、灰色ガラスなどの着色ガラスを用いてもよい。
【0059】
第2のポリマーサブ層102は、第1のガラスサブ層101および第2のガラスサブ層103を貼り合わせて合わせガラスを形成するために用いられる。第2のポリマーサブ層102は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、イオン性ポリマーフィルム(SGP)などから選択することができる。当然ながら、第2のポリマーサブ層102は他の機能を有していてもよい。例えば、第2のポリマーサブ層102は、赤外線吸収剤が添加されたことで、日焼け防止機能または断熱機能を有するようになる。別の例として、第2のポリマーサブ層102は、紫外線吸収剤が添加されたことで、紫外線遮断機能を有するようになる。さらに別の例として、第2のポリマーサブ層102は、より多くの可塑剤が添加されたことで、防音機能を有するようになる。第2のポリマーサブ層102は、透明PVBのような透明なものであってもよく、灰色PVBのような着色されたものであってもよい。
【0060】
選択可能に、増反射膜20は、第2表面220に配置されている。このようにして、増反射膜20は、第1のガラスサブ層101と第2のポリマーサブ層102との間に配置され、環境と直接接触することなく、合わせガラスの製品の組み合わせの自由度を向上させ、より多くの車種の異なるニーズを満たす。
【0061】
選択可能に、増反射膜20は、第2のポリマーサブ層102の少なくとも1つの表面に配置されることもできる。例えば、増反射膜20は、第1のガラスサブ層101に対向する第2のポリマーサブ層102の表面、または第2のガラスサブ層103に対向する第2のポリマーサブ層102の表面に配置される。
【0062】
選択可能に、増反射膜20は、第3表面230に配置されることができる。このようにして、増反射膜20は、第2のガラスサブ層103と第2のポリマーサブ層102との間に配置され、環境と直接接触することなく、合わせガラスの製品の組み合わせの自由度を向上させ、より多くの車種の異なるニーズを満たす。
【0063】
選択可能に、図1および図2に示すように、増反射膜20は第4表面240に配置されている。このようにして、投射光線はまず増反射膜20に到達し、投影光線に対する車窓ガラス100の反射率を最大に向上させることができる。
【0064】
1つの具体的な実施例では、増反射膜20は単層構造または多層構造である。単層または多層の増反射膜20により、増反射膜20の厚さを調整することができ、投射光線に対する増反射膜20の反射効果を調整することができる。単層または多層の増反射膜20の材質は同じであってもよく、または異なってもよい。
【0065】
1つの具体的な実施例では、増反射膜20は、少なくとも一層の高屈折率層と、少なくとも一層の低屈折率層とを含み、少なくとも一層の高屈折率層と、少なくとも一層の低屈折率層とは、交互に積層配置されている。例えば、1つの積層構造体(高屈折率層/低屈折率層)、2つの積層構造体(高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)、または3つの積層構造体(高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)が配置される。高屈折率層は1.8以上の屈折率を有し、低屈折率層は1.6以下の屈折率を有する。理解できるように、さらに、高屈折率層は、積層された複数の高屈折率サブ層を含んでもよい。例えば、第1の高屈折率サブ層/第2の高屈折率サブ層/低屈折率サブ層のように配置される。低屈折率層も、積層された複数の低屈折率サブ層を含んでもよい。例えば、高屈折率層/第1の低屈折率サブ層/第2の低屈折率サブ層のように配置される。高屈折率層の材料は、Zn、Sn、Ti、Nb、Zr、Ni、In、Al、Ce、W、Mo、Sb、Biという元素の酸化物および混合物、またはSi、Al、Zr、Y、Ce、Laという元素の窒化物、窒素酸化物および混合物から選択される少なくとも一種である。低屈折率層の材料は、SiO、Alおよびそれらの混合物から選択される少なくとも一種である。選択可能に、高屈折率層は2.3以上の屈折率を有してもよい。あるいは、ガラス層10から最も遠い高屈折率層は、2.3以上の屈折率を有してもよく、この形態における増反射膜20は、第4表面240に配置される。
【0066】
1つの具体的な実施例では、少なくとも一層の低屈折率層の総厚さは、少なくとも一層の高屈折率層の総厚さよりも大きい。このようにして、投射光線に対する屈折率の要求を満たすことができる。
【0067】
1つの具体的な実施例では、少なくとも一層の高屈折率層の総厚さは10nm~50nmであり、いずれか一層の低屈折率層の厚さは70nm以下である。このようにして、増反射膜20の反射率の要求を満たすとともに、増反射膜20を高効率で製造することができる。1つの具体的な実施例では、少なくとも一層の高屈折率層の総厚さは10nm~20nmであり、いずれか一層の高屈折率層の厚さは15nm以下であり、いずれか一層の低屈折率層の厚さは50nm以下である。このようにして、増反射膜20の反射率の要求を満たすとともに、増反射膜20を高効率で製造することができる。
【0068】
以上をまとめると、本出願では、助手席の視野領域に対応するHUD領域に第1投影画像P1を表示し、運転席の視野領域に対応するHUD領域に第2投影画像P2を表示することで、車窓ガラス100の運転席の視野領域に対応するHUD領域および助手席の視野領域に対応するHUD領域を十分に利用し、また、車窓ガラス100に増反射膜20を配置する場合、プロジェクタの発光パワーを向上させることなく、比較的に大きな体積を配置することなく、高輝度、高鮮明度の投影画像を得ることができる。第1投影画像P1は、エンターテイメント情報を表示し、エンターテイメント情報には、ビデオ、ゲーム等の種類の情報が含まれる。第2投影画像P2は、運転情報を表示し、運転情報には、計器、ナビゲーション、一部のADAS情報が含まれる。
【0069】
本出願では、運転席の視野領域に対応するHUD領域にはっきりとした運転情報を表示し、助手席の視野領域に対応するHUD領域にはっきりとしたエンターテイメント情報を表示することができ、車窓ガラス100を十分に活用し、運転手が頭を下げて運転することを避け、助手席の人がエンターテイメント情報を見るために頭を下げることを避けることができる。
【0070】
以下、本出願のように、合わせガラスに増反射膜20が配置された車窓ガラス100のS偏光に対する反射率と可視光(380nm~780nm)に対する反射率との比較について説明する。

【表1】
【0071】
実施例1、2、4は、増反射膜20が1つの積層構造体からなることを示し、実施例3、5は、増反射膜20が2つの積層構造体からなることを示している。例えば、実施例1のように、積層構造体(高屈折率層/低屈折率層)のガラス層10から最も遠い側に高屈折率層を配置してもよい。例えば、実施例4、5のように、積層構造体(高屈折率層/低屈折率層)のガラス層10から最も近い側に低屈折率層を配置してもよい。また、例えば、実施例2のように、積層構造体(高屈折率層/低屈折率層)における高屈折率層は、複数の高屈折率サブ層を含んでいてもよい。
【0072】
以上から分かるように、本出願の増反射膜20が配置された車窓ガラス100により、S偏光に対する車窓ガラス100の反射率を著しく向上させることができ、これにより、投影画像の鮮明度および輝度を向上させることができる。
【0073】
理解できるように、人間の目による色認識は、CIE LAB色空間内の明度および色度から判断される。国際照明委員会のCIE 1976では、Lをもって明度を表し、Lの値の範囲は[0,100]であり、a(緑赤)、b(青黄)をもって色度を表し、aの値の範囲は[-128,127]であり、bの値の範囲は[-128,127]である。以上の内容は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明の請求範囲を制限するために用いられない。当業者は上記実施例の全体又は一部の操作を理解且つ実現することができ、当業者が本発明の特許請求の範囲に基づいて行う同等な変化は、依然として本発明のカバーする範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
図1図2及び図4を合わせて参照すると、具体的には、第1投影光線S1は、第1入射角θ1で第1投影領域A1に入射されて、投影距離がL1である第1投影画像P1を形成し、第2投影光線S2は、第2入射角θ2で第2投影領域A2に入射されて、投影距離がL2である第2投影画像P2を形成する。中間膜が0.2mrad~0.8mradのくさび角αを有し、投影距離L1は0.5メートル~3メートルであり、L2は2メートル~100メートルであり、θ2<θ1である。ガラス面への第1投影光線S1の投影領域は第1投影領域A1であり、ガラス面への第2投影光線S2の投影領域は第2投影領域A2である。投影画像が互いに影響し合うことを避けるために、第1投影領域A1と第2投影領域A2との水平方向の最小距離WAは100mm~400mmであり、第1投影画像P1と第2投影画像P2との水平方向の最小間隔WSは50mm~600mmである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
図5を参照すると、理解できるように、車窓ガラス100は透視領域110および機能領域120を含み、透視領域110は機能領域120の一側に配置されており、第1投影領域A1および機能領域120は少なくとも部分的に重なり、または、第1投影領域A1および機能領域120は離間して配置されている。選択可能に、第1投影領域A1および機能領域120が少なくとも部分的に重なる場合、第1投影領域A1と機能領域120との重なる部分の大きさは0mm~30mmである。第1投影領域A1および機能領域120が離間して配置されている場合、第1投影領域A1と機能領域120との間隔の距離は0mm~200mmである。透視領域110の可視光透過率は10%~95%であり、機能領域120の可視光透過率は10%より小さく、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下である。図において、機能領域120は透視領域110を取り囲んでいる。第1投影領域A1の下側の縁部と機能領域120との最近接距離HLは-30mm~200mm(-30mm~0mmは、第1投影領域A1の下側の縁部および深色遮蔽層が重なることを意味する)である。深色遮蔽層は、機能領域120に設けられている。合わせガラスの縁部に近い第1投影領域A1の縁部と深色遮蔽層との最近接距離HVHV>25mmを満たす。第2投影領域A2の下側の縁部は200mmより大きい水平長さを有し、0.15mmより大きい面積を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
1つの具体的な実施例では、増反射膜20は、少なくとも一層の高屈折率層と、少なくとも一層の低屈折率層とを含み、少なくとも一層の高屈折率層と、少なくとも一層の低屈折率層とは、交互に積層配置されている。例えば、1つの積層構造体(高屈折率層/低屈折率層)、2つの積層構造体(高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)、または3つの積層構造体(高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)が配置される。高屈折率層は1.8以上の屈折率を有し、低屈折率層は1.6以下の屈折率を有する。理解できるように、さらに、高屈折率層は、積層された複数の高屈折率サブ層を含んでもよい。例えば、第1の高屈折率サブ層/第2の高屈折率サブ層/低屈折率層のように配置される。低屈折率層も、積層された複数の低屈折率サブ層を含んでもよい。例えば、高屈折率層/第1の低屈折率サブ層/第2の低屈折率サブ層のように配置される。高屈折率層の材料は、Zn、Sn、Ti、Nb、Zr、Ni、In、Al、Ce、W、Mo、Sb、Biという元素の酸化物および混合物、またはSi、Al、Zr、Y、Ce、Laという元素の窒化物、窒素酸化物および混合物から選択される少なくとも一種である。低屈折率層の材料は、SiO、Alおよびそれらの混合物から選択される少なくとも一種である。選択可能に、高屈折率層は2.3以上の屈折率を有してもよい。あるいは、ガラス層10から最も遠い高屈折率層は、2.3以上の屈折率を有してもよく、この形態における増反射膜20は、第4表面240に配置される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
以下、本出願のように、合わせガラスに増反射膜20が配置された車窓ガラス100のS偏光に対する反射率と可視光(380nm~780nm)に対する反射率との比較について説明する。
【表1】
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用車窓であって、
前記ディスプレイ用車窓は、車窓ガラスと、少なくとも1つの投影装置とを備え、
前記少なくとも1つの投影装置は、少なくとも1本の投影光線を生成し、前記車窓ガラスの少なくとも1つの投影領域に前記少なくとも1本の投影光線を対応して投射して、少なくとも1つの投影画像を対応して形成するように構成されており、前記投影光線は、S偏光を少なくとも90%含み、
前記少なくとも1本の投影光線は第1投影光線を含み、前記少なくとも1つの投影領域は第1投影領域を含み、前記第1投影光線は、第1入射角で前記第1投影領域に投射された後、第1投影画像を形成し、前記第1投影領域は、前記第1入射角で投射された前記第1投影光線に対して少なくとも25%の第1反射率を有する、
ことを特徴とするディスプレイ用車窓。
【請求項2】
前記第1入射角の範囲は53°~67°であり、前記第1投影画像の投影距離は0.5メートル~3メートルである、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項3】
前記第1投影画像は、6°~15°の水平視野角と、2°~10°の垂直視野角とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項4】
前記少なくとも1本の投影光線は第2投影光線を含み、前記少なくとも1つの投影領域は第2投影領域を含み、前記第2投影光線は、第2入射角で前記第2投影領域に投射された後、第2投影画像を形成し、前記第2投影領域は、前記第2入射角で投射された前記第2投影光線に対して少なくとも12%の第2反射率を有し、前記第1投影領域および前記第2投影領域は離間して配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項5】
前記第1投影領域と前記第2投影領域との水平方向の最小距離は100mm~400mmであり、及び/又は、
前記第1入射角は前記第2入射角と等しくなく、前記第1反射率は前記第2反射率よりも大きく、及び/又は、
前記第2入射角の範囲は53°~67°であり、前記第2投影画像の投影距離は2メートル~100メートルである、
ことを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項6】
前記車窓ガラスはガラス層および増反射膜を含み、前記増反射膜は前記ガラス層に設けられており、前記増反射膜は少なくとも前記第1投影領域を覆っている、
ことを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項7】
前記ガラス層は単枚の強化ガラスであり、前記単枚の強化ガラスは、車外に向く外側表面と、車内に向く内側表面とを有し、前記増反射膜は前記内側表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項8】
前記ガラス層は合わせガラスであり、前記ガラス層は、第1のガラスサブ層、第2のポリマーサブ層、および第2のガラスサブ層を含み、前記第1のガラスサブ層、前記第2のポリマーサブ層、および前記第2のガラスサブ層は、順に配置されて前記合わせガラスを形成しており、前記第1のガラスサブ層は、背向する第1表面および第2表面を有し、前記第2のガラスサブ層は、背向する第3表面および第4表面を有し、前記第2のポリマーサブ層は、前記第2表面および前記第3表面に近接して配置されており、前記増反射膜は、前記第2表面、前記第2のポリマーサブ層の少なくとも1つの表面、前記第3表面、または前記第4表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項9】
前記第2投影領域は前記増反射膜によって覆われていない、
ことを特徴とする請求項に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項10】
前記第2投影領域は前記増反射膜によって覆われており、前記第1入射角は前記第2入射角よりも大きく、前記第1入射角で投射された前記第1投影光線に対する前記増反射膜の反射率は、前記第2入射角で投射された前記第2投影光線に対する前記増反射膜の反射率よりも大きく、又は、
前記第2投影領域は前記増反射膜によって覆われており、前記第1入射角は前記第2入射角と等しく、前記第1投影光線におけるS偏光の割合は、前記第2投影光線におけるS偏光の割合よりも大きく、前記第1入射角で投射された前記第1投影光線に対する前記増反射膜の反射率は、前記第2入射角で投射された前記第2投影光線に対する前記増反射膜の反射率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項11】
前記増反射膜は、少なくとも一層の高屈折率層と、少なくとも一層の低屈折率層とを含み、前記少なくとも一層の高屈折率層と、前記少なくとも一層の低屈折率層とは、交互に積層配置されており、前記高屈折率層は1.8以上の屈折率を有し、前記低屈折率層は1.6以下の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項12】
前記少なくとも一層の低屈折率層の総厚さは、前記少なくとも一層の高屈折率層の総厚さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項13】
前記少なくとも一層の高屈折率層の総厚さは10nm~50nmであり、いずれか一層の前記低屈折率層の厚さは70nm以下であり、又は、
前記少なくとも一層の高屈折率層の総厚さは10nm~20nmであり、いずれか一層の前記高屈折率層の厚さは15nm以下であり、いずれか一層の前記低屈折率層の厚さは50nm以下である、
ことを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項14】
前記第1投影領域は助手席の視野領域に対応し、前記車窓ガラスは透視領域および機能領域を含み、前記透視領域の可視光透過率は10%~95%であり、前記機能領域の可視光透過率は10%より小さく、前記第1投影領域の下側の縁部と前記機能領域との最近接距離は-30mm~200mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用車窓。
【請求項15】
車両であって、
前記車両は、車体と、請求項1~14のいずれか一項に記載のディスプレイ用車窓とを備え、前記車窓ガラスは前記車体に取り付けられており、前記投影装置は前記車体内に配置されている、
ことを特徴とする車両。
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【国際調査報告】