IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニの特許一覧

特表2024-532369少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム
<>
  • 特表-少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム 図1
  • 特表-少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム 図2a
  • 特表-少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム 図2b
  • 特表-少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム 図3
  • 特表-少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム 図4
  • 特表-少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/172 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B60T8/172 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513150
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 IB2022057966
(87)【国際公開番号】W WO2023026230
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】102021000022442
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100232275
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 宣喜
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】フレア, マッテオ
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA17
3D246DA01
3D246EA01
3D246GA25
3D246GC16
3D246HA68C
3D246HA87C
3D246JA15
3D246JB11
3D246JB27
(57)【要約】
それぞれが少なくとも1つの車軸に関連付けられた制御手段と、制御手段間で信号または値を送信するための通信手段とを備える、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムが記載される。時間的に連続する測定瞬間において、各制御手段は、それぞれの少なくとも1つの車軸の対応する滑り信号を生成する。共有瞬間において、各制御手段は、それぞれの滑り信号を送信し、非滑り状態では、それぞれの車軸の回転に関連する量の値または車両のそれ自身の推定前進速度を他の制御手段に送信する。全ての滑り信号が滑り状態を示すとき、前記制御手段の1つは、前記車軸に加えられる制動力を低減させるために、車軸の1つに関連付けられた第1の制動手段を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台の車両(V1、V2)の前進速度を決定するシステム(300)であって、
複数の制御手段(302、302’、302’’、302’’’)と、
前記複数の制御手段(302、302’、302’’、302’’’)間での信号または値の送信を可能にするように構成された通信手段(304)と、を有し、
各前記制御手段は、前記車両の台車(B1、B2、B3、B4)の少なくとも1つの車軸(A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8)に関連付けられ、
時間的に連続する測定瞬間において、各前記制御手段(302、302’、302’’、302’’’)は、関連付けられた少なくとも1つの車軸のそれぞれの滑り状態または非滑り状態を示す対応する滑り信号を生成するように構成され、
前記測定瞬間の間に、各前記制御手段が他の前記制御手段にそれぞれの前記滑り信号、および、少なくともそれぞれの前記車軸が前記非滑り状態では、それぞれの前記車軸の回転に関連する量の値、またはそれぞれの前記車軸の回転に関連する量の値の関数として決定される前記車両のそれ自体の推定前進速度を送信するように構成される少なくとも1つの共有瞬間があり、
前記複数の制御手段(302、302’、302’’、302’’’)のうちの所定の制御手段(302)は、全ての前記滑り信号がそれぞれの前記車軸の前記滑り状態を示すときに、前記車軸を前記非滑り状態にするために、前記車軸に加えられる制動力を低減するように、前記車軸の1つに関連付けられた第1の制動手段を制御するように構成され、
各前記制御手段(302、302’、302’’、302’’’)は、関連付けられている少なくとも1つのそれぞれの前記車軸の滑り状態を検出したときに、関連付けられた前記車軸が前記非滑り状態にある少なくとも1つの前記制御手段により送信されたそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の少なくとも1つの値に基づいて、前記車両のそれ自体の前記推定前進速度を決定するように、または、関連付けられた前記車軸が前記非滑り状態にある別の前記制御手段によって送信される前記車両の前記推定前進速度に基づいて、前記車両のそれ自体の前記推定前進速度を決定するように構成される、
ことを特徴とする少なくとも1台の車両(V1、V2)の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項2】
前記所定の制御手段(302)が制動力を低減する前記車軸は、前記所定の制御手段に関連付けられた前記車軸(A1、A2)である、請求項1に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項3】
前記所定の制御手段(302)が制動力を低減する前記車軸は、別の前記制御手段(302’、302’’、302’’’)に関連付けられた前記車軸(A3、A4、A5、A6、A7、A8)である、請求項1に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項4】
前記所定の制御手段(302)は、少なくとも次の前記測定瞬間が発生するまで、前記少なくとも1つの前記車軸に加えられる前記制動力を低減させ続けるように構成される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項5】
前記通信手段(304)は、所定の安全プロトコルに従って、前記複数の前記制御手段(302、302’、302’’、302’’’)間で前記信号または前記値の送信を可能にするように構成される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項6】
前記所定の安全プロトコルはブラックチャネル(Blacl channel)プロトコルである、請求項5に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項7】
各前記制御手段(302、302’、302”、302””)は、前記少なくとも1つの関連付けられた前記車軸の制動を管理するように構成された制御手段である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項8】
各前記制御手段(302、302’、302’’、302’’’)は、
-少なくとも1つの他の前記制御手段からそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値を受信するときに、前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信されるそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値に関連付けられる、それぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値を比較し、
-比較の結果、関連付けられているそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値が、送信されたそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値と少なくとも所定の閾値だけ異なることが示された場合に、警報信号を生成するように構成される、
または、
-前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって決定された前記車両の前記推定前進速度を受信するときに、前記車両のそれ自体の前記推定前進速度の値を、前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信された前記車両の前記推定前進速度の値と比較し、
-比較の結果、前記車両のそれ自体の前記推定前進速度の前記値が、前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信された前記車両の前記推定前進速度の前記値と少なくとも所定の閾値だけ異なることが示された場合に、警報信号を生成するように構成される、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項9】
各前記制御手段(302、302’、302’’、302’’’)は、
-前記少なくとも1つの他の前記制御手段からそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値を受信するときに、それぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の実効値が、関連付けられているそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の前記値、および前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信されるそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値の大きい方に対応することを決定するように構成される、
または、
-前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって決定された前記車両の前記推定前進速度を受信するときに、前記車両の前記前進速度の実効値が、前記車両のそれ自体の前記推定前進速度の値、および前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信される前記車両の前記推定前進速度の値の大きい方に対応することを決定するように構成される、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項10】
各前記制御手段(302、302’、302’’、302’’’)は、
-前記少なくとも1つの他の前記制御手段からそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値を受信するときに、それぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の実効値が、関連付けられたそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値、および前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信されるそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値の小さい方に対応することを決定するように構成される、
または、
-前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって決定された前記車両の前記推定前進速度を受信するときに、前記車両の前記前進速度の実効値が、前記車両のそれ自体の前記推定前進速度の値、および前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信される前記車両の前記推定前進速度の値の小さい方に対応することを決定するように構成される、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項11】
各前記制御手段(302、302’、302’’、302’’’)は、
-前記少なくとも1つの他の前記制御手段からそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値を受信するときに、それぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の実行値が、関連付けられたそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値、および前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信されるそれぞれの前記車軸の前記回転に関連する前記量の値の平均値に対応することを決定するように構成される、
または、
-前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって決定された前記車両の前記推定前進速度を受信するときに、前記車両の前記前進速度の実効値が、前記車両のそれ自体の前記推定前進速度の値、および前記少なくとも1つの他の前記制御手段によって送信される前記車両の前記推定前進速度の値の平均値に対応することを決定するように構成される、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項12】
前記車両は、少なくとも第1の車両(V1)と、前記第1の車両に接続された第2の車両(V2)を有し、前記複数の制御手段(302、302’)の第1の部分は、前記第1の車両に設置され、前記複数の制御手段(302’’、302’’’)の第2の部分は、前記第2の車両に設置される、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項13】
全ての制御手段(302、302’、302’’、302’’’)は単一の車両に設置される、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)。
【請求項14】
複数の車軸と、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム(300)と、を備えることを特徴とする車両。
【請求項15】
前記車両は、少なくとも1台の鉄道車両または鉄道車列である、請求項14に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、車両分野に関する。特に、本発明は、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
滑り(スリップまたはスライドとしても知られる)は、車両の車軸または車輪の回転速度と車両自体の移動速度との間に差がある状態であると理解される。この差は通常、滑り速度として定義される。
【0003】
例えば、鉄道車両の分野を参照すると、滑り速度は次の式で計算することができる。
【数1】
ここで、VRVは車両の縦方向の移動速度、ωaxleは車軸の角速度、Rは車軸の車輪の半径を示す。
【0004】
より近代的な鉄道車両には、車両が牽引段階にある時、および車両が制動段階にある時の両方に介入するように適合された、車輪の滑りを制御するためのサブシステムを含む電子システムが搭載されている。この種のサブシステムは、アンチスキッドシステムまたはアンチスライディングシステムとして知られ、あるいはWSP(車輪滑走防止)システムとしても知られている。
【0005】
従来技術による滑り防止機能における車輪の付着力を制御するシステムが図1に概略的に示されており、n個の制御される車軸A1、A2、…、Anを備える車両を参照する。車軸A1、A2、…、Anは、それぞれのシャフトS1、S2、…、Snと、共同回転するようにそれに接続されたそれぞれの対の車輪W1、W2、…、Wnを備える。
図1では、通常、各車軸の1つの車輪だけが示されている。
【0006】
図1のWSPシステムは、通常、マイクロプロセッサアーキテクチャに基づく電子制御ユニットECUを備え、各車軸A1、A2、…、Anの角速度に関するタコメトリック信号を、これらの車軸にそれぞれ関連付けられたセンサSS1、SS2、…、SSnから受信する。電子ユニットECUは、関連する車軸A1、A2、…、Anにそれぞれ関連付けられたトルク制御装置TC1、TC2、…、TCnにも接続されている。
【0007】
電子ユニットECUは、所定のアルゴリズムに従って各車軸に加えられるトルクを調整するように構成される。付着力が低下した状況で牽引段階または制動段階中にトルクが適用されると、1つまたは複数の車軸の車輪に初期滑りが発生する可能性がある。トルクは、付着力を回復することを目的として、車軸の詰まりを完全に防ぐような方法で調整され、場合によっては、付着力が低下している状態の全期間にわたって、各車軸を制御された滑り状況にするような方法で調整されることもある。
【0008】
車両の瞬間速度VRV(t)を知ることが、滑りを正確に制御するための基礎であることは明らかである。
鉄道車両の前進速度を正確に追跡するための既知の方法の1つは、アイドル車軸、すなわち牽引トルクまたは制動トルクを受けない車軸のメンテナンスを必要とする。これは、速度の測定が当該鉄道車両の実際の速度Vrealを最良に再現することを保証するために必要である。この解決策は、車輪と線路との間の付着力が特に低い場合に特に効果的である。この場合、牽引または制動の際に、全ての車輪が滑り状態に陥る可能性があり、したがって、車両の実際の速度に関する正確な情報を提供することができなくなる。牽引トルクや制動トルクを受けていないアイドル状態の車軸は、車両の速度を正確に追跡し続けることができる。
【0009】
明らかに、「アイドル」車軸を使用すると、車両の牽引能力および制動能力が一時的に失われる。
例えば、図2aは、2台の独立した車両を含む構成例を示し、図2bは、ジェイコブス台車によって抑制された2台の車両を含む構成例を示す。アイドル車軸を使用すると、前者の場合は牽引能力および制動能力が12.5%、後者の場合は16.7%減少する。
【0010】
複数の電子ユニットECUがあり、それぞれが車軸のそれぞれのグループに加えられるトルクを調整するように配置されている場合、例えば、車列内の第1の車両の車軸を制御するように構成された第1の電子ユニットECUと、車列内の第2の車両の車軸を制御するように構成された第2の電子ユニットECUとを備える場合には、不利なことに、各電子ユニットECUは、各電子ユニットECUによって制御される車軸を「アイドル」車軸状態にする可能性がある。
【0011】
現代の鉄道車両構造、特に地下鉄では、構造が非常に限定される傾向があり、例えば、2両の車両から構成されている。この場合、複数の「アイドル」車軸を使用すると、車両または車列の牽引能力および制動能力が大幅に失われる可能性がある。
【0012】
再び図2aおよび図2bを参照し、例えば、2つのアイドル車軸を使用すると、前者の場合には牽引能力および制動能力が25%減少し、後者の場合には33.4%も減少する。
当然のことながら、この制限により、滑り状態での車両または車列の牽引能力および制動能力が大幅に損なわれる。
【0013】
鉄道車両部門に関して上述した欠点は、滑りの場合に車軸が「アイドル」車軸状態になる可能性がある道路車両などの他の部門の車両にも同様に適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の1つの目的は、少なくとも1台の車両または車列の前進速度を確実に決定する機能を維持しながら、たとえ滑り状態であっても、少なくとも1台の車両または車列の牽引能力および制動能力の損失を最小限に抑えるための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記および他の目的および利点は、本発明の一態様によれば、請求項1に定義された特徴を有する少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムによって達成される。前述の目的および利点および他の目的および利点は、本発明のさらなる態様に従って、請求項14に定義された特徴を有する車両によって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項で定義されており、その内容は本明細書の不可欠な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
次に、本発明にかかる、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムおよび車両のいくつかの好ましい実施形態の機能的および構造的特徴について説明する。添付の図面を参照する。
図1図1は、従来技術による、滑り防止機能を備えた例示的な車輪付着制御システムを示す図である。
図2a図2aは、2台の独立した車両を備えた車列の構成の一例を示す図である。
図2b図2bは、ジェイコブス台車によって連結された2台の車両を備えた車列の構成の一例を示す図である。
図3図3は、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムの一実施形態を示す図である。
図4図4は、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムのさらなる実施形態を示す図であり、複数の制御手段の第1の部分は第1の車両に設置され、複数の制御手段の第2の部分は、第2の車両に取り付けられる。
図5図5は、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムのさらに別の実施形態を示す図であり、全ての制御手段が単一の車両に設置されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の複数の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その出願において、以下の説明に提示されるか、または図面に示される構成要素の設計詳細および構成に限定されないことを明らかにすべきである。本発明は他の実施形態を想定することができ、異なる方法で実際に実施または構築されることができる。また、表現および用語は記述的な目的を有し、限定的なものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。「含む(include)」および「備える(comprise)」の使用およびそれらの変形は、以下に記載される要素およびそれらの均等物、ならびに追加の要素およびそれらの均等物を包含するものとして理解されるべきである。
【0018】
図3には、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム300の例示的な実施形態が示されている。
第1の実施形態では、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム300は、複数の制御手段302、302’、302’’、302’’’を備える。各制御手段302、302’、302’’、302’’’は、車両の台車B1、B2、B3、B4の少なくとも1つの車軸A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8に関連付けられる。好ましくは、図3に一例として示すように、第1の制御手段は、車両の台車の全ての車軸を制御してもよいし、車両の2つの台車の4つの車軸を制御してもよい。また、図4に示す、さらなる非限定的な一例では、第1の制御手段は、車両の第1の台車の全ての車軸を制御し、また、第2の制御手段は、第2の台車の全ての車軸を制御してもよいし、第2の台車の2つの車軸を制御してもよい。追加の車両タイプにおける車軸または台車の数も、例示の目的で述べたものと異なる場合があることは明らかである。
【0019】
制御手段は、好ましくは、例えば、少なくとも1つのコントローラ、プロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、制御ユニット、制御モジュール、FPGA、PLCなどであってもよく、またはそれらを含んでもよい。
【0020】
少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステム300は、前記複数の制御手段の間で信号または値の送信を可能にするように構成された通信手段304をさらに備える。好ましくは、時間的に連続する測定瞬間は、所定の測定期間に従って定義され得る。
【0021】
各制御手段302、302’、302’’、302’’’は、それが関連する少なくとも1つの車軸のそれぞれの滑り状態または非滑り状態を示す対応する滑り信号を生成するように構成される。
【0022】
前記測定瞬間の間には、各制御手段302、302’、302’’、302’’’が他の制御手段にそれぞれの滑り信号、少なくともそれぞれの車軸が滑っていない状態では、それぞれの車軸の回転に関連する量の値、またはそれぞれの車軸の回転に関連する量の値の関数として決定される車両の独自の推定前進速度を送信するように構成される少なくとも1つの共有瞬間がある。
【0023】
好ましくは、例えば、それぞれの車軸の回転に関連する量の値は、前記車軸の角速度もしくは前記車軸の回転周波数、または前記車軸の回転に関連する任意の他の量であってもよい。
【0024】
複数の制御手段302、302'、302''、302'''のうちの所定の制御手段は、全ての滑り信号がそれぞれの車軸の滑り状態を示すとき、前記車軸を滑らない状態にするために、前記車軸の1つに関連付けられた第1の制動手段を制御して、前記車軸に加えられる制動力を低減するように構成される。
一例では、制動力は、前記車軸を「アイドル」車軸状態にする点まで減少させてもよい。
【0025】
換言すれば、少なくとも1台の車両の全ての車軸が滑り段階にあり、前記車軸の回転に関して信頼できる指示を与えることができない場合にのみ、車軸に加えられる制動力を低減する必要がある。これにより、前記車軸は回転し、車両の前進速度を導き出すことができる信頼性の高い指標を与えることができる。少なくとも1台の車両の少なくとも1つの車軸が非滑り段階にあるか、または非滑り状態に戻るだけで十分であるため、車軸を非制動状態に維持する必要はなくなる。
【0026】
各制御手段302、302’、302’’、302’’’は、関連付けられている少なくとも1つのそれぞれの車軸の滑り状態を検出したとき、関連する車軸が非滑り状態にある少なくとも1つの制御手段によって送信されたそれぞれの車軸の回転に関連する前記量の少なくとも1つの値に基づいて、車両のそれ自体の推定前進速度を決定するように構成され、あるいは、関連する車軸が非滑り状態にある別の制御手段によって送信された車両の推定前進速度に基づいて、車両の推定前進速度を決定するように構成される。
【0027】
所定の制御手段が制動力を低減する車軸は、好ましくは、前記所定の制御手段に関連付けられた車軸であってもよい。
前記所定の制御手段が制動力を低減させる車軸は、好ましくは、前記制御手段の別の車軸と関連付けられてもよい。
所定の制御手段は、好ましくは、少なくとも次の測定瞬間が発生するまで、少なくとも1つの車軸に加えられる制動力を低減させ続けるように構成されてもよい。
【0028】
通信手段304は、好ましくは、所定の安全プロトコルに従って、複数の制御手段302、302’、302’’、302’’’の間で信号または値の送信を可能にするように構成され得る。所定の安全プロトコルは、好ましくはブラックチャネル(black channel)プロトコルである。
【0029】
各制御手段302、302’、302’’、302’’’は、好ましくは、少なくとも1つの関連する車軸の制動を管理するように構成された制御手段、または例えばWSPシステムの電子ユニットの制御手段であってもよい。換言すれば、1つ以上の車軸の制動制御を既に担当している制御手段を、少なくとも1つの車両の前進速度を決定するための制御手段としてさらに使用することができる。
【0030】
各制御手段302、302’、302’’、302’’’は、好ましくは、以下のように構成され得る。
-少なくとも1つの他の制御手段からそれぞれの車軸の回転に関連する量の値を受信するときに、少なくとも1つの他の制御手段によって送信されるそれぞれの車軸の回転に関連する量の値に関連付けられる、それぞれの車軸の回転に関連する量の値を比較し、
-比較の結果、関連付けられているそれぞれの車軸の回転に関連する量の値が、送信されたそれぞれの車軸の回転に関連する量の値と少なくとも所定の閾値だけ異なることが示された場合に、警報信号を生成するように構成される。
または、
-少なくとも1つの他の制御手段によって決定された車両の推定前進速度を受信するときに、車両のそれ自体の推定前進速度の値を、少なくとも1つの他の制御手段によって送信された車両の推定前進速度の値と比較し、
-比較の結果、車両の推定前進速度の値が、少なくとも1つの他の制御手段によって送信された車両の推定前進速度の値と少なくとも所定の閾値だけ異なることが示された場合に、警報信号を生成するように構成される。
【0031】
警報信号は、例えば、車両のエンジニアまたは運転手のディスプレイ、追加の車載車両制御ユニット、または無線または無線通信手段を介して遠隔制御センターに提供され得る。
【0032】
各制御手段302、302’、302’’、302’’’は、好ましくは、以下のように構成され得る。
-少なくとも1つの他の制御手段からそれぞれの車軸の回転に関連する量の値を受信するときに、それぞれの車軸の回転に関連する量の実効値が、関連付けられているそれぞれの車軸の回転に関連する量の値、および少なくとも1つの他の制御手段によって送信されるそれぞれの車軸の回転に関連する量の値の大きい方に対応することを決定するように構成される。
または、
-少なくとも1つの他の制御手段によって決定された車両の推定前進速度を受信するときに、車両の前進速度の実効値が、車両自身の推定前進速度の値、および少なくとも1つの他の制御手段によって送信される車両の推定前進速度の値の大きい方に対応することを決定するように構成される。
【0033】
上記の方策は、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムが、少なくとも1台の車両が制動段階にあると判断したときに適用することができる。
最大値は、好ましくは、平均の少なくとも1つの標準偏差(1σ)、または平均の少なくとも2つの標準偏差(2σ)、または平均の少なくとも3標準偏差(3σ)の外側にある値を除外することによって選択され得る。
【0034】
各制御手段302、302’、302’’、302’’’は、好ましくは、以下のように構成され得る。
-少なくとも1つの他の制御手段からそれぞれの車軸の回転に関連する量の値を受信するときに、それぞれの車軸の回転に関連する量の実効値が、関連付けられたそれぞれの車軸の回転に関連する量の値、および少なくとも1つの他の制御手段によって送信されるそれぞれの車軸の回転に関連する量の値の小さい方に対応することを決定するように構成される。
または、
-少なくとも1つの他の制御手段によって決定された車両の推定前進速度を受信するときに、車両の前進速度の実効値が、車両自身の推定前進速度の値、および少なくとも1つの他の制御手段によって送信される車両の推定前進速度の値の小さい方に対応することを決定するように構成される。
【0035】
例えば、上記の方策は、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムが、少なくとも1台の車両が加速段階にあると判断した場合に適用することができる。
【0036】
最小値は、好ましくは、平均の少なくとも1つの標準偏差(1σ)、または平均の少なくとも2つの標準偏差(2σ)、または平均の少なくとも3つの標準偏差(3σ)の外側にある値を除外することによって選択され得る。
【0037】
さらに別の実施形態では、各制御手段302、302’、302’’、302’’’は、好ましくは、以下のように構成され得る。
-少なくとも1つの他の制御手段からそれぞれの車軸の回転に関連する量の値を受信するときに、それぞれの車軸の回転に関連する量の実行値が、関連付けられたそれぞれの車軸の回転に関連する量の値、および少なくとも1つの他の制御手段によって送信されるそれぞれの車軸の回転に関連する量の値の平均値に対応することを決定するように構成される。
または、
-少なくとも1つの他の制御手段によって決定された車両の推定前進速度を受信するときに、車両の前進速度の実効値が、車両自身の推定前進速度の値、および少なくとも1つの他の制御手段によって送信される車両の推定前進速度の値の平均値に対応することを決定するように構成される。
【0038】
平均値は、好ましくは、平均の少なくとも1つの標準偏差(1σ)、または平均の少なくとも2つの標準偏差(2σ)、または平均の少なくとも3つの標準偏差(3σ)の外側にある値を除外することによって選択され得る。
【0039】
図4に示すように、好ましくは、車両は、少なくとも第1の車両V1と、前記第1の車両に接続された第2の車両V2であり、前記複数の制御手段の第1の部分302、302’は、上記第1の車両に設置することができ、前記複数の制御手段の第2の部分302’’、302’’’は、上記第2の車両に設置することができる。
あるいは、図5に示すように、好ましくは、すべての制御手段302、302’、302’’、302’’’は、1台の車両に設置されてもよい。
【0040】
好ましくは、前述の各実施形態のいずれかに従って、少なくとも1台の車両300の前進速度を決定するシステムが前進速度を決定する少なくとも1台の車両は、少なくとも1台の鉄道車両であり得る。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、複数の車軸と、前述の実施形態のいずれかに従って、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するためのシステム300とを備える車両に関する。
好ましくは、そのような車両は、少なくとも1つの鉄道車両または鉄道車列である。
さらなる例示的な実施形態では、そのような車両は、好ましくは、一般的な車両分野、例えば自動車分野の車両であってもよく、車輪付き車両または車輪付き車列等であってもよい。
【0042】
達成された利点は、少なくとも1台の車両または車列の前進速度を確実に決定する機能を維持しながら、車両または車列の牽引能力および制動能力の損失を最小限に抑える解決策を提供したことである。
このような解決策は、1つ以上のアイドル車軸を利用しないため、あらゆる付着状態(つまり、付着が劣化していない場合でも)で車両(または車列)の牽引能力および制動能力が低下するが、代わりに、「動的」アイドル車軸、すなわち、車列内の全ての車軸が滑り状態にある場合に必要な場合にのみ制動が解除される車軸を使用する。さらに、通信手段304のおかげで、そのようなアイドル車軸は、全車列の水準で明確に選択される(したがって、1つだけになる)。
【0043】
例えば鉄道車両分野に言及した上記で説明は、一般的な分野では、滑りが発生した場合に車軸がいわゆる「アイドル」車軸状態になる可能性がある、車両、車輪付き車両、または車列等の一般的な分野のような他の分野にも同様の応用が見出され得る。
【0044】
本発明による、少なくとも1台の車両の前進速度を決定するシステムおよび車両の様々な態様および実施形態について説明してきたが、各実施形態は他の実施形態と組み合わせることができることが理解される。さらに、本発明は、説明した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更することができる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
【国際調査報告】