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特表2024-532375オルガノイドの撮像、同定、及び単離の為の自動化されたシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】オルガノイドの撮像、同定、及び単離の為の自動化されたシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240829BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20240829BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/26
C12M1/34 D
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513178
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 US2022041886
(87)【国際公開番号】W WO2023028366
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/237,781
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/280,224
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521568085
【氏名又は名称】セル マイクロシステムズ インク
【氏名又は名称原語表記】CELL MICROSYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】801 Capitola Drive, Suite 10, Darham, NC 27713
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】スターン,レイチェル アリッサ
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン,ジェシカ ケスラー
(72)【発明者】
【氏名】ゲブハルト,スティーブン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】フレミング,カレブ マクラエ
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ケイス
(72)【発明者】
【氏名】マクレラン,ロバート ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029BB11
4B029CC02
4B029FA15
4B029GA03
4B029GB06
4B029HA09
(57)【要約】
オルガノイドを培養する為に特に設計されたマイクロウェルアレイが、個々のオルガノイドの自動化された撮像、同定、及び単離を可能化する為のシステムと併せて提供される。マイクロアレイのマイクロウェルは取り外し可能なセルラフトを包含し、此れは、別個の収集プレートへの、セルラフト上に存在する選択されたオルガノイドの自動化された取り外し及び移し替えを可能化する。マイクロアレイ上で成長したオルガノイドは、其れ等が経時的に成長する際に明視野及び蛍光で装置システムに依って確実に追跡、撮像、及び表現型分析され、其れから、取り外され、下流の用途に於ける使用の為に完全に無傷で移し替えられ得る。システムの使用は、マウス肝臓及び膵臓オルガノイドを用いて、単一オルガノイド撮像、クローン性のオルガノイド生成、親オルガノイドサブクローニング、及び下流の遺伝子発現又はトランスクリプトミクス分析の為の単一オルガノイドRNA抽出に就いて実証される。
【選択図】 図1A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、オルガノイドを培養、モニタリング、及び回収する為の自動化された方法:
希釈細胞外マトリックス(ECM)を含む細胞培養培地中のオルガノイド断片懸濁液又は単細胞懸濁液を、ECMの重合温度よりも下の温度に於いてマイクロアレイのマイクロウェルにローディングし、此処で、前記マイクロウェルは取り外し可能な常磁性のセルラフトを前記マイクロウェルの底表面に含み、前記オルガノイド断片又は単細胞は前記セルラフトの表面に沈降する事、
前記ECMの重合を引き起こす為に十分な温度に前記マイクロアレイを置き、此処で、前記オルガノイド断片又は単細胞は前記ECM重合の結果として前記セルラフトに緩く取り付けられて来る事、及び前記オルガノイド断片又は単細胞をルガノイド形成の為に所望の期間培養する事、
1つ以上の時間に於いて、システムの装置アセンブリ上に前記マイクロアレイをマウントし、前記装置アセンブリはレンズと光軸とを包含する顕微鏡対物、モータ駆動の取り外し針、及びモータ駆動のマグネティック収集ワンドを含み、此処で、前記針及び前記ワンドは前記顕微鏡光軸とアライメントされ、前記システムは以下を含む事:
i.前記顕微鏡対物を含み、且つ前記マイクロアレイの前記マイクロウェル内の前記セルラフト上の前記形成しようとする又は形成されたオルガノイドの画像を得る為に構成された撮像デバイス、
ii.前記マイクロウェルから対象のオルガノイドを有する選択されたセルラフトを取り外す様に、前記装置アセンブリをコントロールする為に構成されたアクチュエータ、及び
iii.少なくとも1つのプロセッサ及びメモリを含むコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、以下に依る、前記形成しようとする又は形成されたオルガノイドの自動化された撮像と、収集プレートへの前記対象のオルガノイドを有する前記選択されたセルラフトの取り外し及び移し替えとの為にプログラムされる:
前記撮像デバイスを用いて、z軸を包含する前記マイクロアレイの前記マイクロウェル内の前記セルラフト上の前記形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上の画像を取得する事、
前記1つ以上の画像を分析する事に依って、1つ以上の選択されたセルラフトを同定する事、及び
前記アクチュエータをコントロールして、前記選択されたセルラフトを含む前記マイクロウェルと反対の表面に押すエネルギーを適用する様に前記取り外し針をコントロールする事に依って前記マイクロアレイから前記選択されたセルラフトを取り外す事、及び前記マグネティック収集ワンドをコントロールする事に依って収集プレートのマッピングされた場所に前記取り外されたセルラフトを分配する事、並びに
1つ以上の時間に於いて、前記コンピュータシステムとのユーザーインターフェースを通して、前記セルラフト上の前記形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上の画像の前記取得と、前記収集プレートへの前記対象のオルガノイドを有する少なくとも1つの選択されたセルラフトの前記分配とを命令する事。
【請求項2】
前記収集プレートがPCR収集プレート又はPCRチューブを含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項3】
前記マイクロウェルが少なくとも75μmの深さであり、少なくとも約400μmの幅を有し、少なくとも約400×400μmサイズのセルラフトを有し、且つ少なくとも約25μmの平均幅を有する壁に依って離間される、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項4】
前記マイクロアレイが、前記細胞培養培地の為の単一のリザーバ上の46×46の前記マイクロウェルを含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項5】
前記選択されたセルラフトが、95%効率で前記収集プレートに移し替えられる、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項6】
前記希釈ECMが、約2%、3%、4%、5%、10%、20%、又は30%の最終濃度に希釈されたECMを含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項7】
前記希釈ECMが、約0.24、0.36、0.48、0.6、1.2、2.4、又は約3.6mg/mlのトータル蛋白質の範囲に及ぶ、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項8】
前記1つ以上の時間が、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週、3週、若しくは4週、又はそれ以上を含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項9】
更に、1つ以上の時間に於いて、前記コンピュータシステムとのユーザーインターフェースを通して、前記マイクロアレイ上の前記形成しようとする又は形成されたオルガノイドの直径及び他の表現型パラメータの1つ又は両方の計算を命令する事を含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項10】
更に、前記取得された画像の1つ以上をエクスポートする事を含み、此処で、前記取得された画像は、前記z軸に於いて取得された1つ以上のzスタック画像を包含する、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項11】
前記マイクロウェルの1つ以上にローディングされた前記単細胞懸濁液の単細胞を前記所望の期間培養する事に依って、200μmから1000μmの範囲であるか又はより大きい直径を有する1つ以上のクローン性のオルガノイドが、前記マイクロアレイ上に形成される、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項12】
前記オルガノイド断片懸濁液又は前記単細胞懸濁液が遺伝子編集又は遺伝子変異を含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項13】
前記遺伝子編集がCRISPR編集である、請求項12に記載の自動化された方法。
【請求項14】
前記単細胞懸濁液が患者由来の細胞又は組織からである、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項15】
前記患者由来の細胞又は組織が既知の変異を有する、請求項14に記載の自動化された方法。
【請求項16】
前記オルガノイド断片懸濁液が親オルガノイドから生成され、此処で、前記親オルガノイドは、前記マイクロウェルの1つ以上に於いて前記オルガノイド断片懸濁液の1つ以上の単一断片を前記所望の期間培養する事と、前記セルラフト上の前記形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上の画像の前記取得、及び前記収集プレートへの前記対象のオルガノイドを有する少なくとも1つの選択されたセルラフトの前記分配を命令する事とに依ってサブクローニングされる、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項17】
前記収集プレートに分配された前記対象のオルガノイドが、前記マイクロアレイにローディングされた前記単細胞懸濁液の単細胞に由来し、前記方法が、更に、
前記分配された対象のオルガノイドをオルガノイド断片懸濁液へと解離させる事と、ローディングする、置く、マウントする、及び命令する前記ステップを繰り返して、対象の1つ以上の子オルガノイドを形成し前記収集プレートに分配する事と、
を含む、
請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項18】
前記対象のオルガノイド及び前記対象の1つ以上の子オルガノイドが、遺伝子編集又は既知の変異を含有する、請求項17に記載の自動化された方法。
【請求項19】
前記単細胞懸濁液の前記単細胞が遺伝子編集又は既知の変異を含有し、此処で、前記分配された対象のオルガノイドの其々は前記遺伝子編集又は前記既知の変異を有する、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項20】
前記遺伝子編集がCRISPR編集である、請求項19に記載の自動化された方法。
【請求項21】
更に、前記形成しようとする又は形成されたオルガノイドを、薬物又は分子に対する応答に就いて、機能的な応答に就いてスクリーニングする事を含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項22】
更に、下流の遺伝子発現又はトランスクリプトミクス分析の為に、前記形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上からのRNAを抽出する事を含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項23】
オルガノイドを描出するセルラフトの画像を処理する為の方法であって、前記方法が、
複数のセルラフトの画像を取得する事、
前記画像中の1つ以上の別々の有色のブロブの探索に依って前記画像をセグメンテーションする事を試みる事、
前記セグメンテーションが非奏功であったという事を決定する事、
前記画像の2つの軸に沿ってピクセルの指定の色のカウントのヒストグラムを実施し、ヒストグラムピークに於ける1つ以上の境界を同定する事、
ヒストグラムピークに於ける前記1つ以上の境界の間に1つ以上の線を描画する事、及び
前記1つ以上の線を描画した後に前記画像をセグメンテーションする事を繰り返す事、
を含む、
オルガノイドを描出するセルラフトの画像を処理する為の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2021年8月27日出願の米国仮特許出願第63/237,781号の利益を主張し、此れの開示は其の全体が参照に依って本明細書に組み込まれる。本願は2021年11月17日出願の米国仮特許出願第63/280,224号の利益を主張し、此れの開示は其の全体が参照に依って本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦出資の研究に関する申し立て
本発明は、国立衛生研究所に依って授与された助成金番号5R44ES032782の下で政府のサポートに依って成された。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
此の発明は、オルガノイドの撮像、同定、及び単離の為の自動化されたシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
数十年間、二次元(2D)細胞培養モデルは疾患を研究し薬物開発を前進させる為に用いられてきた。何故なら、細胞株は典型的には安価且つ培養する事が容易であり、其れ等を高スループット分析の為に便利にするからである。然し乍ら、多くの場合に腫瘍に由来するか又は不死化される細胞株を樹立する事は、培養環境に対する鋭意の遺伝学的及び表現型的適合を要する。此れは正常細胞に対する其れ等の妥当性を減少させ、結果的に、モデルシステムとしての其れ等の適用可能性を縮減する。加えて、2Dモデルは重要な空間的配置及び細胞対マトリックスの相互作用を欠如し、其れ等の予測力を更に限定する。インビボのアウトカムへの2D細胞培養モデルの反映の此の欠如は、創薬パイプラインに有意に影響し、此処では、奏功の確率は13.8%のみと推定されている。2Dモデルは研究開発プログラムに於ける有意な価値を提供し続けるが、組織及び臓器に対するより良い生理的妥当性を提供するより高度な細胞モデルのかなりの必要がある。
【0005】
2Dモデルと比べて増大した複雑さ及び其の後の生理的妥当性を提供する幾つかの三次元(3D)モデルがあり、共培養、スフェロイド、カプセル化細胞、及びオルガノイドを包含する。オルガノイドは自己組織化三次元(3D)構造であり、此れ等は等しくヒト及び動物モデルからの胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は成体幹細胞から成長させられる。臓器に制約される成体幹細胞及び多能性幹細胞(PSC)に由来するオルガノイドは、見かけ上無限の拡大培養ポテンシャルを有する。オルガノイドが分化した時には、其れ等は組織特異的な生理的な及び疾患の状態を見せ、此れ等は、其れ等を、発生研究、創薬、個別化医療、及び毒性学的研究の為の2D単一細胞型単層培養よりも妥当な且つ魅力的なインビトロモデルにする。
【0006】
3Dアセンブリでは、オルガノイドは、基底膜としての用を果たす為の細胞外マトリックス(ECM)の供給源を要求する。幾つかの市販の基底膜抽出物製品があり、マトリゲルは最も一般的に用いられる物の1つである。オルガノイドの従来の培養方法は、マトリゲルドームの層の間で拡大された又はマトリゲルドームの中に埋め込まれた細胞を要する。此れ等の培養方法は、オルガノイドアセンブリ及び成長をサポートする事に於いて高度に有効であるが、正確な評価及びスループットに於ける幾つかの困難を提示する。第1に、標準的な培養方法は、全ての3つの次元に於けるオルガノイドのランダムな配置を齎し、度々重なり合っているウェル当たり複数の構造を有する。此れは、集団を捕捉する為に要求される焦平面の数を増大させ、各オルガノイドを解像及び評価する為には複雑な3D画像に基づく分析の為の高度な装置一式及び演算方法を要求する。加えて、オルガノイドの供給源の材料は不均一性であり、此れはインビボの細胞材料の多様性を捕捉する事に於いて有利であるが、従来の培養方法は不均一性を捕捉する事に失敗する。何故なら、応答が多くの場合に各ウェル内の集団間でホモジナイズされるからである。此れ等の理由から、単一オルガノイド撮像及び回収に依って不均一性のオルガノイド集団をより効率的に且つ正確に評価し得る新たな培養技術及び自動化された装置一式の必要がある。個々のオルガノイドを標準的な組織培養消耗品フォーマットで収容する複数のマイクロウェル位置に焦点を合わせるより新たな消耗品テクノロジーが開発されている。然し乍ら、此れ等のテクノロジーは依然として鋭意の手作業の上流の労力を要求し、回収能力を提供しない。幾つかの最近のテクノロジーは個々の3D構造の回収の為の画像に依って案内されるアスピレーションを活用しているが、此れ等のツールは、其れ等の有用性を破壊的エンドポイント分析に限定する其れ等自体の短所を有し、例えば、オルガノイドの構造を乱し得る物理的な操作の力を要する。
【0007】
2D細胞培養に於ける単細胞の高スループット撮像及び回収を可能化する1つの装置システムは、セルラフト・エアー(CellRaft AIR)システムである(セルマイクロシステムズ社(Cell Microsystems, Inc.)、ダーラム、NC)。例えば特許文献1も又参照。セルラフト・エアーシステムは2D接着細胞培養の為に設計された細胞培養消耗品を有するハードウェア及びソフトウェアシステムであり、此れは単細胞の自動化された同定及び単離を可能化する。セルラフト・エアーシステムは、窪み又は「ウェル」の形成されたエラストマー製グリッドを含むマイクロウェルアレイを利用し、此処では、ウェルは、「セルラフト」と言われる取り外し可能な光学的に透明なマイクロファブリケーションされた要素を含有する。此れ等のマイクロアレイは、生存可能な且つ撹乱されない状態に於ける細胞の単離を可能化し乍ら、同時に、組織培養皿上の標準的なインビトロ条件を再現する培養環境を提供する。セルラフト・エアーシステムに用いられるマイクロアレイ上のミクロンサイズのセルラフトは、100×100μm又は200×200μmのサイズを有し、セルラフトを単一のリザーバ、4つの別個のリザーバ、又は24個の別個のリザーバ何方かに有する3つのリザーバレイアウトを有する。マイクロアレイは幅広い範囲の接着及び懸濁細胞の型の成長を助けるが、最も大きい200×200μmセルラフトフォーマット上のオルガノイドの為の成長領域は限定される。セルラフト・エアーシステムでは、対象の細胞サンプルがマイクロウェルアレイ上に播種され、此処では、細胞はポアソン様の分布に従ってマイクロウェル上にランダムに分布する。撮像及び同定後に、対象の個々の細胞はストレスフリーな方法論に依って単離され得る。此れは、機械的な力を利用して、取り付けられた細胞層を乱す事無しに其のマイクロウェルから選ばれたセルラフトを取り外し、マグネティックワンドを用いて96ウェル組織培養又はPCRプレートに其れを穏やかに移し替える。其れ等のマイクロウェルからの100μm及び200μmのセルラフトの取り外し並びに別個のプレートへの収集のプロセスは、>95%の奏功率でバリデーションされている。然し乍ら、オルガノイドは2D細胞の様な液体培養よりも寧ろ細胞外マトリックス中で成長させられる大きい構造であり、此れはオルガノイドの自動化された培養、画像分析、及び収集に取っての困難を提示する。
【0008】
因って、オルガノイドの培養及び分析の為の現行の方法は、正確な評価及びスループットに於けるボトルネックに直面する。本開示は、オルガノイドの自動化された高スループットアセンブリ、成長、画像分析、及び単離の為のシステムを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】PCT特許出願公開第WO2018/097950号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの実施形態では、オルガノイドを培養、モニタリング、及び回収する為の自動化された方法が提供される。方法は、希釈細胞外マトリックス(ECM)を包含する細胞培養培地中のオルガノイド断片懸濁液又は単細胞懸濁液を、ECMの重合温度よりも下の温度に於いてマイクロアレイのマイクロウェルにローディングする事を包含する。マイクロアレイのマイクロウェルは、取り外し可能な常磁性のセルラフトをマイクロウェルの底に包含し、オルガノイド断片又は単細胞はセルラフトの表面に沈降する。方法は、ECMの重合を引き起こす為に十分な温度にマイクロアレイを置く事を包含し、オルガノイド断片又は単細胞はECM重合の結果としてセルラフトに緩く取り付けられて来る。オルガノイド断片又は単細胞はオルガノイドの形成を可能化する為に所望の期間培養される。方法は、1つ以上の時間に於いてシステムの装置アセンブリ上にマイクロアレイをマウントする事を包含する。装置アセンブリは、レンズと光軸とを有する顕微鏡対物、モータ駆動の取り外し針、及びモータ駆動のマグネティック収集ワンドを包含する。針及びワンドは顕微鏡光軸とアライメントされる。システムは以下を含む:i)撮像デバイスであって、此れは顕微鏡対物を包含し、且つ此れはマイクロアレイのマイクロウェル内のセルラフト上の形成しようとする又は形成されたオルガノイドの画像を得る為に構成されている、ii)アクチュエータであって、此れは装置アセンブリをコントロールして、マイクロウェルから対象のオルガノイドを有する選択されたセルラフトを取り外す為に構成されている、並びにiii)少なくとも1つのプロセッサ及びメモリを包含するコンピュータシステムであって、コンピュータシステムは、形成しようとする又は形成されたオルガノイドの自動化された撮像と対象のオルガノイドを有する選択されたセルラフトの取り外し及び収集プレートへの移し替えとの為にプログラムされる。システムは、以下に依って、自動化された撮像及び取り外し及び移し替えを成し遂げる(affect):撮像デバイスを用いて、z軸に於いてを包含するマイクロアレイのマイクロウェル内のセルラフト上の形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上の画像を取得する事と、1つ以上の画像を分析する事に依って、1つ以上の選択されたセルラフトを同定する事と、アクチュエータをコントロールして、選択されたセルラフトを含むマイクロウェルと反対の表面に押すエネルギーを適用する様に取り外し針をコントロールする事に依ってマイクロアレイから選択されたセルラフトを取り外す事、及びマグネティック収集ワンドをコントロールする事に依って収集プレートのマッピングされた場所に取り外されたセルラフトを分配する事。方法は、1つ以上の時間に於いて、コンピュータシステムとのユーザーインターフェースを通して、セルラフト上の形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上の画像の取得と、収集プレートへの対象のオルガノイドを有する少なくとも1つの選択されたセルラフトの分配とを命令する事を包含する。
【0011】
幾つかの実施形態に於いて、収集プレートはU底96ウェルプレート、PCR収集プレート、又はPCRチューブである。
【0012】
マイクロアレイのマイクロウェルは、少なくとも約75μmの深さであり、少なくとも約400μmの幅を有し、少なくとも約400×400μmのセルラフトを有し、少なくとも約25μmの平均幅を有する壁に依って離間される。1つの実施形態では、マイクロアレイのマイクロウェルは約80μmの深さであり、約500μmの幅を有し、約500×500μmのセルラフトを有し、約30μmの平均幅を有する壁に依って離間される。マイクロアレイは、46×46のマイクロウェルを細胞培養培地の為の単一のリザーバ上に包含し得る。
【0013】
1つの実施形態では、選択されたセルラフトは収集プレートに90%効率で移し替えられる。
【0014】
幾つかの実施形態に於いて、ECMはマトリゲル、UltiMatrix、基底膜抽出物II型、又は動物由来の供給源から精製された他のマトリックスである。希釈ECMは、約2%、3%、4%、5%、10%、20%、若しくは30%の最終濃度に希釈されたECMを包含し得るか、又は希釈ECMは約0.24、0.36、0.48、0.6、1.2、2.4、若しくは約3.6mg/mlのトータル蛋白質の範囲に及び得る。
【0015】
1つの実施形態では、ECMは動物供給源に由来しないゼノフリー合成ハイドロゲルである。希釈ハイドロゲルは約0.24、0.36、0.48、0.6、1.2、2.4、又は約3.6mg/mlのトータル蛋白質の範囲に及び得る。
【0016】
マイクロアレイは、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週、3週、若しくは4週、又はそれ以上を包含するが此れ等に限定されない1つ以上の時間に於いて、対象のオルガノイドを含有する1つ以上の選択されたセルラフトの撮像及び/又は取り外し及び移し替えの為に、システムの装置アセンブリ上にマウントされ得る。
【0017】
自動化された方法は、1つ以上の時間に於いて、コンピュータシステムとのユーザーインターフェースを通して、マイクロアレイ上の形成しようとする又は形成されたオルガノイドの直径及び他の表現型パラメータの1つ又は両方の計算を命令する事を包含し得る。
【0018】
自動化された方法は、取得された画像の1つ以上をエクスポートする事を包含し得、此処で、取得された画像は、z軸に於いて取得された1つ以上のzスタック画像を包含する。
【0019】
幾つかの実施形態に於いては、マイクロウェルの1つ以上にローディングされた単細胞懸濁液の単細胞を所望の期間培養する事に依って、200μmから1mmの範囲である直径を有する1つ以上のクローン性のオルガノイドがマイクロアレイ上に形成される。
【0020】
幾つかの実施形態に於いて、マイクロアレイにローディングされるオルガノイド断片懸濁液又は単細胞懸濁液は遺伝子編集又は遺伝子変異を含む。遺伝子編集はCRISPR編集であり得る。単細胞懸濁液は患者由来の細胞又は組織からであり得る。患者由来の細胞又は組織は既知の変異を有し得る。
【0021】
1つの実施形態では、オルガノイド断片懸濁液は親のオルガノイドから生成され、親のオルガノイドは、マイクロウェルの1つ以上に於いてオルガノイド断片懸濁液の1つ以上の単一の断片を所望の期間培養する事、及びセルラフト上の形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上の画像の取得と収集プレートへの対象のオルガノイドを有する少なくとも1つの選択されたセルラフトの分配とを命令する事に依ってサブクローニングされる。
【0022】
1つの実施形態では、収集プレートに分配される対象のオルガノイドは、マイクロアレイにローディングされた単細胞懸濁液の単細胞に由来し、方法は、更に、分配された対象のオルガノイドをオルガノイド断片懸濁液へと解離させる事と、ローディングする、置く、マウントする、及び命令するステップを繰り返して、対象の1つ以上の子オルガノイドを形成し収集プレートに分配する事とを包含する。対象のオルガノイド及び対象の1つ以上の子オルガノイドは遺伝子編集又は既知の変異を含有し得る。
【0023】
幾つかの実施形態に於いて、単細胞懸濁液の単細胞は遺伝子編集又は既知の変異を含有し、分配された対象のオルガノイドの其々は遺伝子編集又は既知の変異を有する。遺伝子編集はCRISPR編集であり得る。
【0024】
幾つかの実施形態に於いて、方法は、更に、形成しようとする又は形成されたオルガノイドを、薬物又は分子に対する応答に就いて、機能的な応答に就いてスクリーニングする事を包含する。
【0025】
幾つかの実施形態に於いて、方法は、更に、下流の遺伝子発現又はトランスクリプトミクス分析の為に、形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上からのRNAを抽出する事を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1Aは、各マイクロウェルがオルガノイドの培養及び回収の為の取り外し可能なセルラフトを含む本発明の例の三次元マイクロウェルアレイの例解であり、個々のセルラフト及びPDMS壁のレイアウト及び次元を示す。図1Bは、各マイクロウェルがオルガノイドの培養及び回収の為の取り外し可能なセルラフトを含む本発明の例の三次元マイクロウェルアレイの例解であり、完全に作製されたマイクロアレイを示す。図1Cは、各マイクロウェルがオルガノイドの培養及び回収の為の取り外し可能なセルラフトを含む本発明の例の三次元マイクロウェルアレイの例解であり、本発明の自動化されたシステムからの取り外し後のセルラフトの画像を示す。
図2図2Aは、オルガノイドの撮像及び収集の為の本発明の例示的なシステムの概要図である。図2Bは、図2Aに示されたコンピュータシステム102のブロック図である。図2Cは、図2Aに示された装置アセンブリ104のブロック図である。
図3図3Aは、オルガノイド撮像及び収集の為の図2Cで描出された装置アセンブリ104の例の実装のアイソメトリック図である。図3Bは、オルガノイド撮像及び収集の為の図2Cで描出された装置アセンブリ104の例の実装のアイソメトリック図であり、挿入図は同心的な針設計を例解する。
図4図4Aは、自動化されたシステムを用いて取得された一連の画像であり、此処では、ソフトウェアは、対象のオルガノイドに就いての明視野及び3色蛍光に於ける自動化されたzスタック取得を包含する。マウス肝臓オルガノイドが、細胞膜(緑色)及び核(青色)を強調表示する為のEpCAMに対するFITCコンジュゲート化抗体及びヘキスト33342に依って共染色された。自動化されたシステムを用いて、zスタック画像がオルガノイドの全高に渡って10μm毎に取られた。図4Bは、本発明のシステムソフトウェアの1つの例及びコンパニオンOFF-THE-AIRデータ分析ソフトウェアを示す画像であり、此れは、対象のオルガノイドのzスタック画像を自動的に取得及び検討する為のユーザフレンドリーな直感的なインターフェースを提供する。ユーザがzスタックスライスピッチ並びに明視野及び蛍光露出を定義した後に、ソフトウェアはオルガノイド全高に渡って画像を取得する。画像取得後に、ユーザはスタック内の捕捉された各画像を容易に閲覧し得る。ソフトウェアはオルガノイド直径(幅)を報告し、ユーザが各画像にズームイン及びアウトしてオルガノイドを単細胞解像度で可視化する事を許し、コンポジット表示の為に各撮像チャンネルの相対的なコントラストを修正する為のツールを提供する。ソフトウェアは、撮像された対象の各オルガノイドの「説明(description)」を書き込む為の領域をも又ユーザに許し、個々のオルガノイドの完全なデータカタログを提供する。図4Cは、マイクロアレイ上のマウス膵臓オルガノイドの時間的な撮像を示す一連の画像である。マウス膵臓オルガノイドが小さい断片に機械的に解離させられ、希釈マトリゲル培地中でマイクロアレイ上に播種された。オルガノイド発生をモニタリングする為に、アレイの連続スキャンが24時間毎に10日間実施された。
図5図5Aは、マイクロアレイからのオルガノイド含有セルラフトの自動化された単離及び移し替えを可能化する本開示のシステムの概略図であり、此処では、第1に、取り外し針がマイクロアレイのエラストマー製の床を穿刺して、其のマイクロウェルからセルラフトを脱離させ、次に、引き込み可能なマグネットを収容する収集ワンドが、常磁性の鉄ナノ粒子をドープされている取り外されたセルラフトを収集する為にマイクロアレイ上に下降させられる。図5B図3Aのズームインされた部分の例解であり、此処では、収集ワンドは、96ウェルプレート又はPCRチューブの指定されたウェルに挿入され乍ら、内部のマグネットは引き込まれ、セルラフトがウェル内に落下する事を許す。図5Cは先の設計の元々の「軸外の」針を示す例解であり、此れはセルラフト取り外しの為の所定の「突刺」を行う為に工場校正に依拠する。図5Dは本開示の自動化されたシステムの設計を示す例解であり、此処では、同心的な針設計が取り外し針を対物とアライメントし、取り外し針(及びマグネティックワンド)の動的な画像に基づく案内を可能化する。此れは、細胞外マトリックス中のオルガノイド含有セルラフトを脱離させる(及び収集する)正確性及びスピードを増大させる。図5Eは、本開示の自動化されたシステムを用いるセルラフトの取り外しを示す一連の画像である。図5Fはシステムの明視野及び蛍光撮像能力を用いた一連の画像であり、此処では、マウス膵臓オルガノイドがReadyProbesブルー/グリーン細胞生存性キット(インビトロジェン(Invitrogen))を用いて生存性に就いて評価された。個々のオルガノイドは容易に撮像され、壊死性コアを包含する生存性に就いて評価される。
図6図6Aは、左側に於いて、オルガノイドの為の従来のドーム培養方法を示す画像を例解し、此れはx、y、及びz次元に於けるオルガノイドのランダムな配置を原因とする撮像及びクローン拡大に於ける困難を提示する。オルガノイドがマイクロアレイ上の単一の焦平面に於いて分離されたマイクロウェル中に組織化される本開示の方法に従って培養されたオルガノイドを示す右側の画像とは対照的である。図6Bは、本開示の方法、マイクロアレイ、及び自動化されたシステムを用いて培養されたオルガノイドが、クローン拡大と、マイクロアレイ上の細胞播種(第0日)の4時間後に始まる連続撮像に依るクローン性のオルガノイド発生の時間的なモニタリングとを可能化するという事を例解する。単細胞(緑色の枠)又は細胞の小さいクラスター(赤色の枠)を有するセルラフトが、システムソフトウェアを用いて容易に同定され、経時的に追跡され得る。図6Cは8日に渡って取られたマイクロアレイのマイクロウェルの一連の画像であり、本開示のシステム及び方法が、クローン性を立証する完全なデータレコードを許すという事を例解する。
図7図7は、マイクロアレイ上の10日間の細胞の小さい断片からのマウス肝臓オルガノイドの発生の時間的な撮像を示す概略図である。此処では、第10日に、マイクロアレイ上のオルガノイドはEpCAMに対するFITCコンジュゲート化一次抗体に依って染色され、表現型評価の為に撮像された。
図8図8Aは、本開示のマイクロアレイ及びシステムから単離されたオルガノイドが単離後に成長し続け、オルガノイドサブクローニングを包含する下流の用途に用いられ得るという事を示す画像の概略図である。図8Bはマウス肝臓オルガノイドの画像の概略図であり、此れ等は、図6、8Aの通り単離され、其の後にBに解離させられ、第2のマイクロアレイ上に播種され、クローン性のオルガノイド発生をモニタリングする為に24時間毎に8日間撮像された。具体的には、クローン性の「親」オルガノイドが、自動化されたシステムを用いて希釈マトリゲル培地を含有する96ウェル収集プレートに単離され、アレイ外で追加の5日間成長する事を許された。96ウェル収集プレート上で、個々の「親」オルガノイドが酵素的に解離させられ、第2世代の「子」細胞がクローン性のオルガノイド拡大の為の第2のマイクロアレイ上に播種された。
図9図9は、本開示のシステムを用いる事に依って、単一のオルガノイドが下流のオミクス用途の為にマイクロアレイから単離され得るという事を示す概略図である。マイクロアレイ上で種々のサイズ(200~700μm)迄成長したマウス肝臓オルガノイドが、RNA単離の為のリシス緩衝液を含有するPCRストリップチューブに単離された。高品質のRNAが全てのオルガノイドから精製され(RIN>9.4)、RNA濃度はオルガノイド直径と相関した。
図10図10は、オルガノイドを描出するセルラフトの画像を処理する為の例の方法のフローチャートである。
図11図11Aはオルガノイドを描出するセルラフトの例の画像である。図11Bは、ヒストグラムがX及びY軸の其々に沿って描画された例の画像を示す。図11Cは、線が壁の境界間に描画された例の画像を示す。
図12図12Aは、RFP+iPSCから脈絡叢オルガノイドへの分化を例解する14日に渡って取られたマイクロアレイのマイクロウェルの一連の画像であり、本開示のシステム及び方法が、多能性幹細胞から3Dオルガノイドへの分化の完全なデータレコード及び表現型モニタリングを許すという事を実証する。図12Bは、RFP+iPSCから腎臓オルガノイドへの分化を例解する12日に渡って取られたマイクロアレイのマイクロウェルの一連の画像であり、本開示のシステム及び方法が、多能性幹細胞から3Dオルガノイドへの分化の完全なデータレコード及び表現型モニタリングを許すという事を実証する。
図13図13は、RFP+のみ、GFP+のみ、及びRFP+GFP+両方のiPSCから脈絡叢オルガノイドへの分化を例解する7日に渡って取られたマイクロアレイのマイクロウェルの一連の画像であり、本開示のシステム及び方法が、編集されたiPSCの共培養と、共培養された多能性幹細胞から3Dオルガノイドへの発生を追跡及び遡及し得る完全なデータレコードとを許すという事を実証する。
図14図14Aは、下流の化合物誘発毒性アッセイの為の単離に先立ってサイズに就いて選択されない本開示のシステムを用いて培養、分析、及び単離されたオルガノイドが、評価の為の不均一性の集団を齎すという事を示す画像の概略図である。図14Bは、培養及びセルラフト・サイトメトリーの為の本開示の方法が、直径に基づく単離の為のオルガノイドを選択する為に用いられ得るという事を示す画像の概略図である。此れは、アッセイ間の一貫性を維持する下流の化合物誘発毒性の為のカスタム化された単一オルガノイドアッセイ開発を可能化する。
図15図15Aは、本開示のシステムが、下流の化合物誘発毒性アッセイの為に単一オルガノイドを成長、分析、及び単離する為に用いられ得るという事を実証するグラフである。グラフは、サイズに就いて選択されていないオルガノイドが、アセトアミノフェン(APAP)の6点用量曲線(n=5)に依って処理されたマウス肝臓オルガノイドの相対的な速度論的生存性(CellToxグリーン)及び相対的な終点のATP(CellTiter-Glo)読み出しの大きいばらつきを有するという事を実証している。図15Bは、本開示のシステムが、下流の化合物誘発毒性アッセイの為のカスタム化された単一オルガノイドアッセイを構築する為に用いられ得るという事を実証するグラフである。グラフは、自動化されたシステムが、アッセイ内の一貫性を維持する為に特定のサイズに基づいてオルガノイドを選択する為に用いられ得るという事を実証している。此れは、アセトアミノフェン(APAP)の6点用量曲線(n=5)に依って処理されたマウス肝臓オルガノイドの相対的な速度論的生存性(CellToxグリーン)及び相対的な終点のATP(CellTiter-Glo)読み出しの縮減されたばらつきに反映される。
図16図16Aは例のユーザーインターフェースのスクリーンショットである。図16Bは別の例のユーザーインターフェースのスクリーンショットである。図16Cは集団の作出の為の例の方法のフロー図である。
図17図17は集団のセットを例解する為の例のユーザーインターフェースを示す。
図18図18はオルガノイド検出の為の例の方法のフロー図である。
図19図19A~19Dは、マスク、及びオルガノイドセグメンテーションに依って生成される出力の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
此処で、本発明の実施形態が、本発明の実施形態が示される付属の図面を参照して以下でより詳しく記載される。然し乍ら、本発明は多くの異なる形態で実施され得、本明細書に於いて提出される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。本明細書に於いて用いられる術語は具体的な実施形態を記載する目的の為のみであり、本発明を限定している事を意図するものではない。本明細書に於いて用いられる単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明瞭に別様に指示しない限り、複数形も包含する事を意図する。更に、用語「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」は、本明細書に於いて用いられる時に、申し立てられた特徴、ステップ、工程、要素、又は構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、工程、要素、構成要素、又は其れ等の群の存在又は追加を妨げないという事は理解されるであろう。加えて、比較上の量的な用語、例えば「よりも上」、「よりも下」、「より少ない」、「より多い」は等式の概念を包含する事を意図する。其れ故に、「より少ない」は、最も厳密な数学的意味に於ける「より少ない」のみならず、「~に等しいか又はより少ない」をも又意味し得る。
【0028】
本明細書に於いて用いられる用語「約」は±10%を言う。
【0029】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」、「包含する(including)」、「有する」、及び其れ等の同根語は、「~を包含するが其れに限定されない」を意味する。
【0030】
用語「~から成る」は「~を包含し且つ其れに限定される」を意味する。
【0031】
用語「本質的に~から成る」は、組成物、方法、又は構造が追加の成分、ステップ、及び/又は部品を包含し得るが、追加の成分、ステップ、及び/又は部品が請求される組成物、方法、又は構造の基本的な及び新規の特徴を実質的に変調させない場合にのみであるという事を意味する。
【0032】
本願に於いては、本発明の種々の実施形態が範囲のフォーマットで提示され得る。範囲のフォーマットでの記載は単に便宜及び簡潔の為であり、本発明の範囲に対する固定的な限定として解釈されるべきではないという事は理解されるべきである。従って、範囲の記載は、其の範囲内の全ての可能な部分範囲及び個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1から6等の範囲の記載は、部分範囲、例えば1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6等、並びに其の範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされるべきである。此れは範囲の広さに拘らず該当する。
【0033】
別様に定義されない限り、本明細書に於いて用いられる全ての用語(技術及び科学用語を包含する)は、本発明が帰属する分野の業者に依って一般的に理解される同じ意味を有する。更に、本明細書に於いて用いられる用語は、本明細書及び当分野の文脈に於ける其れ等の意味と一貫している意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書に於いて明示的に其の様に定義されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味では解釈されないであろうという事は理解されるであろう。要素が別の要素に「接続される」又は「連結される」と言われる時には、其れは他方の要素に直接的に接続若しくは連結され得るか、又は介在する要素が存在し得るという事も又理解されるであろう。
【0034】
本明細書及び請求項の目的の為には、用語「顕微鏡光軸」及び「顕微鏡撮像軸」は本明細書に於いては交換可能に用いられる。
【0035】
其れ等は低スループットであり、不均一性のオルガノイド集団からの単一オルガノイド撮像、表現型評価、及び単離には不適であるので、従来のオルガノイド培養方法は不充分である。1つの実施形態では、本発明は、本明細書に於いて「マイクロアレイ」と言われるオルガノイドを培養する為に特に設計されたマイクロウェルアレイを、個々のオルガノイドの自動化された撮像、同定、及び単離を可能化する様に設計された装置のハードウェア及びソフトウェアシステムと併せて提供する。マイクロアレイのマイクロウェルは取り外し可能なセルラフトを包含し、此れは、別個の収集プレートへのセルラフト上に存在する選択されたオルガノイドの自動化された取り外し及び移し替えを可能化する。マイクロアレイ上で成長したオルガノイドは、其れ等が経時的に成長する際に明視野及び蛍光で装置システムに依って確実に追跡、撮像、及び表現型分析され、其れから取り外され、下流の用途に於ける使用の為に完全に無傷で移し替えられ得る。開示されるシステムの使用は、マウス肝臓及びマウス膵臓オルガノイドを用いて、単一オルガノイド撮像、クローン性のオルガノイド生成、親オルガノイドサブクローニング、及び下流の遺伝子発現又はトランスクリプトミクス分析の為の単一オルガノイドRNA抽出に就いて実証される。結果は、以下の幾つかの一般的なボトルネックを克服する事に依って、オルガノイド研究に広く適用可能な効率的な、ユーザフレンドリーな、且つ自動化されたワークフローを助けるシステムの能力をバリデーションしている:1)単一オルガノイドタイムコース撮像及び表現型評価、2)単細胞由来オルガノイドの樹立、並びに3)下流の用途の為の単一オルガノイドの単離及び回収。
【0036】
本発明の実施形態は、個々のオルガノイドの培養、撮像に基づく評価、及び無傷の単離の為に専門化されている自動化されたツールのアンメットニーズを満たす。本発明では、オルガノイドワークフローの為に特に設計されているマイクロアレイ消耗品を包含するシステムが提供される。
【0037】
本発明のシステムの実施形態は、培養に依って大きい区画化されたオルガノイドを樹立及び追跡する為のマイクロアレイ消耗品、3Dオルガノイド構造の撮像及び分析の為の能力を有するソフトウェア、並びに速い且つ高効率の単一オルガノイド単離を可能化するハードウェアを包含する。単一のマイクロアレイ培養消耗品上の数百の個々のオルガノイドの発生及び評価の為の確実なユーザフレンドリーなワークフローを助け得る細胞外マトリックス(ECM)培養方法が提供される。例1~7に於いて提供される原理証明実験は、個々のオルガノイドの高品質の明視野及び蛍光撮像並びに時間的な評価、単細胞由来オルガノイドを樹立する事、並びにサブクローニング及びオミクス等の下流の用途の為に個々のオルガノイドを単離する事の為の本発明の実施形態の有用性を実証している。此れ等のワークフロー及び其れ等のエンドポイントは、発生生物学、創薬、個別化医療、及び毒性学に於いて普及及び価値が増大し続け、オルガノイド研究を推進する為の此れ等の方法及びシステムの広いポテンシャルを実証している。
【0038】
従来の2Dインビボアッセイ及び臨床用途の間のギャップを橋渡しする事に於けるオルガノイドの有用性は、インビボの臓器の鍵となる側面を要約する其れ等の能力を原因として明瞭である。然し乍ら、オルガノイド培養の従来の方法は、スループット、撮像に依る表現型評価、並びに下流の拡大培養及び分析の為の無傷の生存可能なオルガノイドの回収に於いて困難を提示する。個々のオルガノイドのより多大なスループット、時間的な画像取得、及びデータカタログ化を提供し乍ら、収集プレートへの個々のオルガノイドの自動化された単離及び移し替えをも又提供するユーザフレンドリーなオルガノイドプロトコールを可能化する事に依って、本発明のシステムはオルガノイドワークフローのアンメットニーズを埋め得る。
【0039】
其の目標の為に、本開示のシステムは、大きいオルガノイドの成長をサポートし得るマイクロアレイ組織培養消耗品と、より高度な3D表現型キャラクタリゼーション及び判定に基づく自動化された単離を許し得るハードウェア及びソフトウェアとを包含する。加えて、研究開発にオルガノイド又は他の3D培養モデルを用いる為に幅広く適用可能であり得る方法が提供される。例1~7を包含する本明細書に於いて提供される実験は、zセクショニングを包含する高品質の明視野及び蛍光撮像を用いるオルガノイドの表現型キャラクタリゼーションと、下流の成長、拡大培養、又はオミクス用途の為の96ウェル組織培養及びPCRプレートへの対象のオルガノイドの単離及び移し替えとの為の、マイクロアレイを包含する自動化されたシステムの使用を実証した。
【0040】
本明細書に於いて提供されるシステムは、以下を包含するオルガノイド培養の為に標準的な消耗品を用いる事のボトルネック及び非効率にアドレスする為に固有に適している:1)ECM中の細胞材料の手作業の操作、2)ウェル当たり複数の重なり合う構造を原因とする画像取得及び分析に於ける困難、並びに3)更なる分析の為に対象の個々のオルガノイドを収集する能力無し。
【0041】
セルマイクロシステムズ社(Cell Microsystems, Inc.)に依って販売されるセルラフト・エアーシステムでの使用の為の最も大きいマイクロウェルアレイは、200×200μmのセルラフトサイズを有する。200×200μmセルラフトフォーマット上のオルガノイドの為の成長領域は限定される。因って、本発明の1つの実施形態では、セルラフト外の単細胞/オルガノイド断片の非特異的結合及び望まれない成長を妨害する為の30μm壁に依って離間された、直径が最高で1mm迄の3D構造の成長をサポートする為の500×500μmサイズのセルラフトを有するマイクロアレイが提供される(図1A)。サイズが500×500μmのセルラフトを有するマイクロアレイのマイクロウェルは、約500μmの幅を有し、少なくとも約75μmの深さである。マイクロウェルアレイは、ウェルの形成されたエラストマー製グリッドを含み、此処では、ウェルは、取り外し可能な光学的に透明なマイクロファブリケーションされた要素、セルラフトを含有する。マイクロアレイは、生存可能な且つ撹乱されない状態に於けるオルガノイドの単離を可能化し乍ら、同時に、組織培養皿上の標準的なインビトロ条件を再現する培養環境を提供する。例示的なマイクロアレイは単一のリザーバ上に500×500μmサイズの46×46セルラフトを含み、分離されたオルガノイド成長の為の2,100よりも多くのセルラフト位置と、22個の96ウェル又は6つの384ウェルプレートに播種するのと同じ位多くのオルガノイドを単一のマイクロアレイ消耗品から検索、キャラクタリゼーション、及び回収するポテンシャルとを齎す。例示的なマイクロアレイの作製が例1に記載される。
【0042】
別の実施形態では、マイクロアレイのマイクロウェルは少なくとも約75μmの深さであり、少なくとも約400μmの幅を有し、少なくとも約400×400μmサイズのセルラフトを有し、少なくとも約25μmの平均幅を有する壁に依って離間される。
【0043】
マイクロアレイは、高度に生存可能な培養環境を助ける隣接した培地リザーバの外縁を提供するポリスチレンカセットに取り付けられ得る(図1B)。ポリスチレンカセットは65mm直径の射出成形されたポリスチレンカセットであり得る。自動化されたシステムの装置ハードウェア上のアダプタープレートに収容された時に、各カセットは、標準的な顕微鏡機器、リキッドハンドラー、及び自動化されたシステムとの適合性を保証する為に、高さ、幅、及び長さに就いてANSI/SLAS公差範囲内である。オルガノイドの樹立及びオルガノイドアッセイ時間は2D培養方法と比較して一般的に延長されているので、本発明者らは、ユースケースシナリオを模倣する為の4週の培養時間後にマイクロアレイのインテグリティを評価した。試験期間の終わりに、漏れ又は構造的破壊もセルラフト取り外し可能性に対する負の影響も観察されず(図1C)、3D培養の為のマイクロアレイの堅牢性をバリデーションした。
【0044】
1つの実施形態では、本発明の自動化されたシステムはzスタック画像取得及び分析を可能化する。1つの例では、細胞がマイクロアレイ上に播種され、システムソフトウェア及び其のコンパニオンOff-The-Airデータ分析ソフトウェア(セルマイクロシステムズ社(Cell Microsystems, Inc.)、ダーラム、NC)が、オルガノイド含有セルラフトの自動化された撮像、同定、及び単離を動作させる為のユーザフレンドリーなインターフェースを提供する。セルラフト・エアーシステムからのソフトウェアアルゴリズム及びコードの殆どは、より大きいマイクロアレイフォーマットを組み込む為に移し替え可能であったが、先のソフトウェアは、3Dワークフローの為に望まれるzスタック撮像機能性を包含しなかった。何故なら、其の元々の目的は、セルラフト表面に取り付けられた2D細胞をスキャン及び撮像する事だったからである。マイクロアレイの標準的な単一平面スキャンを実施した後に、此処で、ユーザはzスタック取得の為の対象のオルガノイドを選択し、其れが選択されたオルガノイドの全高に渡って明視野及び蛍光画像を取得する際に自動化されたシステムが用いるスライス厚を規定し得る。
【0045】
本発明のシステムの実施形態の記載が、図2A~2C及び図3A~3Bを参照して提供される。図2A~2Cはオルガノイド撮像及び収集の為の例のシステム100のダイアグラムである。システム100は、セルラフトの表面に緩く取り付けられている細胞外マトリックス中に埋め込まれたオルガノイドを有するセルラフトを同定及び収集する為に用いられ得る。図2Aはシステム100の概要図である。システム100は、コンピュータシステム102、装置アセンブリ104、実験環境106(例えば、実験室機器の1つ以上のピース、例えば電源及び環境制御システム)、及びユーザ108を包含する。装置アセンブリ104は、マイクロアレイ112を受け取る為の任意のアダプタープレートと、選択され、マイクロアレイ112から取り外されたセルラフトを受け取る為の収集プレート114とを包含する。収集プレート114は、例えばSBS収集プレートとしての標準化されたフォーマットに組織化され得る。収集プレート114が示されているが、システム100は、代替的には、何れかの適当な収集構造、例えばPCRストリップチューブを用い得る。
【0046】
典型的には、ユーザ108は、希釈細胞外マトリックス(ECM)を含む細胞培養培地中のオルガノイド断片懸濁液又は単細胞懸濁液をECMの重合温度よりも下の温度に於いてマイクロアレイ112のマイクロウェルにローディングし、オルガノイド断片又は細胞が個々のセルラフト上に沈降する事を許すであろう。オルガノイド断片又は細胞がセルラフト上に沈降した後に、マイクロアレイは、ECMの重合を引き起こす為に十分な温度に置かれ、オルガノイド断片又は単細胞はECM重合の結果としてセルラフトに緩く取り付けられて来る。オルガノイド断片又は単細胞は、オルガノイド形成を可能化する為に所望の期間培養される。其れから、マイクロアレイ112はスキャン及び画像分析の為にシステム100のアダプタープレート110上に置かれる。スキャン及び画像分析は、オルガノイド形成の為の培養期間の過程全体の間で任意の回数行われ得る。ユーザは、アクチュエータをコントロールする事及び用いる事に依ってマイクロアレイ112からセルラフトを取り外す様に、並びにマグネットを用いて単離されたオルガノイドを有するセルラフトを収集する様にシステム100に命令し得る。例えば、アクチュエータは、セルラフトを取り外す様に針又は類似のデバイスを動かす様に構成された1つ以上のモータであり得る。幾つかの例では、システム100は複数のアクチュエータを包含し、場合に依ってはマグネティックワンドを動かす為の別のアクチュエータ並びに場合に依ってはステージ、撮像光学素子、及びシステムの他の機械的な部品を動かす為のアクチュエータを包含する。
【0047】
図2Bはコンピュータシステム102のブロック図である。コンピュータシステム102は、少なくとも1つのプロセッサ120、メモリ122、プロセッサ120及びメモリ122を用いるコンピュータプログラムとして実装されたコントローラ124、並びにグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)126を包含する。例えば、コンピュータシステム102はモニタ及びキーボード及びマウスを有するデスクトップコンピュータであり得るか、或いはコンピュータシステム102はノート若しくはタブレットコンピュータ又は何れかの他の適当なデバイスであり得る。コンピュータシステム102は例えばユニバーサル・シリアル・バス(USB)ケーブルに依って装置アセンブリ104に作動可能に連結される。
【0048】
コントローラ124は以下の為にプログラムされる:マイクロアレイ112上のセルラフト上の形成しようとする又は形成されたオルガノイドの1つ以上の画像を得る事、画像を分析する事に依って対象の形成しようとする又は形成されたオルガノイドを有する選択されたセルラフトを同定する事、及び装置アセンブリ104をコントロールして、対象の形成しようとする又は形成されたオルガノイドを担持する選択されたセルラフトを取り外す事。GUI126は、種々のコントロール及び結果のスクリーンをユーザ108に提示する様に、且つユーザ108からの入力を受け取る様に構成される。
【0049】
図2Cは装置アセンブリ104のブロック図である。装置アセンブリ104は、表面上に緩く取り付けられた形成しようとする又は形成されたオルガノイドを有する個々のセルラフト130を撮像し、収集プレート114上に置く為にマイクロアレイから対象の形成しようとする又は形成されたオルガノイドを有するセルラフト130を選択的に取り外す為の種々の構成要素を包含し得る。例えば、装置アセンブリ104は、電力ブレイクアウトボード138、並びにモータ及びアクチュエータをコントロールする為の種々のコントロールボード(例えばPS3コントロールボード132、PS3XYZコントロールボード134、及びPS3フィルターコントロールボード136)を包含し得る。モータコントロールボードは、コントローラ124が装置アセンブリ104の種々の構成要素をコントロール又はアドレスする事を許すTTL及びシャッター機能を含有し得る。
【0050】
装置アセンブリ104は、デジタルカメラ140又は他の適当な撮像デバイス、通信ハブ(例えばUSBハブ142)、蛍光発光ダイオード(LED)エンジン144、及びライトガイドアダプター146を包含し得る。蛍光LEDエンジン144は、ライトガイドアダプター146を通ってマイクロアレイ112を照明する様に構成された複数の狭帯域LEDを包含し得る。
【0051】
装置アセンブリ104は、モータ駆動のXYステージ148と顕微鏡対物152を並進させる為に構成されたオートフォーカスモータ150とを包含する顕微鏡システム(例えば内部倒立デジタル顕微鏡)を包含する。典型的には、カメラ140及び蛍光LEDエンジン144及び顕微鏡システムは落射蛍光構成で配置される。顕微鏡システムは、マイクロアレイ112からセルラフト130を個々に取り外す為に構成された取り外し針154を包含する。取り外し針154はオートフォーカスモータ150に依って作動し得る。
【0052】
幾つかの例では、顕微鏡システムは、所与の視野に於いて、ピクセル当たり2ミクロンよりも少ない解像度で、単一のリザーバ上の寸法が500ミクロン×500ミクロンの46×46セルラフトを有するマイクロアレイ上の或る部位の撮像をサポートする。顕微鏡システムは、明視野撮像(即ち、白色光照明及び白色光放出)を用いる画像の捕捉及び1つ以上の蛍光放出チャンネルに於ける画像の捕捉をも又サポートし得る。幾つかの例では、装置アセンブリ104は、全てのチャンネルに於いて露出時間750msを前提とすると、全ての3つの蛍光チャンネル及び明視野に就いて20分未満でマイクロアレイ全体をスキャンする事ができる。
【0053】
取り外し針154は、典型的には、食塩水又は細胞培養培地に暴露される時に酸化に対して耐性の材料を含む。幾つかの例では、取り外し針154はステンレス鋼100ミクロン針である。取り外し針154は、マイクロアレイ112の中心に対して、X及びY方向に例えば少なくとも15mmの可能な移動距離を有し得る。
【0054】
装置アセンブリ104は、ガントリーアセンブリを動かす為のベルトドライブ156を包含するガントリーアセンブリ、撮像の間にマイクロアレイ112を照明する為の明視野LED158、及び取り外し後の形成しようとする又は形成されたオルガノイドを担持するセルラフトを収集する為にマグネティックワンド162を動かす為に構成されたリニアアクチュエータ160を包含する。ガントリーアセンブリは、代替的に、ベルトドライブの代わりのリードスクリュー、又は何れかの他の適当なモータを用い得る。リニアアクチュエータ160は、例えば、マグネティックワンド162をマイクロアレイ112及び収集プレート104の内外に上昇及び下降させる様に構成されたステッピングモータであり得る。
【0055】
装置アセンブリ104は、マグネティックワンド162から収集プレート114にセルラフトを収集する為の、収集プレート114の下側に位置合わせされた収集マグネット164を包含する。収集マグネット164は、マグネティックワンド162内のマグネットに反発し且つセルラフトを収集プレート104の底に引っ張る為に、マグネティックワンド162の物とは反対の分極を有し得る。マグネティックワンド162は、典型的には、取り外されたセルラフト又は収集プレート104に用いられる培地を汚染しない様に無菌にされる(例えば、装置から取り外されている間にエタノール又はイソプロパノールに依ってリンスされる)事ができる材料を含む。マグネティックワンド162の材料は、又、一般的には、培養培地との接触が細胞の生存性若しくは増殖の又はTaqポリメラーゼ若しくは逆転写酵素等の分子生物学試薬の性能の何れかの検出可能な減耗を引き起こさない様にして選択される。
【0056】
図3A~3Bは、オルガノイド撮像及び収集の為の例の機構のアイソメトリック図である。機構は、図2Cで描出された装置アセンブリ104の例の実装である。図3Aに示される通り、アダプタープレート110及び収集プレート114は、水平なXYステージ148の上側に位置合わせされる。幾つかの構成要素、例えば電子コントロールボード132、134、及び136はXYステージ148の下に位置付けられる。XYステージ148はマイクロアレイ112及び収集プレート104を動かす様に構成される。表面上に含有されるオルガノイド構造を撮像する為にセルラフトを位置合わせし(セルラフトを顕微鏡対物152とアライメントし)、対象のオルガノイド構造を担持する選択されたセルラフトを取り外し(セルラフトを取り外し針154とアライメントし)、オルガノイドカーゴを有する選択されたセルラフトを分配する(収集マグネット164の上方に於いて、マグネティックワンド162及び収集プレート104の選択された場所をアライメントする)為に、XYステージ148は電子的にコントロール可能である。
【0057】
ベルトドライブ156を包含するガントリーアセンブリはXYステージ148の上方に垂直に位置合わせされる。ガントリーアセンブリは、撮像の為に明視野LED158を位置合わせする為に及び又マグネティックワンド162を位置合わせする為に水平方向に動く様に構成される。ガントリーアセンブリは、取り外しの間のセルラフトを収集する為にマイクロアレイ112の上方でマグネティックワンド162を位置合わせし、其れから、ガントリーアセンブリは、収集プレート114の選択された場所にセルラフトを分配する為に収集プレート114の上方でマグネティックワンド162を位置合わせする。
【0058】
カメラ140及びオートフォーカスモータ150は、例えばオートフォーカスモータ150がXYステージ148に対して垂直に動き得る様にして、XYステージ148の下方に位置付けられる。蛍光LEDエンジン144及び液体ライトガイドポート146はXYステージ148の下に位置付けられ、蛍光フィルターキューブ170に連結される。蛍光フィルターキューブ170は、蛍光撮像の為に、例えば、蛍光LEDエンジン144からの光がマイクロアレイ112に到達する事を許す様に且つ其の光がカメラ140に到達する事を阻止する様に構成される。
【0059】
図3Bは顕微鏡対物152及び取り外し針154の切断図172を示す。示される通り、取り外し針154は顕微鏡対物152の視野内に位置付けられる。取り外し針154を顕微鏡対物152の視野内に位置付ける事は、リアルタイムでのオルガノイドカーゴを有するセルラフトの取り外しの可視化を可能化する。此れは、マイクロウェルのエラストマー製の基板からのECMに埋め込まれたオルガノイド構造を担持するより大きいセルラフトの脱離の為に、取り外し針を正確に位置合わせする為に要求される。然し乍ら、顕微鏡光軸とアライメントした取り外し針の此の場所は、透明である且つ取り外し針154をマウントする様に機械加工され得るアクリル等の材料のウインドウ174からの撮像を要求し得る。此れは励起及び放出光の透過を縮減し、スキャンの間により長い蓄積時間を要求し得る。加えて、マグネティックワンド162は、セルラフトのより迅速な収集を成し遂げる(affect)為に、取り外しの間には標的のセルラフトの上に位置合わせされる。然し乍ら、此の幾何学では、明視野LED158の水平方向の位置は顕微鏡対物152からオフセットさせられ、マグネティックワンド162は其の光の影を投射する。此れ等の問題を解決する為に、図3Bに例解される取り外し針154を含むアセンブリは、マイクロアレイ及び取り外しの為に標的化されたセルラフトの落射照明を提供する為の発光ダイオード178と抵抗器180とを含有する環状のプリント回路板176を包含し得る。ダイオード178からの光はマイクロアレイ112を通して上方向に移動し、マイクロアレイ112のリザーバ内の流体内の位置合わせされたマグネティックワンド162の先端に依って反射されて、其れが取り外される際にセルラフトの擬似透過照明を作り出す。
【0060】
顕微鏡対物152の視野の中心とマイクロアレイ112上の取り外し針154の穿刺場所との間のオフセットを校正する事が有用であり得る。校正は、例えば針取り換え後に毎回、又は実験開始時に毎回、又は製造の間に1回実施され得る。幾つかの例では、図2Bのコントローラ124は自動化された校正を実施する様にプログラムされる。
【0061】
例えば、コントローラ124は、マイクロアレイ112を動かして顕微鏡対物152の視野をマイクロアレイの縁と位置合わせし、顕微鏡対物をオートフォーカスし、其れから、取り外し針154に依ってマイクロアレイの縁を穿刺し得る。其れから、コントローラ124は画像を取得し(例えば明視野LED158を用いる)、例えば画像をセグメンテーションする事に依って画像を分析して穿刺位置を位置付ける。其れから、コントローラ124はオフセットを計算し得る。幾つかの例では、コントローラ124は、異なる場所に動く事に依って規定された回数だけプロセスを繰り返し、例えばオフセット位置を平均する事に依ってオフセット位置に基づいて校正距離を決定する。幾つかの他の例では、コントローラ124は、セルラフトを含有しないマイクロアレイ112を動かして、マイクロアレイ112の中心に於いてマイクロウェルと顕微鏡対物152の視野を位置合わせし、顕微鏡対物をオートフォーカスし、其れから取り外し針154に依ってマイクロアレイを穿刺し得る。其れから、コントローラ124は画像を取得し(例えば明視野LED158を用いる)、例えば画像をセグメンテーションする事に依って画像を分析して穿刺位置を位置付けるか、又は例えば画像の表示をクリックする事に依って穿刺位置を位置付ける様にユーザに促す。其れから、コントローラ124はオフセットを計算し得る。幾つかの例では、コントローラ124は、異なるマイクロウェルに動く事に依ってプロセスを規定された回数だけ繰り返し、例えばオフセット位置を平均する事に依ってオフセット位置に基づいて校正距離を決定する。
【0062】
自動化されたシステムに依って取得された明視野及び広視野蛍光zスタックの画像品質を試験する為に、2つの200~300μmマウス肝臓オルガノイドがマイクロアレイ上に於いて選択され、撮像の為にヘキスト及びEpCAM(FITCとコンジュゲート化された一次抗体)に依って染色された(例2に記載される通り)。明視野、青色蛍光(露出=50,50ms)、及び緑色蛍光(露出=200,100ms)画像が、2つのオルガノイドの全高を包含する焦点範囲に渡って10μm毎に取得された(夫々、24及び30個の画像)。明視野及び擬似カラーの蛍光画像(図4A)は優良な画像品質を実証し、有糸分裂像を包含する個々の細胞、細胞ジャンクション(緑色)、及び核内の部分構造(青色)を可視化する能力を有する。
【0063】
zスタック画像の表現型内容を活用する為に、1)ユーザが明視野及び蛍光コンポジット表示に依って各画像スタックを視覚的に検討する為のソフトウェア内の直感的なユーザーインターフェースが提供され(図4B)、2)表現型評価又は単離閾値何方かの為のサイズ又は他のメトリクスに基づいてオルガノイドを同定及びグループ化する為に、オルガノイド直径並びに他の形態学及び表現型パラメータを測定する為の自動化されたアルゴリズムが提供される。此れは、セルラフトフットプリントを超えて成長し、隣り合うセルラフト内への画像処理を要求する大きいオルガノイド(>500μm)の評価を包含する。加えて、zスタック画像は外部のソフトウェアを用いる表示及び操作の為にエクスポートされ得る。拡張されたソフトウェア能力の此の組み合わせは、標準的なオルガノイド培養方法及び撮像プラットフォームを用いては可能ではない個々のオルガノイドの自動化された表現型キャラクタリゼーションを許し、ソフトウェア内の複数のスクリーンから単離の為の任意の対象のオルガノイド含有セルラフトを指定する為のオプションを有する。
【0064】
本発明の自動化されたシステムの実施形態は、画像主導のセルラフト単離を提供する。1つの例では、システムを用いて自動化された撮像を実施した後に、ユーザは、対象の形成しようとする又は形成されたオルガノイドを同定し、種々のソフトウェアに依って案内される又は手作業の選択ツールを用いて単離の為にセルラフトを指定し得る。一旦選択されると、セルラフトは、マイクロアレイのエラストマー製の床部を貫くモータ駆動の取り外し針に依って其のマイクロウェルから脱離させられ(図5A)、鉄ナノ粒子をドープされたセルラフトの例示的なケースでは常磁性故に、マグネティックワンドの先端で収集される。其れから、システムはワンドをアライメントし、96ウェル組織培養又はPCRプレートの指定されたウェルに挿入し乍ら、其の内部のマグネットを引き込んで、形成しようとする又は形成されたオルガノイドを担持するセルラフトを収集プレート上に分配する(図5B)。プロセスは、収集ウェル当たり1つのセルラフト(其の取り付けられたオルガノイド構造を有する)で、単離の為にユーザに依って選択された各セルラフトに就いて繰り返される。
【0065】
先のセルラフト・エアーシステムでは、プロセスは、統制された2突刺パターンを用いて其れ等のマイクロウェルから液体培養培地中の100μm及び200μmのセルラフトを取り外す事と、其れから、最高で5mm迄離して位置合わせされるマグネティックワンドに依って其れ等を収集する事とがバリデーションされた(>95%の奏功率)。先のセルラフト・エアーシステムでは、取り外し及び収集の為に対象のセルラフトをアライメントする為の顕微鏡、針、及びワンドの間のシステム校正に依拠して、所定の突刺場所及び大きい吸引距離は、セルラフト単離が顕微鏡撮像経路から「軸外で」行われる事を許した(図5C)。
【0066】
マイクロアレイからの約400μmよりも大きいセルラフト、例えば500μmセルラフトの取り外し、及び細胞外マトリックスからの収集は、液体細胞培養よりも有意に困難である。マイクロアレイからの取り外しは、エラストマー製のマイクロウェルと係合した儘であるセルラフトの角を取り外す為のより標的化された針突刺と、ECMの粘性を克服する為のセルラフトに対するマグネティックワンドの先端の大いにより密接な近位(0~1mm)とを要求する。此れ等の困難にアドレスする為に、「同心的な」取り外し針設計(図5D)が開発され、取り外し針及び収集ワンドを顕微鏡撮像軸とアライメントする事がバリデーションされた。此れは、セルラフト取り外しのリアルタイム撮像と標的のセルラフトに対する収集ワンドの先端の三次元アライメントとを助ける。撮像データが直ちに分析されて、1~4つの標的化された針突刺後にセルラフト取り外しを達成及び検出し(図5E)、且つマグネティックワンドの先端の高さ、水平方向の位置、及びドウェル時間を動的にコントロールして、セルラフト収集を達成する。システムハードウェアの同心的な設計は、画像に基づく判定を実施するシステムソフトウェアと対に成って、先の「軸外の」セルラフト・エアーシステムよりも高い奏功率で速いオルガノイド単離を齎す。
【0067】
本発明の幾つかの実施形態では、マイクロアレイ上のオルガノイドのクローン性の同定及び時間的な表現型評価を包含する幾つものオルガノイドワークフローが、マイクロアレイ及び自動化されたシステムに依って可能化される。マトリゲル等の半固体の基底膜抽出物(BME)ドーム中のオルガノイドの従来の培養方法は、x、y、及びz次元に於いてランダムな配置を齎し、重なり合う3D構造及び多焦点撮像要件を原因として撮像を困難にする。加えて、BMEドーム中の細胞のランダムな配置は、クローン性のオルガノイド成長又は個々のオルガノイドの時間的な成長評価を可能にしない(図6A)。本発明のより大きいマイクロアレイ、例えば固有のIDを有する分離されたマイクロウェル位置を提供する例示的な500×500μmマイクロアレイと、マイクロウェルの予測可能なz平面上へのオルガノイドのアライメントを助ける改訂された播種プロトコール(例2参照)とは、従来のオルガノイド培養方法の此のボトルネックを克服する。システムは、例示的な46×46セルラフトマイクロアレイとの組み合わせで、単一の細胞培養消耗品上の2,100よりも多くの利用可能なセルラフト又はオルガノイドの位置を時間的に撮像する為の自動化された解決法を提供する。1つの実施形態では、各セルラフトに就いて捕捉された画像はシステムソフトウェアに自動的に保存され、各オルガノイドに就いて、完全な容易に閲覧可能なデータレコードを提供する。
【0068】
マウス膵臓(図4C)及びマウス肝臓オルガノイド両方を用いて、マイクロアレイ上の発生しようとするオルガノイドの高品質のタイムコース画像を得る為の堅牢な且つ確実な方法が実証される(例3参照)。加えて、記載される方法は、腎臓、脈絡叢、脳(例5参照)を包含する種々の組織型のオルガノイドへの多能性幹細胞の分化をモニタリングする能力を実証する(図12及び13)。各オルガノイドの動的な成長レコードが、単細胞から単離迄の発生プロセス全体の間に維持され得る。1つの例では、細胞播種(即ち、マイクロアレイ上へのオルガノイド断片又は単細胞懸濁液のローディング)(4時間)の直ぐ後にアレイスキャンを始めて、ユーザは、単一の又は複数の細胞を有するセルラフトを手作業で又はセルラフト・サイトメトリーツール(セルマイクロシステムズ社(Cell Microsystems, Inc.)、ダーラム、NC)を用いる事に依って何方かで同定し得る(図6B)。マイクロアレイ上の毎視野に於いて各セルラフト上の形成しようとする又は形成されたオルガノイドを確実に撮像する能力は、標準的な培養方法及び撮像ツールを用いては現行で可能ではないクローン性のオルガノイドワークフローを可能化し得る。其れから、マイクロアレイの其の後の連続スキャンが、オルガノイド発生の時間的な画像を捕捉する為の所望の時間インターバルでユーザに依って開始され得る(図6C図7)。システムは、全アレイスキャンを明視野及び3つの蛍光チャンネルに於いて15分未満(明視野のみ9分未満)で取得し、数百の個々のオルガノイドのマルチパラメータの表現型的及び形態学的スクリーニングの為の迅速な解決法を提供し得る。
【0069】
明視野撮像に加えて、システムは、生細胞染色、CRISPR編集、及びアレイ上での生存性アッセイを包含するが此れ等に限定されない種々の用途の為の、高度な蛍光に基づく表現型評価を実施し得る(図5F)。例えば、EpCAMに対するFITCコンジュゲート化抗体に依って染色されたマウス肝臓オルガノイドは細胞膜の詳細な可視化を実証し(図4A図7)、ヘキスト染色された核はzスタック中の細胞カウントを可能化する(図4A)。システムを用いて単一のマイクロアレイ上の数百の個々のオルガノイドに適用され得る斯かる時間的な明視野及び蛍光撮像は、多数の標準的な細胞培養消耗品、高価な撮像プラットフォーム、並びにユーザに依る鋭意の手作業の上流及び下流の労力を要求する現行の方法と比べて有意な前進を表す。
【0070】
種々の実施形態に於いて、オルガノイドは、下流のアッセイ、成長、及びサブクローニング、並びにオミクス用途の為にマイクロアレイから単離される。多焦点撮像要件の問題に加えて、従来のオルガノイド培養方法は、一貫しない出発材料を原因とするオルガノイドサイズ、形状、生存性、及び成長速度の大きい変動を生ずる事に対して弱い。毒性物質又は治療に応答したオルガノイドの発生、生存性、又は分子に基づく変化を評価する為に用いられる標準的なマトリゲルドーム培養方法は、多くのオルガノイドの応答をホモジナイズし、表現型的及び遺伝学的不均一性を無視する。本発明のマイクロアレイ及びシステムに依って、不均一性のオルガノイド集団を調査及びクローン由来のオルガノイド集団を生成する為の解決法が提供される。画像に基づく表現型キャラクタリゼーションに加えて、マイクロアレイ及びシステムは下流の用途及び拡大培養の為の対象の個々のオルガノイドの単離及び移し替えを可能にする。
【0071】
分子レベルでの腫瘍内及び腫瘍間不均一性のダイナミクス及び発達を理解する為にオルガノイドモデルを用いる事は、薬物の効力をより良く予測する為に幅広く用いられて来つつある。主としてオルガノイドの集団に焦点を合わせた研究は標準的な培養方法を用いて実施されているが、個々のオルガノイドに就いて斯かる用途を可能化する為の開示されるシステムの信頼性及び効率が実証される。例えば、下流のオルガノイド成長及びサブクローニング並びにマイクロアレイから単離された個々のオルガノイドからの核酸単離の為の開示されるシステムの有用性が、マウス膵臓(データは示さない)及びマウス肝臓オルガノイド両方(例4参照)を用いて実証される。具体的には、マイクロアレイから96ウェル収集プレートへの単離後に、オルガノイドは下流のアッセイの為に生存可能な儘であり、希釈マトリゲル成長培地に於いて成長し続ける(図8A)。
【0072】
開示されるシステムの撮像及び単離能力を活用する事に依ってクローン性のオルガノイド集団を作り出す能力も又実証される(例4参照)。例えば、マイクロアレイ上の時間的な撮像に依って立証される通り、単細胞に由来するオルガノイドが同定され、同定されたオルガノイドは自動化されたシステムを用いて96ウェル収集プレートに単離され得る。アレイ外での5日の成長後に、各「親」オルガノイドは96ウェルプレート上で細胞の小さい断片に酵素的に解離させられ、其れから新たなマイクロアレイに再播種されて、更なる拡大培養又は系譜に基づく表現型の評価の為に数百の第2世代の「子」オルガノイドを拡大し得る(図8B)。
【0073】
下流の成長、アッセイ、及びサブクローニングの為の単一オルガノイド単離を実施する事に加えて、システムは、創薬及び毒性学の一般的に調査されるエンドポイントの核酸単離の為のPCRストリップチューブ又は96ウェルPCRプレートに単一オルガノイドを分配し得る。1つの例では、マウス膵臓(データは示さない)及びマウス肝臓オルガノイドがマイクロアレイ上に播種され、時間的なスキャンが実施されて、オルガノイド発生をモニタリングする(例4参照)。サイズの範囲が1mm超に及ぶオルガノイドが、標準的なPCRストリップチューブ等だが此れ等に限定されない収集プレートに直接的に単離され得る。1つの実施形態では、オルガノイドはサイズが200から700μmの範囲である。1つの実施形態では、所望のサイズ範囲のオルガノイドが、RNA精製の為の標準的なPCRストリップチューブ上のリシス緩衝液中に直接的に単離される。1つの実施形態では、RNA品質及び濃度の為のサイズ閾値が決定される。下流のオミクス用途に於ける使用に好適な高品質のRNA(RIN>9.4)が得られ得る。得られるRNAの量はオルガノイドサイズと直接的に相関し得る(図9)。提示されるデータは、単一オルガノイド用途の上流に於ける個々のオルガノイドの時間的な表現型評価の為の効率的なユーザフレンドリーなワークフローを助けるオールインワンのプラットフォームを提供する為のマイクロアレイを包含する自動化されたシステムの柔軟性及び有用性を実証している。
【0074】
図10は、オルガノイドを描出するセルラフトの画像を処理する為の例の方法1000のフローチャートである。方法1000は、コンピュータシステム、例えば図2Aのコンピュータシステム102に依って実施され得る。
【0075】
方法1000は、セルラフト、例えば500ミクロンラフトの画像を取得する事を包含する(1002)。図11Aはセルラフトの画像の例を示す。
【0076】
方法1000は、画像をバイナリ(白黒)に反転閾値処理してラフト壁を強調表示する事と、別々の白色ブロブを同定する事に依ってラフトをセグメンテーションする事とを包含する(1004)。方法1000は、3つのラフトの2つの列が奏功してセグメンテーションされたかどうかを決定する事を包含する(1006)。セグメンテーションが奏功した場合には(はい(YES))、方法1000は、アレイ上のラフトのアドレスに依って各ラフトを標識する事(1014)及び其れから次の画像に進む事(1016)を包含する。
【0077】
セグメンテーションが奏功しなかった場合には(いいえ(NO))、大き過ぎるオルガノイドが、接続されたブロブを作り出すオルガノイドのフィーチャを原因とするセグメンテーションの失敗を引き起こした。方法1000は、X及びY軸両方に沿って白色のピクセルのカウントのヒストグラムを実施する事を包含する(1008)。齎されるヒストグラムは各次元に於いて壁の境界に沿ってピークに成る(1010)。図11Bは、ヒストグラムがX及びY軸の其々に沿って描画された図11Aからの例の画像を示す。
【0078】
方法1000は、各軸に於いて、各同定された壁の境界間に黒色の線を描画する事を包含する(1012)。図11Cは、黒色の線が同定された壁の境界の間に描画されている図11Bからの例の画像を示す。3つのラフトの2つの列が見出される様にして、セグメンテーションが再演算される。其れから、方法1000は、奏功したセグメンテーション後に、即ちアレイ上のラフトのアドレスに依って各ラフトを標識する事(1014)及び其れから次の画像に進む事(1016)に依って、続行する。
【0079】
図16A~16C、17、18、及び19A~19Dは、システム100に依ってスキャンの間に回収された分析データをクエリする能力をユーザに提供する例のシステムを例解する。例に於いて提供されるフィーチャ名称は例解の目的で示されている。
【0080】
一般的に、システムは、システム100に依って収集されたデータを分析する為に構成されたソフトウェアと、クエリを受け取り結果を提示する為のユーザーインターフェースとを包含する。此れ等のクエリは、単一のCytoSortアレイの複数のスキャンがシステム100に依って取られる場合の、細胞形態学に就いての及び時間上の分析を実行する様に構造化され得る。細胞形態学に就いての分析は「集団(Populations)」と呼ばれるフィーチャを用いて達成される。時間上の分析は、「ベン図(Venn Diagram)」と呼ばれる機能を用いて達成される。
【0081】
システムは「単一の集団(Single Populations)」と呼ばれる機能を包含し得る。此れは、画像処理の間に抽出されたフィーチャに基づいて基準のセットに合致するCytoSortアレイ上の細胞を見出す為に構成される。単一の集団は単一のスキャンのみに焦点を合わせ、其れが単一の時点のみに焦点を合わせるという事を意味するであろう。此れは、集団の焦点が、単一の時点に於いて特定のオブジェクトを含有するセルラフトを同定する事であるという事を意味する。
【0082】
1つの例は、システム100を用いて取られた第1のスキャン上の単細胞を含有する全てのセルラフトを回収する集団であり得る。第2の例は、システム100に依って取られたCytoSortアレイの第2のスキャン上の細胞のコロニーを含有する全てのセルラフトを同定する事に焦点を合わせる集団であろう。
【0083】
各集団はユーザに依って定義された探索基準のセットを有する。此れ等の探索基準は、分析の間に回収されたフィーチャを活用して、セルラフトに含有される対象領域(AOI)をフィルタ処理する。何れのAOIが「良い」として合格するかの定義は、探索基準に依って決定される。集団に就いて探索基準を定義した後に、ソフトウェアは、スキャンの間に見出された全てのAOIをフィルタ処理し、探索基準を通過する全てのAOIを保持し、其れから、フィルターセットを通過する此れ等のAOIの1つを含有する全てのセルラフトを返すであろう。
【0084】
ベン図ツールは、ユーザが、其れから、時点間の分析を行う為にセルラフト・サイトメトリーに於いて構築された集団を更に活用する事を許す。CytoSortアレイが複数回スキャンされる場合には、異なる探索基準に依る集団が各スキャンに就いて定義され得る。其れから、ベン図を用いて、共通部分、和集合、対称差、又は差集合が此れ等の集団から回収され得る。例えば、時点1に於いて単細胞を含有するセルラフトの集団及び時点2に於いて細胞コロニーを含有するセルラフトの集団の共通部分は、単細胞から出発した細胞のクローン性のコロニーを含有する全てのセルラフトのリストを齎すであろう。
【0085】
或る集団又はベン図を用いる結果何方かに含有されるセルラフトの表示は、セルラフト・サイトメトリーのGUIを用いて閲覧され得る。此れは、ユーザが其れ等の探索基準の出力を迅速に吟味し、必要に応じて調整する事を許す。如何にして画像処理アルゴリズムが働こうとするか、如何に多くのセルラフトがクエリの間に回収されるか、及び最終のベン図セットクエリに就いての一般的な情報に就いてのビジュアル及び読み出しも、全てユーザに提供され得る。
【0086】
図16Aはシステムの為の例のユーザーインターフェースのスクリーンショットである。ユーザーインターフェースは例えば図2Aのコンピュータシステム102に依って表示され得る。
【0087】
ユーザーインターフェースは、スキャンの間に回収される分析データをクエリする為のシステムへの入力及び出力を提供する為の「セルラフト・サイトメトリー(商標)」と標識されたタブを包含する。ユーザーインターフェースは、新たな集団を作り出す及び集団をインポートする為のボタンと、集団をリスト化する為のウインドウとを包含する。ユーザーインターフェースは、セットの構成員を表示する為のウインドウと、スキャンの間に捕捉された画像を表示する為のウインドウとを包含する。ユーザーインターフェースは集団のセットを表示する為のウインドウを包含する。
【0088】
図16Bはシステムの為の例のユーザーインターフェースのスクリーンショットである。ユーザーインターフェースは例えば図2Aのコンピュータシステム102に依って表示され得る。
【0089】
ユーザーインターフェースは、クエリ分析からの結果とスキャンの間に捕捉された対応する画像とを表示する為の「Zスタックビューア(Z Stack Viewer)」と標識されたタブを包含する。ユーザーインターフェースはラフトの説明及びスタックの説明の為のテキストフィールドを提供する。説明は、ユーザーインターフェースに対応する画像の画像を表示させる為に用いられ得る。ユーザーインターフェースは、画像のズームレベルを選択する為のユーザーインターフェース要素、例えばスライダーを包含し得る。
【0090】
図16Cは集団の作出の為の例の方法1600のフロー図であり、例えばベン図機能を用いる。方法1600は、例えば図2Aのコンピュータシステム102に依るソフトウェア実行に依って実施され得る。
【0091】
方法1600はクエリを受け取る事及びセルラフトアレイのデータベースにアクセスする事を包含し、データベースは複数の時点からのスコア付けされたスキャンを包含する(1602)。方法1600は、クエリに依って規定される通り、選択されたセルラフトに就いて、対応するセルラフトデータが所望の時点に帰属するかどうかを決定する事を包含する(1604)。方法1600は、セルラフトデータが所望のリザーバに帰属するかどうかを決定する事を包含する(1606)。方法1600は、セルラフトデータが所望のセグメンテーション方法に帰属するかどうかを決定する事を包含する(1608)。
【0092】
方法1600は、セルラフトデータが最高でN個のフィルター迄の1つ以上のフィルターを通過するかどうかを決定する事を包含する。此の例で示される通り、方法1600は、セルラフトデータがフィルター1(1610)、フィルター2(1612)、及び最高でフィルターN(1614)迄を通過するかどうかを決定する事を包含する。フィルター基準の例は次を包含する:
・時点
・リザーバ(該当する場合)
・セグメンテーションの型
・領域
・デブリ
・アスペクト比
・凸度
・円形度
・蛍光強度(RGB)
・振幅
・テクスチャ
・平均強度
・基準AOI
・基準ラフト
・AOIカウント
・カバレッジ
【0093】
セルラフトデータがクエリに依って規定される通りに帰属する場合には、セルラフトは集団に追加される(1616)。セルラフトが選択され、終了条件が到達される迄チェックされ、其れから、集団が選ばれる。
【0094】
図17は、集団のセットを図解する為の例のユーザーインターフェース1700を示す。ユーザはユーザーインターフェース1700を用いて複数の集団からセットを作り出し得る。第1のユーザーインターフェース要素1702は、集団A-実験の第1日に単細胞を有するセルラフト集団の構成員を図解する。第2のユーザーインターフェース要素1704は、集団B-実験の第3日又は第4日何方かに標的の赤色蛍光を見せるセルラフト集団の構成員を図解する。第3のユーザーインターフェース要素1706は、集団C-実験の第6日にクローン性のコロニーを有するセルラフト集団の構成員を図解する。第4のユーザーインターフェース要素1708は、セットが、全ての3つの集団A、B、及びCの構成員であるセルラフトのみを包含するという事を示す。
【0095】
図18はオルガノイド検出の為の例の方法1800のフロー図である。システム100は、CytoSortアレイ上の対象のオルガノイドの検出及び選択の為に構成され得る。画像分析アルゴリズムは、ユーザが特定のサイズのオルガノイドを同定する事を許す様に構成され得る。セルラフトを同定する為のフィーチャ及び機能性がオルガノイドに就いて適用され得、オルガノイド及び3D組織構造に対してされるであろう固有の型の分析の為の新たなパラメータが包含され得る。オルガノイド直径は、対象のオルガノイドを検出する為に用いられる主要なフィーチャである。然し乍ら、3次元オルガノイド/組織成長及び2次元細胞成長を判別する為に用いられ得る幾つかの他のフィーチャが、システム上のオルガノイド分析のインテグレーションに於いて包含され得る。
【0096】
方法1800はオルガノイドの明視野セグメンテーションの為に実施され得る。方法1800は全明視野画像を入力する事を包含する(1802)。方法1800はセルラフトの場所を同定する事を包含する(1804)。方法1800はデプスマップを生成する事を包含する(1806)。方法1800は高いコントラストの領域を同定する事を包含する(1808)。方法1800はノイズを抑制する事を包含する(1810)。方法1800はオルガノイドの輪郭、場所、及びフィーチャを抽出する事を包含する(1812)。方法1800はオルガノイドの場所及びフィーチャを返す事を包含する(1814)。
【0097】
図19A~19Dは、マスク、及びオルガノイドセグメンテーションに依って生成される出力の例を示す。図19Aはオルガノイドを有するセルラフトの例の画像である。図19Bは、オルガノイドの周りの点線の円を示すアノテーションされた画像である。図19Cはオルガノイドセグメンテーションに用いられるマスクの例である。図19Dはオルガノイドセグメンテーションに用いられる異なるマスクの例である。
【実施例
【0098】
例1
マイクロアレイ作製
マイクロアレイを、次のプロトコールを利用してオルガノイド培養及び回収の為に製造した。30μmのスペースに依って離間された高さ80μmの500×500μmピラーから成るSU-8フォトレジストマスターテンプレートを、深掘反応性イオンエッチング(アルカテル(Alcatel)AMS100)に依って、チャペルヒル分析・ナノファブリケーション研究所(Chapel Hill Analytical and Nanofabrication Laboratory)(UNC-チャペルヒル、NC)に於いて作製した。マスターをオクチルトリクロロシランに依る化学蒸着に依って共有結合的に修飾して、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に対する接着を縮減した。マイクロアレイ上の効率的なディップコーティング及び最小限のPDMS変形/サグを保証する為の硬質の犠牲基板を、7.5%ポリ(アクリル酸)(PAA)の薄い層をスライドガラス(75×50mm、コーニング(Corning)、コーニング、NY)上に500rpmで10秒間、其れから1500rpmで30秒間スピンコーティングする事に依って調製した(H6-23スピンコーター、ローレル(Laurell)、ノースウェールズ、PA)。PDMSをシリカマスターテンプレートに注加し、~710torrで10分間脱気した。其れから、マスターをスピンコーター上に225rpmで30秒間置き、其れから100℃で60分間硬化した。ガラスバッキングされたPDMSをシラン化されたマスターテンプレートから離型する事でマイクロウェルアレイ(80μmの深さ、500×500μm)を齎した。各アレイを、1%γFeナノ粒子を含有するガンマブチロラクトン(GBL)中の20%ポリ(スチレン-co-アクリレート)(重量パーセンテージ)の溶液に依ってディップコーティングした。ポリマー溶液を疎水性PDMSからの不連続な脱濡れに依って各個々のマイクロウェルに単離した。GBL溶媒を100℃で18時間ベーキングして飛ばした後に、セルラフトが形成された。セルラフトアレイを、70℃で60分間硬化されるPDMSグルーを用いて射出成形されたポリスチレンカセットに接合し、其れから2分間酸素プラズマ処理した(ハリック・プラズマ(Harrick Plasma)、イサカ、NY)。PAAを溶解する為にバッキングをDI水中に70℃で2時間浸漬する事に依って、犠牲ガラスバッキングを取り外した。各アレイは追加の2分の酸素プラズマ処理を経て、其れから気泡抑制溶液に依って30分間コーティングされた。此の処理後に、余分な溶液をアスピレーションし、アレイにポリスチレン蓋を被せ、セルフシール滅菌パウチで包装した。其れから、細胞培養への使用前に、完成したアレイを10~15kGyで130分間ガンマ線滅菌した(ステリス・アプライドステラリゼーションテクノロジーズ(Steris Applied Sterilization Technologies)、リバティビル、IL)。
【0099】
アレイ製造材料.Sylgard184ポリジメチルシロキサン(PDMS)を、エルスワース・アドヒーシブ社(Ellsworth Adhesive Co)(ジャーマンタウン、WI)からのシリコーンエラストマーキットから調製した。オクチルトリクロロシラン(97%)及びガンマブチロラクトンはシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(セントルイス、MO)から購入した。水中のポリ(アクリル酸)30%溶液(MW~30kDa)はポリサイエンシズ社(PolySciences, Inc.)(ウォリントン、PA)から購入した。カスタムのカセットはポリスチレン材料を用いて射出成形され、プロトラブス(Protolabs)(メープルプレイン、MN)から購入された。カスタムのディップコーティング溶液はセルマイクロシステムズ社(Cell Microsystems, Inc.)(ダーラム、NC)に於いて調製された。
【0100】
例2
マイクロアレイ上の細胞播種並びにZスタック画像取得及び分析
マウス膵臓及び肝臓オルガノイド懸濁液を、細胞播種の為に、24ウェルマトリゲルドーム培養からの断片として、製造者のプロトコール(コーニングマトリゲル低成長因子(GFR)基底膜マトリックス、コーニング社(Corning, Inc.)、コーニング、NY))に記載される通り、標準的な完全培地を用いて、本明細書に於いて下で記載される通り調製した。マウス肝臓オルガノイドを単細胞懸濁液の為に酵素的に解離させた。50μLの1mg/mLのDNaseI溶液(カタログ番号07469、ステムセルテクノロジーズ社(STEMCELL Technologies Inc.))を5mLのTrypLEエクスプレス酵素(カタログ番号12605010、ギブコバイオサイエンシズ(Gibco Biosciences))と混合する事に依って調製されたDNaseIとTrypLEの溶液を用いた。ペレット化された断片を1mLのDNaseIとTrypLEの溶液に37℃水浴上で10分間再懸濁し、ピペッティングに依って懸濁液を2.5分毎に混合して、断片が単細胞に解離する事を保証した。単細胞由来のオルガノイド培養のみは、完全HepatiCult成長培地に10μMのY-27632(カタログ番号ACS-3030、ATCC、ボルチモア、MD)を足した。
【0101】
細胞、培地、及び3D培養マトリックス.マウス膵臓オルガノイド及びマウス肝臓オルガノイド(カタログ番号70933、カタログ番号70932、ステムセルテクノロジーズ社(STEMCELL Technologies Inc.)、バンクーバー、BC)は、37℃の5%COインキュベータで、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号15140-122、ギブコバイオサイエンシズ(Gibco Biosciences)、ダブリン、アイルランド)を足されたPancreaCultオルガノイド成長培地(マウス)又はHepatiCultオルガノイド成長培地(マウス)(カタログ番号06040、カタログ番号06030、ステムセルテクノロジーズ社(STEMCELL Technologies Inc.))に依って、マトリゲルドーム(コーニングマトリゲル低成長因子(GFR)基底膜マトリックス、フェノールレッドフリー、LDEVフリー、カタログ番号356231、コーニング社(Corning, Inc.)、コーニング、NY)中に於ける成長及び拡大培養の為の製造者のガイドラインに従って、培養及び維持した。
【0102】
細胞播種手続きは、マイクロアレイのマイクロウェルへの播種と単一オルガノイド回収の為のセルラフトの取り外し及び収集とを助ける様に従来のマトリゲルドーム培養方法から転用した。細胞播種の為にアレイを調製する為には、アレイを、無菌の予温された(37℃)CaMgPBS(カタログ番号10010-023、ギブコバイオサイエンシズ(Gibco Biosciences))に依って3回洗浄した(各3mL、洗浄当たり3分)。最終の洗浄をアスピレーションした後に、3mLの新しいPBSをリザーバに追加し、アレイを氷上に1時間置いて、細胞播種に先立ってアレイを冷却した。オルガノイド断片又は単細胞懸濁液は先に記載された通り調製した。断片懸濁液をn=3の10μL液滴から光学顕微鏡に依ってカウントした。アレイに播種する為に必要とされる体積は次の等式を用いて計算した。
播種に必要な体積(μL)=所望の断片数/(平均断片カウント/10μL) (1)
【0103】
単細胞懸濁液の為には、細胞をCountessII自動化セルカウンター(インビトロジェン(Invitrogen)、ウォルサム、MA)を用いてカウントし、播種に必要とされる体積は次の等式に依って計算した。
播種に必要な体積(mL)=所望の細胞数/細胞濃度(細胞/mL) (2)
【0104】
細胞又は細胞断片は細胞:セルラフトの1:1比で播種した。所望の体積の細胞懸濁液を、1mLの冷温AdvancedDMEM/F-12(カタログ番号12634010、ギブコバイオサイエンシズ(Gibco Biosciences))を有する15mLコニカルチューブに追加し、300×gで遠心して細胞をペレット化した。細胞播種の為の希釈マトリゲル培地を調製する為には、0.24mg/mLの最終濃度を達成する為に必要とされる体積のマトリゲルを5mLの氷冷完全PancreaCult又はHepatiCult成長培地に追加した(トータルの播種体積中に1.2mgマトリゲル)。遠心後に、上清を注意して除去し、細胞ペレットを1mLの氷冷希釈マトリゲル培地に再懸濁した。マイクロアレイを氷から取り出し、PBSをアレイからアスピレーションした。細胞播種の為のアレイを調製する為には、2mLの希釈マトリゲル培地、次に、細胞懸濁液を有する1mLの希釈マトリゲル培地をリザーバに追加する。細胞接種後に、残りの2mLの冷温希釈マトリゲル培地をアレイリザーバ内で5mLのトータル体積に到達する様にゆっくり追加し、アレイを氷上に20分間返した。此の冷温インキュベーションは、希釈マトリゲル及び細胞懸濁液が37℃に於けるマトリゲルの重合に先立って奏功してマイクロウェルに吸い上げられるという事を保証する為に必須である。細胞又は細胞のクラスターはポアソン様の分布でマイクロアレイのマイクロウェルフットプリントに沈降し、希釈マトリゲルは、セルラフトに対する発生しようとするオルガノイドの緩い取り付けを許す。冷温インキュベーション後に、アレイを37℃の5%COインキュベータに置いた。マイクロアレイを、播種の4時間後に於いて及び24時間毎にシステムを用いて明視野でスキャンして、オルガノイド成長及び発生をモニタリングした。
【0105】
表現型キャラクタリゼーションの為にオルガノイドを生細胞染色する.マウス肝臓オルガノイドを、ヘキスト33342(カタログ番号R37605、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)、ユージーン、OR)、及び上皮細胞接着分子に対する直接コンジュゲート化された(FITC)一次抗体(EpCAM、カタログ番号11-5791-82、イーバイオサイエンス(eBioScience)、サンディエゴ、CA)に依って染色した。簡潔には、50%培地交換を、Fluorobrite-DMEM(カタログ番号A1896701、ギブコバイオサイエンシズ(Gibco Biosciences))を用いて5回実施した(各2mL)。マイクロウェルフットプリントからオルガノイドを脱離させない様に注意した。2×染色カクテルを次の通り調製した:PBS中の400uLの10%BSA(カタログ番号37525、サーモフィッシャーサイエンティフィック(ThermoFisher Scientific)、ウォルサム、MA)、1:400(20μL)のEpCAM一次抗体、8滴のヘキスト(Hoeschst)33342を有する1.6mLのFluorobrite-DMEM。Fluorobrite-DMEMに依る最終の洗浄後に、培地を除去し、リザーバには凡そ2mLを残した。染色カクテルのトータルの体積を、1%BSA、1:200のEpCAM-FITC一次抗体、及びmL当たり2滴のヘキスト33342の最終濃度でリザーバに追加した。アレイを37℃の5%COインキュベータに45分間置き、次にFluorobrite-DMEMに依る5回の50%培地交換(各2mL)をして、撮像の為に過剰な抗体を洗い流した。染色の直後に、アレイをシステムを明視野、青色蛍光(390/432nm)、及び緑色蛍光(475/522nm)で用いてスキャンした。
【0106】
2つのオルガノイド含有セルラフトを、本明細書に於いて下で記載される通りシステムに依る追加のzスタック撮像の為に選択した。システムに依って取得された明視野及び広視野蛍光zスタックの画像品質を試験する為に、ヘキスト及びEpCAM(FITCとコンジュゲート化された一次抗体)に依って染色されたマイクロアレイ上の2つの200~300μmマウス肝臓オルガノイドを、撮像(本明細書に於いて下で記載される通り)の為に選択した。明視野、青色蛍光(露出=50,50ms)、及び緑色蛍光(露出=200,100ms)画像を、2つのオルガノイドの全高を包含する焦点範囲に渡って10μm毎に取得した(夫々、24及び30個の画像)。明視野及び擬似カラーの蛍光画像(図4A)は、優良な画像品質を実証し、有糸分裂像を包含する個々の細胞、細胞ジャンクション(緑色)、及び核内の部分構造(青色)を可視化する能力を有する。緑色蛍光強度はオルガノイドの上側に向かって減衰するが、其れがオルガノイドの下部の部位に於ける励起-放出光透過の縮減、EpCAM染色の縮減、又は組み合わせを原因とするかどうかは不明瞭である。
【0107】
例3
発生しようとするオルガノイドのシステムに依って取得された高品質のタイムコース画像
マウス膵臓(図4C)及びマウス肝臓オルガノイド両方を用いて、単細胞から単離迄の発生プロセス全体の間の各オルガノイドの動的な成長レコードを維持する様に、マイクロアレイ上の発生しようとするオルガノイドの高品質のタイムコース画像を得る為の堅牢な且つ確実な方法が実証された。細胞をマイクロアレイ上に播種し、本明細書に於いて上で記載された通り染色した。細胞播種(4時間)の直ぐ後にマイクロアレイスキャンを始めて、ユーザは、単一の又は複数の細胞を有するセルラフトを手作業で又はセルラフト・サイトメトリーツール(セルマイクロシステムズ社(Cell Microsystems, Inc.)、ダーラム、NC)を用いる事に依って何方かで同定し得る(図6B)。其れから、マイクロアレイの其の後の連続スキャンが、オルガノイド発生の時間的な画像を捕捉する為の所望の時間インターバルでユーザに依って開始された(図6C図7)。システムを利用して、全マイクロアレイスキャンを明視野及び3つの蛍光チャンネルに於いて15分未満(明視野のみ9分未満)で取得し、数百の個々のオルガノイドのマルチパラメータの表現型的及び形態学的スクリーニングの為の迅速な解決法を提供した。明視野撮像に加えて、システムを用いて高度な蛍光に基づく表現型評価を実施した。此れは、生細胞染色、CRISPR編集、及びアレイ上での生存性アッセイを包含する種々の用途に用いられ得る(図5F)。EpCAMに対するFITCコンジュゲート化抗体に依って染色されたマウス肝臓オルガノイドは細胞膜の詳細な可視化を実証し(図4A図7)、ヘキスト染色された核はzスタック中の細胞カウントを可能化する(図4A)。
【0108】
例4
下流のアッセイ、成長、及びサブクローニング、並びにオミクス用途の為のオルガノイドの単離
マウス膵臓(データは示さない)及びマウス肝臓オルガノイド両方を用いて、開示されるシステム及び方法の有用性を、下流のオルガノイド成長及びサブクローニング、並びにマイクロアレイから単離された個々のオルガノイドからの核酸単離に就いて評価した。アレイから96ウェル収集プレートへの単離後に、下流のアッセイの為にオルガノイドは生存可能な儘であり、希釈マトリゲル成長培地に於いて成長し続けた(図8A)。
【0109】
クローン性のオルガノイド集団を作り出す能力をも又、本開示のシステムの撮像及び単離能力を活用する事に依って実証した。単細胞に由来するオルガノイドを、時間的な撮像に依って立証される通り同定し、96ウェル収集プレートに単離した。アレイ外での5日の成長後に、各「親」オルガノイドを96ウェルプレート上で細胞の小さい断片に酵素的に解離させ、其れから新たなマイクロアレイ上に再播種して、更なる拡大培養又は系譜に基づく表現型の評価の為に数百の第2世代の「子」オルガノイドを拡大した(図8B)。
【0110】
下流の成長、アッセイ、及びサブクローニングの為の単一オルガノイド単離を実施する事に加えて、本開示のシステムを用いて、創薬及び毒性学の一般的に調査されるエンドポイントの核酸単離の為のPCRストリップチューブ又は96ウェルPCRプレートに単一オルガノイドを自動的に分配した。マウス膵臓(データは示さない)及びマウス肝臓オルガノイドをマイクロアレイ上に播種し、時間的なスキャンを実施してオルガノイド発生をモニタリングした。サイズが200から700μmの範囲であるオルガノイドを、RNA精製の為の標準的なPCRストリップチューブ内のリシス緩衝液中に直接的に単離して、RNA品質及び濃度の為のサイズ閾値を決定した。下流のオミクス用途に於ける使用に好適な高品質のRNA(RIN>9.4)が得られ(n=8)、得られたRNAの量はオルガノイドサイズと直接的に相関した(図9)。提示されたデータは、単一オルガノイド用途の上流に於ける個々のオルガノイドの時間的な表現型評価の為の効率的なユーザフレンドリーなワークフローを助けるオールインワンのプラットフォームを提供する為の開示されるシステムの柔軟性及び有用性を実証している。
【0111】
RNA精製及び定量化.サイズが凡そ200μmから700μmの範囲である個々のマウス肝臓オルガノイドを、開示されるシステムを用いて、RNA精製の為に単離した。キアゲンRNeasyプラスマイクロキット(カタログ番号74034、キアゲン(Qiagen)、ヒルデン、ドイツ)を用いた。オルガノイドをマイクロアレイから取り外し、システムのPCRスタイルワンドを用いて25μLのRLTプラス緩衝液を有するPCRストリップチューブに収集した。単離を実施した後に、350μLの最終体積に到達する様に、325μLのRLTプラスを各サンプルに追加した。RNA精製は、製造者のガイドラインに従って、14μLの最終溶出体積で実施した。精製されたRNAは、アジレント2100バイオアナライザ及びRNA6000Picoキット(カタログ番号5067-1513、アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)、サンタクララ、CA)を用いて、標準的なプロトコールを用いて定量した。
【0112】
例5
CRISPR編集されたオルガノイドの生成、並びに其の後のクローン拡大及び機能的スクリーニング
CRISPR編集をヒト成体幹細胞に対して実施して、蛍光レポーターを導入する。遺伝子編集された幹細胞の単細胞懸濁液を例2に記載された方法に従ってマイクロアレイにローディングする。細胞をマイクロアレイ上で培養し、上で例3及び4に記載された通り自動化されたシステムを用いて成長及び表現型的特徴に就いて所望の時間インターバルでモニタリングする。蛍光性のCRISPR編集されたオルガノイドは、開示されるシステムの撮像能力を用いて同定し得る。対象のオルガノイドを、更なる拡大培養の為に自動化されたシステムを用いて96ウェル収集プレートに単離する。アレイ外での5日の成長後に、各オルガノイドを96ウェルプレート上で細胞の小さい断片に酵素的に解離させ、其れから新たなマイクロアレイに再播種して、数百の第2世代のレポーターオルガノイドを拡大する。レポーターオルガノイドを経路活性化、分化、又は薬物若しくは他の分子に対する表現型応答に就いてスクリーニングする。
【0113】
細胞、培地、及び3D培養マトリックス.赤色蛍光蛋白質(RFP)又は緑色蛍光蛋白質(GFP)を発現する編集されたヒト人工多能性幹細胞(iPSC)(カタログ番号IPSC1028、カタログ番号IPSC1030、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich))を、37℃の5%COインキュベータで、mTESRプラス(カタログ番号100-0276、ステムセルテクノロジーズ社(STEMCELL Technologies Inc.))に依って製造者のガイドラインに従って、2D成長及び拡大培養の為に培養及び維持した。iPSC由来のオルガノイドワークフローを実証する為に、3つの市販の培地キットを用いて、編集されたiPSCを腎臓、脈絡叢、及び脳オルガノイドに分化させた(カタログ番号05160、カタログ番号100-0824、及びカタログ番号08570、ステムセルテクノロジーズ社(STEMCELL Technologies Inc.))。クローン性のiPSC由来のオルガノイドを成長させ、其の表現型変化をモニタリングする為に、iPSCを単細胞懸濁液に解離させ、本明細書に於いて上で記載された通りマイクロアレイ上に播種した。希釈マトリゲル培地(0.24mg/mL)は、腎臓、脈絡叢、及び脳オルガノイドを形成する為の製造者推奨の培地を用いて作った(データは示さない)。マイクロアレイに、1つの編集されたiPSC細胞株又はRFP及びGFP陽性細胞両方の混合集団を播種して、単色の又は二重蛍光性のオルガノイドを形成する能力を実証した。分化の為には、培地の組成及び持続時間に就いての製造者のガイドラインに基づいて培地交換を実施した。
【0114】
単一の編集されたiPSCからのクローン性のオルガノイドを生成する能力に加えて、本開示のシステムは、従来のiPSC由来のオルガノイド培養方法に対して固有の利点を提示する。何故なら、其れは、分化プロセスの間の個々のオルガノイドの表現型変化の時間的なモニタリングを可能化するからである。iPSC由来のオルガノイドを生成する為の標準的な技術は、細胞分化及びオルガノイド形成を達成する為には、培地交換に加えて、3D構造を種々の培養プレートフォーマットに動かす事を要求し得る。其れ等はオルガノイド分化をサポートするが、其れ等はオルガノイド形成の間の個々の構造の評価を可能にしない。本開示のシステムを用いて、本発明者らは、同じiPSC懸濁液に由来する単細胞及び細胞の小さい断片から脈絡叢及び腎臓オルガノイドを生成する能力を実証した。数百の単細胞又は単一断片由来の脈絡叢(図12A)及び腎臓(図12B)オルガノイドを所望の時点に於いて撮像して、分化プロセスの間の表現型変化を密接にモニタリングし得る。
【0115】
本明細書に於いて上で記載されたマイクロアレイに播種する為に本開示のシステム及び方法を用いて、本発明者らは、RFP+及びGFP+iPSCを同じマイクロアレイ上で共培養する事に依って二重蛍光性の脈絡叢オルガノイドを形成する能力をも又実証した(図13)。自動化されたシステムを用いて、本発明者らは、単一のRFP+iPSC又は単一のGFP+iPSCを含有するセルラフト、及び1つ又は両方の蛍光レポーターの1つよりも多くのiPSCを含有するセルラフトを同定し得る。一重及び二重蛍光性のオルガノイドの時間的な発生をモニタリング及び表現型キャラクタリゼーションし得、単一オルガノイドを、オミクス及び薬物スクリーニング用途を包含する更なる下流の評価の為に又はクローン拡大の為に単離し得る。
【0116】
例6
化合物誘発毒性スクリーニングの為のヒト組織由来オルガノイドのクローン拡大
肝臓、腎臓、及び肺等の化合物誘発毒性の一般的な部位からの組織特異的な細胞の単細胞懸濁液を、例2に記載された方法に従ってマイクロアレイにローディングする。上で例3及び4に記載された通り自動化されたシステムを用いて、細胞をマイクロアレイ上で培養し、成長及び表現型的特徴に就いて所望の時間インターバルでモニタリングする。自動化されたシステムを用いて、単細胞に由来する対象のオルガノイドを時間的な撮像に依って同定し、96ウェル収集プレートに単離する。アレイ外での5日の成長後に、各「親」オルガノイドを96ウェルプレート上で細胞の小さい断片に酵素的に解離させ、其れから新たなマイクロアレイに再播種して、数百の第2世代の「子」オルガノイドを拡大する。所望のサイズ範囲の第2世代のクローン性のオルガノイドを、自動化されたシステムを用いて、下流の化合物毒性アッセイに於ける評価の為の96ウェルプレートに単離する。クローン性の組織特異的なオルガノイドを、薬物若しくは他の分子に対する毒性に就いて、生存性等の機能的な応答に就いてスクリーニングするか、又は単一オルガノイドトランスクリプトミクスに用いて、毒性の細胞機序を明らかにする。
【0117】
例7
単一オルガノイドを用いる化合物誘発毒性スクリーニングの為のカスタムのオルガノイドアッセイ開発
例6で概説された物に類似のアプローチを用いて、本明細書に於いて上で記載された自動化されたシステムを用いて、オルガノイドサイズ及び形態学並びに蛍光マーカーの包含等のパラメータを包含するが此れ等に限定されない類似の表現型的特徴を有する単一オルガノイドを、再現性ある化合物誘発毒性スクリーニングアッセイの為に培養、分析、及び単離し得る。単一の表現型的に選択されたオルガノイドに依る化合物誘発毒性スクリーニングアッセイを実証する為に、マウス肝臓オルガノイドを例3に記載された通りマイクロアレイ上で成長させた。本開示のシステムに記載されたセルラフト・サイトメトリーソフトウェアを用いて、マウス肝臓オルガノイドの集団をオルガノイド直径に基づいてソーティングした。2つの集団を単離の為に選択した。50μmよりも多大な直径を有するオルガノイドの1つの集団、及び直径が300~500μmの範囲であるオルガノイドのより選択的な集団である。上で記載された集団からのオルガノイドを含有するセルラフトの単離後に、96ウェル収集プレートに0.24mg/mL希釈マトリゲル培地をスパイクして、単離後のオルガノイドの生存性及び成長をサポートした。各集団からの単一オルガノイドを既知の毒性効果を有する化合物に依って処理して、標準的な薬物スクリーニングアッセイを実証した。
【0118】
毒性スクリーニングの為の化合物及び試薬.マウス肝臓オルガノイド(用量当たりn=5)を、0.5%ジメチルスルホキシド(DMSO、カタログ番号D12345、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes))中の古典的な肝毒性物質のアセトアミノフェン(APAP、0.0008~2.5mM、カタログ番号A7085、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich))の5倍の6点用量曲線に依って処理した。毒性応答を測定する為に、CellToxグリーン細胞毒性アッセイ(カタログ番号G8731、プロメガ・コーポレーション(Promega Corporation))を用いて速度論的生存性を72時間測定し、CellTiter-Glo3D細胞生存性アッセイ(カタログ番号G9681、プロメガ・コーポレーション(Promega Corporation))を用いて最終の72時間時点に於いてATP定量化に依って相対的な生存性を決定した。
【0119】
本明細書に於いて上で記載された本開示のシステムを用いて、本発明者らは、確実な再現性あるオルガノイドスクリーニングアッセイを生成する能力を実証した。サイズで選択されなかったオルガノイド(>50μm)の代表的な画像はサイズの大きいばらつきを有するが(図14A)、より限定された直径範囲(300~500μm)で選択されたオルガノイドは、アッセイの間により一貫したサイズを維持する(図14B)。サイズに基づいてオルガノイドを選択する能力は、CellToxグリーン及びCellTiter-Glo等の生存性の読み出しを測定する事に於いて肝要な構成要素である。何故なら、此れ等のアッセイは細胞数に依存的であるからである。選択されていない集団に於けるオルガノイドサイズのばらつきは、両方の生存性の読み出しに於いてレプリケートの用量の大きいばらつきに直接的に反映され、此れはED50又は平均の有効用量の計算を妨害する(図15A)。サイズに基づいてオルガノイドを選択する為にセルラフト・サイトメトリーを用いると、オルガノイドサイズはより一貫し、生存性の読み出しはED50(0.6003mM)を計算する為に用いられ得る。此のアプローチは、多くのマイクロアレイ及び96ウェル収集プレート間に於けるアッセイの一貫性をも又可能化し得る。概要として、本開示のシステムは、不均一性のオルガノイド集団のプールされた読み出しに依拠する従来の方法と比べて固有の利点を提示する。何故なら、アッセイが、サイズ及び他の表現型的特徴に基づいて単一オルガノイドを選択する様にカスタム化され得るからである。此れは、他の方法論を用いては達成不可能であるアッセイ内および間の一貫性を可能化する。
【0120】
例8
抗癌治療薬を評価する為の単独及び共培養スフェロイドの拡大
スフェロイド又は腫瘍細胞凝集塊は、遺伝子操作又は化合物の薬理効果に対する腫瘍細胞応答を研究する為のより生理的に妥当なインビトロモデルを提供し、其れ等を治療薬創薬及び個別化医療の為の価値あるツールにしている。ヒト又は動物腫瘍からの腫瘍細胞の単細胞又は凝集塊懸濁液を、例2に記載された方法に従ってマイクロアレイにローディングする。細胞をマイクロアレイ上で培養し、上で例3及び4に記載された通り自動化されたシステムを用いて成長及び表現型的特徴に就いて所望の時間インターバルでモニタリングする。抗癌治療薬をマイクロアレイに追加し得、スフェロイドサイズ又は生存性等のスフェロイドの表現型評価をアレイ上でモニタリングして、不均一性のスフェロイド集団に対する治療の効力を同定し得る。自動化されたシステムを用いて、対象のスフェロイドを時間的な撮像に依って同定し、例4に記載された通りトランスクリプトミクス等の下流の評価の為に96ウェル収集プレートに単離する。代替的には、本開示のシステムを用いて、マイクロアレイ上で成長したスフェロイドを、本明細書に於いて上で記載された通り、自動化されたセルラフト・サイトメトリーを用いて評価し、治療薬薬剤の下流のアッセイの為の96ウェル収集プレートに単離し得る。
【0121】
特定の実施形態が本明細書に於いて例解及び記載されたが、当業者には、同じ目的を達成する様に計算されている何れかのアレンジが、示された特定の実施形態に代用され得るという事と、本発明が他の環境に於ける他の用途を有するという事とは分かる。本願は本発明の何れかの適合又は変形をカバーする事を意図する。次の請求項は、本発明の範囲を本明細書に記載される特定の実施形態に限定する事を決して意図するものではない。
【符号の説明】
【0122】
100 システム
102 コンピュータシステム
104 装置アセンブリ
110 アダプタープレート
112 マイクロアレイ
114 収集プレート
130 セルラフト
140 カメラ
148 モータ駆動のXYステージ
152 顕微鏡対物
154 取り外し針
162 マグネティックワンド
174 ウインドウ
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
【国際調査報告】