(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】アデノシンデアミナーゼの細胞表面発現を有するT細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240829BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/73 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240829BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240829BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240829BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240829BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240829BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/55
C12N15/12
C07K14/73
C07K14/725
C07K19/00
C12N5/10
C07K14/705
C07K16/28
C12N15/13
A61K35/17
A61P43/00 105
A61P37/02
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/04
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513217
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022075584
(87)【国際公開番号】W WO2023034742
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ドロタ ダニュータ クライス
(72)【発明者】
【氏名】クリスタル エル.マッコール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB02
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA31
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB09
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZB31
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087DA31
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB09
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA50
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA89
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、概して、CAR T細胞の適応性及び機能をロバストに改善するための組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示は、アデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーすることができる新規なキメラポリペプチド、該キメラポリペプチドをコードする核酸、該キメラポリペプチド又は該キメラポリペプチドをコードする核酸を含む操作T細胞に関する。操作T細胞を生成する方法、操作T細胞を投与する方法、及び関連する健康上の状態の個体を治療する方法も本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシンデアミナーゼ活性を有する第1のポリペプチドモジュールを含む第1のアミノ酸配列と、
前記アデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーすることができる第2のポリペプチドモジュールを含む第2のアミノ酸配列と、
を含む、キメラポリペプチド。
【請求項2】
前記第1のポリペプチドモジュールが、前記第2のポリペプチドモジュールに作動可能に連結されている、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
前記第1のポリペプチドモジュールが、ヒトアデノシンデアミナーゼ活性を有する、請求項1又は2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
前記ヒトアデノシンデアミナーゼ活性が、ADA1、ADA2、又はこれらのいずれかの機能的変異体の活性である、請求項3に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
前記第1のポリペプチドモジュールが、配列番号7又は配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
前記第2のポリペプチドモジュールが、ポリペプチド膜貫通ドメインを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチド膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD28、CD80、ICOS、CTLA4、PD1、PD-L1、BTLA、HVEM,CD27、4-1BB、4-1BBL、OX40、OX40L、DR3、GITR、CD30、SLAM、CD2、2B4、TIM1、TIM2、TIM3、TIGIT、CD226、CD160、LAG3、LAIR1、B7-1、B7-H1、及びB7-H膜貫通ドメインに由来する、請求項6に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチド膜貫通ドメインが、CD8膜貫通ドメイン又はその機能的変異体である、請求項7に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
前記CD8膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
増強されたエフェクター機能を有する操作T細胞を生成するための方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド、又は前記キメラポリペプチドをコードする核酸をT細胞に導入することを含む、方法。
【請求項11】
前記導入されたキメラポリペプチドが、前記キメラポリペプチドを含まない基準T細胞と比較して、前記操作T細胞におけるアデノシンの細胞内レベルの低下をもたらす、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記導入されたキメラポリペプチドが、前記操作T細胞の増強されたエフェクター機能をもたらす、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記T細胞に少なくとも1つの組換え抗原特異的受容体を導入することを更に含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの組換え抗原特異的受容体が、操作T細胞受容体(TCR)及び/又は操作キメラ抗原受容体(CAR)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか一項に記載の方法によって産生される、操作T細胞。
【請求項16】
キメラポリペプチドを含む操作T細胞であって
アデノシンデアミナーゼ活性を有する第1のポリペプチドモジュールを含む第1のアミノ酸配列と、
前記アデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーすることができる第2のポリペプチドモジュールを含む第2のアミノ酸配列と、
を含む、操作T細胞。
【請求項17】
前記T細胞が、CD8+T細胞傷害性リンパ球細胞又はCD4+Tヘルパーリンパ球細胞である、請求項15又は16に記載の操作T細胞。
【請求項18】
前記CD8+T細胞傷害性リンパ球細胞が、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞、エフェクターCD8+T細胞、CD8+幹メモリーT細胞、バルクCD8+T細胞からなる群から選択される、請求項17に記載の操作T細胞。
【請求項19】
前記CD4+Tヘルパーリンパ球細胞が、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞、エフェクターCD4+T細胞、CD4+幹メモリーT細胞、及びバルクCD4+T細胞からなる群から選択される、請求項17に記載の操作T細胞。
【請求項20】
前記T細胞が、疲弊したT細胞又は疲弊していないT細胞である、請求項15~19のいずれか一項に記載の操作T細胞。
【請求項21】
前記T細胞が、対象から得られた試料の白血球アフェレーシスによって得られる、請求項15~20のいずれか一項に記載の操作T細胞。
【請求項22】
請求項15~20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの操作T細胞及び培養培地を含む、細胞培養物。
【請求項23】
請求項15~21のいずれか一項に記載の操作T細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項24】
健康上の状態の予防及び/又は治療を必要とする対象において、前記健康上の状態を予防及び/又は治療するための方法であって、
(a)請求項15~21のいずれか一項に記載の少なくとも1つの操作T細胞;及び/又は
(b)請求項23に記載の医薬組成物
を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記健康上の状態が、増殖性疾患、自己免疫疾患、又は慢性感染症である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記増殖性疾患が、癌である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、哺乳動物対象である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項28】
前記哺乳動物対象が、ヒト対象である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記操作T細胞が、前記対象に対して自己由来である、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記操作T細胞が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)又は末梢血単核細胞(PBMC)から得られる、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記投与された組成物が、前記対象におけるアデノシン媒介性免疫抑制を阻害する、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記投与された組成物が、前記操作T細胞の増強されたエフェクター機能を付与する、請求項24~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記操作T細胞の前記増強されたエフェクター機能が、成長速度(増殖)、死滅率、死滅率の種類、標的細胞阻害(細胞傷害性)、分化クラスター変化、マクロファージ活性化、B細胞活性化、サイトカイン産生、in vivo持続性、及び予備呼吸能の向上からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記増強されたエフェクター機能が、1つ以上のサイトカインの産生の増加を含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上のサイトカインが、例えばインターフェロンガンマ(INFγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、及び/又はインターロイキン-2(IL-2)を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、個別に(単剤療法)、又は第2の療法と組み合わせて前記対象に投与され、前記第2の療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、又は手術からなる群から選択される、請求項24~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
状態の予防及び/又は治療を必要とする対象において、前記状態を予防及び/又は治療するためのキットであって
(a)請求項1~9のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド;
(b)前記(a)のキメラポリペプチドをコードする核酸;
(c)請求項15~21のいずれか一項に記載の少なくとも1つの操作T細胞;及び/又は
(d)請求項23に記載の医薬組成物
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年8月30日に出願された米国仮特許出願第63/238,756号の優先権を主張するものであり、その開示は、任意の図面を含め、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
本出願は、配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。「078430-535001WO_SequenceListing_ST26.xml」という名称の添付の配列表テキストファイルは、2022年8月25日に作成されたものであり、23KBである。
【背景技術】
【0003】
遺伝子改変された免疫細胞、例えば、T細胞の養子移入は、様々な悪性腫瘍に対する強力な療法として浮上してきた。例えば、養子T細胞療法の現在の様式には、キメラ抗原受容体(CAR)及び高親和性T細胞受容体(TCR)などの癌抗原に特異的な受容体を発現するように改変された細胞が含まれる。癌抗原に曝露されると、改変されたT細胞は、細胞溶解活性を示し、かつ/又はシグナルを送って癌に対する免疫応答を開始する。
【0004】
養子T細胞療法では、改変されたT細胞は、概して、in vitro又はex vivoで同族抗原に曝露することによって活性化され、個体に投与され、そこで増殖して抗癌活性を有する。B細胞悪性腫瘍上のCD19分子に特異的なCAR改変T細胞(CAR-T細胞)を用いた最近の臨床試験では、進行癌患者の一部で顕著な疾患の退縮が実証されている。しかし、この療法を他の種類の癌、特に固形腫瘍に拡張するには、いくつかの課題がある。例えば、長期にわたる抗原認識及び炎症性シグナルへの曝露による過剰刺激は、T細胞にエフェクター機能を失わせることがあり、この現象は「T細胞疲弊」と呼ばれる。更に、腫瘍微小環境は、養子細胞療法の有効性を低減させ得る多くの耐性及び免疫抑制のメカニズムを誘発する。例えば、アデノシンの濃度は、CAR T細胞が腫瘍微小環境において直面する必要がある免疫抑制機構の1つである。
【0005】
したがって、養子細胞療法のための改善された治療用細胞を生成するための新しい組成物及び戦略が必要とされる。本開示の態様及び実施形態は、これらの必要性に対処し、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で提供されるのは、とりわけ様々な健康上の状態を予防及び/又は治療するための、新規の方法及び組成物である。特に、本明細書に記載されるのは、アデノシンデアミナーゼ(ADA)の細胞表面発現の上昇したレベルを発現するように操作された免疫細胞、例えば、T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫抑制性アデノシンに対する操作免疫細胞、例えば、操作T細胞は、患者におけるT細胞の増大した抵抗性及び/又は増強されたエフェクター機能、例えば増強された有効性及び持続性を示す。増強されたエフェクター機能を有する操作免疫細胞の集団を生成するための方法、及び増強されたエフェクター機能を有するこのような操作免疫細胞の集団を含有する医薬組成物、並びに健康上の状態の予防及び/又は治療を必要とする対象において、その健康上の状態を予防及び/又は治療するための方法及びキットも提供される。
【0007】
一態様において、本明細書で提供されるのは、(a)アデノシンデアミナーゼ活性を有する第1のポリペプチドモジュールを含む第1のアミノ酸配列と、(b)アデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーすることができる第2のポリペプチドモジュールを含む第2のアミノ酸配列とを含む、キメラポリペプチドである。
【0008】
開示されるキメラポリペプチドの非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、第2のポリペプチドモジュールに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、ヒトアデノシンデアミナーゼ活性を有する。いくつかの実施形態において、ヒトアデノシンデアミナーゼ活性は、ADA1、ADA2、又はこれらのいずれかの機能的変異体の活性である。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号7又は配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドモジュールは、ポリペプチド膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチド膜貫通ドメインは、CD8、CD4、CD28、CD80、ICOS、CTLA4、PD1、PD-L1、BTLA、HVEM,CD27、4-1BB、4-1BBL、OX40、OX40L、DR3、GITR、CD30、SLAM、CD2、2B4、TIM1、TIM2、TIM3、TIGIT、CD226、CD160、LAG3、LAIR1、B7-1、B7-H1、及びB7-H膜貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態において、ポリペプチド膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメイン又はその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0009】
一態様において、本明細書で提供されるのは、増強されたエフェクター機能を有する操作T細胞を生成するための方法であって、本明細書に記載のキメラポリペプチド又は該キメラポリペプチドをコードする核酸をT細胞に導入することを含む、方法である。
【0010】
操作T細胞を生成するための開示される方法の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、導入されたキメラポリペプチドは、キメラポリペプチドを含まない基準T細胞と比較して、操作T細胞におけるアデノシンの細胞内レベルの低下をもたらす。いくつかの実施形態において、導入されたキメラポリペプチドは、対照T細胞、例えば、そのようなキメラポリペプチドを含むように操作されていないT細胞と比較して、操作T細胞の増強されたエフェクター機能をもたらす。いくつかの実施形態において、本方法は、T細胞に少なくとも1つの組換え抗原特異的受容体を導入することを更に含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの組換え抗原特異的受容体は、操作T細胞受容体(TCR)及び/又は操作キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0011】
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、(a)アデノシンデアミナーゼ活性を有する第1のポリペプチドモジュールと、(b)アデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーすることができる第2のポリペプチドモジュールとを含むキメラポリペプチドを含む、操作T細胞に関する。関連する態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載される方法によって産生される、操作T細胞に関する。
【0012】
本明細書に記載される操作T細胞の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD8+T細胞傷害性リンパ球細胞又はCD4+Tヘルパーリンパ球細胞である。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞傷害性リンパ球細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞、エフェクターCD8+T細胞、CD8+幹メモリーT細胞、バルクCD8+T細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、CD4+Tヘルパーリンパ球細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞、エフェクターCD4+T細胞、CD4+幹メモリーT細胞、及びバルクCD4+T細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、T細胞は、疲弊したT細胞又は疲弊していないT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、対象から得られた試料の白血球アフェレーシスによって得られる。
【0013】
関連する態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本開示の少なくとも1つの操作T細胞及び培養培地を含む、細胞培養物に関する。
【0014】
一態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示される操作T細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物である。
【0015】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、健康上の状態の予防及び/又は治療を必要とする対象において、その健康上の状態を予防及び/又は治療するための方法であって、(a)本明細書に記載される少なくとも1つの操作T細胞;及び/又は(b)本明細書に記載される医薬組成物を含む組成物を対象に投与することを含む、方法である。
【0016】
本明細書に記載される治療方法の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、健康上の状態は、増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、又は慢性感染症である。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物対象である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態において、操作T細胞は、対象に対して自己由来である。いくつかの実施形態において、操作T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)又は末梢血単核細胞(PBMC)から得られる。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象におけるアデノシン媒介性免疫抑制を阻害する。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、同様の条件下で対照T細胞、例えば、そのような組成物を投与されていないT細胞と比較して、操作T細胞の増強されたエフェクター機能を付与する。いくつかの実施形態において、操作T細胞の増強されたエフェクター機能は、成長速度(増殖)、死滅率、死滅率の種類、標的細胞阻害(細胞傷害性)、分化クラスター変化、マクロファージ活性化、B細胞活性化、サイトカイン産生、in vivo持続性、及び予備呼吸能の向上からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、増強されたエフェクター機能は、1つ以上のサイトカイン(例えば、インターフェロンガンマ(INFγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、及びインターロイキン-2(IL-2))の産生の増加を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、個別に(単剤療法)、又は第2の療法と組み合わせて対象に投与され、該第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、又は手術からなる群から選択される。
【0017】
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、状態の予防及び/又は治療を必要とする対象において、その状態を予防及び/又は治療するためのキットであって、(a)本明細書に記載されるキメラポリペプチド;(b)本明細書に記載されるキメラポリペプチドをコードする核酸;(c)本明細書に記載される少なくとも1つの操作T細胞;及び(d)本明細書に記載される医薬組成物、のうちの1つ以上を含む、キットに関する。
【0018】
前述の概要は、例示的なものにすぎず、決して限定することを意図するものではない。本明細書に記載される例示的な実施形態及び特徴に加えて、本開示の更なる態様、実施形態、目的及び特徴は、図面及び発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1A~
図1Eは、CD39発現が、抑制能力を示す疲弊したCART T細胞の高度に機能不全の集団をマークすることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図1Aは、CD19.28z及び疲弊したHA CAR T細胞上の表面CD39発現の動態を示す。代表的なドナーはn=3である。
【
図1B】
図1A~
図1Eは、CD39発現が、抑制能力を示す疲弊したCART T細胞の高度に機能不全の集団をマークすることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図1Bは、T細胞活性化後6日目及び14日目のNalm6-GD2腫瘍細胞株で刺激したCD19.28z及びHA CAR T細胞によるIL-2及びIFNγ分泌を示す。データは、三連のウェルからの平均±標準誤差である。代表的なドナーはn=3である。
【
図1C】
図1A~
図1Eは、CD39発現が、抑制能力を示す疲弊したCART T細胞の高度に機能不全の集団をマークすることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図1Cは、Luminexによって検出された、Nalm6-GD2+細胞による刺激の24時間後にCD39+とCD39-CD8 HA CAR T細胞によって分泌されたサイトカインを示す(pg/ml)。データは、n=3ドナーの平均である。
【
図1D】
図1A~
図1Eは、CD39発現が、抑制能力を示す疲弊したCART T細胞の高度に機能不全の集団をマークすることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図1Dは、活性化後10日目のHA CAR T細胞のCyTOF分析を示す。ヒートマップは、CD4又はCD8のCD39-及びCD39+における示されたマーカーの発現の中央値を表す。ヒートマップは、各列の総CD8値に対する所与のマーカーのArcsinh比の中央値を用いて作成した。代表的なドナーが示される(n=3ドナー)。
【
図1E】
図1A~
図1Eは、CD39発現が、抑制能力を示す疲弊したCART T細胞の高度に機能不全の集団をマークすることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図1Eは、CD8+CD39+とCD8+CD39-において差次的に発現した遺伝子のランク付けされたリストからの示されたシグネチャーのGSEAを示す。
図1Eは、CD8+CD39+とCD8+CD39-において差次的に発現した遺伝子のランク付けされたリストからの示されたシグネチャーのGSEAを示す。
【
図1F】CD19BB CAR T細胞を、Nalm6腫瘍株単独で、又は全HA若しくはCD8精製HA CAR T細胞の存在下で活性化したことを示す。CD19BB CAR T細胞によるIL-2分泌を刺激の24時間後に評価した。データは、三連のウェルからの平均±標準誤差である。n=2の代表的な実験を示す。
【
図2A】
図2A~
図2Cは、HA.28z(HA)CAR T細胞が、CD19.28z CAR T細胞と比較して、疲弊マーカーのより高い発現及びサイトカイン分泌の減少を示すことを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図2Aは、非形質導入モック(灰色)、CD19.28z(青色)、又はHA(赤色)CAR T細胞におけるT細胞活性化後14日目の疲弊マーカーの発現を示し、(B)CD19+GD2+Nalm6-GD2白血病細胞との24時間の共培養後のIL-2(左)及びIFNγ(右)の放出を示す。データは、3~4人のドナーの三連のウェルからの平均±標準誤差である。
【
図2B】
図2A~
図2Cは、HA.28z(HA)CAR T細胞が、CD19.28z CAR T細胞と比較して、疲弊マーカーのより高い発現及びサイトカイン分泌の減少を示すことを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図2Bは、CD19.28z及びHA CAR T細胞における活性化時の疲弊マーカーの発現の動態を示す等高線プロットを示す。
【
図2C】
図2A~
図2Cは、HA.28z(HA)CAR T細胞が、CD19.28z CAR T細胞と比較して、疲弊マーカーのより高い発現及びサイトカイン分泌の減少を示すことを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図2Cは、活性化後の示された時点でのCD19.28z及びHA CAR T細胞によって発現される疲弊マーカーのMFI及び頻度を示す。C.活性化後の示された時点でのCD19.28z及びHA CAR T細胞によって発現される疲弊マーカーのMFI及び頻度。
【
図3A】
図3A~
図3Cは、CD39+CD4 HA CAR T細胞を特徴付けるために実施した実験の結果をまとめたものである。
図3Aは、HA CAR T細胞のCD4+とCD8+コンパートメントにおけるCD39+細胞の百分率(%)を示す。n=独立した実験からの11ドナー。1人の代表的なドナーの等高線プロットを示す。
【
図3B】
図3A~
図3Cは、CD39+CD4 HA CAR T細胞を特徴付けるために実施した実験の結果をまとめたものである。
図3Bは、Luminexによって検出された、Nalm6-GD2+細胞による刺激の24時間後にCD39+とCD39-CD4 HA CAR T細胞とによって分泌されたサイトカインを示す。データは3人のドナーの平均である。
【
図3C】
図3A~
図3Cは、CD39+CD4 HA CAR T細胞を特徴付けるために実施した実験の結果をまとめたものである。
図3Cは、活性化後10日目のCD4 HA CAR T細胞のCyTOF分析を示す。ヒートマップは、CD4又はCD8のCD39-及びCD39+における示されたマーカーの発現の中央値を表す。ヒートマップは、各列の総CD4又は総CD8値に対する所与のマーカーのArcsinh比の中央値を用いて作成した。代表的なドナーを示す(n=3)。
【
図4A】
図4A及び
図4Bは、CD39+とCD39-のCD8 HA CAR T細胞とCD4 HA CAR T細胞との間の転写差を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図4Aは、CD39-T細胞と比較したCD39+T細胞におけるRNA発現レベルを表すボルケーノプロットを示す。有意差のある遺伝子をDESeq2(Wald検定)によって同定し、赤色で示す(調整P値<0.1)。
【
図4B】
図4A及び
図4Bは、CD39+とCD39-のCD8 HA CAR T細胞とCD4 HA CAR T細胞との間の転写差を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図4Bは、CD4+CD39-T細胞と比較してCD4+CD39+T細胞において有意に上方制御された95個の遺伝子と、CD8+CD39-T細胞と比較してCD8+CD39+T細胞において有意に上方制御された57個の遺伝子との間の重複を表すベン図を示す。
【
図5A】
図5A~
図5Cは、CD39-からCD39+CAR T細胞への変換がCARのトニックシグナル伝達に依存し、TGFβを必要としないことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図5Aは、活性化後10日目のCAR+とCAR-HA T細胞におけるCD39+の百分率(%)を示す。N=独立した実験からの12ドナー。
【
図5B】
図5A~
図5Cは、CD39-からCD39+CAR T細胞への変換がCARのトニックシグナル伝達に依存し、TGFβを必要としないことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図5Bは、活性化後16日目に、バルクHA又は精製CD39-HA CAR T細胞集団を、1μMのダサチニブ又は0.001mg/mlの中和抗TGFβの存在下で培養したことを示す。処理の7日後、CD39発現を評価した。データは、独立した実験からの3~4人のドナーの平均±標準誤差である。P値は対応のない両側t検定によって決定した。
【
図5C】
図5A~
図5Cは、CD39-からCD39+CAR T細胞への変換がCARのトニックシグナル伝達に依存し、TGFβを必要としないことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図5Cは、活性化後16日目に、バルクHA又は精製CD39-HA CAR T細胞集団を、1μMのダサチニブ又は0.001mg/mlの中和抗TGFβの存在下で培養したことを示す。処理の7日後、CD39発現を評価した。代表的なドナーのドットプロットを示す。データは、独立した実験からの3~4人のドナーの平均±標準誤差である。P値は対応のない両側t検定によって決定した。
【
図6A】
図6A~
図6Eは、疲弊したCAR T細胞がCD39及びCD73発現を通じてATPを免疫抑制性アデノシンに変換することができること、又は疲弊したHA CAR T細胞がアデノシン産生をもたらす酵素活性なCD39及びCD73の高発現を示すことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図6Aは、プリン作動性経路の概略図である。
【
図6B】
図6A~
図6Eは、疲弊したCAR T細胞がCD39及びCD73発現を通じてATPを免疫抑制性アデノシンに変換することができること、又は疲弊したHA CAR T細胞がアデノシン産生をもたらす酵素活性なCD39及びCD73の高発現を示すことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図6Bは、活性化後14日目のHA CAR T細胞によるCD39及びCD73の発現を示す代表的な等高線プロットを示す(左)。独立した実験からの4人のドナーにおけるCD4+とCD8+HA CAR T細胞における二重陽性CD39+CD73+T細胞の百分率(%)を示す(右)。
【
図6C】
図6A~
図6Eは、疲弊したCAR T細胞がCD39及びCD73発現を通じてATPを免疫抑制性アデノシンに変換することができること、又は疲弊したHA CAR T細胞がアデノシン産生をもたらす酵素活性なCD39及びCD73の高発現を示すことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図6Cは、抗CD73阻害抗体とプレインキュベートしたCAR T細胞又はそうでないCAR T細胞によるeATP加水分解百分率(%)(左:n=4ドナーの代表データ)と、CAR T細胞の表面上に発現したエクトヌクレオチダーゼによって産生されたeADOの百分率(%)(右:n=3ドナーの代表データ)を示す。
【
図6D】
図6A~
図6Eは、疲弊したCAR T細胞がCD39及びCD73発現を通じてATPを免疫抑制性アデノシンに変換することができること、又は疲弊したHA CAR T細胞がアデノシン産生をもたらす酵素活性なCD39及びCD73の高発現を示すことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図6Dは、活性化後16日目における、NECA又は40μMのa2aR阻害剤の存在下又は非存在下、Nalm6GD2細胞株で刺激されたHA及びCD19 CAR T細胞によるIL-2分泌を示す。データは、三連のウェルからの平均±標準誤差である。n=2ドナーの代表的なデータ。
【
図6E】
図6A~
図6Eは、疲弊したCAR T細胞がCD39及びCD73発現を通じてATPを免疫抑制性アデノシンに変換することができること、又は疲弊したHA CAR T細胞がアデノシン産生をもたらす酵素活性なCD39及びCD73の高発現を示すことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図6Eは、CD19bb又はCD19bb A2aRノックアウトCAR T細胞を、Nalm6腫瘍株単独で、又は全HA、又はCD39ノックアウトを有するHAの存在下で活性化したことを示す。CD19bb CAR T細胞によるIL-2分泌を刺激の24時間後に評価した。
【
図7A】
図7A~
図7Dは、疲弊したCAR T細胞及び疲弊していないCAR T細胞の両方のサイトカイン抑制が、NECAによって用量応答的に媒介され得ることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図7Aは、異なる濃度のNECAの存在下、40μMのA2aR阻害剤CPI444を用いて又は用いずに、10日目又は16日目にNalm6-GD2細胞株で刺激したHA CAR T細胞によるIL-2及びIFNγ分泌を示す。データは、三連のウェルからの平均±標準誤差である。3つの独立した実験の代表的なドナー。
【
図7B】
図7A~
図7Dは、疲弊したCAR T細胞及び疲弊していないCAR T細胞の両方のサイトカイン抑制が、NECAによって用量応答的に媒介され得ることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図7Bは、異なる濃度のNECAの存在下、40μMのA2aR阻害剤CPI444を用いて又は用いずに、10日目又は16日目にNalm6-GD2細胞株で刺激したCD19 CAR T細胞によるIL-2及びIFNγ分泌を示す。データは、三連のウェルからの平均±標準誤差である。3つの独立した実験の代表的なドナー。
【
図7C】
図7A~
図7Dは、疲弊したCAR T細胞及び疲弊していないCAR T細胞の両方のサイトカイン抑制が、NECAによって用量応答的に媒介され得ることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図7Cは、NECA及びA2aR競合阻害剤の存在下又は非存在下でのHA CAR T細胞の刺激から4時間後のNFkB-GFP活性化レベルを示す。データは、三連のウェルからの平均±標準誤差である。
【
図7D】
図7A~
図7Dは、疲弊したCAR T細胞及び疲弊していないCAR T細胞の両方のサイトカイン抑制が、NECAによって用量応答的に媒介され得ることを説明するために実施された実験の結果をまとめたものである。
図7Dは、モック又はCAR T細胞を2時間インキュベートした後の細胞によるアデノシン分泌を示す。2回の実験の代表値である。
【
図8A】
図8A~
図8Dは、ATP代謝が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能に影響を及ぼすことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図8Aは、遺伝子改変されたHA CAR T細胞の拡大された表現型決定を示す。各ドナー(n=4)からの約5,000又は最大数のCD8+HA CAR T細胞を、UMPASを使用して26個のマーカーのそれらの組み合わせ発現ごとに組織化した。ドナーを欠失遺伝子によってマッチし、93,280個の無作為にサンプリングされた全事象に連結した。
【
図8B】
図8A~
図8Dは、ATP代謝が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能に影響を及ぼすことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図8Bは、FlowSOMアルゴリズムを使用して定義された表現型クラスターを示す。
【
図8C】
図8A~
図8Dは、ATP代謝が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能に影響を及ぼすことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図8Cは、刺激の24時間後に100μMのATPの存在下での遺伝子改変された及びイディオタイプ刺激されたHA CAR T細胞によるIL-2及びIFNγ分泌を示す。
【
図8D】
図8A~
図8Dは、ATP代謝が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能に影響を及ぼすことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図8Dは、CAR-T細胞の細胞傷害性を評価するための、IncuCyteにおける、それぞれNalm6-GD2(1:8 E:T)、mg63.3(1:5 E:T)、又は143b(1:1 E:T)腫瘍株との共培養を示す。腫瘍GFP蛍光強度を最初の時点に対して正規化した(二連又は三連ウェル)。n=2~3の代表的なドナーを示す。
【
図9A】
図9A~
図9Dは、プリン作動性経路の操作が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能に影響を及ぼすことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図9Aは、CD8 CAR T細胞に対して手動でゲーティングしたFlowSOM分析に使用された26個のマーカーのArhin中央値発現を表すヒートマップを示す。4人のドナーからの試料を、OMIQプラットフォームを用いて連結した。
【
図9B】
図9A~
図9Dは、プリン作動性経路の操作が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能に影響を及ぼすことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図9Bは、4人のドナーからのCD4 HA CAR T細胞(試料当たり5,000事象又は最大)を、UMPASを使用して26個のマーカーのそれらの組み合わせ発現ごとに組織化し、FlowSOMによって定義されたクラスターIDごとに着色したものを示す。ドナーを欠失又は過剰発現遺伝子によってマッチし、93,280個の無作為にサンプリングされた全事象に連結した。
【
図9C】
図9A~
図9Dは、プリン作動性経路の操作が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能に影響を及ぼすことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図9Cは、固形腫瘍微小環境を再現するために200μMのATPの存在下、Nalm6-GD2で刺激したHA CAR T細胞によるIL-2及びIFNγ分泌を示す。
【
図9D】
図9A~
図9Dは、プリン作動性経路の操作が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能に影響を及ぼすことを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図9Dは、様々な腫瘍株上のGD2抗原の発現レベルを表すヒストグラムを示す。
【
図10A】
図10A~
図10Hは、アデノシンデアミナーゼADA1の過剰発現が疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞機能を改善することを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図10Aは、プリン作動性経路におけるADA1の役割(上)及びADA1構築物構造(下)の概略図である。
【
図10B】
図10A~
図10Hは、アデノシンデアミナーゼADA1の過剰発現が疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞機能を改善することを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図10Bは、活性化後14日目の遺伝子改変されたHA CAR T細胞の拡大された表現型決定を示す。各ドナー(n=4)からの5,000又は最大数のCD8+HA CAR T細胞を、UMPASを使用して26個のマーカーのそれらの組み合わせ発現ごとに組織化した。ドナーを欠失又は過剰発現遺伝子によってマッチし、93,280個の無作為にサンプリングされた全事象に連結した。バイオリンプロットは条件ごとにFlowSOMを使用して定義された集団クラスターの頻度を示す。
【
図10C】
図10A~
図10Hは、アデノシンデアミナーゼADA1の過剰発現が疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞機能を改善することを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図10Cは、CRISPRノックアウト実験からの細胞(KO)又はADA過剰発現(O/E)HA CAR T細胞において活性化後14日目に評価された発現プロファイルの各々についての第1主成分対第2主成分のプロットを示す。
【
図10D】
図10A~
図10Hは、アデノシンデアミナーゼADA1の過剰発現が疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞機能を改善することを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図10Dは、ADA O/E HA CAR T細胞と比較した対照HA T細胞におけるRNA発現レベルを表すボルケーノプロットを示す。有意差のある遺伝子をDESeq2(Wald検定)によって同定した(調整P値<0.01)。
【
図10E】
図10A~
図10Hは、アデノシンデアミナーゼADA1の過剰発現が疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞機能を改善することを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図10Eは、AAVS1とADA過剰発現HA CAR T細胞から同定されたDEGを示すヒートマップである。
【
図10F】
図10A~
図10Hは、アデノシンデアミナーゼADA1の過剰発現が疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞機能を改善することを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図10Fは、活性化後11日目にSeahorseによって測定されたHA及びADA O/E CAR T細胞についてのO2消費速度(OCR)及び細胞外酸性化速度(ECAR)を示す。棒グラフは、予備呼吸能(SRC)及び基礎OCR/ECAR比の定量的データを示す。代表的なプロットを示す(n=2)。
【
図10G】
図10A~
図10Hは、アデノシンデアミナーゼADA1の過剰発現が疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞機能を改善することを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図10Gは、活性化後10日目のFoxp3+CD25+CD127-CD8 HA及びHA ADA O/E CAR T細胞の頻度を示す。
【
図10H】
図10A~
図10Hは、アデノシンデアミナーゼADA1の過剰発現が疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞機能を改善することを説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図10Hは、Nalm6-GD2又はCHLA25.5腫瘍株での、1:8 E:T比での細胞傷害性機能、24時間の刺激後のIL-2分泌、及び刺激後72時間の増殖指数を示す。データは、二連又は三連のウェルからの平均±標準誤差である。代表的なグラフを示す(n=2~3ドナー)。
【
図11A】
図11A~
図11Gは、異なる腫瘍株上のCD39及びCD73の発現、並びにCAR T細胞表現型、トランスクリプトーム、及び機能に対するADAの過剰発現の効果を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図11Aは、様々な腫瘍細胞株によるCD39及びCD73表面発現を示す。
【
図11B】
図11A~
図11Gは、異なる腫瘍株上のCD39及びCD73の発現、並びにCAR T細胞表現型、トランスクリプトーム、及び機能に対するADAの過剰発現の効果を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図11Bは、ADA-Tag表面発現及びCAR発現を示す。
【
図11C】
図11A~
図11Gは、異なる腫瘍株上のCD39及びCD73の発現、並びにCAR T細胞表現型、トランスクリプトーム、及び機能に対するADAの過剰発現の効果を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図11Cは、200μMのeATPの存在下又は非存在下でNalm6-GD2+白血病細胞と共培養したHA CAR T細胞の24時間後のCD69の発現を示す。データは、三連のウェルからの平均±標準誤差である。
【
図11D】
図11A~
図11Gは、異なる腫瘍株上のCD39及びCD73の発現、並びにCAR T細胞表現型、トランスクリプトーム、及び機能に対するADAの過剰発現の効果を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図11Dは、活性化後14日目にFlowSOMを使用して分析したCD4+HA及びHA ADA O/E CAR T細胞における示された集団の表現型及び頻度を示す。
【
図11E】
図11A~
図11Gは、異なる腫瘍株上のCD39及びCD73の発現、並びにCAR T細胞表現型、トランスクリプトーム、及び機能に対するADAの過剰発現の効果を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図11Eは、活性化後14日目のHA ADA O/EとHA CAR T細胞のGSEA分析を示す。
【
図11F】
図11A~
図11Gは、異なる腫瘍株上のCD39及びCD73の発現、並びにCAR T細胞表現型、トランスクリプトーム、及び機能に対するADAの過剰発現の効果を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図11Fは、活性化後14日目のNalm6腫瘍株での、1:8 E:T比での殺傷Incucyteアッセイ、刺激の24時間後のIL-2分泌、及び刺激後72時間の増殖指数を示す。
【
図11G】
図11A~
図11Gは、異なる腫瘍株上のCD39及びCD73の発現、並びにCAR T細胞表現型、トランスクリプトーム、及び機能に対するADAの過剰発現の効果を説明するために実施した実験の結果をまとめたものである。
図11Gは、活性化後14日目のNalm6腫瘍株での、1:8 E:T比での殺傷Incucyteアッセイ、刺激の24時間後のIL-2分泌、及び刺激後72時間の増殖指数を示す。
【
図12A】ADA1及びADA2を発現するための2つの例示的なプラスミド設計を示す。SS:シグナル伝達ドメイン(リーダー配列);CD8-TM:CD8膜貫通配列;tEGFR:表面選択マーカー(切断型EGFR様タンパク質)。
【
図12B】2つのヒトADAアイソザイムの各々の過剰発現が、HA CAR T細胞による腫瘍殺傷の増加をもたらしたことを実証するために実施した実験の結果を概略的にまとめたものである。
【
図12C】膜結合ADA1又はADA2を発現する疲弊していないCAR T細胞が、より高レベルのIL-2及びIFNγを分泌したことを実証するために実施した実験の結果を概略的にまとめたものである。
【
図12D】ADA1-TM又はADA2-TMを発現するCAR T細胞が、対照群と比較してより多くのIL-2及びIFNγを産生し、この増加がアデノシンデアミナーゼ阻害剤EHNAの存在下において抑止されたことを実証するために実施した実験の結果を概略的にまとめたものである。HA CAR T細胞を、活性化後15日目に、10uMのEHNA阻害剤の存在下又は非存在下、Nalm6-GD2腫瘍株で刺激した。IL-2及びIFNγ分泌を、ELISAを使用して評価した。1人のドナーを示す。
【
図12E】143b固形腫瘍モデルを使用することによって膜貫通結合アデノシンデアミナーゼの抗腫瘍効力を試験するために実施した実験の結果を概略的にまとめたものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、概して、とりわけ様々な健康上の状態を予防及び/又は治療するための方法及び組成物に関する。特に、本明細書に記載されるのは、CAR T細胞のエフェクター機能を向上させるためのアデノシンデアミナーゼ活性を有する、キメラポリペプチドである。増強されたエフェクター機能を有する操作免疫細胞を生成するための方法、本明細書に記載の方法による操作免疫細胞、それを含む医薬組成物、並びに健康上の状態の予防及び/又は治療を必要とする対象において、その健康上の状態を予防及び/又は治療するための方法及びキットも提供される。
【0021】
以下の説明及び実施例は、本開示の実施形態を詳細に解説する。本開示を、明確性及び理解を目的として解説及び例示によっていくらか詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲内にてある特定の変更及び修正を実施できることは明らかであろう。
【0022】
本明細書で使用される節の見出しは、整理のみを目的としており、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0023】
本開示の様々な特徴が単一の実施形態の文脈で説明することができるが、その特徴は、別々に、又は任意の適切な組み合わせで提供され得る。逆に、本開示は、明確にするために別々の実施形態の文脈で本明細書で説明することができるが、本開示は、単一の実施形態で実施することもできる。本開示は、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されず、したがって変化し得ることを理解されたい。当業者であれば、本開示の変形及び修正が存在し、それらが本開示の範囲内に包含されることを認識するであろう。
【0024】
本明細書全体を通して与えられる全ての最大数値限定は、それより低い数値限定が本明細書に明示的に記載されている場合と同様に、全てのより低い数値限定を含むことが意図される。本明細書全体を通して与えられる全ての最小数値限定は、それより高い数値限定が本明細書に明示的に記載されている場合と同様に、全てのより高い数値限定を含むものとする。本明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲には、より狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されている場合と同様に、より広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を含むものとする。
【0025】
上記又は下記に引用される全ての特許出願、ウェブサイト、他の刊行物、アクセッション番号などは、各々の個々の項目が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる。異なるバージョンの配列が異なる時点でのアクセッション番号に関連付けられている場合、本出願の有効出願日のアクセッション番号に関連付けられたバージョンを意味する。有効出願日は、実際の出願日、又はアクセッション番号への言及がある場合は優先出願の出願日のうち早い方を意味する。同様に、異なるバージョンの刊行物、ウェブサイトなどが異なる時点に公開されている場合、別段の指示がない限り、本出願の有効出願日に直近で公開されたバージョンを意味する。本開示の任意の特徴、工程、要素、実施形態、又は態様は、特に別段の指示がない限り、任意の他のものと組み合わせて使用することができる。
【0026】
定義
全ての用語は、当業者によって理解されるように理解されることが意図される。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0027】
以下の定義は、当該技術分野における定義を補足するものであり、本出願を対象とし、任意の関連する事例又は関連しない事例、例えば、任意の共通所有特許又は出願に帰属されない。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本開示の試験の実施において使用することができるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。したがって、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。
【0028】
本出願において、単数形の使用は、特に明記しない限り、複数形を含む。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。例えば、用語「細胞(a cell)」は、その混合物を含む1つ以上の細胞を含む。「A及び/又はB」は、本明細書では、「A」、「B」、「A又はB」、及び「A及びB」の全ての選択肢を含むものとして使用される。
【0029】
更に、「含む(including)」という用語、並びに「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定するものではない。
【0030】
本明細書における「いくつかの実施形態」、「ある実施形態」、「一実施形態」、又は「他の実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくともいくつかの実施形態に含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるわけではないことを意味する。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、用語「含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの任意の形態の含む)、「有する(having)」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」などの任意の形態の有する)、「含む(including)」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」などの任意の形態の含む)、又は「含有する(containing)」(及び「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの任意の形態の含有する)は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法の工程を除外しない。本明細書で論じられる任意の実施形態は、本開示の任意の方法又は組成物に関して実施することができ、逆もまた同様であることが企図される。更に、本開示の組成物は、本開示の方法を達成するために使用することができる。
【0032】
「投与」という用語及びその文法的変形は、本明細書で使用される場合、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、及び局所投与、又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない投与経路による生物活性組成物又は製剤の送達を指す。この用語には、医療専門家による投与及び自己投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
「癌」という用語は、無制限な増殖、不死性、転移能、急速な成長及び増殖速度、並びに特定の特徴的な形態学的特徴などの、癌を引き起こす細胞のいくつかの特徴を有する細胞の存在を指す。癌細胞は、腫瘍などの塊に凝集することもあれば、対象内に単独で存在することもある。腫瘍は、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、又は転移性病変であり得る。本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、他の種類の非腫瘍癌も包含する。非限定的な例としては、白血病などの血液癌又は血液学的癌が挙げられる。癌には、悪性の癌だけでなく、前悪性の癌も含まれ得る。
【0034】
「細胞」、「細胞培養物」、及び「細胞株」という用語は、特定の対象細胞、細胞培養物、又は細胞株だけでなく、培養物中の転移又は継代の数に関係なく、このような細胞、細胞培養物、又は細胞株の子孫又は潜在的子孫も指す。全ての子孫が親細胞と厳密に同一であるわけではないことを理解する必要がある。これは、変異(例えば、意図的な変異又は意図しない変異)又は環境の影響(例えば、メチル化又は他のエピジェネティックな改変)のいずれかにより、特定の改変が後継世代で発生する場合があるため、子孫が実際には親細胞と同一ではない場合があるが、子孫が元の細胞、細胞培養物、又は細胞株と同じ機能を保持する限り、本明細書に使用する用語の範囲になお含まれる。
【0035】
用語「作動可能に連結された」は、本明細書で使用される場合、2つ以上の要素、例えば、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列の間の物理的又は機能的連結を示し、それらがそれらの意図された様式で作動することを可能にする。例えば、目的のポリヌクレオチドと制御配列(例えば、プロモーター)との間の作動可能な連結は、目的のポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的連結である。作動可能に連結された要素は、隣接していても隣接していなくてもよいことを理解されたい。ポリペプチドの文脈において、「作動可能に連結された」は、ポリペプチドの記載された活性を提供するための、アミノ酸配列(例えば、異なるドメイン)間の物理的連結(例えば、直接的又は間接的連結)を指す。本開示において、本開示の組換えポリペプチドの様々なドメインは、細胞における組換えポリペプチドの適切な折り畳み、プロセシング、標的化、発現、結合、及び他の機能的特性を保持するように作動可能に連結され得る。本開示の組換えポリペプチドの作動可能に連結されたドメインは、隣接していても隣接していなくてもよい(例えば、リンカーを介して互いに連結されていてもよい)。
【0036】
2つ以上の核酸又はタンパク質の文脈において本明細書で使用される用語「同一性パーセント」は、以下に記載されるデフォルトパラメータを有するBLAST若しくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、又は手動アラインメント及び目視検査によって測定される場合、同じであるか、又は同じであるヌクレオチド若しくはアミノ酸の特定の百分率を有する2つ以上の配列又は部分配列(比較ウィンドウ又は指定領域にわたって最大一致のために比較及びアライメントされた場合、特定領域にわたって、例えば、約60%の配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性)を指す。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTのNCBIウェブサイトを参照されたい。そのような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、配列の相補体を指すか、又はそれに適用され得る。この定義はまた、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列を含む。配列同一性は、典型的には長さが少なくとも約20アミノ酸若しくはヌクレオチドである領域にわたって、又は長さが10~100アミノ酸若しくはヌクレオチドである領域にわたって、又は所与の配列の全長にわたって計算することができる。配列同一性は、公開された技術及び広く利用可能なコンピュータプログラム、例えばGCSプログラムパッケージ(Devereux et al,Nucleic Acids Res.12:387,1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al.,J Mol Biol 215:403,1990)を使用して計算することができる。配列同一性は、the Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group at the University of Wisconsin Biotechnology Center(1710 University Avenue,Madison,Wis.53705)などの配列分析ソフトウェアを使用してそのデフォルトパラメータにより測定することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「組換え」又は「操作」核酸分子、ポリペプチド、又は細胞という用語は、ヒトの介入によって改変された核酸分子、ポリペプチド、又は細胞を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、特に指定がない限り、薬剤の「治療有効量」又は「治療有効数」は、疾患、例えば癌の治療若しくは管理において治療的利益を提供するのに、又は疾患に関連する1つ以上の症状を遅延若しくは最小化するのに十分な量又は数である。化合物の治療有効量又は治療有効数は、疾患の治療又は管理において治療的利益を提供する、単独又は他の治療薬と組み合わせた治療薬の量又は数を意味する。「治療有効量」という用語は、疾患の全体的な治療を改善する、疾患の症状若しくは原因を軽減若しくは回避する、又は別の治療薬の治療有効性を増強する量又は数を包含し得る。「有効量」の例は、疾患の症状又は複数の症状の治療、予防、又は低減に寄与するのに十分な量であり、これは「治療有効量」とも呼ばれ得る。症状の「低減」とは、症状の重症度若しくは頻度が減少すること、又は症状が消失することを意味する。「治療有効量」を含む組成物の正確な量は、治療の目的によって異なり、当業者であれば公知の技術を用いて確認できるであろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(Vols.1-3,2010);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(2016);Pickar,Dosage Calculations(2012);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,22 nd Edition,2012,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams&Wilkins)を参照されたい)。
【0039】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「個体」には、ヒト(例えば、ヒト対象)及び非ヒト動物などの動物が含まれる。いくつかの実施形態において、「対象」又は「個体」は、医師の管理下にある患者である。したがって、対象は、関心疾患(例えば、癌)及び/又はその疾患の1つ以上の症状を有するか、それを有するリスクがあるか、又はそれを有する疑いがあるヒト患者又は対象であり得る。また、対象は、診断時又はそれ以降に関心状態のリスクがあると診断された対象であり得る。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、非ヒト霊長類、及び他の哺乳動物、例えばヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、並びに非哺乳動物、例えば両生類、爬虫類等を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「その機能的変異体」は、その変異体が由来する野生型分子と共通する定性的な生物学的活性を有する分子に関する。例えば、酵素活性を有するポリペプチド(例えばアデノシンデアミナーゼなどの酵素;ADA)に言及する場合、用語「機能的変異体」は、酵素をコードするポリペプチド配列に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%同一であるポリペプチド配列を有する酵素を指す。「機能的変異体」酵素は、該酵素について保存されていると認識されるアミノ酸残基を保持し得、置換された、若しくは異なるアミノ酸のものであることが見出された非保存アミノ酸残基、又は挿入若しくは欠失されたアミノ酸を有し得るが、本明細書に記載される酵素と比較して、その酵素活性に影響を及ぼさないか、又はわずかな影響しか及ぼさない。「機能的変異体」酵素は、本明細書に記載される酵素(例えば、ADA)の生物学的活性と同一又は本質的に同一である酵素活性を有する。当業者であれば、「機能的変異体」酵素が、天然に見出され得る、すなわち、天然に存在し得るか、又はその操作された変異型(mutant)であり得ることを理解するであろう。したがって、「ADAポリペプチド変異体(variant)」という用語は、ADAポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体又は選択的スプライス変異体を含む。例えば、ADAポリペプチド変異体は、親ADAポリペプチドのアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸の、類似若しくは相同アミノ酸又は異なるアミノ酸による置換を含む。アミノ酸を類似又は相同としてランク付けすることができる多くの尺度が存在する。(Gunnar von Heijne,Sequence Analysis in Molecular Biology,p.123-39(Academic Press,New York,NY 1987)。
【0041】
「少なくとも」、「より多い」、又は「以上」という用語が、一連の2つ以上の数値の最初の数値に先行する場合はいつでも、「少なくとも」、「より多い」、又は「以上」という用語は、その一連の数値の各数値に適用される。例えば、1、2、又は3以上は、1以上、2以上、又は3以上と等しい。
【0042】
「以下(no more than)」、「未満」、又は「以下(less than or equal to)」という用語が、一連の2つ以上の数値の最初の数値に先行する場合はいつでも、「以下」、「未満」、又は「以下」という用語は、その一連の数値の各数値に適用される。例えば、3、2、又は1以下は、3以下、2以下、又は1以下と等しい。
【0043】
見出し、例えば、(a)、(b)、(i)等は、単に明細書及び特許請求の範囲を読みやすくするために提示されている。本明細書又は特許請求の範囲における見出しの使用は、工程又は要素がアルファベット順若しくは数字順に、又はそれらが提示された順序で実行されることを要件とするものではない。
【0044】
当業者によって理解されるように、書面による説明を提供することなどのあらゆる目的のために、本明細書に開示される全ての範囲は、あらゆる可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも等しい2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを十分に説明し、分解されることを可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下位3分の1、中位3分の1、及び上位3分の1などに容易に分解することができる。同様に当業者によって理解されるように、「まで/最大で」、「少なくとも」、「より多い」、「未満」などの全ての用語は、列挙された数を含み、上述のように部分範囲に後に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は各々の個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の項目を有するグループは、1、2、又は3個の項目を有するグループを指す。同様に、1~5個の項目を有するグループは、1、2、3、4、又は5個の項目を有するグループを指し、以下同様である。
【0045】
特定の範囲は、「約」という用語が先行する数値で本明細書に提示される。本明細書では、「約」という用語は、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近いか、又は近似する数に対する文字通りの支持を提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数字に近いか近似しているかを判断する際、近い又は近似する未列挙の数字は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数字と実質的に同等のものを提供する数字であり得る。近似の程度が文脈から明らかでない場合、「約」は、提供された値を含む全ての場合において、提供された値のプラス若しくはマイナス10%以内であること、又は最も近い有効数字に四捨五入されたことを意味する。いくつかの実施形態において、「約」という用語は、指定された値±10%まで、±5%まで、又は±1%までを示す。
【0046】
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」を含むことが理解される。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法の工程を除外しない。本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」は、特許請求される組成物又は方法において指定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求される組成物又は方法の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を除外しない。特に組成物の構成要素の説明又は方法の工程の説明における、用語「含む(comprising)」の本明細書における列挙はいずれも、列挙された構成要素又は工程から本質的になる、及びそれらからなる組成物及び方法を包含するものと理解される。
【0047】
請求項要素を修飾するための請求項における「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、ある請求項要素の別の請求項要素に対する任意の優先順位、優先性、若しくは順序、又は方法の行為が行われる時間的順序を暗示するものではなく、単に、請求項要素を区別するために、ある名前を有するある請求項要素を、同じ名前を有する別の要素から区別するためのラベルとして使用される(序数用語の使用を除く)。同様に、本明細書におけるこれらの用語の使用は、それ自体では、任意の必要とされる優先順位、優先性、又は順序を暗示するものではない。
【0048】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で説明されている本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本開示の様々な特徴も、別々に、又は任意の適切な下位組み合わせで提供され得る。本開示に関連する実施形態の全ての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、ありとあらゆる組み合わせが個々に明示的に開示されている場合と同様に、本明細書に開示される。加えて、様々な実施形態及びその要素の全ての下位組み合わせもまた、本開示によって具体的に包含され、ありとあらゆるこのような下位組み合わせが、本明細書において個々に明示的に開示されている場合と同様に、本明細書において開示される。
【0049】
アデノシンデアミナーゼ及びCAR T細胞療法
アデノシンデアミナーゼ
アデノシンデアミナーゼ(アデノシンアミノヒドロラーゼ又はADAとしても知られる)は、プリン代謝の重要な酵素の1つと考えられる酵素(EC 3.5.4.4)である。この酵素は、細菌、植物、無脊椎動物、脊椎動物、及び哺乳動物において見出されており、アミノ酸配列が高度に保存されている。アミノ酸配列の高度な保存は、プリンサルベージ経路におけるADAの重要な性質を示唆している。
【0050】
主に、ヒトにおけるADAは、免疫系の発達及び維持に関与する。しかしながら、ADAの会合は、上皮細胞の分化、神経伝達、及び妊娠維持でも観察されている。ADAは、アデノシン分解に加えて、興奮性アミノ酸の放出を刺激し、A1アデノシン受容体とヘテロ三量体Gタンパク質との共役(coupling)に必要であることも考えられている。アデノシンデアミナーゼ欠損は肺線維症を引き起こし、このことは、高レベルのアデノシンへの長期的曝露が炎症応答を抑制するのではなく悪化させ得ることを示唆している。アデノシンデアミナーゼタンパク質及び活性は、HIF1αを過剰発現するマウス心臓において上方制御されることも認識されており、これは、虚血ストレス中のHIF-1α発現心臓においてアデノシンのレベルが減少することを部分的に説明している。
【0051】
ヒトにはADA1とADA2の2種類のアデノシンデアミナーゼが存在する。ADA1(41kDa)は、染色体20q13.12上のADA遺伝子(OMIM 608958又はEntrez Gene ID 100)によってコードされ、全ての細胞によって産生される。単量体として作用するADA1の主な役割は、アデノシン及びデオキシアデノシンの細胞内毒性誘導体を排除し、アポトーシスから細胞を保護することである。遺伝子変異によるADA1の欠如は、重症複合免疫不全症(SCID)を引き起こす。ADA1の細胞内役割は確立されているが、この酵素は細胞外役割も有しており、例えば、ADA1(又は細胞外ADA)によって、T細胞増殖に影響を及ぼす共刺激分子として2つの異なる細胞を架橋するCD26及びA2a受容体との三元複合体が形成される。ADA1は、白血球プリン受容体を介して炎症促進性及びTh1極性化応答を抑制するように作用する内因性プリン代謝産物であるアデノシンを免疫学的に不活性であるイノシンに変換する。ADA1はまた、アデノシン受容体を介してTヘルパー2(Th2)免疫を増強する役割を有する。ADA1欠損は、胸腺細胞の発達及びBリンパ球の免疫グロブリン産生を損ない、重症複合免疫不全を引き起こす。
【0052】
ADA2(57kDa)は、染色体22q11.1上のCECR1(ADA2)遺伝子(OMIM 607575又はEntrez Gene ID 51816)によってコードされ、活性化単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)によって産生される。ADA2は、その酵素活性とは無関係に、免疫細胞上の同族受容体への結合を介して免疫を調節する。ADA2はまた、T細胞共培養において単球のマクロファージへの分化を誘導する。ADA2は、キャットアイ症候群染色体領域候補1又はCECR1としても知られ、アデノシン及び2-プライム-デオキシアデノシンのそれぞれイノシン及びデオキシイノシンへの脱アミノ化を触媒するアデノシンデアミナーゼである。ADA1とは対照的に、ADA2は分泌型ホモ二量体であり、血漿中で高度に発現される。ADA2は、樹状細胞、CD14+単球、及びリンパ系組織、特に胸腺において高度に発現される。ADA2は、アデノシンに対するKmがより高く(23、24)、その結果ADA1よりも酵素活性が低い。ADA1欠損を有する患者では残存ADA2活性ADA2を測定することができるが(23、25)、免疫におけるその重要な役割はこれまで十分に認識されていなかった。
【0053】
CAR T細胞療法
CAR T細胞療法は、多くの種類の血液癌において非常に有効であることが示されている。しかしながら、固形腫瘍の状況下では、CAR Tが標準的な治療となるには対処すべき多くの課題が依然として存在し、これには敵対的な腫瘍微小環境を克服することが含まれ、最も困難な課題の1つであることが判明している。これに関連して、いくつかの報告では、腫瘍微小環境に蓄積する重要な免疫抑制因子としてのアデノシンの役割が強調されている。病的状態では、細胞外アデノシン(eADO)濃度は生理的状態よりも100倍まで高くなり得る。この増加は、瀕死の細胞からのアデノシンの受動的放出、平衡型ヌクレオシド輸送体(ENT)を介した能動的輸送、又はCD39及びCD73によって媒介されるATP/ADP異化作用によるアデノシンの産生の結果であり得る。その後、細胞外アデノシンは、異なるGタンパク質共役受容体:ADORA1、ADORA2A、ADORA2B、ADORA3との相互作用を介してT細胞を抑制することができ、ADORA2a(A2aR)は最も高い親和性を有する。したがって、アデノシン作動性経路を標的とすることは、CAR T細胞免疫療法の状況下において魅力的な新しい治療戦略である。
【0054】
以下により詳細に記載されるように、本明細書に提示される実験データは、とりわけ、抗原非依存性クラスタリングを示す疲弊したCAR T細胞集団が、アデノシン産生に両方とも関与する細胞外酵素CD39及びCD73の高い表面発現を有すること、並びに疲弊したCD39+CAR T細胞が、遺伝子及びタンパク質レベルでTreg表現型に関連するマーカーを上方制御し、アデノシン媒介性抑制機能を示すことを実証する。これらのデータは、活性化時に早期に上方制御されるTIM3、LAG3、又はPD1などの標準的な疲弊/活性化マーカーと比較して、CD39の発現動態が異なることを更に裏付けている。これらの標準的な疲弊/活性化マーカーとは異なり、CD39は、疲弊したCAR T細胞における機能の進行性喪失と特異的に相関するようである。
【0055】
CD39+CD8疲弊CAR T細胞は、それらのCD39-対応物と比較して、特有の転写プロファイル、表現型プロファイル、及び機能プロファイルを示す。CD39+CD8 CAR T細胞は、Ki67+として定義される高い増殖能を示し、Tregの分化及び機能に関与するIFNγ、グランザイムB、IL-27、及びTGFβなどのサイトカインを高レベルで分泌する。それらはまた、低レベルのIL-2、MPC-1、TNFα、及びTNFβサイトカインも分泌する。これらのデータは、CD39+疲弊T細胞と制御性T細胞との間の高レベルの類似性を示唆する。遺伝子エンリッチメント解析により、Treg表現型に関連する遺伝子の上方制御が確認された。更に、CD39+CD8 CAR T細胞は、アデノシン産生を介した一貫した抑制能力を示し、これは、TregマーカーとしてのCD39、及びヒト腫瘍から得られたCD39+CD8 T細胞のin vitro抑制機能を特徴付ける報告と一致する。しかしながら、CD73発現が活性化及び分化の際に低減されることを示す研究とは対照的に、本明細書において実証されるのは、疲弊したCD8 CAR T細胞がCD39及びCD73の両方の発現の増加を示し、これがeATPの活性な加水分解及びアデノシンの生成をもたらすことである。
【0056】
TGFβがCD39発現に関連することが示されている。しかしながら、本明細書で実証されるように、中和TGFβ抗体は、HA CAR T細胞におけるCD39発現のいかなる変化も引き起こさない。代わりに、本明細書に提示される実験データでは、CAR発現とCD39上方制御との間の強い相関が実証され、内因性因子の役割が示唆される。実際に、CD39-選別されたHA CAR T細胞においてダサチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤)によりトニックシグナル伝達を遮断すると、CD39発現が阻害される。このことは、細胞が長期的な抗原刺激状態にある場合、過剰刺激及び自己損傷に対抗するために細胞の抑制能力の向上が必要であることを裏付けている。
【0057】
本明細書において実証されるように、疲弊したCAR T細胞におけるアデノシン受容体A2aRの欠失は、CD39又はCD73の欠失とは対照的に、著しい表現型の変化をもたらさないが、腫瘍特異的殺傷を改善する。CD39、CD73、及び高親和性アデノシンA2a受容体のノックアウトを有するCAR T細胞のうち、CD39又はCD73ノックアウトのみが疲弊表現型に影響を及ぼし、CAR T細胞のTscm及びエフェクター様集団の頻度の有意な増加をもたらす。表現型におけるこれらの変化にもかかわらず、3つ全ての遺伝子の欠失は、短時間アッセイにおいてIL-2分泌の増加をもたらす。A2aR KOのみが、殺傷試験において著しく高い腫瘍増殖制御を示す。
【0058】
A2a受容体は、イノシン誘導性抗腫瘍T細胞応答において重要な役割を果たす。更に、A2b受容体はT細胞によって発現され、T細胞抑制を媒介することができる。したがって、A2aRノックアウトは、CAR T細胞療法を改善するための最も効率的な方法ではない可能性がある。代わりに、CAR T細胞の表面上のアデノシンデアミナーゼ(ADA)酵素の過剰発現は、腫瘍微小環境におけるアデノシン蓄積を減少させることができる。したがって、ある態様において、本明細書で提供されるのは、ADAを過剰発現させることによってCAR T細胞のエフェクター機能を向上させるための組成物及び方法であり、これにより、アデノシンと、アデノシンよりも効力の低いA2aRのアゴニストである非抑制性イノシンとの間のバランスが調節され得る。アデノシンはcAMPバイアス型シグナル伝達を増加させることができ、イノシンはERK1/2バイアス型シグナル伝達を活性化する。A2aRを介したイノシンシグナル伝達は、T細胞免疫療法の状況下において有益であるTh1型応答を誘導することが示されている。イノシンは、エネルギー源としてのグルコースの代替としてT細胞によって利用することができ、CAR T細胞のエフェクター機能を支持する。本明細書において実証されるように、CAR T細胞におけるADA過剰発現は、転写及びタンパク質レベルでの変化を誘導し、より多くのTSCM(幹細胞メモリーT細胞)様表現型と、より少ない疲弊した表現型を示す。疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞の両方におけるADAの過剰発現は表現型の変化をもたらし、幹細胞様メモリーT細胞エフェクターの頻度を高め、同時に疲弊した亜集団を減少させる。CAR T細胞の抗原駆動増殖及びエフェクター機能の両方が、ADAの過剰発現後に著しく改善する。メモリー細胞は、β酸化及びミトコンドリア予備呼吸能(SRC)の向上を示すことが報告されている。本明細書で実証されるように、ADA過剰発現CAR T細胞は、脂肪酸代謝に関与する遺伝子の発現が豊富であり、同様の条件下の対照CAR T細胞、例えば、そのようなADAを過剰発現するように操作されていないCAR T細胞と比較して、酸化的リン酸化及び増強されたSRCへの有意なシフトを示す。これは、改善された抗原特異的増殖及び細胞傷害機能につながる。この現象は、疲弊したCAR T細胞及び疲弊していないCAR T細胞の両方において観察される。
【0059】
本明細書に提示される実験データは、アデノシンデアミナーゼ(ADA)の過剰発現が、アデノシンと非抑制性イノシンとの間のバランスを調節することによってCAR T細胞のエフェクター機能を向上させるための革新的なアプローチとなり得ることを実証する。いくつかの実施形態において、ADA活性は、ADA1、ADA2、又はこれらのいずれかの機能的変異体の活性である。
【0060】
本開示の組成物
以下により詳細に記載されるように、本開示の一態様は、例えば、アデノシンデアミナーゼ活性を有する第1のポリペプチドモジュールと、アデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーすることができる第2のポリペプチドモジュールとを有する1つ以上のポリペプチドモジュールを含む、キメラポリペプチドに関する。本開示のいくつかの実施形態は、キメラポリペプチド又は該キメラポリペプチドをコードする核酸を含む、操作T細胞を提供する。
【0061】
キメラポリペプチド
上記で概説したように、本開示のいくつかの実施形態は、CAR T細胞表現型及びエフェクター機能を改善するように操作された、キメラポリペプチドに関する。以下の実施例の節により詳細に記載されるように、CD39発現は、CAR T細胞の疲弊中の機能の進行性喪失と相関する。簡潔に述べると、CD39+CD8+疲弊CAR T細胞は、Treg関連表現型及び抑制機能を示す。CD39+CD8 CAR T細胞は疲弊しているだけでなく、それらは豊富な抑制性分子シグネチャー、表現型、及び機能を有する新規な細胞亜集団を代表し得る。以下により詳細に説明されるように、CD39-CAR T細胞集団のCD39+への変換は、トニックシグナル伝達に依存する。長期的なT細胞刺激は、CD39-細胞をCD39+細胞に変換するのに十分である。疲弊したCAR T細胞は、酵素活性なCD39及びCD73の高発現を示し、これは抑制性アデノシンの産生をもたらす。疲弊したCAR T細胞の表面上でのCD39及びCD73の高レベルの発現は、ATPを分解し、ADP/AMPをアデノシンに変換する能力の向上と相関する。本明細書において実証されるように、アデノシンは、抗原刺激後のCART T細胞によるサイトカイン産生を抑制することができる。疲弊したCAR T細胞は、それらの表面上に活性CD39及びCD73を発現し、これはアデノシンを生成する能力の向上をもたらす。次に、アデノシンは、A2a受容体媒介様式でCAR T細胞の機能及び増殖に対して抑制効果を発揮する。CAR T細胞上のA2a受容体を遮断すること、又はCAR T細胞上のCD39をノックアウトすることは、アデノシン産生細胞の存在下でCAR T細胞によるサイトカイン(例えば、IL-2)産生を回復させることができる。したがって、プリン作動性経路は、疲弊したCAR T細胞の表現型及び機能を調節することができる。CAR T細胞によるCD39及びCD73の共発現の結果としての自己分泌型アデノシン産生は、隣接細胞に対する抑制効果だけでなく、CAR T細胞活性の内因性抑制ももたらし得る。アデノシン及びその産生を調節する経路は、CAR T細胞応答及び表現型の調節において重要な役割を果たす。
【0062】
以下により詳細に記載されるように、アデノシンデアミナーゼの過剰発現は、CAR T細胞表現型及びエフェクター機能を改善することができる。腫瘍微小環境の状況下において、アデノシンの産生は、CAR T細胞上に存在するCD39及びCD73によって調節されるだけでなく、癌関連線維芽細胞の表面、間質、又は直接腫瘍細胞上に発現される。CD39又はCD73のノックアウトはin vitroでのサイトカイン分泌を改善し得るが、in vivoでは成功するアプローチでない可能性がある。同様に、A2a受容体はアデノシンに対して最も高い親和性を示すが、T細胞によって発現される唯一のアデノシン受容体ではない。したがって、CAR T細胞に対するアデノシンの抑制効果を低下させるための代替的なアプローチは、アデノシンをイノシンに代謝することに関与する酵素であるアデノシンデアミナーゼ(ADA)を過剰発現させることである。本開示のいくつかの実施形態において、過剰発現したADAが確実にT細胞の表面上にアンカーできるように、ADAは、ポリペプチド膜貫通ドメイン、例えば、CD8の、例えば、膜貫通ドメインに融合され得る。以下により詳細に記載されるように、膜貫通結合ADAの過剰発現は、CAR T細胞の表現型をメモリー様細胞にシフトさせることによって、疲弊したCAR T細胞及び疲弊していないCAR T細胞の両方の適応性及び機能を有意かつ強固に向上させる(例えば、実施例8及び9を参照されたい)。特に、膜貫通結合ADAを過剰発現するように操作された疲弊したCAR T細胞は、メモリーT細胞の特徴である予備呼吸能(SRC)が向上していた。例えば、TCF7、IL7Rなどのメモリー表現型及び持続性に関連する遺伝子は、ADA過剰発現HA CAR T細胞において上方制御されることが見出された(例えば、
図10Eを参照されたい)。細胞増殖、cMYC調節経路、及び脂肪酸代謝に関与する多くの遺伝子の上方制御があった(例えば、
図11Eを参照されたい)。対照的に、グランザイムB、IL-3、IL-5、TNFSF4(OX40)、又はTNFSF11(RANKL)などのエフェクター機能に関連する遺伝子は下方制御された。加えて、膜貫通結合ADAの過剰発現は、疲弊したHA並びに疲弊していないCD19 CD8及びCD4 CAR T細胞におけるFoxp3頻度を有意に減少させる(例えば、
図10G及び11Fを参照されたい)。ADA+CAR T細胞中のTregのパーセントの減少は、異なる表面抗原密度及び増殖を示す腫瘍株に対するエフェクター機能の向上につながった(例えば、
図10H及び11Gを参照されたい)。
【0063】
更に、本明細書に記載される実験データは、膜貫通結合ADA1又は膜貫通結合ADA2の過剰発現が、in vitro及びin vivoで疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞のエフェクター機能を有意に改善するという証拠を提供する。特に、膜結合ADA1及び膜結合ADA2のいずれか1つを過剰発現するように操作されたCAR T細胞は、HAを発現する対照CAR T細胞と比較して、腫瘍殺傷の増加をもたらした(例えば、
図12Bを参照されたい)。HA-ADA1-TM又はHA-ADA2-TMのいずれかを過剰発現するCAR T細胞は両方とも、対照群と比較して、より多くのIL-2及びIFNγを産生し、この増加はEHNAの存在下で抑止された(例えば、
図12Dを参照されたい)。これらの結果は、CAR T細胞によるサイトカイン分泌の上昇が、膜貫通結合ADAの酵素活性によって媒介されたことを示す。
【0064】
一態様において、本明細書で提供されるのは、アデノシンデアミナーゼ活性を有する第1のポリペプチドモジュールと、アデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーする(例えば、接着する、つなぐ、又は固定化する)ことができる第2のポリペプチドモジュールとを含む、キメラポリペプチドである。
【0065】
本開示によるキメラポリペプチドの非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、第2のポリペプチドモジュールに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、ヒトアデノシンデアミナーゼ活性を有する。いくつかの実施形態において、アデノシンデアミナーゼ活性は、ADA1、ADA2、又はこれらのいずれかの機能的変異体の活性である。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、ヒトADA1活性又はその機能的変異体を有する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、ヒトADA2活性又はその機能的変異体を有する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号7に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号7の配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号7に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号7に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号7中の1、2、3、4又は5個のアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基によって置換されている。
【0066】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号8の配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号8に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、配列番号8に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号8中の1、2、3、4又は5個のアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基によって置換されている。
【0067】
上記のように、本開示のいくつかの実施形態において、キメラポリペプチドの第2のポリペプチドモジュールは、ポリペプチド膜貫通ドメインを含む。本開示の組成物及び方法に適した膜貫通ドメインの非限定的な例としては、CD8α、CD4、CD28、CD80、ICOS、CTLA4、PD1、PD-L1、BTLA、HVEM,CD27、4-1BB、4-1BBL、OX40、OX40L、DR3、GITR、CD30、SLAM、CD2、2B4、TIM1、TIM2、TIM3、TIGIT、CD226、CD160、LAG3、LAIR1、B7-1、B7-H1、及びB7-H膜貫通ドメインに由来するものが挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリペプチド膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメイン又はその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、配列番号7の配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、配列番号9に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、配列番号9に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号9中の1、2、3、4又は5個のアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基によって置換されている。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドモジュールは、第2のポリペプチドモジュールに作動可能に連結されている。
【0068】
アデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドモジュールを含むキメラポリペプチドのアミノ酸配列を「第1の」ポリペプチドモジュールとして指定し、ポリペプチド膜貫通ドメインを含むポリペプチドモジュールを含むキメラポリペプチドのアミノ酸配列を「第2の」ポリペプチドモジュールとして指定することは、キメラポリペプチド内の「第1の」及び「第2の」アミノ酸配列の任意の特定の構造的配置を意味することを意図しない。非限定的な例として、本開示のいくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、アデノシンデアミナーゼ活性を有するN末端ポリペプチドモジュールと、ポリペプチド膜貫通ドメインを含むC末端ポリペプチドモジュールとを含み得る。他の実施形態において、キメラポリペプチドは、ポリペプチド膜貫通ドメインを含むN末端ポリペプチドモジュールと、アデノシンデアミナーゼ活性を有するC末端ポリペプチドモジュールとを含み得る。加えて又はあるいは、キメラポリペプチドは、アデノシンデアミナーゼ活性を有する2つ以上のポリペプチドモジュール、及び/又はポリペプチド膜貫通ドメインを含む2つ以上のポリペプチドモジュールを含み得る。したがって、いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、各々がアデノシンデアミナーゼ活性を有する少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のポリペプチドモジュールを含む。いくつかの実施形態において、第2のアミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のポリペプチドモジュールは、各々がポリペプチド膜貫通ドメインを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、リンカーを介して第2のアミノ酸配列に作動可能に連結される。本明細書に記載される多価ポリペプチドにおいて使用することができるリンカーは、特に限定されない。いくつかの実施形態において、リンカーは、例えば、化学架橋剤などの合成化合物リンカーである。市販されている適切な架橋剤の非限定的な例としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ-EGS)、ジスクシンイミジルタータレート(DST)、ジスルホスクシンイミジルタータレート(スルホ-DST)、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、及びビス[2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ-BSOCOES)が挙げられる。本開示の多価ポリペプチド及び多価抗体に適した代替的な構造及び連結の他の例としては、Spiess et al.,Mol.Immunol.67:95-106,2015に記載のものが挙げられる。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるキメラポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、リンカーポリペプチド配列(ペプチド結合)を介して第2のアミノ酸配列に作動可能に連結される。理論上、リンカーポリペプチド配列の長さ及び/又はアミノ酸組成に対する特定の制限はない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのリンカーは、約1~100個のアミノ酸残基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個などのアミノ酸残基)を含む単鎖ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチド配列は、約5~50、約10~60、約20~70、約30~80、約40~90、約50~100、約60~80、約70~100、約30~60、約20~80、約30~90個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチド配列は、約1~10、約5~15、約10~20、約15~25、約20~40、約30~50、約40~60、約50~70個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチド配列は、約40~70、約50~80、約60~80、約70~90、又は約80~100個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチド配列は、約1~10、約5~15、約10~20、約15~25個のアミノ酸残基を含む。
【0071】
核酸
一態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載されるキメラポリペプチドをコードする単離された核酸、本明細書に記載されるキメラポリペプチドをコードする発現カセット、及び本明細書に記載されるキメラポリペプチドをコードする単離された核酸を含有する発現ベクターである。いくつかの実施形態において、単離された核酸は、宿主細胞におけるキメラポリペプチドの発現を促進する調節配列に作動可能に連結され得る。
【0072】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で互換的に使用することができ、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、及び核酸類似体を含有するDNA又はRNA分子を含む核酸を含む、RNA及びDNA分子の両方を指す。核酸は、二本鎖又は一本鎖(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)であり得る。核酸は、非従来型又は修飾ヌクレオチドを含有することができる。本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子の配列を指す。37CFR§1.822に記載されるヌクレオチド塩基の命名法が、本明細書で使用される。
【0073】
本開示の核酸は、概ね約0.5Kb~約20Kb、例えば、約0.5Kb~約20Kb、約1Kb~約15Kb、約2Kb~約10Kb、又は約5Kb~約25Kb、例えば、約10Kb~15Kb、約15Kb~約20Kb、約5Kb~約20Kb、約5Kb~約10Kb、又は約10Kb~約25Kbである核酸をはじめとする、任意の長さの核酸であり得る。
【0074】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態において、本開示の核酸は、(i)アデノシンデアミナーゼ活性を有する第1のポリペプチドモジュールと、(ii)アデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーする(例えば、接着する、つなぐ、又は固定化する)ことができる第2のポリペプチドモジュールとを含むキメラポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、核酸は、本明細書に開示されるキメラポリペプチド又はその機能的断片のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を含む。
【0076】
目的のアルファウイルス種の改変ゲノム又はRNAレプリコンの配列に対して高程度の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)を有する核酸配列は、本明細書で同定された配列(例えば、配列番号7~9)若しくは当該技術分野で公知の任意の他の配列を使用することによって、アルファウイルス種ゲノムにおいて同定された配列由来の縮重プライマー若しくは遺伝子特異的プライマーを用いたゲノム配列分析、ハイブリダイゼーション、及び/又はPCRによって同定及び/又は単離することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸は、発現カセット又は発現ベクターに組み込むことができる。したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、本明細書に開示される核酸を含む、ベクター又は発現カセットに関する。発現カセットは、概して、コード配列と、インビボ(in vivo)及び/又はエクスビボ(ex vivo)でのレシピエント細胞内におけるコード配列の適切な転写及び/又は翻訳を指示するのに十分な制御情報とを含有する遺伝物質の構築物を含むことが理解されるであろう。概して、発現カセットは、所望の宿主細胞への標的化のためのベクターに、及び/又は個体に挿入することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の発現カセットは、本明細書に開示されるキメラポリペプチドのコード配列を含み、これは、プロモーターなどの発現制御要素、及び任意選択で、コード配列の転写又は翻訳に影響を及ぼす他の核酸配列のいずれか又は組み合わせに作動可能に連結する。
【0078】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、発現ベクターに組み込むことができる。用語「ベクター」は、概して、宿主細胞間の移動のために設計された組換えポリヌクレオチド構築物を指し、形質転換のため、例えば、宿主細胞への異種DNAの導入のために使用され得ることが当業者によって理解されるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、ベクターは、挿入されたセグメントの複製をもたらすために別のDNAセグメントが挿入され得る、プラスミド、ファージ、又はコスミドであり得る。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、組み込み型ベクターであり得る。したがって、本明細書に開示されるキメラポリペプチドのいずれかをコードする1つ以上の核酸を含有する、ベクター、プラスミド、又はウイルスも本明細書で提供される。上記の核酸は、例えば、ベクターで形質導入された細胞において、それらの発現を指示することができるベクター内に含まれ得る。真核細胞及び原核細胞で使用するのに適したベクターは、当該技術分野で公知であり、そして市販されているか、又は当業者によって容易に調製される。追加のベクターは、例えば、Ausubel,F.M.,et al.,Current Protocols in Molecular Biology,(Current Protocol,1994)及びSambrook et al.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual,」2nd ED.(1989)でも見出すことができる。
【0079】
全てのベクター及び発現制御配列が、本明細書に記載されるDNA配列を発現するために等しく良好に機能するわけではないことを理解されたい。また、全ての宿主が同じ発現系で等しく良好に機能するわけでもない。しかし、当業者は、過度の実験を行うことなく、これらのベクター、発現制御配列、及び宿主の中から選択を行うことができる。例えば、ベクターの選択において、ベクターは宿主の中で複製する必要があるので、宿主を考慮する必要がある。ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、及びベクターによってコードされる任意の他のタンパク質、例えば、抗生物質マーカーの発現も考慮されるべきである。例えば、使用することができるベクターとしては、本開示の多価ポリペプチド及び多価抗体をコードするDNAのコピー数を増幅させるベクターが挙げられる。このような増幅可能なベクターは、当該技術分野で公知である。これらには、例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufman、米国特許第4,470,461号参照)又はグルタミン合成酵素(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号及び欧州特許第338,841号を参照)によって増幅可能なベクターが挙げられる。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示のキメラポリペプチドは、ベクター、概して発現ベクターから発現され得る。ベクターは、宿主細胞における自律的複製に有用であるか、又は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それによって宿主ゲノムと共に複製される(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)。発現ベクターは、それらが作動可能に連結されているコード配列の発現を指示することができる。概して、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミド(ベクター)の形態であることが多い。しかし、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などの他の形態の発現ベクターも含まれる。
【0081】
例示的な組換え発現ベクターは、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択され、発現される核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の制御配列を含み得る。
【0082】
宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,N.Y.)及び他の標準的な分子生物学実験室マニュアルに見出すことができる。
【0083】
本開示のキメラポリペプチドをコードする核酸配列は、目的の宿主細胞における発現のために最適化することができる。例えば、配列のG-C含量は、宿主細胞において発現される既知の遺伝子を参照することによって計算される場合、所与の細胞宿主について平均のレベルに調節され得る。コドン最適化のための方法は、当該技術分野で知られている。本明細書に開示されるキメラポリペプチドのコード配列内のコドン使用頻度は、宿主細胞における発現を増強するように最適化することができ、その結果、コード配列内のコドンの約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、又は最大100%が宿主細胞での発現のために最適化されている。これらの例において、コドン最適化ポリペプチドの発現は、基準ポリペプチド、例えば、コドン最適化されていない元のポリペプチドと比較して、少なくとも約20%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%増強され得る。
【0084】
発現制御配列の選択において、種々の因子もまた考慮されるべきである。これらとしては、例えば、配列の相対強度、その可制御性、及び対象キメラポリペプチドをコードする実際のDNA配列とのその適合性、特に潜在的な二次構造に関するものが挙げられる。宿主は、選択されたベクターとの適合性、本開示のDNA配列によってコードされる産物の毒性、分泌特性、ポリペプチドを正しく折り畳む能力、発酵又は培養要件、及びDNA配列によってコードされる産物の精製の容易さを考慮して選択されるべきである。
【0085】
本開示において使用することができるウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、シミアンウイルス40(SV40)、及びウシパピローマウイルスベクターが挙げられる(例えば、Gluzman(Ed.)、Eukaryotic Viral Vectors,CSH Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)。
【0086】
核酸は、キメラポリペプチドをコードする配列に限定されない。また、コード配列の上流又は下流に位置する非コード配列の一部又は全部を含めることもできる。分子生物学の当業者は、核酸分子を単離するための日常的な手順に精通している。例えば、核酸分子は、ゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼで処理することによって、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって生成することができる。核酸分子がリボ核酸(RNA)である場合、分子は、例えば、in vitro転写によって産生され得る。
【0087】
本開示の例示的な核酸は、天然状態では本来見出されない断片を含むことができる。したがって、本開示は、組換え核酸分子、例えば、核酸配列(例えば、本開示のキメラポリペプチドをコードする配列)がベクター(例えば、プラスミド又はウイルスベクター)又は宿主細胞(例えば、T細胞)のゲノムに組み込まれている、組換え核酸分子を包含する。
【0088】
操作T細胞
本開示のキメラポリペプチドをコードする核酸を、例えば、ヒトTリンパ球などの宿主細胞に導入して、該核酸を含有する操作T細胞を産生することができる。本開示の核酸分子の細胞への導入は、当業者に公知の方法、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達などによって達成することができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、宿主細胞(例えば、T細胞)は、例えば、ウイルスベクター、若しくは宿主細胞のゲノムの一部に相同な核酸配列を含む相同組換えのためのベクターであり得るか、又は目的のポリペプチドの発現のための発現ベクターであり得る、例えば、本出願のベクター構築物で遺伝子操作され得る(例えば、形質導入又は形質転換又はトランスフェクトされ得る)。宿主細胞(例えば、T細胞)は、形質転換されていない細胞又は少なくとも1つの核酸分子ですでにトランスフェクトされている細胞のいずれかであり得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、動物細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、非ヒト霊長類細胞である。
【0091】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、免疫系細胞、例えば、リンパ球(例えば、T細胞又はNK細胞)、又は樹状細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、B細胞、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、制御性T細胞、ヘルパーT細胞(TH)、細胞傷害性T細胞(TCTL)、又は他のT細胞である。
【0092】
いくつかの実施形態において、免疫系細胞は、Tリンパ球である。いくつかの実施形態において、細胞は、対象から得られた試料に対して行われる白血球アフェレーシスによって得られ得る。いくつかの実施形態において、対象は、関心疾患(例えば、癌)及び/又はその疾患の1つ以上の症状を有するか、それを有するリスクがあるか、又はそれを有する疑いがあるヒト患者又は対象である。
【0093】
したがって、ある態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書で提供される方法のいずれかによって産生される操作T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD8+T細胞傷害性リンパ球細胞又はCD4+Tヘルパーリンパ球細胞である。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞傷害性リンパ球細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞、エフェクターCD8+T細胞、CD8+幹メモリーT細胞、バルクCD8+T細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、CD4+Tヘルパーリンパ球細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞、エフェクターCD4+T細胞、CD4+幹メモリーT細胞、及びバルクCD4+T細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、T細胞は、疲弊したT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、疲弊していないT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、対象から得られた試料の白血球アフェレーシスによって得られる。
【0094】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示される少なくとも1つの操作T細胞及び培養培地を含む、細胞培養物である。概して、培養培地は、本明細書に記載される細胞の培養に適した任意の培養培地であり得る。多種多様な上記宿主細胞及び種を形質転換するための技術は、当該分野で公知であり、技術文献及び科学文献に記載されている。したがって、本明細書に開示される少なくとも1つの操作細胞及び培養培地を含む細胞培養物もまた、本出願の範囲内である。細胞培養物を生成及び維持するために適切な方法及び系は、当該分野で公知である。
【0095】
医薬組成物
本開示の操作T細胞、キメラポリペプチド、該キメラポリペプチドをコードする核酸は、医薬組成物を含む組成物に組み込むことができる。このような組成物は、概して、本開示の1つ以上の操作T細胞、キメラポリペプチド、該キメラポリペプチドをコードする核酸、及び薬学的に許容される賦形剤、例えば、担体を含み得る。したがって、一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、薬学的に許容される賦形剤、並びに(a)本開示の操作T細胞;(b)本開示のキメラポリペプチド;及び/又は(c)本開示のキメラポリペプチドをコードする核酸を含む、医薬組成物に関する。
【0096】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、健康上の状態、例えば、癌などの増殖性疾患を治療するため、改善するため、又は疾患の発症を低減若しくは遅延させるために製剤化される。
【0097】
本明細書に記載される医薬組成物の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の本開示のキメラポリペプチドをコードする核酸及び薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、核酸は、ウイルスカプシド又は脂質ナノ粒子に封入されている。いくつかの実施形態において、核酸は、発現カセット又は発現ベクターに組み込まれる。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、又はレトロウイルスベクターである。
【0098】
いくつかの実施形態において、核酸を、宿主免疫細胞、例えば、Tリンパ球に導入して、核酸を含む組換え免疫細胞を産生させることができる。いくつかの実施形態において、核酸は、それを必要とする対象に投与することができる。
【0099】
本開示の核酸の細胞への導入は、当業者に公知の方法、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達などによって達成することができる。
【0100】
したがって、いくつかの実施形態において、核酸分子は、当該技術分野で公知のウイルス送達ビヒクル又は非ウイルス送達ビヒクルによって送達され得る。例えば、核酸分子は、宿主ゲノム中に安定に組み込まれ得るか、又はエピソーム的に複製され得るか、又は一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして宿主細胞中に存在し得る。したがって、いくつかの実施形態において、核酸分子は、エピソーム単位として宿主細胞中で維持及び複製される。いくつかの実施形態において、核酸分子は、宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれる。安定な組み込みは、古典的なランダムゲノム組換え技術を用いて、又はガイドRNA指向性CRISPR/Cas9ゲノム編集、若しくはNgAgo(Natronobacterium gregoryi Argonaute)を用いたDNAガイドエンドヌクレアーゼゲノム編集、若しくはTALENゲノム編集(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)などのより正確な技術を用いて達成することができる。いくつかの実施形態において、核酸分子は、一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして宿主細胞中に存在する。
【0101】
核酸分子は、ウイルスカプシド、若しくはリポソーム、若しくは脂質ナノ粒子(LNP)に封入することができ、又はエレクトロポレーションなどの当技術分野で公知のウイルス若しくは非ウイルス送達手段及び方法によって送達することができる。例えば、細胞への核酸の導入は、ウイルス形質導入によって達成され得る。非限定的な例において、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ウイルス形質導入を介して標的細胞に核酸を送達するように操作され得る。いくつかのAAV血清型が記載されており、公知の血清型の全てが、複数の多様な組織型の細胞に感染し得る。AAVは、毒性を示すことなく、インビボで広範な種及び組織に形質導入することができ、比較的穏やかな自然免疫応答及び適応免疫応答を生じさせる。
【0102】
レンチウイルス由来のベクター系もまた、ウイルス形質導入による核酸送達及び遺伝子治療に有用である。レンチウイルスベクターは、遺伝子送達ビヒクルとしていくつかの魅力的な特性を提供し、これには以下が含まれる:(i)宿主ゲノムへの安定なベクターの組み込みによる持続的な遺伝子送達、(ii)分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する能力、(iii)重要な遺伝子及び細胞療法の標的細胞型を含む広範な組織向性、(iv)ベクター形質導入後にウイルスタンパク質を発現しないこと、(v)ポリシストロン性配列又はイントロン含有配列などの複雑な遺伝要素を送達する能力、(vi)潜在的により安全な組み込み部位プロファイル、並びに(vii)ベクター操作及び産生のための比較的容易な系。
【0103】
いくつかの実施形態において、組成物は、本開示の少なくとも1つの操作T細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの操作T細胞は、対象に導入された場合に、同様の条件下で対照T細胞、例えば、操作されていないT細胞のエフェクター機能と比較して、増強されたエフェクター機能を示す。操作T細胞において増強されるエフェクター機能の例としては、成長速度(増殖)、死滅率、死滅率の種類、標的細胞阻害(細胞傷害性)、標的細胞殺傷、標的細胞生存、分化クラスター変化、マクロファージ活性化、B細胞活性化、サイトカイン産生、in vivo持続性、及び予備呼吸能の向上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による医薬組成物は、それを必要とする個体への投与前に、洗浄、処理、組み合わせ、補充、又は他の方法で変更することができる操作T細胞の培養物を含む。更に、投与は、様々な用量、時間間隔、又は複数回投与であり得る。
【0105】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による医薬組成物は、本開示のキメラポリペプチドを含む、操作T細胞を含む。
【0106】
本明細書で提供される医薬組成物は、組成物が対象に投与されることを可能にする任意の形態であり得る。いくつかの具体的な実施形態において、医薬組成物は、ヒトへの投与に適している。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の全般的に認められている薬局方に記載されていることを意味する。担体は、医薬組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルであり得る。生理食塩水及びデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液もまた、注射用溶液を含む液体担体として使用することができる。適切な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。適切な医薬担体の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(E.W.Martin著)に記載されている。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、個体への投与のために無菌的に製剤化される。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。当業者であれば、製剤が投与様式に適合する必要があることを理解するであろう。
【0107】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、個体への意図された投与経路に適するように製剤化される。例えば、医薬組成物は、非経口投与、腹腔内投与、結腸直腸投与、腹腔内投与、及び腫瘍内投与に適するように製剤化することができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与、経口投与、腹腔内投与、気管内投与、皮下投与、筋肉内投与、局所投与、又は腫瘍内投与用に製剤化され得る。
【0108】
注射用途に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即席調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は無菌である必要があり、容易に注射できる程度に流動的である必要がある。これは、製造及び貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌などの微生物の夾雑作用から保護する必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムの使用によって、維持することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって防止することができる。多くの場合、概して、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、及び/又は塩化ナトリウムを組成物中に含める。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0109】
滅菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。概して、分散液は、塩基性分散媒及び上記に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。
【0110】
いくつかの実施形態において、本開示の操作免疫細胞は、当業者に公知の技術を用いて対象への投与のために製剤化することができる。例えば、操作免疫細胞の集団を含む製剤は、薬学的に許容される賦形剤を含み得る。製剤中に含まれる賦形剤は、例えば、使用する操作免疫細胞及び投与様式によって目的が異なる。全般的に使用される賦形剤の例としては、限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、注射用水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組み合わせ、安定化剤、可溶化剤及び界面活性剤、緩衝剤及び保存剤、等張化剤、増量剤、並びに滑沢剤が挙げられる。操作免疫細胞を含む製剤は、非ヒト成分の非存在下で、例えば動物血清の非存在下で調製及び培養されたものであり得る。製剤は、操作免疫細胞の1つの集団、又は操作免疫細胞の2つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上の集団を含み得る。
【0111】
操作免疫細胞の集団を含む製剤は、当業者に公知の様式及び技術を用いて対象に投与することができる。例示的な様式としては、静脈内注射が挙げられるが、これに限定されない。他の様式としては、腫瘍内、皮内、皮下(S.C.、s.q.、sub-Q、Hypo)、筋肉内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、動脈内、髄内、心臓内、関節内(関節)、滑液内(関節液領域)、頭蓋内、脊髄内、及び髄腔内(髄液)が挙げられるが、これらに限定されない。製剤の非経口注射又は注入に有用なデバイスを用いて、このような投与を行うことができる。
【0112】
キット
本明細書に記載の方法を実施するためのキットも本明細書で提供される。キットは、本明細書に記載及び提供される操作免疫細胞(例えば、操作T細胞)、キメラポリペプチド、該キメラポリペプチドをコードする核酸、及び/又は医薬組成物のうちの1つ以上を含み得る。例えば、本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態において、本開示の1つ以上の操作T細胞を含む、キットである。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、本開示の1つ以上の医薬組成物を含む、キットである。いくつかの実施形態において、本開示のキットは、本開示の操作T細胞、キメラポリペプチド、該キメラポリペプチドをコードする核酸、及び/又は医薬組成物を作製するための、並びにこれらを使用するための書面による指示書を更に含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、提供されるT細胞、核酸、及び医薬組成物のいずれか1つを、それを必要とする対象に投与するために使用される、1つ以上のシリンジ(プレフィルドシリンジを含む)及び/又はカテーテル(プレフィルドシリンジを含む)を更に含む。いくつかの実施形態において、キットは、所望の目的のために、例えば、細胞の活性を調節するため、標的癌細胞を阻害するため、又はそれを必要とする対象において、健康上の状態を治療するために、他のキット構成要素と同時に又は連続的に投与することができる1つ以上の追加の治療薬を有し得る。
【0114】
例えば、上記のキットのいずれも、1つ以上の追加の試薬を更に含むことができ、このような追加の試薬は希釈緩衝液、再構成溶液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照発現ベクター、陰性対照T細胞集団、陽性対照T細胞集団、T細胞集団のex vivo産生用試薬から選択することができる。
【0115】
いくつかの実施形態において、キットの構成要素は、別々の容器に入れることができる。いくつかの他の実施形態において、キットの構成要素は、単一容器内で組み合わせることができる。例えば、本開示のいくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載される提供される免疫細胞、核酸、及び/又は医薬組成物のうちの1つ以上を1つの容器中に(例えば、滅菌ガラス又はプラスチックバイアル中に)含み、更なる治療薬を別の容器中に(例えば、滅菌ガラス又はプラスチックバイアル中に)含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に開示される方法を実施するために、キットの構成要素を使用するための指示書を更に含み得る。例えば、キットは、そのキット内の医薬組成物及び剤形に関する情報を含む添付文書を含み得る。概して、かかる情報は、患者及び医師が、封入された医薬組成物及び剤形を効果的かつ安全に使用するのに役立つ。例えば、本開示の組み合わせに関する以下の情報:薬物動態、薬力学、臨床試験、有効性パラメータ、適応症及び使用方法、禁忌、警告、注意、有害反応、過量投与、適切な用法及び用量、供給方法、適切な保存条件、参考資料、製造業者/流通業者の情報、並びに知的財産情報が添付文書に提供され得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に開示される方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための更なる指示書を含み得る。本方法を実施するための指示書は、概して、適切な記録媒体に記録されている。例えば、指示書は、紙又はプラスチックなどの基材上に印刷することができる。指示書は、添付文書としてキット中に、キット又はその構成要素の容器のラベル中(例えば、パッケージ又はサブパッケージに付随して)などに存在することができる。指示書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えばCD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する電子記憶データファイルとして存在することができる。場合によっては、実際の指示書はキット中に存在しないが、リモートソースから(例えば、インターネットを介して)指示書を得るための手段を提供することができる。この実施形態の例は、指示書を見ることができ、及び/又は指示書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含む、キットである。指示書と同様に、指示書を得るためのこの手段は、適切な基材上に記録することができる。
【0118】
本開示の方法
以下により詳細に記載されるように、本開示の一態様は、本明細書に記載される操作T細胞を生成する方法、操作T細胞を投与する方法、及び関連する健康上の状態、例えば増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、及び微生物感染(例えば、ウイルス感染)の個体を治療する方法に関する。
【0119】
操作T細胞を生成する方法
本開示のキメラポリペプチドをコードする核酸を、例えば、ヒトTリンパ球などの宿主細胞に導入して、該核酸を含有する操作T細胞を産生することができる。本開示の核酸分子の細胞への導入は、当業者に公知の方法、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達などによって達成することができる。
【0120】
核酸は、例えば、当該技術分野で公知のウイルス送達ビヒクル又は非ウイルス送達ビヒクルによって送達することができる。いくつかの実施形態において、核酸は、エピソーム単位として宿主細胞(例えば、T細胞)中で維持及び複製され得る。いくつかの実施形態において、核酸は、宿主細胞(例えば、T細胞)のゲノムに安定に組み込まれ得る。安定な組み込みは、古典的なランダムゲノム組換え技術を用いて、又はガイドRNA指向性CRISPR/Cas9ゲノム編集、若しくはNgAgo(Natronobacterium gregoryi Argonaute)を用いたDNAガイドエンドヌクレアーゼゲノム編集、若しくはTALENゲノム編集(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)などのより正確な技術を用いて達成することができる。いくつかの実施形態において、核酸は、一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして宿主細胞(例えば、T細胞)中に存在することができる。
【0121】
したがって、ある実施形態において、本明細書で提供されるのは、増強されたエフェクター機能を有する操作T細胞を生成するための方法であって、本開示のキメラポリペプチドのいずれか1つ又は該キメラポリペプチドをコードする核酸をT細胞に導入することを含む、方法である。いくつかの実施形態において、導入されたキメラポリペプチドは、キメラポリペプチドを含まない基準T細胞と比較して、操作T細胞におけるアデノシンの細胞内レベルの低下をもたらす。いくつかの実施形態において、導入されたキメラポリペプチドは、同様の条件下で対照T細胞、例えば、そのようなキメラポリペプチドを含むように操作されていないT細胞と比較して、操作T細胞の増強されたエフェクター機能をもたらす。いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも1つの組換え抗原特異的受容体をT細胞に導入することを更に含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの組換え抗原特異的受容体は、操作T細胞受容体(TCR)及び/又は操作キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0122】
治療方法
本明細書に記載される治療用組成物、例えば、操作T細胞、本開示のキメラポリペプチドをコードする核酸分子、及び医薬組成物のいずれか1つの投与は、増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、及び微生物感染(例えば、ウイルス感染)などの関連する健康上の状態の治療において、個体の治療に用いることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される1つ以上の操作T細胞、核酸分子、及び医薬組成物は、増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、及び慢性感染症などの1つ以上の健康上の状態を有する対象、それを有する疑いがある対象、又はその発症のリスクが高い可能性がある対象を治療する方法において使用するための治療薬に組み込むことができる。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物対象である。いくつかの実施形態において、対象は、増殖性疾患、自己免疫疾患、又は感染症を有するか、又はそれを有する疑いがある。いくつかの実施形態において、増殖性疾患は、癌である。いくつかの実施形態において、対象は、医師の管理下にある患者である。
【0123】
したがって、ある態様において、本明細書で提供されるのは、健康上の状態の予防及び/又は治療を必要とする対象において、その健康上の状態を予防及び/又は治療するための方法であって、(a)本開示の少なくとも1つの操作T細胞;及び/又は(b)本開示の医薬組成物を含む組成物を対象に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態において、健康上の状態は、増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、又は慢性感染症である。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物対象である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態において、操作T細胞は、対象に対して自己由来である。いくつかの実施形態において、操作T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)又は末梢血単核細胞(PBMC)から得られる。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象におけるアデノシン媒介性免疫抑制を阻害する。いくつかの実施形態において、対象におけるアデノシン媒介性免疫抑制は、基準対象と比較して、少なくとも10%、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約20倍、約50倍、約100倍、又は約200倍阻害される。いくつかの実施形態において、基準対象は、同じ組成物を投与されていない対象である。いくつかの実施形態において、基準対象は、アデノシンデアミナーゼ活性を有していない、及び/又はアデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーする(例えば、接着する、つなぐ、又は固定化する)ことができるポリペプチドモジュールと作動可能に連結されていないアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドを投与された対象である。
【0124】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、同様の条件下で対照T細胞、例えば、そのような組成物を投与されていないT細胞のエフェクター機能と比較して、操作T細胞の増強されたエフェクター機能を付与する。操作免疫細胞において増強されるエフェクター機能の例としては、成長速度(増殖)、死滅率、死滅率の種類、標的細胞阻害(細胞傷害性)、分化クラスター変化、マクロファージ活性化、B細胞活性化、サイトカイン産生、in vivo持続性、及び予備呼吸能の向上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本開示の組成物を含む免疫細胞のエフェクター機能は、同様の条件下で基準免疫細胞、例えば、そのような組成物を含むように操作されていない基準T細胞と比較して、少なくとも10%高い、例えば、約10%より少なくとも約10%高い、少なくとも約20%より高い、少なくとも約30%より高い、少なくとも約40%より高い、少なくとも約50%より高い、少なくとも約60%より高い、少なくとも約70%より高い、少なくとも約80%より高い、少なくとも約90%より高い、少なくとも約2倍より高い、約3倍より高い、約4倍より高い、約5倍より高い、約6倍より高い、約7倍より高い、約8倍より高い、約9倍より高い、約20倍より高い、約50倍より高い、約100倍より高い、又は約200倍より高いレベルで増強される。したがって、いくつかの実施形態において、基準免疫細胞は、本開示の組成物を含まない。例えば、いくつかの実施形態において、基準T細胞は、同じ組成物を投与されていないT細胞である。いくつかの実施形態において、基準T細胞は、アデノシンデアミナーゼ活性を有していない、及び/又はアデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーする(例えば、接着する、つなぐ、又は固定化する)ことができるポリペプチドモジュールと作動可能に連結されていないアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドを投与されたT細胞である。
【0125】
いくつかの実施形態において、増強されたエフェクター機能は、1つ以上のサイトカイン(例えば、インターフェロンガンマ(INFγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、及びインターロイキン-2(IL-2))の産生の増加を含む。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、同様の条件下で基準免疫細胞、例えば、基準T細胞と比較して、少なくとも10%、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約20倍、約50倍、約100倍、又は約200倍増加した1つ以上のサイトカインの産生をもたらす。いくつかの実施形態において、基準T細胞は、同じ組成物を投与されていないT細胞である。いくつかの実施形態において、基準T細胞は、アデノシンデアミナーゼ活性を有していない、及び/又はアデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーする(例えば、接着する、つなぐ、又は固定化する)ことができるポリペプチドモジュールと作動可能に連結されていないアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドを投与されたT細胞である。
【0126】
いくつかの実施形態において、組成物は、個別に(単剤療法)、又は第2の療法と組み合わせて対象に投与され、該第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、又は手術からなる群から選択される。
【0127】
本明細書に記載される治療方法の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、健康上の状態は、増殖性疾患又は感染症である。例示的な増殖性疾患としては、限定されないが、血管新生疾患、転移性疾患、腫瘍形成性疾患、腫瘍性疾患及び癌が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、増殖性疾患は、癌である。いくつかの実施形態において、癌は、小児癌である。いくつかの実施形態において、癌は、膵臓癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、乳癌、尿路上皮癌、肝臓癌、頭頸部癌、肉腫、子宮頸癌、胃癌、黒色腫、ぶどう膜黒色腫、胆管癌、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、及び神経膠芽腫である。
【0128】
いくつかの実施形態において、癌は、多剤耐性癌又は再発性癌である。本明細書に開示される組成物及び方法は、非転移性癌及び転移性癌の両方に適していることが企図される。したがって、いくつかの実施形態において、癌は、非転移性癌である。いくつかの他の実施形態において、癌は、転移性癌である。いくつかの実施形態において、対象に投与される組成物は、対象における癌の転移を阻害する。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象における腫瘍成長を阻害する。
【0129】
例示的な増殖性疾患としては、限定されないが、血管新生疾患、転移性疾患、腫瘍形成性疾患、腫瘍性疾患及び癌が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、増殖性疾患は、癌である。「癌」という用語は、概して、異常細胞の急速かつ無制限な成長を特徴とする疾患を指す。異常細胞は、固形腫瘍を形成し得るか、又は血液学的悪性腫瘍を構成し得る。癌細胞は、局所的に、又は血流及びリンパ系を介して身体の他の部分に拡散し得る。本開示の組成物及び方法によって治療することができる癌に関して、特定の制限はない。適切な癌の非限定的な例としては、卵巣癌、腎癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌などが挙げられる。
【0130】
本開示の組成物及び方法で適切に治療され得る他の癌としては、急性骨髄芽球性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、副腎皮質癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、脳癌、中枢神経系(CNS)癌、末梢神経系(PNS)癌、乳癌、子宮頸癌、結腸及び直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイングファミリーの腫瘍(例えば、ユーイング肉腫)、眼癌、移行上皮癌、腟癌、骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌及び下咽頭癌、肝臓癌、肺癌、肺カルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、黒色腫皮膚癌、非黒色腫皮膚癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮癌(例えば、子宮肉腫)、移行上皮癌、腟癌、外陰癌、中皮腫、扁平上皮細胞若しくは類表皮癌、気管支腺腫、絨毛癌、頭頸部癌、奇形癌、又はワルデンシュトレームマクログロブリン血症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
特に適切な癌としては、乳癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、中皮腫、白血病、リンパ腫、脳癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、黒色腫、膀胱癌、骨肉腫、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、腎腫瘍、神経芽細胞腫、及び癌腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
いくつかの実施形態において、癌は、多剤耐性癌又は再発性癌である。本明細書に開示される組成物及び方法は、非転移性癌及び転移性癌の両方に適していることが企図される。したがって、いくつかの実施形態において、癌は、非転移性癌である。いくつかの他の実施形態において、癌は、転移性癌である。いくつかの実施形態において、対象に投与される組成物は、対象における癌の転移を阻害する。例えば、いくつかの実施形態において、対象に投与される組成物は、対象における転移性結節を低減させることができる。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象における腫瘍成長を阻害する。
【0133】
いくつかの実施形態において、増殖性疾患は、自己免疫疾患である。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、インスリン依存性真性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、甲状腺炎、クローン病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、白斑、栄養障害型表皮水疱症、全身性紅斑性狼瘡、中等度から重度の尋常性乾癬、乾癬性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び移植片対宿主病からなる群から選択される。
【0134】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、標的癌細胞の増殖を阻害し、かつ/又は対象における癌の腫瘍成長を阻害する。例えば、標的細胞は、その増殖が低減する場合、その病理学的又は病原性挙動が低減する場合、標的細胞が破壊又は死滅する場合などで阻害されることがある。阻害には、測定された病理学的又は病原性挙動の少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%の低減が含まれる。いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に開示される有効数の操作免疫細胞を個体に投与することを含み、操作免疫細胞は、操作免疫細胞を投与されていない対象における標的細胞の増殖及び/又は標的癌の腫瘍成長と比較して、対象における標的細胞の増殖を阻害し、及び/又は標的癌の腫瘍成長を阻害する。
【0135】
本明細書に記載される組成物、例えば、操作免疫細胞、核酸、及び医薬組成物の投与は、免疫応答の刺激において使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される操作免疫細胞、核酸、及び/又は医薬組成物のうちの1つ以上は、化学療法による癌の寛解誘導後、又は自己若しくは同種造血幹細胞の移植後に個体に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、本明細書に開示される治療用組成物のうちの1つを投与されていない対象におけるこれらの分子の産生と比較して、投与された対象におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、及び/又はインターロイキン-2(IL-2)の産生の増加を必要としている、対象に投与される。
【0136】
いくつかの実施形態において、投与される組成物は、免疫細胞、例えば、T細胞の増強されたエフェクター機能を付与する。操作免疫細胞において増強されるエフェクター機能の例としては、成長速度(増殖)、死滅速度、死滅率の種類、標的細胞阻害(細胞傷害性)、標的細胞殺傷、標的細胞生存、分化クラスター変化、マクロファージ活性化、B細胞活性化、サイトカイン産生、in vivo持続性、及び予備呼吸能の向上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本開示の組成物を含む免疫細胞のエフェクター機能は、同様の条件下で基準免疫細胞、例えば、そのような組成物を投与されていない基準T細胞と比較して、少なくとも10%高い、例えば、約10%より少なくとも約10%高い、少なくとも約20%より高い、少なくとも約30%より高い、少なくとも約40%より高い、少なくとも約50%より高い、少なくとも約60%より高い、少なくとも約70%より高い、少なくとも約80%より高い、少なくとも約90%より高い、少なくとも約2倍より高い、約3倍より高い、約4倍より高い、約5倍より高い、約6倍より高い、約7倍より高い、約8倍より高い、約9倍より高い、約20倍より高い、約50倍より高い、約100倍より高い、又は約200倍より高いレベルで増強される。いくつかの実施形態において、基準免疫細胞は、本開示の組成物を含まない。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、免疫細胞におけるADAの細胞表面発現の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、同様の条件下で基準免疫細胞、例えば、基準T細胞と比較して、少なくとも10%、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約20倍、約50倍、約100倍、又は約200倍増加したADAの細胞表面発現をもたらす。いくつかの実施形態において、基準T細胞は、同じ組成物を投与されていないT細胞である。いくつかの実施形態において、基準T細胞は、アデノシンデアミナーゼ活性を有していない、及び/又はアデノシンデアミナーゼ活性をT細胞の表面にアンカーすることができるポリペプチドモジュールと作動可能に連結されていないアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドを投与されたT細胞である。
【0137】
本明細書に記載される組成物、例えば、操作T細胞、核酸、及び/又は医薬組成物の有効量は、意図される目標、例えば、癌の退縮に基づいて判断することができる。例えば、既存の癌が治療されている場合、本明細書に開示される組成物の量は、組成物の投与が癌の予防のためである場合よりも多くなり得る。当業者は、本開示を考慮して、組成物の投与量及び投与頻度を判断することができるであろう。また、投与量は、投与回数及び用量の両方に応じて、投与される個体、個体の状態、及び望まれる保護により異なる。組成物の正確な量はまた、医師の判断に依存し、対象ごとに固有である。投与頻度は、医師の判断に応じて、1~2日から、2~6時間まで、6~10時間まで、1~2週間まで、又はそれ以上の範囲であり得る。
【0138】
組成物の投与量の判断は、当業者によって行われ、癌の程度及び重症度、並びに操作免疫細胞、例えば、T細胞が既存の癌の治療又は癌の予防のために投与されるかどうかに部分的に依存する。例えば、予防を目的とする場合には、投与間隔を長くし、組成物の量を少なくすることが採用できる。例えば、1回当たりの組成物の投与量は、活動性疾患の治療において投与される用量の50%であり得、投与は週1回の間隔であり得る。当業者であれば、本開示に照らして、組成物の有効量及び投与頻度を判断することができるであろう。この判断は、存在する特定の臨床状況(例えば、癌の種類、癌の重症度)に部分的に依存する。
【0139】
いくつかの実施形態において、治療対象、例えば、患者に本明細書に開示される組成物の連続供給を提供することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態において、関心領域(腫瘍など)の連続灌流が好適であり得る。灌流の期間は、特定の対象及び状況に対して臨床医によって選択されるが、時間は、約1~2時間から、2~6時間まで、約6~10時間まで、約10~24時間まで、約1~2日まで、約1~2週間まで、又はそれ以上の範囲であり得る。概して、連続灌流による組成物の用量は、単回又は複数回の注射によって与えられる用量と同等であり、用量が投与される期間に合わせて調整される。
【0140】
いくつかの実施形態において、投与は静脈内注入によるものである。本明細書に開示される操作T細胞、核酸、及び/又は医薬組成物の有効量は、意図される目標、例えば、腫瘍退縮に基づいて判断することができる。例えば、既存の癌が治療されている場合、投与される細胞の数は、本明細書に開示される操作免疫細胞、例えば、T細胞の投与が癌の予防のためである場合よりも多くなり得る。当業者であれば、本開示を考慮して、投与される細胞数及び投与頻度を判断することができるであろう。また、投与量は、投与回数及び用量の両方に応じて、投与される個体、個体の状態、及び望まれる保護により異なる。治療用組成物の正確な量もまた、医師の判断に依存し、個体ごとに固有である。投与頻度は、医師の判断に応じて、1~2日から、2~6時間まで、6~10時間まで、1~2週間まで、又はそれ以上の範囲であり得る。概して、連続灌流による治療用組成物の用量は、単回又は複数回の注射によって与えられる用量と同等であり、用量が投与される期間に合わせて調整される。
【0141】
操作免疫細胞の対象への投与。
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、本明細書で提供される有効量又は有効数の操作免疫細胞、例えば、T細胞を、それを必要とする対象に投与することを伴う。この投与工程は、当該分野における任意の移植送達方法を用いて達成することができる。例えば、操作免疫細胞、例えば、操作T細胞は、対象の血流に直接注入され得るか、又は他の方法で対象に投与され得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、所望の効果が生じるように、所望の部位に導入された細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路によって、操作免疫細胞、例えば、操作T細胞を個体に投与することを含み、この用語は、「導入する」、「埋め込む」、及び「移植する」という用語と互換的に使用される。操作免疫細胞、例えば、操作T細胞又はそれらの分化した子孫は、投与された細胞又は細胞の構成要素の少なくとも一部分が生存したままである個体の所望の位置に送達する任意の適切な経路によって投与することができる。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間、例えば24時間という短いものから、数日、数年、又は更に個体の一生、例えば長期生着であり得る。
【0143】
予防的に提供される場合、本明細書に記載される操作免疫細胞、例えば、操作T細胞は、治療される疾患又は健康上の状態のあらゆる症状の前に、対象に投与することができる。したがって、いくつかの実施形態において、操作T細胞集団の予防的投与は、疾患又は健康上の状態の症状の発生を予防する。
【0144】
いくつかの実施形態において治療的に提供される場合、操作免疫細胞は、疾患又は健康上の状態の症状又は徴候の発症時(又は発症後)に、例えば、疾患又は健康上の状態の発症時に提供される。
【0145】
本明細書に記載される様々な実施形態において使用するために、本明細書に開示される操作免疫細胞、例えば、T細胞の有効量は、少なくとも102細胞、少なくとも5×102細胞、少なくとも103細胞、少なくとも5×103細胞、少なくとも104細胞、少なくとも5×104細胞、少なくとも105細胞、少なくとも2×105細胞、少なくとも3×105細胞、少なくとも4×105細胞、少なくとも5×105細胞、少なくとも6×105細胞、少なくとも7×105細胞、少なくとも8×105細胞、少なくとも9×105細胞、少なくとも1×106細胞、少なくとも2×106細胞、少なくとも3×106細胞、少なくとも4×106細胞、少なくとも5×106細胞、少なくとも6×106細胞、少なくとも7×106細胞、少なくとも8×106細胞、少なくとも9×106細胞、又はその倍数であり得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、操作免疫細胞、例えば、T細胞は、治療を必要とする対象に対して自己由来ではない。いくつかの実施形態において、養子細胞療法は、同種養子細胞療法である。例えば、いくつかの実施形態において、操作免疫細胞、例えば、T細胞は、治療を必要とする対象に対して同種細胞である。同種養子細胞療法では、操作免疫細胞、例えば、T細胞は、養子細胞療法を受ける個体に由来しない。同種細胞療法は、概して、免疫細胞を提供する個体(ドナー)が、細胞療法を受ける個体とは異なる(同じ種の)個体である療法を指す。例えば、個体に投与される操作免疫細胞の集団は、1人以上の血縁関係のないドナーに由来するか、又は1人以上の同一でない兄弟姉妹に由来する。したがって、操作免疫細胞は、1人以上のドナーに由来し得るか、又は自己供給源から得られ得る。いくつかの実施形態において、操作免疫細胞は、それを必要とする対象に投与する前に、培養において増殖される。
【0147】
いくつかの実施形態において、方法又は経路による対象への細胞組成物(例えば、本明細書に記載される細胞のいずれかによる複数の操作免疫細胞、例えば、T細胞を含む組成物)を送達することにより、所望の部位における細胞組成物が少なくとも部分的に局在化する。操作免疫細胞、例えば、T細胞を含む組成物は、対象において有効な治療をもたらす任意の適切な経路によって投与することができ、例えば、投与は、送達された組成物の少なくとも一部分、例えば、少なくとも1×104個の細胞が一定期間、所望の部位に送達される、対象における所望の部位への送達をもたらす。適切な投与の例示的な様式としては、注射、注入、及び点滴注入が挙げられる。「注射」には、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、経路は静脈内である。細胞の送達では、注射又は注入による送達が標準的な投与様式と見なされることが多い。
【0148】
いくつかの実施形態において、操作免疫細胞、例えば、T細胞は、例えば、注入又は注射を介して全身投与される。例えば、本明細書に記載される操作免疫細胞、例えば、T細胞の集団は、対象の循環系に入ることにより代謝及び他の類似の生物学的プロセスに供されるように、標的部位、組織、又は器官に直接投与される以外の方法で投与される。
【0149】
対象の疾患又は健康上の状態の予防又は治療のための、本明細書で提供される組成物のいずれかを含む治療の有効性は、熟練した臨床医によって判断することができる。しかし、当業者であれば、同様の条件下で未治療の対象と比較して、疾患の徴候又は症状又はマーカーのいずれか1つ又は全てが改善又は寛解される場合、予防又は治療が有効であると見なされることを理解するであろう。有効性は、入院又は医学的介入の必要性の減少により評価された場合、対象が悪化し得ない(例えば、疾患の進行が停止するか、又は少なくとも遅くなる)ことによっても測定できる。これらの兆しを測定する方法は、当業者に知られており、かつ/又は本明細書に記載されている。治療には、対象又は動物(いくつかの非限定的な例としては、ヒト又は哺乳動物が挙げられる)における疾患の任意の治療が含まれ、また、同様の条件下で未治療の対象と比較して、(1)疾患を阻害すること、例えば、症状の進行を停止すること若しくは遅らせること;又は(2)疾患を緩和すること、例えば、症状の退縮を引き起こすこと;及び(3)症状の発症を予防すること若しくはその可能性を低減することが含まれる。
【0150】
有効性の程度の測定は、治療される疾患及び経験した症状に関して選択されるパラメータに基づく。概して、疾患の程度又は重症度と相関することが知られているか又は認められているパラメータ、例えば、医学界において認められているか又は使用されているパラメータが選択される。例えば、固形癌の治療において、適切なパラメータは、同様の条件下で未治療の対象と比較した、転移の数及び/又はサイズの低減、無増悪生存期間の月数、全生存期間、疾患のステージ又はグレード、疾患進行速度、診断バイオマーカーの低減(例えば、限定されないが、循環腫瘍DNA又はRNAの低減、循環無細胞腫瘍DNA又はRNAの低減など)、及びこれらの組み合わせを含み得る。有効用量及び有効性の程度は、概して、単一の対象及び/又は対象の群若しくは集団に関連して判断されることが理解されるであろう。本開示の治療方法は、同様の条件下で未治療の対象と比較して、症状及び/又は疾患重症度及び/又は疾患バイオマーカーを、少なくとも約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99又は100%低減する。
【0151】
上述のように、医薬組成物の治療有効量は、疾患又は健康上の状態を有するか、それを有する疑いがあるか、又はそのリスクがある人などの対象に投与したときに、特定の有益な効果を促進するのに十分な医薬組成物の量であり得る。いくつかの実施形態において、有効量は、同様の条件下で未治療の対象と比較して、疾患若しくは健康上の状態の症状の発症を予防若しくは遅延させる、疾患若しくは健康上の状態の症状の経過を変化させる(例えば、限定されないが、疾患の症状の進行を遅らせる)、又は疾患若しくは健康上の状態の症状を逆転させるのに十分な量を含む。任意の所与の場合について、適切な有効量は、日常的な実験を用いて当業者によって判断され得ることが理解される。
【0152】
追加の療法
上述したように、本明細書に開示される組成物、例えば、操作免疫細胞(例えば、操作T細胞)及び医薬組成物のいずれか1つは、それを必要とする対象に、単一の療法(例えば、単剤療法)として投与することができる。加えて又はあるいは、本開示のいくつかの実施形態において、本明細書に記載される操作免疫細胞及び医薬組成物のうちの1つ以上を、1つ以上の追加の(例えば、補助的な)療法、例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの追加の療法と組み合わせて対象に投与することができる。本開示の組成物と組み合わせて施される適切な療法としては、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び手術が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な療法には、化学療法剤、抗癌剤、及び抗癌療法剤などの治療薬が含まれる。
【0153】
1つ以上の追加の療法「と組み合わせた」投与には、同時(並行)投与及び任意の順序での連続投与が含まれる。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、及び手術からなる群から選択される。本明細書で使用される化学療法という用語は、抗癌剤を包含する。本明細書に開示される方法には、様々な種類の抗癌剤を適切に使用することができる。抗癌剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ポドフィロトキシン、抗体(例えば、モノクローナル又はポリクローナル抗体)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標)又はGlivec(登録商標)))、ホルモン治療、可溶性受容体、及び他の抗悪性腫瘍薬が挙げられる。
【0154】
トポイソメラーゼ阻害剤もまた、本明細書で使用することができる別の種類の抗癌剤である。トポイソメラーゼは、DNAのトポロジーを維持する必須酵素である。I型又はII型トポイソメラーゼを阻害すると、適切なDNAのスーパーコイル化が乱れることにより、DNAの転写及び複製の両方に支障をきたす。一部のI型トポイソメラーゼ阻害剤には、イリノテカン及びトポテカンなどのカンプトテシンが含まれる。II型阻害剤の例としては、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、及びテニポシドが挙げられる。これらは、American Mayapple(アメリカハッカクレン)(Podophyllum peltatum)の根に天然に存在するアルカロイドであるエピポドフィロトキシンの半合成誘導体である。
【0155】
抗悪性腫瘍薬としては、免疫抑制剤のダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミドが挙げられる。抗悪性腫瘍化合物は、概して、細胞のDNAを化学的に修飾することによって作用する。
【0156】
アルキル化剤は、細胞内に存在する条件下で多くの求核性官能基をアルキル化することができる。シスプラチン及びカルボプラチン、並びにオキサリプラチンはアルキル化剤である。これらは、生物学的に重要な分子中のアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、及びホスフェート基と共有結合を形成することにより、細胞機能を損なう。
【0157】
ビンカアルカロイドは、チューブリン上の特定の部位に結合し、チューブリンの微小管への集合を阻害する(細胞周期のM期)。ビンカアルカロイドとしては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、及びビンデシンが挙げられる。
【0158】
代謝拮抗物質は、プリン(アザチオプリン、メルカプトプリン)又はピリミジンに似ており、これらの物質が細胞周期の「S」期にDNAに組み込まれるのを防ぎ、正常な発生及び分裂を停止させる。代謝拮抗物質はRNA合成にも影響を与える。
【0159】
植物アルカロイド及びテルペノイドは植物から得られ、微小管機能を妨げることによって細胞分裂をブロックする。微小管は細胞分裂に不可欠であるので、微小管なしでは、細胞分裂は起こり得ない。主な例は、ビンカアルカロイド及びタキサンである。
【0160】
ポドフィロトキシンは、消化を助けることが報告されている植物由来化合物であるだけなく、他の2つの細胞増殖抑制薬であるエトポシドとテニポシドの生成にも使用されている。これらは、細胞がG1期(DNA複製の開始)及びDNAの複製(S期)に入るのを妨げる。
【0161】
グループとしてのタキサンには、パクリタキセル及びドセタキセルが含まれる。パクリタキセルは、元々はタキソールとして知られていた天然物で、最初はタイヘイヨウイチイの樹皮から誘導された。ドセタキセルは、パクリタキセルの半合成類似体である。タキサンは微小管の安定性を高め、後期における染色体の分離を防ぐ。
【0162】
いくつかの実施形態において、抗癌剤は、レミケード、ドセタキセル、セレコキシブ、メルファラン、デキサメタゾン(Decadron(登録商標))、ステロイド、ゲムシタビン、シスプラチン、テモゾロミド、エトポシド、シクロホスファミド、テモダール、カルボプラチン、プロカルバジン、グリアデル、タモキシフェン、トポテカン、メトトレキサート、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、タキソール、タキソテール、フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、ゼローダ、CPT-11、インターフェロンアルファ、ペグ化インターフェロンアルファ(例えば、PEG INTRON-A)、カペシタビン、シスプラチン、チオテパ、フルダラビン、カルボプラチン、リポソームダウノルビシン、シタラビン、ドキセタキソール、パシリタキセル(pacilitaxel)、ビンブラスチン、IL-2、GM-CSF、ダカルバジン、ビノレルビン、ゾレドロン酸、パルミトロネート(palmitronate)、ビアキシン、ブスルファン、プレドニゾン、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、ビスホスホネート、三酸化ヒ素、ビンクリスチン、ドキソルビシン(Doxil(登録商標))、パクリタキセル、ガンシクロビル、アドリアマイシン、エストラウスチンリン酸ナトリウム(Emcyt(登録商標))、スリンダク、エトポシド、及びこれらの任意の組み合わせから選択することができる。
【0163】
他の実施形態において、抗癌剤は、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドキソルビシン、インターフェロン-アルファ、レナリドミド、メルファラン、ペグ化インターフェロン-アルファ、プレドニゾン、サリドマイド、又はビンクリスチンから選択することができる。
【0164】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される予防方法及び/又は治療方法は、免疫療法を更に含む。いくつかの実施形態において、免疫療法は、1つ以上のチェックポイント阻害剤の投与を含む。したがって、本明細書に記載される治療方法のいくつかの実施形態は、1つ以上の免疫チェックポイント分子を阻害する化合物の更なる投与を含む。免疫チェックポイント分子の非限定的な例としては、CTLA4、PD-1、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、TIM3、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、1つ以上の免疫チェックポイント分子を阻害する化合物は、アンタゴニスト抗体を含む。本明細書に開示される組成物及び方法に適したアンタゴニスト抗体の例としては、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、トレメリムマブ、及びアベルマブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
いくつかの態様において、1つ以上の抗癌療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態において、放射線療法は、癌細胞を死滅させるための放射線の投与を含み得る。放射線は、DNAなどの細胞内の分子と相互作用して、細胞死を誘導する。放射線はまた、細胞膜及び核膜、並びに他の細胞小器官にも損傷を与え得る。放射線の種類によって、DNA損傷のメカニズムが異なる場合があり、相対的な生物学的効果も異なる。例えば、重粒子(すなわち、陽子、中性子)はDNAを直接損傷し、相対的な生物学的効果が大きくなる。電磁放射線は、主に細胞内の水分がイオン化することによって生じる短寿命のヒドロキシルフリーラジカルを介して間接的にイオン化をもたらす。放射線の臨床応用は、外部ビーム放射線(外部線源から)及び近接照射療法(患者に移植又は挿入された放射線源を使用する)で構成される。外部ビーム放射線は、X線及び/又はガンマ線で構成され、近接照射療法では崩壊してアルファ粒子又はベータ粒子をガンマ線とともに放出する放射性核種を用いる。また、本明細書において企図される放射線には、例えば、癌細胞への放射性同位体の指向性送達が含まれる。本明細書では、マイクロ波及びUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図される。
【0166】
放射線は、単回線量又は線量分割スケジュールで少量ずつ続けて投与することができる。本明細書で企図される放射線の量は、例えば、約5~約80、約10~約50Gy、又は約10Gyを含む、約1~約100Gyの範囲である。総線量は、分割レジメンで適用することができる。例えば、レジメンは、2Gyの分割された個別線量を含み得る。放射性同位体の線量範囲は多岐にわたり、同位体の半減期、並びに放出される放射線の強度及び種類によって異なる。放射線が放射性同位元素の使用を含む場合、同位体は、放射性ヌクレオチドを標的組織(例えば、腫瘍組織)に運ぶ治療用抗体などの標的化剤にコンジュゲートされ得る。
【0167】
本明細書に記載される手術は、癌性組織の全部又は一部が物理的に除去、施術、及び/又は破壊される切除を含む。腫瘍切除は、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除去することを指す。腫瘍切除に加えて、手術による治療には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、及び顕微鏡下手術(モース手術)が含まれる。前癌又は正常組織の除去もまた本明細書において企図される。
【0168】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示による組成物は、単一の療法(単剤療法)として個別に、又は第1の療法を少なくとも1つの追加の療法(例えば、第2の療法)と組み合わせたものとして、対象に投与される。いくつかの実施形態において、第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、又は手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、同時に施される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法と同時に施される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、連続的に施される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法の前に施される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法の後に施される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法の前及び/又は後に施される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、交代で施される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、単一製剤で一緒に施される。
【0169】
本明細書に記載される態様及び実施形態の各々は、実施形態又は態様の文脈から明示的又は明確に除外されない限り、一緒に使用することができる。
【0170】
本開示で言及された全ての刊行物及び特許出願は、各々の個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0171】
本明細書に引用されたいずれの参考文献も先行技術を構成すると認めるものではない。参考文献の考察は、それらの著者が主張することを述べており、本出願人は、引用された文書の正確さ及び妥当性に異議を申し立てる権利を留保する。本明細書では、科学雑誌論文、特許文書、及び教科書を含むいくつかの情報源が言及されているが、この参考文献は、これらの文書のいずれかが当技術分野における共通の全般知識の一部を形成することを認めるものではないことが明確に理解されるであろう。
【0172】
本明細書に示される全般的な方法の考察は、例示目的のみを意図している。他の代替方法及び代替物は、本開示を検討すれば当業者には明らかであり、本出願の趣旨及び範囲内に含まれるものである。
【実施例】
【0173】
本発明の実施では、別段の指示がない限り、当業者に周知である分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来技術を用いる。このような技術は、Sambrook,J.,&Russell,D.W.(2012)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(4th ed.).Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory and Sambrook,J.,& Russel,D.W.(2001).Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.).Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory(jointly referred to herein as「Sambrook」);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology.New York,NY:Wiley(2014年までの付録を含む);Bollag,D.M.et al.(1996).Protein Methods.New York,NY:Wiley-Liss;Huang,L.et al.(2005).Nonviral Vectors for Gene Therapy.San Diego:Academic Press;Kaplitt,M.G.et al.(1995).Viral Vectors:Gene Therapy and Neuroscience Applications.San Diego,CA:Academic Press;Lefkovits,I.(1997).The Immunology Methods Manual:the Comprehensive Sourcebook of Techniques.San Diego,CA:Academic Press;Doyle,A.et al.(1998).Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology.New York,NY:Wiley;Mullis,K.B.,Ferre,F.& Gibbs,R.(1994).PCR:the Polymerase Chain Reaction.Boston:Birkhauser Publisher;Greenfield,E.A.(2014).Antibodies:A Laboratory Manual(2nd ed.).New York,NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press;Beaucage,S.L.et al.(2000).Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry.New York,NY:Wiley,(2014年までの付録を含む);及びMakrides,S.C.(2003)などの文献で十分に説明されている。Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells.Amsterdam,NL:Elsevier Sciences B.V.を参照されたく、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
更なる実施形態は、以下の実施例において更に詳細に開示され、これらは例示のために提供され、本開示又は特許請求の範囲の範囲を限定することを決して意図するものでない。
【0175】
実施例1.全般的な材料及び方法
ウイルスベクター構築物:以下のCAR:CD19-28z、CD19-BBz、GD2-BBz及びHer2-BBz(Neelapu et al.2017)をコードするMSGVレトロウイルスベクターがこれまでに記載されている。HA-28z CARを、(Rachel et al)においてこれまでに記載されているように、GD2-28z CARプラスミドの14G2a scFvに点変異を導入してE101K変異を作製することによって作製した。
【0176】
T細胞の単離:健常ドナーのバフィーコートを、IRB免除プロトコル下でStanford Blood Centerから購入した。RosetteSepヒトT細胞濃縮キット(Stem Cell Technologies)を製造業者のプロトコルに従って使用して、初代ヒトT細胞を単離した。単離されたT細胞を、CryoStor CS10凍結保存培地(Stem Cell Technologies)中で凍結保存した。抗PE MicroBeads(Miltenyi Biotec)及びLD autoMACS(Miltenyi Biotec)カラムを製造業者のプロトコルに従って使用して、CD39-T細胞を精製した。枯渇効率をフローサイトメトリーによって評価した。
【0177】
ヒトCAR T細胞産生:組織培養処理されていない12ウェルプレートを、PBS中25μg/mlのレトロネクチン(Takara)1mlで4℃で一晩コーティングした。プレートをPBSで洗浄し、2%BSAで15分間ブロッキングした。解凍したレトロウイルス上清をウェル当たり約1mlで加え、細胞を添加する前に32℃で3,200rpmで2時間遠心分離した。初代ヒトT細胞を解凍し、完全培地(10%ウシ胎児血清、10mM N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N9-2-エタンスルホン酸、2mM GlutaMAX、100U/mLペニシリン(Gibco)、及び100U/mL(Peprotech)を添加したRPMI1640)中で、Human T-Expander CD3/CD28 Dynabeads(Gibco)を3:1のビーズ:細胞比で用いて活性化した。T細胞を、活性化後2日目及び3日目にレトロウイルスベクターで形質導入した。活性化後4日目にビーズを取り除いた。
【0178】
細胞株:CD19+Nalm6-GL B-ALL細胞株は、D.Barrett(Barrett 2011)によって提供された。Nalm6-GD2は、Nalm6-GLをGD2シンターゼ及びGD3シンターゼのcDNAと同時形質導入することによって作製した。全ての細胞株を完全培地(CM)(10%FBS、10mM HEPES、2mM GlutaMAX、100U ml-1ペニシリン、及び100μg ml-1ストレプトマイシン(Gibco)を添加したRPMI)中で培養した。全ての細胞株のSTR DNAプロファイリングをGenetica Cell Line testingにより年1回実施した。この研究で使用した細胞株はいずれも、一般的に誤って同定された細胞株レジストリに含まれなかった。in vivo実験に使用する前に、細胞株をMycoAlert検出キット(Lonza)で試験した。試験した全ての細胞株は陰性であった。
【0179】
フローサイトメトリー:抗CD19 CARイディオタイプ抗体は、B.Jena及びL.Cooperによって提供された。1A7抗14G2aイディオタイプ抗体は、NCI Frederick及びUniversity of Texas M.D.Anderson Cancer Centerから入手した。Her2 CARをヒトHer2-Fc組換えタンパク質(R&D)を使用して検出した。イディオタイプ抗体及びFc融合タンパク質を、Dylight650抗体標識キット(Thermo Fisher)を用いて社内でコンジュゲートした。T細胞表面表現型を、以下の抗体を用いて評価した。
BioLegendから:CD4-APC-Cy7(クローンOKT4)、CD8-PerCp-Cy5.5(クローンSK1)、TIM-3-BV510(クローンF38-2E2)、CD39-FITC、PE又はAPC-Cy7(クローンA1)、CD3-PacBlue(クローンHIT3a);
eBioscienceから:PD-1-PE-Cy7(クローンeBio J105)、LAG-3-PE(クローン3DS223H)、CD45RO-PE-Cy7(クローンUCHL1)、CD45-PerCp-Cy5.5(クローンHI30)、CCR7-PE(クローン3D12);
BDから:LAG-3-BV421(クローンT47-530)、CD45RA-FITC又はBV711(クローンHI100)、CD62L-BV605(クローンDREG-56)、CD73-PE-Cy7又はBV510(クローンAD2)、CD4-BUV395(クローンSK3)、CD8-BUV805(クローンSK1)。
【0180】
増殖アッセイ:T細胞を2.5μM CTVで、37℃で10分間標識し、続いて5mlの氷冷PBS 2%FBSを添加して反応をクエンチした。次に、細胞を完全RPMI 1640で洗浄し、5×104個の細胞を活性化し、1又は5μg/mlのCD19又は1A7イディオタイプで4℃で一晩コーティングされた96ウェルプレート中で培養した。増殖アッセイを、外因性IL-2の非存在下で行った。72~96時間後、細胞増殖の指標としてのCTV希釈度をフローサイトメトリーによって評価した。
【0181】
抑制アッセイ:IL-2分泌阻害を評価するために、5×104個のCD19 CAR T細胞、5×104個のNalm6腫瘍細胞を、5×104個のHA CAR又はモックT細胞と共に、96ウェル平底プレート中の300μLのCM中で24時間培養した。各条件について三連のウェルをプレーティングした。培養上清を回収し、ELISA(BioLegend)によってIL-2について分析した。
【0182】
共培養アッセイ:CAR-T細胞を1μMのCPI444(CORVUS BIOPHARMA)と共に2~24時間培養した後、(特に明記しない限り)腫瘍細胞又はプレート結合イディオタイプと1又は5μg/mlの濃度で共培養した。a2aRを刺激するために、細胞を0.01~0.1mMのNECA(Torcis)で処理した。細胞傷害性アッセイでは、およそ5×104個の腫瘍細胞を、96ウェル平底プレートにおいて200μLのCM中で示された比率でCAR T細胞と共培養した。10倍拡大表示でウェル当たり4枚の画像を、各時点で収集した。腫瘍細胞成長を、IncuCyte ZOOM Live-Cell分析システム(Essen Bioscience)を用いて2~3時間ごとにウェル当たりの全積分GFP強度を測定することによって定量化した。GFPシグナルを時間0のシグナルに正規化した。24時間後に細胞培養上清を採取し、インターロイキン-2(IL-2)及びインターフェロン-gの濃度を酵素結合免疫吸着アッセイ(Biolegend)によって測定した。各条件について三連のウェルをプレーティングした。全ての共培養実験は、本文中に異なる記載がない限り、活性化後10日目~16日目の間に実施した。
【0183】
CRISPRノックアウト:P3初代細胞4D-Nucleofector XキットS(Lonza)を使用した一過性Cas9/gRNA(RNP)複合体エレクトロポレーションによって、CRISPR-Cas9遺伝子ノックアウトを行った。培養4日目に、HA-28z CAR T細胞を計数し、ペレット化し、反応液18μL当たり1.5×106~2×106個の細胞でP3緩衝液に再懸濁した。3.3μgのAlt-R.Sp(Streptococcus pyogenes)Cas9ヌクレアーゼのCas9タンパク質(IDT)及び120pmolの化学修飾された合成sgRNA(Synthego)(6:1のgRNA:Cas9モル比)を1反応当たり室温で10分間、事前に複合体化させて、リボ核タンパク質複合体(RNP)を作製した。18μLの細胞懸濁液をRNPと混合し、16ウェルのキュベットストリップ中でEO-115プロトコルを用いてエレクトロポレーションした。細胞を37℃で30分間、200μLのT細胞培地中で回収し、次いで、上記のように増殖させた。ノックダウン効率を、TIDE及び/又はフローサイトメトリーを用いて測定した。対照HA-28z CAR T細胞に、セーフハーバー遺伝子座AAVS1を標的とするgRNAをエレクトロポレーションした。以下のgRNA標的配列を使用した。
【0184】
AAVS1:GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号1);
【0185】
ADORA2a-ガイド1:GUCUGUGGCCAUGCCCAUCA(配列番号2);
【0186】
ADORA2a-ガイド2:UACACCGAGGAGCCCAUGAU(配列番号3);
【0187】
CD73-ガイド1:GCGGGCGCCCGCGCGGCUCG(配列番号4);
【0188】
CD73-ガイド2:CUAUGUGUCCCCGAGCCGCG(配列番号5);
【0189】
CD39:UGGCACCCUGGAAGUCAAAG(配列番号6)。
【0190】
バルクRNA-Seq:バルクRNA単離のために、健康なドナーT細胞を上記のように調製した。14日目に、CD39+及びCD39-CD4+又はCD8+サブセットを、BD FACSAriaセルソーター(Stem Cell FACS Core,Stanford University School of Medicine)を使用して単離し、全mRNAをQiagen RNeasy Plus mini単離キットを使用して単離した。バルクRNA-seqを、BGISEQ-500プラットフォーム、シングルエンド50bpリード長、試料当たり30×106リードを使用して、BGI America(Cambridge,MA)によって実施した。有意差のある遺伝子は、Wald検定を用いてDESeq2によって同定した。遺伝子アノテーションエンリッチメント解析を、Keggパスウェイ及びGOターム(生物学的プロセス、細胞構成要素、及び分子機能)を使用して実施した。機能アノテーションクラスタリングを行い、p<0.05(Benjamini補正された)のタームが示された。冗長なタームを、視覚化のために手動で除去した。
【0191】
ATP測定:CAR T細胞を、フェノールレッドを含まないRPMI(Agilent)で洗浄した。次に、5×104個の細胞を150μLのフェノール不含RPMI培地に再懸濁し、その存在下、20μMのATP(PerkinElmer)でスパイクした。37℃で10分間インキュベートした後、上清を回収し、ATP/試料の濃度を、ATPlite発光アッセイシステム(PerkinElmer)を製造業者のプロトコルに従って使用して測定した。
【0192】
ADO測定:表面での細胞外酵素の能力を測定するために、CAR T細胞をアッセイの24時間前及び2時間前にCPX006で処理した。次に、フェノール不含RPMI(Agilent)で細胞を洗浄した。次に、5×104個の細胞を150μLのフェノール不含RPMI培地に再懸濁し、20μMのATP(PerkinElmer)でスパイクした。37℃で30分間インキュベートした後、上清を回収した。自己分泌型アデノシン産生のために、3×105個のCAR T細胞を120μLのフェノール不含RPMI(Agilent)に再懸濁し、37℃で2時間インキュベートした。アデノシン濃度を、アデノシンアッセイキット(Abcam)を製造業者のプロトコルに従って使用して評価した。
【0193】
Luminex:活性化後14日目に、選別されたCD39+及びCD39-CD4+又はCD8+CAR T細胞をNalm6-GD2細胞と1:1の比で共培養した。各条件について二連のウェルをプレーティングした。24時間後、上清を回収し、Human Immune Monitoring Center of Stanford UniversityでLuminexアッセイを用いて分析を実施した。ヒト62-plexキットをeBioscience/Affymetrixから購入し、記載の改変を加えて製造業者の推奨に従って使用した。簡潔には、ビーズを96ウェルプレートに加え、BioTek ELx405 Select Deep Well Washerで洗浄した。混合した抗体結合ビーズを含有するプレートに試料を加え、室温で1時間インキュベートし、続いて振盪しながら4℃で一晩インキュベートした。低温及び室温でのインキュベーション工程を、オービタルシェーカー上で500~600rpmで実施した。一晩インキュベートした後、プレートをBioTek ELx405 Select Deep Well Washerで洗浄した。次いで、ビオチン化検出抗体を振盪しながら室温で75分間加えた。プレートを、先に記載したように洗浄し、ストレプトアビジン-PEを加えた。室温で30分間インキュベートした後、先に記載したように洗浄を行い、読み取り緩衝液をウェルに加えた。プレートを、Luminex FLEXMAP 3D装置を使用して、1試料当たりサイトカインごとに50ビーズを下限として読み取った。Radix Biosolutionsによるカスタムアッセイ対照ビーズを全てのウェルに加えた。希釈係数を考慮した。各サイトカインについて、濃度(pg/ml)を計算した。GraphPad Prism 8.4を使用してヒートマップを生成した。
【0194】
Seahorse Mitoストレスアッセイ:Seahorse XFe96 Bioanalyser(Agilent)を使用して、HA及びADA O/E HA CAR T細胞についてOCR及びECARを決定した。細胞をアッセイ培地(グルコース(25mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、及びL-グルタミン(2mM)(Gibco)を含むXFベース培地(Agilent)、37℃でpH 7.4)で洗浄した後、Cell-Tak(Corning)でコーティングされたSeahorse細胞培養プレート上にウェル当たり2×105個の細胞でプレーティングした。接着及び平衡化の後、Seahorse Mitoストレスアッセイ(Agilent)中に、オリゴマイシン(1.5μM)、カルボニルシアニド4-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP;1.0μM)、並びにアンチマイシンA及びロテノン(それぞれ0.5μM))を加えて細胞OCR及びECARを測定した。
【0195】
統計分析:特に明記しない限り、群間の有意差についての統計分析は、対応のない両側t検定を、多重比較のための補正を伴わず、GraphPad Prism 8.4を使用して標準偏差が一定であると仮定せずに使用して実施した。
【0196】
実施例2.CD39発現は、CAR T細胞疲弊中の機能の進行性喪失と相関する
本実施例は、CD39発現がCAR T細胞疲弊中の機能の進行性喪失と相関したことを実証するために実施した実験の結果について説明する。
【0197】
抗原の非存在下でトニックシグナル伝達するジシアロガングリオシドGD2を標的とする高親和性(HA)CAR(HA-CAR)を発現するヒトT細胞は、エフェクターサイトカイン分泌の減少と阻害性受容体の高い表面発現を示した(
図2A)。このモデルを使用して、HA-CAR T細胞上のCD39発現が、疲弊の他の特徴の獲得と強く相関することが観察された。しかしながら、CD39の動態は、他の疲弊マーカーの動態とは異なっていた。TIM3、PD1、又はLAG3などのT細胞疲弊の標準マーカーは、活性化後5~7日目に発現及び頻度ピークを示し、その後、活性化ビーズによって誘導されるシグナル伝達が弱まるにつれてゆっくりと下方制御した(
図2B)。逆に、CD39発現及び頻度は、疲弊表現型が完全に確立されるとピークに達した(
図1A)。しかし、疲弊マーカーの発現は、非トニックシグナル伝達CAR T細胞と比較して、後の時点で依然として高かった(
図1A;
図2B)。このCD39発現の頻度の遅延した増加は、エフェクターサイトカインIL-2(p=0.0001)及びIFNγ(p<0.0001)の分泌の有意な/進行性の減少とも相関した(
図1B)。注目すべきことに、CD39発現は、CD4 CAR T細胞(32.5%±4.4)と比較してCD8 CAR T細胞(61.3%±4.3)により特異的であるようであった(
図3A)。
【0198】
CD39発現がCAR Tの機能低下を示唆しているかどうかを評価するために、CD39+HA CAR T細胞を、それらの表面上にGD2を過剰発現するように操作されたNalm6白血病細胞と共培養し、続いてサイトカイン分泌レベルを測定した。予想通り、CD39+CAR T細胞によるIL-2、TNFα、及びTNFβ、又はIL-31(IL-6ファミリーに属する)などの炎症性サイトカインの分泌は、CD39-対応物と比較して低いことが示された(
図1C)。対照的に、免疫細胞遊走に関与するIFNγ及びMPC-1は、分泌の増加を示した(
図1C)。注目すべきことに、両方とも制御性T細胞の分化及び抑制機能に関与するサイトカインであるTGFβ及びIL-27は、CD39+CD8 CAR T細胞によってより高いレベルで分泌された。同様の傾向が、CD4+CAR T細胞において観察された(
図3B)。
【0199】
まとめると、これらの結果は、CD39+が特徴的な機能不全の/疲弊したT細胞集団であったことを実証している。
【0200】
実施例3.CD39+CD8+疲弊CAR T細胞は、Treg関連表現型及び抑制機能を示す
本実施例は、CD39+CD8+疲弊CAR T細胞がTreg関連表現型及び抑制機能を示したことを実証するために実施した実験の結果について説明する。
【0201】
CD39+CAR-T細胞集団をよりよく特徴付けるために、高次元単一細胞マスサイトメトリーを使用した(
図1D)。TIM3、PD1、LAG3などの標準的な疲弊マーカーの高い発現が観察された。CD39+CD8 CAR T細胞において疲弊関連転写因子T-betも観察された。注目すべきことに、CD39+CAR-T細胞は、CD62L、CCR7、又はCD127のようなメモリー及びホーミング分子の発現が低いか又は全くなく、より分化した表現型であることを示している。しかし、
図1Cに示したサイトカイン分泌パターンに従って、Foxp3、TIGIT、CD49、LAP、CD73、又はCTLA4などの免疫抑制に関連するマーカーが上方制御された(ボックスでマークされる)。CD4+HA CAR T細胞において同様の結果が得られた(
図3C)。
【0202】
ゲノムワイドトランスクリプトーム解析により、CD4+CD39+及びCD8+CD39+CAR-T細胞の両方が、それらのCD39-対応物と比較して、(TCF7、TCF4、Sell、又はIL-7R)などのメモリー/ホーミング関連遺伝子を低レベルで発現することが確認された。CD39+CAR-T細胞が多くのTreg関連遺伝子をより高いレベルで発現したことも確認した(
図4A~4B)。遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)では、CD39+CD8 CAR T細胞と制御性T細胞との間の遺伝子発現パターンにおける有意な類似性が示された(
図1E)。CD39+T細胞は、制御性T細胞におけるFOXP3の誘導に関与する核オーファン受容体、及びFOXP3+誘導性制御性T細胞の分化に関与することが報告されているレチノインX受容体アルファ(RXRA)を高レベルで発現することが観察された。
【0203】
疲弊したCAR T細胞が表現型だけでなく機能的にもTregと類似性を示すかどうかを調べるため、周囲細胞の機能を抑制するそれらの能力を評価した。臨床的有効性及び持続性の向上を示した4-1BBz共刺激ドメインを有するCD19 CAR T細胞を選択して、周囲細胞の機能を抑制するそれらの能力を試験した。Nalm6白血病細胞と共培養したCD19.BBz CAR T細胞によって分泌されたIL-2を、バルク又は選別されたCD8+HA CAR T細胞の存在下又は非存在下で24時間測定した。バルク又はCD8+HA T細胞のいずれかの存在下で活性化されたCD19.BBz CAR T細胞は、有意に少ないIL-2を分泌し、このことは、HA CAR-T細胞が、隣接する健常なCAR-T細胞の抗原依存性IL-2産生を抑制し得ることを示している(
図1F)。
【0204】
まとめると、これらのデータは、CD39+CD8 CAR T細胞は疲弊しているだけでなく、それらは豊富な抑制性分子シグネチャー、表現型、及び機能を有する新規な細胞亜集団を代表し得ることを実証した。
【0205】
実施例4.CD39-CAR T細胞集団のCD39+への変換はトニックシグナル伝達に依存する
本実施例は、CD39-CAR T細胞集団のCD39+への変換がトニックシグナル伝達に依存していたことを実証するために実施した実験の結果について説明する。
【0206】
CD39は、担腫瘍宿主における有効な抗腫瘍免疫応答を防止することができる制御性T細胞サブセットのマーカーとしてこれまでに記載されている。本明細書に提示される抗原非依存性CAR駆動性疲弊モデルにおいて、CD39+T細胞の頻度は、HA CARを有する細胞において増加した(
図5A)。このCD39+集団の増加は、培養物中の小さな既存のCD39+集団の拡大により得、又はトニックシグナル伝達によって誘発されるCAR媒介性因子により得る。この2つの可能性を識別するために、CD39-HA CAR T細胞を選別し、CAR T細胞増殖に影響を及ぼすことなくトニックシグナル伝達を遮断することが最近示されたチロシンキナーゼ阻害剤ダサチニブの存在下又は非存在下で維持した(
図5B~5C)。CD39-枯渇HA CAR-T培養物へのダサチニブの添加は、CD39+HA CAR T細胞を生成するそれらの能力に大きく影響を及ぼした。この結果は、CAR媒介性シグナル伝達及び疲弊が、CD39の上方制御及びCD39+T細胞サブセットの生成に必要であったことを示す。
【0207】
TGFβは、制御性T細胞の状況下においてCD39の上方制御において顕著な役割を果たすことが示された。疲弊した細胞によって産生されたTGFβが、CD39-細胞のCD39+細胞への変換を駆動するのに十分であるかどうかを調査した。バルク及びCD39-枯渇培養物への中和抗TGFβ抗体の添加は、CD39+細胞の頻度にも、CAR T細胞上のCD39の発現レベルにも影響を及ぼさないことが観察された(
図5B~5C)。
【0208】
これらのデータは、長期的なT細胞刺激が、CD39-細胞をCD39+細胞に変換するのに十分であることを示唆した。
【0209】
実施例5.疲弊したHA CAR T細胞は、酵素活性なCD39及びCD73の高発現を示し、これは抑制性アデノシンの産生をもたらす
本実施例は、疲弊したHA CAR T細胞が、酵素活性なCD39及びCD73の高発現を示し、これが抑制性アデノシンの産生をもたらしたことを実証するために実施した実験の結果について説明する。
【0210】
Treg免疫抑制機構の1つはCD39及びCD73の共発現であり、これにより細胞外アデノシンのレベルの増加がもたらされ、その結果、高親和性A2aアデノシン受容体の活性化を通じてエフェクターT細胞が抑制される(
図6A)。マウスCD4+Tregの大部分は、CD39及びCD73を高レベルで発現するが、ヒトTreg細胞のわずかな割合のみがCD73+である。驚くべきことに、本明細書に記載のトニックシグナル伝達CARモデルでは、CD39+/CD73+集団の頻度がCD8+よりもCD4+サブセットにおいてはるかに低かっただけでなく、このサブセットにおけるCD73の発現レベルもCD8+よりもCD4+サブセットにおいてはるかに低かった(
図6B)。続いて、これらの細胞が細胞外ATPを加水分解し、アデノシンを生成する能力を評価することによって、これらの酵素が機能的であるかどうかを調べた。CD39のより高い発現と一致して、HA CAR T細胞は、CD19 CAR又はモックT細胞と比較してeATPを加水分解する能力が4倍向上していることを示した(40%対10%±1.245標準誤差)。CRISPR/Cas9系を使用してCD39又はCD73をノックアウトすることで、CD73ではなくCD39がeATPのADP/AMPへの変換に重要であることが確認された(
図6C)。次に、疲弊したCAR T細胞がADP/AMPをアデノシンに更に処理することができるかどうかを調査した。HA CAR T細胞は、モック又は疲弊していないCD19 CAR T細胞と比較して2倍のアデノシンを産生することができたことが観察された(4μM対2μM±0.2965標準誤差)(
図6C)。重要なことに、アデノシン産生は、CD39又はCD73のいずれかのノックアウトによって抑止された。
【0211】
まとめると、これらのデータは、疲弊したHA CAR-T細胞の表面上でのCD39及びCD73の高レベルの発現が、ATPを分解し、ADP/AMPをアデノシンに変換する能力の向上と相関することを示す。
【0212】
実施例6.アデノシンは、抗原刺激後のCAR T細胞によるサイトカイン産生を抑制することができる
本実施例は、アデノシンが抗原刺激後のCART T細胞によるサイトカイン産生を抑制し得ることを実証するために実施した実験の結果について説明する。
【0213】
CAR T細胞がアデノシン媒介性抑制に対して感受性であるかどうかを試験するために、HA及びCD19 CAR T細胞を、アデノシン受容体アゴニストである5’-(N-エチルカルボキサミド)アデノシン(NECA)の存在下又は非存在下、プレート結合イディオタイプで活性化し、ELISAによってエフェクターサイトカインの分泌能を分析した(
図6D;
図7A~7B)。NECA処理は、IL-2及びIFNγ産生の減少をもたらした。アデノシン依存性a2aR刺激は、細胞内3’,5’-環状アデノシン一リン酸(cAMP)の上昇をもたらし、これはNF-kB経路及び細胞増殖を阻害した(
図6A)。CAR T細胞のアデノシン抑制が同じ機構を通じて作用するかどうかを評価するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をNF-κB応答エレメントの下流に配置することによって、NF-κB活性化レポーターを構築した。HA CAR-T細胞に、このNF-kB-GFPレポーターを共形質導入した。プレート結合イディオタイプで活性化すると、NECAはNF-kB-GFPレポーターの活性化を低下させた(
図7C)。活性化に対するこの阻害効果は、選択的A2aR競合的アンタゴニスト(iA2aR)の添加によって防止され、このことからHA CAR-T細胞に対するNECAの抑制効果にA2a受容体(A2aR)が関与していることが確認された。
【0214】
これらのデータは、疲弊したCAR T細胞がそれらの表面上に活性CD39及びCD73を発現し、これがアデノシンを生成する能力の向上をもたらしたこと、並びにアデノシンがA2a受容体媒介様式でCAR T細胞機能及び増殖に対して抑制効果を発揮したことを説明した。アデノシン産生が疲弊したCAR T細胞の隣接細胞に対する抑制機能の要因であるというこの仮説を試験するために、HA CAR-T細胞が自己分泌型様式でアデノシンを産生することができるかどうかを調査した(
図7D)。次に、A2aR阻害剤とプレインキュベートしたCD19 CAR T細胞を、(CD8)HA CAR T細胞の存在下又は非存在下で活性化した。この仮説と一致して、CD19 CAR T細胞上のA2a受容体(A2aR)の遮断又はHA CAR T細胞上のCD39のノックアウトは、アデノシン産生HA細胞の存在下でCD19 CAR T細胞によるIL-2産生を回復させた(
図6E)。
【0215】
実施例7.プリン作動性経路は疲弊したCAR T細胞の表現型及び機能を調節する
本実施例は、プリン作動性経路が疲弊したCAR T細胞表現型及び機能を調節したことを実証するために実施した実験の結果について説明する。
【0216】
HA CAR T細胞によるCD39及びCD73の共発現の結果としての自己分泌型アデノシン産生は、隣接細胞に対する抑制効果だけでなく、CAR T細胞活性の内因性抑制ももたらし得、その状況下において、プリン作動性経路の調節はCAR T細胞機能を改善し得る。
【0217】
単一細胞マスサイトメトリーを使用して、A2aR、CD39、又はCD73のノックアウトがHA CAR-T細胞の疲弊表現型に及ぼす影響を、4人のドナーから生成された試料を使用して分析した。対照は、ゲノム内の他の場所でのオフターゲットCas9結合のリスクを最小限に抑えてアデノ随伴ウイルス組込み部位1を標的とする、AAVS1ガイドを使用したCRISPRノックアウト(KO)実験からのHA CAR T細胞であった。データ分布のU-MAP分析は、A2aRノックアウト(KO)及び対照AAVS1 KO HA CAR T細胞群が互いに空間的に近いことを示したが、CD39 KO及びCD73 KO細胞はマップの反対側にシフトしており、このことは、細胞外酵素のノックアウトが、A2aR KOよりも大きな程度で疲弊したT細胞の表現型に影響を及ぼしたことを示唆している(
図8A)。更に、FlowSOM分析を、手動でゲーティングしたCD4及びCD8 CAR T細胞に対して、クラスターの最大数を5つの同定されたT細胞集団(幹細胞メモリーT細胞(T
SCM)、エフェクターT細胞(T
EF)、疲弊したT細胞(T
Exh)、疲弊したT細胞の前駆細胞(T
PEX)、及びエフェクターメモリー様T細胞(T
EM)として割り当てられた)に設定して実施した(
図8B)。この戦略は、T
SCM及びエフェクター様CAR T細胞の頻度の増加を特徴とする、CD39又はCD73のノックアウト後の表現型の有意なシフトを明らかにした。対照的に、A2aR KOは、HA CAR T細胞表現型の変化を引き起こさなかった。クラスターの表現型の特徴を、それらの系統及び各マーカーの発現中央値に従って順序付けし、ヒートマップに表示した(
図9A)。CAR T細胞表現型の変化における類似した傾向が、CD4+CAR T細胞について観察された(
図9B)。
【0218】
これらの表現型の変化が機能の差に変換されるかどうかを評価するために、各KO HA CAR-T細胞のIL-2及びIFNγ産生を、イディオタイプで刺激して比較した。注目すべきことに、両方のサイトカインレベルは、AAVS1 KO対照と比較して、A2aR KO、CD39 KO、及びCD73 KOにおいて増加したが、CD73KO及びCD39KOは、サイトカイン分泌のより大きな増加を示した(
図8C)。この傾向は、KO HA CAR-T細胞を、イディオタイプの代わりにNalm6-GD2細胞で刺激した場合にも観察された(
図9C)。疲弊したCAR-T細胞機能に対するプリン作動性経路のKO構成要素の影響を更に特徴付けるために、表面上に異なるレベルのGD2を発現する異なる腫瘍細胞株に対して細胞溶解能を測定した(
図9D)。注目すべきことに、A2aR KOのみが、HA CAR T細胞の細胞傷害性機能を改善した(
図8D)。これらの結果は、CD39及びCD73 KOが、高いGD2密度を発現する腫瘍株に対するサイトカイン分泌を増加させたが、A2aR KOのみが、低い抗原密度に対するHA CAR T細胞の活性化閾値を増加させたことを示した。
【0219】
まとめると、これらの結果は、アデノシン及びその産生を調節する経路が、CAR T細胞応答及び表現型の調節において重要な役割を果たすことを説明した。
【0220】
実施例8.膜貫通型結合ADAの過剰発現は、CAR T細胞の表現型及びエフェクター機能を改善する
本実施例は、アデノシンデアミナーゼの過剰発現がCAR T細胞表現型及びエフェクター機能を改善したことを実証するために実施した実験の結果について説明する。
【0221】
腫瘍微小環境の状況下において、アデノシンの産生は、CAR T細胞上に存在するCD39及びCD73によって調節されるだけでなく、癌関連線維芽細胞の表面、間質、又は直接腫瘍細胞上に発現された(
図11A)。CD39又はCD73のノックアウトはin vitroでのサイトカイン分泌を改善し得るが、in vivoでは成功するアプローチでない可能性がある。同様に、A2a受容体はアデノシンに対して最も高い親和性を示すが、T細胞によって発現される唯一のアデノシン受容体ではない。したがって、CAR T細胞に対するアデノシンの抑制効果を低下させるための代替的なアプローチは、アデノシンをイノシンに代謝することに関与する酵素であるアデノシンデアミナーゼ(ADA)を過剰発現させることである。過剰発現したADA1が確実にT細胞の表面上にアンカーされ得るように、ADA1をCD8の膜貫通ドメイン(配列番号9)に融合させた。検出を補助するために、ヘマグルチニンタグ(HAタグ)をそのC末端に付加した(
図10A)。ADA1過剰発現はCAR表面発現に影響を及ぼさないことが観察された(
図11B)。CAR T細胞をアデノシン媒介性抑制から保護するADA1過剰発現の能力を試験するために、eATPの存在下でアデノシンを産生するHA CAR T細胞をスパイクし、CD69発現について分析した(
図11C)。eATPによってスパイクされたHA CAR T細胞は、より低いMFI及び頻度でCD69を発現した。この活性化抑制は、ADA1の過剰発現によって救済されることが観察された。
【0222】
HA CAR T細胞の表面上のADA1過剰発現の効果を更に分析するために、高次元CyTOF分析を行った。ADA1過剰発現HA CAR T細胞は、対照試料と比較して、完全に異なる発現プロファイルを示した(
図10B)。他のノックアウト条件と比較したFlowSOM分析では、疲弊前駆細胞の頻度が有意に減少し、その結果、疲弊した集団が減少したことが明らかになった。一方、幹細胞メモリー様集団は、ADA過剰発現(O/E)条件においてのみ有意に増加した。同様の傾向が、CD4 HA CAR T細胞において観察された(
図11D)。
【0223】
更に、トランスクリプトームプロファイリングでは、HA CAR-T細胞上のADAの過剰発現が、対照又はCD39、CD73、若しくはA2aRノックアウト(KO)と比較して、遺伝子発現における最大の差異を駆動することが示された(
図10C)。ボルケーノプロットで表されるように、ADA1 O/E試料と対照試料との間に2,500を超える差次的に発現される遺伝子が存在した(
図10D)。最も差次的に発現される遺伝子の中で、ADA1過剰発現HA CAR T細胞において上方制御されたTCF7、IL7Rなどのメモリー表現型及び持続性に関連する遺伝子が同定された(
図10E)。グランザイムB、IL-3、IL-5、TNFSF4(OX40)、又はTNFSF11(RANKL)などのエフェクター機能に関連する遺伝子は下方制御された。更に、エンリッチメントスコアに最も大きく寄与した遺伝子のサブセットを同定するために、GSEAデータセットに対するリーディングエッジ解析(leading-edge)を行った。細胞増殖、cMYC調節経路、及び脂肪酸代謝に関与する多くの遺伝子の上方制御があった(
図11E)。この結果は、代謝レベルでの変化を示唆した。HA及びADA1過剰発現CAR T細胞の代謝状態を、Seahorseアナライザーを使用してMitoストレステストを実施することによって試験した(
図10F)。ADA1 HA CAR T細胞は、ベースラインでより高いOCR及びECARの両方を示した。しかしながら、OCR/ECAR比は、解糖よりも酸化的リン酸化への依存度が高いことを示した。ミトコンドリア阻害剤の更なる注射は、ADA1過剰発現疲弊CAR T細胞が、メモリーT細胞の特徴である予備呼吸能(SRC)を向上させたことを示した。
【0224】
膜貫通結合ADA1の過剰発現がHA CAR T細胞の制御性表現型に影響を及ぼし得るかどうかを調査するために、Foxp3の発現を測定した。膜貫通結合ADA1の過剰発現は、疲弊したHA並びに疲弊していないCD19 CD8及びCD4 CAR T細胞におけるFoxp3頻度を有意に減少させる(
図10G;
図11F)。ADA1+CAR T細胞中のTregのパーセントの減少は、異なる表面抗原密度及び増殖を示す腫瘍株に対するエフェクター機能の向上につながった(
図10H;
図11G)。
【0225】
まとめると、ADA1過剰発現は、疲弊した及び疲弊していない両方のCAR T細胞の適応性及び機能を、それらの表現型をメモリー様細胞にシフトさせることによって、有意かつロバストに向上させた。
【0226】
実施例9.アデノシンデアミナーゼの過剰発現は、CAR T細胞表現型及びエフェクター機能を改善する
本実施例は、ヒトADAアイソフォームADA1及びADA2がCAR T細胞エフェクター機能を改善するかどうかを決定するために実施した更なる実験の結果について説明する。
【0227】
以前に報告され、上記で記載されたように、ヒトアデノシンデアミナーゼには2つのアイソフォーム:ADA1及びADA2が存在する。どちらの種類もアデノシンの脱アミノ化を触媒し、免疫抑制シグナルを減少させる。ADA1ポリペプチドは、細胞によるタンパク質分泌に必要とされるいかなるシグナル配列も含まないが、ADA1ポリペプチドは、膜結合CD26タンパク質を介して細胞表面に接着することができる。対照的に、ADA2は、細胞外へのその分泌を駆動することができるシグナルペプチドを備えている(例えば、Zavialov A.V.et al.,Biochem.J.391,51-57,2005;及びZavialov A.V.et al.,Biol.Chem.285,12367-12377,2010を参照されたい)。
【0228】
ADA1及びADA2が同様にCAR T細胞エフェクター機能を改善するかどうかを判定するために、組換えCAR T細胞を操作して、膜貫通ドメインに融合したADAポリペプチドを発現させた。これらの実験において、膜貫通ドメインは、CD8に由来した。活性化後14日目に、(i)HA、(ii)HA-ADA1-TM、又は(iii)HA-ADA2-TMを発現する組換えCAR T細胞を、白血病Nalm6-GD2及び143b骨肉腫腫瘍細胞で刺激した(例えば、
図12Aを参照されたい)。
【0229】
これらの実験では、活性化後15日目に、(i)HA、(ii)HA-ADA1-TM、又は(iii)HA-ADA2-TMを発現するCAR T細胞を、Nalm6-GD2又は143b腫瘍株と8:1のT:E比で共培養した。細胞傷害機能をIncuCyteアッセイで評価した。代表的なドナーを示す(n=2)。膜結合ADA1及び膜結合ADA2のいずれか1つを過剰発現するように操作されたCAR T細胞は、HAを発現する対照CAR T細胞と比較して、腫瘍殺傷の増加をもたらしたことが観察された(例えば、
図12Bを参照されたい)。
【0230】
更に、膜結合ADA1又はADA2を発現する疲弊していない二重特異性CD19-CD22 CAR T細胞が、より高レベルのIL-2及びIFNγを分泌したことも観察された(例えば、
図12Cを参照されたい)。これらの実験において、二重特異性CD19-CD22.BBz CAR T細胞を、活性化後15日目にNalm6腫瘍株で刺激した。IL-2及びIFNγ分泌を、ELISAを使用して評価した。代表的なドナーを示す(n=2)。
【0231】
いくつかの更なる実験において、ADA1-TM又はADA2-TMのいずれかを過剰発現するCAR T細胞を、10uMのアデノシンデアミナーゼ阻害剤EHNAの存在下又は非存在下、Nalm6-GD2で活性化した。HA-ADA1-TM又はHA-ADA2-TMのいずれかを過剰発現するCAR T細胞は両方とも、対照群と比較して、より多くのIL-2及びIFNγを産生し、この増加は、EHNAの存在下で抑止されたことが観察された(例えば、
図12Dを参照されたい)。この結果は、CAR T細胞によるサイトカイン分泌の上昇が、膜貫通結合ADAの酵素活性によって媒介されたことを示す。
【0232】
更なる実験を実施して、143b固形腫瘍モデルを使用することによって膜貫通結合アデノシンデアミナーゼの抗腫瘍効力を試験した。これらの実験において、NSGマウスに1×10
6個の143b骨肉腫腫瘍を筋肉内注射により接種した。接種後4日目に、10×10
6個の対照Her2.BBz CAR T細胞、又はADA2-TMを過剰発現するHer2.BBz CAR T細胞を注射した。これらの実験では、NSGマウスに1×10
6個の143b腫瘍細胞を筋肉内注射した。注射後4日目に、マウスに、(i)Her2.BBz CAR(すなわち、対照Her2)又は(ii)Her2.BBz CAR及びADA2-TMを発現する1×10
7個のCAR T細胞を静脈注射した。腫瘍成長をキャリパー測定によってモニタリングした。N=5マウス/群。ADA2-TMを発現するCAR T細胞を注射したマウスの群は、有意に低い腫瘍量を示したことが観察された(例えば、
図12Eを参照されたい)。
【0233】
まとめると、上記の実験データは、膜貫通結合ADA1又は膜貫通結合ADA2の過剰発現が、in vitro及びin vivoで疲弊した及び疲弊していないCAR T細胞のエフェクター機能を有意に改善するという証拠を提供する。
【0234】
本開示は、特定の実施形態(そのうちのいくつかは好ましい実施形態である)を参照して具体的に示され、説明されているが、本明細書に開示されている本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更がその中で行われ得ることが当業者によって理解されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】