(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】導電材マスターバッチ及びこれを用いて製造された乾式電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240829BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240829BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240829BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240829BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240829BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/04 Z
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513247
(86)(22)【出願日】2023-04-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 KR2023005409
(87)【国際公開番号】W WO2023204643
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2022-0049191
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0049192
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ウク・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-スン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】サン-ミン・カク
(72)【発明者】
【氏名】キュン-ファン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ドン-オ・シン
(72)【発明者】
【氏名】キ-ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】クァン-ホ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ナム-ジョン・イ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA12
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
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5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB20
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA24
5H050FA16
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、電極に用いるための導電材マスターバッチ及びこれを用いて製造された電極に関するものであり、本発明の一側面による導電材マスターバッチを用いて製造される電極は、55Ω・cm以下の電極抵抗を有することを特徴とするものであり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系バインダー及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダーを含み、
前記導電材は、80m
2/g以上のBET比表面積を有し、
前記ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系バインダー及び前記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダーの結晶化度は、それぞれ独立して30%以下である、導電材マスターバッチ。
【請求項2】
前記導電材は、カーボンナノチューブ単独で含むか、又は前記導電材は、カーボンナノチューブ及び点状導電材を含む、請求項1に記載の導電材マスターバッチ。
【請求項3】
前記導電材は、カーボンナノチューブ及び点状導電材を含み、
前記点状導電材は、カーボンブラック、活性炭、黒鉛又はこれらのうちの2種以上の混合物である、請求項2に記載の導電材マスターバッチ。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブと前記点状導電材の重量比は、100:0~10:90である、請求項2に記載の導電材マスターバッチ。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、ナノファイバー状に分散されている形態である、請求項2に記載の導電材マスターバッチ。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブの直径は、0.1~50nmである、請求項2に記載の導電材マスターバッチ。
【請求項7】
前記ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系バインダーが、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリデンフルオライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の導電材マスターバッチ。
【請求項8】
20~70重量部の前記導電材、5~60重量部の前記ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系バインダー及び0.1~50重量部の前記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダーを含む請求項1に記載の導電材マスターバッチ。
【請求項9】
集電体と、前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層と、を含み、
前記電極活物質層は、電極活物質、電極導電材及び電極バインダーを含み、
前記電極バインダーが繊維化して前記電極活物質及び電極導電材を結着させ、
55Ω・cm以下の電極抵抗を有する電極。
【請求項10】
前記電極導電材の含量は、前記電極活物質層の全重量に基づいて、1重量%以下である、請求項9に記載の電極。
【請求項11】
前記電極バインダーの結晶化度が、15%以下である、請求項9に記載の電極。
【請求項12】
前記電極活物質の含量は、前記電極活物質層の全重量に基づいて、95重量%以上である、請求項9に記載の電極。
【請求項13】
前記電極導電材は、BET比表面積が80m
2/g以上である炭素材料を含む、請求項9に記載の電極。
【請求項14】
前記電極導電材は、カーボンナノチューブ単独で含むか、又は前記電極導電材は、カーボンナノチューブ及び点状導電材を含む、請求項9に記載の電極。
【請求項15】
前記電極導電材は、カーボンナノチューブ及び点状導電材を含み、
前記点状導電材は、カーボンブラック、活性炭、黒鉛又はこれらのうちの2種以上の混合物である、請求項14に記載の電極。
【請求項16】
前記カーボンナノチューブ及び前記点状導電材の重量比は、100:0~10:90である、請求項14に記載の電極。
【請求項17】
前記電極導電材及び前記電極バインダーは、請求項1から8のいずれか一項に記載の導電材マスターバッチに由来する、請求項9に記載の電極。
【請求項18】
導電材マスターバッチの製造方法であって、
導電材、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系バインダー及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダーを混合して混合物を得るステップと、
前記混合物を混錬しかつ押出して押出物を得るステップと、
前記押出物を粉砕するステップと、を含み、
前記導電材は、80m
2/g以上のBET比表面積を有し、
製造される導電材マスターバッチ内の前記ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系バインダー及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダーの結晶化度は、それぞれ独立して30%以下である、導電材マスターバッチの製造方法。
【請求項19】
前記混合物を得るステップは、混合機において200rpm~1,700rpmにて1分間~30分間混合する、請求項18に記載の導電材マスターバッチの製造方法。
【請求項20】
前記押出物を得るステップは、前記混合物を二軸押出機に投入し、100℃~300℃の押出温度及び50rpm~600rpmのスクリュー速度にて溶融混錬してダイを介して押出する、請求項18に記載の導電材マスターバッチの製造方法。
【請求項21】
前記粉砕は、500rpm~20,000rpmにて5秒間~10分間行われる、請求項18に記載の導電材マスターバッチの製造方法。
【請求項22】
導電材及び第1のバインダーを混合して混合物を得るステップと、
前記混合物を混錬しかつ押出して押出物を得るステップと、
前記押出物を粉砕して導電材マスターバッチを得るステップと、
電極活物質、前記導電材マスターバッチ、及び第2のバインダーを含む混合物から集電体の少なくとも一面の上に電極活物質層を形成するステップと、を含む、電極の製造方法。
【請求項23】
前記電極活物質層を形成するステップは、
前記電極活物質、前記導電材マスターバッチ、及び前記第2のバインダーを混合して混合物を得るステップと、
前記得られる混合物を高温・低せん断率にて混錬して混合物塊状体を得るステップと、
前記混合物塊状体を高せん断で粉砕して電極用の混合粉体を得るステップと、
前記電極用の混合粉体をカレンダリングして合剤フィルムを得るステップと、
前記合剤フィルムを前記集電体の少なくとも一面に位置させ、ラミネーションするステップと、を含む、請求項22に記載の電極の製造方法。
【請求項24】
前記第1のバインダーの結晶化度が、30%以下である、請求項22に記載の電極の製造方法。
【請求項25】
前記合剤フィルムの引っ張り強度が、0.2MPa以上である、請求項23に記載の電極の製造方法。
【請求項26】
製造される電極は、55Ω・cm以下の電極抵抗を有する、請求項22に記載の電極の製造方法。
【請求項27】
正極、負極及び前記正極と前記負極との間に介在している分離層を含み、
前記正極及び前記負極のうちの少なくともどちらか一方は、請求項9から16のいずれか一項に記載の電極である、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式電極に用いるための導電材マスターバッチ、この製造方法、これを用いて製造された電極に関する。
【0002】
本出願は、2022年4月20日付け出願の韓国特許出願第2022-0049191号及び第2022-0049192号のそれぞれに基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近の化石燃料の使用の急増には目を見張るものがあり、これに伴い、代替エネルギー、清浄エネルギーの使用へのニーズが急激に伸びており、その一環として最も盛んに研究が行われている分野が電気化学を用いた発電・蓄電の分野である。
【0004】
現在のところ、このような電気化学的なエネルギーを用いる電気化学素子の代表例として、二次電池が挙げられ、益々その使用領域が広がりつつある傾向にある。
【0005】
このような二次電池に代表されるリチウム二次電池は、モバイル機器のエネルギー源のみならず、最近には、大気汚染の主な原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を用いる車両に代え得る電気自動車、ハイブリッド電気自動車の動力源としての使用が実用レベルに至っており、グリッド(Grid)化を通じた電力補助電源などの用途にも使用領域が広がりつつある。
【0006】
このようなリチウム二次電池の製造工程は、大きく、電極工程、組立て工程、化成(フォーメーション)工程の3段階に分けられる。前記電極工程は、再び、活物質の混合工程、電極のコーティング工程、乾燥工程、圧延工程、スリット(切断)工程、巻き取り工程などに分けられる。
【0007】
これらの中でも、活物質の混合工程は、電極において実際に電気化学反応が起こる電極活性層の形成のためのコーティング物質を配合する工程であって、詳しくは、電極の必須要素である電極活物質とその他の添加剤である導電材と充填材と、粉体同士の間の結着と集電体への接着のためのバインダー、及び粘度の付与と粉体の分散のための溶媒などを混合して流動性を有するスラリーの形状に製造するものである。このように、電極活性層の形成のために混合された組成物を広義で電極合剤(electrode mixture)と称することもある。
【0008】
この後、電極合剤を電気伝導性がある集電体の上に塗布する電極コーティング工程と、電極合剤に含有されていた溶媒を取り除くための乾燥工程と、が行われ、追加的に電極が圧延されて所定の厚さに製造される。
【0009】
一方、前記乾燥過程において電極合剤に含有されていた溶媒が蒸発することにより、既に形成された電極活性層にピン孔やひび割れなどの欠陥が生起される可能性がある。また、活性層の内外部が均一に乾燥されるわけではないため、溶媒の蒸発速度の差による粉体の浮遊現象、すなわち、先に乾燥される部位の粉体が浮き上がりながら相対的に後ほどに乾燥される部位と間隙を形成して電極の品質が低下する虞もある。したがって、最近には、溶媒を使用しない乾式電極(ドライ電極)を製造する研究への取り組みが盛んに行われている。
【0010】
前記乾式電極は、一般に、集電体の上に、活物質、バインダー、導電材などを含み、フィルム状に製造されたフリースタンディングフィルムをラミネーションすることにより製造される。乾式電極の作業性を向上させるために、乾式電極用の原材料である活性炭導電材、活物質、バインダーなどをミキシング、ニーディング、粉砕するなどの工程を用いて粉体混合物を製造する技術が開発されたが、このとき、導電材のBET比表面積が大きければ大きいほど、導電材を均一に分散し難いため、湿式電極に比べて導電材の含量が増えてしまい、BET比表面積が大きなカーボンナノチューブ(CNT)を効率よく使えないという問題が見つかった。
【0011】
これにより、導電材の分散性を向上させるだけではなく、これを用いて製造される乾式電極の性能を向上させるための研究・開発への取り組みが絶え間なく行われているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、乾式電極の製造に使用可能な導電材マスターバッチ及びこの製造方法を提供することにある。
【0013】
また、導電材の分散性が向上した導電材マスターバッチを導電材として用いて製造された電極及びこの製造方法を提供しようとしている。
【0014】
本発明の一側面によれば、本発明は、BET比表面積が大きな導電材の分散性を向上させた導電材マスターバッチ及びこの製造方法を提供しようとしている。また、本発明は、高い含量の導電材が安定的に含まれる導電材マスターバッチ及びこの製造方法を提供しようとしている。
【0015】
本発明の他の側面によれば、本発明は、BET比表面積が大きな導電材の分散性を向上させた導電材マスターバッチを導電材として用いて導電材の含量を低め、電極抵抗の特性を向上させた電極及びこの製造方法を提供しようとしている。また、本発明は、引っ張り強度などの機械的な物性を良好に保持しながらも、電極抵抗の特性が向上した電極及びこの製造方法を提供しようとしている。
【0016】
本発明のさらに他の側面によれば、本発明は、電極の製造方法であって、活物質の微粉化を極力抑え、バインダーの繊維化を極大化させて柔軟性と機械的な物性が向上した電極の製造方法を提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の一側面によれば、下記の態様の導電材マスターバッチが提供される。
【0018】
第1の態様によれば、導電材、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系バインダー及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダーを含み、前記導電材は、80m2/g以上のBET比表面積を有するものであり、前記PVDF系バインダー及び前記PTFEバインダーの結晶化度は、それぞれ独立して30%以下であることを特徴とする導電材マスターバッチが提供される。
【0019】
第2の態様によれば、前記導電材は、カーボンナノチューブ単独で含むか、又は前記導電材は、カーボンナノチューブ及び点状(ドット状)導電材を含む第1の態様に記載の導電材マスターバッチであり得る。
【0020】
第3の態様によれば、前記点状導電材は、カーボンブラック、活性炭、黒鉛又はこれらのうちの2種以上の混合物である第2の態様に記載の導電材マスターバッチであり得る。
【0021】
第4の態様によれば、前記カーボンナノチューブ及び前記点状導電材の重量比は、100:0~10:90である第2の態様から第3の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の導電材マスターバッチであり得る。
【0022】
第5の態様によれば、前記カーボンナノチューブは、ナノファイバー状に分散されている形態である第2の態様から第4の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の導電材マスターバッチであり得る。
【0023】
第6の態様によれば、前記カーボンナノチューブの直径は、0.1~50nmである第2の態様から第5の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の導電材マスターバッチであり得る。
【0024】
第7の態様によれば、前記PVDF系バインダーが、PVDF、ポリビニリデンフルオライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)又はこれらの混合物を含む第1の態様から第6の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の導電材マスターバッチであり得る。
【0025】
第8の態様によれば、前記導電材20~70重量部、前記PVDF系バインダー5~60重量部及び前記PTFEバインダー0.1~50重量部を含む第1の態様から第7の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の導電材マスターバッチであり得る。
【0026】
本発明の他の側面によれば、下記の態様の電極が提供される。
【0027】
第9の態様による電極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層と、を含み、前記電極活物質層は、電極活物質、電極導電材及び電極バインダーを含み、前記電極バインダーが繊維化して前記電極活物質及び電極導電材を結着させ、55Ω・cm以下の電極抵抗を有する。
【0028】
本発明の第10の態様によれば、前記電極導電材の含量は、前記電極活物質層の全重量に基づいて、1重量%以下である第9の態様に記載の電極であり得る。
【0029】
本発明の第11の態様によれば、前記電極バインダーの結晶化度が15%以下である第9の態様又は第10の態様に記載の電極であり得る。
【0030】
本発明の第12の態様によれば、前記電極活物質の含量は、前記電極活物質層の全重量に基づいて、95重量%以上である第9の態様から第11の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極であり得る。
【0031】
本発明の第13の態様によれば、前記電極導電材は、BET比表面積が80m2/g以上である炭素材料を含む第9の態様から第12の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極であり得る。
【0032】
本発明の第14の態様によれば、前記電極導電材は、カーボンナノチューブ単独で含むか、又は前記導電材は、カーボンナノチューブ及び点状導電材を含む第9の態様から第13の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極であり得る。
【0033】
本発明の第15の態様によれば、前記電極導電材は、カーボンナノチューブ及び点状導電材を含み、前記点状導電材は、カーボンブラック、活性炭、黒鉛又はこれらのうちの2種以上の混合物である第9の態様から第14の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極であり得る。
【0034】
本発明の第16の態様によれば、前記カーボンナノチューブと前記点状導電材の重量比は、100:0~10:90である第9の態様から第15の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極であり得る。
【0035】
本発明の第17の態様によれば、前記電極導電材及び前記電極バインダーは、前記第1の態様から第8の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の導電材マスターバッチに由来するものを含む第9の態様から第16の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極であり得る。
【0036】
本発明のさらに他の側面によれば、下記の態様の導電材マスターバッチの製造方法が提供される。
【0037】
第18の態様による導電材マスターバッチの製造方法は、導電材、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーを混合して混合物を得るステップと、前記混合物を混錬しかつ押出して押出物を得るステップ及び前記押出物を粉砕するステップを含み、前記導電材は、80m2/g以上のBET比表面積を有するものであり、製造される導電材マスターバッチ内の前記PVDF系バインダー及びPTFEバインダーの結晶化度は、それぞれ独立して30%以下であるものとする。
【0038】
第19の態様によれば、前記混合物を得るステップは、200rpm~1,700rpmにて1分間~30分間混合するものである第18の態様に記載の導電材マスターバッチの製造方法であり得る。
【0039】
第20の態様によれば、前記押出物を得るステップは、前記混合物を二軸押出機(twin screw extruder)に投入し、100℃~300℃の押出温度及び50rpm~600rpmのスクリュー速度にて溶融混錬してダイを介して押出するものである第18の態様又は第19の態様に記載の導電材マスターバッチの製造方法であり得る。
【0040】
第21の態様によれば、前記粉砕は、500rpm~20,000rpmにて5秒間~10分間行う第18の態様から第20の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の導電材マスターバッチの製造方法であり得る。
【0041】
本発明のさらに他の側面によれば、下記の態様の電極の製造方法が提供される。
【0042】
第22の態様による電極の製造方法は、導電材及び第1のバインダーを混合して混合物を得るステップと、前記混合物を混錬しかつ押出して押出物を得るステップと、前記押出物を粉砕して導電材マスターバッチを得るステップと、電極活物質、前記導電材マスターバッチ、及び第2のバインダーを含む混合物から集電体の少なくとも一面の上に電極活物質層を形成するステップと、を含む。
【0043】
第23の態様によれば、前記電極活物質層を形成するステップが、電極活物質、前記導電材マスターバッチ、及び第2のバインダーを混合して混合物を得るステップと、前記得られる混合物を高温・低せん断率にて混錬して混合物塊状体を得るステップと、前記混合物塊状体を高せん断で粉砕して電極用の混合粉体を得るステップと、前記電極用の混合粉体をカレンダリング(カレンダ加工)して合剤フィルムを得るステップと、前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に位置させ、ラミネーションするステップと、を含む第22の態様に記載の電極の製造方法であり得る。
【0044】
第24の態様によれば、前記第1のバインダーの結晶化度が30%以下である第22の態様又は第23の態様に記載の電極の製造方法であり得る。
【0045】
第25の態様によれば、前記合剤フィルムの引っ張り強度が0.2MPa以上である第22の態様から第24の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極の製造方法であり得る。
【0046】
第26の態様によれば、製造される電極は、55Ω・cm以下の電極抵抗を有する第22の態様から第25の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極の製造方法であり得る。
【0047】
本発明のさらに他の態様によれば、下記の態様の電気化学素子が提供される。
【0048】
本発明の第27の態様による電気化学素子は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在している分離層を含み、前記正極及び負極のうちの少なくともどちらか一方は、第9の態様から第17の態様のうちのいずれか一つの態様に記載の電極であり得る。
【発明の効果】
【0049】
本発明の一側面によれば、BET比表面積が大きな導電材を用い、電極の製造に際して活物質との付着力に優れた導電材マスターバッチを提供することができる。また、本発明の一側面による導電材マスターバッチは、BET比表面積が大きな導電材の分散性を大幅に向上させることができるという効果を奏する。
【0050】
本発明の他の側面によれば、電極抵抗が減少した電極、特に、電極抵抗が減少した電極を提供することができる。具体的には、本発明の一側面による電極は、製造に際して溶媒を用いない電極、いわゆる乾式電極であって、従来の乾式電極に比べて導電材の含量を低め、これにより、電極活物質の含量が増大された乾式電極を提供することができる。
【0051】
本発明の他の側面によれば、電極の抵抗が向上し、電極フィルムの強度が向上して、電気的な性能に優れており、安定性が向上した乾式電極及びこれを用いた電気化学素子を提供する効果を奏する。
【0052】
本発明のさらに他の側面によれば、高せん断ミキシング工程の代わりに、高温・低せん断混錬工程の後に粉砕する工程を導入することにより、電極活物質の微粉化が極力抑制でき、バインダーの繊維化が最大化でき、繊維化したバインダーの切断が最小限に抑えられた乾式電極を提供することができる。
【0053】
さらには、高せん断のジェットミル工程を用いることなく、混錬機を用いた混錬、及び粉砕段階を経ることにより構成成分の塊状化により流路が閉塞されるという問題がないことから、電極の量産にも有利になる製造方法を提供することができる。
【0054】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割のためのものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本明細書に記載されている実施例1~3、比較例1及び2の写真である。
【
図2】本明細書に記載されている実施例1~3、比較例1及び2の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図3】本発明の一態様に従って合剤フィルムを製造する工程の模式図である。
【
図4】本発明の一態様による電極ラミネーション工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0057】
本発明は、電極用の混合粉体を押し付ける方式により製造される乾式電極に用いるための導電材マスターバッチ、これを用いて製造される電極、及び導電材マスターバッチ及び電極のそれぞれを製造する方法に関する。
【0058】
本発明において、前記乾式電極は、リチウムイオン二次電池など電気化学素子の電極として使用可能であるが、本発明の用途がこれに限定されることはない。
【0059】
本明細書中において、用語「BET比表面積」は、BET法により測定した比表面積を示すものであって、前記BET比表面積は、マイクロメリティックス(Micromeritics)社製のTriStar II 3020装置を用いて液体窒素温度(77K)下での窒素ガスの吸着量から算出される値を示す。
【0060】
本明細書中において、用語「融点」は、高分子の融点(Tm)を測定する通常の方法により測定された値を示す。例えば、前記融点は、示差走査熱量分析装置(Differential Scanning Calorimeter;DSC)を用いて測定したものであり得る。
【0061】
本明細書中において、用語「結晶化度」は、高分子の混錬性及び繊維化の度合いを予測するための尺度であって、例えば、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて測定したものであり得る。
【0062】
本明細書中で使われた「直径(D50)」は、直径に応じた粒子体積累積分布の50%の地点での直径を意味し、前記直径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定されたものであり得る。具体的には、測定の対象の物質を分散媒中に分散させた後、市販中のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に取り込ませて粒子がレーザービームを通過するとき、直径に応じた回折パターンの差を測定して直径の分布を算出する。測定装置における直径に応じた粒子体積累積分布の50%となる地点での直径を算出することにより、D50直径を測定することができる。
【0063】
本明細書中において、用語「CNT分散性」は、CNTがバンドル(束、bundle)状に固まって塊状になることなく、ナノ繊維状に分散される性質を示す。例えば、前記CNT分散性は、SEM形状分析の方法により評価されたものであり得る。
【0064】
導電材マスターバッチ
本発明の一側面によれば、BET比表面積が大きな導電材を乾式電極に適用するための導電材マスターバッチを提供しようとしている。
【0065】
本発明の一側面による導電材マスターバッチは、導電材、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーを含み、前記導電材は、80m2/g以上のBET比表面積を有するものであり、前記PVDF系バインダー及び前記PTFEバインダーの結晶化度は、それぞれ独立して30%以下であるものとする。
【0066】
本発明において、前記導電材は、80m2/g以上のBET比表面積を有するものである。前記導電材としてBET比表面積が80m2/g以上であるものを用いることにより、導電材の含量を低め、活物質の含量を増加させて乾式電極の容量を高める機能を成し遂げることができるが、前記導電材の機能は上記の機能のみに制限されるものではない。
【0067】
本発明の一態様において、前記導電材は、BET比表面積が80m2/g以上であり、電池に化学的な変化を引き起こさずに、導電性を有するものであれば、特に制限なしに使用可能である。前記導電材は、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉体などの金属粉体;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用可能である。より具体的には、導電材の均一な混合と導電性の向上のために、前記導電材は、カーボンナノチューブ、活性炭、黒鉛、カーボンブラック、又はこれらの混合物であり得る。
【0068】
本発明の一態様において、前記導電材は、カーボンナノチューブを単独で含むものであり得る。
【0069】
本発明の他の態様において、前記導電材は、カーボンナノチューブ及び点状(ドット状)導電材を含むものであり得る。本発明の一態様において、前記点状導電材は、カーボンブラック、活性炭、黒鉛又はこれらのうちの2種以上の混合物であり得る。
【0070】
本発明のさらに他の態様において、前記導電材は、カーボンナノチューブと点状導電材とを100:0~10:90の重量比にて含むものであり得る。ここで、前記カーボンナノチューブと点状導電材との重量比が100:0である場合、前記導電材がカーボンナノチューブを単独で含むことを意味する。
【0071】
本発明のさらに他の態様において、前記導電材は、カーボンナノチューブ及び点状導電材を含み、前記カーボンナノチューブと点状導電材との重量比は、99:1~50:50であり得る。
【0072】
本発明のさらに他の態様において、前記導電材がカーボンナノチューブを含む場合、前記導電材マスターバッチ内において、前記カーボンナノチューブは、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーによりナノファイバー状に分散され得る。
【0073】
本発明の一態様において、前記導電材のBET比表面積は、具体的には、80m2/g以上かつ2,000m2/g以下であり得る。より具体的には、前記導電材のBET比表面積は、例えば、100m2/g以上、150m2/g以上、160m2/g以上、500m2/g以上、1,000m2/g以上、2,000m2/g以下、1,500m2/g以下、1400m2/g以下、300m2/g以下、250m2/g以下、210m2/g以下であり得る。本発明の他の態様において、前記導電材は、BET比表面積が80m2/g以上かつ300m2/g以下であるカーボンナノチューブ及びBET比表面積が100m2/g以上かつ2,000m2/g以下である点状導電材を含み得る。前記導電材のBET比表面積が上述した範囲である場合、導電材マスターバッチ内の導電材の分散安定性の側面からみて有利な効果が奏されるが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0074】
本発明の他の態様において、前記導電材がカーボンナノチューブを含む場合、前記カーボンナノチューブの直径は、例えば、0.1~50nm、1~30nm、5~25nm、10~20nm又は10~15nmであり得る。本明細書中において、前記カーボンナノチューブの直径は、カーボンナノチューブの長手方向と直交する方向の断面の直径を測定した値を示し、前記直径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡の観察により測定したものであり得る。前記カーボンナノチューブの直径が上記の範囲である場合、CNT分散性の側面からみて有利な効果を奏するが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0075】
本発明の一側面による導電材マスターバッチは、前記導電材とともに、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーを含む。
【0076】
本発明の一態様において、前記導電材マスターバッチは、バインダーとしてPVDF系バインダーを含むことにより、上述した導電材との結着力の向上の側面からみて有利な効果を奏する。これにより、前記導電材マスターバッチ内のバインダーの含量を低め、導電材の含量を高める効果を奏するが、前記PVDF系バインダーの機能がこれらに限定されるものではない。
【0077】
本発明の一態様において、前記導電材マスターバッチは、後述するように、バインダーの繊維化方式により電極フィルムを形成する乾式電極に用いられ得る。このとき、前記導電材マスターバッチがバインダーとしてPTFEバインダーを含むことにより、バインダーの繊維化方式による電極フィルムを形成する側面からみて有利な効果を奏するが、前記PTFEバインダーの機能がこれらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の一態様において、前記導電材マスターバッチは、バインダーとしてPVDF系バインダー及びPTFEバインダーを含むことにより、導電材との結着力に優れており、高い比表面積の導電材の分散性を向上させる効果を奏する。さらに、これを用いてバインダーの繊維化方式による電極フィルムを形成する際に安定的に電極フィルムを形成し、これにより、低い電極抵抗を有する電極を実現するのに有利な効果を奏するが、本発明の機序がこれらに限定されるものではない。
【0079】
本発明の一態様において、前記PVDF系バインダーは、融点が200℃以下であるPVDF系バインダーを含み得る。前記PVDF系バインダーとして、融点が200℃以下であるPVDF系バインダーを用いることにより、溶融状態で導電材の分散性及び分散安定性を向上させ、マスターバッチの製造を可能にする機能を成し遂げることができるが、前記PVDF系バインダーの機能が上記の機能のみに制限されるものではない。
【0080】
本発明の一態様において、前記PVDF系バインダーは、融点が200℃以下であり、高分子の繰り返し単位内にPVDF(polyvinylidene fluoride)の繰り返し単位が1つ以上含まれる高分子であれば、特に制限なしに使用可能である。前記PVDF系バインダーは、例えば、PVDF、ポリビニリデンフルオライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP:polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)又はこれらの混合物を含むものであり得る。
【0081】
本発明の一態様において、前記PVDF系バインダーの融点は、具体的には、100℃以上かつ200℃以下であり得、例えば、100℃以上、120℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、200℃以下、190℃以下、185℃以下、180℃以下であり得る。あるいは、100℃以上、110℃以上、120℃以上、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下であり得る。
【0082】
本発明の一態様において、前記PTFEバインダーは、融点が300℃~380℃であるPTFEバインダーを含み得る。前記PTFEバインダーとして融点が300℃~380℃であるものを用いることにより、溶融状態で導電材の分散性及び分散安定性を向上させ、マスターバッチの製造を可能にする機能を成し遂げることができるが、前記PTFEバインダーの機能が前記機能にのみ制限されるものではない。
【0083】
本発明の一態様において、前記PTFEバインダーは、融点が300℃~380℃であり、高分子の繰り返し単位内にPTFE(polytetrafluoroethylene)の繰り返し単位が1つ以上含まれる高分子であれば、特に制限なしに使用可能である。
【0084】
本発明の一態様において、前記PTFEバインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み得る。
【0085】
本発明の一態様において、前記PTFEバインダーの融点は、具体的には、300℃以上、310℃以上、320℃以上、330℃以上、335℃以上、380℃以下、370℃以下、360℃以下、355℃以下であり得る。
【0086】
本発明の一態様において、前記導電材マスターバッチ内に含まれる前記PVDF系バインダー及びPTFEバインダーの結晶化度は、それぞれ独立して30%以下であり得る。
【0087】
本明細書中において、前記バインダーの結晶化度は、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて測定した値であり得る。具体的には、示差走査熱量分析装置(DSC)にサンプル5~12mgを入れ、窒素雰囲気及び25~360℃の温度範囲において10℃/minの速度にて昇温させながら、融点、融解熱量(ΔHm)を測定し、バインダーの種類に応じた結晶融解熱量(ΔHm°)を基準として下記の式により結晶化度を測定し得る。
バインダーの結晶化度(Xc)=ΔHm/ΔHm°×100%
【0088】
本発明の一態様において、前記バインダーの結晶融解熱量(ΔHm°)に関し、PVDFバインダーの100%結晶融解熱量(ΔHm°)は、105J/gであり、PVDF-HFPバインダーの100%結晶融解熱量(ΔHm°)は、80J/gであり、PTFEバインダーの100%結晶融解熱量(ΔHm°)は、85.4J/gの値を参考にし得、あるいは、他の文献における既知の値を参考にして各バインダーの結晶化度を測定し得る。
【0089】
本発明の他の態様において、前記PVDF系バインダーがPVDFを含む場合、前記導電材マスターバッチ内におけるPVDFの結晶化度は、より具体的には、30%以下、28%以下、27%以下、26.5%以下、26%以下又は25%以下、又は0%であり得る。
【0090】
本発明のさらに他の態様において、前記PVDF系バインダーがPVDF-HFPを含む場合、前記前記導電材マスターバッチ内におけるPVDF-HFPの結晶化度は、より具体的には、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、8%以下又は6%以下、又は0%であり得る。
【0091】
本発明の他の態様において、前記PTFEバインダーの結晶化度は、より具体的には、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は0%であり得る。
【0092】
本発明のさらに他の態様において、前記PVDF系バインダーの結晶化度が30%以下であり、PTFEバインダーの結晶化度が30%以下であり得る。
【0093】
本発明のさらに他の態様において、前記PVDF系バインダーの結晶化度が30%以下であり、PTFEバインダーの結晶化度が20%以下であり得る。
【0094】
本発明の一態様において、前記PVDF系バインダーの結晶化度が前記範囲を満たす場合、比表面積が大きな導電材、特に、CNTの分散性及び分散安定性を向上させる側面からみて有利な効果を奏するが、本発明はこれに何ら制限されるものではない。
【0095】
本発明の一態様において、前記PTFEバインダーの結晶化度が前記範囲を満たす場合、導電材マスターバッチを用いて製造される電極の物性を向上させる側面からみて有利な効果を奏するが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0096】
本発明の一側面において、前記導電材マスターバッチは、前記導電材20~70重量部、PVDF系バインダー5~60重量部及びPTFEバインダー0超50以下の重量部を含む。具体的には、前記導電材マスターバッチは、前記導電材20~70重量部、PVDF系バインダー5~60重量部及びPTFEバインダー0.1~50以下の重量部を含み得る。例えば、前記導電材40~70重量部、PVDF系バインダー40~50重量部及びPTFEバインダー5~30重量部を含み得、より具体的には、前記導電材マスターバッチは、前記導電材50~60重量部、PVDF系バインダー30~40重量部及びPTFEバインダー10~20重量部を含み得る。
【0097】
本発明の一態様において、前記導電材マスターバッチ内の導電材、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーの含量比が前記範囲を満たすことにより、導電材マスターバッチと活物質とを混合するとき、導電材の分散性が格段に向上し、導電材に対する活物質の割合が向上することができ、導電材と活物質との貼着力が抜群であるという効果を奏するが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0098】
本発明の一態様において、前記導電材マスターバッチは、前記PVDF系バインダー及びPTFEバインダーの他に、ポリオレフィンバインダーをさらに含み得る。
【0099】
本発明の他の態様において、前記導電材マスターバッチは、上述した成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲内において活物質をさらに含み得る。
【0100】
電極
本発明の他の側面による電極は、集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、電極活物質、電極導電材及び電極バインダーを含み、前記電極バインダーが繊維化して前記電極活物質及び電極導電材を結着させており、55Ω・cm以下の電極抵抗を有する。
【0101】
本発明の他の側面による電極は、上述した導電材マスターバッチを用いて製造されるものであり得る。
【0102】
本発明の一態様において、前記電極は、電極活物質及び電極導電材を結着させる手段として繊維化した電極バインダーを含み得る。このような繊維化した電極バインダーは、途切れの現象が従来の繊維化していないバインダーに比べてあまり見られず、長手方向への伸び性に優れていて、電極活物質層及びこれを含む電極それ自体の柔軟性を向上させることができる。前記電極バインダーの繊維化工程については、後述する電極の製造方法の欄において具体的に述べてみる。
【0103】
本発明の一態様において、前記電極活物質層は、自立型の電極フィルムに由来するものであり得る。例えば、前記電極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面の上に電極フィルムに由来する電極活物質層が配置されるものであり得る。そして、前記電極フィルムと前記集電体とは、ラミネーション工程などにより接合されて形成されたものであり得る。
【0104】
本発明の一態様において、前記電極活物質層は、電極フィルムであって、溶媒が介入せずに電極活物質、電極導電材及び電極バインダーを含む電極材料を用いて自立型(free standing type、フリースタンディング型)の単独のシート状に製造されたものであり得る。本明細書中において、用語「自立型」は、他の部材に依存せず、単独の形状を保持することができ、それ自体で移動や取り扱いが可能であるものを意味する。
【0105】
前記電極活物質層は、後述するように、電極用の混合粉体が圧着されて形成されたものであり得る。例えば、前記電極活物質層は、前記電極用の混合粉体が圧着により集積されて層状の構造をなした形状を呈し得る。前記電極用の混合粉体とは、電極活物質、電極導電材及び電極バインダーを含む粉末状の電極材料のことをいい、例えば、後述するように、電極活物質、電極導電材及び電極バインダーを含む混合物塊状体が粉砕されて得られるものであり得る。
【0106】
本発明において、前記電極の抵抗は、55Ω・cm以下を示す。
【0107】
本明細書中において、前記電極の抵抗は、下記のようにして測定された値を示す。抵抗の測定の対象の電極を50×50mm2の大きさにして用意する。マルチプローブテスター(日置電機株式会社製、RM2610)に用意された電極試料を入れ、電流正極100μA、負極10mA、電圧0.5Vの条件下でそれぞれのプローブ(45本)の間において測定される電位差を測定して電極抵抗値として示す。
【0108】
従来、乾式電極の製造に際して溶媒を用いないため、導電材の分散性が不良であるという問題がある。特に、BET比表面積が大きな導電材は、安定的に分散されないため、乾式電極の製造に用いるのに不向きであるという問題があった。これにより、BET比表面積が小さな導電材を用いるが、導電材の含量を増大させて電極の電気的な特性を向上させようとする試みが行われてきた。しかしながら、導電材の含量を増大させる場合、活物質の含量が減って電極の容量が低下する虞があり、バインダーの含量も減って集電体との集電性及び活物質の間の結着力が低下して電極抵抗が上昇する虞があるという問題がある。
【0109】
本発明の一側面によれば、前記電極活物質層は、BET比表面積が大きな導電材の分散性が改善されることにより、導電材を少ない含量にて含みながらも、電極抵抗値を大幅に低めて電気的な特性が向上した乾式電極を提供することができるという効果がある。但し、本発明の機序がこれに何ら限定されるものではない。
【0110】
本発明の一態様において、前記電極導電材の含量は、電極活物質層の全重量に基づいて、例えば、1重量%以下であり得る。具体的には、前記電極導電材の含量は、電極活物質層の全重量に基づいて、0.1重量%以上かつ1重量%以下又は0.1重量%以上かつ0.8重量%以下であり得る。
【0111】
そして、これにより、本発明の一態様によれば、前記電極活物質層内の電極活物質の含量を増大させることができる。本発明の一態様において、前記電極活物質の含量は、前記電極活物質層の全重量に基づいて、95重量%以上、96重量%以上、97重量%~99重量%、97重量%~98重量%又は97重量%~97.5重量%であり得る。
【0112】
このように、本発明の一態様によれば、電極活物質層には、電極導電材の含量が低いながらも、電極抵抗値が改善されるという効果を奏する。前記電極は、例えば、前記電極活物質層の全重量に基づいて、導電材0.8重量%以下を含みながら、電極抵抗値が55Ω・cm以下を示し得る。
【0113】
特に、前記電極は、下記式1により電極活物質層に含まれる導電材の含量を1重量%に換算したときの抵抗値が45Ω・cm以下を示すものであり得る。
[式1]
Rt=Cw×Rw …1
【0114】
上記の式1において、Rtは、導電材1重量%を基準として換算した電極抵抗値を示し、Cwは、対象の電極における電極活物質層の全重量に基づく導電材の含量を示し、Rwは、対象の電極の電極抵抗値を示す。
【0115】
上述したように、本発明の他の側面によれば、前記電極に含まれる導電材及びバインダーは、上述した導電材マスターバッチに由来するものであり得る。
【0116】
すなわち、前記「電極導電材」は、導電材マスターバッチの欄において上述した「導電材」であり得る。これにより、前記導電材マスターバッチの欄において述べた導電材についての説明を前記電極の「電極導電材」に対して援用することにする。
【0117】
また、前記「電極バインダー」は、導電材マスターバッチの欄において上述した「バインダー」を含み得る。これにより、前記導電材マスターバッチの欄において述べたバインダーについての説明を前記電極の「電極バインダー」に対して援用することにする。
【0118】
例えば、前記電極導電材は、80m2/g以上のBET比表面積を有するものであり得る。
【0119】
また、前記電極導電材は、カーボンナノチューブを単独で、又はカーボンナノチューブ及び点状導電材を含むものであり得る。このとき、前記点状導電材の種類、及び前記カーボンナノチューブ及び点状導電材の重量比などに関しては、上述した事項を援用することにする。
【0120】
本発明の他の側面による電極は、上述した導電材マスターバッチを用いて設けられた電極活物質層を含むことにより、BET比表面積が大きな導電材の分散性を向上させ、これにより、電極活物質層の形成にBET比表面積が大きな導電材が安定的に含まれることを可能にする。これにより、電極活物質層内の導電材の含量を減らし、活物質の含量を増大させることにより、電極の抵抗特性が向上したものであり得る。
【0121】
また、前記電極バインダーは、前記導電材マスターバッチに由来するPVDF系バインダー及びPTFE系バインダーを含み得る。
【0122】
これらの他にも、前記電極バインダーは、後述する製造方法、特に、前記混合物塊状体を製造する工程において繊維化(fibrillation)可能であるものであれば、特定のものに何ら限定されるものではない。前記繊維化は、高分子重合体が細分割される処理をいい、例えば、機械的なせん断力などを用いて行われ得る。このようにして繊維化した重合体繊維は、その表面が解れて微小繊維(フィブリル)が多数本生じる。
【0123】
本発明の一態様によれば、前記電極バインダーは、非制限的な例として、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene;PTFE)、ポリオレフィン、又はこれらの混合物を含み得、詳細には、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene;PTFE)を含み得、さらに詳細には、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene;PTFE)であり得る。具体的には、前記ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene;PTFE)は、全体のバインダー高分子の全重量に基づいて、60重量%以上で含まれ得る。一方、このとき、前記バインダー材料には、ポリエチレンオキサイド(PEO:polyethylene oxide)、PVdF(polyvinylidene fluoride)、PVdF-HMP(polyvinylidene fluoride-co hexafluoropropylene)、及びポリオレフィン系高分子のうちの1種以上がさらに含まれ得るということはいうまでもない。
【0124】
本発明の一態様において、前記電極活物質層に含まれるバインダー高分子は、電極の製造方法の欄において後述するように、電極用の混合粉体の製造のために投入されたもの、すなわち、第2のバインダーであってもよいし、あるいは、導電材マスターバッチの製造のために投入されたもの、すなわち、第1のバインダーであってもよいし、あるいは、両段階においてそれぞれ投入されたものであってもよい。
【0125】
本発明の一態様において、前記電極バインダーの結晶化度は、例えば、15%以下、具体的には、10%以下であり得る。
【0126】
本発明の一態様において、前記電極バインダーは、前記導電材マスターバッチに由来するものを含み得る。例えば、前記導電材マスターバッチは、PVDF系バインダー高分子及びPTFEバインダー高分子を含み得、これらのそれぞれは、独立して結晶化度が30%以下であるものであり得る。すなわち、前記導電材マスターバッチに含まれるバインダーの結晶化度が30%以下であり得、これを用いて電極用の混合粉体を製造するとき、混錬段階によりバインダーがさらに繊維化しながら、その結晶化度が15%以下のレベルまで減少したものを含み得る。
【0127】
本発明の一態様において、前記PTFEバインダーの結晶化度が前記範囲を満たす場合、導電材マスターバッチを用いて製造される電極の物性を向上させる側面からみて有利な効果を奏するが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0128】
本発明の一態様において、前記電極バインダーの含量は、電極活物質層の全重量に基づいて、例えば、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4重量%、0.1重量%~3重量%又は0.1~2.5重量%であり得るが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0129】
本発明の一態様において、前記電極活物質層は、電池の極性に応じて正極活物質又は負極活物質を含み得る。
【0130】
前記正極活物質の非制限的な例としては、例えば、リチウム遷移金属酸化物;リチウム金属鉄リン酸塩;リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物;リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物の一部が他の遷移金属で置換された酸化物;又はこれらのうちの2種以上を含み得るが、これらに限定されるものではない。具体的には、前記正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や1種又はそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは、0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B又はGaであり、x=0.01~0.3である)で表わされるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn又はTaであり、x=0.01~0.1である)又はLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、Cu又はZnである)で表わされるリチウムマンガン複合酸化物;リチウム金属リン酸塩LiMPO4(ここで、Mは、M=Fe、CO、Ni、又はMnである);リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物Li1+x(NiaCobMnc)1-xO2(x=0~0.03、a=0.3~0.95、b=0.01~0.35、c=0.01~0.5、a+b+c=1);リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物の一部がアルミニウムで置換された酸化物Lia[NibCocMndAle]1-fM1fO2(M1は、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、P及びSからなる群から選択される1種以上であり、0.8≦a≦1.2、0.5≦b≦0.99、0<c<0.5,0<d<0.5,0.01≦e≦0.1、0≦f≦0.1);リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物の一部が他の遷移金属で置換された酸化物Li1+x(NiaCobMncMd)1-xO2(x=0~0.03、a=0.3~0.95、b=0.01~0.35、c=0.01~0.5、d=0.001~0.03、a+b+c+d=1、Mは、Fe、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群から選択されたいずれか1種である)、ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらのみに何ら限定されるものではない。
【0131】
前記負極活物質の非制限的な例としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si)、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0≦x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SiO、SiO/C、SiO2などのシリコン系酸化物;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などが使用可能である。
【0132】
本発明の一態様において、前記集電体は、電池に化学的な変化を引き起こさずに、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレジ鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅又はアルミニウムやステンレジ鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などにより表面処理を施したものなどが使用可能である。集電体はまた、その表面に微小な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多種多様な形態のものが採用可能である。
【0133】
本発明の一態様において、前記集電体としては、表面において抵抗を低め、接着力を向上させるための導電性プライマーを全体的に又は部分的にコーティングしたものが使用可能である。ここで、前記導電性プライマーは、導電性物質とバインダーを含み得、前記導電性物質は、導電性を帯びる物質であれば、格別限定されないが、例えば、炭素系物質であり得る。前記バインダーは、溶剤に溶け得るフッ素系(PVDF及びPVDF共重合体を含む)、アクリル系バインダー及び水系バインダーなどを含み得る。
【0134】
導電材マスターバッチの製造方法
本発明のさらに他の側面によれば、上述した導電材マスターバッチを製造する方法が提供される。
【0135】
本発明の他の側面による導電材マスターバッチの製造方法は、導電材、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーを混合して混合物を得るステップと、前記混合物を混錬しかつ押出して押出物を得るステップ及び前記押出物を粉砕するステップを含み、前記導電材は、80m2/g以上のBET比表面積を有するものであり、製造される導電材マスターバッチ内の前記PVDF系バインダー及びPTFEバインダーの結晶化度は、それぞれ独立して30%以下であるものとする。
【0136】
本発明の導電材マスターバッチの製造方法において、前記導電材、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーは、前記導電材マスターバッチの欄において説明した事項を援用する。
【0137】
本発明の一態様において、前記導電材、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーの混合物を得るための混合は、前記導電材、PVDF系バインダー及びPTFEバインダーが均一に分布できるように行うことであり、これらの構成成分は、粉末状に混合されるものであるため、これらの単なる混合を可能にするものであれば、格別限定されずに多種多様な方法により混合され得る。前記導電材マスターバッチは、乾式混合により行われ得、ブレンダー又はスーパーミキサーなどの機器に前記物質を投入して行われ得る。
【0138】
本発明の一態様において、前記混合物を得るステップは、スーパーミキサー混合機において200rpm~1,700rpmにて1分間~30分間混合するものであり得る。具体的には、混合機において1,000rpm~1,500rpmにて2分間~7分間混合するものであり得る。
【0139】
前記導電材マスターバッチの製造方法は、前記混合物から押出物を得るために、前記混合物内のバインダーを繊維化させるために混錬しかつ押出するステップを含む。
【0140】
本発明の一態様において、前記押出物を得るステップは、例えば、二軸押出機(twin screw extruder)を用いて行い得る。前記押出物を二軸押出機を用いて得ることにより、製造される導電材マスターバッチ内の前記PVDF系バインダー及びPTFE系バインダーのそれぞれの結晶化度を30%以下に実現することができるという効果を奏する。
【0141】
本発明の一態様において、前記二軸押出機内のそれぞれのスクリューは、例えば、直径(Φ)が10~40、15~35、20~30、具体的には、25であり、長さ(L)/直径(D)の比率(L/D)が40~60、45~55、例えば、48であるものが使用可能である。
【0142】
本発明の一態様において、前記押出物を得るステップは、具体的には、前記混合物を前記二軸押出機に投入し、100℃~300℃の押出温度及び50rpm~600rpmのスクリュー速度にて溶融混錬してダイを介して押出して行い得る。
【0143】
本発明の一態様において、前記押出温度は、例えば、130℃~230℃又は140℃~220℃であり得る。本発明の一態様において、前記押出温度が上記の範囲よりも低すぎる場合、バインダーの繊維化及び混錬による混合物の塊状化が上手く行われないため、押出物が粉末状に圧縮される虞があり、前記押出温度が上記の範囲よりも高すぎる場合、バインダーの結晶化度が急激に低下し、熱分解が起こり得るという問題があるため好ましくない可能性があるが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0144】
本発明の一態様において、前記二軸押出機内のスクリュー速度は、例えば、150rpm~450rpm、300rpm~450rpm、350rpm~450rpm又は400rpmであり得る。
【0145】
本発明の一態様において、前記押出時のダイの形状は、長方形状又は円形状であり得るが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0146】
本発明の一態様において、前記粉砕するステップは、導電材マスターバッチを以降の電極の製造時に粉末状の活物質との混合が行われ易いように切断するものであって、前記押出物が適切な大きさ及び形状を有するように通常の方法により粉砕するものであり、その方法が特に制限されるものではない。
【0147】
本発明の一態様において、前記粉砕は、前記押出物をブレンダーに投入し、例えば、5,000rpm~20,000rpmにて10秒間~10分間行い得る。具体的には、前記粉砕は、8,000rpm~15,000rpm又は10,000rpmにて20秒間~1分間、又は30秒間行い得る。
【0148】
以上のようにして製造される導電材マスターバッチは、導電材が均一に分散された形状を呈し、投入されたPVDF系バインダー及びPTFEバインダーのそれぞれの結晶化度が30%以下を示し得るという特徴がある。
【0149】
以上のようにして製造される導電材マスターバッチは、電極、特に、乾式電極の製造に利用可能であるが、前記導電材マスターバッチの用途がこれに何ら制限されるものではない。
【0150】
電極の製造方法
本発明のさらに他の側面によれば、上述した電極を製造する方法が提供される。
【0151】
本発明のさらに他の側面による電極の製造方法は、導電材及び第1のバインダーを混合して混合物を得るステップと、前記混合物を混錬しかつ押出して押出物を得るステップと、前記押出物を粉砕して導電材マスターバッチを得るステップと、電極活物質、前記導電材マスターバッチ、及び第2のバインダーを含む混合物から集電体の少なくとも一面の上に電極活物質層を形成するステップと、を含む。
【0152】
本発明の一態様によれば、前記導電材は、前記導電材マスターバッチの欄において上述した事項を援用し得る。
【0153】
本発明の一態様によれば、前記第1のバインダー及び第2のバインダーのそれぞれは、前記電極の欄において上述した事項を援用し得る。例えば、前記第1のバインダー及び第2のバインダーのそれぞれは、互いに独立して電極の製造に用いられる通常の種類が利用可能であり、その種類が特に制限されることはない。
【0154】
本発明の一態様によれば、前記第1のバインダーは、前記導電材マスターバッチに用いられるバインダーであり得、具体的には、PVDF系バインダー、PTFE系バインダー又はこれらの混合物を含むものであり得る。
【0155】
本発明の一態様によれば、前記第2のバインダーは、電極の製造に用いられる通常のバインダーであり得、例えば、PVDF系バインダー、PTFE系バインダー、ポリオレフィンバインダー又はこれらのうちの2種以上の混合物を含むものであり得る。
【0156】
本発明のさらに他の側面による電極の製造方法は、上述した導電材マスターバッチを用いて電極活物質層を形成するステップを含むものであり得る。すなわち、前記電極の製造方法は、導電材マスターバッチを製造するための工程と、製造された導電材マスターバッチを導電材として用いて電極を製造する工程と、に大別できる。
【0157】
このような側面からみて、前記第1のバインダーは、導電材マスターバッチの製造工程に用いられるバインダーであり得、前記第2のバインダーは、前記導電材マスターバッチを用いて電極を製造する工程において用いられる電極バインダーであり得る。
【0158】
また、前記導電材マスターバッチの製造工程に含まれる混合物を得るステップと、混錬するステップ、及び粉砕するステップのそれぞれを第1の混合ステップと、第1の混錬ステップ及び第1の粉砕ステップと称し得る。そして、前記導電材マスターバッチを用いて電極を製造する工程において混合物を得るステップと、混錬するステップ、及び粉砕するステップのそれぞれを第2の混合ステップと、第2の混錬ステップ及び第2の粉砕ステップと称し得る。
【0159】
本発明の一態様によれば、前記電極の製造方法は、上述した導電材マスターバッチを得る工程、及び電極活物質層を形成する工程を含む。
【0160】
本発明の一態様において、前記導電材マスターバッチを用いて電極を製造する工程は、集電体の少なくとも一面の上に電極活物質、前記導電材マスターバッチ、及び第2のバインダー高分子を含む電極活物質層を形成するステップを含む。
【0161】
本発明の一態様において、前記電極活物質層を形成するステップは、電極活物質、前記導電材マスターバッチ及びバインダー高分子(第2のバインダー)から電極用の混合粉体を製造した後、集電体の少なくとも一面の上に前記電極用の混合粉体から得られる自立型の電極フィルムをラミネーションする工程を含み得る。
【0162】
本発明のさらに他の側面によれば、導電材及び第1のバインダーを混合して混合物を得るステップ(第1の混合ステップ)と、前記混合物を混錬しかつ押出して押出物を得るステップ(第1の混錬ステップ)と、前記押出物を粉砕して導電材マスターバッチを得るステップ(第1の粉砕ステップ)と、電極活物質、前記導電材マスターバッチ、及び第2のバインダーを混合して混合物を得るステップ(第2の混合ステップ)と、前記第2の混合ステップから得られる混合物を高温・低せん断率にて混錬して混合物塊状体を得るステップ(第2の混錬ステップ)と、前記混合物塊状体を高せん断で粉砕して電極用の混合粉体を得るステップ(第2の粉砕ステップ)と、前記電極用の混合粉体をカレンダリングして合剤フィルムを得るステップと、前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に位置させ、ラミネーションして電極を得るステップと、を含む電極の製造方法が提供される。
【0163】
前記導電材マスターバッチを得るステップ(第1の粉砕ステップ)までは、上述した事項を援用する。
【0164】
前記第2の混合ステップと、第2の混錬ステップ及び第2の粉砕ステップは、電極用の混合粉体を製造するための工程である。
【0165】
前記電極用の混合粉体は、電極活物質、導電材及びバインダーを含む粉末状の電極材料であって、例えば、後述するように、電極活物質、電極導電材及び電極バインダーを含む混合物塊状体が粉砕されて得られるものであり得る。本明細書中において、前記混合粉体は、2以上の電極材料粒子が集まっている集合物を意味する。前記混合粉体をなす個々の電極材料粒子は、電極活物質、導電材及びバインダーを含む。
【0166】
前記電極用の混合粉体は、下記のような製造方法により得られ得る。
【0167】
まず、電極活物質、上記において用意された導電材マスターバッチ及びバインダー高分子(第2のバインダー)を含む電極材料混合物を用意する。前記混合物を製造するための混合は、前記混合物内において前記電極活物質、導電材マスターバッチ及び電極バインダーなど電極材料が均一な分散状を呈し得るように行われるものである。本発明の一態様による電極は、溶媒を用いない乾式電極として製造されるため、前記混合は、溶媒が投入されずに粉末状に混合されるものである。したがって、前記電極材料の単なる混合を可能にするものであれば、格別限定されず、多種多様な方法により混合が行われ得る。例えば、公知のミキサーやブレンダーなどの機器に前記電極材料を投入し、攪拌するなどの方法により行われ得る。
【0168】
次いで、上記において得られた電極材料混合物に対して、電極バインダーを繊維化させるための繊維化工程が行われる(第2の混錬ステップ)。このとき、前記バインダーは、導電材マスターバッチに含まれる第1のバインダー及び電極用の混合粉体の製造に際してさらに投入された第2のバインダーのうちの少なくともどちらか一方を示すものである。前記繊維化工程としては、せん断応力によるミキシング、例えば、機械的なミリングの方法や混練(ニーディング、kneading)の方法が適用可能である。
【0169】
本発明の一態様において、好ましくは、前記繊維化工程として低せん断の混錬(ニーディング、kneading)の方法が適用可能であり、例えば、ニーダー(kneader)などの練り合わせ機を用いて行われ得る。このような混錬により電極バインダーが繊維化しながら粉末状で投入されていた電極活物質など電極材料が結合又は連結されて混合物塊状体が形成され得る。前記混錬は、溶媒の投入が伴われないため、前記混合物塊状体は、固形分100%のものであり得る。
【0170】
本発明の一態様において、前記混錬は、10rpm~100rpmの速度に制御され得る。例えば、前記混錬は、前記範囲内において40rpm以上又は70rpm以下の速度に制御され得る。前記混錬は、1分間~10分間行われ得る。例えば、前記範囲内において40rpm~70rpmの速度にて3分間~7分間行われ得る。
【0171】
さらに好ましくは、前記混錬は、5分以内又は3分以内で行われ得る。得られた電極用の混合粉体におけるタップ圧縮率が低ければ低いほど、粉体を用いた電極フィルムの製造工程性が改善されるという効果があるが、前記タップ圧縮率は、混錬の初期に減少していて、一定の時点を過ぎてからは変化がほとんどない。前記混錬時間が上述した範囲であるとき、適切な繊維化の度合い及び繊維化したバインダー高分子の引っ張り強度の側面からみて好ましい場合があるが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0172】
一方、前記第2の混錬ステップにおいて、前記混錬は、せん断率が10/s~500/sの範囲に制御され得る。本発明の具体的な一態様において、前記混錬は、1分間~30分間行われ得、せん断率は、30/s~100/sの範囲に制御され得る。
【0173】
また、このような混錬ステップは、高温及び常圧以上の圧力条件下で行われ得、さらに詳細には、常圧よりも高い圧力条件下で行われ得る。より具体的には、前記混錬は、50℃~230℃の範囲、詳細には、90℃~200℃において行われ得る。上述した範囲において混錬が行われるとき、バインダー高分子の繊維化の度合い及び投入された材料の塊状化、電極フィルムのフィルム化させ易さ、及び電極フィルムの引っ張り強度の側面からみて好ましい場合があるが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0174】
また、常圧以上、詳細には、1atm~60atmの圧力下、又は1atm~30atmの圧力下、又は1atm~10atmの圧力下、1atm~10atmの圧力下、1.1atm~10atmの圧力下、1.1atm~6atmの圧力下又は1.1atm~3atmの圧力下で行われ得る。上述した範囲において混錬が行われるとき、繊維の結晶化の度合い及び混合物塊状体の密度の側面からみて好ましい場合がある。本発明の一態様によれば、高いせん断ミキシングの代わりに、高温及び常圧以上の圧力条件下での低せん断ミキシング工程を行うとき、本発明が意図している効果を好ましく成し遂げることができるという効果を奏するが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0175】
次いで、前記混錬のステップ(第2の混錬ステップ)を用いて製造された混合物塊状体を粉砕して粉末状の電極用の混合粉体を得る(第2の粉砕ステップ)。
【0176】
前記混錬工程を用いて得られた混合物塊状体を直ちに押し付けてシート状成形(カレンダリング工程)を行う場合もあるが、この場合、ターゲットの厚さに成形するために強い圧力と高温が印加される必要があり、これにより、乾式電極フィルムの密度が過剰に高くなりすぎたり、均一なフィルムが得られなくなったりするという問題が起こり得る。このため、上記のようにして得られた混合物塊状体を粉砕して電極用の混合粉体を作製する。
【0177】
このとき、前記粉砕は、格別限定されないが、ブレンダー又はグラインダーなどの機器により行われ得る。本発明の一態様において、前記粉砕は、具体的には、グラインダーにおいて5,000rpm~20,000rpm、又は10,000rpm~18,000rpmの速度にて行われ得る。一方、前記粉砕工程は、30秒間~10分間、詳細には、30秒間~1分間行われ得る。上述した範囲において粉砕が行われるとき、電極用の混合粉体の粒子径の側面と微粉の発生を制御する側面からみて好ましい場合があるが、本発明がこれに何ら制限されるものではない。
【0178】
本発明の一態様において、前記混合物塊状体を粉砕した後、粉砕された電極用の混合粉体を分級するステップをさらに含み得る。これにより、分級された電極用の混合粉体をカレンダリングするものであり得る。前記分級するステップにおいては、前記粉砕された電極用の粉体を一定の大きさ以下の空隙を有する網目(mesh、メッシュ)を用いて一定の大きさ以上の電極用の粉体を濾し取って得られる。
【0179】
次いで、前記電極用の混合粉体を圧着成形する方法により合剤フィルムを得るステップを含む。本明細書中において、前記電極用の混合粉体を圧着してシート状の乾式電極フィルムを製造する工程をカレンダリング工程であると説明する。前記カレンダリング工程により、前記乾式電極フィルムは、所定の厚さを有するシート(sheet)の形状に用意されることが可能になる。例えば、前記乾式電極フィルムは、アスペクト比が1を超える短冊状(strip、ストリップ)を有するものであり得る。本発明の一実施形態において、前記乾式電極フィルムは、厚さが50μm~300μmであり得る。
【0180】
例えば、前記カレンダリング工程は、前記電極用の混合粉体をカレンダー装置に供給し、カレンダー装置に含まれているロールプレスを用いて熱圧着するカレンダリング方法により行われ得る。また、前記カレンダリング工程は、ロールテゥロール連続工程により行われ得る。
【0181】
本発明の一実施形態において、前記カレンダー装置は、2つのローラーが向かい合うように配置されているロールプレス部を含み得、電極用の混合粉体が前記ロールプレス部を通過してシート状に圧着され得る。前記ロールプレス部は、連続して複数配置されていて、乾式電極フィルムの圧着が複数回行われ得る。ロールプレス部の数は、乾式電極フィルムの厚さや圧延率を考慮して適宜調節され得る。
【0182】
図1は、前記カレンダリング工程100を概略的に図式化して示すものである。これを参照すると、複数のカレンダリング用のローラー110が含まれているカレンダー装置により電極用の混合粉体120の押し付けが複数回行われて電極用の合剤フィルム130が製造される。前記電極用の合剤フィルムは、溶媒を用いずに製造されたため、乾式電極フィルムとも呼ばれ得る。
【0183】
一方、前記各ロールプレス部は、それぞれ独立して両ローラーの回転速度比が1:1~1:10の範囲内において適宜制御され得る。例えば、いずれか一つ以上のロールプレス部において両ローラーの回転速度比が1:1~1:3の比率に制御されるのである。また、それぞれ独立して各ロールプレス部のローラーの温度は、常温(25℃)~250℃の範囲に制御され得る。このようなカレンダリング工程により合剤フィルムが製造され得る。
【0184】
本発明の一態様において、前記合剤フィルムは、気孔度が20vol%~50vol%であり得、好ましくは、前記範囲内において40vol%以下又は35vol%以下の値に制御され得る。気孔度が前記範囲を満たす場合、多種多様な効果を奏するという側面からみて好ましい。本発明の一態様において、前記気孔度は、合剤フィルムの見かけ密度を測定し、各構成成分の実際の密度と組成を基準として計算した実際の密度を用いて下記のような式2により求め得る。
[式2]
気孔度%={1-(見かけ密度/実際の密度)}×100 …2
【0185】
本発明の一態様において、前記合剤フィルムは、引っ張り強度が0.2MPa以上であり得る。本発明の一態様において、前記合剤フィルムの引っ張り強度は、0.2MPa以上、0.3MPa以上又は0.50MPa以上であり得る。
【0186】
前記引っ張り強度は、下記のような方法に従って測定した値を示し得る。
【0187】
製造されたフィルムを横×縦が1cm×10cmの大きさになるように切断して試片を用意する。米国材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials)D638標準基準に準拠し、万能試験機(UTM)(ツビックローエル(ZwichRoell)社製)を用いて予荷重0.01kg/cm、試験速度5mm/minの条件下で用意された試片の両終端を引っ張る。このとき、破断時に試片に加えられた力を試片の初期の断面積で割って引っ張り強度を測定する。3回測定して平均値として示す。
【0188】
カレンダリングの後に得られる合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に形成するためのラミネーションを行う。
【0189】
本発明の一態様において、前記ラミネーションは、前記合剤フィルムを集電体の上に所定の厚さに圧延、貼着するステップであり得る。前記ラミネーションもまた、ラミネーションロールにより行われ得、このとき、ラミネーションロールは、常温(25℃)~200℃の温度に保たれ得るが、これに何ら限定されるものではない。
【0190】
図2は、本発明の一態様によるラミネーション工程200を概略的に図式化して示すものである。これを参照すると、電極合剤フィルム230が集電体220と接合されて乾式電極240が製造され、前記ラミネーション工程は、ラミネーションローラー210による押し付けにより行われる。一方、本発明において、ラミネーションを用いて集電体に貼着された電極合剤フィルムを電極活物質層と称し得る。また、本発明において、前記電極合剤フィルム、すなわち、電極活物質層は、前記電極用の混合粉体に由来するものであって、前記電極活物質層における前記材料の含量比は、前記混合粉体と同様の範囲を有し得る。
【0191】
以上の方法に従って上述した電極が製造され得る。
【0192】
これにより製造される電極は、55Ω・cm以下の電極抵抗を有するものであり得る。
【0193】
電気化学素子
本発明のさらに他の側面によれば、上述した電極を含む電気化学素子が提供される。
【0194】
前記電気化学素子は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在している分離層を含み、前記正極及び負極のうちの少なくともどちらか一方が上述した電極であるものとする。
【0195】
本発明の一態様において、前記分離層は、電気化学素子に用いられる通常の分離膜、固体電解質膜又はこれらをいずれも網羅する構成要素であり得、正極と負極との直接的な接触を防ぐための構成であれば、特に制限されるものではない。
【0196】
本発明の一態様において、前記電気化学素子は、電気化学反応をするあらゆる素子を網羅する。具体例として、あらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はスーパーキャパシタ素子などのキャパシタ(capacitor)などが挙げられる。特に、前記二次電池のうち、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が好適に使用可能である。
【0197】
前記二次電池の具体的な構造などは、従来周知の通りであるため、本明細書中ではその説明を省略する。
【0198】
本発明による二次電池は、エネルギー貯蔵装置内に単位電池として含まれ得るが、本発明の用途がこれに何ら制限されるものではない。
【0199】
前記エネルギー貯蔵装置の具体的な構造などは、従来周知の通りであるため、本明細書中ではその説明を省略する。
【0200】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明するが、下記の実施例は、単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範ちゅうがこれらにのみ限定されることはない。
【0201】
製造例1.導電材マスターバッチの製造
下記の方法に従って、導電材マスターバッチを製造した。
【0202】
実施例1
PVDF-HFP(融点118℃)40wt%、PTFE(融点348℃)10wt%及びCNT(直径(D50)12nm、BET比表面積185m2/g)50wt%をスーパーミキサー(韓国、ヒソンテックウィン株式会社(Heesung Techwin co.,LTD))製、20L Super Mixer)に投入し、1,200rpmにて3分間混合して混合物を製造した。
【0203】
得られた混合物は、定量フィーダーを介して2~3kg/hrにて二軸押出機(直径(Φ)25)、L/D 48)に供給し、押出機ヒーター#1~9ゾーンの温度130~200℃、スクリュー速度400rpmにて溶融混錬してダイを介して押出した。
【0204】
得られた押出物をブレンダー(韓国、信一電子株式会社製)分散機に投入し、10,000rpmにて30秒間粉砕して導電材マスターバッチを得た。
【0205】
実施例2
PVDF(融点174℃)40wt%、PTFE(融点347℃)10wt%及びCNT(直径(D50)12nm、BET比表面積185m2/g)50wt%をスーパーミキサー(韓国、ヒソンテックウィン株式会社製、20L Super Mixer)に投入し、1,200rpmにて3分間混合して混合物を製造した。
【0206】
得られた混合物は、定量フィーダーを介して2~3kg/hrにて二軸押出機(直径(Φ)25、L/D 48)に供給し、押出機ヒーター#1~9ゾーン温度140~220℃、スクリュー速度400rpmにて溶融混錬してダイを介して押出した。
【0207】
得られた押出物をブレンダーに投入し、10,000rpmにて30秒間粉砕して導電材マスターバッチを得た。
【0208】
実施例3
PVDF(融点174℃)30wt%、PTFE(融点348℃)10wt%及びCNT(直径(D50)12nm、BET比表面積185m2/g)60wt%を用いた以外は、実施例2の方法と同様にして導電材マスターバッチを得た。
【0209】
実施例4
PVDF-HFP(融点118℃)20wt%、PTFE(融点348℃)20wt%及びCNT(直径(D50)12nm、BET比表面積185m2/g)60wt%を投入した以外は、実施例1の方法と同様にして導電材マスターバッチを製造した。
【0210】
比較例1
PVDF-HFP(融点118℃)70wt%及びCNT(直径(D50)12nm、BET比表面積185m2/g)30wt%をブレンダー(韓国、信一電子株式会社製)分散機に投入し、10,000rpmにて1分間ミックスして混合物を得た。
【0211】
ローターミキサー(韓国、エールエムテック(LM TECH)社製、PBV-0.1)の温度を160℃に安定化させ、上記において得られた混合物をローターミキサーに入れた後、50rpmの速度にて10分間溶融混錬して導電材マスターバッチを得た。
【0212】
比較例2
PVDF-HFP(融点118℃)35wt%、PTFE(融点347℃)35wt%及びCNT(直径(D50)12nm、BET比表面積185m2/g)30wt%をブレンダー(韓国、エールエムテック社製、PBV-0.1)に投入し、10,000rpmにて1分間混合して混合物を得た。
【0213】
ローターミキサーの温度を160℃に安定化させ、上記において得られた混合物をローターミキサーに入れた後、50rpmの速度にて10分間溶融混錬して混合物塊状体を得た。
【0214】
得られた混合物塊状体をブレンダー(韓国、信一電子株式会社製)分散機に投入し、10,000rpmにて30秒間粉砕して導電材マスターバッチを得た。
【0215】
比較例3
PVDF-HFP(融点118℃)40wt%、PTFE(融点348℃)10wt%及びCNT(直径(D50)12nm、BET比表面積185m2/g)50wt%を用いた以外は、比較例2の方法と同様にして導電材マスターバッチを得た。
【0216】
評価例1.導電材マスターバッチの物性の評価
上記において製造した導電材マスターバッチの写真を
図1に示し、SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製、S-4800)像を
図2に示す。
図2には、参考のために、導電材マスターバッチの製造に用いたCNT原材料のSEM像を併せて示す。
【0217】
また、DSC(TAインスツルメント社製、DSC 25)熱分析を用いて導電材マスターバッチ内のそれぞれのバインダーの結晶化度を測定した結果を表1に示す。
【0218】
結晶化度の測定方法
示差走査熱量分析装置(DSC)にサンプル5~12mgを入れ、窒素雰囲気下で25~360℃の温度範囲において10℃/minの速度にて昇温させながら、融点、融解熱量(ΔHm)を測定し、バインダー種類に応じた結晶融解熱量(ΔHm°)を基準として、下記式により結晶化度を測定した。
バインダーの結晶化度(Xc)=ΔHm/ΔHm°×100%
【0219】
PVDFバインダーの100%結晶融解熱量(ΔHm°)は、105J/gであり、PVDF-HFPバインダーの100%結晶融解熱量(ΔHm°)は、80J/gであり、PTFEバインダーの100%結晶融解熱量(ΔHm°)は、85.4J/gの値を参考にして測定した。
【0220】
CTN分散性の評価方法
図2に示すように、SEM像内のCNTバンドルの直径及びナノ繊維の直径を測定することにより分散性を評価した。
【0221】
【0222】
図1に示す実施例1~3、比較例1~3の写真を参照すると、PTFEバインダーを用いなかった比較例1は、粉末状の原材料が固まって塊状にならないため、目的とする導電材マスターバッチとして使えないということを確認した。
【0223】
図2に示す実施例1~3、比較例1~3のSEM像を参照すると、ローターミキサーを用いて混錬して製造した比較例1及び比較例2は、CNTが均一に分散されず、束(バンドル)状に固まって塊状になっていることを確認した。
【0224】
表1の結果によれば、比較例1~3の場合、二軸押出機を用いずに溶融混錬する場合、混錬及び押出が不安定であり、PTFEの結晶化度が30%を超えるように実現された結果、目的とする導電材マスターバッチとして使えないということを確認した。
【0225】
製造例2.電極の製造
上記において製造した導電材マスターバッチを用いて、下記の方法に従って電極を製造した。
【0226】
実施例5
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウムオキサイド(NCMA,Li[Ni0.73Co0.05Mn0.15Al0.02]O2)、前記実施例1において製造した導電材マスターバッチ及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を重量比が97:1.6:1.4の比率になるようにブレンダーに投入し、10,000rpmにて1分間混合して混合物を製造した。ニーダーの温度を180℃に安定化させ、前記混合物をニーダーに入れた後、圧力4気圧下で40rpmの速度にて混錬して混合物塊状体を得た。前記混合物塊状体をブレンダーに投入し、10,000rpmの条件下で30秒間粉砕して1mmの気孔を有するふるいを用いて分級して電極用の混合粉体を得た。このとき、製造された電極用の混合粉体内のPVDF-HFPの結晶化度が0%であり、PTFEの結晶化度が6.8%であった。
【0227】
次いで、前記電極用の混合粉体をラップカレンダー(ロール直径:200mm、ロール温度:100℃、ロール速度比1.5)に投入して圧着して電極合剤フィルムを製造した。次いで、前記得られた電極合剤フィルムをアルミニウム薄膜(13μm)の両面に位置させ、30℃のロール温度のロールプレスを用いてラミネーションして電極を得た。
【0228】
実施例6
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウムオキサイド(NCMA,Li[Ni0.73Co0.05Mn0.15Al0.02]O2)、前記実施例4の導電材マスターバッチ及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を重量比が97:1.34:1.66の比率になるようにして用いたことを除いては、実施例5の方法と同様にして電極を得た。
【0229】
このとき、製造された電極用の混合粉体内のPVDF-HFPの結晶化度が0%であり、PTFEの結晶化度が10.6%であった。
【0230】
比較例3
導電材マスターバッチとして、比較例3の導電材マスターバッチを用いたことを除いては、実施例5の方法と同様にして電極を得た。
【0231】
このとき、製造された電極用の混合粉体内のPVDF-HFPの結晶化度が0%であり、PTFEの結晶化度が15.6%であった。
【0232】
比較例4
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウムオキサイド(NCMA,Li[Ni0.73Co0.05Mn0.15Al0.02]O2)96.3wt%、PTFE(融点348℃)2.2wt%及びカーボンブラック(BET比表面積65m2/g)1.5wt%をスーパーミキサー(韓国、ヒソンテックウィン株式会社製、20L Super Mixer)に投入し、1,200rpmにて3分間混合して混合物を製造した。
【0233】
ニーダーの温度を180℃に安定化させ、前記混合物をニーダーに入れた後、圧力4気圧下で40rpmの速度にて7分間混錬して混合物塊状体を得た。
【0234】
この後、実施例5の方法と同様にして電極を得た。
【0235】
評価例2.電極用の混合粉体の組成及び電極バインダーの結晶化度の評価
前記実施例5、実施例6、比較例3及び比較例4の電極の製造に用いられた電極用の混合粉体の組成を下記の表2にまとめて示す。
【0236】
また、製造された電極用の混合粉体内に含まれている電極バインダーの結晶化度を測定してその結果を下記の表2に併せて示す。
【0237】
バインダーの結晶化度は、下記のような方法に従って測定した。バインダーの結晶化度は、評価例1の方法と同様にして測定した。
【0238】
【0239】
上記の表2から明らかなように、CNT導電材マスターバッチを用いると、電極用の混合粉体内の導電材の含量を低め、活物質の含量を増大させることができるということを確認した。
【0240】
また、CNT導電材マスターバッチを用いるとき、溶融混錬の段階においてローターミキサーを用いる比較例3に比べて、二軸押出機を用いた実施例5、6の場合に電極用の混合粉体内の電極バインダーの結晶化度が15%以下を示すことを確認した。
【0241】
評価例3.電極の物性の評価
前記実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2において製造した電極合剤フィルムの引っ張り強度と、電極の抵抗値をそれぞれ下記の表3に示す。
【0242】
また、下記の表3には、電極抵抗値として、導電材1重量%の含量を基準として変換した電極抵抗値を併せて示す。
【0243】
電極合剤フィルムの引っ張り強度の測定
製造されたフィルムを横×縦が1cm×10cmの大きさになるように切断して試片を用意した。米国材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials)D638標準基準に準拠し、万能試験機(UTM)(ツビックローエル(ZwichRoell)社製)を用いて予荷重0.01kg/cm、試験速度5mm/minの条件下で用意された試片の両終端を引っ張った。
【0244】
このとき、破断時に試片に加えられた力を試片の初期の断面積で割って引っ張り強度を測定した。3回測定して平均値として示した。
【0245】
電極の抵抗測定
マルチプローブテスター(日置電機株式会社製、RM2610)に用意された電極試料を入れ、電流正極100μA、負極10mA、電圧0.5Vの条件下でそれぞれのプローブ(45個)の間において測定される電位差を測定して電極抵抗値として示す。
【0246】
電極抵抗値の換算
下記式1に従って測定された電極抵抗値を導電材1重量%を基準として換算した。
[式1]
Rt=Cw×Rw …1
【0247】
上記の式において、Rtは、導電材1重量%を基準として換算した電極抵抗値を示し、Cwは、対象の電極における電極活物質層の全重量に基づく導電材の含量を示し、Rwは、対象の電極の電極抵抗値を示す。
【0248】
【0249】
上記の表3によれば、電極用の合剤フィルムの製造時にCNT導電材マスターバッチを用いた実施例5及び実施例6の場合、引っ張り強度を0.2MPa以上に良好に保持しながらも、電極抵抗値が大幅に向上することが確認された。
【0250】
特に、実施例5及び実施例6は、導電材を1重量%未満の含量にて含みながらも、電極抵抗値が55Ω・cm以下を示している。実施例5及び実施例6の電極抵抗を導電材の含量の1重量%を基準として換算したとき、比較例3及び比較例4に比べて電極抵抗値が格段に改善されたことが確認された。
【0251】
このように、実施例5、実施例6の場合、電極抵抗値が大幅に改善されることが確認され、これは、電極用の混合粉体及び電極用の合剤フィルムの製造にCNT導電材マスターバッチを用いることにより、BET比表面積が大きな導電材の分散性が向上した点、電極用の混合粉体内のバインダーの結晶化度が低くなった点、活物質の含量を増大させた点に起因する特性であると確認された。
【0252】
以上、本発明の実施形態及び図面を参照して説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、上記の内容を踏まえて本発明の範ちゅう内において多種多様な応用及び変更を行うことが可能である筈である。
【符号の説明】
【0253】
100 カレンダリング工程
110 カレンダリング用のローラー
120 電極用の混合粉体
130 電極用の合剤フィルム
200 ラミネーション工程
210 ラミネーションローラー
220 集電体
230 電極合剤フィルム
240 乾式電極
【国際調査報告】