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特表2024-532396過熱診断方法、その方法を提供する過熱診断装置およびバッテリーシステム
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  • 特表-過熱診断方法、その方法を提供する過熱診断装置およびバッテリーシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】過熱診断方法、その方法を提供する過熱診断装置およびバッテリーシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20240829BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240829BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01R31/00
H01M10/48 301
H02J7/00 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513252
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 KR2023001312
(87)【国際公開番号】W WO2023224210
(87)【国際公開日】2023-11-23
(31)【優先権主張番号】10-2022-0061919
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・キム
【テーマコード(参考)】
2G036
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G036AA18
2G036BB08
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB11
5G503EA09
5G503FA18
5H030AA10
5H030AS01
5H030AS08
5H030AS11
5H030FF22
5H030FF52
(57)【要約】
本発明は過熱診断方法、その方法を提供する過熱診断装置およびバッテリーシステムに関し、本発明のバッテリーシステムは、複数のバッテリーセルを含むバッテリー、前記バッテリーの過熱を診断する診断時点ごとに、前記バッテリーの温度を測定する測定部、前記測定部が測定した温度値を保存する保存部、そして前記診断時点ごとに、前記診断時点を基準にして所定の標本個数に対応する以前の複数の診断時点を抽出し、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の温度値の平均である移動平均値を算出し、前記診断時点ごとに測定された温度値を前記移動平均値より所定値だけ大きい基準値と比較して前記バッテリーの過熱を診断する制御部を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の温度を測定する測定部と、
前記測定部が測定した温度値を保存する保存部と、
前記物体の過熱を診断する診断時点ごとに、前記診断時点を基準にして所定の標本個数に対応する以前の複数の診断時点を抽出し、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の温度値の平均である移動平均値を算出し、前記診断時点ごとに測定された温度値を前記移動平均値より所定値だけ大きい基準値と比較して前記物体の過熱を診断する制御部と、を含む過熱診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の標準偏差の平均である標準偏差平均値を算出し、前記標準偏差平均値に所定の倍数をかけて第1誤差値を算出し、前記移動平均値に前記第1誤差値をプラスして前記基準値を算出する、請求項1に記載の過熱診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記標準偏差平均値が所定の偏差基準値より小さければ、所定の補正値を第2誤差値と決定し、前記移動平均値に前記第2誤差値をプラスして前記基準値を算出する、請求項2に記載の過熱診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記測定された温度値が前記基準値を超えれば、前記物体に過熱イベントが発生したと診断する、請求項1から3のいずれか一項に記載の過熱診断装置。
【請求項5】
複数のバッテリーセルを含むバッテリーと、
前記バッテリーの温度を測定する測定部と、
前記測定部が測定した温度値を保存する保存部と、
前記バッテリーの過熱を診断する診断時点ごとに、前記診断時点を基準にして所定の標本個数に対応する以前の複数の診断時点を抽出し、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の温度値の平均である移動平均値を算出し、前記診断時点ごとに測定された温度値を前記移動平均値より所定値だけ大きい基準値と比較して前記バッテリーの過熱を診断する制御部と、を含むバッテリーシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の標準偏差の平均である標準偏差平均値を算出し、前記標準偏差平均値に所定の倍数をかけて第1誤差値を算出し、前記移動平均値に前記第1誤差値をプラスして前記基準値を算出する、請求項5に記載のバッテリーシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記標準偏差平均値が所定の偏差基準値より小さければ、所定の補正値を第2誤差値と決定し、前記移動平均値に前記第2誤差値をプラスして前記基準値を算出する、請求項6に記載のバッテリーシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記測定された温度値が前記基準値を超えれば、前記バッテリーに過熱イベントが発生したと診断する、請求項5から7のいずれか一項に記載のバッテリーシステム。
【請求項9】
複数のバッテリーセルを含むバッテリーの過熱を診断する所定の診断時点で、前記バッテリーの温度測定値である温度値を収集する温度データ収集段階と、
前記診断時点を基準にして標本個数に対応する以前の複数の診断時点を抽出する標本集団決定段階と、
前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の温度値の平均である移動平均値および前記移動平均値より所定値だけ大きい基準値を算出する基準値決定段階と、
前記温度値を前記基準値と比較して前記バッテリーの過熱を診断する過熱診断段階と、を含む過熱診断方法。
【請求項10】
前記基準値決定段階は、前記複数の診断時点それぞれに対応する標準偏差の平均である標準偏差平均値を算出し、前記標準偏差平均値に所定の倍数をかけて第1誤差値を算出し、前記移動平均値に前記第1誤差値をプラスして前記基準値を算出する、請求項9に記載の過熱診断方法。
【請求項11】
前記基準値決定段階は、前記標準偏差平均値が所定の偏差基準値より小さければ、所定の補正値を第2誤差値と決定し、前記移動平均値に前記第2誤差値をプラスして前記基準値を算出する、請求項10に記載の過熱診断方法。
【請求項12】
前記過熱診断段階は、前記温度測定値が前記基準値を超えれば、前記バッテリーに過熱イベントが発生したと診断する、請求項9から11のいずれか一項に記載の過熱診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2022年5月20日付韓国特許出願第10-2022-0061919号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、物体(例えば、バッテリーなど)に対する過熱を診断する方法、その方法を提供する過熱診断装置およびバッテリーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯用電話機などのような携帯用電子製品の需要が急激に増大し、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返し充放電が可能な高性能バッテリーに対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在の商品化されたバッテリーとしてはニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどがなり、このうちのリチウムバッテリーはニッケル系のバッテリーに比べてメモリ効果がほとんど起こらなくて充放電が自由であり、自己放電率が非常に低くエネルギー密度が高い長所で脚光を浴びている。
【0005】
一方、バッテリーの温度はバッテリーの性能に重要な影響を与える要素である。一般に、バッテリーの温度が適正温度で分布する時、効率的に作動できる。例えば、バッテリーの温度が過度に高い場合、バッテリーの負極結晶格子の安全性が減少するなどによってバッテリーの性能が低下するか、爆発などの事故につながることがある。したがって、バッテリーの温度を正確にモニタリングすることが必要である。
【0006】
従来は、予め設定された基準値と測定されたバッテリーの温度を比較して、バッテリーの過熱有無を診断した。従来の方法は、過熱イベントが診断された後バッテリーの爆発などが発生する時点間の時間間隔が過度に短くて、適切な措置を取りにくい問題がある。また、従来の方法は、バッテリーの老後による温度上昇を過熱イベントが発生したと誤診断する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、物体に対する異常な発熱挙動(以下、過熱)を精密度高く速やかに診断することができる過熱診断方法、その方法を提供する過熱診断装置およびバッテリーシステムに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一特徴による過熱診断装置は、物体の過熱を診断する診断時点ごとに、前記物体の温度を測定する測定部、前記測定部が測定した温度値を保存する保存部、そして前記診断時点ごとに、前記診断時点を基準にして所定の標本個数に対応する以前の複数の診断時点を抽出し、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の温度値の平均である移動平均値を算出し、前記診断時点ごとに測定された温度値を前記移動平均値より所定値だけ大きい基準値と比較して前記物体の過熱を診断する制御部を含む。
【0009】
前記制御部は、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の標準偏差の平均である標準偏差平均値を算出し、前記標準偏差平均値に所定の倍数をかけて第1誤差値を算出し、前記移動平均値に前記第1誤差値をプラスして前記基準値を算出することができる。
【0010】
前記制御部は、前記標準偏差平均値が所定の偏差基準値より小さければ、所定の補正値を第2誤差値と決定し、前記移動平均値に前記第2誤差値をプラスして前記基準値を算出することができる。
【0011】
前記制御部は、前記測定された温度値が前記基準値を超えれば、前記物体に過熱イベントが発生したと診断することができる。
【0012】
本発明の他の特徴によるバッテリーシステムは、複数のバッテリーセルを含むバッテリー、前記バッテリーの過熱を診断する診断時点ごとに、前記バッテリーの温度を測定する測定部、前記測定部が測定した温度値を保存する保存部、そして前記診断時点ごとに、前記診断時点を基準にして所定の標本個数に対応する以前の複数の診断時点を抽出し、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の温度値の平均である移動平均値を算出し、前記診断時点ごとに測定された温度値を前記移動平均値より所定値だけ大きい基準値と比較して前記バッテリーの過熱を診断する制御部を含む。
【0013】
前記制御部は、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の標準偏差の平均である標準偏差平均値を算出し、前記標準偏差平均値に所定の倍数をかけて第1誤差値を算出し、前記移動平均値に前記第1誤差値をプラスして前記基準値を算出することができる。
【0014】
前記制御部は、前記標準偏差平均値が所定の偏差基準値より小さければ、所定の補正値を第2誤差値と決定し、前記移動平均値に前記第2誤差値をプラスして前記基準値を算出することができる。
【0015】
前記制御部は、前記測定された温度値が前記基準値を超えれば、前記バッテリーに過熱イベントが発生したと診断することができる。
【0016】
本発明の他の特徴による過熱診断方法は、複数のバッテリーセルを含むバッテリーの過熱を診断する所定の診断時点で、前記バッテリーの温度測定値である温度値を収集する温度データ収集段階、前記診断時点を基準にして標本個数に対応する以前の複数の診断時点を抽出する標本集団決定段階、前記複数の診断時点それぞれに対応する複数の温度値の平均である移動平均値および前記移動平均値より所定値だけ大きい基準値を算出する基準値決定段階、そして前記温度値を前記基準値と比較して前記バッテリーの過熱を診断する過熱診断段階を含む。
【0017】
前記基準値決定段階は、前記複数の診断時点それぞれに対応する標準偏差の平均である標準偏差平均値を算出し、前記標準偏差平均値に所定の倍数をかけて第1誤差値を算出し、前記移動平均値に前記第1誤差値をプラスして前記基準値を算出することができる。
【0018】
前記基準値決定段階は、前記標準偏差平均値が所定の偏差基準値より小さければ、所定の補正値を第2誤差値と決定し、前記移動平均値に前記第2誤差値をプラスして前記基準値を算出することができる。
【0019】
前記過熱診断段階は、前記測定された温度値が前記基準値を超えれば、前記バッテリーに過熱イベントが発生したと診断することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、固定された基準値を使用して診断する従来と異なり、過熱診断時点ごとに物体に対する温度傾向を反映した基準値を算出し、算出した基準値を測定温度と比較して過熱診断を行うことによって、過熱イベント発生を速やかに判断することができる。
【0021】
本発明は、過熱診断時点ごとに物体に対する温度傾向を反映した基準値を算出し、算出した基準値を測定温度と比較して過熱診断を行うことによって、物体(例えば、バッテリーなど)の老後による温度上昇を過熱イベントの発生と誤診断する問題を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態による過熱診断装置を説明するブロック図である。
図2】他の実施形態によるバッテリーシステムを説明するブロック図である。
図3】実施形態による過熱診断方法を説明するフローチャートである。
図4図3の基準値決定段階(S300)を詳細に説明するフローチャートである。
図5】充電モードで欠陥のないバッテリーの温度変化を示した例示図である。
図6】充電モードで欠陥のあるバッテリーに対して過熱診断を実施した例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して本明細書に開示された実施形態を詳しく説明するが、同一であるか類似の構成要素には同一、類似の図面番号を付与し、これに関する重複する説明は省略する。以下の説明で使用される構成要素に対する接尾辞“モジュール”および/または“部”は明細書作成の容易さのみが考慮されて付与されるか混用されるものであって、それ自体で互いに区別される意味または役割を有するのではない。また、本明細書に開示された実施形態を説明することにおいて、関連する公知技術に関する具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を不明にする可能性があると判断される場合、その詳細な説明を省略する。また、添付された図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解することができるようにするためのものに過ぎず、添付された図面によって本明細書に開示された技術的思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むと理解されるものである。
【0024】
第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明することに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的としてのみ使用される。
【0025】
ある構成要素が他の構成要素に“連結されて”いるとか“接続されて”いると言及された時は、その他の構成要素に直接的に連結されているかまたは接続されていることもあるが、中間に他の構成要素が存在することもあると理解されるものである。反面、ある構成要素が他の構成要素に“直接連結されて”いるとか“直接接続されて”いると言及された時は、中間に他の構成要素が存在しないと理解されるものである。
【0026】
本出願で、“含む”または“有する”などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されるものである。
【0027】
図1は、一実施形態による過熱診断装置を説明するブロック図である。
【0028】
図1を参照すれば、過熱診断装置1は、測定部11、保存部13、そして制御部15を含む。
【0029】
測定部11は、物体(object)の過熱を診断する診断時点(以下、診断時点)ごとに物体の温度を測定し、測定結果を制御部15に伝達することができる。例えば、測定部11は、物体の温度を測定する温度センサーを含むことができる。この時、物体は、バッテリーを含むことができるが、これに限定されるのではなく、過熱イベントが発生する前に予め予測することが必要な多様な装置を含むことができる。
【0030】
保存部13は、診断時点ごとに測定部11が測定した物体の温度値を保存することができる。また、保存部13は、診断時点ごとに制御部15が算出する移動平均(MA;Moving Average)値、標準偏差(SD;Standard Deviation)、標準偏差平均(SD_ave)、基準値(Th)を保存することができる。例えば、所定の診断時点に対応する物体の温度値、移動平均(MA)値、標準偏差(SD)、標準偏差平均(SD_ave)、および基準値(Th)がルックアップテーブル形態に保存部13に保存できる。
【0031】
制御部15は、予め設定された条件による診断時点が到来すれば、移動平均値(MA)および移動平均値より所定値だけ大きい基準値(Th)を算出する。例えば、物体がバッテリーである場合、診断時点はバッテリーの充電が始まる時点またはバッテリーの放電が終了する時点であってもよい。しかし、これに限定されるのではなく、診断時点は、多様に設定できる。
【0032】
まず、制御部15は、現在診断時点(N)を基準にして以前診断時点方向に診断時点をカウントする時、予め設定された標本個数(the number of sample、SN)に含まれる複数の診断時点を抽出して、標本集団を決定することができる。この時、標本個数(SN)は、標本集団に含まれる複数の診断時点の個数で、実験などに基づいて最適の個数に決定できる。
【0033】
標本集団は、母集団である過去複数の診断時点に対する部分集団で、以下説明する移動平均値(MA)および標準偏差平均値(σ_ave)などを算出するための集団であってもよい。
【0034】
【表1】
【0035】
上記表1は、複数の診断時点それぞれに対応する物体の温度(T)、移動平均(MA)、標準偏差(SD)、標準偏差平均(SD_ave)、および基準値(Th)に対するロックアップテーブルの一例示である。以下で、第N診断時点で過熱診断のために必要な基準値(Th)を算出する方法を詳細に説明する。また、標本個数(SN)は、5と仮定する。
【0036】
参照として、表1で最初診断時点(1)では、標本集団を構成する以前診断時点が存在しないので、移動平均(MA)、標準偏差(SD)、標準偏差平均(SD_ave)、および基準値(Th)は直接算出が難しいことがある(よって、表1で対応する値は空欄で表示される)。のみならず、最初診断時点(1)に隣接した所定の診断時点(例えば、2、3、4、5)で標本集団を構成する複数の以前診断時点の個数が不足するので、移動平均(MA)、標準偏差(SD)、標準偏差平均(SD_ave)、および基準値(Th)を算出しにくいことがある。この場合、設計者は、実験によって平均的に算出される値を初期診断時点および隣接した診断時点(例えば、1、2、3、4、5)での移動平均(MA)、標準偏差(SD)、標準偏差平均(SD_ave)、および基準値(Th)として提供することができる。
【0037】
制御部15は、現在診断時点(N)を基準にして以前診断時点方向に診断時点をカウントする時、標本個数(SN)である5個に対応する第N-1診断時点、第N-2診断時点、第N-3診断時点、第N-4診断時点、および第N-5診断時点を抽出して、標本集団を決定することができる。
【0038】
制御部15は、複数の診断時点(N-1、N-2、N-3、N-4、N-5)を抽出して標本集団を決定し、標本集団内に属する複数の診断時点それぞれで測定された温度値に基づいて欠陥診断に使用される基準値を決定することができる。
【0039】
そうすれば、例えば、物体がバッテリーである場合、バッテリーを相当期間使用すれば老化によって内部抵抗値が増加し、内部抵抗値の増加による温度上昇を過熱イベント発生と誤診断する問題を予防することができる。また、一時的な温度上昇を過熱イベント発生と誤診断する問題を解決することができる。
【0040】
その次に、制御部15は、標本集団に属する複数の診断時点(N-1、N-2、N-3、N-4、N-5)それぞれで測定された温度値に基づいて第N診断時点に対応する基準値(Th)を決定する。
【0041】
一実施形態によって、制御部15は、第N診断時点で測定された温度値(T)を基準値(Th)と比較して、物体の過熱有無を診断する。例えば、表1を参照すれば、移動平均値(MA)、および標準偏差平均(SD_ave)は基準値(Th)を算出するために必要な値である。但し、標準偏差(SD)は、第N診断時点の過熱状態の診断時に必要な値ではないが、以後診断時点(N+1、N+2、…)の過熱状態の診断時に必要であるので、第N診断時点で算出されて保存部13に保存できる。
【0042】
以下、表1を参照して、第N診断時点で、制御部15が算出する移動平均値(MA)、標準偏差(SD)、標準偏差平均(SD_ave)、および基準値(Th)を説明する。
【0043】
制御部15は、標本集団に属する複数の診断時点(N-5、N-4、N-3、N-2、N-1)それぞれに対応する複数の温度値(29.4℃、29.3℃、29.4℃、29.3℃、29.5℃)を平均(29.4℃+29.3℃+29.4℃+29.3℃+29.5℃/5=29.38℃)して診断時点(N)に対応する移動平均値(MA、29.38℃)を算出することができる。即ち、標本個数(SN)を5と仮定すれば、第N診断時点で移動平均値(MA)は下記式(1)によって算出できる。
【0044】
MA=(TN-5+TN-4+TN-3+TN-2+TN-1)/5 … 式(1)
【0045】
下記表2を参照すれば、制御部15は、標本集団に属する複数の診断時点(N-5、N-4、N-3、N-2、N-1)それぞれに対応する温度値(T)および上記式(1)を用いて算出した移動平均値(MA)に基づいて第N診断時点に対応する標準偏差(SD)を算出することができる。
【0046】
【表2】
【0047】
先に説明したように、第N診断時点に対応する標準偏差(SD)は、第N診断時点の過熱状態診断時に必要な値ではないが、以後診断時点(N+1、N+2、…)で物体の過熱有無診断時に必要である。したがって、第N診断時点に対応する標準偏差(SD)は、第N診断時点で算出されて保存部13に保存できる。
【0048】
【表3】
【0049】
制御部15は、上記表3を参照すれば、標本集団に属する複数の診断時点(N-5、N-4、N-3、N-2、N-1)それぞれに対応する複数の標準偏差(SDN-5、SDN-4、SDN-3、SDN-2、SDN-1)に基づいて第N診断時点に対応する標準偏差平均値(SD_ave、0.0742)を算出することができる。
【0050】
制御部15は、移動平均値(MA)より所定値だけ大きい基準値(Th)を算出することができる。実施形態によって、制御部15は、標準偏差平均値(SD_ave)に予め設定された倍数(Q)をかけた誤差値(ER)を算出し、移動平均値(MA)に誤差値(ER)をプラス演算して基準値(Th)を算出することができる。この時、倍数(Q)は、過熱イベント発生有無に対する基準を設定するための値で、実験によって多様な値に決定できる。以下で、倍数(Q)は、自然数3と仮定する。
【0051】
過熱診断装置などに搭載されて物体の温度を測定する温度センサー、測定したアナログ温度値をデジタル温度値に変換するADC(Analog-Digital Converter、アナログデジタル変換器)の種類などによって±0.5℃程度温度偏差が発生することがある。物体に対する精密な過熱診断のために、温度センサーによって発生する可能性がある温度偏差を補完することが必要である。
【0052】
一実施形態によって、標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)以上であれば、制御部15は、標準偏差平均値(SD_ave)に所定の倍数をかけて誤差値(ER)を算出することができる。この時、偏差基準値(Th_DV)は、温度測定過程で発生することがある誤差を反映するための基準値であってもよい。例えば、偏差基準値(Th_DV)は、0.5℃と設定することができるが、これに限定されるのではなく、実験などによって多様な値に決定できる。
【0053】
標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)以上であれば、制御部15は、下記式(2)を用いて誤差値(ER)を算出することができる。
【0054】
ER=SD_ave×Q … 式(2)
【0055】
他の実施形態によって、標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)未満であれば、制御部15は、所定の補正値(CB)を誤差値(ER)として決定することができる。この時、補正値(CB)は、温度測定過程で発生することがある誤差を補正するための値であってもよい。例えば、補正値(CB)は、0.5℃に設定することができるが、これに限定されるのではなく、実験などによって多様な値に決定できる。
【0056】
ER=CB … 式(3)
【0057】
例えば、前記表3を参照すれば、第N診断時点に対応する標準偏差平均値(SD_ave)が0.0742として算出できる。即ち、第N診断時点に対応する標準偏差平均値(SD_ave、0.0742)が所定の偏差基準値(Th_DV、0.5)未満(0.0742<0.5)であるので、制御部15は、所定の補正値(CB、0.5)を誤差値(ER)として決定することができる。
【0058】
制御部15は、移動平均値(MA)に誤差値(ER)をプラス演算して基準値(Th)を算出することができる。例えば、標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)以上であれば、制御部15は、標準偏差平均値(SD_ave)に所定の倍数をかけて誤差値(ER)を算出し、移動平均値(MA)に誤差値(ER)をプラス演算して基準値(Th)を算出することができる。他の例として、標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)未満であれば、制御部15は、補正値(CB)を誤差値(ER)として決定し、移動平均値(MA)に誤差値(ER)をプラス演算して基準値(Th)を算出することができる。制御部15は、下記式(4)を用いて、基準値(Th)を算出することができる。
【0059】
Th=MA+ER … 式(4)
【0060】
例えば、前記表3を参照すれば、第N診断時点に対応する標準偏差平均値(SD_ave、0.0742)が偏差基準値(Th_DV、0.5)より小さいので、制御部15は、所定の補正値(CB、0.5)を誤差値(ER)として決定することができる。制御部15は、移動平均値(MA、29.38)に誤差値(ER、0.5℃)をプラス演算して基準値(Th)を算出することができる。即ち、基準値(Th)は29.88℃(29.38℃+0.5℃)であってもよい。
【0061】
制御部15は、第N診断時点で測定された温度(T)値と第N診断時点で算出した基準値(Th)を比較して、物体に対する過熱イベント発生有無を診断することができる。
【0062】
例えば、表1を参照すれば、第N診断時点で測定された温度(T)値が30℃であると仮定しよう。第N診断時点に対応する温度(T、30℃)値が第N診断時点に対応した基準値(Th、29.88℃)を超えるので、制御部35は、過熱イベントが発生したと診断することができる。
【0063】
【表4】
【0064】
上記表4は、複数の診断時点それぞれに対応する物体の温度(T)、移動平均(MA)、標準偏差(SD)、標準偏差平均(SD_ave)、および基準値(Th)に対するロックアップテーブルの他の例示である。
【0065】
表4を参照すれば、制御部15は、現在診断時点(N+1)を基準にして以前診断時点方向に診断時点をカウントする時、標本個数(SN)である5個に対応する第N診断時点、第N-1診断時点、第N-2診断時点、第N-3診断時点、および第N-4診断時点を抽出して、標本集団を決定することができる。
【0066】
制御部15は、複数の診断時点(N、N-1、N-2、N-3、N-4)を抽出して標本集団を決定し、標本集団内に属する複数の診断時点それぞれで測定された温度値に基づいて欠陥診断に使用される基準値を決定することができる。
【0067】
制御部15は、先に説明した表1~表3、式(1)~式(4)を用いて、第N+1診断時点に対応する移動平均(MAN+1)、標準偏差(SDN+1)、標準偏差平均(SDN+1_ave)、および基準値(ThN+1)を算出することができる。
【0068】
図2は、他の実施形態によるバッテリーシステムを説明するブロック図である。
【0069】
図2を参照すれば、バッテリーシステム2は、バッテリー10、リレー20、そしてバッテリー管理システム(Battery Management System、以下BMS)30を含む。
【0070】
バッテリー10は、直列および/または並列連結された複数のバッテリーセルを含むことができる。図2では、並列連結された3個のバッテリーセルが示されているが、これに限定されるのではなく、バッテリー10は、直列および/または並列連結された多様な個数のバッテリーセルを含むことができる。ある実施形態で、バッテリーセルは充電可能な二次電池であってもよい。
【0071】
また、例えば、バッテリー10は、所定個数のバッテリーセルが並列連結されてバッテリーバンク(battery bank)を構成し、所定個数のバッテリーバンクが直列連結されてバッテリーパック(battery pack)を構成して、所望の電力を外部装置に供給することができる。他の例として、バッテリー10は、所定個数のバッテリーセルが並列連結されてバッテリーバンク(battery bank)を構成し、所定個数のバッテリーバンクが並列連結されてバッテリーパック(battery pack)を構成して、所望の電力を外部装置に供給することができる。しかし、このような連結に限定されるのではなく、バッテリー10は、直列および/または並列連結された複数のバッテリーセルを含むバッテリーバンクを複数個含み、複数のバッテリーバンクも直列および/または並列連結できる。
【0072】
図2では、バッテリー10は、バッテリーシステム2の二つの出力端OUT1、OUT2の間に連結されている。また、バッテリーシステム2の正極と第1出力端OUT1の間にリレー20が連結されている。図2に示された構成および構成間の連結関係は一例であって、発明がこれに限定されるのではない。
【0073】
リレー20は、バッテリーシステム2と外部装置間の電気的連結を制御する。リレー20がオンされれば、バッテリーシステム2と外部装置が電気的に連結されて充電または放電が行われ、リレー20がオフされれば、バッテリーシステム2と外部装置が電気的に分離される。この時、外部装置はバッテリー10に電力を供給して充電する充電サイクルでは充電器であり、バッテリー10が外部装置に電力を放電する放電サイクルでは負荷であってもよい。
【0074】
BMS30は、測定部31、保存部33、制御部35を含む。図1に示された過熱診断装置1は図2に示されたBMS30に対応できる。具体的に説明すれば、過熱診断装置1の測定部11、保存部13、制御部15それぞれが果たす機能はBMS30の測定部31、保存部33、および制御部35それぞれが果たす機能に対応できる。例えば、過熱診断装置1はバッテリーシステム2と別個に構成できる。他の例として、図2のようにバッテリーシステム2で、BMS30が過熱診断装置1の機能を果たすことができる。
【0075】
以下、BMS30の測定部31、保存部33、および制御部35それぞれの機能に関する説明は、過熱診断装置1の測定部11、保存部13、および制御部15それぞれの機能に関する説明で代替する。
【0076】
図3は実施形態による過熱診断方法を説明するフローチャートであり、図4図3の基準値決定段階(S300)を詳細に説明するフローチャートである。
【0077】
以下、図1図4を参照して、過熱診断方法、その方法を提供する過熱診断装置1およびバッテリーシステム2について説明する。以下で、BMS30の測定部31、保存部33、および制御部35として説明するが、過熱診断装置1の測定部11、保存部13、および制御部15にも同一に適用できる。また、バッテリー10として説明するが、これに限定されるのではなく、温度測定が必要な多様な物体にも同一に適用できる。
【0078】
まず、制御部35は、バッテリー10の過熱を診断する所定の診断時点で、バッテリー10の温度の測定値を測定部31から収集する(S100)。
【0079】
予め設定された条件による診断時点が到来すれば、測定部31はバッテリー10の温度を測定し、測定した結果を制御部35に伝達することができる。例えば、測定部31は温度センサーを含んでバッテリー10の温度を診断時点ごとに測定し、測定した結果を制御部35に伝達することができる。他の例として、測定部31は温度センサーが所定時間間隔または実時間で測定する温度値を受信し、所定の診断時点に対応する温度データを抽出して制御部35に伝達することができる。
【0080】
その次に、制御部35は、現在診断時点(N)を基準にして標本個数(SN)に対応する以前の複数の診断時点を抽出して標本集団を決定する(S200)。
【0081】
表1を参照すれば、制御部35は、現在診断時点(N)を基準にして以前診断時点方向に診断時点をカウントする時、標本個数(SN)である5個に対応する第N-1診断時点、第N-2診断時点、第N-3診断時点、第N-4診断時点、および第N-5診断時点を抽出して、標本集団を決定することができる。
【0082】
制御部35は、複数の診断時点(N-1、N-2、N-3、N-4、N-5)を抽出して標本集団を決定し、標本集団内に属する複数の診断時点それぞれで測定された温度値に基づいて欠陥診断に使用される基準値(Th)を決定することができる。以下説明する方法で基準値(Th)を設定すれば、バッテリーの老化による温度上昇を過熱イベント発生と誤診断する問題を予防することができる。また、一時的な温度上昇を過熱イベント発生と誤診断する問題を解決することができる。
【0083】
その次に、制御部35は、標本集団に属する複数の診断時点(N-1、N-2、N-3、N-4、N-5)それぞれで測定された温度値に基づいて第N診断時点に対応する基準値(Th)を決定する(S300)。
【0084】
S300段階で、図4を参照すれば、制御部35は、標本集団に属する複数の診断時点それぞれに対応する複数の温度値を平均して第N診断時点に対応する移動平均値(MA)を算出する(S310)。
【0085】
具体的には、表1を参照すれば、制御部35は、標本集団に属する複数の診断時点(N-5、N-4、N-3、N-2、N-1)それぞれに対応する複数の温度値(29.4℃、29.3℃、29.4℃、29.3℃、29.5℃)を平均(29.4℃+29.3℃+29.4℃+29.3℃+29.5℃/5=29.38℃)して第N診断時点に対応する移動平均値(MA、29.38℃)を算出することができる。即ち、標本個数(SN)を5と仮定すれば、第N診断時点で移動平均値(MA)は前記式(1)によって算出できる。
【0086】
S300段階で、制御部35は、標本集団に属する複数の診断時点それぞれに対応する複数の標準偏差を平均して標準偏差平均値(SD_ave)を算出し、標準偏差平均値(SD_ave)に基づいて誤差値を算出する(S320)。
【0087】
具体的に、表3を参照すれば、制御部35は、標本集団に属する複数の診断時点(N-5、N-4、N-3、N-2、N-1)それぞれに対応する複数の標準偏差(SDN-5、SDN-4、SDN-3、SDN-2、SDN-1)に基づいて第N診断時点に対応する標準偏差平均値(SD_ave、0.0742)を算出することができる。
【0088】
過熱診断装置などに搭載されて物体の温度を測定する温度センサー、測定したアナログ温度値をデジタル温度値に変換するADC(Analog-Digital Converter)の種類などによって±0.5℃程度温度偏差が発生することがある。物体に対する精密な過熱診断のために、温度センサーによって発生する可能性がある温度偏差を補完することが必要である。
【0089】
一実施形態によって、標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)以上であれば、制御部35は、標準偏差平均値(SD_ave)に所定の倍数(Q)をかけて誤差値(ER)を算出することができる。この時、偏差基準値(Th_DV)は、温度測定過程で発生することがある誤差を反映するための基準値であってもよい。例えば、偏差基準値(Th_DV)は、0.5と設定することができるが、これに対し限定されるのではなく、実験などによって多様な値として決定できる。具体的に、制御部35は、前記式(2)を用いて誤差値(ER)を算出することができる。
【0090】
他の実施形態によって、標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)未満であれば、制御部35は、所定の補正値(CB)を誤差値(ER)として決定することができる。この時、補正値(CB)は、温度測定過程で発生することがある誤差を補正するための値であってもよい。例えば、補正値(CB)は、0.5℃と設定することができるが、これに限定されるのではなく、実験などによって多様な値として決定できる。具体的に、制御部35は、前記式(3)を用いて誤差値(ER)を算出することができる。
【0091】
例えば、表3を参照すれば、制御部35は、第N診断時点に対応する標準偏差平均値(SD_ave)を0.0742として算出することができる。この時、第N診断時点に対応する標準偏差平均値(SD_ave、0.0742)が所定の偏差基準値(Th_DV、0.5)未満であるので、制御部35は、所定の補正値(CB、0.5)を誤差値(ER、0.5)として決定することができる。
【0092】
S300段階で、制御部35は、移動平均値(MA)に誤差値(ER)をプラス演算して基準値(Th)を算出する(S330)。
【0093】
例えば、標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)以上であれば、制御部35は、標準偏差平均値(SD_ave)に所定の倍数をかけて誤差値(ER)を算出し、移動平均値(MA)に誤差値(ER)をプラス演算して基準値(Th)を算出することができる。他の例として、標準偏差平均値(SD_ave)が所定の偏差基準値(Th_DV)未満であれば、制御部35は、補正値(CB)を誤差値(ER)として決定し、移動平均値(MA)に誤差値(ER)をプラス演算して基準値(Th)を算出することができる。制御部35は、前記式(4)を用いて、基準値(Th)を算出することができる。
【0094】
例えば、表3を参照すれば、第N診断時点に対応する標準偏差平均値(SD_ave、0.0742)が偏差基準値(Th_DV、0.5)より小さいので、制御部35は、所定の補正値(CB、0.5)を誤差値(ER)として決定することができる。制御部35は、移動平均値(MA、29.38)に誤差値(ER、0.5℃)をプラス演算して基準値(Th)を算出することができる。即ち、基準値(Th)は29.88℃29.38℃+0.5℃)であってもよい。
【0095】
その次に、制御部35は、第N診断時点で測定された温度(T)値と第N診断時点で算出した基準値(Th)を比較して、バッテリー10に対する過熱イベント発生有無を診断する(S400)。
【0096】
S400段階で、図3を参照すれば、制御部35は、第N診断時点に対応する温度(T)値が基準値(Th)を超えるか判断する(S410)。
【0097】
判断結果、超えれば(S410、Yes)、制御部35は、バッテリー10に過熱イベントが発生したと診断する(S420)。
【0098】
例えば、表1を参照すれば、第N診断時点で測定された温度(T)値が30℃であると仮定しよう。第N診断時点に対応する温度(T、30℃)値が第N診断時点に対応した基準値(Th、29.88℃)を超えるので、制御部35は、過熱イベントが発生したと診断することができる。
【0099】
判断結果、超えなければ(S410、No)、制御部35は、バッテリー10の温度を正常と診断する(S430)。
【0100】
図5は充電モードで欠陥のないバッテリーの温度変化を示した例示図であり、図6は充電モードで欠陥のあるバッテリーに対して過熱診断を実施した例示図である。
【0101】
図5および図6で、X軸は時間(sec)であり、Y軸は温度(℃)を示す。
【0102】
図5を参照すれば、多様な外部温度で欠陥のないバッテリーが充電される時、時間変化に対する温度変化を示した例示図である。
【0103】
例えば、大気温度が25℃である時、外部装置の電力でバッテリー10が充電される充電モードで、時間によってバッテリー10の温度変化は第1グラフTに対応できる。他の例として、大気温度が30℃である時、バッテリー10が充電される場合、時間によってバッテリー10の温度変化は第2グラフTに対応できる。同様に、大気温度が35℃および大気温度が40℃それぞれでバッテリー10の温度変化は第3グラフTおよび第4グラフTに対応できる。
【0104】
即ち、所定の基準によって正常状態にあるバッテリー10または使用されなかった新規バッテリー10の場合、外部温度が変われば開始温度値は異なることがあるが、図5に示されているように時間変化による温度変化(即ち、傾き)は一定であり得る。
【0105】
図6を参照すれば、所定の外部温度で、欠陥のあるバッテリーが充電される時、時間変化に対する温度変化を示した例示図であり、実験によって導出されたグラフである。
【0106】
この時、実線FLは実際測定されたバッテリーの温度であり、実線FLに近接して示された点線DLは基準線である。基準線は、実施形態による診断時点ごとに算出される基準値を連結して構成できる。図5および図6を参照すれば、欠陥のないバッテリーの温度変化は、図5のように直線グラフを形成するが、欠陥のあるバッテリーの温度変化は、図6のように曲線グラフを形成することができる。
【0107】
従来は、バッテリー10の温度が固定された基準値(例えば、60℃)を超えれば、当該時点に過熱イベント発生を診断した。図6を参照すれば、従来は、第2時点AD2で最初にバッテリー10の過熱が診断できた。
【0108】
しかし、一実施形態による過熱診断方法によれば、バッテリー10の温度が固定された基準値(例えば、60℃)を超える前に予め過熱イベントの発生を診断することができる。実験結果、第1時点AD1で最初にバッテリー10の過熱が診断された。具体的に、診断結果、実線FLが点線DLを超える第1時点AD1から第2時点AD2まで診断時点ごとに過熱イベントが継続して診断された。
【0109】
図6を参照すれば、実験結果、第1時点AD1と第2時点AD2の間に約1000secの時間差(約16分)を示した。一実施形態による過熱診断方法によれば、バッテリー10の過熱イベント発生を予め認知することができて、これに対する対策を用意することができる長所を有する。
【0110】
以上で本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲がこれに限定されるのではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者が多様に変形および改良した形態も本発明の権利範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】