(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】酸性組成物におけるフィコシアニンの改善された安定化
(51)【国際特許分類】
A23L 5/41 20160101AFI20240829BHJP
A23L 2/58 20060101ALI20240829BHJP
A23L 2/44 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/405 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A23L5/41
A23L2/00 M
A23L2/58
A23L2/00 P
C07K14/405 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513314
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2022000483
(87)【国際公開番号】W WO2023026097
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524069651
【氏名又は名称】ザ ウィリアムソン グループ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】クールバレ マチュー
(72)【発明者】
【氏名】アターヌ アクセル
(72)【発明者】
【氏名】カニャック オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】アヴィレス ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーヴィス ジェニファー ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ナンツ ジョディ レナー
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MA08
4B018MB03
4B018MC04
4B117LC01
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK16
4B117LL03
4B117LP13
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA30
4H045EA01
4H045GA01
4H045GA45
(57)【要約】
本技術は、一般的に、安定化されたフィコシアニンを含む酸性組成物及びそのような酸性組成物を取得するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィコシアニンを含む酸性組成物であって、フィコシアニンが、約0.001質量%~約0.1質量%の範囲の量で組成物中に存在する、酸性組成物。
【請求項2】
フィコシアニンが約0.001質量%~約0.05質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の酸性組成物。
【請求項3】
フィコシアニンが約0.001質量%~約0.025質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の酸性組成物。
【請求項4】
フィコシアニンが約0.0025質量%~約0.010質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の酸性組成物。
【請求項5】
フィコシアニンが約0.0025質量%~約0.005質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の酸性組成物。
【請求項6】
フィコシアニンが、そのアポタンパク質が配列番号1若しくは配列番号2のタンパク質又はその変異体を含むフィコビリタンパク質である、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項7】
フィコシアニンのα-サブユニットアポタンパク質が配列番号1を含み、且つフィコシアニンのβ-サブユニットアポタンパク質が配列番号2又はその変異体を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項8】
α-サブユニットアポタンパク質が配列番号1からなり、且つβ-サブユニットアポタンパク質が配列番号2又はその変異体からなる、請求項7に記載の酸性組成物。
【請求項9】
フィコシアニンが、イデユコゴメ目(Cyanidiales)の藻類又は微細藻類から抽出される、請求項1~8のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項10】
フィコシアニンが、イデユコゴメ科(Cyanidiaceae)の藻類又は微細藻類から抽出される、請求項1~8のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項11】
フィコシアニンが、ガルディエリア科(Galdieriaceae)の藻類又は微細藻類から抽出される、請求項1~8のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項12】
フィコシアニンが、シアニジオシゾン属(Cyanidioschyzon)、シアニジウム属(Cyanidium)又はガルディエリア属(Galdieria)の藻類又は微細藻類から抽出される、請求項1~8のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項13】
フィコシアニンが、シアニジオシゾン・メロラエ(Cyanidioschyzon merolae)10D、シアニジオシゾン・メロラエDBV201、シアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)、シアニジウム・ダエダルム(Cyanidium daedalum)、シアニジウム・マキシムム(Cyanidium maximum)、シアニジウム・パルティツム(Cyanidium partitum)、シアニジウム・ルムペンス(Cyanidium rumpens)、ガルディエリア・ダエダラ(Galdieria daedala)、ガルディエリア・マキシマ(Galdieria maxima)、ガルディエリア・パルティタ(Galdieria partita)、ガルディエリア・フレグレア(Galdieria phlegrea)、ガルディエリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)、優先的には生物種ガルディエリア・スルフラリア、シアニジウム・カルダリウム、及びシアニジオシゾン・メロラエから選択される生物種の藻類又は微細藻類から抽出される、請求項1~8のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項14】
フィコシアニンが酸性pH耐性フィコシアニンである、請求項1~13のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項15】
約4以下のpHを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項16】
約3超且つ約4以下のpHを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の硫酸化多糖の量をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項18】
フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖が、約0.20:1~約20:1、好ましくは約0.25:1~約10:1又は約1:1~約10:1、さらに好ましくは約0.3:1~約1.5:1の比率で組成物中に存在する、請求項17に記載の酸性組成物。
【請求項19】
少なくとも1種の硫酸化多糖がカラギーナンである、請求項17又は18に記載の酸性組成物。
【請求項20】
カラギーナンが多硫酸化カラギーナンである、請求項19に記載の酸性組成物。
【請求項21】
多硫酸化カラギーナンがλ-カラギーナンである、請求項20に記載の酸性組成物。
【請求項22】
液体であることを特徴とする、請求項1~21のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の酸性組成物を含む炭酸飲料。
【請求項24】
固体であることを特徴とする、請求項1~21のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項25】
フィコシアニン含有量が0.25mg/g~2.5mg/gであることを特徴とする、請求項24に記載の酸性組成物。
【請求項26】
フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖を含む酸性組成物であって、フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖が、約0.20:1~約20:1、好ましくは約0.25:1~約10:1の比率で、又は約1:1~約10:1、さらに好ましくは約0.3:1~約1.5:1の比率で組成物中に存在する、酸性組成物。
【請求項27】
少なくとも1種の硫酸化多糖がカラギーナンである、請求項26に記載の酸性組成物。
【請求項28】
カラギーナンが多硫酸化カラギーナンである、請求項27に記載の酸性組成物。
【請求項29】
多硫酸化カラギーナンがλ-カラギーナンである、請求項28に記載の酸性組成物。
【請求項30】
フィコシアニンが約0.05質量%~約0.1質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項26~29のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項31】
少なくとも1種の硫酸化多糖が約0.001質量%~0.1質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項26~30のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項32】
少なくとも1種の硫酸化多糖が約0.05質量%~0.1質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項26~30のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項33】
フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖が約1:1~約4:1の比率で組成物中に存在する、請求項26~30のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項34】
フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖が約1:1~約3:1の比率で組成物中に存在する、請求項26~30のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項35】
フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖が約1:1~約2:1の比率で組成物中に存在する、請求項26~30のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項36】
約4以下のpHを有する、請求項26~35のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項37】
約3超且つ約4以下のpHを有する、請求項26~35のいずれか1項に記載の酸性組成物。
【請求項38】
ガルディエリア属抽出物を含む酸性組成物であって、ガルディエリア属抽出物が約0.004質量%~約0.4質量%の範囲の量で組成物中に存在する、酸性組成物。
【請求項39】
請求項1~22及び24~38のいずれか1項に規定される酸性組成物を含む食品製品。
【請求項40】
約50mg/L~約2500mg/Lの範囲の量で濃縮組成物中に存在するフィコシアニンを含む、濃縮液体組成物。
【請求項41】
フィコシアニンが約500mg/L~約1000mg/Lの範囲の量で濃縮組成物中に存在する、請求項40に記載の濃縮液体組成物。
【請求項42】
少なくとも1種の硫酸化多糖をさらに含む、請求項40又は41に記載の濃縮液体組成物。
【請求項43】
少なくとも1種の硫酸化多糖がカラギーナンである、請求項42に記載の濃縮液体組成物。
【請求項44】
カラギーナンがλ-カラギーナンである、請求項56に記載の濃縮液体組成物。
【請求項45】
請求項53~57のいずれか1項に規定される濃縮液体組成物を含む食品製品。
【請求項46】
4未満のpHを有する、請求項39又は45に記載の食品製品。
【請求項47】
加熱され、且つ/又は光に曝露されたことを特徴とする、請求項39、45又は46のいずれか1項に記載の食品製品。
【請求項48】
瞬間殺菌などの殺菌に供された、請求項39及び45~47のいずれか1項に記載の食品製品。
【請求項49】
フィコシアニンが熱及び/又は光曝露に対して安定である、請求項1~22及び24のいずれか1項に記載の酸性組成物又は請求項40~45のいずれか1項に記載の濃縮液体。
【請求項50】
a)水中に少なくとも1種の硫酸化多糖を添加及び溶解させるステップ;並びに
b)フィコシアニンを添加し、且つ少なくとも5のpHで、好ましくは5~10のpHで溶解するまで混合するステップ
を含む、フィコシアニンの熱安定性及び/又は光安定性を改善するための方法。
【請求項51】
約30℃~約90℃の温度で、約3.6又は3.6未満のpHにおいて、水溶液中のフィコシアニンを加熱するステップを含む、緑色を生成するための方法であって、フィコシアニンが、シアニジオシゾン属、シアニジウム属又はガルディエリア属の藻類又は微細藻類から抽出される、方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法を用いて取得される緑色フィコシアニン。
【請求項53】
請求項50に記載の方法により安定化された、請求項52に記載の緑色フィコシアニン。
【請求項54】
請求項52に記載の緑色又は請求項53に記載の安定化された緑色を含む製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は一般的に、安定化されたフィコシアニンを含む酸性組成物及びそのような酸性組成物を取得するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィコシアニンは、それが添加される製品に青色を与える食品着色料である。スピルリナから抽出されたフィコシアニンは、現在FDAにより承認されている唯一の天然青色色素である(FR Doc No:2013-19550)。フィコシアニンは、食品における青色色素としての使用のために、液体形態、又は粉末形態で販売される。
そのスピルリナ由来フィコシアニンは、しかしながら、5未満の酸性pHで不安定であるという欠点を有し、このことは、着色の欠如及び沈殿をもたらし、これがその用途を限定する。最良の場合では、安定性の欠如はpH4付近で起こる(スピルリナ由来フィコシアニンLinablue(登録商標)の技術的明細事項を参照されたい;http://www.dlt-spl.co.jp/business/en/spirulina/linablue.html)。結果として、それに対してスピルリナ由来フィコシアニンを食品着色料として又はその抗酸化特性のために用いることができない多数の酸性食品組成物、特に、炭酸飲料及び非炭酸飲料がある。
スピルリナ由来フィコシアニンとは対照的に、ガルディエリア属(Galdieria)又はイデユコゴメ目(Cyanidiophycae)から抽出されたフィコシアニンが酸性pHに耐える能力を有することが、参照により本明細書中に組み入れられる国際公開第2017/050918号において以前に実証された。
【0003】
しかしながら、酸性飲料中での工業的文脈におけるフィコシアニンの使用は、はるかに複雑である。実際に、殺菌中などの熱処理、及びそれに続く加速劣化試験後に、フィコシアニンの顕著な喪失があったこと、並びにそのような喪失は緑色の色調の出現を含む色の段階的変化を伴ったことが、試験により示されてきた。条件に応じて、これらの色相の変化は全面的である。この安定性の欠如は、製品の販売に関して問題であり得る。
λ-カラギーナンのような硫酸化多糖は、スピルリナ由来フィコシアニンの安定化に関して既に開示されてきた。しかしながら、食品組成物内に大量の添加物を添加することは適切ではない。
このことに鑑みて、酸性組成物、特に酸性飲料の文脈において、フィコシアニンを安定化するか又はフィコシアニンにより提供される着色を安定化する方法を特定することの必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
様々な態様に従えば、本技術は、フィコシアニンを含む酸性組成物に関し、このとき、フィコシアニンは、約0.001~約0.1質量%の範囲の量で組成物中に存在する。
様々な態様に従えば、本技術は、本明細書中に規定される通りの酸性組成物を含む炭酸飲料に関する。
様々な態様に従えば、本技術は、本明細書中に規定される通りの酸性組成物からなる炭酸飲料に関する。
本発明者らは、驚くべきことに、少量の硫酸化多糖を、酸性組成物中でフィコシアニンを安定化するために用いることができることを見出した。したがって、態様に従えば、本技術は、フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖を含む酸性組成物に関し、このとき、フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖は、約0.20:1~約20:1、好ましくは約0.25:1~約10:1の比率で、又は約0.3:1~約10:1、好ましくは約1:1~約10:1、さらに好ましくは約0.3:1~約0.6:1、約0.9:1~約2.4:1又は約0.3:1~1.5の比率で、組成物中に存在する。
【0005】
本技術は、フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖を含む酸性組成物に関し、このとき、フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖は、約0.25:1~約1:1の比率で組成物中に存在する。
別の実施形態では、本技術は、フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖を含む酸性組成物に関し、このとき、フィコシアニン及び少なくとも1種の硫酸化多糖は、約0.25:1、約0.3:1、約1:3、約0.5:1、約0.75:1、約0.6:1、約1:1、約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1又は約6:1の比率で、組成物中に存在する。
様々な態様に従えば、本技術は、ガルディエリア属抽出物を含む酸性組成物に関し、このとき、ガルディエリア属抽出物は、約0.004質量%~約0.4質量%の範囲の量で、組成物中に存在する。
【0006】
様々な態様に従えば、本技術は、本明細書中に規定される通りの酸性組成物を含む食品製品に関する。
様々な態様に従えば、本技術は、本明細書中に規定される通りの酸性組成物からなる食品製品に関する。
様々な態様に従えば、本技術は、約50mg/L~約2500mg/Lの範囲の量で濃縮組成物中に存在するフィコシアニンを含む、濃縮液体組成物に関する。
様々な態様に従えば、本技術は、本明細書中に規定される通りの濃縮液体組成物を含む食品製品に関する。
様々な態様に従えば、本技術は、本明細書中に規定される通りの濃縮液体組成物からなる食品製品に関する。
【0007】
本開示の他の態様及び特徴は、添付の図面と組み合わせた具体的な実施形態の以下の説明の再検討に際して、当業者に明らかであるであろう。
本開示中に記載される実施形態の全ての特徴は、相互に排他的でなく、且つ互いに組み合わせることができる。例えば、一実施形態の要素は、さらなる言及なしに他の実施形態において利用することができる。具体的な実施形態の詳細な説明が、以下の通りの添付の図面を参照して、下記で本明細書中に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】0.1%、0.2%、又は0.4%ガルディエリア属抽出物を含み、且つ視覚的比較のために加熱後に全て0.1%まで希釈されたモデル飲料系における、4時間にわたるフィコシアニンの熱安定性試験の結果を示す写真である。
【
図2A】ビタミンCを含むか又は含まない、0.2%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料及び電解質飲料の第1シリーズにおけるフィコシアニンの8週間安定性を示す写真である。
【
図2B】ビタミンCを含むか又は含まない、0.2%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料及び電解質飲料の第1シリーズにおけるフィコシアニンの8週間安定性後の結果の表である。
【
図3A】ビタミンCを含むか又は含まない、0.2%及び0.4%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料の第2シリーズにおけるフィコシアニンの8週間安定性を示す写真である。
【
図3B】ビタミンCを含むか又は含まない、0.2%及び0.4%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料の第2シリーズにおけるフィコシアニンの8週間安定性後の結果の表である。
【
図4】0.01%及び0.02%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料に対する安定性試験の結果を示す写真である。
【
図5】0.01%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料の安定性に対する高温短時間殺菌(HTST、本出願において瞬間殺菌とも称される)殺菌の影響を示す写真である。
【
図6】0.01%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料の安定性に対するλ-カラギーナンの影響を示す写真である。
【
図7】市販の飲料Gatorade(登録商標)及びPowerade(登録商標)(dE CMC 1.99)に対するガルディエリア属抽出物-カラギーナン(5:1)含有飲料の比較を示す図である。
【
図8】異なる比率のガルディエリア属抽出物:λ-カラギーナンを含む飲料のdE CMCに対するHTST殺菌の影響を示すグラフである。
【
図9】実施例10terの異なる飲料のHTST後の平均dE CMCを提示するチャートである。
【
図10】実施例10terに従うHTSTの前(左側ボトル)及び後(右側ボトル)の異なる含有量のガルディエリア属抽出物(飲料の総質量に対して0.1質量%又は0.2質量%)を含む飲料の写真である。
【
図11】実施例10bis及び10terに従う異なる飲料の光試験後の平均dE CMCを示すグラフ表示である。
【
図12】実施例10bis及び10terに従う光試験前(左側ボトル)及び後(右側ボトル)の、ビタミンCを含むか又は含まない、異なる含有量のガルディエリア属抽出物(飲料の総質量に対して0.1質量%又は0.2質量%)を含む数種類の飲料の写真である。
【
図13】実施例10terに従う異なる飲料の加速安定性試験後の平均dE CMCを提示するチャートである。
【
図14】実施例10terに従う加速安定性試験前(左側ボトル)及び後(右側ボトル)の異なる含有量のガルディエリア属抽出物(飲料の総質量に対して0.1質量%又は0.2質量%)を含む数種類の飲料の写真である。
【
図15A】比率5:1で異なるpHにおいてガルディエリア属抽出物及びλ-カラギーナンを含む飲料の写真である。
【
図15B】比率5:1で異なるpHにおいてガルディエリア属抽出物及びλ-カラギーナンを含む飲料の色彩測定の表である。
【
図16A】比率5:1で異なるpHにおいてスピルリナ抽出物及びλ-カラギーナンを含む飲料の写真である。
【
図16B】比率5:1で異なるpHにおいてスピルリナ抽出物及びλ-カラギーナンを含む飲料の色彩測定の表である。
【
図17A】比率1:1で異なるpHにおいてガルディエリア属抽出物及びλ-カラギーナンを含む飲料の写真である。
【
図17B】比率1:1で異なるpHにおいてガルディエリア属抽出物及びλ-カラギーナンを含む飲料の色彩測定の表である。
【
図18A】比率1:1で異なるpHにおいてスピルリナ抽出物及びλ-カラギーナンを含む飲料の写真である。
【
図18B】比率1:1で異なるpHにおいてスピルリナ抽出物及びλ-カラギーナンを含む飲料の色彩測定の表である。
【
図19】異なる含有量のλ-カラギーナン及び異なるpHを伴うガルディエリア属抽出物又はスピルリナ抽出物のいずれかを含む数種類の飲料のHTST後の平均dE CMCを提示するチャートである。
【
図20】異なる含有量のλ-カラギーナン並びにpH3.0及び4.0を伴うガルディエリア属抽出物又はスピルリナ抽出物のいずれかを含む数種類の飲料のHTST後の平均dE CMCを提示するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術は、下記でより詳細に説明される。この説明は、技術を遂行することができる異なる様式の全て、又は本技術に付加することができる全ての特徴の詳細な一覧であることは意図されない。例えば、1つの実施形態に関して例示される特徴を他の実施形態へと組み込むことができ、特定の実施形態に関して例示される特徴をその実施形態から削除することができる。加えて、本明細書中で示唆される様々な実施形態に対する多数の変形及び追加が、本開示に鑑みて当業者には明らかであろうし、それらの変形及び追加は本技術から逸脱しない。それゆえ、以下の説明は、技術の一部の特定の実施形態を例示することが意図され、且つその全ての並べ替え、組み合わせ及び変形を網羅的に特定することは意図されない。
本明細書中で用いる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、複数の参照物を含む。
終点による数値範囲の本明細書中での記述は、その範囲内に含まれる全ての数を含むことが意図される(例えば、1~5の記述は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、4.32、及び5を含む)。
【0010】
用語「約」は、明示的に又は明示的でなく本明細書中で用いられ、本明細書中に与えられる全ての量は実際に与えられる値を意味することが意図され、そのような所与の値に対する実験的且つ/又は測定条件に起因する等価物及び近似値をはじめとする、当技術分野の通常の技能に基づいて合理的に推測されるであろうそのような所与の値に対する近似値も意味することが意図される。例えば、所与の値又は範囲の文脈における用語「約」は、所与の値又は範囲の20%以内、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、より好ましくは9%以内、より好ましくは8%以内、より好ましくは7%以内、より好ましくは6%以内、及びより好ましくは5%以内である値又は範囲を意味する。
本明細書中で用いる場合の表現「及び/又は」は、他のものを含むか又は含まない2つの特定される特徴又は構成要素のうちの各々の具体的開示として受け取られるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、まさにそれぞれが本明細書中に個別に提示されるかの如く、(i)A、(ii)B並びに(iii)A及びBのうちの各々の具体的開示として受け取られるべきである。
【0011】
本明細書中で用いる場合、用語「含む」は、単語に続く項目が含められるが、具体的に言及されない項目が除外されないことを意味するためにその非限定的な意味で用いられる。
本明細書中で用いる場合、表現「質量%」及び「%」は、別途定義されない限り、組成物の総質量に対する構成要素の質量%として定義される。
本技術の意味において、フィコシアニンの「安定性」とは、長期保存及び/又は熱処理下での酸性環境においてその色調、明度及び透明性を保持するその能力を意味する。
比較的少ない沈殿、比較的少ない不明瞭性及び/又は比較的顕著でない色変化が周囲温度での暗所又は明所における高温及び/又は長期保存への曝露後に観察される場合、フィコシアニンは改善されたか又は強化された安定性を有すると考えられる。沈殿及び不明瞭性は肉眼で観察することができ、且つ色変化は、λmax値を調べることによる分光学的(spectrophototometric)方法により、又はdE CMCを決定することにより比色法を介して追跡することができる。
【0012】
色調は、水溶液に関して分光光度計並びに半固体及び固体組成物に関してDigiEye色測定及びイメージングシステムを用いて測定される。CIE L*a*b*値及び色相角(h)が算出される。測色計測定は、CIE L*a*b*が、(CIELAB色空間):
L*スケール:明対暗、小さな数(0~50)は暗を示し、大きな数(51~100)は明を示す。
a*スケール:赤色対緑色、正の数は赤色を示し、負の数は緑色を示す。
b*スケール:黄色対青色、正の数は黄色を示し、負の数は青色を示す。
を表す反対色説に基づく色の数値表示を提供する。
【0013】
【数1】
dEは、色差の全体的尺度である。色変化は、2のdE CMCから可視であると考えられ、dE CMCが高い程、フィコシアニンの不安定性が高い。3以下のdE CMCは、視覚的変化がないことを示すと考えられる。
酸性条件においては、例えば、λ及びι-カラギーナンのような負に荷電した多硫酸化カラギーナンは、正に荷電したフィコシアニンとの複合体を形成し、凝集を妨げ、且つ色を安定化させるという仮説が立てられる。明らかな色調のシフトが、酸性条件において、例えば、ι及びλ-カラギーナンのような多硫酸化カラギーナンの添加に伴って観察される。
【0014】
一実施形態では、本技術は、最終生成物中で用いられるフィコシアニンの用量に応じて、着色作用がより顕著であったか又はより顕著でなかったことを示した実験に端を発する。直観に反して、組成物中に存在したフィコシアニンがより多い程、より高い不安定性が観察された。一方で、低濃度の使用では、色変化は限定され、ヒトの目に対して時には辛うじて可視的であった。
カラギーナンの添加がフィコシアニンの熱安定性を改善したこともまた決定された。一般的に、高温短時間殺菌(HTST殺菌、瞬間殺菌とも称される)へと曝露される場合、フィコシアニンの色は薄くなる。
フィコシアニンとカラギーナンとを組み合わせることにより、飲料中で青色1号を置き換えるために用いることができた色調をつくり出すことが可能になることが、さらに決定された。特に、好ましい実施形態では;本技術に従う酸性組成物は、5:1の比率でのガルディエリア属フィコシアニン-カラギーナン(1.5:1 フィコシアニン:カラギーナン)を含み、ガルディエリア属飲料と青色1号飲料との間での2.5未満のdE CMCを生じ、したがって、青色1号含有飲料の色と一致する色を与える。
【0015】
濃縮フィコシアニン(例えば、典型的には約0.3%~約10%フィコシアニンを含む組成物)を酸性条件下で加熱した場合、緑色の抽出物が形成されること、及びこの緑色の抽出物は食品及び飲料用途で用いることができたことが、さらに決定された。つまり、本技術はまた、イデユコゴメ目の、好ましくはシアニジオシゾン属(Cyanidioschyzon)、シアニジウム属(Cyanidium)又はガルディエリア属の、さらに好ましくは生物種ガルディエリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)、シアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)、又はシアニジオシゾン・メロラエ(Cyanidioschyzon merolae)由来の藻類又は微細藻類から抽出されたフィコシアニンに基づいて緑色を生成するための方法にも関する。一部の実施形態では、本技術において有用なフィコシアニンは、ガルディエリア科(Galdieriaceae)から抽出された、一部の例ではガルディエリア属から抽出されたフィコシアニンであり得る。一部の例では、フィコシアニンはガルディエリア属抽出物の成分である。
【0016】
典型的には、粉末中の着色料は、E10=180の着色料の10%希釈の吸光度を示すために、約25%~約30%のフィコシアニンを含む。例示目的のために、1gのガルディエリア属抽出物は、水、転化糖、スクロース、及び/又はマルトデキストリンなどの少なくとも1種の希釈剤と混合された、約0.25~約0.30gのフィコシアニンを含むであろう。
一部の実施形態では、本技術のフィコシアニンは、抽出されたフィコシアニンである。フィコシアニンは、当技術分野で公知のプロトコール、例えば、参照により本明細書中に組み入れられる国際公開第2020/144331号に記載されるものなどのプロトコールを用いて、ガルディエリア属から抽出することができる。
一部の実施形態では、本技術のフィコシアニンは、抽出されたフィコシアニンである。一部の実施形態では、本技術のフィコシアニンは、単離されたフィコシアニンである。本明細書中で用いる場合、用語「抽出された」及び「単離された」とは、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%若しくは約98%を超える純度又は約99%を超える純度をもたらす、例えば、クロマトグラフィー、蒸留、抽出、又は類似の技術を用いて、天然供給源から(例えば、ガルディエリア属から)単離された化合物を意味する。
【0017】
一部の実施形態では、本技術のフィコシアニンは、精製されたフィコシアニン、特にフィコシアニンの精製された抽出物である。「精製された抽出物」とは、フィコシアニンを保持しながら、その水溶性要素(タンパク質、イオン、糖)のうちの一部分が、限定するものではないが、当業者に公知の方法である限外ろ過、中空糸ろ過、又はイオン交換クロマトグラフィーなどの液体分離方法により除去されている、粗抽出物を意味する。一部の実施形態では、本明細書中で用いる場合のガルディエリア属抽出物は、精製されたガルディエリア属抽出物である。
本明細書中、以下では短く「フィコシアニン」と称される総フィコシアニン含有量は、C-フィコシアニン及び存在する場合にアロフィコシアニンの合計である。
【0018】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される「精製された」化合物は、70%超の純度を有する。一部の実施形態では、本明細書中に開示される「精製された」化合物は、80%超の純度を有する。一部の実施形態では、本明細書中に開示される「精製された」化合物は、90%超の純度、95%超の純度、又は98%超の純度を有する。
【0019】
フィコシアニンは、発色団に共有結合したアポタンパク質から構成されるα及びβサブユニットを含むフィコビリタンパク質である。異なるフィコシアニンは、それらのα-及びβ-サブユニットアポタンパク質の配列により本質的に区別される。
特定の実施形態に従えば、本技術の酸性組成物、特に酸性食品組成物は、そのα-サブユニットアポタンパク質が配列番号1(登録番号YP_009051179.1)を含み、且つそのβ-サブユニットアポタンパク質が配列番号2(登録番号YP_009051180.1)又はその変異体を含む、酸性pH耐性フィコシアニンを含む。
一部の実施形態では、本技術は、フィコシアニンを含む酸性組成物に関する。一部の実施形態では、酸性組成物は、抽出されたフィコシアニン、単離されたフィコシアニン又は精製されたフィコシアニンを含む。
【0020】
本技術の酸性組成物は、固体、ペースト状、又は液体であり得る酸性食品組成物であり得る。一部の例では、酸性食品組成物は炭酸飲料である。一部の他の例では、酸性食品組成物は、限定するものではないが、ヨーグルトなどの乳製品である。
酸性組成物、特に酸性食品組成物とは、本技術に従えば、4.0以下のpHを有する、有利には約2.5~約3.5、有利には約3.0超且つ約4.0以下のpHを有する組成物を意味する。
一部の実施形態では、酸性組成物、特に酸性食品組成物は、そのα-サブユニットアポタンパク質が配列番号1(登録番号YP_009051179.1)に示されるアミノ酸配列又はその変異体を有し、且つそのβ-サブユニットアポタンパク質が配列番号2(登録番号YP_009051180.1)に示されるアミノ酸配列又はその変異体を有する、酸性pH耐性フィコシアニンを含む。
【0021】
一部の実施形態では、酸性組成物、特に酸性食品組成物は、C-フィコシアニンと組み合わせたアロフィコシアニンをさらに含むことができる。
一部の例では、当該アロフィコシアニンのα-サブユニットアポタンパク質は、配列番号3(登録番号YP_009051103.1)に示されるアミノ酸配列又はその変異体を有し、且つβ-サブユニットアポタンパク質は配列番号4(YP_009051104.1)に示されるアミノ酸配列又はその変異体を有する。
一部の実施形態では、当該アロフィコシアニンのα-サブユニットアポタンパク質は、配列番号3(登録番号YP_009051103.1)に示されるアミノ酸配列又はその変異体からなり、且つβ-サブユニットアポタンパク質は配列番号4(YP_009051104.1)に示されるアミノ酸配列又はその変異体からなる。
【0022】
タンパク質の特性は、とりわけ、そのアミノ酸組成及びその等電点(pI)に依存する。等電点は、タンパク質が正味電荷を帯びない溶液のpH、又は、言い換えれば、分子が電気的に中性であり、且つタンパク質が互いに引き付け合い、凝集及び沈殿する傾向にあるpHである。その等電点を超えるpHでは、タンパク質は負に荷電し、且つ互いに反発する傾向を有する。
Patrickios and Yamasaki(Polypeptide Amino Acid Composition and Isoelectric Point. II. Comparison between Experiment and Theory. Analytical Biochemistry. 231, 1, 1995: 82-91.1995)により記載されるコンピュータによる手順を用いる様々なタンパク質の等電点の比較解析は、理論的計算と実験的に観察される酸性pH耐性との間での一定の相関を示す。
【0023】
本出願人により行われた研究は、フィコシアニンの酸性pH耐性が、当該フィコシアニンのαサブユニットのアミノ酸配列に関連付けられる場合があることを示す。さらに、フィコシアニンのαサブユニットのアミノ酸配列内で、最初の26個のアミノ酸の同一性が特に重要であるように見えることが注記される。これは、シアニジオシゾン属、シアニジウム属又はガルディエリア属の微細藻類株の、より詳細には株ガルディエリア・スルフラリア、シアニジウム・カルダリウム、及びシアニジオシゾン・メロラエの培養により取得されるフィコシアニンの場合に特に当てはまる。
一部の実施形態では、本技術の組成物は、その少なくとも1つのアポタンパク質、特にα-サブユニットのものが、酸性pHにおいてより良好な安定性を可能にする低い等電点を有し得る少なくとも1種のフィコシアニンを含むことができる。低い等電点とは、3以下の、優先的には2.5以下の、より優先的には2.2以下の等電点を意味する。一部の実施形態では、本技術の組成物は、その少なくとも1つのアポタンパク質、特にα-サブユニットのものが、3以下の、優先的には2.5以下の、より優先的には2.2以下の等電点を有し得る少なくとも1種のフィコシアニンを含むことができる。
【0024】
酸性組成物、特に酸性食品組成物は、そのα-サブユニットアポタンパク質が低い等電点を有し得る少なくとも1種のフィコシアニン、より詳細にはそのα-サブユニットアポタンパク質が配列番号1に示されるアミノ酸配列、又はその変異体を含み得る少なくとも1種のフィコシアニンを含むことができる。
一部の実施形態では、酸性組成物、特に酸性食品組成物は、そのα-サブユニットアポタンパク質が低い等電点を有し得る少なくとも1種のフィコシアニン、より詳細にはそのα-サブユニットアポタンパク質が配列番号1に示されるアミノ酸配列、又はその変異体からなる少なくとも1種のフィコシアニンを含む。
本明細書中で用いる場合、用語「変異体」とは、参照配列に対応するタンパク質配列を意味し、この場合は、参照配列の1つ若しくは複数のアミノ酸の1つ若しくは複数の置換、挿入又は欠失により改変され、且つ当該参照配列と同じ機能的特性、特に酸性環境における同じ安定性を有する、配列番号1又は配列番号2又は配列番号4により表されるタンパク質を意味する。
【0025】
一部の例では、本技術の変異体は、フィコシアニンのα-サブユニットとの少なくとも約83%の配列同一性、及びフィコシアニンのβサブユニットとの少なくとも約82%の配列同一性を有する。一部の他の例では。一部の例では、本技術の変異体は、α(配列番号1)及びβ(配列番号2)サブユニットとの少なくとも約90%の同一性、好ましくは、α(配列番号1)及びβ(配列番号2)サブユニットとの少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する。
同様に、アロフィコシアニンに関して、変異体は、アロフィコシアニンのαサブユニットとの少なくとも約89%の配列同一性、及びアロフィコシアニンのβサブユニットとの少なくとも約90%の配列同一性を有する。
当業者は、自由に使うことができる一般的な方法、特に、BLASTPプログラム(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて、タンパク質配列同一性を測定する方法を知っている。
【0026】
本技術により包含される変異体の正体は、酸性pHにおける安定性試験により、例えば、本出願の実施例中に提示される試験などの試験を行うことにより、変異体が元のアミノ酸配列と同じ構造的及び機能的特性を保持することを検証することによるなど、当技術分野で公知の方法を用いて特定することができる。
本技術のポリペプチドは、その機能を実質的に変化させることなく、少なくとも1つのアミノ酸の置換、挿入及び/又は欠失により改変することができる。例えば、別の化学的に同等なアミノ酸による所与の位置でのアミノ酸の置換は、タンパク質の特性に実質的に影響を及ぼさない配列変化の公知の例である。これらの「保存的」置換は、以下のアミノ酸の群内での交換として定義することができる:i)Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;ii)Asp、Asn、Glu、Gln;iii)His、Arg、Lys;iv)Met、Leu、Ile、Val、Cys;及びv)Phe、Tyr、Trp。
【0027】
したがって、本技術に従うC-フィコシアニン及び/又はアロフィコシアニンのアポタンパク質の変異体は、対応する参照配列に対して1~30箇所のアミノ酸の差異を含むことができる。一部の例では、本技術に従うC-フィコシアニン及び/又はアロフィコシアニンのアポタンパク質の変異体は、対応する参照配列に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30箇所のアミノ酸の差異を含むことができる。一部の例では、フィコシアニンのα及び/又はβサブユニットの変異体は、参照タンパク質の特性及び上記で述べられる相同性/同一性パーセントを保持する。
【0028】
一部の実施形態では、置換、挿入及び/又は欠失に由来する本技術の酸性組成物中で有用なフィコシアニンのα-サブユニットアポタンパク質変異体は、得られる変異体が参照タンパク質の特性及び上記で述べられる同一性パーセントを保持する限り、対応する参照配列に対して1~27箇所のアミノ酸の差異を含むことができる。
一部の実施形態では、参照配列の置換、挿入及び/又は欠失に由来する本技術の酸性組成物中で有用なフィコシアニンのα-サブユニットアポタンパク質変異体及び本技術に従う酸性組成物中で有用なフィコシアニンのβ-サブユニットアポタンパク質変異体は、得られる変異体が参照タンパク質の特性及び上記で述べられる同一性パーセントを保持する限り、対応する参照配列に対して1~30箇所のアミノ酸の差異を含むことができる。
【0029】
一部の実施形態では、置換、挿入及び/又は欠失に由来する本技術の酸性組成物中で有用なC-フィコシアニンのα-サブユニットアポタンパク質変異体、本技術に従う酸性組成物中で有用なアロフィコシアニンのα-サブユニットアポタンパク質変異体は、得られる変異体が参照タンパク質の特性及び上記で述べられる同一性パーセントを保持する限り、対応する参照配列に対して1~24箇所のアミノ酸の差異を含むことができる。
一部の実施形態では、置換、挿入及び/又は欠失に由来する本技術の酸性組成物中で有用なC-フィコシアニンのα-サブユニットアポタンパク質変異体、本技術に従う酸性組成物中で有用なアロフィコシアニンのβ-サブユニットアポタンパク質変異体は、得られる変異体が参照タンパク質の特性及び上記で述べられる同一性パーセントを保持する限り、対応する参照配列に対して1~20箇所のアミノ酸の差異を含むことができる。
考慮される参照配列(フィコシアニンα及び/若しくはβサブユニット並びに/又はアロフィコシアニンα及び/若しくはβサブユニット)にかかわらず、当該サブユニットの変異体は、得られる変異体が参照タンパク質の特性及び上記で述べられる同一性パーセントを保持する限り、対応する参照配列に対して1~15箇所のアミノ酸の差異、好ましくは1~10箇所のアミノ酸の差異、特に1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は10箇所のアミノ酸の差異を含むことができる。
【0030】
一部の実施形態では、酸性組成物中で、特に酸性食品組成物中で、単独で又はアロフィコシアニン若しくはその変異体と組み合わせて有用な、C-フィコシアニン又はその変異体は、C-フィコシアニン若しくは対象となるその変異体を天然に発現する天然生物の培養により、又は当該C-フィコシアニン若しくはその変異体を産生するその能力に関して選択された、C-フィコシアニン若しくは対象となるその変異体を発現するために遺伝学的に形質転換された生物の培養により、取得することができる。本技術に従う組成物中で有用なC-フィコシアニン又は対象となるその変異体を天然に発現する天然生物の例としては、イデユコゴメ目の藻類又は微細藻類が挙げられる。イデユコゴメ目は、イデユコゴメ科(Cyanidiaceae)及びガルディエリア科を含み、これら自体がシアニジオシゾン属、シアニジウム属及びガルディエリア属へと細分され、そのメンバーとしては、とりわけ、生物種シアニジオシゾン・メロラエ10D、シアニジオシゾン・メロラエDBV201、シアニジウム・カルダリウム、シアニジウム・ダエダルム(Cyanidium daedalum)、シアニジウム・マキシムム(Cyanidium maximum)、シアニジウム・パルティツム(Cyanidium partitum)、シアニジウム・ルムペンス(Cyanidium rumpens)、ガルディエリア・ダエダラ(Galdieria daedala)、ガルディエリア・マキシマ(Galdieria maxima)、ガルディエリア・パルティタ(Galdieria partita)、ガルディエリア・フレグレア(Galdieria phlegrea)、及びガルディエリア・スルフラリアが挙げられる。株ガルディエリア・スルフラリア(シアニジウム・カルダリウムとも称される)に特に言及することができる。
【0031】
したがって、本技術の実施形態に従えば、酸性組成物、特に酸性食品組成物は、イデユコゴメ目の藻類又は微細藻類などの天然生物由来、特にイデユコゴメ科又はガルディエリア科の天然生物由来の酸性pH耐性フィコシアニンを含む。一部の例では、酸性組成物、特に酸性食品組成物は、有利にはシアニジウム属及びガルディエリア属の生物種から選択される、シアニジオシゾン属、シアニジウム属、ガルディエリア属に属する天然生物由来の酸性pH耐性フィコシアニンを含む。一部の他の例では、酸性組成物、特に酸性食品組成物は、生物種シアニジオシゾン・メロラエ10D、シアニジオシゾン・メロラエDBV201、シアニジウム・カルダリウム、シアニジウム・ダエダルム、シアニジウム・マキシムム、シアニジウム・パルティツム、シアニジウム・ルムペンス、ガルディエリア・ダエダラ、ガルディエリア・マキシマ、ガルディエリア・パルティタ、ガルディエリア・フレグレア、ガルディエリア・スルフラリアから選択される天然生物由来の酸性pH耐性フィコシアニンを含む。
一部のさらなる例では、本技術に従う酸性食品組成物は、ガルディエリア・スルフラリア、シアニジウム・カルダリウム又はシアニジオシゾン・メロラエなどの天然微細藻類由来の酸性pH耐性フィコシアニンを含む。より優先的には、酸性pH耐性フィコシアニンは、ガルディエリア・スルフラリア及びシアニジウム・カルダリウムから選択される天然微細藻類に由来する。
【0032】
当該フィコシアニン又はその変異体を産生するその能力に関して選択された、フィコシアニン又は対象となるその変異体を発現するために形質転換された生物の例として、発色団の産生のために及びアポタンパク質に対するその結合性のために必要な生合成経路もまた含む、配列番号1及び/又は配列番号2及び/又は配列番号3及び/又は配列番号4のアポタンパク質を発現するように形質転換された微生物に言及することができる。本技術に従う食品組成物中で用いられるC-フィコシアニン及び/又はアロフィコシアニンを産生するために改変されることができる微生物として、酵母に特に言及することができる。本技術に従う組成物中で有用なフィコシアニンを産生することができる天然及び/又は改変型生物を培養するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、当業者に周知のイデユコゴメ目のイデユコゴメ科又はガルディエリア科の培養は、混合栄養様式で行うことができ、色素の生合成のために光が通常必要とされる。そのような工業的培養は、大規模(すなわち、1,000リットル、10,000リットル、20,000リットル、100,000リットル)発酵器中で行うことができる。培養は、当業者に公知の条件下で行うことができる。培養は、バッチ様式、フェドバッチ様式又は連続様式で行うことができる。
【0033】
本技術に従う組成物中で有用なフィコシアニンは、約400nm~約550nm、又は約420nm~約500nm、又は約430~約480nm、又は約455nmの波長を有する光を伴う混合栄養様式で培養された、上記で規定される通りのイデユコゴメ目の藻類の培養により取得されるバイオマスから抽出することができる。これは、前記波長の光を含む広域スペクトルを有する「白色」光であり得る。これはまた、前記波長からなる狭域スペクトルでもあり得る。混合栄養様式でのイデユコゴメ目バイオマスの工業的調製のためのそのような方法、及びそのようにして得られるバイオマスは、その内容が参照により本明細書中に組み入れられる、特許出願FR 15 59072号において特に記載される。
【0034】
本技術の目的は、その中でフィコシアニンが酸性pHにおける改善又は強化された安定性を示す酸性組成物を提供することである。酸性組成物とは、本技術に従えば、鉱酸又は有機酸及びフィコシアニンを含むあらゆる組成物を意味する。当該組成物は、酸性pHを有し、且つそれに対して酸性pH耐性フィコシアニンが組み込まれる、流動性若しくは粘性の液体、ペースト状又は固体であり得る。酸性pHにおける「改善」又は「強化」された安定性とは、フィコシアニンを含有する溶液の熱及び/又は保存処理に際して、色強度がより良好に維持されることを意味する。強化は、λmax値を追跡する分光学的(spectrophototometric)方法を介して、又はdE CMCを追跡する比色法を介して、測定することができる。
【0035】
水性液体組成物に関して、pHは、通常の様式で測定される。非水性液体組成物に関して又はペースト状若しくは固体組成物に関して、pHは、鉱酸又は有機酸及びフィコシアニンをはじめとする、その中に含有される可溶性化合物を溶解するために十分な量の水の中での組成物の溶解後に測定される。本技術の組成物中で用いることができる鉱酸の例としては、限定するものではないが、炭酸、リン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、スルホン酸及び硝酸が挙げられる。他の例としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、及びコハク酸などの有機酸が挙げられる。
一部の実施形態では、本技術に従う組成物は、ゲル形態でもよい水性液体組成物、又は水溶液中又は水を含む固体若しくはペースト状組成物中に溶解するために設計されているペースト状若しくは固体組成物である。本技術の他の実施形態に従えば、酸性組成物は、湿潤環境中で利用及び/又は保存することが意図されるペースト状又は固体組成物である。
【0036】
酸性食品組成物とは、本技術に従えば、ヒト又は動物により摂取されるために設計され、且つ先行する定義の範囲内に入るあらゆる組成物を意味する。栄養補給食品酸性組成物は、本技術の文脈内で酸性食品組成物の定義の範囲内に入ると考えられなければならない。
本技術に従う酸性食品組成物は、当業者に周知である。酸性食品組成物は、ヒト又は動物に利益を与えるそれらの栄養供給に関して又はそれらの健康特性に関して特定される活性化合物と関連付けられる構造的成分を含み得る担体を含むことができる。本技術に従う酸性食品組成物はまた、食感付与剤、香味料、保存料、又は当業者に周知のあらゆる成分などの食品添加物も含むことができる。担体は、水及び/又はタンパク質及び/又は脂質及び/又は繊維及び/又は糖を含むことができる。担体の成分は、構造特性のみを有することができるが、それらの栄養供給に関して一般的に公知である。
【0037】
本技術に従う酸性食品組成物は、即時使用可であるか、又は食用食品を調製するために固体、ペースト状若しくは液体調製物へと添加される対象である食品添加物の形態であり得る。
食品組成物に関して、酸は、食品に対して認可された酸化剤のリスト、特に、炭酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、及びクエン酸から選択することができる。
本技術に従う非食品酸性組成物に関して、それらはとりわけ、医薬組成物、獣医学的組成物又は化粧組成物であり得、公知且つそのような組成物中で用いられるあらゆる添加物及び/又は活性薬剤をさらに含むことができる。
【0038】
本技術に従う固体、液体又はペースト状酸性組成物において、フィコシアニンは、例えば、粉末形態で組み込まれることができる。当該酸性組成物、特に当該酸性食品組成物は、つまり、クリーム、ゲル、フォーム、ペースト等などのあらゆる公知の慣用の形態にあることができる。固体食品組成物の例としては、ケーキ又はビスケット、調理用の乾燥食品、可溶性粉末、ゼラチン状固体組成物(ゼリー)、フォーム等が挙げられる。
本技術に従えば、当該液体酸性組成物は、その中にフィコシアニンが溶解される水性組成物であり得る。液体酸性組成物は、即時使用組成物の形態、或いは、特に、摂取される対象であるか又はその調製のため若しくはその摂取のためのいずれかで固体食品へと添加される対象である、希釈用の液体濃縮物、例えば、その色を与えるためにケーキへと適用される対象である濃縮液体「トッピング」組成物であり得る。これらの濃縮組成物のうちで、アルコールを含有してもよいシロップに言及することができる。
【0039】
本技術に従う液体酸性組成物は、様々な粘度のものであり得、且つ増粘剤、ゲル化剤などの添加物、及び当業者に公知且つ液体食品組成物の調製に対して典型的である他の構造化添加物を含むことができる。
本技術の一実施形態に従えば、液体食品組成物は、炭酸酸性飲料である。ソーダ、ジュース、スポーツドリンク、エナジードリンク、リカバリードリンク等に特に言及することができる。これらの飲料の組成は、当業者に周知であり、且つ特に、糖、無機塩、食品添加物、溶存ガス等を含むことができる。本技術に従う飲料は、通常利用される着色料が、本技術に従う酸性pH耐性フィコシアニンにより完全又は部分的に置き換えられている、慣用の酸性飲料である。
【0040】
本発明者らは、直観に反して、より多くのフィコシアニンが組成物中で濃縮される程、安定性が低くなり、したがって、最終製品の色がより多く変化することを見出した。したがって、より色鮮やかな製品を得るためには、フィコシアニン、特にC-フィコシアニン含有量を減少させること、言い換えれば、製品の色を増加させるために着色料の量を減少させることが推奨される。
一部の実施形態では、フィコシアニンは、本明細書中、以下では「低含有量」とも称される、フィコシアニンの改善された安定化を可能にする量で、本技術の酸性組成物中に存在する。一部の例では、フィコシアニンは、約0.001~約0.1質量%、又は約0.001~約0.05質量%、又は約0.001~約0.025質量%、又は約0.0025~約0.010質量%、又は約0.0025~約0.005質量%の範囲の量で、酸性組成物中に存在する。一部の例では、フィコシアニンは、約2.5mg/L~約2500mg/L、約25mg/L~約300mg/L、又は約50mg/L~約100mg/Lの範囲の量で、酸性組成物中に存在する。これらの実施形態の一部の遂行では、酸性組成物は、液体酸性組成物である。
【0041】
酸性組成物が即時使用飲料タイプである実施形態では、フィコシアニン含有量は、約25mg/L~約300mg/L、又は約50mg/L~約100mg/Lの範囲であり得る。
酸性組成物が使用前の希釈のための濃縮液体組成物(例えば、シロップ)である実施形態では、フィコシアニン含有量は、約50mg/L~約2500mg/L、又は約500mg/L~約1000mg/Lの範囲であり得る。
酸性組成物が固体組成物である実施形態では、フィコシアニン含有量は、約0.01mg/g~約10mg/g、又は約0.1mg/g~約5.0mg/g、又は約0.25mg/g~約2.5mg/gの範囲であり得る。
一部の実施形態では、ガルディエリア属抽出物は、フィコシアニンの改善された安定性を可能にする量で、本技術の酸性組成物中に存在する。一部の例では、ガルディエリア属抽出物は、約0.004~約0.4質量%、又は約0.004~約0.2質量%、又は約0.004~約0.1質量%、又は約0.01~約0.04質量%、又は約0.01~約0.02質量%の範囲の量で、酸性組成物中に存在する。一部の例では、ガルディエリア属抽出物は、約10mg/L~約10g/L、約100mg/L~約1200mg/L、又は約200mg/L~約400mg/Lの範囲の量で、酸性組成物中に存在する。これらの実施形態の一部の遂行では、酸性組成物は、液体酸性組成物である。
【0042】
酸性組成物が即時使用飲料タイプである実施形態では、ガルディエリア属抽出物含有量は、約100mg/L~約1200mg/L、又は約200mg/L~約400mg/Lの範囲であり得る。
酸性組成物が使用前の希釈のための濃縮液体組成物(例えば、シロップ)である実施形態では、ガルディエリア属抽出物含有量は、約200mg/L~約10g/L、又は約2000mg/L~約4000mg/Lの範囲であり得る。
酸性組成物が固体組成物である実施形態では、ガルディエリア属抽出物含有量は、約0.04mg/g~約40mg/g、又は約0.4mg/g~約20mg/g、又は約1mg/g~約10mg/gの範囲であり得る。
【0043】
一部の実施形態では、本技術の組成物は、1つ又は複数の硫酸化多糖をさらに含む。一部の例では、1つ又は複数の硫酸化多糖は、多硫酸化カラギーナンである。カラギーナンは海藻に由来し、渦巻き型らせん状構造を形成することができる非常に柔軟な分子である。カラギーナンは、反復ガラクトース単位を含む直鎖状多糖として特徴付けられる。カラギーナンは、硫酸化度により分類される。一硫酸化カラギーナンの例は、k-カラギーナン、g-カラギーナン及びо-カラギーナンである。二硫酸化カラギーナンの例は、i-カラギーナン、d-カラギーナン、m-カラギーナン及びq-カラギーナンである。三硫酸化カラギーナンの例は、l-カラギーナン及びv-カラギーナンである。
【0044】
多硫酸化カラギーナンは、二糖単位当たり少なくとも2個の硫酸基、好ましくは2個又は3個の硫酸基を含有するカラギーナンである。本技術において用いることができる多硫酸化カラギーナンの例としては、限定するものではないが、i-カラギーナン、d-カラギーナン、m-カラギーナン、0-カラギーナン、l-カラギーナン及びv-カラギーナン、i-カラギーナンの加水分解生成物、d-カラギーナンの加水分解生成物、m-カラギーナンの加水分解生成物、0-カラギーナンの加水分解生成物、l-カラギーナンの加水分解生成物及びv-カラギーナンの加水分解生成物が挙げられ;i-カラギーナン及びl-カラギーナン、及びそれらの加水分解生成物がより好ましく、l-カラギーナン及び加水分解型l-カラギーナンが最も好ましい。
一部の実施形態では、本技術の組成物のカラギーナン含有量は、約0.006質量%~約0.6質量%、又は約0.02質量%~約0.5質量%、又は0.03質量%~約0.4質量%、又は約0.05質量%~約0.3質量%、又は約0.005質量%~約0.1質量%、又は約0.001質量%~約0.1質量%、又は約0.05質量%~約0.1質量%の範囲である。
【0045】
一部の実施形態では、本技術の酸性組成物中に存在するフィコシアニン抽出物とカラギーナンとの質量比は、組成物の含水量及びpHに依存する。少なくとも約45質量%且つ最大で約95質量%の高い含水量では、フィコシアニン抽出物(約25%~約30%フィコシアニンを含有するフィコシアニン抽出物)とカラギーナンとの間の質量比(フィコシアニン抽出物:カラギーナン)は、約1:1~約10:1、又は約1:1~約5:1、又は約1:1~約4:1、又は約1:1~約3:1、又は約1:1~約2:1の範囲である。一部の実施形態では、この高含水量での組成物のpHは、約2.0~約3.7、又は約2.2~約3.5、又は約2.3~約3.3の範囲である。
少なくとも15且つ45質量%未満の水の低い含水量では、フィコシアニン抽出物(約25%~約30%フィコシアニンを含有するフィコシアニン抽出物)とカラギーナンとの間の質量比は、少なくとも約2且つ約2.5未満のpHにおいて、1:1.5、好ましくは1:1~10:1の範囲である。フィコシアニンとカラギーナンとの間の質量比は、少なくとも約2.5且つ約2.9未満のpHにおいて、約1:2、好ましくは1:1~約10:1の範囲であり、フィコシアニン抽出物とカラギーナンとの間の質量比は、少なくとも約2.9且つ約4未満のpHにおいて、約1:1~約10:1の範囲である。フィコシアニン及びカラギーナンは、好ましくは、液体原料中に溶解される。溶解されるとは、フィコシアニン及びカラギーナンが水溶液中に留まる場合を意味する。溶液は目視で透明であり、沈殿物又は浮遊粒子を示さない。
【0046】
フィコシアニン構成が色調に影響を及ぼすことが公知である。pHが低下し、且つC-フィコシアニンの平衡が単量体へとシフトする場合、色調は、暗青色から青緑色へとシフトする(Buchweitz, 2016)。一般的に、3.9以下のpH値では、C-フィコシアニンの平衡は単量体へとシフトする。色性能は、色彩測定(CIE L*a*b*及びh値、上記を参照されたい)及び青色吸光度の合計を用いて評価される。
あらゆる理論に拘泥することなく、酸性条件においては、例えば、λ及びι-カラギーナンのような負に荷電した多硫酸化カラギーナンは、正に荷電したフィコシアニンとの複合体を形成し、凝集を妨げ、且つ色を安定化させるという仮説が立てられる。しかしながら、明らかな色調のシフトが、酸性条件において、特に2.6~4.0のpHで、例えば、ι及びλ-カラギーナンのような多硫酸化カラギーナンの添加に伴って観察される。カラギーナンの添加は、より明るく(より高いL*)且つより青色でない/より黄色(より高いb*)へと色調をシフトさせる。
【0047】
測光測定から生来型フィコシアニン含有量(mg/mL)を算出するためのフィコシアニン決定のための標準的方法が、Yoshikawa & Belay (2008)により確立された。この方法は、620nm及び650nmでの吸光度測定並びにpH6.0でのこれらの波長におけるC-フィコシアニン及びアロフィコシアニンの吸光係数に依存する。多硫酸化カラギーナンの添加は、フィコシアニンピークの形状を変化させ、一部の場合には、ピーク最大値は、620nmから660~670nmへとシフトする。620nm及び650nmでの吸光度測定のみを用いるフィコシアニン含有量の算出は、多硫酸化カラギーナンを含有する溶液に関してフィコシアニン含有量を低く見積もるであろう。つまり、色の保持の大きさを決定するために、A620nm~A750nm、A650nm~A750nm、及びA667nm~750nmでの青色吸光度測定の合計が算出され、且つ用いられる。スピルリナ抽出物中の総フィコシアニン含有量は、下記に列挙されるpH6.0でのYoshikawa & Belay (2008)の方法を用いて算出される。
【0048】
【0049】
組成物に添加されるC-フィコシアニンの量を決定するために、ガルディエリア属抽出物の投与量レベルに、ガルディエリア属抽出物中の総C-フィコシアニン含有量を乗算する。
一部の実施形態では、液体組成物のフィコシアニン含有量は、約0.001質量%~約0.1質量%、又は約0.003質量%~約0.5質量%、又は約0.007質量%~約0.4質量%、又は約0.01質量%~約0.4質量%である。
スピルリナ抽出物を含有するフィコシアニンに伴う困難性は、酸性化された水性系に対する適用である。スピルリナタンパク質(フィコシアニンを含む)は、pHが約2.7~約6.0である場合に溶液から沈殿する。沈殿は、即時又は数週間後に起こる場合があり、これは、溶液の粘度、イオン強度、添加の順序、温度、及びpHなどの因子に依存する。凝集/沈殿は、視覚的に評価され、且つ退色に対する原因であり得る。酸性化及び/又は加工後の750nmでの高い吸光度は、タンパク質凝集/沈殿に対する強い可能性を示すことができる。
【0050】
一部の実施形態では、技術に従う酸性組成物は、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1未満のpHを有し、さらに好ましくは、pHは、2.0以上である。
3.0超且つ4.0以下のpHにおける0.3:1~0.6:1の比率でのガルディエリア属由来の低含有量のフィコシアニンと少なくとも1種の硫酸化多糖、特にλ-カラギーナンとの組み合わせが、特に有利である。
【0051】
一部の実施形態では、本技術の組成物は、例えば、甘味料、安定化剤、キレート剤、酸、タンパク質、塩、香料、ビタミン、無機物、色素、増粘剤及び保存料などの追加の成分を含む。
本技術の組成物は、フィコシアニン含有量に起因する青色の色を有し得るが、青色に基づく他の色を、組成物内で他の色素を混合することによって得ることができる。組成物は、サフロミン(ベニバナ)、アントシアニン、カロテノイド、ベタニン、アナトー、リコペン、クルクミン及びクロロフィルなどの他の色素を含有することができる。色素は、例えば、サフロミンを用いて緑色などの他の色へと混ぜ合わせるために、青色のフィコシアニン含有組成物へと添加することができる。
【0052】
甘味料の例は、転化糖、スクロース、ブドウ糖果糖液糖、コーンシロップ、フルクトース、グルコース、トレハロース、ラクトース、ハチミツ、アガベ、ステビア、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム、アセスルファムカリウム、ラカンカ、又はサッカリンである。保存料の例は、塩、ソルビン酸、安息香酸、ナタマイシン、ナイシン及び亜硫酸塩である。塩の例は、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、又は銅などの正に荷電したカチオンと、例えば、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、酸化物イオン、リン酸イオン、ソルビン酸イオン、安息香酸イオン、ヘキサメタリン酸イオン又は硫酸イオンのような塩形成性アニオンとを用いて形成させることができるイオン性化合物である。酸の例は、リン酸、クエン酸、硫酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸又は酸性ピロリン酸ナトリウムである。増粘剤の例は、ゼラチン、デンプン、ペクチン、コンニャク、又は寒天である。
【0053】
技術に従う組成物は、キレート剤とも称される場合がある、キレーターを含有することができる。キレーターは、キレートを形成することによりそれらが結合する分子/原子の化学的及び/又は物理的状態に影響を及ぼす結合性薬剤である。キレーターは、色の保持を改善することができ、多硫酸化カラギーナンと相乗的に作用することが見出されている。キレート剤は、合成化合物及び天然化合物であり得、エチレンジアミン四酢酸及び/又はそのNa、K、Ca塩(EDTA)、L-グルタミン酸N,N-二酢酸四ナトリウム塩(GLDA)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、グルタチオン、メタロチオネイン(metallotheionein)、2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホン酸(2,3-dimerapto-1-propanesulfonic acid)、クロレラ、ニンニク、コリアンダー、セレン、オオアザミ、ビタミンC、ビタミンE、クエン酸塩、ブドウ種子抽出物、ケルセチン、及びリポ酸の群から特に選択される。好ましくは、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸及び/又はそのNa、K、Ca塩(EDTA)並びにL-グルタミン酸N,N-二酢酸四ナトリウム塩(GLDA)の群から選択される。EDTAは、例えば、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二カリウム、及びエチレンジアミン四酢酸三カリウムのようなそのNa、K、Ca塩と併せたエチレンジアミン四酢酸であると考えられる。エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムはCaNa2 EDTAと略され、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムはNa2 EDTAと略され、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムはNa4 EDTAと略され、エチレンジアミン四酢酸二カリウムはK2 EDTAと略され、及びエチレンジアミン四酢酸三カリウムはK3 EDTAと略される。さらに好ましくは、キレート剤は、ビタミンC及び/又はEDTAである。キレート剤は、組成物中に約1~約2000ppmの範囲の量で存在することができる。1ppmのキレート剤は0.0001質量%として理解されるべきであり;例えば、30ppmのEDTAは0.003質量%である。EDTAは、約10~約300ppm、又は(por)約15~約200ppm、又は約20~約100ppmの範囲の量で、組成物中に存在することができる。
【0054】
EDTA及びフィコシアニン(ガルディエリア属抽出物由来のフィコシアニンなど)は、好ましくは、約4:1~約1:200、又は約2:1~約1:125、又は約1:1~約1:75の質量比で、本技術の組成物内に存在する。
組成物は、典型的には、消費される前に輸送及び保存される。これらの組成物が腐敗せず、且つ消費に対して安全であることを確実にするために、熱プロセス、保存料、水分活性、又は上記の組み合わせのうちのいずれかが用いられる。
高温短時間(210℃、6秒間)加工時及び保存料がカラギーナンを含まない溶液に対して用いられる場合に、顕著な青色の退色が観察される。
【0055】
組成物は、以下のステップ:a)水中に多硫酸化カラギーナンを添加及び溶解させ、目視観察により多硫酸化カラギーナンが溶解するまで混合するステップ;b)フィコシアニン含有ガルディエリア属抽出物を添加し、少なくとも5のpHで、好ましくは5~10のpHで溶解するまで混合するステップ;c)酸又は酸化性成分を添加するステップ;d)任意に、甘味料、香料、ビタミン、無機物、塩、緩衝剤、又は他の飲料成分を添加するステップ;e)任意に、EDTAなどのキレート剤を添加するステップ;f)任意に、アントシアニンなどの他の色素を添加するステップ;g)任意に、保存料などの添加物を添加するステップ;h)少なくとも65℃まで液体を熱的に処理するか;若しくは熱処理を伴わない低温充填、又はその2つの組み合わせによってa)~h)の混合物を処理するステップを含むプロセスに従って、取得することができる。フィコシアニン含有ガルディエリア属抽出物を、5.0以上のpHで、他の成分の存在下でもよい、溶解された多硫酸化カラギーナンに添加することが重要である。フィコシアニンを不安定化させ得る化合物のリストとしては、限定するものではないが、酸、アントシアニン、ベニバナ、及びアルコールが挙げられる。酸は加水分解型カラギーナンを調製するために用いることができるが、加水分解型カラギーナンの電荷は、フィコシアニンとの混合前に少なくとも5のpHまで中和されるべきである。
【0056】
フィコシアニンを不安定化させない成分を、プロセスのステップa)の間又はその前に添加することができる。多硫酸化カラギーナンは、例えば、溶解を改善するために、スクロース又はマルトデキストリンなどの非酸性炭水化物と乾式混合することができる。ステップc)(酸又は酸性化成分の添加)は、ステップd)、e)、又はf)の前又は後に行うことができる。ステップh)は、好ましくは、ステップa)~g)後に行われる。存在する場合、保存料(ステップg)は、好ましくは、保存料の溶解度制限に起因して、ステップa)の前又はその間に添加される。
カラギーナンは、反復硫酸化ガラクトース単位を含む直鎖状多糖である。ガラクトース単位間のグリコシル結合は、熱及び酸による加水分解を受ける。加水分解された多硫酸化カラギーナンはまたフィコシアニンを安定化することも見出されているが、しかしながら、加水分解された多硫酸化カラギーナンの電荷は、フィコシアニンとの複合体化に先立って5超のpHへと中和されなければならない。加水分解型と未分解型の両方の多硫酸化カラギーナンは、沈殿を防止するために、フィコシアニンの添加に先立って5超のpHを有しなければならない。好ましくは、多硫酸化カラギーナンを含有する溶液のpHは、フィコシアニンの添加前に5~10、より好ましくは5.5~9.9である。
【0057】
本技術はまた、約30℃~約90℃の温度で、約3.6又は3.6未満のpHにおいて、水溶液中でフィコシアニンを加熱するステップを含む、緑色を生成するための方法にも関し、このとき、フィコシアニンは、イデユコゴメ目の、好ましくはシアニジオシゾン属、シアニジウム属又はガルディエリア属の、さらに好ましくは生物種ガルディエリア・スルフラリア、シアニジウム・カルダリウム、又はシアニジオシゾン・メロラエ由来の藻類又は微細藻類から抽出される。
好ましい実施形態では、水溶液は、約0.3%~約10%のフィコシアニン、さらに好ましくは約0.1%~約1%のフィコシアニンを含む。
【0058】
特定の実施形態では、緑色を生成するための方法は、加熱温度が、約30℃~約90℃、特に約31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃以上であることを特徴とする。さらに好ましくは、加熱温度は、約40℃~約90℃、特に約50℃~約85℃、さらにより好ましくは約60℃~約80℃である。
【0059】
特定の実施形態では、緑色を生成するための方法は、水溶液のpHが、好ましくは約2.0~4.0、さらに好ましくは3.0付近であることを特徴とする。
特定の実施形態に従えば、緑色を生成するための方法は、好ましくは、本明細書中に記載されるものの通りのアミノ酸配列、構造及び機能的特性を有する酸性pH耐性フィコシアニンであるフィコシアニンの使用を含む。
緑色を生成するための方法の加熱ステップは、約1分間~約480分間、好ましくは約60分間~約360分間、さらに好ましくは約120分間~約300分間に含まれる継続時間を有し得る。温度が高い程、必要とされる継続時間が短いことが注記されるべきである。
特に好ましい実施形態では、緑色を生成するための方法は、約200分間~約280分間にわたる約70℃~80℃の温度での加熱ステップを含む。
本技術はまた、この方法により取得される緑色にも関する。当該緑色は、したがって、緑色フィコシアニンとも称され、当該緑色フィコシアニンは、約120°~190°の色相角を有する。
【0060】
別の実施形態では、本技術は、エチレンジアミン四酢酸及び/又はそのNa、K、Ca塩(EDTA)、L-グルタミン酸N,N-二酢酸四ナトリウム塩(GLDA)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、グルタチオン、メタロチオネイン(metallotheionein)、2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホン酸(2,3-dimerapto-1-propanesulfonic acid)、クロレラ、ニンニク、コリアンダー、セレン、オオアザミ、ビタミンC、ビタミンE、クエン酸塩、ブドウ種子抽出物、ケルセチン、及びリポ酸の群から、好ましくはビタミンC及び/又はEDTAから選択される少なくとも1種のキレーターと当該色を混合するステップを含む、上記の方法によりフィコシアニンから取得される緑色を安定化するための方法に関する。
当技術分野においては、当業者は、ビタミンCがフィコシアニンを不安定化させる可能性がある化合物であることに気付くことが注記されるべきである。したがって、本技術において、本発明者らが安定化剤としてビタミンCを用いることは、特に驚くべきことである。
【0061】
好ましくは、上記の方法によりフィコシアニンから取得される緑色を安定化するための方法は、上記の通りの少なくとも1種の硫酸化多糖を添加するステップをさらに含む。
本技術は、上記の通りの方法によりフィコシアニンから取得される安定化された緑色に関する。
好ましくは、取得された安定化型緑色は、熱及び/又は光曝露下で安定である。
特定の実施形態では、安定化されているか又はされていない、技術に従う緑色は、固体、ペースト状、又は液体形態のいずれかにあり得る。
本技術はまた、上記の生成方法によりフィコシアニンから取得される緑色又は上記の安定化方法によりフィコシアニンから取得される安定化型緑色を含む製品にも関する。
【0062】
一部の実施形態では、技術に従う酸性組成物、食品製品及び/又は濃縮液体は、緑色形態下のフィコシアニンを含むか又はそれに存する。
好ましい実施形態に従えば、当該緑色は、瞬間殺菌などの殺菌を受けたことがある。
別の態様に従えば、本技術は、a)水中に少なくとも1種の硫酸化多糖を添加及び溶解させるステップ、b)、少なくとも5.0のpH、好ましくは5.0~10.0のpHにおいて、フィコシアニンを添加し、且つ溶解するまで混合するステップを含む、フィコシアニンの熱安定性及び/又は光安定性を改善するための方法に関する。
この方法に関して、一部の実施形態では、本技術の組成物は、上記の通りの1つ又は複数の硫酸化多糖を含む。
この方法に関して、フィコシアニンは、好ましくは、本明細書中に記載されるものの通りのアミノ酸配列、構造及び機能的特性を有する酸性pH耐性フィコシアニンである。
この方法に関して、フィコシアニンは、技術に従う緑色フィコシアニンであり得る。
より高濃度において緑色へのシフトが起こることが、驚くべきことに観察された。したがって、本発明は、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、好ましくは約0.1%~約10%のフィコシアニン、さらに好ましくは約0.1%~約1%のフィコシアニンなどの少なくとも0.1%のフィコシアニンを含む組成物に関する。好ましい実施形態では、フィコシアニンは、(ガルディエリア属フィコシアニン)である。当該組成物は、塩基性、中性又は酸性pHを有することができる。
【0063】
好ましくは、当該組成物は、酸性組成物、すなわち、4.0未満、好ましくは2.0~4.0のpHを有する組成物である。
技術は本明細書中に記載される特徴の全ての考えられる組み合わせに関し、特許請求の範囲中に存在する特徴の組み合わせが特に好ましいことが注記される。したがって、技術に従う組成物に関連する特徴の全ての組み合わせ、技術に従うプロセスに関連する特徴の全ての組み合わせ及び技術に従う組成物に関連する特徴の全ての組み合わせ並びに技術に従うプロセスに関連する特徴が本明細書中に記載されることが理解されるであろう。
本技術の利点のうちの1つは、以下の実施例において見て取ることができる通り、酸性pH耐性フィコシアニンにより提供される着色が経時的により安定であるという事実に存在する。
本技術の他の態様及び特徴は、実施例及び図面を読み取ることから明らかになるであろう。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
ガルディエリア・スルフラリア由来フィコシアニンの生成
株:ガルディエリア・スルフラリア(シアニジウム・カルダリウムとも称される)UTEX#2919。バッチ培養培地:30g/Lグリセロール、8g/L (NH4)2SO4、1g/L KH2PO4、716mg/L MgSO4、44mg/L CaCl2、3mL/LのFe-EDTAストック溶液(6.9g/L FeSO4及び9.3g/L EDTA-Na2)及び4mL/Lの微量金属溶液(3.09g/L EDTA-Na2;0.080g/L CuSO4,5H2O;2.860g/L H3BO3;1.820g/L MnCl2;0.220g/L ZnSO4,7H2O)。
【0065】
培養条件:参照により本明細書中に組み入れられる特許国際公開第2020161280号に記載される通り、フェドバッチ様式でコンピュータ制御自動化システムを用いて、1m3有効体積反応器において、培養が行われる。フィード培地に関して、炭素源の量は、培養の標的とされる乾燥質量に従って調整される。培地の全ての他の要素は、実施例中に規定されるバッチ培地に対して用いられる割合を考慮しながら添加される。培養pHは、塩基(14%アンモニア溶液(wNH3/w))及び/又は酸(4N硫酸溶液)を添加することにより調節される。培養温度は37℃に設定される。細胞生育の追跡は800nmでの吸光度を測定することにより異なる時点で行われ、乾燥質量の測定はろ過により行われる。生育の終了時での培養の性能特性は、以下の表1にまとめられる。
【0066】
【表1】
乾燥物質1グラム当たりの細胞内フィコシアニン含有量の測定を、Modesteら、Toxicology Research and Applications VOL. 3, 1 - 13, 2019による抽出を用いて行い、Tris-Clバッファーによってリン酸バッファーを置き換えて、Yoshikawa and Beal, JOURNAL OF AOAC INTERNATIONAL VOL. 91, NO. 3, 2008により記載される方法を用いて測定した。
【0067】
(実施例2)
フィコシアニンの抽出
株ガルディエリア・スルフラリア(UTEX#2919)及び/又はシアニジオシゾン・メロラエ(ACUF199)を、実施例1の条件下で培養した。続いて、フィコシアニンを、両方とも参照により本明細書中に組み入れられる、国際公開第2020/161280号及び同第2018/17833号に記載されるプロトコールに従って抽出した。対象となるフィコシアニンに加えて他の水溶性タンパク質を含む抽出物(「フィコシアニン抽出物」又は「粗抽出物」とも称される)を取得した。フィコシアニン抽出物は、用いられる抽出及び/又は精製の方法に応じて、数種類の考えられる品質を有し得る。例えば、粗抽出物は、精製抽出物中で見出されるものよりも多量のフィコシアニン以外の水溶性タンパク質を含有するであろう。純度指数は従来、総タンパク質レベルを提示する芳香族アミノ酸の特異的吸光度である280nmでのものに対する618nm(フィコシアニンの特異的吸光度)での溶液の吸光度の比率を算出することにより表される。この比率が低い程、溶液中のフィコシアニン以外のタンパク質の量が多い。粗抽出物を、Spectrum(登録商標)LabsからのKrosFlo(登録商標)接線流ろ過システムを用いて精製した。表2は、精製前後でのフィコシアニン抽出物の純度指数測定を示す。
【0068】
【0069】
(実施例3)
飲料中での4時間にわたるフィコシアニンの安定性
実施例1及び2に概要が示される通りのガルディエリア属由来の精製されたフィコシアニン抽出物を、異なる濃度のガルディエリア属抽出物(約25%フィコシアニンを含有するガルディエリア属抽出物)が飲料の総質量の0.4%(すなわち、0.10%フィコシアニン)、0.2%(すなわち、0.05%フィコシアニン)、及び0.1%(すなわち、0.025%フィコシアニン)の量で添加された飲料モデル(水、7%スクロース、クエン酸pH3)中での安定性試験(43℃で4時間)を行うために用いた。
陰性対照(4℃で維持)と43℃処理サンプルとの間でのdE CMC値を用いて色差を測定して、安定性を評価した。モデル飲料を、3種類の異なるガルディエリア属抽出物濃度:0.1%、0.2%、及び0.4%で、すなわち、0.03質量%、0.06質量%及び0.10質量%のフィコシアニンを7質量%グラニュー糖と併せて調製し、且つ50%クエン酸溶液を用いてpH3.0へと調整した。サンプルを、4時間にわたって43℃オーブン中に置き、測色計上で測定してdE CMC値を取得した。dE CMCが2超である場合、色差はヒトの目により検出可能である。
【0070】
この実験の結果は
図1において提示され、視覚的比較のために熱処理後に0.1%へと希釈された全3種類の濃度を示す。左端の飲料は0.1%w/wガルディエリア属抽出物であり、熱処理後に1.9の平均dE CMCを有した。中央の飲料は0.2%w/wガルディエリア属抽出物であり、熱処理後に5.475の平均dE CMCを有した。右端の飲料は0.4%w/wガルディエリア属抽出物であり、熱処理後に16.45の平均dE CMCを有した。これらの結果は、組成物中により多くのフィコシアニンが存在する程、生成物及び/又は着色の安定性が低いことを示す。
【0071】
(実施例4)
飲料の第1シリーズにおける8週間にわたるフィコシアニンの安定性
モデル飲料を、8週間の安定性に関して試験した。モデル飲料は、表3に提示される通りに調合した。表4は、示されるモデル飲料に関する電解質の含有量を示し、表5は、示されるモデル飲料に関する電解質混合物配合を示す。ガルディエリア属抽出物は、約30%フィコシアニンを含有する。
【0072】
【0073】
【0074】
【表5】
参照される飲料を、75℃で30秒間、HTST殺菌(BottomLine殺菌機、Advantage Engineering)を用いて殺菌し、続いて、氷浴中で冷却した。冷却後、飲料を、4℃(これは対照として機能した)、暗所における32℃、暗所及び明所における25℃を含む様々な温度で保存した。飲料を観察のために取り出し、8週間で撮影した。
図2A及び
図2Bは、0.2%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料及び電解質飲料に対する安定性試験の結果を示す。0.2%でのガルディエリア属(Galderia)を含む飲料保存中の顕著な変化。保存中の色相角における減少は、青色から緑色への色相のシフトを示し、したがって、青色は保存時間が増加するにつれて緑色のニュアンスを示すこと、及びより高い保存温度は緑色へのより大きなシフトを生じることを注記することができる。
【0075】
(実施例5)
飲料の第2シリーズにおける8週間にわたるフィコシアニンの安定性
モデル飲料を、8週間の安定性に関して試験した。モデル飲料は、表6に提示される通りに調合した。表7は、示されるモデル飲料に関する電解質混合物配合を示す。ガルディエリア属抽出物は、約30%フィコシアニンを含有する。
【0076】
【0077】
【表7】
図3A及び
図3Bは、0.2%及び0.4%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料に対する安定性試験の結果を示す。ビタミンCの添加は、ビタミンC添加なしと比較して、暗色化(L
*値における減少)を引き起こす。ビタミンCを含むものとビタミンCを含まないものとの間での明らかな色相の差異は、暗色化作用に起因すると考えられる。ビタミンCの添加は、ガルディエリア属フィコシアニンに基づく色相に対する若干の保護的作用を示す。
【0078】
(実施例6)
ビタミンCの非存在下での飲料における4週間にわたるフィコシアニンの安定性
ビタミンCの非存在下での飲料におけるフィコシアニンの安定性を評価した。モデル飲料は、表8に提示される通りに調合した。上記の表7は、示されるモデル飲料に関する電解質混合物配合を示す。ガルディエリア属抽出物は、約30%フィコシアニンを含有する。
【表8】
【0079】
参照される飲料を、75℃で30秒間、HTST殺菌(BottomLine殺菌機、Advantage Engineering)を用いて殺菌し、続いて、氷浴中で冷却した。冷却後、飲料を、4℃(これは対照として機能した)、暗所における32℃、暗所及び明所における25℃を含む様々な温度で保存した。飲料を観察のために取り出し、4週間で撮影した。
図4A及び
図4Bは、0.01%及び0.02%ガルディエリア属抽出物を含むモデル飲料に対する安定性試験の結果を示す。色相角は、0.02%及び0.01%ガルディエリア属に関して4週間後に全ての保存条件に対して略一定のままであり、言い換えれば、ガルディエリア属が0.01%及び0.02%の濃度で用いられた場合、飲料の色における顕著な変化は観察されなかった。3未満のdE CMC値では、色変化は辛うじて可視的であった。不安定性を生じるメカニズムは本当には分かっていないが、酸pHに関連付けられる。pHが酸性である程、フィコシアニンは不安定である。
【0080】
(実施例7)
λ-カラギーナンと組み合わせたガルディエリア属抽出物の安定性
モデル飲料におけるガルディエリア属抽出物の安定性に対するλ-カラギーナンの作用を評価した。モデル飲料(対照)を、脱イオン水中へとグラニュー糖12質量%、及び0.05%のガルディエリア属抽出物粉末(ガルディエリア属抽出物は約30%フィコシアニンを含有する)、すなわち、飲料の総質量と比較して0.015%のフィコシアニン、又は0.01%のガルディエリア属抽出物粉末、すなわち、飲料の総質量と比較して0.003%のフィコシアニンを溶解することにより、作製した。λ-カラギーナン粉末を、1.5:1のフィコシアニン:カラギーナン比を得るために、異なる濃度でモデル飲料へと添加した。続いて、飲料のpHを、50%クエン酸を用いて3へと調整した。調製物を、瞬間殺菌を通した色変化に関して試験した。モデル飲料及びカラギーナン含有飲料を20mLシンチレーションバイアルに入れ、80℃水浴中に4分間浸漬した。続いて、バイアルを(where)直ちに氷水中に浸漬し、その後、測色計上で内容物を測定した。各飲料バイアルを80℃浴中に4分間置き、続いて、氷浴中に4分間置いて、HTST殺菌をシミュレーションした。続いて、dE CMCを測定し、退色を決定した。dE CMCが2超である場合、可視範囲内である。酸性飲料中のλ-カラギーナンの存在は、より良好な熱安定性及び青色1号に類似する色相を生じた。
【0081】
図5及び
図6は、瞬間殺菌に起因して生じる退色を示す。各写真は、左側の未加熱バイアル及び右側の加熱バイアルを有する。ガルディエリア属フィコシアニン:カラギーナン写真(右側)よりも大きな退色が、対照写真(左側)に対して見て取れる。このことは、λ-カラギーナンが、ガルディエリア属の安定化及び加熱条件における色の保護を助けることを確認する。ガルディエリア属0.05%モデル飲料対照(左側)はHTST殺菌後に5.0のdE CMCを有し、1.5:1比率(0.0015%ガルディエリア属フィコシアニン:0.01%カラギーナン)を示すガルディエリア属:カラギーナン(右側)はHTST殺菌後に3.4のdE CMCを有する。これらの結果は、より高濃度のガルディエリア属がより安定性が低い生成物をもたらすこと、及びまたλ-カラギーナンが熱処理中にフィコシアニンに対して保護的作用を有することを示す。
【0082】
図7は、市販の飲料Gatorade(登録商標)及びPowerade(登録商標)に対するガルディエリア属フィコシアニン:カラギーナン(1.5:1)含有飲料の比較を示す(dE CMC 1.99)。左側のバイアルは、青色Poweradeを含有する中央のバイアル及び青色Gatoradeを含有する右側のバイアルと比較して、1.5:1比率(0.05%ガルディエリア属抽出物、0.025%カラギーナン)でのガルディエリア属フィコシアニン:カラギーナンモデル飲料を示す。ガルディエリア属飲料とPowerade及びGatorade飲料との間で測定されたdE CMCは、1.99である。これは可視範囲内である。この低いdeCMC値は、青色1号含有飲料に対するガルディエリア属フィコシアニン:カラギーナン(1.5:1)飲料の色の一致を示す。
【0083】
(実施例8)
瞬間殺菌に際した異なる比率のフィコシアニン:カラギーナンの安定性
モデル飲料(対照)を、脱イオン水中へとグラニュー糖12質量%及び様々な濃度の抽出物粉末を溶解し、50%クエン酸溶液を用いてpHを3.0へと調整することにより、作製した。試験飲料は、異なる濃度でモデル飲料へとλ-カラギーナン粉末を添加し、続いて、50%クエン酸を用いて3.0のpHへと飲料をさらに調整することにより、調製した。適用されたフィコシアニン及びカラギーナンの濃度は、下記の表9に提示される。
【0084】
【表9】
調製物を、瞬間殺菌を通した色変化に関して試験した。モデル飲料及びカラギーナン含有飲料を20mLシンチレーションバイアルに入れ、80℃水浴中に4分間浸漬した。続いて、バイアルを(where)直ちに氷水中に浸漬し、その後、測色計上で内容物を測定した。
図8は、異なる比率のガルディエリア属フィコシアニン:λ-カラギーナンでの飲料のHTST殺菌を示す。2未満のdE CMC値が0.3:1、及び0.6:1の比率で見られ、このことは、ガルディエリア属:λ-カラギーナンの理想的な比率が約0.6:1~約0.3:1であることを示す。
【0085】
(実施例9)
瞬間殺菌に際したλ-カラギーナンと組み合わせたガルディエリア属抽出物の安定性
カラギーナンを含有しないモデル飲料(対照)を、脱イオン水中へとグラニュー糖を溶解させ、0.05%濃度でのガルディエリア属粉末、すなわち、組成物の総質量と比較して0.015%のフィコシアニンを添加し、且つ50%クエン酸溶液を用いて組成物のpHを3.0へと調整することにより調製した。試験飲料は、ガルディエリア属粉末とλ-カラギーナンとを5:1比率で混合し、脱イオン水へと12質量%を達成するためにグラニュー糖を溶解させることにより作製した。続いて、50%クエン酸を用いてpHを3.0へと調整した。調製物を、瞬間殺菌を通した色変化に関して試験した。モデル飲料及びカラギーナン含有飲料を20mLシンチレーションバイアルに入れ、80℃水浴中に4分間浸漬した。続いて、バイアルを(where)直ちに氷水中に浸漬し、その後、測色計上で内容物を測定した。表10は、dE CMC結果を提供する。結果は、モデル飲料カラギーナンが、熱処理中に色に対する保護的作用を有したことを示す。カラギーナンを含まないモデル飲料は4.37の平均dE CMCを有し、これは左側の写真において見て取れる通りに可視範囲の外側であり、カラギーナンを含有する飲料は1.225の平均dE CMCを有し、このことは左側の写真において見て取れる通りに可視範囲内であることを示す。このことは、熱処理下でのフィコシアニン飲料におけるλ-カラギーナンの保護的作用をさらに証明する。
【0086】
【0087】
(実施例10)
飲料における使用のための緑色濃縮物の調製
ガルディエリア属抽出物を含む飲料における使用のために、緑色濃縮物を調製した。飲料を、以下の通りに調製した:飲料の総質量に対して1質量%ガルディエリア属(Galderia)抽出物(粉末形態、0.30質量%のフィコシアニン)を、DI水中に溶解し、50%クエン酸を用いてpH3.0へと調整し、4時間にわたって75℃浴中に入れて、緑色液体を得た。続いて、この緑色液体を、12%糖と共に2.5%濃度でモデル飲料系に添加した。
実験:加速保存寿命安定性に関して、43℃オーブン中で緑色飲料の安定性を試験する。緑色飲料を43℃オーブン中に置き、3及び4日間後に試験した。表11は、加速保存寿命条件における緑色飲料を示す。43℃オーブン中での3及び4日間後、緑色飲料は、それぞれ3.22及び4.07のdE CMCを伴って、可視範囲の外側であった。一部の例では、組成物が緑色シフトを受ける後に、カラギーナンを組成物へと添加することができるであろう。
【0088】
【0089】
(実施例10bis)
ガルディエリア属フィコシアニン及びビタミンCを用いて調製された緑色飲料の安定性
緑色ガルディエリア属濃縮物は、以下の通りに調製される:
1.1%のガルディエリア属粉末を脱イオン水内に希釈する;
2.クエン酸を用いてpHを3.0へと調整する;
3.ステップ2で得られた組成物を、4時間にわたって75℃水浴中で加熱する。
続いて、数種類のサンプルが、以下を含有するように既に取得された緑色抽出物を用いて調製される:
- 12質量%の結晶性スクロース;並びに
- 0.1質量%及び0.2質量%の緑色ガルディエリア属濃縮物又は0.02質量%の粉末ガルディエリア属青色抽出物;並びに
- 任意に、300ppmのビタミンC。
標準的な青色ガルディエリア属抽出物と緑色ガルディエリア属抽出物との間で得られた色相を、表12に示す。
【0090】
【表12】
各サンプルが、Suntest XLS
+において2時間の光処理の前後で、ColorQuest測色計上でdE CMCに関して試験される。光処理を受けたサンプルに関するdE CMCを、
図11及び
図12に提示する。結果は、ビタミンCが光処理における保護的作用を有したことを示す。
【0091】
(実施例10ter)
ガルディエリア属フィコシアニンを用いて調製された緑色飲料の安定性
緑色ガルディエリア属濃縮物が、実施例10bisにおいて既に記載された通りに調製される。続いて、数種類のサンプルが、以下を含有するように既に取得された緑色抽出物を用いて調製される:
- 12質量%の結晶性スクロース;並びに
- 0.1質量%及び0.2質量%の緑色ガルディエリア属濃縮物又は0.02質量%の粉末ガルディエリア属青色抽出物。各サンプルが、以下の処理の前後で、ColorQuest測色計上でdE CMCに関して試験される:
HTST殺菌(80℃、5分間);光処理:Suntest XLS+において2時間;及び
加速熱安定性(4日間、40℃オーブン)。
【0092】
HTSTを受けたサンプルに関するdE CMCを、
図9及び
図10に提示する。これらの結果に鑑みて、緑色飲料は、青色のもの(対照)よりもHTSTにおいて安定である。光処理を受けたサンプルに関するdE CMCを、
図11及び
図12に提示する。結果は、緑色飲料が、青色のもの(対照)よりも光において安定であることを示す。加速安定性処理を受けたサンプルに関するdE CMCを、
図13及び
図14に提示する。飲料系における比較的低濃度の緑色は、青色対照飲料よりも安定であることを証明する。使用率と加速熱安定性との間に反比例関係が見られる。上記に鑑みて、緑色ガルディエリア属濃縮物飲料は、熱及び光の下で安定である。
【0093】
(実施例11)
異なるpH下でのλ-カラギーナンと組み合わせた様々なフィコシアニン抽出物の安定性
12%糖を用いて飲料を作製し、50%クエン酸溶液を用いてpHを調整した。色含有量は、0.06%のガルディエリア属及びスピルリナ抽出物、すなわち、飲料の総質量と比較して0.018質量%のフィコシアニンであり、λ-カラギーナンを0.01%及び0.06%で添加した。「モデル」又は「対照」飲料は、添加されたカラギーナンを有しない。「そのまま」の飲料は、クエン酸を添加せずに調製された飲料である。適用されたフィコシアニン及びカラギーナンの個別の濃度は、下記の表13に提示される。
【0094】
【表13】
調製物を、HTST殺菌を通した色変化に関して試験した。モデル飲料及びカラギーナン含有飲料を20mLシンチレーションバイアルに入れ、80℃水浴中に4分間浸漬した。
以下の
図15A~
図18Bは、熱処理前の様々なpHレベルでのカラギーナン飲料を示す。ガルディエリア属及びスピルリナの両方が、pHが低下するにつれてカラギーナン系において緑色になり始めるが、ガルディエリア属カラギーナン飲料とスピルリナカラギーナン飲料との間で色調は異なり、ガルディエリア属は、スピルリナのものよりも黄色の色調を有する。熱処理の前でも、スピルリナ対照飲料はpH3.5未満で沈殿し、濁っていたが、ガルディエリア属対照は透明であり、沈殿しなかった。
【0095】
dE CMCをColorQuest測色計上で測定し、
図19において報告した。これらの結果は、カラギーナンを含有する飲料が、カラギーナンを含有しない対照飲料よりも熱安定であることを示す。しかしながら、スピルリナ及びガルディエリア属飲料は、様々な出発pHレベルで、カラギーナンの存在下において異なる挙動を示す。例えば、pH3.2では、0.3:1ガルディエリア属飲料はスピルリナ飲料よりも安定であり、pH4.3の「そのまま」のサンプルではその逆が当てはまる。
これらの結果は、ガルディエリア属抽出物及びカラギーナンの両方を含有する飲料が、スピルリナ抽出物及びカラギーナンの両方を含有する飲料よりも熱安定であることを示す。
【0096】
さらに、pHが3.0超且つ4.0以下である場合、ガルディエリア属由来フィコシアニン及びカラギーナンを含む酸性組成物は、スピルリナ由来フィコシアニンを含むものよりも熱処理下で安定でさえあると結論付けることができる。
【0097】
(実施例12)
瞬間殺菌に際した異なる比率のフィコシアニン:カラギーナンの安定性
12%糖を用いて飲料を作製し、50%クエン酸溶液を用いてpHを3.0及び4.0へと調整した。色含有量は、0.06%のガルディエリア属及びスピルリナ抽出物、すなわち、飲料の総質量と比較して0.018質量%のフィコシアニンであり、λ-カラギーナンを0.01%及び0.06%で添加した。適用されたフィコシアニン及びカラギーナンの個別の濃度は、既に提示された表13と同じである。「モデル」又は「対照」飲料は、添加されたカラギーナンを有しない。
調製物を、HTST殺菌を通した色変化に関して試験した。モデル飲料及びカラギーナン含有飲料を20mLシンチレーションバイアルに入れ、80℃水浴中に4分間浸漬した。熱処理前には、カラギーナンを含むガルディエリア属ベースの飲料とスピルリナベースの飲料との間で色調が異なる。ガルディエリア属のものはスピルリナのものよりも黄色の色調を有する。dE CMCをColorQuest測色計上で測定し、
図20において報告した。
図20は、pH3.0及び4.0でのカラギーナンが添加されたガルディエリア属飲料とスピルリナ飲料との比較を示す。結果は、スピルリナ-カラギーナン含有飲料は、pH4.0で、同じpHでのガルディエリア属-カラギーナン飲料とは異なる挙動を示すことをさらに証明する。これらの結果は、ガルディエリア属抽出物及びカラギーナンの両方を含有する飲料が、カラギーナンを含有しない対照飲料よりも、且つスピルリナ抽出物及びカラギーナンの両方を含有する飲料よりも熱安定であることを示す。さらに、pHが3.0超且つ4.0以下である場合、ガルディエリア属由来フィコシアニン及びカラギーナンを含む酸性組成物は、スピルリナ由来フィコシアニンを含むものよりも熱処理下で安定でさえあると結論付けることができる。
【0098】
配列情報:
配列番号1:YP_009051179.1=
1 mktpiteaia aadnqgrfls ntelqavngr yqraaaslea arsltsnaqr lingaaqavy
61 skfpytsqmp gpqyassavg kakcardigy ylrmvtyclv vggtgpmdey liagleeinr
121 tfdlspswyv ealnyvksnh glsgqaanea ntyidyaina ls
配列番号2:YP_009051180.1=
1 mldafakvva qadargefls ntqldalskm vsegnkrldv vnritsnasa ivtnaaralf
61 seqpqliqpg gnaytnrrma aclrdmeiil ryvsyaiiag dssvlddrcl nglretyqal
121 gvpgasvavg vekmkdsaia iandpsgitt gdcsalmaev gtyfdraata vq
配列番号3:YP_009051103.1=
1 msivtksivn adaearylsp geldriksfv lsgqrrlria qiltdnreri vkqagqqlfq
61 qrpdivspgg naygeemtat clrdldyylr lvtygvvagd ispieeiglv gvkemynslg
121 tpisavaegi kamknvacsl lsgddsaeag fyfdytigam q
配列番号4:YP_009051104.1=
1 mqdaitavin tadvqgkyld nssieklkgy fqtgelrvra aatiaanaag iikdavaksl
61 lysditrpgg nmyttrryaa cirdldyylr yatysmlagd psildervln glketynslg
121 vpigatiqsi qamkevtssl vgseagkemg iyfdyicsgl s
【0099】
本明細書中で引用される全ての参考文献、及びそれらの参考文献は、追加の若しくは代替的な詳細、特徴、及び/又は技術的背景の教示に関して適切である場合、それらの全体で本明細書中に参照により組み入れられる。
本開示が詳細に示され、且つ特定の実施形態を参照して記載されてきたが、上記で開示されたもの並びに他の特徴及び機能、又はそれらの代替の変形を、多数の他の異なる系又は適用へと望ましく組み合わせることができることが理解されるであろう。また、その様々な現在予見できないか若しくは予期せぬ代替物、変法、変形又はその中での改善を、その後に当業者により生成することができ、それらもまた以下の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】