(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】生分解性高分子微小球及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/06 20060101AFI20240829BHJP
C08G 63/81 20060101ALI20240829BHJP
C08G 63/82 20060101ALI20240829BHJP
C08G 63/88 20060101ALI20240829BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08G63/06
C08G63/81
C08G63/82
C08G63/88
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513319
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2022113877
(87)【国際公開番号】W WO2023025084
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110969905.X
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524069891
【氏名又は名称】蕪湖微求新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHU WEIQIU NEW MATERIAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3D Printing Industrial Park, Fanchang Economic Development Zone, Fanchang District, Wuhu, Anhui 241200, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】楊 桂生
(72)【発明者】
【氏名】趙 興科
(72)【発明者】
【氏名】李 宏林
【テーマコード(参考)】
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB04
4J029AB05
4J029AB07
4J029AC01
4J029AC02
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4J200DA22
4J200EA17
4J200EA19
(57)【要約】
本発明は、生分解性高分子微小球及びその製造方法を提供する。前記製造方法は、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーと触媒とを含む混合溶液中で前記生分解性高分子モノマーを重合させる工程を含む。本発明では、モノマーと水溶性ポリマーとを混合して溶液を形成し、モノマーのin situ重合後に相分離が発生して生分解性高分子微小球を得るので、生産過程は簡単で制御しやすく、有機溶媒が必要なく、生産過程が環境に優しく、大規模生産に適する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性高分子を含み、粒径が≦20μmであることを特徴とする、生分解性高分子微小球。
【請求項2】
前記生分解性高分子は、脂肪族ポリエステルであり、例えばポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、ラクチド-カプロラクトン共重合体、ラクチド-グリコライド共重合体、カプロラクトン-グリコライド共重合体、又はラクチド-カプロラクトン-グリコライド共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の生分解性高分子微小球。
【請求項3】
前記生分解性高分子微小球の粒径が0.5~15μmであり、好ましくは、粒径が1~6μmである生分解性高分子微小球の数が前記生分解性高分子微小球の総数の80%以上を占めることを特徴とする、請求項1に記載の生分解性高分子微小球。
【請求項4】
さらに、酸化防止剤を含み、好ましくは、前記酸化防止剤は、酸化防止剤168、酸化防止剤1010、酸化防止剤1098、酸化防止剤626、及び酸化防止剤THP-24からなる群から選択される1種以上であり、好ましくは、前記生分解性高分子微小球において、前記生分解性高分子と前記酸化防止剤との質量比は100:(0.1~1)であることを特徴とする、請求項1に記載の生分解性高分子微小球。
【請求項5】
さらに、機能材料を含み、前記機能材料が、無機機能粉体及び薬物からなる群から選択されることが好ましく、前記無機機能粉体が、グラフェン、黒鉛、カーボンナノチューブ、及び磁性ナノ粒子からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、前記薬物が、エリスロマイシン、イブプロフェン、クリンダマイシン、アモキシシリン、セファラジン、アセチルヘリカルマイシン、アジスマイシン、及びオリザノールからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、好ましくは、前記生分解性高分子微小球において、前記生分解性高分子と前記機能材料との質量比は100:(1~20)であることを特徴とする、請求項1に記載の生分解性高分子微小球。
【請求項6】
生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーと触媒とを含む混合溶液中で前記生分解性高分子モノマーを重合させる工程を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の生分解性高分子微小球の製造方法。
【請求項7】
前記生分解性高分子モノマーは、脂肪族ポリエステルのモノマーから選択され、好ましくは、脂肪族ラクチド及び脂肪族ラクトンからなる群から選択される1種以上であり、例えばラクチド、カプロラクトン、及びグリコライドからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびメチルセルロースからなる群から選択される1種以上であり、及び/又は、前記混合溶液において、前記生分解高分子モノマーと前記水溶性ポリマーとの質量比は100:(20~300)であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒は、金属、ルイス酸、ルイス塩基、有機金属化合物、及び金属塩類からなる群から選択され、例えばFe、Cu、Zn、Co、アルカリ金属塩、シッフ塩基、ジブチルマグネシウム、アルミニウムアルコキシド、Ti[OCH(CH
3)
2]
4、Sn(Oct)
2、SnCl
4、Sn(C
6H
5)
4、Sn(Oct)
2/CH
3(CH
2)
11OH、及びSn(Oct)
2/P(C
6H
5)
3からなる群から選択される1種以上、および/または、
前記混合溶液において、前記生分解高分子モノマーと前記触媒との質量比は100:(0.1~2)であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記混合溶液は、さらに、酸化防止剤及び/又は機能材料を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記重合の反応温度は、90~180℃であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
さらに、次の工程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
S1、液体モノマーの準備:常温下で液体である生分解性高分子モノマーを準備するか、常温下で固体である生分解性高分子モノマーを加熱溶融して液体モノマーを得る;
S2、混合溶液の調製:液体モノマーに水溶性ポリマーを添加し、水溶性ポリマーを液体モノマーに完全に溶解させて混合溶液を得る;
S3、重合:混合溶液に触媒を添加し、反応温度で静置してモノマーを重合させて生分解性高分子微小球と水溶性ポリマーとの混合体を得る;
S4、後処理:混合体を後処理して生分解性高分子微小球を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性高分子材料の技術分野に関し、特に生分解性高分子微小球及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性高分子微小球は、多くの分野で広く応用されており、例えば、ポリ乳酸微小球は薬物制御放出ベクター、遺伝子ベクター、及びポリペプチドと蛋白類薬物のベクターとして免疫学、遺伝子治療、腫瘍治療、眼科など多くの医学分野に広く応用されており、また、高分子微小球は、3D印刷、粉体塗料、インク添加剤、化粧品添加剤などの分野にも用いられ、これも分解性微小球の潜在的な用途である。生分解性高分子微小球の先行技術(例えば、特許出願CN 001281164.X、CN 20110462504.1及びCN 20191103460. X)の共通の特徴は、高分子微小球の製造過程における有機溶媒の大量使用による環境汚染及び危害である。
そのため、本分野では、生産過程で有機溶媒を必要としない生分解性高分子微小球及びその製造方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術に存在する問題を解決するために、本発明は、生分解性高分子微小球及びその製造方法を提供する。本発明では、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーとを混合して溶液を形成し、モノマーのin situ重合後に生分解性高分子/水溶性ポリマー複合材料を得た時に両者に既に相分離が発生し、水で水溶性ポリマーを洗浄して生分解性高分子微小球を得るので、生産過程は簡単で制御しやすく、有機溶媒が必要なく、生産過程が環境に優しく、大規模生産に適する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
具体的には、本発明の一態様は、生分解性高分子を含み、粒径が≦20μmである生分解性高分子微小球を提供する。
【0005】
1つ以上の実施形態では、前記生分解性高分子は、脂肪族ポリエステルであり、例えばポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、ラクチド-カプロラクトン共重合体、ラクチド-グリコライド共重合体、カプロラクトン-グリコライド共重合体、又はラクチド-カプロラクトン-グリコライド共重合体である。
【0006】
1つ以上の実施形態では、前記生分解性高分子微小球は、粒径が0.5~15μmである。
【0007】
1つ以上の実施形態では、粒径が1~6μmである生分解性高分子微小球の数が前記生分解性高分子微小球の総数の80%以上を占める。
【0008】
1つ以上の実施形態では、前記生分解性高分子微小球は、さらに、酸化防止剤を含む。
【0009】
1つ以上の実施形態では、前記酸化防止剤は、酸化防止剤168(トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)、酸化防止剤1010(テトラキス[β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]ペンタエリスリトールエステル)、酸化防止剤1098(N,N’-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヘキサンジアミン)、酸化防止剤626(ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)及び酸化防止剤THP-24(ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)からなる群から選択される1種以上である。
【0010】
1つ以上の実施形態では、前記生分解性高分子微小球において、前記生分解性高分子と前記酸化防止剤との質量比は100:(0.1~1)である。
【0011】
1つ以上の実施形態では、前記生分解性高分子微小球は、さらに、機能材料を含む。
【0012】
1つ以上の実施形態において、前記機能材料は、無機機能粉体及び薬物からなる群から選択される。
【0013】
1つ以上の実施形態では、前記無機機能粉体が、グラフェン、黒鉛、カーボンナノチューブ、及び磁性ナノ粒子からなる群から選択される1種以上である。
【0014】
1つ以上の実施形態では、前記機能性材料は、薬物であり、例えば、エリスロマイシン、イブプロフェン、クリンダマイシン、アモキシシリン、セファラジン、アセチルヘリカルマイシン、アジスマイシン、オリザノールなどである。
【0015】
1つ以上の実施形態では、前記生分解性高分子微小球において、前記生分解性高分子と前記機能材料との質量比は100:(1~20)である。
【0016】
本発明の別の態様は、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーと触媒とを含む混合溶液中で前記生分解性高分子モノマーを重合させる工程を含む生分解性高分子微小球の製造方法を提供する。前記生分解性高分子微小球は、好ましく本文のいずれかの実施形態に記載される生分解性高分子微小球である。
【0017】
1つ以上の実施形態では、前記生分解性高分子モノマーは、脂肪族ポリエステルのモノマーであり、好ましくは、脂肪族ラクチド及び脂肪族ラクトンからなる群から選択される1種以上であり、例えばラクチド、カプロラクトン、及びグリコライドからなる群から選択される1種以上である。
【0018】
1つ以上の実施形態において、前記水溶性ポリマーは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびメチルセルロースからなる群から選択される1種以上である。
【0019】
1つ以上の実施形態では、前記混合溶液において、前記生分解高分子モノマーと前記水溶性ポリマーとの質量比は100:(20~300)である。
1つ以上の実施形態では、前記触媒は、金属、ルイス酸、ルイス塩基、有機金属化合物、及び金属塩類からなる群から選択され、例えばFe、Cu、Zn、Co、アルカリ金属塩、シッフ塩基、ジブチルマグネシウム、アルミニウムアルコキシド、Ti[OCH(CH3)2]4、Sn(Oct)2、SnCl4、Sn(C6H5)4、Sn(Oct)2/CH3(CH2)11OH、及びSn(Oct)2/P(C6H5)3からなる群から選択される1種以上ある。
1つ以上の実施形態では、前記混合溶液において、前記生分解高分子モノマーと前記触媒との質量比は100:(0.1~2)である。
1つ以上の実施形態では、前記混合溶液は、さらに、酸化防止剤及び/又は機能材料を含む。
1つ以上の実施形態では、前記重合の反応温度は、90~180℃である。
1つ以上の実施形態では、前記方法は、さらに、次の工程を含む。
S1、液体モノマーの準備:常温下で液体である生分解性高分子モノマーを準備するか、または常温下で固体である生分解性高分子モノマーを加熱溶融して液体モノマーを得る;
S2、混合溶液の調製:液体モノマーに水溶性ポリマーを添加し、水溶性ポリマーを液体モノマーに完全に溶解させて混合溶液を得る;
S3、重合:混合溶液に触媒を添加し、反応温度で静置してモノマーを重合させて生分解性高分子微小球と水溶性ポリマーとの混合体を得る;
S4、後処理:混合体を後処理して生分解性高分子微小球を得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例2、3、4及び5で製造されたポリ乳酸微小球の走査電子顕微鏡によるSEM図を示す。
図1において、a、b、c及びdは、それぞれに実施例2、3、4及び5で製造されたポリ乳酸微小球の形態であり、左側は1000倍拡大したSEM図、右側は5000倍拡大したSEM図である。
【
図2】本発明の実施例2、3、4及び5で製造されたポリ乳酸微小球の粒径分布図を示す。
図2において、a、b、c及びdは、それぞれに、実施例2、3、4及び5で製造されたポリ乳酸微小球の粒径分布図を示す。
【
図3】本発明の実施例6で製造されたポリ乳酸微小球のSEM図を示す。
【
図4】本発明の実施例7で製造されたポリ乳酸微小球のSEM図を示す。
【
図5】本発明の実施例8で製造されたポリ乳酸微小球のSEM図を示す。
【
図6】本発明の実施例9で製造されたポリ乳酸微小球のSEM図を示す。
【
図7】本発明の実施例10で製造されたポリカプロラクトン微小球のSEM図を示す。
【
図8】本発明の実施例11で製造されたポリグリコライド微小球のSEM図を示す。
【
図9】本発明の実施例12で製造された磁性L-ラクチドとカプロラクトンとの共重合微小球のSEM図を示す。
【
図10】本発明の実施例6~実施例12で製造された微小球の粒径分布図を示す。
図10において、a、b、c、d、e、f及びgは、それぞれに、実施例6、7、8、9、10、11及び12で製造された微小球の粒径分布図を示す。
【
図11】実施例1及び実施例5で製造されたポリ乳酸微小球及びポロキサマー407のDSC加熱グラフを示す。
【
図12】実施例13、実施例14及び実施例15で製造された、エリスロマイシンを担持したポリ乳酸微小球及びエリスロマイシンの紫外吸収スペクトル図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を説明する。当業者は、本明細書に開示された内容から、本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。この技術に詳しい人なら、本発明の精神及び範疇に背くことなく、本発明の微小球を修飾又は変更して、特定の機能を有する生分解性高分子微小球を得ることができるが、本発明の請求の範囲によってカバーされるべきである。本発明は、さらに、別の異なる具体的な実施形態によって実施または応用することができ、本明細書において各詳細も、異なる観点及び応用に基づいて、本発明の精神から逸脱することなく様々な修飾または変更を行うことができる。なお、衝突しない場合には、本発明の具体的な実施形態及び実施例における特徴を組み合わせてもよい。
本発明の特徴及び効果を当業者に理解させるために、以下、明細書及び特許請求の範囲に記載されている術語及び用語について、一般的に説明及び定義する。特に説明がない限り、本文で使用されているすべての技術および科学上の文語は、当業者が本発明について理解している通常の意味である。衝突がある場合は、本明細書の定義に準拠すべきである。
本明細書で説明および開示の理論またはメカニズムは、正しいか間違っているかにかかわらず、いかなる方法でも本発明の範囲を制限すべきではない。すなわち、本発明の内容は、いかなる特定の理論またはメカニズムにも制限されずに実施できる。
【0022】
本明細書において、「含む」、「含有する」、「有する」及び類似の用語は、「実質に…からなる」及び「…からなる」の意味をカバーする。例えば、本文に「Aは、BとCを含む」と開示されている場合、「Aは、実質にBとCからなる」及び「Aは、BとCからなる」が本文に開示されたと考えられるべきである。
【0023】
本文では、数値範囲またはパーセント範囲の形で定義されているすべての特徴、例えば数値、数量、含有量及び濃度は、簡潔で便利のためだけである。このため、数値範囲またはパーセンテージ範囲の説明は、すべての可能な段階的範囲および範囲内の個別の数値(整数及び分数を含む)をカバーし、且つ具体的に開示したものとみなされるべきである。
本文では、特に説明がない限り、パーセンテージは、質量パーセンテージを指し、割合は、質量パーセンテージを指す。
【0024】
本文では、実施形態または実施形態を説明する際に、これは本発明をこれらの実施形態または実施形態に限定することを意図したものではないと理解されるべきである。逆に、本発明に記載されている方法及び材料のすべての代替物、改良物及び均等物は、いずれも請求の範囲に限定の範囲をカバーできる。
【0025】
本文では、説明を簡潔にするために、各実施形態または実施形態における各技術的特徴の可能なすべての組み合わせについて説明していない。したがって、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、各実施形態または実施例における各技術的特徴は任意の組み合わせを行ってもよく、可能な組み合わせはすべて本明細書に記載の範囲内にあるとみなされるべきである。
【0026】
本発明は、生分解性高分子のモノマーと水溶性ポリマーとを液状混合物(本発明では、混合溶液ともいう)に調製し、モノマーを水溶性ポリマーの存在下で重合させた後に形成される生分解性高分子と水溶性ポリマーに相分離が発生し、生分解性高分子が、析出した時に連続相を形成できずに微小球に成形し、水で水溶性ポリマーを洗浄して生分解性高分子微小球を得るので、有機溶媒が必要なく、環境に優しく、制御可能に生分解性高分子微小球を製造できる、ことを発見した。
【0027】
本発明の生分解性高分子微小球は、生分解性高分子を含む。通常、生分解性高分子の質量は、本発明の生分解性高分子微小球の全質量の60%以上、例えば70%以上、80%以上、90%以上を占める。
【0028】
本発明において、生分解性高分子とは、一定の条件下(例えば一定の湿度、温度、pH及び/又は酸素濃度下)で酵素又は微生物(例えば細菌、カビ、藻類等)の作用下で分子鎖を分解(例えば加水分解)できる高分子を指す。生分解性高分子は、通常、エステル結合(例えば脂肪族エステル結合)、エーテル結合(例えば脂肪族エーテル結合)、アミド基(例えばペプチド結合)、ウレタン結合、窒素リン二重結合(N=P)などからなる群から選択される1種以上の生分解性化学結合を含む。生分解性高分子として、ポリエステル(例えば脂肪族ポリエステル)、ポリエーテル(例えば脂肪族ポリエーテル)、ポリエステルエーテル(例えば、脂肪族ポリエステルエーテル)、ポリアミド(例えば、ポリアミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリホスホンニトリル、ポリウレタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球に含まられる生分解性高分子は、生分解性の脂肪族ポリエステルであり、例えばポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、ラクチド-カプロラクトン共重合体、ラクチド-グリコライド共重合体、カプロラクトン-グリコライド共重合体、又はラクチド-カプロラクトン-グリコライド共重合体などである。
【0029】
本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が通常≦20μmである。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が18μm、15μm、13μm、10μm、9μm、又は8μm以下である。本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が通常≧0.1μm。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が0.2μm、0.5μm、1μm、又は2μm以上である。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が0.5~15μmである。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球において、粒径が1~6μmである生分解性高分子微小球の数が生分解性高分子微小球の総数の80%以上を占める。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球において、粒径は1~6μmである生分解性高分子微小球の数は生分解性高分子微小球の総数の80%以上を占める。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が1~13μmであり、且つ粒径が1~4μmである生分解性高分子微小球の数が微小球の総数の88%以上を占める。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が2~9μmであり、且つ粒径が2~6μmである生分解性高分子微小球の数が微小球の総数の85%以上を占める。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が1~8μmであり、且つ粒径が3~6μmである生分解性高分子微小球の数が微小球の総数の80%以上を占める。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が1~13μmであり、且つ粒径が1~3μmである生分解性高分子微小球の数が微小球の総数の75%以上を占め、粒径が1~6μmである生分解性高分子微小球の数が微小球の総数の80%以上を占める。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、粒径が1~3μmであり、且つ粒径が1~2μmである生分解性高分子微小球の数が微小球の総数の80%以上を占める。
【0031】
いくつかの生分解性高分子(例えばポリ乳酸など)の重合時に温度が比較に高いので、酸化を防止し、より高分子量の生成物を得るために、反応系に適量の酸化防止剤を添加してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、さらに、酸化防止剤を含む。本発明に適用な酸化防止剤は、酸化防止剤168、酸化防止剤1010、酸化防止剤1098、酸化防止剤626、及び酸化防止剤THP-24からなる群から選択される1種以上である。本発明の生分解性高分子微小球が酸化防止剤を含む場合、生分解性高分子微小球において、生分解性高分子と酸化防止剤との質量比は100:(0.1~1)、例えば100:0.2、100:0.5、100:0.6、100:0.7、100:0.8、100:0.9であってもよい。本発明の生分解性高分子微小球は、生分解性高分子微小球が生物医薬分野に応用される場合、酸化防止剤を含まないか、または少量の酸化防止剤、好ましくは生物毒性のない酸化防止剤のみを含むことが好ましい。
いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、さらに、1種以上の特定の機能を備える機能材料を含む。機能材料には、前記酸化防止剤が含まれていない。本発明に適用な機能材料として、免疫学的材料、薬物制御放出材料、磁性材料、導電性材料、薬物、染料、蛍光分子、pH応答材料などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に適用な機能材料は、有機材料、無機材料、または有機-無機複合材料であってもよい。本発明に適用な機能材料は、サイズがナノメートルスケール(1~100 nm)またはサブミクロンスケール(100~1000 nm)のものであってもよい。いくつかの実施形態では、機能材料は、無機機能粉体であり、例えばグラフェン、黒鉛、カーボンナノチューブ、磁性ナノ粒子などである。磁性ナノ粒子の例として、コバルトフェライトナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、機能性材料は、薬物であり、例えばエリスロマイシン、イブプロフェン、クリンダマイシン、アモキシシリン、セファラジン、アセチルヘリカルマイシン、アジスマイシン、オリザノールなどである。本発明の生分解性高分子微小球が機能材料を含む場合、生分解性高分子微小球において、生分解性高分子と機能材料との質量比は100:(1~20)、例えば100:2、100:5、100:10、100:15であってもよい。機能材料と生分解性高分子との質量比を20:100以下に制御することは、微小球の成形に寄与する。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、生分解性高分子と、必要に応じての酸化防止剤と、必要に応じての機能材料とを含む。いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、主に、生分解性高分子と、必要に応じての酸化防止剤と、必要に応じての機能材料とからなり、生分解性高分子と、必要に応じての酸化防止剤と、必要に応じての機能材料との合計質量は、生分解性高分子微小球の総質量の80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または100%を占めてもよい。
【0033】
本発明の生分解性高分子微小球は、微量の触媒残留物を含んでもよい。
【0034】
本発明の生分解性高分子微小球における生分解性高分子に、本文に記載の水溶性ポリマー(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体)がグラフトされた可能性がある。
【0035】
本発明の生分解性高分子微小球の製造方法は、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーと触媒とを含む混合溶液中で生分解性高分子モノマーを重合させる工程を含む。
【0036】
本発明に適用な生分解性高分子モノマーは、本分野で公知の生分解性高分子の製造に有用なモノマーであってもよい。いくつかの実施形態では、生分解性高分子モノマーは、脂肪族ポリエステルのモノマーであり、好ましくは、脂肪族ラクチド及び脂肪族ラクトンからなる群から選択される1種以上であり、例えばラクチド(例えばL-ラクチド)、カプロラクトン、及びグリコライドからなる群から選択される1種以上である。複数の生分解性高分子モノマーを用いる場合、各モノマー間の割合は特に制限されない。
【0037】
本発明において、水溶性ポリマー(water soluble macromolecular、本文では、水溶性ポリマー添加剤とも称される)とは、水に溶解または膨潤して水溶液または分散系を形成できる高分子を指し、その分子量が300g/mol以上である。本発明に適用な水溶性ポリマーとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびメチルセルロースからなる群から選択される1種以上が挙げられる。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびメチルセルロースからなる群から選択される1種以上である。水溶性ポリマーの分子量は、好ましくは300~50000g/mol、例えば1000g/mol、2000g/mol、5000g/mol、10000g/mol、15000g/mol、20000g/mol、25000g/mol、30000g/mol、40000g/molである。本発明に適用なメチルセルロースの粘度は、好ましくは10000~100000mPa・s、例えば20000mPa・s、40000mPa・s、80000mPa・sである。適用なポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体は、ジブロック、トリブロック、およびより多くブロックの共重合体を含み、例えばポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(PEG-b-PPG-b-PEG)である。PEG-b-PG-b-PEGにおいて、PEGブロックの含有量は、50~90 wt%、好ましくは60~80 wt%、例えば70~75 wt%であってもよい。PEG-b-PG-b-PEGの例として、ポロキサマー407が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明で使用される水溶性ポリマーは、分子量5000~20000g/mol、例えば9000~1500g/molのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体(例えばPEG-b-PPG-b-PEG)、または粘度40000~10000mPa・s、例えば80000~10000mPa・sのメチルセルロース、または分子量5000~10000g/mol、例えば7000~9000g/molのポリビニルピロリドン、または分子量5000~1500g/mol、例えば8000~12000g/molのポリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上である。水溶性ポリマーの分子量又は粘度を上記範囲内に制御することは、生分解性高分子モノマーの重合後に相分離が発生して本発明の要件に満たす粒径の微小球を得ることに寄与する。
【0038】
本発明の重合用混合溶液において、生分解高分子モノマーと水溶性ポリマーとの質量比は100:(20~300)、例えば100:20、100:30、100:40、100:50、100:60、100:70、100:80、100:90、100:100、100:150、100:200、100:250、100:300である。水溶性ポリマーの質量割合が大きいほど、製造された生分解性高分子微小球の粒子径は小さくなる。いくつかの実施形態では、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーとの質量比は100:(20~100)である。これらの実施形態では、生分解性高分子微小球の粒径を0.5~15μmであり、且つ粒径が1~6μmである生分解性高分子微小球の数が生分解性高分子微小球の総数の80%以上を占めることに制御できる。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球の製造方法は、さらに、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーとを含む混合溶液を調製した後、この混合溶液に触媒を加えて生分解性高分子モノマーを凝集させることを含む。
【0040】
本発明では、生分解性高分子モノマーが周囲温度、例えば常温(25℃) 下で液体(例えばモノマーとしてカプロラクトン)である実施形態では、例えば周囲温度、常温または加熱条件下で、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーとを均一に混合して混合溶液を得てもよい。例えば、常温下で液状であるモノマーと水溶性ポリマーとを混合した後、20~40分間攪拌して混合溶液を得てもよい。
【0041】
本発明では、生分解性高分子モノマーが周囲温度、例えば常温(25℃) 下で固体であるモノマー(例えばL-ラクチド、グリコライド)を含む実施形態では、重合するための混合溶液の温度は、周囲温度下で固体であるモノマーの融点より低くない。周囲温度下で固体であるモノマーが複数存在する場合、混合溶液の温度は、融点が最も高い固体モノマーの融点より低くない。生分解性高分子モノマーを溶融するように加熱し、好ましくは一定時間(例えば10~20分間)保温して、液体モノマーを得、その後この液体モノマーを水溶性ポリマーと均一に混合して混合溶液を得てもよい。例えば、加熱溶融後の液体モノマーを水溶性ポリマーと混合した後、20~40分間攪拌して混合溶液を得てもよい。
【0042】
生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーとを含む混合溶液は、さらに、機能材料を含んでもよい。通常、触媒を添加する前に、混合溶液に機能材料を導入する。例えば、液体モノマーと水溶性ポリマーとを均一に混合した後、機能材料を加えて続いて均一に混合してもよい。適用な機能材料及びその使用量は前述の通りである。
【0043】
本発明では、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーとを含む混合溶液に触媒を添加した後、生分解性高分子モノマーに開環重合反応が発生する。開環重合は、アニオン、カチオン、または配位開環重合であってもよい。本発明に用いられる触媒は、金属、ルイス酸、ルイス塩基、有機金属化合物、及び金属塩類からなる群から選択され、例えばFe、Cu、Zn、Co、アルカリ金属塩、シッフ塩基、ジブチルマグネシウム、アルミニウムアルコキシド、Ti[OCH(CH3)2]4、Sn(Oct)2、SnCl4、Sn(C6H5)4、Sn(Oct)2/CH3(CH2)11OH、及びSn(Oct)2/P(C6H5)3からなる群から選択される1種以上である。本文では、Sn(Oct)2/CH3(CH2)11OHとは、Sn(Oct)2とCH3(CH2)11OHとの組成物を指し、そのうち、Sn(Oct)2とCH3(CH2)11OHとのモル比が2:1~1:2、例えば1:1であってもよい。本文では、Sn(Oct)2/P(C6H5)3とは、Sn(Oct)2とP(C6H5)3との組成物を指し、そのうち、Sn(Oct)2とP(C6H5)3とのモル比が2:1~1:2、例えば1:1であってもよい。いくつかの実施形態では、触媒は、Ti[OCH(CH3)2]4、Sn(Oct)2、Sn(Oct)2/CH3(CH2)11OH、及びSn(Oct)2/P(C6H5)3からなる群から選択される1種以上である。反応系において、生分解高分子モノマーと触媒との質量比は100:(0.1~2)、例えば100:0.2、100:0.3、100:0.4、100:0.5、100:1であることが好ましい。水溶性ポリマーの活性末端基が触媒の一部を消費するので、水溶性ポリマーの含有量が高い場合、または水溶性ポリマーの分子量が低い場合には、より多くの触媒を添加する必要がある;また、水溶性ポリマーの含有量が低い場合、または水溶性ポリマーの分子量が高い場合には、より低い触媒添加量を選用してもよい。
【0044】
本発明では、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーとを含む混合溶液に触媒を添加するとともに、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。好適な酸化防止剤及びその使用量は前述の通りである。
【0045】
本発明では、重合反応を行う際の反応系の温度は、90~180℃、例えば90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、140℃、150℃、160℃である。生分解性高分子モノマーの種類に応じて適切な反応温度を選択してもよく、例えば、モノマーがL-ラクチドである場合の反応温度は、130~180℃、例えば140~150℃であることが好ましく、モノマーがグリコライドである場合の反応温度は90~130℃、例えば110~120℃であることが好ましく、モノマーがカプロラクトンである場合の反応温度は、110~140℃、例えば120~130℃であることが好ましく、モノマーがL-ラクチドとカプロラクチドである場合の反応温度は、110~140℃、例えば139~140℃であることが好ましい。反応は、通常、静置状態で行い、これは相分離に寄与する。反応時間は、0.5h~24h、例えば1h、1.5h、2h、2.5h、3h、5h、10h、24hであってもよい。反応過程において、反応系は透明で均一な溶液から徐々に乳白色の固体に変化した。反応系が完全に硬化する時点で、反応が終了とみなされてもよい。
【0046】
重合反応が完了した後、生分解性高分子微小球と水溶性ポリマーとを含む生成物系が得られた。本発明の生分解性高分子微小球の製造方法は、さらに、生成物系を後処理し、分離して生分解性高分子微小球を得る工程を含んでもよい。後処理は、例えば、生成物系を周囲温度、例えば常温に下げ、水洗、ろ過、乾燥を含んでもよい。水洗の回数は、例えば5~8回であってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球は、重量部で以下の材料を含む:
生分解性高分子モノマー:100部と、
水溶性ポリマー添加剤:20~300部、例えば20~100部と、
酸化防止剤:0.1~1部、例えば0.5~1部と、
触媒:0.1~2部、例えば0.1~0.5部。
【0048】
なお、本発明の生分解性高分子は、さらに、本発明の生分解性高分子モノマー100重量部に対して、1~20重量部の機能材料を含んでもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球の製造に必要な原料は、重量部で以下の材料を含むか、または重量部で以下の材料からなる:
生分解性高分子モノマー:100部と、
水溶性ポリマー添加剤:20~300部、例えば20~100部と、
酸化防止剤:0.1~1部、例えば0.5~1部と、
触媒:0.1~2部、例えば0.1-0.5部と、
必要に応じての機能材料:1~20部。
【0050】
さらに、生分解性高分子モノマーは、ラクチド、カプロラクトン、グリコライドからなる群から選択される1種以上であり、さらに、ラクチドは、L-ラクチドである。
【0051】
さらに、前記水溶性ポリマー添加剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上である。
【0052】
さらに、前記水溶性ポリマー添加剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上である。
【0053】
さらに、前記酸化防止剤は、酸化防止剤168、酸化防止剤1010、酸化防止剤1098、酸化防止剤626、または酸化防止剤THP-24からなる群から選択される1種以上である。
【0054】
さらに、触媒は、金属、ルイス酸、ルイス塩基、有機金属化合物、及び金属塩類からなる群から選択され、例えばFe、Cu、Zn、Co、アルカリ金属塩、シッフ塩基、ジブチルマグネシウム、アルミニウムアルコキシド、Ti[OCH(CH3)2]4、Sn(Oct)2、SnCl4、Sn(C6H5)4、Sn(Oct)2/CH3(CH2)11OH、及びSn(Oct)2/P(C6H5)3からなる群から選択される1種以上であり、さらに、前記触媒は、Ti[OCH(CH3)2]4、Sn(Oct)2、Sn(Oct)2/CH3(CH2)11OH、及びSn(Oct)2/P(C6H5)3からなる群から選択される1種以上である。
【0055】
さらに、前記機能材料は、無機機能粉体であり、前記無機機能粉体は、例えばグラフェン、黒鉛、カーボンナノチューブ、及び磁性ナノ粒子からなる群から選択される1種以上である。
【0056】
さらに、機能材料は、薬物であり、前記薬物は、例えば、エリスロマイシン、イブプロフェン、クリンダマイシン、アモキシシリン、セファラジン、アセチルヘリカルマイシン、アジスマイシン、及びオリザノールからなる群から選択される1種以上である。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球の製造方法は、連続相の水溶性ポリマー添加剤を用いて生分解性高分子モノマーに溶解し、酸化防止剤と触媒を添加することにより、モノマーの生分解性高分子微小球への重合を促進する。水溶性ポリマー添加剤が、生分解性高分子に不溶であるため、モノマーの重合中に析出して生分解性高分子と相分離が発生し、生分解性高分子を微小球に分散させる。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の生分解性高分子微小球の製造方法は、次の工程を含む:
S1、液体モノマーの準備:常温下で液体である生分解性高分子モノマーを準備するか、または常温下で固体である生分解性高分子モノマーを加熱溶融して液体モノマーを得る;
S2、混合溶液の調製:液体モノマーに水溶性ポリマーを添加し、水溶性ポリマーを液体モノマーに完全に溶解させて混合溶液を得る;
S3、重合:混合溶液に触媒を添加し、反応温度で静置してモノマーを重合させて生分解性高分子微小球と水溶性ポリマーとの混合体を得る;
S4、後処理:混合体を後処理して生分解性高分子微小球を得る。
【0059】
さらに、前記製造方法は、具体的には、次の工程を含む:
S1、液体モノマーの準備:常温下で液体である生分解性高分子モノマーを準備するか、または常温下で固体である生分解性高分子モノマーを加熱溶融し、温度10~20minに保持して液体モノマーを得る;
S2、混合溶液の調製:液体モノマーに水溶性ポリマーを添加し、引き続き20~40 分間攪拌し、水溶性ポリマーを液体モノマーに完全に溶解させて混合溶液を得る;
S3、重合:混合溶液に酸化防止剤と触媒を添加し、反応温度で静置してモノマーを重合させるか、または攪拌してモノマーを重合させ、常温まで自然冷却して生分解性高分子微小球と水溶性ポリマーとの混合体を得る;
S4、水洗:混合体を水洗(例えば5~8回)し、ろ過乾燥し、水溶性ポリマー添加剤を除去して生分解性高分子微小球を得る。
【0060】
さらに、前記工程S2混合溶液の調製後に、機能材料、例えば無機機能粉体または薬物を添加して攪拌混合してもよい。
【0061】
さらに、前記無機機能粉体は、グラフェン、黒鉛、カーボンナノチューブ、及び磁性ナノ粒子からなる群から選択される1種以上である。
【0062】
さらに、前記工程S3において、反応温度で静置し、例えば静止キャスティングによりモノマー重合を促進することが好ましい。
【0063】
本発明は以下の有益な効果を有する:
本発明に提供の生分解性高分子微小球の製造方法は、プロセスが簡単で、過程が制御しやすく、生産過程に有機溶媒が必要なく、コストが下がると同時に汚染を減少し、大規模な工業生産が可能である、
【0064】
本発明に提供の生分解性高分子微小球の製造方法は、生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマー添加剤を溶液(いくつかの実施形態では、液体モノマーが溶媒であり、水溶性ポリマー添加剤が溶質であり、水溶性ポリマー添加剤がモノマーに溶解して溶液を形成する)に調製でき、水溶性ポリマー添加剤がモノマー表面に連続相を形成し、モノマーのin situ重合後に相分離が発生して生分解性高分子微小球(水溶性ポリマー添加剤が生分解性高分子に不溶であり、生分解性高分子が水溶性ポリマー添加剤によって析出した時に連続相を形成できず、相分離が発生することにより、球になる)を得ることができ、生産過程は簡単で制御しやすい。
【0065】
水溶性ポリマー添加剤を水洗で除去でき、有機溶媒を必要とせず、技術が簡単で、生産コストが低く、生産過程が環境に優しく、工業化の将来性が大きい。
【0066】
本発明では、例えば、本発明のいくつかの実施形態では、生分解性高分子微小球は粒径が0.5~15μmであり、且つ粒径が1~6μmである生分解性高分子微小球の数が生分解性高分子微小球の総数の80%以上を占めるような、粒径分布が比較的狭い生分解性高分子微小球を得ることができる。
【0067】
本発明では、機能材料(例えば無機機能粉体と薬物)が担持された生分解性高分子微小球を製造でき、免疫学、遺伝子治療、腫瘍治療などの分野での応用に有益である。
【0068】
以下、具体的な実施例で本発明を説明する。これらの実施形態は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。実施例で用いられる方法、試薬及び材料は、特に説明がない限り、本分野において従来の方法、試薬及び材料である。実施例における原料化合物は、いずれも市販経路により購入できる。
【0069】
実施例1
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで100℃に加熱し、温度を10min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤PEG-b-PPG-b-PEG(ポロキサマー407、分子量9840~14600g/mol、PEGブロック含有量71~75wt%)20質量部を添加し、120℃に攪拌昇温し、引き続き30分間攪拌し、攪拌速度は100r/minで、ポロキサマーをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に酸化防止剤THP-24 0.5質量部と触媒Sn(Oct)2 0.1質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とポロキサマーとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を5回水洗し、ろ過乾燥し、ポロキサマーを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0070】
実施例2
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで100℃に加熱し、温度を10min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤PEG-b-PPG-b-PEG(ポロキサマー407、分子量9840~14600g/mol、PEGブロック含有量71~75wt%)40質量部を添加し、120℃に攪拌昇温し、引き続き30分間攪拌し、攪拌速度は100r/minで、ポロキサマーをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に酸化防止剤THP-24 0.6質量部と触媒Sn(Oct)2 0.2質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とポロキサマーとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を5回水洗し、ろ過乾燥し、ポロキサマーを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0071】
実施例3
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで100℃に加熱し、温度を10min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤PEG-b-PPG-b-PEG(ポロキサマー407、分子量9840~14600g/mol、PEGブロック含有量71~75wt%)60質量部を添加し、120℃に攪拌昇温し、引き続き30分間攪拌し、攪拌速度は100r/minで、ポロキサマーをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に酸化防止剤THP-24 0.7質量部と触媒Sn(Oct)2 0.3質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とポロキサマーとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を5回水洗し、ろ過乾燥し、ポロキサマーを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0072】
実施例4
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで100℃に加熱し、温度を10min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤PEG-b-PPG-b-PEG(ポロキサマー407、分子量9840~14600g/mol、PEGブロック含有量71~75wt%)80質量部を添加し、120℃に攪拌昇温し、引き続き30分間攪拌し、攪拌速度は100r/minで、ポロキサマーをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に酸化防止剤THP-24 0.8質量部と触媒Sn(Oct)2 0.4質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とポロキサマーとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を5回水洗し、ろ過乾燥し、ポロキサマーを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0073】
実施例5
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで100℃に加熱し、温度を10min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤PEG-b-PPG-b-PEG(ポロキサマー407、分子量9840~14600g/mol、PEGブロック含有量71~75wt%)100質量部を添加し、120℃に攪拌昇温し、引き続き30分間攪拌し、攪拌速度は100r/minで、ポロキサマーをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に酸化防止剤THP-24 1質量部と触媒Sn(Oct)2 0.5質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とポロキサマーとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を5回水洗し、ろ過乾燥し、ポロキサマーを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0074】
実施例6
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで98℃に加熱し、温度を15min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤メチルセルロース(粘度:100000mPa・s)30質量部を添加し、110℃に攪拌昇温し、引き続き撹拌して20min真空除水し、撹拌速度は100r/minで、メチルセルロースをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に酸化防止剤168 0.9質量部と触媒Ti[OCH(CH3)2]4 0.3質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とメチルセルロースとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を6回水洗し、ろ過乾燥し、メチルセルロースを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0075】
実施例7
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで102℃に加熱し、温度を20min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤ポリビニルピロリドン(分子量8000g/mol)50質量部を添加し、130℃に攪拌昇温し、引き続き40分間攪拌し、撹拌速度は120r/minで、ポリビニルピロリドンをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に酸化防止剤1010 0.7質量部と触媒Sn(Oct)2/CH3(CH2)11OH 0.7質量部を添加し、140℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応2h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とポリビニルピロリドンとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を7回水洗し、ろ過乾燥し、ポリビニルピロリドンを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0076】
実施例8
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで101℃に加熱し、温度を15min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤ポリエチレングリコール(分子量10000g/mol)70質量部を添加し、125℃に攪拌昇温し、引き続き25分間攪拌し、撹拌速度は115r/minで、ポリエチレングリコールをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に触媒Sn(Oct)2/P(C6H5)3(モル比1:1) 0.5質量部を添加し、140℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応2h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とポリエチレングリコールとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を8回水洗し、ろ過乾燥し、ポリエチレングリコールを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0077】
実施例9
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで99℃に加熱し、温度を14min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融物に水溶性ポリマー添加剤ポリエチレングリコール(分子量10000g/mol)90質量部を添加し、115℃に攪拌昇温し、引き続き35分間攪拌し、撹拌速度は110r/minで、ポリエチレングリコールをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に触媒Sn(Oct)2/CH3(CH2)11OH(モル比1:1) 0.3質量部を添加し、140℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応2h後に常温まで自然冷却してポリ乳酸微小球とポリエチレングリコールとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を8回水洗し、ろ過乾燥し、ポリエチレングリコールを除去してポリ乳酸微小球を得た。
【0078】
実施例10
S1、カプロラクトンの準備:室温下で液体カプロラクトン100質量部を準備した;
S2、混合溶液の調製:カプロラクトンに水溶性ポリマー添加剤ポリエチレングリコール(分子量10000g/mol)70質量部を添加し、引き続き35分間攪拌し、撹拌速度は110r/minで、ポリエチレングリコールをカプロラクトンに完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に触媒Sn(Oct)2 0.3質量部を添加し、130℃まで昇温してカプロラクトンを重合させ、静置反応2h後に常温まで自然冷却してカプロラクトンとポリエチレングリコールとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を8回水洗し、ろ過乾燥し、ポリエチレングリコールを除去してポリカプロラクトン(PCL)微小球を得た。
【0079】
実施例11
S1、グリコライドの溶融:固体グリコライド100質量部を完全に溶融するまで85℃に加熱し、温度を14min保持してグリコライドを得た;
S2、混合溶液の調製:グリコライドに水溶性ポリマー添加剤ポリエチレングリコール(分子量10000g/mol)60質量部を添加し、95℃に攪拌昇温し、引き続き35分間攪拌し、撹拌速度は110r/minで、ポリエチレングリコールをグリコライドに完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、重合:混合溶液に触媒Sn(Oct)2 0.4質量部を添加し、110℃まで昇温してグリコライドを重合させ、静置反応2h後に常温まで自然冷却してポリグリコライド微小球とポリエチレングリコールとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を8回水洗し、ろ過乾燥し、ポリエチレングリコールを除去してポリグリコライド微小球を得た。
【0080】
実施例12
S1、液体モノマーの準備:固体L-ラクチド50質量部をカプロラクトン50質量部に溶解して完全に溶融するまで101℃に加熱し、温度を15min保持してL-ラクチドとカプロラクトンとの混合溶融物を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチドとカプロラクトンとの混合溶融物に水溶性ポリマー添加剤ポリエチレングリコール(分子量10000g/mol)50質量部とポリビニルピロリドン(分子量8000g/mol)20質量部を添加し、125℃に攪拌昇温し、引き続き25分間攪拌し、撹拌速度は115r/minで、ポリエチレングリコールとポリビニルピロリドンをL-ラクチドとカプロラクトンとの混合溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、コバルトフェライトナノ粒子10質量部を添加し、引き続き25分間攪拌し、攪拌速度は115r/minで、十分に混合した;
S4、重合:S3で得られた材料に酸化防止剤1098 0.4質量部と酸化防止剤1010 0.3質量部及び触媒Sn(Oct)2/P(C6H5)3 0.2質量部とSn(Oct)2 0.4質量部を添加し、140℃まで昇温してL-ラクチドとカプロラクチドを共重合させ、静置反応1.5h後に常温まで自然冷却して磁性L-ラクチドカプロラクチド共重合微小球とポリエチレングリコールとポリビニルピロリドンとの混合体を得た;
S5、水洗:混合体を8回水洗し、ろ過乾燥し、ポリエチレングリコールとポリビニルピロリドンを除去して磁性L-ラクチドとカプロラクトンとの共重合微小球を得た。
【0081】
実施例13
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで100℃に加熱し、温度を10min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融体に水溶性ポリマー添加剤PEG-b-PPG-b-PEG(ポロキサマー407、分子量9840~14600g/mol、PEGブロック含有量71~75wt%)40質量部を添加し、120℃に攪拌昇温し、引き続き30分間攪拌し、攪拌速度は100r/minで、ポロキサマーをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、エリスロマイシン5質量部を添加し、引き続き25分間攪拌し、攪拌速度は115r/minで、十分に混合した;
S4、重合:S3で得られた材料に触媒Sn(Oct)2 0.2質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してエリスロマイシンとポリ乳酸微小球とポロキサマーとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を5回水洗し、ろ過乾燥し、ポロキサマーを除去し、エリスロマイシンが担持されたポリ乳酸微小球を得た。
【0082】
実施例14
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで100℃に加熱し、温度を10min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融体に水溶性ポリマー添加剤PEG-b-PPG-b-PEG(ポロキサマー407、分子量9840~14600g/mol、PEGブロック含有量71~75wt%)40質量部を添加し、120℃に攪拌昇温し、引き続き30分間攪拌し、攪拌速度は100r/minで、ポロキサマーをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、エリスロマイシン10質量部を添加し、引き続き25分間攪拌し、攪拌速度は115r/minで、十分に混合した;
S4、重合:S3で得られた材料に触媒Sn(Oct)2 0.2質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してエリスロマイシンとポリ乳酸微小球とポロキサマーとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を5回水洗し、ろ過乾燥し、ポロキサマーを除去し、エリスロマイシンが担持されたポリ乳酸微小球を得た。
【0083】
実施例15
S1、L-ラクチドの溶融:固体L-ラクチド100質量部を完全に溶融するまで100℃に加熱し、温度を10min保持してL-ラクチド溶融体を得た;
S2、混合溶液の調製:L-ラクチド溶融体に水溶性ポリマー添加剤PEG-b-PPG-b-PEG(ポロキサマー407、分子量9840~14600g/mol、PEGブロック含有量71~75wt%)40質量部を添加し、120℃に攪拌昇温し、引き続き30分間攪拌し、攪拌速度は100r/minで、ポロキサマーをL-ラクチド溶融物に完全に溶解させて混合溶液を得た;
S3、エリスロマイシン15質量部を添加し、引き続き25分間攪拌し、攪拌速度は115r/minで、十分に混合した;
S4、重合: S3で得られた材料に触媒Sn(Oct)2 0.2質量部を添加し、150℃まで昇温してL-ラクチドを重合させ、静置反応1h後に常温まで自然冷却してエリスロマイシンとポリ乳酸微小球とポロキサマーとの混合体を得た;
S4、水洗:混合体を5回水洗し、ろ過乾燥し、ポロキサマーを除去し、エリスロマイシンが担持されたポリ乳酸微小球を得た。
【0084】
実施例2、3、4及び5で製造されたポリ乳酸微小球を選択し、走査電子顕微鏡でその形態を観察したところ、
図1に示すSEM図を得た。ここで、左側は1000倍拡大、右側は同じサンプルで5000倍拡大したSEM画像で、aは実施例2で製造されたポリ乳酸微小球の形態で、bは実施例3で製造されたポリ乳酸微小球の形態で、cは実施例4で製造されたポリ乳酸微小球の形態で、dは実施例5で製造されたポリ乳酸微小球の形態である。
図1から、実施例2~5で製造された乳酸微粒子は、いずれも約球状粒子であることが分かる。
【0085】
さらに、レーザー粒度計を用いて実施例2、3、4及び5で製造されたポリ乳酸微小球について粒径分布分析を行ったところ、
図2に示すポリ乳酸微小球の粒径分布図を得た。aは実施例2で製造されたポリ乳酸微小球の粒径分布図であり、その粒径は1~13μmであり、且つ1~4μm内に分布するポリ乳酸微小球の含有量は88%以上であり、bは実施例3で製造されたポリ乳酸微小球の粒径分布図であり、その粒径は2~9μmであり、且つ2~6μm内に分布するポリ乳酸微小球の含有量は85%以上であり、cは実施例4で製造されたポリ乳酸微小球の粒径分布図であり、その粒径は1~8μmであり、且つ3~6μm内に分布するポリ乳酸微小球の含有量は80%以上であり、dは実施例5で製造されたポリ乳酸微小球の粒径分布図であり、その粒径は1~13μmであり、且つ1~3μm内に分布するポリ乳酸微小球の含有量は75%以上であるとともに、1~6μm内に分布するポリ乳酸微小球の含有量は80%以上であることが示される。
【0086】
実施例6~実施例12で製造された微小球の形態を走査電子顕微鏡で観察したところ、
図3~
図9に示すSEM図を得た。実施例6~実施例12で製造された微小球は、いずれも約球状粒子であることが分かる。
【0087】
実施例6~実施例12で製造された微小球をレーザー粒度計を用いて粒径分布分析を行ったところ、
図10に示す微小球粒径分布図を得た。実施例6~実施例12で製造された微小球の粒径は、1~3μmであり、且つ粒径分布が1~2μm内である微小球の含有量が80%以上であることが示される。
【0088】
実施例1及び実施例5で製造されたポリ乳酸微小球及び純ポロキサマーサンプルを選択して熱分析を行ったところ、
図11に示すDSCグラフを得た。実施例1のサンプルの172.2℃における吸収ピークは、ポリ乳酸の溶融温度を表す。実施例5のサンプルの溶融吸収ピーク対応温度は160.1℃であり、実施例1のサンプルより明らかに低下した。これは、ポロキサマーが重合反応プロセスに参加し、ポリ乳酸とグラフトを形成することにより、ポリ乳酸の結晶完全性を破壊し、融点を下げるのは原因だと考えられる。
【0089】
図12は、実施例13~実施例15のサンプルのUV吸収スペクトル図であり、235nmにおける特徴ピークは,エリスロマイシンの吸収ピークに対応する。純エリスロマイシンと微小球の235nmにおけるの吸収ピーク強度比から算出された、実施例13、実施例14及び実施例15で製造された微小球のそれぞれのエリスロマイシンの封入率は、それぞれに42%、45%、48%であった。
【0090】
上記実施形態は、本発明の原理及びその効果を例示的に説明するだけであって、本発明を限定するためのものではない。この技術に詳しい人なら、本発明の精神及び範疇に背くことなく、上述の実施例の微小球を修飾又は変更して、ある機能を有する生分解性高分子微小球を得ることができ、依然として本発明の請求項によってカバーされるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性高分子モノマーと水溶性ポリマーと触媒とを含む混合溶液中
で生分解性高分子モノマーを重合させる工程を含むことを特徴とする
、生分解性高分子微小球の製造方法。
【請求項2】
前記生分解性高分子モノマーは、脂肪族ポリエステルのモノマーから選択され、好ましくは、脂肪族ラクチド及び脂肪族ラクトンからなる群から選択される1種以上であり、例えばラクチド、カプロラクトン、及びグリコライドからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルブロック共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびメチルセルロースからなる群から選択される1種以上であり、及び/又は、前記混合溶液において、前記生分解高分子モノマーと前記水溶性ポリマーとの質量比は100:(20~300)であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒は、金属、ルイス酸、ルイス塩基、有機金属化合物、及び金属塩類からなる群から選択され、例えばFe、Cu、Zn、Co、アルカリ金属塩、シッフ塩基、ジブチルマグネシウム、アルミニウムアルコキシド、Ti[OCH(CH
3)
2]
4、Sn(Oct)
2、SnCl
4、Sn(C
6H
5)
4、Sn(Oct)
2/CH
3(CH
2)
11OH、及びSn(Oct)
2/P(C
6H
5)
3からなる群から選択される1種以上、および/または、
前記混合溶液において、前記生分解高分子モノマーと前記触媒との質量比は100:(0.1~2)であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合溶液は、さらに、酸化防止剤及び/又は機能材料を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記重合の反応温度は、90~180℃であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、次の工程を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
S1、液体モノマーの準備:常温下で液体である生分解性高分子モノマーを準備するか、常温下で固体である生分解性高分子モノマーを加熱溶融して液体モノマーを得る;
S2、混合溶液の調製:液体モノマーに水溶性ポリマーを添加し、水溶性ポリマーを液体モノマーに完全に溶解させて混合溶液を得る;
S3、重合:混合溶液に触媒を添加し、反応温度で静置してモノマーを重合させて生分解性高分子微小球と水溶性ポリマーとの混合体を得る;
S4、後処理:混合体を後処理して生分解性高分子微小球を得る。
【国際調査報告】