(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】アルミニウム合金製スクラップの環境に配慮した再生利用方法
(51)【国際特許分類】
C22B 21/06 20060101AFI20240829BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240829BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240829BHJP
C22B 9/18 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C22B21/06
C22B7/00 F
C22B1/00 101
C22B9/18 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513335
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 FR2022051619
(87)【国際公開番号】W WO2023031546
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500092697
【氏名又は名称】コンステリウム イソワール
【氏名又は名称原語表記】Constellium Issoire
(71)【出願人】
【識別番号】517422951
【氏名又は名称】コンステリウム ヌフ-ブリザック
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM NEUF-BRISACH
(71)【出願人】
【識別番号】522470817
【氏名又は名称】コンステリウム マッスル ショールズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM MUSCLE SHOALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ピシャ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァセル,アラン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA09
4K001GA17
(57)【要約】
本発明は、個別実体で構成された、アルミニウム合金ベースの粉砕済みのコーティングされたスクラップを供給するステップと、コーティング除去ステップと、溶湯の調製ステップと、溶湯上に、コーティング除去済みスクラップを装入し溶融させるステップと、を含むアルミニウム合金製のコーティングされたスクラップの再溶融方法に関する。本発明は、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%が、0.6以下の折畳み比(R)を有し、個別実体の折畳み比(R)が、式:折畳み比=R=(広げた表面積-折畳んだ表面積)/(広げた表面積)によって定義され、折畳んだ表面積は、平面上の個別実体の正射影の最大表面積であり、広げた表面積は、広げられた後の同じ個別実体の総表面積である、スクラップの特定の幾何形状の選択を特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製のコーティングされたスクラップの再溶融方法において、
(i)個別実体で構成された、アルミニウム合金ベースの粉砕済みのコーティングされたスクラップを供給するステップと、
(ii)前記粉砕済みのコーティングされたスクラップのコーティング除去を実施してコーティング除去済みスクラップを得るステップと、
(iii)所与の周波数で機能するるつぼ形誘導炉内で第1の組成の液体金属の初期溶湯を調製するステップと、
(iv)誘導炉内で初期溶湯上に直接、コーティング除去済みスクラップを装入して、溶融させるステップと、
を含む方法であって、
ステップi)で供給した粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%が、0.6以下の折畳み比(R)を有し、ここで、個別実体の折畳み比(R)が式:
【数1】
によって定義され、
ここで、折畳んだ表面積は、平面上の個別実体の正射影の最大表面積であり、広げた表面積は、広げられた後の同じ個別実体の総表面積である、
コーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項2】
ステップi)で供給される粉砕済みのコーティングされたスクラップが、任意には粒度を調整するように構成されたグリッドが備わった、ナイフミルを用いた粉砕ステップを含むプロセスを用いることによって得られることを特徴とする、請求項1に記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項3】
ステップi)で供給される粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%が、5~50mm、好ましくは8~50mm、より好ましくは8~25mm、より好ましくは8~16mmである粒度を有し、粒度がふるい分けによって測定されることを特徴とする、請求項1または2に記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項4】
ステップi)で供給される粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%が、50mm以下、好ましくは30mm以下、さらに一層好ましくは15mm以下の高さを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項5】
ステップi)で供給される粉砕済みのコーティングされたスクラップの容積質量が、0.2~0.4t/m
3であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項6】
ステップi)で供給されるコーティングされたスクラップが、アルミニウム製の家庭用包装材、典型的には使用済みアルミニウム製飲料缶から回収されたスクラップから得られることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項7】
ステップii)後に得られたコーティング除去済みスクラップが、ステップiv)において、100℃超の温度、好ましくは200℃~450℃、より好ましくは300℃~450℃、さらに一層好ましくは400℃~450℃である温度で誘導炉内に導入されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項8】
誘導炉内ではいかなる保護用塩も使用されないことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項9】
ステップiv)の際に、浮遊するコーティング除去済みスクラップ床が、ステップiv)の持続時間の大半の間、液体浴の表面に維持されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項10】
ステップiv)の際の誘導炉の周波数が、50Hz~150Hzであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項11】
ステップiv)における装入が、好ましくはウォームスクリュまたはホッパまたはバイブレータシステムを用いて、不連続的または連続的に実施されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項12】
ステップiv)の際の液体金属浴の温度が、750℃以下、好ましくは730℃以下であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【請求項13】
ステップiv)の際に、液体金属浴が、典型的にはアルゴンガス流を用いて、不活性化されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一つに記載のコーティングされたスクラップの再溶融方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製のコーティングされたスクラップ、好ましくはアルミニウム製の家庭用包装材、典型的には使用済みアルミニウム製飲料缶から回収されたスクラップの、誘導炉内における再溶融に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムの再生利用は、経済的で環境保護的であるという利点を有する。二次アルミニウムの生産は、一次アルミニウムに比べて最大95%少ないエネルギーしか必要とせず、CO2排出量の削減を可能にする。アルミニウムの生産が環境に及ぼす影響を改善する目的で、アルミニウム業界は、再生利用ステップに際してスクラップの再溶融ステップ中に排出されるCO2の量を削減しようとしている。
【0003】
本明細書では、異なる製造段階で生成された金属の収集および/または回収の結果としてもたらされるアルミニウム製および/またはアルミニウム合金製の製品または使用後の製品で構成される再生利用のための原料を、「スクラップ」の総称で呼んでいる。別段の記載のないかぎり、アルミニウムおよびアルミニウム合金スクラップに関連する用語を定義する2003年9月のフランス規格NF EN12258-3号が参照される。例えば塗料、ワニス、印刷用インキ、プラスチック、紙、金属などのあらゆるタイプのコーティングを有する部片で構成されたスクラップは、「コーティングされたスクラップ」と呼ばれる。
【0004】
アルミニウム合金製飲料缶は、缶本体と蓋で構成され;通常、缶本体は、AA3104合金で、そして蓋はAA5182合金で作製されている。缶本体および蓋は、ワニスおよび/または塗料および/または有機物質などの有機コーティングおよび/または無機コーティングでコーティングされている。
【0005】
アルミニウム製のUBC(Used Beverage Can)とも呼ばれる、使用済み飲料缶は、コーティングされたスクラップのカテゴリに属する。同様に、アルミニウム合金製の食品包装材またはエアロゾル缶も、コーティングされたスクラップのカテゴリに属する。これらは、概してワニスおよび/または塗料および/または印刷用インキの存在により汚染されている。また、場合によっては粉塵、砂、水、飲料残留物または他の汚れが存在することによって、これらの容器が汚染されている可能性もある。
【0006】
家庭用包装材としては、使用済み飲料缶、使用済み食品包装材、使用済みエアロゾル缶を挙げることができる。アルミニウム合金製のこれらのタイプの製品または他のあらゆるコーティングされた製品は、収集可能である。通常、収集後にこれらの製品は、保管および輸送を容易にする「梱」または「ブリケット」を形成するように圧縮される。圧縮はまた、時として米国特許第4159907号明細書にあるように再溶融炉内でスクラップの浸漬を容易にするためにも企図される。
【0007】
しかしながら、これらを粉砕することもまた可能である。個別実体で構成される分割された形態のスクラップが得られる。粉砕作業は特に、製品を切り刻み、容器内に液体が残存することを回避し、ひいては再溶融作業中の爆発のリスクを回避することを可能にする。この粉砕段階中に、例えば場合によっては存在する屑鉄の破片、アルミニウム製またはアルミニウム合金製でない他の全ての金属製品またはプラスチック製品といったあらゆる汚染を分離するために、選別を行うことが可能である。
【0008】
コーティングされた製品、特にUBCの再生利用のためにこの業界において使用されている技術は、通常、冷間前処理ステップ(粉砕機、磁気選別およびエアブレードセパレータ)、「デコータ」内でのインキ、ワニスおよび他の有機物質の熱間除去ステップで構成された専用ラインを利用する。コーティングされたスクラップは次に、典型的には、サイドウェル型炉(「side-well」炉」)内で再溶融される。液体金属中に含まれる酸化物を除去するためには、塩の添加(3%~5%)による金属の処理が必要である(R.Evans、G.Guest、「The aluminium decoating handbook」、Stein Atkinston Stordy、Gillespie Powers internet source)。金属はその後、鋳造工場に向けて輸送されて、鋳造される。別の代替案は、回転炉内で再溶融を実施することである。この解決法は、サイドウェル型炉の場合よりも高い塩レベルを必要とする(10%~15%)。有機物質の燃焼および金属の再溶融は、この場合、炉のエンクロージャ内で同時に行なわれる。
【0009】
米国特許第3999980号明細書は、UBCを「デコータ」内で予め処理する必要のない方法を記述している。この方法は、スクラップ溶融炉内において不活性雰囲気下で実施され、溶融塩を用いる典型的プロセスと比較されている。
【0010】
別の代替案は、マルチチャンバ(multi-chamber)炉での再溶融である(「Alumnium recycling」、M.Schlesinger、CRC Press、(2007))。コーティングされたスクラップは、別個のチャンバ(垂直トンネルまたは水平傾斜路)内で、装入、予熱、コーティング除去される。有機物質の燃焼は、設備を暖めるのに寄与する。これは、塩無しのプロセスである。この解決法には、CO2排出量の削減に適応されていないガス炉内で行なう必要があるという欠点がある。
【0011】
CO2排出量を削減するための1つの解決法は、電気炉を使用することである。誘導炉技術は、参考文献(R.Evans、G.Guest、「The aluminium decoating handbook」、Stein Atkinston Stordy、Gillespie Powers internet source)中でUBCの再生利用に関して記載されている。るつぼ形誘導電気炉は、優れたエネルギー効率という利点を有し、金属損失がほとんど発生しない。大容量チャンネル電気炉は、時として、新しい製造残片またはコーティング除去後の飲料缶の再溶融のために使用される(F.Herbulot - Recuperation et recyclage de l’aluminium - Techniques de l’Ingenieur - Mars 2001)。しかしながら、これらのタイプの炉が、大きな工業的飛躍を遂げることはなかった。これらの炉には、るつぼ壁への酸化物の漸進的付着または金属中の酸化物形成を回避するために清潔な原料が求められる。
【0012】
しかしながら、コーティングされたスクラップの誘導炉における処理に関しては、コーティングされたスクラップの再生利用、詳細には使用済み飲料缶から回収されたスクラップの再生利用が、誘導電気炉内では工業的規模で溶融塩を使用せずには不可能であるとする当業者の偏見が存在する(Verranら、Ressources、Conservation and Recycling 52(2008)731~736)。溶融塩は、酸化物を収集する役割を果たし、液体金属から分離しこの液体金属上を浮遊するペースト状の塩性スラグの構成を可能にする。塩性スラグの存在には、金属粗収率または金属正味収率を低減させるという欠点がある。「金属粗収率」(%単位)とは、実際に炉から取出されたまたは鋳造された液体金属の質量と炉内に装入された物質質量の間の比である。「金属正味収率」とは、実際に炉から取出されたまたは鋳造された液体金属の質量と、炉内に装入された金属正味質量の間の比である。
【0013】
したがって、コーティングされたスクラップ、詳細には使用済みアルミニウム製飲料缶から回収されたスクラップの処理における、溶融塩無しの誘導炉の使用を可能にする経済的でかつ信頼性の高い解決策に対するニーズが存在する。
【0014】
米国特許出願公開第2020/0255922号明細書は、アルミニウムリチウム合金製の機械加工スクラップの再生利用のための、真空誘導炉内での処理方法について記述している。この方法は、バッチで実施される、すなわちアルミニウムリチウム合金製スクラップは、真空下での作動を目的として、単一回で炉入れされる。炉内で溶融される金属の数量を増大させるため、米国特許出願公開第2020/0255922号明細書は、切り屑の圧縮ステップを提供している。
【0015】
国際公開第2007/015013号は、アルミニウムリチウム合金製の機械加工スクラップの再生利用のための誘導炉内における処理方法について記述している。アルミニウムリチウム合金製スクラップは、液体金属床の表面に制御された厚みのスクラップの浮遊マットを創出するように液体金属溶湯上に装入される(装入ステップ)。このスクラップ浮遊マットは、液体金属を酸化から保護し、不活性雰囲気の使用を回避する。この浮遊マットは、少なくとも1つの寸法が1mm未満でかつどの寸法も25mm以下である分割されたスクラップで構成されている。スクラップの容積質量は、0.05好ましくは0.1から0.7t/m3(立方メートルあたりのトン数)そしてさらに一層有利には0.2から0.4t/m3である。これらの幾何学的な考慮事項だけでコーティングされたスクラップを用いて良好な金属正味収率を得ることができないということを、発明者らは確認した。
【0016】
米国特許第4159907号明細書は、低容積質量のスクラップが、液体アルミニウムの表面にとどまり酸化する傾向を有するという欠点を示し、この問題を解決するために圧縮によりスクラップを高密度化することを提案している。先行技術における他の文書は、溶融炉内へのスクラップの浸漬による代替的解決法を提案している。米国特許第6074455号明細書は、回転子が創出する渦の中に導入することによってスクラップを液体アルミニウム中に急速に浸漬させる方法について記述している。米国特許第3873305号明細書は、回転プロペラの作用によりスクラップを強制的に浸漬させる飲料缶スクラップの溶融方法について記述している。特開平10-147822号公報は、特殊な機器を用いて液体金属浴の上方でスクラップを混合する飲料缶スクラップの溶融のために使用される炉について記述している。スクラップを浸漬させるために機械的手段を使用するこれらの浸漬解決法は、浴の酸化を促すという欠点を有し、これは金属粗収率にとって有利ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4159907号明細書
【特許文献2】米国特許第3999980号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0255922号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/015013号
【特許文献5】米国特許第6074455号明細書
【特許文献6】米国特許第3873305号明細書
【特許文献7】特開平10-147822号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】R.Evans、G.Guest、「The aluminium decoating handbook」、Stein Atkinston Stordy、Gillespie Powers internet source
【非特許文献2】「Alumnium recycling」、M.Schlesinger、CRC Press、(2007)
【非特許文献3】F.Herbulot - Recuperation et recyclage de l’aluminium - Techniques de l’Ingenieur - Mars 2001
【非特許文献4】Verranら、Ressources、Conservation and Recycling 52(2008)731~736
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、保護用塩を使用することなく誘導による再溶融炉を使用して、アルミニウム合金製のコーティングされたスクラップ、好ましくはアルミニウム製の家庭用包装材から回収されたスクラップ、典型的には使用済みアルミニウム製飲料缶の再生利用方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、アルミニウム合金製のコーティングされたスクラップの再溶融方法において、
(i)個別実体で構成された、アルミニウム合金ベースの粉砕済みのコーティングされたスクラップを供給するステップと、
(ii)前記粉砕済みのコーティングされたスクラップのコーティング除去を実施してコーティング除去済みスクラップを得るステップと、
(iii)所与の周波数で機能するるつぼ形誘導炉内で第1の組成の液体金属初期溶湯を調製するステップと、
(iv)誘導炉内で初期溶湯上に直接、コーティング除去済みスクラップを装入して、溶融させるステップと、
を含む方法を目的とする。
【0021】
本発明によると、ステップi)で供給した粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%が、0.6以下の折畳み比(R)を有し、ここで、個別実体の折畳み比(R)は、式:
【数1】
によって定義され、
ここで、折畳んだ表面積は、平面上の個別実体の正射影の最大表面積であり、広げた表面積は、広げられた後の同じ個別実体の総表面積である。
【0022】
有利には、粉砕済みのコーティングされたスクラップは、好ましくはグリッドが備わった、ナイフミルを用いた粉砕ステップを含むプロセスにしたがって得られる。本発明によると、使用されたナイフミルは、鋭利な切断を可能にしかつ、効果的なコーティング除去およびるつぼ形誘導炉内へのスクラップの導入を得るためには重大な障害となる折畳みをひき起こすスクラップの「折り目」を回避することから、選好される。好ましくは、粉砕済みのコーティングされたスクラップの供給ステップの前に、コーティングされたスクラップが供給されその後ナイフミル内で粉砕される。これは、回転中のシャフト上に組付けられたナイフと固定ナイフ列の間でコーティングされたスクラップを切断することからなる。グリッドの存在により、出口における粒度制御を保証することができる。
【0023】
ナイフミル内でのこの予備的粉砕ステップは、以下の連続的ステップを含むアルミニウム合金製のコーティングされたスクラップの再溶融方法に対応する:
- アルミニウム合金ベースのコーティングされたスクラップ、好ましくはアルミニウム製の家庭用包装材、典型的には使用済みアルミニウム製飲料缶から回収されたスクラップを供給するステップ、
- 任意にはグリッドの備わった、ナイフミル内で前記コーティングされたスクラップを粉砕して、個別実体で構成された粉砕済みのコーティングされたスクラップを得るステップ、
- 前記粉砕済みのコーティングされたスクラップのコーティング除去を実施してコーティング除去済みスクラップを得るステップ、
- 所与の周波数で機能するるつぼ形誘導炉内で第1の組成の液体金属初期溶湯を調製するステップ、
- 誘導炉内で初期溶湯上に直接、コーティング除去済みスクラップを装入して、溶融させるステップ。
【0024】
本発明によると、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%が、0.6以下の折畳み比(R)を有し、ここで、個別実体の折畳み比(R)は、式:
【数2】
によって定義され、
ここで、折畳んだ表面積は、平面上の個別実体の正射影の最大表面積であり、広げた表面積は、広げられた後の同じ個別実体の総表面積である。
【0025】
有利には、ステップi)で供給される粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%は、5~50mm、好ましくは8~50mm、より好ましくは8~25mm、より好ましくは8~16mmである粒度を有し、粒度はふるい分けによって測定される。
【0026】
この有利な形態によると、粉砕済みのコーティングされたスクラップは、5~50mm、好ましくは8~50mm、さらに一層好ましくは8~25mm、さらに一層好ましくは8~16mmである粒度を得るように適応されたグリッドを備えたナイフミルを用いた粉砕ステップを含む方法にしたがって得られる。
【0027】
グリッドを備えたナイフミル内でのこの予備的粉砕ステップは、以下の連続的ステップを含むアルミニウム合金製のコーティングされたスクラップの再溶融方法に対応する:
- アルミニウム合金ベースのコーティングされたスクラップ、好ましくはアルミニウム製の家庭用包装材、典型的には使用済みアルミニウム製飲料缶から回収されたスクラップを供給するステップ、
- グリッドの備わったナイフミル内で前記コーティングされたスクラップを粉砕して、個別実体で構成された粉砕済みのコーティングされたスクラップを得るステップ、
- 前記粉砕済みのコーティングされたスクラップのコーティング除去を実施してコーティング除去済みスクラップを得るステップ、
- 所与の周波数で機能するるつぼ形誘導炉内で第1の組成の液体金属の初期溶湯を調製するステップ、
- 誘導炉内で初期溶湯上に直接、コーティング除去済みスクラップを装入して、溶融させるステップ。
【0028】
有利には、ステップi)で供給される粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%が、50mm以下、好ましくは30mm以下、さらに一層好ましくは15mm以下の高さを有する。
【0029】
有利には、ステップi)で供給される粉砕済みのコーティングされたスクラップの容積質量は、0.2~0.4t/m3である。
【0030】
有利には、ステップi)で供給されるコーティングされたスクラップは、大半がアルミニウム製の家庭用包装材、典型的には使用済みアルミニウム製飲料缶から回収されたスクラップから構成されている。
【0031】
すなわち、粉砕済みのコーティングされたスクラップは、アルミニウム製の家庭用包装材、典型的には使用済みアルミニウム製飲料缶から回収されたスクラップから得られる。
【0032】
有利には、ステップii)後に得られたコーティング除去済みスクラップは、ステップiv)において、100℃超の温度、好ましくは200℃~450℃、より好ましくは300℃~450℃、さらに一層好ましくは400℃~450℃である温度で誘導炉内に導入される。
【0033】
有利には、誘導炉内ではいかなる保護用塩も使用されない。
【0034】
有利には、ステップiv)の際に、浮遊するコーティング除去済みスクラップ床は、ステップiv)の持続時間の大半の間、液体浴の表面に維持される。
【0035】
有利には、ステップiv)の際の誘導炉の周波数は、50Hz~150Hzである。
【0036】
有利には、ステップiv)における装入は、好ましくはウォームスクリュまたはホッパまたはバイブレータシステムを用いて、不連続的または連続的に実施される。
【0037】
有利には、ステップiv)の際の液体金属浴の温度は、750℃以下、好ましくは730℃以下である。
【0038】
有利には、ステップiv)の際に、液体金属浴は、典型的にはアルゴンガス流を用いて、不活性化される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】折畳み比Rを測定することを可能にする方法の原理を表わしている。1aおよび1cはそれぞれ、供給された粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の外観および広げられた同じ個別実体の外観を表わしている。1bは、最大表面積を提供する個別実体1aの正射影を表わしている。1dは、広げた表面積の測定を可能にする広げた表面積の輪郭を表わす。
【
図2】粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の高さ測定を可能にする方法を表わしている。
【
図3】本発明に係る供給された粉砕済みのコーティングされたスクラップの外観を表わしている。
【
図4】撹拌運動を伴うるつぼ形誘導炉の図を表わしている。
【
図5】ハンマ粉砕方法によって得られた本発明外の粉砕済みのコーティングされたスクラップの外観を表わしている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明に係る方法は、4つの連続的ステップ、すなわち、第1に粉砕済みのコーティングされたスクラップの供給ステップ、第2に粉砕済みのコーティングされたスクラップのコーティング除去ステップ、第3に誘導炉内での液体金属溶湯の調製ステップ、そして第4に誘導炉内へのコーティング除去済のスクラップの装入ステップを含む。
【0041】
1) 粉砕済みのコーティングされたスクラップの供給
本発明に係る方法によって再生利用され得るコーティングされたスクラップは、粉砕済み形態を呈する。本発明によると、コーティングされたスクラップが粉砕され、分割された形態で供給されることが重要である。本発明に係る粉砕済みのコーティングされたスクラップは、個別実体で構成されている。これらの個別実体は、飲料缶または缶詰のような初期廃棄物の寸法に比べてより小さい寸法を有する。
【0042】
以下では、別段の記載のない限り、個別実体の%単位での割合は、個別実体の数値的%に対応する。
【0043】
本発明によると、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の大半が、0.6以下の折畳み比を有することが重要である。有利には、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%が、0.6以下の折畳み比(R)を有する。好ましくは、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも60%または70%または80%が、0.6以下の折畳み比(R)を有する。個別実体の折畳み比は、等式1:
【数3】
によって定義される。
【0044】
好ましくは、ステップi)で供給された粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%は、0.5以下、より一層好ましくは0.4以下の折畳み比(R)を有する。
【0045】
粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の折畳み比は、先行ステップの際のこの個別実体の折畳まれ方を定量化する。この比が大きければ大きいほど、個別実体はより多く折畳まれ、したがって、特に球形状でコンパクトである。この比が小さければ小さいほど、個別実体は平坦である。るつぼ形誘導炉内での再溶融ステップの際に、液体金属から酸化物を分離するために、再生利用フラックスと呼ばれる塩の使用を回避する目的で0.6以下の折畳み比を有する必要があるということを、発明者らは確認した。
【0046】
折畳んだ表面積は、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の見かけの表面積である。折畳んだ表面積は、個別実体の平面上の正射影の最大表面積として定義される。
【0047】
広げた表面積は、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の展開表面積に対応する。広げた表面積は、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の広げられた後の総表面積として定義される。個別実体の厚みおよび質量および平均容積質量が分かっていることから、広げた表面積を容易に決定できるということに留意すべきである。広げた表面積は、個別実体を広げることで得ることもできる。
【0048】
一例として、典型的には郵便切手の寸法を有し、1cm2の広げた表面積を有する粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体を考慮すると、この個別実体は、それが2つに折畳まれる場合に0.5の折畳み比を有する。この同じ実体の折畳まれていない場合の折畳み比は0である。
【0049】
折り目または表面オバーラップの数が、個別実体の平坦度を劣化させることを、発明者らは確認した。一方で、コーティングされた表面がコーティング除去炉の雰囲気と直接接触し、その結果としてコーティング除去作業の際に介入するスクラップの表面における質量および熱の交換ができるだけ効率良く行なわれるように、コーティングされたスクラップの折り畳みが最小であることが重要であることを、発明者らは確認した。
【0050】
折畳み比は、以下のように測定され得る:粉砕済みのコーティングされたスクラップ(1、
図1a)の個別実体を取り上げる。質量m
0と表面積S
0が公知である紙を使用する。コーティングされたスクラップの個別実体の最大表面積の射影を得るように紙上に個別実体が置かれたことを確かめながら(10、
図1b)、折畳んだ表面を得るようように、紙上に個別実体の輪郭を描く(10、
図1b)。こうして、平面上に個別実体の正射影の最大表面積が得られる。輪郭を切断し、破片m
1の重さを計る。このステップがひとたび実施された時点で、粉砕済みのコーティングされたスクラップの同じ個別実体を広げる(2、
図1c)。質量m’
0および表面積S’
0が公知である紙を再び取り上げる。このように広げられたコーティングされたスクラップの個別実体の輪郭を描き(20、
図1d);輪郭を切断し、m
2の重さを計る。折畳み比(R)は、等式2:
【数4】
にしたがって演繹できる。
【0051】
広げ作業は、手作業で行なうことができる。この作業の際には、破片が離脱する可能性がある。質量m2の測定においては、各破片も考慮に入れなければならない。
【0052】
0.6未満の折畳み比を有する粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の百分率の推定を、スクラップ全体についてかまたは一部分について、典型的には少なくとも20に等しい数の個別実体について実施することができる。
【0053】
有利には、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体は、実質的に平坦である。粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体は、長さ、幅および高さによって定義される架空の体積に内接し得る。粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の平坦度は、mm単位で表わされた架空体積の最小高さによって特徴付けされる。高さ(h)を測定するために、粉砕済みのコーティングされたスクラップ1の個別実体は、実体の最小高さを得るように平坦度定規3上に置かれる(
図2参照)。平坦度定規は、測定用大理石などのあらゆる平坦な表面であり得る。
【0054】
有利には、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%または60%または70%または80%が、50mmまたは40mmまたは30mmまたは20mmまたは15mmまたは10mmまたは5mm以下の高さを有する。粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の高さがコーティング除去作業によって修正されないことを、発明者らは確認した。粉砕済みのコーティングされたスクラップの大半の個別実体が50mmまたは40mmまたは30mmまたは20mmまたは15mmまたは10mmまたは5mm以下の高さを有することによって、積上げられた層の形態でのそれらの配設が促進され、誘導炉の液体金属浴内でのそれらの浸漬が改善されると、発明者らは考えている。
【0055】
50mm以下の高さを有する粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の百分率の推定は、スクラップ全体について、または一部について、典型的には少なくとも20に等しい数の個別実体について実施することができる。
【0056】
以下では、別段の記載のないかぎり、「○○~○○である」なる表現の使用は、「○○から○○までである」なる表現で置換可能である。以下では、別段の記載のないかぎり、「ゲインはA~Bである」のような表現は、ゲインはAからBまでである、ゲインは値AまたはBを取り得る、限界AおよびBが含まれる、ということを意味する。
【0057】
有利には、粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の少なくとも50%または60%または70%または80%が、5~50mm、好ましくは6mm、または7mmまたは8mmまたは10mmから、50mmまたは45mmまたは40mmまたは35mmまたは30mmまたは25mmまたは24mmまたは23mmまたは22mmまたは21mmまたは20mmまたは19mmまたは18mmまたは17mmまたは16mmまたは15mmまでである粒度を有する。有利には、これらの値のあらゆる組合せが可能である。
【0058】
粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の粒度をふるい分けによって測定することができる。粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の粒度を測定するためには、互いに入れ子になった一連のふるいを使用することができる。ふるいのメッシュ寸法は、上から下に向かって小さくなっている。スクラップを構成する個別実体は、最も上のふるい上に設置される。振動によってスクラップはそのサイズに応じて異なるふるい上に分布させられる。方形メッシュを有するふるいをその開口部を通って使用することができる。ふるいの公称寸法は、メッシュの辺の長さ(mm単位)に対応する。60、50、40、35、25、16、8、4、2、1mmサイズの10個のふるいを使用することができる。ふるい分けの持続時間は、好ましくは少なくとも10分間である。コーティングされたスクラップの個別実体の粒度がコーティング除去作業によって修正されないことを、発明者らは確認した。5~50mmである個別実体の粒度は、誘導炉の液体金属浴内のスクラップの浸漬の改善を可能にする。
【0059】
所与の粒度を有する粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の百分率の推定は、スクラップ全体についてまたは一部について、典型的には少なくとも20に等しい数の個別実体について実施することができる。
【0060】
有利には、コーティングされたスクラップの容積質量は、0.2~0.4t/m3(立米あたりのトン数)である。スクラップの容積質量は、以下のように測定される:容量1リットルの円筒形容器にスクラップを充填し、スクラップを詰め込むように小さい衝撃の形態で振動を発生させる。作業は、容器が縁まで一杯に充填されるまで反復される。充填済み容器の重量から空の容器の重量を減算することで、スクラップの容積質量を決定することができる。
【0061】
先に定義した通りの幾何学的特性を有する粉砕済みのコーティングされたスクラップの供給は、好ましくはグリッドを備えた、ナイフミルを用いた粉砕ステップを含む方法を用いて得ることができる。ナイフミル内で、コーティングされたスクラップは高速回転シャフト上に組付けられたナイフと固定ナイフ列との間で切断される。グリッドが存在することで、粉砕機の出口における粒度制御を保証することができる。このステップは、専用ツール上で別個に実施可能である。ナイフミルの利点は、鋭利な切断が得られること、スクラップの変形が回避されること、そしてスクラップの折り畳みも回避できることにある。
【0062】
先に定義した通りの幾何的特性を有する粉砕済みのコーティングされたスクラップの供給は、(再生利用センターまでのスクラップの輸送およびハンドリングのために使用される)低密度圧縮方法と、それに続く圧縮された梱の単位UBCの解放を可能にする低回転速度の予備粉砕機と、それに続くスクラップの鋭利なカットを可能にする粉砕機(ナイフミルタイプ)を使用することによって得ることができる。圧縮は、再生利用センターまでスクラップを輸送しなければならない場合に、有用であることが判明し得る。しかしながら、圧縮が圧縮済みスクラップの見かけ密度を増大させないように気をつける必要があり、典型的には、圧縮が、圧縮済みスクラップの見かけ密度を、約1400kg/m3を超えて増大させないように気を付ける必要がある。したがって、これは低密度圧縮と呼ばれる。実際、過度に高密度に圧縮した場合、圧縮されたパッケージ(梱または梱包体とも呼ばれる)を構成するスクラップを個別に解放することは可能ではない。コーティングされたスクラップをナイフミルで個別に粉砕できない場合、所望される折畳み比を得るために5mm未満の粒度を目ざす必要があることを、発明者らは確認した。このことは、再溶融の時点での金属損失の増大という結果をもたらす。
【0063】
「ベールオープナー」とも呼ぶことのできる低速での予備粉砕は、圧縮済み単位スクラップの形状を修正することなく梱包体を破壊することからなる。このステップは当然のことながら、スクラップが圧縮されていない場合には任意である。
【0064】
5~50mm、好ましくは8~50mmである粒度を保証する目的で、粉砕作業中に50mm未満、好ましくは25mm未満の寸法のグリッドを使用することができる。所望される幾何形状、詳細には0.6以下の折畳み比および5~50mmである粒度、そして50mm以下の高さを得るためには、ハンマミルの使用が有利でないことを、発明者らは確認した。実際、ハンマミルを用いて実施されるスクラップの粉砕作業は、0.6超の折畳み比を有するスクラップペレットを形成する傾向を有する。
【0065】
2) コーティング除去ステップ
このように供給された粉砕済みのコーティングされたスクラップは次に、コーティング除去される。コーティング除去は、例えば塗料、保護用ワニス、蓋シールおよび他の発煙性物質などの有機物質および水分が除去される温度で、ただし金属の溶融を回避するため過度に高い温度に加熱することなく、コーティングされたスクラップを加熱することからなる。典型的には、温度は、450℃~540℃である。スクラップは、炉の雰囲気との熱伝導によって、好ましくは煙の後燃焼に由来しコーティング除去チャンバ内で循環する加熱ガスによって、加熱される。この作業によって、一方ではスクラップを乾燥させること、そして他方では有機物質を除去することが可能になる。有機物質は、燃焼後ユニット内でCO2に変換されて有機分子を破壊することができる。こうして、発煙性物質の無い浄化され乾燥したスクラップが得られる。
【0066】
十分な時間が経過した後、スクラップは、コーティング除去チャンバから取出される。
【0067】
コーティング除去作業はまた、化学的手段によって得ることもできる。すなわち、粉砕済みのコーティングされたスクラップを、有機物質の溶解を可能にする異なる浴内に浸漬させ、その後乾燥作業に付すことができる。
【0068】
コーティング除去または乾燥作業がスクラップの折畳み比、平坦度、形状を修正しないことを、発明者らは確認した。したがって、清潔なスクラップは、供給された粉砕済みのコーティングされたスクラップと同じ折畳み比、同じ平坦度、同じ粒度を有する。清潔なスクラップの容積質量は、コーティングされたスクラップの容積質量に比べわずかに修正され、0.2~0.4t/m3にとどまる。
【0069】
コーティング除去前に、粉砕されたコーティングされたスクラップは、典型的には少なくとも1.5重量%の初期残留炭素量を有する。有利には、コーティング除去ステップ後、スクラップは、0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、さらに一層好ましくは0.1重量%未満の残留炭素量を有する。重量%単位の残留炭素量は、LECO社が提供する計器などの適切な計器を用いて測定され得る。分析は、アルゴン流の下で250℃~550℃である温度にコーティング除去ステップ後のスクラップの所与の質量を炉内で維持し、触媒反応炉内で煙をCO2に転換させることからなる。炭素の秤量は、赤外線プローブを介してCO2の割合を秤量することによって評価される。
【0070】
3) 誘導炉内の液体金属初期溶湯の調製
るつぼ形誘導炉100が提供される(
図4)。
【0071】
るつぼ形誘導炉は本質的に、溶融すべき金属の塊が内部に置かれるるつぼ102を形成する突固めされた練り土製の耐火性ライニングまたは予備焼成された耐火性シェルを取り囲み、冷却液101の循環によって冷却される1つまたは2つの誘導コイルで構成されている。
【0072】
コーティング除去および/または乾燥の後に得られる清潔なスクラップが内部に注ぎ込まれることになる第1の組成の液体金属溶湯50を調製する。コーティング除去後に得られた清潔なスクラップは、液体金属浴の表面52に注ぎ込まれる。液体金属の初期溶湯は、コーティング除去ステップ後に得られた清潔なスクラップから、または薄板もしくは厚板の切断残片または切断骨格部などの塊状廃棄物から得ることができ、前記塊状廃棄物は、その組成が最終的組成を害することのない、清潔なそして好ましくはより純度が高いスクラップと相容れる組成の合金で構成されている。典型的には、塊状廃棄物は、3XXXシリーズのアルミニウム合金、典型的にはAA3104タイプの合金である。液体金属溶湯は、また、清潔なスクラップと相容れる1xxx、3xxx、5xxx、6xxx、8xxxタイプの合金の再溶融インゴットの溶融によっても得ることができる。連続鋳造の場合、液体金属溶湯は有利には、先行する鋳造の残留部分で構成されていてよい。
【0073】
溶湯の体積は、誘導炉の総体積の約30%~60%を占め、典型的には誘導炉の容量の半分を占める。溶湯の体積が小さすぎると、溶湯が液体状態を維持するのに十分な熱容量を有さず、炉内で凝固するというリスクがある。溶湯を用いた作動により、2t/h~4t/hの有利な溶融率を得ることができる。
【0074】
4) ステップ3および溶融の後に得られるスクラップの装入ステップ
コーティング除去および/または乾燥の後に得られた清潔なスクラップの装入ステップは、予め溶湯を収納するるつぼ形誘導炉内にコーティング除去されたスクラップを導入することからなる。誘導炉内では、いかなる保護用塩も使用されない。有利には、液体金属の表面を保護するために、不活性ガス、典型的にはアルゴンが使用される。装入ステップは、連続式または半連続式に行なわれる。スクラップは、例えばウォームスクリュまたはホッパまたはバイブレータシステムなどの適切な手段によって、液体金属溶湯上に装入される。
【0075】
有利には、装入ステップに際して、コーティング除去後の清潔なコーティング除去済みスクラップは、装入物中に含まれる残留水分の存在に関連する爆発のあらゆるリスクを回避するために、安全性の理由で、100℃超の温度で装入される。好ましい形態においては、溶融率を増大させエネルギー消費量を削減するために、乾燥されコーティング除去されたスクラップは、コーティング除去後に、200℃~450℃、好ましくは300℃~450℃、さらに一層好ましくは400℃~450℃であるスクラップ温度で、液体金属内に直ちに装入される。清潔なスクラップが300℃~450℃である温度で炉入れされる場合には、液体金属浴上における清潔なスクラップの滞留時間が、それらの酸化を制限するために短時間であることが有利である。
【0076】
ステップiv)の持続時間の大半の間、液体浴52(
図4)の表面において浮遊するコーティング除去済みスクラップ床4によって浴が覆われていることが有利であることを、発明者らは確認した。浮遊するコーティング除去済みスクラップ床の存在により、液体金属浴の表面を酸化から保護することができる。ステップiv)の持続時間の大半は、ステップiv)の持続時間の少なくとも70%または80%または90%に相当する。ステップiv)の持続時間は、スクラップの装入を開始する時点と装入の終了によって定義される。装入の終了は、誘導炉内の溶融金属の量がその最大充填レベルに達した時点によって定義される。
【0077】
有利には、浮遊するコーティング除去済みスクラップ床の厚みは、少なくとも300mm、有利には1000mm(t、
図4)である。浮遊するコーティング除去済みスクラップ床は、完全に溶解するまでの液体金属浴の連続的供給を可能にする。酸化を回避するために、コーティング除去済みスクラップの個別実体を液体金属浴の表面に、多くとも2分間、好ましくは30秒~90秒間、維持することが有利であることを、発明者らは確認した。したがって、液体金属浴内でのそれらの浸漬を促進することが重要である。
【0078】
有利には、スクラップの浸漬は、るつぼの壁(
図4)に沿った下降速度場51を得るように液体金属浴の循環速度場を作用させることによって改善される。この下降循環速度場は、るつぼ形誘導炉の設計において周知であるラプラス力と呼ばれる電磁力の結果としてもたらされる。るつぼの壁に沿った下降速度場は、浮遊するコーティング除去済みスクラップ床内に存在するコーティング除去済みスクラップの個別実体の浸漬を容易にする。液体金属浴中の急速な浸漬を、本発明にしたがって使用される個別実体の特定の形状に起因するものと、発明者らはみなしている。実際、その粒度および平坦度により、これらの個別実体は、その最大の面に沿って平行に配設されたカードスタックのように、積上げた層の形態で組織される。これにより、液体金属浴は効果的に保護され、液体金属浴中への個別実体の導入は容易になる。これらの個別実体は相互に摺動し、るつぼの壁に沿って下へ進む。
【0079】
るつぼ102の周囲に誘導コイル101が存在することにより、本発明に係るスクラップの浸漬を改善することのできる下降速度場51をるつぼの壁に沿って得ることが可能である。この下降速度場51は、スクラップの浸漬を促す渦を創出する。
【0080】
浴の表面での渦の創出は、チャンネル形誘導炉を使用した場合には不可能である。発明者らによると、チャンネル形誘導炉では、本発明にしたがったスクラップを再溶融するための有利な条件を得ることができない。すなわち、浴の表面に渦が不在であると、本発明にしたがってスクラップを導入した場合、これらのスクラップは相互に積重なり、絶縁マットを作り、液体金属浴中に浸漬させられないことになる。スクラップが長時間にわたり液体金属浴上に維持された場合、スクラップは酸化し、金属収率を減少させる可能性がある。
【0081】
るつぼの壁に沿った下降速度場は、誘導炉の周波数を選択することによって得られる。50Hz~150Hz、好ましくは約60Hzの周波数を選択することで、下降速度場を得ることができる。この下降速度場が液体金属浴の上位表面でドームの形成を誘発することを、発明者らは確認した。このドーム形状は、液体中でのスクラップの浸漬を加速させることができる。下降速度場を修正するために炉の出力を作用させることもまた可能である。電磁流体力学計算が示すように、炉の充填レベルに応じて炉の周波数および/または出力を適応させることが可能である。下降速度場に関連するコーティング除去済みスクラップの個別実体の積上げは、液体金属中でのスクラップの浸漬にとって特に有利である。有利には、炉の出力および周波数パラメータは、コーティング除去済みスクラップ床の厚みおよびサイクルの段階(冒頭、再溶融終了、温度上昇および維持)に応じて適応される。
【0082】
容積質量が0.2~0.4t/m3である場合、スクラップは液体金属浴中に急速に浸漬されるということを、発明者らは確認した。したがって、これにより、スクラップの酸化が回避され、溶融の際の金属収率を最大化することが可能となる。
【0083】
スクラップの溶融は、第2の組成の液体金属浴の形成を可能にする。第2の組成は、概して、第1の組成とは異なるが、スクラップが初期溶湯と同じ組成を有する場合には同一であってもよい。
【0084】
スクラップの装入持続時間中およびその完全な再溶融の後、液体金属浴の温度は、750℃以下、好ましくは730℃以下である。
【0085】
本発明はまた、本発明の溶融方法によって得られた液体金属の鋳造ステップが行なわれるボウルまたは圧延プレート、押出しビレット、鍛造ブロックまたはインゴットなどの中間製品の製造方法にも関する。
【0086】
有利には、鋳造ステップの前に、金属は、場合によって存在する酸化物を除去しかつ/または水素含有量を減少させかつ/または望ましくないあらゆる不純物を取り除くように、脱ガスおよび/または濾過および/または処理される。
【0087】
実施例1-粉砕済みのコーティングされたスクラップの特性
この実施例では、コーティングされたスクラップは、使用済み飲料缶(UBC)に由来する。この実施例において、粉砕は、40mm未満の較正グリッドを伴うナイフミルを使用して行なわれた。
図3は、本発明に係るスクラップを代表するナイフミル内で得たスクラップの外観を表わしている。このように粉砕されたこれらのスクラップは、折畳み比(表2)、ふるい分けによるそれらの粒度(表2)、高さを測定することによるスクラップの平坦度(表3)、それらの見かけ密度(表1)を決定するように特徴付けされる。
【0088】
測定された個別実体の75%は、0.6以下の折畳み比を有する。測定された個別実体の74%は、8~50mmである粒度を有する。測定された個別実体の100%が、15mm以下の高さを有する。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
実施例2
先行実施例中で特徴付けされた本発明に係る粉砕済みのコーティングされたスクラップを、IDEXタイプのコーティング除去炉内に供給し、コーティング除去した。コーティング除去は、500kg/hの装入流量、1rpmの炉回転速度、そして440℃~540℃の煙出口温度で実施した。これらの条件により、0.1%~0.2%の変動する残留炭素を得ることができた。
【0094】
コーティング除去の後、予め液体溶湯が満たされたるつぼ形誘導炉内に、コーティング除去済みスクラップを導入した。初期溶湯は、3104のスクラップから作製されており、その体積は、るつぼの最大容量の約40%である。保護用塩は全く使用しなかった。コーティング除去済みスクラップを100℃超、典型的には200℃の温度で炉内に導入した。炉の周波数を、62Hzに設定した。サイクルの冒頭で、炉の出力を50%に設定した。60Hzに近い周波数を選択することによって、液体中での粉砕物の浸漬を加速することができる。コーティング除去済みスクラップのマットを、液体浴の表面に維持して、空気の侵入を削減し、浴の表面を酸化から保護した。金属の保護を強化するために、アルゴン吹込みも実施した。コーティング除去済みスクラップの装入は、約4000kg/hの速さで実施される。マット内で測定した温度範囲(220℃~250℃)内の合金の酸化反応速度を考慮すると、コーティング除去済みスクラップが浴の表面において酸化する時間はない。このスクラップが、1分超にわたり表面に滞留することはない。スクラップの個別実体の幾何形状およびそれらの層状組織化により、浴の表面におけるならびにるつぼに沿ったその流動が容易になる。
【0095】
本発明に係る方法を使用することによって、97.8%という正味金属収率を得ることができた。詳細には、元素Mgについての正味収率は94%であった。粉砕済みのコーティングされたスクラップの個別実体の幾何形状、詳細には折畳み比、粒度および平坦度の選択によって、この優れた収率が可能になると、発明者らは考えている。
【0096】
実施例3-参考
比較のため、ハンマミルによって得られる粉砕済みのコーティングされたスクラップ(
図5参照)について得られる折畳み比を、実施例1で記述したものと同じ原理にしたがって決定した。
【0097】
25個の試料について折畳み比を測定した。こうして、ハンマミルによって得られる粉砕済みスクラップでは、0.6未満の折畳み比を得ることができない(表5参照)ことが分かる。すなわち、100%のスクラップが、0.6超の折畳み比を有している。
【0098】
このことが、ナイフ粉砕によって、より鋭利な切断を有すること、ひいてはスクラップが折り返されるのを回避することが可能になるという事実に関係すると、発明者らはみなしている。
【0099】
【0100】
先行のものと同様に、粒度を測定した。すなわち、ハンマミルを用いて得られるスクラップは大半が、8~16mmである粒度を主として得ることを可能にしないということが確認される(表6参照)。
【0101】
【符号の説明】
【0102】
1 スクラップ
3 平坦度定規
4 スクラップ床
50 液体金属溶湯
51 下降速度場
52 液体金属浴の表面
100 るつぼ形誘導炉
101 誘導コイル
102 るつぼ
【国際調査報告】