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特表2024-532415環境に配慮したアルミニウム合金製スクラップの再溶融ライン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】環境に配慮したアルミニウム合金製スクラップの再溶融ライン
(51)【国際特許分類】
   C22B 9/187 20060101AFI20240829BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20240829BHJP
   C22B 21/06 20060101ALI20240829BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C22B9/187 Z
C22B7/00 F
C22B21/06
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513339
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 FR2022051620
(87)【国際公開番号】W WO2023031547
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】2109091
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2109082
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2109085
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500092697
【氏名又は名称】コンステリウム イソワール
【氏名又は名称原語表記】Constellium Issoire
(71)【出願人】
【識別番号】517422951
【氏名又は名称】コンステリウム ヌフ-ブリザック
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM NEUF-BRISACH
(71)【出願人】
【識別番号】522470817
【氏名又は名称】コンステリウム マッスル ショールズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM MUSCLE SHOALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ジュエ-パストル,ロラン
(72)【発明者】
【氏名】ピシャ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァセル,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァズ,エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA09
4K001GA17
(57)【要約】
スクラップ再溶融ラインにおいて、スクラップの貯蔵用に構成された少なくとも1つの貯蔵サイロと、スクラップを再溶融し再溶融液体金属を得ることを可能にする少なくとも2つの誘導炉と、少なくとも2つの誘導炉に向かってスクラップを供給する手段と、少なくとも1つの液体金属収容炉(6)と、収容炉に向かって再溶融液体金属を輸送する手段(5、15)と、を含むスクラップ再溶融ラインに関する。本発明はまた、誘導炉内の再溶融済みスクラップから液体金属を得る方法にも関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラップ再溶融ラインにおいて、
- スクラップの貯蔵用に構成された少なくとも1つの貯蔵サイロ(4)と、
- 前記スクラップを再溶融し再溶融液体金属を得ることを可能にする少なくとも2つの誘導炉(8、8’)、好ましくは少なくとも2つの円筒形誘導炉、より好ましくは少なくとも2つのるつぼ形円筒形誘導炉(9)と、
- 少なくとも2つの誘導炉に向かってスクラップを供給する手段(14)と、
- 少なくとも1つの液体金属収容炉(6)と、
- 液体金属収容炉(6)に向かって再溶融液体金属を輸送する手段(5、15)と、
を含むスクラップ再溶融ライン。
【請求項2】
前記少なくとも1つの貯蔵サイロ(4)が遮熱されており、任意には前記スクラップを加熱するように構成された加熱手段(401)を含む、請求項1に記載のスクラップ再溶融ライン。
【請求項3】
少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの誘導炉(8)を含む、請求項1または2に記載のスクラップ再溶融ライン。
【請求項4】
前記少なくとも1つの液体金属収容炉(6)が、再溶融液体金属によるおよび/または固体金属によるおよび/または一次液体金属によるおよび/または所与の組成を得ることを目的とした添加元素による供給を受け得る維持および/または溶融炉である、請求項1から3のいずれか一つに記載のスクラップ再溶融ライン。
【請求項5】
前記少なくとも1つの貯蔵サイロが、供給を受ける誘導炉1つにつき少なくとも1つの区画(41、42、43)を含む、請求項1から4のいずれか一つに記載のスクラップ再溶融ライン。
【請求項6】
コーティング除去炉(1)および、前記少なくとも1つの貯蔵サイロ(4)にコーティング除去済みスクラップを供給するコーティング除去済みスクラップ輸送手段(3)を含む、請求項1から5のいずれか一つに記載のスクラップ再溶融ライン。
【請求項7】
1mm未満の粒度の金属および非金属粒子である微粉を抽出するように構成された抽出手段(13)を含む、請求項6に記載のスクラップ再溶融ライン。
【請求項8】
粉砕機(20)、好ましくはナイフミルを含み、任意には前記粉砕機には、5~50mmの粒度を得ることを可能にするグリッドが備わっている、請求項6または7に記載のスクラップ再溶融ライン。
【請求項9】
アルミニウム製スクラップの再溶融方法において、
a. 少なくとも1つの粉砕機(20)にアルミニウム製スクラップ(100)を供給するステップと、
b. 前記スクラップ(100)を粉砕して、粒状スクラップ(101)を得るステップと、
c. 粒状スクラップの輸送手段を用いて、粒状スクラップ(101)を少なくとも1つのコーティング除去炉(1)に供給するステップと、
d. コーティング除去炉(1)内でコーティング除去を実施して、コーティング除去済みスクラップ(103)を得るステップと、
e. 抽出手段(13)を用いて、コーティング除去済みスクラップから粒度1mm未満の金属および非金属粉塵である微粉を除去するステップと、
f. コーティング除去済みスクラップ輸送手段(3)を用いて、コーティング除去済みスクラップ(103)を少なくとも1つの貯蔵サイロ(4)に供給するステップと、
g. コーティング除去済みスクラップ供給手段(14)を用いて、少なくとも1つの貯蔵サイロ(4)由来のコーティング除去済みスクラップを少なくとも2つのるつぼ形円筒形誘導炉(8)に供給するステップと、
h. コーティング除去済みスクラップの誘導による溶融を実施して、再溶融液体金属を得るステップと、
i. 再溶融液体金属輸送手段(5、15)によって、前記少なくとも2つのるつぼ形円筒形誘導炉由来の再溶融液体金属を少なくとも1つの液体金属収容炉(6)に供給して、鋳造液体金属を得るステップと、
を含む方法。
【請求項10】
ステップb)の際に、ナイフミルでスクラップを粉砕して、粉砕済みスクラップの少なくとも50%の個別実体が0.6以下の折畳み比(R)を有する粉砕済みスクラップ(102)を得ることを特徴とし、
ここで、個別実体の折畳み比(R)が、式:
【数1】
によって定義され、
ここで、折畳んだ表面積は、平面上の個別実体の正射影の最大表面積であり、広げた表面積は、広げられた後の同じ個別実体の総表面積である、
請求項9に記載のアルミニウム製スクラップの再溶融方法。
【請求項11】
前記粉砕機が、5~50mm、好ましくは8~50mm、より好ましくは8~16mmの粒度を有する粉砕済みスクラップを得ることを可能にするグリッドを備え、粒度がふるい分けによって測定されることを特徴とする、請求項10に記載のアルミニウム製スクラップの再溶融方法。
【請求項12】
粉砕済みスクラップが、50mm以下、好ましくは30mm以下、さらに一層好ましくは15mm以下の高さを有することを特徴とする、請求項10または11に記載のアルミニウム製スクラップの再溶融方法。
【請求項13】
サイロ(4、41、42、43)内のコーティング除去済みスクラップの温度が、断熱および/または加熱手段(401)を用いて100℃超、好ましくは150℃超そして好ましくは200℃超に維持される、請求項9から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
再溶融ステップg)の前に、高さH、最大内径Dのるつぼ形円筒形誘導炉内に、高さh、最大直径dの本質的に円筒形のアルミニウム合金製の再溶融ボウル(105)を装入し、ここでdが0.7D~0.97Dの範囲内、好ましくは0.84D~0.92Dの範囲内にある、請求項9から13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記再溶融ボウルの2分の1高さh/2に位置付けされた直径が、炉の底面からH/2-H/4からH/2+H/4までの距離のところに位置設定されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップc)~i)が、連続的に実施される、請求項9から15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
液体金属収容炉(6)が、再溶融液体金属によるおよび/または固体金属によるおよび/または一次液体金属によるおよび/または所与の組成を得ることを目的とした添加元素による供給を受ける、請求項9から16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
再溶融液体金属輸送手段が、液体金属収容炉(6)に向かう100から150トン/hまでの移送を可能にするために断面寸法が決定されたシュート(5)を含み、好ましくはシュートが断熱されかつ/または予熱手段を有している、請求項9から17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
コーティング除去済みスクラップ供給ステップg)および溶融ステップh)が、少なくとも300mmの高さの液体金属浴上のスクラップ床の存在を保証するために調節されている、請求項9から18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
2つの誘導炉のうちの少なくとも1つの誘導炉の保守および/または清掃の作業(10、11、12)を含み、これらのいわゆる保守および/または清掃作業は、少なくとも1つの別の誘導炉が動作中であるときに行なわれる、請求項9から19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
誘導炉および/または収容炉のスキミングおよび/または温度測定および/または試料採取および/または清掃ステップを含み、有利にはこれらのステップ(10、11、12)が自動化されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップh)の溶融ステップが、連続する少なくとも2つのステップで、すなわち誘導炉がコーティング除去済みスクラップの完全な溶融に至るまで40から80Hzまでの周波数で動作している第1のステップと、誘導炉がスキミングを可能にするために150Hz以上の周波数で動作する第2のステップとで実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
スキミングが、第2のステップの開始後2分から20分間持続する待機段階の後に実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
レードル(15)内に再溶融液体金属を採取し、有線誘導式台車(16)が前記レードルを液体金属収容炉(6)まで輸送する、請求項9から23のいずれか一つに記載の方法。
【請求項25】
未加工形態の、典型的にはプレートまたはビレットの鋳造方法において、請求項8から24のいずれか一つに記載の方法によって得られた鋳造液体金属を鋳造ライン(7)に供給する、鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、中間収容炉に連続的または半連続的に供給を行なうことのできる少なくとも2つのるつぼ型誘導炉を使用するアルミニウム製スクラップの再溶融ラインである。本発明の別の目的は、中間収容炉に連続的または半連続的に供給を行なうことのできる少なくとも2つのるつぼ型誘導炉を使用するアルミニウム製スクラップの再溶融方法である。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムの再生利用は、経済的で環境保護的であるという利点を有する。二次アルミニウムの生産は、一次アルミニウムに比べて最大95%少ないエネルギーしか必要とせず、CO排出量の削減を可能にする。アルミニウムの生産が環境に及ぼす影響を改善する目的で、アルミニウム業界は、再生利用ステップに際してスクラップの再溶融ステップ中に排出されるCOの量を削減しようとしている。
【0003】
コーティングされた製品、特にUBCの再生利用のためにこの業界において使用されている技術は、通常、冷間前処理ステップ(粉砕機、磁気選別およびエアブレードセパレータ)、「デコータ」内でのインキ、ワニスおよび他の有機物質の熱間除去ステップで構成された専用浄化ラインを利用する。スクラップは次に、典型的には、ガス炉内で再溶融される。サイドウェル型炉(「side-well」炉」)を挙げることができる。液体金属中に含まれる酸化物を除去するためには、塩の添加(場合に応じて1.5%~8%)による金属の処理が必要である(R.Evans、G.Guest、「The aluminium decoating handbook」、Stein Atkinston Stordy、Gillespie Powers internet source)。金属はその後、鋳造工場に向けて輸送されて、鋳造される。同じくガス技術を使用する別の代替案は、回転炉内で再溶融を実施することである。この解決法は、サイドウェル型炉の場合よりも高い塩レベルを必要とする(10%~15%)。有機物質の燃焼および金属の再溶融は、この場合、炉のエンクロージャ内で同時に行なわれる。別の代替案は、マルチチャンバ(multi-chamber)炉での再溶融である(「Alumnium recycling」、M.Schlesinger、CRC Press、(2007))。コーティングされたスクラップは、別個のチャンバ(垂直トンネルまたは水平傾斜路)内で、装入、予熱、コーティング除去される。有機物質の燃焼は、設備を暖めるのに寄与する。これは、塩無しのプロセスである。
【0004】
これらの解決法は全て、CO排出量の削減に適応されていないガス炉内で行なう必要があるという欠点を有する。
【0005】
CO排出量を削減するための1つの解決法は、使用される電気エネルギーがCOを排出しないことが条件で、電気炉を使用することである。誘導炉技術は、参考文献(R.Evans、G.Guest、「The aluminium decoating handbook」、Stein Atkinston Stordy、Gillespie Powers internet source)中でUBCの再生利用に関して記載されている。るつぼ形誘導電気炉は、優れたエネルギー効率という利点を有し、金属損失がほとんど発生しない。大容量チャンネル電気炉は、時として、新しい製造残片またはコーティング除去後の飲料缶の再溶融のために使用される(F.Herbulot - Recuperation et recyclage de l’aluminium - Techniques de l’Ingenieur - Mars 2001)。
【0006】
これらの著作中で開示されている誘導炉の開示対象の解決法は、誘導炉にはガス炉に比べて低い溶融能力しか無く、そのためにアルミニウム鋳物工場の鋳造装置および/または維持炉の供給を可能にする連続プロセスを備えることができないこと、そして他方では、誘導炉では清潔なスクラップを利用できる必要があることを理由として、経済的に実現性のある工業的応用を可能とするものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R.Evans、G.Guest、「The aluminium decoating handbook」、Stein Atkinston Stordy、Gillespie Powers internet source
【非特許文献2】「Alumnium recycling」、M.Schlesinger、CRC Press、(2007)
【非特許文献3】F.Herbulot - Recuperation et recyclage de l’aluminium - Techniques de l’Ingenieur - Mars 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、スクラップ再溶融ラインの新たな設計(Lay-out)およびCOの量を削減しながら優れたサイクル効率を得ることを可能にする方法を提案することによって、この課題を解決しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書中、「スクラップ」なる包括的表現は、異なる製造ステップにおいて生成されるアルミニウムおよび/またはアルミニウム合金製製品または使用後の製品の収集および/または回収の結果としてもたらされるアルミニウムおよび/またはアルミニウム合金製製品で構成された再生利用向け原料を意味する。スクラップは、必要な場合、あらゆる異物を除去するために選別されている。
【0010】
別段の記載の無いかぎり、アルミニウムおよびアルミニウム合金スクラップに関係する用語を定義している2003年9月のフランス規格NF EN12258-3号を参照し、詳細には、いかなる圧縮作業も受けておらずその各々の破片を個別に採取できるスクラップに対応する「バルク状スクラップ」、粉砕機、ナイフミルまたはハンマミルまたはチョッパといった機械を用いてより大きい部片を処理することによって実施される、数ミリメートルから数センチメートルの範囲内に含まれる寸法を有する部片で構成されたスクラップである「粒状スクラップ」、例えば塗料、ワニス、印刷用インキ、プラスチック、紙、金属などのあらゆるタイプのコーティングを有する部片で構成されたスクラップである「コーティングされたスクラップ」なる用語を使用するものとする。
【0011】
本発明に係る再溶融ラインの設計は、独立した複数の誘導炉を用いて得られると考えられる生産性よりもはるかに高い生産性を得ることを可能にする。
【0012】
本発明の第1の目的は、スクラップ再溶融ラインにおいて、スクラップの貯蔵用に構成された少なくとも1つの貯蔵サイロと、スクラップを再溶融し再溶融液体金属を得ることを可能にする少なくとも2つの誘導炉と、少なくとも2つの誘導炉に向かってスクラップを供給する手段と、少なくとも1つの液体金属収容炉と、収容炉に向かって再溶融液体金属を輸送する手段と、を含むスクラップ再溶融ラインに関する。
【0013】
少なくとも1つの貯蔵サイロが遮熱されていることが有利であり、任意には貯蔵サイロは、前記スクラップを加熱するように構成された加熱手段を含む。
【0014】
本発明によると、収容炉への連続的な供給を可能にする連続した方法を得る目的で、少なくとも2つの誘導炉、好ましくは少なくとも2つの円筒形誘導炉、より好ましくは少なくとも2つのるつぼ形円筒形誘導炉を有することが重要である。
【0015】
少なくとも3つの誘導炉、またはさらに一層好ましくは少なくとも4つの誘導炉を有することが有利であり得る。
【0016】
有利には、少なくとも1つの収容炉は、再溶融液体金属によるおよび/または固体金属によるおよび/または一次液体金属によるおよび/または所与の組成を得ることを目的とした添加元素による供給を受け得る維持および/または溶融炉である。
【0017】
少なくとも1つのサイロが、供給を受ける誘導炉1つにつき少なくとも1つの区画を含むことが有利である。この配置には、各々の誘導炉が区画によって供給されていることから、少なくとも2つの誘導炉についてサイロを共有できるという利点がある。
【0018】
有利には、ライン設計には、キルンとも呼ばれるコーティング除去炉が含まれる。コーティング除去は、金属の溶融を回避するため過度に高い温度まで加熱することなく、塗料、保護用ワニス、蓋シールおよび他の発煙性物質などの潜在的に存在する有機物質および湿気が除去される温度までスクラップを加熱することからなる。典型的には、温度は、450℃~540℃である。スクラップは、炉の雰囲気との熱伝導によって、好ましくは煙の後燃焼に由来しコーティング除去チャンバ内を循環する加熱気体によって加熱される。この作業は、一方ではスクラップを乾燥させ、他方では有機物質を除去することを可能にする。有機物質は、有機分子を破壊するため、後燃焼ユニット内でCOに変換されてよい。こうして、発煙性物質の無い浄化された乾燥スクラップが得られる。
【0019】
再溶融ラインが、コーティング除去炉および、前記少なくとも1つの貯蔵サイロにコーティング除去済みスクラップを供給するコーティング除去済みスクラップ輸送手段を含むことが有利である。実際、コーティング除去炉の熱の恩恵を受けかつ典型的には100℃の温度よりも高い高温スクラップを使用できるように、コーティング除去炉を少なくとも1つの貯蔵サイロと連結したことは有利である。
【0020】
1mm未満の粒度の金属および非金属粒子である微粉を抽出するように構成された抽出手段を有することが好ましい。この抽出手段は、特にコーティング除去済みスクラップの1mm未満の金属粒子を少なくとも1つの誘導炉内に導入される前に除去することができる。
【0021】
有利には、再溶融ラインは、粒状スクラップの供給を受ける。好ましくは、この粒状スクラップは、好ましくはナイフミルを用いた粉砕の後に得られる。このような理由から、粉砕機、好ましくはナイフミルが利用可能であることが有利であり、任意には前記粉砕機には、5~50mmの粒度を得ることを可能にするグリッドが備わっている。
【0022】
本発明の第2の目的は、アルミニウム製スクラップの再溶融方法において、
a) 少なくとも1つの粉砕機にアルミニウム製スクラップを供給するステップであって、好ましくはスクラップがバルク状であるステップと、
b) 前記スクラップを粉砕して、粒状スクラップを得るステップと、
c) 粒状スクラップの輸送手段、典型的にはベルトコンベアを用いて、粒状スクラップを少なくとも1つのコーティング除去炉に供給するステップと、
d) コーティング除去炉内でコーティング除去を実施して、コーティング除去済みスクラップを得るステップと、
e) 抽出手段を用いて、コーティング除去済みスクラップから粒度1mm未満の金属および非金属粉塵である微粉を除去するステップと、
f) コーティング除去済みスクラップ輸送手段(3)を用いて、コーティング除去済みスクラップを少なくとも1つの貯蔵サイロに供給するステップと、
g) コーティング除去済みスクラップ供給手段を用いて、少なくとも1つの貯蔵サイロ由来のコーティング除去済みスクラップを少なくとも2つのるつぼ形円筒形誘導炉に供給するステップと、
h) コーティング除去済みスクラップの誘導による溶融を実施して、再溶融液体金属を得るステップと、
i) 再溶融液体金属輸送手段(5、15)によって、前記少なくとも2つのるつぼ形円筒形誘導炉由来の再溶融液体金属を少なくとも1つの液体金属収容炉に供給して、鋳造液体金属を得るステップと、
を含む方法に関する。
【0023】
好ましくは、ステップb)の際に、ナイフミルでスクラップを粉砕して、粉砕済みスクラップの少なくとも50%の個別実体が0.6以下の折畳み比(R)を有する粉砕済みスクラップを得、ここで、個別実体の折畳み比(R)は、式:
【数1】
によって定義され、
ここで、折畳んだ表面積は、平面上の個別実体の正射影の最大表面積であり、広げた表面積は、広げられた後の同じ個別実体の総表面積である。
【0024】
好ましくは、前記粉砕機は、5~50mm、好ましくは8~50mm、より好ましくは8~25mmまたは8~16mmの粒度を有する粉砕済みスクラップを得ることを可能にするグリッドを備え、粒度はふるい分けによって測定される。
【0025】
好ましくは、粉砕済みスクラップは、50mm以下、好ましくは30mm以下、さらに一層好ましくは15mm以下の高さを有する。
【0026】
粉砕済みスクラップの幾何形状は、一方ではコーティング除去作業、他方では溶融作業を容易にするために重要である。実際、0.6以下の折畳み比を目標にすることによってスクラップをより良くコーティング除去することが可能であるということに、発明者らは気付いた。他方で、5~50mmの粒度も目標にすることによって、迅速かつ効果的な再溶融を可能にする50mm以下の高さを有するスクラップを得ることが可能であった。
【0027】
好ましくは、サイロ内のコーティング除去済みスクラップの温度は、断熱および/または加熱手段を用いて100℃超、好ましくは150℃超そして好ましくは200℃超に維持される。
【0028】
好ましくは、誘導炉のうちの少なくとも1つ炉内で第1の溶融浴を実施する必要がある場合、再溶融ステップg)の前に、高さH、最大内径Dのるつぼ形円筒形誘導炉内に、高さh、最大直径dの本質的に円筒形のアルミニウム合金製の再溶融ボウルの形態をした塊状金属を装入することができ、ここでdは、0.7D~0.97Dの範囲内、好ましくは0.84D~0.92Dの範囲内にある。
【0029】
塊状金属の誘導炉の加熱効率を増大させるために、0.7D~0.97Dの範囲内で関係式にしたがった誘導炉の直径dに適応された寸法を有する円筒形ボウルを使用することが有利である。
【0030】
再溶融ボウルの2分の1高さh/2における直径を、H/2-H/4からH/2+H/4までの炉の底面からの距離のところに位置付けすることが有利である。
【0031】
好ましくは、ステップc)~i)は、連続的に実施される。
【0032】
好ましくは、液体金属収容炉は、再溶融液体金属によるおよび/または固体金属によるおよび/または一次液体金属によるおよび/または所与の組成を得ることを目的とした添加元素による供給を受ける。
【0033】
好ましくは、再溶融液体金属輸送手段は、液体金属収容炉(6)に向かう100から150トン/hまでの移送を可能にするために断面寸法が決定されたシュートを含み、好ましくは、シュートは、断熱されかつ/または予熱手段を有している。
【0034】
好ましくは、コーティング除去済みスクラップ供給ステップg)および溶融ステップh)は、少なくとも300mmの高さの液体金属浴上のスクラップ床の存在を保証するために調節されている。
【0035】
好ましくは、本発明に係る方法は、保守および/または清掃ステップを含む。これらのいわゆる保守および/または清掃作業は、少なくとも1つの別の誘導炉が動作中であるときに行なわれる。
【0036】
好ましくは、本発明に係る方法は、誘導炉および/または収容炉のスキミングおよび/または温度測定および/または試料採取および/または清掃ステップを含む。好ましくは、これらのステップは、自動化されている。
【0037】
好ましくは、ステップh)の溶融ステップは、連続する少なくとも2つのステップで、すなわち誘導炉がコーティング除去済みスクラップの完全な溶融に至るまで40から80Hzまでの周波数で動作している第1のステップと、誘導炉がスキミングを可能にするために150Hz以上の周波数で動作する第2のステップとで実施される。
【0038】
好ましくは、スキミングは、第2のステップの開始後2分から20分間持続する待機段階の後に実施される。この第2のステップおよびその待機段階は、浴の沈降を可能にするという利点を有する。
【0039】
好ましくは、レードル内に再溶融液体金属を採取し、有線誘導式台車(16)が前記レードルを液体金属収容炉まで輸送する。
【0040】
本発明の第3の目的は、未加工形態の、典型的にはプレートまたはビレットの鋳造方法において、本発明の第2の目的に係るスクラップの再溶融方法によって得られた鋳造液体金属を鋳造ラインに供給する、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】2つの誘導炉と1つのサイロを伴う再溶融ラインの本発明の第1の実施形態の概略的上面図である。
図2】本発明の第1の実施形態の概略的側面図である。
図3】2つの誘導炉および、2つの区画を有する1つのサイロを伴う再溶融ラインの本発明の第1の実施形態の一変形形態の概略的上面図である。
図4】2つの誘導炉および2つのサイロを伴う再溶融ラインの本発明の第2の実施形態の概略的上面図である。
図5】本発明の第2の実施形態の概略的側面図である。
図6】3つの誘導炉および、3つの区画を有する1つのサイロを伴う再溶融ラインの本発明の第3の実施形態の概略的上面図である。
図7】4つの誘導炉および2つのサイロを伴い、各々のサイロが誘導炉に供給するための2つの区画を有している再溶融ラインの本発明の第4の実施形態の概略的上面図である。
図8】4つの誘導炉と4つのサイロを伴う再溶融ラインの本発明の第5の実施形態の概略的上面図である。
図9】貯蔵サイロの供給の概略的上面図である。
図10】貯蔵サイロの供給の概略的側面図である。
図11】誘導炉へのボウルとコーティング除去済みスクラップの装入の概略図である。
図12】撹拌運動を伴うるつぼ形誘導炉の図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1(上面図)および2(概略的側面図)は、本発明の第1の実施形態を例示する。スクラップ100は、コーティング除去炉(1)に供給を行なう。スクラップは概して、コーティングされている。好ましくは、本発明に係る方法によって再生利用される可能性のあるスクラップは、粒状体101の外観を示す。有利には、スクラップが、ナイフミルを用いて粉砕され、分割された形態で供給されることが好ましい。以下の明細書においては、ナイフミルを用いて粉砕されたスクラップを「粉砕済みスクラップ」102と呼ぶ。
【0043】
以下において、別段の記載の無い限り、個別実体の%単位の割合は、個別実体の数値的%に相当する。
【0044】
粒状スクラップの個別実体の大部分が、0.6以下の折畳み比を有することが好ましい。好ましくは、粒状スクラップの個別実体の少なくとも50%が、0.6以下の折畳み比(R)を有する。好ましくは、粒状スクラップの個別実体の少なくとも60%、または70%または80%が、0.6以下の折畳み比(R)を有する。個別実体の折畳み比は、等式1
【数2】
によって定義される。
【0045】
ナイフミル20を用いてバルク状スクラップを粉砕した場合、このような折畳み比を得ることが可能であることを、発明者らは確認した。所望の幾何形状、詳細には0.6以下の折畳み比を得るためには、ハンマミルの使用は推奨されないことを、発明者らは実際、確認した。実際、ハンマミルを用いて実施されたスクラップ粉砕作業は、バルク状スクラップに折り目を発生させ、0.6超の折畳み比を有する「ペレット」を形成する傾向を有する。
【0046】
したがって、好ましくは、コーティング除去炉1内に入る粉砕済みスクラップの個別実体の少なくとも50%は、0.6以下の折畳み比(R)を有する。好ましくは、粉砕済みスクラップの個別実体の少なくとも60%、または70%または80%が、0.5または0.4以下の折畳み比(R)を有する。
【0047】
粉砕済みスクラップの個別実体の折畳み比は、粉砕ステップの際のこの個別実体の折畳まれ方を定量化する。この比が大きければ大きい程、個別実体の折畳みレベルは高く、したがって特に球形の形態でコンパクトである。この比が小さければ小さいほど、個別実体は平担である。誘導炉のうちの1つにおいて再溶融ステップの際に液体金属から酸化物を分離するために、再生利用フラックスと呼ばれる塩の使用を回避するために0.6以下の折畳み比を有する必要があるということを、発明者らは確認した。
【0048】
折畳んだ表面積は、粉砕済みスクラップの個別実体の見かけ表面積である。折畳んだ表面積は、平面上の個別実体の正射影の最大表面積として定義される。
【0049】
広げた表面積は、粉砕済みスクラップの個別実体の展開表面積に対応する。広げた表面積は、広げられた後の粉砕済みスクラップの個別実体の総表面積として定義される。個別実体の厚みおよび質量ならびに平均容積質量が分かっていることから、広げた表面積を容易に決定することができるということに留意すべきである。また、個別実体を広げることによって広げた表面積を得ることも可能である。
【0050】
有利には、粉砕済みスクラップの個別実体の少なくとも50%は、5~50mm、好ましくは8~50mm、より好ましくは8~16mmの粒度を有し、粒度は、ふるい分けによって測定される。
【0051】
有利には、粉砕済みスクラップは、5~50mm、好ましくは8~50mm、さらに一層好ましくは8~16mmの粒度を得るように適応されたグリッドを備えたナイフミルを用いた粉砕ステップを含む方法にしたがって得られる。
【0052】
有利には、粉砕済みスクラップの個別実体は、実質的に平坦である。粉砕済みスクラップの個別実体は、長さ、幅および高さによって定義される架空の体積に収まり得る。粉砕済みスクラップの個別実体の平坦度は、mm単位で表わされた架空体積の最小高さによって特徴付けされる。高さ(h)を測定するために、粉砕済みスクラップの個別実体は、実体の最小高さを得るように平坦度定規上に据え付けられる。平坦度定規は、測定用大理石などのあらゆる平坦な表面であり得る。
【0053】
有利には、粉砕済みスクラップの個別実体の少なくとも50%または60%または70%または80%が、50mmまたは40mmまたは30mmまたは20mmまたは15mmまたは10mmまたは5mm以下の高さを有する。粉砕済みスクラップの個別実体の高さがコーティング除去作業によっては修正されないことを、発明者らは確認した。粉砕済みスクラップの大半の個別実体が50mmまたは40mmまたは30mmまたは20mmまたは15mmまたは10mmまたは5mm以下の高さを有することによって、積上げられた層の形態でのそれらの配設が促進され、誘導炉の液体金属浴内でのそれらの浸漬が改善されると、発明者らは考えている。
【0054】
有利には、粉砕済みスクラップの容積質量は、0.2~0.4t/mである。
【0055】
グリッドを備えたナイフミル内でのこの予備的粉砕ステップは、図9に表わされている以下の連続的ステップを含むアルミニウム合金製スクラップ再溶融方法に対応する。
- 典型的には、アルミニウム製の家庭用包装材、典型的にはアルミニウム製飲料缶に由来する、アルミニウム合金ベースのスクラップ100、好ましくはバルク状スクラップ、通常はコーティングされたスクラップを供給するステップ、
- 任意にはグリッドを備えた、ナイフミル20内で前記スクラップを粉砕して、個別実体で構成された粉砕済みスクラップ102を得るステップ、
- 輸送手段2によりコーティング除去炉1に粉砕済みスクラップ102を供給するステップ、
- 前記粉砕済みスクラップのコーティング除去を実施して、コーティング除去済みスクラップ103を得るステップ、
- 輸送手段3によって、貯蔵サイロ4にコーティング除去済みスクラップ103を供給するステップ。
好ましくは、コーティング除去炉1の出口で、抽出手段13により、1mm未満の粒度の金属または非金属粒子である微粉を抽出する。
【0056】
「微粉」とは、粉塵に類似する1mm未満の粒度の金属または非金属粒子のことである。金属微粉は酸化し溶融浴中に浸漬できない傾向を有することから、再溶融作業の際に微粉が存在することは望ましくない。
【0057】
スクラップの供給(2)は、低温または高温でのスクラップの輸送に好適である。
【0058】
コーティング除去炉1は、例えば、450℃~540℃の温度での塗料、保護用ワニス、蓋のシールおよび他の発煙性物質の除去を可能にする。コーティング除去後に、乾燥ステップを実施することができる。
【0059】
コーティング除去または乾燥作業がスクラップの折畳み比、平坦度、形状を修正しないことを、発明者らは確認した。したがって、コーティング除去済みスクラップは、供給された粉砕済みスクラップと同じ折畳み比、同じ平坦度、同じ粒度を有する。コーティング除去済みスクラップの容積質量は、粉砕済みスクラップの容積質量に比べわずかに修正され、0.2~0.4t/mにとどまる。
【0060】
コーティングされた表面がコーティング除去炉の雰囲気と直接接触ししたがってコーティング除去作業の際に介入するスクラップの表面における質量および熱の交換が可能なかぎり効率良く起こり得るように、コーティング除去炉内に入るスクラップの折返しが最も少なくなることが好ましいことを、発明者らは確認した。このような理由から、0.6以下の折畳み比で粉砕済みスクラップを主に処理することが有利である。
【0061】
コーティング除去済みスクラップの輸送手段(3)は、好ましくは100℃超の温度で遮熱されかつ/または加熱手段(401)を備えている貯蔵サイロ(4)に供給を行なうことを可能にする。サイロ内でのコーティング除去済みスクラップの温度は好ましくは、液体金属内への装入前に200℃~450℃である。スクラップの微細な粒子、典型的には0.1mm未満のサイズの粒子の抽出手段(13)が、コーティング除去済みスクラップコンベア上に位置付けされる。これらの手段は有利には、スクラップがもはや熱によって過度に凝集させられないように、典型的にはコーティング除去炉(1)の出口から少なくとも5mという十分な距離のところに設置される。また、これらの抽出手段(13)を、コーティング除去炉内に設置してこの炉の撹拌の恩恵を受けるようにすることも企図可能である。
【0062】
コーティング除去前のスクラップは、典型的には少なくとも1.5重量%の初期残留炭素量を有する。有利には、コーティング除去ステップ後、コーティング除去済みスクラップは、0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、さらに一層好ましくは0.1重量%未満の残留炭素量を有する。重量%単位の残留炭素量は、LECO社が提供する計器などの適切な計器を用いて測定され得る。分析は、コーティング除去ステップ後のスクラップの所与の質量をアルゴン流の下で250℃~550℃の温度に炉内で維持し、触媒反応炉内で煙をCOに転換させることからなる。炭素の秤量は、赤外線プローブを介してCOの割合を秤量することによって評価される。
【0063】
2つの誘導炉(8)には、コーティング除去済みスクラップ供給手段(14)を用いてコーティング除去済みスクラップが供給される。
【0064】
コーティング除去済みスクラップ供給手段(14)は、好ましくは、典型的には1mm未満の微細なスクラップ粒子を除去することのできるふるいを含むホッパである。
【0065】
誘導炉(8)は、溶融の際に閉じられる蓋(81)を含む。典型的には、溶融を加速する目的で、誘導炉の装入の際に溶湯が維持される。
【0066】
必要な場合には、溶湯を調製することが可能である。液体金属の初期溶湯は、コーティング除去ステップ後に得られた清潔なスクラップから、または薄板もしくは厚板の切断残片または切断骨格部などの塊状廃棄物から得ることができ、前記塊状廃棄物は、その組成が最終的組成を害することのない、清潔なそして好ましくはより純度が高いスクラップと相容れる組成の合金で構成されている。典型的には、塊状廃棄物は、3XXXシリーズのアルミニウム合金、典型的にはAA3104タイプの合金である。液体金属溶湯は、また、清潔なスクラップと相容れる1xxx、3xxx、5xxx、6xxx、8xxxタイプの合金の再溶融インゴットの溶融によっても得ることができる。連続鋳造の場合、液体金属溶湯は有利には、先行する鋳造の残留部分で構成されていてよい。
【0067】
溶湯の体積は、誘導炉の総体積の約30%~60%を占め、典型的には誘導炉の容量の半分を占める。溶湯の体積が小さすぎると、溶湯が液体状態を維持するのに十分な熱容量を有さず、炉内で凝固するというリスクがある。溶湯を用いた作動により、2t/h~4t/hの有利な溶融率を得ることができる。
【0068】
各々の誘導炉はまた、図1には表わされていないが、特に工場の製造または他の塊状廃棄物に由来する塊状スクラップの供給を受けることもできる。
【0069】
有利には、誘導炉8は、円筒形誘導炉、好ましくはるつぼ形円筒形誘導炉である。
【0070】
例えば図12に表わされているるつぼ形円筒形誘導炉(8)は、本質的に、溶融すべき金属の塊が内部に置かれるるつぼ801を形成する突固めされた練り土製の耐火性ライニングまたは予備焼成された耐火性シェルを取り囲み、冷却液の循環によって冷却される1つまたは2つの誘導コイル801で構成されている。
【0071】
有利には、図11に表わされているるつぼ形円筒形誘導炉8には、高さhおよび最大直径dの本質的に円筒形のボウル105の形態で供給されてよい。前記ボウルは、高さH、最大内径Dの円筒形誘導炉内に装入され得、ここで、前記ボウルの高さ方向は、炉の高さ方向に対し実質的に平行である。前記ボウルの寸法dの最大直径は有利には、0.7D~0.97Dの範囲内、そして好ましくは0.84D~0.92Dの範囲内にある。
【0072】
有利な一実施形態において、るつぼ形円筒形誘導炉はまず最初に、コーティング除去済みスクラップにより部分的に充填され、その後、高さh、最大直径dの本質的に円筒形のボウルが導入され、その後改めて、コーティング除去済みスクラップが、特にボウルと炉壁の間に残留する空間内に導入され、装入は最終的に、コーティング除去済みスクラップによって完了する。
【0073】
溶融をより迅速化しかつその消費エネルギーを削減するためには、少なくとも1つのボウルを炉の2分の1の高さのところに位置付けすることが有利である。したがって、有利な一実施形態においては、本質的に円筒形のボウルの2分の1の高さh/2に位置付けされた直径は、炉の底面すなわちるつぼの底面からH/2-H/4~H/2+H/4、そして好ましくはH/2-H/5~H/2+H/5の距離のところに位置設定されている。
【0074】
装入物のタイプ(塊状またはスクラップの形態)の如何に関わらず、再溶融液体金属浴を得るために誘導による装入物の溶融が実施される。溶融は、蓋を伴ってまたは伴わずに、不活性雰囲気下でまたは周囲空気において実施可能である。使用される出力および周波数は、使用される炉および装入物に応じて選択される。
【0075】
再溶融ステップの持続時間の大半の間、液体浴110の表面において図12に表わされているような浮遊するコーティング除去済みスクラップ床1020によって浴が覆われていることが有利であるということを、発明者らは確認した。浮遊するコーティング除去済みスクラップ床1020の存在により、液体金属浴の表面を酸化から保護することができる。再溶融ステップの持続時間の大半は、再溶融ステップの持続時間の少なくとも70%または80%または90%の持続時間に相当する。再溶融ステップの持続時間は、スクラップ装入の開始時点と装入の終了によって定義される。装入の終了は、誘導炉内の溶融した金属の量がその最大充填レベルに達した時点によって定義される。
【0076】
有利には、浮遊するコーティング除去済みスクラップ床1020の厚みtは、少なくとも300mm、有利には少なくとも1000mmである。浮遊するコーティング除去済みスクラップ床は、完全に溶解するまでの液体金属浴の連続的供給を可能にする。
【0077】
本発明に係る粉砕済みスクラップを使用した場合、液体金属浴中でのスクラップの浸漬が容易になることを、発明者らは確認した。使用された個別実体の(ここでは高さにより定義される)粒度および平坦度により、これらの個別実体は、その最大の面に沿って平行に配設されたカードスタックのように、積上げた層の形態で組織される。これにより、液体金属浴は効果的に保護され、液体金属浴中への個別実体の導入は容易になる。これらの個別実体は相互に摺動し、るつぼの壁に沿って下へ進む。
【0078】
酸化を回避するために、コーティング除去済みスクラップの個別実体を液体金属浴の表面に、多くとも2分間、好ましくは30秒~90秒間、維持することが有利である。したがって、液体金属浴内でのそれらの浸漬を促進することが重要である。
【0079】
有利には、スクラップの浸漬は、るつぼ810の壁に沿った下降速度場を得るように液体金属浴の循環速度場を作用させることによって改善される。この下降速度場は、スクラップの浸漬を促す渦を創出する。この下降循環速度場は、るつぼ形誘導炉の設計において周知であるラプラス力と呼ばれる電磁力の結果としてもたらされる。るつぼの壁に沿った下降速度場は、浮遊するコーティング除去済みスクラップ床内に存在するコーティング除去済みスクラップの個別実体の浸漬を容易にする。
【0080】
電磁力を使用することによる浴の表面での渦の創出は、チャンネル形誘導炉を使用した場合には不可能である。発明者らによると、チャンネル形誘導炉では、本発明にしたがったスクラップを再溶融するための有利な条件を得ることができない。すなわち、浴の表面に渦が不在であると、本発明にしたがってスクラップを導入した場合、これらのスクラップは相互に積重なり、絶縁マットを作り、液体金属浴中に浸漬させられないことになる。スクラップが長時間にわたり液体金属浴上に維持された場合、スクラップは酸化し、金属収率を減少させる可能性がある。
【0081】
るつぼの壁に沿った下降速度場は、誘導炉の周波数を選択することによって得られる。50Hz~150Hz、好ましくは約60Hzの周波数を選択することで、下降速度場を得ることができる。この下降速度場が液体金属浴の上位表面でドーム805の形成を誘発することを、発明者らは確認した。このドーム形状は、液体中でのスクラップの浸漬を加速させることができる。下降速度場を修正するために炉の出力を作用させることもまた可能である。電磁流体力学計算が示すように、炉の充填レベルに応じて炉の周波数および/または出力を適応させることが可能である。下降速度場に結び付けられたコーティング除去済みスクラップの個別実体の積上げは、液体金属中でのスクラップの浸漬にとって極めて有利である。有利には、炉の出力および周波数パラメータは、コーティング除去済みスクラップ床の厚みおよびサイクルの段階(冒頭、再溶融終了、温度上昇および維持)に応じて適応される。
【0082】
溶融は、蓋が有る状態または無い状態で、不活性雰囲気下または周囲空気において実施可能である。使用される出力および周波数は、使用される炉および/または装入物に応じて選択される。周波数は特に、誘導炉の寸法に適応させられる。
【0083】
一実施形態において、溶融は装入物を完全に導入する前に開始され得る、すなわち装入物がひとたび部分的に溶融した時点で、場合によっては、供給手段(14)を用いて装入サイクルを再開することができる、という点に留意すべきである。
【0084】
任意には、目標の組成に達するために、組成調整用の合金元素を次に炉入れする。合金元素は概して、単一元素でもしくはこれらの元素を含有する強力に合金化されたアルミニウム合金の形態で、または添加用純金属の形態で添加される。合金元素を添加するために使用される様々な形態が、「母合金および添加用金属」を意味する「MAAM」という略号で知られている。
【0085】
0.2~0.4t/mの容積質量について、スクラップが液体金属浴中に急速に浸漬されることを、発明者らは確認した。これにより、スクラップの酸化が回避され、溶融の際の金属収率を最大化することが可能になる。
【0086】
誘導炉は、再溶融液体金属110の獲得を可能にする。スクラップが溶融した時に、誘導炉を空にするために、再溶融液体金属の輸送手段5、15が利用可能である。移送シュート5を介して湯道に向かうまたはレードルによる液体輸送を実施できるように一方向または二方向で傾動し得る誘導炉を有することが有利である。
【0087】
移送シュート5は、再溶融液体金属収容炉6に供給することを可能にする。
【0088】
このシュートは、好ましくは、100~150トン/hの高速移送を可能にするため、断面、断熱、予熱の面で最適化されている。
【0089】
収容炉は同様に、レードル15による供給を受けることができる。レードルは、誘導炉からサイフォン式に、または注湯によって充填される。好ましくは、再溶融液体金属収容炉6が満杯である場合または、再溶融液体金属収容炉内に存在する液体金属の組成と相容れる組成を再溶融液体金属が有している場合に、これらのレードルが使用される。レードル15は、レードル予熱器(図示せず)内で予熱可能である。レードル15は、蓋151を用いて閉じることができる。レードルは、矢印によって表示されているように、例えばレードルの輸送トラックを用いてかまたは有線誘導式台車(図示せず)によって収容炉6に向かってかまたは別の炉に向かって移動可能である。
【0090】
誘導炉のスキミング、温度測定、サンプル採取および清掃ステップまたは誘導炉の機能に必要な他のあらゆるステップが全面的に自動化されていることが有利である。各々の誘導炉について、ツールマニピュレータロボット10が、これらの動作を自動的に実施するために利用可能なツール12を把持することができる。ツール12のリストには、スキミングショベルおよび/またはピンレードルおよび/または壁面クリーニングスクレーパ、および/または温度測定用熱電対あるいは誘導炉の機能に適応可能な他のあらゆるツールがあり得る。クリーニングスクレーパにより回収されたドロスは、近くに配置されたドロスタンク11内に注ぎ込まれる。
【0091】
好ましくは、溶融ステップは、以下の少なくとも2つのステップで行なわれる。
第1のステップは、40~150Hz、好ましくは50Hz~70Hzの周波数で実施される。この第1のステップ中に、コーティング除去済みスクラップは誘導炉内に導入される。液体金属の表面のドームおよびるつぼの壁に沿って下降する場を創出することによって、これらのコーティング除去済みスクラップの浸漬を確実にすることが重要である。これは、詳細には、40~150Hz、好ましくは50Hz~70Hzの周波数で作業することによって得ることができる。炉の出力は典型的には、公称出力の40%超である。
【0092】
第2のステップは、炉のスキミングを行うことを目的としている。導入された全てのスクラップが溶融した時に、形成された酸化物および/またはドロスを除去するために液体金属のスキミングを行うことが好ましい。効率の良いスキミングを可能にするためには、浴を沈降させることが重要である。このとき、炉の周波数を150Hz超、典型的には160Hz~400Hzの周波数に調節することによって、浴の撹拌を停止させる。炉の出力もまた、典型的には炉の公称出力の20%以下の出力に低減され得る。しかしながら、いかなる浴の凝固も回避するために、680℃~750℃、好ましくは680℃~730℃の液体金属温度を維持するようにすることが重要である。スキミングは、第2のステップの開始の後典型的には2分~20分、好ましくは2分~15分、さらに一層好ましくは5分~10分の待機時間の後で実施される。
【0093】
収容炉6は、誘導炉内で得た再溶融液体金属による供給を受けることができるが、特に工場の製造に由来するかまたは他の塊状廃棄物に由来する塊状スクラップによる供給を受けることもできる。
【0094】
収容炉(6)は、組成調整可能である。任意には、目標の組成に達するために、組成調整用の合金元素を炉入れする。合金元素は概して、単一元素でもしくはこれらの元素を含有する強力に合金化されたアルミニウム合金の形態で、または添加用純金属の形態で添加される。合金元素を添加するために使用される様々な形態が、「母合金および添加用金属」を意味する「MAAM」という略号で知られている。
【0095】
収容炉(6)は、鋳造ライン7の供給を行うことができる。
【0096】
実際、シュート5または他のあらゆる適応した手段を用いて鋳造ライン7に収容炉6を連結することが有利である。鋳造ラインは、プレートまたはビレットの鋳造中に降下装置によって降下しながら移動する仮底によって鋳造の当初に閉じられている下端部を除いて、開放した端部を有する、円筒形または矩形の管状垂直方向半連続鋳造用金型を含む、プレートまたはビレットの直接冷却式垂直半連続鋳造装置を含んでおり、ここで上端部は金属供給用に意図され、下端部はプレートまたはビレットの出口用に意図され、前記上端部には、凝固先端と接触して液体金属マーシュに鋳造液体金属を供給する手段、典型的にはノズルまたはシュート、そして任意には、金型内に導入され得る分配器が備わっている。本発明によると、鋳造装置の鋳造液体金属の供給手段は、収容炉6に連結されている。
【0097】
図3は、誘導炉(8)がそれらにスクラップを供給する唯一の貯蔵サイロ(4)の周りに誘導炉(8)が配置されている第1の実施形態の変形形態を例示する。この変形形態におけるサイロは、2つの誘導炉の各々に供給する少なくとも2つの区画(41、42)を含む。
【0098】
図4(上面図)および図5(側面図)は、誘導炉(8)が、別個の貯蔵サイロ(4)によって各々供給されている第2の実施形態を例示している。この構成は、サイロの各々に異なるスクラップを供給することを可能にする。異なるとは、異なる化学組成のアルミニウム合金製のスクラップを意味する。このことには、工場において、化学組成の観点から見て十分に識別された異なるスクラップ供給源がある場合に有利であり得る。別個のサイロを伴うこのタイプの構成は、使用される誘導炉の数の如何に関わらず使用可能である。
【0099】
図6は、3つの区画(41、42、43)を含む1つのサイロ(4)によって3つの誘導炉(8)が供給される第3の実施形態を例示している。分配器(31)が、3つのサイロに供給を行なうことを可能にしている。この実施形態においては、液体金属収容炉は、シュートにより供給されず、唯一、矢印によって象徴されている有線誘導式台車(16)によって輸送されるレードル(15)によって供給される。
【0100】
図7は、4つの誘導炉(8)が、各々2つの区画(41、42)を含む2つのサイロ(4)によって供給されている第4の実施形態を例示している。収容炉(6)は、中央位置にあり、こうして、誘導炉の各々の内に格納された再溶融液体金属の組成に応じて金属の組成調整を最適化することが可能になる。
【0101】
図8は、4つの誘導炉(8)が、4つのサイロ(4)により供給され、ツールマニピュレータロボット(10)、ドロスタンク(11)およびツール(12)が、2つの炉に共有されている第5の実施形態を例示している。
【符号の説明】
【0102】
1 コーティング除去炉
3 輸送手段
4 貯蔵サイロ
5 輸送手段
6 液体金属収容炉
7 鋳造ライン
8 誘導炉
13 抽出手段
14 供給手段
16 有線誘導式台車
20 粉砕機
100 スクラップ
101 粒状スクラップ
102 粉砕済みスクラップ
103 コーティング除去済みスクラップ
105 ボウル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】