(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】回転中心データを術前に評価するための外科手術計画システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B34/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513444
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 US2022041846
(87)【国際公開番号】W WO2023034195
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514290052
【氏名又は名称】アースレックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARTHREX, INC.
【住所又は居所原語表記】1370 Creekside Blvd, Naples, FL 34108, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニック・メトカーフ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・メガー
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン・エヴァンズ
(57)【要約】
術前、術中、および/または術後に、外科手術計画を作成、編集、実行、および/またはレビューすることを含む、整形外科手技を計画するための外科手術計画システムおよび方法が開示される。外科手術計画システムおよび方法は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心に対して、計画された術後のインプラントの回転中心を術前に評価するために使用されてもよい。計画された術後のインプラントの回転中心と術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を利用して、所与の患者の解剖学的構造に最も適切な具体的なインプラントの回転中心を最適化し、それによって外科手術転帰を改善してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術計画システムであって、
コンピュータ実行可能命令を記憶するように構成されたメモリデバイスと、
前記メモリデバイスに動作可能に連結され、かつ前記コンピュータ実行可能命令を実行して、
外科手術計画環境内の骨モデルに対するインプラントモデルの位置に関連する入力を受信し、
前記インプラントモデルの計画された術後のインプラントの回転中心と前記骨モデルの術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間の偏差を計算するように構成されたプロセッサと、を含む、外科手術計画システム。
【請求項2】
前記術前の生来の解剖学的構造の回転中心が、前記骨モデルに関連付けられた関節の関節機構がそれを中心として周回する前記生来の回転中心である、請求項1に記載の外科手術計画システム。
【請求項3】
前記術前の生来の解剖学的構造の回転中心が、前記骨モデルに関連付けられた患者の本来の悪化していない解剖学的構造の補間である、請求項2に記載の外科手術計画システム。
【請求項4】
前記計画された術後のインプラントの回転中心が、前記インプラントモデルに関連付けられたインプラントに関連付けられた値である、請求項1に記載の外科手術計画システム。
【請求項5】
前記インプラントがグレノスフィアインプラントである、請求項4に記載の外科手術計画システム。
【請求項6】
前記インプラントが上上腕骨頭インプラントである、請求項4に記載の外科手術計画システム。
【請求項7】
前記偏差が、三次元空間における前記計画された術後のインプラントの回転中心と前記術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のベクトルの長さを代表するデルタ距離である、請求項1に記載の外科手術計画システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記デルタ距離を前記外科手術計画環境のユーザーインターフェース内に表示させるようにさらに構成される、請求項7に記載の外科手術計画システム。
【請求項9】
前記デルタ距離が、前記計画された術後のインプラントの回転中心と前記術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間に延在する線によって視覚的に指示される、請求項8に記載の外科手術計画システム。
【請求項10】
前記デルタ距離が、前記ユーザーインターフェースのグラフィックインジケータの数値によって視覚的に示される、請求項8に記載の外科手術計画システム。
【請求項11】
前記プロセッサが、類似の回転中心特性を有する記録について、前記外科手術計画システムのデータベースに問い合わせるようにさらに構成される、請求項1に記載の外科手術計画システム。
【請求項12】
前記データベースが、代表的患者集団内の解剖学的差異内の解剖学的差異および分散を特徴付ける複数の解剖学的構成分類を記憶する解剖学的構成分類データベースである、請求項11に記載の外科手術計画システム。
【請求項13】
前記複数の解剖学的構成分類の各々が、前記代表的患者集団の骨または関節の解剖学的構成の数値的な分類である、請求項12に記載の外科手術計画システム。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記類似の回転中心特性を有する前記記録に基づいて、ユーザーが順調な外科手術転帰の確率を評価するように促されることをコマンドするようにさらに構成される、請求項11に記載の外科手術計画システム。
【請求項15】
外科手術計画システムであって、
コンピュータ実行可能命令を記憶するように構成されたメモリデバイスと、
前記メモリデバイスへと動作可能に連結され、かつ前記コンピュータ実行可能命令を実行して、表示モジュール、空間モジュール、および比較モジュールを含む外科手術計画環境を実行するように構成されたプロセッサと、を備え、
前記メモリデバイスが、インプラントモデルおよび骨モデルを記憶するように構成され、
前記骨モデルが、術前の生来の解剖学的構造の回転中心の特定を含み、
前記空間モジュールが、前記骨モデル上に重ね合わせられた前記インプラントモデルのインプラントの計画された術後のインプラントの回転中心を確立するように構成され、
前記比較モジュールが、前記計画された術後のインプラントの回転中心と前記術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を決定するように構成され、
前記表示モジュールが、グラフィカルユーザーインターフェースの表示窓内に前記デルタ距離を表示するように構成される、外科手術計画システム。
【請求項16】
前記デルタ距離が、前記計画された術後のインプラントの回転中心と前記術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間に延在する線によって視覚的に指示される、請求項15に記載の外科手術計画システム。
【請求項17】
前記デルタ距離が、前記表示窓内に数値によって視覚的に指示される、請求項15に記載の外科手術計画システム。
【請求項18】
前記術前の生来の解剖学的構造の回転中心が、前記骨モデルに関連付けられた患者の本来の悪化していない解剖学的構造の補間である、請求項15に記載の外科手術計画システム。
【請求項19】
前記計画された術後のインプラントの回転中心が、前記インプラントに関連付けられた値であり、かつさらに前記インプラントがグレノスフィアインプラントまたは上腕骨頭インプラントである、請求項15に記載の外科手術計画システム。
【請求項20】
コンピュータ実装された外科手術計画方法であって、
ユーザーから術前計画入力を受信する工程であって、
前記術前計画入力が、対象患者の骨モデルに対するインプラントモデルの位置を含む、工程と、
前記骨モデルに対する前記インプラントモデルのインプラントの計画された術後のインプラントの回転中心を特定する工程と、
前記骨モデルの、前記計画された術後のインプラントの回転中心と骨の術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を計算する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2021年8月30日に出願された、米国仮特許出願第63/238,411号に対する優先権を主張し、またその全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、外科手術計画の分野を対象とし、そしてより具体的には、整形外科手技を計画するための外科手術計画システムおよび方法を対象とする。外科手術計画は、例えば、適切なインプラントタイプ、サイズ、位置、配向などを選択するために、解剖学的な回転中心およびインプラントモデル回転中心の両方を術前に評価することを含んでもよい。
【0003】
関節形成術は、疾患関節を修復または置換するために実施される整形外科の外科手技の一タイプである。外科医は、転帰を改善するために、関節形成術を実施する前に、外科手術部位の準備、インプラントの選択、および外科手術部位におけるインプラントの定置のために外科手術計画を確立することを望む場合がある。外科手術計画は、外科手術部位の画像を捕捉することと、画像に基づいてインプラントの位置を決定することとを含んでもよい。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、改善された外科手術計画システムおよび方法に関する。
【0005】
本開示の外科手術計画システムおよび方法は、外科手術計画を作成、編集、実行、および/または検討するために、術前、術中、および/または術後を含む整形外科手技を計画するための一部の実装で利用されてもよい。外科手術計画システムおよび方法は、関節の機能を回復させるための整形外科手技を計画および実装するために利用されてもよい。
【0006】
外科手術計画システムは、とりわけ、コンピュータ実行可能命令を記憶するように構成されたメモリデバイスと、メモリデバイスに動作可能に連結され、かつコンピュータ実行可能命令を実行するように構成されたプロセッサと、を含んでもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を実行して、計画環境内の骨モデルに対するインプラントモデルの位置に関連する入力を受信し、そしてインプラントモデルの計画された術後のインプラントの回転中心と骨モデルの術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間の偏差を計算してもよい。
【0007】
別の外科手術計画システムは、とりわけ、コンピュータ実行可能命令を記憶するように構成されたメモリデバイスと、メモリデバイスに動作可能に連結され、かつコンピュータ実行可能命令を実行するように構成されたプロセッサと、を含んでもよい。プロセッサは、表示モジュール、空間モジュール、および比較モジュールを含む計画環境を実行してもよい。メモリデバイスは、インプラントモデルおよび骨モデルを記憶するように構成される。骨モデルは、術前の生来の解剖学的構造の回転中心の同定を含む。空間モジュールは、骨モデル上に重ね合わせられたインプラントモデルのインプラントの計画された術後のインプラントの回転中心を確立するように構成される。比較モジュールは、計画された術後のインプラントの回転中心と術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を決定するように構成され、また表示モジュールは、グラフィカルユーザーインターフェースの表示窓内にデルタ距離を表示するように構成される。計画された術後のインプラントの回転中心は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心に対して参照される、前部/後部座標、上側/下側座標、および内側/外側座標を含んでもよい。
【0008】
コンピュータ実装された外科手術計画方法は、とりわけ、ユーザーから術前計画入力を受信することを含んでもよい。術前計画入力は、例えば、対象患者の骨モデルに対するインプラントモデルの位置を含んでもよい。方法は、骨モデルに対するインプラントモデルのインプラントの計画された術後のインプラントの回転中心を特定することと、計画された術後のインプラントの回転中心と骨モデルの術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を計算することと、をさらに含んでもよい。
【0009】
先行の段落、特許請求の範囲、またはそれらの様々な態様またはそれぞれの個々の特徴のいずれかを含む、後に続く記述および図面の実施形態、実施例、および代替は、独立して、または任意の組み合わせで取られてもよい。一つの実施形態に関連して記述される特徴は、こうした特徴が不適合ではない限り、すべての実施形態に適用可能である。
【0010】
本開示の様々な特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態から当業者には明らかになるであろう。詳細な説明に付随する図面は、以下のように簡潔に説明され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、例示的な外科手術計画システムを概略的に図示する。
【
図2】
図2は、
図1の外科手術計画システムの例示的な態様を概略的に図示する。
【
図3】
図3は、外科手術計画システムの例示的なユーザーインターフェースを概略的に図示する。
【
図4】
図4は、外科手術計画システムの別の例示的なユーザーインターフェースを概略的に図示する。
【
図5】
図5は、外科手術計画システムの別の例示的なユーザーインターフェースを概略的に図示する。
【
図6】
図6は、外科手術計画システムのまた別の例示的なユーザーインターフェースを概略的に図示する。
【
図7】
図7は、外科手術計画システムによってアクセスすることができる記憶システムの例示的なデータベースを概略的に図示する。
【
図8】
図8は、外科手術計画システムの追加的な態様を概略的に図示する。
【
図9】
図9は、外科手術計画システムによって割り当てることができる例示的な解剖学的構成分類を概略的に図示する。
【
図10】
図10は、外科手術計画システム内の回転中心情報を評価するための方法を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、術前、術中、および/または術後に、外科手術計画を作成、編集、実行、および/またはレビューすることを含む、整形外科手技を計画するための、改善された外科手術計画システムおよび方法を対象とする。外科手術計画システムおよび方法は、関節の機能を回復させるための整形外科手技を計画および実装するために利用されてもよい。
【0013】
一部の実施形態では、外科手術計画システムおよび方法は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心に対して、計画された術後のインプラントの回転中心を術前に評価するために使用されてもよい。計画された術後のインプラントの回転中心と術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を利用して、所与の患者の解剖学的構造に最も適切な具体的なインプラントの回転中心を最適化し、それによって外科手術転帰を改善してもよい。本開示のこれらおよびその他の特徴は、この発明を実施するための形態の以下の段落でより詳細に考察される。
【0014】
本開示の例示的な態様による外科手術計画システムは、コンピュータ実行可能命令を記憶するように構成されたメモリデバイスと、メモリデバイスに動作可能に連結され、かつコンピュータ実行可能命令を実行するように構成されたプロセッサと、を含んでもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を実行して、計画環境内の骨モデルに対するインプラントモデルの位置に関連する入力を受信し、そしてさらに、インプラントモデルの計画された術後のインプラントの回転中心と骨モデルの術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間の偏差を計算してもよい。
【0015】
さらなる実装では、術前の生来の解剖学的構造の回転中心は、骨モデルに関連付けられた関節の関節機構がそれを中心として周回することになる、生来の回転中心である。
【0016】
さらなる実装では、術前の生来の解剖学的構造の回転中心は、骨モデルに関連付けられた患者の本来の悪化していない解剖学的構造の補間である。
【0017】
さらなる実装では、計画された術後のインプラントの回転中心は、インプラントモデルに関連付けられたインプラントに関連付けられた値である。
【0018】
さらなる実装では、インプラントはグレノスフィアインプラントである。
【0019】
さらなる実装では、インプラントは上腕骨頭インプラントである。
【0020】
さらなる実施形態では、偏差は、計画された術後のインプラントの回転中心と術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間の三次元空間におけるベクトルの長さを表すデルタ距離である。
【0021】
さらなる実装では、プロセッサは、デルタ距離を外科手術計画環境のユーザーインターフェース内に表示するようにさらに構成される。
【0022】
さらなる実施形態では、デルタ距離は、計画された術後のインプラントの回転中心と術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間に延在する線によって視覚的に指示される。
【0023】
さらなる実装では、デルタ距離は、ユーザーインターフェースのグラフィックインジケータの数値によって視覚的に指示される。
【0024】
さらなる実装では、プロセッサは、同様の回転中心特性を有する記録について、外科手術計画システムのデータベースに問い合わせるようにさらに構成される。
【0025】
さらなる実装では、データベースは、代表的な患者集団内の解剖学的差異内の解剖学的差異および分散を特徴付ける、複数の解剖学的構成分類を記憶する解剖学的構成分類データベースである。
【0026】
さらなる実装では、複数の解剖学的構成分類の各々は、代表的患者集団の骨または関節の解剖学的構成の数値的な分類である。
【0027】
さらなる実施形態では、プロセッサは、類似の回転中心特性を有する記録に基づいて、ユーザーに順調な外科手術転帰の確率を評価するように促すことをコマンドするようにさらに構成される。
【0028】
本開示の別の例示的な態様による外科手術計画システムは、コンピュータ実行可能命令を記憶するように構成されたメモリデバイスと、メモリデバイスに動作可能に連結され、かつコンピュータ実行可能命令を実行するように構成されたプロセッサと、を含んでもよい。プロセッサは、表示モジュール、空間モジュール、および比較モジュールを含む計画環境を実行してもよい。メモリデバイスは、インプラントモデルおよび骨モデルを記憶するように構成される。骨モデルは、術前の生来の解剖学的構造の回転中心の同定を含む。空間モジュールは、骨モデル上に重ね合わせられたインプラントモデルのインプラントの計画された術後のインプラントの回転中心を確立するように構成される。比較モジュールは、計画された術後のインプラントの回転中心と術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を決定するように構成され、また表示モジュールは、グラフィカルユーザーインターフェースの表示窓内にデルタ距離を表示するように構成される。計画された術後のインプラントの回転中心は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心に対して参照される、前部/後部座標、上側/下側座標、および内側/外側座標を含んでもよい。
【0029】
さらなる実装では、デルタ距離は、計画された術後のインプラントの回転中心と術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間に延在する線によって視覚的に指示される。
【0030】
さらなる実装では、デルタ距離は、表示窓内の数値によって視覚的に指示される。
【0031】
さらなる実装では、術前の生来の解剖学的構造の回転中心は、骨モデルに関連付けられた患者の本来の悪化していない解剖学的構造の補間である。
【0032】
さらなる実装では、計画された術後のインプラントの回転中心は、インプラントに関連付けられた値であり、インプラントは、グレノスフィアインプラントまたは上腕骨頭インプラントである。
【0033】
本開示のまた別の例示的な態様によるコンピュータ実装された外科手術計画方法は、ユーザーから術前計画入力を受信することを含んでもよい。術前計画入力は、例えば、対象患者の骨モデルに対するインプラントモデルの位置を含んでもよい。方法は、骨モデルに対するインプラントモデルのインプラントの計画された術後のインプラントの回転中心を特定することと、計画された術後のインプラントの回転中心と骨モデルの術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を計算することと、をさらに含んでもよい。
【0034】
図1は、例示的な外科手術計画システム10(以下、「システム10」と称される)を図示する。システム10は、外科手術計画を作成、編集、レビュー、改良、および/または実行するために、術前、術中、および/または術後を含む整形外科手技を計画するために使用されてもよい。システム10は、例えば、関節を修復するための関節形成術などの様々な整形外科および他の外科手技のために利用されてもよい。
【0035】
肩関節形成術は、システム10のある特定の特徴を例示または強調するために、本開示全体を通して定期的に参照される。しかしながら、本開示の教示は、ヒト筋骨格系の任意の特定の関節に限定することを意図せず、したがって、肩、膝、臀部、足首、手首などに適用可能として理解するべきである。さらに、本開示の教示は、関節形成術手技に限定することを意図せず、したがって、本開示の範囲内の骨折および/または他の変形の修復に適用可能である。
【0036】
システム10は、数ある中でも、少なくとも一つのホストコンピュータ12、一つ以上のクライアントコンピュータ14、一つ以上の撮像装置16、クラウドベースの記憶システム18、およびネットワーク20を含んでもよい。システム10は、本開示の範囲内に、より多い数の、またはより少ない数のサブシステムを含んでもよい。
【0037】
ホストコンピュータ12は、一つ以上のソフトウェアプログラムを実行するように構成されてもよい。一部の実装では、ホストコンピュータ12は、ソフトウェア命令を逐次的にまたは並列的に処理するように連携して構成された二つ以上のコンピュータであってもよい。
【0038】
ホストコンピュータ12は、ネットワーク20と通信するように動作可能であってもよく、それ自体が一つ以上のコンピューティングデバイスを含んでもよい。ネットワーク20は、例えば、プライベートローカルエリアネットワーク(LAN)、プライベートワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、またはメッシュネットワークであってもよい。
【0039】
ホストコンピュータ12および各クライアントコンピュータ14は、コンピュータプロセッサ、メモリ、記憶手段、ネットワークデバイス、ならびに入力および/または出力デバイスおよび/またはインターフェースのうちの一つ以上を含んでもよい。入力デバイスは、キーボード、マウスなどを含んでもよい。出力デバイスは、モニター、スピーカー、プリンターなどを含んでもよい。メモリは、例えば、UVPROM、EEPROM、FLASH、RAM、ROM、DVD、CD、ハードドライブ、または本明細書に開示される外科手術計画および実施技法に関連するデータおよび/または他の情報を記憶していてもよい他のコンピュータ可読媒体を含んでもよい。ホストコンピュータ12および各クライアントコンピュータ14は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット、バーチャルマシン、または任意の他のコンピューティングデバイスであってもよい。インターフェースは、ネットワーク20のその他のシステムおよび/または構成要素との通信を容易にする場合がある。
【0040】
各クライアントコンピュータ14は、直接的なクライアントインターフェース22を介してなど直接的に、またはネットワーク20を通して、のいずれかで、ホストコンピュータ12と通信するように構成されてもよい。他の実装では、クライアントコンピュータ14は、ピアツーピアインターフェース24を介して、相互に直接的に通信するように構成される。
【0041】
各クライアントコンピュータ14は、例えば、撮像装置16のうちの一つ以上へと動作可能に連結されてもよい。各撮像装置16は、撮像装置16のスキャンフィールド(例えば、窓)内に存在する患者の解剖学的構造の一つ以上の画像26を捕捉または取得するように構成されてもよい。撮像装置16は、二次元(2D)および/または三次元(3D)グレースケールおよび/またはカラー画像26を捕捉または取得するように構成されてもよい。患者の一つ以上の画像26を取得するX線装置、コンピュータ断層撮影(CT)装置、または磁気共鳴撮像(MRI)装置などが挙げられるがこれらに限定されない様々な撮像装置16を利用してもよい。画像26は、記憶システム18へと保存されてもよい。
【0042】
クライアントコンピュータ14は、様々な外科手術計画ツールおよび/またはアプリケーションに関連付けられたものなどの一つ以上のソフトウェアプログラムも実行するように構成されてもよい。各クライアントコンピュータ14は、外科手術の術前、術中、および/または術後段階の間に、一つ以上の外科手術計画36を作成、編集、実行、改良、および/またはレビューするための計画環境28にアクセスし、かつこれを局所でおよび/または遠隔で実行するように動作可能であってもよい。計画環境28は、スタンドアロンのソフトウェアパッケージであってもよく、または別の外科手術ツールの中へと組み込まれてもよい。計画環境28は、ネットワーク20を通して、または直接的なクライアントインターフェース22を直接的に通してのいずれかで、ホストコンピュータ12と通信するように構成されてもよい。
【0043】
計画環境28は、患者の解剖学的構造の画像26を捕捉または取得するために、撮像装置16のうちの一つ以上と相互作用するようにさらに構成されてもよい。計画環境28は、一つ以上のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を介して、一つ以上の画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および/または外科手術計画36の表示または可視化を提供してもよい。各画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、外科手術計画36、ならびに他のデータおよび/または情報は、特定されたデータ構造に従って、一つ以上のファイルまたは記録内の記憶システム18上に記憶されてもよい。
【0044】
計画環境28は、所望の計画機能を実施するための様々なモジュールを含んでもよい。例えば、下記にさらに考察するように、計画環境28は、外科手術計画36に関するデータにアクセス、取得、および/または記憶するためのデータモジュールと、データを表示するための表示モジュール(例えば、一つ以上のGUI内)と、表示モジュールによって表示されるデータを修正するための空間モジュールと、例えば、選択された骨モデルと選択されたインプラントモデルとの間の一つ以上の関係を決定するための比較モジュールとを含む。しかしながら、より大きいもしくはより少ない数のモジュールが利用されてもよく、かつ/または開示された機能を提供するためにモジュールのうちの一つ以上を組み合わせてもよい。
【0045】
記憶システム18は、ホストコンピュータ12および/またはシステム10の一つ以上のクライアントコンピュータ14などの他のコンピューティングデバイスへと/他のコンピューティングデバイスからデータを記憶する、または別の方法で提供するように動作可能であってもよい。記憶システム18は、例えば、ネットワーク20を通してホストコンピュータ12および/またはクライアントコンピュータ14と通信するように構成されたストレージエリアネットワークデバイス(SAN)であってもよい。システム10の別個の装置として示されているが、一部の実装では、記憶システム18は、ホストコンピュータ12および/またはクライアントコンピュータ14内に組み込まれてもよく、またはホストコンピュータ12および/またはクライアントコンピュータ14へと直接的に連結されてもよい。記憶システム18は、コンピュータソフトウェア命令、データ、データベースファイル、構成情報などのうちの一つ以上を記憶するように構成されてもよい。
【0046】
一部の実装では、システム10は、ホストコンピュータ12上でコンピュータソフトウェアを実行するように構成されたクライアントサーバーアーキテクチャであってもよく、これは、クライアントコンピュータ14上で実行することができるシンクライアントアプリケーションまたはウェブブラウザのいずれかを使用して、クライアントコンピュータ14によってアクセス可能であってもよい。ホストコンピュータ12は、コンピュータソフトウェア命令を局所記憶から、または記憶システム18からメモリへとロードしてもよく、また一つ以上のコンピュータプロセッサを使用して、コンピュータソフトウェアを実行してもよい。
【0047】
システム10は、一つ以上のデータベース38をさらに含んでもよい。データベース38は、記憶システム18上などの中央の場所に記憶されてもよい。別の実装では、一つ以上のデータベース38は、ホストコンピュータ12において記憶されてもよく、かつ/またはクライアントコンピュータ14のうちの一つ以上によって提供される分散型データベースであってもよい。各データベース38は、一つ以上の画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、および/または伝達モデル34を相互におよび/またはそれぞれの外科手術計画36と関連付けるように構成されたリレーショナルデータベースであってもよい。各外科手術計画36は、それぞれの患者の解剖学的構造と関連付けられてもよい。各画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および外科手術計画36は、記憶システム18上の記憶のために、一意の識別子またはデータベースエントリを割り当てられる場合がある。各データベース38は、画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および外科手術計画36に対応するデータおよび他の情報を、一つ以上のデータベース記録またはエントリに記憶するように構成されてもよく、かつ/または各それぞれの画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および外科手術計画36に対応する一つ以上のファイルをリンクする、または別の方法で関連するように構成されてもよい。データベース38に記憶された様々なデータは、以前の外科手術事例からのそれぞれの患者の解剖学的構造に対応する場合があり、また性別、年齢、人種、欠陥分類、手技のタイプ、解剖学的構成分類、外科医、施設または組織などの一つ以上の所定の分類へと配置されてもよい。
【0048】
各画像26および骨モデル30は、撮像装置16などの一つ以上の医療装置またはツールから得たデータおよびその他の情報を含んでもよい。骨モデル30は、撮像装置16によって捕捉または別の方法で得られた画像26から得られた、またはそれらから導出された患者の解剖学的構造に関連する一つ以上のデジタル画像および/または座標情報を含んでもよい。
【0049】
各インプラントモデル32および伝達モデル34は、所定の設計または計画環境28によって確立または修正された設計と関連付けられた座標情報を含んでもよい。所定の設計は、一つ以上の構成要素に対応する場合がある。計画環境28は、モデル30、32、34を、二次元(2D)および/または三次元(3D)の容積または構築物としてレンダリングするために、コンピュータ支援設計(CAD)パッケージなどの一つ以上のモデリングパッケージを組み込む、かつ/またはそれらとインターフェース接続し、これは、一つ以上のGUIのディスプレイスクリーン内の画像26または骨モデル30のうちの一つ以上を重ね合わせてもよい。
【0050】
インプラントモデル32は、様々な形状およびサイズのインプラントおよび構成要素に対応してもよい。各インプラントは、人工装具、ねじ、アンカー、移植片を含む外科手術部位に位置していてもよい一つ以上の構成要素を含んでもよい。各インプラントモデル32は、単一の構成要素に対応してもよく、またはインプラント組立品を確立するように構成されてもよい二つ以上の構成要素を含んでもよい。各インプラントおよび関連付けられた構成要素は、金属材料および/または非金属材料を含む、様々な材料で形成されてもよい。各骨モデル30、インプラントモデル32、および伝達モデル34は、2Dおよび/または3Dの幾何学的形状に対応する場合があり、またGUI内にワイヤフレーム、メッシュ、および/または固体構築物を生成するために利用されてもよい。
【0051】
各外科手術計画36は、画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、および/または伝達モデル34のうちの一つ以上と関連付けられてもよい、またはリンクしてもよい。外科手術計画36は、画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、および/または伝達モデル34と関連付けられた様々なパラメータを含んでもよい。例えば、外科手術計画36は、画像26内に捕捉された患者の解剖学的構造に関連付けられた解剖学的インプラントおよび計画されたインプラントの回転中心に関連するパラメータを含んでもよい。外科手術計画36は、選択された骨モデル30、インプラントモデル32、および/または伝達モデル34の相対的な位置決めおよび座標情報に関連する空間情報を含むパラメータをさらに含んでもよい。
【0052】
外科手術計画36は、骨モデル30に対する一つ以上の補正、ならびに本来の骨モデル30および/または補正された骨モデル30に対するインプラントモデル32および/または伝達モデル34の位置に関連する情報を定義してもよい。外科手術計画36は、補正された骨モデル30に関連する座標情報、および一つ以上の所定のデータ構造におけるインプラントモデル32および/または伝達モデル34の相対的な位置を含んでもよい。計画環境28は、自動的に、またはユーザーインターフェースとのユーザーインタラクションに応答してのいずれかで、様々なモデルに対して一つ以上の補正を実装するように構成されてもよい。各骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および/または外科手術計画36に対する補正は、自動的に、および/またはシステム10とのユーザーインタラクションに応答してのいずれかで、データベース38のうちの一つ以上に記憶されてもよい。
【0053】
一人以上の外科医および/または他のスタッフユーザーには、クライアントコンピュータ14を介して、計画環境28が提示されてもよく、またデータベース38内に記憶された各画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および外科手術計画36に同時にアクセスしてもよい。各ユーザーは、外科手術計画36の様々な態様を作成、見る、改良、および/または修正するために、計画環境28とインタラクトしてもよい。各クライアントコンピュータ14は、画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および/または外科手術計画36のローカルインスタンスを記憶するように構成されてもよく、それらは、データベース38とリアルタイムでまたは定期的に同期されてもよい。計画環境28は、クライアントコンピュータ14上で実行されるスタンドアロンソフトウェアパッケージであってもよく、または、例えば、ホストコンピュータ12上で実行される一つ以上のウェブベースのサービスとして提供されてもよい。
【0054】
上述のシステム10は、外科手技を術前に計画するように構成されてもよい。システム10によって提供される術前計画は、患者の解剖学的構造の仮想モデルを構築すること、仮想モデルを分類すること、仮想モデル内の目印を識別すること、仮想モデル内の仮想インプラントを選択および配向すること、仮想モデル内の回転中心情報を特定および評価することなどの特徴を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0055】
ここで
図1を引き続き参照しながら、
図2を参照すると、システム10は、コンピュータ実行可能命令を記憶する能力を有するメモリ44に連結された少なくとも一つのプロセッサ42を含むコンピューティングデバイス40を含んでもよい。コンピューティングデバイス40は、ホストコンピュータ12および/またはクライアントコンピュータ14が挙げられるがこれらに限定されない、本明細書に開示されるコンピューティングデバイスのいずれかの代表と考えられてもよい。プロセッサ42は、外科手術の術前、術中、および/または術後段階の間に、一つ以上の外科手術計画36ならびに任意の関連付けられた骨モデル30、インプラントモデル32、および伝達モデル34を作成、編集、実行、改良、および/またはレビューするための計画環境28のうちの一つ以上を実行するように構成されてもよい。
【0056】
プロセッサ42は、特注のまたは市販のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、または一般的にソフトウェア命令を実行するための任意の装置とすることができる。メモリ44は、揮発性メモリ要素および/または不揮発性メモリ要素のうちのいずれか一つまたはそれらの組み合わせを含むことができる。プロセッサ42は、メモリ44へと動作可能に連結されてもよく、またシステム10に関連付けられた他のデバイスまたはデータソースから受信した様々な入力に基づいて、メモリ44内に記憶された一つ以上のプログラムを実行するように構成されてもよい。
【0057】
計画環境28は、少なくともデータモジュール46、表示モジュール48、空間モジュール50、および比較モジュール52を含んでもよい。
図2の非常に概略的な描写には四つのモジュールが示されているが、当然のことながら、より多いまたはより少ない数のモジュールを利用することが可能であり、また/またはさらに、モジュールのうちの一つ以上を組み合わせて、計画環境28を実行するための開示された機能を提供することが可能である。
【0058】
データモジュール46は、患者の解剖学的構造、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および/または外科手術計画36の一つ以上の画像26に対応するデータおよび他の情報を、データベース38においてアクセスする、読み出す、および/または記憶するように構成されてもよい。データおよび他の情報は、一つ以上の記録またはエントリ54として一つ以上のデータベース38内に記憶されてもよい。一部の実装では、データおよび他の情報は、エントリ54によって参照される一つ以上のオブジェクトまたはメモリ場所を参照することによってアクセス可能な一つ以上のファイル内に記憶されてもよい。
【0059】
メモリ44は、データモジュール46からの一つ以上のコマンドに応答して、一つ以上の画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および/または外科手術計画36のインスタンスにアクセス、ロード、編集、および/または記憶するように構成されてもよい。データモジュール46は、メモリ44に、画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル34、および/または外科手術計画36のローカルインスタンスを記憶させるように構成されてもよく、これは、データベース38内に記憶されたエントリ54と同期されてもよい。
【0060】
データモジュール46は、撮像装置16などの様々なソースから、患者の解剖学的構造の少なくとも一つ以上の画像26に対応するデータおよび他の情報を受信するようにさらに構成されてもよい。データモジュール46は、撮像装置16に、画像26を自動的に、またはユーザーインタラクションに応答して、捕捉または取得するようにコマンドするようにさらに構成されてもよい。
【0061】
表示モジュール48は、画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、および/または伝達モデル34のうちの一つ以上を含む、少なくとも一つのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)56に、一つ以上の外科手術計画36に関連するデータおよび他の情報を表示するように構成されてもよい。コンピューティングデバイス40は、表示装置58を組み込んでもよく、または表示装置58へと連結してもよい。表示モジュール48は、表示装置58に、ユーザーインターフェース56に情報を表示させるように構成されてもよい。外科医、計画技師、または他のユーザーは、患者の解剖学的構造および/または任意の関連付けられた骨モデル30、インプラントモデル32、および伝達モデル34の一つ以上の画像26を見るために、計画環境28内のユーザーインターフェース56とインタラクトしてもよい。外科医、計画技師、または他のユーザーは、一つ以上の外科手術計画36を作成、編集、実行、改良、および/またはレビューするために、計画環境28を介してユーザーインターフェース56とインタラクトしてもよい。
【0062】
図2を引き続き参照しながら、
図3を参照すると、ユーザーインターフェース56は、一つ以上の表示窓60と、表示窓60内に提示されてもよい一つ以上のオブジェクト62を含んでもよい。表示窓60は、任意の数の窓を含んでもよく、またオブジェクト62は、本開示の範囲内の任意の数のオブジェクトを含んでもよい。この実施形態で、ホストコンピュータ12上で操作する計画技師であってもよいユーザーは、例えば、オブジェクト62および/または表示窓60を含むユーザーインターフェース56とインタラクトして、選択された画像26、骨モデル30、インプラントモデル32、および/または伝達モデル34からの情報を含んでもよい、それぞれの外科手術計画36の様々な態様を読み出し、表示、編集、記憶などしてもよい。
【0063】
オブジェクト62は、ユーザーインタラクションによってアクセス可能であり、またそれぞれの表示窓60に関連付けられた一つ以上のメニューアイテムの状態で整理されてもよい、メニュー、タブ、ボタンなどのグラフィックを含んでもよい。一実施形態では、オブジェクト62としては、タブ62A、ドロップダウンメニュー62B、ドロップダウンリスト62C、ボタン62Dなどが挙げられる。骨モデル30および/または外科手術計画36に関連する他の情報を含む幾何学的オブジェクトは、表示窓60のうちの一つ以上に表示されてもよい。
【0064】
表示窓60は、第一、第二、第三、および第四の表示窓60-1、60-2、60-3、および60-4を含んでもよい。四つの表示窓が
図3に図示されるが、当然のことながら、本明細書に開示される教示に従って、より多くのまたはより少ない数の表示窓60を利用することが可能である。
【0065】
第一の表示窓60-1は、三次元(3D)ビューと関連付けられてもよく、第二、第三、および第四の窓60-2、60-3、および60-4は、二次元(2D)ビューと関連付けられてもよい。一実施形態では、第二、第三、および第四の窓60-2、60-3、および60-4は、ユーザーに対して提示することができる二次元(2D)DICOMビュー(例えば、それぞれ冠状、矢状、および横断方向)と関連付けられてもよい。計画環境28は、表示窓60-1~60-4のうちの一つの変化が、その他の表示窓60-1~60-4の各々と同期されるように構成されてもよい。変化は、ユーザーインタラクションに応答して、表示窓60-1~60-4の間で自動的におよび/または手動で同期されてもよい。
【0066】
表示モジュール48は、第一、第二、第三、および第四の表示窓60-1、60-2、60-3、60-4に、骨モデル30のうちの選択された一つを表示するように構成されてもよい。選択された骨モデル30は、
図3に図示したような上腕骨などの、関節に関連付けられた骨に対応してもよい。図示した実施形態では、選択された骨モデル30は、例えば、関節から骨をセグメント化、閾値設定、および分離することによって、画像26からすでに作成されている。
【0067】
空間モジュール50は、ユーザーが選択された骨モデル30内に様々な目印を特定することを可能にするように構成されてもよい(例えば、プロセッサ42によって実行可能なデスクトップアプリケーションを介してなど)。一実施形態では、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64は、選択された骨モデル30に関連付けられた解剖学的構造内で特定されてもよい。本開示では、「術前の生来の解剖学的構造の回転中心」という用語は、選択された骨モデル30に関連付けられた関節の関節機構がそれを中心として周回することになる、生来の回転中心として定義されてもよい。術前の生来の解剖学的構造の回転中心64は、あらゆる骨びらんを無視する様態で特定されてもよく、したがって、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64は、患者の本来の悪化していない解剖学的構造の回転中心を実質的に模倣する場合がある。したがって、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64は、患者の本来の悪化していない解剖学的構造の近似または補間とすることができる。
【0068】
肩関節については、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64は、上腕骨の上腕骨頭に対して定義されてもよい。例えば、ユーザーは、空間モジュール50を介して、選択された骨モデル30の3Dレンダリング内に球66を位置付けてもよく、これはこの実施形態では、患者の生来の上腕骨の解剖学的構造を代表し、そしてこれは第一の表示窓60-1に示される。球66は、第一の表示窓60-1内の選択された骨モデル30の3D再構成、および第二、第三、および第四の表示窓60-2、60-3、60-4内に提供される2Dビューの両方を視覚的に利用して定置されてもよく、またスキャプラプレーンなどの目印に対して参照されてもよい。球66は、患者の生来の上腕骨頭を代表してもよく、またスキャプラプレーンに対する特定の直径および位置を含んでもよく、それ故に、球66の中心は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64として定義されてもよい。術前の生来の解剖学的構造の回転中心64は、回転中心特徴に関連付けられた画像データ内に0,0,0のX、Y、Z座標原点を確立してもよい。
【0069】
一旦特定されると、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64の場所は、対象患者のための外科手術計画36に関連付けられた画像データ内に目印として保存されてもよい。術前の生来の解剖学的構造の回転中心64は、その後、特定の患者のための外科手術計画36のさらなら開発および改良のために参照されてもよい。
【0070】
ここで、
図2および
図3を引き続き参照しながら
図4を参照すると、計画環境28の表示モジュール48は、システム10の回転中心特徴に関連する追加的なデータ/情報を別のグラフィカルユーザーインターフェース156内に表示するようにさらに構成されてもよい。この実施形態では、クライアントコンピュータ14のうちの一つで作業する外科医であってもよいユーザーは、選択された外科手術計画36の様々な態様を読み出す、表示する、編集する、記憶するなどのために、ユーザーインターフェース156とインタラクトする。
【0071】
ユーザーインターフェース156は、第一の表示窓160-1および第二の表示窓160-2を含んでもよい。二つの表示窓が
図4に図示されるが、当然のことながら、本明細書に開示される教示に従って、より多くのまたはより少ない数の表示窓を利用することが可能である。
【0072】
ユーザーインターフェース156は、外科手術計画36の様々な態様を特定するためになど、ユーザーがユーザーインターフェース156とインタラクトすることを可能にする、一つ以上のオブジェクト162をさらに含むことが可能である。オブジェクト162は、ユーザーインタラクションによってアクセス可能であり、またそれぞれの表示窓160-1、160-2に関連付けられた一つ以上のメニューアイテムの状態で整理されてもよい、メニュー、タブ、ボタンなどのグラフィックを含んでもよい。一実施形態では、オブジェクト162としては、ドロップダウンメニュー162A、ボタン162B、および矢印162Cが挙げられる。
【0073】
外科手術計画36に関連する選択された骨モデル30および/または他の情報を含む幾何学的オブジェクトは、表示窓160-1、160-2内に表示されてもよい。一実施形態では、選択された骨モデル30に関連付けられた生来の術前解剖学的構造は、表示窓160-1内に提示されてもよく、またインプラントモデル32のうちの一つは、選択された骨モデル30に関連付けられた生来の解剖学的構造の上に重ね合わせられて表示窓160-2内に示されてもよい。したがって、表示窓160-2は、外科手術計画36の計画された術後態様を提示するように構成されてもよい。表示モジュール48は、選択された骨モデル30を表示窓160-1内に表示するように構成されてもよく、また選択された骨モデル30および選択されたインプラントモデル32の両方を表示窓160-2内に表示するようにさらに構成されてもよい。
【0074】
図4の図示された実施形態では、表示窓160-1、160-2は両方とも、様々な幾何学的オブジェクトの冠状図を図示するように構成される。しかしながら、例えば、横断方向図(
図5を参照のこと)などの他の図が提示されてもよい。ユーザーは、利用可能なビューの間で切り替えるためにボタン162Bのうちの一つを選択してもよい。
【0075】
表示モジュール48は、選択された骨モデル30、および選択されたインプラントモデル32の3D表現を表示窓160-2内に表示するように構成されてもよい。空間モジュール50は、ユーザーが表示窓160-2、またはユーザーインターフェース156の別の部分と相互作用して、選択された骨モデル30および/または選択されたインプラントモデル32を空間内で移動させること(例えば、上、下、左、右)を可能にするように構成されてもよい。例えば、空間モジュール50は、骨モデル30および関連付けられた患者の解剖学的構造に対するそれぞれのインプラントモデル32の定置に応答して、仮想位置および/または仮想軸を設定するように構成されてもよい。仮想位置および/または仮想軸は、選択された骨モデル30に対する選択されたインプラントモデル32の位置および配向に基づいて、ならびに/またはユーザーインターフェース156とのユーザーインタラクションに応答して、自動的に設定および/または調整されてもよい。ユーザーは、ユーザーインターフェース156内で実施することができる術前計画の一部として、インプラントモデル32の構成要素およびそれらの位置/配向を選択してもよい。
【0076】
選択されたインプラントモデル32は、一つ以上の構成要素を含んでもよ。例えば、インプラントモデル32は、少なくとも第一の構成要素32Aと、組み立てを確立するように第一の構成要素32Aへと連結される第二の構成要素32Bとを含んでもよい。第一の構成要素32Aは、選択された骨モデル30の容積内に少なくとも部分的に受けられるように構成されてもよい。第二の構成要素32Bは、反対側の骨またはインプラントの関節面と嵌合するように寸法設定された関節接続面を有してもよい。
図4の図示した実施形態では、選択されたインプラントモデル32は、逆全肩関節形成術インプラント組立品である。しかしながら、解剖学的な全肩関節形成術インプラント組立品が挙げられるがこれらに限定されない、他の構成も企図される(例えば、
図6の実装を参照のこと)。
【0077】
表示モジュール48は、選択されたインプラントモデル32および/または選択された骨モデル30の断面図を表示窓160-1、160-2のうちの一方または両方に表示するように構成されてもよい。断面図は、選択された骨モデル30に関連付けられた骨の画像として提示されてもよい。断面図の配向は、例えば、矢印162Cを押すことによってなど、ユーザーインターフェース156とのユーザーインタラクションに応答して事前に定義されてもよく、または特定されてもよい。
【0078】
表示モジュール48は、表示窓160-1、160-2のうちの一方または両方内に、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64を表示するようにさらに構成されてもよい。術前の生来の解剖学的構造の回転中心64と関連付けられた座標(0,0,0)は、グラフィックインジケータ70内に表示されてもよい。グラフィックインジケータ70は、例えば、表示窓160-1へと重ねられてもよく、または表示窓160-1と隣接して配置されてもよい。
【0079】
術前の生来の解剖学的構造の回転中心64と関連付けられた座標は、解剖学的期間内に表示されてもよい。例えば、第一の座標は、回転中心値の内側の場所または外側の場所であってもよく、第二の座標は、回転中心値の前側の場所または後側の場所であってもよく、また第三の座標は、回転中心値の上側の場所または下側の場所であってもよい。
【0080】
選択された骨モデル30の別の骨(例えば、関節窩)の生来の回転中心72はまた、表示窓160-1での参照のためにも、解剖学的座標の有無にかかわらず、表示されてもよい。これらの値および解剖学的場所は、ホストコンピュータ12で計画技師によって実施される目印付け手順に由来する場合がある生来の値である。一部の実装では、生来の回転中心64、72は、生来の目印であり、それ故にそれらの関連付けられた値は、外科医ユーザーによってユーザーインターフェース156内で調整することはできない。
【0081】
空間モジュール50は、選択されたインプラントモデル32の第一の構成要素32Aの計画された術後のインプラントの回転中心74を特定するように構成されてもよい。計画された術後のインプラントの回転中心74は、ユーザーが表示窓160-2内の骨モデル30に対して選択されたインプラントモデル32を操作するにつれて、自動的に更新されてもよい。対象の外科手術計画36が逆全肩関節形成術の手技に関連する実装(例えば、
図4~
図5を参照のこと)では、選択されたインプラントモデル32の第一の構成要素32Aは、グレノスフィアインプラントであり、また計画された術後のインプラントの回転中心74は、グレノスフィアインプラントの中心である。対象の外科手術計画36が解剖学的な全肩関節形成術の手技に関連する他の実装(例えば、
図6を参照のこと)では、選択されたインプラントモデル32の第一の構成要素32Aは、上腕骨頭インプラントであり、また計画された術後のインプラントの回転中心74は、上腕骨頭インプラントの中心である。
【0082】
計画された術後のインプラントの回転中心74に関連付けられた座標は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64に対して対応する解剖学的座標(例えば、ミリメートル単位)として表示されてもよい。例えば、第一の座標は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64の内側または外側座標に対するインプラントの回転中心値の内側または外側座標であってもよく、第二の座標は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64の前方または後方座標に対するインプラントの回転中心値の前方または後方座標であってもよく、また第三の座標は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64の上側座標または下側座標に対するインプラントの回転中心値の上側または下側座標であってもよい。これらの座標の各々に対する解剖学的方向は、骨モデル30内に保存された目印(例えば、スキャプラプレーン)に対する撮像データセットの再サンプリングに基づいてもよい。
【0083】
空間モジュール50は、表示モジュール48に、計画された術後のインプラントの回転中心74に関連付けられた座標をグラフィックインジケータ76内に表示させるように構成されてもよい。グラフィックインジケータ76は、例えば、表示窓160-2へと重ねられてもよく、または表示窓160-2と隣接して配置されてもよい。
【0084】
比較モジュール52は、外科手術計画36の実施に関連付けられた一つ以上のパラメータを生成または設定するように構成されてもよい。パラメータは、例えば、骨モデル30に対するインプラントモデル32の位置付けに由来する回転中心データに関連付けられた一つ以上の設定または寸法を含んでもよい。
【0085】
一実施形態では、比較モジュール52は、計画された術後のインプラントの回転中心74と術前の生来の解剖学的構造の回転中心64との間のデルタ距離78を導出するように構成されてもよい。デルタ距離78は、本質的に、計画された術後のインプラントの回転中心74と術前の生来の解剖学的構造の回転中心64との間の三次元空間におけるベクトルの長さであり、それ故に、計画された術後のインプラントの回転中心74に関連付けられた三つの解剖学的座標を使用して計算することができる。より具体的には、デルタ距離78は、計画された術後のインプラントの回転中心74の内側/外側座標、前方/後方座標、および上側/下側座標の各々を二乗した値の和の平方根を計算することによって計算されてもよい。この計算は、下記の式によって表されてもよい。
Δ=√(M/L2+A/P2+S/I2)
【0086】
比較モジュール52は、表示モジュール48に、ユーザーインターフェース156内にデルタ距離78を表示させるようにさらに構成されてもよい。一実施形態では、デルタ距離78は、インプラントの回転中心74と術前の生来の解剖学的構造の回転中心64との間に描かれる線80によって視覚的に指示してもよい。別の実施形態では、デルタ距離78の実際の値(例えば、ミリメートル単位)は、一つ以上のグラフィックインジケータ82内に表示されてもよい。グラフィックインジケータ82は、例えば、表示窓160-2へと重ねられてもよく、または表示窓160-2と隣接して配置されてもよい。
【0087】
ユーザーインターフェース156を使用して、ユーザーは、術前計画中に、インプラントモデル32のインプラント構成要素および骨モデル30に対するそれらの位置/配向を選択してもよい。これらの選択は、計画された術後のインプラントの回転中心74の場所と、デルタ距離78の値とを導出するために利用されてもよい。次いで、これらの値は、計画されたインプラントタイプ、サイズ、位置、配向などを調整して、患者の解剖学的構造に最も適切な具体的な術後の回転中心またはデルタ距離を達成するために、ユーザーによって評価されてもよい。一般に、より小さいデルタ距離は、より大きいデルタ距離と比較して、解剖学的手技に対して改善された外科手術転帰を提供する可能性が高いと考えられる。
【0088】
表示モジュール48は、ユーザーインターフェース156または別のユーザーインターフェース内でユーザーへと亜脱臼率の表示を提供するようにさらに構成されてもよい。例えば、表示モジュール48は、2D円としてスキャプラプレーンの後方に位置付けられた上腕骨頭球66と、スキャプラプレーンとの体積割合を撮像データ上に重ね合わせられた線として提供してもよい。
【0089】
満足のいくデルタ距離78が達成されると、ユーザーは、外科手術計画36を保存してもよい。外科手術計画36は、記憶システム18の適切なデータベース38へと保存されてもよく、またボタン162Bのうちの一つ以上(例えば、保存ボタンおよび/または承認ボタン)を押すことによって承認されてもよい。保存および承認された外科手術計画36は、計画された術後のインプラントの回転中心74およびデルタ距離78の値の両方を含む、対象患者に関連付けられた様々なパラメータを含んでもよい。下記でさらに考察するように、これらのパラメータは、患者転帰データおよび解剖学的構成情報の追跡/比較のために使用されてもよい。
【0090】
ここで
図2~
図6を引き続き参照しながら
図7を参照すると、システム10のコンピューティングデバイス40は、外科手術計画36を確立および実施するために、その上に記憶された様々なデータベース38とアクセスするために、ネットワーク20を通して記憶システム18とインターフェース接続してもよい。記憶システム18のデータベース38としては、患者プロファイルデータベース84、外科医プロファイルデータベース86、外科手術転帰データベース88、可動域データベース90、および解剖学的構成分類データベース92が挙げられてもよい。本開示の範囲内で、追加的なデータベースを記憶システム18上に記憶し、かつそこからアクセスすることが可能である。さらに、別個のデータベースとして示されているが、データベースのうちの一つ以上を一緒に組み合わせるか、またはリンクすることが可能である。例えば、解剖学的構成分類データベース92は、患者プロファイルデータベース84、外科手術転帰データベース88、および可動域データベース90のうちの一つ以上と組み合わせられる、またはリンクすることが可能である。
【0091】
患者プロファイルデータベース84は、システム10に関連付けられた一つ以上の現在の患者に関連する、インデックス付けされ、かつ記憶された記録またはエントリの一部である情報を含んでもよい。患者プロファイルデータベース84上に記憶された情報は、性別、年齢、人種、身長、体重、欠陥の範疇、手技のタイプ、外科医、施設または組織、主要関節、日常生活の行為/ライフスタイルの目標プロファイル(例えば、外転、内転、外旋、内旋、伸長、屈曲、60°の外転と組み合わせた外旋、60°の外転を有する内旋、に対する所望の術後可動域など)、保存された計画された術後のインプラントの回転中心74およびデルタ距離78を含む、現在の外科手術計画情報などを、患者ごとに含んでもよい。患者プロファイルデータベース84は、術前の生来の解剖学的構造の回転中心64および計画された術後のインプラントの回転中心74の目印識別子を含む画像26を含む、所与の患者に対する画像26をさらに記憶してもよく、またはそれらへとリンクしてもよい。
【0092】
外科医プロファイルデータベース86は、システム10に関連付けられた一つ以上の外科医ユーザーに関連する、インデックス付けされ、かつ記憶された記録またはエントリの一部である情報を含んでもよい。外科医プロファイルデータベース86上に記憶された情報は、外科医の名前、施設または組織、システム10を使用して外科医によって計画された以前の外科手術のタイプに関する履歴データ、外科医の術前の外科手術計画に含まれるインプラントのタイプに関するデータ、外科医の以前の外科手術で利用された実際のインプラントに関するデータ、外科医の以前の外科手術における、術前の生来の解剖学的構造の回転中心と計画された術後のインプラントの回転中心との間のデルタ距離に関するデータ、などを含んでもよい。一部の実装では、外科医プロファイルデータベース86は、外科医プロファイルデータベース86からの各外科医を、患者プロファイルデータベース84に列挙されたその外科医の患者にリンクするために、患者プロファイルデータベース84とインターフェース接続してもよい。
【0093】
外科手術転帰データベース88は、システム10に関連付けられた一つ以上の以前の患者に関連する、インデックス付けされ、かつ記憶された記録またはエントリの一部である情報を含んでもよい。外科手術転帰データベース88は、各外科手術を実施した後、および以前の患者の経過を示すための毎回の追跡通院時に、外科医および/または他のスタッフユーザーによってロギングされた情報に基づいて作成されてもよい。外科手術転帰データベース88上に記憶された情報は、性別、年齢、人種、身長、体重、欠陥の範疇、手技のタイプ、使用された特定のインプラント、外科医、施設または組織、主要関節、視覚的なアナログ疼痛スコア、ASESスコア、達成された日常生活の行為/ライフスタイルのプロファイル(例えば、外転、内転、外旋、内旋、伸長、屈曲、60°の外転と組み合わせた外旋、60°の外転を有する内旋、に対する所望の達成された術後可動域など)、計画された術後のインプラントの回転中心、および術前の生来の解剖学的構造の回転中心と計画された術後のインプラントの回転中心との間のデルタ距離を含む、外科手術計画情報などを、患者ごとに含んでもよい。外科手術転帰データベース88は、各以前の患者について、術前および術後の画像26を追加的に記憶してもよく、またはそれらとリンクしてもよい。
【0094】
可動域データベース90は、システム10に関連付けられた一つ以上の現在および以前の患者に関連する、インデックス付けされ、かつ記憶された記録またはエントリの一部である情報を含んでもよい。可動域データベース90は、各外科手術計画36に対してコンピューティングデバイス40によって実施された可動域シミュレーションに由来する可動域データの範囲を記憶する場合がある。可動域データは、シミュレーションした関節の動き(例えば、外転/内転、屈曲/伸張、内旋/外旋など)、様々なインプラント位置に対する特定された接触点または衝突点、様々なインプラント位置に対する角度弧および衝突モード(例えば、インプラントとインプラントとの間、インプラントと骨との間、骨と骨との間など)、様々なインプラント位置に対する複数の増分およびオフセット方向でのインプラントの調整された回転中心などに関連する情報を含んでもよい。可動域データベース90は、調整された回転中心の各々について、術前の生来の解剖学的構造の回転中心と計画された術後のインプラントの回転中心との間のデルタ距離を追加的に記憶してもよい。
【0095】
解剖学的構成分類データベース92は、一つ以上の意図された外科手術(例えば、解剖学的総肩、リバース型人工肩関節置換術など)について、代表的患者集団内の解剖学的差異および解剖学的差異内の解剖学的分散を特徴付ける、複数の解剖学的構成分類を記憶してもよい。一部の実施では、代表的患者集団は、意図された外科手術をすでに受けた複数の以前の患者に関連付けられた、外科手術転帰データベース88および/または任意の他の撮像源に記憶された以前の患者からの画像などの画像データを分析することによって導出されてもよい。複数の解剖学的構成分類の各々は、代表的患者集団の骨または関節の解剖学的構成の数値的な分類である。
【0096】
ここで
図8を参照すると、統計的形状モデラー94を利用して、解剖学的構成分類データベース92を作成してもよい。統計的形状モデラー94は、コンピューティングデバイス40のメモリ44または記憶システム18内に記憶され、そしてプロセッサ42によって実行されてもよいソフトウェアパッケージであってもよい。統計的形状モデラー94は、対象となる骨または関節に関連付けられた画像データ96の複数のセットを受信してもよい。一部の実装では、画像データのセット96は、画像データの数万のセットから構成される。画像データ96の各セットは、対象となる骨または関節についての代表的患者集団の以前の患者に特異的であり、また所与のタイプの外科手術に関連する、2Dおよび/または3D解剖学的画像を含んでもよい。統計的形状モデラー94は、統計的形状モデル95を構築するために、画像データの複数のセット96を分析してもよい。
【0097】
入力として、統計的形状モデラー94は、画像データの複数のセット96を分析するために使用される複数の事前に定義されたモード98を受信してもよい。モード98の各々は、統計的形状モデル95に関連付けられた骨または関節内の解剖学的差異を特徴付けるように構成された記述子である。統計的形状モデラー94に提供されてもよい例示的なモード98は、関節窩のサイズ、肩甲骨のサイズ、傾斜の量、バージョン数、関節窩および矢状頸部の長さの予測される量、肩甲頸部に対する関節窩の角度、重要な肩の角度、肩峰および/または烏口骨の予測、上腕骨頭のサイズ、上腕骨頭の内反/外反、大腿骨および/または脛骨の内反/外反、大腿骨および/または脛骨の内旋/外旋、肩甲下筋、三角筋、および/または棘上筋の完全性、ML幅およびAP幅、顆頭間ノッチ深さ、脛骨傾斜、膝のQ角度、ACL/PCL安定性、MCL/LCL安定性、屈曲量、延長の量、関節を包囲する軟組織の質および量、膝蓋骨追跡角度、骨密度、骨質亜脱臼率、解剖学的目印、関節腔、術前可動域、術前の生来の解剖学的構造の回転中心と計画された術後のインプラントの回転中心との間のデルタ距離、前述のものの任意の組み合わせなどが挙げられる場合があるが、これらに限定されない。
【0098】
一部の実装では、統計的形状モデル95を特徴付けるために、少なくとも七つの異なるモードが統計的形状モデル94によって利用されてもよい。しかしながら、本開示の範囲内で、より大きい数またはより小さい数のモードが提供されてもよい。
【0099】
一部の実装では、モード98は事前に定義されなくてもよい。むしろ、統計的形状モデラー94は、人工知能(例えば、ニューラルネットワーク)または機械学習を利用して、統計的形状モデル95内でモデル化される骨または関節に最も良好に関連するモードを推定するようにプログラムされてもよい。
【0100】
別の入力として、統計的形状モデラー94は、画像データの複数のセット96を分析するために使用される複数の事前に定義された標準偏差100を受信してもよい。各標準偏差100は、複数の事前に定義されたモード98の各々内に含有される解剖学的分散(例えば、特徴間の距離、特徴の配向、相対的特徴など)を代表してもよい。標準偏差100は、統計的形状モデル95内で表わされる代表的患者集団のパーセンタイルカバレッジを検証するために使用されてもよい。一部の実装では、少なくとも七つの異なる偏差の標準(例えば、-3、-2、-1、0、1、2、および3)が、統計的形状モデル94によって利用されて、統計的形状モデル95内に記述される解剖学的構造内に含有されるすべての解剖学的分散をさらに特徴付けてもよい。しかしながら、本開示の範囲内で、より大きい数またはより小さい数の標準偏差を利用することが可能である。
【0101】
統計的形状モデラー94は、プロセッサ42からのコマンドに応答して、複数の標準偏差100を複数の事前に定義されたモード98と組み合わせて、統計的形状モデル95内に表される患者集団全体の解剖学的構成を分類するために、統計的形状モデル95に関連付けられた骨または関節へと複数の解剖学的構成分類99Nを割り当ててもよく、式中Nは、任意の数である。次いで、各解剖学的構成分類99Nは、記憶システム18の解剖学的構成分類データベース92に保存されてもよい。
【0102】
図9は、統計的形状モデル95に由来する特定の骨モデル102へと割り当てられた、例示的な解剖学的構成分類99を概略的に描写する。一実施形態では、骨モデル102は、肩関節の肩甲骨の3Dモデルである。しかしながら、他の骨および関節を、同様の様式で分類することも可能である。
【0103】
図8の統計的形状モデラー94は、統計的形状モデル95に関連付けられたその他の類似の骨/関節と比較して、骨モデル102において任意の解剖学的差異を特徴付けるために、複数のモード98
1~98
7の各々に関して骨モデル102を分析してもよい。当然のことながら、より大きい数またはより小さい数のモードが可能である。
【0104】
統計的形状モデラー94は、複数の標準偏差1001~1007に対してモードの各々を分析することによって、複数の事前に定義されたモード981~987の各々内に含有される任意の解剖学的分散をさらに特徴付ける場合がある。当然のことながら、より大きい数またはより小さい数の偏差の標準が可能である。
【0105】
図9に示す実装では、骨モデル102は、その解剖学的構成分類99として数値0213120が割り当てられている。この数値は、第一のモード98
1内の0の偏差の標準、第二のモード98
2内の2の偏差の標準、第三のモード98
3内の1の偏差の標準、第四のモード98
4内の3の偏差の標準、第五のモード98
5内の1の偏差の標準、第六のモード98
6内の2の偏差の標準、および第七のモード98
7内の0の偏差の標準を表す。それ故に、解剖学的構成分類99は、骨モデル102に関連付けられた解剖学的構造を記述するための固有の数値的な識別子である。
【0106】
図1~
図9を引き続き参照しながら、
図10は、システム10を使用するそれぞれの患者のための整形外科手技を計画するための方法110を概略的に図示する。方法110は、患者のための外科手術計画を準備するための外科手術計画手順の一部として、ユーザー(例えば、外科医)によって実施されてもよい。より少ない工程または追加的な工程が下記に列挙され、本開示の範囲内で実施することが可能であり、また列挙される工程の順序は、本開示を限定することを意図するものではない。
【0107】
システム10は、その関連付けられたコンピューティングデバイスおよびモジュールのうちのいずれかを介して、方法110の工程の各々を実行するように構成されてもよい。例示的な実装では、クライアントコンピュータ14のうちの一つ以上のコンピューティングデバイス40は、方法110を実行するようにプログラムされてもよい。したがって、方法110は、計画技師が、患者の解剖学的構造の骨モデル30をすでに作成し、そして骨モデル30内の術前の生来の解剖学的構造の回転中心64を特定したと仮定する。しかしながら、本開示の範囲内で他の実装がさらに企図される。
【0108】
術前計画入力は、工程112において、ユーザーから受信されてもよい。術前計画入力は、インプラントタイプ選択、インプラントサイズ選択、インプラント場所、インプラント配向、インプラントオフセットなどを含んでもよい。
【0109】
術前計画入力に基づいて、計画された術後のインプラントの回転中心74は、工程114において特定されてもよい。次いで、計画された術後のインプラントの回転中心74と術前の生来の解剖学的構造の回転中心64との間のデルタ距離78は、工程116において特定されてもよい。
【0110】
工程118において、ユーザーは、特定された回転中心デルタ距離78が許容可能であるかどうかを指示するように促される場合がある。いいえの場合、方法110は、インプラントタイプ、サイズ、場所、配向などの入力に対する追加的なユーザー修正を受信するための工程112へと戻る場合がある。
【0111】
方法110は、デルタ距離78がユーザーに許容可能である時、工程120へと進んでもよい。この工程において、システム10は、ユーザーから術前外科手術計画の承認を受信する場合がある。次いで、計画された術後のインプラントの回転中心74および承認された外科手術計画に関連付けられたデルタ距離78は、工程122において記憶システム18の適切なデータベース内に保存される。
【0112】
次に、工程124において、コンピューティングデバイス40は、解剖学的構成分類データベース92および/または外科手術転帰データベース88へと問い合わせて、類似の解剖学的構成分類および類似の回転中心特性(例えば、術前の生来の解剖学的構造の回転中心、計画されたインプラントの回転中心、デルタ距離など)を有する、その中に記憶された記録を見つけてもよい。最も近い回転中心特性を有する記録は、工程126においてコンピューティングデバイス40のユーザーインターフェース上に表示されてもよい。
【0113】
ユーザーは、ブロック128において、中心または回転データに基づいて、順調な外科手術転帰の確率を評価するように促される場合がある。次いで、方法110は、回転中心デルタ距離78が許容可能であるかどうかを再度指示するようにユーザーに問い合わせることによって、工程118へと戻る場合がある。次いで、方法110は、ユーザーがインプラントのタイプ、サイズ、場所、配向などに対して、もはやこれ以上は修正をしなくなるまで、ループ様式で継続する場合がある。
【0114】
本開示の提案された外科手術計画システムおよび方法は、個々の患者に対して調整された外科手術計画を作成および実施するために利用されてもよく、これは治癒を改善する場合がある。開示されたシステムおよび方法は、順調な外科手術転帰を得る確率をより良好に評価するために、計画されたインプラント回転中心と術前の生来の解剖学的構造の回転中心との間のデルタ距離を含む、中心または回転のデータを術前に分析してもよい。したがって、提案されたシステムおよび方法は、先行の計画システムと比較して改善された機能を提供する。
【0115】
異なる非限定的な実施形態が、特定の構成要素または工程を有するものとして例示されているが、本開示の実施形態は、それらの特定の組み合わせに限定されない。非限定的な実施形態のいずれかからの構成要素または特徴のいくつかを、他の非限定的な実施形態のいずれかからの特徴または構成要素と組み合わせて使用することが可能である。
【0116】
当然のことながら、同様の参照符号は、いくつかの図面全体を通して、対応する要素または同様の要素を特定する。さらに当然のことながら、これらの例示的な実施形態では、特定の構成要素の配置が開示され、また図示されるが、他の配置もまた、本開示の教示から恩恵を受けることができる。
【0117】
前述の記述は、例示的であるとして解釈されるべきであり、いかなる限定的な意味でも解釈されるべきではない。当業者は、ある特定の修正が、本開示の範囲内になる場合があることを理解するであろう。これらの理由により、以下の特許請求の範囲が、本開示の真の範囲および内容を決定するために検討されるべきである。
【国際調査報告】