(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】抗Aβプロトフィブリル抗体の皮下製剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240829BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240829BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240829BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P25/28
A61K47/18
A61K47/26
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513446
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022041926
(87)【国際公開番号】W WO2023034230
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ランドリー, イシャニ
(72)【発明者】
【氏名】サチデブ, パラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】バーベル, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】クレイマー, リン
(72)【発明者】
【氏名】兼清 道雄
(72)【発明者】
【氏名】小山 彰比古
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン, チャド
(72)【発明者】
【氏名】イリザリー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カプロウ, ジューン
(72)【発明者】
【氏名】ダッダ, ショバ
(72)【発明者】
【氏名】レイダーマン, ラリサ
(72)【発明者】
【氏名】早戸 誠一
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB16
4C076CC01
4C076DD51
4C076EE23
4C076FF61
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書には、アルツハイマー病を治療する方法、初期アルツハイマー病を有する対象の臨床的衰退を低減する方法、対象の脳アミロイドレベルを低減する方法、対象をアミロイド陽性からアミロイド陰性に転換させる方法、アルツハイマー病を予防する方法であって、抗Aβプロトフィブリル抗体を皮下投与することを含む方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病を治療する方法であって、それを必要としている対象に、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含む抗Aβプロトフィブリル抗体を、400mg~800mgなど、400mg~1500mg皮下投与することを含む方法。
【請求項2】
臨床的衰退を遅延させる方法であって、それを必要としている対象に、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含む抗Aβプロトフィブリル抗体を、400mg~800mgなど、400mg~1500mg皮下投与することを含む方法。
【請求項3】
脳アミロイドレベルを低減する方法であって、それを必要としている対象に、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含む抗体を、400mg~800mgなど、400mg~1500mg皮下投与することを含む方法。
【請求項4】
アミロイド陽性対象をアミロイド陰性に転換させる方法であって、前記対象に、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含む抗体を、400mg~800mgなど、400mg~1500mg皮下投与することを含む方法。
【請求項5】
前記対象が初期アルツハイマー病を有すると診断されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、アルツハイマー病を有すると診断されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、アルツハイマー病を発症するリスクがある、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗Aβプロトフィブリル抗体が週1回投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗Aβプロトフィブリル抗体が、400mg~500mg、500mg~600mg、600mg~700mg、又は700mg~800mgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗Aβプロトフィブリル抗体が、440mg、580mg、又は720mgの用量で投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む前記抗Aβプロトフィブリル抗体、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象がApoE4陽性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗Aβプロトフィブリル抗体が、プレフィルドシリンジ又は自己注射器の形態で医薬組成物中に含まれている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
アルツハイマー病を治療する方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
前記医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【請求項15】
前臨床アルツハイマー病を治療する方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
前記医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【請求項16】
アルツハイマー病を有する対象の臨床的衰退を遅延させる方法であって、それを必要としている前記対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
前記医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【請求項17】
対象の脳アミロイドレベルを低減する方法であって、それを必要としている前記対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
前記医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【請求項18】
対象をアミロイド陽性から陰性に転換させる方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
前記医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【請求項19】
アルツハイマー病の病態生理学的及び臨床的進行を遅延させる方法であって、それを必要としている対象に、
a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
前記医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【請求項20】
アルツハイマー病を予防する方法であって、それを必要としている対象に、
a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
前記医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【請求項21】
前記対象が無傷の認知機能を有する、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象がアミロイドの上昇を示す、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が中間アミロイドを示す、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象に0週目から8週目まで毎週、前記医薬組成物の1回の注射、続いて10週目から96週目まで毎週、前記医薬組成物の2回の注射、続いて前記医薬組成物の2回の注射が皮下投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象に、440mg、580mg、又は720mgの前記抗Aβプロトフィブリル抗体を含む前記医薬組成物が0週目から216週目まで毎週皮下投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象に0週目から4週目まで2週間毎に前記医薬組成物の1回の注射、続いて6週目から212週目まで2週間毎に前記医薬組成物の2回の注射が皮下投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象への前記医薬組成物の初回用量の投与後少なくとも2年間にわたって前記対象に前記医薬組成物が毎週投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象に少なくとも4年間にわたって前記医薬組成物が投与される、請求項15~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象に維持用量の前記医薬組成物が投与される、請求項15~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象がアミロイド蓄積及び神経原線維のもつれの発生に関してタウのPETスキャン、血漿及び/又はCSFバイオマーカーに基づきモニタされる、請求項15~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象に0週目から8週目まで毎週、前記医薬組成物の1回の注射、続いて10週目から96週目の週数まで毎週、前記医薬組成物の2回の注射、続いて98週目から216週目まで2週間毎に前記医薬製剤の2回の注射が皮下投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象に8週目から94週目まで及び/又は98週目から216週目まで前記医薬組成物の2回の注射が皮下投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象に、440mg、580mg、又は720mgの前記抗Aβプロトフィブリル抗体を含む前記医薬組成物が0週目から96週目まで毎週皮下投与され、続いて前記医薬組成物が98週目から216週目まで2週間毎に投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象に0週目から8週目まで2週間毎に前記医薬組成物の1回の注射、続いて10週目から216週目まで2週間毎に前記医薬組成物の2回の注射が皮下投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象に、440mg、580mg、又は720mgの前記抗Aβプロトフィブリル抗体を含む前記医薬組成物が10週目から216週目まで2週間毎に皮下投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象に、440mg、580mg、又は720mgの前記抗Aβプロトフィブリル抗体を含む前記医薬組成物が10週目から212週目まで2週間毎に皮下投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が65~80歳である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が55~64歳であり、
(i)75歳より前に認知症発症が診断された第一度近親者;
(ii)少なくとも1つのアポリポタンパク質E4変異体(APOE4)アレル;及び
(iii)前記投与前のPET又は脳脊髄液(CSF)検査による脳アミロイドの上昇
から選択される少なくとも1つのリスク要因を有する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記投与前の時点で前記対象の臨床的認知症尺度(CDR)全般スコアが0である、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象の学歴調整後のミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが前記投与前に27以上である、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象のウェクスラー記憶尺度-改訂版論理的記憶下位尺度II(WMS-R LM II)スコアが、前記投与前に、50~64歳の範囲の年齢の対象について15以下、65~69歳の範囲の年齢の対象について12以下、70~74歳の範囲の年齢の対象について11以下、75~79歳の範囲の年齢の対象について9以下、及び80~90歳の範囲の年齢の対象について7以下の前記WMS-IV LMIIの年齢調整平均より少なくとも1標準偏差低い、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記注射の容積が、1.1mL、1.4mL、又は1.8mLである、請求項24、26、31、32、又は34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部には、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から交付された助成金第R01AG054029号、第R01AG061848号、及び第5U24AG057437-04号に基づく政府の支援を受けて行われた。連邦政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本願は、「SUBCUTANEOUS FORMULATIONS OF ANTI-ABETA PROTOFIBRIL ANTIBODY AND METHODS OF USE THEREOF」と各々題される2021年8月30日に出願された米国仮特許出願第63/260,730号明細書;2022年2月2日に出願された同第63/306,050号明細書;2022年3月15日に出願された同第63/269,389号明細書;2022年3月16日に出願された同第63/269,463号明細書;2022年5月12日に出願された及び同第63/364,619号明細書の利益及びそれに対する優先権を主張するものであり、これらの内容は、全体として参照により本明細書に明示的に援用される。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、未知の病因の進行性神経変性障害であり、高齢者では最も一般的な形態の認知症である。2006年には、世界で2660万例のAD症例があり(範囲:1140万~5940万例)(Brookmeyer,R.,et al.,「アルツハイマー病の世界的負担を予測する(Forecasting the global burden of Alzheimer’s Disease)」.Alzheimer Dement.2007;3:186-91)、一方、米国では500万人を超える人がADを抱えて生きていると報告された(「2010年数字で見るアルツハイマー病(2010 Alzheimer’s disease facts and figures)」.Alzheimer Dement.2010;6:158-94)。2050年までに世界全体のAD患者数は1億680万例(範囲:4720万~2億2120万例)に上ると予測され、一方、米国単独では患者数は1100万~1600万例と推定される。(Brookmeyer、前掲、及び「2010年数字で見るアルツハイマー病(2010 Alzheimer’s disease facts and figures)」、前掲)。
【0004】
この疾患には、概して認知機能の全般的な衰退が関わり、これが緩徐に進行し、末期の対象では寝たきり状態となる。AD対象は、典型的には症状の発症後僅か3~10年しか生存しないが、2年及び20年の極端な例も知られている(Hebert,L.E.,et al.,「米国人口におけるアルツハイマー病:2000年センサスを用いた有病率推定(Alzheimer disease in the U.S.population:prevalence estimates using the 2000 census)」.Arch Neurol.2003;60:1119-1122)。死亡診断書において死因がADとされることはまれであるため、ADに起因する死亡率は大幅に低く見積もられているという事実があるにも関わらず、ADは米国におけるあらゆる死亡原因の中で7番目に多く、年齢が65歳を超えるアメリカ人の死亡原因として5番目に多い(「2010年数字で見るアルツハイマー病(2010 Alzheimer’s disease facts and figures)」、前掲)。
【0005】
組織学的には、この疾患は、連合皮質、辺縁系及び基底核に主に見られる神経突起斑を特徴とする。こうした神経突起斑の主要な構成成分は、アミロイドベータペプチド(Aβ)である。Aβは、様々な立体構造状態-モノマー、オリゴマー、プロトフィブリル、及び不溶性フィブリルで存在する。アルツハイマー病の発症とAβ産生との間の機構的関係の詳細は不明である。しかしながら、現在、幾つかの抗Aβ抗体が、アルツハイマー病の治療用薬剤候補として臨床試験段階にある。
【0006】
抗Aβ抗体及び他のタンパク質は、対象に対し、静脈内、皮下、筋肉内、及び他の手段で投与され得る。抗体の投薬量、投薬形態、及び投与経路は、多くの難問を提示し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書には、アルツハイマー病の治療及び/又は予防方法であって、それを必要としている対象に抗Aβプロトフィブリル抗体を皮下投与することを含む方法が提供される。また、本明細書には、初期アルツハイマー病を有する対象の臨床的衰退を低減する方法、対象の脳アミロイドレベルを低減する方法、及び対象をアミロイド陽性からアミロイド陰性に転換させる方法であって、それを必要としている対象に抗Aβプロトフィブリル抗体を皮下投与することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】カニクイザルに対する4ヵ所の異なる背側注射位置を示す。
【
図2】実施例4及び5に開示される本研究の事前無作為化及び無作為化スケジュールを示す。
【
図3】IV製剤及びSC製剤の経時的血清濃度を比較するプロットを示す。
【
図4】IV製剤及びSC製剤の用量正規化曲線下面積(AUC)を比較するグラフを示す。
【
図5】IV製剤及びSC製剤(550mg QW)の12週間にわたる予測血清濃度のプロットを示す。
【
図6】模擬データに基づく単回用量のSC製剤からの健常対象におけるAUC
ss幾何平均比比較の予測90%信頼区間を示す。
【
図7】IV製剤及びSC製剤(720mg QW)の12週間にわたる予測血清濃度のプロットを示す。
【
図8】IV製剤及びSC製剤の体重(kg単位のBW)に対するAUCを比較するプロットを示す。10mg/kg/BW iv及び720mg/W scとは、それぞれ、10mg/kg隔週静脈内及び720mg毎週皮下を指す。
【
図9】体重(kg単位のBW)に対するAUCsc/AUCiv比のプロットを示す。
【
図10】IV製剤及びSC製剤を投与された3例の体重が異なる対象(51kg、70kg、及び99kg)についての18ヵ月にわたるPET SUVrをプロットする3つのグラフにおけるアミロイドPETクリアランスを示す。
【
図11】予測モデルにおける12及び18ヵ月時点での総皮質平均皮質下白質(SWM)標準取込値比(SUVr)のベースラインからの%変化率(CFB)のグラフを示す。
【
図12】C
maxに対する予測ARIA-E発生率(%)のプロットを示す。
【
図13】BWが異なるIV製剤及びSC製剤(550mg QW)を投与したApoE4陽性及びApoE4陰性対象での18ヵ月の治療にわたる予測ARIA-E発生率(%)の2つのグラフを示す。
【
図14】BWが異なるIV製剤及びSC製剤(720mg QW)を投与したApoE4陽性及びApoE4陰性対象での18ヵ月の治療にわたる予測ARIA-E発生率(%)の2つのグラフを示す。
【
図17】時間の経過に伴いアミロイドが徐々にクリアランスされることを示す代表的な横断及び冠状断フロルベタピルPET SUVr画像を示す(SUVR:標準取込値比;CL:センチロイド単位;OLE:非盲検延長;最上列:ベースラインMRI;列2~5:それぞれ、ベースライン時、55週目、79週目及び171週目(OLEベースライン)のフロルベタピルPET SUVR画像)
【
図18】92週間のレカネマブ治療のないギャップ期間を間に挟んだ、患者がレカネマブ10mg/kg IV隔週の投与を79週間にわたって受けたコアフェーズの経過中における臨床尺度の折れ線グラフを示す。評価した臨床尺度は、MMSE、ADAS-cog、CDR-SB、及びADCOMSであった。
【
図19】92週間のレカネマブ治療のないギャップ期間を間に挟んだ、患者がレカネマブ10mg/kg IV隔週の投与を79週間にわたって受けたコアフェーズの経過中におけるバイオマーカーの折れ線グラフを示す。評価したバイオマーカーは、アミロイドPET、血漿Ab42/40比(C2Nアッセイ)、血漿p-タウ181、及びボリューメトリックMRIであった。
【
図20】β-アミロイド、タウ-AT8、及びGFAP染色した、レカネマブで治療した患者の上前頭皮質BA8、9の拡大率12.5倍及び200倍の顕微鏡像を示す。
【
図21】β-アミロイド及びタウ-AT8染色した、未治療のAD患者の上前頭皮質BA8、9の拡大率12.5倍及び200倍の顕微鏡像を示す。
【
図22】β-アミロイド、タウ-AT8、及びGFAP染色した、レカネマブで治療した患者の海馬体の拡大率12.5倍及び200倍の顕微鏡像を示す。
【
図23】β-アミロイド及びタウ-AT8染色した、未治療のAD患者の海馬体の拡大率12.5倍及び200倍の顕微鏡像を示す。
【
図24】レカネマブで治療した患者(上)を未治療のAD患者と比較した、アミロイド斑に関して染色した脳組織の400倍拡大率の顕微鏡像を示す。
【
図25】レカネマブで治療した患者におけるCD68染色による脳組織中のミクログリアの顕微鏡像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
以下は、本願で使用される用語の定義である。
【0010】
本明細書で使用されるとき、単数形の用語「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」には、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形の参照が含まれる。
【0011】
語句「及び/又は」は、本明細書で使用されるとき、そのように等位接続された要素の「いずれか一方又は両方」、即ち、ある場合には等位接続的に存在し、他の場合には離接接続的に存在する要素を意味する。このように、非限定的な例として、「A及び/又はB」は、「~を含んでいる(comprising)」などの非制限的な文言と併せて使用されるとき、一部の実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む)を指してもよく;他の実施形態では、Bのみ(任意選択でA以外の要素を含む)を指してもよく;更に他の実施形態では、A及びBの両方(任意選択で他の要素を含む)を指してもよい;等である。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「少なくとも1つ」は、要素のリスト中にある要素のうちの1つ以上であるが、必ずしも要素のリストの中に具体的に列挙されているありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含んで、要素のリストにある要素の任意の組み合わせを除外するとは限らないことを意味する。この定義はまた、具体的に特定される要素に関係があるか否かにかかわらず、語句「少なくとも1つ」が参照する要素のリストの中に具体的に特定される要素以外の要素が任意選択で存在し得ることを許容する。このように、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は、等価に、「A又はBの少なくとも1つ」、又は、等価に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上を含めたAであって、Bが存在しないもの(及び任意選択でB以外の要素を含む)を指してもよく;別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上を含めたBであって、Aが存在しないもの(及び任意選択でA以外の要素を含む)を指してもよく;更に別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上を含めたA、及び少なくとも1つの、任意選択で2つ以上を含めたB(及び任意選択で他の要素を含む)を指してもよい;等である。
【0013】
本明細書で使用されるとき、「ベースラインからの調整平均変化量」は、時間の経過に伴うバイオマーカー値の変化量の統計的分析を用いた計算を指す。一部の実施形態において、線形混合効果モデル(MMRM)を用いて少なくとも1つの追加的な共変量を考慮することにより、ベースラインからの調整平均変化量を決定する。
【0014】
数字が記載されるときは、単独であれ、又は数値範囲の一部としてであれ、その数値が、表示されている値から上方及び下方に、最大でその表示されている値の±10%の変動分だけ変わり得ることが理解されなければならない。本明細書に値の範囲が挙げられるとき、それには、その範囲内にある各値及び部分的範囲が包含されることが意図される。例えば、「2.5mg/kg~10mg/kg」には、例えば、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5mg/kg、5.5mg/kg、6mg/kg、6.5mg/kg、7mg/kg、7.5mg/kg、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kg、10mg/kg、2.5mg/kg~3mg/kg、2.5mg/kg~4.5mg/kg、3mg/kg~4.5mg/kg、4.5mg/kg~8mg/kg、2.5mg/kg~9mg/kgなどが包含されることが意図される。
【0015】
アミロイドβ1-42(Aβ42)とは、完全長タンパク質のアミノ酸1~42からのアミロイドベータモノマーを指す(表22、配列番号11)。アミロイドβ1-40(Aβ1-40)とは、完全長タンパク質のアミノ酸1~40からのアミロイドベータモノマーを指す(表22、配列番号12)。
【0016】
本明細書に記載されるとおりの「前臨床AD」又は「前駆AD」の患者は、脳内のアミロイドレベルが中等度であるか又は上昇している認知機能正常者であり、記憶愁訴を伴う又は伴わない無症候期にあること、並びにエピソード記憶及び実行機能障害が出現しつつあることによって同定され得る。認知機能正常には、CDR 0の者、又は認知機能検査スコア(MMSE、インターナショナルショッピングリスト課題、論理的記憶等)が正常範囲内の者が含まれ得る。前臨床ADは、重大な不可逆的神経変性及び認知機能障害に先立って起こり、典型的には、ADのインビボ分子バイオマーカーの出現及び臨床症状の欠如によって特徴付けられる。将来アルツハイマー病が発症することを示唆し得る前臨床ADバイオマーカーとしては、限定はされないが、アミロイド又はタウ陽電子放射断層撮影法(PET)による1つ以上の中等度の又は上昇した脳内アミロイドレベル(例えば、約20~40のセンチロイド尺度、例えば、約20~32の尺度)、脳脊髄液Aβ1-42レベル、脳脊髄液総タウレベル、脳脊髄液ニューログラニンレベル、脳脊髄液神経フィラメント軽鎖レベル、及び血清中又は血漿中で測定したときの血液バイオマーカー(例えば、Aβ1-42レベル、2つの形態のアミロイド-βペプチドの比(Aβ42/Aβ40比、例えば、約0.092~0.094の間の比、又は約0.092を下回る比)、血漿総タウ(T-タウ)の血漿レベル、リン酸化タウ(P-タウ)アイソフォームのレベル(181(P-タウ181)、217(P-タウ217)、及び231(P-タウ231)でリン酸化したタウを含む)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、及び神経フィラメント軽鎖(NfL))が挙げられる。例えば、βサイトアミロイド前駆体タンパク質切断酵素(BACE)阻害薬であるエレンベセスタット(E2609)で治療した対象であって、1.4~1.9のアミロイドベースライン陽電子放射断層撮影法(PET)標準取込値比(SUVr値)を有した対象は、治療継続中である間に呈した認知機能衰退の緩徐化が最も大きかったことが分かっている。Lynch,S.Y.et al.「エレンベセスタット、BACE阻害薬:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度から中等度の認知症を有する対象における第2相研究の結果(Elenbecestat,a BACE inhibitor:results from a Phase 2 study in subjects with mild cognitive impairment and mild-to-moderate dementia due to Alzheimer’s disease)」.Poster P4-389,Alzheimer’s Association International Conference,July 22-26,2018,Chicago,IL,USAを参照のこと。同様に、1.2を下回るベースラインフロルベタピルアミロイドPET SUVrレベルを有する対象は、検出可能となるのに十分な認知機能の衰退を呈しない一方、1.6を上回るSUVrレベルを有する対象は、アミロイドレベルが飽和レベルに達していて、治療による認知機能尺度の変化が生じないプラトー効果と相関関係があるように見えることが分かっている。Dhadda,S.et al.,「ベースラインフロルベタピルアミロイドPET標準取込値比(SUVr)は前駆アルツハイマー病(pAD)の臨床的進行を予測することができる(Baseline florbetapir amyloid PET standard update value ratio(SUVr)can predict clinical progression in prodromal Alzheimer’s disease(pAD))」.Poster P4-291,Alzheimer’s Association International Conference,July 22-26,2018,Chicago,IL,USAを参照のこと。
【0017】
「初期AD」又は「初期アルツハイマー病」(EAD)は、本明細書で使用されるとき、ADによる軽度認知障害-可能性が中等度から軽度アルツハイマー病型認知症に至るまでのAD重症度の連続体である。初期ADの対象には、本明細書に定義するとおりの軽度アルツハイマー病型認知症の対象及び本明細書に定義するとおりのADによる軽度認知障害(MCI)-可能性が中等度の対象が含まれる。一部の実施形態において、初期ADの対象は、ミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアが22~30であり、CDR全般が0.5~1.0の範囲である。初期AD疾患を検出する他の方法は、McKhann,G.M.et al.,「アルツハイマー病による認知症の診断:国立老化研究所-アルツハイマー病協会作業グループからのアルツハイマー病診断ガイドラインに関する提言(The diagnosis of dementia due to Alzheimer’s disease:Recommendations from the National Institute on Aging-Alzheimer’s Association workgroups on diagnostic guidelines for Alzheimer’s disease)」.Alzheimer Dement.2011;7:263-9におけるほぼ確実なアルツハイマー病型認知症の米国国立老化研究所-アルツハイマー病協会(NIA-AA)コア臨床判定基準を含め、以下に具体的に示す検査及びアッセイを利用するものであり得る。他の方法としては、CDR-SB、ADCOMS総合臨床スコア、ミニメンタルステート検査、ADAS-Cog、ADAS MCI-ADL、修正iADRS、ウェクスラー記憶尺度-IV論理的記憶(下位尺度)I(WMS-IV LMI)、及びウェクスラー記憶尺度-IV論理的記憶(下位尺度)II(WMS-IV LMII)が挙げられる。一部の実施形態において、初期ADの対象は、脳内のアミロイド高値又は陽性アミロイド負荷のエビデンスを有する。一部の実施形態において、脳内のアミロイド高値又は陽性アミロイド負荷は、PET評価により指示され、及び/又は確認される。一部の実施形態において、脳内のアミロイド高値又は陽性アミロイド負荷は、Aβ1-42などのマーカーのCSF評価(例えば、可溶性CSFバイオマーカー分析)により指示され、及び/又は確認される。一部の実施形態において、脳内のアミロイド高値又は陽性アミロイド負荷は、アミロイドβ1-42(Aβ42)の濃度及びアミロイドβ1-40(Aβ40)の濃度を測定し、Aβ40に対するAβ42の比(Aβ42/40比又はAβ1-42/1-40比)を計算することにより指示され、及び/又は確認される。一部の実施形態において、脳内のアミロイド高値又は陽性アミロイド負荷は、MRIにより指示され、及び/又は確認される。一部の実施形態において、脳内のアミロイド高値又は陽性アミロイド負荷は、網膜アミロイド蓄積により指示される。一部の実施形態において、2つ以上の評価方法が用いられる。
【0018】
対象からの試料における血清又は血漿Aβ1-42/1-40比を測定することに加えて、対象のアミロイドレベルは、限定はされないが:(a)PETスキャンによって目視読影又は半定量的閾値(SUVr又はセンチロイド)のいずれかから検出されるアミロイド;(b)脳脊髄液(CSF)Aβ1-42、及び/又はAβ1-42/1-40比;及び/又は(c)血液バイオマーカー(血漿Aβ1-42、タウ、総タウ(T-タウ)、及び/又はP-タウ(例えば、P-タウ181)など)など、1つ以上のバイオマーカーによって或いは検出され、又は加えて確認されてもよい。二次的なマーカーによって一次的なアミロイドの決定を確認してもよく、それらとしては、限定はされないが、神経フィラメント軽鎖ペプチド(NfL)などの神経損傷マーカー及びグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)などの神経炎症マーカーが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「無傷の認知機能」を有する対象とは、学歴調整後のMMSEのスコアが27より高く、CDR全般が0に等しい対象を指す。
【0020】
対象のアミロイドレベルは、限定はされないが:(a)PETスキャンによって目視読影又は半定量的閾値(SUVr又はセンチロイド)のいずれかから検出されるアミロイド;(c)脳脊髄液(CSF)Aβ1-42、及び/又はAβ1-42/1-40比;及び/又は(d)血液バイオマーカー(即ち、血漿Aβ1-42、Aβ1-42/Aβ1-40、タウ、総タウ(T-タウ)、P-タウ、及び/又はNfL)などのバイオマーカーによって検出することができる。二次的なマーカーによって一次的なアミロイドの決定を確認してもよく、それらとしては、限定はされないが、(a)PETスキャンによって検出されるタウ;(b)CSFタウ、リン酸化タウ(p-タウ)、神経フィラメント軽鎖ペプチド(NfL)、及び/又はニューログラニン;(c)他の血液バイオマーカー(即ち、タウ、総タウ(T-タウ)、P-タウ、及び/又はNfL)が挙げられる。
【0021】
「アミロイド」は、分岐していない、通常は細胞外にある、インビボで見出される線維を指す;加えて、この線維は色素コンゴレッドに結合し、次には交差偏光子間で観察すると緑色の複屈折を示す。アミロイド形成タンパク質は同定されており、アルツハイマー病(AD)に関連するアミロイド-βペプチド(Aβ)、2型糖尿病に関連する膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、及び海綿状脳症に関連するプリオンタンパク質(PrP)を含め、重篤な疾患と関連付けられている。本明細書で使用されるとき、「アミロイド」、「脳アミロイド」、及び「アミロイド-βペプチド(Aβ)」は、同義的に使用される。
【0022】
一部の実施形態において、対象は、「アミロイド高値」又は「中間アミロイド」を示す。当業者は認識するであろうとおり、アミロイドPETからのアミロイドレベルは、センチロイド法を用いて「センチロイド」単位(CL)で報告することができる(Klunk WE et al.「センチロイド計画:PETによる定量的アミロイド斑推定法の標準化(The Centiloid Project:standardizing quantitative amyloid plaque estimation by PET)」.Alzheimer’s Dement.2015;11:1-15 e1-4)。センチロイド法ではトレーサーが0CL~100CLの尺度で測定され、ここでは0が基準点と見なされ、若年健常対照の平均値に相当し、100CLが、軽度から中等度の重症度のADによる認知症を有する対象に見られる平均アミロイド負荷量に相当する(同上)。当業者に公知のとおり、センチロイド閾値は様々であってよく、例えば新規の又は追加的な科学的情報に基づき改良し得る(例えば、http://www.gaain.org/centiloid-projectを参照のこと)。アミロイドレベルの高値は、当業者(person of ordinary skill in the art:POSA)に公知の方法に従い決定された健常対照のベースライン閾値に対する相対で設定することができる。例えば、32.5のセンチロイド値を「アミロイド高値」の閾値として使用することができ、「中間アミロイド」レベルは、20~32.5CLの範囲のAβアミロイドPETを指す。別の例では、40のセンチロイド値を「アミロイド高値」の閾値として使用することができ、「中間アミロイド」レベルは、20~40CLの範囲のAβアミロイドPETを指す。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「ApoE4陽性」対象及び「ApoE4保有者」は、アポリポタンパク質遺伝子のε4バリアントを内包する対象を指す。ε4バリアントは、アポリポタンパク質遺伝子の幾つかのメジャーアレルのうちの1つである。この遺伝子は、概して脂肪の代謝に関与する。アポリポタンパク質ε4の保有者は、非保有者と比較したとき、アミロイド貯留速度の大幅な増加を示すことが分かっている(Drzezga,A.et al,「アルツハイマー病においてAPOE遺伝子型がアミロイド斑負荷量及び灰白質容積に及ぼす効果(Effect of APOE genotype on amyloid plaque load and gray matter volume in Alzheimer disease)」.Neurology.2009;72:1487-94)。一部の実施形態において、対象は、アポリポタンパク質E ε4遺伝子アレルのヘテロ接合体保有者である。一部の実施形態において、対象は、アポリポタンパク質E ε4遺伝子アレルのホモ接合体保有者である。ApoE4保有者は、抗Aβプロトフィブリル抗体(即ちレカネマブ)を含む組成物を投与されたとき、ApoE4非保有者と比べて高い治療反応性を示す。用語「ApoE4陰性」及び「ApoE4非保有者」は、同義的に使用される。
【0024】
本明細書で使用されるとき、初期AD対象が「アミロイド陽性」か、それとも「アミロイド陰性」かは、脳内へのアミロイド造影剤取り込みのPET評価、バイオマーカーの評価を用いたアミロイド病変の存在のCSF評価、及び/又は血液又は血漿バイオマーカーによって指示されるとおり、対象が陽性アミロイド負荷を有するか否かに基づいて決定される。一部の実施形態では、PETスキャンの定性的な目視読影を用いて、PET画像パターンに基づき対象が「正常な」取り込み又は「異常な」取り込みのいずれを有するかを分類することにより、アミロイド陽性及びアミロイド陰性が決定されることになる。読影者は、異常又は正常な取り込みパターンの脳PET画像を認識するように訓練を受けた有資格者であることになり、又はアミロイドの検出は、半定量的又は定量的手法を通じて行われる。
【0025】
「軽度アルツハイマー病型認知症」の対象とは、本明細書で使用されるとき、McKhann,G.M.et al.,「アルツハイマー病による認知症の診断:国立老化研究所-アルツハイマー病協会作業グループからのアルツハイマー病診断ガイドラインに関する提言(The diagnosis of dementia due to Alzheimer’s disease:Recommendations from the National Institute on Aging-Alzheimer’s Association workgroups on diagnostic guidelines for Alzheimer’s disease)」.Alzheimer Dement.2011;7:263-9におけるほぼ確実なアルツハイマー病型認知症についてのNIA-AAコア臨床判定基準を満たす対象である。また、本明細書では、スクリーニング及びベースライン時のCDRスコアが0.5~1.0及びメモリーボックススコアが0.5以上である対象並びにウェクスラー記憶尺度-改訂論理的記憶下位尺度II(WMS-R LM II)のスコアの変化を呈する対象も含まれる。
【0026】
「ADによるMCI-可能性が中等度」の対象は、本明細書で使用されるとき、アルツハイマー病による軽度認知障害-可能性が中等度のNIA-AAコア臨床判定基準(McKhann 前掲を参照のこと)に従うようなものとして同定される対象である。例えば、症候性であるが、認知症ではないAD対象であって、脳アミロイド病変のエビデンスがあるため不均一性が低くなり、本明細書に定義されるADCOMS総合臨床スコアで測定したときの認知及び機能衰退の点で軽度アルツハイマー病型認知症対象との類似性が一層高い対象。また、スクリーニング及びベースライン時にCDRスコアが0.5及びメモリーボックススコアが0.5以上である対象も含まれる。更に、本明細書には、スクリーニング前の過去1年に徐々に始まり、緩徐に進行しつつある主観的な記憶力衰退の経過歴を訴え、それが情報提供者によって裏付けられる対象もまた含まれる。記憶力の衰退及び/又はエピソード記憶障害は、対象において、ウェクスラー記憶尺度-改訂論理的記憶下位尺度II(WMS-R LM II)のスコアの変化によって評価することができる。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」は、限定はされないが、治療下の基礎病態又はそれに関連する生理学的症状のうちの1つ以上の根絶又は改善を意味する治療利益を含めた有益な又は所望の結果を達成することを指す。
【0028】
本明細書で使用されるとき、用語「予防する」は、限定はされないが、予防利益を含めた有益な又は所望の結果を達成することを指す。予防利益のためには、本製剤は、アルツハイマー病を有するとの臨床診断が下されていない場合であっても、アルツハイマー病を発症するリスクがある対象、アルツハイマー病の1つ以上の発症前症状を有するが、臨床症状は有しない対象、又はアルツハイマー病の生理学的症状のうちの1つ以上を訴える対象に投与されてもよい。本明細書で使用されるとき「予防」には更に、治療下の基礎病態又はそれに関連する生理学的症状のうちの1つ以上の根絶又は改善を意味する治療利益が含まれてもよい。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「ARIA」は、MRIを用いて判定したときのアミロイド関連画像異常を指す。一部の実施形態において、ARIAには、アミロイド関連画像異常浮腫/浸出(ARIA-E)が含まれる。一部の実施形態において、ARIAには、アミロイド関連画像異常出血(ARIA-H)が含まれる。一部の実施形態において、ARIAの対象には頭痛、錯乱、及び/又は発作が認められ、これらを用いてARIAの対象を同定し、又はARIAの更なる判定を指示し得る。一部の実施形態において、ARIAは、治療中、指定された間隔で判定される。一部の実施形態において、ARIAは、対象にARIAの症状が認められるときに判定される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体の最高血清濃度(Cmax)をARIA-Eリスクの予測因子として使用することができる。一部の実施形態において、皮下製剤の使用が、IV投与と比較して(例えば、Cmaxがより低いことに起因して)ARIA-Eリスクの低下をもたらし得る。
【0030】
本明細書で使用されるとき、用語「臨床的衰退」は、ADの1つ以上の臨床症状の悪化を指す。臨床的衰退の測定方法は、本明細書に指定される検査及びアッセイを用いるものであり得る。一部の実施形態において、臨床的衰退は、ADCOMSの悪化により決定される。一部の実施形態において、臨床的衰退は、MMSEの悪化により決定される。一部の実施形態において、臨床的衰退は、ADAS-Cogの悪化により決定される。一部の実施形態において、臨床的衰退は、機能評価質問票(Functional Assessment Questionnaire:FAQ)の悪化により決定される。一部の実施形態において、臨床的衰退は、CDR-SBの悪化により決定される。一部の実施形態において、臨床的衰退は、ウェクスラー記憶尺度-IV論理的記憶(下位尺度)I及び/又は(下位尺度)IIの悪化により決定される。一部の実施形態において、臨床的衰退は、CDRスコアの悪化により決定される。一部の実施形態において、臨床的衰退とは、1つ以上のADバイオマーカー又は脳測定値(例えば、PET又はMRIによる)、例えば、脳萎縮及び/又はアミロイド蓄積の脳測定値の悪化を指す。
【0031】
当業者であれば理解するであろうとおり、デジタルの、コンピューター化された、及び/又は従来の(例えば、筆記式)認知機能検査を用いて初期の認知変化を検出することができ、そうした変化は軽度認知障害及び/又は認知症の発症リスクを警告し得るため、ひいてはそれを用いて本明細書に開示されるとおりの治療を必要としている対象を同定し得る。かかる検査によれば、例えば、認知機能障害をスクリーニングし、場合によってはMCIを持つ個体を同定し得る。検査では、人工知能を用いて認知機能検査結果を分析してもよく、ある軽度認知障害症例が1年以内にアルツハイマー病へと進むことになるかどうかを決定し得る。症状が出現し始める前の、病態の早期診断を用いると、本明細書に開示されるとおりの治療を必要としている対象を医師がより早く同定する助けとなり得るため、神経変性疾患の発病を遅らせ、又はその重症度を軽くすることができる可能性がある。
【0032】
本明細書には、対象の臨床的衰退を遅延させる及び/又は低減する方法であって、400mg~1500mg又は400mg~800mgなど、好適な用量の抗Aβプロトフィブリル抗体をそれを必要としている対象に皮下投与することを含む方法が提供される。本明細書で使用されるとき、「臨床的衰退を遅延させる及び/又は低減する」とは、所与の期間にわたってADCOMSにより決定したときのプラセボと比べたスコアの(例えば%単位での)変化を指す。臨床的衰退の低減及び/又は遅延は、例えば、1ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、及び/又は60ヵ月後に決定される。臨床的衰退は、ADCOMSにより決定したときプラセボと比べて少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、又は少なくとも52%低減又は遅延する。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「ADCOMS」は、本実施例及びWang,J.et al.,「ADCOMS:前駆アルツハイマー病試験のための総合臨床アウトカム(ADCOMS:a composite clinical outcome for prodromal Alzheimer’s disease trials)」.J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry.2016;87:993-999において考察されるとおりの、ADAS-Cogの4項目(遅延単語想起、見当識、単語認識、及び喚語困難)、MMSEの2項目(時間に対する見当識、及び描画)、及びCDR-SBの全6項目(身の回りの世話、地域社会活動、家庭及び趣味、記憶、見当識、並びに判断力及び問題解決)の分析に基づく総合臨床スコアであるアルツハイマー病総合スコアを指す。ADCOMSは、ADの初期段階における疾患進行(即ち、前臨床AD又は初期AD)に特に高い感度を示すように開発された。
【0034】
一部の実施形態において、対象には、ある用量、例えば、720mgなど、400mg~800mg又は400mg~1500mgの抗Aβプロトフィブリル抗体、例えば、BAN2401が、特定の頻度で、例えば、週2回、毎週(QW)、隔週(2週間毎又はQ2W)、又は毎月、ある期間、例えば、18ヵ月にわたって、又は特定の判定基準に達するまで皮下投与され、次に対象には、任意選択で維持用量の抗Aβプロトフィブリル抗体が、特定の頻度で、及びある期間にわたって、又は特定の判定基準に達するまで投与される。投与される用量、頻度、期間、及び判定基準は、前回投与された治療用量、頻度、期間、及び/又は判定基準と同じであっても、又は同じでなくてもよい。一部の実施形態において、治療用量は、週2回、例えば、1用量当たり720mgで投与され、維持用量は、週2回又は毎週、例えば、1用量当たり720mgで投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体の2つ以上の第1の用量及び2つ以上の第2の用量が投与され、ここで第2の用量は第1の用量と比べて低量及び/又は低頻度で投与される。一部の実施形態において、判定基準には、試料(例えば、血漿試料)で観察されるAβ42/40比についての、治療前に対象から取った試料の比と比べた増加又はアミロイドPET SUVrの低減が含まれ得る。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「維持用量」は、所望の治療効果を維持するために対象に投与される投薬量を指す。一部の実施形態において、対象の維持用量は、治療期間中の用量と同じである。一部の実施形態において、維持用量は、皮下投与される。一部の実施形態において、維持用量は、1回又は複数回投与される。一部の実施形態において、維持用量は、毎週、2週間毎、4週間毎、6週間毎、8週間毎、10週間毎、12週間毎(3ヵ月毎又は4分の1年毎)、16週間毎、24週間毎(6ヵ月毎又は半年毎)、48週間毎、毎月、2ヵ月毎、3ヵ月毎、4ヵ月毎、6ヵ月毎、又は12ヵ月毎に投与される。一部の実施形態において、維持用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を含む。一部の実施形態において、維持用量は、300mg~800mg、300mg~400mg、400mg~500mg、400mg~450mg、450mg~500mg、500mg~600mg、500mg~550mg、550mg~600mg、600mg~700mg、600mg~650mg、650mg~700mg、700mg~800mg、700mg~750mg、又は750mg~800mgである。一部の実施形態において、維持用量は、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、又は390mgである。一部の実施形態において、維持用量は、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、又は490mgである。一部の実施形態において、維持用量は、500mg、510mg、520mg、530mg、540mg、550mg、560mg、570mg、580mg、又は590mgである。一部の実施形態において、維持用量は、600mg、610mg、620mg、630mg、640mg、650mg、660mg、670mg、680mg、又は690mgである。一部の実施形態において、維持用量は、700mg、710mg、720mg、730mg、740mg、750mg、760mg、770mg、780mg、又は790mgである。一部の実施形態において、維持用量は、800mg~1600mg、800mg~1000mg、800mg~900mg、900mg~1000mg、1000mg~1200mg、1000mg~1100mg、1100mg~1200mg、1200mg~1400mg、1200mg~1300mg、1300mg~1400mg、1400mg~1600mg、1400mg~1500mg、又は1500mg~16000mgである。一部の実施形態において、維持用量は、800mg、820mg、840mg、860mg、880mg、900mg、920mg、940mg、960mg、又は980mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1000mg、1020mg、1040mg、1060mg、1080mg、1100mg、1120mg、1140mg、1160mg、又は1180mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1200mg、1220mg、1240mg、1260mg、1280mg、1300mg、1320mg、1340mg、1360mg、又は1380mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1400mg、1420mg、1440mg、1460mg、1480mg、1500mg、1520mg、1540mg、1560mg、又は1580mgである。一部の実施形態において、維持用量は単回投与で提供され、例えば、1440mgの単回皮下注射として投与されるか、又は2回以上の投与で、720mgの投与を2回で合計1440mg、360mgの投与を4回で合計1440mgが提供される。一部の実施形態において、維持用量は、3600mgである。一部の実施形態において、維持用量は、440mgである。一部の実施形態において、維持用量は、580mgである。一部の実施形態において、維持用量は、720mgである。一部の実施形態において、720mgの維持用量は単回投与で提供されるか、又は2回の360mgの投与で提供される。一部の実施形態において、維持用量は、1440mgである。一部の実施形態において、維持用量は単回投与で提供され、例えば、720又は1440mgの単回皮下注射として投与されるか、又は2回以上の投与で、例えば、360mgの投与を2回連続で合計720mg、又は720mgの投与を2回で合計1440mg、又は360mgの投与を4回で合計1440mgが提供される。一部の実施形態において、維持用量は、120mgである。一部の実施形態において、維持用量は、180mgである。一部の実施形態において、維持用量は、240mgである。一部の実施形態において、維持用量は、360mgである。一部の実施形態において、維持用量は、440mgである。一部の実施形態において、維持用量は、480mgである。一部の実施形態において、維持用量は、540mgである。一部の実施形態において、維持用量は、440mgである。一部の実施形態において、維持用量は、580mgである。一部の実施形態において、維持用量は、600mgである。一部の実施形態において、維持用量は、720mgである。一部の実施形態において、維持用量は、840mgである。一部の実施形態において、維持用量は、900mgである。一部の実施形態において、維持用量は、960mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1080mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1200mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1260mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1320mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1440mgである。一部の実施形態において、維持用量は、毎週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む毎週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、隔週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む隔週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、隔週の1440mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる、例えば、2回の逐次的な720mgの皮下製剤の投与で合計1440mg、又は4回の逐次的な360mg投与で合計1440mgを含む隔週の単回1440mg投与で提供される。
【0036】
一部の実施形態において、維持用量は、1回又は複数回投与される。一部の実施形態において、維持用量は、治療経過初期の間よりも低い用量で投与され、及び/又は治療経過初期の間よりも低い頻度で投与される。
【0037】
一部の実施形態において、維持用量は、皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、毎週の皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、隔週の皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、毎月の皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、4分の1年毎の皮下注射として投与される。
【0038】
一部の実施形態において、維持用量の頻度は毎週である。一部の実施形態において、維持用量は、2週間毎(隔週)である。一部の実施形態において、維持用量は、4週間毎(毎月)である。一部の実施形態において、皮下維持用量は、6週間毎に投与される。一部の実施形態において、皮下維持用量は、8週間(2ヵ月)毎に投与される。一部の実施形態において、維持用量は、3ヵ月毎(12週間毎又は4分の1年毎)である。一部の実施形態において、維持用量は、6ヵ月毎(24週間毎又は半年毎)である。一部の実施形態において、対象の維持用量は、治療期間中の用量と同じである。一部の実施形態において、維持用量は、維持用量を投与する前の用量と同じ用量の大きさである。一部の実施形態において、維持用量の大きさは、維持用量を投与する前の用量よりも低い用量である。一部の実施形態において、維持用量は、維持用量を投与する前の用量と同じ用量頻度である。一部の実施形態において、維持用量は、維持用量を投与する前の用量よりも低い用量頻度である。
【0039】
一部の実施形態において、維持用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体(例えば、BAN2401)の皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体の皮下製剤の毎週の皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む毎週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む毎月の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む4分の1年毎の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む隔週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む毎月の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む4分の1年毎の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、皮下維持用量は、毎週投与される。一部の実施形態において、皮下維持用量は、2週間毎に投与される。一部の実施形態において、皮下維持用量は、4週間毎に(毎月)投与される。一部の実施形態において、皮下維持用量は、6週間毎に投与される。一部の実施形態において、皮下維持用量は、8週間(2ヵ月)毎に投与される。一部の実施形態において、皮下維持用量は、3ヵ月毎(12週間毎又は4分の1年毎)に投与される。一部の皮下の実施形態において、維持用量は、毎週、2週間毎、4週間毎、6週間毎、8週間毎、10週間毎、12週間毎、16週間毎、24週間毎、48週間毎、毎月、2ヵ月毎、3ヵ月毎、4ヵ月毎、6ヵ月毎、又は12ヵ月毎に投与される。一部の実施形態において、皮下維持用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を300mg~800mg、300mg~400mg、400mg~500mg、400mg~450mg、450mg~500mg、500mg~600mg、500mg~550mg、550mg~600mg、600mg~700mg、600mg~650mg、650mg~700mg、700mg~800mg、700mg~750mg、又は750mg~800mgの用量で含む。一部の実施形態において、維持用量は、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、又は390mgである。一部の実施形態において、維持用量は、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、又は490mgである。一部の実施形態において、維持用量は、500mg、510mg、520mg、530mg、540mg、550mg、560mg、570mg、580mg、又は590mgである。一部の実施形態において、維持用量は、600mg、610mg、620mg、630mg、640mg、650mg、660mg、670mg、680mg、又は690mgである。一部の実施形態において、維持用量は、700mg、710mg、720mg、730mg、740mg、750mg、760mg、770mg、780mg、又は790mgである。一部の実施形態において、維持用量は、800mg~1600mg、800mg~1000mg、800mg~900mg、900mg~1000mg、1000mg~1200mg、1000mg~1100mg、1100mg~1200mg、1200mg~1400mg、1200mg~1300mg、1300mg~1400mg、1400mg~1600mg、1400mg~1500mg、又は1500mg~16000mgである。一部の実施形態において、維持用量は、800mg、820mg、840mg、860mg、880mg、900mg、920mg、940mg、960mg、又は980mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1000mg、1020mg、1040mg、1060mg、1080mg、1100mg、1120mg、1140mg、1160mg、又は1180mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1200mg、1220mg、1240mg、1260mg、1280mg、1300mg、1320mg、1340mg、1360mg、又は1380mgである。一部の実施形態において、維持用量は、1400mg、1420mg、1440mg、1460mg、1480mg、1500mg、1520mg、1540mg、1560mg、又は1580mgである。一部の実施形態において、維持用量は、単回投与で提供され、例えば、720又は1440mgの単回皮下注射として投与されるか、又は2回以上の投与で、例えば、360mgの投与を2回連続で合計720mg、又は720mgの投与を2回で合計1440mg、又は360mgの投与を4回で合計1440mgが提供される。一部の実施形態において、維持用量は、440mgである。一部の実施形態において、維持用量は、580mgである。一部の実施形態において、維持用量は、720mgの単回投与又は2回の360mg投与として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、1440mgである。一部の実施形態において、維持用量は、毎週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、毎週の360mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、隔週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、隔週の1440mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる、例えば、逐次的な720mgの皮下製剤の投与で合計1440mgを含む隔週の単回1440mg投与で提供される。
【0040】
一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体、例えば、BAN2401を皮下投与した後、静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、例えば、患者がアミロイド陰性になるまで、又は例えば、少なくとも18ヵ月間にわたってBAN2401を毎週皮下投与すること、例えば、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射を含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、次に維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、毎週10mg/kgの静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、隔週10mg/kgの静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、毎月10mg/kgの静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、6週間毎に10mg/kgの静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、8週間毎に10mg/kgの静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、4分の1年毎に10mg/kgの静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、対象の維持用量は、治療期間中の用量と同じ量及び/又は頻度で投与される。一部の実施形態において、対象の維持用量は、治療期間中の用量の50%である。
【0041】
一部の実施形態において、維持用量は、例えば、上記に開示されるとおりの静脈内治療期間後に静脈内投与される。一部の実施形態において、静脈内維持用量、例えば、10mg/kg BAN2401の用量投与は、毎週、2週間、毎月、2ヵ月毎、又は3ヵ月毎(4分の1年毎)に投与される。一部の実施形態において、静脈内維持用量は、2週間毎に投与される。一部の実施形態において、静脈内維持用量は、4週間毎に投与される。一部の実施形態において、静脈内維持用量は、6週間毎に投与される。一部の実施形態において、静脈内維持用量は、8週間(2ヵ月)毎に投与される。一部の実施形態において、静脈内維持用量は、3ヵ月毎(4分の1年毎)に投与される。一部の実施形態において、静脈内維持用量は、24週間毎(6ヵ月毎又は半年毎)に投与される。一部の実施形態において、静脈内維持用量は、2.5mg/kg~10mg/kgである。一部の実施形態において、維持用量は、10mg/kg BAN2401の隔週の静脈内用量として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、4週間毎に(毎月)10mg/kgの静脈内用量として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、6週間毎に10mg/kgの静脈内用量として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、8週間(2ヵ月)毎に10mg/kgの静脈内用量として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、12週間毎(3ヵ月毎又は4分の1年毎)に10mg/kgの静脈内用量として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、24週間毎(6ヵ月毎又は半年毎)に10mg/kgの静脈内用量として投与される。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、毎週の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、隔週の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、毎月の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、6週間毎の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、8週間毎の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、4分の1年毎の静脈内維持用量に切り替えることを含む。
【0042】
一部の実施形態において、患者は、静脈内維持用量、例えば、上記に開示されるとおりの10mg/kg BAN2401の用量設定で開始した後、皮下維持用量、例えば、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射に切り替える。一部の実施形態において、患者は、皮下維持用量、例えば、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射で開始した後、静脈内維持用量、例えば、上記に開示されるとおりの10mg/kg BAN2401の用量設定に切り替える。
【0043】
一部の実施形態において、例えば、維持用量への切り替え後に採取した血液試料において0.092を下回るAβ42/40比が測定されることにより評価したとき、及び/又はPET SUVrにより決定したとき、患者がもはやアミロイド陰性でないと決定される場合、患者は維持用量から初期治療用量に戻される。一部の実施形態において、例えば、維持用量への切り替え後に採取した血液試料において0.092を下回るAβ42/40比が測定されることにより評価したとき、患者がもはやアミロイド陰性でないと決定される場合、患者の治療は中断される。
【0044】
一部の実施形態において、維持用量で維持しようとする所望の治療効果は、十分な又は所定のレベルを実現する脳アミロイドレベルの低減、アミロイドPET SUVrの低減、血漿Aβ42/40比の増加、血漿p-タウ181の低減、及び脳アミロイドの低減と相関関係のある他のバイオマーカーの変化のうちの1つ以上であり得る。
【0045】
一部の実施形態において、本明細書には、対象、例えば、前駆AD又は初期アルツハイマー病を有する対象の臨床的衰退を低減する及び/又は緩徐化する方法であって、0.092未満のAβ42/40比を有する患者に治療有効量の少なくとも1つの抗Aβプロトフィブリル抗体(例えば、BAN2401)を投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体(例えば、BAN2401)は、Aβ42/40比が0.092を上回るまで増加するのに治療的に有効な量で投与される。一部の実施形態において、Aβ42/40比が増加すると、患者(例えば、前駆AD又は初期ADを有する患者)の認知機能の衰退が、治療がないときの衰退と比べて緩徐になる。
【0046】
一部の実施形態において、維持用量は、少なくとも3ヵ月毎(例えば、4分の1年毎)又は12週間毎に投与される。一部の実施形態において、維持用量への切り替え後、対象からの試料(例えば、血漿試料)においてAβ42/40比が測定される。一部の実施形態において、維持用量及び/又は頻度は、初期治療の完了後(例えば、18ヵ月間の治療後)に実現したAβ42/40比を維持するように選択される。一部の実施形態において、維持用量及び/又は頻度は、Aβ42/40比が0.092以上に維持されるように選択される。一部の実施形態において、Aβ42/40比が変化しないままであるか、又は増加する場合、維持用量が継続される。一部の実施形態において、維持用量で治療中、患者のアミロイドレベルが、例えば、血液バイオマーカーによってモニタされてもよい。一部の実施形態において、維持用量で治療中、患者のアミロイドレベルが、限定はされないが:(a)PETスキャンによって目視読影又は半定量的閾値(SUVr又はセンチロイド)のいずれかから検出されるアミロイド;(b)脳脊髄液(CSF)Aβ1-42、及び/又はAβ1-42/1-40比;及び/又は(c)血液バイオマーカー(血漿Aβ1-42、総タウ(T-タウ)、及び/又はリン酸化タウ(P-タウ)など)など、1つ以上のバイオマーカーによってモニタされてもよい。一部の実施形態において、患者のバイオマーカーは、維持用量への切り替え後に少なくとも1回モニタされてもよい。一部の実施形態において、患者のバイオマーカーは、維持用量への切り替えから少なくとも1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、又は24ヵ月経った後に判定される。一部の実施形態において、1つ以上のバイオマーカーが悪化した場合、例えば、Aβ42/40比が初期治療期間の終了時(例えば、治療の開始後18ヵ月時点)の試料で測定される比と比べて減少している場合、対象は元の用量設定に戻される。一部の実施形態において、1つ以上のバイオマーカーが悪化した場合、例えば、Aβ42/40比が初期治療期間の終了時(例えば、治療の開始後18ヵ月時点)の試料で測定される比と比べて減少している場合、対象には、より高い用量が投与される(例えば、維持用量の50%の増加)。一部の実施形態において、1つ以上のバイオマーカーが悪化した場合、例えば、Aβ42/40比が初期治療期間の終了時(例えば、治療の開始後18ヵ月時点)の試料で測定される比と比べて減少している場合、対象には、治療がより高い頻度で投与される(例えば、隔週投与から毎週投与への変更)。一部の実施形態において、対象の維持用量は、治療期間中の用量と同じである。一部の実施形態において、維持用量は、患者がApoE4保有者かどうかに基づいて(例えば、Aβ42/40比の変化の判定と併せて)選択され、例えば、保有者は非保有者と比べて初期治療から維持用量への移行にAβ42/40比のより大きい増加が要求される。一部の実施形態において、維持用量への切り替え後、対象からの試料(例えば、血漿試料)においてpタウ181レベルが測定される。一部の実施形態において、維持用量及び/又は頻度は、初期治療の完了後に実現したpタウ181レベルを維持するように選択される。一部の実施形態において、pタウ181レベルが変化しないままである場合、維持用量が継続される。一部の実施形態において、pタウ181レベルが治療期間の終了時(例えば、治療の開始後18ヵ月時点)の試料で測定される比と比べて増加している場合、対象は元の用量設定に戻される。一部の実施形態において、維持用量は、患者がApoE4保有者かどうかに基づいて(例えば、pタウ181レベルの変化の判定と併せて)選択され、例えば、保有者は非保有者と比べて維持用量への移行にpタウ181レベルのより大きい低下が要求される。一部の実施形態において、維持用量は2つ以上の用量設定を含み、ここでは第1の用量設定が、上記に例示したとおりの維持用量から選択され、第2の及び/又は後に続く用量設定が、それぞれ第1の又は前の用量設定と比べて低い量及び/又は頻度の用量設定を含む。一部の実施形態において、第2の又は後に続く用量設定への切り替えは、上記に例示したとおりの1つ以上のバイオマーカーに基づいて決定され、ここでバイオマーカーのレベルは、初期用量から維持用量における第1の用量設定への切り替えで用いられたレベルと異なる(例えば、それと比べて改善されている)。一部の実施形態において、患者のバイオマーカーは、維持用量への切り替えから少なくとも1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、又は24ヵ月経った後にモニタされる。一部の実施形態において、患者のバイオマーカーは、維持用量への切り替え後毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2ヵ月毎、3ヵ月毎、6ヵ月毎、12ヵ月毎(毎年)、18ヵ月毎(1.5ヵ月毎)、又は24ヵ月毎(2年毎)にモニタされる。
【0047】
一部の実施形態において、維持用量への切り替え後、対象のバイオマーカーレベルは、脳内のアミロイドレベルの増加を指示することになる。一部の実施形態において、維持用量への切り替え後、対象のバイオマーカーレベル、例えば血漿Aβ42/40比は低下し始め、脳内のアミロイドレベルの増加が指示されることになる。一部の実施形態において、維持用量服用中の対象は、Aβ42/40比の低下を呈することになる。一部の実施形態において、対象には、対象がAβ42/40比の低下を呈することになるが、Aβ42/40比はアミロイド陽性の閾値を例えば少なくとも1年間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10年間)にわたって下回ったまま保たれることになるように選択される維持用量が処方される。
【0048】
一部の実施形態において、維持用量への切り替え後、対象のバイオマーカーレベル、例えばp-タウ181は増加し始め、脳内のアミロイドレベルの増加が指示されることになる。一部の実施形態において、維持用量服用中の対象は、血漿p-タウ181の増加を呈することになる。一部の実施形態において、維持用量服用中の対象はp-タウ181の増加を呈することになるが、レベルp-タウ181はアミロイド陽性の閾値を例えば少なくとも1年間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10年間)にわたって上回ったまま保たれることになる。
【0049】
一部の実施形態において、例えば、認知機能評価、PET SUVr、及び/又はAβ42/40比などの血漿バイオマーカーにより評価したときに患者がもはや初期ADを有しない場合(例えば、Aβ42/40比が0.092を下回るまで下がった場合、又はフロルベタピルを使用して測定したときSUVr陰性が1.17を上回るまで増加した場合)、患者の治療は中断される。
【0050】
一部の実施形態において、維持用量及び/又は頻度は、初期治療の完了後に実現したPET SUVr陰性レベル、例えば、フロルベタピルを使用して測定したとき1.17のレベルを維持するように選択される。一部の実施形態において、維持用量への切り替え後、PET SUVrレベルが測定される。一部の実施形態において、維持用量及び/又は頻度は、初期治療の完了後に実現したPET SUVrレベルを維持するように選択される。一部の実施形態において、PET SUVrレベルが変化しないままである場合、維持用量が継続される。一部の実施形態において、治療期間の終了時(例えば、治療の開始後18ヵ月時点)の試料で測定される比と比べてPET SUVrレベルが増加している場合、対象は元の用量設定に戻される。一部の実施形態において、維持用量は、患者がApoE4保有者かどうかに基づいて(例えば、PET SUVrの変化の判定と併せて)選択され、例えば、保有者は非保有者と比べて維持用量への移行にPET SUVrレベルのより大きい低下が要求される。
【0051】
一部の実施形態において、有利なバイオマーカーレベルが実現した場合、治療は中断される。一部の実施形態において、初期治療の完了後に有利なバイオマーカーレベルが実現した場合、治療は中断される。一部の実施形態において、維持用量設定の間に(例えば、6ヵ月又は1年など、設定された期間にわたって)有利なバイオマーカーレベルが実現した及び/又は維持されている場合、治療は中断される。一部の実施形態において、例えば、初期治療の完了後又は維持用量設定レジメンの間に、高いAβ42/40比(例えば、0.09、0.091、0.092、0.093、0.094、0.095、0.096、0.097、0.099、0.1のAβ42/40比)が実現した場合、治療は中断される。一部の実施形態において、0.092以上のAβ42/40比が実現した場合、治療は中断される。一部の実施形態において、0.092を上回るAβ42/40比が実現した場合、治療は中断される。一部の実施形態において、初期治療の完了後又は維持用量設定レジメンの間に、SUVrアミロイド陰性レベルがフロルベタピルを使用して測定したとき1.17以下である場合、治療は中断される。
【0052】
一部の実施形態において、維持治療に設定された期間(例えば、6ヵ月又は1年)の完了後に有利なバイオマーカーレベルが実現した場合、維持用量は中断される。一部の実施形態において、高いAβ42/40比(例えば、0.09、0.091、0.092、0.093、0.094、0.095、0.096、0.097、0.099、0.1のAβ42/40比)が実現した場合、維持用量は中断される。一部の実施形態において、0.092以上のAβ42/40比が実現した場合、維持用量は中断される。一部の実施形態において、0.092を上回るAβ42/40比が実現した場合、治療は中断される。一部の実施形態において、SUVrアミロイド陰性レベルがフロルベタピルを使用して測定したとき1.17以下である場合、維持用量は中断される。
【0053】
一部の実施形態において、維持治療の経過中に有利なバイオマーカーレベルが維持されない場合(例えば、Aβ42/40比が0.092を下回るまで下がった場合、又はフロルベタピルを使用して測定したときSUVr陰性が1.17を上回るまで増加した場合)、維持用量は中断される。一部の実施形態において、維持治療の経過中に有利なバイオマーカーレベルが維持されない場合(例えば、Aβ42/40比が0.092を下回るまで下がった場合、又はフロルベタピルを使用して測定したときSUVr陰性が1.17を上回るまで増加した場合)、維持用量は中断される。
【0054】
一部の実施形態において、治療中断後、患者のアミロイドレベルが後戻りしていないか、例えば、血液バイオマーカーによりモニタされてもよい。一部の実施形態において、治療中断後、患者のアミロイドレベルが後戻りしていないか、限定はされないが:(a)PETスキャンによって目視読影又は半定量的閾値(SUVr又はセンチロイド)のいずれかから検出されるアミロイド;(b)脳脊髄液(CSF)Aβ1-42、及び/又はAβ1-42/1-40比;及び/又は(c)血液バイオマーカー(血漿Aβ1-42、タウ、総タウ(T-タウ)、及び/又はP-タウ(例えば、pタウ181)など)など、1つ以上のバイオマーカーによりモニタされてもよい。一部の実施形態において、患者のバイオマーカーは、治療中断後に少なくとも1回モニタされてもよい。一部の実施形態において、患者のバイオマーカーは、治療中断から少なくとも1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、又は24ヵ月経った後にモニタされる。一部の実施形態において、患者のバイオマーカーレベルがあまり有利でなくなった場合(例えば、Aβ42/40比の、例えば、0.092未満への減少)、治療が再び開始される。一部の実施形態において、治療中断後にアミロイドレベルが後戻りしたと判明した場合、治療が再び開始される。
【0055】
一部の実施形態において、維持用量は、少なくとも3ヵ月毎に(例えば、3ヵ月毎、2ヵ月毎、又は毎月)投与される。一部の実施形態において、維持用量は、少なくとも毎月投与される。一部の実施形態において、維持用量及び/又は頻度は、初期治療の完了後に実現したPET SUVrレベルを維持するように選択される。一部の実施形態において、維持用量は、アミロイド陰性以下であるPET SUVrレベル(例えばフロルベタピルについて、1.17のPET SUVr)を維持するように選択される。
【0056】
一部の実施形態において、対象には、ある用量の抗Aβプロトフィブリル抗体が、治療用量まで初期用量調節段階なしに投与される。一部の実施形態において、ある用量のレカネマブを先行する用量調節段階の必要なしにADの治療に使用し得る。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「PET」又は「アミロイドPET」は、アミロイド陽電子放射断層撮影画像法を指す。一部の実施形態において、PET画像法(PETスキャンとも称される)を実施することにより、アミロイド病変が評価される。一部の実施形態において、アミロイドPETはPETトレーサーで評価され、フォローアップ評価においても同じトレーサーを使用する。一部の実施形態において、PET画像法はフロルベタピルトレーサーを使用する。一部の実施形態において、PET画像法は、フルテメタモルトレーサーを使用する。
【0058】
アミロイド陽電子放射断層撮影法(PET)画像法を用いると、研究のスクリーニングフェーズにおいて初期AD対象の脳内のアミロイド病変の存在を確認することができ、及び/又は少なくとも1つの抗AB抗体が脳内のアミロイドレベルに及ぼす効果を、全脳分析(例えば、5~6つの皮質領域の平均)及び脳領域分析の両方により判定することができる。一部の実施形態において、PETスキャンはフロルベタピルを使用する。一部の実施形態において、アミロイドプラーク負荷は、例えば、熟練した放射線科医によるPET画像の取り込み目視読影によって同定することができる。一部の実施形態において、2人の読影者(1人が主任読影者に指名される)が画像を目視で評価して、スキャンがアミロイドに関して陽性か、それとも陰性かを決定する。更なる実施形態において、造影剤の取り込みに関して脳の4つの領域:側頭葉、後頭葉、前頭前野、及び頭頂葉皮質が評価され、陽性アミロイドスキャンは、白質への取り込みよりも灰白質に一層集中的に取り込まれ、脳の外縁にまで及んでいる領域を1つ有するか、又は灰白質-白質のコントラストが減少している範囲のある領域を2つ有するかのいずれかである。更なる実施形態において、2人の読影者の間で意見の相違があった場合、両者が集まってスキャンを見直し、読影の一致を得る。
【0059】
一部の実施形態において、アミロイドプラーク負荷は、参照領域と比較したときの標準取込値比(SUVr)により同定することができる。PET SUVrの計算方法は当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されるものが含まれ得る。一部の実施形態において、アミロイドレベルの標準取込値比定量分析は、PMOD生物医学画像定量化ソフトウェア(PMOD Technologies、チューリッヒ、スイス)を使用して完遂される。一部の実施形態において、PET画像は初めにX、Y、及びZ平面における対象の動きが評価され、必要に応じて動きが補正された後、個々の画像(例えば、5分間の放射フレーム)が、例えば、PMOD平均化機能(Averaging Function)を用いて平均化される(信号対雑音比が増加するようにPETフレームが平均化される)。一部の実施形態において、対象からの対応するMRIが準備される(例えば、行列サイズリダクション処理、脳のみを含めるためのMRIのクロッピング、画像を灰白質、白質、及びCSFのバイナリマップに分けるためのセグメンテーション、及び脳マスクのみを残す頭蓋の画像のストリッピングを用いる)。一部の実施形態において、平均化したPET画像及び準備したMRIが、PMODマッチング機能を用いて、画像を同じ向きに置いてマッチングされる。一部の実施形態において、例えば、PMODソフトウェアによって提供されるとおりの脳標準化(Brain Normalization)機能を脳ノルム(Brain Norm)及びリジッドマッチング(Rigid Matching)変換行列と共に使用すると、平均化されたPETが生じる。一部の実施形態において、この平均化されたPET、これはMNInst空間(Senjem et al,2005)に対して標準化され、定量分析のため対象のセグメンテーションされたMRIと同じ向きにある。一部の実施形態において、PMODマスク機能(Mask Function)を用いて脳をマスクし、画像をマスクの外側についてゼロ化して、標準化された灰白質PET及び標準化された白質PETを作成する。SUVの単位に達するように、標準化されたPET、対象の体重、及びトレーサーの注入用量を用いて計算されるPMODソフトウェアを使用して、全ての灰白質マッピング領域及び3つの白質領域(橋、小脳白質、及び皮質下白質)についての標準取込値(SUV)を計算し得る。一部の実施形態において、SUVrは、選択の参照領域と比較したときの総皮質平均の比である。一部の実施形態において、全小脳マスクが参照領域として使用される。一部の実施形態において、参照領域は、皮質下白質、由来の全小脳、皮質下白質によって調整される全小脳、小脳灰白質、並びに小脳皮質、橋皮質下白質、及び小脳白質からなる複合参照領域である。
【0060】
一部の実施形態において、組成物の第1の用量の投与後に、対象のPET SUVr値のベースラインからの調整平均変化量は、ベースラインと比べて少なくとも-0.10、少なくとも-0.15、少なくとも-0.20、少なくとも-0.25、少なくとも-0.30、少なくとも-0.35、少なくとも-0.40、少なくとも-0.45、少なくとも-0.50、少なくとも-0.55、少なくとも-0.60、少なくとも-0.65、少なくとも-0.70、少なくとも-0.75、少なくとも-0.80、少なくとも-0.85、少なくとも-0.90、又は少なくとも-0.95低減される。一部の実施形態において、対象のPET SUVr値のベースラインからの調整平均変化量は、-0.20~-0.30低減される。
【0061】
一部の実施形態において、アルツハイマー病に対する治療の有効性は、例えば、216週時点におけるアミロイドPETによる脳アミロイド蓄積の予防、タウPET蓄積の遅延;216週目におけるアミロイドPET標準取込値比(SUVr)のベースラインからの変化;216週目におけるタウPET SUVrのベースラインからの変化;前臨床アルツハイマー病認知複合5(PACC5)尺度の変化;補体C3レベルの変化;ウェクスラー記憶尺度-改訂版論理的記憶下位尺度II(WMS-R LM II)のスコアの変化;Cogstateインターナショナルショッピングリストテスト(ISLT)のスコアの変化;トレイルメイキングテスト(TMTのスコアの変化;認知機能インスツルメント(CFI)のスコアの変化;アルツハイマー病共同研究-日常生活動作尺度(ADCS-ADL)のスコアの変化;臨床認知症評価尺度項目合計(CDR-SB)のスコアの変化;ボリューメトリック磁気共鳴画像法(vMRI);安静状態機能的磁気共鳴画像法(rs-fMRI);Aβ[1-42]、Aβ[1-40]、t-タウ、p-タウ、ニューログラニン、及び神経フィラメント軽鎖タンパク質(NfL)などの脳脊髄液中のバイオマーカーのレベルの変化;血漿中及び/又は血中のバイオマーカーのレベルの変化;及び/又はアミロイド陰性閾値になるまでの時間など、医学的観察、認知機能評価、医学的診断、及び医用画像のいずれか1つ又は組み合わせにより測定することができる。
【0062】
一部の実施形態において、前臨床アルツハイマー病に対する治療の有効性は、例えば、216週時点における前臨床アルツハイマー病認知複合5(PACC5)尺度のベースラインからの変化;96及び216週目におけるアミロイドPET SUVrのベースラインからの変化;96及び216週目におけるタウPET SUVrのベースラインからの変化;216週目における認知機能インデックス(CFI)のベースラインからの変化;補体C3レベルの変化;Cogstateインターナショナルショッピングリストテスト(ISLT)のスコアの変化;トレイルメイキングテスト(TMTのスコアの変化;認知機能インスツルメント(CFI)のスコアの変化;アルツハイマー病共同研究-日常生活動作尺度(ADCS-ADL)のスコアの変化;臨床認知症評価尺度項目合計(CDR-SB)のスコアの変化;ボリューメトリック磁気共鳴画像法(vMRI);安静状態機能的磁気共鳴画像法(rs-fMRI);Aβ[1-42]、Aβ[1-40]、t-タウ、p-タウ、ニューログラニン、及び神経フィラメント軽鎖タンパク質(NfL)などの脳脊髄液中のバイオマーカーのレベルの変化;血漿中及び/又は血中のバイオマーカーのレベルの変化;臨床認知症評価尺度のスコアが0.5になるまでの時間の変化;及び/又は全大脳皮質の標準取込値比(SUVr WC)が1.17以下のスコアになるまでの時間の変化など、医学的観察、認知機能評価、医学的診断、及び医用画像のいずれか1つ又は組み合わせにより測定することができる。
【0063】
一部の実施形態において、初期アルツハイマー病に対する治療の有効性は、例えば、3、6、12、及び18ヵ月目のアミロイドPET SUVrのベースラインからの変化;13及び18ヵ月目のタウPET SUVrのベースラインからの変化;Aβ[1-42]、Aβ[1-40]、t-タウ、p-タウ、ニューログラニン、及び神経フィラメント軽鎖タンパク質(NfL)などの脳脊髄液中のバイオマーカーのレベルの変化;18ヵ月にわたるアルツハイマー病複合スコア(ADCOMS)のスコアの変化;18ヵ月にわたるアルツハイマー病評価尺度-認知機能下位尺度(ADAS-cog)のスコアの変化;臨床認知症評価尺度項目合計(CDR-SB)のスコアの変化;ミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアの変化;血漿中及び/又は血中のバイオマーカーのレベルの変化;アルツハイマー病共同研究-日常生活動作尺度(ADCS-ADL)のスコアの変化;欧州クオリティ・オブ・ライフ-5ディメンション(EQ-5D)でのグレードの変化;アルツハイマー病におけるクオリティ・オブ・ライフ(QOL-AD)尺度の評価点の変化など、医学的観察、認知機能評価、医学的診断、及び医用画像のいずれか1つ又は組み合わせにより測定することができる。
【0064】
上述のとおり、本明細書には、アルツハイマー病の治療及び/又は予防方法であって、それを必要としている対象に抗Aβプロトフィブリル抗体を皮下投与することを含む方法が開示される。また、本明細書には、初期アルツハイマー病を有する対象の臨床的衰退を低減する方法、対象の脳アミロイドレベルを低減する方法、及び対象をアミロイド陽性からアミロイド陰性に転換させる方法であって、それを必要としている対象に抗Aβプロトフィブリル抗体を皮下投与することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0065】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3);及び配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)を含む。
【0066】
本明細書で使用されるとき、抗体の「断片」は、抗体の一部分、例えばその抗原結合領域又は可変領域を含む一部分を含む。断片の非限定的な例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、線状抗体、及び単鎖抗体分子が挙げられる。
【0067】
各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、概して、SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST(Kabat et al.,5th ed.,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,1991、以下「Kabat報告」と称する)の定義に従う。
【0068】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体はヒト定常領域を含む。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体のヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgE、及びKabat報告に開示されるとおりのこれらの任意のアレル変異から選択される重鎖定常領域を含む。本開示においては、かかる配列の任意の1つ以上を使用し得る。一部の実施形態において、重鎖定常領域は、IgG1及びそのアレル変異から選択される。ヒトIgG1定常領域のアミノ酸配列は、当該技術分野において公知であり、配列番号3に示される。
【0069】
一部の実施形態において、少なくとも1つの抗Aβプロトフィブリル抗体のヒト定常領域は、κ-λ鎖定常領域及びKabat報告で考察するとおりのこれらの任意のアレル変異から選択される軽鎖定常領域を含む。本開示においては、かかる配列の任意の1つ以上を使用し得る。一部の実施形態において、軽鎖定常領域は、κ及びそのアレル変異から選択される。ヒトκ鎖定常領域のアミノ酸配列は、当該技術分野において公知であり、配列番号4に示される。
【0070】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域、及びヒトIgカッパ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域とを含む。
【0071】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、BAN2401としても知られるレカネマブである。レカネマブは、プロトフィブリルを標的化するように作られたマウスモノクローナル抗体であるmAb158のヒト化IgG1モノクローナル版であり、国際公開第2007/108756号パンフレット及びJournal of Alzheimer’s Disease 43:575-588(2015)に開示されている。レカネマブは抗Aβプロトフィブリル抗体であり、Aβモノマーに対して低親和性を実証する一方、可溶性Aβ凝集体種に対しては高い選択性で結合する。例えば、レカネマブは、Aβモノマー又はAβ不溶性フィブリルよりも可溶性Aβプロトフィブリルに対して、それぞれ、約1000倍及び5倍~10倍高い選択性を実証することが報告されている。
【0072】
レカネマブは、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。レカネマブの完全長配列は配列番号13に示され、国際公開第2007/108756号パンフレット及びJournal of Alzheimer’s Disease 43:575-588(2015)に記載されている。
【0073】
本開示における抗Aβプロトフィブリル抗体としての使用に好適な抗体の他の非限定的な例としては、国際公開第2002/003911号パンフレット、国際公開第2005/123775号パンフレット、国際公開第2007/108756号パンフレット、国際公開第2011/001366号パンフレット、国際公開第2011/104696号パンフレット、及び国際公開第2016/005466号パンフレットに開示されるものが挙げられる。
【0074】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、皮下(SC)投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1.1mLの容積を有する注射で投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1.4mLの容積を有する注射で投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1.45mLの容積を有する注射で投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1.8mLの容積を有する注射で投与される。
【0075】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1日1回投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1日2回投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1回又は複数回投与される;例えば、抗Aβプロトフィブリル抗体は、720mgの単回投与として投与されるか、又は720mgの投与を2回で合計1440mgとして投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、毎週投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、週2回投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、週3回投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、2週間毎に投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、毎月投与される。一部の実施形態において、用量の大きさ及び/又は用量頻度は、所望の治療効果が実現した後に低減されてもよい。低減される頻度は、2週間毎、又は4週間毎、6週間毎、8週間毎、10週間毎、12週間毎、16週間毎、毎月、2ヵ月毎、3ヵ月毎、4ヵ月毎、6ヵ月毎、又は12ヵ月毎であり得る。一部の実施形態において、用量の大きさ又は用量頻度の低減が関係した所望の治療効果は、十分な又は所定のレベルを実現する脳アミロイドの低減、アミロイドPET SUVrの低減、血漿Aβ42/40比の増加、血漿p-タウ181の低減、及び脳アミロイドの低減と相関関係のある他のバイオマーカーの変化から選択される1つ以上であり得る。一部の実施形態において、用量の大きさ又は用量頻度の低減後に所望の治療効果が維持されるとき、抗Aβプロトフィブリル抗体の投与は中断される。一部の実施形態において、脳アミロイドの低減、アミロイドPET SUVrの低減、血漿Aβ42/40比の増加、血漿p-タウ181の低減、及び脳アミロイドの低減と相関関係のある他のバイオマーカーの変化から選択される1つ以上によって判定し得る所望の治療効果、又は対象における予想される十分な又は所定のレベルが実現されない場合、抗Aβプロトフィブリル抗体の投与は中断される。
【0076】
一部の実施形態において、本方法は、ADを有する又は有する疑いがある対象からの試料、例えば、血液試料において治療前にAβ42/40比を測定し、治療中に別の試料において再び測定することを含む(しかしながら、それらの試料採取時点の合間に追加の用量が投与されることもあり得ると理解されるべきである)。一部の実施形態において、1回目と2回目の試料採取の間にAβ42/40比の増加が検出された場合、治療は中止及び/又は低減されてもよい(例えば、頻度及び/又は投薬量の低減)。一部の実施形態において、治療が中止又は低減された後、対象からの試料においてAβ42/40比の更なる測定が行われてもよい。一部の実施形態において、Aβ42/40比の低減が検出された場合、治療を再開し、投薬量を増加させ、及び/又は投与頻度を増加させる。一部の実施形態において、治療の投薬量又は頻度は、例えば、用量低減及び/又は投与頻度の延長が開始された以前の、過去の治療で使用した投薬量及び/又は頻度に戻るまで増加させる。一部の実施形態において、本方法は、対象からの試料のAβ42/40比を治療中に測定し、治療の中止後又は治療の投薬量若しくは頻度を低減した後に再び測定することを含む(それらの試料採取時点の合間に追加の用量が投与されることもあり得ると理解されるべきである)。一部の実施形態において、Aβ42/40比の低減が検出された場合、治療を再開するか、又は比の低下があった期間中の用量又は頻度と比較して治療の投薬量又は頻度を増加させる。一部の実施形態において、治療中に複数回の測定が行われてもよく、その後、Aβ42/40比の上昇に基づいて(例えば、続く測定の度に毎回Aβ42/40比が増加を示す傾向があることに基づいて)治療を中止する及び/又は治療を低減する決断が下されてもよい。一部の実施形態において、治療を中止した後又は低減した後に複数回の測定が取られてもよく、Aβ42/40比の低減に基づいて(例えば、続く測定の度に毎回Aβ42/40比が低減を示す傾向があることに基づいて)治療を再開する及び/又は治療を増加させる決断が下されてもよい。一部の実施形態において、治療の再開後又は増量した治療レジメンの後、対象からの試料においてAβ42/40比の追加的な測定が1回以上行われてもよい。一部の実施形態において、続く測定でAβ42/40比の増加が観察される場合、治療は継続される。一部の実施形態において、Aβ42/40の測定は、1つ以上の追加のバイオマーカーの測定と併せて(例えば、治療中及び/又は治療後のアミロイドプラーク減少の指標としてPET SUVrの減少を使用して)行われる。一部の実施形態において、1回目と後続の、例えば、2回目、3回目、又は4回目との試料採取間にAβ42/40比の低下が検出された場合、治療は中止されてもよい。一部の実施形態において、治療は、治療効果が低いことに起因して中止されてもよい。
【0077】
一部の実施形態において、本方法のいずれも、1つ以上の追加のバイオマーカーを測定すること、例えば、リン酸化タウ(P-タウ)(例えば、P-タウ181)を測定することを更に含み得る。一部の実施形態において、P-タウ(例えば、P-タウ181)の測定は、ADを有する又は有する疑いがある対象からの試料、例えば、血液試料において治療前に行われ、及び治療中に別の試料において再び行われる(しかしながら、それらの試料採取時点の合間に追加の用量が投与されることもあり得ると理解されるべきである)。一部の実施形態において、1回目と2回目の試料採取の間でP-タウ181の低下が検出された場合、治療は中止及び/又は低減されてもよい(例えば、頻度及び/又は投薬量の低減)。一部の実施形態において、治療が中止又は低減された後、対象からの試料においてP-タウ181の更なる測定が行われてもよい。一部の実施形態において、P-タウ181の増加が検出された場合、治療を再開し、投薬量を増加させ、及び/又は投与頻度を増加させる。一部の実施形態において、投薬量又は治療頻度は、例えば、用量低減及び/又は投与頻度の延長が開始された以前の、過去の治療で使用した投薬量及び/又は頻度に戻るまで増加させる。一部の実施形態において、本方法は、対象からの試料のP-タウ181を治療中に測定し、治療の中止後又は投薬量若しくは治療頻度を低減した後に再び測定することを含む(それらの試料採取時点の合間に追加の用量が投与されることもあり得ると理解されるべきである)。一部の実施形態において、P-タウ181の増加が検出された場合、治療を再開するか、又はP-タウ181のレベルの低下があった期間中の用量若しくは頻度と比較して投薬量若しくは治療頻度を増加させる。一部の実施形態において、治療中に測定を複数回行った後に、P-タウ181の低下に基づいて(例えば、続く測定の度に毎回P-タウ181が低下を示す傾向があることに基づいて)治療が中止され、及び/又は治療が低減されてもよい。一部の実施形態において、治療を中止又は低減した後に複数回の測定が取られてもよく、その後、P-タウ181の増加に基づいて(例えば、続く測定の度に毎回P-タウ181が増加を示す傾向があることに基づいて)治療を再開し、及び/又は治療を増加させてもよい。一部の実施形態において、治療の再開後又は増量した治療レジメンの後、対象からの試料においてP-タウ181の追加的な測定が1回以上行われてもよい。一部の実施形態において、続く測定でP-タウ181の低下が観察される場合、治療は継続される。一部の実施形態において、P-タウ181の測定は、1つ以上の追加のバイオマーカーの測定と併せて(例えば、治療中及び/又は治療後のアミロイドプラーク減少の指標としてAβ42/40比の増加を使用して)行われる。
【0078】
一部の実施形態において、対象において1回目と2回目の試料採取の間でP-タウ(例えば、P-タウ181)の低下が検出され、及びそれらの試料においてAβ42/40比の増加が検出された場合、治療を中止し、及び/又は低減する(例えば、頻度及び/又は投薬量の低減)。一部の実施形態において、対象における初期治療の中止後及び/又は低減後にP-タウ(例えば、P-タウ181)の増加が検出され、及びAβ42/40比の低下が検出された場合、治療を再開し、及び/又は増加させる(例えば、頻度及び/又は投薬量の増加)。
【0079】
一部の実施形態において、1回目の試料採取と、後続の、例えば、2回目、3回目、又は4回目の試料採取との間でP-タウ181の増加が検出された場合、治療は中止されてもよい。一部の実施形態において、治療は、治療効果が低いことに起因して中止されてもよい。
【0080】
一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって皮下投与することを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を週2回、例えば、1用量当たり720mgで、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって皮下投与することを含む。一部の実施形態において、1つ以上のバイオマーカー又は他の治療アウトカム尺度の所望の改善が実現するまで、例えば、治療前、例えば、18ヵ月間の治療の前に対象から採取された試料の比と比べて試料(例えば、血漿試料)にAβ42/40比の増加が観察されるときまで、治療は継続される。一部の実施形態において、対象は、初期ADと診断されている。一部の実施形態において、対象は、アルツハイマー病による軽度認知障害-可能性が中等度を有すると診断されている、及び/又は軽度アルツハイマー病型認知症を有すると診断されている。
【0081】
一部の実施形態において、本治療方法は、対象から入手された第1の血液試料中のアミロイドβ1-42(Aβ42)の濃度及びアミロイドβ1-40(Aβ40)の濃度を測定することにより、Aβ40に対するAβ42の第1の比(Aβ42/40比)を決定することを含む。一部の実施形態において、次に対象に治療有効用量の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体が投与される。一部の実施形態において、第1の試料の後に第2の血液試料が入手され、第2のAβ42/40比が決定される。一部の実施形態において、第2の血液試料は、治療が中止された後又は低減された後に対象から入手される。一部の実施形態において、Aβ42/40比の変化を用いて第2の治療有効用量が決定される。一部の実施形態において、第1の比と比べて上昇した第2の比を有する対象には、その対象に対する第1の用量と同じか又はそれより低量の抗Aβプロトフィブリル抗体を含む第2の治療有効用量が投与される。一部の実施形態において、第1の比と比べて低い第2の比を有する対象には、第1の用量よりも高量の抗Aβプロトフィブリル抗体を含む第2の治療有効用量が投与される。一部の実施形態において、第1の比と比べて低い第2の比を有する対象には、別のAD治療が投与される。第1の治療有効用量が複数回(例えば、6~18ヵ月間にわたって隔週又は毎月)投与された後、第2のAβ42/40比の測定後に第2の治療有効用量又は用量投与レジメンに変更されてもよい。一部の実施形態において、第1の治療有効用量が少なくとも18ヵ月間にわたって投与された後、維持用量に切り替えられてもよい。一部の実施形態において、患者がアミロイド陰性になるまで第1の治療有効用量が投与された後、維持用量に切り替えられてもよい。一部の実施形態において、患者がアミロイド陰性(例えば、アミロイド又はタウ陽電子放射断層撮影法(PET)、脳脊髄液Aβ1-42レベル及び/又はAβ1-42/1-40比、脳脊髄液総タウレベル、脳脊髄液ニューログラニンレベル、脳脊髄液神経フィラメント軽鎖ペプチド(NfL)レベル、及び血清中又は血漿中で測定したときの血液バイオマーカー(例えば、Aβ1-42レベル、2つの形態のアミロイド-βペプチドの比(Aβ1-42/1-40比)、血漿総タウ(T-タウ)の血漿レベル、リン酸化タウ(P-タウ)アイソフォームのレベル(181(P-タウ181)、217(P-タウ217)、及び231(P-タウ231)でリン酸化したタウを含む)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、及び/又は神経フィラメント軽鎖(NfL)で測定したとき)になるまで第1の治療有効用量が投与された後、維持用量に切り替えられてもよい。一部の実施形態において、患者が例えば0.092~0.094であるか若しくはそれを上回る(例えば、0.092であるか若しくはそれを上回る)Aβ42/40比によって測定されるとおりのアミロイド陰性になるまで、又は1.17であるか若しくはそれを下回るフロルベタピルアミロイドPET SUVr陰性になるまで第1の治療有効用量が投与された後、維持用量に切り替えられてもよい。一部の実施形態において、患者が例えば0.092を上回るAβ42/40比によって測定されるとおりのアミロイド陰性になるまで、又は1.17であるか若しくはそれを下回るフロルベタピルアミロイドPET SUVr陰性になるまで第1の治療有効用量が投与された後、維持用量に切り替えられてもよい。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、維持用量に切り替えることを含む。
【0082】
一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、静脈内維持用量(例えば、10mg/kgで、例えば、隔週、又は4、6、8、10、若しくは12週間毎)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、隔週の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、毎月の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、6週間毎の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、8週間毎の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、2ヵ月毎の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、4分の1年毎の静脈内維持用量に切り替えることを含む。
【0083】
一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで720mgで皮下投与した後(例えば、BAN2401を720mgで投与した後)、皮下維持用量(例えば、720mgで、例えば、毎週、隔週、又は4、6、8、10、若しくは12週間毎)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、維持用量は、毎週360mgである。
【0084】
一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、毎週の皮下維持用量(例えば、720mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、毎週の皮下維持用量(例えば、360mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、隔週の皮下維持用量(例えば、720mgの用量又は360mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、毎月の皮下維持用量(例えば、720mgの用量又は360mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、6週間毎の皮下維持用量(例えば、720mgの用量又は360mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、8週間毎の皮下維持用量(例えば、720mgの用量又は360mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、2ヵ月毎の皮下維持用量(例えば、720mgの用量又は360mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、4分の1年毎の皮下維持用量(例えば、720mgの用量又は360mgの用量)に切り替えることを含む。
【0085】
一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与すること、例えば、ある所与の週に2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射の後、毎週の皮下維持用量(例えば、720mgの用量又は360mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与すること、例えば、ある所与の週に2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射の後、隔週の皮下維持用量(例えば、720mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与すること、例えば、ある所与の週に2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射の後、毎週の皮下維持用量(例えば、360mgの単回用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与すること、例えば、ある所与の週に2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射の後、毎月の皮下維持用量(例えば、720mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与すること、例えば、ある所与の週に2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射の後、6週間毎の皮下維持用量(例えば、720mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与すること、例えば、ある所与の週に2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射の後、8週間毎の皮下維持用量(例えば、720mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与すること、例えば、ある所与の週に2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射の後、2ヵ月毎の皮下維持用量(例えば、720mgの用量)に切り替えることを含む。一部の実施形態において、第1の治療有効用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体を毎週、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与すること、例えば、ある所与の週に2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む720mgの皮下注射の後、4分の1年毎の皮下維持用量(例えば、720mgの用量)に切り替えることを含む。
【0086】
一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって10mg/kgで静脈内投与すること(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与すること)を含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を静脈内投与した後、維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、対象は、維持用量に至るまでの初期の用量調節段階なしに維持用量に切り替えられる。一部の実施形態において、対象は、維持用量に至るまで少なくとも1段階の用量調節を経て維持用量に切り替えられ、例えば、対象の投薬量又は投与頻度は、最終的な維持用量設定レジームが実現するまで多段階で低減されてもよい(例えば、毎週720mgの皮下治療用量投与レジメンから毎週360mg又は隔週720mgの維持用量投与レジメンへの、毎週540mg又は10日毎に720mgなど、中間的な量又は期間での中間的用量設定を経る段階的低減)。一部の実施形態において、対象の維持用量は、治療期間中の用量と同じである。一部の実施形態において、対象の維持用量は、治療期間中の用量の50%である。
【0087】
一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体、例えば、BAN2401を皮下投与した後、皮下維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、例えば、患者がアミロイド陰性になるまで、又は例えば、少なくとも18ヵ月間にわたってBAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で皮下投与することを含む。一部の実施形態において、治療は、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで、BAN2401を毎週皮下投与した後、例えば、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射での毎週720mgの皮下注射の後、次に維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、毎週の皮下維持用量、例えば、360mgの用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与した後、毎月の皮下維持用量、例えば、720mgの用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、対象の維持用量は、治療期間中の用量と同じ量及び/又は頻度で投与される。
【0088】
一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、毎週の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、隔週の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、毎月の静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、4分の1年毎の静脈内維持用量に切り替えることを含む。
【0089】
一部の実施形態において、維持用量は、(例えば、皮下注射として)皮下投与される。他の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を皮下投与した後、静脈内維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を静脈内投与した後、皮下維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後(例えば、BAN2401を10mg/kgで投与した後)、皮下維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、毎週の皮下維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、毎週の360mgの皮下維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、毎週の720mgの皮下維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、隔週の720mg皮下維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、毎月の720mgの皮下維持用量に切り替えることを含む。一部の実施形態において、治療は、抗Aβプロトフィブリル抗体を隔週で、例えば、少なくとも18ヵ月間にわたって、又は例えば、患者がアミロイド陰性になるまで10mg/kgで静脈内投与した後、4分の1年毎の720mgの皮下維持用量に切り替えることを含む。
【0090】
一部の実施形態において、患者は、抗Aβプロトフィブリル抗体を10mg/kgの用量で静脈内投与することを含む治療を開始し、次に、抗Aβプロトフィブリル抗体を、例えば、720mgの用量で皮下投与することを含む治療に切り替えることになる。一部の実施形態において、患者は、抗Aβプロトフィブリル抗体を10mg/kg、隔週で静脈内投与することを含む治療を開始し、次に、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で、例えば、少なくとも18ヵ月の総治療期間にわたって、又は患者がアミロイド陰性になるまで皮下投与することを含む治療に切り替えることになる。一部の実施形態において、患者は、抗Aβプロトフィブリル抗体を10mg/kg、隔週で静脈内投与することを含む治療を開始し、次に、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で皮下投与した後、毎週の360mgの皮下維持用量に切り替えることを含む治療に切り替えることになる。一部の実施形態において、患者は、抗Aβプロトフィブリル抗体を10mg/kg、隔週で静脈内投与することを含む治療を開始し、次に、BAN2401を毎週、例えば、720mgの用量で皮下投与した後、毎月の720mgの皮下維持用量に切り替えることを含む治療に切り替えることになる。
【0091】
一部の実施形態において、維持用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体(例えば、BAN2401)の皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、抗Aβプロトフィブリル抗体の皮下製剤の毎週の皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む毎週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む毎月の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む4分の1年毎の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む隔週の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む毎月の720mg皮下注射として投与される。一部の実施形態において、維持用量は、2回の並行して行われる360mg(2×1.8mLの400mg/2mL)の皮下製剤の注射、例えば、逐次的な注射を含む4分の1年毎の720mg皮下注射として投与される。
【0092】
一部の実施形態において、本治療方法は、対象から入手された第1の血液試料中のアミロイドβ1-42(Aβ42)の濃度及びアミロイドβ1-40(Aβ40)の濃度を測定することにより、Aβ40に対するAβ42の第1の比(Aβ42/40比)を決定することを含む。一部の実施形態において、次に対象に治療有効用量の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体が投与される。一部の実施形態において、第1の試料の後に第2の血液試料が入手され、第2のAβ42/40比が決定される。一部の実施形態において、第2の血液試料は、治療が中止された後又は低減された後に対象から入手される。一部の実施形態において、Aβ42/40比の変化を用いて第2の治療有効用量が決定される。一部の実施形態において、第1の比と比べて上昇した第2の比を有する対象には、その対象に対する第1の用量と同じか又はそれより低量の抗Aβプロトフィブリル抗体を含む第2の治療有効用量が投与される。一部の実施形態において、第1の比と比べて低い第2の比を有する対象には、第1の用量よりも高量の抗Aβプロトフィブリル抗体を含む第2の治療有効用量が投与される。一部の実施形態において、第1の比と比べて低い第2の比を有する対象には、別のAD治療が投与される。第1の治療有効用量が複数回(例えば、6~18ヵ月間にわたって隔週又は毎月)投与された後、第2のAβ42/40比の測定後に第2の治療有効用量又は用量投与レジメンに変更されてもよい。
【0093】
一部の実施形態において、対象には、第1の用量の抗Aβプロトフィブリル抗体が、治療用量まで初期用量調節段階なしに投与される(例えば、対象は10mg/kgで治療を開始し、用量調節はない)。一部の実施形態において、ある用量のBAN2401を先行する用量調節段階の必要なしにADの治療に使用し得る。一部の実施形態において、対象は、維持用量に至るまでの初期の用量調節段階なしに維持用量に切り替えられる。理論によって拘束されるものではないが、用量調節段階なしに治療用量を提供すると、患者に追加的な治療利益がもたらされ、例えば、血漿バイオマーカーがアミロイド陰性に向かうシフトが速まり得るか、又は抗Aβプロトフィブリル抗体に応答した血漿バイオマーカーの治療的変化が見られない(ノンレスポンダー)、且つ別の治療から利益を受けるであろう患者のより早い同定が促進され得る。
【0094】
一部の実施形態において、少なくとも1つの抗Aβプロトフィブリル抗体は、BAN2401、別名レカネマブである。用語「BAN2401」及び「レカネマブ」は同義的に使用され、プロトフィブリルを標的とするように作られた、国際公開第2007/108756号パンフレット及びJournal of Alzheimer’s Disease 43:575-588(2015)に開示されるマウスモノクローナル抗体であるmAb158のヒト化IgG1モノクローナルバージョンを指す。BAN2401は、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)、及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)、及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含み、国際公開第2007/108756号パンフレット及びJournal of Alzheimer’s Disease 43:575-588(2015)に記載されている。BAN2401は、(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。BAN2401の重鎖及び軽鎖の完全長配列は、配列番号9及び10に示され、国際公開第2007/108756号パンフレット及びJournal of Alzheimer’s Disease 43:575-588(2015)に記載されている。
【0095】
本開示における少なくとも1つの抗Aβプロトフィブリル抗体としての使用に好適な抗体の他の非限定的な例としては、アデュカヌマブ、並びに国際公開第2002/003911号パンフレット、国際公開第2005/123775号パンフレット、国際公開第2007/108756号パンフレット、国際公開第2011/001366号パンフレット、国際公開第2011/104696号パンフレット、及び国際公開第2016/005466号パンフレットに開示されているものが挙げられる。
【0096】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、300mg~800mg、又は400~1500mgの範囲の用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、300mg~400mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、400mg~500mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、400mg~450mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、450mg~500mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、500mg~600mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、500mg~550mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、550mg~600mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、600mg~700mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、600mg~650mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、650mg~700mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、700mg~800mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、700mg~750mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、750mg~800mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、又は390mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、又は490mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、500mg、510mg、520mg、530mg、540mg、550mg、560mg、570mg、580mg、又は590mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、600mg、610mg、620mg、630mg、640mg、650mg、660mg、670mg、680mg、又は690mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、700mg、710mg、720mg、730mg、740mg、750mg、760mg、770mg、780mg、又は790mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、440mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、580mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、720mgの用量で皮下投与される。
【0097】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、800mg~1600mgの範囲の用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、800mg~1000mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、800mg~900mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、900mg~1000mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1000mg~1200mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1000mg~1100mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1100mg~1200mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1200mg~1400mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1200mg~1300mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1300mg~1400mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1400mg~1600mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1400mg~1500mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1500mg~1600mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、800mg、820mg、840mg、860mg、880mg、900mg、920mg、940mg、960mg、又は960mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1000mg、1020mg、1040mg、1060mg、1080mg、1100mg、1120mg、1140mg、1160mg、又は1180mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1200mg、1220mg、1240mg、1260mg、1280mg、1300mg、1320mg、1340mg、1360mg、又は1380mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1400mg、1400mg、1440mg、1460mg、1480mg、1500mg、1520mg、1540mg、1560mg、又は1580mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、880mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1160mgの用量で皮下投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、1440mgの用量で皮下投与される。
【0098】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は医薬組成物の形態である。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体を含む医薬組成物は、1つ以上のシリンジ及び/又は自己注射器で投与される。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体を含む医薬組成物は、腹部に投与される。
【0099】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に少なくとも80mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に少なくとも100mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に少なくとも200mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に少なくとも250mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗体は、医薬組成物中に80mg/mL~300mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に85mg/mL~275mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に90mg/mL~250mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に95mg/mL~225mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に100mg/mL~200mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mL、250mg/mL、260mg/mL、270mg/mL、280mg/mL、290mg/mL、又は300mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に100mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に200mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に250mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、医薬組成物中に300mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体は、レカネマブである。
【0100】
一部の実施形態において、抗Aβプロトフィブリル抗体を含む医薬組成物は、少なくとも1つの追加成分を更に含む。一部の実施形態において、医薬組成物中の少なくとも1つの追加成分は、薬学的に許容可能な緩衝液から選択される。一部の実施形態において、薬学的に許容可能な緩衝液は、クエン酸塩緩衝液である。一部の実施形態において、薬学的に許容可能な緩衝液は、ヒスチジン緩衝液である。一部の実施形態において、医薬組成物中の少なくとも1つの追加成分は、乳化剤から選択される。一部の実施形態において、医薬組成物中の少なくとも1つの追加成分は、クエン酸(又はクエン酸一水和物)、塩化ナトリウム、ヒスチジン(及び/又はヒスチジン塩酸塩)、アルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)、及びポリソルベート80から選択される。一部の実施形態において、医薬組成物中の少なくとも1つの追加成分は、クエン酸(及び/又はクエン酸一水和物)、アルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)、及びポリソルベート80から選択される。一部の実施形態において、医薬組成物中の少なくとも1つの追加成分は、ヒスチジン(及び/又はヒスチジン塩酸塩)、アルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)、及びポリソルベート80から選択される。
【0101】
一部の実施形態において、医薬組成物は、アルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)を含む。一部の実施形態において、医薬組成物中のアルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)の濃度は、100mM~400mMの範囲である。一部の実施形態において、医薬組成物中のアルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)の濃度は、110mM~380mM、120mM~360mM、125mM~350mM、140mM~340mM、160mM~325mM、175mM~300mM、又は200mM~250mMの範囲である。一部の実施形態において、医薬組成物中のアルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)の濃度は、110mM~150mM、150mM~200mM、200mM~250mM、250mM~300mM、300mM~350mM、又は350mM~380mMの範囲である。一部の実施形態において、アルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)の濃度は、125mMである。一部の実施形態において、アルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)の濃度は、200mMである。一部の実施形態において、アルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)の濃度は、350mMである。
【0102】
一部の実施形態において、医薬組成物は、ヒスチジンを含む。一部の実施形態において、医薬組成物中のヒスチジンの濃度は、10mM~100mMの範囲である。一部の実施形態において、医薬組成物中のヒスチジンの濃度は、10mM~100mM、12mM~80mM、14mM~60mM、15mM~55mM、15mM~35mM、又は15mM~25mMの範囲である。一部の実施形態において、ヒスチジンの濃度は、25mMである。一部の実施形態において、ヒスチジンの濃度は、50mMである。
【0103】
一部の実施形態において、医薬組成物は、ポリソルベート80を含む。一部の実施形態において、医薬組成物中のポリソルベート80の濃度は、0.01~0.1%w/v、0.01~0.08%w/v、0.02~0.08%w/v、0.03~0.07%w/v、又は0.04~0.06%w/vの範囲である。一部の実施形態において、ポリソルベート80は、医薬組成物中に0.01%w/v、0.02%w/v、0.03%w/v、0.04%w/v、0.05%w/v、0.06%w/v、0.07%w/v、又は0.08%w/vの濃度で存在する。一部の実施形態において、ポリソルベート80は、医薬組成物中に0.02%w/vの濃度で存在する。一部の実施形態において、ポリソルベート80は、医薬組成物中に0.05%w/vの濃度で存在する。
【0104】
一部の実施形態において、医薬組成物は、クエン酸一水和物を含む。一部の実施形態において、医薬組成物中のクエン酸一水和物の濃度は、10mM~100mMの範囲である。一部の実施形態において、医薬組成物中のクエン酸一水和物の濃度は、10mM~100mM、10mM~90mM、15mM~85mM、20mM~80mM、25mM~75mM、30mM~70mM、30mM~60mM、又は30mM~50mMの範囲である。一部の実施形態において、医薬組成物中のクエン酸一水和物の濃度は、50mMである。
【0105】
一部の実施形態において、本開示は、4.5~5.5の範囲のpHを有する医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、医薬組成物のpHは、4.0~6.0、4.2~5.8、4.3~5.7、4.4~5.6、又は4.5~5.5の範囲である。一部の実施形態において、pHは、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4又は5.5である。一部の実施形態において、pHは、5.0である。
【0106】
一部の実施形態において、本明細書に開示される医薬組成物は、溶液及び/又は当業者が適切と見なす任意の他の好適な液体製剤の形態であってもよい。一部の実施形態において、医薬組成物は、皮下投与用の無菌のノンパイロジェニック液体として製剤化される。一部の実施形態において、医薬組成物は、生理食塩水である。
【0107】
一部の実施形態において、医薬組成物は、レカネマブなど、Aβプロトフィブリルに結合する抗Aβプロトフィブリル抗体を含み、例えば、クエン酸一水和物、アルギニン、アルギニン塩酸塩、及びポリソルベート80を更に含む液体投薬形態である。一部の実施形態において、医薬組成物は、100mg/mLのレカネマブなどのAβプロトフィブリルに結合する抗Aβプロトフィブリル抗体、50mMクエン酸一水和物、110mMアルギニン、240mMアルギニン塩酸塩、及び0.05%(w/v)ポリソルベート80を含み、5.0±0.4のpHを有する。
【0108】
一部の実施形態において、医薬組成物は、レカネマブなど、Aβプロトフィブリルに結合する抗Aβプロトフィブリル抗体を含み、例えば、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、アルギニン塩酸塩、及びポリソルベート80を更に含む液体投薬形態である。一部の実施形態において、医薬組成物は、100mg/mL又は200mg/mLのレカネマブなどのAβプロトフィブリルに結合する抗Aβプロトフィブリル抗体、25mMのヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩、200mMアルギニン塩酸塩、及び0.05%(w/v)ポリソルベート80を含み、5.0±0.4のpHを有する。一部の実施形態において、医薬組成物は、200mg/mLレカネマブ、200mMアルギニン、25mMヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩、0.05%(w/v)ポリソルベート80を滅菌水溶液として含む。
【0109】
一部の実施形態において、医薬組成物は、レカネマブなど、Aβプロトフィブリルに結合する抗Aβプロトフィブリル抗体を含み、例えば、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、アルギニン塩酸塩、及びポリソルベート80を更に含む液体投薬形態である。一部の実施形態において、医薬組成物は、200mg/mLのレカネマブなどのAβプロトフィブリルに結合する抗Aβプロトフィブリル抗体、50mMヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩、125mMアルギニン塩酸塩、及び0.02%(w/v)ポリソルベート80を含み、5.0±0.4のpHを有する。
【0110】
一部の実施形態において、医薬組成物は、レカネマブなど、Aβプロトフィブリルに結合する抗Aβプロトフィブリル抗体を含み、例えば、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、アルギニン塩酸塩、及びポリソルベート80を更に含む液体投薬形態である。一部の実施形態において、医薬組成物は、200mg/mLのレカネマブなどのAβプロトフィブリルに結合する抗Aβプロトフィブリル抗体、50mMクエン酸(及び/又はクエン酸一水和物)、125mMアルギニン(及び/又はアルギニン塩酸塩)、及び0.02%(w/v)ポリソルベート80を含み、5.0±0.4のpHを有する。
【0111】
レカネマブ及びレカネマブの使用を含む方法については、米国仮特許出願第62/749,614号明細書及びPCT/US2019/043067号明細書(これらは両方とも全体として参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0112】
前臨床ADを有する対象におけるレカネマブの使用を含む方法については、臨床試験識別番号NCT04468659(ClinicalTrials.gov)(これらは全体として参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0113】
本開示の非限定的な実施形態:
本開示の特定の実施形態は、水性医薬製剤及びかかる医薬製剤の使用方法に関する。
【0114】
一部の実施形態は、以下を含む方法に関する:
【0115】
実施形態1:アルツハイマー病を治療する方法であって、それを必要としている対象に、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含む抗Aβプロトフィブリル抗体を400mg~1500mg又は400mg~800mgなど、好適な用量で皮下投与することを含む方法。
【0116】
実施形態2:臨床的衰退を遅延させる方法であって、それを必要としている対象に、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含む抗Aβプロトフィブリル抗体を400mg~1500mg又は400mg~800mgなど、好適な用量で皮下投与することを含む方法。
【0117】
実施形態3:脳アミロイドレベルを低減する方法であって、それを必要としている対象に、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含む抗体を400mg~1500mg又は400mg~800mgなど、好適な用量で皮下投与することを含む方法。
【0118】
実施形態4:アミロイド陽性対象をアミロイド陰性に転換させる方法であって、対象に、配列番号5(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)、及び配列番号7(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)と;配列番号8(LCDR1)、配列番号9(LCDR2)、及び配列番号10(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)とを含む抗体を400mg~1500mg又は400mg~800mgなど、好適な用量で皮下投与することを含む方法。
【0119】
実施形態5A:対象が初期アルツハイマー病を有すると診断されている、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。実施形態5B:対象が、前臨床アルツハイマー病を有すると診断されている、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
【0120】
実施形態6:対象が、アルツハイマー病を有すると診断されている、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
【0121】
実施形態7:対象が、アルツハイマー病を発症するリスクがある、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
【0122】
実施形態8:抗Aβプロトフィブリル抗体が週1回投与される、実施形態1~7のいずれか一つに記載の方法。
【0123】
実施形態8b:抗Aβプロトフィブリル抗体が単回投与として投与されるか、又は2回の投与として投与される、実施形態1~8aのいずれか一つに記載の方法。
【0124】
実施形態9:抗Aβプロトフィブリル抗体が、300mg~400mg、400mg~500mg、500mg~600mg、600mg~700mg、又は700mg~800mgの用量で投与される、実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法。
【0125】
実施形態10a:抗Aβプロトフィブリル抗体が、360mg、440mg、580mg、又は720mgの用量で投与される、実施形態1~9のいずれか一つに記載の方法。
【0126】
実施形態10b:抗Aβプロトフィブリル抗体が、720mg、880mg、1160mg、又は1440mgの用量で投与される、実施形態1~10aのいずれか一つに記載の方法。
【0127】
実施形態11:配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗Aβプロトフィブリル抗体、実施形態1~10のいずれか一つに記載の方法。
【0128】
実施形態12:対象がApoE4陽性である、実施形態1~11のいずれか一つに記載の方法。
【0129】
実施形態13:抗Aβプロトフィブリル抗体が、シリンジ又は自己注射器の形態で医薬組成物中に含まれている、実施形態1~12のいずれか一つに記載の方法。
【0130】
実施形態14:アルツハイマー病を治療する方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【0131】
実施形態15:前臨床アルツハイマー病を治療する方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【0132】
実施形態16A:アルツハイマー病を有する対象の臨床的衰退を遅延させる方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【0133】
実施形態16B:初期アルツハイマー病を有する対象の臨床的衰退を遅延させる方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【0134】
実施形態17:対象の脳アミロイドレベルを低減する方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【0135】
実施形態18:対象をアミロイド陽性から陰性に転換させる方法であって、それを必要としている対象に、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
(b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
(c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
(d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【0136】
実施形態19:アルツハイマー病の病態生理学的及び臨床的進行を遅延させる方法であって、それを必要としている対象に、
a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【0137】
実施形態20:アルツハイマー病を予防する方法であって、それを必要としている対象に、
a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む200mg/mLの抗Aβプロトフィブリル抗体又はその断片;
b)100mM~400mMアルギニン及び/又はアルギニン塩酸塩;
c)0.01%w/v~0.1%w/vポリソルベート80;及び
d)薬学的に許容可能な緩衝液
を含む水性医薬組成物を皮下投与することを含む方法において;
医薬組成物が4.5~5.5の範囲のpHを有する、方法。
【0138】
実施形態21:対象が無傷の認知機能を有する、実施形態15~20のいずれか一つに記載の方法。
【0139】
実施形態22:対象がアミロイドの上昇を示す、実施形態15~21のいずれか一つに記載の方法。
【0140】
実施形態23:対象が中間アミロイドを示す、実施形態15~21のいずれか一つに記載の方法。
【0141】
実施形態24:対象に0週目から8週目まで毎週、医薬組成物の1回の注射、続いて10週目から96週目まで毎週、医薬組成物の2回の注射、続いて医薬組成物の2回の注射が皮下投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0142】
実施形態25:対象に、440mg、580mg、又は720mgの抗Aβプロトフィブリル抗体を含む医薬組成物が0週目から216週目まで毎週皮下投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0143】
実施形態26:対象に0週目から4週目まで2週間毎に医薬組成物の1回の注射、続いて6週目から212週目まで2週間毎に医薬組成物の2回の注射が皮下投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0144】
実施形態27:対象への医薬組成物の初回用量の投与後少なくとも2年間にわたって対象に医薬組成物が毎週投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0145】
実施形態28:対象に少なくとも4年間にわたって医薬組成物が投与される、実施形態15~27のいずれか一つに記載の方法。
【0146】
実施形態29a:対象に維持用量の医薬組成物が投与される、実施形態15~29のいずれか一つに記載の方法。
【0147】
実施形態29b:維持用量が1回又は複数回投与される、実施形態29aに記載の方法。
【0148】
実施形態29b:維持用量が、治療中に実現したPET SUVrレベルを維持するように選択される用量頻度で投与される、実施形態29a又は29bに記載の方法。
【0149】
実施形態29d:維持用量が、1.17以下のPET SUVrレベルを維持するように選択される用量頻度で投与される、実施形態29bに記載の方法。
【0150】
実施形態29e:維持用量が3ヵ月毎又は12週間毎に投与される、実施形態29b~29dのいずれか一つに記載の方法。
【0151】
実施形態29f:維持用量が毎月又は4週間毎に投与される、実施形態29b~29dのいずれか一つに記載の方法。
【0152】
実施形態29g:維持用量が、治療中に実現したAβ42/40比を維持するように選択される用量頻度で投与される、実施形態29bに記載の方法。
【0153】
実施形態29h:維持用量が、0.092以上のAβ42/40比を維持するように選択される用量頻度で投与される、実施形態29gに記載の方法。
【0154】
実施形態29i:維持用量が毎月又は4週間毎に投与される、実施形態29g~29hに記載の方法。
【0155】
実施形態29j:有利なバイオマーカーが実現したとき維持用量の投与を中止する、若しくはその頻度を下げるか、又は用量を減量する、実施形態29a~29hのいずれか一つに記載の方法。
【0156】
実施形態29j:有利なバイオマーカーがあまり有利でなくなったとき維持用量の投与の頻度を増加させるか、又は用量を増加させる、実施形態29a~29hのいずれか一つに記載の方法。
【0157】
実施形態30:対象がアミロイド蓄積及び神経原線維のもつれの発生に関してタウのPETスキャン、血漿及び/又はCSFバイオマーカーに基づきモニタされる、実施形態15~30のいずれか一つに記載の方法。
【0158】
実施形態31:対象に0週目から8週目まで毎週、医薬組成物の1回の注射、続いて10週目から96週目の週数まで毎週、医薬組成物の2回の注射、続いて98週目から216週目まで2週間毎に医薬製剤の2回の注射が皮下投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0159】
実施形態32:対象に8週目から94週目まで及び/又は98週目から216週目まで医薬組成物の2回の注射が皮下投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0160】
実施形態33:対象に、440mg、580mg、又は720mgの抗Aβプロトフィブリル抗体を含む医薬組成物が0週目から96週目まで毎週皮下投与され、続いて前記医薬組成物が98週目から216週目まで2週間毎に投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0161】
実施形態34:対象に0週目から8週目まで2週間毎に医薬組成物の1回の注射、続いて10週目から216週目まで2週間毎に医薬組成物の2回の注射が皮下投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0162】
実施形態35:対象に、440mg、580mg、又は720mgの抗Aβプロトフィブリル抗体を含む医薬組成物が10週目から216週目まで2週間毎に皮下投与される、実施形態15~23のいずれか一つに記載の方法。
【0163】
実施形態36:対象に、440mg、580mg、又は720mgの抗Aβプロトフィブリル抗体を含む医薬組成物が10週目から212週目まで2週間毎に皮下投与される、実施形態35に記載の方法。
【0164】
実施形態37:対象が65~80歳である、実施形態1~36のいずれか一つに記載の方法。
【0165】
実施形態38:対象が55~64歳であり、
(i)75歳より前に認知症発症が診断された第一度近親者;
(ii)少なくとも1つのアポリポタンパク質E4変異体(APOE4)アレル;及び
(iii)前記投与前のPET又は脳脊髄液(CSF)検査による脳アミロイドの上昇
から選択される少なくとも1つのリスク要因を有する、実施形態1~37のいずれか一つに記載の方法。
【0166】
実施形態39:前記投与前に対象の臨床的認知症尺度(CDR)全般スコアが0である、実施形態1~38のいずれか一つに記載の方法。
【0167】
実施形態40:前記投与前に対象の学歴調整後のミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが27以上である、実施形態1~39のいずれか一つに記載の方法。
【0168】
実施形態41:前記投与前に対象のウェクスラー記憶尺度-改訂版論理的記憶下位尺度II(WMS-R LM II)スコアが、50~64歳の範囲の年齢の対象について15以下、65~69歳の範囲の年齢の対象について12以下、70~74歳の範囲の年齢の対象について11以下、75~79歳の範囲の年齢の対象について9以下、及び80~90歳の範囲の年齢の対象について7以下のWMS-IV LMIIの年齢調整平均より少なくとも1標準偏差低い、実施形態1~40のいずれか一つに記載の方法。
【0169】
実施形態42:注射の容積が、1.1mL、1.4mL、又は1.8mLである、実施形態24、26、31、32、又は34のいずれか一つに記載の方法。
【0170】
実施形態43:対象に初回治療有効用量の抗Aβプロトフィブリル抗体を投与するのに用量調節段階が不要である、実施形態1~42のいずれか一つに記載の方法。
【0171】
実施形態44:アミロイド関連画像異常浮腫/滲出液貯留(ARIA E)のリスク又は発生率が、例えば、同等の、又は同等と予想される曝露量及び/又は有効性の抗Aβプロトフィブリル抗体のIV投与と比較すると減少する、実施形態1~43のいずれか一つに記載の方法。
【実施例】
【0172】
実施例1:レカネマブ製剤の調製
SC製剤の調製
表1に示されるとおり、200mg/mLレカネマブを含有する例示的SC製剤には、以下の材料を使用した。
【0173】
【0174】
以下に要約するとおり、200mg/mLの目標タンパク質濃度のレカネマブをタンジェンシャルフローろ過(TFF)で調製した。レカネマブ材料の調製には、製剤緩衝液毎に別々のTFF作業を実施し、但し組成1a及び1bは例外とした。これらの製剤の2つについては、1つのTFF作業を実施し、得られた濃縮材料を2つの半分ずつのロットに分割した。各最終製剤緩衝液中の少量の滅菌ろ過材料は、ゼロ時点で満たすのでなく、-20℃で凍結保存して、シリンジ検査のため適切な容器クロージャに充填した。
【0175】
レカネマブ調製物
TFFによるタンパク質濃縮/ダイアフィルトレーションプロセスは、3段階に細分することができる:
1.材料の100~150mg/mLへの濃縮
2.製剤化緩衝液によるダイアフィルトレーション(5倍)
3.200mg/mL超への濃縮
【0176】
濃縮/ダイアフィルトレーション工程は、0.02m2の膜面積を取り付けたPall Centramate LVシステムを使用して実施した。レカネマブ材料(ポリソルベート80(PS80)を加える前にGMPロット製造から抜き取った)をTFFシステムに入れ、10~15倍濃縮(第1段階)を実施した。次に材料を最大5ダイア容量の製剤化緩衝液でダイアフィルトレーションし(第2段階)、ここでは透過液のpH及び電気伝導度のチェックを行ってダイアフィルトレーションをモニタした。ダイアフィルトレーション後、材料を210~250mg/mLの目標タンパク質濃度にまで更に濃縮した(第3段階)。保持液を回収し、タンパク質濃度の決定用に試料を採取した。
【0177】
この製剤の調製では、TFFシステムの高圧に起因して、210~250mg/mLの目標タンパク質濃度に達しなかった。従って、Millipore遠心フィルタユニット(30,000MWCO)を使用して目標タンパク質濃度を実現した。この濃縮工程を実施するため、フィルタユニットをレカネマブ製剤化緩衝液と平衡化させた後、続いてレカネマブ材料を20℃にて3600RPM(約3000×g)で、保持液のタンパク質濃度が200mg/mLよりも高いと予想されるまで30分間隔で遠心した。フィルタユニットから保持液を回収し、プールした。徹底的に混合した後、タンパク質濃度の測定のため、プールされた保持液から試料を採取した。
【0178】
タンパク質を濃縮した後、プールから試料を取り、適切な製剤化緩衝液で500倍希釈した。緩衝液ブランクに対する希釈した試料の吸光度を280nm及び320nmで測定した。適切な製剤化緩衝液で希釈することによって最終的なタンパク質濃度調整を実施した。最後に、レカネマブに10%PS80溶液を加えて最終溶液中0.02%のPS80を実現し、このタンパク質溶液を転倒式回転により徹底的に混合した。
【0179】
0.2μmシリンジフィルタを使用して最終的なレカネマブ製剤化材料をろ過し、続いてバイアル又はプレフィルドシリンジ(PFS)に充填した。この工程は、バイオセーフティキャビネットにて無菌的に実施した。得られたバイアル又はPFSを-20℃のフリーザーに置いた。最悪条件をシミュレーションするため、バイアルは逆さにして保存し、PFSは水平に保存した。
【0180】
IV製剤の調製
滅菌水性製剤の調製のための従来のcGMP無菌法により、静脈内(IV)注射用のレカネマブ10mg/mL及び2つの100mg/mL製剤を製造した。これらのIV注射は、以下のとおり対応するレカネマブ原薬製剤から、いかなる賦形剤及び希釈剤も加えることなく作製した。
【0181】
ろ過したレカネマブ原薬溶液をバイアルに無菌的に充填した。プールした原薬を0.2pmフィルタによるバイオバーデン低減ろ過工程にかけた。最終回の滅菌ろ過は、2つの連続する0.2pmフィルタで実施し、ろ過前及びろ過後にフィルタの完全性試験を行った。滅菌原薬製品をバイアルに無菌的に充填した。充填操作中、充填精度はバイアル充填重量を測定することにより確認した。充填したバイアルを打栓し、次にアルミニウムオーバーシールで密閉した。巻き締めした後、この製品を5±3℃で保存した。
【0182】
10mg/mLレカネマブを含むIV製剤の組成を表2に示す。
【0183】
【0184】
100mg/mLレカネマブを含む2つのIV製剤の組成を各々表3(「IV製剤A」)及び表4(「IV製剤B」)に示す。
【0185】
【0186】
【0187】
実施例2:NHP薬物動態研究
レカネマブは、25mM L-ヒスチジン、200mM L-アルギニン、0.05%ポリソルベート80、pH5.0の液体製剤として提供した。タンパク質濃度は204.3mg/mLであり、投与用製剤の計算時点で200mg/mLと見なした。
【0188】
投与用製剤のため、使用当日にレカネマブを室温に放置して解凍した。投与当日に紫外線遮断蛍光灯下で静脈内投与用の投与用製剤を調製した。これは、可能な限り滅菌した器具類を使用してクリーンベンチで調製した。レカネマブを注射用水で希釈することによって投与用製剤(10mg/mL)を調製した。調製後、投与用製剤を滅菌ポリプロピレン(PP)容器に移し替え、アルミ箔で覆った。レカネマブは皮下投与には調製なしに使用した。
【0189】
レカネマブを10mg/kgの用量で6匹の雄カニクイザル(3歳、体重2.4~3.4kg)に静脈内及び皮下投与した(3匹の動物/経路)。研究デザインを表5に示す。
【0190】
【0191】
安全性試験で使用した用量レベルでの薬物動態(PK)パラメータの決定並びに同じ用量レベルでの皮下及び静脈内投与後のPKパラメータの比較のために、10mg/kg/日の用量正当化静脈内及び皮下投与を選択した。皮下投与について:動物の背部に用量投与を実施した。用量投与には、針付き使い捨てシリンジ(1mL、27G、テルモ株式会社、日本)を使用した。被験物質は、室温に戻した後そのまま使用した。用量投与前に背部をクリッパーで剃毛した。投与容積は0.05mL/kgであった(各動物の投与容積は、投与当日に測定した体重に基づいて計算した)。
【0192】
静脈内投与について:投与用製剤は、使い捨てシリンジ、延長チューブ、及び留置針(22G、ニプロ株式会社、日本)を使用して2mL/分の速度で伏在静脈に注射した。投与容積は1mL/kgであった(各動物の投与容積は、投与当日に測定した体重に基づいて計算した)。
【0193】
薬物動態
PKパラメータの計算には単回用量を選択した。
【0194】
以下のスケジュールに基づいて、全ての動物の橈側皮静脈から非麻酔下に血液試料(約1mL)を採取した:
【0195】
静脈内投与について:1日目(投与当日;5回、投与前、投与後5分、1、2、及び8時間)、2日目(投与後24時間)、3日目(投与後48時間)、5日目(投与後96時間)、8日目(投与後168時間)、15日目(投与後336時間)、29日目(投与後4週間;投与後672時間)、43日目(投与後6週間;投与後1008時間)、及び57日目(投与後8週間;投与後1344時間)。
【0196】
皮下投与について:1日目(投与当日;4回、投与前、投与後2、4、及び8時間)、2日目(投与後24時間)、3日目(投与後48時間)、4日目(投与後72時間)、5日目(投与後96時間)、8日目(投与後168時間)、15日目(投与後336時間)、29日目(投与後4週間;投与後672時間)、43日目(投与後6週間;投与後1008時間)、及び57日目(投与後8週間;投与後1344時間)。
【0197】
血液試料は血清分離剤入りの採血管(ベノジェクトII、テルモ株式会社)に移し替え、室温に30~60分間静置しておいた後、血清採取のため遠心した。遠心後(約4℃にて約1750×gで10分間)、血清試料(0.1mL以上×2本)をポリプロピレン(PP)チューブに分け、ドライアイスで冷却し、約-80℃で貯蔵し(実際の範囲:-84.8~-76.8℃;許容範囲:-60℃以下)、凍結状態でドライアイスと共に包装して試験施設に送付した。
【0198】
血清中レカネマブ濃度はELISA法により決定した。
【0199】
【0200】
レカネマブの単回静脈内投与後、レカネマブの血清濃度は下がり、t1/2平均値は241.4時間であった。CL、Vss、AUC(0-inf)、及びMRT(0-inf)の平均値は、それぞれ、0.189mL/h/kg、65.1mL/kg、55,100μg・h/mL、及び344時間であった。
【0201】
レカネマブの単回皮下投与後、レカネマブの血清濃度は96.0時間でピークに達し(48.0~168時間)、t1/2平均値は270.9時間であった。Cmax、AUC(0-inf)、及びMRT(0-inf)の平均値は、それぞれ、94.8μg/mL、52,900μg・h/mL、及び439時間であった。レカネマブのFは95.9%であった。
【0202】
抗薬物抗体(ADA)分析
採血:1日目(投与当日;投与前)、29日目(投与後4週間;投与後672時間)、及び57日目(投与後8週間;投与後1344時間)に、全ての動物の橈側皮静脈から非麻酔下に血液試料(約1mL)を採取した。
【0203】
血清試料の調製方法:血液試料を血清分離剤入りの採血管(ベノジェクトII、テルモ株式会社)に移し替え、室温に30~60分間静置しておいた後、血清採取のため遠心した。遠心後(約4℃にて約1750×gで10分間)、血清試料(0.1mL以上×2本)をPPチューブに分け、ドライアイスで冷却し、約-80℃(実際の範囲:-84.8~-76.8℃;許容範囲:-60℃以下)で保存し、凍結状態でドライアイスと共に包装して試験施設(株式会社LSIメディエンス、中央総合ラボラトリー(Shimura Laboratory)、分析研究センター(Analytical Research Center))に送付した。
【0204】
ADA分析:血清中の抗レカネマブ抗体は、試験施設にてブリッジング電気化学発光イムノアッセイ(ECL)法により決定された。
【0205】
抗レカネマブ抗体のスクリーニングアッセイでは、投与前に1例の分析試料、29日目に4例の分析試料、及び57日目に4例の分析試料について、陽性である可能性があると判定された。
【0206】
抗レカネマブ抗体陽性である可能性がある9例の試料を確認アッセイに供した。抗レカネマブ抗体の確認アッセイでは、29日目に1例の分析試料及び57日目に4例の分析試料が陽性であると判定された。従って、陽性と確定したADA分析試料について、力価測定アッセイを行った。
【0207】
抗レカネマブ抗体の力価測定アッセイでは、抗体力価は1~256であった。
【0208】
他の観察結果
いずれの動物においても、臨床徴候、体重、及び摂食量の点でレカネマブ関連の変化はなかった。
【0209】
結論
雄カニクイザル(n=3匹/群)において10mg/kgの用量での単回静脈内及び皮下投与後のレカネマブのPKプロファイルを調べた。
【0210】
レカネマブの単回静脈内投与後、血清中のレカネマブのPKプロファイルは、CL低値(平均値、0.189mL/h/kg)及びVss低値(平均値、65.1mL/kg)と特徴付けられ、t1/2平均値が241.4時間であった。単回皮下投与後、血清レカネマブ濃度は96.0時間でピークに達し、t1/2平均値は270.9時間であった。t1/2平均値の値は、静脈内投与と皮下投与との間で同等であった。皮下投与後のFは95.9%であった。ADA分析に関しては、抗レカネマブ抗体は皮下投与後29日目に1例の分析試料に検出され、静脈内及び皮下投与後57日目に4例の分析試料に検出された(2例の試料/経路)。
【0211】
実施例3:毒性研究
局所刺激効果を評価するため、レカネマブを雄及び雌カニクイザル(4匹の動物/群/性別)に10mg/kgの用量(濃度:レカネマブとして200mg/mL)で1日1回、4週間(28日)にわたって皮下投与した。レカネマブは4週間にわたって毎日、背部の異なる4ヵ所に;即ち、部位番号1→2→3→1→2→3→4に4週間(
図1)注射し;これにより急性局所効果並びにその可逆性の評価が可能になった。対照群(4匹の動物/群/性別)は、等容積(0.05mL/kg)の対照物質(プラセボ[25mM L-ヒスチジン;200mM L-アルギニン;0.05%ポリソルベート80])を受けた。いずれの動物も、4週目の最終回投与の3日後に剖検した。
【0212】
毒性の評価は、死亡率、注射部位の観察を含めた臨床徴候、体重、摂食量、血液学、血液化学、トキシコキネティクス(TK)、抗薬物抗体(ADA)分析、注射部位、腋窩リンパ節、鼠径リンパ節、及び脾臓の肉眼検査、及び顕微鏡検査に基づいた。
【0213】
いずれの評価にも、死亡又は被験物質関連の変化はなかった。
【0214】
TKでは、Cmax及びAUC(0-24h)平均値は繰り返し投与により増加し、明らかな性差はなかった。
【0215】
【0216】
ADA分析では、全ての適用可能なADA分析試料が陰性であると判定された。
【0217】
これらの結果は、10mg/kg/日のレカネマブ(200mg/ml製剤)の連日皮下投与が28日間を超えて局所刺激なく良好に忍容されたことを示している。
【0218】
実施例4:皮下治療研究プロトコル
本研究は、健常対象で行った単一施設、無作為化、非盲検、並行群間研究である。本研究では、単回の一定用量を皮下投与した後のレカネマブの絶対的バイオアベイラビリティを単回静脈内用量と比較して判定した。18~65歳の合計59例の健常対象を登録して、各治療群につき少なくとも24例の対象の完了を支持した。皮下治療群にのみ、5例の日本人対象が含まれた。
【0219】
研究フェーズ
図2に示すとおり、本研究は2つのフェーズ:事前無作為化フェーズ及び無作為化フェーズからなった。
【0220】
事前無作為化フェーズは最長21日間続き、スクリーニング期間とベースライン期間とからなった。この間に各対象の研究適格性が決定されることになり、ベースライン評価が行われることになる。スクリーニング期間は20日間続いた。ベースライン期間は1日続くことになる(-1日目)。
【0221】
無作為化フェーズは、治療期間とフォローアップ期間とからなった。研究治療は、1日目に、対象の研究適格性が確認され、ベースライン評価が行われた後に行われた。対象は、2つの治療群のうちの1つ(A又はB)に1:1の比で無作為化した。
【0222】
試験薬物:レカネマブ薬物製品は、200mg/mLレカネマブを200mMアルギニン/25mMヒスチジン/0.05%ポリソルベート80と共に含むガラスバイアルに2mL溶液が入った滅菌水溶液として供給された。レカネマブは、静脈内注入についてはmg/kg単位で投与した一方、皮下投与については、700mgの一定用量を用いることになる。
【0223】
治療A:約1時間をかけた10mg/kg IVレカネマブ注入。レカネマブは、終端0.2μMインラインフィルタを備えた注入システムを使用して、静脈内注入により標準生理食塩水中で約1時間をかけて投与した。所定の時点で血清レカネマブ濃度を測定した。最終回のフォローアップ来院は、50日目におけるPK試料採取の最終日に行った。
【0224】
治療B:腹部に皮下投与した固定700mg SCレカネマブ(各350mgが入った1.75mL(即ち、200mg/mLの濃度)の2回の注射)。皮下用量はシリンジで投与した;各下腹部象限に1回の注射として2回の皮下注射を投与して全皮下用量を実現した。
【0225】
薬物動態評価
全ての対象について、1日目の投与前及び投与後1(IV:静脈内注入終了時及びSC:投与1時間後)、2、4、8時間、及び2日目(投与24時間後)、3日目(48時間)、4日目(72時間)、5日目(96時間)、6日目(120時間)、8日目(168時間)、15日目(336時間)、22日目(504時間)、29日目(672時間)、36日目(840時間)、50日目(1176時間)、及び任意の早期中止(ET)来院時、静脈内投与又は皮下投与のいずれかの後にレカネマブに関する決定用の血清試料を採取した。
図3を参照のこと。PK試料採取時点は全て、IV注入/SC注射の開始を基準とする。
【0226】
【0227】
SC用量投与後の絶対的バイオアベイラビリティは約50%であることが実証された。
図3及び
図4を参照のこと。約50%のバイオアベイラビリティに基づけば、700mg毎週のSC用量が10mg/kg Q2Wと同等の曝露量であるものと予測される。
【0228】
自己注射器(AI)装置の開発について、AI装置の技術開発を加速させるため、3種の注入量を予め選択した(1.1、1.4又は1.8mL)。1.8mL(360mg)の充填容積は720mg用量を送達し、これは計画される用量よりも約3%高い。AI装置の微調整を考慮の上、将来のSC開発に向けたSC用量レジメンとして720mg QWが提案される。
【0229】
日本人対象及び非日本人対象の間に顕著な差は認められなかった。
【0230】
安全性評価
安全性評価は、全てのAEのモニタリング及び記録からなった;血液学値、血液化学値、及び尿値の臨床検査判定;バイタルサイン及び心電図(ECG)の定期的測定;及び理学的検査の実施。注射部位反応の任意の有害事象(AE)は積極的に集め、共通毒性基準(CTC)によってグレード分類した。注射部位反応の臨床的特徴(疼痛、圧痛、紅斑/発赤、硬化/腫脹)は表9に従いグレード分類した。
【0231】
【0232】
各用量の注射部位における注射部位反応は、以降の来院時に毎回、消散するまで、表9に従いグレード分類した。このSC製剤では、新規の又は予想外の安全性シグナルは検出されなかった。
【0233】
免疫原性評価
1日目、15日目、29日目、50日目、及び任意のET来院時、血清中の抗薬物(レカネマブ)抗体(ADA)評価を投与前に行った。対象がADA力価陽性と確認された場合には、ADA力価がベースラインに戻るまで試料を最長6ヵ月(3ヵ月毎に)採取した。
【0234】
生物学的分析方法
血清レカネマブ濃度については、バリデートされた免疫沈降-液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(IP/LC-MS/MS)方法により、抗ヒト免疫グロブリンG(IgG)抗体を使用して血清試料からレカネマブを沈降させて測定した。沈降したレカネマブを単離し、タンパク質分解酵素消化にかけることにより、更に小型のペプチドを生じさせた。レカネマブにユニークな配列を持つペプチドの量を液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC MS/MS)により測定して、レカネマブの定量化を提供した。
【0235】
バリデートされたECL方法を用いてADA及び中和抗体(NAb)を測定した。
【0236】
研究評価項目
主要評価項目には、レカネマブの血清濃度-時間データを使用したノンコンパートメント解析によって導き出される以下のPKパラメータが含まれた。
【0237】
【0238】
バイオアベイラビリティを判定する主要なPKパラメータは、AUC(0-inf)及びF=絶対的バイオアベイラビリティ=[AUC(0-inf)SC×用量(IV)]/[AUC(0-inf)IV×用量(SC)]であった。IV用量は、注入した総用量(mg)に基づいた。
【0239】
安全性評価項目には、AEの発生率、臨床検査パラメータ、バイタルサイン、ECGパラメータ、及び血清ADA濃度を含めた。
【0240】
安全性分析
安全性の判定は、安全性解析対象集団で実施することになる。判定することになる安全性データには、有害事象(治療中に発生した有害事象[TEAE]を含む)、臨床検査結果、バイタルサイン、及びECGが含まれ、治療群別に要約した。局所注射部位反応を目的の事象として分析することになる。
【0241】
陽性及び陰性ADAの対象の数(割合)及びADA力価カテゴリー(例えば:>0、5、25、125)、及び来院別のNAbを治療群別に要約することになる。加えて、記述統計量及びデータが許容する場合には要約プロットを用いて(最低でも)ADA力価とPKプロファイルとの間の相関関係を判定することになる。
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
生物学的同等性のシミュレーション
シミュレーションは、生物学的同等性を裏付ける母集団モデル化手法を用いて行った。
【0246】
第1のシミュレーションでは、IV用量(10mg/kg単回用量を1時間かけて注入する)とSC用量(毎週550mgの一定用量を投与する)とを並行比較した。
【0247】
【0248】
SC治療及びIV治療について、同等の有効性が予測された。表12及び
図5を参照のこと。
【0249】
予測された幾何平均比及び関連する90%CIは80%~125%の範囲内に入った。
図6を参照のこと。単回用量投与後に生物学的同等性が確立され、720mgという用量が確立された。
【0250】
第2のシミュレーションでは、IV用量(10mg/kg単回用量を1時間かけて注入する)とSC用量(2回の720mgの一定用量を1週間空けて投与する)とを比較した。体重及び性別を再度標本抽出し、60例の対象を20レプリケートで分析した。表13を参照のこと。
【0251】
【0252】
同等のSC治療のAUC及びIV治療のAUCが約4週間で実現した。表14及び
図7を参照のこと。
【0253】
【0254】
シミュレーションは、IV(単回用量)とSC(1週間空けて投与する2用量)との間に生物学的同等性が実現したことを裏付けている。AUCについてSC用量を2×720mg用量に調整すると、IV用量と生物学的同等性が得られた(CI0.88~1.17)。
【0255】
曝露量のモデル化
薬物動態(PK)/薬力学(PD)シミュレーションを行い、体重が極端に低値/高値のとき見込まれるレカネマブ曝露量の差がレカネマブの有効性及び安全性に及ぼす効果を判定した。EADの対象についてPKモデルを用いてPKシミュレーションを実施することにより、固定皮下用量及び体重換算静脈内用量として投与したときの体重がレカネマブのAUCに与える影響を調べた。
【0256】
図8に示すとおり、レカネマブ曝露量は、静脈内用量投与後、体重の増加に伴い相対的増加を示す;対照的に、レカネマブ曝露量は、固定皮下用量について体重の増加に伴い相対的減少を示す。
【0257】
しかしながら、
図9に示されるとおり、広範囲の体重(約58~90kg)については、レカネマブ曝露量は静脈内投与及び皮下投与で同等である(CIは80~125%の範囲)。AUC
ss比は、51kg(PK解析対象集団の5番目のパーセンタイル値)など、低体重の対象について1.25より高く、99kg(PK解析対象集団の95番目のパーセンタイル値)など、高体重の対象について0.8より僅かに低い。表14を参照のこと。
【0258】
【0259】
安全性及び有効性モデル化
体重がレカネマブ曝露量(AUC)に及ぼす効果を更に調べるために行った分析に加えて、体重が低値(51kg、5番目のパーセンタイル値)及び高値(99kg、95番目のパーセンタイル値)の対象において曝露量の差が有効性及び安全性に及ぼす効果の潜在的な臨床的重要性を判定する別の分析を行った。
【0260】
脳アミロイド負荷の低減によって測定したときの体重が有効性に及ぼす効果について、PET SUVrのPK/PDモデルを使用したシミュレーション分析により判定した。シミュレーション結果から、典型的な70kg対象について、720mg SC毎週用量及び10mg/kg隔週IV用量の投与後のSUVrの低減が同程度であることが実証された。シミュレーション分析によって実証されるとおりの体重が高値(95番目のパーセンタイル値)又は低値(5番目のパーセンタイル値)の対象についてのPET SUVrの低減の僅かな差は、臨床的に重要でないと見なされた。このように、極端な体重で観察されるレカネマブ曝露量の差は、PET SUVrにより定義されるとおりのレカネマブの有効性に意味のある効果を及ぼさないものと思われる。
【0261】
ARIA-E発生率として定義される体重がレカネマブの安全性に及ぼす効果もまた、PK/PDモデルに基づくシミュレーション分析により判定した。
【0262】
実施例4の研究からのデータを使用して開発されたARIA-EについてのPK/PDモデルに基づけば、レカネマブ最高血清濃度(Cmax)は、ARIA-Eのリスクの有意な予測因子である。単回用量の投与後、レカネマブの皮下投与によれば、静脈内と比較してCmaxが約4分の1になった。このように、SC投与後のARIA-Eの発生率は、IV投与と比較して実質的に低くなることが予想される。このことは、モデルに基づくシミュレーション分析により確認され、ここで最初の6ヵ月間の治療におけるARIA-Eの発生率は、APOE4+(APOE4-)対象について、10mg/kg隔週IV用量の9%(3.7%)と比較して、720mg毎週SC用量では2.1%(1.2%)であると予測される。体重が高値(95番目のパーセンタイル値)又は低値(5番目のパーセンタイル値)の対象のARIA-E発生率は、シミュレーション分析によって実証されるとおり、参照70kg体重の対象と同等であった。毎週の皮下投与後にARIA-Eを経験する確率は、隔週の静脈内後よりも低く、体重の影響は最小限であると予測される。
【0263】
要約すれば、PET SUVrを有効性の尺度として使用し、及びARIA-E発生率を安全性の尺度として使用した曝露量-反応シミュレーションでは、臨床的に重要な体重の効果はないことが実証され、体重にかかわらず、全ての対象に提案の固定皮下用量を投与し得ることが確認された。
【0264】
アミロイドPETクリアランス
体重が(a)51kg、(b)70kg、又は(c)99kgの対象について、10mg/kg Q2Wの用量を720mg QW SCと比較した。IV及びSCのアミロイドPETクリアランスは同等であり、固定SC用量投与後に体重の影響はなかった。
図10を参照のこと。
【0265】
PET SUVrの低減について、3つの体重範囲(51kg、57~90kg、及び99kg)の間で僅かな差が認められたが、しかしながらそれらは臨床的に重要でないと見なされた。つまり、極端な体重で認められるレカネマブ曝露量の差は、PET SUVrにより定義されるとおりのレカネマブの有効性に意味のある効果を及ぼさないものと予想される。
【0266】
薬物動態及び薬力学モデル化
対象の総皮質平均皮質下白質(SWM)SUVr(12ヵ月及び18ヵ月におけるデータ点)のベースラインからの%変化率(CFB)に基づけば、予測モデルは、PET SUVrとC
aveとの間に相関関係を確立する。高いC
ass,avほど、大きいアミロイド低減及び臨床効果と相関する。
図11を参照のこと。このモデルはまた、ARIA-EとCmaxとの間にも相関関係を確立する。低いCmaxほど、低いARIA-Eの発生率と相関する。
図12を参照のこと。
【0267】
ARIA-Eのリスク
あるモデルによれば、定常状態では、SC 550mg QW及び720mg QW投与後のCmaxが、10mg/kg IV治療と比較してARIA-Eリスクの低下に関連すると予測された。低いCmaxほど、低いARIA-Eの発生率に相関する。
図12を参照のこと。モデル化した皮下用量投与後のARIA-E率予測値(3.9%)は、静脈内投与したときのApoE4+についてのレカネマブ5mg/kg隔週(3.6%)と同様である。以下に示すとおり、薬物を皮下投与したときのARIA-E発生率は、薬物を静脈内投与したときよりも低いと予測された。表15、表16、及び表17並びに
図13及び
図14を参照のこと。
【0268】
【0269】
【0270】
実施例5:第2の皮下治療研究プロトコル
コア研究
「コア研究」は、陽性アミロイド負荷によって指示される確定したアミロイド病変を有する早期AD(可能性が中等度のADによる軽度認知障害[MCI]/前駆AD又は軽度AD認知症)の対象において行った、多施設、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、非盲検、並行群間研究である。アミロイド病変は、アミロイドPET評価又はtタウ/Aβ[1-42]のCSF評価により確定されることになる。固定1:1(プラセボ:レカネマブ)スケジュールに従う2治療群(プラセボ及びレカネマブIV 10mg/kg、隔週)でのコア研究では、約1766例の対象を無作為化することになる。これら2つの臨床サブ群(ADによるMCI/前駆AD又は軽度AD認知症)の間での無作為化は、対象の総数の約50%以上がADによるMCIの臨床サブ群にあることになるなど、適度に均衡が保たれることになる。対象は、臨床サブ群;継続中の承認されたAD治療(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬[アセチルコリンエステラーゼ阻害薬]、メマンチン、又は両方)の有無;APOE4状態(即ち、APOE4保有者又は非保有者);及び地理的領域に基づき層別化されることになる。
【0271】
コア研究における治療は、18ヵ月間にわたることになる(1ヵ月ウィンドウ及び物流上の目的で必要に応じて関連するスケジュールの変更が適用されることになる)。個々の対象についてのこのコア研究は最長24ヵ月である(スクリーニングに最長3ヵ月、18ヵ月間の治療、及び治療後3ヵ月時点でのフォローアップ来院)。
【0272】
試験薬物:
静脈内注入について、レカネマブ薬物製品は、100mg/mLレカネマブ、50mmol/Lクエン酸塩、350mmol/Lアルギニン、0.05%ポリソルベート80を含有するpH5.0の滅菌水溶液として5mLの溶液が入ったガラスバイアルに供給されることになるか、又は100mg/mLレカネマブ、25mmol/Lヒスチジン、200mmol/Lアルギニン、0.05%ポリソルベート80を含有するpH5の滅菌水溶液としてクエン酸塩不含製剤で5mLの溶液が入ったガラスバイアルに供給されることになることを含む滅菌水溶液として供給されることになる。レカネマブは、標準生理食塩水中で60分間の静脈内注入として投与されることになる。
【0273】
皮下投与について、レカネマブ薬物製品は、25mmol/Lヒスチジン、200mmol/Lアルギニン、0.05%ポリソルベート80、pH5.0中200mg/mLで製剤化された、400mgレカネマブが入った2mLバイアルに供給された。少なくとも6ヵ月の継続期間にわたって各毎週用量につき2本のバイアルが提供されることになる。レカネマブ720mg SCの各毎週用量は、各々、2回連続して行われる360mg注射(2×1.8mLの400mg/2mL SC製剤)で構成され、これは医療専門家(HCP)によって腹部、大腿、又は上腕に、疼痛、挫傷又は腫脹を最小限に抑えるため注射部位を割り当てられた範囲内で順繰りに交替させながら投与されなければならない。皮下投与用のレカネマブは、使用直前に使い捨てのポリプロピレンシリンジ中に吸い上げ、25G皮下針を使用して約15秒の時間をかけて投与しなければならない。
【0274】
研究フェーズ
本研究は、3つのフェーズ:事前無作為化フェーズ、無作為化フェーズ、及び延長フェーズからなることになる。無作為化及び延長フェーズを
図15に示す。
【0275】
事前無作為化フェーズ
事前無作為化フェーズは最長60日間続くことができ、スクリーニング期間とベースライン期間とからなることになる。
【0276】
無作為化フェーズ
無作為化フェーズは、18ヵ月治療期間と3ヵ月フォローアップ期間とからなることになる(延長フェーズに参加しない対象については、以下で考察する)。対象は、来院3回目(1日目)に、2週間毎の60分間静脈内注入として投与されるレカネマブ(10mg/kg、隔週)又はプラセボのいずれかを受けるように無作為化されることになる(割り付け1:1;レカネマブ:プラセボ)。
【0277】
延長フェーズ
延長フェーズは、コア研究における全18ヵ月プラセボ対照治療を完了し、且つ延長フェーズの組入れ/除外基準を満たしている対象について利用可能であることになる。延長フェーズに参加する対象は、3ヵ月フォローアップ来院を完了しないことになり、延長フェーズに直接移行することになる。
【0278】
延長フェーズに参加する対象について、個々の対象のコア研究期間は約20ヵ月であり、これには、スクリーニングのための2ヵ月及び治療の18ヵ月が含まれる。延長フェーズに参加し、任意の時点で治療を中断する対象は、3ヵ月フォローアップ来院を完了することになる。延長フェーズは、最長2年間、又はレカネマブが利用可能になるまで、又はこの適応疾患における肯定的なリスク便益評価が実証されなくなるまでのうちのいずれか早く到来するまで継続されることになる。
【0279】
対象は、レカネマブによる非盲検10mg/kg IV、隔週治療を受けることになるか;又は任意選択の皮下(バイアル)サブ研究に参加する場合、2回連続して行われる360mg注射(2×1.8mLの400mg/2mL SC製剤)として投与される毎週の720mg皮下注射を受けることになる。
【0280】
延長フェーズにおけるサブ研究
レカネマブの皮下投与を調べるため、延長フェーズにおいてサブ研究が行われることになり、以前プラセボのみで治療された対象及び以前静脈内レカネマブで治療された対象において皮下投与したときの、安全性及び忍容性、薬物動態、免疫原性、並びにレカネマブのアミロイドPET及び血漿バイオマーカー(例えばp-タウ181など)に対する効果を判定することになる。
【0281】
本サブ研究は任意選択である。延長フェーズの間に静脈内治療の継続を希望する対象は、そうすることを選び得る。
【0282】
このサブ研究の適格性は、コア研究を完了した対象であることになり、それには、以前延長フェーズでの皮下レカネマブの開始前にプラセボのみで治療された対象、及び以前静脈内レカネマブで治療された対象が含まれ得る。米国及び日本に住む対象で、延長フェーズへの登録が適格である対象はまた、このサブ研究の募集期間帯に合致する場合には、この任意選択の皮下(バイアル)サブ研究への参加も適格であることになる。延長フェーズをまだ開始していない対象は、コア研究を完了次第、皮下(バイアル)サブ研究での非盲検治療を直接始めることができ、アミロイドPETサブ研究への参加又は継続に同意しなければならない。対象はまた、延長フェーズにおける6ヵ月間の静脈内治療後に皮下(バイアル)サブ研究に入ることもできる。
【0283】
このサブ研究に参加する対象は、各登録時点(来院42回目又は来院56回目)で、腹部、大腿、又は上腕のいずれかとなる注射部位を無作為に固定1:1:1スケジュールで割り付けられることになる。連続して行われる注射は毎回、必要に応じて体の両側を用いながら、割り付けられた注射部位の範囲内で順繰りに交替させなければならない。
【0284】
皮下(バイアル)サブ研究の対象は、メディカルモニターの承認を得た上でレカネマブの隔週静脈内投与に戻ってもよい。その場合、対象は、研究の延長フェーズの残りの間は(レカネマブ10mg/kg IV隔週を最長24ヵ月[2年]間、又は対象の在住国で薬物が市販されるまで、又はレカネマブによる治療からのリスク対便益比がもはや有利とは見なされなくなるまでのうちのいずれか早く到来するまで)レカネマブの隔週静脈内投与を続けることになる。
【0285】
加えて、皮下バイアルサブ研究に参加した対象には、皮下バイアルサブ研究で少なくとも6ヵ月経った後に、皮下AI(自己注射器)研究に参加するという選択肢が提供されることになる。皮下AIサブ研究では、AI装置を使用した皮下投与について調べることになり、これは、治験責任医師の裁量で、必要な訓練が完了した後に限り、非HCP(医療専門家(health care professional)、例えば、対象、研究パートナー、又は家族など)によって投与されるものであり得る。非HCP使用者向けの初期AI訓練の期間は最低でも2週間となり、2回の連続する研究薬物投与来院は診療施設で行われることになる。AI装置を使用して研究薬物を投与するのに好適な非HCPがいない場合、研究薬物投与はHCPが実施し得る。皮下バイアル又はAIサブ研究の対象は、毎週の研究薬物投与を有することになる。皮下バイアルサブ研究については、研究薬物を投与する度に毎回、バイタルサイン、過去の/併用している薬物療法の評価、及びAE評価を実施しなければならない。皮下AIサブ研究については、対象は、臨床的評価が実施される来院の度に毎回、診療施設に来るべきである。そうした来院時に、注射技法もまた評価されることになる。AI分配来院では、バイタルサイン、過去の/併用している薬物療法の評価、及びAE評価もまた行わなければならない。
【0286】
AI装置は、内容物観察窓が付いたハウジング、ばね作動機構及び一体型の針安全機能からなる自動式の使い捨て2.25mL AI装置である。この装置は、テーパー針、硬質針カバー、及び栓を備える2.25mL充填済みプラスチック製シリンジに1.8mLの200mg/mLレカネマブ溶液が予め充填されているものを含む。溶液の外観は、無色乃至淡黄色の液体である。AIは即時使用可能であり、いかなる更なる組み付けも不要である。装置は紙箱に入れて供給されることになり、各紙箱に2個の装置が入っている。
【0287】
皮下AIサブ研究に参加する対象、対象は、AI装置を使用して投与される、一定用量(720mg)のBAN2401の2回の連続して行われる皮下注射を毎週の頻度で受けることになる。これは、2個で1パックのAI装置で分配されることになる。各AI装置が一セット分の量の研究薬物1.8mL(360mg BAN2401)を有するため;従って、両方のAI装置とも、最大限の用量の研究薬物(720mg)が投与される必要がある。AI装置は腹部若しくは大腿に投与するか(自己投与の際又は他の誰かが注射を行う場合)、又は上腕に投与することができる(他の誰かが注射を行う場合;全詳細については、AI使用説明書を参照のこと)。
【0288】
フォローアップ来院
フォローアップ来院は、研究薬物の最終回用量の3ヵ月後に行われることになる。
【0289】
対象は、延長フェーズの間、何らかの理由で研究から離脱し得るか、又は研究薬物を中断し得る。早期に研究から離脱する又は研究薬物を中断する対象は、早期中止来院(研究薬物を中断すると決めてから7日以内)及びフォローアップ来院(研究薬物の最終用量から3ヵ月後)を完了しなければならず、また、該当する場合、安全性評価のための不定期の来院があり得る。延長フェーズでは、研究薬物を中断する対象は、臨床的有効性評価が行われるときに各予定された来院のために再通院する必要はなくなる。本研究は、延長フェーズの最後の対象の最終回の来院評価が行われたときに終了となることになる。
【0290】
薬物動態評価
コア研究及び延長フェーズ
事前無作為化フェーズの間のベースライン時(段階4)、アミロイドPET評価前、来院3回目の研究薬物の初回用量投与前、並びに6、12、及び18ヵ月間の治療後に対象から血液を採取し、アミロイドアイソフォーム、タウ、並びにAD診断及びアミロイド負荷に関連する他のタンパク質バイオマーカー(例えば、NFL)を挙げることができる潜在的な新規ADバイオマーカーを判定することになる。同様に、バイオマーカーの発見及びバリデーションをADを患う対象からの試料を伴い実施することにより、対象PK及びPD反応、治療反応、対象の層別化又はレカネマブに関連する有害作用の予測に有用であり得る血液及び遺伝子バイオマーカーを同定し得る。
【0291】
APOE4遺伝子タイピングを行うことにより、APOE状態(APOE4保有者及び非保有者)による層別化が可能になることになる。APOE4ホモ接合状態又はヘテロ接合状態を統計的分析で用いることにより、血管原性浮腫、微小出血及び脳表ヘモジデリン沈着症が挙げられるアミロイド関連画像異常(ARIA)の発生を含め、治療反応及び安全性に対する効果を決定することになる。APOE4遺伝子タイピングからの残りのDNAを用いて、レカネマブの吸収、分布、代謝、及び排泄におけるDNA配列変異性の役割を調べてもよい。研究解析対象集団で観察されるレカネマブ曝露量又はAE発生率のばらつきは、一塩基変異多型とPK、安全性、又はPDデータとの相関関係により判定し得る。
【0292】
PK及びPDの予測的バイオマーカーを同定しようとする試みの中では、本研究の参加者から入手した薬理ゲノム学(PG)及びバイオマーカー試料を大域的なプロテオミクス、メタボロミクス、又はリピドミクス及び単一又は多重アッセイにより分析し得る。加えて、他のレカネマブ又はAD臨床研究で同定されたバイオマーカーもまた、本研究に登録した対象から収集した試料で評価し得る。
【0293】
vMRIイメージングを用いてレカネマブがEAD集団の萎縮率に及ぼす効果を判定することにより、疾患修飾のエビデンスが提供されることになる。対象は全て、全ての安全性MRI評価を終えた直後にvMRIイメージングシーケンスを受けることになる。vMRIシーケンスはまた、スクリーニング来院時及びコア研究中の来院16、29、及び42回目(6、12、及び18ヵ月間の治療)にも分析されることになる。vMRIシーケンス収集は、延長フェーズ中、全ての安全性MRI評価で行われることになる。海馬、全脳、及び脳室総体積を評価することになる。
【0294】
ベースライン時並びに12及び18ヵ月間の治療時点で、同意を得た対象においてAD関連バイオマーカー(限定はされないが、Aβ[1-42]、Aβ[1-40]、ニューログラニン、NFL、tタウ及びpタウを含む)のCSF濃度を測定することになる。
【0295】
コア研究では、全ての対象から血液試料を採取して約12週間間隔で血清レカネマブレベルを決定することになる。早期に研究から離脱する又は研究薬物を中断する対象は、早期中止来院時(研究薬物を中断すると決めてから7日以内)及びフォローアップ来院時(研究薬物の最終用量から3ヵ月後)に血液試料を採取されることになる。
【0296】
延長フェーズでは、9週目来院42、47回目、来院50回目、及びその後延長フェーズ1年目の間は3ヵ月毎、及びその後延長フェーズの2年目の間は6ヵ月毎、該当する場合には早期中止来院時、及び研究薬物の最終回用量から3ヵ月後に行うフォローアップ来院時に血液試料を採取することになる。
【0297】
母集団PK手法を用いてレカネマブのPKを特徴付けることになる。共変量(例えば、限定はされないが、人口統計学的情報、併用薬、ADA発症、及び研究薬物製剤を含む)がレカネマブPKに及ぼす効果を判定することになる。PKモデルは、クリアランス(CL)及び分布容積に関してパラメータ化されることになる。AUC及び平均濃度(Cav)など、導出される曝露パラメータは、個々のCL事後推定及び投与歴を用いてモデルから計算することになる。
【0298】
皮下サブ研究
任意選択の皮下サブ研究に参加する対象は、血清PK用に追加の血液試料を採取する必要があることになる。
【0299】
安全性評価
コア研究及び延長フェーズ
延長フェーズの間、引き続き安全性評価をモニタすることになる。SAE及び研究特異的AEを含め、AEを特定し、評価し、及び収集することになる。研究薬物が投与されるとき、投与前及び注入後の両方にバイタルサインを評価することになる。血液学、血液化学、及び尿臨床検査値を6ヵ月毎にモニタすることになる。
【0300】
全ての対象について、臨床検査値、安全性MRI、vMRI、アミロイドPET評価、タウPET評価、及びCSF試料採取を用いて評価することになる。全ての対象が、延長フェーズにおける最初の6ヵ月間の治療について、アミロイド関連画像異常浮腫/滲出液貯留(ARIA E)モニタリングに関してコア研究の場合と同じ安全性MRIスケジュールに従うことになる(延長の開始後9週間、13週間、及び6ヵ月)。安全性MRIは6ヵ月毎に行い、その後、延長フェーズの終了まで行うことになる。全ての安全性MRI評価後にボリューメトリックMRI評価を収集することになり、延長フェーズの24、30、36、及び42ヵ月時点で分析することになる。
【0301】
臨床評価は6ヵ月毎の(可能であれば常に)朝に、以下の順序:MMSE、CDR-SB、及びADAS-cog14で施行することになる。全ての臨床評価(MMSE、CDR-SB、及びADAS-cog14)は、同じ日に記入しなければならない。全ての臨床評価は、可能であれば常に朝に、又は研究中一貫して1日のうちほぼ同じ時点で記入しなければならない。ADAS-cog 14への記入後、EQ-5D-5L、QOL-AD、ADCS MCI ADL、及びZarit介護負担尺度の記入が行われることになる。
【0302】
来院42回目、来院47回目、来院50回目、9週目及びその後延長フェーズの1年目の間は3ヵ月毎、その後延長フェーズの2年目の間は6ヵ月毎、該当する場合には早期中止来院時、及び研究薬物の最終回用量から3ヵ月後に行うフォローアップ来院時に、血清PK用の血液を採取することになる。
【0303】
コア研究における縦断的PETサブ研究に同意する者については、延長フェーズの30及び42ヵ月時点でアミロイドPETを収集することになり、一方、コア研究における縦断的CSFサブ研究に同意する者については、延長フェーズの30及び42ヵ月時点でCSFを収集することになる。コア研究における縦断的タウPETサブ研究に同意する者については、延長フェーズの30及び42ヵ月時点でタウPETを収集することになる。
【0304】
薬力学、薬理ゲノム学、及び他のバイオマーカー評価
(スクリーニング)時にAPOE4の遺伝子タイピング用の血液試料を対象から入手することになる。血液試料はまた、事前無作為化の間にも追加のAD診断用に採取することになる。
【0305】
他の評価
コア研究におけるアミロイドPET、タウPET、及び/又はCSFサブ研究に同意した対象は、それらのサブ研究判定を継続してもよい。コア研究における縦断的アミロイドPETサブ研究に同意する者については、延長フェーズの30及び42ヵ月時点でアミロイドPETを収集することになり、一方、コア研究における縦断的CSFサブ研究に同意する者については、延長フェーズの30及び42ヵ月時点でCSFを採取することになる。コア研究における縦断的タウPETサブ研究に同意する者については、延長フェーズの30及び42ヵ月時点でタウPETを収集することになる(修正事項08により改訂)
【0306】
皮下(バイアル)サブ研究に参加することを選び、延長フェーズの開始時点(1週目[来院42回目])でこのサブ研究に入る全ての対象は、皮下投与開始前4週間のアミロイドPETスキャンをベースライン皮下(バイアル)サブ研究アミロイドPETスキャンとして有しなければならない;これらの対象は、コア研究アミロイドPETサブ研究に参加したことがなくてもよい。延長フェーズにおける6ヵ月間の静脈内治療後に皮下(バイアル)サブ研究に入る対象は、アミロイドPETサブ研究に参加する必要はないが、アミロイドPETサブ研究に参加している対象は、定期評価スケジュールに従いアミロイドPETサブ研究を継続し得る。
【0307】
皮下(バイアル)サブ研究評価項目
主要評価項目:
・AE発生率並びにバイタルサイン、ECG、安全性臨床検査値、自殺傾向評価、ADA、及びHCPがレカネマブを皮下投与したときのMRI安全性パラメータの変化
・限定されないが、AUC、Cavを含めた、血清中レカネマブの母集団PKパラメータ。
【0308】
副次的評価項目:
・ADA発症の発生率及びタイミング、ADA力価、及び皮下治療期間にわたる対象のADA状態に関連する他の特性、並びに中和ADA(NAb)発症の発生率及びタイミング、NAb力価、及び皮下治療期間にわたる対象のNAb状態に関連する他の特性
・OLEにおける皮下レカネマブの開始前に以前プラセボのみで治療された対象、及び以前静脈内レカネマブで治療された対象の皮下治療期間にわたる脳アミロイドレベルのサブ研究ベースラインからの変化
・OLEにおける皮下レカネマブの開始前に以前プラセボのみで治療された対象、及び以前静脈内レカネマブで治療された対象の皮下治療期間にわたる、目視読影、SUVR、及びセンチロイド尺度によりアミロイドPET陽性からアミロイドPET陰性に転換する対象の比率
・OLEにおける皮下レカネマブの開始前に以前プラセボのみで治療された対象、及び以前静脈内レカネマブで治療された対象の皮下治療期間にわたる血漿バイオマーカー(例えば、p-タウ181など)のサブ研究ベースラインからの変化
【0309】
サブ研究解析対象集団
皮下(バイアル)サブ研究についての延長安全性解析対象集団(延長-SC-SAS)は、皮下治療期間にわたって少なくとも1用量の皮下投与される研究薬物(バイアル及びシリンジ)を受けた対象の群である。
【0310】
皮下(バイアル)サブ研究の延長PK解析対象集団は、コア研究の間に少なくとも1用量の研究薬物を受けた対象であって、延長フェーズの間における皮下(バイアル及びシリンジ)用量投与歴の文書記録を伴う少なくとも1つの定量化可能なレカネマブ血清(血清についての解析対象集団)又はCSF(CSFについての解析対象集団)濃度を有する対象の群である。
【0311】
皮下(バイアル)サブ研究の延長PD解析対象集団は、皮下治療期間にわたって少なくとも1用量の皮下投与される研究薬物(バイアル及びシリンジ)を受けた、且つこの期間中に少なくとも1つのPDパラメータを導出するのに十分なPDデータを有した(ベースライン及び少なくとも1つの投与後評価を有した)対象の群である。
【0312】
実施例6:レカネマブ(BAN2401)による長期治療を受けたアルツハイマー病を患う対象の剖検所見
上記に記載するコア研究に、ある患者(約85歳)が登録した。この患者は、以前、3年間にわたって軽度の記憶障害を有した後に軽度認知障害と診断された患者であり、10mg/kg q4週間(4週間毎)で79週間にわたる積極的治療中であったところ、次に無治療の98週間を経て、続いて10mg/kg 2週間毎の延長フェーズが94週間にわたった。この患者は行動症状を発症し、治療を中止し、12週間後、初発症状の発症から9年後に死亡した。
【0313】
剖検を実施した。脳は中等度の萎縮を示した(脳重量1052g)。
図16を参照のこと。梗塞又は出血は存在しなかった。脳組織の試料を複数の領域(前頭、頭頂、後頭、海馬、脳幹)から採取し、病理学的タンパク質(タウ[AT8]、β-アミロイド[6E10]、a-シヌクレイン、TDP43)並びにアストログリア及びミクログリア反応(GFAP、CD68)に関する組織学染色(LH&E、ビールショウスキー、チオフラビン)及び免疫組織化学染色で全神経病理学的判定を実施した。表18、及び
図17、
図18及び
図19を参照のこと。
【0314】
主要な所見は、極めてまばらなアミロイド沈着物であった-びまん性アミロイドは極めて少なく、まばらな斑状のプラークがあるのみであった。
図20~
図23を参照のこと。レカネマブ治療したアミロイド斑は均一性に乏しく、低密度である。
図24を参照のこと。アミロイド斑は、ほぼ海馬のCA4領域に限られている。
図22を参照のこと。タウ染色が存在する-しかしCA4のもつれはまばらである。
図20及び
図22を参照のこと。新皮質及び不等皮質に神経突起斑が存在したが、全体的には、より密集したプラークの範囲は幾つかあるものの、比較的まばらであった。全皮質領域にわたって糸屑状の神経原線維が存在した。神経原線維のもつれは広く存在したが、密度は高くなかった。中等度の限局的なアミロイドアンギオパチーが存在した。軽度の顆粒空胞変性が存在した。アミロイド物質周辺にミクログリアに関するCD68染色が存在した。
図25を参照のこと。扁桃及び嗅内皮質にのみ、微量のTDP43細胞質染色が存在した。扁桃にのみ、レビー小体が存在した。
【0315】
【0316】
アルツハイマー病症状の既往歴が9年に及ぶこの症例の神経病理学的所見において最も注目すべきは、びまん性のプラークが著しく少ないこと、及びばらつきはあるが全体的には神経突起斑の負荷が極めて低いことである。存在したプラークは「虫食い状」の外観を呈した。また、アミロイドアンギオパチーの欠如も顕著であった。神経原線維病変は、もつれよりも糸屑状であるのが一層広範で顕著であった。第3相CLARITY AD研究におけるタウPETでは、アミロイドクリアランスがタウ病変を遅らせるかどうかが評価されることになる。びまん性アミロイドがほぼ存在せず、散在した神経突起性のアミロイドがあるのみという状況でトポグラフィー的に広範な神経原線維病変が存在するというのは、典型的なADでは極めて珍しい:NACC神経病理学データセットでは、Braak B2又はB3の脳でThalのステージA0又はA1を示すのは、僅か2%である。この神経病理学的所見は、レカネマブ治療でトレーサー取込値の著しい減少を示すフロルベタピルPETスキャンと一致している。このように、神経病理学的調査の結果は、レカネマブの誘導による原線維アミロイド(びまん性及び神経突起性の両方)の除去を裏付けている。
【0317】
【0318】
【0319】
【0320】
【0321】
【配列表】
【国際調査報告】