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特表2024-532446リチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成される複合体及びその製造方法、ならびに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】リチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成される複合体及びその製造方法、ならびに使用
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/00 20060101AFI20240829BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240829BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C01D15/00
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513489
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2022114220
(87)【国際公開番号】W WO2023030092
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111023963.X
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522450819
【氏名又は名称】天津中能▲里▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY LITHIUM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.100, The 9th Avenue Of Xinye, West TEDA, Tianjin 300457, China
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孔▲徳▼▲玉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲旬▼▲慶▼娜
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼兆勇
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】牟瀚波
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA13
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
リチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成された複合体及びその製造方法、並びに使用を提供する。本発明の方法は、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとの複合体の工業的製造を実現でき、かつ、製造した複合体中の金属リチウムと炭素材とが完全に浸潤し、材料内部に層分けがなく、空隙がない。複合体内部の導電性3次元カーボン骨格構造は、金属リチウムの沈着のための予備空間を提供し、金属リチウム負極の体積膨張を緩和することができ、かつ、カーボン骨格構造の導電能力は、電極表面の電流密度を低くし、リチウムデンドライトの発生及び成長を少なくすることができ、当該複合体で製造した電極は、構造が安定しており、長いサイクル寿命の電極の製造に有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成される複合体であって、
多孔質骨格と、多孔質骨格の空隙内に充填される金属リチウムとを含み、
前記多孔質骨格は、複合炭素材が交絡してなる、リチウム親和性修飾層を有する網目状骨格であり、
前記複合炭素材は、結晶化カーボン材料と前記結晶化カーボン材料の表面を覆う非晶質カーボン被覆層とを含み、
前記非晶質カーボン被覆層はリチウム親和性修飾層を構成することを特徴とする、複合体。
【請求項2】
前記結晶化カーボン材料は、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボン繊維、カーボンベース金属酸化物繊維、炭素系共有結合性有機繊維のうちの少なくとも1種を含み、
前記非晶質カーボン被覆層は、結晶化カーボン材料とブレンドした有機材料の炭化生成物であり、前記有機材料は、有機バインダー、有機フィラー及び架橋剤からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記複合体が帯材の形であり、前記帯材は、1ミクロン~1000ミクロンの範囲内の厚さと5ミリメートル~1メートルの範囲内の幅を有することを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記非晶質カーボン被覆層の厚さが10nm~600nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記非晶質カーボン被覆層は、さらに、その内部又は表面に嵌め込んだナノ金属粒子を含み、
前記ナノ金属粒子のサイズ範囲が5nm~800nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体を製造する製造方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする、製造方法。
工程1:有機バインダー、フィラー、架橋剤及び溶媒を均一に混合し、前記フィラーは、結晶化カーボン材料と、任意の有機フィラー及び無機フィラーとを含む。
工程2:工程1で得られた混合物に対して、溶媒を除去する予備乾燥を行う。
工程3:不活性ガス雰囲気の保護下、工程2で得られた材料を300℃~1200℃の範囲内の温度で加熱し、冷却後に多孔質骨格を得る。
工程4:工程3で得られた多孔質骨格を溶融リチウムで浸漬し、リチウム-カーボン複合材料を得る。
【請求項7】
前記有機バインダー、フィラー、架橋剤及び溶媒の質量比が(4~15部):(10~30部):(0.01~20部):(20~400部)であり、
前記結晶化カーボン材料の質量割合がフィラー中15%~100%であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリブテンスチレン、ポリスチレン、ポリカルボキシ化セルロース、シアノアクリレート、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、環状エーテル誘導体、ポリウレタン、メタクリレート、エポキシ樹脂、ビニルアセテートポリマー、ポリイミド、オルガノフルオロポリマー、オルガノシロキサン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、グリセリン、エチルパラベン及びその誘導体、単糖又は多糖類ポリマーからなる群より選ばれ、
前記有機フィラーは、プラスチック微粒子、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸カルシウム、デヒドロ酢酸塩からなる群より選ばれ、
前記無機フィラーは、金属ナノ粒子、金属酸化物、金属窒化物、炭酸カルシウム、含水ケイ酸マグネシウム、マイカ、水和シリカ、シリカからなる群より選ばれ、
前記架橋剤は、アクリル酸にアリルスクロース又はペンタエリスリトールアリルエーテルを結合した高分子ポリマー、ベンゾイルパーオキサイド、ジエチレントリアミン、ホウ酸ナトリウム水和物、セルロース誘導体、イソチアゾリノンからなる群より選ばれ、
前記溶媒は、水、テトラクロロエチレン、トルエン、テレピン油、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シトラルバ、エタノール、キシレン、トルエン、シクロヘキサノン、イソプロパノール、エチルエーテル、プロピレンオキシド、メチルブタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニトリル、ピリジン、フェノール、エチレンジアミンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程1のフィラーには、さらにナノ金属粒子が含まれていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
工程4で得られたリチウム-カーボン複合材料中の多孔質骨格と金属リチウムとの質量比が1:0.1~1:6であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記プラスチック微粒子は、ポリプロピレンマイクロスフェア、ポリエチレンテレフタレートマイクロスフェア、ポリスチレンマイクロスフェア又はその組み合わせを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体、又は請求項6~11のいずれか1項に記載の方法で製造された複合体を含む金属リチウム負極。
【請求項13】
請求項12に記載の金属リチウム負極を含む金属リチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規材料技術分野に属し、特に、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成される複合体及びその製造方法、ならびに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池のエネルギー密度が既にその電池系の限界に達し、新しい高エネルギー密度の電池系を求めることが急務となっている。
【0003】
金属リチウムは、最も密度が小さい金属材料として、常に軽質合金及び金属リチウム電池を作製する肝心な材料であった。特に、新エネルギー分野において、金属リチウムは、高い比容量(3860mAh/g)及び最も負である化学ポテンシャル(-3.04V vs H/H)など、多くのメリットを有するため、単独の部品、つまり、金属リチウム負極とする見込みがあり、電池のエネルギー密度の向上に対して決定的な役割を果たす。しかし、通常の金属リチウム負極は、電池のサイクル過程において、体積膨張及びリチウムデンドライトの問題があり、かつ、リチウムデンドライトが破断する原因の1つも、電極体積の変化によるデンドライト根元の破断に起因するものである。この問題を解決するために、通常の方法は、3次元導電性骨格構造を有する金属リチウム負極を作製し、金属リチウム負極の体積膨張を低減して電極表面の局所電流密度を小さくすることである。3次元骨格構造は、金属リチウムが沈着するための予備空間を提供することができ、金属リチウムが予備空間へ沈着すると、予備空間において、電極が膨張しなくなる。また、3次元骨格構造の導電性能により、電極表面の電流密度を小さくし、デンドライトの発生を効果的に少なくすることができる。従って、導電性3次元骨格構造を有する金属リチウム帯材を作製することにより、金属リチウム負極の膨張を緩和してデンドライトを少なくすることができる。
【0004】
従来、導電性3次元骨格構造と金属リチウムとを複合するプロセスは、2種類があり、1つは、金属リチウムと3次元骨格構造とを機械的圧力により複合するが、このように作製した金属リチウム帯材の内部は、層分けが明らかであり、かつ、骨格構造に対してある程度の破壊がある。もう1つは、電気的沈着により金属リチウムを3次元骨格上に沈着して、3次元骨格構造を有する金属リチウム帯材を得ることであるが、このような方法は効率が低く、大規模に実現することが難しい。
【0005】
以上より、大規模に製造可能な3次元骨格構造を有する金属リチウム複合体を製造するプロセスの開発が必要である。
【発明の概要】
【0006】
上記課題に対して、本願の発明者は、(強い)リチウム親和性修飾層を有する(3次元)網目状骨格材料と金属リチウムとで形成される複合体(リチウム-カーボン複合体又はリチウム-カーボン複合材料と称する場合もある)及びその製造方法ならびに使用を提供し、この方法により、強いリチウム親和性修飾層を有する(3次元)網目状骨格(カーボン)材料と金属リチウムとの複合体を工業的に製造することができ、かつ、製造した複合体において金属リチウムと炭素材とが完全に浸潤し、複合体の内部は層分けされず、空隙がない。当該複合体内部の導電性3次元カーボン骨格構造(空隙を有する)は、金属リチウムの沈着のための予備空間を提供することにより、金属リチウム負極とするときの体積膨張を緩和することができ、また、カーボン骨格構造の導電能力により、電極表面の電流密度を低下させることにより、リチウムデンドライトの発生及び成長を少なくすることができる。当該複合体を用いて作製した電極は、構造が安定し、長サイクル寿命の電極の製造に有利である。
【0007】
具体的に、本発明の一態様によれば、リチウム親和性修飾層を有する(3次元)網目状骨格材料と金属リチウムとで形成される複合体を提供し、当該複合体は、多孔質骨格と、多孔質骨格の空隙内に充填される金属リチウムとを含み、
前記多孔質骨格は、複合炭素材(すなわち、カーボン骨格材料)が交絡してなる、リチウム親和性修飾層を有する(多孔質)網目状骨格であり、
前記複合炭素材は、結晶化カーボン材料と前記結晶化カーボン材料の表面を覆う非晶質カーボン被覆層とを含み、
前記非晶質カーボン被覆層は前記リチウム親和性修飾層を構成する(すなわち、前記非晶質カーボン被覆層は、リチウム親和性修飾層とされている)。
【0008】
本発明において、結晶化カーボン材料とは、当該材料を構成する炭素原子が一定のルールで規則的に配列されている(微視的構造)材料を指し、非晶質材料とは、原子が近距離で規則的に、遠距離で不規則的に配列されている材料を指し、アモルファス材料とも呼ばれる。
【0009】
本発明のリチウム-カーボン複合材料の概略的な構造は、図1に示すように、多孔質骨格と(浸漬、浸潤及び沈着により)多孔質骨格の空隙内に充填される金属リチウム1とで構成され、中でも、多孔質骨格は、複合炭素材が交絡してなり、当該複合炭素材は、内部の結晶化カーボン材料2と外部の非晶質カーボン被覆層3とを含む。
【0010】
幾つかの実施態様において、多孔質骨格の空隙率が15%~85%であり、空隙のサイズが5ナノメートル(nm)~90nmの範囲内にある。
【0011】
幾つかの実施態様において、前記結晶化カーボン材料は、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボン繊維、カーボンベース金属酸化物繊維、炭素系共有結合性有機繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
幾つかの実施態様において、前記複合炭素材が繊維状である。
【0013】
幾つかの実施態様において、前記非結晶化カーボン被覆層は、結晶化カーボン材料とブレンドした有機材料の炭化生成物であり、前記有機材料は、有機バインダー、有機フィラー及び架橋剤からなる群より選ばれ、非晶質カーボン被覆層の厚さが10nm~600nmの範囲内にある。
【0014】
幾つかの実施態様において、前記有機バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリブテンスチレン、ポリスチレン、ポリカルボキシ化セルロース、シアノアクリレート、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、環状エーテル誘導体、ポリウレタン、メタクリレート、エポキシ樹脂、ビニルアセテートポリマー、ポリイミド、オルガノフルオロポリマー、オルガノシロキサン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、グリセリン、エチルパラベン及びその誘導体、単糖又は多糖類ポリマーからなる群より選ばれる。
【0015】
幾つかの実施態様において、前記有機フィラーは、プラスチック微粒子(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)等)、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸カルシウム、デヒドロ酢酸塩からなる群より選ばれる。
【0016】
幾つかの実施態様において、前記架橋剤は、アクリル酸にアリルスクロース又はペンタエリスリトールアリルエーテルを結合した高分子ポリマー、ベンゾイルパーオキサイド、ジエチレントリアミン、ホウ酸ナトリウム水和物、セルロース誘導体、イソチアゾリノンからなる群より選ばれる。
【0017】
幾つかの実施態様において、リチウム-カーボン複合材料が帯材の形であり、リチウム-カーボン帯材の厚さが1ミクロン(μm)~1000ミクロンであり、リチウム-カーボン帯材の幅が5ミリメートル(mm)~1メートル(m)である。
【0018】
幾つかの実施態様において、外部の非晶質カーボン被覆層の厚さが10nm~600nmである。
【0019】
幾つかの実施態様において、非晶質カーボン被覆層には、さらにナノ金属粒子が含まれており、前記ナノ金属粒子が非晶質カーボン被覆層内又はその表面上に嵌め込まれている。
【0020】
幾つかの実施態様において、前記ナノ金属粒子のサイズ範囲が5nm~800nmであり、前記外部の非晶質カーボン被覆層内に分散的に嵌め込まれている。
【0021】
本発明の別の態様によれば、上記複合体を製造する方法を提供し、前記方法は、下記の工程を含む。
【0022】
工程1:有機バインダー、フィラー、架橋剤及び溶媒を均一に混合し、前記フィラーは、結晶化カーボン材料と、任意の有機フィラー及び無機フィラーとを含む。
【0023】
工程2:工程1で得られた混合物に対して、溶媒を除去する予備乾燥を行う。
【0024】
工程3:不活性ガス雰囲気の保護下、工程2で得られた材料を300℃~1200℃の範囲内の温度で加熱し(炭化処理)、冷却後に多孔質骨格を得る。
【0025】
工程4:工程3で得られた多孔質骨格を溶融リチウムで浸漬し、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとの複合体を得る。
【0026】
幾つかの実施態様において、前記有機バインダー、フィラー、架橋剤及び溶媒の質量比が(4~15部):(10~30部):(0.01~20部):(20~400部)である。
【0027】
幾つかの実施態様において、フィラー中の結晶化カーボン材料の質量比率が15%~100%、例えば15%~99.5%である。
【0028】
幾つかの実施態様において、前記有機バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリブテンスチレン、ポリスチレン、ポリカルボキシ化セルロース、シアノアクリレート、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、環状エーテル誘導体、ポリウレタン、メタクリレート、エポキシ樹脂、ビニルアセテートポリマー、ポリイミド、オルガノフルオロポリマー、オルガノシロキサン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、グリセリン、エチルパラベン及びその誘導体、単糖又は多糖類ポリマーからなる群より選ばれる。
【0029】
幾つかの実施態様において、前記有機フィラーは、プラスチック微粒子(PP、PET、PS)、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸カルシウム、デヒドロ酢酸塩からなる群より選ばれる。
【0030】
幾つかの実施態様において、無機フィラーは、金属ナノ粒子、金属酸化物、金属窒化物、炭酸カルシウム、含水ケイ酸マグネシウム、マイカ、水和シリカ、シリカからなる群より選ばれる。
【0031】
幾つかの実施態様において、前記架橋剤は、アクリル酸にアリルスクロース又はペンタエリスリトールアリルエーテルを結合した高分子ポリマー、ベンゾイルパーオキサイド、ジエチレントリアミン、ホウ酸ナトリウム水和物、セルロース誘導体、イソチアゾリノンからなる群より選ばれる。
【0032】
幾つかの実施態様において、前記溶媒は、水、テトラクロロエチレン、トルエン、テレピン油、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シトラルバ、エタノール、キシレン、トルエン、シクロヘキサノン、イソプロパノール、エチルエーテル、プロピレンオキシド、メチルブタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニトリル、ピリジン、フェノール、エチレンジアミンからなる群より選ばれる。
【0033】
幾つかの実施態様において、前記予備乾燥温度が-200℃~200℃、好ましくは20℃~100℃であり、予備乾燥時間が1時間~48時間、好ましくは2~8時間である。
【0034】
幾つかの実施態様において、工程1のフィラーにナノ金属粒子が含まれており、前記ナノ金属粒子、有機バインダー、その他のフィラー、架橋剤及び溶媒の質量比が(0.01~20部):(4~15部):(10~30部):(0.01~20部):(20~400部)である。
【0035】
幾つかの実施態様において、工程3で得られた多孔質骨格がリチウム親和性カーボン骨格である。
【0036】
幾つかの実施態様において、工程3における加熱は、2~24時間、好ましくは2~10時間行われる。
【0037】
幾つかの実施態様において、工程4で得られたリチウム-カーボン複合材料中の多孔質骨格と金属リチウムとの質量比が1:0.1~1:6である。
【0038】
幾つかの実施態様において、得られたリチウム-カーボン複合材料を加工し、例えば、旋盤加工、スライス、機械的ロールプレス、レーザ切断、押出等を行うことができる。
【0039】
本発明の別の態様によれば、上述した複合体又は上述した方法により製造された複合体を含む金属リチウム負極を提供する。
【0040】
本発明の別の態様によれば、上述した金属リチウム負極を含む金属リチウム電池を提供する。
【0041】
本発明は、下記の少なくとも1つの利点を有する。
【0042】
1.強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとの複合体の工業的製造を実現でき、かつ、製造した複合体が完全に浸潤し、材料内部が層分けせず、空隙がない。
【0043】
2.当該複合体内部の導電性3次元カーボン骨格構造は、金属リチウムの沈着のための予備空間を提供することにより、金属リチウム負極とする場合の体積膨張を緩和することができる。
【0044】
3.カーボン骨格構造の導電能力により、電極表面の電流密度を低下させ、リチウムデンドライトの成長を少なくすることができる。
【0045】
4.当該複合体で製造した電極は、構造が安定し、長いサイクル寿命の電極の製造に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、本発明に係るリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとの複合体の概略図である。
図2図2は、実施例1で作製した複合体の断面の走査電子顕微鏡写真である。
図3図3は、実施例1の複合体の比容量の測定グラフである。
図4図4は、実施例1の複合体のリチウム抜き後の光学写真である。
図5図5は、比較例1で作製した複合体の走査電子顕微鏡写真。
図6図6は、実施例1と比較例1における複合体のボタン電池サイクル図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施例を参照しながら、例を挙げて本発明を説明する。
【0048】
実施例1
ポリビニルアルコール(阿拉丁試剤(上海)有限公司)、ポリスチレンマイクロスフェア(蘇州微邁新材料有限公司)、カーボンナノチューブ(山東大展)、ジエチレントリアミン(上海妍泰実業有限公司)、イソチアゾリノン(阿拉丁試剤(上海)有限公司)及び脱イオン水を6:9:9:5:5:75(質量部の比)で用いて、均一に混合した。
【0049】
調製した混合物を85℃で5時間予備乾燥した。
【0050】
予備乾燥した材料を坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気の保護下、高温処理を行い、カーボン骨格材料を得、高温処理は、1000℃の温度で5時間行われた。
【0051】
上記のように作製したカーボン骨格材料を溶融金属リチウムと接触させ、金属リチウムをカーボン骨格材料(の空隙)に浸漬した。冷却後、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成された複合体を得た。
【0052】
金属リチウムと炭素材の結合状態を特定するために、上記得られた複合体に対して走査電子顕微鏡測定を行い、測定結果を図2に示す。図2からわかるように、複合体の内部に層分けがなく、空隙がなく、材料同士が完全に浸潤して1つのまとまりとして結合している。
【0053】
得られた複合体をブランキングしてボタン電池に組み立て、金属リチウムシートを対電極とする。カーボネート系電解液とポリプロピレンセパレータを用い、中でも、カーボネート系電解液は、溶質が1mol/LのLiPFであり、かつ溶媒がECとEMC(体積比が1:1)の溶液である。
【0054】
複合体の比容量を特定するために、複合体に対してリチウム抜き試験を行い、複合体の比容量の測定のグラフを図3に示す。図3からわかるように、複合体電極の比容量が2500mAh/gと高かった。
【0055】
残ったカーボン骨格の状況を確認するために、リチウム抜き後のボタン電池を解体し、ボタン電池の解体後の光学写真を図4に示す。図4からわかるように、リチウム抜き後に残ったカーボン骨格は、明らかに見え、カーボン骨格のエッジの円弧が整っており、金属リチウムを完全に抜いた後、カーボン骨格が依然として良好な形を保っている。
【0056】
実施例2
ポリウレタン(阿拉丁試剤(上海)有限公司)、ポリスチレンマイクロスフェア(蘇州微邁新材料有限公司)、銀ナノ粒子、カーボンナノチューブ(山東大展)、ベンゾイルパーオキサイド(阿拉丁)、イソチアゾリノン(阿拉丁試剤(上海)有限公司)及び脱イオン水を10:8:1:9:5:5:80(質量部の比)で用いて、均一に混合した。
【0057】
調製した混合物を65℃で10時間予備乾燥した。
【0058】
予備乾燥した材料を坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気の保護下、高温処理を行い、銀ナノ粒子を含有するカーボン骨格材料を得、高温処理は、800℃の温度で3時間行われた。
【0059】
上記のように作製したカーボン骨格材料を溶融金属リチウムと接触させ、金属リチウムをカーボン骨格材料に浸漬した。冷却後、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成された複合体を得た。
【0060】
実施例3
ポリビニルアルコール(阿拉丁試剤(上海)有限公司)、水和シリカ(蘇州微邁新材料有限公司)、カーボンナノチューブ(山東大展)、ベンゾイルパーオキサイド(阿拉丁)、イソチアゾリノン(阿拉丁試剤(上海)有限公司)及び脱イオン水を10:12:9:5:1:55(質量部の比)で用いて、均一に混合した。
【0061】
調製した混合物を65℃で10時間予備乾燥した。
【0062】
予備乾燥した材料を坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気の保護下、高温処理を行い、カーボン骨格材料を得、高温処理は、800℃の温度で6時間行われた。
【0063】
上記のように作製したカーボン骨格材料を溶融金属リチウムと接触させ、金属リチウムをカーボン骨格材料に浸漬した。冷却後、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成された複合体を得た。
【0064】
実施例4
ポリビニルアルコール(阿拉丁試剤(上海)有限公司)、水和シリカ(蘇州微邁新材料有限公司)、カーボンナノチューブ(山東大展)、ベンゾイルパーオキサイド(阿拉丁)及びp-キシレンを10:12:9:5:55(質量部の比)で用いて、均一に混合した。
【0065】
調製した混合物を65℃で10時間予備乾燥した。
【0066】
予備乾燥した材料を坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気の保護下、高温処理を行い、カーボン骨格材料を得、高温処理は、800℃の温度で6時間行われた。
【0067】
上記のように作製したカーボン骨格材料を溶融金属リチウムと接触させ、金属リチウムをカーボン骨格材料に浸漬した。冷却後、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとで形成された複合体を得た。
【0068】
比較例1
サンドイッチ構造を採用し、3次元骨格構造付きのカーボンクロスを、厚さが50ミクロンである2層のリチウム帯材間に放置し、ロールプレスにより厚さが180ミクロンの炭素材と金属リチウム帯材とで形成された複合体に作製した。作製した複合体に対して走査電子顕微鏡観察を行い、3次元カーボン骨格材料と金属リチウムの結合状態を特定し、測定結果を図5に示す。図5からわかるように、ロールプレスにより製造した複合体は、層分けが明らかであり、かつ、金属リチウムがカーボン骨格材料に非常に入りにくい。
【0069】
上記実施例1と比較例1における複合体をそれぞれ動作電極として用いてボタン電池を組み立て、中でも、市販のリチウムシートを対電極とした。カーボネート系電解液とポリプロピレンセパレータを用い、中でも、当該カーボネート系電解液は、溶質が1mol/LのLiPFであり、かつ溶媒がECとEMC(体積比が1:1)の溶液である。
【0070】
電池を組み立た後、サイクル性能測定を行った。サイクル性能測定のステップは以下の通りである。組み立てたボタン電池を12時間放置し、1mA/cmの定電流で電池を充電し、時間が1時間であり、そして、1mA/cmの定電流で電池を放電し、時間が1時間であり、サイクル過程における時間と電圧変化を記録した。サイクル測定結果を図6に示す。図6からわかるように、比較例1の複合体で組み立てた電池は、初期段階の分極電圧が比較的大きく、かつ、サイクルが約450時間となった後、電池の電圧が急速に小さくなり、この時、電池が短絡し、電池の寿命が終わったことがわかった。しかしながら、実施例1の複合体で組み立てた電池は、初期段階の分極電圧が比較例1の複合体で組み立てた電池の分極電圧よりも小さく、かつ、サイクルの進行につれて、当該電池の電圧が徐々に安定し、かつ、サイクルが700時間超えた場合でも、電池の分極電圧が安定しており、明らかな「電圧急落」が現れず、電池は依然として正常に動作可能である。よって、実施例1の複合体の電極は、構造がより安定しており、製造した電極のサイクル寿命がより長い。
【0071】
本発明の実施例において、具体的な実施形態を組み合わせて本発明に係る、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとの複合体及びその製造方法を詳しく説明しているが、これは法的要件を満たすための説明であり、本発明は、以上に記載した実施例に限定されない。当業者であれば、明細書の開示及び教示に基づき、適切な手法によって、強いリチウム親和性修飾層を有する網目状骨格材料と金属リチウムとの複合体及びその製造方法の複製を行うことができる。
【0072】
上述した明細書の開示及び教示に基づき、当業者であれば、上記の実施形態に対して適切な変更及び修正を行うことができる。従って、本発明は、以上に掲載及び説明されている具体的な実施形態に限定されず、本発明に対する幾つかの修正及び変更も本発明の請求項の保護範囲に含まれるべきである。なお、本明細書では、幾つかの特定の用語を用いているが、これらの用語は、説明の便宜上であり、本発明を何ら制限するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
請求項1に記載の複合体、又は請求項6に記載の方法で製造された複合体を含む金属リチウム負極。

【国際調査報告】