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特表2024-532448エタノールを用いたエタンODH生成物流からの酸素除去
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  • 特表-エタノールを用いたエタンODH生成物流からの酸素除去 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】エタノールを用いたエタンODH生成物流からの酸素除去
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/48 20060101AFI20240829BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20240829BHJP
   B01J 27/30 20060101ALI20240829BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20240829BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C07C5/48
C07C11/04
B01J27/30 Z
B01J23/80 M
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513500
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2022057902
(87)【国際公開番号】W WO2023031733
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/238,559
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505382548
【氏名又は名称】ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オレイーウォラ、ボラジ
(72)【発明者】
【氏名】シマンゼーンコフ、ヴァシリー
(72)【発明者】
【氏名】グーダルズニア、シャーヒン
(72)【発明者】
【氏名】ゲント、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ケシュトカー、モハマッド
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC43A
4G169BC54B
4G169BC55B
4G169BC59B
4G169BD02B
4G169BD10B
4G169CB07
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC12
4H006AD17
4H006BA05
4H006BA07
4H006BA08
4H006BA14
4H006BA81
4H006BD80
4H006BD84
4H006BE30
4H006BE60
4H039CA20
4H039CA65
4H039CC20
4H039CC30
(57)【要約】
エタンをエチレンに転化する方法及びシステムが提供される。例示的な方法は、エタン及び酸素を含む供給物流を酸化的脱水素化反応器に供給する工程と、酸化的脱水素化反応器内で、エタンの少なくとも一部をエチレンに転化して、エタン、エチレン、及び酸素、アセチレン、又はその両方を含む反応器流出物流を供給する工程と、を含む。この方法は、反応器流出物流を冷却して、冷却された流出物流を形成する工程と、冷却された流出物流を、ODH触媒床を含む酸素除去反応器に供給する工程と、を含む。水及びアルコールを含む脱酸素化流が酸素除去反応器に供給されて、脱酸素された流出物を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタンをエチレンに転化する方法であって、
エタン及び酸素を含む供給物流を酸化的脱水素化反応器に供給する工程と、
酸化的脱水素化反応器内で、エタンの少なくとも一部をエチレンに転化して、エタン、エチレン、及び酸素とアセチレンの一方又は両方を含む反応器流出物流を供給する工程と、
反応器流出物流を冷却して、冷却された流出物流を形成する工程と、
冷却された流出物流を、ODH触媒床を含む酸素除去反応器に供給する工程と、
水及びエタノールを含む脱酸素化流を酸素除去反応器に供給して、脱酸素された流出物を形成する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記脱酸素された流出物をアセチレン吸着カラムに供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱酸素された流出物を冷却して混合流出物を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合流出物をガス流と液体流とに分離する工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス流をスクラバーに通して酢酸を除去する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記ガス流を圧縮する工程と、
前記ガス流を極低温分離システムに供給して、純化されたアルケン流を形成する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法であって、
前記ガス流を圧縮する工程と、
前記ガス流を加熱する工程と、
前記ガス流を第2の酸素除去反応器に供給して、精製されたガス流を形成する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記精製されたガス流を圧縮する工程と、
前記精製されたガス流を極低温分離システムに供給して、純化されたアルケン流を形成する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項9】
前記ガス流を、前記第2の酸素除去反応器内の銅、亜鉛、銀、クロム、セリウム、又はそれらの任意の組合せを含む触媒床に通して、前記精製されたガス流を形成する工程と、含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項4に記載の方法であって、
前記ガス流を圧縮する工程と、
前記ガス流を加熱する工程と、
前記ガス流をアセチレン吸着カラムに供給して、精製されたガス流を形成する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記精製されたガス流を圧縮する工程と、
前記精製されたガス流を極低温分離システムに供給して、純化されたアルケン流を形成する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項12】
前記ガス流を、前記アセチレン吸着カラム内の銅、銀、又はその両方を含む吸着床に通して、前記精製されたガス流を形成する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
エタンからエチレンを生成するためのシステムであって、
酸化的脱水素化(ODH)反応器と、
ODH反応器からのODH流出物を冷却するための第1の熱交換器と、
ODH触媒を含む酸素除去反応器と、
を備える、上記システム。
【請求項14】
酸素除去反応器からの酸素低減流出物を冷却するための第2の熱交換器と、
酸素低減流出物をガス流と液体流に分離するためのフラッシュドラムと、
を備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記フラッシュドラムからの前記液体流上に、前記液体流を酢酸流と水流とに分離する酢酸分離システムを備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
向流で前記ガス流から酢酸を除去するための水入口を備えるスクラバーを備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記スクラバーからのガス流上に、第1の圧縮機を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記圧縮機からの前記ガス流を加熱するための第3の熱交換器を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第3の熱交換器に連結された精製ユニットを備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記精製ユニットが、銅、銀、亜鉛、セリウム、又はそれらの任意の組合せを含む触媒を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記精製ユニットが、銅、銀、亜鉛、又はそれらの任意の組合せを含む吸収床を備えるアセチレン吸着カラムを備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1の圧縮機からのガス流上に、第2の圧縮機を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
アルケン出口流を形成するために、前記第2の圧縮機に連結された極低温分離システムを備える、請求項22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、エタンのエチレンへの酸化的脱水素化(ODH:oxidative dehydrogenation)に関する。より具体的には、本発明は、生成物流から酸素、アセチレン、又はその両方を除去するための直列の複数の反応器を含むODHプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンは、様々な商業的に価値のあるポリマーの基本的な構成要素である。天然に存在するオレフィンの供給源は商業的な量では存在しないため、ポリマー生産者は、より豊富な低級アルカンをオレフィンに転化する方法に依存している。今日の商業的規模の生産者が選択する方法は、蒸気分解である。蒸気分解は、蒸気で希釈されたアルカンが非常に短時間、最高約900℃の温度にさらされる吸熱プロセスである。必要な温度を生成するための燃料需要と、その温度に耐えられる装置の必要性により、全体的なコストが大幅に増加する。加えて、高温によりコークスの形成が促進され、コークスがシステム内に蓄積するため、メンテナンスとコークス除去のためにコストのかかる定期的な反応器の停止が必要となる。
【0003】
酸化的脱水素化(ODH)プロセスは、蒸気分解の代替プロセスであり、発熱性でコークスをほとんど又はまったく生成しない。ODHでは、エタンなどの低級アルカンを、触媒及び任意に不活性希釈剤(二酸化炭素、窒素、水蒸気など)の存在下、300℃という低い温度で酸素と混合し、対応するアルケンを生成する。このプロセスでは、二酸化炭素や酢酸などの様々な他の酸化生成物が生成する可能性があるが、これらに限定されない。
【0004】
ODH反応器を、反応器生成物流中に少なくとも少量の酸素が残っている状態で操作することが有益である。これは、ODH触媒を高温の酸素のない還元環境にさらすことによって引き起こされる永久的な損傷や不活性化から保護するために行われる。
【0005】
固定床ODH反応器の場合、反応器を少なくとも少量の酸素で操作するもう1つの理由は、触媒床の上流領域のみが反応に利用される(このような反応は、ODH生成物流のO濃度が1ppm未満である場合に起こり得る)のではなく、ODH触媒床全体が反応に確実に利用されるようにするためである。
【0006】
しかしながら、ODH生成物ガス流中に酸素が存在することにより、下流の装置、主にODHプラントの第1の圧縮段階及びその下流において、安全上及び操作上の重大な問題を引き起こす。その結果として、生成物ガスを圧縮する前に、酸素を、非常に低いレベルから検出不可能なレベルまで除去するという必要性がある。
【0007】
特許文献及び公開文献には、ODH生成物ガスのごく一部を触媒的に燃焼させ、残留酸素を完全に消費することに主眼を置いた、多数の異なるアプローチが開示されている。このアプローチは実行可能であるが、ODHプロセスにおける全体的な酸素消費量が増加し、エチレンに対する全体的なプロセス選択率が低下するため、非常に望ましくない。
【発明の概要】
【0008】
本明細書の実施例に記載される実施形態は、エタンをエチレンに転化する方法を提供する。この方法は、エタン及び酸素を含む供給物流を酸化的脱水素化反応器に供給する工程と、酸化的脱水素化反応器内で、エタンの少なくとも一部をエチレンに転化して、エタン、エチレン、及び、酸素、アセチレン又はその両方を含む反応器流出物流(reactor effluent stream)を供給する工程と、を含む。この方法は、反応器流出物流を冷却して、冷却された流出物流(cooled effluent stream)を形成する工程と、冷却された流出物流を、ODH触媒床を含む酸素除去反応器に供給する工程と、を含む。水及びアルコールを含む脱酸素化流(deoxygenation stream)が酸素除去反応器に供給されて、脱酸素された流出物(deoxygenated effluent)を形成する。
【0009】
本明細書の実施例に記載される別の実施形態は、エチレンからエタンを生成するためのシステムを提供する。このシステムは、酸化的脱水素化(ODH:oxidative dehydrogenation)反応器と、ODH反応器からのODH流出物を冷却するための第1の熱交換器と、ODH触媒を含む酸素除去反応器とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】酸化的脱水素化(ODH)プロセスユニットの簡略化されたブロック図である。
図2】酸素除去反応器内で酸素及びアセチレンを除去するためのプロセスユニットの簡略化されたブロック図である。
図3】エタンをエチレンに転化し、流出物から酸素を除去するための方法のプロセスフロー図である。
図4】ODH触媒を含む酸素除去反応器のシミュレーションにおける構成要素のフロー図である。
図5】Cu/Zn酸化物触媒を含む酸素除去反応器のシミュレーションにおける構成要素のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
エタンは、約300℃と約450℃の間の温度で酸化的脱水素化反応を受け、エチレンと、蒸気、酢酸、CO、COなどの他の副生成物を生成する。このために使用される触媒は、通常、MoVNbTeOなどの金属酸化物の混合物である。触媒を、還元環境、例えば炭化水素のみを含む還元環境にさらすと、触媒が金属の混合物、あるいは金属と金属炭化物の混合物に還元され、活性が失われる可能性がある。したがって、反応器から出るガス流の酸素含有量は、触媒の失活を避けるために、乾燥基準で、約0.1モル%、すなわち1000ppmに維持される。
【0012】
しかしながら、反応器流出物流中の未反応の酸素は、酸素の存在によりアミンの分解を引き起こす可能性があるアミン塔などの下流の装置での操作にとって問題となる可能性がある。さらに、未反応の酸素は、下流の生成物ガス圧縮機で汚損(fouling)を引き起こす可能性がある。さらに、未反応の酸素は、例えば、他の反応の中でも過酸化物の形成を引き起こすなど、望ましくない反応を引き起こす可能性がある。したがって、上述の問題を最小限に抑えるために、ODH生成物ガスから未反応の酸素の全部又は大部分を可能な限り除去することが望ましい。
【0013】
さらに、生成物流中のアセチレンは、下流のユーザーにとって問題となる可能性がある。例えば、アセチレンは、一部の重合プロセスでは触媒毒になる可能性がある。
【0014】
本明細書の実施例に記載される実施形態は、ODH生成物ガスから未反応の酸素及びアセチレンを除去するための方法及びシステムを提供する。主たるODH反応器からの生成物流は、反応温度よりも低い温度、例えば約140℃~約170℃、約145℃~約165℃、約150℃~約160℃、又は約150℃~約152℃まで冷却することができる。次いで、この流れは、本明細書では酸素除去反応器と呼ばれる別の反応器に供給される。酸素除去反応器にはODH触媒が含まれており、エタノールと水の混合物は生成物流と組み合わされるか、又は酸素除去反応器の床に注入される。
【0015】
酸素除去反応器で使用されるODH触媒は、主たるODH反応器触媒床に存在するODH触媒と同じであってもよく、又は異なるODH触媒を使用してもよい。注入するエタノールの量は、所望する結果によって異なり、例えば、その量は、未反応の酸素と完全に反応するのに使用される化学量論量よりも過剰であってもよいし、例えば、後続の反応で使用するために、生成物ガス中に未反応の酸素がいくらか残る量であってもよい。
【0016】
酸素除去反応器からの脱酸素された流れは、例えば、酢酸を除去するためにスクラバーに通される。スクラバーからのプロセスガスは、アセチレンを除去するために精製ユニットを通して供給されてもよい。いくつかの実施形態では、精製ユニットは、第2の酸素除去反応器である。例えば、いくつかの実施形態では、プロセスガスは圧縮され、熱交換器に供給されて、その温度が第2の酸素除去反応器で使用される触媒の操作温度である150℃まで上昇する。例えば、触媒には、本明細書で説明する他の多くの触媒の中でも特に、Cu/Zn酸化物触媒が含まれ得る。Cu/Zn酸化物触媒上の化学吸着された酸素は、生成物流中のCOとアセチレンを選択的に酸化してCOにする。次いで、枯渇した床(depleted bed)は、ガス流中に残っている微量の未反応の酸素とアセチレンを除去するための化学反応を開始し、精製されたガス流(polished gas stream)を形成する。精製されたガス流は、アミンカラム又は苛性カラムを通過して、COを除去することができる。
【0017】
操作例における、又は他に指示がある場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを指すすべての数字又は表現は、全ての場合において「約」という用語によって変更されると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示が取得することを望む所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を請求項の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0018】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の例に示された数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値もそれぞれの試験測定で見出された標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。
【0019】
また、本明細書に記載されているいずれの数値範囲も、そこに包含される全てのサブ範囲を含むことを意図していることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、記載されている最小値1と記載されている最大値10とを含むそれらの間の全てのサブ範囲を含むことを意図しており、すなわち、最小値が1以上で、最大値が10以下である。開示されている数値範囲は連続しているため、最小値と最大値との間の全ての値が含まれる。特に明記されていない限り、本出願で指定されている様々な数値範囲は近似値である。
【0020】
<定義>
本明細書で使用される場合、「希釈剤」という用語は、炭化水素又は酸化ガスと不燃性混合物を形成するガスを指す。いくつかの例では、希釈剤は、二酸化炭素などの、ODH触媒の存在下でODH反応に関与するものを選択してもよい。さらに、希釈剤は、熱を除去するためにしてもよい。いくつかの実施形態では、希釈剤は、エタンと酸素の混合物が可燃性限界の外にあることを保証するためにも使用され得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「本質的に酸素を含まない」という用語は、本明細書に記載のプロセス流に残っている酸素の量(存在する場合)が、下流のプロセス流又は装置に可燃性又は爆発性のリスクを与えないほど十分に少ないことを意味する。存在する酸素の量は、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、最も好ましくは1ppm未満である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「固定床反応器」という用語は、直列又は並列の1つ以上の反応器であって、多くの場合、反応物が床を通って流れて生成物に転化される触媒ペレットで充填された円筒形のチューブを含む反応器を指す。反応器内の触媒は、1つの大きな床、いくつかの水平床、いくつかの平行に充填されたチューブ、及びそれら自身のシェル内の複数の床を含むがこれらに限定されない複数の構成を有することができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「流動床反応器」という用語は、直列又は並列の1つ以上の反応器であって、多くの場合、固体粒状触媒を通過する流体(ガス又は液体)を含む反応器を指し、この触媒は、固体を懸濁させて流体であるかのように挙動させるのに十分な速度で、(典型的には200μmより小さい)小さな球の形をとることができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「線速度」という用語は、多くの場合、ガス流の線速度(m/s)であり、ガス流の流量/反応器の断面積/触媒床の空隙率を指す。多くの場合、流量はODH反応器に流入するすべてのガスの流量の合計を指し、酸素とエタンが最初にODH触媒に接触する場所で、その時点の温度と圧力で測定される。反応器の断面積も、ODH触媒床の入口で測定される。触媒床の「空隙率」とは、触媒床中の空隙の体積/触媒床の総体積を指す。「空隙の体積」とは、触媒粒子間の空隙を指し、触媒粒子内部の細孔の体積は含まない。多くの場合、線速度は5cm/秒~1500cm/秒の範囲であり、場合によっては10cm/秒~500cm/秒の範囲である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「MoVOx触媒」という用語は、実験式Mo6.5-7.0を有する混合金属酸化物(式中、dは、少なくとも金属の原子価を満たす数である)、実験式Mo6.25-7.25を有する混合金属酸化物(式中、dは、金属の原子価を満たす数である)、又はそれらの組合せを指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「酸化的脱水素化」又は「ODH」という用語は、本明細書でさらに説明されるように、エタンの吸熱脱水素化と水素の強力な発熱酸化とを組み合わせるプロセスを指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「実質的に酸素を含まない」という用語は、本明細書に記載のプロセス流に残っているアセチレンの量(存在する場合)が、本明細書に記載の分析技術を用いて検出されないか、ゼロppmvであることを意味する。
【0028】
<ODHプロセスユニット>
図1は、ODHプロセスユニット100の簡略化されたブロック図である。ODHプロセスユニットは、独立した化学コンプレックスとして構築されてもよく、又は製油所若しくは重合プラントなどのより大きな化学コンプレックスの一部であってもよい。いくつかの実施形態では、図1に概略的に一実施形態を示す化学コンプレックスは、ODH反応器102、熱交換器104、酸素除去反応器106、急冷塔又は酢酸スクラバー108、精製ユニット110、アミン洗浄塔112、乾燥機114、及び蒸留塔116を、協働配置で備える。ODH反応器102は、酸素ライン120を介して導入され得る酸素の存在下で、エタンライン122を介して導入されたエタンの酸化的脱水素化を触媒することができる少なくとも1つのODH触媒を含む。第2の酸素除去反応器又はアセチレン吸着床であってもよい精製ユニット110は、急冷塔又は酢酸スクラバー108の直後に示されているが、図2に関して説明したように、さらに下流に配置することができる。多くの場合、投入した流れが圧縮された後に精製ユニット110を配置した方が、プロセス構成はよりエネルギー効率的になり得る。
【0029】
様々な実施形態において、エタンの酸化的脱水素化のためのODHプロセスは、ODH反応器102内で、約300℃と約500℃の間、又は約300℃と約450℃の間、又は約330℃と約425℃の間の温度で実施される。様々な実施形態において、ODH反応器102は、約0.5psigと約100psigの間(約3.447kPagと約689.47kPagの間)、又は約15psigと約50psigの間(約103.4kPagと約344.73kPagの間)の圧力で操作される。様々な実施形態において、ODH反応器102内のエタンの滞留時間は、約0.12秒と約9秒の間、又は約1秒と約3.6秒の間である。
【0030】
いくつかの実施形態では、このプロセスは、対応するアルケン(例えば、エタンのODHの場合はエチレン)について、約85%を超える、又は約90%を超える、又は95%を超える、又は約98%を超える選択率を有する。様々な実施形態において、ガス毎時空間速度(GHSV)は、約400h-1と約30000h-1の間、又は約1000h-1と約30000h-1の間である。いくつかの実施形態では、ガス速度は、重量毎時空間速度(WHSV)の観点から記述することができる。様々な実施形態において、WHSVは、約0.4h-1と約30h-1の間である。いくつかの実施形態では、ガス速度は、線速度の観点から記述することができ、例えば、約5cm/秒と約500cm/秒の間で記述することができる。いくつかの実施形態では、触媒1kg当たりのg/時間での対応するアルケンの空間-時間収率(生産性)は、触媒床の温度プロファイルに応じて、ODH反応器102の温度約330~500℃で、少なくとも約50、又は少なくとも約1500、又は少なくとも約3000、又は少なくとも約3500とすることができる。いくつかの実施形態では、触媒の生産性は、選択性が低下するまで、温度の上昇とともに増加するであろう。
【0031】
ODH反応は、二酸化炭素、窒素、又は蒸気などの希釈剤の存在下でも発生する可能性があり、希釈剤は、酸素と炭化水素の混合物が可燃性限界の外にあることを確認するために追加される。本明細書に記載されるように、希釈剤は、ODH反応に関与してもよいし(例えば、二酸化炭素又蒸気)か又は関与しなくてもよい(例えば、窒素)。混合物が、所定の温度と圧力について、可燃性限界の外にあるかどうかの判断は、当業者の知識の範囲内である。
【0032】
ODH反応、及びODH触媒を用いた酸素除去反応は、任意の数のODH触媒を用いて行うことができる。本明細書で述べたように、ODH反応と酸素除去反応に使用される触媒は、同じであっても異なっていてもよい。適切な酸化的脱水素化触媒の非限定的な例には、以下から選択される1つ以上の混合金属酸化物を含有するものが含まれる:
i)次式の触媒:
MoTeNbPd
(式中、a、b、c、d、e、及びfは、それぞれ元素Mo、V、Te、Nb、Pd及びOの相対原子量であり;a=1、b=0.01~1.0、c=0.01~1.0、d=0.01~1.0、0.00≦e≦0.10で、fは、少なくとも触媒中の金属の原子価状態を満たす数である);
ii)次式の触媒:
Ni
(式中、gは0.1~0.9、多くの場合0.3~0.9、他の場合には0.5~0.85、場合によっては0.6~0.8の数であり;hは0.04~0.9の数であり;iは0~0.5の数であり;jは0~0.5の数であり;fは、少なくとも触媒の原子価状態を満たす数であり;Aは、Ti、Ta、V、Nb、Hf、W、Y、Zn、Zr、Si及びAl又はそれらの混合物から選択され;Bは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Sb、Sn、Bi、Pb、Tl、In、Te、Cr、Mn、Mo、Fe、Co、Cu、Ru、Rh、Pd、Pt、Ag、Cd、Os、Ir、Au、Hg、及びそれらの混合物から選択され;Dは、Ca、K、Mg、Li、Na、Sr、Ba、Cs、Rb及びそれらの混合物から選択され;Oは、酸素である);
iii)次式の触媒:
Mo
(式中、Eは、Ba、Ca、Cr、Mn、Nb、Ta、Ti、Te、V、W及びそれらの混合物から選択され;Gは、Bi、Ce、Co、Cu、Fe、K、Mg、V、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Ti、U、及びそれらの混合物から選択され;a=1;kは0~2;l=0~2、ただし、Co、Ni、Fe及びそれらの混合物のlの合計値は0.5未満であり;fは、少なくとも触媒中の金属の原子価状態を満たす数である);
iv)次式の触媒:
MoNbTeMe
(式中、Meは、Ta、Ti、W、Hf、Zr、Sb及びそれらの混合物から選択され;mは0.1~3であり;nは0.5~1.5であり;oは0.001~3であり;pは0.001~5であり;qは0~2であり;fは、少なくとも触媒中の金属の原子価状態を満たす数である);
v)次式の触媒:
Mo
(式中、Xは、Nb及びTaの少なくとも1つであり;Yは、Sb及びNiの少なくとも1つであり;Zは、Te、Ga、Pd、W、Bi及びAlの少なくとも1つであり;Mは、Fe、Co、Cu、Cr、Ti、Ce、Zr、Mn、Pb、Mg、Sn、Pt、Si、La、K、Ag及びInの少なくとも1つであり;a=1.0(正規化);r=0.05~1.0;s=0.001~1.0;t=0.001~1.0;u=0.001~0.5;v=0.001~0.3;fは、少なくとも触媒の金属の原子価状態を満たす数である)。
vi)次の実験式を有する混合金属酸化物:
Mo6.5-7.0
(式中、dは、少なくとも触媒中の金属の原子価を満たす数である);
vii)次の実験式を有する混合金属酸化物:
Mo6.25-7.25
(式中、dは、少なくとも触媒中の金属の原子価を満たす数である)。
【0033】
いくつかの実施形態では、触媒は、バインダーで担持/凝集され得る。いくつかのバインダーには、TiO、ZrO、Al、AlO(OH)及びそれらの混合物の酸性、塩基性、又は中性のバインダースラリーが含まれる。別の有用なバインダーとしては、Nbが挙げられる。凝集した触媒は、固定床反応器内で典型的に使用されるサイズの適切な形状(リング、球体、サドルなど)に押し出すことができる。触媒を押し出す場合、当技術分野で知られている様々な押出助剤を使用することができる。場合によっては、結果として得られる担体は、BETで測定した場合の累積表面積が、35m/g未満、場合によっては20m/g未満、他の場合には3m/g未満であってもよく、累積細孔容積は0.05~0.50cm/gであってもよい。
【0034】
ODH反応器102は、固定床反応器であっても流動床反応器であってもよい。いくつかの実施形態では、ODH反応器は、固定床反応器である。固定床反応器では、反応物は一方の端で反応器に導入され、固定化された触媒を通過して流れ、生成物が形成され、反応器のもう一方の端から出る。いくつかの実施形態では、固定床反応器は、シェルアンドチューブ反応器である。本明細書に開示される方法に適した固定床反応器の設計は、このタイプの反応器について知られている技術に従うことができる。
【0035】
追加の実施形態には、流動床反応器の使用が含まれ、この場合、触媒床は、反応器の下端近くに位置する多孔質構造、又は分配版によって支持することができ、反応物は、流動床を流動化するのに十分な速度で流れる(例えば、触媒は上昇し、流動的に旋回し始める)。反応物は、流動化された触媒と接触すると生成物に転化され、その後、反応物は反応器の上端から除去される。当業者が修正及び最適化できる設計上の考慮事項には、反応器の形状、分配板の形状及びサイズ、入力温度、出力温度、並びに反応器の温度及び圧力制御が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本開示の実施形態は、固定床反応器と流動床反応器の両方の組合せを使用することを含み、各反応器が同じ又は異なるODH触媒を有する。例えば、一実施形態では、酸素除去反応器106は、ODH反応器102と同様のサイズ及び構成を有し、2つの反応器を交換することができる。
【0037】
ODH反応器102内で起こるODH反応は、触媒及びODH反応器102内の一般的な条件に応じて、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素化物、及び水を含み得る様々な他の生成物を生成することもできる。これらの生成物は、未反応のエタン、エチレン、残留酸素、一酸化炭素、及び添加された場合には希釈剤とともに、ODH反応器生成物ライン124を介してODH反応器102から出る。
【0038】
ODH反応器生成物ライン124は、熱交換器104に導かれる。熱交換器104では、反応器流出物を、例えば300℃超から180℃未満に冷却する。いくつかの実施形態では、反応器流出物は、約350℃と450℃の間、約375℃と425℃の間、又は約400℃である。冷却された流出物流は、冷却された流出物ライン126を通って熱交換器104を出る。冷却された流出物流は、約140℃と約180℃の間、又は約150℃と約160℃の間、又は約151℃と155℃の間である。
【0039】
冷却された流出物ライン126は、冷却された流出物流を酸素除去反応器106に導く。エタノールライン128は、水とエタノールの混合物を酸素除去反応器106に添加する。様々な実施形態において、水とエタノールの混合物は、熱交換器104の前に、ODH生成物ライン124に添加されてもよい。様々な実施形態において、エタノールと水の混合物は、酸素除去反応器106の前に、冷却された流出物流に添加されてもよい。酸素除去
【0040】
様々な実施形態において、エタノール溶液は、約0.1体積%~約50体積%、又は約1体積%~約35体積%、又は約10体積%~約20体積%の濃度のエタノールを含む。一実施形態では、エタノールは、水中で約13.5体積%の濃度である。
【0041】
酸素除去反応器106では、エタノールが酸素と反応して酸素を少なくとも部分的に除去し、以下でさらに詳しく説明するように、酸素レベルが低下した脱酸素された流れを形成する。酸素除去反応器は、固定床反応器であってもよい。
【0042】
様々な実施形態において、酸素除去反応器106における酸素除去は、酸素除去反応器106内の約140℃と約180℃の間、又は約150℃と約160℃の間、又は約151℃と約155℃の間の温度で実施される。様々な実施形態において、酸素除去反応器106は、約0.5psigと約100psigの間(約3.447kPagと約689.47kPagの間)、又は約15psigと約50psigの間(約103.4kPagと約344.73kPagの間)の圧力で操作される。様々な実施形態において、酸素除去反応器106内の生成物流の滞留時間は、約0.12秒と約9秒の間、又は約1秒と約3.6秒の間である。
【0043】
脱酸素された流れは、脱酸素された流出物ライン130によって急冷塔又は酢酸スクラバー108に導かれ、脱酸素された流出物ライン130からの生成物を急冷し、急冷塔底部出口132を介して酢酸及び水の除去を容易にする。脱酸素された流れは、急冷塔又は酢酸スクラバー108に入る前に冷却されてもよく、又は脱酸素された流れは、水などの急冷剤との接触によって急冷塔内で冷却されてもよい。急冷塔又は酢酸スクラバー108に添加される未転化のエタン、エチレン、未反応の酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、及び不活性希釈剤は、急冷塔オーバーヘッドライン134を通って出て、精製ユニット110に導かれる。
【0044】
様々な実施形態において、精製ユニット110は、例えば、銅及び亜鉛を含む触媒系を使用する第2の除去反応器であり、アセチレン及び酸素の除去に触媒作用を及ぼすことができる他の実施形態では、精製ユニット110は、例えば、銅又は銀ベースの吸着剤を含むアセチレン吸着床である。吸着剤又は触媒には、活性が異なる任意の数の銅又は銀の化合物を含めることができる。様々な実施形態において、触媒は、とりわけ、CuZnZr、AgCe、CuMn、CuCe、MnCe、及びCrCeを含むことができる。これらの触媒はシリカ上に担持することができる。
【0045】
様々な実施形態において、精製ユニット110は、60℃と約200℃の間、又は約70℃と約150℃の間、又は約80℃と約120℃の間の温度で操作される。様々な実施形態において、精製ユニット110は、約0.5psigと約100psigの間(約3.447kPagと約689.47kPagの間)、又は約15psigと約50psigの間(約103.4kPagと約344.73kPagの間)の圧力で操作される。様々な実施形態において、精製ユニット110内の生成物流の滞留時間は、約0.12秒と約9秒の間、又は約1秒と約3.6秒の間である。
【0046】
精製ユニット110が第2の酸素除去反応器である実施形態では、第2の反応器は、本明細書に記載の任意の促進剤及び任意の支持体を有する11族金属を含む触媒を含む。精製ユニットは、固定床反応器であってもよい。触媒は、未反応の酸素又は表面金属酸化物を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素を生成する。いくつかの実施形態では、アセチレンは、未反応の酸素又は表面金属酸化物との反応によって除去される。第2の反応器では、酸素除去反応器106の後に残っている未反応の酸素及びアセチレンの大部分又は全部が消費される。第2の反応器内の二酸化炭素の全部又は一部は、上述したように、リサイクルライン136及び138を介してODH反応器102にリサイクルして戻り、酸化剤、希釈剤、又はその両方として作用することができる。残りの未転化のエタン、エチレン、未反応の酸素(存在する場合)、二酸化炭素の全部又は一部、一酸化炭素(存在する場合)、及び不活性希釈剤は、洗浄塔供給物ライン140を介してアミン洗浄塔112に搬送される。
【0047】
洗浄塔供給物ライン140からの供給物流中に存在する任意の二酸化炭素は、アミン洗浄塔112内で捕捉され、二酸化炭素底部出口142を介して除去され、販売されるか、あるいは代替的に、上述したようにODH反応器102にリサイクルして戻されることができる。洗浄塔供給物ライン140を介してアミン洗浄塔112に導入される二酸化炭素以外の成分は、アミン洗浄塔オーバーヘッドライン144を通ってアミン洗浄塔112を出て、乾燥器114を通過した後、乾燥供給物ライン146を通って蒸留塔116に導かれる。蒸留塔116では、極低温蒸留を行って、C2/C2+炭化水素を単離し、C2/C2+炭化水素底部出口148を介して除去する。残りは、主にC1炭化水素を含み、残留する不活性希釈剤と一酸化炭素(もしあれば)も含んでおり、これらは、オーバーヘッド流150を介して蒸留塔116から出る。このオーバーヘッド流150は、(例えば、ガス燃焼炉内で)熱を発生させるために、フレアされ、燃焼されてもよく、あるいは、米国特許第10,343,957号(譲受人NOVA Chemicals(International)S.A.)に記載されているように、酸素分離モジュールに導かれてもよい。
【0048】
底部出口148から除去されたC2/C2+炭化水素は、エタンからエチレンを分離するためのスプリッターに導くことができる。一実施形態では、蒸留塔116は、C2/C2+炭化水素留分をエタン留分とエチレン留分に分離することができ、エチレンは蒸留塔の側方出口(図示せず)から取り出すことができ、エタンは蒸留塔の底部出口148から取り出すことができる。エチレンからエタンを分離することができるスプリッター又は蒸留塔から得られるエタン留分は、反応器にリサイクルして戻すことができ、エチレン留分は、追加のプロセス(例えば、エチレンオキシドの製造)に使用することができ、又はポリエチレンの製造に使用することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、ODHプロセスで懸念されるのは、炭化水素を酸素と混合することである。特定の条件下では、混合物が不安定になり、爆発事故を引き起こす可能性がある。混合器は、開口した混合容器(flooded mixing vessel)内で、炭化水素含有ガスを酸素含有ガスと混合するために使用することができる。このように混合することにより、不安定な組成物のポケットが不燃性の液体で囲まれるため、たとえ発火事象が発生してもすぐに消火される。その結果、ODH反応器に供給される炭化水素ガス及び酸素ガスの不燃性で均一な混合物が得られる。本明細書に記載の方法及びシステムでの使用に適したガス混合器の例は、PCT特許出願WO2018/007912及びWO2021/019347(譲受人NOVA Chemicals(International)S.A.)に見出すことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、開口したガス混合器(flooded gas mixier)が、ODH反応器102の上流に配置される。この例では、酸素ライン120及びエタンライン122が、開口したガス混合器に供給される。炭化水素と酸素、及び任意に希釈剤を含む均一混合物を、混合物ラインを介して、開口したガス混合器からODH反応器102に導入することができる。酸素分離モジュールからの酸素に富む流れは、開口したガス混合器に直接供給することもできるし、酸素ライン120と組み合わせて、開口したガス混合器に供給することもできる。
【0051】
図2は、酸素除去反応器内で酸素及びアセチレンを除去するためのプロセスユニット200の簡略化されたブロック図である。同様の番号が付けられた項目は、図1に関して説明したものと同じである。図2を参照すると、プロセスユニット200は、プロセスユニット100と同様に、一般に、ODH反応器202、熱交換器204、酸素除去反応器206、及び急冷塔又は酢酸スクラバー208を備える。プロセスユニット200は、プロセスユニット100と同様に、アミン洗浄塔、乾燥機、蒸留塔、及び任意の酸素分離モジュールを含む下流の分離構成要素を備えることもできるが、これらは簡略化のために図2には示されていない。
【0052】
ODH反応器202は、酸素ライン220を介して導入され得る酸素の存在下で、触媒作用を及ぼすことができる少なくとも1つのODH触媒を含み、エタンライン222を介して導入されたエタンの酸化的脱水素化により、未転化のエタン、エチレン、未転化の酸素、酢酸、水、及び場合によってはアセチレンを含む生成物流を生成する。本明細書に記載されるように、ODH生成物流は、ODH反応器生成物ライン224によって、ODH反応器202から熱交換器204に搬送される。いくつかの実施形態では、生成物流は、反応温度よりも低い温度、例えば、約140℃から約170℃、約145℃~約165℃、約150℃~約160℃、又は約150℃~約152℃の間の温度まで冷却される。次いで、この流れは、冷却された流出物ライン226によって、酸素除去反応器206に供給される。
【0053】
酸素除去反応器206は、ODH触媒床を含み、エタノール/水流は、エタノールライン228を介してODH触媒床に注入される。あるいは、エタノール/水混合物は、熱交換器204の前又は後のいずれかで、生成物流と混合されてもよい。ODH触媒は、ODH反応器内のものと同じであってもよいし、酸素除去反応を最適化するように選択されてもよい。注入されるエタノールの量は、所望の結果に依存する。例えば、注入される量は、未反応の酸素を完全に除去するのに必要な化学量論量を超えることができる。未反応の酸素をプロセスガス中に残すために、注入される量を少なくしてもよい。注入されたエタノールは、酸素との反応で酢酸に転化することもできるし、酸素が存在しない場合には、過剰のエタノールを脱水してエチレンを生成することもできる。エタノールの代わりにプロパノールなどの代替アルコールを使用してもよい。ただし、プロパノールを使用すると、プロパン酸(残留酸素がある場合)又はプロピレン(残留酸素がない場合)が生成される可能性が高いことに留意されたい。
【0054】
この実施形態では、酸素除去反応器206の流出物は、脱酸素された流出物ライン230によって冷却器252に供給され、そこで流出物の温度は酢酸と水の露点未満に低下する。その結果、流れ中の相当量の酢酸と水が凝縮する。フラッシュドラム254は、ガス流から液体流を分離するために使用される。液体流は、底部流256として除去することができ、これを酢酸分離システム(図示せず)でさらに処理して、水から酢酸を分離することができる。
【0055】
フラッシュドラム254からのガス流は、スクラバー208に供給され、水ライン256を通して加えられる水の向流により、微量の酢酸が除去される。スクラバー208に添加された未転化のエタン、エチレン、未反応の酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、及び不活性希釈剤を含む残りのガスは、急冷塔オーバーヘッドライン234を通って出て、圧縮機260で圧縮される。圧縮されたプロセスガスは、アセチレン含有量に基づいて処理してもよい。アセチレンガス含有量が、下流の水素化を経済的にするのに十分に高い場合(例えば、約5%超、約10%超、又はそれを超える場合)、バイパスライン262を使用して精製ステップをバイパスすることができる。アセチレンが低すぎて分離を経済的に実行できない場合は、圧縮されたプロセスガスを精製ユニットに供給して、微量のアセチレンと酸素を除去することができる。図2に示す実施形態では、精製ユニットは、第2の酸素除去反応器222である。圧縮されたプロセスガスは、熱交換器264に供給され、その温度を約80℃と約250℃の間、又は約150℃まで上昇させる。この温度は、第2の酸素除去反応器210内のCu/Zn酸化物触媒を含む触媒床の操作温度である。Cu/Zn酸化物触媒上の化学吸着酸素は、生成物流中のCOを選択的に酸化してCOにする。次に、枯渇した床は、気相中に残っている微量の未反応の酸素とアセチレンを除去するための化学反応を開始する。あるいは、ODH反応器202からのすべての未反応の酸素が酸素除去反応器206で除去され、第2の床での燃焼によるアセチレン除去にCu/Zn酸化物触媒が使用される場合、酸素は、例えば酸素ライン(図示せず)を通して、第2の床に供給されなければならない。本明細書に記載されるように、精製ユニット内の第2の酸素除去反応器210は、例えば、Cu、Ag、又はその両方を含む吸着剤を含むアセチレン吸着床に置き換えてもよい。この場合、アセチレンの吸着剤に対する親和性が高いため、生成物流中のアセチレンは吸着剤床に吸着される。吸着床は、再生のために定期的に使用を停止することができる。
【0056】
精製されたガス(又はバイパスガス)は、アミン洗浄塔、乾燥機、及び蒸留塔を含む下流の分離システムに供給される前に、第2の圧縮機232で再度圧縮されてもよい。最終処理により、エチレン流248が生成され、これをポリエチレン又は他のエチレン由来の生成物の製造に使用することができる。C1炭化水素は、上記のように、フレアしたり、炉の加熱に使用したり、酸素分離モジュールを通過させたりすることができる。再捕捉されたエタンは、リサイクルされて、ODH反応器202に添加することができる。
【0057】
図3は、エタンをエチレンに転化し、流出物から酸素を除去するための方法300のプロセスフロー図である。この方法300は、ブロック302で、エタン及び酸素を含む供給物流を、酸化的脱水素化反応器に供給することによって始まる。ブロック304で、エタンの少なくとも一部が、酸化的脱水素化反応器内でエチレンに転化され、エタン、エチレン、及び酸素、アセチレン、又は酸素とアセチレンの両方を含む反応器流出物流を供給する。ブロック306で、反応器流出物流を冷却して、冷却された流出物流を形成する。ブロック308で、冷却された流出物流を、ODH触媒床を含む酸素除去反応器に供給する。ブロック310で、水及びアルコールを含む脱酸素化流を、酸素除去反応器に供給し、脱酸素された流出物を形成する。
【0058】
本開示は、流量計、圧縮機、バルブ、並びに温度及び圧力などのパラメータを測定するためのセンサーを含む、化学反応器に一般的に使用される様々なツールの使用も想定している。当業者であれば、操作に必要と判断される、あるいは安全規制に関連する法的義務の遵守に必要とみなされる、これらの構成要素を含めることが予想される。
【実施例
【0059】
以下の例は、非限定的なものであり、コンピュータモデリングと組み合わせた物理的実験によって、エタンODH生成物流中の酸素及びアセチレンの除去又は低減を実証することのみを意図している。当業者であれば、記載された構成要素のバリエーションが、エタンODH生成物流中の酸素及びアセチレンレベルの低減において、同様の結果を達成し得ることを理解するであろう。
【0060】
<ODH試験触媒の調製>
600mLの蒸留水中の一般組成Mo0.30-0.40Te0.10-0.20Nb0.10-0.20)O4-14を有するODH触媒を以下のように調製した:(NHMo24・4HOの溶液(44.20g、35.77mmol、白色固体)の溶液を、磁気撹拌子を備えた2L丸底フラスコ中で調製した。600mLの蒸留水中のVOSO・3.46HO(14.07g、62.95mmol、明るい青色固体)の溶液を、磁気撹拌子を備えた1Lビーカー中で調製した。2つの溶液を、60℃の水浴中で均一になるまで撹拌した。次いで、青色のバナジウム溶液を、無色透明のモリブデン溶液に添加した。これにより、微細な懸濁液を含む暗紫色の溶液が得られた。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(13.57g、47.06mmol、白色固体)を、反応混合物に添加した。紫色のスラリーを、60℃で1時間撹拌したままにした。
【0061】
反応混合物をガラスライナーに移し、すすいだ後に測定した総体積は約1380mLであった。ライナーを2Lの圧力反応器(Parr Instrument Company社、モリーン、イリノイ州)に装填し、隙間を蒸留水で満たした。反応器を密閉し、ヘッドスペースを排気して窒素ガスを再充填することを10回繰り返した。ヘッドスペースを、15psigの窒素ガス下に放置し、密閉した。反応器を、プログラム可能なオーブンに移し、230℃で24時間加熱した(230℃まで1時間かけて昇温し、室温まで24時間かけて冷却した)。室温まで冷却したら、反応器を排気し、内容物をブフナー漏斗と4枚の定量濾紙を用いて濾過した。油状の母液をデカントして除き、濾紙を交換した。濾過ケーキを、1250mLの蒸留水ですすいだ。濾液は濃青色であり、生成物はチャコール/グレー紫色であった。
【0062】
濾過ケーキを90℃のオーブンで一晩乾燥させ、15.29gの生成物を回収した(推定収率37%)。未焼成の触媒をスパチュラで粉砕し、プログラム可能なマッフル炉に装填した。プログラムの設定は、1時間かけて280℃まで昇温し、その温度で9時間保持した後、室温まで自然に冷却するような設定とした。この空気処理された生成物を、乳鉢と乳棒で粉砕し、CHN分析に供した。炭素と窒素の含有量は、1重量%未満であることがわかった。この材料を、石英ボートに装填し、QRU炉の石英チューブの中心に配置した。石英チューブを、窒素用いて8時間パージし(400sccm)、その後、酸素スクラビングベッドを通して窒素を供給し、窒素をさらに0.25ppmv酸素未満にまで精製した。この超高純度(UHP)窒素を、石英チューブを通して一晩パージした。翌朝、炉の電源を入れ、4時間かけて400℃まで加熱した。触媒を、400℃で2時間焼成し、次いで、周囲温度まで自然に冷却した。
【0063】
Cu/Zn酸化物触媒、すなわち、70重量%CuO、20重量%ZnO及び10重量%ZrOを含有する酸化物前駆体組成物の還元形態を、以下のように調製した:Cu-Zn-Zr硝酸塩溶液(金属含有量15.2重量%、Cu:Zn:Zr比は、CuO:ZnO:ZrO重量比で7:2:1に相当する)を、pH6.5及び70℃で、水酸化アンモニウム溶液(28~30重量%アンモニア)を用いて沈殿させた。沈殿が完了した後、懸濁液を、pH6.5及び70℃で、さらに120分間撹拌した。次に、溶液を濾過し、濾過ケーキを、脱塩水で洗浄して硝酸塩を除去し、120℃で乾燥させた。乾燥粉末を、強制空気オーブン内で、300℃で240分間焼成した。
【0064】
[例1]エタノールを用いた残留Oの除去
ODH生成物流からの残留酸素の除去を、直列に配置された2つの固定床反応器からなる固定床反応器ユニット(FBRU)を使用して実証した。各反応器は、外径1インチ、長さ34フィートのSS316Lステンレス鋼管で構成されており、温度制御のために水/スチームジャケットに包まれていた。2つの反応器のいずれにもODH試験触媒を充填し、約151℃~約153℃の温度で酸素除去床として操作した。反応器には、エタノールと水の混合物とともに、エチレン、エタン、酸素、アセチレンを含むODHプロセス流出物の模擬混合物を供給した。乾燥基準と液体基準の両方を合わせた供給組成物(表1A)を、648h-1のガス毎時空間速度(GHSV)で添加した。
【0065】
FBRU実験では、ガス生成物流出物と液体生成物流出物を同定するためにGC分析装置が使用した。GC分析装置の一般的な検出限界は0.01%であり、データの精度を保証するために少なくとも月に1回は校正を行った。検出された化合物が検出限界(<0.1)に近い実験では、対応するGCクロマトグラムを手動で分析し、クロマトグラムがノイズパターンを反映しているか、明確なピークパターンを反映しているかを判断した。ピークパターンが観察された場合にのみ、その値を受け入れ、それ以外の場合はゼロであるとみなした。反応は、29時間45分間継続した。3回のインターバル後の生成物ガス組成を、表1Bに示す。O含有量はゼロまで低下した。固定床反応器の下流の凝縮画分で評価した液体組成は、実験時間枠の終了時に測定した。
【0066】
【表1A】
【0067】
【表1B】
【0068】
表2は、エタノールをエチレン及び酢酸に転化するODH触媒の活性を示しており、これは、3回のインターバルでの生成物ガス組成(体積%)の平均と最終液体組成(体積%)から決定される。供給物流中のCO含有量と生成物流中のCO含有量は、本質的に変化していないことがわかる。
【0069】
【表2】
【0070】
これらの実験では、エタノール注入実験を実施する前と実施した後の両方で、典型的なODH反応条件での触媒ベースライン活性を試験した。ODH条件は、GHSVが825h-1、WHSVが1.02h-1、反応器入口圧力が18.3psigであり、供給物にはエタン及び酸素がそれぞれ82体積%及び18体積%含まれた。脱酸素のためにエタノール蒸気を注入しても、表3に示すように、触媒を失活しないことがわかった。
【0071】
【表3】
【0072】
商業的規模において酸素濃度を乾燥基準で約10ppmに低減するのに必要なエタノールの量を決定するために、ASPENシミュレーションを実施した。シミュレーションは、ASPEN Plus(登録商標)V10ソフトウェアを用いて開発した。シミュレーションには、PENG-ROB状態方程式を用いた。蒸気特性は、STEAMNBSを用いて取得した。反応器は、RSTOICモデルを用いてモデル化した。ODH反応後の出口流組成は、gPROMS(登録商標)モデルから取得し、ASPEN Plusに供給した。反応は、152℃で、FBRU条件と同様に行った。エタノール転化のために考慮した2つの反応は、以下の通りである。
【0073】
ASPENシミュレーションに用いられるモジュールと方程式は、当技術分野で知られている。本明細書で使用される場合、PENG-ROBは、ペン=ロビンソン状態方程式であり、関係する各種の臨界特性及び偏心因子の観点から流体特性を表す。STEAMNBSは、ASPEN Plusで蒸気の特性を計算するために用いられる蒸気テーブルである。RSTOICは、ASPEN Plusで用いられる化学量論反応器モデルである。このモデルは、反応速度論が未知又は重要ではないが、各反応の化学量論及びモル量又は転化率が既知である場合に用いられる。gPROMSは、Process System Enterprise社のソフトウェアモジュールであり、定常状態及び動的プロセスモデルの構築、検証、実行に使用される。
【0074】
各反応ステップの分別転化率は、表3に示した収量に基づいている。エタノールの合計転化率は、87%である。シミュレーションに基づくと、47.4kg/hrの酸素を含むプロセスガス流の精製には、241.8kg/hrのエタノールが必要である。モデル400の構成要素は図4に示されており、酸素除去反応器406と熱交換器404を含む。生成物流Aは、エタノール/水流Bと混合されて混合流Cを形成し、混合流Cは、熱交換器404を通過して冷却された流出物流Dを形成し、この流出物流Dは、酸素除去反応器に流入し、そこで脱酸素された流出物Eが形成される。点A~点Eの各点での組成物の組成並びに物質収支及び熱収支を、表4に示す。反応器の熱負荷は、-0.43GJ/hrであった。
【0075】
【表4】
【0076】
[例2]Cu/Zn酸化物触媒を用いた酸素/アセチレンの除去
Cu/Zn酸化物触媒を用いた残留酸素及びアセチレンの除去を、マイクロ反応器ユニット(MRU)と呼ばれる実験室規模の酸化的脱水素化反応器を用いて実証した。MRU反応器は、外径0.5インチのステンレス鋼チューブから形成され、2gのODH試験触媒を充填した。酸素、エタン、及び窒素をそれぞれ18体積%/36体積%/46体積%の重量比で含む供給物を、8.4psig、ガス流量32.8sccm、及び温度327℃で触媒床に通した。MRU反応器からの流出物を凝縮器に通して、18.5重量%の酢酸を含む水溶液を除去した。凝縮した酢酸を除いたガス状画分を、14psigで酸素除去反応器に通した。
【0077】
酸素除去反応器である外径1/4インチのチューブに、乾燥し、焼成したCu/Zn/Zr酸化物触媒(粉末形態)1gを充填し、温度制御オーブンに入れた。触媒粉末と流出物ガスを、32.8sccmの流量を使用して、8.4psig~4psigの圧力範囲で、150℃で接触させた。流出物は、周囲圧力で酸素除去反応器から出て、Agilent(登録商標)6890Nガスクロマトグラフと、いくつかの温度及び時間インターバルでのデータ評価用のChromPerfect(登録商標)Analysis、バージョン6.1.10ソフトウェアを使用して評価された。結果を、表5に示す。供給物組成は、2つの異なる時点で測定し、供給物のGC測定値の一貫性を確保した。
【0078】
【表5】
【0079】
表5のデータは、乾燥し、焼成した粉末触媒が、120℃より高い温度でO、CO、及びアセチレンを除去することを示している。また、表5に示すデータから、すべての化合物が化学吸着されているのではなく、触媒からの酸素又はガス流中の酸素と反応していることも明らかである。供給物流中に酸素が常に存在することは、アセチレンをすべて酸化するのに十分であり、(COが元の供給物濃度に戻ったことで示されるように)触媒表面上の化学吸着された酸素が触媒材料から枯渇した後でも、アセチレンとOが継続的に除去された。
【0080】
[例3]Cu/Zn酸化物のAspenシミュレーション
商業プラントでアセチレンを除去するための精製ユニットを等温モード又は断熱モードで運転するための要件を決定するために、2回目のASPEN Plusシミュレーションを実施した。シミュレーションは、ASPEN Plus V10を用いて開発した。シミュレーションには、PENG-ROB状態方程式を用いた。蒸気特性は、STEAMNBSを用いて取得した。反応器は、RSTOICモデルを用いてモデル化した。触媒転化のために考慮した2つの反応は、以下の通りである。

図5に示すモデル500は、Cu/Zn酸化物触媒を備える酸素除去反応器510、第1の熱交換器564、ポンプ566、及び第2の熱交換器566を含む。このモデル500から、酸素除去反応器を取り囲む冷却水が、第2の熱交換器568と連動して酸素除去反応器510の熱を制御するようにモデル化された。
【0081】
<反応器の断熱操作>
酸素除去水の断熱モードをモデル化することは、第1の酸素除去反応器で形成された脱酸素された流出物と同様の流出物A(図5)を、熱交換器562に通して、加熱された流出物Bを形成し、これを、酸素除去反応器510に導入して、精製されたガス流(polished gas stream)Cを形成すること、を含む。点A、点B、及び点Cの各点での組成並びに物質収支及び熱収支を、表6に示す。反応器を断熱的に操作することにより、反応器内の必要な反応温度150℃(酸素除去反応器を出る精製されたガス流の温度で示される)が、加熱された流出物B温度141℃で達成された。当業者には、流出物Aの温度、圧力、及び流量をルーチンとして最適化することによって、この例で示したのと同様の断熱操作を達成できることが明らかであるはずである。これには、急冷塔又はスクラバーの下流での圧縮、加熱、及び冷却のための様々なセットアップが含まれる。表6の結果は、精製されたガス流中に酸素とアセチレンが存在しないことを示している。
【0082】
【表6】
【0083】
<反応器の等温操作>
モデル500を使用し、酸素除去反応器の周囲の冷却水循環を用いた等温モードの酸素除去を実証するためのシミュレーションには、断熱モードからの流出物A、加熱された流出物B、及び精製されたガスCと共に、ポンプ566で冷却水Dの圧力を高めて加圧された冷却水Eを形成し、これが熱交換器568を介して酸素除去反応器510の冷却ジャケットから戻る水を冷却し(二重矢印)、加熱された冷却水Fを形成することが含まれる。点A~点Fの各点での組成並びに物質収支及び熱収支を、表7に示す。この結果は、冷却水の流量、温度、及び圧力が、0.77GJ/hrの反応器熱負荷を除去することできる場合、加熱された流出物Bが、150℃の温度で酸素除去反応器510に流入することができることを示している。この例では、表7の冷却水Dの条件は、等温操作に必要な熱を除去するのに十分であった。当業者であれば、圧力、温度、及び流量を調整して、この例で示したのと同様の等温操作を達成できることを理解するであろう。
【0084】
【表7】
【0085】
<実施形態>
本明細書の実施例に記載される実施形態は、エタンをエチレンに転化する方法を提供する。この方法は、エタン及び酸素を含む供給物流を酸化的脱水素化反応器に供給する工程と、酸化的脱水素化反応器内で、エタンの少なくとも一部をエチレンに転化して、エタン、エチレン、及び、酸素、アセチレン又はその両方を含む反応器流出物流を供給する工程と、を含む。この方法は、反応器流出物流を冷却して、冷却された流出物流を形成する工程と、冷却された流出物流を、ODH触媒床を含む酸素除去反応器に供給する工程と、を含む。水及びアルコールを含む脱酸素化流が酸素除去反応器に供給されて、脱酸素された流出物を形成する。
【0086】
一態様では、この方法は、脱酸素された流出物をアセチレン吸着カラムに供給することを含む。
【0087】
一態様では、この方法は、脱酸素された流出物を冷却して混合流出物を形成することを含む。一態様では、混合流出物は、ガス流と液体流に分離される。一態様では、ガス流は、スクラバーに通されて、酢酸を除去する。一態様では、ガス流は、圧縮され、極低温分離システム(cryogenic separation system)に供給されて、純化されたアルケン流(purified alkene stream)を形成する。
【0088】
一態様では、ガス流は、圧縮され、加熱され、次いで第2の酸素除去反応器に供給されて、精製されたガス流(polished gas stream)を形成する。一態様では、精製されたガス流は、圧縮され、極低温分離システムに供給されて、精製されたアルケン流を形成する。
【0089】
一態様では、ガス流は、第2酸素除去反応器内の銅、亜鉛、銀、クロム、セリウム、又はそれらの任意の組合せを含む触媒床(catalyst bed)を通過して、精製されたガス流を形成する。
【0090】
一態様では、この方法は、ガス流を圧縮することと、ガス流を加熱することと、ガス流をアセチレン吸着カラムに供給して、精製されたガス流を形成することと、を含む。一態様では、この方法は、精製されたガス流を圧縮することと、精製されたガス流を極低温分離システムに供給して、純化されたアルケン流を形成することと、を含む。
【0091】
一態様では、ガス流は、アセチレン吸着カラム内の銅、銀、又はその両方を含む吸着床(adsorbent bed)を通過して、精製されたガス流を形成する。
【0092】
本明細書の実施例に記載される別の実施形態は、エタンからエチレンを生成するためのシステムを提供する。このシステムは、酸化的脱水素化(ODH)反応器と、ODH反応器からのODH流出物を冷却するための第1の熱交換器と、ODH触媒を含む酸素除去反応器とを備える。
【0093】
一態様では、システムは、酸素除去反応器からの酸素低減流出物(oxygen reduced effluent)を冷却するための第2の熱交換器と、酸素低減流出物をガス流と液体流に分離するためのフラッシュドラムとを備える。一態様では、システムは、フラッシュドラムからの液体流上に、酢酸分離システムを備え、酢酸分離システムは、液体流を酢酸流と水流に分離する。一態様では、システムは、向流でガス流から酢酸を除去するための水入口を備えるスクラバーを備える。一態様では、システムは、スクラバーからのガス流上に、第1の圧縮機を備える。一態様では、システムは、圧縮機からのガス流を加熱するための第3の熱交換器を備える。
【0094】
一態様では、システムは、第3の熱交換器に連結された精製ユニット(polishing unit)を備える。一態様では、精製ユニットは、銅、銀、亜鉛、セリウム、又はそれらの任意の組合せを含む触媒を含む。
【0095】
一態様では、精製ユニットは、銅、銀、亜鉛、又はそれらの任意の組合せを含む吸収床(absorption bed)を備えるアセチレン吸着カラムを備える。一態様では、システムは、第1の圧縮機からのガス流上に、第2の圧縮機を含む。一態様では、システムは、アルケン出口流を形成するために、第2の圧縮機に連結された極低温分離システムを備える。
【0096】
本開示には、多くの特定の実施形態の詳細が含まれるが、これらは、主題の範囲又は特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で本開示において説明される特定の特徴は、単一の実施形態において、組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施形態において、個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、前述の特徴は、特定の組合せで機能するものとして説明され、当初はそのように請求項に記載される場合もあるが、場合によっては、請求項に記載された組合せから1つ以上の特徴をその組合せから削除することができ、請求項に記載された組合せは、部分的組合せ又は部分的組合せのバリエーションを対象とする場合がある。
【0097】
主題の特定の実施形態について説明した。記載された実施形態の他の実施形態、変更、及び置換は、当業者には明らかなように、特許請求の範囲内にある。操作は、図面又は特許請求の範囲において特定の順序で示されているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が、示された特定の順序で、若しくは連続した順序で実行されること、又は図示されたすべての操作(いくつかの操作は、任意であるとみなされ得る)が実行されることを必要とするものとして理解されるべきではない。
【0098】
したがって、前述の例示的な実施形態は、本開示を定義したり制約したりするものではない。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の変更、置換、及び改変も可能である。
【0099】
他の実施態様も、以下の特許請求の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示は、エタンのエチレンへの酸化的脱水素化に関する。より具体的には、本開示は、エタノールを用いてエタンODH生成物流から酸素を除去することに関する。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】