(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】低減された凝集能及び低減された疎水性を有する、改善されたFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20240829BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240829BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240829BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240829BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240829BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240829BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240829BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240829BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240829BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240829BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C07K16/18
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
A61P43/00 121
A61P31/12
A61P35/00
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/00
A61P11/06
A61P9/00
A61P19/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P13/12
A61P13/10
A61P3/10
A61P25/00
A61P17/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024513731
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022074449
(87)【国際公開番号】W WO2023031397
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520476488
【氏名又は名称】オンコワン・リサーチ・アンド・ディベロップメント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】シナグル,アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ケルスバウメル,ランドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ティーレ,ミヒャエル・ロベルト
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA01
4B064CA19
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4B064DA08
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、軽鎖及び重鎖可変ドメインにおける選択されたアミノ酸置換により改善された特性、例えば、低減された凝集能及び低減された疎水性を有するFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体と、oxMIF関連症状の治療におけるその使用とを指す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体であって、1つ若しくは複数のアミノ酸置換又はグリコシル化修飾を有する配列番号1を含む野生型ヒトIgGの変異体Fc領域、並びに以下の可変ドメイン:
(a1)アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを有する配列番号2を含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号2を含み、
- 36位に保存されたチロシン、及び
- アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;及び
(b1)配列番号3を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号3及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)アミノ酸置換L5Q若しくはW97Yの少なくとも1つ及び1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つの更なるアミノ酸置換を有する配列番号3を含む重鎖可変ドメイン
を含み、
ここで、アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、
変異体Fc領域が、野生型IgG1 Fc領域と比較してFcγR結合の減少を示し、
前記抗体又はその抗原結合断片が、アミノ酸置換を欠く配列番号2及び配列番号3を含む抗体又はその抗原結合断片と比較して低減された凝集能及び低減された疎水性を有する、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項2】
軽鎖可変ドメインがアミノ酸置換W93Fを含み、重鎖可変領域がアミノ酸置換W97Yを含む、請求項1に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項3】
配列番号4、5、6、7、8、9、43、及び85からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変ドメインを含む、請求項1又は2に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項4】
i.)配列番号3及び6、
ii.)配列番号9及び6、
iii.)配列番号4及び6、
iv.)配列番号4及び8、
v.)配列番号4及び5、又は
vi.)配列番号43及び配列番号5、6、7若しくは8のいずれか1つ
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項5】
配列番号14を更に含む、請求項4に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項6】
配列番号15、及び16又は17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2のいずれか一項に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項7】
Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体であって、1つ若しくは複数のアミノ酸置換又はグリコシル化修飾を有する配列番号1を含む野生型ヒトIgGの変異体Fc領域を含み、
配列番号72又は78から選択される軽鎖CDR1配列、
配列番号73、79、80、又は81から選択される軽鎖CDR2配列、
配列番号74又は82から選択される軽鎖CDR3配列、
配列番号75から選択される重鎖CDR1配列、
配列番号76又は83から選択される重鎖CDR2配列、及び
配列番号77又は84から選択される重鎖CDR3配列
を含み、
ただし、配列番号74及び配列番号77は一緒に含まれない、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項8】
アミノ酸置換が、配列番号1の位置E233、L234、L235、G236、G237、P238、I253、D265、S267、H268、N297、S298、T299、H310、E318、L328、P329、A330、P331、H435のいずれか1つにおいてであり、具体的には、アミノ酸置換が、EU付番指標に従って、位置L234及びL235、特に位置L234、L235、H310及びH435であり、及び/又はFc領域がアグリコシル化されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項9】
二重特異性抗体、scFv-Fc、(scFv)
2-Fc、scFv/scFv-Fc、Fab/scFv-Fc、Fab/(scFv)
2-Fc、Fab/Fab-scFv-Fc、Fab/Fab-crossFab-Fc、Fab/crossFab-Fc、IgG-scFv及びIgG-(scFv)
2からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項10】
前記抗体が、具体的には、CD3のエピトープ又はヒスタミン-スクシニル-グリシン(HSG)を特異的に認識する少なくとも1つの結合部位を更に含む二重特異性抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項11】
前記抗体が第1の工程で対象に投与され、HSGハプテンが第2の工程で投与され、前記HSGハプテンが、抗体に結合し、放射性核種で標識されている、固形腫瘍の治療又は検出における使用のための、請求項10に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
【請求項12】
医薬の調製における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載のFcサイレンシングされた抗体。
【請求項13】
場合により医薬担体又はアジュバントと共に、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体を含む医薬組成物。
【請求項14】
皮下投与のために製剤化される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
単一の物質として投与するためか、又は好ましくは抗ウイルス、抗癌、抗炎症、及び抗生物質からなる群から選択される更なる活性物質と共に投与するための、請求項13又は14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
炎症性疾患、感染性疾患を患う患者の治療、具体的には、喘息、血管炎、関節炎、敗血症、敗血症性ショック、内毒素性ショック、毒素性ショック症候群、後天性呼吸窮迫症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、腎炎、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)、多発性硬化症、急性及び慢性膵炎、1型糖尿病、IgA腎症、間質性膀胱炎、ポストCOVID症候群並びに乾癬の治療における使用のため、又は過剰増殖性障害若しくは癌を患う患者の治療、具体的には、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、及び肺癌の治療における使用のための、請求項13~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体をコードする単離核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸を含む発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽鎖及び重鎖可変ドメインにおける選択されたアミノ酸置換により改善された特性、例えば、低減された凝集能及び低減された疎水性を有するFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体と、oxMIF関連症状の治療におけるその使用とを指す。
【背景技術】
【0002】
サイトカインマクロファージ遊走阻止因子(MIF)は、早くも1966年には記載されている(David,J.R.,1966;Bloom B.R.and Bennet,B.,1966)。MIFは、クローニング及び組換え発現の後、生化学特性及び生理的役割が解明された(Bernhagen et al.,1993;Bernhagen et al.,1994)。現在では、MIFが自然免疫の極めて重要な制御因子であり、炎症反応及び癌において中心的な役割を果たすということが十分に認められている。MIFは、他の炎症促進性メディエーター、例えば、TNF(Calandra et al.,1994)、一酸化窒素(Bernhagen et al.,1994)、及びプロスタグランジンE2(Mitchell et al.,1999;Sampey et al.,2001)の産生を促進する。MIFの最も顕著な特性の1つは、グルココルチコイド(GC)の免疫抑制効果を無効化する能力である。In vitroでは、MIFは、単球(TNF、IL-1、IL-6、及びIL-8)(Calandra et al.,1995)並びにT細胞(Bacher et al.,1996)におけるサイトカイン分泌のGC誘導阻害を相殺し、線維芽細胞におけるTNF誘導アラキドン酸放出のデキサメタゾンによる抑制を無効化する(Mitchell et al.,1999)。In vivo研究により、MIFがデキサメタゾンで治療した内毒素血症マウスの死亡率を増加させることが明らかになった(Calandra et al.,1995)。MIF血清レベルの上方制御及びその疾患との関連は、最も詳細なデータが重度の敗血症の患者において記載されている(Emonts et al.,2007;Bozza et al.,2004;Sprong et al.,2007)。MIFの血漿レベルは、疾患の重症度及びショック状態と相関し、死亡患者では生存患者よりも有意に高かった。MIF濃度は、IL-1、IL-6、IL-10、IL-12、及びコルチゾールの血漿中濃度の上昇と有意に相関した。患者におけるMIFレベルの上昇は、多くの炎症性疾患、例えば、関節リウマチ(Onodera et al.,1999;Morand et al.,2002)、クローン病(de Jong et al.,2001)、乾癬(Shimizu et al.,2001)、及び多発性硬化症(Niino et al.,2000;Rinta et al.,2008)でも測定されている。
【0003】
MIFは、p53依存性の細胞死を阻止し、単球及びマクロファージの生存を刺激することによって、更に炎症過程の維持に寄与する(Mitchell et al.,2002)。
【0004】
炎症と多くの種類の癌との密接な関連を示唆する証拠がますます増えている。炎症経路は、感染及び傷害からの防御を行うようにできているが、腫瘍増殖及び転移を促す環境を促進しうる(Conroy et al.,2010)。このように、炎症は、腫瘍形成を駆動する重要な要因であることが示唆されており、多くの癌が感染又は慢性炎症の結果として生じる(Bucala and Donnelly,2007;Conroy et al.,2010;Karin,2009)。更に、腫瘍微小環境の炎症性が血管形成及び細胞外マトリックス(ECM)の崩壊を促進し、ひいては腫瘍細胞の生存、増殖、及び遊走に寄与することがよく立証されている(Coussens and Werb,2002;Hagemann and Balkwill,2005;Hagemann et al.,2007;Kessenbrock et al.,2010)。MIFは、膵臓、乳房、前立腺、結腸、脳、皮膚、及び肺由来の腫瘍のような多種多様なヒト新生物において上方制御されることが示されている(Bando et al.,2002;Chen et al.,2010;Kamimura et al.,2000;Meyer-Siegler and Hudson,1996;Shimizu et al.,1999;Takahashi et al.,1998;Winner et al.,2007)。いくつかの研究は、MIFの発現が腫瘍の攻撃性及び転移能と密接に相関していると報告しており、疾患の重症度及び細胞の生存においてMIFが重要な役割を果たしている可能性があることが示唆されている(Rendon et al.,2009)。最近のデータは、細胞外MIFが細胞内MIFと比較してより攻撃的な腫瘍表現型に寄与している可能性があることを示唆している(Verjans et al.,2009)。MIFは、腫瘍増殖、血管形成、浸潤性、及び転移に有利な微小環境に寄与している。MIFは、炎症促進機能に加えて、p53の阻害(Hudson et al.,1999;Mitchell and Bucala,2000)並びに中心的なキナーゼであるERK1/2(Mitchell et al.,1999)及びAKT(Lue et al.,2007)の活性化を含む抗アポトーシス効果及び増殖促進効果を発揮する。MIFは、血管新生(Coleman et al.,2008)と、HIF-1αの安定化(Winner et al.,2007)並びにVEGF及びIL-8のような血管形成促進因子の上方制御(Ren et al.,2004)による腫瘍の血管新生とを促進する血管形成促進因子として更に記載されている。MIFはまた、ケモカインとしても機能し、ケモカイン受容体CXCR2及びCXCR4を介して腫瘍環境内での炎症細胞の動員に寄与すると予測される(Bernhagen et al.,2007;Rendon et al.,2007)。
【0005】
しかしながら、MIFは、構成的に発現され、健常な対象の循環中に存在するため、他のサイトカイン及びケモカインとは著しく異なる。MIFは、予め形成され、マクロファージ、T細胞、及び視床下部-下垂体-副腎軸を含む体内の多くの他の細胞の細胞質プールに貯蔵されることで、de novo合成をせずに刺激時に迅速な放出が可能となる(Bernhagen et al.,1993;Bacher et al.,1997;Fingerle-Rowson et al.,2003)。
【0006】
このタンパク質の遍在性に起因して、MIFは、治療的介入には不適切な標的と考えられうる。しかしながら、MIFは、還元型MIF(redMIF)及び酸化型MIF(oxMIF)と称される2つの免疫学的に別個の立体構造的なアイソフォームで存在する(Thiele M.et al.,2015)。RedMIFは、どの対象の細胞質及び循環においても見出されうる大量に発現されるMIFのアイソフォームであることが分かった。RedMIFは、潜在型の非活性貯蔵形態に相当するようである(Schinagl. A. et al.,2018)。
【0007】
対比して、oxMIFは、腫瘍組織、具体的にはoxMIFの高い腫瘍特異性を示す結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌及び肺癌を有する患者由来の腫瘍組織(Schinagl.A.et al.,2016)、更には、炎症性疾患を有する患者の循環及び炎症組織(Thiele et al.,2015)において検出されうる、生理学的に関連する疾患関連のアイソフォームであるようである。
【0008】
上述のoxMIF陽性適応症のような癌を治療するための薬剤標的で成功したものの数は限定されている。例えば、300超の潜在的な免疫腫瘍学標的が記載されているが、多くの臨床研究は抗PD-1及び抗PD-L1抗体に焦点を当てている(Tang J.,et al.2018)。したがって、科学界と医学界は、予後不良の癌患者の治療選択肢を増やすために、腫瘍特異的抗原を標的とする見込みのある薬剤を切望している。
【0009】
更に、炎症性疾患を標的とする薬剤に対する需要も高い。グルココルチコイド(GC)は、通常の臨床診療において最も重要で頻繁に使用される抗炎症薬のクラスを表す(Schacke et al.,2002)。GCの有用性は、炎症細胞の動員を低減させ、炎症促進性サイトカイン及びメディエーターの合成を抑制することで、効果的に炎症カスケードを多くのレベルでブロックするGCの能力に主に関連している(Barnes et al.,2003)。GCの経口使用率は、一般人口の0.5%及び55歳超の人口の1.4%と推定されている(Ramsey-Goldman,2002;Walsh et al.,1996)。GCは、明らかに有益であると考えられているが、用量依存性でしばしば不可逆な相当の副作用が認められるため、使用には制限がある(Pisu et al.,2005)。最も懸念される副作用としては、高血圧、肥満、骨粗鬆症、ミオパチー、浮腫及び免疫低下が挙げられる。RA及び全身性エリテマトーデスを含む炎症性疾患において、アテローム性動脈硬化に関連した早過ぎる死もますます認められるようになってきている(Wallberg-Jonsson et al.,2005;del Rincon et al.,2001;Solomon et al.,2003;El-Magadmi et al.,2004;Manzi et al.,1999)。GCの毒性は相当の負担となるため、GCの炎症性疾患への作用を促進し、用量の低減を可能にする治療法の開発が求められている。しかし、このためには、GC感受性を制御する因子の解明が必要である。2000年代初頭、サイトカインのマクロファージ遊走阻止因子(MIF)とGCとの間の特異な関係が明らかとなり、GC感受性を制御しうる因子の候補としてMIFが同定された(Aeberli et al.,2006)。
【0010】
oxMIFを標的とする抗体は、炎症及び癌のin vitro及びin vivoモデルにおいて有効性を示した(Hussain F. et al.,2013;Schinagl. A. et al.,2016;Thiele et al.,2015)。
【0011】
国際公開第2019/234241 A1号において、抗oxMIF/抗CD3二重特異性抗体が開示されている。
【0012】
国際公開第2009/086920 A1号において、抗oxMIF抗体Bax69(イマルマブ)が記載されている。
【0013】
タンパク質凝集、具体的には、抗体凝集は、タンパク質発現、精製及び保存を含むバイオプロセスのいくつかの段階で頻繁に観察される。抗体凝集は、治療用タンパク質製造工程の全収率に影響し、治療用抗体の安定性及び免疫原性に寄与しうる。
【0014】
したがって、抗体のタンパク質凝集は、それらの発生性に重大な問題であり続け、抗体産生における重要な関心事のままである。抗体凝集は、単量体-単量体会合後、核生成及び凝集体増殖をもたらす、そのドメインの部分的なアンフォールディングによって誘発されうる。抗体及び抗体ベースのタンパク質の凝集傾向は、外部実験条件によって影響されうるが、それらは、それらの配列及び構造によって決定される潜在的な抗体特性に強く依存する。
【0015】
例えば、凝集に対する耐性は、天然状態の安定化(すなわちアンフォールディングに耐性がある)により、又はタンパク質のアンフォールド若しくは部分的なフォールド状態が凝集する傾向を低減することにより達成しうる。天然状態の安定化の不都合な点は、タンパク質がアンフォールドするような環境に暴露される可能性が高い点である。一般に、タンパク質は、変性又はアンフォールドすると、タンパク質の内部において通常は分子内接触を媒介するアミノ酸残基が露出する。そのような露出により、タンパク質は、しばしば分子間接触を形成しやすくなり、凝集しやすくなる。アンフォールディングに耐性があるタンパク質とは対照的に、アンフォールディングしたときに凝集する傾向が低減しているタンパク質は、そのような環境に暴露された後、容易に生物活性のある非凝集状態へとリフォールディングする。
【0016】
抗体及びその抗原結合ドメインを含むタンパク質の凝集耐性又は凝集傾向は、通常、そこに含有される多くの凝集傾向ドメイン(複数可)によって、及び(存在する場合)周辺ドメインとのその相互作用の強度によって制限される。
【0017】
これは、ドメインが一旦アンフォールディングすると、リフォールディングできない場合、同じタンパク質内又は他のタンパク質内の他のドメインと相互作用し、凝集体を形成しうるためである。抗体の定常ドメインは、一般に、凝集せず、大きく変化しない。したがって、凝集能及び安定性に関して抗体の最も弱いドメインは、一般に、可変ドメインであると考えられる(例えば、重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は軽鎖可変ドメイン(VL)、Ewert S. et al.,2003)。これに関して、凝集傾向のVH又はVLドメインの、他の安定な組換え抗体産物への組み込みは、これらの一般に望ましくない特性を新しい組換え設計に付与することが多い。したがって、可変ドメインを凝集耐性であるように操作することは、その可変ドメインを含みうるタンパク質全体を凝集耐性にする可能性が最も高い。可変ドメインの凝集を低減させるための様々な戦略、例えば、凝集耐性タンパク質の合理的設計、相補性決定領域(CDR)移植、又は可変ドメインへのジスルフィド結合の導入、が提案されている。凝集耐性タンパク質の合理的設計は、一般的に、in silico解析を使用してタンパク質の凝集傾向における点突然変異の効果を予測することを含む。しかし、このアプローチではいくつかの障害に直面する。例えば、単に、アンフォールドタンパク質の凝集を低減する可能性のある突然変異を同定するだけでは不十分なことである。もっと厳密に言えば、突然変異は、フォールドタンパク質の凝集を増加させてはならず、また、フォールドタンパク質の機能、特に、抗体の場合、結合特性、例えば、親和性又は特異性に影響を与えてもいけない。更に、合理的設計は、改善される特定のタンパク質の詳細な構造解析が必要となり、したがって、十分に特徴付けられていないタンパク質では用いることが難しく、様々な異なるタンパク質にすぐに適用できない。CDR移植は、1つの可変ドメインからのCDRを別の可変ドメインのフレームワーク領域(FR)上に移植することを含む。この戦略は、抗EGP-2 scFvを安定化するのに有用であることが示された(Willuda J.et al.,1999)。このアプローチの不都合な点としては、CDR移植後に生じうる親和性の低減が挙げられる。この親和性の喪失は、突然変異をFRに導入することで克服できるが、そのような突然変異は、タンパク質中に免疫原性エピトープを生じさせて、タンパク質を治療の観点から望ましくないものとさせる可能性がある。更に、CDR移植は、一般に、移植の適合性を評価するために、ドナー及びアクセプター可変ドメインの結晶構造解析又はホモロジーモデリングを必要とする。そのようなアプローチは、手間がかかり、専門的な知識を必要とする。更に、この方法は、各可変ドメインが異なる構造を有するため、様々な分子に容易に適用できない。ジスルフィド結合を可変ドメインに導入する工程を含む方法に関しては、ジスルフィド結合は、タンパク質が正しくリフォールディングするのを助けうるが、同時にまた、可変ドメインに柔軟性のなさを導入することにもなる。そのような柔軟性のなさは、抗体の抗原に対する親和性を低減させうる。更に、ジスルフィド結合形成に必要なシステイン残基を、親和性の喪失又は免疫原性エピトープの導入なしに全ての可変ドメインに導入できるわけではない。更に、高タンパク質濃度下でのジスルフィド結合の形成は、タンパク質の凝集を引き起こして、見込みのあるジスルフィド結合の好ましい効果が打ち消されてしまう可能性がある。
【0018】
しかし、凝集傾向の低減は、発現力価の増加が伴うことが示されており、このことは、タンパク質の凝集の低減は、開発プロセス全体を通じて有益であり、より効率的な臨床研究への道につながる可能性があることを示す。治療用タンパク質の場合、凝集は、患者における有害な免疫応答の重大な危険因子であり、様々なメカニズムを介して形成されうる。凝集の制御は、タンパク質の安定性、製造性、減少率、安全性、製剤化、力価、免疫原性、及び溶解性を改善できる(Wei Li et al.,2016;Van der Kant R.et al.,2017)。
【0019】
タンパク質の更に固有の特性、例えば疎水性も、抗体可溶性に重要な役割を果たす。表面疎水性によるこれらの治療用タンパク質の低い可溶性は、製剤開発をより困難にすることが示されており、in vivoでの不十分な生体内分布、望ましくない薬物動態挙動及び免疫原性をもたらしうる。したがって、候補モノクローナル抗体の全体的な表面疎水性を減少させることは、精製及び投与レジメンに関して利益及びコスト削減を提供しうる。
【0020】
特定の治療目的に合わせて抗体のエフェクター機能を制御することも、関心が高まっている。具体的には、Fc null又はFcサイレンシングされた抗体は、FcγRを介した強力な免疫エフェクター機能としてのFcエフェクター機能及び補体相互作用(これらは抗体メカニズムにとって好ましくない場合がある)を除く戦略でありうる。同様に、薬物動態を制御するためにIgG抗体の新生児型Fc受容体(FcRn)結合を制御することもまた広く知られるようになってきている。
【0021】
Strohl W.R.et al.(2012)は、IgGアイソタイプのFcγR媒介活性を増加又は減少させるための抗体Fc操作を記載している。
【0022】
WO2017/178493A1には、Fcサイレンシングのために改変CH1-CH3ドメインを含むTIM-3(T細胞免疫グロブリン-ムチンドメイン含有分子(T-cell immunoblobulin and mucin domain containing)3)を標的とする抗体が記載されている。低減された凝集能、低減された疎水性及びFcサイレンシングの組合せにより、抗体特性が非常に有利になると考えられる。当技術分野では、低減された疎水性を有するFcサイレンシングされた対oxMIF凝集耐性抗体への需要が未だに満たされていない。
【発明の概要】
【0023】
本発明の目的は、FcサイレンシングされたoxMIFを標的とし、低減された凝集傾向及び疎水性を有する改善された抗体又はその抗原結合断片を提供することである。
【0024】
この目的は、本発明の主題によって解決される。
【0025】
本発明は、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、1つ若しくは複数のアミノ酸置換又はグリコシル化修飾を有する配列番号1(CH2-CH3)、或いは代替として配列番号44(CH1-CH3)を含む野生型ヒトIgGの変異体Fc領域、並びに以下の可変ドメイン:
(a1)アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを有する配列番号2を含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号2を含み、
- 36位に保存されたチロシン、及び
- アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;及び
(b1)配列番号3を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号3及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)アミノ酸置換L5Q若しくはW97Yの少なくとも1つ及び1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つの更なるアミノ酸置換を有する配列番号3を含む重鎖可変ドメイン
を含み、
ここで、アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、
変異体Fc領域が、野生型IgG1 Fc領域と比較してFcγR結合の減少を示し、
上記抗体又はその抗原結合断片が、アミノ酸置換を欠く配列番号2及び配列番号3を含む抗体又はその抗原結合断片と比較して低減された凝集能及び低減された疎水性を有する、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片を開示する。
【0026】
具体的には、組換え抗oxMIF抗体は、配列番号2を参照し、アミノ酸置換W93Fを含む。
【0027】
具体的には、組換え抗oxMIF抗体は、配列番号3を参照し、アミノ酸置換W97Yを含む。
【0028】
更なる特定の実施形態によれば、組換え抗oxMIF抗体は、アミノ酸置換W93F及びW97Yを含む。
【0029】
本明細書に記載の特定の実施形態によれば、Fc領域におけるアミノ酸置換は、EU付番指標に従って、配列番号1の位置E233、L234、L235、G236、G237、P238、D265、S267、H268、N297、S298、T299、E318、L328、P329、A330、P331のいずれか1つにおいてである。
【0030】
代替の実施形態によれば、Fc領域はアグリコシル化されている。
【0031】
より具体的には、Fc領域におけるアミノ酸置換は、EU付番指標に従って、配列番号1の位置L234及びL235、具体的には、L234A及びL235Aにおいてである。
【0032】
本明細書では、配列番号4、5、6、7、8、9、43、及び85からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むFc領域を含む、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体が特に提供される。
【0033】
より具体的には、本明細書に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、可変重鎖及び軽鎖
i.)配列番号3及び6、
ii.)配列番号9及び6、
iii.)配列番号4及び6、
iv.)配列番号4及び8、
v.)配列番号4及び5、又は
vi.)配列番号43及び配列番号5、6、7若しくは8のいずれか1つ
を含む。
【0034】
一実施形態によれば、本明細書に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、配列番号14のCH1~CH3ドメインを更に含む。
【0035】
本発明の特定の実施形態によれば、抗oxMIF抗体は、配列番号15及び16又は17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0036】
更なる実施形態によれば、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、1つ若しくは複数のアミノ酸置換又はグリコシル化修飾を有する配列番号1を含む野生型ヒトIgGの変異体Fc領域を含み、
配列番号72又は78から選択される軽鎖CDR1配列、
配列番号73、79、80、又は81から選択される軽鎖CDR2配列、
配列番号74又は82から選択される軽鎖CDR3配列、
配列番号75から選択される重鎖CDR1配列、
配列番号76又は83から選択される重鎖CDR2配列、及び
配列番号77又は84から選択される重鎖CDR3配列
を含み、ただし、配列番号74及び配列番号77は一緒に含まれない、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片が本明細書で提供される。
【0037】
代替の実施形態において、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、
配列番号72又は78から選択される軽鎖CDR1配列、
配列番号73、79、80、又は81から選択される軽鎖CDR2配列、
配列番号82から選択される軽鎖CDR3配列、
配列番号75から選択される重鎖CDR1配列、
配列番号76又は83から選択される重鎖CDR2配列、及び
配列番号77又は84から選択される重鎖CDR3配列を含む。
【0038】
代替の実施形態において、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、
配列番号72又は78から選択される軽鎖CDR1配列、
配列番号73、79、80、又は81から選択される軽鎖CDR2配列、
配列番号82から選択される軽鎖CDR3配列、
配列番号75から選択される重鎖CDR1配列、
配列番号76又は83から選択される重鎖CDR2配列、及び
配列番号84から選択される重鎖CDR3配列を含む。
【0039】
代替の実施形態において、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、
配列番号72又は78から選択される軽鎖CDR1配列、
配列番号73、79、80、又は81から選択される軽鎖CDR2配列、
配列番号82から選択される軽鎖CDR3配列、
配列番号75又は83から選択される重鎖CDR1配列、
配列番号76又は84から選択される重鎖CDR2配列、及び
配列番号85から選択される重鎖CDR3配列を含む。
【0040】
本発明の更なる実施形態によれば、本明細書に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、配列番号1の位置E233、L234、L235、G236、G237、P238、I253、D265、S267、H268、N297、S298、T299、H310、E318、L328、P329、A330、P331、H435のいずれか1つにおいてのアミノ酸置換を有し、具体的には、アミノ酸置換が、EU付番指標に従って、位置L234及びL235、特に位置L234、L235、H310及びH435であり、及び/又はアグリコシル化されているFc領域を有する。
【0041】
本明細書に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、CH2及びCH3抗体ドメインを含有する任意のフォーマット、具体的には、単一特異性抗体、二重特異性抗体(例えば、Crossmab)、scFv-Fc、(scFv)2-Fc(2つのscFv断片が1つのアーム上に含まれる)、scFv/scFv-Fc(すなわち、各アームがscFv断片を含む)、Fab/scFv-Fc、Fab/(scFv)2-Fc、Fab/Fab-scFv-Fc、Fab/Fab-crossFab-Fc、Fab/crossFab-Fc、IgG-scFv及びIgG-(scFv)2からなる群から選択されるフォーマットでありうる。
【0042】
更なる実施形態において、本明細書に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体が、CD3のエピトープ又はヒスタミン-スクシニル-グリシン(HSG)を特異的に認識する少なくとも1つの結合部位を更に含む二重特異性抗体である。特定の実施形態において、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、固形腫瘍の治療又は検出における使用のためのものであり、上記抗体が第1の工程で対象に投与され、HSGハプテンが第2の工程で投与され、上記HSGハプテンが、抗体に結合し、放射性核種で標識されている。
【0043】
医薬の調製における使用のための、本明細書に記載のFcサイレンシングされた抗体も本明細書で提供される。
【0044】
本発明の更なる実施形態において、場合により、医薬担体又はアジュバントと共に本明細書に記載の抗体を含む医薬組成物も本明細書中で提供される。
【0045】
具体的には、組成物は、本発明の抗体を10~250mg/ml、具体的には、50mg/ml超を含む。
【0046】
より具体的には、上記医薬組成物は皮下投与のために製剤化される。
【0047】
本明細書で提供されるように、医薬組成物は、単一の物質として投与するためか、又は好ましくは抗ウイルス、抗癌、抗炎症、及び抗生物質からなる群から選択される1つ又は複数の活性物質を含む更なる医薬組成物と共に複合製剤として投与するためのものである。
【0048】
更なる実施形態において、本明細書では、炎症性疾患、感染性疾患を患う患者の治療、具体的には、喘息、血管炎、関節炎、敗血症、敗血症性ショック、内毒素性ショック、毒素性ショック症候群、後天性呼吸窮迫症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、腎炎、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)、多発性硬化症、急性及び慢性膵炎、1型糖尿病、IgA腎症、間質性膀胱炎、ポストCOVID症候群、並びに乾癬の治療における使用のための、医薬組成物が提供される。
【0049】
代替の実施形態によれば、医薬組成物は、過剰増殖性障害又は癌を患う患者の治療、具体的には、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、及び肺癌の治療における使用のためのものである。
【0050】
本発明の抗体をコードする単離核酸が更に提供される。
【0051】
本明細書に記載の核酸分子(複数可)を含む発現ベクターも本明細書に提供される。
【0052】
更なる実施形態において、本明細書に記載の核酸又は発現ベクターを含有する宿主細胞が提供される。
【0053】
宿主細胞を培養する工程、及び上記抗体を細胞培養物から回収する工程を含む、本発明の抗体を産生する方法が更に提供される。
【0054】
宿主細胞において抗体をコードする核酸を発現させる工程を含む、本発明の抗体を産生するための方法が更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1-1】新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集及び疎水性を実証するクロマトグラフィープロフィールである。(A)移動相として1×PBSを使用する、Enrich 650ゲル濾過カラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)と新しく設計した抗体C0115及びC0118の親抗体(C0083及びC0090、Fcサイレンシングなし)の溶出プロフィールの比較;(B)移動相として1×PBSを使用する、Enrich 650ゲル濾過カラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)と新しく設計した抗体C0115及びC0118の溶出プロフィールの比較。(C)HiTrap Butyl HP HICカラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)及び新しく設計した抗体C0115及びC0118並びにその親抗体C0083及びC0090(Fcサイレンシングなし)の溶出プロフィールの比較。
【
図1-2】新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集及び疎水性を実証するクロマトグラフィープロフィールである。(A)移動相として1×PBSを使用する、Enrich 650ゲル濾過カラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)と新しく設計した抗体C0115及びC0118の親抗体(C0083及びC0090、Fcサイレンシングなし)の溶出プロフィールの比較;(B)移動相として1×PBSを使用する、Enrich 650ゲル濾過カラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)と新しく設計した抗体C0115及びC0118の溶出プロフィールの比較。(C)HiTrap Butyl HP HICカラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)及び新しく設計した抗体C0115及びC0118並びにその親抗体C0083及びC0090(Fcサイレンシングなし)の溶出プロフィールの比較。
【
図2】固定化したoxMIFへの新しく設計した抗oxMIF抗体の結合曲線(KD決定)を示す図である。抗oxMIF抗体は、抗ヒトIgG(Fc)-HRPコンジュゲートによって検出され、C0008を参照抗体として使用した。EC50値は、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式によって決定した(2つの実験の平均+/-SEMが示される)。
【
図3】redMIFと比較したoxMIFへの新しく設計した抗体の差次的結合を示す図である。C0008を参照抗体として、アイソタイプIgGを陰性対照として使用した。2つ又は3つの実験の平均+/-SEMが示される。
【
図4-1】レポーターアッセイによって決定された、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及びC0118の強く低減されたエフェクター機能を示す図である。(A~B)抗oxMIF対照抗体C0008(B)又はwtFcを有するその親抗oxMIF抗体C0083及びC0090(A)のいずれかと比較した、FcyRIIIa(V:高応答性遺伝子型、F:低応答性遺伝子型)を安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞、及びHCT116-pMIF(A)又はA2780-pMIF(B)標的細胞を使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及び/又はC0118によるADCCレポーターバイオアッセイ;(C)wtFcを有するそれらの親抗体C0083及びC0090と比較した、FcyRIIaを安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF標的細胞を使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及び/又はC0118によるADCPレポーターバイオアッセイ。データは、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SDが示される)。
【
図4-2】レポーターアッセイによって決定された、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及びC0118の強く低減されたエフェクター機能を示す図である。(A~B)抗oxMIF対照抗体C0008(B)又はwtFcを有するその親抗oxMIF抗体C0083及びC0090(A)のいずれかと比較した、FcyRIIIa(V:高応答性遺伝子型、F:低応答性遺伝子型)を安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞、及びHCT116-pMIF(A)又はA2780-pMIF(B)標的細胞を使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及び/又はC0118によるADCCレポーターバイオアッセイ;(C)wtFcを有するそれらの親抗体C0083及びC0090と比較した、FcyRIIaを安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF標的細胞を使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及び/又はC0118によるADCPレポーターバイオアッセイ。データは、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SDが示される)。
【
図5】補体依存性細胞毒性バイオアッセイによって決定された、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115の強く低減されたCDC活性を示す図である。補体の供給源としてBRC及び標的細胞としてHCT116-HiBiT-pMIFを使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115によるCDCバイオアッセイは、wtFcを有するその親抗oxMIF抗体C0083及びIgG4陰性対照としてのニボルマブと比較した。データ(適切な場合)は、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SDが示される)。
【
図6-1】PBMC媒介細胞毒性バイオアッセイによって決定された、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及びC0118の強く低減されたADCC活性を示す図である。エフェクター細胞としてPBMC及び標的細胞としてHCT116-HiBiT-pMIFを使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115(A)及びC0118(B)によるADCCバイオアッセイは、抗oxMIF対照抗体C0008又はwtFcを有するC0115の親抗oxMIF抗体(C0083)と比較した。2人の健常なドナーからのPBMCを使用した2回の反復の平均及びSEMが示される。データは、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした。
【
図6-2】PBMC媒介細胞毒性バイオアッセイによって決定された、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及びC0118の強く低減されたADCC活性を示す図である。エフェクター細胞としてPBMC及び標的細胞としてHCT116-HiBiT-pMIFを使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115(A)及びC0118(B)によるADCCバイオアッセイは、抗oxMIF対照抗体C0008又はwtFcを有するC0115の親抗oxMIF抗体(C0083)と比較した。2人の健常なドナーからのPBMCを使用した2回の反復の平均及びSEMが示される。データは、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした。
【
図7】FACSによって決定したA2780 MIF-/-細胞への新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された非特異的結合を示す図である。新しく設計した抗oxMIF抗体C0118及びその親抗体C0090(A)並びにC0115及びその親抗体C0083(B)並びに対照抗体C0008並びに陰性対照としてアイソタイプIgGによるA2780MIF-/-細胞の染色;生存細胞のGeoMean(AF488の平均蛍光強度)を抗体濃度に対してプロットした。
【
図8】新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115は、参照抗体C0008と比較してヒトPBMCからの強く低減されたサイトカイン放出を示すことを示す図である。Fcサイレンシング突然変異を持つ抗oxMIF抗体C0115及び参照抗体C0008は、ヒトPBMCと終夜インキュベートし、上清のヒトMCP-1(A)、ヒトIL-6(B)及びヒトTNF-α(C)をLegendPlexサイトメトリービーズアッセイ(BioLegend社)において解析した。3人の異なるPBMCドナーからのサイトカイン濃度(単位:pg/ml)の平均+/-SEMを示す。
【
図9】皮下HCT116腫瘍を持つマウスのinfra-red in vivo画像化による、新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115及び参照抗体C0008の腫瘍浸透及び保持を示す図である。(A)マウスのInfra-red画像は、5mg/kgで投与されたIRDye 800CW標識抗体C0115(上のパネル)及びC0008(下のパネル)の注射後1時間、6時間、24時間、48時間、72時間、96時間及び168時間で撮られた;(B)デジタル画像解析によって定量されたC0115及びC0008の腫瘍浸透及び保持。3匹のマウスの平均を示す。
【
図10】新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115は、コラーゲンII誘導DBA/1jマウス関節炎モデルにおいて疾患の重症度を改善することを示す図である。累積疾患スコア(A)及び足の厚さ(B)は、C0115(20mg/ml)、標準治療コルチコステロイド薬としての高用量デキサメタゾン(0.3mg/kg)、又はビヒクルを用いた治療時のマウス関節炎モデルにおいて評価した。平均±SEMが示される。統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、続けて、フィッシャーのLSD検定を使用した(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)。
【
図11-1】新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115は、腎毒性血清(NTS)誘導ラット糸球体腎炎モデルにおいて疾患の重症度を改善することを示す図である。血尿(ディップスティック試験)(A)、タンパク尿(B)、及び糸球体マクロファージ浸潤を、ラット糸球体腎炎モデルにおいて、抗oxMIF抗体C0115、アイソタイプ対照IgG1又はビヒクルを用いた疾患ラットの治療時に評価した。平均±SEMが示され、統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、続けて、多重検定のためのダネット補正を使用した(*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001)。
【
図11-2】新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115は、腎毒性血清(NTS)誘導ラット糸球体腎炎モデルにおいて疾患の重症度を改善することを示す図である。血尿(ディップスティック試験)(A)、タンパク尿(B)、及び糸球体マクロファージ浸潤を、ラット糸球体腎炎モデルにおいて、抗oxMIF抗体C0115、アイソタイプ対照IgG1又はビヒクルを用いた疾患ラットの治療時に評価した。平均±SEMが示され、統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、続けて、多重検定のためのダネット補正を使用した(*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001)。
【
図12】新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG二重特異性抗体(bsMab)であるC0132(Fab/scFv-Fc)及びC0133(Fab/Fab-scFv-Fc)の概略図である。
【
図13】固定化されたoxMIFへの新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133の結合曲線を示す図である。結合された抗体は、抗ヒトIgG(Fc)-HRPコンジュゲートによって検出され、C0008をoxMIFへの二価結合の参照抗体として使用した。データは、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SEMが示される)。
【
図14】redMIFと比較したoxMIFへの新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133の差次的結合を示す図である。C0008を参照抗oxMIF抗体として使用した。3回の反復の平均及びSEMが示される。
【
図15】皮下同系移植CT26腫瘍を持つマウスのinfra-red in vivo画像化によって評価した、新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133の腫瘍浸透及び保持を示す図である。マウスのInfra-red画像は、5mg/kgで投与されたIRDye 800CW標識抗体の注射後1時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間及び168時間で撮られた。
【
図16-1】(A)HSGハプテンIMP288の構造を示す図である。(B)bsMabのC0132及びC0133の177Lu-IMP288ペプチドへの結合を示す図であり、この結合の評価は、iTLCによるものであり、bsMabとインキュベーションしたときの177Lu-IMP288の移動プロフィールの変化に基づき、177Lu-IMP288ペプチドのみの移動プロフィールと比較した。
【
図16-2】(A)HSGハプテンIMP288の構造を示す図である。(B)bsMabのC0132及びC0133の177Lu-IMP288ペプチドへの結合を示す図であり、この結合の評価は、iTLCによるものであり、bsMabとインキュベーションしたときの177Lu-IMP288の移動プロフィールの変化に基づき、177Lu-IMP288ペプチドのみの移動プロフィールと比較した。
【
図17-1】Fcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132を用いたBalb/cマウスにおける同系移植CT26マウス結腸直腸癌のPRAITを示す図である。C0132は、-3日目に投与し、続けて、3日後(0日目)に177Lu-IMP288を投与した。(A)0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%);平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;**p<0.01対177Lu-IMP288。(B)カプラン・マイヤー生存曲線(単位:生存パーセント(%))。(C)0日目に測定した体重に対する体重(単位:%)。
【
図17-2】Fcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132を用いたBalb/cマウスにおける同系移植CT26マウス結腸直腸癌のPRAITを示す図である。C0132は、-3日目に投与し、続けて、3日後(0日目)に177Lu-IMP288を投与した。(A)0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%);平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;**p<0.01対177Lu-IMP288。(B)カプラン・マイヤー生存曲線(単位:生存パーセント(%))。(C)0日目に測定した体重に対する体重(単位:%)。
【
図18】Fcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0133を用いたBalb/cマウスにおける同系移植CT26マウス結腸直腸癌のPRAITを示す図である。C0133は、-3日目に投与し、続けて、3日後(0日目)に177Lu-IMP288を投与した。図は、0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%)を示す。平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;***p<0.001対177Lu-IMP288。
【
図19】CT26マウス結腸直腸癌細胞を同系移植したBalb/cマウスにおける、PRAITアプローチを使用した抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132の有効性を示す図である。C0132は、-5日目に2.5mg/ml、及び5mg/mlで投与し、続けて、5日後(0日目)に177Lu-IMP288を投与した;平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;***p<0.001対177Lu-IMP288。(A)0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%)、(B)カプラン・マイヤー生存曲線(単位:生存パーセント(%))。
【
図20】CFPAC-1膵臓腺癌細胞を異種移植したBalb/cヌードマウスにおける、PRAITアプローチを使用した抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132の有効性を示す図である。C0132は、-5日目に5mg/mlで投与し、続けて、5日後(0日目)に177Lu-IMP288を投与した。0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%);平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;**p<0.01対ビヒクル。
【
図21】新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115が、単剤又はGCとの組合せでDBA/1jマウスにおいてコラーゲンII誘導関節炎の疾患の重症度を改善することを示す図である。累積疾患スコアは、マウス関節炎モデルにおいて、C0115(20mg/kg)を単独若しくは低用量0.1mg/kgのデキサメタゾン(「Dexa」)との組合せで用いた治療の場合、標準治療コルチコステロイド薬としてデキサメタゾン(「Dexa」)を低用量(0.1mg/kg)及び高用量(0.3mg/kg)で用いた治療の場合、又はビヒクル対照を用いた治療の場合で評価した。統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、続けて、フィッシャーのLSD検定を使用した(*p<0.05;**p<0.01)。
【
図22】新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115が、単剤及びGCとの組合せで大腸炎のT細胞移入マウスモデルにおいて疾患の重症度を改善することを示す図である。実験終了時の83日目での体重変化(A)及び累積便スコア(B)は、C0115を用いた治療の場合(10mg/kg;単独若しくは低用量0.01mg/kgのデキサメタゾン(「Dexa」)との組合せで)、標準治療コルチコステロイド薬としてデキサメタゾン(「Dexa」)を低用量(0.01mg/kg)及び高用量(0.1mg/kg)で用いた治療の場合、又はビヒクル対照治療の場合で評価した。統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、続けて、フィッシャーのLSD検定を使用した(*p<0.05;**p<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
他に指定又は定義しない限り、本明細書中で使用する全ての用語は、当技術分野において通常の意味を有し、当業者には明らかであろう。例えば、標準的なハンドブック、例えば、Sambrook et al,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(4th Ed.),Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012);Krebs et al.,“Lewin’s Genes Xi”,Jones & Bartlett Learning,(2017)、及びMurphy & Weaver,“Janeway’s Immunobiology”(9th Ed.,又はより最新版),Taylor&Francis Inc,2017を参照する。
【0057】
請求項の主題は、具体的には、人工産物又はそのような人工産物を用いるか若しくは産生する方法に関し、それは天然(野生型)産物の変異体でありうる。天然の構造に対してある程度の配列同一性がありうるが、本発明の材料、方法及び使用、例えば具体的には、単離核酸配列、アミノ酸配列、融合構築物、発現構築物、形質転換された宿主細胞及び改変タンパク質を指すものは、「人工」又は合成であり、したがって「自然の法則」の結果として考えられないことが十分に理解される。
【0058】
「を含む(comprise)」、「を含有する(contain)」、「を有する(have)」及び「を包含する(include)」という用語は、本明細書中で使用する場合、同義的に使用することができ、広い定義として理解されるべきであり、更なる成員又は部品又は要素を可能にする。「からなる」は、構成している定義特性の更なる要素を伴わない最も閉じた定義と解釈される。したがって、「を含んでいる」はより広義であり、「からなる」の定義を含有する。
【0059】
「約」という用語は、本明細書中で使用する場合、同じ値又は所与の値の+/-5%異なる値を指す。
【0060】
本明細書中及び請求項中で使用される場合、単数形、例えば「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」は、文脈が他に明確に指定しない限り、複数を包含する。
【0061】
本明細書中で使用する場合、アミノ酸は、61個のトリプレットコドンによってコードされる20個の自然発生のアミノ酸を指す。これらの20個のアミノ酸は、中性電荷、正電荷、及び負電荷を有するアミノ酸に分割することができる:
【0062】
「中性」アミノ酸を、各々の3文字コード及び1文字コード並びに極性と併せて、以下に示す:アラニン(Ala、A;無極性、中性)、アスパラギン(Asn、N;極性、中性)、システイン(Cys、C;無極性、中性)、グルタミン(Gln、Q;極性、中性)、グリシン(Gly、G;無極性、中性)、イソロイシン(Ile、I;無極性、中性)、ロイシン(Leu、L;無極性、中性)、メチオニン(Met、M;無極性、中性)、フェニルアラニン(Phe、F;無極性、中性)、プロリン(Pro、P;無極性、中性)、セリン(Ser、S;極性、中性)、スレオニン(Thr、T;極性、中性)、トリプトファン(Trp、W;無極性、中性)、チロシン(Tyr、Y;極性、中性)、バリン(Val、V;無極性、中性)、及びヒスチジン(His、H;極性、正(10%)中性(90%))。
【0063】
「正に」帯電したアミノ酸は:アルギニン(Arg、R;極性、正)、及びリジン(Lys、K;極性、正)である。
【0064】
「負に」帯電したアミノ酸は:アスパラギン酸(Asp、D;極性、負)、及びグルタミン酸(Glu、E;極性、負)である。
【0065】
本発明の抗体又は抗原結合断片は、oxMIFを特異的に認識する少なくとも1つの結合部位を含み、可変重鎖及び軽鎖ドメインにおける標的化アミノ酸置換により、上記アミノ酸置換を欠損する非改変抗体と比較して低減された凝集傾向及び低減された疎水性を示す。
【0066】
凝集能の低減は、本明細書に記載の抗体の可変ドメイン内の選択された位置のアミノ酸置換による。
【0067】
抗体凝集のレベルは、マススペクトロメトリー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、動的光散乱(DLS)、光遮蔽(LO)、動的画像粒子解析(DIP A)技術、例えばマイクロフローイメージング(MFI)、及びコールターカウンター(CC)、示差走査蛍光定量法(DSF)を包含する様々な公知の技術を使用して測定されうる。
【0068】
低減された疎水性及び低減された凝集能は、本明細書中で使用する場合、本明細書で開示されるように配列番号44及び2、3を含む抗体C0008などの参照抗体と比較した、新しく設計した抗体の表面疎水性の低減及び低減された凝集能を指す。C0008の配列は、Proposed INN List 111(WHO Drug Information,Vol.28,No.2,2014)で公表されたイマルマブの配列を含有するが、C末端リジンを欠く。測定は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)又はアフィニティーキャプチャー自己相互作用ナノ粒子分光法(AC-SINS,Estep P.et al.,2015)を包含するが、これらに限定されない様々な公知の技術を使用して実施されうる。
【0069】
一実施形態において、低減された凝集能及び低減された疎水性を有する本発明のoxMIF抗体は、具体的には、Kabat付番に従う位置M30、F49、A51、P80、W93、具体的には、M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの1つ若しくは複数のアミノ酸置換を有する軽鎖可変ドメイン、或いは、配列番号3を含む重鎖可変ドメインと組み合わせて、又はKabat付番に従う位置L5、若しくはW97、具体的には、L5Q若しくはW97Yのアミノ酸置換を含む重鎖可変ドメインと組み合わせて、位置36にチロシンと、更に位置M30、F49、A51、P80、W93、具体的には、M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fでのアミノ酸置換のうちの少なくとも1つとを含む、配列番号2と少なくとも95、具体的には、少なくとも96、97、98又は99%配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、或いは、位置L5又はW97、具体的には、L5Q又はW97Yのアミノ酸置換の一方又は両方を更に含む1、2、3、4又は5アミノ酸置換を有する配列番号3を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0070】
代替の実施形態において、配列番号2を含む軽鎖可変ドメインは、36位のチロシンが保存され、更にアミノ酸のうちの少なくとも1つが、M30位、F49位、A51位、P80位、W93位で置換されるという条件で、1つ、2つ、3つ、4つ、5つのアミノ酸置換を有する。
【0071】
特定の実施形態によれば、アミノ酸W93は、F、Y、又はHによって置換される。
【0072】
更なる実施形態において、低減された凝集能及び低減された疎水性を有する本発明の抗oxMIF抗体は、具体的には、配列番号3、及び位置W97、具体的にはW97Yのアミノ酸置換、L5、具体的にはL5Qのアミノ酸置換、又はL5Q及びW97Yのアミノ酸置換を含む重鎖可変ドメイン、或いは、場合によりL5Qと組み合わせて、アミノ酸置換W97Yを更に含む1、2、3、4又は5アミノ酸置換を有する配列番号3を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0073】
特定の実施形態によれば、アミノ酸W97は、F、Y、又はHによって置換される。
【0074】
代替の実施形態において、配列番号3を含む重鎖可変ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つのアミノ酸置換を有し、更には、アミノ酸のうちの少なくとも1つが位置L5及びW93で置換される。
【0075】
好ましい実施形態において、低減された凝集能及び低減された疎水性を有する本発明の抗oxMIF抗体は、具体的には位置W93及びW97のアミノ酸置換を含む。
【0076】
軽鎖の位置36のチロシンは、具体的には未改変のままであり、本明細書に記載の抗体の結合特性を保存する。上記アミノ酸位置における任意の改変は、不要な損なわれた結合特性を生じうる。
【0077】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号5を含み、可変重鎖ドメインは、配列番号3、4、9、又は43の任意の1つ又は複数を含む。
【0078】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号6を含み、可変重鎖ドメインは、配列番号3、4、9、又は43の任意の1つ又は複数である。
【0079】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号7を含み、可変重鎖ドメインは、配列番号3、4、9、又は43の任意の1つ又は複数である。
【0080】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号8を含み、可変重鎖ドメインは、配列番号3、4、9、又は43の任意の1つ又は複数である。
【0081】
更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、上記に列挙した可変軽鎖及び重鎖ドメインのいずれか1つと組み合わせて、配列番号14及び18を含む。
【0082】
Fcγ受容体(FcγR)は、膜結合型表面受容体、非典型的な細胞内受容体及び細胞質糖タンパク質を含む、よく記載されているタンパク質ファミリーである。FcγRは、液性免疫及び自然免疫を制御し、感染への適切な応答、及び慢性炎症又は自己免疫疾患の予防に必須である。膜結合型受容体は、例えば、FcγRIIa、FcyRIIb、FcyRIIIa、及びFcyRIa受容体である。抗体は、FcγRとの相互作用により免疫応答を制御できる。
自然免疫エフェクター細胞では、活性化及び抑制性FcγRは、免疫複合体による細胞活性化の閾値を設定している。FcγRによって制御されるエフェクター応答の重要な例は、貪食、ADCC及び炎症性メディエーターの放出である。樹状細胞(DC)では、対になったFcγRの発現は、細胞成熟及び抗原提示を制御し、それによって間接的に細胞性免疫応答を制御している。B細胞では、抑制性FcγRIIBは、液性寛容の維持に必須である。これは、クラススイッチングされたメモリーB細胞、形質芽球又は形質細胞のレベルで後期チェックポイントとして働く。更に、FcγRIIBは、形質細胞の恒常性及び生存の制御に重要な役割を有している。抗体-FcγR相互作用は、活性化及び抑制性FcγRの発現レベルに影響を与えるいくつかの要因(例えば、サイトカイン)又は抗体-FcγR相互作用の親和性を変化させるいくつかの要因(例えば、差次的抗体グリコシル化)によって影響を受ける。特定のグリコシル化パターンによって、IgG分子は、炎症促進活性又は抗炎症活性を有しうる。重要なことに、抗体のグリコシル化は、免疫応答中に制御される。
【0083】
非典型的なFcγRは、新生児型Fc受容体(FcRn)及び細胞質糖タンパク質、例えば、補体因子C1qタンパク質である。FcRnは、内皮細胞によって発現され、ピノサイトーシスにより血流からの可溶性IgGを含む血清成分を内部移行させる。FcRnへのIgG結合は、pH依存性であり;エンドソーム構成成分内の酸性pH(pH6.0)は、IgGのFcRnへの結合を可能にする。細胞表面にリサイクルした後、生理学的pH(約pH7.2)でIgGはFcRnから解離し、血液循環に放出し戻され、それによりリソソーム分解から保護され、IgGの延長された半減期をもたらす。したがって、FcRnは、循環中のIgG及びアルブミンの維持に関与するトランスサイトーシスリサイクリング受容体として機能する。FcRn結合に関して減少された又はサイレンシングされたFcを生じるFc領域の改変は、当技術分野において公知であり、例えば、Kenanova V.et al.,2005及びPyzik M.et al.2019に記載される。
【0084】
本明細書中で使用する場合、「エフェクター機能」は、Fc受容体又はリガンドとの抗体Fc領域の相互作用から生じる生化学イベントを意味する。エフェクター機能は、限定はされないが、ADCC、ADCP、及びCDCを包含する。
【0085】
本明細書中で使用する場合、「エフェクター細胞」は、1つ又は複数のFc受容体を発現し、1つ又は複数のエフェクター機能を媒介する免疫系の細胞を意味する。エフェクター細胞としては、限定はされないが、単球、マイクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びT細胞が挙げられ、限定はされないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルを包含する任意の生物由来でありうる。本発明によれば、本明細書中に記載される抗oxMIF抗体は、重鎖定常領域、具体的にはFc領域において選択された位置でのアミノ酸置換により、サイレンシングされたエフェクター機能を有する。低減された補体及びFcγR媒介活性による、これらの抗体の減少された又はサイレンシングされたエフェクター機能は、低減又は消失された補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/又は抗体依存性細胞貪食(ADCP)を包含しうる。
【0086】
「Fc」又は「Fc領域」(又は断片結晶性領域)という用語は、本明細書中で使用される場合、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン(CH1ドメイン)を除く抗体の定常領域を含むポリペプチド、及び一部の場合においては、ヒンジの一部を指す。Fc領域は、抗体のC末端領域を指す。Fc領域は、抗体の2つの重鎖:A鎖及びB鎖の第2及び第3の定常ドメインに由来する、2つの同一のタンパク質断片から構成される。第2及び第3の定常ドメインは、それぞれ、CH2ドメイン及びCH3ドメインとして公知である。CH2ドメインは、A鎖のCH2ドメイン配列及びB鎖のCH2ドメイン配列を含む。CH3ドメインは、A鎖のCH3ドメイン配列及びB鎖のCH3ドメイン配列を含む。本明細書中で使用される場合、Fc領域は、ヒンジ領域又はその一部を含む。
【0087】
ヒトIgG Fc領域配列の「CH2ドメイン」は、通常、EU付番指標に従い、約アミノ酸231から約アミノ酸340まで伸びる。CH2ドメイン配列はユニークであり、別のドメイン配列と厳密には対合しない。むしろ、2つのN結合型分岐状炭水化物鎖が無傷の天然IgG分子の2つのCH2ドメイン配列の間に挟まれる。
【0088】
「CH3ドメイン」は、Fc領域配列中においてC末端残基からCH2ドメイン配列の鎖を含む(すなわち、EU付番指標に従い、IgGの約アミノ酸残基341から約アミノ酸残基447まで)。
【0089】
「機能性Fc領域」は、天然のFc領域の「エフェクター機能」及びFcRn結合を持つ。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞障害(ADCC)等を含む。そのようなエフェクター機能は、通常、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合されるFc領域を必要とし、当技術分野で公知の、及び本明細書中で開示される様々なアッセイを使用して評価されうる。
【0090】
「天然のFc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列に対して同一のアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ);天然配列のヒトIgG2 Fc領域及び天然配列のヒトIgG3 Fc領域並びにその自然発生の変異体を含む。
【0091】
「変異体Fc領域」は、「1つ又は複数のアミノ酸置換」によって天然のFc領域配列のものとは異なるアミノ酸配列を含む。変異体Fc領域配列は、天然のFc領域配列又は親ポリエペプチドのFc領域配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然のFc領域配列又は親ポリペプチドのFc領域配列において、約1から約20アミノ酸置換、及び好ましくは約1から約17アミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態において、本明細書中の変異体Fc領域配列は、天然のFc領域配列及び/又は親ポリペプチドのFc領域配列と少なくとも約80%の同一性、最も好ましくは、それと少なくとも約90%の同一性、より好ましくはそれと少なくとも約95%の同一性を持つ。
【0092】
特定の実施形態において、アミノ酸置換は、EU付番指標に従って、IgG1と関連してE233位、L234位、L235位、G236位、I253位、G237位、P238位、D265位、S267位、H268位、N297位、S298位、T299位、H310位、E318位、L328位、P329位、A330位、P331位及びH435位のいずれか1つにおいてである。
【0093】
エフェクター機能に関して減少された又はサイレンシングされたFcを生じるFc領域の改変は、当技術分野において公知であり、Saunders K.,2019及びLiu R. et al.,2020に記載される。
【0094】
代替の実施形態において、アミノ酸置換は、CH2ドメインにおけるL234F、H268Q、K274Q、Y296F、A327G、A330S、P331S及びCH3ドメインにおけるR355Q、K409R、Q419E、P445Lのいずれか1つ又は全ての位置にある。
【0095】
具体的には、本明細書中に記載されるFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、アミノ酸置換又は欠失の以下の組合せの1つ又は複数を含み、アグリコシル化抗体をもたらす:
i)L235、G237及びE318、具体的にはL235A、G237A及びE318A;
ii)L234、L235、具体的にはL234A、L235A;
iii)S228、L235、具体的にはS228P、L235E;
iv)G236、L328、具体的にはG236R、L328R;
v)S298、T299、具体的にはS298G、T299A;
vi)L234、L235、P331、具体的にはL234F、L235E、P331S;
vii)H268、V309、A330、P331、具体的にはH268Q、V309L、A330S、P331S;
viii)E233、L234、L235、G236、S267、具体的にはE233P、L234V、L235A、G236del、S267K;
ix)L234、L235、P329、具体的にはL234A、L235A、P329G;
x)V234、G237、P238、H268、A330、P331、具体的にはV234A、G237A、P238S、H268A、A330S、P331S;
xi)L234、L235、D265、具体的にはL234F、L235E、D265A;
xii)D265、具体的にはD265A;
xiii)G237、具体的にはG237A;
xiv)E318、具体的にはE318A;
xv)E233、具体的にはE233P、
xvi)G236、L328、具体的にはG236R、L328R;
xvii)L235、具体的にはL235E;
xviii)L234、L235、P331、具体的にはL234Q、L235F、P331S;
xix)L234、L235、G237、P238、H268、A330、P331、具体的にはL234A、L235A、G237A、P238S、H268A、A330S、P331S
xx)N297、具体的にはN297A、N297Q又はN297G。
【0096】
グリコシル化、O-及びN-グリコシル化は、Abの翻訳後修飾であり、環境因子、例えばストレス又は疾患、サイトカイン活性、及び自然免疫シグナル伝達受容体、例えば、Toll様受容体を含む、B細胞刺激の範囲によって制御されうる。親抗体のグリコシル化パターンは、当技術分野で周知の方法によって改変されうる。具体的には、O結合型グリコシル化部位は、CH2及びヒンジ領域に位置する。
【0097】
更なる実施形態において、アミノ酸置換は、CH2ドメインにおけるI253及びH310並びにCH3ドメインにおけるH435のいずれか1つ又は全ての位置にある。
【0098】
具体的には、本明細書に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、アミノ酸置換の以下の組合せの1つ又は複数:
i)I253A
ii)H310A
iii)H435、具体的には、H435A、H345Q又はH435R
iv)I253A及びH310A
v)I253A、H310A並びにH435Q、H435A、及びH435Rのうちの1つ
vi)H310A並びにH435Q、H435A、及びH435Rのうちの1つを含む。
【0099】
本明細書に記載のCHドメインにおけるサイレンシング及び更なる突然変異は、しかしながら、EU付番指標に従って相当する位置に野生型IgG2、IgG3又はIgG4のFcへも導入されうる。
【0100】
「アグリコシル化」という用語は、Fc領域がグリコシル化されていないことを示す。IgGアイソタイプの全てのヒト定常領域は、297位のアスパラギン残基においてグリコシル化されることが公知であり、Nグリコシル化モチーフ、アスパラギン297-X298-セリン299又はスレオニン299の一部を形成し、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸の残基である。グリカンは、七糖のコア及び可変伸長、例えば、フコース、ガラクトース、及び/又はシアル酸を有する。本発明の抗体は、したがって、酵素的な手段によってグリコシル化又は脱グリコシル化されない別のアミノ酸を有するそのような定常領域におけるアスパラギン297の置換によってアグリコシル化されうる。任意の他のアミノ酸残基を使用することができるが、アラニンが最も好ましい。或いは、アスパラギン297におけるグリコシル化は、モチーフの他の残基の1つを変更することによって、例えば、残基298をプロリンにより、又は残基299をセリン又はスレオニン以外の任意のアミノ酸により置換することによって防ぐことができる。この部位特異的変異誘発を実施するための技術は、当業者に周知であり、例えば、市販の部位特異的変異誘発キットを使用して実施されうる。
【0101】
「サイレンシングされたFc」という用語は、任意のFcγR、例えば、FcγRIIaH、FcγRIIaR、FcyRIIb、FcyRIIIaF、FcyRIIIaV、及びFcyRIa及び/又はFcRn受容体、並びに補体因子C1qタンパク質ヘの抗体の結合を低減又は除去する改変されたグリカンを生じるアミノ酸置換又はグリコシル化パターンの改変により、そのエフェクター機能及び/又はFcRn結合が低減又は除去される抗体のFc領域を指す。エフェクター機能及び/又はFcRn結合の低減又は除去を生じるこの結合のそのような低減又は除去は、典型的には、野生型IgG Fc領域によって媒介される。
【0102】
FcγRIIa、FcyRII、FcyRIIIa及びFcyRIa及び/又はFcRn受容体のいずれか1つ並びに補体因子C1qタンパク質などのFcγR結合が完全に消失する場合、「Fc null」という用語が本明細書中で使用されうる。
【0103】
大部分のFcサイレンシングは、突然変異を組み合わせることによって達成されうる。L234及びL235、これらの残基はヒンジ領域付近に位置し、アラニンによって置換されるとFcyR結合が低減する。例として、L234A及びL235AのP329Gとの組合せは、全てのFcyRアイソフォームについてFcyR相互作用のほぼ完全な阻害をもたらしうる。
【0104】
大きく低減された、サイレンシングされた、無視できる又は除去されたFcyR結合親和性及びC1q結合親和性を有するFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片は、親ポリペプチド又は天然のFc領域配列を含むポリペプチドと比較してFcyR結合活性及びC1q結合活性が減少されたものである。一部の実施形態において、大きく低減された、サイレンシングされた、無視できる又は除去されたFcR結合親和性及びC1q結合親和性を有するFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片は、親ポリペプチド又は天然のFc領域配列を含むポリペプチドと比較して、大きく低減された、サイレンシングされた、無視できる又は除去されたADCC、ADCP及びCDC活性も有する。減少された又は検出できないFcyRへの結合を示す、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片は、親ポリペプチドよりも低い親和性を有する全てのFcyRに結合しうる。FcyRへの減少した結合を示すそのような変異体は、FcyRへのわずかな又は感知できるほどではない結合を有しうる。特定の一実施形態において、変異体は、例えば、平衡乗数の変化によって測定した場合、天然のIgG Fc領域と比較してFcyRへの0~20%の結合を示す。一実施形態において、変異体は、天然のIgG Fc領域と比較してFcyRへの0~10%の結合を示す。一実施形態において、変異体は、天然のIgG Fc領域と比較してFcyRへの0~5%の結合を示す。一実施形態において、変異体は、天然のIgG Fc領域と比較してFcyRへの0~1%の結合を示す。
【0105】
サイレンシングされた補体活性を有する本明細書中に記載される抗体は、細胞ベースのCDCアッセイ、及びすなわち、SPR又はELISAによって決定された、低減されたか又は消失されたC1qへの結合によって決定されうる。
【0106】
減少したか又はサイレンシングされたCDC活性は、参照、すなわち、未改変の、野生型抗体、例えばC0008と比較して、少なくとも1.5倍、具体的には、少なくとも2倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、より具体的には、少なくとも10倍下方制御されることが決定される。
減少したADCC又はADCP活性は、参照抗体、すなわち、未改変の、野生型抗体、例えばC0008と比較して、少なくとも2倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、より具体的には、少なくとも10倍減少されることが決定された。
【0107】
特定の実施形態において、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片は、重鎖定常領域における選択された位置でのアミノ酸置換により、FcRnへの結合の低減を示す。本発明のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体のFcRnへの減少された結合は、循環において低減された半減期、及びより早いin vivoクリアランスをもたらす。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期決定は、当技術分野で公知の方法を使用しても実施されうる(例えば、Petkova,S.B.,et al.,2006を参照)。
【0108】
野生型IgG Fc領域を含む抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片と比較して減少されたFcRn結合を示すFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体、又はその抗原結合断片のFcドメインは、好ましくは、位置I253、H310、及びH435のいずれか1つの1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を含むFcドメインを含みうる。
【0109】
減少したFcRn結合(すなわち、親和性)は、参照抗体、すなわち、未改変の、野生型抗体、例えばC0008と比較して、少なくとも2倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、より具体的には、少なくとも10倍減少した結合(すなわち、親和性)であることが決定される。
【0110】
更なる実施形態において、更に大きなFcサイレンシングは、アミノ酸位置L234、L235、H310及びH435での突然変異を組み合わせることによって達成されうる。これらの残基は、Fc領域に位置し、FcyR相互作用のほぼ完全な阻害をもたらしうる。
【0111】
具体的には、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、Kabat,IMGT and MacCallum RM et al.,1996(CONTACT)に従い定義されたように表1Aに列挙されるCDRの任意の1つ又は複数を含む。
【0112】
【0113】
oxMIF結合特異性は、oxMIFへの選択的結合を決定するために適切な任意のアッセイ、例えば、oxMIFへの結合に関して、対照抗体、例えばイマルマブに対する任意の競合アッセイ、又は当技術分野で公知の、及び本明細書中で開示される様々なアッセイによって決定されうる。
【0114】
本明細書中の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、リンカー配列を有するか、又は有さない免疫グロブリンの重鎖及び/又は軽鎖の定常ドメイン及び/又は可変ドメインとして理解される抗体ドメインからなるか、若しくはそれらを含むポリペプチド又はタンパク質を包含する。上記用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体等の多特異性抗体、及びそれらが、所望の抗原結合活性を示す限り、すなわちoxMIFに結合する抗体断片を含むがこれらに限定されない各種抗体構造を包含する。用語は、融合タンパク質、例えば免疫毒素との融合体又は抗体コンジュゲート、例えばoxMIFに結合する抗体薬コンジュゲートも包含する。
【0115】
抗体ドメインは、天然の構造であるか又は変異誘発若しくは誘導体化によって改変され、例えば、抗原結合特性又は任意の他の特性、例えば安定性若しくは機能特性、例えばFc受容体、例えばFcRn及び/又はFcガンマ受容体への結合を改変する。ポリペプチド配列は、ループ配列によって結合された抗体ドメイン構造の少なくとも2つのベータ鎖からなるベータ-バレル構造を含む場合に、抗体ドメインであるとみなされる。
【0116】
「抗体」という用語は、それらの抗原結合誘導体、変異体及び断片を包含することが理解されよう。誘導体又は変異体は、本発明の1つ又は複数の抗体ドメイン又は抗体及び/又は本発明の抗体の任意のドメインが、他の抗体又は抗体型式等の1つ又は複数の他の結合タンパク質の任意の位置で融合されうる融合タンパク質の任意の組合せ、例えば、CDRループ、受容体ポリペプチド、更にはリガンド、スキャフォールドタンパク質、酵素、標識、毒素等を含む結合構造である。
【0117】
「抗体」という用語は、標的抗原oxMIFに対して結合特性を示すポリペプチド又はタンパク質について特に言及する。
【0118】
「抗体断片、抗原結合断片、抗原結合変異体又は抗体変異体」という用語は、交換可能に使用することができ、無傷の抗体が結合する抗原に結合する無傷の抗体の抗原結合部を含む無傷の抗体以外の分子、並びに抗体断片又は変異体から形成される本明細書に記載の変異体Fc領域を更に含む多特異性抗体を指す。抗原部の例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、単鎖抗体分子(例えばscFv)ディアボディ、cross-Fab断片;線状抗体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によれば、抗体断片又は変異体は、ヒンジ領域及び/又はリンカー(例えば(scFv)-Fc、(scFv)2-Fc、scFv/scFv-Fc、Fab/scFv-Fc、Fab/(scFv)2-Fc、Fab/Fab-scFv-Fc、Fab/Fab-crossFab-Fc、IgG-scFv及びIgG-(scFv)2)によって、サイレンシングされたFc部分又はサイレンシングされたFcドメインに融合される。
【0119】
更に、抗体断片は、VHドメインの特徴を有する、すなわち、VLドメインと一緒に集合することが可能であるか、又はVLドメインの特徴を有する、すなわち、機能性抗原結合部位に対してVHドメインと一緒に集合することが可能であり、それにより、完全長抗体の抗原結合特性を提供する単鎖ポリペプチドを含む。本明細書中で言及された抗体断片は、抗原結合領域、例えば、Fcab(商標)又はサイレンシングされたFc領域が第2の異なる抗原結合部位を含有するFcab(商標)によって置換されたIgG構造を有する全長抗体フォーマットを含有する1つ又は複数の構造ループ領域を含む、サイレンシングされたFcドメインも包含する。
【0120】
本明細書中で使用する場合、「Fab断片又はFab」は、軽鎖(CL)のVLドメイン及び定常ドメインを含む軽鎖断片、並びに重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。本発明の抗体は、少なくとも1つのFab断片を含むことができ、ここで、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換される。可変領域又は定常領域のいずれかの交換に起因して、上記Fab断片はまた、「cross-Fab断片」又は「クロスオーバーFab断片」とも称される。クロスオーバーFab分子の2つの異なる鎖組成が可能であり、本発明の抗体に含まれる:Fab重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されうる、すなわち、クロスオーバーFab分子はペプチド鎖から構成される。本発明によれば、Fabは、ヒンジ領域によって、サイレンシングされたFc部分又はサイレンシングされたFcドメインに融合される。
【0121】
本明細書中で使用する場合、「Fabアーム」は、サイレンシングされたFc部分又はサイレンシングされたFcドメインにヒンジ領域によって融合されるFab断片を指す。
【0122】
「(scFv)2」は、約50キロダルトンの単一のペプチド鎖上の、異なる抗体又は同じ抗体の単鎖可変断片(scFv)2つ、すなわち、4つ又は2つの異なる遺伝子からのアミノ酸配列からなる融合タンパク質である人工モノクローナル抗体を指す。
【0123】
「bs(scFv)2」は、約50キロダルトンの単一のペプチド鎖上の、標的抗原が異なる抗体の単鎖可変断片(scFv)2つ、すなわち、4つの異なる遺伝子からのアミノ酸配列からなる融合タンパク質である人工モノクローナル抗体を指す。
【0124】
「機能性変異体」又は「機能的に活性な変異体」という用語は、自然発生の対立遺伝子変異体、並びに突然変異体又は任意の他の非自然発生の変異体も包含する。当技術分野で公知のように、対立遺伝子変異体(又は相同体とも呼ばれる)は、核酸又はポリペプチドの生物機能を基本的に変更しない1つ若しくは複数のヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有するとして特徴付けられる核酸又はペプチドの代替形態である。具体的には、機能性変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸残基の置換、欠失及び/又は付加、又はこれらの組合せを含んでもよく、その置換、欠失及び/又は付加は保存的改変であり、抗原結合特性を変更しない。具体的には、本明細書中に記載される機能性変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個以下、又はまでのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、それは保存改変であり、抗体の機能を変更しない。具体的には、本明細書中に記載される機能的に活性な変異体は、15個まで、好ましくは10個又は5個までのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、それは保存的改変であり、抗体の機能を変更しない。
【0125】
機能性変異体は、ポリペプチド又はヌクレオチド配列における配列変更、例えば1つ又は複数の点突然変異によって得られ、ここで、配列変更は、本発明の組合せ中で使用される場合、未変更のポリペプチド又はヌクレオチド配列の機能を保持又は改善する。そのような配列変更は、(保存)置換、付加、欠失、突然変異及び挿入を包含しうるが、これらに限定されない。保存置換は、それらの側鎖及び化学特性と関連するアミノ酸ファミリー内で起こるものである。そのようなファミリーの例は、塩基性側鎖、酸性側鎖、非極性脂肪族側鎖、非極性芳香族側鎖、無電荷極性側鎖、小側鎖、大側鎖等を有するアミノ酸である。
【0126】
点突然変異は、1つ若しくは複数の個々のアミノ酸の欠失若しくは挿入によって、又は置換によるアミノ酸の交換によって、操作されていないアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列の発現をもたらすポリヌクレオチドの操作として特に認識される。
【0127】
特定の実施形態によれば、本明細書中に記載する抗体は、例えば、親和性タグ、溶解度増強タグ及びモニタリングタグであるが、これらに限定されない、精製及び/又は検出用の1つ又は複数のタグを含みうる。
【0128】
具体的には、親和性タグは、ポリヒスチジンタグ、ポリアルギニンタグ、抗体用のペプチド基質、キチン結合ドメイン、RNA分解酵素Sペプチド、プロテインA、β-ガラクトシダーゼ、FLAGタグ、Strep IIタグ、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)タグ、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、HAタグ、及びc-Mycタグからなる群から選択され、具体的には、タグは、1つ又は複数のHを含むHisタグ、例えば、ヘキサヒスチジンタグである。
【0129】
「融合される」又は「結合される」とは、構成成分(例えば、Fab分子及びFcドメインサブユニット)が、ペプチド結合によって、直接的に又は1つ若しくは複数のペプチドリンカーを介して連結されることを意味する。
【0130】
「リンカー」という用語は、本明細書中で使用する場合、ペプチドリンカーを指し、2、3、4、5、6、7又はそれ以上のアミノ酸長、好ましくは2アミノ酸長~10アミノ酸長、より好ましくは3アミノ酸長~5アミノ酸長を有するアミノ酸配列を有するペプチドであることが好ましい。
【0131】
「免疫グロブリン」という用語は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィドで結合されている2つの軽鎖及び2つの重鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。重鎖はそれぞれ、N末端からC末端に向かって、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて、重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、軽鎖はそれぞれ、N末端からC末端に向かって、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて、軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインを有する。IgGクラスの免疫グロブリンは、免疫グロブリンヒンジ領域を介して連結される本質的に2つのFab分子及びFcドメインからなる。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、又はμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプの1つに帰属させてもよく、それらのいくつかは、サブタイプ、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)に更に分類されうる。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの1つに帰属されうる。
【0132】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の供給源又は種に由来するのに対して、重鎖及び/又は軽鎖の残部が、異なる供給源又は種に由来する、通常は組換えDNA技法によって調製される抗体を指す。キメラ抗体は、ウサギ又はマウスの可変領域と、ヒト定常領域とを含みうる。キメラ抗体は、免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントと、免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントとを含む発現免疫グロブリン遺伝子の産物である。キメラ抗体を産生する方法は、従来の組換えDNAに関与し、遺伝子トランスフェクション技法が当該技術分野で周知である(Morrison,S.L.,et al.,1984)。
【0133】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって産生される抗体、又はヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト供給源に由来する抗体、又は他のヒト抗体コード配列のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を保有する。ヒト抗体のこの定義は、具体的に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を排除する。キメラ抗体及びヒト化抗体に関しても述べたように、「ヒト抗体」という用語はまた、本明細書中で使用する場合、例えば、「クラススイッチング」、すなわちFc部分の変化又は突然変異(例えば、IgG1からIgG4への変化、及び/又はIgG1/IgG4突然変異)によって、定常領域において修飾されるかかる抗体を含む。
【0134】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、HEK細胞、NS0若しくはCHO細胞等の宿主細胞から、又はヒト免疫グロブリン遺伝子にとってトランスジェニックな動物(例えば、マウス)から単離される抗体、或いは宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体等の、組換え手段によって調製、発現、創出又は単離されるヒト抗体全てを包含すると意図される。組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列配列に由来し、且つそれらに関連する一方で、天然ではin vivoでヒト抗体レパートリー内に存在しない可能性がある配列である。
【0135】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。概して、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループ由来である。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,1991に記載されるようなサブグループである。
【0136】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基、及びヒト化を受けたヒトフレームワーク領域(FR)からのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のそれに相当し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のそれに相当する。ヒト化抗体は場合によりヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含みうる。具体的には、ヒト化抗体の形態は、本発明によって包含され、定常領域が元の抗体の定常領域から更に修飾又は変更されて、すなわちC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合の低減又は消失に関して、新たな特性を発する。
【0137】
「二重特異性」という用語は、本明細書中で使用する場合、少なくともoxMIF抗原、並びに更なる抗原、例えば、限定はされないが、CD3又はHSG抗原などとの結合反応を指す。具体的には、二重特異性抗体は、特定の結合特性を有する少なくとも2つの部位を含むことができ、2つの異なる標的抗原、すなわちoxMIF及び更なる抗原が抗体によって認識される。例示的な二重特異性抗体フォーマットは、2つの結合部位を含むことができ、結合部位の各々が、異なる抗原、例えば、CD3又はHSG、並びにoxMIFと特異的に結合できる。更なる例示的な二重特異性フォーマットは、2つ超の結合部位を含むことができ、1つ又は複数の結合部位が、oxMIFと、1つ又は複数の異なる抗原、例えば、CD3又はHSGと特異的に結合できる1つ又は複数の結合部位と結合する。
【0138】
本発明による「二重特異性抗体」は、2つの異なる結合特異性を有する抗体である。二重特異性抗体は、本明細書に記載の完全長抗体又は抗体断片として調製できるが、しかし、サイレンシングされたFc領域を依然として含む。免疫グロブリンFcヘテロ二量体は、CH3ドメイン界面への改変により操作することができ、CH3変異体対を持つ操作したFc断片がホモ二量体よりもヘテロ二量体を優先的に形成するような異なる突然変異を各ドメイン上に有する(Ha J-H.et al.,2016)。二重特異性抗体フォーマットの例は、Spiess C.et al.,2015、及びBrinkmann U.and Kontermann R.E.,2017に記載されているような、二重特異性IgG(BsIgG)、すなわち、更なる抗原結合部分を付加したIgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質、BsAbコンジュゲート、ハイブリッドbsIgG、改変Fc融合タンパク質、付加IgGs-HC融合体、付加IgGs-LC融合体、付加IgGs-HC&LC融合体、Fc融合体、CH3融合体、F(ab’)2融合体、CH1/CL、改変IgG、Fc改変IgG、ディアボディなどを包含しうるが、これらに限定されない。
【0139】
本明細書に記載の二重特異性抗体又は抗体断片を包含する代替の実施形態において、「IgG-scFv」という用語は、二重特異性を目的として1つのscFvを単一特異性免疫グロブリンG(IgG)に融合することによって操作された二重特異性抗体の一種を指す。本発明によれば、二重特異性抗体は、Fcサイレンシングされており、すなわち、本明細書に記載の1つ若しくは複数のアミノ酸置換又はグリコシル化修飾を有する、野生型ヒトIgGの変異体Fc領域を含む。IgGの特異性はoxMIFに対するものであり、scFvの特異性はCD3又はHSGに対するものである場合があり、或いはその逆の場合もある。更に、軽鎖又は重鎖のうちの1つのアミノ末端又はC末端のいずれかは、scFvを付加でき、多様なタイプのIgG-scFv二重特異性抗体(BsAb):(i)IgG(H)-scFv、すなわち、完全長IgG HCのうちの1つのC末端に結合したscFv;(ii)scFv-(H)IgG(これはscFvがHCのN末端に結合している以外は、IgG(H)-scFvと同じである);(iii)IgG(L)-scFv又は(iv)scFv-(L)IgG、すなわち、IgG軽鎖のC末端又はN末端に結合されたscFv(これはそれぞれIgG(L)-scFv又はscFv-(L)IgGを形成する)が形成される。具体的には、IgG-scFvは、165kDa~185kDaの範囲であり、具体的には、約175kDaである。
【0140】
代替の実施形態によれば、組換え可変ドメイン、例えば、ディアボディをサイレンシングされたFc領域に融合すること(例えばscDb-Fc)は、結合価を顕著に増加させうる。サイズの増加はまた、血清中のディアボディの半減期を延長させることができる。
「ディアボディ」という用語は、小さなペプチドリンカーによって結合される重鎖可変(VH)及び軽鎖可変(VL)領域からなる単鎖Fv(scFv)断片の非共有結合的二量体を指す。ディアボディの別の形態は、2つのscFV断片が互いに共有結合的に連結される単鎖(FV)2である。更に、内部リンカーを用いて、各鎖における遺伝子をタンデムに連結させることによって、4つのVH及びVLドメインは、タンデムに発現されて、単鎖ディアボディ(scDb)としてフォールディングさせることができ、これはまた、二重特異性抗体産生にとって有効な戦略である。具体的には、ディアボディ-CH3は、約125kDaを有する。
【0141】
特定の実施形態において、Fab/bs(scFv)2-Fcという用語は、一方のFabアームがbs(scFv)2によって置換されるが他方のIgGアームが保存されているIgGである二重特異性抗体を指す。
【0142】
特定の実施形態において、Fab/scFv-Fcという用語は、一方のFabアームがscFvによって置換されるが他方のIgGアームが保存されているIgGである二重特異性抗体を指す。
図12に概略的に示される本明細書に記載の抗体C0132は、Fab/scFv-Fcの非限定的な例として機能する。
【0143】
特定の実施形態において、Fab/Fab-scFv-Fcという用語は、一方のFabアームがFab-scFvによって置換されるが他方のIgGアームが保存されているIgGである二重特異性抗体を指す。
図12に概略的に示される本明細書に記載の抗体C0133は、Fab/Fab-scFv-Fcの非限定的な例として機能する。
【0144】
「CrossMab」(ここで、Mabはモノクローナル抗体を指す)という用語は、独立した親の抗体に由来する二重特異性Abのフォーマットである。重鎖の誤対合は、KIH(knobs-into-holes)法を適用することで回避される。軽鎖の誤対合は、二重特異性抗体が抗体ドメイン交換によって産生されるが、1つのFabアームの可変ドメイン又は定常ドメイン(CL及びCH1)のいずれかを軽鎖と重鎖との間で入れ替えるので避けられる。この「クロスオーバー」は、抗原結合親和性を維持し、また、軽鎖の誤対合を回避するために2つの異なるアームも保存する。CrossMabの例は、異なる領域で交換したFab、VH-VL及びCH1-CLでありうるが、限定はされない。CrossMAb Fabでは、VH-CH1及びVL-CL領域の全てが交換され;CrossMAb VH-VLフォーマットでは、VH領域及びVL領域のみが交換され;CrossMAb CH1-CL1フォーマットでは、二重特異性抗体のCH1及びCL領域が交換される。具体的には、CrossMabは約150kDaである。
【0145】
本発明のoxMIF抗体は、例えば、CD3の更なるエピトープ、具体的には、細胞表面上に存在するCD3γ(ガンマ)鎖、CD3δ(デルタ)鎖、及びCD3ε(イプシロン)鎖を含むヒトCD3のエピトープを特異的に認識する少なくとも1つの結合部位を更に含みうる。例えば、固定化された抗CD3抗体によるT細胞上のCD3のクラスター形成は、T細胞受容体の結合と類似しているがそのクローンの典型的な特異性とは独立しているT細胞活性化をもたらす。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体のCD3結合ドメインは、ヒトCD3との強力なCD3結合親和性を示すだけでなく、それぞれのカニクイザルCD3タンパク質との優れた交差反応性も示す。一部の例では、抗体のCD3結合ドメインは、カニクイザルからのCD3と交差反応する。一実施形態において、抗CD3結合部位は、本明細書に記載の抗CD3結合ドメインの1つ若しくは複数の(例えば3つ全ての)軽鎖相補性決定領域及び/又は本明細書に記載の抗CD3結合ドメインの1つ若しくは複数の(例えば3つ全ての)重鎖相補性決定領域を含み、例えば、1つ又は複数の、例えば3つ全てのLC CDR、及び1つ又は複数の、例えば3つ全てのHC CDRを含む抗CD3結合ドメインを含む。
【0146】
更なる実施形態によれば、抗体は、エフェクターT細胞、NK細胞又はマクロファージ上に発現する1つ又は複数の抗原、具体的には、CD3、ADAM17、CD2、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11a、CD11b、CD14、CD16、CD16b、CD25、CD28、CD30、CD32a、CD40、CD 40L、CD44、CD45、CD56、CD57、CD64、CD69、CD74、CD89、CD90、CD137、CD177、CEAECAM6、CEACAM8、HLA-DRα鎖、KIR、LSECtin又はSLC44A2のうちの1つ又は複数、或いは1つ又は複数のハプテン抗原、すなわちHSGを特異的に認識する1つ又は複数の更なる結合部位を含みうる。
【0147】
代替の実施形態によれば、本発明の抗体は、モスネツズマブ、パソツキシズマブ(pasotuxizumab)、シビサタマブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ又はフォラルマブの1つ又は複数のCD3可変結合ドメインを更に含む二重特異性抗体である。
【0148】
特定の実施形態によれば、抗CD3結合部位は、ムロモナブ-CD3(OKT3)、オテリキシズマブ(TRX4)、テプリズマブ(MGA031)、ビジリズマブ(Nuvion)、ソリトマブ(solitomab)、ブリナツモマブ、パソツキシズマブ、シビサタマブ、モスネツズマブ、SP34、X35、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111-409、CLB-T3.4.2、TR-66、WT32、SPv-T3b、11D8、XIII-141、XIII-46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW2-4B6、OKT3D、M-T301、SMC2、F101.01、UCHT-1及びWT-31からなる群から選択される相補性決定領域(CDR)、並びに、該当する場合、その任意のヒト化誘導体を含む。
【0149】
具体的には、本発明によるCD3結合ドメインとして、抗CD3可変領域の1つ又は複数のCDR、或いはムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ、ソリトマブ、ブリナツモマブ、パソツキシズマブ、シビサタマブ、モスネツズマブのCDR配列のいずれかと少なくとも70%、具体的には、80%、90%、95%又は99%配列同一性を含む又は有するCDRが使用できる。
【0150】
CD3に結合する上記特異的なCDRは以下の通りである:
【0151】
【0152】
【0153】
より具体的には、二重特異性抗oxMIF/抗CD3抗体は、上記に列挙したCDR配列の各々において0、1、又は2つの点突然変異を含む。
【0154】
更なる特定の実施形態は、抗oxMIF/抗CD3 bs(scFv)2を指し、相当する可変重鎖領域(VH)及び相当する可変軽鎖領域(VL)の領域が、VH(oxMIF)-VL(oxMIF)-VH(CD3)-VL(CD3)、VH(CD3)-VL(CD3)-VH(oxMIF)-VL(oxMIF)又はVH(CD3)-VL(CD3)-VL(oxMIF)-VH(oxMIF)の順序でN末端からC末端へと配置されている。本発明によれば、bs(scFv)2は、ヒンジ領域によって、サイレンシングされたFc部分又はサイレンシングされたFcドメインに融合される。
【0155】
更なる実施形態によれば、本発明のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体は、HSG(ヒスタミン-スクシニル-グリシン)ハプテンを特異的に更に認識する少なくとも1つの結合部位を更に含みうる。
【0156】
特定の実施形態によれば、抗HSG結合部位は、マウス(m)抗HSG抗体679(m679)から選択される相補性決定領域(CDR)、及び該当する場合、その任意のヒト化(hz)誘導体を含む。
【0157】
そのような二重特異性抗oxMIF抗体は、以下の表3及び4に列挙したCDRを含むHSGを特異的に認識する結合部位を含みうる(hz抗HSG抗体679(hz679)配列はUS2009/0240037A1からのものである)。
【0158】
【0159】
【0160】
より具体的には、二重特異性抗oxMIF/抗HSG抗体は、上記に列挙したCDR配列の各々において0、1、又は2つの点突然変異を含む。
【0161】
更なる特定の実施形態は、抗oxMIF/抗HSG bs(scFv)2を指し、相当する可変重鎖領域(VH)及び相当する可変軽鎖領域(VL)の領域が、VH(oxMIF)-VL(oxMIF)-VH(HSG)-VL(HSG)、VH(HSG)-VL(HSG)-VH(oxMIF)-VL(oxMIF)又はVH(HSG)-VL(HSG)-VL(oxMIF)-VH(oxMIF)の順序でN末端からC末端へと配置されている。本発明によれば、bs(scFv)2は、ヒンジ領域によって、サイレンシングされたFc部分又はサイレンシングされたFcドメインに融合される。
【0162】
更なる実施形態において、抗体は、具体的には、二重特異性IgG、CD3又はHSG結合部位を付加したIgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質、BsAbコンジュゲートからなる群から選択されるFcサイレンシングされた二重特異性抗体である。
【0163】
直接放射線標識した抗体は、固形腫瘍では血液クリアランスが遅く、腫瘍取り込みが遅れるため、健康な組織及び臓器への放射線用量暴露が継続的に高くなる。In vivo PRAIT(pretargeted radioimmunotherapy)は、これらの制限を克服することを可能とするが、PRAITのためのbsMabフォーマットの選択及び設計は、依然として困難である。PRAITは、直接放射線標識した抗体又は抗体断片と比較して腫瘍への吸収用量の送達を増加させることにより治療指数(腫瘍対正常組織比)を改善することを目的としている。PRAITは、HSG及び腫瘍標的に対するbsMabを投与し、続けて、数日後に放射線標識した二価HSGハプテンを投与することを含む。この技術を使用すると、相当量のbsMabが腫瘍に蓄積し、循環から大幅にクリアされ、放射能標識した二価HSGハプテンが腫瘍に蓄積したbsMAbに結合する一方、非結合放射能HSGハプテンが数時間以内に腎臓によって循環からクリアされる。したがって、放射能への正常臓器の暴露が最小限に抑えられる(US2005/0025709、Sharkey RM et al.,2005、Rossi EA et al,and Karacay H.et al,2005)。
【0164】
標的化放射性核種治療には、例えば、HSGハプテンIMP288(US2005/0025709に記載されるような)及び177Luを放射性核種として使用できる。IMP288は、DOTAコンジュゲートD-Tyr-D-Lys-D-Glu-D-Lys-NH2テトラペプチドであり、両リジン残基がε-アミノ基を介してHSG部分で誘導体化されている。
【0165】
「抗原」という用語は、本明細書中で「標的」又は「標的抗原」という用語と交換可能に使用される場合、抗体結合部位によって認識される全標的分子又はかかる分子の断片を指す。具体的には、抗原の下部構造、一般的に、免疫学的に関連性のある「エピトープ」、例えばB-細胞エピトープ又はT細胞エピトープと称される抗原、例えば、ポリペプチド又は炭水化物構造は、かかる結合部位によって認識されうる。
【0166】
「エピトープ」という用語は、本明細書中で使用する場合、特に、特異的な結合パートナーを完全に構成しうるか、又は本発明の抗体型式の結合部位に対する特異的な結合パートナーの一部でありうる分子構造を指す。エピトープは、炭水化物、ペプチド構造、脂肪酸、有機物質、生化学物質若しくは無機物質又はそれらの誘導体及びそれらの任意の組合せで構成されうる。エピトープが、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質等のペプチド構造に含まれる場合、エピトープは通常、少なくとも3アミノ酸、具体的には5アミノ酸~40アミノ酸、及び具体的には10アミノ酸以下、具体的には4アミノ酸~10アミノ酸を含む。エピトープは、線状エピトープ又は立体構造的エピトープのいずれかでありうる。線状エピトープは、ポリペプチド又は炭水化物鎖の一次配列の単一セグメントで構成される。線状エピトープは、近接しうるか、又は重複しうる。立体構造的エピトープは、ポリペプチドをフォールディングして、三次構造を形成することによって一緒にまとめられたアミノ酸又は炭水化物で構成され、アミノ酸は、線状配列において、必ずしも互いに隣接するとは限らない。かかるoxMIFエピトープは、oxMIFの中心領域内に位置する配列EPCALCS(配列番号42)でありうる。
【0167】
「抗原結合ドメイン」又は「結合ドメイン」又は「結合部位」という用語は、抗原の一部又は全てに特異的に結合し、また抗原の一部又は全てに相補的な区域を含む抗原結合部分の一部を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、抗原の特定の部分にのみ結合する場合があり、その特定の部分は、エピトープと称される。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって提供されうる。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と、抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。
【0168】
「結合部位」という用語は、本発明の抗体に関して本明細書中で使用する場合、抗原と結合相互作用が可能な分子構造を指す。通常、結合部位は、各種抗原に結合機能を付与する様々な構造を有する特異的な領域である、本明細書中で「CDR結合部位」とも称される抗体の相補性決定領域(CDR)内に位置する。様々な構造は、抗体の天然レパートリー、例えば、マウス又はヒトレパートリーに由来しうるか、或いは例えば突然変異誘発によって、具体的には無作為化技法によって、組換え的に又は合成的に産生されうる。これらには、突然変異誘発されたCDR領域、可変抗体ドメインのループ領域、特に、抗体のCDRループ、例えばVL及び/又はVH抗体ドメインのいずれかのCDR1、CDR2及びCDR3ループが包含される。本明細書により使用される場合の抗体型式は通常、それぞれが抗原に特異的な1つ又は複数のCDR結合部位を含む。
【0169】
本明細書中に記載される抗体のoxMIF結合部位は、MIFの酸化形態に、すなわち動物、具体的には哺乳動物oxMIF、例えば、限定はされないがマウス、ラット、サル及びヒト、具体的にはヒトoxMIFに特異的であるが、還元型MIFの実質的な交差反応性を示さない。oxMIFは、炎症性疾患を有する対象の循環及び癌患者の腫瘍組織において、特異的に且つ優勢に検出されうるMIFの疾患関連の構造アイソフォームである。一実施形態において、ヒト化又はヒト抗oxMIF結合部位は、本明細書中に記載するヒト化又はヒト抗oxMIF結合ドメインの1つ又は複数の(例えば、3つ全ての)軽鎖相補性決定領域、例えば、配列番号2、5、6、7又は8に含まれるCDR及び/又は本明細書中に記載するヒト化又はヒト抗oxMIF結合ドメインの1つ又は複数の(例えば、3つ全ての)重鎖相補性決定領域、例えば配列番号3、4、9、又は43を含む。
【0170】
「特異的な」という用語は、本明細書中で使用する場合、分子の異種集団において目的の同族リガンドを決定する結合反応を指す。本明細書中では、結合反応は、少なくともoxMIF抗原との反応である。したがって、指定条件、例えば、イムノアッセイ条件下で、特定の標的に特異的に結合する抗体は、試料中に存在する他の分子に、著しい量では結合せず、具体的には、その抗体は、還元型MIFへの実質的な交差反応性を示さない。
【0171】
特異的な結合部位は通常、他の標的と交差反応しない。依然として、特異的な結合部位は、標的の1つ又は複数のエピトープ、アイソフォーム又は変異体に特異的に結合しうるか、又は他の関連標的抗原、例えば、相同体若しくは類似体に対して交差反応でありうる。
【0172】
特異的な結合は、結合が、選択に応じて、標的同一性、高、中若しくは低の親和性又はアビディティに関して選択されることを意味する。選択的な結合は通常、oxMIF等の標的抗原に対する結合定数又は結合動態が、標的抗原ではない抗原に対する結合定数又は結合動態と比較して、少なくとも10倍異なり、好ましくは、その差が少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも1000倍である場合に達成される。
【0173】
「価」という用語は、本出願内で使用する場合、抗体分子における指定数の結合部位の存在を意味する。したがって、「二価」、「四価」、及び「六価」という用語は、抗体分子における、それぞれ、2つの結合部位、4つの結合部位、及び6つの結合部位の存在を表す。
【0174】
「一価」という用語は、抗体の結合部位に関して本明細書中で使用する場合、標的抗原に対して向けられた唯一の結合部位を含む分子を指す。したがって、「結合価」という用語は、同じ標的抗原に対して向けられる抗原の同じ又は異なったエピトープに特異的に結合する結合部位の数として理解される。
【0175】
本発明の抗体は、oxMIFを特異的に結合する一価、二価、四価又は多価の結合部位を含むと理解される。
【0176】
「超可変領域」又は「HVR」という用語は、本明細書中で使用する場合、配列において超可変性であり、及び/又は構造的に規定されるループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域それぞれを指す。概して、自然四鎖抗体は、VHにおける3つ(H1、H2、H3)、及びVLにおける3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。HVRは概して、超可変ループ由来及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は、最も高い配列可変性を有し、及び/又は抗原認識に関与する(Kabat et al.,1991)。超可変領域(HVR)はまた、相補性決定領域(CDR)とも称され、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域部分に関連して、本明細書中で交換可能に使用される。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列及びサイズに応じて様々である。抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを含むかどうかを、当業者は日常的に決定することができる。
【0177】
Kabatは、任意の抗体に適用可能な可変領域配列に対する付番システムを規定した。当業者は、「Kabat付番」のこのシステムを、配列自体を超えるいかなる実験データに頼らずに、任意の可変領域配列に一義的に帰属させることができる。残基のKabat付番は、「標準」Kabat付番配列との、抗体の配列の相同性の領域におけるアライメントにより、所与の抗体について決定されうる。本明細書中で使用する場合、「Kabat付番」は、Kabat et al.,1983,U.S.Dept.of Health and Human Services,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」によって記載される付番システムを指す。別記しない限り、抗体可変領域における特定のアミノ酸残基位置の付番への言及は、Kabat付番システムに従う。定常領域の付番は、EU付番指標に従う。
【0178】
CDRはまた、「特異性決定残基」又は「SDR」を含み、これらは、抗原と接触する残基である。SDRは、簡易CDR、又はa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に含有される。別記されない限り、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書中では上述のKabatらに従って付番される。CDRの決定は、IMGTに従って行うこともできる(Lefranc MP.1997)。IMGTは、フレームワーク領域(FR-IMGTと命名)及びCDR(CDR-IMGTと命名)に対して独自の定義を有している。IMGT付番方法は、生殖系列V配列アラインメントに基づいて、残基を1から128まで連続的に数える。
【0179】
CDR(又はSDR)はまた、MacCallum RM et al.,1996に従って決定することもできる。本明細書中では、抗原接触残基を解析し、Protein Data Bankから入手可能な抗体Fv及びFabの結晶構造中の部位形状を組み合わせる。抗原接触傾向を各抗体残基で示すことで、観察された抗原接触に基づいてCDRの定義を提唱することができる。接触は、組合せ部位の中心に位置するCDR残基でより一般的であり;接触は、いくつかのあまり中心にないCDR残基では大きな抗原によってのみ生じる。CDR中の非接触残基は、Chothia及び共同研究者ら(Chothia C et al.,1987)によって「典型的」立体構造を定義するのに重要であると同定された残基と一致する。
【0180】
「点突然変異」は、種々のアミノ酸に関して1つ又は複数の単一(不連続)アミノ酸或いは二重アミノ酸の置換又は交換、欠失又は挿入における、操作されていないアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列の発現をもたらすポリヌクレオチドの操作として特に認識される。好ましい点突然変異は、同じ極性及び/又は電荷のアミノ酸の交換を指す。これに関して、アミノ酸は、61個のトリプレットコドンによってコードされる20個の天然に存在するアミノ酸を指す。これら20個のアミノ酸は、中性電荷、正電荷、及び負電荷を有するアミノ酸に分割することができる。
【0181】
本明細書中で同定されるポリペプチド配列に関する「パーセント(%)の配列同一性」は、最大のパーセントの配列同一性を達成するように、必要に応じて、配列を整列させて、ギャップを導入した後の、特定のポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントとして定義され、配列同一性の一部として、いかなる保存的置換も考慮しない。当業者は、比較される配列の完全長にわたる最大の整列を達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0182】
本発明によれば、可変又は定常領域配列の配列同一性は、本明細書中に記載する各々の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%である。
【0183】
「対象」は哺乳動物である。哺乳動物として、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、個体又は対象はヒトである。
【0184】
「単離核酸」は、その天然環境の構成成分と分離された核酸分子を指す。単離核酸は、核酸分子を通常含有する細胞中に含有される核酸分子を包含するが、核酸分子は、染色体外で、又はその天然染色体位置とは異なる染色体位置で存在する。
【0185】
「抗oxMIF抗体をコードする単離核酸」は、単一ベクター又は別々のベクター中にかかる核酸分子を包含する、抗体重鎖及び軽鎖(又はそれらの断片)をコードする1つ又は複数の核酸分子、及び宿主細胞における1つ又は複数の位置で存在するかかる核酸分子を指す。
【0186】
「実質的な交差反応なし」は、分子(例えば、抗体)が、特に当該標的抗原と比較した場合に、分子(例えば、標的抗原に密接に関連した抗原)の実際の標的抗原とは異なる抗原、具体的には還元型MIFを認識しないか、又は特異的に結合しないことを意味する。例えば、抗体は、実際の標的抗原とは異なる抗原に、約10%未満~約5%未満結合しうるか、又は約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%、又は0.1%未満、好ましくは約2%、1%、又は0.5%未満、最も好ましくは約0.2%又は0.1%未満の実際の標的抗原とは異なる抗原からなる量で、実際の標的抗原とは異なる抗原を結合しうる。結合は、例えばELISA又は表面プラズモン共鳴であるが、これらに限定されない当該技術分野で既知の方法によって決定されうる。
【0187】
本発明の抗体の組換え産生は、好ましくは、例えば、抗体型式をコードするヌクレオチド配列を含む発現構築物又はベクターを包含する発現系を含む。
【0188】
「発現系」という用語は、動作可能な連結で所望のコード配列及び制御配列を含有する核酸分子を指し、その結果、これらの配列で形質転換又はトランスフェクトされた宿主は、コードされるタンパク質を産生することが可能である。形質転換を達成するためには、発現系は、ベクター上に含まれうるが、続いて、関連DNAは、宿主染色体に組み込まれうる。或いは、発現系は、in vitroでの転写/翻訳に使用することができる。
【0189】
本明細書中で使用する「発現ベクター」は、適切な宿主生物におけるクローニングされる組換えヌクレオチド配列の、すなわち組換え遺伝子の転写、及びそれらのmRNAの翻訳に必要とされるDNA配列と定義される。発現ベクターは、発現カセットを含み、更に、宿主細胞における自己複製のための起源又はゲノム組み込み部位、1つ又は複数の選択可能マーカー(例えば、アミノ酸合成遺伝子又はゼオシン、カナマイシン、G418又はハイグロマイシン等の抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子)、多数の制限酵素切断部位、適切なプロモーター配列及び転写終結因子を通常含み、これらの構成成分は、動作可能に一緒に連結される。「プラスミド」及び「ベクター」という用語は、本明細書中で使用する場合、自己複製ヌクレオチド配列及びゲノム組み込みヌクレオチド配列を包含する。
【0190】
具体的には、上記用語は、DNA又はRNA配列(例えば、外来遺伝子)、例えば本発明の抗体型式をコードするヌクレオチド配列が、宿主を形質転換するように宿主細胞に導入され、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進しうるビヒクルを指す。プラスミドは、本発明の好ましいベクターである。
【0191】
ベクターは通常、外来遺伝子が挿入される伝播性物質のDNAを含む。DNAの一方のセグメントを、DNAの別のセグメントに挿入する一般的な方法は、制限部位と呼ばれる特定の部位(ヌクレオチドの特定の基)でDNAを切断する制限酵素と呼ばれる酵素の使用を包含する。
【0192】
「カセット」は、規定の制限部位でベクターに挿入されうる発現産物をコードするDNAのDNAコード配列又はセグメントを指す。カセット制限部位は、適正なリーディングフレームにおけるカセットの挿入を保証するよう設計されている。概して、外来DNAは、ベクターDNAの1つ又は複数の制限部位で挿入され、続いて、ベクターによって伝播性ベクターDNAと一緒に宿主細胞へ運搬される。発現ベクター等のDNAが挿入又は付加されたDNAのセグメント又は配列はまた、「DNA構築物」とも呼ばれうる。ベクターの一般的なタイプはプラスミドであり、これは概して、更なる(外来)DNAを容易に受け入れることができる二重鎖DNAの自己完結式分子であり、適切な宿主細胞に容易に導入されうる。本発明のベクターは多くの場合、コードDNA及び発現制御配列、例えば、プロモーターDNAを含有し、外来DNAを挿入するのに適した1つ又は複数の制限部位を有する。コードDNAは、本発明の抗体型式等の特定のポリペプチド又はタンパク質に関する特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始するか、調節するか、又は他の場合には媒介するか、若しくは制御するDNA配列である。プロモーターDNA及びコードDNAは、同じ遺伝子由来であってもよく、又は異なる遺伝子由来であってもよく、同じか、又は異なる生物由来であってもよい。本発明の組換えクローニングベクターは多くの場合、クローニング若しくは発現用の1つ又は複数の複製系、宿主における選択用の1つ又は複数のマーカー、例えば抗生物質耐性、及び1つ又は複数の発現カセットを包含する。
【0193】
例えば、本発明の要素を提供又はコードするDNA配列、及び/又は目的のタンパク質、プロモーター、終結因子及び更なる配列をそれぞれライゲーションして、組み込み又は宿主複製に必要な情報を含有する適切なベクターにそれらを挿入するのに使用される手順は、当業者に周知であり、例えば、Sambrook et al.,2012に記載される。
【0194】
宿主細胞は、具体的には、本発明によるベクター等の発現構築物でトランスフェクトされた細胞、組換え細胞又は細胞株と理解される。
【0195】
「宿主細胞株」という用語は、本明細書中で使用する場合、長期間にわたって増殖する能力を獲得した特定の細胞型の樹立されたクローンを指す。宿主細胞株という用語は、本発明の組換え抗体型式等のポリペプチドを産生するように内因性又は組換え遺伝子を発現するのに使用される場合の細胞株を指す。
【0196】
「産生宿主細胞」又は「産生細胞」は、産生プロセスの産物である本発明の組換え抗体型式を得るように、バイオリアクターにおける培養のための使用準備済の細胞の細胞株又は培養物であると一般的に理解される。本発明による宿主細胞型は、任意の原核細胞又は真核細胞でありうる。
【0197】
「組換え」という用語は、本明細書中で使用する場合、例えば、具体的には組換えベクター又は組換え宿主細胞において取り込まれた異種配列を用いた「遺伝子操作によって調製されること」又は「遺伝子操作の結果」を意味する。
【0198】
本発明の抗体は、任意の既知の十分に樹立された発現系及び組換え細胞培養偽術を使用して、例えば、細菌宿主(原核生物系)又は酵母、真菌、昆虫細胞若しくは哺乳動物細胞等の真核生物系における発現によって産生されうる。本発明の抗体分子は、ヤギ、植物又はヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きな断片を有し、且つマウス抗体産生を欠損している操作されたマウス株であるトランスジェニックマウス等のトランスジェニック生物において産生されうる。抗体はまた、化学合成によって産生されてもよい。
【0199】
特定の実施形態によれば、宿主細胞は、CHO、PerC6、CAP、HEK、HeLa、NS0、SP2/0、ハイブリドーマ及びジャーカットからなる群から選択される細胞の産生細胞株である。より具体的には、宿主細胞はCHO細胞から得られる。
【0200】
本発明の宿主細胞は、具体的には、例えば、血清に代わるものとして、血漿タンパク質、ホルモン及び成長因子等の他の構成成分を含む無血清培養物中で培養又は維持される。
【0201】
宿主細胞は、樹立されて、適応されて、無血清下で、任意選択により、動物起源のいかなるタンパク質/ペプチドも含まない培地中で完全に培養される場合に最も好ましい。
【0202】
本発明の抗oxMIF抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して、培養培地から回収されうる。
【0203】
「医薬製剤」という用語は、調製物中に含有される有効成分の生物活性が有効であるのを可能にするような形態で存在し、製剤が投与される対象にとって受け入れられないほど毒性である更なる構成成分を含有しない調製物を指す。
【0204】
「薬学的に許容可能な担体」は、対象にとって無毒性である有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体のいくつかの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、グリシン若しくはヒスチジンなどのアミノ酸、デキストロース、グリセロール、エタノール等、並びにそれらの組合せである。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール等のポリアルコール、又は塩化ナトリウムを包含することが好適である。薬学的に許容可能な物質の更なる例は、湿潤剤、又は少量の、湿潤剤若しくは乳化剤、防腐剤又は緩衝液等の補助物質であり、これらは、抗体の寿命又は有効性を高める。
【0205】
本明細書中で使用する場合、「治療」、「治療する」又は「治療すること」は、治療される個体の自然経過を変更しようとする臨床的介入を指し、予防のため、又は臨床病理の経過中に実施されうる。治療の所望の効果として、疾患の発症又は再発の防止、症状の軽減、疾患の任意の直接的若しくは間接的な病理学的帰結の減少、転移の予防、疾患進行の速度の減少、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の向上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせるのに、又は疾患の進行を減速させるのに使用される。
【0206】
本発明の抗oxMIF抗体及びそれを含む医薬組成物は、1つ又は複数の他の治療剤、診断剤又は予防剤と組み合わせて投与されうる。更なる治療剤として、治療されるべき疾患に応じて、他の抗癌剤、抗腫瘍剤、抗血管新生剤及び化学療法剤、ステロイド、又はチェックポイント阻害剤が挙げられる。
【0207】
本発明の医薬組成物は、様々な形態、例えば、液体、半固体及び固体剤形、例えば、液体溶液(例えば、注射可能な溶液及び注入可能な溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソーム並びに座薬で存在しうる。好ましい形態は、投与及び治療適用の意図した様式に依存する。典型的な好ましい組成物は、注射可能な溶液又は注入可能な溶液の形態であり、例えば、ヒトの受動免疫のために使用されるものと類似の組成物である。投与の好ましい様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態において、抗体は、静脈内注入又は注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、抗体は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。当業者に理解されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変わるであろう。
【0208】
本発明の抗体の最適化された有利な特性により、高投与量の抗体組成物を投与することができる。具体的には、組成物は、抗体を約10~250mg/ml、具体的には25~100mg/ml、具体的には50mg/ml以上含む。
【0209】
抗oxMIF抗体は、1回投与されうるが、より好ましくは、複数回投与される。例えば、抗体は、1日に3回~6ヶ月以上に1回投与することができる。投与は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、2日に1回、3日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、及び6ヶ月に1回などのスケジュールで行うことができる。
【0210】
本発明は、MIF関連症状、具体的には、免疫疾患、例えば、炎症性疾患及び過剰増殖性障害の治療を必要とする対象の治療のための、抗oxMIF抗体又はその抗原結合部を含む組成物にも関する。一部の実施形態において、治療を必要とする対象はヒトである。
【0211】
「癌」という用語は、本明細書中で使用する場合、増殖性疾患を指し、具体的には、固形癌、例えば、結腸直腸癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、黒色腫、扁平上皮癌(SCC)(例えば、頭頚部、食道、及び口腔)、肝細胞癌、結腸直腸腺癌、腎臓癌、甲状腺髄様癌、乳頭様甲状腺癌、星状細胞腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、子宮頸癌、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、並びに悪性精上皮癌を指し、上記の癌の任意の難治性バージョン、又は上記の癌の1つ若しくは複数の組合せを含む。
【0212】
本発明の抗oxMIF抗体によって治療されうる癌疾患又は癌などの過剰増殖性障害は、任意の組織又は臓器に関与し、脳癌、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、肝臓癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、食道癌、婦人科癌、鼻咽頭癌、若しくは甲状腺癌、黒色腫、リンパ腫、白血病又は多発性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。特に、本発明の抗oxMIF抗体は、卵巣、膵臓、結腸及び肺の癌の治療に有用である。
【0213】
特定の実施形態において、
癌疾患の治療、具体的には、固形腫瘍の治療に非常に好適な抗体は、
組換え抗oxMIF抗体、その抗原結合断片、二重特異性抗oxMIF/抗CD3抗体、又は二重特異性抗oxMIF/抗HSG抗体であって、サイレンシングされたFc並びに低減された凝集能及び低減された疎水性を有し、以下:
(a1)アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを有する配列番号2を含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号2を含み、
- 36位に保存されたチロシン、及び
- アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(b1)配列番号3を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号3及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)アミノ酸置換L5Q若しくはW97Yの少なくとも1つ及び1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つの更なるアミノ酸置換を有する配列番号3を含む重鎖可変ドメイン
を含み、
ここで、アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、
変異体Fc領域が、野生型IgG1 Fc領域と比較してFcγR結合の減少を示し、
上記抗体又はその抗原結合断片が、アミノ酸置換を欠く配列番号2及び配列番号3を含む抗体と比較して低減された凝集能及び低減された疎水性を有する、組換え抗oxMIF抗体、その抗原結合断片、二重特異性抗oxMIF/抗CD3抗体、又は二重特異性抗oxMIF/抗HSG抗体である。
【0214】
本発明はまた、ヒトを含む対象における、血管炎、関節炎、敗血症、敗血症性ショック、内毒素性ショック、毒素性ショック症候群、後天性呼吸窮迫症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、腎炎、アトピー性皮膚炎、喘息、結膜炎、発熱、マラリア、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)、多発性硬化症、急性及び慢性膵炎、1型糖尿病、IgA腎症、間質性膀胱炎、ポストCOVID症候群、乾癬、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、腎炎及び腹膜炎、全身性エリテマトーデス(SLE-ループス腎炎を含む)、喘息、関節リウマチ(RA)並びに炎症性腸疾患(IBD)などの炎症性疾患の治療のための方法であって、それを必要とする上記対象に抗oxMIF抗体又はその抗原結合部の治療有効量を投与する工程を含む方法も包含する。
【0215】
特定の実施形態において、
炎症性又は感染性疾患の治療に非常に好適な抗体は、
組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、サイレンシングされたFc並びに低減された凝集能及び低減された疎水性を有し、以下の可変ドメイン:
(a1)アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを有する配列番号2を含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号2を含み、
- 36位に保存されたチロシン、及び
- アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(b1)配列番号3を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号3及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)アミノ酸置換L5Q若しくはW97Yの少なくとも1つ及び1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つの更なるアミノ酸置換を有する配列番号3を含む重鎖可変ドメイン
を含み、
ここで、アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、
変異体Fc領域が、野生型IgG1 Fc領域と比較してFcγR結合の減少を示し、
上記抗体又はその抗原結合断片が、アミノ酸置換を欠く配列番号2及び配列番号3を含む抗体と比較して低減された凝集能及び低減された疎水性を有する、組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片である。
【0216】
更に特定の実施形態において、炎症性又は感染性疾患の治療に非常に好適な抗体は、抑制性受容体FcγRIIBへの優先的結合も増加させた又はα2,6-N結合型シアリル化が亢進した本明細書に記載の組換え抗oxMIF抗体である。
【0217】
本発明は、下記の実施形態も更に包含する。
1.Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、1つ若しくは複数のアミノ酸置換又はグリコシル化修飾を有する配列番号1を含む野生型ヒトIgGの変異体Fc領域、並びに以下:
(a1)アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを有する配列番号2を含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号2を含み、
- 36位に保存されたチロシン、及び
- アミノ酸置換M30L、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;及び
(b1)配列番号3を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号3及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)アミノ酸置換L5Q若しくはW97Yの少なくとも1つ及び1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つの更なるアミノ酸置換を有する配列番号3を含む重鎖可変ドメイン
を含み、
ここで、アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、
変異体Fc領域が、野生型IgG1 Fc領域と比較してFcγR結合の減少を示し、
上記抗体又はその抗原結合断片が、アミノ酸置換を欠く配列番号2及び配列番号3を含む抗体と比較して低減された凝集能及び低減された疎水性を有する、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片。
2.アミノ酸置換W93F及び/又はW97Yを含む、実施形態1に記載の組換え抗oxMIF抗体。
3.アミノ酸置換が、EU付番指標に従って、配列番号1の位置E233、L234、L235、G236、G237、P238、D265、S267、H268、N297、S298、T299、E318、L328、P329、A330、P331のいずれか1つにおいてである、実施形態1又は2に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
4.Fc領域がアグリコシル化されている、実施形態1~3のいずれか1つに記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
5.アミノ酸置換が位置L234及びL235、具体的には、L234A及びL235Aである、実施形態1~4のいずれか1つに記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
6.配列番号4、5、6、7、8、9、及び43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変ドメインを含む、実施形態1に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
7.i.)配列番号3及び6、
ii.)配列番号9及び6、
iii.)配列番号4及び6、
iv.)配列番号4及び8、又は
v.)配列番号4及び5
vi.)配列番号43及び5、6、7、若しくは8のいずれか1つ
を含む、実施形態1に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
8.配列番号14を更に含む、実施形態7に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
9.配列番号15、及び16又は17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
10.Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、1つ若しくは複数のアミノ酸置換又はグリコシル化修飾を有する配列番号1を含む野生型ヒトIgGの変異体Fc領域を含み、
配列番号72又は78から選択される軽鎖CDR1配列、
配列番号73、79、80、又は81から選択される軽鎖CDR2配列、
配列番号74又は82から選択される軽鎖CDR3配列、
配列番号75から選択される重鎖CDR1配列、
配列番号76又は83から選択される重鎖CDR2配列、及び
配列番号77又は84から選択される重鎖CDR3配列
を含み、ただし、配列番号74及び配列番号77は一緒に含まれない、Fcサイレンシングされた抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片。
11.アミノ酸置換が、配列番号1の位置E233、L234、L235、G236、G237、P238、I253、D265、S267、H268、N297、S298、T299、H310、E318、L328、P329、A330、P331、H435のいずれか1つにおいてであり、具体的には、アミノ酸置換が、EU付番指標に従って、位置L234及びL235、特に位置L234、L235、H310及びH435であり、及び/又はFc領域がアグリコシル化されている、実施形態1~10のいずれか1つに記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
12.二重特異性抗体(すなわちCrossmab)、scFv-Fc、(scFv)2-Fc、scFv/scFv-Fc、Fab/scFv-Fc、Fab/(scFv)2-Fc、Fab/Fab-scFv-Fc、Fab/Fab-crossFab-Fc、IgG-scFv及びIgG-(scFv)2からなる群から選択される、実施形態1~11のいずれか1つに記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
13.上記抗体が、CD3のエピトープ又はヒスタミン-スクシニル-グリシン(HSG)を特異的に認識する少なくとも1つの結合部位を更に含む二重特異性抗体である、実施形態1~12のいずれか1つに記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
14.上記抗体が第1の工程で対象に投与され、HSGハプテンが第2の工程で投与され、上記HSGハプテンが、抗体に結合し、放射性核種で標識されている、固形腫瘍の治療又は検出における使用のための、項目13に記載のFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体。
15.医薬の調製における使用のための、実施形態1~13のいずれか1つに記載のFcサイレンシングされた抗体。
16.場合により医薬担体又はアジュバントと共に、実施形態1~13のいずれか1つに記載の抗体を含む医薬組成物。
17.実施形態1~13のいずれか1つに記載の抗体を、10~250mg/ml、具体的には、50mg/ml超を含む、実施形態16に記載の医薬組成物。
18.皮下投与のために製剤化される、実施形態16又は17に記載の医薬組成物。
19.単一の物質として投与するためか、又は好ましくは抗ウイルス、抗癌、抗炎症、及び抗生物質からなる群から選択される1つ又は複数の活性物質を含む更なる医薬組成物と共に投与するための、実施形態16~18のいずれか1つに記載の医薬組成物。
20.炎症性疾患、感染性疾患を患う患者の治療、具体的には、喘息、血管炎、関節炎、敗血症、敗血症性ショック、内毒素性ショック、毒素性ショック症候群、後天性呼吸窮迫症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、腎炎、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)、多発性硬化症、急性及び慢性膵炎、1型糖尿病、IgA腎症、間質性膀胱炎、ポストCOVID症候群、並びに乾癬の治療における使用のための、実施形態16~19のいずれか1つに記載の医薬組成物。
21.過剰増殖性障害又は癌を患う患者の治療、具体的には、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、及び肺癌の治療における使用のための、実施形態16~19のいずれか1つに記載の医薬組成物。
22.実施形態1~13のいずれか1つに記載の抗体をコードする単離核酸。
23.実施形態22に記載の核酸を含む発現ベクター。
24.実施形態22に記載の核酸又は実施形態23に記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
25.実施形態24に記載の宿主細胞を培養する工程、及び上記抗体を細胞培養物から回収する工程を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の抗体を産生する方法。
【実施例】
【0218】
本明細書中に記載される実施例は、本発明の例示であり、それを限定することを意図しない。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの改変及びバリエーションが本明細書中に記載及び例示される技術に行われうる。したがって、実施例が例示のみであり、本発明の範囲を限定しないことが理解されるはずである。
【0219】
実施例1:実施例セクションで使用する、変異体ID、配列組合せ並びに抗oxMIF抗体(表5A)及び抗oxMIF×抗HSG二重特異性抗体(表5B)の配列
【0220】
【0221】
【0222】
実施例2:新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集傾向及び低減された疎水性
疎水性及び凝集を評価するため、新しく設計した抗体C0115及びC0118は、2つの異なるSECカラム及びランニング緩衝液条件を使用するゲル濾過(SEC)並びに疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いて対照抗oxMIF抗体C0008並びにFcサイレンシングしていないそれらの親抗体C0083及びC0090と比較して解析した。
【0223】
SECのため、試料を、1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)中で1mg/mlに希釈し、100μlの試料を1.25ml/minの流速でEnrich 650(Bio-Rad社)ゲル濾過カラムに適用した。分離及び平衡は、室温で、1×PBS中で実施した。タンパク質ピークは、280nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、ChromLabソフトウェアパッケージ(Bio-Rad社)を使用して解析した。結果は、メインピークの保持容積(Vr、ml)で報告し、凝集体の存在は手動で順位付けした。
【0224】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)解析のため、全ての試料を、50mMリン酸及び0.75M硫酸アンモニウム、pH6.9を使用して、1mg/mlの最終濃度に希釈した。抗体の高度に精製された試料(約100μg)を、1mlのHiTrap Butyl HPカラム上に独立してロードした。100μlの試料を注入し、カラム流速を22℃で1ml/minに維持した。ピークの分離は、0~100%B(緩衝液B:50mMリン酸、20%イソプロパノール;pH7.0)の勾配の20カラム容積(CV)で実行した。タンパク質ピークは、280nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、ChromLabソフトウェアパッケージ(Bio-Rad社)を使用して解析した。
【0225】
結果:対照抗体C0008は、サイズ排除カラムの総容量(約16~18ml Enrich 650)に近い保持容量を示し、それはヒトIgGで予測されるよりもはるかに小さい分子量に相当する(
図1A及びB)。異常に長い保持は、主に、固定相表面との疎水性相互作用による。更に、高保持容量には、C0008では、顕著な量のIgG二量体及び凝集体が存在した。全ての新しく設計した抗体は、低減された保持容量(Vr)を示し、カラムとの相互作用の低減、したがって分子の疎水性の低減を実証した(表6、
図1A及びB)。新しく設計した抗体C0115及びC0118は、分子量標準と比較した場合、単量体ヒトIgGの分子量に相当する保持容量(表6、
図1B)を示した。更に、抗体二量体及び凝集は、新しく設計した抗体C0115及びC0118の試料中では著しく低減された(
図1B)。新しく設計した抗体C0115及びC0118のFcサイレンシング突然変異は、それぞれ、wtFcを有するそれらの親抗体C0083及びC0090と比較して、それらのSECプロフィールを変更しなかった。
【0226】
HICカラム保持容量は、疎水性の測定であり、低保持容量の抗体は、高保持容量の抗体よりも低疎水性である(
図1C)。新しく設計した抗体C0115及びC0118は、非常に高い疎水性を示す対照抗体C0008(保持容量約21ml)と比較して、低疎水性であることが示された(保持容量15~16ml)。新しく設計した抗体C0115及びC0118のFcサイレンシング突然変異は、それぞれ、wtFcを有するそれらの親抗体C0083及びC0090と比較して、それらのHICプロフィールを変更しなかった。
【0227】
結論:新しく設計した抗体が、対照抗oxMIF抗体C0008と比較して、改善された生化学特性、具体的には、低減された疎水性、及び凝集傾向を有することは、SEC及びHIC解析から明らかである。
【0228】
【0229】
図1は、新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集及び疎水性を実証するクロマトグラフィープロフィールを示す。(A)移動相として1×PBSを使用するEnrich 650ゲル濾過カラムでの、C0008(対照抗体、グレー領域)並びに新しく設計した抗体C0115及びC0118の親抗体(C0083及びC0090、Fcサイレンシングなし)の溶出プロフィールの比較;(B)移動相として1×PBSを使用するEnrich 650ゲル濾過カラムでの、C0008(対照抗体、グレー領域)並びに新しく設計した抗体C0115及びC0118の溶出プロフィールの比較;(C)HiTrap Butyl HP HICカラムでの、C0008(対照抗体、グレー領域)、新しく設計した抗体C0115及びC0118、並びにその親抗体C0083及びC0090(Fcサイレンシングなし)の溶出プロフィールの比較。
【0230】
実施例3:固定化されたMIFへの、新しく設計した抗oxMIF抗体の結合(KD決定)。
PBS中に希釈した1μg/mlの組換えヒトMIFを、4℃で終夜ELISAプレートに固定化した(Thiele et al.,2015に従って、MIFをoxMIFに変換)。ブロッキングした後、抗oxMIF抗体の段階希釈を、プレートに添加した。最後に、結合された抗体を、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)-HRPコンジュゲート、及び基質としてテトラメチルベンジジン(TMB)を使用して検出した。発色反応を3M H2SO4で停止させ、ODを450nmで測定した。異なる実験からのデータは、それぞれの実験の抗oxMIF抗体C0008の最大OD(=100%)に対して正規化し、EC50値を、GraphPad Prismを使用する4パラメーターフィットによって決定した(2つの実験の平均+/-SEMが示される)。
【0231】
結果及び結論:固定化されたMIF(oxMIF)に対する、新しく設計した抗体の結合を広範な濃度にわたり測定し、生じる結合曲線を
図2に示す。抗oxMIF抗体C0008を、oxMIF結合の参照として使用した。結合曲線及びK
Dを表す算出したEC
50値は、新しく設計した抗体C0115及びC0118が、C0008と比較して、oxMIFへのそれらの低ナノモルの親和性を保持したことを明確に示した(
図2、表7)。
【0232】
図2は、固定化されたoxMIFへの新しく設計した抗oxMIF抗体の結合曲線(K
D決定)を示す。抗oxMIF抗体は、抗ヒトIgG(Fc)-HRPコンジュゲートによって検出され、C0008を参照抗体として使用した。EC
50値は、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式によって決定した(2つの実験の平均+/-SEMが示される)。
【0233】
【0234】
実施例4:redMIFと比較したoxMIFへの、新しく設計した抗oxMIF抗体の差次的結合
抗oxMIF抗体及びヒトIgGアイソタイプ対照を、15nMの濃度で、4℃で終夜マイクロプレートに固定化した。ブロッキングした後、ウェルを、50ng/mlのredMIF又はoxMIF代理NTB-MIF(Schinagl et al.,2018)とインキュベートした。捕捉したoxMIFは、ポリクローナルウサギ抗MIF抗体及びヤギ抗ウサギIgG-HRPによって検出した。プレートを、テトラメチルベンジジン(TMB)によって染色し、発色反応を30%H2SO4の添加により停止させた。ODを450nmで測定した。異なる実験からのデータを、それぞれの実験の抗oxMIF抗体C0008の最大OD(=100%)に対して正規化し、2つ又は3つの実験の平均+/-SEMが示される。
【0235】
結果及び結論:可溶性oxMIF及びredMIFに対する、新しく設計した抗体の結合は、
図3に示される。結果は、新しく設計した抗体C0115及びC0118がoxMIFに強く結合するが、redMIFには結合しないことを明確に示した。新しく設計した抗体は、参照抗体C0008と非常に類似したODを示し、oxMIFとredMIFを区別することが記載された(Thiele et al.,2015)。アイソタイプIgGでは、結合は観察されなかった。したがって、低減された疎水性及び凝集並びにFcサイレンシングを有する新しく設計した抗体は、oxMIFとredMIFを区別するそれらの能力を保持した。
【0236】
図3は、redMIFと比較したoxMIFへの、新しく設計した抗体の差次的結合を示す。C0008を参照抗体として、アイソタイプIgGを陰性対照として使用した。2つ又は3つの実験の平均+/-SEMが示される。
【0237】
実施例5:レポーターアッセイによって決定された新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及びC0118の強く低減されたエフェクター機能
上記のように、Fc部分の点突然変異、すなわちL234A/L235Aにより抗体のADCC及びADCP能を減少させる努力がなされた。標的結合抗体のFc部分がまた、エフェクター細胞の細胞表面上のFc受容体に結合する場合、2つの細胞型の複数の架橋が生じ、ADCC又はADCPの経路活性化をもたらし、機能性Fc関連有害事象を防ぐ標的中和抗体に望まれない。
【0238】
エフェクター細胞として、ADCCを解明するためにヒトFcγRIIIa V158(高親和性遺伝子型)、又はADCPを解明するためにヒトFcγRIIa-H131のいずれかを安定に発現する操作したジャーカット細胞、及びホタルルシフェラーゼのNFAT応答エレメント駆動発現を使用して、抗体の生物学的活性を、エフェクター細胞においてNF-AT経路活性化の結果として産生されたルシフェラーゼにより定量した。
【0239】
ADCC又はADCPレポーターアッセイは、基本的に製造業者によって推奨されるように実施した(Promega社#G7010及び#G9991)。
【0240】
高応答性の標的細胞を生成するため、HCT116及びA2780細胞を、huMIF-pDisplayプラスミド(Invitrogen社)によってトランスフェクトし、ジェネテシンによって選択し、FACSによってソートして膜係留単量体ヒトMIFを安定に発現する細胞株(HCT116-pMIF又はA2780-pMIF)を生成し、すなわちMIFは、oxMIFエピトープが抗oxMIF抗体に接近可能である単量体タンパク質として提示される(Schinagl et al.,Biochemistry 2018)。これらの細胞株は、細胞表面でのoxMIFの提示の増加を示し、したがってin vitro解析のための感度のよいツールである。手短に言えば、100μlの培養培地(Pen/Strept/L-Glutamine及び4%低IgG FBSを追加したRPMI 1640培地)中の1×10
4細胞/ウェルのHCT116-pMIF(
図4A及びC)又はA2780-pMIF(
図4B)細胞は、96ウェルプレートに播種し、加湿したインキュベーター内で、37℃/5%CO
2で終夜接着させた。翌日、培養培地を、除去し、25μlの新しい培養培地と交換した。25μlの段階希釈のFcサイレンシングされた新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及びC0118、又はそれらの親抗体C0083、C0090並びにwtFcを有する対照抗体C0008(最終濃度0.01~100nM)と、25μlのジャーカットエフェクター細胞(
図4A~B、高応答性遺伝子型V158のFcγRIIIa受容体エフェクター細胞;
図4C、FcγRIIa受容体エフェクター細胞)とを、約6:1のエフェクター対標的細胞比で添加し、加湿したインキュベーター内で、細胞を37℃/5°CO
2で抗体及びエフェクター細胞と6時間インキュベートした。最後に、アッセイプレートを室温に平衡化し、75μlのBio-Gloルシフェラーゼ試薬を添加した。Tecanマルチプレートリーダーを使用して、10~20分のインキュベーション後に発光(RLU)を測定した(0.5s積算時間)。データ(適切な場合)は、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SDが示される)。
【0241】
結果:Fcサイレンシング突然変異を持つ新しく設計した抗体C0115及びC0118は、ADCC(
図4A~B)又はADCP(
図4C)レポーターアッセイにおいてレポーター細胞のいずれの活性化も示さなかったが、対照抗体C0008(
図4B)並びにwtFcを有するそれらの親抗体、C0083及びC0090(
図4A)は、エフェクター細胞の強いFcyRIIIa(ADCC、
図4A~B)又はFcyRIIa(ADCP、
図4C)媒介活性化を誘導したことが、
図4A~Cから証明された。
【0242】
結論:Fcサイレンシング突然変異(L234A/L235A)を持つ新しく設計した変異体C0115及びC0118は、レポーターバイオアッセイにおいてADCC又はADCPのいずれの開始も示さなかった。したがって、それらは、強く低減されたADCC及びADCPエフェクター機能を示した。
【0243】
図4は、レポーターアッセイによって決定された、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及びC0118の強く低減されたエフェクター機能を示す。(A~B)抗oxMIF対照抗体C0008(B)又はwtFcを有するそれらの親抗体C0083及びC0090(A)のいずれかと比較した、FcyRIIIaを安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF(A)又はA2780-pMIF(B)標的細胞を使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及び/又はC0118によるADCCレポーターバイオアッセイ;(C)wtFcを有するそれらの親抗体C0083及びC0090と比較した、FcyRIIaを安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF標的細胞を使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及び/又はC0118によるADCPレポーターバイオアッセイ。データは、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SDが示される)。
【0244】
実施例6:補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイによって決定された、新しく設計した抗oxMIF抗体C0115の強く低減されたCDC機能
このアッセイは、新しく設計した抗oxMIF抗体によって誘導された抗体駆動補体依存性細胞傷害(CDC)から生じる溶解細胞を決定するために実施した。細胞傷害は、LgBiT(LargeBiT)及びフリマジン(基質)を含有する非溶解性検出試薬を使用して標的細胞からのHiBiTタグ付きタンパク質の放出を定量するHiBiT検出アッセイ(Promega社)によって測定した。HiBiT及びLgBiTは、自発的に機能性NanoBiT(登録商標)酵素に集合し、基質の存在下で定量可能な発光シグナルを発する。
【0245】
高応答性のレポーター標的細胞を生成するために、HCT116細胞は、HaloTag-HiBiTプラスミド(Promega社#CS1956B17)によってトランスフェクトし、ブラストサイジンによって選択し、FACSによって細胞プールとしてソートした。安定HiBiT発現細胞プールを、次いで、huMIF-pDisplayプラスミド(Invitrogen社)によってトランスフェクトし、ジェネテシンによって選択し、FACSによってソートして、細胞内HiBiT及び膜係留単量体ヒトMIFを安定に発現する細胞プール(HCT116-HiBiT-pMIF)を生成し、すなわちMIFは、oxMIFエピトープが抗oxMIF抗体に接近可能である単量体タンパク質として提示される(Schinagl et al.,Biochemistry2018)。これらの細胞株は、細胞表面でのoxMIFの提示の増加を示し、したがってin vitro解析のための感度のよいツールである。
【0246】
手短に言えば、100μlの培養培地(Pen/Strept/L-Glutamine及び10%FBSを追加したRPMI 1640培地)中の1×104細胞/ウェルのHCT116-HiBiT-pMIF細胞を96ウェルプレートに播種し、加湿したインキュベーター内で、37℃及び5%CO2で終夜接着させた。翌日、培養培地を除去し、50μlの無血清RPMI 1640と、無血清RPMI 1640中の50μlの段階希釈のFcサイレンシングされた新しく設計した抗oxMIF抗体C0115又はwtFcを有するその親抗体C0083、及びニボルマブ(ヒトIgG4、陰性対照)(最終濃度1~100nM)とを添加した。抗体と細胞とを37℃で30分間インキュベーションした後、50μlの仔ウサギ補体(BRC、Sedarlane社、アッセイ直前に無血清RPMI中に1:10に希釈)をプレートに添加した。補体添加後、プレートを加湿したインキュベーター内で、37℃及び5%CO2で終夜インキュベーションした。翌日、10μlのNano-Glo HiBiT Extracellular Detection Reagent(Promega社#N2421)を添加し、3分後に発光シグナル(RLU、積算時間0.1s)をTecanプレートリーダーで測定した。データ(適切な場合)は、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SDが示される)。
【0247】
結果及び結論:
図5によって、Fcサイレンシング突然変異(L234A/L235A)を持つ新しく設計した抗体C0115は、CDC活性を誘導せず、測定されたシグナルが陰性対照(ニボルマブ、IgG4)よりも更に低かったことが明確に示される。対比して、wtFcを有する親抗体C0083は、ヒトIgG1に対して予想されるように、HCT116-pMIF細胞の補体依存性細胞溶解を示した。したがって、Fcサイレンシング(L234A/L235A)突然変異を持つ新しく設計した抗体C0115は、強く低減されたCDC活性を示す。
【0248】
図5は、補体依存性細胞毒性バイオアッセイによって決定された、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115の強く低減されたCDC活性を示す。補体の供給源としてBRC及び標的細胞としてHCT116-pMIFを使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115によるCDCバイオアッセイは、wtFcを有するその親抗oxMIF抗体C0083及びIgG4陰性対照としてのニボルマブと比較した。データ(適切な場合)は、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SDが示される)。
【0249】
実施例7:PBMC細胞溶解バイオアッセイによって決定された、新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及びC0118の強く低減されたADCC機能
このアッセイは、新しく設計した抗oxMIF抗体によって誘導された抗体依存性細胞傷害(ADCC)から生じる細胞溶解を決定するために実施した。細胞傷害は、LgBiT(LargeBiT)及びフリマジン(基質)を含有する非溶解性検出試薬を使用して標的細胞からのHiBiTタグ付きタンパク質の放出を定量するHiBiT検出アッセイ(Promega社)によって測定した。HiBiT及びLgBiTは、自発的に機能性NanoBiT(登録商標)酵素に集合し、基質の存在下で定量可能な発光シグナルを発する。
【0250】
HCT116-HiBiT-pMIFレポーター標的細胞は、実施例6に記載されているように生成した。
【0251】
手短に言えば、50μlの培養培地(Pen/Strept/L-Glutamine及び5%超低IgG FBS(Thermo Scientific社)を追加したRPMI 1640培地)中の1×104細胞/ウェルのHCT116-HiBiT-pMIF標的細胞を96ウェルプレートに播種し、加湿したインキュベーター内で、37℃/5%CO2で終夜接着させた。翌日、50μlの培養培地中での段階希釈のFcサイレンシングされた新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及びC0118又はC0115の親抗体(wtFcを有するC0083)、及び/又はwtFcを有する参照抗体C0008(最終濃度0.01~100nM)と、2人の健常なドナーからの50μlのヒトPBMCエフェクター細胞(4×105細胞/ウェル;エフェクター対標的細胞比40:1)とを、プレートに添加した。抗体及びPBMC添加後、プレートを加湿したインキュベーター内で、37℃及び5%CO2で終夜インキュベーションした。翌日、10μlのNano-Glo HiBiT Extracellular Detection Reagent(Promega社#N2421)を添加し、3分後に発光シグナル(RLU、積算時間0.1s)をTecanプレートリーダーで測定した。
【0252】
結果及び結論:Fcサイレンシング(L234A/L235A)突然変異を持つ新しく設計した抗体C0115及びC0118は、ADCC活性を示さないか、或いは強く低減されていることが
図6から明らかである。対比して、C0115の親抗体(C0083、wtFcを有する)及びwtFcを有する対照抗oxMIF抗体C0008は、ヒトIgG1に対して予想されるように、HCT116-HiBiT-pMIF細胞の抗体依存性細胞溶解を示した。したがって、Fcサイレンシング(L234A/L235A)突然変異を持つ新しく設計した抗体C0115は、強く低減されたADCC活性を示す。
【0253】
図6は、PBMC媒介細胞毒性バイオアッセイによって決定された、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115及びC0118の強く低減されたADCC活性を示す。エフェクター細胞としてPBMC及び標的細胞としてHCT116-HiBiT-pMIFを使用する、新しく設計したFcサイレンシングされた抗体C0115(A)及びC0118(B)によるADCCバイオアッセイは、抗oxMIF対照抗体C0008(B)及びwtFcを有するC0115の親抗oxMIF抗体、すなわち、C0083(A)と比較した。2人の健常なドナーからのPBMCを使用した2回の反復の平均及びSEMが示される。データは、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした。
【0254】
実施例8:A2780 MIF-/-細胞への、新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及びC0118の低減された非特異的結合
材料及び方法。A2780MIF-/-細胞株は、A2780卵巣癌細胞株におけるヒトMIF遺伝子のCRISPR/Cas9遺伝子編集によって生成した。手短に言えば、標的遺伝子配列を解析し、標的部位は、GenCRISPR(商標)システムの標的化ガイドRNA(gRNA)を設計する通常の決まりに従って位置した。ガイドRNA(gRNA)は、MIF遺伝子の5’領域(TTGGTGTTTACGATGAACATCGG、配列番号40)を特異的に認識するように設計し、gRNA配列はS.pyogenes Cas9(SpCas9)ヌクレアーゼを含有するPX459(addgene社)ベクターにクローニングした。A2780細胞は、エレクトロポレーションによって一過性にトランスフェクトされ、限界希釈によって96ウェルプレートにプレートし、同系単一クローンを生成した。内因性MIF遺伝子が効果的に変異された同系単一クローンは、結果としてMIFタンパク質の発現の低減(又は除去)を生じ、サンガーシークエンシングスクリーニングによって同定された。最終クローンは、ヒトMIF遺伝子の開始コドン後+2の位置に10bpの欠失を示した。A2780MIF-/-細胞株における内因性ヒトMIFタンパク質の不在は、ポリクローナル抗ヒトMIF抗体を使用するウェスタンブロッティングによって確認した。
【0255】
A2780MIF-/-細胞を、Cell Stripper(Corning社、Cat#25-056-C1)によって剥がし、染色緩衝液(PBS+5%BSA)によって洗浄し、96ウェルのU底プレートにウェル当たり2×105個の細胞をプレートした。細胞を、固定可能な生死判定色素eFluor780(ThermoFisher社、PBS中で1:2000希釈)によって4℃で20分間染色し、染色緩衝液によって洗浄した。細胞を、50μlの染色緩衝液中に再懸濁し、50μlの段階希釈の新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及びC0118又はそれぞれ、それらの親抗体C0083及びC0090、又は対照抗oxMIF抗体C0008若しくはアイソタイプIgG(最終濃度37nM~9.4nM)を添加した。4℃で40分間インキュベーション後、細胞を染色緩衝液によって洗浄し、100μlの二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG(H+L)-AlexaFluor488、1:100希釈)中に再懸濁した。4℃で30分間インキュベーション後、細胞を染色緩衝液によって洗浄し、PBS+2%BSA中に再懸濁し、CytoFlex-Sフローサイトメーター(Beckman Coulter社)で獲得した。
【0256】
データは、FlowJo(BD社)によって解析し、生存細胞のGeoMean(AF488チャンネルの平均蛍光強度)をGraphPad Prismで抗体濃度に対してプロットした。
【0257】
結果及び結論:新しく設計した抗oxMIF抗体C0118及びその親抗体C0090(A)並びにC0118及びその親抗体C0083(B)は、それらのGeoMeanがアイソタイプIgG陰性対照のものに非常に近いため、A2780 MIF
-/-細胞に結合しないことが
図7A及びBから明らかである。反対に、抗oxMIF抗体C0008は、A2780MIF
-/-細胞に顕著な結合を示したが、それらはMIFを発現しないことが分かった。したがって、疎水性の低減は、A2780MIF
-/-への、新しく設計した抗oxMIF抗体の非特異的結合の強い低減又は除去をもたらしたが、抗oxMIF対照抗体C0008は、その疎水性により細胞表面に非特異的に結合する。
【0258】
図7は、FACSによって決定したA2780 MIF
-/-細胞への新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された非特異的結合を示す。新しく設計した抗oxMIF抗体C0118及びその親抗体C0090(A)並びにC0115及びその親抗体C0083(B)並びに対照抗体C0008並びに陰性対照としてアイソタイプIgGによるA2780 MIF
-/-細胞の染色;生存細胞のGeoMean(AF488チャンネルの平均蛍光強度)を抗体濃度に対してプロットした。
【0259】
実施例9:新しく設計した抗oxMIF抗体C0115による強く低減されたヒトPBMCからの非特異的サイトカイン放出
サイトカイン放出症候群(CRS)は、様々な要因、例えば、感染によって誘発されうる全身性炎症反応症候群(SIRS)の一形態である。CRSはまた、一部のモノクローナル抗体医薬品の有害作用としても知られている。CRSは、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞、及び単球を含む多くの白血球が、活性化され、病原性炎症の正のフィードバックループにおいてより多くの白血球を活性化するIL-6、IFN-γ、IL-8、MCP-1などのような炎症性サイトカインを放出するときに生じる。この過程は、調節不全に陥ると、全身性過剰炎症、低血圧性ショック、及び多臓器不全により生命を危うくすることがある。したがって、新しく設計した抗oxMIF抗体C0115は、in-vitroアッセイにおいてPMBCから炎症性サイトカインを放出させる能力を評価した。
【0260】
材料及び方法:新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及び抗oxMIF参照抗体C0008は、96ウェルプレート中の150μlの5%超低IgG血清を追加したRPMI1640培地において、新しく融解した3人の健常なドナーからのPBMC(ウェル当たり4~5×105個の細胞)と、又は培地のみと、70nM、7nM、0.7nM、0.07nMでインキュベートした。加湿したインキュベーター内で37℃/5%CO2で終夜インキュベーションした後、プレートは、300×gで5分間遠心分離して細胞をペレットとし、清澄化した上清を96ウェルV底プレート(BioLegend社)に移した。上清は、ヒトMCP-1、ヒトIL-6、及びヒトTNF-αに対して、BioLegend LegendPlexサイトメトリービーズアッセイによって製造業者のプロトコールに従って解析した。測定は、96ウェルプレートローダー(Beckman Coulter社)を有するCytoFlex-Sサイトメーターで行った。ビーズ分類チャンネルは、APC(レーザー638nmからの励起、バンドパスフィルター660/10nm)であったのに対し、レポーターチャンネルは、PE(黄色レーザー561nmからの励起、バンドパスフィルター585/42nm)であった。データは、LegendPlex解析ソフトウェア(BioLegend社)を使用して解析し、グラフをGraphPad Prismで作成した。3人の異なるPMBCドナーからの平均+/-SEMを示す。
【0261】
結果及び結論:可変領域に製造性突然変異及びFcサイレンシング突然変異(L234A/L235A)を持つ新しく設計した抗体C0115は、70nMまでの濃度で、PBMCからのMCP-1、IL-6及びTNF-αの放出が検出できないか、又はわずかであることを示したことは、
図8から明らかである。参照抗oxMIF抗体C0008は、疎水性により凝集傾向及び非特異的結合が高いことと一致して、最も高い濃度(70nM)でMCP-1、IL-6及びTNF-αの有意な放出を誘導した。抗体治療剤の凝集は、例えわずかであっても、免疫細胞からのサイトカイン放出を強く増強することが知られている。
【0262】
図8は、新しく設計した抗oxMIF抗体C0115が、参照抗体C0008と比較してヒトPBMCからの強く低減されたサイトカイン放出を示すことを示している。Fcサイレンシング突然変異を持つ抗oxMIF抗体C0115及び参照抗oxMIF抗体C0008は、広範な濃度範囲(70nM、7nM、0.7nM、0.07nM)にわたりヒトPBMCと終夜インキュベートし、上清のヒトMCP-1(A)、ヒトIL-6(B)及びヒトTNF-α(C)をLegendPlexサイトメトリービーズアッセイ(BioLegend社)において解析した。3人の異なるPMBCドナーからのサイトカイン濃度(単位:pg/ml)の平均+/-SEMを示す。
【0263】
実施例10:異種移植ヒトHCT116大腸癌の腫瘍を担持するBalb/cヌードマウスにおける新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及び対照抗体C0008の生体内分布
材料及び方法:新しく設計した抗oxMIF抗体C0115の生体内分布は、参照抗oxMIF抗体C0008と比較して、ヒト大腸癌細胞HCT116の皮下腫瘍を持つ雌のBalb/cヌードマウスにおいて調べた。雌のBalb/cヌードマウスは、全注射容積100μlの50%PBS及び50%マトリゲル中5×106個のHCT116細胞の皮下注射を片側に受けた。個々の腫瘍容積が150~300mm3に達すると、マウスは治療群に割り当てられ、5mg/kgのIRDye 800CW標識C0115及びC0008の単回静脈内投与を受けた。
【0264】
C0115及びC0008は、製造業者の説明書に従ってIRDye800CW Protein標識キット(LI-COR Biosciences社の高MW)を使用して、IRDye800CWによって標識した。標識プロセス後及び標識抗体のマウスへの注入前に、タンパク質濃度及びIRDye800CW標識抗体の標識効率を、Nanodrop技術を使用して決定し、マウスは、標識後のタンパク質濃度に基づいて投与された。In vivo画像化は、以下の時点:投与後1、6~8、24、48、72、96、168時間での標識抗体の投与時に、LI-COR Pearl(登録商標)Trilogy画像化装置で実施した。画像解析を実施し、腫瘍における抗体の相対蛍光単位(RFU)を定量した(RFU/面積=RFU腫瘍面積/mm2腫瘍面積-RFUバックグラウンド/mm2バックグラウンド面積)。
【0265】
結果及び結論:
図9は、7日までの腫瘍保持により、それぞれ、静脈内投与したIRDye 800CW標識C0115及びC0008の、顕著な腫瘍内分布を示す。約24時間でピークを示した参照抗oxMIF抗体C0008と比較して、新しく設計した抗oxMIF抗体C0115の腫瘍取り込みは7日にわたり強く増強及び増加されることが、
図9(A)及び定量画像解析(
図9(B))から明らかである。
【0266】
図9は、皮下HCT116腫瘍を持つマウスのinfra-red in vivo画像化による、新しく設計した抗oxMIF抗体C0115及び参照抗体C0008の腫瘍浸透及び保持を示す。A:マウスのInfra-red画像は、5mg/kgで投与されたIRDye 800CW標識抗体C0115(上のパネル)及びC0008(下のパネル)の注射後1時間、6時間、24時間、48時間、72時間、96時間及び168時間で撮られた;(B)デジタル画像解析によって定量されたC0115及びC0008の腫瘍浸透及び保持。3匹のマウスの平均を示す。
【0267】
実施例11:
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
実施例12:コラーゲンII誘導関節炎(CIA)マウスモデルにおけるC0115抗体の有効性
材料及び方法:この研究では、8~9週齡の雄のDBA/1j(Harlan Laboratories社,Italy)マウス(体重範囲:18~20グラム)を使用した。ウシII型コラーゲン(CII;Chondrex社,USA)は、4℃で穏やかに終夜撹拌することによって、0.05M酢酸中に2mg/mlで溶解した。CFA(完全フロイントアジュバント)は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Ra(Difco社,Detroit,MI)を、IFA(不完全フロイントアジュバント、Sigma Aldrich社,Milano,Italy)に2mg/mlの濃度で添加することによって調製した。注射前に、CIIを等量のCFAで乳化した。CIAを誘導するために、マウスの尾の付け根に、100μlのCII及びCFAを含有する得られたエマルション(100μg/匹)を皮内注射した。21日目に、2回目のIFA中のCIIの追加免疫100μl(100μg/匹)を投与した。疾患の発症時(1から2の間の範囲の関節炎スコア)、マウスは、20日間、ビヒクル、アイソタイプ対照IgG1(40mg/kg)、C0115(20mg/kg)で週2回(i.p.)治療するか、又は標準治療薬としてのデキサメタゾン(0.3mg/kg)を毎日注射した。治療終了時に、動物は、安楽死させ、血液を回収し、組織(前足及び後足)を採取した。関節炎の臨床的重症度は、体重、及び足の厚さ(4本の足の全ての、厚さ計を使用)を週に2回モニタリングすることによって評価した。足の厚さ指数は、治療の間、各マウスに対して4本の各々の足の厚さの合計の曲線下面積(AUC)を計算することによって決定した。各マウスの4本の足の関節炎スコアは、0~4の範囲であり、以下のように評価する:0=関節炎の徴候なし;1=足又は1本の指の腫脹及び/又は発赤;2=2つの関節の発症;3=2つ超の関節の発症;4=足及び指全体の重度の関節炎(マウス当たりの最大スコアは12になる)。各マウスの累積疾患スコアを、治療期間にわたりスコアを合計することによって個々のマウスに対して計算した。計算は、GraphPad Prismで行い、統計解析には、通常の一元ANOVA、続けて、フィッシャーのLSD検定を使用した。
【0274】
結果及び結論:
図10により、20mg/kgでのC0115を用いた治療で、ビヒクル治療群と比較して疾患スコア(A)及び足浮腫(B)の有意な改善がもたらされたことが明らかにされる。これらの効果(特に、足の厚さの低減)は、高用量の標準治療コルチコステロイド薬のデキサメタゾン(0.3mg/kg)を用いた治療に匹敵するものであった。アイソタイプ対照(IgG)治療群は、疾患スコアが低減しなかった。全ての治療群は、疾患の経過中の体重の変動は同じ程度であった。
【0275】
図10は、新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115が、コラーゲンII誘導DBA/1jマウス関節炎モデルにおいて疾患の重症度を改善することを示す。累積疾患スコア(A)及び足の厚さ(B)は、C0115(20mg/ml)、標準治療コルチコステロイド薬としての高用量デキサメタゾン(0.3mg/kg)、又はビヒクルを用いた治療時のマウス関節炎モデルにおいて評価した。統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、続けて、フィッシャーのLSD検定を使用した(
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001)。
【0276】
実施例13:糸球体腎炎(GN)ラットモデルにおけるC0115抗体の有効性
材料及び方法:新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115の有効性は、WKYラットにおけるNTNで評価した。このモデルは、マクロファージ浸潤、フィブリン沈着及び組織破壊を伴う疾患の急速な発症を有する(Tam FWK.et al.,1999)。このモデルの時間経過及び形態は、ヒトにおける半月体性糸球体腎炎と非常に類似している。このモデルは、非常に堅牢であり、全ての動物が、腎毒性血清(NTS)の注射による誘導後に腎炎を発症する。糸球体腎炎は、雄のWKYラット(体重範囲:190~220グラム)に100μlのウサギ抗ラットNTS(腎毒性血清)を静脈注射することにより誘導した。NTS注射後4日目及び6日目に、動物は、ビヒクル、アイソタイプ対照IgG1、又はC0115を用いて(i.p.)治療した(30mg/kg)。尿を0日目(ベースライン)、4日目(疾患の発症)及び7日目(治療後)に回収した。研究終了時(8日目)に、動物は、安楽死させ、血液及び組織(腎臓、肝臓、脾臓、及び肺)を回収した。組織学的解析(半月体数;ED-1マクロファージ染色、ラット及びウサギIgG沈着)並びに生化学的解析(タンパク尿及び血尿)を実施して、疾患の重症度を評価した。統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、続けて、多重検定のためのダネット補正を使用した(*p<0.05、**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001)。
【0277】
結果及び結論:C0115を用いた治療(30mg/kg)は、血尿、タンパク尿及び糸球体マクロファージ浸潤がビヒクル治療群と比較して低減することによって証明されるように、疾患を有意に改善した(
図11)。アイソタイプ対照IgGを用いた治療は、ビヒクル群と比較して血尿を低減させなかった。
【0278】
図11は、新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115が、腎毒性血清(NTS)誘導ラット糸球体腎炎モデルにおいて疾患の重症度を改善することを示す。尿中の血尿(ディップスティック)(A)、タンパク尿(B)、及び糸球体マクロファージ浸潤(C)を、ラット糸球体腎炎モデルにおいて、抗oxMIF抗体C0115、アイソタイプ対照IgG1又はビヒクルを用いた疾患ラットの治療時に評価した。平均±SEMが示され、統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、続けて、多重検定のためのダネット補正を使用した(
*p<0.05、
***p<0.001、
****p<0.0001)。
【0279】
実施例14:二重特異性抗体(bsMab)C0132及びC0133(抗oxMIF×抗HSG)のoxMIFへの結合
材料及び方法:PBS中に希釈した1μg/mlの組換えヒトMIFを、4℃で終夜ELISAプレートに固定化した(Thiele et al.,2015に従って、MIFをoxMIFに変換)。ブロッキングした後、抗体の段階希釈をプレートに添加し、ELISAを実施例3に記載のように実施した。
【0280】
結果及び結論:固定化されたMIF(oxMIF)に対する、C0132及びC0133抗体の結合を広範な濃度にわたり測定し、生じる結合曲線を
図13に示す。抗oxMIF抗体C0008を、二価oxMIF結合の参照抗体として使用した。結合曲線及び算出したEC
50値は、2つの抗oxMIFアームを有するbsMabのC0133が、C0008と類似の親和性でoxMIFに結合する(EC
50=242pM(C0133)、及び158pM(C0008))のに対して、抗oxMIFアームを1つしか有しないbsMabのC0132が、アビディティ効果の喪失によりoxMIFにより高いEC
50値(2508pM)で結合することを明確に示した。
【0281】
図12:新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG二重特異性抗体(bsMab)であるC0132(Fab/scFv-Fc)及びC0133(Fab/Fab-scFv-Fc)の概略図。
【0282】
図13は、固定化されたoxMIFへの新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133の結合曲線を示す。結合された抗体は、抗ヒトIgG(Fc)-HRPコンジュゲートによって検出され、C0008をoxMIFへの二価結合の参照抗体として使用した。データは、GraphPad Prismを使用するシグモイド4パラメーター式にフィットした(2回の反復の平均+/-SEMが示される)。
【0283】
実施例15:redMIFと比較したoxMIFへの、C0132抗oxMIF×抗HSG bsMab及びC0133抗oxMIF×抗HSG bsMabの差次的結合
材料及び方法:抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133、参照抗oxMIF mAb C0008、並びにヒトIgG1アイソタイプ対照は、マイクロプレートに4℃で終夜固定化した(oxMIF二価抗体は15nM、oxMIF一価抗体は30nM)。ブロッキングした後、ウェルを、50ng/ml(約1.3nM)のredMIF又はoxMIF代理NTB-MIF(Schinagl et al.,2018)とインキュベートした。捕捉したoxMIFは、ポリクローナルウサギ抗MIF抗体及びヤギ抗ウサギIgG-HRPによって検出した。プレートを、テトラメチルベンジジン(TMB)によって染色し、発色反応を30%H2SO4の添加により停止させた。ODを450nmで測定した。
【0284】
結果及び結論:可溶性oxMIF及びredMIFに対するC0132及びC0133の結合を
図14に示す。結果は、C0132及びC0133の両方がoxMIFに強く結合するが、redMIFには結合しないことを明確に示した。新しく設計した抗体は、参照抗体C0008と非常に類似したOD値を示し、oxMIFとredMIFを区別することが記載された(Thiele et al.,2015)。アイソタイプIgGでは、結合は観察されなかった。したがって、抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133は、oxMIFとredMIFを区別する能力を保持した。
【0285】
図14は、redMIFと比較したoxMIFへの新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133の差次的結合を示す。C0008を参照抗oxMIF抗体として使用した。3回の反復の平均及びSEMが示される。
【0286】
実施例16:同系CT26大腸腫瘍を持つBalb/cマウスにおける新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133の生体内分布
【0287】
材料及び方法:新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133の生体内分布は、マウス大腸癌CT26細胞株の皮下腫瘍を持つ雌のBalb/cマウスにおいて調べた。雌のBalb/cマウスは、全注射容積100μlのPBS中3×106個のCT26細胞の皮下注射を片側に受けた。個々の腫瘍容積が150~300mm3に達すると、マウスは治療群に割り当てられ、5mg/kgのIRDye 800CW標識C0132若しくはIRDye 800CW標識C0133又は治療なし(対照群)の単回静脈内投与を受けた。
【0288】
C0132及びC0133は、製造業者の説明書に従ってIRDye800CW Protein標識キット(高MW、LI-COR Biosciences社製)を使用して、IRDye800CWによって標識した。標識プロセス後及び標識抗体のマウスへの注入前に、タンパク質濃度及びIRDye800CW標識抗体の標識効率を、Nanodrop技術を使用して決定し、マウスは、標識後のタンパク質濃度に基づいて投与された。In vivo画像化は、以下の時点:投与後1時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間、168時間での標識抗体の投与時に、LI-COR Pearl(登録商標)Trilogy画像化装置で実施した(785nmの励起波長及び820nmの発光波長で実施)。
【0289】
結果及び結論:
図15は、7日までの腫瘍保持により、それぞれ、静脈内投与したIRDye 800CW標識C0132及びC0133の、顕著な腫瘍内分布を示す。注入1時間後及びそれ以降の全ての画像化の時点で、腫瘍で観察された赤外線シグナルがバックグラウンドを上回ることから、腫瘍における抗体の優先的集積が示されることは、
図15から明らかである。
【0290】
図15は、皮下同系移植CT26腫瘍を持つマウスのinfra-red in vivo画像化によって評価した、新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及びC0133の腫瘍浸透及び保持を示す。マウスのInfra-red画像は、5mg/kgで投与されたIRDye 800CW標識抗体の注射後1時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間及び168時間で撮られた。
【0291】
実施例17:Balb/cマウスでの同系CT26大腸癌マウスモデルにおける抗oxMIF×抗HSG二重特異性抗体(bsMab)のC0132及びC0133並びに177Lu標識IMP288を使用するPRAIT(Pretargeted Radioimmunotherapy)
【0292】
この実施例では、新しく設計したFcサイレンシングされた二重特異性抗oxMIF×抗HSG抗体のC0132及びC0133の有効性を、HSGハプテンIMP288(US2005/0025709に記載のように)及び放射性核種としての
177Luと共に、PRAITアプローチを使用して評価した。IMP288は、DOTAコンジュゲートD-Tyr-D-Lys-D-Glu-D-Lys-NH2テトラペプチドであり、両リジン残基がε-アミノ基を介してHSG部分で誘導体化されている(
図16A)。IMP288のDOTAキレート基は、
177Luを含む放射性金属と共に使用するように特に設計される。
【0293】
材料及び方法:pre-RAITのIn vivo有効性を、皮下CT26マウス結腸直腸癌の腫瘍を担持するBalb/cマウスで評価した。
IMP288(Genepep社、France)は、約220MBq/nmolの比放射能にて177Luで標識され、放射化学的純度(RCP)95%以上を示した。簡潔に述べると、IMP288は、滅菌水によって希釈して最終濃度を1mMとした(1.45mg/ml)。IMP288ストック溶液の1/10希釈は、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(500mM、pH5.5)で実施した。0.04N HCl中の5mCi(185MBq)の177LuCl3(EndolucinBeta(登録商標)、ITG社、Germany)を放射線標識バイアルに入れ、続いて、40μlのMES緩衝液(250mM、pH5.5)及び0.84nmolの希釈IMP288溶液(8.4μl)を添加した。反応混合物を95℃で15分間インキュベートした。その後、5μlの10mMジエチレンペンタ-ジアミン四酢酸ナトリウム塩(DTPA-Na)を加えて、非組み込み177Luを錯体化し、溶液を0.9%NaCl/10g/L アスコルビン酸塩/0.05%(m/v)BSA中で370MBq/mLに希釈した。キレート効率並びにC0132及びC0133への結合は、iTLC(instant Thin Layer Chromatography、Agilent Technology社、SGI001)によって解析した。簡潔に述べると、220MBq/nmol及び0.084nmolのIMP288に相当する1.68nmol/mlの177Lu-IMP288溶液50μlを、10倍モル過剰の各bsMab(0.84nmol)と混合した。各反応液を、穏やかな撹拌下、37℃で30分間インキュベートした。177Lu-IMP288溶液並びに177Lu-IMP288-bsMab溶液は、iTLCストリップに適用し、0.15M酢酸アンモニウム(pH5.5):MeOHの1:1(v/v)溶液で溶出した。溶出後、iTLCプレートをリンスクリーン(MS,BAS-IP,Fujifilm 2025)で暴露し、Typhoon IP(Amersham社)及び関連ソフトウェアImageQuant TL version 8.2を使用して明らかにした。
【0294】
CT26マウス結腸直腸癌(ATCC-CRL-2638)細胞は、10%の熱不活性化FBS及び2mMグルタミンを追加したRPMI1640培地中で37℃/5% CO2にて拡大した。CT26細胞の懸濁液を、滅菌PBS中で10×106生存細胞/mLに調製した。Balb/cマウスは、100μLのPBSに懸濁した1×106個のCT26細胞を右脇腹に皮下注射した。腫瘍の容積が50~100mm3に達したら(接種約7~9日後)、マウスを1群当たり10匹のマウスの治療群に無作為に割り当てた。抗体(C0132又はC0133)を、無作為化の日(-3日目)に5mg/kgで静脈内注射した。177Lu-IMP288を、二重特異性mAbの注射の3日後(0日目)に、10:1のbsMAb/HSGIMP288ハプテンモル比で静脈内経路により投与した(それぞれ18.5MBqに相当する約4nmol/kg C0132 bsMAb又は約3nmol/kg C0133 bsMab)。更に、対照群は、事前の治療なしで0日目に37MBqの177Lu-IMP288又はビヒクルのいずれかを投与した。腫瘍容積及び体重は、21日目まで、又はマウスが1000mm3の腫瘍容積の人道的エンドポイントに達するまで2~3日毎に測定し、生存パーセンテージを決定した。各治療群の相対腫瘍容積(0日目の腫瘍容積=100%)、相対体重(0日目の体重=100%)、及びカプラン・マイヤー生存曲線(単位:生存パーセンテージ)は、GraphPrismソフトウェアを使用して時間に対してプロットした。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した。
【0295】
結果及び結論:
図16Bは、
177Lu-IMP288及び
177Lu-IMP288-bsMabに関するiTLCプロファイルを明らかにする。
図16Bに示されるように、
177Lu-IMP288に関する移動プロフィールの変化は、bsMabのC0132及びC0133とインキュベーションした後に観察され、
177Lu-IMP288がbsMabによって結合されたことが確認された。両bsMabとも、ImageQuant TLバージョン8.2によって明らかにされたピクセル強度から計算すると、94%超の
177Lu-IMP288ペプチドが結合していた。
【0296】
図17A~Bに示されるように、5mg/kgのFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132及び18.5MBqのIMP288を使用するPRAITは、強力且つ有意な腫瘍増殖阻害(
図17A)が21日間のモニタリング期間全体を通して持続した(100%の生存、
図17B)。統計解析(通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正;
**p<0.01)は、ビヒクル群中の動物のほぼ半数を8日目後に過剰な腫瘍増殖のために屠殺しなければならなかったため、8日目のみ実施し、C0132/
177Lu-IMP288治療群を
177Lu-IMP288群と比較した。更に、
図17Cにより、C0132を使用するPRAITは、モニタリング期間全体(21日間)を通して実質的な体重減少を生じないため、忍容性が良好であったことが示される。
図18から明らかなように、5mg/kgのbsMabのC0133及び18.5MBqのIMP288を用いるPRAITは、強力且つ有意な腫瘍増殖阻害をもたらした。統計解析(通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正;
***p<0.001)は、ビヒクル群中の動物のほぼ半数を8日目後に過剰な腫瘍増殖のために屠殺しなければならなかったため、8日目のみ実施し、C0133/
177Lu-IMP288治療群を
177Lu-IMP288群と比較した。要約すると、これらの結果から、放射線標識したHSGハプテンと一緒にしたFcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabは、PRAITとしての能力が高いことが浮き彫りにされる。
図16は、以下を示す:(A)HSGハプテンIMP288の構造並びに(B)bsMabのC0132及びC0133の
177Lu-IMP288ペプチドへの結合、この結合の評価は、iTLCによるものであり、bsMabとインキュベーションしたときの
177Lu-IMP288の移動プロフィールの変化に基づき、
177Lu-IMP288ペプチドのみの移動プロフィールと比較した。
【0297】
図17は、Fcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132を用いたBalb/cマウスにおける同系移植CT26マウス結腸直腸癌のPRAITを示す。C0132は、-3日目に投与し、続けて、3日後(0日目)に
177Lu-IMP288を投与した。(A)0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%);平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;
**p<0.01対
177Lu-IMP288。(B)カプラン・マイヤー生存曲線(単位:生存パーセント(%))、(C)0日目に測定した体重に対する体重(単位:%)。
【0298】
図18は、Fcサイレンシングされた抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0133を用いたBalb/cマウスにおける同系移植CT26マウス結腸直腸癌のPRAITを示す。C0133は、-3日目に投与し、続けて、3日後(0日目)に
177Lu-IMP288を投与した。図は、0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%)を示す。平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;
***p<0.001対
177Lu-IMP288。
【0299】
実施例18:Balb/cマウスでの同系CT26大腸癌マウスモデルにおける抗oxMIF×抗HSG二重特異性抗体(bsMab)のC0132及びC0132適用5日後に177Lu標識IMP288を使用するPRAIT(Pretargeted Radioimmunotherapy)
【0300】
この実施例では、新しく設計したFcサイレンシングされた二重特異性抗oxMIF×抗HSG抗体のC0132の有効性を、HSGハプテンIMP288(US2005/0025709に記載のように)及び放射性核種としての177Luと共に、PRAITアプローチを使用して評価した。
【0301】
材料及び方法:RRAITのIn vivo有効性を、皮下CT26マウス結腸直腸癌の腫瘍を担持するBalb/cマウスで評価した。研究は、実施例16に記載されるように実施し、いくつかの改変を加えた。簡潔に述べると、Balb/cマウス(Balb/c ByJ、Janvier Labs社、France)は、100μLのPBSに懸濁した1×106個のCT26細胞を右脇腹に皮下注射した。腫瘍増殖は、接種7日後まで目視観測及び触診によって管理した。In vivo治療研究は、腫瘍サイズが、3つの治療群(1群当たり10匹のマウス)で約100~200mm3及び1つの対照群(1群当たり10匹のマウス)で約400~500mm3に達したとき開始した。bsMabのC0132を2用量:2.5mg/ml、及び5mg/mlでi.v.注射する一方で、177Lu標識IMP288をC0132の投与5日後(実施例16では3日後に対して)(0日目)にi.v.注射した。C0132/放射線標識したHSG IMP288ハプテンモル比を10/1で一定に保つ(実施例16と同じ)ことは、177Lu標識IMP288がそれぞれ2nmol/kg(9.3MBq)、及び4nmol/kg(18.5MBq)で投与されたことを意味する。対照群は、マウスがbsMabを用いて事前に治療されることなく0日目に177Lu-IMP288を8nmol/kg(37MBq)で投与された1コホートからなった。投与後21日間にわたり、動物の体重及び腫瘍容積を2~3日毎に評価した。腫瘍容積は、デジタルノギスを用いて腫瘍の長さ、幅、及び深さを測定することによって決定した。腫瘍容積は、以下の式:腫瘍容積=(長さ×幅×深さ)×0.5を使用して算出した。マウスを21日目まで、或いはマウスが所定の実験エンドポイント:腫瘍容積>1500mm3又は体重減少20%超に達するまでモニターした。各治療群の相対腫瘍容積(0日目の腫瘍容積=100%)、及びカプラン・マイヤー生存曲線(単位:生存パーセンテージ)は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して時間に対してプロットした。統計解析(通常の一元ANOVA及び多重検定のためのダネット補正、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)は、対照群中の動物(177Lu-IMP288、bsMabなし)を11日目後に過剰な腫瘍増殖のために屠殺しなければならなかったため、8日目及び10日目のみGraphPad Prismを使用して実施し、2つのC0132治療群の各々を対照群(177Lu-IMP288のみ、bsMabなし)と比較した。
【0302】
結果及び結論:C0132を2.5及び5mg/mlで用いたプレ標的化治療が有意な腫瘍退縮(
図19A)、及び生存利益(
図19B)をもたらすことは、
図19から明らかである。C0132を5mg/mlで投与した場合に、最大21日間のモニタリングの間持続する最良の生存パーセンテージ(100%)を達成できた。
【0303】
図19は、Balb/cで、CT26マウス結腸直腸癌細胞を同系移植したマウスにおける、PRAITアプローチを使用した抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132の有効性を示す。C0132は、-5日目に2.5mg/ml、及び5mg/mlで投与し、続けて、5日後(0日目)に
177Lu-IMP288を投与した。(A)0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%);平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;
***p<0.001対
177Lu-IMP288。(B)カプラン・マイヤー生存曲線(単位:生存パーセント(%))。
【0304】
実施例19:Balb/cヌードマウスでの異種移植CFPAC-1膵臓癌マウスモデルにおける抗oxMIF×抗HSG二重特異性抗体(bsMab)のC0132及びC0132適用5日後に177Lu標識IMP288を使用するPRAIT(Pretargeted Radioimmunotherapy)
この実施例では、新しく設計したFcサイレンシングされた二重特異性抗oxMIF×抗HSG抗体のC0132の有効性を、膵臓癌の異種移植モデルにおいて、HSGハプテンIMP288(US2005/0025709に記載のように)及び放射性核種としての177Luと共に、PRAITアプローチを使用して評価した。
【0305】
材料及び方法:PRAITのIn vivo有効性を、皮下CFPAC-1膵管腺癌の腫瘍を担持するBalb/cヌードマウスで評価した。研究は、基本的に実施例16及び17に記載されるように実施し、いくつかの改変を加えた。ヒト膵管腺癌細胞、CFPAC-1は、ATCCから提供された(Cat#CRL-1918)。細胞は、10%FBS及び2mM L-グルタミンを追加したRPMI 1640培地で培養した。CFPAC-1細胞の懸濁液を、滅菌PBS中で50×106細胞/mLに調製した。Balb/cヌードマウス(Balb/c ByAnNRj-Foxn1nu/nu)は、100μLのPBSに懸濁した5×106個のCFPAC-1細胞を右脇腹に皮下注射した。腫瘍増殖は、接種4日後まで目視観測及び触診によって管理した。In vivo治療研究は、腫瘍サイズが、治療群(1群当たり10匹のマウス)で約150~300mm3及び2つの対照群(1群当たり10匹のマウス)で約350~500mm3に達したとき開始した。治療群は最初に5mg/kg用量のBsMAbのC0132を投与した(-5日目)。5日後(0日目)、放射線標識したIMP288は、10:1の固定BsMAb/HSGハプテンIMP288モル比を用いて、つまり、177Lu標識HSGハプテンIMP288をそれぞれ4nmol/kg(18.5MBq)で投与した。対照群は、マウスが177Lu-IMP288を8nmol/kg(37MBq)で投与されたが、BsMAbを投与されなかった1コホートと、マウスが177Lu-IMP288の希釈に使用されるビヒクルのみを投与された1コホートと、からなった。投与後28日間にわたり、動物の体重及び腫瘍容積を2~3日毎に評価した。腫瘍容積は、デジタルノギスを用いて腫瘍の長さ、幅、及び深さを測定することによって決定した。腫瘍容積は、以下の式:腫瘍容積=(長さ×幅×深さ)×0.5を使用して算出した。マウスを28日目まで、或いはマウスが所定の実験エンドポイント:腫瘍容積>1500mm3又は体重減少20%超に達するまでモニターした。各治療群の相対腫瘍容積(0日目の腫瘍容積=100%)は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して時間に対してプロットした。統計解析(通常の一元ANOVA及び多重検定のためのダネット補正;**p<0.01)は、14日目のみを対象にしてGraphPad Prism V9.4において実施し、C0132治療群をビヒクル群と比較した。
【0306】
結果及び結論:C0132を5mg/mlで用いたプレ標的化治療が有意な腫瘍退縮(
図20)をもたらすことは、
図20から明らかである。
【0307】
図20は、CFPAC-1膵臓腺癌細胞を異種移植したBalb/cヌードマウスにおける、PRAITアプローチを使用した抗oxMIF×抗HSG bsMabのC0132の有効性を示す。C0132は、-5日目に5mg/mlで投与し、続けて、5日後(0日目)に
177Lu-IMP288を投与した。0日目に測定した腫瘍容積に対する腫瘍容積(単位:%);平均±SEMが示される(n=最大10)。統計解析は、GraphPad Prism V9.4において、通常の一元ANOVA、及び多重検定のためのダネット補正を使用して実施した;
**p<0.01対ビヒクル。
【0308】
実施例20:II型コラーゲン誘導関節炎(CIA)のマウスモデルにおける、グルココルチコイド(GC)と組み合わせたC0115抗体の有効性
グルココルチコイド(デキサメタゾンなど)は、ヒト患者におけるリウマチ性疾患を制御するための長期療法として一般的に使用される強力な免疫抑制剤であるが、様々な副作用を伴う。この実施例では、C0115の有効性を単独治療として、又はデキサメタゾンと組み合わせて評価した。
【0309】
材料及び方法:この研究では、8~9週齡の雄のDBA/1j(Harlan Laboratories社,Italy)マウス(体重範囲:18~20グラム)を使用した。ウシII型コラーゲン(CII;Chondrex社,USA)は、4℃で穏やかに終夜撹拌することによって、0.05M酢酸中に2mg/mlで溶解した。CFA(完全フロイントアジュバント)は、結核菌H37Ra(Difco社,Detroit,MI)を、IFA(不完全フロイントアジュバント、Sigma Aldrich社,Milano,Italy)に2mg/mlの濃度で添加することによって調製した。注射前に、CIIを等量のCFAで乳化した。CIAを誘導するために、マウスの尾の付け根に、100μlのCII及びCFAを含有する得られたエマルション(100μg/匹)を皮内注射した。21日目に、2回目のIFA中のCIIの追加免疫100μl(100μg/匹)を投与した。疾患の発症時に、マウスは、ビヒクルを用いた治療、C0115(20mg/kg)を単独で用いた治療、又はC0115(20mg/kg)を低用量のデキサメタゾン(0.1mg/kg)の毎日の注射との組合せで用いた治療を、週に2回(i.p.)、20日間行った。マウスの対照群は、標準治療薬として高用量のデキサメタゾン(0.3mg/kg)を毎日注射した。治療終了時に、動物は、安楽死させ、血液を回収し、更なる組織学的解析のために組織(前足及び後足)を採取した。関節炎の臨床的重症度は、体重、及び足の厚さ(4本の足の全ての、厚さ計を使用)を週に2回モニタリングすることによって評価した。各マウスの4本の足の関節炎スコアは、0~4の範囲であり、以下のように評価した:0=関節炎の徴候なし;1=足又は1本の指の腫脹及び/又は発赤;2=2つの関節の発症;3=2つ超の関節の発症;4=足及び指全体の重度の関節炎(マウス当たりの最大スコアは12になる)。各マウスの累積疾患スコアを、治療期間にわたりスコアを合計することによって個々のマウスに対して計算した。統計解析は、GraphPad Prismにおいて、通常の一元ANOVA、続けて、フィッシャーのLSD検定を使用して行った。
結果及び結論:
図21により、C0115を用いた治療(20mg/kg)で、ビヒクル治療群と比較した累積疾患スコアによって示される臨床的関節炎徴候の有意な改善がもたらされたことが明らかにされる。更に、C0115(20mg/kg)と低用量のデキサメタゾン(0.1mg/kg)との組合せ治療は、高用量のデキサメタゾン(0.3mg/kg)の有効性に匹敵し、単剤としての治療と比較して臨床的関節炎徴候が更に改善された。
【0310】
実施例21:大腸炎のT細胞移入マウスモデルにおける、C0115抗体の有効性及びグルココルチコイド(GC)と組み合わせたC0115抗体の有効性
この実施例では、単剤としてのC0115抗体、又は低用量のデキサメタゾンと組み合わせたC0115抗体の有効性は、慢性腸炎症時に評価した。
【0311】
材料及び方法:この研究では、8~9週齡の雌のBALB/c及びC.B-17 SCID(Envigo社,San Pietro al Natisone,Udine,Italy)マウス(体重範囲:18~20グラム)を使用した。
【0312】
大腸炎を誘導するために、BALB/cマウス由来のCD4+CD25- T細胞をCB-17 SCIDマウス(B細胞及びT細胞を欠く)に移植した。簡潔に述べると、Balb/Cマウスから単離された脾細胞を、4μg/mlのコンカナバリンAを用いてin vitroで刺激した。T細胞は、CD4+CD25-細胞の磁気選択によって単離され、細胞調製物を、生死判定色素(7-アクチノマイシン-D)、FITCコンジュゲート抗マウスCD4抗体(BD社、Heidelberg、Germany)及びAPCコンジュゲート抗マウスCD25抗体(BD社、Heidelberg、Germany)で染色し、FACS Calibur(BD Bioscience社、Heidelberg、German)及びCellQuestソフトウェアを使用してフローサイトメトリーによって純度制御した(CD4+CD25-ゲートでの95%超の生存T細胞)。単離したCD4+CD25-T細胞は、最終容量0.2mlの生理食塩水中に500,000細胞の濃度でCB-17 SCIDマウスにi.p.注射した。T細胞移入の1週間後、マウスは、ビヒクル、単剤としてのC0115(10mg/kg)、又は低用量のデキサメタゾン(0.01mg/kg)の毎日の注射と組み合わせたC0115(10mg/kg)で、83日間治療した(週に2回;i.p.)。マウスの対照群は、標準治療薬として高用量のデキサメタゾン(0.1mg/kg)を毎日注射した。治療終了時に、血液、便及び結腸組織を、更なる解析のために回収した。大腸炎の臨床的重症度は、体重変化及び便の硬さの定期的なモニタリングによって評価した。各マウスの累積便スコアは、毎日の便スコアを合計することによって決定した(0=よく形成されたペレット;1=軟便;2=下痢)。統計解析には、GraphPad Prism V9.4において、一元ANOVA、続けて、フィッシャーのLSD検定を使用した。
【0313】
結果及び結論:
図22により、C0115を用いた治療(10mg/kg)で、ビヒクル治療群と比較した累積便スコア(A)の有意な低減によって証明される疾患の重症度の有意な改善がもたらされたことが示され、これは高用量のデキサメタゾン(0.1mg/kg)に匹敵するものであった。10mg/kgのC0115と低用量のデキサメタゾン(0.01mg/kg)との組合せ治療は、累積便スコアの更なる有意な低減によって証明されるように、疾患の重症度を更に改善した。驚くべきことに、10mg/kgのC0115と低用量のデキサメタゾン(0.01mg/kg)との組合せ治療は、治療終了時(83日目)にビヒクル治療群及び標準治療コルチコステロイド薬のデキサメタゾンを用いた治療と比較して体重が有意に増加することによって評価された大腸炎の更なる改善をもたらした。
【0314】
図22は、新しく設計したFcサイレンシングされた抗oxMIF抗体C0115が、単剤及びGCとの組合せで大腸炎モデルのT細胞移入マウスにおいて疾患の重症度を改善することを示す。実験終了時のD83での体重変化(A)及び累積便スコア(B)は、C0115(10mg/kg)を単独若しくは低用量0.01mg/kgのデキサメタゾンとの組合せで用いた治療の場合、標準治療コルチコステロイド薬としてデキサメタゾンを低用量(0.01mg/kg)及び高用量(0.1mg/kg)で用いた治療の場合、又はビヒクル対照治療の場合で評価した。データは、平均±SEMとして示され、統計解析を通常の一元ANOVA、続けて、フィッシャーのLSD検定を使用して行った(
*p<0.05;
**p<0.01)。
【0315】
実施例22:新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集傾向及び低減された疎水性、並びに固定化されたoxMIFとのその結合の保持(KD推定)
【0316】
【0317】
疎水性及び凝集を評価するため、新しく設計した抗体を、対照抗oxMIF抗体C0008とのhead to head比較で、ゲル濾過(SEC)によって、及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって解析する。
【0318】
SECのため、抗体を、1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)中で1mg/mlに希釈し、100μlの試料を1.25ml/minの流速でEnrich 650(Bio-Rad社)ゲル濾過カラムに適用する。分離及び平衡は、室温で、1×PBS中で実施する。タンパク質ピークは、280nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、ChromLabソフトウェアパッケージ(Bio-Rad社)を使用して解析する。結果は、メインピークの保持容量(Vr、ml)で報告し、凝集体の存在は手動で順位付けする。
【0319】
HIC解析のため、抗体を、50mMリン酸及び0.75M硫酸アンモニウム、pH6.8を使用して、1mg/mlの最終濃度に希釈する。1mgの各抗体は、1mlローディングループを使用して1mlのHiTrap Butyl HPカラムに注入し、カラム流速を室温で1ml/minに維持する。ピークの分離は、0~100%緩衝液B(50mMリン酸、20%イソプロパノール;pH7.0)の勾配の20カラム容積(CV)で実行する。タンパク質ピークは、280nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、Unicornエマルションソフトウェアパッケージ(GE Healthcare社)を使用して解析する。結果は、各ピークについて、最大ピークでのVr(ml)で報告する。
【0320】
oxMIFへの結合(見かけの親和性)を評価するため、新しく設計した抗体をELISAで分析する。簡潔に述べると、PBS中に希釈した1μg/mlの組換えヒトMIFを、4℃で終夜ELISAプレートに固定化する(Thiele et al.,2015に従って、MIFをoxMIFに変換)。ブロッキングした後、抗oxMIF抗体の段階希釈を、プレートに添加する。最後に、結合された抗体を、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)-HRPコンジュゲート、及び基質としてテトラメチルベンジジン(TMB)を使用して検出する。発色反応を3M H2SO4で停止させ、ODを450nmで測定する。見かけの親和性(KD)を表すEC50値は、GraphPad Prismを使用して4パラメーターフィットによって決定する。
【0321】
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