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特表2024-532462免疫チェックポイント阻害剤の安定性を改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント阻害剤の安定性を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240829BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240829BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513742
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 IN2022050787
(87)【国際公開番号】W WO2023031969
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202141040075
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】202241019550
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512276315
【氏名又は名称】ドクター レディズ ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラマン, ムラリ
(72)【発明者】
【氏名】ケー ゴウド, サイシャラン
(72)【発明者】
【氏名】ナンカール, スニール アショク
(72)【発明者】
【氏名】ナナス, マヤ
(72)【発明者】
【氏名】シギレディ, インドラ クマール
(72)【発明者】
【氏名】アガルワル, ロヴィシャ
(72)【発明者】
【氏名】カリガトラ, シリーシャ ゴスワミー
(72)【発明者】
【氏名】マリカンティ, ラヴィ クマール
(72)【発明者】
【氏名】スレーシュ, アビラミ
(72)【発明者】
【氏名】シヴァランカ, ギリダール
(72)【発明者】
【氏名】ペンメッツァ, ラヴィ キランマイ
(72)【発明者】
【氏名】ラバーラ, スマン
(72)【発明者】
【氏名】インガレ, マヘシュ
(72)【発明者】
【氏名】サルカール, プジャ
(72)【発明者】
【氏名】デサイ, マユール ヴィジャイ
(72)【発明者】
【氏名】キレーヴ, プラティーバ チャンドラシェカール
(72)【発明者】
【氏名】シンデ, チェタン ゴヴィンドラオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076DD09F
4C076DD23
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE23F
4C076FF36
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、ヒトプログラム死受容体-1(PD-1)/プログラム死受容体リガンド1(PD-Ll)に対する抗体および抗原結合フラグメントの医薬製剤、ならびにこれらを調製するための方法に関する。開示される製剤は、低濃度から高濃度まで抗PD1/抗PD L1抗体を安定化し、異なる投与モード(皮下/静脈内)に適したものにする。本発明は、抗PD-1/PD-L1抗体の医薬製剤を開示する。特に、上記抗PD1抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PD1抗体の液体医薬製剤であって、前記製剤は、抗PD1抗体、5.0~6.0のpHを有するコハク酸もしくは酢酸もしくはクエン酸緩衝液、糖、アミノ酸、キレート剤および界面活性剤を含む製剤。
【請求項2】
前記抗PD1抗体濃度は、10mg/ml~200mg/mlの範囲に及ぶ、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
IgG4 抗PD1抗体においてサブビジブル粒子の形成を制御する方法であって、前記方法は、
前記IgG4 抗PD1抗体を、コハク酸もしくは酢酸もしくはクエン酸緩衝液、糖、キレート剤および界面活性剤を含む組成物中で製剤化する工程、
を包含する方法。
【請求項4】
前記組成物は、メチオニンをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サブビジブル粒子のサイズは、≧5μm、または≧10μm、または≧25μm、または≧50μmかつ80μm未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記抗PD1抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである、請求項1または3に記載の製剤または方法。
【請求項7】
前記糖は、トレハロースまたはスクロースである、請求項1または3に記載の製剤または方法。
【請求項8】
前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)である、請求項1または3に記載の製剤または方法。
【請求項9】
前記界面活性剤は、ポリソルベート80またはポリソルベート20である、請求項1または3に記載の製剤または方法。
【請求項10】
ニボルマブ、コハク酸または酢酸緩衝液、トレハロース、メチオニン、塩化ナトリウム、DTPAおよび界面活性剤を含むニボルマブ抗体の液体医薬製剤であって、ここで前記抗体濃度は、10mg/ml~200mg/mlの範囲にある、製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトプログラム死受容体-1(PD-1)/プログラム死受容体リガンド1(PD-Ll)に対する抗体および抗原結合フラグメントの安定な製剤、およびその調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
過去20年間にわたり、組換えDNA技術は、多くのタンパク質、特に、抗体治療剤の商品化をもたらした。これらの治療用抗体の有効性は、主に、その安定性、投与経路ならびにそれらの投与形態および濃度に依存する。これは、次に、治療用抗体が、治療用抗体の安定性および活性を保持するために適切に製剤化されることを必要とする。
【0003】
各投与経路および投与形態のための製剤は、特有であり得、従って、特定の要件を有する。固体投与形態(例えば、凍結乾燥散剤)は、一般に、液体(水性)製剤より安定である。しかし、凍結乾燥製剤の再構成は、かなり、バイアルにかなりの過剰充填が必要であり、取り扱いにおける注意を要し、液体製剤に対して高い生産コストを伴う。液体製剤は、これらにおいて有利であり、通常、注射用タンパク質治療剤のために(エンドユーザーについては利便性および製造業者については調製のしやすさに関して)好ましいが、この形態は、ストレス(温度、pH変化、撹拌など)下での変性、凝集および酸化に対するタンパク質の感受性を考慮すると、常に実現可能なわけではない。これらのストレス要因の全ては、治療用タンパク質/抗体の生物学的活性の喪失を生じ得る。
【0004】
ヒトプログラム死-1タンパク質(PD-1)またはヒトプログラム死リガンド-1タンパク質(PDL-1)に結合する抗体は、治療用抗体の例のうちの1つであり、種々の腫瘍的障害を処置することにおけるその広いスペクトルに起因して、重要性が非常に増している。上記PD1抗体のうちの大部分は、IgG4アイソタイプ抗体であり、PD-L1抗体は、IgG1アイソタイプ抗体である。抗体の各アイソタイプは、安定な製剤であるように、製剤化に関してその特有の難題がある。フラグメント化とは別に、IgG4アイソタイプ抗体は、他のIgGアイソタイプと比較して、特に、低pH条件では、凝集または粒子形成しやすい傾向にあることは、当該分野で公知である。IgG4アイソタイプ抗体における粒子は、それらのサイズに基づいて、視認できるまたはサブビジブル(sub visible)であり得、これらは、抗体の貯蔵、輸送および製造の間に(例えば、調製、配合(compounding)、充填、取り扱い、検査、または他の製造ステージの間に)形成し得る。これらの粒子は、大抵は、上記のうちのいずれかから生じるタンパク質夾雑物である。粒子が免疫原性に対して実質的な影響を及ぼすという事実は、広く知られておりかつ受け入れられている(Ishii-Watabeら/ Journal of Pharmaceutical Sciences 106 (2017) 3431-3437の3432の行番号28~29)。さらに、粒子は、上記治療用抗体のバイオアベイラビリティーおよび吸収に干渉し、従って、薬物の治療上の有効性に影響を与え得る。
【0005】
よって、十分に明確な理由から、承認当局は、治療用抗体組成物におけるサブビジブル粒子および視認できる粒子(visible particle)の限界に関して厳密な規制上の要求を課している。現行の米国薬局方(USP)の明細は、視認できる粒子およびサブビジブル粒子(サイズが≧10μmおよび≧25μm)に関して数値限界を含み、さらに、>2μm~5μmサイズ範囲の粒状物に関して、粒子濃度/計数の決定を推奨する。
【0006】
従って、上記粒子を特定し、IgG4を含む、任意の治療用抗体組成物中の視認できる/サブビジブル粒子を特徴づけることは、規制ガイドラインの必要な条件ではなく、義務的な要件である。本発明の目的は、水性製剤の貯蔵中にIgG4抗体(例えば、ニボルマブ)において顕著に起こる粒状物、視認できる粒子およびサブビジブル粒子の両方、ならびに特にサブビジブル粒子のこの問題に対処することである。
【0007】
さらに、抗体を安定化する適切な緩衝液および/または賦形剤組成物中で、アイソタイプバリエーションとは無関係に、抗PD1/IgG4抗体を製剤化することは必要である。さらに、抗体製剤の視覚的外見および/または粘性のような要因は、任意の治療用抗体製剤を調製する間に注意が払われなければならなかった。このような複雑さを考慮すると、医薬製剤の分野において、改善された代替の製剤に関する連続的なかつ不変の要求が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本発明は、抗PD-1/PD-L1抗体の医薬製剤を開示する。特に、上記抗PD1抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである。
【0009】
本発明の医薬製剤は、抗PD1/PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを開示し、ここで上記製剤は、抗PD1/PD-L1抗体、4.5~6.5のpHを有する緩衝液および必要に応じて、1種またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤/安定化剤を含む。抗PD1/PD-L1抗体製剤において開示されるとおりの緩衝液は、コハク酸緩衝液、もしくは酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液もしくはヒスチジン緩衝液、またはその派生物もしくは塩あるいはこれらの組み合わせである。
【0010】
特に、本発明の開示される製剤は、抗PD1/PD-L1抗体を、低濃度から高濃度まで、約10mg/ml~約200mg/mlまで安定化し、異なる投与経路に適したものにする。
【0011】
1つの局面において、本発明は、抗PD-1/PD-L1抗体組成物において抗PD1/PD-L1抗体の粒子形成および/またはチャージバリアントの形成および/または凝集および/またはフラグメント化もしくは脱アミド化を制御する方法であって、ここで上記方法は、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液もしくはヒスチジン緩衝液、またはその派生物もしくは塩またはこれらの組み合わせを、上記抗体組成物に添加することを包含する方法を開示する。上記緩衝液組成物は、上記抗体生成の予備製剤化(pre-formulation)中におよび/または製剤化段階で添加され得る。
【0012】
さらに、本発明は、抗PD1/抗PDL1抗体組成物の、その組成物中での乳白色(opalescence)を制御する方法であって、ここで上記方法は、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液もしくはヒスチジン緩衝液、またはその派生物もしくは塩あるいはこれらの組み合わせを、上記抗体組成物に添加することを包含する方法を開示する。上記緩衝液組成物は、上記組成物中で可溶性形態において上記抗体を維持し、それによって乳白色を維持するために、上記抗体生成の予備製剤化中におよび/または製剤化段階において添加され得る。さらに、上記プロセスから得られる製剤の乳白色は、基準乳白色標準(ROS)IIまたはII-IIIと適合する。
【0013】
本発明はまた、抗PD1/抗PDL1抗体にコロイド安定性を付与する方法であって、ここで上記方法は、上記抗PD1/PD-L1抗体を、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液、もしくは酢酸緩衝液もしくはヒスチジン緩衝液、またはその派生物、もしくは塩あるいはこれらの組み合わせを含む緩衝液組成物中で製剤化する工程を包含する方法を開示する。
【0014】
本発明の開示される製剤は、以下の、25℃~40℃の範囲に及ぶ温度で1日~28日/4週間の範囲に及ぶ期間を含む加速条件のうちの少なくとも1つの下で安定性を示す。上記製剤中の抗体は、安定であり、40℃で2週間にわたる貯蔵後ですら上記製剤中の抗体のモノマー内容物を98%またはこれより高く(≧98%)維持する。
【0015】
別の局面において、本発明は、IgG4抗体組成物中の視認できる粒子およびサブビジブル粒子の形成を制御する方法であって、上記方法は、4.5~6.5のpHを有し、糖、キレート剤または抗酸化剤および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液もしくはヒスチジン クエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液組成物中で上記抗体組成物を調製する工程を包含する方法を開示する。具体的には、本開示の方法は、 加速温度および種々のストレス条件に供した後ですら、視認できる粒子およびサブビジブル粒子の形成を制御する。特に、本開示の方法は、サブビジブル粒子を十分に受容可能な規制限界未満に制御する。
【0016】
本発明はさらに、IgG4抗体組成物における酸化を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物を、4.5~6.5のpHを有し、糖、キレート剤、抗酸化剤および界面活性剤をさらに含むコハク酸またはヒスチジン-クエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液組成物中で調製する工程を包含する方法を開示する。特に、上記方法は、メチオニン残基(ニボルマブの重鎖のMet34およびMet83、ならびにペムブロリズマブの重鎖のCDR3のMet105)の酸化を防ぐ。
【0017】
本発明の開示される製剤は、1種またはこれより多くの以下のストレス条件(例えば、温度ストレス、撹拌、凍結-融解、化学物質誘発性酸化および金属誘発性酸化ストレス)の下で安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される用語「約」は、特定の値から20%までの変動を意味し、含む。
【0019】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、完全な抗体または任意の抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)またはその融合タンパク質を包含する。
【0020】
本明細書で使用される用語「緩衝液」とは、酸または塩基の添加の際に、選択した値の付近での、溶液のpHのいかなる変化にも耐える作用因子に言及する。本明細書での緩衝液は、緩衝剤、またはその派生物、またはその塩および/もしくは組み合わせを含む。
【0021】
用語「安定な」製剤とは、その中にある抗体が、その物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を保持する製剤に言及する。
【0022】
安定性試験は、時間経過中の種々の環境要因の影響下で抗体の質の証拠を提供する。ICHの「Q1A: 新原薬および製品の安定性試験(Stability Testing of New Drug Substances and Products)」は、加速安定性試験からのデータが、抗体の輸送中に起こり得る表示貯蔵条件より高いまたは低い、短期間移動の影響を評価するために使用され得ることを述べている。
【0023】
種々の分析方法が、医薬製剤中の抗体の物理的および化学的分解を測定するために利用可能である。抗体は、色および/もしくは清澄性の視覚的検査の際に、またはUV光散乱によるかもしくはサイズ排除クロマトグラフィーによる測定の場合に、凝集、沈殿および/または変性の徴候が実質的にないかまたは最小限にしか示さない場合、医薬製剤中で「その物理的安定性を保持する」。抗体は、目的の抗体の化学的改変(例えば、脱アミノ化、酸化など)の結果としてのバリアントを含み得る生成物バリアントの形成を全くまたは最小限にしか示さない場合に、医薬製剤において「その化学的安定性を保持する」といわれる。分析方法(例えば、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性イオンクロマトグラフィー)は、化学的生成物バリアントを調査するために使用され得る。
【0024】
用語「モノマーとは、本明細書で使用される場合、2本の軽鎖および2本の重鎖からなる抗体を説明する。抗体組成物の上記モノマー含有量は、代表的には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析される。SECの分離原理によれば、大きな分子または高分子量(HMW)を有する分子が、先ず溶離し、続いて、より小さなまたはより低い重量の分子が溶離する。抗体組成物に関する代表的なSECプロフィールにおいて、ダイマー、マルチマー等を含み得る凝集物が先ず溶離し、続いて、モノマーが溶離し、短縮された(clipped)抗体バリアントまたは分解生成物が最後に溶離され得る。状況によっては、上記凝集物ピークまたは上記分解生成物ピークは、ベースライン分離ピークとして溶離されない場合もあるが、代わりに、ショルダーまたは異常な広いピークとして溶離する場合もある。抗体の、特に治療用抗体の適切な活性を維持するために、凝集物の形成または生成物のフラグメント化の形成を低減し、よって、モノマー含有量を目標値へと制御することは望ましい。安定性試験中の種々の時点で測定される場合、凝集物の形成および分解生成物含有量を阻害する能力は、目的の抗体の候補製剤の適切性を示し得る。TOSCHのTSK-GEL G3000SWXL(7.8mm×30cm)カラムは、SECを行うために、waterHPLCで使用され得る。
【0025】
用語「主要ピーク」とは、本明細書で使用される場合、カチオン交換クロマトグラフィー中で多量に溶離するピーク(主なピーク)に言及する。カチオン交換クロマトグラフィー中に、主要ピークに対して酸性である電荷で主要ピークより速く溶離するピークは、酸性バリアントピークといわれる。カチオン交換クロマトグラフィー中に、主要ピークより相対的に塩基性である電荷で主要ピークより遅く溶離するピークは、塩基性バリアントピークといわれる。主要ピーク含有量は、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)によって決定され得る。利用可能なIECのモードは2つ存在する。すなわち、カチオンおよびアニオン交換クロマトグラフィーである。負に荷電した分子は、アニオン交換樹脂に結合する一方で、正に荷電した分子は、カチオン交換樹脂に結合する。抗体組成物の代表的なカチオン交換クロマトグラフィープロフィールでは、酸性バリアントが先ず溶離し、続いて、主要ピークが、およびその後、最後に塩基性バリアントが溶離する。上記酸性バリアントは、抗体改変(例えば、アスパラギン残基の脱アミド化)の結果である。上記塩基性バリアントは、C末端リジン残基の不完全な除去の結果である。一般に、抗体において、リジン残基は、重鎖および軽鎖の両方のC末端に存在する。重鎖および軽鎖の両方においてリジンを含む抗体分子は、K2バリアントといわれ、重鎖および軽鎖のうちのいずれか一方においてリジン残基を含む抗体分子は、K1バリアントといわれ、何も有しない抗体分子は、K0分子といわれる。カルボキシペプチダーゼB酵素(CP-B酵素)は、K2バリアントおよびK1バリアントに存在するC末端リジン残基に対して作用するので、それらをK0分子として変換する。状況に応じて、IEC分析は、カルボキシペプチダーゼB(CP-B)酵素で消化したサンプルに関して行われ得る。代表的な安定性試験では、安定な製剤が、試験中に、チャージバリアント(酸性および塩基性バリアント)の形成の低減をもたらし、よって、主要ピーク含有量の何らかの低減を最小限にすることが予測される。
【0026】
薬学的に受容可能な賦形剤/安定化剤とは、添加剤またはキャリアに言及し、これは、製剤中の抗体の安定性に寄与する。上記賦形剤は、安定化剤および張度調整剤を包含し得る。安定化剤および張度調整剤の例としては、糖、アミノ酸、塩、界面活性剤、ポリマー、もしくはその誘導体および/またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
用語、糖は、本明細書で使用される場合、糖および糖アルコール/ポリオールを含む。糖は、モノサッカリド、ジサッカリド、およびポリサッカリドに言及し得る。糖の例としては、スクロース、トレハロース、グルコース、デキストロース、ラフィノースなどが挙げられるが、これらに限定されない。糖アルコールおよびポリオールの例としては、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
界面活性剤とは、種々のストレス条件(撹拌、剪断、高温への曝露などのような)に対してタンパク質製剤を保護するために使用される薬学的に受容可能な賦形剤に言及する。適切な界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween(登録商標) 20TMまたはTween(登録商標) 80TM)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(例えば、Poloxamer、Pluronic(登録商標))、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛および/または酢酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
用語「乳白色」または「乳白色の外観(opalescent appearance)」とは、溶液中の構成要素のうちの1種またはこれより多くのものの濃度(例えば、タンパク質および/または塩濃度)の関数としての、溶液(例えば、タンパク質調製物)中で検出される濁度に言及する。濁度は、既知の濁りの懸濁物を使用して生成される標準曲線を参照することによって計算され得る。医薬組成物に関する濁度を決定するための参照標準は、米国薬局方または欧州薬局方の基準に基づき得る。ここで、本発明において、乳白色を測定するために、先ず、ホルマジン溶液を、等容積の硫酸ヒドラジン溶液およびヘキサメチレンテトラミン溶液を混合することによって調製し、次いで、希釈して種々の基準乳白色標準を調製した。乳白色標準は、ROS-I、ROS-II、ROS-IIIおよびROS-IVを含む。
【0031】
比濁法は、可溶性の凝集物の存在を検出するために、または乳白色を示すために使用される濁度測定法(turbidometric method)である。出力は、比濁計濁度単位(NTU)に関して列挙される。
【0032】
「予備製剤化工程」とは、治療用生成物へのタンパク質の製剤化の前に行われる任意のまたは複数の工程に言及する。このような工程の例としては、クロマトグラフィー、濾過(限外濾過、滅菌濾過、ナノ濾過、ダイアフィルトレーション、タンジェンシャルフロー濾過、デプス濾過)、またはタンパク質を濃縮するために、もしくは緩衝液を異なる/適切な緩衝液へと交換するために行われる任意の他の工程が挙げられる。本明細書で言及される濾過工程は、タンジェンシャルフロー濾過モードにおいて行われ得る。
【0033】
「製剤化工程」とは、原薬から医薬品を調製する(原薬は、予備製剤化工程から得られる)ための下流のクロマトグラフィー工程および濾過工程の後に続く工程に言及する。
【0034】
用語「キレート剤(chelator)/キレート剤(chelating agent)」とは、金属原子と少なくとも1つの結合を形成し得る化合物に言及する。キレート剤は、代表的には、多座配位子であり、これは、そうでなければ、不安定性を促進し得る種と複合体を形成する安定化剤として組成物中で使用され得る。例示的なキレート剤としては、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシアミノカルボン酸、N-置換されたグリシン、2-(2-アミノ-2-オキソクチル(oxocthyl))アミノエタンスルホン酸(BES)、デフェロキサミン(DEF)、ナイアシンアミド、デスオキシコレート(desoxycholate)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、N-2-アセトアミド-2-イミノ二酢酸(ADA)、ビス(アミノエチル)グリコールエーテル、N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、trans-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、N,N-ビス-ヒドロキシエチルグリシン(ビシン)、N-(トリスヒドロキシメチルメチル)グリシン(トリシン)、グリシルグリシン、デスオキシコール酸ナトリウム、エチレンジアミン;プロピレンジアミン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラアミン(トリエン)、エチレンジアミンテトラアセトEDTA;EDTA二ナトリウム、EDTA、EDTAカルシウム、シュウ酸およびマレートが挙げられる。
【0035】
本明細書で言及される用語「抗酸化剤(antioxidant)」は、他の分子の酸化を阻害する作用物質(agent)に言及し、緩衝液構成要素の一部ではない。本明細書での抗酸化剤の例としては、シトレート、メチオニン、リポ酸、尿酸、グルタチオン、トコフェロール、カロテン、リコペン、システイン、ホスホネート化合物、例えば、エチドロン酸、デフェロキサミン(desferoxamine)およびマレートが挙げられる。
【0036】
本明細書で言及される用語「視認できる粒子」とは、100μmより大きいかまたはこれに等しい(≧100μm)寸法があるサイズの、液体組成物中の不溶性粒状物に言及する。これらの不溶性粒状物形成は、上記製剤に存在する賦形剤の分解によって、および/あるいはタンパク質凝集もしくは分解に起因して、または上記組成物を保持する容器からの任意の浸出物から引き起こされ得る。視認できる粒子は、代表的には、分析者による適切な照明の下での目視検査によって測定される。
【0037】
本明細書で言及される用語「サブビジブル粒子(sub-visible particle)」とは、(≦100μm)の寸法があるサイズ、具体的には、1μmから100μm未満の範囲に及ぶサイズの液体組成物中の不溶性粒状物に言及する。米国薬局方、USP 788は特に、サブビジブル粒子サイズに関する制限/許容可能な粒子計数を提供する。
【0038】
本発明において、上記サブビジブル粒子は、マイクロフローイメージング(Micro Flow Imaging)技術によって測定される。マイクロフローイメージング(MFI)は、サブビジブル粒子を定量する、およびこれの特徴づけのための顕微鏡検査、フルイディクス、および画像化技術の統合である。明視野画像(サンプル中の粒子の反射の結果として明るいバックグラウンドに対する暗い画像)は、波長470nmのLEDによって連続的に照明される固定倍率5×のカメラの視界の中心にある深さ100μmのフローセルを経てサンプルが流れる場合に連続フレームで捕捉される。検出は、粒子コントラストおよび利用可能な画素によって制限され得る。MFIに関する測定結果は、粒子濃度(計数/mL)および形状/形態である。
【0039】
実施形態の詳細な説明
本発明は、抗PD1/抗PDL1抗体の医薬製剤を開示する。特に、本発明は、特定の緩衝液組成物中のIgG4 抗PD1抗体の医薬製剤を開示する。別の局面において、本発明はまた、IgG4 抗PD1抗体製剤中の粒子形成(視認できる粒子およびサブビジブル粒子)を制御する方法を提供する。IgG4抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ)は、水性組成物として製剤化される場合に、粒状物質を形成する傾向にある。本発明の発明者らは驚くべきことに、IgG4抗体(ニボルマブ)において、異なる緩衝液組成物中でのその水性製剤における粒状物含有量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される場合に類似であるが、粒状物の形成およびこれらの粒子計数が増加する速度は、種々の緩衝液組成物間で異なることが見出された。これは、凝集物含有量のSEC測定にのみ基づいて上記抗体に関する安定な製剤を完成させる際に、特有の問題を課す。なぜなら上記組成物中の根底にある粒状物含有量は変動する可能性があり(SECによって検出されない)、最終製剤中で、または貯蔵中に粒子数の増加を生じ、治療用組成物において隠れたリスクをもたらす。本発明は、このようなリスクを特定し、上記組成物中の視認できるおよびサブビジブルな粒状物質をソートおよび列挙して、法定限度を十分に下回る粒子計数を有する最適な組成物/製剤を提示する。さらに、本発明者らはまた、ニボルマブ抗体の重鎖の(Kabat番号付けシステムに従って)34位および83位に存在するメチオニン残基が、ニボルマブに存在する他のメチオニン残基と比較して、より酸化しやすい傾向にあることを見出した。同様に、別の抗PD1抗体(すなわち、ペムブロリズマブ)はまた、特に、上記抗体の重鎖のCDR3における105位に存在するメチオニン残基が酸化する傾向にある。本発明の製剤組成物はまた、このようにして、治療用組成物におけるメチオニン誘発性酸化を制御するために調製される。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、
(i)抗PD-1/抗PDL1抗体、
(ii)約4.5~約6.5のpHを有する緩衝液、
(iii)1種またはこれより多くの安定化剤;および
(iv)界面活性剤、
を含む抗PD1/抗PDL1抗体の液体医薬製剤を開示する。
【0041】
上記の実施形態において、上記緩衝液は、有機緩衝液および/もしくはその塩またはそれらの組み合わせである。
【0042】
本発明の上記で言及した実施形態において、上記有機緩衝液は、コハク酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくはヒスチジン緩衝液である。
【0043】
一実施形態において、本発明は、抗PD1/PDL1抗体組成物において、抗PD1/PD L1抗体にコロイド安定性を付与する方法であって、ここで上記方法は、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液もしくはヒスチジン緩衝液、またはその派生物もしくは塩あるいはこれらの組み合わせを、上記抗体生成の予備製剤化および/または製剤化段階の間に、上記抗体組成物に添加することを伴う方法を開示する。
【0044】
さらに別の実施形態において、本発明は、抗PD1/PD-L1抗体組成物におけるチャージバリアントの形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、コハク酸もしくは酢酸もしくはクエン酸緩衝液、またはその派生物もしくは塩あるいはこれらの組み合わせを、上記抗体生成の予備製剤化および/または製剤化段階の間に、上記抗体組成物に添加することを包含する方法を開示する。
【0045】
一実施形態において、本発明は、抗PD1/PD-L1抗体組成物の凝集および/またはフラグメント化を制御する方法であって、ここで上記方法は、コハク酸もしくは酢酸もしくはクエン酸緩衝液もしくはその派生物もしくは塩またはこれらの組み合わせを、上記抗体生成の予備製剤化および/または製剤化段階の間に、上記抗体組成物に添加することを包含する方法を開示する。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、抗PD-1/PD-L1抗体組成物における粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、コハク酸もしくは酢酸もしくはクエン酸緩衝液、またはその派生物もしくは塩あるいはこれらの組み合わせを、上記抗体生成の予備製剤化および/または製剤化段階の間に、上記抗体組成物に添加することを包含する方法を開示する。
【0047】
別の実施形態において、本発明は、
i.抗PD1/抗PD L1抗体、
ii.10~50mM コハク酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液、
iii.マンニトールもしくはトレハロースもしくはスクロースもしくはソルビトールもしくは塩化ナトリウム、
iv.キレート剤、および
v.界面活性剤、
を含む抗PD1抗体/抗PD L1抗体の液体医薬製剤を開示する。
【0048】
別の実施形態において、本発明は、
i.抗PD1/抗PD L1抗体,
ii.10~50mM コハク酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液、
iii.マンニトールもしくはトレハロースもしくはスクロースもしくはソルビトールもしくは塩化ナトリウム、
iv.アミノ酸もしくは抗酸化剤、
v.キレート剤、および
vi.界面活性剤、
を含む抗PD1抗体/抗PD L1抗体の液体医薬製剤を開示する。
【0049】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記緩衝液は、これらの派生物もしくは塩または組み合わせを含む。すなわち、上記コハク酸緩衝液は、コハク酸緩衝液もしくはコハク酸アルギニン緩衝液もしくはコハク酸リン酸緩衝液であり;上記クエン酸緩衝液は、クエン酸緩衝液もしくはクエン酸ヒスチジン緩衝液もしくはクエン酸アルギニン緩衝液もしくはクエン酸リン酸緩衝液であり;上記酢酸緩衝液は、酢酸緩衝液もしくは酢酸アルギニン緩衝液もしくは酢酸リン酸緩衝液である。
【0050】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)もしくはエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)もしくはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などである。
【0051】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記抗PD1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、またはドスタルリマブ(dosrtalimab)である。
【0052】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記抗PDL1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブまたはデュルバルマブである。
【0053】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記抗体の濃度は、10mg/ml~200mg/mlの液体医薬製剤の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、上記製剤中の抗体の濃度は、10mg/ml、または25mg/ml、30mg/ml、または40mg/ml、または50mg/ml、または60mg/ml、または70mg/ml、または80mg/ml、90mg/ml、または100mg/ml、または110mg/ml、または120mg/ml、または130mg/ml、または140mg/ml、150mg/mlまたは160mg/ml、または170mg/mlまたは175mg/mlまたは180mg/mlまたは190mg/mlまたは195mg/mlまたは200mg/mlである。
【0054】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、本発明の開示される製剤のpHは、約4.5~約6.5の範囲にある。
【0055】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、本発明の開示される製剤のpHは、約5.0~約6.0の範囲にある。
【0056】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、本発明の開示される製剤のpHは、6.0±0.2である。
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記抗PD1/PD-L1抗体は、40℃で2週間の貯蔵後に、上記抗体のモノマー含有量のうちの少なくとも90%を維持する。
【0057】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記抗PD1/PDL1 抗体製剤の重量オスモル濃度は、600mOsm/kg未満、好ましくは、300mOsm/kg未満である。
【0058】
別の実施形態において、本発明は、
i)IgG4抗体、
ii)約4.5~約6.5のpHを有する、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液、および/またはこれらの組み合わせもしくは塩、
iii)糖、
iv)キレート剤もしくは抗酸化剤もしくはアミノ酸;および
v)界面活性剤、
を含むIgG4 抗PD1抗体の医薬製剤を開示する。
【0059】
上記の実施形態において、IgG4 抗PD1抗体濃度は、約10mg/ml~約200mg/mlの範囲に及ぶ。
【0060】
いくつかの実施形態において、上記製剤中の抗体の濃度は、10mg/ml、または25mg/ml、30mg/ml、または40mg/ml、または50mg/ml、または60mg/ml、または70mg/ml、または80mg/ml、90mg/ml、または100mg/ml、または110mg/ml、または120mg/ml、または130mg/ml、または140mg/ml、150mg/mlまたは160mg/ml、または170mg/mlまたは175mg/mlまたは180mg/mlまたは190mg/mlまたは195mg/mlまたは200mg/mlである。
【0061】
上記で言及した実施形態において、上記IgG4 抗PD1抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである。
【0062】
別の局面において、本発明は、IgG4 抗PD1抗体組成物中での粒子形成および凝集を制御する種々の方法を開示する。
【0063】
一実施形態において、本発明は、IgG4 抗PD1抗体組成物中のサブビジブル粒子および視認できる粒子の形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物を、糖、抗酸化剤もしくはキレート剤、および界面活性剤を含む、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液中で調製する工程を包含する方法を開示する。
【0064】
一実施形態において、本発明は、IgG4 抗PD1抗体組成物中での視認できる粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物を、糖、キレート剤、抗酸化剤、および界面活性剤を含む、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液組成物中で調製する工程を包含する方法を開示する。
【0065】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ組成物中でサブビジブル粒子および視認できる粒子の形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物を、糖、抗酸化剤もしくはキレート剤、および界面活性剤を含む、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液中で調製する工程を包含する方法を開示する。
【0066】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中での視認できる粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物を、糖、キレート剤もしくは抗酸化剤、および界面活性剤を含む、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液組成物中で調製する工程を包含する方法を開示する。
【0067】
上記の実施形態において、上記視認できる粒子計数は、40℃で2ヶ月間または25℃で3ヶ月間または2~8℃で3ヶ月間貯蔵した場合に、上記抗体組成物について約10個の粒子/mlへと低減される。
【0068】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中でサイズが≧5μmのサブビジブル粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物の、糖、抗酸化剤もしくはキレート剤、および界面活性剤を含む、コハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液組成物中での調製を包含する方法を開示する。
【0069】
上記で言及した実施形態において、上記方法は、サブビジブル粒子形成を、上記製剤が40℃で2週間で貯蔵される場合に、上記抗体組成物について1000個の粒子/ml未満;および上記抗体組成物が25℃で3ヶ月間または2~8℃で3ヶ月間貯蔵される場合に、上記抗体組成物について150個の粒子/ml未満へと制御する。
【0070】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中でサイズが≧10μmのサブビジブル粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物の、糖、抗酸化剤もしくはキレート剤、および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液組成物中での調製を包含する方法を開示する。
【0071】
上記で言及した実施形態において、上記サブビジブル粒子は、40℃で2週間貯蔵される場合に、上記抗体組成物について200個の粒子/ml未満、および室温(すなわち、25℃)で3ヶ月間貯蔵される場合に、50個の粒子/ml未満へと低減される。
【0072】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中でサイズが≧10μmのサブビジブル粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、抗体組成物の、糖、抗酸化剤、キレート剤および界面活性剤を含むヒスチジン-クエン酸緩衝液組成物中での調製を包含する方法を開示する。
【0073】
上記で言及した実施形態において、上記サブビジブル粒子は、40℃で2週間または25℃で3ヶ月間または2~8℃で3ヶ月間貯蔵される場合に、上記抗体組成物について100個の粒子/ml未満へと低減される。
【0074】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中でサイズが≧25μmのサブビジブル粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物の、糖、抗酸化剤もしくはキレート剤、および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液組成物中での調製を包含する方法を開示する。
【0075】
上記で言及した実施形態において、上記サブビジブル粒子は、40℃で2週間または25℃で3ヶ月間または2~8℃で3ヶ月間貯蔵される場合に、抗体組成物について約25/ml未満へと低減される。
【0076】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中でサイズが≧25μmのサブビジブル粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物の、糖、抗酸化剤、キレート剤および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液組成物中での、上記抗体組成物への調製を包含する方法を開示する。
【0077】
上記で言及した実施形態において、上記サブビジブル粒子は、25℃で3ヶ月間または2~8℃で3ヶ月間貯蔵される場合に、抗体組成物について10/ml未満へと制御される。
【0078】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中でサイズが≧25μmのサブビジブル粒子形成を阻害する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物を、糖、抗酸化剤、キレート剤および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液組成物中で調製することを包含する方法を開示する。
【0079】
上記で言及した実施形態において、上記サブビジブル粒子計数は、上記抗体組成物が25℃で3ヶ月間貯蔵される場合に、ゼロであると測定される。
【0080】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中でサイズが≧50μmのサブビジブル粒子形成を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物の、糖、抗酸化剤もしくはキレート剤、および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液組成物中での調製を包含する方法を開示する。
【0081】
上記で言及した実施形態において、上記サブビジブル粒子は、40℃で2週間または25℃で3ヶ月間貯蔵される場合、上記抗体組成物について5個の粒子/ml未満へと低減される。
【0082】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ抗体組成物中でのサイズが≧50μmのサブビジブル粒子形成を阻害する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物の、糖、抗酸化剤、キレート剤および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液組成物中での調製を包含する方法を開示する。
【0083】
上記で言及した実施形態において、上記サブビジブル粒子計数は、上記抗体組成物が25℃で3ヶ月間貯蔵される場合に、ゼロであると測定される。
【0084】
上記の実施形態のうちのいずれかにおいて、上記粒子は、金属もしくは化学物質によって、または撹拌もしくは凍結融解サイクルによって誘発される。
【0085】
別の実施形態において、本発明は、ニボルマブの医薬組成物において、ニボルマブの重鎖のMet34およびMet83の酸化を制御する方法であって、ここで上記方法は、上記抗体組成物の、糖、キレート剤、抗酸化剤および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液中での調製を包含する方法を開示する。
【0086】
上記で言及した実施形態において、糖、キレート剤、抗酸化剤および界面活性剤を含むコハク酸緩衝液中で調製される上記抗体製剤中のニボルマブの34位および83位のメチオニン残基の酸化は、糖、界面活性剤および抗酸化剤を含むがキレート剤なしのコハク酸緩衝液、または糖、界面活性剤およびキレート剤を含むが、抗酸化剤なしのコハク酸緩衝液のいずれかの中で調製されるニボルマブ抗体製剤と比較して、より良好に制御される。
【0087】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記糖は、トレハロースまたはスクロースである。上記製剤は、4%~8%(w/v)の範囲に及ぶ濃度のトレハロースを有し、スクロースの濃度は、6%(w/v)である。
【0088】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記抗酸化剤は、メチオニンである。
【0089】
上記で言及した実施形態において、メチオニンの濃度は、10mM~20mMである。
【0090】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記キレート剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0091】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記界面活性剤は、ポリソルベート-80またはポリソルベート-20である。
【0092】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、本発明の抗体製剤は、以下の条件、40℃で2週間、25℃で3ヶ月間および2~8℃で少なくとも3ヶ月間のうちの少なくとも1つの下で安定性を示す。
【0093】
本発明の上記の実施形態のうちのいずれかにおいて、上記抗体製剤は安定であり、以下の条件、40℃で2週間または40℃で1ヶ月間、もしくは40℃で2ヶ月間、または25℃で1ヶ月間もしくは25℃で2ヶ月間もしくは25℃で3ヶ月間、または2~8℃で3ヶ月間~6ヶ月間のうちの1つの下での貯蔵後ですら、上記製剤中で、1%未満の高分子量(HMW)種またはフラグメントを含む。
【0094】
上記実施形態のうちのいくつかにおいて、ニボルマブは、以下の条件、40℃で2週間もしくは40℃で1ヶ月間、もしくは40℃で2ヶ月間、または25℃で1ヶ月間もしくは25℃で2ヶ月間もしくは25℃で3ヶ月間、または2~8℃で3ヶ月間~6ヶ月間のうちの1つの下での貯蔵後に、90%またはこれより多くの上記抗体のモノマー含有量を維持する。
【0095】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、開示される抗体製剤の重量オスモル濃度は、600mOsm/kg未満、好ましくは300mOsm/kg未満である。
【0096】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記抗体の製剤は、安定な液体(水性)製剤であり、これは、非経口投与のために使用され得る。非経口投与としては、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内投与、または非経口投与の範囲に入ると概して考えられ、当業者に周知であるとおりの任意の他の送達経路が挙げられる。
【0097】
本発明の上記の実施形態のうちのいずれかにおいて、上記安定な液体/水性製剤は適切であり、凍結乾燥散剤として凍結乾燥され得る。さらに、抗PD1/PDL1抗体またはIgG4抗体の凍結乾燥製剤は、投与に適した液体製剤を達成するために適切な希釈剤で再構成され得る。
【0098】
上記で言及した実施形態のうちのいずれかにおいて、上記液体/水性抗PD1/PD-L1抗体またはIgG4抗体は、凍結乾燥プロセスと適合性であり、その凍結乾燥プロセスは、上記抗体の品質属性に影響しない。
【0099】
一実施形態において、本発明は、ニボルマブ、5.0~6.0のpHを有する10~30mMのコハク酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液、4%~8%(w/v) トレハロース、10~30mM メチオニン、0.008mg/mlのDTPA、50~100mM 塩化ナトリウムおよび0.2mg/ml 界面活性剤を含むニボルマブの液体医薬製剤であって、ここで上記製剤に存在する抗体濃度は、10mg/ml~200mg/mlの範囲にある製剤を開示する。
【0100】
上記で言及した実施形態において、上記界面活性剤は、ポリソルベート-80またはポリソルベート-20である。
【0101】
別の実施形態において、本発明は、ペムブロリズマブ、5.0~6.0のpHを有する10~30mMのコハク酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液、4%~8%(w/v) トレハロース、0.008mg/mlのDTPA、および0.2mg/ml 界面活性剤を含むペムブロリズマブの液体医薬製剤であって、ここで上記製剤に存在する抗体濃度は、10mg/ml~200mg/mlの範囲にある製剤を開示する。
【0102】
本発明の別の局面は、本明細書で記載される主題の製剤のうちのいずれかを含む、バイアル、プレフィルドシリンジまたはオートインジェクターデバイス、または任意の他の適切なデバイスを提供する。ある特定の実施形態において、上記バイアルまたはプレフィルドシリンジまたはオートインジェクターデバイス中に貯蔵される上記水性製剤は、抗PD1/抗PDL1抗体またはIgG4抗体、コハク酸緩衝液もしくは酢酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液もしくはヒスチジン緩衝液および/またはその派生物もしくは塩あるいはこれらの組み合わせ、糖および界面活性剤を含む。
【0103】
本発明のある特定の具体的局面および実施形態は、以下の実施例を参照することによってより十分に記載される。しかし.これらの実施例は、本発明の範囲を限定するとは如何様にしても解釈されるべきではない。
【実施例
【0104】
実施例
本発明の医薬組成物中での貯蔵に適した抗PD1抗体、ニボルマブを、当該分野で公知の標準的方法によって生成する。例えば、ニボルマブを、哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞)での免疫グロブリン軽鎖および重鎖の遺伝子の組換え発現によって調製する。さらに、その発現されるニボルマブを採取し、その粗製採取物を、精製、濾過および必要に応じて希釈または濃縮工程を含む標準的な下流のプロセス工程に供する。例えば、ニボルマブの粗製採取物を、標準的クロマトグラフィー技術(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびその組み合わせ)を使用して精製し得る。その精製されるニボルマブ溶液をさらに、1種またはこれより多くの濾過工程に供し得、その得られる溶液を、さらなる製剤化試験に供する。
【0105】
実施例1: ニボルマブ製剤の安定性に対する種々の緩衝液および安定化剤の効果の評価
種々の緩衝液バックグラウンドにある(例えば、ヒスチジン/コハク酸/クエン酸/酢酸緩衝液バックグラウンドにある)精製ニボルマブ抗体、およそ25mg/mlを、下流のクロマトグラフィー工程から得た。ニボルマブの安定性に対する種々の緩衝液および/または安定化剤(例えば、糖/ポリオール/アミノ酸/キレート剤)の効果を知るために、緩衝液交換工程を行い、その濃度を10mg/mlに調整した。その後、界面活性剤ポリソルベート-80を上記製剤全てに添加した。ニボルマブは、商品名オプジーボ(登録商標)の下で承認されており、現在承認されている製剤は、20mM クエン酸緩衝液、3% マンニトール、2.92mg/mL NaCl、0.2mg/mL ポリソルベート-80および0.008mM DTPAクエン酸中に、10mg/ml ニボルマブを含む。オプジーボ(登録商標)製剤は、この実験の中に含められており、N1製剤として表示される。全てのニボルマブ製剤の最終組成を、表1に示す。
【0106】
サンプル全てを、それらの粒子形成、乳白色、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して高分子量種に関して測定した。乳白色を測定するために、種々のUSP基準乳白色標準物質を、4000 NTU((比濁計濁度単位)を有するホルマジン懸濁物を含む一次乳白色溶液を希釈することによって調製した。全てのニボルマブ製剤を、40℃で4週間の加速安定性試験に供した。その後、上記サンプルを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して低分子量(LMW)種およびモノマー含有量[結果を表2に示す]、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)を使用してチャージバリアント[結果を表3に示す]、粒子形成[結果を表4に示す]、および乳白色[表5]に関して分析した。
表1: 実施例-1に従って調製したニボルマブ製剤の組成
【表1-1】
【表1-2】
【0107】
表2: 実施例-1に従って調製したニボルマブ製剤のSECデータ
【表2】
Wは、週数を示す; ND-検出されない
【0108】
表3: 実施例-1に従って調製したニボルマブ製剤のIEXデータ
【表3-1】
【表3-2】
【0109】
表4: ニボルマブ製剤中の粒子形成の測定
【表4】
【0110】
表5: 実施例1に従って調製したニボルマブ製剤の乳白色
【表5-1】
【表5-2】
【0111】
上記製剤全てを、pHの変化に関してもチェックした。40℃で4週間の貯蔵後にすら、上記製剤のpHに変化はないことが観察された。そして上記サンプルは全て、40℃で4週間の貯蔵後にすら無色であった。上記製剤全ての重量オスモル濃度は、350mOsm/kg未満であることが見出された。
【0112】
本発明の医薬組成物中での貯蔵に適したIgG4抗PD1抗体、ニボルマブを、当該分野で公知の標準的方法によって生成する。例えば、ニボルマブを、哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞)での免疫グロブリン軽鎖および重鎖の遺伝子の組換え発現によって調製する。さらに、その発現されるニボルマブを採取し、その粗製採取物を、精製、濾過および必要に応じて希釈または濃縮工程を含む標準的な下流のプロセス工程に供する。例えば、ニボルマブの粗製採取物を、標準的クロマトグラフィー技術(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびその組み合わせ)を使用して精製し得る。その精製されるニボルマブ溶液をさらに、1種またはこれより多くの濾過工程に供し得、その得られる溶液を、さらなる製剤化試験に供する。
【0113】
実施例2: 種々の緩衝液および安定化剤の効果
種々の緩衝液バックグラウンドにある(例えば、ヒスチジン-クエン酸/コハク酸/アルギニン クエン酸緩衝液バックグラウンドにある)精製ニボルマブ抗体、およそ25mg/mlを、下流のクロマトグラフィー工程から得た。上記抗体の濃度を10mg/mlに調整し、上記抗体の安定性に対する種々の緩衝液および/または安定化剤の効果を評価する条件に供した。あるいは、20mM クエン酸緩衝液中のニボルマブ 10mg/mlを、ニボルマブ、3% マンニトール、2.92mg/mL NaCl、0.2mg/mL ポリソルベート-80および0.008mM DTPAで製剤化した。全てのニボルマブ製剤の最終組成を表6に示す。
【0114】
上記組成物全てを、上記サンプルを加速/ストレス安定性条件に供する前に、それらの視認できる粒子形成およびサブビジブル粒子形成、高分子量種に関してサイズ排除クロマトグラフィーを使用して測定した。上記製剤全てを、40℃で2週間~2ヶ月間、および同様に室温、25℃で3ヶ月間、および2~8℃で6ヶ月間の加速安定性試験に供した。次いで、上記サンプルを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して高分子量(HMW)種、モノマー含有量および低分子量(LMW)種に関して分析した[結果を表7(a)~7(c)に示す]。視認できる粒子[結果を表8に示す]およびサブビジブル粒子を、マイクロフローイメージング(MFI)技術によって測定した[結果を表9(a)~9(d)に示す]。
【0115】
表6: 実施例-2に従って調製した製剤の組成
【表6-1】
【表6-2】
【0116】
表7(a): SECによって測定される、実施例-2に従って調製した製剤の高分子量含有量(すなわち、凝集物含有量)
【表7a】

Wは、週数を示す。Mは、月数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0117】
表7(b): SECによって測定される、実施例-2に従って調製した製剤のパーセンテージモノマー含有量
【表7b】

Mは、月数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0118】
表7(c): SECによって測定される、実施例-2に従って調製した製剤の低分子量含有量(すなわち、LMW含有量)
【表7c-1】

【表7c-2】

Wは、週数を示す。Mは、月数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す; ND-検出されない。
【0119】
表8: 実施例-2に従って調製した製剤の視認できる粒子計数
【表8】
Mは、月数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0120】
表9(a): MFIによって測定される、実施例-2に従って調製した製剤のサイズ≧5μmを有するサブビジブル粒子計数
【表9a-1】

【表9a-2】

Wは、週数を示す。Mは、月数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0121】
表9(b): MFIによって測定される、実施例-2に従って調製した製剤のサイズ≧10μmのサブビジブル粒子
【表9b】

Wは、週数を示す。Mは、月数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0122】
表9(c): MFIによって測定される、実施例-2に従って調製した製剤のサイズ≧25μmのサブビジブル粒子
【表9c-1】

【表9c-2】

Wは、週数を示すs, Mは、月数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0123】
表9(d): MFIによって測定される、実施例-2に従って調製した製剤の、サイズ≧50μmのサブビジブル粒子
【表9d】

Wは、週数を示す。Mは、月数を示す;T0は、ゼロ時点でのデータを表す。
【0124】
実施例3: 種々のストレス条件下でのニボルマブ抗体製剤の安定性
上記のデータに基づいて、実施例1の製剤のうちのいくつか、すなわち、F1コントロール、F9、F10、F12およびF16を、撹拌、凍結/融解、化学的酸化および金属誘発性酸化ストレスにさらに供して、上記製剤の安定性に対するこれらの条件の影響を把握した。
【0125】
撹拌試験:
上記で言及されるように、実施例-3の全5つのサンプルを、300 RPM下で4日間、25℃での撹拌に供した。次いで、上記サンプルを、MFIによって視認できる粒子およびサブビジブル粒子に関して測定した。結果を表10および表11に示す。
表10: 撹拌誘発性ストレス試験製剤の視認できる粒子データ
【表10】
Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0126】
表11: MFIによって測定される、誘発性ストレス試験サンプルのサブビジブル粒子データ
【表11】
Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0127】
凍結融解試験
実施例-3の全5つのサンプルをまた、5回の凍結融解サイクルにさらに供し、各凍結融解サイクルにおいて、サンプルを80℃で24時間凍結し、室温で融解した。5回の凍結融解サイクル後、サンプルを、MFIによって視認できる粒子、サブビジブル粒子、ならびにサイズ排除クロマトグラフィーによって高分子量種およびモノマー含有量に関して測定した。結果を、以下の表12、表13および表14に示す。F1コントロールサンプルは、4回の凍結融解サイクル後に沈殿したことが観察された。
【0128】
表12: 複数の凍結融解サイクル後のサンプルの視認できる粒子データ
【表12】
FTは、凍結融解サイクルを示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0129】
表13: MFIによって測定される、複数の凍結融解サイクル後のサンプルのサブビジブル粒子データ
【表13】
FTは、凍結融解サイクルを示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0130】
表14: SECによって測定される、複数の凍結融解サイクル後のサンプルの凝集物含有量およびモノマー含有量
【表14】
FTは、凍結融解サイクルを示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0131】
化学的酸化試験:
実施例-3の全5つのサンプルを、0.1% 過酸化水素(H)および1% Hでの化学的酸化にさらに供し、サンプルを25℃で3日間保持した。次いで、サンプルを、MFIによって視認できる粒子、サブビジブル粒子、SECによってモノマーおよび凝集物含有量に関して測定した。上記試験の結果を、表15、表16、および表17に示す。
【0132】
表15: 化学物質誘発性酸化ストレス試験後の、実施例-3に従って調製したサンプルの視認できる粒子データ
【表15】
Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0133】
表16(a): 0.1% H化学物質誘発性酸化後の、実施例-2に従って調製したサンプルのサブビジブル粒子データ
【表16a】

Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0134】
表16(b): 1% H化学物質誘発性酸化後の、実施例-3に従って調製したサンプルのサブビジブル粒子データ
【表16b】

Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0135】
表17:SECによって測定される、0.1% Hおよび1% Hでの化学物質誘発性酸化ストレス後の、実施例-3に従って調製したサンプルのHMWおよびモノマー含有量
【表17-1】
【表17-2】
Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0136】
金属誘発性酸化試験:
実施例-3の全5つのサンプルを、0.0007mg/mlのコバルトでの金属誘発性酸化にさらに供し、サンプルを、25℃で3日間保持した。その後、サンプルを、MFIによって視認できる粒子、サブビジブル粒子、SECによってモノマーおよび凝集物含有量に関して測定した。上記試験の結果を、表13、表14、および表15に示す。
【0137】
表18: 実施例-3に従って調製した金属誘発性酸化ストレス試験サンプルの視認できる粒子データ
【表18】
Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0138】
表19: MFIによって測定される、実施例-3に従って調製したサンプルの金属誘発性酸化試験のサブビジブル粒子データ
【表19】
Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0139】
表20: SECによって測定される、実施例-3に従って調製した金属誘発性酸化ストレス試験サンプルのHMWおよびモノマー含有量
【表20】
Dは、日数を示す; T0は、ゼロ時点でのデータを表す
【0140】
実施例4: ニボルマブ抗体製剤の酸化試験
実施例-1のニボルマブサンプル、すなわち、F4、F9、F10、F12、F13およびF16を、40℃で2ヶ月間貯蔵した。次いで、上記サンプルを、液体クロマトグラフィー-質量分析法に供し、種々の点での酸化レベルを測定した。コントロールサンプルの酸化データを、特定の温度条件での貯蔵に供することなく、ゼロ時点(T0)で測定する。酸化の結果を、表21に示す。
【0141】
表21: 実施例-4のサンプルのパーセンテージメチオニン酸化
【表21】
【0142】
上記の製剤全てを、pHの変化に関してもチェックした。加速条件下での貯蔵後ですら、上記製剤のpHに変化はないことが観察された。そして上記サンプル全ては無色であり、上記製剤全ての重量オスモル濃度は、撹拌誘発性ストレス試験、凍結融解ストレス試験および金属誘発性ストレス試験の下で、350mOsm/kg未満であることが見出された。
【0143】
実施例5: 高濃度抗PD1抗体製剤
60mg/ml トレハロース、メチオニン、2.92mg/ml 塩化ナトリウム、0.008mg/ml DTPAおよび0.2mg/ml ポリソルベート-80を含むコハク酸緩衝液中のニボルマブ 10mg/mlを、限外濾過によって150mg/mlまでさらに濃縮した。あるいは、この高濃度ニボルマブサンプル緩衝液を、酢酸緩衝液へと緩衝液交換した。その後、コハク酸緩衝液中および酢酸緩衝液中のこれら2種の高濃度ニボルマブサンプルを、それぞれ、40℃で1週間および5日間のストレス安定性条件に供し、SECを使用して高分子量種、モノマー含有量および低分子量種に関して測定した。さらに、上記サンプルの酸性バリアントおよび主要ピーク含有量を、IEXクロマトグラフィーを使用して測定し、上記サンプルの粘度を、粘度計を使用して測定した。上記試験の結果を、以下の表22に示す。
【0144】
表22: 実施例-5に従って調製した高濃度ニボルマブ製剤の組成、および上記製剤の品質属性
【表22】
Dは、日数を示す;T0は、ゼロ時点でのデータを表す;Wは、週数を示す
【0145】
実施例6: 他の抗PD1抗体製剤の安定性
別の抗PD1抗体、ペムブロリズマブをCHO細胞において発現させ、その発現させた抗体を、当該分野で既に公知の技術によって精製した。下流のクロマトグラフィー工程から得た35mg/mlの精製ペムブロリズマブを、コハク酸またはヒスチジン 酢酸緩衝液との緩衝液交換工程に供した。さらに、下流のクロマトグラフィー工程技術から得た酢酸緩衝液中のペムブロリズマブを、そのまま維持した。種々の緩衝液中のペムブロリズマブ抗体サンプル全てに、種々の賦形剤(例えば、糖、アミノ酸、キレート剤および界面活性剤)の組み合わせを添加した。全ペムブロリズマブサンプルの組成を、表23に示す。
【0146】
その後、これらのサンプルを、40℃で1ヶ月間の加速安定性試験に供し、上記サンプルの種々の品質属性(例えば、pHの変化、重量オスモル濃度、SECを使用して高分子量含有量、モノマー含有量および低分子量含有量、ならびにIEXを使用してチャージバリアント)を測定した。さらに、上記サンプルの乳白色を測定した。上記試験の結果を、表24~26に示す。
【0147】
表23: 実施例-6に従って調製したペムブロリズマブ製剤の組成
【表23-1】
【表23-2】
【0148】
表24: 実施例-6に従って調製したペムブロリズマブ製剤の種々の品質属性
【表24】
T0は、ゼロ時点でのデータを表す; Mは、月数を示す
【0149】
表25: 40℃で1ヶ月間貯蔵した場合の、実施例-6に従って調製したペムブロリズマブ製剤のSECデータ
【表25】
T0は、ゼロ時点でのデータを表す;Mは、月数を示す。
【0150】
表26: 40℃で1ヶ月間貯蔵した場合の、実施例-6に従って調製したペムブロリズマブ製剤のIEXデータ
【表26】
T0は、ゼロ時点でのデータを表す;Mは、月数を示す。
【0151】
表27: 実施例-6に従って調製したペムブロリズマブサンプルの乳白色
【表27-1-1】

【表27-1-2】
【0152】
実施例7: 高濃度ペムブロリズマブ製剤
35mg/mlの濃度の酢酸緩衝液中のペムブロリズマブを、コハク酸緩衝液と緩衝液交換し、続いて、250mg/mlまで遠心分離フィルター/限外濾過を使用して濃縮した。その後、上記抗体の濃度を、製剤緩衝液を使用して142mg/mlに調整し、種々の賦形剤(例えば、糖、アミノ酸および界面活性剤)を添加して、高濃度ペムブロリズマブ製剤を調製した。さらに、上記製剤を、40℃で1週間の加速安定性条件に供する。品質属性とともに上記製剤の詳細を、以下の表27に示す。
【0153】
表27: 実施例6に従って調製した高濃度ペムブロリズマブ製剤の組成、および上記製剤の品質属性
【表27-2-1】


【国際調査報告】