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特表2024-532467動的架橋性ポリマー組成物、物品、及びそれらの方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】動的架橋性ポリマー組成物、物品、及びそれらの方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240829BHJP
   C08K 5/55 20060101ALI20240829BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20240829BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K5/55
C08K5/5415
C08G59/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513799
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 IB2022020064
(87)【国際公開番号】W WO2023031676
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/239,805
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ムリーロ・ラウアー・サンソン
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー・ミラー・マクローリン
(72)【発明者】
【氏名】ハディ・モハンマディ
(72)【発明者】
【氏名】ネイ・セバスティアン・ドミンゲス・ジュニオル
(72)【発明者】
【氏名】アナ・パウラ・デ・アゼレード
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・ケイ・シング
(72)【発明者】
【氏名】ジゼーリ・マーシュナー・ラシア
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーヌ・ジャクエリーネ・マウス
(72)【発明者】
【氏名】カルメン・ロザンヌ・イッセ・ゴメス
(72)【発明者】
【氏名】カリン・ジャネテ・ステイン・ブリト
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア・コフェッリ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002BB061
4J002DA039
4J002DE239
4J002EE047
4J002EH148
4J002EX036
4J002EY016
4J002EZ027
4J002FD019
4J002FD028
4J002FD146
4J002FD157
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J036AA01
4J036AK11
4J036DB02
4J036DC10
4J036DC46
(57)【要約】
ポリマー組成物は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー;及び動的架橋基含む熱可塑性ポリマー;並びに熱可塑性ポリマーを動的に架橋する動的架橋系、を含みうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー;及び
動的架橋基を含む、熱可塑性ポリマー;並びに
熱可塑性ポリマーを動的に架橋する動的架橋系を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
動的架橋基が、エステル、エポキシド、有機酸、アルコール、無水物、アミン、アミド、シアネート、不飽和炭化水素、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のモノマーが、動的架橋基を含む、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む熱可塑性ポリマー;並びに
熱可塑性ポリマーを架橋する動的架橋系を含む、ポリマー組成物であって、
架橋が、分子状酸素の存在に比較的非感受性である、ポリマー組成物。
【請求項5】
熱可塑性ポリマーが、エステル、エポキシド、有機酸、アルコール、無水物、アミン、アミド、シアネート、不飽和炭化水素、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
動的架橋系が、動的架橋剤及び触媒を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
動的架橋剤が、ホウ酸エステル、シラン類、ジアミン、ジオール、二酸、二無水物、ジエポキシド、ジイソシアネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
触媒が、エステル交換触媒である、請求項6又は7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
触媒が、o-求核試薬;n-求核試薬;金属酸化物;金属水酸化物;アセチルアセトン塩、ジアクリル酸塩、炭酸塩、酢酸塩、及びそれらの組合せからなる群から選択される有機金属塩であり、金属が、亜鉛、モリブデン、銅、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、スズ、リチウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、鉛、鉄、バナジウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項6から8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
触媒が、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(VI)、トリアザビシクロデセン(TBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、7-メチル-l,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、トリフェニルホスフィン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、複合金属シアン化物(DMC)、炭酸ジフェニル(DPC)、炭酸メチルフェニル(MPC)からなる群から選択される、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
永久架橋系を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
永久架橋系が、永久架橋剤及び任意選択で架橋助剤を含む、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
永久架橋剤が、有機過酸化物、アゾ/アジド化合物、硫黄、シラン類、シアネート、放射線硬化系からなる群から選択され;助剤が、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパン-トリス-メタクリレート(TRIM)、トリアリルシアヌレート(TAC)、三官能(メタ)アクリル酸エステル(TMA)、N,N'-m-フェニレンジマレイミド(PDM)、ポリ(ブタジエン)ジアクリレート(PBDDA)、高ビニルポリ(ブタジエン)(HVPBD)、及びポリ-トランスオクテナマーラバー(TOR)から選択される、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
熱可塑性ポリマーが、動的架橋系によって動的に架橋された、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
動的架橋が、共有結合を介して形成される、請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
DMA分析において、20~150℃の温度範囲内でプラトー弾性貯蔵率を示す、請求項14又は15に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
弾性貯蔵率が、応力緩和レオメトリー分析において、230℃未満の温度で10,000秒以内にその初期値(G0、プラトー弾性率)に対して少なくとも50%低下するように、120℃を超える温度で時間依存的である、請求項14から16のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
ポリマー組成物を製造するための方法であって、動的架橋系を熱可塑性ポリマーと加工して請求項1から13のいずれか一項に記載のポリマー組成物を形成する工程を含み、
加工する工程が、ポリマー組成物において動的架橋を形成するのに十分な、第2の温度よりも低い第1の温度においてである、方法。
【請求項19】
加工する工程が、溶融混合する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
加工する工程の前に、重合後反応性加工を介してベースポリマーをエポキシド、エステル、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの部分と反応させて熱可塑性ポリマーを形成する工程を更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
反応性加工が、溶融グラフト化、溶液グラフト化、又は固体状態グラフト化を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ポリマー組成物を溶融温度又は軟化温度を超える第2の温度で加工する工程により、ポリマー組成物を架橋して請求項14から17のいずれか一項に記載のポリマー組成物を形成する工程を更に含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
架橋が分子状酸素の存在下で起こる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
熱可塑性ポリマーが、反応性加工によって最初に形成され、それから架橋系と溶融混合され、その後架橋される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ポリマー組成物を製造する方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリマー組成物をその溶融温度又は軟化温度を超えて溶融混合デバイス中で加工する工程;及び
酸素の存在下でポリマー組成物を架橋する工程を含む、方法。
【請求項26】
架橋する工程が、溶融混合デバイス又は熱に基づく硬化装置中である、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
溶融混合デバイスが、インターナルミキサー又は押出機から選択され、熱に基づく硬化装置が、熱風トンネル、オーブン、液圧プレス、射出成形機、さらなる製造機械、又はオートクレーブから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
架橋ポリマー組成物を再加工する工程を更に含む、請求項22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ポリマー組成物を再加工する方法であって、請求項14から17のいずれか一項に記載のポリマー組成物を熱可塑性ポリマーの溶融温度又は軟化温度を超えて再加工する工程を含み、再加工する工程の後に、ポリマー組成物が、動的機械分析によって測定した場合に、再加工する工程の前のポリマー組成物と比較して、その初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも50%をその溶融温度を超えて維持する、方法。
【請求項30】
少なくとも更に4回加工する工程を繰り返す工程を更に含み、再加工する工程を繰り返した後に、ポリマー組成物が、動的機械分析によって測定した場合に、再加工する工程の前のポリマー組成物と比較して、その初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも50%をその溶融温度を超えて維持する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項14から17のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む部品。
【請求項32】
発泡していないものである、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
発泡したものである、請求項31に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
エチレン酢酸ビニル(EVA)は、軽量で、非常に高い強靭性及び弾力性のある発泡体を製造するために広く使用されている。EVA発泡体は、ランニングシューズの中敷等の厳しい用途、並びに内部パッド材、カーペット下敷き、ガスケット等の自動車及び建築用途への応用が見出されている。EVA発泡体及び高い耐熱性を必要とする他のコンパクトなエラストマー用途に必要となるポリマー構造は、隣接するポリマー分子を架橋することによって作製される三次元ネットワークである。
【0002】
共有結合されたポリマーネットワークは、性能、特性、及び耐久性のバランスが取れている。しかし、高性能の発泡体の材料の選択において、永続的なネットワークを優れた候補とする同様の特徴は、困難な環境課題を示す。一度形成されると、これらのネットワーク構造は、溶融したり、流動したり、又は溶解して、従来の再加工又はリサイクル方法を使用することができない。
【0003】
履物の中敷を製造する成形プロセスでは、小片が生じる。永続的なネットワークの加工中に生じた小片は、加工するのが困難であるため、二次的な原料として製造プロセスに完全に再導入することができない。架橋ポリマーからのほんのわずかの廃棄小片だけが、粉砕されて、充填剤として再導入される。同じく、永久架橋ポリマーから製造された寿命をむかえた部品は、価値の低い材料しか生成しないエネルギーを大量に消費する粉砕作業等、再生利用の選択肢が限られている。結果として、かなりの割合の小片及び使用済み部品が、環境廃棄物として蓄積する。
【0004】
環境への影響が大きいことに加えて、共有結合的な、架橋EVA発泡体が溶融によって再加工することができないことは、製造業者にとって大きな費用となっている。大量の廃棄物により、一次材料の利用率が制限され、廃棄物を扱うための費用が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第17/063,488号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】GUOら、2019 - https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.macromol.9b02281
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
架橋ポリマー、特に架橋発泡体EVAの再加工を可能にする技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の概要は、詳細な説明で下記に更に記載される概念から選択したものを紹介するために提供される。この発明の概要は、特許請求される主題の鍵となる又は必須の特色を特定することを意図したものではなく、特許請求される主題の範囲を制限する際の助けとして使用されることを意図したものでもない。
【0009】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマー、並びに動的架橋基を含む熱可塑性ポリマーを含む、ポリマー組成物に関する。このポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーを動的に架橋する動的架橋系を更に含む。
【0010】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマー、及び動的架橋基を含む熱可塑性ポリマー;並びに熱可塑性ポリマーを架橋する動的架橋系を含む、ポリマー組成物であって;架橋が、分子状酸素の存在に比較的非感受性である、ポリマー組成物に関する。
【0011】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ポリマー組成物を製造するための方法であって、架橋系を熱可塑性ポリマーと加工して、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマー、並びに動的架橋基を含む熱可塑性ポリマーを含むポリマー組成物を形成する工程を含み、ポリマー組成物が、熱可塑性ポリマーを動的に架橋する動的架橋系を更に含む、方法に関する。加工する工程は、ポリマー組成物において架橋を形成するのに十分な、第2の温度よりも低い第1の温度においてである。
【0012】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ポリマー組成物を製造するための方法であって、架橋系を熱可塑性ポリマーと加工して、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマー、並びに動的架橋基を含む熱可塑性ポリマー;熱可塑性ポリマーを動的に架橋する動的架橋系を含む、ポリマー組成物を形成する工程を含み;架橋が、分子状酸素の存在に比較的非感受性である、方法に関する。加工する工程は、ポリマー組成物において架橋を形成するのに十分な、第2の温度よりも低い第1の温度においてである。
【0013】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ポリマー組成物をその溶融温度又は軟化温度を超えて加工する工程及び分子状酸素の存在下でポリマー組成物を架橋する工程を含む、ポリマー組成物を製造する方法に関する。このポリマー組成物は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマー、並びに動的架橋基を含む熱可塑性ポリマーを含む。このポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーを動的に架橋する架橋系を更に含む。
【0014】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ポリマー組成物をその溶融温度又は軟化温度を超えて加工する工程及び分子状酸素の存在下でポリマー組成物を架橋する工程を含む、ポリマー組成物を製造する方法に関する。このポリマー組成物は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマー、及び動的架橋基を含む熱可塑性ポリマー;並びに熱可塑性ポリマーを動的に架橋する動的架橋系を含み;架橋が、分子状酸素の存在に比較的非感受性である。
【0015】
更に別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ポリマー組成物を熱可塑性ポリマーの溶融温度又は軟化温度を超えて再加工する工程を含む、ポリマー組成物を再加工する方法であって、再加工する工程の後に、ポリマー組成物が、動的機械分析によって測定した場合に、再加工する工程の前のポリマー組成物と比較して、その初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも50%をその溶融温度を超えて維持する、方法に関する。このポリマー組成物は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマー、並びに動的架橋基を含む熱可塑性ポリマー;熱可塑性ポリマーを動的に架橋した動的架橋系を含む。
【0016】
更に別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ポリマー組成物を熱可塑性ポリマーの溶融温度又は軟化温度を超えて再加工する工程を含む、ポリマー組成物を再加工する方法であって、少なくとも更に4回加工する工程を繰り返した後に、ポリマー組成物が、動的機械分析によって測定した場合に、再加工する工程の前のポリマー組成物と比較して、その初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも50%をその溶融温度を超えて維持する、方法に関する。このポリマー組成物は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマーを含む熱可塑性ポリマー、並びに熱可塑性ポリマーを架橋した動的架橋系を含み、架橋が、分子状酸素の存在に比較的非感受性である。
【0017】
更に別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマー、並びに動的架橋基を含む熱可塑性ポリマー;熱可塑性ポリマーを動的に架橋する動的架橋系を含む、ポリマー組成物を含む物品に関する。
【0018】
更に別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマーを含む熱可塑性ポリマー、熱可塑性ポリマーを架橋する動的架橋系を含む、ポリマー組成物を含む物品であって、架橋が、分子状酸素の存在に比較的非感受性である、物品に関する。
【0019】
特許請求される主題の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】平行板せん断レオメトリー(parallel plate shear rheometry)における周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図2】平行板せん断レオメトリーにおける周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図3】平行板せん断レオメトリーにおける周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図4】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図5】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図6】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図7】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図8A】ニートEVA及び試料ホウ素5についての応力緩和実験の結果を示すグラフである。
図8B】ニートEVA及び試料ホウ素5についての応力緩和実験の結果を示すグラフである。
図9A】ニートEVA及び試料ホウ素5についての応力緩和実験の結果を示すグラフである。
図9B】ニートEVA及び試料ホウ素5についての応力緩和実験の結果を示すグラフである。
図10A】THFに168時間曝露したときの、試料ホウ素5及び過酸化物で架橋されたEVAの耐溶剤性を示す画像である。
図10B】THFに168時間曝露したときの、試料ホウ素5及び過酸化物を用いて架橋されたEVAの耐溶剤性を示す画像である。
図11】DMA試験の結果を示すグラフである。
図12】大気中酸素の存在下(強制対流のオーブン)での試料の架橋の結果を示す図である。
図13】架橋試料の2回目の成形サイクル後のDMA試験結果を示すグラフである。
図14】試料ホウ素5の複数硬化サイクルのDMAデータを示すグラフである。
図15】試験試料(DBTO触媒、2×クロスリンカー、1/2触媒、参照-ホウ素5及びニートEVA)のDMAデータを示すグラフである。
図16】架橋組成物ホウ素5を用いて作製されたコンパウンドのDMAデータを示すグラフである。
図17】架橋組成物ホウ素5を用いて作製されたコンパウンドのDMAデータを示すグラフである。
図18】架橋組成物ホウ素5を用いて作製されたコンパウンドのDMAデータを示すグラフである。
図19】前述のコンパウンドのメルトフローレート試験の異なる温度の比較を示す画像である。
図20】押出しプロファイル(ガーベイダイ)の寸法安定性及び部品品質に及ぼす押出し条件の影響を示す画像である。
図21】押出しプロファイル(ガーベイダイ)の寸法安定性及び部品品質に及ぼす押出し条件の影響を示す画像である。
図22】押出しプロファイル(平型ダイ)の部品品質に及ぼす押出し条件の影響を示す画像である。
図23】押出しプロファイル、架橋コンパウンド(圧縮成形)、及びニートEVAのDMAデータの比較を示すグラフである。
図24】混合硬化系(ホウ酸エステル及びシラン)及び異なるマトリックス(低VA含有量)でのDMAデータを示すグラフである。
図25】混合硬化系(架橋コンパウンドホウ素5+過酸化物)、EPDMとのブレンド及び他の硬化系(硫黄及び過酸化物)を含む試料のDMAデータを示すグラフである。
図26】前述の試料の応力緩和プロットを示すグラフである。
図27】前述の試料の応力緩和プロットを示すグラフである。
図28】ニートDV001B及び動的架橋DV001Bの応力緩和プロットを示すグラフである。
図29】ニートDV001B及び動的架橋DV001Bの応力緩和プロットを示すグラフである。
図30】前述の試料及び架橋DV001Bで作製されたコンパウンドのDMAデータを示すグラフである。
図31】DV001Bを用いて作製された架橋コンパウンドの耐溶剤性(室温THF)を示す画像である。
図32】ラバープロセスアナライザの結果を示すグラフである。
図33】ラバープロセスアナライザの結果を示すグラフである。
図34】ラバープロセスアナライザの結果を示すグラフである。
図35】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引及び周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図36】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引及び周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図37】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引及び周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図38】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引及び周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図39】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引及び周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図40】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引及び周波数掃引についての試験試料の比較を示すグラフである。
図41】平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引及び周波数掃引についての試験試料の比較を示す図である。
図42】DMA試験結果を示すグラフである。
図43】DMA試験結果を示すグラフである。
図44】応力緩和実験の結果を示すグラフである。
図45】応力緩和実験の結果を示すグラフである。
図46A】大気中酸素の存在下(強制対流のオーブン)での試料の架橋の結果を示す図である。
図46B】大気中酸素の存在下(強制対流のオーブン)での試料の架橋の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に開示される実施形態は、ポリマー組成物、かかるポリマー組成物を形成する方法及び再加工する方法、並びにかかるポリマー組成物から形成される物品に関する。ポリマー組成物は、動的に架橋されたビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む熱可塑性ポリマーでありうる。本開示の実施形態によれば、動的架橋反応は、分子状酸素の存在に比較的非感受性である。本明細書で使用される場合、「比較的非感受性」という用語は、ポリマー組成物が5を超える粘着性番号(tackiness number)を有することを意味する。
【0022】
結合的共有結合適応ネットワーク(Associative covalent adaptive network)(CAN)は、化学的架橋ポリマーの1種であり、外部刺激(温度、応力、pH等)が結合交換反応を引き起こし、それによってネットワークのトポロジーの変化を可能にする。存在する動的共有結合は、架橋密度を一定に維持しながら、ネットワークのトポロジーが変化でき、材料が応力を緩和して流動するように、結合的交換反応(associative exchange reaction)を受けることができる。動的架橋系は、室温で、架橋材料の特徴を示す(高い耐薬品性、並外れた機械的特性)が、高温で、熱可塑性材料と同様の様式で加工又は再加工することができる。
【0023】
1つ又は複数の実施形態によれば、ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーと架橋系を混合することによって調製することができる。架橋系は、架橋剤及び触媒を含むことができる。熱可塑性ポリマーは、動的架橋基を含むことができ、且つ/又は動的架橋基は、そこにグラフト化されていてもよい。架橋性ポリマー組成物は、架橋系を熱可塑性ポリマーと加工する工程を含む方法を介して調製することができる。ポリマー組成物の架橋は、ポリマー組成物の架橋を引き起こすために、組成物の溶融温度又は軟化温度を超えて行われる加工を含みうる。更に、架橋ポリマー組成物は動的に架橋されているために、以前に架橋されたポリマー組成物は、その後の工程において高温で再加工することができる。
【0024】
熱可塑性ポリマー
1つ又は複数の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、C2~C12オレフィン、ビニルエステル、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマーを含む。オレフィンは、エチレン、1-プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、及びそれらの組合せのうちの1つ又は複数を含むことができる。したがって、例えば、熱可塑性ポリマーが、エチレンホモポリマー、エチレンと1種又は複数のC3~C12アルファオレフィンとのコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレンとエチレン、C4~C12アルファ-オレフィン、及びそれらの組合せから選択される1種又は複数のコモノマーとのコポリマーを含むポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、ポリ(酢酸ビニル)、並びにそれらの組合せ等のポリマーを含むことができることが想定される。オレフィンとビニルエステルとのコポリマーでは、ビニルエステルが、コポリマーの全質量の1、5、10、15、18、又は20wt%の下限値から25、40、60、又は80wt%のうちの任意の上限値までの範囲の量で、コモノマーとして存在することができることが想定される。1つ又は複数の特定の実施形態では、酢酸ビニルをモノマー又はコモノマーとして使用することができる。1つ又は複数の更により特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、バイオベースのポリマー、特にエチレン酢酸ビニル及びポリエチレンであってもよく、例えば、エチレンは、バイオベースのエタノールに由来しうる。
【0025】
熱可塑性ポリマーが、分岐ビニルエステルコモノマーを含むことができることも想定される(エチレンのみと組み合わせてコポリマーを形成するか、又はエチレン及び酢酸ビニルと組み合わせてターポリマーを形成する)。そのようなコポリマー及びターポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第17/063,488号に記載されている。例えば、そのような分岐ビニルエステルモノマーは、一般構造(I):
【0026】
【化1】
【0027】
(式中、R4及びR5は、6個又は7個の組み合わせた炭素数を有する)を有するモノマーを含むことができる。しかし、米国特許出願第17/063,488号に記載されている他の分岐ビニルエステルを使用することができることも想定される。
【0028】
1つ又は複数の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリマー組成物の少なくとも1wt%、少なくとも5wt%、10wt%、15wt%、少なくとも20wt%、少なくとも25wt%、少なくとも50wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%、少なくとも90wt%、又は少なくとも99wt%を形成する。熱可塑性ポリマーの量は、例えば、他の成分、例えば、架橋剤、触媒、充填剤、添加剤、油、及び/又は可塑剤の存在に依存しうるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書に記載されるポリマー組成物を形成する熱可塑性ポリマーに言及する場合、ポリマーが、動的架橋基及び架橋系の添加を介して動的に架橋されることが意図される。動的架橋基、例えば、EVAのビニルエステルは、重合の間に熱可塑性ポリマー中に組み込むことができ、又は動的架橋基は、ベースポリマーが重合された後にベースポリマーに加えることができる。動的架橋基は、例えば、熱可塑性ポリマーを形成する反応性加工工程の間に、グラフト化反応を介してベースポリマーに付加することができる。グラフト化反応は、ベースポリマーと動的架橋基を含む分子との間に少なくとも1つの共有結合を形成することを含みうる。グラフト化は、例えば、溶融グラフト化、溶液グラフト化、又は固体状態グラフト化を含みうる。
【0030】
動的架橋基
上述の通り、架橋は、熱可塑性ポリマーに存在する動的架橋基又は部分を介して達成することができる。1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、エステル、エポキシド、有機酸、アルコール、無水物、アミン、アミド、シアネート、不飽和炭化水素、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0031】
また上述の通り、その部分又は動的架橋基は、重合から熱可塑性ポリマーに存在してもよく(ビニルエステルモノマーを含む熱可塑性物質におけるエステルの場合において等)、又はそのような部分は、重合後反応性加工を介してベースポリマーと反応させて、熱可塑性ポリマーを形成してもよい。そのような反応加工は、例えば、溶融グラフト化、溶液グラフト化、又は固体状態グラフト化を含みうる。動的架橋基が、熱可塑性ポリマーを形成するモノマーと同一又は異なる化学種でありうることも想定される。例えば、熱可塑性ポリマーがポリ酢酸ビニルである場合、酢酸ビニルは、モノマー及び動的架橋基の両方である。
【0032】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、デカン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、ケイ皮酸ビニル、4-tert-ブチル安息香酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ケイ皮酸アリル、メタクリル酸ビニル等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0033】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、不飽和有機酸、例えばイタコン酸、マレイン酸、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、フマル酸、1-ビニル-1H-ピロール-2-カルボン酸、1,2-ベンゼンジカルボン酸等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0034】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、不飽和エポキシド、例えばメタクリル酸グリシジル、4-ビニル-1-シクロヘキセン、1,2-エポキシド、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-シクロヘキセン、2-メチル-2-ビニルオキシラン、1,2-エポキシ-9-デセン等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0035】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、3-ブテン-1-オール、2-メチル-2-プロペン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-ブテン-2-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、クロチルアルコール等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0036】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、不飽和無水物、例えば無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、(2-ドデセン-1-イル)無水コハク酸等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0037】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、不飽和アミン、例えばtrans-ジメチル-(4-(2-p-トリル-ビニル)-ベンジル)-アミン、[4-((e)-2-ベンゾチアゾール-2-イル-ビニル)-フェニル]-ジエチル-アミン、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、2-ビニルピリジン、4-ビニルアニリン、3-ビニルアニリン、アリルアミン、3-ブテン-1-アミン、n-アリルメチルアミン、n-ビニルホルムアミド、2-メチル-2-プロペン-1-アミン等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0038】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、動的架橋系と反応することができる部分を含みうる。1つ又は複数の実施形態では、動的架橋基は、熱可塑性ポリマーの100wt%、90wt%、70wt%、50wt%、30wt%、10wt%、5wt%、4wt%、3wt%、2wt%、1wt%、0.05wt%、又は0.01wt%までの量で熱可塑性ポリマーに存在する。
【0039】
動的架橋系
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋系は、動的架橋基と反応することができる動的架橋剤及び任意選択で触媒を含みうる。1つ又は複数の実施形態では、動的架橋系は、ポリマー組成物の40wt%、30wt%、25wt%、20wt%、15wt%、10wt%、5wt%、4wt%、3wt%、2wt%、1wt%、0.05wt%、又は0.01wt%までの量でポリマー組成物に存在する。
【0040】
動的架橋剤
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋剤は、エステル、エポキシド、有機酸、アルコール、無水物、アミン、アミド、シアネート、及び/又は不飽和炭化水素基と反応して可逆的な共有結合を形成することができる。動的架橋剤は、ホウ酸エステル、シラン類、ポリアミン、多価アルコール、ポリオール、ポリ酸、無水物、及びそれらの組合せから選択することができる。
【0041】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋剤は、ホウ酸エステル、例えばホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリ-tert-ブチル、ホウ酸トリアリル、ホウ酸トリへキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリベンジル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、ホウ酸トリス(2-エチルヘキシル)等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0042】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋剤は、シラン類、例えばオルトケイ酸テトラプロピル(TPOS)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、オルトケイ酸テトラブチル(TBOS)、オルトケイ酸テトラペンチル、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニル-トリ-n-ブトキシシラン、ヘキセニルトリ-イソ-ブトキシシラン、アリルトリ-n-ペントキシシラン、ドデセニルトリ-n-オクトキシシラン、ヘプテニルトリ-n-ヘプトキシシラン、アリルトリ-イソ-プロポキシシラン、ペンテニルトリ-n-プロポキシシラン、secブテニルトリエトキシシラン(secbutenyltriethoxysilane)、3-メタクリロキシプロピル-トリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0043】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋剤は、ポリアミン-ジアミン、トリアミン、又は複数のアミンを含む分子-例えばヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、エチレンジアミン、1,12-ジアミノドデカン、1,10-ジアミノデカン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0044】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋剤は、ポリオール-ジオール、トリオール、又は複数のアルコールを含む分子-例えばポリカプロラクトンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,4-ヘプタンジオール、1,2,10-デカントリオール、エチレンジアミンテトラキス(エトキシレート-ブロック-プロポキシレート)テトロール、5-プレグネン-3-ベータ,11-ベータ,17-アルファ,20-ベータ-テトロール等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0045】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋剤は、ポリ酸-二酸、三酸、又は複数の酸を含む分子-例えば2-アミノテレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テレフタル酸、2-ヒドロキシテレフタル酸、トリメシン酸、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0046】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋剤は、無水物、二無水物、又は複数の無水物を含む分子、例えば無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、(2-ドデセン-1-イル)無水コハク酸、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等、及びそれらの組合せを含みうる。
【0047】
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋剤は、0.01wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、又は3wt%のうちの任意の下限値から、4wt%、5wt%、6wt%、8wt%、10wt%、12wt%、15wt%、20wt%、25wt%、又は40wt%のうちの任意の上限値までポリマー組成物に存在してもよく、任意の下限値を任意の上限値と組み合わせて使用することができる。
【0048】
触媒
1つ又は複数の実施形態では、動的架橋系は、上述のポリマー組成物における動的架橋の形成及び交換反応を促進する触媒を任意選択で含む。1つ又は複数の実施形態では、触媒は、エステル交換触媒であってもよい。1つ又は複数の実施形態では、触媒は、o-求核試薬、n-求核試薬、金属酸化物、金属水酸化物、NaOH又はKOH等の酸/アルカリ触媒、アセチルアセトン塩、ジアクリル酸塩、炭酸塩、酢酸塩、及びそれらの組合せからなる群から選択される有機金属塩であって、金属が、亜鉛、モリブデン、銅、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、スズ、リチウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、鉛、鉄、バナジウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される、有機金属塩から選択される。
【0049】
1つ又は複数の実施形態では、触媒は、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(VI)、ジブチルスズオキシド(DBTO)、トリアザビシクロデセン(TBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、7-メチル-l,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、トリフェニルホスフィン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、複合金属シアン化物(DMC)、炭酸ジフェニル(DPC)、炭酸メチルフェニル(MPC)、若しくはそれらの組合せ、又は当技術分野で公知の他の同様の触媒から選択することができる。
【0050】
1つ又は複数の実施形態では、触媒は、動的架橋系に対して0.1mol%、0.5mol%、1mol%、2mol%、5mol%、10mol%、25mol%、又は50mol%を超える量で存在しうる。時間、温度、せん断速度等の適切な加工条件で熱可塑性ポリマー中に動的架橋を作り出すのに十分な量の触媒を加えることが望ましい場合があることが想定される。
【0051】
任意選択の永久架橋系
本開示のポリマー組成物(熱可塑性ポリマーであろうと、組成物に任意選択で加えられる他のポリマーであろうと)は、永久架橋系によって任意選択で部分的に架橋されうることも想定される。永久架橋系は、クリープ、応力緩和、圧縮永久歪み等の特定の特性をポリマー組成物に合わせるために、化学的クロスリンカー、例えば、任意選択で架橋促進剤/活性化剤と組み合わせた有機過酸化物、アゾ/アジド化合物、シラン類、元素状硫黄及びシアネート;放射線硬化系、又は他の従来の架橋方法を含みうる。これは、ポリマー組成物の加工性が大幅に損なわれない場合に、望ましい/関連性がある可能性がある。特定の実施形態では、永久架橋系は、永久架橋剤及び任意選択で架橋助剤を含みうる。
【0052】
永久架橋剤
部分的永久架橋が想定されるとき、本開示に従うポリマー組成物は、有機過酸化物、アゾ/アジド化合物、硫黄架橋系、シアネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される永久架橋剤を含みうる。
【0053】
本開示による有機過酸化物は、ポリマーの加工中にフリーラジカルを生成することができる。1つ又は複数の実施形態では、過酸化物は、二官能性過酸化物、例えばベンゾイルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;00-Tert-アミル-0-2-エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート;tert-ブチルクミルペルオキシド;tert-ブチル3,5,5-トリメチルヘキサノエートペルオキシド;tert-ブチルペルオキシベンゾエート;2-エチルヘキシルカーボネートtert-ブチルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシド)ヘキサン;1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシド)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシド)ヘキシン-3;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン;ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシド)バレレート;ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド;ペルオキシドジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等を含みうる。
【0054】
過酸化物は、ベンゾイルペルオキシド、2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノール、ブチル-ペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ターシャリーブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチル-ペルオキシ-ベンゾエート、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエート、4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノン、4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノン、4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2-t-ブチルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2-クミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2-t-アミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、m/p-アルファ,アルファ-ジ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,3,5-トリス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5-トリス(t-アミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5-トリス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カ-ボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチル]カーボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ)ブチル]カーボネート、ジ-t-アミルペルオキシド、t-アミルクミルペルオキシド、t-ブチル-イソプロペニルクミルペルオキシド、2,4,6-トリ(ブチルペルオキシ)-s-トリアジン、1,3,5-トリ[1-(t-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,3,5-トリ-[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]ベンゼン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノール、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノール、ジ(2-フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジベンジルペルオキシジカーボネート、ジ(イソボルニル)ペルオキシジカーボネート、3-クミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、3-t-ブチルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、3-t-アミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、トリ(1,3-ジメチル-3-t-ブチルペルオキシブチルオキシ)ビニルシラン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル)1-メチルエチル]カルバメート、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチルN-[1-13(1-メチルエテニル)-フェニル}-1-メチルエチル]カルバメート、1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ))ブチルN-[1-3-(1-メチルエテニル)-フェニル1-1-メチルエチル]カルバメート、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル4,4-ジ(t-アミルペルオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-エトキシカボニルメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、エチル-3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、ベンゾイルペルオキシド、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシ-スクシネート、OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシ-スクシネート、3,6,9,トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン(又はメチルエチルケトンペルオキシド環状トリマー)、メチルエチルケトンペルオキシド環状ダイマー、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルベンゾエート、t-アミルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシスクシネート、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシスクシネート、ジ-t-ブチルジペルオキシフタレート、t-ブチルペルオキシ(3,3,5-トリメチルヘキサノエート)、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチル-ペルオキシ-(cis-3-カルボキシ)プロピオネート、アリル3-メチル-3-t-ブチルペルオキシブチレート、OO-t-ブチル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、OO-t-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、1,1,1-トリス[2-(t-ブチルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、1,1,1-トリス[2-(t-アミルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、1,1,1-トリス[2-(クミルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、OO-t-アミル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(3-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、2,4-ジブロモ-ベンゾイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(2,4-ジクロロ-ベンゾイル)ペルオキシド等、及びそれらの組合せも含みうる。
【0055】
他の永久架橋剤は、ポリマー組成物の特定の官能基と反応することができる選択された成分、例えば、ポリイソシアネート、シラン類、硫黄、硫黄供与体及び促進剤、シアネート等であってもよいが、これらに限定されない。硫黄架橋系は、架橋系に一般に使用される他の成分の中で、元素状硫黄、硫黄供与体、促進剤、活性化剤を含みうる。硫黄活性化剤は、ステアリン酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等、及びそれらの組合せから選択することができる。硫黄供与体及び/又は促進剤は、n-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、ジフェニルグアニジン(DPG)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、4,4'-ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、2,2'-ベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ヘキサメチレン-1,6-ビスチオ硫酸二ナトリウム塩二水和物、2-(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール(MBS又はMOR)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(II)(ZBEC)、N-ターシャリーブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、及びN-オキシジエチレンチオカルバミル-N-オキシジエチレンスルホンアミド(OTOS)、2-エチルヘキサン酸亜鉛(ZEH)、N,N'-ジエチルチオ尿素等、並びにそれらの組合せから選択することができる。
【0056】
本明細書に開示されるポリマー組成物は、永久架橋剤を、ポリマー組成物の0.001wt%、0.01wt%、0.1wt%、0.4wt%、1wt%、1.6wt%、2.2wt%、又は2.8wt%のうちの1つの下限値と3.4wt%、4wt%、4.6wt%、5.2wt%、6wt%、又は10wt%のうちの1つの上限値との範囲の量で任意選択で含んでもよく、任意の下限値を数学的に適合する任意の上限値と組み合わせることができる。
【0057】
架橋助剤
永久架橋系が架橋助剤を任意選択で含みうることも想定される。架橋助剤は、架橋のためのさらなる反応性部分を作り出し、ポリマー架橋度が、過酸化物又は他の架橋剤の添加のみによって通常得られるものからかなり増加することを可能にする。一般に、助剤は、架橋の速度を増加させる。1つ又は複数の実施形態では、架橋助剤は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパン-トリス-メタクリレート(TRIM)、トリアリルシアヌレート(TAC)、三官能(メタ)アクリル酸エステル(TMA)、N,N'-m-フェニレンジマレイミド(PDM)、ポリ(ブタジエン)ジアクリレート(PBDDA)、高ビニルポリ(ブタジエン)(HVPBD)、ポリ-トランスオクテナマーラバー(TOR)(Vestenamer(登録商標))、及びそれらの組合せを含みうる。
【0058】
本明細書に開示されるポリマー組成物は、架橋助剤を、ポリマー組成物の0.001wt%、0.01wt%、0.1wt%、0.4wt%、1wt%、1.6wt%、2.2wt%、又は2.8wt%のうちの1つの下限値と3.4wt%、4wt%、4.6wt%、5.2wt%、6wt%、又は10wt%のうちの1つの上限値との範囲の量で任意選択で含んでもよく、任意の下限値を数学的に適合する任意の上限値と組み合わせることができる。
【0059】
任意選択の添加剤
本開示のポリマー組成物は、主要な動的架橋性ポリマー、動的架橋剤、及び任意選択の触媒に加えて、他の任意選択の成分、例えば架橋ポリマー又は架橋されていないポリマー、1つ若しくは複数の任意選択の添加剤、例えば、これらに限定されないが、永久架橋剤及び助剤、充填剤、発泡剤、発砲促進剤、エラストマー、可塑剤、加工助剤、離型剤、滑沢剤、染料、顔料、抗酸化剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、粘着防止添加剤(antiblock additive)、又はポリマー組成物における剛性及び弾力性のバランスを変更するための他の添加剤、例えば、繊維、充填剤、製造小片、ナノ粒子、ナノ繊維、ナノウィスカー、ナノシート、及び他の補強要素又はナノ要素も含みうる。いくつかの実施形態では、1種又は複数のそのような添加剤を、ポリマー、動的架橋剤、及び触媒の最初の混合又は溶融加工中に加えることができ、一方、1つ又は複数の実施形態では、1種又は複数のそのような添加剤を、動的架橋が構築された後で、その後のプロセス工程において配合することができる。
【0060】
本開示に従うポリマー組成物は、膨張ポリマー組成物及び発泡体を製造するために1種又は複数の発泡剤を含みうる。発泡剤は、固体、液体、又はガスの発泡剤を含みうる。化学発泡剤を利用する実施形態では、発泡剤は、粉末又は顆粒としてポリマー組成物と組み合わせてもよい。
【0061】
本開示に従う発泡剤は、ポリマー加工温度で分解し、発泡ガス、例えばN2、CO、CO2等を放出する化学発泡剤を含みうる。化学発泡剤の例は、トルエンスルホニルヒドラジン等のヒドラジン、オキシジベンゼンスルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4'-ジスルホン酸ヒドラジド等のヒドラジド、硝酸塩、亜硝酸塩、アジ化カルシウム等のアジ化物、アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物、シアノ吉草酸、アゾビス(イソブチロニトリル)、並びにN-ニトロソ化合物及び他の窒素系材料、クエン酸、並びに当技術分野で公知の他の化合物を含む有機発泡剤を含みうる。
【0062】
無機系化学発泡剤は、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、重炭酸亜鉛、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸鉄、重炭酸アルミニウム等を含むことができ、これらは単独で使用してもよく、又はクエン酸、乳酸、若しくは酢酸等の弱い有機酸と組み合わせてもよい。
【0063】
本開示に従う発泡剤は、物理的発泡剤、例えば押出機、射出成形機、ブロー成形機等における直接的なガス注入を含むことができるのに対して、ガスは、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、空気、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロエタン、フロン、他のクロロフルオロカーボン、アルゴン等を含むことができ、このプロセスは、超臨界条件下で実施することもでき、当技術分野で公知の他のガス及び方法も含むことができる。
【0064】
本明細書に開示されるポリマー組成物は、発泡剤を、ポリマー組成物の0.01wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、又は9wt%のうちの1つの下限値と10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、又は15wt%のうちの1つの上限値との範囲の量で含んでもよく、任意の下限値を数学的に適合する任意の上限値と組み合わせることができる。
【0065】
本開示に従うポリマー組成物は、関連する活性化エネルギー/温度を低下させることによって発泡剤の作用を高める又は引き起こす1種又は複数の発泡促進剤(キッカーとしても知られる)を含みうる。例えば、選択された発泡剤が170℃よりも高い温度、例えば、220℃以上で反応又は分解し、周囲のポリマーが活性化温度に加熱されると分解する可能性がある場合に、発泡剤促進剤を使用することができる。発泡促進剤は、選択された発泡剤を活性化することができる任意の適切な発泡促進剤を含みうる。1つ又は複数の実施形態では、適切な発泡促進剤は、カドミウム塩、カドミウム-亜鉛塩、鉛塩、鉛-亜鉛塩、バリウム塩、バリウム-亜鉛(Ba-Zn)塩、酸化亜鉛、二酸化チタン、トリエタノールアミン、ジフェニルアミン、スルホン化芳香族酸、及びそれらの塩等を含みうる。本開示の特定の実施形態に従うポリマー組成物は、1種又は複数の発泡促進剤として酸化亜鉛を含みうる。
【0066】
本明細書に開示されるポリマー組成物は、発泡促進剤を、ポリマー組成物の0.01wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%、又は2.5wt%のうちの1つの下限値と3.0wt%、3.5wt%、4.0wt%、4.5wt%、又は5.0wt%のうちの1つの上限値との範囲の量で任意選択で含んでもよく、任意の下限値を数学的に適合する任意の上限値と組み合わせることができる。
【0067】
本開示の1つ又は複数の実施形態に従うポリマー組成物は、1種又は複数のエラストマーを含みうる。本開示に従うエラストマーは、天然ゴム、ポリ-イソプレン(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエン、ニトリルゴム(NBR);ポリオレフィンゴム、例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPDM、EPM)等、アクリルゴム、ハロゲンゴム、例えば、臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムを含むハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン、ポリクロロプレン等;シリコーンゴム、例えば、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム等、硫黄含有ゴム、例えば、ポリスルフィドゴム(polysulfidic rubber);フッ素化ゴム;熱可塑性ゴム、例えば、スチレン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、及びプロピレンをベースにしたエラストマー、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-ブチレン-スチレン(SBS)等、エステル系エラストマー、エラストマーポリウレタン、エラストマーポリアミド等、及びそれらの組合せのうちの1種又は複数を含みうる。
【0068】
本開示に従うポリマー組成物は、他のエラストマーを0~60wt%の範囲で任意選択で含みうる。エラストマーは、ポリマー組成物の0wt%、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、及び30wt%のうちの1つの下限値と35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、及び70wt%のうちの1つの上限値との範囲の量で存在してもよく、任意の下限値を数学的に適合する任意の上限値と組み合わせることができる。
【0069】
本開示に従うポリマー組成物は、組成物の物理的特性及び加工性を調整するために、1種又は複数の可塑剤を含みうる。いくつかの実施形態では、本開示に従う可塑剤は、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ジ-イソノニル(DINP)、フタル酸ビス(n-ブチル)(DNBP)、フタル酸ブチルベンジル(BZP)、フタル酸ジ-イソデシル(DIDP)、フタル酸ジ-n-オクチル(DOP又はDNOP)、フタル酸ジ-o-オクチル(DIOP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ-イソブチル(DIBP)、フタル酸ジ-n-ヘキシル、トリメリット酸トリ-メチル(TMTM)、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)(TOTM)、トリメリット酸トリ-(n-オクチル、n-デシル)、トリメリット酸トリ-(ヘプチル、ノニル)、トリメリット酸n-オクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHA)、アジピン酸ジメチル(DMD)、アジピン酸モノ-メチル(MMAD)、アジピン酸ジオクチル(DOA))、セバシン酸ジブチル(DBS)、VIERNOL等のアジピン酸のポリエステル、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸ジ-イソブチル(DIBM)、ベンゾエート、エポキシ化ダイズ油及び誘導体、n-エチルトルエンスルホンアミド、n-(2-ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド、n-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミド、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリブチル(TBP)、グリコール/ポリエステル、トリエチレングリコールジヘキサノエート、3gh)、テトラエチレングリコールジ-ヘプタノエート、ポリブテン、アセチル化モノグリセリド;クエン酸アルキル、クエン酸トリエチル(TEC)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸アセチルトリへキシル、クエン酸ブチリルトリへキシル、o-ブチリルクエン酸トリへキシル、クエン酸トリメチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、2-シクロヘキサンジカルボン酸ジ-イソノニルエステル、ニトログリセリン、ブタントリオールトリナイトレート、ジニトロトルエン、トリメチロールエタントリナイトレート、ジエチレングリコールジナイトレート、トリエチレングリコールジナイトレート、ビス(2,2-ジニトロプロピル)ホルマール、ビス(2,2-ジニトロプロピル)アセタール、2,2,2-トリニトロエチル2-ニトロキシエチルエーテル、様々な化学組成の鉱油、他の油の中でも、植物油又はバイオベースの油、可塑剤、ポリマー可塑剤等、並びにそれらの組合せのうちの1種又は複数を含みうる。特定の実施形態では、1種又は複数の可塑剤のうちの1つは、エステル系油でありうる。
【0070】
本開示に従うポリマー組成物は、可塑剤をポリマー組成物の0~40wt%の範囲の量で任意選択で含みうる。可塑剤は、ポリマー組成物の0wt%、1.0wt%、2.0wt%、及び5.0wt%、8.0wt%、10wt%、及び20.0wt%のうちの1つの下限値と12wt%、15wt%、18wt%、19wt%、20wt%、30wt%、及び40wt%のうちの1つの上限値との範囲の量で存在してもよく、任意の下限値を数学的に適合する任意の上限値と組み合わせることができる。
【0071】
本開示に従うポリマー組成物は、1種又は複数の有機又は無機の充填剤及びナノ充填剤、例えば、タルク、ガラス繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレイ、カーボンブラック、長石、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、シリケート、ケイ酸カルシウム、ケイ酸粉末、ガラス微小球、マイカ、金属酸化物の粒子及びナノ粒子、例えば、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、無機塩の粒子及びナノ粒子、例えば、硫酸バリウム、珪灰石、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、チタン系酸化物、炭酸カルシウム、グラフェン、カーボンナノチューブ及び他の炭素系ナノ構造、窒化ホウ素ナノチューブ、木粉、木誘導体粒子(wood derivative particle)、セルロースの繊維及びナノ繊維、結晶性ナノセルロース、セルロースナノ繊維及び他のセルロース系ナノ構造、多様な供給源からの他のセルロース誘導体、リグニン系材料及び他の天然繊維/充填剤、並びに他のナノ粒子、ナノ繊維、ナノウィスカー、ナノシート、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、再生EVA、並びに他の再生ゴム及び架橋されていてもされていなくてもよいプラスチックコンパウンドを含みうる。本明細書に定義するように、再生コンパウンドは、寿命をむかえた使用済み物品、又は成形若しくは押出し等の少なくとも1つの加工方法を経てその後のスプルー、ランナー、フラッシュ、不合格部品等が粉砕若しくは刻まれたリグラインド材料に由来する場合がある。本開示の実施形態に従って、そのような再生材料は、触媒と組み合わされて、動的架橋ネットワークを有する本明細書に記載されるポリマー組成物を形成するが、さらなる再生EVA又は他のポリマーを充填剤としてその後の配合工程において加えることができることも想定される。
【0072】
本明細書に開示されるポリマー組成物は、少なくとも1種の充填剤又はナノ充填剤を、ポリマー組成物の0.01wt%、0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%、2.0wt%、又は5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、及び25wt%のうちの1つの下限値と35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、65wt%、70wt%、又は75wt%のうちの1つの上限値との範囲の量で任意選択で含んでもよく、任意の下限値を数学的に適合する任意の上限値と組み合わせることができる。
【0073】
動的架橋ポリマー組成物
1つ又は複数の実施形態では、架橋時に、組成物は、20℃から少なくとも150℃までの温度範囲内でプラトー弾性貯蔵率を示す。
【0074】
1つ又は複数の実施形態では、架橋時に、組成物は、230℃未満の温度で10,000秒以内にその初期値(G0、プラトー弾性率)に対して少なくとも50%低下するように、120℃を超える温度で時間依存的である弾性貯蔵率を有する。正規化緩和弾性率の値は、プラトー弾性率(G0)がt=0秒での適合に対応する弾性貯蔵率データに対する指数関数的崩壊適合を介して得ることができる。G0は、特にそれが0.1秒に近い又は0.1秒よりも小さい時間にある場合、応力緩和実験における所望の変形での最初の捕捉点と考えることもできる。
【0075】
1つ又は複数の実施形態では、架橋時に、組成物は、改善された耐溶剤性を示す。例えば、168時間を超えて、中程度の膨張(過酸化物硬化ポリマーと比較して)を示しながら室温でTHFへの曝露に抵抗するが、一方で、未架橋ポリマー(例えば、ニートEVA)は、48時間未満でほとんど完全に可溶化する。更に、いくつかの組成物は、沸騰キシレンに対して最長で12時間耐溶剤性を示し、ASTM D2765-16に従って測定して、70wt%を超える高いゲル含有量を示す可能性もある。
【0076】
1つ又は複数の実施形態では、架橋時に、組成物は、20~90アスカーCの範囲の硬度(ASTM D2240に従って測定)を示す。他の実施形態では、組成物は、30~95ショアAの硬度を示す。1つ又は複数の実施形態では、組成物は、30~90ショアDの硬度を示す。1つ又は複数の実施形態では、組成物は、架橋時に50~90ショアAのショアA硬度を示す。
【0077】
1つ又は複数の実施形態では、架橋時に、組成物は、ASTM D792又はASTM D297によって測定した場合に、0.8~1.5g/cm3、好ましくは0.9~1.1g/cm3の密度を示す。
【0078】
1つ又は複数の実施形態では、架橋時に、組成物は、ASTM D1238に従って、190℃で10kgの荷重下で測定した場合に、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~20g/10分のメルトフローレート(MFR)を示す。
【0079】
1つ又は複数の実施形態では、熱可塑性ポリマーが結晶性ポリマーであるとき、架橋時に、組成物は、ASTM D3418に従ってDSCによって測定した場合に、30~200℃、好ましくは40~170℃の溶融温度(第2溶融-Tm2)及び/又は10~180℃、好ましくは20~160℃の結晶化温度、及び/又は-100~100℃、好ましくは-60℃~-40℃のガラス転移温度を示す。架橋コンパウンド
【0080】
動的架橋ポリマー組成物は、下記に開示されるように配合されうることも想定される。
【0081】
1つ又は複数の実施形態では、架橋コンパウンドは、ASTM D4065に従ってDMA(温度掃引)を介して測定した場合に-20℃から少なくとも150℃までの温度範囲内でプラトー貯蔵弾性率を示す。
【0082】
1つ又は複数の実施形態では、架橋コンパウンドは、230℃未満の温度で10,000秒以内にその初期値(G0、プラトー弾性率)に対して少なくとも50%低下するように、120℃を超える温度で時間依存的である弾性貯蔵率を有する。正規化緩和弾性率の値は、プラトー弾性率(G0)がt=0秒での適合に対応する弾性貯蔵率データに対する指数関数的崩壊適合を介して得ることができる。G0は、特にそれが0.1秒に近い又は0.1秒よりも小さい時間にある場合、応力緩和実験における所望の変形での最初の捕捉点と考えることもできる。
【0083】
1つ又は複数の実施形態では、架橋コンパウンドは、改善された耐溶剤性を示す。例えば、168時間を超えて、中程度の膨張(過酸化物硬化ポリマーと比較して)を示しながら室温でTHFへの曝露に抵抗するが、一方で、未架橋ポリマー(例えば、ニートEVA)は、48時間未満でほとんど完全に可溶化する。更に、いくつかの組成物は、沸騰キシレンに対して最長で12時間耐溶剤性を示し、ASTM D2765-16に従って測定して、70wt%を超える高いゲル含有量を示す可能性もある。
【0084】
1つ又は複数の実施形態では、架橋コンパウンドは、20~90アスカーCの範囲の硬度(ASTM D2240に従って測定)を示す。他の実施形態では、組成物は、30~95ショアAの硬度を示す。1つ又は複数の実施形態では、組成物は、30~90ショアDの硬度を示す。1つ又は複数の実施形態では、組成物は、架橋時に50~90ショアAのショアA硬度を示す。
【0085】
1つ又は複数の実施形態では、架橋コンパウンドは、ASTM D792又はASTM D297によって測定した場合に、0.9~2g/cm3、好ましくは1~1.7g/cm3の密度を示す。
【0086】
1つ又は複数の実施形態では、架橋コンパウンドは、ASTM D1238に従って、190℃及び10kgの荷重で測定した場合に、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~20g/10分のMFRを示す。
【0087】
1つ又は複数の実施形態では、架橋コンパウンドは、ASTM D412又はASTM 638に従って、0.1~200MPa、好ましくは5~30MPaの破断時の応力を示す。
【0088】
1つ又は複数の実施形態では、架橋コンパウンドは、ASTM D412又はASTM 638に従って、50~2000%、好ましくは300~900%の破断時の歪みを示す。
【0089】
加工
1つ又は複数の実施形態では、熱可塑性ポリマーと動的架橋剤及び触媒を含む動的架橋系とを含みうる架橋性ポリマー組成物は、溶融-加工操作にかけられ、動的架橋性ポリマー組成物(すなわち、まだ動的に架橋されていない)を形成する。それから、このポリマー組成物は、多工程プロセスの一部として動的に架橋することができる。第1の工程では、ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー、動的架橋剤、及び任意選択で触媒を、ポリマー組成物において動的架橋を形成するのに十分でない温度で溶融混合することによって調製される。第2の工程では、第1の工程で形成されたポリマー組成物は、任意選択で分子状酸素の存在下で、例えば、熱風トンネル、オーブン、オートクレーブ、又は他の適切な架橋装置を使用するプロセスで架橋される。ポリマー組成物を架橋する工程は、動的架橋ポリマー組成物を形成するのに十分に高い温度で実行される。架橋する工程は、例えば、温度上昇時に、ポリマー組成物を形成するために使用されるのと同じ装置で実行することができ、又は、反応性加工を特徴付ける別々の装置で実行することができ、それにより、実際、前述のようなさらなる硬化プロセスの必要性を除くことができる。本明細書で動的架橋に使用される化学的性質は、分子状酸素に比較的非感受性である。動的架橋を形成するための架橋反応は、酸素を含む環境で実行することができる。
【0090】
先に述べたように、マトリックス及び/又は組成物における他のポリマー相を架橋することができる有機過酸化物又は他の従来の硬化剤、例えば、硫黄、アジド化合物、シアヌレート、放射線等を含む永久架橋系の添加との混合系も、特定の特性に有益であれば想定され、動的架橋プロセスの後又はその間に材料中で実行される可能性がある。永久架橋は、組成物中の熱可塑性ポリマー及び/又は他のポリマーにおいて、加工性が大幅に損なわれないレベルまで起こる可能性がある。
【0091】
1つ又は複数の実施形態では、熱可塑性ポリマーと動的架橋剤及び任意選択で触媒を含む動的架橋系とを含みうる架橋性ポリマー組成物は、溶融-加工操作にかけられ、1工程又は多工程プロセスで動的に架橋されたポリマー組成物を形成することができる。具体的に、熱可塑性ポリマー、動的架橋剤、及び触媒は、高温、すなわち、組成物の軟化温度又は溶融温度を超えて混合することができる。例えば、熱可塑性ポリマー、動的架橋剤、及び触媒の混合物は、架橋されていない熱可塑性ポリマーの加工温度よりも高い加工温度にかけられ、ポリマー組成物を形成することができる。すなわち、混合物は、架橋されていないポリマーの融点又は軟化点のいずれかよりも高い温度にかけることができる。温度は、ポリマーの分解温度を超えない限り、選択された加工操作の要件に従って選択されるべきである。非晶質の架橋されていないポリマーの軟化点は、ASTM D-1525に従ってビカット軟化点法によって決定することができ、半結晶性の架橋されていないポリマーの融点は、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。
【0092】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に従うポリマー組成物は、連続若しくは不連続押出しを使用して、又は連続若しくはバッチ混合において調製することができる。方法は、単軸押出機、二軸押出機、若しくは多軸押出機、接線式若しくは噛合式インターナルミキサー、ロールミルミキサー、熱風トンネル、オーブン、液圧プレス、射出成形機、さらなる製造機械、又はオートクレーブを含みうるがこれらに限定されず、これらのいずれもが、いくつかの実施形態では60~270℃、いくつかの実施形態では140~230℃の範囲の温度で使用されうる。いくつかの実施形態では、原材料(熱可塑性ポリマー、動的架橋系、及び任意選択で他の充填剤、油、添加剤、永久架橋系等)は、押出機又は他の加工方法に、同時に又は順次に加えられる。
【0093】
本開示に従うポリマー組成物を調製する方法は、熱可塑性ポリマー、動的架橋剤、任意選択で触媒及び他の充填剤、油、添加剤、永久架橋系等を押出機又はミキサー内で混ぜ合わせる一般的工程と;組成物を溶融押出しする一般的工程と;ポリマー組成物のペレット、フィラメント、異形材、粉末、バルクコンパウンド、シート等を形成する一般的工程とを含みうる。
【0094】
本方法によって調製されるポリマー組成物は、物品を製造するための、押出し、カレンダー処理、射出成形、発泡、圧縮成形、スチームチェスト成形(steam chest molding)、超臨界成形、追加の製造等から選択されるプロセスを含む異なる成形プロセスに適用できる顆粒の形態又は他の形状でありうる。
【0095】
動的架橋を考慮すると、本開示の実施形態は、架橋ポリマー組成物の再加工にも関する。1つ又は複数の実施形態では、使用される化学的性質の固有の特性のため、架橋ポリマー配合物は、最初の架橋プロセスでバージンポリマーに適用される同様の加工を使用して再加工又は再生することができる。小片又は使用済み部品は、再粉砕又は他の必要となるプロセスを経て、二次的な原料として未だ有用である方法で、加工性又は特性が容認できる程度に低下しながら、所望の操作において材料を供給することができる。意図しているのは、一般に、再加工パラメーターが最初の製造プロセスで使用されるものと同様であることである。有利には、ポリマー組成物は、再加工することができ、ポリマー組成物の特性は、再加工する工程の直前と比較して実質的に維持することができる。具体的に、1つ又は複数の実施形態では、再加工する工程の後に、ポリマー組成物は、動的機械分析(DMA)によって測定した場合に、再加工する工程の前のポリマー組成物と比較して、その初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも50%をその溶融温度を超えて維持する。
【0096】
再加工する工程は繰り返し(複数サイクルを通して)行われることも想定される。1つ又は複数の実施形態では、再加工する工程を繰り返した後(例えば、5サイクルの再加工の後)、ポリマー組成物は、動的機械分析によって測定した場合に、再加工する工程の前のポリマー組成物と比較して、その初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも50%をその溶融温度を超えて維持する。
【0097】
架橋材料の配合
充填剤、油、さらなる架橋剤、抗酸化剤、難燃剤、発泡剤、又は前述のような他の添加剤は、同じ工程/混合装置において又は別の工程/混合装置において、以前に架橋された材料に配合することができる。この配合の条件は、架橋コンパウンドが流動し、配合物の他の成分を組み込むことができるように、最小限の熱エネルギー及び時間を提供する。必要な正確な時間及び温度は、クロスリンカーと触媒のwt%及び比率、並びにそれぞれの化学組成等の、正確な架橋系の特徴に依存する。
【0098】
物品
1つ又は複数の実施形態では、物品を動的架橋ポリマー組成物又は配合された材料から形成することができる。形成される物品は、発泡したものである場合も、発泡していないものである場合もある。
【0099】
1つ又は複数の実施形態では、物品は、配合物の主成分として、又は熱可塑性プラスチック加硫物(TPV)、熱可塑性プラスチック若しくは熱硬化性樹脂用の強化剤等の配合物の成分としての両方で、靴底、インソール、ミッドソール、ユニソール、フォクシングテープ、又は他の靴付属品/部品;ガスケット、ホース、ケーブル、ワイヤー、トリムシール、及びシーリング異形材、又は自動車、建築、若しくは他の産業用途のシーリングシステムの他の部品、コンベヤーベルト、NVH材料、遮音材、屋根材及び床材等からなる群から選択される。多層物品の実施形態では、層のうちの少なくとも1つが本開示のポリマー組成物を含むことが想定される。
【0100】
架橋時の酸素非感受性
オーブン(真空でも不活性雰囲気でもない)中で硬化(架橋)後の架橋ポリマー組成物の粘着性を評価するために、以下の手順を使用した。
【0101】
ポリマー組成物のシートは、カレンダー処理及び/又は圧縮成形を介して調製され、その後カミソリの刃、はさみ、又は他の切断デバイスで厚さ0.7~3mm、幅2.5cm、及び長さ4cmの寸法に切断される(ほとんどが表面現象であるため、寸法は重要なパラメーターではないが)。その後、それは硬化のために、金属トレイ等のある表面に置かれるか、又は金属ワイヤーを使用して、オーブンの上部に吊るされ、熱風オーブン設定205℃で15分間予熱されたオーブンに入れられる。
【0102】
15分の硬化の後、シートを取り出し、直ちに絶縁表面(例えば、硬化ゴム)の上に置き、その後直ちにKleenex(登録商標)Facial Tissueで被覆し、ゴム表面全体に手でしっかりと圧力をかけ、平面を持つ1.8kgの重りを供試体上に5分間置く。室温に冷却後、ティッシュペーパーを注意深く取り除く。
【0103】
目視評価時に、ポリマー表面にはティッシュペーパー繊維があってはならない。ティッシュペーパー又はその繊維の大部分がポリマーに接着する場合、表面架橋が不十分であるか、配合物の表面粘着性が過剰であることを示している。
【0104】
この試験の測定基準は、粘着性番号として定義され、ペーパー繊維で被覆されていないポリマー表面の百分率÷10で、10~0の範囲である。粘着性がない表面(ペーパー繊維なし)は、評定10であり、一方でティッシュペーパー繊維で完全に被覆された粗悪な材料表面は、等級0である。
【0105】
本開示の実施形態に従って、分子状酸素の存在に比較的非感受性である架橋ポリマー組成物は、5を超える粘着性番号を有する。より具体的な実施形態では、架橋ポリマー組成物は、少なくとも6、7、8、又は9の粘着性番号を有する場合がある。
【実施例
【0106】
(実施例1)
ホウ素を中心とした化学架橋-ミキサーでの硬化の時間の影響
エチレン-酢酸ビニルコポリマーについて、動的架橋剤としてホウ酸トリエチル(99%、CAS 150-46-9、Sigma Aldrich社によって供給)及び触媒としてビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(VI)(CAS 17524-05-9、Sigma Aldrich社によって供給)を使用して、ホウ酸トリエチルが酢酸ビニル部分と触媒されたエステル交換反応を受ける、可逆的である可能性を有する、過酸化物(フリーラジカル系)に代わる架橋経路の調査を実行した。
【0107】
加工前に、EVAを40℃でおよそ16時間オーブンで乾燥させ、その後ディセクター(dissector)で冷却した。
【0108】
従来のEVA(Braskem社市販等級HM728-公称VAc含有量28wt%及びIF(2.16kgで190℃)=6g/10分-をTable 1(表1)に表示した成分と混合チャンバー(Haake(商標)、ローラーローター)で、充填率80%、初期設定温度80℃で混合し、EVA及び触媒を最初に供給し混合した。完全に溶融/混合した後(約15分)、TEBを加えた。TEBを他の成分と約10分混合した後、設定温度を所望温度(145~155℃)に上げた。
【0109】
表示したTEB含有量は、およそ28wt% VAポリマーの利用可能なVA部位の1/3に対して1個のB-O結合を導くTEBの量を指す。触媒:TEBの化学量論を文献から抽出した(約2mol%)(GUOら、2019 - https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.macromol.9b02281)。Table 1(表1)中の配合をすべての試料(ホウ素3、4、及び5)に使用したが、異なる混合時間及びわずかに異なる設定温度で、それらを異なる熱サイクルに曝露した。
【0110】
【表1】
【0111】
溶融温度の150℃付近で、溶融物の粘度及び弾力性を上昇させる架橋反応を示す、混合チャンバーのトルクの明白で激しい増加が観察された。試料ホウ素3及び4は、ホウ素5と同一の配合及び供給順序を示したが、これらは、熱サイクルがそれほど激しくない他の反応プロトコルにかけられた。ホウ素4をトルクの増加が観察されない最も激しくない熱プロトコルにかけ、一方、ホウ素3をトルク及び温度の増加が著しい、より激しいがホウ素5より激しくない熱サイクルにかけた。加工結果の概要は、Table 2(表2)に見ることができる。それから、試料ホウ素3及び4を80℃で円筒状に積層したが、ホウ素5は90℃で積層した。レオメトリー用の供試体を作製するために、試料を積層部分から切断した。
【0112】
【表2】
【0113】
架橋を評価するための特徴付けを、平行板せん断振動レオメーターAnton Paar社モデルMCR 102(周波数掃引:直径25mm、間隙1~2.4mm、200℃、振幅1%、1~100rad/秒;時間掃引:直径25mm、間隙1~2.2mm、60分、200℃、周波数1.67Hz(約10,47rad/秒)、振幅7%;耐溶剤性(目視評価、室温で最長で168時間THFに曝露)、及び圧縮モード、温度掃引23℃~100℃、加熱速度 5℃/分、静荷重-8N、周波数1Hz、変形10ミクロンで、寸法4×7×3mm(幅×長さ×厚さ)の平行6面体の形状の切断供試体でのDMA 25Metravib社を用いた動的機械分析で、2連で評価して実行した。
【0114】
ホウ素5をニートEVA HM728と比較するために、応力緩和実験を振動せん断レオメーターAres G2で、平行板付属品、直径25mm、間隙約1~1.5mm、軸力10N、浸漬時間10分、変形1%、及び温度180、160、140、120℃で実行した。試料を180℃で20分間の圧縮成形を介して調製した。
【0115】
時間掃引及び周波数掃引の両方でニートEVAとホウ酸エステル硬化試料とを比較したとき、貯蔵弾性率、粘度の顕著な上昇及びtanδの減少に気づくことが可能であり、架橋反応の大きな拡大を実証している。トルク挙動及び熱サイクルの違いは、レオロジー特性に置き換えられ、周波数掃引については図1図2、及び図3に、時間掃引については図4図5図6、及び図7に示されるように、ホウ素3ではホウ素5と比較して粘度及び弾力性がより低く、ホウ素4では更に低かった。試料ホウ素4及び5は、時間掃引試験を、混合チャンバーにおけるより激しい熱サイクルの後で、「ゲル点」(すなわち、貯蔵弾性率>損失弾性率、tanδ<1)の後に開始した。一方でホウ素4は、試験を損失>貯蔵弾性率で開始したが、交差が、図7に示される実験の間に見られる(約28分)。
【0116】
応力緩和の結果は、図8及び図9に示される。挙動の違いは明らかであり、ホウ素5はすべての温度でニートEVA(上述のHM728)よりも緩和弾性率が全体的にはるかに高く、その場合、緩和は試験範囲のすべてにおいて(180~120℃)50秒以内に本質的に完全に起こる。一方、ホウ酸エステルで架橋するとき、顕著な緩和が160及び180℃で観察される(100秒以内にほとんど完全に緩和)が、120及び140℃では、完全な緩和は10000秒まで観察されなかった(しかし、50%超は8秒前に得られた)。正規化緩和弾性率を計算するための値を、データに対する指数関数的崩壊適合を介して得た。緩和プラトー弾性率は、t=0秒での適合に対応し、G0とも呼ばれる。
【0117】
更に、ホウ素5では、顕著に改善された耐溶剤性(試験に適切な形状にするために180℃で5分間圧縮成形し、更に硬化させたときも同じことが観察された)に気づくことが可能であり、図10Aに示されるように、室温で168時間THFに曝露させたときは膨張しただけであり、過酸化物-硬化EVA(図10B-1.5phrのDCP及び20phrの炭酸カルシウムを有するEVA、205℃で15分間オーブンで硬化した)で起こることと同様であった。一方、未架橋EVAは、48時間未満に可溶化する。
【0118】
ホウ素5では、DMA試験は、レオロジー及び耐溶剤性を裏付け、ニートEVAと比較して熱機械的挙動の変化を示しており、180℃及び50バールで更に5分又は30分硬化させると、図11に示されるように、約75℃の後のEVA溶融時の貯蔵弾性率の降下を抑制することができ、代わりに約100℃までゴム状プラトーを示した。これは、架橋ポリマーの典型的挙動であり、設定温度80℃、50rpmで混合チャンバーで分散後、175℃で15分の圧縮成形サイクルで0.8phrのジクミルペルオキシドで架橋されたEVAの図10に表示される例に従う。ゴム状プラトーに関して同じ種類の挙動が観察され、弾性率の低温(約30℃)値を維持しながら、過酸化物硬化試料と比較して、ゴム状プラトーにおける貯蔵弾性率が更に高かった。結果は、図11に示される。
【0119】
大気中酸素の存在下(オーブン)での架橋に関して、前述のティッシュペーパー試験における評価では、試料ホウ素3及び5は、表面粘着性を示さなかった。混合チャンバーで意図的に架橋しなかった試料4は、試料の実質的な溶融が観察されたため、オーブン硬化時に粘着性を実証し、加工が、オーブンでのみ行われるのに対して、流動時に行われるとき、架橋効率ははるかに高く、それは、ポリマーマトリックスに沿って触媒が一定に分布することに関連している可能性があることを示している。レオロジーデータは、架橋能力のこの違いを裏付けており、図4から図10に見られる、混合チャンバーで架橋された(部分的であっても)ホウ素3及び5の試料の周波数掃引、より重要なのは、時間掃引において、はるかに大きくなっている。結果は、図12に示される。
【0120】
(実施例2)
ホウ素を中心とした化学架橋-混合チャンバーでの硬化及び再成形後の加熱プレスでの硬化時間の影響
成形時間及び反応の可逆性の最初の評価を、図13に見られる新しい圧縮成形及びDMA試験を通じて行った。比較の目的で、試料を5分及び30分間圧縮成形した。それから、30分間成形した試料を切断し、再び成形し(180℃で5分間)、新たにDMAを測定した。同一の試料をもう一度切断し、180℃で更に30分間成形し、新たにDMA測定を実行したところ、再生可能性が示された。すべての試料で、架橋を示すゴム状プラトーが維持された。5分及び30分成形した試料は、非常に類似した熱機械的挙動を示し、30分間成形した試料は、切断し再成形したとき、5分間成形したときには初期降下を示し(これはプレス時にいくらか困難をもたらした)、圧縮成形30分では弾性率の上昇さえ示した。
【0121】
(実施例3)
ホウ素を中心とした化学架橋-再生操作の影響(圧縮成形)
圧縮成形を介した複数の再生操作を参照試料-ホウ素5で実行し、5サイクルの圧縮成形(180℃、5分、32バール、80℃まで冷却速度15℃/分)を実行し、試料を切断し、DMAを介して試験した(温度掃引25℃~120℃)。1回目と3回目の成形サイクルでは、顕著な変化は検出されなかった(図14及びtable 3(表3))。5回目の成形サイクルでは、高温(>105℃)でのゴム状プラトーはうまく形成されなかったが、弾性率は、100℃まで1回目及び3回目のサイクルと同様のレベルであり(Table 3(表3)を参照のこと)、ニートEVAと比較して、70℃を超える温度での貯蔵弾性率は、はるかに高い値であった。制御冷却は、結晶化/反応に関して試料調製をより均質にするはずであるため、これらの違いは、試料調製の問題(特に寸法の正確さ及び試料の変形レベル又は熱劣化(又は試料調製での最終的な問題)に対するその影響)に関連している可能性がある。
【0122】
【表3】
【0123】
(実施例4)
ホウ素を中心とした化学架橋-架橋系含有量、触媒の含有量及び種類の影響
可逆的に架橋された組成物の挙動を評価するために、触媒の含有量及び種類並びに架橋系含有量の変更を行った。組成物は、Table 4(表4)に表示される。
【0124】
【表4】
【0125】
モリブデン系触媒をDBTO(ジブチルスズオキシド-CAS 818-08-6-TIB Chemicals社によるTIB KAT 248、AODRAN DO BRASIL COMERCIO DE PRODUTOS QUIMICOS LTDA.社によって親切に提供された、スズ含有量>47t%)に置換した組成物、動的架橋系(TEB及び触媒)の含有量を2倍にした組成物、及びモリブデン系触媒の含有量を半分にした組成物を、前述の手順に従って配合した。DBTOでは異なる加工挙動が観察され、粘性消散時に低温に達したが、これは架橋時に溶融物が脆化したためである可能性がある。2×動的架橋系及び1/2触媒では、参照ホウ素5と比較してはるかに「標準的な」挙動、試料の良好な外観、及び同様の加工の特徴が観察された。加工結果(近似値)は、Table 5(表5)に表示される。
【0126】
【表5】
【0127】
動的架橋系、触媒の含有量、及び触媒の種類が異なる試料を、先に使用したのと同じ条件(180℃、32バール、5分、80℃まで冷却速度15℃/分)で圧縮成形し、DMAを介して試験した(圧縮モード、温度掃引25℃~135℃、既述のパラメーター。結果は、図15で得られる。DMA結果は、試料の中での類似性を示し、半量のMo系触媒を用いた試料ではすべての温度で弾性率が高く、参照ホウ素5と2×架橋系との間では非常に類似した挙動であり、DBTOではすべての温度で弾性率がわずかに低かった。すべての試料はうまく形成されたゴム状プラトーをほぼ120℃まで示したが、DBTO試料はそうではなく、測定を約100℃後に停止した。それでも、DBTOは、40℃超、100℃までの温度で、ニートEVAと比較して、架橋を示すはるかに高い貯蔵弾性率を示した。
【0128】
DBTOで観察された加工特徴は、他の架橋系と比較して、低い架橋密度及び/又はエステル交換反応を実行するためのDBTO触媒の低い効率を意味することが可能である。溶融脆化が反応時に観察されたため、反応温度は全体的により低く、トルク、したがって粘性散逸の減少を引き起こした。しかし、良い面は、試料の着色であり、試料は現在白であり、着色/染色されるのがはるかに容易になった。
【0129】
(実施例5)
以前に動的に架橋されたポリマーを用いた組成物の作製
前述の架橋組成物を用いたコンパウンドを、混合チャンバー(Haake(商標)、ローラーローター)、その後のロールミル積層を介して製造した。試験したコンパウンドの配合は、Table 6(表6)に表示される。
【0130】
既に架橋された組成物ホウ素5(ベースEVA HM728)をベースにしたコンパウンドを充填率70%で加工し、設定温度80℃、30rpm、10分間の最初の混合工程を実行した。予備混合物を40℃でロールミルで積層した後、混合チャンバーに再供給し、分散を改善するために設定温度160℃、30rpm、5分間で再加工した。その後、コンパウンドを40℃でロールミルで積層した。混合条件、供給順序、及び温度は、Table 7(表7)に表示される。
【0131】
【表6】
【0132】
【表7】
【0133】
DMAを介して、180℃で5分間成形した試料と比較して、約30分間成形した試料は、図16に見られるように、低温であっても弾性率が全体的に上昇し、その後90℃までゴム状プラトーが続いたことを示した。一方、180℃で約5分間成形した試料は、ニートEVAと比較したとき中間の挙動を示し、プラトーの始まりのみが見られた。架橋組成物(EVA+架橋系のみのとき)で見られたものと同様に、図17に示されるように、同じプロトコル(試料を切り刻み再度成形する、空冷しながら成形する)に従って、DMAを介した再試験が可能であり、弾性率は低下したが、ゴム状プラトーは完全に維持された。試料調製は、この試験の全体的な値に影響を及ぼした可能性があり、制御冷却が行われないため成形品の取り出しがより困難になる5分間成形した試料では特にそうである。
【0134】
架橋組成物ホウ素5に対して行われたものと同様に、コンパウンドを、同じ圧縮成形及び試験プロトコル(制御冷却- 15℃/分で)に従って、圧縮成形/切断サイクルを介した再生5サイクルについて試験した。結果は、図18及びTable 8(表8)に表示される。1回目の成形に関連している弾性率が上昇しながら、貯蔵弾性率に関して、50%未満の小さなばらつきに気づくことが可能である。1回目及び5回目の成形サイクルでは、うまく形成されたゴム状プラトーが約115℃まであったが、3回目の成形サイクルは、例えば、試料の厚さのばらつきに起因している可能性があるが、何らかの理由でそれを示さなかった。
【0135】
【表8】
【0136】
コンパウンドの押出し性/加工性を初めにASTM D1238:2013 方法A、パージ時間300秒に従って、CeastからのプラストメーターMelt Flowを使用して、160、180、及び200℃で、10kgで、30~60秒間評価した。目標は、ダイを通過する材料の流動性への温度の影響、及び押し出されたストランドの外観を理解することであった。各試料についてのメルトフローインデックス分析のパラメーター及び得られた試料の外観は、Table 9(表9)及び図19で得られる。160℃が最良の温度で、滑らかな表面が得られたことが分かる。特に200℃の場合、いくつかの気泡及び欠陥が観察された。
【0137】
【表9】
【0138】
コンパウンドの押出しを、Haake Polylab Systemの本体に連結された、運搬要素に基づいた1軸スクリュー設計の押出機Rheomex 203pで実施した。2種類のダイ、平型及びガーベイを使用した(ASTM D2230-17に従った)。後者は、平面、尖った角、及び薄い横断面を組み合わせてゴムコンパウンドの押出し性を決定し、一方で平型ダイは、好都合に引張下で試験ができるテープを作製する。図20及び図21に表示されるように、ガーベイダイでは、150~170℃の範囲の温度を試験し、スクリュー回転数20~40rpm、及び回転フィーダー速度400~600を評価した。全体的に、より低いスクリュー回転数(20rpm)、平均温度(155~165℃)、及びより高いフィーダー速度(600)が、最良のプロファイルをもたらした。
【0139】
その後、良好なテープを、厚さおよそ1mmの平型ダイを用いて、160~170℃の範囲の温度プロファイル、フィーダー速度600、スクリュー回転数10及び20rpmを使用して作製し、スクリュー回転数10及び20rpmの両方で性能は良好であったが、10rpmの方が外観が優れていた-図22。押し出されたテープを硬度(ショアA)及び引張を通じて評価した。硬度は、既述のパラメーターで評価したが、一方で引張試験は、ダイカットして、ASTM D412-16、タイプDに従って試験した。EMIC社万能試験機をクロスヘッド速度500±50mm/分で使用し、平均及び標準偏差を得るために5回の試験を実行した。結果は、Table 10(表10)に表示され、硬度に関して、非常に同程度の値である。更に、DMAを使用して、ガーベイダイ押出し試料から切断した試料を評価した-図23。コンパウンドの圧縮成形試料から観察されたものに非常に類似した、ゴム状プラトーがあるプロファイルを見ることができ、したがって、試料が実際に架橋されたことを確認できる。弾性率の値自体は低かったが、それは押し出された部品の一部をカミソリの刃で正確に切断したことに関連している可能性があり、試料内の厚さの変化がこれらの値に影響を及ぼした可能性がある。
【0140】
【表10】
【0141】
(実施例6)
クロスリンカーの種類及びポリマー組成物の影響
置換は分子量に比例し、およそ28wt%VAポリマーの1/3のVAに対する1つのSi-O結合の比率を維持する、ホウ酸エステル系クロスリンカーをシラン系クロスリンカー(TPOS-オルトケイ酸テトラプロピル、Dynasilan P、99.7wt%、Evonik Brasil Ltda.社によって親切に提供された)によって漸進的に置換した架橋組成物(充填剤、油等なし)。置換は、Mo系触媒を同じ含有量に維持しながら、クロスリンカーのそれぞれを系の1/3、2/3、及び3/3にすることによって実行した。更に、低VAのEVA(Braskem社等級TN2005、公称MFR 0.5g/10分及びVA%含有量13.5wt%)を、参照ホウ素5と同じ架橋系で、また、2/3ホウ酸エステル+1/3シランw/Mo系触媒の組合せで試験した。配合は、Table 11(表11)に表示される。加工パラメーターは、他の系に適用したものと同じであり、加工結果(近似値)は、Table 12(表12)に表示される。
【0142】
シラン架橋を有するコンパウンドの外観は、加工中に次第に悪化し、反応時に溶融物が脆化し(架橋の性質に起因している可能性がある)、より低い反応トルク及び温度をもたらし(2/3シラン+1/3ホウ酸エステル及びシランだけでは、粘性散逸による温度上昇はない)、また、溶融物の着色も変化した(黄色い染み)。ベースEVA TN2005を配合した試料の挙動は、HM728で観察されたものと非常に類似していた。
【0143】
【表11】
【0144】
【表12】
【0145】
混合架橋系(ホウ酸エステル及びシラン)及びマトリックスの特徴(低VA及び低MFR)を有する試料を、先に使用した条件(180℃、32バール、5分、80℃まで冷却速度15℃/分)で圧縮成形し、DMA(圧縮モード、既述のパラメーター)、及び回転式レオメーターにおける応力緩和(振動レオメーターAnton Paar社モデルMCR 102、直径25mmの平行板付属品、間隙1~2.2mm、一定温度(120及び180℃)、試験前の浸漬時間20分、一定変形1%、約10000秒の合計時間の間、点の対数捕捉-正規化緩和弾性率の場合、G0の選択された緩和弾性率は、変形が1%に達したとき(測定された応力が最大に達したので、この点の後で減少しはじめる)であり、それは、試料及び温度に応じて約0.05~0.2秒であった))及び沸騰キシレンに曝露時のゲル含有量(ASTM D2765-16に従って、材料を沸騰キシレンに12時間曝露し、その後一定質量まで真空オーブンで乾燥させ、初期質量に対する残留材料の比率をゲル不溶含有量として決定する-2連から報告された平均)を介して試験した。
【0146】
架橋系ホウ素5及び他の永久架橋系を用いて、有機過酸化物又は硫黄を使用して、EPDM(Keltan(登録商標)6950、Arlanxeo社- 125℃でのムーニー粘度ML(1+4)、65(ISO 289/ASTM D1646)、エチレン含有量46wt%(ASTM D3900)、ENB含有量9wt%(ASTM D6047)、製造業者のテクニカルデータシートによる)と混合して作製されたコンパウンド(充填剤及び油の添加)の例は、Table 13(表13)及び14(表14)に見ることができる。EPDMを、過酸化物及び硫黄の両方をベースにした特定の架橋系、硫黄供与体及び促進剤(Table 13(表13))と、50℃でのロールミルでの分散工程で混合し、それからそれを、最終配合物(Table 14(表14))を配合するために混合チャンバーに供給し、これも、実施例4のコンパウンドに関する供給順序プロトコル及びスクリュー回転数で2工程で行った。混合チャンバーでの第1の工程を、設定温度100~150℃で、30rpmで13~15分間実行した。その後、分散を改善するためにそれを混合チャンバーに再供給し、設定温度60~120℃で5~8分混合した。2回目の加工で、120℃よりも高い温度で、試料EPDMブレンド(過酸化物)のみでトルクの増加を観察することができ、これは、有機過酸化物によって架橋が促進されたためである可能性がある。その他に、試料「混合系(過酸化物)」及び「EPDMブレンド(硫黄)」では、実施例4でのコンパウンドで観察されたものと同様に加工が順調に進み、2回目の加工操作の後、シートを80℃で積層することができた。これは、硫黄はEPDM(EVAマトリックス中の分散相であるべき)を選択的に架橋するはずであり、試料「混合系(過酸化物)」は、「EPDMブレンド(過酸化物)」と比較して過酸化物の量がはるかに少ないことに起因している可能性がある。
【0147】
【表13】
【0148】
【表14】
【0149】
その後、これらの組成物を、80℃まで制御冷却(15℃/分)しながら、2つの異なる時間-5分及びt90+2分間、180℃で圧縮成形した。コンパウンド(t90)について指針硬化時間を決定するために、予備分散させたEPDM組成物をRPA(ラバープロセスアナライザ)、Alpha 2を通じて、ASTM D5289-17に従って180℃で15分間評価した。硫黄を用いた系では、t90=5.22分であり、最大トルクは約14dN.mであった。一方で、過酸化物では、t90=6.03分であり、最大トルクは約45dN.mであった。したがって、それぞれ約7'12"及び8'の成形時間を使用した。組成物ホウ素5(参照)及び過酸化物をベースにしたコンパウンドを含む試料を、5分間圧縮成形した。
【0150】
それから、圧縮成形試料をDMA(温度掃引20~135℃、既述の条件)、120及び180℃での応力緩和(既述の条件)について試験した。
【0151】
クロスリンカーとしてシランを使用した試料(充填剤及び油なし)では、DMAプロット(図24)は、参照試料(ホウ素5)と比較して曲線の形状に関して類似した挙動を示すが、貯蔵弾性率がより高く、2/3ホウ素+1/3シランを含む試料が最も高い弾性率を示した。予想された通り、TN2005のマトリックスを含む試料は、EVA HM728をベースにした試料と比較して、はるかに高い貯蔵弾性率、高い軟化点(結晶画分の軟化/溶融に関連している可能性のある、DMAの急激な減少)を示した。更に、Table 15(表15)に見られるように、1/3シラン+2/3ホウ酸エステルの使用は、配合物が70%を超えるゲル含有量を得るのに十分であり、シランだけを含む試料ではわずかに高かった。ホウ酸エステル架橋のみを含む試料は、沸騰キシレンでゲル含有量が0%となった。
【0152】
【表15】
【0153】
EPDM及び永久架橋系とブレンドしたすべてのコンパウンドは、ニートEVAと比較して改善された熱機械的安定性を示し(図25)、100℃までの温度で貯蔵がはるかに高く、ゴム状プラトーがうまく形成され(EPDMブレンド(硫黄)を除く)、ホウ素5をベースにしたコンパウンドよりも貯蔵弾性率が低く、これは、特にEPDMの添加のために予想された。
【0154】
予想された通り、図26及び図27に見られるように、試料の、充填剤及び油の有無の違いにもかかわらず、永久架橋剤を含むすべての試料の120及び180℃での全体的な緩和動力学の激しい減速に気づくことが可能であり、シランは、120℃でより大きな緩和時間をもたらし、EPDM及び過酸化物を含む系は、180℃でより大きな緩和時間をもたらした。これは、主に架橋反応の性質に起因している。
【0155】
(実施例7)
マトリックスとしてのエチレン-VA-VEOVAターポリマー
エチレン-酢酸ビニル及びネオデカン酸ビニル(VeoV(商標)10)を使用した組成物を、試料ホウ素5及びホウ素5をベースにしたコンパウンドの場合と同じ配合(ポリマー、クロスリンカー、及び触媒-TEB及びMo触媒-、充填剤、油等の含有量に関して)を使用して試験した。
【0156】
DV001Bと符号化されたターポリマー試料を、EVAコポリマーを製造するために通常稼働する高圧工業設備で製造した。DV001Bは、9.3wt.%のVeoV(商標)10及び24.1wt.%の酢酸ビニル(残りはエチレンである)を含むターポリマーであり、MFRは5.2g/10分である。このターポリマーの製造に至るまでの一般反応器条件は、Table 16(表16)に記載される。
【0157】
【表16】
【0158】
分岐ビニルエステル及び酢酸ビニルが組み込まれた証拠が、13C NMRスペクトル(TCE-D2、393.1K、125MHz)のカルボニル領域(170~180ppm)及びアルキル領域(0~50ppm)の両方で見られる。1 H NMRスペクトル(TCE-D2、393.2K、500MHz)は、酢酸ビニルと分岐ビニルエステル(4.7~5.2ppm)、及びエチレン(1.2~1.5ppm)、並びに分岐ビニルエステルモノマーの長アルキル鎖を示すアルキル領域における追加のピーク(0.5~1.5ppm)を示す。1 H NMR及び13C NMRスペクトルに見られたピークの相対強度を使用して、コポリマー/ターポリマー中の分岐ビニルエステル及び酢酸ビニルのモノマー組込みを計算する。
【0159】
DV001BをTable 17(表17)に表示された成分と混合チャンバー(Haake(商標)、ローラーローター)で、充填率80%、初期設定温度80℃、ローター回転数40rpmで混合し、DV001B及び触媒を最初に供給し混合した。完全に溶融/混合した後(約15分)、TEBを加えた。TEBを他の成分と約10分混合した後、設定温度を所望温度(145~155℃)に上げた-全体的に、ホウ素5と比較してほとんど同じプロトコル及び組成である。同量のTEBを使用し、DV001Bが24.1wt%のVAを含むことを考慮すると、ホウ素5(HM728を用いて作製)又はTN2005を用いて作製された試料と同じ(又は少なくとも同様の)架橋密度を予想できる。更に、VeoVA(商標)10はビニルエステルであるため、酢酸ビニルと比較して反応速度論が変化するという点では、立体障害が役割を果たすかもしれないが、交換反応に加わることも予想できる。反応温度は65.5分で211,8℃に達し、試料ホウ素5の加工中に起こったものと非常に類似した状態であった。しかし、最大トルクは、わずかに低かった(150N.m対ホウ素5で約190N.m)。
【0160】
【表17】
【0161】
前述の架橋組成物を用いたコンパウンドを、混合チャンバー(Haake(商標)、ローラーローター)、その後のロールミル積層を介して製造した。試験したコンパウンドの配合は、Table 18(表18)に表示される。
【0162】
コンパウンドを充填率70%で加工し、設定温度80℃、30rpm、約18分間の最初の混合工程を実行した。予備混合物を60℃でロールミルで積層した後、混合チャンバーに再供給し、分散を改善するために設定温度160℃、30rpm、約5分間で再加工した。その後、コンパウンドを60℃でロールミルで積層した(厚さ約2mm)。混合条件、供給順序、トルク、及び温度のグラフは、Table 19(表19)に表示される。全体的に、良好な加工性及びコンパウンドの外観が得られ、シートは容易に積層することができた。
【0163】
【表18】
【0164】
【表19】
【0165】
ニートポリマー(DV001B-ニート)、架橋組成物-充填剤及び油なし(DV001B-架橋)、並びにコンパウンド(DV001B-コンパウンド)を、硬度(ショアA)、DSC(ASTM D3418-21に基づく-1回目加熱25℃から200℃まで、冷却200℃から-90℃まで、及び2回目加熱-90℃から200℃まで、冷却速度及び加熱速度共に10℃/分))、SAOSレオメトリー(応力緩和-既述の条件、及び特性緩和時間(τ-Gまでの時間=G0/e)を0,3679に近い正規化G付近のデータ外挿法により計算した)、DMA(温度掃引- 25~140℃-既述の条件)、耐溶剤性(THF-室温)、及び実施例で先に報告したのと同じ条件に従い同じ装置を使用した引張試験(厚さ2mm、ASTM D412-16、タイプD、EMIC社万能試験機をクロスヘッド速度500±50mm/分で使用し、平均及び標準偏差を得るために5回の試験を実行した)を介して特徴付けた。結果は、Tables 20(表20)~22(表22)及び図28図31に表示される。
【0166】
加工条件及び結果、熱的特性(Tc、Tm2、及び融解エンタルピーの低下、並びにTgの上昇)、引張特性、硬度、並びに耐溶剤性は、ホウ素5に対して観察されたものと非常に同程度であることに気づくことが可能である。一方、DV001B架橋組成物は、より速い特性緩和時間(τ)を示し、機械的完全性を失うことなくより高温に耐えることができず、したがってDMA分析で適切なゴム状プラトーを形成することができなかった。これは、VeoVA(商標)10が大きいために、遅い反応速度論/立体障害に関連している可能性があり、架橋密度及び/又は緩和動力学に影響を及ぼす可能性がある。
【0167】
【表20】
【0168】
【表21】
【0169】
【表22】
【0170】
(実施例8)
エポキシ化学架橋
可逆的である可能性を有する架橋経路の調査を、エポキシ官能基を含むモデルポリマー(Lotader AX8900-エチレン、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸グリシジル(GMA)ターポリマー)を使用して、クロスリンカーとしてのジエチレングリコール(DEG)及び触媒としての1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)を使用して実行し、ジエチレングリコールは、エポキシド部分とエステル交換反応を受けた。
【0171】
Lotader AX8900(MA- 24wt%、GMA- 8wt%、6MFR)を、Table 23(表23)に開示される配合で、前述の成分と混合チャンバー(Haake(商標)、ローラーローター)で混合した。試料2及び3では、初期設定温度130℃を使用し、Lotaderを初めに供給し溶融させた。完全に溶融した後(約3分)、DEGを加えた。Lotader及びDEGを約5分混合後、TBDを系に加えた。エポキシ2では、せん断が系の温度を約152℃まで上昇させ、反応を更に10分間実行した。エポキシ3では、同じ供給プロトコル、混合時間、及び設定温度を使用したが、せん断による最終温度は約143℃であった。両試料の加工中にトルクの顕著な増加が観察された。
【0172】
代替的に、エポキシ3と同じ配合のエポキシ6と名付けた試料を製造したが、熱サイクルはそれほど激しくなく、設定温度120℃、及び50rpm、並びにより短い混合時間で、12分での最終温度127℃をもたらした。最後に、代替的硬化系(m-キシリレンジアミン)を触媒なしで使用した。この試料(エポキシ7)では、設定温度100℃及び40rpmで、Lotaderが完全に溶融した後(約4分)、m-キシリレンジアミンを供給しおよそ5分間混合し、温度は110℃まで上昇した。試料エポキシ6及び7では、混合チャンバーにおけるトルクは、混合中安定化後に変化せず、反応がないことを示した。
【0173】
【表23】
【0174】
架橋を評価するための特徴付けを、ASTM D5289-17に従って、Alpha Technologies社からのラバープロセスアナライザ(RPA)RPA 2000-アーク(arc)0,5°、180及び200℃、周波数100cpm、60分)、及び平行板振動レオメーターAnton Paar社モデルMCR 102(周波数掃引:直径25mm、間隙1~3.7mm-積層シートの厚さ、200℃、振幅7%、1~100rad/秒;時間掃引:直径25mm、間隙2.6mmまで-積層シートの厚さ、60分、200℃、周波数1,67Hz、振幅7%)、耐溶剤性実験(THF、室温、168時間まで;及びASTM D2765-16に従った沸騰キシレン、12時間、真空オーブン乾燥後の残存質量がゲル含有量を決定する)、並びに動的機械分析(DMA-圧縮モード、温度掃引- 30℃~100℃、加熱速度5℃/分、静荷重-8N、周波数1Hz、変形10ミクロン)で実行した。これらを「ニートEVA」と比較した。耐溶剤性では、異なる熱サイクル後の試料を評価した(注:積層は低温(50℃)で実行した)。
【0175】
RPAは、すべての試料において架橋を実証している。エポキシ2及び3の架橋(200℃、図32に見られる)は、トルクの増加(したがって、架橋密度)がクロスリンカーの量に比例した(エポキシ3>エポキシ2)ことを実証している。
【0176】
更に、図33で示されるエポキシ6は、混合操作中トルクの増加がない「混合のみ」の材料であるにもかかわらず、図32のエポキシ2及び3と比較したとき、RPAを通じて評価すると、反応速度論は同じように見え、180℃及び200℃の両方で同様のデルタトルクであった。最後に、混合チャンバー中で基本的に未反応であった、ジアミンを含み触媒を含まない架橋系-エポキシ7-は、図34に見られるように、エポキシ6と比較したとき、更に速い架橋速度論及び強度(デルタトルクによる)を示した。
【0177】
図36図41は、平行板せん断レオメトリーにおける時間掃引及び周波数掃引についてのすべての試験試料の比較を実証している。時間掃引(図35図38に示される)は、試料エポキシ2、3、及び6が、架橋されていないポリマーよりも(ニートEVAと比較して)はるかに高い粘度、貯蔵弾性率、及び弾力性レベルで開始することを実証している。更に、架橋試料すべては、ゲル点(G'>G"、又はtanδ<1)後に試験を開始する。おそらく、以前に架橋されていない試料にこれが起こったのは、試験前に反応を開始させる可能性がある、高温での装置における浸漬時間であった。未反応の試料は、弾性率のより激しい変化を示したが、一方で、RPAを通じて見られるように最も激しい硬化能力を有するエポキシ7は、弾性率、粘度、及び弾力性の最も高い上昇(すなわち、tanδの減少)も示した。
【0178】
同様の挙動が、図39図41に示される周波数掃引で観察された。すべての試料で、全周波数範囲で貯蔵弾性率及び複素粘度の強い上昇(及びtanδの減少)が検出され、分子量の増加(架橋)を示した。おそらく、先の熱サイクル-及び架橋系の効率-のために、観察された傾向は、エポキシ7(ジアミン)>エポキシ2>エポキシ3>エポキシ2でより高い上昇を示す。
【0179】
沸騰キシレン曝露後のゲル含有量の結果は、Table 24(表24)に表示される。同様の熱サイクルでクロスリンカーの含有量が高いほど(例えば、エポキシ2対エポキシ3及び6)、一般にゲル含有量が高くなり、プレスでの熱サイクルが厳しいほど、またゲル含有量が高くなった(試料名称-圧縮成形の時間及び温度を参照のこと)。更に、レオロジーを通じて見て最も効率的な架橋系-エポキシ7-は、最も高いゲル含有量を示した。試料で見られたゲル含有量はすべて、典型的過酸化物架橋EVA(測定値- 95%)と同程度(高くない場合)である。同様に、すべての試料のTHF耐性(室温)は、先の実施例で見られたように、168時間の時間枠で膨張のみをもたらした。
【0180】
【表24】
【0181】
図42及び図43に示されるDMA結果は、過酸化物硬化で見られるものと非常に類似の挙動を示し(図11)、短い(それぞれ、2及び5)成形時間及び長い(30分)成形時間(200℃で)の両方で、試料(エポキシ2及び6)について100℃(装置が軟化前の変形を確実に測定することができる最高温度)までゴム状プラトーが明確に定められた。プラトー弾性率に関する傾向は、ゲル含有量と同じ傾向に従う(ゲル含有量が高いほど、プラトー弾性率は高くなる)。
【0182】
更に、試料エポキシ2の応力緩和実験を振動せん断レオメーターAres G2で、平行板付属品、直径25mm、間隙1.3~1.9mm、軸力10N、浸漬時間10分、変形1%、並びに温度180、200、及び220℃で実行した。試料を180℃で2~3分間の圧縮成形を介して調製した。結果は、図44及び図45に示される。すべての温度で、試験の時間枠(10000秒)では完全な緩和は観察されなかった。正規化緩和弾性率を計算するための値を、データに対する指数関数的崩壊適合を介して得た。緩和弾性率は、t=0秒での適合に対応し、G0とも呼ばれる。180、200、及び220℃で、正規化緩和弾性率70~80%に達し、試験温度の緩和の明確な区別はなく、同様の減少速度論であった。
【0183】
大気中酸素の存在下(オーブン)での架橋に関して、前述のティッシュペーパー試験における評価では、図46A及び図46Bに示されるように、試料エポキシ2、3、6及び7は、表面粘着性を示さなかった。更に、オーブン架橋後に溶融は観察されず、効率的な架橋度を示した。DMA及びレオロジーの結果は、この結果を裏付けている。ホウ素の例とは異なり、エポキシ試料では、混合チャンバーにおいて架橋した試料と架橋していない試料とを比較して、硬化能力/強度の違いはそれほど顕著ではなかった。
【0184】
ほんのわずかの例示的な実施形態を上記で詳細に記載したが、当業者であれば、本発明から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの改変が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、すべてのそのような改変は、以下の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲では、ミーンズプラスファンクション節は、列挙された機能を実行するものとして、本明細書に記載の構造、及び構造的均等物だけでなく、均等な構造も網羅とすることが意図される。したがって、釘とネジは、釘が木製部品を一緒に固定するために円柱状の表面を用いるのに対して、ネジは、らせん状の表面を用いるという点で、構造的均等物ではないかもしれないが、木製部品を留める環境では、釘とネジは均等な構造である可能性がある。特許請求の範囲が関連する機能と共に「~のための手段」という語を明示的に使用しているものを除いて、本明細書のいずれの請求項のいかなる限定についても米国特許法第112条(f)を適用しないことは、出願人の明確な意図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
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図44
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図46A
図46B
【国際調査報告】