(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】血小板由来セクレトームを得る方法、および血小板由来セクレトームの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20240829BHJP
A61K 35/19 20150101ALI20240829BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240829BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240829BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240829BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240829BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240829BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240829BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240829BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240829BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240829BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240829BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N5/078
A61K35/19
A61K9/51
A61P9/00
A61P13/12
A61P35/02
A61P25/00
A61P3/10
A61P29/00
A61P7/06
A61P17/00
A61P5/14
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P9/10
A61P7/02
A61P25/28
A61P1/04
A61P11/06
A61P21/00
A61P25/16
A61P1/16
G01N33/68
G01N33/49 X
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024513879
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 IB2022057936
(87)【国際公開番号】W WO2023026213
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524068735
【氏名又は名称】フンダシオン パラ ラ インベスティガシオン エ イノバシオン ビオサニタリア デル プリンシパド デ アストゥリアス(フィンバ)
(71)【出願人】
【識別番号】524073832
【氏名又は名称】ウニベルシダー デ オビエド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス グティエレス,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】アセベス ウエルタ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045BB05
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4B065AA93X
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4C087BB38
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4C087ZA55
4C087ZA59
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4C087ZA81
4C087ZA89
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4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZC06
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、血小板からセクレトームを得るためのユニークな方法、ならびに再生医療、細胞治療を含む疾患の治療、およびin vitro細胞培養において使用するセクレトームに関する。本方法は、血小板顆粒カーゴに富み、成長因子に富み、他の血小板由来分子および血漿を除去した、普遍的な使用のための、血小板由来のバイオ生産物を得ることを目的として開発された。本方法は、処理における血小板阻害剤または温度ショックの使用を避け、血小板生物学的供給源の完全性を保証する。さらに、この生成物の潜在的な処理により、さらなる臨床応用が可能になり、保存の制限も解決されるであろう。本方法、ならびに健康および疾患におけるセクレトームの分子レベルでの特徴は、疾患の診断および予後のためのバイオマーカーの同定に貢献するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板由来セクレトームを製造するためのユニークなin vitro方法であって、前記血小板由来セクレトームの成分は、使用した血小板活性化剤またはアゴニストにより活性化されたシグナル伝達経路にのみ依存し、
前記方法は以下の工程を含み:
a)血漿、および、血小板以外の他の血液/組織成分を含まない非活性化血小板懸濁液を、血小板を含む生物学的供給源から、または多血小板試料から、前記血小板を単離し、緩衝液に再懸濁することにより、得る工程;
b)工程a)で得られた前記血小板懸濁液を、血小板アゴニストとともに一定に振盪させながらインキュベートすることにより、血小板脱顆粒を誘導し、血小板および血小板セクレトームの懸濁液を得る工程;および
c)工程b)で得られた血小板および血小板セクレトームの懸濁液を遠心分離によって血小板および他の細胞残屑を除去することにより、血小板由来セクレトームを回収する工程、
工程b)は35℃~40℃で行い、他の全ての工程は室温で行う、方法。
【請求項2】
血小板凝集阻害剤の使用を想定していない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血小板の活性化を停止するために、外的な物理的または化学的である剤、機構、処理、または技術を用いない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3に記載の方法によって得られた血小板セクレトームの組成物であって、血小板顆粒由来因子が豊富であり、これらの因子の割合は、血小板を刺激するために使用したアゴニストによって異なる、組成物。
【請求項5】
請求項1~3に記載の方法によって得られた血小板セクレトームの組成物であって、血小板顆粒由来の因子の濃度が、前記供給源材料中の血小板の当量を考慮して、同じ技術で測定した、閉鎖系を使用して製造されたPRPにおける同じ因子の濃度に比べて少なくとも2倍以上である、組成物。
【請求項6】
血小板の活性化を誘導するために用いたアゴニストにより、繊維芽細胞の分裂促進活性が異なる、請求項4に記載の血小板セクレトームの組成物。
【請求項7】
請求項1~3に記載の方法により得られた血小板セクレトームの組成物であって、前記供給源材料中の血小板の当量を考慮して、閉鎖系を使用して製造されたPRPと比較して劣らない線維芽細胞分裂促進能を示す、組成物。
【請求項8】
再生医療において、普遍的または同種の治療として使用するための、請求項1~3に記載の方法により得られた血小板セクレトームの組成物。
【請求項9】
前記血小板セクレトームが、標的治療目的を有する再生医療において使用するためにナノカプセル化されている、請求項1~3に記載の方法により得られた血小板セクレトームの組成物。
【請求項10】
前記血小板セクレトームが、長期保存および貯蔵のために処理された、再生医療において使用するための直接的な利用可能性を有する血小板セクレトームである、請求項1~3に記載の方法により得られた血小板セクレトームの組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、血小板セクレトームを得るためのユニークな方法、ならびに、再生医療(治療的または美容的な指標を有する)、疾患の治療と潜在的診断、および細胞療法を含むin vitro細胞培養における用途のための、血小板セクレトームの特徴付けおよび特有の特性に関する。したがって、本発明は、医学、医学的組成物および疾患の診断の分野に属する。
【0002】
〔背景技術〕
血小板は、身体の止血を担う無核の血液成分である。近年、血小板は止血以外にも、免疫調節、発生におけるリンパ管と血管の分離、血管新生、腫瘍転移など、多くの他の生理的および病理的過程に関与していることが明らかになり、新たな機能が血小板に起因すると考えられつつある。生理的条件下では、内皮の損傷に伴うコラーゲンの露出とフォンヴィレブランド(von Willebrand)因子の放出は、血小板によって認識され、活性化されて損傷部位に接着する。この活性化は、血小板の凝集および顆粒状カーゴの放出を促進する形状コンフォメーション変化およびインテグリン活性化を導くシグナル伝達経路を誘導する。血小板セクレトーム(血小板放出物(platelet releasate)とも呼ばれる)には、多数の成長因子、ケモカイン、サイトカイン、炎症性メディエーターが含まれており、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)、血管内皮成長因子(VEGF)、および塩基性線維芽細胞成長因子(FGF)などが挙げられるが一例にすぎず、細胞の移動、分化、増殖、新生血管形成を含む、創傷治癒および組織再生過程の重要な段階に関与している。
【0003】
組織再生および創傷治癒における血小板の役割、および血小板が成長因子の天然のリザーバーであるという知識は、再生医療における補助治療法として、多血小板血漿(PRP)または血小板溶解物(PL)などの、血小板ベースのバイオ生産物の開発をもたらした。血小板をベースとしたバイオ生産物の治療的使用は、再生医療における比較的新しいアプローチであり、歯科および顎顔面外科、眼科、スポーツ医学、獣医学ならびに美容医学など、幅広い医療分野において臨床的利益をもたらしている。しかしながら、この分野の文献は、調製法のコンセンサス不足、および日常臨床で使用される生産物の説明(細胞レベルおよび分子レベル)のコンセンサス不足を反映している。PRPは、血液を分画遠心分離した後に得られる血漿画分と定義され、超生理学的濃度の血小板を含む。PRPは新鮮な状態(したがって、生きている血小板を含む)、または活性化もしくは凍結/融解後(血小板のカーゴを放出させるため)に適用されることがあるが、文献上では命名法を区別していない。一方、PLは、異なる方法論(機械的、化学的)を用いて血小板を溶解した生産物を指す。しかしながら、多くの場合、血小板溶解を誘導する前の一次材料が血漿を含むかまたは含まないかについての特定がない。さらに、PRP/PLsの使用は、一般的に自己血小板の使用が示されており、同種または異種(同種(allogenic))血小板由来のバイオ生産物の潜在的応用を検証するための研究が行われているが、(ドナー非依存性および安全性の両方を提供する)普遍的な生産物の生産に対する需要が高まっている。
【0004】
PRPまたはPLの調製、処理、保存および適用方法に関する上記のコンセンサス不足のために、血小板をベースとする治療法の治療成果は、依然として非常に議論の標的となっており、その結果、血小板数、白血球の有無、ならびにそれに続く成長因子濃度および生理活性分子の活性の点でPRPの組成が非常に変動することによっても特徴付けを欠いている。さらに、PRPおよびPLは、実際の生理活性分子(すなわち、血小板顆粒に含まれるもの)の他に、血漿と血小板タンパク質との混合物を含んでおり、これは生産物の細画分を表している。さらに、特定の病態が血小板の質および反応性に影響を及ぼす可能性があることも報告されており、自己血小板生産物の使用は必ずしも最も適する治療源とは限らず、基礎となる病態のために期待される結果が不確実性をもたらす。したがって、治療の臨床的有益性を改善するために、普遍的に使用でき、治療される病態に対してより特異的または標的化された、新規の血小板由来生産物の開発に対する臨床的需要が高まっている。
【0005】
活性がある生体分子に富む血小板由来のバイオ生産物を生成するためには、血漿から血小板を単離して洗浄し、浸透圧溶液に最適な濃度で再懸濁することが合理的である。血小板受容体アゴニストで血小板を活性化すると、活性型脱顆粒が誘発され、上清には血小板顆粒カーゴ分子に富む血小板セクレトームが残る。
【0006】
最近の研究では、異なる目的で血小板セクレトームを得るために上記アプローチが用いられている。米国特許文献US5599558には、in vitroで血小板セクレトーム能力を研究する方法が開示されているが、その方法論は特定されていない(1mL中109の血小板から得られたセクレトームを使用していることを除いて)。同様に、文献WO2018091713には、血小板セクレトームを含む成長因子組成物を調製する方法および、再生医療における上記組成物の使用が記載されている。
【0007】
文献WO2013113024、文献EP2389942、文献EP2757879に記載されたPL、または文献US8734854に記載された全血から得られた成長因子溶液などの、血小板由来のバイオ生産物の製造方法を開示する文書が存在するにもかかわらず、これらは現在の方法で得られた生産物とは異なる。
【0008】
したがって、血漿および他の血小板成分を含まない、血小板の活性化からのみ得られる血小板放出物を得るための代替方法が必要とされている。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明は、特定のアゴニストによる血小板の活性化によって生じる、血小板由来セクレトームを得るためのユニークな方法論を述べる。本発明者らは、血小板セクレトームの組成が、血小板アゴニストとの接触を通してではなく、血小板セクレトームを得る過程における血小板の物理的性質の変化による血小板の活性化によって変化し得ることに注目した。そこで、本発明者らは、本明細書で開示する、血小板由来セクレトームを得る方法を開発した。ここで、多血小板試料は、血小板アゴニストの作用によってのみ活性化され、セクレトームを得る過程における血小板の物理的性質の変化によっては活性化されない。さらに、本発明者らは、セクレトーム組成が、血小板脱顆粒を誘導するために使用される血小板アゴニストに依存することを発見した。
【0010】
〔本発明の方法〕
本発明の第一の態様は、血小板由来セクレトームを産生するためのin vitro方法であり、以降、本発明の方法は、以下の工程を含む:
a)緩衝液において、血小板を含む生物学的供給源から、または多血小板試料から、血小板を単離し、緩衝液に再懸濁することにより、非活性化血小板懸濁液を得る工程;
b)工程a)で得られた前記血小板懸濁液を、血小板アゴニストとともに一定に振盪させながらインキュベートすることにより、血小板脱顆粒を誘導し、血小板および血小板セクレトームの懸濁液を得る工程;および
c)工程b)で得られた前記血小板および血小板セクレトームの懸濁液を遠心分離によって血小板および他の細胞残屑を除去することにより、血小板由来セクレトームを回収する工程、
工程b)は35℃~40℃で行い、他の工程はすべて室温で行う。
【0011】
本明細書で使用される、「血小板由来セクレトーム」という表現は、血小板が「アゴニスト」と呼ばれる活性化剤によって活性化されるときに、「脱顆粒」とも呼ばれる過程である分泌される血小板の顆粒状内容物を指す。本明細書で使用される用語「血小板」は、血液の血小板を指す。血小板は、脊椎動物の血液中に存在し、血液凝固を助ける、血液中の円盤状の細胞成分である。
【0012】
本発明の方法の第1工程は、非活性化血小板懸濁液を得ることを含む。このように、本発明の方法の工程a)の「血小板を含む生物学的供給源から、または多血小板試料から、血小板を単離し、緩衝液に再懸濁することにより、非活性化血小板懸濁液を得る」という表現は、遠心分離および/または濾過によって、血小板または多血小板試料を含む、生物学的供給源の構成部分を分離する処理を指し、画分の形成を導き、当該画分の1つはほとんど血小板を含み、したがって、血小板画分を単離し、この血小板画分を適切な緩衝液に再懸濁し、本発明の方法の残りの工程を実施する。本発明の方法の工程a)により、望まない可溶性成分および/または汚染物質を除去することができ、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の非活性化血小板を含む血小板画分が得られる。したがって、好ましい実施形態において、本発明の方法の工程a)の単離処理は、遠心分離および/または濾過によって達成される。より好ましい実施形態において、遠心分離は、3分間~10分間、3500rpm~4500rpmの間で実施される。さらに好ましい実施形態において、遠心分離は、4000rpmで5分間行われる。別の好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)の単離処理は、白血球減少フィルターを用いた濾過によって実施される。本明細書で使用される、「白血球減少フィルター」という表現は、合成マイクロファイバー材料が不織ウェブとして調製された複合フィルターを指す。フィルター材料は、血液から白血球を除去する性能を向上させるために、表面張力または電荷を変化させるように表面改質されていてもよい。
【0013】
一旦単離されると、血小板は適切な緩衝液に再懸濁される。このような緩衝液は本発明の分野で広く知られており、この分野の専門家であれば、このような緩衝液およびその使用方法を知っているであろう。好ましい実施形態において、本発明の方法の工程a)の再懸濁処理は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、HEPESグルコース緩衝液、HEPES緩衝タイロード液からなるリストから選択される緩衝液を用いて実施される。さらに好ましい実施形態において、血小板画分は、1mLあたり100~500×106の血小板濃度に再懸濁される。さらに好ましい実施形態において、血小板画分は、1mLあたり200×106の血小板濃度に再懸濁される。
【0014】
本明細書で使用される用語「多血小板試料」は、血漿または緩衝液などの担体中に超生理学的濃度の血小板を含む試料を指す。多血小板試料の例は、多血小板血漿、血小板濃縮物、単離された血小板およびex vivoで産生された血小板である。本発明の方法の好ましい実施形態において、多血小板試料は、多血小板血漿(PRP)、血小板濃縮物、単離された血小板およびex vivoで産生された血小板からなるリストから選択される。
【0015】
「血小板を含む生物学的供給源」は、抗凝固性の全血の大容量を代表すると考えられる部分、画分、部分、または小容量(sub-volume)を指す。本発明の方法の好ましい実施形態では、血小板を含む生物学的供給源は、抗凝固性の全血である。本明細書で使用される、「抗凝固性の全血」という表現は、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または凝固を防止する他の物質を用いて生体から採取された血液そのものを指し、前記血液は、血清および血漿などの、その構成部分または成分に分離されていない。抗凝固性の全血は、抗凝固性の採血管での静脈もしくは動脈の瀉血、健康なドナーからの完全もしくは中断献血(interrupted blood donation)、臍帯血試料、または骨髄などの血小板が単離され得る他の組織もしくは試料によって得ることができる。好ましい実施形態では、抗凝固性の全血は、静脈血、動脈血、または臍帯血である。別の好ましい実施形態では、全血は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはあらゆる性別および年齢のヒト由来のものである。
【0016】
本明細書で使用される用語「試料」は、サンプリングされる材料/対象物/量のより大きな体積を代表すると考えられる部分、画分、部分、または部分体積を指す。
【0017】
本明細書で使用される用語「多血小板血漿」または「PRP」は、血漿中の血小板の超生理学的濃度を指す。例えば、血小板濃度は、血液中の通常の濃度の5倍、10倍、100倍またはそれ以上であってもよい。PRPは、血小板に加えて、他の微量の血液成分を含んでいてもよい。血小板以外の成分は、血漿に加えて、白血球、赤血球および/またはドナーの血液中に存在する他の成分であってもよい。本明細書で使用される用語「血漿」は、細胞成分が懸濁している血液の液体部分を指す。血漿は全血の約55%を占め、アルブミン、グロブリンおよびフィブリノーゲンなどのタンパク質、水、イオンならびに栄養素を含む。
【0018】
本明細書で使用される用語「血小板濃縮物」は、プールされた全血献血または血小板瀉血のいずれか由来の、血小板を含む輸血製剤を包含することを意図している。
【0019】
本明細書で使用される用語「単離された血小板」は、天然の生物学的担体(例えば、血漿)から単離され、人工担体(例えば、緩衝液)に含まれる血小板を指す。
【0020】
本明細書で使用される用語「ex vivoで産生された血小板」は、造血幹細胞、胚性幹細胞、および人工多能性幹細胞、または血小板細胞への分化を誘導するのに適した他の幹細胞培養物を含む、様々な幹由来から生成された血小板を指す。ex vivoで血小板を産生する方法の例および方法は、文献(Buduo, C. A. et al.,2016,Thrombosis and Haemostasis,115(02),250-256;Di Buduo C. A.,Blood 2015,125:2254-2264;Nakagawa Y. et al.,Exp Haematol 2013;41:742-748;Schlinker A. et al.,Biotechnol Bioeng 2015;112:788-800)で入手可能である。
【0021】
目下記載されているように、多血小板試料は、動物などの生物学的供給源、ならびに細胞培養物、特に幹細胞培養物または人工多能性幹(iPS)細胞培養物などのin vitro/ex vivo供給源の両方から得ることができる。したがって、本発明の方法の好ましい実施形態において、多血小板試料は動物由来、好ましくは哺乳動物由来、より好ましくはあらゆる年齢、性別または人種のヒト由来のものである。本発明の方法の別の好ましい実施形態において、多血小板試料は、細胞培養物由来、好ましくは、幹細胞培養物由来、より好ましくは、造血幹細胞培養物、胚性幹細胞培養物およびiPS細胞培養物由来のものである。
【0022】
上述のように、あり得る多血小板試料の1つは、最も一般的な形態では、全血から得られるPRPである。そのようなものとして、好ましい実施形態において、本発明の方法は、強制的な減速を伴わない分画遠心分離によって、血小板を含む生物学的供給源から多血小板試料を得る任意の工程をさらに含み、ここで、この任意の工程は、工程a)の前に実施される。「強制的な減速を伴わない分画遠心分離によって、血小板を含む生物学的供給源から多血小板試料を得る」という表現は、生物学的供給源に含まれる血小板を分離または濃縮する過程を指す。抗凝固性の血液試料からPRPを得るためには、血液試料の成分を分離しなければならない。このような分離は「強制的な減速を伴わない分画遠心分離によって」行われる。血液分画とも呼ばれる、抗凝固性の血液試料の遠心分離では、試料に物理的な力が加わり、血液の成分が、その密度および質量に応じて異なる速度で沈降し、異なる組成を有する、別個の層または分画が形成される。このような分画の1つがPRP分画であり、このPRP分画は回収され、さらなる処理のために保持し得る。好ましい実施形態では、遠心分離は100グラムフォース~500グラムフォースの間で10分間~20分間行われる。さらに好ましい実施形態では、遠心分離は193グラムフォースで15分間行われる。積極的な遠心分離を終えると、試料は停止しなければならない。本明細書で使用される、「強制減速なし」という表現は、遠心分離機およびその機構内部の重力および摩擦力の影響のみを使用して、遠心分離された試料が完全に停止するまで減速する過程を指す。本発明者らは、強制的な減速が血小板の活性化を導くことができることを見出したので、このような過程は本発明の方法にとって重要である。さらに、本発明の方法は、アピラーゼおよびプロスタグランジンE2(PGE2)などの血小板凝集阻害剤の使用を想定していない。
【0023】
本明細書に記載されるように、多血小板試料は、PRPもしくは血小板濃縮物が得られる全血、または血小板細胞前駆体のin vitro培養物などの、異なる資源材料から得ることができる。前記資源材料は、前記資源材料中に存在し得る疾患原因物質を減少または除去するために、病原体減少技術で予め処理され得る。本発明の方法の好ましい実施形態において、多血小板試料は、病原体低減技術で処理された試料から得られる。本明細書で使用される用語「病原体低減技術」は、試料資源材料にリボフラビンを添加し、リボフラビンに加えて資源材料に紫外線を照射することにより、起こり得る疾患を引き起こす病原体を低減/除去する方法を指す。
【0024】
一旦得られた非活性化血小板懸濁液は、顆粒の内容物を懸濁緩衝液中に放出するために刺激されるか、または活性化されなければならない。本発明の方法の工程b)の「工程a)で得られた前記血小板懸濁液を、血小板アゴニストとともに一定に振盪させながらインキュベートすることにより、血小板脱顆粒を誘導し、血小板および血小板セクレトームの懸濁液を得る」という表現は、上記刺激または活性化を意味し、これにより血小板活性化剤またはアゴニストが血小板に接触することにより、血小板によって顆粒の内容物の懸濁液中への放出が導かれ、この処理は脱顆粒とも呼ばれ、「血小板および血小板セクレトームの懸濁液」を生じ、この表現は本明細書で使用される場合、懸濁媒体中に分散した、血小板および血小板顆粒の内容物である血小板セクレトームの両方を含む懸濁液を指す。溶液中のすべての血小板の均一で強力な活性化を保証するために、活性化は、液体または試料の温度制御および混合を可能にする装置上で、一定の振盪または混合運動で行われる。好ましい実施形態では、本発明の方法の工程b)は、35℃~40℃で3分間~10分間、500rpm~1500rpm(混合速度または回転)の一定振盪下、好ましくは37℃で5分間、1000rpmの一定振盪下で行われる。
【0025】
本明細書で使用される用語「血小板活性化剤」および「血小板アゴニスト」は、血小板を活性化することができ、それによって血小板の放出反応または脱顆粒、およびそれらの凝集を開始することができる化合物を指す。本発明の方法の好ましい実施形態において、工程b)において使用される血小板活性化剤は、以下からなるリストから選択される:トロンビン受容体活性化ペプチド6(TRAP6)、コンバルキシン、コラーゲン、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)、アグレチンA、アデノシン二リン酸(ADP)、エピネフリン、アラキドン酸およびトロンビン。
【0026】
本発明の方法のさらなる実施形態において、血小板活性化剤は標識と結合している。このような標識は、セクレトームから活性化剤を事後的に抽出するため、またはセクレトーム中の活性化剤を事後的に検出するために使用することができる。
【0027】
本明細書で使用される用語「標識」は、上記検出に適した方法によって検出可能なシグナルを生成することができる分子を指す。標識の検出方法としては、蛍光顕微鏡、光顕微鏡、共焦点顕微鏡および電子顕微鏡、磁気共鳴および分光法、蛍光透視、コンピュータ断層撮影および陽電子放射断層撮影、酵素結合免疫吸着アッセイ、蛍光検出サイズ排除クロマトグラフィー、ラテラルフローアッセイ、ラジオ免疫学的アッセイ、放射性標識、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学、免疫蛍光、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、蛍光活性化セルソーティング、免疫沈降、および酵素型免疫スポットなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な標識としては、フルオレセイン、ローダミン、エオシンなどの蛍光色素、放射性同位元素、金、ガドリニウムなどのランタノイド、常磁性鉄、フッ素-18などのポジトロン放出核種、またはヘキサ-ヒスチジンタグペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。加えて、標識は二機能性または多機能性であってもよく、列挙した方法のうちの一つ以上によって検出可能であってもよい。標識は、例えば、発色性化合物、蛍光発生化合物、磁性化合物、高電子密度(electrodense)化合物、放射性化合物および/または化学発光性化合物であってもよい。本発明の方法の好ましい実施形態において、標識は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、アロフォシアニン(APC)またはフローサイトメトリーに関連する他の蛍光色素、ヘキサ-ヒスチジンタグペプチド、ビオチン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、金ビーズおよび常磁性鉄からなるリストから選択される。
【0028】
このような標識は、安定で機能的な結合を形成するために活性化剤に共役または結合される。このような「共役」または「結合」は、活性化剤のドメインと、前の段落で述べた技術のいずれか1つ以上によって検出可能なシグナルを生成する標識とを機能的に結合させるために、当該技術分野で知られている任意の方法によって行うことができ、このようなドメインを連結する方法としては、限定されるものではないが、中間ドメインを伴うまたは伴わない組換え融合、タンパク質媒介融合、非共有結合および共有結合、例えば、抗体-ジスルフィド結合、水素結合、静電結合およびコンフォメーション結合、例えば、ビオチン-アビジン結合などが挙げられる。標識との結合は、化学的手段または組換え手段によって起こり得る。化学的手段とは、2つの分子間に共有結合が形成され、1つの分子を形成するように、活性化剤と標識とが反応することを指す。
【0029】
本発明の方法のさらなる実施形態において、血小板活性化剤は表面に付着される。本明細書で使用される用語「表面」は、血小板活性化剤が付着され得、そして当該剤の活性化機能または血小板それ自体といかなる形でも干渉しない任意の表面、材料または化合物を指す。前記表面の例としては、限定するものではないが、アフィニティーカラム、ナノ粒子および活性化剤で共有結合的に修飾された脂質成分が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「アフィニティーカラム」は、生体分子を分離または反応させるための特殊な化学的性質を有するビーズを含む、分子分画装置を指す。本発明が言及するアフィニティーカラムは、カラムを通過する際に血小板を活性化するように血小板アゴニストがビーズに結合することを可能にする。
【0031】
用語「ナノ粒子」は、本明細書で使用される場合、ナノスケールの寸法を有する粒子を指し、いかなる特定の形状の制約を表すものではない。特に、用語「ナノ粒子」は、ナノスフェア、ナノチューブ、ナノボックス、ナノクラスター、ナノロッドなどを含む。いくつかの実施形態において、本発明にしたがって提供されるナノ粒子および/またはナノ粒子の核は、一般に多面体または球状の幾何学的形状を有する。血小板活性化剤を表面に結合させることにより、血小板の活性化が可能になるとともに、血小板および血小板由来セクレトームの両方を含む懸濁液からの当該剤の除去が容易になる。
【0032】
脂質成分の例としては、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-1000](DSPE-mPEG1000)、1、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG2000-Mal)および1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アジド(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG2000-アジド)などが挙げられる。
【0033】
一旦血小板が脱顆粒すると、血小板由来セクレトームは、溶液中に存在する他の成分から分離することによって得られる。本発明の方法の工程c)の「工程b)で得られた前記血小板および血小板セクレトームの懸濁液を遠心分離によって血小板および他の細胞残屑を除去することにより、血小板由来セクレトームを回収する」とは、遠心分離により細胞残屑または血小板凝集体から血小板顆粒の成分が豊富になった培地を除去し、血小板セクレトームを単離する処理を指す。好ましい実施形態では、本発明の方法の工程d)における遠心分離は、1分間~10分間、8000グラムフォース~13000グラムフォースの間で行われる。より好ましい実施形態では、遠心分離は10000グラムフォースで2分間行われる。遠心分離後、上清を容器に移す。
【0034】
本発明の方法の工程c)で得られた血小板由来セクレトームの組成物が外的な物理的要因によって変化しないことを保証するために、本発明の方法の工程b)を除いて、本発明の方法のすべての工程は室温で行われる。さらに、本発明の方法の工程c)を実行する前に、本発明の方法の工程b)で実行された、血小板の活性化を停止する機構、処理、または技術を用いない。そのような機構、処理または技術の非限定的な例は、低温ショック、例えば、試料を氷上に置くこと、または化学的ショック、例えば、アスピリンもしくはプロスタグランジンE2による処理である。
【0035】
得られた血小板由来セクレトームは、新鮮なまま、すなわち、得られた後に使用することも、後の使用のために保存することもできる。本発明の方法によって得られた血小板由来セクレトームの計画された使用に応じて、滅菌手順を適用してもよい。好ましい実施形態において、本発明の方法は、工程c)で得られた血小板由来セクレトームの濾過および/またはナノ濾過を含む任意の工程を含む。様々なグレードの濾過手順を適用することができる。濾過手順は、保存前にあらゆる望まない細菌および/またはウイルス汚染物質を除去するために、血小板由来セクレトームを濾過滅菌するために実施される。好ましい実施形態では、フィルター処理は、0.22ミクロンのフィルターで行われる。本明細書で使用される用語「ナノ濾過」は、ウイルス汚染を除去することができる、ナノメートルサイズの孔を有する膜でろ過する処理を指す。
【0036】
得られた血小板由来セクレトームに適用できるいくつかの保存方法が当技術分野で知られている;例としては、限定されるものではないが、凍結、凍結乾燥、フリーズドライ、脱水、カプセル化およびナノカプセル化が挙げられる。このような方法は、得られた生成物を再構成が容易な使いやすい容量で保存することを可能にし、また、血小板由来セクレトームに増大した安定性ならびに増大した組織および/または器官への可触性を提供する。したがって、本発明の方法の好ましい実施形態において、工程c)で得られた血小板由来セクレトームは、凍結、凍結乾燥、フリーズドライ、脱水、カプセル化またはナノカプセル化によって保存される。
【0037】
〔血小板由来セクレトームおよびその用途〕
本発明は、血小板活性化剤または薬剤および血小板の生物学的供給源によって活性化されるシグナル伝達経路のみに成分が依存する、血小板由来セクレトームを得るためのユニークな方法を開示する。
【0038】
したがって、本発明の別の態様は、本発明の方法によって得られた血小板由来セクレトーム(以降、本発明のセクレトーム)である。
【0039】
用語「血小板由来セクレトーム」は、本発明の方法に関して以前に定義されており、このような定義は、本態様およびその実施形態に対しても有効である。
【0040】
本発明のセクレトームは、従来技術の代替方法(すなわち、Ojea-Perez A.M. et al,2019,Transfus Apher Sci、58(5),701-704に記載されている閉鎖系を用いて得られたPRPなどのPRP)に関して、供給源原料中の血小板数を考慮して正規化した後の、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、炎症メディエーター、免疫学的活性調節因子の累積濃度の増加、ならびに細胞アポトーシス/ネクローシスに関連する因子の含有量の減少を含む。本発明の血小板由来セクレトームの組成を測定するための方法、およびそのような方法を適用するためのパラメータは、この分野の専門家に公知である。このような方法には、限定されないが、多重免疫アッセイ、質量分析アッセイ、クロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリーが含まれる。本明細書で使用される、「組成を測定する」という表現は、本発明のセクレトームにおける分子もしくは物質の存在の検出および/またはそのような分子もしくは物質の定量を指す。
【0041】
本明細書で使用される用語「成長因子」は、特定の受容体に結合することによって細胞の増殖、生存および/または遊走を刺激するタンパク質を指す。通常、成長因子は、それぞれの受容体を発現する特定の細胞型にのみ作用する。本発明のセクレトーム中に存在し得る、成長因子ならびに他の生体分子、代謝産物および/または生体物質の例としては、限定されるものではないが、PDGF、PDAF、VEGF、PDGF、PF-4、TGF-B、FGF-A、FGF-B、TGF-A、IGF-1、IGF-2、BTG、TSP、vWF、PAI-1、IgG、IgM、IgA、KGF、EGF、FGF、TNF、IL-1、KGF-2、フィブロペプチドA、フィブリノーゲン、アルブミン、オステオネクチン、グロα、ビトロネクチン、フィブリンDダイマー、第V因子、アンチトロンビンIII、a2マクログロブリン、アンジオゲニム、Fg-D、およびエラスターゼが挙げられる。さらに詳細には、存在し得る成長因子、サイトカインなどには、限定されないが、LIF、IGFBP3などの抗がん成長因子、PGまたはロイコトリエンなどのエイコサノイド、IL-1 TNFα、INF、TNF-a、IL-6、IL-1(a/b)、プロスタノイド代謝産物、補体成分、活性酸素中間体、アラキドン酸代謝産物、凝固因子、硝酸塩、ならびにケモカインなどが含まれる。ヒト由来の成長因子、ケモカイン、サイトカイン、およびホルモンとしては、αディフェンシン、αシヌクレイン、βシヌクレイン、4-1BBL、6Ckine、酸性FGF、アクチビンA、アブチビンRib、アンジオポエチン2、B-DNF、BAFF、BCA-1、BCA-1、BD-1、BMP-2、BMP-4、BMP-7、BMPRAl、BDNF、CNTF、CTGF、CTI_A-4Fc、CXCL1、CXCL2、カルジオトロフィン-1、クリプト、シスタチンC、Dkk-1、EGF AOF、EGF、EMAP II、ENA-78、EPO、エオタキシン、FGF塩基性AOF、FGF-10、FGF-16、FGF 17、FGF 18、FGF19、FGF4、FGF6、FGF7、FGF8、FGF8b、FGF9、Flt3、G-CSF、GDNF、GMCSF、HGF、HGH、IFNαA、IFNαA D、IFNαD、IFNαa2b、IFN、β1A、IFN-γ、IGF1、IGFil、IGFBP-4、IGFBP6、ILIα、IL-lβ、IL10、IL11、IL12、IL13、IL15、IL17、IL17A、IL17F、IL18、IL19、IL2、IL20、IL21、IL23、IL28A、IL28B、IL29、IL3、IL31、IL33、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、ITAC、KGF2、カリクレイン1、カリクレイン4、カリクレイン7、LEFTY-A、LIF、レプチン、MCSF AOF、MCSF、MCP-1、MCP2、MCP3、MCP4、MDC、MIG、MIP1α、MIP1β、MIP3α、MIP3β、MIP4、MIP5、ミッドカイン、NAP2、NT3、NT4、ニューロタクティン、ノイルチュリン、オンコスタチン、オステオプロテグレリン、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PTN、ランクリガンド、ランクレセプター、RANTES<SCF、SCFAOF、SDF-1α、SDF-1β、CD4、CD40L、TNF-RI、TNFRII、TARC、TECK、TGFα、TGFlβl、TGFβ2、TGFβ3、TNFβ/リンホトキシン、TNFα、TPO、TRAIL、TWEAK、およびVEGFが含まれ得る。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のセクレトームは、カスパーゼ-3、EGF、G-CSF/CSF-3、GM-CSF、グランザイムB、HGF、ICAM-1、IL-10、MCP-1、MCP-2、MIP-1β、オステオポンチン、PECAM、P-セレクチン、SDF-1、TNF-α、VCAM-1、CD40L、FGF-2、GITRL、IFN-γ、IL-1a、MCP-2、PDGF-BB、TGF-β、TPO、VEGF-A、FGF-23、Gro-α、IL-1b、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-3、MIP-1α、RANTES、VEGF-Dが含まれる。
【0043】
以下の表1は、血小板アゴニストとして異なる因子を用いて本発明の方法によって得られた濃度範囲を記載する。分析した分子は、カスパーゼ-3、EGF、G-CSF/CSF-3、GM-CSF、グランザイムB、HGF、ICAM-1、IL-10、MCP-1、MCP-2、MIP-1β、オステオポンチン、PECAM、P-セレクチン、SDF-1、TNF-α、VCAM-1、CD40L、FGF-2,GITRL、IFN-γ、IL-1a、MCP-2、PDGF-BB、TGF-β、TPO、VEGF-A、FGF-23、Gro-α、IL-1b、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-3、MIP-1α、RANTES、VEGF-Dであり、表1に記載の濃度範囲内である。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明のセクレトームは、血小板アゴニストであるTRAP6を100μMの濃度で用いて得られ、表1に記載の濃度範囲で分析された分子を含む。
【0045】
別の好ましい実施形態では、本発明のセクレトームは、血小板アゴニストであるコンバルキシンを0.625ng/mLの濃度で用いて得られ、表1に記載の濃度範囲で分析された分子を含む。
【0046】
別の好ましい実施形態では、本発明のセクレトームは、血小板アゴニストであるホルボール12-ミリスチン酸13-アセテートを100ng/mLの濃度で用いて得られ、表1に記載の濃度範囲で分析された分子を含む。
【0047】
別の好ましい実施形態では、本発明のセクレトームは、血小板アゴニストであるアグレチンAを6.53nMの濃度で用いて得られ、表1に記載の濃度範囲で分析された分子を含む。
【0048】
別の好ましい実施形態では、本発明のセクレトームは、血小板アゴニストであるコラーゲンを30μg/mLの濃度で用いて得られ、表1に記載の濃度範囲で分析された分子を含む。
【0049】
別の好ましい実施形態では、本発明のセクレトームは、血小板アゴニストであるコラーゲンを90μg/mLの濃度で用いて得られ、表1に記載の濃度範囲で分析された分子を含む。
【0050】
【0051】
前述のように、本発明のセクレトームの組成は、活性化剤によって活性化されるシグナル伝達カスケード、ならびに本発明のセクレトームが得られる多血小板試料の由来および処理に依存する。本発明のセクレトームが被験体からの生物学的試料から得られる場合、被験体の生理学的状態もまた血小板反応性を決定し、したがって血小板由来セクレトームの最終組成に影響する。したがって、異なる生理学的状態を有する被験体、すなわち健常被験体と病的被験体との血小板由来セクレトームの比較は、疾患バイオマーカーの測定に使用することができる。このように、本発明の別の態様は、疾患の診断または予後のためのバイオマーカーを同定するための方法のin vitroでの使用であって、これ以降、本発明のバイオマーカーの使用は、以下の工程を含み:
a)被験体から本発明のセクレトームを得る工程;および
b)工程a)からの血小板由来セクレトームを、対照の血小板由来セクレトームと比較する工程、
ここで、対照の血小板由来セクレトームと比較して、工程a)で得られたセクレトームの成分が存在すること、存在しないこと、または濃度が変化することは、当該成分がバイオマーカーであることを示すものである。
【0052】
本明細書で使用される用語「バイオマーカー」は、先に述べた方法によって、本発明のセクレトームの組成物中の存在を客観的に測定し、定量することができる物質を指し、この物質は、疾患の有無またはその予後の指標として使用される。検出および/または定量することができる、本発明の疾患バイオマーカーは、検出および/または定量することができ、存在/非存在のみを検出できる疾患バイオマーカー、量もしくは濃度の変化のみを検出できる疾患バイオマーカー、または存在/非存在および量もしくは濃度の変化の両方を検出できる疾患バイオマーカーを意味する。
【0053】
本明細書で使用される用語「診断」は、特定の疾患、疾病単位、症候群、またはあらゆる健康-疾患状態が、当該疾患に特徴的であり、類似の臨床像を有する他の疾患と区別する一連の臨床パラメータまたは症状を分析することによって同定される手順を指す。「診断」とは、診断に有用な情報を提供することも指す。
【0054】
本明細書で使用される用語「予後」は、被験者が特定の疾患、疾病単位、症候群、またはあらゆる健康-疾患状態を発症する確率または可能性を、当該疾患に特徴的であり、類似の臨床像を有する他の疾患と区別する一連の臨床パラメータまたは症状を分析することによって測定する手順を指す。当業者には理解されるように、このような予後評価は、予後診断の対象となる被験者の100%に対して正しいことが好ましいが、通常、100%に対して正しいとは限らない。しかしながら、この用語は、被験者の統計学的に有意な部分が、疾患を有するか、または疾患に対する素因を有すると同定され得ることを必要とする。統計学的に有意である数は、当業者であれば、例えば、信頼区間の測定、P-有意値の測定、Studentの検定またはFisherの判別関数、Mann Whitneyノンパラメトリック測定、Spearman相関、ロジスティック回帰、線形回帰、ROC曲線下面積(AUC)など、さまざまな統計学的手段を用いて確定することができるが、これらに限定されない。好ましくは、信頼区間は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。好ましくは、p値は0.1未満、0.05未満、0.01未満、0.005未満または0.0001未満である。好ましくは、本発明は、分析された所与のグループまたは集団の被験者の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%において、区別して疾患を正しく予測することを可能にする。
【0055】
本明細書で使用される用語「被験体」は、動物、好ましくはあらゆる年齢および性別のヒトを指す。したがって、本発明のバイオマーカーの好ましい使用において、被験体は動物、好ましくはヒトである。
【0056】
本発明のバイオマーカーの使用の工程b)の「工程a)からの血小板由来セクレトームを、対照の血小板由来セクレトームと比較する」という表現は、本発明の方法によって得られた2つの血小板由来セクレトームを比較する処理を意味し、一方の血小板由来セクレトームは、特定の疾患、疾病単位、症候群、または任意の健康-疾患状態に罹患している、罹患している可能性がある、または罹患する可能性がある被験体から得られ、他方の血小板由来セクレトームは、健康な被験体から得られる。両方のセクレトームは、特定の疾患、疾病単位、症候群、もしくは任意の健康-疾患状態の異なる段階にある同一もしくは異なる被験体から、または健康な状態にある被験体と疾患/状態/症候群に罹患している同一の被験体とから得ることができる。「対照の血小板由来セクレトームと比較して、工程a)で得られたセクレトームの成分が存在すること、存在しないこと、または濃度が変化することは、当該成分がバイオマーカーであることを示すものである」という表現は、工程a)で得られた血小板由来セクレトームを対照血小板由来セクレトームと分析または比較する処理を指し、ここで、前記分析、比較は、一方のセクレトームと他方のセクレトームとで存在または非存在が変化する成分、または一方のセクレトームと他方のセクレトームとで濃度が変化する成分を同定してもよく、これらの成分が、分析される疾患、疾病単位、症候群、または健康-疾患状態によって影響され、したがって、前記状態のバイオマーカーであることを示す。
【0057】
同定され得る疾患バイオマーカーの例は、血管障害、血液癌、免疫障害、凝固障害、疼痛調節障害のバイオマーカーである。好ましい実施形態において、本発明の疾患バイオマーカーは、以下からなる疾患のリストから選択される:先端紅痛症、末梢動脈疾患、腎動脈狭窄症、バージャー病、レイノー病、播種性血管内凝固症、脳血管疾患、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、T細胞性リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、全身性エリテマトーデス、強皮症、溶血性貧血、血管炎、1型糖尿病、バセドウ病、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、ミオパチー、ライム病、血栓症、凝固異常症、急性外傷性凝固異常症、感覚調節障害、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、大腸炎、皮膚炎、憩室炎、線維筋痛症、肝炎、腎炎、パーキンソン病、皮膚疾患、および潰瘍性大腸炎。
【0058】
前述のように、本発明のセクレトームは、複雑な組成を有し、特に成長因子が豊富である。そのため、本発明のセクレトームは、培地および/または培地サプリメントとして特に有用である。したがって、本発明の別の態様は、in vitroおよび/またはex vivoの細胞培養および/または組織培養、好ましくは幹細胞培養、線維芽細胞初代培養、線維芽細胞培養、樹状細胞培養、他の免疫細胞と細胞株のための培地および/または培地サプリメントとしての本発明のセクレトームの使用に関する。前記培養は、細胞治療目的だけでなく、研究目的であってもよい。
【0059】
本明細書で使用される、「培地サプリメント」という表現は、細胞の生存性を維持し、ならびに/または、細胞の増殖および/もしくは遊走を刺激するために培地に添加される培地添加物を指す。
【0060】
用語「細胞培養」および「組織培養」は、細胞および組織中の細胞、好ましくは動物由来の細胞(ヒト由来の細胞を含む)をin vitroで維持および増殖させることを指す。
【0061】
本明細書で使用される用語「細胞の維持」は、細胞を最適な状態に保つことを指す。用語「細胞の増殖」は、細胞を増殖させ、それによって細胞数の増加を導くことを指す。用語「細胞の移動」は、多細胞生物の発生および維持における中心的な過程であり、特定の位置への特定の方向における細胞の調整された移動を必要とする過程であり、すなわち、胚発生における組織形成、創傷治癒、および免疫反応である。
【0062】
〔医薬組成物〕
前述のように、本発明のセクレトームは成長因子を豊富に含んでおり、in vitroでの細胞の成長を刺激するのに使用することができる。同様に、このような刺激能力はin vivoでも使用することができ、そのようにして、本発明のセクレトームは、再生医療および組織損傷の治療における用途を有する。それゆえ、本発明の別の態様は、本発明のセクレトームを含む医薬組成物に関し、これ以降は本発明の医薬組成物に関する。本発明の別の態様は、再生医療および/または組織損傷の治療における使用のための本発明の医薬組成物に関する。
【0063】
本明細書で使用される用語「再生医療」は、正常な機能を回復または確立するために、細胞、組織、または器官を置換または再生する処理を指す。
【0064】
本明細書で使用される用語「治療」は、対象(好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト)における、(組織損傷のような)関心の疾患または病理学的状態の結果として引き起こされる影響と闘うことを指し、以下を含む:
i)疾患または病的状態を抑制する、すなわち、その進行を止めること;
(ii)疾患または病的状態を緩和すること、すなわち、疾患または病的状態もしくはその症状を退縮させること;
(iii)病気または病的状態を安定させること。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、以下からなるがこれらに限定されないリストから選択される疾患の治療に使用される:先端紅痛症、末梢動脈疾患、腎動脈狭窄症、バージャー病、レイノー病、播種性血管内凝固症、脳血管疾患、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、T細胞性リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、全身性エリテマトーデス、強皮症、溶血性貧血、血管炎、1型糖尿病、バセドウ病、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、ミオパチー、ライム病、血栓症、凝固異常症、急性外傷性凝固異常症、感覚調節障害、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、大腸炎、皮膚炎、憩室炎、線維筋痛症、肝炎、腎炎、パーキンソン病、皮膚疾患および潰瘍性大腸炎、または創傷治癒もしくは組織再生、治癒時間の短縮、もしくは病変の解消に援助を必要とするあらゆる病的症状。
【0066】
本発明の医薬組成物の別の好ましい実施形態では、本発明のセクレトームは、新鮮であるか、冷凍、凍結乾燥、カプセル化またはナノカプセル化されている。
【0067】
本発明の医薬組成物のさらに別の好ましい実施形態において、血小板由来セクレトームは、動物血小板由来セクレトーム、好ましくは哺乳動物血小板由来セクレトーム、より好ましくはヒト血小板由来セクレトームである。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、許容可能な医薬アジュバント、許容可能な医薬ビヒクル、および/または別の有効成分をさらに含む。
【0069】
本明細書で使用される、「許容可能な医薬アジュバント」という表現は、本発明の医薬組成物の成分の吸収を補助し、そのような成分を安定化し、組成物の調製において、組成物に粘度を与えるか、または組成物をより心地よくする風味を提供するという意味で活性化するか、補助する物質を指す。したがって、賦形剤またはアジュバントは、例えばデンプン、糖またはセルロースの場合のように、成分を一緒に維持する機能、甘味を与える機能、着色する機能、例えば組成物を空気および/または湿度から遮断するために保護する機能、錠剤、カプセルまたは任意の他の形態の提示物に充填する機能、腸における成分の溶解および吸収を促進するための崩壊機能を有し得るが、この段落で言及されていない他のタイプの賦形剤を排除するものではない。
【0070】
本明細書で使用される、「許容可能な医薬ビヒクル」という表現は、組成物中でその成分のいずれかを一定の体積または重量に希釈するために使用される物質を指す。医薬的に許容されるビヒクルは、不活性であるか、または本発明の医薬組成物に含まれるいずれかの成分と同一の作用を有する物質である。ビヒクルの機能は、他の成分の取り込みを容易にすること、より良い用量および投与を可能にすること、または組成物に粘性および形態を与えることである。
【0071】
用語「有効成分」は、血清または血漿などの治療上活性がある化合物、ならびにそれらのプロドラッグ、ならびに化合物およびプロドラッグの薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物を指す。
【0072】
本発明の組成物はまた、徐放性薬物製剤、あるいは、ナノ粒子、リポソームもしくはナノスフィア、高分子材料、生分解性もしくは非生分解性のインプラント、または生分解性微小球などの生分解性微小粒子などの、任意の他の従来の放出系の形態をとってもよい。本組成物および/またはその製剤は、腹腔内、静脈内、皮内、脊髄内、基質内、関節内、基質内、および滑膜内、くも膜下内、髄腔内、腔内、動脈内、筋肉内、鼻腔内、頭蓋内、皮下、眼窩内、嚢内、局所、経口、経皮パッチ、経皮、鼻腔スプレー、外科用インプラント、外科用体内ペイントまたは注入ポンプを介した方法を含む種々の方法で、動物に、したがってヒトに投与することができる。
【0073】
本発明の医薬組成物の投与は、治療上有効な投与量で実施されるべきであり、これは患者に利益を示すのに十分な投与である。このような利益には、患者に影響を及ぼす疾患または病理に関連する少なくとも1つの症状の改善を含むことができる。治療法の処方、すなわち、投与量、投与周期、投与期間などに関する決定は、罹患患者を診察する一般医または専門医の責任となる。
【0074】
用語「治療上有効な投与量」または「治療上有効な量」は、本発明で使用される場合、最小限の副作用または毒性を引き起こしながら、薬物または治療剤が投与される個体または個体群に対して検出可能な治療効果を引き起こす、薬物または治療剤の量(またはそれが投与される個体の単位質量当たりの量)を指す。治療効果をもたらすのに有用な治療上有効な量は、その技術の専門家によく知られている従来の技術によって測定することができる。用語「治療上有効な投与量-50」または「治療上有効な投与量-95」は、投与される個体の50%または95%において治療効果が検出可能でなければならない統計学的値を含む。薬物または化合物の毒性作用に関しては、治療上有効な投与量が何も引き起こさないことが好ましい。しかしながら、毒性作用が生じることもあるが、薬物または化合物を投与せずに疾患または病態が正常に進行するよりは好ましいと考えられる妥協点に達することもあり、追加の治療法によって治療することができる場合もある。
【0075】
〔図面の説明〕
図1.A.セクレトーム調製のワークフローの例。B.セクレトーム試料の異なる組成に基づく階層的クラスタリングを示したヒートマップ。C.セクレトーム試料のクラスター系統図および主成分分析(PCA)。4人の異なるドナー由来のセクレトームの平均が用いられている。D.異なるアゴニストで刺激した血小板のフローサイトメトリーによる脱顆粒分析。
【0076】
図2.PRP試料およびセクレトーム試料(異なるアゴニスト)における成長因子濃度の累積和を示す棒グラフ。血小板数(平均)が低くても、PRPに比べてセクレトームでは濃度が高い。
【0077】
図3.創傷治癒アッセイおよびスクラッチ閉鎖の経時的モニタリング。MRC-5細胞を、標準培養条件としての10%ウシ胎児血清(FBS)に加え、セクレトーム(10%、n=6)で刺激した)。A.アッセイ開始時および刺激48時間後のスクラッチの代表的な画像を示す。B.対照(標準培養条件)と比較した、異なるセクレトームで刺激したMRC-5細胞の閉鎖動態を示したグラフ。
【0078】
図4.多血小板血漿(PRP)と血小板セクレトーム(PLT-S)とのin vitro再生能の比較。スクラッチ創傷治癒アッセイを、10%PRPまたはセクレトーム(標準培養条件としての10%FBSに加えて)で刺激処理した、または刺激処理していないMRC-5細胞で行い、細胞増殖能を測定した。A.PRPまたはセクレトーム(コンバルキシンで得られた)で細胞処理したときの、時間0時のMRC-5細胞のスクラッチ創傷を示し、スクラッチ開始48時間後の創傷の状態を表す。B.PRPまたはセクレトームで刺激したMRC-5細胞の閉鎖動態を、それぞれの対照条件(ヘパリン無添加の標準培地)と比較したグラフ。
【0079】
〔実施例〕
〔材料および方法〕
〔閉鎖系を用いたPRP調製〕
多血小板血漿(PRP)は、Ojea-Perez A.M. et al,2019,Transfus Apher Sci.,58(5),701-704に記載されているように、中断献血(n=14)から得た。分画は、認定血液バンク(Centro Comunitario de Sangre y Tejidos de Asturias-CCSTA)の装置を用いて行った。簡単に説明すると、血液バッグを小児用収集バッグに接続した後、二重分画遠心分離を行った。最初の遠心分離は1130rpmで休止なしで5分間行い、その後、血小板を含む血漿画分をプレスCompomat G5(Fresenius-Kabi)システムで赤血球から分離して別々のバッグに入れる。2回目の遠心分離は2500rpmで4回の休止で12分間行い、PRPを新しいバッグに分離し、3つの小児用バッグ(それぞれ約10mL)に分配する。PRP試料は、血小板溶解および保存のために-40℃に置かれた。凍結試料(PRPx)を37℃の水浴中で融解し、10krpmで2分間遠心分離して細胞残屑を除去した。凍結/融解後のPRPx試料の上清は、さらなる使用のために回収した。
【0080】
〔血小板セクレトーム(PLT-S)の調製〕
PLT-Sは、全血(中断献血)から調製し、1000rpmで15分間遠心分離した後、PRPを回収した(開放系)。PRP中の血小板濃度はCBC分析装置(Sysmex XN-10/XN-20 Hematology Analyzer)を用いて測定した。その後、PRPを4000rpmで5分間遠心分離し、少血小板血漿(PPP)上清を除去した。HEPESグルコース緩衝液(132mMのNaCl、6mMのKCl、1mMのMgSO4、1.2mMのKH2PO4、20mMのHEPES、pH7.4、5mMのD-グルコースを含む)を用いて、血小板ペレットを2×108血小板/mLの濃度に再懸濁した。次に、PAR1アゴニスト(TRAP6;100μM;BACHEM H-8365.0005)、コンバルキシン(0.625ng/ml;ENZO Life Sciences ALX-350-100-C050)、ホルボール12-ミリスチン酸13-アセテート(PMA;100ng/mL;Sigma-Aldrich P8139-5MG)、アグレチンA(6.53nM、J.Eble教授のご厚意)、コラーゲン(30μg/mLおよび90μg/mL;Sigma-Aaldrich C4243-20ML)を用いて、サーモミキサー(Mixing Block MB-102;BIOER)を用いて、37℃で5分間、一定の振盪下で活性化した。発表された他の研究とは異なり、氷上で血小板をインキュベートする反応を止めなかった。最後に、血小板を10,000rpmで2分間遠心分離し、細胞残屑を除去した。さらなる使用のために、セクレトーム上清は、回収し、0.22μm孔のフィルターで濾過し、アリコートに分け、-80℃で凍結保存した。あるいは、血小板を数え、HEPESグルコース緩衝液に再懸濁した後、血小板を完全に破砕できるように-80℃で保存した(すなわち、血小板溶解液)。
【0081】
〔品質管理:脱顆粒およびβ3インテグリン活性化解析〕
血小板は上記のように刺激し(セクレトームの調製)、刺激前後に表面マーカー(CD9-Alexa Fluor 647;CD62P-PE;CD63-PECy7)および結合フィブリノーゲン FBG-Alexa Fluor 488)とインキュベートし、刺激時の血小板脱顆粒能とβ3インテグリン活性化を解析した。この解析は、多重解析の前の、調製したセクレトームの品質管理として機能する。インキュベーション後、血小板をフローサイトメトリーで分析した。血小板は、前方散乱/側方散乱およびCD9陽性に基づいてゲーティングされた。カットオフを非刺激試料に設定し、CD62pおよびCD63の発現の増加とフィブリノーゲン結合とが測定された。試料は、血小板の脱顆粒が至適であったとき(すなわち、刺激なしでは脱顆粒もFBG結合もなく、刺激により適切な脱顆粒およびFBG結合を示したとき)に、さらなる解析のために選択された。抗体はすべて、BD Biosciencesのものを使用した。データはFACS Aria II(登録商標)フローサイトメーター(BD Biosciences)で取得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star, Ashland,OR,USA)を用いて解析した。
【0082】
〔多重免疫学的アッセイ〕
異なる血小板バイオ生産物中に含まれる成長因子、サイトカイン、ケモカインおよび免疫調節分子は、Human Procartaplex(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を用いた高性能多重免疫学的アッセイで測定した。このアレイは、抗体ベースの磁気ビーズシステムであり、Luminex 200装置プラットフォーム(Luminex Corporation,USA)を用いて広範なバイオマーカーの定量が可能である。多重アッセイは、製造元の説明書にしたがって実施し、xPONENT ソフトウェア(Luminex Corporation,USA)を用いてプレートを読み取った。分析した特定の因子は以下の通りである:カスパーゼ-3、CD40L、EGF、FGF-2、FGF-23、G-CSF(CSF-3)、GM-CSF、GITRL、グランザイムB、GROα(KC/CXCL1)、HGF、ICAM-1、IFNγ、IL- 1α、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8(CXCL8)、IL-10、MIP-1α(CCL3)、MCP-1(CCL2)、MCP-2(CCL8)、MCP-3(CCL7)、MIP-1β(CCL4)、オステオポンチン、PDGF-BB、PECAM-1、P-セレクチン、RANTES(CCL5)、SDF-1α、トロンボポエチン(TPO)、TGFβ、TNFα、VCAM、VEGF-AおよびVEGF-D。
【0083】
〔スクラッチ創傷閉鎖アッセイおよび画像解析〕
PLT-SまたはPRPの再生能を分析するために、MRC-5線維芽細胞株を用いてスクラッチ創傷閉鎖アッセイを行った。MRC-5細胞を、Culture-Insert 2 well 24 ibiTreat (μ-Plate 24 Well Black, Ibidi)内に3.5×105細胞/mLで播種し(1チャンバー1ウェルあたり70μLの容量)、80~90%コンフルエントに達するまで細胞接着のために培養した(約24時間)後、シリコーン挿入物を慎重に除いた。付着していない細胞を洗い流した後、PLT-SまたはPRP(10%ウシ胎児血清-FBS-に加えて)を10%添加した培地を細胞培養に加えた。創傷閉鎖を観察するため、温度および雰囲気をそれぞれ37℃および5%CO2に保った「ステージインキュベーター」を装備したタイムラプス顕微鏡Zeiss AxioObserver Z1顕微鏡(Carl Zeiss,Germany)を用いて、プレートを48時間モニターした。撮像にはPlan-Apochromat 10x/0,45 M27(dt=2.1mm)対物レンズを用いた。カメラ(AxioCam MRm;Carl Zeiss)を用いて、12時間ごとにモザイク画像(3×3)を撮影した。ZEN Blueソフトウェア(Carl Zeiss)のTilesツール(Tilesセットアップからのz-位置)を用いて、マイクロメートルの精度でフィールドを選択した(3次元的に、軸xyz)。
【0084】
その後、Fiji/ImageJソフトウェア(NIH)を用いて、https://github.com/MontpellierRessourcesImagerie/imagej_macros_and_scripts/wiki/Wound-Healing-Toolにおいてオンラインで入手可能なMontpellier Ressources Imagerie (MRI) Wound healing Toolマクロを用いて画像を解析した。栓塞は、創傷縁間のクリアスペースの減少を測定する時系列を表す画像のスタックに基づいて、細胞組織の創傷の面積を分析した。隙間閉鎖の割合が算出され、対照群と治療群との間で比較された。
【0085】
〔統計解析〕
すべてのデータは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)で計算して表した。0.05を超えるP値は、統計学的に有意とみなした。データは分散分析(anova)を用い、多重比較にはTukeyのHSD(honest significant difference)検定を用いた。統計解析およびヒートマップは、Rパッケージ(Rstudio)バージョン3.5.2を用いて行った。主成分分析(PCA)は、Perseusソフトウェアバージョン1.6.7.0を用いて、変数値のスケールから区間への正規化を行った後に実施した。
【0086】
〔実施例1-血小板分泌プロファイルは、活性化シグナル伝達経路によって測定される/血小板由来セクレトームの組成は、異なる受容体アゴニストによる血小板の刺激によって調節することができる〕
血漿を含まない血小板セクレトームを作製するために、洗浄した血小板を使用した。この目的のために、健康なドナーの血小板(n=4)を、いくつかの受容体アゴニストで刺激し(材料および方法を参照)、次に、成長因子、サイトカイン、ケモカインおよびいくつかの免疫メディエーターを含む合計37の因子を、多重ヒト免疫測定法を用いて定量した。多重法による特徴付けの前に、CD62p(α顆粒)、CD63(濃顆粒およびリソソーム)およびフィブリノーゲンの発現を、フローサイトメトリーを用いて、カーゴ脱顆粒の品質管理として、血小板の活性化を測定した。
【0087】
タンパク質の特徴付けは、血小板のアゴニスト誘導活性化によって、異なる分泌パターンを示した。
【0088】
次に、データを区画に正規化した後(M&Mに記載されている通り)、放出試料のクラスタリングを可視化するために、すべての多重変数に対してPCAを実施した。この解析により、TRAP6の分泌プロフィールはコラーゲン(低用量)およびアグレチンAとクラスターを形成し、コンバルキシンの分泌プロフィールはコラーゲン(高用量)とクラスターを形成し、PMAセクレトームは残りとわずかに離れていることが明らかになった。
【0089】
〔実施例2-血小板由来セクレトームは、古典的PRPよりも成長因子に富んでいる〕
次に、PLT-S(200×103 PLTs/μl)とPRPx(PLT範囲 262×103 PLTs/μl~728×103 PLTs/μl)との組成を比較した。PRP試料の方がより血小板密度が高いことを考慮しても、ほとんどの分析対象物は、PRPよりもPLT-Sにおいてより濃度が高いことが観察された。顕著な点として、FGF、VEGF、HGFおよびPDGF-BBなど、組織再生に関与する主要な成長因子は、PLT-S試料の方がより濃度が高かった。特筆すべきは、EGFの濃度が広範囲(HPS 49,938~103,581;PRPx 90,424~472,029)を示し、各PRPx試料の血小板数と強い相関を示した唯一の因子であったことである(r=0.82)。
【0090】
同様に、サイトカイン、ケモカイン、接着分子PECAM1(CD31)およびP-セレクチンは、PLT-S試料においてより高い割合で検出された。反対に、ICAM-1およびVCAM-1は、PRPx試料においてより高い割合で検出され、主に血漿画分に存在する特定の免疫メディエーターと接着分子とを取り込む、RANTES(188倍)、カスパーゼ-3(12倍)およびオステオポンチン(PLT-S試料では検出されなかった)もまた同様に検出された。
【0091】
〔実施例3-血小板セクレトームの再生能力は、血小板脱顆粒を誘導するために用いられたアゴニストによって異なる〕
PLT-Sのin vitro再生能を評価するために、MRC-5細胞(線維芽細胞)において創傷治癒アッセイを行い、異なるPLT-Sで刺激した場合と刺激しなかった場合のギャップ/創傷閉鎖を、タイムラプス顕微鏡を用いて、48時間にわたってモニターした。その結果、創傷閉鎖の動態は、バイオ生産物の組成に大きく依存すること、同様に、血小板カーゴの脱顆粒を活性化するために使用したアゴニストに依存することが示された。コンバルキシンによるGPVIの刺激によって得られたセクレトームは、最も分裂促進的な反応をもたらし、対照の66%と比較して95%の創傷閉鎖を達成した。コラーゲン高用量(90μg/mL)においても同様の結果が得られた。さらに、PMAおよびアグレチンAで得られたセクレトームも同じ再生能力を示し、どちらの場合も92%の創傷閉鎖を示した。最後に、TRAP6で得られたセクレトームは再生能が最も低かった。全体として、これらの結果は、再生目的の治療としてセクレトームを使用する可能性を示す非常に関連性の高いものである。
【0092】
【0093】
【0094】
〔実施例4-血小板セクレトームの再生能力は、従来のPRPよりも優れている〕
ヒト線維芽細胞(hF)単層(MRC-5細胞株)における、スクラッチ創傷の画像を、スクラッチの0時間後と48時間後に撮影し、スクラッチ創傷領域へのhFの増殖が、PRPと比較してPLT-S存在下で促進されたことを示した。
【0095】
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】A.セクレトーム調製のワークフローの例。B.セクレトーム試料の異なる組成に基づく階層的クラスタリングを示したヒートマップ。C.セクレトーム試料のクラスター系統図および主成分分析(PCA)。4人の異なるドナー由来のセクレトームの平均が用いられている。D.異なるアゴニストで刺激した血小板のフローサイトメトリーによる脱顆粒分析。
【
図2】PRP試料およびセクレトーム試料(異なるアゴニスト)における成長因子濃度の累積和を示す棒グラフ。血小板数(平均)が低くても、PRPに比べてセクレトームでは濃度が高い。
【
図3】創傷治癒アッセイおよびスクラッチ閉鎖の経時的モニタリング。MRC-5細胞を、標準培養条件としての10%ウシ胎児血清(FBS)に加え、セクレトーム(10%、n=6)で刺激した)。A.アッセイ開始時および刺激48時間後のスクラッチの代表的な画像を示す。B.対照(標準培養条件)と比較した、異なるセクレトームで刺激したMRC-5細胞の閉鎖動態を示したグラフ。
【
図4】多血小板血漿(PRP)と血小板セクレトーム(PLT-S)とのin vitro再生能の比較。スクラッチ創傷治癒アッセイを、10%PRPまたはセクレトーム(標準培養条件としての10%FBSに加えて)で刺激処理した、または刺激処理していないMRC-5細胞で行い、細胞増殖能を測定した。A.PRPまたはセクレトーム(コンバルキシンで得られた)で細胞処理したときの、時間0時のMRC-5細胞のスクラッチ創傷を示し、スクラッチ開始48時間後の創傷の状態を表す。B.PRPまたはセクレトームで刺激したMRC-5細胞の閉鎖動態を、それぞれの対照条件(ヘパリン無添加の標準培地)と比較したグラフ。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板由来セクレトームを製造するため
のin vitro方法であって
、前記方法は以下の工程を含み:
a)血漿、および、血小板以外の他の血液/組織成分を含まない非活性化血小板懸濁液を、
以下の工程により得る工程:
i.血小板を含む生物学的供給源から、または多血小板試料から、あらかじめ得られた試料を遠心分離および/または濾過する工程;
ii.前記血小板画分を単離する工程;および
iii.前記血小板画分を緩衝液に再懸濁する工程;
b)工程a)で得られた前記
非活性化血小板懸濁液を、血小板アゴニストとともに一定に振盪させながらインキュベートすることにより、血小板脱顆粒を誘導し、血小板および血小板セクレトームの懸濁液を得る工程;
ならびに
c)工程b)で得られた前記血小板および血小板セクレトームの懸濁液を遠心分
離することにより、血小板由来セクレトームを回収する工程、
工程a)は室温で行い;
工程b)の温度は35~40℃であり;ならびに
工程c)は室温で行い、
前記方法は、血小板凝集阻害剤を使用しないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記血小板を含む生物学的供給源、または前記多血小板試料が哺乳動物由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)における前記血小板アゴニストが、トロンビン受容体活性化ペプチド6(TRAP6)、コンバルキシン、コラーゲン、ホルボール12-ミリスチン酸13-アセテート(PMA)、アグレチンA、アデノシン二リン酸(ADP)、エピネフリン、アラキドン酸およびトロンビンからなる群から選択される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
工程b)における前記アゴニストが、TRAP6 100μM、コンバルキシン 0.625ng/mL、ホルボール12-ミリスチン酸13-アセテート 100ng/mL、アグレチンA 6.53nM、コラーゲン 30μg/mLおよびコラーゲン 90μg/mLから選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程c)の後に、前記血小板セクレトームを、濾過またはナノ濾過により滅菌する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程c)の後に、前記セクレトームを、凍結、凍結乾燥、フリーズドライ、脱水、カプセル化またはナノカプセル化により保存する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程c)の後に、前記セクレトームがナノカプセル化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の方法により得られた、血小板由来セクレトーム。
【請求項9】
前記血小板アゴニストがTRAP6 100μMであるとき、前記セクレトームが、548.5pg/mL~912.7pg/mLのFGF-23と、221.1pg/mL~404.3pg/mLのG-CSFと、181.9pg/mL~296.1pg/mLのGM-CSFと、95.2pg/mL~130.7pg/mLのHGFと、972.4pg/mL~17119.7pg/mLのPDFF-BBと、119.4pg/mL~404.3pg/mLのTPOと、185.3pg/mL~239.2pg/mLのVEGF-Aと、33.7pg/mL~72.7pg/mLのVEGF-Dとを含む、請求項8に記載の血小板由来セクレトーム。
【請求項10】
前記血小板アゴニストがコラーゲン 30μg/mLであるとき、前記セクレトームが、567.8pg/mL~882pg/mLのFGF-23と、235.1pg/mL~414.8pg/mLのG-CSFと、191.4pg/mL~269pg/mLのGM-CSFと、87.7pg/mL~132pg/mLのHGFと、766.3pg/mL~16946.5pg/mLのPDFF-BBと、90.1pg/mL~338.9pg/mLのTPOと、164.9pg/mL~214.2pg/mLのVEGF-Aと、31.5pg/mL~59.7pg/mLのVEGF-Dとを含む、請求項8に記載の血小板由来セクレトーム。
【請求項11】
培養培地および/または培養培地サプリメントとしての、請求項8~10のいずれかに記載の血小板セクレトームの使用。
【請求項12】
請求項8~10のいずれかに記載の血小板セクレトームを含む、医薬組成物。
【請求項13】
許容される医薬アジュバント、許容される医薬ビヒクル、および/または別の有効成分をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
再生医療および組織損傷の治療における医薬品として使用するための、請求項8~10のいずれかに記載の血小板セクレトームまたは請求項12もしくは13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記使用は、再生医療にお
ける、普遍的または同種の治療
のための使用
である、請求項14に記載の、使用のための血小板セクレトーム。
【請求項16】
前記血小板セクレトーム
がナノカプセル化されている、
請求項14に記載の、使用のための血小板セクレトームまたは医薬組成物。
【請求項17】
先端紅痛症、末梢動脈疾患、腎動脈狭窄症、バージャー病、レイノー病、播種性血管内凝固症、脳血管疾患、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、T細胞性リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、全身性エリテマトーデス、強皮症、溶血性貧血、血管炎、1型糖尿病、バセドウ病、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、ミオパチー、ライム病、血栓症、凝固異常症、急性外傷性凝固異常症、感覚調節障害、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、大腸炎、皮膚炎、憩室炎、線維筋痛症、肝炎、腎炎、パーキンソン病、皮膚疾患および潰瘍性大腸炎からなるリストから選択される疾患の治療における医薬品として使用するための、請求項8~10のいずれかに記載の血小板セクレトームまたは請求項12もしくは13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
疾患の診断または予後のためのバイオマーカーを同定する方法であって、以下を含み:
a)請求項1~7のいずれか1項に記載の方法により、被験体の血小板由来セクレトームを得る工程;および
b)工程a)からの血小板由来セクレトームを、対照の血小板由来セクレトームと比較する工程、
ここで、前記対照の血小板セクレトームと比較して、工程a)で得られた前記セクレトームの成分が存在すること、存在しないこと、または濃度が変化することは、前記成分がバイオマーカーであることを示すものであり;
ここで、前記セクレトームの成分は、カスパーゼ-3、CD40L、EGF、FGF-2、FGF-23、G-CSF/CSF-3、GITRL、GM-CSF、グランザイムB、Gro-α、HGF、ICAM-1、IFN-γ、IL-10、IL-1a、IL-1b、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-1、MCP-2、MCO-3、MIP-1α、MIP-1β、オステオポンチン、PDGF-BB、PECAM、P-セレクチン、RANTES、SDF-1、TGF-β、TNF-α、TPO、VECAM-1、VEGF-AおよびVEGF-Dからなる群から選択されることを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記セクレトームの成分が、少なくともFGF-23、G-CSF、GM-CSF、HGF、PDGF-BB、TPO、VEGF-AおよびVEGF-Dであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板由来セクレトームを製造するためのin vitro方法であって、前記方法は以下の工程を含み:
a)血漿、および、血小板以外の他の血液/組織成分を含まない非活性化血小板懸濁液を、以下の工程により得る工程:
i.血小板を含む生物学的供給源から、または多血小板試料から、あらかじめ得られた試料を遠心分離および/または濾過する工程;
ii.前記血小板画分を単離する工程;および
iii.前記血小板画分を緩衝液に再懸濁する工程;
b)工程a)で得られた前記非活性化血小板懸濁液を、血小板アゴニストとともに一定に振盪させながらインキュベートすることにより、血小板脱顆粒を誘導し、血小板および血小板セクレトームの懸濁液を得る工程;ならびに
c)工程b)で得られた前記血小板および血小板セクレトームの懸濁液を遠心分離することにより、血小板由来セクレトームを回収する工程、
工程a)は室温で行い;
工程b)の温度は35~40℃であり;ならびに
工程c)は室温で行い、
前記方法は、血小板凝集阻害剤を使用しないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記血小板を含む生物学的供給源、または前記多血小板試料が哺乳動物由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)における前記血小板アゴニストが、トロンビン受容体活性化ペプチド6(TRAP6)、コンバルキシン、コラーゲン、ホルボール12-ミリスチン酸13-アセテート(PMA)、アグレチンA、アデノシン二リン酸(ADP)、エピネフリン、アラキドン酸およびトロンビンからなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
工程b)における前記アゴニストが、TRAP6 100μM、コンバルキシン 0.625ng/mL、ホルボール12-ミリスチン酸13-アセテート 100ng/mL、アグレチンA 6.53nM、コラーゲン 30μg/mLおよびコラーゲン 90μg/mLから選択される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
工程c)の後に、前記血小板セクレトームを、濾過またはナノ濾過により滅菌する、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
工程c)の後に、前記セクレトームを、凍結、凍結乾燥、フリーズドライ、脱水、カプセル化またはナノカプセル化により保存する、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
工程c)の後に、前記セクレトームがナノカプセル化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項
1に記載の方法により得られた、血小板由来セクレトーム。
【請求項9】
前記血小板アゴニストがTRAP6 100μMであるとき、前記セクレトームが、548.5pg/mL~912.7pg/mLのFGF-23と、221.1pg/mL~404.3pg/mLのG-CSFと、181.9pg/mL~296.1pg/mLのGM-CSFと、95.2pg/mL~130.7pg/mLのHGFと、972.4pg/mL~17119.7pg/mLのPDFF-BBと、119.4pg/mL~404.3pg/mLのTPOと、185.3pg/mL~239.2pg/mLのVEGF-Aと、33.7pg/mL~72.7pg/mLのVEGF-Dとを含む、請求項8に記載の血小板由来セクレトーム。
【請求項10】
前記血小板アゴニストがコラーゲン 30μg/mLであるとき、前記セクレトームが、567.8pg/mL~882pg/mLのFGF-23と、235.1pg/mL~414.8pg/mLのG-CSFと、191.4pg/mL~269pg/mLのGM-CSFと、87.7pg/mL~132pg/mLのHGFと、766.3pg/mL~16946.5pg/mLのPDFF-BBと、90.1pg/mL~338.9pg/mLのTPOと、164.9pg/mL~214.2pg/mLのVEGF-Aと、31.5pg/mL~59.7pg/mLのVEGF-Dとを含む、請求項8に記載の血小板由来セクレトーム。
【請求項11】
培養培地および/または培養培地サプリメントとしての、請求項
8に記載の血小板セクレトームの使用。
【請求項12】
請求項
8に記載の血小板セクレトームを含む、医薬組成物。
【請求項13】
許容される医薬アジュバント、許容される医薬ビヒクル、および/または別の有効成分をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
再生医療および組織損傷の治療における医薬品として使用するための、請求項
8に記載の血小板セクレトームまたは請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記使用は、再生医療における、普遍的または同種の治療のための使用である、請求項14に記載の、使用のための血小板セクレトーム。
【請求項16】
前記血小板セクレトームがナノカプセル化されている、請求項14に記載の、使用のための血小板セクレトームまたは医薬組成物。
【請求項17】
先端紅痛症、末梢動脈疾患、腎動脈狭窄症、バージャー病、レイノー病、播種性血管内凝固症、脳血管疾患、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、T細胞性リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、全身性エリテマトーデス、強皮症、溶血性貧血、血管炎、1型糖尿病、バセドウ病、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、ミオパチー、ライム病、血栓症、凝固異常症、急性外傷性凝固異常症、感覚調節障害、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、大腸炎、皮膚炎、憩室炎、線維筋痛症、肝炎、腎炎、パーキンソン病、皮膚疾患および潰瘍性大腸炎からなるリストから選択される疾患の治療における医薬品として使用するための、請求項
8に記載の血小板セクレトームまたは請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項18】
疾患の診断または予後のためのバイオマーカーを同定する方法であって、以下を含み:
a)請求項
1に記載の方法により、被験体の血小板由来セクレトームを得る工程;および
b)工程a)からの血小板由来セクレトームを、対照の血小板由来セクレトームと比較する工程、
ここで、前記対照の血小板セクレトームと比較して、工程a)で得られた前記セクレトームの成分が存在すること、存在しないこと、または濃度が変化することは、前記成分がバイオマーカーであることを示すものであり;
ここで、前記セクレトームの成分は、カスパーゼ-3、CD40L、EGF、FGF-2、FGF-23、G-CSF/CSF-3、GITRL、GM-CSF、グランザイムB、Gro-α、HGF、ICAM-1、IFN-γ、IL-10、IL-1a、IL-1b、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-1、MCP-2、MCO-3、MIP-1α、MIP-1β、オステオポンチン、PDGF-BB、PECAM、P-セレクチン、RANTES、SDF-1、TGF-β、TNF-α、TPO、VECAM-1、VEGF-AおよびVEGF-Dからなる群から選択されることを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記セクレトームの成分が、少なくともFGF-23、G-CSF、GM-CSF、HGF、PDGF-BB、TPO、VEGF-AおよびVEGF-Dであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【国際調査報告】