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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】歯科用インプラント組立体
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513901
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022074075
(87)【国際公開番号】W WO2023031195
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21194850.0
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21200917.9
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
【住所又は居所原語表記】CeramTec-Platz 1-9, D-73207 Plochingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ユースチェック・マテウシュ・マリア
(72)【発明者】
【氏名】レンプ・アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA43
(57)【要約】
【課題】患者の顎骨に挿入される歯科用インプラント組立体を提供する。
【解決手段】本発明は、患者の顎骨に挿入される歯科用インプラント組立体1に関する。歯科用インプラント組立体1は、歯科用補綴物を保持するために用いられるものであり、該歯科用インプラント1を歯槽骨(すなわち、顎骨)に接続する本体3と、アバットメント2と、接続要素51と、を備える。本体3およびアバットメント2は、連結領域14,24をそれぞれ有する。これらの連結領域14,24は、境界面を共同で形成する。連結領域14,24の一方が凹状であり、他方が凸状であり、これらの連結領域の一部は、一致する形状となっている。アバットメント2と本体3は、接続要素51によって接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に顎骨内に導入される本体(3)であって、該本体(3)の歯冠側端(36)から根尖側端(32)の方向に延びる凹部(37)、および該凹部(37)を取り囲み凹状又は凸状に湾曲している、前記歯冠側端(36)の連結領域(14)を有する、本体(3)と、
前記本体(3)と揃えられる、根尖側の連結領域(24)を有し、該連結領域(24)が、前記本体(3)の前記連結領域(14)と対をなす凸状又は凹状の幾何形状を有している、アバットメント(2)と、
前記アバットメント(2)を前記本体(3)に留め固定する接続要素(51)と、
を備え、
前記本体(3)の前記連結領域(14)が、前記アバットメント(2)の前記連結領域(24)との境界面を形成し、凹状の連結領域の曲率が、凸状の連結領域の曲率よりも小さい、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記本体(3)および/または前記アバットメント(2)が、チタン、チタン合金、プラスチックまたはセラミックスからなる、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記本体(3)および/または前記アバットメント(2)が、セラミックス、好ましくは二酸化ジルコニウムまたは二酸化ジルコニウム合金、例えば酸化イットリウム安定化二酸化ジルコニウム(Y-TZP)、酸化アルミニウム強化二酸化ジルコニウム(ATZ)または酸化セリウム安定化二酸化ジルコニウムからなる、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項4】
請求項1から3に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記アバットメント(2)および前記本体(3)が、共通の材料で構成される、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記境界面(10)が、前記本体(3)の凸状の連結領域(14)および前記アバットメント(2)の凹状の連結領域(24)からなる、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、凹状の形状の前記連結領域および凸状の形状の前記連結領域(14,24)が、接触線(41)、好ましくは平面視で円状又は少なくとも略円状の接触線(41)を形成する、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記接触線(41)の直径が、平面視で前記本体(3)の連結部(35)の直径の40~99%である、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記アバットメント(2)の前記連結領域および前記本体(3)の前記連結領域(14,24)が、少なくとも1つの上昇部(7)および少なくとも1つの下降部(6)、好ましくは偶数の上昇部(7)および下降部(6)を有する、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項9】
請求項8に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記本体(3)の前記連結領域が、第1の上昇部(7)、第2の上昇部(7)、前記第1の上昇部(7)から前記第2の上昇部(7)までの間の第1の下降部(6)、および前記第2の上昇部(7)から前記第1の上昇部(7)までの間の第2の下降部(6)を有し、好ましくは、前記上昇部(7)同士および前記下降部(6)同士が正反対の場所にある、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記本体(3)の前記連結領域(14)の前記第1の下降部(6)の最も根尖側の点が前記第2の下降部(6)の最も根尖側の点よりも歯冠側にあり、かつ/あるいは、前記第1の上昇部(7)の最も歯冠側の点が前記第2の上昇部(7)の最も歯冠側の点よりも根尖側にある、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記接続要素(51)が、前記アバットメント(2)の歯冠側端(29)から根尖側端(27)にかけて前記本体(3)の前記凹部(37)内へと延びる前記アバットメント(2)の開口部(23)を貫通して導入される、外的な接続要素(51)である、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項12】
請求項11に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記接続要素(51)が、スクリューである、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項13】
請求項11または12に記載の歯科用インプラント組立体(1)において、前記外的な接続要素(51)が、プラスチック、好ましくはPE、PEK、PEKK、PEEKまたはCFKPEEK、極めて好ましくは繊維強化PE、繊維強化PEK、繊維強化PEKK、繊維強化PEEKまたは繊維強化CFKPEEKからなる、歯科用インプラント組立体(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの歯科用インプラント組立体(1)と、
少なくとも1つの歯科用補綴物と、
を備える、歯科用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医療分野に関し、患者の顎骨に挿入される歯科用インプラントについて説明する。本発明に係る歯科用インプラントは、歯冠である歯科用補綴物を受ける役割を果たす。歯科用インプラントは、該歯科用インプラントを歯槽骨(すなわち、顎骨)に接続する本体と、アバットメントと、接続要素と、を備える。アバットメントは、歯科用補綴物である歯冠をインプラントに接続する両面アダプタとして機能する。アバットメントは、接続要素によって本体に留め固定される。
【背景技術】
【0002】
先行技術からは、一部品又は二部品の歯科用インプラントが知られている。いずれも、根尖側端と歯冠側端との間を第1の長手軸線に沿って延びている。歯科用インプラントの根尖側の骨内部品となる本体は、患者の顎骨内に埋設されるように意図されている。
【0003】
歯科用インプラント治療は、患者の口腔内の1本以上の歯を人工部品によって修復することからなる。このような人工部品は、通常、歯科用インプラントと、該歯科用インプラントに固定接続される補綴歯冠とで構成される。歯科用インプラントは、歯冠に対する接続片と一体化してなる一体品として設計される場合がある。近年、二部品の歯科用インプラント方式が普及しつつある。二部品の歯科用インプラントは、一般的に、骨に係止される本体と、人工歯冠と歯科用インプラントの本体との接続片として機能するアバットメントとで構成される。本体の植込みは、基本的に、軟組織皮弁を挙上し、歯槽骨を削り、歯科用インプラント床を用意することで行う。そして、本体が挿入され、傷口の治癒過程を促すためにキャップが取り付けられる。これにより、傷口の封鎖が適切に行われる。治癒過程が終わると、キャップが取り外されて、アバットメントが適切な留め固定手段で本体にスクリュー固定及び/又はセメント固定される。そして、補綴歯である人工歯冠の取付けが可能となる。
【0004】
歯科用インプラントとしては、骨に完全に埋設されてボーンレベルと同じ高さ(骨付近配置)で終端するものや、さらには、ボーンレベルよりやや下方に終端するものも知られている。これらの歯科用インプラントは、ボーンレベルインプラントと称される。このようなインプラントでは、一般的に、2回法の術式が必要になる。ショルダーがボーンレベルよりも数ミリメートル上方に突出することで周辺組織の形成を促すインプラントは、ティッシュレベルインプラントと称される。
【0005】
ティッシュレベルインプラントは、根尖側の部品を長く設定することで、歯肉(軟)組織に接触するカラーを設けている。このようなティッシュレベルインプラントは、1回の外科手術で歯科用インプラントを挿入することができるため、通常、臼歯インプラントの位置に対して適用される。
【0006】
大半の歯科用インプラントでは、植込み状態で合わさることになる本体とアバットメントの各表面が、プラグとソケットの如く互いに嵌め込まれて噛み合い、相対回転できないように互いに調整されている。歯冠を確実にしっかりと着座させるためには、これら2つの部品を正確に位置決めし、確実に回転しないように接続する必要がある。アバットメントは、しばしば、凹部である座ぐり穴を該アバットメントの長手軸線に沿って有している。この凹部が、接続手段を受け入れる役割を果たす。
【0007】
基本的に、歯科用インプラントの製造には、チタン合金が使用される。というのも、このような金属は、歯科用インプラントの極めて小さい寸法に求められる高い必要精度の機械加工も、簡単に行うことができるからである。しかも、チタン合金は、その可塑的な自在性から、局所的な応力集中に寛容であるため、複合体に良好な機械的安定性と強固性をもたらす。
【0008】
しかしながら、歯科用インプラントの材料にチタン合金を使用することには欠点も伴う。一つは、その灰色の審美的側面であり、歯肉縁でそれが見えてしまう可能性があるという点である。他方で、金属イオンの放出と、その結果としての患者のアレルギー反応も、歯科用インプラント治療において増加している問題である。近年では、これらの欠点とセラミックス材料の昨今の進歩から、セラミックス製歯科用インプラントがさらなる発展を遂げている。
【0009】
本体とアバットメントとで構成される二部品のセラミックス製インプラントが幾つも提案されている。一部のものは、DE212013000248U1(特許文献1)に記載されているように、本体とアバットメントとの間に円錐状の接続部とスクリューを適用するとともに、境界面にポリマーセメントを適用している。こうすれば、対応する部品間で、セラミックスオンセラミックスの直接接触が生じない。対称的に、WO2018046148A1(特許文献2)では、セラミックス-セラミックスの接続部とプラスチック製スクリューとの併用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国実用新案第212013000248号明細書
【特許文献2】国際公開第2018/046148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
セラミックス製の本体がセラミックス製のアバットメントと接触することになる二部品の歯科用インプラントに関する先行技術では、懸念も存在する。例えば咀嚼時などに負荷がかかると、本体とアバットメントとの境界面が、例えば開いたり隙間が形成されたりする等の変化を生じる可能性がある。このような変化により、点荷重が許容可能な荷重レベルを超えて増大する可能性があり、それによって歯科用インプラントのマイクロクラック及び/又は故障が生じる場合がある。
【0012】
セラミックス-オン-セラミックスのソリューションにとって、本体とアバットメントとの境界面は依然として機械的な問題となっている。一部として、ねじ山、ロック、回転阻止などの必要な機能を組み込むための寸法面での制約により、機械的安定性が低下するという点が挙げられる。
【0013】
先行技術に鑑みて、位置精度の高い確実な境界面を有するとともに使用が簡単な、二部品の歯科用インプラントの改良品を提供することを、本発明の目的の一つとした。
【課題を解決するための手段】
【0014】
同目的は、請求項1に係る歯科用インプラントおよび請求項15に係る歯科用キットによって達成される。従属請求項は、好適な実施形態を示す。実施形態同士は、互いに自由に組み合わせることも可能である。
【0015】
本発明に係る歯科用インプラントは、本体と、該本体と対応する境界面を有するアバットメントと、これら本体とアバットメントとを形状係合による接続によって互いに保持する接続手段と、を備える。本体は、人工歯根を形成する。本体は、歯槽骨に植え込まれる。本体は、該本体の根尖側端(すなわち、歯槽骨に挿入される端部)に位置した軸部、該本体の歯冠側端にある連結部、および前記連結部から該本体内を前記軸部の方向に延びる凹部を有する。
【0016】
植込み状態では、前記アバットメントが、上部の歯冠側部分にて、補綴物である人工歯冠又は歯科用補綴物に接続され、下部の根尖側部分にて、前記本体の歯冠側端に着座する。
【0017】
一実施形態では、前記アバットメント自体が、前記接続要素を構成する(以降、このような場合には、内的な接続要素と称する)。すなわち、前記アバットメントの根尖側領域が延長されており、これが前記本体の前記凹部内へと延入することで、前記アバットメントの係止が付加的に行われる。
【0018】
好ましい一実施形態では、前記接続要素が、前記アバットメントに留め固定されない。このようなアバットメントは、該アバットメント上部の歯冠側部分から該アバットメント下部の根尖側部分にかけて該アバットメントを貫通して延びる開口部を有している。該アバットメントを前記本体に留め固定する外的な接続要素が、この開口部を貫通して導入される。該外的な接続要素は、そのアバットメントの前記開口部を貫通して前記本体の前記凹部内に挿入される。
【0019】
前記アバットメント下部の根尖側部分である前記連結領域と、前記本体の歯冠側端である前記本体の前記連結領域は、対応し合う形状係合境界面を有する。前記アバットメントの前記連結領域の幾何形状は、前記連結部の連結領域の幾何形状と対をなしている。前記境界面の一部の領域にて、前記アバットメントの前記連結領域の幾何形状は、前記本体の前記連結領域の幾何形状と一致するように構成されている。前記アバットメントの前記連結領域は、前記本体の前記連結領域によって受けられるように意図されている。取付け状態において、前記アバットメント下部の前記連結領域は、前記本体の前記連結部の前記連結領域に接続されて接触線を形成する。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記歯科用インプラントは、前記本体の外表面が歯槽骨に部分的にしか植え込まれず該インプラントの連結領域の少なくとも一部がボーンレベルを超えて突出するティッシュレベルインプラントである。さらなる実施形態において、前記インプラントは、骨に完全に埋設されるボーンレベルインプラントとして設けられ、そのため、前記本体の外表面は、歯槽骨内に完全に植え込まれる。
【0021】
一実施形態において、前記本体は、長手軸線方向の長さが5~30mmである。ここで、長さとは、長手軸線方向の最大範囲のことである。前記本体の長さは、好ましくは7~25mm、極めて好ましくは10~20mmである。いわゆる短寸の本体の場合は、長さが5~10mmとなり、長寸の本体の場合は、25mmを超える。
【0022】
前記本体の公称直径は、前記本体の前記連結部の最大平均として定義される。好ましくは、前記公称直径は、ボーン/歯肉のレベルの位置である。極めて好ましくは、前記本体の前記公称直径は、前記連結領域の真下の位置である。前記公称直径は、好ましくは8mm以下、好ましくは6mm以下、極めて好ましくは5mm以下の範囲内である。前記公称直径は、さらに好ましくは1mmを超え、極めて好ましくは2mmを超える。前記連結部の円筒状、楕円状などの形状に応じて、前記直径は、前記連結部の周にわたって一定または変化し得る。好ましくは、前記公称直径の中心点は、前記長手軸線上に位置している。好ましくは、前記本体の外形は、円錐状の部位及び/又は円筒状の部位及び/又はねじ山が設けられた部位を組み合わせたものである。好ましくは、前記本体の歯冠側端は円錐状又は円筒状である。さらに好ましくは、前記本体の根尖側端が、円錐状である。好ましくは、前記本体の根尖側端は、ねじ山が切られた少なくとも1つの部位および/または少なくとも部分的に有孔性である外表面を有する。
【0023】
一実施形態において、前記アバットメントは、長手軸線方向の長さが3~10mm、好ましくは5~9mm、極めて好ましくは4~8mmである。
【0024】
歯の解剖学的修復を可能にするために、前記アバットメントは、長寸の円筒形状以外の形状とされてもよい。前記アバットメントは、その長手軸線に対して傾いた領域を含み得る。
【0025】
好ましくは、前記アバットメントの直径は、前記インプラントの長手軸線に沿って変化する。前記アバットメントの最大直径は、好ましくは8mm以下、極めて好ましくは6mm以下、特に好ましくは5mm以下の範囲内である。好ましい一実施形態において、前記アバットメントの最大直径は、1mmを超える。極めて好ましい一実施形態において、前記アバットメントの最大直径は、2mmを超える。好ましくは、前記アバットメントの外形は、円錐状、円筒状、または少なくとも部分的に円錐状もしくは円筒状である。
【0026】
好ましい一実施形態において、前記アバットメントの最大直径は、前記アバットメントの根尖側端にある前記アバットメントの前記連結領域の真上の位置である。
【0027】
前記アバットメントの根尖側部分の直径は、前記本体の歯冠側部分の直径と同一であってもよいし、それより大きくても小さくてもよい。一実施形態において、前記アバットメントの根尖側部分の直径は、前記本体の歯冠側部分の直径と同一であるか、あるいは、僅かに大きいか又は小さく、それら2つの直径の差は10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内であり、これにより、前記本体と前記アバットメントは、組立て状態にて、前記境界面の領域で直径が急激に変化することなく、外表面が最大限滑らかに移り変わることになる。好ましくは、前記インプラント全体の外表面が最大限途切れなく確実に滑らかなものとなるように、前記アバットメントの根尖側領域の最大直径は、前記本体に接続される幾何形状と併せて、前記本体の前記連結部と同一の外形、例えば、同一の円筒形状とされる。また、前記本体の前記連結部の形状に応じて、前記アバットメントの直径は、前記本体の前記連結領域と対応する境界面となるように周にわたって一定または変化し得る。
【0028】
前記本体の外形及び前記アバットメントの外形として考えられ得る寸法や形状は、先行技術から知られている(例えば、円錐形状や、円状又は楕円状の底面を有する円筒形状等が挙げられる)。円や楕円などといった、角部を持たない基礎的な二次元幾何形状が好ましい。
【0029】
前記本体の前記軸部は、前記本体の長手軸線に沿って延びる。好ましくは、前記軸部は、根尖側部分から歯冠側部分にかけて前記長手軸線に沿って幅広になる。好ましくは、根尖側端の直径は、歯冠側端の直径よりも小さい。好ましい一実施形態において、前記連結部の形状は、円筒状、楕円円筒状または円錐状であり、別々の幾何形状の部片同士が長手軸線に沿って交互に配置されていてもよい。前記軸部は、緻密セラミックスで構成されるとともに巻線状(ねじ山)、有孔性、発泡性又は粗面状の表面を外表面に有し得る。骨細胞や歯肉組織の癒着を確実に優れたものにするため、該外表面の粗さRaは、好ましくは0.2~1.6μm、好ましくは0.5~0.8μmとされる。該外表面のこのような粗さは、前記本体の本体部分をサンドブラスト加工又はエッチング加工することによって達成することが可能である。また、該外表面は、少なくとも1つのねじ山および/または孔を有し得る。該ねじ山は、前記軸部の表面から、好ましくは0.2~1mm、より好ましくは0.5~0.8mm突設されている。前記軸部の外表面が有孔性のものである場合、孔の平均径は0.2~1mm、好ましくは0.5~0.8mmとされる。前記本体部分の有孔性の外表面にねじ山がさらに設けられていてもよいし、ねじ山が設けられた前記本体部分の外表面が少なくとも1つの有孔性部を含んでいてもよい。孔とねじ山の周回により、細胞がこのような構造の周囲や内部に成長することが可能となるため、骨内での前記軸部の保持が向上する。
【0030】
一実施形態において、前記軸部には、根尖側端から歯冠側端に向けて延在して前記本体の外表面の少なくとも一部を覆う雄ねじ部が設けられている。
【0031】
好ましくは、有孔性の外表面は、セラミックス発泡体で構成される。
【0032】
前記本体の前記連結部も、前記本体の長手軸線に沿って延びており、前記本体の歯冠側端を形成している。前記連結部は、円状又は楕円状の底面を有する円筒形状からなるとともに円錐状の部片を含み得る。好ましくは、前記本体の前記連結部は、円筒状又は円錐状である。極めて好ましくは、前記連結部は、円状の底面を有する円筒状である。前記連結部は、緻密(理論密度の95%超、好ましくは99%超)セラミックスで構成され得るとともに、有孔性、発泡性又は粗面状の表面を外表面に有し得る。骨細胞や歯肉組織の癒着を確実に優れたものにするため、該外表面の粗さRaは、好ましくは0.2~1.6μm、より好ましくは0.5~0.8μmとされる。該外表面のこのような粗さは、前記連結部をサンドブラスト加工又はエッチング加工することによって達成することが可能である。前記軸部についても述べたように、前記連結部の外表面は、ねじ山および/または孔を有し得る。
【0033】
前記アバットメントも、長手軸線に沿って延びる。前記アバットメントの形状は、円状又は楕円状の底面を有する円錐状又は円筒状であり得る。別々の幾何形状の部片同士が、交互に配置されていてもよい。前記アバットメントは、緻密セラミックスで構成されるとともに有孔性、発泡性又は粗面状の表面を外表面に有し得る。前記アバットメントの歯冠側端は、先行技術から知られているような、歯科用補綴物である歯冠との接続を確実にするための構成を具備している。
【0034】
前記本体と前記アバットメントは、いずれも、チタン、チタン合金、ポリマーまたはセラミックスから形成され得る。好適なポリマーは、PE、PEK、PEKK、PEEKまたはCFKPEEKであり、これらは、繊維強化したポリマーであるのが極めて好ましい。前記本体および/または前記アバットメントは、好ましくはセラミックス、極めて好ましくは二酸化ジルコニウムまたは二酸化ジルコニウム合金、例えば酸化イットリウム安定化二酸化ジルコニウム(Y-TZP)、酸化アルミニウム予備緊張二酸化ジルコニウム(ATZ)または酸化セリウム安定化二酸化ジルコニウムから作製される。好ましい一実施形態において、前記本体と前記アバットメントは、共通の材料からなる。
【0035】
植込み状態にて、前記アバットメントおよび前記本体は、一方が他方の上に配置され、前記アバットメントの下端部の根尖側端と前記本体の歯冠側端が、対応し合う境界面を形成して互いに接触する。前記インプラントは、接続要素で留め固定される。前記本体は、前記接続要素が挿入される凹部を有する。前記凹部である穴や空洞は、前記連結部内を前記本体の歯冠側端から前記本体の前記軸部の方向へと延びている。好ましくは、前記凹部は、前記本体の前記軸部内まで延びている。好ましい一実施形態において、前記凹部は、前記本体の中央に位置して歯冠側端から根尖側端の方向に長手軸線に沿って延びる中央凹部である。好ましくは、前記凹部は、前記本体の歯冠側端に円柱状の部分を含む。さらに好ましくは、同円柱の軸は、前記本体の長手軸線の一部となる。好ましくは、該円柱は、円状の底面を有する矩形柱である(ただし、楕円状又はその他の非円状の底面を有していてもよい)。前記凹部は、部分的に前記軸部内まで延びている。前記軸部は、前記本体の根尖側端で閉じている。好ましい一実施形態において、前記凹部は、前記本体の前記軸部の方向へと、前記本体の全長の3/4以下にわたって延びている。前記本体の長さのうちの根尖側端にある1/4は、中実であるように構成されており、すなわち、前記凹部は、前記本体のこの部位よりも前で終端している。前記凹部である穴は、さらに、ねじ山が切られた部位を内部に含み得る。好ましくは、該ねじ山が切られた部位は、前記凹部の根尖側端に設けられている。雌ねじ部を有する部位を含んでなる内部接続凹部は、前記本体に取り付けられた前記アバットメントを固定するのに使用される接続要素を収容するように意図される。
【0036】
前記凹部周囲の前記本体内部の最小壁厚は、好ましくは0.65mm以上、より好ましくは0.8mm以上、極めて好ましくは1mm以上である。
【0037】
前記連結部は、前記本体上部の歯冠側端の領域に位置している。前記本体の前記連結部は、前記本体の外表面と前記凹部との間に位置する連結領域を有する。該連結領域は、前記本体の外表面の縁部である外側遷移領域から、前記本体内部の前記開口部の縁部である内側遷移領域までの領域からなり、前記凹部を取り囲む。好ましくは、前記凹部内へと延入する縁部および/または前記本体の外表面へと延出する縁部は、前記連結領域が摩耗や損傷を生じないようにR部となっている。好ましくは、このような連結領域の表面は、0.05mm未満の公差で精密機械加工されており、また、焼成、研削又は研磨が施されていてもよい。
【0038】
前記連結領域は、凹状又は凸状に湾曲している。設計に応じて、前記縁部のR部のR径と、前記連結領域の凹状又は凸状のR径は、同一であってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、前記内側及び外側遷移領域のR径ならびにその間の部分のR径は、前記凹部周囲の前記連結領域の断面形状において一定であり、断続部を有さない。その結果、前記連結領域のどの点においてもR径は変わらない。
【0039】
好ましい一実施形態において、前記本体の前記連結領域は凹状に構成されており、各遷移領域のR径同士が前記連結領域で接線を呈するようにして合体する。R径同士が途切れなく互いに合体した凹面が形成される。
【0040】
一実施形態において、R部である各遷移領域は、内表面および外表面と合わさるようにして延在している。すなわち、尖りや段差のような遷移部がない完全なR部である連結領域が形成される。
【0041】
前記本体の前記連結部の前記連結領域は、凸状に構成されている場合、雄状の部分であるといえる。前記アバットメントの根尖側端の前記連結領域は、凹状となって、対応する雌状の部分が設けられる。これら2つの部分は、対応し合う境界面を形成する。
【0042】
前記本体の歯冠側端の雄状の連結領域は、前記アバットメントの根尖側端の雌状の連結領域によって受けられるように意図される。
【0043】
前記境界面の一部であるこのような凹状の連結領域は、前記アバットメント下部の領域、すなわち、取付け状態で前記本体と合わさることになる端部に位置する。前記アバットメントの前記連結領域は、前記アバットメントの外側遷移領域である外表面から、外的な接続要素用の前記開口部である内側遷移領域までの位置である。前記アバットメントが接続要素と一体化したものである場合の前記内側遷移領域は、前記連結領域からその一体型の接続要素までの間の位置になる。
【0044】
好ましくは、前記アバットメントの内側および外側遷移領域も、該アバットメントが摩耗や損傷を生じないようにR部となっている。前記アバットメントの前記連結領域は、前記内側の遷移領域から前記外側の遷移領域まで延在している。このような領域は、前記本体の前記連結領域の形状と対をなす凹状又は凸状であり得る。前記本体の連結領域は、凸状である場合、前記アバットメントの凹状の連結領域と対応し、凹状である場合には、前記アバットメントの凸状の連結領域と対応する。各遷移領域のR部のR径と、前記連結領域の凹状又は凸状の形状のR径は、同一であってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、前記内側及び外側遷移領域のR径ならびに前記連結領域のR径は、前記開口部周囲又は前記接続要素周囲の前記連結領域の断面形状において一定であり、断続部を有さない。
【0045】
前記アバットメントの前記連結領域の幾何形状は、前記本体の前記連結領域の幾何形状に合わせて調整され、その設計に沿ったものとなる。前記本体の前記連結領域の幾何形状が該本体の周にわたって一様なものである場合、前記アバットメントの前記連結領域の幾何形状も同じく該アバットメントの周にわたって一様に形成される。
【0046】
前記アバットメントの凸状の連結領域と前記本体の凹状の連結領域が、前記境界面を形成する。凸状又は凹状に構成された前記本体の前記連結領域と前記アバットメントの前記連結領域が互いに接触し、接触線を形成する。該接触線が形成される理由は、合わさることになる2つの連結領域が湾曲しており、凸状の連結領域の曲率度が凹状の連結領域よりも大きいからである。これら2つの連結領域は、前記本体と前記アバットメントが互いに合わさってから接触線が生じるように構成されている。本発明に係る境界面は、組立て後に接触線が生じるものである。これにより、個々の接触点に荷重ピークが発生し得るということがなくなる。
【0047】
長手軸線に沿った平面視で、前記接触線は、円状、楕円状または双曲線状に見えるか、あるいは、尖りのない自由形状として、変則楕円または非正円に相当する。好ましくは、前記接触線は、円状、少なくとも(製造公差内の)略円状、または正楕円状である。好ましくは、各連結領域は、互いに接触することで、閉じた接触線を形成する。すなわち、前記本体と前記アバットメントは、前記連結領域内で合わさって、例えば連結領域内の凹所や切欠きによる(製造公差以外の)意図せぬ断続部を持たない閉じた接触線を形成する。なお、製造公差は、閉じた接触線中に極めて小さいズレや不一致を生じさせる場合がある。好ましい一実施形態において、前記接触線は、円状または少なくとも(製造公差内の)略円状である。これにより、前記インプラントの製造および挿入が容易になる。また、接触線を円状とすることにより、前記アバットメントが前記本体に対して自動的に心合わせするようになる。
【0048】
好ましい本実施形態において、前記接触線の直径は、平面視で、すなわち、該接触線を平面上に投影した場合に、前記本体の公称直径の99%~40%である。前記本体の公称直径とは、前記本体の前記連結部の最大直径のことである。前記接触線の直径は、好ましくは前記本体の公称直径の95%~65%、好ましくは90%~80%である。
【0049】
一実施形態において、前記アバットメント及び本体の、凹状及び/又は凸状の連結領域は、互いに非平行に延びる自由曲線である。凹状の連結領域は、凸状の連結領域よりもやや湾曲が小さい。これにより、凹状の連結領域により形成された空間内に凸状の連結領域が確実に収まる。アバットメントと本体の組立て状態において、上記の各連結領域は、それらの両端部である内側遷移領域及び外側遷移領域にて、互いに距離を隔てて配置される。これら内側および外側遷移領域を起点として、同距離は、組立て状態において前記連結領域同士が接触して前記接触線が生じる各連結領域の中心に向かう方向に行くにつれて減少する。他の実施形態において、凹状の連結領域および凸状の連結領域は、双曲線状の部分同士であるか、あるいは、楕円の直径部分同士である。
【0050】
一実施形態において、2つの屈曲又は湾曲した連結領域同士の、内側遷移領域から外側遷移領域までの距離にわたる凹状及び凸状の各領域の屈曲や曲率の差は、(0.05mm以下が好適である)製造公差の2倍以上、好ましくは5倍以上であり、かつ、凹状の連結領域が凸状の連結領域よりも屈曲又は湾曲が小さい。これにより、前記連結領域間の線接触が確実なものとなる。本発明では、前記アバットメントの前記連結領域の幾何形状と前記本体の前記連結領域の幾何形状が異なる。幾何形状のズレは、少なくとも、組立て状態において線接触が生じる程度のズレとされる。このとき、連結領域同士の幾何形状のズレが設計に起因するものであるのか製造時の公差に起因するものであるのかは重要でない。連結領域同士の屈曲の差が小さ過ぎる場合には、線接触ではなく面接触が生じることになり得る。面接触の力のかかり方などの特性は、線接触のそれとは異なるものになり、境界面を信頼高く恒久的に用いるには不利である。セラミックス材料からなる本発明に係るインプラントでは、線接触を設定している。
【0051】
好ましい一実施形態では、凹状の連結領域も凸状の連結領域も、断面が円弧状である。前記凹状の連結領域を形成する円弧に対応する円の中心は、前記凸状の連結領域を構成する部分の内側に位置する。前記凸状の連結領域を形成する円弧に対応する円の中心は、前記凹状の連結領域を構成する部分の仮想延長線の内側に位置する。いずれの円弧も、R径を有する。前記凹状の連結領域を形成する円の半径は、前記凸状の連結領域を形成する円の半径よりも0.1~10%、好ましくは1~5%大きい。好ましい一実施形態において、前記凸状の連結領域のR径は、前記本体の公称直径の10~50%の範囲内である。
【0052】
組立て状態において、各連結領域の両端部同士は、互いに距離を隔てて配置されることになる。該距離は、各連結領域の外側遷移領域と内側遷移領域とにそれぞれ存在する。該距離、つまり、該距離により形成される隙間は、出来る限り小さいのが好ましい。これは、前記凸状の連結領域の屈曲を前記凹状の連結領域よりも僅かに強くするだけで達成される。本発明において、各連結領域は、前記アバットメントと前記本体とが組み立てられたときに遷移領域でのこれら連結領域間の距離、すなわち、各連結領域の端部領域同士の距離を出来る限り小さくしながら接触線が生じるように構成されている。前記凹状の連結領域及び前記凸状の連結領域を円状の幾何形状とした一実施形態では、これが、それら凸状の連結領域と凹状の連結領域の公称R径を互いに僅かにずらすだけで達成される。前記凸状の連結領域のR径は、前記凹状の連結領域により形成された空間内に該凸状の連結領域が確実に収まるように前記凹状の連結領域のR径よりも小さくする必要がある。凸状のR径:凹状のR径の比は、好ましくは凹状のR径の0.8~0.999:1、より好ましくは0.9~0.98:1、極めて好ましくは0.94~0.96:1である。一実施形態において、2つのR径の差は、前記製造公差(例えば、0.05mm)の5倍、好ましくは10倍であり、かつ、凹状のR径は凸状のR径よりも大きく、これにより、線接触が確実なものとなる。
【0053】
上記の仕様による凸状の連結領域と凹状の連結領域とで構成される本発明に係る境界面は、焼結時の収縮および/または研磨時の薄肉化のような、セラミックス製品の製造において存在するパラメータに関係なく有利である。本発明に従って設計された2つの連結領域は、線接触を常時形成する。中心部分が円周状となる連結領域の場合、平面視で、前記接触線が円を形成する。該円は、前記本体の前記凹部と前記アバットメントの前記開口部又は前記接続要素とを取り囲む。本発明に係るこのような境界面は、
-各連結領域、つまり、前記アバットメントおよび前記本体を、応力や荷重から保護し、
-2つの接触部分同士が自動的に心合わせすることを確実にする。
【0054】
一実施形態において、本発明に係る境界面は、歯科用インプラント組立体の長手軸線を中心として対称的に配置される。凸状の連結領域と凹状の連結領域とにより形成される接触線は、一つの平面上に位置する。該平面は、長手軸線と直交するか又は長手軸線に対して傾いたものであり得る。
【0055】
他の実施形態において、本発明に係る境界面の前記アバットメントと前記本体との接触線は、少なくとも1つの領域にて、前記歯科用インプラント組立体の長手軸線と直交に向いた平面から離れて位置する。つまり、同接触線は、該平面に対して少なくとも1つの谷部である下降部および少なくとも1つの山部である上昇部を含む。前記本体の前記連結領域における下降部は、前記アバットメントの前記連結領域における上昇部に対向して設けられる。前記本体の前記連結領域における下降部の最も深い点は、その連結領域が凸状であれ凹状であれ、長手軸線と直交する任意の平面と交わる該連結領域の点のうち、該連結領域の断面形状で両隣りとなる各点と交わる平面からみて、前記本体の根尖側端の方向へと最も遠くに離れた点のことを表す。上昇部の最も高い点は、下降部と対をなす部位であり、かつ、その連結領域が凸状であれ凹状であれ、長手軸線と直交する任意の平面と交わる該連結領域の点のうち、該連結領域の断面形状の両隣りとなる各点と交わる平面からみて、前記本体の歯冠側端の方向へと最も遠くに離れた点のことを表す。同じことは、前記アバットメントの連結領域における上昇部や下降部にも適宜当てはまる。このように、下降部や上昇部の最も深い点や最も高い点は、それぞれ頂点を表す。
【0056】
上昇部および下降部を含む一実施形態において、前記接触線は、長手軸線に対して傾いて設けられる。接触線が傾いて設けられる場合、それに伴って剪断力も発生し得ることから、前記アバットメントと前記本体との接続を安定させるには、前記接続要素(好ましくはスクリュー)の長さを、その直径の1.5倍以上にする必要がある。
【0057】
好ましい一実施形態において、前記連結領域の断面形状は、複数の下降部、上昇部、好ましくは2つ、3つ又は4つの下降部、上昇部を有する。偶数の下降部、上昇部がさらに好ましい。好ましい一実施形態では、前記連結領域のこれら下降部と上昇部との間の距離が対称的である。すなわち、各下降部とそれに続く上昇部(および各上昇部とそれに続く下降部)との間の距離は同じである。一実施形態において、前記本体の前記連結領域は、第1の上昇部、第2の上昇部、前記第1の上昇部から前記第2の上昇部までの間の第1の下降部、および前記第2の上昇部から前記第1の上昇部までの間の第2の下降部を有し、好ましくは、前記上昇部同士および前記下降部同士が互いに正反対の場所にある。同じことは、前記本体と幾何形状が対応していることを前提として、前記アバットメントにも適宜当てはまる。
【0058】
極めて好ましい一実施形態では、前記連結領域が、2つの下降部および2つの上昇部を有する。好ましくは、該連結領域が、対称的である。すなわち、該連結領域において、下降部同士および上昇部同士が互いに反対側に設けられている。このように設計された連結領域は、回転阻止手段としても自己固定要素としても機能する。組立ての過程では、前記本体及び前記アバットメントの下降部と上昇部とが揃えられてから、前記接続要素が前記アバットメントの前記開口部を貫通して前記本体の前記凹部へと導入されて前記本体の内部に留め固定される。前記接続要素の留め固定が済んだ後に、回転運動を行おうとすると、前記連結領域で前記アバットメントを上下に変位させなければならず、すなわち、回転が可能となるには、前記アバットメントが前記下降部と上昇部を乗り越えるように上方に動かなければならないため、前記本体上での前記アバットメントの回転は排除される。このような上下変位は、前記接続要素によって阻止される。また、組立て時には、前記上昇部と下降部とが噛み合うまで、すなわち、一方の連結領域の上昇部が他方の連結領域の下降部に「掛止め」されるまで、前記アバットメントが前記本体上で該アバットメントの径方向に動かされる。先行技術の接続要素は、留め固定の役割に加えて、回転を阻止する役割も果たすため、しばしば非円状の外形を有する。上昇部および下降部を有する上記の実施形態の本発明に係る組立体では、前記連結領域の形状だけで回転阻止を確保している。前記接続要素は、前記アバットメントと前記本体とを固定する役割のみを担っている。前記接続要素は、追加で回転阻止を行う必要がない。そのため、前記接続要素(好ましくは、スクリュー)の外形(好ましくは、ねじ山を有する外形)の断面を円状、すなわち、スクリュー本体を円錐状又は円筒状とすることが可能になる。このような設計により、前記接続要素の形状を、最大限の直径を有する堅牢な形状に構成することが可能になる。接続要素の直径を最大限大きくすると、予備緊張が増すため、より高い曲げ強度と安定性を達成することができる。
【0059】
回転対策付きの接続要素は、少なくとも1つの位置にて周が減少する。結果として、断面が円状の場合の断面に比べて小さくなり、全体として接続要素の安定性の低下に繋がる。
【0060】
さらに好ましい実施形態において、前記下降部および上昇部は、埋込み状態の外観が審美的に美しくなるように自然な歯肉線に沿ったものとされる。そして、好ましい一実施形態では、人工歯又は歯冠を前記アバットメントに留め固定するだけでよく、人工歯又は歯冠で前記本体を隠す必要はない。前記本体を顎骨内に配置する際に、それによって歯肉線の変化や修正が伴うことはなく、自然な見た目が維持される。このような実施形態では、長手軸線と直交に位置する同じ平面上に2つ以上の下降部を配置しない。下降部が配される各平面は、互いに距離を隔てて位置する。一方の平面は、他方の平面よりも根尖側端の方向に離れて位置する。前記本体の前記連結領域において2つの上昇部および2つの下降部が存在する場合、一方の下降部の頂点は他方の下降部の頂点よりも歯冠側に位置する。他の実施形態において、一方の上昇部の頂点は他方の上昇部の頂点よりも根尖側にある。これらの頂点は、諸要件に従って配置され得る。いずれの頂点も、前記歯科用インプラント組立体の長手軸線から距離を隔てて位置し得る。そして、各々の頂点は、長手軸線と直交方向に互いに離間した各平面上に配される。同じことが、前記アバットメントの前記連結領域の上昇部及びその断面形状にも適宜当てはまる。本発明に係る本体の連結領域とアバットメントの連結領域は、植込み状態において互いに噛み合って互いにロックするように形成されている。これにより、取付け状態では、前記アバットメントと前記本体との間に、連続した接触線が形成される。植込み状態において最も深い頂点が頬側に位置する場合、顔の正面を審美的に確実に美しくすることができる。口腔側も自然な歯肉線に合わせれば、本発明に係る歯科用インプラント組立体は自ずと現実を反映したものになる。つまり、患者の違和感が最小限となり、理想的にはゼロになる。
【0061】
個々の下降部と上昇部との差は、好ましくは0.1~2mm、より好ましくは0.3~1mm、極めて好ましくは0.3~0.5mmである。一実施形態において、隣合う頂点間の距離(すなわち、直隣りに位置する下降部と上昇部との間の距離)と前記接触線の直径との比は、0.025~0.5:1である。
【0062】
好ましくは、前記頂点間の断面形状は滑らかで且つ湾曲しており、すなわち、鋭い尖りや段差がない。
【0063】
前記アバットメントは、接続要素によって前記本体に留め固定される。前記接続要素は、前記アバットメントに予め留め固定された内的な接続要素であってもよい。該接続要素は、前記連結領域に取り囲まれており、かつ、前記本体内の前記凹部に導入して該凹部に留め固定することができるように前記連結領域から突出している。好ましくは、内的な接続要素は、接着剤やセメントのような歯科用留め固定手段である追加の接着性物質によって前記凹部内に留め固定される。
【0064】
好ましい一実施形態では、前記接続要素が、前記アバットメントに留め固定されていない。該接続要素は、外的な接続要素である。前記アバットメントは、接続要素の挿通用の開口部を有する。該開口部は、前記アバットメントを根尖側から歯冠側の部分まで貫通して延びている。好ましくは、前記外的な接続要素はスクリューであり、該スクリューが前記本体の前記凹部のうちのねじ山が切られた部位に螺合する。前記アバットメントの前記開口部は、前記接続要素と合致することで前記アバットメントの締まり嵌めおよび確実な留め固定を確実に行う保持手段を有している。好ましくは、前記開口部内に、前記アバットメントの壁から該開口部内に突出した少なくとも1つの凸部が設けられている。取付け状態において、前記少なくとも1つの凸部は、前記外的な接続要素の所定の領域(例えば、スクリューの頭部等)と接触する。好ましくは、前記凸部は、前記接続要素の前記領域と前記アバットメントとの接触面積を最大限確保するように傾斜している。好ましい一実施形態において、前記凸部は円錐状である。前記凸部は、前記アバットメントの歯冠側の部分から根尖側の部分にかけて延在しており、該根尖側の部分に向かうにつれて前記開口部の直径を減少させる。
【0065】
好ましい一実施形態において、前記外的な接続要素の頭部と前記アバットメントにおける対応する保持要素(好ましくは、前記凸部)は、該接続要素の軸部近傍で円状の接触線を形成する。これにより、前記留め固定要素を留め固定するのに適用しなければならない挿設時のトルクを増大させることができる。このような接触線は、前記アバットメントの前記開口部の円錐状の凸部と、前記外的な接続要素の頭部(好ましくは、スクリューの頭部)の凸R部とによって実現され得る。変形例として、上記の幾何形状である円錐状の凸部は、前記接続要素に設けられてもよい。そして、前記凸R部は、前記アバットメントの前記凸部に設けられる。上述の幾何形状同士がどのように配置されるとしても、前記歯科用インプラント組立体を固定するうえで前記接続要素と前記アバットメントとの接触線が円状になることは有利である。
【0066】
前記接続要素は、先行技術から選ばれるどのような接続要素であってもよい。前記接続要素は、例えば、スクリュー、バヨネットロック、ボルト、固定ピン等であり得る。前記アバットメントを前記本体に固定するスクリューが好適である。
【0067】
好ましくは、前記外的な接続要素は、スクリューである。該スクリューは、前記アバットメントの前記開口部に嵌め込まれて該アバットメントを前記本体に留め固定するような形状とされる。好ましくは、前記スクリューの頭部は、前記開口部に嵌め込まれて前記開口部及び/又は前記開口部の内部に存在し得る保持要素と摩擦係合によって接続可能であるように円錐状又は凸状に形成されている。さらに好ましくは、前記スクリューは、前記本体の前記凹部の内部に存在するねじ山と相互作用するねじ山を有している。
【0068】
前記外的な接続要素(好ましくは、前記スクリュー)は、金属、金属合金、セラミックスまたはプラスチックからなる。好ましくは、前記外的な接続要素または前記スクリューは、PE、PEK、PEKK、PEEKまたはCFKPEEKなどのポリマーで構成される。なおいっそう好ましくは、これらのポリマーが、繊維強化ポリマーである。好ましい一実施形態では、前記本体および前記アバットメントがセラミックスで構成され、前記外的な接続要素(好ましくは、前記スクリュー)がプラスチック、好ましくは、上に列挙したポリマーで構成される。
【0069】
好ましくは、前記本体の長手軸線に沿った前記スクリューの最大広がりは、該スクリューの最大直径の1.5倍以上、好ましくは2倍以上である。
【0070】
一実施形態では、前記スクリュー及び/又は前記アバットメント及び/又は前記本体に接着性物質を塗布することにより、前記スクリューの留め固定のさらなる増強が行われ得る。好ましくは、該接着性物質は、歯科用留め固定手段、歯科用接着剤または歯科用セメントである。
【0071】
好ましい一実施形態では、前記アバットメントの係止が、前記外的な接続要素単独で、すなわち、接着剤やセメントなどの接着性物質を使用することなく完全に機械的にのみ行われる。
【0072】
本発明のさらなる態様では、
-前述の歯科用インプラント組立体と、
-歯科用補綴物である人工歯冠と、
を備える、歯科用キットが提供される。
【0073】
前記歯科用キットは、歯を完全に取り換えることを目的としたものである。取付け状態において、前記歯科用補綴物は、前記アバットメントと接触している。また、特にティッシュレベルインプラントの場合には、前記歯科用補綴物が必要に応じて前記本体とも接触している場合がある。前記歯科用補綴物は、前記歯科用インプラント組立体の少なくとも一部を覆う。好ましくは、前記歯科用補綴物は、前記歯科用インプラント組立体のうち、歯肉から突出している部位を覆う。ティッシュレベルなのかボーンレベルなのかといったインプラントの種類に応じて、前記アバットメント(ティッシュレベル)のみ、あるいは、前記アバットメントと前記本体(ボーンレベル)とが覆われる。
【0074】
本発明に係る歯科用インプラント組立体は、先行技術で知られている製造方法によって(例えば、一般的なCNCミリングマシンや、CIMなどの成形方法を用いて)製造が可能である。前記接続要素は、先行技術から知られている歯科用インプラントに比べて断面が小さいため、本体直径を3.5mm未満にしつつ、依然として安定性や力による外傷への耐性を確保した、歯科用インプラント組立体を実現することが可能となる。よって、本発明に係る歯科用インプラント組立体は、切歯の取換えにも使用することができる。
【0075】
本発明は、
-前記連結領域内に前記接触線が位置するため、2つの部品同士の互いの圧力が、前記内側遷移領域の縁部や前記外側遷移領域の縁部から遠ざけられ、
-凹状と凸状の連結領域同士によって点荷重が最小限に抑えられるとともに、接触線に沿って確実に荷重が伝達するため、インプラントをセラミックスオンセラミックスのものとすることが可能となり、
-各遷移領域の縁部がR部であることで、切り傷による負傷が防がれるとともに、安定性が向上し、摩耗も減少するという点で、
セラミックスに最大限優しく荷重を伝達することができる、対応し合う境界面の最適な幾何形状を提案する。
【0076】
また、本発明に係る歯科用インプラント組立体では、前記本体と前記アバットメントとの接触ゾーン(連結部)に回転阻止機能を組み込んでいることで、接続要素を、スクリューのように大径の、より安定したものにできるため、歯科用インプラント組立体の安定性が向上する。
【0077】
また、
-前記境界面の連結領域同士が対応関係にあることにより、前記接続要素への留め固定時に前記アバットメントが前記本体上で自動的に心合わせされ、
-前記連結領域が下降部-上昇部の断面形状を有していることで、前記アバットメントが前記本体上で自動的にロックされるという仕組みが得られ、
-前記連結領域の幾何形状に2種類の異なる上昇部、下降部を含めることで、審美的に美しい外観とすることが可能となり、
-前記本体や前記アバットメントの遷移領域がR部となっていて歯肉組織が保護されるため、患者に炎症や違和感が生じないという理由からも、
本発明は有利である。
【0078】
まとめると、本発明では、患者の顎骨に適用される歯科用インプラント組立体1について説明する。本発明に係る歯科用インプラント組立体1は、歯科用補綴物を受ける役割を果たし、歯科用インプラントを歯槽骨(すなわち、顎骨)に接続する本体3と、アバットメント2と、接続要素51と、を備える。本体3およびアバットメント2は、連結領域14,24をそれぞれ有する。これらの連結領域14,24は、境界面を共同で形成する。連結領域14,24の一方は凹状であり、他方は凸状であり、これらの連結領域の一部は、一致している。アバットメント2と本体3は、接続要素51によって接続される。
【0079】
以下では、図面を参照しながら、本発明について説明する。各図は、本発明を概略的に切り取ったものであり、本発明を説明するための例示として使用する。本発明の具体的な実施形態は、これらの図と異なり得る。図中の本発明に係る歯科用インプラント組立体は、概略的にスケッチしたものを記載している。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明に係る歯科用インプラント組立体の断面図である。
図2図1の歯科用インプラント組立体の斜視図である。
図3図2の歯科用インプラント組立体の線I-I’に沿った断面図である。
図4】本体とアバットメントとの接触領域の詳細図である。
図5】境界面の領域の形状が非対称な歯科用インプラント組立体の斜視図である。
図6】本発明に係る歯科用インプラント組立体の、境界面の領域に上昇部及び下降部を有する本体の斜視図である。
図7図6の本体の断面図である。
図8】本発明に係る歯科用インプラント組立体のうちの、境界面の領域に2つの上昇部及び2つの下降部を有する本体の斜視図である。
図9図8の本体の断面図である。
図10】本発明に係る歯科用インプラント組立体のうちの、境界面の領域に3つの上昇部及び3つの下降部を有する本体の斜視図である。
図11図10の本体の断面図である。
図12】本体とアバットメントとの境界面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1は、本発明に係るインプラント組立体1の断面図である。該インプラント組立体は、本体3と、アバットメント2と、接続要素51と、を備える。組立て状態において、アバットメント2は、境界面10を介した形状係合によって本体3に接続している。本発明では、該境界面10が、アバットメント2を本体3に対して正確に位置決めすることのできる構造を有する。
【0082】
インプラント組立体1のこのような構造について、下記の図面で詳細に説明する。特に、境界面10の同構造に関して、本体3やアバットメント2の一方にあると後述している特徴は、それぞれ他方の部品に設けられてもよい。言い換えれば、特定の一実施形態として、後述する境界面10の特徴のうち、本体3に関する特徴を、アバットメント2に配置するようにしてもよい。その場合、後述するアバットメント2の特徴は、本体3に配置されなければならない。これにより、位置決めを確実に正確に行うことが可能になる。
【0083】
図2に、本体3とアバットメント2とを備える、本発明に係るインプラント組立体1を示す。本体3は、根尖側端32に軸部33を有する。軸部33は、長手軸線I-I’に沿って根尖側端32の方向に先細っており、図1の実施形態では円錐状となっている。本体3の歯冠側端36には、連結部35が設けられている。連結部35は、本体3の軸部33に一体的に繋がっており、境界面10の一部をなしている。歯冠側端36に位置する境界面10により、本体3をアバットメント2と噛み合うように位置決めすることができる。
【0084】
図3から見て取れるように、本体3は、歯冠側端36に凹部37を有する。凹部37内には、本体3とアバットメント2とを切離し可能に接続することが可能な接続要素51(図示せず)が配置される。図2及び図3の実施形態の連結部35は、対称的であり、歯冠側端36の境界面10に連結領域14を有する。該連結領域14は、連結部35の円筒最外縁から凹部37にかけて延在するものであり、対称的な断面形状を有する。連結部35から連結領域14への外側遷移領域342、および凹部37から連結領域14への内側遷移領域341は、R部であるのが好ましい。本体3の連結領域14は、凸状で形成されており、R径r3を有する。連結領域14は、境界面10の一部をなす。
【0085】
アバットメント2は、スリーブの形態で構成されている。アバットメント2は、穴の形態の貫通開口部23を有する。アバットメント2の根尖側端27には、境界面10の一部をなす連結領域24が設けられている。該連結領域24は、アバットメント2の円筒最外縁から貫通開口部23にかけて延在するものであり、対称的な断面形状を有する。アバットメント2から連結領域24への外側遷移領域242、および貫通開口部23から連結領域24への内側遷移領域241は、R部に構成されているのが好ましい。連結領域24は、凹状の形状であり、R径r2(図4)を有する。
【0086】
本発明では、R径r2とR径r3の値が異なる。凹状の連結領域24のR径は、凸状の連結領域14のR径よりも大きい。このため、アバットメント2と本体3とが互いに合わさった後は、円状の接触線41が生じる。該接触線41は、境界面10の領域に位置し、複数の点が互いに連なって形成されている。接触線41の直径5は、連結部35の直径313よりも小さい(図3)。直径5、直径313の各中心は、軸線l-l’上に配される。図2及び図3の実施形態では、長手軸線I-I’と直交する仮想平面9(図6)を基準として、該平面9から線接触41までの距離が一定となっている。言い換えれば、接触線41は、長手軸線l-I’と直交している。接触線41上の点は、いずれも、仮想平面9に対して同じ距離のところにある。
【0087】
図4から、接触線41が見て取れる。接触線41は、本体3とアバットメント2との互いの正確な位置決めを可能にする。R径r2とR径r3の値が異なるため、遷移部341,241、さらに、遷移部342,242の領域に隙間が生じる。遷移領域341,342は、図4から見て取れるように、鋭く尖るように構成されていてもよい。これは、遷移領域241,242にも当てはまる。遷移部341,241,342,242は、R部に構成されているのが好ましい。
【0088】
図4から見て取れるように、前記接触線を起点として、前記隙間は、前記遷移領域の方向に連続的に増加する。図4の実施形態では、凹状の連結領域14から遷移領域241,242に切り替わる部分の、前記長手軸線と平行に求められる隙間15の値(距離)が、0.05mm以下、好ましくは0.03mm以下、極めて好ましくは0.01mm以下である。
【0089】
図3は、本体3およびアバットメント2の断面図である。同図では、開口部23の形状を確認することができる。本体3をアバットメント2と合わせるために、例えばスクリュー等の接続要素51(図1)が、開口部23内に挿入される。接続要素51は、アバットメント2を貫通して本体3内へと延び、保持手段38によって該本体3内に留め固定される。この目的のため、本体3は、例えば雌ねじ部16の形態の保持手段38を有する。アバットメント3と本体3との接続を確実に安定に行うために、アバットメント2は、開口部23内に突出した少なくとも1つの凸部26を有する。図3の実施形態では、凸部26が、開口部23の全周にわたって延在している。該凸部は、円状に構成されており、アバットメント2の根尖側端27の方向に傾斜している。移行部(Phase)として構成されている凸部26は、円筒状部28に合流する。該円筒状部28は、接続要素51のガイド領域を形成しており、かつ、その直径は、アバットメント2の開口部23の歯冠側端29よりも小さい。凸部26は、接続要素51のうちの、対応する設計の領域に動作可能に接続されるようになっている。その結果、本体3とアバットメント2との接続が確実に安定に行われる。
【0090】
図5に、接続要素51を省略したインプラント組立体1を示す。本体3の連結領域14の連結部35を構成する境界面10は、非対称に構成されている。このため、連結領域14の接触線41は、長手軸線I-I’と直交に向いた平面9に対して傾くことになる(図7)。接触線41の個々の点は、仮想平面9に対する距離が様々である。距離は、一定に変化している。連結部35の歯冠側端29に平面9が位置していると仮定すると、接触線41は、平面9と交わる上昇部7を有する。接触線41の最も高い点7である該上昇部から始まり、接触線41の最も低い点の下降部6まで、傾斜が連続的に生じている。この点6で、平面9からの距離11は最大となる。最も低い点6を起点として、接触線41は最も高い点7まで連続的に上昇する。図5図6及び図7の接触線41は、点7に上昇部を、点6に下降部を有する。
【0091】
図8及び図9の実施形態の境界面10の接触線41は、2つの上昇部7(最も高い点)および2つの下降部6(最も低い点)を有する。それ以外は、上記の構成の説明が適宜当てはまる。
【0092】
図10及び図11に、本発明に係る歯科用インプラント組立体1の本体3を示す。その接触線41は、3つの上昇部7および3つの下降部6を有する。それ以外は、上記の構成の説明が適宜当てはまる。
【0093】
本発明に係る歯科用インプラント組立体1の境界面10の接触線41は、連結部35の歯冠側端29とアバットメント2の根尖側端27との相互作用によって形成される。本体3を一例として行った接触線41の形状についての上記の説明は、アバットメント2の接触線41にも適宜当てはまる。アバットメント2の根尖側端27と本体3の歯冠側端29は、径r2,r3の値が異なるだけで部分的には一致している。凸端の径は凹端の径よりも小さい。これは、凸状の部分や凹状の部分が(本体3とアバットメント2の)どちらの部品に設けられているのかにかかわらない。本体3とアバットメント2が互いに合わさることで、接触線41が生じる。
【0094】
図12は、組立て状態のアバットメント2および本体3の写真である。アバットメント2は、最大長さ(長手軸線I-I’に沿った広がり)が6mm、最大直径が3.9mmである。アバットメント2の下部は円筒状、上部は円錐状であり、長手軸心に沿って上部に向かうにつれて幅が小さくなる。本体3の連結部35は、円筒状である。本体3の長さは20mm、公称直径は4mmである。アバットメント2は、ISOM2のねじ山を有するスクリュー(図示せず)を用いて本体3に留め固定される。アバットメント2は凹状の連結領域24を有し、本体3は凸状の連結領域14を有する。これら凹状の連結領域と凸状の連結領域は、円弧状である。凹状の連結領域24の円の半径は1.1mmであり、凸状の連結領域14の円の半径は1.0mmである。連結領域14,24のR径の中心は、本体3内に配されており、かつ、本体3の連結部35の外周から0.5mmの距離に位置している。各連結領域、特には、接触線41が位置している領域は、グリーン状態で機械加工されている。焼成後の状態での平滑化や研磨の形態の追加の機械加工は、不要である。遷移領域241,242,341,342は、R径=0.05mmで設けられている。この歯科用インプラント組立体の各連結領域は、2つの上昇部7および2つの下降部6を有する。上昇部7は、下降部6と同様に、長手軸線と直交に配置された平面と交差している。各平面は、互いに距離を隔てて位置している。上昇部7の最大範囲と下降部6の最大範囲との間の距離は、0.6mmである。
【0095】
写真で見て取れるように、連結領域14,24には鋭い尖りや段差がない。いずれの領域も、組織や骨に点状の荷重が生じないように湾曲したR部に構成されている。これにより、炎症、負傷などの形態の違和感を実質的になくすことができ、理想的にはゼロにできる。本実施形態では、本体3の連結領域14が、該本体3の前記連結部の円筒状の表面に接線を呈するようにして合流している。
【符号の説明】
【0096】
1 インプラント組立体
2 アバットメント
3 本体
5 41の直径
6 41の下降部
7 41の上昇部
9 平面
10 境界面
11 距離
14 連結領域
15 隙間
16 雌ねじ部
23 開口部
24 連結領域
26 凸部
27 2の根尖側端
28 部
29 歯冠側端
32 3の根尖側端
33 軸部
35 連結部
36 歯冠側端
37 凹部
38 保持手段
41 接触線
51 接続要素
241 内側遷移領域
242 外側遷移領域
313 3の直径
341 内側遷移領域
342 外側遷移領域
I-I’ 長手軸線
II-II’ 軸線
r3 14のR径
r2 24のR径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】