(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】新規な組成を有するHDV対応の電気化学電極、構造及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20240829BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240829BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20240829BHJP
B01J 31/28 20060101ALI20240829BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20240829BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20240829BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20240829BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20240829BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240829BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240829BHJP
【FI】
H01M4/86 M
B01J37/02 301N
B01J23/42 M
B01J31/28 M
H01M4/86 H
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/90 M
H01M4/90 X
H01M4/88 K
H01M8/1004
H01M8/12 101
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513932
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 CA2022051326
(87)【国際公開番号】W WO2023028712
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514043207
【氏名又は名称】ブルー-オー テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルアン,ハイ シオン
(72)【発明者】
【氏名】ジルギス,エマド アズミー スルタン
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA12
4G169BA08B
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BA36A
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4G169FB77
4G169FB78
5H018AA06
5H018AS03
5H018BB01
5H018BB03
5H018BB07
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5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE10
5H018EE12
5H018HH00
5H018HH01
5H018HH03
5H018HH05
5H018HH08
5H126AA02
5H126BB06
(57)【要約】
意図された大型車両(HDV)用途のための優れた耐久性と持続的な触媒性能とを提供する新規な触媒層(CL)組成物及び構造。本発明のCLの組成物及び構造は、結合剤コーティングナノ粒子、結合剤非含有触媒ナノ粒子ならびに規則的な電気経路、イオン経路、ガス経路及び液体経路から構成される内部組成物と、複数の副層間で充填密度が異なる多層構造と、CLの外面の外部パターンとを含む。CLの耐久性及び触媒性能の向上が達成され、また、本発明のCLを使用することにより、新規な固体電解めっきプロセスが実証され、新規な薄膜コーティング触媒生成物が得られる。結合剤コーティングナノ粒子は、その結合剤コーティング表面にコーティングされていないナノ粒子が接着剤状に付着した相互接続基材または部位として機能し、結合剤非含有触媒ナノ粒子が結合剤コーティングナノ粒子とその凝集体との間に一貫して散在する規則的な構造を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層組成物であって、
結合基材としての結合剤でコーティングされた結合剤コーティングナノ粒子と、
少なくとも前記結合剤コーティングナノ粒子にその結合基材で付着した結合剤非含有触媒ナノ粒子と、
前記結合剤コーティングナノ粒子と前記結合剤非含有触媒ナノ粒子との相互接続によって少なくとも部分的に規定される、前記層内の規則的な電気経路、イオン経路、ガス経路及び液体経路と、
を含む、触媒層組成物。
【請求項2】
前記層内の前記規則的な電気経路、イオン経路、ガス経路及び液体経路を形成するために、前記結合剤非含有触媒ナノ粒子及び前記結合剤コーティングナノ粒子のいずれかまたは両方と付着した結合剤非含有導電性担持ナノ粒子を更に含む、請求項1に記載の触媒層組成物。
【請求項3】
前記結合剤非含有導電性担持ナノ粒子は非触媒導電性粒子である、請求項2に記載の触媒層組成物。
【請求項4】
前記結合剤コーティングナノ粒子は導電性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒層組成物。
【請求項5】
前記結合剤は溶液可溶性アイオノマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒層組成物。
【請求項6】
前記結合剤は、摂氏100度を超える動作温度に耐えることができる高温能力の溶液分散性結合剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒層組成物。
【請求項7】
前記結合剤コーティングナノ粒子は結合剤コーティング触媒ナノ粒子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒層組成物。
【請求項8】
前記結合剤コーティング触媒ナノ粒子及び前記結合剤非含有触媒ナノ粒子の両方が、導電性支持体を有する担持触媒ナノ粒子である、請求項7に記載の触媒層組成物。
【請求項9】
前記結合剤コーティングナノ粒子は非触媒ナノ粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒層組成物。
【請求項10】
前記結合剤非含有触媒ナノ粒子は、導電性ナノサイズ支持体を有する担持触媒触媒ナノ粒子を含む、請求項1~6又は請求項9のいずれか一項に記載の触媒層組成物。
【請求項11】
前記結合剤コーティングナノ粒子及び前記結合剤非含有触媒ナノ粒子は凝集ナノ粒子を含み、30ナノメートルnm~2500nmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒層組成物。
【請求項12】
前記結合剤非含有触媒ナノ粒子は、粒子サイズが100nm未満の非凝集ナノ粒子も含む、請求項11に記載の触媒層組成物。
【請求項13】
前記規則的な電気経路、イオン経路、ならびにガス経路及び液体経路は、触媒粒子の凝集体内または凝集体間の接続された細孔から構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒層。
【請求項14】
前記結合剤非含有触媒ナノ粒子は、クロム、鉄、銅、ニッケル、コバルト、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、バリウム、ハフニウム、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマス、ランタン、サマリウム、及びそれらの組み合わせまたは合金もしくは金属酸化物からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の触媒層。
【請求項15】
ナノサイズの導電性固体ナノ粒子と、前記導電性固体ナノ粒子の表面上に堆積された触媒材料の薄膜とを含む触媒材料の薄膜でコーティングされた担持触媒生成物を製造する固体電解めっき方法であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の電極触媒層組成物を含む触媒層を有する電極を有することと、
前記電極を電気化学反応に供し、その間に前記触媒層中の触媒ナノ粒子を再分配して、前記ナノサイズの導電性固体ナノ粒子上に前記触媒材料の薄膜を形成することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記電気化学反応は燃料電池反応器内で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項17】
前記電極は前記燃料電池反応器のカソードである、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒層は、互いに重なり合って積層された複数の副層であって、
a)第1の材料充填密度によって特徴付けられる最内層と、
b)前記最内層の反対側に位置し、第2の材料充填密度によって特徴付けられる最外層と、
c)前記最内層と前記最外層との間に存在し、それぞれが前記第1の材料充填密度または前記第2の材料充填密度とは異なるそれぞれの材料充填密度によって特徴付けられる1つ以上の中間層と、
を含む複数の副層を備える多層触媒層である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
各中間層の前記材料充填密度は、前記最内層及び前記最外層の少なくとも一方の前記材料充填密度よりも小さい、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の中間層の全体の厚さが、前記最内層及び前記最外層の少なくとも一方の厚さよりも大きい、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記多層触媒層は、膜電極アセンブリの固体電解質膜の一方の面にコーティングされ、前記固体電解質の他方の面が、前記複数の副層の少なくともいくつかの間で充填密度が異なる複数の副層から構成される別のこのような多層触媒層でコーティングされている、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記最内層及び前記最外層の少なくとも一方の前記材料充填密度は、前記1つ以上の中間層の充填密度以上である、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の中間層は、前記1つ以上の中間層全体にわたって同一の組成を有する、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の中間層は、混合触媒ナノ粒子組成物層を有する少なくとも1つの中間層を含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上の中間層は、異なるそれぞれの充填密度を有する複数の中間層を含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の触媒層構造。
【請求項26】
前記最内層は、30~150nmの範囲の平均粒子サイズを有するナノ粒子を含む、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の中間層の少なくとも1つが、100~800nmの範囲の平均粒子サイズを有するナノ粒子を含む、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項15~27のいずれか一項に従って製造される、触媒材料の薄膜でコーティングされた担持触媒生成物。
【請求項29】
触媒材料の薄膜でコーティングされた担持触媒生成物であって、
a)ナノサイズの導電性固体ナノ粒子と、
b)前記導電性固体ナノ粒子の表面上に堆積された触媒材料の薄膜と、
を含む、担持触媒生成物。
【請求項30】
前記固体ナノ粒子は、前記表面の少なくとも一部上に堆積された既存の触媒ナノ粒子を有し、前記既存の触媒ナノ粒子の少なくとも一部が、前記触媒材料の薄膜によって少なくとも部分的にコーティングされている、請求項28または29に記載の生成物。
【請求項31】
前記固体ナノ粒子は、その上に触媒粒子を有さない触媒非含有固体ナノ粒子を含み、前記固体の触媒非含有固体ナノ粒子の少なくとも一部が、前記触媒材料の薄膜によって少なくとも部分的にコーティングされている、請求項28または29に記載の生成物。
【請求項32】
前記導電性固体ナノ粒子は凝集した導電性ナノ粒子を含む、請求項28または29に記載の生成物。
【請求項33】
前記凝集した導電性ナノ粒子の少なくとも一部が、その上に既存の触媒ナノ粒子を有し、前記既存の触媒ナノ粒子の少なくとも一部が、前記触媒材料の薄膜によって少なくとも部分的にコーティングされている、請求項32に記載の製品。
【請求項34】
前記触媒材料は電気的に還元可能な金属または半金属である、請求項28または29に記載の生成物。
【請求項35】
前記触媒材料は、クロム、鉄、銅、ニッケル、コバルト、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、バリウム、ハフニウム、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマス、ランタン、サマリウム、及びそれらの組み合わせまたは合金からなる群から選択される、請求項34に記載の生成物。
【請求項36】
触媒層インク混合物を調製する方法であって、
a)任意の順序で、または同時に、
i.第1の選択された溶媒溶液中で均質化され、次いで固体ナノ粒子をコーティングする結合剤の溶液と均質に混合された前記固体ナノ粒子からなる結合剤コーティングナノ粒子インク溶液を調製する工程と、
ii.結合剤を添加せずに第2の選択された溶媒溶液中で均質化された結合剤非含有触媒ナノ粒子からなる結合剤非含有触媒ナノ粒子インク溶液を調製する工程と、
b)工程(a)(ii)からの前記結合剤コーティングナノ粒子インク溶液を工程(a)(i)からの前記結合剤非含有触媒溶液にゆっくり添加して、得られた混合インク溶液中で前記結合剤非含有触媒ナノ粒子を前記結合剤コーティング固体ナノ粒子に付着させる工程と、
を含む、方法。
【請求項37】
工程(a)が、工程(a)(i)及び工程(a)(ii)に対して任意の順序で、またはそれらのいずれかもしくは両方と同時に、更に別の選択された溶媒溶液中で導電性結合剤非含有担持粒子を含む結合剤非含有導電性ナノ粒子インクを調製する工程(a)(iii)を更に含む、請求項36に記載の方法であって、前記方法は、工程(a)(iii)からの前記結合剤非含有導電性ナノ粒子インクを工程(b)からの前記混合物インク溶液中にゆっくり添加して最終混合物インクを形成する追加の工程(c)を更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
使用される前記溶媒溶液は、揮発性溶媒及び/または脱イオン水の混合物である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
行われる均質な混合が、ジャーミル粉砕、高圧ホモジナイザ、エマルジョン、及び超音波処理のいずれか1つ以上によって行われる、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の溶媒溶液と前記第2の溶媒溶液とは同じである、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
互いに重なり合って積層された複数の副層であって、
a)第1の材料充填密度によって特徴付けられる最内層と、
b)前記最内層の反対側に位置し、第2の材料充填密度によって特徴付けられる最外層と、
c)前記最内層と前記最外層との間に存在し、それぞれが前記第1の材料充填密度または前記第2の材料充填密度とは異なるそれぞれの材料充填密度によって特徴付けられる1つ以上の中間層と、
を含む複数の副層を備える多層触媒層を有する、触媒層構造。
【請求項42】
各中間層の前記材料充填密度は、前記最内層及び前記最外層の少なくとも一方の前記材料充填密度よりも小さい、請求項41に記載の触媒層構造。
【請求項43】
前記1つ以上の中間層の全体の厚さが、前記最内層及び前記最外層の少なくとも一方の厚さよりも大きい、請求項41または42に記載の触媒層構造。
【請求項44】
前記多層触媒層は、請求項13~25のいずれか一項に記載の触媒層組成物から構成されている、請求項41~43のいずれか一項に記載の触媒層。
【請求項45】
前記多層触媒層は、膜電極アセンブリの固体電解質膜の一方の面にコーティングされ、前記固体電解質の他方の面が、前記複数の副層の少なくともいくつかの間で充填密度が異なる複数の副層から構成される別のこのような多層触媒層でコーティングされている、請求項41~44のいずれか一項に記載の触媒層構造。
【請求項46】
前記最内層及び前記最外層の少なくとも一方の前記材料充填密度は、前記1つ以上の中間層の充填密度以上である、請求項41~45のいずれか一項に記載の触媒層構造。
【請求項47】
前記1つ以上の中間層は、前記1つ以上の中間層全体にわたって同一の組成を有する、請求項41~46のいずれか一項に記載の触媒層構造。
【請求項48】
前記1つ以上の中間層は、混合触媒ナノ粒子組成物層を有する少なくとも1つの中間層を含む、請求項41~47のいずれか一項に記載の触媒層構造。
【請求項49】
前記1つ以上の中間層は、異なるそれぞれの充填密度を有する複数の中間層を含む、請求項41~46のいずれか一項に記載の触媒層構造。
【請求項50】
前記最内層は、30~150nmの範囲の平均粒子サイズを有するナノ粒子を含む、請求項41~49のいずれか一項に記載の触媒層構造。
【請求項51】
前記1つ以上の中間層の少なくとも1つが、100~800nmの範囲の平均粒子サイズを有するナノ粒子を含む、請求項41~50のいずれか一項に記載の触媒層構造。
【請求項52】
請求項41から51のいずれか一項に記載の触媒層構造の製造方法であって、
a)溶媒系中で少なくとも触媒ナノ粒子と結合剤とを有する混合物を含む触媒層インクを調製するかまたは得る工程と、
b)プロセスパラメータのセットを制御することによって、前記触媒層インクを使用した均一な凝集体で固体基材をコーティングすることによって、前記第1の充填密度で前記固体基材上に触媒材料の第1の層を堆積させ、それによって前記最内層を形成する工程と、
c)前記プロセスパラメータのうちの1つ以上の制御された調整によって、前記触媒層インクを使用した異なるサイズの凝集体で前記最内層をコーティングすることによって、触媒材料の異なるそれぞれの充填密度を有する少なくとも1つの追加の層を前記最内層上に堆積させ、それによって前記1つ以上の中間層を形成する工程と、
d)前記プロセスパラメータの少なくとも1つの制御された調整下で、前記1つ以上の中間層をより多くの前記触媒層インクでコーティングすることによって、前記1つ以上の中間層上に最終層を触媒材料の別の充填密度で直ちに堆積させ、それによって前記触媒層構造の前記最外層を形成する工程と、
e)前記触媒層構造を加熱乾燥プロセスに供して、すべての残留溶媒を除去する工程と、
を含む、方法。
【請求項53】
工程(b)における前記均一な凝集体は、30~150nmの平均サイズ範囲を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
工程(c)における前記異なるサイズの凝集体は、100~800nmの平均サイズ範囲を有する、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
工程(d)は、前記1つ以上の追加の層のうちの少なくとも最後に堆積された層の凝集体サイズよりも小さい凝集体サイズで前記最終層を堆積させて、前記最終層上に滑らかな外面を形成することを含む、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
工程(b)~(d)における前記層の堆積中に超音波スプレーコーティングを使用することを含み、コーティングパラメータが、流量、成形空気圧、基材温度、ならびに超音波処理の周波数及び出力のうちの少なくとも1つを含む、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
第1のコーティングパラメータと第2のコーティングパラメータとの間で異なる前記少なくとも1つのパラメータが前記流量を含み、前記1つ以上の中間層は、前記最内層の流量よりも大きい流量で堆積される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒層組成物から構成された外部パターン化触媒層であって、
外部パターンが形成された外面であって、前記パターンは、
a)前記触媒層の前記外面の隆起した領域と、
b)前記触媒層の前記外面の圧縮された領域であって、前記隆起した領域に対して陥凹した関係にある圧縮された領域と、
によって更に特徴付けられ、
前記隆起した領域及び前記圧縮された領域は、前記触媒層の前記外面上に互い違いに配置されている、
外部パターン化触媒層。
【請求項59】
前記触媒層の厚さが、前記圧縮された領域よりも前記隆起した領域において10~30%大きい、請求項58に記載の外部パターン化触媒層。
【請求項60】
片面流れ場プレートまたはバイポーラ流れ場プレートと組み合わせた、請求項58または59に記載の外部パターン化触媒層であって、前記触媒層の前記外部パターンは、前記流れ場プレートのパターンと実質的に一致する、外部パターン化触媒層。
【請求項61】
前記外部パターン化触媒層は、一方の面が前記触媒層でコーティングされ、他方の面が別のそのような外部パターン化触媒層でコーティングされた固体電解質膜を含む膜電極アセンブリの一部である、請求項58~60のいずれか一項に記載の外部パターン化触媒層。
【請求項62】
請求項58~61のいずれか一項に記載の外部パターン化触媒層を形成する方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒層組成物を有する既に作製された触媒層から開始し、続いて前記既に作製された触媒層に前記外部パターンを付与することを含む、方法。
【請求項63】
前記既に作製された触媒層に前記外部パターンを機械的に付与することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記既に作製された触媒層に前記外部パターンを機械的に押し込むことを含む、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
機械的圧縮及び熱を加えて前記外部パターンを前記既に作製された触媒層に押し込むことを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
片面流れ場プレートまたはバイポーラ流れ場プレートを使用して前記外部パターンを前記既に作製された触媒層に押し込むことを含む、64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記外部パターン化触媒層は、前記電解質膜の対向する両側に2つの既に作製された触媒層を有する電解質膜を含む膜電極アセンブリの一部であり、前記方法は、前記膜電極アセンブリの対向する両側から前記既に作製された触媒層にそれぞれの外部パターンを押し込むことを含む、請求項62~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記外部パターンを前記既に作製された触媒層に押し込むことは、一対の片面流れ場プレートまたはバイポーラ流れ場プレートの間で前記膜電極アセンブリを圧縮することを含む、請求項67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、水素燃料電池及び電気分解装置に使用されるような電気化学電極、ならびにエネルギー貯蔵装置に関し、より詳細には、大型車両(heavy duty vehicle、HDV)用途における燃料電池の使用に適した電気化学電極に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒コーティング膜(Catalyst Coated Membrane、CCM)の組成及び作製技術は、電気化学製品のコア構成要素技術である。長期的なクリーンエネルギー市場の需要を満たすことができるコストを上回る最良の性能の製品を競合企業が達成することを、いくつかの要因が阻んでいる。Ballard Powerは、高性能CCM製品を開発し、その商業生産プロセス技術を所有する主要企業の1つである。CCMは、固体電解質膜上にコーティングされた2つの触媒層を含む電極である。膜電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly、MEA)は、それぞれの側に1つのガス拡散層を有するCCMの組立品である。現在の最先端のMEAは、約0.300mg Pt/cm2で1平方センチメートル当たり0.78~1.2ワットの範囲の出力密度を生成することができる。しかしながら、過去数十年の開発を通して、このような小型のポータル発電機の商業的な目標は、乗用車用であった。2015年以来、電気化学車両市場は、水素燃料電池(hydrogen fuel cell、HFC)車両に必要な水素燃料ステーションの制約のために商業用タクシー市場に移行している。2019年以降、中国での深刻な大気汚染のために、中国政府は、公共交通機関、船舶、及びトラックを含む輸送車両のためのクリーンエネルギー発電を追求すべく尽力してきた。商業用途への市場需要の移行により、ほとんどの技術開発が、あらゆる水素燃料電池(HFC)駆動製品の強力なゼロエミッション機能を含む他のすべての要因よりも、コスト、耐久性及び性能を重視して行われてきた。更に、世界全体が、その製品需要の焦点を、小型車両(light duty vehicle、LDV)、中型車両(medium duty vehicle、MDV)、及び大型車両(HDV)市場の同じ傾向に再び合わせている。これらのセクターは、乗用車と比較してより多くの温室効果ガスの発生源であるため、温室効果ガス(GHG)排出を削減するためには、先ずこれらのような商業セクターが上述のようなゼロエミッション技術を採用しなければならないことは明らかである。
【0003】
HFC市場にとって、耐久性及びコストは、すべての商業的HDV用途に応えるための重要な経済的要因となっている。乗用車HFCパワートレインのHDV用途への移行は、長期的かつ持続的な解決策ではない。したがって、耐久性が高く、費用効果の高いHFC製品の開発が強く望まれている。電気化学スタックが、高い電力密度での通常動作状態で25000時間超に到達するためには、乗用車の場合の5000時間と比較して、燃料電池(fuel cell、FC)スタックのコア構成要素であるCCMまたはそのMEAがそのような耐久性に到達するかまたはそれを超えなければならない。パブリックドメインでは、コスト及び性能の持続可能性の点で現在の市場ニーズを満たすことができるそのような技術または製品は、本出願よりも前には開示されていない。
【0004】
Schulerら[参考文献16]は、電気化学学会(Electrochemical Society、ECS)の2019年の刊行物において、耐久性及び高度な触媒作用を有する電極を可能にするためには触媒層(Catalyst Layer、CL)構造が非常に重要であると述べている。Schulerらは、この論文において、周知の方法で作製されたCL構造内の出力密度に影響を与える様々な構成要素を理論化した。Schulerらは更に、CLの構成要素の様々なサブ抵抗を測定及び特定した。とりわけ、Schulerらの結果は、クヌーセン及びアイオノマー輸送抵抗が主要なCL抵抗であり、次いで第2は界面抵抗であることを示した。Schulerらは、その体系的な研究を通して、CL設計及び作製プロセスは、同じCL厚さであっても面貫通CL抵抗に大きな影響を与えると結論付けた。したがって、耐久性があり触媒活性の高いCLを作製することは、科学及び工学においてきわめて困難であることが証明された。
【0005】
MEAは水素系電気化学スタックのコア構成要素であるため、そのCL劣化は市場の拡大と上昇にとって重大な困難になっている。
【0006】
Huらは、[参考文献9]において、典型的な運転条件下で寿命を短縮させるポリマー電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)の3つの重要な耐久性劣化メカニズムを要約した:(1)起動条件及び停止条件における耐久性の劣化;(2)動的負荷サイクルにおける耐久性;(3)アイドリングサイクル及び高負荷サイクルにおけるPEMFCの耐久性。第1のメカニズムでは、保護されていない始動から界面で生成された1.6Vの高い反転電位が触媒担体の腐食を引き起こし、Pt系触媒粒子が凝集して大きくなることが指摘された。このような工程の直接的な結果として、耐久性の低下の重要な要因である、CL中の触媒の電気化学的表面積(Electrochemical surface Area:ECSA)の喪失が引き起こされる。第2のメカニズムでは、加速応力試験(Accelerated Stress Test、AST)[参考文献18]サイクル下でのPEMFCの性能低下の大部分がPt/Cアノード材料の劣化によるものであることが分かった。様々な刊行物から、Ptナノ粒子の成長及び凝塊形成が観察された。更に、膜薄化及び触媒層減衰が、この加速劣化試験下での永続的な性能劣化の2つの主要な要因であった[参考文献5]。[参考文献5]の刊行物では、370時間の試験後、Pt系触媒の均一性が変化し、一部が膜内に移動したことが見出された。より多くの亀裂及び隙間がCLに見られた。微細構造の変化は、ECSAの喪失と膜抵抗及び電荷移動抵抗の増加との相関に基づいて結論付けられた。更に、第3のメカニズムに関して、高出力で電気化学的に動作すると燃料電池性能がより速く低下することを多くの学者が実証したことが分かっている。Jian Xie[参考文献1]は、電流密度が0.8A/cm2を超えると、FC出力電圧の劣化が著しく加速されることを実証した。2018年のHuの発見[参考文献10]は、Bruijnが2008年に4.2の電極劣化メカニズムのセクションで要約したものとほとんど一致していた[参考文献3]。De Bruijn[参考文献8]は、重要な要因には、ECSAの喪失、担持炭素腐食、逆電位による酸素発生、ならびにアイオノマー、ガス拡散層(Gas Diffusion Layer、GDL)、及びマクロ多孔質層(Macro Porous Layer、MPL)を含む他の劣化要因が含まれると要約した。
【0007】
De Bruijnは更に、定負荷条件下での定常状態での劣化の主な原因は、GDLの排水能力の低下であると結論付けた。その他の要因としては、(1)短寿命の原因となる膜劣化、(2)細胞電位の定常的な低下をもたらすPt粒子の成長が挙げられる。しかしながら、Bruijnは、ASTまたは自動車負荷サイクル、始動及び停止、低加湿、ならびに燃料枯渇の下では劣化速度が桁違いに増加し得ることも示した。長年の研究開発を通して、これらの困難は、残留水素を除去するための空気によるパージなどのシステム制御を利用するエネルギー管理によって少なくとも部分的に克服されてきた。しかしながら、そのような既存の困難を克服してはるかに望ましいHDV用途のための高出力と優れた長期耐久性とを発揮できることを示す明らかな方法またはCLの組成もしくは構造は存在しなかった。HDV ASTプロトコルが、2019年11月に米国エネルギー省(Department of Energy、DOE)によって公開された。
【0008】
2020年のRodney Burrup[参考文献5]は、「Recent developments in catalyst-related PEMFC electrochemical durability」と題する自身の論文において、触媒粒子の成長及び喪失、ならびに支持体の腐食がMEAの劣化の重要な要因であると指摘した。電極層の形態が、燃料電池の性能及び耐久性において重要な役割を果たすことも見出された。最後に、Burrupは、Pt及びPt合金触媒ナノ粒子ならびにカソード電極構造の劣化が、依然として輸送用途のためのPEMFCの商業化を妨げる主要な懸念事項であると結論付けた。更に、触媒AST及び支持体ASTは、十分な寿命を達成するためにシステム緩和戦略を必要としない触媒材料ベースの解決策のための材料の相対的安定性及びベンチマークに関する有用な情報を提供し続ける。
【0009】
Schuler[参考文献16]は、CLにおける様々なサブ抵抗構成要素を特定した。しかしながら、Schulerは問題を解決するための解決策を提供せず、代わりに更なる研究が必要とされた。
【0010】
本出願の1つの目的は、新規なCL組成物、新規なCL構造、及び/またはそれらの組み合わせを提供することによって、特定されたサブ抵抗寄与要因を克服し、性能及び耐久性を改善することである。
【0011】
別の目的は、その溶解及び/または成長を最小化または低減させる、新規な耐久性のある触媒生成物を提供することである。
【0012】
別の分野では、電気化学反応における耐久性があり費用効果の高い担持触媒の利用が、過去数十年にわたって広範囲に研究開発されてきた。その推進力となっているのは、長寿命のクリーンエネルギー製品のコストの低減である。支持体上または単独での活性触媒の多くの革新的な構造及び形状が開発され、試験された。しかし、それらの多くは、25~50cm2の面積のMEA試験で寿命が著しく短かった。それらの多くは、そのような触媒または担持触媒の均質化が極めて困難であるため、良好なMEAを作製することさえできなかった。非常に活性な触媒のいくつかは、ケージ構造及び脱合金化骨格構造を含む不安定な構造のために急速に劣化した。そのような構造は、それらの初期構造の急速な変化のために安定した活性を提供することができない。燃料電池用途における電気化学的触媒反応が触媒の強力な反応を伴うことは、疑う余地のない科学的事実である。
【0013】
Ruanは、2011年に支持体上の板状ナノ触媒を発表し、このような板状ナノ触媒は、同じカテゴリーの他の市販の触媒と比較して並外れた耐久性を示した。しかし、はるかに遅い速度であっても、ECSAの喪失による活性の低下は避けられなかった。
【0014】
したがって、本出願の別の目的は、従来技術に見られるECSAの喪失及び結果として生じる劣化に対処することである。
【0015】
バルク支持体上の白金の薄膜は、燃料電池電気化学プロセスにおいて非常に耐久性があることがよく知られている。しかしながら、バルク支持体上の表面積が限られているため、必要な量の白金は商業的用途には実現不可能である。これは、担持ナノ触媒の開発及び試験後に水素燃料電池技術の採用が増加した主な理由であった。最も安定で活性な材料である白金の担持量の劇的な低減のために、白金及びその合金または複合材料は広範に研究開発されてきた。しかし、薄膜コーティングナノ粒子支持体の製造に、(化学気相成長法(chemical vapor deposition、CVD)、物理気相成長法、金属有機CVD法、含浸法、光化学法などを含む)現在知られているプロセスを利用することは不可能である。1つの主要な障害は、個々のナノ粒子を必要な配向となるように取り扱う既知の手段、またはナノ粒子を適切な位置に固定してその上に均一な薄膜コーティングを生成することができる既知のプロセスがないことである。いかなる湿式化学においても、球状触媒ナノ粒子は、熱力学的条件により形成される。
【0016】
したがって、本出願の別の目的は、電気化学的用途または他の触媒的用途におけるはるかに望ましい改善のための薄膜(ナノメートル厚さまたはオングストローム厚さ)でコーティングされた担持ナノ粒子を提供することである。
【0017】
過去20年間の研究開発及び実路試験によって実証されているように、並外れた耐久性を有する高出力密度を得ることの技術上の難しさが依然として残っている。
【0018】
新規な解決策のこの実証された必要性に応じて、出願人はいくつかの優れた技術を開発し、その詳細を以下に開示する。
【発明の概要】
【0019】
特に順序はないが、本出願のいくつかの発明の態様は以下のように要約され、そのうちの他の態様も以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことから明らかになり得る。
【0020】
本発明の第1の態様によれば、触媒材料の薄膜でコーティングされた担持触媒生成物であって、a)ナノサイズの導電性固体ナノ粒子と、b)導電性固体ナノ粒子の表面上に堆積された触媒材料の薄膜と、を含む担持触媒生成物が提供される。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、触媒層組成物であって、
結合基材としての結合剤でコーティングされた結合剤コーティングナノ粒子と、
少なくとも結合剤コーティングナノ粒子にその結合基材で付着した結合剤非含有触媒ナノ粒子と、
結合剤コーティングナノ粒子と結合剤非含有触媒ナノ粒子との相互接続によって少なくとも部分的に規定される、層内の規則的な電気経路、イオン経路、ガス経路及び液体経路と、
を含む触媒層組成物が提供される。
【0022】
本発明の第3の態様によれば、触媒層インク混合物を調製する方法であって、
a)任意の順序で、または同時に、
i.第1の選択された溶媒溶液中で均質化され、次いで固体ナノ粒子をコーティングする結合剤の溶液と均質に混合された固体ナノ粒子からなる結合剤コーティングナノ粒子インク溶液を調製する工程と、
ii.結合剤を添加せずに第2の選択された溶媒溶液中で均質化された結合剤非含有触媒ナノ粒子からなる結合剤非含有触媒ナノ粒子インク溶液を調製する工程と、
b)工程(a)(ii)からの結合剤コーティングナノ粒子インク溶液を工程(a)(i)からの結合剤非含有触媒溶液にゆっくり添加して、得られた混合インク溶液中で結合剤非含有触媒ナノ粒子を結合剤コーティング固体ナノ粒子に付着させる工程と、
を含む方法が提供される。
【0023】
本発明の第4の態様によれば、互いに重なり合って積層された複数の副層であって、
a)第1の材料充填密度によって特徴付けられる最内層と、
b)最内層の反対側に位置し、第2の材料充填密度によって特徴付けられる最外層と、
最内層と最外層との間に存在し、それぞれが第1の材料充填密度または第2の材料充填密度とは異なるそれぞれの材料充填密度によって特徴付けられる1つ以上の中間層と、
を含む複数の副層を備える多層触媒層を有する触媒層構造が提供される。
【0024】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第4の態様からの触媒層構造の製造方法であって、
a)溶媒系中で少なくとも触媒ナノ粒子と結合剤とを有する混合物を含む触媒層インクを調製するかまたは得る工程と、
b)プロセスパラメータのセットを制御することによって、触媒層インクからの均一な凝集体で固体基材をコーティングすることによって、第1の充填密度で固体基材上に触媒材料の第1の層を堆積させ、それによって最内層を形成する工程と、
c)プロセスパラメータのうちの1つ以上の制御された調整によって、触媒層インクからの異なるサイズの凝集体で最内層をコーティングすることによって、触媒材料の異なるそれぞれの充填密度を有する少なくとも1つの追加の層を最内層上に堆積させ、それによって1つ以上の中間層を形成する工程。
d)プロセスパラメータの少なくとも1つの制御された調整下で、1つ以上の中間層をより多くの触媒層インクでコーティングすることによって、1つ以上の中間層上に最終層を触媒材料の別の充填密度で直ちに堆積させ、それによって触媒層構造の最外層を形成する工程と、
e)触媒層構造を加熱乾燥プロセスに供して、すべての残留溶媒を除去する工程と、
を含む方法が提供される。
【0025】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第2の態様の触媒層組成物から構成された外部パターン化触媒層であって、
外部パターンが形成された外面であって、パターンは、
a)触媒層の外面の隆起した領域と、
b)触媒層の外面の圧縮された領域であって、隆起した領域に対して陥凹した関係にある圧縮された領域と、
によって更に特徴付けられ、
隆起した領域及び圧縮された領域は、触媒層の外面上に互い違いに配置されている、
外部パターン化触媒層が提供される。
【0026】
本発明の第7の態様によれば、本発明の第7の態様からの外部パターン化触媒層を形成する方法であって、本発明の第2の態様からの触媒層組成物を有する既に作製された触媒層から開始し、続いて既に作製された触媒層に外部パターンを付与することを含む、方法。
【0027】
本発明の第8の態様によれば、本発明の第1の態様による触媒材料の薄膜でコーティングされた担持触媒生成物を製造する固体電解めっき方法であって、本発明の第2の態様からの電極触媒層組成物及び本発明の第4の態様からの電極触媒層構造を含む触媒層を有する電極を使用して、電極を電気化学反応に供し、その間に触媒層中の触媒ナノ粒子を再分配して、ナノサイズの導電性固体ナノ粒子上に触媒材料の薄膜を形成することを含む固体電解めっき方法が提供される。
【0028】
PEMFCの耐久性に影響を及ぼす重要な要因は、触媒材料、それらの支持体、及びカソード電極構造に大きく関係する。本発明の開示される実施形態は、これらの要因を最適化して、結果として得られる本発明のMEAの向上した性能及び延長された耐久性を達成し、LDV、MDV、及びHDV用途のベンチマークを満たすかまたは超えるための独自の解決策を提供する。より詳細には、本開示の実施形態は、触媒材料の耐久性のある薄膜コーティングを有する新規な触媒生成物、そのような高性能を生成し維持するための高性能で耐久性のある電気化学電極組成物及び本発明の多層構造、ならびに触媒粒子の溶解及び再堆積プロセスを局在化させて、作製された電極に優れた耐久性を付与するPtナノ粒子の優れた再分布を提供する外部パターニングを含む。本開示の実施形態はまた、本発明の高耐久性かつ高性能の触媒コーティング膜(CCM)を製造するための新規な方法を開示する。
【0029】
更に、本出願に開示する発明は、水処理のための高度酸化プロセス、工業用固定床反応器、高温固体酸化物燃料電池を含む他の触媒プロセスにも適している。触媒層の本発明の組成物の著しい改善は、すべてのそのような触媒プロセスにとって有益であり得る。
【0030】
本出願では、触媒ナノ粒子という用語は、触媒ナノ粒子自体、及び担持ナノ粒子上に配置された触媒ナノ粒子の両方を包含する。担持ナノ粒子は、導電性ナノ粒子であっても非導電性ナノ粒子であってもよい。本明細書で使用される場合、ナノ粒子は、主に1ナノメートル~999ナノメートルのサイズの範囲の粒子を指す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
次に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面と併せて説明する。
【
図1】水素燃料電池の従来技術の触媒層におけるアイオノマーコーティング触媒粒子クラスタの概略図である。
【
図2】本発明の新規な触媒層におけるクラスタ化されたアイオノマーコーティング触媒粒子及びアイオノマー非含有触媒粒子の概略図である。
【
図3】触媒層がそれぞれ様々な密度の複数の副層から構成されている、本発明の膜電極アセンブリの概略図である。
【
図4】
図3に示すタイプの試験された膜電極アセンブリの出力密度測定値を示すチャートである。
【
図5】本発明の外部パターン化された触媒層を概略的に示す図である。
【
図6】2つの流れ場プレートの間で膜電極アセンブリ(MEA)を圧縮してMEAの触媒層に外部パターニングを形成することを概略的に示す図である。
【
図7】本発明の外部パターン化された触媒コーティング膜の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)画像である。
【
図8】
図7に示す外部パターン化された触媒コーティング膜の寿命末期(end-of-life、EOL)断面図である。
【
図9】試験前の滑らかな表面仕上げを示す、密に充填された外層を有する本発明のCLのSEM画像である。
【
図10】試験後の本発明のCLの断面画像を示すSEM画像であり、CLのPEM側に触媒的に濃縮されたバンドを示す。
【
図11】それらの領域の含有量を測定した、本発明のCLの3つの異なる領域の走査型電子顕微鏡画像である。
【発明の詳細な説明】
【0032】
ほとんどの現在のCLインク組成物において、組成物は、触媒ナノ粒子と、結合剤として使用されるアイオノマーと、いくつかの導電性ナノ粒子とを含む。しかしながら、組成物は、多くの場合、CLをコーティングする前に一緒に均質化されていた。そのようなインク配合物の鍵は、高活性触媒ナノ粒子の選択、アイオノマーの種類、それらの比、及び選択された溶媒系、ならびに均質化方法及び手順に依存していた。作製されたCLは、層を通して類似または同一の含有量を有する主に1つの均質な組成物層でなければならなかった。得られたCLはまた、最良の性能及び必要な寿命を達成するために非常に複雑な活性化プロセス及び工程を必要とした。それらの依然として残る課題は、上記で十分に説明されている。
【0033】
本出願では、CL組成物及び層構造の完全に新規な設計を開示する。ナノ粒子の第1の部分が、結合剤、例えば1つ以上のアイオノマーと混合される。この工程では、導電性ナノ粒子または非導電性ナノ粒子のいずれかを使用することができる。導電性ナノ粒子を利用して、高出力密度用途にとって重大である電極抵抗へのその更なる寄与を低減または最小化することが好ましい。非導電性ナノ粒子または半導電性ナノ粒子が使用される場合、より多くの結合剤が使用され、非導電性ナノ粒子または半導電性ナノ粒子の量が最小限まで低減されて、最小限の更なる層抵抗という同じ目標が達成されることが好ましい。
【0034】
燃料電池用途または電解槽用途でよく知られている高い導電率を有する触媒ナノ粒子を使用することが更に好ましい。したがって、作製されたCLの所望の性能及び耐久性を達成するためには、その決定が当業者の技術の範囲内で容易である正確な量のアイオノマー対触媒比が重要である。この要件の単純な理由は、ほとんどのアイオノマーが電気絶縁性であり、イオン伝導性でもあるためであった。アイオノマーが多すぎると、アイオノマー起因の抵抗が大きくなる。アイオノマーの使用量が少なすぎると、プロトン伝導性が低すぎて所望の出力密度を得ることができない。
【0035】
より重要なことには、均質化及び混合後の固体ナノ粒子のこの部分は、本明細書では一般に結合剤コーティングナノ粒子と呼ばれ、結合剤非含有触媒ナノ粒子と結合するための意図的な結合ナノ粒子として作用する。結合剤コーティングナノ粒子のコーティング表面に結合する結合剤非含有触媒ナノ粒子の利用は革新的であり、結合剤非含有触媒ナノ粒子が吸着ガス分子と自由に反応することができる一方で、結合剤コーティングナノ粒子上の下層のまたは隣接するアイオノマー層が、燃料電池CLの場合、必要なプロトンを提供するので、そのような新しい相互接続構造はアイオノマー抵抗を著しく低減させる。結合剤非含有ナノ粒子が結合剤コーティングナノ粒子に付着して、結合剤非含有ナノ粒子と規則的な相互接続構造を形成するこの組成物は、本明細書で初めて開示される。
【0036】
更に、本出願人は、結合剤コーティングナノ粒子単独では所望の電気化学反応に必要な電子を触媒粒子に提供することができない場合に、結合剤非含有導電性ナノ粒子を添加することにより、結合剤非含有触媒ナノ粒子により多くの導電経路が追加されるため、より多くの利益が提供されることを見出した。
【0037】
従来の刊行物では、薄い触媒層(5ミクロン未満)の層亀裂を低減し、更なる導電性を提供するために、導電性炭素支持体がいくつかの電極インクに使用されていた。ほとんどの商業的プロセスでは、ほとんどのアノードCLが膜(CCM)上にデカール転写された。触媒と混合されたインクに炭素を添加することにより、より良好なデカール転写のための滑らかなCL層を提供することができる。PEMFCのカソードへの同じまたは類似の炭素支持体の追加は、従来技術では利用されなかったが、これは、非活性支持体が触媒性能を低下させるおそれがあり、また追加の層の厚さが、より厚い層への浸水の増加のために質量活性を低下させるおそれがあるためである。CLの亀裂に関しては相反する重要性がある:カソードCLの亀裂の平滑化は、膜へのCLの不完全な転写を引き起こす可能性があるアノードCLの亀裂と比較して重大な問題ではない。以下に開示するように、本発明は、先行技術における潜在的な悪影響よりもはるかに有益な方法でCL中の裸の導電性支持体を利用する、CLの独自の組成物を包含する。
【0038】
ほとんどの商業的刊行物または研究刊行物では、ほとんどの触媒インクは、コーティング前にすべての固形分を同時に添加及び混合して均質な溶液を形成することによって調製された。ナノ粒子間の結合はランダムかつ任意であった。本発明では、ナノ粒子の一部を結合中心として利用して、そのような結合中心に触媒活性のより高い触媒ナノ粒子を結合させる。本発明の設計は、以下の追加の有利な特性を可能にする:(1)ガスまたは液体が入る空間またはチャネル内に触媒ナノ粒子を広げるので、触媒ナノ粒子の反応空間へのこの広がりにより触媒反応を高めることができる。(2)このような構造は、プロトン伝導性アイオノマーが結合剤コーティングナノ粒子上にコーティングされ、その結果、結合剤非含有触媒粒子の大部分が入ってくる燃料分子と反応して電気を発生することができるので、アイオノマー抵抗が最小限となる。(3)相互接続された結合剤非含有触媒ナノ粒子が結合剤コーティングナノ粒子に付着することにより、
図2に示すように、結合剤非含有ナノ粒子またはそれらの凝集体の間により多くのガスチャネル及び/または液体チャネルを形成可能とすることができ、これは所望の電気化学反応にとって非常に有益である。
【0039】
当業者には理解されるように、本明細書で以下に開示する本発明のCL組成物は、様々な用途のための様々なインク配合物において、その例にはカチオン性アイオノマー、アニオン性アイオノマー、またはPTFEさえも含まれる任意の触媒結合剤と共に作用することができる。
【0040】
1)触媒層への結合剤非含有触媒の添加
Kochaらは、「Influence of ink composition on the electrochemical properties of Pt/C」と題するその刊行物(2012)において、RDE実験により、Nafion(登録商標)(プロトン伝導体ならびに触媒粒子の結合剤として作用するカチオン性アイオノマー)の非存在下では、Nafion非含有Pt/C粒子が、0.1MのHClO4電解質中にNafionを約1.8倍取り込んだPt/C電極よりも高い酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction、ORR)比及び質量活性を示すことが分かったと報告した。しかしながら、一例では、平均厚さ10ミクロン以上の50CM
2のような半工業用サイズのCCMを有する電極の場合、触媒層に結合剤としてのアイオノマーがないと、触媒は垂直位置で急速に崩壊し、不均一に再分配される。アイオノマーなしでも、5ミクロン~10ミクロンの厚さを有するCLは、動作条件下で良好にプロトンを伝導することができる。多くの科学的実験は、PEMFCのCLのための正確な量のアイオノマーがなければ、触媒コーティング膜は劣悪な性能となったことを示している。これとは対照的に、本出願人は、高出力を生成可能であり優れた耐久性を有するCLで作製された電極内にいくつかのアイオノマー非含有触媒を含む組成物を本明細書で開示する。本開示の実施形態は、同じまたは異なる触媒物質に加えて、任意の裸の導電性支持体を使用して、既にアイオノマーでコーティングされている触媒をアイオノマー非含有触媒と混合してCLを作製することを含む。そのような本発明の組成物は、アイオノマーのような様々な構成要素のサブ抵抗、アイオノマーの電子絶縁層、アクセス不可能なガス経路などを含む、電極性能及び耐久性に関するいくつかの既知の問題を大幅に軽減することが分かった。CLにおけるそのような新しい組成物の想定される機構を
図2に示す。
【0041】
図1は、参考文献16から引用され、触媒粒子がすべてアイオノマーコーティング粒子である従来のCLを示し、e
-でマークされた明るい破線で制限された電子伝導経路を示す。反応ガス分子がアイオノマー層を通ってアイオノマーコーティング触媒粒子の表面に拡散しない限り、アイオノマーで囲まれた空隙(細孔)は活性ではない。
図1の右側の部分拡大図では、粒子の約60%超が不活性領域内にある。したがって、多くの触媒粒子は、アイオノマーコーティングによって不活性にされる。しかしながら、
図2では、アイオノマーコーティング触媒粒子とアイオノマー非含有触媒粒子との両方を含む本発明のCL内の粒子構造が示されており、これらのうちでアイオノマーコーティング触媒粒子は、粒子の外周のアイオノマーコーティングを示す視覚的にコントラストを付けた外輪でこれらのコーティング粒子を囲むことによって、左側の拡大図で視覚的に区別可能である。アイオノマー非含有触媒粒子は、入ってくるガス分子に直接さらされ、一方、アイオノマーコーティング触媒粒子は、相互接続して必要なプロトン伝導体を形成する。CLの全体的な触媒含有量の第1のアイオノマー含有部分に使用されるアイオノマーの量は、十分なプロトン伝導経路、ならびにアイオノマーコーティング触媒粒子が互いに、または他の粒子に電気的に接続して所望の電気化学反応を最大にすることを可能にするための部分的に露出した炭素担持表面を提供するように選択される。
【0042】
図2の拡大されていない右側では、大きな黒丸及び楕円形は、結合剤、例えばカチオン性アイオノマーと予め混合された凝集した触媒粒子を表し、したがって、視覚的にコントラストを付けた外輪で囲まれて示されている。
図2の拡大された左側では、コントラストを付けた外輪を欠いている黒丸は、それ自体のアイオノマーコーティングを欠くが凝集体の外側イオノマー層に付着している、担持アイオノマー非含有触媒を表す。
図2の拡大されていない右側に示すように、凝集体を互いに接続させるために、適切な混合比が選択される。より小さい暗いドットは、面間の触媒活性を高めるためのより良好な電子経路を提供する追加の導電性担持材料(例えば裸の炭素)を表す。e
s
-と標識されたより明るい色調の経路線は電子経路を表し、O
2と標識されたより暗い経路線はガス分子経路を表す。図は酸素ガスの標識を示しているが、水素ガスまたは他のガス分子も同様に使用することができる。
【0043】
Schulerが
図1の左側で示したように、アイオノマーがすべての相互接続している触媒粒子を覆う必要はない。
図1の二次細孔は、より多くのガス分子が移動して触媒ナノ粒子に到達することを可能にし、一方、一次細孔は、ガスがアイオノマー層を透過して触媒ナノ粒子に到達することを可能にした。本発明のCLには二次細孔が多数存在するので、本発明のCLの
図2の拡大挿入図における粒子間の密閉空間は、ある量の水分を含むことができ、これもプロトン伝導性物質である。高温燃料電池では、CL中のプロトン伝導体として水分を用い、高温結合剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いている。したがって、本発明の新規なCL組成物は、この利点を利用して、より良好な触媒性能のためにアイオノマーをより少なくすることができる。良好に構築されたCL内のアイオノマーが少ないと、CL内のアイオノマー誘導抵抗が減少し、これはSchulerの結論とよく一致する。
【0044】
加えて、より少ない量の触媒粒子を担持した触媒溶液、または裸の導電性担持ナノ粒子を含有する非触媒担持溶液でさえも、本発明のインク配合物の第1の結合剤またはアイオノマーを含有する部分に使用することができるが、これは、Schulerによって報告されているように、アイオノマーで被覆された触媒粒子のサブ抵抗がより大きいためである。結合剤またはアイオノマーを含有しない触媒粒子はより容易に反応物と自由に相互作用することができるので、本発明のインク配合物の第2の結合剤またはアイオノマーを含有しない触媒部分には、より多量の触媒粒子を含むより高担持量の触媒溶液を使用することができる。本発明のCLの最良の性能及び耐久性を達成するための適切な量の結合剤またはアイオノマーの選択は、当業者の技術の範囲内である。
【0045】
結合剤またはアイオノマーでコーティングされた触媒の結合剤またはアイオノマーでコーティングされた表面は、インクの第1の部分で互いに接続することができ、または相互接続を、結合剤またはアイオノマーでコーティングされた触媒溶液と結合剤またはアイオノマーを含有しない触媒溶液との混合中に、または最終インク溶液を達成するために追加のアイオノマーを含有しない(裸の)導電性支持体と更に混合中に達成し、アイオノマーで被覆された触媒、アイオノマー非含有触媒、及び裸の導電性支持体を含むすべての間で必要な相互接続を達成することができる。あるいは、相互接続は、インクの調製後の別個のプロセス中、例えば、粒子が互いに堆積するときに結合剤コーティングナノ粒子と結合剤非含有ナノ粒子との間の相互接続が起こり得る場合に、触媒層を形成するための基材上へのインクのコーティング中、及び/またはコーティング後に行われる溶媒気化段階中に達成され得る。
【0046】
この相互接続は、結合剤非含有触媒ナノ粒子が結合剤コーティングナノ粒子上に付着する、または結合剤非含有導電性ナノ粒子が結合剤コーティング触媒ナノ粒子に付着する、または結合剤非含有導電性ナノ粒子が結合剤非含有触媒ナノ粒子に付着する、または結合剤コーティングナノ粒子に付着した結合剤コーティングナノ粒子の形態である。
【0047】
本発明の触媒層では、作製プロセス中に、そのようなナノ粒子及び/またはそれらの凝集体が互いの上に充填され、均質化されたインク溶液から生成された任意の組成物の代わりに規則的な層組成物を形成することを可能にする。
図2に示すように、結合剤コーティングナノ粒子は、他のナノ粒子の少なくとも一部が結合剤コーティングナノ粒子の結合剤への接着剤様の接続によって少なくとも部分的に付着した相互接続基材または部位として機能する。十分な量の結合剤非含有触媒ナノ粒子が相互接続された結合剤コーティングナノ粒子に付着すると、得られた触媒層中に、結合剤非含有触媒ナノ粒子が結合剤コーティングナノ粒子及び/またはその凝集体の間に散在して、それらの間により小さな触媒ブリッジを形成するナノ粒子の規則的な構造が生成される。同様に、以下のセクション2に記載するように、結合剤非含有導電性担持ナノ粒子が組成物に含まれる場合、それらは、結合剤コーティングナノ粒子及び/またはその凝集体の間に散在して、それらの間に追加の高導電性架橋を形成する。
【0048】
規則的な構造は、少なくとも、結合剤コーティングナノ粒子の結合剤コーティング表面で結合剤コーティングナノ粒子に接着剤様の様式で直接付着し、それにより、他の任意の含有される結合剤コーティングナノ粒子またはそれらの凝集体と相互接続して、はるかに良好な電気経路、イオン経路、ならびに液体経路及びガス経路を達成する結合剤非含有触媒ナノ粒子を含む。より詳細には、導電性担持ナノ粒子が使用される場合、担持ナノ粒子の表面の全体よりも少ない部分が電気絶縁体であるアイオノマーによって覆われている限り、導電性担持ナノ粒子は、電気化学反応から生成された電子が周囲のまたは吸着された分子またはイオンに電子を通過させるかまたは伝導することを可能にする導電体として作用する。結合剤非含有触媒ナノ粒子が、導電性担持ナノ粒子のこれらの少なくとも部分的にコーティングされていない表面と接触すると、これらの導電性触媒及び担持ナノ粒子は、意図された反応のために電子を互いに通過させる。加えて、本発明では、結合剤コーティングナノ粒子が結合剤非含有触媒ナノ粒子を一緒に接着して凝集体を形成し、そのような凝集体が充填されると、結合剤コーティングナノ粒子と結合剤非含有触媒ナノ粒子との相互接続の規則的な構造が形成される。これは、均質化された触媒粒子と触媒層中の結合剤との積層がランダムまたは任意であり、個々の粒子またはそれらの凝集体間に区別可能な相互接続がない従来技術の均質化された触媒粒子組成物とは異なる。本発明では、結合剤コーティングナノ粒子は互いに接続して接続ネットワークを形成し、一方、結合剤非含有触媒ナノ粒子及び/または結合剤非含有担持ナノ粒子は、そのような結合剤コーティングナノ粒子及びそれらの凝集体の周りに付着接触して分布し、それによって粒子相互接続の規則的な構造を形成する。結合剤非含有ナノ粒子間の接触は、電気経路を大幅に増強することができる。一方、結合剤非含有ナノ粒子間の積層または接触は、その相互接続状態がガスまたは液体が通過するための経路を形成する多くの必要な相互接続された細孔または空隙を生成する。触媒層の充填された凝集体内の接続された結合剤コーティングナノ粒子は、イオン経路を形成して、プロトンを付着した結合剤非含有触媒ナノ粒子へと導く。電気化学反応を最大化するために、このような凝集体中の結合剤コーティングナノ粒子上に良好に接続した結合剤層が確保される。これらのイオン経路は、触媒ナノ粒子の単一の均質化されたインクによって生成されるものとは異なり、ランダムで任意の分布である。したがって、規則的な電気経路、イオン経路、ガス経路及び液体経路の新規な構築は、本明細書に開示され可能にされた本発明の触媒層組成物によって達成された。
【0049】
本出願人の知る限りでは、市販のCCMのCLにおける結合剤またはアイオノマーを含有しない触媒の使用、あるいは高い触媒性能(平均0.7~1.2w/cm2超)を維持するだけでなく、HDV用途を満たすための優れた耐久性(25000時間当量に達する)も示す結合剤またはアイオノマーでコーティングされたナノ粒子と結合剤またはイオノマーを含有しないナノ粒子との混合物を開示した先行刊行物はなかった。結合剤またはアイオノマーでコーティングされたナノ粒子をCL構造中の結合基材として利用し、支持体の有無にかかわらず高活性の結合剤またはアイオノマーを含有しない触媒粒子を添加し、多目的の裸の導電性支持体を本発明のCL組成物中に一緒に添加することを、本明細書で最初に開示する。この新規なCL組成物は、PEMFC用途の触媒性能及び耐久性に関する多くの既存の困難に対するより良い解決策を提供する。
【0050】
本明細書に開示するすべての触媒インク配合物または処理の例では、意図された電極触媒層コーティングのために、すべてのインクはそれぞれ、互いに同じ触媒、互いに異なるそれぞれの触媒、あるいはインクの触媒と同じまたは異なる混合物である異なる触媒の混合物から作られてもよい。選択された結合剤またはアイオノマーは、インク中の炭素に対して選択された比率で混合される。次いで、このようなインクを膜上にキャスティング、ダイコーティング、またはスプレーコーティング、またはブラッシングして触媒層を形成した。
【0051】
CLの新規な組成物からの1つの更なる利点は、相互接続された結合剤非含有触媒ナノ粒子及び/または結合剤非含有導電性ナノ粒子のそのような顕著に増強された導電性経路が、電気化学プロセス中に新規な担持触媒生成物の生成をもたらすことであり、これは、燃料電池及び電気分解装置の電気化学反応、または電池用途を含む、非常に望ましい電気化学反応に理想的である。得られた担持触媒生成物のこの新規性は、触媒材料、例えばPtの薄膜が導電性担持ナノ粒子上にコーティングされることである。
【0052】
2)追加の導電性支持体を含む触媒層組成物
いくつかの実施形態では、本発明の新規なCL組成物は、いくつかの導電性支持体上に堆積した触媒粒子を利用する。支持体の腐食、例えば炭素腐食を防止し、貫通層の電子伝導を高め、より良好な電気化学反応を促進するために、高度に黒鉛化された導電性支持体が、以下の意図する理由のために好ましい:
【0053】
2.1)新たな触媒支持体として作用する
炭素担持粒子上のPtまたはPt含有ナノ粒子(nanoparticle、NP)のような触媒粒子の溶解及び再堆積は周知であり、従来技術における様々な科学者及び技術者によって調査されている。しかしながら、追加の導電性担持ナノ粒子が、還元されたPt-NPの更なる堆積のための新たな追加の支持体として作用するように、炭素担持粒子上に既に担持されている既存の炭素担持触媒粒子の溶液に添加された追加の炭素担持ナノ粒子を利用することは、新規であると考えられ、本明細書に初めて開示される。この新規な担持触媒は、必要な性能を維持することができる更なるECSAを提供することが見出された。
【0054】
2.2)更なる電子伝導経路として作用する
更なる導電性支持体または同様の(例えば、半導電性の)担持粒子は、本開示の組成物で形成された触媒層内により良好な導電性を提供する。すべての市販のCCM製品において、アイオノマーは例外なくインク混合物に使用されている。アイオノマーは、電子絶縁体である。電子は、それらが生成部位から移動することができないか、または反応活性部位に移動することができない場合に失われる。追加のアイオノマーを含有しない(すなわち、裸の、コーティングされていない)導電性支持体を追加することにより、より良好な所望の電気化学反応のための電子伝導経路が強化され増加する。これは新規であると考えられ、本明細書で初めて開示される。
【0055】
2.3)疎水性を向上させる
アイオノマーを含有しない裸の炭素支持体または同様の導電性支持体の追加は、触媒層により良好な疎水性を提供する。これは、生成された水または任意の凝縮水をCLから容易に押し出すことを可能にするためにも重要である。
【0056】
2.4)犠牲腐食支持体として作用する
炭素支持体上に堆積した触媒粒子は、触媒粒子が堆積していない同じ支持体よりもわずかに高い炭素腐食速度をもたらすことが実証されている[参考文献2]。追加の支持体として選択された、より腐食性の傾向の高い支持体(インク組成物への添加時に予備堆積した触媒を欠く裸の炭素)は、触媒支持体の腐食を軽減するための犠牲支持体として作用する。これは、本出願において初めて開示された。
【0057】
更に、本発明の新規CL組成物の選択された実施形態で利用される追加の裸の支持体は、Burupの最近の総説[参考文献5]の結論によって間接的に支持されるように、触媒生成物の耐久性を向上させる。そこに記載されているように、大きなサイズの触媒粒子(オストワルド熟成効果)は、ECSAの喪失に起因する性能低下を引き起こした。裸の支持体上への還元されたPtの再堆積により、Ptナノ粒子のより新しいECSAが作り出されるので、ECSAの喪失が軽減される。支持体上の隣接Pt NP上のPtの再堆積と比較して、そのようなオストワルド熟成はECSA喪失の重要な要因の1つである。
【0058】
更に、溶解したPtイオンがCLからGDLまたは膜に移動することにより、PtのECSAの不可逆的喪失が引き起こされた。CLに近い膜内の白金バンドは、移動効果のためによく観察されている。Ptのような触媒粒子もGDLメソポーラス層上に観察された。本発明では、還元されたPtを堆積させるための裸の支持体を近傍に局所的に設けることにより、そのような移動を最小化及び低減させる。
【0059】
また、溶解したPtイオンの移動を制限し、それらを触媒層内に再堆積させるCLの本発明の多層内部構造も本明細書で以下に更に開示する。高分解能走査型電子顕微鏡法によって得られた
図8の画像から、PEM側に近いより触媒的なナノ粒子濃縮バンドを有する均一な層がカソードCL内に観察されたことが明らかである。これは最初に開示されたものであり、金属触媒粒子の移動または不規則な再分布とは全く異なっていた[参考文献1]。第2に、PEMの内部に堆積した金属粒子は観察されなかった。これは、様々な研究者によって観察された、PEM中への溶解Ptの更なる移動の防止を提供するPEM側でのCLの緻密層の発現の直接的な指標であった。
【0060】
加えて、プレート形状触媒構造ナノ粒子[参考文献19]がより大きく成長したときにプレート形状様構造を維持することを開示した先行技術はなく、そのような粒子がより良好な性能及び耐久性のために支持体上に残ることは述べられていない。本発明は、プレート形状構造触媒粒子を利用することにより、成長するナノ粒子の移動、凝集及び凝塊形成を更に最小限に抑えることができ、その結果、それらの触媒性能が維持されることを開示した。そのようなプレート形状触媒粒子の形状、サイズ及び配合は、本出願人の以前の米国特許第9,761,885号により詳細に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
更に、支持体上の触媒粒子のプレート形状構造は、寿命末期に0.585Vで0.90w/cm2超生成され、15万サイクル超の間の支持体表面上の触媒粒子の均一な分布を促進する要因として示されている。以前の刊行物には、支持体上での触媒粒子サイズの漸進的な成長が、そのような予想される性能及び耐久性を提供することを開示したものはなく、むしろ逆であった。プレート形状触媒粒子の漸進的なサイズ成長は、本発明の開発において明らかであった。
【0062】
更に、耐久性試験における均一なサイズ成長が観察され、以下に詳述する追加的に開示された新規点の少なくとも1つ以上がなければ、大きなサイズのPt系触媒粒子の凝集及び凝塊形成が更に抑制されたと仮定される。これに加えて、これらの粒子は、MEAの上部からMEAの下部へと垂直な取り付け方向に移動するであろう。
【0063】
3)ナノ粒子の薄膜コーティングのための固体電解めっきプロセス
本発明の研究では、本発明により構成された本発明のCL層を有する燃料電池カソードは、白金担持触媒が使用されているために、使用期間後に多くのナノ粒子またはナノ粒子の凝集体の上面がPtの薄膜でコーティングされていることが見出された。これらのコーティングされた個々のまたは凝集したナノ粒子のいくつかは、支持体上に触媒ナノ粒子を含有しないことが見出された。他のいくつかは、Pt薄膜の下に位置するいくつかの触媒ナノ粒子を含有することが見出された。パブリックドメインでは公知であるように、連続したPt薄膜は、触媒活性の劣化が無視できる程度である。これを念頭に置いて、この新規な固体電解めっきプロセスを利用し、更に開発して、このような本発明の新規な触媒を製造することができる。
【0064】
図10では、白色ナノ粒子が層厚にわたって観察され、膜とCLとの間の界面でより多く観察された。これらの白色スポットは、電子回折X線分光法によって分析され、Ptリッチ粒子であることが判明した。
【0065】
CLにわたるそのようなPt薄膜コーティング粒子の観察は、良好に接続した電気経路及びプロトン伝導経路の有効性を示した。最適化された組成物は、この新規な固体電解めっきプロセスの更なる進歩をもたらすことができる。引き続き
図10を参照すると、そのような薄膜が凝集粒子上にもコーティングされ、そのような薄膜が支持体の表面上のいくつかの既存の触媒ナノ粒子の上にもコーティングされることも観察された。
【0066】
液体状態電解めっきの分野における既存の科学的知識により、既知のイオン錯体が利用可能であれば、大部分の遷移金属をいくつかの導電性基材上に電解めっきすることができる。固体電解めっきは、液体プロセス相に浸漬することなく近傍の金属イオンをカソード材料表面上に還元することによって同じ機構を利用する。したがって、クロム、鉄、銅、ニッケル、コバルト、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、バリウム、ハフニウム、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマス、ランタン、サマリウムを含む多くの金属をこのプロセスで使用して、薄膜触媒材料コーティングナノ粒子を製造することができる。
【0067】
既存の電解めっき方法と本明細書に開示する本発明の固体電解めっきとの間のいくつかの重要な違いには、以下が含まれる:
(a)固体電解めっきは、液体電解質または電解質中に金属イオン化合物をめっきすることを必要としない;
(b)固体電解めっきは、バルク物体の代わりにナノ粒子をコーティングする;
(c)めっき金属の溶解及びめっき金属イオンの還元が同時に起こる陰極内で固体電解めっきが起こるが、これは、金属が陽極から陰極へ、または溶液から陰極へ移動するほとんどの市販の電解めっきとは異なる;
(d)固体電解めっきは、廃液または有毒な排ガスもしくは溶液を生成しない。
【0068】
本発明の固体電解めっきプロセスの一実施形態では、上述の組成及び後述の層状構造を有する本発明の電極を作製した。このCCMをGDLと組み合わせ、電池固定具に取り付けた。加湿条件及び摂氏60度~85度の高温下で、水素をアノードに使用し、窒素をカソードに使用しながら、電池を0.6V~0.95Vのサイクリックボルタンメトリーサイクルに供した。CCMのECSA変化を監視しながら、このデューティサイクルを継続した。ECSAが安定した値に達すると、固体電解めっきプロセスは完了したと考えられた。ナノ粒子の性質に起因して、いくつかの実験では、ECSAの安定化によって示される「完了」の前に、例えば約65000サイクル後など早期に、いくつかのめっきされたナノ粒子が観察された。電子顕微鏡観察により、多くの金属めっきされたナノ粒子が観察された。
【0069】
この発明の固体電解めっきプロセスによって、このような新規なPt薄膜コーティングナノ粒子または他の同様の触媒材料コーティングナノ粒子を容易に製造することができる。発明者が理解する限りでは、サイクル電位が100mV/秒、または更には200mV/秒に増加する場合、堆積プロセスは大幅に高速化すると予想される。そのため、このような新規Pt薄膜コーティングナノ粒子を大量に製造できることが期待される。
【0070】
この薄膜コーティングのための固体電解めっきは、本発明の触媒層組成物を他の用途に利用することによって、それら他の用途に拡張することができる。この新規なプロセスの利点は、以下の非網羅的なリストに記載されている:
a)他の多くの金属薄膜コーティングナノ粒子を様々な用途のために製造することを可能にする。例えば、イリジウム薄膜コーティング担持触媒を製造することがきわめて望ましい。イリジウムは、グリーン水素製造のための水電解装置の最も高価な触媒であるため、Ir担持量の低減は非常に有益である。
b)本発明のプロセスは、ナノ粒子の外面上に厚さが数オングストローム~数ナノメートルの範囲であり得る薄層でナノ粒子をコーティングするという、以前は不可能であると考えられていたことを達成する。プロセスが十分に開発及び制御される場合、そのようなコーティングの厚さを制御及び定義することができる。液相電解めっきの以前の開発と同様に、新規なプロセスは、多くの新規かつ斬新な材料開発及び製造の大きな将来性を有する。
c)この固体電気めっきプロセスの注目すべき利点の1つはまた、そのゼロエミッション状態、ならびに廃棄物及び/または有害な化学物質が避けられない現在の液体電解めっきと比較して、廃棄物及び/または有害な化学物質がはるかに少ないか、または無視できる点である。
d)この新規な固体電解めっきプロセスは、既知の科学的かつ工学的知識に基づいて容易に増幅可能である。大型で迅速な帯電プロセスにより、支持体新規材料としての薄膜コーティングナノ粒子の製造は容易に実現可能となる。
e)本発明では、燃料電池反応プロセスによって触媒材料の薄膜を担持ナノ粒子上に生成した。しかしながら、電解槽を用いて行うこともでき、その場合、めっき材料をアノード側に配置することができる。酸素還元プロセスに関与する触媒材料は、溶解及び再堆積プロセスを経る。本発明の層組成物を利用することで、電子が現れると触媒金属イオンが導電性支持表面に移動し、還元されることが可能になる。
【0071】
触媒金属は、最内層内では他の副層よりもはるかに高い含有量を有することが見出された。しかし、この段階では、そのような移動の正確な機序は知られていなかった。考えられる理由は、最内層のコンパクトな充填密度内では、導電性ナノ粒子とナノ触媒との間の接触が、より緩く充填された中間層内での接触よりも大きかったことであり得る。定常動作下では、プロセス中の触媒層内の金属イオンの濃度勾配は、より多くの金属イオンを枯渇領域に駆動する主要な力であり得、枯渇領域では、金属イオンは中間層よりも最内層でより迅速に還元される。
【0072】
電解プロセス下での電解めっきの公知の知識を組み合わせると、この本発明の固体電解めっきは、強制電流条件下で実施することで、上記のプロセスをより高効率化することができる。
【0073】
コーティングされていないナノ粒子または部分的にコーティングされたナノ粒子からの薄膜コーティングナノ粒子の分離は、キャッピングリガンドを利用して非薄膜コーティングナノ粒子を除去することによって行うことができる。またはその逆に、洗浄、遠心分離などによって薄膜コーティングナノ粒子を除去する。
【0074】
結合剤またはアイオノマーでコーティングされた触媒、結合剤またはアイオノマーを含有しない触媒、及び更なる裸の(結合剤またはアイオノマーを含有しない)導電性支持体を有する本発明のCLは、より多くの電子経路、ガス燃料経路、及びアクセス可能な触媒粒子経路を提供する。経路のこのような有意な増強は、増強された触媒活性を提供し、Schulerによって同定されたすべてのサブ抵抗を劇的に減少させた。白金のような触媒粒子の担持量を等しく低減させるこのようなCLの還元が容易に実現可能であることも当業者によって予測可能である。同時に、CL中の触媒粒子の還元はCLの厚さも低減させ、これは浸水の問題を軽減するので、より良好な質量活性にとっても好ましい。
【0075】
4)多層触媒層構造
本発明の別の目的は、溶解触媒イオンの移動を低減することである。従来のCL作製プロセスでは、触媒粒子イオンの低減に特に有用な意図的に得られる構造はない。カソードの二層CLの従来の作製においては、CLの2つの副層間の充填密度は互いに類似していた。本発明では、異なる副層充填密度を有する異なる副層が代わりに使用される。本発明の特定の実施形態では、本発明のCLにおいて、異なる充填密度の少なくとも3つの副層が構築される。
【0076】
本明細書で使用される場合、材料充填密度は、所与の体積中の個々の粒子及び凝集体を含む固体粒子の数として定義される。したがって、粒子サイズが小さいほど、所与の体積の材料のより大きな粒子と比較して、材料充填密度が高くなる。
【0077】
一実施形態では、本発明の多層CL構造は、以下の3つの副層からなる:(1)膜の上に位置し、高い充填密度のナノ粒子またはそれらの凝集体のコンパクトな層構造を有する最内層;(2)最内層の上に作製され、低充填密度の大きなナノ粒子凝集体のゆるい充填構造を有する中間層;(3)中間層の真上に作製された最外層。この最外層は、滑らかな表面を有するコンパクトな層を生成するために、ナノ粒子のより小さな凝集体を利用する(
図7参照)。
【0078】
高い充填密度を有する最内層の目的には、2つの主な目的が含まれる:(1)インタクトな界面を形成して、基材、例えばPEMからのCLの剥離を防止することができる。そうでない場合には、結合剤非含有導電性ナノ粒子及び/または結合剤非含有触媒ナノ粒子(大きな凝集体は、膜と副層との間に細孔を存在させ、そのようなエアポケットは、局所的な浸水及び界面抵抗を増加させるので望ましくない)を含むことから問題となり得る;(2)膜を通って移動した高濃度のプロトンのための緩衝ゾーンを作り出す。この緩衝ゾーンの目的は、濃度勾配の生成を可能にし、CLにおける意図された電気化学的還元反応のために高濃度のプロトンがこのゾーン内により長く留まることを可能にすることである。
【0079】
中間層の目的は、特にCLが燃料電池のカソードである場合に、結合剤非含有触媒ナノ粒子を十分に利用して、非常に望ましい還元反応を改善することである。したがって、高電流密度用途のためには、この層は厚く作製されることが好ましい。
【0080】
最外層の目的または利点は、次の2つである:(1)この最外層はGDLと直接接触するので、より緩く充填された中間層の粗面を滑らかにする。また、エアポケットまたは隙間、または凹みはCLの性能を損なうので、滑らかな上面はより良好な界面伝導性を提供する。(2)高電流動作下で生成された水によって結合剤非含有ナノ粒子が失われたり洗い流されたりするのを防ぐために、コンパクトな層を作り出す。いくつかの実施形態では、最内層及び最外層のナノ粒子サイズは、中間層のナノ粒子サイズよりもはるかに小さい。特定の非限定的な一例では、前者は150nm以下の平均ナノ粒子サイズを有するが、中間層の平均ナノ粒子サイズは100~500nmの範囲である。CLの最内層中のナノ粒子の小さい平均サイズは、異なるコーティングプロセスパラメータを制御することによって操作されたが、中間層中のより大きいサイズは、それらのプロセスパラメータのいくつかを変化させることによって制御された様式で達成された。
【0081】
一例では、プロトン交換膜(proton exchange membrane、PEM)、陰イオン交換膜(anion exchange membrane、AEM)、もしくは炭化水素膜(hydrocarbon membrane、HCM)であり得る膜の上、またはGDLのメソポーラス層の上に、CLの固形分の充填密度が高い第1の副層を調製した。次いで、より大きな固体粒子の固形分の緩く充填された第2の副層を堆積させた。この第2の副層の後に、より小さい固体粒子の滑らかな最外層を堆積させて、滑らかな最外層を形成した。コンパクトな副層がCLの底部にある(すなわち、膜に近い)理由は、触媒粒子イオンの移動を減速させ、更にこれらの触媒粒子イオンを、結合剤非含有触媒粒子を含む小さな凝集粒子上に堆積させるために意図的に構成された層を提供するためである。触媒粒子としてPtを用いる場合、Ptナノ粒子はPt(2+)イオンを還元する優れた還元剤である。一部または最小のクロスオーバ水素により、溶解性Pt(2+)イオンは、既存の触媒ナノ粒子の表面上または裸の導電性支持体の表面上のいずれかで、緻密層中で完全に還元され得る。
【0082】
図10において、CLと膜との間の境界及びCL内にいくつかの完全にPtでコーティングされたナノ粒子が明確に観察されることは、本発明のCLのこの本発明の多層構造からの独自の結果の強力な証拠である。白色粒子は、この画像化試料中の白金で完全にコーティングされた個々の粒子(30~80nmのサイズ)及び凝集粒子である。触媒粒子の均一な輝度は、SEM撮像下でそれらの表面が白金で完全にコーティングされていることを示している。いくつかの既存のナノ粒子が、薄いコーティングの下に存在していた。このような白金薄膜で完全にコーティングされた触媒粒子は、本発明において初めて製造され、開示されたものであることは間違いない。これらの新規な触媒粒子は、界面で生成されただけでなく、本発明のCLの最内層内で(米国エネルギー省によって公開されたHDV MEAプロトコルの10万サイクルを超えた後の本発明のCLの断面を示す
図10の画像の垂直方向に)生成された。
【0083】
電子回折X線スペクトルから、
図8のCLの最内層中の触媒粒子の均一な高含有量が検出された。この最内層の触媒粒子含有量は、隣接する副層の触媒粒子含有量のほぼ3倍であった。これらのデータは、本発明の多層構造が革新的に構成されたCL内の白金イオンの移動を首尾よく低減させたことを示している。電子が現れるたびにPt(2+)イオンが還元されたので、十分に接続された電子経路は、CL中の完全にコーティングされた白金触媒ナノ粒子及び凝集体の堆積によって証明された。結合剤またはアイオノマーでコーティングされた触媒では、Pt(2+)イオンが膜内に移動し、膜内で還元されてECSAの永久的な喪失を引き起こした。クロスオーバ水素は、移動するPt(2+)の還元のための別の還元源であった。PEMにおける水素クロスオーバも、文献に記載されている。
【0084】
この本発明の多副層CL構造はまた、運転中に著しいCL構造変化及び触媒剥離を引き起こす可能性がある触媒層電極からの非結合触媒粒子の剥離を防止し、様々な材料密度の複数の層からなる慎重に設計されたサンドイッチ構造が発明され、本明細書では以下のように開示される。この本発明の多副層CL構造では、触媒層の上部(すなわち、膜から最も遠い最外領域)及び底部(すなわち、膜に最も近い最内領域)に2つのコンパクトな副層が作製され、上部副層と底部副層との中間に位置する中間副層はナノ粒子の大きな凝集体で満たされており、したがって上部副層及び底部副層よりも低い材料密度を有する。
【0085】
CLの上部または底部の緻密なまたはコンパクトな副層は、触媒インクの固形分のより小さな粒子を利用してコンパクトな層を形成することによって作製された。層厚は、層構造設計に基づいて変化し得る。中間層は、より多くの細孔を生成する大きな凝集粒子で形成され、上部副層または下部副層よりも緩く充填された副層構造をもたらした。
【0086】
図3を参照すると、LE1、LE2、及びLE3はそれぞれ、本発明の新規MEAの左電極の最外層、中間層、及び最内層である。一方、RE1、RE2、及びRE3は、MEAの右側電極の最外層、中間層、及び最内層であり、2つの電極は膜によって分離されている。左電極の最外層及び最内層LE1及びLE3は、より高い材料密度の緻密層であり、一方、中間層LE2は、LE1及びLE3よりも低い材料密度のより緩く充填された副層である。同様に、右電極の最外層及び最内層RE1及びRE3は、より高い材料密度の緻密層であり、一方、中間層RE2は、RE1及びRE3よりも低い材料密度のより緩く充填された副層である。
【0087】
実験結果から、寿命末期(EOL)には、CL厚さは依然として元のCL厚さの平均90+%以内にとどまっていた。この持続的な構造は、高性能で必要な寿命にとって重要である。本出願人は、特に結合剤コーティング触媒粒子、結合剤非含有触媒粒子及び追加の裸の(アイオノマー非含有)導電性支持体から構成される本発明のCL組成物と混合した場合、重要な寄与因子の1つがこのような本発明の多層構造設計であると考えている。
【0088】
DOE HDV AST(2019.11)[参考文献18]試験期間にわたるより高い触媒性能は、この構造の成功の明確な証拠であった[
図4参照]。改善された持続的な高出力密度は、電極層構造のそのような本発明の技術が実際の産業用途上大きな価値を有するものであったことを立証する。
【0089】
更に、CL内では、例えば、LE2またはRE2のような単一の中間層の図示されたシナリオを2つ以上の中間層に置換するなど、互いに同じまたは異なる触媒で形成されたより多数の充填密度が異なる副層を利用することができる。例えば、CLの中間部を、より耐久性のある一方の触媒層と、より触媒活性の高い層である他方の触媒層とを含む2つの異なる緩く充填された触媒副層で構成することができる。そのような構造は、本発明の組成物がそれらの溶解及び再堆積過程の間に触媒粒子を保持するための同じ機能性を提供するので、触媒性能を向上させると共にはるかに長期にわたる耐久性を提供することができる。
【0090】
Ballard Powerは、触媒性能を高めるための多層電極を開示した。基本的に、彼らはカソードCL用の二層構造を開発した。一方の層は、必要な耐久性のためにPtのみが担持された触媒で構成されていた。他方は、高い触媒性能を提供するためにPt合金担持触媒で構成されていた。しかしながら、これらの層には、遊離炭素またはアイオノマー非含有担持触媒は開示されていなかった。作製された触媒層の人工的なパターニングの利用も開示されていなかった。持続的な耐久性を提供するための本発明のインク形成及び関連する触媒構造副層も開示されていなかった。文献[参考文献20]は、黒色炭素粒子をアノード層に添加して、その薄さに起因する層の亀裂を最小限に抑えることを開示している。しかしながら、別の工程でアイオノマー非含有触媒を添加することは開示されておらず、CLのサンドイッチ/副層構造の利用も開示されていない。既知の科学に基づいて、白金薄膜は、衛星燃料電池用途で10年にわたって劣化が最小限であることが分かっている。本発明におけるこれらの白金膜コーティング触媒粒子も、同様の耐久性及び性能を達成することができる。
【0091】
本開示の触媒粒子の組成物を使用してすべての触媒粒子間に正しい内部接続を形成すると、既知の科学によって裏付けられるように、安定した触媒性能を得ることができ、これはまた、触媒活性を有する表面積の喪失を最小限とすることが経時的な触媒性能の維持につながり得ることを裏付けている。縮合触媒粒子層が最適化されると、接続された触媒粒子の形成に基づいて安定した触媒性能に達することができる。これは、白金連続膜の性能の経時的な減衰が最小から無視できる程度までであるという既知の科学から完全に裏付けられる。
【0092】
本発明の有用性の裏付けとして、上記で開示された多層CL構造を有する50cm2の活性領域サイズのMEAをコーティング手段によって作製した。これを活性化し、2019年11月に公開された米国DOE HDV ASTプロトコル(参考文献18)の下で試験に供した。
【0093】
別の用途、例えば水処理のための高度酸化プロセスでは、上記で開示された触媒層組成物を、活性炭などの何らかの吸収基材上にコーティングすることができる。この組成物によって形成された表面層構造は、Fe3O4のような活性触媒ナノ粒子が水流中に広がり、フェノール錯体のようなより多くの汚染物質を捕捉することを可能にする。そのような組成物は、活性触媒ナノ粒子の担持量を節約するだけでなく、過酸化水素などのいくつかの選択された酸化剤と反応して、触媒ナノ粒子の表面または隣接部位に吸着した汚染物質を切断することによる迅速な再活性化プロセスを可能にする。同じ活性炭基材の表面上に直接堆積した触媒粒子と比較した本発明の組成物の明確な違いは、その組成物が、同じまたは更に必要性の低い活性ナノ粒子を有する表面上のその拡張された網目構造による汚染物質の有意な捕捉を可能にすることである。
【0094】
特に、本明細書に開示される本発明の主題の様々な潜在的用途へのこの先見の明を考慮すると、本発明の触媒層組成物は電極触媒層に利用できるだけでなく、他の触媒反応を目的とするプロセスにも適用できることが当業者には理解されよう。
【0095】
5)パターン化触媒層のポストファブリケーション
また、溶解したPtイオンの膜への移動、GDLへの移動、及び触媒上への再堆積を含む、科学分野のパブリックドメインで公知のいくつかの劣化要因を更に緩和して、ほとんどのMEA生成物が垂直に組み立てられるために垂直位置に沿って上から下に空乏ゾーンを形成し、生成された水を容易に排出することを可能にするより大きな触媒粒子を形成するために作製された本発明の触媒層のポストファブリケーション(post fabrication)も本明細書に開示されている。この人工的なパターニングは、CL領域全体にわたる触媒粒子の溶解-再堆積経路を変化させた。
【0096】
Burupら(参考文献5)は、MEAの性能及び耐久性の劣化に影響を及ぼす1つの重要な要因が、インク中の材料の組成及び形成された層構造自体を含むカソード電極構造及び電極層特性であることを見出した。
【0097】
Byron Gates[参考文献17]は、性能を改善するためにCL上にパターンを形成することを開示した。しかしながら、CCL(Cathode Catalyst Layer、カソード触媒層)またはACL(Anode Catalyst Layer、アノード触媒層)のパターニングは、その電流密度が水素ガス及び酸素ガス下で0.6Vで1.5A/cm^2であり、同じ試験条件下でパターニングなしの通常のCLよりもほぼ1.5倍低いため、例外的な性能を全く示さなかった。水素条件下及び酸素条件下での触媒活性は、水素条件下及び空気条件下で試験したものよりも最大2~3倍の性能を提供することができることに留意されたい。単純には、空気中の酸素含有量が約21%と低いため、純粋な酸素ガスでは100%に近い酸素である。耐久性データは報告されなかった。その上、Gatesは高価かつ商業用にスケールアップすることが困難なナノリソグラフィ技術を利用していた。パブリックドメインでは、ほとんどのPt/C非パターン化CCLは、水素及び空気条件下で同一またはより良好な電圧で2.0A/cm^2超、または更には2.5A/cm^2超に達することができる。
【0098】
そのような設計及び作製の欠点は、小さなポケット孔が多数あり、これらは中程度のまたは高い電流密度の間に局所的な浸水を引き起こす可能性があり、これが性能の低下の原因となり得ることである。電極の全領域にわたるそのようなパターニングは、パターンの多くがランドの下にあったことを意味するので、このパターニングは、水の蓄積に起因する既知の劣化要因を効果的に緩和しない。また、それらの実験結果は、そのような程度の表示を提供しなかった。しかしながら、その作製プロセスに基づいて、本発明のCLの開示されている人工的なパターニングとは根本的に異なっていた。更に、それらのプロセスは非常に高価であり、商業生産には適さない。しかし、本開示の人工的なパターニングは、単純な機械的組み立て手段によって行うことができるため、極めて費用効果が高い。
【0099】
溶解したPt(2+)イオンの移動及び制御されていないPtの再堆積は、現在の市販のMEAの下方部分で起こることが知られているので、そのような移動の局所的制限及び/または局所的に制御された再堆積経路は、優れた緩和効果を提供し、MEAの劣化を低減することができる。本開示のCLの本発明のポストパターニングからの実験結果は、この理論を強く支持する。
【0100】
本発明では、CLの外部パターン化構造は、CL中の触媒反応の不連続性を防ぐためにCLの作製中に作成されず、代わりに、CLの外部パターニングを作成するための外部手段を使用して、このCLが既に作製された後に付与される。
図5を参照すると、このパターンは、CLの外面(すなわち、膜の反対側に位置するその表面)にわたって隆起/非圧縮領域RUAと陥凹/圧縮領域RCAとの交互レイアウトを含む。この外部パターニングは、触媒粒子の移動及び凝集を緩和して触媒粒子の電気化学的面積の減少を低減または著しく平滑化する触媒粒子溶解及び再堆積プロセスを局在化させることを意図して発明された。
【0101】
より詳細には、膜の対向する側に2つの電極CLを有するMEAが、2つの電極CLに対して対向するMEAの対向する側に2つの流れ場プレートと組み合わせて示されている
図6を参照すると、各CLの隆起/非圧縮領域RUAは、それぞれの流れ場プレートのガス流れ場チャネルFFC内に位置し、各CLの陥凹/圧縮領域RCAは、流れ場チャネルFFCを互いに分離するそれぞれの流れ場プレートの隆起リブRRと整列する。隆起した/圧縮されていない領域RUAは、拡散ガス反応物と反応するためのより多くの触媒粒子を有し、その結果、より多くの触媒活性を生じる。陥凹の深さがCL層の全体の厚さの約10~15%しか測定されない場合でも、この外部パターニングは、著しい耐久性の向上と共に、触媒性能の著しい向上を達成することが示されている。耐久性の向上は、本発明のCLパターニングが繰り返しパターン領域における触媒粒子の溶解及び再堆積を局在化させることによって説明され得る。同じ量の触媒粒子が陥凹/圧縮領域CA及び隆起/非圧縮領域にある場合、溶解及び再堆積プロセスを可能にするためのそれらの領域の局在化は、CLにわたって傾斜した触媒密度の代わりに、動作中の均一な触媒密度をもたらした。
【0102】
他の従来のアセンブリとは異なり、CLのそのようなポストパターニングがない場合、CL全体における触媒粒子の溶解及び再堆積は、薄い上部(より少ない粒子)から厚い底部(より多くの触媒粒子)への様式でCL全体にわたるPt濃度の勾配を作り出した。この溶解及び再堆積の効果を停止することは不可能であるが、CLのこのような本発明のパターニングを利用すると、それらの劣化効果は大幅に緩和及び低減された。
【0103】
この特徴は明確であり、高性能かつ長期耐久性の発電にとって非常に有益である。結果として、MEAの組み立て中のそのようなパターニングは、傾斜ではなく、RIM側の近くに均一なPt濃縮バンドを生じさせた。より高いPt濃度帯域のこのような均一な層の形成は、以下の要因に起因する可能性がある:1)上記のような局所的なPt溶解及び再堆積効果;2)更なる遊離炭素粒子の組み込み。裸の炭素粒子は、還元されたPt再堆積のための追加の支持体として利用することができる。この機能は、新たに還元され堆積されたPtナノ粒子上の触媒粒子の成長を大幅に低減させた。これはまた、新たに形成された担持触媒に起因してECSA減衰が大幅に減速された理由を十分に説明し得る。
【0104】
第2に、流れ場プレートの隆起リブRRの下に位置する陥凹/圧縮領域RCAは、陥凹/圧縮領域RCAと隆起/非圧縮領域RUAとの間を遷移するCLの側壁内のより隣接する触媒粒子に電子がアクセスすることを可能にするか、または伝導流れ場プレートに電子が迅速に放出され、または伝導流れ場プレートから電子が放出されることを可能にする。これは、従来の表面接触が隆起リブRRと導電性CLとの間にある場合、本発明のパターン化されたCL構造は、電子が流れ場プレートの流れ場チャネル壁からCLの隣接する側壁に放出されることを可能にするからである。ORRの場合、電子の更なるアクセスは、ORR反応速度、更には反応物質としての酸素のより良好な利用を高める。正確な圧縮もまた、接触抵抗を低減するために有益である。不均一な多相反応の場合、この特徴は、発電性能を維持し強化するためのより良好な反応経路を提供する。
【0105】
図5に示すポストファブリケーションされた非限定的な例では、正規化された全体のCL厚さは0.95であり、陥凹/圧縮領域REAの圧縮深さは0.15であった。陥凹/圧縮領域REAの床の下では、CL層の材料密度は隆起/非圧縮領域RUAの下よりも圧縮されており、CLの材料密度はより緩く充填されている。
【0106】
これらのパターンは、流れ場プレートのランドの下で圧縮されたRCAでのCLの厚さが、9.2ミクロンの相対厚さから、隣接するRUAに向かって外側に移動する方向に、標的カソードCLの典型的な厚さである10ミクロンのより大きな厚さに移行することが見られた
図8に示す本発明のCLで観察された。外圧が除去された後にSEM撮像が行われたことが指摘される。SEM機器の画像領域サイズの制約のために、完全なRCA/RUA遷移を包含するのに十分に大きい(例えば2000×1000ミクロン)領域内で十分に小さな厚さ差(例えば0.8~1.5ミクロン)を観察することは不可能であった。したがって、
図8に示す選択された画像化領域は、RCAと隣接するREAとの間の遷移領域の部分的な割合のみを示す。画像化領域の極値間の可視CL厚さの差は、可視最大厚さの約8%であった(最も厚い可視領域では10ミクロン、最も薄い可視領域で9.2ミクロン)。圧力解放後の全体的な傾斜遷移が0.1~0.2mmの長さであったと仮定すると、RCAとRUAとの間の厚さの推定差は2~4ミクロンであり、これは、RUAで13ミクロンの推定全体CL厚さについて、全体CL厚さの約15%~30%のRUA/RCA厚さ差を示す。したがって、パターン作成プロセスでより小さい圧力が加えられた場合、厚さの差がより小さくなり得ることを考えると、RUA/RCA厚さの差は、CL厚さ全体の10%~30%のより大きな範囲内で変化し得る。
【0107】
高電流密度動作下で局所的な浸水を引き起こす可能性があるCLに更なる亀裂またはポケットを生じさせないように、適切なパターンプロファイルが選択される。浸水は、一般的な低質量活性の問題である。更に、上に開示された新規なCL組成物、及び同じく上に記載された内部副層構造は、他の従来の製造プロセスのCLよりも、そのような所望の外部パターンの作成に大きな利点を提供する。CLのいくつかの既存の市販のCCM作製プロセスにこのパターン化構造のポストファブリケーション形成を追加することは、上記と同じ基礎となる科学原理及び工学原理のために、それらの耐久性にも有益であると仮定される。
【0108】
図6を参照すると、予め作製されたMEAへの外部CLパターニングの適用は、既知の方法でバイポーラ流れ場プレートであり得るそのMEAの流れ場プレートの流れ場チャネル/リブパターンにレイアウトを合わせて実行することができる。本発明の試験では、MEAの2つのCL内の外部パターンは、双極流れ場プレート上のわずかに高いトルク圧力を利用してそれらの間でMEAを圧縮し、流れ場プレートの対応する領域(流れ場チャネルFFC及び隆起リブRR)を使用してCLの隆起/非圧縮領域RUA及び陥凹/圧縮領域RCAを作成することによって作成された。外部CLパターニングを作成するための2つの流れ場プレート間のMEAのこの機械的押圧は、MEAにわたる均一な圧力印加を示す押圧力矢印PFによって
図6に概略的に示されている。
【0109】
CL上に圧縮領域及び非圧縮領域を形成するために連続CL上にポストパターニングを形成することは、優れた耐久性を有する優れた高出力密度の製造及び維持に寄与することが見出された。このポストパターニングとマイクロパターニングまたは他の同様のものとの間の顕著な違いは、以下に列挙されるそれらの特性である。
1)それらをインビボ細胞アセンブリによって作製した。このプロセスは、マイクロパターニングに使用されるようなパターンを生成するための追加の高価で正確な制御システムを必要としなかった。
2)そのようなパターンを作成するプロセスは、Byronのグループのような他の刊行物に開示された潜在的なピンホールまたは近くのCLもしくはCL材料の剥離を引き起こさなかった。これは、本発明の触媒インク組成物及びCL作製のためのプロセス技術に少なくとも部分的に起因し得る。
3)更に、ガス流路内の外部CLパターンの隆起/非圧縮領域RUAは、これらの隆起/非圧縮領域RUAでのCL厚さが大きいことに起因して、より良好な触媒性能を促進する。これは、制御された多孔質構造を有する持続的な層パターンが触媒反応を促進するので、触媒性能を改善する。また、多くの先行刊行物において、流れ場チャネルの下のCLは、流れ場のリブの下のCLよりも反応性が高いことが明らかである。本発明の方法によってCLに正しく埋め込まれたランドを利用することにより、チャネルの下のCL領域により良好なより多くの電子を提供する。導電性粒子はまた、この必要性を増大させる。
4)更に、局所的な高度に触媒性の層パターンは、溶解した触媒金属イオンの移動を防止するかまたは劇的に減少させるか、あるいは限定されたポストファブリケーションパターン領域内でのそれらの再堆積を更に制限する。これは、寿命の終わりに、触媒粒子が依然として大きなサイズで支持体上に均一に分布していることから明らかであった。触媒粒子のサイズ成長は、このパターン構造及び組立技術によって緩和される。科学的には、活性領域内の支持体上の触媒粒子の保持は、耐久性を促進することができる重要な要因の1つである。
5)隣接する領域も浸水させる局所的な浸水を回避するためには、流れ場プレートの隆起リブの下のMEAの陥凹/圧縮領域RCAは、触媒層なしで空であることも、空にすることもできない。もう1つの態様は、RCEとRUAとの間に亀裂を生じさせないことであり、そのような亀裂は、高性能の電気化学用途にとって理想的ではない。
【0110】
6)固体電解質膜の更なる保護
固体電解質膜は、CCMの重要な原材料である。ほとんどの市販の強化膜(reinforced membrane、RIM)は、高出力密度動作下では長時間持続しない。いくつかの要因がRIMの劣化を引き起こす。市場で支配的な製品は、Gore Select RIM製品である。しかしながら、それらは非常に高価であり、依然として動作中に絶え間ない劣化を被る。フッ素の浸出、アイオノマーの喪失、ヒドロキシルラジカルによる攻撃、熱ストレスまたは動作ガス圧により、ほとんどの場合、RIM厚さは経時的に薄くなる。その結果、RIMのバーストにより、CCL及びスタックの寿命が終了してしまう。
【0111】
本発明の試験から明らかなように、RIM上にコーティングされた本発明のCL構造により、市販のRIMの縮みまたは薄化が大幅に軽減された。0.90ワット/cm2を超える15万サイクルの試験の終了時の高出力密度は、RIMのこの更なる保護の確固とした証拠であった。高出力密度は、試験したCCMの寿命末期にRIMのプロトン伝導性が優れていたことを間接的に示した。
【0112】
試験後の本発明のCCMの走査型電子顕微鏡撮像法で撮像された高解像度画像[
図10]は、8%未満の厚さ喪失を示した。BOLでのCCMと比較して、その厚さは平均12ミクロン(±1ミクロン)であった。EOLでは11ミクロン(±1ミクロン)であった。
【0113】
EOLでのCCMの断面を
図8に示す。PEM側の緻密層(Pt濃縮バンド)は、3.2(±1.0)ミクロンの厚さを有することが示されている。触媒層の平均厚さは約9.6ミクロンであった。使用した市販のPEMの厚さは15.0ミクロンであり、これはコーティング前の製品の厚さと非常によく一致している。CLの最上層/最外層は、顕著な厚さの密集した充填物を生成するのではなく、むしろより緩く充填された中層/中間層の粗い表面を平滑化し、したがって触媒または裸の担持粒子の剥離を防止することを意図していたため、明確に観察されなかった。
【0114】
そのような結果は、同じ用途に特殊RIMを利用しないことによってCCMコストを削減する優れた可能性を示している。
【0115】
<実施例>
実施例1:本発明のインク配合物
白金含有触媒を、そのECSA及び触媒サイズ分布に基づいて選択した。例えば、20%~50%以上の白金含有量の炭素担持触媒を触媒の第1の部分として選択することができる。この触媒を、一晩のジャーミル粉砕を含む既知の方法によって溶媒溶液で均質化した。例えば、1.0グラムのPt-/C触媒をアルコール及び水と混合した溶液中で使用して、ジャーミル粉砕によって均一溶液を形成した。溶媒系の体積は、必要な粘度または固形分に基づいてコーティングプロセスによって決定した。例えば、上記量の触媒について、アルコール溶液の体積は40~70mlであった。しかし、マイクロ流動化または超音波処理を代わりに使用することもできる。この均質化された触媒インク溶液1を所望の量の結合剤、この場合はナフィオンアイオノマーと混合して、アイオノマーコーティング触媒インク溶液(Catink1)を形成した。使用されるアイオノマーの量は、例えば、触媒の導電性支持体の量の20%~90%の間で変化し得る。選択される結合剤の量は、その意図される用途による触媒層の種類に基づいてもよい。この実施例では、導電性触媒支持体に対する70%のアイオノマーの比を使用した。
【0116】
第1の部分に対する触媒対担体含有量の比が同じであっても異なっていてもよい触媒の第2の部分を測定し、アルコール溶液中で均質化して、結合剤非含有触媒インク溶液(Catink2)を得た。この特定の例では、等量の選択された触媒ナノ粒子をCatink1と同様に使用した。
【0117】
次いで、Catink1を激しく撹拌しながらCatink2にゆっくりと添加し、それによって触媒インク混合物(Catink3)を得て、これを使用前に継続的に撹拌した。Catink3の一部を直接使用して、本発明の触媒層を作製した。
【0118】
次いで、溶媒溶液中に炭素担持ナノ粒子などの裸の導電性支持体を含む結合剤非含有支持体インク(Supink1)を調製し、超音波処理手段によって使用前に均質化した。裸の担持粒子の量を、1つの触媒インク(Catink1、Catink2)に使用された全触媒生成物に基づいて計算した。支持体と触媒の比率は1未満が好ましく、0.5未満が更に好ましい。上記の試料について、50mlのアルコール溶液中の0.80グラムの導電性炭素をSupink1に使用した。Supink1を同じ溶媒系中で更に一定期間、例えば最大1時間の超音波処理で均質化した後、激しく撹拌しながらSupink1をCatink3にゆっくり添加した。混合後、得られた最終触媒層インク混合物を使用前に少なくとも1時間にわたって撹拌した。
【0119】
高出力流動化装置を使用した場合、Catink1混合時間を大幅に短縮することができる。同じことが、高出力流動化装置による選択された溶媒溶液を用いた触媒の均質化にも当てはまる。
【0120】
実施例2:代替的な本発明のインク配合物
実施例1において、Catink1とCatink2とで使用する触媒が同じであれば、第1のインク溶液調製において、同じ触媒の大部分を使用することができる。そして、均質化した後、インク溶液を2分割した。所望の量のアイオノマー溶液を少量添加して、Catink1を形成した。アイオノマーを含まない残留インクは、Catink2を形成する。Catink1を一晩撹拌した後、Catink2にゆっくりと添加してCatink3を形成した。Supink1は、実施例1に記載したのと同じ方法で調製した。Supink1の超音波処理後、これをCatink2にゆっくり添加して最終インク溶液を形成し、これを使用前に少なくとも1時間にわたって撹拌した。
【0121】
実施例3:本発明のCCM製品の本発明の製造
上記で製造した実施例1のインクをコーティング機に移した。本発明の多層CCM構造体を、超音波スプレーコータを用いた以下のプロセスによって作製した。しかしながら、このプロセスは、スロットダイコーティング、他のドクターブレードコーティング、またはスクリーニング印刷技術、または任意の多層コーティングプロセスを含む既知のプロセス技術を使用して代替的に実行することができる。
【0122】
異なる副層の材料充填密度を、最内層についてはMPD1、最外層についてはMPD2として示した。ラベリングフォーマットMPD-I#は、中間層に使用され、#は、中間層内の異なる副層の数値識別子である。例えば、MPD-i1及びMPD-i2は、2つの異なる中間層のそれぞれの充填密度を示す。一般的な目的向けには、MPD1及びMPD2の値は、典型的には、MPD-i#の値よりも大きい。
【0123】
工程1)コーティング中の膜の膨潤を低減するために、清浄な膜、例えばナフィオン膜または他の強化プロトン交換膜を、膜のガス化温度より低い温度に設定したホットプレート上に置いた。例えば、超音波スプレーコータの流量、成形空気圧、ホットプレート温度、ならびに超音波処理周波数及び出力を含むコーティングパラメータを制御することによって、インクの固形分の薄層を膜の上に作製した。超音波スプレーコーティングは周知のコーティングプロセス技術であるため、本明細書に記載の所望の結果を達成するためのプロセスパラメータの適切な最適化は、当業者には明らかであろう。各層のコーティングパラメータのセットを制御することによって、霧化された液滴を様々なサイズとすることが可能である。好ましくは、そのような制御は、所望のMPD1を有する半乾燥粒子または乾燥固体粒子を得るために使用される。このインク試料では、そのような堆積した粒子のサイズは50~150nmの範囲であった。この第1の層は、触媒層の全インク容量の約10~30%を使用して作製された。この実施例では、上記で開示されたインク溶液を使用して、全触媒層の約30%の厚さの最内層を作製した。これにより、緻密な底層/最内層が作製され、その厚さは、インクの固形分及びCLの設計に応じて変化し得る。
【0124】
工程2)所望の液滴サイズ及び濡れ性を得るために、増加した流速、及び他のコーティングプロセスパラメータの関連する調整を使用して、第2の層を第1の層の上に直ちにコーティングした。流速を初期流速よりも増加させてCL中に大きな凝集粒子を生成し、前の副層よりも低い材料充填密度の中間層を作成した。乾燥した固体粒子は、約80nm~約500nmのサイズ範囲を有していた。均一に大きな凝集粒子がより好ましい。この中間層は、選択された実施形態において所望のCLの総インク容量の約50~70%を含有するものとする。この例では、中間層の厚さは約5~6ミクロンであった。更に、コーティングプロセス中の溶媒による膜の大きな膨潤は、高性能CCMにとって理想的ではないことが知られていた。ほとんどの液滴は、膜を堆積させる前に半湿潤状態に達するように制御された。当業者であれば、コーティングパラメータの操作によってこの要件を容易に達成することができる。
【0125】
工程3)第2の層の上に第3の層を作製した。滑らかな表面を有するコンパクトで緻密な最上層/最外層を作製するために、流量をより小さいものに変更した。他のコーティングプロセスパラメータを調整して、均一な被覆率及び厚さを有する必要な最上層を作製した。
【0126】
工程4)3つの層を有する1つの触媒層が膜の第1の面に完成すると、触媒コーティングされた膜を裏返し、工程1)~3)からの同じコーティングプロセスを繰り返して、膜の反対側に他のCLを調製した。
【0127】
処理工程のこの新規な組み合わせの実施により、本発明のCL組成物を有する本発明のCCMをその後の試験のために調製した。
図9は、均一で滑らかな上面形態を示すCCMの上面SEM画像を示す。そのような最上層/最外層は、亀裂が観察されず、いかなる緩い島または充填された大きな凝集体も露出されなかったため、理想的である。コーティングされた電極全体にわたる均一な細孔はまた、ガス拡散及び液体(例えば水)の漏出のための理想的な経路であった。
【0128】
実施例4:膜電極アセンブリの作製
以下の手順で、活性面積が50cm2(幅50.0mm、長さ100.0mm)の膜電極接合体を作製した。
【0129】
上記で作製された本発明のCCMの一片を、2つのガス拡散層の間に挟まれるように好ましいサイズに切断した。通常、CCMは、幅70mm、長さ120.0mmにカットされる。長方形のGDLの二片を58×108mmの寸法に切断した。この一組の電極は、切断されたCCM上に正確に位置合わせされて中心に配置された50mm×100mmの開口領域を有する片方の面に接着剤を設けたプラスチックフィルムの二片の間に積層された。次に、最終的なMEA生成物を、MEAの防漏封止を提供するのに十分な圧力下で、摂氏115度で3~8分間ホットプレスした。
【0130】
MEAをモノセルスタックに組み立てた後にリーク試験を行った。スタックの各ガス入口に5PSIの圧縮空気を印加し、各出口のスイッチバルブを閉じた。セルを水容器に浸漬し、中心から気泡が現れるのを観察した。MEAの漏れ試験は、MEAの片側のみを5PSIで加圧し、MEAガスチャネルの反対側、すなわち出口からガスが出ていないかどうかを確認することによって行った。
【0131】
実施例5:CCM上への外部パターンの作製
触媒コーティング膜の外部パターンは、両側の2つの流れ場プレート間で十分な圧力でMEAを圧縮することによって同時に作製された。例えば、上記で作製したMEAを2枚のグラファイト製流れ場プレートに入れ、圧縮して上記の圧縮領域深さを達成した。
【0132】
GDLを除去した後、ランド(RUA)及び谷(RCA)をCCMの上部に見ることができる。
図7は、上記の方法によって作成されたそのようなCCMの上面SEM画像を示す。線1、線2、線3、及び線4の長さは1.00mm、0.92mm、1.06mm、及び0.90mmであり、線1及び線3はRCAにまたがる測定線であり、線2及び線4はRUAにまたがる測定線である。これらは、1.0mmのチャネル幅及び0.90mmのランド幅を有する流れ場のものとよく一致している。幅の広がりは、流れ場とCCMとの間のGDLの弾性圧縮によって引き起こされ得る。
【0133】
<本発明のCCMを用いたMEAの試験>
この完成したMEAを、100%RHの燃料電池試験ステーションで、燃料として水素及び酸化剤として空気を用いて80℃で活性化プロセスに供した。活性化プロセスの後、MEAを試験プログラムに従って分極試験に供した。
【0134】
次いで、MEAを、2019年11月に公開されたHDV DOE MEA試験プロトコルに供した。基本的に、MEAを、85℃、相対湿度100%、及び各側1バール未満で、50mV/秒で0.6~0.95VのCVサイクルに合計15万サイクルにわたって供した。それぞれ1000サイクル目または3000サイクル目に、ECSA測定を行い、記録した。それぞれ5000サイクル目に、分極曲線を水素及び空気下、85℃及び相対湿度100%で測定した。次いで、セルをカソード上で十分に窒素でパージし、耐久性試験を15万サイクルに達するまで続けた。
【0135】
1.0A/cm
2及び1.5A/cm
2でのセル電圧を、異なるサイクル数で
図4に要約する。結果は、2019年11月に公開されたDOE HDV MEAの試験プロトコルの下で、15万サイクルを超えるサイクルが行われたことを示した。1.5A/cm
2の出力密度での電圧変化は5.0%であり、これは、HDV用途のためのMEA性能の要件のベンチマークの半分である。
【0136】
実施例6:Pt薄膜コーティング担持触媒の作製
上に開示されたタイプの本発明のCLを調製し、水素ガスがアノード側に供給され、窒素がカソード側に60℃~80℃、選択された相対湿度80%~100%で供給される設定でCVサイクル下で試験した場合、十分な量のサイクル、例えば50mV/秒で5万サイクルを超えて、CLのECSAは約20%低下した。MEAを10万サイクルにわたってサイクルすると、ECSAは初期値の約28%低下した。また、MEAを150kにわたってサイクルすると、ECSAは初期値の約40%減少した。本発明のPt薄膜で被覆された担持触媒は、この期間中に徐々に形成されたと考えられた。CL支持体内の様々なサイズのPt薄膜コーティングナノ粒子及び凝集体の存在は、経時的な生成の進行を強力に補助する。CLの(膜に近い)最内領域における高濃度のPt含有量及び隣接領域における非常に低いPt含有量は、Pt薄膜コーティングナノ粒子の漸進的な生成の他の堅固な証拠である。
【0137】
得られたPtコーティングナノ粒子は、
図10で画像中の明るい点として観察可能である。同様の明るい粒子は、より少ない量及び濃度であるが、中間層内でも観察可能である。
【0138】
図11を参照すると、電子分散型X線分光法によって分析された異なる領域のPt含有量は以下のようにして得られた:手書き領域1では、Pt含有量は39.0%であった。手書き2では、Pt含有量は34.9%であった;手書き領域3のPt含有量は14.9%であった。この分析されたPt含有量を除いて、残りの質量は主に炭素であった。
【0139】
本明細書で上述したように本発明では様々な修正を行うことができ、多くの明らかに大きく異なる実施形態が行われるため、添付の明細書に含まれるすべての事項は例示的なものとしてのみ解釈され、限定的な意味では解釈されないことが意図される。
【0140】
参考文献
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【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層組成物であって、
結合基材としての結合剤でコーティングされた結合剤コーティングナノ粒子と、
少なくとも前記結合剤コーティングナノ粒子にその結合基材で付着した結合剤非含有触媒ナノ粒子と、
前記結合剤コーティングナノ粒子と前記結合剤非含有触媒ナノ粒子との相互接続によって少なくとも部分的に規定される、前記
触媒層内の規則的な電気経路、イオン経路、ガス経路及び液体経路と、
を含む、触媒層組成物。
【請求項2】
前記層内の前記規則的な電気経路、イオン経路、ガス経路及び液体経路を形成するために、前記結合剤非含有触媒ナノ粒子及び前記結合剤コーティングナノ粒子のいずれかまたは両方と付着した結合剤非含有導電性担持ナノ粒子を更に含む、請求項1に記載の触媒層組成物。
【請求項3】
前記結合剤非含有導電性担持ナノ粒子は非触媒導電性粒子である、請求項2に記載の触媒層組成物。
【請求項4】
前記結合剤コーティングナノ粒子は導電性である、請求項
1に記載の触媒層組成物。
【請求項5】
前記結合剤は溶液可溶性アイオノマーを含む、請求項
1に記載の触媒層組成物。
【請求項6】
前記結合剤は、摂氏100度を超える動作温度に耐えることができる高温能力の溶液分散性結合剤を含む、請求項
1に記載の触媒層組成物。
【請求項7】
前記結合剤コーティングナノ粒子は結合剤コーティング触媒ナノ粒子を含む、請求項
1に記載の触媒層組成物。
【請求項8】
前記結合剤コーティング触媒ナノ粒子及び前記結合剤非含有触媒ナノ粒子の両方が、導電性支持体を有する担持触媒ナノ粒子である、請求項7に記載の触媒層組成物。
【請求項9】
前記結合剤コーティングナノ粒子は非触媒ナノ粒子である、請求項
1に記載の触媒層組成物。
【請求項10】
前記結合剤非含有触媒ナノ粒子は、導電性ナノサイズ支持体を有する担持触
媒ナノ粒子を含む、請求項
1に記載の触媒層組成物。
【請求項11】
前記結合剤コーティングナノ粒子及び前記結合剤非含有触媒ナノ粒子は凝集ナノ粒子を含み、30ナノメートルnm~2500nmの範囲の粒子サイズを有する、請求項
1に記載の触媒層組成物。
【請求項12】
前記結合剤非含有触媒ナノ粒子は、粒子サイズが100nm未満の非凝集ナノ粒子も含む、請求項11に記載の触媒層組成物。
【請求項13】
前記規則的な電気経路、イオン経路、ならびにガス経路及び液体経路は、触媒粒子の凝集体内または凝集体間の接続された細孔から構成される、請求項
1に記載の触媒層
組成物。
【請求項14】
前記結合剤非含有触媒ナノ粒子は、クロム、鉄、銅、ニッケル、コバルト、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、バリウム、ハフニウム、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマス、ランタン、サマリウム、及びそれらの組み合わせまたは合金もしくは金属酸化物からなる群から選択される、請求項
1に記載の触媒層
組成物。
【請求項15】
ナノサイズの導電性固体ナノ粒子と、前記導電性固体ナノ粒子の表面上に堆積された触媒材料の薄膜とを含む触媒材料の薄膜でコーティングされた担持触媒生成物を製造する固体電解めっき方法であって、
請求項
1に記載の電極触媒層組成物を含む触媒層を有する電極を有することと、
前記電極を電気化学反応に供し、その間に前記触媒層中の触媒ナノ粒子を再分配して、前記ナノサイズの導電性固体ナノ粒子上に前記触媒材料の薄膜を形成することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記電気化学反応は燃料電池反応器内で行われる、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記電極は前記燃料電池反応器のカソードである、請求項1
5に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒層は、互いに重なり合って積層された複数の副層であって、
a)第1の材料充填密度によって特徴付けられる最内層と、
b)前記最内層の反対側に位置し、第2の材料充填密度によって特徴付けられる最外層と、
c)前記最内層と前記最外層との間に存在し、それぞれが前記第1の材料充填密度または前記第2の材料充填密度とは異なるそれぞれの材料充填密度によって特徴付けられる1つ以上の中間層と、
を含む複数の副層を備える多層触媒層である、請求項1
5に記載の方法。
【請求項19】
各中間層の前記材料充填密度は、前記最内層及び前記最外層の少なくとも一方の前記材料充填密度よりも小さい、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1
5に従って製造される、触媒材料の薄膜でコーティングされた担持触媒生成物。
【国際調査報告】