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特表2024-532485CD137および腫瘍関連抗原に結合する二重特異性結合タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】CD137および腫瘍関連抗原に結合する二重特異性結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240829BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240829BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240829BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/705
C07K16/00
C12N15/09 Z
C12N15/62
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/63 Z
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K48/00
A61K47/65
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513933
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 US2022075846
(87)【国際公開番号】W WO2023034922
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/240,402
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/327,700
(32)【優先日】2022-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521339223
【氏名又は名称】ノヴァロック バイオセラピューティクス, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】ペイ,イ
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ハイチュン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,イック
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チャン フン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトCD137および腫瘍関連抗原(例えば、Claudin-6、Claudin18.2、またはNectin-4)に結合する二重特異性結合タンパク質およびその断片、これらの抗体をコードするポリヌクレオチド配列、およびそれらを生産する細胞を提供する。本開示はさらに、これらの抗体を含む治療組成物、ならびにがんの検出、予後、および抗体ベースの免疫療法のためのそれらの使用方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連抗原およびCD137に結合する二重特異性結合タンパク質であって、
(a)前記腫瘍関連抗原に結合する第一の抗原結合部位と、前記腫瘍関連抗原に結合する第二の抗原結合部位とを含む、抗体スキャフォールドモジュール、および
(b)CD137に結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールを含む、二重特異性結合タンパク質。
【請求項2】
前記腫瘍関連抗原が、Claudin6、Claudin18.2、およびNectin-4からなる群から選択される、請求項1に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項3】
前記腫瘍関連抗原がClaudin6である、請求項2に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項4】
前記腫瘍関連抗原がClaudin18.2である、請求項2に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項5】
前記腫瘍関連抗原がNectin-4である、請求項2に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項6】
前記抗体スキャフォールドモジュールがIgGである、請求項1に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項7】
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもClaudin6に結合し、
(i)CDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、およびCDR3:配列番号47を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号48、CDR2:配列番号49、およびCDR3:配列番号50を含む軽鎖可変領域配列、または
(ii)CDR1:配列番号51、CDR2:配列番号52、およびCDR3:配列番号53を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号54、CDR2:配列番号55、およびCDR3:配列番号56を含む軽鎖可変領域配列を含む、請求項3に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項8】
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもClaudin6に結合し、配列番号25または配列番号27に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号26または配列番号28に記載の軽鎖可変領域配列とを含む、請求項7に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項9】
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもClaudin6に結合し、
(i)配列番号25に記載の重鎖可変領域配列、および配列番号26に記載の軽鎖可変領域配列、または
(ii)配列番号27に記載の重鎖可変領域配列、および配列番号28に記載の軽鎖可変領域配列を含む、請求項8に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項10】
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもClaudin18.2に結合し、
CDR1:配列番号33、CDR2:配列番号34、およびCDR3:配列番号35を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号36、CDR2:配列番号37、およびCDR3:配列番号38を含む軽鎖可変領域配列とを含む、請求項4に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項11】
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもClaudin18.2に結合し、配列番号21に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号22に記載の軽鎖可変領域配列とを含む、請求項10に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項12】
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもNectin-4に結合し、
CDR1:配列番号57、CDR2:配列番号58、およびCDR3:配列番号59を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号60、CDR2:配列番号61、およびCDR3:配列番号62を含む軽鎖可変領域配列とを含む、請求項5に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項13】
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもNectin-4に結合し、配列番号29または配列番号31に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号30または配列番号32に記載の軽鎖可変領域配列とを含む、請求項12に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項14】
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもNectin-4に結合し、
(i)配列番号29に記載の重鎖可変領域配列、および配列番号30に記載の軽鎖可変領域配列、または
(ii)配列番号31に記載の重鎖可変領域配列、および配列番号32に記載の軽鎖可変領域配列を含む、請求項13に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項15】
前記二重特異性結合タンパク質が、一つの第一の結合モジュールを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項16】
前記結合タンパク質が、二つの第一の結合モジュールを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項17】
前記第一の結合モジュールが、抗体断片である、請求項1~16のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項18】
前記抗体断片がscFvである、請求項17に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項19】
前記第一の結合モジュールがCD137に結合する、請求項1~18のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項20】
前記第一の結合モジュールが、CD137に結合するscFVである、請求項1~19のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項21】
前記抗体スキャフォールドモジュールが、C末端とN末端とをそれぞれが有する二つの重鎖配列を含み、前記抗体スキャフォールドモジュールが、C末端とN末端とをそれぞれが有する二つの軽鎖配列を含み、前記第一の結合モジュールが、前記抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の一方もしくは両方の前記C末端、前記抗体スキャフォールドモジュール軽鎖配列の一方もしくは両方の前記C末端、前記抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の一方もしくは両方の前記N末端、前記抗体スキャフォールドモジュール軽鎖配列の一方もしくは両方の前記N末端、またはそれらの組合せに共有結合され、前記第一の結合モジュールおよび前記抗体スキャフォールドモジュールが、直接的にまたはインターリンカーを介して互いに共有結合される、請求項1~20のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項22】
前記第一の結合モジュールおよび前記抗体スキャフォールドモジュールが、配列番号64または配列番号65に記載の配列を有するインターリンカーを介して互いに共有結合される、請求項1~21のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項23】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の両方の前記C末端に共有結合される、請求項21に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項24】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体スキャフォールドモジュール軽鎖配列の両方の前記C末端に共有結合される、請求項21に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項25】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の両方の前記N末端に共有結合される、請求項21に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項26】
前記第一の結合モジュールが、CD137に結合し、
CDR1:配列番号39、CDR2:配列番号40、およびCDR3:配列番号41を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、およびCDR3:配列番号44を含む軽鎖可変領域配列とを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項27】
前記第一の結合モジュールが、CD137に結合し、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含む、請求項26に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項28】
前記二重特異性結合タンパク質が、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもClaudin18.2に結合し、配列番号21に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号22に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールがそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールが、グリシン-セリンリンカーによって、前記抗体スキャフォールドモジュール中の各重鎖の前記C末端に別々に結合される、請求項1~27のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項29】
前記グリシン-セリンリンカーが、3×G4Sリンカー(配列番号64)である、請求項28に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項30】
前記第一の結合モジュール中の前記重鎖可変領域配列および前記軽鎖可変領域配列が、グリシン-セリンリンカーによって結合される、請求項28に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項31】
前記グリシン-セリンリンカーが、4×G4Sリンカー(配列番号65)である、請求項30に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項32】
前記抗体スキャフォールドモジュールの前記重鎖、前記グリシン-セリンリンカー、および前記第一の結合モジュールが、配列番号3に記載の配列を含む、請求項28に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項33】
前記二重特異性結合タンパク質が、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもClaudin18.2に結合し、配列番号21に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号22に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールがそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールが、グリシン-セリンリンカーによって、前記抗体スキャフォールドモジュール中の各軽鎖の前記C末端に別々に結合される、請求項1~27のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項34】
前記グリシン-セリンリンカーが、3×G4Sリンカー(配列番号64)である、請求項33に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項35】
前記第一の結合モジュール中の前記重鎖可変領域配列および前記軽鎖可変領域配列が、グリシン-セリンリンカーによって結合される、請求項33に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項36】
前記グリシン-セリンリンカーが、4×G4Sリンカー(配列番号65)である、請求項35に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項37】
前記抗体スキャフォールドモジュールの前記軽鎖、前記グリシン-セリンリンカー、および前記第一の結合モジュールが、配列番号5に記載の配列を含む、請求項36に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項38】
前記二重特異性結合タンパク質が、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもClaudin6に結合し、配列番号25または27に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号26または28に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールがそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールが、グリシン-セリンリンカーによって、前記抗体スキャフォールドモジュール中の各重鎖の前記C末端に別々に結合される、請求項1~27のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項39】
前記グリシン-セリンリンカーが、3×G4Sリンカー(配列番号64)である、請求項38に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項40】
前記第一の結合モジュール中の前記重鎖可変領域配列および前記重鎖可変領域配列が、グリシン-セリンリンカーによって結合される、請求項38に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項41】
前記グリシン-セリンリンカーが、3×G4Sリンカー(配列番号64)である、請求項40に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項42】
前記抗体スキャフォールドモジュールの前記重鎖、前記グリシン-セリンリンカー、および前記第一の結合モジュールが、配列番号12、72、または13に記載の配列を含む、請求項41に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項43】
前記二重特異性結合タンパク質が、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもNectin-4に結合し、配列番号29または31に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号30または32に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールがそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールが、グリシン-セリンリンカーによって、前記抗体スキャフォールドモジュール中の各軽鎖の前記C末端に別々に結合される、請求項1~27のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項44】
前記グリシン-セリンリンカーが、3×G4Sリンカー(配列番号64)である、請求項43に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項45】
前記第一の結合モジュール中の前記重鎖可変領域配列および前記軽鎖可変領域配列が、グリシン-セリンリンカーによって結合される、請求項43に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項46】
前記グリシン-セリンリンカーが、4×G4Sリンカー(配列番号65)である、請求項45に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項47】
前記抗体スキャフォールドモジュールの前記軽鎖、前記グリシン-セリンリンカー、および前記第一の結合モジュールが、配列番号17に記載の配列を含む、請求項46に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項48】
前記二重特異性結合タンパク質が、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもNectin-4に結合し、配列番号29または31に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号30または32に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールがそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールが、グリシン-セリンリンカーによって、前記抗体スキャフォールドモジュール中の各重鎖の前記N末端に別々に結合される、請求項1~27のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項49】
前記グリシン-セリンリンカーが、4×G4Sリンカー(配列番号65)である、請求項48に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項50】
前記第一の結合モジュール中の前記重鎖可変領域配列および前記軽鎖可変領域配列が、グリシン-セリンリンカーによって結合される、請求項48に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項51】
前記グリシン-セリンリンカーが、4×G4Sリンカー(配列番号65)である、請求項50に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項52】
前記第一の結合モジュール、前記グリシン-セリンリンカー、および前記抗体スキャフォールドモジュールの前記重鎖が、配列番号18に記載の配列を含む、請求項51に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項53】
前記二重特異性結合タンパク質が、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、
前記第一の抗原結合部位および前記第二の抗原結合部位が、どちらもNectin-4に結合し、配列番号29または31に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号30または32に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールがそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、
前記第一の結合モジュールが、グリシン-セリンリンカーによって、前記抗体スキャフォールドモジュール中の各重鎖の前記C末端に別々に結合される、請求項1~27のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項54】
前記グリシン-セリンリンカーが、3×G4Sリンカー(配列番号64)である、請求項53に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項55】
前記第一の結合モジュール中の前記重鎖可変領域配列および前記軽鎖可変領域配列が、グリシン-セリンリンカーによって結合される、請求項53に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項56】
前記グリシン-セリンリンカーが、4×G4Sリンカー(配列番号65)である、請求項55に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項57】
前記抗体スキャフォールドモジュールの前記重鎖、前記グリシン-セリンリンカー、および前記第一の結合モジュールが、配列番号14に記載の配列を含む、請求項56に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項58】
前記抗体スキャフォールドモジュールが、定常領域をさらに含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項59】
前記定常領域が、Fcサイレンシング変異を含む、請求項58に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項60】
前記Fcサイレンシング変異が、LALAまたはN297Aである、請求項59に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項61】
前記定常領域が、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、または配列番号73を含む、請求項58に記載の結合タンパク質。
【請求項62】
請求項1~61のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質と、医薬的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項63】
がんを治療または予防する方法であって、請求項1~61のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項64】
請求項1~61のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質をコードする配列を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項65】
請求項64に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項66】
請求項64に記載のポリヌクレオチド、および/または請求項65に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項67】
請求項1~61のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質の生産方法であって、請求項66に記載の細胞を培養することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本国際特許出願は、2021年9月3日に出願された米国仮特許出願第63/240,402号、および2022年4月5日に出願された米国仮特許出願第63/327,700号の利益を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する記述
本願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにXML形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むXLMファイルの名前は、122863-5007_Sequence_Listing_ST.26.xmlである。このテキストファイルは、約111,345バイトであり、2022年8月28日頃に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
本開示は、免疫療法の分野にあり、ヒトCD137および腫瘍関連抗原(例えば、Claudin-6、Claudin18.2、またはNectin-4)に結合する二重特異性結合タンパク質およびその断片、これらの抗体をコードするポリヌクレオチド配列、およびそれらを生産する細胞に関する。本開示はさらに、これらの二重特異性結合タンパク質を含む治療用組成物、ならびにがんの検出、予後および抗体ベースの免疫療法のためのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
T細胞の活性化は、抗腫瘍免疫において中心的な役割を果たす。ナイーブT細胞を活性化するためには、二つの主要なシグナルが必要である。シグナル1は、T細胞受容体(TCR)を介して提供されるのに対し、シグナル2は、共刺激のシグナルである。CD28:B7分子は、最も研究された共刺激経路の一部であり、一次T細胞刺激が発生する主な機構であると考えられている。しかし、初期T細胞活性化後にT細胞応答を増幅および多様化するように機能する数多くの他の分子が特定されている。これらにはCD137/CD137リガンド(CD137L)分子が含まれるが、この分子は4-1BB:4-1BBリガンド(4-1BBL)としても知られている。
【0005】
CD137(4-1BB、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー9)は、TNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであり、自然免疫細胞と適応免疫細胞との両方の免疫細胞の活性化に続いて発現される共刺激分子である。CD137は、様々な免疫細胞の活性を調節する上で重要な役割を果たす。CD137/CD137Lシグナル伝達経路を標的とする療法は、複数のモデル系において抗腫瘍効果を有することが示されており、アゴニスト性抗CD137抗体も臨床開発に入っている(Yonezawa et al.,Clin.Cancer Res.2015 Jul.15;21(14):3113-20;Tolcher et al.,Clin Cancer Res.2017 Sep.15;23(18):5349-5357)。CD137アゴニストは、免疫細胞の増殖、生存、サイトカインの分泌、および細胞溶解活性CD8 T細胞を増強する。数多くの他の研究により、CD137の活性化が、マウスの腫瘍 を除去するための免疫応答を増強することが示された。臨床では、CD137モノクローナル抗体療法が有望な抗腫瘍効果を示しているが、全身免疫刺激は用量制限性肝毒性を誘発している(Chester,C.et al.,Cancer Immunol Immunother 65,1243-1248(2016);Segal,N.H et al.,Clin.Cancer Res.2017,23,1929-1936)。
【0006】
肝炎症の副作用を回避し、治療ウィンドウを広げるために、腫瘍微小環境(TME)を標的とする強力な共刺激を目的として、新しいCD137アゴニスト部分が開発されている。異なるアプローチが適用される。臨床開発中の最も進行したものは、TME特異的にCD137共刺激をもたらすCD137ベースの二重特異性構築物、例えば腫瘍抗原(例えば、TAAまたはTSA)およびCD137を標的とする二重特異性抗体などである。抗腫瘍活性は、宿主免疫系を腫瘍関連抗原に指向させることによって達成される可能性がある。腫瘍細胞をCD137発現T細胞と連結して細胞性細胞傷害性を増加させることは、がん療法における有望な戦略を代表する。
【0007】
CD137-Her2二重特異性抗体は、当該構築物の良好な忍容性を呈し、臨床活性のエビデンスを示し(Hinner MJ et al.,Clin Cancer Res.2019年10月1日;25(19):5878-5889;Piha-Paul S et al.,HER2+悪性腫瘍を有する患者におけるHER2/4-1BB二重特異性分子PRS-343の第I相用量漸増試験、がん免疫療法協会の第34回年次会議および事前会議プログラム、ナショナルハーバー、メリーランド州、2019)、腫瘍抗原5T4およびCD137を標的とする二重特異性抗体も、良好な前臨床活性を示した(Nelson M et al.,4-1BB×5T4 ADAPTIRTM二重特異性抗体ALG.APV-527によって誘発された強力な腫瘍特異的T細胞活性化および腫瘍阻害、がん免疫療法協会の第34回年次会議および事前会議プログラム、ナショナルハーバー、メリーランド州、2019)。
【0008】
Claudinスーパーファミリーのメンバーは、密着結合の主要な構成要素であり、細胞極性を維持し、隣接細胞同士の間の空間を封止する。Claudin6(CLDN6)は、初期発生の間に発現されるが、健康な成人ヒト組織ではサイレンシングされる、癌胎児性タンパク質である。CLDN6発現は、小児脳腫瘍、胃腺癌および生殖細胞腫瘍、ならびに卵巣がんおよび精巣がんなどの広範な非血液がんにおいて報告されている。その発現はしばしば予後不良と相関する。Claudin18.2は、胃がん、食道がん、膵がん、肺がん、および卵巣がんを含む広範なヒト悪性腫瘍において広く発現される。Claudin18.2は、優れた標的安全性プロファイルを有する。正常な組織では、Claudin18.2の発現は胃に限定的であり、かつ短命の分化細胞上のみに限定的である。Nectinファミリータンパク質は、ホモ親和性およびヘテロ親和性のトランス相互作用を介して細胞間接着を媒介し、ヘテロ親和性のトランス相互作用は、ホモ親和性のトランス相互作用よりもはるかに強い。Nectinタンパク質ファミリーのメンバーとして、nectin-4は腫瘍形成および転移の重要な駆動因子である。がん組織におけるNectin-4の過剰発現は、がんの進行および予後不良と関連している。
【0009】
上皮起源のがんは、患者、その家族、および医療システムに影響を及ぼす重大かつ世界的な医療課題を代表する。CLDN6、CLDN18.2、またはNectin-4などの上皮腫瘍抗原を過剰発現する腫瘍を有する患者のアンメット・メディカル・ニーズに対し、CD137およびこれらの腫瘍抗原に結合する特異的な結合タンパク質は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて抗体ベースの免疫療法に使用でき、それゆえに潜在的に効果的かつ安全な治療的解決策が提供される。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、CD137および腫瘍関連抗原(TAA)に結合する二重特異性結合タンパク質を提供することによって、上記のニーズに対処する。特定の実施形態では、本開示は、腫瘍特異的抗原のCLDN18.2、CLDN6、またはNectin-4と、共刺激性CD137受容体とに結合する二重特異性抗体を提供する。かかる二重特異性結合タンパク質は、がんなどの疾患または障害の治療に有用であり得る。
【0011】
また本明細書において提供されるのは、腫瘍関連抗原およびCD137に結合する二重特異性結合タンパク質であり、この二重特異性結合タンパク質は、(a)腫瘍関連抗原に結合する第一の抗原結合部位と、腫瘍関連抗原に結合する第二の抗原結合部位とを含む抗体スキャフォールドモジュール、および(b)CD137に結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールを含む。
【0012】
一部の実施形態では、腫瘍関連抗原は、以下からなる群から選択される:Claudin6、Claudin18.2、およびNectin-4。
【0013】
一部の実施形態では、腫瘍関連抗原は、Claudin6である。
【0014】
一部の実施形態では、腫瘍関連抗原は、Claudin18.2である。
【0015】
一部の実施形態では、腫瘍関連抗原は、Nectin-4である。
【0016】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、IgGである。
【0017】
一部の実施形態では、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもClaudin6に結合し、(i)CDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、およびCDR3:配列番号47を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号48、CDR2:配列番号49、およびCDR3:配列番号50を含む軽鎖可変領域配列、または(ii)CDR1:配列番号51、CDR2:配列番号52、およびCDR3:配列番号53を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号54、CDR2:配列番号55、およびCDR3:配列番号56を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0018】
一部の実施形態では、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもClaudin6に結合し、配列番号25または配列番号27に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号26または配列番号28に記載の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0019】
一部の実施形態では、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもClaudin6に結合し、(i)配列番号25に記載の重鎖可変領域配列および配列番号26に記載の軽鎖可変領域配列、または(ii)配列番号27に記載の重鎖可変領域配列および配列番号28に記載の軽鎖可変領域配列を含む。
【0020】
一部の実施形態では、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもClaudin18.2に結合し、CDR1:配列番号33、CDR2:配列番号34、およびCDR3:配列番号35を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号36、CDR2:配列番号37、およびCDR3:配列番号38を含む軽鎖可変領域配列とを含む。
【0021】
一部の実施形態では、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもClaudin18.2に結合し、配列番号21に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号22に記載の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0022】
一部の実施形態では、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもNectin-4に結合し、CDR1:配列番号57、CDR2:配列番号58、およびCDR3:配列番号59を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号60、CDR2:配列番号61、およびCDR3:配列番号62を含む軽鎖可変領域配列とを含む。
【0023】
一部の実施形態では、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもNectin-4に結合し、配列番号29または配列番号31に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号30または配列番号32に記載の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0024】
一部の実施形態では、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもNectin-4に結合し、(i)配列番号29に記載の重鎖可変領域配列および配列番号30に記載の軽鎖可変領域配列、または(ii)配列番号31に記載の重鎖可変領域配列および配列番号32に記載の軽鎖可変領域配列を含む。
【0025】
一部の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、一つの第一の結合モジュールを含む。
【0026】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、二つの第一の結合モジュールを含む。
【0027】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、抗体断片である。
【0028】
一部の実施形態では、抗体断片はscFvである。
【0029】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、CD137に結合する。
【0030】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、CD137に結合するscFVである。
【0031】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、C末端とN末端とをそれぞれが有する二つの重鎖配列を含み、抗体スキャフォールドモジュールは、C末端とN末端とをそれぞれが有する二つの軽鎖配列を含む。第一の結合モジュールは、抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の一方もしくは両方のC末端、抗体スキャフォールドモジュール軽鎖配列の一方もしくは両方のC末端、抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の一方もしくは両方のN末端、抗体スキャフォールドモジュール軽鎖配列の一方もしくは両方のN末端、またはそれらの組合せに共有結合され、第一の結合モジュールと抗体スキャフォールドモジュールは、直接的にまたはインターリンカーを介して互いに共有結合される。
【0032】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールおよび抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号64または配列番号65に記載の配列を有するインターリンカーを介して互いに共有結合される。
【0033】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の両方のC末端に共有結合される。
【0034】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、抗体スキャフォールドモジュール軽鎖配列の両方のC末端に共有結合される。
【0035】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の両方のN末端に共有結合される。
【0036】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、CD137に結合し、CDR1:配列番号39、CDR2:配列番号40、およびCDR3:配列番号41を含む重鎖可変領域配列と、CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、およびCDR3:配列番号44を含む軽鎖可変領域配列とを含む。
【0037】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、CD137に結合し、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0038】
一部の実施形態では、本二重特異性結合タンパク質は、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもClaudin18.2に結合し、配列番号21に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号22に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールはそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールは、グリシン-セリンリンカーによって抗体スキャフォールドモジュール中の各重鎖のC末端に別々に結合される。
【0039】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、3×G4Sリンカー(配列番号64)である。
【0040】
一部の実施形態では、第一の結合モジュール中の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列は、グリシン-セリンリンカーによって結合される。
【0041】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、4×G4Sリンカー(配列番号65)である。
【0042】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールの重鎖、グリシン-セリンリンカー、および第一の結合モジュールは、配列番号3に記載の配列を含む。
【0043】
一部の実施形態では、本二重特異性結合タンパク質は、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもClaudin18.2に結合し、配列番号21に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号22に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールはそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールは、グリシン-セリンリンカーによって抗体スキャフォールドモジュール中の各軽鎖のC末端に別々に結合される。
【0044】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、3×G4Sリンカー(配列番号64)である。
【0045】
一部の実施形態では、第一の結合モジュール中の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列は、グリシン-セリンリンカーによって結合される。
【0046】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、4×G4Sリンカー(配列番号65)である。
【0047】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールの軽鎖、グリシン-セリンリンカー、および第一の結合モジュールは、配列番号5に記載の配列を含む。
【0048】
一部の実施形態では、本二重特異性結合タンパク質は、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもClaudin6に結合し、配列番号25または27に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号26または28に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールはそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールは、グリシン-セリンリンカーによって抗体スキャフォールドモジュール中の各重鎖のC末端に別々に結合される。
【0049】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、3×G4Sリンカー(配列番号64)である。
【0050】
一部の実施形態では、第一の結合モジュール中の重鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列は、グリシン-セリンリンカーによって結合される。
【0051】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、3×G4Sリンカー(配列番号64)である。
【0052】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールの重鎖、グリシン-セリンリンカー、および第一の結合モジュールは、配列番号12、13、または72に記載の配列を含む。
【0053】
一部の実施形態では、本二重特異性結合タンパク質は、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもNectin-4に結合し、配列番号29または31に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号30または32に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールはそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールは、グリシン-セリンリンカーによって抗体スキャフォールドモジュール中の各軽鎖のC末端に別々に結合される。
【0054】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、3×G4Sリンカー(配列番号64)である。
【0055】
一部の実施形態では、第一の結合モジュール中の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列は、グリシン-セリンリンカーによって結合される。
【0056】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、4×G4Sリンカー(配列番号65)である。
【0057】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールの軽鎖、グリシン-セリンリンカー、および第一の結合モジュールは、配列番号17に記載の配列を含む。
【0058】
一部の実施形態では、本二重特異性結合タンパク質は、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもNectin-4に結合し、配列番号29または31に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号30または32に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールはそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールは、グリシン-セリンリンカーによって抗体スキャフォールドモジュール中の各重鎖のN末端に別々に結合される。
【0059】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、4×G4Sリンカー(配列番号65)である。
【0060】
一部の実施形態では、第一の結合モジュール中の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列は、グリシン-セリンリンカーによって結合される。
【0061】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、4×G4Sリンカー(配列番号65)である。
【0062】
一部の実施形態では、第一の結合モジュール、グリシン-セリンリンカー、および抗体スキャフォールドモジュールの重鎖は、配列番号18に記載の配列を含む。
【0063】
一部の実施形態では、本二重特異性結合タンパク質は、CD137に結合する二つの第一の結合モジュールを含み、第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位は、どちらもNectin-4に結合し、配列番号29または31に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号30または32に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールはそれぞれ、配列番号23に記載の重鎖可変領域配列と、配列番号24に記載の軽鎖可変領域配列とを含み、第一の結合モジュールは、グリシン-セリンリンカーによって抗体スキャフォールドモジュール中の各重鎖のC末端に別々に結合される。
【0064】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、3×G4Sリンカー(配列番号64)である。
【0065】
一部の実施形態では、第一の結合モジュール中の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列は、グリシン-セリンリンカーによって結合される。
【0066】
一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、4×G4Sリンカー(配列番号65)である。
【0067】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールの重鎖、グリシン-セリンリンカー、および第一の結合モジュールは、配列番号14に記載の配列を含む。
【0068】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、定常領域をさらに含む。
【0069】
一部の実施形態では、定常領域は、一つまたは複数のFcサイレンシング変異を含む。
【0070】
一部の実施形態では、Fcサイレンシング変異は、L234A/L235A(LALA)単独、またはP329A変異(LALAP)もしくはN297Aとの組合せとすることができる。
【0071】
一部の実施形態では、定常領域は、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、または配列番号73を含む。
【0072】
また、本明細書に開示されるのは、腫瘍関連抗原およびCD137に結合する二重特異性結合タンパク質であり、この二重特異性結合タンパク質は、(a)第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位を介して腫瘍関連抗原に結合するための手段を含む抗体スキャフォールドモジュールと、(b)第三の抗原結合部位を介してCD137に結合するための手段を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールとを含む。
【0073】
本開示はまた、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質と、医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0074】
本開示はまた、がんを治療または予防する方法を提供し、本方法は、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0075】
また、本明細書に提供されるのは、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質をコードする配列を含む単離ポリヌクレオチドである。本開示はまた、本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含むベクターまたは細胞を提供する。また、本明細書に提供されるのは、本明細書に開示される細胞を培養することを含む、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質の生産のための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
前述の概要、ならびに本開示の以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読むとより良く理解されよう。本開示を説明する目的で、図に示されるのは、現在好ましい実施形態である。しかし、本開示は、示される正確な配置、例、および手段に限定されないことが理解されるべきである。
【0077】
図1A-1】 図1図1~1Cは、CLDN18.2/CD137、CLDN6/CD137、およびNectin-4/CD137二重特異性体の重鎖配列および軽鎖配列のアミノ酸配列を示す。
図1A-2】同上。
図1B-1】同上。
図1B-2】同上。
図1C-1】同上。
図1C-2】同上。
図1C-3】同上。
図1D-1】図1Dは、CD137、CLDN6、CLDN18.2、またはNectin-4に結合する結合タンパク質のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列を示す。TAA/CD137二重特異性タンパク質の他の構成要素の配列も示されている。VHドメインおよびVLドメインのCDR配列(Kabatナンバリング)は、それらのそれぞれの可変ドメイン配列に下線を付されている。配列識別子が示されている。
図1D-2】同上。
図1D-3】同上。
図1D-4】同上。
図1D-5】同上。
図1D-6】同上。
【0078】
図2図2は、三つの例示的な二重特異性結合タンパク質フォーマットを示し、これらは、i)腫瘍関連抗原に結合する二つの抗原結合部位を有する抗体スキャフォールドモジュールと、抗体スキャフォールドモジュールの重鎖定常領域のC末端にそれぞれが別々に結合された、CD137に結合する二つの第一の結合モジュール(例えばscFv)とを有する第一のフォーマット(BsAb_A)、ii)腫瘍関連抗原に結合する二つの抗原結合部位を有する抗体スキャフォールドモジュールと、抗体スキャフォールドモジュールの軽鎖定常領域のC末端にそれぞれが別々に結合された、CD137に結合する二つの第一の結合モジュール(例えばscFv)とを有する第二のフォーマット(BsAb_B)、ならびにiii)腫瘍関連抗原に結合する二つの抗原結合部位を有する抗体スキャフォールドモジュールと、抗体スキャフォールドモジュールの重鎖可変領域のN末端にそれぞれが別々に結合された、CD137に結合する二つの第一の結合モジュール(例えばscFv)とを有する第三のフォーマット(BsAb_C)を含む。
【0079】
図3図3は、1901Ab1、1901Ab2、1901Ab3、1923Ab4、1912Ab1、1912Ab2、1912Ab3、1912Ab4、1912Ab5、1925Ab1、1925Ab2、1925Ab3、および1925Ab4を含めた、複数の結合タンパク質の重鎖および軽鎖の組成物を示す。
【0080】
図4図4は、1901Ab1、1901Ab2、1901Ab3、1923Ab4、1912Ab1、1912Ab2、1912Ab3、1912Ab4、1912Ab5、1925Ab1、1925Ab2、1925Ab3、および1925Ab4を含めた、複数の結合タンパク質の抗体スキャフォールドモジュールおよび結合モジュール(存在する場合)の組成物を示す。
【0081】
図5図5は、1901Ab1、1901Ab2、1901Ab3、1923Ab4、1912Ab1、1912Ab2、1912Ab3、1912Ab4、1912Ab5、1925Ab1、1925Ab2、1925Ab3、および1925Ab4を含めた、複数の結合タンパク質における配列の配列識別子を示す。1901Ab2、1912Ab3、1912Ab4、1912Ab5、1925Ab1、および1925Ab3について、重鎖配列は、抗体スキャフォールドモジュールの重鎖、グリシン-セリンリンカー、および第一の結合モジュールのアミノ酸配列を含む。1901Ab3および1925Ab2について、軽鎖配列は、抗体スキャフォールドモジュールの軽鎖、グリシン-セリンリンカー、および第一の結合モジュールのアミノ酸配列を含む。
【0082】
図6-1】 図6A~Bは、腫瘍抗原であるClaudin6に対する結合活性を示す。図6Aは、NEC8 CLDN6ノックアウト細胞と比較した場合の、NEC8野生型細胞の細胞表面のヒトClaudin6に対する単一特異性抗体(1912Ab1および1912Ab2)および二重特異性抗体CLDN6/CD137(1912Ab3および1912Ab4)BsAbを示す。図6Bは、NEC8野生型細胞に結合するbsAb 1912Ab5を示す。
図6-2】図6Cは、1912Ab5が、Claudin6に選択的に結合し、Claudin9には結合しないことを示す。
【0083】
図7-1】 図7A~Bは、CD137結合活性を示す。図7Aは、CD137に結合する1912Ab5の表面プラズモン共鳴(SPR)結合分析を示す。図7Bは、HEK-CD137細胞ベースの結合アッセイにおける1912Ab3、1912Ab4、および1923Ab4のヒトCD137結合を示す。
図7-2】図7Cは、ヒトCD137との1912Ab5およびウレルマブ-NRの結合の用量応答結合曲線を示す。ウレルマブ-NRは、米国特許第7,288,638号に公開された公的入手可能な情報に基づく、内部対照の抗CD137抗体である。
【0084】
図8-1】 図8A~Dは、Jurkat T細胞のCD137 NFKBレポーター細胞を使用したCLDN6/CD137 BsAbによるCD137シグナル伝達のClaudin-6依存的な活性化を示す。図8Aは、NEC8野生型細胞またはClaudin6ノックアウトNEC8細胞の存在下での共培養アッセイにおける、1912Ab3、1912Ab4、またはベンチマーク対照のウレルマブ-NRに由来する活性を示す。図8Bは、NEC8野生型細胞の存在下でのシグナル伝達アッセイにおける、CLDN6/CD137 BsAbである1912Ab3、1912Ab4、またはベンチマーク対照ウレルマブ-NRの用量依存性活性を示す。
図8-2】図8Cは、NEC8標的細胞を使用した共培養シグナル伝達アッセイにおける、1912Ab5またはウレルマブ-NRによるNFKB活性化を示す。図8Dは、OV90標的細胞を使用した共培養シグナル伝達アッセイにおける、1912Ab5またはウレルマブ-NRによるNFKB活性化を示す。
【0085】
図9-1】 図9は、CLDN6/CD137 BsAbによるIFNγ分泌を誘導するCD8 T細胞のClaudin6依存的な活性化を示す。図9Aは、NEC8野生型細胞またはClaudin6ノックアウトNEC8細胞の存在下での共培養アッセイにおける、1912Ab3、1912Ab4、またはベンチマーク対照のウレルマブ-NRに由来する活性を示す。図9Bは、NEC8野生型細胞の存在下での、CLDN6/CD137 BsAbである1912Ab3、1912Ab4、およびベンチマーク対照ウレルマブ-NRの用量依存的な活性を示す。
図9-2】図9Cは、NEC8野生型細胞を使用した共培養シグナル伝達アッセイにおける、1912Ab5またはウレルマブ-NRによるIFNγ分泌を示す。図9Dは、Claudin6ノックアウトNEC8細胞を使用した共培養シグナル伝達アッセイにおける、1912Ab5またはウレルマブ-NRによるNFKB活性化を示す。
【0086】
図10図10A~Bは、標的細胞の殺傷であるT細胞由来の殺傷を示す。図10Aは、CLDN6/CD137二重特異性抗体である1912Ab3および1912Ab4によるNEC8細胞の殺傷を示す。図10Bは、CLDN6/CD137二重特異性抗体である1912Ab5によるT細胞由来OV90細胞の殺傷を示す。
【0087】
図11図11A~Cは、マウスMC38腫瘍モデルを使用したインビボでの有効性および安全性データを示す。図11Aは、CLDN6/CD137 BsAbである1912Ab3および1912Ab4によるインビボでのMC38-Claudin6腫瘍増殖の-Claudin6による阻害を示す。マウスの活性酵素の活性を、21日目の血清を使用して測定した。ALT活性を図11Bに示し、AST活性を図11Cに示す。図11Dは、1912Ab3または1912Ab4によって事前処置され完全な腫瘍寛解を有したマウスを使用した、再曝露試験の結果を示す。
【0088】
図12図12は、0.3mpk、1mpk、および3mpkでの1912Ab5の抗腫瘍増殖効果を示す。
【0089】
図13図13は、0.1mpkでの1912Ab5および0.1mpkでのベンチマーク抗体のウレルマブ-NRの抗腫瘍増殖効果を示す。
【0090】
図14図14は、定着した大きな腫瘍を治療する1912Ab5の抗腫瘍効果を示す。
【0091】
図15図15は、対照(図15A)または1912Ab5(図15B)により処理した腫瘍の蛍光免疫組織化学(IHC)データを示す。
【0092】
図16図16A~Fは、対照または1912Ab5により処理した腫瘍の腫瘍浸潤リンパ球の結果を示す。データは、CD4(図16A)、CD8(図16B)、Tcem(図16C)、Trm(図16D)、疲弊T細胞(図16E)、およびM2様マクロファージ細胞(図16F)における、対照および1912Ab5処理細胞のデータを比較する免疫細胞プロファイリングを記載する。
【0093】
図17図17は、B16-F10腫瘍の治療における1912Ab5の抗腫瘍増殖効果を示す。
【0094】
図18図18は、NUGC4細胞上のヒトClaudin18.2に対する、単一特異性の1901Ab1およびCLDN18.2/CD137 BsAbの1901Ab2および1901Ab3の結合活性を示す。
【0095】
図19図19は、細胞表面のヒトCD137に対するCLDN18.2/CD137 BsAbの1901Ab2および1901Ab3、ならびに単一特異性の抗CD137抗体である1923Ab4の結合活性を示す。
【0096】
図20図20A~Bは、Jurkat T細胞のCD137レポーター細胞を使用したCLDN18.2/CD137 BsAbによるCD137シグナル伝達のClaudin18.2依存的な活性化を示す。図20Aは、棒グラフを示し、図20Bは、Claudin18.2-CD137二重特異性抗体の用量依存性活性を示す。
【0097】
図21図21は、NUGC4細胞の存在下でCD8 T細胞の活性化を誘導するためのCLDN18.2/CD137 BsAbの用量応答曲線を示す。
【0098】
図22図22は、CLDN18.2/CD137 BsAbである1901Ab2および1901Ab3によるT細胞由来の標的細胞の殺傷を示す。
【0099】
図23図23は、CLDN18.2/CD137 BsAbである1901Ab2によるインビボにおけるMC38-Claudin18.2腫瘍増殖の阻害を示す。
【0100】
図24図24は、Nectin4/CD137 BsAbである1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3のCHO細胞上のヒトNectin4との結合活性を、親マウスモノクローナル抗体1925Ab4の結合活性に比べて示す。
【0101】
図25図25は、Nectin4/CD137 BsAbである1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3の細胞表面のヒトCD137との結合活性を、親マウスモノクローナル抗体1925Ab4の結合活性に比べて示す。
【0102】
図26A図26A~Bは、Nectin-4/CD137 BsAbが、Jurkat T細胞のCD137レポーター細胞を使用して標的細胞依存的なCD137アゴニズムを誘導することを示す。図26Aは、棒グラフを示し、図26Bは、Nectin4/CD137二重特異性抗体の用量依存性活性を示す。
図26B】同上。
【0103】
図27-1】 図27A~Cは、対照抗体、ウレルマブ-NR、または1912Ab5の処理によって誘導された免疫細胞浸潤を示す。CD4(A)、CD8(B)、およびF4/80(C)によって染色されたマウス肝臓IHC切片を用いて、T細胞浸潤およびマクロファージ浸潤を示した。
図27-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本開示は、CD137および腫瘍関連抗原(TAA)に結合する二重特異性結合タンパク質を提供する。例示的なTAAとしては、以下に限定されないが、Claudin6、Claudin18.2、およびNectin4が挙げられる。有利なことに、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質は、オンターゲット毒性を克服することが可能である。例えば、腫瘍関連抗原が発現されないかまたはアクセス可能ではない肝臓などの組織では、本開示の分子は、CD137媒介性細胞傷害性を活性化できないため、安全となろう。対照的に、腫瘍関連抗原が過剰発現されるかまたはアクセス可能である腫瘍組織では、抗体は、腫瘍関連抗原結合依存的なCD137シグナル伝達の活性化を受け、CD137媒介性の免疫細胞の活性化をもたらし、それによって腫瘍を治療する。本二重特異性結合タンパク質は、がんの治療に使用され得る。さらに、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質は、より低い用量製剤を生じるがゆえに、より少ない頻度および/またはより効果的な投与をもたらし、コストの低減および効率の増加に繋がる。
【0105】
腫瘍微小環境では、完全なT細胞活性化は、二つのシグナルに依存するが、うち一方はTCR/CD3の活性化を介して媒介され、他方は共刺激経路によって媒介される。T細胞共刺激を提供する表面受容体の中でも、CD137は重要な調節因子である。腫瘍標的化CD137アゴニスト性抗体は、単独で、または腫瘍標的化CD3非依存性抗体と組み合わせて使用して、T細胞の増殖、生存、メモリー形成、および腫瘍殺傷機能を促進し得る。
【0106】
CD137共刺激(すなわち、アゴニズム)は、T細胞増殖の延長、アネルギー性T細胞の再活性化、メモリーT細胞の形成および維持の促進に繋がることが報告されている(Hashimoto K.Cancers(Basel).2021 May 11;13(10):2288;Chester C et al..Blood 2018 Jan 4;131(1):49-57))。CD137をアゴニスト性抗体で活性化することは、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の治療有効性を改善するか、またはICIに対する耐性を克服する機会を提供する。さらに、TAAの存在下でのみCD137シグナル伝達を活性化する二重特異性抗体は、肝臓常在性クッパー細胞におけるCD137シグナル伝達の活性化に対するモノクローナル抗CD137アゴニスト性抗体を用いた臨床試験にて観察される、用量依存性肝毒性の低減に役立ち得る。したがって、本開示は、CD137のTAA媒介性クラスター化を介して腫瘍微小環境においてCD137共刺激経路を活性化するように一意に設計された、新規の四価のTAA/CD137結合タンパク質(すなわち、二重特異性抗体)を提供する。
【0107】
本開示がより容易に理解され得るように、特定の技術用語および科学用語が以下に具体的に定義される。この文書の他の箇所で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての他の技術用語および科学用語は、本開示の属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0108】
本開示全体を通して、以下の略語が使用されるものとする。
BsAb-二重特異性抗体
mAbまたはMabまたはMAb-モノクローナル抗体。
CDR-免疫グロブリン可変領域内の相補性決定領域。
VHまたはVH-免疫グロブリン重鎖可変領域。
VLまたはVL-免疫グロブリン軽鎖可変領域。
FR-抗体フレームワーク領域、CDR領域を除く免疫グロブリン可変領域。
【0109】
用語「CD137」とは、TNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーである4-1BBまたはTNFRSF9(TNF受容体スーパーファミリーメンバー9)を指し、免疫細胞(自然免疫細胞および適応免疫細胞の両方)の活性化に続いて発現される共刺激分子である。本明細書で使用される際に、4-1BBは、哺乳類、例えば、ホモサピエンス(ヒト)(NCBI受入番号NP_001552)に由来し得る。本明細書に記載されるように、CD137という用語は、バリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ、およびパラログを含む。例えば、ヒトCD137タンパク質に特異的な抗体は、ある場合には、ヒト以外の種由来のCD137タンパク質と交差反応することがある。他の実施形態では、ヒトCD137タンパク質に特異的な抗体は、ヒトCD-137タンパク質に完全に特異的であることもあり、種もしくは他のタイプの交差反応性を示すこともあり、ある他の種由来のCD137と交差反応するが他の全ての種と交差反応しないこともある(例えば、サルCD137と交差反応するがマウス4-1BBとは交差反応しない)。用語「cyno CD137」は、NCBI受入番号XP_005544945.1を有する完全アミノ酸配列などのカニクイザルCD137を指す。用語「マウスCD137」は、NCBI受入番号NP_035742.1を有するマウス4-1BBの完全なアミノ酸配列などの、マウス配列4-1BBを指す。本開示のヒトCD137配列は、例えば、保存された変異または非保存領域内の変異を有することによって、NCBI受入番号NP_001552のヒトCD137とは異なることがあり、本開示のCD137は、NCBI受入番号NP_001552のヒトCD137と実質的に同じ生物学的機能を有する。
【0110】
用語「腫瘍関連抗原」または「TAA」とは、正常細胞(すなわち、非腫瘍細胞)上で観察される量よりも多い量(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上)で腫瘍細胞の表面に発現される抗原を指す。「腫瘍特異的抗原」または「TSA」という用語は、腫瘍に特有の抗原を指す。TAAおよびTSAの非限定的な例としては、AFP、BAGE、BCMA、Claudin6、Claudin18.2、CAMEL、CEA、CD19、CD20、CD22、CD30、CD38、CD71、CD123、CD133、DAM-6、GPRC5D、PCMA、EGFR、cMET、HER2、HER3、TROP2、ROR1、ROR2、MSLN、B7H3、B7H4,PD-L1、MAGE、MUC1、MUC16,NY-ESO-1、PSM、TRP-2、Wt-1、PSAおよびSART-1が挙げられる。
【0111】
用語「Claudin6」または「CLDN6」(本明細書では互換的に使用される)は、好ましくはヒトCLDN6に関し、特に、配列表の配列番号75によるアミノ酸配列を含むタンパク質、または当該アミノ酸配列のバリアントに関する。用語「CLDN6」は、翻訳後修飾バリアントおよび立体構造バリアントなどの任意のCLDN6バリアントを含む。ヒト、カニクイザル、およびマウスのCLDN6のアミノ酸配列は、NCBI参照配列NP_067018.2(ヒト)(配列番号75)、XP_005591080.1(カニクイザル(配列番号76)、およびNP_061247.1(マウス)(配列番号77)に示される。CLDN6のオルソログは、カニクイザルおよびマウスそれぞれにおいて、ヒトタンパク質と99%超および約88%の同一性を共有する。
【0112】
本明細書で使用される際に、用語「Claudin18アイソフォーム2」(CLDN18.2と互換的に使用される)とは、NCBIエントリーNP_001002026.1のClaudin-18アイソフォーム2に提供されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるペプチドを指し、そのようなペプチドには、正常細胞または形質転換したがん細胞の表面に存在するか、またはCLDN18.2遺伝子でトランスフェクトされた細胞上に発現される、翻訳後修飾バリアントおよび種ホモログが含まれる。Claudin18.2は、配列番号72によるアミノ酸配列を有することが好ましい。
【0113】
用語「Nectin-4」(N4)、または「Nectin-4タンパク質」は、ヒトNectin-4、具体的にはNectin-4の天然配列ポリペプチド、アイソフォーム、キメラポリペプチド、全てのホモログ、断片、および前駆体を含む。ヒト、カニクイザル、ラット、およびマウスのNectin-4のアミノ酸配列は、NCBI参照配列NP_112178.2(ヒト)(配列番号78)、XP_005541277.1(カニクイザル)(配列番号79)、NP_001102546.1(ラット)(配列番号80)、およびNP_082169.2(マウス)(配列番号81)に示される。Nectin-4のオルソログは、カニクイザル、ラット、およびマウスそれぞれにおいて、ヒトタンパク質と99%超、約94%、および約92%の相同性を共有する。
【0114】
「同一性割合」という用語は、比較されるべき二つの配列間で同一であるアミノ酸残基の割合を示すことが意図されているが、この割合は、最も良くアラインメントさせた後に得られ、完全に統計的であり、二つの配列間の差異は、ランダムにかつそれらの全長にわたって分配される。二つのアミノ酸配列間の配列比較は、従来、これらの配列を最適にアラインメントさせた後に比較することによって行われ、この比較は、配列類似性を有する局所的な領域を識別し比較するために、セグメントまたは「比較ウィンドウ」によって行われる。比較のための配列の最適なアライメントは、手動による他に、Smith and Waterman,:1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddiernan and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを用いたコンピュータープログラム(ウィスコンシン州マディソン、サイエンスドライブ575、ジェネティクス・コンピューター・グループのウィスコンシン・ジェネティクス・ソフトウェア・パッケージ内のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、およびTFASTA)によって、生成することができる。
【0115】
本明細書の用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0116】
本明細書の用語「抗体スキャフォールドモジュール」とは、二つの重鎖および二つの軽鎖を有するY字型抗体を指す。この二つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに連結され、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結される。抗体スキャフォールドは、その重鎖および/または軽鎖のうち一つまたは複数に付加された一つまたは複数の結合モジュールを有し得る。抗体結合スキャフォールドは、二つのFabと、二つの定常領域配列を有するFc部分とを含む。
【0117】
本明細書で使用される際に、用語「交差反応」とは、異なる種由来のCD137またはTAAにそれぞれ結合する、本明細書に記載の抗ヒトCD137抗体または抗ヒトTAA抗体の能力を指す。例えば、本明細書に記載の抗体はまた、別の種(例えば、ラットまたはマウスのCD137またはTAA)由来のCD137またはTAAに結合し得る。
【0118】
IgGなどの例示的な抗体は、二つの重鎖と二つの軽鎖とを含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略される)および重鎖定常領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略される)および軽鎖定常領域からなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域の入り交じった、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で整列された三つのCDRおよび四つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0119】
一般に、超可変領域は、Kabat et al.,SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に参照される、軽鎖可変領域内の概ねアミノ酸残基24~34(LCDR1;「L」は軽鎖を表す)、50~56(LCDR2)、および89~97(LCDR3)、ならびに重鎖可変領域内の概ね31~35B(HCDR1;「H」は重鎖を表す)、50~65(HCDR2)、および95~102(HCDR3)に由来するアミノ酸残基、ならびに/またはChothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917に参照される、超可変ループを形成する残基(例えば、軽鎖可変領域内の残基26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、および91~96(LCDR3)、ならびに重鎖可変領域内の残基26~32(HCDR1)、53~55(HCDR2)、および96~101(HCDR3))を包含する。
【0120】
本明細書で使用される際に、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指す。例えば、この集団を構成する個々の抗体は、存在し得るバリアント抗体を除けば、同一である、および/または同じエピトープに結合し、上記バリアント抗体は、例えば、天然に生じる変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の生産中に発生し、概して少量で存在する。ポリクローナル抗体調製物が、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を含むのとは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から取得される抗体の特性を示すため、いかなる方法による抗体の産生を必要とするとも解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な手法によって作製され得るが、そのような手法としては、以下に限定されないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法が挙げられ、かかる方法およびモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0121】
用語「キメラ」抗体とは、所望の生物学的活性を示す限りにおいて、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体の対応する配列と同一もしくは相同であるか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属し、一方で、鎖の残りの部分が、別の種に由来する抗体内の対応する配列と同一もしくは相同であるか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する、組換え抗体ならびにその抗体の断片を指す。加えて、相補性決定領域(CDR)移植を実施して、親和性または特異性を含む抗体分子の特定の特性を変化させてもよい。典型的には、可変ドメインは、齧歯類などの実験動物(「親抗体」)由来の抗体から取得され、定常ドメイン配列は、ヒト抗体から取得されるため、結果として得られるキメラ抗体は、ヒト対象においてエフェクター機能を方向付けることができ、その由来とする親(例えば、マウス)抗体よりも有害な免疫応答を誘発しにくいものとなる。
【0122】
用語「ヒト化抗体」とは、重鎖および/または軽鎖の非ヒト(例えば、マウス、ラット、またはハムスター)相補性決定領域(CDR)と共に、可変領域に一つまたは複数のヒトフレームワーク領域を含むように工学的に操作されている抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、CDR領域を除いて完全にヒトである配列を含む。ヒト化抗体は、典型的には、非ヒト化抗体と比較して、ヒトに対する免疫原性が低く、したがって、特定の状況で治療的利益を提供する。当業者は、ヒト化抗体を認識し、その生成に適した技術も認識するものとなる。例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれるHwang,W.Y.K.,et al.,Methods 36:35,2005;Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029-10033,1989;Jones et al.,Nature,321:522-25,1986;Riechmann et al.,Nature,332:323-27,1988;Verhoeyen et al.,Science,239:1534-36,1988;Orlandi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:3833-37,1989;米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第6,180,370号、およびSelick et al.のWO90/07861を参照されたい。
【0123】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する、および/または当業者に公知のヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製されている、抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に除外する。ヒト抗体は、当技術分野に公知の様々な手法を用いて生産し得るが、そのようなものとしては、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol,147(I):86-95(1991)に記載された方法が挙げられる。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原曝露に応答して当該抗体を産生するように改変されているが内因性遺伝子座が不能にされているトランスジェニック動物に抗原を投与することによって、例えば免疫されたHuMabマウス(例えば、HuMabマウスに関するNils Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859、WO98/24884、WO94/25585、WO93/1227、WO92/22645、WO92/03918、およびWO01/09187を参照)、xenoマウス(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号および6,150,584を参照)、またはTrianniマウス(例えば、WO2013/063391、WO2017/035252、およびWO2017/136734)によって、調製することができる。
【0124】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。五つの主な抗体のクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられ得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0125】
抗体の「抗原結合ドメイン」(または単に「結合ドメイン」)という用語または類似の用語は、抗原複合体に特異的に結合する能力を保持する抗体の一つまたは複数の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCHドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された二つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VHドメインおよびCHドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、(vii)合成リンカーによって任意に接合され得る二つ以上の単離されたCDRの組合せ、が挙げられる。
【0126】
抗体の「可変ドメイン」(Vドメイン)は、特定の抗体の結合を媒介し抗原特異性を付与する。しかし、その変動性は、可変ドメインの110アミノ酸範囲にわたって均等には分布していない。代わりに、V領域は、それぞれ9~12アミノ酸長の「超可変領域」またはCDRと本明細書では称される極端に変動性のあるより短い領域によって分断された、15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の広がりからなる。当業者によって理解されるように、異なるナンバリングシステム間では、CDRの正確なナンバリングおよび配置が異なる可能性がある。しかし、可変重鎖配列および/または可変軽鎖配列の開示は、関連するCDRの開示を含むことが理解されるべきである。したがって、各可変重鎖領域の開示は、vhCDR(例えば、vhCDR1、vhCDR2、およびvhCDR3)の開示であり、各可変軽鎖領域の開示は、vlCDR(例えば、vlCDR1、vlCDR2、およびvlCDR3)の開示である。
【0127】
「相補性決定領域」または「CDR」とは、本明細書でこれらの用語が使用される際には、特定の抗原認識を媒介することに主に関与する重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内にある短いポリペプチド配列を指す。各VLおよび各VH内には、三つのCDR(CDR1、CDR2、およびCDR3と称される)がある。本明細書に別段の記載がない限り、CDR領域およびフレームワーク領域は、Kabatナンバリング則(Kabat E.A.et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,In:NIH Publication No.91-3242,US Department of Health and Human Services,Bethesda,Md)に従って注釈される。
【0128】
他の実施形態では、抗体のCDRは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMacCallum RM et al,(1996)J Mol Biol 262:732-745に従って決定することができる。他の実施形態では、抗体のCDRは、AbM超可変領域を指すAbMナンバリング則に従って決定することができ、AbM超可変領域とは、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の折衷を表し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるオックスフォード・モレキュラー社のAbM抗体モデリングソフトウェア(オックスフォード・モレキュラー・グループ社)によって使用される。CDRはまた、Kabat et al.,1991,In:Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.の配列比較によって画定されてもよいが、一方、HVLは、Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917に記載されるように、可変ドメインの三次元構造に従って構造的に定義される。これら二つの方法がCDRのわずかに異なる識別をもたらす場合、構造的な定義が好ましい。Kabatによって定義されるように、CDR-L1は、軽鎖可変ドメイン内のおよそ残基24~34に、CDR-L2はおよそ残基50~56に、CDR-L3はおよそ残基89~97に位置付けられ、CDR-H1は、重鎖可変ドメイン内のおよそ残基31~35に、CDR-H2およそ残基50~65に、CDR-H3はおよそ残基95~102に位置付けられる。IMGTおよびNORTHは、CDRの代替的な定義を提供する(Lefranc MP.Unique database numbering system for immunogenetic analysis.Immunol Today(1997)18:509;and North B,Lehmann A,Dunbrack RLJ.A new clustering of antibody CDR loop conformations.J Mol Biol.(2011)406:228-56を参照)。さらに、CDRは、Chemical Computing Group(CCG)ナンバリング(Almagro et al.,Proteins 2011;79:3050-3066 and Maier et al.,Proteins 2014;82:1599-1610)に従って定義されてもよい。したがって、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3は、所与の抗体に特異的な固有かつ機能的な特性を定義する。
【0129】
「フレームワーク」または「フレームワーク領域」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、概して、四つのFRドメインFR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。
【0130】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンのVLまたはVHのフレームワーク配列の選択において、最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。概して、ヒト免疫グロブリンのVL配列またはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから行う。概して、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.(1991),Vols.1-3にある通りのサブグループである。一実施形態では、VLについては、サブグループは、前掲のKabat et al.にある通りのサブグループカッパIである。一実施形態では、VHについては、サブグループは、前掲のKabat et al.にある通りのサブグループIIIである。
【0131】
「ヒンジ領域」は、概して、ヒトIgG1の216~238(EUナンバリング)または226~251(Kabatナンバリング)の広がりとして定義される。ヒンジは、上部ヒンジ、中間(例えば、コア)ヒンジ、および下部ヒンジという三つの別個の領域にさらに分けることができる。
【0132】
本明細書の用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列のFc領域およびバリアントのFc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延在する。しかし、Fc領域のC末端のリジン(Lys447)は、存在していても存在していなくてもよい。本明細書に別段の指定がない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、EUナンバリングシステムに従うが、このシステムは、EUインデックスとも呼ばれ、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載される通りのものである。
【0133】
用語「抗体断片」とは、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、以下に限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab)、ダイアボディ、直線状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる二つの同一の抗原結合断片と、結晶化し易いという能力を反映した名称を持つ残りの「Fc」断片とが産生する。Fab断片は、軽(L)鎖全体と、重(H)鎖の可変領域ドメイン(VH)および一本の重鎖の第一定常ドメイン(CH1)とからなる。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab)断片が生じるが、この断片は、二価の抗原結合活性を有しかつ依然として抗原を架橋することができるジスルフィド連結された二つのFab断片にほぼ対応する。Fab断片は、抗体ヒンジ領域由来の一つまたは複数のシステインを含む、CH1ドメインのカルボキシ末端に追加的な少数の残基を有するという点で、Fab’断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’に対する、本明細書における名称である。F(ab’)抗体断片は元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生産された。抗体断片の他の化学カップリングも公知である。
【0134】
「Fv」は、緊密な非共有結合性の会合状態にある、一つの重鎖可変領域ドメインと一つの軽鎖可変領域ドメインとの二量体からなる。これら二つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する、六つの超可変ループ(H鎖およびL鎖からそれぞれ3ループ)が発生する。
【0135】
「単鎖可変断片」または「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖(V)および軽鎖(V)の可変領域の融合タンパク質を指す。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。一部の態様では、この領域は、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドと結合される。リンカーは、柔軟性のためにグリシンを豊富に含ませることができ、また溶解性のためにセリンまたはスレオニンを豊富に含ませることができ、VHのN末端をVLのC末端と接続するか、またはその逆とすることができる。このタンパク質は、定常領域が除去され、リンカーが導入されているにもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。ジスルフィド安定化scFvは、特異的なVH残基またはVL残基にシステイン変異を対で導入することによって、工学的に操作することができる。これらの残基は、VHおよびVLの境界にある。参考文献Weatherill,E.E.et al.Towards a universal disulphide stabilized single chain Fv format:importance of interchain disulphide bond location and VL-VH orientation.Protein Eng Des Sel 25,321-329,NovaRock used VH44-VL100を参照されたい。
【0136】
用語「多重特異性抗体」は、最も広い意味で用いられ、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を特異的にカバーするが、このVH-VL単位は、ポリエピトープ特異性を有する(例えば、一つの生体分子上の二つの異なるエピトープまたは異なる生体分子上の各エピトープに結合することが可能である)。かかる多重特異性抗体としては、以下に限定されないが、完全長抗体、二つ以上のVLドメインおよびVHドメインを有する抗体、二重特異性ダイアボディ、ならびにトリアボディが挙げられる。「ポリエピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的上の二つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。
【0137】
「二特異性(dual specificity)」または「二重特異性(bispecificity)」とは、同じまたは異なる標的上の二つの異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。しかし、二重特異性抗体とは対照的に、二特異性抗体は、アミノ酸配列において同一である二つの抗原結合アームを有し、各Fabアームは、二つの抗原を認識する能力を有する。二特異性により、抗体は、単一のFab分子またはIgG分子として、二つの異なる抗原と高い親和性で相互作用することが可能になる。一実施形態によれば、IgG1形態の多重特異性抗体は、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で、各エピトープに結合する。「単一特異性」とは、一つのエピトープのみに結合する能力を指す。多重特異性抗体は、完全免疫グロブリン分子に類似した構造を有するものとすることができ、Fc領域、例えば、IgG Fc領域を含むものとすることができる。そのような構造としては、以下に限定されないが、IgG-Fv、IgG-(scFv)、DVD-Ig、(scFv)2-(scFv)-Fc、および(scFv)-Fc-(scFv)が挙げられる。IgG-(scFv)の場合、scFvは、重鎖または軽鎖のどちらかのN末端またはC末端のどちらかに付加させることができる。
【0138】
本明細書で使用される際に、用語「二重特異性抗体」(BsAb)は、少なくとも二つの異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体であって、多くの場合にヒト型であるかまたはヒト化された抗体を指す。本開示では、結合特異性のうちの一方はCD137に、他方はCLDN6、CLDN18.2、またはNectin-4に向けるものとすることができる。
【0139】
本明細書で使用される際に、用語「ダイアボディ」とは、二つのポリペプチド鎖を含む二価抗体を指し、この抗体では、各ポリペプチド鎖は、同じペプチド鎖上のVHドメインとVLドメインとを分子内会合させるには短すぎるリンカー(例えば、五つのアミノ酸からなるリンカー)によって接合されたVHドメインおよびVLドメインを含む。この構成により、ホモ二量体構造を形成するように、各ドメインは別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対合する。したがって、用語「トリアボディ」とは、三つのペプチド鎖を含む三価抗体を指し、そのそれぞれは、同じペプチド鎖内のVHドメインとVLドメインとの分子内会合を可能にするには短すぎるリンカー(例えば、1~2アミノ酸から構成されるリンカー)によって接合された、一つのVHドメインおよび一つのVLドメインを含有する。
【0140】
本明細書に開示される様々な抗体を説明するために使用される際に、用語「単離抗体」とは、それが発現された細胞または細胞培養物から特定および分離および/または回収された抗体を意味する。単離された抗体または抗体断片は、抗体または抗体断片の生産、精製、および/または保存の間に発生する一つまたは複数の翻訳後修飾を有する抗体または抗体断片のバリアントを含み得る。その天然環境の汚染物質成分は、ポリペプチドの診断または治療の用途に典型的には干渉する材料である。それらは、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含み得る。一部の実施形態では、単離された抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)法またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)法によって決定されるような、95%または99%を超える純度に精製される。抗体純度を評価するための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。好ましい実施形態では、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することによって、N末端または内部のアミノ酸配列のうち少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(2)クマシーブルー染色もしくは好ましくは銀染色を用いた非還元または還元条件下のSDS-PAGEによって均質になるまで、精製される。
【0141】
標的分子への抗体の結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「への特異的結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、測定できる程度に非特異的相互作用とは異なる、結合を意味する。特異的結合は、例えば、分子の結合を対照分子の結合と比較して決定することによって、測定することができる。例えば、特異的結合は、過剰量の非標識の標的など、標的に類似した対照分子との競合によって決定することができる。この場合では、標識された標的とプローブとの結合が、過剰な未標識の標的によって競合的に阻害される場合に、特異的結合が標示される。本明細書で使用される際の、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「への特異的結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、例えば10-4M以下、あるいは10-5M以下、あるいは10-6M以下、あるいは10-7M以下、あるいは10-8M以下、あるいは10-9M以下、あるいは10-10M以下、あるいは10-11M以下、あるいは10-12M以下の標的に対するKd、または10-4M~10-6M、もしくは10-6M~10-10M、もしくは10-7M~10-9Mの範囲にあるKdを有する分子によって示すことができる。当業者によって理解されるように、親和性とKD値は反比例する。抗原に対する高い親和性は、低いKD値により測定される。一実施形態では、用語「特異的結合」とは、分子が、いかなる他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、CD137、CLDN6、CLDN18.2、またはNectin-4(またはCD137、CLDN6、CLDN18.2、もしくはNectin-4のエピトープ)に結合するという結合を指す。
【0142】
本明細書で使用される際に、用語「CD137に結合する」、「CLDN6に結合する」、「CLDN18.2に結合する」、「Nectin-4に結合する」は、ヒトCD137、CLDN6、CLDN18.2、もしくはNectin-4が正常細胞もしくは悪性細胞の表面に発生する場合に、またはCD137、CLDN6、CLDN18.2、もしくはNectin-4をそれぞれ過剰発現するように工学的に操作された組換え宿主細胞の表面に発生する場合に、内因性ヒトCD137、CLDN6、CLDN18.2、もしくはNectin-4を認識して結合する抗体または抗原結合断片の能力を指す。
【0143】
本明細書に使用される際に、用語「親和性」とは、エピトープへの抗体の結合の強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数Kdによって与えられ、式中、[Ab-Ag]は、抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は、非結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は、非結合抗原のモル濃度である。親和性定数Kaは、1/Kdにより定義される。mAbの親和性を決定するための方法は、Harlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988)、Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)、およびMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)に見出すことができ、これらの文献は、参照により本明細書に全体を組み込まれている。mAbの親和性を決定するための当技術分野で周知の標準的な方法の一つは、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(BIAcore(商標)SPR分析装置を用いた分析によるなど)の使用である。
【0144】
「エピトープ」とは、抗体とその抗原との間の相互作用の一つまたは複数の部位を示す。Janeway,C,Jr.,P.Travers,et al.(2001).Immunobiology:the immune system in health and disease.Part II,Section 3- 8.New York,Garland Publishing,Inc.に記載されるところでは、「抗体は一般に、タンパク質などの高分子の表面の小さな領域のみを認識し・・・ [特定のエピトープ]は、タンパク質フォールディングによって合わさった[抗原]ポリペプチド鎖の異なる部分に由来するアミノ酸から構成されやすい。この種の抗原決定基は、認識される構造が抗原のアミノ酸配列では不連続であるが三次元構造では合わさったタンパク質のセグメントから構成されるため、立体構造または不連続のエピトープとして知られている。対照的に、ポリペプチド鎖の単一のセグメントから構成されるエピトープは、連続的または線状のエピトープと呼ばれる」(Janeway,C.Jr.,P.Travers,et al.(2001).Immunobiology:the immune system in health and disease.Part II,Section 3-8.New York,Garland Publishing,Inc.)。
【0145】
本明細書で使用される際に、用語「KD」とは、kdとkaとの比(例えば、kd/ka)から得られ、モル濃度(M)として表現される平衡解離定数を指す。抗体のKD値は、本技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための好適な方法としては、バイオレイヤー干渉(BLI)分析であって好ましくはFortebio Octet RED装置を使用するもの、表面プラズモン共鳴法であってBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴システムなどのバイオセンサーシステムを使用するもの、またはフローサイトメトリーおよびスキャチャード分析が挙げられる。
【0146】
本明細書で使用される際に、用語「KD」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指すことが意図される。これは、以下の式によって計算される。Koff/Kon=KD。結合カイネティクスは、抗体がその標的にどの程度速く結合するか(Kon)、および抗体がその標的からどの程度速く解離するか(Koff)を記述する。抗体のその標的上の、例えばCD137上の滞留時間は、これらの動力学的特徴によって決定される(Schuetz,DA,et al.(2017)Kinetics for Drug Discovery:an industry-driven effort to target drug residence time.Drug Discov Today 22:896-911)。
【0147】
本明細書で使用される際に、用語「IC50」は、それが結合する抗原の生物活性の50%を中和するために必要な本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質の有効濃度を指すことが意図される。
【0148】
作用物質および具体的な活性(例えば、細胞への結合、酵素活性の阻害、免疫細胞の活性化または阻害)に関する「EC50」とは、かかる活性に関するその最大の応答または効果の50%を生じる作用物質の効率的な濃度を指す。作用物質および特定の活性に関する「EC100」とは、かかる活性に関してその実質的に最大の応答を生じる作用物質の効率的な濃度を指す。
【0149】
本明細書で使用される際に、用語「抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)」とは、合成リンカーを介して細胞傷害剤(ペイロードとして知られる)に共有結合された組換えモノクローナル抗体からなる免疫コンジュゲートを指す。免疫複合体(抗体-薬剤複合体、ADC)は、非常に強力な抗体ベースのがん治療剤のクラスである。ADCは、合成リンカーを介して細胞傷害剤(ペイロードとして知られる)に共有結合された組換えモノクローナル抗体からなる。ADCは、モノクローナル抗体の特異性と低分子化学療法剤の効力とを組み合わせて、細胞傷害性の高い小分子薬剤部分を腫瘍細胞へ標的送達することを促進する。
【0150】
本明細書で使用される際に、用語「エンドサイトーシス」とは、真核細胞が形質膜片、細胞表面受容体、および細胞外液由来成分を内部移行させるプロセスを指す。エンドサイトーシス機構としては、受容体媒介性エンドサイトーシスが挙げられる。用語「受容体媒介性エンドサイトーシス」とは、リガンドがその標的に結合すると、膜の陥入および挟み込みを惹起し、内部移行されてサイトゾル内に送達されるか、または適切な細胞内区画に移されるという生物学的機構を指す。
【0151】
用語「バイスタンダー効果」とは、抗体薬剤コンジュゲートにより標的とされる腫瘍細胞に隣接する健康な細胞の、標的細胞媒介性の殺傷を指す。バイスタンダー効果は、一般に、疎水性の細胞傷害剤の細胞性流出によって引き起こされ、この流出により、抗原陽性の標的細胞から隣接する抗原陰性の健康な細胞への拡散が可能となる。バイスタンダー効果の有無は、免疫複合体を生成するために使用されるリンカーおよびコンジュゲーションの化学物質の態様に起因し得る。
【0152】
ある特定のFc受容体との抗体Fc領域の相互作用に由来する「エフェクター機能」という用語には、以下に限定されないが、Clq結合能、補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合能、ADCCなどのFcyR介在性エフェクター機能、抗体依存性細胞媒介性貪食能(ADCP)、T細胞依存性細胞性細胞傷害性(TCDD)、および細胞表面受容体の下方制御が含まれる。かかるエフェクター機能は、一般に、抗原結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされるFc領域を必要とする。
【0153】
本明細書で使用される際に、「抗体ベースの免疫療法」および「免疫療法」という用語は、CD137およびCLDN6、CD137およびCLDN18.2、またはCD137およびNectin-4に結合する結合タンパク質の標的化特異性に依存して、CD137、CLDN6、CLDN18.2、および/またはNectin-4の発現細胞に対する直接的または間接的な効果を媒介する、任意の形態の療法を広く指すために使用される。
【0154】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、免疫グロブリンのFc領域に結合する抗体受容体を記述し、この受容体は、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、および肥満細胞を含めた、ある特定の免疫細胞の膜に位置する抗原認識に関与する。IgGのFc部分を認識するFc受容体は、Fcガンマ受容体(FcγR)と呼ばれる。FcγRファミリーには、これらの受容体の対立遺伝子性バリアントおよび選択的スプライシング体が含まれる。IgG結合の構造、機能、および親和性の差異に基づいて、FcγRは、三つの主要な群、すなわち FcγRI、FcγRII(FcγRIIaおよびFcγRIIb)、ならびにFcγRIII(FcγRIIIaおよびFcγRIIIb)に分類される。中でも、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、およびFcγRIIIa(CD16a)は、FcγRIおよびFcγRIIIaのγサブユニット内、またはFcγRIIaの細胞質側の尾部内に、シグナル伝達モチーフ、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する活性化受容体である。抗原-抗体複合体の結合後、活性化Fcγ受容体(ヒト:FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIA、FcγRIIIB、およびマウス:FcγRI、FcγRIII、FcγRIV)は、免疫エフェクター機能を惹起する。対照的に、FcγRIIb(CD32b)は阻害性受容体である。FcγRIIbの架橋は、免疫受容体チロシン系阻害性モチーフ(ITIM)のリン酸化および阻害性のシグナル伝達をもたらす(Patel et al.Front Immunol.2019;10:223)。
【0155】
用語「Fcサイレンシングされた」とは、FcγRおよび補体との結合活性を最小化し/消失させ、Fc媒介性エフェクター機能のサイレンシングまたは排除に繋がるように工学的に操作されたFc領域を指す。Fcを工学的に操作するための戦略としては、Fcグリコシル化の改変、IgGサブクラスのハイブリッドの使用、またはヒンジ領域および/もしくはCH2領域への一つまたは複数の変異の導入が挙げられる。残基はエフェクター機能に重要であり、Fcをサイレンシングするそれぞれの変異は、当技術分野で、例えば、Strohl,WR and Strohl LM,“Antibody Fc engineering for optimal antibody performance”In Therapeutic Antibody Engineering,Cambridge:Woodhead Publishing(2012),pp 242、国際特許出願公開公報WO2017/008169A1およびWO2021/055669に公知である。
【0156】
ヒトIgG1 Fcをサイレンシングするように工学的に操作できる部位の非限定的な具体例としては、全てEUナンバリングで、L234、L235、G237、D265、N297、P329、P331が挙げられる。
【0157】
本明細書で使用される際に、用語「二重特異性」とは、抗体スキャフォールドモジュールと第一の結合モジュールとを含む結合タンパク質を指し、これらのモジュールは、二つの異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体および/または受容体タンパク質に由来する。一実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、腫瘍関連抗原(TAA)に対する結合特異性を有し、第一の結合モジュールは、CD137(例えば、ヒトCD137)に対する結合特異性を有する。
【0158】
標的分子への二重特異性結合タンパク質の結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「への特異的結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、測定できる程度に非特異的相互作用とは異なる、結合を意味する。特異的結合は、例えば、分子の結合を対照分子の結合と比較して決定することによって、測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子、例えば過剰の非標識標的などとの競合によって決定することができる。この場合では、標識された標的とプローブとの結合が、過剰な未標識の標的によって競合的に阻害される場合に、特異的結合が標示される。本明細書で使用される際の、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「への特異的結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、例えば10-4M以下、あるいは10-5M以下、あるいは10-6M以下、あるいは10-7M以下、あるいは10-8M以下、あるいは10-9M以下、あるいは10-10M以下、あるいは10-11M以下、あるいは10-12M以下の標的に対するKd、または10-4M~10-6M、もしくは10-6M~10-10M、もしくは10-7M~10-9Mの範囲にあるKdを有する分子によって示すことができる。当業者によって理解されるように、親和性とKD値は反比例する。抗原に対する高い親和性は、低いKD値により測定される。一実施形態では、用語「特異的結合」とは、分子がいかなる他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する、結合を指す。
【0159】
本明細書に使用される際に、用語「親和性」とは、エピトープへの二重特異性結合タンパク質の結合の強度を意味する。二重特異性結合タンパク質の親和性は、[二重特異性結合タンパク質]×[Ag]/[二重特異性結合タンパク質-Ag]として定義される解離定数Kdによって与えられ、式中、[二重特異性結合タンパク質-Ag]は、二重特異性結合タンパク質-抗原複合体のモル濃度であり、[二重特異性結合タンパク質]は、非結合の二重特異性結合タンパク質のモル濃度であり、[Ag]は、非結合の抗原のモル濃度である。親和性定数Kaは、1/Kdにより定義される。結合タンパク質の親和性を決定するための方法は、Harlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988),Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993),and Muller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)に見出すことができ、これらの文献は、参照により本明細書に全体を組み込まれている。二重特異性結合タンパク質の親和性を決定するための当技術分野で周知の標準的な方法の一つは、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(BIAcore(商標)SPR分析装置を用いた分析によるなど)の使用である。
【0160】
用語「リンカー」とは、二つの化学実体間に共有結合を形成する少なくとも一つの原子を指す。用語「リンカー」とは、スキャフォールドモジュールと結合モジュールへの別の共有結合との間に共有結合を形成する、少なくとも一つの原子を指し得る。スキャフォールドモジュールと結合モジュールとがペプチド結合のみを介して連結される場合、リンカーは、「ペプチドリンカー」と呼ばれる。そうでなければ、リンカーは「化学リンカー」と呼ばれる。さらに、「可撓性ペプチドリンカー」は、大抵は小さな、非極性または極性のアミノ酸を含み、一方で「剛性ペプチドリンカー」は、アルファ-ヘリックス形成配列を含む、および/またはプロリン残基が豊富である(Chen et al.,2013.Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369)。
【0161】
CD137(4-1BB)
CD137(4-1BB)は、活性化T細胞上およびナチュラルキラー(NK)細胞上に発現される誘導性共刺激受容体である。4-1BBタンパク質は、四つの細胞外システインリッチ偽リピート(CRD)ドメインCRD1、CRD2、CRD3、およびCRD4を有する(以下の表のアミノ酸配列およびCRD領域を参照)。T細胞上の4-1BBリガンド(41BBL)三量体による4-1BB三量体クラスターの形成は、抗アポトーシス分子の上方制御、サイトカインの分泌、およびエフェクター機能の強化をもたらすシグナル伝達カスケードを惹起する。NK細胞上では、4-1BBシグナル伝達は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性を増加させることができる。
【0162】
TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであるCD137は、T細胞によって活性化される誘導性分子として最初に特定された(Kwon and Weissman,1989,Proc Natl Acad Sci USA 86,1963-1967)。その後の研究では、NK細胞、B細胞、NKT細胞、単球、好中球、肥満細胞、樹状細胞(DC)、ならびに内皮および平滑筋細胞などの非造血起源の細胞を含む、多くの他の免疫細胞も4-1BBを発現することが示された(Vinay and Kwon,2011,Cell Mol Immunol 8,281-284)。異なる細胞型における4-1BBの発現は、主に誘導性であり、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体のトリガリングなどの様々な刺激シグナル、ならびに炎症促進性サイトカインの共刺激分子または受容体を介して誘導されるシグナル伝達によって駆動される(Diehl et al.,2002,J Immunol 168,3755-3762;Zhang et al.,2010,Clin Cancer Res 13,2758-2767)。
【0163】
4-1BBリガンド(4-1BBLまたはCD137L)は、1993年に同定された(Goodwin et al.,1993,Eur J Immunol 23,2631-2641)。4-1BBLの発現は、B細胞、DC、およびマクロファージなどの専門の抗原提示細胞(APC)上では制限されていたことが示されている。4-1BBLの誘導発現は、αβT細胞サブセットおよびγδT細胞サブセットの両方を含めたT細胞、ならびに内皮細胞の特徴である(Shao and Schwarz,2011,J Leukoc Biol 89,21-29)。
【0164】
4-1BB受容体を介した共刺激(例えば、4-1BBLのライゲーションによる)は、T細胞(CD4サブセットおよびCD8サブセットの両方)内の複数のシグナル伝達カスケードを活性化し、T細胞の活性化を強力に増強する(Bartkowiak and Curran,2015)。TCRのトリガリングと併せて、アゴニスト性4-1BB特異的抗体は、T細胞の増殖を増強し、リンホカインの分泌を刺激し、活性化誘導性細胞死に対するTリンパ球の感受性を低下させる(Snell et al.,2011,Immunol Rev 244,197-217)。この機序は、がん免疫療法における概念の最初の証明としてさらに進められた。前臨床モデルでは、腫瘍担持マウスにおける4-1BBに対するアゴニスト性抗体の投与は、強力な抗腫瘍効果をもたらした(Melero et al.,1997,Nat Med 3,682-685)。その後、エビデンスの蓄積により、4-1BBが、通常は、他の免疫調節化合物、化学療法薬、腫瘍特異的ワクチン接種、または放射線療法との併用で投与された場合にのみ、抗腫瘍剤としてその効力を発揮することが示された(Bartkowiak and Curran,2015,Front Oncol 5,117)。
【0165】
4-1BBを標的とするアゴニスト性モノクローナル抗体は、がん免疫療法のための4-1BBシグナル伝達を利用するように開発されている。前臨床の結果では、様々な誘導性腫瘍モデルおよび自然発生腫瘍モデルにおいて、アゴニスト抗体を用いて4-1BBを標的化することが、腫瘍のクリアランスおよび持続的な抗腫瘍免疫性をもたらし得ることが示唆された。さらに、4-1BBリガンドの細胞外ドメインの一つと単鎖抗体断片とから構成される融合タンパク質(Homig et al.,2012,J Immunother 35,418-429;Muller et al.,2008,J Immunother 31,714-722)、または重鎖のC末端に融合された単一の4-1BBリガンド(Zhang et al.,2007,Clin Cancer Res 13,2758-2767)が作製されている。WO2010/010051では、互いに連結されて抗体部分に融合された三つのTNFリガンド外部ドメインからなる融合タンパク質の生成が開示されている。
【0166】
ウレルマブおよびウトミルマブなどの第一世代免疫アゴニストCD137抗体は、臨床において所望の有効性を達成していない。T細胞共刺激アゴニストががん療法として機能するためには、標的係合親和性、結合カイネティクス、結合価、クラスター形成、Fc受容体媒介性活性などの多くの因子を考慮する必要がある。目的に適う腫瘍抗原-CD137の構成のデザインは、開示された二重特異性抗体の効力および安全性を改善するために用いられてきた。具体的には、高度に特異的な腫瘍抗原結合抗体が、腫瘍細胞の係合のために選択され、腫瘍抗原結合のための二価が、標的係合を最大化するために用いられた。2)T細胞の準最適な活性化では、T細胞の消耗がより少なく、抗腫瘍効果が長期間持続するものと考えられた(Stone JD et al.,Immunology.2009;126(2):165-176)。高速オンおよび高速オフの特徴を有するCD137抗体は、T細胞への一定の刺激シグナルを回避し、したがって低速オフの抗体よりも良好に機能するものと予想された(Garble K,Nature Reviews Drug Discovery 19,3-5(2020))。さらに、クラスター化依存性を有するCD137アゴニズムは、循環T細胞の全身活性化を回避し、腫瘍細胞を経たT細胞のみを腫瘍部位で活性化することができる。これは、腫瘍抗原クラスター依存性CD137アゴニズムを用いることによって達成された。さらに、エフェクター機能を排除するためのFcのサイレンシング、およびFc媒介性受容体クラスターの形成は、クファー細胞活性化由来の肝毒性をさらに低減することができる。
【0167】
Claudinタンパク質ファミリー
Claudin(CLDN)ファミリーは、27のメンバーから構成され、細胞型および組織型に選択的な様式で別個の発現パターンを呈する。Claudinは、上皮および内皮の密着結合(TJ)内に位置する膜内在性タンパク質である。CLDNは、同じ細胞中(シス相互作用)および隣接細胞同士上(トランス相互作用)の両方で互いに相互作用し、その結果、組織特異的バリア機能を有するTJの構成を生じる。個々の細胞型は、Claudinファミリーメンバーのうちの二つ以上を発現する。正常な生理では、Claudinは、複数のタンパク質と相互作用し、密着結合部への、および密着結合部からのシグナル伝達に密接に関与する(Lal-Nag,M and Morin,P.J.,Genome Biol 10:235,2009)。
【0168】
CLDNタンパク質は、四つの膜貫通(TM)ヘリックス(TM1、TM2、TM3、およびTM4)と二つの細胞外ループ(ELIおよびEL2)とを含む。隣接細胞同士に由来するClaudinの細胞外ループが、互いに相互作用して細胞シートを密封し、管腔と基底側腔との間の傍細胞輸送を調節する。Claudinタンパク質の構造は、異なるファミリーメンバー間で高度に保存されている。CLDN6は、220アミノ酸を含み、23kDaのサイズであり、Claudin型タンパク質構造を呈する。
【0169】
最初のClaudinタンパク質ファミリーは、1998年に初めてクローニングされ、密着結合の重要な構造的および機能的な構成要素として命名された。ファミリーとして、Claudinは、上皮細胞および内皮細胞のバリア機能、ならびに細胞骨格の維持に関与する四回膜貫通タンパク質の多重遺伝子ファミリーである(Furuse et al.,J.Cell.Biol.141(7):1539-50,1998)。Claudinは、上皮細胞シートまたは内皮細胞シートに見られるものなど、分極細胞型において最頂端の細胞間接着接合部である密着結合部の主要な構造タンパク質を含む、一体型膜タンパク質である。
【0170】
Claudinタンパク質の第一の細胞外ドメイン(ECD)が、典型的には約50アミノ酸からなるのに対し、第二のECDは、約22アミノ酸より小さい(Hashimoto,et al.Drug Discovery Today 21(10):1711-1718,2016)。N末端は、通常は非常に短い(例えば、約4~10アミノ酸)のに対し、C末端は、21~約63アミノ酸の範囲にあり、密着結合部におけるこのタンパク質の局在化に必要とされる。
【0171】
多くの場合に密着接合の透過性が正常組織よりも腫瘍組織で高いという観察があったことから、腫瘍細胞上のClaudinタンパク質が、インタクトな密着結合を有する正常組織よりもアクセス性が高い可能性があることが推測される。また、この観察ゆえに、Claudinタンパク質は、がんへの治療介入のための魅力的な標的となっている。
【0172】
ヒトにおけるClaudinタンパク質ファミリーは、少なくとも27のメンバーからなり、サイズは22~34kDaに及ぶ。全てのClaudinは、両方のタンパク質末端が膜の細胞内面上に位置するテトラスパニントポロジーを有し、その結果、二つの細胞外(EC)ループ、EC1およびEC2の形成を生じる。典型的には、EC1は、約50~60アミノ酸のサイズであり、EC2は、EC1よりも小さく、通常はおよそ25アミノ酸を含む。ECループは、ヘッド・ツー・ヘッドのホモ親和性の相互作用を媒介し、Claudinの特定の組合せについては、密着結合の形成を導くヘテロ親和性の相互作用を媒介する。
【0173】
Claudin-6
広範に発現される大多数のClaudinタンパク質とは異なり、CLDN6は選択的発現という特徴がある(Hewitt,et al.,BMC Cancer,6:186,2006)。CLDN6は、いくつかのタイプの胚性上皮細胞で発現される癌胎児性の密着結合分子である。
【0174】
密着結合の障害および密着結合分子の調節不全は、がん細胞の高頻度にみられる特徴であり、悪性の形質転換としばしば関連する。CLDN6の発現は、胃、肺および卵巣の腺癌、子宮内膜および胚性の癌、脳の小児腫瘍(例えば、異型奇形腫/ラブドイド腫瘍)、ならびに生殖細胞腫瘍を含めた様々ながんの型において、異常に活性化される(Hassimoto et al.,J Pharmacol Exp Ther 368:179-186,2019;Kojima et al.,Cancers 2020,12,2748)。いくつかのヒト悪性腫瘍におけるCLDN6の発現の増加は、卵巣がんおよび胃がんなどの予後不良と関連している(Zavala-Zendejas VE,et al.,Cancer Invest.29:1-11.2011;Wang L,et al.Diagn Pathol.8:1902013.)を参照されたい。したがって、CLDN6は、CARTおよびT細胞係合型二重特異性抗体などの腫瘍標的化治療薬のための、有望な腫瘍関連抗原(TAA)である。
【0175】
腫瘍関連抗原として、CLDN6は、上皮分化およびバリア形成に重要となる、上皮形態形成の初期段階中のその発現に起因して、分化抗原として分類することができる。がん組織では明瞭であるが正常成体組織ではそうでないというCLDN6の発現パターンと、抗体へのがん細胞表面のアクセス性とを組み合わせると、CLDN6は、広く多様ながんの型における診断上ならびに免疫療法上のアプローチのための有望な標的として適格性がある。
【0176】
CLDN6と他のClaudinタンパク質との間には、高度な配列保存性がある。このCLDN6と他のClaudinタンパク質(例えば、CLDN9、CLDN4、およびCLDN3)との高い相同性ゆえに、特異性、親和性、および安全性などの治療用途に適した特性を有するCLDN6抗体を提供することは困難である。
【0177】
CLDN6は、概して、ヒトにおいて220アミノ酸の前駆体タンパク質として発現され、最初の21アミノ酸はシグナルペプチドを構成する。CLDN6前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、米国国立生物工学情報センター(NCBI)ウェブサイトでNCBI参照配列NP067018.2として公的に利用可能であり、配列番号75として本明細書に示されている。
【0178】
発現CLDN6は、精上皮種、胚性がん、および卵嚢腫瘍を含む生殖細胞腫瘍、ならびに胃腺癌、肺腺癌、卵巣腺癌、および子宮内膜癌の一部の事例において高度に発現される(Ushiku T et al.,Histopathology 61(6):1043-1056,2012,Hewitt KJ,Agarwal R,Morin PJ.The claudin gene family:expression in normal and neoplastic tissues.BMC Cancer 2006;6;186;Micke,P.et al.(2014)Aberrantly activated Claudin-6 and 18.2 as potential therapeutic targets in non-small-cell lung cancer.Int.J.Cancer 135,2206-2214;Lal-Nag,M.et al.(2012)Claudin-6:a novel receptor for CPE-mediated cytotoxicity in ovarian cancer.Oncogenesis 1,e33;Ben-David,U.et al.(2013)Immunologic and chemical targeting of the tight junction protein Claudin-6 eliminates tumorigenic human pluripotent stem cells.Nat.Commun.4,1992)。
【0179】
ヒトCLDN6タンパク質は、細胞外ドメイン(ECD)中のヒトCLDN9タンパク質配列と非常に密接に関連し、ECD1では>98%の同一性を有し、ECD2では>91%の同一性を有する。ヒトCLDN4も、ECD配列中のヒトCLDN6に密接に関連しており、ECD1では>84%の同一性を有し、ECD2では>78%の同一性を有する。CLDN6に対するモノクローナル抗体(MAb)の探索は、内因的に発現しているClaudin-9(CLDN9)の高い相同性が妨げとなっており、CLDN9は、CLDN6とは細胞外ドメインで3アミノ酸(ECD1では2アミノ酸、およびECD2では1アミノ酸)しか異なっていない。カニクイザルのCLDN4、CLDN6、およびCLDN9タンパク質の推定タンパク質ECD配列は、それぞれのヒトECD配列と100%同一である。さらに、Claudin-6遺伝子は、異なる種間で高度に保存され、例えば、ヒトおよびマウスの遺伝子は、DNAおよびタンパク質のレベルで88%の相同性を示す。
【0180】
Claudin18.2
タンパク質のClaudinファミリーの別のメンバーである密着結合分子Claudin-18は、通常は胃粘膜および腸上皮の細胞性密着結合に見られる。肺(CLDN18.1)および胃(CLDN18.2)に限定された発現を呈する別個のアイソフォームをコードする、プロモーター依存性の様式で選択的にスプライシングされた二つのヒトClaudin18転写バリアント(Niimi et al.,Mol.細胞。Biol.21:7380-90,2001)が、以前に記載されている。これらのスプライスバリアントの主要タンパク質の配列は、N末端細胞内領域と第一の膜貫通領域(TMD1)と細胞外ループ1(ECL1)とを含むN末端部分で異なっている。CLDN18.2は、一つの細胞系統に厳格に制限されるヒトClaudinファミリーの少数のメンバーのうちの一つである(Tureci et al.)。より具体的には、短い寿命の分化上皮細胞に限定されかつ胃腺の幹細胞ゾーンには存在しないという発現パターンを有する、高度に選択的な胃系統(例えば、胃細胞特異的)マーカーを提供する(Sahin et al.,Clin.Cancer Res.14(23)7624-7634,2008)。
【0181】
CLDN18.2は、悪性の形質転換において保持され、原発性腫瘍のかなりの部分およびその転移において発現される。Sahinらはまた、CLDN18.2が膵がん、胃がん、食道がん、肺がん、および卵巣がんを含めたいくつかの異なる型のがんにおいて高頻度で過剰発現され、CLDN18.1がそうではないことを報告した。したがって、がんという文脈では、CLDN18.2は胃細胞系統に限定されない(Sahin et al.)。まとめて考えると、公表された報告の知見により立証されるのは、CLDN18.2が、上皮細胞由来の腫瘍に関連する疾患のがん免疫療法の開発のための、診断ツールと薬剤開発に繋がる標的との両方を提供するということである。
【0182】
多くの場合に密着接合の透過性が正常組織よりも腫瘍組織で高いことが報告されており、それゆえに、腫瘍細胞上のClaudinタンパク質が、インタクトな密着結合を有する正常組織よりもアクセス性が高い可能性があることが推測される。この可能性により、Claudinタンパク質は、がんへの治療介入のための魅力的な標的となっている。さらに、公表された発現プロファイリングの結果から、CLDN18.2を標的とするがん療法は、正常な代謝回転および恒常性維持のプロセスにより二日~七日毎に胃腸上皮細胞が補充されるため、好ましい全身毒性プロファイルを有することが示唆されている(Sahin et al)。限られた期間の一時的な胃腸毒性は、がん免疫療法の一般的で管理可能な有害事象である。
【0183】
膵がんおよび胃食道がんは、アンメット・メディカル・ニーズが最も高い悪性腫瘍の一つである(Sahin,et al)。胃がんおよび膵がんが重大ながん関連罹患率および死亡率に寄与するという事実があるものの、治療選択肢は限られている。そのため、上皮細胞由来の原発性および転移性の固形腫瘍に関連するがんの免疫療法で使用するための抗CLDN18.2特異的抗体および結合剤に対するニーズが存在する。
【0184】
CLDN18.2は、二つの小さな細胞外ループを有する四つの膜貫通ドメイン(疎水性領域1および疎水性領域2によって包囲されたループ1と、疎水性領域3および4によって包囲されたループ2)を含む。CLDN18.2は膜貫通タンパク質であり、それゆえ、その細胞外ループ内に存在するかまたはその細胞外ループによって形成されるエピトープは、抗体ベースのがん免疫療法の望ましい標的を表す。しかし、CLDN18.1が、毒性に非常に関連性の高い組織である正常な肺組織中の肺胞上皮細胞によって発現されることを考慮すると、排他的スプライスバリアントへの特異性は、抗体ベースのがん免疫療法にCLDN18.2特異的抗体を使用するための必要条件であるものと認識された。Sahinらは、CLDN18.2に排他的に結合するがCLDN18.1には結合しない抗体(ポリクローナルおよびモノクローナル)の単離に基づき、CLDN18.2をがん免疫療法の薬剤開発に繋がる標的として検証した、コンセプト検証の結果を初めて報告した(Sahin et al,Clin.Cancer Res.14(23)7624-7634,2008)。
【0185】
CLDN18.2は、胃がん、食道がん、膵がん、非小細胞肺がんなどの肺がん、卵巣がん、結腸がん、肝がん、頭頸部がん、および胆嚢がんを含めた、複数の原発性腫瘍およびその転移において発現される。Claudinの発現の調節不全は、多くのがんで検出され、腫瘍形成およびがん侵襲性に寄与し得る(Singh et al,J Oncology 2010;2010:541957)。CLDN18.2の発現は、膵管腺癌(PDAC)(Tanaka et al,J Histochem Cytochem.2011;59:942-952)、食道腫瘍、非小細胞肺がん(NSCLC)、卵巣がん(Sahin et al.,Hu Cancer Biol.2008;14:7624-7634))、および胆管腺癌(Keira et al,Virchows Arch.2015;466:265-277)において特に上昇する。
【0186】
胃がんが重大ながん関連罹患率および死亡率に寄与するという事実があるものの、胃がんのための治療選択肢は限られている。Claudinは、正常組織、良性新生物、過形成状態、およびがんに存在する(Ding et al.,Cancer Manag.Res.5:367-375(2013))。Claudinの発現パターンは、高度に組織特異的であり、ほとんどの組織は、複数のClaudinを発現する。Claudinタンパク質は、ホモ型またはヘテロ型の様式で隣接細胞由来のClaudinと相互作用して、密着結合を形成することができる(Ding et al.)。Claudinの発現経路およびシグナル伝達経路の変化は、がんの発生と関連していることが知られており、密着結合の障害と腫瘍の進行との間の関連が広く報告されている。
【0187】
ネクチンタンパク質ファミリー
ネクチン(「接続する」ことを意味するラテン語「necto」に由来する)は、そのECDのIg様Vドメインを介して他の細胞表面分子上のネクチンと相互作用する。ネクチンは、まず結合して、同じ細胞上でシス二量体を形成し、次いで、隣接細胞同士上でネクチンまたは免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)の他のメンバーと共にホモ親和性またはヘテロ親和性のトランス二量体を形成することによって、細胞接着を促進するように機能する(Miyoshi et al.,Am J Nephrol,27:590,2007)。ヘテロ親和性のトランス二量体は、ホモ親和性のトランス二量体よりも強い細胞間相互作用を形成することが報告されている 結合の特異性は、各ネクチンについて異なる(例えば、Nectin-4はそれ自体およびNectin-1に結合する)。
【0188】
ヒトネクチンファミリーは、9個のホモログ(Nectin-1からNectin-4およびNectin様1から5)からなる(Duraivelan et al.,Sci Rep,10:9434,2020)。ネクチンタンパク質(Nectin-1、Nectin-2、Nectin-3、およびNectin-4)は、カルシウム非依存性免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)細胞接着分子であり、この分子は、ホモ親和性またはヘテロ親和性のトランス相互作用を生じ、上皮細胞における接着結合部で細胞間接着を媒介する。正常な上皮では、接着結合部は、腫瘍形成中に失われることの多い特性である細胞極性を画定する。
【0189】
Nectin-1、-2、-3、および-4は、シングルパスI型糖タンパク質として発現され、N末端Ig様可変ドメイン(D1)として配置された三つのタンデム免疫グロブリン様ドメイン/ループを有する細胞外ドメイン(ECD)と、それに続く二つのIg様定常ドメイン(D2およびD3)とからなる、共通したドメイン編成によって特徴付けられる。ネクチンは、Vドメイン同士の結合相互作用を介して相互に作用し合い、それによって、細胞間接着を支持するトランスヘテロ相互作用ネットワークを作り出す。Nectin-3/Nectin-1、Nectin-3/Nectin-2、Nectin-1/Nectin-4の間のヘテロ親和性相互作用が報告されている(Harrison et al.,Nat Struct Mol Biol,19(9):906-915,2012)。細胞間接着におけるそれらの役割に加えて、ネクチンは、様々な生理的な細胞活性の調節、ウイルスの侵入、および免疫の調節において、重要な役割を果たしている。
【0190】
ネクチンファミリーのメンバーは、シングルパスI型糖タンパク質として発現され、細胞外ドメイン内の三つのIg様ドメイン(膜遠位IgVドメインとそれに続く二つのIgCドメイン)と、膜貫通領域と、アダプタータンパク質アファディンを介してアクチン細胞骨格に結合する細胞質ドメイン(Samanta et al.,Cell Mol Life Sci,72(4):645-658,2015)とからなる、共通したドメイン編成によって特徴付けられる。
【0191】
多くのウイルスは、IgSFメンバータンパク質を利用して、ウイルスの指向性、付着、およびそれに続く宿主細胞への侵入を促進する。ネクチンファミリーのいくつかのメンバーは、細胞接着分子としての生理学的機能が見出される前に、ウイルス受容体として同定された。当初、ネクチンファミリーのメンバーは、独立して、複数のグループによりウイルス侵入受容体として同定され、観察された機能に基づき名称を割り当てられた。Nectin-1、-2、および-3は、元々はポリオウイルス受容体(PVR、necl-5、CD155)に相同な分子として記載され、ゆえにポリオウイルス受容体関連(PRR)タンパク質(nectin1/PRR1/CD111、nectin2/PRR2/CD112、およびnectin3/PRR3)と命名され(Reymond et al.,J Biol Chem,276(46):43205-15,2001)、その後、それぞれCD111、CD112、およびCD113と命名された。続いてNectin-4は、麻疹ウイルス血球凝集素(MV-H)を認識し、麻疹ウイルス侵入のための上皮細胞受容体として機能することが示された(Samanta et al.,Cell Mol Life Sci,72(4):645-658,2015)。
【0192】
ネクチンは、まず細胞表面にホモシス二量体を形成し、次いで、ホモ親和性およびヘテロ親和性の両方の様式で隣接細胞同士上にトランス二量体を形成することによって、細胞接着分子として機能する。結合の特異性は、各ネクチンについて異なる。Nectin-4は、それ自体およびNectin-1に結合する(Reymond et al.,J Biol Chem,276(46):43205-15,2001,Fabre et al.,J Biol Chem,277(30):27006-27013,2002)。細胞間の接触は、隣接細胞同士上のネクチン間の相互作用によって開始されると考えられる。その後、カドヘリン-カテニン複合体が、ネクチンベースの細胞間接着の部位にリクルートされ、隣接細胞同士上のカドヘリンのトランス相互作用が発生して、それにより接着接合部が形成される(Boylan et al.,Oncotarget,8(6):9717-9738,2017)。
【0193】
ネクチンタンパク質の外部ドメインは、30~55%のアミノ酸配列同一性を共有する。ネクチンは、その細胞質ドメインの結合モチーフを介してアクチン細胞骨格アファディン(F-アクチン結合タンパク質)に接続され、上皮および内皮の結合部の編成に関与する。他の細胞接着分子(CAM)およびシグナル伝達分子との複雑な相互作用では、例えば移動、増殖、生存、分化、分極、およびウイルス侵入などのいくつかの多様な生理学的細胞活性を調節する。
【0194】
追加的な細胞表面分子と相互作用するというネクチンファミリーメンバーの能力により、哺乳動物において当該メンバーの相互作用ネットワークは著しく拡張される。ネクチンは、血小板由来成長因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体、血管内皮成長因子受容体、プロラクチン受容体、ErbB2、ErbB3、およびErbB4などの他の細胞表面膜受容体、ならびにインテグリンαvβ3およびインテグリンα6β4などのインテグリンとシス相互作用することが知られており、細胞間接着だけでなく、細胞の移動、増殖、分化、および生存も調節する(Kedashiro et al.,Sci Rep,9:18997,2019)。
【0195】
ネクチンファミリーの一部のメンバーは、免疫グロブリンスーパーファミリーの別のメンバーとのヘテロ親和性トランス相互作用の結果、免疫調節機能を発揮し得る。これらの相互作用は、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、樹状細胞(DC)、およびTリンパ球を含む多様な免疫細胞のタイプの機能に影響を与えることが知られている。公知のネクチンファミリー相互作用物質であるIgSFメンバーのいくつかだけでなく、ネクチンのいくつかが、共通の結合パートナーを認識することが知られている。例えば、Nectin-2およびPVRは、どちらもCD226、TIGIT、およびNectin-3を認識する(Duraivelan et al.,Sci Rep,10:9434,2020)。
【0196】
タンパク質を機能的に関連するファミリーに分類するためのアルゴリズムを用いたバイオインフォマティクス分析では、五つの追加的なIgSFメンバーであるCD96(TACTILE)、CD226(DNAM-1)、TIGIT(WUCAM、VSTM3)、CRTAM、およびCD200が、ネクチンおよびネクチン様タンパク質に機能的および進化的に関連し、ネクチンファミリーのメンバーの結合パートナーを表す可能性があることが予測された(Rubinstein et al.,Structure,21(5):766-776,2013)。今日まで、CD200を除いて、これらのタンパク質の全てが、ネクチン/ネクチン様ファミリーのメンバーに結合することが報告されている(Rubenstein,et al )。
【0197】
追加的な細胞表面分子と相互作用するというネクチンファミリーメンバーの能力により、当該メンバーの相互作用ネットワークは著しく拡張される。ネクチンファミリーのいくつかのメンバーは、IgSFの別のメンバーとのヘテロ親和性のトランス相互作用の結果、免疫調節機能を発揮し得る。これらの相互作用は、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、樹状細胞(DC)、およびTリンパ球を含む多様な免疫細胞のタイプの機能に影響を与えることが知られている。公知のネクチンファミリーパートナーであるIgSFメンバーのいくつかだけでなく、ネクチンのいくつかが、共通の結合パートナーを認識することが知られている。例えば、Nectin-2およびPVRは、どちらもCD226、TIGIT、およびNectin-3を認識する(Duraivelan et al.,Sci Rep,10:9434,2020)。
【0198】
Nectin-4
Nectin-4(ポリオウイルス受容体様4、PVRL4としても知られる)は、まず既知のネクチンタンパク質細胞外ドメイン由来の配列を用いてバイオインフォマティクス検索を介して特定され、関連配列が特定された(Reymond et al.,J Biol Chem,276(46):43205-15,2001)。ヒトNectin-4は、ヒト気管からクローニングされ、正常ヒト組織における発現パターンが制限されている抗原として記載された。より具体的には、Vドメイン相互作用を介してNectin-1とトランス相互作用するが、Nectin-2、Nectin-3、またはRVRとは相互作用しない、ネクチンファミリーのアファディン関連メンバーとして記載されている(Reymond et al.,J Biol Chem,276(46):43205-15,2001)。
【0199】
Reymondらは、自分達による以下の知見に基づきNectin-4をNectin-1の新規リガンドとして特定した(Reymond et al.,J Biol Chem,276(46):43205-15,2001):i)可溶性キメラ組換えNectin-4細胞外ドメイン(Nectin-4-Fc)は、Nectin-1を発現する細胞と相互作用するが、PVR/CD155、Nectin-2、またはNectin-3を発現する細胞とは相互作用せず、逆に、Nectin-1Fcは、Nectin-4を発現する細胞に結合する、ii)Nectin-1-Fcは、COS細胞に発現されるNectin-4を沈殿させる、iii)Nectin-4-Fc可溶性組換えタンパク質とNectin-1-Fc可溶性組換えタンパク質との間に、インビトロでの相互補完的な物理的相互作用が観察された(Reymond,N et al.)。Nectin-4-Fc/Nectin-4-Fc相互作用も検出されたが、このことは、Nectin-4がホモ親和性の特性およびヘテロ親和性の特性の両方を有することを示す。
【0200】
ヒトNectin-4遺伝子は、510アミノ酸を含有する55.5kDaタンパク質であるNectin-4接着受容体をコードする九つのエクソンを含有する。タンパク質知識データベースUniProtKbによると、Nectin-4(Q96NY8)は、N末端シグナルペプチド(1~31アミノ酸)、三つの免疫グロブリン様サブドメイン(V-1型32~144アミノ酸、C2-1型148~237アミノ酸、C2-2型248~331アミノ酸)を有する細胞外ドメイン(32~349アミノ酸)、膜貫通ドメイン(350~370アミノ酸)、および細胞質ドメイン(371~510アミノ酸)を含有する。
【0201】
Nectin-4のV様ドメインがNectin-1とのそのトランス相互作用を媒介するのに十分であること、ならびに膜近位Nectin-4 C様ドメインがトランス相互作用の親和性の増加に寄与することが報告されている(Fabre et al.,J Biol Chem,277(30):27006-27013,2002)。Nectin-4およびNectin-3は、Nectin-1 V様ドメインにおいて共通の結合領域を共有する(Harrison et al.,Nat Struct Mol Biol,19(9):906-915,2012)。
【0202】
また、Nectin-1のV様ドメインにエピトープが局在する抗Nectin-1モノクローナル抗体(R1.302)によって、Nectin-4/Nectin-1トランス相互作用が遮断されることも報告されている(Reymond et al.,J Biol Chem,276(46):43205-15,2001)。以降の刊行物では、Nectin-4のIg様Vドメインに特異的なモノクローナル抗体が、ヒトNectin-4(NIH:OVCAR5)を過剰発現するように工学的に操作された卵巣がん細胞株とNectin-1との接着を遮断することが確定された(Boylan et al.,Oncotarget,8(6):9717-9738,2017)。
【0203】
Nectin-4は、様々な上皮細胞がん、例えば、乳がん(Fabre-Lafay et al.,BMC Cancer,7:73,2007)、肺がん(Takano et al.,Cancer Res,69(16):6694-03,2009)、卵巣がん(Derycke et al.,Am J Clin Pathol,5:835-845,2010)、膵がん(Nishiwada et al.,J Exp Clin Cancer Res,34(1):30,2015)、胆嚢がん(Zhang et al.,Cancer Lett,375:179-189,2016)、および胃がん(Zhang et al.,Hum Pathol,72:107-116,2018)などで上方制御されることが報告されている。これらのがんは、Nectin-4遺伝子座のコピー数の増加または局所的な増幅を高頻度で有する(Pavlova et al.,Elife,2:e00358,2013)。
【0204】
最近では、ネクチンが腫瘍形成と転移を促進する機能とに寄与することを示すエビデンスが蓄積されている。特に、Nectin-4は、がん細胞の接着、遊走、増殖、および上皮間葉転換に関与している。乳がん、膵臓がん、および肺がんでは、患者血清中のNectin-4の過剰発現、または検出もしくは可溶性Nectin-4は、腫瘍進行および/または生存不良と関連することが報告されている(Fabre-Lafay et al.,BMC Cancer,7:73,2007,Takano et al.,Cancer Res,69(16):6694-03,2009,Derycke et al.,Am J Clin Pathol,5:835-845,2010,Nishiwada et al.,J Exp Clin Cancer Res,34(1):30,2015,and Lattanzio et al.,Oncogenesis,3:e118,2014)。
【0205】
がん免疫療法のための腫瘍関連抗原の標的化
過去数年で、密着結合ががん細胞の増殖、形質転換、および転移において役割を果たすことのさらに多くの証拠が確立されている。Claudinの調節不全は、上皮細胞における密着結合の崩壊につながり、次いで、細胞極性の喪失および上皮の完全性の減損をもたらす。腫瘍細胞によるClaudin6および/またはClaudin18.2の過剰発現は、腫瘍細胞の脱分化の結果としてClaudinの局在が調節不全となること、または異常な血管形成を伴う腫瘍塊内の栄養素を効率的に吸収するためにがん性組織が急速に成長する必要があることと関連し得る(Morin PJ.,Cancer Res.1;65(21):9603-6,2005)。細胞間接着の減少およびがん細胞の可動性の増加は、がんの進行および転移における重要なステップである上皮から間葉への移行(EMT)の主要な事象であることが示唆される。
【0206】
Nectin-4は、膀胱がんにおけるmRNA発現のレベルが高いため、抑制サブトラクティブハイブリダイゼーションを用いて、潜在的な標的として同定された(Challita-Eid et al.,Cancer Res,76(10):3003-13,2016)。初期の刊行物では、Nectin-4の発現がヒト胎盤内の内皮細胞に限定されること(Reymond et al.,J Biol Chem,276(46):43205-15,2001)、正常成人組織で発現が欠落しており、乳がん、卵巣がん、膵がん、および肺がんを含めた様々ながん組織で再発現すること(Fabre-Lafay et al.,BMC Cancer,7:73,2007,Takano et al.,Cancer Res,69(16):6694-03,2009,Derycke et al.,Am J Clin Pathol,5:835-845,2010,Pavlova et al.,Elife,2:e00358,2013, Nishiwada et al.,J Exp Clin Cancer Res,34(1):30,2015,Challita-Eid et al.,Cancer Res,76(10):3003-13,2016)が報告されていたことから、Nectin-4は、元々は腫瘍特異的抗原(TSA)として記載されていた。
【0207】
ヒトNectin-4の細胞外ドメインを指向するマウス抗体(M22-244b3)および正常ヒト組織標本のパネル(36個のヒト器官を表す)を使用した免疫組織化学(IHC)試験の結果では、以前に報告されたものよりも低いレベルから中程度のレベルで正常組織においてさらに広範な発現が呈示され(Challita-Eid et al.)、オンターゲットの対Nectin-4毒性を誘発するリスクが増加した可能性のある正常組織が同定された。ヒト皮膚ケラチノサイト、皮膚付属器官(汗腺および毛包、ならびに膀胱、胃、乳房、食道、および唾液腺(管)の上皮では、弱から中程度という低レベルの均質な染色があることが報告されており(Challita-Eid et al.,Reymond et al.,J Biol Chem,276(46):43205-15,2001,Brancati et al.,Am J Hum Gen,87:265-273,2010)、このことは、Nectin-4が、TSAというよりはむしろ腫瘍関連抗原(TAA)であることを示唆している。
【0208】
Nectin-4は、複数のがん、特に尿路上皮がん、肺がん、膵がん、乳がん、および卵巣がんにおいて過剰発現される(Challita-Eid et al.,Cancer Res,76(10):3003-13,2016,Fabre-Lafay et al.,BMC Cancer,7:73,2007,Takano et al.,Cancer Res,69(16):6694-03,2009,Derycke et al.,Am J Clin Pathol,5:835-845,2010)。7つの異なる適応症(例えば、膀胱がん、乳がん、膵がん、肺がん、卵巣がん、頭頸部がん、および食道がん)を代表する34種の腫瘍を表すヒトがん腫瘍マイクロアレイ(TMA)における、Nectin-4発現の広範な免疫組織化学では、評価されたがん適応症全体で、TMA標本の69%がNectin-4陽性であることが確認された。最も高い頻度でNectin-4の全体的な発現が、膀胱、乳房、および膵臓の腫瘍について観察された。卵巣がん、肺がん、頭頸部がん、および食道がんの試料では、中程度から強い染色を有するNectin-4陽性試料の有病率は、総じて比較的低かった(Chalittta-Eid et al.)。比較的高いNectin-4発現レベルががんに観察されることから、理論的には、抗Nectin-4標的ADCおよび抗体ベースの免疫療法に対し、許容可能な安全性プロファイルを特徴とする治療ウィンドウが提供される(Challita-Eid et al.,Cancer Res,76(10):3003-13,2016、およびShim et al.,Biomolecules,10(3):360,2020)。
【0209】
上皮がんの進行の初期段階は、細胞外マトリックス足場の非存在下で生存および増殖する能力を付与する遺伝子変化を特徴とする。足場の喪失に耐容性を有するというがん細胞の能力は、がん細胞の生存および腫瘍形成の病理学的進行(例えば、下部にある間質の浸潤、血管への血管外遊走、および遠位部位としての転移性増殖)に重要である(Pavlova et al.,Elife,2:e00358,2013)。Nectin-4は、TL-HMECにおけるマトリックス足場に依存しない細胞増殖を可能にする遺伝子の機能獲得スクリーニングで同定された(SV40ラージT抗原を形質導入されたhTERT不死化ヒト乳腺上皮細胞)(Pavlova et al.,Elife,2:e00358,2013)。
【0210】
Pavlova et al.はさらに、Nectin-4が、懸濁液中の多細胞クラスターへのTL-HMECの迅速な会合を駆動し、Nectin-4の細胞外ドメインを指向する抗体を用いて、観察可能なクラスター形成を阻止できることを報告した。細胞クラスター形成は、抗Nectin-4抗体の存在下で完全に抑制された。同様に、Nectin-1の細胞外領域を標的とする抗体も、Nectin-4誘導性の細胞クラスター形成を阻害した。
【0211】
Pavlova et al.はさらに、Nectin-4が、隣接細胞上のNectin-1受容体を係合することによる腫瘍細胞の相互のクラスター形成と、マトリクス付着に依存しない様式でのインテグリンβ4/SHP-2/c-Src活性化を惹起する相互作用とを促進することを示した。Pavlova et al.が提示したモデルでは、Nectin-4/Nectin-1相互作用を介した腫瘍特異的な細胞間接触およびシグナル伝達は、細胞-マトリックスのシグナル伝達の代替を提供し、アノイキス(すなわち、細胞外マトリックス(ECM)および隣接細胞への付着を喪失した際の細胞におけるアポトーシスの誘導)の回避を可能にするという生存上の利点を付与する。
【0212】
卵巣がんの進行(すなわち、細胞接着、スフェロイド形成、遊走および増殖)の基礎をなす細胞機能におけるNectin-4の生物学的意義を決定するために実施された研究の結果では、Nectin-4のIgV様ドメインに対するmAbが、Nectin-1への卵巣がん細胞接着をほぼ完全に遮断したことを示すインビトロデータが報告されている(Boylan et al.,Oncotarget,8(6):9717-9738,2017)。Boylan et al.は、Pavlova et al.が、乳がんのマウス異種移植片モデルに同じ抗Nectin-4抗体を使用し、対照IgGで処理された腫瘍に比べて腫瘍細胞接着の崩壊および腫瘍増殖の減少をインビボで観察したことに注目し、それらを組み合わせた結果に基づき、Nectin-4細胞接着の遮断が、がん免疫療法に使用される抗Nectin-4抗体の治療有効性の重要な構成要素であり得ると推測している(Boylan et al.)。
【0213】
Nectin-4発現腫瘍の治療に対する単独療法としての抗Nectin-4 ADCの使用を評価した前臨床試験の結果を報告した発表では、抗Nectin-4抗体ベースの免疫療法の臨床開発が実証された。例えば、AGS-22M6E ADC単独療法は、ヒトの膀胱がん、膵臓がん、乳がん、および肺がんの四つのマウス異種移植片モデルにおいて、腫瘍の成長を阻害することが報告された。続くM-Rabet et al.による発表では、Nectin-4が原発性および転移性のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の治療標的として確定されたが、この知見は、異なる抗Nectin-4抗体を使用して調製されたADC(N41 mAb-vcMMAE)(WO 2017/042210)が、免疫不全NSGマウスで開発されたTNBCの三つのモデル、すなわち原発性腫瘍、転移性病変、および局所再発に対するモデルにおいて、インビトロおよびインビボで完全かつ持続的な応答を誘導したという観察に基づく(M-Rabet et al.,Annals of Oncology,28(4):769-776,2017)。
【0214】
CD137および腫瘍関連抗原に結合する二重特異性結合タンパク質
本開示は、CD137および腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異的抗原ならびにその断片に結合する二重特異性結合タンパク質を提供する。例えば、腫瘍特異的抗原は、非腫瘍細胞上よりも多い量で腫瘍細胞の表面に発現される任意の抗原であり得る。一部の実施形態では、腫瘍関連抗原は、Claudin6、Claudin18.2、またはNectin-4であり得る。
【0215】
TAAおよびCD137に結合する二重特異性結合タンパク質は、(a)TAAに結合する第一の抗原結合部位およびTAAに結合する第二の抗原結合部位を含む抗体スキャフォールドモジュールと、(b)CD137に結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールと、を含み得る。
【0216】
一部の実施形態では、腫瘍関連抗原およびCD137に結合する二重特異性結合タンパク質は、(a)第一の抗原結合部位および第二の抗原結合部位を介して腫瘍関連抗原に結合するための手段を含む抗体スキャフォールドモジュールと、(b)第三の抗原結合部位を介してCD137に結合するための手段を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールと、を含む。
【0217】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、二つの重鎖および二つの軽鎖を有するY字型抗体である。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールはIgGであり、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4が挙げられる。一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、scFvなどの抗体断片である。さらに別の実施形態では、scFvは、ジスルフィド結合の導入によって安定化される。
【0218】
一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、CD137に結合し、アゴニスト活性を有する。
【0219】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、二価モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、完全長抗体である。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、マウス抗体またはヒト抗体である。他の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、キメラ抗体、二重特異性抗体、またはヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、対称(例えば、ホモ二量体)または非対称(例えば、ヘテロ二量体)である。
【0220】
他の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、抗体断片であり、そのようなものとしては例えば、Fab、Fab’、F(ab)、Fv、ドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、および単鎖抗体(scFv)からなる群から選択される抗体断片が挙げられる。抗体スキャフォールドモジュールは、キメラ抗体または二重特異性抗体であってもよい。代替的な実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、ポリペプチドにTAA選択的結合を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部分を含有するポリペプチドであってもよい。は、ヒト抗体である。
【0221】
一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、C末端とN末端とをそれぞれが有する二つの重鎖配列と、C末端とN末端とをそれぞれが有する二つの軽鎖配列とを含む。一部の実施形態では、第一の結合モジュールは、抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の一方もしくは両方のC末端、抗体スキャフォールドモジュール軽鎖配列の一方もしくは両方のC末端、抗体スキャフォールドモジュール重鎖配列の一方もしくは両方のN末端、抗体スキャフォールドモジュール軽鎖配列の一方もしくは両方のN末端、またはそれらの組合せに共有結合される。さらに別の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールおよびTAAに結合する抗体スキャフォールドモジュールは、直接的にまたはインターリンカーを介して、互いに共有結合される。一実施形態では、第一の結合モジュールは、ヒト型であってもヒト化されていてもよい。
【0222】
抗体スキャフォールドモジュールおよび第一の結合モジュールは、直接的にコンジュゲート(例えば、融合)されてもよいし、またはリンカーによって間接的にコンジュゲートされてもよい。例示的なリンカーとしては、例えば、3×G4Sリンカー(例えば、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号64))および4×G4Sリンカー(例えば、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号65))を含めたグリシン-セリンリンカーが挙げられる。
【0223】
様々な実施形態では、本明細書に提供される二重特異性結合タンパク質は、定常領域(すなわち、Fc領域)の置換または修飾を有する抗体スキャフォールドモジュールを含んでいてもよく、そのような置換または修飾としては、アミノ酸残基の置換、変異、および/または修飾が挙げられるが限定はない。これらの結果として、以下に限定されないが、薬物動態の変化、血清中半減期の延長、結合親和性の増加、免疫原性の低下、生産性の増加、Fc受容体(FcR)へのFcリガンドの結合の変化、ADCC、CDC、ADCP、TDCCの増強または低減、グリコシル化および/またはジスルフィド結合の改変、ならびに結合特異性の改変を含めた、好適な性質を有する化合物が生じる。
【0224】
いくつかの刊行物では、最適化されたFcgR結合プロファイルと、細胞媒介性エフェクター機能を最適化するのに適した活性化/阻害(A:I)比とを有する、バリアントヒトIgG1 Fcドメイン(CH領域)を設計するためのタンパク質工学戦略の使用に成功したことが報告されている。具体的には、低親和性受容体FcγIIIaに対するFcドメインの親和性を増加させることに焦点を当てて取り組みが行われてきた。Fcドメイン内のいくつかの変異が、Fc受容体の結合を直接的または間接的に増強し、結果として細胞性細胞傷害性を有意に増強することが特定されている(Lazar,G.A.PNAS 103:4005-4010(2006);Shields,R.L.et al,J.Biol.Chem.276:6591-6604(2001);Stewart,R.et al.,Protein Engineering Design and Selection 24:671-678(2011);Richards,J.O.et al,Mol.Cancer Ther.7:2517-2575(2008))。
【0225】
抗体スキャフォールドモジュールは、Fc領域(例えば、二つの抗体重鎖定常領域)を含み得る。一部の実施形態では、Fc領域は、少なくとも一つのFcサイレンシング変異を含み、そのようなものとしては、例えば、L234A L235A、またはN297Aが挙げられる。一部の実施形態では、Fc領域は、重鎖の二量体形成を促進するために、ノブ・イン・ホール(KiH)変異を有する一つの重鎖定常領域を含んでいてもよい。本明細書に開示される抗体スキャフォールドモジュールで使用するための例示的なFc定常領域は、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、および配列番号73に記載される。本明細書に開示される抗体スキャフォールドモジュールの軽鎖の例示的な定常領域は、配列番号70および配列番号71に記載される。
【0226】
一実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、抗CD137抗体またはその断片に由来するCDRを含む。例えば、第一の結合モジュールは、表1に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHを含み得る。一実施形態では、第一の結合モジュールは、CD137に結合する抗体の重鎖HCDRを含み、そのようなものとしては例えば、配列番号23に記載の可変重鎖ドメインを含む抗体が挙げられる。
【表1】
【0227】
一実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、抗CD137抗体またはその断片に由来するCDRを含む。例えば、第一の結合モジュールは、表1に開示されるCDRのセット(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLを含み得る。一実施形態では、第一の結合モジュールは、CD137に結合する抗体のLCDRを含み、そのようなものとしては例えば、配列番号24に記載の可変軽鎖ドメインを含む抗体が挙げられる。
【表2】
【0228】
一実施形態では、第一の結合モジュールは、以下からなる群から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のセットを有するVHおよびVLの組合せを含む:
(i)VH:CDR1:配列番号39、CDR2:配列番号40、CDR3:配列番号41、
VL:CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、CDR3:配列番号44。
【0229】
一実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、抗CD137抗体またはその断片に由来するCDRを含む。例えば、第一の結合モジュールは、表1に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHと、表2に開示されるCDRのセット(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLとを含み得る。
【0230】
別の実施形態では、第一の結合モジュールは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を有するVHを含む。別の実施形態では、第一の結合モジュールは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を有するVLを含む。さらに別の実施形態では、第一の結合モジュールは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号24に記載のアミノ酸配列を有するVLとを含む。
【0231】
一部の実施形態では、本二重特異性結合タンパク質は、1~10nM以下のKDを有する、CD137に結合する第一の結合モジュールを含む。結合会合定数kaは、1~10×10(1/Ms)である。結合会合定数kdは、1~10×10-2(1/S)である。
【0232】
抗体スキャフォールドモジュールは、TAAに特異的な抗体由来のCDRのセットを含んでいてもよい。
【0233】
一実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、Claudin6に結合し、表3に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHを含む。別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、Claudin6に結合し、表4に開示されるCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)のセットを有するVLを含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、表3に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHと、表4に開示されるCDRのセット(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLとを含む。
【表3】
【表4】
【0234】
ある実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、以下からなる群から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)のセットを有するVHとVLの組合せを含む:
(i)VH:CDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、CDR3:配列番号47、
VL:CDR1:配列番号48、CDR2:配列番号49、CDR3:配列番号50、および
(ii)VH:CDR1:配列番号51、CDR2:配列番号52、CDR3:配列番号53、
VL:CDR1:配列番号54、CDR2:配列番号55、CDR3:配列番号56。
【0235】
別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号25または配列番号27に記載のアミノ酸配列を有するVHを含む。別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号26または配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するVLを含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号25に記載のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号26に記載のアミノ酸配列を有するVLとを含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号27に記載のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するVLとを含む。
【0236】
一実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、Claudin18.2に結合し、表5に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHを含む。別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、Claudin18.2に結合し、表6に開示されるCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)のセットを有するVLを含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、表5に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHと、表6に開示されるCDRのセット(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLとを含む。
【表5】
【表6】
【0237】
一実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、以下からなる群から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のセットを有するVHとVLとの組合せを含む:
(i)VH:CDR1:配列番号33、CDR2:配列番号34、CDR3:配列番号35、
VL:CDR1:配列番号36、CDR2:配列番号37、CDR3:配列番号38。
【0238】
別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号21に記載のアミノ酸配列を有するVHを含む。別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するVLを含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号21に記載のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するVLとを含む。
【0239】
一実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、Nectin-4に結合し、表7に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHを含む。別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、Nectin-4に結合し、表8に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVLを含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、表7に開示されるCDRのセット(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHと、表8に開示されるCDRのセット(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLとを含む。
【表7】
【表8】
【0240】
一実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、以下からなる群から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のセットを有するVHとVLとの組合せを含む:
(i)VH:CDR1:配列番号57、CDR2:配列番号58、CDR3:配列番号59、
VL:CDR1:配列番号60、CDR2:配列番号61、CDR3:配列番号62。
【0241】
別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号29または配列番号31に記載のアミノ酸配列を有するVHを含む。別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号30または配列番号32に記載のアミノ酸配列を有するVLを含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号29に記載のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号30に記載のアミノ酸配列を有するVLとを含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号31に記載のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号32に記載のアミノ酸配列を有するVLとを含む。
【0242】
別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、以下の組合せから選択される一対の可変重鎖配列および可変軽鎖配列を含む:
i)配列番号21と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号22と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、ならびに
ii)配列番号23と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号24と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、
iii)配列番号25と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号26と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、
iv)配列番号27と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号28と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、
v)配列番号29と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号30と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、
vi)配列番号31と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号32と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列。
当業者はさらに、可変軽鎖および可変重鎖が、独立して選択されるかまたは混合し適合されて、上記に特定した対合とは異なる可変重鎖および可変軽鎖の組合せを含む抗CLDN6抗体を調製してもよいことを理解するものとなる。
【0243】
一部の実施形態では、本二重特異性結合タンパク質は、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含む。当業者は、保存的なアミノ酸置換が、例えば類似の側鎖など、類似の構造的または化学的な特性を有する別のアミノ酸による一アミノ酸の置換であることを認識するものとなる。例示的な保存された置換は、当技術分野において、例えば、Watson et al.,Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Publication Company,4th Ed.(1987)に記載されている。
【0244】
「保存的な改変」とは、アミノ酸配列を含有する二重特異性結合タンパク質の結合特性に著しく影響しないかまたは変化させないアミノ酸改変を指す。保存的な改変には、アミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。保存的な置換は、アミノ酸が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されるというものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、明確に定義されており、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン)、芳香族側鎖(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン)、脂肪族側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン)、アミド(例えば、アスパラギン、グルタミン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および硫黄含有側鎖(システイン、メチオニン)を有するアミノ酸を含む。さらに、ポリペプチド中の任意の天然残基は、アラニンスキャニング変異誘発につき前述されているように(MacLennan et al.(1998)Acta Physiol Scand Suppl 643:55-67;Sasaki et al.(1998)Adv Biophys 35:1-24)、アラニンにより置換されていてもよい。本開示の二重特異性結合タンパク質へのアミノ酸置換は、公知の方法、例えばPCR変異誘発(米国特許第4,683,195号)によって作製されてもよい。
【0245】
一部の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、配列番号23の可変重鎖配列を含むCD137に結合する結合モジュールの結合および/または機能的活性を保持する。さらに別の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、配列番号23の可変重鎖配列を含み、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、または1~5個の保存的なアミノ酸置換を重鎖可変配列に有する。さらに別の実施形態では、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換は、配列番号23の一つまたは複数のフレームワーク領域内に含まれる(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0246】
特定の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、配列番号23に記載の可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域に一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、CD137に結合しかつ配列番号23に記載の可変重鎖配列と配列番号24に記載の可変軽鎖配列とを含む第一の結合モジュールの結合および/または機能的活性を保持する。
【0247】
一部の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、配列番号24に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、配列番号24の可変軽鎖配列を含むCD137に結合する結合モジュールの結合および/または機能的活性を保持する。さらに別の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、配列番号24の可変軽鎖配列を含み、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、または1~5個の保存的なアミノ酸置換を軽鎖可変配列に有する。さらに別の実施形態では、上記一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換は、配列番号24の一つまたは複数のフレームワーク領域内に含まれる(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0248】
特定の実施形態では、CD137に結合する第一の結合モジュールは、配列番号24に記載の可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域に一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、配列番号23に記載の可変重鎖配列と配列番号24に記載の可変軽鎖配列とを含む第一の結合モジュールの結合および/または機能的活性を保持する。
【0249】
一部の実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号25または27に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号25または27の可変重鎖配列を含むClaudin6に結合する結合モジュールの結合および/または機能的活性を保持する。さらに別の実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号25または27の可変重鎖配列を含み、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、または1~5個の保存的なアミノ酸置換を重鎖可変配列に有する。さらに別の実施形態では、上記一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換は、配列番号25または27の一つまたは複数のフレームワーク領域内に含まれる(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0250】
特定の実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号25または27に記載の可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域に一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、Claudin6に結合しかつ配列番号25または27に記載の可変重鎖配列と配列番号26または28に記載の可変軽鎖配列とを含む抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。
【0251】
一部の実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号26または28に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号26または28の可変軽鎖配列を含むClaudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。さらに別の実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号26または28の可変軽鎖配列を含み、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、または1~5個の保存的なアミノ酸置換を軽鎖可変配列に有する。さらに別の実施形態では、上記一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換は、配列番号26または28の一つまたは複数のフレームワーク領域内に含まれる(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0252】
特定の実施形態では、Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号26または28に記載の可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域に一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、配列番号25または27に記載の可変重鎖配列と配列番号26または28に記載の可変軽鎖配列とを含む抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。
【0253】
一部の実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号21に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号21の可変重鎖配列を含むClaudin18.2に結合する結合モジュールの結合および/または機能的活性を保持する。さらに別の実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号21の可変重鎖配列を含み、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、または1~5個の保存的なアミノ酸置換を重鎖可変配列に有する。さらに別の実施形態では、上記一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換は、配列番号21の一つまたは複数のフレームワーク領域内に含まれる(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0254】
特定の実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号21に記載の可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域に一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、Claudin18.2に結合しかつ配列番号21に記載の可変重鎖配列と配列番号22に記載の可変軽鎖配列とを含む抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。
【0255】
一部の実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号22に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号22の可変軽鎖配列を含むClaudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。さらに別の実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号22の可変軽鎖配列を含み、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、または1~5個の保存的なアミノ酸置換を軽鎖可変配列に有する。さらに別の実施形態では、上記一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換は、配列番号22の一つまたは複数のフレームワーク領域内に含まれる(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0256】
特定の実施形態では、Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号22に記載の可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域に一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、配列番号21に記載の可変重鎖配列と配列番号22に記載の可変軽鎖配列とを含む抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。
【0257】
一部の実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号29または31に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号29または31の可変重鎖配列を含むNectin-4に結合する結合モジュールの結合および/または機能的活性を保持する。さらに別の実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号29または31の可変重鎖配列を含み、一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、または1~5個の保存的なアミノ酸置換を重鎖可変配列に有する。さらに別の実施形態では、上記一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換は、配列番号29または31の一つまたは複数のフレームワーク領域内に含まれる(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0258】
特定の実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号29または31に記載の可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域に一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、Nectin-4に結合しかつ配列番号29または31に記載の可変重鎖配列と配列番号30または32に記載の可変軽鎖配列とを含む抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。
【0259】
一部の実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号30または32に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号30または32の可変軽鎖配列を含むNectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。さらに別の実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号30または32の可変軽鎖配列を含み、一つまたは複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、または1~5個の保存的なアミノ酸置換を軽鎖可変配列に有する。さらに別の実施形態では、上記一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換は、配列番号30または32の一つまたは複数のフレームワーク領域内に含まれる(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0260】
特定の実施形態では、Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号30または32に記載の可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域に一つまたは複数の保存的なアミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、配列番号29または31に記載の可変重鎖配列と配列番号30または32に記載の可変軽鎖配列とを含む抗体スキャフォールドモジュールの結合および/または機能的活性を保持する。
【0261】
一部の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号3および配列番号2(1901 Ab2)、配列番号4および配列番号5(1901 Ab3)、配列番号12および配列番号9(1912 Ab3)、配列番号13および配列番号11(1912 Ab4)、配列番号72および配列番号9(1912 Ab5)、配列番号14および配列番号15(1925 Ab1)、配列番号16および配列番号17(1925 Ab2)、または配列番号18および配列番号15(1925 Ab3)を含む。
【0262】
他の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号3および配列番号2(1901 Ab2)を含み、CD137およびClaudin18.2に結合する。他の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号4および配列番号5(1901 Ab3)を含み、CD137およびClaudin18.2に結合する。他の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号12および配列番号9(1912 Ab3)を含み、CD137およびClaudin6に結合する。他の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号13および配列番号11(1912 Ab4)を含み、CD137およびClaudin6に結合する。他の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号72および配列番号9(1912 Ab5)を含み、CD137およびClaudin6に結合する。他の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号14および配列番号15(1925 Ab1)を含み、CD137およびNectin-4に結合する。他の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号16および配列番号17(1925 Ab2)を含み、CD137およびNectin-4に結合する。他の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、配列番号18および配列番号15(1925 Ab3)を含み、CD137およびNectin-4に結合する。
【0263】
一実施形態では、CD137およびClaudin18.2に結合する二重特異性結合タンパク質は、
i)Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールであって、抗体スキャフォールドモジュールが、二つの重鎖と二つの軽鎖とを有するIgGであり、IgGが、N末端およびC末端を有する二つの定常鎖を含むFc領域を含む、抗体スキャフォールドモジュール、ならびに
ii)CD137に結合する二つの第一の結合モジュールであって、第一の結合モジュールが、scFvであり、scFvが、4×(G4S)リンカーによって連結されたVHとVLとを含み、第一の結合モジュールのそれぞれが、3×(G4S)リンカーによってFc定常鎖のC末端に別々に結合される、二つの第一の結合モジュールを含む。
【0264】
一部の実施形態では、3×(G4S)リンカーは、N末端およびC末端を有し、3×(G4S)リンカーのN末端は、二つのFc定常鎖のC末端に結合され、3×(G4S)リンカーのC末端は、第一の結合モジュール中のVHのN末端に結合されている。scFvは安定化されていてもよい。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュール、3×(G4S)リンカー、および第一の結合モジュールからなる二つの重鎖はどちらも、配列番号3に記載のN末端からC末端へのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号2に記載のアミノ酸配列をそれぞれが有する二つの軽鎖を含む。
【0265】
一実施形態では、CD137およびClaudin18.2に結合する二重特異性結合タンパク質は、
i)Claudin18.2に結合する抗体スキャフォールドモジュールであって、抗体スキャフォールドモジュールが、二つの重鎖と二つの軽鎖とを有するIgGであり、IgGが、N末端およびC末端を有する二つの定常鎖を含むFc領域を含む、抗体スキャフォールドモジュール、ならびに
ii)CD137に結合する二つの第一の結合モジュールであって、第一の結合モジュールが、scFvであり、scFvが、4×(G4S)リンカーによって連結されたVHとVLとを含み、第一の結合モジュールのそれぞれが、3×(G4S)リンカーによって軽鎖のC末端に別々に結合される、二つの第一の結合モジュールを含む。
【0266】
一部の実施形態では、3×(G4S)リンカーは、N末端およびC末端を有し、3×(G4S)リンカーのN末端は、二つの軽鎖のC末端に結合され、3×(G4S)リンカーのC末端は、第一の結合モジュール中のVHのN末端に結合されている。scFvは安定化されていてもよい。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュール、3×(G4S)リンカー、および第一の結合モジュールからなる二つの軽鎖は、それぞれ別々に、配列番号5に記載のN末端からC末端へのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号4に記載のアミノ酸配列をそれぞれが有する二つの重鎖を含む。
【0267】
一実施形態では、CD137およびClaudin6に結合する二重特異性結合タンパク質は、
i)Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールであって、抗体スキャフォールドモジュールが、二つの重鎖と二つの軽鎖とを有するIgGであり、IgGが、N末端およびC末端を有する二つの定常鎖を含むFc領域を含む、抗体スキャフォールドモジュール、ならびに
ii)CD137に結合する二つの第一の結合モジュールであって、第一の結合モジュールが、scFvであり、scFvが、4×(G4S)リンカーによって連結されたVHとVLとを含み、第一の結合モジュールのそれぞれが、3×(G4S)リンカーによってFc定常鎖のC末端に別々に結合される、二つの第一の結合モジュールを含む。
【0268】
一部の実施形態では、3×(G4S)リンカーは、N末端およびC末端を有し、3×(G4S)リンカーのN末端は、二つのFc定常鎖のC末端に結合され、3×(G4S)リンカーのC末端は、第一の結合モジュール中のVHのN末端に結合されている。scFvは安定化されていてもよい。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュール、3×(G4S)リンカー、および第一の結合モジュールからなる二つの重鎖は、それぞれ別々に、配列番号12または配列番号72に記載のN末端からC末端へのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号9に記載のアミノ酸配列をそれぞれが有する二つの軽鎖を含む。
【0269】
一実施形態では、CD137およびClaudin6に結合する二重特異性結合タンパク質は、
i)Claudin6に結合する抗体スキャフォールドモジュールであって、抗体スキャフォールドモジュールが、二つの重鎖と二つの軽鎖とを有するIgGであり、IgGが、N末端およびC末端を有する二つの定常鎖を含むFc領域を含む、抗体スキャフォールドモジュール、ならびに
ii)CD137に結合する二つの第一の結合モジュールであって、第一の結合モジュールが、scFvであり、scFvが、4×(G4S)リンカーによって連結されたVHとVLとを含み、第一の結合モジュールのそれぞれが、3×(G4S)リンカーによって軽鎖のC末端に別々に結合される、二つの第一の結合モジュールを含む。
【0270】
一部の実施形態では、3×(G4S)リンカーは、N末端およびC末端を有し、3×(G4S)リンカーのN末端は、二つの軽鎖のC末端に結合され、3×(G4S)リンカーのC末端は、第一の結合モジュール中のVHのN末端に結合されている。scFvは安定化されていてもよい。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュール、3×(G4S)リンカー、および第一の結合モジュールからなる二つの軽鎖は、それぞれ別々に、配列番号11に記載のN末端からC末端へのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号13に記載のアミノ酸配列をそれぞれが有する二つの重鎖を含む。
【0271】
一実施形態では、CD137およびNectin-4に結合する二重特異性結合タンパク質は、
i)Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールであって、抗体スキャフォールドモジュールが、二つの重鎖と二つの軽鎖とを有するIgGであり、IgGが、N末端およびC末端を有する二つの定常鎖を含むFc領域を含む、抗体スキャフォールドモジュール、ならびに
ii)CD137に結合する二つの第一の結合モジュールであって、第一の結合モジュールが、scFvであり、scFvが、4×(G4S)リンカーによって連結されたVHとVLとを含み、第一の結合モジュールのそれぞれが、3×(G4S)リンカーによってFc定常鎖のC末端に別々に結合される、二つの第一の結合モジュールを含む。
【0272】
一部の実施形態では、3×(G4S)リンカーは、N末端およびC末端を有し、3×(G4S)リンカーのN末端は、二つのFc定常鎖のC末端に結合され、3×(G4S)リンカーのC末端は、第一の結合モジュール中のVHのN末端に結合されている。scFvは安定化されていてもよい。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュール、3×(G4S)リンカー、および第一の結合モジュールからなる二つの重鎖は、それぞれ別々に、配列番号14に記載のN末端からC末端へのアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号15に記載のアミノ酸配列をそれぞれが有する二つの軽鎖を含む。
【0273】
一実施形態では、CD137およびNectin-4に結合する二重特異性結合タンパク質は、
i)Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールであって、抗体スキャフォールドモジュールが、二つの重鎖と二つの軽鎖とを有するIgGであり、IgGが、N末端およびC末端を有する二つの定常鎖を含むFc領域を含む、抗体スキャフォールドモジュール、ならびに
ii)CD137に結合する二つの第一の結合モジュールであって、第一の結合モジュールが、scFvであり、scFvが、4×(G4S)リンカーによって連結されたVHとVLとを含み、第一の結合モジュールのそれぞれが、3×(G4S)リンカーによって軽鎖のC末端に別々に結合される、二つの第一の結合モジュールを含む。
【0274】
一部の実施形態では、3×(G4S)リンカーは、N末端およびC末端を有し、3×(G4S)リンカーのN末端は、二つの軽鎖のC末端に結合され、3×(G4S)リンカーのC末端は、第一の結合モジュール中のVHのN末端に結合されている。scFvは安定化されていてもよい。一部の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュール、3×(G4S)リンカー、および第一の結合モジュールからなる二つの軽鎖は、それぞれ別々に、配列番号17に記載のN末端からC末端へのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号16に記載のアミノ酸配列をそれぞれが有する二つの重鎖を含む。
【0275】
一実施形態では、CD137およびNectin-4に結合する二重特異性結合タンパク質は、
i)Nectin-4に結合する抗体スキャフォールドモジュールであって、抗体スキャフォールドモジュールが、二つの重鎖と二つの軽鎖とを有するIgGであり、IgGが、N末端およびC末端を有する二つの定常鎖を含むFc領域を含む、抗体スキャフォールドモジュール、ならびに
ii)CD137に結合する二つの第一の結合モジュールであって、第一の結合モジュールが、scFvであり、scFvが、4×(G4S)リンカーによって連結されたVHとVLとを含み、第一の結合モジュールのそれぞれが、4×(G4S)リンカーによって二つの重鎖のN末端に別々に結合される、二つの第一の結合モジュールを含む。
【0276】
一部の実施形態では、4×(G4S)リンカーは、N末端およびC末端を有し、4×(G4S)リンカーのC末端は、二つの重鎖のN末端に結合され、4×(G4S)リンカーのN末端は、第一の結合モジュール中のVLのC末端に結合されている。scFvは安定化されていてもよい。一部の実施形態では、第一の結合モジュール、4×(G4S)リンカー、および抗体スキャフォールドモジュールの二つの重鎖は、それぞれ別々に、配列番号18に記載のN末端からC末端へのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体スキャフォールドモジュールは、配列番号15に記載のN末端からC末端のアミノ酸配列をそれぞれが有する二つの軽鎖を含む。
【0277】
本開示の二重特異性結合タンパク質の治療上の価値は、その有効性および効力を向上させる細胞傷害薬または細胞傷害剤とのコンジュゲーションによって増強させることができるが、そのような細胞傷害性薬剤としては、例えば、放射性同位体、薬剤、または細胞毒などの細胞傷害性エフェクター剤が挙げられる。
【0278】
一部の実施形態では、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質は、以下の構造的および機能的な特徴のうちの一つまたは複数を、単独でまたは組み合わせて示す:
(a)ヒトCD137および腫瘍関連抗原(TAA)に結合することが可能であること、
(b)カニクイザルCD137と、腫瘍関連抗原(TAA)のうちの一つとに交差反応すること、
(c)CD137に結合するヒトCD137Lを阻止(例えば、低減または防止)すること、
(d)CD137に対し高速オンおよび高速オフの特性を示すこと、
(e)CD137シグナル伝達に対しTAA依存的なアゴニスト活性を有すること、
(f)TAA依存的な様式でT細胞を活性化すること、および
(g)CD8 T細胞を活性化することによってTAA発現細胞を殺傷すること。
【0279】
一部の実施形態では、二重特異性結合タンパク質は、以下の構造的および機能的な特徴のうちの一つまたは複数を単独でまたは組み合わせて示す、Claudin-6/CD137 BsAbである:
(a)Claudin6結合のための二価性、
(b)高速オン/高速オフのCD137結合カイネティクス、
(c)腫瘍においてリンパ球浸潤を強化すること、
(d)腫瘍においてT細胞の増殖/活性化を促進すること、
(e)腫瘍においてT細胞を枯渇から保護すること、
(f)腫瘍を経たT細胞からのT細胞メモリーの形成を促進すること、
(g)腫瘍微小環境(TME)においてTreg/CD8比を減少させること、および
(h)TMEにおいてM2様マクロファージを減少させること。
【0280】
スキャフォールドモジュールまたは結合モジュールとして使用するためのモノクローナル抗体を生産する方法
CD137およびTAAに結合する二重特異性結合タンパク質は、当技術分野で公知の任意の方法によって作製されてもよい。例えば、レシピエントは、可溶性組換えCD137タンパク質またはその担体タンパク質とコンジュゲートされたCD137ペプチドの断片で免疫されてもよい。同様に、レシピエントは、可溶性組換えTAAタンパク質またはその担体タンパク質とコンジュゲートされた腫瘍関連抗原ペプチドの断片で免疫されてもよい。任意の適切な免疫方法を使用することができる。かかる方法としては、アジュバント、他の免疫刺激剤、反復ブースター免疫、および一つまたは複数の免疫経路の使用を挙げることができる。抗体から得られたCDRまたはVH/VLは、抗体スキャフォールドモジュールおよび/または第一の結合モジュールで使用され得る。
【0281】
ヒトCD137またはTAAの任意の適切な供給源を、本明細書に開示される組成物および方法の非ヒトまたはヒトの抗CD137抗体および/または抗TAA抗体を生成するための免疫原として、使用することができる。
【0282】
CD137および/またはTAAの異なる形態を使用して、生物学的に活性な抗CD137抗体または抗TAA抗体を同定するための免疫応答を誘発させてもよい。そのため、誘発性のCD137抗原またはTAAは、単一エピトープ、複数のエピトープ、もしくタンパク質全体のみであってもよいし、一つまたは複数の免疫原性賦活化剤と組み合わせたものであってもよい。一部の態様では、誘発性抗原は、単離された可溶性完全長タンパク質、または完全長配列よりも小さな可溶性タンパク質である(例えば、CD137もしくはTAAの細胞外ドメイン/ループ、ECD1および/もしくはECD2を含むペプチドを単独でまたは組み合わせて免疫する)。本明細書で使用される際に、用語「部分」とは、必要に応じて、目的の抗原の免疫原性エピトープを構成する最小数のアミノ酸または核酸を指す。目的の細胞の形質転換に適した任意の遺伝子ベクターが採用され得るが、そのようなものとしては、以下に限定されないが、アデノウイルスベクター、プラスミド、およびカチオン性脂質などの非ウイルスベクターが挙げられる。
【0283】
マウス、齧歯類、霊長類、ヒトなどの様々な哺乳類宿主からモノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。かかるモノクローナル抗体を調製するための技術の記載は、例えば、Sties et al.(eds.)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(4th ed.)Lance Medical Publication,Los Altos,CA,and references cited therein;Harlow and Lane(1988)ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL CSH Press;Goding(1986)MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE(2nd ed.)Academic Press,New York,NY.に見出され得る。典型的には、所望の抗原で免疫された動物に由来する脾臓細胞は、通常は骨髄腫細胞との融合によって不死化される。Kohler and Milstein(196)Eur.J.Immunol.6:511-519を参照されたい。不死化の代替的な方法としては、エプスタインバールウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当技術分野で公知の他の方法が挙げられる。例えば、Doyle et al.(eds.1994および定期増補版)CELL AND TISSUE CULTURE:LABORATORY PROCEDURES,John Wiley and Sons,New York,NY.を参照されたい。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対する所望の特異性および親和性の抗体の産生についてスクリーニングされ、このような細胞の産生するモノクローナル抗体の収率は、脊椎動物宿主の腹腔内への注射を含めた様々な技術によって増強され得る。あるいは、例えばHuse et al.(1989)Science 246:1275-1281により概説された一般プロトコールに従って、ヒトB細胞からDNAライブラリをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードするDNA配列を単離してもよい。このように、抗体は、当業者によく知られている様々な技術によって取得され得る。
【0284】
他の適切な技術としては、ファージ、酵母、ウイルス、または類似のベクター中の抗体のライブラリの選択が挙げられる。例えば、前掲のHuse et al.およびWard et al.(1989)Nature 341:544-546を参照されたい。本明細書に開示されるポリペプチドおよび抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体を含めて、改変の有無にかかわらず使用され得る。多くの場合、ポリペプチドおよび抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を共有結合的にまたは非共有結合的に結合することによって標識されるものとなる。多種多様な標識およびコンジュゲーション技術が公知であり、科学文献および特許文献の両方に広く報告されている。適切な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子などが挙げられる。こうしたラベルの使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,9396,345号、第4,277,437号、第4,275,149号、および第4,366,241号が挙げられる。また、組換え免疫グロブリンが産生されてもよい。Cabillyの米国特許第4,816,567号、およびQueen et al.(1989)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10023を参照されたい。あるいは、トランスジェニックマウスで作製された場合には、Nils Lonberg et al.(1994),Nature 368:856-859、およびMendez et al.(1997)Nature Genetics 15:146-156;TRANSGENIC ANIMALS AND METHODS OF USE (WO2012/62118)、Medarex、Trianni、Abgenix、Ablexis、OminiAb、Harbour、および他の技術を参照されたい。
【0285】
一部の実施形態では、産生抗体がCD137またはTAAに結合する能力は、表面プラズモン共鳴(SPR)、FoteBio(BLI)、Gator(BLI)、ELISA、ウェスタンブロット、免疫蛍光、フローサイトメトリー分析(FACS)、または内部移行アッセイなどの標準的な結合アッセイを使用して評価することができる。
【0286】
ハイブリドーマまたは宿主細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティクロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティクロマトグラフィーは典型的な精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体内に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトガンマ1、ガンマ2、またはガンマ4の重鎖に基づく抗体を精製することができる(例えば、Lindmark et al.,1983 J.Immunol.Meth.62:1-13を参照)。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプおよびヒトガンマ3に対して推奨される(例えば、Guss et al.,1986 EMBO J.5:1567-1575を参照)。アフィニティリガンドが結合するマトリックスは、最も多くの場合にアガロースであるが、他のマトリックスが利用可能である。制御多孔性ガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの物理的に安定なマトリクスにより、アガロースで達成できるよりも速い流量および短い処理時間が実現される。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)は精製に有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)上のヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿なども、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0287】
任意の予備精製工程に続いて、目的の抗体および汚染物質を含む混合物は、典型的には低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で実施される、約2.5~4.5のpHの溶出緩衝液を使用した低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供されてもよい。
【0288】
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
他の実施形態は、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質をコードする配列を含む単離ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、ならびに該二重特異性結合タンパク質の生産のための組換え技術を包含する。単離ポリヌクレオチドは、その構成要素、例えば、スキャフォールドモジュールおよび/または第一の結合モジュールなどを含む、任意の所望の形態の二重特異性結合タンパク質をコードし得る。
【0289】
一実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、VH:CDR1:配列番号39、CDR2:配列番号40、CDR3:配列番号41、およびVL:CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、CDR3:配列番号44から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のセットを有するVHとVLとの組合せを含む、第一の結合モジュールをコードする。
【0290】
一実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、Claudin6に結合し、かつVH:CDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、CDR3:配列番号47、およびVL:CDR1:配列番号48、CDR2:配列番号49、CDR3:配列番号50から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のセットを有するVHとVLとの組合せを含む、抗体スキャフォールドモジュールをコードする。
【0291】
一実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、Claudin6に結合し、かつVH:CDR1:配列番号51、CDR2:配列番号52、CDR3:配列番号53、およびVL:CDR1:配列番号54、CDR2:配列番号55、CDR3:配列番号56から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のセットを有するVHとVLとの組合せを含む、抗体スキャフォールドモジュールをコードする。
【0292】
一実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、Claudin18.2に結合し、かつVH:CDR1:配列番号33、CDR2:配列番号34、CDR3:配列番号35、およびVL:CDR1:配列番号36、CDR2:配列番号37、CDR3:配列番号38から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のセットを有するVHとVLとの組合せを含む、抗体スキャフォールドモジュールをコードする。
【0293】
一実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、Nectin-4に結合し、かつVH:CDR1:配列番号57、CDR2:配列番号58、CDR3:配列番号59、およびVL:CDR1:配列番号60、CDR2:配列番号61、CDR3:配列番号62から選択される相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のセットを有するVHとVLとの組合せを含む、抗体スキャフォールドモジュールをコードする。
【0294】
別の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号29または配列番号31に記載のアミノ酸配列を有するVHを含む抗体スキャフォールドモジュールをコードする。別の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号30または配列番号32に記載のアミノ酸配列を有するVLを含む抗体スキャフォールドモジュールをコードする。さらに別の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号29に記載のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号30に記載のアミノ酸配列を有するVLとを含む抗体スキャフォールドモジュールをコードする。さらに別の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号31に記載のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号32に記載のアミノ酸配列を有するVLとを含む抗体スキャフォールドモジュールをコードする。
【0295】
別の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、以下の組合せから選択される可変重鎖配列と可変軽鎖配列との対を含む抗体スキャフォールドモジュールをコードする:
i)配列番号21と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号22と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、ならびに
ii)配列番号23と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号24と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、
iii)配列番号25と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号26と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、
iv)配列番号27と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号28と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、
v)配列番号29と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号30と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列、
vi)配列番号31と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列、および配列番号32と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列。
【0296】
一部の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号3および配列番号2(1901 Ab2)、配列番号4および配列番号5(1901 Ab3)、配列番号12および配列番号9(1912 Ab3)、配列番号13および配列番号11(1912 Ab4)、配列番号72および配列番号9(1912 Ab5)、配列番号14および配列番号15(1925 Ab1)、配列番号16および配列番号17(1925 Ab2)、または配列番号18および配列番号15(1925 Ab3)を含む二重特異性結合タンパク質をコードする。
【0297】
他の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号3および/または配列番号2(1901 Ab2)を含み、かつCD137およびClaudin18.2に結合する、二重特異性結合タンパク質をコードする。他の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号4および/または配列番号5(1901 Ab3)を含み、かつCD137およびClaudin18.2に結合する、二重特異性結合タンパク質をコードする。他の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号12および/または配列番号9(1912 Ab3)を含み、かつCD137およびClaudin6に結合する、二重特異性結合タンパク質をコードする。他の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号13および/または配列番号11(1912 Ab4)を含み、かつCD137およびClaudin6に結合する、二重特異性結合タンパク質をコードする。他の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号72および/または配列番号9(1912 Ab5)を含み、かつCD137およびClaudin6に結合する、二重特異性結合タンパク質をコードする。他の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号14および/または配列番号15(1925 Ab1)を含み、かつCD137およびNectin-4に結合する、二重特異性結合タンパク質をコードする。他の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号16および/または配列番号17(1925 Ab2)を含み、かつCD137およびNectin-4に結合する、二重特異性結合タンパク質をコードする。他の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号18および/または配列番号15(1925 Ab3)を含み、かつCD137およびNectin-4に結合する、二重特異性結合タンパク質をコードする。
【0298】
また、本開示の二重特異性結合タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチド配列によって表されるヌクレオチド配列の全てまたは一部(例えば、可変領域をコードする部分)には、本明細書に定義されるように、低、中、および高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸も含まれる。ハイブリダイズ核酸のハイブリダイズ部分は、典型的には、少なくとも15個(例えば、20個、25個、30個、または50個)のヌクレオチド長である。ハイブリダイズ核酸のハイブリダイズ部分は、二重特異性結合タンパク質のポリペプチド鎖(例えば、抗体スキャフォールドモジュールおよび/もしくは第一の結合モジュールの重鎖もしくは軽鎖の可変領域)またはその相補鎖をコードする核酸の一部または全ての配列に対し、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である。本明細書に記載されるタイプのハイブリダイズ核酸は、例えば、クローニングプローブ、プライマー、例えばPCRプライマー、または診断プローブとして使用することができる。
【0299】
本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の一つまたは複数の調節配列または制御配列に融合することができ、当技術分野で公知の適切な発現ベクターまたは細胞に含有させることができる。抗体結合スキャフォールドの重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインをコードする各ポリヌクレオチド分子は、独立して、ヒト定常ドメインなどの定常ドメインをコードするポリヌクレオチド配列に融合されて、抗体スキャフォールドモジュールを形成することができる。あるいは、ポリヌクレオチドまたはその一部は、合わせて融合され、第一の結合モジュールの生産のための鋳型を提供することができる。
【0300】
組換え生産のために、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質(例えば、二つの重鎖および二つの軽鎖を含むその抗体スキャフォールドモジュール、ならびに第一の結合モジュール)をコードするポリヌクレオチドは、クローニング(DNAの増幅)または発現のための複製可能なベクターに挿入される。二重特異性結合タンパク質を発現するための多くの適切なベクターが利用可能である。ベクター構成要素は概して、シグナル配列、複製起点、一つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終結配列のうちの一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0301】
二重特異性結合タンパク質(例えば、二つの重鎖および二つの軽鎖を含むその抗体スキャフォールドモジュール、ならびに第一の結合モジュール)はまた、融合ポリペプチドとして生産されてもよく、この場合に二重特異性結合タンパク質は、シグナル配列などの異種ポリペプチド、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのアミノ末端に特定の切断部位を有する他のポリペプチドと融合される。選択される異種シグナル配列は、典型的には、宿主細胞によって認識およびプロセッシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。二重特異性結合タンパク質シグナル配列を認識およびプロセッシングしない原核宿主細胞については、シグナル配列は、原核シグナル配列によって置換することができる。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、リポタンパク質、熱安定性エンテロトキシンIIリーダーなどとしてもよい。酵母の分泌については、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼアルファ因子(サッカロミセスおよびクルイベロミセスのα因子リーダーを含む)、酸ホスファターゼ、C.アルビカンスグルコアミラーゼから得られたリーダー配列、またはWO90/13646に記載のシグナルにより置換することができる。哺乳類細胞では、哺乳類シグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルを使用することができる。このような前駆体領域のDNAは、リーディングフレーム内で、二重特異性結合タンパク質をコードするDNA(例えば、二つの重鎖および二つの軽鎖を含むその抗体スキャフォールドモジュール、ならびに第一の結合モジュール)にライゲーションされる。
【0302】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、ベクターが一つまたは複数の選択された宿主細胞中で複製することを可能にする核酸配列を含有する。概して、クローニングベクターでは、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは独立して複製することを可能にし、複製起点または自律複製配列を含む。様々な細菌、酵母、およびウイルスについて、そのような配列が周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適しており、2-υプラスミド起点は酵母に適しており、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、およびBPV)は、哺乳類細胞におけるクローニングベクターに有用である。概して、複製要素の起点は、哺乳類発現ベクターに必要とされない(SV40起点は、初期プロモーターを含有するという理由のみで典型的に使用され得る)。
【0303】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、発現を容易に識別できるようにするための選択マーカーをコードする遺伝子を含有していてもよい。典型的な選択マーカー遺伝子は、抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、あるいは相補的な栄養要求性の欠損体であるタンパク質をコードするか、または他の代替では、複合培地中に存在しない特定の栄養素を供給するタンパク質をコードし、例えば、バシラスのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子などがある。
【0304】
また、二重特異性結合タンパク質をコードする一つまたは複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞も本明細書に提供される。本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質を生産するために使用される細胞は、様々な培地中で培養され得る。ハムF10(シグマアルドリッチ社)、最小必須培地((MEM)、シグマアルドリッチ社)、RPMI-1640(シグマアルドリッチ社)、FreeStyle(商標)(Gibco)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、シグマアルドリッチ社)などの市販培地は、宿主細胞の培養に適している。これらの培地または他の培地のいずれも、ホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、もしくは上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシンなど)、微量元素(通常はマイクロモル以下の範囲の最終濃度で存在する無機化合物など)、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源を、必要に応じて補充されてもよい。任意の他の必要なサプリメントも、当業者に既知であるものと思われる適切な濃度で含まれていてもよい。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された細胞と共に以前に使用されたものを含み、当業者には明らかとなろう。
【0305】
非治療用途
本明細書に記載の二重特異性結合タンパク質は、アフィニティ精製剤として有用である。このプロセスでは、二重特異性結合タンパク質は、当技術分野で周知の方法を使用して、プロテインA樹脂などの固相上に固定化される。固相化された二重特異性結合タンパク質を、精製されるCD137およびTAAタンパク質(またはその断片)を含有する試料と接触させ、次いで、固相化された二重特異性結合タンパク質に結合されたCD137およびTAAタンパク質を除いて試料中の実質的に全ての物質を除去する適切な溶媒で、支持体を洗浄した。最後に、支持体は、CD137およびTAAタンパク質を二重特異性結合タンパク質から遊離させる別の適切な溶媒で洗浄される。
【0306】
本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質はまた、例えば、特定の細胞、組織、または血清中のCD137および/またはTAAの発現を検出するなど、CD137および/またはTAAのタンパク質を検出および/または定量化するための診断アッセイにも有用である。二重特異性結合タンパク質は、例えば、臨床検査手順の一部として疾患の発生または進行をモニタリングして、例えば、所与の治療および/または予防レジメンの有効性を決定するために、診断的に使用することができる。検出は、検出可能な物質に二重特異性結合タンパク質をカップリングすることによって促進することができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材、発光材、生物発光材、放射性材、様々な陽電子放出断層撮影を使用する陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。例えば、本開示による診断として使用するために二重特異性結合タンパク質にコンジュゲートすることのできる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照されたい。
【0307】
二重特異性結合タンパク質は、CD137および/もしくはTAAに関連する障害(例えば、CD137および/もしくはTAAの異常発現を特徴とする障害)を診断する方法、または対象がCD137および/もしくはTAAに関連する障害を発症するリスクが高いかどうかを決定するための方法において使用することができる。かかる方法は、対象由来の生体試料を本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質と接触させること、ならびにCD137および/またはTAAへの分子の結合を検出することを含む。「生体試料」は、個体、細胞株、組織培養物、またはCD137および/もしくはTAAを潜在的に発現する細胞の他の供給源から得られた、任意の生体試料を意図する。哺乳動物から組織生検および体液を得る方法は、当技術分野で周知である。
【0308】
一部の実施形態では、本方法は、患者試料中のCD137および/またはTAAのレベルを対照試料(例えば、CD137および/またはTAAに関連する障害を有していない対象)と比較して、患者がCD137および/もしくはTAAに関連する障害を有するか、またはCD137および/もしくはTAAに関連する障害を発症するリスクがあるかを決定することをさらに含み得る。
【0309】
一部の実施形態では、例えば、検出可能部分により二重特異性結合タンパク質を標識することが、診断目的のために有利となる。放射性同位体、蛍光標識、酵素基質標識などを含む、多数の検出可能な標識が利用可能である。標識は、様々な公知の技術を使用して、二重特異性結合タンパク質と間接的にコンジュゲートされてもよい。例えば、二重特異性結合タンパク質は、ビオチンとコンジュゲートすることができ、上述の三つの広範なカテゴリーの標識のいずれかは、アビジンとコンジュゲートすることもまたはその逆とすることもできる。ビオチンは、アビジンに選択的に結合し、それゆえに、標識は、この間接的な様式で二重特異性結合タンパク質とコンジュゲートすることができる。あるいは、二重特異性結合タンパク質との標識の間接的なコンジュゲートを達成するために、二重特異性結合タンパク質は、小さなハプテン(ジゴキシンなど)とコンジュゲートすることができ、上述の異なるタイプの標識のうちの一つは、抗ハプテン抗体(例えば、抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートされる。したがって、標識と二重特異性結合タンパク質との間接的なコンジュゲーションを達成することができる。
【0310】
例示的な放射性同位体標識としては、35S、14C、125I、H、および131Iが挙げられる。二重特異性結合タンパク質は、例えば、Current Protocols in Immunology,Volumes 1 and 2,1991,Coligen et al.,Ed.Wiley-Interscience,New York,N.Y.,Pubs.に記載される技術を用いて、放射性同位体により標識化することができる。放射活性は、例えば、シンチレーション計数によって測定することができる。
【0311】
例示的な蛍光標識としては、希土類キレート(ユーロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン、およびTexas Redに由来する標識が挙げられ、入手可能である。蛍光標識は、既知の技術、例えば、Current Protocols in Immunologyに開示される技術などを介して、二重特異性結合タンパク質にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
【0312】
当技術分野で公知の様々なよく特徴の解明された酵素-基質標識がある(例えば、米国特許第4,275,149号を参照)。酵素は一般に、様々な技術を使用して測定することができる発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、変化は、分光光度法で測定できる基質の色変化であり得る。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変化させ得る。蛍光の変化を定量化するための技術は上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって次第に電子的に励起され、次いで、例えば化学発光計を用いて、測定可能な光を放射し得るか、または蛍光アクセプターにエネルギーを提供する。
【0313】
酵素標識の例としては、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼなどのルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソザイム、糖類オキシダーゼ(グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなど)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。酵素をタンパク質性分子にコンジュゲートするための技術は、例えば、O’Sullivan et al.,1981,Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay,in Methods in Enzym.(J.Langone & H.Van Vunakis,eds.),Academic Press,N.Y.,73:147-166に記載されている。
【0314】
酵素-基質の組合せの例としては、例えば、基質として水素ペルオキシダーゼを有し、該水素ペルオキシダーゼがオルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3,5,5-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB)などの染料前駆体を酸化する、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO);発色基質としてパラニトロフェニルホスフェートを有するアルカリホスファターゼ(AP);p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼなどの蛍光発生基質を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)または4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼなどの発色基質を有するβ-D-Galが挙げられる。
【0315】
別の実施形態では、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質は、非標識で使用され、二重特異性結合タンパク質に結合する標識化抗体により検出される。
【0316】
本明細書に記載の二重特異性結合タンパク質は、任意の公知のアッセイ方法、例えば、競合結合アッセイ、直接的および間接的なサンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイなどに用いられてもよい。例えば、Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158(CRC Press,Inc.1987)を参照されたい。
【0317】
本明細書に開示の二重特異性結合タンパク質を使用して、CD137および/またはTAAのそれぞれの受容体への結合を阻害することができる。かかる方法は、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質を細胞(例えば、哺乳類細胞)または細胞環境に投与し、それによって受容体により媒介されるシグナル伝達を阻害することを含む。これらの方法は、インビトロまたはインビボで実施することができる。「細胞環境」は、細胞を囲む組織、培地、または細胞外マトリックスが意図されている。
【0318】
治療組成物および治療方法
本開示はまた、例えば、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物を含む組成物を提供する。このような組成物は、がんなどの疾患または障害の治療、予防、または改善のための多数の治療用途を有する。
【0319】
TAA-CD137抗体によるTMEにおけるCD137の活性化は、患者におけるがん細胞への免疫応答を増強することができる。本開示の二重特異性抗体によって増殖が阻害され得るがんとしては、典型的に免疫療法に応答するがんと典型的に免疫療法に応答しないがんとが挙げられ、そのようなものとしては、免疫チェックポイント抵抗性腫瘍が挙げられる。がんは、固形腫瘍または液体腫瘍であり得る。
【0320】
治療のためのがんの非限定的な例としては、骨がん、皮膚がん、子宮がん、扁平上皮癌、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠腫、胃腸がん、腎がん、卵巣がん、肝がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸癌、頭頸部がん、生殖細胞腫瘍、黒色腫、精巣がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸管の癌、膣の癌、外陰部の癌、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、尿管のがん、腎盂の癌、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳がん、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、全てのタイプの白血病、リンパ腫、および骨髄腫、例えば、急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)など、未分化AML(MO)、骨髄芽細胞白血病(Ml)、リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞血液悪性腫瘍、例えば、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、単細胞性B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki 1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病(T-Lbly/TALL)、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、真性組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、B細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ球系統の造血腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)、骨髄腫、例えば、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無痛性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫、および多発性骨髄腫など、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞リンパ腫、ならびに上記がんの任意の組合せが挙げられる。
【0321】
本明細書に記載の抗体はまた、転移性がん、切除不能および/または不応性のがん(例えば、以前の免疫療法に不応性であるがん)、ならびに再発がんの治療に使用され得る。特定の実施形態では、TAA-CD137 Abは、以前の治療、例えば免疫腫瘍薬を用いた以前の治療などに対して不十分な応答を示したがんを有する患者、または本質的に不応性もしくは抵抗性のどちらか(例えば、PD-1経路アンタゴニストに対して不応性)の不応性もしくは抵抗性のがんを有する患者、または抵抗性もしくは不応性状態を獲得したがんを有する患者に投与される。例えば、第一の療法に応答しないかもしくは十分に応答しないか、または治療、例えば抗PD-1治療の後に疾患が進行する対象は、TAA-CD137抗体を単独で、または別の療法(例えば、抗PD-1療法)と併用して投与することによって治療されてもよい。ある特定の実施形態では、TAA-CD137抗体は、免疫腫瘍学剤、例えば、PD-1経路アンタゴニストを以前に受けていない(すなわち、それで治療された)患者に投与される。TAA-CD137抗体は、標準治療処置と併せて投与されてもよい。TAA-CD137抗体は、維持療法、例えば、腫瘍の発生または再発を予防することが意図される療法として投与されてもよい。抗GITR抗体は、別の治療、例えば、放射線、手術、または化学療法と併せて投与されてもよい。
【0322】
ヒトでは、黒色腫などの一部の腫瘍は免疫原性であることが示されている。CD137の活性化を介してT細胞の活性化の閾値を低下させることによって、宿主内の腫瘍応答を活性化することができ、非免疫原性腫瘍または免疫原性が制限された腫瘍の治療が可能になる。
【0323】
一部の実施形態では、例えば、がんを有する患者の治療のための治療薬として使用するための、CD137および腫瘍関連抗原に結合する二重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物を含む、組成物が提供される。具体的な一実施形態では、本明細書に記載の組成物は、腫瘍細胞を殺傷するためにがん患者に投与される。例えば、本明細書に記載の組成物は、腫瘍関連抗原を発現または過剰発現するがん細胞の存在を特徴とする固形腫瘍を有する患者を治療するために使用することができる。一部の態様では、開示された組成物は、乳がん、肺がん、卵巣がん、精巣がん、膵がん、胃がん、胆嚢がん、および尿路上皮がんを治療するために使用することができる。
【0324】
本開示はまた、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質を含む組成物または製剤と、任意選択的に別の免疫ベースの療法とを、それを必要とする対象に投与することを含む、がんの治療または予防のための方法を提供する。
【0325】
開示された二重特異性結合タンパク質はまた、単独で(例えば、単剤療法として)、または他の免疫療法剤および/もしくは化学療法と組み合わせて、がんの治療方法に有用である。
【0326】
二重特異性結合タンパク質は、単独で、または免疫媒介性炎症性障害もしくは自己免疫疾患の治療に有用な他の組成物と組み合せて、投与することができる。
【0327】
一部の態様では、医薬組成物、例えば、本明細書に開示される一つまたは複数の二重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1995に開示されるものなどの従来の手法に従って、医薬的に許容可能な担体または希釈剤、ならびに任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤と合わせて製剤化され得る。
【0328】
典型的には、注射による投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、医薬品はまた、注射部位の痛みを軽減するために、可溶化剤およびリグノカインなどの局所麻酔剤を含むことができる。一般的に、成分は、例えば、活性薬剤の量を標示するアンプルまたはサシェなどの密封容器中に乾燥凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、別々に、または単位剤形で一緒に混合されて供給される。薬剤が注入によって投与される場合、滅菌医薬品グレードの水または生理食塩水を含む注入ボトルで分注することができる。医薬品が注射によって投与される場合、滅菌済みの注射用水または生理食塩水のアンプルが提供され得るため、成分は投与前に混合され得る。
【0329】
本明細書で使用される際に、「医薬的に許容可能な担体」としては、生理学的に適合性のある任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などが挙げられる。好ましくは、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊椎投与、または上皮投与(例えば、注射または注入による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、二重特異性結合タンパク質は、化合物を不活化し得る酸の作用および他の自然条件から化合物を保護するために、材料でコーティングされていてもよい。
【0330】
組成物は、当技術分野で公知の様々な方法によって投与することができる。当業者によって理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて変化するものとなる。二重特異性結合タンパク質は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含めた、制御放出製剤などの急速な放出から化合物を保護する担体を用いて調製することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、概ね当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0331】
医薬組成物中の二重特異性結合タンパク質の投与量レベルは、対象に毒性となることなく特定の対象、組成物、および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な二重特異性結合タンパク質の量を得るように変えられてもよい。選択された投与量レベルは、様々な薬物動態上の要因に依存するものとなり、そのような要因としては、採用される具体的な組成物の活性、投与経路、投与時間、採用される具体的な化合物の排泄速度、治療期間、採用される具体的な組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康状態、および以前の病歴、ならびに医療分野で周知の同様の要因が挙げられる。
【0332】
本明細書に記載の医薬組成物は、有効量で投与され得る。「有効量」とは、単独で、または追加的な用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患または特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関する これは、疾患の進行を遅らせること、特に、疾患の進行を中断または逆転させることを含む。
【0333】
一部の態様では、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載されるものなど様々な障害を治療または予防するために、例えばインビボで、患者に投与される。好適な患者としては、本明細書に開示される二重特異性結合タンパク質を投与することによって矯正または寛解され得る障害を有するヒト患者が挙げられる。
【0334】
一部の態様では、従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入方法を用いて、本明細書に記載されるように、二重特異性結合タンパク質をコードする核酸を、哺乳類細胞または標的組織に導入することができる。かかる方法を用いて、二重特異性結合タンパク質をコードする核酸を細胞にインビトロで投与することができる。一部の実施形態では、二重特異性結合タンパク質をコードする核酸は、インビボまたはエクスビボの遺伝子療法の使用のために投与される。他の実施形態では、遺伝子送達技術を用いて、細胞ベースまたは動物モデルにおける二重特異性結合タンパク質の活性を研究する。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームなどの送達ビヒクルと複合体化された核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、DNAウイルスおよびRNAウイルスが挙げられ、これらは細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する。このような方法は当技術分野で周知である。
【0335】
二重特異性結合タンパク質をコードする核酸の非ウイルス送達方法としては、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、およびDNAの薬剤強化性取込みが挙げられる。リポフェクション方法およびリポフェクション試薬は、当技術分野で周知である(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質としては、Felgner、WO91/17424、WO91/16024の脂質が挙げられる。送達は、細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)に対するものとすることができる。免疫脂質複合体などの標的リポソームを含めた脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である。
【0336】
本明細書に記載の二重特異性結合タンパク質をコードする核酸の送達のためのRNAウイルスベースまたはDNAウイルスベースのシステムの使用は、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化してウイルスペイロードを核に輸送するための、高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接的に投与することもできるし(インビボ)、細胞をインビトロで処理するために使用することもでき、改変された細胞は患者に投与される(エクスビボ)。本開示の二重特異性結合タンパク質の送達のための従来のウイルスベースの系としては、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターを挙げることができる。ウイルスベクターは、現在、標的の細胞および組織における遺伝子導入の最も効率的かつ多用途の方法である。宿主ゲノム内への組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスの遺伝子導入方法により可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、多くの異なる細胞型および標的組織において高い形質導入効率が観察されている。
【0337】
治療方法の一つでは、CD137および腫瘍関連抗原に結合する二重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物は、CD137および腫瘍関連抗原に結合する二重特異性結合タンパク質にコンジュゲートされているかまたはコンジュゲートされていない、治療剤または毒性剤をさらに含み得る。具体的な一実施形態では、CD137および腫瘍関連抗原に結合する二重特異性結合タンパク質を用いて、腫瘍関連抗原を発現および/または過剰発現する腫瘍に対し、細胞傷害性ペイロードを有するADCを標的化する。
【0338】
本開示の広範な範囲は、本開示を特定の実施形態に限定することを意図されていない以下の実施例を参照して、最もよく理解される。本明細書に記載される特定の実施形態は、例示として提供されているに過ぎず、本開示は、添付の特許請求の範囲の文言によって、ならびにかかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲によって、限定されるものとなる。
【実施例
【0339】
一般的な方法
免疫沈降、クロマトグラフィー、および電気泳動を含むタンパク質精製の方法は記載されている。例えば、Coligan et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New Yorkを参照されたい。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生産、およびタンパク質のグリコシル化は記載されている。例えば、Coligan et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubel et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,N.Y.,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,Mo.;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照されたい。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生産、精製、および断片化は記載されている。Coligan et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;前掲のHarlow and Lane。
【0340】
本明細書に開示される抗体タンパク質を含有するハイブリドーマまたは細胞の培養上清を、製造業者の手順に従ってHiTrapプロテインGカラム(GE社、カタログ番号17040401)を介して精製した。簡潔に述べると、上清をDPBS(ギブコ、カタログ番号14190-136)で5CVにわたり平衡化し、周囲温度および3分の滞留時間でシリンジ/注入ポンプ(Legato 200、KDサイエンティフィック社)を介してロードした。カラムを5CVのDPBSで洗浄し、溶出を4CVのpH2.8溶出緩衝液(フィッシャーサイエンティフィック社、カタログ番号PI21004)で行った。溶出物を分画し、画分を1M Tris-HCL、pH8.5(フィッシャーサイエンティフィック社、カタログ番号50-843-270)で中和し、A280(Dropsensiti96、トリニアン(Trinean)社)によりアッセイした。ピーク画分をプールし、緩衝液をDPBSに交換した。遠心分離フィルター(EMDミリポア社、カタログ番号UFC803024)を、DPBS中、4,000×gで2分間平衡化した。精製した試料をロードし、DPBSを添加し、総DPBS体積が6DV以上に達するまで、試料を4,000×gで5~10分間スピンした。最終プールをA280により分析した。
【0341】
分子生物学における標準的な方法は記載されている。例えば、Maniatis et al.(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,Calif.を参照されたい。標準的な方法は、Ausbel et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,N.Y.にも掲載されており、この文献には、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、糖コンジュゲートおよびタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)が記載されている。
【0342】
エレクトロポレーションベースのトランスフェクションを用いて、本明細書に開示されるTSA/TAAタンパク質を発現するpcDNA3.1ベースのプラスミドを、選択された宿主細胞(すなわち、CHO-K1、HEK293T)にトランスフェクトすることによって、本明細書に開示される標的TSA/TAAを発現する安定細胞株を生成した。ジェネティシンを使用して、組込み細胞を選抜した。7~10日間のジェネティシン選抜後、安定クローンをFACSにより単離した。拡大増殖後、安定クローンを、TSA/TAA標的の発現についてフローサイトメトリーによりさらに確認した。
【0343】
本明細書で「ウレルマブ-NR」と称される抗CD137抗体(ウレルマブ)に基づく内部対照の抗CD137抗体を、米国特許第7,288,638号(該特許中の配列番号3のVHおよび配列番号6のVL)に公開されている公的に入手可能な情報に基づいて調製した。
【0344】
ハイブリドーマクローンの重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列を、以下に記載されるように決定した。キアゲン社(米国メリーランド州ジャーマンタウン)のRNeasy Plus Mini Kitを使用して、1~2×10個のハイブリドーマ細胞から総RNAを抽出した。タカラバイオ社(米国カリフォルニア州マウンテンビュー)のSMARTer RACE 5’/3’Kitを使用して5’RACE反応を実施することによって、cDNAを生成した。NEBラボラトリーズ社(米国マサチューセッツ州イプスウィッチ)のQ5高忠実度DNAポリメラーゼを使用してPCRを実施し、Takara Universal Primer Mixを適切な免疫グロブリンの3’マウス定常領域の遺伝子特異的プライマーと組み合わせて用いて重鎖および軽鎖由来の可変領域を増幅した。重鎖および軽鎖の増幅された可変領域を、2%アガロースゲル上で泳動させ、適切なバンドを切り出し、次いでキアゲン社のMini Elute Gel Extraction Kitを用いてゲル精製した。精製したPCR産物を、インビトロジェン(米国カリフォルニア州カールスバッド)のZero Blunt PCR Cloning Kitを用いてクローニングし、タカラバイオ社のStellar Competent E.Coli Cellsに形質転換し、LB 寒天+50ug/mlカナマイシンプレート上に播種した。ダイレクトコロニーサンガーシーケンシングは、ジーンウィズ社(米国ニュージャージー州サウスプレーンフィールド)により行われた。結果として得られたヌクレオチド配列を、IMGT V-QUESTを使用して分析して、生産性のある再構成体を特定し、翻訳されたタンパク質配列を分析した。CDRの決定は、Kabatナンバリングに基づくものとした。
【0345】
組換えのモノクローナルまたは二重特異性の結合タンパク質を以下のように発現し精製した:それぞれの重鎖または軽鎖をPCR増幅または合成し、pcDNA3.4ベースの発現ベクターにクローニングした。この発現ベクターは、ヒトIgG1(Uniprot P01857)またはヒトカッパ軽鎖(UniProt P01834)またはヒトラムダ軽鎖(UniProt P0DOY2)に由来する定常領域を保有する。Expi293細胞(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)に対し、重鎖発現プラスミドおよび軽鎖発現プラスミドの対を、供給業者のExpi293発現システムのプロトコールに従ってトランスフェクトした。トランスフェクションの五日後、培養上清を遠心分離により採集した。プロテインAカラムおよび緩衝液を用いた1ステップのアフィニティ精製によって、抗体を精製し、20mMの酢酸ナトリウムpH5.0、またはPBS pH7.2に交換した。
【0346】
蛍光活性化細胞ソーティング検出システム(FACS(登録商標))を含めた、フローサイトメトリーについての方法が入手可能である。例えば、Owens et al.(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,N.J.;Givan(2001)Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley-Liss,Hoboken,N.J.;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,N.J.を参照されたい。例えば診断試薬として使用するための、核酸のプライマーおよびプローブを含めた核酸、ポリペプチド、ならびに抗体を改変するのに適した蛍光試薬が入手可能である。Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oreg.;Sigma-Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,Mo.
【0347】
リガンド/受容体相互作用の特徴を解析するための標準的な技術が利用可能である。例えば、Coligan et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照されたい。特定の作用機序を有する抗体の特性解析に適した抗体機能の特性解析の標準的な方法も、当業者に周知である。
【0348】
例えば、抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能ドメイン、CDRアノテーション、グリコシル化部位、および配列アライメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である。
【0349】
本明細書で利用される参照配列を表9に示す。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【0350】
実施例1:CD137およびClaudin6、Claudin18.2、またはNectin-4に結合する結合タンパク質の生成
ヒト抗体のVH遺伝子およびVL遺伝子を発現するヒトIgトランスジェニックマウスであるTrianniマウス(例えば、WO2013/063391、TRIANNI(登録商標)マウスを参照)を免疫することによって、完全ヒト型の抗ヒトCD137抗体、抗ヒトClaudin6抗体、および抗ヒトClaudin18.2抗体を生成した。
【0351】
上述の免疫用TRIANNIマウスを、腹腔内(IP)、皮下(SC)、尾基部、または足蹠への注射を介して組換えヒトタンパク質、標的タンパク質を発現する安定細胞株、またはDNAのいずれかを注射することによって免疫した。
【0352】
マウス抗Nectin-4抗体は、Balb/cマウスを腹腔内(IP)、皮下(SC)、または尾基部、もしくは足蹠のいずれかへの注射により、組換えヒトNectin-4タンパク質で免疫することによって作製した。
【0353】
免疫応答を後眼窩採血によりモニタリングした。血漿を、(以下に記載されるように)ELISA、フローサイトメトリー(FACS)、またはイメージングによってスクリーニングした。十分な抗CD137、抗Claudin6、抗Claudin18.2、または抗Nectin-4の力価を有するマウスを融合に使用した。マウスを免疫原により腹腔内、尾基部、足蹠、または静脈内でブーストした後に屠殺し、脾臓およびリンパ節を摘出した。
【0354】
CD137、Claudin6、Claudin18.2、またはNectin-4に結合する抗体を産生するマウスを選択するために、免疫マウスから得た血清を、それぞれヒトCD137、Claudin6、Claudin18.2、またはNectin-4タンパク質への結合について、ELISA、FACS、またはイメージングによってスクリーニングした。
【0355】
ELISAについては、簡潔に述べると、組換えヒトCD137またはNectin-4でコーティングしたELISAプレートを、免疫マウス由来の血清の希釈物と共に室温で一時間インキュベートし、アッセイプレートを洗浄した。特異的な抗体結合は、HRP標識抗マウスIgG抗体(ジャクソンイムノリサーチ社、カタログ番号:115-036-071)と共に室温で一時間保ち、洗浄し、次いでABTS基質(Moss社、カタログ番号:ABTS-1000)により室温で30分間インキュベートすることにより検出した。ELISAプレートリーダー(バイオテック)を使用してプレートを読み取った。
【0356】
FACSについては、簡潔に述べると、CD137、Claudin6、Claudin18.2、またはNectin-4を発現するHEK293T細胞もしくはCHO-K1細胞、または親のHEK293T細胞もしくはCHO-K1細胞を、免疫マウス由来の血清の希釈物と共に4℃で2時間インキュベートした。細胞を、2%PFA(アルファエイサー(Alfa Aesar)、カタログ番号:J61899)により4℃で15分間固定し、次いで洗浄した。4℃で一時間インキュベートした後、特異的抗体結合をAlexa 647標識ヤギ抗マウスIgG抗体(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、カタログ番号:A21235)により検出した。フローサイトメトリー分析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte IQue plus、ザルトリウス社)上で行った。
【0357】
さらに、マウス血清をイメージングによって試験した。簡潔に述べると、CD137、Claudin6、Claudin18.2、またはNectin-4を発現するHEK293T細胞もしくはCHO-K1細胞を、免疫マウス由来の血清の希釈物とインキュベートした。細胞を洗浄し、パラホルムアルデヒドにより固定し、洗浄し、特異的抗体結合を二次Alexa488ヤギ抗マウス抗体およびHoechst(インビトロジェン)により検出した。プレートをスキャンし、イメージング装置(Cytation 5、バイオテック)上で分析した。
【0358】
CD137、Claudin6、Claudin18.2、またはNectin-4に対するヒト抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、脾細胞およびリンパ節細胞を免疫マウスから単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適切な不死化細胞株に融合した。結果として得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。例えば、免疫マウス由来の脾細胞、リンパ節細胞の単一細胞懸濁液を、同数のマウスIgG非分泌性骨髄腫細胞Sp2/0(ATCC、CRL 1581)に電気融合により融合した。細胞を平底96ウェル組織培養プレートに播種した後、選択培地(HAT培地)中で約一週間のインキュベーションを行い、次いで、ハイブリドーマ培養培地に置換した。細胞播種のおよそ10~14日後、個々のウェルから得た上清を、上述のようにELISA、イメージング、またはFACSによってスクリーニングした。抗体分泌ハイブリドーマを24ウェルプレートに移し、再びスクリーニングして、抗CD137、抗Claudin6、抗Claudin18.2、または抗Nectin-4が依然として陽性であった場合に、陽性ハイブリドーマを、単一細胞ソーターを用いたソーティングによってサブクローニングした。サブクローンを、上述のようにELISA、イメージング、またはFACSにより再度スクリーニングした。次いで、安定なサブクローンをインビトロで培養して、精製および特性解析のために少量の抗体を生成した。
【0359】
マウス抗Nectin-4抗体を、CDR移植によってヒト化した。簡潔に述べると、1925Ab4のVHおよびVLをそれぞれクエリーとして使用して、最も類似したヒトフレームワーク領域についてヒト抗体生殖系列配列を検索した。マウスCDR(Kabatナンバリングに基づく)を、特定したヒト抗体フレームワークに移植した。複数の対のヒト化VHおよびVLのバリアントを発現および精製し、ヒトNectin-4に対し最も高い結合親和性を有する1対(1925Ab4 VH(Hz)および1925Ab4 VL(Hz))を使用して、二重特異性抗体を構築した。
【0360】
実施例2:TAA/CD137二重特異性体(BsAb_A)の分子設計および生産
TAAに結合する結合タンパク質の代表的な例として、図3および図4に要約されるサブユニット/構成成分を含む、図2に示される分子フォーマットによって特徴付けられる相称的な二重特異性体(Claudin 6×CD137)BsAb_Aを調製した。
1912Ab3
1.重鎖:抗Claudin6抗体の重鎖、リンカー、および抗CD137 scFv(CCを有するVH-VL)(N→C)という構成成分を含む配列番号12、ならびに
2.軽鎖:抗Claudin6抗体軽鎖を含む配列番号9
【0361】
1912Ab3の重鎖構成成分をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号12)を有するDNAセグメント1を発現ベクターに挿入し、1912Ab3の軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号9)を有するDNAセグメント2を上記発現ベクターに挿入した。
1912Ab5
1.重鎖:抗Claudin6抗体の重鎖、リンカー、および抗CD137 scFv(CCを有するVH-VL)(N→C)という構成成分を含む配列番号72、ならびに
2.軽鎖:抗Claudin6抗体軽鎖を含む配列番号9。
【0362】
代替的な一例では、1912Ab5の重鎖構成成分をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号72)を有するDNAセグメント1を発現ベクターに挿入し、1912Ab5の軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号9)を有するDNAセグメント2を上記発現ベクターに挿入した。
【0363】
構築された発現ベクターをExpi293細胞(サイエンティフィック社)中で一過性に発現させ、CO2インキュベーターにて37℃の条件下で5日間、Expi293発現培地中で培養した。二重特異性抗体を、組換えプロテインAアフィニティクロマトグラフィー(Hitrap Mabselect SuRe、GEヘルスケア社)によって、また必要に応じてイオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィーによる第二の工程の精製によって、細胞培養上清から精製した。SDS-PAGE(バイラッド(BiRad)社)、SE-HPLCカラム(東ソー社、G3000SWXL)を用いたサイズ排除HPLC(アジレントテクノロジー社、1100シリーズ)分析、およびCE-SDS(サイエックス(SCIEX)社、PA800 Plus)を実施して、二重特異性抗体のサイズおよび純度を検出および確認した。精製したタンパク質を所望の緩衝液に緩衝液交換し、Amicon Ultra 15 30K装置を使用した限外濾過により濃縮し、ドロップセンス(アンチェインドラブス(Unchained Lab)社)を用いてタンパク質濃度を推定した。一過性トランスフェクションは、2ベクター系において、または一つの単一ベクター中に重鎖成分と軽鎖成分との両方を含有する1ベクター系を用いて、使用可能であった。あるいは、二重特異性抗体は、CHO安定発現細胞株の上清から精製することができた。
【0364】
実施例3:TAA/CD137二重特異性体(BsAb_B)の分子設計および生産
TAAに結合する結合タンパク質の代表的な例として、図3および図4に要約されるサブユニット/成分を含む、図2に示される分子フォーマットによって特徴付けられる相称的な二重特異性体(Claudin 18.2×CD137)BsAb_Bを調製した。
1901Ab3
1.重鎖:抗Claudin18.2抗体の重鎖という構成成分を含む配列番号4、および
2.軽鎖:抗Claudin 18.2抗体の軽鎖、リンカー、および抗CD137 scFv(CCを有するVH-VL)(N→C)を含む配列番号5
【0365】
1901Ab3の重鎖構成成分をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号4)を有するDNAセグメント1を発現ベクターに挿入し、1901Ab3の軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号5)を有するDNAセグメント2を上記発現ベクターに挿入した。
【0366】
構築された発現ベクターをExpi293細胞(サイエンティフィック社)中で一過性に発現させ、CO2インキュベーターにて37℃の条件下で5日間、Expi293発現培地中で培養した。二重特異性抗体を、組換えプロテインAアフィニティクロマトグラフィー(Hitrap Mabselect SuRe、GEヘルスケア社)によって、また必要に応じてイオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィーによる第二の工程の精製によって、細胞培養上清から精製した。SDS-PAGE(バイラッド(BiRad)社)、SE-HPLCカラム(東ソー社、G3000SWXL)を用いたサイズ排除HPLC(アジレントテクノロジー社、1100シリーズ)分析、およびCE-SDS(サイエックス(SCIEX)社、PA800 Plus)を実施して、二重特異性抗体のサイズおよび純度を検出および確認した。精製したタンパク質を所望の緩衝液に緩衝液交換し、Amicon Ultra 15 30K装置を使用した限外濾過により濃縮し、ドロップセンス(アンチェインドラブス(Unchained Lab)社)を用いてタンパク質濃度を推定した。一過性トランスフェクションは、2ベクター系において、または一つの単一ベクター中に重鎖成分と軽鎖成分との両方を含有する1ベクター系を用いて、使用可能であった。あるいは、二重特異性抗体は、CHO安定発現細胞株の上清から精製することができた。
【0367】
実施例4:TAA/CD137二重特異性体(BsAb_C)の分子設計および生産
TAAに結合する結合タンパク質の代表的な例として、図3および図4に要約されるサブユニット/成分を含む、図2に示される分子フォーマットによって特徴付けられる相称的な二重特異性体(Nectin-4×CD137)BsAb_Cを調製した。
1925Ab3
1.重鎖:抗CD137 scFv(CCを有するVH-VL)(N→C)、リンカー、およびヒト化抗Nectin-4抗体の重鎖という構成成分を含む配列番号18、ならびに
2.軽鎖:ヒト化Nectin-4抗体軽鎖を含む配列番号15
【0368】
1925Ab3の重鎖構成成分をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号18)を有するDNAセグメント1を発現ベクターに挿入し、1925Ab3の軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号15)を有するDNAセグメント2を上記発現ベクターに挿入した。
【0369】
構築された発現ベクターをExpi293細胞(サイエンティフィック社)中で一過性に発現させ、CO2インキュベーターにて37℃の条件下で5日間、Expi293発現培地中で培養した。二重特異性抗体を、組換えプロテインAアフィニティクロマトグラフィー(Hitrap Mabselect SuRe、GEヘルスケア社)によって、また必要に応じてイオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィーによる第二の工程の精製によって、細胞培養上清から精製した。SDS-PAGE(バイラッド(BiRad)社)、SE-HPLCカラム(東ソー社、G3000SWXL)を用いたサイズ排除HPLC(アジレントテクノロジー社、1100シリーズ)分析、およびCE-SDS(サイエックス(SCIEX)社、PA800 Plus)を実施して、二重特異性抗体のサイズおよび純度を検出および確認した。精製したタンパク質を所望の緩衝液に緩衝液交換し、Amicon Ultra 15 30K装置を使用した限外濾過により濃縮し、ドロップセンス(アンチェインドラブス(Unchained Lab)社)を用いてタンパク質濃度を推定した。一過性トランスフェクションは、2ベクター系において、または一つの単一ベクター中に重鎖成分と軽鎖成分との両方を含有する1ベクター系を用いて、使用可能であった。あるいは、二重特異性抗体は、CHO安定発現細胞株の上清から精製することができた。
【0370】
実施例5:細胞表面のClaudin6へのCLDN6/CD137 BsAbの結合
二重特異性CLDN6/CD137結合タンパク質を、実施例4に記載されるように生成し、生産し、精製した。BsAb 1912Ab3および1912Ab4のClaudin6への結合活性を調べるために、細胞表面に内因性ヒトClaudin6を発現するNEC8 WT細胞またはClaudin6 KO NEC8細胞を使用して、免疫蛍光結合アッセイを行った。Claudin6 KO NEC8細胞を、CRISPR遺伝子編集技術によって生成した。これらの細胞を、10%FBSを含むRPMI中で培養した。実験日に、細胞を採集し、洗浄し、BsAb 1912Ab3および1912Ab4、ならびにmAb 1912Ab1および1912Ab2を用いて4℃で2時間染色した後、室温で15分間細胞を固定した。固定細胞をPBSで三回洗浄した後、検出のためにAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG抗体(インビトロジェン、カタログ番号A-11013)を用いて室温で1時間染色した。結合シグナルを、iQue Screener PLUS(ザルトリウス社、ミシガン州)を使用して蛍光強度を定量化することにより評価した。
【0371】
図6Aに示されるように、10μg/mlの濃度で、1912Ab3および1912Ab4を含む開示された二重特異性結合タンパク質は、単一特異性対照抗体1912Ab1および1912Ab2と比較して、NEC8細胞の細胞表面のヒトClaudin6に同様に結合した。Claudin 6遺伝子がCRISPR遺伝子編集技術によって欠失された場合、結合は検出されなかった。この結果では、NEC8 WT細胞上の二重特異性結合タンパク質の結合が、NEC8細胞の細胞表面に発現するClaudin6を通して特異的であることが確認された。Claudin6に対する1912Ab5の濃度依存性結合曲線を、図6Bに示す。1912Ab5は、1.5nMの結合EC50値でNEC8細胞に結合する。
【0372】
Claudin6とClaudin9との間には高い相同性があること、およびClaudin9が正常細胞に発現するというプロファイルを示すことから、がんを治療し安全性の問題を最小にするためには、高度に選択的なClaudin6抗体が望ましい。Claudin6の結合選択性がClaudin9を上回ることを評価するために、Claudin6またはClaudin9のいずれかを過剰発現する二つのCHO細胞株を、画像ベースの細胞結合アッセイに使用した。図6Cに示されるように、1912Ab5は、CHO-Claudin9細胞に結合せず、CHO-Claudin6細胞に結合する。
【0373】
実施例6:CLDN6/CD137 BsAbのCD137への結合
Claudin6-CD137 BsAbのCD137との結合を、SPRアッセイおよび免疫蛍光イメージングアッセイによって測定した。図7Aに示されるように、1912Ab5は、ヒトCD137に結合する際に、所望の高速オンと高速オフのカイネティクスを有する。三つの実験から、1912Ab5は、1.33E+06(1/Ms)の平均ka値、および4.62E-02(1/s)の平均kd値を有した。平均KDは3.46E+08Mであった。断続的な結合は、T細胞を過剰に刺激しT細胞の消耗を引き起こすリスクを低下させる可能性がある。
【0374】
ヒトCD137発現構築物により安定的にトランスフェクトされたHEK293T細胞を、細胞ベースの結合アッセイに使用して、CD137結合親和性を評価した。細胞を、10%FBSを含むDMEMを含む完全培地に播種し、次いで37℃で一晩インキュベートした。試験抗体を用いて細胞を4℃で2時間染色した後、細胞を室温で15分間固定した。固定細胞をPBSで三回洗浄した後、検出のためにAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(インビトロジェン、カタログ番号A-11013)を用いて室温で1時間染色した。細胞をイメージングし、Cytation Imager(バイオテック、バーモント州)を使用して蛍光強度を定量化することによって、結合シグナルを評価した。
【0375】
図7Bに示される結果では、二重特異性抗体1912Ab3および1912Ab4、ならびに単一特異性対照抗体1923Ab4が、10μg/mlの濃度で、同様のレベルでヒトCD137に結合したことが示された。1912Ab5の濃度依存性結合曲線を、図7Cに示す。1912Ab5は、0.28nMの結合EC50値でHEK293-Claudin6細胞に結合し、ベンチマーク対照のウレルマブ-NRの結合EC50は0.22nMであった。
【0376】
実施例7:CD137シグナル伝達のClaudin6依存的な活性化
Claudin6依存的なCD137アゴニズムを誘導する能力について、CLDN6/CD137 BsAbを評価した。簡潔に述べると、CD137を安定的に発現しNFkB-Lucレポーターを含有するJurkat Tレポーター細胞株を、CD137シグナル伝達を定量化するために使用し、また、細胞表面に内因性Claudin6を発現させたNEC8 WT細胞を、Claudin6を提供する標的細胞として使用した。Claudin6 KO NEC8細胞を陰性対照として使用して、Claudin6依存性を示した。開示された抗体1912Ab3および1912Ab4は、Claudin6およびCD137の両方に結合する二重特異性抗体である。単一特異性抗体のウレルマブ-NRは、CD137にのみ結合し、対照抗体として使用される。Jurkat Tレポーター細胞を、NEC8 WT細胞またはClaudin6 KO細胞のいずれかと共培養し、開示された結合タンパク質により37℃、5%COで16時間刺激した。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(プロメガ社、カタログ番号E6130)を添加し、プレートを室温で10分間インキュベートした。発光シグナルを、Synergy Neo2プレートリーダー(バイオテック)によって測定し、データをGraphPad Prismによって分析した。図8Aは、ウレルマブ-NRのみが、NEC8 WTおよびClaudin6 KO標的細胞の両方においてCD137シグナル伝達を活性化したことを示す。1912Ab3および1912Ab4は、NEC8 WT細胞の存在下で、ウレルマブ-NRよりも強いCD137シグナル伝達を誘導した。Claudin6ノックアウトNEC8細胞では、バックグラウンド活性のみが検出された。
【0377】
NEC8 WT細胞の存在下でCD137シグナル伝達を誘導する1912Ab3、1912Ab4、およびウレルマブ-NRの用量応答曲線を、図8Bに示した。1912Ab3、1912Ab4、およびウレルマブ-NRのEC50値(効力)は、それぞれ0.20nM、0.18nM、および0.31nMであった。1912Ab3および1912Ab4の両方が、ウレルマブ-NRよりも良好な有効性(より高いEmax)を示した。
【0378】
同様に、1912Ab5およびウレルマブ-NRを、NEC8細胞(図8C)またはOV90細胞(図8D)のいずれかを用いたCD137シグナル伝達アッセイで評価した。図に示されるように、1912Ab5は、それぞれ0.066nMおよび0.064nMのEC50値(効力)で用量依存的なCD137シグナル伝達を誘導した。対照抗体のウレルマブ-NRは、それぞれ0.28nMおよび0.62nMのEC50値を示した。1912Ab5は、ウレルマブ-NRよりもT細胞のCD137シグナル伝達において強いアゴニズムを示した。
【0379】
実施例8:CD8 T細胞のClaudin6依存的な活性化
共培養実験を用いて、Claudin6-CD137 BsAbによるT細胞の活性化を測定した。健康なドナー由来CD8 T細胞およびNEC8細胞を、それぞれエフェクター細胞および標的細胞として使用した。これらの二つの細胞を、10%FBSおよび0.5ug/mlのマウス抗hCD3クローンOKT3(バイオレジェンド社、カタログ番号317325)を補充したRPMI1640培地中で共培養した。開示された結合タンパク質を添加して、T細胞を刺激した。開示された抗体1912Ab3および1912Ab4は、Claudin6およびCD137の両方に結合する二重特異性抗体である。単一特異性抗体のウレルマブ-NRは、CD137にのみ結合し、対照抗体として使用される。5%CO共存下37°Cで3日間、プレートをインキュベートした。72時間のインキュベーション後、上清を採集し使用して、製造業者の指示によるプロトコールを用いてAlphaLISA(PerkinElmer社、カタログ番号AL217C/F)により、分泌されたIFNγを測定した。IFNγの量は、T細胞の活性化を表す。
【0380】
図9Aは、ウレルマブ-NRが、Claudin6発現とは独立してT細胞の活性化を刺激することを示す。CD8 T細胞をNEC8 WT細胞またはClaudin6 KO NEC8細胞と共培養したときに、同様のレベルのIFNγが検出された。しかし、1912Ab3および1912Ab4は、CD8 T細胞の活性化をNEC8 WT細胞の存在下でのみ刺激するが、Claudin6 KO NEC8細胞の存在下では刺激しない。この結果は、開示された二重特異性結合タンパク質のClaudin6依存的なT細胞活性化活性を確定するものである。
【0381】
NEC8 WT細胞の存在下でCD8 T細胞の活性化を誘導するための1912Ab3、1912Ab4、およびウレルマブ-NRの用量応答曲線を図9Bに示す。1912Ab3、1912Ab4、およびウレルマブ-NRのEC50値(効力)は、それぞれ0.042nM、0.15nM、および0.9nMであった。1912Ab3および1912Ab4の両方が、ウレルマブ-NRよりも、T細胞活性化の顕著な特徴であるIFNγ産生を誘導するための効力および有効性(より高いEmax)を高く示した。
【0382】
同様に、1912Ab5およびウレルマブ-NRを、NEC8細胞(図9C)またはClaudin6 KO NEC8細胞(図9D)のいずれかを使用して、T細胞活性化アッセイで評価した。図に示されるように、1912Ab5は、NEC8野生型細胞の存在下でのみ、0.17nMのEC50値(効力)で用量依存的なCD137シグナル伝達を誘導した。対照的に、対照抗体のウレルマブ-NRは、NEC8野生型の試験およびClaudin6 KO NEC8細胞の試験の両方で活性を示し、EC50値はそれぞれ0.82nMおよび0.99nMであったが、このことは、その活性がClaudin6の発現とは独立していることを示している。1912Ab5は、T細胞活性化試験において、標的腫瘍抗原が利用可能である場合にのみ、ウレルマブ-NRよりも高いアゴニズムレベルを示した。
【0383】
実施例9:BsAb CLDN6/CD137によって誘導されるCD8 T細胞の腫瘍殺傷活性
共培養実験を実施して、BsAb 1912Ab3および1912Ab4によって媒介されるT細胞由来腫瘍殺傷活性(TDCC)を評価した。簡潔に述べると、健康なドナー由来のCD8 T細胞を、ImmunoCult(商標)ヒトCD3/CD28 T細胞活性化剤(ステムセル社、カタログ番号10971)で2日間、予め活性化した。活性化細胞を洗浄して、CD3/CD28活性化剤を除去した。次いで、活性化CD8 T細胞を、GFP発現構築物で安定的にトランスフェクトされたNEC8腫瘍細胞と共培養し、開示された二重特異性結合タンパク質で108時間処理した。開示された抗体1912Ab3および1912Ab4は、Claudin6およびCD137の両方に結合する二重特異性抗体である。Cytation(バイオテック、バーモント州)を使用して測定した緑色蛍光細胞の面積により、細胞数を測定した。殺傷の割合を、以下の式によって計算した。
殺傷の%=(結合タンパク質処理のないウェル由来のGFP細胞の面積-結合タンパク質で処理されたウェル由来のGFP細胞の面積)/結合タンパク質処理のないウェル由来のGFP細胞の面積*100%
【0384】
図10Aは、1912Ab3および1912Ab4が強力なT細胞媒介性細胞傷害性を誘導したことを示す。腫瘍細胞の約80%が、BsAbを用いた108時間の処理時にCD8 T細胞によって殺傷された。1912Ab3および1912Ab4のEC50値は、それぞれ0.11nMおよび0.16nMであった。
【0385】
BsAb 1912Ab5のTDCC効果を評価するために、類似の共培養実験を実施した。簡潔に述べると、健康なドナー由来のCD8 T細胞を、マウス抗hCD3クローンOKT3(バイオレジェンド社、カタログ番号317325)の存在下でGFPを安定的にトランスフェクトされた卵巣がん細胞株OV90細胞と共培養した。共培養細胞を、BsAb 1912Ab5または対照で144時間処理した。開示された抗体1912Ab5は、Claudin6およびCD137の両方に結合する二重特異性抗体である。Cytation(バイオテック、バーモント州)を使用して、生細胞数を測定した。殺傷の割合を、以下の式によって計算した:
殺傷の%=(結合タンパク質処理のないウェル由来のGFP細胞の面積-結合タンパク質で処理されたウェル由来のGFP細胞の面積)/結合タンパク質処理のないウェル由来のGFP細胞の面積*100%
【0386】
図10Bは、1912Ab5が強力なT細胞媒介性細胞傷害性を誘導したことを示す。腫瘍細胞の約70%が、BsAbを用いた144時間の処理時にCD8 T細胞によって殺傷された。1912Ab5のEC50値は0.036nMであった。
【0387】
実施例10:ヒト化B-h4-1BBマウスの皮下同系MC38-hClaudin 6マウス腫瘍モデルにおける腫瘍増殖に対するCLDN6/CD137 BsAbの効果
16~20gの体重の6~8週齢のメスB-h4-1BBマウス(バイオサイトジェン社)を、試験登録前に7日間順応させた。MC38マウス結腸がん細胞株を遺伝子改変して、ヒトClaudin6を過剰発現させた。細胞を、5%雰囲気下、37℃で、10%熱不活化FBSを補充したDMEM中の単層培養としてインビトロで維持した。細胞を採取し、100μlのPBS中の5×10個の細胞を、腫瘍発生のために右前脇腹に皮下移植した。7日目に、腫瘍担持マウスを、およそ100~150mmの平均腫瘍サイズを有する3つの試験群に無作為に登録した。各群は6頭のマウスから構成された。腫瘍サイズはキャリパーを用いて二次元で週二回測定し、体積は以下の式を使用してmmで表した。V=0.5a×bであって、式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長寸法および短寸法である。7日目、11日目、14日目、および18日目に、マウスを、5mg/kgの1912Ab3、1912Ab4、または陰性対照としてPBSの腹腔内注射により処置した。試験は28日目に終了した。
【0388】
図11Aは、三つの治療群についての腫瘍増殖曲線を示す。1912Ab3および1912Ab4の両方が、ビヒクル対照と比較して腫瘍増殖を有意に阻害した。1912Ab3を注射した全てのマウス、および1912Ab4を注射した6頭中5頭のマウスは、28日目に完全な腫瘍寛解を示した。
【0389】
肝毒性は、21日目の血清試料由来のマウス血清中のALTおよびASTの活性を測定することによってモニタリングされている。図11Bに示されるように、ALTレベルは、処置群と対照群とを比較して有意な増加がない。同様に、図11Cに示されるように、ASTレベルは、処置群からは有意な増加がなく、このことは抗体由来肝毒性のリスクが低いことを示している。
【0390】
完全な腫瘍寛解を有するマウスにおいて、bsAb Claudin6/CD137が腫瘍免疫を誘導できるか否かを評価するため。四頭のマウスを予め1912Ab3により処置し、1912Abにより処置した四頭のマウスを、事前処置の最後の投与の45日後、MC38-Claudin6腫瘍に再曝露した。本試験では、四頭のナイーブマウスを対照群として使用した。図11Dに示されるように、全てのナイーブマウスが腫瘍を発症したが、完全な腫瘍寛解を有する事前処置されたマウスはいずれも、再曝露後に腫瘍を発症しなかった。
【0391】
抗体1912Ab5の有効用量を探索するために、用量滴定試験を実施した。バイオサイトジェン社(マサチューセッツ州ボストン)のメスB-h4-1BBマウスに、5×10個の生細胞のMC38細胞を皮下接種した。腫瘍サイズがおよそ100mmに達したとき、マウスを3つの群に無作為化し、腹腔内注射による処置を開始した。第1群はビヒクル対照を受け、第2群は0.3mpkの1912Ab5抗体を受け、第3群は1mpkの1912Ab5抗体を受け、第4群は3mpkの1912Ab5抗体を受けた。処置を2週間にわたって週二回投与した。
【0392】
図12に示されるように、単剤の1912Ab5は強力な有効性を示した。0.3mpkの用量では、腫瘍接種後32日目に97.7%の腫瘍増殖阻害(TGI)を呈し、1mpkでの1912Ab5は、腫瘍接種後32日目に106.2%の腫瘍増殖阻害(TGI)を呈し、3mpkでの1912Ab5は、腫瘍接種後32日目に106.4%の腫瘍増殖阻害(TGI)を呈した。
【0393】
Ab 1912Ab5の効力を、ベンチマークのCD137 Abであるウレルマブ-NRと比較するために、追跡試験を実施した。バイオサイトジェン社(マサチューセッツ州ボストン)のメスB-h4-1BBマウスに、5×10個の生細胞のMC38細胞を皮下接種した。腫瘍サイズがおよそ100mmに達したとき、マウスを3つの群に無作為化し、腹腔内注射による処置を開始した。第1群はビヒクル対照を受け、第2群は0.1mpkの1912Ab5抗体を受け、第3群は0.1mpkのウレルマブ-NRを受けた。処置を2週間にわたって週二回投与した。
【0394】
図13に示されるように、単剤の1912Ab5は、ベンチマーク抗体のウレルマブ-NRと比較して優れた有効性を示した。0.1mpkの用量では、1912Ab5は、腫瘍接種後27日目に77.2%の腫瘍増殖阻害(TGI)を呈したのに対し、0.1mpkでのウレルマブ-NRは、36.6%の腫瘍増殖阻害(TGI)を呈したのみであった。
【0395】
Claudin6/CD137二重特異性Abが、定着した大きな腫瘍の治療に使用できるか否かを調べるため。バイオサイトジェン社(マサチューセッツ州ボストン)のメスB-h4-1BBマウスに、5×10個の生細胞のMC38細胞を皮下接種した。腫瘍サイズがおよそ400mmに達したとき、マウスを二つの群に無作為化し、1週間にわたって週2回処置した。第1群はビヒクル対照を受け、第2群は2mpk 1912Ab5抗体の二回投与を受けた。図14に示されるように、1912Ab5は、腫瘍接種後35日目に強力な有効性、すなわち62.7%の腫瘍増殖阻害(TGI)を示した。
【0396】
実施例11:Claudin6-CD137抗体により処理した腫瘍の免疫構成解析
マルチプレックス蛍光免疫組織化学(IHC)試験および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析を実施して、Claudin6/CD137 bsAb処置後の腫瘍における免疫細胞の内容を評価した。
【0397】
バイオサイトジェン社(マサチューセッツ州ボストン)のメスB-h4-1BBマウスに、5×10個の生細胞のMC38細胞を皮下接種した。腫瘍サイズが約100mmに達したとき、マウスを二つの群、一つの群当たり8頭のマウスに無作為化し、15日目および19日目の2回処置した。第1群をビヒクル対照によって処理し、第2群を1mpk 1912Ab5によって処理した。腫瘍接種後26日目に、マウスを安楽死させ、IHCおよびTil試験のために新鮮な腫瘍を採取した。
【0398】
各治療群由来の二つの腫瘍をホルマリン固定し、パラフィン包埋した。蛍光IHCを、5mmのFFPE組織切片を用いて行った。脱パラフィン後、マルチプレックス免疫細胞プロファイリングのために、CD45、CD3、CD4、およびCD8を検出する一次抗体によってスライドを染色した。代表的な画像を図15に示す。1912Ab5処置腫瘍は、ビヒクル対照(図15A)と比較して、リンパ球の浸潤、ならびにCD4およびCD8 T細胞の浸潤を有意に増加させた(図15B)。
【0399】
各治療群から得た6個の新鮮な腫瘍を用いて、腫瘍浸潤リンパ球分析を実施した。腫瘍を解離させるために、酵素ベースの方法を用いた。消化された腫瘍から得た細胞を濾過し、洗浄し、マルチプレックスフローサイトメトリーに使用した。T細胞集団を活性のCD45+CD3+によりゲーティングし、CD4 T細胞を活性のCD45+CD3+CD4+CD8-によりゲーティングし、CD8 T細胞を活性のCD45+CD3+CD4-CD8+によりゲーティングし、疲弊T細胞を活性のCD45+CD3+Tim-3+によりゲーティングし、セントラルメモリーT細胞をCD45+CD3+CD8+高CD44高CD62Lによりゲーティングし、常在性メモリーT細胞を活性のCD45+CD3+CD8+CD69+CD103+によりゲーティングし、M2様マクロファージ細胞を活性のCD45+CD11b+F4/80++CD206+によりゲーティングした。
【0400】
図16に示されるように、1912Ab5処置された全ての腫瘍において、CD4細胞(図16A)およびCD8細胞(図16B)の両方が増加し、このことはT細胞由来の腫瘍殺傷の強化を示唆している。さらに、メモリーT細胞であるセントラルメモリーT細胞(図16C)および常在性メモリーT細胞(図16D)が、1912Ab5処置動物(図11D)に観察された腫瘍免疫に伴って有意に増加し、このことはClaudin6-CD137 bsAbによる処置が抗腫瘍メモリーの形成を促進し得ることを示唆している。さらに、疲弊T細胞の減少(図16E)およびM2様マクロファージの低減(図16F)は、Claudin6-CD137 bsAbの腫瘍微小環境調節効果を示す。
【0401】
本明細書に開示されるデータに基づくと、CLDN6/CD137 BsAb処置の抗腫瘍効果によりTMEの調節がもたらされ、リンパ球浸潤の増加により抑制性TMEが炎症性TMEへと転換することが予想される。腫瘍細胞依存的なCD137の活性化は、腫瘍を経たT細胞活性化を特異的に増強し、Tメモリー形成を促進するものとなり、bsAbの高速オフのカイネティクスは、T細胞の疲弊の低減に役立ち得る。低減されたM2マクロファージは、TMEにおける抑制性サイトカイン放出を低減し、したがってT細胞の活性化を改善する。
【0402】
実施例12:PD1抵抗性モデルB16F10におけるClaudin6-CD137抗体の評価
PD1抵抗性患者におけるClaudin6/CD137抗体治療の治療的可能性を予測するために、PD1抵抗性腫瘍モデルであるB16F10黒色腫モデルを使用して、抗体1912Ab5の有効性を評価した。バイオサイトジェン社(マサチューセッツ州ボストン)の六~七週齢のメスホモ接合性B-h4-1BBマウスに、1×10個の生細胞のB16-F10細胞を右脇腹に皮下注射した。腫瘍サイズが75~100mmに達したとき、マウスを二つの群に無作為化し、腹腔内注射による処置を開始した。第1群はビヒクル対照を受け、第2群は3mpk 1912Ab5抗体を受けた。処置を2週間にわたって週二回投与した。
【0403】
体重を週に二回測定した。腫瘍体積を、異なる時点で式V=1/2×L×W×Wを用いて決定した。式中、Lは異種移植片の長寸法であり、Wは短寸法である。2500mmを超える腫瘍があればどのマウスも屠殺した。マウスの生存を、腫瘍移植後27日までモニタリングした。
【0404】
図17に示されるように、3mpk 1912Ab5抗体処置群に由来するマウスは、腫瘍移植後20日目に67.1%のTGI値を有し、有意な有効性を示した。
【0405】
実施例13:細胞表面上Claudin18.2へのCLDN18.2/CD137 BsAbの結合
二重特異性CLDN18.2/CD137抗体を、実施例3に記載されるように生成し、生産し、精製した。これらの結合タンパク質のClaudin18.2への結合活性を調べるために、ヒトClaudin18.2を内因的に発現するNUGC4細胞を、免疫蛍光結合アッセイに使用した。細胞を、10%FBSを含むRPMI培地中で培養した。実験日に、細胞を採集し、洗浄し、BsAb 1901Ab2および1901Ab3、ならびに単一特異性の抗CLDN18.2対照抗体1901Ab1を用いて4℃で2時間染色し、続いて室温で15分間、パラホルムアルデヒドで細胞を固定した。モノクローナル抗体1901Ab1は、Claudin18.2に特異的に結合する。次いで、固定細胞をPBSで三回洗浄した後、検出のためにAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG抗体(インビトロジェン、カタログ番号A-11013)で細胞を室温で1時間染色した。結合シグナルを、iQue Screener PLUS(ザルトリウス社、ミシガン州)を使用して蛍光強度を定量化することにより評価した。
【0406】
図18に示されるように、10μg/mlの濃度で、1901Ab2および1901Ab3を含む開示された二重特異性結合タンパク質は、対照モノクローナル抗体1901Ab1と比較して、NUGC4細胞上のヒトClaudin18.2に同様に結合した。
【0407】
実施例14:細胞表面のCD137へのCLDN18/CD137 BsAbの結合
CLDN18.2/CD137 BsAbの1901Ab2および1901Ab3の結合親和性を、免疫蛍光イメージングアッセイを使用して評価した。簡潔に述べると、ヒトCD137を安定的に発現するHEK293T-huCD137細胞を、10%FBSを含むDMEMを含有する完全培地に播種し、次いで37℃で一晩インキュベートした。細胞をBsAbと4℃で2時間結合させた後、細胞をパラホルムアルデヒド中、室温で15分間固定した。単一特異性抗体1923Ab4は、CD137にのみ結合し、対照抗体として使用される。固定細胞をPBSで三回洗浄した後、検出のためにAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG抗体(インビトロジェン、カタログ番号A-11013)を用いて室温で1時間染色した。細胞をイメージングし、Cytation Imager(バイオテック、バーモント州)を使用して蛍光強度を定量化することによって、結合シグナルを評価した。
【0408】
図19に示されるように、10μg/mlの濃度で、開示された二重特異性結合タンパク質1901Ab2および1901Ab3は、それらのモノクローナル抗体対照1923Ab4と同様に、細胞表面のヒトCD137に結合した。
【0409】
実施例15:CLDN18.2/CD137 BsAbによるCD137シグナル伝達の標的細胞依存的な活性化
抗CLDN18.2/CD137 BsAbの1901Ab2および1901Ab3も、標的細胞依存的なCD137アゴニズムを誘導する能力について評価した。簡潔に述べると、CD137を安定的に発現しNFkB-lucレポーターを含有するJurkat Tレポーター細胞株を用いて、CD137シグナル伝達を定量した。細胞表面に内因性Claudin18.2を発現したNUGC4細胞を標的細胞として使用した。Jurkat Tレポーター細胞を、NUGC4標的細胞と共培養するかまたはNUGC4標的細胞不含で培養し、開示される結合タンパク質により37℃、5%COで16時間刺激した。次いで、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(プロメガ社、カタログ番号E6130)を添加し、プレートを室温で10分間インキュベートした。単一特異性抗体のウレルマブ-NR(公的に入手可能な配列情報に基づいてノバロックバイオセラピューティック(NovaRock Biotherapeutics)社により生成)は、CD137にのみ結合し、対照抗体として使用される。発光シグナルを、Synergy Neo2プレートリーダー(バイオテック)によって測定し、データをGraphPad Prismによって分析した。
【0410】
図20Aは、予想通り、ウレルマブ-NRが、NUGC4標的細胞の存在とは独立してCD137シグナル伝達を活性化したことを示している。対照的に、1901Ab2は、NUGC4標的細胞の存在下でのみCD137シグナル伝達を誘導した。さらに、1901Ab2は、NUGC4標的細胞の存在下で、ウレルマブ-NRよりも強固なCD137シグナル伝達を誘導した。この結果は、1901Ab2が、NUGC4細胞の細胞表面に発現するClaudin18.2と係合したときにのみ、該結合タンパク質がCD137アゴニズムを示したことを確定するものである。NUGC4細胞の非存在下では、1901Ab2のアゴニスト活性は検出されなかった。
【0411】
NUGC4細胞の存在下でCD137シグナル伝達を誘導する1901Ab2、1901Ab3、およびウレルマブ-NRの用量応答曲線を、図20Bに示した。1901Ab2、1901Ab3、およびウレルマブ-NRのEC50値(効力)は、それぞれ0.047nM、0.10nM、および0.21nMであった。1901Ab2および1901Ab3の両方が、ウレルマブ-NRよりも、CD137シグナル伝達を誘導するための良好なEC50値と高いシグナル伝達強度(Emax)とを示した。
【0412】
実施例16:CLDN18.2/CD137 BsAbによるCD8 T細胞の活性化
共培養実験を用いて、TCRシグナル伝達の存在下でのBsAb 1901Ab2および1901Ab3によるT細胞の活性化を測定した。健康なドナー由来CD8 T細胞およびNUGC4細胞を、エフェクター細胞および標的細胞として使用した。これらの二つの細胞を、10%FBSと、TCRシグナル伝達をもたらす0.5ug/mlのマウス抗hCD3クローンOKT3(Biolegend社、カタログ番号317325)とを補充したRPMI1640培地中で共培養した。開示された結合タンパク質を添加して、T細胞を刺激した。5%CO共存下37°Cで3日間、プレートをインキュベートした。72時間のインキュベーション後、上清を採集し使用して、製造業者の指示によるプロトコールを用いてAlphaLISA(PerkinElmer社、カタログ番号AL217C/F)により、分泌されたIFNγを測定した。IFNγの量は、T細胞の活性化を表す。
【0413】
NUGC4細胞の存在下でCD8 T細胞の活性化を誘導するための1901Ab2、1901Ab3、およびウレルマブ-NRの用量応答曲線を図21に示す。1901Ab2、1901Ab3、およびウレルマブ-NRのEC50値は、それぞれ0.081nM、0.12nM、および0.51nMであった。1901Ab2および1901Ab3の両方が、ウレルマブ-NRよりも、T細胞活性化の顕著な特徴であるIFNγ産生を誘導するための良好な効力と高いEmaxとを示した。
【0414】
実施例17:CLDN18.2/CD137 BsAbによって誘導されるCD8 T細胞由来の腫瘍殺傷活性
CLDN18.2/CD137 BsAbの1901Ab2および1901Ab3で処理されたCD8 T細胞の腫瘍殺傷活性を測定するために、共培養実験を実施した。簡潔に述べると、健康なドナー由来のCD8 T細胞を、ImmunoCult(商標)ヒトCD3/CD28 T細胞活性化剤(ステムセル社、カタログ番号10971)で2日間、予め活性化した。次に、活性化細胞を洗浄して、CD3/CD28活性化剤を除去した。次いで、活性化CD8 T細胞を、GFPで安定的にトランスフェクトされたNUGC4腫瘍細胞と共培養し、開示された二重特異性結合タンパク質で96時間処理した。Cytation(バイオテック、バーモント州)を使用して緑色蛍光強度によって、細胞数を測定した。殺傷の割合を、以下の式によって計算した:
殺傷の%=(結合タンパク質処理のないウェル由来のGFPシグナル-抗体で処理したウェル由来のGFPシグナル)/結合タンパク質処理のないウェル由来のGFPシグナル*100%
【0415】
図22は、1901Ab2および1901Ab3が強力なT細胞媒介性細胞傷害性を誘導したことを示す。開示された二重特異性結合タンパク質を用いて96時間処理すると、腫瘍細胞の約75%がCD8 T細胞によって殺傷された。1901Ab2および1901Ab3のEC50値は、それぞれ0.043nMおよび0.033nMである。
【0416】
実施例18:ヒト化B-h4-1BBマウスの皮下同系MC38-hClaudin18.2マウス腫瘍モデルにおける腫瘍増殖に対するCLDN18.2/CD137 BsAb 1901Ab2の効果
16~20gの体重の6~8週齢のメスB-h4-1BBマウス(バイオサイトジェン社)を、試験登録前に7日間順応させた。MC38マウス結腸がん細胞株を遺伝子改変して、ヒトClaudin18.2を過剰発現させた。細胞を、5%雰囲気下、37℃で、10%熱不活化FBSを補充したDMEM中の単層培養としてインビトロで維持する。細胞を採取し、100μlのPBS中の5×10個の細胞を、腫瘍発生のために右前脇腹に皮下移植した。7日目に、腫瘍担持マウスを、およそ100~150mmの平均腫瘍サイズを有する3つの試験群(各群は6頭のマウスを含む)に無作為に登録した。腫瘍サイズはキャリパーを用いて二次元で週二回測定し、体積は以下の式を使用してmmで表した。V=0.5a×bであって、式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長寸法および短寸法である。7、10、14、および17日目に、マウスに、腹腔内注射によって5mg/kgの1901Ab2またはPBS対照を処置した。試験は34日目に終了した。
【0417】
図23は、二つの治療群についての腫瘍増殖曲線を示す。1901Ab2は、PBS処置対照と比較して、腫瘍増殖を有意に阻害した。1901Ab2を注射した6頭中4頭のマウスは、34日目に完全な腫瘍寛解を示した。
【0418】
実施例19:細胞表面のNectin4へのNectin-4/CD137 BsAbの結合
二重特異性Nectin-4/CD137結合タンパク質を、実施例4に記載されるように生成し、生産し、精製した。Nectin4に対するBsAbの1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3の結合活性を調べるために、ヒトNectin4を発現するCHO細胞を免疫蛍光結合アッセイに使用した。細胞を、10%FBSを含むF12K培地中で培養した。実験の日に、細胞を採集し、洗浄し、結合タンパク質により4℃で2時間染色した後、パラホルムアルデヒドにより室温で15分間、細胞を固定した。開示された抗体1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3は、Nectin-4およびCD137の両方に結合する二重特異性抗体である。単一特異性抗体1925Ab4(親マウス抗体)は、Nectin-4にのみ結合し、対照抗体として使用される。次いで、固定細胞をPBSで三回洗浄した後、検出のためにAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG抗体(インビトロジェン、カタログ番号A-11013)を用いて細胞を室温で1時間染色した。結合シグナルを、iQue Screener PLUS(ザルトリウス社、ミシガン州)を使用して蛍光強度を定量化することにより評価した。
【0419】
図24に示されるように、10μg/mlの濃度で、1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3を含む開示された二重特異性結合タンパク質は、対照モノクローナル抗体1925Ab4と比較して、CHO細胞上のヒトNectin4に同様に結合した。
【0420】
実施例20:細胞表面のCD137へのNectin-4/CD137 BsAbの結合
BsAb 1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3の結合親和性を、免疫蛍光イメージングアッセイを使用して評価した。簡潔に述べると、ヒトCD137を安定的に発現するHEK293T-huCD137細胞を、10%FBSを含むDMEMを含有する完全培地に播種し、次いで37℃で一晩インキュベートした。細胞を、開示された結合タンパク質と4℃で2時間結合させた後、パラホルムアルデヒドで室温で15分間、細胞を固定した。開示された抗体1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3は、Nectin-4およびCD137の両方に結合する二重特異性抗体である。単一特異性抗CD137抗体1923Ab4は、CD137にのみ結合し、対照抗体として使用される。固定細胞をPBSで三回洗浄した後、検出のためにAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG抗体(インビトロジェン、カタログ番号A-11013)を用いて室温で1時間染色した。細胞をイメージングし、Cytation Imager(バイオテック、バーモント州)を使用して蛍光強度を定量化することによって、結合シグナルを評価した。
【0421】
図25に示されるように、10μg/mlの濃度で、1925Ab1、1925Ab2および1925Ab3を含めた開示された二重特異性結合タンパク質は、それらのモノクローナル抗体対照1923Ab4と同様に、細胞表面のヒトCD137に結合した。
【0422】
実施例21:Nectin-4/CD137 BsAbによるCD137シグナル伝達の標的細胞依存的な活性化
Nectin-4/CD137 BsAbの1925Ab1,1925Ab2,1925Ab3を、標的細胞依存的なCD137アゴニズムを誘導する能力について評価した。簡潔に述べると、CD137を安定的に発現しNFkB-lucレポーターを含有するJurkat Tレポーター細胞株を用いて、CD137シグナル伝達を定量した。ヒトNectin4で安定的にトランスフェクトされたCHO細胞(CHO-Nectin4)を標的細胞として用いた。Jurkat Tレポーター細胞を、CHO-Nectin4標的細胞と共培養するかまたはCHO-Nectin4標的細胞不含で培養し、開示される結合タンパク質により37℃、5%COで16時間刺激した。次いで、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(プロメガ社、カタログ番号E6130)を添加し、プレートを室温で10分間インキュベートした。開示された抗体1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3は、Nectin-4およびCD137の両方に結合する二重特異性抗体である。単一特異性抗体のウレルマブ-NRは、CD137にのみ結合し、対照抗体として使用される。発光シグナルを、Synergy Neo2プレートリーダー(バイオテック)によって測定し、データをGraphPad Prismによって分析した。
【0423】
ウレルマブ-NRは、公的に入手可能なウレルマブの配列に基づいて、ノバロックバイオセラピューティック社により生成された。図26Aは、予想通り、ウレルマブ-NRが、CHO-Nectin4標的細胞の存在とは独立してCD137シグナル伝達を活性化したことを示している。対照的に、1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3は、CHO-Nectin4標的細胞の存在下でのみCD137シグナル伝達を誘導した。さらに、1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3は、NUGC4標的細胞の存在下で、ウレルマブ-NRよりも強固なCD137シグナル伝達を誘導した。この結果は、開示された二重特異性結合タンパク質が、CHO細胞の細胞表面に発現するNectin4と係合したときにのみ、該結合タンパク質がCD137アゴニズムを示したことを確定するものである。これらの開示された二重特異性結合タンパク質のアゴニスト活性は、CHO-Nectin4細胞の非存在下では検出されなかった。
【0424】
NUGC4細胞の存在下でCD137シグナル伝達を誘導する1925Ab1、1925Ab2、1925Ab3、およびウレルマブ-NRの用量応答曲線を、図26Bに示した。1925Ab1、1925Ab2、1925Ab3、およびウレルマブ-NRのEC50値(効力)は、それぞれ0.027nM、0.080nM、0.049nM、および0.26nMであった。1925Ab1、1925Ab2、および1925Ab3を含む開示された二重特異性結合タンパク質は、ウレルマブ-NRよりも、CD137シグナル伝達を誘導するための良好なEC50値と高いシグナル伝達強度(Emax)とを示した。
【0425】
実施例22:マウス肝臓における抗体由来の免疫細胞浸潤の評価
肝毒性は、初期のいくつかのCD137アゴニスト抗体治療薬の公知の副作用となってきた。ウレルマブは、0.3mg/kg以上の用量で炎症性肝毒性を誘導し、最大許容用量(MTD)は0.1mg/kgであり、その治療ウィンドウを制限することが報告されている(Segal NH,et al.Clin Cancer Res.2017;23(8):1929-1936)。研究では、ウレルマブによる肝毒性が、肝臓における免疫細胞の浸潤および血清ALTレベルの有意な上昇によって標示される肝炎症によるものであることが示されている(Zhang H,et al.Journal for ImmunoTherapy of Cancer 2020;8)。
【0426】
CD137および腫瘍関連抗原(TAA)に結合する二重特異性抗体は、腫瘍微小環境(TME)を標的とする強力な共刺激という利点と、肝炎症/肝毒性のリスクの減少とをもたらし、これらにより治療ウィンドウを広げることができる。
【0427】
開示された二重特異性TAA-CD137抗体がより低い肝毒性を有することを実証するために、16~20gの体重を有する6~8週齢のメスB-h4-1BBマウス(バイオサイトジェン社)を、試験登録前に7日間順応させた。B-h4-1BBマウスを三つの試験群に無作為に登録した。各群は6頭のマウスから構成された。0、3、7、および10日目に、マウスを、10mg/kgのウレルマブ-NR、1912Ab5、または陰性対照としてPBSの腹腔内注射により処置した。試験は13日目に終了した。各治療群由来の肝臓をホルマリン固定し、パラフィン包埋した。蛍光IHCを、5mmのFFPE組織切片を用いて行った。脱パラフィン後、免疫細胞の同定のためにCD4、CD8 T細胞、およびマクロファージを検出する一次抗体によってスライドを染色した。
【0428】
図27では、マウスCD4 T細胞(A)、CD8 T細胞(B)、およびマウスマクロファージ(C)の浸潤は、ウレルマブ-NR処置マウスでのみ有意に増加したが、1912Ab5処置マウスでは有意に増加しなかった。
【0429】
実施例10、図11Bおよび図11Cと一致して、1912Ab5により誘導された免疫細胞浸潤の欠如は、CLDN6/CD137 bsAb由来の肝毒性のリスクが低いことを示す。
【0430】
別途示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表現する全ての数は、全ての場合において用語「約」によって修正されるものと理解されたい。したがって、反対に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって取得されることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定しようとするのではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数を考慮して、かつ通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0431】
本開示の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメータが近似であるとはいえ、特定の実施例に記載の数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いかなる数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0432】
本開示を記述する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)使用される用語「a」、「an」、「the」、および類似の言及は、本明細書において別段に指示がない限り、または文脈により明確に矛盾しない限り、単数形と複数形との両方を網羅するものと解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に収まる別々の各値に個別に言及する簡潔な方法として機能することが意図される。本明細書に別段の指示がない限り、別々の各値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提供される任意のおよび全ての実施例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本開示をより良く明らかにすることが意図されており、別様に特許請求の範囲に記載される本開示の範囲に限定を生じない。本明細書中のいかなる文言も、本開示の実践に必須の任意の非請求要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0433】
本明細書に開示される本開示の代替的な要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、または本明細書に見出されるグループの他のメンバーもしくは他の要素との任意の組合せで、参照し特許請求の範囲に記載することができる。あるグループの一つまたは複数のメンバーは、利便性および/または特許性の理由で、あるグループに含まれるかまたはグループから削除することができることが予想される。そのような包含または欠失が発生した際に、本明細書は、改変されたものとしてそのグループを含むものと考えられ、それゆえに、添付の特許請求の範囲で用いられる全てのマーカッシュグループの書面による説明を満たす。
【0434】
本開示の特定の実施形態は、本開示を実施するための発明者らに既知の最良のモードを含めて、本明細書に記載されている。言うまでもなく、これらの記載された実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者に明らかになるものとなる。発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変形を採用するものと期待し、発明者らは、本明細書に具体的に記載されたもの以外の方法で本開示が実践されることを意図する。したがって、本開示は、適用法で許容されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変および等価物を含む。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、その全ての可能な変形における上述の要素の任意の組合せは、本開示によって包含される。
【0435】
本明細書に開示される特定の実施形態は、言語「からなる」か、または「から本質的になる」を用いて、特許請求の範囲にさらに限定され得る。特許請求の範囲に使用される際に、出願時であっても補正毎に追加されるときであっても、移行用語「からなる」は、特許請求の範囲に指定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。移行用語「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、指定された材料または工程、ならびに基本的および新規の特徴に実質的に影響を与えない材料または工程に限定する。そのように特許請求の範囲に記載される本開示の実施形態は、本明細書に本質的にまたは明示的に記載され、有効化される。
【0436】
本明細書に開示される本開示の実施形態は、本開示の原理の例示であることを理解されたい。採用可能な他の修正は、本開示の範囲内である。したがって、例として、しかし限定ではないが、本開示の代替的な構成は、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本開示は、正確に示され説明されるようなものに限定されない。
【0437】
本開示は、様々な特定の材料、手順、および実施例を参照することによって本明細書に説明および図示されているが、本開示は、その目的のために選択される材料および手順の具体的な組合せに限定されないことを理解されたい。当業者によって理解されるものとなるように、このような詳細の複数の変形が含意され得る。本明細書および実施例は、例示に過ぎないものと考えられ、本開示の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。本願に言及される全ての参考文献、特許、および特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1A-1】
図1A-2】
図1B-1】
図1B-2】
図1C-1】
図1C-2】
図1C-3】
図1D-1】
図1D-2】
図1D-3】
図1D-4】
図1D-5】
図1D-6】
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
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図14
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図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27-1】
図27-2】
【配列表】
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【国際調査報告】