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特表2024-532494血管内ガイドワイヤおよびマイクロカテーテルシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】血管内ガイドワイヤおよびマイクロカテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240829BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/00 632
A61M25/09 516
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513986
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022042514
(87)【国際公開番号】W WO2023034599
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/240,845
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/271,114
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/901,819
(32)【優先日】2022-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515246317
【氏名又は名称】サイエンティア・バスキュラー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】リッパート,ジョン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,エドワード・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,クラーク・シー
(72)【発明者】
【氏名】ターンルンド,トッド・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】マッジオ,リチャード・エフ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA05
4C267AA29
4C267BB03
4C267BB07
4C267BB08
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB31
4C267BB40
4C267CC08
4C267HH17
(57)【要約】
患者血管系を通る前進のためにガイドワイヤを通じて望ましいカテーテル軸方向応答(例えば、押込伝達性)を容易にするのに使用することができる、ガイドワイヤおよびカテーテルシステムが開示される。ガイドワイヤおよびカテーテルシステムの特徴は、50gを超えない押込力に応じてカテーテルが患者の血管系の蛇行経路内でガイドワイヤを通じて前進することを可能にする。構成されたカテーテルデバイスは、50g以下の押込力に応じて患者の血管系の蛇行経路内でガイドワイヤを通じて前進することができる。例えば、21.5cmの全経路長、3.68mmの内径、3つの完全なループを有する蛇行経路モデルの場合、構成されたガイドワイヤおよびカテーテルシステムは、30グラムの押込力を超えることなくガイドワイヤを通じて前進することができた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10mm以下の曲率半径を有する1つまたは複数の湾曲を含む血管を通るナビゲーションのために構成されたカテーテルデバイスであって、前記血管の少なくとも一部について、前記カテーテルデバイスの外径に対する前記血管の内径の比率が、約300%から約800%である、カテーテルデバイスと、
前記血管を通るナビゲーションのために構成されたガイドワイヤデバイスと、
を備える、血管内システムであって、
前記カテーテルデバイスおよび前記ガイドワイヤデバイスは、前記カテーテルデバイスに加えられる50g以下の押込力に応じて前記カテーテルデバイスが前記ガイドワイヤデバイスを通じて前進することを可能にするように構成される、血管内システム。
【請求項2】
前記血管の経路長が少なくとも10cmである、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項3】
前記血管の経路長が少なくとも20cmである、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項4】
前記1つまたは複数の湾曲は、3つ以上の湾曲を含む、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項5】
前記1つまたは複数の湾曲はそれぞれ、約4mmから約9mmの範囲内の半径を有する、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項6】
前記カテーテルデバイスは、前記カテーテルデバイスに加えられる40g以下の押込力に応じて前記ガイドワイヤデバイスを通じて前進するように構成される、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項7】
前記カテーテルデバイスは、前記カテーテルデバイスに加えられる30g以下の押込力に応じて前記ガイドワイヤデバイスを通じて前進するように構成される、請求項6に記載の血管内システム。
【請求項8】
前記カテーテルデバイスは、前記カテーテルデバイスに加えられる20g以下の押込力に応じて前記ガイドワイヤデバイスを通じて前進するように構成される、請求項7に記載の血管内システム。
【請求項9】
前記カテーテルデバイスの外径に対する前記血管の内径の比率は、少なくとも約371%である、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項10】
前記カテーテルデバイスは、
複数の隙間が形成されている微細加工内側シャフトと、
前記隙間内に配置されるポリマー材料を含む外側部材と、
を備える、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項11】
前記内側シャフトは、複数の周方向に延びるリングをつなぐ複数の軸方向に延びる桁を含む、請求項10に記載の血管内システム。
【請求項12】
前記内側シャフトは、3本桁セクションおよび2本桁セクションのうちの一方または両方を含み、前記3本桁セクションは、前記2本桁セクションの近位に配置され、前記3本桁セクションの少なくとも一部は、前記2本桁セクションよりも高い曲げ剛性を有する、請求項11に記載の血管内システム。
【請求項13】
前記外側部材は、ポリマーの複数の異なるデュロメータを含む、請求項10に記載の血管内システム。
【請求項14】
前記外側部材は、第1のポリマーが異なる硬度の第2のポリマーに隣り合う移行セクションを含み、前記移行セクションが前記外側部材の曲げ剛性の変化を含み、前記微細加工シャフトは、前記移行セクションにおける前記カテーテルデバイスの曲げ剛性の全体変化が、前記移行セクションにおける前記外側部材自体の曲げ剛性の全体変化よりも低くなるよう、前記外側部材の曲げ剛性の変化を補償するように構成される、前記移行セクションと一致するセクションを含む、請求項13に記載の血管内システム。
【請求項15】
前記第2のポリマーは、前記第1のポリマーの近位にあり、前記第1のポリマーよりも大きい硬度を有し、そのため、前記外側部材は遠位から近位方向に前記移行セクションにわたる曲げ剛性が増加し、前記シャフトは、前記外側部材の曲げ剛性の増加を補償するように遠位から近位方向に前記移行セクションの少なくとも一部にわたる曲げ剛性が増加しない、請求項14に記載の血管内システム。
【請求項16】
周りに前記シャフトが配置される内側ライナをさらに備える、請求項10に記載の血管内システム。
【請求項17】
前記外側部材の前記ポリマー材料は、前記ライナに融合され、前記シャフトの前記隙間を満たし、前記シャフトの外側表面を覆って前記シャフトを封じ込むかつ埋め込む、請求項16に記載の血管内システム。
【請求項18】
前記シャフトは、ニチノールから形成される、請求項10に記載の血管内システム。
【請求項19】
前記カテーテルデバイスは、遠位15cmセクションについて約6.0×10-7以下、遠位35cmセクションについて約9.0×10-7以下、および/または遠位50cmセクションについて約9.0×10-7以下の曲げ剛性勾配((N・m)/cm)を有する、請求項10に記載の血管内システム。
【請求項20】
前記ガイドワイヤデバイスは、
近位側セクションおよび遠位側セクションを有するコアと、
チューブ構造であって、前記コアの前記遠位側セクションが前記チューブ構造に入るように前記コアに連結され、第1のセクションと、前記第1のセクションより遠位に第2のセクションとを有する、チューブ構造と、
を備え、
前記チューブ構造は、複数の周方向に延びるリングをつなぐ複数の軸方向に延びる桁を形成するカットパターンを含む、請求項1に記載の血管内システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2022年9月1日に出願された、「Intravascular Guidewire and Microcatherer System」という名称の米国実用出願第17/901,819号に対する優先権およびその利益、ならびに2021年10月22日に出願された、「Intravascular Guidewire and Microcatheter System」という名称の米国仮出願第63/271,114号および2021年9月3日に出願された、「Microcatheter Device with Non-Linear Bending Stiffness」という名称の米国仮出願第63/240、845号に対する優先権を主張し、これら出願のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]人体内の深部で繊細な処置を行うために医療分野においてガイドワイヤおよびカテーテルなどの介入的デバイスが利用される場合が多い。典型的に、カテーテルは、患者の大腿血管、橈骨血管、頸動脈血管、または頸静脈血管に挿入され、ガイドワイヤを通じて、患者の血管系を通って心臓、脳、または他の標的の解剖学的構造にナビゲートされる。配置されると、カテーテルは、薬剤、ステント、塞栓デバイス、放射線不透過性染料、または、所望のやり方で患者を治療するための他のデバイスもしくは物質を送達するのに使用することができる。
【0003】
[0003]多くの用途において、そのような介入的デバイスは、標的の解剖学的構造に到達するために、血管系通路の蛇行した曲がりおよび湾曲を通ってナビゲートされねばならない。かかる介入的デバイスは、そのような蛇行経路をナビゲートするために、特にその遠位端のより近くで十分な可撓性を必要とする。しかしながら、他の設計面も考慮されねばならない。例えば、介入的デバイスは、十分なトルク伝達性(すなわち、近位端において印加されたトルクを遠位端までずっと伝達する能力)、押込伝達性(すなわち、中間部分を曲げるおよび拘束するのではなく遠位端に軸方向押込を伝達する能力)、および意図された医療機能を行うための構造的完全性を与えることもできなければならない。
【0004】
[0004]カテーテルデバイスが良好な軸方向応答を有することが望ましく、そのため、ガイドワイヤを通じて(例えば、患者の血管系内に)配置されたカテーテルデバイスの近位端に押込力が加えられると、カテーテルデバイスの中間部分および遠位部分が、押込力に従って、ガイドワイヤを通じて(例えば、さらに患者の血管系に)前進する。しかしながら、多くの場合、カテーテルデバイスが血管系の曲がりおよび湾曲内に前進するにつれ、軸方向移動の大部分は付随的に、実際にカテーテルデバイスの遠位端を前方に前進させるのではなくデバイスの中間部分を血管系の湾曲部分の壁に押し入れる。近位端において使用者が与える軸方向押込量と、その結果生じる遠位端の前方移動とのこのような対応の欠如は、ナビゲーションをより困難にするとともにより触覚的直感の低いものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]したがって、ガイドワイヤおよびカテーテルシステムの分野においていくつかの制約が存在し、例えば、意図された解剖学的標的に到達するのに過度の押込力を必要とすることなく血管系内におけるガイドワイヤを通じてカテーテルの有効な経路付けを可能にするシステムの継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]本発明の様々な目的、特徴、特性および利点は、添付の図面および添付の特許請求の範囲と併せて、そのすべてが本明細書の一部を形成する実施形態の以下の説明から明らかとなるとともにより容易に理解される。図面において、同様の参照番号は、様々な図面における対応するまたは類似の部品を示すために用いることができ、示された様々な要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[0007]カテーテルおよびハブを含む、カテーテルシステムの概観を示す。
図2】[0008]カテーテルシステムのカテーテルの様々なセクションを示す、詳細な図を示す。
図3A】[0009]本明細書において説明されるカテーテルシステムにおいて使用される微細加工シャフトに含まれ得る、1本桁セクションの例を示す。
図3B】本明細書において説明されるカテーテルシステムにおいて使用される微細加工シャフトに含まれ得る、2本桁セクションの例を示す。
図3C】本明細書において説明されるカテーテルシステムにおいて使用される微細加工シャフトに含まれ得る、3本桁セクションの例を示す。
図4】[0010]カテーテルの遠位側セクションの詳細図を示す。
図5A】[0011]血管(人工血管が示されている)内で起こり得る軸方向応答の相違を示す写真であり、従来のカテーテルの軸方向応答を示す。
図5B】血管(人工血管が示されている)内で起こり得る軸方向応答の相違を示す写真であり、従来のカテーテルの軸方向応答を示す。
図5C】血管(人工血管が示されている)内で起こり得る軸方向応答の相違を示す写真であり、本開示によるカテーテルの改善された軸方向応答を示す。
図5D】血管(人工血管が示されている)内で起こり得る軸方向応答の相違を示す写真であり、本開示によるカテーテルの改善された軸方向応答を示す。
図6】[0012]蛇行した解剖学的構造において、曲げ力、ねじり力、および軸方向力を分散させるよう、カテーテルがどのように構成されているかを示す、曲げ時のカテーテルの一セクションを概略的に示す。
図7A】[0013]1つのポリマーから別のポリマーへの移行による、外側ポリマー層における剛性のステップ変化を補償するよう、微細加工シャフトが構成されていることを示す。
図7B】1つのポリマーから別のポリマーへの移行による、外側ポリマー層における剛性のステップ変化を補償するよう、微細加工シャフトが構成されていることを示す。
図8A】[0014]本開示によるカテーテルデバイス(「Plato17」と付されている)の曲げ剛性プロファイルを様々な従来のカテーテルデバイスの曲げ剛性プロファイルと比較した図であり、遠位先端部から60cmまでの曲げ剛性を示す。
図8B】本開示によるカテーテルデバイス(「Plato17」と付されている)の曲げ剛性プロファイルを様々な従来のカテーテルデバイスの曲げ剛性プロファイルと比較した図であり、遠位先端部から15cmまでの曲げ剛性を示す。
図9】[0015]本開示によるカテーテルデバイス(「Plato17」と付されている)の遠位長さに沿った外径を様々な従来のカテーテルデバイスと比較した図である。
図10】[0016]有効なトルク伝達性を与えるとともに成形可能な先端部を有するガイドワイヤデバイスの例示的な実施形態を示す。
図11】[0017]図10のガイドワイヤデバイスの断面図である。
図12】[0018]図10および図11のガイドワイヤデバイスとともに用いられ得るチューブ構造の例示的な実施形態を示し、有効な可撓性および遠位先端部の成形性を与えるように構成されたバイパスカットパターン(すなわち、1本桁カットパターン)をチューブが有する。
図13】[0019]代替的な1本桁カットパターンを有するセクションを有するチューブ構造の代替的な実施形態を示す。
図14】[0020]対称的に離間した対向する桁を有する2本桁カットパターンを有するチューブ構造の一実施形態を示す。
図15】[0021]片側だけの1本桁カットパターンを有するセクションを有するチューブ構造の一実施形態を示す。
図16】[0022]結果として得られる桁の螺旋パターンをもたらす例示的な角度オフセットを有するバイパスカットパターンを有するチューブ構造の一実施形態を示す。
図17】[0023]3つのセクションを含むチューブ構造の一実施形態の斜視図を示す。
図18A】[0024]コアが配置された遠位側セクションを含むチューブの一実施形態の側面図を示す。
図18B】[0025]図18Aのチューブの断面図を示す。
図19】[0026]図18Aおよび図18Bのチューブの第1のセクションと第2のセクションとの間の移行の拡大側面図を示す。
図20】[0027]図18Aおよび図18Bのチューブの第2のセクションおよび第3のセクションを含む、図18Aおよび図18Bのチューブの遠位先端部の拡大側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
組合せシステムの概観
[0028]上述したように、多くのカテーテルデバイスは、近位押込力を加えることと遠位部分および中間部分(例えば、カテーテルデバイスが患者の血管系の湾曲部分内にガイドワイヤを通じて配置される場合)の前進との対応の欠如を被る。従来のカテーテルデバイスは多くの場合、近位端から遠位端にかけて曲げ剛性の勾配を与えるために複数の異なる材料を用いる。しかしながら、異なる剛性の材料間の移行がある場合は常に、デバイスの曲げ剛性プロファイル、軸方向剛性プロファイル、およびねじり剛性プロファイルは、急激なステップ変化を含む。曲げ剛性のそのような急激な変化は、特定の場所に機械的応力を集中させる可能性があり、キンク点を生じさせ、デバイスの滑らかな移動および曲げを中断させ、蛇行した血管系のナビゲーションを複雑にするため、望ましくない。曲げ剛性のそのような急激な変化は、上述した近位押圧力と遠位前進との対応の欠如に寄与する可能性がある。
【0009】
[0029]過剰な近位押圧力(例えば、約30から50グラム超)を加えることは、患者の血管内でガイドワイヤを通じてカテーテルデバイスのさらなる前進を十分に促進することができない状況に直面する場合、医師は典型的に、カテーテル(および場合によってガイドワイヤも)を引っ込めて、ガイドワイヤおよび/またはカテーテルを患者の血管系に通して標的に到達させる経路付けを再試行する。そのようなことを行う結果、時間および材料に関して非効率となり、患者転帰に悪影響を及ぼしかねない。
【0010】
[0030]したがって、本開示の少なくとも1つの態様は、患者血管系を通る(または患者血管系をシミュレートする環境を通る)前進のための望ましいカテーテル軸方向応答(例えば、押込伝達性)を促進させるのに使用することができる、ガイドワイヤおよびカテーテルシステムを提供することである。本明細書において論じる例示的なガイドワイヤおよびカテーテルシステムの少なくともいくつかは、デバイスの長さに沿って滑らかな曲げ剛性プロファイルを呈し、それにより、特定の場所における機械的応力の集中の低減に寄与する。そのような特徴は、本開示のカテーテルデバイスが押込伝達性特性、トルク伝達性特性、および/または曲げ可撓性特性を呈することを可能にするものであり得、これら特性は、血管系壁に対する軸方向力の損失を低減させるとともに意図された標的に対する(最小の押圧力による)有効な経路付けに寄与するように、ガイドワイヤを通じてカテーテルデバイスを前進させることを可能にする。
【0011】
[0031]本開示に従って構成されたカテーテルデバイスは、50g以下の押込力に応じて患者の血管系の蛇行経路内でガイドワイヤを通じて前進することができる。例えば、21.5cmの総経路長、3.68mmの内径、3つの完全なループ(それぞれが6.4mmのループ径を有する)を有する例示的な蛇行経路モデルに関して、本開示に従って構成されたガイドワイヤおよびカテーテルシステムは、30グラムの押込力を超えることなく、いくつかの例では20グラムの押込力を超えることなく、ガイドワイヤを通じて前進することができた。特に、0.432mm(0.017インチ)(内径)カテーテルおよび0.356mm(0.014インチ)(外径)ガイドワイヤを有する、カテーテル/ガイドワイヤシステムが、18gを超えない押込力によりモデルを通って経路付けられ、0.686mm(0.027インチ)(内径)カテーテルおよび0.610mm(0.024インチ)(外径)ガイドワイヤを有する、カテーテル/ガイドワイヤシステムが、29gを超えない押込力によりモデルを通って経路付けられた。
【0012】
[0032]STRYKER EXCELSIOR SL-10と組み合わせて使用されたSTRYKER SYNCHRO 2などの他のデバイス組合せは、そのような機能を達成することができなかった。実際、STRYKER SYNCHRO 2およびSTRYKER EXCELSIOR SL-10の組合せシステムは、50gの押込力(200gと同じ高程度にジャンプ)が加えられたとしても完全モデルを通って進むことができなかった。
【0013】
[0033]試験カテーテルに対するモデルの比率は557%(例えば、モデルに関して3.68mm内径およびカテーテルに関して0.66mm外径)とした。本明細書において開示される構造的特徴を用いた、異なってサイズ決めされたガイドワイヤおよびカテーテルの組合せもまた、同様のサイズ比率を有するモデルにおいて同様に機能することが予想される。例えば、カテーテルの外径に対するモデルの内径の比率が約250%から約800%、または約300%もしくは350%から約750%、または約400%から約700%、または約450%から約650%、または約500%から約600%、または上記の値のうちの任意の2つによって規定される端点を有する範囲内の比率である限り、同様の有効な結果が予想される。
【0014】
[0034]したがって、本開示のガイドワイヤおよびカテーテルシステムは、医師がカテーテルを意図される標的までより効果的に前進させることを可能にし、安全レベルの押込力ではガイドワイヤを通じてカテーテルを十分に前進することができない状況を低減させ、それにより、カテーテルおよび/またはガイドワイヤデバイスの抜去および/または再前進に関連する非効率を回避する。
【0015】
[0035]図5A図5Dに示した試験と同様の試験は、本開示に従って構成されたカテーテル(例えば、カテーテル102を参照しながら説明する1つまたは複数の特徴を含む)が、約50g以下、または約40g以下、または約35g以下、または約30g以下、または約25g以下、または約20g以下(例えば、約10gから約20gの範囲、または約20gから約30gの範囲、または約30gから約40gの範囲、または約40gから約50gの範囲、または端点として上記の値のうちのいずれかを有する範囲内)の押込力を加えることに応じて、血管内でガイドワイヤを通じて前進させることができることを示した。
【0016】
[0036]そのような機能性は、様々な半径(例えば、6.4mmのような、約3mmから約10mmの範囲内)の湾曲および/またはループ(例えば、1つの湾曲および/もしくはループ、2つの湾曲および/もしくはループ、3つの湾曲および/もしくはループ、または4つ以上の湾曲および/もしくはループ)を有する約21.5cmの経路長(またはそれよりも長いもしくは短い)の動作環境(例えば、本物の血管またはモデル血管)内で本開示のカテーテルデバイスによって呈することができる。
【0017】
[0037]開示されるシステムは、様々な血管対カテーテル比率で用いられてもよい。例えば、血管内径は、約2mmから約6mmの範囲内(例えば、約3.68mm)であってもよく、カテーテル外径は、約0.2mmから約1.5mm(例えば、約0.66mm)の範囲内であってもよく、その結果、約133%から約3,000%の血管対カテーテル比率の範囲(例えば、3.68mmの管腔内径および0.66mmのカテーテル外径に関して557%のような、約371%以上)が得られる。試験用モデルは、他の寸法を用いてもよい。当業者は、同じモデル条件が各カテーテル/ガイドワイヤの組合せに用いられる限り、そのような試験用モデルを用いて様々なカテーテル/ガイドワイヤの組合せが互いに対して有効に試験され得ることを理解するであろう。そのような押込力試験は、難なく当業者の能力内にある。
【0018】
例示的なカテーテルデバイス
[0038]図1は、改善された軸方向応答性、曲げ力の改善された分散、および/または滑らかなデバイス曲げ剛性プロファイルのうちの1つまたは複数を与える特徴を含む、以下でより詳細に説明する、例示的なカテーテルデバイス100の概観である。
【0019】
[0039]カテーテルデバイス100は、近位端がハブ104に接続されているとともにハブ104から遠位端103に延びるカテーテル102を含む。カテーテル102は、接着剤、摩擦嵌めを用いて、インサート成形、および/または他の適切な取着手段により、ハブ104に結合され得る。ストレインリリーフ部材106もまた、カテーテル102の近位側セクションにわたってハブ104の近くに配置される。ストレインリリーフ部材106は、ハブ104の隣り合うセクションに実質的に一致する外径を有する。ストレインリリーフ部材106は、ほぼ一定の外径を有するハブ104からある距離にわたって延びてから、カテーテル102が出現するとともにさらに遠位に延びる端部まで遠位にテーパする。ストレインリリーフ部材106は、ストレインリリーフ部材106にさらなる可撓性を与えるように機能する、かつ/または、ユーザグリップおよび触覚係合のための表面特徴を与えるように機能する、ほぼ一定の外径のセクションに配置された溝パターン108を含み得る。
【0020】
[0040]カテーテル102の作動長さ(すなわち、ストレインリリーフ(106)の遠位端とカテーテル(102)の遠位端(103)との間の距離)は、特定の用途に応じて様々とすることができる。一例として、カテーテル102は、約50cmから約200cmの作動長さを有するが、適切な場合には、より短いまたはより長い長さが用いられてもよい。カテーテルサイズ(典型的には、内径/管腔サイズを指す)もまた、特定の応用ニーズに従って様々であってもよい。例として、0.254mm(0.010インチ)、0.330mm(0.013インチ)、0.432mm(0.017インチ)、0.533mm(0.021インチ)、0.686mm(0.027インチ)、0.762mm(0.030インチ)、0.890mm(0.035インチ)、0.965mm(0.038インチ)、1.143mm(0.045インチ)、1.651mm(0.065インチ)、2.519mm(0.085インチ)、2.54mm(0.100インチ)、または端点として上記の値の任意の2つを含む範囲が挙げられる。カテーテルの内径は、より小さい遠位部分からより大きい近位部分にテーパし得る。必要に応じて、いくつかの用途において、より小さいまたはより大きいサイズが用いられてもよい。
【0021】
[0041]さらに、カテーテル102の外径は、特定の応用ニーズに従って様々であってもよい。例として、0.254mm(0.010インチ)、0.330mm(0.013インチ)、0.432mm(0.017インチ)、0.533mm(0.021インチ)、0.660mm(0.026インチ)、0.686mm(0.027インチ)、0.762mm(0.030インチ)、0.890mm(0.035インチ)、0.965mm(0.038インチ)、1.143mm(0.045インチ)、1.651mm(0.065インチ)、2.519mm(0.085インチ)、2.54mm(0.100インチ)、3.429mm(0.135インチ)、4.191mm(0.165インチ)、5.334mm(0.20インチ)または端点として上記の値の任意の2つを含む範囲が挙げられる。
【0022】
[0042]直線形状を有するものとしてカテーテル102の遠位側セクションがこの例において示されているが、他の実施形態は成形遠位先端を含んでもよい。例えば、カテーテル102の遠位側セクションは、傾斜形状、湾曲形状(例えば、45度角度、90度角度、J形状など)、複合湾曲形状、または当該技術分野において知られている他の適切な傾斜もしくは湾曲形状を有することができる。
【0023】
[0043]本明細書において説明されるカテーテルデバイス100は、様々な介入用途のために、最も一般的には、心臓血管処置、末梢血管処置、および神経介入処置において用いられ得る。例として、遠位の解剖学的構造へのアクセス、血管病変もしくは凝血の横断、虚血治療、治療薬剤(例えば、塞栓コイルまたは他の塞栓薬剤)の送達、診断剤(例えば、造影剤または塩水)の注射、回復用途、呼吸用途、または、マイクロカテーテルの使用が有益である他の用途が挙げられる。
【0024】
[0044]カテーテル102の内部特徴を以下でより詳細に説明する。カテーテル102の外側表面は、表面をより潤滑にするために親水性コーティングなどの適切なコーティング材料でコーティングされ得る。コーティング材料は、カテーテル102の作動長さのほぼすべてまたはその一部を覆ってもよい。例えば、コーティング材料は、カテーテル102の作動長さの最遠位の30%から80%に適用され得る。
【0025】
[0045]図2は、カテーテル102の内部構成要素のうちのいくつかおよび種々の長手方向セクションをよりよく示す、カテーテル102の詳細図を示す。図示のように、カテーテル102は、デバイスの内側管腔を画定する内側ライナ110を含む。ライナ110は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および/または他の適切なポリマーから形成され得る。遠位端103の近くのワイヤにコイル114が配置されている。コイル114は、そこから近位に延びる微細加工シャフト112(本明細書において「内側シャフト」とも呼ばれる)の隣に取り付けられるまたは配置される。1つまたは複数のポリマー材料から形成される外側部材115が典型的に、コイル114およびシャフト112に対しておよびコイル114およびシャフト112にわたって熱収縮積層され、両方を包むとともにライナに取り付けもする。
【0026】
[0046]一実施形態では、コイル114は、ステンレス鋼から形成され、シャフト112はニチノールから形成される。これらの材料は、本明細書において説明される他の特徴と組み合わせて使用される場合、有効な軸方向応答、曲げ力の有効な分散、および滑らかな曲げ剛性プロファイルを提供することが見出されている。他の実施形態は、コイル114、シャフト112またはそれらの両方について1つまたは複数の種々の材料を用い得る。いくつかの実施形態では、例えば、シャフト112は、他の超弾性合金、および/または、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)もしくは他のポリアリルエーテルケトン(PAEK)などの1つまたは複数のポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、コイル114は、ニチノールなどの超弾性合金、1つまたは複数の他の金属、合金、またはポリマーを含み得る。
【0027】
[0047]カテーテル102は、曲げ剛性プロファイル全体が近位側セクションでのより高い剛性(およびより低い曲げ可撓性)から遠位側セクションでのより低い剛性(およびより大きい曲げ可撓性)に移行するように構成される。たいていの用途では、比較的高い軸方向、ねじり剛性、および曲げ剛性の近位側セクションが可撓性と、押込伝達性と、トルク伝達性とのよい組合せを提供することができるため、そのようなセクションを示すことが望ましい。しかしながら、遠位側セクションは多くの場合、蛇行した血管系を通ってナビゲートされ、したがって、好ましくは、曲がるときに比較的より可撓性がある。この剛性プロファイル勾配は、微細加工シャフト112の特定の特徴を調整することによって、および/または、外側部材115においてシャフト112をコーティングおよび埋め込むように種々のポリマー材料を用いることによって形成することができる。以下でより詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、マイクロカテーテル112および外側部材115は、剛性の急激な変化を最小限にするとともに滑らか剛性移行を提供する剛性プロファイル全体を提供するよう、ともに作動するように構成される。
【0028】
[0048]例示の実施形態は、遠位側セクション120と、中間セクション122と、近位側セクション124とを含む。遠位側セクション120において、外側部材115は、第1のポリマー材料116aから形成される。中間セクション122において、外側部材115は、第2のポリマー材料116bから形成される。近位側セクション124において、外側部材115は、第3のポリマー材料116cから形成される。ポリマー材料116a、116b、および116cは、異なる硬度を有し、したがって、そのそれぞれのセクションの剛性に異なって影響する。第2のポリマー材料116bは、第1のポリマー材料116aよりも高い硬度を有し、第3のポリマー材料116cは、第2のポリマー材料116bよりも高い硬度を有する。
【0029】
[0049]一組のポリマー材料の一例はともに用いられると有効であることが見出されているため、第1のポリマー材料116aは、約20から約30のショアD硬度を有し得、第2のポリマー材料116bは、約30から約50のショアD硬度を有し得、第3のポリマー材料116cは、約50から約80のショアD硬度を有し得る。他の実施形態は、遠位部分においてより柔らかいなど、所望に応じて、これらの値を変えることができるが、上記の値が特に有効であることが見出されている。ポリマー材料116a、116bおよび116cは、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)ポリマーなどの適切なポリマーから独立して形成され得、ポリマーのデュロメータにおいて約10のショアA硬度から約100のショアD硬度の範囲にあるものとすることができる。
【0030】
[0050]シャフト112はまた、可変曲げ剛性を提供する特徴を含む。図示のように、シャフト112は、一連の微細加工カットを含むチューブ構造である。これらカットは、連続的な周方向に延びる「リング」を接続する軸方向に延びる「桁」を形成する。これらのカットパターンは、シャフト112の曲げ剛性を調整するように様々であってもよい。例えば、曲げ剛性は、隣り合うリングの各対間にある桁の本数を調整することによって適応させることができる。遠位側セクション120に示すような「2本桁セクション」は、隣り合うリングの各対間に2本の桁を含む。中間セクション122および近位側セクション124において示すような「3本桁セクション」は、隣り合うリングの各対間に3本の桁を含む。他のすべて(シャフト材料、カット深さ、カット幅、カット間隔)が等しい場合、3本桁セクションは曲げ剛性が2本桁セクションよりも大きい。隣り合うリングを接続する単一の桁を有する「1本桁セクション」も用いられ得、このセクションは、他のすべてが等しい場合、2本桁セクションよりもさらに低い曲げ剛性を有する。「4本桁セクション」および/または4つよりも多くの桁を有するセクションも用いられ得、したがって、このセクションは、隣り合うリングの各対間の桁の本数が増えるにつれ、より高い曲げ剛性を提供する。
【0031】
[0051]図3A図3Cは、それぞれ1本桁セクション、2本桁セクション、および3本桁セクションの例を示し、そのようなセクションにおける、桁130およびリング132の例示的な配置を示す。桁は、連続した組の桁間の角度オフセット(またはその欠如)に応じて、および/または角度オフセットがどのくらいの頻度で(例えば、各リングの後または2つ以上のリングの後で)加えられるかに応じて、様々な配置で構成することができる。図3Aの1本桁セクションは例えば、1本の桁から隣の桁に180度角度オフセットを含み、図3Bの2本桁セクションは、1本の桁対から隣の桁に90度オフセットを含み、図3Cの3本桁セクションは、1組の桁から隣の桁に120度角度オフセットを含む。これらのタイプのオフセットは、有益である一方、好ましい曲げ平面にも関連付けられ、好ましい曲げ平面を最小限にするまたは排除するために他の配置が設けられてもよい。例として、螺旋配置、分散配置、不完全ランプ配置、および鋸歯状配置が挙げられる。本開示のシャフト102に用いられ得る桁配置に関するさらなる詳細は、米国特許第11,369,351号および米国特許出願第2022/0105312号に提示されており、これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
[0052]リング間に配置された桁の本数を調整することに加え、シャフト112の曲げ可撓性が、カットの深さ、カットの幅、および/またはカットの間隔を調整することによって制御され得る。典型的に、カットの幅は、所与の値(例えば、カット用ブレードサイズに対応する)に設定され、曲げ剛性プロファイルに対して所望の制御を提供するために製造時にカット深さおよび/またはカット間隔を調整することが容易である。他のすべてが等しい場合、リング幅が減少(すなわち、カット間隔が減少)するにつれ、カット幅が増大し、および/または桁幅が減少(すなわち、カット深さが増大)し、結果として、曲げ剛性が低減する。例示の実施形態では、3本桁セクション(中間セクション122および近位側セクション124と一致する)におけるカット間の間隔は、遠位側セクション120に近くなるにつれ、漸次的に減少する。同様に、2本桁セクション(遠位側セクション120と一致する)は、カット間のより大きいスペースで始まり、コイル114および遠位端103に近くなるにつれ、カット間のより小さいスペースに進む。好ましくは、種々の幾何学形状間(例えば、3本桁から2本桁への)移行は、曲げ剛性がこれらのセクションの移行にわたって同じまたは同様であるように構成される。したがって、シャフト112は、3本桁セクションから2本桁セクションに移行するものとして、また、より離間しているカットから比較的あまり離間していないカットに移行するものとしてそれぞれのセクション内にもある、剛性勾配を提供する。
【0033】
[0053]2本桁セクションの遠位端において、カットパターンは、コイル114の高い可撓性に滑らかな移行を提供するために、比較的高い可撓性を有して構成される。いくつかの実施形態では、コイル114は省略され、代わりに、遠位端103におけるまたはその近くの位置に延びる2本桁セクション(または代替的に、1本桁セクション)の多くが用いられる。
【0034】
[0054]桁120、122および124の長さは、特定の応用ニーズまたは好みに応じて様々であってもよい。一実施形態では、遠位側セクション120は、約5cmから約40cmの長さを有し得、中間セクション122は、約10cmから約50cmの長さを有し得、近位側セクション124は、カテーテル102の作動長さの残りを占める。例示の実施形態は、シャフト112が、中間セクション122から遠位側セクション120への移行において3本桁構成から2本桁構成に移行することを示す。しかしながら、シャフト112の移行は、別個のセクション120、122、および124を画定するポリマー材料の移行に必ずしも対応する必要はない。以下でより詳細に説明するように、シャフト112および外側部材115は、急激な剛性変化を補償するとともに最小限にするようにともに構成され、いくつかの例では、外側部材115のポリマー移行と全く重ならないシャフト移行ゾーンを伴ってもよい。
【0035】
[0055]図4は、ライナ110、遠位放射線不透過性マーカバンド140、コイル114、シャフト112、および近位放射線不透過性マーカバンド142などの特定の遠位特徴をよりよく示す、カテーテル102の遠位側セクション120の詳細図を示す。マーカバンド140および142は、ステンレス鋼よりも放射線不透過性である材料から形成される。例として、白金、イリジウム、タングステン、他の高放射線不透過性金属、およびその合金が挙げられる。遠位マーカバンド140は、カテーテル102の遠位端103の位置の表示を提供するが、近位マーカバンド142は、着脱可能な塞栓コイル、または、カテーテル102を通じて展開される他の構成要素の適切な配置を助けるために、所定の長さ(例えば、2から5センチメートル、または約3センチメートル)だけオフセットされる。
【0036】
[0056]シャフト112は、近位マーカバンド142が配置される位置に周溝を含み得る。この溝は、マーカバンド142の外側表面がシャフト112の外径を超えて過度に延びないようにマーカバンド142を受け入れることができる。近位マーカバンド142にわたる、デバイスの外径は、外側部材115によって覆われると、ほぼ面一のままとなる。
【0037】
[0057]例示の実施形態では、コイル114は可変ピッチとされる。コイル114の各端は、コイルが微細加工チューブに移行するなど、或る幾何学形状から別の幾何学形状への曲げ剛性のより改善された移行を提供する狭ピッチ領域を含む。一例として、コイル114は、約1cmから約3cmの長さを有し得る。図示のように、ライナ110の一部は、コイル114および遠位マーカコイル140から遠位に或る距離を延び得る。この距離は、例えば約0.2mmから約2mmまで様々であり得る。
【0038】
カテーテル曲げ力分散
[0058]本明細書において説明されるカテーテルデバイスは、曲げ力を効果的に分散させることにより使用時に改善された軸方向応答をもたらす特徴を含む。図5Aおよび図5Bは、人工血管系構造中で従来のカテーテル(この例ではSTRYKER EXCELSIOR SL-10が示されている)をナビゲートすることの一般的な制約を示す。カテーテルが血管中の曲がりに接近するにつれ、カテーテルの特定の長さが曲がりの周りに延びる(図5Aの初期位置)。さらに押し込むと、連続した押し込みにより、血管系を通るカテーテルの遠位先端部を実際に前進させることにならないうちに、カテーテルを血管の壁に押し付けて湾曲に入る(図5Bにおける押込位置の後;矢印によって示す接触点を参照のこと)際に初期の軸方向移動がとられる。近位端において使用者によって与えられる軸方向押込量と、その結果生じる遠位端の前方移動とのこのような対応の低減は、ナビゲーションをより困難にするとともにより触覚直感の低いものにする。さらに、上述したように、施術者は、多くの例において、血管壁が引き起こす抵抗に打ち勝つためにさらなる押込力を加えることができず、その理由は、そのようにすると患者損傷の危険に陥ることになるためである。
【0039】
[0059]図5Aおよび図5Bにおけるような従来のカテーテルの応答と比較すると、図5Cおよび図5Dは、本明細書において説明されるようなカテーテル102を使用した、血管の曲がりのナビゲーションを示す。図示のように、「初期」位置(図5C)から押込後の位置(図5D)まで、血管の湾曲に入る際に軸方向移動はあまりとられず、したがって、軸方向移動のより多くがカテーテル102の遠位端の実際の移動に伝達される。この機能は、カテーテル102の長さに沿って曲げ力を分散させる能力の向上に起因する。曲げ力をよりよく分散させることによって、カテーテル102は、任意の1つの特定の場所における曲げによりよく抵抗し、それにより、近位の軸方向移動をデバイスの遠位端によりよく伝達することができる。
【0040】
[0060]図6は、カテーテル102が曲げ力を効果的に分散させることができることをさらに示す。図6は、曲げ時のシャフト112の一部を示す。ポリマー材料116がシャフト112の桁とリングとの間の隙間を満たしている。見やすくするため、ポリマー材料116は、シャフト112の隙間のそれぞれにおいて個別のセクションで示されている。多くの場合、ポリマー材料116は、隙間を満たし、ライナ110と融合し、シャフト112の外側表面にわたって延びてもいることで、シャフト112を完全に封じ込めるかつ埋め込む。
【0041】
[0061]シャフト112の曲げ時、シャフト構造は、曲げ応力をより分散させにくいとともにより捩れさせやすいコイルまたはブレイドに比して、より多くの曲げ応力に局所的に抵抗し、より有効にこの応力を構造の隣り合う部分に分散させる。さらに、ポリマー材料116は、シャフト112の隣り合うリング間にそれぞれ配置された一連のダンパーとして有効に機能する。曲がりの内側において、ポリマー材料116は圧迫され、したがって、外方へリングに押し当たるとともにさらなる曲げに抵抗する反作用力をもたらす。同様に、曲がりの外側において、ポリマー材料116は引張状態にされ、したがって、リングを内方へ引くとともにさらなる曲げに抵抗する反作用力をもたらす。カテーテル102の曲げ剛性は非線形であり、その理由は、曲げ角度が増加するにつれ、非線形的に、曲げに対して漸増的に抵抗性があるものとなるためである。
【0042】
[0062]曲げ時、従来のカテーテルは、先端が曲がり始め、カテーテルの断面形状が「楕円状になる」傾向がある可能性がある。「楕円化」が始まると、曲げに対する抵抗が減少し、したがって、曲げ力を連続して加えることにより曲がることがますます容易となる。これに対し、開示されるカテーテル102において、シャフト112に対する微細加工構造およびポリマー材料116の作用によって提供される曲げ抵抗が、カテーテル102の軸方向長さに沿って曲げ力を分散させるとともに楕円化と特定のキンク点における曲げ力の集中とを回避する傾向がある。例えば、曲げ抵抗は、曲がりを特定の点に集中させることによりキンク位置を形成するのではなく、曲がりをより大きい曲率半径に広げる傾向がある。したがって、カテーテル構造によって提供される曲げ抵抗は、(図5Cおよび図5Dによって示すような)軸方向応答性の向上、および、曲げ応力によって引き起こされる機械的疲労からの保護の向上も提供する。
【0043】
カテーテル曲げ剛性プロファイルの平滑化
[0063]図7Aおよび図7Bは、微細加工シャフトが1つのポリマーから別のポリマーへの移行による外側部材の剛性のステップ変化を補償するように構成され得ることを示す。図7Aは、カテーテル102のうち、第1のポリマー材料116aが第2のポリマー材料116bと合流する部分を示す。図7Bに示すように、これは、外側部材のポリマー層の曲げ剛性の急激なステップ変化に関連付けられる。曲げ剛性のそのような急激な変化は望ましくなく、その理由は、そのような急激な変化が、機械的応力を集中させ、キンク点を生じさせ、デバイスの滑らかな移動および曲げを途絶させ、蛇行した血管系におけるナビゲーションを複雑にする可能性があるためである。
【0044】
[0064]このステップ変化を補償するために、シャフトは、曲げ剛性が、全く変わるとともにポリマー外側部材の曲げ剛性の急激な変化を補償するように構成される。その結果、カテーテルの曲げ剛性全体が、第1のポリマー116aから第2のポリマー116bへの移行にわたって比較的滑らかなままとなる。曲げ剛性の急激なステップ変化を最小限にするとともに滑らかにするために他のポリマー移行ゾーンにおいて同様の構成が用いられ得る。シャフト112は、様々なやり方でステップ変化を補償するように構成することができる。図7Aの例において、第2のポリマー116bの曲げ剛性が第1のポリマー116aよりも高いため、シャフト112のカット/隙間の構成は、一定のままであるか、または、移行にわたって短距離間狭められてから再び広がって、さらに近位に移動する間にシャフト曲げ剛性を概ね増加させる。曲げ剛性プロファイル全体を滑らかにする結果を達成するために、本明細書において説明されるようなシャフト112の曲げ剛性を調整する(例えば、桁の本数および/またはカット深さを調整する)他の手段が追加的または代替的に使用されてもよい。
【0045】
[0065]ポリマー外側部材115の急激な曲げ剛性変化を補償するようにシャフト112を構成することは有益には、そのような移行を滑らかにするための他の従来手法の複雑化を回避する。従来手法は、複雑なスプライス接続配置またはポリマー共押出および混合技術に依拠する。これらは、余計な複雑化の層を製造プロセスに加え、依然として移行の急激性をわずかしか解決しないであろう。他の手法は、ポリマータイプ間の移行を補償するためにポリマーチュービングの種々の直径および直径勾配を利用する。しかしながら、これらの手法は、不均一な外径をもたらすことになるか、または、さらにより多くの材料を重ねることによってこの不均一な外径をなんとか対処しようとするための要件を加えることになる。
【0046】
[0066]本明細書において説明される平滑化特徴は、従来のマイクロカテーテルに比べて改善された曲げ剛性プロファイルを有するマイクロカーテルの製造を可能にする。図8Aおよび図8Bは、本開示に従って作製されたカテーテル(「Plato17」と付されている)の曲げ剛性プロファイルをいくつかの従来のマイクロカテーテルの曲げ剛性プロファイルと比較した試験結果を示す。図中、「SL10」は、Excelsior SL-10(Stryker Neurovascular社により販売)を指し、「XT17」は、Excelsior XT-17(Stryker Neurovascular社により販売)を指し、「Ech14」は、Echelon14(Medtronic社により販売)を指し、「Ech10」は、Echelon10(Medtronic社により販売)を指し、「HW17」は、Headway17(Micro Vention Terumo社により販売)を指す。図8Aは、デバイスの遠位50から60cmについての曲げ剛性プロファイルを示す。図8Bは、デバイスの遠位15cmについての曲げ剛性プロファイルのより近い図を提示する。図中、Plato17のデータは、5回の反復回数分の平均を表し、SL10のデータは、3回の反復回数分の平均を表し、XT17のデータは、2回の反復回数分の平均を表し、Ech14のデータは、2回の反復回数分の平均を表し、Ech10のデータは、3回の反復回数分の平均を表し、HW17のデータは、2回の反復回数分の平均を表す。図示のように、本開示に対応するカテーテルは、曲げ剛性の急激な変化がより少ない滑らかなプロファイルをもたらす。
【0047】
[0067]表1は、種々の遠位側セクションサイズを列挙するとともにそのセクション内において最も高く測定された「勾配」を提示することによって、図8Aおよび図8Bのデータを示す。「勾配」は、測定されたデータ点間の距離(cm)に対する曲げ剛性(N・m)の変化を表す。図8Aおよび図8Bにおけるデータ点から明らかなように、0.5cmから2.5cmの増分で測定が行われ、通常、1cmごとに、はっきりとしたポリマー移行が明らかである領域でより小さい増分があり、遠位端から約15から20cmに到達すると、より大きい増分がある。したがって、勾配は、カテーテルの所与のセクションにわたる曲げ剛性変化の急激性の表示を提示する。
【0048】
【表1】
【0049】
[0068]図示のように、Plato17は、遠位15cmセクションにわたる、遠位35cmセクションにわたる、および遠位50cmセクションにわたる最も低く測定された勾配を有する。図8Aおよび図8Bのデータに基づき、表1にさらに開示されるように、いくつかの実施形態では、本明細書において説明されるようなカテーテルデバイスは、遠位15cmセクションについて約6.0×10-7以下、遠位35cmセクションについて約9.0×10-7以下、および/または遠位50cmセクションについて約9.0×10-7以下の曲げ剛性勾配((N・m)/cm)を有する。本開示に従って構成されたPlato17デバイスが上記の特徴のそれぞれを達成したのに対し、試験された他の従来のカテーテルデバイスのいずれもそのように達成することができなかった。
【0050】
[0069]いくつかの実施形態では、カテーテルデバイスの遠位35cmの少なくとも一部は、5×10-6N・m以上の曲げ剛性を有する。いくつかの実施形態では、上記の剛性最小に加え、本明細書において説明されるカテーテルデバイスは、遠位35cmセクションについて約4.0×10-6以下、および/または遠位50cmセクションについて約4.5×10-6以下の曲げ剛性勾配((N・m)/cm)を有する。図8Aおよび図8Bならびに表1に示すように、Plato17デバイスがこれらの要件を満たすのに対し、Headway-17カテーテルは、最小曲げ剛性要件を満たさず、試験された他のカテーテルのいずれも勾配要件を満たさない。
【0051】
[0070]図9は、本開示によるPlato17デバイスの遠位長さに沿った外径を様々な従来のカテーテルデバイスと比較している。より高いデータ点は、ポリマー移行が目に見えて明らかである点を表す。図9からのデータは表2にも表されており、表2は、カテーテルデバイスのそれぞれの遠位15cmセクションおよび遠位35cmセクション内における最大直径変化を示す。図示のように、Plato17の直径は、遠位15cmセクションにわたって、および遠位35cmセクションにわたって、0.0432mm(0.0017インチ)以下だけ変化する。
【0052】
【表2】
【0053】
[0071]いくつかの実施形態では、本明細書において説明されるようなカテーテルデバイスは、(1)カテーテルデバイスの遠位35cmの少なくとも一部において、5×10-6N・m以上の曲げ剛性、(2)遠位15cmおよび/または遠位35cmセクションにわたって0.051mm(0.002インチ)以下の外径の変化、および(3)遠位15cmセクションについて約1.3×10-6以下、遠位35cmについて約4.2×10-6以下、および/または遠位50cmセクションについて約1.1×10-5以下の曲げ剛性勾配((N・m)/cm)を有する。本開示に従って構成されたPlato17デバイスが上記の特徴のそれぞれを達成したのに対し、試験された他の従来のカテーテルデバイスのいずれもそのように達成することができなかった。すなわち、Headway-17カテーテルは、最小曲げ剛性要件を満たさず、Echelon-10は、直径変化要件を満たさず、試験された他のカテーテルのいずれも勾配要件を満たさない。
【0054】
[0072]いくつかの実施形態では、上述した有益な曲げ剛性プロファイル特徴は、外側部材の第1のポリマーが外側部材の第2のポリマーに移行する移行セクションに特に当てはまる。
【0055】
[0073]いくつかの実施形態では、シャフト112は、その長さに沿ってほぼ同じ肉厚を維持する。コイルおよび/またはブレイドに基づいた他のカテーテルデバイスはほとんどの場合、調整された肉厚を移行点において有するであろう。肉厚の変化は、さらなるキンクもしくは応力点をもたらす可能性があり、かつ/または、対処するためにさらなる製造ステップを必要とする可能性がある。
【0056】
[0074]いくつかの実施形態では、シャフト112がコイル114に移行し、および/またはコイル114がライナ110の最遠位側セクションに移行することから、遠位先端部領域に関連付けられた許容可能な曲げ剛性変化が存在し得る。これらの剛性変化は、遠位端103のそのような近くにあるために許容可能であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、上記の曲げ剛性変化の制約から最遠位3から5cmが想定され得る。
【0057】
カテーテル耐疲労性
[0075]本明細書において説明されるカテーテルデバイスはまた、有益には、効果的な耐疲労性をもたらす。例えば、ASTM E2948に基づいた曲げおよび捩れ疲労試験方法において、本明細書において説明されるようなカテーテルデバイスは、故障するまで20回超のサイクルを達成することが可能である。曲げおよび捩れ疲労試験方法は、より詳細に文書TM-00127に記載されており、この文書は添付書1として本明細書に添付されている。要するに、試験は、細線の周りでの固体の回転曲げ疲労を測定する標準的な試験方法であるASTM E2948から適合される。
【0058】
[0076]開示されるカテーテルデバイスの効果的な耐疲労性は、デバイスのシャフト部分の全長に沿って、または、デバイスの1つもしくは複数のサブセクションに沿って(例えば、約3から35cm、または約3から20cm、または約3から10cmの長さを有する1つまたは複数のセクションに沿って)存在し得る。効果的な耐疲労性は、以下のパラメータ、すなわち、(1)シャフト112の対応する外径の約30%以下にリング幅を維持すること、および/または(2)シャフト112の外径の約11%以上にカット深さを維持すること、のうちの1つまたは複数によってもたらされる。
【0059】
例示的なガイドワイヤ
[0077]上述したように、本開示のカテーテルデバイスは、本明細書において記載される有益性(例えば、カテーテルデバイスの近位部分において50g以下の押込力を加えることによる、蛇行経路内でのガイドワイヤデバイスを通じてのカテーテルデバイスの前進)を達成するために、様々なガイドワイヤデバイスと組み合わせて動作し得る。
【0060】
[0078]図10図20は、上述したカテーテルデバイスと組み合わせて用いられ得る例示的なガイドワイヤの構成要素および側面を示す。図10図20は、少なくともいくつかの点において、手動で成形可能な先端部および/または特定のカットパターンを含むガイドワイヤデバイスに焦点を当てているが、本開示に鑑み、本開示のカテーテルデバイスと組み合わせて用いるためのガイドワイヤデバイスは、追加的または代替的な特徴および/または構成要素を含んでもよいことが理解されるであろう。
【0061】
[0079]開示されるガイドワイヤおよびカテーテルシステムのガイドワイヤによって用いられ得るガイドワイヤ特徴および構成要素の例が、米国特許第11,369,351号(ガイドワイヤチューブのための分散された不完全ランプおよび鋸歯状カットパターンを開示)、米国特許出願第2021/0228845号(チューブの外径がコアの近位側セクションの外径よりも大きく、チューブ内においてコアの遠位側セクションのセンタリングをもたらすための様々なコイル構成を含む、ガイドワイヤデバイスを開示)、および米国特許出願第2021/0346656号(ねじり剛性と側方曲げ剛性との高い比を有するガイドワイヤデバイスを開示)に記載されており、これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
[0080]図10は、コア202を有する例示的なガイドワイヤデバイス200を示す。チューブ204がコア202に結合され、取付点203の一点からコア202へ遠位に延びる。図示のように、コア202の遠位側セクションがチューブ204に延出し、チューブ204によって囲まれている。いくつかの実施形態では、コア202は、コア202がチューブ204内に嵌まるとともにチューブ204に延出することができるように1つまたは複数のテーパセクションを含む。例えば、コア202の遠位側セクションは、遠位端における、より小さい直径まで、漸次的にテーパするように研がれ得る。この例では、コア202およびチューブ204は、互いに隣接するとともに取り付ける取付点203においてほぼ同様の外径を有する。いくつかの実施形態では、コア202およびチューブ204は、互いに隣接するとともに取り付ける取付点203において異なる外径を有し、直径の差は、溶接、はんだ、接着、締まり嵌め、または他の構造取付手段によって補償される。
【0063】
[0081]チューブ204は、ねじり力がコア202からチューブ204に伝達されることによりチューブ204によって遠位にさらに伝達されることを可能するやり方で(例えば、接着、はんだ付け、および/または溶接を用いて)コア202に結合される。デバイスの遠位端においてチューブ204をコアワイヤ202に結合するのに、また、非外傷性の被覆物を形成するのに医療グレードの接着剤220が使用され得る。以下でより詳細に説明するように、チューブ204は、複数のカットを含むように微細加工される。カットは、優れたトルク伝達性を維持しつつも、ガイドワイヤデバイス200の遠位先端部の近くで有効な成形性を有益に提供するカットパターンを形成するように配列される。明確にするために、図10および図11にカットパターンは示されていない。チューブ204に用いられ得るカットパターンの例が図12図14に示されている。
【0064】
[0082]ガイドワイヤデバイス200の近位側セクション210が、標的の解剖学的領域への送達に十分なガイドワイヤ長さを提供するのに必要な長さまで近位に延びる。近位側セクション210は典型的に、約50から350cmの範囲の長さを有する。近位側セクション210は、約0.356mm(約0.014インチ)の直径、または約0.203mm(約0.008インチ)から3.175mm(0.125インチ)の範囲内の直径を有し得る。コア202の遠位側セクション212は、約0.051mm(約0.002インチ)の直径、または約0.025mm(約0.001インチ)から1.27mm(0.050インチ)の範囲内の直径までテーパし得る。いくつかの実施形態では、チューブ204は、約3から100cmの範囲内の長さを有する。
【0065】
[0083]いくつかの実施形態では、コア202の遠位側セクション212は、円形断面までテーパする。他の実施形態では、コア202の遠位側セクション212は、平坦または矩形断面を有する。遠位側セクション212もまた、その長さに沿って種々の領域において、別の多角形形状、卵形形状、不規則形状、または種々の断面形状の組合せなどの、別の断面形状を有し得る。
【0066】
[0084]典型的に、使用者は、手動でガイドワイヤデバイス200の遠位1cmから3cm(近似)を曲げる、ねじる、または他のやり方で所望の形状に操作することによって、ガイドワイヤデバイス200の遠位端を成形する。この長さは、図10において遠位「先端部」206として概略的に示されている。いくつかの実施形態では、先端部206は、ステンレス鋼、白金、および/または他の成形可能な材料から形成された1つまたは複数の成形可能な構成要素(チューブ204内にある)を含む。好ましい実施形態では、先端部206は、加工硬化特性を呈する材料から形成された1つまたは複数の構成要素を含み、そのため、先端部は、成形(すなわち、塑性変形)されると、成形されたセクションにおいて、成形される前よりも高い弾性率を提供する。
【0067】
[0085]図11は、図10のガイドワイヤデバイス200の断面図を示す。図示のように、コア202は、近位側セクション210および遠位側セクション212を含み、遠位側セクションが近位側セクション210よりも小さい直径を有している。コア202の遠位側セクション212の少なくとも一部にコイル214が配置されている。コイル214は好ましくは、白金族、金、銀、パラジウム、イリジウム、オスミウム、タンタル、タングステン、ビスマス、ジスプロシウム、ガドリニウムなどのような、1つまたは複数の放射線不透過性材料から形成される。追加的または代替的に、コイル214は、ステンレス鋼から、または、使用者によって曲げられるかもしくは他のやり方で操作された後で成形状態に有効に保持することが可能な他の材料から少なくとも部分的に形成されてもよい。例示の実施形態では、コイル214は、デバイスの遠位端にまたはその近くに配置されており、取付点203へ向かって近位にある距離を延びている。いくつかの実施形態では、コイル214は、チューブ204の長さとほぼ一致する長さを有する。他の実施形態では、コイル214はより短い。例えば、コイル214は、1、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30、または35cmだけ遠位端から延びていてもよく、または上記の値のうちの任意の2つによって規定される範囲内の距離を近位端から延びていてもよい。
【0068】
[0086]いくつかの実施形態では、コイル214は、1つの一体部片として形成される。他の実施形態では、コイル214は、互いに隣り合って配置されたかつ/または絡合型コイルにより連結された複数の別個のセクションを含む。そのような別個のセグメントは追加的または代替的に、はんだ付け、接着、または他のやり方で互いに締結されて完全なコイル214を形成してもよい。いくつかの実施形態は、2つ以上のコイルを含んでもよく、その場合、コイルのうちの少なくとも1つは放射線不透過性を提供するように構成され、コイルのうちの少なくとも1つはサイズおよび形状がチューブ204の内部でのコア202の遠位側セクション212のセンタリングを改善するように構成される。
【0069】
[0087]例示の実施形態はコイル214とチューブ204との間に空間を示しているが、これは、見やすくするために模式的になされていることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、コイル214は、遠位側セクション212とチューブ204との間の空間のより大きな割合を充填するとともに満たすようにサイズ決めされる。例えば、コイル214は、コア202の遠位側セクション212およびチューブ204の内側表面の両方に当接するようにサイズ決めされ得る。他の実施形態は、ガイドワイヤデバイス200のセクションのうち、チューブ204およびコア202が同一の広がりを有する少なくとも一部について、コア202とチューブ204との間に空間を含む。
【0070】
[0088]コイル214は有益には、コア202の遠位側セクション212の湾曲をチューブ204の湾曲と位置合わせするようにコア202とチューブ204との間の空間を満たすように機能し得る。例えば、湾曲がチューブ204内に形成される場合、コイル214の密に詰まったセグメントは、同じ湾曲を遠位側セクション212に与えるようにチューブ204と遠位側セクション212との間のパッキングとして機能する。これに対し、コイルを省いているガイドワイヤデバイスは、チューブに湾曲が形成される場合、チューブと同じ湾曲を辿ろうとはせずに、チューブの内側表面に当接するまで延びてから湾曲するように強いられることになる。
【0071】
[0089]本明細書において説明される実施形態は有益には、遠位端先端部206が所望の姿勢に成形されるとともに、成形姿勢に十分に長時間にわたって留まることを可能にする。従来のガイドワイヤデバイスとは対照的に、例示の実施形態は、成形構成を形成および維持することができる。従来のガイドワイヤデバイスの場合、チューブ構造と内部構成要素(コアおよびコイル)との間の特性の不整合の結果として成形性に関する問題が起こることが多い。チューブ構造は典型的に、ニチノールまたは他の超弾性材料から形成される。そのようなチューブは、曲げられるまたは成形されると、その元の(真っ直ぐな)姿勢へ付勢され、それにより、いずれもの成形可能な内部構成要素に抗して復元力を与える結果、先端部のカスタマイズされた形状の変形および損失が生じることになる。
【0072】
[0090]多くの場合、例えば、従来のガイドワイヤは、展開前に成形先端部を有しているであろうが、成形先端部は、超弾性チューブが所望の先端部形状とは反対のその元の形状へ撓むため、ガイドワイヤの使用中に先端部が失われるまたは損なわれることになる。こうして、チューブによって与えられる復元力が内部構成要素に抗して作用して、使用者によって設定された所望の形状を元に直すまたは損ねる。これに対し、本明細書において説明される実施形態は、チューブからの優先的な復元力を被ることなく先端部206が成形されることを可能にする特徴を含む。以下で説明するように、チューブ204は、先端部206のカスタム形状を乱すことを回避するように十分な可撓性を遠位先端部206に提供しつつも有効なトルク伝達性を維持するカットパターンを含み得る。
【0073】
[0091]図12図16は、本明細書に説明されるガイドワイヤデバイス実施形態のうちの1つまたは複数に用いられ得るチューブカットパターンの例示的な実施形態を示す。例えば、図10および図11に示す実施形態のチューブ204は、図12図16に示す構成のうちの1つまたは複数に従ってカットされ得る。
【0074】
[0092]図12は、桁530(軸方向に延びる)およびリング540(横断方向および周方向に延びる)を形成する一連のカット508を有するチューブ504を示す。例示の実施形態では、カット508は、一連の「バイパスカット」としてチューブに配列されている。本明細書において使用される場合、バイパスカットとは、チューブの長手方向軸に対してその真正面に対向するカットを有さず、それにより、横断方向および周方向に延びる材料のリング540間に長手方向に延びる材料の単一の桁530が残されるカットである。「バイパス」カットパターンは、本明細書において「1本桁」カットパターンと呼ばれることもある。桁の横断面幾何学形状は、円形ブレード付き切断鋸からつくり出されるもののような半円形、レーザ加工作業からつくり出されるもののような平坦面、または任意のタイプの断面形状を含む、様々な形状とすることができる。例示の実施形態では、カットは、チューブ504の長さに沿って1つのカットから次のカットまで約180度オフセットされている交互のカットとして配列されているが、以下で説明するように180度から0度とは異なる角度で回転オフセットもなされ得る。
【0075】
[0093]示すようなバイパス(すなわち、1本桁)カットの1つまたは複数のセクションを用いて形成されたチューブは、特にガイドワイヤデバイスの関連付けられる成形可能な先端部に関して、多くの有益性を提供することができる。例えば、バイパスカットを有するチューブの可撓性は、カットを有しないチューブまたは連続したリング間に複数の桁を残すカットを有するチューブ(例えば、桁幅、リングサイズ、およびカット間隔がその他の点では等しいものとする)の可撓性よりも比較的大きい。有益には、バイパスカット配列によってもたらされる可撓性の増加は、チューブがガイドワイヤの内部構造の形状を変形させることを最小限にするまたは防止する。例えば、チューブ内に配置されたコア(例えば、ステンレス鋼)は、ガイドワイヤの先端部に所望の形状を与えるように曲げるまたは湾曲する(すなわち、塑性変形する)ことができる。
【0076】
[0094]上記で説明したように、多くの事例では、チューブの弾性復元に関連付けられた力が成形コアに対して与えられ、少なくとも、成形コアのうち、チューブ内に配置された部分に関して、成形コアを真っ直ぐする傾向があるであろう。したがって、チューブの可撓性を適切に調整することが、成形コアに対して与えられた復元力を低減させ、成形コアがその形状に良好に維持することを可能にする。
【0077】
[0095]いくつかの実施形態では、連続したバイパスカットまたは複数組のバイパスカットの深さは、各連続したカットまたは複数組のカットについて遠位端に向かっていくにつれて漸次的に増加されている。したがって、所与の用途について所望の可撓性特性およびトルク伝達性特性を有するチューブを構成するのにカット深さプロファイルが利用され得る。例えば、1つのチューブ構成は、比較的低い可撓性および比較的高いトルク伝達性を有する近位側セクションを含むことができ、この近位側セクションは、バイパスカットが遠位端に向かって急激に漸次的に深くなっていくにつれ、比較的高い可撓性および比較的低いトルク伝達性を有する遠位側セクションへ急激に進んでいく。いくつかの実施形態では、比較的深いカットを有するセクションは、チューブの残りについて、より高いトルク伝達性を保つように、チューブのうち、成形性が期待されるまたは望まれる最遠位側セクション(例えば、チューブの遠位1から3cm)においてのみ、形成される。
【0078】
[0096]バイパスカット508は、深さ、幅、および/または間隔に応じて様々であってもよい。例えば、カット508は、デバイスの遠位先端部に近づくにつれ、漸次的に深くなっていてもよく、および/または、より密に離間していてもよい。より深い、および/または、より密に離間したカットは、比較的大きい可撓性をもたらす。したがって、ガイドワイヤの漸次的により遠位の領域においてガイドワイヤ可撓性を増加させるために提供する勾配が形成され得る。以下でより詳細に説明するように、バイパスカット508はまた、各隣り合うカットに適用される、または隣り合う組のカットに適用される角度オフセットに従って交互の角度位置で配列されてもよい。例示の実施形態は、1つのカットから次のカットまでの180度の角度オフセットを示す。いくつかの実施形態は、1つのカットから次のカットまでの、または1つの組のカットから次の組のカットまでの約5、15、30、45、60、75、80、または85度の角度オフセットを含み得る。
【0079】
[0097]図13は、バイパスカットと、バイパスカットより近位に配置された一組の対向する深さオフセット2本桁カットとを有するチューブ604の別の実施形態を示す。例示の実施形態では、一組のバイパスカットが桁630をもたらしている。桁630より近位に、一組のカットが対向するカットとして配列されており、この結果、桁634をもたらしている。この図では見えないが、各桁634に対向してさらなる桁(この図では桁634の後ろに隠れている)が形成されている。したがって、深さオフセット2本桁カットパターン内の各リング640は、リングをその近位に隣り合うリングに接続する一組の2つの桁と、リングをその遠位に隣り合うリングに接続する一組の2つの桁とを有する。
【0080】
[0098]図示のように、対向する2本桁カットは、それぞれの対向するカット対(チューブ軸の各側に1つのカット)について、カットのうちの一方が反対側のカットよりも大きい深さを有するように深さがオフセットされている。そのような深さオフセット2本桁カットは有利には、(図12に示すような)バイパスカットの長さから(図14に示すような)対向する非オフセット2本桁カットの長さに移行するのに用いられ得る。
【0081】
[0099]図14は、2本桁カットパターンを有するチューブ250のセクションを示し、各対向するカット対の各カットがおよそ同じカット深さを有しており、そのため、結果として得られる桁が実質的に周方向に等しく離間している。図示のように、カットは結果としてリング240のそれぞれの間に形成された一対の桁234をもたらす。カットはここでは、対向するカットの1つの対から次の対まで約90度だけ角度オフセットされているものとして示されているが、他の角度オフセットが用いられてもよい。
【0082】
[0100]実質的に周方向に等しく離間した桁を有する2本桁カットパターンを有するチューブのセクションは典型的に、比較的高いトルク伝達能力および比較的低い可撓性を有し、その一方、バイパスカットを有するチューブのセクションは典型的に、比較的低いトルク伝達能力および比較的高い可撓性を有することになる。深さオフセット2本桁カット構成を有するチューブのセクションは典型的に、対向する深さ対称2本桁カットのセクションのトルク伝達性および可撓性とバイパスカットのセクションのトルク伝達性および可撓性との間のトルク伝達性および可撓性を有することになる。対向するカットの深さ間の差が大きいほど、結果として得られる桁はともに周方向により近寄ることになり、したがって、オフセット2本桁カットは1本桁/バイパスカットにより類似したものとなる。同様に、対向するカットの深さがより類似するほど、オフセット2本桁カットは対称2本桁カットにより類似したものとなる。
【0083】
[0101]オフセット2本桁セクションを含むチューブの実施形態は有利には、遠位側バイパスカットゾーンと近位側対称2本桁セクションとの間に所望の移行特性を提供するように配置および構成され得る移行ゾーンを提供する。例えば、移行ゾーンは、移行ゾーンの長さに応じて、および/または連続したカットのオフセットに対する変化の急激さに応じて、比較的漸次的であってもまたは急激的であってもよい。したがって、チューブは、より大きいトルク伝達性およびより小さい可撓性を近位側セクションに与えるように構成され、この近位側セクションは、施術者によって成形されると曲がった形状を良好に維持するために、より大きい可撓性を有する、より可撓性の遠位側セクションに移行する。近位側セクション、移行セクション、および遠位側セクションの位置および構成は、有効なトルク伝達性および成形可能な先端部の性能の有益性を最適化するように調整可能である。
【0084】
[0102]図15は、複数の桁730およびリング740を形成する1本桁カットを有するチューブ704の別の実施形態を示す。図示のように、カットは、桁730が180度または何らかの他の角度量で交互に配置されるのではなく、チューブ704の片側に沿って整列するように配列されている。そのような実施形態は有益には、1つの方向への(例えば、整列した桁730へ向けた)優先的な曲げを提供し、そのため、チューブの軸へ向かって戻る関連付けられた復元力がさらに最小限にされる。
【0085】
[0103]図16は、バイパスカットパターンと複数組のカット間の角度オフセットとを有するチューブ304の実施形態を示す。図示のように、角度オフセットは、結果として得られる桁330をチューブセクションの長さに沿って回転/螺旋周方向パターンに配置する。いくつかの実施形態では、第1の角度オフセットが一組のカット内における1つのカットから次のカットまで適用され、第2の角度オフセットが1つの組のカットから次の組のカットまで適用される。例えば、図16に示すように、一対の隣り合うカットにおける各カット308は、結果としての桁330をガイドワイヤの長手方向軸に関して互いの反対側に残すように約180度オフセットされ得、その一方、各対は、隣り合う対から何らかの他の角度オフセットだけ(例えば、例示の実施形態では約5度だけ)オフセットされる。このようにして、組内角度オフセットが、桁330をガイドワイヤ軸の反対側に配置することができ、その一方、組間角度オフセットが、複数組のカット308の長さにわたってガイドワイヤの優先的な曲げ方向を最小限にするのに十分な連続した桁の角度位置を調整することができる。
【0086】
[0104]図12図15に示されたカットパターンに回転オフセットも適用され得る。好ましい実施形態では、所与のセクションの長さに沿った各連続したカットまたは複数組のカット(例えば、毎2番目のカット、毎3番目のカット、毎4番目のカットなど)が、約1、2、3、5、もしくは10度だけ回転オフセットされるか、または2本桁構成では90度から約1、2、3、5、もしくは10度だけずらしてオフセットされ、または1本桁構成では180度から1、2、3、5、もしくは10度だけずらしてオフセットされる。これらの回転オフセット値は有益には、屈曲バイアスを排除する優れた能力を示した。
【0087】
[0105]例えば、各対の桁が図14に示すような周方向に等しく離間している2本桁カットパターンでは、90度から約1、2、3、5、または10度ずれる回転オフセットが、一つおきの対の桁をカットセクションの長さに沿って数度の不整列で配置する。例えば、2番目の対の桁は、1番目の対の桁から90度よりわずかに大きくまたは小さく回転オフセットされ得るが、3番目の対の桁は、1番目の対から数度しか回転オフセットされず、4番目の対の桁は、2番目の対から数度しか回転オフセットされない。いくつかの連続した対の桁がガイドワイヤデバイスのカットセクションの長さに沿ってこのように配列されると、結果として得られる構造は、カットパターンがいずれもの方向可撓性バイアスをもたらすまたは悪化させることなく可撓性を高めることを可能にする。
【0088】
[0106]図12図16に示すチューブ実施形態の別個の構成要素および特徴は、種々のチューブ構成を形成するように組み合わされてもよい。例えば、いくつかのチューブは、(図12図15、および/または図16におけるような)バイパス(1本桁)カットのセクションと、(図14におけるような)対称的に離間した2本桁カットのセクションとを有するように、任意選択的に(図13におけるような)1つまたは複数の深さオフセット2本桁カットも有するように構成されてもよい。例えば、いくつかのチューブ実施形態は、対称的に離間した2本桁カットパターンを有する近位側セクションであって、バイパスカット配列を有する遠位側セクションに移行する近位側セクションを含んでもよい。
【0089】
[0107]本明細書において説明される実施形態は有益には、チューブのより近位側の領域が比較的多くのトルクを伝達することができるようにするとともに、トルク伝達性を過度に犠牲にすることなく先端部成形を可能にするためにチューブのより遠位側のセクションのトルク伝達性を減らすことができる。したがって、ガイドワイヤデバイスの特徴は、特定の必要性または用途に合わせ、トルク伝達性と、可撓性と、先端部成形性との間の動作関係を最適化するように調整され得る。
【0090】
[0108]好ましい実施形態では、コアの成形可能な遠位側セクションは、コアの遠位側セクションが成形された後でこの遠位側セクションに作用するチューブからの想定される曲げ力に耐えることができる剛性を有する。いくつかの実施形態では、コアの成形可能な遠位側セクションは、チューブを形成するのに使用される材料(複数可)の弾性率よりも約1.5から4倍大きい、または約2から3倍大きい弾性率を提供する材料または材料の組合せから形成される。
【0091】
[0109]図17は、第1のセクション850、第2のセクション860、および第3のセクション870を有するチューブ804の実施形態を示す。第2のセクション860は、第1のセクション850より遠位にあり、第3のセクション870は第2のセクション860より遠位にある。セクション850、860、870のそれぞれは、各セクションのカットパターンによって互いと区別され得る。本明細書において説明される他の実施形態に関して上述したように、カットパターンは、チューブ内にリング840および桁803をつくり出すことができる。図17に示すセクション850、860、870は、各セクションにおいて異なるカットパターンを有し得る。例えば、第1のセクション850は、2本桁カットパターンを有し得、第2のセクション860は、1本桁カットパターンを有し得、第3のセクション870は、2本桁カットパターンを有し得る。
【0092】
[0110]他の実施形態は図17に示すものとは異なるカットパターンを含んでもよいことが理解されるであろう。例えば、1つの実施形態では、第1のセクション850は、2本より多くの桁のカットパターンを有してもよく、第2のセクション860は、2本桁カットパターンまたは1本桁カットパターンを有してもよく、第3のセクション870は、1本桁カットパターンを有してもまたは省略されてもよい。また、チューブ804の他の実施形態は、チューブ804の長さに沿って3つよりも多いまたは少ないセクションを含んでもよい。例えば、チューブ804の1つの実施形態は、4つ以上のセクションを含んでもよい。また、例えば、チューブ804の1つの実施形態は、1つまたは2つのセクションしか含まなくてもよい。本明細書において説明される他の実施形態のいずれかに示すカットパターンが用いられ得る。
【0093】
[0111]図18Aは、図17に示すチューブの実施形態と同様のチューブ904の実施形態の側面図を示す。図18Aのチューブは、チューブ904およびコイル914を通って延びるコア902の遠位側セクション912を示すために第2のセクション960の部分断面図も示す。ここでは部分断面しか示されていないが、コア902は典型的に、デバイスの遠位端922までずっと延びていることが理解されるであろう。例示の実施形態では、チューブ904の第2のセクション960は、1本桁カットパターンを含む。1本桁カットパターンは、一対の隣り合う周方向に延びるリング940間にそれぞれ配置された一連の軸方向に延びる桁930をつくり出す。
【0094】
[0112]例示の実施形態では、連続した桁930は位置がチューブ904の第1の側916からチューブ904の第2の側918へ交互になっている(すなわち、各連続した桁930は約180°の回転オフセットを有する)。別の実施形態では、第2のセクション960の1本桁カットパターンの桁903はすべて、図15に示す実施形態と同様に、チューブ904に沿って軸方向に延びるとともに複数のリング940を接続する整列した桁930の背骨を形成するようにチューブの同じ側に沿って配置され得る。
【0095】
[0113]図18Aに示す、第2のセクション960の1本桁カットパターンは、優先的な曲げ平面Bを形成する。優先的な曲げ平面Bは、図18Aに示すように、チューブ904に沿って軸方向におよびチューブ904を横切って横断方向に延びている。第2のセクション960の桁930がチューブ904とともに軸方向に延びているため、チューブ904は、優先的な曲げ平面Bに沿って最も可撓性がある。すなわち、桁930は、チューブ904が、任意の他の平面に比べ、優先的な曲げ平面Bに沿って曲げられることに対して最も抵抗が少ないように構成される。この例示的な実施形態では、第2のセクション960のカットパターンが、図18Aに示されている桁930の交互パターンをつくり出すのであれ、または上述したように桁930の単一の背骨をつくり出すのであれ、優先的な曲げ平面Bをつくり出す。
【0096】
[0114]また、図18Aに示すように、コア902の遠位側セクション912は、コイル914およびチューブ904を通って遠位に延びるにつれ、テーパし、遠位部分においてテーパして平坦なリボン状構成になっている。図18Bは、図18AのA-Aの平面を通るチューブ904の横断面図を示す。コア902の遠位側セクション912は、チューブ904の少なくとも第2のセクション960内を軸方向に延びるほぼ平坦なリボンである。コア912のリボン構成は、大寸法D1および小寸法D2を有する。コア902の遠位側セクション912の大寸法D1は、コア902のリボン状遠位側セクション912の主面が優先的な曲げ平面Bに対して直交して(および好ましくは垂直に)延びるようにコア912の小寸法D2よりも大きい。このように、コア902の遠位側セクション912もまた、チューブ904とともに優先的な曲げ平面B内での曲げに対して最も抵抗が少ない。換言すると、コア912は、リボン状構成へとテーパするとともにチューブ904に沿って軸方向に延びることができ、そのため、コア902の遠位側セクション912が、優先的な曲げ平面Bをチューブ904と共有するように第2のセクション960の桁930と整列する。
【0097】
[0115]1つの実施形態では、チューブ904の第2のセクション960は、長さが約0.5cmから約5cmである。別の実施形態では、チューブ904の第2のセクション960は、長さが約1cmから約2cmである。さらに別の実施形態では、チューブ904の第2のセクション960は、長さが約1cmから約1.5cmである。遠位端922から、第2のセクション960が延びる距離は、所与の処置のために曲げられるまたは成形される、チューブ904の長さに応じて、様々であってもよい。これらの距離は、必要に応じて、様々な処置を考慮するために実施形態間で様々であってもよい。図17図18Bに示す実施形態の他の特徴は、コイル914、チューブ904、およびコア902の材料および寸法を含め、また、カットパターンに関係する特定の特徴を含め、他の図に関して本明細書において説明した他の実施形態と同様であってもよい。
【0098】
[0116]図19は、チューブ904の第1のセクション950と第2のセクション960との間の移行部の拡大図を示す。例示の実施形態では、第1のセクション950は、2本桁カットパターンを含み、第2のセクション960は、1本桁カットパターンを含む。チューブ904の各セクションにおける剛性は、少なくとも部分的に、カットが形成されてからのチューブ904に残存する材料の量と、残存する桁930の配置/間隔とに応じて決まる。例えば、チューブ904のうち、各対の隣り合うリング940間に2本の桁930を有するセクションは、他のすべてが等しい場合、各対の隣り合うリング940間に同じサイズの単一の桁930を有するチューブ904のセクションよりも大きい剛性を有することになる。また、例えば、チューブ904のうち、カット間により大きい距離を有するセクションは、他のすべてが等しい場合、カット間により小さい距離を有するセクションよりも大きい剛性を有することになる。すなわち、カット間の距離が大きいほど、カット間に形成されるリング940の厚さがより大きくなるとともに、チューブ904のそのセクションにおける剛性がより大きくなる。
【0099】
[0117]図19に示すチューブ904の第1のセクション950と第2のセクション960との間の移行点にまたはその近くに配置されたカット、リング940、および桁930は、チューブ904の剛性プロファイルが2つのセクション950と960との間の移行部にわたってほぼ連続的であるように構成される。換言すると、第1のセクション950および第2のセクション960のカットパターンは、移行点の一方の側から他方の側への剛性の著しい上昇ジャンプまたは降下ジャンプを回避するように配列される。
【0100】
[0118]当然のことながら、剛性がチューブ904に沿って測定される際の細分性の特定のレベルに応じて、また、測定セグメントの特定の長さに応じて、測定セグメントごとの剛性の或る程度のレベルの個別の変化が存在し得る。無限回数の剛性測定は行うことができないため、実際的に測定可能な剛性プロファイルは、チューブの一連の個別のセグメント長さのそれぞれにおける測定剛性レベルから構成される。1つの測定セグメントから次の測定セグメントへのジャンプ(すなわち、剛性の変化)が個別的であり得るのに対し、そのようなジャンプの全体パターンは好ましくは、直線状の連続または少なくとも滑らかな曲線に近似している。したがって、本開示の文脈において、「著しいジャンプ」は、1つのセグメントから次のセグメントへのジャンプがどちらかのすぐ隣のジャンプよりも約1.5倍を超えて大きい場合に起こる。それゆえ、移行点にわたるジャンプがどちらかの隣のジャンプよりも約1.5倍を超えて大きくない場合、著しいジャンプが回避され、したがって、移行点にわたる剛性プロファイルが「連続的」となる。好ましくは、移行点にわたるジャンプはどちらかの隣のジャンプよりも約1.2倍を超えて大きくない。
【0101】
[0119]図19は、セクション950とセクション960との間の移行部にわたる連続的な剛性プロファイルを達成するリング940および桁930を有するチューブ904の実施形態を示す。例示の実施形態では、第2のセクション960の最近位リング940aの軸方向厚さは、第1のセクション950の最遠位リング940bの軸方向厚さよりも大きい。このように、チューブ904の移行部における材料の総量は、セクション950と960との間の移行部においてまたはその近くにおいて同様である。これは、上述したように、移行部にわたる連続的な剛性をもたらす。さらに、第2のセクション960のリング940の軸方向厚さは、チューブ904の長さに沿って遠位に減少することができ、そのため、これに応じて剛性が減少する。このことは図19に示されているが、より劇的に図18Aに示されている。
【0102】
[0120]ここで図20を参照すると、チューブ904の遠位先端部906が示されている。図20に示す遠位先端部906は、第3のセクション970と、第2のセクション960の少なくとも一部と、チューブ904の遠位端922において第3のセクション970より遠位に配置されたポリマー接着剤920とを含む。チューブ904の第3のセクション970は、各対の隣り合うリング940間に2本の桁930を形成する2本桁カットパターンを含む。これは、第2のセクション960の1本桁カットパターンと対照的である。第2のセクション960と第3のセクション970との間の移行部は、上述したような、第1のセクション950と第2のセクション960との間の移行部と同様であってもよいことが理解されるであろう。すなわち、チューブ904の剛性は、第2のセクション960から第3のセクション970への移行部にわたってほぼ連続的であってもよい。
【0103】
[0121]チューブ904の遠位端922に配置された接着剤920は、チューブ904およびコアをともに固定するようにチューブ904とチューブ904の遠位端922におけるコアとの間に延び得る。図10に示すように、コア202の遠位側セクション212は、チューブ204を越えて接着剤220の中へ遠位に延在し得る。したがって、接着剤220は、チューブ204をコアおよび/またはコイル214に連結するように機能することができる。
【0104】
[0122]再び図20を参照すると、接着剤920は、チューブ904の遠位端922に配置され、少なくとも部分的に、近位に、第3のセクション970の様々なリング940と桁930との間のカットのうちの1つまたは複数へと運ばれ得る。第3のセクション970の2本桁カットパターンは、第2のセクション960の1本桁カットパターンに比べ、接着剤920が結合することができる、チューブ904の材料の追加の表面積を提供する。したがって、第3のセクション970の2本桁カットパターンは、接着剤920とコアおよび/またはコイルの遠位側セクションとの間により強い連結をもたらす。ゆえに、各対の隣り合うリング940間に2本よりも多い桁930を含むカットパターンが、チューブ904とコア020および/またはコイルの遠位側セクションとの間の連結の強さを高めるように働き得ることが理解されるであろう。しかしながら、上述したように、カットがチューブ904から除去する材料が多いほど、チューブ904は剛性がより低くなり、その逆もまた同じである。
【0105】
[0123]また、製造中、チューブ904の遠位端922に大量の接着剤920を配置する結果、接着剤920が、チューブ904をさらに近位に遡って運ばれることになる。第3のセクション970の2本桁カットパターンは、接着剤920が第3のセクション970をどの程度近位に遡って運ばれるのかを確認するために、カットパターンにおけるカットの数および間隔により、製造業者に対して有効な視覚的インジケータを提供する。第3のセクション970のこの視覚的インジケータはまた、製造中に接着剤220が第3のセクション970をどの程度近位に遡って運ばれるのかを機械または他の自動製造デバイスが検知するのを助けることができる。
【0106】
[0124]例えば、製造業者が製造中にチューブ904の遠位端922に接着剤920を配置すると、接着剤は、第3のセクション970のリング940と桁930との間の空間を通って運ばれ始め得る。第3のセクション970の2本桁カットパターンは、第2のセクション960の1本桁カットパターンとは対照的に、視覚的インジケータを提供することから、製造業者は、接着剤が1つのリング940から次のリングへチューブ904をどの程度近位に遡って運ばれるのかをより容易に分かることができる。したがって、製造業者は、どの程度の接着剤220をチューブ904の遠位端922に配置するかを決定することができる。製造御者はまた、接着剤920が運ばれた所定の距離またはリング940に基づいて、接着剤220を追加することを止めるときを決定することができる。
【0107】
[0125]1つの実施形態では、チューブ904の第3のセクション970は、チューブ904の遠位端922から約0.5mmから1.5mmの間で延在する。別の実施形態では、チューブ904の第3のセクション970は、チューブ904の遠位端922から約0.75mmから1.25mmの間で延在する。さらに別の実施形態では、チューブ904の第3のセクション970は、チューブ904の遠位端922から約1mm延在する。遠位端922から、第3のセクション970が延在する距離は、曲げられるもしくは成形されることが必要とされる、チューブ904の長さに応じて、または、接着剤920がチューブ904を十分に遡って運ばれるのに必要な距離に応じて様々であってもよい。これらの距離は、必要に応じて、様々なチューブおよび処置を考慮するために実施形態間で様々であってもよい。図19および図20に示す実施形態の他の特徴は、コイル914、チューブ904、およびコア902の材料、特性、および寸法を含め、他の図に関して本明細書において説明した他の実施形態と同様であってもよい。
【0108】
さらなる用語および定義
[0126]特定の構成、パラメータ、構成要素、要素などに関して、本開示の特定の実施形態を詳細に説明してきたが、これらの説明は例示的であり、特許請求される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0109】
[0127]本明細書において使用される場合、「微細加工」という用語は、本明細書において開示されるような内側シャフトにおいて隙間を形成することが可能な任意の作製プロセスを含む、本明細書において開示される特徴のうちの1つまたは複数を有するカテーテルデバイスを形成するようにストック材料を取り扱うことが可能な任意の作製プロセスを指す。例として、レーザカットおよびブレードカットが挙げられるがこれらに限定されない。
【0110】
[0128]説明される実施形態の構成要素の任意の所与の要素について、その要素または構成要素について挙げた可能な代替例は概して、別段に暗示的または明示的に述べられていない限り、個別にまたは互いに組み合わせて用いられてもよい。
【0111】
[0129]別段に示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲において用いられた、量、成分、距離、または他の測定値を表す数は、「約」という用語またはその同義語によって任意選択的に修正されたものと理解されたい。「約」、「ほぼ」、「実質的に」などの用語が、述べた量、値、または条件に関して使用されている場合、述べた量、値、または条件の20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満だけ逸脱した量、値または条件を意味するとみなされてもよい。少なくとも、特許請求の範囲の均等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数の観点で、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0112】
[0130]本明細書において使用されるいずれもの見出しおよび小見出しは、構成的な目的のためだけであり、本明細書の範囲または特許請求の範囲を限定するために使用されることを意図していない。
【0113】
[0131]本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないと明らかに指示していない限り、複数の指示対象を排除しないことも留意されたい。したがって、例えば、単数の指示対象(例えば、「ウィジェット」)に言及する実施形態は、2つ以上のそのような指示対象も含んでもよい。
【0114】
[0132]本明細書において説明される実施形態は、本明細書において説明される他の実施形態において説明される特性、特徴(例えば、成分、構成要素、部材、要素、部品、および/または部分)を含んでもよいことも理解されたい。したがって、所与の実施形態の様々な特徴は、本開示の他の実施形態と組み合わせるかつ/またはそれに組み込むことができる。したがって、本開示の特定の実施形態に関する或る特定の特徴の開示は、特定の実施形態への前記特徴の適用または包含を限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、他の実施形態もそのような特徴を含むことができることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
【国際調査報告】