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特表2024-532503GLP-1/GIPデュアルターゲット型ポリペプチド及び融合タンパク質並びにこれらの適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】GLP-1/GIPデュアルターゲット型ポリペプチド及び融合タンパク質並びにこれらの適用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/575 20060101AFI20240829BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/79 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240829BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240829BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C07K14/575
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/79 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12N15/12
A61K38/26
A61K38/22
A61K47/68
A61K48/00
A61K35/12
A61P3/10
A61P3/04
A61P1/16
A61P3/06
A61K39/395 Y
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514046
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 CN2022116513
(87)【国際公開番号】W WO2023030444
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111026970.5
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515014990
【氏名又は名称】サンシャイン・レイク・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE LAKE PHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Northern Industrial Area,Songshan Lake,Dongguan,Guangdong 523000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲蒋▼ ▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】肖 琳
(72)【発明者】
【氏名】周 林俊
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲麗▼▲メイ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】▲蒋▼ 燕
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲寧▼▲遠▼
(72)【発明者】
【氏名】毛 ▲劍▼▲銘▼
(72)【発明者】
【氏名】李 勇
(72)【発明者】
【氏名】李 利佳
(72)【発明者】
【氏名】郭 林峰
(72)【発明者】
【氏名】李 静
(72)【発明者】
【氏名】李 文佳
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG15
4B064AG26
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE11
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA91
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA02
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA41
4C084DB35
4C084DB37
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA70
4C084ZA75
4C084ZC33
4C084ZC35
4C085AA21
4C085BB42
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZC33
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA41
4H045DA30
4H045DA75
4H045EA27
4H045FA33
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
以下のアミノ酸配列:X1X2X3GTFX4SDYSX5X6X7X8X9X10X11X12X13X14FX15X16WLX17X18X19を有する第1のポリペプチドを含む、GLP-1/GIPデュアルターゲット型ポリペプチドであり、式中、X1はY又はHであり、X2はA又はG又はSであり、X3はE又はQであり、X4はI又はTであり、X5はI又はKであり、X6はA又はY又はL又はIであり、X7はM又はLであり、X8はD又はEであり、X9はK又はEであり、X10はI又はQ又はK又はE又はLであり、X11はH又はA又はRであり、X12はA又はQ又はVであり、X13はK又はQ又はR又はHであり、X14はD又はE又はA又はLであり、X15はV又はIであり、X16はN又はE又はD又はQであり、X17はL又はI又はK又はVであり、X18はA又はE又はKであり、X19はQ又はGであり、X1~X13は、X1がYであり、X2がAであり、X3がEであり、X4がIであり、X5がIであり、X6がAであり、X7がMであり、X8がDであり、X9がKであり、X10がIであり、X11がHであり、X12がQであり、X13がQであり、X14がDであり、X15がVであり、X16がNであり、X17がLであり、X18がAであり、且つX19がQであることを同時には満たさない。GLP-1/GIPデュアルターゲット型ポリペプチドは、体重及び血中糖レベルを効果的に低減させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列:
X1X2X3GTFX4SDYSX5X6X7X8X9X10X11X12X13X14FX15X16WLX17X18X19を有する第1のポリペプチドを含む、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドであって、式中、X1がY又はHであり、X2がA、G、又はSであり、X3がE又はQであり、X4がI又はTであり、X5がI又はKであり、X6がA、Y、L、又はIであり、X7がM又はLであり、X8がD又はEであり、X9がK又はEであり、X10がI、Q、K、E、又はLであり、X11がH、A、又はRであり、X12がA、Q、又はVであり、X13がK、Q、R、又はHであり、X14がD、E、A、又はLであり、X15がV又はIであり、X16がN、E、D、又はQであり、X17がL、I、K、又はVであり、X18がA、E、又はKであり、X19がQ又はGであり、
X1~X19が、X1がYであり、X2がAであり、X3がEであり、X4がIであり、X5がIであり、X6がAであり、X7がMであり、X8がDであり、X9がKであり、X10がIであり、X11がHであり、X12がQであり、X13がQであり、X14がDであり、X15がVであり、X16がNであり、X17がLであり、X18がAであり、X19がQであることを同時には満たさない、
GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド。
【請求項2】
GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドが、以下のアミノ酸配列:
X1X2EGTFTSDYSIX6LDKX10AQX13X14FX15X16WLX17AX19を有する第1のポリペプチドを含み、式中、X1がY又はHであり、X2がA、G、又はSであり、X6がA、Y、又はLであり、X10がI、Q、K、又はLであり、X13がQ又はRであり、X14がD、E、又はAであり、X15がV又はIであり、X16がE、D、又はQであり、X17がL、I、又はKであり、X19がQ又はGであり、
第1のポリペプチドがアミノ酸配列YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQ(配列番号122)を含まない
ことを特徴とする、請求項1に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドを更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド。
【請求項4】
第1のポリペプチドのC末端が第2のポリペプチドのN末端と連結されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド。
【請求項5】
以下のアミノ酸配列:配列番号2~112、配列番号117~121の少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド。
【請求項6】
配列番号2、配列番号13、配列番号16、配列番号25~28、配列番号37、配列番号50~51、配列番号56、配列番号58、配列番号83、配列番号85、配列番号93、配列番号95、配列番号101~107、配列番号110~112で示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項5に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド。
【請求項7】
(1)請求項1から6のいずれか一項に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、及び
(2)Fc断片
を含む、融合タンパク質であって、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドのC末端が、Fc断片のN末端と連結されている、融合タンパク質。
【請求項8】
Fc断片がヒトIgG4又はそのバリアントのFc断片であることを特徴とする、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
Fc断片が、配列番号113で示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項7又は8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
配列番号114で示されるアミノ酸配列を有するリンカーペプチドを更に含むことを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
リンカーペプチドのN末端がGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドのC末端と連結されており、リンカーペプチドのC末端がFc断片のN末端と連結されていることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド又は請求項7から11のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項14】
真核細胞発現ベクターであることを特徴とする、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
請求項12に記載の核酸分子又は請求項13若しくは14に記載の発現ベクターを担持している組換え細胞。
【請求項16】
請求項1から6のいずれか一項に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、請求項7から11のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載の核酸分子、請求項13若しくは14に記載の発現ベクター、又は請求項15に記載の組換え細胞を含む、医薬組成物。
【請求項17】
糖尿病、肥満、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝炎、脂質異常症、並びにメタボリックシンドロームを処置するための医薬の製造における、請求項1から6のいずれか一項に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、請求項7から11のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載の核酸分子、請求項13若しくは14に記載の発現ベクター、請求項15に記載の組換え細胞の使用。
【請求項18】
請求項7から11のいずれか一項に記載の融合タンパク質を調製するための方法であって、
1)請求項12又は13に記載の発現ベクターを構築する工程、
2)発現ベクターを宿主細胞に導入して、融合タンパク質を発現させるための組換え細胞を得る工程
を含む、方法。
【請求項19】
対象における糖尿病、肥満、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝炎、脂質異常症、並びにメタボリックシンドロームを処置する方法であって、治療有効量の請求項1から6のいずれか一項に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、請求項7から11のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載の核酸分子、請求項13若しくは14に記載の発現ベクター、請求項15に記載の組換え細胞を対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項20】
対象における糖尿病、肥満、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝炎、脂質異常症、並びにメタボリックシンドロームの処置において使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、請求項7から11のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載の核酸分子、請求項13若しくは14に記載の発現ベクター、請求項15に記載の組換え細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2021年9月2日に中国国家知識産権局に出願された中国特許出願第202111026970.5号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本発明は、生物医学の分野、具体的には、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、融合タンパク質、及びこれらの適用に関するものであり、更に具体的には、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドをコードする核酸分子、融合タンパク質、融合タンパク質をコードする核酸分子、発現ベクター、組換え細胞と、医薬の製造における、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド及びその核酸分子、融合タンパク質及びその核酸分子、発現担体、並びに組換え細胞の使用と、医薬組成物と、融合タンパク質を調製するための方法とに関するものである。
【背景技術】
【0003】
II型糖尿病は、肥満、高脂血症、及び高血圧に緊密に関連している、慢性的な代謝障害である。現在のところ、II型糖尿病の第一選択療法のための薬物の主な効果は、血中グルコースを低減させることであるが、体重減少の効果は非常に限られている。グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、食後に腸のL細胞によって分泌されるポリペプチドホルモンであり、これは、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンを分泌させることができ、これによって、食後の血中グルコースの変動を安定化させる。当該ホルモンの血中グルコースを低下させる効果はグルコース濃度に依存し、血中グルコースを調節しながら、当該ホルモンは、血糖低下のリスクを大きく低減させる。ここ数年、GLP-1ベースの薬物、例えばリラグルチド、デュラグルチド、及びセマグルチドは、徐々に、糖尿病用の薬物の非常に重要なポジションを占めてきている。GLP-1薬はまた、血中グルコースを低下させる時に体重減少の効果も有し、このメカニズムは、GLP-1が消化管に作用して胃内容排出及び腸の蠕動を遅らせ、また中枢神経系に作用して食欲を抑えて、食物摂取を低減させるという目的を達成するというものである。しかし、GLP-1受容体アゴニスト薬は、体重減少のためには一般的にはより高用量で使用され、胃腸の副作用を生じさせやすく、忍容性が低く、そして治療ウィンドウが狭い。
【0004】
グルコース依存性のインクレチン(GIP)は、42のアミノ酸を有し、グルコースのホメオスタシスにおいて主に役割を果たし、膵臓のβ細胞を保護する、腸のK細胞によって分泌されるペプチドホルモンである。GIP及びGLP-1は共にインクレチンであり、これらの双方とも、インスリンの分泌を促進し、血中グルコース濃度依存性の様式で血中グルコースを低下させることができ、また、GIP介在性の血中グルコース低下の効果は、GLP-1のそれよりも更に強力である。しかし、高血糖によって誘導される受容体耐性におそらく起因して、糖尿病患者はGIPに対して非感受性であり、そのため、糖尿病患者におけるGIP受容体アゴニストの単独の使用は、血中グルコースを改善するという目的を達成していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、複雑なメカニズムを伴う疾患、例えば糖尿病、肥満等では、シングルターゲット薬の効果は限定的であり、一部の古典的な処置、例えばインスリン注射、経口のスルホニルウレア及びメトホルミンは、容易に低血糖をもたらし得るため、これらは依然として臨床的要求を満たすことができていない。異なる標的に作用することによって、薬物の有効性を改善するための複数の効果が達成され得る。したがって、単一分子のGLP-1/GIPデュアル受容体アゴニストは、既存のシングルターゲット薬の欠点を効果的に解決し得、複数の代謝関連標的を同時に活性化することによって、より良好な血糖低下効果及び体重減少効果を達成し得、また優れた開発可能性を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、以下の、本発明者らの発見及び知識に基づいている。
【0007】
単一分子のGLP-1/GIPデュアル受容体アゴニストは、既存のシングルターゲット薬の欠点を効果的に解決し得、本発明者らは、多くの実験を通して野生型GLP-1及びGIPを変異させ、GLP-1受容体及びGIP受容体を同時に認識し得る様々なGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドを得、このGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドを、リンカーペプチドを使用して免疫グロブリンのFc断片と融合させて、融合タンパク質を得た。本発明者らは、融合タンパク質がGLP-1受容体及びGIP受容体を同時に活性化させる良好な能力を有していること、並びに、異なる変異がGLP-1受容体及びGIP受容体のアゴニスト活性を増大又は低下させることを発見した。
【0008】
したがって、第1の態様では、本発明は、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドを提供する。本発明の実施形態に従うと、デュアルターゲットポリペプチドは第1のポリペプチドを含み、第1のポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:X1X2X3GTFX4SDYSX5X6X7X8X9X10X11X12X13X14FX15X16WLX17X18X19を有し、式中、X1はY又はHであり、X2はA、G、又はSであり、X3はE又はQであり、X4はI又はTであり、X5はI又はKであり、X6はA、Y、L、又はIであり、X7はM又はLであり、X8はD又はEであり、X9はK又はEであり、X10はI、Q、K、E、又はLであり、X11はH、A、又はRであり、X12はA、Q、又はVであり、X13はK、Q、R、又はHであり、X14はD、E、A、又はLであり、X15はV又はIであり、X16はN、E、D、又はQであり、X17はL、I、K、又はVであり、X18はA、E、又はKであり、X19はQ又はGであり、X1~X13は、X1がYであり、X2がAであり、X3がEであり、X4がIであり、X5がIであり、X6がAであり、X7がMであり、X8がDであり、X9がKであり、X10がIであり、X11がHであり、X12がQであり、X13がQであり、X14がDであり、X15がVであり、X16がNであり、X17がLであり、X18がAであり、X19がQであることを同時には満たさない。本発明者らは、野生型GLP-1及びGIPの部位特異的変異を行い、得られたGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、GLP-1及び/又はGIP受容体とのある程度の結合活性を有する。
【0009】
本発明の実施形態に従うと、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、以下の更なる技術的特徴の少なくとも1つを更に含み得る。
【0010】
本発明の実施形態に従うと、デュアルターゲットポリペプチドは第1のポリペプチドを含み、第1のポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:X1X2EGTFTSDYSIX6LDKX10AQX13X14FX15X16WLX17AX19を有し、式中、X1はY又はHであり、X2はA、G、又はSであり、X6はA、Y、又はLであり、X10はI、Q、K、又はLであり、X13はQ又はRであり、X14はD、E、又はAであり、X15はV又はIであり、X16はE、D、又はQであり、X17はL、I、又はKであり、X19はQ又はGであり、第1のポリペプチドは、YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQ(配列番号122)のアミノ酸配列を含まない。本発明者らは、野生型GLP-1及びGIPの部位特異的変異を行い、得られたGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、GLP-1及び/又はGIP受容体との良好な生物学的結合活性を有し、したがって、GLP-1受容体及びGIP受容体は同時に活性化され得、そしてGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有する。
【0011】
本発明の実施形態に従うと、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、第2のポリペプチドを更に含み、第2のポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する。配列番号1の具体的なアミノ酸配列はGPSSGAPPPSである。
【0012】
本発明の実施形態に従うと、第1のポリペプチドのC末端アミノ酸は、第2のポリペプチドのN末端アミノ酸と連結されている。
【0013】
本発明の実施形態に従うと、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、Table 1(表1)に示すアミノ酸配列の少なくとも1つを有する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、融合タンパク質を提供する。本発明の実施形態に従うと、融合タンパク質は、(1)第1の態様で記載されているGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、(2)Fc断片を含み、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドのC末端は、Fc断片のN末端と連結されている。本発明の実施形態に従った融合タンパク質はまた、GLP-1及び/又はGIP受容体との優れた結合活性を有し、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0015】
本発明の実施形態に従うと、融合タンパク質は、以下の更なる技術的特徴の少なくとも1つを更に含み得る。
【0016】
本発明の実施形態に従うと、Fc断片は、ヒトIgG4又はそのバリアントのFc断片である。
【0017】
本発明の実施形態に従うと、Fc断片は、配列番号113で示されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
【化1】
【0019】
本発明の実施形態に従うと、融合タンパク質は、配列番号114で示されるアミノ酸配列を有するリンカーペプチドを更に含む。
【0020】
【化2】
【0021】
本発明の実施形態に従うと、リンカーペプチドのN末端はGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドのC末端と連結されており、リンカーペプチドのC末端はFc断片のN末端と連結されている。
【0022】
第3の態様では、本発明は、核酸分子を提供する。本発明の実施形態に従うと、核酸分子は、第1の態様のGLP-1/GIPダブルターゲットポリペプチド又は第2の態様の融合タンパク質をコードする。本発明の実施形態に従うと、核酸分子によってコードされるGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド又は融合タンパク質は共に、GLP-1及び/又はGIP受容体との優れた結合活性を有し、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0023】
第4の態様では、本発明は、発現ベクターを提供する。本発明の実施形態に従うと、発現ベクターは、第3の態様で記載されている核酸分子を含む。
【0024】
本発明の実施形態に従うと、発現ベクターは、以下の更なる技術的特徴の少なくとも1つを更に含み得る。
【0025】
本発明の実施形態に従うと、発現ベクターは、真核細胞発現ベクターである。
【0026】
第5の態様では、本発明は、組換え細胞を提供する。本発明の実施形態に従うと、組換え細胞は、第3の態様で記載されている核酸分子又は第4の態様で記載されている発現ベクターを担持している。本発明の実施形態に従った組換え細胞は、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド又は融合タンパク質を発現し得、また、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド及び融合タンパク質は、GLP-1及び/又はGIP受容体との優れた結合活性を有し、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0027】
第6の態様では、本発明は、医薬組成物を提供する。本発明の実施形態に従うと、医薬組成物は、第1の態様で記載されているGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、第2の態様で記載されている融合タンパク質、第3の態様で記載されている核酸分子、第4の態様で記載されている発現ベクター、又は第5の態様で記載されている組換え細胞を含む。医薬組成物は、薬学的に許容可能なアジュバントを含み得、薬学的に許容可能なアジュバントは、安定剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張剤のうちの少なくとも1つを含み、医薬組成物は、錠剤、顆粒、粉末、カプセル、溶液、懸濁液、又は凍結乾燥調製物のうちの少なくとも1種である。本発明の実施形態に従うと、医薬組成物は、長期の体重減少及び/又は血糖低下という機能を有し、体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0028】
第7の態様では、本発明は、医薬の製造における、第1の態様で記載されているGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、第2の態様で記載されている融合タンパク質、第3の態様で記載されている核酸分子、第4の態様で記載されている発現ベクター、又は第5の態様で記載されている組換え細胞の使用を提供する。本発明の実施形態に従うと、医薬は、グルコース及び体重を制御する又は低下させるために使用される。
【0029】
第8の態様では、本発明は、第2の態様で記載されている融合タンパク質を調製するための方法を提供する。本発明の実施形態に従うと、本方法は、1)第4の態様で記載されている発現ベクターを構築する工程、2)発現ベクターを宿主細胞に導入して、融合タンパク質を発現させるための組換え細胞を得る工程を含む。ここで提供される方法によって調製された融合タンパク質は、GLP-1及び/又はGIP受容体との優れた結合活性を有し、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0030】
第9の態様では、本発明は、患者の血中グルコース及び/又は体重を低下させるための方法を提供する。本発明の実施形態に従うと、本方法は、1)第1の態様で記載されているGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、2)第2の態様で記載されている融合タンパク質、3)第3の態様で記載されている核酸分子、4)第4の態様で記載されている発現ベクター、5)第5の態様で記載されている組換え細胞、及び6)第6の態様で記載されている医薬組成物のうちの少なくとも1つを患者に投与する工程を含む。ここで提供される方法は、患者の体重及び/又は血中グルコースレベルを効果的に且つ長期にわたり制御するか又は低減させることができる。
【0031】
本発明の更なる態様及び利点は、一部は以下の記載で示され、一部は当該記載から明らかとなり得るか、又は本発明の実施によって学習され得る。
【0032】
本発明の上記の及び/又は更なる態様及び利点は、以下の図面と組み合わせて、実施形態の記載から明らかとなり、容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態の異なる時点での、HEC-G123群、HEC-G128群、HEC-G131群、HEC-G132群の血中グルコース値を示す図である。
図2】本発明の実施形態のHEC-G123群、HEC-G128群、HEC-G131群、HEC-G132群の曲線下面積を示す図である。
図3】本発明の実施形態の異なる時点でのHEC-G113群、HEC-G122群、HEC-G126群、HEC-G127群の血中グルコース値を示す図である。
図4】本発明の実施形態のHEC-G113群、HEC-G122群、HEC-G126群、HEC-G127群の曲線下面積を示す図である。
図5】本発明の実施形態のdb/dbマウスモデルにおけるHEC-G20のインビボでの血糖低下効果を示す図である。
図6】本発明の実施形態のdb/dbマウスモデルにおけるHEC-G20のグリコシル化ヘモグロビン値を示す図である。
図7】DIOモデルの肥満マウスの本発明の実施形態におけるHEC-G115及びHEC-G124の長期反復投与の体重への効果を示す図である。
図8】DIOモデルの肥満マウスの本発明の実施形態におけるHEC-G115及びHEC-G124の長期反復投与の累積摂取効果を示す図である。
図9】本発明の実施形態の融合タンパク質の構造図であり、融合タンパク質が、N末端からC末端まで、GLP-1/GIPデュアル受容体アゴニスト(GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド)、リンカーペプチド、及びFc断片という3つのドメインを含んでいる。GLP-1/GIPデュアル受容体アゴニストポリペプチド。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0034】
その例が添付の図面で示されている、本発明の実施形態を以下に詳述する。図面を参照して以下に記載する実施形態は例示的なもので、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するとは解釈されない。
【0035】
加えて、「第1の」及び「第2の」という用語は、説明をのみを目的として使用され、相対的重要性を示す若しくは暗示する、又は示されている技術的特徴の量を暗示的に示すものとは理解され得ない。したがって、「第1の」及び「第2の」と規定された特徴は、これらの特徴の少なくとも1つを明確に又は暗示的に含み得る。本発明の記載では、「複数」は、別段のことが明らかに及び具体的に限定されていない限り、少なくとも2つ、例えば2つ、3つ等を意味する。
【0036】
この明細書では、「受容体アゴニスト」という用語は、受容体に作用し、受容体の活性化を生じさせ得、こうして生物学的効果を生じさせる、物質を指すことが留意されるべきである。この効果は、細胞活性の特異的出現の増強又は減退であり得る。
【0037】
この明細書では、「GLP-1/GIPデュアル受容体アゴニスト」、「GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド」、及び「組換えポリペプチド」という用語が全て、野生型GLP-1及びGIPタンパク質分子の部位特異的変異によって得られたポリペプチドを指すことが留意されるべきであり、野生型GLP-1及びGIPタンパク質分子の部位特異的変異の後に得られた、GLP-1受容体及びGIP受容体を同時に活性化させ得る当該ポリペプチドのアミノ酸配列を、Table 1(表1)に示す。
【0038】
この明細書では、「核酸分子」という用語が、限定はしないが修飾された又は未修飾のDNA及びRNAを含むデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含有するあらゆるポリマーであり得、その長さがいかなる特別な制限も受けないことが留意されるべきである。組換え細胞の構築に使用される構築物については、核酸はDNAであることが好ましく、それは、DNAがRNAよりも安定であり操作が容易であるためである。本願において記載される「核酸」は、実際は、相補的二本鎖のいずれか一方又は両方を含む。当業者にはまた、一方の鎖が別の鎖の検出に使用され得ること、及び逆の場合も同様であることが理解されよう。
【0039】
本願で記載されている「構築物」が、特定の核酸配列を含み、組換え細胞を得るために標的核酸配列を宿主細胞に導入し得る、遺伝子ベクターを指すことが留意されるべきである。本発明の実施形態に従うと、構築物の形態は、特に限定されない。本発明の実施形態に従うと、構築物は、プラスミド、ファージ、人工染色体、コスミド、及びウイルスのうちの少なくとも1つであり得、プラスミドが好ましい。遺伝子ベクターとしては、プラスミドが、操作が単純であり、より大きな断片を担持し得、そして操作及び取り扱いが容易である。プラスミドの形態は特に限定されず、プラスミドは環状プラスミド又は線状プラスミドのいずれかであり得、すなわち、プラスミドは一本鎖又は二本鎖であり得る。当業者は必要に応じて選択を行うことができる。
【0040】
本発明は、以下のアミノ酸配列:X1X2X3GTFX4SDYSX5X6X7X8X9X10X11X12X13X14FX15X16WLX17X18X19を有する第1のポリペプチドを含む、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドであって、式中、X1がY又はHであり、X2がA、G、又はSであり、X3がE又はQであり、X4がI又はTであり、X5がI又はKであり、X6がA、Y、L、又はIであり、X7がM又はLであり、X8がD又はEであり、X9がK又はEであり、X10がI、Q、K、E、又はLであり、X11がH、A、又はRであり、X12がA、Q、又はVであり、X13がK、Q、R、又はHであり、X14がD、E、A、又はLであり、X15がV又はIであり、X16がN、E、D、又はQであり、X17がL、I、K、又はVであり、X18がA、E、又はKであり、X19がQ又はGであり、X1~X19が、X1がYであり、X2がAであり、X3がEであり、X4がIであり、X5がIであり、X6がAであり、X7がMであり、X8がDであり、X9がKであり、X10がIであり、X11がHであり、X12がQであり、X13がQであり、X14がDであり、X15がVであり、X16がNであり、X17がLであり、X18がAであり、X19がQであることを同時には満たさない、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドを提供する。本発明者らは、野生型GLP-1及びGIPの部位特異的変異を行い、得られたGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、GLP-1及び/又はGIP受容体とのある程度の結合活性を有する。
【0041】
本発明の具体的な実施形態に従うと、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは第1のポリペプチドを含み、第1のポリペプチドは以下のアミノ酸配列:X1X2EGTFTSDYSIX6LDKX10AQX13X14FX15X16WLX17AX19を有し、式中、X1はY又はHであり、X2はA又はG又はSであり、X6はA、Y、又はLであり、X10はI、Q、K、又はLであり、X13はQ又はRであり、X14はD、E、又はAであり、X15はV又はIであり、X16はE、D、又はQであり、X17はL、I、又はKであり、X19はQ又はGであり、第1のポリペプチドはアミノ酸配列YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQ(配列番号122)を含まない。本発明者らは、野生型GLP-1及びGIPの部位特異的変異を行い、得られたGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、GLP-1受容体及びGIP受容体をそれぞれ活性化させることができ、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有する。
【0042】
本発明の具体的な実施形態に従うと、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは第2のポリペプチドを更に含み、第2のポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する。配列番号1の具体的なアミノ酸配列は、GPSSGAPPPSである。
【0043】
本発明の具体的な実施形態に従うと、第1のポリペプチドのC末端アミノ酸は、第2のポリペプチドのN末端アミノ酸と連結されている。
【0044】
本発明の具体的な実施形態に従うと、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、Table 1(表1)に示すアミノ酸配列の少なくとも1つを有する。
【0045】
【表1A】
【0046】
【表1B】
【0047】
【表1C】
【0048】
【表1D】
【0049】
本発明の具体的な実施形態に従うと、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドは、配列番号2、配列番号13、配列番号16、配列番号25~28、配列番号37、配列番号50~51、配列番号56、配列番号58、配列番号83、配列番号85、配列番号93、配列番号95、配列番号101~107、配列番号110~112で示されるアミノ酸配列を有する。
【0050】
本発明は、(1)上記のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、(2)Fc断片を含む、融合タンパク質を提供し、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドのC末端は、Fc断片のN末端と連結されている。本発明の実施形態に従った融合タンパク質はまた、GLP-1及び/又はGIP受容体に対する優れた結合活性を有し、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0051】
本発明の具体的な実施形態に従うと、Fc断片は、ヒトIgG4のFc断片又はその変異体である。GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドに免疫グロブリンのFc断片が融合すると、インビボでの融合タンパク質の半減期が延長され得る。
【0052】
本発明の具体的な実施形態に従うと、Fc断片は、配列番号113で示されるアミノ酸配列を含む。
【0053】
【化3】
【0054】
本発明の具体的な実施形態に従うと、融合タンパク質はリンカーペプチドを更に含み、リンカーペプチドは、配列番号114で示されるアミノ酸配列を有する。
【0055】
【化4】
【0056】
本発明の具体的な実施形態に従うと、リンカーペプチドのN末端は、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドのC末端と連結されており、リンカーペプチドのC末端は、Fc断片のN末端と連結されている。
【0057】
本発明は、上記のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド又は融合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。本発明の実施形態に従った核酸分子によってコードされるGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド又は融合タンパク質はまた、GLP-1及び/又はGIP受容体との優れた結合活性を有し、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0058】
本発明は、発現ベクターを提供する。本発明の実施形態に従うと、発現ベクターは、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド又は融合タンパク質をコードする前述の核酸分子を含む。上記の核酸分子をベクターに連結すると、核酸分子は、ベクター上の、核酸分子の翻訳及び発現を制御し得る限りの制御エレメントと、直接的又は間接的に連結され得る。当然のことながら、これらの制御エレメントはベクター自体に直接的に由来し得るか、又はこれらの制御エレメントは外因性であり得、すなわち、これらの制御エレメントはベクター自体に由来していなくてよい。当然のことながら、敢えて言うならば、核酸分子は、制御エレメントと作動可能に連結されている。この明細書では、「作動可能に連結されている」は、ベクター内の制御エレメント、例えば転写制御配列及び翻訳制御配列が、外因性遺伝子の転写及び翻訳を調節するそれらの予想される機能を行い得るように、外因性の遺伝子をベクターに連結することを指す。
【0059】
本発明の具体的な実施形態に従うと、発現ベクターは、真核細胞発現ベクターである。
【0060】
本発明は、組換え細胞を提供する。本発明の実施形態に従うと、組換え細胞は、上記のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド若しくは融合タンパク質をコードする核酸分子、又は上記の発現ベクターを担持する。本発明の具体的な実施形態に従った組換え細胞は、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド又は融合タンパク質を発現し得、また、GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド及び融合タンパク質は、GLP-1及び/又はGIP受容体に対する優れた結合活性を有し、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0061】
本発明の具体的な実施形態に従うと、組換え細胞は、哺乳動物細胞、例えばCHO細胞である。
【0062】
本発明の具体的な実施形態に従うと、組換え細胞は、動物生殖細胞、受精卵、又は胚性幹細胞を含まない。
【0063】
本発明は、前述のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、前述の融合タンパク質、前述のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド若しくは融合タンパク質をコードする前述の核酸分子、前述の発現ベクター、又は前述の組換え細胞を含む、医薬組成物を提供する。医薬組成物は、薬学的に許容可能なアジュバントを含み得、薬学的に許容可能なアジュバントは、安定剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張剤のうちの少なくとも1つを含み、医薬組成物は、錠剤、顆粒、粉末、カプセル、溶液、懸濁液、又は凍結乾燥調製物のうちの少なくとも1種である。本発明の具体的な実施形態に従った医薬組成物は、糖尿病、肥満、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂質異常症、メタボリックシンドローム、及び他の疾患を処置するために使用され、長期の体重減少及び/又は血糖低下の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0064】
本発明は、医薬の製造における、前述のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、前述の融合タンパク質、前述のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド若しくは融合タンパク質をコードする前述の核酸分子、前述の発現ベクター、及び前述の組換え細胞の使用を提供する。本発明の具体的な実施形態に従うと、医薬は、血中グルコース及び体重を制御するか又は低減させるために使用される。
【0065】
本発明は、前述の融合タンパク質を調製するための方法であって、1)前述の発現ベクターを構築する工程、2)発現ベクターを宿主細胞に導入して、前述の融合タンパク質を発現させるための組換え細胞を得る工程を含む、方法を提供する。本発明の具体的な実施形態に従った方法に従って調製された融合タンパク質は、GLP-1及び/又はGIP受容体に対する優れた結合活性を有し、体重減少及び血糖低下という二重の機能を有し、そして体重及び血中グルコースレベルを効果的に制御するか又は低減させることができる。
【0066】
更に、本発明で記載されている「GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド」又は「組換えポリペプチド」は、組換え発現によって調製され得るだけではなく、化学合成によっても調製され得る。どの調製方法が使用されても、本発明で記載されている血糖低下又は体重減少活性の1つを有している限り、当該方法は、本発明の保護範囲内である。
【0067】
本発明の具体的な実施形態に従うと、組換え細胞は、動物生殖細胞、受精卵、又は胚性幹細胞を含まない。
【0068】
本発明は、患者の血中グルコース及び/又は体重を低減させるための方法であって、1)前述のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド、2)前述の融合タンパク質、3)GLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド又は融合タンパク質をコードする前述の核酸分子、4)前述の発現ベクター、5)前述の組換え細胞、及び6)前述の医薬組成物のうちの少なくとも1つを患者に投与する工程を含む、方法を提供する。本発明の具体的な実施形態に従った方法は、患者の体重及び/又は血中グルコースレベルを効果的に且つ長期にわたり制御し得るか又は低減させ得、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂質異常症、及びメタボリックシンドローム、並びに他の疾患を処置し得る。本発明の「Fc断片」は、ヒトIgG4 Fc断片、又はIgG4 Fc断片のバリアントであり得る。変異体は、野生型IgG4 Fcと比較した1つ又は複数のアミノ酸部位変異を有する。
【0069】
本発明のGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチドの名称は、例えば「CG01」、「CG02」等、「CG」で始まり、GLP-1/GIPデュアルターゲット融合タンパク質の名称は、例えば「HEC-G01」、「HEC-G02」等、「HEC-G」で始まる。
【0070】
本発明を、具体的な実施例を参照して以下に記載する。以下の実施例で使用されている実験方法は全て、別段の特定がない限り従来の方法であることが留意されるべきである。以下の実施例で使用されている材料、試薬等は、全て、別段の特定がない限り、商業的供給元から入手することができる。これらの実施例は説明的なものにすぎず、本発明を決して限定してはいない。
【0071】
(実施例1)
この実施例は、本発明のポリペプチドを合成するための方法を提供する。
【0072】
1.固相ペプチド合成をペプチド合成装置で行った:樹脂を150mlのリアクターに添加し、次いで、50mlのジクロロメタン(DCM)を添加し、樹脂を2時間浸した。樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄し、次いで排出し、これを4回繰り返し、次いで、樹脂を排出した。Fmoc(保護型)のC末端の第1のアミノ酸、DCM、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を秤量し、リアクターに添加し、次いで、リアクターを30℃で2時間、振とう器に置いた。混合物をメタノール溶液(メタノール:DIEA:DCM=1:1:2)で0.5時間ブロックし、次いでDMFで4回洗浄し、次いで排出した。20%ピペリジン溶液をリアクターに添加してFmoc保護基を除去した。脱保護の後、混合物をDMFで4回洗浄し、次いで排出した。
【0073】
2. Fmoc(保護型)のC末端の第2のアミノ酸、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、及びN,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を秤量し、リアクターに添加し、次いで、リアクターを30℃で1時間、振とう器に置いた。少量の樹脂を取り、ニンヒドリン法で試験した。樹脂が着色していたら、これは縮合が不完全であることを意味しており、反応を継続する。反応が完了した後、樹脂をDMFで4回洗浄し、次いで排出した。ある特定の量の20%ピペリジン(ピペリジン/DMF=1:4)をリアクターに添加し、次いで、リアクターを脱色振とう器に置き、20分間振とうして、樹脂上のFmoc保護基を除去した。脱保護の後、樹脂をDMFで4回洗浄し、次いで排出して、保護基が除去されたかどうかを確認した。
【0074】
3.工程2に従ってアミノ酸を順に連結し、最後に、切断試薬を使用して、全てのポリペプチド保護群を除去し、次いで、ポリペプチドを樹脂から切断し、精製に送った。
【0075】
4.標的ペプチドを合成した後、逆相液体クロマトグラフィー精製を介して標的ペプチドを不純物から分離した。回収された標的ペプチドを粉末に凍結乾燥し、品質検査並びに純度及び質量分析同定のためにQCに送った。HPLC試験の後、純度は95%を超えていた。質量分析によって同定されたペプチドの分子量は、理論上の分子量と一致していた。Table 2(表2)は、合成されたポリペプチド化合物を示している。
【0076】
【表2】
【0077】
(実施例2)
ポリペプチドのインビトロ活性の決定
GLP-1R又はGIPRを発現するHEK293細胞を、ペプチド試料であるヒトGLP-1(購入した)及びヒトGIP(購入した)でそれぞれ処理し、具体的な操作は以下の通りである。
1)遺伝子GIPR及びGLP-1RをGenewiz社で最適化し、通常通りに合成し、遺伝子をベクターpUC57-Ampにクローニングして、ミニスケールの組換えプラスミドDNAを調製し、そして組換えプラスミドを有する細菌に穴をあけた。
2)pUC57-GIPR組換えプラスミドDNAをHindIII及びEcoRIで二重消化し、pUC57-GLP-1RをHindIII及びXhoIで二重消化した。消化産物を1%アガロースゲル上で電気泳動し、標的バンドを清潔な刃で切り出し、次いで、ゲル回収キットを使用して標的断片を回収した。具体的な実験操作はキットの指示に従って行う。
3)標的断片酵素消化回収産物及びベクタープラスミドpcDNA3.1断片を、T4リガーゼを介して連結し、DH5αコンピテント細胞に形質転換し、次いで、プレートに広げることによって単一コロニーを単離し、形質転換体を選択し、そして酵素消化の検証及びシーケンシングの検証のために増殖させた。
4)接種工程3)で得られ、シーケンシングによって標的産物の融合タンパク質を有することが確認された、200mLの細菌液を、プラスミド抽出に使用した。使用したキットは、PureLink HiPure Plasmid Maxiprep Kitであり、指示に従った。PCR及び酵素消化によってプラスミドが正確であることを確認した後、pvuI制限酵素を使用して線状化を行った。最後に、エタノール沈殿法を使用してプラスミドを回収した。
5)宿主細胞はHEK293であり、トランスフェクションの前日に、細胞を2×106細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに広げ、加えた容積は1mL/ウェルであった。回収された線状化されたプラスミドを、リポフェクタミン3000トランスフェクション法を使用してHEK293細胞にトランスフェクトし、次いで、G418をスクリーンに添加して混合株を得、単一クローンを限界希釈及び単離によって得、そして活性を試験及び検証した。
【0078】
cAMP検出キット(Cisbio社、62AM6PEC)を使用して、操作指示に記載されている工程に従って、レシピエント細胞によって産生されたcAMPを検出した。具体的な工程は以下の通りである。
1)アッセイバッファーの調製:完全培養培地(DMEM培地+10%FBS)に4/1000のIBMXストック溶液500mMを添加し、cAMP-d2検量線用溶液及び抗cAMP-クリプテート検量線用溶液をキットの指示に従って調製した。
2)試験試料及びコントロール試料のヒトGLP-1(購入した)及びGIP(購入した)を希釈して、初期濃度が500nMのストック溶液とし、次いで、その20μLを勾配段階希釈のアッセイバッファー(5回希釈した)80μLに添加し、ストック溶液を含めて全部で8つの化合物勾配を得た。
3)細胞懸濁液の調製:細胞HEK293-GLP-1R及びHEK293-GIPRを液体窒素タンクから取り出し、すぐに37℃のウォーターバスに置いた。混合物が1.5分間以内に完全に融解しなかった場合は、細胞を、クリーンベンチ上の8mLの温かい培養培地を含有する15mLの遠心管に滴下で添加し、次いで、900rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、そして細胞を1mLの完全培養培地で再懸濁させた(ピペッティングによって15回)。20μLの懸濁液をすぐに取り出し、等容積のトリパンブルーと混合し、20μLを取り出した後に細胞を4x105細胞/mLに希釈して、生存細胞の数をカウントした。
4)384ウェルプレートをGLP-1R細胞区域及びGIPR細胞区域に分け、細胞懸濁液を、12チャネルのアジャスタブルディスペンサーを使用して、ウェル当たり5μLで、対応する区域のウェルに添加し、次いで、試験物質及びポジティブコントロール物質の連続希釈物を、12チャネルのアジャスタブルディスペンサーを使用して、ウェル当たり5μLで、細胞に対応する384ウェルプレートに添加した(同一濃度の試料を2つの並行のウェルで複製した)。ネガティブコントロール:アッセイバッファー10μL/ウェルであり、各384ウェルプレートに3つのウェルを設定し、白色のシーリングフィルムでカバーし、37℃の定温インキュベーターに置き、そして0.5時間後に取り出した。
5)cAMP-d2検量線用溶液及び抗cAMP-クリプテート検量線用溶液を、使用の前に、Hi-rangeキットの溶解バッファーで20倍希釈し、次いで、1:1で等しく混合してcAMP検出試薬混合物を調製し、cAMP検出試薬混合物に10μL/ウェルの試料群を添加し、5μLの溶解バッファー及び5μLの希釈された抗cAMP-クリプテート検量線用溶液を、ネガティブコントロールの各ウェルに添加し、次いで、プレートを白色の蓋で覆い、そして室温で暗所に1時間置いた。
6)665nm及び620nmでの蛍光値を多機能マイクロプレートリーダーによって検出した。
7)これを使用して用量応答曲線を作成し、次いでEC50値を計算し、そして互いに比較した。
【0079】
具体的な結果をTable 3(表3)に示す。全てのペプチドが強力なGIPRアゴニスト活性を示したが、GLP-1Rアゴニスト活性にはある程度の差があった。これらのうち、CG133及びCG134は比較的弱いGLP-1Rアゴニスト活性を有していた。
【0080】
【表3】
【0081】
(実施例3)
発現ベクターの構築
この実施例は、分子クローニング法を使用して、連結ペプチドでGLP-1/GIPデュアル受容体アゴニストポリペプチドをFc断片と融合した。ここで、野生型GLP-1のアミノ酸配列は、HAEGT FTSDV SSYLE GQAAK EFIAW LVKGR G(配列番号115)であり、野生型GIPのアミノ酸配列は、YAEGT FISDY SIAMD KIHQQ DFVNW LLAQ(配列番号116)であり、そしてGLP-1/GIPデュアル受容体アゴニストポリペプチドを、野生型GLP-1及びGIPのアミノ酸配列を変異させることによって得た。合成された配列を二重消化し、哺乳動物細胞発現ベクターの同一の酵素消化部位に挿入した。又は、部位特異的変異プライマーを既存のベクターに基づいて設計し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して一連の変異体ベクターを構築し、次いでシーケンシング会社に送り、シーケンシングが正確であることを確認し、OMEGA社のエンドトキシン除去プラスミド抽出キット(Endo-free Plasmid Miniキット)を使用して、プラスミドベクターを抽出し、カタログ番号はD6950-01であり、プラスミドベクターを後の使用のために-20℃で保存した。Table 4(表4)は、GLP-1/GIPデュアルターゲット融合タンパク質におけるGLP-1/GIPデュアルターゲットポリペプチド配列を示している。
【0082】
【表4A】
【0083】
【表4B】
【0084】
【表4C】
【0085】
【表4D】
【0086】
(実施例4)
細胞におけるベクターのトランスフェクション及び発現
この実施例では、CHO-S細胞を蘇生させ、継代培養し、細胞密度を約6×106細胞/mLまで希釈した。ExpiCHO Fectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientific社)をトランスフェクションに使用した。例として50mLの発現系を利用した場合、具体的な実験操作は以下の通りであった。
1)2mLのOptiPRO(商標)SFM複合体形成培地でプラスミドを希釈し、プラスミドは濾過及び滅菌する必要があった。最終濃度は1μg/mLであった。
2)1.84mLのOptiPRO(商標)SFM複合体形成培地を、160μLのExpiFectamine(商標)CHO試薬に添加した。
3)工程1及び工程2の溶液を等しく混合し、細胞に添加し、それぞれマークを付け、混合物を振とう器に置き、そして37℃、8%CO2、140rpmで18~22時間インキュベートした。
4)培養した後、300μLのExpiFectamine(商標)CHOエンハンサー及び12mLのExpiCHO(商標)フィードをそれぞれ、トランスフェクトされた細胞に添加した。
5)工程4)で得られたトランスフェクトされた細胞を、37℃、8%CO2、140rpmの振とう器に置いた。6日間培養した後、細胞発酵培養液をその後の精製のために回収した。
【0087】
(実施例5)
融合タンパク質の精製及び同定
細胞培養培地を遠心分離して上清を回収し、0.22μmのフィルターで濾過して、残った細胞残屑を除去した。回収された細胞培養培地を、タンパク質Aクロマトグラフィーカラムを使用して精製して、標的ピークを回収し、次いで、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して更に精製した。タンパク質を最後に、0.02MのPBSで溶出及び回収した。具体的な工程は以下の通りである。
1)細胞発酵培養液を50mLの遠心管に回収し、1000rpmで10分間、低速で遠心分離した。
2)同時に、カラム及び精製系を、5~10カラム容積の超純水ですすいだ。
3)遠心分離の後、0.45μmの限外濾過膜を使用して上清を濾過して、細胞沈殿物を除去した。
4)カラムを、5~10カラム容積の0.02MのPBSバッファーで洗浄し、カラムを平衡化した。
5)全ての試料がカラムを通るまで、濾過した上清をカラムに流した。
6)次いで、試料ベースラインが「0」に達するまで、カラムを、5~10カラム容積の0.02MのPBSバッファーですすいだ。
7)次いで、0.1Mの酢酸-酢酸ナトリウム溶液を使用して、試料を、pH8.0のTris-HCl溶液2.5mLを含有する50mLの遠心管に溶出した。
8)カラムを0.1MのNaOH溶液(5~10カラム容積)ですすぎ、次いで充填物を再生し、そしてカラム内の一部の不純物タンパク質を除去した。
9)カラムを5~10カラム容積の超純水ですすいだ。
10)全ての試料がロードされるまで、上記の操作4)~9)を反復した。
11)系を20%エタノールですすぎ、最後に、カラムをエタノール中で保存し、次いでカラムを取り出した。
12)タンパク質Aを事前に充填したカラムを精製装置から取り出し、これを、陰イオン交換クロマトグラフィーQカラムで置き換えた。
13)カラム及び精製系を、5~10カラム容積の超純水ですすいだ。
14)カラムを5~10カラム容積の0.02MのPBバッファーで洗浄し、平衡させた。
15)上記の操作(7)で得られた、最初は純粋な試料を、導電率が5ms/cmを下回るまで希釈し、次いで、試料をロードした。
16)次いで、カラムを、5~10カラム容積の0.02MのPBバッファーで洗浄した。
17)タンパク質試料を、0.02MのPBSバッファーで溶出した。
18)試料を1.5MのNaCl溶液で溶出して、カラム内の色素を除去した。
19)カラムを0.1MのNaOH溶液(5~10カラム容積)ですすいで、カラム内の一部の不純物タンパク質を除去した。
20)カラムを5~10カラム容積の超純水ですすいだ。
21)全ての試料がロードされるまで、上記の操作14)~20)を反復した。
22)カラム内に残っているのがエタノールのみになるまで、系及びカラムを20%エタノールですすいだ。
【0088】
試料を、マイクロ核酸タンパク質アナライザー(NanoDrop 2000/2000c分光光度計)を使用して定量し、次いで、12%SDS-PAGE電気泳動によって検出し、そして電気泳動の結果は単一のバンドを示した。
【0089】
(実施例6)
融合タンパク質のインビトロ活性の決定
GLP-1R又はGIPRを発現するHEK293細胞を、ヒトGLP-1(購入した)及びGIP(購入した)を発現させることによって調製した融合タンパク質によってそれぞれ処理し、具体的な操作は以下の通りである。
1)遺伝子GIPR及びGLP-1RをGenewiz社で最適化し、通常通りに合成し、遺伝子をベクターpUC57-Ampにクローニングして、ミニスケールの組換えプラスミドDNAを調製し、そして組換えプラスミドを有する細菌に穴をあけた。
2)pUC57-GIPR組換えプラスミドDNAをHindIII及びEcoRIで二重消化し、pUC57-GLP-1RをHindIII及びXhoIで二重消化した。消化産物を1%アガロースゲル上で電気泳動し、標的バンドを清潔な刃で切り出し、次いで、ゲル回収キットを使用して標的断片を回収した。具体的な実験操作はキットの指示に従って行う。
3)標的断片酵素消化回収産物及びベクタープラスミドpcDNA3.1断片を、T4リガーゼを介して連結し、DH5αコンピテント細胞に形質転換し、次いで、プレートに広げることによって単一コロニーを単離し、形質転換体を選択し、そして酵素消化の検証及びシーケンシングの検証のために増殖させた。
4)接種工程3)で得られ、シーケンシングによって標的産物の融合タンパク質を有することが確認された、200mLの細菌液を、プラスミド抽出に使用した。使用したキットは、PureLink HiPure Plasmid Maxiprep Kitであり、指示に従った。PCR及び酵素消化によってプラスミドが正確であることを確認した後、pvuI制限酵素を使用して線状化を行った。最後に、エタノール沈殿法を使用してプラスミドを回収した。
5)宿主細胞はHEK293であり、トランスフェクションの前日に、細胞を2×106細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに広げ、加えた容積は1mL/ウェルであった。回収された線状化されたプラスミドを、リポフェクタミン3000トランスフェクション法を使用してHEK293細胞にトランスフェクトし、次いで、G418をスクリーンに添加して混合株を得、単一クローンを限界希釈及び単離によって得、そして活性を試験及び検証した。
【0090】
レシピエント細胞によって産生されたcAMPを、cAMP検出キット(Cisbio社、62AM6PEC)によって、操作指示に記載されている工程に従って検出した。具体的な工程は以下の通りである。
1)アッセイバッファーの調製:完全培養培地(DMEM培地+10%FBS)に4/1000のIBMXストック溶液500mMを添加し、cAMP-d2検量線用溶液及び抗cAMP-クリプテート検量線用溶液をキットの指示に従って調製した。
2)試験試料及びコントロール試料のヒトGLP-1(購入した)及びGIP(購入した)を希釈して、初期濃度が500nMのストック溶液とし、次いで、その20μLを勾配段階希釈のアッセイバッファー(5回希釈した)80μLに添加し、ストック溶液を含めて全部で8つの化合物勾配を得た。
3)細胞懸濁液の調製:細胞HEK293-GLP-1R及びHEK293-GIPRを液体窒素タンクから取り出し、すぐに37℃のウォーターバスに置いた。混合物が1.5分間以内に完全に融解しなかった場合は、細胞を、クリーンベンチ上の8mLの温かい培養培地を含有する15mLの遠心管に滴下で添加し、次いで、900rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、そして細胞を1mLの完全培養培地で再懸濁させた(ピペッティングによって15回)。20μLの懸濁液をすぐに取り出し、等容積のトリパンブルーと混合し、20μLを取り出した後に細胞を4x105細胞/mLに希釈して、生存細胞の数をカウントした。
4)384ウェルプレートをGLP-1R細胞区域及びGIPR細胞区域に分け、細胞懸濁液を、12チャネルのアジャスタブルディスペンサーを使用して、ウェル当たり5μLで、対応する区域のウェルに添加し、次いで、試験物質及びポジティブコントロール物質の連続希釈物を、12チャネルのアジャスタブルディスペンサーを使用して、ウェル当たり5μLで、細胞に対応する384ウェルプレートに添加した(同一濃度の試料を2つの並行のウェルで複製した)。ネガティブコントロール:アッセイバッファー10μL/ウェルであり、各384ウェルプレートに3つのウェルを設定し、白色のシーリングフィルムでカバーし、37℃の定温インキュベーターに置き、そして0.5時間後に取り出した。
5)cAMP-d2検量線用溶液及び抗cAMP-クリプテート検量線用溶液を、使用の前に、Hi-rangeキットの溶解バッファーで20倍希釈し、次いで、1:1で等しく混合してcAMP検出試薬混合物を調製し、cAMP検出試薬混合物に10μL/ウェルの試料群を添加し、5μLの溶解バッファー及び5μLの希釈された抗cAMP-クリプテート検量線用溶液を、ネガティブコントロールの各ウェルに添加し、次いで、プレートを白色の蓋で覆い、そして室温で暗所に1時間置いた。
6)665nm及び620nmでの蛍光値を多機能マイクロプレートリーダーによって検出した。
7)これを使用して用量応答曲線を作成し、次いでEC50値を計算し、そして互いに比較した。
【0091】
具体的な結果をTable 5(表5)に示し、この表において、G04、G05、G12、G27、G28、G30、G42、G49~G51、G58、G62、G108~G111で示される融合タンパク質はアゴニスト活性を示さず、他の融合タンパク質はアゴニスト活性が検出され、これらのうち、G06、G20、G23、G34、G35、G37、G38、G48、G66、G67、G72、G74、G99、G101、G113、G115、G121~G127、G130~G132は強力なインビトロ活性を有していた。
【0092】
【表5A】
【0093】
【表5B】
【0094】
【表5C】
【0095】
【表5D】
【0096】
(実施例7)
グルコース負荷の評価
この実施例は、正常なC57BL/6マウスにおける、グルコース負荷に対するHEC-G123、HEC-G128、HEC-G131、HEC-G132の効果を評価している。
【0097】
実験方法:正常なC57BL/6マウスを、血中グルコース及び体重に従って各群8頭のマウスで6つの群(媒質群、デュラグルチド群、HEC-G123群、HEC-G128群、HEC-G131群、HEC-G132群)にランダムに分けた。デュラグルチド、HEC-G123、HEC-G128、HEC-G131、及びHEC-G132の群では、対応する薬物を3nmol/kgの用量でマウスに皮下注射し、コントロール群では、対応する媒質を皮下注射した。
【0098】
60時間の単回投与の後、マウスを12時間絶食させ、水は自由に飲ませた。血液を尾静脈から回収して、各群の基底血中グルコース値を測定し、次いで、2g/kgのグルコース溶液を腹腔内注射し、そして、グルコース投与の15分後、30分後、60分後、及び0分後に血中グルコースを測定した。異なる時点で測定された血中グルコース値に従って、血中グルコース濃度-時間曲線をプロットし、各用量群のAUC0~90分を計算し、そして実験結果をTable 6(表6)及び図1図2に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
結論:HEC-G123、HEC-G128、HEC-G131、及びHEC-G132は、72時間の単回投与の後に、正常なC57マウスの血中グルコースレベルを有意に低減させた。ポジティブコントロールのデュラグルチドと比較してHEC-G123及びHEC-G128は、グルコース負荷の改善に対して更に顕著な効果を有していたが、HEC-G131及びHEC-G132は、グルコース負荷の改善において有意差はなかった。
【0101】
(実施例8)
グルコース負荷の評価
この実施例は、正常なC57BL/6マウスにおける、グルコース負荷に対するHEC-G113、HEC-G122、HEC-G126、HEC-G127の効果を評価している。
【0102】
実験方法:正常なC57BL/6マウスを、血中グルコース及び体重に従って各群8頭のマウスで6つの群(媒質群、デュラグルチド群、HEC-G113群、HEC-G122群、HEC-G126群、HEC-G127群)にランダムに分けた。デュラグルチド(デュラグルチドはEli Lilly社から購入し、ロット番号はD256504であった)、HEC-G113、HEC-G122、HEC-G126、及びHEC-G127の群では、対応する薬物を3nmol/kgの用量でマウスに皮下注射し、コントロール群では、対応する媒質を皮下注射した。
【0103】
60時間の単回投与の後、マウスを12時間絶食させ、水は自由に飲ませた。血液を尾静脈から回収して、各群の基底血中グルコース値を測定し、次いで、2g/kgのグルコース溶液を腹腔内注射し、そして、グルコース投与の15分後、30分後、60分後、90分後、及び0分後に血中グルコースを測定した。異なる時点で測定された血中グルコース値に従って、血中グルコース濃度-時間曲線をプロットし、各用量群のAUC0~90分を計算し、そして実験結果をTable 7(表7)及び図3図4に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
結論:HEC-G113、HEC-G122、HEC-G126、及びHEC-G127は、72時間の単回投与の後に、正常なC57マウスの血中グルコースレベルを有意に低減させた。各群のグルコース負荷改善効果は、ポジティブコントロールのデュラグルチドのそれよりも良好であった。
【0106】
(実施例9)
9頭のdb/dbマウスモデルのインビボ有効性の評価
この実施例は、db/dbマウスモデルに対するHEC-G20のグルコース効果を評価している。
【0107】
方法:7~8週齢のdb/dbマウスを、血中グルコース及び体重に従って各群9頭のマウスで3つの群(モデル群、セマグルチド群、HEC-G20群)にランダムに分けた。セマグルチド(セマグルチドはNovo Nordisk社から購入し、ロット番号はJP52092であった)及びHEC-G20の群では、対応する薬物を各群につき10nmol/kgの用量でマウスに皮下投与し、モデル群では、対応する媒質を皮下注射した。セマグルチド群には1日に1回投与し、HEC-G20群には1週間に2回、全部で4週間投与し、そして動物の血中グルコースを各投与の前に検査した。
【0108】
実験結果:HEC-G20群は、投与後に血中グルコースを有意に低減させることができ、血中グルコース値は7時間で最低レベルに達し、効果は、同一の用量で、ポジティブコントロールのセマグルチドの効果と同様であった。モデル群と比較して、HEC-G20群の長期反復投与を行ったマウスの血中グルコース値は有意に低く、長時間にわたり安定なままであり、そして、Table 8(表8)及び図5図6に示すように、その血糖低下効果はセマグルチド群の効果と同様であった。
【0109】
【表8】
【0110】
結論:HEC-G20の長期の投与は、II型糖尿病db/dbマウスの血中グルコースレベルを有意に改善することができる。
【0111】
(実施例10)
DIOモデルのインビボ有効性の評価
この実施例では、DIOモデルの肥満マウスの体重及び摂食に対するHEC-G115及びHEC-G124の長期反復投与の効果を評価した。
【0112】
実験方法:C57/BL6マウスを5週齢で正常群NFD及びモデル群HFDにランダムに分け、正常群には通常の維持飼料を給餌し、一方、モデル群には高脂肪飼料D12492を給餌した。マウスの体重及び飼料摂取の変化を、3週間毎にモニタリングした。16週間給餌した後、モデル群及び正常群のマウスの体重はそれぞれ(47.9±3.4)g及び(29.6±1.5)gであり、2つの群の間の差は、統計的に有意であった。正常群をコントロール群に分け、うまくモデル化されたモデル群マウスを、各群10頭のマウスで、媒質群、セマグルチド群、HEC-G115群、及びHEC-G124群に分けた。セマグルチド、HEC-G115、及びHEC-G124の群では、対応する薬物を各群に皮下注射し、媒質群ではPBSを皮下注射した。最初の投与は、各群、10nmol/kgの用量で7日間にわたり、その後3日間毎に観察された。体重及び飼料摂取を各投与の前に測定した。3週間の投与の後、腹腔内のグルコース負荷試験を行った。72時間の最後の投与の後、各群で、試料を回収し、肝臓の質量を記録し、そして肝臓の病理学的状態及び血液の生化学的指標を検出した。試験結果をTable 9(表9)~Table 12(表12)及び図7図8に示す。
【0113】
【表9】
【0114】
【表10】
【0115】
【表11】
【0116】
【表12】
【0117】
結果:4週間後の、3日に1回投与されたHEC-G115及びHEC-G124の体重減少及び摂食阻害の効果は、同一の用量で1日に1回投与されたコントロール群セマグルチドの効果と同等であった。HEC-G115及びHEC-G124はまた、DIOマウスの肝機能及び血中脂質を有意に改善し、その効果はセマグルチドの効果と同様であった。
【0118】
本明細書を通して、「一実施形態」、「一部の実施形態」、「一実施例」、「具体的な実施例」、又は「一部の実施例」への言及は、当該実施形態又は実施例に関連して記載されている特定の特徴、構造、材料、又は特質が本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれていることを意味している。本明細書では、上記の用語の図式表示は、同一の実施形態又は実施例を必ずしも示しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特質は、1つ又は複数の実施形態又は実施例においてあらゆる適切な様式で組み合わされてもよい。加えて、当業者は、異なる実施形態、実施例、又はこれらの特徴を、これらが互いに矛盾しない限り、組み込み、組み合わせることができる。
【0119】
本発明の実施形態を示し、記載してきたが、当業者には、上記の実施形態が本開示を限定するものとは解釈され得ず、本開示の趣旨、原理、及び範囲から逸脱することなく、実施形態において変更、代替、及び修正がなされ得ることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【国際調査報告】