IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表-直接冷却電動機 図1
  • 特表-直接冷却電動機 図2
  • 特表-直接冷却電動機 図3
  • 特表-直接冷却電動機 図4
  • 特表-直接冷却電動機 図5
  • 特表-直接冷却電動機 図6
  • 特表-直接冷却電動機 図7
  • 特表-直接冷却電動機 図8
  • 特表-直接冷却電動機 図9
  • 特表-直接冷却電動機 図10
  • 特表-直接冷却電動機 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】直接冷却電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514374
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2022073096
(87)【国際公開番号】W WO2023030911
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21195002.7
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP02
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ13
5H609RR27
5H609RR37
5H609RR43
(57)【要約】
冷媒によって冷却されるように構成された、電気自動車のトラクションドライブのための直接冷却電動機(9)であって、電動機(9)は、積層鋼板を有するステータコア(2)を収容するハウジング(1)と、ステータコア(2)の半径方向内側で回転するように配置されたローター(3)と、ステータコア(2)を通って軸方向に延び、ステータコア(2)の軸方向端部(8)を超えて軸方向に延びる巻線(7)と、少なくとも1つの端部ファイバー(6)と、を備え、端部ファイバー(6)は、ステータコア(2)の、軸方向端部(8)上で周方向及び半径方向に延び、端部ファイバー(6)の周りに周方向に配置された複数の巻線用開口(6c)を備え、巻線(7)は、巻線用開口(6c)を通って延びる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒によって冷却されるように構成された、電気自動車のトラクションドライブのための直接冷却電動機(9)であって、
前記電動機(9)は、
積層鋼板を有するステータコア(2)を収容するハウジング(1)と、
前記ステータコア(2)の半径方向内側で回転するように配置されたローター(3)と、
前記ステータコア(2)を通って軸方向に延び、前記ステータコア(2)の軸方向端部(8)を超えて軸方向に延びる巻線(7)と、
少なくとも1つのリング状の端部ファイバー(6)と、
を備え、
前記端部ファイバー(6)は、前記ステータコア(2)のそれぞれの前記軸方向端部(8)のうちの1つに配置され、前記ステータコア(2)の、それぞれの前記軸方向端部(8)にわたって周方向及び半径方向に延び、前記端部ファイバー(6)の周りに周方向に配置された複数の巻線用開口(6C)を備え、
前記巻線(7)は、前記巻線用開口(6C)を通って延び、
前記端部ファイバー(6)の内径(Di)は、前記ローター(3)の外径(Do)より小さい、
直接冷却電動機。
【請求項2】
前記端部ファイバー(6)は、その半径方向内側端において前記ローター(3)と半径方向に重複することを特徴とする、
請求項1に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項3】
前記端部ファイバー(6)と前記ローター(3)との間の該端部ファイバーの軸方向のクリアランス(6-AC)は、前記ローター(3)の前記外径(Do)と前記端部ファイバー(6)の前記内径(Di)との差の半分より小さいことを特徴とする、
請求項1又は2に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項4】
前記端部ファイバー(6)と前記ローター(3)との間の該端部ファイバーの軸方向のクリアランス(6-AC)は、0.3mm~15mmの範囲にあることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項5】
前記端部ファイバー(6)は、前記ステータコア(2)と前記ローター(3)との間のエアギャップ(10)の領域において、少なくとも1つの傾斜面をもつエアギャップフローデフレクタ(6A)をさらに備えることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項6】
前記エアギャップフローデフレクタ(6A)は、前記ローター(3)に向かって、前記端部ファイバー(6)の前記内径(Di)に近づくことを特徴とする、
請求項5に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項7】
前記端部ファイバー(6)の半径方向内側端と前記ローター(3)との間の該端部ファイバーの半径方向のクリアランス(6-RC)は、前記端部ファイバー(6)と前記ローター(3)との間の該端部ファイバーの軸方向のクリアランス(6-AC)以下であることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項8】
前記端部ファイバー(6)の半径方向内側端と前記ローター(3)との間の端部ファイバーの半径方向のクリアランス(6-RC)は、0.3mm~15mmの範囲であることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項9】
前記端部ファイバー(6)は、エアギャップラビリンスシール(6A’)の一部を形成し、それによって、前記ラビリンスシールの回転対偶は、前記ローター(3)によって提供されることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項10】
前記端部ファイバー(6)は、前記冷媒を前記電動機(9)の回転部分から遠ざけるように偏向するための、少なくとも1つの、勾配のついた又は面取りされた偏向面(6A)を備え、
前記ローター(3)の回転軸(R)を含む軸平面において、前記ローター(3)の前記回転軸(R)に対して垂直に延びる平面と、前記偏向面(6A)との間の、前記偏向面(6A)の偏向角(β)は、0°~90°の範囲にあることを特徴とする、
請求項1~9のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項11】
前記偏向面(6A)の前記偏向角(β)は、10°~80°の範囲にあることを特徴とする、
請求項10に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項12】
前記偏向面(6A)の前記偏向角(β)は、30°~60°の範囲にあることを特徴とする、
請求項10に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項13】
前記端部ファイバー(6)は、前記端部ファイバー(6)と前記ステータコア(2)との間に、冷媒流路(6B)を形成する凹部をさらに備え、それによって、前記軸方向における前記冷媒流路(6B)の幅(6-CH)は、前記端部ファイバー(6)と前記ローター(3)との間の該端部ファイバーの軸方向のクリアランス(6-AC)以下であることを特徴とする、
請求項1~12のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項14】
前記軸方向における、前記冷媒流路(6B)の前記幅(6-CH)は、0.3mm~15mmの範囲にあることを特徴とする、
請求項13に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項15】
前記ステータコア(2)は、前記ステータコア(2)を通って軸方向に延びる、少なくとも2つの冷却チャネル(2A,2A’)をさらに備え、それによって、前記冷媒流路(6B)の前記凹部は、少なくとも2つの前記冷却チャネル(2A,2A’)のうちの少なくとも2つを互いに流体接続するか、又は、前記冷却チャネル(2A,2A’)のうちの少なくとも1つを、前記電動機(9)の冷媒出口又は冷媒入口と流体接続することを特徴とする、
請求項13又は14に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項16】
冷媒が、前記ステータコア(2)を通って軸方向に反対向きに流れることができるように、少なくとも2つの前記冷却チャネル(2A,2A’)は、直列に流体接続され、前記冷媒流路(6B)は、少なくとも2つの前記冷却チャネル(2A,2A’)を流体接続することを特徴とする、
請求項15に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項17】
前記端部ファイバー(6)は、前記ハウジング(1)と接触し、好ましくは前記ハウジング(1)との密閉をする、少なくとも1つの半径方向の外側接触表面(6D)をさらに備えることを特徴とする、
請求項1~16のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項18】
前記ローター(3)は、前記巻線(7)を通り過ぎる、及び/又はステータにおける少なくとも1つの冷却チャネル(2A,2A’)を通る冷媒の流れを誘起するためのインペラ(5)を備え、それによって、前記インペラ(5)は、複数のブレード群(5B)と、縁又は溝(5A)とを備え、前記縁又は溝は、エアギャップラビリンスシール(6A’)の一部を形成することを特徴とする、
請求項1~17のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項19】
前記端部ファイバー(6)は、プラスチック製であることを特徴とする、
請求項1~18のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項20】
前記端部ファイバー(6)は、射出成形プロセスによって製造された、独立した要素として製造され、前記端部ファイバーの少なくとも本体は、ポリフェニレンサルファイド材料で作られていることを特徴とする、
請求項1~19のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項21】
前記端部ファイバー(6)は、熱硬化性材料から作られた、前記ステータコア(2)のオーバーモールド構造の一部として製造されていることを特徴とする、
請求項1~19のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項22】
前記ステータコア(2)、前記ローター(3)、前記巻線(7)、及び前記端部ファイバー(6)は、前記冷媒にさらされ、前記冷媒と直接に接触していることを特徴とする、
請求項1~21のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【請求項23】
前記冷媒は、誘電性流体、特に絶縁油と、空気との混合物であることを特徴とする、
請求項1~22のいずれか1項に記載の直接冷却電動機(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主な目的は、直接冷却電動機の冷却性能を向上させるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出力が数kW~1MWの範囲の、電気自動車のトラクションドライブのための直接冷却電動機は、巻線の少なくとも一部が、特にオーバーハングの領域の巻線が、冷媒と直接に接触するように構成されており、それは先行技術からよく知られている。
【0003】
日本公開特許公報2001-103700による解決策は、ステータ本体の表面に当接するフランジ型のプラスチックコイルホルダー(すなわち、端部ファイバー)を備えたステータを開示している。ヘアピン巻線の場合のプラスチックフランジの主な目的は、ワイヤを溶接用の最終形状に曲げることによってステータ巻線のコイルを形成することを目的とした曲げ加工の間、導体を支持することである。その基本的な形状では、端部ファイバーは、特に巻線の導体が挿入されるスロットの寸法及び数について、その外形がステータラミネーションの外形と基本的には一致する、ディスク又はリング状の部材である。ヘアピン巻線、アイピン(I-pin)巻線、又は連続巻線を備えたステータの製造は、先行技術において周知であるので、詳細は本願では説明されない。
【0004】
直接冷却電動機の、先行技術による解決策の不利な点は、特に電動機のステータとローターとの間のエアギャップの領域における、電動機の動作中の冷媒流の挙動を制御するための解決策が欠如していることである。したがって、著しい量の冷媒がエアギャップに入り、そこで流体摩擦及び粘度効果によって抗力が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直接冷却電動機は、連続出力に対するピーク出力の比を容易に高くできる、優れた冷却機能を提供する。しかしながら、直接冷却の熱性能は、電動機の筐体内の冷媒レベルに依存するので、電動機の動作中に、冷媒レベルが、特にウェットランナーとして知られる電動機については、ステータ及びローターの間のエアギャップ領域を上回るのは珍しくなく、この場合、ローターコアの外側表面は冷媒と直接接触し、露出した銅線から熱を除去する目的で、冷媒を巻線端部の領域内に前進させ、飛散させる。
【0006】
本願の目的のための「直接冷却」という表現は冷却を表し、ここで、電動機によって発生された熱は、少なくとも巻線頭部を含むステータの部分と直接接触する冷却流体によって除去される。すなわち、個々のワイヤは絶縁被膜を有していてもよいが、巻線頭部の個々のワイヤは、ステータの軸方向端部において、冷却流体と接触している。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る直接冷却電動機は、直接冷却電動機の効率又は製造性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
提案された解決策は、誘電性流体と空気との混合物であり得る冷却流体によって冷却されるように構成された、電気自動車のトラクションドライブのための直接冷却電動機を提供することである。直接冷却電動機は、積層鋼板を備えるステータコアを収容するハウジングと、回転軸のまわりをステータコアの半径方向内側で回転するように配置されたローターと、前記ステータコアを通って軸方向に延び、前記ステータコアの軸方向両端を超えて軸方向に延びる巻線と、少なくとも1つの端部ファイバーとを備え、それによって、個々の端部ファイバーは、周方向及び半径方向に、すなわち、ステータコアの軸方向端部に沿って延びる。前記端部ファイバーはリング状であるか、又はそれぞれがリングを形成する。前記端部ファイバーは、前記端部ファイバーの周りに周方向に配置された複数の巻線用開口を備え、それによって、前記巻線は、巻線用開口を通って延び、前記端部ファイバーの内径は、前記ローターの外径より小さい。したがって、端部ファイバーは、その内側端において、ローターを超えて半径方向に延び、ローターと半径方向に重複する。端部ファイバーは、その内側端に隣接して、ステータコアのそれぞれの軸方向端部と接触する接触領域を備える。前記接触領域は、好ましくは、平坦であってもよい。したがって、前記接触領域における端部ファイバーの軸方向の幅は、その半径方向の範囲より小さくてもよく、具体的には、多くても5分の1、好ましくは、多くても10分の1であってもよい。これに対して、前記内側端は、端部ファイバーの平坦な接触領域を超えて、軸方向に延びてもよい。
【0009】
軸方向は、ローターの回転軸と平行であり、半径方向及び周方向は、ローターの回転軸に対してのものである。
【0010】
端部ファイバーは、したがって、ローター及びステータの間のラジアルギャップへの流れを妨げるという、追加の機能と利点とを有する。これは、特に実施形態において有利であり、それによって、冷却チャンバーは、端部ファイバーに隣接して設けられ、冷媒は、加圧されることによって、ステータコアにおける軸方向の冷却チャネルを通過させられる。代替として、もし電動機が、冷媒に浸漬されたモーターであるなら、それによって、冷媒レベルは、ステータコア及びローターの間のラジアルギャップのレベルより高くすることができ、冷媒が、ローター及び/又はステータ部分へ到達する範囲が拡大し、ステータの軸方向端部から、ローター及びステータコアの間の隙間に入る冷媒が少なくなるので、ローターによって発生する引き摺り損失の減少により、特に高速回転時に、電動機の全体効率が向上する。ハウジングは、シェルと、シェルの軸方向端部に配置され、ベアリングプレート上に又はベアリングプレート内にローターが回転可能に取付された、2つのベアリングプレートとを有し得る。2つのベアリングプレートのうちの1つは、シェルと一体であってもよく、その結果、シェル及び一体化したベアリングプレートは、他のベアリングプレートによって軸方向に閉じられた窪みを形成する。ステータコアは、シェルに配置され、両方のベアリングプレートから軸方向に間隔があけられる。端部ファイバーは、ステータコアの1つの軸方向端部に配置され、それに隣接するベアリングプレートから間隔があけられる。したがって、端部ファイバーは、隣接するベアリングプレートとは接触しない。
【0011】
端部ファイバーは、巻線頭部が形成される曲げ加工の間、ワイヤ又は巻線を支持するように構成され、それによって、支持構造は、ステータコアへの冷媒の流れのための、少なくとも1つの流路も提供する。
【0012】
好ましい実施形態では、端部ファイバーとローターとの間の端部ファイバーの軸方向のクリアランスは、ローターコアの外径と端部ファイバーの内径との間の差の半分より小さい。前記軸方向のクリアランスは、例えば、0.3mm~15mmの範囲であってもよい。
【0013】
端部ファイバーは、ステータコアとローターとの間のエアギャップに近接して、エアギャップフローデフレクタをさらに備えてもよい。前記エアギャップフローデフレクタは、好ましくは、ローターに向かって、端部ファイバーの内径に収束する。端部ファイバーの半径方向の内側端とローターとの間の、端部ファイバーの半径方向のクリアランスは、端部ファイバーとローターとの間の端部ファイバーの軸方向のクリアランス以下であってもよく、好ましくは、0.3mm~15mmの範囲であってもよい。エアギャップフローデフレクタは、少なくとも1つの、勾配のついた、又は面取りされた、特に円錐状の表面を有する。少なくとも1つの勾配のついた又は円錐状の表面は、好ましくは、冷媒の流れを、概ね軸方向に導くために配置される。代替として又は追加的に、少なくとも1つの偏向面は、冷媒を電動機の回転部分から遠ざけるために設けられ得て、偏向角βは、0°~90°の範囲にあり、より好ましくは、10°~80°の範囲にあり、それによって、偏向角βは、偏向面と半径方向との間の角度として定義される。
【0014】
端部ファイバーは、ローター及びステータの間のラジアルギャップに近接して配置された、エアギャップラビリンスシールの一部を形成し得て、それによって、ラビリンスシールの回転対偶は、ローターコアによって提供され、端部ファイバーの軸方向のクリアランスと端部ファイバーの半径方向のクリアランスは、具体的には、0.3mm~15mmの範囲であってもよい。ローターとステータとの間の隙間を密閉するためのラビリンスシールを設けることによって、ステータコアとローターとの間の隙間への冷媒の侵入が、より効果的に阻止される。
【0015】
端部ファイバーは、端部ファイバーとステータコアとの間に冷媒流路を形成する、少なくとも1つの第1凹部を備え得る。軸方向における冷媒流路の幅は、端部ファイバーとローターとの間の軸方向のクリアランスと、好ましくは等しく、又は、好ましくはそれより小さく、具体的には、0.3mm~15mmの範囲であってもよい。したがって、端部ファイバーは、冷媒に経路を提供する、追加の機能を有する。
【0016】
有利には、ステータコアは、ステータコアを通って軸方向に延びる、少なくとも2つの冷却チャネルを備え得て、それによって、冷媒流路を形成する凹部は、少なくとも2つの冷却チャネルのうちの少なくとも2つを互いに流体接続するか、又は、冷却チャネルのうちの少なくとも1つを、電動機の冷媒出口又は冷媒入口と流体接続する。冷媒が、ステータコアを通って軸方向に反対向きに流れることができるように、少なくとも2つの冷却チャネルは、直列に流体接続され得て、したがって、冷媒流路は、少なくとも2つの冷却チャネルを流体接続し得る。したがって、端部ファイバーは、ステータを通って戻った冷媒を導くための、追加の機能を有する。
【0017】
別の実施形態では、端部ファイバーは、半径方向に延び、かつ、少なくとも1つの第1凹部によって形成された冷媒流路を、ステータコアの半径方向の内側部分で、すなわち、ヨーク部分の半径方向の内側のステータティースの領域において、ステータコアを通って軸方向に延びる冷却チャネルと接続する、複数の第2凹溝をさらに備える。
【0018】
端部ファイバーは、ハウジングと接触し、好ましくはハウジングとの密閉をする、少なくとも1つの半径方向の外側接触表面を備え得る。端部ファイバーは、したがって、ハウジングと連通する2つの冷媒チャンバーを分離する隔壁として機能し得る。
【0019】
端部ファイバーは、電動機の別の構成要素、具体的にはエンドプレートの接触表面に一致する接続面を備え得る。
【0020】
端部ファイバーは、巻線のための滴下プロセスの間(すなわち、溶接点の局所領域又は巻線全体にわたって電気絶縁コーティングを施すとき)、ワニスが冷却チャネルに侵入することを制限するために、端部ファイバーの周りに周方向に延在する、又は開口の周りに延在する、非流出端又は軸方向に延在する縁も備え得る。
【0021】
ステータコアへの取付の間に基準面位置を提供するために、端部ファイバーは、端部ファイバーをステータコアに対して所定の位置に位置決めするための、端部ファイバーから突出、好ましくは、軸方向に突出する、少なくとも1つの位置決めピンを備え得る。ステータコアのスロット開口は、したがって、端部ファイバーにおいて、容易に巻線用開口に正対され得る。
【0022】
有利な実施形態では、ローターは、巻線を通り過ぎ及び/又はステータにおける少なくとも1つの冷却チャネルを通る冷媒の流れを誘起するためのインペラを備え、それによって、インペラは、複数のブレード群と、シールを形成するために端部ファイバーと協働し、又はラビリンスシールの場合には、エアギャップラビリンスシールの部分を形成する、縁又は溝とを備える。
【0023】
端部ファイバーは、有利には、プラスチック、好ましくは熱硬化性材料から作られてもよい。
【0024】
端部ファイバーは、射出成形プロセスによって製造された、独立した要素として製造され得て、前記端部ファイバーの少なくとも本体は、好ましくは、PPS材料から作られ、PPSはポリフェニレンサルファイドを表す。
【0025】
端部ファイバーは、代替として、ステータコアの部分をオーバーモールドすることによって製造され得る。これによって、コスト効果の高い製造が可能になる。
【0026】
使用される冷媒は、好ましくは、絶縁油と空気との混合物である。したがって、電動機のための、追加の電気絶縁又は重要部分の腐食に対する絶縁は必要ない。ステータコア、ローター、巻線、及び端部ファイバーは、好ましくは、全て冷媒にさらされ、冷媒と直接に接触している。
【0027】
引き続き、添付の図面を参照し、好ましい実施形態及び代替の実施形態の説明を用いて、本発明の本質がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明による、直接冷却電動機の好ましい実施形態のための断面図を示す。
図2図2は、図1に示されるAの詳細図を示す。
図3図3は、ステータコアに面した背面図における、本発明係る端部ファイバーを示す。
図4図4は、図3のB-B断面における端部ファイバーを示す。
図5図5は、図4におけるCの詳細図における端部ファイバーを示す。
図6図6は、本発明に係る端部ファイバーの等角図を示す。
図7図7は、ステータ側から見た、本発明に係る端部ファイバーの等角図を示す。
図8図8は、ハウジングの無い電動機の詳細図を示す。
図9図9は、本発明に係る端部ファイバーの別の実施形態を示す。
図10図10は、図9における端部ファイバーの実施形態の詳細図を示す。
図11図11は、端部ファイバーの領域における、本発明に係る直接冷却電動機の、別の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図を参照すると、直接冷却電動機9は、ヘアピン巻線7有するステータコア2を備え、単線は、ステータコア2を通って軸方向に延びる、ステータコア2のスロット開口(不図示)に挿入される。ステータコア2は、積層鋼板から作られる。巻線7のワイヤをステータスロット内に取付する目的で、端部ファイバー6は複数の巻線用開口6Cを備え、巻線用開口6Cの数、寸法、及び位置は、ステータコア2の構成に適合され、ステータコア2の構成(すなわち、ステータの電磁設計)と一致する。
【0030】
いくつかの種類のヘアピン技術(すなわち、片側に溶接点を有するヘアピン、ステータ2の両側に溶接点をもつヘアピン巻線、アイピン巻線、波巻線等)が存在し、周知の利点と不利な点とがある。巻線7は、本発明の主題ではないと考えられるので、本願では巻線の種類は限定されず、より広く説明されることもない。発明の目的の観点から、端部ファイバー6の主要機能は、ステータコア2のスロット内へのワイヤ(すなわち、個々のヘアピン)の取付の間、特に、ステータコア2の軸方向端部8における溶接側のヘアピンを曲げるプロセスの間に、巻線7の導体を支持することであることを理解することが重要であり、ここで、ヘアピンは、巻線端部のオーバーハング(つまり巻線頭部)7A(図2を参照)内のそれらの最終位置に屈曲され、個々のヘアピンは、目的の電磁巻線方式に従って、配置、接続、及び溶接される。
【0031】
電動機冷却システムの観点から、直接冷却用に設計されたステータコア2は、好ましくは、ステータコア2(すなわち、電磁鋼の積層鋼板)内に、複数の孔状の冷却チャネル2Aを備え、ここで、冷却チャネル2Aは、ワイヤの間やステータティースの間のステータスロットの領域、及び/又はステータヨークの領域に設けられる。有利な実施形態では、ステータコア2は、ステータコア2の外側表面上に、複数の溝状の冷却チャネル2A’を備え、ここで、冷媒の流れの利用のために必要とされるチャネルは、ステータコア2と電動機の筐体1とが協働することによって設けられている。図1で示されるように、電動機9の有利な実施形態では、冷媒はシャフト4から放出され、電動機9のローター3上に配置されたインペラ5によってもたらされるポンプ能力によって、直列の冷却チャネル2A,2A’を通って進められ、ここで、冷媒は、好ましくは、並列接続と直列接続とを組合せて動作可能に接続された冷却チャネル2A,2A’のシステムを通って、ステータコア2の一側からステータコア2の他側に注入される。冷媒流を利用するために、端部ファイバー6は、ステータコア2に対向する側に凹部を備え、これによって、凹部は、ステータコア2と共に冷媒流路6Bを形成し、軸方向における冷媒流路6Bの幅6-CHは、0.3mmと15mmとの間にある。図7に示される別の実施形態では、端部ファイバー6は、半径方向に延び、かつ、冷媒流路6Bを、ステータコア2の半径方向の内側部で、すなわち、ヨーク部分の半径方向の内側のステータティースの領域において、ステータコア2を通って軸方向に延びる冷却チャネル2Aと接続する、追加の凹溝6Eをさらに備える。代替の実施形態では、端部ファイバー6は、冷媒の流路を利用するために、ステータコア2の一端部8上のチャンバー2-RC(図2を参照)を2つ以上のチャンバーに分割する目的で、1つ以上の接触表面6D(図9を参照)を備え、これによって、リターンチャンバー及び/又は収集チャンバーは、電動機9の他の構成要素と組合せて、端部ファイバー6の前記部分によって設けられることに留意することが重要である。
【0032】
直接冷却電動機用の完全防水型冷却システムの粘性抵抗の影響を低減させるために、端部ファイバーは、ローターとステータコア2との間の半径方向のエアギャップ10への入口の領域に、非接触のフローバリアを設ける。これは、ローターの高回転速度の範囲(すなわち、ローター3の外側表面の周速が100m/sを超える)において、特に重要である。前述のように、有利な設計における電動機のローター3は、電動機の冷却システムを通して冷媒を進めるためのポンプ出力を提供するためのインペラ5を備える。好ましい実施形態では、インペラは、接線方向の出口開口を備えた、後方に傾斜した複数のブレードを備える。しかしながら、ステータコア2とローター3との間のエアギャップ領域内に入る油の量を減らすために、端部ファイバー6は、有利な実施形態では、エアギャップフローデフレクタ6Aを備え、ここで、エアギャップフローデフレクタ6Aの内径は、半径方向のエアギャップ10の領域において、ローター3の外径より実質的に小さい。したがって、端部ファイバー6は、それぞれの軸方向端部において、前記半径方向のエアギャップ10と重なるローター3と、半径方向に重なる。
【0033】
したがって、エアギャップフローデフレクタ6Aの内径は、端部ファイバー6の内径Diと適合しかつ、ローターコア3上のインペラ5の外径Doより小さい。よって、端部ファイバー6の部分とローター3の軸方向に隣接する部分との間の、端部ファイバーの軸方向のクリアランス6-AC(図2を参照)及び、端部ファイバー6の部分とローター3の半径方向に隣接する部分との間の、端部ファイバーの半径方向のクリアランス6-RCは、電動機の回転部分と固定部分との間の摩擦を避ける目的で設けられ、ここで、端部ファイバーの軸方向のクリアランス6-ACと、端部ファイバーの半径方向のクリアランス6-RCとは、0.3mm~15mmの範囲である。
【0034】
図11に示される別の実施形態では、エアギャップフローデフレクタ6Aは、エアギャップラビリンスシール6A’の型に改変され、ここで、ラビリンスシールの回転対偶は、インペラ5の一部を形成する回転溝5A、又はローターコア3のためのバランシングリングによって設けられ、端部ファイバーの軸方向のクリアランス6-AC,6AC’、及び端部ファイバーの半径方向のクリアランス6-RC,6RC’は、電動機の回転部分と固定部分との間の全ての領域において維持される。それにもかかわらず、もし端部ファイバー6が、エアギャップフローデフレクタ6A又はエアギャップラビリンスシール6A’を備える場合、目的のたわみ曲面の傾斜、つまり、偏向角βは、0°~90°の範囲にあり、好ましくは10°~80°の範囲にあり、さらに好ましくは30°~60°の範囲にあり、これらの場合には、フローデフレクタ6Aは、円錐又は円錐台の表面を備える。偏向角βは、図5に示されるように、偏向面と半径方向との間の角度として規定される。換言すれば、偏向角βは、ローター3の回転軸Rが延びる軸平面において、偏向面と、ローター3の回転軸Rに対して垂直に延びる半径方向平面との間で測定される。
【0035】
図8は、ハウジングが無い電動機9の詳細図を示し、ここで、図の明瞭さのために、単一のスロット内の1組のワイヤのみが示される。電動機9のハウジング1と組み合わされることによってステータコア2の外側に冷媒流のためのチャネルを提供するための冷却溝2A’は、ステータコア2の外側表面に設けられることが理解されよう。
【0036】
シャフト4、複数のブレード群5Bを備えたインペラ5、エアギャップフローデフレクタ6Aの機能の部分をもつ端部ファイバー6、巻線用開口6C、接触表面6D、非流出端6F、巻線7、及び巻線頭部のオーバーハング7Aも、図8に示される。
【0037】
有利な実施形態では、端部ファイバー6は、射出成形によって製造され、プラスチック、好ましくは、ポリフェニレンサルファイドから作られた独立した要素である。ステータコア2への取付時における基準位置を提供するために、端部ファイバー6は、端部ファイバー6をステータコア2に対して所定の位置に位置決めするための、端部ファイバーから突出した、好ましくは、軸方向に突出した、少なくとも1つの位置決めピン6G(図9を参照)を備える。したがって、ステータコア2のスロット開口は、端部ファイバー6における巻線用開口6Cに容易に正対され得る。いくつかの実施形態では、端部ファイバー6、特に、エアギャップフローバリア6Aの少なくとも主要な特徴は、ステータを熱硬化性材料でオーバーモールドすることによって製造される。同様に、電動機の巻線7は、PEEK絶縁体でコーティングされ、ここで、PEEKはポリエーテルエーテルケトンを表す。しかしながら、必要であれば、巻線7のワイヤは追加の電気絶縁層(すなわちワニス)でコーティングされ、この場合、さまざまな技術が使用され得る。もし、ワニスが巻線端部7Aの上に注がれる滴下プロセスが使用される場合、いくつかの冷却チャネル2Aが、塗布された物質によって詰まることを防止する目的で、端部ファイバー6は、冷却チャネル2Aの周り又は端部ファイバー6の周りの周方向に少なくとも部分的に延在する、非流出端又は軸方向に延在する縁6F(図9及び10を参照)を備えてもよい。それにもかかわらず、最新式の電動機では、滴下を使わずに、必要であれば、浸漬プロセス及びスピンプロセスのみを使用することも考慮され得る。この場合、巻線頭部のオーバーハング7の一部のみが、ワイヤを巻線端部のオーバーハング7Aの領域に固定する目的で塗布されるべき物質内に浸漬される。ここで、電動機の巻線7のワイヤに対して、適切な絶縁体、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又は自己融着性電線を使用すれば、この浸漬さえも不要になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】