(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】抗がん活性を有するADP-リボース結合ペプチドおよびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/00 20060101AFI20240829BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240829BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240829BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240829BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240829BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240829BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/16
A61K38/10
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514398
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2022012886
(87)【国際公開番号】W WO2023033481
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0117046
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524077988
【氏名又は名称】パールズインマイアーズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PEARLSINMIRES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チョン,クンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミンヒ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
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4C084BA23
4C084BA35
4C084DC50
4C084MA02
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4C084ZB26
4C084ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA54
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗がん活性を有するADP(adenosine diphosphate)-リボース結合ペプチドに関し、具体的に、特定アミノ酸配列のADP-リボース結合ペプチドおよびその変形物、そして、これを有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物、および抗がん補助用薬学的組成物に関する。本発明のADP-リボース結合ペプチドは、がん細胞内ADP-リボースを蓄積させることで、細胞の均衡を崩してがん細胞を死滅に至るようにするとともに、正常細胞には毒性を現わさない優れた抗がん効果を有し、他の抗がん剤の投与や放射線抗がん治療時に併用投与される場合、抗がん剤および放射線治療に対する反応性を増進させて、抗がん補助剤としても非常に優れた効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~配列番号14からなる群から選択されたいずれか一つのアミノ酸配列を有する、ADP(adenosine diphosphate)-リボース結合ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、N-末端、C-末端または両末端に細胞透過性ペプチド(cell-penetrating peptide)をさらに含むものである、請求項1に記載のADP-リボース結合ペプチド。
【請求項3】
前記細胞透過性ペプチドは、TAT、マウロカルシン(maurocalcine)、ペネトラチン(penetratin)、ポリ-アルギニン(Poly-arginine)由来ペプチド、アンテナペディア(Antennapedia)、トランスポータン(Transportan)、VP22、Hph-1、ポリ-アルギニン(Poly-arginine)、R11(R9)、Pep-1、HP4、LAH4、Vetofusing-1、シグナル配列基盤ペプチド、および両親媒性(Amphipathic)ペプチドからなる群から選択される一つ以上のものである、請求項2に記載のADP-リボース結合ペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、配列番号15~24からなる群から選択されたいずれか一つのアミノ酸配列を有するものである、請求項2に記載のADP-リボース結合ペプチド。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のADP-リボース結合ペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項7】
請求項5に記載のポリヌクレオチドを含む、形質転換体。
【請求項8】
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
前記がんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がんおよび卵巣がんからなる群から選択された1種以上の固形がんであるものである、請求項8に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
前記組成物は、皮下または経口に投与されるものである、請求項8に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、第2抗がん剤に対する反応性を増進させる、抗がん補助用薬学的組成物。
【請求項12】
前記抗がん剤は、細胞毒性抗がん剤、標的抗がん剤またはこれらの組み合わせである、請求項11に記載の抗がん補助用薬学的組成物。
【請求項13】
前記第2抗がん剤が標的にするがんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がんおよび卵巣がんからなる群から選択された1種以上の固形がんであるものである、請求項11に記載の抗がん補助用薬学的組成物。
【請求項14】
(i)請求項1~4のうちいずれか一項に記載のADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩、および
(ii)第2抗がん剤を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、放射線抗がん治療に対する反応性を増進させる、抗がん補助用薬学的組成物。
【請求項16】
前記放射線抗がん治療が標的にするがんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がんおよび卵巣がんからなる群から選択された1種以上の固形がんであるものである、請求項15に記載の抗がん補助用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん活性を有するADP(adenosine diphosphate)-リボース結合ペプチドに関し、具体的に、特定アミノ酸配列のADP-リボース結合ペプチドおよびその変形物、そして、これを有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物、および抗がん補助用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
PARylation(poly ADP-ribosylation)は、翻訳後修飾(post-translation modification)過程の一つであって、PAR重合酵素によってADP-リボースポリマー(poly(adenosine diphosphate-ribose))がタンパク質に共有結合で付着する過程を言う。PARylationを通じて高分子ADP-リボースチェーンを生成するようになり、アセチル化またはメチル化のような小さな分子的次元の変形ではなく、ユビキチン化(ubiquitination)またはSUMO化(SUMOylation)のような形態を示さないユニークな細胞内生化学的作用を誘導することができる。PARylationの均衡は、DNA損傷修復、転写の調節、染色質構造変更、酸化/還元恒常性、細胞内の多様なシグナル伝達、非-膜(non-membrane)構造形成、宿主-病原体相互作用およびRNA代謝調節に重要な部分を担当している(Juan et al.、Cancers、2020、12(3):739)。
【0003】
PARylationは、がん、ウイルス感染および神経退行を含む全身疾患の発病に関与しており、特に、PARylationは、PARP-1の活性化に由来するため、PARP-1の活性を抑制する方法で卵巣がん、前立腺がん、乳房がんおよびその他のがんを標的にする抗がん効能は、既によく知られている(J Mateo et al.、Ann Oncol.、2019、30(9):1437)。
【0004】
PARylation媒介細胞死滅と関連した生化学的機序情報は、比較的に最近に知られるようになり、PARylationの活性化は、代表的に3種の主要経路を通じて細胞の死滅を誘発することができる。(Rebecca Gupte et al.、Genes Dev.2017、31(2):101)。
【0005】
NAD+の枯渇は、細胞エネルギー危機(ATP枯渇)で発生する細胞代謝、特に、酸化的リン酸化過程を損傷させることができる。広範囲なDNA損傷によって誘導されたPARylation活性化がNAD+を消費し、この作用の後続効果によって細胞を死滅させることができると提案された。
【0006】
また、DNA修復後に核から放出されたPARポリマーが細胞質内のミトコンドリア膜に束ねられている細胞死滅誘導因子を解放させて、核内部に細胞死滅誘導因子を動員させる経路を活性化させることができる。細胞死滅因子が核に移動すると、大規模DNA断片化を媒介させて、細胞の死滅を誘導する。PARylationによるエネルギー枯渇および細胞死滅誘導因子は、PI3K-Akt経路またはMAPキナーゼ経路のようなタンパク質キナーゼ-フォスファターゼ経路を制御するPARのシグナル伝達と関連があると知られており、このようなPAR依存性細胞死滅過程は、相当な水準で死滅機序の複雑性に寄与している。
【0007】
そして、まだ明確な生化学的機序が明かになっていないが、PARP-1のautoPARylationを通じてPARP-1自体を分解させ、細胞死滅を誘導することができると報告されている。しかし、がんは、この死滅過程を防ぐために、様々なタンパク質分解酵素を活性化して、がんの生存に必要な多様な生化学的作用に関与した余剰のPARポリマーを分解することで、この死滅作用を賢く回避することができる。
【0008】
よって、既存のPARP-1抑制剤のようなPARylation抑制のための試みとは逆に、PARylationを活性化させるか、PARポリマーの分解を抑制することもまた、効果的な抗がん治療法発掘のための一つの戦略になり得る。特に、PARylation活性化またはPARポリマーの分解抑制は、正常細胞とは異なる方式の代謝過程を経るがん細胞特異的な領域で非常に有望な標的であると見ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、新規抗がん剤を開発するために鋭意努力した結果、本発明の新規アミノ酸配列を有するペプチドがADP-リボースとの結合を通じて最終的に細胞内の多様な分解酵素やシグナル伝達タンパク質の作用からADP-リボースまたはPARポリマーを活用することができないようにして、PARylationを過活性化し、PAR重合酵素の分解過程を撹乱させることができ、この撹乱の結果として、がん細胞の死滅を誘導して、画期的な抗がん効能を出すことができることを確認して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの目的は、配列番号1~配列番号14からなる群から選択されたいずれか一つのアミノ酸配列を有する、ADP(adenosine diphosphate)-リボース結合ペプチドを提供することである。
【0011】
本発明の他の一つの目的は、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することである。
【0012】
本発明のまた他の一つの目的は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターおよび形質転換体を提供することである。
【0013】
本発明のまた他の一つの目的は、前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物、第2抗がん剤に対する反応性を増進させる抗がん補助用薬学的組成物および放射線抗がん治療に対する反応性を増進させる抗がん補助用薬学的組成物を提供することである。
【0014】
本発明のまた他の一つの目的は、がんの予防または治療のための前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の用途、および前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を必要とする個体に投与するステップを含む、がんの予防または治療方法を提供することである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のADP-リボース結合ペプチドは、がん細胞内ADP-リボースを蓄積させることで、細胞の均衡を崩してがん細胞を死滅に至るようにするとともに、正常細胞には毒性を現わさない優れた抗がん効果を有し、他の抗がん剤の投与や放射線抗がん治療時に併用投与される場合、抗がん剤および放射線治療に対する反応性を増進させて、抗がん補助剤としても非常に優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】配列番号1~4のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に濃度別に処理した後、細胞内ポリADP-リボースの水準を示したものである。
【
図2】配列番号5~8のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に濃度別に処理した後、細胞内ポリADP-リボースの水準を示したものである。
【
図3】配列番号9~12のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に濃度別に処理した後、細胞内ポリADP-リボースの水準を示したものである。
【
図4】配列番号13および14のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に濃度別に処理した後、細胞内ポリADP-リボースの水準を示したものである。
【
図5】配列番号1、配列番号15、配列番号2および配列番号16のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果を示したものである。上図面は細胞写真を示したものであり、下グラフは細胞生存率を示したものである。
【
図6】配列番号3、配列番号17、配列番号4および配列番号18のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果を示したものである。上図面は細胞写真を示したものであり、下グラフは細胞生存率を示したものである。
【
図7】配列番号5、配列番号19、配列番号6および配列番号20のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果を示したものである。上図面は細胞写真を示したものであり、下グラフは細胞生存率を示したものである。
【
図8】配列番号7、配列番号21、配列番号8および配列番号22のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果を示したものである。上図面は細胞写真を示したものであり、下グラフは細胞生存率を示したものである。
【
図9】配列番号9、配列番号23、配列番号10および配列番号24のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果を示したものである。上図面は細胞写真を示したものであり、下グラフは細胞生存率を示したものである。
【
図10】配列番号11、配列番号25、配列番号12および配列番号26のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果を示したものである。上図面は細胞写真を示したものであり、下グラフは細胞生存率を示したものである。
【
図11】配列番号13、配列番号27、配列番号14および配列番号28のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果を示したものである。上図面は細胞写真を示したものであり、下グラフは細胞生存率を示したものである。
【
図12】配列番号15~配列番号28のペプチドをそれぞれ異なるがん細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果を示したものである。
【
図13】互いに異なるがん細胞にベバシズマブ(bevacizumab、左側)またはオシメルチニブ(Osimertinib、右側)単独、または配列番号1~配列番号14のペプチドと併用処理した後の細胞生存率を示したものである。
【
図14】互いに異なるがん細胞にゲムシタビン(gemcitabine、左側)またはドセタキセル(docetaxel、右側)単独、または配列番号15~配列番号28のペプチドと併用処理した後の細胞生存率を示したものである。
【
図15】互いに異なるがん細胞に2Gyの放射線照射単独、または配列番号1~配列番号14のペプチドと併用処理した後の細胞生存率を示したものである。
【
図16】互いに異なるがん細胞に2Gyの放射線照射単独、または配列番号15~配列番号28のペプチドと併用処理した後の細胞生存率を示したものである。
【
図17】腫瘍移植動物モデルから配列番号15~配列番号28のペプチドを皮下に投与した後、時間による腫瘍体積変化を示したものである。
【
図18】腫瘍移植動物モデルから配列番号15~配列番号28のペプチドを皮下に投与した後、確認した腫瘍組織の写真である。
【
図19】腫瘍移植動物モデルから配列番号1~配列番号14のペプチドを経口に投与した後、時間による腫瘍体積変化を示したものである。
【
図20】腫瘍移植動物モデルから配列番号1~配列番号14のペプチドを経口に投与した後、確認した腫瘍組織の写真である。
【
図21】代表的に配列番号7のペプチドの正常細胞(CCD-18Co)に対する毒性を評価した結果である。
【
図22】代表的に配列番号7のペプチドの正常細胞(HDPC)に対する毒性を評価した結果である。
【
図23】配列番号7のペプチドの構造を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これを具体的に説明すれば、次のとおりである。一方、本発明において開示されているそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの他の説明および実施形態にも適用され得る。すなわち、本発明において開示されている多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、後述された具体的な叙述によって、本発明の範疇が制限されるものとは見られない。
【0018】
前記目的を達成するための本発明の一様態は、配列番号1~配列番号14からなる群から選択されたいずれか一つのアミノ酸配列を有する、ADP(adenosine diphosphate)-リボース結合ペプチドである。
【0019】
本発明において、用語「ADP-リボース」は、分離したADP-リボース自体およびADP-リボース重合体(poly ADP-ribose)をすべて含む概念として使用され、「ADP-リボース結合ペプチド」は、ADP-リボースまたはADP-リボース重合体に結合して分解を抑制する活性を有するすべてのペプチドを意味する。本発明において、前記ペプチドは、単にこれを構成するアミノ酸間のペプチド結合によって形成されただけでなく、タンパク質医薬品の観点で安定性、効能などの特性を改善させるために、一部変形された形態を有するすべての形態のペプチド類似体、誘導体などの変形物も含む。
【0020】
本発明者らは、従来PARP-1抑制剤によってPARylation(poly ADP-ribosylation)が抑制される側面で、抗がん効能が多数報告されたものとは全く異なる側面で、PARylationの活性化またはPARポリマーの分解抑制を通じても抗がん効果を期待することができるという点に注目した。特に、がん細胞は、正常細胞に比べて速い速度で分裂し続け、活発に代謝活動をするので、PARylationを過活性化させるか、PARポリマーの分解を抑制することで、PARylationを過活性化しない正常細胞には特別な影響なしにがん細胞を特異的に死滅させることができると期待した。
【0021】
本発明の配列番号1~配列番号14(表1)からなる群から選択されたいずれか一つのアミノ酸配列を有するADP(adenosine diphosphate)-リボース結合ペプチドは、いずれもWWEドメインに由来した。WWEドメインは、deltex、Trip12、ポリ-ADP-リボース重合酵素同族体(homolog)など多数のタンパク質で保存された球状ドメイン(globular domain)であって、ドメイン内に最も多く保存された残基の名を取って命名された(L.Aravind、TRENDS in Biochemical Sciences、2001、26(5):273)。WWEドメインを有する一部タンパク質で前記ドメイン内ADP-リボース結合モチーフが存在すると知られている。細胞内酵素のWWEドメインは、主にADP-リボースに結合して分解を誘導すると報告された。すなわち、WWEドメインを通じて特定酵素がPARまたはADPRに結合することは、がん細胞生存のための目的が大きいと見られる(PNAS August 23、2011 108(34)14103-14108)。
【0022】
しかし、本発明のように、WWEドメインの一部分を分離したペプチドで製造して細胞に処理したとき、逆にADP-リボース分解が抑制され、細胞内ADP-リボースが蓄積され、結果的に優れた抗がん効果を有するということは、全く報告されていない。
【0023】
本発明の具体的な一実施例においては、様々な種類のタンパク質内に存在するWWEドメインからその断片を合成し、これらの抗がん活性を照射した。その結果、実施例1~14のADP-リボース結合ペプチド(配列番号1~14)を多様な種類のがん細胞に処理したとき、がん細胞内ADP-リボースの水準が顕著に増加することを確認した(
図1~
図4)。さらに、前記ペプチドの処理によって細胞内ADP-リボースの均衡が崩れてがん細胞の成長が抑制され、殆ど死滅することを試験管内(in vitro)実験を通じて確認し(
図5~
図11)、腫瘍移植動物モデルからも実施例1~14のADP-リボース結合ペプチドを皮下または経口に投与したとき、生体内(in vivo)腫瘍組織の成長が急激に減少することを確認した(
図19および
図20)。
【0024】
また、本発明の他の具体的な一実施例においては、代表的に配列番号7のペプチドを正常細胞に処理して、正常細胞に対する細胞毒性を評価した。その結果、正常細胞には如何なる毒性も現わさないことを確認した(
図21および
図22)。
【0025】
したがって、本発明の配列番号1~14のADP-リボース結合ペプチドは、がん種にかかわらず、非常に優れた抗がん効果を有し、正常細胞には細胞毒性を全く現わさないので、がんの予防または治療用組成物として有用に使用され得る。
【0026】
前記ADP-リボース結合ペプチドは、配列番号1~14のうちいずれか一つのアミノ酸配列を有するペプチドだけでなく、これらの配列から一つ以上のアミノ酸が付加、置換または結実された配列も均等範囲に該当する場合であれば、いずれも本発明の範疇に属する。
【0027】
例えば、本発明の配列番号1~14のうちいずれか一つのアミノ酸配列を有するペプチドと少なくとも80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または99%以上の相同性を有し、前記配列番号1~14のうちいずれか一つのアミノ酸配列からなるペプチドと相応する効能、すなわち、ADP-リボース結合活性および抗がん活性を示すペプチドであれば、配列番号1~14のアミノ酸配列から一部配列が付加、置換または結実されたアミノ酸配列を有しても、本発明の範囲内に含まれることは自明である。
【0028】
また、配列番号1~14のうちいずれか一つのアミノ酸配列からなるペプチドと相応する活性を有する場合であれば、アミノ酸配列前後の無意味な配列追加または自然的に発生し得る突然変異、あるいはその潜在性突然変異(silent mutation)も本発明の範囲内に含まれ得る。
【0029】
本発明において、用語「相同性」は、与えられたアミノ酸配列または塩基配列と一致する程度を意味し、パーセントで表示されることができる。本明細書において、与えられたアミノ酸配列または塩基配列と同一または類似の活性を有するその相同性配列は、「%相同性」で表示される。例えば、点数(score)、同一性(identity)および類似度(similarity)などの媒介変数(parameter)を計算する標準ソフトウェア、具体的に、BLAST2.0を利用するか、定義された厳格な条件下でサザン混成化実験によって配列を比較することで確認することができ、定義される適切な混成化条件は該当技術範囲内であり、当業者によく知られている方法(例えば、J.Sambrook et al.、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、2nd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory press、Cold Spring Harbor、New York、1989;F.M.Ausubel et al.、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、Inc.、New York)で決定されることができる。
【0030】
また、本発明のペプチドは、追加で所望の特性を改善させるために、ペプチドを構成する一つ以上のアミノ酸で化学的誘導体化などの変形を含むことができ、このような変形にもかかわらず、本発明のペプチドと同等な抗がん活性を有する限り、いずれも本発明の範疇に該当することは当業者に自明である。前記誘導体化は、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、ペギル化、および炭水化物または脂質成分、補因子などの付加を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0031】
本発明の具体的な一様態として、前記ペプチドは、細胞透過性を高めるために、追加で細胞透過性ペプチド(cell-penetrating peptide)と融合した形態で利用されることができる。すなわち、前記ADP-リボース結合ペプチドは、N-末端、C-末端または両末端に細胞透過性ペプチドをさらに含むことができる。このとき、ADP-リボース結合ペプチドおよび細胞透過性ペプチドの間にリンカーをさらに含むことができ、これは、当業者によって適切に遂行されることができる。
【0032】
本発明において、用語「細胞透過性ペプチド」は、ナノ粒子、化合物、DNA、タンパク質など多様な物質の細胞内摂取/吸収を促進させることができる特性を有するペプチドを言う。具体的に、前記細胞透過性ペプチドは、TAT、マウロカルシン(maurocalcine)、ペネトラチン(penetratin)、ポリ-アルギニン(Poly-arginine)由来ペプチド、アンテナペディア(Antennapedia)、トランスポータン(Transportan)、VP22、Hph-1、ポリ-アルギニン(Poly-arginine)、R11(R9)、Pep-1、HP4、LAH4、Vetofusing-1、シグナル配列基盤ペプチド、または両親媒性(Amphipathic)ペプチドであってよいが、これに制限されるものではなく、本発明のADP-リボース結合ペプチドの細胞内移動を促進させることができるものであれば、当業者によって適切に選択されることができる。
【0033】
本発明の具体的な一実施例においては、本発明の配列番号1~14のADP-リボース結合ペプチドのN-末端に細胞透過性ペプチドであるTATを融合して、その抗がん活性を評価した(配列番号15~配列番号24、表2)。その結果、ADP-リボース結合ペプチド単独で使用した場合よりもさらに優れている抗がん活性を有することが確認できた(
図5~
図12、
図17および
図18)。したがって、本発明の配列番号1~14のADP-リボース結合ペプチドだけでなく、前記ペプチドに細胞透過性タンパク質が融合された形態もまた、がんの予防または治療用組成物として非常に有用に使用されることができる。
【0034】
さらに、当業者は、使用される細胞透過性ペプチドの種類によってこれを適用するために、本発明のADP-リボース結合ペプチドを適切に変形して使用することができる。すなわち、本発明のADP-リボース結合ペプチドは、これを細胞透過性ペプチドに融合して使用する場合にも、本発明において提示するアミノ酸配列にのみ限定されるものではなく、当業者に自明な範囲、すなわち、均等範囲内で細胞透過性ペプチドの適用に適切な形態でアミノ酸配列を付加/置換/除去して使用することができる。
【0035】
また、本発明のADP-リボース結合ペプチドは、細胞透過性を高めるために、細胞にタンパク質を伝達させるか、伝達効率を増進させることができる当業界に公知の試薬とともに使用され得る。前記試薬は、例えば、ChariotTM(Active motif、Cat.30025)、XflectTM(Takara、Cat.631324)、PierceTM(ThermoFisher Scientific、Cat.89850)、ProteoJuiceTM(Merck、Cat.71281)、PULSinTM(Poylplus transfection)などの商業的に販売される試薬だけでなく、その他の非商業的試薬をすべて含み、本発明のADP-リボース結合ペプチドを細胞に伝達させることができる限り、前記例に特に制限されるものではない。
【0036】
本発明の他の一様態は、前記ADP-リボース結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0037】
本発明のまた他の一様態は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0038】
本発明のまた他の一様態は、前記ポリヌクレオチドを含む形質転換体である。
【0039】
ADP-リボース結合ペプチドは、前記説明したとおりである。
【0040】
前記ポリヌクレオチドは、本発明のADP-リボース結合ペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはこれと少なくとも80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または99%以上相同性を有するヌクレオチド配列を有するものであってよく、これから翻訳されたポリペプチドが本発明のADP-リボース結合ペプチドと相応する効能を示すものであれば、ヌクレオチド配列の5’-および/または3’-末端に無意味な配列の付加、あるいは一部配列の結実、変形、置換された場合、いずれも本発明の範囲に含まれ得る。前記ポリヌクレオチドは、公知のプロモーター配列と作動可能に連結された発現カセット、または前記ポリヌクレオチドを含むベクターの形態で使用されることができ、ポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターの製造は、当業者が公知の方法を通じて適切に遂行することができる。プロモーターおよびベクターの種類は、特に制限されず、目的によって当業者が適切に選択することができる。また、前記ポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターを宿主細胞に形質転換させて、形質転換体を製造して使用することができ、このときの形質転換方法もまた当業者が公知の方法を制限なく使用することができる。前記形質転換体は、本発明のADP-リボース結合ペプチドを発現させようとする対象体であって、微生物、植物または動物であってよく、ヒトを除いたものであってよいが、これに制限されるものではない。
【0041】
当業者は、多様な目的で前記ADP-リボース結合ペプチドを適用/生産するために、これをコードするポリヌクレオチド、これを含むベクター、あるいは前記ベクターを含む形質転換体を製造して使用することができる。例えば、前記ポリヌクレオチドあるいは前記ベクターを利用して直接的にがんに対する治療用途で使用することができ、これを含んでADP-リボース結合ペプチドを発現する形質転換体を利用して前記ペプチドを生産するか、治療目的で使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明のまた他の一様態は、前記ADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物である。
【0043】
本発明のまた他の一様態は、がんの予防または治療のための前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の用途、および前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を必要とする個体に投与するステップを含む、がんの予防または治療方法である。
【0044】
本発明のADP-リボース結合ペプチドががんの予防および/または治療に優れた効果を有するということは、上述のとおりである。
【0045】
本発明において、用語「がん」は、細胞の死滅調節と関連する疾病であって、正常的な細胞死滅均衡が崩れる場合、細胞が過多増殖するようになることで生じる疾病を言う。本発明において、前記がんは、悪性腫瘍(malignant tumor)および良性腫瘍(benign tumor)をすべて含み、例えば、脳がん、頭頚部がん、肺がん、乳房がん、胸腺腫、食道がん、大腸がん、肝がん、胃がん、膵臓がん、胆道がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、睾丸がん、生殖細胞腫、卵巣がん、子宮頸部がん、子宮内膜がん、大腸がん、リンパ腫、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄種、肉腫、悪性黒色腫または皮膚がんであってよいが、前記例によって本発明のがんの種類が限定されるものではない。本発明のがんの予防または治療用組成物は、細胞内ADP-リボースが蓄積されることで、細胞死滅が起きることができるすべてのがんに治療効果を有する。
【0046】
一例として、前記がんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がんまたは卵巣がんのような固形がんであってよいが、これに制限されるものではない。
【0047】
本発明において、用語「治療」は、疾病を有する個人または細胞の天然過程を変更させるために介入することを指称し、これは、病理状態が進行される間またはこれを予防するために遂行されることができる。目的とする治療効果には、疾病の発生または再発を予防し、症状を緩和し、疾病によるすべての直接または間接的な病理学的結果を低下させ、転移を予防し、疾病進行速度を減少させ、疾病状態を軽減または一時的に緩和させ、快方させるか予後を改善させることが含まれる。特に、本発明においては、ADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む組成物の投与でがんの経過を好転させるすべての行為を含む。また、用語「予防」は、前記組成物の投与でがんの発病を抑制または遅延するすべての行為を言う。
【0048】
前記薬学的組成物に含まれるADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容される塩の重量%は、特にこれに制限されないが、最終組成物の総重量を基準に0.0001~90重量%、具体的に0.001~50重量%、より具体的に0.01~20重量%の含量で含まれ得る。
【0049】
前記薬学組成物は、薬剤の製造に通常的に使用される適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んで製造されることができる。具体的に、本発明の薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、経口パッチなどの経口型剤形、外用剤、外用パッチ剤、坐剤および滅菌注射液の形態で剤形化して使用され得る。
【0050】
前記薬学組成物が経口投与用として使用される場合、適切なカプセル化(encapsulation)、腸溶コーティング(enteric coating)、ポリマーの配合などを通じて徐放性製剤で製造されることができる。
【0051】
一実施様態において、前記徐放性製剤は、長時間作用性(long acting)製剤で製造されることができる。
【0052】
一実施態様において、長時間作用性製剤には、ポリマーと脂質が適切な割合で混合されることができる。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、がんが発病したか、または発病する危険を有する個体に投与されることができる。本発明において、用語「個体」は、ヒトを含むすべての動物を意味する。
【0054】
本発明の薬学的組成物は、対象個体に薬学的に有効な量で投与されることができる。本発明において、用語「投与」は、ある適切な方法で対象個体に本発明の薬学的組成物を導入することを言い、投与経路は、目的組織に到達できる限り、経口または非経口の多様な経路を通じて投与されることができる。投与経路の例としては、経口、筋肉、静脈、動脈、皮下、腹腔、肺、および鼻腔が含まれ、例えば、皮下または経口に投与されるものであってよいが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明において、用語「薬学的に有効な量」は、医学的用途に適用可能な合理的な受益/危険割合でがんを予防および/または治療するに十分な量を意味する。当業界に公知の方法によって適切な投与量および投与回数が選択されることができ、実際に投与される本発明の薬学的組成物の量および投与回数は、治療しようとする症状の種類、投与経路、性別、健康状態、食餌、個体の年齢、体重および疾患の重症度のような多様な因子によって適切に決定されることができる。
【0056】
本発明において、薬学的に許容可能な塩は、製薬業界において通常的に使用される塩を意味し、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、銅、マンガン、亜鉛、鉄などを始めとした無機イオンの塩と塩酸、リン酸、硫酸のような無機酸の塩があり、その外に、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、グリコール酸、コハク酸、プロピオン酸、酢酸、オロト酸、アセチルサリチル酸のような有機酸の塩などと、リジン、アルギニン、グアニジンなどのアミノ酸塩がある。また薬学的な反応、精製および分離過程で使用され得るテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンゼトニウムなどの有機イオンの塩がある。ただし、列挙されたこれらの塩によって、本発明において意味する塩の種類が限定されるものではない。
【0057】
本発明のADP-リボース結合ペプチドは、優れた抗がん活性を有するので、薬学的組成物だけでなく、機能性を有した食品組成物の形態でも製造されることができる。
【0058】
本発明の組成物が食品組成物の形態で製造される場合、前記食品組成物は食品に通常使用されて、匂い、味、視覚などを向上させることができる追加成分を含むことができる。例えば、食品添加物(food additives)を添加することができる。前記添加物は、食品の種類によって選別されて適切な量で使用される。
【0059】
前記食品組成物は、健康機能性食品で製造されることができ、ここで、健康機能性食品(functional food)とは、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同一の用語であって、栄養供給の外にも生体調節機能が効率的に示されるように加工された医学、医療効果が高い食品を意味する。前記健康機能性食品は、がんの改善に有用な効果を得るために、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸などの多様な形態で製造されることができる。
【0060】
本発明のまた他の一様態は、前記ADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、第2抗がん剤に対する反応性を増進させる抗がん補助用薬学的組成物である。
【0061】
本発明のまた他の一様態は、(i)前記ADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩、および(ii)第2抗がん剤を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物である。
【0062】
ADP-リボース結合ペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩に対しては、上述のとおりである。
【0063】
本発明のADP-リボース結合ペプチドは、単独で抗がん効果を有することに加えて、第2抗がん剤に対する反応性を増進させるための目的で抗がん補助用薬学的組成物としても非常に優れた効果を有する。したがって、ADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩とともに、第2抗がん剤を有効成分にして、がんの予防または治療用薬学的組成物として使用されることができる。
【0064】
本発明において、用語「第2抗がん剤」は、本発明のADP-リボース結合ペプチドを除いた任意の抗がん活性を有する薬物を言う。本発明において、前記第2抗がん剤の範囲は特に制限されず、がんの種類と進行程度によって、がんの完治、調節、症状緩和などの目的によって当業者が適切な種類を選択して使用することができる。第2抗がん剤は、例えば、細胞毒性抗がん剤、標的抗がん剤、免疫抗がん剤または代謝抗がん剤であってよいが、これに制限されない。
【0065】
本発明において、細胞毒性抗がん剤は、正常細胞に比べて速い速度で無分別に分裂するがん細胞を攻撃して抗がん効果を示す薬物であって、その意味は、本発明の属する技術分野において通常的に使用されるものと同じである。前記細胞毒性抗がん剤は、アルキル化剤、抗代謝剤(antimetabolite)、天然物抗がん剤を含む。
【0066】
前記アルキル化剤は、窒素マスタード(例えば、シクロホスファミド、クロルメチン、ウラムスチン、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、ベンダムスチンなど)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン、プロカルバジンなど)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシンなど)、白金基盤アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ジシクロプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ミリプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、トリプラチンテトラニトラートなど)を挙げることができるが、これに制限されない。アルキル化剤は、がん細胞内DNAに結合してDNA構造を損傷させることで、がん細胞の破壊を誘発することができる。
【0067】
前記抗代謝剤は、ピリミジン誘導体(例えば、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、フルダラビンなど)、フォレート誘導体(例えば、メトトレキサート、ペメトレキセドなど)、プリン誘導体(例えば、メルカプトプリンなど)を挙げることができるが、これに制限されない。抗代謝剤は、DNA複製および細胞生存に必要な代謝を抑制することで、がん細胞死滅を誘導することができる。
【0068】
前記天然物抗がん剤としては、トポイソメラーゼ抑制剤(例えば、カンプトテシン、エピポドフィロトキシン、タキサン系列薬物(ドセタキセル、パクリタキセル))、抗生剤(例えば、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン、フレオマイシン、イダルビシン、ミトキサントロンHClなど)を挙げることができるが、これに制限されない。
【0069】
本発明において、標的抗がん剤は、がんの成長に関与するターゲットタンパク質(受容体または酵素)を抑制することで、がん細胞の死滅を誘導する抗がん剤であって、その意味は、本発明の属する技術分野において通常的に使用されるものと同じである。前記細胞毒性抗がん剤は、標的タンパク質(チロシンキナーゼなど)抑制低分子化合物および単クローン抗体を含む。
【0070】
一例として、前記標的抗がん剤は、VEGF-AおよびEGFRからなる群から選択された一つ以上のターゲットを標的する受容体チロシンキナーゼ抑制剤であってよい。
【0071】
一実施態様において、ADP-リボース結合ペプチドと併用投与されることができる標的抗がん剤は、VEGF-A抑制剤である。本発明において、VEGF-A抑制剤は、ベバシズマブ(bevacizumab)、ラニビズマブ(ranibizumab)、アフリベルセプト(aflibercept)、ラムシルマブ(ramucirumab)のような単クローン抗体、スニチニブ(sunitinib)、パゾパニブ(pazopanib)、ソラフェニブ(sorafenib)、アキシチニブ(axitinib)のような低分子化合物を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0072】
一実施態様において、ADP-リボース結合ペプチドと併用投与されることができる標的抗がん剤は、EGFR抑制剤である。本発明において、EGFR抑制剤は、オシメルチニブ(osimertinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、アファチニブ(afatinib)、ブリグチニブ(brigatinib)、イコチニブ(icotinib)、バンデタニブ(vandetanib)のような低分子化合物とともに、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)、ザルツムマブ(zalutumumab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、マツズマブ(matuzumab)のような単クローン抗体を挙げることができるが、これに制限されない。
【0073】
以外にも、本発明の標的抗がん剤はまた、ラパチニブ(lapatinib)、ネラチニブ(neratinib)、アファチニブ(afatinib)のようなHER2標的抗がん剤、イマチニブ(imatinib)、ダサチニブ(dasatinib)、ニロチニブ(nilotinib)のようなBcr-Abl標的抗がん剤;ボスチニブ(bosutinib)のようなSrc標的抗がん剤;レスタウルチニブ(lestaurtinib)、ルキソリチニブ(ruxolitinib)、パクリチニブ(pacritinib)のようなJAK標的抗がん剤;コビメチニブ(cobimethinib)、セルメチニブ(selumetinib)、トラメチニブ(trametinib)、ビニメチニブ(binimetinib)のようなMAP2 Kinase標的抗がん剤;セリチビン(ceritibin)、クリゾチニブ(crizotinib)のようなMEL4-ALK標的抗がん剤などを含み、その種類に特に制限されない。
【0074】
また、本発明の第2抗がん剤は、一つ以上の細胞毒性抗がん剤および/または標的抗がん剤の組み合わせであってよく、これらは、同時にまたは異時に投与されてよい。
【0075】
本発明において、免疫抗がん剤は、人体の免疫系を活性化させてがん細胞と戦わせる薬物を言う。本発明において、免疫抗がん剤は、免疫チェックポイント抑制剤、免疫細胞治療剤、抗がんワクチン、抗体-薬物接合体を含み、がんの種類と進行程度によって、がんの完治、調節、症状緩和のために適切な種類を選択することができる。
【0076】
一実施態様において、免疫抗がん剤は、免疫チェックポイント抑制剤であってよく、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、CD28抗体、KIR抗体、TCR抗体、LAG-3抗体、TIM-3抗体、TIGIT抗体、A2aR抗体、ICOS抗体、OX40抗体、4-1BB抗体およびGITR抗体からなる群から選択された一つ以上であってよい。例えば、前記免疫チェックポイント抑制剤は、ニボルマブ(nivolumab)、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、セミプリマブ(cemiplimab)、ピジリズマブ(pidilizumab)、トリパリマブ(toripalimab)のようなPD-1抗体;アテゾリズマブ(atezolizumab)、アベルマブ(avelumab)、デュルバルマブ(duralumab)のようなPD-L1抗体;イピリムマブ(ipilimumab)、トレメリムマブ(tremelimumab)のようなCTLA-4抗体であってよいが、これに制限されるものではない。
【0077】
一実施態様において、免疫抗がん剤は免疫細胞治療剤であってよく、チサゲンレクロイセル(tisagenlecleucel)、アキシカブタゲンシロルユーセル(axicabtagene ciloleucel)のようなCAR-T治療剤、またはCAR-NK治療剤であってよいが、これに制限されるものではない。
【0078】
本発明において、代謝抗がん剤は、がん細胞に栄養を供給するなど、がん細胞の成長および生存に関与するか、必須な様々な代謝作用に関与してがん細胞を死滅させる薬物を言う。前記代謝抗がん剤は、例えば、IM-156、3-ブロモピルビン酸(3BP)、NYH817100、WZB117、GNE-140、AZ93、AZD3965、CPI-613、MKT-077、CB-839、CB-1158、CPI-444、TVB-2640、NDI-010976、TCD-717、ADI-PEG20、エパカドスタット(Epacadostat)、インドキシモド(Indoximod)、PX478、CPI-0610、RTA402、APO866、GMX1778、AG-221またはAG-120などであってよいが、これに制限されるものではない。
【0079】
本発明のADP-リボース結合ペプチドは、がん細胞内ADP-リボースの均衡を崩して第2抗がん剤に対する反応性を増進させる効果を有して抗がん補助剤として使用され得るので、使用される第2抗がん剤の種類やがんの種類に特に制限されない。一例として、前記がんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がんまたは卵巣がんのような固形がんであってよいが、これに制限されるものではない。
【0080】
本発明のADP-リボース結合ペプチドは、第2抗がん剤と独立して存在する形態で併用投与されることができるだけでなく、目的によって、公知の任意の方法で第2抗がん剤と物理/化学的な結合を形成した状態で投与されることができる。例えば、ADP-リボース結合ペプチドは、第2抗がん剤と直接結合された状態で使用されるか、または公知のリンカーを通じて第2抗がん剤と連結された状態で使用されることができ、本発明のADP-リボース結合ペプチドが第2抗がん剤とともに作用して相乗した抗がん効果を示す限り、その適用方法に特に制限されない。
【0081】
本発明の具体的な一実施例においては、低濃度のベバシズマブ、オシメルチニブ、ゲムシタビン、ドセタキセルとともに、本発明のADP-リボース結合ペプチドをそれぞれ異なるがん種に処理した場合、すべてのがん細胞で抗がん剤に対する反応性が増進されることを確認した(
図13および
図14)。したがって、本発明のADP-リボース結合ペプチドは、第2抗がん剤の反応を増進させることができ、抗がん補助用途として非常に有用に使用されることができ、第2抗がん剤を低濃度で処理しても優れた抗がん活性を有するので、第2抗がん剤によって発生し得る副作用を最小化することができる。
【0082】
本発明のまた他の一様態は、前記ADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、放射線抗がん治療に対する反応性を増進させる抗がん補助用薬学的組成物である。
【0083】
ADP-リボース結合ペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、上述のとおりである。
【0084】
本発明において、用語「放射線抗がん治療」は、がん細胞を死滅させるための目的であって、がん細胞または腫瘍組織に放射線を照射する治療行為を言う。一般的に、切開不可能または手術不可能な腫瘍、または腫瘍転移を制御するための標準治療法であって、標的部位に伝達された放射線が再生性細胞(reproductive cell)の死滅を招くという原理に基づく。本発明において、放射線抗がん治療は、イオン化放射線療法(ionizing radiation therapy)、電磁気放射線療法(electromagnetic radiation)、近接放射線療法(brachytherapy)または外部放射線療法(external beam radiation therapy)であってよいが、これに制限されるものではない。
【0085】
本発明に係るADP-リボース結合ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物は、放射線療法と併用される場合、相乗的抗がん効果を示すので、放射線療法に対する抗がん補助剤または放射線敏感度を向上させる放射線敏感化剤として有用に活用されることができ、適用可能ながんの種類に特に制限されない。一例として、前記がんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がんおよび卵巣がんのような固形がんであってよいが、これに制限されるものではない。
【0086】
一実施様態として、前記固形がんは、放射線療法に対して耐性を示すものであってよい。放射線治療の抗がん効果は、DNA切断の形成で示されるため、放射線治療に対する耐性は、一般的に放射線治療によって誘導されるDNA損傷を修復できる機序によって決定される。放射線治療の抗がん効能を相乗させる方法として、DNA修復機序抑制のための多くの試みがあり、破壊されたDNA鎖の修理が遮断されると、放射線治療の感度が高くなり得る。DNA損傷の二つの主要形態は、SSB(Single Strand Breaks)とDSB(Double Strand Breaks)である。よって、SSBおよびDSBを対象とする二つの修復経路の範疇で説明することができる。BER(Base Excision Repair)は、選択された類型のDNA SSBの修復に関与する様々な経路のうち一つである。
【0087】
PARP1は、ADP-リボシル化(ribosylation)と知られている工程を通じて、DNA SSBのBERで重要な役割を果たす。核においてPARP1は、SSB DNAの損傷を感知し、修理のためにSSB部位にADP-リボシル化を通じてDNA修復複合体を募集する。PARP-1活性によるADP-リボシル化を通じて合成されたポリ-ADP-リボースの過蓄積は、最終的に細胞の死滅に繋がるため、がん細胞は、この現象を防ぐためにPARGやARH3などのようなプロテアソームを通じてポリ-ADP-リボースの分解を活性化して、生存シグナル伝達活動を活性化する。本発明者らは、がん細胞内ADP-リボースやADP-リボース重合体の蓄積ががん細胞のこのような生化学的生存機序を撹乱させることができる媒介体として作用することができ、放射線治療耐性を克服する重要な抗がん補助剤として活用できることに着眼した。
【0088】
本発明の具体的な一実施例においては、それぞれ異なるがん種で低線量の放射線照射とともに、本発明のADP-リボース結合ペプチドを併用処理した場合、すべてのがん種で放射線治療に対する反応性が増進されることを確認した(
図15および
図16)。したがって、本発明のADP-リボース結合ペプチドは、放射線治療の反応を増進させることができ、抗がん補助用途として非常に有用に使用されることができ、放射線を耐性線量で照射しても、優れた抗がん活性を有するので、放射線によって発生し得る副作用を最小化することができる。
【0089】
本発明の実施形態は、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、当該技術分野において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0090】
[発明の実施のための形態]
以下、実施例を通じて本発明の構成および効果をより詳しく説明しようとする。これらの実施例は、ひたすら本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0091】
実施例1-14.ADP(adenosine diphosphate)-リボース結合ペプチドの製造
様々な種類のタンパク質内に存在するWWEドメインから実施例1~実施例14のADP-リボース結合ペプチドを合成し、これを実験に使用した。使用されたペプチドの具体的な情報は、下記表1に示した。
【0092】
【0093】
また、前記実施例1~14のペプチドのN-末端に細胞透過性ペプチド(cell-penetrating peptide)を結合して、実施例15~28のペプチドを製造した。実施例15~28のペプチド配列を表2に示した。
【0094】
【0095】
実験例1:がん細胞内ADP(adenosine diphosphate)-リボース水準変化確認
本発明の実施例1~28のペプチドは、ポリADP-リボースの分解酵素作用を抑制することができるように設計されたものである。実験例1においては、細胞実験を通じて各ペプチドによってポリADP-リボースの分解が抑制されて、がん細胞内に蓄積されるかを確認した。
【0096】
1-1.U-87MG細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のU-87MG細胞を37℃、5%CO2条件で10%FBS、100units/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むEMEM(Eagle’s Minimum Essential Medium)培地に実施例ペプチドを処理しないグループおよび0.2、1、2、4、8、16、32μMの実施例1(配列番号1)または実施例8(配列番号8)のペプチドを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%SDSを処理した。準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0097】
図1の左上および
図2の右下は、U-87MG細胞で実施例1または8のペプチド処理によって対照群グループ対比ADP-リボース増加量を倍数変化で示したものであって、処理しないグループに比べて処理されたペプチド2種とも濃度依存的にADP-リボースの量が顕著に増加していることを示している(
**p<0.001)。
【0098】
1-2.H1975細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のH1975細胞を37℃、5%CO2条件で10%FBS、100units/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むRPMI-1640培地で実施例ペプチドを処理しないグループおよび0.2、1、2、4、8、16、32μMの実施例2のペプチド(配列番号2)を処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%SDSを処理した。準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0099】
図1の右上および
図3の左上は、H1975細胞で実施例2または実施例9のペプチド処理によって対照群グループ対比ADP-リボース増加量を倍数変化で示したものであって、処理しないグループに比べて処理されたペプチドの濃度依存的にADP-リボースの量が顕著に増加していることを示している(**p<0.001)。
【0100】
1-3.Aspc-1細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のAspc-1細胞を37℃、5%CO2条件で10%FBS、100units/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むRPMI-1640培地で実施例ペプチドを処理しないグループおよび0.2、1、2、4、8、16、32μMの実施例3のペプチド(配列番号3)を処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%SDSを処理した。準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0101】
図1の左下および
図3の右上は、Aspc-1細胞で実施例3または実施例10のペプチド処理によって対照群グループ対比ADP-リボース増加量を倍数変化で示したものであって、処理しないグループに比べて処理されたペプチドの濃度依存的にADP-リボースの量が顕著に増加していることを示している(
**p<0.001)。
【0102】
1-4.Hep G2細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のHep G2細胞を37℃、5%CO2条件で10%FBS、100units/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むEMEM培地に実施例ペプチドを処理しないグループおよび0.2、1、2、4、8、16、32μMの実施例4のペプチド(配列番号4)を処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%SDSを処理した。準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0103】
図1の右下および
図3の左下は、Hep G2細胞で実施例4または実施例11のペプチド処理によって対照群グループ対比ADP-リボース増加量を倍数変化で示したものであって、処理しないグループに比べて処理されたペプチドの濃度依存的にADP-リボースの量が顕著に増加していることを示している(
**p<0.001)。
【0104】
1-5.MDA-MB-231細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のMDA-MB-231細胞を37℃、5%CO2条件で10%FBS、100units/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むLeibovitz’s L-15培地で実施例ペプチドを処理しないグループおよび0.2、1、2、4、8、16、32μMの実施例5のペプチド(配列番号5)を処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%SDSを処理した。準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0105】
図2の左上および
図3の右下は、MDA-MB-231細胞で実施例5または実施例12のペプチド処理によって対照群グループ対比ADP-リボース増加量を倍数変化で示したものであって、処理しないグループに比べて処理されたペプチドの濃度依存的にADP-リボースの量が顕著に増加していることを示している(
**p<0.001)。
【0106】
1-6.HCT116細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のHCT116細胞を37℃、5%CO2条件で10%FBS、100units/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むMcCoy’s 5A培地で実施例ペプチドを処理しないグループおよび0.2、1、2、4、8、16、32μMの実施例6のペプチド(配列番号6)を処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%SDSを処理した。準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0107】
図2の右上および
図4の左側は、HCT116細胞で実施例6または実施例13のペプチド処理によって対照群グループ対比ADP-リボース増加量を倍数変化で示したものであって、処理しないグループに比べて処理されたペプチドの濃度依存的にADP-リボースの量が顕著に増加していることを示している(
**p<0.001)。
【0108】
1-7.Caki-1細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のCaki-1細胞を37℃、5%CO2条件で10%FBS、100units/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むMcCoy’s 5A培地で実施例ペプチドを処理しないグループおよび0.2、1、2、4、8、16、32μMの実施例7のペプチド(配列番号7)を処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%SDSを処理した。準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0109】
図2の左下および
図4の右側は、Caki-1細胞で実施例7または実施例14のペプチド処理によって対照群グループ対比ADP-リボース増加量を倍数変化で示したものであって、処理しないグループに比べて処理されたペプチドの濃度依存的にADP-リボースの量が顕著に増加していることを示している(
**p<0.001)。
【0110】
実験例2:実施例のペプチド処理によるがん細胞生存率の変化
細胞は、生化学的恒常性を維持するとともに、ADP-リボースの生成および分解の均衡を合わせており、がん細胞は、持続的に分裂して急激に成長するため、このような均衡が崩れる場合、正常細胞に比べて生存に大きく影響を受けることができる。
【0111】
前記実験例1の結果によると、本発明の実施例ペプチドをがん細胞に処理する場合、細胞内ADP-リボースの量が顕著に増加するので、これを通じてがん細胞の恒常性均衡が崩れることある。よって、実験例2においては、実施例1~28のペプチド処理によるがん細胞の生存率を測定した。
【0112】
2-1.U-87MG細胞でADP-リボース結合ペプチド処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のU-87MG細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、何も処理しないか、16μM濃度の実施例1~28のペプチドをそれぞれ処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0113】
図5の左上および
図8の右上は、U-87MG細胞に実施例1、15、8および22のペプチドをそれぞれ処理したグループと処理しないグループの代表的な顕微鏡写真である。共通的に、ペプチドを処理しないグループではU-87MG細胞が急激に成長している形態を観察することができる一方、本発明の実施例ペプチドを処理したグループではU-87MG細胞の成長が抑制され、死滅している形態を観察することができる。特に、細胞透過性ペプチド(cell-penetrating peptide、CPP)が付着した実施例15および22のペプチドを処理したグループではがん細胞が完全に死滅したことを確認した。
【0114】
2-2.H1975細胞でADP-リボース結合ペプチド処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のH1975細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、何も処理しないか、16μM濃度の実施例1~28のペプチドをそれぞれ処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0115】
図5の右上および
図9の左上は、H1975細胞に実施例2、16、9、23のペプチドをそれぞれ処理したグループと処理しないグループの代表的な顕微鏡写真である。共通的に、ペプチドを処理しないグループではH1975細胞が急激に成長している形態を観察することができる一方、本発明の実施例ペプチドを処理したグループではH1975細胞の成長が抑制されて死滅している形態を観察することができる。特に、CPPが付着した実施例16および23のペプチドを処理したグループではがん細胞が完全に死滅したことを確認した。
【0116】
2-3.Aspc-1細胞でADP-リボース結合ペプチド処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のAspc-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、何も処理しないか、16μM濃度の実施例1~28のペプチドをそれぞれ処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0117】
図6の左上および
図9の右上は、Aspc-1細胞に実施例3、17、10、24のペプチドをそれぞれ処理したグループと処理しないグループの代表的な顕微鏡写真である。共通的に、ペプチドを処理しないグループではAspc-1細胞が急激に成長している形態を観察することができる一方、本発明の実施例ペプチドを処理したグループではAspc-1細胞の成長が抑制されて死滅している形態を観察することができる。特に、細胞透過性ペプチドCPPが付着した実施例17および24のペプチドを処理したグループではがん細胞が完全に死滅したことを確認した。
【0118】
2-4.Hep G2細胞でADP-リボース結合ペプチド処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のHep G2細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、何も処理しないか、16μM濃度の実施例1~28のペプチドをそれぞれ処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0119】
図6の右上および
図10の左上は、Hep G2細胞に実施例4、18、11、25のペプチドをそれぞれ処理したグループと処理しないグループの代表的な顕微鏡写真である。共通的に、ペプチドを処理しないグループではHep G2細胞が急激に成長している形態を観察することができる一方、本発明の実施例ペプチドを処理したグループではHep G2細胞の成長が抑制されて死滅している形態を観察することができる。特に、細胞透過性ペプチドCPPが付着した実施例18および25のペプチドを処理したグループではがん細胞が完全に死滅したことを確認した。
【0120】
2-5.MDA-MB-231細胞でADP-リボース結合ペプチド処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のMDA-MB-231細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、何も処理しないか、16μM濃度の実施例1~28のペプチドをそれぞれ処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0121】
図7の左上および
図10の右上は、MDA-MB-231細胞に実施例5、19、12、26のペプチドをそれぞれ処理したグループと処理しないグループの代表的な顕微鏡写真である。共通的に、ペプチドを処理しないグループではMDA-MB-231細胞が急激に成長している形態を観察することができる一方、本発明の実施例ペプチドを処理したグループではMDA-MB-231細胞の成長が抑制されて死滅している形態を観察することができる。特に、CPPが付着した実施例19および26のペプチドを処理したグループではがん細胞が完全に死滅したことを確認した。
【0122】
2-6.HCT116細胞でADP-リボース結合ペプチド処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のHCT116細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、何も処理しないか16μM濃度の実施例1~28のペプチドをそれぞれ処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0123】
図7の右上および
図11の左上は、HCT116細胞に実施例6、20、13、27のペプチドをそれぞれ処理したグループと処理しないグループの代表的な顕微鏡写真である。共通的に、ペプチドを処理しないグループではHCT116細胞が急激に成長している形態を観察することができる一方、本発明の実施例ペプチドを処理したグループではHCT116細胞の成長が抑制されて死滅している形態を観察することができる。特に、細胞透過性ペプチドCPPが付着した実施例20および27のペプチドを処理したグループではがん細胞が完全に死滅したことを確認した。
【0124】
2-7.Caki-1細胞でADP-リボース結合ペプチド処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のCaki-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、何も処理しないか、16μM濃度の実施例1~28のペプチドをそれぞれ処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0125】
図8の左上および
図11の右上は、Caki-1細胞に実施例7、21、14、28のペプチドをそれぞれ処理したグループと処理しないグループの代表的な顕微鏡写真である。共通的に、ペプチドを処理しないグループではCaki-1細胞が急激に成長している形態を観察することができる一方、本発明の実施例ペプチドを処理したグループではCaki-1細胞の成長が抑制されて死滅している形態を観察することができる。特に、CPPが付着した実施例21および28のペプチドを処理したグループではがん細胞が完全に死滅したことを確認した。
【0126】
2-8.SNU-1細胞およびOVCAR-3細胞でADP-リボース結合ペプチド処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のSNU-1細胞またはOVCAR-3細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、何も処理しないか、16μM濃度の実施例15~28のペプチドをそれぞれ処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに96時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0127】
その結果、実施例15~28のペプチドをそれぞれ処理したグループは、SNU-1細胞およびOVCAR-3細胞の両方でがん細胞を殆ど死滅させることを確認した(
図12)。
【0128】
実験例3:実施例のペプチドおよび低濃度の抗がん剤併用処理によるがん細胞生存率の変化
既存の抗がん剤によるがん細胞生存の減少などで代表される抗がん効果は、ADP-リボースのシグナルによって相乗することができるので、既存の抗がん剤を処理し、ADP-リボースの蓄積を誘導すると、がん細胞に既存の抗がん剤を必要濃度以下で処理しても、相乗した抗がん効果を示すと期待した。前記実験例1で確認したように、本発明の実施例ペプチドは、がん細胞内でADP-リボースの量を顕著に増加させるので、実験例3においては、実施例ペプチドと低濃度の抗がん剤を併用処理したとき、相乗した抗がん効果が示されるかを確認しようとした。
【0129】
3-1.U-87MG細胞で実施例ペプチドと低濃度ベバシズマブ(bevacizumab)の併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のU-87MG細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、18mMのベバシズマブ単独、または0.2、1または8μM濃度の実施例1~14のペプチドと併用処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0130】
その結果、U-87MG細胞にベバシズマブを単独で処理したとき、全がん細胞の約49%が生存していたが、実施例ペプチドと併用処理したすべての場合に、低濃度のベバシズマブでもがん細胞の生存率が顕著に減少すると確認された(
*p<0.05、
**p<0.001、
***p<0.001;
図13の左側)。
【0131】
3-2.H1975細胞で実施例ペプチドと低濃度オシメルチニブ(osimertinib)の併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のH1975細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、1nMのオシメルチニブ単独、または0.2、1または8μM濃度の実施例1~14のペプチドと併用処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0132】
その結果、H1975細胞に1nMのオシメルチニブを単独で処理したとき、全がん細胞の約49%が生存していたが、実施例ペプチドと併用処理したすべての場合に、低濃度のオシメルチニブでもがん細胞の生存率が顕著に減少すると確認された(
*p<0.05、
**p<0.001、
***p<0.001;
図13の右側)。
【0133】
3-3.Aspc-1細胞で実施例ペプチドと低濃度ゲムシタビン(gemcitabine)の併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のaspc-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、1μMのゲムシタビン単独、または0.2、1または8μM濃度の実施例15~28のペプチドと併用処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0134】
その結果、aspc-1細胞にゲムシタビンを単独で処理したとき、全がん細胞の約50%が生存していたが、実施例ペプチドと併用処理したすべての場合に、低濃度のゲムシタビンでもがん細胞の生存率が顕著に減少すると確認された(
*p<0.05、
**p<0.001、
***p<0.001;
図14の左側)。
【0135】
3-4.MDA-MB-231細胞で実施例ペプチドと低濃度ドセタキセル(docetaxel)の併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のMDA-MB-231細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、50μMのドセタキセル単独、または0.2、1または8μM濃度の実施例15~28のペプチドと併用処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0136】
その結果、MDA-MB-231細胞にドセタキセルを単独で処理したとき、全がん細胞の約52%が生存していたが、実施例ペプチドと併用処理したすべての場合に、低濃度のドセタキセルでもがん細胞の生存率が顕著に減少すると確認された(
*p<0.05、
**p<0.001、
***p<0.001;
図14の右側)。
【0137】
実験例4:実施例のペプチドおよび放射線併用処理によるがん細胞生存率の変化
放射線治療は、遺伝物質の損傷による死滅作用を通じて抗がん効果を期待することができるが、がん細胞は、これを克服するために、ADP-リボシル化(ribosylation)と知られている工程を通じてDNAの鎖を持続的に修復する。しかし、放射線照射による修復作用で一時的にのみ増加するADP-リボースを持続的に蓄積されるように補助すると、耐性線量の放射線を照射しても、相乗した抗がん効果があると期待した。前記実験例1において確認したように、本発明の実施例ペプチドは、がん細胞内でADP-リボースの量を顕著に増加させるので、実験例4においては、実施例ペプチドと耐性線量の放射線照射を併用した際に相乗した抗がん効果が示されるかを確認しようとした。
【0138】
4-1.H1975細胞で実施例ペプチドと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のH1975細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、2Gy線量の放射線単独、または1.6または3.2μMの配列番号1~14のペプチドと併用処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0139】
その結果、H1975細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループに対比してがん細胞の約76%が生存する耐性を示していたが、実施例ペプチドと併用処理したすべての場合に、耐性線量の放射線照射でもがん細胞の生存率が顕著に減少すると確認された(
**p<0.001、
***p<0.001;
図15の左側)。
【0140】
4-2.Aspc-1細胞で実施例ペプチドと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のAspc-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、2Gy線量の放射線単独、または1.6または3.2μMの配列番号1~14のペプチドと併用処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0141】
その結果、Aspc-1細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループに対比してがん細胞の約86%が生存する耐性を示していたが、実施例ペプチドと併用処理したすべての場合に、耐性線量の放射線照射でもがん細胞の生存率が顕著に減少すると確認された(
**p<0.001、
***p<0.001;
図15の右側)。
【0142】
4-3.MDA-MB-231細胞で実施例ペプチドと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のMDA-MB-231細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、2Gy線量の放射線単独、または1.6または3.2μMの配列番号15~28のペプチドと併用処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0143】
その結果、MDA-MB-231細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループに対比してがん細胞の約86%が生存する耐性を示していたが、実施例ペプチドと併用処理したすべての場合に、耐性線量の放射線照射でもがん細胞の生存率が顕著に減少すると確認された(
**p<0.001、
***p<0.001;
図16の左側)。
【0144】
4-4.Caki-1細胞で実施例ペプチドと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のCaki-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養した後、2Gy線量の放射線単独、または1.6または3.2μMの配列番号15~28のペプチドと併用処理した。次いで37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0145】
その結果、Caki-1細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループに対比してがん細胞の約96%が生存する耐性を示しているが、実施例ペプチドと併用処理したすべての場合に、耐性線量の放射線照射でもがん細胞の生存率が顕著に減少すると確認された(
**p<0.001、
***p<0.001;
図16の右側)。
【0146】
実験例5:動物モデルを利用した実施例ペプチドの投与経路による抗がん効能効果比較および検証
5-1.実施例ペプチドを皮下経路に注射した動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のbalb/cヌードマウスにaspc-1細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、無処理対照群(control)と実施例15~28のペプチドをそれぞれ皮下経路に注射する15種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、各実施例ペプチドを週3回20mg/kgの用量で皮下注射した。デジタルケリファーで腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0147】
その結果、最終投薬後の対照群腫瘍の最終体積は約3136mm
3に大きく成長したが、実施例15~28のペプチドをそれぞれ皮下経路に注射したすべての群では腫瘍の成長が顕著に抑制されることを確認した(
**p<0.001;
図17)。
【0148】
図18は、すべての群で剖検後に獲得した代表的な腫瘍写真を示したものであって、対照群と対比した際に本発明の実施例ペプチドを皮下注射したすべての群で腫瘍組織の成長が顕著に抑制されたことが観察された。
【0149】
5-2.実施例ペプチドを口腔投与経路に注射した動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のbalb/cヌードマウスにaspc-1細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、無処理対照群(Control)と実施例1~14のペプチドをそれぞれ口腔投与する15種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、各実施例ペプチドを週5回20mg/kgの用量で口腔投与した。デジタルケリファーで腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0150】
その結果、最終投薬後の対照群腫瘍の最終体積は約3517mm
3で大きく成長したが、実施例1~14のペプチドをそれぞれ口腔投与したすべての群では腫瘍の成長が顕著に抑制されることを確認した(
**p<0.001;
図19)。
【0151】
図20は、すべての群で剖検後に獲得した代表的な腫瘍写真を示したものであって、対照群と対比した際に本発明の実施例ペプチドを口腔投与したすべての群で腫瘍組織の成長が顕著に抑制されたことが観察された。
【0152】
実験例6:実施例ペプチドの正常細胞での細胞毒性確認
次に、本発明のペプチドが正常細胞でも細胞毒性を示すか否かを追加で確認した。試験のために、正常細胞としてヒト大腸纖維芽細胞(colon fibroblast)であるCCD-18Coおよびヒト皮膚乳頭細胞(dermal papilla cell)であるHDPCを使用し、本発明の実施例ペプチドとして、代表的に配列番号7のペプチドを使用した。
【0153】
先ず、96-ウェルプレートに5×103個の各正常細胞を接種した後、DMEM培地で37℃、5%CO2条件で24時間培養した。各ウェルをペプチドを処理しないグループ(untreated)および配列番号7のペプチドを処理したグループ(それぞれ25、50および100μM)に区分して実験を遂行した。
【0154】
実験結果、ペプチドを処理したすべてのグループ(処理後24時間、48時間または72時間)で未処理対照群と有意な差を全く見出すことができなかった(
図21および
図22)。したがって、本発明の実施例のペプチドは、がん細胞では強力な抗がん活性を示す一方、正常細胞では全く細胞毒性を現わさないため、抗がん用途として非常に優れた効果を有するということを確認した。
【0155】
以上の説明から、本発明の属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せずに、他の具体的な形態で実施され得ることを理解できるはずである。これと関連して、上述した実施例は、すべての面で例示的なものであって限定的なものではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味および範囲、そして、その等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解析されなければならない。
【配列表】
【国際調査報告】