(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 90/98 20160101AFI20240829BHJP
A61B 17/86 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61B90/98
A61B17/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514420
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022074177
(87)【国際公開番号】W WO2023031258
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グライヒ ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】モエセル リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ラマー ユルゲン エルウィン
(72)【発明者】
【氏名】シュメール インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン ティム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL42
4C160LL70
(57)【要約】
本発明は、ステント又は骨インプラントのような医療用インプラント130の作動ステータスを検出するためのデバイス100である。マイクロデバイス131がインプラントに統合される及び/又は取り付けられ、磁気励起場を磁気応答場に変換するように構成された磁気機械発振器を含む。応答場はマイクロデバイスの温度変化を示す。デバイスは、励起場を発生させ、応答場を検出し、検出された応答場を電気応答信号に変換するように適応された送信/受信ユニット110と、送信/受信ユニットを制御するように適応され、かつ電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの温度変化を決定し、マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて医療用インプラントの作動ステータスを判定するようにさらに適応されているコントローラ120とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の身体に埋め込まれた医療用インプラントの作動ステータスであって、前記医療用インプラントの臨床的機能に関して臨床的決定を可能にする当該作動ステータスを検出するためのデバイスであって、
マイクロデバイスが前記医療用インプラントに統合される及び/又は取り付けられ、前記マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換する磁気機械発振器を含み、前記磁気機械発振器は、前記磁気応答場が前記マイクロデバイスの温度変化を示すように適応され、
前記デバイスは、
i)前記磁気機械発振器を励起するための前記磁気励起場を発生させ、ii)前記磁気応答場を検出し、iii)前記磁気機械発振器の検出された前記磁気応答場を電気応答信号に変換する送信/受信ユニットと、
前記送信/受信ユニットを制御するように適合されるコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記磁気機械発振器の前記電気応答信号に基づいて前記マイクロデバイスの温度変化を決定し、前記マイクロデバイスの決定された前記温度変化に基づいて前記医療用インプラントの前記作動ステータスを判定するようにさらに適合される、デバイス。
【請求項2】
前記医療用インプラント及び/又は前記医療用インプラントの環境を加熱して、前記マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ前記医療用インプラントの温度変化を引き起こす加熱ユニットをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記加熱ユニットは、前記医療用インプラントを加熱するために前記医療用インプラント及び/又は前記医療用インプラントの前記環境に、変化する磁場を印加する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コントローラは、前記マイクロデバイスの前記温度変化を所定期間にわたる温度曲線として決定するように適合され、前記コントローラは、決定された前記温度曲線に基づいて前記作動ステータスを判定するように適合される、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記医療用インプラント及び/又は前記医療用インプラントの環境を加熱して、前記マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ前記医療用インプラントの温度変化を引き起こす加熱ユニットをさらに備え、前記コントローラは、前記マイクロデバイスの前記温度変化を、前記医療用インプラントの加熱中及び/又は加熱終了後の所定期間にわたる温度曲線として決定するように適合され、前記コントローラは、決定された前記温度曲線と、前記医療用インプラントの加熱に関して同一期間中に決定された較正温度曲線とを比較するようにさらに適合され、前記較正温度曲線は、前記医療用インプラントを配置した後、所定の較正時間中に決定されたものであり、前記コントローラは、前記比較に基づいて前記作動ステータスを判定するようにさらに適合される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記比較は、前記温度曲線及び前記較正温度曲線のフィッティングパラメータを決定することを含み、フィッティングパラメータは、温度曲線への所定の数学的関数のフィッティングを決定し、前記比較は、また、前記医療用インプラントの前記作動ステータスを決定するために、前記温度曲線及び前記較正温度曲線の前記フィッティングパラメータを比較することをさらに含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記コントローラは、前記作動ステータスに基づいて臨床的決定のための提案を提供するようにさらに適合される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
複数のマイクロデバイスが異なる位置で前記医療用インプラントに統合される及び/又は取り付けられ、前記コントローラは、前記複数のマイクロデバイスに関連する複数の電気応答信号に基づいて前記マイクロデバイスの各々の温度変化を決定し、複数の決定された前記温度変化に基づいて前記医療用インプラントの作動ステータスを判定するように適合される、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記医療用インプラントは骨インプラントであり、前記医療用インプラントの前記作動ステータスは、前記骨インプラントの潜在的な破損を示す破損状態である、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記医療用インプラントは医療用ステントであり、前記医療用インプラントの前記作動ステータスは、前記医療用ステントを覆っている組織の量を示す前記ステントの過剰成長ステータスである、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
対象の身体に埋め込まれた医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのシステムであって、前記システムは、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイスを備え、さらに、前記医療用インプラントに統合される及び/又は取り付けられる前記マイクロデバイスを備え、
前記マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換する磁気機械発振器を含み、前記磁気機械発振器は、前記磁気応答場が前記マイクロデバイスの温度変化を示すように適応されている、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムで使用可能な医療用インプラントであって、前記医療用インプラントに統合された及び/又は取り付けられたマイクロデバイスを備える、医療用インプラント。
【請求項13】
対象の身体に埋め込まれた医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのシステムで利用されるコントローラであって、前記作動ステータスは、前記医療用インプラントが意図した作業を遂行する能力を示し、前記システムは、a)前記医療用インプラントに統合された及び/又は取り付けられたマイクロデバイスであって、前記マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換する磁気機械発振器を含み、前記磁気機械発振器は、前記磁気応答場が前記マイクロデバイスの温度変化を示すように適応されている、マイクロデバイスと、b)i)前記磁気機械発振器を励起するための前記磁気励起場を発生させ、ii)前記磁気応答場を検出し、iii)前記磁気機械発振器の前記磁気応答場を電気応答信号に変換する送信/受信ユニットとを含み、
前記コントローラは、前記磁気機械発振器の電気応答信号に基づいて前記マイクロデバイスの温度変化を決定し、前記マイクロデバイスの決定された前記温度変化に基づいて前記医療用インプラントの前記作動ステータスを判定するように適合される、コントローラ。
【請求項14】
対象の身体に埋め込まれた医療用インプラントであって、マイクロデバイスを含む当該医療用インプラントの作動ステータスを検出するための方法であって、前記作動ステータスは、前記医療用インプラントが意図した作業を遂行する能力を示し、前記マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換する磁気機械発振器を含み、前記磁気機械発振器は、前記磁気応答場が前記磁気機械発振器の環境の温度変化を示すように適応されている方法において、前記方法は、
i)前記磁気機械発振器を励起するための前記磁気励起場を発生させ、ii)前記磁気応答場を検出し、iii)前記磁気機械発振器の前記磁気応答場を電気応答信号に変換するように送信/受信ユニットを制御するステップと、
前記磁気機械発振器の電気応答信号に基づいて前記マイクロデバイスの温度変化を決定するステップと、
前記マイクロデバイスの決定された前記温度変化に基づいて前記医療用インプラントの前記作動ステータスを決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記医療用インプラント及び/又は前記医療用インプラントの環境を加熱して、前記マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ前記医療用インプラントの温度変化を引き起こすステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記医療用インプラント及び/又は前記医療用インプラントの環境を加熱して、前記マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ前記医療用インプラントの温度変化を引き起こすステップと、
前記マイクロデバイスの前記温度変化を、前記医療用インプラントの加熱中又は加熱終了後の所定期間にわたる温度曲線として決定するステップと、
決定された前記温度曲線と、前記医療用インプラントの加熱に関して同一期間中に決定された較正温度曲線とを比較するステップであって、前記較正温度曲線は、前記医療用インプラントを配置した後、所定の較正時間中に決定されている、比較するステップと、
前記比較に基づいて前記作動ステータスを判定するステップと、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記比較するステップは、前記温度曲線及び前記較正温度曲線のフィッティングパラメータを決定するステップを含み、フィッティングパラメータは、所定の数学的関数の温度曲線へのフィッティングを決定し、前記比較するステップは、また、前記医療用インプラントの前記作動ステータスを決定するための前記較正温度曲線の前記フィッティングパラメータと前記温度曲線の前記フィッティングパラメータとを比較するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記作動ステータスに基づいて臨床的決定のための提案を提供するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのコンピュータプログラムであって、請求項1に記載のデバイスに請求項14から18のいずれか一項に記載の方法を実行させるプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのデバイス、システム、方法、及びコンピュータプログラム製品に関する。さらに、本発明は、医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのシステムで利用可能な医療用インプラント及びコントローラに言及する。
【背景技術】
【0002】
医療用インプラントを埋め込んだ後、患者のさらなる治療は、インプラントの現在の作動ステータスに依存することがよくある。例えば、軟組織内のインプラントは、時間の経過とともに組織が過剰成長していることが多い。多くの場合、この過剰成長はある程度望まれる。しかしながら、患者のさらなる治療、例えば患者の投薬治療は、そのような軟組織インプラントの過剰成長ステータスに強く依存する。別の例として、硬組織へのインプラント、例えば整形外科用骨インプラントも、緩んだり、材料破損が生じている可能性があるため、モニタリングが必要になる場合がある。緩んだり、材料破損が生じている場合は、インプラントの緩みや破損による損傷が大きくなりすぎる前に、そのようなインプラントを交換することが望ましいことは明らかである。しかし、インプラントを直接モニタリングすることは困難なことが多く、撮像放射線や侵襲的な測定手順などにより、患者のさらなる健康リスクにつながる。
【0003】
近年、人体内への医療適用といったサイズ制限の厳しい用途において有利に活用できる、例えばマイクロボットやマイクロデバイスの形の超小型機械デバイスが開発されている。このようなマイクロデバイスの中で非常に有利なものは、最近導入された磁気機械発振器である。多くの場合、これらのマイクロデバイスは、例えば人体内でマイクロデバイスの位置を非常に正確に特定できるマーカーデバイスとして使用される。このようなマイクロデバイス内に入れられたこのような磁気機械発振器の位置特定は、一般的に、磁気励起場に応答して発生する磁気機械発振器の磁気応答場を空間的に分解して検出することに依存している。しかし、磁気機械発振器を含むマイクロデバイスを、マイクロデバイスの環境における物理的パラメータ、例えば温度や圧力の検出を可能にするように適応させることもできる。磁気機械発振器を含むこのようなマイクロデバイスの例は、例えばEP3583890A2に記載されている。しかし、このようなマイクロデバイスは、すでに人体内のインプラントの位置を特定するために提案されているが、インプラントの作動ステータスを直接測定するために、このようなマイクロデバイスをどのように利用できるかについては、これまでのところ解決策は提供されていない。
【0004】
したがって、患者にさらなる健康リスクをもたらすことなく、体内の医療用インプラントの作動ステータスを容易に判断できる医療デバイス及び方法が提供されることが望ましい。
【0005】
米国特許出願公開第2006/0020313(A1)号は、患者の体内の温度に関連する物理パラメータを正確に評価するための装置に関連している。正確な温度測定は、体内に戦略的に置かれ、パッシブ共振回路で構成された1つ以上のテザーレス温度センサを使用することによって達成される。
【0006】
米国特許第6,308,715(B1)号は、生体内に埋め込まれたステントに関連する再狭窄を解析するための解析器装置及び方法に関連している。装置は、超音波撮像装置から超音波データを受信するための入力部と、超音波データを少なくとも一時的に保存するためのデジタルメモリと、超音波データを解析するためのプロセッサであって、ステントが経験する再狭窄の程度を診断するために少なくとも1つの事前定義された基準に従ってデータを解析するように構成されているプロセッサと、診断を示す情報を出力するための出力とを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、患者にさらなる健康リスクをもたらすことなく、医療用インプラントの作動ステータスを容易に検出することを可能にするデバイス、システム、方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。さらに、本出願は、このようなシステムで利用可能なコントローラ及び医療用インプラントを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのデバイスが提示される。この作動ステータスにより、医療用インプラントの臨床的機能に関して臨床的決定を下すことができる。医療用インプラントは、対象の身体に埋め込まれる。マイクロデバイスが医療用インプラントに統合される及び/又は取り付けられる。マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換するように構成された磁気機械発振器を含む。磁気機械発振器は、磁気応答場がマイクロデバイスの温度変化を示すように適応されている。デバイスは、a)i)磁気機械発振器を励起するための磁気励起場を発生させ、ii)磁気応答場を検出し、iii)磁気機械発振器の検出された磁気応答場を電気応答信号に変換する送信/受信ユニットと、b)送信/受信ユニットを制御するコントローラであって、さらに、磁気機械発振器の電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの温度変化を決定し、マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて医療用インプラントの作動ステータスを判定するコントローラとを備える。
【0009】
インプラントに取り付けられた又は統合されたマイクロデバイスの温度変化を決定することにより、インプラントのその環境、例えば軟組織及び/又は骨組織への導電結合を決定できる。この導電結合は、例えばインプラントがどれくらいしっかりと骨組織に結合されているか、又はインプラントの過剰成長ステータスを示すことができ、したがって、インプラントの現在の作動ステータスを判定することを可能にする。さらに、マイクロデバイスを利用するために、患者には磁気励起場のみが提供されればよいので、作動ステータスを判定するために侵襲的手順や害が及ぶ可能性のある放射線を適用する必要がない。したがって、患者への更なる健康リスクなく、作動ステータスを非常に簡単に判定できる。
【0010】
デバイスは、医療用インプラントの作動ステータスを検出するのに適している。特に、この作動ステータスにより、インプラントの臨床的機能に関して臨床的決定を下すことができる。一般的に、作動ステータスとは、インプラント自体の物理的ステータスか、又はインプラントとその環境との関係を示す任意のパラメータであり得る。好ましくは、パラメータは、インプラント自体の物理的状態及び/又はインプラントのその環境との関係の変化を示す。例えば医療用インプラントがステントである場合、作動ステータスは、医療用インプラントの過剰成長ステータスであり、例えばステントを過剰成長した組織の量及び/又は種類を示すことができる。別の例では、医療用インプラントが整形外科用骨インプラントである場合、作動ステータスは、骨インプラントが骨インプラントを囲む骨にどれくらいしっかりと結合されているかを示すパラメータか、又はインプラントの物理的な統合性を示す破損状態であり得る。これらの例のいずれにおいても、それぞれの作動ステータスに基づいて、例えばステントの過剰成長ステータスに基づいて、さらなる臨床的決定を下し、患者の投薬治療を調整でき、又は、骨インプラントのフィッティングステータスに基づいて、インプラントの骨環境への損傷が大きくなる前に骨インプラントの交換を提案できる。一般的に、デバイスは、医療用インプラントが対象の身体にすでに埋め込まれているときに使用されるのに適しており、また、対象とは、人間又は動物の患者である。
【0011】
医療用インプラントは、医療用インプラントに統合された及び/又は取り付けられたマイクロデバイスを含む。マイクロデバイスは、磁気機械発振器を含む。一般的に、磁気機械発振器は、マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換するように構成されている。これを達成するために、磁気機械発振器は、磁気励起場にさらされると回転又は発振可能な磁性物体を含む。回転又は発振する磁性物体は、それ自身で周期的に変化する磁気応答場の形の信号を生成し、これは、例えば医療用インプラントが埋め込まれた患者の外側で測定可能である。好ましくは、マイクロデバイスは、15kHz未満の比較的低い周波数で磁気励起場及び磁気応答場で動作するように適応されており、この動作周波数は、それぞれの用途、例えば医療用インプラントの種類に依存し得る。
【0012】
磁気機械発振器の環境における測定値若しくは物理的パラメータのような追加の情報又は磁気機械発振器の識別は、一般的に磁気応答場で符号化できる。特に、磁気機械発振器を含むマイクロデバイスは、磁気応答場が、マイクロデバイスの温度変化を決定することを可能にする、磁気機械発振器の環境における物理的パラメータを示すように適応されている。好ましくは、磁気機械発振器は、直接マイクロデバイスの温度変化を測定し、この測定された変化を磁気応答場に符号化するように適応されている。例えば磁気機械発振器は、3つの磁性物体、好ましくは磁性球をハウジング内に含む。磁性物体のうちの2つはハウジングに固定され、この2つの磁性物体の間の中央にある3つ目の磁性物体は、磁気励起場によって励起されると自由に発振することができる。このような磁気機械発振器は、温度変化に非常に敏感であり、各温度変化は、磁気機械発振器の発生した磁気応答場の変化につながる。さらに、磁気機械発振器の温度変化への感度は、磁気機械発振器の磁性物体に、予想される正常動作温度(例えば人間の体内の予想される体温)以下のキュリー温度を有する強磁性及び/又は常磁性材料を補うことによってさらに高められる。適切な温度センサの詳細な例は、例えば出願EP3583890A2に記載されている。しかし、温度変化に敏感である異なるデザインの磁気機械発振器も利用することができる。例えば別のデザインでは、磁気機械発振器は、2つの磁性物体のみを含み、磁性物体のうちの一方が固定され、他方が発振できる。好ましくは、マイクロデバイスは、例えば磁気機械発振器の磁性物体の材料及び配置を適宜選択することによって、0.001℃、より好ましくは0.0001℃未満の範囲の温度変化を測定することを可能にする温度感度を有するように適応されている。
【0013】
デバイスは送信/受信ユニットを備える。一般的に、送信/受信ユニットは、磁気機械発振器を励起するための磁気励起場を発生させるように適応されている。さらに、送信/受信ユニットは、磁気機械発振器の磁気応答場を検出し、磁気機械発振器の検出された磁気応答場を電気応答信号に変換するようにさらに適応されている。電気応答信号は、例えば送信/受信ユニットのコントローラのようなデジタル又はアナログ処理デバイスによってさらに処理可能である。例えば送信/受信ユニットは、インプラントを含んだ対象の近傍に配置できるコイルアレイを含む。コイルアレイは、磁気機械発振器の磁気応答場を検出するように適応された検出コイルと、磁気機械発振器を励起するための磁気励起場を発生させるように適応された送信コイルとを含み得る。ただし、専用の検出コイル及び専用の送信コイルの代わりに、コイルアレイのすべてのコイルを検出コイル及び送信コイルとして機能するように適応させることもできる。適切なこのような送信/受信ユニットの例も、例えば出願EP3583890A2に記載されている。
【0014】
デバイスはさらに、a)送信/受信ユニットを制御し、b)磁気機械発振器の電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの温度変化を決定し、c)マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて医療用インプラントの作動ステータスを判定するように適応されているコントローラを備える。コントローラは、コンピューティングデバイスのハードウェア及び/又はソフトウェアの一部として形成されることが好ましい。コンピューティングデバイスとは、任意の既知の一般的な又は専用のコンピューティングデバイス、例えばパーソナルコンピュータや、スマートフォンのようなハンドヘルドコンピュータ、タブレット、ラップトップ、電子制御盤、クラウドコンピューティングデバイスなどである。
【0015】
コントローラは、例えば磁気励起場を発生させたり、磁気応答場を検出したり、検出された磁気応答場を電気応答場に変換したりするように、送信/受信ユニットを制御するように適応されている。例えば磁気励起場を発生させるように送信コイルを、磁気応答場を検出し変換するように検出コイルを制御するようにコントローラを適応させることができる。
【0016】
さらに、コントローラは、マイクロデバイスの電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの温度変化を決定するように適応されている。例えば電気応答信号の特性(例えば周波数、振幅など)の変化を決定することができる。コントローラは、例えば電気応答信号の特性の変化とマイクロデバイスの温度変化とを相関させるために、所定の較正表を利用するように適応させることができる。しかし、このような較正表は省略されてもよく、電気応答信号の変化はマイクロデバイスの温度変化を示すものとして直接決定することができる。さらに、コントローラは、例えば物理法則から導出された既知の関数を使用して、電気応答信号の変化とマイクロデバイスの温度変化とを相関させるように適応することもできる。また、ディープラーニング法のような人工知能の手法を用いて、マイクロデバイスの温度変化を電気応答信号から決定することもできる。例えばディープラーニングアルゴリズムは、適宜既知の温度変化を用いて較正段階でトレーニングされる。
【0017】
コントローラは、マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて、医療用インプラントの作動ステータスを判定するように適応されている。例えば温度変化に対して所定の閾値又は最大/最小値を使用して、温度変化がそれぞれのインプラントの予想範囲内にあるかどうかを判定するようにコントローラを適応させることができる。この場合、医療用インプラントの作動ステータスとは、医療用インプラントの温度変化が予想される温度変化範囲内にあるかどうかである。ただし、作動ステータスは、より複雑なパラメータであることもある。例えば作動ステータスは、医療用インプラント上の組織の成長である。マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて組織の成長を決定するようにコントローラを適応させることができる。医療用インプラント上の組織の成長は、医療用インプラントとその環境との間で異なる結合をもたらすため、医療用インプラントの温度変化は組織の成長に依存する。
【0018】
実施形態では、デバイスは、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境を加熱して、マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ医療用インプラントの温度変化を引き起こす加熱ユニットをさらに備える。加熱ユニットは、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境を加熱することを可能にする任意のデバイスである。例えば加熱ユニットは、患者の身体、特にインプラントの環境で高周波エネルギーを印加することを可能にする高周波生成ユニットである。例えば磁気共鳴撮像装置を利用して、患者に高周波エネルギーを印加できる。ただし、加熱ユニットは、インプラント及び/又はインプラントの周囲を加熱することを可能にする音波を発生させるように適応された音響加熱ユニットであってもよい。さらに、加熱ユニットは、患者の全身を、したがって、インプラントの環境も加熱することを可能にする、患者に暖かい流体を適用するためのデバイスであってもよい。また、例えば超音波デバイスを使用して、医療用インプラントの環境で組織を加熱できる。好ましい実施形態では、加熱ユニットは、医療用インプラントを加熱するために医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境に変化する磁場を印加するように適応されている。この実施形態では、加熱ユニットは、例えば患者の外側であるが、医療用インプラントの近くに配置される変化する磁場を発生させるように適応されたコイルである。好ましい実施例では、送信/受信ユニットは、例えば磁気励起場を発生するだけでなく、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境を加熱するための変化する磁場を発生するように適応されたコイルを含むことによって、加熱ユニットとしても機能するように適応される。好ましくは、変化する磁場は、医療用インプラントの種類に関して予め決められた周波数を含む。例えば医療用インプラントの形状、サイズ、材料などに基づいて、変化する磁場の異なる周波数を選択して、医療用インプラントを効果的に加熱できる。好ましくは、変化する磁場の周波数は10kHz~100kHzの範囲にある。
【0019】
加熱ユニットを提供する代わりに、デバイスは、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境を冷却して、マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ医療用インプラントの温度変化を引き起こす冷却ユニットも備えていてもよい。この場合、冷却ユニットは、例えば患者に冷却液を塗布することを可能にするデバイスである。しかし、冷却ユニットは、例えばクライオカテーテルをインプラントの近くで患者の外又は内に提供することによって、患者の特定の部分を冷却することを可能にする一種のクライオカテーテルであってもよい。
【0020】
ただし、実施形態では、加熱ユニットを省略することもでき、医療用インプラント及び/若しくは医療用インプラントの環境の加熱並びに/又は冷却は、患者にそれぞれの手段を行うよう指示することで引き起こすことができる。例えば患者は、体温を上げ、したがって、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境の温度も上昇させる体操を行うように指示される。さらに、患者は体温を変えるためにそれぞれの熱い液体又は冷たい液体を飲むように指示されるか、又は所定の体温値だけ体温を変えることを可能にする投薬治療が提供されてもよい。さらに、医療用インプラントの温度変化を決定するために、医療用インプラントが提供されている人体の少なくとも一部で温度変化を引き起こす可能性のある人体内の無意識のプロセスをモニタリングすることもできる。一般的に、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境の温度が変化する所定の温度値は、患者に健康リスクを与えない温度値である。好ましくは、所定の温度値は0.1℃、さらに好ましくは0.01℃未満である。
【0021】
実施形態では、コントローラは、マイクロデバイスの温度変化を所定期間にわたる温度曲線として決定し、コントローラは、決定された温度曲線に基づいて作動ステータスを判定するように適応されている。例えば送信/受信ユニットを制御して磁気励起場を発生させ、例えば上記のように、医療用インプラントの及び/又は医療用インプラントの環境における加熱/冷却中に、インプラント及び/又はインプラントの環境で発生する予想される温度変化の間に電気応答信号を提供するようにコントローラを適応させることができる。このような予想される温度変化の間、マイクロデバイスの温度を示す電気応答信号が連続的に、又は10秒ごとなど一定の間隔で提供されるようにコントローラを適応させることができる。それぞれの電気応答信号は、コントローラによって使用されて、所定期間にわたる温度曲線を決定できる。温度曲線は、測定された温度を直接示すことができるが、測定された温度のみを示すこともでき、例えば比例関係や反比例関係など、マイクロデバイスの温度との関数関係を提供できる。温度曲線がマイクロデバイスの温度と関数関係を介して相関している場合、通常、作動ステータスを判定するために正確な関数関係がわかっている必要はない。
【0022】
コントローラは、例えば、温度曲線に基づいて、温度曲線の特性と作動ステータスとの既知の関数関係に基づいて、作動ステータスを判定するように適応させることができる。例えば作動ステータスとしてインプラントの正常な機能を示す温度曲線の傾き範囲がわかっている。温度曲線の傾きが既知の傾き範囲を上回っている又は下回っている場合、例えば破損リスクの増加、特定の過剰成長レベル、環境へのインプラントの結合の減少/増加など、医療用インプラントの作動ステータスの変化を判定するようにコントローラを適応させることができる。ただし、温度曲線の他の特性を使用して、作動ステータスを判定することもできる。温度曲線の特性のそれぞれの所定範囲は、例えばそれぞれのインプラントでの経験、過去の症例の測定値、インプラントを含む異なる患者の複数の測定値のデータベースの分析に基づいて、理論的な考察に基づいてなどで決定できる。
【0023】
好ましい実施形態では、コントローラは、指数関数を加熱/冷却温度曲線にフィッティングさせ、インプラントの作動ステータスとして加熱/冷却温度曲線に最もフィッティングする指数関数の時定数を決定するように適応されている。特に、最適フィッティング指数関数の時定数は、温度曲線によって測定されたインプラント及び/又はインプラントの環境の温度の変化の速さを示す。したがって、時定数はインプラントと環境との熱接触を示す。したがって、作動ステータスとして提供されるこの情報は、それぞれの医学的可能性を推測し、インプラントの医学的決定を下すために利用できる。例えば実験や過去の症例での経験を利用して、作動ステータスとしての時定数に基づいて特定のインプラントに関する医学的提案を提供できる。
【0024】
別の好ましい実施形態では、作動ステータスを判定するための温度モデルを利用するようにコントローラを適応させることができる。例えば温度モデルは、特定のインプラントのマイクロデバイスによって測定された仮想温度曲線をシミュレートするための数値モデルであり得る。この場合、温度モデルは、シミュレートされた温度曲線と実際に測定された温度曲線とを比較し、シミュレートされた温度曲線が測定された温度曲線に一致するまで、例えば反復数値法を用いて温度モデルのモデルパラメータを変更するように適応させることができる。その結果、決定されたモデルパラメータは、インプラントの作動ステータスを示すものとみなすことができるか、又は直接作動ステータスとして利用できる。好ましくは、モデルパラメータは、熱伝達パラメータである。インプラントに複数のマイクロデバイスが設けられている場合、温度モデルは、例えば熱伝達パラメータである空間的に分解されたモデルパラメータを決定するように適応させることさえ可能である。このように、インプラントの作動ステータスは、モデルパラメータに関する空間情報に基づいて決定することもでき、空間的に分解された作動ステータスを決定することが可能になる。
【0025】
好ましい実施形態では、コントローラは、決定された温度曲線と較正温度曲線とを比較するように適応されている。較正温度曲線とは、現在の温度曲線と同じやり方でインプラントの埋め込み後の所定の時間に測定された温度曲線である。例えば較正温度曲線は、医療用インプラントを配置してから数日又は数週間後に測定することができ、したがって、インプラントの配置によって引き起こされた外傷の大部分が患者の身体によって治癒されている。特に、較正温度曲線は、同じ熱又は冷却源、同じ所定の温度値、並びに加熱/冷却中及び/又は加熱/冷却終了後の同じ測定期間を利用することによって決定される。したがって、較正温度曲線は、インプラントの作動ステータスのベースラインとみなすことができ、これに関して、インプラントの作動ステータスの変化を決定できる。この場合、コントローラが、例えば傾きのような温度曲線の特性を互いに比較することによって、現在の温度曲線と較正温度曲線とを比較するように適応されていることが望ましい。さらに、この場合、コントローラは、比較に基づいてインプラントの作動ステータスを決定するように適応されている。特に、比較に基づいてインプラントの作動ステータスの変化を決定するように適応されている。好ましい実施形態では、比較は、温度曲線及び較正温度曲線のフィッティングパラメータを決定することであって、フィッティングパラメータは、所定の数学的関数の温度曲線へのフィッティングを決定する、決定することを含み、また、温度曲線及び較正温度曲線のフィッティングパラメータを比較して、医療用インプラントの作動ステータスを決定することをさらに含む。好ましくは、所定の数学的関数は指数関数であり、フィッティングパラメータは指数関数をそれぞれの温度曲線にフィッティングさせることを可能にするパラメータの値である。特に、この場合、フィッティングパラメータは、指数、前因子、加法定数などであり得る。フィッティングパラメータの比較によって、フィッティングパラメータに属する曲線を比較できる。したがって、フィッティングパラメータの差は、それぞれの比較された曲線の差を示す。したがって、この実施形態は、医療用インプラントの作動ステータス、特に医療用インプラントの作動ステータスの変化を決定するために、現在の温度曲線と較正温度曲線との比較を容易にする。
【0026】
好ましい実施形態では、デバイスは、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境を加熱して、マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ医療用インプラントの温度変化を引き起こす加熱ユニットをさらに備え、コントローラは、マイクロデバイスの温度変化を、医療用インプラントの加熱中及び/又は加熱終了後の所定期間にわたる温度曲線として決定するように適応され、コントローラは、決定された温度曲線と、医療用インプラントの加熱に関して同一期間中に決定された較正温度曲線とを比較するようにさらに適応され、較正温度曲線は、医療用インプラントを配置した後、所定の較正時間中に決定されたものであり、コントローラは、比較に基づいて作動ステータスを判定するようにさらに適応されている。
【0027】
実施形態では、コントローラは、作動ステータスに基づいて臨床的決定のための提案を提供するようにさらに適応されている。例えば医療用インプラントの作動ステータスをそれぞれの医学的提案にマッピングする保存されたマッピングを利用するようにコントローラを適応させることができる。例えばインプラントがステントである場合、作動ステータスはステントの過剰成長レベルであり、マッピングは、異なる過剰成長レベルとそれぞれの可能な投薬治療決定との相関を含み得る。
【0028】
実施形態では、複数のマイクロデバイスが異なる位置で医療用インプラントに統合される及び/又は取り付けられ、コントローラは、複数のマイクロデバイスに関連する複数の電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの各々の温度変化を決定し、複数の決定された温度変化に基づいて医療用インプラントの作動ステータスを判定するように適応されている。特に、この場合は、マイクロデバイスによって異なる位置で測定された決定された温度変化に基づいて、空間的に分解された作動ステータスを判定されることが好ましい。インプラント内の複数のマイクロデバイスによって測定された温度変化を利用することで、インプラントのさまざまな領域におけるインプラントの作動ステータスの変化に関する情報を提供することが可能になる。例えばステントはある部分で別の部分とは異なる過剰成長レベルがある場合がある。さらに、骨インプラントは、いくつかの部分ではまだ骨にしっかりと結合されているが、他の部分では結合の緩みがすでに生じている場合がある。したがって、複数の決定された温度変化を利用することで、医療用インプラントの作動ステータスをより正確に判定することが可能になる。好ましくは、この実施形態では、コントローラは複数の決定された温度変化を比較するように適応されている。さらに、又は或いは、決定された温度変化に基づいて作動ステータスを判定するための上記の可能性も、複数の決定された温度変化を含むこの場合に利用することができる。特に、好ましい実施形態では、決定された温度変化は、所定の期間にわたる温度変化を示す温度曲線である。
【0029】
実施形態では、医療用インプラントは骨インプラントであり、医療用インプラントの作動ステータスは、骨インプラントの潜在的な破損を示す破損状態である。骨インプラントの材料が破損し始めると、インプラントの歪みと材料特性が変化する。これにより、骨インプラントの熱伝導率が変化し、したがって、例えばインプラント及び/又はインプラントの周囲の加熱中に骨インプラントで測定される温度曲線が変化する可能性がある。したがって、この実施形態では、上記の現在の温度曲線と較正温度曲線との比較に基づいて、破損状態を作動ステータスとして判定するようにコントローラを適応させることが好ましい。これらの曲線間の変化は、インプラントの材料特性又は歪みのそれぞれの変化を示し得る。この場合、所定の関数関係又は他の関係を利用して、例えば2つの曲線間の差に基づいて破損状態のレベルを決定するようにコントローラを適応させることができる。特に、このような関係は、実験、特定のインプラントを使用した複数の患者症例の分析、例えば既知のインプラント破損状態を有する類似症例の複数の過去の測定値に基づいた機械学習法、物理的な考慮事項などに基づいて決定できる。
【0030】
さらに、又は或いは、作動ステータスは、骨インプラントと周囲の骨との結合状態である場合もある。一般的に、熱は互いに接触している2つの物体間で伝導することができ、熱伝導は、例えば熱的接触抵抗によって物理的に記述することができる。熱的熱接触抵抗は、特に骨と体液又は軟組織の異なる熱伝導率によって影響される。特に、骨インプラントが周囲の骨との接触を失った場合、体液や軟組織がそれぞれの隙間を埋め、熱接触抵抗が増加して骨インプラントが緩み、骨インプラントと骨との熱伝導率が低下する。したがって、骨インプラントの場合、骨インプラントの周囲の骨との接触が緩むほど、骨インプラントと周囲の骨との間で決定される熱抵抗性が高くなる。したがって、周囲の骨に導入された熱は骨インプラントにあまり効果的に輸送されない。しかし、場合によってはインプラントの緩みは周囲の骨の炎症によって引き起こされる可能性があり、この場合、炎症を起こした骨の血流の増加によって、骨インプラントと周囲の骨とがよりよく熱接触する。この場合、熱は通常よりも効果的にインプラントから及び/又はインプラントに輸送される。したがって、コントローラが、温度曲線に基づいて骨インプラントの結合ステータスを作動ステータスとして判定するように適応されていることが好ましい。特に、温度曲線の1つ以上の特性を、特定のインプラントと周囲の骨との異なる結合レベルを示す特性の所定の範囲と比較するようにコントローラを適応させることができる。好ましくは、コントローラは、上述のように温度曲線と較正温度曲線とを比較するように適応されている。この場合、較正温度曲線と比較して温度曲線の平坦化、すなわち傾きの減少は、インプラントと周囲の骨との結合の減少を示し、傾きの増加は、骨の炎症を示している可能性がある。したがって、この場合は、較正温度曲線と比較して温度曲線の傾きの減少又は増加に基づいて結合状態を決定するようにコントローラを適応させることができる。さらに、インプラント自体の加熱に基づいて決定された温度曲線と、周囲組織の、特に、インプラントの上流の血液の加熱に基づいて決定される温度曲線とを比較することによって、炎症の有無をさらに検証するようにコントローラを適応させることができる。比較に基づいて、炎症が予想されているものであるかどうか、また炎症によってインプラントの緩みがすでに引き起こされているかどうかを示す作動ステータスを判定するようにコントローラを適応させることができる。
【0031】
別の実施形態では、医療用インプラントは医療用ステントであり、医療用インプラントの作動ステータスは、医療用ステントを覆っている組織の量を示すステントの過剰成長ステータスである。一般的に、インプラント(この場合は、ステント)と接触する材料の種類が、インプラントと周囲の材料との熱伝導率に影響を与える。ステントの場合、ステントは血液、軟組織、及び血小板と接触することができ、これらの各組織の量が、特に周囲の組織とステントとの間の熱伝導を決定する。したがって、この場合は、コントローラは、上記の温度曲線と較正曲線との比較に基づいて、過剰成長ステータスを判定するように適応されていることが好ましく、曲線間の差がステントの過剰成長ステータスの変化を示す。好ましくは、コントローラは、ステントと周囲組織との間の熱伝導率の低下を示す作動ステータスを比較から判定するように適応されている。例えば較正曲線にフィッティングされた指数関数の時定数と比較して、現在の温度曲線にフィッティングされた指数関数の時定数の増加は、熱伝導率の低下を示す。この場合、作動ステータスは、例えば時定数間の差である。特に、ステントの埋め込み直後には、ステントは実質的に血液と直接接触し、良好な熱接触と良好な熱伝達を可能にすることが予想されている。しかし、次の段階では、ステントが薬剤溶出ステントであるかどうかなど、さまざまな要因に応じて、数日又は数週間の間にステントに上皮組織が過剰成長していく。組織が過剰成長すると、ステントと血液との接触が減少し、したがって、ステントと周囲との間の熱伝導が低下する。したがって、上記で説明したように、例えば時定数の増加を示すことによる熱伝導率の低下を示す作動ステータスは、ステント上の組織の成長を直接示す。したがって、例えば既知の実験結果を利用することによって、作動ステータスとしての較正曲線の時定数に対する現在の温度曲線の時定数の変化に基づいて、例えば推定される過剰成長組織の厚さの形で過剰成長状態を直接決定するようにコントローラを適応させることもできる。
【0032】
さらに、上皮組織の過剰成長は、実質的に線形過程であると予想されるため、時間の経過に伴う熱伝導率の低下も実質的に一定である。この場合、例えば異なる時間で測定された温度曲線に基づいて、上皮の過剰成長の完了を示す熱伝導率の低下が停止したことを決定するようにコントローラを適応させることができる。特に、作動ステータスがこの完了を示している場合、患者の現在の抗凝固療法の見直しを提案するようにコントローラを適応させることができる。さらに、例えば連続して測定された温度曲線、例えば毎日又は毎週に測定された温度曲線の熱伝導率を示す作動ステータスに基づいて、予期しない速さの低下が熱伝導率に起きていないかどうかを決定するようにコントローラを適応させることができる。熱伝導率の低下は、複数の医学的に正常な症例の平均よりも低下が所定の割合よりも速い場合に、予期しない速さとみなされる。このような低下が決定された場合、予期しない状況が発生し、即時の健康診断が必要であることをユーザに示すようにコントローラを適応させることができる。特に、このような速い低下は、ステント内の血栓の形成を示す可能性があり、これは、生命を脅かす可能性がある。さらに、場合によっては、ステントの周囲に瘢痕組織が形成され始め、数か月又は数年の間にステントが埋め込まれた血管が狭くなる。例えば数年にわたって毎月のように長期間にわたって続いて判定されたインプラントの作動ステータスを比較して、そのような瘢痕組織形成に予想される熱伝導率の増加が示されているかどうかを決定するためにコントローラを適応させることができる。これにより、古いステントを援助する新しいステントが必要となる適切なタイミングを計画する際に、医療ユーザに提案及び支援を提供し、潜在的な重大な緊急事態が発生するまで血管の狭窄が気付かれないままになるという患者のリスクが軽減される。
【0033】
実施形態では、作動ステータスに基づいてステントを通る血流量を決定するようにコントローラを適応させることができる。特に、この実施形態では、作動ステータスが温度曲線に部分的にフィッティングされた指数関数の時定数であることが好ましい。例えば、温度曲線の異なる部分について、異なる指数関数を温度曲線にフィッティングさせることができる。特に、温度曲線が複数の心拍にわたって測定される場合、心拍ごとに血流が変化することで、熱伝導の変化が起こり、心拍ごとに時定数が変化する。さらに、それぞれの変化はステントを通る血流量に依存する。したがって、それぞれの判定された作動ステータスから、ステントを通る全体的な血流量を導き出すことができる。ただし、この場合、血流量自体も作動ステータスとみなすことができる。
【0034】
上述のように、インプラントが骨インプラントである場合、1つ以上のマイクロデバイスが、5kHz未満の周波数で磁気励起場及び磁気応答場で動作するように適応されていることが好ましい。しかし、インプラントが医療用ステントである場合、1つ以上のマイクロデバイスが、最大15kHzの高い周波数で磁場励起場及び磁場応答場で動作するように適応されていることが好ましい。
【0035】
本発明のさらなる態様では、医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのシステムが提示される。医療用インプラントは、対象の身体に埋め込まれている。システムは、a)医療用インプラントに統合された及び/又は取り付けられたマイクロデバイスであって、マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換するように構成された磁気機械発振器を含み、磁気機械発振器は、磁気応答場がマイクロデバイスの温度変化を示すように適応されている、マイクロデバイスと、b)上記のデバイスとを備える。
【0036】
本発明のさらなる態様では、上記のシステムで使用可能であるように適応されている医療用インプラントが提示される。医療用インプラントは、医療用インプラントに統合された及び/又は取り付けられたマイクロデバイスを含む。実施形態では、医療用インプラントは、医療用骨インプラント、特に骨セメントを用いて埋め込まれていない整形外科用インプラントである。好ましくは、骨インプラントは比較的低い熱伝導率を有する。特に、骨インプラントは、主にチタン合金又は合金ステンレス鋼から作られており、熱伝導率が20W/(m*K)未満、好ましくは8W/(m*K)未満であることが好ましい。好ましくは、マイクロデバイスは骨インプラントに統合されている。例えばマイクロデバイスはインプラントのボアホール内に設けられている。この例では、マイクロデバイスの周囲のボアホール内のスペースにポリマー材料を充填することが好ましい。別の実施形態では、医療用インプラントは医療用ステントであり得、この実施形態では、マイクロデバイスが医療用ステントの外側に取り付けられていることが好ましい。例えば医療用ステントは、クランプによってマイクロデバイスを保持するように適応されている、例えばポケットの形のクランプ機構を含むことが好ましい。さらに又は或いは、マイクロデバイスは、接着剤を使用して医療用ステントに固定されていてもよい。この場合、この接着剤もステントとマイクロデバイスとの間の熱輸送を可能にする熱伝導体であり得る。
【0037】
本発明のさらなる態様では、医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのシステムで利用されるコントローラが提示される。この作動ステータスにより、インプラントの臨床的機能に関して臨床的決定を下すことができ、この医療用インプラントは対象の身体に埋め込まれている。システムは、a)医療用インプラントに統合された及び/又は取り付けられたマイクロデバイスであって、マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換するように構成された磁気機械発振器を含み、磁気機械発振器は、磁気応答場がマイクロデバイスの温度変化を示すように適応されている、マイクロデバイスと、b)i)磁気機械発振器を励起するための磁気励起場を発生させ、ii)磁気応答場を検出し、iii)磁気機械発振器の磁気応答場を電気応答信号に変換するように適応された送信/受信ユニットと、を含む。コントローラは、磁気機械発振器の電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの温度変化を決定し、マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて医療用インプラントの作動ステータスを判定するように適応されている。
【0038】
本発明のさらなる態様では、医療用インプラントの作動ステータスを検出するための方法が提示される。この作動ステータスにより、インプラントの臨床的機能に関して臨床的決定を下すことができ、医療用インプラントは、対象の身体に埋め込まれ、マイクロデバイスを含んでいる。マイクロデバイスは、磁気励起場を磁気応答場に変換するように構成された磁気機械発振器を含み、磁気機械発振器は、磁気応答場が磁気機械発振器の環境の温度変化を示すように適応されている。この方法は、a)i)磁気機械発振器を励起するための磁気励起場を発生させ、ii)磁気応答場を検出し、iii)磁気機械発振器の磁気応答場を電気応答信号に変換するように送信/受信ユニットを制御するステップと、b)磁気機械発振器の電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの温度変化を決定するステップと、c)マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて医療用インプラントの作動ステータスを決定するステップとを含む。
【0039】
実施形態では、方法はさらに、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境を加熱して、マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ医療用インプラントの温度変化を引き起こすステップを含む。
【0040】
好ましい実施形態では、方法はさらに、a)医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境を加熱して、マイクロデバイスによって測定可能な所定の温度値だけ医療用インプラントの温度変化を引き起こすステップと、b)マイクロデバイスの温度変化を、医療用インプラントの加熱中又は加熱終了後の所定期間にわたる温度曲線として決定するステップと、c)決定された温度曲線と、医療用インプラントの加熱に関して同一期間中に決定された較正温度曲線とを比較するステップであって、較正温度曲線は、医療用インプラントを配置した後、所定の較正時間中に決定されている、比較するステップと、d)比較に基づいて作動ステータスを判定するステップと、を含む。特に、医療用インプラント及び/又は医療用インプラントの環境の加熱は、患者に健康リスクを引き起こさない加熱である。好ましくは、医療用インプラントの温度が変化する所定の温度値は、0.1℃未満である。
【0041】
実施形態では、比較は、温度曲線及び較正温度曲線のフィッティングパラメータを決定することであって、フィッティングパラメータは、所定の数学的関数の温度曲線へのフィッティングを決定する、決定することを含み、また、温度曲線及び較正温度曲線のフィッティングパラメータを比較して、医療用インプラントの作動ステータスを決定することをさらに含む。
【0042】
実施形態では、方法はさらに、作動ステータスに基づいて臨床的決定のための提案を提供するステップを含む。
【0043】
本発明のさらなる態様では、医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのコンピュータプログラム製品が提示される。このコンピュータプログラム製品は、上記のコントローラに上記の方法を実行させるためのプログラムコード手段を含む。
【0044】
上記のデバイス、上記のシステム、上記の医療用インプラント、上記のコントローラ、上記の方法、及び上記のコンピュータプログラム製品は、特に従属請求項で定義されているように、類似及び/又は同一の好ましい実施形態を有することが理解されるべきである。
【0045】
また、本発明の好ましい実施形態は、対応する独立請求項との従属請求項又は上記の実施形態の任意の組み合わせであり得ることも理解されるべきである。
【0046】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのデバイスの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
【
図2】医療用インプラントの作動ステータスを検出するための方法のフローチャートを概略的かつ例示的に示す。
【
図3】医療用インプラントの作動ステータスを検出するために使用可能な医療用インプラントの2つの好ましい実施例を概略的かつ例示的に示す。
【
図4】医療用インプラントの作動ステータスを検出するために使用可能な医療用インプラントの2つの好ましい実施例を概略的かつ例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのデバイスの実施形態を概略的かつ例示的に示す。医療用インプラント130は、患者サポート140の上に横たわっている患者141内に埋め込まれる。医療用インプラント130は、例えば、整形外科用骨インプラント、ステント、又は、任意の他の医療用インプラントである。医療用インプラント130は、医療用インプラント130に統合された及び/又は取り付けられたマイクロデバイス131を含む。マイクロデバイス131は、磁気励起場を磁気応答場に変換するように構成された磁気機械発振器を含む。この実施形態では、マイクロデバイス131は、磁気機械発振器の磁気応答場が磁気機械発振器の環境における温度変化を示すような温度センサとして機能するように適応される。マイクロデバイス131は医療用インプラント130に統合さている及び/又は取り付けられているため、マイクロデバイス131で測定された温度変化は、医療用インプラント130及び/又は医療用インプラント130の環境の温度変化も示す。
【0049】
当技術分野では、複数の異なる磁気機械発振器の構造がすでに知られている。例えば磁気機械発振器は、3つの磁性物体、例えば3つの磁性球を含み、磁性物体のうちの2つが磁気機械発振器のハウジングに固定され、3つ目の磁性物体が2つの固定された磁性物体の間に設けられ、自由に発振又は回転するようにされる。このような磁気機械発振器では、変化する磁場である磁気励起場は、変化する磁場内での3つ目の磁性物体の回転又は発振をもたらす。2つの固定された磁性物体に対する3つ目の磁性物体の回転又は発振自体が、これも変化する磁場である磁気応答場を発生させる。磁気機械発振器の温度変化は、磁気機械発振器にさまざまな影響を与える可能性がある。例えば、変化する温度は、例えば磁気機械発振器で利用されるハウジングの材料のある範囲への温度の影響により、固定された磁性物体と回転又は発振する磁性物体との間の距離を変化する。また、磁気機械発振器の磁性物体又は他の部分の磁化も、磁気機械発振器の温度の変化に反応する可能性がある。磁化に対する温度の影響は、例えば、磁気機械発振器の一部として磁性物体のうちの1つ以上の一部として、予想温度範囲内、例えば人体内で測定されることが予想される温度範囲内のキュリー温度を有する軟質磁性材料を設けることによって、温度変化に対する磁気機械発振器の感度をさらに高めるために利用することもできる。一般的に、磁気機械発振器へのこれらの温度の影響はすべて、3つ目の磁性物体の回転又は発振挙動の変化をもたらし、したがって磁気応答場の変化をもたらす。例えば、出願EP3583890A2に説明される原理を利用すると、磁気機械発振器は、0.001℃未満の温度変化を測定することを可能にする温度感度を提供するように簡単に適応させることができる。したがって、患者内のすでに非常に小さな温度変化を、磁気機械発振器を用いて測定可能である。
【0050】
デバイス100は、マイクロデバイス131と対話するために、送信/受信ユニット110を含む。送信/受信ユニット110は、磁気機械発振器を励起するための磁気励起場を発生させるように適応されている。例えば、送信/受信ユニット110は、それぞれの変化する磁気励起場を提供するように適応された送信コイル111を含む。さらに、送信/受信ユニット110は、マイクロデバイス131の磁気機械発振器によって提供される磁気応答場を検出し、磁気応答場を電気応答信号に変換するように適応されている。例えば、送信/受信ユニット110は、磁気応答場を検出するように適応された検出コイル112を含み、また、検出された磁気応答場を、例えばコンピューティングユニット又はさらなる電子構成要素によってさらに処理可能である電気応答信号に変換するように適応されたそれぞれの電子構成要素をさらに提供する。
【0051】
デバイス100はさらに、ハードウェア及び/又はソフトウェアとして実現できるコントローラ120を含む。コントローラ120の機能ロジックに従って、2つの論理ユニット121、122を識別できる。以下で説明するように、これらの論理ユニット121、122は、コントローラ120の同じハードウェア及び/若しくはソフトウェア部分の一部として、又は別々のハードウェア及び/若しくはソフトウェア部分の一部として提供できる。しかし、論理ユニット121、122は、コントローラ120の機能をよりよく理解できる構成とみなすこともでき、コントローラ120の実際の構成では、それぞれの物理的又は仮想的な同等物を持たない構成とみなすこともできる。第1の論理ユニットは、送信/受信ユニット110を制御するために適応された送信/受信コントロールユニット121である。特に、送信/受信制御ユニット121は、送信コイル111などの送信/受信ユニット110を制御して磁気励起場を発生させるように適応されている。さらに、送信/受信制御ユニット121は、検出コイル112などの送信/受信ユニット110を制御して、磁気機械発振器の磁気応答場を検出し、検出された磁気応答場を電気応答信号に変換するように適応されている。次いで、送信/受信制御ユニット121は、通常、作動ステータス判定ユニット122である第2の論理ユニットに電気応答信号を提供するように適応されている。
【0052】
作動ステータス決定ユニット122は、電気応答信号に基づいてマイクロデバイス131の温度変化を判定するように適応されている。例えば、電気応答信号の変化と温度変化との既知の関数関係を使用するように作動ステータス判定ユニット122を適応させることができる。このような関数関係は、例えば、磁気機械発振器の製造の一部として、既知の温度変化に対する磁気機械発振器の較正に基づいて決定できる。しかし、このような関数関係を決定するために、理論的な考察も利用できる。決定された関数関係に基づいて、絶対温度変化又は相対温度変化を決定するように作動ステータス判定ユニット122を適応させることができる。例えば、関数関係は電気応答信号から絶対温度値を決定することを可能にし、これにより、絶対温度変化を決定できる。しかし、関数関係が絶対温度値を示さない相対温度変化のみを決定できる場合にも適している。或いは、このような関係は省略することもでき、電気応答信号の変化が相対温度変化を直接示しているとみなすことができるため、電気応答信号の変化は直接温度変化を示すとみなすこともできる。
【0053】
好ましい実施形態では、作動ステータス判定ユニット122は、所定の時間にわたる温度曲線の形でマイクロデバイス131の温度変化を決定するように適応されている。このような温度曲線は、マイクロデバイス131の温度変化をモニタリングすることを可能にする所定の期間にわたる連続的又は定期的な温度測定を記述する。したがって、温度曲線は温度変化に関してより多くの情報を提供するので、医療用インプラント130の作動ステータスを非常に正確に判定することを可能にする。例えば、温度曲線の傾きなどの温度曲線の特性を解析することで、温度曲線に基づいて医療用インプラント130の作動ステータスを判定するように作動ステータス判定ユニット122を適応させることができる。しかし、温度曲線を使用せずに、単に決定された温度変化を利用するだけで、医療用インプラント130の作動ステータスを判定するように作動ステータス判定ユニット122を適応させることもできる。
【0054】
一般に、温度変化の既知の事前定義された特性範囲を利用するように作動ステータス判定ユニット122を適応させることができる。例えば、正常とみなすことができる温度変化の範囲、すなわち、医療用インプラント130が異常を示さない、意図された機能を提供していることを示す温度変化の範囲を定義できる。このような単純なケースでは、温度変化又は温度曲線の特性が所定の範囲内にある場合、医療用インプラント130の作動ステータスとして、ステータス「正常」と判定するように作動ステータス判定ユニット122を適応させることができる。ただし、温度変化又は温度曲線の1つ以上の特性が所定の範囲外にある場合、作動ステータスとして、ステータス「異常」と判定するように作動ステータス判定ユニット122を適応させることができる。この場合、特定のインプラント、患者の状況、及び/又は所定の範囲との不一致の可能性のある正確な性質に基づいて、デバイス100のユーザ(医師など)は、例えば患者141の投薬治療を適応させる、医療用インプラント130のさらなるモニタリングをスケジューリングする、医療用インプラント130の除去又は交換の準備をするなど、患者141について臨床的な決定を下すことができる。
【0055】
好ましい実施形態では、現在決定された温度曲線と以前に決定された較正温度曲線との比較に基づいて、作動ステータスを判定するように作動ステータス判定ユニット122を適応させることができる。このような較正温度曲線は、例えば、医療用インプラント130を埋め込んだ後の所定の時間、特に医療用インプラント130がそのすべての機能を意図したとおりに提供することが予想される時間に決定できる。例えば、較正温度曲線は埋め込み直後か、埋め込み中に患者141が受けた外傷の治癒過程が終了し、較正測定に干渉しないように埋め込み後数週間で決定される。較正温度曲線は、現在の温度曲線を決定するのと同じ又は類似のデバイスを使用して決定でき、さらに同じ状況下で決定できる。例えば、同一期間の温度変化をモニタリングすることによって、同一温度範囲での温度変化をモニタリングすることによって、患者の同一生理学的状況下での温度変化をモニタリングすることによってなどである。次に、作動ステータス判定ユニット122は、温度曲線の特性を比較するなどして、較正温度曲線と現在決定された温度曲線とを比較するように適応されている。さらに、作動ステータス判定ユニット122は、例えば特定のインプラントに関する理論的な考察に基づいて、又は特定のインプラントを有する患者の複数の類似ケースの分析に基づいて提供されるマッピング又は関数関係を利用して、温度曲線の差と医療用インプラントの作動ステータスとの関係を決定できる。例えば、現在の温度曲線が、整形外科用骨インプラントにおける較正温度曲線に対して平坦化されている場合、これは骨インプラントと周囲の骨との結合が減少していることを示していると考えることができる。この場合、較正温度曲線に対する現在の温度曲線の平坦化の程度に関して、異なるレベルの結合減少を定義できる。さらに、骨インプラントがモニタリングされた患者の過去の症例の分析では、この例では医療用インプラントの作動ステータスとみなすことができるさまざまな結合減少のレベルを、それぞれの臨床的決定の提案にマッピングできる。例えば、あるレベルの結合減少では、骨インプラントが周囲の骨を過度に損傷する前に、骨インプラントを交換することが賢明である。
【0056】
一般に、医療用インプラント130の温度変化は、医療用インプラント130又は医療用インプラント130の環境の温度上昇又は低下によって引き起こされる。例えば、1日の流れや特定の活動の中での体温変化など、患者141内の体温変化の自然な原因を利用して温度変化を引き起こすことができる。しかし、マイクロデバイス131の温度変化は制御された方法で開始できることが好ましい。これには、温度変化を所定のタイミングで開始し、好ましくは所定の温度値によって開始できるという利点がある。例えば患者141には、飲用用又は他のやり方で塗布するための加熱又は冷却用の流体が提供される。また、患者141は、体温を上昇させるために特定の体操を行うように求められたりする。また、特定の投薬治療が体温上昇又は低下につながる場合もある。
【0057】
マイクロデバイス131の温度変化をさらに制御するために、オプションでデバイス100が加熱ユニット150を含むことが好ましい。この場合、特に患者141に提供される熱を制御するために、加熱ユニット150をさらに制御するようにコントローラ120を適応させることができる。加熱ユニット150は、患者141にさらなる健康リスクをもたらすことなく、医療用インプラント130及び/又は医療用インプラント130の環境を加熱することができるあらゆる種類の加熱ユニットであり得る。例えば、加熱ユニット150は、医療用インプラント130又は医療用インプラント130の環境を加熱するために、医療用インプラント130又は医療用インプラント130の環境に集束される超音波を発生させるように適応された超音波生成ユニットであり得る。しかし、加熱ユニット150はまた、医療用インプラント130及び/又は医療用インプラント130の環境を加熱することを可能にする、患者141に電気を集束させることを可能にする電気適用ユニットであり得る。好ましい実施形態では、加熱ユニット150は、医療用インプラント130又は医療用インプラント130の環境に変化する磁場又は電磁場を提供することを可能にするコイルである。印加される電磁場又は磁場の周波数を、特定の医療用インプラント130又は医療用インプラント130の特定の環境に合わせて適応させて、医療用インプラント130又は患者141の身体の所望の部分のみを効果的に加熱することが可能にされる。この実施例では、送信/受信ユニット110の少なくとも1つのコイル、例えば送信コイル111が加熱ユニット150として機能するようにさらに適応されていることが好ましい。この場合、コントローラ120は、送信/受信ユニット110を制御して、加熱ユニット150によって誘導された制御された熱変化中に電気応答信号を測定及び提供するように適応される。
【0058】
図2は、医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのフローチャートの方法を概略的かつ例示的に示す。この方法は、特に上記のデバイス及び医療用インプラントを利用することによって適用できる。方法200は、第1のステップ210において、送信/受信ユニット、例えば送信/受信ユニット110を制御することを含む。特に、制御は、磁気機械発振器を励起するための磁気励起場の発生と、磁気応答場の検出と、検出された磁気応答場の電気応答信号への変換とを意味する。ステップ220では、方法200は、磁気機械発振器の電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの温度変化を決定することを含む。最後のステップ230では、方法は、マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて、医療用インプラントの作動ステータスを判定することを含む。一般に、
図1に例示的に示すデバイスに関して説明するすべての原理は、
図2に示す方法200にも適用できる。
【0059】
以下では、
図3及び
図4に関して、2つの特定の医療用インプラントへの本発明の原理の適用についての2つのより詳細で好ましい実施例を提供する。
【0060】
第1の好ましい実施例では、医療用インプラントは医療用ステントである。近年、ステント技術は大きく進歩している。特に薬剤溶出ステントの普及は強い印象を与えている。しかし、この方向に向けた多大な研究努力にもかかわらず、「インテリジェントステント」の分野では真の進展は見られていない。インテリジェントステントの分野では、従来のアプローチは、ステント両端間の圧力降下を測定してステントの作動ステータスを判定することである。特に、圧力降下により、ステントの過剰成長ステータスなど、作動ステータスを判定することを可能にする生理学的に関連するパラメータを直接決定できる。しかし、これは圧力センサ自体が組織によって覆われて圧力を測定する能力が損なわれるという解決が難しい問題がある。さらに、圧力センサは複雑で費用効果が高くない可能性がある。
【0061】
したがって、この問題を解決するために、
図1に関して上述したような、医療用インプラントとしてのステントとともに利用できるように適応されたデバイス及び医療用インプラントを利用することが提案されている。好ましくは、ステントは、マイクロデバイスとして、磁気機械発振器の形で実現される、外径0.3mm未満の小型遠隔評価温度センサを含む。このセンサは、すでに
図1で説明したように、変化する磁場励起場における磁性物体の発振に依存している。磁気機械発振器の内部構造は、例えば磁気機械発振器に適切なキュリー温度を有する材料を提供することによって、温度によって変化する発振周波数を定義する。センサは、ステントのケージ構造にしっかりと取り付けられていることが好ましい。その結果、その内部発振は、例えば上記のように送信/受信ユニット110を使用して遠隔制御できる。
【0062】
好ましくは、この実施形態におけるデバイスはさらに加熱ユニットを含む。例えば、加熱ユニットは、ステントの種類と位置に応じて、10kHz~1MHzの周波数を有するコイルのような磁場の発生器である。加熱デバイスは、デバイスに、例えば送信/受信ユニットに統合されていても、別のエンティティであってもよい。この結果、ステントは0.01℃~0.1℃の温度値で加熱できるため、患者に危険がない。温度センサ、つまりマイクロデバイスは、例えば加熱が終了した後、例えば数10秒間温度を記録できる。インプラントの冷却曲線から、例えばコントローラによって熱伝達を決定できる。しかし、インプラントの加熱中にインプラントの温度曲線を記録することもできる。特に、この場合、インプラントの温度上昇が安全尺度を超えないようにすることができる。例えば0.1℃の上昇を超えないようにすることができる。一般的には、較正曲線はまた、例えば埋め込み直後に決定することもできる。組織が成長し、最終的に血流が減少すると、組織とインプラントとの熱抵抗が増加する。したがって、温度曲線と較正曲線との差から、ステント全体の組織成長の状態を作動ステータスとして推測するようにコントローラを適応させることができる。いくつかのセンサ、つまり、いくつかのマイクロデバイスがステントに置かれるときは、空間成長分布に関する情報を作動ステータスとして判定するようにコントローラを適応させることさえできる。
【0063】
図3は、上記の実施形態によるステントを示す。ステントは、任意の既知のタイプ又は構造のものであり得る。ステントの唯一の変更点は、ワイヤレス温度センサ、つまり、マイクロデバイスが図のように取り付けられていることである。センサは、金属製ハウジング内の3つの磁性球で構成される磁気機械発振器を含む。ハウジングには2つの球が取り付けられており、2つの固定された球の間の中央にある球は自由に発振できる。このような実施形態では、発振周波数は比較的低く、特に10kHz未満である。したがって、磁気機械発振器の磁気応答信号は、ステントとセンサの金属製ハウジングを容易に貫通できる。磁気機械発振器の永久磁性球は、キュリー温度が動作温度以下である強磁性/常磁性材料によって補うこともできる。例えばこのような材料は、固定磁性球と移動磁性球との間に位置決めされることが好ましい。これにより、磁気応答信号の発振の温度依存性が劇的に増大する。さらに、ステント材料自体を利用して、磁気応答信号の温度依存性をサポートすることもできる。例えばステントの適切な材料、例えばいくつかの種類のステンレス鋼は、温度依存性を高めることを可能にする。適切な材料は、例えばニッケルリッチのステンレス鋼、又はモネルタイプ合金、つまりニッケル銅合金を含むステンレス鋼である。さらに、ステントは、特にガドリニウムから作られた望ましいキュリー温度を有する任意の材料から作られ、生体適合性コーティングを設けることができる。
【0064】
好ましくは、マイクロデバイス、つまりセンサは、製造工程中にステントにセンサ用ポケットを設けることによってステントに取り付けられている。ポケットは、クランプ機構を利用して、マイクロデバイスを保持するように適応されていてもよい。さらに又は或いは、マイクロデバイスは、接着剤でステントに固定されていてもよい。この場合、接着剤が熱伝導体としても機能するが、接着剤がない場合は、水と組織がこのタスクを行う。
【0065】
オプションの加熱ユニットは、増幅器に接続されたコイルであり、ステントの近くに位置決めされ得る。一般的に、異なるステントが異なって熱くなる。加熱を容易にするためには、ステント材料内に閉電気ループが形成できるようにステントを構築することが好ましい。一般に、ステント材料内に少なくとも1つの電気ループが形成できるようにステントを構築することが好ましい。好ましくは、ステントは完全に金属材料で作られている。或いは、ステントは、例えば、ワイヤのねじれにおいてポリマーリングによって一緒に保持されている金属ワイヤから作ることもできる。この実施例では、ステント材料に電気ループは形成されず、加熱効率は低下する。
【0066】
好ましくは、ステントは、ステントを加熱するために磁気励起場を利用できるように構築される。しかしながら、別の実施形態では、ステントを加熱するために使用される磁場は磁気励起場とは異なっていてもよい。例えば、加熱磁場が磁気励起場よりも高い周波数を含むことが好ましい。周波数は、例えば約100kHz~1MHzで選択できる。好ましくは、患者の強すぎる生理学的反応を回避するために、加熱磁場強度は約1mTに制限される。限られた加熱電力を補償するために、周波数を増加させることができる。しかし、より高い周波数では、加熱は純粋にステントや他の金属インプラントに位置せず、正常組織も加熱し始める。一般的には、これは有利でさえある。例えば数100MHzパルスがあるこのような場合では、ステント領域外の血液を加熱し、血液からステントへの加熱移動を温度曲線として記録できるためである。この場合、温度曲線により、ステントに関する組織成長と血流の状態をさらに詳細に決定できる。
【0067】
コイルなどによって発生する磁場に加えて又はそれに代えて、電気コネクタパッチなどによって発生する電場も利用できる。この場合、加熱ユニットは、電気コネクタパッチなどによって患者に提供できる高周波電流を発生するように適応されていることが好ましい電場発生器を含む。電流は一般的にステントにあまり熱を提供しないが、周囲組織により強い影響を与える。したがって、それらはまた、血流に関する補足情報の取得を提供する。特に、ステントを通る血流に関する補足情報を取得するために、例えばステントの上流の血液を加熱するように加熱ユニットを適応させることができる。その結果、ステントを通る血流によって、マイクロデバイスで測定できるステントの加熱が決定される。加熱ステントのこのように決定された温度曲線は、例えば有限要素法を使用してステントの過剰成長状況、したがってステントの過剰成長ステータスをモデル化するコントローラによって利用できる。特に、ある領域にあるステントを過剰成長している組織が多いほど、血液からステントのこの領域に伝わる熱が少なくなる。さらに、コントローラによって、時間とともにステントを流れる血液量を決定することもできる。この情報は、ステントを通る血流を増やすための追加の治療が必要かどうかを判断するのに役立つ。
【0068】
さらに、加熱ユニットはまた、ステント領域自体を加熱したり、ステントの上流の領域などを加熱したりすることができる集束超音波ビームを生成するように適応されていることが好ましい超音波発生器を含むことができる。
【0069】
或いは、加熱ユニットは省略することもでき、インプラントは他の手段で加熱又は冷却できる。例えば、皮膚表面又は飲料水を介して、温かい又は冷たい媒体で患者を加熱又は冷却できる。ただし、この場合、効果はおそらく非常に低く、したがって、ステント上の比較的厚い組織層の測定にのみ適している可能性があることを考慮する必要がある。しかし、このような選択肢は実現しやすく、特定の状況下で好ましい場合があるように、患者にとってより便利である可能性がある。
【0070】
この実施形態では、温度曲線の特性を決定することによってステントの作動ステータスを判定するようにコントローラが適応されていることが好ましい。特に、一連の指数関数を温度曲線にフィッティングさせるようにコントローラが適応されていることが好ましい。その結果、1つ以上のフィッティングパラメータが得られる。コントローラは、フィッティングパラメータに基づいて、作動ステータスを判定するように適応されている。例えば、それぞれのフィッティングパラメータと作動ステータス(例えば過剰成長状態)との関係を、実際の実験及び/又は理論シミュレーションによって学習できる。好ましくは、コントローラは較正温度曲線を利用するように適応されている。較正温度曲線は、ステントに組織が存在しないことが予想されるとき(ステントを埋め込んだ直後など)に、温度曲線の初期測定を行うことで求めることができる。そうすると、例えば両方の曲線のフィッティングパラメータを比較することによって、較正温度曲線と現在の温度曲線とを比較して、比較に基づいて作動ステータス(過剰成長状態など)を判定するようにコントローラを適応させることができる。これにより、ステント上の薄い組織層でさえも検出でき、これは、判定された作動ステータスによって反映できる。一般的に、このような薄い組織層は、ステントの「ベアメタル」(この用語にはポリマーも含まれる)が血流にさらされていないことを示し得る。そのような作動ステータスが判定された場合、抗凝固投薬治療の低減を考慮する必要があることを示す医学的提案をユーザに提供するようにコントローラを適応させることができ、これにより、患者のクオリティオブライフを改善し、コストを削減できる。
【0071】
上記の実施例では、
図3に示すように、多数のセンサ(マイクロデバイスなど)をステント全体に均等に配置することが好ましい。センサの各々の識別を可能にする一意の周波数コードを有する磁気応答場を提供するように各センサを適応させることができる。したがって、各センサについて、それぞれの温度曲線を決定するようにコントローラを適応させることができる。したがって、例えば、上記の方法の1つを使用して、各センサの作動ステータス(過剰成長状態など)を判定するようにコントローラを適応させることができる。次いで、決定されたすべての作動ステータスに基づいてインプラントの全体的な作動ステータスを判定するようにコントローラを適応させることができる。例えば、すべてのセンサの作動ステータスがステント上の少なくとも数個の細胞層を示している場合にのみ、投薬治療の変更を提案するようにコントローラを適応させることができる。
【0072】
一般的に、異なる加熱方法を用いて作動ステータスの判定を繰り返すことで、作動ステータス結果の信頼性をさらに高めることができる。例えば、すでに上述したように、ステントを直接加熱することに加えて、ステントの周囲も加熱できる。これに加えて、又は代替として、コントローラは、磁場又は電場ベクトルの方向が変更されるように加熱ユニットを制御するように適応されていてもよい。これにより、ステント及び/又は周囲組織の異なる位置をさまざまなやり方で加熱できる。このような実施形態では、ステントの少なくとも一部が「パーマロイ」のような柔らかい磁性材料で覆われているならば有利である。これにより、加熱パターンを非常に簡単に変更できる。さらに、加熱パターンを変更するために、コントローラは、加熱領域の空間的焦点を達成するために、変化する加熱磁場に加えて直流磁場/勾配を発生させるように加熱ユニットを制御するようにさらに適応されている。
【0073】
さらに、マイクロデバイスは、初期展開手順中に位置マーカとして使用することもできる。また、温度測定特徴は、上記のように、熱希釈法、つまり、インプラントの上流の血液の加熱を介して血流をモニタリングするために使用することもできる。
【0074】
さらなる実施例では、インプラントは、整形外科用骨インプラントである。一般的に、骨インプラントの破損は、罹患率の原因であると同時に、健康コストの原因でもある。破損は比較的まれで、手順に応じて1%~10%であるが、手順の数が多いため、その影響は深刻である。骨インプラントの破損の一般的な種類の1つは、インプラント表面の感染である。これらの感染症は、初期段階では比較的検出が困難であり、周囲の骨材料を破壊して骨インプラントを緩めてしまう。現在、骨インプラントの周囲のX線撮像と血液検査とを組み合わせて感染症を検出している。しかし、この破損は、周囲の骨の数mmが脱灰されている場合にのみ確認できる。さらに、X線撮像は、それに伴う害のために頻繁に行うことはできない。また、診療所ではX線を使用できない場合がある。しかし、病理学的過程を早期に発見することで、早期治療が可能となり、骨の損失や罹患率の増加を回避できる。さらに、インプラントに破損が発生する経路は感染症だけではない。したがって、他の破損モードも同じ方法で検出でき、場合によっては互いに区別できることが有利である。
【0075】
より一般的に上述した本発明のこの例示的な実施形態では、骨インプラントには、外径が1mm未満のマイクロデバイスとして、遠隔で評価される単一又は一組の小型温度センサが設けられていることが好ましい。上記の実施形態に関してすでに述べたように、マイクロデバイスの温度検知は磁気機械発振器に基づいている。この実施形態では、センサが骨インプラント内に埋め込まれ、骨インプラントと良好な熱接触を有することが好ましい。マイクロデバイスのサイズが小さいため、整形外科用骨インプラントの機械的強度はほとんど影響を受けない。好ましくは、マイクロデバイスは5kHz以下の比較的低い周波数で動作するように適応されている。したがって、組織内の渦電流や場合によっては導電する骨インプラントによってあまり減衰されずに、磁気励起場及び磁気応答信号がそれらのターゲットに到達できる。前述のように、デバイスの送信/受信ユニットを利用してマイクロデバイスと対話できる。
【0076】
さらに、この実施形態では、デバイスが、磁場アプリケータを含むことができる加熱ユニットを含んでいることも好ましい。好ましくは、加熱ユニットは比較的高い周波数の磁場を発生させるように適応されている。センサの温度分解能が高いため、インプラントの温度上昇は0.1℃を超える必要はない。この実施形態のコントローラは、加熱段階後の正常に戻る骨インプラントの温度低下を示す温度曲線を決定するように適応されている。好ましくは、骨インプラントは、1よりも多いマイクロデバイスを含み、各センサについて、つまり、さまざまな位置について、それぞれの温度曲線が決定される。石灰化した骨構造は、他のすべての組織よりも高い熱伝導率を有するため、破損の初期では、より遅い温度低下が予想される。
【0077】
図4に、それぞれの骨インプラントの実施例を示す。一般的に、説明する原理は、好ましくは骨セメントを用いて埋め込まれていないすべての整形外科用骨インプラントに適用できる。整形外科用骨インプラントとは、ワイヤレス温度センサがマイクロデバイスとして設けられている任意の既知の整形外科用骨インプラントのことである。マイクロデバイスは、骨インプラントに取り付けられても、統合されてもよい。マイクロデバイスは、他の実施形態ですでに上述したように、磁気機械発振器を含む。好ましくは、マイクロデバイスは、インプラントの微細なボアホールにセンサを配置し、残りのスペースに接着剤(例えば適切なポリマー)を充填することによって、骨インプラントに取り付けられる。MRI適合性を高めるために、ボア内の接着剤は、強磁性による磁気アーチファクトに対抗するために反磁性を高くすることができる。
【0078】
さらに、潜在的に異なるセンサ位置の温度曲線をよりよく区別するために、整形外科用骨インプラントの材料が比較的低い熱伝導率を有していることが有利である。適切な材料は、典型的な組織伝導率よりもわずか一桁高い6.7W/(m*K)の熱伝導率を含む骨インプラントに使用される標準的なチタン合金である。軟組織の予想される熱伝導率は0.5W/(m*K)であるが、骨の熱伝導率は約0.7W/(m*K)である。さらに、骨インプラントの実施形態では、インプラントの少なくとも部分に異なる量の磁性材料を与えることで、変化する磁場を使用してインプラントを加熱することの加熱効率を高めることができる。この場合、インプラント内の加熱位置も静的磁場勾配を有する磁場を提供することで非常に正確に制御できる。したがって、インプラントに複数のセンサが設けられている場合、インプラントのその周囲への熱接触を記述する1つの温度曲線だけでなく、骨インプラント内のセンサの位置の関数として、一連の温度曲線を得ることができる。
【0079】
骨セメントを用いて骨インプラントを埋め込む場合は、マイクロデバイスを骨セメントに統合することによって骨インプラントに取り付けることが好ましい。さらに、骨セメント内での効率的な加熱と熱伝達とを可能にするために、骨セメントに骨セメントの加熱を可能にする追加材料が与えられていることが好ましい。例えば、好ましくは長さ1mm以下の軟磁性ワイヤを導入し、無線周波数電磁場による骨セメントの加熱を可能にすることができる。また、中空ポリマー球のような超音波吸収材料を追加して、超音波による加熱を可能にすることができる。この実施形態では、コントローラが骨セメントによってインプラントに取り付けられたマイクロデバイスの位置も決定するように適応されていることが好ましい。次に、骨セメントを使用せずに埋め込んだインプラントの場合と同じ原理を適用できる。
【0080】
加熱ユニットは、ステントインプラントの実施形態に関してすでに詳細に説明したものと類似していてもよい。一般的に、より実質的な骨インプラントでは、骨インプラントの加熱は、骨インプラントのサイズと材料に依存する。したがって、コントローラは、骨インプラントの所望の加熱を可能にする、それぞれの周波数、持続時間、及び磁場強度をインプラントの種類ごとに提供及び/又は選択するように適応されていることが好ましい。例えば、異なるタイプの骨インプラントを用いたそれぞれの実験を使用して、例えばインプラントのタイプと対応する可能性のある磁気加熱場との表形式で、ユーザ又はコントローラが骨インプラントを加熱するためのそれぞれの磁場を選択できるようにするアコーディングマッピングを生成できる。適切な磁場周波数は、ほとんどの場合、10kHz~100kHzである。
【0081】
前の実施形態でもすでに説明したように、この場合も加熱ユニットを省略でき、インプラントは患者を加熱することによって加熱できる。例えば、MRIと同様に高周波エネルギーを全身に適用したり、患者に高温又は低温の液体を提供したりすることができる。体操を熱源として利用することもできる。一般的に、加熱に必要な総エネルギーは3kJ~30kJであり、したがって1kWの加熱で3~30秒以内に達することができる。
【0082】
作動ステータスを判定するために、コントローラは、温度曲線(好ましくは冷却曲線)と埋め込み直後に取得された較正温度曲線とを比較するように適応されていることが好ましい。これにより、インプラントの熱特性の変化に対して高い感度を得ることができる。インプラントを加熱する代わりに、又はそれに加えて、主に患者が加熱される場合、温度曲線から骨構造内の血流に関するさらなる情報を求めることができる。
【0083】
上記の実施形態では、詳細に説明したインプラントはステント及び骨インプラントであるが、他の実施形態では他のインプラントも企図できる。例えば心臓弁のような心臓インプラント、脳インプラントなどに、インプラント又はインプラントの周囲の温度変化を測定するためのマイクロデバイスを設けることができる。いずれの場合においても、特に例えば較正曲線の形での初期温度変化と比較して、温度変化はインプラントと周囲の組織との熱的相互作用の変化を示すものとみなすことができる。したがって、インプラントの特定の状況に基づいて、異なるインプラントの温度変化から異なる作動ステータスを導き出すことができる。
【0084】
本発明の原理は、インプラントの2つの異なる実施形態に関して説明したが、それぞれの他のインプラントにも適用できる。例えば、骨インプラントの場合も、例えば温度曲線と較正温度曲線とを比較するために、フィッティングパラメータを使用するようにコントローラを適応させることができる。したがって、一般的に、オプションの加熱ユニットとコントローラに関する原則、特に任意の例示的なインプラントに関して説明したコントローラによる作動ステータスの判定に関する原則は、任意の他のインプラントにも適用し、それとともに利用できる。
【0085】
開示された実施形態の他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行可能である。
【0086】
特許請求の範囲において、「備える」という用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、単数形の要素は、複数形を除外するものではない。
【0087】
単一のユニット又はデバイスが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。
【0088】
1つ以上のユニット又はデバイスによって行われる送信/受信ユニットの制御、マイクロデバイスの温度変化の決定、作動ステータスの判定などのような手順は、任意の他の数のユニット又はデバイスによって行うことができる。これらのプロセスは、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、及び/又は専用ハードウェアとして実施できる。
【0089】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として、供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの任意の適切な媒体に保存/配布することができるが、インターネット又は他の有線若しくはワイヤレス通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。
【0090】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0091】
本発明は、ステント又は骨インプラントのような医療用インプラントの作動ステータスを検出するためのデバイスであって、マイクロデバイスがインプラントに統合される及び/又は取り付けられ、かつ、磁気励起場を磁気応答場に変換するように構成された磁気機械発振器を含む。応答場はマイクロデバイスの温度変化を示す。デバイスは、励起場を発生させ、応答場を検出し、検出された応答場を電気応答信号に変換するように適応された送信/受信ユニットと、送信/受信ユニットを制御するように適応され、かつ電気応答信号に基づいてマイクロデバイスの温度変化を決定し、マイクロデバイスの決定された温度変化に基づいて医療用インプラントの作動ステータスを判定するようにさらに適応されているコントローラとを備える。
【国際調査報告】