(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】試料ホルダを移動させるための装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20240829BHJP
G01N 23/223 20060101ALI20240829BHJP
G01N 23/2204 20180101ALI20240829BHJP
【FI】
G01N35/04 G
G01N23/223
G01N23/2204
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515343
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022074852
(87)【国際公開番号】W WO2023036818
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】303043704
【氏名又は名称】エフイーアイ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】カフォーレク マルチン
(72)【発明者】
【氏名】パターク ヤン
【テーマコード(参考)】
2G001
2G058
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001PA02
2G001PA06
2G001PA15
2G058CB02
2G058CB11
2G058CB20
2G058GA01
(57)【要約】
第1及び第2の試料ホルダを、それぞれの第1及び第2の開始位置と、それぞれの第1及び第2の終了位置との間で移動させるための装置は、案内アセンブリを備え、案内アセンブリは、第1の試料ホルダを第1の経路に沿って第1の開始位置から第1の終了位置まで案内し、第1の経路に沿って第1の終了位置から第1の開始位置まで戻すように構成され、第2の試料ホルダを第2の経路に沿って第1の開始位置から第2の終了位置まで案内し、第2の経路に沿って第2の終了位置から第2の開始位置まで戻すように構成される。案内アセンブリは、第1及び第2の試料ホルダがそれらのそれぞれの経路の長さの少なくとも一部に沿って移動するときに、第1及び第2の試料ホルダが互いに離間されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の試料ホルダ及び第2の試料ホルダをそれぞれの第1の開始位置及び第2の開始位置とそれぞれの第1の終了位置及び第2の終了位置との間で移動させるための装置であって、
前記第1の開始位置から前記第1の終了位置まで第1の経路に沿って前記第1の試料ホルダを案内し、前記第1の終了位置から前記第1の開始位置まで前記第1の経路に沿って戻るように案内し、
前記第1の開始位置から前記第2の終了位置まで第2の経路に沿って前記第2の試料ホルダを案内し、前記第2の終了位置から前記第2の開始位置まで前記第2の経路に沿って戻るように案内する
ように構成された案内アセンブリを備え、
前記案内アセンブリは、前記第1の試料ホルダ及び前記第2の試料ホルダが、それぞれの経路の長さの少なくとも一部に沿って移動するにつれて互いに離間されるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記経路は、前記第1の開始位置及び前記第2の開始位置において若しくはその近傍において、並びに/又は前記第1の終了位置及び前記第2の終了位置において若しくはその近傍において平行である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記試料ホルダの各々の前記開始位置が同じであり、及び/又は前記試料ホルダの各々の前記終了位置が同じである、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の開始位置及び/又は前記第2の開始位置は、試料装填位置であり、及び/又は
前記第1の終了位置及び/又は前記第2の終了位置は、試料分析位置又は試料取出し位置である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記案内アセンブリは、前記経路が前記経路に対して実質的に直交する方向に互いに離間されるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記案内アセンブリは、前記経路間の分離が前記経路の長さに沿って変化するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記案内アセンブリは、前記経路が、前記経路の長さの一部のみに対して、又はそれらの長さの全てに対して、互いに離間されるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記案内アセンブリは、前記第1の経路及び前記第2の経路がそれらの長さの少なくとも一部に沿って互いに離間され、前記試料ホルダがそれぞれの経路に沿って反対方向に同時に移動することを可能にするように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記案内アセンブリは、前記経路間の距離が、前記経路の一端におけるよりも、又は前記経路の両端におけるよりも、前記経路の中心又はその近傍において大きくなるように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記案内アセンブリは、前記経路のうちの少なくとも1つ、好ましくは前記経路の各々が、
湾曲状の部分、及び/又は
実質的に直線状の部分を
備えるように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記案内アセンブリは、前記試料ホルダをそれぞれの経路に沿って長手方向に案内するように構成された1つ又は複数の長手方向案内要素を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記案内アセンブリは、前記試料ホルダがそれぞれの経路に沿って移動するときに前記試料ホルダを横方向に案内し、及び/又は前記経路間の前記分離を変化させるように構成された1つ又は複数の横方向案内要素を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記1つ又は複数の長手方向案内要素は、長手方向案内ロッドを備え、及び/又は
前記1つ又は複数の横方向案内要素は、横方向案内ロッドを備える、請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記案内アセンブリは、少なくとも1つの試料ホルダをそれぞれの経路に沿って移動させるように構成された少なくとも1つのキャリッジを備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記1つ又は複数のキャリッジがそれぞれ、1つ又は複数の横方向案内要素を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記キャリッジのうちの少なくとも1つは、前記案内アセンブリの相補的チャネルに係合するように構成された突出部を備え、前記相補的チャネルは、前記少なくとも1つのキャリッジに前記試料ホルダのうちの少なくとも1つを前記試料ホルダのそれぞれの経路に沿って移動させるように構成され、好ましくは、前記相補的チャネルは、横方向案内要素及び/又は長手方向案内要素として機能する、請求項14又は請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記相補的チャネルは、前記案内アセンブリの表面を通る細長いチャネル、及び/又は前記少なくとも1つの突出部に係合するように構成された前記案内アセンブリの表面の細長い溝のうちの少なくとも1つを備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記相補的チャネルは、
湾曲状の部分、及び/又は
実質的に直線状の部分
を備える、請求項16又は請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのキャリッジは、長手方向に案内され、開始点と終了点との間を実質的に直線的に移動する固定部分と、前記キャリッジが前記開始点と前記終了点との間を移動するときに前記固定部分から離れるように移動する、試料ホルダを保持するための横方向被案内部分とを備える、請求項14~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記案内アセンブリは、前記第1の経路に沿って前記第1の試料ホルダを案内するように構成された第1のガイドと、前記第2の経路に沿って前記第2の試料ホルダを案内するように構成された第2のガイドとを備える、請求項1~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記案内アセンブリは、前記第1の試料ホルダ及び前記第2の試料ホルダがそれらの試料ホルダの経路に沿って移動するときに実質的に平坦に保持されるように構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記案内アセンブリは、前記試料ホルダに、前記試料ホルダのそれぞれの経路に沿った曲線状又は直線状の並進運動をさせるように構成されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも1つの真空チャンバを更に備え、
前記第1の開始位置と、前記第2の開始位置と、前記第1の終了位置と、前記第2の終了位置とが、前記少なくとも1つの真空チャンバ内にある、請求項1~22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記請求項1~23のいずれか一項に記載の装置と、分析器とを備える分析機器であって、前記装置は、前記試料ホルダ内の試料の分析のために前記試料ホルダを前記分析器に移動させるように構成されている、分析機器。
【請求項25】
前記分析器は、光子、電子、及び/又はイオンを使用して試料を分析するように構成された分光計、回折計、及び顕微鏡のうちの少なくとも1つを備える、請求項24に記載の分析機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料ホルダを移動させるための装置、及び本明細書に記載の装置を組み込んだ分析機器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分析機器は、試料の分析又は処理のために、材料の試料をある位置から別の位置に移すことを必要とする。例えば、試料は、開始位置で試料ホルダに装填されてもよく、終了位置又は分析位置で分析器に取り出されるか、又はそれらの試料ホルダ内で分析されてもよい。このように試料ホルダを移動させるための装置は、移送アセンブリ又は試料搬送システムと呼ばれることもある。
【0003】
試料ホルダをある位置から別の位置に移動させるための装置を使用する分析機器の例は、Thermo Scientific(商標)ARL(商標)9900分光計であり、これは、プロセス又は品質管理のために様々な産業において金属又は非金属の試料の高速分析を可能にするX線蛍光(XRF)システムである。
図1は、ARL9900分光計の簡略図を示し、これは、外部の大気圧と分光計の真空環境との間のエアロックとして機能するシャッタ170を備える。分光計は、試料ホルダを試料交換器から分光計の一次チャンバ内に移送するための機構である試料リフト(「入力リフト」と呼ばれることもある)180を更に備える。更に、分光計は、試料ホルダを分析リフト(「X線リフト」と呼ばれることもある)190に移動させるための移送アセンブリ110を備え、試料ホルダは、その後のXRF分析のために持ち上げられる。XRF用のX線管167が設けられている。また、試料交換器195も設けられている。この場合、回転式試料交換器が示されているが、他のタイプの試料交換器も可能である(例えば、X-Yアームを有する試料交換器を代わりに使用することができる)。
【0004】
図2は、ARL9900をより詳細に示す。
図2に見ることができるように、ARL9900は、試料搬送システム110と、入力リフト180と、X線リフト190と、真空下となり得る領域(参照番号161の矢印の右手分岐線によって示される分光計タンクと、参照番号161の矢印の左手分岐線によって示される前部ハウジングとによって集合的に定義される)を示す真空境界部161と、試料ホルダの直線並進部162と、分光計タンク163と、試料交換器164と、分子ポンプ165と、回転ポンプ166と、XRF用のX線管167と、ガス調節システム172と、XRD管171aと、XRD管回転機構171bと、XRD検出器173と、X線回折(XRD)検出器回転機構168と、X線電源174と、X線管冷却システム175と、XRD電源176と、電子モジュール177と、光学素子178と、を備える。ARL9900分光計の動作は、https://dokumen.tips/documents/user-manual-xrf-9900.html(https://web.archive.org/web/20210322223412/https://dokumen.tips/documents/user-manual-xrf-9900.htmlで入手可能)で更に詳細に説明され、これは、あらゆる目的のために、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
図2では、4つの位置(ラベル1~4付き)が示されている。ARL9900で実行される手順は、図示された4つの位置の関連する位置と共に、以下の表1で説明される。
【0006】
【0007】
ARL9900の移送アセンブリは、
図3に切り離してより詳細に示されている。移送アセンブリは、2つの長手方向案内要素120及び121を備える装置110であり、これらの長手方向案内要素は、水平に互いに離間された直線状の細長いロッドであり、ロッドの一方の端部における開始位置とロッドの反対側の端部における終了位置との間を長手方向に延びている。試料ホルダを保持するためのキャリッジ130は、2つの長手方向案内要素120及び121に取り付けられている。
図3には試料ホルダが示されていないが、キャリッジ130は、試料ホルダ(図示せず)を受け入れて保持するための円形の開口部を備える。キャリッジは、長手方向案内要素120及び121に係合して、それによって案内されるように構成されている。2つの長手方向案内要素120及び121は、一対のトラック又はレールとして機能し、それにより、使用時に、キャリッジ130は、キャリッジ130の開始位置とキャリッジ130の終了位置との間で長手方向案内要素120及び121に沿って摺動又は他の態様で移動することができる。例えば、キャリッジ130を長手方向案内要素120及び121に沿って開始位置と終了位置との間で移動させるために、電動プーリーシステムを使用することができる。したがって、移送アセンブリ110は、試料ホルダを開始位置と終了位置との間で移動させるように構成された案内アセンブリ(試料ホルダを経路に沿って移動させることに寄与する全ての構成要素であるとみなしてもよい)として機能する。
【0008】
この移送アセンブリは、XRF分析に対して良好な性能を与える一方、そのスループットを向上させることができる。更に、種々の他の分析機器の移送アセンブリの使用速度及び効率を向上させることができることが理解されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高スループットをもたらすために、複数の試料ホルダを移動させる回転式試料搬送システムを使用することが知られている。しかしながら、回転式のシステムは、そのようなシステムの構成要素が通過する面積に起因して、かなりの大きさの空間を占有するが、空間は、多くの場合、分析機器において貴重である。円の面積はその半径の二乗で増加するので、その影響は、試料ホルダを長い距離にわたって移動させるために回転式のシステムが設けられる場合に特に顕著となる。
【0010】
したがって、本開示の目的は、試料ホルダを移動させるための既知の装置に関するこれら及び他の問題に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この背景に対して、第1の態様によれば、請求項1に規定されるように、第1及び第2の試料ホルダをそれぞれの第1及び第2の開始位置とそれぞれの第1及び第2の終了位置との間で移動させるための装置が提供される。更なる態様において、請求項24に規定されるような分析機器が提供される。
【0012】
本開示は、ARL9900などのXRF分光計を含む様々な機器で使用するための試料ホルダを移動させるための装置を提供する。本明細書で説明される装置は、2つの試料を同時に処理することを可能にし、ロバストでコンパクトな構成で分光計チャンバ内でそれらを直接交換することを可能にするデュアル試料装填機構を提供する。本開示は、分光器の機能性を維持し、使用される空間を
図3の装置110等の既知の装置と概ね同じに保ちながら、試料交換時間を改善し、試料スループットを高める。
【0013】
本開示の1つの有利な特徴は、複数の試料ホルダが2つ以上の方向に同時に移動されることを可能にするデュアル試料装填機の提供である。これは、2つ以上の試料ホルダを別個の経路に沿って案内することによって達成することができ、別個の経路は、少なくとも1つの試料ホルダがその端部位置から移動することを可能にするのに十分に大きい距離だけ(それらの経路長さの少なくとも一部について)互いから横方向に離間され、少なくとも1つの他の試料ホルダがその端部位置に移動することを可能にする。これはまた、1つの試料が分析位置で分析され得る一方で、別の試料が装填位置で調製され得ることを意味する。このようにして、試料ホルダの装填及び取出しは、重なり合う態様で、又は部分的に重なり合う態様で実行することができ、それによって時間を節約し、スループットを向上させる。本開示の文脈において、長手方向は、試料ホルダの開始位置と終了位置との間の方向であり、一方、横方向は、長手方向に直交する方向である。
【0014】
試料を真空チャンバ内及び分析位置に移動させることは、試料自体が移動するためだけでなく、分析のために使用される主チャンバ内の真空を試料の装填が妨げてはならないために、時間がかかる。したがって、試料を装填するためのより小さい移行チャンバがあるとよく、その移行チャンバは、それが主チャンバ内に開放される前にポンプで真空引きされる。したがって、1つの試料が分析され、同時に別の試料が装填されて分析のために調製されるという利点がある。
【0015】
本開示は、これら及び他の利益を提供するいくつかの有利な実施形態を提供する。いくつかの実施形態では、試料ホルダは、その長さ全体にわたって互いに離間された平行経路に沿って前後に移動される。他の実施形態では、試料ホルダは、試料ホルダが当たることなく反対方向に移動するための空間を提供するように、互いから離れる湾曲状の経路に沿って案内される。この目的のために、様々な案内アセンブリが開示されており、これらの案内アセンブリは、長手方向案内要素と、横方向(すなわち、開始位置と終了位置との間の長手方向に対して直交する方向の)案内要素とを含んでもよい。更に、いくつかの実施形態は、表面に湾曲状の経路を画定する材料(例えば、プレート)の表面を使用し(例えば、表面に凹部を提供する溝、又は表面の厚さ全体を貫通する開口部などのチャネルを表面に有する)、湾曲状の経路は、複雑な経路に沿って試料ホルダを円滑に案内するように、試料ホルダキャリッジ又はカセット内の案内ピンを受容するように構成される。いくつかの実施形態では、湾曲状の経路を画定する表面は、案内ロッド等の付加的案内要素で補完されることができ、試料ホルダの複雑な動きを可能にする2部品型のキャリッジが、使用されることができる。このような構成は、試料ホルダを傾斜させるおそれがなく試料ホルダを移動させるのに適している場合があり、液体又は粉末試料に特に有用である場合がある。
【0016】
好ましい一実施形態では、リニア(回転しない)移送アセンブリを使用して2つの試料を同時に処理することができ、2つの試料は試料チャンバ内で交換される。これは、試料交換時間を改善し、単一の試料装填のみを有する既存のリニア試料交換器と比較して、試料スループットを向上させる。更に、回転試料交換器よりも必要な空間が小さい。この実施形態では、移送アセンブリは、既存の設計におけるものの代わりに2つの試料キャリッジを備える。両キャリッジは、正確に同じ場所で開始及び終了し、中央で互いにすれ違う。キャリッジはそれぞれ、2つの主要部分、すなわち、リニア式の案内を使用して長手方向に移動する第1の部分と、横方向に(典型的には垂直に)移動する試料ホルダを保持する第2の部分とを備える。この横方向の動きは、試料が互いにすれ違って移動することを可能にする。第2の部分の垂直移動は、案内ピンを使用して達成され、案内ピンは、第1の部分がリニア式の案内で水平に移動するときに、垂直変位を含む所定の経路で移動する。この解決手段はまた、試料を傾けるおそれなしに必要な操作を可能にする。したがって、この実施形態の利点は、空間の節約を含み、非常に限られた空間内で、好ましくは真空下で試料交換を可能にすること、既存のシステムへの変更を最小限に抑えて、既存のシステムがその全ての機能を維持することを可能にすること、及び証明された(リニア式)案内を増強することによる信頼性が高くロバストな運動アセンブリを可能とすることである。
【0017】
試料ホルダは使い捨てであっても交換可能であってもよいので、本明細書に記載される装置は試料ホルダなしで提供され得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書で説明される試料ホルダを移動させるための装置は、独立型装置として提供されてもよい。
【0018】
したがって、本開示は、空間を節約すること、任意選択的に真空下で、非常に限られた空間内で試料交換を可能にすることを含むいくつかの利点を提供する。本明細書に開示される装置を既存のシステムに後付けしてスループットを向上させることを可能にし、本明細書に記載される案内アセンブリを通して信頼性が高くロバストな運動を提供すること。これら及び他の利点は、以下の説明から明らかになろう。
【0019】
ここで、本開示を、添付の図を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ARL9900におけるインサイチュ(本来の位置)での既知の移送アセンブリを概略的に示す。
【
図2】ARL9900の既知の移送アセンブリの動作を概略的に示す。
【
図3】分離されたARL9900の既知の移送アセンブリを概略的に示す。
【
図4】第1の実施形態による第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置を概略的に示す。
【
図5】第2の実施形態による第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置を概略的に示す。
【
図6】第3の実施形態による第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置を概略的に示す。
【
図7】第4の実施形態による第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置を概略的に示す。
【
図8】第4の実施形態の装置の背面図を概略的に示す。
【
図9】第4の実施形態の装置のキャリッジの拡大図を概略的に示す。
【
図10】第4の実施形態のキャリッジの分解図を概略的に示す。
【
図11】第4の実施形態の第1及び第2の試料ホルダによって走行される経路を概略的に示す。
【
図12】ARL9900内のインサイチュでの第4の実施形態の装置を概略的に示す。
【
図13】第5の実施形態による第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置を概略的に示す。
【
図15】第6の実施形態による第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置を概略的に示す。
【
図16】第7の実施形態による第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置を概略的に示す。
【
図17】第7の実施形態の装置の背面図を概略的に示す。
【
図18】第7の実施形態の装置の背面図を概略的に示す。
【
図19】第7の実施形態のキャリッジの分解図を概略的に示す。
【
図20】ARL9900における第7の実施形態の装置を概略的に示す。
【
図21】ARL9900における第7の実施形態の装置を概略的に示す。
【
図22】ARL9900における第7の実施形態の装置を概略的に示す。
【
図23】ARL9900における第7の実施形態の装置を概略的に示す。
【
図24】ARL9900における第7の実施形態の装置を概略的に示す。
【
図25】本明細書で説明される実施形態で使用するための試料ホルダを概略的に示す。
【
図26】リニア移送アセンブリ及び回転式アセンブリの空間的要件の比較を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述したように、
図1~
図3は、ARL9900XRF分光計の移送アセンブリを示す。
図4には、本開示の第1の実施形態による、第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置410が示されている。第1の実施形態の装置410は、前述したものと同様の態様でARL9900において使用され得る。
【0022】
ARL9900の既知の移送アセンブリ110と同様に、装置410は、第1の対の長手方向案内要素421a及び422aを備え、これらは、水平かつ平行に互いに離間された直線状の細長いロッドであり、ロッドの一方の端部における開始位置とロッドの反対側の端部における終了位置との間で長手方向に延びている。第1の試料ホルダ440aを取外し可能に保持するための第1のキャリッジ430aは、第1の対の長手方向案内要素421a及び422aと係合する。第1の対の長手方向案内要素421a及び422aは、使用時に、第1のキャリッジ430aが、第1の対の案内要素421a及び422aの一方の端部における開始位置と、案内要素421a及び422aの反対側の端部における終了位置との間で走行することができるように、一対のトラック又はレールとして機能する。したがって、装置410は、第1の経路に沿って開始位置と終了位置との間で第1の試料ホルダ440aを移動させるように構成された案内アセンブリとして機能する。
【0023】
第1の対の長手方向案内要素421a及び422aに加えて、同様の第2の対の長手方向案内要素421b及び422bが、第1の対421a及び422aの直下に(通常の使用において)設けられている。第2の対の長手方向案内要素421b及び422bによって、第2のキャリッジ430b及び関連付けられた第2の試料ホルダ440bは、第1の試料ホルダ440aの動きに平行な方向であるが、その動きから離間する並進運動をすることが可能となる。第1の試料ホルダ440aは、空間を通る第1の経路に沿って移動し、第1の経路は、第1の対の長手方向案内要素421a及び422aからある距離にある直線である。この距離は、第1の試料ホルダ440aを第1の対の長手方向案内要素421a及び422aに機械的に結合する第1のキャリッジ430aの幾何学的形状によって決定される。同様に、第2の試料ホルダ440bは、空間を通る第2の経路に沿って移動し、この第2の経路も、第2のキャリッジ430bの幾何形状によって決定される距離だけ第2の対の長手方向案内要素421b及び422bからオフセットされた直線である。これによって、第1及び第2の試料ホルダ440a及び440bは、垂直方向に互いに離間した2つの経路に沿って移動する。第1の試料ホルダ440aの開始位置は、第2の試料ホルダ440bの開始位置から離間しており、試料ホルダ440a及び440bの終了位置についても同様である。
【0024】
この構成により、
図1~
図3の移送アセンブリ110と比較して、スループットを向上させることができる。例えば、第1の試料ホルダ440aが案内要素421a及び422aの一端で分析のために使用されている間、第2の試料ホルダ440bは、案内要素421b及び422bの他端にあってもよく、そこで同時に再装填されてもよい。したがって、第1の試料ホルダ440aが分析のために使用されたとき、それは引き出されることができ、第2の試料ホルダ440bは、その案内要素421b及び422bの端部に移動させることができ、分析のために直ちに使用されることができる。これにより、スループットを向上させることができる。更に、これは、回転式(例えば、カルーセル型試料ホルダ)構成ではなく、リニア並進構成であるので、空間的要件は著しく増加せず、これは、厳しい空間的要件を有する既存の機器に装置410を組み込むことを容易にするのに役立つ。
【0025】
キャリッジ430a及び430b並びに試料ホルダ440a及び440bを動作させるために、装置は、キャリッジ430a及び430b並びに試料ホルダ440a及び440bをそれらのそれぞれの経路に沿って移動させるよう、図示されないモータを作動させるように構成される、図示されないコントローラを備えてもよい。例えば、機械的エンドストップ(ARL9900で使用されるものと同様)が、キャリッジ430a及び430b並びに試料ホルダ440a及び440bの開始位置及び終了位置を画定するために使用されてもよい。例えば、デュアル試料装填コントローラ(DSLC:Dual Sample Loading Controller)は、ステッピングモータからのフィードバックに従って、キャリッジ430a及び430b並びに試料ホルダ440a及び440bの位置を検出してもよい。キャリッジ430a及び430bの両方を移動させるために1つの共通のステッピングモータのみを使用することができるが、各キャリッジ430a及び430bに1つずつ、2つのステッピングモータが設けられることが好ましい。キャリッジ430a及び430bの位置を検知するための追加のセンサを含むことも可能であり、追加のセンサからのフィードバックを使用して、それらの位置を制御してもよい。更に、タイミング回路を使用して、キャリッジ430a及び430bが適切な時間に移動して、試料ホルダ440a及び440bの両方が、いつでも案内要素のそれぞれの対の同じ端部にあることを防止することを確実にすることができる。このように、試料ホルダ440a及び440bの動きを制御するための様々な機構が実装され得ることが理解されるであろう。
【0026】
第1の実施形態に対して多くの変形を行うことができることが理解されよう。例えば、上述したものと同様の追加の案内要素を設けることによって、3つ、4つ、又は4つより多いなど、任意の数のキャリッジ及び試料ホルダを設けることができる。更に、各キャリッジ430a及び430bは、2つの案内要素421a、422a、421b及び422bに取り付けられているが、2つより多い又は2つより少ない案内要素を使用することができる。更に、案内要素421a、422a、421b及び422bは、湾曲されることもでき、任意の形状とすることもできる。例えば、機器の空間的制約が直線的な案内要素の使用を妨げる場合、案内要素421a、422a、421b、及び422bは、湾曲するように修正されることができる。更に、円筒形の試料ホルダ440a及び440bが示されているが、任意の他の形状を使用することができる。別の形状を有する試料ホルダが使用される場合、キャリッジは、試料ホルダを保持するために相補的な形状を有することができる。
【0027】
一般的な意味において、第1及び第2の試料ホルダ(例えば、試料ホルダ440a及び440b)をそれぞれの第1及び第2の開始位置(例えば、案内要素421a、422a、421b及び422bの一端)とそれぞれの第1及び第2の終了位置(例えば、案内要素421a、422a、421b及び422bの他端)との間で移動させるための装置が提供される。装置は、案内アセンブリ(この場合、案内要素421a、422a、421b及び422b並びにキャリッジ440a及び440bを有する)を備え、案内アセンブリは、第1の試料ホルダを第1の経路に沿って第1の開始位置から第1の終了位置まで案内し、第1の経路に沿って第1の終了位置から第1の開始位置まで戻すように構成され、第2の試料ホルダを第2の経路に沿って第1の開始位置から第2の終了位置まで案内し、第2の経路に沿って第2の終了位置から第2の開始位置まで戻すように構成されている。案内アセンブリは、第1及び第2の試料ホルダがそれらのそれぞれの経路の長さの少なくとも一部に沿って移動するときに、第1及び第2の試料ホルダが互いに離間されるように構成されている。したがって、同等の回転式デュアル試料装填装置よりもコンパクトであり、
図3の装置と比較して改善されたスループットを提供するデュアル試料装填装置が提供される。試料ホルダは使い捨て可能及び/又は交換可能であってもよいため、装置は、試料ホルダのない独立型装置として提供され得ることが理解されるであろう。
【0028】
試料ホルダの経路は、第1及び第2の開始位置若しくはその近傍において、並びに/又は第1及び第2の終了位置若しくはその近傍において、平行であってもよい。試料ホルダが平行軌道上の開始位置から離れ、及び/又は平行軌道上の終了位置に到達することを確実にすることによって、試料ホルダの装填及び/又は取出しをより容易に達成することができる。例えば、試料ホルダが様々な向きで装填及び/又は取出しをされる場合(例えば、試料ホルダが開始位置及び/又は終了位置で様々な方向を向いているため)、試料ホルダをリフト及び/又は真空チャンバと位置合わせすることが困難な場合がある。したがって、この平行配置は、リフトなどを複数の試料ホルダと位置合わせする困難さの一部を低減する。第1及び/若しくは第2の開始位置は、試料装填位置であってもよく、並びに/又は、第1及び/若しくは第2の終了位置は、試料分析位置又は試料取出し(例えば、配置)位置であってもよい。
【0029】
案内アセンブリは、複数の経路がそれらの経路に対して実質的に直交する方向において離間されるように構成されてもよい。例えば、経路は、第1及び第2の試料ホルダの長手方向経路に対して実質的に直交する垂直方向(例えば、
図4に示すように)に離間されてもよい。このように経路を離間させることにより、試料ホルダが衝突することなくそれぞれの経路に沿って移動するための空間が提供され、デュアル装填及び/又は取出し機構によるスループットの向上が促進される。本開示の案内アセンブリは、経路がそれらの長さの一部又は全体にわたって離間されるように構成されてもよい。
【0030】
本明細書で説明される案内アセンブリは、試料ホルダをそれらのそれぞれの経路に沿って長手方向に(例えば、それらの開始位置と終了位置との間で延びる方向に)案内するように構成された1つ又は複数の長手方向案内要素を備えてもよい。例えば、直線状の長手方向ロッド(要素421a、422a、421b及び422bなど)が設けられてもよく、したがって、ロッドなどの2つの長手方向案内要素(又は1つ又は2つより多くの長手方向案内要素)がキャリッジごとに設けられてもよい。長手方向ガイドは、キャリッジ及び試料ホルダがそれらの開始位置と終了位置との間で移動されることを可能にする。いくつかの例において、水平ガイドの使用は、試料ホルダが実質的に平坦な向き(例えば、水平)に保持されることを確実にするのを助けることができ、それにより、試料ホルダがその経路に沿って移動するときに、その中に保管された試料が乱されたりこぼれたりしないようにする。好ましくは、1つ又は複数の長手方向案内要素は、長手方向案内ロッドを含む。このような長手方向案内ロッドは、直線状であっても湾曲状であってもよい。
【0031】
次に
図5を参照すると、第2の実施形態による、それぞれの第1及び第2の開始位置と終了位置との間で第1及び第2の試料ホルダ540a及び540bを移動させるための装置510が示されている。第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態の試料ホルダ540a及び540bは、同じ位置で移動を開始及び終了し、これは、試料ホルダ540a及び540bをリフト及び真空ポンプと位置合わせするのに役立つ。更に、第2の実施形態は、第1の実施形態よりもコンパクトである。
【0032】
装置510は、キャリッジ530a及び530bをそれらの経路に沿って案内する長手方向案内要素520a及び520bを画定する表面529(実質的に平坦かつ平面であるように示されているが、平坦又は平面である必要はない)を備える。案内要素520a及び520bはまた、キャリッジ530a及び530bのための横方向(すなわち、キャリッジの経路の略長手方向に直交する表面529の面内の方向)の案内及び分離をもたらすように作用する。この場合、案内要素520a及び520bは、前述したような細長いロッドではなく、表面529を貫通して延びる表面529の細長いチャネルである。したがって、キャリッジ530a及び530bは、試料ホルダ540a及び540bが案内要素520a及び520bによって画定された経路に従うように、キャリッジ530a及び530bが案内要素520a及び520b内に確実に保持されることを可能にするための突出部又は機械的結合部(例えば、案内ピン、リッジ、リップ又はフランジ)を有する。使用時、表面529は、表面の面529が地面と平行になるように実質的に水平に配置され、案内要素520a及び520bは水平面内で互いに離間される。第1の実施形態と同様に、装置510は、第1及び第2のキャリッジ530a及び530bを備え、これらは、それぞれの第1及び第2の試料ホルダ540a及び540bを、それらの開始位置と終了位置との間で第1及び第2の経路に沿って移動させる。
【0033】
第1のキャリッジ530aは、第1の試料ホルダ540aを案内要素520aと案内要素520bとの間の位置に保持するように、その案内要素520a内に着座し、そこから案内要素520a及び520bの中心に向かって延びている。同様に、第2のキャリッジ530bは、案内要素520aと520bとの間に第2の試料ホルダ540bを保持するように、その案内要素520b内に着座し、そこから案内要素520a及び520bの中心に向かって延びている。キャリッジごとに1つの案内要素が設けられるが、複数のそのような案内要素を設けることもできる。案内要素520a及び520b並びにキャリッジ530a及び530bを画定する表面529は、第1及び第2の試料ホルダ540a及び540bのための案内アセンブリとして共に機能する。この案内アセンブリは、第1の試料ホルダ540aをその開始位置からその終了位置まで第1の経路に沿って案内し、第1の経路に沿って戻るように構成され、第2の試料ホルダ540bをその開始位置からその終了位置まで第2の経路に沿って案内し、第2の経路に沿って戻るように構成されている。
【0034】
この実施形態では、第1及び第2の試料ホルダ540a及び540bの経路は、それらの中心で離れる。第1及び第2の試料ホルダ540a及び540bが通る経路は、本質的に平行であり、開始位置及び終了位置において一致するが、第1及び第2の試料ホルダ540a及び540bが互いにすれ違って移動するための空間を提供するよう、中央において離間されている。特に、第1及び第2の試料ホルダ540a及び540bが通る経路は、中央にいくほど離れている。これにより、試料ホルダ540a及び540bの両方に対して単一の試料装填又は取出し機構を使用することがより容易になる。試料ホルダ540a及び540bは、同一の開始位置及び終了位置を有するので、試料ホルダ540a及び540bがそれらの開始位置又は終了位置に移動するたびに、試料装填機構又は試料取出し機構の大きな再調整は必要とされない。更に、第2の実施形態は、第1の実施形態よりも空間的要件は低いが、同様に高いスループットを有する。
【0035】
第2の実施形態に対する多くの変形形態があることは当業者には明らかであろう。案内要素520a及び520bの詳細な形状は、湾曲されていても任意の形状とされていてもよく、案内要素520a及び520bによって画定される経路の一方又は両方は、直線状としてもよい。平坦な表面529が示されているが、表面529は平坦である必要はなく、相当な深さを有する中実材料であってもよい。更に、円筒形の試料ホルダ540a及び540b並びに対応するキャリッジ530a及び530bが示されているが、任意の他の形状を使用することができる。この場合、案内要素520a及び520bは、表面529全体を貫通して延びる細長いチャネルであるが、案内要素520a及び520bは、代わりに、表面529を貫通して延びてはいない(例えば、表面529に凹部を提供する)表面529の溝であってもよい。
【0036】
第2の実施形態は、試料ホルダが重力に打ち勝つ必要がないので、追加の数の案内要素520a及び520b、キャリッジ530a及び530b、並びに試料ホルダ540a及び540bを有するのに特によく適している。追加の試料ホルダ及びキャリッジが設けられる場合、第3のキャリッジ(及び任意選択で任意の他の数のキャリッジ)は、第1及び第2の試料ホルダを妨害しないように、(例えば、装填位置と分析位置との間で)第1及び第2の試料ホルダの通り道から移動され、一時的に保管されてもよい。
【0037】
したがって、先に使用された一般的な表現に戻ると、第1及び第2の試料ホルダを移動させるための装置であって、試料ホルダの各々の開始位置が同じであり、及び/又は試料ホルダの各々の終了位置が同じである装置が提供される。したがって、試料ホルダの経路は、開始位置及び/又は終了位置で一致してもよい。この構成は、単一キャリッジ移送アセンブリ用に設計された装填及び/又は取出し機構を有する既存の機器に組み込むことができる、試料ホルダを移動させるための装置を提供する。本明細書に記載される装置は、装填位置及び/又は取出し位置が同じであるため、そのような機器に容易に設置することができ、これは、元の装填及び/又は取出し機構を使用し続けることができることを意味する。更に、単一の開始位置及び/又は単一の終了位置を有することは、封止された真空チャンバを提供することをより容易にすることができる。
【0038】
本明細書で説明される案内アセンブリは、経路間の分離が経路の長さに沿って変化するように構成されてもよい。例えば、
図5に示されるように、試料ホルダが衝突することなく互いにすれ違って移動するための空間を提供するように、経路は最初に一致し、次いでそれらの中心に向かうほど離れるようにしてもよい。例えば、案内アセンブリは、第1及び第2の経路がそれらの長さの少なくとも一部に沿って互いに離間され、試料ホルダがそれらのそれぞれの経路に沿って反対方向に同時に移動することを可能にする(例えば、試料ホルダが互いにすれ違うための空間を提供する)ように構成されてもよい。したがって、本開示の案内アセンブリは、経路がそれらの長さの一部のみにわたって離間されるように構成されてもよい。経路間の距離は、経路の一端でよりも経路の中心又はその付近で大きくてもよく、又は経路の両端でよりも経路の中心又はその付近で大きくてもよい。そのために、案内アセンブリは、経路の少なくとも1つ、好ましくはそれぞれが、湾曲状部分、及び/又は実質的に直線状の部分を備えるように構成されてもよい。経路のうちの1つ以上は、2つ以上の直線状部分を備えてもよく、湾曲状部分はその間に、試料ホルダが互いにすれ違うための空間を提供する。あるいは、経路のうちの1つ以上は、各々が角度が付けられた部分によって接合された複数の直線部分を備えてもよい。
【0039】
本明細書で説明される湾曲状の経路を提供するために、表面(例えば、表面529)の湾曲状のチャネル(例えば、案内要素520a及び/又は520b)が提供され得る。そのような湾曲状チャネルは、試料ホルダをそれらの開始位置と終了位置との間で概ね長手方向に移動させるので、長手方向案内要素として機能し得る。更に、そのような湾曲状チャネルは、試料ホルダを横方向に(すなわち、それらの開始位置と終了位置との間に延びる長手方向に直交する方向に)移動させるので、横方向案内要素として同時に機能し得る。したがって、本開示のいくつかの実施形態は、試料ホルダがそれぞれの経路に沿って移動するときに試料ホルダを横方向に案内し、及び/又は経路間の分離を変化させるように構成された1つ又は複数の横方向案内要素(例えば、案内要素520a、520b)を備える。そのような横方向の案内は、試料ホルダが当たることなく互いにすれ違うことを可能にし、従来のリニア移送アセンブリよりもスループットの向上を促進する。
【0040】
第2の実施形態では2つの湾曲状経路が示されているが、一方の湾曲状経路のみを使用し、他方の経路を実質的に直線状にしても同様の利点が得られることが理解されよう。これを達成するために、試料ホルダ540a及び540bの一方に対して表面529に直線状チャネルを設けることができ、同じホルダ540a及び540bの他方は、表面529の湾曲状チャネルによって湾曲状経路に従うようにすることができる。
【0041】
次に
図6を参照すると、第3の実施形態による、それぞれの第1及び第2の開始位置と終了位置との間で第1及び第2の試料ホルダ640a及び640bを移動させるための装置610が示されている。この実施形態もまた、同じ位置で開始及び終了する試料ホルダ640a及び640bを提供し、空間を節約する。
【0042】
第3の実施形態はまた、案内要素620a及び620bを画定する、実質的に平坦又は平面であってもよい表面629を備え、案内要素620a及び620bは、第1のキャリッジ630a及び第2のキャリッジ630bを、案内要素210a及び210bの各端部における開始位置と終了位置との間の経路に沿って案内する。表面629は、
図5の表面529と同様であるが、通常の使用中に水平ではなく垂直に向けられる。また、第3の実施形態の試料ホルダ640a,640bは、第1の実施形態及び第2の実施形態の試料ホルダと実質的に同じである。
【0043】
第3の実施形態のキャリッジ630a及び630bは、表面629に直交する方向に延びているという点で、第2の実施形態のキャリッジ530a及び530bとは異なる。使用時には、略円筒形の試料ホルダ640a及び640bの軸線は、表面629に対して垂直かつ平行であり、第2の実施形態では、略円筒形の試料ホルダ540a及び540bの軸線は、表面529に対して垂直で直交している。第3の実施形態の装置610は、垂直方向の空間的制約が水平方向の空間的制約よりも厳しくない機器で使用するのに特に適している。これは、第2の実施形態とは対照的であり、第2の実施形態は、垂直方向の空間的制約が支配的である機器における使用により適している。
【0044】
先に使用された一般的な表現では、案内要素620a及び620bは、長手方向案内要素及び横方向案内要素として同時に機能してもよい。これは、試料ホルダ640a及び640bを開始位置と終了位置との間で長手方向に移動させる一方で、試料ホルダ640a及び640bの経路間の分離をそれらの経路の長さに沿って変化させるためである。
図5に示される実施形態と同様に、これは、試料ホルダが各々を通過するための空間を提供し、一方、試料ホルダ640a及び640bは、それらのそれぞれの経路に沿って反対方向に同時に移動する。
【0045】
第3の実施形態に対して多くの変形形態が可能である。例えば、他の数の案内要素620a及び620b、キャリッジ630a及び630b、並びに試料ホルダ640a及び640bを設けることができる。更に、案内要素620a及び620bによって画定される詳細な経路は、湾曲されていても任意の形状とされていてもよく、案内要素620a及び620bによって画定される経路の一方又は両方は、直線状としてもよい。平坦な表面629が示されているが、表面629は任意の形状とすることができる。更に、キャリッジ630a及び630bの更なる案内を提供し、安定性を改善するために、更なるそのような表面を表面629に面して設けることができる。更に、他の形状を試料ホルダ640a及び640bに使用することができ、キャリッジ630a及び630bを使用することができる。案内要素620a及び620bは、表面629全体を貫通して延びるチャネルであるが、案内要素620a及び620bは、代わりに、表面629を貫通して延びていない、表面629の溝であってもよい。
【0046】
次に
図7を参照すると、第4の実施形態による第1及び第2の試料ホルダ740a及び740bを移動させるための装置710が示されている。第4の実施形態は、いくつかの点で、上述の第1及び第3の実施形態の組合せと同様である。第4の実施形態は、
図5及び
図6に示される先の実施形態よりもロバストな案内システムを提供しており、このシステムは、再現するために精密な機械加工を必要とする湾曲状経路を有する。第4の実施形態は、第2及び第3の実施形態の表面529及び629と同様の表面729を設けているが、試料ホルダの円滑な案内を得るために、試料ホルダの傾斜を低減又は防止するための追加の案内を設けている。第2及び第3の実施形態におけるように、試料ホルダ740a及び740bは、同じ位置で開始及び終了し、装置710が、必要とされる最小限の修正で既存のシステムに適合されることを可能にする。
【0047】
図7に示される装置710は、これも第3の実施形態の平坦な表面629と実質的に同様の平坦な表面729を備える案内アセンブリを有する。平坦な表面729は、案内要素720a及び720bを画定し、案内要素720a及び720bは、第1のキャリッジ730a及び第2のキャリッジ730bを、案内要素の各端部における開始位置と終了位置との間の経路に沿って案内し、したがって、長手方向の案内を提供するように機能する。案内アセンブリは、第1の対の長手方向案内要素721a及び722aを更に備え、この場合、これらの長手方向案内要素は、水平に互いに離間された直線状の細長いロッドであり、ロッドの一方の端部における開始位置とロッドの反対側の端部における終了位置との間を長手方向に延びている。第1の対の長手方向案内要素721a及び722aは、第1の実施形態のロッド421a及び422aと同様である。また、第2の対の長手方向案内要素721b及び722bが設けられており、これらの長手方向案内要素も、第2のキャリッジ730bを案内するために水平方向に互いに離間した直線状の細長いロッドである。
【0048】
表面729の案内要素720aと第1の対の長手方向案内要素721a及び722aとの組合せは、第1の実施形態と比較したときに空間削減という点で同様の利点を保持しながら、第3の実施形態よりも試料ホルダ740aの安定性を向上させる。
【0049】
図8は、
図7の装置の後側を示し、試料ホルダ740a及び740bは、明確にするために省略されている。試料ホルダ740a及び740bが、
図7の構成を使用して空間を通る所定の経路をたどるようにされるために、
図7のキャリッジ730a及び730bは、2部品型の構成要素として提供される。キャリッジ730a及び730bは、長手方向案内要素721a及び722aの対、並びに長手方向案内要素721b及び722bの対によって長手方向に案内されるように構成された固定部分731a及び731bを備える。長手方向案内要素721a及び722aの対、並びに長手方向案内要素721b及び722bの対は、固定部分731a及び731bを貫通し、固定部分731a及び731bは、長手方向案内要素721a及び722a並びに長手方向案内要素721b及び722bに沿って摺動することができる。キャリッジ440a及び440bの固定部分731a及び731bは、
図4のキャリッジ730a及び730bの経路と同様である、長手方向案内要素721a及び722aの対、並びに長手方向案内要素721b及び722bの対によって画定される実質的に直線状の経路をたどる。
【0050】
試料ホルダ740a及び740bが平坦な表面729の案内要素720a及び720bによって画定された所定の軌道に沿って移動することを確実にするために、キャリッジ730a及び730bは、試料ホルダを保持するように構成された横方向に案内される部分(以下「横方向被案内部分」という)732a及び732bを更に備える。横方向被案内部分732a及び732bは、キャリッジ730a及び730bがそれらの開始点と終了点との間を移動するときに、固定部分731a及び731bから離れるように(通常の使用中に垂直に)移動する。これは、固定部分731a及び731bと横方向被案内部分732a及び732bとを互いに機械的に結合する横方向案内要素723a、724a、723b及び724bを使用して達成され、その結果、それらはそれぞれ共に長手方向に移動する。横方向案内要素723a、724a、723b及び724bは、試料ホルダ740a及び740bがそれぞれの経路の中心に到達する際に互いにすれ違うことを可能にするのに十分な距離だけ、横方向被案内部分732a及び732bが固定部分731a及び731bから離れるよう自由に動くことを確実にするロッドである。横方向案内要素723a、724a、723b及び724bは、横方向被案内部分732a及び732bに堅固に接続され、固定部分731a及び731bの開口部を貫通する。これは、横方向被案内部分732a及び732bが、案内要素720a及び720bによって画定される経路に沿って自由に摺動して、試料ホルダ740aと試料ホルダ740bとの間の横方向の分離を変化させることを確実にする。
【0051】
図8は、試料ホルダ(
図8には示さず)がそれらのそれぞれの経路に沿って反対方向に同時に移動するための空間を提供するように、キャリッジ730a及び730bがそれらのそれぞれの経路の中心にある状態で、分離が最大となる点にある横方向被案内部分732a及び732bを示している。したがって、この実施形態では、上述の実施形態と同様に、試料ホルダの一方が開始位置(装填位置)にあり、他方の試料ホルダが終了位置(分析位置)にあり、試料ホルダは、位置を変更するために、それぞれの経路に沿って反対方向に同時に移動することができる。
図9は、非拡張状態にある上側のキャリッジ730aを示しており、この状態では固定部分731aと横方向被案内部分732aとは接触している。横方向案内要素723a、724a、723b及び724bは、キャリッジ730a及び730bの横方向被案内部分732a及び732bが固定部分731a及び731bから離れるように移動するときに、それらを拘束して安定させる(例えば、試料ホルダ740a及び740bが傾く可能性を低減する)。キャリッジ730a及び730bの主要な個々の構成要素は、
図10に分解状態で示されている。この実施形態では、案内要素723a及び724aは、約8mmの直径を有し、横方向被案内部分732a内に試料ホルダ740aを受容するための開口部は、約82mmの直径を有する。もちろん、移送される試料のサイズ及び必要とされる試料ホルダのサイズに依存して、他の寸法が採用され得る。
【0052】
図10に示すように、固定部分731aは、長手方向案内要素722aに係合するための2つのリニア玉軸受736a及び737aを備えてもよい。長手方向案内要素722aは、リニア玉軸受736a及び737aを貫通している。固定部分731aの反対側は、
図9に最もよく示されるように、使用時に他方の長手方向案内要素721aの上に載る軸受738aを備える。
図10には示されていないが、他方の固定部分731bは、長手方向案内要素721b及び722bに係合するための同様の玉軸受を備えてもよい。固定部分731a及び731bを案内要素に固定する他の方法が使用され得ることが理解されるであろう。
【0053】
第3の実施形態と同様に、横方向被案内部分732a及び732bは、平坦な表面729に画定された案内要素720a及び720bに係合するように構成された突出部735a及び735b(例えば案内ピン)を備える。これらの突出部735a及び735bは、横方向被案内部分732a及び732b、したがって試料ホルダ740a及び740bを湾曲状経路に従わせ、一方、固定部分731a及び731bを実質的にまっすぐな直線状経路に従わせるように、案内要素720a及び720b内に着座される。
【0054】
前述したように、本開示の目的のために、案内アセンブリは、試料ホルダをその経路に沿って移動させるように協働する装置の構成要素であるとみなしてもよい。したがって、第4の実施形態の文脈では、案内アセンブリは、平坦な表面729並びにその案内要素720a及び720bと、第1の対の長手方向案内要素721a及び722aと、第2の対の長手方向案内要素721b及び722bと、横方向案内要素723a、724a、723b及び724bと、キャリッジ730a及び730b(その固定部分731a及び731b並びに横方向被案内部分732a及び732bを含む)と、を備えるとみなしてもよい。
【0055】
先に使用した一般的な表現では、本明細書に記載の装置は、1つ又は複数の横方向案内要素を有してもよく、本明細書に記載の案内アセンブリは、少なくとも1つの試料ホルダをそのそれぞれの経路に沿って移動させるように構成された少なくとも1つのキャリッジ(及び任意選択で2つ以上のキャリッジ)を備えてもよい。
図7~
図10に示すように、1つ又は複数のキャリッジ(例えば、各キャリッジ)は、1つ又は複数の横方向案内要素を備えてもよい。例えば、
図9において、2つの横方向案内要素723a、724aは、キャリッジ730aの一部であり、同じことが他方のキャリッジ730bにも当てはまる。したがって、試料ホルダを実質的に平坦に(例えば水平に)保持することができる一方で、円滑に横方向に案内することができるので、案内機能及び安定性が向上される。
【0056】
図11は、第4の実施形態の第1及び第2の試料ホルダ740a及び740bが走行する経路705a及び705bを示している。これらの経路は、開始位置及び終了位置で一致しているが、それらの中心では互いに離間しており、試料ホルダ740a及び740bが衝突することなく互いにすれ違うための空間を提供していることが分かる。経路705a及び705bは同じ場所で開始及び終了するので、第4の実施形態は、ARL9900などの既存の機器において容易に実施することができる。
【0057】
キャリッジ730a及び730b並びに試料ホルダ740a及び740bの動きをもたらすために、装置は、キャリッジ730a及び730b並びに試料ホルダ740a及び740bをそれぞれの経路に沿って移動させるためのモータ750a及び750b(ステッピングモータであってもよい)を備える。
図8において、第1のモータ750aは、第1の紐又はケーブル755aによって第1のキャリッジ730aに接続されているものとして示されている。第1の紐又はケーブル755aは、第1の複数のプーリー751a、752a、753a、及び754aによって第1のモータ750aを第1のキャリッジ730aに接続する。第1のモータ750aは、紐又はケーブル755aの動きを制御するためにプーリー753aのうちの1つに機械的に結合されてもよい。同様のケーブルとプーリーの構成が第2のモータ750bのために設けられてもよいが、簡略化のために
図8には示されていない。前述のように、(ARL9900で使用されるものと同様の)機械的エンドストップを使用して、キャリッジ730a及び730b並びに試料ホルダ740a及び740bの開始位置及び終了位置、又は開始位置及び終了位置とわずかに異なり得る原点復帰(homing)位置を画定してもよい。例えば、デュアル試料装填コントローラ(DSLC)は、ステッピングモータからのフィードバックに従ってキャリッジ730a及び730b並びに試料ホルダ740a及び740bの位置を検出してもよい。この実施形態では、2つのモータ750a及び750b(各キャリッジ730a及び730bに対して1つ)が設けられているが、キャリッジ730a及び730bの両方を同時に移動させるために1つの共通のモータを使用することができる。
【0058】
第4の実施形態の装置710は、
図12のARL9900に示されている。ここで、第4の実施形態の装置710は、シャッタ170、試料リフト180、及び分析リフト190を備える、
図1に示されるものと同じ機器内に示されている。したがって、一般的な意味では、本明細書に記載される装置のいずれかと分析器とを備える分析機器が提供されてもよく、その場合、装置は、試料ホルダ内の試料の分析のために試料ホルダを分析器に移動させるように構成される。分析機器は、分析機器の真空チャンバ内に試料ホルダを受容するように、及び/又は分析機器の真空チャンバ内に試料ホルダを配置するように構成されてもよい。
【0059】
本明細書に記載の分析器は、光子、電子及び/又はイオンを使用して試料を分析するように構成された分光計、回折計、及び顕微鏡のうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、分析器は、蛍光X線(XRF)分光計、X線回折計(XRD)、電子顕微鏡、スパーク発光(OES)分光計、レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)分光計、X線光電子分光法(XPS)分光計、オージェ電子分光法分光計、又は電子エネルギー損失分光法(EELS)分光計のうちの任意の1つ以上を備えてもよい。様々な他の分析機器が、本明細書に記載される装置の恩恵を受けることができる。例えば、本明細書に記載される実施形態は、真空下での分析を必要とし、分析時間が試料処理時間と比較して特に長くない任意のシステムにおいて有利であり得る。第4の実施形態を使用すると、
図1~
図3に示す例と比較して、試料交換時間を短縮することができる。
【0060】
第4の実施形態には多くの変更を加えることができる。例えば、図示のものと同様の追加の案内要素を設けることによって、他の数のキャリッジ730a及び730b並びに試料ホルダ740a及び740bを設けることができる。更に、案内要素720a、721a、722a、720b、721b、722bによって画定される詳細な経路は、任意の形状とすることができ、経路705a及び705bの一方又は両方は直線状とすることができる。1つの平坦な表面729が示されているが、表面729は任意の形状とすることができ、平坦である必要はない。更に、キャリッジ730a及び730bの追加の案内を提供するように、更なるそのような表面を表面729に対向して設けることができる。また、他の形状の試料ホルダ740a,740bやキャリッジ730a,730bを用いることもできる。案内要素720a及び720bは、表面729全体を貫通して延びるチャネルによって提供されるが、案内要素720a及び720bは、代わりに、表面729全体を貫通して延びていない、表面729の溝とすることもできる。
【0061】
図7~
図11の実施形態では、横方向案内要素723a、724a、723b及び724bは、横方向被案内部分732a及び732bに堅固に接続され、固定部分731a及び731bの開口部を貫通している。代替的な実施形態では、横方向案内要素は、固定部分に堅固に接続されてもよく、横方向被案内部分の開口部を貫通してもよい。そのような場合、横方向案内要素は、それらの経路の端部で開口部を通って突出することになり、これは、追加の空間を必要とする突出部分に起因する問題を引き起こすおそれがある。特に、横方向案内要素は、装填位置及び分析位置に干渉し、衝突を引き起こすおそれかある。したがって、
図7~
図11の構成(横方向案内要素723a、724a、723b及び724bが横方向被案内部分に堅固に接続されている)が好ましい。
【0062】
上述したように、試料ホルダのための滑らかな湾曲状の経路は、上述した案内機構によって得られる。一般的に言えば、キャリッジのうちの少なくとも1つ(選択で複数又は全て)は、好ましくは、案内アセンブリの相補的チャネルに係合するように構成された突出部を備え、相補的チャネルは、少なくとも1つのキャリッジに、試料ホルダのうちの少なくとも1つをそのそれぞれの経路に沿って移動させるように構成される。相補的チャネルは、横方向及び/又は長手方向の案内要素として機能してもよい。例えば、突出部は、細長いチャネル内に嵌合して、キャリッジ及び試料ホルダを、所定の任意選択的に湾曲された経路に沿って案内するように構成された、案内ピン、リッジ、リップ、フランジ、又はノッチなどの機械的結合部であってもよい。これにより、キャリッジ及び試料ホルダの経路に対する制御が改善される。相補的チャネルは、所望の経路を提供するように、湾曲状部分及び/又は実質的に直線状部分を備えてもよい。相補的チャネルは、少なくとも1つの突出部に係合するように構成される、案内アセンブリの表面の細長いチャネルを備えてもよい。チャネルは、表面の穴(すなわち、表面全体を貫通して延びる開口部)であってもよく、又は単に、表面全体を貫通しない表面のくぼみ(例えば、溝)であってもよい。更に、複数のそのような表面を設けることができる。例えば、第4の実施形態では、キャリッジ730a及び730bの追加の案内を提供するために、更なる同一の表面729を装置710の反対側に設けることができる。同様に、
図6の実施形態では、追加の同一の表面629を設けることができる。
【0063】
キャリッジのうちの少なくとも1つは、長手方向に案内され、開始点と終了点との間で実質的に直線状に移動する固定部分と、キャリッジが開始点と終了点との間を移動するときに固定部分から離れるように移動する試料ホルダを保持するための横方向被案内部分とを備えてもよい。本明細書で説明される様々なタイプの案内(例えば、様々なタイプの長手方向案内及び横方向案内)の組合せは、開始位置及び終了位置での試料ホルダの位置合わせに対する正確な制御を可能にし、試料ホルダが経路に沿って移動するときの分離も可能にする。更に、試料ホルダの安定性がもたらされる。案内アセンブリは、第1及び第2の試料ホルダがそれぞれの経路に沿って移動する際に実質的に平坦に保持されるように構成されてもよい。例えば、液体は、こぼれるおそれを低減した状態で、上部が開いた試料ホルダ内で移送されることができる。
【0064】
次に
図13及び
図14を参照すると、キャリッジ1330a及び1330bを有する(
図14)及び有しない(
図13)、第5の実施形態による装置1310が示されている。装置1310は、真空領域を提供するために使用することができる主ハウジング1395を備える。
図13は、部分的に開いているハウジングを有するデバイスを示すが、ハウジング1395は、試料ホルダの経路の全体を包含するように拡張することができ、その結果、経路の全体を真空にすることができる。装置1310は、第1の対の長手方向案内要素1320a及び1321aを備え、これらは、垂直方向に互いに離間された直線状の細長いロッドであり、ハウジング1395の外側のロッドの一方の端部における開始位置と、ハウジング1395内のロッドの反対側の端部における終了位置との間を長手方向に延びている。装置1310は、ハウジング1395の外側で第1の対の案内要素1320a及び1321aから離れるように湾曲する第2の対の案内要素1320b及び1321bを更に備える。第2の対の案内要素1320b及び1321bは、この場合も、垂直方向に互いに離間された細長いロッドであり、ハウジング1395の外側のロッドの一方の端部における開始位置と、ハウジング1395内のロッドの反対側における端部における終了位置との間を延びている。この実施形態の試料ホルダは、同じ位置で開始及び終了するように作製され得る。
【0065】
図14に示すように、第1のキャリッジ1330aは、第1の対の案内要素1320a及び1321aに機械的に結合されて、第1のキャリッジ1330aが第1の対の案内要素1320a及び1321aに沿って前後に走行することを可能にする。第1のキャリッジ1330aは、案内要素1320a及び1321a(互いに離間している)から第2の対の案内要素1320b及び1321bに向かって水平に延びている。同様に、第2のキャリッジ1330bは、第2の対の案内要素1320b及び1321bに機械的に結合されて、第2のキャリッジ1330bが第2の対の案内要素1320b及び1321bに沿って前後に走行することを可能にする。したがって、この実施形態では、案内アセンブリは、第1の対の案内要素1320a及び1321a並びに第2の対の案内要素1320b及び1321bと、キャリッジ1330a及び1330bとを備えるものとみなしてもよい。
【0066】
チャンバの外側の第2の対の案内要素1320b及び1321bの湾曲により、第1及び第2のキャリッジ1330a及び1330bは、試料ホルダ(図示せず)がキャリッジ1330a及び1330b内に保持されるときに、試料ホルダが当たることなく試料ホルダが互いにすれ違うことができるように、互いに離間される。例えば、第2のキャリッジ1330bをハウジング1395から引き出して、案内要素1320b及び1321bの湾曲状部分に沿って移動させ、第1のキャリッジ1330aが第2のキャリッジ1330bと干渉することなくそれぞれの案内要素1320a及び1321aに沿って自由に移動できるようにすることができる。したがって、第1の対の案内要素1320a及び1321a並びに第2の対の案内要素1320b及び1321bが互いに離間しているという特性により、スループットを向上させることができる。
【0067】
したがって、この実施形態も、デュアル試料装填のために、試料ホルダの経路間の空間が、試料が交換される少なくとも1つの場所(好ましくは真空下)において必要とされるという原理に従う。この実施形態における3次元運動は、先に説明した実施形態とは異なることが理解されよう。試料ホルダを装填位置で停止させるためにセンサが設けられてもよく、様々な空間的要件に起因してハウジング1395の前部における複雑さを増加させてもよい。
【0068】
この場合も、この実施形態に対する多くの変形が当業者には明らかであろう。例えば、この実施形態では、試料交換領域を、前部ハウジングの前方にある状態からX線管の後方にある状態に移動させることができる。更に、3つ以上のキャリッジ1330a及び1330bを設けることもでき、及び/又はキャリッジ1330a及び1330bの両方を湾曲状経路に従うようにすることもできる。更に、試料ホルダと、キャリッジ内の対応する開口部とは、円筒形である必要はなく、任意の形状をとるようにすることもできる。
【0069】
次に
図15を参照すると、第6の実施形態による装置1510が示されている。この実施形態は、
図3のものと実質的に同様である案内要素1520及び1521を備える。しかしながら、第6の実施形態のキャリッジ1530は、1つの試料ホルダではなく2つの試料ホルダ1540a及び1540bを保持するように構成されている点で、上述の実施形態とは異なる。
【0070】
この場合、案内要素1520及び1521を含む単一の水平案内機構が、ダブルキャリッジ1530と共に設けられている。試料ホルダ1540a及び1540bの両方を機器の装填/分析位置の下に位置決めすることができるように、装填位置の前及び分析位置の後ろに追加の空間を設けてもよい。分析リフトは、X線管の下で試料を持ち上げるために使用することができ、キャリッジをブロックすべきではないので、試料を適所に保持して分析リフトが下降してキャリッジ1530への自由経路を提供することを可能にするために、クランプ機構(図示せず)が設けられてもよい。言い換えるならば、この実施形態ではキャリッジ1530が1つしかないので、試料ホルダのうちの1つが分析リフトによって持ち上げられ、分析中にそこに保持された場合、リフトはキャリッジ1530を通過し、したがってキャリッジ1530が次の試料を装填するために装填位置(すなわち経路の他端)に戻ることを妨げる。したがって、試料ホルダが分析のために持ち上げられるとき、試料ホルダはそこで、分析リフトが後退してキャリッジ1530が装填位置に戻ることを可能にするように、X線管の下でクランプされることができる。したがって、良好なスループットを達成することができる。
【0071】
この実施形態では、案内アセンブリは、案内要素1520及び1521と、タブルキャリッジ1530とを備えるものとみなしてもよい。この場合、試料ホルダ1540a及び1540bは、それらの長さのかなりの部分(例えば、少なくとも半分)について同じである空間を通る経路を走行するが、案内アセンブリの構成は、第1及び第2の試料ホルダ1540a及び1540bがそれらのそれぞれの経路に沿って移動するときに常に互いに離間されるようなものとなっている。経路は、その2つの端部において全く重ならないことに留意されたい。
図3の装置110と比較すると、これもスループットの向上が達成される。
【0072】
前述したように、案内要素1520及び1521並びに試料ホルダ1540a及び1540bは、任意の形状をとることができる。更に、3つ以上の試料ホルダを単一のキャリッジ1530上に設けることができる。
【0073】
次に
図16、
図17及び
図18を参照すると、第7の実施形態による第1及び第2の試料ホルダ1640a及び1640bを移動させるための装置1610が示されている。装置1610は、
図7に示す第4の実施形態の装置710と同様である。特に、
図16は、
図7と同様の視点からの装置1610を示し、
図17は、
図8と同様の視点からの装置1610を示している。装置1610と装置710との間に類似性があるので、第7の実施形態の装置1610の全ての構成要素の詳細な説明は、簡潔にするために省略する。
【0074】
装置1610は、案内要素1620a及び1620bを画定する平坦な表面1629を含む、第4の実施形態と同様の案内アセンブリを備える。これらの案内要素1620a及び1620bは、第1のキャリッジ1630a及び第2のキャリッジ1630bを、案内要素1620a及び1620bの各端部における開始位置と終了位置との間の経路に沿って案内し、したがって、長手方向に案内するように機能する。長手方向案内要素1621a及び1622aの対並びに長手方向案内要素対1621b及び1622bの対も設けられている。これは、第4の実施形態の対応する要素729、720a、720bが第4の実施形態のキャリッジ730a及び730bを案内するのと同様に作用する。
【0075】
第4の実施形態と同様に、キャリッジ1630a及び1630bは、別個の部分、すなわち、固定部分1631a及び1631bと、横方向被案内部分1632a及び1632bと、を備える。これらのキャリッジ1630a及び1630bは、試料ホルダ1640a及び1640bを保持するように構成されている。キャリッジ1630a及び1630bの動きは、モータ1650a及び1650b並びにプーリー1651a、1652a、1653a及び1654aからなる構成によってもたらされる。この場合も、1つ又は複数のモータを使用してもよく、各キャリッジは、関連するモータとプーリーの構成を有してもよい。
図19に示すように、固定部分1631aは、長手方向案内要素1622aに係合するための2つのリニア玉軸受1636a及び1637aを備えてもよい。固定部分1631aの反対側は、使用時に他方の長手方向案内要素1621aの上部に載置される軸受1638aを備える。他方の固定部分1631bは、同様の玉軸受を備えてもよい。固定部分1631a及び1631bを案内要素に固定する他の方法が使用され得ることが理解されるであろう。
【0076】
第7の実施形態と第4の実施形態との相違点は、キャリッジ1630a,1630bの案内の仕方である。第4の実施形態では、突出部735a及び735bが案内ピンとして示されている。第4の実施形態では、軸受は、キャリッジ730a及び730bの横方向被案内部分732a及び732bの内側に隠されている。対照的に、第7の実施形態では、突出部1635a及び1635bは、軸受によって囲まれたピン(例えば、ころ軸受の中心を通るピン)であり、軸受は、案内要素1620a及び1620bの溝内で移動する。これは
図16に明示されている。先に使用された一般化された用語では、少なくとも(任意選択で両方の)キャリッジは、案内アセンブリの相補的チャネルに係合するように構成された突出部を備えてもよく、そのような1つの突出部(又は複数の突出部)は、案内ピン及び/又は軸受(例えば案内ピンを取り囲む軸受)を備えてもよい。軸受の使用は、より円滑な動きをもたらし、機械的摩耗を低減することができる。
【0077】
第7の実施形態と第4の実施形態との更なる違いは、第7の実施形態では、平坦な表面1629の案内要素1620a及び1620bの幅が大きくされていることである。比較的幅の広い案内要素1620a及び1620bに係合する軸受1635a及び1635bを有することは、安定性を高めることができる。
【0078】
更に、第7の実施形態では、案内要素1620a及び1620bは、平坦な表面1629を完全に貫通しない平坦な表面1629の溝によって画定されている。これは、表面1629の剛性を高め、案内アセンブリの信頼性を向上させることができる。したがって、以前に使用された一般化された用語では、案内アセンブリの相補的チャネルは、案内アセンブリの表面に細長い溝を備えてもよい。
【0079】
次に
図19を参照すると、
図16~
図18のキャリッジ1630aの分解図が示されている。他方のキャリッジ1630bは図示されていないが、同様に動作する。
図19は、
図10に示す分解図と同様である。キャリッジ1630aは、固定部分1631aと、横方向被案内部分1632aとを備えている。固定部分1631aは、案内要素1620aと係合するための突出部1635aを備える。第7の実施形態では、第4の実施形態の2つの横方向案内要素723a及び724aの代わりに、3つの横方向案内要素1623a、1624a及び1625aが設けられている。横方向案内要素1623a、1624a及び1625aは、横方向案内ロッドである。追加の横方向案内要素1625aにより、キャリッジ1630a(及びキャリッジ1630b)の形状が変更されている。3つの横方向案内要素を有するこの構成は、安定性の向上につながる。
【0080】
図20は、
図1と同じシステムにおける、インサイチュでの第7の実施形態の装置1610を示している。前述したように、システムは、シャッタ170、試料リフト180、分析リフト190、及び試料交換器195を備える。そのコンパクトな形状により、装置1610は既存のシステムに適合させることができ、装置1610を収容するために大幅な変更を必要とせずにシステムのスループットを向上させることができることが分かる。
【0081】
図21~
図24は、装置1610が、
図1、
図12及び
図20のシステムなどの既存のシステムにおいて有効な真空をいかにして形成することができるかを示している。
図21は封止されていない状態を示し、
図22及び
図23は封止された状態を示し、
図24は断面図を示す。ARL9900の既存の設計では、システム試料ホルダは、移行チャンバの一部として使用される。試料ホルダが装填位置に接近しているとき、
図21に示すように、上下に隙間がなければならない。新しい試料が導入されると、
図22に示されるように、移行チャンバが最初に閉じられる。これを行うために、リフト180が上昇して試料ホルダを押して当接させ、真空を形成する。
図23に示されるように、真空が破られた後に試料を取り出すとき、シャッタ170の蓋が離れる方向に移動され、ロッド181が上方に移動して試料をその試料ホルダから押し出し、試料の交換を可能にする。第7の実施形態の装置1610は、キャリッジ1630a及び1630bの両方における試料ホルダが、本質的に同じ場所にある開始位置を有し、これは、真空形成手順が、いずれかのキャリッジによって運ばれる試料ホルダに対して機能することを意味するので、このシステムにおける使用に非常に適している。第2~第6の実施形態は、複数の試料ホルダが同じ開始位置を有するようにそれぞれ構成することができるので、同様の真空形成システムと共に使用することもできる。
【0082】
図25には、本明細書に記載の装置のいずれかで使用するための試料ホルダ2540が示されている。試料ホルダ2540は、試料を収容するための、基部及び直立側壁部を有する略円筒形の容器である。試料ホルダ2540の外面は、試料ホルダ2540をキャリッジの開口部内に保持するための突出部又はリッジ2541を備える。当然ながら、キャリッジが他の形状に応じて適合されるならば、他の形状を使用することができる。
【0083】
次に
図26を参照すると、回転式移送アセンブリ2660aの空間的要件に対するリニア移送アセンブリ又は並進移送アセンブリ2660b(本明細書で説明されるもののいずれかなど)の空間的要件の比較が示されている。回転式装填機構は、試料が長い円形経路に従うため、本明細書に記載の装置よりも多くの空間を占める。対照的に、経路の長さの少なくとも一部について互いから逸れる独立した経路に沿って試料ホルダを前後に案内することは、回転式機構ほど多くの空間を占めることなく、試料ホルダが衝突することを防止することを可能にする。したがって、本明細書に記載される構成は、試料ホルダがそれぞれの経路に沿って曲線状又は直線状の並進運動(回転運動ではない)を受けるように構成された案内アセンブリを提供することが理解されよう。円の面積は、その半径の二乗で増加する。したがって、本明細書で説明されるリニア移送アセンブリの使用に起因して生じる空間節約は、試料ホルダが遠く離れた位置間で移動されるときに特に顕著である。
【0084】
前述の利点を保持しながら、多くの変形が、上記の装置、システム及び方法に対して行われ得ることが理解されよう。例えば、特定の構成要素について説明してきたが、同じ又は同様の機能を提供する代替の構成要素を提供することができる。
【0085】
上記の実施形態は、説明を容易にするために、2つのホルダのみが示されている装置に関する。上述の原理を使用して、任意の数の試料ホルダを設けることができることが理解されるであろう。
【0086】
更に、上記の実施形態では、分析機器内の構成要素の詳細な説明を省略している。リフト、モノクロメータ、ゴニオメータなどの様々な組合せを上述の装置と組み合わせることができることが理解されよう。
【0087】
円筒形の試料ホルダが上記で広く参照されたが、他の形状の試料ホルダを、本明細書に説明される装置を使用して移動させることができる。本明細書に記載される試料ホルダ及びキャリッジは交換可能であり、様々な形態をとることができる。
【0088】
更に、上記の装置は、説明を容易にするために真空チャンバを詳細に図示していないが、記載された実施形態は、試料が真空条件下で処理される必要があるシステム及び/又は複数の試料が分析されるシステムに特に適していることが理解されよう。例えば、電子顕微鏡機器もまた、本明細書に説明される装置を利用することができる。
【0089】
本明細書に記載の試料ホルダは、様々な手段を介して案内要素に取り付けることができる。例えば、
図7~
図12及び
図16~
図20に示されるような、本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、案内要素はキャリッジを貫通する。しかしながら、そのような場合には、代わりとして、複数のホイール(例えば、アンダフリクションホイール又はアップストップホイール、トラクタホイール又は走行ホイール及びサイドフリクションホイールのうちの少なくとも1つ、2つ又は3つを備えるジェットコースタホイールアセンブリ(roller-coaster wheel assembly)に類似したクランピングホイールアセンブリ(clamping wheel assembly))を、キャリッジをそれぞれの案内要素に取り付けるために使用することができる。同様に、ホイール構成が図示されている場合、案内要素は代わりにキャリッジの開口部を貫通することができる。
【0090】
本明細書に開示される各特徴は、別段の指定のない限り、同一、同等、又は類似の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられ得る。したがって、別段の指定のない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等又は類似の特徴の単なる一例である。
【0091】
特許請求の範囲内を含む、本明細書において使用される場合、文脈が別様に示さない限り、本明細書における用語の単数形は、複数形を含むものとして解釈され、文脈により可能な場合、その逆も同様である。例えば、文脈が別様に示さない限り、(試料ホルダ(a sample holder)又はキャリッジ(a carriage)などの)「a」又は「an」などの、特許請求の範囲を含む本明細書における単数形の言及は、「1つ以上」を意味する(例えば、1つ以上の試料ホルダ、又は1つ以上のキャリッジ)。本開示の説明及び特許請求の範囲を通じて、語「備える(comprise)」、「含む」(including)、「有する(having)」、及び「包含する(contain)」、並びに語の変形、例えば「備えている(comprising)」及び「備える(comprises)」又は同様のものは、説明されている特性が、追随する追加の特性を含み、他の構成要素の存在を排除するとは意図されない(及び排除しない)ことを意味する。
【0092】
本明細書において提供されるありとあらゆる例、又は例示的な文言(「例えば(for instance)」、「~など(such as)」、「例えば(for example)」、及び同様の文言)の使用は、単に、発明をより良く例示することを意図され、特に特許請求されない限り、本開示の範囲への限定を示すものではない。本明細書におけるいずれの文言も、本開示の実施に不可欠なものとして主張されていないいかなる要素も示すものとして解釈されるべきではない。
【0093】
本明細書に記載された任意のステップは、異なるように記載されていない限り、又は文脈により別の意味が必要とされない限り、任意の順序で、又は同時に実行され得る。更に、あるステップがあるステップの後に実行されると説明されている場合、これは、介在ステップが実行されていることを排除するものではない。
【0094】
本明細書で開示される態様及び/又は特徴の全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組合せで組み合わせることができる。特に、本開示の好ましい特徴は、本開示の全ての態様及び実施形態に適用可能であり、任意の組合せで使用され得る。同様に、必須ではない組み合わせで記載された特徴は、(組合せではなく)別々に使用され得る。
【0095】
本明細書に開示される装置のいずれかを製造及び/又は動作させる方法も提供される。方法は、開示された特徴の各々を提供するステップ、及び/又はそれぞれの特徴をその述べられた機能のために構成若しくは使用するステップを含んでもよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の試料ホルダ及び第2の試料ホルダをそれぞれの第1の開始位置及び第2の開始位置とそれぞれの第1の終了位置及び第2の終了位置との間で移動させるための装置であって、
前記第1の開始位置から前記第1の終了位置まで第1の経路に沿って前記第1の試料ホルダを案内し、前記第1の終了位置から前記第1の開始位置まで前記第1の経路に沿って戻るように案内し、
前記第1の開始位置から前記第2の終了位置まで第2の経路に沿って前記第2の試料ホルダを案内し、前記第2の終了位置から前記第2の開始位置まで前記第2の経路に沿って戻るように案内する
ように構成された案内アセンブリを備え、
前記案内アセンブリは、前記第1の試料ホルダ及び前記第2の試料ホルダが、それぞれの経路の長さの少なくとも一部に沿って移動するにつれて互いに離間されるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記経路は、前記第1の開始位置及び前記第2の開始位置において若しくはその近傍において、並びに/又は前記第1の終了位置及び前記第2の終了位置において若しくはその近傍において平行である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記試料ホルダの各々の前記開始位置が同じであり、及び/又は前記試料ホルダの各々の前記終了位置が同じである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の開始位置及び/又は前記第2の開始位置は、試料装填位置であり、及び/又は
前記第1の終了位置及び/又は前記第2の終了位置は、試料分析位置又は試料取出し位置である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記案内アセンブリは、前記経路が前記経路に対して実質的に直交する方向に互いに離間されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記案内アセンブリは、前記経路間の分離が前記経路の長さに沿って変化するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記案内アセンブリは、前記経路が、前記経路の長さの一部のみに対して、又はそれらの長さの全てに対して、互いに離間されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記案内アセンブリは、前記第1の経路及び前記第2の経路がそれらの長さの少なくとも一部に沿って互いに離間され、前記試料ホルダがそれぞれの経路に沿って反対方向に同時に移動することを可能にするように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記案内アセンブリは、前記経路間の距離が、前記経路の一端におけるよりも、又は前記経路の両端におけるよりも、前記経路の中心又はその近傍において大きくなるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記案内アセンブリは、前記経路のうちの少なくとも1つ、好ましくは前記経路の各々が、
湾曲状の部分、及び/又は
実質的に直線状の部分を
備えるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記案内アセンブリは、前記試料ホルダをそれぞれの経路に沿って長手方向に案内するように構成された1つ又は複数の長手方向案内要素を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記案内アセンブリは、前記試料ホルダがそれぞれの経路に沿って移動するときに前記試料ホルダを横方向に案内し、及び/又は前記経路間の前記分離を変化させるように構成された1つ又は複数の横方向案内要素を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記1つ又は複数の長手方向案内要素は、長手方向案内ロッドを備え、及び/又は
前記1つ又は複数の横方向案内要素は、横方向案内ロッドを備える、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記案内アセンブリは、少なくとも1つの試料ホルダをそれぞれの経路に沿って移動させるように構成された少なくとも1つのキャリッジを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記1つ又は複数のキャリッジがそれぞれ、1つ又は複数の横方向案内要素を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記キャリッジのうちの少なくとも1つは、前記案内アセンブリの相補的チャネルに係合するように構成された突出部を備え、前記相補的チャネルは、前記少なくとも1つのキャリッジに前記試料ホルダのうちの少なくとも1つを前記試料ホルダのそれぞれの経路に沿って移動させるように構成され、好ましくは、前記相補的チャネルは、横方向案内要素及び/又は長手方向案内要素として機能する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記相補的チャネルは、前記案内アセンブリの表面を通る細長いチャネル、及び/又は前記少なくとも1つの突出部に係合するように構成された前記案内アセンブリの表面の細長い溝のうちの少なくとも1つを備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記相補的チャネルは、
湾曲状の部分、及び/又は
実質的に直線状の部分
を備える、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのキャリッジは、長手方向に案内され、開始点と終了点との間を実質的に直線的に移動する固定部分と、前記キャリッジが前記開始点と前記終了点との間を移動するときに前記固定部分から離れるように移動する、試料ホルダを保持するための横方向被案内部分とを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記案内アセンブリは、前記第1の経路に沿って前記第1の試料ホルダを案内するように構成された第1のガイドと、前記第2の経路に沿って前記第2の試料ホルダを案内するように構成された第2のガイドとを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記案内アセンブリは、前記第1の試料ホルダ及び前記第2の試料ホルダがそれらの試料ホルダの経路に沿って移動するときに実質的に平坦に保持されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記案内アセンブリは、前記試料ホルダに、前記試料ホルダのそれぞれの経路に沿った曲線状又は直線状の並進運動をさせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも1つの真空チャンバを更に備え、
前記第1の開始位置と、前記第2の開始位置と、前記第1の終了位置と、前記第2の終了位置とが、前記少なくとも1つの真空チャンバ内にある、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
請求項1に記載の前記装置と、分析器とを備える分析機器であって、前記装置は、前記試料ホルダ内の試料の分析のために前記試料ホルダを前記分析器に移動させるように構成されている、分析機器。
【請求項25】
前記分析器は、光子、電子、及び/又はイオンを使用して試料を分析するように構成された分光計、回折計、及び顕微鏡のうちの少なくとも1つを備える、請求項24に記載の分析機器。
【国際調査報告】