(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ブレーキシステムならびに切換可能な保持力を有する弁
(51)【国際特許分類】
B60T 8/92 20060101AFI20240829BHJP
B60T 8/36 20060101ALI20240829BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20240829BHJP
B60T 13/122 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B60T8/92
B60T8/36
B60T17/18
B60T13/122 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515573
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022073463
(87)【国際公開番号】W WO2023036607
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202021105878.1
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509159159
【氏名又は名称】アイピーゲート・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】IPGATE AG
【住所又は居所原語表記】Churerstrasse 160b, 8808 Pfaeffikon, Switzerland
(71)【出願人】
【識別番号】523351759
【氏名又は名称】ハインツ ライバー
【氏名又は名称原語表記】Heinz Leiber
【住所又は居所原語表記】Theodor-Heuss-Strasse 34, 71739 Oberriexingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ライバー
(72)【発明者】
【氏名】アントン ファン ザンテン
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB06
3D048CC05
3D048CC54
3D048DD02
3D048HH18
3D048HH26
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3D246BA02
3D246BA08
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3D246GB37
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3D246LA73Z
3D246MA03
3D246MA16
3D246MA37
(57)【要約】
本発明は、ブレーキシステムであって、-それぞれ分離したホイール回路(RK1-4)の構成部分である少なくとも2つのホイールブレーキシリンダ(RZ1-4)、-少なくともホイールブレーキシリンダ(RZ1-4)内の増圧(Pauf)のために機能する少なくとも1つの圧力供給部(DV)、-少なくとも1つのリザーバタンク(VB)、-少なくとも1つの電子開ループ制御または閉ループ制御装置(ECU)、-切換弁(SV2K1-4)であって、各ホイールブレーキシリンダ(RZ1-4)が、それぞれ1つの液圧接続管路を介して、各ホイールブレーキシリンダ(RZ1-4)と、切換弁(SV2K1-4)を少なくとも圧力供給部(DV)に接続可能なもしくは接続する少なくとも1つの別の液圧主管路との液圧的な接続を分離するおよび接続するために機能する1つの切換弁(SV2K1-4)に接続されている、切換弁(SV2K1-4)、を備えており、液圧接続管路と、この液圧接続管路に接続された前記ホイールブレーキシリンダ(RZ1-4)とはそれぞれ、1つのホイール回路(RK1-4)の構成部分である、ブレーキシステムにおいて、個々の前記ホイール回路(RK1-4)の各非密閉性の診断が行われ、診断結果に応じて、電子開ループ制御または閉ループ制御装置(ECU)が、ホイール回路(RK1-4)を所属の前記切換弁(SV2K1-4)の継続的な閉鎖によって遮断するか、または制動作用を生成するためにさらに作動させるかを決定することを特徴とする、ブレーキシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシステムであって、
それぞれ分離したホイール回路(RK
1-4)の構成部分である少なくとも2つのホイールブレーキシリンダ(RZ
1-4)と、
少なくとも前記ホイールブレーキシリンダ(RZ
1-4)内の増圧(p
auf)のために機能する少なくとも1つの圧力供給部(DV)と、
少なくとも1つのリザーバタンク(VB)と、
少なくとも1つの電子開ループ制御および閉ループ制御装置(ECU)と、
切換弁(SV2K
1-4)であって、各ホイールブレーキシリンダ(RZ
1-4)が、それぞれ1つの液圧接続管路を介して、前記各ホイールブレーキシリンダ(RZ
1-4)と、前記切換弁(SV2K
1-4)を少なくとも前記圧力供給部(DV)に接続可能なもしくは接続する少なくとも1つの別の液圧主管路との液圧的な接続を分離するおよび接続するために機能する1つの切換弁(SV2K
1-4)に接続されている、切換弁(SV2K
1-4)と、
を備え、
前記液圧接続管路と、前記液圧接続管路に接続された前記ホイールブレーキシリンダ(RZ
1-4)とはそれぞれ、1つのホイール回路(RK
1-4)の構成部分である、ブレーキシステムにおいて、
個々の前記ホイール回路(RK
1-4)の各非密閉性の診断が行われ、診断結果に応じて、電子開ループ制御および閉ループ制御装置(ECU)が、ホイール回路(RK1-4)を所属の前記切換弁(SV2k
1-4)の継続的な閉鎖によって遮断するか、または制動作用を生成するためにさらに作動させるかを決定することを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項2】
ホイール回路(RK
1-4)における非密閉性もしくは漏れ流(Q
leck)の程度を、以下の方法a)~e)、すなわち、
a)各前記ホイール回路(RK
1-4)における目標圧力(p
soll)を生成するために、予め規定された流体量に加えて付加的に前記圧力供給部(DV)によって追加圧送しなければならない液圧流体の必要量の検出、
b)前記各ホイール回路(RK1-4)における求められた絶対減圧(dp
ab)および/または圧力低下勾配(p
ab/dt)の検出、
c)前記目標圧力(p
soll)を生成するために予め規定された流体量(q)を前記ホイール回路(RK
1-4)に圧送し、次いで実際圧力(p
ist)を求めることにより、前記各ホイール回路(RK
1-4)における前記増圧の際の前記目標圧力値(p
soll)からの圧力偏差(dp=p
soll-p
ist)の検出、
d)前記圧力供給部(DV)による増圧中または圧力供給部(DV)が遮断された状態で、前記切換弁(SV2K
1-4)と前記圧力供給部(DV)とを接続する液圧管路内の圧力(p
ist)の時間的測定を介した、前記ホイール回路(RK
1-4)における非密閉性の診断、
e)目標圧力(p
soll)を生成するための前記圧力供給部(DV)を介した前記各ホイール回路(RK
1-4)の収容体積(Q)の測定であって、前記収容体積(Q)を前記圧力供給部(DV)によって、特に前記圧力供給部(DV)の駆動モータ(M)の電流測定かつ/または前記圧力供給部(DV)のピストンのピストン行程距離(ds)を介して求める、測定、
の1つ以上に基づき求める、請求項1記載のブレーキシステム。
【請求項3】
ホイール回路(RK
1-4)の非密閉性の上限値(Q
high)もしくは上限値範囲(dQ
high)を上回った場合に、それぞれ所属の前記切換弁(SV2K
1-4)が持続的に閉鎖され、ひいてはこのホイールブレーキシリンダ(RZ
1-4)による制動作用がそれ以上行われず、前記上限値(Q
high)未満かつ下限値(Q
low)以上で、前記各ホイールブレーキシリンダ(RZ
1-4)において設定すべき制動圧力(p
soll)を得るために時間的に制限されたかつ/または持続的な追加圧送が行われる、請求項1または2記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記上限値(Q
high)は、増圧のための前記圧力供給部(DV)の最大圧送出力によって規定されている、請求項3記載のブレーキシステム。
【請求項5】
漏れ流(Q
leck)が、前記圧力供給部(DV)の前記最大圧送出力の50~90%の場合、制動作用が減じられないように、またはごく僅かにしか減じられないように、前記漏れ流(Q
leck)を、前記圧力供給部(DV)によって追加圧送により補償する、請求項3または4記載のブレーキシステム。
【請求項6】
制動作用および走行安定性を最適にするために、電子開ループ制御および閉ループ制御装置(ECU)によって、非密閉のホイール回路(RK
1-4)を前記各切換弁(SV2K
1-4)の持続的な閉鎖によって遮断するか否かを、およびどの非密閉のホイール回路(RK
1-4)を前記各切換弁(SV2K
1-4)の持続的な閉鎖によって遮断するかを求める、請求項3から5までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記ホイールブレーキシリンダに所属の出口弁(AV
1-4)は、前記各ホイール回路(RK
1-4)の構成部分である、請求項1から6までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記ブレーキシステムは、ブレーキペダルを、特にマスタブレーキシリンダ(SHZ,THZ)に機械的に作用するブレーキペダルの形態のまたはブレーキ・バイ・ワイヤ式ブレーキシステムのための電子ブレーキペダルの形態のブレーキペダルを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記診断によって、前記ブレーキシステムにおけるシングルエラー、ダブルエラー、および漏れ速度(dQ;dQ/dt)を検出する、請求項1から8までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記切換弁(SV2K
1-4)に対して平行に、逆止弁(RV)が接続されていない、請求項1から9までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項11】
少なくとも1つのホイール回路(RK
1-4)においてまたは求められたすべての漏れ流の合計(ΣQ
leck,1-4)において、所定の漏れ流(Q
leck,min)を上回った場合に、前記ブレーキシステムは、警告メッセージを、特に光学的かつ/または音響的な警告を、特にディスプレイを用いて、前記少なくとも1つのホイール回路(RK
1-4)の故障を知らせる、請求項1から10までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項12】
ホイール回路(RK
1-4)における非密閉性の診断の際に、前記各ホイール回路(RK
1-4)の圧力・体積特性曲線(DVK)を考慮するもしくは使用する、請求項1から11までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項13】
前記圧力供給部(DV)と切換弁(SV2K
1-4)との間で、最大2つの別の弁(BP1,MVDV1,MVDV2)が、特に切換弁が、前記液圧接続管路内に配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項14】
前記圧力供給部(DV)と少なくとも一方のホイール回路(RK1,RK2)の切換弁(SV2K
1-4)との間で、最大2つの別の弁(MVDV1,MVDV2,BP1)が、特に切換弁が、前記液圧接続管路内に配置されていて、前記圧力供給部(DV)と他方のホイール回路(RK3,RK4)の少なくとも1つの別の切換弁(SV2K
1-4)との間で、1つだけの別の弁(MVDV1,MVDV2)が、特に切換弁が、前記液圧接続管路内に配置されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項15】
すべてのホイール回路(RK
1,RK
2,RK
3,RK
4)は、1つのブレーキ回路(BK)に属していて、1つの共通の液圧主管路(HL)を介して、
a)前記圧力供給部(DV)のプランジャシステムのただ1つの作業室(A)に接続されている、もしくは少なくとも1つの弁(MVDV1)を介して前記作業室(A)から分離可能である、または
b)前記圧力供給部(DV)の二重作用式ピストン・シリンダシステムの両作業室(A1,A2)に接続されているもしくは接続可能であって、この場合、二重作用式ピストンの両行程方向で、少なくとも1つのホイール回路(RK
1-4)において減圧および/または増圧を行うことができる、
請求項1から14までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項16】
1つのブレーキ回路(BK1,BK2)にそれぞれ2つのホイール回路(RK
1,RK
2;RK
3,RK
4)が属しており、前記ブレーキ回路はそれぞれ液圧ブレーキ回路管路(HL1,HL2)を有している、請求項1から14までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項17】
前記ブレーキ回路(BK1,BK2)は、回路分離弁(BP1)を介して互いに液圧的に接続可能もしくは互いに液圧的に分離可能である、請求項16記載のブレーキシステム。
【請求項18】
各ブレーキ回路(BK1,BK2)は、別個の液圧管路を介して、前記圧力供給部(DV)の二重作用式ピストン・シリンダシステムの各作業室(A1,A2)に接続されているもしくは接続可能であって、この場合、オプションとして、各液圧管路内に分離弁を配置することができる、請求項16または17記載のブレーキシステム。
【請求項19】
少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(RZ1-4)に、特にブレーキ回路(BK1,BK2)ごとのそれぞれ1つのホイールブレーキシリンダに、出口弁(AV)が配属されており、または前記ブレーキシステム全体に対して1つだけの出口弁(AV)が設けられている、請求項7から14または16から18のいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項20】
少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(RZ
1-4)に、特に2つのまたはすべてのホイールブレーキシリンダに、それぞれ1つの出口弁(AV)が配属されている、請求項15記載のブレーキシステム。
【請求項21】
前記ホイール回路(RK
1-4)の前記診断に加えて付加的に、
a)前記切換弁(SV2K
1-4)と前記圧力供給部との間に配置された前記弁(MVDV1,MVDV2,BP1,BP2)の診断を機能および/または密閉性に関して行う、かつ/または
b)前記切換弁(SV2K
1-4)の機能および/または密閉性の診断を行う、かつ/または
c)前記圧力供給部(DV)の機能および/または密閉性の診断を行う、
請求項1から20までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項22】
1つ以上のホイール回路(RK
1-4)内の非密閉性を診断するために、まずすべてのホイール回路(RK
1-4)のすべての切換弁(SV2K
1-4)を開放し、前記ホイール回路内の目標圧力(p
soll)の設定のために前記圧力供給部(DV)を使用し、前記実際圧力(p
ist)を前記目標圧力(p
soll)と比較し、所定の偏差を上回った場合に、個々のホイール回路(RK
1-4)のさらなる診断を、
a)1つのホイール回路(RK
i)において、特に以前に求められた実際圧力(pist)と目標圧力(psoll)との間の偏差に適合した非密閉性が求められるか、または
b)すべてのホイール回路(RK1-4)が順次に非密閉性に関して検査されるまで、順次行う、
請求項1から21までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項23】
1つだけのホイール回路(RKi)の非密閉性を検査するために、まず、1つのまたはすべてのブレーキ回路(BK1,BK2)のすべてのホイール回路のすべての切換弁(SV2k1-4)を閉鎖し、その後、検査すべき前記ホイール回路(RK
i)に所属の前記切換弁(SV2K
i)を開放して、次いで、
a)前記各ホイール回路(RK
i)もしくは各ホイール回路のブレーキシリンダ(RZ
i)内の目標圧力(p
soll)を前記圧力供給部により設定し、その際、前記実際圧力(p
ist)を、圧力トランスデューサ(DG)を用いて、かつ/または前記圧力供給部(DV)の前記駆動モータ(M)の測定された前記駆動電流に基づいて求め、求められた目標圧力(p
soll)と求められた実際圧力(p
ist)との偏差に基づいて、前記非密閉性の程度を求める、もしくは推定する、または
b)前記圧力供給部(DV)を用いて圧力変更を行わず、各ホイール回路もしくはブレーキ回路における前記実際圧力を、特に圧力トランスデューサ(DG)を用いて求め、求められた減圧に基づいて、前記非密閉性の程度を求めるもしくは推定する、
請求項22記載のブレーキシステム。
【請求項24】
前記圧力供給部(DV)は、電気モータ駆動装置(M)を有しており、前記駆動装置は、
a)ピストン・シリンダシステムであって、
aa)シングル行程ピストンおよび1つの作業室、または
bb)ダブル行程ピストンおよび2つの作業室
を備えたピストン・シリンダシステムを駆動する、または
b)回転ポンプを駆動する、
請求項1から23までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項25】
前記圧力供給部(DV)のために回転ポンプまたはピストンポンプを使用する場合、前記ブレーキ回路から前記ポンプの前記圧力出口を分離するために、磁石弁(MVDV)または逆止弁(RV)が設けられている、請求項24記載のブレーキシステム。
【請求項26】
前記ホイールブレーキシリンダ(RZ
i)に割り当てられた前記出口弁(AV)を介して減圧(Pab)が行われ、特に減圧(Pab)の目標勾配を得るために、1つ、2つ、またはそれ以上の出口弁(AV)が開放される、請求項25記載のブレーキシステム。
【請求項27】
前記ブレーキシステムもしくは前記個々のホイール回路(RK1-4)における非密閉性の検査のための前記診断を、以下に挙げる時点もしくは走行状況、すなわち、
a)制動中、
b)車両停止中または最大速度(v
max)未満の速度、特に、例えば30km/h以下の速度、
c)所定の時間間隔、
d)車両スタートごと、
のうちの1つにおいて行うもしくは行うことができる、請求項1から26までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項28】
a)前記ブレーキシステムの各ホイール回路の前記診断の際に、故障を検査し、かつ/または
b)前記診断の際に、前記圧力供給部(DV)の実際ピストン位置(Sk
ist)および前記ブレーキシステムの実際圧力(p
ist)を使用し、かつ/または前記診断の際に、前記ブレーキシステムおよび/または前記ホイール回路の記憶された圧力・体積特性曲線(DKV)を使用し、かつ/または
c)前記圧力・体積特性曲線(DKV)を使用して前記ブレーキシステム内の圧力から、前記圧力供給部(DV)の目標ピストン位置(Sk
soll)を導き出し、かつ/または
d)実際ピストン位置と目標ピストン位置との間の差から、前記ブレーキシステムのエラー機能を導き出し、かつ/または
e)非密閉性によるエラー機能の際には、漏れ体積流を前記圧力供給部(DV)による相応の追加圧送によって補償する、
請求項1から27までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項29】
前記ブレーキ回路(BK)もしくは前記2つのブレーキ回路(BK1,BK2)の1つの液圧主管路または2つの液圧主管路(HL1,HL2)は、特にシングルマスタブレーキシリンダ(SHZ)またはタンデムマスタブレーキシリンダ(THZ)の形態のマスタブレーキシリンダの1つのまたはそれぞれ1つの作業室に液圧的に接続されており、この接続は、1つのまたは2つの、特に「常開の」切換弁(9)によって遮断可能である、請求項1から28までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項30】
少なくとも1つのブレーキ回路(BK,BK1)もしくは複数のブレーキ回路(BK1,BK2)は、1つまたは2つの、特に「常閉の」切換弁(MVe,BP1,BP2)によって、前記圧力供給部(DV)から、特にエラー時に分離可能である、請求項1から29までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項31】
電磁的な前記切換弁(SV2K
1-4)および/または前記圧力供給部(DV)の駆動装置は、少なくとも2重の冗長的な巻線および/または制御部を有している、請求項1から30までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項32】
前記ホイール回路(RK1-4)は2つのブレーキ回路(BK1,BK2)に分配されており、両前記ブレーキ回路(BK1,BK2)は、回路分離弁(BP1)によって遮断可能な液圧管路によって接続されていて、一方のブレーキ回路(BK2)は、介在する磁石弁なしに前記圧力供給部に堅固に接続されていて、もしくは結合されていて、他方のブレーキ回路(BK1)は、液圧接続部(HL5)を介して前記マスタブレーキシリンダ(SHZ,THZ)に接続されており、前記液圧接続部(HL5)は「常開の」切換弁(9)によって遮断可能である、請求項1から31までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項33】
前記ブレーキシステムは、
a)もっぱら純粋に液圧的に作用するホイールブレーキシリンダ(RZ1-4)
b)純粋に液圧的に作用するホイールブレーキシリンダ(Rz1,RZ2)および電気モータにより操作されるホイールブレーキ(EMB1,EMB2)を有している、請求項1から32までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項34】
前記ブレーキシステムは、アンチロックブレーキシステム(ABS)および/または電子安定性プログラム(ESP)を有している、もしくはこれらを模倣している、請求項1から33までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項35】
少なくとも1つのホイール回路(RK
1-4)の故障時にヨーモーメントが生じた場合に、圧力制御の際に前記電子安定化システム(ESP)のヨーモーメント制御が使用されるもしくは介入する、請求項1から34までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項36】
特に前記マスタブレーキシリンダ(SHZ/HZ)の非密閉性または前記弁(9)の非密閉性による前記マスタブレーキシリンダ(SHZ/HZ)内の容積変化の検知を、測定されたペダル距離から導き出される、前記マスタブレーキシリンダ(SHZ/HZ)内の目標圧力と、前記マスタブレーキシリンダ(SHZ/HZ)内の実際圧力との永続的な比較により行う、かつ/または選択可能な境界値が超過された場合に、前記容積変化の補償を、前記圧力供給部(DV)によって通常のブレーキペダル特性を維持するように行い、前記補償の間は、前記ホイールブレーキシリンダにおける圧力制御を停止する、請求項1から35までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項37】
前記ホイール回路(RK
1-4)に割り当てられた前記切換弁(SV2K
1-4)と前記圧力供給部(DV)との間には弁が設けられていない、請求項1から36までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項38】
特に請求項1から37までのいずれか1項記載の液圧的に機能するブレーキシステムのための切換弁(SV2K
1-4)であって、前記切換弁(SV2K
1-4)は、弁部材もしくは弁プランジャ(7)を開弁位置と閉弁位置との間で調節することができる電磁的な駆動装置(EM1)を備えた電磁弁である切換弁(SV2K
1-4)において、
前記切換弁(SV2K
1-4)は、固有の磁界によって、前記弁部材もしくは弁プランジャ(7)に力(FM2)を加える力付加装置(EM2,9)を有していることを特徴とする、切換弁(SV2K
1-4)。
【請求項39】
前記切換弁(SV2K
1-4)は、前記弁部材もしくは弁プランジャ(7)に、前記弁の引込み閉鎖を阻止する力を加える戻しばね(RF)を有している、請求項38記載の切換弁(SV2K
1-4)。
【請求項40】
前記弁(SV2k)は、無通電開放式の弁または無通電閉鎖式の弁であって、この場合、無通電とは、前記電磁的な駆動装置(EM1)が通電されていないことを意味する、請求項38または39記載の切換弁(SV2K
1-4)。
【請求項41】
前記力付加装置(EM2,9)の前記力(FM2)は、通電可能な電磁石および/または永久磁石によって生成可能もしくは生成される、請求項38から40までのいずれか1項記載の切換弁(SV2K
1-4)。
【請求項42】
前記力付加装置(EM2,9)の前記力(FM2)は、前記電磁的な駆動装置(EM1)の力(FM1)の逆向きに作用する、請求項40または41記載の切換弁(SV2K
1-4)。
【請求項43】
前記力付加装置(EM2,9)の前記力(FM2)は、可能な戻しばね(RF)の力(FRF)と等価であり、磁気回路が相応に寸法設定されている場合には、戻しばね(RF)は不要である、請求項42記載の切換弁(SV2K
1-4)。
【請求項44】
前記ブレーキシステムの状態に、前記切換弁(SV2K
1-4)の望ましくない引込み閉鎖が見込まれる場合にのみ、コイルの通電により前記力付加装置(EM1)によって力(FM2)を発生させ、これにより前記力付加装置(EM1)はこのような状態でしかエネルギを消費しない、請求項38から43までのいずれか1項記載の切換弁(SV2K
1-4)。
【請求項45】
電磁的な保持力は、電流強度および可動子の運動を介して診断機能によって診断される、請求項38から44までのいずれか1項記載の切換弁(SV2K
1-4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
ほぼ80年前から、2つのブレーキ回路を備えた現在の2系統制動システムが安全上の理由から定着しており、車両コンセプトに応じて、
a)対角線型および
b)白/黒型もしくは前車軸/後車軸型
のブレーキ回路配管が採用されている。1つのブレーキ回路故障時には、制動作用が、a)では約50%、b)では約70%まで減じられる。統計によると、1年につき0.001%のブレーキ回路故障が見込まれる。減じられた制動作用もしくはブレーキの完全な故障に基づいて、著しい事故のリスクが生じている。
【0002】
独国特許出願公開第10202018213306号明細書には、圧力勾配を評価することにより、ブレーキ回路の非密閉性によるブレーキ回路故障を検知するシステムが記載されている。
【0003】
ほぼすべての車両が、主に液圧式に制動される4つすべての車輪のための電子式のブレーキ制御システムを有している。各ホイールブレーキシリンダは、少なくとも1つのまたは2つの電磁制御式の調整弁に接続されていて、これらの調整弁は、例えば車輪のロックを阻止するために、電気的な制御ユニット(ECU)によって電気的に制御される。
【0004】
ABS/EPS機能を備えた今日では普通のブレーキシステムでは、通常、各ホイールブレーキシリンダに、それぞれ1つの入口弁と出口弁とが割り当てられており、入口弁は大抵、迅速な減圧の際に、しばしば切換弁とも呼ばれる入口弁が動圧により閉じないようにするために、並列に接続された逆止弁を有している。
【0005】
所属の逆止弁を備えた入口弁が故障して、非密閉になると、今日の2系統ブレーキシステムでは、ホイールブレーキシリンダの故障の際には大抵、一方のブレーキ回路全体が故障し、これにより、制動作用は少なくとも30%減じられる。
【0006】
発明の課題
本発明の課題は、1つのホイール回路のみが故障したもしくは非密閉になった場合に、一方のブレーキ回路全体が故障してしまうことを阻止することである。ホイール回路とはこの場合、ホイールブレーキシリンダまでの弁、例えば入口弁へのホイールブレーキシリンダの液圧接続部を含むホイールブレーキシリンダであると理解される。4回路ブレーキシステムとは、この場合、1つのまたは2つのまたは3つのホイール回路の故障時に、その他3つのもしくは2つのもしくは1つのブレーキ回路がまだ機能することのできるブレーキシステムであると理解される。
【0007】
発明の利点
上述したことを達成するために、圧力供給部から液圧制御ユニットの出口に至るまでの間で管路接続部に装着される故障する構成要素はできるだけ僅かでなければならない。そのような構成要素としては、例えば電磁的または機械的に操作される弁が挙げられる。最終的には、圧力供給部から各ホイールブレーキシリンダへの管路接続部の端部で、「無通電常開の」設計のただ1つの弁だけが使用されることが重要である。ABS/ESPのために通常使用される入口弁は、並列の逆止弁を有しており、このような逆止弁は、密閉性が確実でないと見なされており、もはや使用することはできない。上述したように、迅速な減圧時に入口弁が動圧によって閉じられないようにするために逆止弁が設けられていた。
【0008】
本発明による弁SV2kとは、ホイールブレーキシリンダに割り当てられた弁であると理解され、この弁を介して、このホイールブレーキシリンダのみの増圧のために液圧媒体が流れる。ホイール回路とはこの場合、ホイールブレーキシリンダまでの弁の液圧接続部を含むホイールブレーキシリンダであると理解される。液圧媒体は、勿論、減圧のために、割り当てられたホイールブレーキシリンダから弁SV2kを通ってブレーキ回路BK1もしくはBK2へと戻るように流れることもできる。
【0009】
本発明は、上述した問題を回避するために、弁SV2kもしくは「無通電常開の」タイプの切換弁を使用しており、この弁の弁部材は、第1の電磁的な駆動装置によって開弁位置から、弁部材が弁座に押し付けられる閉弁位置へと調節される。電磁的な駆動装置が通電されていないもしくは十分には通電されていない場合には、弁ばねが、弁作動部材を初期位置、すなわち開弁位置へと押す。本発明は、開弁位置で、開弁位置の方向に向けられた、ひいては弁ばねを支援するまたは弁ばねに代わる付加的な力を弁部材へと加え、これにより弁部材に開弁位置に向かって力を負荷する高められた合力を生じさせる力付加装置を想定している。
【0010】
力付加装置は切換可能であってもよく、例えば、実際の弁駆動装置に加えて付加的な電磁石によって形成されていてもよい。したがって、力付加装置は、付加的に弁部材に加えられる力を選択的にブレーキシステムの状態に応じてオン・オフすることができるので、能動的な力付加装置とも呼ぶことができる。しかしながら、例えば、永久磁石の使用により、力付加装置が受動的に作用することも可能である。力付加装置が、電磁石ならびに永久磁石を有している場合も、本発明によるものである。上述したすべての実施形態では、有利には、弁が意図せず吸引閉鎖されないように弁部材を開放位置に保持するために、力付加装置によって、弁ばねを支援する力が弁部材に加えられる。
【0011】
したがって、単に能動的な力付加装置では、弁SV2kの閉鎖のために弁の駆動装置は単に、切換可能な力付加装置に基づきより小型に寸法設計することができる弁ばねの力に抗して作用すればよく、これにより弁SV2kは、確実に閉じられ、高い押圧力により密閉性が保証されている。
【0012】
純粋に受動的な力付加装置では、弁SV2kの実際の作動駆動装置は、受動的に、ひいては持続的に作用する付加的な力を克服するために、開放位置から閉鎖位置の方向への行程運動の開始時にのみ高い力を加えればよい。空隙が増大するほど、受動的な力付加装置の力は急速に減少し、弁の閉鎖位置ではそれほど強く作用しない。
【0013】
つまり、弁SV2kは、ホイールブレーキシリンダRZに対するブレーキ回路BKのための安全ゲートである。本発明によるブレーキシステムにおいて、液圧的な制御ユニットからホイールブレーキシリンダへの4つの液圧接続部のうちの1つが故障すると、またはホイールブレーキシリンダが非密閉である場合には、本発明による弁SV2kによって、故障した液圧接続部もしくは故障したホイールブレーキシリンダを残りのブレーキシステムから、高い確実性をもって分離することができる。
【0014】
力付加装置は、急速な減圧が行われなければならない場合にのみオンにされればよい、もしくは機能すればよい。ブレーキシステムのその他すべての作動状態では、力付加装置の付加的な保持力もしくは支援力は不要であるので、有利にはエネルギを節約することができる。これにより、本発明によるブレーキシステムでは、1つのホイール回路の故障時には、この故障した1つのブレーキ回路の制動作用のみが省かれ、残り3つのホイール回路の制動作用は引き続き利用される。したがってまだ、4つの完全なホイール回路から3つの完全なホイール回路への制動作用の低減しか生じておらず、したがって、前車軸における1つのホイール回路の故障時には、制動作用の損失は約35%にすぎず、1つの完全なブレーキ回路ひいては2つのホイール回路が故障した場合に、黒/白ブレーキ回路配管に関して上述したような70%とは異なる。
【0015】
上述した弁は、単独でも、以下に記載するブレーキシステムとの組み合わせにおいても特許請求される。以下に記載する本発明によるブレーキシステムは、有利には、上述した弁を備えているのが望ましい。しかしながら、本発明によるブレーキシステムが別種の弁と共に動作されることも考えられる。
【0016】
したがって、本発明によるブレーキシステムは、4つのホイール回路を有していて、そのうちそれぞれ2つのホイール回路が1つのブレーキ回路に割り当てられている。1つのホイール回路が故障すると、有利にはその他3つのブレーキ回路が制動作用のために提供される。
【0017】
本発明によるブレーキシステムの機能安全性は、ブレーキ液中の汚染粒子に関しては、付加的に、弁の入口および/または出口に小さなメッシュ幅を有する少なくとも1つのフィルタを組み込むことによって高めることができる。メッシュ幅は、これらの小さな汚染粒子が弁SV2kの閉鎖状態で、圧力供給部によって補償することができるが、圧力供給部の圧送量を介した診断によっても、リザーバタンク内のレベルを介した診断によっても検知可能である程度の小さな非密閉性ひいては僅かな通流量しか生じないように小さく選択されることが望ましい。
【0018】
本発明による弁SV2kの機能を検査するために、例えば診断の際に、各ホイール回路における収容容積および圧力の時間的推移の測定、およびホイール回路の以前に求められた圧力・体積特性曲線との比較を実施することができる。この場合、診断は、各制動時にかつ/または停止時にも、またはメンテナンスの際に実施することができる。
【0019】
弁SV2kは、上述したように逆止弁なしで作動するが、様々な要求を考慮している。したがって、両方向で通流量が大きな場合でも、確実に開放されたままでなければならず、つまり、通流量が多い場合に弁座における作用によって、弁円錐および弁ばねに力が作用し、弁が自動的に閉じるという今日の弁に典型的な弱点は生じてはならない。
【0020】
有利には、力付加装置に加えて付加的に、シール円錐部、戻しばねおよび弁プランジャの寸法を相応に構成することによって弁SV2kを最適化することができる。入口弁とも呼ぶことができるが、ホイールブレーキシリンダ内の圧力を低下させることもできる弁の閉鎖位置において、開放押圧力は、この位置では開放位置におけるよりも高い力を有していて、このことは磁石回路の寸法設定に関して、所要の力が相応に高くのるので望ましくない累進的なばねの使用時よりも著しく小さいことが望ましい。
【0021】
本発明によるブレーキシステムは、様々な弁回路を有することができる:
a)それぞれ割り当てられたホイールブレーキシリンダのために増圧および減圧の両方を行う、それぞれ4つのホイールブレーキシリンダのための4つの弁SV2k;
b)それぞれ4つのホイールブレーキシリンダのための4つの弁SV2k、ならびに2つの出口弁;
c)4つの弁SV2kおよび4つの出口弁。
【0022】
1つのホイール回路のための1つの出口弁を使用する場合、増圧Paufおよび減圧Pabのホイール個別の制御が可能である。1つのホイール回路において非密閉性が生じた場合には、有利には診断回路が、制動時および駐車時の両方で故障しているホイール回路を識別し、このホイール回路に属する弁SV2kを閉鎖することができ、これによって、このシングルエラーの場合には、引き続き3つのホイール回路が、ダブルエラーの場合には、すなわち2つのホイール回路が同時に故障している場合には、「ワーストケース」として2つのホイール回路が利用可能である。これに対し従来のブレーキシステムでは、「ワーストケース」では、ブレーキの完全故障となる。
【0023】
したがって要するに、弁SV2kによる入口弁における僅かな変更および逆止弁の省略によって、有利には、高い安全上の利益が得られることがわかる。弁SV2kの相応の構造的な構成では、安全性の利益に加えて付加的にコスト削減が可能である。
【0024】
本発明によるブレーキシステムは、4つの液圧的なホイール回路ではなくて、その構造が公知である、例えば液圧式に動作する前輪ブレーキに通じる液圧管路と、後車軸に設けられた電動モータ式に動作するブレーキ(EMB)との単に電気的な接続とを備えた、混合式の液圧電気ブレーキシステムのように構成することもできる。この場合も、液圧的なホイール回路が、上述した構成に相応に構成されるならば、同様の利点が得られる。
【0025】
説明した弁コンセプトの他に、圧力供給部の異なるコンセプト、例えば自動運転のレベル2のための1つだけの圧力供給部、または自動運転のレベル3からレベル5のための2つの圧力供給部も可能であり、この場合、第2の冗長的な圧力供給部は、ピストンポンプまたは回転ポンプを含んでいてもよい。回転ポンプは、コスト的な利点が著しい。ピストンポンプの場合、圧力供給部の出口に、磁石弁の代わりに単なる逆止弁を使用することができ、これは、圧力供給部の故障時に同様の利点を有し、かつコスト的に有利である。このブレーキシステムでは、通常制動時の減圧は、圧力供給部のピストンの制御を介して行うことはできず、圧力トランスデューサの圧力トランスデューサ信号を使用して出口弁の制御を介して行うことができる。少なくとも2つの出口弁AVが使用されるので、冗長的な減圧も行われる。減圧速度の必要に応じて、かつ出口弁AVの数に応じて、1つ、2つ、またはそれ以上の出口弁を開放することができる。
【0026】
圧力供給部をブレーキ回路から分離するために、磁石弁が設けられていてもよい。しかしながら、冗長的な巻線回路、例えば2×3相を、かつ/または冗長的な制御装置を備えた駆動装置を備えた圧力供給部が設けられているならば、ホイール回路に割り当てられた切換弁SV2k1-4と圧力供給部DVとの間に弁が設けられていないように、このような分離弁を省くこともできる。この場合、例えば、非密閉のピストンシールまたは小さなピストンの遊びによるブレーキシステムの故障を阻止するために、追加圧送による補償が行われる。
【0027】
有利には、上述したブレーキシステムでは、ロジスティクス、メンテナンスおよび認証許可等の様々な分野における通常の車両調整を省略することができる。
【0028】
図面の説明
以下に、図面につき、本発明によるブレーキシステムおよび使用される弁の可能な様々な実施形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】4つの液圧管路を介して液圧ユニットに接続されている4つの液圧的なホイールブレーキを備えた本発明によるブレーキシステムの構造を示す図であり、このブレーキシステムは、4つのホイールブレーキにそれぞれ割り当てられた本発明による弁SV2kの他にさらに付加的な弁を有している。
【
図1a】ABS制御サイクルにおける典型的な制動圧推移を示す図である。
【
図1b】前車軸に液圧操作されるブレーキを、後車軸に電気操作されるブレーキを備えた混合ブレーキシステムの構造を示す図である。
【
図2】力付加装置を備えた弁SV2kの原理的な構造を示す図である。
【
図2a】力付加装置の力の推移を弁可動子行程に関して示す図である。
【
図2b】電磁的な弁力の推移と戻しばねの力とを弁可動子行程に関して示す図である。
【
図2c】電流制御時の弁電流、電流制御時の電磁的な弁力の推移、および力付加装置の力を弁可動子行程に関して示す図である。
【
図2d】標準的な弁の改変としての
図2による弁SV2kの構造を示す図である。
【
図3a】4つのホイール回路を備えた本発明によるブレーキシステムのために可能な弁回路を示す図である。
【
図3b】4つのホイール回路を備えた本発明によるブレーキシステムのために可能な弁回路を示す図である。
【
図3c】4つのホイール回路を備えた本発明によるブレーキシステムのために可能な弁回路を示す図である。
【
図3d】4つのホイール回路を備えた本発明によるブレーキシステムのために可能な弁回路を示す図である。
【
図4a】本発明によるブレーキシステムのための、制動中の診断経過を示す図である。
【
図4c1】ホイールブレーキシリンダにおける非密閉性および弁SV2kにおける非密閉性の際の診断経過を示す図である。
【
図4c2】ホイールブレーキシリンダにおける非密閉性および弁SV2kにおける非密閉性の際の診断経過を示す図である。
【
図4c3】ホイールブレーキシリンダにおける非密閉性および弁SV2kにおける非密閉性の際の診断経過を示す図である。
【
図4d】本発明によるブレーキシステムのための、制動中または車両停止中のシングルエラーに関する第1の代替的な診断経過を示す図である。
【
図4e】本発明によるブレーキシステムのための、制動中または車両停止中のシングルエラーに関する第2の代替的な診断経過を示す図である。
【
図4f】本発明によるブレーキシステムのための、制動中または車両停止中のダブルエラーに関する第1の代替的な診断経過に基づいて構成される診断経過を示す図である。
【0030】
図1は、4つのホイール回路を備えた本発明によるブレーキシステムの簡略化された構造を示しており、4つのホイール回路は、ホイールブレーキシリンダRZ1~RZ4と弁SV2k1~SV2k4との間に液圧接続部HL1~HL4を有している。この場合、例えば、ホイール回路1は、ホイールブレーキシリンダRZ1と液圧管路HL1とから成る。出口弁は、オプションとして設けられていてもよく、この場合、1つ、2つ、または4つの出口弁が設けられていてもよい。オプションとしての出口弁AVとリザーバタンクVBとの間の液圧接続部は、破線で示されている。弁SV2kは、ブレーキ回路BK1およびBK2を介して圧力供給部DVへの液圧接続部を有している。ブレーキ回路BK1およびBK2は、
図3a~
図3cに符号BP1でより詳細に構造が示されている無通電開放式の回路分離弁KTVを介して選択的に互いに接続することができる。この回路分離弁KTVは、安全上の理由から3ポート2位置弁として構成されてもよく、この場合、弁の1つのポートには、圧力供給部DVが接続され、他の2つのポートは、2つのブレーキ回路に接続されており、これにより、選択的に圧力供給部は、一方のブレーキ回路BK1もしくは他方のブレーキ回路BK2に接続可能である。公知のように、圧力供給部DVとしては、いわゆる無段階のシングル行程ピストンを備えたピストンポンプ、および往復行程を行うダブル行程ピストンとしての段付きピストンを備えたピストンポンプが使用される。シングル行程ピストンを備えた圧力供給部DVは1つの圧力出口しか有していないのに対し、ダブル行程ピストンを備えた圧力供給部DVは2つの圧力出口を有している。1つだけの圧力出口を備えた圧力供給部DVは、例えば、1つだけの圧力室を備えたモータ駆動式のピストン・シリンダユニットによって、または例えば回転ポンプによって形成されていてもよい。2つの圧力出口を備えた圧力供給部DVは、例えば、2つの圧力室を備えたモータ駆動式のダブル行程ポンプによって形成されていてもよく、この場合、各圧力室もしくは作業室が、1つの出口に接続されている、もしくは1つの出口を形成している。ダブル行程ピストンを備えた圧力供給部DVは、有利には、連続圧送のために使用されて、4回路ブレーキシステムにおいてエラーが発生した場合でも、漏れ補償のための追加供給における利点を有している。ダブル行程ピストンを含む圧力供給部DVは、往復行程のために弁の切換を必要とする。両ピストン形式は、両ブレーキ回路BK1およびBK2の分離のために回路分離弁KTVも選択的に利用している。安全弁としてのSV2kを備えた4回路ブレーキシステム、およびより安全なn回路ブレーキシステムでも、回路分離弁KTVを、および圧力供給部DVの2回路供給を省くことができる。1つのホイール回路RK1,・・・,RK4の故障時における弁SV2kによる安全性の利点により、例えば、ホイールブレーキシリンダ1の非密閉性および弁SV2k1の非密閉性のような2重の故障安全措置を省いた状態で、弁KTVを省くことができる。
【0031】
1つだけの出口しか有していない圧力供給部を使用する場合には、弁KTVは、圧力供給部を選択的にブレーキ回路BK1およびBK2に接続するために、またはこれらから分離するために使用される。これに対して、2つの出口を有した圧力供給部を使用する場合には、圧力供給部DVの各出口に、その都度1つのブレーキ回路BK1もしくはBK2が接続され、この場合、
図1に示されているように、両ブレーキ回路BK1およびBK2の選択的な接続もしくは分離のために回路分離弁KTVが使用される。圧力供給部DVは、好ましくは、1つまたは2つの相と、相応の個数の巻線制御部とを備えたECモータを有しているので、冗長的な動作が保証されている。1つまたは2つの圧力トランスデューサDGが、実際圧力Pistを求めるために両ブレーキ回路BK1,BK2内に設けられてもよい。マスタブレーキシリンダは、選択的に、シングルマスタブレーキシリンダSHZとして、またはタンデムマスタブレーキシリンダTHZとして形成されていてもよく、マスタブレーキシリンダを介しては、圧力供給部DVの故障時に、ブレーキペダルによって圧力を形成することができる。マスタブレーキシリンダHZには、リザーバタンクVBが接続もしくは配置されていてもよく、リザーバタンクは、センサターゲット2が配置されたフロートを有しており、開ループ・閉ループ制御ユニットECU内には、リザーバタンクの充填レベルを検出するためにセンサエレメント1が設けられている。
【0032】
図1aは、ホイールブレーキシリンダ内の標準ABS制御サイクルにおける典型的な制動圧推移P
RZを示している。不安定なホイールスリップに基づく制動圧低減後の時点1では、安定したホイールスリップを生じさせることができるように制動圧は時点2まで一定に保たれる。時点2では、安定したホイールスリップが達成され、タイヤと路面との間の制動力の最大値に再び急速に達することを目的として、制動圧は急速に、すなわち大きな勾配で上昇する。時点3では、制動力は、タイヤと路面との間の最大制動力を僅かに下回っている。制動圧は、今や、ゆっくりと、すなわち小さな勾配で上昇し、これによって、制動力は、タイヤと路面との間の制動力の最大値付近に長期に維持される。時点4では、制動圧の上昇にもかかわらず、タイヤと路面との間の制動力は低下している。ホイールは著しく減速し、ホイールスリップは不安定であり、出口弁AVの開放によって圧力が減じられる。時点4と時点5との間ではホイールスリップは不安的であり、極めて急速に大きくなるおそれがあるので、この期間に、制動圧を極めて急速に、すなわち大きな勾配で減じなければならない。時点5では、ホイールは再び加速され、再び安定したホイールスリップを生じさせることができるように、圧力は一定に保たれる。時点6では、安定したホイールスリップに到達し、制動圧を再び高めることができる。時点3と時点4との間の制動圧の小さな勾配は、弁SV2kの電流開ループ制御または電流閉ループ制御により達成される。このためには、
図1に示したような弁の接続が必須である。時点4と時点5との間の制動圧勾配は、ホイールブレーキシリンダ内の制動圧に依存していて、すなわち、ホイールブレーキシリンダ内の圧力P
RZが高い場合は、勾配は大きく、ホイールブレーキシリンダ内の圧力P
RZが低い場合は、勾配は小さい。ホイールブレーキシリンダ内の制動圧が小さい場合、例えば、P
RZ=10barの場合、勾配を大きくするために、出口弁AVの液圧抵抗が小さいことが望ましい。ホイールブレーキシリンダ内の大きな制動圧のためには、例えば、P
RZ=100barのためには、正確な圧力調節のために、かつ騒音を小さくするために、勾配が大き過ぎないようにするために、出口弁AVの液圧抵抗がより大きいことが望ましい。その結果、出口弁の液圧抵抗は、常に、妥協的なものでしかない可能性がある。
【0033】
既に説明したように、時点3と時点4との間のホイールブレーキシリンダ内の制動圧増圧の小さな勾配は、弁SV2kの電流開ループ制御または電流閉ループ制御により達成される。このためには、
図1に示したような弁SV2kの、例えばSV2k1の、液圧的な接続が必須である。
【0034】
例えば、ホイールブレーキシリンダRZ1内の制動圧増圧の勾配制御では、弁SV2k1の液圧抵抗に、電流開ループ制御または電流閉ループ制御によって影響を与える。弁SV2k1が開放されている場合、ホイールブレーキシリンダRZ1内への制動圧増圧の際には、ブレーキ回路BK1からホイールブレーキシリンダRZ1内へと体積流が流入する。この場合、体積流は、弁可動子(図では、SV2k1のボール)と弁SV2k1の弁座との間の狭い弁ギャップを通流する。これにより、弁ギャップ上流の、すなわちブレーキ回路BK1の側の制動圧は、弁ギャップ下流の制動圧よりも大きい。この差圧は、弁可動子に作用し、これにより、弁開放の方向で作用する差圧力が弁可動子に加えられる。弁SV2k1が通電されると、弁の閉鎖位置の方向で弁可動子に対して作用する磁力が生じる。このような磁力によって、可動子は、弁閉鎖の方向で動き、弁ギャップは小さくなり、これにより体積流が、ひいてはホイールブレーキシリンダRZ1内の増圧勾配が減じられる。弁SV2k1に対する電流が大きくなるほど、ホイールブレーキシリンダRZ1内の制動圧増圧勾配は小さくなる。このようにして、ホイールブレーキシリンダRZ1内の制動圧増圧勾配に、弁SV2k1の電流開ループ制御または電流閉ループ制御によって影響を与えることができる。
【0035】
図1bは、前車軸に液圧操作されるブレーキを、後車軸に電気操作されるブレーキEMBを備えた混合ブレーキシステムを示している。SV2k弁を備えた前車軸の液圧的な切換は、
図1による実施形態と同じであり、圧力供給部DVに対する単一の接続部を有している。接続管路HL5には、
図1に示した実施形態でも設けることができるシングルマスタシリンダSHZに対する付加的な分離弁が配置されている。この弁は、通常動作では閉鎖されている。圧力供給部DVは、好ましくは冗長的に、2×3相の巻線制御を介して駆動されるECモータによって駆動される。これにより、1つの巻線における単一エラーの場合、まだ約70%の制動作用を提供することができる。
【0036】
図2は、上述した実施形態のために必要な特別な弁SV2kを示しており、この弁は、両通流方向で確実に機能し、すなわち、例えば、100cm
3/秒~120cm
3/秒のような大きな通流量、かつ例えば160bar~220barのような、弁を介した大きな差圧のもとでも確実に機能する。特に、上記範囲に関しては、この弁SV2kでは、自動的に閉じないことが保証されている。本発明による弁SV2kは、可動子6、弁作動部材もしくは弁プランジャ7および弁座8ならびに戻しばね13を含む電磁回路EM1を備えた電磁弁の典型的な構造を有している。
図2において電磁回路EM2により形成された力付加装置が相応に形成されているならば、戻しばね13は省かれてもよい。弁駆動部EM1は、(
図2a参照)行程hにわたり著しく累進的な力FM1を生じさせ、かつ可動子を戻すための戻しばね13は、行程hにわたって累進的な戻し力FRFを生じさせる。可動子6は、
図2の左の部分図で、本発明による力付加装置を成す第2の力生成エレメントに連結されている。第2の力生成エレメントは、可動子6aを含む第2の電磁回路EM2から成っていてもよく、その切換可能な力FM2は、第1の電磁回路EM1の力FM1の逆方向に作用する。より安価な態様として、受動的な力付加装置として、磁極プレート10を備えた小さな永久磁石切換磁石回路を使用することもできる。FM2の力作用は、FM1の逆方向に作用し、弁の開放時に比較的強い力で作用して、行程hにわたり、所望される力の著しい低下を伴う。力FM2は、(
図2b参照)行程終了時に、通常の可動子の戻しを行うのになお十分な大きさであり、したがって、通常の戻しばね13の代用とされてもよい。
図2cは、電流強度の関数としての力供給源FM1と永久磁石の場合のFM2との相互作用を示している。圧力P2が圧力P1よりも大きい場合に、弁開放の方向に向けられる力FPを有した差圧P2-P1が、閉弁位置で弁座に作用する。開弁位置では、弁を通る体積流Qによって上述の液圧力FHが弁座に作用し、この液圧力は、弁SV2kがどのように圧力供給部DVおよびホイールブレーキシリンダRZに接続されているかによっては、またどの方向に体積流が流れるかによっては、増圧Paufの際にも減圧Pabの際にも、対抗措置なしでは弁を引込み閉鎖するおそれがあり、このことは以下の
図3~
図3bにおいてより詳細に説明する。
【0037】
弁を通流する際に体積流Qが作用する、弁可動子FHに対する液圧力が、その都度、弁の開放位置で作用する。したがって、とりわけこの位置において力付加装置の力FM2が作用することが望ましく、これにより、弁の閉鎖方向での可動子運動にわたってFM2の力が低下していることから、これにより開放位置では、弁の閉鎖方向での可動子運動の際に上昇する力FRFを有するばねを使用する場合よりも、開放位置でより高く設定することができる。
【0038】
弁プランジャ7は、液圧的な流れの力による反力を提供し、吸引閉鎖力を減じることができる特別な形状を有していてもよい。
【0039】
図2cは、弁iの電気的な制御を示している。電流強度i1は、閉弁位置において、FM1がFM2よりも大きくなるように選択される。この場合、電流は、弁i2の閉鎖位置で、弁を介した液圧的な差圧P2-P1に応じて可変であってもよい。この位置では記載した理由から力FM2は、通常のばね力の範囲にあるので、弁は、例えば、電流開ループ制御または電流閉ループ制御によって動作されてもよい。弁を閉鎖位置に保持するためには、差の力、
FV,zu=FM1,zu-FM2,zu
は、閉鎖位置における弁を介した差圧P2-P1により生じる力FPよりも大きくなければならない。
【0040】
図2dは、入口弁セットをベースとした本発明による切換弁SV2kの構造的な構成を示している。セット部分として相応に存在する部分にはすべて符号Sが付与されている。弁セットに組み込まれる逆止弁は省かれる。力付加装置のためにはさらに4つの部分しか必要ではない。それは、以下のものである:
1.永久磁石9
2.磁極プレート10
3.電磁的なコイルフラックスガイド11および
4.可動子を含む複数の部材を互いに結合するプラスチック体12。
【0041】
図3a~
図3dは、増圧Paufおよび減圧Pabのための圧力制御のシステムに依存しているABS/ESP機能のための様々な弁回路を示している。各実施形態は、弁の数がそれぞれ異なっており、この場合、差別化する特徴は出口弁AVであり、ひいては減圧制御である。矢印はそれぞれ、弁SV2k1,・・・,SV2k4の吸引閉鎖の危険が生じる体積流を示している。弁の吸引閉鎖または引込み閉鎖とは、無通電状態で開いている弁が、弁を通る体積流により自動的に閉鎖することを意味している。例えば、
図3aには、ホイールブレーキシリンダ2,RZ2内における増圧Paufが示されていて、この場合、液圧体積がブレーキ回路BK1から開放状態の弁SV2k2を通ってホイールブレーキシリンダ2,RZ2内に流入する。弁SV2k
2が開かれている場合、体積流が、弁可動子(
図2では、SV2k
2のボール)と弁座との間の狭い弁ギャップを通流する。これにより、弁ギャップ上流の制動圧は、弁ギャップ下流の制動圧よりも大きい。この差圧は、弁可動子に作用し、これにより、弁閉鎖の方向で作用する差圧力が弁可動子に加えられる。この差圧力が、弁ばねが弁可動子に加える力よりも大きいならば、弁を閉じ、これは体積流による弁の吸引閉鎖と呼ばれる。このような自動的な閉鎖は、弁が閉鎖するように制御されてはいないので、望ましくない。
【0042】
図3bは、
図1aと類似の弁回路を示しており、これにより、標準ABS制御が、
図1aにつき記載したのと同様に可能である。
【0043】
図3cは、対角線型のブレーキ回路配管において可能な実施形態を示しており、この場合、出口弁AVは、前車軸VAにおけるホイールブレーキシリンダでしか使用されない。この使用では、
図1aに記載されたように、前輪ブレーキシリンダを標準ABS制御によって動作させることができる。この場合、前輪ブレーキシリンダのいずれでも同時に増圧が行われない場合にのみ、両後輪ブレーキシリンダにおける減圧Pabが可能である。減圧は、
図1aにつき詳細に記載したように時間的に臨界的であるので、例えば前輪ブレーキシリンダにおける標準ABS制御と、後輪ブレーキシリンダにおける弁SV2kを介したPauf制御およびPab制御との混合動作は、後輪ブレーキシリンダにおけるABS制御における欠点を伴う。
【0044】
図3cは、変更されたABS制御による弁SV2k3およびSV2k4を介した後車軸における増圧Paufおよび減圧Pabにおける使用例を示している。弁SV2k3およびSV2k4の電流開ループ制御または電流閉ループ制御により、弁の接続がこれを可能とするので、減圧時の圧力勾配を調整することができる。この場合、電流開ループ制御または電流閉ループ制御は、
図1aにつき説明したような増圧勾配の制御に類似している。この場合、
図1aで記載したような、出口弁AVを介した減圧の際の勾配の妥協は不要である。
【0045】
例えば、弁SV2k1,・・・,SV2k4の吸引閉鎖について、このような状況は、
図3cの弁において、例えば減圧PabがDVの制御を介して行われる場合には、減圧Pabの際のBK1内の弁SV2K1およびBK2内の弁SV2k2において、およびPaufがDVの制御を介して行われる場合には、Paufの際のBK2内の弁SV2k
3およびBK1内のSV2k
4において生じることがある。
図3bでは、吸引閉鎖はすべてのSV2kにおいて、圧力供給部DVの制御を介した減圧Pabの場合にのみ生じる可能性がある。
図3aでは、吸引閉鎖はすべての弁SV2kにおいて、圧力供給部DVの制御を介した増圧Paufの場合にのみ生じる可能性がある。
【0046】
図3dによる実施形態は、
図1aおよび
図3bによる実施形態に相当し、この実施形態は、シングルマスタブレーキシリンダSHZ、分離弁9、オプションとしての回路分離弁BP1、オプションとしての安全弁MVDV1および2回路ポンプの場合には安全弁MVDV2、および圧力供給部をDVの補足を伴う。多くのシステム、例えば独国特許出願公開第102017219598号明細書では、無通電閉鎖式の安全弁MVDV1/MVDV2が、圧力供給部DVの出口において使用される。安全弁MVDV1/MVDV2は、無通電閉鎖弁であり、その構造は、
図3bの出口弁AVに相当する。この安全弁MVDV1/MVDV2は、圧力供給部DVの故障時には、例えば、圧力供給部のモータの故障または増圧中のピストンシールD1の故障の際には、ホイールブレーキシリンダから圧力供給部DVへの体積流の制御されない逆流を、ひいてはホイールブレーキシリンダ内の望ましくない制御されない減圧を阻止するために閉じている。2つの作業チャンバをシールして互いに分離するダブル行程ピストンを備えた圧力供給部DVを使用する場合には、作業チャンバの両出口をブレーキ回路BK1とBK2とに接続する液圧接続部で2つの磁石弁MVDVとMVDV2とを使用して、選択的に両出口を遮断および開放することができる。この場合も、両ブレーキ回路BK1およびBK2は、弁BP1を介して選択的に接続することができる。
【0047】
ピストンポンプの代わりに、例えば歯車ポンプのような回転ポンプを使用することもでき、この場合、磁石弁MVDV1の代わりに、ポンプの出口に、単純な逆止弁RVDV1を設けることができる。この逆止弁RVDV1は、圧力供給部DVの故障時に、磁石弁MVDV1と同様の機能を果たす。開かれた弁を介して、圧力供給部DVを介した減圧を行うことができる磁石弁MVDV1とは異なり、これは逆止弁RVDV1によっては不可能である。したがって、回転ポンプを備えたシステムにおける減圧Pabは、出口弁AVを介して行われる。減圧が緩慢な場合、出口弁AVは個別にまたはすべて一緒に、圧力トランスデューサDG1を介して、減圧Pabのために制御することができる。回転ポンプとポンプ出口における逆止弁RVDV1との組み合わせは、圧力供給部DVのための最も安価な解決手段である。いくつかの回転ポンプでは、圧力供給部と磁石弁MVDV1との組み合わせも可能であり、これは、例えば歯車ポンプの場合の回転ポンプを介した良好に制御可能な減圧速度という利点を有している。
【0048】
図1aに示されているように、2つのブレーキ回路BK1およびBK2を備えたいくつかのブレーキシステムでは、無通電開放式の回路分離弁KTVが設けられており、その構造は、
図3aの分離弁BP1と同様であり、故障時、例えばブレーキ回路BK1の非密閉の場合に、制御され、ひいては閉じられ、これにより、他方のブレーキ回路BK2には、圧力供給部DVによってなお圧力を負荷することができる。
【0049】
オプションとしての切換弁BP1およびMVDV1は、様々な実施形態で使用することができる:
1.両弁を使用する;
2.安全弁MVDV1のみを使用し、回路分離弁BP1は有していない;
3.回路分離弁BP1のみを使用し、安全弁MVDV1は有していない。
【0050】
上記1の実施形態は、この場合、3種すべての実施形態のうち最も高価なブレーキシステムであり、既に上述したように、圧力供給部DVまたは1つのブレーキ回路BK1またはBK2の故障の際に、高い安全性の利点を有している。
【0051】
上記2の実施形態では、1つのブレーキ回路の故障を、例えばブレーキ回路BK1が非密閉であることを、診断により検出することができる。したがって診断によっても、どのホイール回路が故障しているのか、例えばホイールブレーキシリンダRZ1が非密閉であることを検出することができ、これに続いて、所属の弁SV2k1を閉じることができる。それ以外のホイールブレーキシリンダRZ2,RZ3およびRZ4には、引き続き圧力供給部DVを介して圧力を負荷することができる。
【0052】
上記3の、すなわち安全弁MVDV1を有していない実施形態では、例えば圧力供給部DVのピストンシールの非密閉による圧力供給部DVの故障の際には、切換弁9を開き、回路分離弁BP1を閉じることができる。この場合、運転者は、ブレーキペダルを介して、ブレーキ回路BK1内の圧力をコントロールすることができる。この場合は、ブレーキ回路BK2のみが故障している。制動中に圧力供給部が故障すると、ホイールブレーキシリンダRZ1,・・・,RZ4内の圧力は、弁SV2k1,・・・,SV2k4が閉じた状態で、弁AVを介して減じられる。
【0053】
図4aおよび
図4bは、診断におけるブレーキシステムの密閉性の検査のためのテストサイクルを示している。
図4aは、制動中のテストT0-T4を示している。制動の開始時に、点A0の時点から点Aの時点までテストT0では、増圧中に永続的に、圧力と、例えば圧力供給部DVのピストン行程距離Skを介してホイールブレーキシリンダの収容体積Vとが測定される。ピストン行程距離の目標値Sk
sollは、ブレーキの記憶された圧力・体積特性曲線、PV特性曲線によって圧力に依存して送られ、ピストン行程距離の実際値Sk
istと比較される。点Aの時点で、圧力は一定に保持される。点Aの時点でSk
sollとSk
istとの間の差が測定されず、この比較が、点A1の時点まで制動段階全体にわたって維持された場合、テストT0は陰性である。テストT0が陰性の場合、さらなるテスト(T1,T2,T3,T4)は不要である。差が測定された場合は、1つのホイール回路に、すなわち、1つのホイールブレーキシリンダRZと所属の弁SV2kとの間に非密閉性が存在しており、テストT0は陽性である。テストは陽性であるが、点Aの時点でSk
sollとSk
istとの間に極めて小さな1つの差しか測定されなかった場合は、さらなるテスト(T1,T2,T3,T4)は不要である。ディスプレイ上の警告は、運転者に、最初の機会に工場を訪れることを促す。ホイール回路内の非密閉性によるブレーキシステムからの体積損失にもかかわらず、リザーバタンク内の体積が、多数回の、例えば1000回のさらなる制動のために充分であり、体積損失が圧力供給部DVの体積流圧送により補償可能である場合には、Sk
sollとSk
istとの間の差は極めて小さい。テストT0が陽性であり、点Aの時点でSk
sollとSk
istとの間に極めて小さな差が2つ以上測定された場合には、どのホイール回路に非密閉性が存在しているかを検出しなければならない。このためには、点Aの時点で、ホイールブレーキシリンダRZ1に割り当てられた弁SV2k1を閉鎖してテストT1が行われる。ホイール回路1が非密閉である場合には、弁SV2k1の閉鎖後、測定された圧力を一定に維持するためにピストン運動Skは必要なく、テストT1は陽性である。テストT1が陽性の場合、弁SV2k1は、制動終了A01まで閉じられたままであり、点Aから点A1まで、圧力供給部DVのピストン行程距離Skは一定のままであり、さらなるテスト(T2,T3,T4)は不要である。テストT1のテスト時間、テスト段階は、制動過程が、および場合によっては運転者もテストによって邪魔されないように、例えば20msと短く選択される。例えば運転者が、テスト段階中、圧力を減じようとすると、これはテスト段階の終了後初めて、またはホイール回路が非密閉であると既に特定された直後に初めて、圧力供給部DVのピストン運動を介して行われる。運転者がテスト段階中、圧力を上げようとすると、テストは中断される。テストT1が陰性だった場合、すなわち、弁SV2k1の閉鎖にもかかわらず、圧力を一定に保つために、圧力供給部DVのピストン行程距離Skの増大が必要な場合には、ホイール回路1は非密閉ではなく、別のホイール回路が非密閉であるので、点Aの時点後、極端な場合には、ホイール回路4のテストT4まで漏れ流が作用し、ひいては圧力供給部DVのピストン行程距離Skが進行する。この場合、圧力供給部DVのピストン行程距離Sk
istは、点Aの時点から点Bの時点までのテスト段階T1の間に増大し、点Bに達する。陰性のテストT1後は、弁SV2k1は開かれる。テストT1が陽性の場合は、それ以上テストは実施されず、弁SV2k1は、その後の制動時に、閉じられたままとなり、点Aの時点でのSk
sollとSk
istとの間の差は、時点A01まで制動段階全体にわたって維持される。ディスプレイ上の警告は、運転者に、すぐに修理工場を訪れることを促す。
【0054】
(点Aの時点でSksollとSkistとの間で極めて小さな差が2つ以上測定された)陽性のテストT0と陰性のテストT1との後に、点Bの時点で、ホイール回路2のためのテストT2が実施される。テストT2は、テストT1と同様に行われる。このためには、点Bの時点で、ホイールブレーキシリンダRZ2に割り当てられた弁SV2k2を閉鎖してテストT2が行われる。ホイール回路2が非密閉である場合には、弁SV2k2の閉鎖後、測定された圧力を一定に維持するためにピストン運動Skは必要なく、テストT2は陽性である。テストT2が陽性の場合、弁SV2k2は、制動終了A01まで閉じられたままであり、点Bから点B1まで、圧力供給部DVのピストン行程距離Skは一定のままであり、さらなるテスト(T3,T4)は不要である。テストT2のテスト時間、テスト段階は、制動過程が、および場合によっては運転者もテストによって邪魔されないように、例えば20msと短く選択される。例えば運転者が、テスト段階中、圧力を減じようとすると、これはテスト段階の終了後初めて、またはホイール回路が非密閉であると既に特定された直後に初めて、圧力供給部DVのピストン運動を介して行われる。運転者がテスト段階中、圧力を上げようとすると、テストは中断される。テストT2が陰性だった場合、すなわち、弁SV2k2の閉鎖にもかかわらず、圧力を一定に保つために、圧力供給部DVのピストン行程距離Skの増大が必要な場合には、ホイール回路2は非密閉ではなく、別のホイール回路が非密閉であるので、点Bの時点後、極端な場合には、ホイール回路4のテストT4まで漏れ流が作用し、ひいては圧力供給部DVのピストン行程距離Skが進行する。この場合、圧力供給部DVのピストン行程距離Skは、点Bの時点から点Cの時点までのテスト段階T2の間に増大し、点Cに達する。陰性のテストT2後は、弁SV2k2は開かれる。テストT2が陽性の場合は、それ以上テストは実施されず、弁SV2k2は、その後の制動時に、閉じられたままとなり、点Bの時点でのSksollとSkistとの間の差は、時点A01まで制動段階全体にわたって維持される。ディスプレイ上の警告は、運転者に、すぐに修理工場を訪れることを促す。
【0055】
(点Aの時点でSksollとSkistとの間で極めて小さな差が2つ以上測定された)陽性のテストT0と陰性のテストT1およびT2との後に、点Cの時点で、ホイール回路3のためのテストT3が実施される。テストT3は、テストT1と同様に行われる。このためには、点Cの時点で、ホイールブレーキシリンダRZ3に割り当てられた弁SV2k3を閉鎖してテストT3が行われる。ホイール回路3が非密閉である場合には、弁SV2k3の閉鎖後、測定された圧力を一定に維持するためにピストン運動Skは必要なく、テストT3は陽性である。テストT3が陽性の場合、弁SV2k3は、制動終了A01まで閉じられたままであり、点Cから点C1まで、圧力供給部DVのピストン行程距離Skは一定のままであり、さらなるテスト(T4)は不要である。テストT3のテスト時間、テスト段階は、制動過程が、および場合によっては運転者もテストによって邪魔されないように、例えば20msと短く選択される。例えば運転者が、テスト段階中、圧力を減じようとすると、これはテスト段階の終了後初めて、またはホイール回路が非密閉であると既に特定された直後に初めて、圧力供給部DVのピストン運動を介して行われる。運転者がテスト段階中、圧力を上げようとすると、テストは中断される。テストT3が陰性だった場合、すなわち、弁SV2k3の閉鎖にもかかわらず、圧力を一定に保つために、圧力供給部DVのピストン行程距離Skの増大が必要な場合には、ホイール回路3は非密閉ではなく、別のホイール回路が非密閉であるので、点Cの時点後、極端な場合には、ホイール回路4のテストT4まで漏れ流が作用し、ひいては圧力供給部DVのピストン行程距離Skが進行する。この場合、圧力供給部DVのピストン行程距離Skは、点Cの時点から点Dの時点までのテスト段階T3の間に増大し、点Dに達する。陰性のテストT3後は、弁SV2k3は開かれる。テストT3が陽性の場合は、それ以上テストは実施されず、弁SV2k3は、その後の制動時に、閉じられたままとなり、点Cの時点でのSksollとSkistとの間の差は、時点A01まで制動段階全体にわたって維持される。ディスプレイ上の警告は、運転者に、すぐに修理工場を訪れることを促す。
【0056】
(点Aの時点でSksollとSkistとの間で極めて小さな差が2つ以上測定された)陽性のテストT0と陰性のテストT1,T2およびT3との後に、ホイール回路4の非密閉性が推測され、弁SV2k4がすぐに閉じられる。他方で、ブレーキシステムのその他の個所が非密閉である可能性を排除するために、点Dの時点でも、ホイール回路4のためのテストT4を実施することができる。テストT4は、テストT1と同様に行われる。このためには、点Dの時点で、ホイールブレーキシリンダRZ4に割り当てられた弁SV2k4を閉鎖してテストT4が行われる。ホイール回路4が非密閉である場合には、弁SV2k4の閉鎖後、測定された圧力を一定に維持するためにピストン運動Skは必要なく、テストT4は陽性であり、点D1に到達する。テストT4が陽性の場合、弁SV2k4は、制動終了A01まで閉じられたままであり、点Dから点D1まで、圧力供給部DVのピストン行程距離Skは一定のままであり、さらなるテストは不要である。テストT4のテスト時間、テスト段階は、制動過程が、および場合によっては運転者もテストによって邪魔されないように、例えば20msと短く選択される。例えば運転者が、テスト段階中、圧力を減じようとすると、これはテスト段階の終了後初めて、またはホイール回路が非密閉であると既に特定された直後に初めて、圧力供給部DVのピストン運動を介して行われる。運転者がテスト段階中、圧力を上げようとすると、テストは中断される。テストT4が陰性だった場合、すなわち、弁SV2k4の閉鎖にもかかわらず、圧力を一定に保つために、圧力供給部DVのピストン行程距離Skの増大が必要な場合には、ブレーキシステムのその他の個所に非密閉性が存在するので、点Dの時点後、漏れ流が作用し、ひいては圧力供給部DVのピストン行程距離Skが進行する。この場合、圧力供給部DVのピストン行程距離Skは、点Dの時点から制動終了A01までのテスト段階T4の間に増大する(記入されていない)。陰性のテストT4後は、弁SV2k4は開かれる。テストT4が陽性の場合は、弁SV2k4は、その後の制動時に、閉じられたままとなり、点Dの時点でのSksollとSkistとの間の差は、時点A01まで制動段階全体にわたって維持される。テストT4の実施により、テストサイクルは終了する。陽性(ホイール回路4が非密閉)の場合も、陰性(ブレーキシステムのその他の個所が非密閉)の場合も、ディスプレイ上の警告は、運転者に、すぐに修理工場を訪れることを促す。
【0057】
テストT4で、点D1の時点でテストサイクルは終了し、点Eの時点で、圧力低減を伴う制動過程は終了する。この診断は、センサの相応の精度と動的特性、例えばピストン行程距離、圧力を前提とする。
【0058】
図4bには、車両静止状態におけるテストサイクルが示されていて、このテストサイクルは、ほぼ完全に
図4aに相当するが、圧力がDVによって決定され、運転者によっては決定されないという小さな相違点を有している。簡略化のために、この場合は、テスト4で初めて、RZ4の非密閉性が特定される。この場合、例えば20msのテスト時間は、例えば2倍にされてもよい。
【0059】
極めて小さいわけではないホイール回路の非密閉性に加えて付加的に、所属の弁SV2kも、例えば、弁可動子と弁座との間の汚染粒子による非密閉性を含む場合に、別の状況が生じる。例えば、ホイール回路1と弁SV2k1とにおいてこのようなことが該当した場合、圧力を一定に維持するためのテストT1の間のピストン行程距離Skは一定のままではない。弁SV2kにおける非密閉性による体積損失は小さく、圧力供給により補償することができるので、ホイール回路1は故障してはいるが、他のホイール回路は故障していない。ディスプレイ上の警告は、運転者に、早期に修理工場を訪れることを促す。
【0060】
図4c1~
図4c3は、基本的なテスト経過を示している。
【0061】
図4c1は、非密閉性が存在しない場合のDVピストンのピストン行程距離推移Skを示している。この場合、テストT0,・・・,T4は不要である。
【0062】
図4c2は、例えば、ホイールブレーキシリンダRZ1が非密閉であり、所属の弁SV2k1がオンにされずに、場合によっては、所属の閉鎖されたSV2kによって絞られない高い漏れ体積流Q
SV2k,Leckを伴う場合の、DVピストンのピストン行程距離推移Skを示している。
【0063】
図4c3は、例えば、ホイールブレーキシリンダRZ1が非密閉であり、この場合、漏れ体積流Q
SV2k1,Leckは、非密閉の弁SV2k1の閉鎖によって小さい場合の、DVピストンのピストン行程距離推移Skを示している。弁SV2k1の代わりに、平行な逆止弁RV1を備えた通常の入口弁EV1が使用され、この場合、入口弁EV1または逆止弁RV1が非密閉であるか、または両方が非密閉である場合には、
図4c3と同様のピストン行程距離推移Skが行われる。例えばホイールブレーキシリンダRZ1が非密閉である場合には、例えば、非密閉の入口弁EV1の制御により、漏れ体積流Q
EV1,Leckは、非密閉のホイールブレーキシリンダRZ1によって、0cm
3/sまでではなく、小さい値まで減じられて、例えば、最も深刻な場合(worst case)は、EV1とRV1とは両方とも非密閉であり、漏れ流は例えば、弁EV1を介した差圧が50barのときに、Q
EV1,Leck=20cm
3/sである。
【0064】
テストT0の間の時点A0でのSksollとSkistとの間の差が極めて小さい場合には、通常時におけるような制動を維持することができる。しかしながら、差が極めて小さくはない場合には、ホイール回路の故障により、例えば、ホイールブレーキシリンダシールの非密閉により、所属の弁SV2kの閉鎖、車両の減速は、通常時よりも小さくなり、制動中、車両に対するヨーモーメントが生じる。電子安定化プログラムESPはこの場合、通常、(全制動の場合を除き)車両の減速を、通常時の車両の減速となるように補償することができる。これにより、運転者にとって制動感覚はほぼ通常のままであり、運転者の驚愕反応は減じられる。さらに、電子安定化プログラムESPは、ヨーモーメントを部分的に補償することができ、これによっても運転者の驚愕反応を減じることができる。
【0065】
図4dは例示的に、個々の欠陥を検査する第1の代替的な診断経過を示しており、この経過は、時点0から時点t0まで増加しかつ時点t0以降一定に留まる、圧力供給部DVのピストン行程距離推移Skと、ピストン行程距離推移Skから、ブレーキ装置のPV特性曲線(圧力・体積特性曲線)を用いて導き出される目標圧力推移Psollとを含んでいる。さらに、
図4dは、圧力センサDGによって測定される(
図3a参照)実際圧力推移Pistを示している。時点t0では、目標圧力Psollと実際圧力Pistとの間の差が認められ、これにより、ブレーキ装置のエラー挙動を推測することができる。この理由から、時点t0では、すべての弁SV2k1,・・・,SV2k4が閉じられ、実際圧力推移Pistが時点t0から時点t1までのテスト期間において観察される。破線1によって示されているように、時点t0から時点t1までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路RK1,・・・,RK4の非密閉性に起因するものではなく、例えば圧力供給部DVのピストンシールの非密閉性に起因するものである。弁SV2k1,SV2k2,SV2k3およびSV2k4を再び開放することができ、圧力供給部DVのピストン運動を介して、実際圧力Pistを、点Aにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。圧力供給部DVのピストンシールが非密閉であることにより、実際圧力Pistを目標圧力レベルPsollに維持するために、点A以降も連続的なピストン運動が必要である。これは、エラーにもかかわらず、すべてのホイールブレーキシリンダにおいて通常の制動作用が維持され続けるという利点を有している。しかしながら、目標圧力レベルPsollにおいて、ピストンシールの漏れ速度が圧力供給部DVの最大圧送速度を上回った場合、圧力供給部DVを用いないフォールバックレベルに切り換えられる。
【0066】
時点t0から時点t1の実際圧力Pistにおいて実線2によって示されているように、t0からt1までのテスト期間において実際圧力Pistが低下しないならば、時点t1で弁SV2k1は開放されて、時点t1から時点t2のテスト期間において実際圧力推移Pistが観察される。破線3によって示されているように、時点t1から時点t2までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路1の非密閉性に起因するものである。この場合、弁SV2k1は時点t2で閉じられ、一方で、弁SV2k2,SV2k3およびSV2k4は再び開放され、圧力供給部DVのピストン運動を介して、実際圧力Pistを、点Bにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0067】
時点t1から時点t2の実際圧力Pistにおいて実線4によって示されているように、t1からt2までのテスト期間において実際圧力Pistが低下しないならば、時点t2で弁SV2k1は開放されて、時点t2から時点t3のテスト期間において実際圧力推移Pistが観察される。破線5によって示されているように、時点t2から時点t3までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路2の非密閉性に起因するものである。この場合、弁SV2k2は時点t3で閉じられ、一方で、弁SV2k1,SV2k3およびSV2k4は再び開放され、圧力供給部DVのピストン運動を介して、実際圧力Pistを、点Cにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0068】
時点t2から時点t3の実際圧力Pistにおいて実線6によって示されているように、時点t2から時点t3までのテスト期間において実際圧力Pistが低下しないならば、時点t3で弁SV2k3は開放されて、時点t3から時点t4のテスト期間において実際圧力推移Pistが観察される。破線7によって示されているように、時点t3から時点t4までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路3の非密閉性に起因するものである。この場合、弁SV2k3は時点t4で閉じられ、一方で、弁SV2k1,SV2k2およびSV2k4は再び開放され、圧力供給部DVのピストン運動を介して、実際圧力Pistを、点Dにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0069】
時点t3から時点t4の実際圧力Pistにおいて実線8によって示されているように、時点t3から時点t4までのテスト期間において実際圧力Pistが低下しないならば、時点t4で弁SV2k4は開放されて、時点t4から時点t5のテスト期間において実際圧力推移Pistが観察される。一点鎖線9によって示されているように、時点t4から時点t5までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路4の非密閉性に起因するものである。この場合、弁SV2k4は時点t5で閉じられ、一方で、弁SV2k1,SV2k2およびSV2k3は再び開放され、圧力供給部DVのピストン運動を介して、実際圧力Pistを、点Eにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0070】
時点t4から時点t5の実際圧力Pistにおいて実線10によって示されているように、時点t4から時点t5までのテスト期間において実際圧力Pistが低下しないならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路RK1,・・・,RK4の非密閉性に起因するものではなく、例えばブレーキ液中の気泡に起因するものである。時点t5で、弁SV2k1,SV2k2,SV2k3およびSV2k4を再び開放することができ、圧力供給部DVのピストン運動を介して、実際圧力Pistを、点Fにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0071】
弁が開放される順序およびホイール回路RK1,・・・,RK4および圧力供給部DVのピストンシールにおける非密閉性の大きさは、ここでは例示的に選択されており、束縛するものではない。順序は、例えば、走行力学的観点に応じて選択することができる。圧力供給部DVのピストンシールが非密閉である場合と同様に、ホイール回路、例えばホイール回路1が非密閉である場合は、連続的なピストン運動によって実際圧力Pistを目標圧力レベルPsollに維持するために、所属の弁SV2k1を開放したままにすることができる。既に述べたように、これは、エラーにもかかわらず、すべてのホイールブレーキシリンダにおいて通常の制動作用が維持され続けるという利点を有している。この場合も、目標圧力レベルPsollにおいて、ホイール回路1の漏れ速度が圧力供給部DVの最大圧送速度を上回った場合は、目標圧力Psollに到達せず、実際圧力Pistは、目標圧力Psollよりも低いままであるということが当てはまる。この場合、弁SV2k1は閉じられる。弁SV2k1の開放状態で、ブレーキ液がブレーキシステムから流出すると、このことは、リザーバタンクVB内のレベルの減少により認められるので、漏れ流の補償を時間的に制限することができ、弁SV2k1を適時に閉鎖することができ、これによって、後続の制動のために十分なブレーキ液がリザーバタンクVB内に残る。ブレーキシステムからブレーキ液が流出する場合は、一方では、ブレーキ液により環境が汚染されるおそれがあるというリスクを、他方では、燃焼し易いブレーキ液が、例えばブレーキディスクのような、高温の部分に当たった場合に火災が発生するおそれがあるというリスクをさらに考慮すべきである。このようなリスクは、弁SV2k1を開放しないことにより減じることができる。
【0072】
図4eは例示的に、個々のエラーを検査するための第2の代替的な診断経過を示しており、この経過は、時点0から時点t0まで増加しかつ時点t0以降一定に留まる、圧力供給部DVのピストン行程距離推移Skと、ピストン行程距離推移Skから、ブレーキ装置のPV特性曲線(圧力・体積特性曲線)を用いて導き出される目標圧力推移Psollとを含んでいる。さらに、
図4eは、圧力センサDGによって測定される(
図3a参照)圧力推移Pistを示している。時点t0では、目標圧力Psollと実際圧力Pistとの間の差が認められ、これにより、ブレーキ装置のエラー挙動を推測することができる。この理由から、時点t0では、弁BP1(
図3a参照)が閉じられ、ブレーキ回路BK2(
図3a参照)内の実際圧力推移Pistが時点t1から時点t2までのテスト期間において観察される。弁SV2k3およびSV2k4は開かれたままである。状況によってはブレーキ回路1におけるホイール回路RK1またはRK2の非密閉性が存在している場合に、時点t1から時点t2までのテスト期間で、ブレーキ液が両ホイール回路RK1,RK2から流出しないように、弁SV2k1およびSV2k2は閉じられる。
【0073】
診断さらなる経過に関して、ここで、時点t0から時点t1までの期間において圧力Pistが低下しているのか否かが判断される。
【0074】
1.微細な破線1によって示されているように、圧力センサDGによって測定された、時点t0から時点t1までのブレーキ回路2内の実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ブレーキ回路BK2内のホイール回路RK3またはRK4の非密閉性に起因するものである。したがって、時点t1では、弁SV2k3が閉じられ、ブレーキ回路BK2内の実際圧力推移Pistが時点t1から時点t2までのテスト期間において観察される。
【0075】
粗い破線2によって示されているように、時点t1から時点t2までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路4の非密閉性に起因するものである。この場合、時点t2で弁SV2k4は閉じられ、弁BP1と弁SV2k1,SV2k2およびSV2k3は開かれる。圧力供給部DVのピストン運動を介して、ホイールブレーキシリンダRZ1,RZ2およびRZ3内の実際圧力Pistを、時点t2以降、点Aにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0076】
時点t1から時点t2の実際圧力において微細な破線1aによって示されているように、時点t1から時点t2までの実際圧力Pistが低下しないならば、ホイール回路3は非密閉であり、時点t2で弁BP1と弁SV2k1およびSV2k2は開放される。圧力供給部DVのピストン運動を介して、ホイールブレーキシリンダRZ1,RZ2およびRZ4内の実際圧力Pistを、時点t2以降、点Bにおいて到達する目標圧力まで上昇させることができる。
【0077】
2.実線3によって示されているように、圧力センサDG(
図3a参照)によって測定された、時点t0から時点t1までのブレーキ回路2内の実際圧力Pistが低下しないならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ブレーキ回路BK2内のホイール回路RK3またはRK4の非密閉性に起因するものではない。したがって、時点t1では、弁BP1が開かれ、ブレーキ回路BK2内の実際圧力推移Pistがt1からt2までのテスト期間において観察される。幾分粗い破線4によって示されているように、時点t1から時点t2までの実際圧力Pistが低下するならば、弁SV2k1およびSV2k2はまだ閉鎖されているので、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路1またはホイール回路2の非密閉性に起因するものではなく、例えば圧力供給部DVの非密閉性に起因するものである。この場合、時点t2で、弁SV2k1およびSV2k2を開放し、この場合、弁SV2k3およびSV2k4も開放されていて、圧力供給部DVのピストン運動を介して、すべてのホイールブレーキシリンダRZ1,RZ2,RZ3およびRZ4内の実際圧力Pistを、点Cにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。圧力供給部DVのピストンシールが非密閉であることにより、実際圧力Pistを目標圧力レベルPsollに維持するためには、点C以降も連続的なピストン運動が必要である。既に述べたように、これは、エラーにもかかわらず、すべてのホイールブレーキシリンダにおいて通常の制動作用が維持され続けるという利点を有している。しかしながら、目標圧力レベルPsollにおいて、ピストンシールの漏れ速度が圧力供給部DVの最大圧送速度を上回った場合、圧力供給部DVを用いないフォールバックレベルに切り換えられる。
【0078】
時点t1から時点t2の実際圧力Pistにおいて実線5によって示されているように、時点t1から時点t2までの実際圧力Pistが低下しないならば、ホイール回路1またはホイール回路2が非密閉である。したがって、時点t2では弁SV2k1が開かれ、実際圧力推移Pistが時点t1から時点t2までのテスト期間において観察される。
【0079】
さらに幾分粗い破線6によって示されているように、時点t2から時点t3までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路1の非密閉性に起因するものである。この場合、時点t3で、弁SV2k1を閉鎖しかつ弁SV2k2を開放し、この場合、弁SV2k3およびSV2k4も開放されていて、圧力供給部DVのピストン運動を介して、時点t3以降、ホイールブレーキシリンダRZ2,RZ3およびRZ4内の実際圧力Pistを、点Dにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0080】
実線7によって示されているように、時点t2から時点t3までの実際圧力Pistが低下しないならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路1の非密閉性に起因するものではない。したがって、時点t3では弁SV2k2が開かれ、実際圧力推移Pistが時点t3から時点t4までのテスト期間において観察される。
【0081】
一点鎖線8によって示されているように、時点t3から時点t4までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路2の非密閉性に起因するものである。この場合、時点t4で、弁SV2k2を閉鎖し、この場合、弁SV2k1,SV2k3およびSV2k4はなお開放されていて、圧力供給部DVのピストン運動を介して、時点t4以降、ホイールブレーキシリンダRZ1,RZ3およびRZ4内の実際圧力Pistを、点Eにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0082】
時点t3から時点t4の実際圧力Pistにおいて実線9によって示されているように、時点t3から時点t4までの実際圧力Pistが低下しないならば、ブレーキ装置のエラー挙動は、ホイール回路RK1,・・・,RK4の非密閉性に起因するものではなく、例えばブレーキ液中の気泡に起因するものである。時点t4で、弁SV2k1,SV2k2,SV2k3,SV2k4の開放状態で、圧力供給部DVのピストン運動を介して、実際圧力Pistを、点Fにおいて到達する目標圧力Psollまで上昇させることができる。
【0083】
弁が開放および閉鎖される順序およびホイール回路および圧力供給部DVのピストンシールにおける非密閉性の大きさは、ここでは例示的に選択されており、束縛するものではない。順序は、例えば、走行力学的観点に応じて選択することができる。圧力供給部DVのピストンシールが非密閉である場合と同様に、ホイールブレーキ回路、例えばホイールブレーキ回路1が非密閉である場合は、連続的なピストン運動によって実際圧力Pistを目標圧力レベルPsollに維持するために、所属の弁SV2k1を開放したままにすることができる。既に述べたように、これは、エラーにもかかわらず、すべてのホイールブレーキシリンダにおいて通常の制動作用が維持され続けるという利点を有している。この場合も、目標圧力レベルPsollにおいて、ホイール回路1の漏れ速度が圧力供給部DVの最大圧送速度を上回った場合は、目標圧力Psollに到達せず、実際圧力Pistは、目標圧力Psollよりも低いままであるということが当てはまる。この場合、弁SV2k1は閉じられる。弁SV2k1の開放状態で、ブレーキ液がブレーキシステムから流出すると、このことは、リザーバタンクVB内のレベルの減少により認められるので、漏れ流の補償を時間的に制限することができ、弁SV2k1を適時に閉鎖することができ、これによって、後続の制動のために十分なブレーキ液がリザーバタンクVB内に残る。ブレーキシステムからブレーキ液が流出する場合は、一方では、ブレーキ液により環境が汚染されるおそれがあるというリスクを、他方では、燃焼し易いブレーキ液が、例えばブレーキディスクのような、高温の部分に当たった場合に火災が発生するおそれがあるというリスクをさらに考慮すべきである。このようなリスクは、弁SV2k1を開放しないことにより減じることができる。
【0084】
図4fは例示的に、第1の代替的な診断経過を示しているが、この場合、この診断経過は、ロジックツリーの形態でダブルエラーを検査するためのものであり、時点0から時点t0まで増加しかつ時点t0以降一定に留まる、圧力供給部DVのピストン行程距離推移Skと、ピストン行程距離推移Skから、ブレーキ装置のPV特性曲線(圧力・体積特性曲線)を用いて導き出される目標圧力推移Psollとを含んでいる。さらに、
図4fは、圧力センサDGによって測定される(
図3a参照)実際圧力推移Pistを示している。時点t0では、点1で目標圧力Psollと実際圧力Pistとの間の差が認められ、これにより、ブレーキ装置のエラー挙動を推測することができる。この理由から、時点t0では、すべての弁SV2k1,・・・,SV2k4が閉じられ、実際圧力推移Pistが時点t0から時点t1までのテスト期間において観察される。時点t0から時点t1までの実際圧力Pistが低下するならば、ブレーキ装置のエラー挙動は少なくとも、ホイール回路RK1,・・・,RK4に場合によっては存在する非密閉性とは別の非密閉性、例えば圧力供給部DVのピストンシールの非密閉性に起因するものである。ホイール回路RK1,・・・,RK4の密閉性を付加的に検査するために、点2では、圧力供給部DVの圧送速度は、圧力供給部DVのピストンシールの非密閉性による漏れ流が補償されるように調整される。このことは、時点t1以降のピストン行程距離Skにおいて微細な破線によって示されている。しかしながら、漏れ流が、圧力供給部DVの最大圧送速度よりも大きい場合は、診断は中断され、圧力供給部を用いないフォールバックレベルに切り換えられる。さもないと同時に、点2において弁SV2k1が開かれる。測定された圧力が低下した場合は、時点t2で点3に到達し、このことはダブルエラー<<圧力供給部DVが非密閉かつホイール回路1が非密閉>>であることを示唆している。測定された圧力が低下しない場合は、時点t2で点4に到達する。点4では、弁SV2k1が閉じられ、弁SV2k2が開かれる。測定された圧力が低下した場合は、時点t3で点5に到達し、このことはダブルエラー<<圧力供給部DVが非密閉かつホイール回路2が非密閉>>であることを示唆している。測定された圧力が低下しない場合は、時点t3で点6に到達する。点6では、弁SV2k2が閉じられ、弁SV2k3が開かれる。測定された圧力が低下した場合は、時点t4で点7に到達し、このことはダブルエラー<<圧力供給部DVが非密閉かつホイール回路3が非密閉>>であることを示唆している。測定された圧力が低下しない場合は、時点t4で点8に到達する。点8では、弁SV2k2が閉じられ、弁SV2k4が開かれる。測定された圧力が低下した場合は、時点t5で点9に到達し、このことはダブルエラー<<圧力供給部DVが非密閉かつホイール回路4が非密閉>>であることを示唆している。測定された圧力が低下しない場合は、時点t5で点10に到達し、この場合、圧力供給部DVだけが非密閉であり、ホイール回路RK1,・・・,RK4は非密閉ではないのでダブルエラーは存在していない。圧力供給部DVのピストンシールが非密閉であることにより、実際圧力Pistを目標圧力レベルPsollに維持するために、点10以降は連続的なピストン運動が必要である。点3または点5または点7または点9におけるホイール回路、例えば点3におけるホイール回路1が付加的に非密閉である場合も、圧力供給部DVの連続的なピストン運動によって実際圧力Pistを目標圧力レベルPsollに維持するために、所属の弁SV2k2を開放したままにすることができる。既に述べたように、これは、エラーにもかかわらず、すべてのホイールブレーキシリンダにおいて通常の制動作用が維持され続けるという利点を有している。この場合も、目標圧力レベルPsollにおいて、ピストンシールの漏れ速度とホイール回路1の漏れ速度との合計が圧力供給部DVの最大圧送速度を上回った場合は、目標圧力Psollに到達せず、実際圧力Pistは、目標圧力Psollよりも低いままであるということが当てはまる。この場合、弁SV2k1は閉じられる。弁SV2k1の開放状態で、ブレーキ液がブレーキシステムから流出すると、このことは、リザーバタンク内のレベルの減少により認められるので、ホイールブレーキシリンダRZ1における漏れ流の補償を時間的に制限することができ、弁SV2k1を適時に閉鎖することができ、これによって、後続の制動のために十分なブレーキ液がリザーバタンクVB内に残る。ブレーキシステムからブレーキ液が流出する場合は、一方では、ブレーキ液により環境が汚染されるおそれがあるということを、他方では、燃焼し易いブレーキ液が、例えば高温のブレーキディスクのような、高温の部分に当たった場合に火災が発生するおそれがあるということをさらに考慮すべきである。このようなリスクは、弁SV2k1を開放しないことにより減じることができる。
【0085】
時点t0から、点1以降、時点t1までの実際圧力Pistが低下しない場合には、時点t1で、点11に到達し、エラー挙動が、1つのまたは2つのホイール回路RK1,RK2,RK3またはRK4の非密閉性に起因するものであるか否かが検査される。ホイール回路1の密閉性の検査のために、点11で弁SV2k1が開放される。その後測定された圧力が低下した場合は、ホイール回路1において非密閉性が存在しており、時点t2で点12に到達する。時点t2、点12以降、第2のエラーが検査され、この場合、時点t2で弁SV2k1が閉じられ、弁SV2k2が開かれる。その後、測定された圧力が低下した場合は、時点t3で点13に到達し、このことはダブルエラー<<ホイール回路1が非密閉かつホイール回路2が非密閉>>であることを示唆している。その後、測定された圧力が低下しない場合は、時点t3で点14に到達する。これは、ホイール回路2には非密閉性が存在していないことを示唆している。時点t3、点14では、弁SV2k2が閉じられ、弁SV2k3が開かれる。これにより、測定された圧力が低下した場合は、時点t4で点15に到達し、このことはダブルエラー<<ホイール回路1が非密閉かつホイール回路3が非密閉>>であることを示唆している。これにより測定された圧力が低下しない場合は、時点t4で点16に到達する。これは、ホイール回路3には非密性は存在していないことを示唆している。点16では、弁SV2k3が閉じられ、弁SV2k4が開かれる。これにより、測定された圧力が低下した場合は、時点t5で点17に到達し、このことはダブルエラー<<ホイール回路1が非密閉かつホイール回路4が非密閉>>であることを示唆している。これにより測定された圧力が低下しない場合は、時点t5で点18に到達し、この場合、ホイール回路1だけが非密閉であり、ダブルエラーは存在していない。
【0086】
時点t1から、点11以降、時点t2までの実際圧力Pistが低下しない場合には、時点t2で、点19に到達し、ブレーキ装置のエラー挙動が、ホイール回路1の非密閉性に起因するものではなく、エラー挙動が1つのまたは2つのホイール回路RK2,RK3またはRK4の非密閉性に起因するものであるか否かが検査される。ホイール回路2の密閉性の検査のために、点19で弁SV2k1が閉鎖され、弁SV2k2が開放される。その後測定された圧力が低下した場合は、ホイール回路2において非密閉性が存在しており、時点t3で点20に到達する。この場合、時点t3、点20以降、第2のエラーが検査され、この場合、時点t3で弁SV2k2が閉じられ、弁SV2k3が開かれる。その後、測定された圧力が低下した場合は、時点t4で点21に到達し、このことはダブルエラー<<ホイール回路2が非密閉かつホイール回路3が非密閉>>であることを示唆している。その後、測定された圧力が低下しない場合は、時点t4で点22に到達する。これは、ホイール回路3には非密性は存在していないことを示唆している。時点t4、点22では、弁SV2k3が閉じられ、弁SV2k4が開かれる。これにより、測定された圧力が低下した場合は、時点t5で点23に到達し、このことはダブルエラー<<ホイール回路2が非密閉かつホイール回路4が非密閉>>であることを示唆している。これにより測定された圧力が低下しない場合は、時点t5で点24に到達する。これは、ホイール回路4には非密閉性は存在していないことを、かつホイール回路2のみが非密閉であり、ダブルエラーは存在していないことを示唆している。
【0087】
時点t2から、点19以降、時点t3までの実際圧力Pistが低下しない場合には、時点t3で、点25に到達し、ブレーキ装置のエラー挙動が、ホイール回路RK1またはRK2の非密閉性に起因するものではなく、エラー挙動が1つのまたは2つのホイール回路RK3またはRK4の非密閉性に起因するものであるか否かが検査される。ホイール回路3の密閉性の検査のために、点25で弁SV2k2が閉鎖され、弁SV2k3が開放される。その後、測定された圧力が低下した場合は、ホイール回路3において非密閉性が存在しており、時点t4で点26に到達する。この場合、時点t4、点26以降、第2のエラーが検査され、この場合、時点t4で弁SV2k3が閉じられ、弁SV2k4が開かれる。その後、測定された圧力が低下した場合は、時点t4で点27に到達し、このことはダブルエラー<<ホイール回路3が非密閉かつホイール回路4が非密閉>>であることを示唆している。その後、測定された圧力が低下しない場合は、時点t5で点28に到達する。これは、ホイール回路4には非密閉性は存在していないことを、かつホイール回路3のみが非密閉であり、ダブルエラーは存在していないことを示唆している。
【0088】
時点t3から、点25以降、時点t4までの実際圧力Pistが低下しない場合には、時点t4で、点29に到達し、ブレーキ装置のエラー挙動が、ホイール回路RK1,RK2またはRK3の非密閉性に起因するものではなく、エラー挙動がホイール回路4の非密閉性に起因するものであるか否かが検査される。ホイール回路4の密閉性の検査のために、点29で弁SV2k3が閉鎖され、弁SV2k4が開放される。その後、測定された圧力が低下した場合は、ホイール回路4において非密閉性が存在しており、時点t5で点30に到達する。しかしながら、ダブルエラーは存在していない。その後、測定された圧力が低下しない場合は、時点t5で点31に到達する。これは、ホイール回路4には非密閉性は存在していないことを示唆している。点31に到達する場合、ホイール回路RK1,・・・,RK4には非密閉性は存在しておらず、ブレーキ装置のエラー挙動は、別の原因、例えばブレーキ液中の気泡を有しているはずである。
【0089】
弁が開放される順序およびホイール回路RK1,・・・,RK4および圧力供給部DVのピストンシールにおける非密閉性の大きさは、ここでは例示的に選択されており、束縛するものではない。順序は、例えば、制動距離および走行安定性のような走行力学的観点に応じて選択することができる。上述したように、ダブルエラー<<DVが非密閉でありかつホイール回路1が非密閉>>の場合には、圧力供給部DVの連続的なピストン運動により、実際圧力Pistを目標圧力レベルPsollに維持するために、所属の弁SV2k1を開いたままにすることができ、これにより、ダブルエラー、例えば<<ホイールブレーキシリンダRZ1が非密閉でありかつホイールブレーキシリンダRZ2が非密閉>>の場合でも、圧力供給部DVの連続的なピストン運動により、実際圧力Pistを目標圧力レベルPsollに維持するために、両弁SV2k1およびSV2k2を開いたままにすることができる。既に述べたように、これは、エラーにもかかわらず、すべてのホイールブレーキシリンダにおいて通常の制動作用が維持され続けるという利点を有している。この場合も、目標圧力レベルにおいて、両ホイール回路RK1およびRK2の漏れ速度の合計が圧力供給部DVの最大圧送速度を上回った場合は、目標圧力Psollに到達せず、実際圧力Pistは、目標圧力Psollよりも低いままであるということが当てはまる。両ホイール回路、例えばRK1およびRK2の個別の漏れ速度が既に、圧力供給部DVの最大圧送出力よりも大きい場合には、両弁SV2k1およびSV2k2が閉じられる。一方のホイール回路、例えばRK1の漏れ速度だけが、圧力供給部DVの最大圧送出力を上回った場合には、弁SV2k1のみが閉じられる。両ホイール回路、例えば、RK1およびRK2の漏れ速度の合計のみが、圧力供給部DVの最大圧送出力を上回った場合には、制動距離および走行安定性のような、走行力学的観点によって、どちらの弁SV2k1またはSV2k2を閉じるかが決定される。この場合も、すなわち、ホイール回路1の非密閉性にもかかわらず、例えば、弁SV2k1が開かれたままである場合に、この状態でブレーキ液がブレーキシステムから流出すると、このことは、リザーバタンクVB内のレベルの減少により認められるので、漏れ流の補償を時間的に制限することができ、弁SV2k1を適時に閉鎖することができ、これによって、後続の制動のために十分なブレーキ液がリザーバタンクVB内に残るということが当てはまる。ブレーキシステムからブレーキ液が流出する場合は、一方では、ブレーキ液により環境が汚染されるおそれがあるというリスクを、他方では、燃焼し易いブレーキ液が、例えばブレーキディスクのような、高温の部分に当たった場合に火災が発生するおそれがあるというリスクをさらに考慮すべきである。このようなリスクは、弁SV2k1を開放しないことにより減じることができる。
【0090】
完全なブレーキシステムでは、各ブレーキペダル距離に、所定の圧力、すなわち、ペダル特性を規定する、マスタブレーキシリンダSHZ/HZ(
図1参照)における目標圧力が割り当てられている。マスタブレーキシリンダ内の圧力は、例えば圧力センサDG-SHZによって直接的に実際圧力が測定される、または例えばペダル力を測定することができる力・距離センサ(図示せず)によって間接的に測定される。ブレーキペダル距離は、図示されていないペダル距離センサを介して測定される。したがって、各ブレーキペダル距離に対して、マスタブレーキシリンダ内の目標圧力を規定することができる。マスタブレーキシリンダSHZ/HZまたは弁9(
図1参照)が非密閉である場合には、マスタブレーキシリンダ内の体積は変化し、これにより、マスタブレーキシリンダSHZ/HZ内の実際圧力は、目標圧力値からずれる。
【0091】
エラーは、マスタブレーキシリンダSHZ/HZ内の実際圧力と目標圧力とを永続的に比較することにより検出される。実際圧力と目標圧力との間の差が、選択可能な境界値を超過した場合には、フォールバックレベルで、弁SV2k1,・・・,SV2k4が閉じられ、弁9が開かれる。マスタブレーキシリンダから体積が損失した場合には、圧力供給部から体積をマスタブレーキシリンダに供給するように、またはマスタブレーキシリンダSHZ/HZ内の体積が増加した場合には、実際圧力と目標圧力とが同じになるまで、圧力供給部からの体積をマスタブレーキシリンダから導出するように、マスタブレーキシリンダSHZ/HZ内の体積変動は、圧力供給部DVを介して補償される。その後、弁9は閉じられ、弁SV2k1,・・・,SV2k4は開かれる。今や再び、圧力供給部DVは、実際圧力と目標圧力との間の差が再び選択可能な境界値を超過し、その後フォールバックレベルの過程が繰り返されるまで、ホイールブレーキシリンダRZ1,・・・,RZ4内の制動圧制御のために使用される。ブレーキペダル特性およびブレーキペダル感覚はこれによりほぼ通常通りに維持される。しかしながら、ブレーキペダルの僅かな振動が生じる場合がある。
【0092】
以下の表には、診断のための参照値が列挙されている。
【0093】
【符号の説明】
【0094】
1 センサエレメント
2 フロートにおけるターゲット
3 VBへの逆流管路
4 DV専用弁回路
5 シングル回路圧力供給部
6 可動子6/6a
7/7a 弁プランジャ
8 弁座
9 分離弁
RZ1-RZ4 ホイールブレーキシリンダ
BK1/BK2 ブレーキ回路
RK1 ホイール回路1
RK2 ホイール回路2
RK3 ホイール回路3
RK4 ホイール回路4
HCU DVおよび弁を含む全液圧ユニット
VB リザーバタンク
HL1-HL4 HCUの外側のRZへの液圧管路
HL5 SHZからBVへの液圧管路
KTV 回路分離弁
DV 圧力供給部
DG 圧力トランスデューサ
EM1/2 電磁石回路1/2
ElV 電気的な弁制御装置
elEM 電気機械的なブレーキの電気的なモータ制御装置
9 永久磁石
10 磁極プレート
11 電磁的なコイルフラックスガイド
12 プラスチック体
13 戻しばね
SV2k 力付加装置を備え、逆止弁を有さない無通電開放式の磁石弁
【国際調査報告】