(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ
(51)【国際特許分類】
A61C 17/22 20060101AFI20240829BHJP
A61C 17/34 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61C17/22 A
A61C17/34 K
A61C17/34 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515604
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022075566
(87)【国際公開番号】W WO2023041602
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515148387
【氏名又は名称】キュラデン・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ザヴァッローニ・マルコ
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA07
3B202AB15
3B202BC08
3B202BC09
3B202BD01
3B202BE09
3B202CA02
3B202CA05
3B202DB04
(57)【要約】
縦長の基体を備える、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ(10)は、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結する駆動部アダプタを有する円錐台状のベース部(11)と、多数の毛が植設されている毛支持体を有するヘッド部(13)と、ベース部(11)とヘッド部(13)とを結合する縦長のネック部(12)と、を備えている。基体は、幾何学的なベース部長手方向軸線(20)と、幾何学的なヘッド部配向軸線とが5°~12°の範囲内の角度yを形成するように屈曲角度を形成している。基体内の幾何学的な屈曲位置(22)は、ベース部(11)の終端面に対して、基体の全長の少なくとも50%の間隔を有している。長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシは、ブラシ(10)と、手持ち器具であって、ブラシ(10)を手持ち器具に着脱自在に取り付けるブラシクラッチを有する手持ち器具と、ブラシクラッチに長手方向軸線振動を発生させる駆動部(16)と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ(10)であって、縦長の基体を備え、前記基体は、
a)円錐台状のベース部(11)を有し、前記ベース部(11)は、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結する駆動部アダプタ(14)を有し、前記駆動部アダプタ(14)は、前記ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定し、
b)ヘッド部(13)を有し、前記ヘッド部(13)は、ヘッド部配向軸線(21)と、毛支持体と、を有し、前記毛支持体内には、多数の毛が植設されており、
c)かつ前記ベース部と比較して横断面テーパしたネック部(12)を有し、前記ネック部(12)は、ベース部(11)とヘッド部(13)とを結合する、
ブラシ(10)において、
d)前記基体は、幾何学的なベース部長手方向軸線(20)と、幾何学的なヘッド部配向軸線(21)とが5°~12°の範囲内の角度γを形成するように屈曲角度を形成し、かつ
e)前記基体内の幾何学的な屈曲位置(22)は、前記ベース部(11)の終端面に対して、前記基体の全長(L)の少なくとも50%の間隔(K)を有する、
ことを特徴とする、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ(10)。
【請求項2】
前記幾何学的な屈曲位置(22)の、前記ベース部(11)の前記終端面に対する前記間隔(K)は、前記基体の前記全長(L)の少なくとも60%であることを特徴とする、請求項1に記載のブラシ(10)。
【請求項3】
前記幾何学的な屈曲位置(22)の、前記ベース部(11)の前記終端面に対する前記間隔は、前記基体の全長(L)の最高で75%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のブラシ(10)。
【請求項4】
前記ヘッド部(13)はプレート形で、前記ネック部(12)はロッド形であり、好ましくは、
a)前記ヘッド部(13)は、前記ネック部(12)の少なくとも約2倍の幅であり、かつ/又は
b)前記ヘッド部(13)は、前記ネック部(12)の最高で約1.5倍の長さであり、かつ/又は
c)前記ヘッド部(13)は、前記長手方向軸線(x)と前記ヘッド配向軸線とにより規定される断面内で、前記ネック部と約同じ厚さである、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項5】
前記ヘッド部(13)は、前記ネック部(12)の質量より大きい質量を有し、特に、前記ヘッド部(13)は、前記ネック部(12)の前記質量より少なくとも30%、特に好ましくは、少なくとも50%大きい質量を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項6】
前記ベース部(11)は、前記ヘッド部(13)と約同じ長さであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項7】
前記ネック部(12)は、前記ネック部(12)の長さの4分の1以下である横方向寸法を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項8】
前記基体は、6000MPa以下であって、2000Mpa以上である弾性率を有する支持機能を担う材料を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項9】
前記弾性率は、少なくとも2500Mpa、特に少なくとも3000Mpaであることを特徴とする、請求項8に記載のブラシ(10)。
【請求項10】
前記基体は、実質的に一体に1つの材料からなることを特徴とする、請求項8に記載のブラシ(10)。
【請求項11】
前記基体は、実質的に2つ又は3つの素材結合式に結合される材料部分により形成されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載のブラシ(10)。
【請求項12】
前記ヘッド部(13)は、前記ブラシ(10)の長さに関して10%~20%の振れを有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項13】
前記毛は、前記ブラシ(10)の前記ヘッド部配向軸線(21)から実質的に垂直に突出することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項14】
前記幾何学的なベース部長手方向軸線(20)と、前記幾何学的なヘッド部配向軸線(21)とは、7°~10°の範囲内の角度γを形成することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項15】
ネック部(12)は、ヘッド部と比較して横断面テーパしていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項16】
長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシであって、
a)請求項1から9のいずれか一項に記載のブラシ(10)と、
b)手持ち器具であって、前記ブラシ(10)を前記手持ち器具に着脱自在に取り付けるブラシクラッチと、前記ブラシクラッチに長手方向軸線振動を発生させる駆動部(16、前記手持ち器具内)と、を有する手持ち器具と、
を備える、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ。
【請求項17】
前記駆動部(16)は、150Hz~400Hzの範囲内の長手方向軸線振動の振動数を発生させるべく、形成されていることを特徴とする、請求項16に記載の音波歯ブラシ。
【請求項18】
前記駆動部(16)は、3°未満、特に1°~3°の振幅を有する長手方向軸線振動を発生させるべく、形成されていることを特徴とする、請求項16又は17に記載の音波歯ブラシ。
【請求項19】
長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ(10)であって、縦長の基体を備え、前記基体は、
f)ベース部(11)を有し、前記ベース部(11)は、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結する駆動部アダプタ(14)を有し、前記駆動部アダプタ(14)は、前記ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定し、
g)ヘッド部(13)を有し、前記ヘッド部(13)は、ヘッド部配向軸線(21)と、毛支持体と、を有し、前記毛支持体内には、多数の毛が植設されており、
h)かつ前記ベース部と比較して横断面テーパしたネック部(12)を有し、前記ネック部(12)は、ベース部(11)とヘッド部(13)とを結合する、
ブラシ(10)において、
i)前記基体は、前記幾何学的なベース部長手方向軸線(20)と、幾何学的なヘッド部配向軸線(21)とが8°~15°の範囲内の角度γを形成するように屈曲角度を形成し、かつ
j)前記基体は、6000Mpa以下であって、2000Mpa以上である弾性率を有する支持機能を担う材料を有する、
ことを特徴とする、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ(10)。
【請求項20】
前記弾性率は、少なくとも2500Mpa、特に少なくとも3000Mpaであることを特徴とする、請求項19に記載のブラシ(10)。
【請求項21】
前記ヘッド部(13)はプレート形で、前記ネック部(12)はロッド形であり、好ましくは、
a)前記ヘッド部(13)は、前記ネック部(12)の少なくとも約2倍の幅であり、かつ/又は
b)前記ヘッド部(13)は、前記ネック部(12)の最高で約1.5倍の長さであり、かつ/又は
c)前記ヘッド部(13)は、前記長手方向軸線(x)と前記ヘッド配向軸線とにより規定される断面内で、前記ネック部と約同じ厚さである、
ことを特徴とする、請求項19又は20に記載のブラシ(10)。
【請求項22】
前記ヘッド部(13)は、前記ネック部(12)の質量より大きい質量を有し、特に、前記ヘッド部(13)は、前記ネック部の前記質量より少なくとも30%、特に好ましくは、少なくとも50%大きい質量を有することを特徴とする、請求項19から21のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項23】
前記ベース部(11)は、前記ヘッド部(13)と約同じ長さであることを特徴とする、請求項19から22のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項24】
前記ネック部(12)は、前記ネック部(12)の長さの4分の1以下である横方向寸法を有することを特徴とする、請求項19から23のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項25】
前記基体は、実質的に一体に、支持機能を担う1つの材料からなることを特徴とする、請求項19から24のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項26】
前記基体は、実質的に2つ又は3つの素材結合式に結合される材料部分により形成されていることを特徴とする、請求項19から24のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項27】
前記ヘッド部(13)は、前記ブラシ(10)の長さ(L)の10%~20%の振れ(A)を有することを特徴とする、請求項19から26のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項28】
前記毛は、前記ブラシ(10)の前記ヘッド部配向軸線(21)から実質的に垂直に突出することを特徴とする、請求項19から27のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項29】
前記幾何学的な屈曲位置(22)の、前記ベース部(11)の前記終端面に対する前記間隔は、前記基体の長さ(L)の少なくとも50%であることを特徴とする、請求項19から28のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項30】
前記幾何学的なベース部長手方向軸線(20)と、前記幾何学的なヘッド部配向軸線(21)とは、10°~14°の範囲内の角度γを形成することを特徴とする、請求項19から29のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項31】
ネック部(12)は、前記ヘッド部と比較して横断面テーパしていることを特徴とする、請求項19から30のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項32】
前記幾何学的な屈曲位置(22)の、前記ベース部(11)の前記終端面に対する前記間隔(K)は、前記基体の前記全長(L)の少なくとも60%であることを特徴とする、請求項19から31のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項33】
前記幾何学的な屈曲位置(22)の、前記ベース部(11)の前記終端面に対する前記間隔は、前記基体の前記全長(L)の最高で75%であることを特徴とする、請求項19から32のいずれか一項に記載のブラシ(10)。
【請求項34】
長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシであって、
c)請求項19から33のいずれか一項に記載のブラシ(10)と、
d)手持ち器具(16)であって、前記ブラシ(10)を前記手持ち器具(16)に着脱自在に取り付けるブラシクラッチと、前記手持ち器具(16)内に設けられ、前記ブラシクラッチに長手方向軸線振動を発生させる駆動部と、を有する手持ち器具(16)と、
を備える、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ。
【請求項35】
前記手持ち器具(16)内に設けられた前記駆動部は、150Hz~400Hzの範囲内の長手方向軸線振動の振動数を発生させるべく、形成されていることを特徴とする、請求項34に記載の音波歯ブラシ。
【請求項36】
前記駆動部は、最大3°、特に少なくとも1°であって、3°以下である振幅(α)を有する長手方向軸線振動を発生させるべく、形成されていることを特徴とする、請求項34又は35に記載の音波歯ブラシ。
【請求項37】
前記ベース部(32)内にRFIDチップ(31)を含むことを特徴とする、請求項1から15又は19から33のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項38】
前記RFIDチップ(31)は、前記ベース部の連結中空室(36)の長手方向領域内に配置されていることを特徴とする、請求項37に記載のブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシであって、縦長の基体を備え、基体は、ベース部を有し、ベース部は、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結する駆動部アダプタを有する、ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の電気式に駆動される歯ブラシが存在する。
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3等の刊行物から、毛方向に対して平行な軸線回りに回転することができ、この軸線回りに往復動される円いブラシヘッドの原理が公知である。このアッセンブリの利点は、動かされる部分(すなわち、円いブラシヘッド)が極めて小さいことである。この小さな部分は、多くの駆動エネルギを必要とせず、生じる力(トルク)は、小さいという傾向がある。この原理の欠点は、毛運動が回転軸線に対する距離に依存していることにある。毛がブラシヘッドの軸線に対して近ければ近いほど、往復運動は小さくなってしまう。この運動パターンは、つまり、毛領域にわたって極めて不均一に分布している。
【0004】
特許文献4、特許文献5、特許文献6等の刊行物からは、揺動運動の原理が公知である。この場合、ブラシは、揺動軸線を中心に揺動し、揺動軸線は、手持ち器具(駆動部)及び載置されたブラシに対して垂直であり、かつ手持ち器具及びブラシの長手方向延在軸線と、ブラシを手持ち器具に連結するところで交差している。利点は、運動強度が毛領域全体にわたって均一に分布していることである。すべての毛は、すなわち、程度の差こそあれ同じ間隔を揺動軸線から有している。欠点は、しかし、ブラシヘッドの質量が比較的遠く揺動軸線から離れているため、比較的大きな力(モーメント)が生じてしまうことにある。
【0005】
特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11等の刊行物からは、筐体バイブレーションの原理が公知である。手持ち器具内又はブラシネック内に設けられた駆動部が、詳しくは規定されないバイブレーションを発生させ、バイブレーションは、毛に伝達される。この設計の利点は、運動伝達の技術的な詳細に煩わされずに済むことである。欠点は、しかし、筐体全体をバイブレーションさせなければならず、かつ相応に、小さな部分をバイブレーションさせるだけで済む場合と比較して、多くの駆動エネルギを必要としてしまうことである。加えて、バイブレーションは、強すぎると、手持ち器具を保持したときの快適性を損なわせることになるため、強すぎてはならない。つまるところ、毛の効果的な運動は、不明であり、規定されても、コントロールされてもいないバイブレーションによるこの種の清掃の作用は、とても最適とは言い難い。
【0006】
1つの別の原理は、特許文献12、特許文献13等の刊行物において公知である。ここでは、手持ち器具は、連結ピンを有し、連結ピンは、長手方向軸線回りに往復回転する。連結ピン上に載置されたブラシは、真っ直ぐなネックを備え、端部には毛プレートを備え、毛プレートからは、毛が手持ち器具あるいはブラシネックの長手方向軸線に対して横方向で立っている。この幾何学形状の利点は、アタッチメントブラシの質量(ネック、毛プレート)が長手方向軸線(運動中心)の比較的近傍にあるので、生じる力(モーメント)が比較的僅かであることにある。運動強度も、比較的一様に毛領域にわたって分布している。この原理の欠点は、しかし、毛が1次元の運動(往復)しか実施しないことである。一方では、これにより、歯磨き剤のための発泡効果は、満足のいくものではなく、他方では、専門家によって手動歯ブラシとの関連で数十年来推奨されてきた、円を描くような、ひいてはやさしくもありながら、効率的でもある運動の利点は、失われてしまう。
【0007】
手動歯ブラシでは、清掃効果が毛の硬さに依存していることが知られている。それぞれ異なる硬さの毛は、使用目的次第で、それぞれ異なる清掃作用と、それぞれ異なる潜在的な有害性とを有している。これらの効果は、当業者の間では知られており、患者へのアドバイスにも含まれることが常である。
【0008】
電気式に駆動されるブラシは、人が手で行うことができるよりも遥かに高速で動くので、音波歯ブラシは、ユーザにとって極めて快適であり、効率的でもある。
【0009】
音波歯ブラシの場合、これまで、モータの振動数が高ければ高いほど、そして毛の清掃運動が大きければ大きいほど、清掃はより良好とされてきた。
【0010】
特許文献14において、折曲したブラシヘッドを備える音波歯ブラシが公知である。この音波歯ブラシは、前方に向かって角度が付けられていることにより、歯列の様々な箇所へより良好にアクセス可能である。加えて屈曲により、ブラシのフィラメントが、より大きな振幅でブラシ長手方向軸線に対して横方向で振動することが達成される。好ましい動作振動数は、2000~8000ヘルツである。振動数は、しかし、より高く、例えば10kHz、50kHzにあってもよいし、より低く、例えば200Hz又は500Hzにあってもよい。
【0011】
特許文献15において、共振振動数を高めるために、ブラシの長手方向軸線に対して横方向で延びる2つの平行なチャネルを備える超音波歯ブラシが公知である。振動数は、両チャネルが前面に布置されているとき、前後方向で高められる。チャネルがブラシネックの左右に設けられているときは、側方方向での振動数が高まる。
【0012】
欠点:
依然として、音波歯ブラシの清掃挙動は、十分には理解されていない。人が今日、手動歯ブラシの清掃作用に関して有している見識は、音波歯ブラシの高度に動的な状況には転用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】DE 10 2016 011477(Schiffer)
【特許文献2】欧州特許出願公開第2454967号明細書(Braun)
【特許文献3】国際公開第2005/046508号(Trisa)
【特許文献4】JP H04-43127(Kao)
【特許文献5】米国特許出願公開第2006168744号明細書(Butler)
【特許文献6】US 2012/0291212(Montagnino)
【特許文献7】JP 2012-161368(Sanion)
【特許文献8】独国実用新案第29913406号明細書(Rowenta)
【特許文献9】米国特許第6766548号明細書(Rowenta)
【特許文献10】国際公開第2005/046508号(Trisa)
【特許文献11】国際公開第2013/104020号(Erskine)
【特許文献12】国際公開第2012/151259号(Water Pik)
【特許文献13】欧州特許第2548531号明細書(Trisa)
【特許文献14】国際公開第2017/050612号(Curaden)
【特許文献15】米国特許出願公開第2012/0291212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、より良好な、特に歯肉にやさしい清掃作用を有する、冒頭で挙げた技術分野に属する音波歯ブラシ用の歯ブラシを提供することである。特に、毛の、規定されていて、コントロールされている2次元の運動が発生されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、解決手段は、請求項1により規定される。
【0016】
長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシは、縦長の基体を備え、基体は、
a)円錐台状のベース部を有し、ベース部は、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結する駆動部アダプタを有し、駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定し、
b)ヘッド部を有し、ヘッド部は、ヘッド部配向軸線と、毛支持体と、を有し、毛支持体内には、多数の毛が植設されており、
c)かつベース部と比較して横断面テーパしたネック部を有し、ネック部は、ベース部とヘッド部とを結合する。
【0017】
基体は、幾何学的なベース部長手方向軸線と、幾何学的なヘッド部配向軸線とが5°~12°の範囲内の角度γを形成するように屈曲角度を有している。加えて、基体内の幾何学的な屈曲位置は、ベース部の終端面に対して、基体の全長の少なくとも50%の間隔を有している。
【0018】
本発明に係る音波歯ブラシは、基本的には、長手方向軸線、つまりベース部長手方向軸線(ここではx軸と規定)回りのブラシの振動を発生させる。毛は、これにより一次的には上記長手方向軸線に対して横方向での払拭運動を実施する。本発明に係るブラシの1つの特別な利点は、ブラシが、ヘッド部の十分に大きな振れ(偏心ともいう)を結果として伴う屈曲角度位置を有するので、長手方向軸線の方向での所定の振動も実施することにある。結果として、「8の字」運動と称呼し得る2次元の運動が生じる。このような運動は、複数の観点で特に有利である。
【0019】
本発明により小さすぎることも、大きすぎることもない特別な屈曲角度と、あまりベース部に近くない本発明による屈曲角度位置とからなる組み合わせは、振れ(あるいはベース部長手方向軸線に関する偏心)と、てこ作用とを生じ、てこ作用は、歯ブラシの動作時、ブラシヘッドを容易に傾動運動させる。このことは、毛先の上述の2次元の「8」の字運動を生じる。
【0020】
しかし、本ブラシ設計の1つの利点は、ブラシが、毛の方向での小さな「傾動運動」も実施することである。これにより、唾液と歯磨き剤とからなる混合物が、「前方へ」歯間に推進される。このことは、特にワンタフト歯ブラシの場合に重要であり、このワンタフト歯ブラシは、特により良好な歯間清掃のために好適である。
【0021】
本発明は、その他の点では、以下の基本的特徴から出発する:
a)ブラシは、ベース部を備え、ベース部には、手持ち器具へのアダプタ、いわゆる駆動部アダプタが形成されている。アダプタは、幾何学的な観点で、音波歯ブラシ駆動部の連結部材(例えばピン)に回転伝達可能(しかし、交換可能)に結合されるべく、設計されている。音波歯ブラシ駆動部は、ブラシに伝達すべき長手方向軸線振動を発生させる。駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定する。この長手方向軸線は、通常の場合、ブラシを手持ち器具上に差し嵌めることが可能な方向である。
b)さらにブラシは、毛支持体を有するヘッド部を備え、毛支持体内には、多数の毛が植設されている(毛領域)。ヘッド部は、この原理では、ブラシの上側の端部である(これに対して、ベース部は、下側の端部を形成している)。ヘッド部は、ヘッド部配向軸線を規定する。ヘッド内に植設された毛は、例えばヘッド部配向軸線に対して横方向で突出している。典型的には、しかし、必須というわけではないが、毛は、ヘッド部配向軸線に対して垂直である。
c)ベース部とヘッド部との間に、基体は、ネック部を有している。ネック部は、つまり、ベース部とヘッド部とを互いに結合する。ネック部は、ベース部と比較して横断面テーパしている。すなわち、ベース部を(ベース部長手方向軸線に関して)横断面で見たとき、x方向又はy方向での寸法は、ネック部の横断面(つまり、ネック部長手方向軸線に対して横方向)で見たものよりも小さい。このとき、横断面テーパとは、横断面積に関すべきものである。つまり、必ずしも、x方向での寸法及びy方向での寸法が、より小さいというわけではない。
【0022】
第1の変化態様において、毛支持体は、それぞれ多数の毛を有する複数のタフトを有している。第2の変化態様において、毛支持体は、多数の毛を有する正確に1つのタフトを有している(ワンタフト変化態様)。
【0023】
毛は、しかし、特にブラシが歯間ブラシとして形成されている場合、毛支持体の表面と間接的に、植設されていてもよい。第3の変化態様において、毛支持体は、毛支持体の表面に、ねじられた又はよられたワイヤループを有し、ストランドの間に毛が挟まれ固定されている。この場合、ヘッド部配向軸線は、好ましくは、ワイヤ配向に対して直角に配向されている。
【0024】
幾何学的な屈曲位置は、幾何学的なベース部長手方向軸線と、幾何学的なヘッド部配向軸線との間の交点により規定される。幾何学的な屈曲位置には、つまり、必ずしも基体の屈曲状(又はエルボ状)の方向転換が存在している必要はない。好ましくは、幾何学的な屈曲位置は、基体内に存在している。基体の形状は、必ずしも外見上看取可能な屈曲を有している必要はなく、例えば弧形に形成されていてもよい。変化態様において、さらに、幾何学的な屈曲位置は、基体外に位置していてもよい。当業者であれば、さらなるバリエーションも明らかである。
【0025】
ベース部の終端面と、屈曲位置との間の間隔は、ベース部長手方向軸線に沿って測定される。同じく基体の全長は、ベース部長手方向軸線に沿って測定される。
【0026】
幾何学的な屈曲位置は、本発明により、幾何学的なベース部長手方向軸線と、幾何学的なヘッド部配向軸線との間の角度γ(ガンマ)が5°~12°であることとの関連において、歯の清掃のための特に最適な振動挙動を達成すべく、ヘッド部から比較的大きな間隔を有している。角度が大きく選択されればされるほど、ベース部長手方向軸線からのヘッド部の振れ(偏心)は強くなる。同じく、屈曲位置がさらにヘッド部から離されると、偏心はより大きくなる。しかし、両パラメータ(屈曲位置及び角度)は、振動挙動に対して、同じ規模で、同じようには影響を及ぼさないことがわかっており、その結果、清掃作用に関して、例えば拡大した角度は、直接、屈曲位置とヘッド部との間の間隔をより小さくすることによっては補償され得ない。それというのも、ヘッド部の2次元あるいは3次元の振動パターンは、両パラメータに対してそれぞれ異なる反応を示すからである。
【0027】
幾何学的な屈曲位置の、ベース部の終端面に対する間隔は、好ましくは、基体の全長の少なくとも60%である。これにより、幾何学的な屈曲位置のための、実験により特に有利な2次元あるいは3次元の振動パターンへと至る特に最適な範囲が規定される。これにより、特に効果的であると同時にやさしい歯の清掃が達成され得る。
【0028】
変化態様において、幾何学的な屈曲位置の、ベース部の終端面に対する間隔は、基体の全長の50%~60%であってもよい。
【0029】
特別な一実施態様によれば、幾何学的な屈曲位置の、ベース部の終端面に対する間隔は、基体の全長(L)の最高で75%である。上限を定めたこの範囲内では、5°~12°の本発明による屈曲角度とともに、ネック部及びヘッド部の幾何学的な寸法に関する大きな構成上の余地を伴って、十分に強い「8」の字運動が達成される。
【0030】
特別な一実施態様によれば、ヘッド部はプレート形で、ネック部はロッド形である。ヘッド部は、つまり、横断面内(つまり、ヘッド部配向軸線に対して垂直な平面内)において、一方の方向(例えばy方向)で、他方の方向(例えばz方向)よりも広幅である。横断面の形状は、例えば長方形、台形又はオーバルであってもよい。
【0031】
ネック部は、例えば横断面円形、オーバル、四角形、六角形、八角形、台形又はこのような形状の幾何学的な近似若しくは変形である。横断面形状は、回転対称である必要はない。
【0032】
第1の特別な実施の形態によれば、ヘッド部は、ネック部の少なくとも約2倍の幅である。
【0033】
第2の特別な実施の形態に応じて、ヘッド部は、ネック部の最高で約1.5倍の長さである。このことは、前述の実施の形態とも組み合わされる。
【0034】
第3の特別な実施の形態によれば、ヘッド部は、ブラシの長手方向軸線とヘッド配向軸線とにより規定される断面内で、ネック部と約同じ厚さである。つまり、ヘッド部がプレート形であるとき、ネック部は、ヘッド部プレートと約同じ厚さである。
【0035】
一実施の形態では、ヘッド部は、ネック部の少なくとも約2倍の幅であり、かつ最高で約1.5倍の長さである。特に好ましくは、ヘッド部は、ネック部の2~3倍の幅であり、かつ好ましくは、0.5~1.5倍の長さである。ヘッド部と比較して相対的に細身のネック部により、特に良好な振動挙動が達成され、ひいては歯の最適な清掃が達成される。
【0036】
変化態様において、ヘッド部は、ネック部の2倍未満の幅であり、かつ1.5倍より大きい長さであってもよい。
【0037】
特別な一実施態様では、ヘッド部は、ネック部の質量より大きい質量を有し、特に、ヘッド部は、好ましくは、ネック部の質量より30%超大きい、特に好ましくは、50%超大きい質量を有している。この質量分布は、相応の幾何学的な寸法によって、若しくは異なる材料によって、又はその両方によって達成される。
【0038】
ネック部と比較してヘッド部の相対的に大きな質量は、歯ブラシの動作時、ブラシヘッドの容易に傾動する運動(z方向での運動)が最適化され得るという効果を有している。より大きな質量により、傾動運動のインパルスを拡大させることができ、これにより、2次元の「8」の字運動を強めることができ、これにより、他方、より良好に歯間にアプローチすることができる。このことは、特に、しかし、それらに限定するものではないが、ワンタフト変化態様あるいは歯間ブラシにおいて大きな利点である。
【0039】
変化態様において、ヘッド部は、ネック部の質量よりも30%未満大きい質量を有していてもよく、特に、ヘッド部及びネック部の質量は、大体同じであってもよい。これは、例えばヘッド部がネック部と同じ厚さで、ネック部がヘッド部より3倍長く、かつヘッド部がネック部より3倍広幅であるときである。
【0040】
好ましくは、ベース部は、ヘッド部と約同じ長さである。これにより、ベース部は、音波歯ブラシ駆動部への安定的な取り付けを達成するのに十分な大きさである(例えば長いアダプタチャネルを、手持ち器具の相応に長いピンのために有する)。駆動部の振動、ひいては運動エネルギは、効率的にネック部を介してヘッド部に伝達される。
【0041】
特別な一実施態様では、ベース部は、ヘッド部より短く、特に、ベース部は、ヘッド部の約半分の長さである。これにより、より多くの構成上の余地が、ネック部のために提供される。このような一実施態様では、加えて駆動部アダプタが、ブラシに設けられた細身のピンとして形成されており、このピンが、手持ち器具内に設けられたアダプタチャネル内に導入される場合、安定的な取り付け部は、音波歯ブラシ駆動部に埋伏されている。
【0042】
変化態様において、ベース部は、ヘッド部より長くてもよい。
【0043】
好ましくは、ネック部は、ネック部の長さの4分の1以下である横方向寸法を有している。横方向寸法とは、幾何学的な配向軸線に対して直角あるいはベース部長手方向軸線に対して直角な直径と解すべきである。ネック部がヘッド部に接続しているところでは、ヘッド部配向軸線が基準であり、ネック部がベース部に接続しているところでは、ベース部長手方向軸線が基準である。ネック部は、これにより意識的に細身に保たれ、その結果、これにより、ヘッド部の振動挙動、特に平面内での振動挙動(「8」の字運動)及び傾動運動は、補助され得る。
【0044】
変化態様において、横方向寸法は、ネック部の長さの4分の1より大きくてもよい。このことは、例えば特に柔軟なあるいは弾性的な材料が、ネック部のために使用されるとき、有意義な場合もある。
【0045】
好ましくは、基体は、8000MPa未満の弾性率を有する支持機能を担う材料を有している。特に弾性率は、2000MPa~6000MPaの範囲内にある。これにより、振動を最適に伝達するのに十分に弾性的であり、他方では、同じく十分に安定的である基体が得られる。
【0046】
好ましくは、弾性率は、少なくとも2500MPa、特に少なくとも3000MPaである。これにより、長手方向軸線振動を最適に伝達するのに十分に堅固である基体が保証される。
【0047】
本発明の特定の変化態様(例えば8°の範囲のむしろ小さな屈曲角度)では、弾性率は、傾向としては、大きな屈曲角度(例えば15°)のときよりも低いことがある(例えば2000MPa~3000MPa)。
【0048】
別の特別な一実施態様は、基体の支持機能を担う1種類の材料(あるいは支持機能を担う複数種類の材料)の弾性率が、4000MPa~6000MPaの範囲内にあることを特徴とする。
【0049】
ヘッド部の質量が、ネック部の横断面に比して相対的に大きいときは、5000MPa~6000MPaの範囲内の弾性率が有利である。
【0050】
好ましくは、基体は、実質的に一体に1つの材料からなっている。これにより、一方では、基体の特に低コストの製造が達成される。他方では、これにより、特に最適な振動挙動も可能とされる。それというのも、振動挙動、特に2次元あるいは3次元の振動挙動を妨げる異なる材料の移行界面が存在しないからである。振動挙動において、このような移行界面は、振動パターンにより異なる方向に曲げられてしまう。
【0051】
本発明の範囲内において、ブラシの表面が、支持機能を担わない材料によりコーティング又は被覆されていても、支持機能を担う1つの材料からなる一体の基体といえる。例えば、一体の基体において、ベース部に、粗さ又は表面グリップ性を高める材料からなる領域が設けられていてもよく、その結果、ブラシは、より良好に指でつまんで駆動ピンから除去することが可能である。
【0052】
特別な一実施の形態によれば、基体は、実質的に2つの素材結合式に結合される材料部分により形成されている。例えばベース部が、ブラシのネック及びヘッドとは別のプラスチックから射出成形される場合、極めて剛性の高い(高い弾性率を有する)プラスチックにより、手持ち器具に設けられた駆動ピンへの連結部が、駆動部の運動を最適にブラシに伝達することが保証され得る。それにもかかわらず、ネックは、剛性がそれほど高くない材料により、十分に弾性的に構成され得る(ネック部の材料の弾性率は、ベース部の弾性率より低い)。
【0053】
別の特別な一実施態様は、基体が、実質的に3つの素材結合式に結合される材料部分により形成されていることを特徴とする。而して、基体は、例えば長手方向で、強度の異なる2つの素材結合式に結合される材料部分からなっていてもよい。さらにヘッド部、ネック部及びベース部が、それぞれ異なる材料から形成されていることが可能である。ヘッド部に対する要求は、ベース部に対する要求とは異なっており、このことは、材料選択により最適化され得る。
【0054】
2つ又は3つの素材結合式に結合される材料からなる基体は、例えば2つ又は3つの材料を用いた新しいプラスチック射出成形法により生じる。
【0055】
支持機能を担う2つ又は3つの材料部分を有する基体にも、さらに、支持機能を担わない(例えば軟性の)被覆層が存在していてもよく、これにより、特定の機能(例えばブラシ背面が歯と接触した際の保護)を達成することができる。
【0056】
好ましくは、ヘッド部は、ブラシの長さに関して10%~20%の振れを有している。振れとは、ここでは、ヘッド部の中心(重心)の、アダプタ長手方向軸線に対する距離を、基体の(x方向での)全長Lにより割った比と解される。振れは、「アダプタ長手方向軸線に関するヘッド部の偏心」と見なされ得る。振れは、振動パターンにおいて重要であり、10%~20%の振れにより、「8」の字運動が特に際立って実施されることが判明している。
【0057】
振れは、10%未満であってもよいし、20%より大きくてもよい。全体として小さな長さを有するブラシの場合、ヘッドの「不釣り合い」が小さくなりすぎないように、振れは、好ましくは、20%の範囲に選択される。高い動作振動数(例えば240Hz超)用に指定されているブラシの場合であれば、振れは、むしろ10%の範囲に選択される。それというのも、振動数が比較的高いときは、ヘッドの「不釣り合い」が、さもなければ大きくなりすぎてしまうことがあるからである。
【0058】
特別な一実施態様によれば、毛は、ブラシのヘッド部配向軸線から実質的に垂直に突出している。ベース部長手方向軸線と毛方向との間の角度は、この場合、90°マイナス屈曲角度γ(ガンマ)である。屈曲角度が例えばγ=9°であるとき、90°-9°=81°である。
【0059】
毛は、例えば、プレート形に形成されるヘッド部の主面上に植設されている。ヘッド部は、ワンタフトブラシの場合、しかし、ロッド形であってもよく、単一のタフトは、シリンダ状の空所(例えば止まり穴)内に植設されている。
【0060】
好ましくは、幾何学的なベース部長手方向軸線と、幾何学的なヘッド部配向軸線とは、7°~10°の範囲内の角度γ(ガンマ)を形成する。この角度範囲は、実験で特に有利であることがわかっており、その結果、これにより、歯の清掃のために特に理想的な振動パターンが達成され得る。実験は、これにより、振動パターン、特に「8」の字運動が、特に有利にははっきりとし、これにより、ブラシによる歯の清掃が、特にやさしく実施され得ることを示している。この角度範囲は、さらに、ブラシの全長に関するヘッド部の振れあるいは偏心が10%~20%であることとの関連において、特に有利であることがわかっており、かつ同じく、最適なエルゴノミクスで、特に良好な清掃結果へと導く。
【0061】
7°~10°の角度範囲は、10%~20%の振れとの組み合わせで、所望の「8の字運動」の意味でのブラシヘッドの振動の良好な固有動特性に至る。
【0062】
特別な一実施態様では、ネック部は、ヘッド部と比較して横断面テーパしている。すなわち、ヘッド部は、(ヘッド部配向軸線に対して垂直に見て)ネック部より大きな幅及び/又は厚さを有している。これにより、ネック部は、ヘッド部より機械的に剛性が下げられる(基体が、1つの材料から、又は大体同じ弾性率を有する複数の材料から製造されている場合)。
【0063】
長手方向軸線振動を有する本発明に係る音波歯ブラシは、本発明に係るブラシと、手持ち器具であって、ブラシを手持ち器具に着脱自在に取り付けるブラシクラッチと、ブラシクラッチに長手方向軸線振動を発生させる駆動部と、を有する手持ち器具と、を備えている。駆動部は、例えば圧電式駆動部、電磁式駆動部及び/又は電気式回転駆動部を有していてもよい。特に好ましくは、特に単純な構造、特にコンパクトな構造形式及び精緻な制御可能性に基づき、圧電式駆動部が使用される。
【0064】
好ましくは、駆動部は、150Hz~400Hzの範囲内の長手方向軸線振動の振動数を発生させるべく、形成されている。ブラシにより2次元あるいは3次元の運動パターンが発生されるので、長手方向軸線振動の振動数は、比較的低く設定されており、その結果、より多くの時間が、振動毎に複数の方向転換の実施のために、例えば「8」の字運動」時に提供されている。長手方向軸線振動の振動数は、有利には、300Hz以下である。振動数が高すぎると、基体は、駆動部により発生される長手方向軸線振動をもはやブラシヘッドに伝達し得ない。内部のねじり運動が生じてしまうことがあり、内部のねじり運動は、ヘッドが例えば1つおきの振動しか実施しないことに至らしめる。
【0065】
長手方向軸線振動の振動数は、150Hz未満、例えば120Hzであってもよい。
【0066】
好ましくは、駆動部は、3°未満、特に1°~3°の範囲内の振幅(静止姿勢に関する振れ)を有する長手方向軸線振動を発生させるべく、形成されている。すなわち、ベース部は、周期的に上記角度の分だけベース部長手方向軸線回りに回転(往復動)される。変化態様において、振幅は、3°より大きくてもよい。
【0067】
本発明の第1の態様によらず、独立的に観察され得る本発明の第2の態様によれば、解決手段は、請求項19により規定される。
【0068】
長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシは、縦長の基体を備え、基体は、
a)ベース部を有し、ベース部は、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結する駆動部アダプタを有し、駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定し、
b)ヘッド部を有し、ヘッド部は、ヘッド部配向軸線と、毛支持体と、を有し、毛支持体内には、多数の毛が植設されており、
c)かつベース部と比較して横断面テーパしたネック部を有し、ネック部は、ベース部とヘッド部とを結合する。
【0069】
ブラシの基体は、幾何学的なベース部長手方向軸線と、幾何学的なヘッド部配向軸線とが8°~15°の範囲内の角度γ(ガンマ)を形成するように屈曲角度を有している。第2の重要な特徴として、基体が、6000MPa以下であって、2000MPa以上である弾性率を有する支持機能を担う材料を有する(MPa=メガパスカル)ことが追加される。
【0070】
本発明に係る音波歯ブラシは、基本的には、長手方向軸線、つまりベース部長手方向軸線(ここではx軸と規定)回りのブラシの振動を発生させる。毛は、これにより一次的には上記長手方向軸線に対して横方向(ここではy軸と規定)での払拭運動を実施する。本発明に係るブラシの1つの特別な利点は、ブラシが、選択した材料パラメータに基づき、ある特定の弾性を有し、それゆえ、予定の振動数時、長手方向運動(x軸)の方向での振動も実施することにある。結果として、「8」の字運動と称呼し得る運動が生じる。毛は、同期的にx方向とy方向とで動かされ、「8」の字の形状の1つの線にしたがう。このような運動は、デンタルケアに際して複数の観点で特に有利である。
【0071】
少なくとも8の十分に大きな屈曲角度と、十分な(しかし大きすぎない)規模の柔軟性を提供する弾性率とからなる組み合わせは、ヘッドの2次元の運動に至る。毛の植設された端部におけるこの運動は、毛の清掃端部(毛の自由端部)における毛の動きを制御する。屈曲角度の上限と、弾性率の下限とは、ブラシヘッドが、まだ十分に安定に保たれており、その結果、望ましくない「打撃」運動(毛の長手方向、つまりz軸の方向での運動)が、過度に高い(有害な)規模では生じないことを保証する。
【0072】
しかし、特に、本ブラシ設計の1つの利点は、ブラシが、毛の方向での小さな「傾動運動」(ここではz方向と規定)を実施することである。それといういのも、これにより、唾液と歯磨き剤とからなる混合物が、いわば「前方へ」歯間に推進されるからである。このことは、特にワンタフト歯ブラシの場合に重要であり、このワンタフト歯ブラシは、特により良好な歯間清掃のために好適である。
【0073】
本発明は、その他の点では、以下の基本的特徴から出発する:
d)ブラシは、ベース部を備え、ベース部には、手持ち器具へのアダプタ、いわゆる駆動部アダプタが形成されている。アダプタは、幾何学的な観点で、音波歯ブラシ駆動部の連結部材(例えばピン)に回転伝達可能(しかし、交換可能)に結合されるべく、設計されている。音波歯ブラシ駆動部は、ブラシに伝達すべき長手方向軸線振動を発生させる。駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定する。この長手方向軸線は、通常の場合、ブラシを手持ち器具上に差し嵌めることが可能な方向である。
e)さらにブラシは、毛支持体を有するヘッド部を備え、毛支持体内には、多数の毛が植設されている(毛領域)。ヘッド部は、この原理では、ブラシの上側の端部である(これに対して、ベース部は、下側の端部を形成している)。ヘッド部は、ヘッド部配向軸線を規定する。ヘッド内に植設された毛は、例えばヘッド部配向軸線に対して横方向で突出している。典型的には、しかし、必須というわけではないが、毛は、ヘッド部配向軸線に対して垂直である。
f)ベース部とヘッド部との間に、基体は、ネック部を有している。ネック部は、つまり、ベース部とヘッド部とを互いに結合する。ネック部は、ベース部と比較して横断面テーパしている。すなわち、ベース部を(ベース部長手方向軸線に関して)横断面で見たとき、x方向又はy方向での寸法は、ネック部の横断面(つまり、ネック部長手方向軸線に対して横方向)で見たものよりも小さい。このとき、横断面テーパとは、横断面積に関すべきものである。つまり、必ずしも、x方向での寸法及びy方向での寸法が、より小さいというわけではない。
【0074】
好ましくは、弾性率は、少なくとも2500MPa、特に少なくとも3000MPaである。これにより、長手方向軸線振動を最適に伝達するのに十分に堅固である基体が保証される。
【0075】
本発明の特定の変化態様(例えば8°の範囲のむしろ小さな屈曲角度)では、弾性率は、傾向としては、大きな屈曲角度(例えば15°)のときよりも低いことがある(例えば2000MPa~3000MPa)。
【0076】
別の特別な一実施態様は、基体の支持機能を担う1種類の材料(あるいは支持機能を担う複数種類の材料)の弾性率が、4000MPa~6000MPaの範囲内にあることを特徴とする。
【0077】
ヘッド部の質量が、ネック部の横断面に比して相対的に大きいときは、5000MPa~6000MPaの範囲内の弾性率が有利である。
【0078】
特別な一実施態様によれば、ネック部は、長手方向で弧形に湾曲されており、これにより、ベース部長手方向軸線と、ヘッド部配向軸線との間に角度を生じさせる。換言すれば、ベース部及びヘッド部自体は、直線状である。ネック部のみが湾曲されている。このことは、長手方向軸線振動時に生じる力が、ネック部上に分配され、1箇所に集中的には生じないという利点を有している。
【0079】
特別な一実施の形態によれば、ネック部は、ヘッド部とベース部との間の基体の細身のセクションである。ベース部は、典型的には、最大の横断面を駆動部アダプタ(ベース端部)に有し、最小の横断面をネック部への移行部付近に有している。
【0080】
ヘッド部は、実質的に、毛の植設部を形成していることにより規定されている。
【0081】
好ましくは、ヘッド部はプレート形で、ネック部はロッド形である。ヘッド部は、つまり、横断面内(つまり、ヘッド部配向軸線に対して垂直な平面内)において、一方の方向(例えばy方向)で、他方の方向(例えばz方向)よりも広幅である。横断面の形状は、例えば長方形、台形又はオーバルであってもよい。
【0082】
ネック部は、例えば横断面円形、オーバル、四角形、六角形、八角形、台形又はこのような形状の幾何学的な近似若しくは変形である。横断面形状は、回転対称である必要はない。
【0083】
第1の特別な実施の形態によれば、ヘッド部は、ネック部の少なくとも約2倍の幅である。
【0084】
第2の特別な実施の形態に応じて、ヘッド部は、ネック部の最高で約1.5倍の長さである。このことは、前述の実施の形態とも組み合わされる。
【0085】
第3の特別な実施の形態によれば、ヘッド部は、ブラシの長手方向軸線とヘッド配向軸線とにより規定される断面内で、ネック部と約同じ厚さである。
【0086】
特に好ましくは、ヘッド部は、ネック部の2~3倍の幅であり、かつ好ましくは、0.5~1.5倍の長さである。ヘッド部と比較して相対的に細身のネック部により、特に良好な振動挙動が達成され、ひいては歯の最適な清掃が達成される。
【0087】
ヘッド部は、上記寸法設定によれば、つまり、一種のはずみ質量体を形成し、ネック部は、一種の(細身の)弾性的な棒体を形成する。
【0088】
変化態様において、ヘッド部は、ネック部の2倍未満の幅であり、かつ1.5倍より大きい長さであってもよい。
【0089】
好ましい一実施の形態によれば、ヘッド部は、長手方向軸線(x)とヘッド配向軸線とにより規定される断面内で、ネック部と約同じ厚さである。つまり、ヘッド部がプレート形であるとき、ネック部は、ヘッド部プレートと約同じ厚さである。
【0090】
特別な一実施態様では、ヘッド部は、ネック部の質量より大きい質量(すなわち慣性質量)を有し、特に、ヘッド部は、好ましくは、ネック部の質量より30%超大きい、特に好ましくは、50%超大きい質量を有している。この質量分布は、相応の幾何学的な寸法によって、若しくは異なる材料によって、又はその両方によって達成される。
【0091】
ネック部と比較してヘッド部の相対的に大きな質量は、歯ブラシの動作時、ブラシヘッドの傾動する運動が最適化され得るという効果を有している。より大きな質量により、傾動運動のインパルスを拡大させることができ、これにより、2次元の「8」の字運動を強めることができ、これにより、他方、より良好に歯間にアプローチすることができる。このことは、特に、しかし、それらに限定するものではないが、ワンタフト変化態様あるいは歯間清掃において大きな利点である。
【0092】
一変化態様において、ヘッド部は、ネック部の質量よりも30%未満大きい質量を有していてもよく、特に、ヘッド部及びネック部の質量は、大体同じであってもよい。これは、例えばヘッド部がネック部と同じ厚さで、ネック部がヘッド部より3倍長く、かつヘッド部がネック部より3倍広幅であるときである。
【0093】
好ましくは、ベース部は、ヘッド部と約同じ長さである。これにより、ベース部は、音波歯ブラシ駆動部への安定的な取り付けを達成するのに十分な大きさである(例えば長いアダプタチャネルを、手持ち器具の相応に長いピンのために有する)。駆動部の振動、ひいては運動エネルギは、効率的にネック部を介してヘッド部に伝達される。
【0094】
特別な一実施態様では、ベース部は、ヘッド部より短く、特に、ベース部は、ヘッド部の約半分の長さである。これにより、より多くの構成上の余地が、ネック部のために提供される。このような一実施態様では、加えて駆動部アダプタが、ブラシに設けられた細身のピンとして形成されており、このピンが、手持ち器具内に設けられたアダプタチャネル内に導入される場合、安定的な取り付け部は、音波歯ブラシ駆動部に埋伏されている。
【0095】
変化態様において、ベース部は、ヘッド部より長くてもよい。
【0096】
好ましくは、ネック部は、ネック部の長さの4分の1以下である横方向寸法を有している。横方向寸法とは、幾何学的な配向軸線に対して直角あるいはベース部長手方向軸線に対して直角な直径と解すべきである。ネック部がヘッド部に接続しているところでは、ヘッド部配向軸線が基準であり、ネック部がベース部に接続しているところでは、ベース部長手方向軸線が基準である。ネック部は、これにより意識的に細身に保たれ、その結果、これにより、ヘッド部の振動挙動、特に平面内での振動挙動(「8」の字運動)及び傾動運動は、補助され得る。
【0097】
変化態様において、横方向寸法は、ネック部の長さの4分の1より大きくてもよい。このことは、例えば特に柔軟なあるいは弾性的な材料が、ネック部のために使用されるとき、有意義な場合もある。
【0098】
好ましくは、基体は、実質的に一体に、支持機能を担う1つの材料からなっている。これにより、一方では、基体の特に低コストの製造が達成される。他方では、これにより、特に最適な振動挙動も可能とされる。それというのも、振動挙動、特に2次元あるいは3次元の振動挙動を妨げる異なる材料の移行界面が存在しないからである。振動挙動において、このような移行界面は、振動パターンにより異なる方向に曲げられてしまう。
【0099】
本発明の範囲内において、ブラシの表面が、支持機能を担わない材料によりコーティング又は被覆されていても、支持機能を担う1つの材料からなる一体の基体といえる。例えば、一体の基体において、ベース部に、粗さ又は表面グリップ性を高める材料からなる領域が設けられていてもよく、その結果、ブラシは、より良好に指でつまんで駆動ピンから除去することが可能である。
【0100】
特別な一実施の形態によれば、基体は、実質的に2つの素材結合式に結合される材料部分により形成されている。例えばベース部が、ブラシのネック及びヘッドとは別のプラスチックから射出成形される場合、極めて剛性の高い(高い弾性率を有する)プラスチックにより、手持ち器具に設けられた駆動ピンへの連結部が、駆動部の運動を最適にブラシに伝達することが保証され得る。それにもかかわらず、ネックは、剛性がそれほど高くない材料により、十分に弾性的に構成され得る(ネック部の材料の弾性率は、ベース部の弾性率より低い)。
【0101】
別の特別な一実施態様は、基体が、実質的に3つの素材結合式に結合される支持機能を担う材料部分により形成されていることを特徴とする。而して、基体は、例えば長手方向で、強度の異なる2つの素材結合式に結合される材料部分からなっていてもよい。さらにヘッド部、ネック部及びベース部が、それぞれ異なる材料から形成されていることが可能である。ヘッド部に対する要求は、ベース部に対する要求とは異なっており、このことは、材料選択により最適化され得る。
【0102】
2つ又は3つの素材結合式に結合される支持機能を担う材料からなる基体は、例えば2つ又は3つの材料を用いた新しいプラスチック射出成形法により生じる。
【0103】
支持機能を担う2つ又は3つの材料部分を有する基体にも、さらに、支持機能を担わない(例えば軟性の)被覆層が存在していてもよく、これにより、特定の機能(例えばブラシ背面が歯と接触した際の保護)を達成することができる。
【0104】
好ましくは、ヘッド部は、ブラシの長さに関して10%~20%の振れを有している。振れとは、ここでは、ヘッド部の中心(重心)の、アダプタ長手方向軸線に対する距離を、基体の(x方向での)全長Lにより割った比と解される。振れは、「アダプタ長手方向軸線に関するヘッド部の偏心」と見なされ得る。振れは、振動パターンにおいて重要であり、10%~20%の振れにより、「8」の字運動が特に際立って実施されることが判明している。
【0105】
振れは、10%未満であってもよいし、20%より大きくてもよい。全体として小さな長さを有するブラシの場合、ヘッドの「不釣り合い」が小さくなりすぎないように、振れは、好ましくは、20%の範囲に選択される。高い動作振動数(例えば240Hz超)用に指定されているブラシの場合であれば、振れは、むしろ10%の範囲に選択される。それというのも、振動数が比較的高いときは、ヘッドの「不釣り合い」が、さもなければ大きくなりすぎてしまうことがあるからである。
【0106】
特別な一実施態様によれば、毛は、ブラシのヘッド部配向軸線から実質的に垂直に突出している。ベース部長手方向軸線と毛方向との間の角度は、この場合、90°マイナス屈曲角度γ(ガンマ)である。屈曲角度が例えばγ=11°であるとき、90°-11°=79°である。
【0107】
毛は、例えば、プレート形に形成されるヘッド部の主面上に植設されている。ヘッド部は、ワンタフトブラシの場合、しかし、ロッド形であってもよく、単一のタフトは、シリンダ状の空所(例えば止まり穴)内に植設されている。
【0108】
幾何学的な屈曲位置の、ベース部の終端面に対する間隔は、好ましくは、基体の長さの少なくとも50%である。これにより、弾性率の本発明による範囲との関連において、幾何学的な屈曲位置のための、実験により特に有利な2次元あるいは3次元の振動パターンへと至る特に最適な範囲が規定される。これにより、特に効果的であり、やさしくもある歯の清掃が達成され得る。
【0109】
幾何学的な屈曲位置は、幾何学的なベース部長手方向軸線と、幾何学的なヘッド部配向軸線との間の交点により規定される。幾何学的な屈曲位置には、つまり、必ずしも基体の屈曲状(又はエルボ状)の方向転換が存在している必要はない。好ましくは、幾何学的な屈曲位置は、基体内に存在している。基体の形状は、必ずしも外見上看取可能な屈曲を有している必要はなく、例えば弧形に形成されていてもよい。変化態様において、さらに、幾何学的な屈曲位置は、基体外に位置していてもよい。当業者であれば、さらなるバリエーションも明らかである。
【0110】
ベース部の終端面と、屈曲位置との間の間隔は、ベース部長手方向軸線に沿って測定される。同じく基体の全長は、ベース部長手方向軸線に沿って測定される。
【0111】
幾何学的な屈曲位置は、本発明により、幾何学的なベース部長手方向軸線と、幾何学的なヘッド部配向軸線との間の角度γ(ガンマ)が8°~15°であることとの関連において、歯の清掃のための特に良好な振動挙動を達成すべく、ヘッド部から比較的大きな間隔を有している。角度が大きく選択されればされるほど、ベース部長手方向軸線からのヘッド部の振れ(偏心)は強くなる。同じく、屈曲位置がさらにヘッド部から離されると、偏心はより大きくなる。しかし、両パラメータ(屈曲位置及び角度)は、振動挙動に対して、同じ規模で、同じようには影響を及ぼさないことがわかっており、その結果、清掃作用に関して、例えば拡大した角度は、直接、屈曲位置とヘッド部との間の間隔をより小さくすることによっては補償され得ない。それというのも、ヘッド部の2次元あるいは3次元の振動パターンは、両パラメータに対してそれぞれ異なる反応を示すからである。
【0112】
変化態様において、幾何学的な屈曲位置の、ベース部の終端面に対する間隔は、基体の長さの50%未満であり、例えば少なくとも35%であってもよい。
【0113】
好ましくは、幾何学的なベース部長手方向軸線と、幾何学的なヘッド部配向軸線とは、10°~14°の範囲内の角度γ(ガンマ)を形成する。この角度範囲は、実験で特に有利であることがわかっており、その結果、これにより、歯の清掃のために特に理想的な振動パターンが達成され得る。実験は、これにより、振動パターン、特に「8」の字運動が、特に有利にははっきりとし、これにより、ブラシによる歯の清掃が、特にやさしく実施され得ることを示している。この角度範囲は、さらに、ブラシの全長に関するヘッド部の振れあるいは偏心が10%~20%であることとの関連において、特に有利であることがわかっており、かつ同じく、最適なエルゴノミクスで、特に良好な清掃結果へと導く。
【0114】
10°~14°の角度範囲は、ブラシの長さの半分のところの屈曲位置との組み合わせで、ブラシヘッドの良好な振れ(偏心)に至る。これにより、所望の「8」の字運動の意味でのブラシヘッドの振動の良好な固有動特性が達成される。
【0115】
特別な一実施態様では、ネック部は、ヘッド部と比較して横断面テーパしている。すなわち、ヘッド部は、(ヘッド部配向軸線に対して垂直に見て)ネック部より大きな幅及び/又は厚さを有している。これにより、ネック部は、ヘッド部より機械的に剛性が下げられる(基体が、1つの材料から、又は大体同じ弾性率を有する複数の材料から製造されている場合)。
【0116】
本発明の別の一実施態様では、幾何学的な屈曲位置の、ベース部の終端面に対する間隔(K)は、基体の全長(L)の少なくとも60%である。
【0117】
特別な一実施態様によれば、幾何学的な屈曲位置の、ベース部の終端面に対する間隔は、基体の全長(L)の最高で75%である。上限を定めたこの範囲内では、8°~15°の本発明による屈曲角度とともに、ネック部及びヘッド部の幾何学的な寸法に関する大きな構成上の余地を伴って、十分に強い「8」の字運動が達成される。
【0118】
長手方向軸線振動を有する本発明に係る音波歯ブラシは、本発明に係るブラシと、手持ち器具であって、ブラシを手持ち器具に着脱自在に取り付けるブラシクラッチと、ブラシクラッチに長手方向軸線振動を発生させる駆動部と、を有する手持ち器具と、を備えている。駆動部は、例えば圧電式駆動部、電磁式駆動部及び/又は電気式回転駆動部を有していてもよい。特に好ましくは、特に単純な構造、特にコンパクトな構造形式及び精緻な制御可能性に基づき、圧電式駆動部が使用される。
【0119】
好ましくは、駆動部は、150Hz~400Hzの範囲内の長手方向軸線振動の振動数を発生させるべく、形成されている。ブラシにより2次元あるいは3次元の運動パターンが発生されるので、長手方向軸線振動の振動数は、比較的低く設定されており、その結果、より多くの時間が、振動毎に複数の方向転換の実施のために、例えば「8」の字運動」時に提供されている。長手方向軸線振動の振動数は、有利には、300Hz以下である。振動数が高すぎると、基体は、駆動部により発生される長手方向軸線振動をもはやブラシヘッドに伝達し得ない。内部のねじり運動が生じてしまうことがあり、内部のねじり運動は、ヘッドが例えば1つおきの振動しか実施しないことに至らしめる。
【0120】
長手方向軸線振動の振動数は、150Hz未満、例えば120Hzであってもよい。
【0121】
好ましくは、駆動部は、3°以下、特に1°~3°の範囲内の振幅を有する長手方向軸線振動を発生させるべく、形成されている。すなわち、ベース部は、周期的にベース部長手方向軸線回りに回転(往復動)される。変化態様において、振幅は、3°より大きくてもよい。
【0122】
本発明の特別な一実施態様では、ブラシは、ベース部内にRFIDチップを含んでいる。このことは、手持ち器具がデータを読み取り、ブラシの最適な動作のために利用することを可能にする。例えばブラシの最適な駆動部振動数が読み取られ、かつ手持ち器具内に設けられた駆動部が相応に動作制御され得る。
【0123】
本発明の別の特別な一実施態様では、RFIDチップは、ベース部の連結中空室の長手方向領域内に配置されている。このことは、RFIDチップが手持ち器具の近傍に配置されており、ブラシの振動挙動に影響を及ぼさないことを意味する。
【0124】
以下の詳細な説明と、特許請求の範囲の全体とから、本発明の別の有利な実施の形態及び特徴組み合わせが看取可能である。
【0125】
図面は、実施例の説明に利用する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図4】ブラシを備える音波歯ブラシの概略平面図である。
【
図6】正確に1つのタフトを備える音波歯ブラシの概略側面図である。
【
図7】本発明による「8」の字運動の概略図である。
【
図8】長手方向軸線振動の角度振幅の概略図である。
【
図9】オーバルのブラシヘッドを有する一実施の形態を示す図である。
【
図10】背面の毛領域を備えるワンタフトブラシの一実施の形態を示す図である。
【
図11】前面の毛領域を備えるワンタフトブラシの一実施の形態を示す図である。
【
図12a】RFIDを有する一実施の形態を示す図である。
【
図12b】RFIDを有する一実施の形態を示す図である。
【
図12c】RFIDを有する一実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0127】
原則、図中、同じ部材には、同じ符号を付した。
【0128】
図1は、ブラシ10の概略平面図を示している。ブラシ10は、円錐台形のベース部11と、この円錐台形のベース部11に接続しているロッド形のネック部12と、最後に、このネック部12に接続しているプレート形のヘッド部13と、を備えている。これら3つの部分は、ブラシの基体を形成している。
【0129】
円錐台形のベース部11は、駆動部アダプタを有している。駆動部アダプタは、ここでは、実質的にチャネル形の受け部14により形成されており、受け部14内には、音波歯ブラシの手持ち器具のピンが導入可能かつ係止可能である(
図4に関して下記参照)。ブラシ10は、ベース部長手方向軸線20を有し、ベース部長手方向軸線20は、受け部14に対して同軸に、あるいは音波歯ブラシの動作中、ピンに対して同軸に配向されている。この長手方向軸線は、ここで使用するxyz座標系のx軸を規定する。換言すれば、駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定する。
【0130】
図1には、さらにヘッド部13の毛領域17が看取可能であり、毛領域17は、ここでは複数(例えば20~40)のタフトを有し、タフトは、それぞれ多数(例えば100~200)の毛を有している。
【0131】
好ましい一実施の形態によれば、ヘッド部13は、正面図で見て滴形である。すなわち、ヘッド部13の形状は、ネック部への移行部で始まり、ほぼヘッド部の上側の端部まで漸次拡幅し、そこで丸みを帯びた最終輪郭で終わっている。この形状の場合、(x方向での毛領域の所与の長さで)ヘッド部13の重心は、ブラシの上記端部の近傍にある。このことは、所定の動作振動数時、偏心的な効果を強め、ひいては「8」の字運動も強めることができる。
【0132】
プレート形のヘッド部13の主面は、x軸に対して実質的に横方向に、y方向で延在している。
【0133】
毛領域17上には、さらに符号23により、y方向に寝かせた「8」を示してある。この「8」は、選択した材料特性(弾性率)と、幾何学的なベース部長手方向軸線20と幾何学的なヘッド部配向軸線(さらに下記参照)との間の角度と、屈曲位置とに基づき、動作中にこの平面内で実施される運動を表している。
【0134】
この「8」に加え、ブラシは、さらに、小さな傾動運動もヘッド部13により実施する。この運動は、「8」に対して実質的に直角に、つまり、実質的にz方向に方向付けられている。好ましい一実施の形態の意味で、毛は、これにより3つの次元(x,y,z)で動かされる。
【0135】
図2は、ブラシ10の概略側面図を示している。本図には、幾何学的なベース部長手方向軸線20の他に、幾何学的なヘッド部配向軸線21も看取可能である。
図1に示す図示では、ベース部長手方向軸線20とヘッド部配向軸線21とは、互いに連なっている。ヘッド部配向軸線21は、実質的にヘッド部の長手方向軸線である。両軸線は、幾何学的な屈曲位置22において交差している。本実施の形態において、幾何学的なベース部長手方向軸線20と、幾何学的なヘッド部配向軸線21とは、10°の角度γ(ガンマ)を形成している。幾何学的な屈曲位置22は、ここでは、ベース部11の終端面に対して、ブラシ10の全長Lの50%の間隔Kを有している。この角度と屈曲位置22との組み合わせで、歯の特に効果的なかつ歯肉にやさしい清掃が可能なブラシ10が提供される。
【0136】
図1及び2の組み合わせから看取可能であるように、本実施の形態では、ヘッド部13はプレート形で、ネック部12はロッド形である。基体をxz平面に投影したとき、ヘッド部13とネック部12とは、同じ横方向寸法(つまり、同じ厚さ)を有している。xy平面に投影したとき(
図1に示す正面図)、ヘッド部13は、ネック部12の約3倍の幅(y方向)である。ヘッド部の長さ(x方向)は、幅(y方向)よりも約3分の1大きい。ネック部11は、ヘッド部13の例えば3分の1の幅であり、1.5倍の長さである。
【0137】
ネック部12は、ヘッド部13及びベース部11に対してテーパしている。本例において、ネック部12は、側面図の少なくとも1つにおいて(ここでは、
図1のz方向で見て)ヘッド部13より狭幅である。
【0138】
ブラシ10の基体は、本例では、支持機能を担う材料として、約3500MPAの弾性率(降伏引っ張り強さ=97MPa;降伏伸び=2.8%;弾性率=降伏引っ張り強さ/降伏伸び)を有するガラス繊維強化ポリプロピレン Borealis GB311Uを有している。
【0139】
振れは、ブラシの長さLに対する間隔Aの比により特定されている。間隔Aは、ヘッド部の正面の中心(ここでは、毛領域17の中心に相当)の、ベース部長手方向軸線20に対する間隔に相当する(
図2参照)。本例において振れは14%である。
【0140】
毛は、ここでは、複数のタフト内に配置されており、プレート形のヘッド部の主面から垂直に突出している。この場合、毛は、y方向に対して垂直であり、xz平面内で延びている。本実施の形態では、毛は、ヘッド部の前面(あるいはブラシの前面27)に取着されている。すなわち、毛は、軽微に下向きにベース部のアダプタ面(yz平面)に向いている。
【0141】
図3は、
図1及び2に示すブラシ10の概略背面図を示している。これらの図から看取可能であるように、基体は、背面26に別の材料を有しており、この材料は、軟性であり、ブラシ背面が歯と接触した際の保護(保護層、保護被覆)を提供している。この材料は、支持機能を担わず、それゆえ、2000~6000MPaの本発明による弾性率範囲外の弾性率を有していてもよい。支持機能を担う材料は、前面27に看取可能であり、基体の横断面の主たる部分をなしている。
【0142】
図4は、音波歯ブラシの概略平面図(z方向)を示しており、音波歯ブラシは、ブラシ10と、ピン15を有する手持ち器具16と、を備えている。ブラシ10は、ピン15上に差し嵌められており、その結果、ブラシは、着脱自在に、相対回動不能にかつ軸方向で固定されている。ブラシ10と手持ち器具16との間の移行部には、アダプタ平面33が規定されている。アダプタ平面33は、手持ち器具の長手方向軸線及びブラシのベース部の長手方向軸線に対して垂直である。手持ち器具16は、ピン15を、例えば(静止位置に関して)2°の振幅を有する例えば180~270Hzの振動数で、ピン15の長手方向軸線(手持ち器具16の長手方向軸線に相当)回りに往復回転させる。ブラシは、つまり、ベース部長手方向軸線20(x軸)回りに往復回転する。
【0143】
図5aは、音波歯ブラシ10の概略側面図を示している。音波歯ブラシ10は、手持ち器具16と、ブラシ10と、を備えている。手持ち器具16の駆動部は、ピエゾ電気式の駆動部(図示せず)として形成されており、x軸20(手持ち器具の長手方向軸線)回りのブラシ10の振動を発生させる。これにより、ブラシ10は、動作中、ハンドグリップに対して相対的にx軸20回りの回転振動を実施する。ヘッド部13の本発明による振れに基づき、不釣り合いが生じ、この不釣り合いは、Y方向24及び/又はZ方向25(下記、
図5b参照)での運動成分を補助する。この効果は、ブラシネック内に設けられた好適に角度を付けた屈曲、好適に選択した弾性率によって制御され、かつブラシの別の幾何学的な構成上の特徴(例えば屈曲角度位置、振れ、質量分布及び本発明の特別な実施態様によるその他の特徴)によって調整され得る。
【0144】
図5bは、
図5aに示す身体ケア機器の概略平面図を示している。この図示には、Z方向25が看取可能である。Z方向25は、実質的に毛の方向で延びている。この図から看取可能であるように、手持ち器具は、ブラシよりも明らかに大きい。そうあってのみ、手持ち器具は、(公知の音波歯ブラシの場合に存在しているような、規定されていないあるいは方向付けられていないバイブレーション運動の代わりに)長手方向軸線振動を発生させ得る。
【0145】
図6は、正確に1つのタフト18を備える音波歯ブラシの一実施の形態を示している。タフト18は、ヘッド部13に関して背面に配置されている。ヘッド部は、いわば後方に傾斜されている。
【0146】
図7は、本発明による「8」の字運動の概略図を示している。「8」の字運動は、ここでは、片側で扁平化された「8」の字の形状を呈しており、「8」の中心27を通るように対称軸線(X軸)が延びている。「8」の両ループ28a,28bは、y方向で延在している。本発明は、しかし、「8」の字運動のこの形状に正確に限定されるものではなく、運動の正確な形状は、最終的には、ブラシヘッドのパラメータと、手持ち器具のモータにより発生される振動とに依存している。
【0147】
図8は、長手方向軸線振動運動の振幅を示している。x軸は、図平面に対して垂直である。プレート形のヘッド部13(毛は図示せず)は、角度α(アルファ)の分だけx軸回りに旋回する。(毛は、
図8で見てz方向で上方に延在している)。旋回運動の主成分(ひいては毛払拭運動)は、y方向である。角度α(アルファ)は、好ましくは2°である。
【0148】
図9は、プレート形のオーバルのヘッド部13を備えるブラシ10を示している。オーバルの形状の長手方向軸線は、実質的にx方向で延び、かつ横方向軸線は、y方向で延びている。ヘッド部13の中心は、ここでは、ブラシ10の上側の端部から、
図1に示す滴形のヘッド部の場合と比較して、遠く離れている。
【0149】
図10は、屈曲角度γ(ガンマ)が14°であり、幾何学的な屈曲位置22の、ベース部11の終端面29に対する間隔Kが、ブラシの長さLに関して75%であるブラシを示している。
【0150】
ベース部11は、終端面29から出発して、ネック部12への移行部までテーパしている。ベース部11は、例えば円錐台形又は角錐台形であってもよく、縦断面図で見て例えば凹のプロファイルを有している。これにより、ベース部11の重心は、真っ直ぐなプロファイルラインを有する同等のベース部の場合と比較して、終端面29の近傍にある。
【0151】
ネック部12は、図示の実施態様では、ブラシの長さ(L)の約半分を占めている。
図10が示すように、ネック部12は、必ずしも、一定の横断面をネック部12の全長に有している必要はない。ネック部12は、全体的に、変化する輪郭を有していてもよい。
【0152】
ヘッド部13は、ネック部12の延長により形成される。本例において、ヘッド部13は、(ヘッド部配向軸線21に対して垂直な断面で見て)ネック部12と実質的に同じ横方向寸法を有している。毛領域17は、ヘッド部13の側方に布置されている。毛は、つまり、ヘッド部配向軸線21に対して垂直に張り出している。
【0153】
図11は、ベース部11が実質的にピン30により駆動部アダプタとして形成されている一実施の形態を示している。ネック部12は、ロッド形であり、ブラシ長さの例えば90%を占めている。ヘッド部13は、ここでは単一のタフトの形態の毛領域17が植毛されている部分である。ピン30は、x方向で手持ち器具内に、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結すべく、差し込まれ、このとき、駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定する。
【0154】
図11に示すブラシは、例えば約4600MPaの弾性率を有する材料からなっている。このような材料の例として、LNP ULTEM(登録商標) EXCP0096 ポリエーテルイミド、30%炭素繊維強化、10%PTFE潤滑剤が挙げられる(降伏引っ張り強さ=163MPa、降伏伸び=3.5%、引っ張り強さ/伸び=4650MPa)。
【0155】
図12a~cは、RFIDチップ31を有する一実施の形態を示している。
図12aは、ブラシの縦断面図を示しており、
図12bは、下からブラシのアダプタ平面33を見た図を示しており、
図12cは、
図12aから抜粋した拡大図を示している。RFIDチップ31は、円錐形のベース部32内に、具体的には、好ましくは、アダプタ平面33(先行の実施の形態における終端面29に相当)のすぐ上に格納されている。この場合、底板34のみが、保護としてアダプタ平面33とRFIDチップ31との間に設けられている。RFIDチップ31は、例えばホルダ35内に固定されていてもよく、ホルダ35自体は、栓体の形態でベース部32の開口内に装入され、そこにアンカ固定されている。
【0156】
アダプタ平面33には、手持ち器具の駆動ピン(図示せず)のための連結中空室36が開口している。連結中空室36内には、クランプ要素37が存在し、クランプ要素37は、手持ち器具の駆動ピンを、駆動ピンの振動運動が最良にブラシに伝達されるように(着脱自在に)締結する。クランプ要素37を有する連結中空室36は、ブラシと、手持ち器具の駆動ピンとの間の差し込み接続の一例である。
【0157】
RFIDチップ31は、連結中空室36により占められる長手方向領域内に存在している。有利には、連結中空室のこの長手方向領域は、ブラシの円錐形のベース部と実質的に同じ長さである。
【0158】
図12a~cには、RFIDチップのホルダが側方から(つまり、ブラシの長手方向軸線に対して横方向で)装入されている一実施の形態を示してある。しかし、ホルダがアダプタ平面から嵌め込まれているようにブラシを設計することも可能である。
【0159】
手持ち器具内には、RFIDリーダが格納されており(図示せず)、RFIDリーダは、RFIDチップ31を読み取ることができる。このことは、例えば、駆動部をブラシにとって最適な振動数で動作制御することを可能にし、その結果、本発明によるコントロールされた2次元の運動が最適に発生される。別のデータを読み取ることも可能であり、このデータは、ユーザに音又は光による信号を介して、ブラシを交換すべきか表示する。
【0160】
実施例の改変:
図示しない別の実施の形態において、ブラシ10は、毛領域17の代わりに、歯間を清掃する歯間ブラシを備えている。
【0161】
確認しておくと、要するに、本発明により、効果的で歯肉にやさしい歯の清掃のための、ヘッド部の特に有利な運動に至らしめる音波歯ブラシ駆動部用のブラシが提供される。
【国際調査報告】