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特表2024-532574長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/34 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61C17/34 F
A61C17/34 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515605
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022075567
(87)【国際公開番号】W WO2023041603
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】21196658.5
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515148387
【氏名又は名称】キュラデン・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ザヴァッローニ・マルコ
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA07
3B202AB15
3B202BC08
3B202BC09
3B202BD01
3B202BE09
3B202CA02
3B202CA05
3B202DB04
3B202EA01
3B202EE01
3B202EF10
3B202EG16
(57)【要約】
ブラシは、縦長の基体を備え、基体は、ベース部に、ブラシをベース部長手方向軸線回りに振動させるべく、音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結するアダプタを形成している。ヘッド部には、多数の毛が植設されている毛支持体が形成されている。ベース部とヘッド部との間には、縦長のネック部が形成されている。基体は、ベース部長手方向軸線と、ヘッド部配向軸線とが7°~17°の範囲内の角度γを形成するように屈曲角度を形成している。毛支持体は、基体の長さ(L)に関して5%~15%の範囲内の振れ(A)を有している。多数の毛は、ヘッド部配向軸線に対して実質的に垂直である。毛の主たる部分は、0.1~10MPaの範囲内の屈曲応力σを有し、ここで、σ=(π/L)・E・r、π=円周率(=3.14)、E=毛の弾性率、r=毛の直径の半分、L=毛の長さ(LB)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシであって、縦長の基体を備え、前記基体は、ベース部に、前記ブラシをベース部長手方向軸線回りに振動させるべく、音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結するアダプタを形成し、かつヘッド部に、多数の毛が植設されている毛支持体を形成し、ベース部とヘッド部との間には、ネック部が形成されており、かつ
a)前記基体は、前記ベース部長手方向軸線と、ヘッド部配向軸線とが7°~17°の範囲内の角度γを形成するように屈曲角度を形成し、
b)前記毛支持体は、前記基体の長さ(L)に関して5%~20%の範囲内の振れを有し、
c)多数の前記毛は、前記ヘッド部配向軸線に対して実質的に垂直である、
ブラシにおいて、
d)前記毛の主たる部分は、0.1~10MPaの範囲内の屈曲応力σを有し、ここで、
【数1】
π=円周率(=3.14)
E=前記毛の弾性率
r=前記毛の直径の半分
L=前記毛の長さ
であることを特徴とする、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシ。
【請求項2】
前記屈曲応力は、最高で4MPa、特に最高で1MPaであることを特徴とする、請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記屈曲応力は、少なくとも1MPa、特に少なくとも4MPaであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のブラシ。
【請求項4】
前記屈曲応力は、1MPa~4MPaの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項5】
前記毛の前記弾性率は、1000MPa~3500MPaの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項6】
前記毛の前記弾性率は、2000MPa以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項7】
前記毛の前記弾性率は、2500MPa~3500MPaの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項8】
前記毛の平均の長さは、最大10mmまでの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項9】
前記振れは、5%~15%の範囲内、特に7%~13%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項10】
前記毛は、0.12mm以下、特に最大0.1mm、特に好ましくは、0.08~0.12mmの直径を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項11】
前記角度γは、12°~17°の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項12】
前記角度γは、7°~12°の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項13】
前記毛は、タフトの形態で配置されており、前記タフトは、好ましくは、互いに距離を置いていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項14】
少なくとも2つの異なる毛長さが設けられていることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項15】
前記音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結する前記アダプタは、前記音波歯ブラシ駆動部のピンを形状結合式に受け入れる、前記ベース部長手方向軸線に対して平行に延びるチャネルを有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項16】
前記基体は、6000MPa以下であって、2000MPa以上である弾性率を有する支持機能を担う材料を有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のブラシと、音波ブラシ駆動部を有する手持ち器具と、を含むセットであって、前記ブラシは、前記音波ブラシ駆動部上に差し嵌め可能であり、前記手持ち器具は、前記ブラシを前記ベース部長手方向軸線回りに振動するように駆動し、かつ前記音波ブラシ駆動部は、150~400Hzの範囲内、特に150Hz~300Hzの範囲内の動作振動数を有することを特徴とするセット。
【請求項18】
モータが、最大3°の角度振幅を有する振動を励起することを特徴とする、請求項17に記載のセット。
【請求項19】
前記ベース部の前記アダプタは、チャネルを有し、前記音波ブラシ駆動部は、ピンを有し、前記ピンは、前記ベース部長手方向軸線に関して相対回動しないように保持された結合を提供すべく、前記チャネル内に形状結合式に嵌め込み可能であり、その結果、前記ブラシは、全体として前記ベース部長手方向軸線回りに振動するように駆動され得ることを特徴とする、請求項18に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ用のブラシに関する。ブラシは、縦長の基体を備え、基体は、ベース部に、ブラシをベース部長手方向軸線回りに振動させるべく、音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結する駆動部アダプタを形成する。ブラシのヘッド部には、多数の毛が植設されている毛支持体が形成されている。ベース部とヘッド部との間には、ネック部が形成されている。基体は、ベース部長手方向軸線と、ヘッド部配向軸線とが7°~17°の範囲内の角度γを形成するように屈曲角度を形成している。毛支持体は、基体の長さに関して5%~20%の範囲内の振れAを有している。毛は、ヘッド部配向軸線に対して実質的に垂直である。
【0002】
さらに本発明は、請求項1から16のいずれか一項に記載のブラシと、音波ブラシ駆動部を有する手持ち器具と、を含むセットに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な種類の電気式に駆動される歯ブラシが存在する。
【0004】
特許文献1、特許文献2、特許文献3等の刊行物から、毛方向に対して平行な軸線回りに回転することができ、この軸線回りに往復動される円いブラシヘッドの原理が公知である。このアッセンブリの利点は、動かされる部分(すなわち、円いブラシヘッド)が極めて小さいことである。この小さな部分は、多くの駆動エネルギを必要とせず、生じる力(トルク)は、小さいという傾向がある。この原理の欠点は、毛運動が回転軸線に対する距離に依存していることにある。毛がブラシヘッドの軸線に対して近ければ近いほど、往復運動は小さくなってしまう。この運動パターンは、つまり、毛領域にわたって極めて不均一に分布している。
【0005】
特許文献4、特許文献5、特許文献6等の刊行物からは、揺動運動の原理が公知である。この場合、ブラシは、揺動軸線を中心に揺動し、揺動軸線は、手持ち器具(駆動部)及び載置されたブラシに対して垂直であり、かつ手持ち器具及びブラシの長手方向延在軸線と、ブラシを手持ち器具に連結するところで交差している。利点は、運動強度が毛領域全体にわたって均一に分布していることである。すべての毛は、すなわち、程度の差こそあれ同じ間隔を揺動軸線から有している。欠点は、しかし、ブラシヘッドの質量が比較的遠く揺動軸線から離れているため、比較的大きな力(モーメント)が生じてしまうことにある。
【0006】
特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11等の刊行物からは、筐体バイブレーションの原理が公知である。手持ち器具内又はブラシネック内に設けられた駆動部が、詳しくは規定されないバイブレーションを発生させ、バイブレーションは、毛に伝達される。この設計の利点は、運動伝達の技術的な詳細に煩わされずに済むことである。欠点は、しかし、筐体全体をバイブレーションさせなければならず、かつ相応に、小さな部分をバイブレーションさせるだけで済む場合と比較して、多くの駆動エネルギを必要としてしまうことである。加えて、バイブレーションは、強すぎると、手持ち器具を保持したときの快適性を損なわせることになるため、強すぎてはならない。つまるところ、毛の効果的な運動は、不明であり、規定されても、コントロールされてもいないバイブレーションによるこの種の清掃の作用は、とても最適とは言い難い。
【0007】
1つの別の原理は、特許文献12、特許文献13等の刊行物において公知である。ここでは、手持ち器具は、連結ピンを有し、連結ピンは、長手方向軸線回りに往復回転する。連結ピン上に載置されたブラシは、真っ直ぐなネックを備え、端部には毛プレートを備え、毛プレートからは、毛が手持ち器具あるいはブラシネックの長手方向軸線に対して横方向で立っている。この幾何学形状の利点は、アタッチメントブラシの質量(ネック、毛プレート)が長手方向軸線(運動中心)の比較的近傍にあるので、生じる力(モーメント)が比較的僅かであることにある。運動強度も、比較的一様に毛領域にわたって分布している。
【0008】
この原理の欠点は、しかし、毛が1次元の運動(往復)しか実施しないことである。
【0009】
手動歯ブラシでは、清掃効果が毛の硬さに依存していることが知られている。それぞれ異なる硬さの毛は、使用目的次第で、それぞれ異なる清掃作用と、それぞれ異なる潜在的な有害性とを有している。これらの効果は、当業者の間では知られており、患者へのアドバイスにも含まれることが常である。
【0010】
例えば特許文献14は、弾性支持される毛を備える手動歯ブラシを開示している。毛は、斜めの角度で支持体プレートから突出し、これにより特に弾性的である。これにより、毛は、負荷がかかると毛の長さを変更することができ、このことは、歯肉にとっての快適性を高める。毛の屈曲力に関する範囲として、0.01N~2N、例えば0.4Nが提示される。
【0011】
フィラメントの軟性あるいは柔軟性がもつ意義は、電気式に駆動される歯ブラシにとってもテーマとなっている。
【0012】
例えば特許文献15は、使用者がブラシヘッドの特定部分を交換することが可能な、モジュール式に構成される電気式の歯ブラシを記載している。ブラシヘッドは、定置の毛支持体と、ブラシ長手方向でリニアに摺動可能な毛支持体と、からなっている。この設計の清掃有効性の因子として言及されるのは、毛剛性である。毛剛性は、4つのパラメータの関数として示される:毛直径、毛長さ、弾性率、ブラシの毛の数。毛剛性は、0.2~0.8の範囲内であることが望ましい。
【0013】
電気式に駆動されるブラシは、人が手で行うことができるよりも遥かに高速で動くので、音波歯ブラシは、ユーザにとって極めて快適であり、効率的でもある。
【0014】
音波歯ブラシの場合、これまで、モータの振動数が高ければ高いほど、そして毛の清掃運動が大きければ大きいほど、清掃はより良好とされてきた。
【0015】
特許文献16において、折曲したブラシヘッドを備える音波歯ブラシが公知である。この音波歯ブラシは、前方に向かって角度が付けられていることにより、歯列の様々な箇所へより良好にアクセス可能である。加えて屈曲により、ブラシのフィラメントが、より大きな振幅でブラシ長手方向軸線に対して横方向で振動することが達成される。好ましい動作振動数は、2000~8000ヘルツである。振動数は、しかし、より高く、例えば10kHz、50kHzにあってもよいし、より低く、例えば200Hz又は500Hzにあってもよい。
【0016】
特許文献17において、共振振動数を高めるために、ブラシの長手方向軸線に対して横方向で延びる2つの平行なチャネルを備える超音波歯ブラシが公知である。振動数は、両チャネルが前面に布置されているとき、前後方向で高められる。チャネルがブラシネックの左右に設けられているときは、側方方向での振動数が高まる。
【0017】
欠点:
依然として、音波歯ブラシの清掃挙動は、十分には理解されていない。人が今日、手動歯ブラシの清掃作用に関して有している見識は、音波歯ブラシの高度に動的な状況には転用されない。特許文献15において指摘されるのは、0.2~0.8の毛剛性が、清掃の有効性にとって有利であることである。特許文献18は、0.01N~2Nの範囲内の屈曲力を有利と記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】DE 10 2016 011477(Schiffer)
【特許文献2】欧州特許出願公開第2454967号明細書(Braun)
【特許文献3】国際公開第2005/046508号(Trisa)
【特許文献4】JP H04-43127(Kao)
【特許文献5】米国特許出願公開第2006168744号明細書(Butler)
【特許文献6】US 2012/0291212(Montagnino)
【特許文献7】JP 2012-161368(Sanion)
【特許文献8】独国実用新案第29913406号明細書(Rowenta)
【特許文献9】米国特許第6766548号明細書(Rowenta)
【特許文献10】国際公開第2005/046508号(Trisa)
【特許文献11】国際公開第2013/104020号(Erskine)
【特許文献12】国際公開第2012/151259号(Water Pik)
【特許文献13】欧州特許第2548531号明細書(Trisa)
【特許文献14】国際公開第2016/178142号(Braun GmbH)
【特許文献15】欧州特許第1713413号明細書(Church & Dwight)
【特許文献16】国際公開第2017/050612号(Curaden)
【特許文献17】米国特許出願公開第2012/0291212号明細書
【特許文献18】EP 3 291 700(Braun)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、より良好な、特に歯肉にやさしい清掃作用を有する、冒頭で挙げた技術分野に属する音波歯ブラシ用の歯ブラシを提供することである。特に、毛の、規定されていて、コントロールされている2次元の運動が発生されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題の解決手段は、請求項1の特徴により規定されている。本発明によれば、毛の主たる部分は、0.1MPa~10MPaの範囲内の屈曲応力σを有し、ここで、
【数1】
π=円周率(=3.14)
E=毛の弾性率
r=毛の直径の半分
L=毛の長さ
である。
【0021】
獲得しようと努められている毛先の2次元の運動が、ブラシの本発明による幾何学形状と、毛の提示の屈曲応力との組み合わせ効果であることがわかっている。特に、この2次元の運動は、毛先が一種の「8」の字を描くので、一種の「8」の字運動と称呼し得る。「8」は、この場合、y方向で、このy方向に対して垂直なx方向よりもかなり大きい。「8」の字運動の正確な幾何学形状は、様々な因子を介して制御可能である。
【0022】
本発明は、その他の点では、以下の基本的特徴から出発する:
a)ブラシは、ベース部を備え、ベース部には、手持ち器具へのアダプタ、いわゆる駆動部アダプタが形成されている。アダプタは、幾何学的な観点で、音波歯ブラシ駆動部の連結部材(例えばピン)に回転伝達可能(しかし、交換可能)に結合されるべく、設計されている。音波歯ブラシ駆動部は、ブラシに伝達すべき長手方向軸線振動を発生させる。駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定する。この長手方向軸線は、通常の場合、ブラシを手持ち器具上に差し嵌めることが可能な方向である。この長手方向軸線回りにブラシは往復回転される。
b)さらにブラシは、毛支持体を有するヘッド部を備え、毛支持体内には、多数の毛が植設されている(毛領域)。ヘッド部は、この原理では、ブラシの上側の端部である(これに対して、ベース部は、下側の端部を形成している)。ヘッド部は、ヘッド部配向軸線を規定する。ヘッド内に植設された毛は、例えばヘッド部配向軸線に対して横方向で突出している。典型的には、しかし、必須というわけではないが、毛は、ヘッド部配向軸線に対して垂直である。
c)ベース部とヘッド部との間に、基体は、ネック部を有している。ネック部は、つまり、ベース部とヘッド部とを互いに結合する。ネック部の構成は、多種多様であってもよい。
【0023】
特別な一実施態様では、ネック部は、ベース部と比較して横断面テーパしている。すなわち、ベース部を(ベース部長手方向軸線に関して)横断面で見たとき、x方向又はy方向での寸法は、ネック部の横断面(つまり、ネック部長手方向軸線に対して横方向)で見たものよりも小さい。このとき、横断面テーパとは、横断面積に関すべきものである。つまり、必ずしも、x方向での寸法及びy方向での寸法が、より小さいというわけではない。
【0024】
毛先が、本発明による「8」の字運動をするように、ブラシの基体は、本発明により構成されていなければならない。その際、屈曲角度γと振れとが重要である。屈曲角度は、毛が、ヘッド部配向軸線に対して垂直であるとき、ベース部長手方向軸線に対して垂直ではなく、したがって長手方向軸線振動の軸線に対して垂直ではないことを提供する。むしろ、毛は、83°~73°の範囲内(=90°-7°あるいは=90°-17°)の角度を形成する。屈曲角度は、本発明による「8」の字運動が十分な規模で生じ得るように、ある程度の大きさを有していなければならない。屈曲角度が大きすぎれば、「8」の字運動は、再び崩れてしまうか、あるいは望ましくない動的な影響により退化してしまう。
【0025】
同じくブラシヘッドの振れは、「8」の字運動の発生にとって重要である。本発明の範囲内において、振れは、5%~20%の範囲内にある。振れが、本発明による範囲を下回っていると、ヘッド部の運動は、十分な励起を、毛の植設された部分に起こすことができない。振れが大きすぎれば、屈曲角度との組み合わせにおいて、本発明による「8」の字運動の励起に反する振動が、基体内に生じてしまうことがある。
【0026】
特別な一実施の形態によれば、屈曲応力は、最高で4MPa、特に最高で1MPaである。屈曲応力は、すなわち、「8」の字運動の形状に対して特別な影響を及ぼすパラメータの1つである。屈曲応力が、本発明による(つまり、本実施の形態の意味での)上限を大幅に下回っているとき、「8」の字運動のx成分は、大幅に大きくなり得る。屈曲応力が1MPa以下のとき、毛は、比較的柔軟であり、小さな屈曲角度及び/又は僅かな振れを有するブラシであっても、本発明による「8」の字運動をまだ良好に実施し得る。
【0027】
本発明の別の特別な一実施の形態によれば、屈曲応力は、少なくとも1MPaである。これにより、「8」の字運動がx方向で小さくなることが達成され得る。この下限により達成され得る別の効果は、「8」の字運動が不安定にならずに、振れが拡大され得ることである。すなわち、振れが比較的大きいときは、毛先がもはや、コントロールされた「8」の字運動を実施せず、「無秩序にばたつく」だけとなることがある。
【0028】
特別な一実施態様の意味で、屈曲応力は、1MPa~4MPaの範囲内にある。このことは、ブラシが、特に250Hz以上の比較的高い動作振動数のために好適であるという利点を有している。大抵、音波歯ブラシの場合、様々な動作振動数が設定され得る。動作振動数は、毛先の運動に対して、ひいては「8」の字運動に対して影響を及ぼすパラメータに属している。それゆえ、とりわけ、個々のケースで推奨されるまたは好ましい動作振動数が、ブラシに対して、かつ毛の屈曲応力に対して適合しているときに、ブラシが、最適化された「8」の字運動を実施する点に留意すべきである。
【0029】
別の特別な一実施態様によれば、毛の材料の弾性率は、1000MPa~3500MPaの範囲内にある。これにより、10%ガラス繊維を含む例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)等の材料を用いて作業することが可能である。この範囲内の弾性率を有する材料の場合、毛長さは、屈曲応力が大幅に下がることなく、より短く選択され得る。
【0030】
特に弾性率は、2000MPa以下であることが有利であり得る。このような材料は、同じくガラス繊維含有量の低いPBTに見出せる。
【0031】
しかし、2500MPa~3500MPaの範囲内の弾性率を有する材料を使用することも、有利な場合がある。これにより、毛直径は、減じられることができ、このことは、より細い毛先を可能にする。
【0032】
本発明は、4000MPa以上の弾性率を有する特別な実施の形態にも及ぶ。この範囲は、毛が、密に詰められたタフト内にないときに、または毛同士の摩擦が、むしろ低いときに、有利な場合がある。1つの別の利点は、「8」の字運動が失われることなく、毛を比較的長くすることができる点にあり得る。このような毛は、例えばカーボンブラック成分を含むポリブチレンテレフタレート(PBT)により製造される。
【0033】
特別な一実施態様によれば、毛の平均の長さは、10mm以下の範囲内にある。毛が長すぎれば、ブラシの取り回しが悪化しかねない。
【0034】
別の特別な一実施態様によれば、毛の平均の長さは、少なくとも5mmである。これにより、毛の横断面が極めて細いことが保証され、このことは、ブラシの製造時に有利である。
【0035】
典型的には、ブラシの毛は、タフトにまとめられている。タフト内の毛がそれぞれ異なる長さを有しているとき(例えばタフトの端部が丸み付けられているか、または先が尖らされているとき)は、本発明の範囲内で、タフト内の毛長さの平均値が、基準の毛長さとして使用される。ブラシがそれぞれ異なる長さのタフトを備えているとき、異なるタフトは、通例、互いに異なる機能も有している。特に重要であるのは、歯の縁部領域を磨くあるいは歯肉への移行部で有効である毛あるいはタフトのための本発明による屈曲応力である。
【0036】
特別な一実施の形態によれば、振れは、5%~15%の範囲内、特に7%~13%の範囲内にある。振れは、「8」の字運動の幾何学的な形状に対する影響因子に属する。傾向的に、大きな振れは、「8の字運動」を強め、小さな振れは、「8の字運動」を減じる。しかし、この場合、屈曲角度にも留意すべきである。「8」の字運動は、動作中の異なるパラメータ(ブラシの幾何学形状、毛の寸法設定および弾性率等)の組み合わせから生じる動的な効果に基づくため、屈曲角度は、どの振動数でブラシが動作されるかにも依存している。本発明の特別な実施の形態は、ブラシが、100Hz~400Hzの範囲内の振動数で動作されるとき、すなわち、この範囲内の駆動部と組み合わされているとき、「8の字運動」を示すために設計されている。
【0037】
好ましくは、振れは、5~10mmの範囲内にある。
【0038】
別の特別な一実施態様は、毛が、0.12mm以下、特に0.1mm以下の直径を有することにある。タフト毎の、個々のケースにおいて所望の所定数の毛を前提とすると、細い毛により、より細いタフトが作製可能である。比較的細い毛のこの範囲は、比較的短い毛長さの範囲と組み合わされてもよい。
【0039】
通常の場合、毛は、横断面円形である。毛が、非円形の横断面を有している場合、最大の横方向寸法と最小の横方向寸法との間の平均値が、本発明の意味での直径と見なされる。
【0040】
本発明の特別な一実施態様によれば、角度γは、上側の範囲内、つまり12°~17°の範囲内にある。このことは、幾何学的な屈曲位置の、アダプタ平面からの間隔が、ブラシの長さの少なくとも50%であるブラシにとって有利である。(幾何学的な屈曲位置は、ベース部長手方向軸線とヘッド部配向軸線との交点から生じる。)角度範囲は、単一の毛タフトのみを備えるブラシにおいても有利であり得る。
【0041】
大きな屈曲角度は、毛先の「8」の字運動をx方向で強めると思われる。すなわち、「8」の字運動の目は、いわばより大きくなる。
【0042】
本発明の別の特別な一実施態様は、屈曲角度γが、7°~12°の範囲内にあることにある。このことは、ブラシヘッドが、プレート形であり、多数の毛タフトを有しているブラシにとって有利である。付加的に、本実施態様では、ネック部は、ヘッド部に対して横断面テーパしていてもよい。
【0043】
好ましい一実施の形態によれば、ブラシの毛は、複数のタフトの形態で配置されており、タフトは、互いに距離を置いている。タフトは、例えば内側の毛領域と、外側の毛領域とが規定されているように配置されていてもよい。内側の毛領域は、外側の毛領域により包囲されている。内側の毛領域内の毛は、外側の毛領域内の毛とは異なる長さを有していてもよい。この場合、外側の毛領域内の毛だけが、規定された屈曲応力を有していることが、本発明の範囲内で可能である。
【0044】
ブラシヘッドに少なくとも2つの異なる毛長さが設けられていることは、しかし、普遍的にも、特別な一実施態様に相当する。この場合、しかし、異なる長さの毛が、異なる毛タフトに属していると、有利である。換言すれば、1つの毛タフト内の毛長さは、好ましくは、実質的に同じ大きさである。
【0045】
本発明の好ましい一実施の形態によれば、音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結するアダプタは、音波歯ブラシ駆動部のピンを形状結合式に受け入れる、ベース部長手方向軸線に対して平行に延びるチャネルを有している。ブラシは、つまり、アダプタにより音波歯ブラシ駆動部のピン上に嵌められ得る。好ましくは、この場合、係止要素が設けられており、その結果、ブラシは、音波歯ブラシ駆動部上に係止される。ピンは、ピンの長手方向軸線回りに往復旋回され、ブラシは、全体としてこの長手方向軸線振動運動を受け継ぐ。
【0046】
本発明の好ましい一実施の形態では、基体は、6000MPa以下であって、2000MPa以上である弾性率を有する支持機能を担う材料を有している。毛支持体は、ベース部、特にアダプタと1ピースに形成されている。本発明の範囲内において、1ピースの基体は、複数の素材結合式に結合される要素(ベース部、ネック部、ヘッド部)から形成されていてもよい。ブラシの主部分は、例えば1つのプラスチック射出成形部分であってもよい。この射出成形部分に、この場合、毛支持体、ブラシネックおよびベース部が形成されている。必要に応じて、軟性のプラスチック被覆による局所的または全体的な被覆が存在していてもよい。
【0047】
本発明は、本発明による形態のブラシと、音波ブラシ駆動部と、からなるセットにも関する。音波ブラシ駆動部は、ブラシが差し嵌められ得る手持ち器具の形態を呈している。音波ブラシ駆動部は、ブラシをベース部長手方向軸線回りに往復振動させるべく、形成されている。動作振動数は、150~400Hzの範囲内、特に150Hz~300Hzの範囲内にあることが望ましい。
【0048】
この範囲内で、本発明による毛は、獲得しようと努められている2次元の「8」の字運動を最良に実施し得る。
【0049】
ブラシと音波ブラシ駆動部とからなるセットの特別な一実施態様は、音波ブラシ駆動部が、最大3°(中間姿勢に関して)の角度振幅を有する振動を発生させることを特徴とする。極めて小さな角度振幅のみが必要なことがわかっている。毛の「8」の字運動における振幅は、より大きくなる。それというのも、特に、ブラシの設計と、毛の本発明による屈曲応力とが、互いに組み合わさって、このことを引き起こすからである。
【0050】
ベース部のアダプタは、例えばチャネルを有し、音波ブラシ駆動部は、ピンを有し、ピンは、ベース部長手方向軸線に関して相対回動しないように保持された結合を提供すべく、チャネル内に形状結合式に嵌め込み可能であり、その結果、ブラシは、全体としてベース部長手方向軸線(ピンの長手方向軸線)回りに振動するように駆動され得る。
【0051】
以下の詳細な説明と、特許請求の範囲の全体とから、本発明の別の有利な実施の形態及び特徴組み合わせが看取可能である。
【0052】
図面は、実施例の説明に利用する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】ブラシの概略平面図である。
図2】ブラシの概略側面図である。
図3】ブラシの概略背面図である。
図4】ブラシを備える音波歯ブラシの概略平面図である。
図5a】音波歯ブラシの概略側面図である。
図5b】音波歯ブラシの概略平面図である。
図6】正確に1つのタフトを備える音波歯ブラシの概略側面図である。
図7】本発明による「8」の字運動の概略図である。
図8】長手方向軸線振動の角度振幅の概略図である。
図9】オーバルのブラシヘッドを有する一実施の形態を示す図である。
図10】背面の毛領域を備えるワンタフトブラシの一実施の形態を示す図である。
図11】前面の毛領域を備えるワンタフトブラシの一実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
原則、図中、同じ部材には、同じ符号を付した。
【0055】
図1は、ブラシ10の概略平面図を示している。ブラシ10は、円錐台形のベース部11と、この円錐台形のベース部11に接続しているロッド形のネック部12と、最後に、このネック部12に接続しているプレート形のヘッド部13と、を備えている。これら3つの部分は、ブラシの支持機能を担う基体を形成している。
【0056】
円錐台形のベース部11は、駆動部アダプタを有している。駆動部アダプタは、ここでは、実質的にチャネル形の受け部14により形成されており、受け部14内には、音波歯ブラシの手持ち器具のピンが導入可能かつ係止可能である(図4に関して下記参照)。ブラシ10は、ベース部長手方向軸線20を有し、ベース部長手方向軸線20は、受け部14に対して同軸に、あるいは音波歯ブラシの動作中、ピンに対して同軸に配向されている。この長手方向軸線は、ここで使用するxyz座標系のx軸を規定する。換言すれば、駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定する。
【0057】
図1には、さらにヘッド部13の毛領域17が看取可能であり、毛領域17は、ここでは複数(例えば20~40)のタフトを有し、タフトは、それぞれ多数(例えば100~200)の毛を有している。
【0058】
好ましい一実施の形態によれば、ヘッド部13は、正面図で見て滴形である。すなわち、ヘッド部13の形状は、ネック部への移行部で始まり、ほぼヘッド部の上側の端部まで漸次拡幅し、そこで丸みを帯びた最終輪郭で終わっている。この形状の場合、(x方向での毛領域の所与の長さで)ヘッド部13の重心は、ブラシの上記端部の近傍にある。このことは、所定の動作振動数時、偏心的な効果を強め、ひいては「8」の字運動も強めることができる。
【0059】
プレート形のヘッド部13の主面は、x軸に対して実質的に横方向に、y方向で延在している。
【0060】
毛領域17上には、さらに符号23により、y方向に寝かせた「8」を示してある。この「8」は、選択した材料特性(弾性率)と、幾何学的なベース部長手方向軸線20と幾何学的なヘッド部配向軸線(さらに下記参照)との間の角度と、屈曲位置とに基づき、動作中にこの平面内で実施される運動を表している。
【0061】
この「8」に加え、ブラシは、さらに、小さな傾動運動もヘッド部13により実施する。この運動は、「8」に対して実質的に直角に、つまり、実質的にz方向に方向付けられている。好ましい一実施の形態の意味で、毛は、これにより3つの次元(x,y,z)で動かされる。
【0062】
図2は、ブラシ10の概略側面図を示している。本図には、幾何学的なベース部長手方向軸線20の他に、幾何学的なヘッド部配向軸線21も看取可能である。図1に示す図示では、ベース部長手方向軸線20とヘッド部配向軸線21とは、互いに連なっている。ヘッド部配向軸線21は、実質的にヘッド部の長手方向軸線である。両軸線は、幾何学的な屈曲位置22において交差している。本実施の形態において、幾何学的なベース部長手方向軸線20と、幾何学的なヘッド部配向軸線21とは、10°の角度γ(ガンマ)を形成している。幾何学的な屈曲位置22は、ここでは、ベース部11の終端面に対して、ブラシ10の全長Lの50%の間隔Kを有している。この角度と屈曲位置22との組み合わせで、歯の特に効果的なかつ歯肉にやさしい清掃が可能なブラシ10が提供される。
【0063】
図1及び2の組み合わせから看取可能であるように、本実施の形態では、ヘッド部13はプレート形で、ネック部12はロッド形である。基体をxz平面に投影したとき、ヘッド部13とネック部12とは、同じ横方向寸法(つまり、同じ厚さ)を有している。xy平面に投影したとき(図1に示す正面図)、ヘッド部13は、ネック部12の約3倍の幅(y方向)である。ヘッド部の長さ(x方向)は、幅(y方向)よりも約3分の1大きい。ネック部11は、ヘッド部13の例えば3分の1の幅であり、1.5倍の長さである。
【0064】
ネック部12は、ヘッド部13及びベース部11に対してテーパしている。本例において、ネック部12は、側面図の少なくとも1つにおいて(ここでは、図1のz方向で見て)ヘッド部13より狭幅である。
【0065】
ブラシ10の基体は、本例では、支持機能を担う材料として、約3500MPAの弾性率(降伏引っ張り強さ=97MPa;降伏伸び=2.8%;弾性率=降伏引っ張り強さ/降伏伸び)を有するガラス繊維強化ポリプロピレン Borealis GB311Uを有している。
【0066】
振れは、ブラシの長さLに対する間隔Aの比により特定されている。間隔Aは、ヘッド部の正面の中心(ここでは、毛領域17の中心に相当)の、ベース部長手方向軸線20に対する間隔に相当する(図2参照)。本例において振れは14%である。
【0067】
毛は、ここでは、複数のタフト内に配置されており、プレート形のヘッド部の主面から垂直に突出している。この場合、毛は、y方向に対して垂直であり、xz平面内で延びている。本実施の形態では、毛は、ヘッド部の前面(あるいはブラシの前面27)に取着されている。すなわち、毛は、軽微に下向きにベース部のアダプタ面(yz平面)に向いている。毛長手方向軸線は、ベース部長手方向軸線とともに、90°より小さい角度を形成している:すなわち90°マイナス屈曲角度γ。
【0068】
図3は、図1及び2に示すブラシ10の概略背面図を示している。これらの図から看取可能であるように、基体は、背面26に別の材料を有しており、この材料は、軟性であり、ブラシ背面が歯と接触した際の保護(保護層、保護被覆)を提供している。この材料は、支持機能を担わず、それゆえ、2000~6000MPaの本発明による弾性率範囲外の弾性率を有していてもよい。支持機能を担う材料は、前面27に看取可能であり、基体の横断面の主たる部分をなしている。
【0069】
図4は、音波歯ブラシの概略平面図(z方向)を示しており、音波歯ブラシは、ブラシ10と、ピン15を有する手持ち器具16と、を備えている。ブラシ10は、ピン15上に差し嵌められており、その結果、ブラシは、着脱自在に、相対回動不能にかつ軸方向で固定されている。手持ち器具16は、ピン15を、例えば(静止位置に関して)2°の振幅を有する例えば180~270Hzの振動数で、ピン15の長手方向軸線(手持ち器具16の長手方向軸線に相当)回りに往復回転させる。ブラシは、つまり、ベース部長手方向軸線20(x軸)回りに往復回転する。
【0070】
図5aは、音波歯ブラシ10の概略側面図を示している。音波歯ブラシ10は、手持ち器具16と、ブラシ10と、を備えている。手持ち器具16の駆動部は、ピエゾ電気式の駆動部(図示せず)として形成されており、x軸20(手持ち器具の長手方向軸線)回りのブラシ10の振動を発生させる。これにより、ブラシ10は、動作中、ハンドグリップに対して相対的にx軸20回りの回転振動を実施する。ヘッド部13の本発明による振れに基づき、不釣り合いが生じ、この不釣り合いは、Y方向24及び/又はZ方向25(下記、図5b参照)での運動成分を補助する。この効果は、ブラシネック内に設けられた好適に角度を付けた屈曲、好適に選択した弾性率によって制御され、かつブラシの別の幾何学的な構成上の特徴(例えば屈曲角度位置、振れ、質量分布及び本発明の特別な実施態様によるその他の特徴)によって調整され得る。
【0071】
図5bは、図5aに示す身体ケア機器の概略平面図を示している。この図示には、Z方向25が看取可能である。Z方向25は、実質的に毛の方向で延びている。この図から看取可能であるように、手持ち器具は、ブラシよりも明らかに大きい。そうあってのみ、手持ち器具は、(公知の音波歯ブラシの場合に存在しているような、規定されていないあるいは方向付けられていないバイブレーション運動の代わりに)長手方向軸線振動を発生させ得る。
【0072】
図6は、正確に1つのタフト18を備える音波歯ブラシの一実施の形態を示している。タフト18は、ヘッド部13に関して背面に配置されている。ヘッド部は、いわば後方に傾斜されている。
【0073】
図7は、本発明による「8」の字運動の概略図を示している。「8」の字運動は、ここでは、片側で扁平化された「8」の字の形状を呈しており、「8」の中心27を通るように対称軸線(X軸)が延びている。「8」の両ループ28a,28bは、y方向で延在している。本発明は、しかし、「8」の字運動のこの形状に正確に限定されるものではなく、運動の正確な形状は、最終的には、ブラシヘッドのパラメータと、手持ち器具のモータにより発生される振動とに依存している。
【0074】
図8は、長手方向軸線振動運動の振幅を示している。x軸は、図平面に対して垂直である。プレート形のヘッド部13(毛は図示せず)は、角度α(アルファ)の分だけx軸回りに旋回する。(毛は、図8で見てz方向で上方に延在している)。旋回運動の主成分(ひいては毛払拭運動)は、y方向である。静止位置(オフに切り換えられた駆動部)と、この静止位置からの最大の振れとの間の角度α(アルファ)は、好ましくは最大3°、好ましくは2°である。「最大限左」から「最大限右」への振れは、つまり6°あるいは4°である。
【0075】
図9は、プレート形のオーバルのヘッド部13を備えるブラシ10を示している。オーバルの形状の長手方向軸線は、実質的にx方向で延び、かつ横方向軸線は、y方向で延びている。ヘッド部13の中心は、ここでは、ブラシ10の上側の端部から、図1に示す滴形のヘッド部の場合と比較して、遠く離れている。
【0076】
図10は、屈曲角度γ(ガンマ)が14°であり、幾何学的な屈曲位置22の、ベース部11の終端面29に対する間隔Kが、ブラシの長さLに関して75%であるブラシを示している。
【0077】
ベース部11は、終端面29から出発して、ネック部12への移行部までテーパしている。ベース部11は、例えば円錐台形又は角錐台形であってもよく、縦断面図で見て例えば凹のプロファイルを有している。これにより、ベース部11の重心は、真っ直ぐなプロファイルラインを有する同等のベース部の場合と比較して、終端面29の近傍にある。
【0078】
ネック部12は、図示の実施態様では、ブラシの長さ(L)の約半分を占めている。図10が示すように、ネック部12は、必ずしも、一定の横断面をネック部12の全長に有している必要はない。ネック部12は、全体的に、変化する輪郭を有していてもよい。
【0079】
ヘッド部13は、ネック部12の延長により形成される。本例において、ヘッド部13は、(ヘッド部配向軸線21に対して垂直な断面で見て)ネック部12と実質的に同じ横方向寸法を有している。毛領域17は、ヘッド部13の側方に布置されている。毛は、つまり、ヘッド部配向軸線21に対して垂直に張り出している。
【0080】
図11は、ベース部11が実質的にピン30により駆動部アダプタとして形成されている一実施の形態を示している。ネック部12は、ロッド形であり、ブラシ長さの例えば90%を占めている。ヘッド部13は、ここでは単一のタフトの形態の毛領域17が植毛されている部分である。ピン30は、x方向で手持ち器具内に、長手方向軸線振動を有する音波歯ブラシ駆動部に相対回動不能に連結すべく、差し込まれ、このとき、駆動部アダプタは、ブラシの幾何学的なベース部長手方向軸線(x)を規定する。
【0081】
図11に示すブラシは、例えば約4600MPaの弾性率を有する材料からなっている。このような材料の例として、LNP ULTEM(登録商標) EXCP0096 ポリエーテルイミド、30%炭素繊維強化、10%PTFE潤滑剤が挙げられる(降伏引っ張り強さ=163MPa、降伏伸び=3.5%、引っ張り強さ/伸び=4650MPa)。
【0082】
図示しない別の実施の形態において、ブラシ10は、毛領域17の代わりに、歯間を清掃する歯間ブラシを備えている。
【0083】
本発明について、而るに好適なパラメータの具体的な例を基に説明する。その際、図2に示すように、毛の長さLBは、毛がヘッド部の正面から出たところから、毛の先端まで、測定される。例1ないし6において、毛は、互いに軽微に距離を置いた複数のタフト内に配置されている。
【0084】
例1:ブラシは、屈曲角度γ=14°と、ブラシの長さLに関して10%の振れAとを有している。毛の屈曲応力は、約9.7MPaである。すべての毛は、同じ材料からなっており、同じ幾何学的な寸法を有している。毛の弾性率は、2000MPaである。毛の長さLBは、6mmである。毛は、横断面円形であり、0.15mmの直径を有している。このブラシは、特に200Hz以下の振動数を有する長手方向軸線振動に好適である。ブラシは、例えば図10又は11に示すように構成されていてもよい。
【0085】
例2:ブラシは、屈曲角度γ=12°と、ブラシの長さLに関して11%の振れAとを有している。毛の屈曲応力は、約4.5MPaである。すべての毛は、同じ材料からなっており、同じ幾何学的な寸法を有している。毛の弾性率は、4000MPaである。毛の長さLBは、10mmである。毛は、横断面円形であり、0.12mmの直径を有している。このブラシは、特に150~300Hzの振動数を有する長手方向軸線振動に好適である。
【0086】
例3:ブラシは、屈曲角度γ=10°と、ブラシの長さLに関して7%の振れAとを有している。毛の屈曲応力は、約2.4MPaである。すべての毛は、同じ材料からなっており、同じ幾何学的な寸法を有している。毛の弾性率は、4500MPaである。毛の長さLBは、12mmである。毛は、横断面円形であり、0.10mmの直径を有している。このブラシは、特に150~300Hzの振動数を有する長手方向軸線振動に好適である。
【0087】
例4:ブラシは、屈曲角度γ=8°と、ブラシの長さLBに関して70%の振れAとを有している。毛の屈曲応力は、約1.5MPaである。すべての毛は、同じ材料からなっており、同じ幾何学的な寸法を有している。毛の弾性率は、3500MPaである。毛の長さLBは、12mmである。毛は、横断面円形であり、0.09mmの直径を有している。このブラシは、特に400Hzまでの振動数を有する長手方向軸線振動に好適である。
【0088】
例2ないし4は、例えば図1ないし3に示すブラシのように構成されていてもよい。
【0089】
例5:ブラシは、屈曲角度γ=10°と、ブラシの長さLに関して10%の振れAとを有している。毛の屈曲応力は、約0.52MPaである。すべての毛は、同じ材料からなっており、同じ幾何学的な寸法を有している。毛の弾性率は、1500MPaである。毛の長さLBは、12mmである。毛は、横断面円形であり、0.08mmの直径を有している。このブラシは、特に150~300Hzの振動数を有する長手方向軸線振動に好適である。
【0090】
例6:ブラシは、屈曲角度γ=11°と、ブラシの長さLに関して8%の振れAとを有している。毛の屈曲応力は、約2.3MPaである。すべての毛は、同じ材料からなっており、同じ幾何学的な寸法を有している。毛の弾性率は、3000MPaである。毛の長さLBは、10mmである。毛は、横断面円形であり、0.10mmの直径を有している。このブラシは、特に150~300Hzの振動数を有する長手方向軸線振動に好適である。
【0091】
例7:ブラシは、屈曲角度γ=9°と、ブラシの長さLに関して7%の振れAとを有している。ブラシは、2つのそれぞれ異なる種類の毛を有している。歯と歯肉との間の移行部の清掃にとって重要である縁部領域に、毛は、例2による屈曲応力を有している。縁部領域により囲繞される内側領域内で、弾性率は、4000MPaであり、毛の長さは、9mmである。毛は、横断面円形であり、全領域において0.12mmの直径を有している。内側領域内の屈曲応力は、5.5MPaである。このブラシは、特に150~300Hzの振動数を有する長手方向軸線振動に好適である。
【0092】
例8:ブラシは、屈曲角度γ=16°と、ブラシの長さLに関して17%の振れAとを有している。ブラシは、2つのそれぞれ異なる種類の毛を有している。歯と歯肉との間の移行部における清掃にとって重要である過半数の毛は、2.6MPaの屈曲応力を有している。挙げた毛の弾性率は、4500MPaであり、毛の長さLBは、7mmである。毛は、横断面円形であり、全領域において0.06mmの直径を有している。このブラシは、特に150~300Hzの振動数を有する長手方向軸線振動に好適である。
【0093】
例5ないし8は、例えば図1ないし3及び9ないし11の各々に示すブラシのように構成されていてもよい。
【0094】
毛は、横断面円形である必要はない。毛は、例えば一方の方向での横方向寸法が、これに対して垂直な方向での横方向寸法より20%だけ大きいことにより、軽微にオーバルまたは非円形であってもよい。
【0095】
確認しておくと、要するに、本発明により、効果的かつ効率的な歯の清掃のための、ヘッド部の特に有利な運動に至らしめる音波歯ブラシ駆動部用のブラシが提供される。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】