(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】導波管構造を備えるレーダセンサ
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20240829BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01P5/08 L
H01P5/08 K
G01S7/03 210
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515877
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2022074827
(87)【国際公開番号】W WO2023041393
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021210123.2
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ヒンメルシュトス,アルミン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AF03
(57)【要約】
プリント基板(10)の反対側に配置されている導波管構造(14)および高周波コンポーネント(12)と、高周波コンポーネント(12)と導波管構造(14)との間でマイクロ波信号を伝送するための結合デバイス(18)とを備えるレーダセンサであって、結合デバイス(18)が、プリント基板(10)とは別個に製造された誘電導波体(28)を有する、レーダセンサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板(10)の反対側に配置されている導波管構造(14)および高周波コンポーネント(12)と、前記高周波コンポーネント(12)と前記導波管構造(14)との間でマイクロ波信号を伝送するための結合デバイス(18;18’;18a~c)とを備えるレーダセンサにおいて、前記結合デバイス(18;18’;18a~c)が、前記プリント基板(10)とは別個に製造された誘電導波体(28;28’)を有することを特徴とするレーダセンサ。
【請求項2】
前記誘電導波体(28;28’)が、前記プリント基板(10)の孔(16、16’)を通って延びる、請求項1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
前記誘電導波体(28;28’)が、その全周にわたって前記孔(16;16’)の内壁から距離を有するように前記プリント基板(10)の前記孔(16;16’)内に保持されている、請求項2に記載のレーダセンサ。
【請求項4】
前記誘電導波体(28)が、クランプ要素(30)によって前記孔(16)内に固定されている、請求項2または3に記載のレーダセンサ。
【請求項5】
前記クランプ要素(30)が、弾性ウェブ(32)を介して前記導波体(28)に接続され、前記孔(16)の周面に対してクランプ式にプレストレスをかけられている、請求項4に記載のレーダセンサ。
【請求項6】
前記誘電導波体(28’)が、前記プリント基板(10)の孔(16’)を通過し、前記導波管構造(14)の側で、前記孔(16’)から突き出たセクションを有し、前記セクションが、前記孔(16’)と前記導波管構造(14)の結合位置(36)との間の距離を橋渡しする、請求項2から5のいずれか一項に記載のレーダセンサ。
【請求項7】
前記孔(16’)から突き出た前記誘電導波体(18’)のセクションが角度を付けられている、または曲げられている、請求項6に記載のレーダセンサ。
【請求項8】
前記高周波コンポーネント(12)がハウジングを有し、前記ハウジングが、はんだボール(24)によって前記プリント基板(10)に固定および接触されており、前記はんだボール(24)のうちの1つが、前記誘電導波体(28)に結合するための結合点を形成し、前記誘電導波体(28)の一端が、前記はんだボールに対置する、請求項1から7のいずれか一項に記載のレーダセンサ。
【請求項9】
前記高周波コンポーネント(12)が、前記誘電導波体(28)に結合するための一体化された結合位置(38)を有し、前記導波体(28)の一端が前記結合位置に対置する、請求項1から7のいずれか一項に記載のレーダセンサ。
【請求項10】
前記結合位置(38)が、前記高周波コンポーネント(12)の前記プリント基板(10)に面する部分にある、請求項9に記載のレーダセンサ。
【請求項11】
前記結合位置(38)が、前記プリント基板(10)の平面に対して直角に延びる前記高周波コンポーネント(12)の側面にある、請求項9に記載のレーダセンサ。
【請求項12】
前記結合位置(38)が、前記高周波コンポーネント(12)の前記プリント基板(10)とは反対側の表面にある、請求項9に記載のレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の反対側に配置されている導波管構造および高周波コンポーネントと、高周波コンポーネントと導波管構造との間でマイクロ波信号を伝送するための結合デバイスとを備えるレーダセンサに関する。
【0002】
特に、本発明は、例えば運転支援システムまたは自律運転システムにおいて交通環境を検出するための、自動車用のレーダセンサに関する。
【背景技術】
【0003】
ドイツ特許第10 2006 019 054 B4号から、自動車用のレーダセンサであって、レーダ信号を送信するためおよびレーダエコーを受信するためのアンテナ構成が導波管構造により形成され、導波管構造が、結合デバイスを介して高周波コンポーネントと接続されている、レーダセンサが知られている。このレーダセンサでは、導波管構造と高周波コンポーネントとが、プリント基板の同じ側にある。
【0004】
導波管構造と高周波コンポーネントとがプリント基板の反対側にあるレーダセンサも提案されており、結合デバイスは、プリント基板を貫き通して、またはプリント基板の周りを通してマイクロ波信号を伝送しなければならない。そのような場合、結合デバイスは、例えば、プリント基板を貫通する孔を通して形成され、孔の内面は任意選択で金属化することができ、孔の内部は空気または別の誘電材料で充填される。
【0005】
このタイプの結合デバイスでは、伝送特性は、プリント基板の特性、特にプリント基板の厚さおよび材料、または多層プリント基板の場合にはさらにその内部構造によって決まる。結合デバイスが金属化表面を有する限り、金属化、特に表面粗さも伝送特性に影響を及ぼす。したがって、高周波コンポーネントと導波管構造との間でマイクロ波信号の低損失伝送を実現するためには、特別な適合ネットワークが必要である。プリント基板の製造では製造公差が避けられないため、適合ネットワークの設計は比較的複雑である。
【0006】
レーダセンサが、異なる導波管構造および/または異なる高周波コンポーネントを備えた様々な変形実施形態で製造されるとき、通常、プリント基板とそこに形成される結合デバイスをそれぞれの変形実施形態に適合させることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、より容易に結合デバイスを他の構成要素に適合させることができる、冒頭で述べたタイプのレーダセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、結合デバイスが、プリント基板とは別個に製造された誘電導波体を有することにより解決される。
誘電導波体は、誘電体材料からなり、マイクロ波が屈折および/または反射により導体の内部でのみ伝播することができる導体である。
【0009】
この誘電導波体はプリント基板の構成部分ではないので、誘電導波体がプリント基板の孔または開口部を通って延びるときでも、その導波特性はプリント基板の特性に依存しない。このようにして、プリント基板の製造や金属化表面の製造などにおける公差による影響の受けやすさがかなり低減される。
【0010】
一方では導波管構造への結合、他方では高周波コンポーネントへの結合は、誘電導波体の関連する端部の幾何形状を適切に選択することによって最適化することができ、それにより低損失の伝送が提供され、プリント基板に何らかの変更を加える必要がない。さらに、この誘電導波体は、導波管構造および高周波コンポーネントの結合位置の配置に関して、より大きな設計自由度を提供する。
【0011】
本発明の有利な形態および発展形態は従属請求項に記載されている。
誘電導波体がプリント基板の孔を通過するとき、導波体は、ばね要素やクランプ要素などの適切な固定要素によって、その全周にわたって孔の内壁から距離を保持されるように孔内に保持され得る。
【0012】
例えば、高周波コンポーネントが、はんだボールによって形成された電気接点を備えるBGA/eWLBハウジングを有するとき、高周波コンポーネントへの導波体の結合は、はんだボールを介して非接触で行われる。
【0013】
代替として、導波体は、はんだボール、またはBGA/eWLBの別の接触面に接触してもよい。この場合、接触を常に保証するために、固定要素の弾性設計が必要である。
代替として、高周波コンポーネントは、そのハウジングの表面または内部に、一体化された結合位置(ラジエータおよび/またはアンテナ)を有してもよい。この場合、誘電導波体を、この結合位置に直接結合するように配置して導くことができる。
【0014】
導波管構造の側では、例えば導波管の開放端に誘電導波体が入ることによって結合を行うことができる。
導波管構造の側でも高周波コンポーネントの側でも、誘電導波体は、プリント基板の孔からかなり突き出してもよい。導波体のこの突き出たセクションは、任意選択で角度を付けられてまたは曲げられて延びることもでき、したがって、プリント基板の孔からさらに離れた導波管構造または高周波コンポーネントの結合位置に到達させることができる。
【0015】
以下、図面を参照して例示的実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明によるプリント基板、導波管構造、高周波コンポーネント、および結合デバイスの部分断面図である。
【
図2】誘電導波体の固定方法を説明するための、
図1の詳細拡大図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】別の例示的実施形態による導波管構造、プリント基板、および誘電導波体の部分斜視図である。
【
図5】誘電導波体と高周波コンポーネントとの異なるタイプの結合に関する、
図1と同様の部分断面図である。
【
図6】誘電導波体と高周波コンポーネントとの異なるタイプの結合に関する、
図1と同様の部分断面図である。
【
図7】誘電導波体と高周波コンポーネントとの異なるタイプの結合に関する、
図1と同様の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、レーダセンサのプリント基板10(プリント配線板;PCB)の一部が断面図で示されており、プリント基板10の片側(
図1の下側)には高周波コンポーネント12が備えられ、反対側には導波管構造14が備えられている。高周波コンポーネント12と導波管構造14とは、プリント基板10の孔16を通過する結合デバイス18を介して互いに接続されており、高周波コンポーネント12で生成されたマイクロ波信号が導波管構造14に結合され得る。例えば、導波管構造14は、マイクロ波信号が放射される導波管アンテナであってもよい。逆に、導波管アンテナによって受信されたレーダエコーは、結合デバイス18を介して高周波コンポーネント12に伝送され、そこでさらに評価され得る。
【0018】
図示される例では、プリント基板10は、レーダセンサの様々な、ここには図示しない構成要素を互いに接続するいくつかの平行な導電層20を有する。導波管構造14は、プリント基板10に直接配置されており、高周波コンポーネント12に結合するために導波管22を有し、導波管22は、プリント基板の孔16と位置合わせされており、プリント基板10に対して開いている。
【0019】
高周波コンポーネント12、例えばMMIC(モノリシックマイクロ波集積回路)またはSoC(システムオンチップ)は、図示される例ではBGA/eWLBハウジングを有し、このハウジングは、プリント基板10への接触および固定のためのはんだボール24のグリッドを有する。図示される例では、これらのはんだボール24のうちの2つはシールド26と電気的に接触しており、シールド26は、距離を置いて結合デバイス18を取り囲む。
【0020】
結合デバイス18のコア部はピン形状の誘電導波体28であり、誘電導波体28は、プリント基板10の孔16を通って自由に延び、
図1には詳細に示されていない方法で、端部が導波管22に突き出るようにこの孔内に保持され、反対側(下側)の端部は、はんだボール24の1つと非接触で対置し、はんだボール24を介してマイクロ波信号が導波体28に結合される、または導波体28から結合解除される。誘電導波体28の両端の幾何形状は、マイクロ波出力の低損失伝送が達成されるように、導波管22およびはんだボールの幾何形状に適合される。
【0021】
プリント基板10の孔16における誘電導波体28の可能な固定方法の一例が
図2に示されている。この例では、導波体28は、互いに直径方向で対向する2つのクランプ要素30と一部片で形成されており、クランプ要素30は、孔16の内壁に当接し、弾性ウェブ32を介して導波体の主要部分と接続されている。このようにして、導波体28は孔16の中心に位置し、孔の壁から距離を保たれる。クランプ要素30は、下端にそれぞれ挿入ベベルを有し、これにより、孔16への導波体28の挿入が容易になる。クランプ要素は、反対側の端部にそれぞれストッパ34を有し、ストッパ34は、最終的に組み立てられた状態ではプリント基板10の表面に載置し、導波体に対し正確な軸方向位置を定める。
【0022】
図3で見られるように、実際の導波体28は、図示される例では長方形の断面を有する。クランプ要素30の断面および弾性ウェブ32の輪郭も
図3で見ることができる。
しかし、誘電導波体28のための代替の固定方法も考えられる。例えば、導波体を取り囲む、適切に選択された誘電定数を有する充填物で孔16が充填されることによって、導波体は固定され得る。
【0023】
図4は、結合デバイス18’の別の例示的実施形態を斜視図で示す。結合デバイス18’は、プリント基板10の孔16’を通過し、導波管構造14を、
図4ではプリント基板10の下側の見えない位置にある高周波コンポーネントと接続する。この例では、導波管構造14は、プリント基板10の平面に対して直角に延びる導波管構造の側壁に、横方向に配置されている結合位置36を有する。
【0024】
この場合、結合デバイス18’のコア部は、ここでも断面が長方形の誘電導波体28’であり、誘電導波体28’は、孔16’からかなり突き出た部分であり、直角に角度を付けられており、その角度を付けられた端部で結合位置36内に入る。
【0025】
図5~7は、結合デバイス18a、18b、18cの例を示し、これらの結合デバイスは、高周波コンポーネント12への誘電導波体28の様々な結合法により、
図1による結合デバイス18とは異なる。
【0026】
図5では、高周波コンポーネント12は、その縁部がプリント基板の孔16から突出するようにプリント基板10に配置されている。高周波コンポーネント12のハウジングには、プリント基板10に面する側で、孔16と揃った位置に、一体化された結合位置38(ラジエータおよび/またはアンテナ、または任意選択で直接接触)が形成され、誘電導波体28の端部に対置する。
【0027】
図6では、孔16が高周波コンポーネント12の外形の外側に位置するように配置が選択されている。この場合、結合位置38は、高周波コンポーネントの側壁にあり、誘電導波体28は、結合位置38と適切な距離で対置するように形成されている、孔16から突き出た結合セクション40を有する。
【0028】
図7では、結合セクション38は、高周波コンポーネント12のプリント基板10とは反対側にあり、導波体28の結合セクション40は、高周波コンポーネント12の縁部の周りに延びている。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板(10)の反対側に配置されている導波管構造(14)および高周波コンポーネント(12)と、前記高周波コンポーネント(12)と前記導波管構造(14)との間でマイクロ波信号を伝送するための結合デバイス(18;18’;18a~c)とを備えるレーダセンサにおいて、前記結合デバイス(18;18’;18a~c)が、前記プリント基板(10)とは別個に製造された誘電導波体(28;28’)を有することを特徴とするレーダセンサ。
【請求項2】
前記誘電導波体(28;28’)が、前記プリント基板(10)の孔(16、16’)を通って延びる、請求項1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
前記誘電導波体(28;28’)が、その全周にわたって前記孔(16;16’)の内壁から距離を有するように前記プリント基板(10)の前記孔(16;16’)内に保持されている、請求項2に記載のレーダセンサ。
【請求項4】
前記誘電導波体(28)が、クランプ要素(30)によって前記孔(16)内に固定されている、請求項
2に記載のレーダセンサ。
【請求項5】
前記クランプ要素(30)が、弾性ウェブ(32)を介して前記導波体(28)に接続され、前記孔(16)の周面に対してクランプ式にプレストレスをかけられている、請求項4に記載のレーダセンサ。
【請求項6】
前記誘電導波体(28’)が、前記プリント基板(10)の孔(16’)を通過し、前記導波管構造(14)の側で、前記孔(16’)から突き出たセクションを有し、前記セクションが、前記孔(16’)と前記導波管構造(14)の結合位置(36)との間の距離を橋渡しする、請求項
2に記載のレーダセンサ。
【請求項7】
前記孔(16’)から突き出た前記誘電導波体(18’)のセクションが角度を付けられている、または曲げられている、請求項6に記載のレーダセンサ。
【請求項8】
前記高周波コンポーネント(12)がハウジングを有し、前記ハウジングが、はんだボール(24)によって前記プリント基板(10)に固定および接触されており、前記はんだボール(24)のうちの1つが、前記誘電導波体(28)に結合するための結合点を形成し、前記誘電導波体(28)の一端が、前記はんだボールに対置する、請求項
1に記載のレーダセンサ。
【請求項9】
前記高周波コンポーネント(12)が、前記誘電導波体(28)に結合するための一体化された結合位置(38)を有し、前記導波体(28)の一端が前記結合位置に対置する、請求項
1に記載のレーダセンサ。
【請求項10】
前記結合位置(38)が、前記高周波コンポーネント(12)の前記プリント基板(10)に面する部分にある、請求項9に記載のレーダセンサ。
【請求項11】
前記結合位置(38)が、前記プリント基板(10)の平面に対して直角に延びる前記高周波コンポーネント(12)の側面にある、請求項9に記載のレーダセンサ。
【請求項12】
前記結合位置(38)が、前記高周波コンポーネント(12)の前記プリント基板(10)とは反対側の表面にある、請求項9に記載のレーダセンサ。
【国際調査報告】