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特表2024-532580香辛料を移行させるための可食性フィルム形成溶液、フィルム及びそれを得るための方法
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  • 特表-香辛料を移行させるための可食性フィルム形成溶液、フィルム及びそれを得るための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】香辛料を移行させるための可食性フィルム形成溶液、フィルム及びそれを得るための方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/08 20060101AFI20240829BHJP
   A23L 27/14 20160101ALI20240829BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20240829BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240829BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240829BHJP
   A23L 13/60 20160101ALN20240829BHJP
【FI】
C08L1/08
A23L27/14
A23L29/262
A23L5/00 B
A23L29/00
A23L13/60 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515915
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 ES2022070572
(87)【国際公開番号】W WO2023037032
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P202130851
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513107595
【氏名又は名称】ビスコファン,エセ.アー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリア・アレハンドラ・ロハス・グラウ
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルド・フェロン
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・アンヘル・アララス・イルンダイン
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
4B047
4J002
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE06
4B035LG05
4B035LG17
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG22
4B035LG25
4B035LG26
4B035LG27
4B035LG28
4B035LG31
4B035LK02
4B035LK14
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP31
4B035LP59
4B042AC10
4B042AD01
4B042AE05
4B042AG10
4B042AH01
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK11
4B042AP19
4B042AP30
4B047LB09
4B047LE10
4B047LG06
4B047LG25
4B047LG26
4B047LG27
4B047LG28
4B047LG29
4B047LG30
4B047LG43
4B047LG44
4B047LG47
4B047LP02
4B047LP07
4B047LP09
4B047LP11
4B047LP14
4B047LP20
4J002AB021
4J002AB052
4J002GC00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、可食性フィルム形成溶液、並びに、異なる質量、サイズ及び形状の香辛料を食品の表面に移行させ、それが適用された食品の水分と接触すると完全に崩壊し、前記フィルムに含まれる香辛料の層のみを可視化させることが可能な可食性フィルムに言及する。本発明は、また、前記フィルムを得る方法及びその使用にも言及する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液の総質量に対して0.5質量%~6質量%の濃度のメチルセルロースの水性溶解物を含むフィルム形成溶液であって、メチルセルロースが、溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度を有する、フィルム形成溶液。
【請求項2】
溶液の総質量に対して0.1質量%~5質量%の範囲の、メチルセルロースと異なる多糖類も含むことを特徴とする、請求項1に記載のフィルム形成溶液。
【請求項3】
多糖類がアルギン酸塩、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、デキストリン、デンプン及びそれらの組合せから選択されることを特徴とする、請求項2に記載のフィルム形成溶液。
【請求項4】
溶液の総質量に対して1質量%~20質量%の濃度の可塑剤も含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルム形成溶液。
【請求項5】
可塑剤がグリセリン、ソルビトール、又はプロピレングリコール及びそれらの組合せから選択されることを特徴とする、請求項4に記載のフィルム形成溶液。
【請求項6】
メチルセルロースが、溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して300cP~560cPの粘度を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルム形成溶液。
【請求項7】
a)水溶性の層であって、溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度を有するメチルセルロースを含む層、及び
b)メチルセルロースを含む層の上又はメチルセルロースを含む層と一体化された香辛料の層
を含むことを特徴とする、香辛料移行用可食性フィルム。
【請求項8】
粘度が300cp~560cPであることを特徴とする、請求項7に記載の可食性フィルム。
【請求項9】
メチルセルロースを含む層がメチルセルロースと異なる多糖類も含むことを特徴とする、請求項7又は8に記載の可食性フィルム。
【請求項10】
多糖類がアルギン酸塩、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、デキストリン、デンプン及びそれらの組合せから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の可食性フィルム。
【請求項11】
メチルセルロースを含む層が可塑剤も含むことを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の可食性フィルム。
【請求項12】
可塑剤がグリセリン、ソルビトール、又はプロピレングリコール及びそれらの組合せから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の可食性フィルム。
【請求項13】
多糖類の第2の層c)を、香辛料の層b)の上、又は香辛料を一体化するメチルセルロースの層a)の上に含み、多糖類が接着能力を有する多糖類であることを特徴とする、請求項7から12のいずれか一項に記載の可食性フィルム。
【請求項14】
接着能力を有する多糖類が、デキストリン、デンプン、ガム、又はこれらの組合せ、例えば、デキストリン及びデンプン;デキストリン及びセルロースガム;デンプン及びセルロースガム;デキストリン、デンプン及びセルロースガムから選択されることを特徴とする、請求項13に記載の可食性フィルム。
【請求項15】
層c)の上に香辛料の層があることを特徴とする、請求項13又は14に記載の可食性フィルム。
【請求項16】
0.1~0.5の水分活性を有することを特徴とする、請求項7から15のいずれか一項に記載の可食性フィルム。
【請求項17】
フィルムの厚さが100~1500ミクロンであることを特徴とする、請求項7から16のいずれか一項に記載の可食性フィルム。
【請求項18】
以下の工程:
a)水中にメチルセルロースを溶液の総質量に対して0.5~6質量%の濃度に溶解させる工程であって、メチルセルロースが、2%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度を有する、工程;
b)工程a)で得られた溶液を脱気する工程;
c)工程b)で得られた脱気された溶液を広げて、基材上に均一な層を形成する工程;
e)c)で得られた層を乾燥させる工程;
f)フィルムを基材から分離させる工程
を含む、可食性フィルムを得るための手順であって、
香辛料を添加する工程d)において、香辛料が工程a)の溶液又は工程c)で得られた層に添加される、手順。
【請求項19】
工程a)において、メチルセルロースとは異なる第2の多糖類を0.1~5質量%の濃度で溶解させ、可塑剤を1~20質量%の濃度で溶解させることを特徴とする、請求項18に記載の手順。
【請求項20】
以下の多糖類:デキストリン、デンプン、ガム、セルロースの少なくとも1つを、0.5~6質量%の濃度で含む接着性溶液を調製する工程、
この溶液を、d)において適用された香辛料の第1の層の上に、又は香辛料が工程a)において添加された場合はc)で得られた層の上に噴霧して、接着性の多糖類層を得る工程、及び
接着性多糖類の層の上に香辛料の第2の層を適用する工程
を含むことを特徴とする、請求項18又は19に記載の手順。
【請求項21】
香辛料を食品に移行させるための、請求項7から17のいずれか一項に記載の香辛料移行用可食性フィルムの使用。
【請求項22】
請求項7から17のいずれか一項に記載の香辛料移行用可食性フィルムを含む、食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性フィルムを形成する溶液、並びに、様々な質量、サイズ及び形状の香辛料を食品の表面に移行させ、フィルムが適用された場所で製品の水分と接触すると完全に崩壊し、前記フィルムに含有された香辛料の層のみを可視化させることが可能な可食性フィルムに言及する。本発明は、また、それを得るための手順及びそれに与えられた使用に言及する。
【背景技術】
【0002】
香辛料担体としての多糖類ベースの可食性フィルムの使用は以前から知られた概念であり、例えば、米国特許出願公開第2010/055280A1号、特開昭52-108058A号の特許に言及されている。いずれの特許も、可食性フィルムの形成のためにメチルセルロース及び他の多糖類を使用する可能性を企図している。しかし、これらの特許は、多糖類自体が最終産物において有する感覚的な影響を考慮していない。一部のセルロース、ガム、ゼラチン又はコラーゲンなど、この種のフィルム製造に幅広く使用される、ゲル化特性を有する様々な多糖類又はタンパク質の使用は、それが適用された食品の表面において、ゼラチン状の外見を有する層の形成を伴う。この層は、特に、これら成分の大半のゲル化が生じる温度である冷蔵温度で製品が保管される場合、食品の感覚的な品質を明らかに低減させる。
【0003】
西国特許第2349576T3号、米国特許出願公開第2003/044511A1号は、異なるサイズの香辛料を使用する可能性を企図しているが、いずれの場合にも、異質なサイズ又は形状の香辛料を扱う問題を解決できるような、均一な被覆を有し、更に軽い粒子の分離が回避されるフィルムを得られる解決策は提案されていない。これらの特許出願は、また、フィルムの適正な形成へのメチルセルロースの粘度の影響を考慮してもいない。
【0004】
これら全ての理由から、適用された食品の水分と接触すると完全に崩壊し、消滅し、このため、その表面でのゲルの形成を回避することの可能な多糖類をベースとする可食性フィルムを処方する必要性は、明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/055280A1号
【特許文献2】特開昭52-108058A号
【特許文献3】西国特許第2349576T3号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/044511A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、適用された製品の表面上に望ましくない知覚可能な層を生成せずに香辛料を食品に移行させることを可能にする、可食性フィルム形成溶液及び多糖類ベースの可食性フィルムを記載するが、それは、使用されるセルロースの種類及び濃度の適切な選択並びにその粘度レベルによって達成された。
【0007】
本発明の可食性フィルムの調製に使用されるメチルセルロースは、その可逆的なゲル化特性、すなわち、冷水中で溶解し、熱の存在下ではゲル、更にそれが取り込まれる生成物の冷却後に再び液体となるその能力によって、セルロースの群から選択された。驚くべきことに、メチルセルロースは、この特徴によって、一方ではその初期の調製時に熱の使用が回避され、フィルム乾燥プロセスを通じて速やかに固体化し、最も重要なことには、食料品に適用されると当初の流動状態に戻り食品自体の水分によって完全に崩壊し、またそれが予想外の様子であるため、本発明において記載される可食性フィルムの構造的原料として使用するのに理想的なものとなっている。低粘度のメチルセルロース(100~1000cP)を使用することで、可撓性で厚さの低いフィルムを得ることが可能になり、それが適用される食品の表面上での可食性フィルムのより良好な溶解に寄与し、このため最終産物上での知覚可能な層(ゼラチン状の外見)の形成が回避される。
【0008】
非常に低粘度のメチルセルロース(100cP未満)の使用は、フィルム形成上の問題を伴い、溶液の縮小及びその生成の限定が観察される。一方、高粘度のメチルセルロース(1000cP超)を使用すると、フィルム形成は可能であるが、厚さは大きくなり、弾性は低下し、食品に適用された際に大いにそれと分かる多糖類の層が生成され、それは原料が低濃度で使用された場合にも同様である。
【0009】
本発明の香辛料移行用可食性フィルムは、本発明の第1の態様を表すフィルム形成溶液から得られる。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、溶液の総質量に対して0.5質量%~6質量%の濃度のメチルセルロースの水性溶解物を含むフィルム形成溶液であって、メチルセルロースが、溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度を有する、フィルム形成溶液に関する。
【0011】
この形成溶液から、且つ下記に説明する手順で、本発明のフィルムは得られる。
【0012】
本発明の別の態様は、
a)溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度を有するメチルセルロースを含む層、及び
b)メチルセルロースを含む層の上又はメチルセルロースを含む層と一体化された香辛料の層
を含むことを特徴とする、香辛料移行用可食性フィルムに言及する。
【0013】
本発明の別の態様は、以下の工程:
a)水中に、溶液の総質量に対して0.5質量%~6質量%の濃度の溶液が得られるまでメチルセルロースを溶解させる工程であって、メチルセルロースが、溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用した回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度を有する、工程;
b)工程a)で得られた溶液を脱気する工程;
c)工程b)で得られた脱気された溶液を広げて、基材上に均一な層を形成する工程;
e)c)で得られた層を乾燥させる工程;
f)フィルムを基材から分離させる工程
を含む、可食性フィルムを得るための方法であって、
香辛料を添加する工程d)において、香辛料が工程a)の溶液又は工程c)で得られた層に添加される、方法に言及する。
【0014】
上述したように、任意選択で工程c)の後に、香辛料を取り込む工程d)があり、香辛料は可食性フィルムがまだ湿っている時にその表面上へカスケード式に添加される。各香辛料の量は、可食性フィルムの最終的な用途に依存する。均質な形状、質量及びサイズを有する任意の種類の香辛料を添加することができ、粒又は粒の集まりのいずれかで、葉、茎、粉末、野菜片など、中でもコショウ、オレガノ、パセリ、カレー、バジル、スイートパプリカ又はホットパプリカ、ファインハーブ、タイム、ローズマリー、チポトレ、ガーリック、乾燥野菜、また、中でも「甘い」と考えられる香辛料、例えばシナモン、カルダモン、アニス、ナツメグ、更に乾燥した花又は果実の小片なども含み、並びにそれらの最終用途に応じて香料も含む。同様に、粉末香辛料の使用の場合に述べたように、フィルムを風味づけ又は色づけするために、例えば、パプリカ又はカレーなどは、撹拌プロセスの手段によりフィルム形成溶液に直接取り込むことができ、システムにおいてそれを得る工程が省かれ、フィルムにおける含有量が標準化され、最終産物におけるその完全な移行が可能となる。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明の方法によって得られる可食性フィルムに言及する。
【0016】
本発明の可食性フィルムの食品への適用は、フィルムの香辛料を含有する側との直接接触によって、又はフィルムの多糖類層のみを含有する側との直接接触によって行うことができる。
【0017】
更に、香辛料移行用可食性フィルムの使用により、食品表面上の香辛料の均一性の増大が保証され、標準的な製造方法におけるこれらの原料の調製及び適用時間が最小化され、また、中間の洗浄プロセスを行う必要なしに異なる風味が製造ラインに導入され、それにより時間と手間が省かれる可能性が拡大する。
【0018】
したがって、本発明の別の態様は、本発明の態様の1つで記載した、食品に香辛料を移行させるための可食性フィルムの使用である。
【0019】
本発明において、食品という用語は、牛肉、家禽肉、豚肉及びラムを含む任意の種類の未加工又は加工肉、魚及び海産物、並びに乳製品、パン類、寿司、ビーガン食品、並びに何らかの種類の香辛料又は香料を含有し得る任意の他の食品を指す。
【0020】
最後に、本発明の別の態様は、本発明のフィルムを含む食品である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1による配合物4が適用されたハム片を示す図である。
図2】より大きな質量及びサイズの香辛料の第1の層を含有し、より小さな質量及びサイズの香辛料を固定するために第2の接着性多糖類層を適用した後の可食性フィルムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述したように、本発明の第1の態様は、溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度のメチルセルロースの、溶液の総質量に対して0.5質量%~6質量%の濃度の水性溶解物を含む、フィルム形成溶液に言及する。より好ましくは、粘度は300cP~560cPである。
【0023】
好ましい実施形態では、構造多糖類であるメチルセルロースに加えて、可食性フィルムの弾性、強度、及び接着特性を改善するために他の原料も組み込まれ、溶液の総質量に対して0.1質量%~5質量%の範囲の、メチルセルロースと異なる少なくとも1種の他の多糖類が使用される。
【0024】
多糖類という用語は、モノマーがグリコシド結合によって連結した単糖類であるポリマーを指す。好ましくは、多糖類は、アルギン酸塩、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、デキストリン、デンプン、及びそれらの組合せ:アルギン酸塩、ペクチン;アルギン酸塩、アラビアガム;アルギン酸塩、キサンタンガム;アルギン酸塩、デキストリン;アルギン酸塩、デンプン;ペクチン、アラビアガム;ペクチン、キサンタンガム;ペクチン、デキストリン;ペクチン、デンプン;アラビアガム、キサンタンガム;アラビアガム、デキストリン;アラビアガム、デンプン;キサンタンガム、デキストリン;キサンタンガム、デンプン;デキストリン、デンプン;アルギン酸塩、ペクチン、アラビアガム;アルギン酸塩、ペクチン、キサンタンガム;アルギン酸塩、ペクチン、デキストリン;アルギン酸塩、ペクチン、デンプン;アルギン酸塩、アラビアガム、キサンタンガム、アルギン酸塩、アラビアガム、デキストリン;アルギン酸塩、アラビアガム、デンプン;アルギン酸塩、キサンタンガム、デキストリン;アルギン酸塩、キサンタンガム、デンプン;アルギン酸塩、デキストリン、デンプン;ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム;ペクチン、アラビアガム、デキストリン;ペクチン、アラビアガム、デンプン;ペクチン、キサンタンガム、デキストリン;ペクチン、キサンタンガム、デンプン;ペクチン、デキストリン、デンプン;アラビアガム、キサンタンガム、デキストリン;アラビアガム、デキストリン、デンプン;キサンタンガム、デキストリン、デンプンから選択される。
【0025】
結果として得られるフィルムの弾性、伸び及び取扱い性の特性を改善するため、好ましくは可塑剤も組み込まれる。
【0026】
したがって、形成溶液の別の態様では、形成溶液は、溶液の総質量に対して1質量%~20質量%の濃度で可塑剤を更に含む。より好ましくは、可塑剤は、グリセリン、ソルビトール、又はプロピレングリコール及びそれらの組合せ:グリセリン、ソルビトール;グリセリン、プロピレングリコール;ソルビトール、プロピレングリコール;グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールから選択される。
【0027】
特に、形成溶液は、溶液の総質量に対して2質量%~3質量%の濃度のメチルセルロース、0.5質量%~1質量%のペクチン、0.1質量%~1質量%のアルギン酸塩、及び2質量%~3質量%のグリセロールを含む。
【0028】
本発明の第2の態様は、
溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度を有するメチルセルロースを含む層、及び
メチルセルロースを含む層の上又はメチルセルロースを含む層と一体化された香辛料の層
を含むことを特徴とする、可食性フィルムに言及する。
【0029】
好ましい実施形態では、粘度は300cP~560cPである。
【0030】
好ましい実施形態では、フィルムはメチルセルロースを含む層において、メチルセルロースとは別の多糖類も含む。より好ましくは、多糖類は、アルギン酸塩、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、デキストリン、デンプン、並びに本明細書において上で定義したようなこれらの組合せから選択される。より好ましくは、この層は可塑剤を含む。更により好ましくは、可塑剤は、グリセリン、ソルビトール、又はプロピレングリコール及びそれらの組合せ:グリセリン、ソルビトール;グリセリン、プロピレングリコール;ソルビトール、プロピレングリコール;グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールから選択される。
【0031】
一方で、異なるサイズ、質量及び/又は粒度分布(粉末、粒、種子、葉その他)の原料の混合物からなる香辛料が使用される場合、香辛料混合物の成分の接着性レベルが異なることで起こるフィルム表面上での均質性の欠如により、技術上の困難が生じる。これは主に、より重い粒子、例えばコショウの粒が可食性フィルムの上にカスケード式に適用された場合、可食性フィルムの表面をより速やかに被覆するという事実に起因する。この事実により、より軽い粒子、例えば一部のアロマハーブの葉が、前記香辛料混合物に包含される残りのより重い原料と同じ割合で接着した状態を維持できるために必要とする面積は減少する。この問題は、最終産物の均一性低減を生じさせるのに加え、これらのより軽い粒子がフィルムの表面に完全には接着していないため、後続のフィルムの取扱いの間に分離する量を増大させることにもなる。均質な質量、形状及びサイズの香辛料が個々に使用されるが、取扱いの間に容易にはがれる傾向を有するような場合(特に葉)、まだ湿っているフィルムの表面上に配置されるならば、香辛料の層の上に接着性の多糖類の層を適用することが可能である。このようにして、多糖類の単一層で構成されたフィルムにおける香辛料の固定化が改善される。
【0032】
したがって、これらの問題は多糖類の第2の層によって解決され、この第2の層は、中でもデキストリン、デンプン、ゴム、セルロース、又はこれらの組合せ、例えばデキストリン、デンプン;デキストリン、セルロースガム;デンプン、セルロースガム;デキストリン、デンプン及びセルロースガムの群の中の、接着能力を有する少なくとも1つ原料で構成された、溶液の総質量に対して0.1~10質量%の濃度の多糖類の溶液によって形成される。したがって、好ましくは可食性フィルムは、香辛料の層の上又は香辛料を一体化するメチルセルロースの層の上に、接着能力を有する多糖類の層も含む。
【0033】
最後に、本発明で記載される可食性フィルムは、0.5未満、好ましくは0.1~0.5の低い水分活性を有し、長期間に亘って安全に使用及び保管することが可能であるほか、食料品に香辛料を適用する一部の現行の手法に伴う交差汚染の微生物学的リスクを最小限にする。
【0034】
メチルセルロースを残りの原料と共に組み合わせて使用することで、それらの間での相乗効果が生じ、単一の層又は幾つかの層のいずれで構成されているかに拘わらず、乾燥した取扱いに耐性であり、食品自体の水分によって完全に可溶性であり、香辛料及びフィルムの両方について、適用される製品の表面上で完全に崩壊する食料製品への良好な接着特性を有する可食性フィルムを得ることが可能となる。
【0035】
多糖類の単一層から結果として得られるフィルムの厚さは、香辛料なしで、好ましくは30~160ミクロンである。一方で、香辛料を含有する、結果として得られるフィルムの厚さは、その調製に使用される香辛料の種類及び量、並びに多糖類の二重層の存在に依存して、100~1500ミクロンである。異なるミクロンを得るために、投入システムの開口部、ラインの速度、及び溶液の粘度など、様々なパラメーターを調節することが可能である。
【0036】
既に述べたように、本発明の別の態様は、以下の工程:
a)水中に溶液の総質量に対して0.5質量%~6質量%の濃度の溶液が得られるまでメチルセルロースを溶解させる工程であって、メチルセルロースが、溶液の総質量に対して2質量%の溶液中、Brookfield DV2T粘度計を25℃でスピンドルNo.1と共に使用して回転速度60rpmで測定して100cP~1000cPの粘度を有する、工程;
b)工程a)で得られた溶液を脱気する工程;
c)工程b)で得られた脱気された溶液を広げて、基材上に均一な層を形成する工程;
e)c)で得られた層を乾燥させる工程;
f)フィルムを基材から分離させる工程
からなる可食性フィルムを得るための方法であって、
香辛料を添加する工程d)において、香辛料が工程a)の溶液又は工程c)で得られた層に添加される、方法に言及する。
【0037】
好ましくは、脱気する工程b)は、溶液を0.6バールより大きな真空圧に供し、絶えず撹拌しながら少なくとも1時間、又は気泡が完全に消えるまで行う。
【0038】
好ましくは工程c)の基材は、プラスチック、シリコーンペーパー、テフロン(登録商標)から選択される。好ましくはこの工程は、ブレードシステムを用いて、又はスロットダイシステムを通じて行う。
【0039】
好ましくは、乾燥工程e)は、コンベクション及び/又は赤外線乾燥法であり、温度は50~150℃、時間は1~10分である。
【0040】
好ましくは、フィルムが完全に乾燥したら、フィルムは自動的に基材から分離され、可食性フィルムのみからなるコイルに転換され、それはその後、適用されることが意図される食品に応じて異なる形状及びサイズに変形される。別の実施形態では、堆積のために使用されるプラスチック又は紙の基材によって依然として支えられる可食性フィルムからなるコイルを得ることも可能であり、それがその後異なる形状及びサイズに変形できる。
【0041】
好ましくは、本手順は、以下の多糖類の少なくとも1つ:デキストリン、デンプン、ガム、セルロースを、接着性溶液の総質量に対して0.5質量%~6質量%の濃度で含む、好ましくは水溶液である接着性溶液を調製する工程、この溶液を、d)において適用された香辛料の第1の層の上に、又は香辛料が工程a)において添加された場合はc)で得られた層の上に噴霧して、接着性の多糖類層を得る工程、並びに、より好ましくは接着性多糖類の層の上に香辛料の第2の層を適用することを含む。
【0042】
以下は、可食性フィルムを作製及び適用する2つの実施例であるが、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例
【0043】
本発明者らが以下の試験を実施するために使用した原料は、以下に詳述される。
メチルセルロース(MC):セルロースエステル、METHOCEL(商標)A4C、A4M、A15、及びWELLENCE(商標)Smart Fry 60、The Dow Chemical Company社、Michigan、USA。
アルギン酸塩:アルギン酸ナトリウム、Viscarin(登録商標)GP21、Dupont Nutrition Ireland社、Cork、Ireland。
ペクチン:低メトキシ化ペクチン、UnipectineTM OF-100、Cargill France SAS社、Redon、France。
コーンスターチ:アルファ化コーンスターチ、Quemina 21.214、Agrana Starke GmbH社、Aschach、Austria。
アラビアガム:アラビアガム/アカシア、噴霧乾燥アカシアガム396A、Alland & Robert社、Paris、France。
グリセロール:グリセロール、Wilfarin USP-997、Wilmar Europe Trading BV社、Rotterdam、Netherland。
【0044】
(実施例1)
異なる粘度範囲のメチルセルロースで作製された可食性フィルム及びそれらのシチメンチョウハム片における適用の比較例
まず、異なるフィルム形成溶液を調製した。全ての場合において、配合物は、2.5w/w溶液%のMC、1w/w溶液%のペクチン、1w/w溶液%のアルギン酸塩、及び3w/w溶液%のグリセロールの水溶液で構成され、これは、前記原料を水中で分散させ、続いて脱気することにより得られた。MC中に存在する異なる粘度レベルは、Table 1(表1)に詳細を示す。
【0045】
混合物が得られたら、それらをモジュラーブレードシステムを用いてシリコーンペーパー上に広げることで、まだ湿っているフィルムの初期の厚さを決定し、このようにして、乾燥したフィルムの予測される厚さを計算することが可能となった。溶液がペーパー上に堆積したら(300μm)、温度120℃で、3分間の赤外線及び温風からなる連続した乾燥プロセスに供した。乾燥したら、フィルムをペーパーから分離し、続いて、以下に詳述するように比較評価した。
【0046】
【表1】
【0047】
Table 1(表1)に示す結果は、フィルムの形成及びその機械的特性に対する粘度の影響を明白に示している。非常に低粘度のMCからのフィルムの形成(配合物1及び2)は、耐性フィルムの形成を困難にし、その取扱い性を限定する。一方で、高粘度のMCを使用すると(配合物4)、破断に対する耐性のより大きなフィルムが生成されたが、同時に厚さも大きくなった。得られたフィルムが最終産物の感覚的な特徴に対して有し得る影響を評価するために、異なる粘度のMCを用いて作製された前記フィルムの適用について比較試験を行った。この試験のために、レッドパプリカパウダーを使用し、一貫してフィルムを形成することのできる配合物(配合物3及び4)のみにおいて適用した。これを行うために、フィルム形成溶液がペーパー上に堆積したら、レッドパプリカパウダーをまだ湿っている表面にカスケード式に滴下し、この場合は60g/m2の香辛料を取り込んだ。次に、既に香辛料を含有する湿ったフィルムを、赤外線及び温風からなる連続した乾燥プロセスに供し、この場合は完全に乾燥したフィルムを得るためには130℃の温度、3分間を使用する必要があり、ミクロン端の150μmフィルムを得た。乾燥したら、異なるフィルムをペーパーから分離し、シチメンチョウハム片に適用した。これを行うために、スイートパプリカの層を含有するフィルムの側をシチメンチョウハムの表面と直接接触するように配し、その表面を完全に被覆し、続いて真空パックした。異なるフィルムで被覆されたハム片を、冷蔵庫(4~6℃)で7日間保管した。この期間の後、フィルムのサンプルはハムの表面上で既に完全に崩壊しており、配合物3(300~560cP)との主な違いがその粘度の高さである配合物4(3500~5600cP)の可食性フィルムでコーティングしたサンプル上では、それと分かるゼラチン状の層が観察された(図1に示すとおり)。
【0048】
(実施例2)
不均質なサイズ及び形状の香辛料を含有する多糖類二重層を有するフィルムの調製
このために、2種類の溶液を調製し、まず、5.5w/w溶液%のMC A4C、2w/w溶液%のトウモロコシデンプン及び2w/w溶液%のグリセロールで構成された水性溶液(混合物1)を、これら全ての原料を水中で分散させ、続いて溶液を脱気することで得た。続いて、この場合、0.5質量%のアラビアガムの水溶液で構成された、接着能力を有する第2の多糖類溶液(混合物2)を調製し、やはり使用前に脱気した。
【0049】
溶液が調製されたら、混合物1をモジュラーブレードシステムを使用してシリコーンペーパー上に広げた。この場合、それが不均質な香辛料の混合物であり、より大きな片(粉砕されたペパーコーン、コリアンダーシード、チリピース)及びコリアンダーリーフからできたより軽い粒子を含有するため、パストラミを使用した。したがって、混合物1の溶液がペーパー上に堆積したら、香辛料のより大きな片はまだ湿っている表面にカスケード式に落とされ、この場合30g/m2の香辛料を取り込んだ。次に、混合物2を香辛料の第1の層の上に噴霧で適用し、多糖類の層40μmを形成させた。その直後、コリアンダーリーフを適用し、後者はまだ湿っているフィルムの表面上にカスケード式に落とされ、この場合30g/m2のコリアンダーリーフを取り込んだ。
【0050】
最後に、既に香辛料を含有する湿ったフィルムを、完全に乾燥したフィルムを得るために必要な140℃及び4分間の赤外線及び温風で構成された連続した乾燥プロセスに供し、香辛料を含有する220μmの極小サイズの最終的なフィルムを得た。
図1
図2
【国際調査報告】