(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】化学組成物、前記化学組成物を得るための次亜塩素酸を製造するための方法、および前記方法を実施するための設備
(51)【国際特許分類】
C01B 11/04 20060101AFI20240829BHJP
C01B 11/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C01B11/04
C01B11/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024516821
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022075802
(87)【国際公開番号】W WO2023041725
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524099197
【氏名又は名称】イグナシ クロテト エス.エル.ユー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】カバ ムンタダ、ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】クロス ピジュアン、ジョアン
(57)【要約】
本発明は、殺生物剤の分野に関し、次亜塩素酸および二酸化塩素を含む水性化学組成物に関する。本発明はまた、化学組成物を得るための次亜塩素酸を製造するための方法、および方法を実施するための設備に関する。設備は、第1のリアクター(RNK)と、酸性組成物が第1のリアクター(RNK)からの水溶液と混合される酸性リアクター(RAK)と、塩基性組成物が第1のリアクター(RNK)からの水溶液と混合される塩基性リアクター(RBK)とを備える。塩基性リアクター(RBK)で得られた溶液は、酸性リアクターで得られた溶液と混合されて、混合溶液が形成され、混合溶液は、第1のリアクター(RNK)に吐出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.00005~0.6%w/wの濃度の次亜塩素酸、0.00001~0.5%w/wの濃度の二酸化塩素、および4.5~7.5の間に含まれるpHを含む水溶液であり、HClOに関するClO
2の比が、0.05:1~0.5:1(w/w)の間に含まれること、ならびにHClOに関する亜塩素酸イオンの比が、0.01:1(w/w)未満であり、HClOに関する塩素酸イオンの比が、0.02:1(w/w)未満であることを特徴とする、化学組成物。
【請求項2】
次亜塩素酸の前記濃度が0.002~0.4%w/wの範囲であり、二酸化塩素の前記濃度が、0.0002~0.3%w/wの範囲であり、好ましくは、次亜塩素酸の前記濃度が、0.01~0.2%w/wの範囲であり、二酸化塩素の前記濃度が、0.001~0.03%w/wの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の化学組成物。
【請求項3】
前記pHが、5~7.5の間に含まれ、好ましくは、5.2~6.7の間に含まれ、より好ましくは5.3~6.2の間に含まれることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項4】
1.5%w/w未満、好ましくは1%w/w未満の濃度の塩化ナトリウムをさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項5】
HClOに関するNaClの比が、4:1(w/w)未満、より好ましくは3:1(w/w)未満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項6】
HClOに対する炭酸イオンの比が、0.06:1(w/w)未満、好ましくは0.01:1(w/w)未満、より好ましくは0.006:1(w/w)未満であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項7】
HClOに関する亜塩素酸イオンの前記比が、0.006:1(w/w)未満、好ましくは0.002:1(w/w)未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項8】
HClOに関する塩素酸の前記比が、0.015:1(w/w)未満、好ましくは0.01:1(w/w)未満であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項9】
HClOに関するClO
2の前記比が、0.1:1~0.2:1(w/w)の間に含まれ、好ましくは、前記比が、0.11:1~0.16:1(w/w)の間に含まれることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項10】
以下の式:
k=(4.75×C)±100%
(式中、Cは、HClOおよびClO
-の濃度であり、ppmで表される)に従って、μS/cmで表される導電率kを示し、好ましくは、前記導電率kは、
k=(4.75×C)±50%
であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項11】
第1のリアクター(RNK)、塩基性リアクター(RBK)および酸性リアクター(RAK)を備える設備において、請求項1~10のいずれか一項に記載の化学組成物を得るための次亜塩素酸を製造するための方法であって、
以下のステップ:
i. 全塩素制御ユニット(2)を所望の全塩素設定点に調整するステップと、
ii. pH制御ユニット(4)を所望のpH設定点に調整するステップと、
iii. 前記第1のリアクター(RNK)に水を添加するステップと、
iv. 前記塩基性リアクター(RBK)において、塩基性組成物を、第1のリアクター(RNK)からの水溶液と混合して、第1の塩基性溶液を形成するステップであって、前記塩基性組成物が、
a. 塩素酸ナトリウムもしくはカリウム、および/または亜塩素酸ナトリウムもしくはカリウム、ならびに
b. 次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カリウムによって形成される群から選択される塩
を含む水溶液である、ステップと、
v. 前記酸性リアクター(RAK)において、酸性組成物を、第1のリアクター(RNK)からの前記水溶液と混合して第1の酸性溶液を形成するステップであって、前記酸性組成物が、塩酸およびH
2SO
4によって形成される群から選択される酸性化合物を含む水溶液である、ステップと、
vi. 前記第1の塩基性溶液を前記第1の酸性溶液と混合して、混合溶液を得るステップと、
vii. 前記混合溶液を前記第1のリアクター(RNK)に吐出し、前記混合溶液を前記第1のリアクター(RNK)の前記水溶液と混合するステップと、
viii. 前記第1のリアクター(RNK)の水溶液のpHレベルを測定し、pHレベルの前記測定およびステップiiの前記pH設定点に基づいて、前記ステップvの第2の塩基性組成物および/または前記酸性組成物の添加を制御するステップと、
ix. 全塩素を測定し、前記ステップivにおける前記塩基性組成物の添加を、全塩素の前記測定およびステップiの前記全塩素設定点に基づいて制御するステップと、
x. 前記第1のリアクター(RNK)における酸化還元電位を測定するステップと、
xi. 前記第1のリアクター(RNK)の前記水溶液において見出されるClO
2の濃度を測定するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記ステップivの前記塩基性組成物が、少なくとも1%w/wの次亜塩素酸イオン、好ましくは少なくとも5%w/wの次亜塩素酸イオン、より好ましくは少なくとも10%w/wの次亜塩素酸イオンを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップivの前記塩基性組成物中、前記塩素酸ナトリウムもしくはカリウム、および/または前記亜塩素酸ナトリウムもしくはカリウムの合わせた濃度が、18%w/w未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%w/w未満であることを特徴とする、請求項11または12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップivの前記塩基性組成物中、炭酸ナトリウムの濃度が2%w/w未満であることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記設備が、冷却ユニットをさらに備え、前記第1のリアクター(RNK)の前記水溶液が冷却され、冷却水溶液を形成し、前記冷却水溶液が、第1のリアクター(RNK)に送り戻されることを特徴とする、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却水溶液が、少なくとも部分的に前記塩基性リアクター(RBK)を通して、および/または少なくとも部分的に前記酸性リアクター(RAK)を通して、前記第1のリアクター(RNK)に送り戻されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップixの全塩素の測定が、前記冷却水溶液中で行われることを特徴とする、請求項15または16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基性組成物の前記塩が、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記酸性組成物の前記酸性化合物が、塩酸である、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記水が、60μS/cm未満で予備処理された水であることを特徴とする、請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第2のpH制御ユニットを所望の第2のpH設定点に調整するステップと、前記ステップviの混合溶液のpHレベルを測定するステップと、混合溶液のpHレベルの前記測定および前記第2のpH設定点に基づいて、前記ステップvの前記酸性組成物の添加を制御するステップとを含むことを特徴とする、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
5~35℃の間に含まれる温度、好ましくは、15~23℃の間に含まれる温度で実施されることを特徴とする、請求項11~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項11~22のいずれか一項に記載の方法を実施するための設備であって、
- 塩基性化合物保存室(6)と、
- 酸性化合物保存室(8)と、
- 水の入口(10)を有する第1のリアクター(RNK)と、
- 酸入口(12)、酸性リアクター水溶液入口(14)、および酸性リアクター出口(16)を有する酸性リアクター(RAK)であり、前記水溶液入口(14)が、前記第1のリアクター(RNK)と流体連通しており、前記酸入口(12)が、前記酸性化合物保存室(8)と流体連通しており、前記出口(16)が、前記第1のリアクター(RNK)と流体連通している、酸性リアクター(RAK)と、
- 塩基入口(18)、塩基性リアクター水溶液入口(20)、および塩基性リアクター出口(22)を有する塩基性リアクター(RBK)であり、前記塩基性リアクター水溶液入口(20)が、前記第1のリアクター(RNK)と流体連通しており、前記塩基入口(18)が、前記塩基性化合物保存室(6)と流体連通しており、前記塩基性リアクター出口(22)が、前記酸性リアクター(RAK)の前記2つの入口(12、14)の下流で、前記酸性リアクター(RAK)と流体連通している、塩基性リアクター(RBK)と、
- 塩基性溶液を、前記塩基性化合物保存室(6)から前記塩基性リアクター(RBK)にポンプ輸送することができる塩基性ポンプ(BB)と、
- 前記塩基性ポンプ(BB)に接続され、前記塩基性ポンプ(BB)を制御することができる全塩素制御ユニット(2)と、
- 酸性溶液を、前記酸性化合物保存室(8)から前記酸性リアクター(RAK)にポンプ輸送することができる酸性ポンプ(BA)と、
- 前記酸性ポンプ(BA)に接続され、前記酸性ポンプ(BA)を制御することができるpH制御ユニット(4)と
を備えることを特徴とする、設備。
【請求項24】
前記第1のリアクター(RNK)と流体連通した1つの冷却ユニット入口(28)、ならびに前記酸性リアクター水溶液入口(14)および前記塩基性リアクター水溶液入口(20)と流体連通した1つの冷却ユニット出口(30)を有する冷却ユニット(26)をさらに備えることを特徴とする、請求項23に記載の設備。
【請求項25】
温度センサー(32)をさらに備え、好ましくは前記温度センサー(32)が、前記冷却ユニット(26)に接続されていることを特徴とする、請求項24に記載の設備。
【請求項26】
水処理ユニット(34)をさらに備えることを特徴とする請求項23~25のいずれか一項に記載の設備。
【請求項27】
前記酸性リアクター(RAK)および前記塩基性リアクター(RBK)が、少なくとも部分的に、前記第1のリアクター(RNK)内に配置されていることを特徴とする請求項23~26のいずれか一項に記載の設備。
【請求項28】
酸化還元電位センサー(36)をさらに備えることを特徴とする、請求項23~27のいずれか一項に記載の設備。
【請求項29】
塩素ガスセンサー(38)をさらに備え、好ましくは、[a]前記塩素ガスセンサー(38)および活性炭フィルターと流体連通したファンユニット(40)、ならびに/または[b]前記塩素ガスセンサー(38)と流体連通した水シャワー(42)をさらに備えることを特徴とする、請求項23~28のいずれか一項に記載の設備。
【請求項30】
前記第1のリアクター(RNK)内に配置構成された撹拌素子(44)をさらに備えることを特徴とする、請求項23~29のいずれか一項に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学組成物、前記化学組成物を得るための次亜塩素酸を製造するための方法、および前記方法を実施するための設備に関する。
【背景技術】
【0002】
活性塩素を含む化学組成物は、例えば、水の処理における、殺生物剤として使用することができる。微生物は絶えず進化しており、故に殺生物剤も絶えず改善されているため、これは非常に動的な分野である。
【0003】
活性塩素は塩化ナトリウムの電気分解によって水溶液中で形成されうることが公知である。使用される塩化ナトリウムは不純物または夾雑物、例えば金属を有するため、得られた溶液は非常に純粋というわけではない。これは、殺生物剤の品質に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、合成を次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カリウムから開始して、次亜塩素酸を製造するための方法である。これらの次亜塩素酸塩は、通常、いくらかの量の亜塩素酸塩および塩素酸塩を含み、本発明による方法は、これらの亜塩素酸塩および塩素酸塩の変換を可能にし、有益な副生成物としてある特定量の二酸化塩素を得る、いくつかの反応を含む。したがって、本発明による方法から得られた化学組成物はまた、ある特定量の二酸化塩素を含む(常に、次亜塩素酸未満)。他の不純物、例えば炭酸塩(特にNa2CO3)もまた破壊され、加えて、出発材料として、塩化ナトリウムをほとんど含まず、一般に、塩化ナトリウム中に存在する少量の不純物または夾雑物、例えば金属もまた回避され、組成物中の全塩化物含有量は低い。したがって、本発明により得られた組成物は、はるかにより純粋である。
【0005】
そのため、本発明の別の目的は、殺生物剤特性を強化する化学組成物を提供することである。この目的は、0.00005~0.6%w/wの濃度の次亜塩素酸、0.00001~0.5%w/wの濃度の二酸化塩素、および4.5~7.5の間に含まれるpHを含む水溶液であり、HClOに関するClO2の比が、0.05:1~0.5:1(w/w)の間に含まれることを特徴とする、最初に示した種類の化学組成物によって実現される。この殺生物製品の主な利点は、2種の殺菌性殺生物剤:HClO(主成分として)およびClO2を、同じ化学物質溶液内に含有することである。したがって、この製品は、2種の殺生物剤の同時作用、およびそれらが正確な割合で製造されることに起因して、より良好な殺菌特性を有する。加えて、亜塩素酸塩、塩素酸塩および炭酸塩などの不純物(組成物の製造のための試薬中に存在する)は、非常に少ないか、または存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書および特許請求の範囲において、「全塩素」という表現は、HClOおよびClO-として見出される全遊離塩素を指す。
【0007】
本発明は、従属請求項の目的であるいくつかの好ましい特徴をさらに含み、その利用は、本発明の実施形態の詳細な記載において本明細書の以下で強調する。
【0008】
好ましくは、前記pHは5~7.5の間に含まれ、より好ましくは、前記pHは5.2~6.7の間に含まれ、さらにより好ましくは、pHは5.3~6.2の間に含まれる。このpH範囲内で、HClO、ClO-およびClO2の最適な濃度が得られる。さらに、これらのpH範囲により、化学組成物が安定であることが確実になる。
【0009】
好ましくは、次亜塩素酸の前記濃度は、0.002~0.4%w/wの範囲であり、二酸化塩素の前記濃度は、0.0002~0.3%w/wの範囲である。より好ましくは、次亜塩素酸の前記濃度は、0.01~0.2%w/wの範囲であり、二酸化塩素の前記濃度は、0.001~0.03%w/wの範囲である。
【0010】
好ましくは、前記化学組成物は、1.5%w/w未満、より好ましくは1%w/w未満の濃度の塩化ナトリウム(NaCl)をさらに含む。NaClは化学組成物にそれ以上は添加されないため、化学組成物は、不純物および金属をほとんど含まない。これにより、この化学組成物は市販のものとは区別でき、市販のものは、NaClを使用して形成されているため、より高含有量のNaCl、不純物および金属を有する。特に、カルシウム除去された浸透水(好ましくは、60μS/cm未満の導電率を有する)が組成物の製造に使用される場合、得られる組成物は、1%w/w未満の濃度の塩化ナトリウムを有しうる。あるいは、好ましくは、前記化学組成物は、4:1(w/w)未満、より好ましくはで3:1(w/w)未満のHClOに関するNaClの比を示す。
【0011】
好ましくは、前記化学組成物は、0.06:1(w/w)未満、より好ましくは0.01:1(w/w)未満、最も好ましくは0.006:1(w/w)未満のHClOに関する炭酸イオンの比を示す。炭酸イオンの含有量の低減により、組成物の安定性が改善する。
【0012】
好ましくは、前記化学組成物は、0.01:1(w/w)未満、より好ましくは0.006:1(w/w)未満、最も好ましくは0.002:1(w/w)未満のHClOに関する亜塩素酸塩の比を示す。
【0013】
好ましくは、前記化学組成物は、0.02:1(w/w)未満、より好ましくは0.015:1(w/w)未満、最も好ましくは0.01:1(w/w)未満のHClOに関する塩素酸イオンの比を示す。
【0014】
好ましくは、前記化学組成物は、0.1:1~0.2:1(w/w)の間に含まれるHClOに関するClO2の比を示す。より好ましくは、前記比は、0.11:1~0.16:1(w/w)の間に含まれる。これらは、複殺生物剤(double biocide)として作用するのに最適な化学組成物であることが見出された範囲である。
【0015】
好ましくは、前記化学組成物は、以下の式:k=(4.75×C)±100%(式中、Cは、HClOおよびClO-の濃度であり、ppmで表される)に従って、μS/cmで表される導電率kを示す。より好ましくは、前記導電率kは、k=(4.75×C)±50%である。化学組成物の導電率は、この化学組成物を市販の他の化学組成物と比較し、それらから区別するためのパラメーターとして使用できる。導電率は化学組成物に見られる化合物の濃度に密に関連しているため、これが可能である。
【0016】
本発明の別の目的は、前記化学組成物を得るための次亜塩素酸を製造する製造方法を提供することである。この目的は、第1のリアクター(RNK)、塩基性リアクター(RBK)、および酸性リアクター(RAK)を備える設備において、最初に示した種類の製造方法であって、以下のステップ:
i. 全塩素制御ユニットを所望の全塩素設定点に調整するステップと、
ii. pH制御ユニットを所望のpH設定点に調整するステップと、
iii. 前記第1のリアクターに水を添加するステップと、
iv. 前記塩基性リアクターにおいて、塩基性組成物を、第1のリアクターからの水溶液と混合して、第1の塩基性溶液を形成するステップであって、前記塩基性組成物が、
a. 塩素酸ナトリウムもしくはカリウム、および/または亜塩素酸ナトリウムもしくはカリウム、ならびに
b. 次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カリウムによって形成される群から選択される塩
を含む水溶液である、ステップと、
v. 前記酸性リアクターにおいて、酸性組成物を、第1のリアクターからの前記水溶液と混合して第1の酸性溶液を形成するステップであって、前記酸性組成物が、塩酸およびH2SO4によって形成される群から選択される酸性化合物を含む水溶液である、ステップと、
vi. 前記第1の塩基性溶液を前記第1の酸性溶液と混合して、混合溶液を得るステップと、
vii. 前記混合溶液を前記第1のリアクターに吐出し、前記混合溶液を前記第1のリアクターの前記水溶液と混合するステップと、
viii. 前記第1のリアクターの水溶液のpHレベルを測定し、pHレベルの前記測定およびステップiiの前記pH設定点に基づいて、前記ステップvの第2の塩基性組成物および/または前記酸性組成物の添加を制御するステップと、
ix. 全塩素を測定し、前記ステップivにおける前記塩基性組成物の添加を、全塩素の前記測定およびステップの前記全塩素設定点に基づいて制御するステップと、
x. 前記第1のリアクターにおける酸化還元電位を測定するステップと、
xi. 前記第1のリアクターの前記水溶液において見出されるClO2の濃度を測定するステップと
を含むことを特徴とする、製造方法によって実現される。
【0017】
この製造方法は、製造プロセスが制御された環境下で実施されることを確実にする。
【0018】
起こる反応は以下の通りである:
a)塩基性反応:
NaClO+H2O→NaOH+HClO⇔Na++OH-+ OCl-(pH値に応じて)
【0019】
b)酸性反応:
次亜塩素酸塩の次亜塩素酸への変換:
NaClO+2HCl→Cl2+NaCl+H2O(pH<4,5)、気体Cl2が水に取り囲まれており、以下の反応を受ける:Cl2+H2O→ClOH+Cl-+H+
【0020】
炭酸塩の除去:
Na2CO3+HCl→NaHCO3+NaCl ----> NaHCO3+HCl→NaCl+CO2+H2O(pH<3,7(炭酸塩は分解され、pH<2で、完全に除去される)
【0021】
亜塩素酸塩の二酸化塩素への変換:
2NaClO2+NaOCl+2HCI=2ClO2+3NaCl+H2O(pH2~5)
4ClO2
-+2H+→Cl-+2ClO2+ClO3
-+H2O(pH<2)
【0022】
塩素酸塩の二酸化塩素への変換:
2NaClO3+4HCl→2ClO2+Cl2+2NaCl+2H2O(pH<1、さらに、Cl2+H2O→ClOH+Cl-+H+)
【0023】
分かる通り、この方法の目的は、次亜塩素酸を製造することであり、出発反応物は、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムまたはカリウム)および強酸(塩酸またはH2SO4)である。亜塩素酸塩および塩素酸塩は、意図して添加されることはないが、次亜塩素酸塩自体の分解によって生成された工業グレードの次亜塩素酸塩(例えば、スペイン規格UNE-EN901による)における不可避不純物である。本方法の利点は、これらの不純物が除去されることであり、別の利点は、二酸化塩素が有益な副生成物として得られることである。
【0024】
全塩素制御ユニットにより、全塩素設定点を、気体Cl2が生成されうる限界(約5000ppm)よりも十分低くすることが可能になる。亜塩素酸塩および塩素酸塩が二酸化塩素に変換されるため、その正確な組成が未知(次亜塩素酸塩/亜塩素酸塩/塩素酸塩の相対含有量)の塩基性組成物で行うことが可能である。
【0025】
好ましくは、ステップivの塩基性組成物は、少なくとも1%w/wの次亜塩素酸イオン、好ましくは少なくとも5%w/wの次亜塩素酸イオン、より好ましくは少なくとも10%w/wの次亜塩素酸イオンを含む。
【0026】
好ましくは、ステップivの塩基性組成物中、塩素酸ナトリウムもしくはカリウム、および/または亜塩素酸ナトリウムもしくはカリウムの合わせた濃度は、18%w/w未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%w/w未満である。
【0027】
好ましくは、ステップivの塩基性組成物中、炭酸ナトリウムの濃度は、2%w/w未満である。
【0028】
好ましくは、前記設備は冷却ユニットをさらに備え、前記第1のリアクターの前記水溶液が冷却され、第1のリアクターに送り戻される。このようにして、製造プロセスが実施される温度を制御することが可能である。
【0029】
より好ましくは、前記冷却水溶液は、少なくとも部分的に前記塩基性リアクターを通して、前記第1のリアクターに送り戻される。したがって、塩基性リアクターに入る水溶液は、所望の温度であり、反応は、制御された環境で行うことが可能である。
【0030】
さらにより好ましくは、前記冷却水溶液は、少なくとも部分的に前記酸性リアクターを通して、前記第1のリアクターに送り戻される。したがって、酸性リアクターに入る水溶液は、所望の温度であり、反応は、制御された環境で行うことが可能である。
【0031】
さらに好ましい溶液中、ステップixの、全塩素の測定は、冷却水溶液中で行われる。
【0032】
好ましくは、前記塩基性組成物の前記塩は、次亜塩素酸ナトリウムである。
【0033】
好ましくは、前記酸性組成物の前記酸性化合物は塩酸であり、これは、塩酸が容易に製造されるためである。
【0034】
好ましくは、前記水は、60μS/cm未満で予備処理された水である。これにより、酸の消費を低減することが可能である。
【0035】
好ましくは、この方法は、第2のpH制御ユニットを所望の第2のpH設定点に調整するステップと、ステップviの混合溶液のpHレベルを測定するステップと、混合溶液のpHレベルの測定および第2のpH設定点に基づいて、ステップvの酸性組成物の添加を制御するステップとを含む。
【0036】
好ましくは、前記方法は、5~35℃の間に含まれる温度で実施される。より好ましくは、前記方法は、15~23℃の間に含まれる温度で実施される。この温度範囲は、化学組成物がより低速で分解し、より安定となるため、製造方法を実施するのに最適なものであることが見出された。
【0037】
本発明の別の目的は、前記化合物を製造するための製造方法を実施するための設備を提供することである。この目的は、最初に示した種類の設備であって、
- 塩基性化合物保存室(deposit)と、
- 酸性化合物保存室と、
- 水入口を有する第1のリアクターと、
- 酸入口、酸性リアクター水溶液入口、および酸性リアクター出口を有する酸性リアクターであり、前記水溶液入口が、前記第1のリアクターと流体連通しており、前記酸入口が、前記酸性化合物保存室と流体連通しており、前記出口が、前記第1のリアクターと流体連通している、酸性リアクターと、
- 塩基入口、塩基性リアクター水溶液入口、および塩基性リアクター出口を有する塩基性リアクターであり、前記塩基性リアクター水溶液入口が、前記第1のリアクターと流体連通しており、前記塩基入口が、前記塩基性化合物保存室と流体連通しており、前記塩基性リアクター出口が、前記酸性リアクターの前記2つの入口の下流で、前記酸性リアクターと流体連通している、塩基性リアクターと、
- 塩基性溶液を、前記塩基性化合物保存室から前記塩基性リアクターにポンプ輸送することができる塩基性ポンプと、
- 前記塩基性ポンプに接続され、前記塩基性ポンプを制御することができる全塩素制御ユニットと、
- 酸性溶液を、前記酸性化合物保存室から前記酸性リアクターにポンプ輸送することができる酸性ポンプと、
- 前記酸性ポンプに接続され、前記酸性ポンプを制御することができるpH制御ユニットと
を備えることを特徴とする、設備によって実現される。
【0038】
記載した設備により、化学組成物を制御された環境で製造することが可能になる。
【0039】
好ましくは、前記設備は、前記第1のリアクターと流体連通した1つの冷却ユニット入口、ならびに前記酸性リアクター水溶液入口および前記塩基性リアクター水溶液入口と流体連通した1つの冷却ユニット出口を有する冷却ユニットをさらに備える。したがって、これは、水溶液を冷却する閉鎖ループシステムを作る。
【0040】
好ましくは、前記設備は、温度センサーをさらに備える。より好ましくは、前記温度センサーは、前記冷却ユニットに接続される。温度センサーが閾値を超えるまたは閾値未満の温度を検出した場合、冷却ユニットは、水溶液の温度を所望の値に調整するように作用する。
【0041】
好ましくは、前記設備は、製造プロセスを実施するのに用いる水を処理する水処理ユニットをさらに備える。理想的には、既に述べた通り、水は、60μS/cm未満を有するように処理される。
【0042】
好ましくは、前記酸性リアクターおよび前記塩基性リアクターは、少なくとも部分的に、第1のリアクター内に配置されている。したがって、前記酸性リアクターおよび塩基性リアクターは、同じ温度におかれる。
【0043】
好ましくは、前記設備は、化学反応が所望の酸化レベルで起こっているかを検出する酸化還元電位センサーをさらに備える。
【0044】
好ましくは、前記設備は、塩素ガスが放出されているかを検出する塩素ガスセンサーをさらに備える。
【0045】
好ましくは、前記設備は、前記塩素ガスセンサーおよび活性炭フィルターと流体連通したファンユニットをさらに備える。したがって、それは、第1のリアクターを、塩素ガスセンサーに向けて通気することができる。
【0046】
より好ましくは、前記設備は、前記塩素ガスセンサーと接続した水シャワーをさらに備える。そのため、設定した閾値を超える塩素ガス値が検出された場合、水シャワーが作動する。
【0047】
好ましくは、前記設備は、前記第1のリアクター内に配置構成された撹拌素子をさらに備える。これにより、水溶液が確実に混合される。
【0048】
好ましくは、前記設備は、第1のタンクに投入されている水の量を制御するフローメーターおよび導電率センサーをさらに備え、これにより、前記水は所望の質を有する。
【0049】
好ましくは、前記設備は、前記第1のリアクター内の水溶液が閾値を超えているかを検出する第1のレベルプローブ、および化学反応の実施を開始するのに必要な最小量の水を検出する第2のレベルプローブをさらに備える。
【0050】
同様に、本発明はまた、本発明の実施形態の詳細な記載および添付の図面に例示される他の特徴の詳細を含む。
【0051】
本発明のさらなる利点および特徴は以下の記載から明らかになり、これらは、限定的性質をなんら含むことなく、本発明の好ましい実施形態が、添付の図面を参照して開示される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の第1の実施形態による設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の第1の実施形態による設備は、
図1において見ることができる。この設備は、以下を備える:
- 第1のリアクターRNK、酸性リアクターRAK、および塩基性リアクターRBKである3つリアクター。
図1において見られるように、酸性リアクターRAKおよび塩基性リアクターRBKの両方が、部分的に第1のリアクターRNK内に配置される。第1のリアクターRNK内には、撹拌素子44も配置構成される、
- 水を処理し、60μS/cm未満の処理水を第1のリアクターに送達することが可能な水処理ユニット34。60μS/cm未満の処理水が好ましいが、非処理水(またはより高い導電率を有する水、例えば、単純にカルシウム除去された水)もまた、第1の中性リアクターRNKに送達されうる、
- 次亜塩素酸ナトリウムおよび塩素酸ナトリウムである塩を含む水溶液である塩基性組成物を含有する塩基性化合物保存室6。塩基性ポンプBBは、塩基性ポンプBBに接続され、塩基性ポンプBBを制御することができる全塩素制御ユニット2の指示下で、塩基性組成物を塩基性化合物保存室6から塩基性リアクターRBKにポンプ輸送することができる、
- 塩酸を含む水溶液である第1の酸組成物を含有する酸性化合物保存室8。酸性ポンプBAは、酸性ポンプBAに接続され、酸性ポンプBAを制御することができるpH制御ユニット4の指示下で、酸性組成物を酸性化合物保存室8から酸性リアクターRAKにポンプ輸送することができる、そして
- 前記第1のリアクターRNKと流体連通した1つの冷却ユニット入口28、ならびに前記酸性リアクターRAKおよび前記塩基性リアクターRBKと流体連通した1つの冷却ユニット出口30を有する冷却ユニット26。
【0054】
一方で、酸性リアクターRAKは、以下を備える:
- 酸性化合物保存室8と流体連通した酸入口12、
- 第1のリアクターRNKと流体連通した酸性リアクター水溶液入口14。冷却ユニット26は、酸性リアクター水溶液入口14および第1のリアクターRNKの間に配置構成され、それらと流体連通している、
- 第1のリアクターRNKと流体連通した酸性リアクター出口16。
【0055】
他方、塩基性リアクターRBKは、以下を備える:
- 塩基性化合物保存室6と流体連通した塩基入口18、
- 第1のリアクターRNKと流体連通した塩基性リアクター水溶液入口20。冷却ユニット26は、塩基性リアクター水溶液入口20および第1のリアクター(RNK)の間に配置構成され、それらと流体連通している。
- 前記酸性リアクターRAKの前記2つの入口12、14の下流で、前記酸性リアクターRAKと流体連通した塩基性リアクター出口22。
【0056】
化学反応のパラメーターを制御し、化学反応が最適で安全な条件下で起こることを確実にするために、設備はまた、以下を備える:
- 冷却ユニット26に接続された温度センサー32、
- 酸化還元電位センサー36、
- ファンユニット40および活性炭フィルターと流体連通した塩素ガスセンサー38、
- 塩素ガスが検出された場合、安全上の理由から水シャワーが動作するように、塩素ガスセンサー38と接続した水シャワー42、
- 前記第1のリアクター内の水溶液が閾値を超えているかを検出する第1のレベルプローブ。閾値を超えていた場合、製造プロセスが停止する、
- 化学反応の実施を開始するのに必要な最小量の水を検出する第2のレベルプローブ、そして
- 第1のタンクに投入されている水の量を制御するフローメーターおよび導電率センサー、これにより、前記水は所望の質を有する。
【0057】
この第1の実施形態において説明される通り、酸性組成物の酸性化合物は、塩酸である。しかしながら、酸性化合物はまた、H2SO4でありうる。そして、塩基性組成物は、次亜塩素酸ナトリウムである塩を含む水溶液、および塩素酸ナトリウムである。言うまでもなく、塩はまた、次亜塩素酸カリウムでありえ、塩素酸ナトリウムは、塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、または亜塩素酸ナトリウムのうちのいずれかで置き換えられうる。
【0058】
この第1の実施形態では、製造プロセスは、水処理ユニット34において水を処理して開始する。導電率センサーが、水が60μS/cm未満を有することを検出した場合、水は、第1のリアクターRNKに送達される。送達される水の量は、フローメーターパラメーターに従って調整することができる。第1のリアクターRNKは、最小レベルまで満たされる。第2のレベルプローブが、この最小レベルに達したことを検出した場合、化学反応を開始することができる。
【0059】
第1のリアクターRNKに含有される水は、次いで、冷却ユニット26に送られ、これにより、その温度を約23℃に調整することができる。その後、水は、酸性リアクターRAKおよび塩基性リアクターRBKの両方に送られ、したがって、閉鎖ループ冷却システムが形成する。本明細書の以下で説明される通り、化学反応が起こった場合、処理水は化合物と混合され、したがって、化合物を含む水溶液に変化するため、第1のリアクターがこの処理水のみを含有するのは、製造プロセスのまさに最初のステップのみである。実際、最終化学組成物は、第1のリアクターRNKに含有されることになる。
【0060】
2つの化学反応が、1つは酸性リアクターRAKにおいて、もう1つは塩基性リアクターRBKにおいて、同時に起こる。
【0061】
一方で、冷却水は、酸性リアクター水溶液入口14を通して酸性リアクターRAKに入る。並行して、酸性ポンプBAは、塩酸を酸性化合物保存室8から酸性リアクターRAKの酸入口12にポンプ輸送する。この塩酸は、次いで、酸性リアクターRAKにおいて、冷却水と混合され、その結果、第1の酸性溶液が形成する。
【0062】
他方、冷却水はまた、塩基性リアクター水溶液入口20を通して塩基性リアクターRBKにも入る。並行して、塩基性ポンプBBは、次亜塩素酸ナトリウムおよび塩素酸ナトリウムを含む水溶液である塩基性組成物を、塩基性化合物保存室6から塩基性リアクターRBKの塩基入口18にポンプ輸送する。この塩基性組成物は、次いで、塩基性リアクターRBKにおいて、冷却水と混合され、その結果、第1の塩基性溶液が形成する。第1の塩基性溶液が形成されると、これは、酸性リアクター入口12、14の下流の酸性リアクターRAKに送られ、その結果、第1の酸性溶液と混合されうる。したがって、混合溶液が得られる。次いで、この混合溶液は第1のリアクターRNKに吐出され、最初に第1のリアクターRNKに送達された処理水と混合される。処理水および混合溶液が混合されると、水溶液が得られる。この水溶液は、次いで、再度冷却ユニット26に送達される。実際には、これは連続プロセスであるため、この水溶液の化学組成は、所望の化学組成が達成されるまで、絶えず変化している。
【0063】
既に説明した通り、pH制御ユニット4は、酸性ポンプBAを制御することによって、第1のリアクターRNKに含有される水溶液のpHを調節する。つまり、水溶液のpHは、大なり小なりの塩酸を添加することによって調整されることになる。
【0064】
同様に、全塩素制御ユニット2は、塩基性ポンプBBを制御することによって、第1のリアクターRNKに含有される水溶液の全塩素を調節する。つまり、水溶液中に見られる全塩素は、大なり小なりの塩基性組成物を添加することによって調整される。
【0065】
記載した通りの製造プロセスを実施することによって、HClOおよびClO2を含む化学組成物が得られることは、言及に値する。現在、HClOおよびClO2は、異なる製造プロセスに従い、異なる化合物を使用して製造されているため、これは重要である。
【0066】
以下の表は、既に説明した製造プロセスによって得られた化学組成物の化学組成を示す。
【0067】
【0068】
既に言及した通り、全塩素は、この場合、HClOおよびClO-の形態で見出される遊離塩素を指す。
【0069】
以下の表は、pH5,5での、既に説明した製造方法により得られた、異なるHClO含有量を有する異なる化学組成物の導電率を示す。
【0070】
【実施例】
【0071】
小規模都市の飲用水のための水処理設備は、活性Cl源として次亜塩素酸ナトリウムを使用した。流入水はごく酸性(pH5.8)であり、次亜塩素酸ナトリウムの使用は、pHを6にする追加の利点を有した。しかし、通常の場合の通り、次亜塩素酸ナトリウムはある特定量の塩素酸塩を含有せず、処理水は過剰量の塩素酸塩を有した:流入水に2ppmの亜塩素酸ナトリウムを添加する(処理水中活性Clを1ppm未満とするため)場合、処理水はまた、0.25ppm超の塩素酸塩(ヒト消費が意図される水の品質に対する2020年12月16日の欧州議会および理事会の欧州指令(UE)2020/2184によって策定された限界値)を有した。
【0072】
本発明による新しい方法および設備を使用して、次亜塩素酸塩は、少量の二酸化塩素を含み、亜塩素酸塩および塩素酸塩を含まない高品質の次亜塩素酸に変換される。
【0073】
この方法は、本発明による設備において行われる。第1のリアクターRNKは、500Lの容量を有し、その内部に酸性リアクターRAKおよび塩基性リアクターRBKを有する。塩基性リアクター出口22は、酸性リアクターRAKの入口12、14の下流で酸性リアクターRAKと流体連通している。そして、酸性リアクター出口16は、第1のリアクターRNKと流体連通している。設備全体は、センサーのシグナル(全塩素、pH、酸化還元電位、フローなど)を受け取り、これらのシグナルに従ってポンプを調整する制御手段によって制御される。実際、この制御手段は、設備に存在しうる全塩素制御ユニット2、pH制御ユニット4、および他の制御ユニットの制御タスクを含む。例えば、500ppmの全塩素設定点、および7.5のpH設定点が導入される。制御手段は、塩基性組成物(すなわち、次亜塩素酸ナトリウム)の添加を制御し、その結果、次亜塩素酸の量は確立された設定点に達する。さらに、制御手段は、pH設定点に達するまで、第2の塩基性組成物(一般に、好ましくは、希釈NaOHである)の添加を制御する。本例において、流入水は、ごく酸性であり、したがって、ある特定量の第2の塩基性組成物を添加する必要がある。他の例では、pH設定点に達するためにより多くの酸(第2の塩基性組成物の代わりに)を添加する必要がありうる。この後者のシナリオでは、制御手段により、より多くの量の酸性組成物を添加することが可能である。
【0074】
第1のステップは、本例においてはわずかに酸性(pH5.8)であるカルシウム除去した浸透水400Lを第1のリアクターに満たすことである。塩基性組成物は、濃次亜塩素酸ナトリウム(11%w/w、pH>12)であり、塩基性リアクターRBKにおいて、塩基性組成物は、第1のリアクターからの循環水により希釈され、塩基性反応が起こる。酸性組成物は、塩酸(33%w/w、pH<1)であり、酸性リアクターRAKにおいて、酸性組成物は、第1のリアクターからの循環水により希釈される。第1の塩基性溶液および第1の酸性溶液は、酸性リアクターRAKで混合され、いわゆる混合溶液が形成する。この時点で、pHは非常に酸性(好ましくは<1)であることが好都合である。したがって、一般に、本発明の好ましい実施形態は、混合溶液のpHを制御する第2のpH制御ユニットを含む。これらの酸性条件において、塩素酸塩(および亜塩素酸塩)は、ほぼ完全に除去される。気体Cl2は加水分解され、次亜塩素酸が得られる。
【0075】
設備は、冷却ユニットを備え、冷却水溶液は、15℃の温度を有した。
【0076】
本発明の方法および設備により、pH5.5で500ppmの次亜塩素酸を含む402Lの組成物を得るために、1.48Lの次亜塩素酸塩(11%w/w)および約0.5Lの塩酸(33%w/w)が必要である。組成物中に存在する二酸化塩素の量は、塩基性組成物中に存在する塩素酸塩(および亜塩素酸塩)の量に依存する。本例では、組成物は、98ppmの二酸化塩素を有し、亜塩素酸塩は、完全に除去され、塩素酸塩は、ほぼ除去される。さらに、塩基性組成物中に存在する60ppmの炭酸ナトリウムも、除去される。
【0077】
製造比は、亜塩素酸塩または塩素酸塩を含まず、HClO 1ppm:ClO2 0.2ppmであり、トリハロメタンまたは他の望ましくない化合物が形成する問題を有することなく投入し、以下の生物:酵母、真菌、ウイルス、バクテリオファージ、胞子、藻類、バクテリア、除去することが困難な被包性細菌(レジオネラ属)、およびバイオフィルム除去のすべてについて高い殺菌力を有するのに理想的であった。
【国際調査報告】