(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】含浸クリーム、利用法、及び含浸クリームを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240829BHJP
C04B 24/40 20060101ALI20240829BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20240829BHJP
C04B 41/64 20060101ALI20240829BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240829BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240829BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08L83/04
C04B24/40
C04B24/32 A
C04B41/64
C08L83/06
C08L71/02
C08K3/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517067
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2021080391
(87)【国際公開番号】W WO2023046309
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021124578.8
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522356706
【氏名又は名称】ヘヒトル,ヴォルフガング
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘヒトル,ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
4G028
4J002
【Fターム(参考)】
4G028CA02
4G028CB08
4G028CC01
4G028CD02
4J002CH023
4J002CP03W
4J002CP06X
4J002DE027
4J002ED036
4J002FD313
4J002FD316
4J002GL00
4J002HA01
(57)【要約】
本発明は含浸クリームに関する。この含浸クリームは、水と、少なくとも1つの乳化剤と、少なくとも1つのポリジメチルシロキサンとを含み、ポリジメチルシロキサンは、HO-(SiMe2O)n-H及びMe3SiO-(SiMe2O)n-SiMe3、ここでnは20から2500までの整数、から選択され、含浸クリームは、炭化水素、アルコキシル化シラン、アルコキシル化シロキサン、及びアミン基官能化シロキサンを含まない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸クリームにおいて、
水と、
少なくとも1つの乳化剤と、
少なくとも1つのポリジメチルシロキサンと
を含み、前記ポリジメチルシロキサンは、
HO-(SiMe
2O)
n-H及びMe
3SiO-(SiMe
2O)
n-SiMe
3、
ここでnは20から2500までの整数、から選択され、
前記含浸クリームは、炭化水素、アルコキシル化シラン、アルコキシル化シロキサン、及びアミン基官能化シロキサンを含まない、含浸クリーム。
【請求項2】
水と、
少なくとも1つの乳化剤と、
少なくとも1つのポリジメチルシロキサンと
からなり、前記ポリジメチルシロキサンは、
HO-(SiMe
2O)
n-H及びMe
3SiO-(SiMe
2O)
n-SiMe
3、
ここでnは20から2500までの整数、から選択され、
任意選択として少なくとも1つの添加剤を含み、前記添加剤の総量は前記含浸クリームの総質量に対して5質量%よりも少なく、特に3質量%よりも少ない、請求項1に記載の含浸クリーム。
【請求項3】
前記乳化剤は、少なくとも9のHLB値を有するアルコキシル化乳化剤である、請求項1又は2に記載の含浸クリーム。
【請求項4】
前記乳化剤は、少なくとも10、及び特に少なくとも12のHLB値を有する、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の含浸クリーム。
【請求項5】
前記乳化剤は、イソトリデシルアルコール-ポリグリコールエーテルである、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の含浸クリーム。
【請求項6】
前記乳化剤の量は、前記含浸クリームの総質量に対して0.3~3質量%、特に0.4~2質量%、特に0.5~1質量%である、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の含浸クリーム。
【請求項7】
請求項1に記載の式のnは、50から1800までの整数である、請求項1から6のうちいずれか一項に記載の含浸クリーム。
【請求項8】
ポリジメチルシロキサンの粘度は、25℃のもとで20~350,000mm
2/sの範囲内であり、特に50~80,000mm
2/sの範囲内である、請求項1から7のうちいずれか一項に記載の含浸クリーム。
【請求項9】
ポリジメチルシロキサンの量は、前記含浸クリームの総質量に対して50~92質量%、特に60~90質量%、特に70~88質量%である、請求項1から8のうちいずれか一項に記載の含浸クリーム。
【請求項10】
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の含浸クリームを製造する方法において、
均一な混合物が生じるまで、水と少なくとも1つの乳化剤とが混合される工程と、
均一な白色のクリームが生じるまで、少なくとも1つのポリジメチルシロキサンが前記均一な混合物に混入される工程と
を含む方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の含浸クリームの利用法において、鉱物性の建築材料、特に鉱物性の壁構造物に含浸させるための利用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料を疎水化するための含浸クリーム並びにこれを製造する方法に関する。含浸クリームの利用法も本発明の構成要素である。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、建造物を湿潤から保護するための含浸クリームが知られている。たとえば特許文献1は、水と、乳化剤と、有機ケイ素化合物とを含む特定のシラン/シロキサン作用物質含有量を有する含浸クリームを記載している。その他の主要な原料として、この含浸クリームは、含浸クリームの作用物質含有量を減らして含浸クリームをいっそう良好に加工可能にするために添加される炭化水素成分を含んでいる。炭化水素含有の含浸クリームにおける欠点は、疎水性の炭化水素の割合に基づいて安定化が難しいことにある。更に特許文献2より、アルコキシル化シランと、アミノ基官能化された有機ポリシロキサンとを含む含浸クリームが公知である。その場合、高い割合のアルコキシル化シラン及びアミノ基官能化された有機ポリシロキサンが必要であるが、これらはそのアルコキシル化ないしアミノ基官能化の理由から、さほど環境適合的ではなくユーザー適合的でもない。これに加えて含浸クリームは、上述した従来技術に開示されているように多くの成分を含んでいる場合、製造、保管、加工がいっそう難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第19945305号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19628035号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の課題は、組成が簡素化されることを特徴としながらも、卓越した疎水化特性を有する含浸クリームを提供することにある。これに加えて本発明の課題は、このような含浸クリームを製造する簡易かつ低コストな方法、並びに含浸クリームの利用法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの課題の解決は、独立請求項の対象物によって行われる。本発明の好ましい発展形態と実施形態は、従属請求項に含まれている。
【0006】
それによると、本課題は、水と、少なくとも1つの乳化剤と、少なくとも1つのポリジメチルシロキサンとを含む含浸クリームによって解決される。
【0007】
このときポリジメチルシロキサンは次式のポリジメチルシロキサンから選択され、ここでnは20から2500までの整数である。
【0008】
HO-(SiMe2O)n-H 及び
Me3SiO-(SiMe2O)n-SiMe3
【0009】
本発明に基づいて使用されるポリジメチルシロキサンは、それぞれ単独で、又は任意の組み合わせで適用することができる。そのような組み合わせとは、ヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサンとトリメチルシリル基末端ポリジメチルシロキサンの両方を含む組み合わせでもある。これらのポリジメチルシロキサンは、所望の粘性に応じて使用することができる。
【0010】
本発明によるポリジメチルシロキサンはその疎水性の性質に基づき、一方では、鉱物性の建築材料を疎水化するのに良く適しているが、他方では、従来技術で用いられるシロキサンよりも改善されたユーザー適合性と環境適合性を有している。このとき、使用されるシロキサン自体はアルコキシル基を有さないのが有利であることが見出された。なぜなら、これにより、使用量に基づいてアルコキシル化生成物の割合が高くなることを効果的に回避できるからである。
【0011】
しかしながら、後述するように、好ましくは少なくとも9のHLB値(親水性・親油性・バランス)を有するアルコキシル化乳化剤である乳化剤の使用により、簡素に構成された、少ない成分からなる含浸クリームの非常に良好な安定性を実現することができた。好ましい形で使用される乳化剤のアルコキシル化によって、ある程度の量のアルコキシ基は含浸クリームに投入されるが、乳化剤の割合は、通常、ポリジメチルシロキサンの割合よりも明らかに低いので、合計として含浸クリーム中のアルコキシ基割合は、アルコキシル化乳化剤が使用されている場合でさえ、従来の含浸クリームと比べると低減される。アルコキシル化乳化剤の使用が特別に有利であるのは、これによって含浸クリームの特別に高い安定性が得られ、本発明に基づいて使用されるポリジメチルシロキサンが、含浸クリームの中で恒常的に安定的かつ均一に分散したまま保たれるからである。これにより、疎水化する基材に含浸クリームを塗布した後、疎水化剤であるポリジメチルシロキサンが均等に分布される。
【0012】
更に本発明によれば、含浸クリームは、炭化水素、アルコキシル化シラン、アルコキシル化シロキサン、及びアミン基官能化シロキサンを含まない。
【0013】
ここで「炭化水素」とは、あらゆる種類の炭化水素、脂肪族(直鎖又は分岐)炭化水素、並びに芳香族炭化水素であると理解される。これらの炭化水素は特にパラフィン及びイソパラフィンも含み、本発明によれば、含浸クリームの改善された安定性及び簡易化された加工性と製造可能性の理由から、これらが省略される。
【0014】
ここで「アルコキシル化シラン」とは、1つ又は複数のアルコキシ基を有するシラン、たとえばアルキルアルコキシシラン、エトキシル化シランなどである。
【0015】
ここで「アルコキシル化シロキサン」とは、1つ又は複数のアルコキシ基を有するシロキサン、たとえばアルキルアルコキシシロキサン、エトキシル化ジアルキルシロキサンなどである。シロキサンは、定義に即して、シロキサンのポリマーを含む。
【0016】
「アミン基官能化シロキサン」は、1つ又は複数のアミノ基を有するあらゆるシロキサン、たとえばアミノプロピル基官能化シロキサンを含む。シロキサンは、定義に即して、シロキサンのポリマーを含む。
【0017】
上述した原料が省略されることで、本発明による含浸ポリマーの組成を、非常に良好な疎水化特性のもとで簡素化することができる。更に、それによって含浸クリームの製造も簡易化され、それにもかかわらず、非常に良好な塗布特性、良好な安定性、及び耐雨性を有する含浸クリームが得られる。
【0018】
含浸クリームの組成をいっそう簡素化するために、含浸クリームは、水と、少なくとも1つの乳化剤と、次のものから選択される少なくとも1つのポリジメチルシロキサンとからなる。
【0019】
HO-(SiMe2O)n-H 及び
Me3SiO-(SiMe2O)n-SiMe3
【0020】
ここでnは20から2500までの整数である。任意選択として、更に少なくとも1つの添加剤が含まれていてよく、添加剤の総量は含浸クリームの総質量に対して5質量%よりも少なく、特に3質量%よりも少ない。複数の添加剤が組み合わされて使用される場合、すべての添加剤の合計について上記の量が適用される。
【0021】
本発明の意味における添加剤は、含浸クリームの作用、すなわち含浸クリームの疎水性の作用を損なうことがない助剤である。例示としての助剤は、抗酸化剤及び保存剤を含む。
【0022】
すでに上で説明したとおり、乳化剤は少なくとも9のHLB値を有するアルコキシル化乳化剤であるのが好ましい。アルコキシル化乳化剤が使用されることで、簡素に構成された、少数の成分からなる含浸クリームの非常に良好な安定性を実現することができる。安定性とは、長期の室温保管後における含浸クリームの変化しない安定したコンシステンシーであり、それにより液相の分離を確認できないことであると理解される。本発明に基づいて使用されるポリジメチルシロキサンは含浸クリーム内で恒常的に安定的かつ均一に保たれ、これにより、疎水化する基材に含浸クリームを塗布した後、疎水化剤であるポリジメチルシロキサンが均等に分布する。
【0023】
含浸クリームの安定性をいっそう改善するために、乳化剤は少なくとも10、及び特に少なくとも12のHLB値を有するのが好ましい。乳化剤のHLB値が高いほど、乳化剤はいっそう親水性になる。本発明に基づいて使用されるポリジメチルシロキサンは高い疎水性を特徴とするにもかかわらず、おそらくは強力な水素橋結合が形成されることで、ポリジメチルシロキサンを非常に良好に安定化させる「ネットワーク」を含浸クリームに生成可能であることが確認されており、それにより、ポリジメチルシロキサンは長期の耐用期間後にも含浸クリーム内で均一に分散したまま保たれ、それに伴って非常に良好な利用特性を維持する。
【0024】
特別に効果的な乳化剤として判明しているのは、13のHLB値を有するイソトリデシルアルコール-ポリグリコールエーテルであり、これはポリエチレングリコール-モノアルキルエーテル又はオリゴエチレングリコール-モノアルキルエーテルとして、CAS番号9043-30-5のもとでも入手することができる。
【0025】
乳化剤の量が減ることで、含浸クリームのユーザー適合性と環境適合性をいっそう改善することができる。特に乳化剤の量は、含浸クリームの総質量に対して0.3~3質量%、特に0.4~2質量%、特に0.5~1質量%であるのが有利である。2つ又はそれ以上の乳化剤が組み合わされて使用される場合、ここに挙げている量はすべての乳化剤の合計に関するものである。0.3質量%のごく僅少な量だけで、高い親水性とアルコキシル化された構造とに基づき、含浸クリームの安定化のために効果的であることが判明した。3質量%の量を上回ると、実質的にそれ以上の安定性向上は観察されない。経済性、ユーザー適合性、及び環境適合性の理由から、乳化剤の好ましい量は0.4~2質量%の範囲内であり、特に0.5~1質量%の範囲内である。
【0026】
更に有利には、上に記載したポリジメチルシロキサンの重合度nは、50から1800までの整数である。それにより、ポリジメチルシロキサンの粘性が非常に良好に加工可能な範囲へと引き上げられ、ないしはこれに限定され、それにより簡易な加工性が、同時に含浸クリームの高い安定性のもとで得られる。
【0027】
上述した利点の観点から、本発明に基づいて使用される1つ又は複数のポリジメチルシロキサンの粘度は、25℃において好ましくは20~350,000mm2/sの範囲内であり、特に50~80,000mm2/sの範囲内である。80,000mm2/sの粘度を上回るとポリジメチルシロキサンの加工性が低下する可能性があり、そのため、含浸クリームの不均一性及びこれに伴って安定性の低下が生じる可能性がある。ここで粘度は2020年版のISO3104に準拠して測定している。
【0028】
疎水化作用を改善するために、ポリジメチルシロキサンの量は含浸クリームの総質量に対して50~92質量%、特に60~90質量%、特に70~88質量%であるのが好ましい。複数のポリジメチルシロキサンが組み合わされて使用される場合、ここに挙げている量はすべてのポリジメチルシロキサンの合計に関するものである。ポリジメチルシロキサンの量が92質量%を上回ると、ポリジメチルシロキサンの加工性が困難になる可能性があり、それに対して、量が50質量%を下回ると、場合により疎水化作用の低下を伴うことがある。
【0029】
上で説明したような含浸クリームを製造する方法も、同じく本発明に基づいて開示される。この方法は、均一な澄んだ混合物が生じるまで、水と少なくとも1つの乳化剤とが混合される工程を含む。この混合は振り混ぜによって、又は適当な撹拌機による混和によって行うことができる。均一な混合物が得られた後、均一な白色のクリームが生じるまで、少なくとも1つのポリジメチルシロキサンの混入が行われる。特に、この混入はせん断力の作用のもとで、たとえばロータ・ステータ・撹拌機を利用したうえで行われる。すでに数分後には、均一な小滴分布を有する白色のクリームが形成される。ロータ・ステータ・撹拌機を15,000回転で5分間混ぜた場合、高い疎水化作用、良好な加工性、ユーザー適合性、及び環境適合性を特徴とする、特別に安定した白色のクリームが得られる。この含浸クリームは製造後すぐに適用可能であり、高い耐雨性を示す。
【0030】
更に本発明に基づき、鉱物性の建築材料、特に鉱物性の壁構造物に含浸させるための上に開示された製造済み含浸クリームの利用法も開示される。ここでは鉱物性の建築材料は、特にコンクリート、レンガ、及び砂岩を含む。非常に良好な疎水性、容易な加工性、及び良好な塗布特性に基づき、鉱物性の建築材料及び特にこれから製作される壁構造物を、浸透する水や下から昇ってくる水に対して、恒久的に高い信頼度で保護することができる。
【0031】
本発明による含浸クリームについて説明した利点、好ましい効果、及び発展形態は、含浸クリームを製造する本発明の方法並びに含浸クリームの利用法にも適用することができる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例を援用しながら本発明について更に説明する。
【0033】
実施例-含浸クリームの製造
実施例1
18.4gの水と、0.8gの乳化剤イソトリデシルアルコール-ポリグリコールエーテルとを計量して混合容器に入れた。液滴が消えて澄んだ液体が生じるまで、約5分のあいだ振り混ぜた。
【0034】
次いで、25℃のもとで、約50,000mm2/sの粘度を有する35.1gのヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(可能なポリジメチルシロキサンはたとえばGelest社から入手可能)を投入した。
【0035】
この混合物を、IKA社のロータ・ステータ・撹拌機を用いて毎分15,000回転で5分間均一化した。希溶液状の乳状液が形成された。
【0036】
次いで、36.3gのポリジメチルシロキサンを計量して加え、同じく毎分15,000回転で5分間均一化した。
【0037】
含浸クリームのコンシステンシーはクリーム状になったが、依然として流動性があった。
【0038】
次いで、34.6gのポリジメチルシロキサンを再度計量して加え、同じく毎分15,000回転で5分間均一化した。
【0039】
白みを帯びた安定したクリームが得られた。12ヶ月間の室温保管の後、安定したコンシステンシーの変化は確認できなかった。
【0040】
実施例2
実施例1の製造方法を繰り返したが、乳化剤の調量を倍にし、50,000mm2/sの粘度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを、25℃のもとで100mm2/sの低い粘度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンで置き換えた。
【0041】
白みを帯びた安定したクリームが同じく得られた。12ヶ月間の室温保管の後、安定したコンシステンシーの変化は確認できなかった。
【0042】
実施例3
実施例1の製造方法を再度繰り返したが、50,000mm2/sの粘度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを、25℃のもとで5000mm2/sの粘度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンで置き換えた。
【0043】
白みを帯びた安定したクリームが得られた。12ヶ月間の室温保管の後、安定したコンシステンシーの変化は確認できなかった。
【0044】
実施例4
実施例1と同様にして含浸クリームをあらためて製造したが、50,000mm2/sの粘度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを、25℃のもとで約10,000mm2/sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンで置き換えた。
【0045】
可能なトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンは、Thermo Fisher Scientific-Alfa Aesar社から入手することができる。
【0046】
白みを帯びた安定したクリームがあらためて得られた。12ヶ月間の室温保管の後、安定したコンシステンシーの変化は確認できなかった。
【0047】
実施例5
実施例4の製造方法を繰り返したが、10,000mm2/sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンを、25℃のもとで50mm2/sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端ポリマーで置き換えた。
【0048】
白みを帯びた安定したクリームが同じく得られた。12ヶ月間の室温保管の後、安定したコンシステンシーの変化は確認できなかった。
【0049】
実施例-含浸クリームの利用
実施例A:レンガ石のコーティング
20.5cm×13.5cm×5.5cmの寸法を有する5個のレンガ石を、実施例1から5の含浸クリームでコーティングした。
【0050】
そのために、それぞれレンガ石の表面(20.5cm×13.5cm)の中央に、辺の長さが10cmと8cmの長方形をマーキングし、マーキングされた長方形の長辺をレンガ石の長辺と平行になるように向けた。
【0051】
マーキングされた長方形の中に、実施例1から5の含浸クリームをそれぞれ10gずつ塗布した。
【0052】
これらのレンガ石は、含浸クリームの塗布前に2日間、底面(20.5cm×13.5cm)を下にして高さ1cmの水層の中で保管された。含浸クリームの塗布後も、この水中保管を中断なく継続した。
【0053】
2週ないし5週の保管期間の後、レンガ石を水浴から取り出し、ハンマーとノミを使って真ん中で2つの半体に分割した。
【0054】
破断面にピペットで水滴を垂らし、液滴が表面によって吸収されるか、それとも形状安定的で長期の保管後にも吸収されない水玉が形成されるかをチェックした。
【0055】
このとき、考えられる水玉の形成は、レンガ石の内部領域で疎水化が起こっていることの証明であるとみなすことができる。
【0056】
コーティングが行われた上側縁部では水玉が形成され、それよりも下では、ピペットで垂らした水の流動と吸収が破断面全体に生じたことが判明した。
【0057】
水玉が形成された上側のストライプの幅は、5つのレンガでそれぞれ相違していた。
【0058】
水玉を形成した上側のストライプの幅は、下記のように、実施例1から5のそれぞれのクリームによるコーティング及び水中保管期間に依存していた。
【0059】
2週間の水中保管後には、次の結果が得られた。
実施例1の含浸クリームによるコーティングの場合のストライプ幅:5mm。
実施例2の含浸クリームによるコーティングの場合のストライプ幅:10mm。
実施例3の含浸クリームによるコーティングの場合のストライプ幅:5mm。
実施例4の含浸クリームによるコーティングの場合のストライプ幅:3mm。
実施例5の含浸クリームによるコーティングの場合のストライプ幅:15mm。
【0060】
このようなチェックの後、分割されたレンガのそれぞれ一方の半体を用いて水中保管を継続した。それぞれ他方の半体は乾燥させて保管した。
【0061】
分割されたレンガのそれぞれ一方の半体を更に3週間追加で水中保管した後、再度の分割を行い、それぞれの破断面に水滴をピペットで垂らした。
【0062】
破断面では、水玉を形成した次のような上側のストライプ幅が確認され、このような水玉形成をするストライプよりも下方では、ピペットで垂らした水はやはりレンガ石表面によって即座に吸収された。
実施例1のクリームによるコーティングの場合のストライプ幅:10mm
実施例2のクリームによるコーティングの場合のストライプ幅:15mm
実施例3のクリームによるコーティングの場合のストライプ幅:10mm
実施例4のクリームによるコーティングの場合のストライプ幅:10mm
実施例5のクリームによるコーティングの場合のストライプ幅:30mm
【0063】
更に6ヶ月のあいだ水中保管又は乾燥保管をした後、水玉を形成するストライプの寸法は、乾燥保管後も水中保管後も変わらずに保たれるという結果が得られた。
【0064】
これらの結果から、本発明のポリジメチルシロキサン・含浸クリームでレンガをコーティングすることで、水をはじく作用が縁部ゾーンで実現されたと結論づけることができる。
【0065】
実施例B-コンクリートブロック石のコーティング
実施例1から5の含浸クリームによるコーティングのために、辺の長さが19cmの立方体の中空ブロック石を使用した。
【0066】
6つの側面のうち4つは、厚さ3.5cmのコンクリート壁で閉止され、2つの向かい合う側面は開いていた。
【0067】
このコンクリート中空ブロック石を、4つのコンクリート壁のうちの1つを下にして水中に置いて保管した。水の高さは1cmであり、水中保管の期間は2日とした。すなわちそれぞれの中空ブロック石は、底面板及び2つの向かい合う側壁が、1cmだけ水中に沈められた。上側の被覆板は乾いていた。
【0068】
垂直方向の側壁では、下から進行していく黒ずみが約12cmの高さまで生じた。
【0069】
2日間の水中保管の後、上側の被覆板を実施例1から5の含浸クリームにより6cmのストライプ幅でコーティングした。
【0070】
辺の長さが19cmと6cmの長方形のコーティングストライプは、上側の被覆板の縁部で、その下に位置する側壁のすぐ上にあった。含浸クリームの塗布量はそれぞれ約35gであった。
【0071】
引き続いて水中保管を継続した。6ヶ月の保管期間後にそれぞれの中空ブロック石を水浴から取り出し、垂直方向の側壁の当初の黒ずみに関して鑑定を行った。
【0072】
コーティングストライプのすぐ下にある、下から上へと上昇していく側壁の黒ずみは、12cmの高さから4cmの高さまで下方に向かって低減していることが判明した。
【0073】
更に、被覆板のコーティングが行われた上から8cmの側壁高さまで下方に向かって延びる別の黒ずみが確認された。側壁全体は、上から8cmの壁高さまで黒ずんでいた。
【0074】
向かい合う他方の側壁は、変わることなく下から12cmの高さまでのみ黒ずんでいた。
【0075】
この結果から、下側の黒ずみは、上昇してきた水によって引き起こされたものであり、上側の黒ずみは、その上に塗布された含浸クリームによって引き起こされたものであると結論づけることができた。
【0076】
黒ずみをチェックするために、両方の垂直方向の側壁をハンマーとノミを使って中空ブロック石から引き剥がした。破断面にピペットで水滴を垂らした。
【0077】
その際に、下側の黒ずみにピペットで垂らした水滴は即座に吸収され、これとは対照的に、上側の黒ずみにピペットで垂らした水滴は水玉を形成することが明らかとなった。
【0078】
これらの結果から、含浸クリームがコンクリート本体に浸透し、水をはじく作用を引き起こしたと結論づけることができる。
【国際調査報告】