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特表2024-532598抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用
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  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図1
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図2
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図3
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  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図5
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図6
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図7A
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図7B
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図8
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図9
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図10
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図11
  • 特表-抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240829BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240829BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K47/68
A61P35/00
A61K45/00
A61K38/07
A61K31/537
A61K31/4745
A61K51/04 100
A61K39/395 L
A61K39/395 C
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536344
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2022114793
(87)【国際公開番号】W WO2023025243
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110999986.8
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523203056
【氏名又は名称】石▲薬▼集▲団▼巨石生物制▲薬▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】孫召朋
(72)【発明者】
【氏名】沈明月
(72)【発明者】
【氏名】淡墨
(72)【発明者】
【氏名】袁燦
(72)【発明者】
【氏名】王艷翠
(72)【発明者】
【氏名】武玉芬
(72)【発明者】
【氏名】惠希武
(72)【発明者】
【氏名】劉伯寧
(72)【発明者】
【氏名】姚兵
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CE12
4B064DA05
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA12
4C084AA17
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA14
4C084BA23
4C084BA41
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、乳がん及び膀胱がんのようながんをはじめとするNectin-4陽性腫瘍の治療及び/又は予防に有効な抗Nectin-4抗体、抗体薬物複合体、その製造方法及び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nectin-4に特異的に結合する抗体薬物複合体(ADC)であって、前記抗体又はその機能性断片が重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域の配列が配列番号9に示されるアミノ酸配列であり、前記軽鎖可変領域の配列は、配列番号10-12に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列である。
【請求項2】
前記抗体又はその機能性断片の重鎖可変領域の配列が、配列番号9に示されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列であり、前記軽鎖可変領域の配列が、配列番号10-12に示されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列から選択される、請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の抗体薬物複合体。
【請求項4】
前記抗体がヒト抗体である、請求項1-3のいずれかに記載の抗体薬物複合体。
【請求項5】
請求項1-4のいずれかに記載の抗体又はその機能性断片の軽鎖及び/又は請求項1-4のいずれかに記載の抗体又はその機能性断片の重鎖をコードする;又は
請求項1-4のいずれかに記載の抗体又はその機能性断片をコードする、
単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターであって、前記ポリヌクレオチドと、宿主細胞又は無細胞の発現系においてそれがコードするポリペプチドの発現可能の調節配列とを連結される。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項8】
1つ以上の薬物に結合された抗体又はその機能性断片を含む複合体であって、前記薬物は、細胞毒性薬物、免疫増強剤及び放射性同位体から選択され、好ましくは、前記薬物が、アウリスタチン誘導体、マイタンシノイド誘導体、カンプトテシン類似体、DNAトポイソメラーゼI阻害剤及びそれらの誘導体から選択され、最も好ましくは、前記薬物が、MMAE、MMAF、DM1、DM4、DXD及びSN38及びそれらの誘導体から選択され、それに、前記抗体が、請求項1-4のいずれかに記載の抗体又はその機能性断片である。
【請求項9】
前記薬物がリンカーによって前記抗体又はその機能性断片に結合し、前記リンカーがスルフヒドリル基又はアミノ基を介して抗体又はその機能性断片に結合し、前記リンカーが、mc-Val-Cit-pABC、mc-Val-Cit、NH2-(PEG)m-Val-CitとNH2-(PEG)m-Val-Cit-pABCからなる群から選択され、mが1-8の整数である、請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
Ab-(L-U)nの構造を有し、式中、Abが抗体又はその機能性断片を表し、Lがリンカーを表し、Uが薬物を表し、nが1-8の整数又は小数である、請求項8に記載の複合体。
【請求項11】
前記抗体又はその機能性断片が、モノクローナル抗体又は二重特異性抗体で、好ましくはヒト抗体で、最も好ましくは完全ヒト抗体である、請求項8-10のいずれかに記載の複合体。
【請求項12】
前記抗体又はその機能性断片がIgG型、好ましくはIgG1抗体である、請求項8-11のいずれかに記載の複合体。
【請求項13】
請求項8-12のいずれかに記載の複合体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項14】
腫瘍の治療又は予防のための医薬品の製造における、請求項8-12のいずれかに記載の複合体又は請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
前記腫瘍がNectin-4陽性腫瘍で、好ましくはNectin-4陽性固形腫瘍で、好ましくは前立腺がん、胃がん、食道がん、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、肺がん、卵巣がん、結腸がん、肝臓がん、頭頸部がん及び胆嚢がんからなる群から選択され、特に好ましく前立腺がん、乳がん、膀胱がん、肺がん、卵巣がんであり、最も好ましくは前立腺がん、乳がん又は膀胱がんである請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項8-14のいずれかに記載の抗体薬物複合体を含む、医薬品製品。
【請求項17】
請求項9-13のいずれかに記載の抗体-薬物複合体を収容する容器を含むキットの形態で存在する、請求項16に記載の医薬品製品。
【請求項18】
請求項8-12のいずれかに記載の複合体と抗増殖剤と組み合わの、抗腫瘍薬の製造における使用。
【請求項19】
請求項8-12のいずれかに記載の複合体と抗増殖剤を含む医薬組成物。
【請求項20】
対象における腫瘍を治療する方法であって、有効量の請求項8-12のいずれかに記載の抗体薬物複合体、請求項13に記載の医薬組成物、又は請求項16に記載の医薬品製品を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
対象における腫瘍を治療する方法であって、有効量の請求項8-12のいずれかに記載の抗体薬物複合体、請求項13に記載の医薬組成物、又は請求項16に記載の医薬品製剤と放射線とを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項22】
対象における腫瘍を治療する方法であって、有効量の請求項8-12のいずれかに記載の抗体薬物複合体、請求項13に記載の医薬組成物、又は請求項16に記載の医薬品製剤と抗増殖剤とを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項23】
トランスグルタミナーゼの存在下で、請求項1-4のいずれかに記載の抗体又はその機能性断片をリンカーを介して薬物に連結させるステップを含み、前記リンカーが抗体の内因性受容体グルタミン残基Q295位に複合する、複合体の製造方法。
【請求項24】
前記薬物が、アウリスタチン誘導体、マイタンシンアルカロイド誘導体、カンプトテシン類似体、DNAトポイソメラーゼI阻害剤及びその誘導体から選択され、好ましくはMMAE、MMAF、DM1、DM4、DXD及びSN38及びその誘導体から選択され、前記リンカーが、mc-Val-Cit-pABC、mc-Val-Cit、 NH2-(PEG)m-Val-Cit及び NH2-(PEG)m-Val-Cit-pABCから選択され、mが1-8の整数である、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の分野に関し、特にNectin-4タンパク質に対する抗体及びその複合体、並びに上記抗体及び複合体の腫瘍の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Nectin-4(Nectin Cell Adhesion M olecule4)は、PVRL4(ポリオウイルス受容体4、Poliovirus Receptor like4)としても知られ、胚及び胎盤で特異的に発現される細胞接着因子ファミリーのメンバーの1つに属するI型膜タンパク質であり、このファミリーは、4員(Nectin-1~Nectin-4)からなるCa 2+非依存性免疫グロブリンの膜貫通型の細胞接着分子である。Nectin-1~Nectin-3は、正常成人組織において広く発現される。また、Nectin-4タンパク質は、乳房組織をはじめ成人の健常組織では検出できなく、各種がん(乳がん、肺がん、卵巣がんなど)の組織では過剰発現し、62%のトリプルネガティブ乳がんで過剰発現が見られた。
【0003】
がんの発展において、Nectin-4の過剰発現は、腫瘍内血管新生を促進し、腫瘍成長を促進することが研究により明らかにされている。さらに、PI3K/AKTシグナル伝達経路は、Nectin-4媒介性がん細胞増殖の促進に関与する。さらに、Nectin-4の過剰発現は、肺がん、乳がん及び卵巣がんの予後不良と関連する。Nectin-4は、Afadinタンパク質(actin filament-binding protein)と相互作用して複合体を形成し、PI3K-AKTシグナル伝達経路を介して細胞生存を最終的に増加させ、アポトーシスを防止する。Nectin-4の高発現は、甲状腺乳頭がん(PTC)患者のリンパ節転移の危険因子である。Nectin-4の消耗は、インビトロで2つのPTC細胞株(すなわち、TPC1、KTC-1ヒト甲状腺がん細胞株)の増殖及び浸潤を有効に阻害し、アポトーシスを誘導する。ヒト食道がん組織におけるNectin-4の過剰発現は、腫瘍の大きさ、腫瘍の浸潤深さ及び患者の予後不良と密接に関連している。食道がん細胞株におけるNectin-4発現の介入は、Nectin-4発現の増加が細胞生存性、遊走、浸潤及び腫瘍形成を著しく促進する。
【0004】
膀胱がんとは、膀胱粘膜に発生する悪性腫瘍で、多くは移行上皮がんである。膀胱の側壁及び後壁で最も多く、次いで、三角領域及び上部が生じ、これは多中心で発生することがある。膀胱がんは、泌尿器系の最も一般的な腫瘍であり、男性においてより一般的である。2019年中国国家がんセンターで公表されたデータにより、膀胱がんは上位7位で8.83/10万の発病率を示し、近年上昇傾向が顕著であり、膀胱がん発病の地域、人種及び性別に差異があり、各年齢層に発症し、50~70歳の高発病年齢を示し、年齢の増加に伴って発病率も増加する。
【0005】
膀胱がんは、筋層非浸潤性腫瘍(NMIBC)及び筋層浸潤性腫瘍(MIBC)又は転移性腫瘍として臨床的に分類される。尿路上皮(移行上皮)がんは、膀胱がんの一般的なタイプであり、全症例の約90%を占める。転移性膀胱がんは一般に予後不良を伴い、第IV相膀胱がん患者の5年生存率は15%にすぎない。NMIBC及びMIBCについては、経尿道的膀胱腫瘍切除(TURBT)は標準療法であり、局所膀胱灌流化学療法及びそれに続く免疫療法(bacillus Calmette-Guerinの使用)は補助療法である。過去数十年にわたって、化学療法は、転移性がんの治療に優先療法となっており、最も一般的には、白金含有抗がん剤を利用した療法である。
【0006】
乳がんは現在、世界中で最も発生率の高い女性腫瘍であり、世界中で年あたり0.2%~8%の率で乳がんの発生率が上昇し、世界中で年あたり約140万人が乳がんと診断され、約50万人がこの病気で死亡し、乳がんは40~55歳の女性の第1位死亡原因である。乳がんの発症は、20世紀70年代末から世界的に女性の悪性腫瘍の第一位を占める。米国がん学会の公開によれば、米国では年間約20万の乳がんの新症例があり、116/10万で発病率である。我が国は女性乳がんの低発病地域であるが、近年乳がんの発病率が著しく高まっている。中国主要都市ではこの10年以来、乳がん発症率は37%増加し、死亡率は38.9%増長している。特に上海、北京、天津及び沿海地区では乳がんの高発地区となり、女性の悪性腫瘍の発症率のトップを占めるようになった。
【0007】
現在、国際的な抗腫瘍薬は、標的薬モノクローナル抗体を主とし、モノクローナル抗体は、生物医学分野の最も大きなサブ産業である。あるデータにより、2016年に、モノクローナル抗体薬物はバイオ医薬品の市場全体の43%を占めた。モノクローナル抗体は高い標的特異性、低い副作用などの特徴を有するが、単独での使用では、治療効果が比較的限定的であることを示している。従って、モノクローナル抗体薬物の大部分は化学療法との併用で使用され、モノクローナル抗体の治療効果を増強する現在の主要な経路は、抗体薬物複合体である。抗体薬物複合体は、抗がんバイオ医薬品の新規なものであり、抗体、薬物及びその両方を連結するリンカーの3つの部分からなる。モノクローナル抗体を薬物と結合させると、抗体-薬物複合体は、モノクローナル抗体の標的化を利用してがん細胞表面の受容体を特異的に認識し、受容体に結合して細胞内部に進入し、細胞内のプロテアーゼで薬物を放出しがん細胞の増殖を阻止し、死滅する。抗体薬物結合技術は、小分子薬物と生物学的タンパク質を一体化し、両者の長所を兼ね備え、薬効を大幅に向上させ、薬物副作用を減少させ、次世代の治療製品となる。
【0008】
現在の国内外でNectin-4を標的化とするプロジェクトでは、化学薬剤はなく、生物薬剤は6本のみであり、そのうちNectin-4を標的化とする抗体薬物複合体(ADC)として、唯一に上市されている医薬品は、日本Agensys社(Astellas Pharmaの子会社)と米国Seattle Genetics社が共同開発したNectin-4を標的化とするADC薬剤であり、2019年12月19日にFDAによって加速承認され、商品名Padcevであり、適応症は局所進行性又は転移性尿路上皮がんである。関連する臨床データにより、ORR44%、CR12%、中央DOR7.6カ月であり、Padcevの処置を受けた患者において、46%で重症有害反応を示し、その内、最も一般的な重症有害反応(≧3%)は、尿路感染症(6%)、蜂巣炎(5%)、高熱性好中球減少症(4%)、下痢(4%)、敗血症(3%)、急性腎損傷(3%)、呼吸困難(3%)及び発疹(3%)であり、致命的有害反応は発生率が3.2%であり、急性呼吸不全(0.8%)、誤嚥性肺炎(0.8%)、心疾患(0.8%)及び敗血症(0.8%)を含んだ。
【0009】
このように、Padcevによる有害反応は比較的に重篤であり、Nectin-4標的の研究現状に基づいて、患者は、関連する抗体薬物複合体について、未だ満足されていない治療ニーズが存在し、高効率、低副作用、適当な価格で、腫瘍患者に有益な抗腫瘍標的薬が切望されている。
【0010】
ADCの開発は、標的の正確な選択、薬物の最適化及び改善、適切なリンカーの選択、ADC薬物の有効性及び安全性の向上のために、非常に複雑な作業であり、ADC薬物開発の困難な点である。ADC薬物設計について、抗体、リンカー及び薬物を全体として包括的な考慮に基づいて、腫瘍適応症及び薬物作用の標的を明らかにし、ADC薬物の作用機序を十分かつ徹底的に研究し、最終的にADC薬物による腫瘍細胞の効果的な殺傷を達成すると同時に、患者の生活の質を向上させる。
【0011】
なお、ADCの成功の鍵となる1つは、薬物活性を維持しながら腫瘍細胞に薬物を送達するのに適した抗体を選択することである。ADCの調製に使用される抗体は、腫瘍中の抗原陽性細胞に特異的に結合するだけでなく、抗原-抗体複合体がADCの内部移行に役出す能力を持つ特性を有する。抗体のスクリーニングには少なくとも、特異的結合、内部移行及び内部移行後の抗体の定位との3つの要因を考慮する必要があり、それに、抗体の親和性は内部移行速度との明確な関連性を有しない(Laurent Ducry著、抗体薬物複合体、科学出版社、36-37頁)。したがって、極めて高精度の「定位手段」として機能する抗体は、標的細胞に特異的に結合することができ、「エンドサイトーシス」及び定位を効果的に媒介することが抗体薬物複合体の特異性及び毒性にとって重要な物性である。
【0012】
本発明者らは、従来技術の欠点に基づき、従来の薬物のリンカーと小分子薬物の結合が不安定であるという問題点に着目し、NH2 -PEG3 -Val-Citをリンカーとして用い、酵素媒介性の部位橋掛けの結合手法を用いてヒト抗体をリンカーを介して小分子薬物(例えばMMAE)に結合させ、それにより得られたADC薬物は、Nectin-4高発現がん細胞、特に乳がん、膀胱がんなどの腫瘍に対して極めて強力な殺滅作用を有する。具体的には、まず、エンドサイトーシス実験の結果により、本発明により得られた抗Nectin-4抗体薬物複合体は、対照Padcevに対してより良好なエンドサイトーシス効果を有し、特異的結合、高効率の内在化及び正確な細胞定位を同時に達成することができ、抗体薬物複合体の特異性を向上させるとともにその毒性を低下させ、次いでインビボ実験により、抗体薬物複合体をNectin-4陽性異種移植腫瘍を有するヌードマウスに静脈内投与すると、腫瘍成長阻害をもたらし、1mg/kgと低い単回用量の静脈内投与で顕著な治療効果が観察され、その全体的な治療効果は対照Padcevよりも著しく優れ、最後に、Padcevは、サルの毒性実験において2回目の投与で6 mg/kgで重度の副作用を示し、致死的であることを示した。対照的に、本発明によって得られた抗体薬物複合体は、9 mg/kgの高用量で2回投与しても、実質的な有害反応がなく、治療ウインドウがより広く、より良好な薬物形成性を示し、本発明で提供された抗体薬物複合体は、予想外の技術的効果を達成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、Nectin-4タンパク質及び/又はNectin-4タンパク質ポリペプチド断片に結合する抗体、機能性断片(例えば、抗原結合断片)及び抗体薬物複合体(ADC)を提供する。
【0014】
一の実施形態において、本発明は、重鎖と軽鎖を含む、Nectin-4に特異的に結合する抗体又は抗体機能性断片を提供し、その内、
(i) 前記重鎖が3つのCDR領域を含み、少なくとも1つのCDR領域のアミノ酸配列が配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3に示されるアミノ酸配列を有し、又はそれと少なくとも80%(好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%)の配列同一性を持つアミノ酸配列を有する;及び/又は
(ii) 前記軽鎖は3つのCDR領域を含み、少なくとも1つのCDR領域のアミノ酸配列が配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6に示されるアミノ酸配列を有し、又はそれと少なくとも80%(好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%)の配列同一性を持つアミノ酸配列を有する。
【0015】
一部の特定の実施形態において、前記抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、
(i) 前記重鎖が、それぞれCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域である3つのCDR領域を含み、前記CDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域がそれぞれ、配列番号1、配列番号2及び配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する;及び/又は
(ii) 前記軽鎖は、それぞれCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域である3つのCDR領域を含み、前記CDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域がそれぞれ、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。
【0016】
一部の特定の実施形態において、前記抗体は、重鎖可変領域の配列が、配列番号9に示されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%(好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%)の配列同一性を有する配列であり;軽鎖可変領域の配列が、配列番号10-配列番号12に示されるアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%(好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%)の配列同一性を有する配列から選択される。
【0017】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体又はその機能性断片は単離されているものである。
【0018】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。
【0019】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体又はその機能性断片は、ヒト抗体、好ましくは完全ヒト抗体である。
【0020】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体は、二重特異性抗体である。
【0021】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体又はその機能性断片は、ADCC活性を有する。
【0022】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体又はその機能性断片は、CDC活性を有する。
【0023】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体又はその機能性断片は、Nectin-1、Nectin-2、又はNectin-3に実質的に結合せずに、Nectin-4に特異的に結合する。
【0024】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体又はその機能性断片は、二重特異性抗体、Fab断片、Fab '断片、F(ab)'2 、scFv、dsFv及びシングルドメイン抗体を含み、前記scFvタンパク質は、リンカーによって免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域が結合された融合タンパク質であり、前記dsFvは、VH及びVLの保存フレームワーク領域の特定の部位にシステインが導入され、それによってジスルフィド結合がdsFvの構造を安定化した構造である。
【0025】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体又はその機能性断片は、IgM、IgD、IgG、IgA又はIgEであり、IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4との4つのサブタイプを有し、好ましくはIgG1抗体を有する。
【0026】
一部の特定の実施形態において、抗体の重鎖定常領域配列は、以下のように示される。
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号16)。
【0027】
一部の特定の実施形態において、抗体の軽鎖定常領域配列は、以下のように示される。
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号17)。
【0028】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体又はその機能性断片は、Nectin-4を過剰に発現するがんの治療又は予防に有用である。
【0029】
一部の実施形態において、Nectin-4に結合する能力を有する抗体又はその機能性断片は、生細胞の表面上に存在するNectin-4の天然エピトープに結合する。ある実施形態において、Nectin-4に結合する能力を有する抗体又はその機能性断片は、Nectin-4の細胞外ドメインに結合する。ある実施形態において、Nectin-4に結合する能力を有する抗体又はその機能性断片は、Nectin-4の第1の細胞外領域に結合する。ある実施形態において、Nectin-4に結合する能力を有する抗体又はその機能性断片は、Nectin-4の1-147aaドメインに結合する。ある実施形態において、Nectin-4に結合する能力を有する抗体又はその機能性断片は、Nectin-4の32-142aaドメインに結合する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0031】
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明の抗体又はその機能性断片の軽鎖をコードするポリヌクレオチドと、本発明の抗体又はその機能性断片の重鎖をコードするポリヌクレオチドとを含む、単離されたポリヌクレオチドの組み合わせを提供する。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、ポリヌクレオチドと、宿主細胞又は無細胞の発現系においてそれがコードするポリペプチドの発現可能の調節配列とを連結された、本発明のポリヌクレオチド又は本発明のポリヌクレオチドの組み合わせを含む発現ベクターを提供する。
【0033】
本発明の一部の実施形態において、前記宿主細胞は、原核宿主細胞、真核宿主細胞、又はバクテリオファージであってもよい。前記原核宿主細胞は、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Streptomyces又はAspergillus chimaericusであってもよい。前記真核宿主細胞は、Pasteurella、Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母、Xylaria等の真菌、Meadow slime等の昆虫細胞、タバコ等の植物細胞、BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、ミエローマ細胞等の哺乳類細胞等が挙げられる。ある実施形態において、本発明の宿主細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはBHK細胞、CHO細胞、NSO細胞又はCOS細胞である。
【0034】
別の態様において、本発明は、1つ以上の薬物に結合した本発明の抗体又はその機能性断片を含む抗体薬物複合体を提供し、好ましくは、前記薬物は、細胞毒性薬物(例えば、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、アルカロイド)、免疫賦活薬又は放射性同位元素である。より好ましくは、前記薬物は、アウリスタチン誘導体、メイタンシノイド(例えば、アンサマイトシン(Ansamitocin)又はメルタンシン(Mertansine))、ドラスタチン(dolastatin)及びその誘導体)、カンプトテシン類似体、DNAトポイソメラーゼI阻害剤及びその誘導体からなる群から選択され、最も好ましくは、薬物は、MMAE(Monomethyl auristatin E)及びMMAF(Monomethyl auristatin F)から選択される。
【0035】
一部の実施形態において、Nectin-4に結合する能力を有する抗体又はその機能性断片は、リンカーを介して薬物部分に共有結合している。一部の実施形態において、接合部は、切断可能な接合部である。一部の実施形態において、接合部は、細胞内条件下で切断可能である。ある実施形態において、接合部は、5.5未満のpHで加水分解可能である。一部の実施形態において、接合部は、細胞内プロテアーゼによって切断可能である。ある実施形態において、接合部は、組織プロテアーゼ切断可能な接合部である。ある実施形態において、接合部は、ジペプチド、テトラペプチドを含む。一部の実施形態において、ジペプチドは、バリン(Val)-シトルリン(Cit)である。一部の実施形態において、抗体は、抗体のシステインのスルフヒドリル基を介してリンカーに結合される。ある実施形態において、抗体は、抗体のアミノ基(特に、グルタミン残基のアミノ基)を介してリンカーに結合している。
【0036】
一部の特定の実施形態において、本発明の抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)nを有し、式中、Abは、Nectin-4を標的化とするモノクローナル抗体を表し、Lは、NH2-(PEG)m-Val-Cit、NH2-(PEG)m-Val-Cit-pABC、mc-Val-Cit-pABC、Val-Cit-pABC、Val-Cit-pAB又はVal-Citから選択されるリンカーであり、Uは、DM1、DM4、MMAE、MMAF、DXD及びSN38から選択される薬物であり、mは、PEGの数を表し、1-8の整数、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、より好ましくは3、4、5、6、最も好ましくは3であり、nは、薬物抗体結合比DARを表し、1-8の整数、好ましくは2、4、6、8、より好ましくは2、4、最も好ましくは2整数である。一部の特定の実施形態において、nは、1-8の小数であり、式中、mc-Val-Cit-pABCは、maleimidocaproyl-valine-citrulline- p-aminocarbamateとの総称があり、Val-Cit-pABは、valine-citrulline-p-aminobenzyloxycarbonylとの総称がある。
【0037】
一部の特定の実施形態において、本発明は、Nectin-4に特異的に結合する抗体薬物複合体(ADC)に関し、このうち、抗体又はその機能性断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域の配列は、配列番号9に示されるアミノ酸配列であり、前記軽鎖可変領域の配列は、配列番号10-12に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列である。
【0038】
一部の特定の実施形態において、前記抗体又はその機能性断片の重鎖可変領域の配列は、配列番号9に示されるアミノ酸配列であり、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列が、配列番号10-12に示されるアミノ酸配列であり、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列から選択される。
【0039】
一部の特定の実施形態において、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0040】
一部の特定の実施形態において、前記抗体はヒト抗体である。
【0041】
一部の特定の実施形態において、本発明は、前記抗体又はその機能性断片の軽鎖及び/又は前記抗体又はその機能性断片の重鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドにかかる、又は、又は前記抗体又はその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドにかかる。
【0042】
一部の特定の実施形態において、本発明は、前記ポリヌクレオチドと、宿主細胞又は無細胞の発現系においてそれがコードするポリペプチドの発現可能の調節配列とを連結される、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターにかかる。
【0043】
一部の特定の実施形態において、本発明は、前記発現ベクターを含む宿主細胞にかかる。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、本発明の抗体薬物複合体と、薬学的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤とを含む医薬品製剤を提供する。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、本発明の抗体薬物複合体を含む医薬品製品(medical preparation)を提供する。一部の実施形態において、医薬品製品は、抗体薬物複合体を収容する容器を含むキットの形態で存在する。一部の実施形態において、医薬品製剤は、がん(特にNectin-4を発現するがん)を治療または予防する方法において前記製品を使用するための印刷された取扱書(printed instructions)をさらに含む。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、Nectin-4を発現する細胞に関連する腫瘍の有効な治療及び/又は予防のための抗体薬物複合体を提供する。
【0047】
別の実施形態において、本発明は、腫瘍治療のための医薬品の製造における、抗増殖剤と前記抗体薬物複合体との使用を提供する。
【0048】
別の実施形態において、本発明は、前述の抗体薬物複合体及び抗増殖剤を含む医薬組成物を提供する。
【0049】
一部の特定の実施形態において、前記抗増殖剤は、抗体、抗体薬物複合体、融合タンパク質であってもよい。
【0050】
別の実施形態において、本発明は、対象における腫瘍を治療する方法であって、前記抗体薬物複合体又は前記医薬組成物又は前記医薬品製品を前記対象に投与することを含む方法に関する。
【0051】
一部の実施形態において、本発明は、対象における腫瘍を治療する方法であって、有効量の抗体薬物複合体又は前記医薬組成物又は前記医薬品製品と放射線とを対象に投与することを含む方法に関する。
【0052】
一部の実施形態において、本発明は、対象における腫瘍を治療する方法であって、有効量の抗体薬物複合体又は前記医薬組成物又は前記医薬品製品と抗増殖剤を対象に投与することを含む方法に関する。
【0053】
一部の実施形態において、本発明は、がん、好ましくはNectin-4陽性腫瘍の治療に使用するための、前述の抗体、抗体薬物複合体と医薬組成物に関する。
【0054】
一部の実施形態において、(がんを含む)上記腫瘍は、血液腫瘍又は固形腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0055】
一部の実施形態において、(がんを含む)上記腫瘍は、血液腫瘍であり、好ましくはリンパ腫又は白血病であり、骨髄腫、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫T細胞リンパ腫、皮膚リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、不活性非ホジキンリンパ腫、形質細胞腫、慢性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、血液腫瘍は再発性又は難治性である。
【0056】
一部の実施形態において、(がんを含む)上記腫瘍は、固形腫瘍であり、呼吸器系腫瘍、消化管腫瘍、泌尿器腫瘍、男性臓器腫瘍、女性臓器腫瘍、皮膚がん、内皮細胞腫瘍、脳腫瘍、神経系腫瘍、内分泌臓器腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0057】
一部の実施形態において、前記呼吸器系腫瘍は、肺がん、鼻咽頭がん及び喉頭がんを含むが、これらに限定されない。
【0058】
一部の実施形態において、前記消化管腫瘍は、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がんを含むが、これらに限定されない。
【0059】
一部の実施形態において、前記泌尿器腫瘍は、腎臓がん、腎盂尿管がん、膀胱がん、尿道がんを含むが、これらに限定されない。
【0060】
一部の実施形態において、前記男性器官腫瘍は、陰茎がん、前立腺がん、又は精巣がんを含むが、これらに限定されない。
【0061】
一部の実施形態において、前記女性器腫瘍は、乳がん、外陰がん、膣がん、子宮頸がん、子宮体がん、又は卵巣がんを含むが、これらに限定されない。
【0062】
一部の実施形態において、前記神経系腫瘍は、星状膠腫、乏突起膠腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫を含むが、これらに限定されない。
【0063】
一部の実施形態において、前記脳腫瘍は、膠芽腫、神経細胞腫、胚様葉間葉系腫瘍、間質系腫瘍、上皮系腫瘍、奇形腫、松果体腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0064】
一部の実施形態において、前記皮膚がんは、皮膚黒色腫又は非黒色腫皮膚がんを含むが、これらに限定されない。
【0065】
一部の実施形態において、前記腫瘍は固形腫瘍であり、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、胸部腫瘍、子宮内膜がん、食道扁平上皮がん、胃がん、頭部腫瘍、膵臓がん、胆管がん、大腸がん、眼がん、頭頸部扁平上皮がん、尿路上皮がん、腎臓がん、肝臓がん、リンパ節がん、肺がん、口腔がん、頸部腫瘍、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、喉頭・子宮体がん、黒色腫、唾液腺がん、線維肉腫、軟部肉腫、骨肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、上記のがんは再発性又は難治性である。
【0066】
一部の実施形態において、前記乳がんは、乳管がん、小葉がん、髄性がん、神経膠腫、管状がん、炎症性乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を含む。
【0067】
一部の実施形態において、前記卵巣がんは、卵巣における腺がんと卵巣から腹腔内に遊走する腺がんなどの上皮性卵巣腫瘍を含む。
【0068】
一部の実施形態において、前記白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、骨髄異形成、骨髄増殖性障害、NK細胞白血病(例えば、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、肥満細胞症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、多発性骨髄腫(MM)及び骨髄異形成症候群(MDS)を含む。
【0069】
一部の実施形態において、前記膵臓がんは、膵臓の腺房細胞腺がん、膵臓の管細胞腺がん、又は第IV相膵臓がんである。
【0070】
一部の実施形態において、前記肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)及び小細胞肺がん(SCLC)を含み、一部の実施形態において、前記非小細胞肺がん(NSCLC)は、扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、前記肺がんは再発性であり、一部の実施形態において、前記肺がんは再発性扁平上皮細胞肺がん又は第IV(進行性)扁平上皮細胞肺がんである。
【0071】
一部の実施形態において、前記前立腺がんは、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】Nectin-4タンパク質の構造の模式図を示す。
図2】Nectin-4-ADC(SWY2001-Ab1-LND1002)構造の模式図を示す。式中、LND1002はリンカー(Linker) +薬物分子(Drug)の部分を表し、丸印部分は、L&Dにおけるリンカーと抗体におけるアミド結合を表す。この図に示されるNectin-4 ADCは、部位特異的抗体薬物複合体であり、各分子において、リンカー(NH2-PEG3-Val-Cit)を介して1つの抗Nectin-4モノクローナル抗体は各重鎖のQ295位のアミノ酸(Kabat)でMMAE誘導体1分子に結合して、抗体とリンカーとの結合は、安定なアミド結合(ヘテロ-ペプチド結合)であり、薬物抗体結合比(DAR)の平均は2.0であった。
図3】Nectin-4-ADC(SWY2001-Ab1-VC MMAE)構造の模式図を示す。
図4】pcDNA3.1マップを示す。
図5】ヒト抗体SWY2001-Ab1 DSCマップを示す。
図6】Nectin-4 ADC(SWY2001-Ab1-LND1002)修飾率同定マップを示す。
図7A】SWY2001-Ab1-LND1002 DAR値確定のマップを示す。
図7B】SWY2001-Ab1-VC-MMAE DAR値確定のマップを示す。
図8】SK-BR-3細胞におけるSWY2001-Ab1-LND1002のエンドサイトーシス効果実験を示す。
図9】T47D細胞におけるSWY2001-Ab1-LND1002のエンドサイトーシス効果実験を示す。
図10】マウスPC3-Nectin-4安定化株に対するSWY2001-Ab1-LND1002の腫瘍阻害in vivo実験を示す。注:m pk = mg/kg
図11】マウスMDA-MB-468腫瘍に対するSWY2001-Ab1-LND1002の腫瘍阻害in vivo実験を示す。
図12】マウスHT-1376腫瘍に対するSWY2001-Ab1-LND1002の腫瘍阻害in vivo実験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
定義:
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学用語は、当業者によって理解される同じ意味を有する。本分野の定義及び用語について、当業者は具体的に分子生物学カレント・プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel))に参考できる。アミノ酸残基の略語は、本分野で用いられる、20つの通常L-アミノ酸のうちの1つを表記するための3文字及び/又は1文字の標準コードである。
【0074】
本発明において数値範囲とパラメーター近似値は広い範囲で記載されているが、具体的な実施例に示す全ての数値はできるだけ正確に記載してある。しかし、いかなる数値も元来、それぞれの測定における標準偏差に起因する一定の誤差を含む。また、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に含まれる全てかつ任意の部分範囲をも包含することが理解されるべきである。例えば、本明細書中に記載された場合、「1-10」の範囲は最小値1と最大値10の間(端点も含む)に含まれる全てかつ任意の部分範囲をも包含する、つまり、最小値1あるいはこれを超える数値から始まる全ての部分範囲、例えば1-6.1及び最大10あるいはこれ未満の数値で終わる全ての部分範囲、例えば5.5-10などである。その他、「本明細書に取り込む」と述べられている参考文献は全て、その全体が取り込まれることが理解される。
【0075】
本明細書において用いられる、用語「医薬組成物」、「組み合わせ薬物」、「薬物組み合わせ」は、互換的に用いられ得、これは、ある種の特定の目的を達成するため、少なくとも1種の薬物及び場合により薬学的に許容し得る担体又はアジュバントを一緒に組み合わせることによる、組み合わせを意味する。ある実施態様において、医薬組成物は、一緒に働くことにより、本発明の目的を達成することができる限り、時間及び/又は空間レベルで分けられた組み合わせを含む。例えば、医薬組成物(例えば、抗体、核酸分子、核酸分子組み合わせ、及び/又は複合体)において含有される成分は、対象に全体的又は別々に投与することができる。医薬組成物において含有される成分が、対象に別々に投与されるとき、成分は、同時に又は連続して投与することができる。好ましくは、薬学的に許容し得る担体は、水、緩衝水溶液、等張の食塩水、例えばPBS(リン酸緩衝溶液)、グルコース、マンニトール、デキストロース、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセリン、ヒアルロン酸、エタノール又はポリアルキレングリコール、例えばポリ(プロピレングリコール)、トリグリセリドなどである。用いられる薬学的に許容し得る担体の種類は、本発明にかかる組成物が、経口投与、経鼻投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与又は静脈内投与のため製剤化されるかどうかに特に依存する。本発明にかかる組成物は、湿潤剤、乳化剤又は緩衝材料を添加物として含んでもよい。
【0076】
本発明にかかる医薬組成物、ワクチン又は医薬製剤は、任意の適当な経路、例えば、経口投与、経鼻投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与又は静脈内投与により投与することができる。
【0077】
本明細書において用いられる、「治療上有効量」又は「有効量」は、投与される対象に対する恩恵を示すのに十分な用量を指す。投与の実際の用量、並びに速度及び期間は、処置される対象の自己の状態及び重症度のレベルに依存して変動する。処置の指示(例えば、用量についての決定など)は、最終的には、一般開業医及び他の医師の責任であり、決定は、上記要因に基づき成される。通常、決定は、処置される疾患、患者の個々の状態、デリバリー部位、投与の方法及び医師により知られた任意の他の要因を考慮して成される。
【0078】
本明細書において用いられる、用語「対象」は、哺乳動物、例えば、ヒトを意味し、他の動物、例えば、野生動物(例えば、サギ、コウノトリ、ツルなど)、家畜(例えば、カモ、ガチョウなど)又は実験動物(例えば、チンパンジー、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ウッドチャック、ジリスなど)であってもよい。
【0079】
用語「抗体」は、インタクト抗体及びその機能性断片を意味する。「全長抗体」は、ジスルフィド結合により間で結び付けられた、少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含むタンパク質を意味する。それぞれの重鎖は、1つの重鎖可変領域(VHと略される)及び1つの重鎖定常領域を含有する。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3との3つのドメイン(domain)を含有する。それぞれの軽鎖は、1つの軽鎖可変領域(VLと略される)及び1つの軽鎖定常領域を含有する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含有する。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性を有する種々の領域に更に細分され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存される種々の領域が散在し得る。それぞれのVH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列された、3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖のこれらの可変領域は、抗原と相互作用するための結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を介し得る。キメラ又はヒト抗体はまた、本発明にかかる抗体に包含される。本発明のCDRコード化パターンはIMGTである。
【0080】
抗体の軽鎖と重鎖の遺伝子の合成のために、通常の遺伝子工学的手法を用いることができ、例えば、陳建軍ら(陳建軍et al,細胞分子免疫学,1997年,第3号)に開示されている方法を参照することができる。
【0081】
用語「ヒト抗体」は、ヒトからもたらされる抗体由来のCDR領域を含む抗体を指し、この抗体分子の他の部分は、ヒト抗体の1(又は数)種類に由来する。更に、結合親和性を保持するという目的のために、フレームワーク領域(FR)セグメントにおける幾つかの残基を、修飾することができる。本発明にかかるヒト抗体又はその断片は、当業者により知られたそれらの技術により調製され得る。
【0082】
用語「キメラ抗体」は、可変領域の配列がある種に由来し、一方、定常領域の配列が別の種に由来する、例えば、可変領域の配列は、マウス抗体に由来し、一方、定常領域の配列はヒト抗体に由来する、抗体を指す。本発明にかかるキメラ抗体またはその断片は、遺伝子組換え技術を使用することによって調製することができる。例えば、キメラ抗体は、プロモーター並びに本発明にかかる非ヒト(特に、マウス)モノクローナル抗体の可変領域をコードする配列及びヒト抗体の定常領域をコードする配列を含む組み換えDNAをクローニングすることにより、生産され得る。この組み換え遺伝子によりコードされる本発明のキメラ抗体は、例えば、マウスとヒトのキメラであり、これは、マウスDNAに由来する可変領域により決定される特異性を有し、ヒトDNAに由来する定常領域により決定されるそのアイソタイプを有する。
【0083】
用語「モノクローナル抗体」は、1つの分子構造を有する抗体分子調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0084】
用語「二重特異性抗体」は、それぞれ2種類の抗原又は抗原エピトープに結合することができるものであり、これには、第1の抗原に特異的に結合可能な抗体の軽鎖と重鎖と、第2の抗原に特異的に結合可能な抗体の軽鎖と重鎖とが含まれる。
【0085】
本明細書において用いられる、用語「機能的断片」は、抗体断片、例えば、Fv、scFv(scは1本鎖を示す)、Fab、F(ab')2、Fab'、scFv-Fc断片若しくは二重特異性抗体(diabody)、又は化学修飾により、又はリポソームに組み込まれることにより、半減期を増大することができる任意の断片を詳細には意味する。当該化学修飾は、例えば、ポリ(アルキレン)グリコール、例えば、ポリエチレングリコール(「ポリエチレングリコール化」)(Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab')2-PEG又はFab'-PEGのポリエチレングリコール化断片と呼ばれ、「PEG」は、ポリエチレングリコールを示す)を加えることを含み、当該断片は、Nectin-4結合活性を有する。好ましくは、機能的断片は、それが由来する抗体の重鎖又は軽鎖可変鎖由来の部分的配列から構成されるか、又は含み、部分的配列は、それが由来する抗体と同一の結合特異性及び十分な親和性を保持するのに十分である。この機能的断片は、それが由来する抗体配列の少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは、10、15、25、50及び100個の連続するアミノ酸を含有する。
【0086】
典型的には、モノクローナル抗体又はその機能的断片、特に、マウス由来のモノクローナル抗体又はその機能的断片を調製する目的のため、マニュアル「抗体」(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor NY,pp.726,1988)において詳細に記載される技術、又はKohler及びMilstein(Nature,256:495-497,1975)により記載される、ハイブリドーマ細胞から調製する技術が、参照され得る。
【0087】
用語「抗体薬物複合体」(ADC)または「複合体」は、本明細書で使用される場合、一般に、抗体またはその抗原結合性断片と、化学療法剤、毒素、免疫療法剤及びイメージングプローブなどの別の作用剤とが連結されていることを指す。連結は、共有結合であってもよく、または静電力などによる非共有結合相互作用であってもよい。当技術分野で公知であり、本明細書に記載されている種々のリンカーを、抗体薬物複合体を形成するために使用することができる。加えて、抗体薬物複合体は、免疫コンジュゲートをコードするポリヌクレオチドから発現させることができる融合タンパク質の形態で提供することができる。本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」は、元々は別々のタンパク質(ペプチド及びポリペプチドを含む)をコード化していた2つまたはそれよりも多くの遺伝子または遺伝子断片を接合することにより生産されるタンパク質を指す。融合遺伝子の翻訳は、元のタンパク質の各々に由来する機能的特性を有する単一のタンパク質をもたらす。
【0088】
「複合体」においては、2つまたはそれよりも多くの化合物が共に連結されている。ある特定の実施形態では、各化合物の特性の少なくとも一部が、複合体において維持される。連結は、共有結合または非共有結合により達成することができる。好ましくは、複合体の化合物は、共有結合により連結されている。複合体の異なる化合物は、化合物の原子間の1つまたは複数の共有結合を介して互いに直接結合されていてもよい。その代わりに、化合物は、リンカー分子などの化学部分を介して互いに結合されていてもよく、リンカーは化合物の原子に共有結合で連結されている。複合体が2つよりも多くの化合物で構成されている場合、そうした化合物は、例えば、1つが次の化合物に付着されているか、または幾つかの化合物が各々1つの中央化合物に付着されていてもよい鎖コンフォメーションで連結されていてもよい。
【0089】
本明細書に記載の細胞毒性薬物は、特に、細胞の発現活性、細胞機能を阻害又は阻止し、かつ/又は細胞破壊をもたらす物質を指す。例としては、アウリスタチン誘導体(例えば、MMAE、MMAF)、オーレオバシジン(chlortetracycline)、マイタンシノイド(maytansinoid)及びその誘導体(DM0、DM1、DM2、DM3、DM4など)、リシン(Ricin)、コブレスタチン(combrestatin)、アンフィシン(Ansamitocin)、カルベニシン(calicheamicin)、デュオカルマイシン(Duocarmycin)、ゲサトキシンペプチド(dolastatin)及びその誘導体、DNAトポイソメラーゼ阻害剤及びその誘導体(例えば、エトポシドEtoposide、テニポシドteniposide、Dxd、SN38)、アマニチン(Amanitin)、cc1065及びその類似体、マイトマイシンC(Mitomycin C)、カンプトテシン(Camptothecin、CPT)及びその類似体、ビンクリスチン(Vincristine)、ビンブラスチン(Vinblastine)、コルヒチン(colchicine)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アクチノマイシン(Actinomycins)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)、シュードモナス外毒素A(Pseudomonas exotoxin)、アブリン(Abrin)、ゲリン(Gelonin)、ミノマイシン(Micronomicin)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
用語「免疫増強剤」は、例えば、TLRアゴニスト、STINGアゴニスト、非特異的免疫を活性化し、体の免疫応答を増強することができる物質を指す。
【0091】
放射性同位体には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212又はBi213、P32、Pb212、Luが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
用語「リンカー」は、ある化合物の1つの構造的要素を同じ化合物の1以上の他の構造的要素に連結する当該化合物の構造的要素を意味する。リンカーは、切断不可能なリンカー(non-cleavable linker)であってもよい。適切な切断不可能なリンカーとしては、NH2-R-X、NH2NH-R-X和NH2-O-R-X(式中、Rはアルキル又はポリエチレングリコール基(PEGともいう)であり、Xは活性部分である)が挙げられ、これらに限定されない。ポリエチレングリコール基又はPEG基は、一般式-(CH2CH2O)n(式中、nは少なくとも1の整数)を有する。一部の実施形態において、nは、2、4、6、8、10、12、16、20又は24のいずれかである。
【0093】
切断可能リンカーは、Lys-Phe-X、Lys-Val-Cit-PABC-X、NH2-(CH2CH2O)n -Val-Cit-pABC-XとNH2-(CH2CH2O)n-(Val-Cit-PABC-X)2(式中、Xは活性部分であり、nは少なくとも1の整数、例えば2、4、6、8、10、12、16、20又は24のいずれか)を含み、これらに限定されない。PABCは、p-アミノベンジルオキシカルボニルを意味する。
【0094】
だたの一例として、リンカーは、 NH2-(PEG)m-Val-Cit、NH2-(PEG)m-Val-Cit-pABC、mc-Val-Cit-pABC、Val-Cit-pABC又はVal-Citから選択されてもよく、mは、PEGの数を表し、1-8の整数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8である。
【0095】
用語「内因性グルタミン」は、ヒトアイソタイプの全長IgG抗体において、重鎖の位置295位に保存されたグルタミン残基を有すし(Q295)、このグルタミン残基は、N-グリコシル化部位(N297)に近接している。
【実施例
【0096】
装置と実験材料:
【表1】
【0097】
実施例1:抗体の生産とヒト化の操作
Nectin-4マウス抗体は、WO2022051591A2に従って調製された。簡単な工程は、以下の通りであった:
動物(BALB/cマウス)を、アジュバント(フロイントアジュバント)を含有するヒトNectin-4-His融合タンパク質で腹腔内注射により免疫化した。動物に、適切な力価が生じるまで2週間ごとに追加免疫を誘導し続けた。各追加免疫後に動物を採血し、力価をELISA及びFACSにより検出した。最後の免疫化の4日後に、適切な力価を有する動物の脾臓を採取し、単一細胞懸濁液を調製した。細胞を、電気融合を用いてSP2/0マウス骨髄腫細胞と融合させた。融合細胞をハイブリドーマ細胞選択剤であるチミジン、ヒポキサンチン及びアミノプテリン(HAT)を含有する培地に再懸濁し、96ウェルプレートに播種して培養した。
【0098】
7-10日の培養後、培養上清を回収し、ELISA又はFACS法により、ヒトNectin-4タンパク質に結合したクローンを検出し、マウスNectin-4タンパク質に結合するかどうかを確認した。ハイブリドーマ細胞は、新鮮なHAT含有培地を添加した後、培養を続けた。2日間後、1回目のスクリーニングで得られた培養上清を採取し、抗体の機能活性の測定を行った。その後、選択した陽性クローンに対して、さらにサブクローニングした。サブクローニングの成功後、従来の抗体精製方法によりこれらの抗体を精製すると同時に、所望のクローンの一部について抗体の可変領域の配列決定を行った。
【0099】
動物で免疫化し、スクリーニングした後に得られたNectin-4マウス抗体をヒト化操作に供した。GenScriptにヒト化操作を委託して、SWY2001-Ab1、SWY2001-Ab2、SWY2001-Ab3の3つのヒト抗体を得た。その配列を表2に示し、ヒト化工程は以下の通りであった。
【0100】
1.1キメラ抗体発現精製
ヒトIgG1から選択された定常領域でマウス抗体に基づいて修飾されたキメラ抗体の可変領域を、pcDNA3.4(IgG1,kappa)ベクターに挿入して、インタクトな重鎖及び軽鎖プラスミドを構築した。HEK293細胞にプラスミドをトランスフェクトし、上清を採取した後、protein A磁気ビーズを用いて精製し、全長抗体を得た。溶液を透析脱塩によりPBSに置換した。抗体の濃度及び純度をそれぞれOD280及びSDS-PAGEゲル電気泳動により検出した。次に、その親和性は、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance、SPR)技術によって検出した。
【0101】
1.2キメラ抗体結合活性及び親和性検出
キメラ抗体の親和性検出は、主に、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance、SPR)技術を用いたBiacore機器によって決定される。protein Aチップを用いてFc断片を捕捉することによって結合抗体に結合させ、抗原を移動相として用いた。得られた検出データを、機器によるソフトウェア・フィットから対応する結合定数(ka)及び解離定数(pk)を決定し、対応する平衡定数(KD)を計算した。
【0102】
1.3ヒト抗体の復帰突然変異の設計
ヒト抗体の軽鎖構造及び重鎖構造の核領域の複数のアミノ酸部位で復帰突然変異及び組み合わせを行った。対応する軽鎖遺伝子は、GenScript(登録商標)によって合成した。
【0103】
1.4復帰突然変異ヒト抗体の生産及び親和性の順位
重鎖と軽鎖のプラスミドを得た後、対応する軽鎖と重鎖の組み合わせを合わせ、対合し、4mL系でトランスフェクション発現を行った。発現上清を得た後、SPR技術を用いて、親和性を検出し、上清中の抗体を、protein Aチップを用いて抗体Fc断片を捕捉することにより捕捉し、センサーチップ上に固定化した。分析物抗原は移動相として使用した。表面再生は、別の抗体上清の注入前に行い、全ての抗体が分析されるまでこのプロセスを繰り返した。Biacore解析ソフトウェアを使用して、1:1相互作用モデルを用いて実験データをフィッティングした。抗体の結合解離速度を取得し、抗体の親和性を解離速度定数(pk)によって順序付けた。配列結果から、上位3種の親和性のクローンを候補抗体として選択し、上記の手順により、SWY2001-Ab1、SWY2001-Ab2及びSWY2001-Ab3とそれぞれ命名された3つのヒト抗体を得た。
【0104】
1.5候補抗体の構築、発現及び親和性アッセイ
3株の候補抗体の遺伝子をそれぞれ、ベクターpcDNA3.4(IgG1、kappa)に挿入し、完全な重鎖及び軽鎖抗体プラスミドを構築した。次に、Expi293F細胞に軽鎖と重鎖プラスミドを同時トランスフェクトし、上清を採取した後、protein A磁気ビーズで精製して、完全長抗体を得た。溶液を透析脱塩によりPBSに置換し、抗体の濃度と純度をそれぞれOD280及びSDS-PAGEゲル電気泳動により検出した。次いで、その親和性を、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance、SPR)技術よって検出した。
【0105】

【表2-1】
【表2-2】
【0106】
実施例2:発現ベクターの構築及びヒト抗体の発現
Nectin-4ヒト抗体重鎖、軽鎖DNA配列は、Biointron Tazhouにより合成され、発現ベクターpcDNA3.1は、Biointron Tazhouにより提供された(図4参照)。簡単な工程は、以下の通りであった:
【0107】
重鎖の設計及び合成:
人工的に合成した重鎖をNectin-4-HCと名付けた。5'末端にHindIIIエンドヌクレアーゼ部位、3'末端にEcoRIエンドヌクレアーゼ部位を導入し、さらに5'末端のHindIIIエンドヌクレアーゼ部位の後にコザック配列及びシグナルペプチド配列(19アミノ酸) MELGLCWVFLVAILEGVQC(配列番号14)を導入した。重鎖の発現カセットは以下のように設計された。
HindIII-Kozak配列-シグナルペプチド-Nectin-4-HC-終止コドン-EcoRI
【0108】
軽鎖の設計及び合成:
人工的に合成した軽鎖をNectin-4-LCと名付けた。合成の際、軽鎖の5'末端にHindIIIエンドヌクレアーゼ部位、3'末端にEcoRIエンドヌクレアーゼ部位を導入し、それに、5'末端のHindIIIエンドヌクレアーゼ部位の後にコザック配列とシグナルペプチド配列(22アミノ酸):MDMRVPAQLLGLLLLWFPGSRC(配列番号15)を導入した。軽鎖の発現カセットは以下のように設計された。
HindIII-Kozak配列-シグナルペプチド-Nectin-4-LC-終止コドン-EcoRI
【0109】
2) 組換えプラスミドの構築
PCR増幅産物Nectin-4-HC及びプラスミドベクターpcDNA3.1をHindIII/EcoRI二重酵素で切断及び連結形質転換した後、Amp +耐性マーカーで陽性クローンをスクリーニングし、正しい組換え重鎖発現ベクターが得られたことを確認した。PCR増幅産物Nectin-4-LCとプラスミドベクターpcDNA3.1をHindIII/EcoRI二重切断し、連結形質転換し、Amp +耐性マーカーにより陽性クローンをスクリーニングし、正しい組換え型軽鎖発現ベクターを得た。
【0110】
本実験では、ヒト抗体の発現はHEK293細胞の一過性トランスフェクションによって行った。HEK293細胞を5% CO2 恒温振盪床に入れ、37℃、120 rpmで恒温震培養した。細胞を密度2.0×106 個/ mLになるまで培養し、細胞1リットル当たりHC 0.5 mg、LC 0.5 mgの割合で抗体重鎖及び軽鎖プラスミドを添加した。まず、KPM(トランスフェクション緩衝液)と無菌プラスミドを混合し、次に、KPM及びTA-293トランスフェクション試薬が混合された別の遠心分離チューブを取り出した。トランスフェクション試薬をプラスミドを含むKPM混合物にゆっくりと添加し、穏やかに混合してプラスミド-ベクター複合体を調製し、10分静置した後、プラスミド-ベクター複合体を細胞に添加した。24時間後に、細胞タンパク質発現増強剤及び一過性トランスフェクション栄養添加剤を添加し、トランスフェクション後6日目に細胞を回収し、精製した。
【0111】
キャピラリー等電点焦点法(cIEF)法:4.3M尿素、3M尿素-cIEFガム溶液、cIEF MIX溶液を調製し、試料を5 mg/mLに希釈し、cIEF MIX溶液234μLと試料10μLを混合し、十分にボルテックスを行い、混合液200μLを内挿管に移して検出した。
【0112】
モノクローナル抗体のサイズ変異体測定(CE-SDS)法:非還元試料調製:試料溶液100μgを取り、SDS試料バッファーを95μLまで加え、さらに250 mMヨードアセトアミド溶液5μLを加えて混和した。参照溶液を、同法により調製した。還元試料調製:試料溶液100μgを取り、SDS試料バッファーを95μLまで加え、さらに2-メルカプトエタノール5μLを加えて混合した。混合した試料を70±2℃で10分間インキュベートし、室温まで冷却した後、6000 rpmで1分間遠心分離し、上清を80μLずつ試料管に分取し、直ちに試料の分析を行った。物理化学的特性は以下の通りであった:
【0113】
【表3】
【0114】
このように、本発明により得られたヒト抗体は、発現量が高いことが明らかになった。通常の抗体の場合、一過性発現量は50-100 mg/Lであることに対して、本発明の3種のヒト抗体は何れも100 mg/Lを超え、SWY2001-Ab1発現量が200 mg/Lに達していることがわかった。種々の方法で純度を調べた。SEC-HPLC純度>99%で、還元CD-SDS純度>98%で、さらなる実験の要件を満たすものであった。
【0115】
実施例3:Nectin-4ヒト抗体DSC検出
本実験は、Nectin-4ヒト抗体の安定性を示差走査熱量計で測定し、実験パラメータは下表に示し、抗体濃度は1 mg/mLで、試料量は325μLであった。実験結果を図5に示した。具体的なDSCパラメータは、以下のように設定された。
【0116】
【表4】
【0117】
図5の結果から、本発明により得られた抗体は、安定性に優れていることがわかった。
【0118】
実施例4:Nectin-4ヒト抗体の親和性と種交差検出
本実験では、Fortebioを用いて、ヒトNectin-4タンパク質に対するNectin-4ヒト抗体の親和性を検出した。Nectin-4タンパク質を抗Nectin-4抗体試料と共にインキュベートした後、Fortebioによってシグナル値を検出することにより、試料のヒトNectin-4に対する親和性を分析した。実験結果は、表5に示す通り、ヒトNectin-4タンパク質に対する3種のヒト抗体の親和性は、ヒト化完了後もほとんど低下しないことが示された。キメラ抗体はマウス抗体を基にして変性され得られたもので、定常領域はhuman IgG1から選択された。
【0119】
【表5】
【0120】
異なる種のNectin-4タンパク質に対するNectin-4ヒト抗体の親和性は、ELISAを用いて行った。異種属Nectin-4タンパク質(ヒトNectin-4、カニクイザルNectin-4、ラットNectin-4、マウスNectin-4)を、異なる濃度のNectin-4ヒト抗体試料と共にインキュベートした後、IgGに結合した二次抗体(Goat anti-Human IgG(H+L) Cross-Adsorbed Secondary Antibody)と共にインキュベートし、ELISAにより異なる濃度でのシグナル値を測定することによって、試料の異種属Nectin-4タンパク質に対する親和性を分析した。実験結果を表6に示した。結果は、Nectin-4ヒト抗体が、ヒト、ラット、カニクイザルNectin-4タンパク質のいずれに対しても良好な親和性を有することを示した。
【0121】
【表6】
【0122】
実施例5:Nectin-4抗体薬物複合体の調製
1. SWY2001-Ab1-LND1002の酵素的に結合
LND1002(1gを5 mL DMSOで溶解、構造は図2に示した)、10×反応緩衝液、抗Nectin-4抗体、mTgase(トランスグルタミナーゼ、N-グリコシル化部位に近接する受容体グルタミンでのトランスグルタミン反応を触媒するために使用され、Kabat番号Q295位でのトランスグルタミン反応を特異的に触媒することができる)、20% H2OをEPチューブに順に加え、密封混合後、30℃で、反応時間は72時間未満であった。結合率が95%となる時点で反応を終了し、直ちに精製した。反応条件は以下の通りであった:
【0123】
【表7】
【0124】
本発明の抗体のトランスグルタミナーゼ触媒部位は、N-グリコシル化のQ295近傍であることが実験の結果で確認された。
【0125】
使用したトランスグルタミナーゼ配列は、以下の通りであった(配列番号13):
DSDERVTPPAEPLDRMPDPYRPSYGRAETIVNNYIRKWQQVYSHRDGRKQQMTEEQREWLSYGCVGVTWVNSGQYPTNRLAFAFFDEDKYKNELKNGRPRSGETRAEFEGRVAKDSFDEAKGFQRARDVASVMNKALENAHDEGAYLDNLKKELANGNDALRNEDARSPFYSALRNTPSFKDRNGGNHDPSKMKAVIYSKHFWSGQDRSGSSDKRKYGDPEAFRPDRGTGLVDMSRDRNIPRSPTSPGESFVNFDYGWFGAQTEADADKTVWTHGNHYHAPNGSLGAMHVYESKFRNWSDGYSDFDRGAYVVTFVPKSWNTAPDKVTQGWP
【0126】
2. SWY2001-Ab1-VC-MMAEの化学的に結合
抗体を5 mM EDTA pH =6.0を含むPBS緩衝液に置換して、抗体濃度を10 mg/mLとし、抗体(SWY2001-Ab1)の物質量濃度に応じて3モル当量のTCEP還元剤、1/50体積の1Mリン酸二カリウムを加え、37℃水浴で1時間加熱し、次に6モル当量のMC-VC-pABC-MMAEを加え、1mLの体積当たり80μLのDMSOを加え、室温で30分間反応させた。12モル当量のL-システインを添加し、20分後に反応を停止させて最終生成物を形成し、抗体は、鎖間システインにおけるスルフヒドリル基を介してリンカー-薬物に結合し、構造は図3に示された。
【0127】
実施例6:SWY2001-Ab1-ADC物理化学的分析同定
1. 酵素的に結合したSWY2001-Ab1-LND1002修飾率の同定
実験手順:
1) 試料処理:SWY2001-Ab1-LND100272h修飾液を、50 mM酢酸アンモニウム、20 mM DTT、55 mM Tris-HCl緩衝液処理を30℃±2℃で30分間反応し、12000 rpmで5分間遠心分離した。
2) 試料添加:10μL(30μg)の上清みを液体クロマトグラフィー(waters xbridge C4,3.5μm,4.6 mm×250 mm)に添加した
3) 溶出:移動相A液は0.1% TFA水溶液で、移動相B液は0.1%アセトニトリル溶液であり、0、5、8、15、20、22、25、30分で、それぞれ移動相A液:B液の比率が9:1、7:3、6.5:3.5、6:4、5.5:4.5、5:5、1:9、9:1となるように移動相Aを調節した。流速を0.8 mL/minに制御し、カラム温度を60℃とし、検出波長を280/254 nmとした。
【0128】
実験結果は、図6に示すように、SWY2001-Ab1-LND1002において、反応72h後、96.32%修飾率を示した。
【0129】
2. SWY2001-Ab1-ADCDAR値検出
実験手順:
中国薬局方2020年版、4部0512に記載した高速液体クロマトグラフィーを参照し、本品を逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて薬物抗体結合比DAR値を測定した。
【0130】
実験機器:高速液体クロマトグラフィー Agilent1260
カラム:PLRP-S1000A、5um、50*2.1mm
移動相:移動相A:0.1%(v/v) TFA水溶液
移動相B:0.1%(v/v) TFAアセトニトリル溶液
【0131】
検出方法は以下の通り:
流速0.25mL /分
検出波長280nm
注入量10μL
カラム温度80℃
【0132】
勾配溶離手順は以下の通りであった:
【表8】
【0133】
面積正規化法を用いて、実験結果を分析した:
計算結果は以下の通りであった:
【数1】
【0134】
実験結果を図7(図7A及び図7B)、表8に示した。
【表9】
【0135】
実施例7:SWY2001-Ab1-LND1002のエンドサイトーシス
実験手順:
SK-BR-3細胞、T47D細胞(ヒト乳がん細胞)を採集し、培地を用いて細胞を懸濁させた。標的細胞を単細胞懸濁液になるまで数回軽く吹き飛ばし、トリパンブルー染色法によって、細胞生存率及び細胞数を特定した。細胞密度を1×10 5 cells/mLに調整し、100μL /ウェルで共焦点96ウェルプレート細胞培養ディッシュに移し、1ウェルあたり1×10 4 個の細胞播種数で播種し、Zenon(登録商標)pHrodo(登録商標)iFLで標識したADCを最終濃度2μg/mLで96ウェルプレートに添加し、その後37℃で、5%CO2インキュベーター条件下で連続的に24時間にインキュベートした。全ての像をレーザー共焦点顕微鏡20X対物レンズで観察し、画像を撮影した。
【0136】
実験結果を図8図9に示すように、SWY2001-Ab1-LND1002は、細胞内にエンドサイトーシスを起こし、酸性環境のリソソームに局在し、薬物PADCEVよりもエンドサイトーシス速度がはるかに高かった。抗体薬物複合体について、一般的に、エンドサイトーシスは速くほど、薬物は腫瘍細胞に入る能力が高くなり、より良好な毒素放出が可能であり、薬物はより迅速に効果を発揮する。したがって、本発明で得られる抗体薬物複合体の腫瘍細胞内への侵入能力は、PADCEVよりも著しく優れていることが分かった。
【0137】
実施例8:SWY2001-Ab1-LND1002の異なる細胞体外成長に対する阻害作用
実験手順:
標的細胞を回収して単細胞懸濁液として再懸濁し、トリパンブルー染色法により細胞生存率と細胞数を測定した。細胞密度を1×105 cells/mLに調整し、96ウェルの黒平底細胞培養プレートに100μL /ウェルずつ加えた。希釈した試料を、細胞をすでに播種した96ウェルの黒色平底細胞培養プレートに、1ウェル当たり20μLずつ加え、細胞培養器(37℃、5%CO2)に入れて、66±3時間インキュベートし、レサズリン溶液(0.03%)を1ウェル当たり20μLで加え、37℃で3-4時間反応させ、マイクロプレートリーダーで550 nm/610 nmで蛍光値を読み取り、Prism又は同種のプロッティングソフトウェアを用いてプロッティングし、参照標準及び試料の半阻害濃度IC50にフィティングさせた。出力パラメータCはIC50で、ng/mLの単位があった。
【0138】
表9に示すように、実験結果では、SWY2001-Ab1-LND1002がin vitroで293T-Nectin-4、SK-BR-3、PC3-Nectin-4がん細胞のいずれもの成長を阻害することが示された。293T-Nectin-4安定化形質転換株について、インビトロスキラーデータにより、PADECVよりSWY2001-Ab1-LND1002はわずかに良好な結果を示し、SK-BR-3について、インビトロアッセイデータにより、SWY2001-Ab1-LND1002はPADCEVの4倍となり、PC3-Nectin-4について、インビトロアッセイデータにより、SWY2001-Ab1-LND1002はPADCEVと同じ程度で結果を示した。
【0139】
【表10】
【0140】
実施例9:SWY2001-Ab1-LND1002のin vivoでの薬効
1. in vivoでの前立腺がんの阻害の薬効実験
本試験では、適切な年齢の雌NUNUマウスに、PC3-Nectin-4(ヒト前立腺がんで移植されたヌードマウスマデルでNectin-4の発現が高かった)で安定に形質転換された細胞を接種した。腫瘍体積が約190 mm3(播種後D19)まで成長した場合、腫瘍成長が良好な42匹の動物を選別し、腫瘍体積(D0)に従って、7匹のマウスごとに6群、すなわち、溶媒対照群、Nectin4-mab1 mg/kg群、PADCEV1 mg/kg群、SWY2001-Ab1-LND1002 0.5mg/kg群、1mg/kg群及び2 mg/kg群に等分した。投与後のマウスの体重を秤量し、データを記録し、投与後の種々の時点で腫瘍の径を測定することにより、腫瘍の成長を動的に観察した。d17(投与後17日目)で試験を終了し、マウスを二酸化炭素で窒息させた後、腫瘍を取り出し、重量を秤量した。
【0141】
この実験条件(図10参照)下で、SWY2001-Ab1-LND1002は、腫瘍成長を用量依存的に阻害し(P<0.05)、1 mg/kg用量条件下で、PADCEVよりも有意に良好な腫瘍阻害率を示した(58.3%対39.0%)。Nectin4-mab 1mg/kg、PADCEV 1mg/kg、SWY2001-Ab1-LND1002 0.5mg/kg、1mg/kg及び2 mg/kg群の腫瘍重量抑制率は、それぞれ28.2%、39.0%、22.1%、58.3%、79.4%であった。
【0142】
2. in vivoでの乳がんの阻害の薬効実験
本実験では、ヌードマウスにMDA-MB-468細胞を接種して、ヒト乳がんMDA-MB-468ヌードマウス移植モデルを構築した。腫瘍体積が約100 mm3まで成長した(播種後D25)場合、腫瘍成長が良好な16匹の動物を選別し、腫瘍体積(D0)に従って、3群で、溶媒対照群8匹、残りの実験群4匹に分け、それぞれ0.9%塩化ナトリウム注射液(0.9% INJ NS(生理食塩水)、溶媒対照群)、薬物PADCEV群3 mg/kg、SWY2001-Ab1-LND1002群3 mg/kgを静脈内投与した(単回投与)。投与後のマウスの体重を秤量し、データを記録し、投与後の種々の時点で腫瘍の径を測定することにより、腫瘍の成長を動的に観察した。D29で試験を終了し、マウスを二酸化炭素で窒息させた後、腫瘍を取り出し、重量を秤量した。
【0143】
実験結果は図11に示した。本試験条件では、PADCEV 3 mg/kg群、SWY2001-Ab1-LND1002 3 mg/kg群では、それぞれ抑制率が72.3%、66.3%であった。溶媒対照群に比べて、いずれも腫瘍の成長を有意に阻害できた(P<0.001)。
【0144】
3. in vivoでの膀胱がんの阻害の薬効実験
本試験では、適切な年齢の雌NUNUマウスに、1匹当たり5×106個の細胞でHT-1376細胞を接種した。腫瘍体積が約100 mm3(播種後D21)まで成長した場合、腫瘍成長が良好な12匹の動物を選別し、腫瘍体積(D0)に従って、3群に分けた。A:溶媒対照群4匹、0.9%塩化ナトリウム注射液(0.9% INJ NS(生理食塩水)、溶媒対照群)投与、B:PADCEV実験群4匹、PADCEV3 mg/kg(単回投与)投与、C:SWY2001-Ab1-LND1002実験群4匹、3mg/kg(単回投与)投与。投与後のマウスの体重を秤量し、データを記録し、投与後の種々の時点で腫瘍の径を測定することにより、腫瘍の成長を動的に観察した。D22で試験を終了し、マウスを二酸化炭素で窒息させた後、腫瘍を取り出し、重量を秤量した。
【0145】
実験結果は図12に示した。本実験条件下では、PADCEV 3 mg/kg群、SWY2001-Ab1-LND1002 3 mg/kg群では、抑腫瘍率がそれぞれ42.1%、49.4%であった。Nectin-4-ADC 3mg/kg群(単回投与)は、溶媒対照群と比較して腫瘍の増殖を有意に抑制できた。SWY2001-Ab1-LND1002 3mg/kg群は、陽性対照PADCEV 3mg/kg(単回投与)群と比較して腫瘍阻害効果が著しく向上した。
【0146】
実施例10:SWY2001-Ab1-ADC安全性評価研究
10.1 化学的に結合に対するSWY2001-Ab1-VC-MMAEの効果比較アッセイ
本試験では、6匹の適切な年齢の雄のカニクイザルを選択し、対照品と試料であるSWY2001-Ab1-ADCを静脈注射することにより毒性反応を観察した。以下の表に示したように、試料SWY2001-Ab1-LND1002(DAR2)、対照SWY2001-Ab1-VC-MMAE(DAR4)、週1回の静脈内注射、2週間の連続注射で投与した。第2の投与後の7日間の連続観察、1日2回の一般観察、1日1回の詳細観察を実施した。投与前1D、投与後7D、14Dで体重変化を観察し、血液学上と生化学上、指数を測定した。
【0147】
【表11】
【0148】
実験結果を以下の表に示した。
【表12】
【0149】
上記実験結果から明らかなように、全体として、臨床観察によれば、同用量では対照品は、皮膚毒性、眼毒性において、試料よりも重篤であった。具体的には、試料であるSWY2001-Ab1-LND1002は、高用量群(9 mg/kg)では、臨床観察では若干の眼毒性(眼周囲の赤み)が認められたのみであり、これに対して、対照群では、6 mg/kgの低用量群で眼毒性の症状を示すだけでなく、左後肢の足の潰瘍、膝関節から足首関節までの軽度な腫脹、眼周囲の変色、前肢両肢の落屑などの重篤な毒性反応、3回目の投与後で動物が死亡した重篤な有害反応が認められた。本発明により調製した試料は、3回目の投与で12mg/kg(対照投与量である6 mg/kgをはるかに超えた量)に調整しても、いずれの動物においても異常は認められず、安全性において、対照品よりも有意に優れている。
【0150】
10.2 PADCEV(市販)に対するカニクイザルにおける安全性実験
試験では、カニクイザル10匹、雌雄各半を用い、ランダムに5群2匹ずつに群分けた。第1群に6 mg/kgの市販対照(PADCEV(登録商標))を投与し、第2~5群に試料であるSWY2001-Ab1-LND1002を静脈内注入で、10 mL/kgの投与容量と0.5 mL/kg /分の注入速度で投与した。各群の動物に投与した投与量、濃度、頻度及び期間は、以下の表に示された。
【0151】
【表13】
【0152】
同じ用量(6 mg/kg)で、試料は市販対照品と同じように、皮膚異常、白血球及び分類計数、赤血球関連指標(RBC、HGB、HCT)、AST、ALT、PLT及びFIBなどの異常、角膜組織病理異常を含んでいた。しかし、市販の対照と比較して、毒性の特徴付けが実質的に一致する。市販の対照は、試料より、市販対照品のほうは早めに異常を示し(D7対D14)、それに、皮膚毒性の表現がより重篤であった(落屑 対 潰瘍)。
【0153】
市販対照品のFDAの資料により、4週間の長期毒性試験に、1週間に1mg/kg、3mg/kgと6 mg/kgの市販対照品を重複に投与した場合、3匹の動物が試験の初期に死亡し(D11)、皮膚傷害、骨髄毒性及び軽度肝毒性を含む主要な毒性を示し、重度の毒性特性評価のために、6 mg/kg群の動物はすべて、2回目の投与後(D8)に投与を中止した。
【0154】
これにより、同じ用量の試料は、市販対照品PADCEV(登録商標)と比較して毒性のリスクが低いことがわかった。
【0155】
以上の実験結果を総合すると、本発明により得られた抗体薬物複合体は、エンドサイトーシス、in vitroでの腫瘍細胞阻害実験、in vivoでの腫瘍阻害の薬効実験(前立腺がん、乳がん及び膀胱がん)において、総合的な効果がPADCEVよりも著しく優れていることが分かり、特に安全性評価の実験において、本発明により得られた抗体薬物複合体は、治療ウインドウが広く、副作用が小さく、顕著な皮膚毒性、眼毒性等の有害反応が見られないことが明らかになった。
【0156】
実施例11:SWY2001-Ab1-LND1002の安定性実験
血漿安定性実験
実験では、SDラット、カニクイザル及びヒト血漿中のSWY2001-Ab1-LND1002とMMAEの安定性について、37℃でin vitroでの血漿インキュベーション方法を用いて行った。また、試験系全体の信頼性を調べるために、陰性対照群としてPBSTを用いた。各インキュベーション群は、0時間、24時間、48時間(D2)、72時間(D3)、96時間(D4)、168時間(D7)及び336時間(D14)で、インキュベーション試料をそれぞれ採取した。様々な血漿及びPBST中のMMAEの濃度を、LC-MS/MS法を用いて測定した。SWY2001-Ab1-LND1002の様々な血漿及びPBST中でのインキュベーション後のMMAE平均生成百分率結果を表12に示した。
【0157】
【表14】
【0158】
実験の結果により、測定濃度範囲内で、ヒト、カニクイザル、ラットの血漿中で336hインキュベーションした後、3つの濃度の抗体薬物複合体は、理論量の約1%程度の小分子MMAEの生成を示し、良好な安定性を有することが確認された。
【0159】
上記の説明は例示的な実施形態に過ぎず、本発明を実施するために必要な特徴の組み合わせを限定するものではない。また、提供されるタイトルは、本願の多様な実施形態を制限することを意図していない。例えば、「comprising」、「including」、「including」という用語は、限定することを意図していない。さらに、特に断らない限り、カウントワード修飾語がない場合は複数形を含み、「または」、「或いは」は「及び/または」を意味する。本明細書で特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0160】
本願で言及される全ての開示及び特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本願の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に記載された方法及び組成物の多くの修正及び変形は、当業者には明らかである。本願は、特定の好ましい実施形態によって説明されるが、保護が主張される本願は、これらの特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されねばならない。実際に、関連分野の当業者にとって明らかな、本願を実施するための記載された態様のそれらの複数の変形は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
図1
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図5
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図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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【国際調査報告】