(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】インドール化合物の固体形態、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 405/06 20060101AFI20240829BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240829BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240829BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240829BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C07D405/06 CSP
A61K31/404
A61P9/10
A61P15/00
A61P25/00
A61P25/04
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P35/00
A61P19/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536348
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 CN2022115010
(87)【国際公開番号】W WO2023025270
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202111000027.7
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524074600
【氏名又は名称】キーセラ(スーチョウ)バイオ-ファーマスーティカルズ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デン,ヨンキ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ユアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA45
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZC31
(57)【要約】
本出願は、インドール化合物の固体形態、その調製方法及びその使用に関する。特に、本出願は、式(1)
【化1】
の化合物の固体形態、それを調製する方法、それを含む医薬組成物、及び疾患の治療におけるその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
の化合物の結晶形態Iであって、
結晶形態Iが、約6.3±0.2°、11.0±0.2°、13.5±0.2°、16.7±0.2°、18.3±0.2°、18.6±0.2°、19.0±0.2°、22.1±0.2°、22.8±0.2°及び25.3±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有する、式(1)の化合物の結晶形態I。
【請求項2】
請求項1に記載の式(1)の化合物の結晶形態Iを調製する方法であって、方法が、室温溶媒揮発法、貧溶媒添加法及び冷却法からなる群から選択される、方法。
【請求項3】
式(1):
【化2】
の化合物の結晶形態IIであって、
結晶形態IIが、6.3±0.2°、11.1±0.2°、13.8±0.2°、16.6±0.2°、16.8±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、22.4±0.2°、22.8±0.2°及び25.2±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有する、式(1)の化合物の結晶形態II。
【請求項4】
請求項3に記載の式(1)の化合物の結晶形態IIを調製する方法であって、方法が、室温溶媒揮発法、懸濁液撹拌法及び冷却法からなる群から選択される、方法。
【請求項5】
式(1):
【化3】
の化合物の結晶形態IIIであって、
結晶形態IIIが、5.3±0.2°、10.7±0.2°、12.0±0.2°、17.7±0.2°、18.1±0.2°、21.6±0.2°、22.1±0.2°、26.9±0.2°、31.9±0.2°及び32.6±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有し、
結晶形態IIIが、好ましくはテトラヒドロフランとの溶媒和物であり、式(1)の化合物とテトラヒドロフランとのモル比が、好ましくは1:1である、式(1)の化合物の結晶形態III。
【請求項6】
請求項5に記載の式(1)の化合物の結晶形態IIIを調製する方法であって、方法が、貧溶媒添加法及び冷却法からなる群から選択される、方法。
【請求項7】
式(1):
【化4】
の化合物の結晶形態IVであって、
結晶形態IVが、8.7±0.2°、12.1±0.2°、12.7±0.2°、15.5±0.2°、18.3±0.2°、18.8±0.2°、19.3±0.2°、19.9±0.2°、21.5±0.2°、24.4±0.2°及び27.8±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有する、式(1)の化合物の結晶形態IV。
【請求項8】
請求項7に記載の式(1)の化合物の結晶形態IVを調製する方法であって、方法が、式(1)の化合物の固体を良溶媒中に溶解して、透明な溶液(溶液は、透明な溶液を得るために必要に応じて濾過してもよい)を形成すること、次いで、貧溶媒をその透明な溶液に添加して、固体を析出させ、これを濾過して、結晶形態IVを得ることを含む、貧溶媒添加法であり、
用いられる良溶媒が、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する、アルコール(好ましくはメタノール)又はスルホン(好ましくはジメチルスルホキシド)であり、用いられる貧溶媒が、好ましくは無機溶媒(好ましくは水)である、方法。
【請求項9】
式(1):
【化5】
の化合物の結晶形態Vであって、
結晶形態Vが、5.9±0.2°、8.3±0.2°、11.9±0.2°、13.4±0.2°、16.8±0.2°、17.6±0.2°、18.5±0.2°、20.7±0.2°、24.0±0.2°及び28.2±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有し、
結晶形態Vが、好ましくはジメチルスルホキシドとの溶媒和物であり、式(1)の化合物とジメチルスルホキシドとのモル比が、好ましくは1:1である、式(1)の化合物の結晶形態V。
【請求項10】
請求項9に記載の式(1)の化合物の結晶形態Vを調製する方法であって、方法が、式(1)の化合物の固体を溶媒に添加すること、加熱及び撹拌して、固体を溶解すること、得られた透明な溶液(溶液は、透明な溶液を得るために必要に応じて濾過してもよい)を静置すること、及びゆっくりと冷却して、結晶形態Vを得ることを含む、冷却法であり、
用いられる溶媒が、好ましくは水とジメチルスルホキシドとの混合溶媒である、方法。
【請求項11】
請求項1、3、5、7及び9のいずれか一項に記載の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はV、及び1種以上の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
急性又は慢性疼痛、片頭痛、変形性関節炎、関節リウマチ、痛風、滑液包炎、強直性脊椎炎、原発性月経困難症、がん又は動脈硬化症を治療するための医薬の製造における、請求項1、3、5、7及び9のいずれか一項に記載の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はVの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、インドール化合物の固体形態、その調製方法及びその使用に関する。特に、本出願は、3-(1-(1-(ベンゾフラン-2-イルメチル)-1H-インドール-7-カルボキサミド)シクロプロピル)ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-カルボン酸(本明細書において以降、「式(1)の化合物」と称する)の固体形態、それを調製する方法、それを含む医薬組成物、及び疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンE2(PGE2)は、免疫細胞の機能を阻害し、抗腫瘍免疫を回避し得る、アラキドン酸の誘導体である。PGE2は、4種類のPGE2受容体(EP1、EP2、EP3、及びEP4)を通じて生物学的機能を調節する。EP4は、腫瘍組織における主要なPGE2受容体であり、PGE2促進性腫瘍進行に関与している。EP4受容体の発現が多くの種類の腫瘍組織で増加しているという証拠がある。多くの証拠はまた、PGE2のレベルが多くの腫瘍組織で上昇しており、EP4受容体を通じて、腫瘍組織における免疫細胞の機能が抑制され、腫瘍細胞が抗腫瘍免疫系から逃避することを可能にし、それによって、腫瘍増殖及び転移を加速することを示唆する。EP4受容体アンタゴニストは、PGE2のこれらの作用を遮断することができ、それによって、抗腫瘍免疫機能を増強する。
【0003】
さらに、科学的証拠は、選択的EP4アンタゴニストが、炎症性疼痛を軽減するのに有効な薬剤であり、NSAIDs及びCOX-2阻害剤などの現在の標準的な抗炎症性鎮痛薬よりも胃腸忍容性が良好である可能性があることを示唆する。特に、EP4アンタゴニストは、プロスタグランジンE(PGE2)及び他のプロスタグランジン(例えばプロスタサイクリン及びトロンボキサン)の生合成に直接干渉しないため、これらの薬物は、より良好な心血管の安全性を有し得る。
【0004】
腫瘍免疫及び抗炎症性鎮痛におけるEP4アンタゴニストの潜在的適用を考慮して、いくつかのEP4アンタゴニストが臨床研究段階にある。しかし、今のところ、そのような薬物は、販売について承認されていない。このクラスの薬物の固体形態に関する報告もほとんどない。
【発明の概要】
【0005】
本出願のある態様は、以下に示されるような式(1)の化合物(PGE2/EP4シグナル伝達経路を阻害する化合物である、3-(1-(1-(ベンゾフラン-2-イルメチル)-1H-インドール-7-カルボキサミド)シクロプロピル)ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-カルボン酸)の結晶形態を提供する:
【0006】
【0007】
本出願の式(1)の化合物の好ましい結晶形態は、優れた物理的特性(溶解性、溶解速度、低吸湿性、高温耐性、高湿耐性、流動性などを含む)を有し、バイオアベイラビリティ、物理的及び/又は化学的安定性、及び調製の容易さなどの特性に関して、本発明の好ましい結晶形態は、優れた特性を示し得る。本出願の好ましい結晶形態は、良好な粉末流動特性を示し、このことから、該結晶形態は、大量生産及び製剤化により好適且つ好都合なものとなり、医薬品の品質及び有効性を効果的に保証する。
【0008】
本出願の式(1)の化合物の好ましい結晶形態は、良好な化学的及び熱的安定性を実証し、それによって、投与及び製剤化中の完全な溶解を促進し、十分な生物学的活性を維持する。さらに、本出願の式(1)の化合物の好ましい結晶形態は、高いバイオアベイラビリティを示し、インビボにおいて式(1)の化合物の有効な治療用量を提供する。
【0009】
本出願の式(1)の化合物の好ましい結晶形態を粉砕して、微粉末を生成し、次いで、前記微粉末をX線粉末回折(XRPD)分析に供することによって、実験結果は、結晶形態に変化がないことを示す。これは、本出願の好ましい結晶形態が、良好な安定性を有し、調製容易であり、製剤の調製により好適であることを実証する。
【0010】
本出願の式(1)の化合物の好ましい結晶形態は、良好な流動性及び粒子形状、並びに著しく改善された粘性を有し、これにより、製剤化プロセス中の濾過時間を大幅に減らし、生産サイクルを短縮し、コストを節約することができる。
【0011】
本出願の別の態様は、本出願の結晶形態を調製する方法を提供し、該方法は、以下に限定されないが、室温溶媒揮発法、懸濁液撹拌法、貧溶媒添加法(anti-solvent addition method)及び冷却法を含む。
【0012】
本出願の別の態様は、本出願の1種以上の結晶形態及び1種以上の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0013】
本出願の別の態様は、急性又は慢性疼痛、片頭痛、変形性関節炎、関節リウマチ、痛風、滑液包炎、強直性脊椎炎、原発性月経困難症、がん又は動脈硬化症を治療するための医薬の製造における、本出願の結晶形態の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、式(1)の化合物の結晶形態IのXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、式(1)の化合物の結晶形態IのDSC及びTGAグラフである。
【
図3】
図3は、式(1)の化合物の結晶形態IIのXRPDパターンである。
【
図4】
図4は、式(1)の化合物の結晶形態IIのDSC及びTGAグラフである。
【
図5】
図5は、式(1)の化合物の結晶形態IIIのXRPDパターンである。
【
図6】
図6は、式(1)の化合物の結晶形態IIIのDSC及びTGAグラフである。
【
図7】
図7は、式(1)の化合物の結晶形態IVのXRPDパターンである。
【
図8】
図8は、式(1)の化合物の結晶形態IVのDSC及びTGAグラフである。
【
図9】
図9は、式(1)の化合物の結晶形態VのXRPDパターンである。
【
図10】
図10は、式(1)の化合物の結晶形態VのDSC及びTGAグラフである。
【
図11】
図11は、実験例1における粉砕試験の前後の試料のXRPDパターン比較である。
【
図12】
図12は、実験例2における加熱の前後の結晶形態IVのXRPDパターン比較である。
【
図13】
図13は、実験例3における試験の前後の結晶形態IIのXRPDパターン比較である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
文脈において別段定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。本明細書で用いられる技術への言及は、当技術分野で一般に理解されている技術(当業者には明らかであろうそれらの技術のバリエーション又は同等の技術の置換を含む)を指すことが意図される。以下の用語の大部分は、当業者によって容易に理解されると考えられるが、それにもかかわらず、以下の定義は、本発明をよりよく説明するために提示される。
【0016】
用語「含有する」、「含む(include)」、「含む(comprise)」、「有する」、若しくは「に関する」、並びに本明細書で使用される他のバリエーションは、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを排除するものではない。
【0017】
単語「約」は、本明細書で使用される場合、当業者によって理解されるように、±0.05、±0.1、±0.2、±0.3、±1、±2又は±3などの、値の許容される標準誤差内の範囲を指す。
【0018】
用語「固体形態」は、本明細書で使用される場合、結晶形態又は非晶質形態などの、式(1)の化合物のすべての固体形態を含む。
【0019】
用語「非晶質」は、本明細書で使用される場合、三次元における秩序を欠く任意の固体物質を指す。場合によっては、非晶質固体は、XRPD結晶学、固体核磁気共鳴(ssNMR)分光法、DSC、又はこれらの技術のある組み合わせを含む、公知技術によって特徴付けてもよい。以下に示されるように、非晶質固体は、典型的には1つ又は2つのブロードピーク(すなわち、約5°2θ以上のベース幅を有するピーク)で構成される、広がったXRPDパターンを与える。
【0020】
用語「結晶形態」又は「結晶」は、本明細書で使用される場合、非晶質固体物質とは対照的に、くっきりと規定されたピークを有する特有のXRPDパターンを与える、三次元秩序を示す任意の固体物質を指す。
【0021】
用語「X線粉末回折パターン(XRPDパターン)」は、本明細書で使用される場合、実験的に観察されるディフラクトグラム又はそこから導出されるパラメータを指す。XRPDパターンは、通常、ピーク位置(横座標)及びピーク強度(縦座標)によって特徴付けられる。本発明におけるXRPDパターンは、好ましくは、PANalytacal Empyrean及びX’Pert3 X線粉末回折計で収集され、透過モードは、好ましくは、PANalytacal Empyrean X線粉末回折計で収集される。
【0022】
用語「2θ」は、本明細書で使用される場合、X線回折実験の実験設定に基づく度におけるピーク位置を指し、回折パターンにおける一般的な横座標単位である。実験設定は、入射ビームがある特定の格子面と角度シータ(θ)を形成する際に反射が回折される場合、反射されるビームが角度2シータ(2θ)で記録されることを必要とする。本明細書における具体的な固体形態についての具体的な2θ値への言及は、本明細書に記載されるX線回折実験条件を使用して測定した場合の2θ値(度)を意味することが意図されることが理解されるべできある。例えば、本明細書に記載されるように、Cu-Kα(Kα1(Å):1.540598及びKα2(Å):1.544426Å)を放射線源として使用した。
【0023】
用語「示差走査熱量測定(DSC)グラフ」は、本明細書で使用される場合、示差走査熱量計で記録された曲線を指す。本出願におけるDSCグラフは、好ましくは、Discovery DSC 250(TA Instruments, US)で収集される。
【0024】
本明細書で使用される場合、X線回折ピーク位置に関して「本質的に同じ」という用語は、典型的なピーク位置及び強度の変動が考慮されることを意味する。例えば、当業者は、ピーク位置(2θ)が、回折を測定するために使用されている装置におけるのと同様に、典型的には0.1~0.2度程度の、いくらかの変動を示すことを理解する。さらに、当業者は、相対ピーク強度が、装置間の変動だけでなく、結晶化度、優先配向、調製された試料表面、及び当業者に公知の他の要因による変動を示し、定性的尺度としてのみ採用されるべきであることを理解する。同様に、本明細書で使用される場合、DSCグラフに関して「本質的に同じ」も、当業者に公知のこれらの分析技術に関連する変動を包含することが意図される。例えば、示差走査熱量測定グラフは、典型的には、明確に規定されたピークについて最大±0.2℃の変動を有し、ブロードな線についてさらに大きな変動を有する(例えば、最大±1℃)。
【0025】
別段明記しない限り、本出願における液体核磁気共鳴スペクトルは、好ましくは、溶媒としてDMSO-d6を用いて、Bruker 400M核磁気共鳴分光計で収集される。
【0026】
用語「炭化水素」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する炭化水素を意味し、アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含み、具体的には、以下に限定されないが、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、n-ヘキサン、n-ヘプタン及びトルエンを含む。
【0027】
用語「アルコール」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、1~10個の炭素原子を有するアルコールを意味し、以下に限定されないが、メタノール、エタノール、1-プロパノール(n-プロパノール)、2-プロパノール(イソプロパノール)、1-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノールを含む。
【0028】
用語「エーテル」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、2~6個の炭素原子を有するエーテルを意味し、鎖状エーテル及び環状エーテル(例えば、フラン(テトラヒドロフランを含む)及びジオキサン)を含み、具体的には、以下に限定されないが、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール及びジメトキシエタンを含む。
【0029】
用語「ニトリル」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、2~6個の炭素原子を有するニトリルを意味し、以下に限定されないが、アセトニトリル及びプロピオニトリルを含む。
【0030】
用語「ケトン溶媒」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、2~6個の炭素原子を有するケトンを意味し、以下に限定されないが、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びジエチルケトンを含む。
【0031】
用語「エステル」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、3~10個の炭素原子を有するエステルを意味し、以下に限定されないが、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、イソプロピオン酸エチル、炭酸ジメチル及び酢酸ブチルを含む。
【0032】
用語「有機酸」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する有機酸を意味し、以下に限定されないが、ギ酸及び酢酸を含む。
【0033】
用語「スルホン」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、2~10個の炭素原子を有するスルホン又はスルホキシドを意味し、以下に限定されないが、ジメチルスルホキシドを含む。
【0034】
用語「アミド」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、1~10個の炭素原子を有するアミドを意味し、以下に限定されないが、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドを含む。
【0035】
用語「窒素含有複素環」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、3~10個の炭素原子及び少なくとも1個の窒素原子を有する窒素含有複素環を意味し、以下に限定されないが、N-メチルピロリドンを含む。
【0036】
数値範囲(例えば、「1~10」)及びその部分範囲(例えば、「2~10」、「2~6」、「3~10」)などは、本明細書で使用される場合、数値範囲内の任意の点(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)を包含する。
【0037】
調製された塩又はその結晶形態は、デカンテーション、遠心分離、蒸発、重力濾過、吸引濾過、又は加圧下若しくは減圧下で固体を回収するための任意の他の技術を含む方法によって回収してもよい。回収された固体は、任意選択で乾燥され得る。本発明における「乾燥」は、減圧下(好ましくは真空)で、残留溶媒含有量が医薬品規制調和国際会議(「ICH」)ガイドラインに与えられる限度内に低下するまで実施される。残留溶媒含有量は、溶媒の種類に依存するが、約5000ppm、又は好ましくは約4000ppm、又はより好ましくは約3000ppmを超えない。乾燥は、トレイ乾燥機、真空オーブン、エアオーブン、円錐型真空乾燥機、回転式真空乾燥機、流動層乾燥機、スピンフラッシュ乾燥機、フラッシュ乾燥機などで実施してもよい。乾燥は、約100℃未満、約80℃未満、約60℃未満、約50℃未満、約30℃未満の温度、又は任意の他の好適な温度で、大気圧で又は減圧下(好ましくは真空)で、塩の品質が劣化しない限り、所望の結果が達成されるまで、任意の所望の期間(例えば、約1、2、3、5、10、15、20、24時間又は一晩)実施してもよい。乾燥は、所望の生成物品質が達成されるまで、任意の所望の回数、実施することができる。乾燥された生成物は、任意選択で、所望の粒径を生じるためにサイズ縮小手順に供され得る。ミリング又は微粒子化は、生成物の乾燥前に実施してもよいし、又は乾燥完了後に実施してもよい。粒径縮小のために使用可能な技術としては、以下に限定されないが、ボール、ローラー及びハンマーミリング、及びジェットミリングが挙げられる。
【0038】
用語「無水結晶形態」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、構造要素として水分子が含まれない結晶形態を意味する。
【0039】
結晶形態及びその調製方法
ある実施形態では、本発明は、式(1)の化合物の結晶形態Iであって、結晶形態Iが、約6.3±0.2°、11.0±0.2°、13.5±0.2°、16.7±0.2°、18.3±0.2°、18.6±0.2°、19.0±0.2°、22.1±0.2°、22.8±0.2°及び25.3±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有する、式(1)の化合物の結晶形態Iを提供する。
【0040】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Iは、以下の回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する:
【0041】
【0042】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Iは、
図1に示されるものと本質的に同じ回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IのXRPDパターンは、
図1に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図1に示される通りである。
【0043】
好ましい実施形態では、本発明の式(1)の化合物の結晶形態Iは、約220±2℃(開始温度)において特性ピークを含むDSCグラフを有する。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明の式(1)の化合物の結晶形態Iは、約200℃に加熱された場合、重量減少(weight loss)が約0.2%未満である。
【0045】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Iは、
図2に示されるものと本質的に同じ特性ピークを含むDSC-TGAグラフを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IのDSC-TGAグラフは、
図2に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図2に示される通りである。
【0046】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Iは、無水結晶形態である。
【0047】
ある実施形態では、本発明は、式(1)の化合物の結晶形態IIであって、結晶形態IIが、約6.3±0.2°、11.1±0.2°、13.8±0.2°、16.6±0.2°、16.8±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、22.4±0.2°、22.8±0.2°及び25.2±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有する、式(1)の化合物の結晶形態IIを提供する。
【0048】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIは、以下の回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する:
【0049】
【0050】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIは、
図3に示されるものと本質的に同じ回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIのXRPDパターンは、
図3に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図3に示される通りである。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明の式(1)の化合物の結晶形態IIは、約224±2℃(開始温度)において特性ピークを含むDSCグラフを有する。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明の式(1)の化合物の結晶形態IIは、約200℃に加熱された場合、ほとんど重量減少がない。
【0053】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIは、
図4に示されるものと本質的に同じ特性ピークを含むDSC-TGAグラフを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIのDSC-TGAグラフは、
図4に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図4に示される通りである。
【0054】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIは、無水結晶形態である。
【0055】
ある実施形態では、本発明は、式(1)の化合物の結晶形態IIIであって、結晶形態IIIが、約5.3±0.2°、10.7±0.2°、12.0±0.2°、17.7±0.2°、18.1±0.2°、21.6±0.2°、22.1±0.2°、26.9±0.2°、31.9±0.2°及び32.6±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有する、式(1)の化合物の結晶形態IIIを提供する。
【0056】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIIは、以下の回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する:
【0057】
【0058】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIIは、
図5に示されるものと本質的に同じ回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIIのXRPDパターンは、
図5に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図5に示される通りである。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明の式(1)の化合物の結晶形態IIIは、約97±2℃及び223±2℃(開始温度)において特性ピークを含むDSCグラフを有する。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明の式(1)の化合物の結晶形態IIIは、約125℃に加熱された場合、重量減少が約14%である。
【0061】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIIは、
図6に示されるものと本質的に同じ特性ピークを含むDSC-TGAグラフを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIIのDSC-TGAグラフは、
図6に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図6に示される通りである。
【0062】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IIIは、テトラヒドロフランとの溶媒和物であり、式(1)の化合物とテトラヒドロフランとのモル比は、好ましくは1:1である。
【0063】
ある実施形態では、本発明は、式(1)の化合物の結晶形態IVであって、結晶形態IVが、約8.7±0.2°、12.1±0.2°、12.7±0.2°、15.5±0.2°、18.3±0.2°、18.8±0.2°、19.3±0.2°、19.9±0.2°、21.5±0.2°、24.4±0.2°及び27.8±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有する、式(1)の化合物の結晶形態IVを提供する。
【0064】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IVは、以下の回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する:
【0065】
【0066】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IVは、
図7に示されるものと本質的に同じ回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IVのXRPDパターンは、
図7に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図7に示される通りである。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の式(1)の化合物の結晶形態IVは、約169±2℃及び222±2℃(開始温度)において特性ピークを含むDSCグラフを有する。
【0068】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IVは、約200℃に加熱された場合、ほとんど重量減少がない。
【0069】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IVは、
図8に示されるものと本質的に同じ特性ピークを含むDSC-TGAグラフを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IVのDSC-TGAグラフは、
図8に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図8に示される通りである。
【0070】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態IVは、無水結晶形態である。
【0071】
ある実施形態では、本発明は、式(1)の化合物の結晶形態Vであって、結晶形態Vが、約5.9±0.2°、8.3±0.2°、11.9±0.2°、13.4±0.2°、16.8±0.2°、17.6±0.2°、18.5±0.2°、20.7±0.2°、24.0±0.2°及び28.2±0.2°の回折角(2θ)において特性ピークを含むXRPDパターンを有する、式(1)の化合物の結晶形態Vを提供する。
【0072】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Vは、以下の回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する:
【0073】
【0074】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Vは、
図9に示されるものと本質的に同じ回折角(2θ)においてピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態VのXRPDパターンは、
図9に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図9に示される通りである。
【0075】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Vは、約102±2℃、113±2℃及び224±2℃(開始温度)において特性ピークを含むDSCグラフを有する。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明の式(1)の化合物の結晶形態Vは、約200℃に加熱された場合、重量減少が約15%である。
【0077】
より好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Vは、
図10に示されるものと本質的に同じ特性ピークを含むDSC-TGAグラフを有する。最も好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態VのDSC-TGAグラフは、
図10に示されるものと本質的に同じであり、好ましくは
図10に示される通りである。
【0078】
好ましい実施形態では、式(1)の化合物の結晶形態Vは、ジメチルスルホキシドとの溶媒和物であり、式(1)の化合物とジメチルスルホキシドとのモル比は、好ましくは1:1である。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明は、結晶形態I~Vのいずれか1種を調製する方法をさらに提供し、該方法は、以下に限定されないが、室温溶媒揮発法、懸濁液撹拌法、貧溶媒添加法及び冷却法などを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、結晶形態は、式(1)の化合物の固体を溶媒中に完全に溶解して、透明な溶液(溶液は、透明な溶液を得るために必要に応じて濾過してもよい)を形成すること、及び次いで、溶媒が完全に揮発するように、得られた溶液を室温に置いて、結晶形態を得ることを含む、室温溶媒揮発法によって調製される。
【0081】
いくつかの実施形態では、溶媒は、以下に限定されないが、有機溶媒、例えば、1~10個の炭素原子を有する、アルコール、炭化水素(アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含む)、エーテル(鎖状エーテル及び環状エーテル(例えばフラン(テトラヒドロフランを含む)及びジオキサン)を含む)、ケトン、ニトリル、又はエステル、具体的には例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラヒドロフラン、アセトン、ブタノン、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、又はアセトニトリル、又は上記溶媒の2種以上によって形成される混合溶媒を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iが、室温溶媒揮発法を使用して調製される場合、使用される溶媒は、以下に限定されないが、有機溶媒、例えば、1~10個の炭素原子を有する、炭化水素(アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含む)、エーテル(鎖状エーテル及び環状エーテル(例えばフラン(テトラヒドロフランを含む)及びジオキサン)を含む)又はケトン、具体的には例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトン、又はブタノン、又は上記溶媒の2種以上によって形成される混合溶媒を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIが、室温溶媒揮発法を使用して調製される場合、使用される溶媒は、以下に限定されないが、有機溶媒、例えば、1~10個の炭素原子を有するアルコール又はニトリル、具体的にはエタノール又はアセトニトリル、又は上記溶媒の2種以上によって形成される混合溶媒を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物と溶媒との重量対体積比(mg/mL)は、(5~20):1、好ましくは約10:1である。
【0085】
いくつかの実施形態では、結晶形態は、式(1)の化合物の固体を溶媒に添加して、懸濁液を得ること、撹拌すること、及び次いで分離して、結晶形態を得ることを含む、懸濁液撹拌法によって調製される。
【0086】
いくつかの実施形態では、撹拌は、室温又は上昇した温度(例えば、40~60℃、好ましくは約50℃)で実施される。
【0087】
いくつかの実施形態では、溶媒は、以下に限定されないが、無機溶媒(例えば水)及び有機溶媒(例えば、1~10個の炭素原子を有する、アルコール、ケトン、炭化水素(アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含む)、エーテル(鎖状エーテル及び環状エーテル(例えばフラン(テトラヒドロフランを含む)及びジオキサン)を含む)、エステル、ニトリル、及び有機酸、例えばメタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトニトリル、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、メチルtert-ブチルエーテル、ジオキサン、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸、トルエン、トリクロロメタン、シクロペンチルメチルエーテル)、又は上記溶媒から選択される2種以上の混合溶媒を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、好ましい混合溶媒は、以下の表に示される通りである:
【0089】
【0090】
いくつかの実施形態では、溶媒1と溶媒2との体積比は、1:1~1:5、好ましくは1:1~1:3である。
【0091】
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物と溶媒との重量対体積比(mg/mL)は、(20~350):1、好ましくは(20~300):1、より好ましくは(60~300):1、最も好ましくは(60~150):1である。
【0092】
いくつかの実施形態では、結晶形態は、式(1)の化合物の固体を良溶媒中に溶解して、透明な溶液(溶液は、透明な溶液を得るために必要に応じて濾過してもよい)を形成すること、次いで、貧溶媒をその透明な溶液に添加して、固体を析出させ、これを濾過して、結晶形態を得るステップを含む、貧溶媒添加法によって調製される。
【0093】
いくつかの実施形態では、良溶媒は、以下に限定されないが、有機溶媒、例えば、1~10個の炭素原子を有する、アルコール、ケトン、炭化水素(アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含む)、エーテル(鎖状エーテル及び環状エーテル(例えばフラン(テトラヒドロフランを含む)及びジオキサン)を含む)、スルホン、アミド、及び有機酸、例えばメタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸、トリクロロメタン、ジメチルスルホキシド、又はジメチルアセトアミドを含む。いくつかの実施形態では、貧溶媒は、以下に限定されないが、無機溶媒(例えば水)及び有機溶媒(例えば、1~10個の炭素原子を有する、ケトン、炭化水素(アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含む)、エーテル(鎖状エーテル及び環状エーテル(例えばフラン(テトラヒドロフランを含む)及びジオキサン)を含む)、エステル、及びニトリル)、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロペンチルメチルエーテル、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリル、ブタノン、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、及び酢酸エチルを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iが、貧溶媒添加法を使用して調製される場合、用いられる良溶媒は、1~10個の炭素原子を有するケトン(好ましくはアセトン)であり;用いられる貧溶媒は、無機溶媒(好ましくは水)又は1~10個の炭素原子を有する炭化水素(好ましくはn-ヘプタン)である。
【0095】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIIが、貧溶媒添加法を使用して調製される場合、用いられる良溶媒は、1~10個の炭素原子を有するエーテル(好ましくはテトラヒドロフラン)であり;用いられる貧溶媒は、1~10個の炭素原子を有する炭化水素(好ましくはn-ヘプタン)である。
【0096】
いくつかの実施形態では、結晶形態IVが、貧溶媒添加法を使用して調製される場合、用いられる良溶媒は、1~10個の炭素原子を有する、アルコール(好ましくはメタノール)又はスルホン(好ましくはジメチルスルホキシド)であり;用いられる貧溶媒は、無機溶媒(好ましくは水)である。
【0097】
いくつかの実施形態では、良溶媒と貧溶媒との体積比は、(0.5~1):(1~20)、好ましくは約1:10である。いくつかの実施形態では、式(1)の化合物と良溶媒との重量対体積比(mg/mL)は、(50~200):1、好ましくは(90~150):1である。
【0098】
いくつかの実施形態では、結晶形態は、式(1)の化合物の固体を溶媒に添加すること、加熱及び撹拌して、固体を溶解すること、得られた透明な溶液(溶液は、透明な溶液を得るために必要に応じて濾過してもよい)を静置すること、及びゆっくりと冷却して、結晶形態を得ることを含む、冷却法によって調製される。
【0099】
いくつかの実施形態では、溶媒は、以下に限定されないが、無機溶媒(例えば水)及び有機溶媒、例えば、1~10個の炭素原子を有する、アルコール、ケトン、炭化水素(アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含む)、エーテル(鎖状エーテル及び環状エーテル(例えばフラン(テトラヒドロフランを含む)及びジオキサン)を含む)、ニトリル、エステル、及びスルホン、具体的には例えばイソプロパノール、アセトン、ブタノン、トリクロロメタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、又はジメチルスルホキシド、又は上記溶媒から選択される2種以上の混合溶媒を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、好ましい混合溶媒は、以下の表に示される通りである:
【0101】
【0102】
いくつかの実施形態では、溶媒1と溶媒2との体積比は、5:1~1:5、好ましくは約1:1である。
【0103】
いくつかの実施形態では、結晶形態Iが、冷却法を使用して調製される場合、用いられる溶媒は、1~10個の炭素原子を有するアルコール、好ましくはイソプロパノールである。
【0104】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIが、冷却法を使用して調製される場合、用いられる溶媒は、1~10個の炭素原子を有する、ニトリル(好ましくはアセトニトリル)、ケトン(好ましくはブタノン)、エステル(好ましくは酢酸メチル)、又は水と1~10個の炭素原子を有するケトン溶媒(好ましくはアセトン)との混合溶媒である。
【0105】
いくつかの実施形態では、結晶形態IIIが、冷却法を使用して調製される場合、用いられる溶媒は、テトラヒドロフランと1~10個の炭素原子を有する炭化水素溶媒(好ましくはシクロヘキサン)との混合溶媒である。
【0106】
いくつかの実施形態では、結晶形態Vが、冷却法を使用して調製される場合、用いられる溶媒は、水とジメチルスルホキシドとの混合溶媒である。
【0107】
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物と溶媒との重量対体積比(mg/mL)は、(60~150):1である。
【0108】
医薬組成物及び使用
別の実施形態では、本出願は、本発明の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はVのうちのいずれか1種以上、及び1種以上の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0109】
別の実施形態では、本出願は、急性又は慢性疼痛、片頭痛、変形性関節炎、関節リウマチ、痛風、滑液包炎、強直性脊椎炎、原発性月経困難症、がん又は動脈硬化症を治療するための医薬の製造における、本発明の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はVの使用を提供する。
【0110】
別の実施形態では、本出願は、急性又は慢性疼痛、片頭痛、変形性関節炎、関節リウマチ、痛風、滑液包炎、強直性脊椎炎、原発性月経困難症、がん又は動脈硬化症の治療に使用するための、本発明の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はVを提供する。
【0111】
別の実施形態では、本出願は、急性又は慢性疼痛、片頭痛、変形性関節炎、関節リウマチ、痛風、滑液包炎、強直性脊椎炎、原発性月経困難症、がん又は動脈硬化症を治療する方法であって、予防又は治療有効量の、本発明の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はVのうちのいずれか1種以上を、それを必要とする対象、好ましくは哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0112】
別の実施形態では、本出願は、がんを治療するための医薬の製造における、本発明の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はVの使用を提供する。
【0113】
別の実施形態では、本出願は、がんの治療に使用するための、本発明の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はVを提供する。
【0114】
別の実施形態では、本出願は、がんを治療する方法であって、予防又は治療有効量の、本発明の式(1)の化合物の結晶形態I、II、III、IV又はVのうちのいずれか1種以上を、それを必要とする対象、好ましくは哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0115】
好ましい実施形態では、がんは、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、膠芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、髄芽腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん及び尿道がんからなる群から選択される。
【0116】
本明細書で使用される場合、本発明における用語「薬学的に許容される担体」は、治療薬が一緒に投与される希釈剤、補助材料、賦形剤、又はビヒクルを指し、それは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織との接触に好適であり、妥当なベネフィット/リスク比で釣り合っている。
【0117】
本発明の医薬組成物中に用いることができる薬学的に許容される担体としては、以下に限定されないが、滅菌液体、例えば水及び油が挙げられ、石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む。医薬組成物が静脈内投与される場合、水は例示的な担体である。生理食塩水だけでなく、デキストロース及びグリセロール水溶液も、特に注射用溶液のための、液体担体として用いることができる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、マルトース、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物はまた、所望の場合、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することができる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。好適な医薬担体の例は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences (1990)に記載される。
【0118】
本発明の組成物は、全身的及び/又は局所的に作用し得る。この目的のために、本発明の組成物は、好適な経路によって、例えば注射、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、又は経皮投与によって投与してもよく、又は経口、頬、鼻、経粘膜、局所を介して、眼科用製剤として、又は吸入を介して投与してもよい。
【0119】
これらの投与経路について、本発明の組成物は、好適な剤形で投与することができる。
【0120】
剤形は、固体、半固体、液体、又は気体製剤であってもよく、具体的には、以下に限定されないが、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、ロゼンジ、ハードキャンディー、粉末、スプレー、クリーム、膏薬、坐剤、ゲル、ペースト、ローション、軟膏、水性懸濁液、注射用溶液、懸濁液、エリキシル、及びシロップを含む。
【0121】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で周知の任意のプロセス、例えば、混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、粉末化、乳化、凍結乾燥プロセスなどによって製造してもよい。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、治療される障害の症状の1つ以上をある程度まで軽減する、投与される化合物の量を指す。
【0123】
投薬レジメンは、最適な所望の応答を提供するように調整してもよい。例えば、単回ボーラスを投与してもよいし、数回に分けた用量を時間をかけて投与してもよいし、又は治療状況の緊急性によって示される通りに、用量を比例的に減少若しくは増加させてもよい。投薬量の値は、緩和されるべき状態の種類及び重症度によって変化してもよく、単一用量又は複数用量を含み得ることに留意されるべきである。任意の特定の対象について、具体的な投薬レジメンは、個体の必要性、並びに組成物の投与を施す若しくは監督する者の専門的判断に従って、時間の経過とともに調整されるべきであることがさらに理解されるべきである。
【0124】
投与される本発明の化合物の量は、治療される対象、障害若しくは状態の重症度、投与速度、化合物の性質、並びに処方する医師の判断に依存する。一般に、有効な投薬量は、単一用量又は分割用量で、1日あたり体重1kgあたり約0.0001~約50mg、例えば約0.01~約10mg/kg/日の範囲である。70kgのヒトの場合、これは、約0.007mg~約3500mg/日、例えば約0.7mg~約700mg/日となるであろう。場合によっては、前述の範囲の下限を下回る投薬量レベルで十分すぎる可能性があり、一方、他の場合には、さらに大きな用量を、有害な副作用を引き起こすことなく用いることができ、但し、そのようなより大きな用量は、1日を通した投与のためのいくつかの小さな用量に最初に分割される。
【0125】
医薬組成物中の本発明の化合物の含有量又は投薬量は、約0.01mg~約1000mg、好適には0.1~500mg、好ましくは0.5~300mg、より好ましくは1~150mg、特に好ましくは1~50mg、例えば、1.5mg、2mg、4mg、10mg、及び25mgなどである。
【0126】
別段指示のない限り、用語「治療すること」又は「治療」は、本明細書で使用される場合、そのような用語が適用される障害、状態、若しくは疾患、又はそのような障害、状態、若しくは疾患の1つ以上の症状を逆転させる、緩和する、その進行を阻害する、又は予防することを意味する。
【0127】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒト又は非ヒト動物を含む。例示的なヒト対象としては、疾患(例えば本明細書に記載されるもの)を有するヒト対象(患者と呼ばれる)、又は正常な対象が挙げられる。用語「非ヒト動物」は、本明細書で使用される場合、すべての脊椎動物、例えば非哺乳動物(例えば、鳥類、両生類、爬虫類)及び哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、家畜及び/又は飼いならされた動物(例えばヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタなど)を含む。
【実施例】
【0128】
本発明を、実施例を参照して以下により詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の技術的解決策を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、当業者は、依然として本発明の範囲内にある、いくつかの非本質的な改善及び調整を行い得る。
【0129】
実施例及び実験例に使用した装置のモデル及びパラメータは以下の通りである:
【0130】
1. X線粉末回折(XRPD)
実施例で得られた固体試料を、PIXceI1D検出器を備えたPANalytical EMPYREANを使用して結晶形態について分析した。機器のパラメータは以下の通りである:スキャン範囲:3°(2θ)~40°(2θ);ステップサイズ:0.013°(2θ);管電圧及び電流はそれぞれ45KV及び40mAである。
【0131】
2. 熱重量分析(TGA)
試料の熱重量分析を、TGA 55(TA Instruments, US)を使用して実施した。試料を、オープンなアルミニウム試料パンに入れ、TGA炉内で自動的に秤量し、次いで、10℃/分の速度で最終温度まで加熱した。
【0132】
3. 示差走査熱量測定(DSC)
試料の熱分析を、Discovery DSC 250(TA Instruments, US)を使用して実施した。およそ2mgの試料を秤量し、DSC試料パンに入れた。試料を25℃で平衡化し、次いで、10℃/分の速度で最終温度まで加熱した。
【0133】
4. 高速液体クロマトグラフィー分析(HPLC)
HPLC測定を、Agilent HPLC 1260シリーズ機器を使用して実施した。HPLC測定法のパラメータは、以下の表に列挙される通りである。
【0134】
【0135】
実施例1
式(1)の化合物(3-(1-(1-(ベンゾフラン-2-イルメチル)-1H-インドール-7-カルボキサミド)シクロプロピル)ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-カルボン酸)の調製
【0136】
【0137】
ステップ1:メチル3-(1-アミノシクロプロピル)ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-カルボキシレートBの合成
チタンテトライソプロポキシド(29.8g、99.7mmol、31mL、純度:95%)を、トルエン(240mL)中のメチル3-シアノビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-カルボキシレート(A)(22.5g、99.2mmol)の溶液に、窒素雰囲気下、-20℃で添加した。EtMgBr(3M、60mL)を、窒素雰囲気下、-20℃で、30分以内に滴下添加し、温度を-20~-10℃の間に保持した。30分間撹拌した後、BF3・Et2O(27.6g、194mmol、24mL)を滴下添加した。反応混合物を、-20℃で30分間、次いで、25℃で12時間撹拌した。反応混合物を、塩酸水溶液(1N、30mL)を0℃でゆっくりと添加することによってクエンチし、次いで、分離した有機層を廃棄した。水相を、0℃で10M水酸化ナトリウム水溶液でpH約12に塩基性化し、酢酸エチル(200mL×2)で抽出した。合わせた有機層を濃縮し、得られた残留物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物B(3.9g、21.7mmol、収率:21.9%)を黄色の固体として得た。MS (ESI): 182.3 [M+1]+.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 3.58 (s, 3H), 1.77 (s, 6H), 0.39-0.37 (m, 4H).
【0138】
ステップ2:ベンゾフラン-2-イルメタノールDの合成
ベンゾフラン-2-カルボアルデヒド(C)(3g、20.5mmol)及び無水メタノール(40ml)を反応フラスコに連続的に添加し、得られた混合物を0℃まで冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(0.545g、14.4mmol)をバッチでそこに添加し、温度を25℃未満に保持した。添加の完了後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応の完了後、溶媒を減圧下で除去した。1NのHCl水溶液(15ml)を添加し、得られた混合物を室温で5分間撹拌した。混合物を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でpH8~9に調整し、酢酸エチル(10ml×3)で抽出した。合わせた有機相を飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、溶媒を除去し、化合物D(3.0g、20.27mmol、収率:98.9%)を黄色の油として得た。MS (ESI): 149.1 [M+1]+.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.55 (dd, J = 8.4, 7.2 Hz, 1H), 7.47 (dd, J = 8.8, 7.6 Hz, 1H), 7.29-7.19 (m, 2H), 6.66 (s, 1H), 4.77 (d, J = 4.8 Hz, 2H).
【0139】
ステップ3:2-(ブロモメチル)ベンゾフランEの合成
化合物D(2.47g、16.7mmol)及び乾燥ジクロロメタン(32ml)を反応フラスコに連続的に添加し、得られた混合物を0℃まで冷却した。三臭化リン(1.72mL、18.4mmol)をそこにゆっくりと滴下添加した。添加の完了後、反応混合物を室温まで温め、1時間撹拌した。TLCにより、反応が完了したことが示された。反応混合物を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でpH8~9に調整し、ジクロロメタン(10ml×3)で抽出した。合わせた有機相を飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、溶媒を除去し、化合物E(3.36g、収率:95.9%)を黄色の油として得た。化合物を、さらに精製することなく、次の反応に直接使用した。
【0140】
ステップ4:メチル1-(ベンゾフラン-2-イルメチル)-1H-インドール-7-カルボキシレートGの合成
0℃で、カリウムtert-ブトキシド(1.53g、13.63mmol)を、DMF(80mL)中のメチル1H-インドール-7-カルボキシレートF(1.59g、9.09mmol)の溶液に添加し、続いて、2-(ブロモメチル)ベンゾフランE(2.5g、11.36mmol)を添加した。次いで、得られた混合物を25℃まで温め、3時間撹拌した。反応の完了をTLC(石油エーテル:酢酸エチル=9:1)によって確認した後、反応混合物を200mLの水に注ぎ入れ、酢酸エチル(100mL×2)で抽出した。有機層をブライン(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残留物を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、化合物G(2.0g、6.56mmol、収率:72.2%)を黄色の油として得た。MS (ESI): 306.2 [M+1]+.
【0141】
ステップ5:1-(ベンゾフラン-2-イルメチル)-1H-インドール-7-カルボン酸Hの合成
メタノール(40mL)及びテトラヒドロフラン(40mL)中の化合物G(2.0g、6.56mmol)の溶液に、KOH(2M、33mL)の水溶液を添加し、得られた混合物を50℃まで加熱し、12時間撹拌した。出発材料が完全に消費され、標的生成物をLCMSによって検出した後、反応混合物を45℃で濃縮して、メタノール及びテトラヒドロフランの大部分を除去した。混合物を1N塩酸水溶液でpH約6~7に酸性化し、1N塩酸で洗浄し、酢酸エチル(60mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、化合物H(1.8g、6.19mmol、収率:94.3%)を明るい黄色の固体として得た。MS (ESI): 292.1 [M+1]+.
【0142】
ステップ6:メチル3-(1-(1-(ベンゾフラン-2-イルメチル)-1H-インドール-7-カルボキサミド)シクロプロピル)ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-カルボキシレートJの合成
DIEA(2.8g、21.6mmol)を、DMF(40mL)中の化合物H(1.8g、6.18mmol)、化合物B(1.4g、7.73mmol)及びHATU(3.08g、8.12mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を、25℃にて窒素下で3時間撹拌した。LCMSにより反応が完了したことが示された後、反応混合物を100mLの水に注ぎ入れ、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層をブライン(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物J(2.3g、5.07mmol、収率:82.0%)を淡黄色の固体として得た。MS (ESI): 455.0 [M+1]+.
【0143】
ステップ7:3-(1-(1-(ベンゾフラン-2-イルメチル)-1H-インドール-7-カルボキサミド)シクロプロピル)ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-カルボン酸1の合成
LiOH・H2O(2M、3.3mL、6.6mmol)を、メタノール(50mL)中の化合物J(2.3g、5.07mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を、50℃で24時間撹拌した。LCMSにより反応が完了したことが示された後、反応混合物を50℃で濃縮して、メタノールの大部分を除去した。水(30mL)を添加し、混合物を1N塩酸でpH約5に酸性化し、酢酸エチル(40mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をエチルエーテル(20mL)で洗浄し、凍結乾燥させ、式(1)の化合物(1.8g、4.09mmol、収率:80.7%)をオフホワイトの粉末として得た。MS (ESI): 441.0 [M+1]+.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 12.24 (s, 1H), 8.75 (s, 1H), 7.69 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.45 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.24-7.06 (m, 4H), 6.60 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.18 (s, 1H), 5.76 (s, 2H), 1.76 (s, 6H), 0.63 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 0.50 (t, J = 5.6 Hz, 2H).
【0144】
実施例2:室温溶媒揮発法
実施例1で得られた式(1)の化合物の固体を、以下の溶媒中に完全に溶解した(溶液の濃度は約10mg/mLである)。次いで、得られた溶液を室温に置いて、溶媒を完全に揮発させ、固体を得た。XRPD分析を得られた固体に対して実施し、結晶形態を得られたXRPDパターンから決定した(XRPDパターンが
図1に示されるものと本質的に同じである場合、結晶形態を形態Iと決定し;XRPDパターンが
図3に示されるものと本質的に同じである場合、結晶形態を形態IIと決定し;XRPDパターンが
図5に示されるものと本質的に同じである場合、結晶形態を形態IIIと決定し;XRPDパターンが
図7に示されるものと本質的に同じである場合、結晶形態を形態IVと決定し;XRPDパターンが
図9に示されるものと本質的に同じである場合、結晶形態を形態Vと決定した。同じ基準を実施例3~9に適用した)。結果を以下の表に示す。
【0145】
【0146】
実施例3:単一溶媒中の室温懸濁液撹拌法
30ミリグラムの重さの、実施例1から得られた式(1)の化合物の固体を、指定された体積における以下の溶媒に添加して、懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を室温で3日間撹拌し、その後、濾過して固体を得た。XRPD分析を得られた固体に対して実施し、結晶形態をXRPDパターンから決定した。結果を以下の表に示す。
【0147】
【0148】
実施例4:混合溶媒中の室温懸濁液撹拌法
30ミリグラムの重さの、実施例1から得られた式(1)の化合物の固体を、以下の表に示す通りの各混合溶媒に入れ、懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を室温で3日間撹拌し、その後、濾過して固体を得た。XRPD分析を得られた固体に対して実施し、結晶形態をXRPDパターンから決定した。結果を以下の表に示す。
【0149】
【0150】
実施例5:単一溶媒中の高温懸濁液撹拌法
30ミリグラムの重さの、実施例1から得られた式(1)の化合物の固体を、指定された体積における以下の溶媒に添加して、懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を50℃で3日間撹拌し、その後、濾過して固体を得た。XRPD分析を得られた固体に対して実施し、結晶形態をXRPDパターンから決定した。結果を以下の表に示す。
【0151】
【0152】
実施例6:混合溶媒中の高温懸濁液撹拌法
30ミリグラムの重さの、実施例1から得られた式(1)の化合物の固体を、以下の表に示す通りの各混合溶媒に入れ、懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を50℃で3日間撹拌し、その後、濾過して固体を得た。XRPD分析を得られた固体に対して実施し、結晶形態をXRPDパターンから決定した。結果を以下の表に示す。
【0153】
【0154】
実施例7:貧溶媒添加法
以下の表に示すように、実施例1から得られた式(1)の化合物の固体の指定された量を秤量し、良溶媒に入れ、得られた溶液を濾過し、濾液を貧溶媒にゆっくりと添加した。析出した固体を濾過し、XRPD分析に供した。結晶形態をXRPDパターンから決定し、結果を以下の表に示す。
【0155】
【0156】
実施例8:単一溶媒中の冷却法
実施例1から得られた式(1)の化合物の固体およそ30mgを秤量し、以下の表に示す通りの各溶媒に添加し、得られた懸濁液を加熱して、固体を完全に溶解した。次いで、溶液を冷却した。析出した固体を濾過し、XRPDによって分析した。結晶形態をXRPDパターンから決定し、結果を以下の表に示す。
【0157】
【0158】
実施例9:混合溶媒中の冷却法
実施例1から得られた式(1)の固体化合物およそ30mgを秤量し、以下の表に示す通りの各混合溶媒に添加し、得られた懸濁液を加熱して、固体を完全に溶解した。溶液を濾過し、濾液を室温まで冷却した。析出した固体を濾過し、XRPDによって分析した。結晶形態をXRPDパターンから決定し、結果を以下の表に示す。
【0159】
【0160】
実施例10:結晶形態の熱重量分析及び示差走査熱量測定
熱重量分析及び示差走査熱量測定を、結晶形態I、II、III、IV、及びVに対して実施した。結晶形態I、II、III、IV、及びVについてのDSC及びTGAグラフを、それぞれ、
図2、4、6、8、及び10に示す。
【0161】
実験例
実験例1:機械的粉砕試験
0.5gの結晶形態IIを乳鉢に入れ、約5分間粉砕し、次いで、固体をXRPD試験のために収集した。
【0162】
出発試料及び粉砕後の試料のXRPDパターンを
図11に示す。結果は、結晶形態IIの結晶形態が粉砕後に変化しないままであることを示した。
【0163】
実験例2:結晶形態変換試験
結晶形態IVを200℃までゆっくりと加熱し、次いで、室温まで冷却した。加熱の前後の試料をXRPD試験のために収集した。
【0164】
参照結晶形態IIと比較した、加熱の前後のXRPDパターンを、
図12に示す。結果は、加熱すると結晶形態IVが結晶形態IIに変わることを示した。したがって、結晶形態IIは、結晶形態IVと比較してより良好な安定性を示した。
【0165】
実験例3:固体安定性試験
結晶形態IIを、60℃の密封条件で、及び40℃/75%RHで7日間別々に保存した。試料の純度を保存の前後にHPLCによって決定し、XRPDパターンを測定した。
【0166】
試料の純度決定結果を以下の表に示す。結果は、60℃の密封条件で、及び40℃/75%RHで保存した後、試料の純度が減少しないことを示した。
【0167】
【0168】
保存の前後の試料のXRPDパターンを
図13に示す。結果は、60℃の密封条件及び40℃/75%RHに7日間置いた後、結晶形態IIの結晶形態が変化しないままであることを示した。
【0169】
実験例4:光曝露試験
式(1)の化合物の結晶形態IIを、1.2×106Lux・hr以上の光強度の条件下に、200w・hr/m2以上の近紫外エネルギーで、25℃、RH25%で30日間置いた。試料をそれぞれ0、5、10、及び30日に採取して、試料の特性の変化を観察し、乾燥喪失について試験し、HPLCによって総不純物含有量を測定し、試料のXRPDパターンを測定した。
【0170】
試験結果は、試料を光曝露条件(1.2×106Lux・hr以上の総照度、200w・hr/m2以上の近紫外エネルギー)下に30日間置いた後、0日目の結果と比較して、水分及び含有量の著しい変化がなく、0.05%を超える新たな不純物が形成されないことを示した。XRPDパターンは、試料の結晶形態が変化しないことを示した。
【0171】
結果は、結晶形態IIが光曝露条件(1.2×106Lux・hr以上の総照度、200w・hr/m2以上の近紫外エネルギー)下で安定であることを示した。
【0172】
実験例5:高温試験
式(1)の化合物の結晶形態IIを、60℃の高温に30日間置いた。試料をそれぞれ0、5、10、及び30日に採取して、試料の特性の変化を観察し、偏向計で比旋光度を測定し、乾燥喪失について試験し、HPLCによって総不純物含有量を測定し、試料のXRPDパターンを測定した。
【0173】
試験結果は、60℃の高温に30日間置いた後、0日目の結果と比較して、外観、水分、含有量、及び結晶形態の著しい変化がなく、0.05%を超える新たな不純物が形成されないことを示した。
【0174】
結果は、試料が高温(60℃)条件下で安定であることを示した。
【0175】
実験例6:高湿試験
式(1)の化合物の結晶形態IIを、25℃及び92.5%の高湿に30日間置いた。試料をそれぞれ0、5、10、及び30日に採取して、試料の特性の変化を観察し、乾燥喪失について試験し、HPLCによって総不純物含有量を測定し、試料のXRPDパターンを測定した。
【0176】
試験結果は、92.5%RHの高湿条件下に30日間置いた後、水吸収が0.03%(5%未満)であり、0日目の結果と比較して、外観、水分、含有量、及び結晶形態の著しい変化がなく、0.05%を超える新たな不純物が形成されないことを示した。
【0177】
結果は、試料が高湿(RH92.5%)条件下で安定であることを示した。
【0178】
実験例7:SDラットにおける薬物動態試験
式(1)の化合物の結晶形態IIの透明な溶液を、10%DMSO、60%PEG 400、及び30%注射用水中で調製し、SDラットに静脈内投与した。0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC.Na)中の式(1)の化合物の結晶形態IIの水性懸濁液を調製し、SDラットに経口投与して、その薬物動態特性を調べた。
【0179】
SDラットへの式(1)の化合物15mg/kgの単回静脈内投与後、SDラットにおける化合物の薬物曝露(AUC0-t)は、78,811ng*hr/mLであり、クリアランス(CL)及び定常状態の見かけの分布容積(Vss)は、それぞれ3.59mL/分/kg及び1.18L/kgであった。
【0180】
SDラットへの式(1)の化合物40mg/kgの単回経口投与後、化合物の最高血中薬物濃度(Cmax)及び曝露(AUC0-t)は、それぞれ27,700ng/mL及び153,279ng*hr/mLであった。
【0181】
式(1)の化合物の結晶形態IIが、優れた血中薬物濃度及び曝露を有することが明らかである。
【0182】
実験例8:ビーグル犬における薬物動態試験
式(1)の化合物の結晶形態IIの透明な溶液を、10%DMSO、60%PEG 400、及び30%注射用水中で調製し、ビーグル犬に静脈内投与した。0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC.Na)中の式(1)の化合物の結晶形態IIの水性懸濁液を調製し、ビーグル犬に経口投与して、その薬物動態特性を調べた。
【0183】
ビーグル犬への式(1)の化合物5mg/kgの単回静脈内投与後、ビーグル犬における化合物の薬物曝露(AUC0-t)は、12,649ng*hr/mLであり、クリアランス(CL)及び定常状態の見かけの分布容積(Vss)は、6.64mL/分/kg及び1.50L/kgであり、このことは、式(1)の化合物が、低いクリアランスを有する化合物であり、体内で広く分布していることを示した。
【0184】
ビーグル犬への式(1)の化合物45mg/kgの単回経口投与後、化合物の最高血中薬物濃度(Cmax)及び曝露(AUC0-t)は、それぞれ32,917ng/mL及び79,576ng*hr/mLであった。
【0185】
式(1)の化合物の結晶形態IIが、優れた血中薬物濃度及び曝露を有することが明らかである。
【0186】
上記の具体的な実施形態は、本発明をさらに詳細に記載する。しかし、本発明の上記主題の範囲は、上記実施例に限定されると解釈されるべきではなく、本発明の開示に基づいて実行される技術的解決策はすべて、本発明の範囲内にある。
【国際調査報告】