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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】耐炎性の部分芳香族ポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/42 20060101AFI20240829BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08G69/42
C08L77/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536352
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022073369
(87)【国際公開番号】W WO2023025741
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】CH070213/2021
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520424630
【氏名又は名称】エムス-ケミー アーゲー
【氏名又は名称原語表記】EMS-Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Via Innovativa 1 7013 Domat/Ems Switzerland
(71)【出願人】
【識別番号】522232695
【氏名又は名称】エーエムペーアー・アイドゲネッシッシェ・マテリアルプリュフングス-ウント・フォルシュンサンシュタルト
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】リゴン, ザミュエル クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン, ボーソー
(72)【発明者】
【氏名】ガアン, サブヤサチ
(72)【発明者】
【氏名】ドリゴ, ニキータ
(72)【発明者】
【氏名】ナジール, ムハマド ラシド
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB02
4J001DC14
4J001EA06
4J001EA08
4J001EA16
4J001EB08
4J001EB09
4J001EB14
4J001EB29
4J001EB36
4J001EB37
4J001EC04
4J001EC08
4J001EC09
4J001EC13
4J001EC14
4J001EC15
4J001EC16
4J001EC47
4J001EC48
4J001EE28C
4J001EE44C
4J001FA03
4J001FA05
4J001FB05
4J001FB07
4J001FC03
4J001FC05
4J001GA12
4J001GA15
4J001GB12
4J001GB16
4J001GC04
4J001GC05
4J001JA02
4J001JA10
4J001JA12
4J001JA17
4J001JB02
4J001JB19
4J001JB20
4J002CL071
4J002GH00
4J002GK01
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【化1】

本発明は、ポリアミド単位AB/AC/AE/DB/DC/DE/Fを含み、ポリアミド単位ACに加えて、少なくとも1つのさらなるポリアミド単位がポリアミド単位AB、AE、DB、DC、DEおよびFからなる群から選択され、モノマー単位A、B、C、D、EおよびFが、ポリアミドX中にアミド結合した形態で存在する以下の分子:A:脂肪族ジアミン;B:芳香族リン非含有ジカルボン酸類;C:式(1)、(2)および/または(3)によるリン含有芳香族ジカルボン酸;D:芳香族構造単位を有するジアミン;E:脂肪族ジカルボン酸;F:アミノカルボン酸、ラクタムから誘導されることを特徴とする、本質的に難燃性の部分芳香族ポリアミドに関する。本発明はまた、難燃性ポリアミドに基づく耐炎性成形化合物、および本発明によるポリアミドまたはポリアミド成形化合物から形成された成形物品に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド単位AB/AC/AE/DB/DC/DE/Fを含むポリアミドXであって、前記ポリアミド単位ACに加えて、少なくとも1つのさらなるポリアミド単位がポリアミド単位AB、AE、DB、DC、DEおよびFからなる群から選択され、モノマー単位A、B、C、D、EおよびFが、前記ポリアミドX中にアミド結合して存在する以下の分子:
A:脂肪族ジアミン;
B:芳香族リン含有ジカルボン酸;
C:置換基R1、R2の各々が独立してC1~C8-アルキルまたはアリールであり、置換基R3、R4、R5の各々が独立してH、アルキル、アリール、F、Cl、BrまたはP(R1)(R2)Oである、式1、2および/または3によるリン含有芳香族ジカルボン酸;
【化1】
D:芳香族構造単位を有するジアミン;
E:脂肪族ジカルボン酸
F:α,ω-アミノカルボン酸、ラクタム
から誘導されることを特徴とする、ポリアミドX。
【請求項2】
それぞれ前記ポリアミド単位ACと前記少なくとも1つのさらなるポリアミド単位との合計に基づいて、前記ポリアミド単位ACの含有量が1~99mol%、好ましくは10~90mol%、より好ましくは10~60mol%であり、
前記少なくとも1つのさらなるポリアミド単位の含有量が1~99mol%、好ましくは10~90mol%、より好ましくは40~90mol%であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
下記の選択群の少なくとも1つがコンポーネントA~Fについて選択され、好ましくはコンポーネントA、BおよびCまたはA、B、CおよびEについての選択群が選択され、特に好ましくは全ての選択群が同時に選択されることを特徴とするポリアミドであって、
A:前記脂肪族ジアミンが、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群から選択され、好ましくは1,6-ヘキサンジアミンまたは1,10-デカンジアミンとして選択される;
B:前記芳香族リン非含有ジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸およびそれらの混合物からなる群から選択される;
C:前記リン含有芳香族ジカルボン酸が、3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニル-ジメチルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシ-フェニルジフェニルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジメチルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシドからなる群から選択され、好ましくは3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニル-ジメチルホスフィンオキシドまたは3,5-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシドから選択され、より好ましくは3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシドから選択される;
D:前記芳香族構造単位を有するジアミンが、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される;
E:前記脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸、1,10-デカン二酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、1,16-ヘキサデカン二酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される;
F:α,ω-アミノカルボン酸またはラクタムFが、α,ω-アミノウンデカン酸、カプロラクタムおよびラウリンラクタムならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~2のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項4】
前記少なくとも1つのさらなるポリアミド単位がAB、AEおよびFの群から選択され、それぞれ前記ポリアミド単位AB、AC、AEおよびFの合計に基づいて、前記ポリアミド単位ACの含有量が1~99mol%、好ましくは10~90mol%、特に好ましくは10~60mol%であり、前記ポリアミド単位AB、AEおよびFの含有量の合計が、1~99mol%、好ましくは10~90mol%、特に好ましくは40~90mol%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項5】
前記芳香族ジカルボン酸Bが、テレフタル酸またはテレフタル酸とイソフタル酸との混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項6】
前記ポリアミド単位ABが、ポリアミド単位6I、6T、8I、8T、9I、9T、10I、10T、12I、12T、6T/6I、9T/9I、10T/10I、12T/12I、6T/10T、6T/9T、6T/8T、BACI、BACT、BACT/BACI、BACT/6T、BACT/10Tからなる群から選択されるか;
または
前記ポリアミド単位ABが、
a1 60~100重量部、好ましくは55~85重量部、特に好ましくは60~80重量部の、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび/または1,10-デカンジアミンと組み合わせたテレフタル酸から誘導されるポリアミド単位AB;
a2 0~40重量部、好ましくは15~45重量部、より好ましくは20~40重量部の、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび/または1,10-デカンジアミンと組み合わせたイソフタル酸から誘導されるポリアミド単位ABからなることを特徴とし、
コンポーネントa1およびa2の重量部を合わせて100重量部を占め、かつ/または
前記ポリアミド単位AEが、ポリアミド単位66、610、611、612、614、616、618、106、1010、1011、1012、1014、1016、1018、BAC6、BAC10、BAC11、BAC12、BAC14、BAC16からなる群から選択される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項7】
前記ポリアミドXが、前記ポリアミド単位AB、ACおよびAEのみからなり、好ましくは前記ポリアミド単位ABおよびACまたはACおよびAEのみからなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項8】
前縮合物の形態の前記ポリアミドXが、ISO 307:2007に従って100mlのm-クレゾール中の0.5gのポリマー顆粒の溶液を20℃で使用して決定される、1.08~1.39の範囲、特に好ましくは1.10~1.35の範囲、特に1.12~1.30の範囲の溶液粘度ηrelを有し、かつ/または
高分子量または後縮合形態の前記ポリアミドXが、ISO 307:2007に従って100mlのm-クレゾール中の0.5gのポリマー顆粒の溶液を20℃で使用して決定される、1.40~2.50の範囲、特に好ましくは1.45~2.20の範囲、特に1.50~2.00の範囲の溶液粘度ηrelを有し、
かつ/または
前記ポリアミドXが、事前に23℃で相対湿度50%の標準気候で48時間調整された、または対流式オーブン内で70℃で7日間貯蔵された127x12.7x0.35mm、127x12.7x0.5mm、127x12.7x0.75mm、127x12.7x1.5mm、および127x12.7x3.0mmの寸法の試験片おいて、UL94に従って決定された防炎分類V0を有することを特徴とする、
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミドを製造するための方法であって、
少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸Bおよび/または1つの脂肪族ジカルボン酸Eと、
置換基R1、R2が各々独立してC1~C8-アルキルまたはアリールであり、置換基R3、R4、R5が各々独立してH、アルキル、アリール、F、Cl、BrまたはP(R1)(R2)Oである、式1および/または式2による少なくとも1つのリン含有芳香族ジカルボン酸Cと、
少なくとも1つの脂肪族ジアミンAと、
選択肢としての、さらなるモノマーDおよびFとの間で、おそらくは単官能性調節剤Gおよび/またはプロセス補助材料の存在下で重縮合反応させることを含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミドX、および少なくとも1つの充填剤および/または少なくとも1つの添加剤、および/またはポリアミドX以外の少なくとも1つのポリアミドYを含む、ポリアミド成形化合物FM。
【請求項11】
以下のコンポーネント:
25~99.99重量%のポリアミドX
0~70重量%の少なくとも1つの充填剤T;
0.01~50重量%の、XおよびT以外の少なくとも1つの添加剤S;
を含有するか、または好ましくはそれらからなることを特徴とし、
前記コンポーネントS、TおよびXを合わせて100重量%になる、請求項10に記載のポリアミド成形化合物FM。
【請求項12】
請求項10に記載のポリアミド成形化合物FMであって、以下のコンポーネント:
25~100重量%のポリマー混合物Pであって、
20~80重量%のポリアミドXおよび
20~80重量%の、ポリアミドXとは異なるポリアミドY、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド616、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1014、ポリアミド1016、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/12、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/10Tまたはそれらの混合物からなる群から選択されるポリアミドYを含有するか、または好ましくはそれらを含み、
XとYの合計が前記ポリマー混合物Pの100重量%ある、ポリマー混合物P;
0~70重量%の少なくとも1つの充填剤T;
0~50重量%の、X、YおよびT以外の少なくとも1つの添加剤S;
を含有するか、または好ましくはそれらからなることを特徴とし、前記コンポーネントP、SおよびTを合わせて100重量%となる、ポリアミド成形化合物FM。
【請求項13】
好ましくは射出成形、射出ブロー成形、射出圧縮成形、引抜成形、溶融紡糸、押出またはブロー成形によって製造される、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミドXもしくは請求項10~12のいずれか一項に記載のポリアミド成形化合物の、または請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミドXもしくは請求項10~12のいずれか一項に記載のポリアミド成形化合物のコーティングを少なくとも1つの領域に含む、成形部品。
【請求項14】
繊維、フィルム、異形材、チューブ、容器、半製品、完成部品または中空部品、ハウジング、ハウジング部品、フレーム、保護ハウジング、カバーまたはクラッド要素、特に電気製品、電子機器、電気光学機器、電気光学部品、コネクタ、ファン、特にファンホイール、オフィスオートメーション装置、家電製品、自動車部門用の部品、特にシリンダヘッドカバー、エンジンカバー、中間冷却器用のハウジング、中間冷却器のフラップ、サクションパイプ、サクションマニホールド、コネクタ、ギヤホイール、ファンホイール、中間冷却器、ヘッドランプハウジング、リフレクタ、適応ヘッドライト調整装置、ギヤホイール、プラグ接続部、コネクタ、ガソリン、ディーゼル、尿素および圧縮空気ライン用のものを含むコネクタ、電気自動車用の部品、異形材、多層フィルムのフィルムまたは層、電子部品、電子部品用のハウジング、ツール、ノズル、およびホースまたはチューブを接続するための管継手、電気または電子部品、回路基板、回路基板の一部、ハウジング部品、フィルム、特にスイッチ、分配器、継電器、抵抗器、コンデンサ、コイル、ランプ、ダイオード、LED、トランジスタ、コネクタ、レギュレータ、メモリおよび/またはセンサの形態の回線からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の成形部品。
【請求項15】
請求項13および14に記載の成形部品、特に繊維、フィルム、異形材、チューブ、容器、半製品、完成部品または中空部品を製造するための、および成形部品をコーティングするための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミドXまたは請求項10~12のいずれか一項に記載のポリアミド成形化合物FMの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ジアミン、部分的にリンを含有する芳香族ジカルボン酸、および任意選択で他のポリアミド形成コンポーネントに基づく、本質的に耐炎性の部分芳香族ポリアミドに関する。本発明はまた、本質的に耐炎性の部分芳香族ポリアミドに基づく難燃性成形化合物に関する。ポリアミドならびにそれらを使用して製造された成形化合物は、良好な難燃性を有し、良好な機械的特性を示す。これらの成形化合物は、ハウジング、ハウジングコンポーネントまたはコネクタなど、電気および電子産業用の薄肉成形部品の製造に特に適している。さらに、本発明は、成形部品、特に電気電子産業および自動車産業用のコンポーネントの製造のための、本発明によるポリアミドおよびポリアミド成形化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの用途は、難燃性に関する限り、プラスチックに対する高い要求を有する。プラスチックの難燃性は、特に短絡のリスクのために、電気または電子デバイスでの使用に絶対的に不可欠である。
【0003】
それ自体が難燃性(=生来の防炎性)であるプラスチックおよび難燃剤でコーティングされたプラスチックに加えて、反応性難燃剤を含む、すなわち、難燃剤がプラスチックのコンポーネントであり、重合中にそれに化学的に結合するプラスチックも使用される。難燃性添加剤の配合は、難燃性プラスチック嵌合の別の変形である。一般的な添加剤は、メラミンおよび尿素などの窒素系化合物、臭素化ポリスチレンおよび有機リン化合物である。
【0004】
プラスチックの別の必須要件は良好な機械的特性であり、これは、とりわけ繊維強化によってさらに改善することができる。ポリアミドの分野における最新の技術的進歩は、ガラス繊維強化難燃性成形化合物のいくつかの例を示す。防炎クラスUL 94 V0を達成することは、ガラス繊維強化ポリアミド成形化合物にとって特に難題である。
【0005】
また、難燃性ポリアミドおよびポリアミド成形化合物が、例えば射出成形機、溶融紡糸および押出システムにおいて容易に加工できること、特に難燃剤に起因してシステム部品に腐食問題が発生しないことも重要である。
【0006】
欧州特許第1 613 698 A1号は、難燃剤としてホスフィン酸の塩を含有する部分芳香族部分結晶性ポリアミドに基づく、ハロゲンフリーの難燃性成形化合物について言及している。これらの成形化合物は、高温での寸法安定性および良好な燃焼挙動によって、電気および電子産業用の薄肉成形部品の製造に適している。しかしながら、使用される粒子状難燃剤は、特に破断応力、破断伸び、衝撃およびノッチ付き衝撃特性に関する機械的特性の低下、表面の質の劣化、ならびに製造および加工に使用されるシステムコンポーネントの腐食をもたらす。
【0007】
中国特許第101 735 455 A号は、溶媒中のテレフタル酸、ヒドラジン、および変性イソフタル酸から芳香族ポリオキサジアゾールを製造する方法、およびそこから湿式紡糸された耐炎性、高温耐性繊維を記載している。変性イソフタル酸は、塩素、臭素またはジフェニルホスフィンオキシドまたはジフェニルホスフィンスルフィド置換基を有する。
【0008】
米国特許第4,837,394号は、モノマーとしてのポリエステル樹脂をベースとし、とりわけ、ホスホニウム置換基を備えたジメチルイソフタル酸エステルを含有する静電トナー粒子に関する。四級ホスホニウム基は、トナー粒子中の電荷担体として作用する。電荷担体が均一に分布しているので、10-9~10-4mol/gの範囲の非常に低い含有量の第4級ホスホニウム基でも、静電写真の画像化プロセスを実現するのに十分である。しかしながら、これは十分な防炎を提供しない。
【0009】
米国特許第3,108,991号は、ビス(アミノアルキル)アルキルホスフィンおよび脂肪族または芳香族ジカルボン酸、ならびに脂肪族ジアミンおよびビス(カルボキシアルキル)アルキルホスフィンオキシドに基づく線状ポリアミドを開示している。記載のポリアミドは、冷水または温水に溶解し、低い軟化温度を有する。
【0010】
米国特許第2,646,420号は、ポリマー鎖にリンを含有する線状縮合ポリマーに基づく配向繊維に関する。良好な染色能力に加えて、繊維はまた、良好な機械的特性、特に高い初期強度および良好な弾性を示す。実施例では、リン含有モノマーとしてビス(カルボキシフェニル)メチルホスフィンオキシドを使用し、これを種々のグリコールまたはデカンジアミンと縮合させる。
【0011】
布繊維の分野はまた、米国特許第4,032,517B号に包含され、それはポリマー鎖の不可欠な部分として0.5~7.5重量%のリンを含有するコポリアミドを含む。ビス(カルボキシエチル)アルキルホスフィンオキシドは、ヘキサンジアミンおよびアジピン酸と重縮合しており、リン含有ジカルボン酸として推奨されている。繊維は、恒久的に帯電防止性、調湿性かつ耐炎性でなければならない。
【0012】
国際公開第2018 071790A1号は、ポリマー鎖中にリンを含有する難燃性ポリアミドを開示している。リン含有モノマーとして用いられるビス(4-メトキシ-カルボニルフェノキシ)フェニルホスフィンオキシドは、ヒドロキシ安息香酸メチルとフェニルホスホン酸ジクロリドとから製造される。このリン含有ジカルボン酸とm-キシリレンジアミン(MXDA)との交換反応は、説明されている。重量で5%のリン含有ジカルボン酸を含むこのようなポリアミドは、MXD6と比較してLOI値が増加し、UL94燃焼性試験における3.2mm厚の試験片で分類V0を達成する。
【0013】
日本国特許第11286545A号は、50~200℃の温度で不活性溶媒中で重縮合によって製造することができる、高いガラス転移温度を有するリン含有コポリアミドを記載している。2,5-ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5-ジカルボキシフェニルホスフィン酸およびそれらの誘導体は、リン担持モノマーと呼ばれる。特定のジカルボキシフェニルホスフィン酸およびジアミン4,4’-オキシジアニリン、およびさらなるジカルボン酸としてのイソフタル酸に基づくコポリアミドは、240~276℃の範囲のガラス転移温度を有する。そのため、これらのポリアミドを溶融物中で重縮合させることができない。
【0014】
最新の技術進歩において上記で記載され、ポリマー鎖中にリンを含有する本質的に難燃性ポリアミドは、耐薬品性が低く、冷水または温水であっても大部分が可溶性であり、ポリマー鎖中に「弱い」C-PまたはC-O-P結合を含有し、一般に軟化温度が低く、特にガラス転移温度が低く、したがって熱下での寸法安定性がかなり低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1 613 698 A1号
【特許文献2】中国特許第101 735 455 A号
【特許文献3】米国特許第4,837,394号
【特許文献4】米国特許第3,108,991号
【特許文献5】米国特許第2,646,420号
【特許文献6】米国特許第4,032,517B号
【特許文献7】国際公開第2018 071790A1号
【特許文献8】日本国特許第11286545A号
【発明の概要】
【0016】
本発明の課題の1つは、最新の技術的進歩から知られているこれらの欠点を回避し、良好な機械的および熱的特性、良好な表面品質、高温耐性および良好な防炎を特徴とするように、本質的に難燃性の部分芳香族ポリアミドおよびそれから製造されるポリアミド成形化合物を提供することである。本発明によるポリアミドおよびポリアミド成形化合物は、好ましくは、厚さ0.35~3.2mm、特に0.5mmの試験片についてUL94による防火分類V0を有するものとする。
【0017】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載のポリアミド単位AB/AC/AE/DB/DC/DE/Fを有するポリアミドXによって解決され、ポリアミド単位ACに加えて、少なくとも1つのさらなるポリアミド単位は、ポリアミド単位AB、AE、DB、DC、DEおよびFからなる群から選択され、モノマー単位A、B、C、D、EおよびFは、ポリアミドX中にアミド結合を有する以下の分子から誘導される。
A:脂肪族ジアミン;
B:芳香族リン非含有ジカルボン酸;
C:式1、2および/または3によるリン含有芳香族ジカルボン酸
【化1】
(式中、置換基R1、R2の各々は独立してC1~C8-アルキルまたはアリールであり、置換基R3、R4、R5の各々は独立してH、アルキル、アリール、F、Cl、BrまたはP(R1)(R2)Oである);
D:芳香族構造単位を有するジアミン;
E:脂肪族ジカルボン酸
F:α、ω-アミノカルボン酸、ラクタム。
【0018】
これは、ポリアミド単位ACに加えて、少なくとも1つ以上のポリアミド単位が本発明によるポリアミドX中に存在すること、すなわち、少なくとも2つのポリアミド単位が、例えば単位ABおよびACまたはACおよびFの組み合わせで存在しなければならず、したがって、残りのポリアミド単位が任意であることを意味する。
【0019】
コンポーネントBの芳香族ジカルボン酸は、コンポーネントCのジカルボン酸とは異なり、詳細には、それらはリンを含まない。
【0020】
前述のポリアミド単位、例えばポリアミド単位ACまたはABは、ポリアミドX中の繰り返し単位である。したがって、最も単純なケースでは、ポリアミドXは、少なくとも2つの異なる繰り返し単位、例えばポリアミド単位ACおよびABを有するコポリアミドである。この例では、脂肪族ジアミンAに加えて、2つの異なる芳香族ジカルボン酸BおよびCがポリアミドXの製造に使用される。
【0021】
この課題は、請求項9に記載の本発明によるポリアミドの製造方法によっても解決される。
【0022】
この課題は、上記のポリアミドX、少なくとも一つの充填剤および/または少なくとも一つの添加剤、および/またはポリアミドXとは異なる少なくとも一つのポリアミドYを含む、請求項10に記載のポリアミド成形化合物FMを提供することによってさらに解決される。
【0023】
この課題は、ポリアミドXまたは形成化合物FMを使用して少なくとも形成される、請求項13に記載の成形部品によってさらに解決される。
【0024】
この課題は、本発明によるポリアミドXを使用することによって、および本発明の請求項15に記載のポリアミド成形化合物FMを使用することによって最終的に解決される。
用語の定義
【0025】
本発明によれば、「ポリアミド」(略語PA)という用語は、そのモル質量重量または粘度にかかわらず、ホモポリアミドおよびコポリアミドを含む総称であると理解される。したがって、ポリアミドという一般用語は、より低い分子量を有するポリアミド前縮合物に加えて、より高い分子量を有するホモポリアミドおよびコポリアミドを含む。ポリアミドおよびそれらのモノマーについて選択された表記および略語は、ISO規格16396-1(2015(D))で定義されているものに対応する。その中で使用される略語は、モノマーのIUPAC名の同義語として以下の文字列で使用される。具体的にはモノマーについての以下の略語が使用される:テレフタル酸にTまたはTPS、イソフタル酸にIまたはIPS、ビス(4-アミノ-3-メチル-シクロヘキシル)メタン(3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、CAS番号6864-37-5としても知られている)にMACM、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、CAS番号1761-71-3としても知られている)にPACM、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、CAS番号65962-45-0としても知られている)にTMDC。略語HMDAは、1,6-ヘキサンジアミン(ヘキサメチレンジアミンとしても知られる)のために以下で使用される。
【0026】
部分結晶性ポリアミドと比較して、非晶質ポリアミドは、全く融解熱を示さないか、または非常に低い、ほとんど検出できない融解熱を示す。ISO11357(2013)による示差走査熱量測定(DSC)において、非晶質ポリアミドは、好ましくは3J/g未満、特に好ましくは0~1J/gの融解熱を20K/分の加熱速度で示す。非晶質ポリアミドは、その非晶質性に起因する融点を有さない。
【0027】
ガラス転移温度に加えて、部分結晶性ポリアミドは顕著な融点を有し、ISO11357(2013)による示差走査熱量測定(DSC)において、好ましくは少なくとも15J/g、好ましくは少なくとも20J/g、特に好ましくは25~80J/gの範囲の融解熱を20K/分の加熱速度で示す。
【0028】
本発明によるポリアミドXに関して、使用されるジカルボン酸およびジアミンコンポーネントおよび任意のラクタム/アミノカルボン酸または単官能性調節剤のモノマーは、繰り返し単位、および/またはそれぞれのモノマーから誘導されるアミドの形態の末端基を縮合の結果として構築する。これらは通常、ポリアミド中に存在する全ての繰り返し単位および末端基の少なくとも95mol%、特に少なくとも99mol%を構成する。さらに、ポリアミドは、モノマー、例えばジアミンの分解または副反応から生じ得る少量の他の繰り返し単位を有することもできる。
ポリアミドX
【0029】
本発明によるポリアミドは、ポリアミド単位AB/AC/AE/DB/DC/DE/Fを有するポリアミドXであり、ポリアミド単位ACに加えて、ポリアミド単位AB、AE、DB、DC、DEおよびFからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるポリアミド単位が存在しなければならない。これは、ACに対応しないポリアミド単位および少なくとも1つの他のポリアミド単位が任意であり、最も単純なケースではポリアミドXが2つのポリアミド単位のみを含むことを意味する。モノマー単位A、B、C、D、EおよびFは、ポリアミドX中でアミド結合している以下の二官能性分子、モノマーから誘導される。
【0030】
ポリアミドXを製造するための可能なモノマーとしては、コンポーネントA、B、C、D、EおよびFが挙げられる:
A 脂肪族ジアミン、好ましくは6~12個のC原子を有する脂肪族ジアミン;
B 芳香族リン非含有ジカルボン酸、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸またはそれらの混合物;
C 式1、2および/または3によるリン含有芳香族ジカルボン酸(式中、置換基R1、R2の各々は独立してC1~C8-アルキルまたはアリールであり、置換基R3、R4、R5の各々は独立してH、アルキル、アリール、F、Cl、BrまたはP(R1)(R2)Oである);
D 芳香族構造単位を有するジアミン;
E 脂肪族ジカルボン酸、好ましくは6~18個の炭素原子を有する非環式脂肪族ジカルボン酸;
F α,ω-アミノカルボン酸、ラクタム。
【0031】
ポリアミドX中で使用され、存在する、使用される総ジアミンおよび総ジカルボン酸の好ましいモル比は、1.06:1~1:1.06、特に好ましくは1.03:1~1:1.03、特に好ましくはポリアミドX中の1.01:1:1.01のモル比である。
【0032】
好ましい実施形態によれば、脂肪族ジアミンAは、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、特に1,6-ヘキサンジアミン、2,2,4トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、特に1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、1,4-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、ビス-(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMDC)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。6~12個の炭素原子を有するジアミン、特に1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪族ジアミンAが特に好ましい。
【0033】
コンポーネントBとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ジフェニル-イソプロピリデンジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、2,5-アントラセン-ジカルボン酸、4,4’-p-テルフェニレンジカルボン酸および2,5-ピリジンカルボン酸からなる群から好ましく選択される、芳香族リン非含有ジカルボン酸が用いられる。テレフタル酸またはイソフタル酸とテレフタル酸との混合物として選択される芳香族ジカルボン酸Bが特に好ましい。
【0034】
さらに好ましい実施形態によれば、リン含有芳香族ジカルボン酸Cは、3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニルジメチルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジメチルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシドからなる群から選択され、特に好ましくは3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシドとして選択される。3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシドは、式1によるジカルボン酸であり、式中、置換基R1およびR2はフェニルであり、置換基R3、R4およびR5は水素である。
【0035】
本発明のさらに好ましい実施形態は、ジアミンDが、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン(PXDA)およびそれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。m-キシリレンジアミンとして選択されるジアミンDが特に好ましい。
【0036】
本発明のさらに好ましい実施形態は、脂肪族ジカルボン酸Eが、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、アジピン酸、1,7-ヘプタン二酸、1,8-オクタン二酸、1,9-ノナン二酸、1,10-デカン二酸、1,11-ウンデカン二酸、1,12-ドデカン二酸、1,13-トリデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、1,15-ペンタデカン二酸、1,16-ヘキサデカン二酸、1,17-ヘプタデカン二酸、1,18-オクタデカン二酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。6~18個の炭素原子を有するジカルボン酸、特にアジピン酸、1,10-デカン二酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、1,16-ヘキサデカン二酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪族ジカルボン酸Eが特に好ましい。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、α,ω-アミノカルボン酸またはラクタムFは、カプロラクタム、ウンデカノラクタム、ラウリンラクタム、α,ω-アミノカプロン酸、α,ω-アミノヘプタン酸、α,ω-アミノオクタン酸、α,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノデカン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)およびα,ω-アミノドデカン酸(ADA)からなる群から選択され、特に好ましくはα,ω-アミノウンデカン酸、カプロラクタムおよびラウリンラクタムならびにそれらの混合物である。
【0038】
さらに、ポリアミドXは、単官能性調節剤Gとして重合された、少なくとも1種の単官能性カルボン酸G1または単官能性アミンG2を含むことができる。単官能性調節剤Gは、本発明に従って製造されたポリアミドの最終的なキャッピングに使用される。ポリアミド縮合の反応条件下で利用可能なアミノ基の少なくとも一部と反応することができる全てのモノカルボン酸G1が、原理的に適している。好適なモノカルボン酸G1は、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸および芳香族モノカルボン酸である。これらには、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n-、イソ-または三級酪酸、吉草酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、オエナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバル酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、メチル安息香酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの混合物が含まれる。酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ステアリン酸およびそれらの混合物から選択されるモノカルボン酸G1が特に好ましい。特定の実施形態において、脂肪族ポリアミド(X)は、モノカルボン酸G1として重合された安息香酸のみを含有する。
【0039】
ポリアミドXは、少なくとも1つの重合モノアミンG2を含んでいてもよい。モノアミンG2は、本発明に従って製造されたポリアミドの最終的なキャッピングとして使用される。ポリアミド縮合の反応条件下で利用可能なカルボン酸基の少なくとも一部と反応することができる全てのモノアミンが、原理的に適している。脂肪族モノアミンは、好ましいモノアミンG2である。これらには、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0040】
ポリアミドXは、それぞれポリアミド単位ACと少なくとも1つのさらなるポリアミド単位AB、AE、DB、DC、DE、Fとの合計に基づいて、1~99mol%、好ましくは10~90mol%、特に好ましくは10~60mol%のポリアミド単位ACの含有量、および1~99mol%、好ましくは10~90mol%、特に好ましくは40~90mol%の少なくとも1つのさらなるポリアミド単位の含有量を有することが好ましい。
【0041】
ポリアミドXは、コンポーネントA~Fに関して以下の選択群の少なくとも1つが選択され、特に好ましくはコンポーネントA、BおよびCまたはA、B、CおよびEの選択群が選択され、特に好ましくはすべての選択群が同時に選択されることがさらに好ましい:
A:1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)からなる群から選択される脂肪族ジアミンA;
B:芳香族リン非含有ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸およびそれらの混合物からなる群から選択される;
C:リン含有芳香族ジカルボン酸Cは、3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニルジメチルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジメチルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシドからなる群から選択され、特に好ましくは3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニル-ジメチルホスフィンオキシドまたは3,5-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシドとして選択される;
D:芳香族構造単位を有するジアミンは、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される;
E:脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、1,10-デカン二酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、1,16-ヘキサデカン二酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される;
F:α,ω-アミノカルボン酸またはラクタムFは、α,ω-アミノウンデカン酸、カプロラクタムおよびラウリンラクタムならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
好ましい実施形態では、ポリアミドXは、少なくとも1つのさらなるポリアミド単位がAB、AEおよびFからなる群から選択されるポリアミドであり、ここで、それぞれポリアミド単位AB、AC、AEおよびFの合計に基づいて、ポリアミド単位ACの含有量は、1~99mol%、好ましくは10~90mol%、特に好ましくは10~60mol%であり、ポリアミド単位AB、AEおよびFの含有量の合計は、1~99mol%、好ましくは10~90mol%、特に好ましくは40~90mol%である。
【0043】
別の好ましいポリアミドは、少なくともポリアミド単位ABおよびACを含むポリアミドXであり、それぞれポリアミド単位ABおよびACの合計に基づいて、ポリアミド単位ABの含有量は1~99mol%、好ましくは10~90mol%、より好ましくは40~90mol%であり、ポリアミド単位ACの含有量は1~99mol%、好ましくは10~90mol%、より好ましくは10~60mol%である。
【0044】
別の好ましいポリアミドは、少なくともポリアミド単位AB、ACおよびAEを含むポリアミドXであり、それぞれポリアミド単位AB、ACおよびAEの合計に基づいて、ポリアミド単位ACの含有量は1~99mol%、好ましくは10~90mol%、より好ましくは10~60mol%であり、ポリアミド単位ABまたはABおよびAEの含有量は1~99mol%、好ましくは10~90mol%、より好ましくは40~90mol%である。
【0045】
好ましい実施形態では、ポリアミドXは、少なくともポリアミド単位ABおよびACを含むポリアミドであり、モノマー単位A、BおよびCは、好ましくはポリアミドX中でアミド結合している以下の分子から誘導される:
A:1,6-ヘキサンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)からなる群から選択される非環式脂肪族ジアミン;
B:芳香族リン非含有ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸およびそれらの混合物からなる群から選択される;
C:リン含有芳香族ジカルボン酸は、3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニルジメチルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジメチルホスフィンオキシド、2,4-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシドからなる群から選択される。
【0046】
芳香族ジカルボン酸Bが、テレフタル酸またはテレフタル酸とイソフタル酸との混合物からなる群から選択されるポリアミドXも好ましい。
【0047】
別の好ましい選択肢は、ポリアミド単位ABがポリアミド単位6I、6T、8I、8T、9I、9T、10I、10T、12I、12T、6T/6I、9T/9I、10T/10I、12T/12I、6T/10T、6T/9T、6T/8T、BACI、BACT、BACT/BACI、BACT/6T、BACT/10Tからなる群から選択され、かつ/またはポリアミド単位AEがポリアミド単位66、610、611、612、614、616、618、106、1010、1011、1012、1014、1016、1018、BAC6、BAC10、BAC11、BAC12、BAC14、BAC16からなる群から選択される、ポリアミドXである。
【0048】
別の好ましい選択肢は、少なくともポリアミド単位ABおよびACを含むポリアミドXであり、ポリアミド単位ABは、
(a1)60~100重量部、好ましくは60~80重量部、特に好ましくは67重量部の、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび/または1,10-デカンジアミンと組み合わせたテレフタル酸から誘導されるポリアミド単位AB、
(a2)0~40重量部、好ましくは20~40重量部、特に好ましくは33重量部の、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび/または1,10-デカンジアミンと組み合わせたイソフタル酸から誘導されるポリアミド単位ABからなり、
コンポーネント(a1)および(a2)の重量部を合わせて、ポリアミド単位ABに基づいて100重量部になる。
【0049】
コンポーネントA~Fに加えて、さらなるコンポーネントとして単官能性調節剤Gも含有し得るポリアミドXがとりわけ好ましい。
【0050】
ポリアミドXがポリアミド単位ACおよびABおよび/またはAEのみからなる場合も好ましい。したがって、この場合、ポリアミドXはAB/AC、AC/AEまたはAB/AC/AE系であり、他のコンポーネントとして単官能性調節剤Gも含有し得る。それぞれポリアミド単位AB、ACおよびAEの合計に基づいて、ポリアミド単位ACの含有量は、好ましくは1~99mol%、特に好ましくは10~90mol%、特に好ましくは10~60mol%であり、ポリアミド単位ABおよび/またはAEの含有量は、好ましくは1~99mol%、特に好ましくは10~90mol%、特に好ましくは10~40mol%である。
【0051】
ポリアミド単位ABおよびACのみ、またはポリアミド単位ACおよびAEのみを含むポリアミドXが特に好ましい。
【0052】
別の特に好ましい選択肢は、ポリアミド単位ABおよびACのみを含むポリアミドXであり、脂肪族ジアミンAは、1,6-ヘキサンジアミン、1,10-デカンジアミンおよびそれらの混合物として選択され、芳香族ジカルボン酸Bは、テレフタル酸またはテレフタル酸とイソフタル酸との混合物から選択され、リン含有芳香族ジカルボン酸Cは、3,5-ジカルボキシフェニルジフェニルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニル-ジメチルホスフィンオキシド、3,5-ジカルボキシフェニルジエチルホスフィンオキシドおよびそれらの混合物から選択される。
【0053】
ポリアミドXは、好ましくは、少なくとも15J/g、特に好ましくは少なくとも20J/gの融解エンタルピーを有する部分結晶性ポリアミドである。
【0054】
前縮合物の形態のポリアミドXは、好ましくは、ISO 307:2007に従って20℃で100mlのm-クレゾール中の0.5gのポリマー顆粒の溶液を使用して決定される、1.08~1.39の範囲、特に好ましくは1.10~1.35の範囲、特に1.12~1.30の範囲の溶液粘度ηrelを有する。
【0055】
高分子量の、または前縮合物の形態のポリアミドXは、好ましくは、ISO 307:2007に従って20℃で100mlのm-クレゾール中の0.5gのポリマー顆粒の溶液を使用して決定される、1.40~2.50の範囲、好ましくは1.45~2.20の範囲、特に1.50~2.00の範囲の溶液粘度ηrelを有する。
【0056】
ポリアミドXは、好ましくは少なくとも1.0重量%のリン含有量、より好ましくは1.5~7重量%の範囲、より好ましくは1.7~4.0重量%の範囲のリン含有量を有する。
【0057】
本発明によるポリアミドは、良好な防炎を有し、好ましくは、予め23℃で相対湿度50%の基準気候で48時間調整されるか、または対流式オーブン内で70℃で7日間保管された、127x12.7x0.35mm、127x12.7x0.5mm、127x12.7x0.75mm、127x12.7x1.5mmおよび127x12.7x3.0mmの寸法の試験片に対するUL94(Underwriters Laboratoriesの「Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Applications」)に従って決定された防炎分類V0を有する。
【0058】
ポリアミドXの製造は、好ましくは、少なくとも1つの芳香族リン非含有ジカルボン酸Bおよび/または脂肪族ジカルボン酸E、式1、2および/または3による少なくとも1つのリン含有芳香族ジカルボン酸C(式中、置換基R1、R2の各々は独立してC1~C8-アルキルまたはアリールであり、置換基R3、R4、R5の各々は独立してH、アルキル、アリール、F、Cl、BrまたはP(R1)(R2)Oである)、および少なくとも1つの脂肪族ジアミンA、および必要に応じてさらなるモノマーDおよびFの間で、場合により単官能性調節剤Gおよび/またはプロセスのための補助材料の存在下で重縮合反応させることを含む。
【0059】
プロセスのための好ましい補助材料は、無機および有機安定剤、触媒および消泡剤である。リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸などのリン化合物および/または一価から三価のカチオンを含むそれらの塩、例えばNa、K、Mg、Ca、ZnもしくはAl、および/またはそれらのエステル、例えばトリフェニルホスファート、トリフェニルホスファイトもしくはトリス-(ノニルフェニル)-ホスファイトが好ましい触媒である。次亜リン酸類およびそれらの塩、例えば次亜リン酸ナトリウムが触媒として特に好ましい。
【0060】
モノマーA~Fから出発して、ポリアミドXは、圧力容器内で、3000g/mol超、特に好ましくは4000~20,000g/molの範囲の好ましい数平均モル質量(Mn)を有する高分子量ポリマーに、またはより低い数平均モル質量(Mn)、好ましくは3000g/mol未満、特に好ましくは800~2500g/molの範囲のいわゆる前縮合物に重縮合され得る。前縮合物は、後の段階で固相および/または溶融材料後縮合によって、3000g/mol超、特に好ましくは4000g/mol超、特に4000~20,000g/molの範囲の好ましい数平均モル質量(Mn)を有する高分子量のポリマーに変換することができる。
【0061】
少なくともポリアミド単位ACと、少なくとも1つのさらなるポリアミド単位AB、AE、DB、DC、DEまたはFとを含むポリアミドXの製造方法は、好ましくは加圧容器中で行われ、コンポーネントA、Cおよび少なくとも1つのさらなるコンポーネントB、D、E、F、ならびに必要に応じて単官能性調節剤Gおよびプロセスのための補助材料および水を混合した後、240℃~330℃での圧力段階を実施し、続いて240℃~320℃で展開し、続いて240℃~320℃で脱気し、ストランド形態または粉末形態のポリアミドを排出させ、冷却し、ストランドを造粒し、顆粒または粉末を乾燥させる。
【0062】
それらの融点またはガラス転移温度に応じて、前縮合物は、固相で150~300℃の範囲の温度で後縮合され得る。溶融材料の後縮合は、好ましくは、押出機において300~400℃の温度で行われる。好ましくは、2つ以上の異なる前縮合物の混合物を、後縮合を使用して高分子量のポリアミドに変換することもできる。本発明によるポリアミドXの前縮合物は、ポリアミド単位ACを含有しない別の前縮合物と一緒に後縮合して、高分子量のポリアミドXを形成することもできる。
【0063】
加えて、本発明は、ポリアミドX、および少なくとも一つの充填剤および/または少なくとも一つの添加剤、および/またはポリアミドXとは異なる少なくとも一つのポリアミドYを含む、ポリアミド成形化合物FMの提供も包含する。
【0064】
ポリアミドYは、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド616、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1014、ポリアミド1016、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/12、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/10Tまたはそれらの混合物からなる群から選択される。ポリアミド6T/6I、6T/66、6T/10Tおよびこれらの混合物がポリアミドYとして特に好ましい。
【0065】
好ましい実施形態では、ポリアミド成形化合物FMは、以下のコンポーネントを含有するか、または好ましくは以下のコンポーネントからなり、コンポーネントS、TおよびXを合わせて100重量%を占める:
25~99.99重量%のポリアミドX
0~70重量%の少なくとも1つの充填剤T;
0.01~50重量%の、XおよびT以外の少なくとも1つの添加剤S。
【0066】
本発明の特に好ましい実施形態では、ポリアミド成形化合物FMは、以下のコンポーネントを含有するか、または好ましくは以下のコンポーネントからなり、コンポーネントP、SおよびTを合わせて100重量%となる:
25~100重量%のポリマー混合物Pであって、
20~80重量%のポリアミドXおよび
20~80重量%の、ポリアミドXとは異なるポリアミドY、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド616、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1014、ポリアミド1016、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/12、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/10Tまたはそれらの混合物からなる群から選択されるポリアミドYを含み、
XとYの合計がポリマー混合物Pの100重量%ある、ポリマー混合物P;
0~70重量%の少なくとも1つの充填剤T;
0~50重量%の、X、YおよびT以外の少なくとも1つの添加剤S。
【0067】
コンポーネントXおよびYのみを含むポリマー混合物Pが特に好ましい。
【0068】
ポリアミドYは、ポリアミド単位ACおよびDCを含まない、すなわちコンポーネントCを含まないポリアミドである。ポリアミドYは、ポリアミド単位AB、AE、DB、DE、Fの少なくとも1つを含むことが好ましい。好ましい実施形態では、ポリアミドYはポリアミド単位AEおよび/またはFのみを含有し、すなわち脂肪族ポリアミドであることが好ましい。この場合、ポリアミドYが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド616、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1014、ポリアミド1016、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/12、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/10Tまたはそれらの混合物からなる群から選択されれば、特に好ましい。
【0069】
本発明によるポリアミド成形化合物FMは、コンポーネントXおよびSまたはX、TおよびSおよび/またはP、またはPおよびSまたはP、TおよびSを含有するか、または好ましくはコンポーネントXおよびSまたはX、TおよびSまたはPまたはPおよびSまたはP、TおよびSのみからなるが、但しコンポーネントX、T、SまたはP、T、Sの合計は100重量%である。個々のコンポーネントX、T、SまたはP、T、Sの量の特定の範囲は、すべてのコンポーネントX、T、SまたはP、T、Sの合計が100重量%であることを指示する厳密な含量要件が満たされている限り、特定の範囲内の個々のコンポーネントのそれぞれについて任意の量を選択できるように理解されるべきである。
【0070】
ポリマー混合物のリン含有量は、好ましくは0.8~6.0重量%の範囲、特に好ましくは1.2~4.5重量%の範囲、特に好ましくは1.5~3.5重量%の範囲である。
【0071】
コンポーネントTは、ポリアミド成形化合物FM中の重量パーセンテージが0~70%の充填剤である。充填剤は、繊維状および粒子状の形態で、個別に、または混合物として存在することができる。したがって、コンポーネントTは、繊維状充填剤(補強剤)または粒子状充填剤、または補強剤と粒子状充填剤との混合物さえも含有することができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、コンポーネントTは、ポリアミド成形化合物FM中に、10~60重量%、より好ましくは20~55重量%、特に好ましくは25~50重量%の量で存在し、ここでこれらの量は、コンポーネントX、T、Sの合計、またはコンポーネントP、T、Sの合計、またはポリアミド成形化合物FMの総重量を参照する。
【0073】
コンポーネントTが、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維およびそれらの混合物からなる群から選択される補強剤のみからなれば、特に好ましい。本発明によるポリアミド成形化合物の好ましい実施形態によれば、コンポーネントTは完全にガラス繊維から形成される。
【0074】
使用されるガラス繊維は、環状(または同義的に円形)または非環状(または同義的に平坦)のいずれかの断面積を有し、後者の場合、一次断面軸と二次断面軸との寸法比は少なくとも2、好ましくは2~6の範囲である。
【0075】
ガラス繊維による補強は、短繊維(例えば、2~50mmの長さを有する切断ガラス)または連続繊維(長ガラスまたはロービング)を使用して行うことができる。好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるガラス繊維は、6~20μm、好ましくは9~12μmの範囲の直径を有する短ガラス繊維である。ガラス繊維は、2~50mmの長さを有する切断ガラスの形態である。Eおよび/またはSガラス繊維は、特に本発明に従って使用される。しかしながら、他のすべてのタイプのガラス繊維、例えばA、C、D、M、Rガラス繊維、またはそれらの任意の混合物、またはEおよび/もしくはSガラス繊維との混合物も使用することができる。種々のアミノシランのサイジングなど、ポリアミド用の通常のサイジングが使用され、高温安定サイジングが好ましい。
【0076】
平坦なガラス繊維、すなわち非円形断面積を有するガラス繊維の場合、一次断面軸の、それに垂直な二次断面軸に対する寸法比、すなわち少なくとも2、好ましくは2.5~4.5、特に3~4の比を有するものが好ましい。これらのいわゆる平坦なガラス繊維は、楕円形、長円形、楕円形(いわゆる繭繊維)、多角形、長方形、またはほぼ長方形の、狭窄された断面積を有する。使用される平坦なガラス繊維の別の特徴的な形質は、一次断面軸の長さが好ましくは6~40μmの範囲、特に15~30μmの範囲であり、二次断面軸の長さが3~20μmの範囲、特に4~10μmの範囲であることである。
【0077】
円形および非円形断面を有するガラス繊維の混合物を使用して、本発明による成形化合物を補強することもでき、平坦なガラス繊維の割合が優勢である、すなわち繊維の総質量の50重量%を超えることが好ましい。ガラス繊維には、アミノまたはエポキシシラン化合物に基づく接着促進剤を含む熱可塑性樹脂、特にポリアミドに適したサイジングを施すことができる。
【0078】
コンポーネントTの平坦なガラス繊維は、好ましくは、52~62%の二酸化ケイ素、12~16%の酸化アルミニウム、16~25%の酸化カルシウム、0~10%のホウ砂、0~5%の酸化マグネシウム、0~2%のアルカリ酸化物、0~1.5%の二酸化チタンおよび0~0.3%の酸化鉄の組成を有する、非円形断面を有する、ASTM D578-00によるEガラス繊維として選択される。コンポーネント(T)のガラス繊維は、平坦なEガラス繊維であり、好ましくは、2.54~2.62g/cmの密度、70~75GPaの引張弾性率、3000~3500MPaの引張強度および4.5~4.8%の破断伸びを有し、機械的特性は、23℃および相対湿度50%で、直径10μmおよび長さ12.7mmの単繊維について決定された。
【0079】
コンポーネントTはまた、必要に応じて、以下の群:カオリン、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、タルク、マイカ、ケイ酸塩、石英、ウォラストナイト、非晶質ケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、石灰、長石、固体または中空ガラスビーズまたは粉砕ガラス、特に粉砕ガラス繊維およびこの群の構成要素の混合物から選択される、表面処理された形態の他の粒状充填剤を含有してもよい。5~100μmの範囲の平均直径を有するマイクロガラスビーズは、これらが成形部品に等方性を与え、したがって低反りの成形部品の製造を可能にする傾向があるので、充填剤として特に好ましい。
【0080】
本発明の好ましい実施形態によれば、コンポーネントTは、ガラス繊維、粉砕ガラス繊維、ガラス粒子、ガラスフレーク、ガラス球、中空ガラス球またはそれらの組み合わせを含む群から選択されるガラス充填剤のみからなる。ガラス球またはガラス粒子がコンポーネントTとして選択される場合、それらの平均直径は0.3~100μm、好ましくは0.7~30μm、特に好ましくは1~10μmである。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態は、コンポーネントTのガラスタイプが、E-ガラス、ECR-ガラス、S-ガラス、A-ガラス、AR-ガラスおよびR-ガラス、特にE-およびS-ガラス、ならびにこれらのガラスタイプの混合物からなる群から選択されることを意図する。
【0082】
好ましい実施形態によれば、コンポーネントTは、高強度ガラス繊維またはいわゆるSガラス繊維である。これは、好ましくは、三成分系の二酸化ケイ素-酸化アルミニウム-酸化マグネシウムまたは四成分系の二酸化ケイ素-酸化アルミニウム-酸化マグネシウム-酸化カルシウムに基づいており、好ましい組成は、58~70重量%の二酸化ケイ素(SiO)、15~30重量%の酸化アルミニウム(Al)、5~15重量%の酸化マグネシウム(MgO)、0~10重量%の酸化カルシウム(CaO)、0~2重量%の他の酸化物、例えば二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ホウ素(B)、二酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、酸化ナトリウム、酸化カリウムおよび酸化リチウム(LiO)である。
【0083】
高強度ガラス繊維が以下の組成:62~66重量%の二酸化ケイ素(SiO)、22~27重量%の酸化アルミニウム(Al)、8~12重量%の酸化マグネシウム(MgO)、0~5重量%の酸化カルシウム(CaO)、0~1重量%の他の酸化物、例えば二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ホウ素(B)、二酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、酸化ナトリウム、酸化カリウムおよび酸化リチウム(LiO)を有すれば、特に好ましい。
【0084】
高強度ガラス繊維(Sガラス繊維)は、好ましくは少なくとも3700MPa、好ましくは少なくとも3800または4000MPaの引張強度、および/または少なくとも4.8%、好ましくは少なくとも4.9または5.0%の破断伸び、および/または75GPa超、好ましくは78または80GPa超の引張弾性率を特徴とし、これらのガラス特性は、23℃の温度および50%の相対湿度で、10μmの直径および12.7mmの長さを有する単繊維(初期の単繊維)で決定される。
【0085】
本発明によるポリアミド成形化合物FMは、コンポーネントX、TおよびYとは異なる、0~50重量%の少なくとも1つの添加剤をコンポーネントSとして含有する。
【0086】
好ましい実施形態によれば、本発明に係るポリアミド成形化合物FMは、0.01~50重量%または0.01~30重量%、特に好ましくは0.02~20重量%の、コンポーネントSとしての少なくとも1つの添加剤を含有し、これらの量は、コンポーネントX、T、Sの合計、またはコンポーネントP、T、Sの合計、またはポリアミド成形化合物FMの総重量を参照する。
【0087】
好ましい実施形態によれば、コンポーネントSは、潤滑剤、熱安定剤、加工安定剤、加工助剤、粘度調整剤、酸化遅延剤、熱分解および紫外線による分解を防ぐ薬剤、UV遮断剤、摩擦防止剤および離型剤、着色剤、特に染料、無機顔料、有機顔料、可塑剤、難燃剤、衝撃強度調整剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0088】
ポリアミド成形化合物FMは、難燃性を向上させるために、添加剤として難燃剤を含有することもでき、難燃性添加剤はハロゲンフリーであることが好ましい。好ましい難燃性添加剤は、ホスフィン酸塩および/またはジホスフィン酸塩であり、これらは好ましくは、相乗剤、特に窒素含有相乗剤および/または窒素およびリン含有難燃剤、好ましくはメラミンまたはメラミンの縮合生成物、例えば特に好ましくは、メレム(Melem)、メラム(Melam)、メロン(Melon)、メラミンとポリリン酸との凝固生成物、例えばポリリン酸メラミン、メラミンとポリリン酸との縮合生成物の凝固生成物またはそれらの混合物の群から選択される。ホスフィン酸塩の中でも、アルキルまたはジアルキルホスフィン酸のアルミニウム、カルシウムまたは亜鉛塩、特にジエチルホスフィン酸アルミニウムが特に好ましい。
【0089】
さらなる実施形態では、相乗剤は、好ましくは酸素、窒素または硫黄含有金属化合物として選択される。好ましい金属としては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ナトリウム、カリウムおよび亜鉛が挙げられる。適切な化合物は、酸化物、水酸化物、カーボネート、シリケート、ボラート、ホスファート、スズ酸塩、アルコキシド、カルボキシレートおよびこれらの化合物の組み合わせまたは混合物、例えば酸化物-水酸化物または酸化物-水酸化物-カーボネートの群から選択される。これについての例は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、ジヒドロタルサイト、ハイドロカルマイト、水酸化カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、酸化スズ水和物、水酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性ケイ酸亜鉛、スズ酸亜鉛が挙げられる。ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸カリウム、ベヘン酸マグネシウムなどの系を使用することも可能である。
【0090】
本発明によるホスフィン酸塩の製造に適したホスフィン酸は、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル-n-プロピルホスフィン酸、メタン-ジ(メチルホスフィン酸)、エタン-1,2-ジ(メチルホスフィン酸)、ヘキサン-1,6-ジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸である。ホスフィン酸塩は、例えば、ホスフィン酸を水溶液中で金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物と反応させることによって製造することができ、それによって本質的に単量体のホスフィン酸塩が形成され、反応条件に応じて、おそらくは高分子ホスフィン酸塩も形成される。
【0091】
好ましくは、コンポーネントSのこれらのハロゲンフリー難燃性添加剤の含有量は、いずれの場合も全成形化合物FMに基づいて、最大10重量%、特に好ましくは最大5重量%であり、特に好ましくは、成形化合物FMは難燃性添加剤Sを含まない。
【0092】
特に好ましい実施形態によれば、ポリアミド成形化合物FMは、コンポーネントSとして少なくとも1つの潤滑剤を、それぞれコンポーネントX、T、SまたはP、T、Sまたは成形化合物FMの総重量に基づいて、好ましくは0~2重量%、特に好ましくは0.01~2.0重量%、特に好ましくは0.01~1.5重量%、最も好ましくは0.02~1.0重量%の割合で含有する。ここで好ましい選択肢には、アルカリ塩、アルカリ性塩、アルカリ土類塩、10~44個のC原子、好ましくは14~44個のC原子を有する脂肪酸のエステルまたはアミドが含まれ、金属イオンNa、Mg、CaおよびAlが好ましく、CaまたはMgが特に好ましい。特に好ましい金属塩としては、ステアリン酸Caおよびモンタン酸Caならびにステアリン酸Alが挙げられる。脂肪酸は、一価または二価であり得る。この例としては、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸および特に好ましいステアリン酸、カプリン酸およびモンタン酸(30~40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0093】
一価~四価であり得る脂肪族アルコールも潤滑剤として好ましい。これらのアルコールは、好ましくは、n-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、ペンタエリスリトールおよびそれらの混合物からなる群から選択され、グリセロールおよびペンタエリスリトールが好ましい。
【0094】
さらに、一価~三価であり得る脂肪族アミンが好ましい潤滑剤である。好ましいアミンは、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6-アミノヘキシル)アミンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。
【0095】
脂肪酸の好ましいエステルまたはアミドは、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールトリラウレート、グリセロールモノベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。さらに、ホワイトオイルまたはシリコーンオイルも代替的または追加的に使用することができる。
【0096】
さらに好ましい実施形態によれば、ポリアミド成形化合物FMは、コンポーネントSとして少なくとも1つの熱安定剤を含有し、これは好ましくは、それぞれコンポーネントX、T、SまたはP、T、Sまたは成形化合物FMの総重量に基づいて、0~3重量%、特に好ましくは0.02~2.0重量%の割合で存在する。
【0097】
好ましい実施形態によれば、熱安定剤は、以下からなる群から選択される。
・一価または二価の銅の化合物、例えば無機もしくは有機酸または一価もしくは二価のフェノールを含む、一価または二価の銅の塩、一価または二価の銅の酸化物、または銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアニドもしくはホスフィンとの錯体化合物、好ましくはハロゲン化水素酸、シアン化水素酸のCu(I)もしくはCu(II)塩または脂肪族カルボン酸の銅塩。特に好ましい化合物は、一価銅化合物CuCl、CuBr、CuI、CuCNおよびCuO、ならびに二価銅化合物CuCl、CuSO、CuO、酢酸銅(II)またはステアリン酸銅(II)を含む。有利には、銅化合物は、他の金属ハロゲン化物、特にアルカリ金属ハロゲン化物、例えばNal、KI、NaBr、KBr、またはハロゲン化アンモニウムと組み合わせて使用され、ハロゲン化銅に対するハロゲン化金属のモル比は0.5~20、好ましくは1~10、特に好ましくは3~7である。
・酢酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ハロゲン化酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クロム酸塩、過塩素酸塩、シュウ酸塩、硫黄、セレンおよびテルルのモノカルコゲン化物、炭酸塩、水酸化物、酸化物、トリフルオロメタンスルホン酸塩、アセチルアセトネート、アルコラート、ランタニドランタンの2-エチルヘキサノエート、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムからなる群から選択されるランタニド化合物、ならびに上記の塩の水和物および上記の化合物の混合物。セリウムまたはランタン化合物が特に好ましく、水酸化ランタン(III)、水酸化酸化ランタン(III)および四水酸化セリウムの使用がここでは特に好ましい。さらに、ランタニド化合物のカチオンは、酸化数が+IIIまたは+IVであることが好ましい。ランタニド化合物は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物および/または上述の銅化合物と組み合わせて使用されることが好ましい。
・第二級芳香族アミンに基づく安定剤であって、0.2~2、好ましくは0.2~1.5重量%の量で好ましく存在する安定剤、
・立体障害フェノールに基づく安定剤であって、0.1~1.5、好ましくは0.2~1.0重量%の量で好ましく存在する安定剤、
・ホスファイトおよびホスホナイト、ならびに
・上記安定剤の混合物。
【0098】
本発明に従って使用することができる二級芳香族アミンに基づく安定剤の特に好ましい例は、フェニレンジアミンとアセトンとの付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンとリノレンとの付加物、Naugard 445、N,N’-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、またはこれらのうちの2つ以上の混合物である。
【0099】
原則として、フェノール環上に少なくとも1つの立体要求が厳しい(sterically demanding)基を有するフェノール構造を有する全ての化合物は、立体障害フェノールとして適している。本発明に従って使用することができる立体障害フェノールに基づく安定剤の好ましい例は、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオンアミド、ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)-ブタン酸)-グリコールエステル、2,1’-チオエチルビス-(3-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、4-4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-tert.ブチルフェノール)、トリエチレングリコール3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネートまたはこれらの安定剤の2つ以上の混合物である。
【0100】
好ましいホスファイトおよびホスホナイトは、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルフェンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)-ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス-(tert-ブチルフェニル))ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ-[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチル-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイトである。特に、トリス[2-tert-ブチル-4-チオ(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル)-フェニル-5-メチル]フェニルホスファイトおよびトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos 168)が好ましい。
【0101】
熱安定剤の好ましい実施形態は、有機熱安定剤(特にIrgafos 168およびIrganox 1010)、ビスフェノールA系エポキシド(特にEpikote 1001)ならびにCuIおよびKIに基づく銅安定剤の組み合わせからなる。有機安定剤およびエポキシドからなる市販の安定剤混合物は、例えば、Irgatec NC66またはRecylobyk 4371である。CuIおよびKIのみに基づく熱安定化が特に好ましい。
【0102】
酸化遅延剤および熱安定剤の例としては、コンポーネントX、T、SまたはP、T、Sまたは成形化合物FMの総重量に基づいて最大1重量%の濃度の、ホスファイトおよび他のアミン(例えばTAD)、ヒドロキノン、これらの群の様々な置換された代表物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0103】
様々な置換レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンがUV安定剤として挙げられ、これらは一般にポリアミド成形化合物FMの重量に基づいて2重量%までの量で使用される。
【0104】
二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、群青、酸化鉄およびカーボンブラックおよび/またはグラファイトなどの無機顔料、ならびにフタロシアニン、キナクリドン、ペリレンなどの有機顔料、ならびにニグロシンおよびアントラキノンなどの染料を着色剤として添加することができる。
【0105】
コンポーネントSはまた、好ましくはポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、金属イオンによって部分的に中和され得るイオン性エチレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される衝撃強度調整剤を含み得る。好ましくは、衝撃強度調整剤は官能化されている。好ましくは、ポリアミド成形化合物FMは、0~35重量%、特に好ましくは5~20重量%の衝撃強度調整剤を含有する。
【0106】
本発明の好ましい実施形態によれば、コンポーネントSの衝撃強度調整剤は、共重合および/またはグラフト化によって官能化される。この目的のために、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物、および/または不飽和グリシジル化合物が特に好ましく使用される。これは、特に好ましくは、不飽和カルボン酸エステル、特にアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸無水物、特に無水マレイン酸、グリシジルアクリル酸、グリシジルメタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、テトラヒドロフタル酸、ブテニルコハク酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0107】
衝撃強度調整剤の官能化が共重合によって行われる場合、官能化に使用される個々の各化合物の重量割合は、それぞれにおいて官能化衝撃強度調整剤Sの総重量に基いて、好ましくは3~25重量%、特に好ましくは4~20重量%、特に好ましくは4.5~15重量%の範囲である。
【0108】
衝撃強度調整剤がグラフト化によって官能化される場合、官能化に使用される個々の各化合物の重量割合は、それぞれにおいて官能化衝撃強度調整剤Sの総重量に基いて、好ましくは0.3~2.5重量%、特に好ましくは0.4~2.0重量%、特に好ましくは0.5~1.9重量%の範囲である。
【0109】
好ましく選択される衝撃強度調整剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン-α-オレフィンコポリマー、プロピレン-α-オレフィンコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマーおよびそれらの混合物からなる群からのポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマーであり、α-オレフィンは、好ましくは3~18個の炭素原子を有する。α-オレフィンは、特に好ましくは、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。エチレン-α-オレフィンコポリマーの中でも、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-1-ブテンコポリマー、エチレン-プロピレン-1-ブテンコポリマーが好ましい。
【0110】
スチレンコポリマーは、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、アクリレートおよびそれらの混合物からなる群から選択されるコモノマーを有するスチレンコポリマーである。スチレンブロックコポリマーは、好ましくは、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロックコポリマー(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレントリブロックコポリマー(SIS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン/ポピレン-スチレントリブロックコポリマー(SEPS)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0111】
スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロックコポリマーは、1つのエチレン/ブチレンブロックおよび2つのスチレンブロックからなる直鎖トリブロックコポリマーである。スチレン-エチレン/プロピレン-スチレントリブロックコポリマーは、1つのエチレン/プロピレンブロックおよび2つのスチレンブロックからなる直鎖トリブロックコポリマーである。
【0112】
スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロックコポリマーまたはスチレン-エチレン/ポピレン-スチレントリブロックコポリマー中のスチレン含有量は、好ましくは20~45重量%、より好ましくは25~40重量%、最も好ましくは25~35重量%である。
【0113】
イオン性エチレンコポリマーは、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブチレン、アクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレートおよびそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーからなり、酸基は金属イオンで部分的に中和され、特に好ましいものとしては、酸基が金属イオンで部分的に中和されたエチレン-メタクリル酸コポリマーまたはエチレン-メタクリル酸-アクリレートコポリマーが挙げられる。中和に使用される金属イオンは、好ましくはナトリウム、亜鉛、カリウム、リチウム、マグネシウムイオンおよびそれらの混合物であり、特に好ましくはナトリウム、亜鉛およびマグネシウムイオンである。
【0114】
さらに、本発明は、好ましくは射出成形、射出ブロー成形、射出圧縮成形、引抜成形、溶融紡糸、押出またはブロー成形によって製造された、本発明によるポリアミドXまたはポリアミド成形化合物FMから製造された、またはポリアミドXまたはポリアミド成形化合物FMの少なくとも1つの領域またはコーティングを含む成形部品を含む。
【0115】
好ましくは、これらの成形部品は、繊維、フィルム、異形材、チューブ、容器、半製品、完成部品または中空部品、ハウジング、ハウジング部品、フレーム、保護ハウジング、カバーまたはクラッド要素、特に電気製品、電子機器、電気光学機器、電気光学部品、コネクタ、ファン、特にファンホイール、オフィスオートメーション装置、家電製品、自動車部門用の部品、特にシリンダヘッドカバー、エンジンカバー、中間冷却器用のハウジング、中間冷却器のフラップ、サクションパイプ、サクションマニホールド、コネクタ、ギヤホイール、ファンホイール、中間冷却器、ヘッドランプハウジング、リフレクタ、適応ヘッドライト調整装置、ギヤホイール、プラグ接続部、コネクタ、ガソリン、ディーゼル、尿素および圧縮空気ライン用のものを含むコネクタ、電気自動車用の部品、異形材、多層箔の箔または層、電子部品、電子部品用のハウジング、ツール、ノズル、およびホースまたはチューブを接続するための管継手、電気または電子部品、回路基板、回路基板の一部、ハウジング部品、フィルム、特にスイッチ、分配器、継電器、抵抗器、コンデンサ、コイル、ランプ、ダイオード、LED、トランジスタ、コネクタ、レギュレータ、メモリおよび/またはセンサの形態の回線からなる群から選択される。
【0116】
最後に、本発明は、特に繊維、フィルム、異形材、チューブ、容器、半製品、完成部品または中空部品の形態の前述の成形部品の製造のための、および成形部品をコーティングするための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミドXまたは請求項10~12のいずれか一項に記載のポリアミド成形化合物FMの使用も含む。
【発明を実施するための形態】
【0117】
測定方法:
相対粘度(溶液粘度ηrel
相対粘度は、ISO 307(2007)に従って20℃で測定した。この目的のために、0.5gのポリマー顆粒を100mlのm-クレゾールに溶解した。RV=t/tによる相対粘度(RV)の計算は、標準のセクション11に基づいていた。
【0118】
融点Tm及び融解エンタルピーΔHm
ISO 11357-3(2013)に従って、粒状物の融点および融解エンタルピーを決定した。DSC(示差走査熱量測定)測定は、20K/分の加熱速度で行った。
【0119】
ガラス転移温度Tg
ガラス転移温度Tgは、ISO 11357-2(2013)に従って示差走査熱量測定(DSC)を使用して顆粒上で決定した。2回目の加熱後、試験片をドライアイス中でクエンチした。ガラス転移温度(Tg)は、20K/分の加熱速度で行われた3回目の加熱中に決定された。「ハーフハイト」法を用いてガラス転移領域の中心を決定し、それをガラス転移温度として特定した。
【0120】
末端基(アミノおよびカルボキシ末端基)
アミノ(NH)および酸(COOH)末端基濃度を電位差滴定によって決定する。アミノ末端基については、0.2~1.0gのポリアミドを50mlのm-クレゾールおよび25mlのイソプロパノールの混合物に50~90℃で溶解し、アミノカプロン酸の添加後に0.05モル過塩素酸溶液で滴定する。COOH末端基を決定するために、0.2~1.0gの決定される試験片を溶解度に応じて100℃でベンジルアルコールまたはo-クレゾールとベンジルアルコールの混合物に溶解し、安息香酸を添加した後、0.1モルの水酸化テトラ-n-ブチルアンモニウム溶液で滴定する。
【0121】
数平均および重量平均モル質量(Mn、Mw)
ポリアミドの数平均および重量平均モル質量は、ユニバーサルポリ(メチルメタクリレート)較正を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。GPC分析は、ポリアミド顆粒2~4mgをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)1mlに溶解し、溶液を、三重検出器(屈折率検出器、粘度計および光散乱検出器)を備えたAgilent 1260 Infinity II高温GPCシステムに通すことによって行った。測定は、PL HFIPゲル(9μm粒径)2カラムシステムを使用して、以下の測定条件:カラム温度40℃、溶媒として20mmolのトリフルオロ酢酸ナトリウムを含むHFIP、流速1ml/分、注入体積100μl、の下で行った。
【0122】
試験片の作製およびUL 94試験(防炎分類)
可燃性は、IEC 60695-11-10に準拠したUL-94 VBによる縦方向燃焼試験により、127×12.7×0.5mmの試験片で試験した。圧縮成形プロセス(Lindenberg加熱プレス、320-330℃)を用いて試験片を作製した。試験片は、燃焼試験の前に、23℃および相対湿度50%の標準気候で48時間調整した。
【実施例
【0123】
ポリアミドPA-1-NK、PA-2-NK、PA-3-NKおよびPA-4-NKを2段階で重縮合させた。最初に、水の存在下でジアミンおよびジカルボン酸から低分子量の前縮合物(VK)を生成し、次いで、これを単独で、または別の前縮合物との混合物中で、固相および溶融材料の後縮合によって高分子量ポリアミド(NK)に変換した。
【0124】
実施例PA-1-VKからPA-4-VK
ジアミン(コンポーネントA)およびジカルボン酸(コンポーネントB、C、E)を、バッチ全体に対して15重量%の水と共に200mlのオートクレーブに投入し、バッチ全体で約100gが得られるように、個々の量を表1に示す組成に従って選択した。バッチを260℃の温度に加熱し、次いで、圧力段階中にこの温度で2.5時間維持した。次いで、形成された低分子量重縮合物を、開口部を通して蒸気でオートクレーブから取り出した。前縮合物を110℃および30mbarの真空で24時間乾燥させた後、後縮合に供した。
【0125】
実施例PA-1-NKからPA-4-NK
実施例PA-1-NK、PA-2-NKおよびPA-3-NKでは、それぞれの前縮合物単独(PA-1-VK、PA-2-VK、PA-3-VK)を、実施例PA-4-NKでは、2つのポリアミド前縮合物(重量比1:1のPA-4-VKおよびPA-5-VK)の混合物を以下に記載されるように2段階で後縮合させた。
【0126】
第1段階では、前縮合物をBinder VDL53真空炉内で200℃および30mbarで24~120時間の期間にわたって固相で後縮合させた後、第2段階で300~330℃でマイクロコンパウンダー(Xplore MC 15HT)中でさらに重縮合させた。マイクロ押出機は、2つの弁と、材料をマイクロ押出機の上端にフィードバックすることができる加熱チャネルとを備えている。短いスクリュー長さにもかかわらず、この閉ループ動作のおかげで数分の滞留時間を達成することができる。実施例における平均滞留時間は5分、スクリュー速度は50rpm、スクリュートルクは40Nm、シリンダーの温度は330℃、押出された溶融物の温度は322℃であった。ポリアミドを金属タンクに移し、空気雰囲気中で周囲温度に冷却した。次いで、ポリマー試験片を造粒し(Hellweg M50/80)、顆粒を減圧下(30mbar)110℃で24時間乾燥させた。


【表1】
【国際調査報告】