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特表2024-532605チオトロピウム臭化物を含む水中油型エマルジョンゲル
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  • 特表-チオトロピウム臭化物を含む水中油型エマルジョンゲル 図1-1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】チオトロピウム臭化物を含む水中油型エマルジョンゲル
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/46 20060101AFI20240829BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240829BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240829BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240829BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K31/46
A61K9/107
A61K9/06
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/10
A61P17/00
A61K8/06
A61K8/49
A61Q15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536355
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022073705
(87)【国際公開番号】W WO2023025900
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21382781.9
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524071425
【氏名又は名称】ドライオックス ヘルス, エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】DRYOX HEALTH, S.L.
【住所又は居所原語表記】Calle Arago, 60, principal 1a, 08015 Barcelona, Spain
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ソラ-モラレス イ セッラ,オリオル
(72)【発明者】
【氏名】ブクサデ フォルトゥーニ,マリア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC44
4C076DD09F
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39N
4C076DD41
4C076DD45N
4C076DD55N
4C076EE23F
4C076EE32P
4C076EE41
4C076FF12
4C076FF34
4C076FF35
4C076FF68
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC252
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC431
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC642
4C083AC762
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD411
4C083AD412
4C083BB04
4C083CC17
4C083DD23
4C083DD33
4C083DD41
4C083FF05
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA13
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA89
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、チオトロピウム臭化物を含む、外用水中油型エマルジョンゲルに関する。該エマルジョンゲルは、化粧料において、制汗剤として又は多汗症の防止及び/若しくは処置において用いることができる。皮膚への塗布後に、ナノ粒子が形成され、原薬が皮膚に浸透してその効果を発揮する。水中油型エマルジョンゲルは、原薬が表皮に透過し、真皮に侵入するが、わずかな程度だけ原薬が真皮を通過して全身循環に入るような様式で構成されている。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオトロピウム臭化物を含む、皮膚科学的に許容される水中油型エマルジョンゲル。
【請求項2】
セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される水溶性重合体を含む、請求項1に記載のゲル。
【請求項3】
1種以上の透過促進剤を含む、請求項1又は2に記載のゲル。
【請求項4】
1種以上の透過促進剤の濃度が、0.1~20%(w/w)の範囲、例えば0.2~10%(w/w)の範囲、例えば0.3~5.0%(w/w)の範囲、例えば0.5~3.0%(w/w)の範囲である、請求項3に記載のゲル。
【請求項5】
チオトロピウム臭化物が、水不溶性重合体に内包されているか、又は付着している、請求項1又は2に記載のゲル。
【請求項6】
水不溶性重合体が、ゼインである、請求項5に記載のゲル。
【請求項7】
1種以上の非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート、ポリオキシグリセリド、脂肪酸エステル又はポリエトキシル化ヒマシ油を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項8】
ゲル中のチオトロピウム臭化物の濃度が、ゲルの全重量に基づいて、約0.01%から約5.0%w/wまで、例えば約0.025%から約3.5%w/wまで、約0.05%から約2.5%w/wまで、約0.1%から約2.5%w/wまで、約0.5%から約2.5%w/wまで、例えば約0.75%から約2.0%w/wまでである、請求項1から7のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項9】
プロピレングリコール、グリセロール及びエタノールから選択される1種以上の溶剤を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項10】
ゲルの全重量に基づいて、25%から55%w/wまでの濃度でエタノールを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項11】
ゲルの全重量に基づいて、5%から15%w/wまでの濃度の水、25%から55%w/wまでの濃度のエタノール、7.5%から15%w/wまでの濃度のグリセロール、及び15%から30%w/wまでの濃度のプロピレングリコールを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項12】
多汗症の処置又は防止に用いるための、請求項1から11のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項13】
制汗剤として用いるための、請求項1から11のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項14】
チオトロピウム臭化物を含む水中油型エマルジョンゲルを調製する方法であって、
i)1種以上の水溶性セルロース誘導体を含む水アルコールゲルを調製することと、
ii)チオトロピウム臭化物を含む有機相を調製することと、
iii)水アルコールゲルをマイクロエマルジョンと混合して、前記水中油型エマルジョンゲルを得ることとを含む方法。
【請求項15】
前記水アルコールゲルが、水に水溶性セルロース重合体を溶解し、次いでエタノール及び任意の他の外用上許容される剤を加えることにより調製される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオトロピウム臭化物を含む外用の水中油型エマルジョンゲルに関する。本発明は、化粧料において、制汗剤として又は多汗症の防止及び/若しくは処置において用いることができる。皮膚への塗布後に、ナノ粒子が形成され、原薬が皮膚に浸透してその効果を発揮する。水中油型エマルジョンゲルは、原薬が表皮に透過し、真皮に侵入するが、わずかな程度だけ原薬が真皮を通過して全身循環に入るような様式で構成されている。このような様式で、全身性の有害事象を回避するか、又は著しく低減する。水中油型エマルジョンゲルは、所望の保存寿命を有し、安全であると考えられる。
【背景技術】
【0002】
多汗症は、過剰な発汗を引き起こす病状である。これは、原発性又は続発性多汗症のいずれかに分類される。主に身体的負担ではあるが、多汗症は、精神的、感情的及び社会的観点から生活の質を悪化させ得る。この過剰な発汗は、その人が筋肉運動を必要とする任務に従事していなくても起こり、熱への曝露に依存しない。
【0003】
多汗症は、全身、又は体の特定の部分に局所的に起こり得る。汗腺の数が多いために、手、足、腋窩、鼠径部及び顔の領域が最も活発に発汗が起こる領域である。過剰な発汗が局所的である場合、これは、原発性多汗症又は局所的多汗症とよばれる。原発性多汗症は、特発性であり、交感神経の活動過剰により引き起こされる。これは、限定された体の領域、多くの場合、腋の下、手のひら、足の裏又は頭部にのみ影響する。体のほとんどは乾燥したままであるが、1又は2つの領域が汗だくになる。原発性又は局所的多汗症は、罹患する領域によって、例えば掌蹠多汗症(手又は足のみでの症候性発汗)又は味覚性多汗症(ある食物を食べたすぐ後の顔又は胸部の発汗)、さらに分けることができる。
【0004】
全身に及ぶ過剰な発汗は、全身性多汗症または続発性多汗症とよばれる。続発性多汗症は、特定の薬物療法又は基礎疾患、例えば甲状腺若しくは脳下垂体の障害、糖尿病、腫瘍、痛風、閉経、ある種の薬物又は水銀中毒の副作用に起因する。続発性多汗症は、人生のいずれの時点でも開始し得る。
【0005】
多汗症は、発病によって、先天性又は後天性にも分類できる。原発性又は局所的多汗症は、思春期又はその前にさえ通常始まり、常染色体優性遺伝形質として遺伝するとみられる。
【0006】
米国では、15.3百万人の人が多汗症に罹患し、これは、人口の4.8%である。罹患している人の51%だけが、症状について健康管理専門家と話し合っている。調査対象の75%が、その状態が彼らの社会生活、満足な生活状態、感情的又は精神的健康に負の影響を与えていると報告している。その多くが、過剰な発汗はきまり悪く、不安に導くと感じている。
【0007】
可能な処置としては、外用の塩化アルミニウム六水和物、適応外の経口抗コリン薬、注射用ボツリヌス毒素又は外科手術がある。これらはその有効性、副作用、費用及び使用しやすさに様々な違いがある。最近、チオトロピウム臭化物調製物が、制汗効果を達成するための外用投与のために提案されている(CN106137955)。これは、しかし、投与部位での局所的効果に加えて、全身的な影響も有する。チオトロピウム臭化物は、抗コリン薬である。経口抗コリン薬、例えばグリコピロレート、オキシブチニン、ベンズトロピン及びプロパンテリンは、過剰な発汗の処置において知られている。しかし、一般的に、抗コリン薬は、全身に働き、体の1つの領域を標的にできないので、発汗が問題ではない場所までもの全身の発汗を低下させる。この発汗の全体的な低下は、患者を過熱の危険性にさらし得る。さらに、これらの薬物療法は、重篤な全身性の副作用を生じ(過剰な口内乾燥、胃痙攣、泌尿器の問題など)、中止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】CN106137955
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、過剰な発汗に罹患している体の限定された領域を標的にし、使用が簡単で安全で効果的な組成物を開発する必要性がまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その広い観点において、本発明は、チオトロピウム臭化物を含む皮膚科学的に許容される水中油型エマルジョンゲルに関する。本発明は、そのようなゲルの化粧料における、制汗剤として又は多汗症の防止及び/若しくは処置における使用にも関する。
【0011】
本発明は、チオトロピウム臭化物を含む水中油型エマルジョンゲルを調製する方法であって、
i)1種以上の水溶性セルロース誘導体を含む水アルコールゲルを調製することと、
ii)チオトロピウム臭化物を含む有機相を調製することと、
iii)水アルコールゲルを有機相と混合して、前記水中油型エマルジョンゲルを得ることとを含む方法にも関する。
【0012】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、チオトロピウム臭化物を外用で塗布し、それを皮膚に送達することにより制汗剤として用いるため、又は多汗症の処置若しくは防止に用いるためのチオトロピウム臭化物に関する。チオトロピウムは、抗コリン薬であるが、抗コリン薬は全身に作用しなければならないとの一般的な理解とは逆に、本発明者らは、チオトロピウム臭化物が皮膚内で汗腺に対して直接局所的に作用するに違いないことを見出した。
【0013】
本発明は、チオトロピウム臭化物を含む外用組成物であって、チオトロピウム臭化物を含む皮膚科学的に許容される水中油型エマルジョンゲルの形である組成物にも関する。
【0014】
第一の観点において、本発明は、チオトロピウム臭化物を含む皮膚科学的に許容される水中油型エマルジョンゲルに関する。
【0015】
定義
エマルジョンゲルは、軟性の固体状物質のクラスである。この複合材料は、エマルジョン液滴が組込まれた重合体ゲルマトリクス(エマルジョン充填ゲル)、又は凝集したエマルジョン液滴のネットワーク(エマルジョン粒子状ゲル)のいずれかの構造である。
【0016】
本発明の関係において、水中油型エマルジョンゲルは、チオトロピウム臭化物を含む有機相が組込まれた水アルコールゲルを含むことにより、水性ゲル相内で油滴を創出する(エマルジョンとして)組成物であって、ナノ粒子が皮膚への塗布後にin situで形成される組成物である。上記のように、ナノ粒子が、エタノールの蒸発により組成物の塗布後に皮膚上で形成される(in situ自己組織化ナノ粒子)。in situ自己組織化ナノ粒子は、WO 2013/120856に記載されている。ナノ粒子は、経時的に分解してチオトロピウム臭化物を緩慢に放出する緩慢放出系であり、このチオトロピウム臭化物は、皮膚に徐々に浸透する。
【0017】
本発明の関係において、ゲルは、軟性で脆弱から硬性で強靭までの範囲の特性を有し得る半固体と定義される。ゲルは、安定状態では流動を示さない、実質的に強度が弱まった架橋系と定義される。重量により、ゲルは大部分が液体であるが、液体内の三次元ネットワークために固体のように挙動する。ゲルは、典型的には、ゲル化剤又は膨張剤及び液体を用いて形成される。
【0018】
本発明の関係において、用語「ナノ粒子」は、マトリクスナノ粒子であり得、前記マトリクスナノ粒子は、植物性タンパク質を含むマトリクスと、少なくとも水混和性非揮発性溶剤とを含むマトリクスを含むか、又はコア-シェル小胞性ナノ粒子であり得、前記コア-シェル小胞性ナノ粒子は、コアとシェルとを含み、シェルは、植物性タンパク質と、少なくとも1種の混和性非揮発性溶剤とを含む。
【0019】
本発明の関係において、用語「有機相」は、1種以上の有機物質、例えば油物質を含む組成物のことをいうために用いる。その一例は、オレイン酸である。水含有組成物と混和する際に、これは、エマルジョンを形成し得る。
【0020】
本発明の関係において、用語「チオトロピウム臭化物」は、原薬チオトロピウム臭化物、及びチオトロピウムのその他の薬学的に許容される塩、及び遊離塩基としてのチオトロピウムのことをいう。
【0021】
用語「皮膚科学的に許容される」とは、本明細書で用いる場合、組成物又は記載されるその成分が、過度の毒性、不適合、不安定性、アレルギー反応などなく哺乳類の表皮組織と接触する使用に適することを意味する。皮膚科学的に許容される製剤は、好ましくは、良好な外見、乾燥時間及び塗り広げやすさも有する。
【0022】
水アルコールゲル-チオトロピウム臭化物を含む有機相の添加前
有機相を分散させる水アルコールゲルは、ゲル化剤と、1種以上の溶剤と、任意に1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを典型的に含む。
【0023】
ゲル化剤は、水溶性重合体、例えばセルロース誘導体又はポリ(アクリル酸)又はアクリル酸との共重合体から選択される重合体である。適切なセルロース誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。アクリル酸を含む適切な重合体は、ポリ(アクリル酸)、例えばCarbopolを含む。
【0024】
水アルコールゲルに用いる溶剤は、水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセロール、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル(例えばKollicream(登録商標)3C)、イソプロピルアルコール、トリアセチン、ジメチルホルムアミドを含む。
【0025】
水アルコールゲルは、1種以上の薬学的に許容される賦形剤、例えば透過促進剤も含み得る。適切な透過促進剤は、オレイン酸、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えばTranscutol HP)、ジメチルイソソルビド(DMI)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びKollicream(登録商標)3Cを含む。
【0026】
チオトロピウム臭化物を含む有機相-水アルコールゲルへの添加前
有機相は、チオトロピウム臭化物と、任意に水不溶性重合体と、(含むならば)重合体を溶解し得る1種以上の溶剤とを含んで形成される。有機相と水アルコールゲルとを混合する場合、水相(ゲル)と油相との間でエマルジョンが形成され得る。油相が水相に微細に分散される(水中油型ゲルエマルジョン)。
【0027】
適切な水不溶性重合体の例は、植物性タンパク質、例えばプロラミンタンパク質のクラスに属する植物性重合体である。ゼインは、多量の疎水性アミノ酸、例えばプロリン、グルタミン及びアスパラギンで構成されるプロラミンのファミリーに属するコーン又はメイズから単離される植物性タンパク質である。ゼインは、澄明、非毒性、生分解性及び水不溶性の植物性タンパク質である。ゼインは、薬学、医薬食品、化粧品、接着剤及び包装業界で重合体として研究され、用いられている。
【0028】
水不溶性重合体のための適切な溶剤の例は、プロピレングリコール、エタノール、Transcutol HP、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物である。
【0029】
有機相は、1種以上の薬学的又は外用上許容される賦形剤、例えば1種以上の界面活性剤、1種以上の浸透促進剤、及び/又は1種以上の重合体可塑剤も含み得る。
【0030】
エマルジョンを確立するか、又は水中油型エマルジョンゲルへ確実に油性相を均質に分配するために、水アルコールゲル又は有機相(又はその両方)は、1種以上の界面活性剤を含み得る。用いるために適切な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート(Tween 20、Tween 40、Tween 60、Tween 80)、ポリオキシグリセリド(Labrasol(登録商標))、及びポリエトキシル化ヒマシ油(例えばCremophor EL、Cremophor RH40)である。
【0031】
水アルコールゲル又は有機相又はその両方に含み得る適切な透過促進剤は、オレイン酸、Transcutol、ジメチルイソソルビド(DMI)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、DMSO及びKollicream(登録商標)3C及びそれらの混合物である。
【0032】
適切な可塑剤は、オレイン酸及びカプリロカプロイルポリオキシル-8-グリセリド(例えばLabrasol)を含む。
【0033】
水中油型エマルジョンゲル
局所的に塗布される組成物は、水中油型エマルジョンゲルである。チオトロピウム臭化物を含むナノ粒子は、溶剤の蒸発後に皮膚上でin situで形成される。粒子の平均粒子サイズは、最大で500nm、例えば最大で450nm、最大で400nm、又は最大で350nmであり、粒子サイズは、100μLのゲルを5mLの水に希釈して光散乱装置で測定される。
【0034】
水中油型エマルジョンゲルの多分散性指数は、最大で0.5、例えば最大で0.45、最大で0.4又は最大で0.35であり、多分散性指数は、100μLのゲルを5mLの水に希釈して光散乱装置で決定される。
【0035】
本発明の水中油型エマルジョンゲルは、「チオトロピウム臭化物を含む有機相」の章で述べたように、植物性タンパク質を含み得る。植物性タンパク質は、水に溶解性でない重合体である。植物性タンパク質を含んで形成されるナノ粒子は、植物性タンパク質を含み、チオトロピウム臭化物は、ナノ粒子に捕捉されるか、又はナノ粒子の表面に付着する。ナノ粒子がin situで形成される場合、チオトロピウム臭化物は、水中油型エマルジョンゲル中の植物性タンパク質に付着し、ナノ粒子の形成後に、チオトロピウム臭化物は、ナノ粒子に内包されるか、又はナノ粒子の表面に付着する。
【0036】
ナノ粒子を形成するために、(含むならば)植物性タンパク質は、好ましくは、水混和性又は水溶性の溶剤と一緒に存在する。適切な溶剤は、上に記載し、プロピレングリコール、エタノール、Transcutol HP、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物である。
【0037】
一実施形態において、水中油型エマルジョンゲル中の前記水不溶性重合体(植物性タンパク質)の濃度は、ゲルの全重量に基づいて、約0.05%から約10%w/wまで、例えば約0.1%から約8%w/wまで、約0.2%から約5%w/wまで、約0.2%から約2%w/wまで、約0.2%から約1.5%w/wまで、又は約0.5%から約1%w/wまでである。
【0038】
本発明の水中油型エマルジョンゲルは、チオトロピウム臭化物を含む。一実施形態において、水中油型エマルジョンゲル中のチオトロピウム臭化物の濃度は、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、約0.01%から約5.0%w/wまで、例えば約0.025%から約3.5%w/wまで、約0.05%から約2.5%w/wまで、約0.1%から約2.5%w/wまで、約0.5%から約2.5%w/wまで、例えば約0.75%から約2.0%w/wまでである。
【0039】
チオトロピウム臭化物
チオトロピウム臭化物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び喘息の管理に用いられる、長時間効果のある抗ムスカリン気管支拡張剤である。これは、ジメチルスルホキシドに溶けやすく、メタノールにやや溶けやすく、水にやや溶けにくく、塩化メチレンにほとんど溶けない。室温での水溶液への溶解度は、pHに関係なく、およそ2.5%である。
その化学名は、[(1S,2S,4R,5R)-9,9-ジメチル-3-オキサ-9-アゾナイアトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン-7-イル]2-ヒドロキシ-2,2-ジチオフェン-2-イルアセテートブロミドである。構造式は、以下の通りである。
【0040】
【化1】
【0041】
これは、白色~黄色がかった白色、無臭の結晶性粉末である。これは、Spiriva(登録商標)及びその他の名称の下で販売されている。これは、抗ムスカリン又は抗コリン薬としばしばよばれるムスカリン受容体アンタゴニストである。
【0042】
水中油型エマルジョンゲル、続き
ゲルを形成するために、1種以上のゲル化剤が、本発明の水中油型エマルジョンゲルに存在する。典型的に、ゲル化剤は、水溶性であるか、又は水と接触して膨張する。
水溶性重合体は、セルロース誘導体又はアクリル酸重合体若しくは共重合体から選択される。
【0043】
適切なセルロース誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択でき、アクリル酸重合体は、ポリ(アクリル酸)であり得る。
水中油型エマルジョンゲル中の前記水溶性重合体の濃度は、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、約0.5%から約5%w/wまで、例えば約0.5%から約2.5%まで、又は約0.75%から約1.5%w/wまでである。
【0044】
本発明による水中油型エマルジョンゲルは、1種以上の透過促進剤、1種以上の可塑剤、1種以上の界面活性剤、1種以上のゲル化剤、上記の水混和性溶剤の他に1種以上の溶剤を含み得る。本発明の水中油型エマルジョンゲルに用いるために適切なこのような賦形剤の例は、上に記載した。
【0045】
エタノールは、典型的に、本発明の水中油型エマルジョンゲルに含まれる。エタノールは、水不溶性重合体(植物性タンパク質)のための適切な溶剤という目的を果たすとともに、透過をある程度促進する。エタノールが水中油型エマルジョンゲルから、例えば塗布後に蒸発すると、水不溶性重合体をベースとするナノ粒子が形成される。
【0046】
界面活性剤は、水中油型エマルジョンゲルに存在し得る。界面活性剤の機能は、典型的に、2つの液体の間、又は固体と液体との間の表面張力を低下させることである。界面活性剤は疎水性基及び親水性基の両方を含むので、水不溶性(又は油溶性)成分と水溶性成分とを両方含み、混和性でない2つの成分の間の界面をつくる。好ましくは、本発明による水中油型エマルジョンゲルにおいて用いるために適切な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えば本明細書で既に記載したものである。水中油型エマルジョンゲル中の界面活性剤の濃度は、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、最大で15%w/w、例えば最大で10%w/w、最大で7.5%w/w、最大で7%w/wである。
【0047】
界面活性剤がポリソルベート(例えばTween(登録商標))である場合、水中油型エマルジョンゲル中のポリソルベートの濃度は、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、最大で10%w/w、例えば最大で7.5%w/w、最大で7%w/wである。界面活性剤がポリオキシグリセリド(例えばLabrasol(登録商標))である場合、前記ポリオキシグリセリドの濃度は、最大で3%w/wである。
【0048】
本発明の水中油型エマルジョンゲルは、1種以上の界面活性剤を含み得る。
上記のように、本発明の水中油型エマルジョンゲルは、透過促進剤も含み得る。
本発明で用いるために適切な透過促進剤の例は、上に記載し、オレイン酸、Transcutol(登録商標)HP、ジメチルイソソルビド(DMI)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、DMSO及びKollicrean(登録商標)3Cを含む。一般的に、本発明の水中油型エマルジョンゲル中の前記透過促進剤の濃度は、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、最大で20%w/w、例えば最大で5%w/wである。一実施形態において、透過促進剤の濃度は、0.1から20%(w/w)の範囲である。別の実施形態において、透過促進剤の濃度は、0.2から10%(w/w)の範囲である。さらに別の実施形態において、透過促進剤の濃度は、0.3から5.0%(w/w)の範囲である。さらに別の実施形態において、透過促進剤の濃度は、0.5から3.0%(w/w)の範囲である。エタノールを含む場合、エタノールは、ある程度の透過促進剤として、そして溶剤として作用するので、1つより多い機能を有する。エタノールは、本発明の水中油型エマルジョンゲル中に、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、25%から約55%w/wまでの濃度で典型的に存在する。上記の透過促進剤の量は、エタノールの量を含まない。エタノールを他の揮発性溶剤で置き換え、エタノールを透過促進剤としてのみ含めるならば、エタノールの濃度は、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、最大で10%w/wである。
【0049】
本発明の水中油型エマルジョンゲルは、溶剤を含む。典型的な溶剤は、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール及び水を含む。一実施形態において、水の濃度は、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、5%から15%w/wまでである。別の実施形態において、エタノールは、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、25%から55%w/wまで、例えば30%から45%w/wまでの濃度で存在する。さらなる実施形態において、グリセロールは、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、7.5%から15%w/wまでの濃度で存在する。さらに別の実施形態において、プロピレングリコールは、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、15%から30%w/wまでの濃度で存在する。さらに別の実施形態において、水中油型エマルジョンゲルの全重量に基づいて、水の濃度は、5%から15%w/wまで、エタノールは、25%から55%w/wまで、例えば30%から45%w/wまでの濃度、グリセロールは、7.5%から15%w/wまでの濃度、そしてプロピレングリコールは、15%から30%w/wまでの濃度である。
【0050】
本発明による水中油型エマルジョンゲルは、1種以上のさらなる外用上許容される賦形剤、例えば防腐剤、皮膚軟化剤、pH調整剤、香味剤、粘度調整剤なども含み得る。
【0051】
本発明の特定の実施形態は、以下を含む。
i)以下を含む水中油型エマルジョンゲル:
0.01%から5.0%w/wまでのチオトロピウム臭化物、
0.05%から10%までの植物性タンパク質、
1%から15%w/wまでの非イオン性界面活性剤、
0.5%から3%w/wまでの透過促進剤(エタノールが存在するならば、これは、溶剤の濃度に含まれる)、
0.5%から5%までの水溶性重合体、及び
50%から80%w/wまでの1種以上の溶剤:
【0052】
ii)以下を含む、水中油型エマルジョンゲル:
0.05%から3.5%w/wまでのチオトロピウム臭化物、
0.25%から2.0%w/wまでの水不溶性重合体、例えばゼイン、
20%から30%w/wまでの水溶性重合体のための溶剤、例えばプロピレングリコール、
5%から10%w/wまでの非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート20、
2%から3%w/wまでの非イオン性界面活性剤、例えばLabrasol(登録商標)(カプリロカプロイルポリオキシル-8-グリセリド)、
1.75%から2.5%w/wまでの脂肪酸、例えばオレイン酸、
2%から3%w/wまでの透過促進剤、例えばTranscutol(登録商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)及び/又はジメチルイソソルビド、
0.75%から1.25%w/wまでの水溶性重合体、例えばヒドロキシプロピルセルロース、
10%から15%w/wまでの溶剤、例えばグリセロール、
30%から40%w/wまでの溶剤、例えばエタノール、並びに
7.5%から13%w/wまでの溶剤、例えば水、
【0053】
iii)以下を含む、水中油型エマルジョンゲル:
1.0%から2.5%までのチオトロピウム臭化物、
0.25%から1.0%w/wまでのゼイン、
20%から30%w/wまでのプロピレングリコール、
5%から10%w/wまでのポリソルベート20、
1.75%から2.5%w/wまでのオレイン酸、
2%から3%w/wまでのカプリロカプロイルポリオキシル-8-グリセリド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及び/又はジメチルイソソルビド、
0.75%から1.25%w/wまでのヒドロキシプロピルセルロース、
30%から40%w/wまでのエタノール、
10%から15%w/wまでのグリセロール、並びに
7.5%から13%w/wまでの水。
【0054】
本発明の水中油型エマルジョンゲルの使用
本発明による水中油型エマルジョンゲルは、多汗症の処置又は防止に用いることができ、制汗剤として用いることができ、化粧料において用いることができる。本発明の水中油型エマルジョンゲルの特徴は、ゲルが外用で塗布されてチオトロピウム臭化物を皮膚の真皮に送達し、ここでチオトロピウム臭化物がその治療効果を汗腺に対して発揮することである。本明細書の実施例からわかるように、水中油型エマルジョンゲルはわずかだけ皮膚に透過して全身循環に入る。
【0055】
本発明の水中油型エマルジョンゲルを調製する方法
本発明は、チオトロピウム臭化物を含む水中油型エマルジョンゲルを調製する方法であって、
i)1種以上の水溶性重合体を含む水アルコールゲルを調製することと、
ii)チオトロピウム臭化物を含む有機相を調製することと、
iii)水アルコールゲルを有機相と混合して、前記水中油型エマルジョンゲルを得ることとを含む方法にも関する。
【0056】
水アルコールゲル、有機相及び水中油型エマルジョンゲルに関して本明細書で既に記載した全ての詳細が、本発明のこの観点に対しても必要な変更を加えてあてはまる。
【0057】
水アルコールゲルの調製
水アルコールゲルは、水溶性重合体を水に溶解した後にエタノール及び任意の他の外用上許容される剤を加えることにより調製される。水溶性重合体は、典型的に、本明細書で既に記載したように、セルロース誘導体又はアクリル酸重合体である。
上記のように、1種以上の外用上許容される剤、例えばプロピレングリコール、グリセロール、ヒドロキシプロピルセルロース、透過促進剤は、水アルコールゲルを調製する際に加えることができる。
【0058】
有機相の調製
有機相は、チオトロピウム臭化物をプロピレングリコールに溶解し、水不溶性重合体を加え、1種以上の外用上許容される賦形剤、例えば非イオン性界面活性剤、透過促進剤及び任意の他の外用上許容される剤をさらに加えることにより調製される。
【0059】
全般
水中油型エマルジョンゲルに関して上で論じた任意の特徴及び/又は観点は、本明細書に記載する発明の他の観点に対して類推によってあてはまることが理解される。以下の図面及び実施例は、本発明を説明するために示す。これらは、説明を意図し、いずれの様式でも限定すると解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1-1】本発明の水中油型エマルジョンゲルの調製の4工程を示す。工程1は、水アルコールゲルの設計、工程2は、チオトロピウム臭化物を含む有機相の設計、工程3は、水アルコールゲルに有機相を組み込んで水中油型エマルジョンゲルを形成すること、そして工程4は、水中油型エマルジョンゲルの皮膚への塗布である。
図1-2】本発明の水中油型エマルジョンゲルの調製の4工程を示す。工程1は、水アルコールゲルの設計、工程2は、チオトロピウム臭化物を含む有機相の設計、工程3は、水アルコールゲルに有機相を組み込んで水中油型エマルジョンゲルを形成すること、そして工程4は、水中油型エマルジョンゲルの皮膚への塗布である。
図2】フランツ拡散セルを示す。
図3】ブタ皮膚への生成物塗布の6時間後の皮膚(A)、及びRC(B)でのチオトロピウム臭化物(TTB)の分布を示す。統計的な差は、Kruskal Wallisにより評価した。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、IC:内部対照
【発明を実施するための形態】
【0061】
方法、材料及び実施例
装置
HPLC Agilent 1260 Infinity、バイナリーポンプG1312B、オートサンプラーG1367E、サーモスタットG1330B、高感度セルを備えたDAD検出器G4212B、サーモスタットが付いたカラム区画G1316A。Agilent OpenLab CDSソフトウェア、バージョンA.02.08 SP1により制御。
自動化フランツ拡散セル。Hanson Corporate。
粒子サイズ分析器。Brookhaven、90 Plus。
光学顕微鏡。Nikon、Eclipse Ci-L。
人工気候室。Memmert、HPP 108。
科学天秤。Mettler Toledo、XA 204 Delta Range。
水精製システム。Millipore、Direct Q 3UV。
ダーマトーム。Braun、Acculan 3Ti。
精密厚み計。Baxlo precision、モデル3000。
オートクレーブ。Raypa、AH-21N2。
実験室乾燥炉。Indelab、IDL-CD-120。
デジタル超音波浴。Bandelin、Sonorex Digitec DT100H。
排気装置。Indelab、Flowlan GN。
pH計。Progen Scientific、PL-700PV。
-20℃冷凍庫。Liebherr、GX823。
冷蔵庫。Beko、CN 232102。
マイクロピペット
その他(ビーカー、試験管、エッペンドルフチューブ、HPLCバイアル、メスフラスコ、メスシリンダー、シリンジ、Falconチューブなど)。
【0062】
【表1】
【0063】
手順
1.分析方法の実施
新たな分析方法を開発し、実施して、開発した製剤中のチオトロピウムの同定及びその後の定量を進めた。
この目的のために、クォータナリポンプ、サーモスタットが付いたカラム区画及び高感度フローセル(60mm光路長)を備えたAgilent 1260 Infinity HPLCを用いた。
【0064】
クロマトグラフィー条件は、以下の通りであった。
分析カラム:Agilent Zorbax SB-Aq(150×4.6mm) 5μm
カラム温度:40℃
注入量:20μL
流速:1.0mL/分
検出UV波長:237nm
水性移動相(A):リン酸緩衝液pH=3.00
有機移動相(B):メタノール
混合移動相:70%A+30%B(定組成モード)
運転時間:15分
【0065】
活性成分は、精密に秤量した生成物をリン酸緩衝液:メタノール混液(70:30)中で激しく撹拌することにより製剤から抽出した。製剤及びその後チオトロピウムが一旦溶解したら、混合物をメスフラスコにうつし、同じ溶液で印のところまで満たした。
【0066】
2.溶解度、適合性及び賦形剤の選択
活性物質の内包のために最適な賦形剤を選択するために、異なる溶剤及び界面活性剤を用いた:なかでもエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、トリアセチン、ココイルカプリロカプレート(Kollicream(登録商標)3C)、オクチルドデカノール(Kollicream(登録商標)OD)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol HP)、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、中鎖トリグリセリド(MCT)、ジメチルホルムアミド、ポリソルベート20、ポリソルベート80、labrasol、リシノール酸マクロゴールグリセロール(cremophor EL)、アマニ油、及びジメチルスルホキシド(DMSO)。
【0067】
用いる重合体を内包することに関して、無水マレイン酸重合体及び共重合体の両方、例えばポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)のモノアルキルエステルの重合体(例えばPVM/MAのブチルエステル共重合体、Gantrez(商標)ES-425)及びゼインを候補として評価した。最後に、ゼインを、最も適当なものとして選択した。
【0068】
各賦形剤における活性成分の適合性の評価のために、25mgのチオトロピウム臭化物(TTB)を適当なガラス容器に秤量し、適当な溶剤を量を増やしながら加えた。試料を、必要であれば加熱及び超音波にかけた。混合物の外見及び各溶剤中のTTBの最大濃度を記録した。
【0069】
3.製剤設計及び開発
この研究の主な目標の1つは、優れた外見上の特性を有する生成物を開発することであった。よって、最初の工程の1つは、活性成分を含む有機相を組み込むことができる外見上許容される水アルコールゲルを設計することであった。この目的のために、いくつかのゲル化剤を評価し、得られたゲルの物理化学的特徴を研究した。
【0070】
並行して、異なる界面活性剤、補助界面活性剤及び溶剤を、プロピレングリコール又はTranscutol HPに溶解した異なる濃度のゼイン又はGantrez(商標)ES-425に加えて溶剤混合物間の混和性について評価した。最も適切な比率の界面活性剤-補助界面活性剤を選択した。Gantrez(商標)ES-425を含む有機相は、この内包性ポリマーと接触するとTTBが沈殿したので、廃棄しなければならなかった。しかし、ゼインを含むすべての有機相は、澄明であり、いずれの相の分離、結晶化又は凝集も示さなかった。
【0071】
濁った外見の混合物は廃棄し、透明な混合物のみを選択して、チオトロピウム臭化物を溶解又は分散させた。その後、製剤を適当なゲル候補に加え、内包系の特徴を決定した。
手順を図1に示す。
【0072】
4.最適化及び物理化学的特徴決定
以前に記載したように、得られた製剤を以下に記載する方法に従って特徴決定し、評価した。
【0073】
4.1 肉眼で見える外見
有機相及びゲル化生成物の両方を肉眼で観察した。両方の場合において、凝集、相分離及び/又は濁りを示す製剤は、廃棄した。
【0074】
4.2 粒子サイズ測定
粒子のサイズは、粒子サイズ分析器(90S、Brookhaven)を用いて測定した。この目的のために、100μLの各製剤(ゲル化生成物)を5mLの水で希釈した。水との接触により凝集物を形成した生成物は廃棄するとともに、350nmより大きい粒子を形成したもの、又は0.35を超える多分散性を示したものも廃棄した。
【0075】
4.3 安定性
異なる安定性試験を行って、最も適切な製剤を選択した:
- スクリーニング試験:製剤の予備的な安定性を、4℃にて5日間の保存後に評価した(HPLC-UVによる活性成分の定量、凝集物の非存在、適度な肉眼で見える外見、及び相分離のなさ)。
- ストレス条件下の安定性:最終製剤(又はゲル化生成物)を、4回のストレスサイクルに供し、各サイクルは、オートクレーブ中で75℃にて2時間の加熱の後に、-20℃での一晩の保存からなった。最終サイクルが完了した後に、安定性を、肉眼での外見の評価及びHPLC-UVによる活性成分の定量により評価した。
- 長期及び加速安定性:最終製剤(又はゲル化生成物)を、以下の条件下で保存した:4℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RH。これらの安定性を、定期的な間隔での肉眼での外見の評価及びHPLC-UVによる活性成分の定量により評価した。
【0076】
4.4 エクスビボ経皮吸収研究
フランツ拡散セルでのこの種の研究により、ある種の化学物質が皮膚を通してレセプター区画へ透過する程度を評価できる。一片のブタ皮膚をセル(図2を参照)上に、レセプターチャンバの流体と接触するように置いた。評価すべき生成物を皮膚の表面に塗布し、所望の期間、系を32±1℃に撹拌下に維持した。
【0077】
研究の最後に、レセプターチャンバの流体を回収し、皮膚を除去し、適当な媒体で洗浄して、いずれの吸収されなかった過剰の生成物を除去した。全ての検体を分析して、そのTTB含量を決定した。
いくつかの予備的なエクスビボ経皮吸収研究を行って、異なるプロトタイプの透過挙動を比較した。
【0078】
まず、22時間のフランツ拡散セル研究を行って(0、0.5、1、2、4、6、8、12及び22時間での試料回収)、透過能が最高の製剤(DMSOに直接溶解したTTB)と、期待される低い透過プロファイルを有する製剤との間で透過に差が観察される時点を確立した。
【0079】
試験すべきプロトタイプの数が多かったので、標準フランツ拡散セル研究を行うことが不可能であったので、ハイスループットの代替であるミニセルを用いた。この系は、既知の容量のPBSを含むガラスバイアル及び小さい磁気撹拌機からなり、その上に一片のブタ皮膚を置いた。この系をゴムバンドで密閉し、製剤を塗布し(10μL/cm2)、次いで、研究の最後まで32℃に設定した実験室乾燥炉内の磁気撹拌機上に置いた。各プロトタイプを6回反復し、レセプター流体、皮膚及び洗浄流体中の活性成分の濃度をHPLC-UVにより決定した。
【0080】
4.5 統計分析
プロトタイプ間の差を、Dunnの多重比較事後検定とともにKruskal-Wallis検定を用いて評価し、p<0.05を有意とみなした。統計分析は、GraphPadソフトウェアを用いて行った。
【0081】
結果
活性成分の溶解度は、異なる賦形剤(重合体溶剤、透過促進剤、界面活性剤、皮膚軟化剤など)中で決定した。表1は、それらのそれぞれの中で達成された最大溶解度をまとめたものである。
【0082】
【表2】
【0083】
前の溶解度研究に示した情報を用いて、次の焦点は、TTBに適合性の剤を含む優れた外見上の特性を有するゲルを開発することであった。よって、以下の2つの主な方策を立てた。
【0084】
方策1:水中油型エマルジョンゲル
エタノールの蒸発により生成物の皮膚への塗布後にナノ粒子が形成されるゲルを設計した(in situ自己組織化ナノ粒子)。著しい量のエタノールは、その蒸発後にTTB濃度がその後増加するので、有益であると考えられた。
最初のアプローチとして、Carbopolをゲル化剤として評価したが、これは、活性成分と不適合であることがわかった。
【0085】
高濃度のエタノールと適合するゲル化剤を網羅的に探索し、3つの主にセルロースに由来するゲル化剤を最終的に選択した。固定濃度のゲル化剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)を用いて、いくつかのエタノール:水及びPG:グリセロールの比率をアッセイして、最適な外見上の特性を有する組み合わせを選択した。これらの組み合わせを、以下の表2に示す。
初期の試験は、TTBなしで行って、皮膚上の製剤の外見上の特性を評価した。
【0086】
【表3】
【0087】
全ての調製物を、外見上の評価に供し、ゲル化剤の最適濃度は、約1%、例えば約0.5%から約5%までの範囲であると結論付けた。.より高い量により、塗り広げることが困難で、乾燥するために長時間を要する堅すぎる生成物が得られた。一方、より低い量は、必要とされるゲル状生成物を得るために十分ではなかった。
【0088】
さらに、低エタノール濃度は、粘着性のゲルを与え、よって濃度を増加させなければなかった。HECと(25%より多い濃度での)エタノールとの間の主な不適合性が観察された。
ゲルG29及びG35を、外見上の見かけ、乾燥時間及び塗り広げやすさの点で最適なものとして選択した。
ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、Transcutol HP及びKollicream(登録商標)3Cを、次いで、透過促進剤として選択して、以前に選択したゲルとの適合性を評価した。得られた組み合わせを、以下の表3に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
これらのゲルの外見上の評価をした後に、全てのゲルは良好であり、G46~G49はわずかにより良好であった。HPMCがHPCよりもわずかにより粘着性が高いゲルを形成したことが観察され、最良のPG:グリセロール比は、皮膚へのゲルの塗布後に(3:1)であった。
ゼイン及びGantrez(商標)ES-425(GES)を、次いで、選択したゲル(G46~G49)に加え、それらの適合性を評価した。得られた組み合わせを、次の表に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
これらのゲルを、25℃/60%RHの人工気候室に保存して、それらの肉眼で見える外見を1週間後に再評価した。IPMを含む組成物(G51及びG55)は、その堅さを失う傾向があり、廃棄しなければならなかった。しかし、ゲルG50及びG54(透過促進剤なし)並びにゲルG52及びG56(transcutol HPを含む)は、変化がないままであり、良好な肉眼で見える特性を示した。
【0093】
最適なビヒクルを注意深く選択した後に、TTBをPG、グリセロール及びDMSOに溶解し、それらを、活性成分との良好な可溶性を示した様々な透過促進剤、界面活性剤及び可塑剤と組み合わせることによりいくつかの有機相を調製した。次の表5の調製物を参照されたい。
【0094】
【表6】
【0095】
有機相OP20~OP24は、Gantrez(商標)ES-425と接触するとTTBが沈殿したので、廃棄しなければならなかった。しかし、ゼインを含むすべての有機相は、澄明であり、いずれの相の分離、結晶化又は凝集も示さなかった。
【0096】
最後に、前に記載した有機相と、ゼインを含まないゲルG50(すなわち、エタノール、水、プロピレングリコール、グリセロール及びHPCを含む上の表4に示した組成物)とを組み合わせて、最終的な製剤を調製した。いくつかの透過促進剤を単独又は組み合わせで組み込んで、エクスビボ経皮吸収試験において皮膚を通してのTTB透過に対するそれらの影響について比較した。目的は、レセプターチャンバ内の濃度を最小限に維持しながら、皮膚における活性成分の最大濃度を達成することであった。表6は、これらの製剤の組成を示す。
【0097】
最終製剤中の水不溶性重合体(ゼイン)の重合体濃度は、1%(w/w)未満にして、生成物の塗布の比較的短時間後に活性成分が放出され得る制御送達系を形成した。透過促進剤の濃度も20%(w/w)未満にして、活性成分の全身吸収を制限した。
【0098】
【表7】
【0099】
しかし、並行して、増加する濃度のDMSO(これは、より多い量のチオトロピウムを可溶化できた透過促進剤であったので)と、より高い濃度の水不溶性重合体とを用いていくつかの製剤を設計し、この組み合わせがより適当な透過プロファイルを提供するかを検討した。以下の表7のこれらの組み合わせを参照されたい。
【0100】
【表8】
【0101】
方策2:無水ゲル
第一の方策と並行して、水を含まない生成物のために特に設計されたゲル形成剤を用いる無水ゲル製剤の設計からなる別の製剤アプローチを検討した。これらの製剤の組成を、以下の表8に示す。
【0102】
【表9】
【0103】
製剤F25は、高濃度のプロピレングリコール及びエタノールを含むが、製剤F26は、代わりに高濃度のDMSOを含み、それらの外見を比較した。
しかし、両方の生成物は、非常に乏しい外見上の特性を示し、湿った手に塗布した場合に、油っぽく粘着性の感触を示した。
以前に調製した3種の有機相に1%HPCを添加することにより、3つの追加の無水製剤を調製した。
【0104】
【表10】
【0105】
これらの製剤の外見上の見かけは、いずれも許容されるものではなかった。
よって、この第二の方策は、中止した。
【0106】
1.最適化及び物理化学的特徴決定
1.1 分析方法の開発及び実施
製剤中のチオトロピウムの同定のための最も適当なクロマトグラフィー条件が一旦確立されると、基本的な分析試験を行って、1.00から50.00μg/mLの間の濃度範囲における線形性、精度及び精密さについて分析方法を確認した。
分析法のために得た校正曲線は、Y=191.37*X-5.7017であり、相関係数(R2)は、0.9999であった。
この分析方法を用いて、設計したプロトタイプのそれぞれにおける活性成分の濃度を正確に決定し、予め確立した安定性条件下での時間に伴うその進展をモニタリングした。
【0107】
TTB定量のために、およそ25mgの各製剤を、科学天秤においてガラスバイアル中に正確に秤量した。70:30の比率でのリン酸緩衝液とメタノールとの混合物中で激しく撹拌することにより、活性成分を製剤から抽出した。製剤が一旦完全に分散したら、混合物をメスフラスコにうつし、同じ溶液を印のところまで満たした。わずかな画分を、0.22μmメンブレンを通して濾過し、次いでHPLCカラムに注入した。
【0108】
1.2 肉眼での評価
全ての製剤を、肉眼で見た外見について評価した。以下の明細が必要であった:澄明さ、凝集、活性成分の結晶化及び/又は相分離のなさ。
ゼイン濃度の増加により、黄色の着色が増えた。全ての製剤は澄明であり、いずれの肉眼で見える結晶も示さなかった。調製後、又は評価した安定性条件のいずれから解放した後も、凝集又は相分離は観察されなかった。
【0109】
しかし、製剤からゼインを除去すると、肉眼で見える結晶の形成が観察された。よって、特定の理論とは結び付けられないが、ゼインは、少なくとも高TTB濃度にて沈殿を回避するようである。
【0110】
1.3 粒子サイズ測定
製剤を水で希釈し、その粒子サイズを、Brookhaven 90S動的光散乱装置で測定した。350nm未満の粒子サイズ及び0.35未満の多分散性指数を有する製剤のみを、許容できるとみなした。
全ての試料を、調製時及び72時間後に分析して、それらの安定性の予備的なアプローチとした。
【0111】
【表11】
【0112】
全ての製剤は、許容できた。製剤F36、F37、F41及びF42は、いずれの界面活性剤も含まないので、水と接触すると、より大きい粒子及び凝集を形成した。これらのプロトタイプは、最終選択において廃棄した。
全ての製剤は、水で希釈すると乳白色の外見を示し、これは、粒子の存在を示した。さらに、高濃度のゼインを含む製剤は、水と接触すると、重合体の沈殿による白色がかった白亜質の外見を示した。
【0113】
1.4 安定性
製剤の挙動を確認してその特性を失い得るものを廃棄するために、少量の製剤をアンバーガラスバイアルに入れ、PTFEの蓋で密閉していくつかの条件下で保存した。
まず、初期TTB定量をHPLC-UVにより行った。以下の表は、初期の定量結果を示す。理論的濃度とHPLC分析後に得られた実験値との間で比較を行った。±10%の許容差を、許容できるとみなした。
【0114】
【表12】
【0115】
1.4.1 スクリーニング試験
第一の安定性試験は、4℃での5日間の保存後の予備的な評価からなった。バイアルを冷蔵庫から取り出し、数時間放置して室温に戻した。これらを、次いで、前に記載したようにして分析した。以下の表12は、定量結果を示す。
いずれの製剤でも、外見の変化は観察されなかった。相分離、凝集、色又は濁度の変化はなかった。
【0116】
【表13】
【0117】
よって、全ての製剤は、4℃にて5日間の保存の後の以前に確立した許容基準に従った。
【0118】
1.4.2 ストレス条件
プロトタイプの別の一部を、4回のストレスサイクルに供し、各サイクルは、オートクレーブ中75℃にて2時間の加熱の後に、-20℃での一晩の保存からなった。最後のサイクルの後に、製剤を、肉眼で見える外見及びTTB含量について分析した。
いずれの製剤でも、外見の変化は観察されなかった。相分離、凝集、色又は濁度の変化はなかった。以下の表13は、定量結果を示す。
【0119】
【表14】
【0120】
表からわかるように、製剤F16のみが、10%を超える初期濃度と最終濃度との間の差を示した。
【0121】
1.4.3 4℃での安定性
4℃にて保存した製剤の一部を、定期的に分析して、経時的なその進展をモニタリングした。以下の表14は、4か月の保存後の定量結果を示す。
製剤は、肉眼で見える外見についても分析した。いずれの生成物でも、外見の変化は観察されなかった。相分離、凝集、色又は濁度の変化はなかった。
【0122】
【表15】
【0123】
よって、全ての製剤は、4℃にて4か月の保存後の以前に確立された許容基準に従った。
【0124】
1.4.4 25℃/60%RHでの安定性
25℃及び60%RHにて気候室に保存した製剤の一部を、定期的に分析して、経時的なその進展をモニタリングした。以下の表15は、4か月の保存後の結果を示す。
製剤は、肉眼で見える外見についても分析した。いずれの生成物でも、外見の変化は観察されなかった。相分離、凝集物、色又は濁度の変化はなかった。
【0125】
【表16】
【0126】
よって、全ての製剤は、25℃及び60%RHにて4か月の保存後の以前に確立された許容基準に従った。
【0127】
1.4.5 40℃/75%RHでの安定性
40℃及び75%RHにて人工気候室に保存した製剤の一部を、定期的に分析して、経時的なその進展をモニタリングした。以下の表16は、3か月の保存後の結果を示す。
製剤は、肉眼で見える外見についても分析した。いずれの生成物でも、外見の変化は観察されなかった。相分離、凝集、色又は濁度の変化はなかった。
【0128】
【表17】
【0129】
全ての製剤が許容できたが、F15及びF19は、著しく驚くべき安定性を有していた。
よって、製剤15及び19だけが、40℃及び75%RHでの3か月の保存後の以前に確立された許容基準に従い、4か月後に再び分析した。
【0130】
【表18】
【0131】
これらの製剤は、40℃及び75%RHにて4か月の保存後の許容基準に予期せぬことに従った。
【0132】
1.5 エクスビボ経皮吸収研究
前に示したように、いくつかの予備的なエクスビボ研究を行って、選択した製剤の経皮吸収を比較した。チオトロピウムは、皮膚の真皮層にある汗腺に対して作用するが、全身への漏れ(すなわち、レセプターチャンバ中の濃度)を最小限にすることも望ましい。
製剤F1及びF12~F19は、異なる透過促進剤を含むので、相乗作用が見いだされるか、及び/又は特定の透過促進剤がこの活性成分に対して他の透過促進剤よりも効果的であるかを決定する必要があった。製剤F31は、より高濃度のDMSOを含み、F37は、より高濃度の重合体を含んだ。さらに、内部対照を研究に含めて、実験の妥当性を保証した。
【0133】
経皮吸収研究の最適な終点を見出すために、DMSO中のTTB溶液(内部対照)と、透過促進剤を含まない製剤との透過プロファイルを比較するフランツ拡散セル研究を行った。レセプターチャンバの試料を回収し、異なる時点(0、0.5、1、2、4、6、8、12及び22時間)にて分析するとともに、実験の最後に皮膚及び洗浄流体を分析した。製剤当たり3つの反復をアッセイした。
【0134】
【表19】
【0135】
これらの結果の評価後に、製剤間の差が存在するならば、HPLCでそれを定量するためには6時間が十分であることが確立され、同時に、これは、1日の作業時間で試料を処理できる終点でもあった。
その後、いくつかのミニフランツセル経皮吸収研究を、6時間の終点及び製剤当たり6つの反復を用いて行った。これらのセルの拡散面積は1.76cm2であったので、およそ18μLの生成物が塗布するために必要であった(それぞれの場合、対応する重量を、科学天秤を用いて正確に測定した)。それぞれの皮膚片をプラスチックのロッドで15秒間マッサージした後に生成物を塗布して、患者の手に生成物が塗布される実際の条件を模倣した。ロッドに付着したTTBの量も、HPLCにより定量した。
【0136】
【表20】
【0137】
これらの結果に基づいて、およそ20%(w/w)までの透過促進剤の増加(製剤F31)は、皮膚でのTTB濃度の増加をもたらさないが、6時間の曝露後にレセプターチャンバでの増加をもたらしたと結論付けることができる。他方、仮定したとおりに、水不溶性重合体の濃度の増加(製剤F37)は、レセプターチャンバ又は皮膚のいずれにおいても6時間の曝露後に活性成分の濃度を変化させなかった。
【0138】
24時間の長さのエクスビボ実験を、次いで、製剤F31及びF37で行って、より長い曝露期間での透過促進剤及び重合体の増加の影響を決定した。結果を、以下の表20に示す。
【0139】
【表21】
【0140】
DMSO及び/又はゼインの濃度の増加は、6又は24時間のいずれの後でも期待されたように皮膚におけるTTBの増加をもたらさない。
【0141】
これらのデータに対して統計分析を行って、製剤間に有意差がみられるかを検討した。この目的のために、皮膚及びレセプターチャンバにおけるTTBのパーセンテージを標準化し、図3に示す。
プロトタイプ間の差を、Dunnの多重比較事後検定とともにKruskal-Wallis検定を用いて評価し、p<0.05を有意とみなした。統計分析は、GraphPadソフトウェアを用いて行った。
【0142】
目的は、レセプターチャンバ内の濃度を最小限に維持しながら、皮膚における活性成分の最大濃度を達成することであった。
レセプターチャンバ流体を見ると、製剤F16及びF17が内部対照(DMSO中のTTBを含む水アルコールゲル)よりも有意に低い濃度のTTBを示し、製剤F14、F16及びF17は、F31(高含量のDMSOを含む水中油型エマルジョンゲル)よりも有意に低い濃度のTTBを示した。
皮膚に関しては、製剤F17だけが内部対照よりも有意に低い濃度のTTBを示し、F12及びF14は、F37(高含量の重合体を含む水中油型エマルジョンゲル)よりも有意により高いTTB濃度を示した。この観察結果は、著しいものであり、皮膚での驚くべきTTB濃度を示した。
【0143】
ゼインの有無の比較
表6からの製剤F12及びF15について、より低いTTB濃度で試験した。以下の製剤(ゼインあり又はなしでのF12及びF15)を試験した。
【0144】
【表22】
【0145】
これらの組成物を、ブタ皮膚試料をヒトドナーからの皮膚(白人女性、55歳、BMI27、位置:腹部)で置き換えた以外は上記のフランツセルでのエクスビボ経皮吸収研究において試験した。さらに、塗布用量は、10μl/cm2ではなく5μl/cm2であった。
TTBの分布は、以下の通りであった。
【0146】
【表23】
【0147】
これらの結果は、表皮/真皮での良好な保持が、製剤中にゼインを含んでも含まなくても達成でき、両方の場合において全身循環が制限されることを示す。
4つの製剤の安定性を、上記のようにしてさらに試験した。
【0148】
【表24】
【0149】
【表25】
【0150】
【表26】
【0151】
【表27】
【0152】
よって、全ての製剤は、最加速条件下で3か月後以外は安定である。
【0153】
本実験の結論
- 要件に従う製剤を達成するために、56のゲル及び47の有機相を開発し、これらは、多くの見込みのあるプロトタイプをもたらした。
- 2つの異なる製剤方策を検討した:水中油型エマルジョンゲル、及び無水ゲル。後者は、外見上の特性が乏しいので、破棄しなければならなかった。
- 以前に得た製剤は、開発中にGantrez(商標)ES-425とTTBとの間に化学的不適合が見いだされたので、全てのゼインベースのものであった。
- 製剤の安定性に関して:
- 全ての製剤は、4℃及び25℃/60%RHにて4か月の保存後の安定性基準に従った。
- F16以外の全ての製剤は、4サイクルのストレス条件に耐えた。
- F15及びF19だけが、40℃及び75%RHにて4か月の保存後に安定なままであった。
- いくつかのエクスビボ経皮吸収研究を行って、これにより、水不溶性重合体の最適濃度は、生成物の塗布後に比較的短時間で活性成分が放出され得る制御送達系を形成するために1%(w/w)未満であることと、透過促進剤(PE)濃度は、活性成分の全身吸収を制限するために20%(w/w)未満であることが好ましいことが確認された。
- レセプターチャンバ流体に関して、製剤F16及びF17が内部対照(DMSO中のTTBを含む水アルコールゲル)よりも有意に低い濃度のTTBを示し、製剤F14、F16及びF17は、F31(高含量のDMSOを含む水中油型エマルジョンゲル)よりも有意に低い濃度のTTBを示した。
- 皮膚に関しては、製剤F17だけが内部対照よりも有意に低い濃度のTTBを示し、F12及びF14は、F37(高含量の重合体を含む水中油型エマルジョンゲル)よりも有意に高いTTB濃度を示した。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
【国際調査報告】