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特表2024-532606磁束検出のためのリングコア型電流変換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】磁束検出のためのリングコア型電流変換器
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20240829BHJP
   G01R 15/18 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01R33/02 D
G01R15/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024536356
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2022073788
(87)【国際公開番号】W WO2023025940
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21193443.5
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524072628
【氏名又は名称】ダニセンス エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マルカッセン,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
2G017
2G025
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD42
2G017BA03
2G017BA05
2G025AA08
2G025AA14
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
通電導体からの磁束を集中させるためのセンサコアであって、間隙によって中断されたループとして成形されたセンサコアを備える、前記通電導体からの磁束を測定するための電流変換器。本電流変換器は磁束を感知するためのフラックスゲートリングコアと、リングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するために2つの励磁コイルをさらに備える。励磁コイルの電子信号を検出するために励磁コイルに接続された、励磁コイルを介して励磁電流を駆動するための駆動手段が検出回路と共に存在する。フラックスゲートリングコアはセンサコアの間隙内に配置されており、励磁コイルはフラックスゲートリングコアの第1および第2の部分の周囲にそれぞれ巻き付けられている。いくつかの実施形態では、第1および第2のフラックスゲートリングコアは、本電流変換器のセンサコアにおいて互いに直接向かい合って配置された、第1および第2の間隙内に装着された直列に接続された励磁コイルを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙によって中断されたループとして成形されている、通電導体からの磁束を集中させるためのセンサコアと、
前記センサコアの前記間隙内に配置されている、前記磁束を感知するためのフラックスゲートリングコアと、
前記フラックスゲートリングコアの第1の部分の周囲に巻き付けられている、前記リングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ前記通電導体の前記磁束を検出するための第1の励磁コイルと、
前記フラックスゲートリングコアの第2の部分の周囲に巻き付けられている、前記リングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ前記通電導体の前記磁束を検出するための第2の励磁コイルと、
前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルを介して励磁電流を駆動するための駆動手段と、
前記第1および前記第2の励磁コイルの電子信号を検出するために前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルに接続された検出回路と
を備える、通電導体からの磁束を測定するための電流変換器。
【請求項2】
前記検出回路は、前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルのそれぞれの電流の差を復調するための第2の高調波検出器を備える、請求項1に記載の電流変換器。
【請求項3】
前記フラックスゲートリングコアは少なくとも100.000の比透磁率を有する磁性材料で作られている、前記請求項のいずれかに記載の電流変換器。
【請求項4】
前記フラックスゲートリングコアはコバルト系非晶質金属合金で作られている、請求項3に記載の電流変換器。
【請求項5】
前記センサコアは前記フラックスゲートリングコアの比透磁率よりも低い比透磁率を有する磁性材料で作られている、前記請求項のいずれかに記載の電流変換器。
【請求項6】
前記センサコアはMu金属で作られている、請求項5に記載の電流変換器。
【請求項7】
外部磁場からの保護を与え、かつノイズを減少させるために遮蔽物を備え、前記遮蔽物は、前記センサコア、前記フラックスゲートリングコア、前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルを一緒に包囲している、前記請求項のいずれかに記載の電流変換器。
【請求項8】
前記遮蔽物は、前記センサコアおよび前記フラックスゲートリングコアの両方の比透磁率よりも低い比透磁率を有する材料で作られている、請求項7のいずれか1項に記載の電流変換器。
【請求項9】
前記シールドは電磁鋼板で作られている、請求項8に記載の電流変換器。
【請求項10】
前記電流変換器は、相殺電流を誘導し、かつ前記フラックスゲートリングコアにおいてゼロに近い磁束を維持するために補償コイルを備え、前記補償コイルは前記センサコアの周囲の前記遮蔽物の周囲に巻き付けられている、請求項7~9のいずれか1項に記載の電流変換器。
【請求項11】
前記電流変換器は前記電流変換器における残留磁束を除去するために消磁回路を備え、前記消磁回路は前記補償コイルに接続されている、請求項10に記載の電流変換器。
【請求項12】
前記磁束を感知するための第2のフラックスゲートリングコアであって、前記第2のフラックスゲートは前記フラックスゲートリングコアと直接向かい合って配置されており、かつ前記センサコアの第2の間隙内に位置している第2のフラックスゲートリングコアと、
前記第2のフラックスゲートリングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ前記通電導体の前記磁束を検出するための第3の励磁コイルと、
前記第2のフラックスゲートリングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ前記通電導体の前記磁束を検出するための第4の励磁コイルと
を備える、前記請求項のいずれかに記載の電流変換器。
【請求項13】
前記電流変換器はスプリットコア型電流変換器である、前記請求項のいずれかに記載の電流変換器。
【請求項14】
前記電流変換器は前記電流変換器の正確性を高めるためにフィードバックコイルを備える、前記請求項のいずれかに記載の電流変換器。
【請求項15】
一次電流を運ぶための通電導体を用意すること、
センサコア、フラックスゲートリングコア、第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルを備える電流変換器を用意すること、
前記センサコアが前記通電導体から発せられた磁束を感知することができるように、前記センサコアを前記通電導体の周囲に配置すること、
前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルを駆動手段に接続し、かつ励磁磁束が前記フラックスゲートリングコアにおいて誘導されるように、前記第1および前記第2の励磁コイルを介して励磁電流を駆動すること、
前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルを検出回路に接続し、かつ第2の高調波検出を使用して前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルを介した電流の差を決定すること、
前記電流の差の第2の高調波検出に基づいて前記通電導体の前記一次電流を計算すること
を含む、通電導体を通る一次電流の流れを検出するための方法。
【請求項16】
励磁磁束が前記第2のフラックスゲートリングコアにおいて誘導されるように、前記電流変換器の第2のフラックスゲートリングコア内に設けられた第3の励磁コイルおよび第4の励磁コイルを介して励磁電流を駆動すること、および前記第3の励磁コイルおよび前記第4の励磁コイルが前記検出回路に接続されるように、前記第3の励磁コイルおよび前記第4の励磁コイルを前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルに直列に接続することをさらに含み、それにより前記第1の励磁コイルおよび前記第3の励磁コイルの第1の組み合わせられたシステムと前記第2の励磁コイルおよび前記第4の励磁コイルの第2の組み合わせられたシステムとの間で電流の差を決定する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1および前記第2の励磁コイルを介して駆動される前記励磁電流は交流である、請求項15~16に記載の方法。
【請求項18】
前記センサコアの周囲に補償コイルを設け、かつ前記補償コイルを介して補償電流を駆動し、前記一次電流の一次磁束が前記補償コイルを介して前記補償電流の補償磁束によって補償されるように、前記検出回路の出力に基づいて前記補償電流を決定する、請求項15~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記電流変換器の材料中に存在する残留磁束を除去するために、前記補償コイルを介して消磁信号を送信する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電流検出の分野に関し、より具体的には磁束感知による電流検出の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
直接的な電気的接続を確立することを必要とすることなく、電線または母線などの通電導体の電流を検出するための電流変換器が知られている。電流変換器は、通電変換器から発せられた磁場の強度を決定することにより、通電変換器の一次電流を決定する。
【0003】
フラックスゲート型の公知の電流変換器は典型的に、通電導体の周囲に配置することができる連続ループとして成形された高透磁率材料のコアを備える。典型的にそのようなフラックスゲート型電流変換器は、コアにおいて磁場を誘導するための2つの励磁コイルと、コアにおける正味磁束を検出するためのセンサコイルとをさらに備える。
【0004】
典型的なフラックスゲート型電流変換器では、コアは通電導体の周囲に配置することができる連続ループを形成しているが、そのような構成は、通電導体をその電源に接続する前に当該変換器を装着することを必要とする。この構造体を開放および閉鎖することができるスプリットコア型電流変換器は、その通電導体の電源を切ることを必要とすることなく当該変換器を1つの通電導体の周囲に配置し、かつ別の通電導体に移動させることを可能にすることにより、この問題を解決する。
【0005】
スプリットコア型電流変換器は複数の通電導体と共に使用するために実用的であるが、開放および閉鎖することができる電流変換器はいくつかの課題をもたらす。コアを分けることにより、それを再び閉鎖する際にループを形成する方法においてばらつきを生じるリスクをもたらし、これは検出感度に影響を与える。いくつかのシステムは、磁力計コアそれ自体の分割を回避するために、電流変換器内に別々に装着された複数の磁力計コアを有することによりこれを解決することを試みているが、複数の別個の磁力計コアを使用することにより電流変換器が外部場に対してより脆弱になり、当該装置の構築が複雑になる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、その導体からの磁束を測定することにより通電導体の電流を確実に決定するためのツールを提供することにある。
【0007】
上記目的および利点は、本発明の説明から明らかになる数多くの他の目的および利点と共に、
間隙によって中断されたループとして成形されている、通電導体からの磁束を集中させるためのセンサコアと、
前記センサコアの間隙内に配置されている、磁束を感知するためのフラックスゲートリングコアと、
前記フラックスゲートリングコアの第1の部分の周囲に巻き付けられている、前記リングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するための第1の励磁コイルと、
前記フラックスゲートリングコアの第2の部分の周囲に巻き付けられている、前記リングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するための第2の励磁コイルと、
前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルを介して励磁電流を駆動するための駆動手段と、
前記第1および前記第2の励磁コイルの電子信号を検出するために前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルに接続された検出回路と
を備える、
通電導体からの磁束を測定するための電流変換器によって得られる本発明の第1の態様によるものである。
【0008】
ループという言葉により、囲い込みを形成するためにその開始部分がその終了部分に接続されている構造体と理解される。好ましい一変形形態ではループは円形であってもよいが、他の好ましい変形形態では四角形などの他の形状を有していてもよい。好ましい変形形態では、センサコアのループは規則的な形状、すなわち円または全ての角度が同じである幾何学形状である。
【0009】
間隙によって中断されたループという言葉により、ループを形成しているがセグメントが除去されている構造体と理解される。好ましい変形形態では、除去されているセグメントは、センサコアの輪郭の長さの10分の1などのセンサコアの輪郭の長さの最大で5分の1である。間隙という言葉により、センサコアがセンサコアの第1の端部からセンサコアの第2の端部まで連続的な断面積を有する閉ループであった場合に間隙がセンサコアの失われているセグメントの体積であるような、センサコアの第1の端部とセンサコアの第2の端部との間の領域と理解される。
【0010】
センサコアの間隙内に配置されているフラックスゲートリングコアという言葉により、フラックスゲートリングコアがセンサコアの第1の端部とセンサコアの第2の端部との間に位置していると理解される。好ましい変形形態ではフラックスゲートリングコアは間隙の体積内に含まれており、すなわちフラックスゲートリングコアの断面は、センサコアの断面よりも小さいかそれと等しい。フラックスゲートリングコアが間隙を超えて延在していないそのような好ましい変形形態のいくつかでは、フラックスゲートリングコアの周囲に巻き付けられた第1および第2の励磁コイルは、フラックスゲートリングコアそれ自体はそうではないとしても、間隙の体積の外側に延在していてもよい。別の変形形態では、フラックスゲートリングコアは、センサコアの第1の端部とセンサコアの第2の端部との間にセンサコアの第1の端部およびセンサコアの第2の端部の端面に垂直な方向に間隙を超えて延在して配置されていてもよい。
【0011】
フラックスゲートリングコアをセンサコアの間隙内に装着された状態にすることにより、いくつかの利点が得られる。通電導体がセンサコアが形成しているループによって囲い込まれた開口部内にあるように、センサコアを通電導体の周囲に配置することができる。磁性材料で作られているセンサコアは通電導体の磁場を集中させる。磁場はセンサコアによってフラックスゲートリングコアに導かれ、それにより感度が高まる。さらにセンサコアが磁場を集中させるので、それにより外部場に対する脆弱性およびセンサコア開口部内での通電導体の非中心位置合わせも減少する。フラックスゲートリングコアをセンサコアの一体化された部分ではなく間隙内に位置している状態にすることにより、センサコアに侵入し得る第1および第2の励磁コイルによって誘導された励磁磁束からのノイズの量を減少させる。
【0012】
さらに、フラックスゲートリングコアをセンサコアの間隙内に配置された状態にすることにより、様々なサイズのセンサコアを有する同一のフラックスゲートリングコア構造を使用することが可能になる。異なるサイズの通電導体をセンサコア開口部で囲い込むことを可能にするために、センサコアを拡大または縮小してもよい。好ましくは、同一のフラックスゲートリングコア構成を異なるセンサコア寸法と共に使用することができるように、間隙の高さすなわちセンサコアの第1の端部とセンサコアの第2の端部との間の距離は、本電流変換器の異なる変形形態間で同じであってもよい。それにより異なる電流導体に適合可能な電流変換器の作製を単純化する。
【0013】
好ましい変形形態では、駆動手段は第1および第2の励磁コイルを介して駆動される電流を制御するための変調器である。
【0014】
第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルに直接接続された検出回路を有することにより、第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルの電気信号に基づいて通電導体の磁束を測定することが可能になる。測定された磁束に基づいて一次電流を計算してもよく、第1および第2の励磁コイルの電気信号、すなわち電流および電圧の差を監視することにより磁束を決定してもよい。従って好ましい変形形態では、本電流変換器は専用のセンサコイルを備えていない。第1および第2の励磁コイルの信号から磁束を直接決定することにより、センサコイルを不要にすることができるため、本システムは単純化する。センサコア上での測定または必要に応じて第1および第2の励磁コイルの外側周囲に巻き付けられたセンサコイルを用いたさらに離れた場所での測定のいずれかと比較して、磁束を直接フラックスゲートリングコア上で測定することにより信号強度が高まる。
【0015】
好ましい変形形態では、第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルは、それらがフラックスゲートリングコア上で等しく離間されるように、言い換えると第1の励磁コイルの一方の端部から第2の励磁コイルの最も近い端部までの距離が同じになるように、フラックスゲートリングコアの周囲に巻き付けられている。
【0016】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、検出回路は、第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルのそれぞれの電流の差を復調するための第2の高調波検出器を備える。
【0017】
第1および第2の励磁コイルからの電気信号の差を決定するために第2の高調波検出を使用することにより、低い感度を有する電流変換器を用いた場合であっても通電導体の磁束を検出することが可能になる。第2の高調波検出により、本電流変換器におけるノイズの悪影響を減少させる。さらに、両方向に完全飽和状態で実行される第2の高調波検出の対称性により、本電流変換器における温度ドリフトを減少させる。
【0018】
本電流変換器の別の変形形態では、検出回路はエッジ時間差検出器を備える。さらに他の変形形態では、第1および第2の励磁コイルの電流信号を復調する他の公知の方法を使用してもよい。
【0019】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、フラックスゲートリングコアは少なくとも100.000の比透磁率を有する磁性材料で作られている。
【0020】
高い比透磁率を有する磁性材料のフラックスゲートリングコアを構築することにより、磁気抵抗はフラックスゲートリングコアにおいて低くなる。またフラックスゲートリングコアの小さい寸法により、磁性材料を通る短い経路のみが得られる。これらの特徴は、励磁磁束をフラックスゲートリングコア内に制限するのを促進する。センサコアの中に移動している励磁磁束は通電導体から拾われた磁束に関するノイズ源になるため、励磁磁束をフラックスゲートリングコアに制限することが好ましい。
【0021】
フラックスゲートリングコアの磁性材料はさらに、励磁周波数における電力損失を最小限に抑えるように低損失材料で作られている。高い透磁率は励磁磁束を局所化することに寄与するが、フラックスゲートリングコアの材料への磁束の損失を最小限に抑えることにより高い励磁周波数の使用が可能になり、それにより一次電流を検出することができる帯域幅を増加させる。好ましい変形形態では、励磁周波数は少なくとも32kHzである。他の好ましい変形形態では、励磁周波数は128kHz以上である。
【0022】
本電流変換器のいくつかの変形形態は、当該システムの電子機器における励磁ノイズを抑えるためにフィルタを備えていてもよい。
【0023】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、フラックスゲートリングコアはコバルト系非晶質金属合金で作られている。
【0024】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、センサコアはフラックスゲートリングコアの比透磁率よりも低い透磁率を有する磁性材料で作られている。
【0025】
センサコアの透磁率は高いことが好ましいが、センサコアの比透磁率がフラックスゲートリングコアの比透磁率よりも低くなるようにセンサコアの磁性材料を選択することにはいくつかの利点がある。
【0026】
第1に、より低い比透磁率を有する磁性材料は通常より高い比透磁率を有するものよりも安価であり、より安価な材料のより大きいセンサコアを作製することにより、本電流変換器コストを低く維持することができる。
【0027】
第2に、フラックスゲートリングコアにおいてより高い比透磁率を有することにより、励磁磁束をフラックスゲートリングコアに制限することをさらに促進する。それにより、センサコアに侵入する励磁磁束のノイズを最小限に抑える。さらに、センサコアによって拾われた通電導体からの一次磁束は、フラックスゲートリングコアまで最小の磁気抵抗を有する経路を辿り、そこから検出回路によって測定される。
【0028】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、センサコアはMu金属で作られている。
【0029】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、本電流変換器は、外部磁場からの保護を与え、かつノイズを減少させるために遮蔽物を備え、遮蔽物はセンサコア、フラックスゲートリングコア、第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルを一緒に包囲している。
【0030】
本システムは、近くの電子機器の磁場ならびに地球の磁場などの外部磁場に対して敏感である。本電流変換器の構成要素を包囲することにより、そのような望ましくない磁場に対する感度を低下させてもよい。それらの構成要素間での磁束の交換が遮蔽物によって制限されないように、そしてあらゆる外部場が本電流変換器に侵入する場合にシールドを用いてそれをセンサおよびフラックスゲートリングコアから離れる方向に案内するように、センサコア、フラックスゲートリングコアならびに第1および第2の励磁コイルは一緒に遮蔽物で囲い込まれている。
【0031】
本発明の第1の態様のいくつかの変形形態では、遮蔽物は内側シールドコア、外側シールドコア、上部シールドプレートおよび底部シールドプレートを含む。
【0032】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、遮蔽物は、前記センサコアの材料およびフラックスゲートリングコアの材料の両方よりも低い比透磁率を有する材料で作られている。
【0033】
好ましい変形形態では、遮蔽物は、センサコアの材料およびフラックスゲートリングコアの材料のどちらの飽和磁束密度よりも高い飽和磁束密度を有する材料で作られている。
【0034】
遮蔽物が外部磁場からの効果的な保護を与えるようにするために、それを好適な特性を有する材料で作らなければならない。材料が飽和されると磁場が遮蔽物を通過することができるため、遮蔽物の高い飽和磁束密度により遮蔽物が強力な外部磁場に対して確実に遮蔽することができるようにする。一般に高い飽和磁束密度を有する材料は低い比透磁率を有する。さらに、低い比透磁率を有する材料はより高い比透磁率を有するものよりも安価である場合が多く、従って低い比透磁率を有する材料を選択することは、本電流変換器のコストを低下させることに寄与する。
【0035】
好ましい変形形態では、遮蔽物およびセンサコアは、直接的な物理的もしくは電気的接触状態にならないように離間されている。いくつかの変形形態では、遮蔽物とセンサコアとの離間および遮蔽物とフラックスゲートリングコアとの間の距離は、遮蔽物材料の厚さの少なくとも半分である。他の好ましい変形形態では、遮蔽物とセンサコアとの間の距離ならびに遮蔽物とフラックスゲートリングコアとの間の距離は少なくとも1mmである。
【0036】
遮蔽物とセンサコアおよび/またはフラックスゲートリングコアとの間の距離が小さ過ぎる場合、外部磁場が遮蔽物からセンサコアおよび/またはフラックスゲートリングコアに移動する場合がある。従って遮蔽物が外部磁場からの効果的な保護を与えるために、最小距離が必要とされる。
【0037】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、シールドは電磁鋼板で作られている。
【0038】
電磁鋼板という言葉により、鉄および最大7%のシリコンを含む鉄合金と理解される。
【0039】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、本電流変換器は相殺電流を誘導し、かつフラックスゲートリングコアにおいてゼロに近い磁束を維持するために補償コイルを備え、前記補償コイルは前記センサコアの周囲の前記遮蔽物の周囲に巻き付けられている。
【0040】
補償コイルは、本電流変換器がゼロの磁束で動作するのを可能にする。補償コイルは検出回路に接続されており、磁力計出力をゼロのままにするために補償コイルによって発生する磁束が一次電流からの磁場を上回るように、電流は補償コイルを介して導かれる。正味ゼロの磁束で動作させることにより、通電導体の磁場がそうでなければ磁力計を飽和させるのに十分な程に大きい場合であっても、フラックスゲートリングコアの磁性材料が飽和を回避することを保証する。従って補償コイルは、本電流変換器のダイナミックレンジを増加させることに寄与する。
【0041】
補償コイルを遮蔽物の周囲に巻き付けることにより、遮蔽物も補償電流によって影響を受ける。故に補償コイルは遮蔽物の相殺磁化にも寄与する。
【0042】
遮蔽物は、その周囲に巻き付けられた補償コイルのための高周波のために中空変圧器コアとして機能するというさらなる利点を有する。
【0043】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、本電流変換器は本電流変換器における残留磁束を除去するために、補償コイルに接続された消磁回路を備える。
【0044】
消磁回路という言葉により、前記補償コイルを介して駆動される消磁信号の起動を制御するための回路と理解される。消磁信号という言葉により、本電流変換器の磁性材料中の残留磁束を打ち消すのに十分に高い交流と理解される。磁性材料は、磁場に供された後に残留磁束を保持する場合がある。補償コイルおよび遮蔽物などの補償システムが適所にある場合であっても、当該材料が供される磁場が強くなる程、残留磁束が当該材料中に保持される可能性が高くなる。消磁回路は、補償コイルにより問題が起きている場合、および/またはそれが一時的にオフになっている場合、あるいは本電流変換器が補償コイルによって補償することができる磁場の大きさを超える磁場に供されている状況において特に有利である。
【0045】
いくつかの変形形態では、本電流変換器は、フラックスゲートリングコアをセンサコアから離間させるために第1のスペーサおよび第2のスペーサを備え、第1のスペーサはセンサコアの第1の端部とフラックスゲートリングコアと間に位置しており、第2のスペーサはセンサコアの第2の端部とフラックスゲートリングコアと間に位置している。
【0046】
スペーサという言葉により、センサコアをフラックスゲートリングコアと直接接触させた状態にさせないあらゆる構成要素と理解される。好ましい一変形形態では、スペーサはフラックスゲートリングコアをセンサコアの間隙内に装着するためのホルダーの一部であってもよい。別の好ましい変形形態では、スペーサは遮蔽物構造の一部であってもよい。さらに別の好ましい変形形態では、第1および第2のスペーサは、単にさらなる間隔を作り出すという目的を有する別個の構成要素であってもよい。但し、第1のスペーサおよび第2のスペーサは、例えばホルダーの対向側にある状態で接続されていてもよいことを理解すべきである。
【0047】
第1および第2の励磁コイルによってフラックスゲートリングコアにおいて誘導される励磁磁束は、通電導体から検出された磁束に関するノイズ源である。フラックスゲートリングコアとセンサコアとの間に第1および第2のスペーサを有することは、励磁磁束をフラックスゲートリングコア内に含め、かつそれによりセンサコアに侵入するあらゆる励磁磁束を最小限に抑えることに寄与する。
【0048】
本電流変換器のいくつかの変形形態では、第1および第2のスペーサの効果は、異なる材料で作られているセンサコアおよびフラックスゲートリングコアの利点を補ってもよい。本電流変換器の他の変形形態では、第1および第2のスペーサは、同じ材料で作られていながらもセンサコアおよびフラックスゲートリングコアの適当な減結合を与えてもよい。
【0049】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、第1のスペーサの厚さは最大で50μmであり、第2のスペーサの厚さは最大で50μmである。
【0050】
センサコアとフラックスゲートセンサコアとの間隔は、センサコアとフラックスゲートコアセンサとの磁気結合の減少をもたらす。これは励磁磁束をフラックスゲートリングコア内に含めることに寄与し、それはセンサコアからフラックスゲートリングコアに移動する通電導体から感知された磁束の量の減少ももたらす。故に第1のスペーサおよび第2のスペーサがそれぞれ最小の厚さを有すること、すなわちフラックスゲートリングコアとセンサコアとの間の距離が小さいことが重要である。50μm以下の第1のスペーサおよび第2のスペーサのそれぞれの厚さは、励磁磁束からのノイズを最小に維持しながら磁束をフラックスゲートリングコアの中に導くのに適している。
【0051】
いくつかの好ましい変形形態では、本電流変換器はフラックスゲートリングコアとセンサコアとの間にスペーサを備えていない。そのような変形形態は、それぞれが0μmの厚さを有する第1および第2のスペーサを有することと同様であるとみなしてもよい。
【0052】
スペーサが存在しない場合、センサコアとフラックスゲートリングコアセンサとの結合が向上する。そのような変形形態では、材料選択およびそれによる材料の磁気特性における差は、センサコアの中に漏出する励磁磁束の悪影響を回避するのに十分である。
【0053】
さらなる変形形態によれば、本電流変換器は2つ以上のフラックスゲートリングコアを備え、前記フラックスゲートリングコアはセンサコアに沿って均等に分散されている。
【0054】
センサコアに沿って均等に分散されているフラックスゲートリングコアという言葉により、各フラックスゲートリングコア間のセンサコアの部分は等しい長さであると理解することができる。
【0055】
好ましい変形形態では、センサコアは互いに直接向かい合って位置している2つのフラックスゲートリングコアを備え、言い換えると、フラックスゲートリングコアはセンサコアの直径の各端に配置されている。そのような構成では、センサコアは2つの間隙を備え、フラックスゲートリングコアはそれらの間隙内に装着されている。
【0056】
2つ以上のフラックスゲートリングコアはそれぞれ、先に記載されているフラックスゲートリングコアとして構成されている。例えばフラックスゲートリングコアはそれぞれ、フラックスゲートリングコアの周囲に巻き付けられた第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルを備えること、および遮蔽物の場合、全てのフラックスゲートリングコアが本電流変換器の遮蔽物によって包囲されていることを理解すべきである。
【0057】
2つ以上のフラックスゲートリングコアを含めることは、本電流変換器のばらつきを検出し、かつそれを補償することができるので、外部磁場の効果をさらに軽減するという利点を有する。
【0058】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、本電流変換器は、
磁束を感知するための第2のフラックスゲートリングコアであって、前記第2のフラックスゲートは前記フラックスゲートリングコアと直接向かい合って配置されており、かつ前記センサコアの第2の間隙内に位置している第2のフラックスゲートリングコアと、
前記第2のリングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するための第3の励磁コイルと、
前記第2のリングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するための第4の励磁コイルと
を備える。
【0059】
当該フラックスゲートリングによって、コアはセンサコアの直径の各端に配置されている。第1のフラックスゲートリングコアとも呼ぶ他方のフラックスゲートリングコアは、センサコアのループに沿って第2のフラックスゲートリングコアから180度離間されている。
【0060】
第2の間隙内への第2のフラックスゲートリングコアの装着は、間隙内へのフラックスゲートリングコアの先に記載されている装着と同じである。
【0061】
第1および第2のフラックスゲートリングコアをセンサコアの経路内に互いに直接対向して配置された状態にすることには、そうでなければ測定時にノイズを引き起こす外部磁場の影響を減少させるという利点がある。第1および第2のフラックスゲートを互いに直接対向して配置された状態にすることは、外部磁場が第1および第2のリングコアに異なるように影響を与え、従って外部場によって引き起こされる影響を減少させることを意味する。外部場が大きい均一な磁場である理想的な場合には、磁場が反対の方向に印加されながらも、それは同じ大きさの磁場により第1および第2のフラックスゲートリングコアに影響を与える。故に、第1のフラックスゲートリングコアおよび第2のフラックスゲートリングコアによって感知される外部場は互いに打ち消し合う。同時に、センサコアによって拾われた通電導体によって発生した磁場は、磁束がセンサコアの周囲で一方向に導かれるので、互いに打ち消し合うことなく第1の磁束コア電流変換器および第2の磁束コア電流変換器の両方によって検出される。
【0062】
好ましい変形形態では、第1のフラックスゲートリングコアおよび第2のフラックスゲートリングコアとも呼ぶフラックスゲートリングコアは、同じ材料で作られており、かつ互いに同じ割合を有し、それにより測定対称性を与える。そのような好ましい変形形態では、第3および第4の励磁コイルは第1および第2の励磁コイルと同じであり、例えばそれらは同じ数の巻き付けを有し、かつ同じ種類の電線で作られている。
【0063】
好ましい変形形態では、第1の励磁コイルおよび第3の励磁コイルは電気的に直列に接続されており、第2の励磁コイルおよび第4の励磁コイルは電気的に直列に接続されている。そのような接続によって、第1および第2のフラックスゲートリングコアの励磁コイルを同時に、かつ同じように電気的に駆動することが可能になる。これは本電流変換器の動作を単純化し、かつ必要な機器を最小限に抑える。
【0064】
いくつかの好ましい変形形態によれば、
通電導体からの磁束を集中させるためのセンサコアであって、互いに直接対向して位置している第1の間隙および第2の間隙によって中断されたループとして成形されているセンサコアと、
前記センサコアの前記第1の間隙内に配置されている、磁束を感知するための第1のフラックスゲートリングコアと、
前記フラックスゲートリングコアの第1の部分の周囲に巻き付けられている、前記第1のリングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するための第1の励磁コイルと、
前記フラックスゲートリングコアの第2の部分の周囲に巻き付けられている、前記第1のリングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するための第2の励磁コイルと、
前記センサコアの前記第2の間隙内に配置されている、磁束を感知するための第2のフラックスゲートリングコアと、
前記第2のフラックスゲートリングコアの第1の部分の周囲に巻き付けられている、前記第2のリングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するための第3の励磁コイルと、
前記第2のフラックスゲートリングコアの第2の部分の周囲に巻き付けられている、前記第2のリングコアにおいて励磁磁束を発生させ、かつ通電導体の磁束を検出するための第4の励磁コイルと、
前記第1の励磁コイル、前記第2の励磁コイル、前記第3の励磁コイルおよび前記第4の励磁コイルを介して励磁電流を駆動するための駆動手段と、
前記第1および前記第2の励磁コイルの電子信号を検出するために前記第1の励磁コイル、前記第2の励磁コイル、前記第3の励磁コイルおよび前記第4の励磁コイルに接続された検出回路と
を備える、通電導体からの磁束を測定するための電流変換器が存在する。
【0065】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、本電流変換器はスプリットコア型電流変換器である。
【0066】
スプリットコア型電流変換器という言葉により、本電流変換器を通電導体の周囲に配置し、かつ次いでその一部を通電導体の周囲に再び取り付けるために本電流変換器のループを開放することが可能になるように、センサコアおよびフラックスゲートリングコアの閉ループは再取り付け可能に分離されるシステムと理解される。従ってスプリットコア型電流変換器を有することにより、通電導体それ自体を再配置することを必要とすることなく本電流変換器を通電導体の周囲に配置することが可能になる。これにより、本電流変換器を1つの通電導体から他の通電導体に移動させることが容易になるため、様々な異なる通電導体の一次電流を測定するために同じ電流変換器を使用することも容易になる。
【0067】
好ましい一変形形態では、本スプリットコア型電流変換器は、前記スプリットコア型電流変換器の一部を分割するために第1のスプリットおよび第2のスプリットを備え、前記第1のスプリットおよび前記第2のスプリットの両方がセンサコアの上に位置している。
【0068】
センサコア内に位置している第1および第2のスプリットという言葉により、第1および第2のスプリットの両方がいずれかの側にセンサコアを有すると理解される。従って第1および第2のスプリットは両方とも、スプリットが間隙のサイズを増加させないようにフラックスゲートリングコアから離れて位置している。第1および第2のスプリットを間隙から離れてセンサコア内に位置している状態にすることにより、例えばそれを通電導体の周囲に配置するために本スプリットコア型電流変換器を開放および閉鎖する場合を含み、本電流変換器を使用する場合には常に、フラックスゲートリングコアの周囲に囲い込み用遮蔽物を維持することが可能になる。
【0069】
センサコアは、再取り付け可能な閉鎖機構における不精密さに対してフラックスゲートリングコアよりもあまり敏感ではない。従って、通電導体をフラックスゲートリングコアで取り囲むのではなくてセンサコアの間隙内の磁場を感知することにより、フラックスゲートリングコアの特性を変えることなくスプリットを含めることを可能にする。
【0070】
複数のフラックスゲートリングコアを備える本電流変換器のそのような変形形態では、これらのフラックスゲートリングコアはそれぞれ、本スプリットコア型電流変換器のスプリットから離れて位置している。例えば2つのフラックスゲートリングコアを備えた好ましい変形形態では、前記フラックスゲートリングコアはセンサコアに沿って互いから180度で互いに直接向かい合って位置しており、スプリットは同様に互いに直接向かい合い、かつフラックスゲートリングコアから約90度離れて位置している。
【0071】
3つ以上のフラックスゲートリングコアを備える変形形態では、フラックスゲートリングコアはスプリットに関して等距離でないが、好ましい変形形態では、スプリットはフラックスゲートリングコアとスプリットとの間の距離を最大化するように位置している。
【0072】
別の好ましい変形形態では、本スプリットコア型電流変換器は、前記スプリットコア型電流変換器の一部を分割するために第1のスプリットおよび第2のスプリットを備え、前記第1のスプリットは前記フラックスゲートリングコアと前記センサコアと間に位置している。
【0073】
2つのフラックスゲートリングコアを備えるそのような変形形態では、第1のスプリットは第1のフラックスゲートリングコアとセンサコアとの間に位置し、第2のスプリットは第2のフラックスゲートリングコアとセンサコアとの間に位置する。3つ以上のフラックスゲートリングコアを備えた変形形態では、少なくとも第1のスプリットはフラックスゲートリングコアとセンサコアとの間に位置し、第2のスプリットはセンサコア内のどこか他の場所に位置していてもよい。
【0074】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、本電流変換器は前記電流変換器の正確性を高めるためにフィードバックコイルを備える。
【0075】
フィードバックコイルは交互磁束、すなわち交流から発生する磁束を感知するのに適している。フィードバックコイルを含めることにより、中域周波数の正確性を高める。検出回路のデータ処理においてフィードバックコイルによって測定された信号を磁力計の信号に加算し、それにより当該検出の最終出力の中域周波数の正確性を高める。
【0076】
好ましい変形形態では、フィードバックコイルはセンサコアの周囲の遮蔽物の周囲に巻き付けられている。
【0077】
本発明の別の目的は、その導体からの磁束を測定することにより通電導体の電流を決定するための方法を提供することにある。
【0078】
本発明の第2の態様によれば、上記目的および利点は、
一次電流を運ぶための通電導体を用意すること、
センサコア、フラックスゲートリングコア、第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルを備える電流変換器を用意すること、
センサコアが通電導体から発せられた磁束を感知することができるように、センサコアを通電導体の周囲に配置すること、
第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルを駆動手段に接続し、かつ励磁磁束がフラックスゲートリングコアにおいて誘導されるように第1および第2の励磁コイルを介して励磁電流を駆動すること、
第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルを検出回路に接続し、かつ第2の高調波検出を使用して第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルを介した電流の差を決定すること、
電流の差の第2の高調波検出に基づいて通電導体の一次電流を計算すること
を含む、通電導体を通る一次電流の流れを検出するための方法によって得られる。
【0079】
第1および第2の励磁コイルを介した励磁電流の電流の差に基づいて一次電流を決定する場合に、第2の高調波検出を励磁電流に適用することにより本検出方法の正確性を高める。
【0080】
本発明の第2の態様のさらなる実施形態によれば、本方法は、励磁磁束が前記第2のフラックスゲートリングコアにおいて誘導されるように、電流変換器の第2のフラックスゲートリングコア内に設けられた第3および第4の励磁コイルを介して励磁電流を駆動すること、および前記第3の励磁コイルおよび前記第4の励磁コイルが前記検出回路に接続されるように、前記第3の励磁コイルおよび前記第4の励磁コイルを前記第1の励磁コイルおよび前記第2の励磁コイルに直列に接続し、それにより前記第1の励磁コイルおよび前記第3の励磁コイルの第1の組み合わせられたシステムと前記第2の励磁および前記第4の励磁コイルの組み合わせられたシステムとの間で電流の差を決定することをさらに含む。
【0081】
それぞれの励磁コイルの直列接続によって第1の励磁コイルおよび第3の励磁コイルの第1の組み合わせられたシステムおよび第2の励磁コイルおよび第4の励磁コイルの第2の組み合わせられたシステムを形成することには、いくつかの利点がある。第1のフラックスゲートリングコアおよび第2のフラックスゲートリングコアは同じ駆動手段によって駆動してもよく、それにより電気的接続を単純化する。さらに、同じ検出回路を使用して第1のフラックスゲートリングコアおよび第2のフラックスゲートリングコアの組み合わせられた測定を検出してもよく、これにより必要な回路を単純にし、かつ収集された測定値に対してなされる必要な計算も複数のフラックスゲートリングコアの存在により複雑化させない。
【0082】
本発明の第2の態様のさらなる実施形態によれば、前記第1および前記第2の励磁コイルを介して駆動される励磁電流は交流である。
【0083】
好ましい変形形態では、フラックスゲートリングコアの磁性材料を両方向に深い飽和状態にするように、交互励磁電流は第1および第2の励磁コイルを駆動する。交互の深い飽和状態でフラックスゲートリングコアを駆動することにより、フラックスゲートリングコアにおけるあらゆるサーマルオフセットドリフトを最小限に抑え、それにより本電流変換器によって行われる測定の信頼性を高める。
【0084】
本発明の第2の態様のさらなる実施形態によれば、本方法はセンサコアの周囲に補償コイルを設けること、および補償コイルを介して補償電流を駆動することを含み、一次電流の一次磁束が補償コイルを介した補償電流の補償磁束によって補償されるように、検出回路の出力に基づいて補償電流を決定する。
【0085】
本発明の第2の態様のさらなる実施形態によれば、前記電流変換器の材料中に存在する残留磁束を除去するために、前記補償コイルを介して消磁信号を送信する。
【0086】
磁性材料は磁場に供された後に残留磁束を保持している場合がある。補償コイルおよび遮蔽物などの補償システムが適所にある場合であっても、当該材料が供される磁場が強くなる程、残留磁束が当該材料中に保持される可能性が高くなる。消磁信号という言葉により、本電流変換器の磁性材料中の残留磁束を打ち消すのに十分に高い交流と理解される。
【0087】
好ましい変形形態では、消磁信号は、ユーザが残留磁束を打ち消す必要性を観察した場合にそれが導入されるように、ユーザによって手動で起動してもよい。別の好ましい変形形態では、消磁信号は、出力オフセット電流が所定の閾値を超えた場合に自動的に起動される。
【0088】
以下では、本発明に係る実施形態の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】通電導体の周囲に配置された電流変換器の断面図の概略図である。
図2】電流変換器の構成要素および回路の概略図である。
図3】部分破断図に示されている電流変換器の概略図である。
図4】通電導体の周囲に配置されている、2つのフラックスゲートリングコアを有する電流変換器の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、添付の図面を参照しながら本発明を例としてより詳細に説明する。
【0091】
但し本発明は、以下に示されているものとは異なる形態で実施してもよく、本明細書に記載されているどんな例にも限定されるものとして解釈されるべきではない。それどころか、どの例も本開示が徹底的かつ完全となり、かつ本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されている。同様の符号は全体を通して同様の要素を指す。従って同様の要素は、各図の説明に関して詳細に記載されない。リングコアフラックスゲート電流変換器ならびにそのようなシステムを使用するための方法の実施形態の詳細な説明が提供される。
【0092】
図1は、断面で示されているその最も単純な形態の電流変換器1の構成要素の概略図を示す。
【0093】
センサコア10は磁性材料で作られており、間隙13によって中断されたループを形成している。ループという言葉により、囲い込みを形成するためにその開始部分がその終了部分に接続されている構造体と理解される。間隙によって中断されたループという言葉により、ループを形成しているがセグメントが除去されている構造体と理解される。間隙13という言葉により、センサコア10がセンサコアの第1の端部11からセンサコアの第2の端部12まで連続的な断面積を有する閉ループであった場合に間隙13がセンサコアの失われているセグメントが占めている体積であるような、センサコアの第1の端部11とセンサコアの第2の端部12との間の領域と理解される。好ましい実施形態では、センサコア10の断面積はセンサコア10の長さに沿って一定である。
【0094】
センサコア10は、通電導体5の一部がセンサコア10の開口部15内に位置するように、通電導体5の周囲に配置されている。センサコア10の開口部15という言葉により、センサコア10のループによって区切られている領域と理解される。
【0095】
好ましい変形形態では、通電導体5は測定中にセンサコア開口部15の中心に置かれる。例えばこれは、通電導体5の直径がセンサコア開口部15の直径に一致する場合であってもよく、あるいは電流変換器1は好ましい位置でそれを保持する外部支柱(図示せず)上に装着されていてもよい。通電導体5をセンサコア開口部15に対して中心に置かれた状態にすることが最適であるが、電流変換器1はあまり最適でない配置、例えば本電流変換器のセンサコア部分が中心から外れるように通電導体上に吊るされている状態でも機能する。
【0096】
好ましい実施形態では、センサコア10は円形である。他の実施形態では、センサコア10は四角形または六角形などの別の形状を有していてもよい。好ましい変形形態では、センサコアの形状は規則的である。
【0097】
フラックスゲートリングコア50はセンサコア10の間隙13内に配置されている。センサコアの間隙内に配置されているフラックスゲートリングコアという言葉により、フラックスゲートリングコアがセンサコアの第1の端部11とセンサコアの第2の端部12との間に位置していると理解される。好ましい変形形態では、フラックスゲートリングコアは間隙13の体積内に含まれている。
【0098】
図1では、フラックスゲートリングコアは、そのループがセンサコアのループに平行な状態で方向づけられて示されている。これは1つの可能な向きの例示である。本電流変換器の別の好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコアは、フラックスゲートリングコアのループがセンサコアのループに垂直であり、それにより第1の励磁コイルおよび第2の励磁コイルが通電導体に対して等距離に配置された状態になるように方向づけられている。さらに他の好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコア50は、センサコア10の向きに対して任意の他の角度、すなわち平行と垂直との間で方向づけられていてもよい。
【0099】
フラックスゲートリングコア50は閉ループを形成している。好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコア50のループは図1に示すように楕円形である。フラックスゲートリングコア50はループを形成する他の形状をなしていてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコア50は、その周囲に第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62がそれぞれ巻き付けられている実質的に平行な2つの細長い部分を備える。そのような形状はスタジアムのような形状であってもよく、あるいはそれは丸い角を有する矩形であってもよいが半円ではない。さらに他の好ましい変形形態では、フラックスゲートリングコア50は、四角形または矩形によって形成されたループであってもよい。別の実施形態では、フラックスゲートリングコアは円形である。好ましい実施形態では、その周囲に第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62が巻き付けられている細長い部分は、フラックスゲートリングコアが間隙13内に装着されている場合にセンサコア10の磁場に沿って方向づけられる。言い換えると、その周囲に第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62が巻き付けられているフラックスゲートリングコア50の部分は、実質的にセンサコアの第1の端部11からセンサコアの第2の端部12への方向に延在している。
【0100】
好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコア50は任意の装着手段20と共に、電流変換器1がループ構造を形成するようにセンサコアの第1の端部11およびセンサコアの第2の端部12を機械的に接続する。
【0101】
第1の励磁コイル61はフラックスゲートリングコア50の第1の部分の周囲に巻き付けられており、第2の励磁コイル62は、第1のコイル61および第2の励磁コイル62が重ならないようにフラックスゲートリングコア50の第2の部分の周囲に巻き付けられている。好ましい実施形態では、第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62は互いに対向して位置しており、すなわち第1の励磁コイル61と第2の励磁コイル62の間隔は当該励磁コイルの両側で同じであり、言い換えるとそれらはフラックスゲートリングコア50上で均等に離間されている。好ましい実施形態では、第1の励磁コイル61における巻き付け数は第2の励磁コイル62における巻き付け数と同じである。
【0102】
図1の概略図には示されていないが、電流変換器1の好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコイル50は装着手段20によって間隙13内に装着されている。そのような装着手段20はフラックスゲートリングコア50を包囲しているホルダーであってもよく、それはフラックスゲートリングコア50の一部のみを覆っている小さい支持体であってもよく、あるいは間隙13内でのフラックスゲートリングコア50の摩擦嵌合を保証する離間要素であってもよい。いくつかの好ましい変形形態では、装着手段20は第1のコイル61および第2の励磁コイル62のためのボビンとしても使用される。好ましい変形形態では、装着手段20は、それらが磁束を干渉しないように非磁性材料で作られている。
【0103】
電流変換器1のいくつかの実施形態では、前記センサコアの第1の端部11とフラックスゲートリングコア50との間に位置している第1のスペーサ、および前記センサコアの第2の端部12と前記フラックスゲートリングコア50との間に位置している第2のスペーサが存在する。電流変換器1の好ましい変形形態では、第1のスペーサおよび第2のスペーサは保持手段の一部である。他の変形形態では、第1および第2のスペーサは、フラックスゲートリングコア50とそれぞれ第1のセンサコアの端部11および第2のセンサコアの端部12との間の距離を制御するための別個の構成要素であってもよい。そのような一実施形態の好ましい変形形態では、第1のスペーサの厚さは50μmを超えておらず、かつ第2のスペーサの厚さは50μmを超えていない。いくつかの好ましい変形形態では、第1のスペーサの厚さは第2のスペーサの厚さと同じである。
【0104】
他の実施形態では、電流変換器1はスペーサを備えていない。そのような実施形態では、保持手段20はフラックスゲートリングコア50およびセンサコア10を離間させないように配置されている。例えば、保持手段は遮蔽物および/またはフラックスゲートリングコア50の中心に接続されていてもよい。
【0105】
いくつかの変形形態では、フラックスゲートリングコア50がフラックスゲートリングコア50とセンサコアの第1の端部11および第2の端部12との直接的な接触によってセンサコア10の間隙13内に装着されているため、電流変換器1は保持手段20を必要としなくてもよい。
【0106】
フラックスゲートリングコア50と、駆動手段および検出回路に接続された第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62との組み合わせシステムは磁場を検出することができるため、磁力計とみなされる。電流変換器1の他の構成要素は磁力計の出力を向上させることに寄与する。
【0107】
通電導体5は一次電流を運び、電流変換器1は一次電流を決定することを目的としている。一次電流は一次磁束(primary magnetic flux)ともいう一次磁束(primary flux)を発生させる。一次磁束は、電流変換器1の磁力計によって測定され、次いで検出された磁束に基づいて一次電流を計算することができる。
【0108】
一次電流が通電導体5に沿って移動する際に磁場が発生する。磁性材料で作られているセンサコア10は一次磁束を受け取り、次いでこれはセンサコア10に沿って移動する。一次磁束がセンサコア10に沿って移動すると、センサコア10の間隙13内に位置しているフラックスゲートリングコア50に到達する。
【0109】
好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコア50は少なくとも100.000の高い比透磁率を有する材料で作られており、これは第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62の励磁周波数において低損失である。好ましい変形形態では、フラックスゲートリングコア50は、低損失および高い比透磁率というそのような特徴を有するコバルト系非晶質金属合金で作られている。さらにフラックスゲートリングコア50の寸法、例えば直径または断面積は、フラックスゲートリングコア50をセンサコア10の間隙13内に位置づけることが必要とされる場合に、センサコア10の直径または断面積と比較して小さい。
【0110】
好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコア50を介して駆動される電流は、励磁磁束が深い磁気飽和までフラックスゲートリングコア50を駆動するような十分なものである。好ましい実施形態では、交流を使用して励磁磁束を駆動し、それにより誘導される飽和も交互になる。飽和の交互方向はフラックスゲートリングコア50において低いサーマルオフセットドリフトをもたらす。
【0111】
フラックスゲートリングコア50において低い磁気抵抗をもたらすフラックスゲートリングコア50の材料および寸法により、センサコア10における磁束は、一次磁束をフラックスゲートリングコア50内に集中させるようにフラックスゲートリングコアに流れる。好ましい実施形態では、センサコア10の比透磁率はフラックスゲートリングコア50の比透磁率よりも低く、それにより磁束をフラックスゲートリングコア50内に集中させるという効果をさらに高める。センサコアは例えばMu金属で作られていてもよい。
【0112】
図2は、さらなる構成要素を備えた電流変換器1の概略図である。この図は間隙13の領域にあるセンサコア10の部分を示し、ここではフラックスゲートリングコア50は接線方向の断面に示されて位置している。コイルおよび回路は電子回路図として示されている。
【0113】
図2の電流変換器1は、センサコア10とセンサコア10の間隙13内に位置しているフラックスゲートリングコア50とをなお備える。励磁磁束は、好ましい変形形態では信号を変調させるための変調器である駆動手段35によって駆動される第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62を介してフラックスゲートリングコア50において誘導される。第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62は検出回路30にさらに接続されており、これは第2の高調波検出を使用することにより、第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62における電流の差を決定することができる。
【0114】
第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62はどちらも駆動手段35に接続されている。好ましい実施形態では、駆動手段35は、第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62を介してそれぞれ駆動される交流の振幅および周波数を制御する変調器である。第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62を介して駆動される電流は、フラックスゲートリングコア50において誘導される励磁磁束を発生させる。磁力計システムの対称性により、その周囲に第1の励磁コイル61が巻き付けられているフラックスゲートリングコアの第1の部分は、一次磁束が存在しない場合にその周囲に第2の励磁コイル62が巻き付けられているフラックスゲートリングコアの第2の部分と同時に飽和に達する。通電導体5の一次電流からの磁束がセンサコア10からフラックスゲートリングコア50の中に導かれた場合、一次電流からの磁束が励磁コイル61、62のうちの一方における励磁磁束に加算されると共に、励磁コイル61、62の他方における励磁磁束から減算され、それにより、第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62は異なる時間で飽和に達することになる。
【0115】
フラックスゲートリングコア50が一次磁束に供された場合、一次磁束のアライメントは、第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62によって誘導される励磁磁束に関して異なる。そのアライメントの違いにより、一次磁束はフラックスゲートリングコア50の1つの部分における総磁束を増加させると共に、フラックスゲートリングコア50の他の部分においてそれを減少させ、それにより各側において深い飽和を達成する前にそれが要する時間において差が生じることになる。
【0116】
第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62はどちらも検出回路30に接続されている。検出回路は第2の高調波検出を用いて、第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62における電流の差を検出する。第2の高調波検出は電流変換器1の感度を高めると共に、同時に温度ドリフトの影響を最小限に抑える。第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62が同じフラックスゲートリングコア50上で動作する場合、温度誘導特性の変化は2つの信号を減算した場合に無効にされる。
【0117】
好ましい変形形態では、検出回路30は、第2の高調波検出に基づいて一次電流を計算することができる処理装置として機能するさらなる処理能力を備える。
【0118】
異なるサイズを有するセンサコアを、同じ磁力計構成要素すなわちフラックスゲートリングコア50および励磁コイル61、62と共に使用し得ることは本開示の利点である。それにより、様々な種類の通電導体の一次電流を測定するために使用することができる電流変換器のために、磁力計構成要素を同じように使用および作製することができる。
【0119】
センサコア10は、異なる通電導体5を囲い込むことができる多くの異なるサイズで入手される場合がある。好ましい実施形態では、センサコア開口部15の直径は0.1~5mの範囲、より好ましくは約0.5mなどの0.2~1mの範囲である。
【0120】
好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコア50の寸法はセンサコア10の寸法と比較して小さく、その理由はこれにより磁力計のノイズに対する感度が低下するからである。好ましい実施形態では、フラックスゲートリングコア50の直径は1~10mmなどの0.5~50mmの範囲、より好ましくは7mmなどの5~10mmの範囲である。
【0121】
図2に示されている電流変換器1の好ましい実施形態では、センサコア10、フラックスゲートリングコア50ならびに第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62は遮蔽物70によって包囲されている。図2の概略断面図には、内側シールドコア71および外側シールドコア72が示されている。なお、この概略図は原寸に比例しておらず、電流変換器1の異なる好ましい実施形態によって異なる場合があるのと同じように、例えばセンサコア10に対するシールドコア71、72の厚さならびに遮蔽物70とセンサコア10との間隔は図示されているものとは異なってもよい。センサコア10、フラックスゲートリングコア50ならびに第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62が完全に包囲されるように、遮蔽物70は上部シールドプレートおよび底部シールドプレートをさらに備えることを理解すべきである。一変形形態では、遮蔽物70は先に述べられている構成要素の周囲に固定して、あるいは着脱自在に装着することができる4つの部分で作られていてもよい。他の変形形態では、遮蔽物70の当該部分のいくつかは固定して接続されていてもよく、それ以外、例えば一体成形によって形成されている内側シールドコア71および上部シールドプレートは着脱自在であってもよく、外側シールドコア72および底部シールドプレートも同様であり、これらの2つの部分は、例えば保守のために遮蔽物70を遮蔽された構成要素へのアクセスのために取り外すことができるように、センサコア10、フラックスゲートリングコア50ならびに第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62の周囲に着脱自在に装着されてもよい。
【0122】
遮蔽物70は、磁力計によって感知された磁場が一次電流によって発生する磁場であるように、他の電子機器からの磁場および/または地球の磁場などの外部磁場から他の構成要素を保護することを目的としている。
【0123】
好ましい実施形態では、遮蔽物70は高い飽和磁束密度を有する材料で作られている。遮蔽物70が外部磁場により完全に飽和されている場合、磁束が遮蔽物70を通り抜けて磁力計を乱す場合があり、故に、飽和に達することなく外部磁場に耐えるのに十分に高い飽和磁束密度を有する材料から遮蔽物を作製することが好ましい。非常に多くの場合に、高い飽和磁束密度を有する材料は低い比透磁率を有し、従って電流変換器1のいくつかの好ましい変形形態では、遮蔽物70は、センサコア10の比透磁率およびフラックスゲートリングコア50の比透磁率よりも低い比透磁率を有する材料で作られている。いくつかの変形形態において使用されるそのような好ましい材料は電磁鋼板である。いくつかの変形形態では、遮蔽物70は複数の材料、例えばプレートから切り取られた上部シールドコアおよび底部シールドコアなどの、内側シールドコア71および外側シールドコア72とは異なる材料で作られている上部シールドコアおよび底部シールドコアで作られており、内側シールドコアおよび外側シールドコアは巻き付けられたリボンで作られている。
【0124】
好ましい実施形態では、遮蔽物は、遮蔽物70とセンサコア10および/またはフラックスゲートリングコア50との間の距離が遮蔽物の少なくとも2倍の厚さ(なお、図2は原寸に比例していない)であるように装着されている。いくつかの好ましい実施形態では、遮蔽物70とセンサコア10および/またはフラックスゲートリングコア50との間の距離は少なくとも1mmである。いくつかの変形形態では、その距離は非磁性材料で作られた少なくとも2つのディスタンスピースによって達成され、それらのディスタンスピースは、遮蔽物70とセンサコア10との間の固定された距離を維持するために遮蔽物70とセンサコア10との間に配置されている。遮蔽物70とセンサコア10および/またはフラックスゲートリングコア50との間の距離は、磁束が遮蔽物70からセンサコア10および/またはフラックスゲートリングコア50に移動するというリスクを制限し、そうでなければ遮蔽物70を非効率的にさせる。
【0125】
図2に示されている好ましい実施形態では、電流変換器1は補償コイル65をさらに備える。補償コイル65は遮蔽物70の周囲に巻き付けられている。好ましい実施形態では、遮蔽物が補償コイル65の均等に離間された巻き付けで覆われるように、補償コイル65は全てのセンサコアの周囲に巻き付けられている。より好ましい実施形態では、補償コイル65は、フラックスゲートリングコア50の領域において遮蔽物の周囲に均等に巻き付けられている。例えば巻き付けの間隔がフラックスゲートリングコア50の領域の周囲よりもセンサコアの領域の周囲でより大きくなるように、補償コイルの巻き付けはセンサコアの領域の周囲であまり均等に分散されていなくてもよい。電流変換器1がスプリットコア型電流変換器であるいくつかの実施形態では、本スプリットコア型電流変換器を開放することができるように、第1および第2のスプリットにおいて密接する補償コイル65の巻き付け間の距離をそれぞれ増加させることが必要な場合がある。
【0126】
好ましい実施形態では、補償コイル65の補償磁束を駆動する補償電流が計算された一次電流に比例していることを決定するように、補償コイルは検出回路30に接続されている。計算された一次電流に基づいて補償電流を決定することにより、感知される総磁束がゼロになるように補償磁束が一次磁束を上回るように、補償磁束を一次磁束に一致させることが可能である。ゼロの磁束で磁力計を動作させることにより、一次磁束を検出した際に磁力計が機能するのを可能にし、そうでなければこれは高過ぎるために磁力計を飽和させ、かつ磁束を検出することができなくなる。そのような磁力計は非線形であり、かつ例えば線形磁力計コアよりも素早く飽和するため、補償コイル65はフラックスゲートリングコア50と共に動作させる磁力計にとって特に重要である。
【0127】
図2に示されている好ましい実施形態では、電流変換器1はフィードバックコイル67をさらに備える。好ましい変形形態では、フィードバックコイル67は遮蔽物70の周囲に巻き付けられている。フィードバックコイル67は、本システムにおいて組み合わせられた交互磁束を感知する。フィードバックコイル67から検出された信号は磁力計信号に加算され、それにより交互磁束の信号を増幅させる。それによりフィードバックコイル67は、変動を有する中域周波数において検出される磁束の正確性を高める。磁力計は磁束を検出することに限定されており、ここでは変動が励磁磁束を駆動する励磁電流の周波数に関して速過ぎる場合に一次磁束を検出することができないため、一次電流は低い周波数で変動する直流または交流である。フラックスゲートリングコア50は各期間内で各方向において飽和に達することを必要とするため、励磁磁束の周波数は飽和磁束密度および励磁電流の振幅によってさらに制限される。
【0128】
遮蔽物70の外側周囲に巻き付けられた補償コイル65およびフィードバックコイル67の両方を備える一実施形態では、補償コイル65は離間された2つのセグメントに分けられていてもよく、フィードバックコイル67は、補償コイル65の前記セグメント間の領域において遮蔽物の周囲に巻き付けられている。遮蔽物70の外側周囲に巻き付けられた補償コイル65およびフィードバックコイル67の両方を備える別の実施形態では、補償コイル65が最初に遮蔽物70の周囲に巻き付けられていてもよく、フィードバックコイル67が補償コイル65の上に巻き付けられるように、フィードバックコイル67は遮蔽物70および補償コイル65の両方の周囲に巻き付けられていてもよい。さらに別の実施形態では、フィードバックコイル67が最初に遮蔽物の周囲に巻き付けられていてもよく、補償コイル65が補償コイル67の上に巻き付けられるように、補償コイル65は遮蔽物および補償コイル67の両方の周囲に巻き付けられていてもよい。
【0129】
補償コイル65およびフィードバックコイル67の両方が存在する全ての実施形態では、それらのコイルは、当該コイルが物理的接触状態にある場合であっても電気的に分離された状態に維持される。
【0130】
他の実施形態では、さらなる構成要素の1つのみまたはいくつかの組み合わせ、例えば補償コイル65またはフィードバックコイル67を含まずに遮蔽物70のみ、あるいは補償コイル65と組み合わせられているがフィードバックコイル67を含んでいない遮蔽物を有することが可能である。
【0131】
いずれの図にも示されていない好ましい実施形態では、電流変換器1は消磁回路を備える。消磁回路は補償コイル65に接続されており、補償コイル65を介して消磁信号を起動および駆動するのを可能にする。消磁信号は、電流変換器1の磁性材料中の残留磁束を打ち消すことができる高い振幅を有する交流である。好ましい変形形態では、消磁信号が必要とされる場合および電流変換器1の使用への悪影響が少ない場合、例えばそれが一次電流を監視するために重要でない場合をユーザが決定することができるため、消磁信号はユーザによって手動で起動する。
【0132】
いくつかの実施形態では、電流変換器1は非磁性材料、例えばプラスチック材料の外側シェル80を備えていてもよい。この外側シェルは電流変換器1の構成要素を囲い込んでそれを環境からの機械的摩耗ならびに電気信号から保護し、ユーザが電流変換器1を取り扱うのを容易にする。外側シェルは例えばセンサコア10、フラックスゲートリングコア50、遮蔽物70ならびに全てのコイルおよび回路を囲い込んでいてもよい。外側シェルは、電流変換器1の出力を読み取るための表示装置、遠隔表示および/または制御のため、例えば消磁信号を起動するために本電流変換器に接続するためのポートをさらに備えていてもよい。
【0133】
好ましい実施形態では、電流変換器1はスプリットコア型電流変換器である。スプリットコア型電流変換器という言葉により、センサコア10およびフラックスゲートリングコア50の閉ループが再取り付け可能に分離されるシステムと理解される。これは、電流変換器1のループの開放を可能にし、その後それを通電導体5の周囲に配置することができる。その後、電流変換器10を通電導体5の周囲で閉鎖することができる。一変形形態では、センサコアの開放端は表面積を増加させるように構造化されていてもよく、ここではスプリットのいずれかの側面にある部分は接続されている。他の変形形態では、スプリットは単純な平面を備えていてもよい。いくつかの好ましい変形形態では、遮蔽物および/または外側シェルは、閉鎖された構成においてスプリットコア電流導体を着脱自在に保証するためのスナップ接続またはラッチなどの接続手段を備えていてもよい。
【0134】
図3は部分破断図でスプリットコア型電流変換器1を示し、様々な構成要素およびそれらが互いに対してどのように配置されているかを示している。
【0135】
図3には、センサコア10が遮蔽物70によって取り囲まれ、次いでこれがシェル80によって取り囲まれるように、どのようにそれが装着されているかを明らかにしている。センサコア10は、センサコア10と遮蔽物70との間に直接的な物理的接触が存在しないようにするために、それが遮蔽物70から離間されるように装着されている。好ましい実施形態では、補償コイル65は遮蔽物70の周囲に巻き付けられて装着されており、従って遮蔽物70とシェル80と間に位置している。好ましい実施形態では、フィードバックコイル67は遮蔽物70の周囲に巻き付けられて装着されており、従って遮蔽物70とシェル80と間に位置している。より好ましい実施形態では、電流変換器1は遮蔽物70とシェル80との間に位置している補償コイル65およびフィードバックコイル67の両方を備える。
【0136】
第1の励磁コイル61および第2の励磁コイル62が周囲に巻き付けられた状態のフラックスゲートリングコアは、センサコア10の間隙内に装着されており、かつ装着手段20によって適所に保持されている。
【0137】
図3に示されている電流変換器1は、閉鎖された構成にあるスプリットコアの変形である。単一のスプリット2が破断図の中に見える。このスプリット2において、電流変換器1のパーツを分割して再び取り付けることができ、これにより本電流変換器を開放するのを可能にする。図示されている好ましい実施形態では、スプリット2は磁力計から離れて位置している。従ってスプリット2は、磁力計の構成要素を乱すことなくセンサコア10、遮蔽物70およびシェル80を分割する。
【0138】
図4は、断面として示されている第1のフラックスゲートリングコア50および第2のフラックスゲートリングコア50’の両方を有する電流変換器1の構成要素の概略図を示す。
【0139】
センサコア10は磁性材料で作られており、第1の間隙13および第2の間隙によって中断されたループを形成してる。第1および第2の間隙は互いに直接向かい合って、すなわちセンサコア10の対角線の対向端に配置されている。ループという言葉により、囲い込みを形成するためにその開始部分が終了部に接続されている構造体と理解される。間隙によって中断されたループという言葉により、ループを形成しているがセグメントが除去されている構造体と理解される。間隙という言葉により、センサコア10がセンサコアの第1の端部11からセンサコアの第2の端部12まで連続的な断面積を有する閉ループであった場合に間隙13がセンサコアの失われているセグメントが占めている体積であるような、センサコアの第1の端部11とセンサコアの第2の端部12との間の領域と理解される。これは、センサコアが第1および第2の間隙によって2つの対称的なセグメントに分割されているので、それらの間隙がセンサコア10の第3および第4の端部間の空間を占めているセンサコア10のセグメントによって占められている体積である第1の間隙および第2の間隙の両方に当てはまる。
【0140】
センサコア10は、通電導体5の一部がセンサコア10の開口部15内に位置するように通電導体5の周囲に配置されている。センサコア10の開口部15という言葉により、センサコア10のループによって区切られている領域と理解される。
【0141】
好ましい実施形態では、センサコア10は円形である。他の実施形態では、センサコア10の第1の間隙13内に配置された第1のフラックスゲートリングコア50およびセンサコアの第2の間隙に配置された第2のフラックスゲートリングコア50’によってセンサコアに印加される外部場の影響が減少するように、センサコア10が互いに直接対向して配置された第1および第2の間隙によって2つの対称的な部分に分割することができる規則的な形状である限り、センサコア10は四角形または六角形などの別の形状を有していてもよい。
【0142】
第1および第2の間隙内の第1および第2のフラックスゲートリングコアの好ましい配置および向きは、本電流変換器の他の実施形態について考察されているものと同じである。
【0143】
好ましい実施形態では、第1のフラックスゲートリングコア50および第2のフラックスゲートリングコア50’は励磁コイルの幾何学形状、材料および配置を含む同じような方法で構築されている。そのような実施形態では、それぞれのフラックスゲートリングコア上に励磁コイルを備えた第1のフラックスゲートリングコア50および第2のフラックスゲートリングコア50’は、本電流変換器の他の実施形態について記載されている同じ構築であってもよい。
【0144】
好ましい実施形態では、第1のフラックスゲートリングコア50および第2のフラックスゲートリングコア50’は任意の装着手段と共に、電流変換器1がループ構造を形成するようにセンサコア10のセグメントの端部を機械的に接続する。第1のフラックスゲートリングコア50および第2のフラックスゲートリングコア50’の装着は同じように行ってもよく、本発明の他の実施形態について記載されている方法のいずれかで行ってもよい。
【0145】
第1および第2のフラックスゲートリングコアを有する本電流変換器のいくつかの実施形態は、スプリットコア型電流変換器の種類であってもよい。そのような実施形態では、スプリットは好ましくは第1および第2のフラックスゲートリングコアから可能な限り遠くに位置しており、スプリットがフラックスゲートリングコアから等距離であるように、フラックスゲートリングコアに対して本電流変換器のループに沿って90度回転されている。これは、遮蔽物がスプリットにおいて分離される場合に好ましく、従って遮蔽物の有利な効果は、それがその領域において途切れないままである場合にフラックスゲートリングコアにおいて最も重要である。
【0146】
2つのフラックスゲートリングコアを有する本電流変換器の実施形態の背後にある動作原理は、本発明の他の実施形態について記載されているものと同じである。励磁コイルは直列に接続されていてもよく、例えばそれらが共通の磁力計を形成するために共通の駆動手段および検出回路に接続され得るように、第2の励磁コイルが第4の励磁コイルと直列に接続されている間に、第1のフラックスゲートリングコアの第1の励磁コイルは第2のフラックスゲートリングコアの第3の励磁コイルと直列に接続されていてもよい。本発明の他の実施形態について記載されている同じ方法で、好ましくは第1および第2のフラックスゲートリングコアを深い磁気飽和状態まで駆動するのに十分な量で、第1および第2のフラックスゲートリングコアを介して励磁電流を駆動する。
【0147】
参照符号のリスト
1 電流変換器
5 通電導体
10 センサコア
11 センサコアの第1の端部
12 センサコアの第2の端部
13 間隙
15 開口部
30 検出回路
35 駆動手段
50 フラックスゲートリングコア
50’ 第2のフラックスゲートリングコア
61 第1の励磁コイル
62 第2の励磁コイル
63 第3の励磁コイル
64 第4の励磁コイル
65 補償コイル
67 フィードバックコイル
70 遮蔽物
71 内側シールドコア
72 外側シールドコア

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】