(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】NOxを還元するための装置及びNOxを還元するための触媒を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20240829BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20240829BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20240829BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B01D53/86 222
B01J23/44 A ZAB
B01J23/42 A
B01J23/89 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536537
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 GB2022052194
(87)【国際公開番号】W WO2023026054
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524071469
【氏名又は名称】フィンデン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FINDEN LTD
【住所又は居所原語表記】Merchant House, 5 East St Helen Street, Abingdon Oxfordshire OX14 5EG (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ビール,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ウィルム
(72)【発明者】
【氏名】ジャック,サイモン
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
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4G169AA03
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4G169CD05
4G169DA05
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4G169FB45
(57)【要約】
本発明は空気中のNOxを還元するための装置、及び空気中のNOxを還元するための触媒を調製する方法に関し、触媒は、装置で使用するためのものである。装置は触媒を含み、触媒は、Pt、PtCu、PtCo、PtNi、Pd、PtPd及び/又はPdCuを含む。装置は、空気及び還元剤のための入口と、出口とを備える、触媒を受け入れるための反応チャンバをさらに備える。ヒータは、触媒を20℃~100℃の温度に加熱するように構成される。装置はまた、還元剤供給源を備え、還元剤供給源は入口に接続される。この方法は、担体材料を水中で安定化ポリマーと混合して水溶液を形成するステップa)を含む。ステップb)はステップa)で形成された水溶液に第一金属化合物を添加し、この溶液を撹拌することを含む。ステップc)は金属ナノ粒子を形成するように、ステップb)で形成された溶液に還元剤を添加することを含む。ステップd)は、ステップc)で形成された溶液に酸を添加することを含む。ステップe)はステップd)で形成された溶液を撹拌し、続いて濾過及び乾燥して、担持金属ナノ粒子を形成することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中のNOxを還元するための装置であって、前記装置は、
触媒であって、Pt、PtCu、PtCo、PtNi、Pd、PtPd及び/又はPdCuを含む該触媒と、
前記触媒を受け入れるための反応チャンバであって、空気及び還元剤のための入口と、出口とを備える該反応チャンバと、
前記触媒を20℃から100℃の温度に加熱するように構成されたヒータと、
還元剤供給源であって、前記入口に接続されている該還元剤供給源と、を含む装置。
【請求項2】
前記還元剤が水素である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記還元剤を提供するための物質の供給源をさらに含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ヒータは、前記触媒を20℃~25℃の温度に加熱するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記還元剤供給源が、前記還元剤を製造するための電解槽を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記還元剤が水素である場合、前記水素は0.05v/v%~4v/v%の濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
水素が、1v/v%~4v/v%の濃度で存在する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記還元剤の流量を増加又は減少させるための流量制御器をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記流量制御器は、前記還元剤の流量を5~15秒間増加させるように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記触媒が担体上に担持されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記触媒が、前記触媒と前記担体とを合わせた重量に対して0.1wt%~10wt%の量で存在する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記触媒がPtCuであり、前記担体がgC
3N
4であり、PtCuが、PtCuとgC
3N
4とを合わせた重量に対して0.1wt%~10wt%の量で存在する、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記出口と連通する少なくとも1つのガス検出器をさらに備え、前記少なくとも1つのガス検出器は、前記反応チャンバを出るガス中の一酸化窒素(NO)及び/又は亜酸化窒素(N
2O)を検出するように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのガス検出器が、一酸化窒素(NO)及び/又は二酸化窒素(NO
2)を検出するための化学発光検出器を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのガス検出器は、亜酸化窒素(N
2O)を検出するための赤外線検出器を含む、請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
複数の密閉空間において空気中のNOxの濃度を監視するためのシステムであって、
複数の、請求項1~15に記載の前記装置であって、前記複数の装置の各々は前記出口と連通する少なくとも1つのガス検出器を備え、前記少なくとも1つのガス検出器は前記反応チャンバを出るガス中の一酸化窒素(NO)、及び/又は亜酸化窒素(N
2O)を検出するように構成され、前記複数の装置の各々は前記複数の密閉空間の各々に配置される該複数の装置を含むシステム。
【請求項17】
密閉空間内部のNOxを還元する方法であって、
-請求項1~15のいずれか一項に記載のNOxを還元するための装置を提供するステップと、
-前記密閉空間の内部から前記入口を介して前記反応チャンバに空気を圧送するステップと、
-前記反応チャンバに還元剤を導入して、前記還元剤、空気及び触媒が互いに曝されるようにするステップと、
-前記反応チャンバを20℃から100℃の範囲の温度に加熱するステップと、
-前記反応チャンバから前記出口を通って前記密閉空間にガスを圧送するステップと、を含む方法。
【請求項18】
空気中のNOxを還元するための触媒を調製する方法であって
a)担体材料を水中で安定化ポリマーと合わせて、水溶液を形成するステップと、
b)ステップa)で形成された前記水溶液に第一金属化合物を添加し、前記溶液を撹拌するステップと、
c)金属ナノ粒子を形成するように、ステップb)で形成された前記溶液に還元剤を添加するステップと、
d)ステップc)で形成された前記溶液へ酸を添加するステップと、
e)ステップd)で形成された前記溶液を撹拌し、続いて濾過し、乾燥して、担持金属ナノ粒子を形成するステップと、を含む方法。
【請求項19】
前記第一金属化合物が白金又はパラジウムを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップb)がステップa)で形成された前記水溶液に第二金属化合物を添加することをさらに含み、前記第一金属化合物は前記第二金属化合物とは異なる、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記第一金属化合物が白金を含み、前記第二金属化合物が銅、コバルト又はニッケルのうちの1つを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第一金属化合物がパラジウムを含み、前記第二金属化合物が銅を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第二金属化合物が、銅、ニッケル又はコバルトの硝酸塩である、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
請求項18~23のいずれかに記載の方法によって調製された空気中のNOxを還元するための触媒であって、請求項1~15のいずれかに記載の装置で使用するためのものである触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の窒素酸化物(NOx)を還元(又は、低減/reduction)する装置、この装置を用いて密閉空間内のNOxを低減する方法、及びNOxを還元するための触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物は、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)を含む、以下でまとめて「NOx」と呼ばれる一群のガスである。NOはNOxガスの大部分を占め、酸素と結合してNO2を形成する。NOxは、様々な方法で大気中に放出される。NOx排出の主な原因は、例えば道路輸送、発電所を含むエネルギー産業、工業用ボイラーを含む製造業、及び非道路輸送(航空、鉄道、海運を含む)による1200℃を超える高温での燃料の燃焼である。2019年には、英国のNO2濃度の80%までが道路輸送からのNOx排出であると推定された(https://www.gov.uk/government/statistics/emissions-of-air-pollutants/emissions-of-air-pollutants-in-the-uk-nitrogen-oxides-nox)。燃料の燃焼に際して、窒素(空気中又は燃料中のいずれか)と大気中の酸素との反応によってNOxが形成される。NOxはまた、雷によっても、また土壌中の微生物プロセスによっても自然に生成される。
【0003】
NOxは、反応して酸性雨及びスモッグを形成する環境汚染物質である。NOxは土壌化学の変化を引き起こすことにより、生物多様性及び生息地に悪影響を及ぼす可能性がある。NOxはまた、揮発性有機化合物との反応によってオゾンを形成し得る。オゾンは、植生及び作物を酸化することによって環境問題を引き起こす可能性がある。さらに、オゾンは喘息発作などの気道の問題を引き起こし、悪化させ、眼、鼻及び咽喉の刺激を引き起こす可能性がある。NO2は特に健康にも有害であり、呼吸器系の炎症及び感染を引き起こす可能性がある。NO2はまた、喘息などの既存の状態、ならびに他の肺及び心臓の状態を悪化させ得る。
【0004】
人間活動に起因するNOx排出を低減する試みがなされてきた。選択的接触還元(SCR)システムは、NOxを還元剤と反応させることによって、排気又は煙道ガス流中のNOxを窒素ガス及び水に変換する。SCRシステムは例えば、発電所、ボイラー、ガスタービン、及び船舶及び道路車両のディーゼルエンジンにおいて、商業的に広く使用されている。既知のSCR触媒は、典型的にはゼオライト、貴金属又はバナジウム、タングステン及びモリブデンなどの金属の酸化物をベースとする活性触媒成分を含む。NOx排出の低減に関する貴金属SCRの研究は例えば、Surface Science[オンライン:http://dx.doi.org/10.1016/j.susc.2009.05.031]Vol.603、2009年6月12日、K Okumuraら、「H2によるNOの触媒還元に対する貴金属及び金属酸化物担体の組合せの影響」、2544~2550ページ;及びAngewandte Chemie International Edition[オンライン:https://doi.org/10.1002/anie.200500919]Vol.44、2005年7月8日、S Zhouら、「不均一系NOx低減のためのPt-Cuコアシェル及び合金ナノ粒子:コアシェルナノ粒子の異常な安定性と反応性」。
【0005】
一般的に使用される還元剤は、液体又は水性アンモニアである。比較的高いNOx変換効率にもかかわらず、既知のSCRシステムの問題は、要求される有効温度範囲が典型的には177℃から593℃であることである(Environmental ProgressVol 13(4)、1994年11月、R M Heckら、「高温SCR NOx触媒による運転特性及び商業運転経験」、221ページから225ページ)。必要とされる具体的な温度は、触媒材料及び幾何学的形状を含む様々な要因に依存する。したがって、既知のSCRシステムを使用し得る環境は限られている。NOx濃度の低減はまた、酸化経路を介して進行し得る。酸化経路を介して進行するNOx緩和触媒は硝酸などの硝酸塩に影響されやすく、触媒の表面を被毒し、したがって失活する。
【0006】
NOx排出を低減するための代替方法は、NOxを還元剤と反応させて窒素及び水を形成することを含む選択的非触媒還元(SNCR)である。尿素又はアンモニアなどの還元剤を使用し得る。触媒が存在しないため、使用する還元剤に応じて、850℃~1100℃の範囲の温度が必要である。このような温度は、SCRに必要とされる温度よりも高く、SCRと比較して達成されるNOx変換効率がより低い。したがって、SNCRシステムは、NOx排出が低い環境における比較的小さな設備にのみ適している。
【0007】
NOx排出を低減するさらなる方法は、NOx吸着剤の使用を含み、これは、NOx粒子に可逆的に吸着する(従来、リーンNOxトラップ(LNT)として知られている)、すなわちNOx粒子に結合又は「トラップする」材料で被覆された触媒担体を含む。典型的な吸着剤は、ゼオライト又はカーボネートである。吸着剤がNOxで飽和されると、例えば、ディーゼル燃料を噴射してNOxをゼオライトから脱着させ、ディーゼル燃料に含まれる炭化水素と反応させて窒素ガス及び水を生成することによって、吸着剤が再生される。NOx吸着剤はNOxよりも硫黄酸化物に対して高い親和性を有するため、硫黄酸化物を除去して、吸着剤の活性を回復させるためには、周期的な高温脱硫が必要とされるという問題がある。吸収技術は、NOxを除去するためにも使用される。例えば、硫酸は、高圧かつ比較的低温(35℃)でNOxと反応する。しかしながら、NOx変換効率は低く、腐食性化学物質の使用が必要とされ、必要な設備を収容するために比較的広い面積が必要とされる。
【0008】
屋内でNOxを低減するNOx吸収装置が知られている。NOx吸収装置は、機械的換気式熱回収(MVHR)システムの構成要素である。そのようなシステムは、NOxを吸収するための使い捨ての高効率微粒子吸収(HEPA)フィルタ及びカーボンフィルタを含み得る。このようなシステムは、国内及び商業的に使用されている。HEPA及びカーボンフィルタはNOxの90%の削減が可能であるが、通常は12ヶ月ごとに交換が必要である(https://www.dyson.com/air-treatment/purifier-accessories)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
NOx濃度低減のための担持金属ナノ粒子触媒(supported metallic, nanoparticle catalysts)を製造するための既知の方法は、大きな粒径分布の問題を抱えている。既知の方法は触媒の金属成分間に高度の合金化を引き起こすことが示されており、これは、いくつかの状況では担持金属ナノ粒子の触媒活性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、上述の欠点を少なくとも軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一態様によれば、空気中のNOxを還元するための装置であって、触媒を含む装置が提供される。触媒は、Pt、PtCu、PtCo、PtNi、Pd、PtPd及び/又はPdCuを含む。装置は、触媒を受け入れるための反応チャンバをさらに備える。反応チャンバは、空気及び還元剤のための入口と、出口とを備える。反応チャンバは触媒を20℃~100℃の温度に加熱するように構成されたヒータと、還元剤供給源とをさらに備え、還元剤供給源は上記入口に接続される。
【0012】
有利には、上記装置が、還元触媒経路を介して、NOx濃度を低減するための従来の触媒システムよりも低い温度で、空気中のNOx濃度の低減を促進する。したがって、本装置は、従来のシステムよりもエネルギー効率が高い。比較的低い温度の使用のために、装置はまた、従来のシステムよりも安全である。これは、本装置が建物の内部など、より広範な場所に設置することができ、建物の内部からの人員の退避を必要としないことを意味する。さらに、比較的低い温度の使用は、還元反応の副生成物としてのアンモニアの生成を防止する。有利には、NOxの還元の副生成物が窒素及び/又はN2Oであり、これらは共に20℃~100℃の温度で不活性ガスである。本発明の装置はまた、触媒の表面上の硝酸塩又は硝酸の蓄積(build up)に悩まされない。
【0013】
好ましくは、上記還元剤は水素である。水素は安価で容易に入手可能であり、従来のシステムと比較して、比較的低温でNOxを還元する触媒を助ける(又は、触媒がNOxを還元するのを助ける)。水素はまた、環境リスクをもたらさない。
【0014】
好ましくは、上記装置は還元剤を提供するための物質の供給源(すなわち、還元剤の間接的供給源)をさらに含む。水素などの還元剤は、別の物質又は化学物質を改質することによって生成し得る。物質は汚染物質であってもよく、汚染物質は環境に望ましくない影響を及ぼす物質である。ホルムアルデヒドは、有利には還元剤として水素を提供し得る汚染物質である物質の例である。装置の使用中、ホルムアルデヒドはバックグラウンドレベルでのみ存在し、これは、いかなる有害な環境リスクも最小限であることを意味する。
【0015】
好ましくは、ヒータ(又は、加熱器)が触媒を20℃~25℃の温度に加熱するように構成される。この装置は、この温度範囲において特に効率的かつ安全にNOxを還元することが観察されている。
【0016】
好ましくは、還元剤供給源が還元剤を製造するための電解槽を含む。電解槽は、水素などの還元剤を、要求に応じて、及び現場で、例えば水を分解することによって、迅速かつ容易に生成することを可能にする。これにより、還元剤、例えば水素を無駄にすることを防止する。
【0017】
好ましくは、還元剤は水素であり、水素は0.05v/v%~4v/v%の濃度で存在する。有利には、この濃度域内においてNOxの窒素及び/又はN2Oへの良好な転化が観察され、引火の危険性をもたらさない。
【0018】
好ましくは、水素が0.05v/v%~1v/v%の濃度で存在する。この範囲の水素濃度は、触媒が0.1wt%Pt-TiO2である場合に特に効果的である。
【0019】
好ましくは、上記装置は還元剤の流量を増加又は減少させるための流量制御器を備える。触媒の組成に応じて、NOxの最適な還元が達成されるように水素の流量を調整し得る。
【0020】
好ましくは、流量制御器は還元剤の流量を5~15秒間増加させるように構成される。したがって、流量制御器は、還元剤の流量を第一流量から増加した第二流量に増加させるように構成される。還元剤の増加した第二流量は、5~15秒間維持される。この期間が経過すると、流量制御器は還元剤の流量を、増加した第二流量から、第一流量に戻るように減少させるように構成される。水素などの還元剤の流量を一時的に増加させると、パルシング効果(pulsing effect)が生じる。触媒の存在下で還元剤をパルスすること(pulsing)によって、触媒の触媒活性が効果的に再生される。したがって、有利には触媒がより少ない頻度での交換を必要とし、これはコスト節約を提供する。さらに、触媒の再生をその場で行うことができ、装置のメンテナンスをより迅速かつ容易にする。
【0021】
好ましくは、触媒は担体上に担持される。有利には、担体は触媒の活性を改善するために、触媒の比表面積を最大化する。典型的な担体は、グラファイト状窒化炭素(gC3N4)、シリカ、二酸化チタン、活性炭及び/又はアルミナを含む。
【0022】
好ましくは、触媒が触媒と担体とを合わせた重量に対して0.1wt%~10wt%の量で存在する。特に効率的なNOx濃度の低減は、触媒がこの濃度範囲で使用される場合に観察される。好ましくは、触媒はPtCuであり、担体はgC3N4であり、PtCuはPtCuとgC3N4とを合わせた重量に対して0.1wt%~10wt%の量で存在する。
【0023】
好ましくは、上記装置が出口と連通する少なくとも1つのガス検出器を備え、少なくとも1つのガス検出器は反応チャンバを出るガス中の一酸化窒素(NO)及び/又は亜酸化窒素(N2O)を検出するように構成される。有利には、NO及びN2Oの検出によりオペレータが装置の性能を監視することが可能になり、装置が保守を必要とするかどうかを示すことができる。NO及びN2O濃度を監視することによって、窒素濃度をそこから推定し得る。したがって、NOx検出器は、NOx濃度レベルに関する情報をユーザに提供し得る。この情報に応答して、流量制御器は装置への還元剤(例えば、水素)の流れを最適化するように調整され得る。
【0024】
好ましくは、少なくとも1つのガス検出器が一酸化窒素(NO)及び/又は二酸化窒素(NO2)を検出するための化学発光検出器を含む。有利には、化学発光検出器が0.5ppb~20ppmの広いNO検出範囲を有し、したがって、従来のNO検出器よりもNOに対して感受性が高い。代替的な検出器は電気化学的検出器であり、これは、有利には小型で低コストである。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つのガス検出器が亜酸化窒素(N2O)を検出するための赤外線検出器を含む。N2Oは装置によって操作される温度域では不活性であるが、装置が配置される環境に応じて、N2Oレベルを監視することが望ましい場合がある。
【0026】
本発明の第二態様によれば、本発明の第一態様による装置を複数備える、複数の密閉空間内の空気中のNOx濃度を監視するためのシステムが提供される。複数の装置の各々は出口と連通する少なくとも1つのガス検出器を備え、少なくとも1つのガス検出器は反応チャンバを出るガス中の一酸化窒素(NO)を検出するように構成され、複数の装置の各々は複数の密閉空間の各々に配置される。このようなシステムは、密閉空間内の異なる領域間でNOx濃度の比較を行うことを可能にする。これは、装置が正しく機能しているかどうか、及び/又は温度及び/又は触媒濃度などの動作パラメータが調整を必要とするかどうかをオペレータが判断するのを支援する。
【0027】
本発明の第三態様によれば、密閉空間内のNOxを還元する方法であって、本発明の第一態様によるNOxを還元するための装置を提供するステップと、前記密閉空間内部から前記入口を介して前記反応チャンバ内に空気を圧送するステップと、還元剤を前記反応チャンバ内に導入して、前記還元剤、空気及び触媒が互いに曝されるようにするステップと、前記反応チャンバを20℃~100℃の範囲の温度に加熱するステップと、前記反応チャンバから、前記出口を通して前記密閉空間内にガスを圧送するステップと、を含む方法が提供される。
【0028】
本発明の第四態様によれば、空気中のNOxを還元するための触媒を調製する方法であって、a)担体材料を水中で安定化ポリマーと合わせて水溶液を形成するステップ;b)ステップa)で形成された水溶液に第一金属化合物を添加し、溶液を撹拌するステップ;c)金属ナノ粒子を形成するように、ステップb)で形成された溶液に還元剤を添加するステップ;d)ステップc)で形成された溶液に酸を添加するステップ;e)ステップd)で形成された溶液を撹拌し、続いて濾過及び乾燥して、担持金属ナノ粒子を形成するステップを含む方法が提供される。有利には、この方法は、狭い粒径分布を有する触媒を調製する容易な方法を提供する。この方法によって調製された触媒は、特に水素が還元剤として使用される場合、低温範囲で本発明の第一態様による装置においてNOxの濃度を効率的に低減することが観察された。
【0029】
好ましくは、第一金属化合物が白金又はパラジウムを含む。有利には、白金及びパラジウム触媒が比較的低温でのNOx還元のための有効な触媒を提供することが示されている。
【0030】
好ましくは、本方法は、ステップa)で形成された水溶液に第二金属化合物を添加することをさらに含み、第一金属化合物は第二金属化合物とは異なる。有利には、本方法はバイメタリックナノ粒子(bimetallic nanoparticle)を製造するために使用することができ、これは、本発明の第一態様による装置においてNOx還元触媒として特に有効である。
【0031】
好ましくは、第一金属化合物は白金を含み、第二金属化合物は銅、コバルト又はニッケルのうちの1つを含む。有利には、金属元素のこのような組み合わせはNOxを不活性生成物に効果的に変換するバイメタリックNOx還元触媒を提供する。
【0032】
好ましくは、第一金属化合物はパラジウムを含み、第二金属化合物は銅を含む。パラジウム及び銅を含む触媒は、上記の方法を用いて容易に調製し得る。
【0033】
好ましくは、第二金属化合物が銅、ニッケル又はコバルトの硝酸塩である。このような材料は容易に入手可能であり、取り扱いが容易であり、本発明の第四態様による方法における使用に特に適している。
【0034】
本発明の第五態様によれば、本発明の第四態様による方法によって調製された空気中のNOxを還元するための触媒であって、本発明の第一態様による装置において使用するための触媒が提供される。
【0035】
数値範囲が本明細書内に記載される場合、そのような範囲はその範囲の両端点を含み、開示するものとして解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の様々な実施形態及び態様は、添付の図面を参照して、限定することなく以下に説明される。
【0037】
【
図1】
図1は、空気中のNOxを還元するための装置の概略図を示す。
【0038】
【
図2】
図2は、
図1に示す装置を用いて、密閉空間内のNOxを還元する方法のフローチャートを示す。
【0039】
【
図3】
図3は、
図1の装置において使用された1wt%PtCu-gC
3N
4触媒の活性プロットを示す。
【0040】
【
図4】
図4は、
図1の装置において使用された0.1wt%Pd-TiO
2の活性プロットを示す。
【0041】
【
図5】
図5は、
図1の装置において使用された0.1wt%Pd-TiO
2の活性プロットを示す。
【0042】
【
図6】
図6は、
図1の装置における使用前後の0.1wt%Pd-TiO
2のATR(減衰全反射率)スペクトルを示す。
【0043】
【
図7】
図7は、
図1の装置において使用された0.1wt%Pt-TiO
2の活性プロットを示す。
【0044】
【
図8】
図8は、
図1の装置において使用された0.05wt%Pt0.05wt%Pd-TiO
2触媒の活性プロットを示す。
【0045】
【
図9a】
図9a及び9bは、
図1の装置において使用された、本発明の範囲外の方法によって合成された1wt%PtCu-gC
3N
4触媒の活性プロットを示す。
【
図9b】
図9a及び9bは、
図1の装置において使用された、本発明の範囲外の方法によって合成された1wt%PtCu-gC
3N
4触媒の活性プロットを示す。
【0046】
【
図9c】
図9c及び9dは、
図1の装置において使用された、本発明による方法によって合成された1wt%PtCu-gC
3N
4触媒の活性プロットを示す。
【
図9d】
図9c及び9dは、
図1の装置において使用された、本発明による方法によって合成された1wt%PtCu-gC
3N
4触媒の活性プロットを示す。
【0047】
【
図10】
図10は、本発明による方法によって触媒を調製するためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は一般に、空気中のNOxを還元することに関する。より詳細には、本発明の態様は、反応チャンバと、その反応チャンバを含む装置に関し、反応チャンバは中に触媒を収容するための内部を有し、反応チャンバの外部から取り込まれる空気からのNOxの量を還元する。他の態様は、空気中のNOxを還元するための触媒を調製する方法を含む。
【0049】
本発明の装置は、既知のシステムと比較して、比較的低い温度範囲で空気中のNOx濃度を低減するためのものである。したがって、本装置は既知のシステムよりも安全であり、エネルギー効率が高い。空気中のNOxを還元するための触媒を調製する方法は狭い粒度分布を有する金属触媒を提供し、これは本発明の装置における使用に適している。
<NOx還元装置>
【0050】
本明細書では、大気中のNOx(一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)を含む)を還元するための装置1について説明する。好ましい実施形態では、装置1が密閉空間内に配備されてもよい。密閉空間は、建物の内部、例えば、建物の部屋、階段の吹き抜け又は廊下の中であり得る。「建物」という用語は、ガレージ又はキャビンなどの屋外建物を包含する。「密閉空間」という語句は例えば、開閉可能な開口を有する部屋、階段の吹き抜け、廊下、ガレージ、又はキャビンなどの室内環境を包含する。例えば、「密閉空間」という語句は、ドアによって開閉可能な出入口、及び/又は開閉可能な窓を有する部屋を包含する。「密閉空間」とは、例えば、窓が開いている、又は閉じている部屋を含む。
【0051】
装置1は、Pt、PtCu、PtCo、PtNi、Pd、PtPd及び/又はPdCuを含む群から選択される触媒20を含む。触媒20は、担体22によって担持される。装置1は触媒20を受け入れるための反応チャンバ10をさらに備え、反応チャンバ10は空気及び還元剤のための入口101と、出口105とを備える。装置1は、触媒を20℃~100℃の温度に加熱するように構成されたヒータ12をさらに備える。装置1はまた、温度検出器18を含み得るが、これは必須ではない。装置1は還元剤を含む還元剤供給源14を含み、これは、反応チャンバ10内に還元剤を送達するための入口101に接続される。流入管1011が、大気及び還元剤を反応チャンバ10内に送達するために入口101に接続されている。好ましい実施形態では、
図1に示されるように、空気は空気入口パイプ1012を通って導かれる。還元剤供給源14及び空気入口パイプ1012は、管103によって互いに接続される。代替の実施形態では、装置1が2つの入口、すなわち、一方が空気用で他方が還元剤用の入口を備えてもよい。流出管1051が出口105に接続され、流出管1051は、浄化されたガス(cleaned gas)が反応チャンバ10から出ることを可能にするように構成される。
【0052】
装置1は、触媒20を含む反応チャンバ10の内容物を20℃~100℃の範囲の温度に加熱するためのヒータ12を含む。したがって、この装置は、比較的低い温度範囲でのNOxの還元を容易にする。したがって、動作温度範囲の反応チャンバ10は室温(すなわち、20℃)又は室温をわずかに上回る温度である。動作温度は、いずれにしても、既知のSCRシステムの有効温度範囲よりも実質的に低く、したがってより安全である。したがって、本明細書に記載の装置は、密閉空間の内部の空気中のNOxを還元することによって、建物内などの密閉空間内部の空気質を安全に改善し得る。あるいは、この装置は密閉空間の外部の空気中のNOxを還元するために使用し得る。例えば、装置は、道路トンネル内に配備し得る。
【0053】
好ましい実施形態では、ヒータ12が触媒20を20℃~25℃の温度に加熱するように構成される。この温度域は、二酸化チタン担体22上に担持されたPt触媒20(Pt-TiO2)が本装置において使用され、PtがPt触媒と二酸化チタン担体とを合わせた重量に対して0.1wt%の濃度を有する場合に有利である。0.1wt%Pt-TiO2触媒を用いてこの温度域で運転する場合、NOxガスの転化率は約33%のN2Oと約66%のN2である。
【0054】
代替の実施形態では、触媒20はバイメタルである。一実施形態では、触媒20はPtCuであり、担体22はグラファイト状窒化炭素(gC3N4)、すなわちPtCu-gC3N4である。PtCuは、触媒20と担体22とを合わせた重量に対して、0.1wt%~10wt%の濃度で存在し得る。0.1wt%PtCu-gC3N4又は1wt%PtCu-gC3N4触媒/担体系を装置に使用すると、比較的高いNOx還元が観察される
【0055】
触媒20は、任意の適切な担体22と組み合わせることができる。触媒20及び担体22の組合せの実例は、PtCu-gC3N4、Pt-TiO2、Pd-TiO2、及びPtPd-TiO2である。
【0056】
代替の実施形態では、触媒がPtCo、PtNi又はPdCuであり得る。バイメタル触媒中の2つの金属は、1:1~1:3のモル比で存在し得る。いくつかの例ではPtCo、PtNi又はPdCuは触媒20と担体22とを合わせた重量に対して、0.1wt%~10wt%の重量パーセント範囲で存在する。
【0057】
代替の実施形態では、ヒータが、触媒20を65℃~75℃の温度に加熱するように構成される。この温度範囲では、触媒20がPdであり、担体22が二酸化チタンであり(Pd-TiO2)、PdがPd触媒と二酸化チタン担体とを合わせた重量に対して0.1wt%の濃度を有する場合、NOxガスは100%N2に変換され、N2Oはほぼない(with no trace)。
【0058】
装置1は、装置1が配置されている環境からなど、装置1の外部から反応チャンバ10内に空気を引き込むためのポンプ107を含み得る。いくつかの実施形態では、ポンプ107が空気入口101に接続された空気入口パイプ1012の内部にある。いくつかの構成では、ポンプ107が反応チャンバ10を通して空気及び還元剤を引き出すために、流出管1051内に配置し得る。還元剤供給源14は、管103及び流入管1011を介して反応チャンバ10に接続される。好ましくは、還元剤供給源14と管103との間の接続が、還元剤が大気中に失われることなく反応チャンバ10の内部に導かれることができるように密封される。
【0059】
好ましい実施形態では、入口101が、還元剤の流量を第一流量から増加又は減少させるための流量制御器1013を備える。使用時に、ユーザは、還元剤の流量を繰り返し周期的に増加させ得る。例えば、還元剤の第一流量は、流量制御器1013を作動させることによって、10秒の期間、第二流量まで増加させ得る。これにより、パルシング効果が生じる。触媒20上に還元剤をパルスすることによって、触媒20の触媒活性が効果的に再生される。10秒の期間が経過すると、流量制御器1013は、還元剤の流量を増加した第二流量から減少させて第一流量に戻すように構成される。還元剤のこのパルシングは、装置1の動作中に間隔を置いて繰り返されてもよい。
【0060】
好ましい実施形態において、還元剤は水素である。還元剤供給源14は、水を水素に変換するための電解槽を含み得る。水は装置1に供給することもできるし、大気から抽出することもできる。あるいは、還元剤供給源14が水素と不活性キャリアガスとの混合物を含有するキャニスター又はシリンダーであり得る。代替の実施形態では、装置1が還元剤を提供するための物質の供給源(すなわち、還元剤の間接的供給源)をさらに含む。例えば、装置1は、水素を提供するホルムアルデヒドの供給源を含み得る。還元剤(例えば、水素)を提供するための物質の供給源は、還元剤供給源14であると考えることができる。一実施形態では、水素が0.05v/v%~4v/v%の濃度で存在する。代替の実施形態では、水素が0.05v/v%~1v/v%の濃度で存在する。このような水素の濃度は、引火の危険性をもたらさない。
【0061】
触媒20は、担体22上に担持され、反応チャンバ10の内部に収容される。触媒20及び担体22の配置は、
図1に示されるものに限定されない。空気及び還元剤が触媒20と接触することを可能にする触媒20及び担体22の任意の構造配置が好ましい。好ましい実施形態では、触媒20がマルチチャネルモノリス、又はチューブに充填されたビーズの形態で担体20上にコーティングされる。
【0062】
反応チャンバ10は、反応チャンバ10の外部から引き込まれた還元剤(例えば水素)と空気とが混合して触媒20に曝される密閉空間である。触媒20は一酸化窒素(NO)と水素との反応を促進し、窒素(N2)及び/又は亜酸化窒素(N2O)を形成する。窒素(N2)及び亜酸化窒素(N2O)は、不活性ガス生成物である。使用時には、窒素(N2)及び亜酸化窒素(N2O)を含む浄化された空気が出口105を介して反応チャンバ10から出て、大気中に放出される。有利には、装置1は、反応が酸化経路ではなく還元経路を介して進行するので、触媒20の表面上の硝酸塩又は硝酸の蓄積に悩まされない。研究は、触媒20が少なくとも2年の寿命を有することを示している。したがって、装置1は、NOxを最小限に抑えるために触媒酸化を使用する既知の装置と比較して、長寿命を有する。
【0063】
装置1は、触媒を照明するための光源を含み得る。これは、装置1が自然光に曝されない場合に特に有用である。
【0064】
いくつかの実施形態では、装置1が出口105と連通するガス検出器30を含む。
図1に示される実施形態では、ガス検出器30が流出管1051によって反応チャンバ10の出口105に接続される。いくつかの実施形態では、ガス検出器30が出口1050に直接接続され得る。ガス検出器30は、窒素酸化物(NO)及び/又は二酸化窒素(NO
2)及び/又は亜酸化窒素(N
2O)の濃度を検出するように構成される。ガス検出器30は、第一ガス流中のNOの濃度を検出する化学発光検出器を含み得る。有利には、化学発光検出器が0.5ppb~20ppmの広いNO検出範囲を有し、したがって、従来のNO検出器よりもNOに対して感受性が高い。化学発光検出器の代替物は電気化学検出器であり、これは、有利には小型で低コストである。別個の第二ガス流において、NO
2はNOに変換される。別個の第二ガス流中のNO濃度は、全NOx濃度を提供するために測定される。NO
2濃度は、全NOx濃度とNO濃度との差異によって決定し得る。ガス検出器30は付加的に又は代替的に、N
2Oの濃度を検出するための赤外線検出器を備えてもよい。赤外線検出器は、有利には20ppb~50ppmのN
2O検出レンジを有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、化学発光検出器30が反応チャンバ10を出るNO及び/又はNO2の量が第一の所定しきい値を上回ることを検出した場合、制御器16を介してヒータ12に制御信号を送信して、温度を上昇させて反応チャンバ10内の反応速度を上昇させ、反応チャンバ10から出るより清浄な空気(cleaner air)をもたらすことができる。追加的に又は代替的に、還元剤(例えば、水素)の濃度を増加又は減少させるために、制御器16から還元剤供給源14に制御信号を送信し得る。追加的又は代替的に、制御信号を、制御器16を介してポンプ107に送信して、反応チャンバ10内への空気の流れを減少させることができ、その結果、反応チャンバ10を通る空気の体積が減少し、それによって、反応が起こる時間が増加し、反応チャンバ10から出る空気がより清浄であることを確実にする。同様に、検出器30がNO及び/又はNO2の量が第二の所定しきい値を下回ることを示す場合、制御信号を制御器16を介してヒータに送信して、温度を下げて反応チャンバのエネルギー効率を向上させることができ、及び/又は制御信号を制御器16を介してポンプ107に送信して、反応チャンバ10を通る空気の流れを増大させて、所与の時間で浄化される空気の量を向上させることができる。
【0066】
温度検出器18は、装置1の温度に関する情報を制御器16に供給し得る。続いて、制御器16はヒータ12に信号を送って、装置1の温度、ひいては触媒20の温度を増加又は減少させることができる。
【0067】
反応チャンバ10内の材料を20℃~100℃の温度に加熱することによって、反応チャンバ10、及び反応チャンバ10を含む装置1は、より高い温度で動作する従来の構成の使用が不可能な様々な状況で使用し得る。例えば、装置1は、建物内でより清浄な空気を提供するために建物内に含まれ得る。必要に応じて、単一の建物に複数のNOx還元装置1が、含まれ得る。建物の各囲まれた空間(部屋、廊下、階段の吹き抜けなど)はその囲まれた空間における必要性に適合するように、1つ又は複数のNOx還元装置1を有し得る。例えば、ガレージは複数の装置1を必要とし得るが、ガレージの上のオフィスは1つの装置1を必要とし得る。建物の一部の密閉空間は、NOx還元装置を必要としない場合がある。
【0068】
いくつかの例では、装置1が強制空気中央加熱システム(forced air central heating system)に含まれる。他の例では、装置1が空調システムに含まれる。あるいは、装置1が航空機などの車両(例えば、コックピット又は胴体)に一体化されてもよい。
<密閉空間内での装置の使用>
【0069】
次に、建物等の密閉空間内のNOxを還元する方法について説明する。
図2を参照すると、第一ステップ201は、上述のようなNOxを還元するための装置10を提供することを含む。装置が設置されると、ステップ203において、空気が、空気入口101を介して反応チャンバ10内に導かれることができる。
図1に示す構成では、空気が空気入口パイプ1012及び流入管1011を介して空気入口101に導かれる。空気は、ポンプ107の助けを借りて反応チャンバ10内に導かれてもよい。ポンプ107は、空気入口パイプ1012内、又は空気流出管1051内に配置し得る。いくつかの構成において、空気の流れが、装置1が接続される装置(又は、デバイス/device)によって提供され得るときには、ポンプ107は装置1において必要とされない。例えば、出口105が空調ユニットに接続されている場合、空調ユニットを通して空気を吸い込むための手段は、反応チャンバ10を通して空気を吸い込むこともできる。
【0070】
ステップ203と同時に、ステップ205において、還元剤を反応チャンバに導入し得る。還元剤、空気及び触媒20は、反応チャンバ内で互いに曝される。還元剤、空気及び触媒20が互いに曝される間、反応チャンバ10は、20℃~100℃の範囲の温度に維持される。ステップ209では、ガス(浄化された空気)が反応チャンバ10から排出される。反応チャンバ10を出るガスは、空気入口101を通って入る空気よりも少ないNOxを有する。反応チャンバ10を出るガスは出口105を通って、密閉空間(例えば、建物)に直接、好ましくは流出管1051を介して導かれ得る。あるいは、反応チャンバ10を出るガスが別個の装置に導かれることができる。別個の装置は、温度及び/又は湿度などの空気の1つ又は複数の特性を調整し得る。例えば、装置は、空調ユニット、除湿器、又は強制空気加熱システムであり得る。
【0071】
上述の方法は例えば、建物の部屋、階段吹き抜け、又は廊下などの密閉空間の内部の空気質を改善するために実行されてもよい。この方法は、調理器、ボイラー及び/又はログバーナーのようなガス燃料装置が設置される場合に特に有用である。同様に、化石燃料の燃焼源の近くの建物(例えば、非限定的に、交通量の多い道路、バス発着所(bus depot)、飛行場の格納庫、ディーゼルトレインのキャビンなど)におけるNOxの量を低減することが有益である。したがって、例えば建物内の密閉空間の内部からNOxを安全に除去し得る必要がある。
【0072】
いくつかの実施形態において、還元剤供給源は水素である。上記の方法は、従来技術と比較して比較的低い温度(20℃~100℃の範囲)でNOxの還元が起こるため有利である。このような温度の使用は本方法を、例えば建物内の密閉空間内部で安全に実施することを可能にし、反応が進行する間に人が密閉空間に入ることを妨げない。
<複数の密閉空間内のNOxを監視するためのシステム>
【0073】
複数の密閉空間内のNOxを監視するためのシステムが記載される。複数の密閉空間は、1つ又は複数の建物内の複数の領域であり得る。システムは、各々が上述のようなガス検出器30を含む複数の装置1と、複数の装置の各々によって記録されたNOxレベルに関するデータを受信するように構成された受信機とを備える。
図1の構成では、ガス検出器30が制御器16に信号を送信するものとして示される。制御器16は制御信号を装置1のポンプ107及び/又はヒータ12に送信し得る。各装置1のガス検出器30は、中央制御装置と通信し得る。いくつかの構成では、中央制御装置が各装置1に関連する制御器16に加えて設けられる。中央制御装置は、中央制御装置に関連する各装置1に制御信号を送信して、ポンプ107及び/又はヒータ12を制御することができる。中央制御装置は中央制御装置に関連する装置1の各々からの信号を分析することができ、それらの装置1のポンプ107及び/又はヒータ12を個別に又は集合的に調整し得る。
【0074】
代替の実施形態では、装置1が温度検出器18を含み得る。各装置内の温度検出器18は、装置の温度に関する情報を各装置の制御器16に供給し得る。温度検出器18は中央制御装置と通信することができ、その結果、中央制御装置は中央制御装置に関連する装置1の各々からの信号を分析することができ、それらの装置1のヒータ12の温度を個別に又は集合的に調整し得る。
<NOxを還元するための担持触媒の製造方法>
【0075】
次に、
図10を参照して、空気中のNOxを還元するための担持触媒(supported catalyst)の製造方法(100)について説明する。担持触媒20は上述のように、反応チャンバ10での使用に適している。ステップ1001では、担体材料を水中で安定化ポリマーと合わせて水溶液を形成する。担体材料は、好ましくは5~7のゼロ電荷点(point zero charge)を有する任意の材料である。例えば、担体材料は、グラファイト状窒化炭素(gC
3N
4)、シリカ、アルミナ又は二酸化チタン、又はそれらの組み合わせであり得る。安定化ポリマー(キャッピング剤としても知られる)は、ポリビニルアルコールであり得る。
【0076】
ステップ1003において、上記水溶液に第一金属化合物が添加される。好ましい実施形態では、必須ではないが、ステップ1001で形成された水溶液に第二金属化合物が添加される。安定化ポリマーは得られるナノ粒子の凝集を防ぎ、粒径を制限するために、金属化合物に結合する。次いで、第一金属化合物が添加された水溶液を撹拌して、第一金属化合物を水溶液中に混合し得る。第二金属化合物が存在する好ましい実施形態では、第一金属化合物は第二金属化合物とは異なる。
【0077】
第一金属化合物は、(Pt(NH3)4(NO3)2)であることが好ましい。(Pt(NH3)4(NO3)2)は、他の多くのプラチナ化合物に比べて比較的低毒性である。別の実施形態では、第一金属化合物はパラジウムを含む。パラジウム化合物PdCl2及びK2PdCl4が特に好都合であることが見出されている。第二金属化合物は、銅の硝酸塩、すなわちCu(NO3)3.H2Oなど、銅を含むことが好ましい。他の構成では、第一金属化合物はH2PtCl6である。H2PtCl6は広く入手可能であり、金属(例えば、プラチナ)コロイド調製方法において一般に使用されている。いくつかの構成では、第二金属化合物が硝酸コバルト又は硝酸ニッケルのうちの1つを含む。好ましい実施形態では、第一金属化合物は白金を含み、第二金属化合物は銅を含み、担体材料はグラファイト状窒化炭素(gC3N4)を含む。さらに好ましい実施形態において、第一金属化合物は白金を含み、第二金属化合物はパラジウムを含み、担体材料は二酸化チタンを含む。
【0078】
第一(又は第一及び第二)金属化合物が水溶液中に混合されると、ステップ1005において、この水溶液に還元剤が添加される。還元剤は、溶液中の金属塩を還元する。還元された金属は、金属ナノ粒子を形成する。任意の適切な公知の還元剤を使用し得る。しかしながら、水素化ホウ素ナトリウムが還元剤として使用されることが好ましい。水素化ホウ素ナトリウムは強力かつ速効性の還元剤である。ステップ807において、酸が、ステップ1005において形成された水溶液に添加される。酸は、溶液のpHをpH1~2の範囲に低下させ、担体に電子電荷を提供する。したがって、金属ナノ粒子は、担体材料上に固定化される。例えば、酸は、硫酸又は酢酸のうちの1つであり得る。次いで、ステップ1007で形成された水溶液は、ステップ1009で撹拌され、濾過され、乾燥されて、担持触媒20を生成する。
【0079】
上記のように、ステップ1007において、担体材料を安定化ポリマーと合わせて最初に水溶液を生成することによって、本方法から得られる担持触媒は上記のように、従来のゾル固定化法によって調製された担持触媒よりも高いNOからN2Oへの転化率を提供する。
【0080】
代替の実施形態では、単一の(第一)金属化合物を
図10に示す方法で使用して、モノメタル触媒(monometallic catalyst)を調製し得る。これらの実施形態では、第一金属化合物が白金又はパラジウムを含み得る。好ましい実施形態において、第一金属化合物は、(Pt(NH
3)
4(NO
3)
2)、PdCl
2、K
2PdCl
4又はH
2PtCl
6のいずれかであり得る。代替の実施形態では第一金属化合物がパラジウム又は白金を含み、担体材料は二酸化チタンを含む。
<溶液調製>
【0081】
本方法の好ましい実施形態において、担体材料は、例えば超音波処理によって脱イオン水中に分散され、撹拌される。この好ましい実施形態における担体材料は、グラファイト状窒化炭素(gC3N4)である。上述のように、他の担体材料を使用することもできる。
【0082】
分散されたグラファイト状窒化炭素(gC3N4)は、安定化ポリマーと合わされる。安定化ポリマーはポリビニルアルコールであることが好ましい。ポリエチレングリコール(PEG)又はポリビニルピロリドン(PVP)などの他の安定化ポリマーを使用してもよい。
【0083】
続いて、第一金属化合物(又は第一及び第二金属化合物)を、分散された担体材料(好ましい実施形態ではグラファイト状窒化炭素)及び安定化ポリマー(好ましい実施形態ではポリビニルアルコール)の溶液に添加する。担持触媒がPtCu-gC3N4である場合、第一金属化合物はPt(NH3)4(NO3)2であることができ、第二金属化合物が存在する実施形態において、第二金属化合物は、Cu(NO3)3.H2Oであることができる。
【0084】
上記溶液は、第一金属化合物、又は第一及び第二金属化合物が完全に混合されるまで撹拌される。好ましい実施形態では溶液を5分間(例えば、正確に5分間、少なくとも4分45秒~5分15秒)撹拌する。溶液は、状況に応じてより長く撹拌し得る。
【0085】
還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウムは、高濃度の還元剤の局所領域(又は、局所的に還元剤が高濃度になること)を防止するために、溶液に滴下される。代替の実施形態では、還元剤が硫酸鉄(II)、ギ酸又はアスコルビン酸のうちの1つであり得る。上記溶液を、例えば、1時間(例えば、正確に1時間、少なくとも45分~1時間15分)、又はPt(NH3)4(NO3)2及びCu(NO3)3.H2Oが共に反応してバイメタル(PtCu)ナノ粒子を形成するまで撹拌する。第一金属化合物のみが存在する実施形態では、金属ナノ粒子が形成されるまで溶液を撹拌する。溶液は、状況に応じて、より長く撹拌し得る。PtCuナノ粒子(又はモノメタリックナノ粒子)がグラファイト状窒化炭素の表面上に固定化されるようにグラファイト状窒化炭素を電子的に帯電させるため、溶液のpHをpH1~pH2の範囲内(pH1及びpH2の端点はこの範囲内に含まれる)に低下させるために、溶液に酸、例えば硫酸を続いて添加する。酸が溶液に添加され、pHが下げられると、バイメタルナノ粒子が担体材料上に固定化された溶液が形成される。上記の考察において、酸は硫酸として示された。硫酸の代わりに、酢酸などの他の酸を使用し得る。
<ろ過>
【0086】
形成されたら、溶液を濾過する。これは、任意の公知の方法で行うことができる。例えば、濾紙を備えたブフナー漏斗(Buchner funnel)及び真空ポンプが用意される。ポンプを作動させながら、溶液を濾紙上に注ぎ、上清は濾紙を通過させ、濾紙上に材料を残す。製造規模に応じて、異なる濾過技術を適用し得る。例えば、材料は、(真空ポンプの代わりに)上清から材料を分離するために、重力のみに依存して、濾紙を通して濾過されてもよい。
<乾燥>
【0087】
材料を乾燥させて、触媒を形成する。材料は、任意の公知の方法で乾燥させ得る。いくつかの構成では、材料を室温で一晩乾燥させた後、120℃のマッフル炉で4~12時間乾燥させる(ここで、4時間及び12時間の端点はこの範囲に含まれる)。他の構成では、材料を窯(kiln)又は炉(oven)で乾燥させることができる。
<研削>
【0088】
好ましくは、触媒の粒子は粉末の形態である。粉末を得るために、乾燥した担持触媒材料を粉砕し得る。装置にて触媒を使用する前に、粉末をプレスし、ふるいにかけて、100~250μmの範囲の粒径を得ることができる。
<空気中のNOxを還元するための装置における触媒の使用>
【0089】
1wt%PtCu-gC3N4担持触媒を調製した。1wt%PtCu-gC3N4を合成するために、使用した第一金属化合物は、(Pt(NH3)4(NO3)2)であった。(Pt(NH3)4(NO3)2)と、使用した第二金属化合物は、Cu(NO3)3.H2Oであった.ポリビニルアルコールを安定化ポリマーとして使用し、水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として使用した。
【0090】
上記担持触媒を、本発明の第一態様による装置に配置し、室温(20℃)で上記反応を行わした。
図3は、濃度0.5ppm及び流量2mL/minのNO;及び流量95.5mL/minの空気の存在下での1wt%PtCu-gC
3N
4の活性プロットを示す。水素(還元剤)は、空気と共に(濃度4v/v%及び流量2.5mL/minで)装置に導入される。反応ガスはPtCu触媒に切り替える前に、バイパス(又は、側管/bypass)を通して安定化される。約18分で、NOxは完全に緩和され、N
2O及びN
2が生成される。
図3に示すプロットに見られるように、約18分でNOx濃度は低下し、N
2Oは上昇する。したがって、1wt%PtCu-gC
3N
4担持触媒は、NOx排出を低減する効果を達成する。
【0091】
図4は、装置1で使用した0.1wt%Pd-TiO
2触媒の活性プロットを示す。装置1に用いられる0.1wt%Pd-TiO
2触媒は、本発明の範囲に属する方法を用いて調製したモノメタル触媒である。0.1wt%Pd-TiO
2を、濃度0.5ppm、流量2mL/minのNO、及び濃度0.1v/v%、流量2.5mL/minの水素に曝露した。流量は、空気中で100mL/minの総流量までとした。120分で温度は70℃に上昇し、NOの減少が観察された。副生成物としてN
2が生成され、N
2Oはほぼなかった。
【0092】
図5は、装置1で使用した0.1wt%Pd-TiO
2触媒のさらなる活性プロットを示す。触媒を80℃に加熱し、濃度0.5ppmのNO及び濃度3.6v/v%の水素に曝露した。反応の開始時に空気/酸素は導入されなかった。酸素が存在しない場合、NOxが緩和される。酸素が存在しない場合のNOx緩和の主な生成物はN
2Oである。
図5に示すプロットを参照すると、触媒が酸素に曝露されると、N
2OとN
2が還元反応副生成物として生成する。従って、触媒を酸素に曝すことにより、副生成物としてのN
2に対する選択性が高まる。
【0093】
図6は、0.1wt%Pd-TiO
2触媒の装置1での使用前後のATRスペクトルを示している。0.1wt%Pd-TiO
2の「新しい」試料は、装置1内で触媒をNOx、空気及び熱に曝露する前に得られるスペクトルである。0.1wt%Pd-TiO
2の「使用済み」試料は、装置1内で触媒をNOx、空気及び熱に曝露した後である。「使用済み」試料を4時間加熱し、空気中で10v/v%水素及び2.5ppmNOに曝露した。0.1wt%Pd-TiO
2の「使用済み」試料のATRスペクトルに関しては、吸着質に特徴的な可視ピークは存在しない。これは、有利には触媒反応中に亜硝酸塩、ニトロソアミン、アンモニア、又は硝酸アンモニウムの形成がないことを確認する。したがって、触媒の表面は、吸着質による被毒を受けない。これにより、NOxを直接的に窒素及び/又はN
2Oに転化する。
【0094】
図7は、装置1で使用した0.1wt%Pt-TiO
2触媒の活性プロットを示す。このプロットを作成するために使用した0.1wt%Pt-TiO
2触媒を本発明の範囲内の方法を用いて調製し、98mL/minの空気及び水素とともに、濃度0.5ppm、流量2mL/minのNOに曝露した。
図7については、0.1wt%Pt-TiO
2触媒を濃度0.05v/v%、流量1.3mL/minの水素と、空気(酸素濃度20.5v/v%)と、濃度0.5ppm、流量2mL/minのNOに、総流量100mL/minで曝露した。触媒を20℃の温度に加熱した。これらの条件下で、0.1wt%Pt-TiO
2触媒は8.5時間でNOxの濃度を低減した。さらに8時間触媒活性を再生するために、流量制御器を使用して触媒上に水素をパルスする。
【0095】
図8は、装置1で使用した0.05wt%Pt0.05wt%Pd-TiO
2触媒の活性プロットを示す。触媒を、濃度0.5ppm及び流量2mL/minのNOと、濃度0.1v/v%の水素と、濃度20.5v/v%の酸素に曝露した。
図8から分かるように、20℃の温度に曝された触媒は、NOxの濃度を低減し得る。
<比較実験>
【0096】
従来のゾル固定化調製方法(すなわち、方法1)によって調製された1wt%PtCu-gC3N4の触媒挙動と、本発明の範囲内にある方法(すなわち、方法2)によって調製された1wt%PtCu-gC3N4担持触媒の触媒挙動を比較するために、実験を行った。
【0097】
上記触媒は、本発明による装置1において使用された。1wt%PtCu-gC
3N
4触媒は、還元経路を介して空気中のNOx濃度を低減する。触媒を濃度5000ppmのNOに曝露した。触媒は、還元剤(この例では水素)の存在下で、NOを還元してN
2O及び窒素を形成する。方法1及び2を介して調製された1wt%PtCu-gC
3N
4についてのPtCuのNO対N
2O転化率及び粒径を表1に示す。
【0098】
表1(及び下記の
図9a~9d)の結果から、方法2によって調製された1wt%PtCu-gC
3N
4は、同じ条件下で方法1によって調製された1wt%PtCu-gC
3N
4と比較して、熱の存在下での、及び、熱及び酸素の存在下での、NOからN
2Oへのより高い転化率を達成することが分かる。したがって、方法2によって調製された1wt%PtCu-gC
3N
4は、従来の方法1によって調製された1wt%PtCu-gC
3N
4よりも改善されたNOx還元効果を提供する。
【0099】
表1に示されるように、従来の方法1はより大きなPtCu粒子(直径3~4nm)を生成し、一方、方法2は、より小さなPtCu粒子(直径2~3nm)を生成する。したがって、方法2によって得られた1wt%PtCu-gC3N4によるNOのN2Oへのより高い転化率は、(方法1によって得られたPtCu粒子と比較して)PtCu粒子の体積に対する表面積の比率の増加及び白金と銅との間の合金化の減少に起因し得る。
【0100】
図9a及び9bは、従来の調製方法1によって得られた1wt%PtCu-gC
3N
4の活性プロットを示す。大気条件をシミュレートするために、触媒をNOの流れに曝露した。
図9aに示すプロットを参照すると、1wt%PtCu-gC
3N
4を、流量10ml/minのヘリウム中の1%v/vのNO、及び、流量10ml/minのヘリウム中の4%v/vの水素(還元剤)に、熱(50℃)の存在下で曝露した。水素とNOの間の触媒反応の副産物としてN
2Oが観察され、NOのN
2Oへの転化率は方法1によって調製された1wt%PtCu‐gC
3N
4に対して20%であった。
【0101】
図9bを参照すると、1wt%PtCu-gC
3N
4を、流量7ml/minのヘリウム中の1%v/vのNO、流量7ml/minのヘリウム中の4%v/vの水素(還元剤)、及び、流量7ml/minのヘリウム中の10%v/vの酸素に曝露した。触媒はまた、熱(50℃)にさらされた。N
2Oの生成は観察されなかった。したがって、酸素の存在下では、方法1によって調製された1wt%PtCu-gC
3N
4がNOx還元活性を全く示さなかった。言い換えれば、NOはN
2Oに転化されなかった。
【0102】
図9c及び9dは、方法2(すなわち、本発明の方法)によって得られた1wt%PtCu-gC
3N
4の活性プロットを示す。
図9cは、流量10ml/minのヘリウム中の1%v/vのNO、及び流量10ml/minのヘリウム中の4%v/vの水素(還元剤)に曝露された1wt%PtCu-gC
3N
4の活性プロットを示す。熱(50°C)の存在下でのNOのN
2Oへの転化率は50%であった。
【0103】
図9dは、流量7ml/minのヘリウム中の1%v/vのNO、流量7ml/minのヘリウム中の4%v/vの水素(還元剤)、及び流量7ml/minのヘリウム中の10%v/vの酸素に曝露した1wt%PtCu-gC
3N
4の活性プロットを示す。熱(50℃)に曝されると、NOのN
2Oへの転化率は12%であることが観察された。
【0104】
したがって、方法2によって調製された1wt%PtCu-gC3N4は、方法1によって調製された1wt%PtCu-gC3N4よりも効果的なNOx還元触媒を提供すると推測され得る。
【0105】
多くの他の変形及び実施形態は当業者には明らかであり、それらの全ては、出願時の特許請求の範囲によって包含されるか否かにかかわらず、本発明の範囲内に含まれることが意図される。保護は、本明細書に開示される任意の及び全ての新規な主題及びそれらの組み合わせについて求められる。
【国際調査報告】