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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】脳信号検知ヘッドセット
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B5/256 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536542
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2022057909
(87)【国際公開番号】W WO2023026202
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/260,636
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524073061
【氏名又は名称】ニューロルーションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NEUROLUTIONS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツビストラ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ロイトハルト,エリク・クロード
(72)【発明者】
【氏名】ブグラ,ケルン
(72)【発明者】
【氏名】プルー,ティモシー
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127LL13
4C127LL15
(57)【要約】
対象者の脳活動を記録する装置は、対象者の頭部に沿って延びる形状に作られた第1のアームを含み、第1のアームは対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部を有する。装置のセンサアセンブリは、配向の多方向調整機能を有する。センサアセンブリは、多方向に回転できるように構成されたシェルと、シェルの内部のスリーブと、スリーブの第1の端部をシェルの内端に取り付ける弾性要素と、スリーブに取り外し可能に挿入されるセンサであって、センサの接触面が対象者の頭部に面する、センサと、を含む。装置はまた、センサアセンブリ用のエネルギー源及び動作コンポーネントを含むハウジングを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の脳活動を記録するための装置であって、
i)対象者の頭部に沿って延びる形状の第1のアームであって、前記第1のアームは、前記第1のアームの第1の長さに沿った第1のレール対を有し、前記第1のレール対が、前記対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部に隣接し、前記第1のレール対が、前記第1の開口部に面する内縁に沿った溝を有する、前記第1のアームと、
ii)配向の多方向調整機能を有する電極アセンブリであって、前記電極アセンブリは、
前記シェルの外面の両側から突出するタブを備えたシェルであって、前記タブが前記シェルに対して回転可能である、前記シェルと、
前記シェルの内部のスリーブであって、前記スリーブと前記シェルとの間に、前記シェル内での前記スリーブの角度傾斜を可能にするクリアランスを有する、前記スリーブと、
前記スリーブの第1の端部を前記シェルの内端に取り付ける弾性要素と、
前記スリーブ内に取り外し可能に挿入される脳波記録(EEG)電極であって、前記EEG電極の接触面が前記対象者の頭部に面する、前記EEG電極と、
を備え、
前記電極アセンブリが、前記第1のアームに取り付けられ、前記タブが前記第1のレール対の前記溝にスライド可能に設置される、前記電極アセンブリと、
iii)前記対象者の頭部に面する底面を有したハウジングであって、前記ハウジングが、前記電極アセンブリ用のエネルギー源及び電子回路を含む、前記ハウジングと、
iv)前記ハウジングに取り外し可能に結合され、前記対象者の頭部に沿って延びる第2のアームと、
を備え、
前記第1のアームは、前記ハウジングに取り外し可能に結合され、前記対象者の頭部に沿って前記第2のアームとは異なる方向に延びる、
前記装置。
【請求項2】
前記ハウジングに取り付けられた固定電極をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2のアームは、前記第2のアームの第2の長さに沿った第2のレール対を有し、前記第2のレール対は、前記対象者の頭部へのアクセスを可能にする第2の開口部に隣接し、前記第2のレール対は、前記第2の開口部に面する内縁に沿った第2の溝を有しており、
前記装置は、さらに複数の前記電極アセンブリを備え、前記複数の電極アセンブリのうちの1つの電極アセンブリが、前記第2のアームに取り付けられ、前記タブが、前記第2のレール対の前記第2の溝にスライド可能に設置される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第2のアームは、前記第2のアームを前記ハウジングの前記底面に取り外し可能に結合するコネクタをさらに備え、
前記コネクタは、前記第2のアームに取り付けられた前記1つの電極アセンブリを前記ハウジング内の前記電子回路に電気的に結合する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記対象者の頭部に面して、前記第2のアームの下面で前記第2の開口部を取り囲む圧縮性パッドをさらに備えており、
前記圧縮性パッドは、電磁干渉(EMI)シールドを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のアームは、前記対象者の頭部に面する圧縮性パッドを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記弾性要素は、第1のバネ力を備え、
前記装置は、前記第1のアームに取り付けられ、前記対象者の頭部に面する圧縮性パッドをさらに備え、前記圧縮性パッドが、前記第1のバネ力よりも小さい第2のバネ力を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記シェルは、前記対象者の頭部に垂直なZ軸を有し、
前記弾性要素により、前記Z軸に沿った前記EEG電極の移動が可能になり、
前記シェル内の前記スリーブの前記角度傾斜が、前記Z軸に対するものであり、
前記タブにより、前記EEG電極が、前記Z軸に垂直なY軸を中心に回転可能になる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記電極アセンブリが、前記スリーブから前記タブの1つへの電気配線をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記クリアランスは、最大20°の前記角度傾斜を可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記EEG電極は、回転ロック機構で前記スリーブに取り外し可能に挿入され、前記EEG電極は、前記スリーブ内部の凹部と嵌合する突出部を有した円筒体を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ハウジングは、前記ハウジングの縁にグリップ要素をさらに備え、前記縁が、前縁、後縁、または側縁のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
対象者の脳活動を記録するための装置であって、
i)複数の電極アセンブリであって、各電極アセンブリが、配向の多方向調整機能を有し、
前記シェルの外面の両側から突出するタブを備えたシェルであって、前記タブが前記シェルに対して回転可能である、前記シェルと、
前記シェルの内部のスリーブであって、前記スリーブと前記シェルとの間に、前記シェル内での前記スリーブの角度傾斜を可能にするクリアランスを有する、前記スリーブと、
前記スリーブの第1の端部を前記シェルの内端に取り付ける弾性要素と、
前記スリーブ内に取り外し可能に挿入される脳波記録(EEG)電極であって、前記EEG電極の接触面が対象者の頭部に面する、前記EEG電極と、
を備える、前記複数の電極アセンブリと、
ii)底面、第1の側縁、及び第2の側縁を有するハウジングであって、前記ハウジングは、前記複数の電極アセンブリ用のエネルギー源及び電子回路を含む、前記ハウジングと、
iii)前記ハウジングに取り外し可能に結合され、前記ハウジングの前記第1の側縁から前記対象者の頭部に沿って延びる形状に作られた第1のアームであって、前記第1のアームは、前記第1のアームの第1の長さに沿った第1のレール対を有しており、前記第1のレール対が、前記対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部に隣接し、前記第1のレール対が、前記第1の開口部に面する内縁に沿った第1の溝を有する、前記第1のアームと、
iv)前記ハウジングに取り外し可能に結合され、前記ハウジングの前記第2の側縁から前記対象者の頭部に沿って延びる形状に作られた第2のアームであって、前記第2のアームは、前記第2のアームの第2の長さに沿った第2のレール対を有しており、前記第2のレール対が、前記対象者の頭部へのアクセスを可能にする第2の開口部に隣接し、前記第2のレール対が、前記第2の開口部に面する内縁に沿った第2の溝を有する、前記第2のアームと、
v)前記ハウジングに取り外し可能に結合された第3のアームであって、前記第3のアームは、前記対象者の頭部に沿って前後方向に延びている、前記第3のアームと、
を備え、
前記複数の電極アセンブリのうちの第1の電極アセンブリは、前記第1のアームの前記第1の開口部に取り付けられ、前記第1の電極アセンブリの前記タブは、前記第1の開口部の前記第1の溝にスライド可能に設置されており、
前記複数の電極アセンブリのうちの第2の電極アセンブリは、前記第2のアームの前記第2の開口部に取り付けられ、前記第2の電極アセンブリの前記タブは、前記第2の開口部の前記第2の溝にスライド可能に設置されている、
前記装置。
【請求項14】
前記第3のアームは、前記第3のアームの第3の長さに沿った第3のレール対を有し、前記第3のレール対は、前記対象者の頭部へのアクセスを可能にする第3の開口部に隣接し、前記第3のレール対は、前記第3の開口部に面する内縁に沿った第3の溝を有し、
前記複数の電極アセンブリのうちの第3の電極アセンブリは、前記第3のアームに取り付けられ、前記第3の電極アセンブリの前記タブが前記第3の開口部の前記第3の溝にスライド可能に設置されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第3のアームは、前記第3のアームを前記ハウジングの前記底面に取り外し可能に結合するコネクタをさらに備え、
前記コネクタは、前記第3の電極アセンブリを前記ハウジング内の前記電子回路に電気的に結合する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記対象者の頭部に面して、前記第3のアームの下面で前記第3の開口部を取り囲む圧縮性パッドをさらに備えており、
前記圧縮性パッドは、電磁干渉(EMI)シールドを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記第3のアームは、前記対象者の頭部に面する圧縮性パッドを有する、請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記弾性要素は、第1のバネ力を備え、
前記第1のアーム及び前記第2のアームはそれぞれ、前記対象者の頭部に面する圧縮性パッドを備え、前記圧縮性パッドが、前記第1のバネ力よりも小さい第2のバネ力を有する、請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記シェルは、前記対象者の頭部に垂直なZ軸を有し、
前記弾性要素により、前記Z軸に沿った前記EEG電極の移動が可能になり、
前記シェル内の前記スリーブの前記角度傾斜が、前記Z軸に対するものであり、
前記タブにより、前記EEG電極が、前記Z軸に垂直なY軸を中心に回転可能になる、請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記電極アセンブリが、前記スリーブから前記タブの1つへの電気配線をさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項21】
前記クリアランスは、最大20°の前記角度傾斜を可能にする、請求項13に記載の装置。
【請求項22】
前記EEG電極は、回転ロック機構で前記スリーブに取り外し可能に挿入され、前記EEG電極は、前記スリーブ内部の凹部と嵌合する突出部を有した円筒体を備える、請求項13に記載の装置。
【請求項23】
前記ハウジングが、前記第1の側縁または前記第2の側縁にグリップ要素をさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項24】
対象者の脳活動を記録するための装置であって、
i)対象者の頭部に沿って延びる形状に作られた第1のアームであって、前記第1のアームが、前記対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部を有する、前記第1のアームと、
ii)配向の多方向調整機能を有するセンサアセンブリであって、前記センサアセンブリは、
多方向の回転用に構成されたシェルと、
前記シェルの内部のスリーブと、
前記スリーブの第1の端部を前記シェルの内端に取り付ける弾性要素と、
前記スリーブに取り外し可能に挿入されるセンサであって、前記センサの接触面が前記対象者の頭部に面する、前記センサと、
を備える、前記センサアセンブリと、
iii)前記センサアセンブリ用のエネルギー源及び動作コンポーネントを含むハウジングと、
を備える、前記装置。
【請求項25】
iv)前記ハウジングに取り外し可能に結合され、前記対象者の頭部に沿って延びる第2のアーム、をさらに備え、
前記第1のアームが、前記ハウジングに取り外し可能に結合され、前記対象者の頭部に沿って前記第2のアームとは異なる方向に延びる、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記センサは脳波記録(EEG)電極である、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記センサは光センサである、請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記センサは近赤外線センサである、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記シェルは、前記シェルの外面の両側から突出するタブを有し、
前記シェルの前記外面は、前記タブ内で前記多方向の回転を提供するために球形である、請求項24に記載の装置。
【請求項30】
前記第1のアームは、前記第1のアームの第1の長さに沿った第1のレール対を有し、前記第1のレール対が、前記第1の開口部に隣接し、前記第1の開口部に面する内縁に沿った溝を有しており、
前記シェルは、前記シェルの外面の両側から突出するタブを有し、前記タブが前記シェルに対して回転可能であり、
前記スリーブは、前記スリーブと前記シェルとの間に、前記シェル内での前記スリーブの角度傾斜を可能にするクリアランスを有し、
前記センサアセンブリが前記第1のアームに取り付けられ、前記タブが前記第1のレール対の前記溝にスライド可能に設置される、請求項24に記載の装置。
【請求項31】
前記弾性要素は、第1のバネ力を備え、
前記装置は、前記第1のアームに取り付けられ、前記対象者の頭部に面する圧縮性パッドをさらに備え、前記圧縮性パッドが、前記第1のバネ力よりも小さい第2のバネ力を有する、請求項24に記載の装置。
【請求項32】
前記シェルは、前記対象者の頭部に垂直なZ軸を有し、
前記弾性要素により、前記Z軸に沿った前記センサの移動が可能になり、
前記多方向の回転には、前記Z軸に対する角度傾斜と、前記Z軸に垂直なY軸を中心とした回転とが含まれる、請求項24に記載の装置。
【請求項33】
前記センサは、回転ロック機構で前記スリーブに取り外し可能に挿入され、前記センサは、前記スリーブ内部の凹部と嵌合する突出部を有した円筒体を備える、請求項24に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年8月27日に出願された米国仮特許出願第63/260,636号に対する優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
脳細胞は、微小電気信号を生成することによって相互に通信する。脳細胞によって生成される微小電気信号の一部は、人の頭皮に伝達される。それらの微小電気信号を非侵襲的に検出し、定量化するために、脳の近傍の、人の頭の表面から、脳信号情報を取得する脳波記録(「EEG」)ヘッドセットが使用される。EEGは、複数の電極を頭皮に接触させて、頭皮に存在する電気信号を受信することによって実行される。EEGの精度は、電極の配置位置、電極と頭皮との間の接触の健全性、電気的干渉などを含む多くの要因によって影響を受ける可能性がある。
【0003】
EEGヘッドセットには多くの用途があり、その数は増え続けている。例えば、EEGヘッドセットは、これまで長い間医療用途で使用されてきており、通常は訓練を受けた医療従事者がEEGヘッドセットを対象者に着ける医療施設で使用されている。医療用途で使用されるEEGヘッドセットの一般的な一例は、標準的なEEGスカルキャップである。これには、スイミングキャップのように対象者の頭にかぶせられる、ゴムまたはゴムに似た素材で作られたキャップが含まれる。キャップは、対象者の頭の表面に接触するように、キャップ全体にわたって配置された多数の表面電極を有する。頭全体を覆う標準的なEEGスカルキャップのようなEEGヘッドセットの設計は、一般的適用性を備えているため、多種多様な用途に使用できる。他のタイプのEEGヘッドセットは、オーディオヘッドフォンと同様に耳から耳へ、または対象者の頭頂部から外側に、もしくは額に巻き付いて延びるなど、対象者の頭を覆って延びる1つ以上のアームを有する。EEGヘッドセットの電極の数と配置も様々で、個人の生理機能や使用用途に合わせてカスタマイズできる。
【0004】
脳信号検知ヘッドセットは、他の形式のセンサ、つまり言い換えれば信号取得コンポーネントを使用して、電気的脳信号活性化の情報を与えてくれる信号を取得することもある。センサのそのような形式の1つは、血行動態情報、つまり血流に関する情報を含む信号を取得する近赤外分光法(「NIRS」)センサである。血行動態情報は、電気的脳信号活性化と関連しており、または電気的脳信号活性化に起因する。
【0005】
脳信号検知ヘッドセットの1つの用途は、ブレインコンピュータインタフェース(BCI)またはブレインマシンインタフェース(BMI)アプリケーションと呼ばれる分野である。BCIまたはBMIシステムでは、脳信号は、埋め込み型または表面型の脳信号検知アセンブリのいずれかから取得され、対象者の意図を確認するコンピューティングシステムで処理される。一般に、BCIシステムの使用は、対象者が特定のことを考え、または実行するときに、対象者が生成する脳信号をBCIシステムが学習するスクリーニングモードまたは学習モードと、その後に続く、BCIシステムが、電極アセンブリを使用して取得される脳信号情報を継続的に監視して、学習した脳信号の存在を検出し、それによって対象者の意図をBCIシステムに通知する動作モードまたは持続モードとを含む。脳信号検知ヘッドセットのような非埋め込み電極を使用するそのようなBCIシステムの状況では、信号キャプチャコンポーネント、つまり言い換えれば検知コンポーネントを、例えば複数の運用セッションでの使用を含め、システムが使用されるたびに確実に同じ位置に配置させることは困難である。さらに、BCIシステム以外にも、複数の異なるセッション中の信号キャプチャコンポーネントまたはセンサの配置が重要な分野がある。
【0006】
EEGベースのBCIシステムなどの脳信号検知システムの使用分野としては、脳卒中患者が挙げられる。多くの場合、脳卒中患者は、片方の腕と手しか使うことができない。さらに、BCIシステムを利用した脳卒中治療リハビリテーションは、ヘッドセットを含むBCIシステムをかぶる際に、脳卒中患者が利用できる支援がない可能性があるようなリハビリテーションクリニックの外で実施されるのが望ましい場合がある。したがって、脳卒中患者が片方の腕と手だけを使って自分でヘッドセットをかぶることができるようにし、その一方でセンサの位置決めがセッションごとに変わらないことをも保証する脳信号検知ヘッドセットを設計することが重要である。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態では、対象者の脳活動を記録するための装置は、対象者の頭部に沿って延びる形状に作られた第1のアームを含み、第1のアームは、第1のアームの長さに沿った第1のレール対を有する。第1のレール対は、対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部に隣接し、第1のレール対は、第1の開口部に面する内縁に沿った溝を有する。この装置には、配向を多方向に調整できる電極アセンブリが含まれている。電極アセンブリは、シェルの外面の両側から突出するタブを備えたシェルであって、タブがシェルに対して回転可能である、シェルと、シェルの内側のスリーブであって、スリーブが、スリーブとシェルとの間に、シェル内でのスリーブの角度傾斜を可能にするクリアランスを有する、スリーブと、スリーブの第1の端部をシェルの内端に取り付ける弾性要素と、スリーブ内に取り外し可能に挿入され、EEG電極の接触面が対象者の頭部に面する、脳波記録用電極と、を含む。電極アセンブリは第1のアームに取り付けられ、タブは第1のレール対の溝にスライド可能に設置される。装置はまた、対象者の頭部に面する底面を有するハウジングであって、ハウジングが、電極アセンブリ用のエネルギー源及び電子回路を含み、ハウジングと、ハウジングに取り外し可能に結合される第2のアームであって、第2のアームは対象者の頭部に沿って延びる、第2のアームと、を含む。第1のアームは、ハウジングに取り外し可能に結合され、対象者の頭部に沿って第2のアームとは異なる方向に延びる。
【0008】
いくつかの実施形態では、対象者の脳活動を記録するための装置は、複数の電極アセンブリを含む。各電極アセンブリは、配向の多方向調整機能を有し、シェルの外面の両側から突出するタブを備えたシェルであって、タブがシェルに対して回転可能である、シェルと、シェルの内側のスリーブであって、スリーブが、スリーブとシェルとの間に、シェル内でのスリーブの角度傾斜を可能にするクリアランスを有する、スリーブと、スリーブの第1の端部をシェルの内端に取り付ける弾性要素と、スリーブ内に取り外し可能に挿入され、EEG電極の接触面が対象者の頭部に面する、脳波記録用電極と、を含む。装置はまた、底面、第1の側縁、及び第2の側縁を有するハウジングを含み、ハウジングは、複数の電極アセンブリのためのエネルギー源及び電子回路を含む。第1のアームは、ハウジングに取り外し可能に結合され、ハウジングの第1の側縁から対象者の頭部に沿って延びる形状であり、第1のアームは、第1のアームの第1の長さに沿った第1のレール対を有する。第1のレール対は、対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部に隣接し、第1のレール対は、第1の開口部に面する内縁に沿った第1の溝を有する。第2のアームは、ハウジングに取り外し可能に結合され、ハウジングの第2の側縁から対象者の頭部に沿って延びる形状である。第2のアームは、第2のアームの第2の長さに沿った第2のレール対を有し、第2のレール対は、対象者の頭部へのアクセスを可能にする第2の開口部に隣接する。第2のレール対は、第2の開口部に面する内縁に沿って第2の溝を有する。第3のアームは、ハウジングに取り外し可能に結合されており、第3のアームは、対象者の頭部に沿って前後方向に延びている。複数の電極アセンブリのうちの第1の電極アセンブリは、第1のアームの第1の開口部に取り付けられ、第1の電極アセンブリのタブは、第1の開口部の第1の溝にスライド可能に設置される。複数の電極アセンブリのうちの第2の電極アセンブリは、第2のアームの第2の開口部に取り付けられ、第2の電極アセンブリのタブは、第2の開口部の第2の溝にスライド可能に設置される。
【0009】
いくつかの実施形態では、対象者の脳活動を記録する装置は、対象者の頭部に沿って延びる形状に作られた第1のアームを含み、第1のアームは対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部を有する。装置のセンサアセンブリは、配向の多方向調整機能を有する。センサアセンブリは、多方向に回転できるように構成されたシェルと、シェルの内部のスリーブと、スリーブの第1の端部をシェルの内端に取り付ける弾性要素と、スリーブに取り外し可能に挿入されるセンサであって、センサの接触面が対象者の頭部に面する、センサと、を含む。装置はまた、センサアセンブリ用のエネルギー源及び動作コンポーネントを含むハウジングを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットの等角図及び正面図を提供する。
図1B】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットの等角図及び正面図を提供する。
図1C】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットの等角図及び正面図を提供する。
図2A】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットの底面等角図である。
図2B】いくつかの実施形態による、図2Aの電極の底面図である。
図3】A~Cは、いくつかの実施形態による、電極アセンブリの等角図及び分解図である。
図4A】いくつかの実施形態による、多方向の調整機能を示す電極アセンブリの断面図である。
図4B】いくつかの実施形態による、多方向の調整機能を示す電極アセンブリの断面図である。
図4C】いくつかの実施形態による、多方向の調整機能を示す電極アセンブリの断面図である。
図4D】いくつかの実施形態による、多方向の調整機能を示す電極アセンブリの断面図である。
図4E】いくつかの実施形態による、多方向の調整機能を示す電極アセンブリの断面図である。
図5A】いくつかの実施形態による、挿入可能な電極を備えた電極アセンブリの底面斜視図である。
図5B図5Aの電極の等角図である。
図6】いくつかの実施形態による、電極アセンブリを取り囲む圧縮性パッドの断面図である。
図7A】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットの電極の配線を示す、EEGヘッドセットの斜視図である。
図7B】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットの電極の配線を示す、EEGヘッドセットの斜視図である。
図7C】いくつかの実施形態による、電極の配線の断面図である。
図7D】いくつかの実施形態による、電極アセンブリのさらなる実施形態における配線の断面図を示す。
図8】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットの分解図である。
図9A】いくつかの実施形態による、モジュール式コンポーネント間の電気的接続を示す分解図である。
図9B】いくつかの実施形態による、モジュール式コンポーネント間の電気的接続を示す分解図である。
図10A】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットのモジュール式構成の等角図である。
図10B】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットのモジュール式構成の等角図である。
図10C】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットのモジュール式構成の等角図である。
図10D】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットのモジュール式構成の等角図である。
図11】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットの片手での装着を示す斜視図である。
図12】いくつかの実施形態による、EEGヘッドセットと併せて使用できる例示的な電子機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
対象者の頭部との高健全性接触と共に、正確かつ再現可能なセンサ(例えば、電極)の配置を保証する、独自のセンサ位置決め機構を有するEEGヘッドセットなどの脳信号検知ヘッドセットが開示される。実施形態はまた、簡単な使用を可能にして、患者が、片手で、ヘッドセットを装着することだけでなく、ヘッドセット内の個々のセンサを交換することさえも可能にする。さらに、開示されたヘッドセットはモジュール式設計であり、カスタマイズ可能な機能性と、様々な頭のサイズ及び形状への対応とを可能にする。本明細書に開示される脳信号検知ヘッドセットは、ブレインコンピュータインタフェース(BCI)用途など、そのようなヘッドセットを必要とする任意の用途に使用することができる。特定の例では、ヘッドセットは、同側及び/または対側の脳信号を取得するためにヘッドセットを使用するなど、脳卒中治療のためのBCI用途に使用され得る。
【0012】
実施形態は、主に脳センサヘッドセットに挿入可能なEEG電極について説明されるものとする。しかし、実施形態は、電磁センサまたは光センサ(例えば、近赤外分光などの赤外センサまたは近赤外センサ)など、脳活動を監視または測定するための他のタイプのセンサに適用することもできる。したがって、本開示における電極またはEEG電極への言及は、他のタイプのセンサにも適用されるものとする。同様に、本明細書に記載のEEG電極用の電気コンポーネント及び電気接続は、脳センサヘッドセットで使用される他のタイプのセンサ用のコンポーネント及び接続と置き換えることができる。
【0013】
図1A図1Cは、いくつかの実施形態による、EEGヘッドセット100として示される脳センサヘッドセットの様々な図を示す。図1Aは、ヘッドセット100単体の等角図を示し、図1B及び図1Cは、それぞれ患者の頭部195上のヘッドセット100の側面図及び正面図を示す。ヘッドセット100は、中央ハウジング120から延びる複数のアーム110a~110dを含む。アーム110a~110dは、対象者の頭部に沿って互いに異なる方向に延び、ハウジング120に取り外し可能に結合されて、モジュール式設計を提供する。脳信号は、対象者の頭部に沿って延びるアーム110a~110dに取り付けられた複数の電極アセンブリ130(または他のタイプのセンサ)によって収集される。電極アセンブリ130は、アームに沿って移動可能であり、対象者の頭部に対する向きを調整可能である。脳信号は、中央ハウジング120に固定して取り付けられた電極132によっても収集される。ハウジング120は、電子回路及び1つ以上のエネルギー源など、電極アセンブリ130及び電極132を動作させるためのコンポーネント(この図には示されていない)を含む。いくつかの実施形態では、エネルギー源はバッテリであってもよく、電子回路は、例えば、増幅器及びアナログデジタル(A/D)コンバータを含むことができる。
【0014】
ヘッドセット100は、異なる頭のサイズ及び用途に対応するために、アームの全長及び位置決めが調整可能であり得る。例えば、図1Bの矢印160は、アーム110aが、アーム110aの遠位プレート112から出る形でスライドして伸縮するにつれて伸びるように、アーム110aが遠位プレート112に対してスライド可能であり得ることを示す。このスライド相互作用は、アーム110aを動かした後にそれを適所に保持するノッチを有したラチェット型トラックなどの、固定機能及び触覚フィードバックを含んでもよい。この実施形態では、遠位プレート112は、患者の耳の上縁の真上に位置しているか、またはその上に載っているように示されている。他の実施形態では、遠位プレート112は耳を覆うことができ、または耳から間隔を空けることができる。矢印162は、アーム110cも動かせることを示す。いくつかの実施形態では、アーム110cはハウジング120から伸縮可能である。他の実施形態では、アーム110c及び110dは、前方アーム110cが前方に(対象者の額に向かって)移動すると、それと同じ方向に後方アーム110dが移動するように、ハウジング120に対してスライドする一体化されたもの(例えば、「ヘッドバンド」)として形成され得る。
【0015】
図2Aは、ヘッドセット100の底面等角図を示し、快適さを提供するためにヘッドセット100に含まれ得るパッド140a~140eを示す。例えば、パッド140a~140eは、発泡体、エラストマー、または他のポリマー材料などの圧縮性材料で作られていてもよい。パッド140a~140eは、面ファスナー、スナップ、またはクリップなどの機械的ファスナーでヘッドセット100に取り付けられることなどにより、パッドが汚れた場合、またはパッドが磨耗した場合に、交換可能であるように構成され得る。パッド140a及び140bは、それぞれアーム110a及び110bの遠位プレート112上にあり、対象者がヘッドセット100を装着する際に、緩衝性を提供するように、対象者の頭部に面している。パッド140c及び140dは、それぞれアーム110c及び110dの遠位領域にあり、対象者の頭部に面するようにアームの下面にあり、それらのアームに取り付けられた電極アセンブリ130を取り囲む(すなわち電極アセンブリ130の外周部または境界を形成する)。パッド140eは、ハウジング120の底面にあり、電極132(図1A)を取り囲む。パッド140c、140d、及び140eは、緩衝性を提供するだけでなく、パッドによって囲まれた電極に電磁干渉(EMI)シールドを提供するようにも構成することができる。パッド140c、140d、及び140eは、ユーザから検出されたEEG信号の忠実度に対するEMI及び無線周波数干渉(RFI)の悪影響を軽減するファラデーケージとして機能するように構成されていることで、EMIシールドとして機能し得る。そのようなシールドは、EEG電極信号を周囲の電気ノイズから隔離することにより、EEG結果の不正確さを排除し得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、パッド(例えば、パッド140c、140d、及び/または140e)は、EMIシールドを形成するために金属スクリーンまたはメッシュ材料を含むことができる。例えば、銅(または他の導電性金属)のスクリーンまたはメッシュを使用することができる。そのような実施形態では、パッドの形成中に金属スクリーンまたはメッシュ材料をオーバーモールドしてもよい。あるいは、金属スクリーンまたはメッシュ材料は、パッドの形成後または形成中にパッドに取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、EMIシールドを提供するために導電性コーティングがパッドに被着される。例えば、導電性コーティングは、適切な担体材料中に分散された小さな金属粒子(例えば、銅またはニッケル)を含むことができる。分散は、パッド上にスプレー、刷毛塗り、またはその他の方法でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、EMIシールドは、金属スクリーンまたはメッシュ材料と導電性コーティング(複数可)との組み合わせを含むことができる。特定の実施形態では、パッド内のEMIシールドは、アクティブシールド(例えば、負性容量回路)となるように構成される。
【0017】
図2Aはまた、電極の接触面135を示す。図2Bの拡大図に示される接触面135は、対象者の頭部に接触することになる電極の部分である。標準的なEEG電極には様々なタイプがあり、主に湿式電極または乾式電極の2つのカテゴリに分けられる。湿式電極は、人の髪を介した頭皮への電極の電気的接触を促進するためにジェルを使用し、多くの場合、ディスク形状をしている(例えば、カップ電極)。乾式EEG電極の場合、電極は多くの場合、「櫛」構成とも呼ばれる複数のフィンガーを含む。乾式電極の実施形態が、図2Bにフィンガー136と共に示されている。ここでは、対象者の頭部に面するフィンガー136の先端が集合的に接触面135を画定する。フィンガー136は、この実施形態では円形領域に同心リング状に配置されているが、他の実施形態では他の幾何学的形状領域に他の幾何パターンで配置されてもよい。フィンガー136は人の毛髪層を通り抜けることができ、したがってジェルの必要なく、頭皮との接触を促進する。
【0018】
図1A図1Cの電極132はハウジング120内に固定して取り付けられる。ハウジング120は人の頭頂部に配置されているため、電極132は本質的に頭皮に対して垂直であり、良好な物理的及び電気的接触を有するようになる。対照的に、電極アセンブリ130は、頭部の曲率が人それぞれであり、人によって異なる、側方、前部及び後部など、人の頭の他の部分に配置される。図2Aは、電極アセンブリ130がヘッドセットアーム内で再配置可能であり、異なるサイズ及び形状の頭部、ならびに異なる用途のための異なる電極構成(例えば、電極の数及び様々な配置)に対応するカスタマイズを可能にすることを示している。例えば、図2Aの矢印164は、電極アセンブリ130がアーム110aの開口部114の長さに沿ってスライド可能であることを示す。開口部114は、アーム110aの長さに沿った開口部であり、対象者の頭部へのアクセスを可能にする。開口部114は、開口部114の両側の一対のレール116によって形成される。電極アセンブリ130をレール116に沿って移動させることにより、対象者の頭皮上の電極アセンブリ130の位置決めされる位置を調整することが可能になる。
【0019】
人の頭の曲率はその表面の至る所で変化するため、対象者の頭の周囲で電極の位置を変更すると、電極と頭皮との間の接触の健全性に影響を与える可能性がある。すなわち、電極がアーム110aに沿ってある点から別の点へ単純にスライドする場合、電極の接触面135は人の頭部と完全に接触したままではない可能性がある。図2Bのマルチフィンガー電極構成の場合、フィンガー136の端部は本質的に平坦な接触面135を形成するため、フィンガー136のほとんどまたは全てが対象者の頭皮と接触するためには、電極が対象者の頭部に対して垂直であることが重要である。
【0020】
センサアセンブリ(例えば、電極アセンブリ)の実施形態は、センサ(例えば、電極)とユーザの頭部との一定した接触を可能にするために、配向の多軸調整機能を有し、それによって異なる頭部形状及び頭部上の電極の様々な配置位置を補償する。いくつかの実施形態では、センサアセンブリのシェルは、対象者の頭部に垂直なZ軸に対する角度傾斜及びZ軸に垂直なY軸の周りの回転などの多方向の回転用に構成される。センサは、弾性要素によってシェルの内端に取り付けられたスリーブに取り外し可能に挿入され、それによってZ軸に沿ったセンサの移動も可能になる。実施形態はまた、ユーザが片手または片腕しか使用できない場合でも、電極を簡単に交換することを可能にする。フィンガー136などのEEG電極は、時間の経過とともに磨耗する可能性がある銀/塩化銀(Ag/Ag-Cl)で作られることが多く、したがって定期的に交換する必要がある。
【0021】
図3A図3Cは、図1Aの電極アセンブリ130に対応する電極アセンブリ300の側面等角図である。いくつかの実施形態では、電極アセンブリ300は、電磁センサまたは光センサなど、脳信号検知用に他のタイプのセンサを含むアセンブリであってもよい。図3Aは、電極330が電極アセンブリ300のその他の部分に挿入される前の分解図である。図3Bは、電極アセンブリ300上のアクセサリノブ350を示す。図3Cは、電極330が挿入された電極アセンブリ300を示す。電極アセンブリ300は、シェル310、電極330、及びオプションのアクセサリノブ350を含む。電極330は、シェル310に嵌合するスリーブ320に挿入可能であり、銀/塩化銀フィンガー336が劣化したときなどに、電極330の交換を可能にする。言い換えれば、電極330は、シェル310の内側にあるスリーブ320によって受け入れられる。シェル310のノブ312は、シェル310の軸方向に沿って延びるZ軸390を中心とする電極330の回転を可能にする。アクセサリノブ350は、手先が器用ではないユーザのために、ノブ312よりも大きい直径を有し、矢印392によって示される、Z軸390を中心とする電極330の回転を容易にするために、ノブ312上に設置されてもよい。図3Aには、電極330をEEGヘッドセットに電気的に接続するためのワイヤ370も示されている。
【0022】
図4A及び図4Bは、実施形態による、電極アセンブリなどのセンサアセンブリの多方向調整機能についてのさらなる詳細を提供する垂直断面図である。シェル310は、ノブ312、壁314、及び壁314の外面315の両側から突出するタブ316を含む。スリーブ320はシェル310の内側にあり、弾性要素325によってシェル310の内端318に取り付けられている。弾性要素325は、例えば、Z軸390に沿ったシェル310内でのスリーブ320の直線運動、及びZ軸390に関する角運動を可能にするバネ、可撓性ポリマー(例えば、発泡体またはゴムなどのエラストマー)、または他の材料であってもよい。Z軸390は、タブ316を通るY軸317に対して垂直であり、したがって、EEGヘッドセット全体に取り付けられたときに、ヘッドセットアーム(図示せず)に対しても垂直である。電極330は、スリーブ320に取り外し可能に挿入可能であり、挿入後にスリーブ320にロックすることができる。スリーブ320は、スリーブ320の外側とシェル310の内側との間にクリアランス328を有し、図4Bに示すように、スリーブ320がZ軸390に対して角のある状態で傾斜することを可能にする。
【0023】
図4Bは、電極330が対象者の頭部395と適切に接触できるように、その向きを調整する電極330の機能を示す。図4Bにおいて、電極330は電極アセンブリ300に装填され、電極330は対象者の頭部395の表面396上に配置される。クリアランス328(図4A)により、表面396の曲率に対応するように、スリーブ320及び電極330の中心軸338がシェル310のZ軸390に対して角度339で傾斜することが可能になる。理想的には、電極330の中心軸338を、ユーザの頭部395の表面396に対して垂直にして、表面396とフィンガー336によって形成される接触面335との間の接触を最適化する。角度傾斜(角度339)は、ユニバーサルボールジョイントと同様である、Z軸390の周りの全方向性(すなわち、360°の球面運動)にすることができ、それによって電極330の向きの多用途性を可能にする。いくつかの実施形態では、ボールジョイント、ワイヤ、または他の取り付け機構(例えば、図4Cのプランジャ326)が弾性要素325と共に含まれて、スリーブ320のシェル310への結合に機械的冗長性が提供され、それと同時に角度調整機能も可能になり得る。
【0024】
クリアランス328は、Z軸390に対するスリーブ320の例えば、±20°、±10°、または±5°など、最大20°の角度傾斜339を許容するように設計される。電極アセンブリ300内でのスリーブ320の「浮遊」は、人の頭部に沿った曲率の変化、または個人ごとの曲率の変化に対応するには十分であるが、人の頭部上の電極の確実な位置決めを維持するには十分小さい。これらの角度を達成するためのクリアランスの量は、スリーブ320の外径、シェル310の内径、及びスリーブ320を保持するシェルのキャビティの長さに依存する。例えば、より大きなサイズのコンポーネントの場合、またはスリーブの奥深くに取り付けられた電極の場合、同じ量の角度傾斜を達成するには、より多くのクリアランスが必要になり得る。いくつかの実施形態では、クリアランス328は、例えば、1.0mm~5.0mm、または2.0mm~4.0mm、または0.5mm~1.5mm、または1.0mmまでなど、最大5.0mmまでであり得る。いくつかの実施形態では、ヘッドセット内の異なる電極アセンブリは、異なる角度傾斜範囲で設計され得る。例えば、人の頭は、多くの場合、側面よりも前後方向の曲率が大きい。したがって、EEGヘッドセットのいくつかの実施形態は、側方アーム(例えば、アーム110a及び110b)上の電極よりも、前方及び後方のアーム(例えば、図1Aのアーム110c及び110d)上で、より大きな量の角度調整機能を有する電極アセンブリを用いて構成され得る。電極330は、同じタイプの電極330がいずれの電極アセンブリにも適合するように、汎用的なサイズの電極とすることができる。
【0025】
Z軸に対して傾斜可能であることに加えて、電極330のさらなる多軸調整がタブ316によって提供される。図4Bにおいて、タブ316は、シェル310の壁314に対してY軸317を中心に回転可能であり、これにより、電極アセンブリ300全体が、矢印391で示されるようにY軸317を中心に旋回することが可能になる。さらに、電極330は、弾性要素325により、矢印391で示すように、その中心軸338に沿って直線的に移動可能である。例えば、図4Bは、弾性要素325が、図4Aと比較して圧縮され、その結果、電極330及びスリーブ320が、図4Aと比較して、さらにシェル310内に引き込まれることを示す。Z軸390及びY軸317の周りの角度調整に加えて、シェル310の内外に伸展するこの電極330の機能により、電極330の接触面335と、患者の頭部395の表面396との適切な接触が、ユーザによるきめ細かい調整を必要とせずに、独自に促進される。いくつかの実施形態では、電極アセンブリ300は自動調整式である。すなわち、電極アセンブリ300内の電極330は、電極アセンブリ300内でのスリーブ320の「浮遊」と、タブ316を介して枢動する電極アセンブリ300の機能とのため、その配向を対象者の頭部の曲率に自ずから適合させる。いくつかの実施形態では、フィンガー336が対象者の髪を確実に通り抜けるのを助けるために、対象者は、片手を使用して電極アセンブリ300を調整することができる。しかしながら、電極アセンブリ300は、配向調整において複数の自由度を備えて有利に設計されているため、工具やユーザの両手は必要ない。さらに、Z軸390を中心としたノブ312の回転により、フィンガー336が毛髪を通り抜けるのを助けるために、またはより良い位置調整機能を提供するためになど、中心軸338を中心に片手でフィンガー336を回転させることが可能になる。
【0026】
図4Cは、2つの位置/配向における電極アセンブリ301の別の実施形態を示す。この実施形態では、電極アセンブリ301は、弾性要素325(この実施形態ではコイルバネとして示される)の内側に配置され、弾性要素325と平行に配置されたプランジャ326を含む。プランジャ326は、弾性要素325に加えて、スリーブ320をノブ312に結合し、その結果、電極330をノブ312に結合する。状態(I)は、シェル310のZ軸390に沿って垂直に整列し、シェル310から軸方向下方に延びるスリーブ320及び電極330を示す。状態(II)は、Z軸390に対して角度339で傾斜したスリーブ320及び電極330を示し、スリーブ320及び電極330は矢印360で示すようにシェル310内に引き込まれている。状態(II)の傾斜角339は、対象者の頭の曲率を調整する電極アセンブリ301の機能を示す。矢印360に従ってシェル310の内外に伸縮することは、電極330までの対象者の頭部の距離を調整する電極アセンブリ301の機能を実証しており、対象者の頭部は、この図の状態(I)と比較して、状態(II)においては、より電極330に近い。
【0027】
図4D及び図4Eは、図4Cと同様であるが、代替の弾性要素325を備えた実施形態の断面図である。図4Dの電極アセンブリ302において、弾性要素325は、壁内に開いたスロットを有する円筒の形態のエラストマー(例えば、ポリウレタン、シリコーンなど)で作られる。弾性要素325は、図4Cのコイルバネ弾性要素325と同様に、スリーブ320をノブ312に結合し、その結果、電極330をノブ312に結合する。図4Dの状態(I)は、スリーブ320及び電極330がZ軸390に沿って垂直に整列し、シェル310から軸方向下方に延びている状態である。状態(II)は、Z軸390に対して角度339で傾斜したスリーブ320及び電極330を示し、スリーブ320及び電極330は矢印360で示すようにシェル310内に引き込まれている。図4Dの状態(II)に見ることができるように、弾性要素325のスロットは、弾性要素325の圧縮により、状態(I)と比較して短縮される。図4Eは、図4Dの状態(II)と同様の状態であるが、さらに別の弾性要素325の実施形態を備えた電極アセンブリ303を示す。弾性要素325は、圧縮されたときに外側に膨らむ中実の壁を備えた円筒として構成されている。
【0028】
図5A及び図5Bは、いくつかの実施形態による、電極アセンブリへの電極のロック可能な挿入を示す。図5Aは、電極アセンブリ500に挿入されている電極530の底面等角図であり、図5Bは、電極530の側面等角図である。電極530は、電極アセンブリ500に挿入されるシャフト534の端部から延びた突出部532を有する。シャフトは、本実施形態では円筒体である。この実施形態では、電極530は2つの突出部532を有するが、1つのみの突出部、または2つ以上の突出部など、他の数の突出部も可能である。突出部532はスリーブ520の戻り止め522に嵌り、電極530のシャフト534がスリーブ520に完全に挿入されるとき、ユーザは電極530を回転させて、戻り止め522がスリーブの内面の溝524に固定されるようにする。したがって、EEG電極530は、回転ロック機構でスリーブ520に取り外し可能に挿入され、EEG電極530は、スリーブの内部の凹部(溝524)と嵌合する突出部532を備えた円筒体を有する。シャフト534のスリーブ520内へのスライド及び回転ロック動作は、片手で容易に操作できる。例えば、ユーザは、ヘッドセットを膝の上に置き、片手で電極を電極アセンブリ500に挿入し、電極530をスリーブ520に挿入して回転させることができる。様々な実施形態において、電極530は、電極を所定の位置に固定するために、4分の1回転(約90°)、または半回転(約180°)、または4分の1回転もしくは半回転よりも大きいかもしくは小さい他の大きさの回転など、部分的な回転を伴い得る。上述したように、電極アセンブリ500内でのスリーブ520の浮遊は、角度調整を可能にするのに十分な動きを提供するが、安定であるように十分に制限されている。したがって、ユーザがヘッドセットに電極を挿入するための回転ロック動作は片手で行うことができる。電極の取り外しも同様に片手で行うことができる。
【0029】
他の実施形態では、図5A図5Bに示されるもの以外の回転ロック構成が使用可能である。例えば、長方形の突出部532及び戻り止め522は、バヨネットマウントまたは他のタイプの4分の1回転締結機構と置き換えることができる。さらなる実施形態では、片手で電極530を電極アセンブリ500に挿入すること、及び電極アセンブリ500から取り外すことを可能にする非回転機構が使用され得る。例えば、回転ロック機構の代わりに、スリーブ520は、戻り止め522をスリーブにロックし、ボタンが押されると戻り止めを解放するバネ仕掛けのボタンを含んでもよい。別の例では、スリーブ520は、電極のリップまたは他の幾何学的特徴に固定されるヒンジ付きラッチを含んでもよい。
【0030】
図5Bは、電極530がシャフト534の上面に電気トレース572を有することを示す。この実施形態では、電気トレース572は、フィンガー536の同心リング配置に対応する同心円である。電極530がスリーブ520に挿入されるとき、トレース572はシェル内部の端面でポゴピン574に接触する。ポゴピン574は、トレース572との確実な接触を保証するために、バネ仕掛けにすることができる。複数のポゴピン574が直線配列に配置され、1つのポゴピン574が電気トレース572の各リングに対応する。つまり、ポゴピン574は、電気トレース572と同じ距離だけ間隔を空けて配置されている。電気トレース572が同心円状に配置されているため、ポゴピン574は、電極530がスリーブ520に挿入されるときの電極530の回転方向に関係なく、常に電気トレース572と接触することになる。ポゴピン574は、ワイヤ370(図3A)と電気的に接続されており、そしてワイヤ370がヘッドセットに接続される。ポゴピンではなく、ソケット型コネクタなど、電極とスリーブとの間の他のタイプの接続も可能である。他のタイプのセンサの実施形態では、図5Bの電気接続は、使用されている特定のタイプのセンサ(例えば、光電子式、電磁式)に合わせて構成することができる。
【0031】
図6は、図2Aのパッド140c、140d、及び140eに対応し得る圧縮性パッド640が、電極アセンブリと併せて使用され得る実施形態を示す。パッド640は、対象者の皮膚との電極の適切な接触を引き続き確保しながら快適さを提供するように設計されている。図6は、電極630を取り囲み、対象者の頭部695に面するパッド640を有した電極630の簡略化された垂直断面図である。電極630は、電極630が結合された弾性要素625(図4A図4Eの弾性要素325を表すように概略的に図示されている)による第1のバネ力F1で対象者の頭部695に押し付けられる。パッド640は、パッド640の材料に起因する第2のバネ力F2を有する。例えば、パッド640の材料(例えば発泡体)のデュロメータが、所望のバネ力F2を与えるように選択される。さらなる実施形態では、材料のデュロメータ及び/または発泡体のセル構造の密度など、その材料の構造は、目標バネ力F2を達成するように設計され得る。パッド640の材料は、例えば、ポリクロロプレン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエチレン、またはゴムなどの生体適合性の連続気泡発泡体または独立気泡発泡体であってもよい。いくつかの実施形態では、パッド640は、洗浄を容易にするためにセルフスキニング材料で作られてもよい。
【0032】
パッド640及び電極630は、ユーザに最適な安定性、接触性、及び快適性を提供するために協働するように独自に設計されている。パッド640と電極630との組み合わせにより、対象者が感じる圧力が分散される。具体的には、パッド640のバネ力F2は、電極630が適切に接触するのに十分なほど電極アセンブリの内外に伸縮できるように、弾性要素325のバネ力F1よりも小さくなるように構成されるが、パッド640は、その力の一部を軽減してユーザの快適性を向上させる。すなわち、パッド640は、頭部に対する電極の圧力よりも大きい圧力をもたらして、パッドが電極からある程度の圧力を取り除く。パッド640は、ユーザの頭部に対する電極の力を維持するが、その重さを分散させて快適性を向上させる。図2Aに示すように、電極の周りに長方形の外周部を形成する広いバンドなどのパッドの全表面積は、ユーザの頭部上での電極及びヘッドセットの安定性をも提供し得る。
【0033】
図7A図7Dは、電極アセンブリが物理的に取り付けられ、EEGヘッドセットに電気的に配線される方法を示す。図7Aは、電極アセンブリ730がアーム710のレール716内に取り付けられたEEGヘッドセット700の底面等角図であり、図7Bは、その上面等角図である。具体的には、電極アセンブリ730のタブ736は、レール716の長さに沿って延びる溝717内にスライド可能に設置される。レール716の溝717内への電極アセンブリ730の設置は、図7Bの断面A-Aに沿った図7Cの断面図に、より詳細に示されている。したがって、電極アセンブリ730は、矢印764で示されるように、アーム710に沿って、長さ方向にスライドして、電極アセンブリ730を必要に応じて患者の頭部に配置することができる。電極アセンブリをヘッドセットに結合するための他の実施形態も可能である。例えば、各タブ736は、溝に挿入されるのではなく、レール716上に取り付けられ、レール716に沿ってスライドするバンドまたはクリップに結合され得る。
【0034】
所望の脳信号を取得するために、最初に患者の頭部に電極アセンブリ730を配置することは、医療専門家(例えば、理学療法士または医師)によって行われ得る。電極アセンブリ730の適切な位置が決定されると、電極アセンブリ730とレール716との間の摩擦嵌合の結果として、及び/または止めネジ、クランプ、バネ仕掛けの係合機構、またはレールに沿ったノッチ(例えば、ラチェット型トラック)などの押し込み式のロック機構によって、電極アセンブリ730を所定の位置に固定することができる。ヘッドセットは、電極が標的部位に一定して繰り返し接触できるように設計されているので、医療従事者が最初に電極位置を設定した後、ユーザは支援を必要とせずに自分でヘッドセットを装着することができる。いくつかの実施形態では、ヘッドセットは、本開示の譲受人に所有されている米国特許公開第20170143228号「EEG Headsets with Precise and Consistent Electrode Positioning」に記載されているように、対象者の鼻根点及び/またはイニオンと係合するための特徴など、対象者の頭部への反復可能な配置をさらに良くするための位置合わせ特徴を含むこともできる。
【0035】
図7A図7Dには、電極アセンブリ730からハウジング720までの電線770の配線も示されている。図7A図7Bにおいて、電極アセンブリからの配線770(図3Aのワイヤ370に対応する)は、レール716内を走り、図8及び図9A図9Bにも関連して説明するように、ハウジング720に接続する。レール716内の配線770は、ヘッドセットアームに沿った電極アセンブリの再配置を考慮して、たるみ(余分な長さ)を含むことができる。図7Cにおいて、電極アセンブリ730内の内部電気配線772は、スリーブ722から電極アセンブリ730のタブ736の1つを通って延び、配線770に接続される。具体的には、内部電気配線772は、ポゴピン774から始まり、スリーブ722の上部を通って壁714に入り、タブ736を通って延びる。配線770及び内部電気配線772は、電極733が取り外し可能であり、電極アセンブリ730がヘッドセット内で位置変更可能でありかつ向きが調整可能であるにもかかわらず、電極733のヘッドセット全体への電気接続を可能にする。
【0036】
図7Dは、電極アセンブリ731及びその配線770の別の実施形態を示す。図7Dにおいて、配線770はタブ736を通って延び、スリーブ722内の内部配線に接続する。図7Dでは内部配線の図示を明確にするために省略しているが、図7Cの内部電気配線772と同様に構成することができる。電極アセンブリ731は、弾性要素725の内部に弾性要素725と平行にプランジャ713を含む。弾性要素725は、この実施形態ではコイルバネとして示されているが、図4C図4Dで説明したようなエラストマー片などの他の形態をとることもできる。プランジャ713は、例えば、複数の個別のポストまたは中空の円筒であってもよい。状態(I)と比較して状態(II)に示すように、スリーブ722及び電極733がシェル710内に引っ込められるとき(矢印760)、プランジャ713はノブ712の内部スロット712’内に滑り込む。電極アセンブリ731において、シェル710の壁714の外形は、この実施形態では球形であり、タブ736(及びしたがってヘッドセット全体のアーム)内で全方向回転を提供するボールジョイントとして機能する。タブ736は、壁714の球形を受け入れる内側曲率を有する。すなわち、タブ736は、シェルの外面の両側から突出しており、シェル710の外面は、タブ736内で多方向の回転を提供するために球形である。状態(III)は、タブ736に垂直なZ軸790に対して傾斜角739を有する電極アセンブリ731を示す。したがって、Z軸790は、EEGヘッドセット全体に取り付けられたときに、ヘッドセットアーム(この図には示されていない)に対して垂直になる。この実施形態では、タブ736を除く電極アセンブリ731全体が回転し、タブ736はヘッドセットのレール内で静止したままである。壁715の貫通孔715は、タブ736を通る配線770を妨げる(すなわち、挟み込んだり引っかかったり)ことなく、電極アセンブリ731が回転できるようにするのに十分な大きさである。
【0037】
図8は、いくつかの実施形態による、ヘッドセット800のモジュール式構造を示す分解図である。ハウジング820は、ヘッドセット800の電極用の電子回路(または、ヘッドセットで使用されるセンサのタイプに必要な他の動作回路及びエネルギー源)を含み、アーム810a~810dとは別個のコンポーネントであるため、有利には、異なるタイプのアームをハウジング820と共に使用できるようになる。すなわち、アーム810a~810dはハウジング820から取り外し可能であり、異なるタイプのアームと交換することができる。図示の実施形態では、アーム810a及び810bは、第1のヘッドバンド811を形成する一部品で作られている。アーム810c及び810dは別の部品から作られ、ハウジング820に取り付けられたときにヘッドバンド811と交差する第2のヘッドバンド812を形成する。他の実施形態では、各アームは、個別の部品であってもよく、例えば、アーム810aが一体の部品であり、アーム810bが別個の部品であり、それぞれがハウジング820に個別に取り付け可能である。例えば、ユーザ(例えば、臨床医または患者)は、特定の状況では、アーム810a~810bのみを利用すること、または別の状況では、アーム810c~810dと共にアーム810a~810bを両方利用すること、またはさらなる状況では、3つのアーム810a、810b、及び810cを利用することを選択することができる。アーム810a~810d(及びヘッドバンド811、812)は、アームが人の頭部に置かれている間は互いに離れて曲がることができるが、ヘッドセット800が完全に装着されたときに、人の頭部に向かって元に戻ろうと跳ね返ることもできるように、柔軟で弾性のある材料で作られている。他の実施形態では、バネ仕掛けのヒンジまたは他の機構など、人の頭部に向かって跳ね返りをもたらす追加の要素をヘッドセットアームに含めることができる。図8には、片手が使えるユーザによって交換可能な電極833と、電極アセンブリ830を回転させる際に、手先が器用ではないユーザを支援するアクセサリノブ850とが示されている。
【0038】
図8の実施形態では、アーム810a~810bは、アーム810c~810dに対して垂直であるように示されており、ハウジング820は、その直交配置に対応する正方形の形状を有する。例えば、アーム810a~810bは、患者の横方向に向けられ、ハウジング820の第1の側縁及び第2の側縁から延在し、アーム810c~810dは、前後方向にある。他の実施形態では、アームは、頭部の周囲で他の角度に向けられてもよく、ハウジングはそれに応じて構成される。例えば、ハウジング820は、図8に示すように4つのアームの代わりに、6つのアームがハウジングから延びる六角形の形状を有してもよい。他の実施形態では、ハウジングの形状は、円形など、アームの配置とは独立していてもよい。
【0039】
アーム810a~810dは、ハウジング820の電極832が、例えばヘッドバンド812の開口部814を通して対象者の頭部にアクセスできるようにしながら、ハウジング820の底面に結合される。アーム810a~810dは、スナップフィット、ラッチ、クイックリリース機構、または片方の腕及び手で行うことができる他の締結要素などの機構を用いて、ハウジング820の底面に取り外し可能に取り付けられる。例えば、ヘッドバンド811のコネクタ860は、ハウジング820の底面の対応する凹部(図示せず)に嵌合するタブとして示されている。コネクタ860は、図7A図7Cの配線770と接続する配線及び/または電気接点を有することによって、アーム810a~810bに取り付けられた電極アセンブリを、ハウジング820内の電子回路に電気的に結合するように構成することもできる。ヘッドバンド812は、ヘッドバンド811の凹部領域818に嵌合するブリッジ領域815を有する。いくつかの実施形態では、凹部領域818は、ヘッドバンド812が凹部領域818内でスライドして対象者の頭部上のヘッドバンド812の位置を調整できるように、ガイドレールとして機能することができる。例えば、ヘッドバンド812は、図1Bの矢印162で示すように、前後にスライドすることができる。
【0040】
図8には、アーム810bの遠位プレート822内に滑り込むアーム810bの一部の穴816が示されている。穴816は、アーム810bの所望の長さを設定するための実施形態を示しており、穴816は、遠位プレート822の嵌合機構と係合する。例えば、遠位部822は、アーム810bが遠位プレート822の内外に伸縮するときに、穴816に収容できるバネ仕掛けのボールを含んでもよい。
【0041】
図9A及び図9Bは、それぞれヘッドセット901及び902の分解図であり、モジュール式コンポーネントの電気接続のさらなる実施形態を示す。図9A及び図9Bと同じ参照番号を有する図8のコンポーネントの説明は、ヘッドセット901及び902に適用されるものとする。図9Aにおいて、ヘッドバンド812は、アーム810cの側面(すなわち、図7Cのレール716)に沿って、ブリッジ領域815を通って、リボンケーブルコネクタなどのコネクタ960に至る内部配線970を有する。配線970は、シールド要件に応じて、ブリッジ領域815の中空内部を通り抜けるケーブル配線またはリボンケーブルであってもよい。一実施形態では、コネクタ960は介在するヘッドバンド811に差し込まれ、そこでヘッドバンド811は次にハウジング820と電気的に接続される。別の実施形態では、ヘッドバンド811は、コネクタ960がハウジング820の電子モジュールに直接差し込まれるように、コネクタ960がヘッドバンド811を通過できるようにする開口部(この図では見えない)を有してもよい。コネクタ960は、この実施形態では開口部814の縁に配置されているが、構成に応じて、ヘッドバンド811またはハウジング820に接続可能である限り、ブリッジ815の他の所に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、配線970(例えば、リボンケーブル)は、ヘッドバンド812がヘッドバンド811及びハウジング820に対して交差してスライドするなど、ヘッドバンド812の前方/後方調整機能に対応するために、張力緩和及び余分な内部長/たるみを含んでもよい。
【0042】
図9Bのヘッドセット902は、ヘッドセット901と同様の内部配線970(図9Bには図示せず)を有するが、ヘッドセット902は、コネクタ960の代わりに、ブリッジ815の表面上に配置された接触パッド972を有する。接触パッド972は、この実施形態では、開口部814の縁に配置されているが、必要に応じてヘッドバンド811またはハウジング820に接続可能である限り、ブリッジ815上の他の所に配置されてもよい。ハウジング820またはヘッドバンド811上の対応する接続領域は、例えば、接触パッド972と接触するポゴ/バネ仕掛けのピンを用いて構成され得る。接触パッド972は、嵌合するポゴピンと同様の直径を有する円などの点接触用に構成されてもよく、あるいは接触パッド972は、図9Bに示すように細長くてもよい。図9Bの接触パッド972の長方形の形状により、ヘッドバンド812がヘッドバンド811及びハウジング820に対して前方または後方にスライドするときに電気接触を維持することが可能になる。
【0043】
図10A図10Dは、取り外し可能なアームを備えたハウジングのモジュール式構造のために可能である、様々なヘッドセット構成を示す。図10Aは、ハウジング1020に取り外し可能に取り付けられた3つのアーム1010a、1010b、及び1010cを備えた実施形態を示す。第1のアーム1010aは電極アセンブリ1030aを有し、第2のアーム1010bは電極アセンブリ1030bを有する。第3のアーム1010cは電極アセンブリを持たないが、対象者の頭に設置したときにヘッドセットを安定させるのに役立つ働きをする。図10Bは、ハウジング1020に取り外し可能に結合された4つのアーム1010a~1010dと、4つの電極アセンブリ1030a~1030dとを有する実施形態を示す。アーム1010cの開口部の長さL2は、例えば、頭が大きい人、または他の人よりも額のさらに下に電極を配置する必要がある人などのために、図10Aのアーム1010cの開口部の長さL1よりも長い。図10Bにはまた、他の実施形態(例えば図10A)のようにアームの長さに沿った中央ではなく、アーム1010a及び1010cの遠位に配置された電極アセンブリ1030a及び1030cが示されている。図10Cは、交差したアーム(例えば、前後アーム)を使用せずに、横方向アーム1010a及び1010bのみが使用される実施形態を示す。図10Dにおいて、前方から後方へのアーム1010c及び1010dは、アーム用の開口部を有さず、対象者の頭部上でヘッドセットを安定させるのに役立つプレートのみを有する。要約すると、図10A図10Dは、電子機器を収容し、ヘッドセットアームから取り外し可能なハウジングのモジュール式設計で可能な、様々なアーム及び電極構成の例を示す。
【0044】
図8に戻ると、ヘッドセット800は、ハウジング820上にグリップ要素880を含む。グリップ要素880は、この実施形態では、直線状の水平バーとして具体化される隆起特徴であるが、点または曲線形状などの他の幾何学的形状で構成されてもよく、または凹んだ特徴であってもよい。グリップ要素880は、この実施形態では、ハウジング820の側縁(患者の頭の側面に面する)上に示されている。いくつかの実施形態では、グリップ要素880は、前縁(対象者の額に面する)、後縁(対象者の後頭部に面する)、及び側縁のうちの1つ以上など、ハウジング820の複数の縁にあってもよい。グリップ要素880により、図11に示すようにヘッドセットを片手で装着できるようになる。図11では、人の手1100がグリップ要素880を保持することによって、組み立てられたヘッドセット800を持ち上げることができる。
【0045】
図12は、本開示のヘッドセットのハウジング(例えば、図8のハウジング820または図10Aのハウジング1020)に含まれ得る電子機器1200の概略図である。ハウジングは、様々な電子コンポーネントを含む電子モジュールとして機能する。図12は、EEG電極として具現化される。しかしながら、他の実施形態では、ハウジングは、1つ以上のエネルギー源と、電磁センサ、赤外線センサまたは近赤外線センサ、あるいは他の波長の光のためのセンサなど、他のタイプのセンサのための動作コンポーネントとを含むことができる。図示のように、電子機器1200は、電極で記録された信号を増幅する増幅器回路1220と、増幅された検知アナログ信号をデジタル化するアナログデジタル(A/D)変換器回路1230とを含む。電子機器1200はまた、A/D変換回路1230から受信したデータをパッケージ化し、そのパッケージ化されたデータを無線送信機回路1250またはモジュール(この例ではブルートゥース(登録商標)モジュール)に提供し、無線送信機回路を制御する、A/D出力と無線送信機回路1250との間のグルーロジックを提供するコントローラ回路(図示のマイクロコントローラ1240)を含む。データのパッケージ化には、A/D出力をデータ送信またはメッセージングプロトコルの形式に組み立てることが含まれ、これは上記の例ではブルートゥースプロトコルである。電子機器1200はまた、バッテリ1260または他の電源、電圧レギュレータ1270、及びバッテリ充電レギュレータ1280を含む。図示のバッテリ1260などの電源は、送信機回路1250、マイクロコントローラ1240及び他の回路、ならびに図12の左側に設けられた回路に必要である。バッテリの一例は携帯電話のバッテリであるが、他のバッテリ電源を適用できる場合もある。
【0046】
いくつかの実施形態では、初期増幅回路1220及びA/D変換回路1230には、EEGヘッドセットの電極1210が設けられ、具体的には、例えば図8の電極アセンブリ830であり得る、その電極アセンブリが設けられた回路基板上に設けられ得る。一実施形態では、ハウジング(例えば、図8のハウジング820)は、図12の右側部分に示されるコンポーネントの全て、すなわち、マイクロコントローラ1240、バッテリ1260、送信モジュール(送信機回路1250)、及びレギュレータ回路(電圧レギュレータ1270及びバッテリ充電レギュレータ1280)を含む。あるいは、マイクロコントローラ1240には、電極アセンブリが設けられ得、マイクロコントローラ1240は、ハウジング内になくてもよい。図12に示す実施形態では、デジタル化されたデータを1つのシリアルチャネル上に多重化するために、A/D変換器1230の出力からシリアルペリフェラルインタフェース(SPI)1234が提供されている。周知のように、バス接続には、例えばチップ選択機能を提供するために複数のラインが含まれる場合がある。言い換えれば、この実施形態では、相互接続は各チャネルに対して別個のワイヤを必要としない。さらに、A/D変換回路1230は、別個の出力チャネルを提供しないマルチチャネルA/D変換器であってもよい。電子機器1200に加えて、ハウジングの前面またはヘッドセットの他の所に設けられたライト(例えば、ユーザが鏡で見ることができるライト)と連動して、ユーザが作動させるためのオン/オフスイッチが設けられてもよく、これにより、ユーザは、ヘッドセットの電源がオンになっているかどうかを確認することが可能になる。
【0047】
様々な実施形態において、ハウジング内の電子コンポーネントには、1つ以上のバッテリ、マイクロプロセッサ(複数可)、1つ以上のタイプのメモリ装置、制御回路、トランシーバ、アンテナ、ジャイロスコープ、加速度計、酸素濃度測定回路、電極増幅器、様々な種類のコネクタ(例えば、USBポート、電源ポート、オーディオ/ビデオ入力及び/または出力ポート、ネットワーク接続ポートなど)、ユーザインタフェース要素(例えば、グラフィックディスプレイ、タッチスクリーングラフィックディスプレイ、ユーザからの音声入力を受信するマイク、カメラ、オーディオスピーカ、表示灯、ボタン、キー、スイッチ、触覚フィードバック装置など)が含まれ得るが、これらに限定されない。1つ以上のバッテリにより、EEGヘッドセットが持ち運び可能になり、つまり、バッテリはEEGヘッドセットの電極に電力を供給でき、アダプタまたは充電装置を介して再充電できる。いくつかの実施形態では、EEGヘッドセットのバッテリは誘導的に再充電することができる。
【0048】
脳検知ヘッドセット(例えば、EEGヘッドセット)は、トレーニングモード、動作モード(例えば、リハビリテーションセッション)、較正モード、通信モードなどでEEGヘッドセットを動作させる処理及びコントローラ回路を含む。したがって、EEGヘッドセットには、1つ以上の中央処理装置、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性メモリ、ならびにソフトウェアまたはファームウェアのプログラム及び定期的に更新され得る動作パラメータを保存するための読み取り専用メモリ(ROM)及び/または様々な形式のプログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)などの不揮発性メモリが含まれ得る。ソフトウェア及び/またはファームウェアプログラムに関して、EEGヘッドセットは、様々な処理機能を実行するために処理及び制御回路によって実行される実行可能なプログラム命令を含む、不揮発性メモリに格納される様々なプログラムを含み得る。不揮発性メモリは、EEGヘッドセットの動作中に使用される動作パラメータ設定または他の入力情報のための情報記憶領域も含み得る。設定及びその他の入力情報は、ユーザ(または臨床医)によって入力される場合もあれば、リモートシステムからEEGヘッドセットに送信される場合もある。
【0049】
電極アセンブリの電極は、パッシブモードまたはアクティブモードで動作することができる。アクティブモードでの動作とは、一部の回路(通常は増幅器)が電極と同じ場所に配置され、その増幅回路に電力が供給されるため、ノイズの影響を受けにくい伝送ラインに信号が供給されることを意味する。検知された信号が増幅されるのが早ければ早いほど、ほとんどのノイズ源を打ち消す可能性のある低インピーダンス経路が生成される。アクティブモードでは、特に同側信号のような低強度の脳信号が取得され、使用される場合、BCIアプリケーションで動作増幅特性が重要になる可能性がある。パッシブモードでは、センサは伝送線を介して比較的弱い電気信号を送信する。システムがパッシブモードで動作し、ノイズがシステム動作に干渉しないように設計できる場合がある限り、そうすることがコスト上の理由から望ましい場合がある。パッシブ電極は、通常、アクティブ電極よりも製造または購入コストが低く(例えば、おそらく10分の1のコスト)、パッシブ電極設計を使用すると、電極と同位置に設けられた電子機器が不要となるという点において、設計の柔軟性が向上する可能性がある。
【0050】
本明細書に開示される脳検知ヘッドセットの実施形態は、独自に設計されたセンサアセンブリの多方向調整機能により、対象者が、センサ(例えば、電極)を、対象者の頭皮と確実に接触させながら、目標位置に安定して配置することを有利に可能にする。必要に応じて、ヘッドセットの装着とセンサの交換とを、全て片手及び片腕で行うことができ、これは手足に障害があり使用が制限されている脳卒中患者にとって特に有益である。さらに、本開示の脳検知ヘッドセットはモジュール式であり、電子機器モジュールとして機能するハウジングと、センサの数及び位置をカスタマイズできる交換可能なアームとを有する。
【0051】
実施形態では、対象者の脳活動を記録するための装置は、対象者の頭部に沿って延びる形状に作られた第1のアーム(例えば、図1Aのアーム110a)を含み、第1のアームは、第1のアームの長さに沿った第1のレール対(例えば、図2Aのレール116)を有する。第1のレール対は、対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部(例えば、図2Aの開口部114)に隣接し、第1のレール対は、第1の開口部に面する内縁に沿った第1の溝(例えば、図7Aの溝717)を有する。この装置は、配向の多方向調整機能を有する電極アセンブリ(例えば、図1Aの電極アセンブリ130、図4Aの電極アセンブリ300)を含む。電極アセンブリは、シェルの外面の両側から突出するタブを備えたシェルであって(例えば、図4Aのシェル310、タブ316)、タブがシェルに対して回転可能である、シェルと、シェルの内側のスリーブ(例えば、スリーブ320)であって、スリーブが、スリーブとシェルとの間に、シェル内でのスリーブの角度傾斜を可能にするクリアランス(例えば、クリアランス328)を有する、スリーブと、スリーブの第1の端部をシェルの内端に取り付ける弾性要素(例えば、弾性要素325)と、スリーブ内に取り外し可能に挿入され、EEG電極の接触面が対象者の頭部に面する、脳波記録(EEG)用電極(例えば、電極330)と、を含む。電極アセンブリは第1のアームに取り付けられ、タブは第1のレール対の溝にスライド可能に設置される。この装置はまた、対象者の頭部に面する底面を有するハウジング(例えば、図1Aのハウジング120)であって、ハウジングが、電極アセンブリ用のエネルギー源及び電子回路を含み(例えば、図12)、ハウジングと、ハウジングに取り外し可能に結合される第2のアーム(例えば、アーム110b、110c、または110d)であって、第2のアームは対象者の頭部に沿って延びる、第2のアームと、を含む。第1のアームは、ハウジングに取り外し可能に結合され、対象者の頭部に沿って第2のアームとは異なる方向に延びる。
【0052】
いくつかの実施形態では、装置は、ハウジングに取り付けられた固定電極(例えば、図1Aの電極132)を含む。いくつかの実施形態では、第2のアームは、第2のアームの第2の長さに沿った第2のレール対を有し、第2のレール対は、対象者の頭部へのアクセスを可能にする第2の開口部に隣接し、第2のレール対は、第2の開口部に面した内縁に沿った第2の溝を有し、装置はさらに複数の電極アセンブリを備え、複数の電極アセンブリのうちの1つの電極アセンブリが第2のアームに取り付けられ、タブが第2のレール対の第2の溝にスライド可能に設置される。いくつかの実施形態では、第2のアームは、第2のアームをハウジングの底面に取り外し可能に結合するコネクタ(例えば、コネクタ860、960)をさらに備え、コネクタは、第2のアームに取り付けられた1つの電極アセンブリをハウジング内の電子回路に電気的に結合する。いくつかの実施形態では、圧縮性パッド(例えば、パッド140c、140d)が、対象者の頭部に面する第2のアームの下面の第2の開口部を取り囲み、圧縮性パッドは電磁干渉(EMI)シールドを備える。いくつかの実施形態では、第2のアームは、対象者の頭部に面する圧縮性パッド(例えば、パッド140a、140b、140c、140d)を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、弾性要素(例えば、弾性要素325、625)は、第1のバネ力を含み、装置は、第1のアームに取り付けられ、対象者の頭部に面する圧縮性パッド(例えば、パッド140c、140d、640)をさらに備え、圧縮性パッドは、第1のバネ力よりも小さい第2のバネ力を有する。いくつかの実施形態では、シェルは、対象者の頭部に対して垂直なZ軸(例えば、図4AのZ軸390)を有し、弾性要素により、Z軸に沿ったEEG電極の移動が可能になり、シェル内のスリーブの角度傾斜(例えば、図4Aの角度339)は、Z軸に対するものであり、タブにより、EEG電極はZ軸に垂直なY軸を中心に回転できるようになる。いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、スリーブからタブの1つまでの電気配線(例えば、図7Cの内部電気配線772)をさらに備える。いくつかの実施形態では、クリアランス(例えば、図4Aのクリアランス328)により、最大20°の角度傾斜が可能になる。いくつかの実施形態では、EEG電極は、回転ロック機構でスリーブに取り外し可能に挿入され(例えば、図5A図5B)、EEG電極は、スリーブ内部の凹部と嵌合する突出部を有する円筒体を備える。いくつかの実施形態では、ハウジングは、ハウジングの縁にグリップ要素(例えば、グリップ要素880)をさらに備え、その縁は、前縁、後縁、または側縁(例えば、第1の側縁または第2の側縁の側縁)のうちの少なくとも1つである。
【0054】
実施形態では、対象者の脳活動を記録するための装置は、複数の電極アセンブリ(例えば、図1Aの電極アセンブリ130、図4Aの電極アセンブリ300)を含む。各電極アセンブリは、配向の多方向調整機能を有し、シェルの外面の両側から突出するタブを備えたシェルであって、タブがシェルに対して回転可能である、シェルと、シェルの内側のスリーブであって、スリーブが、スリーブとシェルとの間に、シェル内でのスリーブの角度傾斜を可能にするクリアランスを有する、スリーブと、スリーブの第1の端部をシェルの内端に取り付ける弾性要素と、スリーブ内に取り外し可能に挿入され、EEG電極の接触面が対象者の頭部に面する、脳波記録(EEG)用電極と、を含む。この装置はまた、底面、第1の側縁、及び第2の側縁を有するハウジング(例えば、図1Aのハウジング120)を含み、ハウジングは、複数の電極アセンブリのためのエネルギー源及び電子回路を含む(例えば、図12)。第1のアーム(例えば、図1Aのアーム110aまたは図10A図10Dのアーム1010a)は、ハウジングに取り外し可能に結合され、ハウジングの第1の側縁から対象者の頭部に沿って延びる形状であり、第1のアームは、第1のアームの第1の長さに沿った第1のレール対を有する。第1のレール対は、対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部に隣接し、第1のレール対は、第1の開口部に面する内縁に沿った第1の溝を有する。第2のアーム(例えば、図1Aのアーム110bまたは図10A図10Dのアーム1010b)は、ハウジングに取り外し可能に結合され、ハウジングの第2の側縁から対象者の頭部に沿って延びる形状である。第2のアームは、第2のアームの第2の長さに沿った第2のレール対を有し、第2のレール対は、対象者の頭部へのアクセスを可能にする第2の開口部に隣接する。第2のレール対は、第2の開口部に面する内縁に沿って第2の溝を有する。第3のアーム(例えば、図1Aのアーム110cまたは110d、あるいは図10A図10Dのアーム1010cまたは1010d)は、ハウジングに取り外し可能に結合されており、第3のアームは、対象者の頭部に沿って前後方向に延びている。複数の電極アセンブリのうちの第1の電極アセンブリは、第1のアームの第1の開口部に取り付けられ、第1の電極アセンブリのタブは、第1の開口部の第1の溝にスライド可能に設置される。複数の電極アセンブリのうちの第2の電極アセンブリは、第2のアームの第2の開口部に取り付けられ、第2の電極アセンブリのタブは、第2の開口部の第2の溝にスライド可能に設置される。
【0055】
いくつかの実施形態では、第3のアームは、第3のアームの第3の長さに沿った第3のレール対を有し、第3のレール対は、対象者の頭部へのアクセスを可能にする第3の開口部に隣接し、第3のレール対は、第3の開口部に面する内縁に沿った第3の溝を有する。複数の電極アセンブリのうちの第3の電極アセンブリは、第3のアームに取り付けられ、第3の電極アセンブリのタブが第3の開口部の第3の溝にスライド可能に設置される。いくつかの実施形態では、第3のアームは、第3のアームをハウジングの底面に取り外し可能に結合するコネクタをさらに備え、コネクタは、第3の電極アセンブリをハウジング内の電子回路に電気的に結合する。いくつかの実施形態では、装置はさらに、対象者の頭部に面して、第3のアームの下面の第3の開口部を取り囲む圧縮性パッドを含み、圧縮性パッドは電磁干渉(EMI)シールドを備える。
【0056】
いくつかの実施形態では、第3のアームは、対象者の頭部に面する圧縮性パッドを有する。いくつかの実施形態では、弾性要素は第1のバネ力を備え、第1のアーム及び第2のアームはそれぞれ、対象者の頭部に面する圧縮性パッドを備え、圧縮性パッドは、第1のバネ力よりも小さい第2のバネ力を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、対象者の脳活動を記録する装置は、対象者の頭部に沿って延びる形状に作られた第1のアームを含み、第1のアームは対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部を有する。装置のセンサアセンブリは、配向の多方向調整機能を有する。センサアセンブリは、多方向に回転できるように構成されたシェルと、シェルの内部のスリーブと、スリーブの第1の端部をシェルの内端に取り付ける弾性要素と、スリーブに取り外し可能に挿入されるセンサであって、センサの接触面が対象者の頭部に面する、センサと、を含む。この装置はまた、センサアセンブリ用のエネルギー源及び動作コンポーネントを含むハウジングを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、装置は、ハウジングに取り外し可能に結合された第2のアームを含むことができ、第2のアームは対象者の頭部に沿って延び、第1のアームはハウジングに取り外し可能に結合され、対象者の頭部に沿って第2のアームとは異なる方向に延びる。いくつかの実施形態では、センサは脳波記録(EEG)用電極である。いくつかの実施形態では、センサは、近赤外線センサなどの光センサである。
【0059】
いくつかの実施形態では、シェルは、シェルの外面の両側から突出するタブを有し、シェルの外面は、タブ内で多方向の回転を提供するために球形である。いくつかの実施形態では、第1のアームは、第1のアームの第1の長さに沿った第1のレール対を有し、第1のレール対は、第1の開口部に隣接していて、第1の開口部に面する内縁に沿った溝を有しており、シェルは、シェルの外面の両側から突出するタブを有しており、タブはシェルに対して回転可能であり、スリーブは、シェル内でスリーブが角度傾斜を可能にするように、スリーブとシェルとの間にクリアランスを有しており、センサアセンブリは、第1のアームに取り付けられ、タブが第1のレール対の溝にスライド可能に設置される。
【0060】
いくつかの実施形態では、弾性要素は、第1のバネ力を含み、装置は、第1のアームに取り付けられ、対象者の頭部に面する圧縮性パッドをさらに備え、圧縮性パッドは、第1のバネ力よりも小さい第2のバネ力を有する。いくつかの実施形態では、シェルは、対象者の頭部に対して垂直なZ軸を有しており、弾性要素により、Z軸に沿ったセンサの移動が可能になり、多方向の回転には、Z軸に対する角度傾斜と、Z軸に垂直なY軸の周りの回転とが含まれる。いくつかの実施形態では、センサは、回転ロック機構でスリーブに取り外し可能に挿入され、センサは、スリーブ内部の凹部と嵌合する突出部を有する円筒体を備える。
【0061】
開示された発明の実施形態を詳細に参照したが、その1つ以上の例が添付の図に示されている。各例は、本技術を限定するものではなく、本技術を説明するものとして提供されたものである。実際、本明細書は、本発明の特定の実施形態に関して詳細に記載したが、当業者であれば、前述の理解を得ると、これらの実施形態に対する代替形態、変形形態、及び均等物を容易に着想し得ることが理解されよう。例えば、一実施形態の一部として図示または説明されている特徴を別の実施形態に使用して、更に別の実施形態を生み出してもよい。したがって、本主題が、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に入るそのような修正及び変形を網羅することが意図される。本発明に対するこれらの及び他の修正及び変形は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載される本発明の範囲を逸脱することなく当業者によって実施され得る。更に、当業者は、前述の記載が例示のみを目的とし、本発明を制限することを意図しないことを理解するであろう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の脳活動を記録するための装置であって、
i)対象者の頭部に沿って延びる形状の第1のアームであって、前記第1のアームは、前記第1のアームの第1の長さに沿った第1のレール対を有し、前記第1のレール対が、前記対象者の頭部へのアクセスを可能にする第1の開口部に隣接し、前記第1のレール対が、前記第1の開口部に面する内縁に沿った溝を有する、前記第1のアームと、
ii)配向の多方向調整機能を有する電極アセンブリであって、前記電極アセンブリは、
前記シェルの外面の両側から突出するタブを備えたシェルであって、前記タブが前記シェルに対して回転可能である、前記シェルと、
前記シェルの内部のスリーブであって、前記スリーブと前記シェルとの間に、前記シェル内での前記スリーブの角度傾斜を可能にするクリアランスを有する、前記スリーブと、
前記スリーブの第1の端部を前記シェルの内端に取り付ける弾性要素と、
前記スリーブ内に取り外し可能に挿入される脳波記録(EEG)電極であって、前記EEG電極の接触面が前記対象者の頭部に面する、前記EEG電極と、
を備え、
前記電極アセンブリが、前記第1のアームに取り付けられ、前記タブが前記第1のレール対の前記溝にスライド可能に設置される、前記電極アセンブリと、
iii)前記対象者の頭部に面する底面を有したハウジングであって、前記ハウジングが、前記電極アセンブリ用のエネルギー源及び電子回路を含む、前記ハウジングと、
iv)前記ハウジングに取り外し可能に結合され、前記対象者の頭部に沿って延びる第2のアームと、
を備え、
前記第1のアームは、前記ハウジングに取り外し可能に結合され、前記対象者の頭部に沿って前記第2のアームとは異なる方向に延びる、
前記装置。
【請求項2】
前記ハウジングに取り付けられた固定電極をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2のアームは、前記第2のアームの第2の長さに沿った第2のレール対を有し、前記第2のレール対は、前記対象者の頭部へのアクセスを可能にする第2の開口部に隣接し、前記第2のレール対は、前記第2の開口部に面する内縁に沿った第2の溝を有しており、
前記装置は、さらに複数の前記電極アセンブリを備え、前記複数の電極アセンブリのうちの1つの電極アセンブリが、前記第2のアームに取り付けられ、前記タブが、前記第2のレール対の前記第2の溝にスライド可能に設置される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第2のアームは、前記第2のアームを前記ハウジングの前記底面に取り外し可能に結合するコネクタをさらに備え、
前記コネクタは、前記第2のアームに取り付けられた前記1つの電極アセンブリを前記ハウジング内の前記電子回路に電気的に結合する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記対象者の頭部に面して、前記第2のアームの下面で前記第2の開口部を取り囲む圧縮性パッドをさらに備えており、
前記圧縮性パッドは、電磁干渉(EMI)シールドを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のアームは、前記対象者の頭部に面する圧縮性パッドを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記弾性要素は、第1のバネ力を備え、
前記装置は、前記第1のアームに取り付けられ、前記対象者の頭部に面する圧縮性パッドをさらに備え、前記圧縮性パッドが、前記第1のバネ力よりも小さい第2のバネ力を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記シェルは、前記対象者の頭部に垂直なZ軸を有し、
前記弾性要素により、前記Z軸に沿った前記EEG電極の移動が可能になり、
前記シェル内の前記スリーブの前記角度傾斜が、前記Z軸に対するものであり、
前記タブにより、前記EEG電極が、前記Z軸に垂直なY軸を中心に回転可能になる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記電極アセンブリが、前記スリーブから前記タブの1つへの電気配線をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記クリアランスは、最大20°の前記角度傾斜を可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記EEG電極は、回転ロック機構で前記スリーブに取り外し可能に挿入され、前記EEG電極は、前記スリーブ内部の凹部と嵌合する突出部を有した円筒体を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ハウジングは、前記ハウジングの縁にグリップ要素をさらに備え、前記縁が、前縁、後縁、または側縁のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の装置。
【国際調査報告】