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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】鼻腔薬物送達用の粘膜接着ポリマー
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/737 20060101AFI20240829BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240829BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61L 27/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61L 27/26 20060101ALI20240829BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240829BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20240829BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240829BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240829BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20240829BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K31/737
A61K47/36
A61K47/02
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/12
A61K47/42
A61K45/00
A61P1/02
A61P11/02
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P25/00
A61P29/00
A61P5/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P7/02
A61P9/12
A61P7/10
A61P9/10
A61P3/10
A61P11/06
A61K9/72
A61P37/08
A61K39/12
A61P37/04
A61L27/02
A61L27/26
A61L27/20
A61L27/50
A61L27/22
A61L27/24
A61L27/52
A61L27/38 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536547
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 IL2022050952
(87)【国際公開番号】W WO2023031929
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/260,738
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/264,539
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/268,384
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524072824
【氏名又は名称】ポリリゾン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Polyrizon Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】イズラエリ,トメル
(72)【発明者】
【氏名】ターゲマン,ティダー
(72)【発明者】
【氏名】ロン,エヤル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA25
4C076AA26
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC12
4C076CC15
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC30
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD21
4C076EE30A
4C076EE36A
4C076EE37A
4C076EE41A
4C076EE42A
4C076EE43A
4C076EE45
4C076FF12
4C076FF13
4C076FF17
4C076FF34
4C076FF39
4C076FF52
4C076FF61
4C081AB11
4C081AB18
4C081BA12
4C081BB07
4C081CD01
4C081CD04
4C081CD05
4C081CD06
4C081CD07
4C081CD09
4C081CD11
4C081CD12
4C081CD15
4C081CD17
4C081CE02
4C081DA11
4C081DA12
4C081DA14
4C081DA15
4C081DB02
4C081DC12
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA28
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084ZA01
4C084ZA08
4C084ZA21
4C084ZA34
4C084ZA42
4C084ZA45
4C084ZA54
4C084ZA59
4C084ZA67
4C084ZA83
4C084ZA96
4C084ZB09
4C084ZB11
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC03
4C084ZC35
4C084ZC75
4C085AA03
4C085BA51
4C085CC08
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA26
4C086EA27
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA28
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZA34
4C086ZA42
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4C086ZA54
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4C086ZA67
4C086ZA83
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4C086ZB09
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC03
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は概して、粘膜保護剤に関する、特に鼻腔粘膜に作用する薬剤に関する。そのために、本発明は、一連の粘膜接着性ポリマー組成物及び方法を提供し、この組成物はそれ自体で広範囲の微生物病原体及びアレルゲンに対する遮断薬として、又は口腔及び/又は鼻腔粘膜を通じた活性物質の洗練された薬物送達システムとして使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮粘膜上に送達するための組成物であって、前記組成物は、少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマー及び少なくとも1つの正電荷を帯びたイオンによって部分的に架橋された少なくとも1つの疎水性又は親水性ポリマーを含み、
前記組成物は、室温で(RT)実質的に一定の粘度を有し、それにより前記上皮粘膜との接触時に前記組成物は均一な及び連続した薄膜に変形可能である、組成物。
【請求項2】
前記上皮粘膜は、口腔及び/又は鼻腔粘膜である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記上皮粘膜との接触前に、前記組成物は液体、半流動体又は噴霧可能な形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記実質的に一定の粘度は、粘度計で測定して、少なくとも10日間以上の期間約1mPa*s-1~約20mPa*s-1の範囲内に存在する粘度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記粘度は、同じ条件下で測定した場合、同じ濃度の同じポリマーを含むが、正電荷を帯びたイオンを含まない溶液の粘度より最大20%低い、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記実質的に一定の粘度は、様々なせん断力下で測定した粘度であり、レオメータで測定して、約0.1~約10s-1の範囲のせん断速度について約100mPa*s-1~約800mPa*s-1の範囲内に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記実質的に一定の粘度は、様々なせん断力下で測定した粘度であり、約0.1~約10s-1の範囲の様々なせん断速度について25%未満の偏差を有する、請求項1又は6に記載の組成物。
【請求項8】
微粒子又はナノ粒子又は液滴を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマー及び前記少なくとも1つの疎水性又は親水性ポリマーは、合成、半合成若しくは改質天然ポリマー、又はそれらの組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマー及び前記少なくとも1つの疎水性又は親水性ポリマーは、植物、動物若しくは微生物起源、又はそれらの組合せから得られた天然ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、硫酸化ガラクタン、ウルバン、フカン、フコイダン、ヘパリン、グルコサミン、デキストラン、キトサン、キチン及びコンドロイチンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、イオタカラギーナン、カッパカラギーナン及びラムダカラギーナンから選択される少なくとも1つのカラギーナンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの親水性ポリマーは、多糖又はタンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの親水性ポリマーは、デキストラン、アルギン酸、キトサン、アガロース及びプルランから選択される多糖である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの親水性ポリマーは、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、レクチン、レグミン及びビシリンから選択されるタンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの親水性ポリマーは、アルギン酸又はアルギン酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの正電荷を帯びたイオンは、Ba2+、Be2+、Ca2+、Co2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Fe2+及びZn2+から選択される2価カチオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、カラギーナンであり、前記少なくとも1つの親水性ポリマーは、アルギン酸であり、前記少なくとも1つの正電荷を帯びたイオンは、Ca2+である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記カラギーナンは、約0.005%~約1%の範囲の濃度であり、前記アルギン酸は、約0.1%~約3%の範囲の濃度であり、前記Ca2+は、約0.0001%~約1%(w/w)の範囲の濃度である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記カラギーナンは、約0.1%~約0.3%の範囲の濃度であり、前記アルギン酸は、約1%~約3%の範囲の濃度であり、前記Ca2+は、約0.0001%~約0.05%(w/w)の範囲の濃度である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記カラギーナンは、約0.1%~約0.3%の範囲の濃度であり、前記アルギン酸は、約2.0%~約2.9%の範囲の濃度であり、前記Ca2+は、約0.005%~約0.02%(w/w)の範囲の濃度である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記カラギーナンは、約0.1%~約0.3%の範囲の濃度であり、前記アルギン酸は、約2.0%~約2.9%の範囲の濃度であり、前記Ca2+は、約0.0001%~約0.005%(w/w)の範囲の濃度である、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
溶媒、緩衝液、賦形剤、アジュバント、透過促進剤、可塑剤、増粘剤、レオロジー改質剤、アルコール、増量剤、保存料、着色料、色素、甘味料、香料若しくは臭気剤、又はそれらの組合せを更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1つの追加の治療薬を更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
治療有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物及び薬学的に許容される緩衝液、担体又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項26】
前記医薬組成物は、粒子又は液滴形態で吸入に適合している、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記医薬組成物は、スプレー又はゲルの形態で経口及び/又は鼻腔投与に適合している、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
口腔及び/又は鼻腔粘膜障壁機能不全に関連する障害を予防又は治療するための少なくとも1つの追加の治療薬を更に含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1~24に記載の組成物、口腔若しくは鼻腔送達又は吸入のための装置を備え、使用説明書を更に備える、キット。
【請求項30】
請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物及び少なくとも1つの追加の治療薬を含む、薬物送達システム。
【請求項31】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が、口腔及び/又は鼻腔粘膜障壁機能不全に関連する障害又は状態を予防又は治療するための薬剤である、請求項30に記載の薬物送達システム。
【請求項32】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が、臨床的障害又は臨床的若しくは無症状状態を予防又は治療するための薬剤である、請求項30に記載の薬物送達システム。
【請求項33】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、神経遮断剤、鎮痛剤、ホルモン、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、抗凝固剤、β遮断薬、利尿剤、抗高血圧剤、抗アテローム動脈硬化症剤、抗糖尿病剤、抗喘息剤、うっ血除去薬及び/又は風邪薬から選択される、請求項31又は32に記載の薬物送達システム。
【請求項34】
薬物送達方法であって、前記方法は、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物、請求項25~28のいずれか一項に記載の医薬組成物、又は請求項30~33のいずれか一項に記載の薬物送達システムを経口及び/又は鼻腔投与することを含む、方法。
【請求項35】
口腔及び鼻腔粘膜障壁機能の保護に使用するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
口腔及び/又は鼻腔粘膜障壁機能不全に関連する障害又は状態の予防、軽減又は治療に使用するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
対象の口腔及び/又は鼻腔粘膜障壁機能を保護する方法であって、前記方法は、前記対象に治療有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物を経口又は鼻腔投与することを含む、方法。
【請求項38】
前記対象に少なくとも1つの追加の治療薬を投与することを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
微生物口腔及び/又は鼻腔感染症の治療、軽減及び/又は予防に使用するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記微生物口腔及び/又は鼻腔感染症は、ウイルス及び/又は細菌感染症である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
少なくとも1つの抗生物質及び/又は抗ウイルス薬を更に含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記抗ウイルス薬は、抗ウイルスワクチンである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
空気アレルゲン誘発アレルギー及び/又は炎症の治療、軽減及び/又は予防に使用するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
少なくとも1つの抗アレルギー及び/又は抗炎症剤を更に含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
対象の微生物口腔及び/又は鼻腔感染症を治療、軽減及び予防する方法であって、前記方法は、前記対象に治療有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物を経口及び/又は鼻腔投与することを含む、方法。
【請求項46】
前記対象に少なくとも1つの抗生物質及び/又は抗ウイルス薬を同時投与することを更に含み、前記投与することは、経口、経腸、非経口、又は経鼻経路である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
対象の空気アレルゲン誘発アレルギー及び/又は炎症を予防、軽減又は治療する方法であって、前記方法は、前記対象に治療有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物を経口及び/又は鼻腔投与することを含む、方法。
【請求項48】
前記対象に少なくとも1つの抗アレルギー及び/又は抗炎症剤を同時投与することを更に含み、前記投与することは、経口、経腸、非経口、又は経鼻経路である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
組織の再生に及び/又は組織移植片の生体工学に使用するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記組織は、神経又は心臓組織である及び/又は前記組織移植片は、神経又は心臓組織に移植される、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
組織の再生及び/又は組織移植片の生体工学を必要とする対象におけるそれらの方法であって、前記方法は、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物を前記組織に投与すること又は前記対象の前記組織に移植することを含む、方法。
【請求項52】
前記組織は、神経又は心臓組織である及び/又は前記組織移植片は、神経又は心臓組織に移植される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記投与すること又は移植することは、外科手技を更に含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
空気アレルゲン誘発アレルギー及び/又は炎症を予防、軽減又は治療するための薬物を製造するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項55】
微生物口腔及び/又は鼻腔感染症を予防、軽減又は治療するための薬物を製造するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項56】
臨床的障害又は臨床的若しくは無症状状態を予防、軽減又は治療するための薬物を製造するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項57】
口腔及び/又は鼻腔粘膜障壁機能不全に関連する障害又は状態を予防、軽減又は治療するための薬物を製造するための請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、粘膜接着ポリマー、具体的には、様々な粘膜組織に対して粘膜接着親和性を有する親水性生体高分子及び天然の親水性多糖に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲性及び無痛性投与経路の実行と共に革新的な薬物送達システムが出現すると、医薬品業界及び疾患の治療手法が変革する。粘膜を介して投与できる薬物送達システムは、初回通過代謝、P糖タンパク質流出などの、経口投与主要な制限を克服するための、及び高い患者コンプライアンスを提供するための選択肢のため、ますます多くの関心を集めている。更に、粘膜層は多くの臓器で偏在的に存在し、比較的高い物質透過性を有する。したがって、粘膜を標的とする新しい薬物送達システム及び製剤、具体的には、投与時間が長く活性物質の局所的及び全身的バイオアベイラビリティが増加した粘膜接着剤形を作製することは、製薬会社の研究開発部門の主要な焦点の一つとなっている。
【0003】
特定の例は、咽頭及び鼻の粘膜である。両方は、アレルゲン、ウイルス及び細菌などの病原体が侵入する非常に重要な入口として、及び病原体播種の供給源としても働く。例えばCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)(Coronavirus Disease 2019)パンデミックでは、かなりの量の証拠から、咽頭及び鼻におけるSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2)の力価は、非常に高く、SARS-CoV-2侵入の原因である受容体、hACE2受容体の口腔及び鼻組織粘膜における発現も同様である。
【0004】
COVID-19パンデミックの1つの特徴は、主に飛沫及び接触感染による、世界的な免疫学的にナイーブな人間集団におけるSARS-CoVの急速な広がりにおいて明らかにされる。別の特徴は、COVID-19の臨床症状は、広範囲な症状の重症度を示し、一方では高齢者、免疫力が低下した患者及び特定の併発状態の患者で致死率が高く、他方ではかなりの割合の個人が無症候性疾患(asymptomatic)又は無症状疾患(subclinical)だった。この後者は、世界中の感染の44%と推定されている。
【0005】
更に、鼻腔及び口腔又は上咽頭におけるウイルス負荷に関しては、症候性及び無症候性個人は、両者とも身体部位においてウイルス負荷が最も高い部分を含有するという点で類似するように見える。加えて、症候性個人では、鼻及び口内分泌物を経由する感染は、症状の発生前又は直後に最も高いことが示されてきた。したがって、無症候性及び初期症候性のCOVID-19個人は、実際には知らず知らず疾患の指数関数的伝播に寄与する「無症状感染(silent spreaders)」である。
【0006】
したがって、ウイルス伝播及び感染を予防するためのワクチン接種、ソーシャルディスタンス、検査、及び旅行規制などの従来の軽減戦略に加えて、もしあれば、別の手法では鼻及び口の開口部を経由したウイルス侵入を遮断する又は弱める薬剤、又は鼻腔及び口腔内のウイルス負荷を低減することができる薬剤を使用するべきである。この種類の戦略は、個人及び集団レベルで等しく適用可能なこともあり、ワクチン接種に耐えられない集団及び下位集団又はワクチン接種が利用できない場合に特に関連性があることもある。新しいSARS-CoV-2変異株(α、β、δ、オミクロンなど)が連続的に出現していること及び結果として既存のワクチンの効果に関して不確かなことを考慮すると、ずっと関連性がある。
【0007】
広い観点からは、口腔及び鼻腔粘膜は、人体の外側と内側の間の構造的及び機能的界面を構成し、吸入性病原体、アレルゲン、及び他の物質の連続流に対する第1の障壁として働く。上皮性関門の機能性の維持に重大な役割を果たす上皮性関門の重要な構造上の成分は、いわゆるタイトジャンクション(TJ)、上皮細胞の頂端側に位置する細胞―細胞結合複合体である。口腔及び鼻腔粘膜障壁の機能不全性及び特にTJの機能不全性が、喘息アトピー性皮膚炎及び鼻アレルギーなどの多くのアレルギー性疾患並びにアレルゲン及び環境汚染物質に対する反応の根底にあるということを示すますます多くの証拠がある。これら全てから、上皮性関門の機能性を保護し維持する薬剤又は方法がこれらの状態の予防又は減弱に有利なこともあるという考え方が導かれる。
【0008】
2つの薬物送達経路、鼻腔及び口腔薬物送達を考慮する一方、鼻腔送達経路には、いくつかの明白な利点がある。記載した通り、鼻腔送達は、肝臓の初回通過代謝の回避を可能にする。鼻腔は比較的大きな表面積を有し、鼻腔の上皮及び粘膜下は、高い血管新生化及び高い物質透過性を特徴とし、これらの全ては迅速な薬物吸収を促進する。加えて、鼻腔送達は、自己治療の便利な選択肢を与える。
【0009】
粘膜接着ポリマー、特に天然源由来の親水性生体高分子及び多糖は、口腔及び鼻腔薬物送達のビヒクル及び活性物質としてますます多くの注目を集めている。一例は、カラギーナン、紅藻から抽出される天然の硫酸化多糖であり、これは抗ウイルス特性と関連している。同時に、カラギーナンそれ自体は、炎症性が高いことが分かっており、噴霧範囲及び粘膜接着の点からは上手く機能しないことが分かっている。これらの問題を克服するために、カラギーナンは通常、ゲランガムなどの他の生体適合性多糖との混合物において使用される。別の藻類多糖は、アルギン酸であり、特定の例では粘膜接着薬物送達システムはこれを従来型の薬物の担体として使用する。薬物ロード脂質ナノ粒子と共にポリマーを使用する特定のハイブリッド粘膜接着送達システムは、システムを個別化投与量に適合して米国特許出願公開第201922411号及び国際公開第19246384号パンフレットに記載されている。
【0010】
全体的に見て、粘膜接着ポリマーの明白な利点にもかかわらず、ポリマーの毒性についてのいくつかの懸念が依然として、生体適合性粘膜接着ポリマーでさえも、同様にポリマーの粘膜接着性、広がり、及び被覆特性にも存在する。広い観点からは、効果的で安全な全身性薬物送達、具体的には口腔及び鼻腔上皮粘膜障壁の機能性及び未変化性の回復及び維持に関連する薬物の送達のための解決策を見出す満たされてない必要性がある。COVID-19の世界的流行及びアレルギー及び大気汚染による損傷などの状態は、最終的にこのような解決策を提供する必要性を補強する。
【0011】
参考文献
1.Zou L et al.SARS-CoV-2 viral load in upper respiratory specimens of infected patients.N.Engl.J.Med.382(12),1177-1179(2020).
2.Hamming I et al.Tissue distribution of ACE2 protein,the functional receptor for SARS coronavirus.A first step in understanding SARS pathogenesis.J.Pathol.203(2),631-637(2004).
3.Robinson TE et al.Low acyl gellan as an excipient to improve the sprayability and mucoadhesion of iota carrageenan in a nasal spray to prevent infection with SARS-COV-2.Front.Med.Tech.3,article 687681(2021).
4.Patil SB and Sawant KK.Development,optimization and in vitro evaluation of alginate mucoadhesive microspheres of carvedilol for nasal delivery.J.Microencapsul.26(5):432-443(2009).
【発明の概要】
【0012】
上皮障壁は、有害な病原体、アレルゲン、及び他の外来粒子への曝露に対する第一線の防御である。上皮組織又は上皮粘膜の未変化性は、粘膜の自然免疫及び獲得免疫の両方において非常に重要な役割を果たす。上皮細胞は、病原体の侵入を妨害する機能分子の活性化(例えば炎症促進性サイトカイン、増殖因子及びケモカイン)並びに抗菌物質及びペプチド(AMP、例えばリゾチーム、デフェンシン、ラクトフェリン、S-100タンパク質)の原因となる。粘液線毛クリアランスは、口腔及び鼻腔内の腺及び線毛細胞により分泌される粘液中の微生物及び粒子を補足する原因となる。これらのシステムのいずれかの恒常性の変化は、上気道における炎症性疾患及び感染性疾患において重要な役割を果たす。
【0013】
鼻腔上皮障壁は更に、上皮細胞間の相互接続(TJ、接着結合、デスモソーム、ヘミデスモソーム)を可能にする頂端側結合複合体(AJC)を特徴とする。TJ障害は、例えば世界中の人口の最大40%が発症し、人生を通して持続するよく見られる障害であるアレルギー性鼻炎(AR)、の病理発生の主因である。更なる実施例は、喘息、アトピー性皮膚炎、鼻アレルギー、並びにアレルゲン及び環境汚染物質に対する反応である。
【0014】
COVID-19感染症では、ウイルスは主に鼻腔を通じて侵入し、そこで増殖し、鼻腔粘膜の細胞を破壊し、それによりウイルスの全身性伝播を可能にし、局所的及び全身性炎症プロセスのトリガーを可能にする。症状が現れると、疾患の病態生理はすでに確立されている。そして感染及び炎症が持続する場合、このことは呼吸不全、全身性ショック及び潜在的に多臓器不全を含む二次的な末期の疾患を生じることができる。
【0015】
したがって、上気道の感染症、アレルギー及び障害に効率的に取り組むためには、もしあればより直接的な手法で原因となる病原体が鼻腔又は口腔に接触又は侵入するのを予防又は妨害し、それによりその後の感染又はアレルギー反応の危険を最小化するべきである。ウイルスについては、特にCOVID19については、重要な目的は、ウイルスの他の個人への伝播及び母集団での蔓延を防ぐよう鼻腔内のウイルス負荷を最小限にすることである。
【0016】
粘膜接着剤は、それ自体又は抗ウイルス、抗炎症又は抗アレルギー薬と組み合わせて、個人及び集団レベルで容易に適用することができる病原体及びアレルゲンに対する便利で経済的な保護方法を与えるこのような予防手法の魅力的な候補である。
【0017】
このフレームワーク内では、本発明は、特に有利な生体適合性粘膜接着組成物を提供し、細胞又は粘膜表面に適用する場合、組成物は、様々な病原体、アレルゲン及び大気汚染物質に対する効果的な保護障壁として働くことができる連続した、耐久性のある、無毒の薄膜に変形する。この保護の妥当性及び有効性は、様々なウイルス感染及びアレルゲン曝露モデルにおける一連の実験により実証されてきた。
【0018】
言い換えれば、本発明の組成物それ自体は、活性物質を添加せずに、2つの高度に蔓延している条件、ウイルス負荷及びアレルゲン曝露に効果的で安全な粘膜保護剤であると示された。より一般的には、組成物の利便性、生体適合性及び追加の治療活性物質を取り込む能力のため、組成物は、個人及び集団レベルでの病原体の伝播及び有害な汚染物質への過剰曝露の両方を予防する安全で直截な解決策を提供することができる。
【0019】
より具体的には、本発明は、硫酸化多糖及び二価カチオンによって部分的に架橋された疎水性又は親水性ポリマーの組合せを含む組成物を提供する。この成分から成る特定の組成物は本発明で、ゲル/液体一貫性、レオロジー挙動及び薄膜への変形可能性の改善の固有及び驚くべき物理的特性、並びに更に、効果的な粘膜接着性、粘膜保護性及び一般的な毒性の欠如の驚くべき生物学的特性を有することが実証された。
【0020】
物理的特性から始めると、本発明の組成物は、粘度計によって測定した粘度の点で、室温(RT)で実質的に一定の粘度、及びせん断力下でレオロジー挙動を有することが示された。これらの組成物の粘度は更に、同じ濃度のポリマーを含むが、部分的に架橋されていない類似の溶液の粘度より低い(最大20%)。これらの組成物の様々なせん断力下でのレオロジー挙動(又は粘度挙動)も驚くべきことに一定であり、同じ条件下で測定した類似の非架橋溶液の挙動よりも実質的に一定だった(<25%偏差)(実施例5)。
【0021】
これらの2つの中心的な物理的特性、低くて一定な粘度及びRTで様々なせん断力に対して比較的耐性があることは、本発明の組成物の主要な構造上の利点―単独で存在する場合のゲル/液体一貫性又は広がりやすさ/噴霧しやすさの改善、及び組成物が細胞表面と接触した時に連続的かつ耐久性のある薄膜へ変形する能力又は変形可能性の原因となる。
【0022】
この薄膜の未変化性、耐久性及び保護性は、インビトロでの様々なウイルス感染及びアレルゲン曝露モデルにおける一連の実験で証明された。この薄膜形成能力のため、本発明の組成物は、いくつかの種類のコロナウイルス及びインフルエンザウイルス(実施例2~3)を含む、様々な種類のウイルスに対して非常に効果的な粘膜保護剤であることが証明された。これらの組成物はまた、アレルギー反応及びアレルゲン関連炎症の多くの共通決定要因を含む、比較的広範囲の空気アレルゲンに対して効果的であることも分かった。アレルゲン曝露に関連して、更に、他の試験した組成物(非架橋溶液及び単一ポリマー組成物)と比較して、組成物の保護効果は、実質的により顕著で相乗的だった(実施例4)。そのうえ、組成物は、広範な薬学的に適用可能な濃度で無毒であることも実証された(実施例1)。
【0023】
これら全ての特性により、本発明の組成物は、局所的及び粘膜投与に特に適しており、具体的には口腔及び/又は鼻腔粘膜上への適用に特に適している。
【0024】
より一般的には、本発明は、2種類の製品の基礎を形成する。
(1)組成物をそれ自体又はOTC認可された活性物質(キシロメタゾリン、イブプロフェン、うっ血除去薬など)と組み合わせて使用して、病原体、アレルゲン及び他の空気中の媒介物への曝露に対して粘膜組織(例えば口腔及び/又は鼻腔粘膜)の安全かつ効果的な被覆を提供するOTC製品。
(2)組成物を従来の薬物と組み合わせて使用して既に存在する感染及び/又は炎症を治療するための、並びにウイルスの場合、他の宿主への伝播を軽減するための処方に基づく薬物及び方法。
【0025】
両方の種類の製品は、例えば口腔又は経鼻適用のための吸入用のスプレー又は微粒子としてなど、様々な従来の形態で提供されることができる。
【0026】
これらの組成物の利点は、中心的な成分、硫酸化多糖、疎水性及び親水性ポリマー並びに二価カチオンの生体適合性及び利便性に由来する。様々なこのようなポリマーは、天然減、植物、動物及び微生物から入手することができる。注目すべき例は、様々な種類の海洋藻類によって産生される硫酸化多糖、例えばガラクタン、ウルバン、フカン及びフコイダンなどであり、特定の例は、agaran及びカラギーナン、ガラクタンである。生体適合性親水性ポリマーの例は、デキストラン、アルギン酸、キトサン、アガロース、プルラン多糖、及びアルブミン、ゼラチン、コラーゲン、及びレクチンタンパク質であり、これらの全ては天然源から入手可能である。架橋二価カチオンの例は、Ba2+、Ca2+、Co2+、Cu2+、Fe2+、Mg2+及びZn2+である。
【0027】
より特定の例は、それぞれ約0.005%~1%、約0.1%~3%、約0.0001%~1%(w/w)の濃度のカラギーナン及びCa2+によって部分的に架橋されたアルギン酸の組合せを含む組成物である。
【0028】
組成物は更に、噴霧による被覆又は口腔及び/又は経鼻経路を介した吸入による投与に適合性がある及び最適に適合されるように緩衝液、賦形剤、保存料、香料及び臭気剤を含むことができる。
【0029】
医薬組成物として、組成物は更に、特定の臨床的徴候のとおりに、従来の治療活性物質を組み込むことができる。魅力的な候補は、一般的に口腔、鼻腔又は上気道粘膜障壁機能不全と呼ばれる広く普及している無症状及び臨床的状態の群を治療するための薬剤であることができる。
【0030】
広い意味で、本発明は、上皮又は粘膜障壁の恒常性の変化又は上皮又は粘膜障壁の未変化性及び機能性の損失に関連する任意の状態に適用される。本発明は更に、物理的連続性、細胞構造、自然及び獲得免疫のメディエーターの機能性、及び上皮環境の他の機能の障害に関連する状態に適用される。このような状態の特定の例は、微生物(ウイルス及び/又は細菌)感染症、及び空気アレルゲン誘発アレルギー及び炎症であり、これについて本発明の組成物は、単独で又は他の抗ウイルス、抗生物質及び/又は抗炎症剤を組み合わせて、効果的で安全な保護を提供することができる。
【0031】
更に別の観点からは、本発明の組成物は、様々な粘膜組織上への投与を介して全身性薬物を導入するための新しい薬物送達システムを提供する。今までのところ、最も一般的な全身性薬物投与経路は、経口、経腸、又は非経口経路であり、これらには特定の利点及び不利がある。本発明は、粘膜接着及び、泌尿生殖器、直腸、口腔及び鼻腔粘膜、肺及び他の粘膜を含む、様々な粘膜組織を通じた透過による別の薬物投与経路を提供する。
【0032】
この態様は更に、薬物安全性及び有効性を改善するための微粒子化及びナノ粒子化並びにカプセル封入技術を含む、上皮又は全身性環境のいずれかに、活性物質の標的化された及び/又は制御された放出を可能にする追加の技術を含むことができる。
【0033】
本発明で提案された手法は、高度に親油性の活性物質の製剤化に特に有用であることができる。既知の薬物の約60%~70%、及び最近の薬物候補でさえ高い割合で高度に親油性である。親油性活性物質は概して、低い経口バイオアベイラビリティ、不充分な胃腸管(GI)透過性及び吸収、GI流出及び肝臓の初回通過代謝を受ける。上皮粘膜、特に口腔及び鼻腔粘膜は本来、血管新生に富み、肝臓の初回通過代謝と独立して、比較的高い透過性を有する。したがって、これらの経路を使用する親油性薬物は、より良好な薬物バイオアベイラビリティ及び吸収を有するようである。溶解性及びバイオアベイラビリティは更に、特定の透過促進剤、可溶化剤、乳化剤及び界面活性剤を本発明の組成物に組み込むことにより改善されることができる。
【0034】
言い換えれば、本発明の組成物は、粘膜接着性、被覆及び保護性という優れた特性のため、薬物保持のより良好な特性を有してもよく、その結果、薬物の粘膜組織への改善された吸収及び同化を有してもよく、このことは更に追加の処方、ナノ粒子化及びカプセル封入技術、並びに局所的及び全身性薬物送達用のパッチ又は薄膜の使用により強化されることができる。
【0035】
局所的又は全身性送達に関連して興味深い適用は、抗ウイルスワクチン及び他の障害用のワクチンを含む、ワクチンの経口及び/又は鼻腔送達であることができる。比較的非侵襲的で「針を含まない」ので、このようなワクチンは個人及び集団に基づく様々な予防戦略に容易に組み込むことができる。
【0036】
本発明の組成物の更に別の興味深い適用は、組織再生及び組織移植片の生体工学におけるものである。組成物の生体適合性及び物理的、化学的及び他の特性のため、これらの組成物は、組織及び臓器の再生に物理的支持を提供するため、及び特定部位への細胞の集合を支援するためにマトリックス及び/又は注射用ハイドロゲルの形態の普遍的な「万能」材料として働くことができる。本発明の組成物が追加の材料、活性物質及び薬物を組み込む適応性により、組成物のこの応用に特に魅力的な候補となる。
【0037】
例えば、これらの組成物から作製されたマトリックス/ゲルは更に、活性物質、薬物、増殖因子、ホルモン、酵素、核酸、及び特定の細胞集合、増殖及び機能性のための形態学的及び生化学的指示を提供する他の薬剤を含むことができる。必要とされる適応症に応じて、マトリックス/ゲルは更に、様々な種類及び起源の被包された細胞を含むことができる。特定の実施例は、適切なトリガーがあると、特定の適用部位に細胞が集合し、増殖し及び/又は分化することができる様々な種類の幹細胞である。
【0038】
神経又は心臓に関連して、本発明の組成物は、細胞の運命を神経又は心臓再生を好んで、梗塞心臓、障害脊髄又は神経変性脳組織を修復するよう変化させるための機械的及び機能的支持を送達することにより損傷組織の構造的及び機能的回復を支援することができる。神経修復又は再生のツールとみなした場合、本発明の組成物に、補助装置を組み合わせることができ、神経学的外科手技に組み込むことができる。
【0039】
最終的に、本発明は、独立して又は粘膜保護抗ウイルス及び/又は抗炎症剤、組織再生及び修復を支援する薬剤、並びに局所的及び全身薬物送達としての他の薬物又は送達装置と組み合わせて使用する、スプレー、ゲル、マトリックス又は薄膜の形態の生体適合性粘膜接着組成物に基づいて、広範囲の製品、方法及び使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
主題をより良く理解し、実際にどのように実行してもよいかを実証するために、以下の図面を参照して非限定的な例により実施形態を今から記載する。
図1図1A図1Dは、MRC-5(A)、MDCK(B)、A549(C)及びVero(D)細胞における非架橋形態(#16)及び部分的に架橋された形態(それぞれ1.47%、0.02%CaClの#21、#26)のアルギン酸/カラギーナンの組合せを含む組成物と未処理の対照(UT)との効果を比較して、本発明の組成物には細胞傷害性がない(安全性)ことを示す。試験されたモデルのいずれにおいても細胞傷害性が観察されなかった。
図2図2A図2Bは、単一ポリマー(#4アルギン酸、#5カラギーナン)を含む組成物(A)及び(B)、並びに非架橋(それぞれカラギーナン0.12%及び0.24%の#15、#16)及び部分的に架橋された(それぞれカラギーナン0.12%及び0.24%の#25、#26)形態及び部分的に架橋されたアルギン酸(#27)(B)対未処理の細胞及びウイルスに曝露した細胞(UT+virus)を比較した、インビトロヒトコロナウイルス(229E)モデルにおける本発明の組成物の抗ウイルス粘膜保護効果を示す。部分的に架橋されたポリマーを含む組成物は、単一かつ非架橋のポリマーを含む組成物よりも229Eに対して著しく効果的だった。
図3図3は、様々な濃度の(x1、x0.8、x0.6、x0.4、x0.2)非架橋(#16)及び部分的に架橋された(#26)ポリマーを含む組成物対UT及びUT+ウイルス対称の効果を比較した、別のコロナウイルスSARS-CoV-2(オミクロン変異体、B.1.1.529.BA.1)に対する組成物の抗ウイルス粘膜保護効果を示す。部分的に架橋されたポリマーを含む組成物は、低濃度のポリマー(x0.2)のものを含めて、SARS-CoV-2に対してより効果的だった。
図4図4A図4Bは、単一の非架橋ポリマー(#4、#5)を含む組成物(A)及び(B)、並びに非架橋(#15、#16)及び部分的に架橋された(#25,#26)ポリマーの組合せ及び部分的に架橋されたアルギン酸(#27)を含む組成物(B)対UT及びUT+ウイルス対照の効果を比較した、ヒトインフルエンザウイルス(H1N1)に対する組成物の抗ウイルス粘膜保護効果を示す。部分的に架橋されたポリマーを含む組成物は、H1N1で等しく効果的で、非架橋及び他の成分より効果的であることが分かった。
図5図5は、様々な架橋度(0.0.2%、0.01%、0.005%、0.001%、0.0001% CaClの#26)のアルギン酸-カラギーナンポリマー及び非架橋ポリマー(#16)を含む組成物対UT及びUT+ウイルス対照の効果を比較した、同じH1N1モデルにおける架橋度の効果を示す。ポリマーの組合せを含み、CaClによる架橋が0.005%~0.02%の範囲の組成物が、最も高い抗ウイルス粘膜保護効果を有し(>90%細胞生存率)、0.0001%~0.02%の範囲でも非架橋組成物より効果が高かった。
図6図6は、2つの濃度の(x1、x0.5)単一ポリマー(#3イオタカラギーナン、#4アルギン酸、#5カラギーナン)を含む及び非架橋(#15、#16)及び部分的に架橋された(#25、#26)アルギン酸/カラギーナンを含む組成物vsUT及びUT+ウイルス対照の効果を比較した、イエダニDer p1アレルゲン及びIL-8マーカーを使用するインビトロアレルゲン曝露モデルにおける組成物の抗炎症粘膜保護効果を示す。このモデルでは、部分的に架橋されたポリマーの組合せを含む組成物が、非架橋及び単一ポリマー組成物と比較して相乗効果を示した。
図7図7A図7Bは、非架橋(#16)及び部分的に架橋された(#26)ポリマーを含む組成物対UT及びUT+ウイルス対照の効果を比較した、追加のアレルゲン、イエダニアレルゲンDer f1及び花粉アレルゲンPhl p1に対する抗炎症粘膜保護効果を示す。このモデルでも同様に、部分的に架橋されたポリマーの組合せを含む組成物がより効果的だった。
図8図8は、同じ実験モデル及び様々な濃度の別の花粉アレルゲンCar b1(60μg/ml、30μg/ml、15μg/ml)を使用した、Car b1の同じ効果を示す。全ての試験群では、効果は古典的な用量反応と一致し、部分的に架橋されたポリマーを含む組成物が最も高い抗炎症粘膜保護効果を示した(最低のIL-8)。
図9図9は、非架橋(#16)及び部分的に架橋された(#26)ポリマーを含む組成物の長期間にわたる(21日)粘度(25℃)を比較して、RTでの低粘度及び粘度の持続性で明らかにされた、本発明の組成物の特徴的な特性の一つを示す。両種類の組成物が試験期間にわたりRTで比較的一定の粘度を有した一方、部分的に架橋された組成物は、より低い粘度を有し、より良好な噴霧しやすさ、及び被覆範囲及び広がりやすく、均一で連続した薄膜への変形可能性が示唆された。
図10図10は、様々なせん断速度下(0.1、1及び10s-1)での単一ポリマー(#4アルギン酸、#5カラギーナン)並びに非架橋(#15)及び部分的に架橋された(#25、#26)ポリマーの組合せ並びに部分的に架橋されたアルギン酸(#27)を含む組成物の粘度を比較した、様々なせん断力下での持続的な又は一定の粘度の特性を示す。部分的に架橋されたポリマーを含む組成物の粘度は、せん断力に対して耐性があり、組成物の室温で均一かつ耐久性がある薄膜への変形可能性を示した。
図11図11は、任意のポリマー、架橋剤及び保存料を含む、組成物の追加の実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、本明細書に記載の特定の方法、及び実験条件に限定されず、本明細書で使用される専門用語は、例示の目的のみを果たし、限定することを意図しないことに留意すべきである。
【0042】
最も広い意味では、本発明は、1つ又は複数の硫酸化多糖ポリマー及び1つ又は複数の正電荷を帯びたイオンによって部分的に架橋された1つ又は複数の疎水性又は親水性ポリマー又は共重合体を含む複合材料を含む組成物を提供する。
【0043】
「硫酸化多糖ポリマー」という用語は本明細書では広く、1つ又は複数の硫酸基を有し、グリコシド結合によって架橋した負電荷を帯びた長鎖の単糖を一般的に特徴とする一群の化合物を指す。この用語は本明細書では、モノマー及びヘテロマー並びに直線形状及び分岐形状を包含する。この用語は、天然、合成及び半合成の硫酸化多糖並びに硫酸化を(スルフリル化も)含む天然多糖の任意の人工修飾物を更に包含する。
【0044】
「疎水性/親水性ポリマー」という用語は本明細書で広く、任意の種類の電荷を帯びた及び電荷を帯びていないポリマー、水溶性及び水不溶性ポリマー、並びに界面活性剤及び他の両親媒性物質と結合した又は抱合した(conjugated)疎水性ポリマーを指す。この用語は、天然、合成及び半合成親水性及び疎水性ポリマー並びに天然ポリマーの人工修飾物を更に包含する。
【0045】
「共重合体」という用語は、2つ以上の異なるポリマーから作製された結合ポリマーを意味する。
【0046】
「架橋/部分架橋」という用語は本明細書で広く、硫酸化多糖ポリマーと疎水性又は親水性ポリマー又は共重合体との間の任意の種類の非共有結合を指す。
【0047】
いくつかの実施形態では、硫酸化多糖ポリマー及び疎水性又は親水性ポリマー又は共重合体は、イオン結合により架橋又は部分架橋する。架橋の範囲(extent)又は程度(degree)、2種類のポリマーを相互接続する基の数、又は架橋接続の密度は、変わることができる。
【0048】
架橋度(DC)は概して、ポリマー複合体中の架橋基の比率によって表される(モルパーセント又はモル分率)。DCが高いことは、ポリマー長あたりの結合が多い(又はゲル成分の密度が高い)ことを意味し、例えば流体はゼロに近いDCを有し、エラストマーはDCが低く、樹脂はDCが高い。
【0049】
本発明の組成物は、液体、半流体、ゲル及び樹脂などの半固体形状であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、固体形状であってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、硫酸化多糖ポリマー及び疎水性又は親水性ポリマー又は共重合体は、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%モルパーセントの範囲内のDC値で1つ又は複数の正電荷を帯びたイオンにより架橋又は部分架橋することができる。
【0051】
「正電荷を帯びたイオン」という用語は本明細書で広く1つ又は複数の正電荷(カチオンも)を有する任意のイオン、原子又は原子群を指す。この用語は本明細書では、Na、K、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Zn2+並びにFe2+及びFe3+の金属イオンなどの、1、2、3価イオン及び多価イオン又はNH 及びHなどの多原子イオンを包含する。
【0052】
いくつかの実施形態では、硫酸化ポリマー及び疎水性又は親水性ポリマーは、少なくとも1つの2価カチオンにより部分架橋されることができる。
【0053】
更なる実施形態では、2価カチオンは、Ba2+、Be2+、Ca2+、Co2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Fe2+及び/又はZn2+から選択されることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、架橋カチオンはCa2+である。
【0055】
本発明の組成物の重要な特徴の1つは、室温で実質的に一定の粘度を有する点である。「実質的に一定の粘度」という用語は本明細書では、これらの組成物の粘度又はレオロジー挙動は、様々な方法(例えば粘度計、レオメータ)により様々な条件下(例えばせん断力、時間)で測定して、25%未満又は最大25%の偏差、又はより具体的には25%未満、24%未満、23%未満、22%未満、21%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の偏差範囲内で比較的不変/安定又は一定のままであることを意味する。
【0056】
粘度は、ニュートン秒毎平方メートル、パスカル毎秒、又はSI単位(SI(μ)=パスカル毎秒(Pa*s-1)=1kgm‐1‐1)で表すことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、「粘度」という用語は本明細書では、粘度計によって測定された粘度を指す。
【0058】
いくつかの実施形態では、「粘度」という用語は本明細書では、レオロジー挙動を意味し、様々なせん断力下(せん断速度も)レオメータによって測定される粘度を指す。
【0059】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物の粘度は、粘度計によって測定して、約1mPa*s-1~約50mPa*s-1の範囲の、より具体的には約1~5mPa*s-1、約5~10mPa*s-1、約10~15mPa*s-1、約15~20mPa*s-1、約20~25mPa*s-1、約25~30mPa*s-1、約30~35mPa*s-1、約35~40mPa*s-1、約40~45mPa*s-1、約45~50mPa*s-1、又は上記に由来する任意の他の範囲の室温で実質的に一定の粘度によって表すことができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、この粘度は、約1~50mPa*s-1、約5~45mPa*s-1、約10~40mPa*s-1、約15~35mPa*s-1、約20~30mPa*s-1の範囲であってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、この粘度は、約1~50mPa*s-1、約1~45mPa*s-1、約1~40mPa*s-1、約1~35mPa*s-1、約1~30mPa*s-1、約1~25mPa*s-1、約1~20mPa*s-1、約1~15mPa*s-1、約1~10mPa*s-1、約1~5mPa*s-1の範囲であってもよい。
【0062】
粘度は、ポリマー成分(硫酸化多糖及び疎水性又は親水性ポリマー)及び架橋剤(正電荷を帯びたイオン)の濃度及び/又は架橋度に依存する。
【0063】
本発明の組成物の顕著な特徴の1つは、粘度計により測定した粘度が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21日間上記の範囲内に、実質的に一定のままであるということである。
【0064】
別の顕著な特徴は、本発明の組成物の粘度計により測定した粘度は、ポリマーの同じ組合せ及び濃度だが正電荷を帯びたイオンを含まない又は架橋がない類似した溶液の粘度より低いということである。
【0065】
いくつかの実施形態では、この粘度は、同じ条件で測定した場合、同じポリマーの同じ濃度を含むが正電荷を帯びたイオンを含まない溶液の粘度より最大20%低くてもよい、又は同じポリマーの同じ組合せを含むが正電荷を帯びたイオンを含まない溶液の粘度より最大20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%低くてもよい。
【0066】
言い換えれば、架橋又は部分架橋は、この組成物に低い粘度又はより液体状の、液化状態を与え、このことは直観に反し、驚くべきことであり、細胞又は粘膜表面と接触する前、単独で存在する場合の組成物の特徴である。この構造上の特徴は、本発明の組成物の適用のしやすさ、広がりやすさ、及び噴霧しやすさに関して、特に局所適用又は口腔粘膜及び/又は鼻腔粘膜上への適用の文脈で著しい利点を有してもよい。
【0067】
本発明の組成物の更に別の顕著な特徴は、細胞又は粘膜表面との接触時、組成物は、驚くべき連続性、耐久性及び未変化性並びに充分かつ均一な被覆を提供する能力を有する薄膜に変形する(変形可能である)ことである。この薄膜への変形可能性の構造的特徴は、細胞又は粘膜表面と接触した後の組成物の特徴であり、これらの組成物の粘膜接着性及び粘膜保護性の生物学的利点の本質的な原因である。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態では、組成物は、細胞又は粘膜表面と接触する前に、液体、半流体又は噴霧可能な形態であってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、組成物は、細胞又は粘膜表面と接触する前に、液体、半流体又は噴霧可能な形態であってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、組成物は、細胞又は粘膜表面と接触すると、均一かつ連続した膜に変形することができる又は変形可能である。
【0071】
いくつかの実施形態では、細胞又は粘膜表面は、上皮粘膜とすることができる。「上皮粘膜」という用語は本明細書では、口腔、鼻腔粘膜を包含し、眼瞼、角膜、気管、肺、胃及び腸、尿管、尿道、及び膀胱、生殖器及び肛門管の粘膜内層を更に包含する。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、組成物は、口腔及び/又は鼻腔粘膜と接触すると、均一かつ連続した薄膜に変形することができる。
【0073】
本発明の組成物の薄膜形成能力は、レオメータで測定した、様々なせん断力下での実質的に一定の粘度で明らかにされた、組成物の固有のレオロジー挙動に根差している。
【0074】
いくつかの実施形態では、この粘度は、約0.1s-1~約10s-1の範囲のせん断速度で約100mPa*s-1~約800mPa*s-1の範囲の、より具体的には最大0.1s-1、1s-1、又は10s-1のせん断速度で約100~200mPa*s-1、約200~300mPa*s-1、約300~400mPa*s-1、約400~500mPa*s-1、約500~600mPa*s-1、約600~700mPa*s-1、約700~800mPa*s-1の範囲、又は上記に由来する任意の他の範囲の実質的に一定の粘度によって表されることができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、この粘度は、最大0.1s-1、1s-1、又は10s-1のせん断速度で約100~800mPa*s-1、約150~750mPa*s-1、約200~700mPa*s-1、約250~650mPa*s-1、約300~600mPa*s-1、約350~550mPa*s-1、約400~500mPa*s-1の範囲であってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、この粘度は、最大0.1s-1、1s-1、又は10s-1のせん断速度で約100~800mPa*s-1、約100~750mPa*s-1、約100~700mPa*s-1、約100~650mPa*s-1、約100~600mPa*s-1、約100~550mPa*s-1、約100~500mPa*s-1、約100~450mPa*s-1、約100~400mPa*s-1、約100~350mPa*s-1、約100~300mPa*s-1、約100~200mPa*s-1の範囲であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、この粘度は、約0.1~約10s-1の範囲のせん断速度で最大25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又はこれら未満の偏差、又は最大0.1s-1、1s-1、又は10s-1のせん断速度で約1%~25%、約1%~20%、約1%~15%、約1%~10%、約1%~5%の範囲の偏差を有してもよい。
【0078】
この特徴により、本発明の組成物は、同じ条件下で粘度が著しく変動する、同じ組合せ及び濃度のポリマーを含む類似した非架橋溶液及び全く異なるレオロジー挙動を有する単一ポリマーを含む組成物とは本質的に異なる。
【0079】
記載してきたように、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、局所適用並びに口腔及び鼻腔粘膜上への適用に特に有用であってもよい液体及び半流体製剤並びに噴霧剤として提供することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、この製剤は、微粒子又はナノ粒子又は液滴を含むことができる。この種類の組成物は、吸入による及び吸入装置により支援された適用に有用であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、液滴又は粒子は、1μm超の範囲又は約1~10μm、約10~20μm、約20~30μm、約30~40μm、約40~50μm、約50~60μm、約60~70μm、約70~80μm、約90~100μmの範囲、あるいは1μm未満の範囲又は約1~100nm、約100~200nm、約200~300nm、約300~400nm、約400~500nm、約500~600nm、約600~700nm、約700~800nm、約800~900nm、約900~1000nmの範囲のサイズを有することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、液滴又は粒子は、表面積、薬剤充填量及び多孔度の増大という追加の特徴を提供し、これによりこれらの活性物質の局所的及び/又は全身性送達及び吸収を促進するために様々な種類の活性物質を封入することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、組成物は、固体又は半固体薄膜又は樹脂で提供することができる。この種類の組成物は、局在的又は全身性薬物送達用の局所的(local)又は局所(topical)適用に有用であってもよい。
【0084】
全てのこれらの特性により、本発明の組成物は、それ自体又は追加の治療的価値を実現するために他の活性物質又は薬剤と組み合わせてのいずれかで、様々な製剤化技術及び薬物送達システムに高度に適応可能になる。このような製剤の非限定的な例は、ゲル/スプレー及び口腔及び/又は鼻腔適用用の吸入物質、粘膜組織上への適用用の粘膜付着薄膜及び樹脂、局在的局所又は外科的適用用の接着膜及び樹脂である。
【0085】
ポリマーについては、多数の実施形態では、本発明の組成物に含まれる硫酸化多糖ポリマー及び疎水性又は親水性ポリマーは、生体適合性ポリマーとして特徴づけられてもよい。「生体適合性」という用語は広く、生体組織に無害な任意の物質を指す。
【0086】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、植物、動物及び様々な微生物から得られる天然ポリマー、改質天然ポリマー若しくは合成ポリマー、又はこれらの任意の組合せであってもよい。例は、藻類又は海洋無脊椎動物から得られる硫酸化多糖(例えばカラギーナン、フカン)、及び動物から得られるグリコサミノグリカン(例えばヘパリン)、植物多糖(例えばデンプン、セルロース、ペクチン)、及び細菌などの他の供給源由来の多糖(例えばデキストラン)並びに節足動物の外骨格及び菌類の細胞壁(例えばキチン)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、ガラクタン、ウルバン、フカン、フコイダン、ヘパリン、硫酸化グルコサミン、硫酸化キトサン、キチン及び/又はコンドロイチン及び硫酸化デキストラン、又はこれらの任意の組合せなどの天然又は改質硫酸化多糖から選択されることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、線状及び/又は非線状硫酸化多糖であってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、生体高分子のカラギーナンファミリーに属することができる。
【0090】
「カラギーナン」という用語は本明細書では概して、D-ガラクトース及び3,6-アンヒドロ-D-ガラクトースの硫酸化線状多糖を指し、これは、例えば紅藻類(Rhodophyceae)の紅藻(red seaweed)から抽出することができる。この用語は、例えば化学的及び物理的特性、製造方法及び他の特性、並びに他の生体高分子と相互作用する能力及び薄膜形成能力の点で異なる3個の主な種類、カッパ(k)、イオタ(i)、及びラムダ(λ)を含む、全ての種類のカラギーナンを包含する。
【0091】
イオタカラギーナンは、カルシウム塩と組み合わせた場合、強力なゲルを形成する。イオタカラギーナンは、28~30%の硫酸エステルを含有する。イオタカラギーナンは、水に可溶で、質感は弾性である。
【0092】
カッパカラギーナン、カラギーナンの最も一般的な形態は、食品等級と考えられる。カッパカラギーナンは、25~30%の硫酸エステルを含有する。カッパカラギーナンは、カリウム塩と組み合わせた場合、強力なゲルを生じ、ローカストビーンガムと混合する場合、脆いゲルを形成する。
【0093】
ラムダカラギーナンは、冷水に可溶だが、上記の形態は温水に可溶な点で2個の形態とは異なる。ラムダカラギーナンは、製品に高粘度特性を得るために適用される。
【0094】
イオタ、カッパ及びラムダカラギーナンの化学構造を以下に示す。
【0095】
【0096】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、イオタカラギーナン、カッパカラギーナン及び/又はラムダカラギーナンであることができる。
【0097】
親水性及び疎水性ポリマー又は共重合体については、いくつかの実施形態では、組成物は、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサン(polydioxanoes)、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ酸無水物、ポリ酢酸(polyacetates)、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノ炭酸(polyaminocarbonate)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、これらの混合物及び共重合体から選択される少なくとも1つのポリマーを含むことができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、組成物は、L-及びD-乳酸のステレオポリマー、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸との共重合体、セバシン酸共重合体、カプロラクトンの共重合体、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコール共重合体、ポリウレタン及びポリ(乳酸)の共重合体、ポリウレタン及びポリ(乳酸)の共重合体、α-アミノ酸の共重合体、α-アミノ酸とカプロン酸との共重合体、グルタミン酸α-ベンジルとポリエチレングリコールとの共重合体、コハク酸とポリ(グリコール)との共重合体、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシアルカノエート、ラクチド/グリコリド共重合体、ポリ酸無水物及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つのポリマーを含むことができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、組成物は、多糖、ゴム、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つのポリマーを含むことができる。本明細書のゴムとは、中性又は電荷を帯びた(アニオン性又はカチオン性)複雑な分岐ヘテロ多糖を指す。注目すべき例は、アラビアゴム及びキサンタンゴムである。
【0100】
いくつかの実施形態では、組成物は、ポリエチレンオキシド(PEO)、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンゴム、トラガカントゴム、グアーゴム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メタクリル酸メチル共重合体、カルボキシビニル共重合体、デンプン、ゼラチン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びこれらの組合せから選択される天然又は合成親水性ポリマーを含むことができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの親水性ポリマーは、カチオン性、アニオン性及び/又は中性親水性ポリマー又はその混合物であることができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの親水性ポリマーは、ポリカチオンポリマー又はその混合物であることができる。ポリカチオンポリマーとは本明細書では、様々な部位に1つ又は複数の正電荷を有する分子又は複合体を指す。
【0103】
いくつかの実施形態では、ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミン、ポリブレン及び/又はポリ(アミドアミン)(PAMAM)であることができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、多糖及び/又はタンパク質であることができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの天然親水性ポリマーは、天然の供給源、植物、藻類、動物、菌類及び様々な微生物から得られる多糖、すなわちデキストラン、アルギン酸、キトサン、アガロース及び/又はプルランから選択される混合物であることができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの天然親水性ポリマーは、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、レクチン、レグミン及び/若しくはビシリン、又はこれらの組合せから選択されるタンパク質であることができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの天然親水性ポリマーは、アルギン酸又はアルギン酸塩であることができる。
【0108】
「アルギン酸(alginate)」(又はアルギン酸(alginic acid)若しくはアルギン(algin))という用語は本明細書では概して、典型的には褐藻から得られる、天然由来のアニオン性ポリマーを指す。この用語は、様々な粘度を有する、D-マンヌロン酸及びL-グルロン酸から成る線状構造のヘテロ多糖を有する様々な範囲のポリマーを包含する。この用語は更に、いろいろなM-G含有量、及びいろいろな物理特性を有する、様々な供給源由来のアルギン酸を包含する。アルギン酸の別の供給源は、細菌の生合成であり(アゾトバクター及びシュードモナス)、これは海藻由来のアルギン酸と化学構造及び物理的特性が異なる。
【0109】
典型的なアルギン酸の化学構造を以下に示す。
【0110】
【0111】
この用語は更に、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及び物理的マグネシウムアルギン酸塩などの、金属との様々なアルギン酸塩を包含する。これらの塩は、様々な種類のアルギン酸塩又はそれらの混合物を含有することができる。市販のアルギン酸ナトリウムの分子量は例えば、32,000~400,000g/molの範囲に及ぶ。
【0112】
概して、本発明の組成物は、硫酸化多糖ポリマー、疎水性又は親水性ポリマー及び正電荷を帯びた架橋イオン、及びこれらの群の各々からの1つを超える化学物質の様々な組合せを含むことができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つのカラギーナン及びCa2+によって架橋された又は部分的に架橋された少なくとも1つのアルギン酸を含むことができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、カラギーナンは、約0.005%~1%の範囲、又は約0.005%~0.01%、約0.01%~0.05%、約0.05%~0.1%、約0.1%~0.2%、約0.2%~0.3%、約0.3%~0.4%、約0.4%~0.5%、約0.5%~0.6%、約0.6%~0.7%、約0.7%~0.8%、約0.8%~0.9%、約0.9%~1%(w/w)の範囲の濃度であることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、アルギン酸は、約0.1%~3%(w/w)の範囲、又は約0.1%~0.5%、約0.5%~1%、約1%~1.5%、約1.5%~2%、約2%~2.5%、約2.5~3%(w/w)の範囲の濃度であることができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、Ca2+は、約0.0001%~1%(w/w)の範囲、又は約0.0001%~0.0005%、約0.0005%~0.001%、約0.001%~0.005%、約0.005%~0.01%、約0.01%~0.05%、約0.05%~0.1%、約0.1%~0.5%、約0.5%~1%(w/w)の範囲の濃度であることができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、カラギーナンは、約0.1%~0.3%(w/w)の範囲の濃度、又は最大約0.1%、約0.125%、約0.15%、約1.75%、約0.2%、約0.225%、約0.25%、約0.275%、約0.3%(w/w)の濃度であることができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、アルギン酸は、約1%~3%(w/w)の範囲の濃度、又は最大約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.25%、約2.5%、約2.75%、約3%(w/w)の濃度であることができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、Ca2+は、約0.0001%~0.005%(w/w)の範囲の濃度、最大約0.0001%、約0.0005%、約0.001%、約0.0015%、約0.002%、約0.0025%、約0.003%、約0.0035%、約0.004%、約0.0045%、約0.005%(w/w)の濃度であることができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、カラギーナンは、約0.2%~0.3%(w/w)の範囲の濃度、又は最大約0.2%、約0.225%、約0.25%、約0.275%、約0.3%(w/w)の濃度であることができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、アルギン酸は、約1%~3%(w/w)の範囲の濃度、又は最大約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.25%、約2.5%、約2.75%、約3%(w/w)の濃度であることができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、Ca2+は、約0.01%~0.03%(w/w)の範囲の濃度、又は最大約0.01%、約0.0125%、約0.015%、約0.0175%、約0.02%、約0.0225%、約0.025%、約0.0275%、約0.03%(w/w)の濃度であることができる。
【0123】
この種類の組成物は、口腔及び/又は鼻腔スプレー/ゲル及び吸入製品に適用可能である。
【0124】
更に他の実施形態では、組成物は、約1%~2%(w/w)の範囲、又は最大約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2%(w/w)の濃度のCa2+などのより高濃度のCa2+を含むことができる。
【0125】
この種類の組成物は、固体形態及び吸入製品に適用可能である。
【0126】
本発明の組成物は更に、様々な溶媒、緩衝液、賦形剤、アジュバント、透過促進剤、可塑剤、増粘剤、レオロジー改質剤、アルコール、増量剤、保存料、着色料、色素、甘味料、香料及び/又は臭気剤、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、溶媒は、水、アルコール、アセトン、塩化メチレン及びこれらの組合せから選択されることができる。
【0128】
本発明の組成物は、治療有効量で提供される活性物質、及び薬学的に許容される緩衝液及び/又は賦形剤と共に医薬組成物の基礎として使用されることができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、硫酸化多糖ポリマー及び疎水性又は親水性ポリマーは、治療有効量で提供される場合、活性物質として働くことができる。
【0130】
「治療有効量(therapeutically effective amount)」又は「用量(dose)」という用語は(または薬理学的に、薬学的に、又は生理的に有効な量又は用量)は、広く所望のレベルの生理学的又は臨床的に測定可能な反応を提供するのに必要とされる組成物又は活性物質の量又は用量に関する。用量という用語は更に、所望の効果を発揮するための剤形の数又は投与の回数に関することができる。効果は、関連する状態の特定の臨床指標、認識された分子マーカー又は生化学的マーカー及び他のパラメータによって評価又は測定することができる。この場合では、これらの用語は、測定可能な粘膜保護効果、具体的には粘膜組織の感染若しくはウイルス負荷の測定可能な減少、又は1つ又は複数の認識される炎症マーカーによる炎症反応の減少に関連することができる医薬組成物の量又は用量に言い換えることができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は更に、少なくとも1つの追加の活性物質又は治療薬を含むことができる。追加された治療活性物質に関しては、本発明の医薬組成物は、様々な種類の薬剤及び治療活性物質を、徴候、適用方法及び使用に応じて組み込むことができる。
【0132】
多数の実施形態では、医薬組成物は、口腔及び鼻腔粘膜障壁機能に保護を与える治療薬を組み込むことができる。「粘膜障壁機能」という概念は、上で論じた。基本的に、この用語は、上皮組織及び/又はTJなどの特定の分子構造の物理的破壊、自然免疫及び獲得免疫の原因となる炎症促進性サイトカイン、増殖因子及びケモカインの無調節な分泌、抗菌ペプチドの分泌不足及び微生物及び微小粒子の捕捉の原因となる線毛上皮細胞の粘液線毛クリアランスの調節不全を含む、口腔及び/又は鼻腔上皮又は粘膜障壁の恒常性の任意の調節不全を包含する。
【0133】
本発明の組成物の粘膜接着及び粘膜保護特性並びに粘膜の有害で感染性の病原体及びアレルゲンへの過剰な曝露を予防又は軽減する能力のため、本発明の組成物は、口腔及び/又は鼻腔粘膜障壁並びにその機能性の回復に寄与することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書では細菌感染症及びウイルス感染症を包含する、口腔及び/又は鼻腔の微生物感染症を治療、軽減及び/又は予防するために適用することができる。
【0135】
最も一般的な例は、主にミュータンス菌(Streptococcus mutans)及びストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、及び乳酸菌によって引き起こされる感染症である、歯腔の原因となる細菌感染症である。別の例は、肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)によって引き起こされる鼻腔及び鼻洞の急性鼻副鼻腔炎(ABRS)である。ABRSは通常ウイルス感染症に続発する。更に別の例は、A群又はC群β溶血性連鎖球菌、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)(ジフテリア)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)(淋病)及び肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)(クラミジア)によって引き起こされる、急性上気道感染(URI)、すなわち副鼻腔炎、喉頭蓋炎、喉頭炎、及び気管支炎bronchitisである。
【0136】
いくつかの実施形態では、組成物は、典型的には気道、洞、及び鼻腔において見られる肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)によって引き起こされる細菌性髄膜炎である、髄膜炎菌性髄膜炎を治療、軽減及び/又は予防するために適用することができる。この状態の指標はとりわけ、突然の高熱、ひどい頭痛、発作、肩こり、悪心、光に対する過敏症である。
【0137】
いくつかの実施形態では、組成物は、細菌感染症を標的にする薬剤を含むことができる、言い換えれば、組成物は、様々な範囲の抗菌活性を有する、様々な種類の抗生物質及び抗生物質の組合せを含むことができる。非限定的な例は、以下のとおりである。
1.ペニシリン及びアモキシシリンなどのペニシリン類
2.セファレキシン(ケフレックス(Keflex))などのセファロスポリン
3.エリスロマイシン(E-Mycin)、クラリスロマイシン(Biaxin)、アジスロマイシン(ジスロマック(Zithromax))などのマクロライド類
4.シプロフロキサシン(ciprofolxacin)(Cipro)、レボフロキサシン(Levaquin)、及びオフロキサシン(Floxin)などのフルオロキノロン類
5.コトリモキサゾール(バクトリム(Bactrim))及びトリメトプリム(プロロプリム(Proloprim))などのスルホンアミド類
6.テトラサイクリン(Sumycin、パンマイシン)及びドキシサイクリン(ビブラマイシン)
7.ゲンタマイシン(ゲラマイシン(Garamycin))及びトブラマイシン(トブレックス(Tobrex))などのアミノグリコシド類
【0138】
副鼻腔炎は、ウイルス、細菌、及び/又は菌類並びに空気アレルゲンによっても引き起こされることができるので、具体例である。
【0139】
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒト呼吸器ウイルスによって引き起こされる感染症を治療、軽減及び/又は予防するために適用することができる。この群には、気道の細胞で複製する一般的傾向を有し、通常呼吸分泌物によってほかの宿主に伝播する広範囲のウイルスが含まれる。「呼吸器ウイルス」という用語は本明細書では、様々な種類のインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、及びボカウイルスを包含する。
【0140】
いくつかの実施形態では、組成物は、口腔及び/又は鼻腔のウイルス感染症を治療、軽減及び/又は予防するために適用することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、組成物は、既知の抗ウイルス薬治療と組み合わせて適用することができる。アマンタジン(Symmetral)、リバビリン(Virazole)及びパリビズマブ(シナジス(Synagis))を含む、多くの抗ウイルス薬が現在利用可能であり、後者の2個はRSVの治療に適応される。経口アマンタジンは、A型インフルエンザの治療及び予防の両方に効果的である。追加の薬剤は、研究開発(R&D)及び規制承認の様々な段階にある。
【0142】
いくつかの実施形態では、組成物は、感冒、軽症のインフルエンザ、扁桃炎、喉頭炎、及び副鼻腔感染症を治療、軽減及び/又は予防するために使用することができる。現在、FDAに承認されているインフルエンザの治療用の4個の薬剤は、オセルタミビルリン酸塩(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、ペラミビル(Rapivab)及びバロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)である。
【0143】
いくつかの実施形態では、組成物は、インフルエンザの季節的流行(季節性インフルエンザ)の主要な原因病原体である、A型及びB型インフルエンザウイルスの感染症を治療、軽減及び/又は予防するために、単独で又はアルビドール(インフルエンザに対するFDAに承認されている薬剤)と併用して適用することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、組成物は、主にエンテロウイルスによって引き起こされる無菌性ウイルス性髄膜炎を治療、軽減及び/又は予防するために適用することができる。
【0145】
更に広く見れば、組成物は、インフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、及びボカウイルスによって引き起こされる、関連する(related)又は関連している(associated)任意の種類の感染症を治療、軽減及び/又は予防するために適用することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、組成物は、既知のSARS-CoV-2及びより最近のSARS-CoV-2変異体を含む、SARS-CoV-2によって引き起こされる感染症を治療、軽減及び/又は予防するために適用することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えばヌクレオシド/ヌクレオチド類似体(例えばレムデシビル)、プロテアーゼ阻害剤(ジスルフィラム、ロピナビル、及びリトナビル及びダルナビル)及び特異的ウイルス構造に基づいて設計された複数の小分子などの、ウイルス侵入及び生活環を妨害する(広域抗ウイルス活性)追加の抗ウイルス薬と一緒に適用することができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、組成物は、特定のウイルスを標的とする抗ウイルス薬を含むことができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、組成物は更に、ペニシリンVK、アモキシシリン、ペニシリンGベンザチン、セファドロキシル、エリスロマイシン、広範囲のオーグメンチン(アモキシシリン及びクラブラン酸)を含むことができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、組成物は、一次感染症及び二次感染症を治療、軽減及び/又は予防するための抗生物質と抗ウイルス薬との組合せを含むことができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、組成物は、不活化若しくは弱毒化ウイルス、又はウイルスゲノムの一部のいずれかを含有する抗ウイルスワクチンを含むことができる。点鼻薬形態の前例のCOVID-19ワクチンは、最近動物で試験された。
【0152】
いくつかの実施形態では、組成物は、空気アレルゲン誘発アレルギー及び/又は炎症を治療及び/又は予防するために適用することができる。空気アレルゲンは本明細書では広く、花粉、胞子などの広範囲の空気中の物質又は吸入抗原、及びアレルギー反応を引き起こすことができる生物学的若しくは非生物学的な空気中の粒子を指す。
【0153】
臨床的な点では、いくつかの実施形態では、組成物は、空気アレルゲン駆動型Th2免疫応答に起因する咳、喘鳴、及び突発性呼吸器疾患を治療、軽減及び/又は予防するために適用することができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、組成物は、活動性喘息を治療、軽減するために、及び/又は喘息にかかるリスクを予防するために適用することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、組成物は、職業上の危険を予防するために適用することができる。職業性アレルゲンは、ほとんど全ての産業に存在する何百種類もの化学物質(例えば金属、エポキシ及びアクリル樹脂、ゴム添加剤、及び化学中間体など)を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、組成物は更に、ステロイド系及び非ステロイド系抗炎症剤を含むことができる。例は、様々な種類の副腎皮質ステロイド(コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン)、及びアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メロキシカム、セレコキシブなどの様々な種類のNSAIDである。
【0157】
いくつかの実施形態では、組成物は更に、抗アレルギー薬を含むことができる。注目すべき例は、抗ヒスタミン薬である。点鼻薬は、オキシメタゾリン、テトラヒドロゾリンなどのうっ血除去薬、及び様々な種類の副腎皮質ステロイド(ブデソニド、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、モメタゾン、トリアムシノロン)を含むことができる。吸入剤は、持続型気管支拡張薬を含むベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルチカゾン、モメタゾンなどの副腎皮質ステロイド、及び粘膜障壁機能の特定の障害を標的とする追加の薬剤を含むことができる。
【0158】
大まかに言って、本発明の組成物は、いくつかの種類の製品に組み込むことができる。
(1)組成物それ自体又は潜在的感染及び非感染因子(agents)及び病原体(pathogens)への曝露から鼻腔及び口腔粘膜を保護するためのOTCに承認されている若しくはホメオパシーの活性物質と組み合わせたOTC型の製品。
(2)組成物並びに口腔及び鼻腔粘膜障壁機能不全に関連する臨床状態を標的とするFDAに承認されている薬剤を含む処方箋に基づく製品。
(3)様々な臨床的障害並びに臨床及び無症状状態用のFDAに承認されている薬剤の担体として働く組成物を含む薬物送達システム。
【0159】
例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、上記の組成物の一つ又は組合せを含む口腔及び鼻腔スプレー/ゲルを提供することができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記の組成物の一つ又は組合せを含む口腔又は鼻腔吸入物質を提供することができる。吸入物質は、好ましくは10μmより大きい粒子又は液滴形態であることができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、スプレー/ゲル又は吸入物質は、粘膜障壁機能の障害から口腔及び/又は鼻腔粘膜を保護するのに役立つことができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、スプレー/ゲル又は吸入物質は更に、粘膜障壁機能の障害を標的とする少なくとも1つの治療薬を含むことができる。
【0163】
更に別の態様では、本発明は、本発明の組成物の一つ又は組合せ(例えば口腔若しくは鼻腔スプレー/ゲル又は吸入物質)及び口腔若しくは鼻腔送達のための装置、および使用説明書を備えるキットを提供することができる。キットという概念は、スプレー/ゲル又は吸入物質を特定の容器又は剤形に区画化することを意味する。
【0164】
いくつかの実施形態では、組成物は、装置に組み込むことができる。
【0165】
別の態様では、本発明は、追加の治療薬の有無にかかわらず、上記の組成物の一つ又は組合せを含む口腔又は鼻腔薬物送達システムを提供することができる。
【0166】
本発明の更に別の重要な目的は、様々な臨床的障害並びに臨床及び無症状状態を標的とする薬物送達システムを提供することである。このようなシステムによって送達される薬剤又は薬物は通常、全身的に作用する薬剤又は薬物と呼ばれる。「全身的に作用する薬剤又は薬物」という用語は本明細書では広く、薬剤又は薬物の適用又は投与点外に作用し、循環を介して体の他の部位を標的とする薬物を指す。この用語は本明細書では、心血管系、呼吸器系、胃腸管系又は神経系に働く薬物を包含する。分子レベルでは、この用語は本明細書では、酵素阻害薬、受容体アンタゴニスト又はアゴニスト、プロトンポンプ及びイオンチャネル阻害薬、及び再取り込み阻害薬を包含する。
【0167】
いくつかの実施形態では、追加の全身性薬物を、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、神経遮断剤、鎮痛剤、ホルモン、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、抗凝固剤、β遮断薬、利尿剤、抗高血圧剤、抗アテローム動脈硬化症剤、抗糖尿病剤、抗喘息剤、うっ血除去薬及び/又は風邪薬から選択することができる。
【0168】
候補薬剤を、FDA認定の薬物カテゴリーの総目録から選択することができ、その例は、ANNEX Aに記載されている。関連する臨床的障害及び状態の日限定的な目録は、ANNEX Bに記載されている。
【0169】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬を、有益なオイル、栄養補助食品(nutraceuticals)、ビタミン類、健康及び栄養補助食品(dietary or food supplements)、栄養剤、抗酸化剤、スーパーフード、動物及び植物起源の天然抽出物、プロバイオティック微生物、又はこれらの任意の組合せから選択することができる。
【0170】
構造的観点では、組成物は、炭水化物、脂質、タンパク質、ペプチド、酵素、核酸、オリゴヌクレオチド又はこれらを含む複合分子の群に属する治療薬を含むことができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、組成物は、小分子の群に属する薬剤を含むことができる。小分子とは通常、生物学的プロセスを調節してもよい低分子量(<900ダルトン)の有機化合物を指す。
【0172】
いくつかの実施形態では、組成物は、一本鎖及び二本鎖のDNA若しくはRNA、siRNA、プラスミド、直鎖若しくは環状DNA若しくはRNA、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0173】
本発明の別の目的は、対象の上皮粘膜に1つ又は複数の上記組成物又は送達システムを投与することにより、上皮粘膜を介して全身的又は局所的薬物送達する方法を提供することである。「上皮粘膜に投与すること」という用語は本明細書では、口腔、鼻腔粘膜、眼球粘膜、肺粘膜、及び他の粘膜組織を意味する。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、特定の徴候及び対象の必要性の通りに、対象に1つ又は複数の治療薬を同時投与することであって、この投与は、経腸、非経口、局所又は任意の他の経路を利用する同時又は連続であることができる、投与することを含むことができる。
【0175】
いくつかの実施形態では、方法は、上記組成物の一つ又は組合せを経口又は鼻腔投与することにより対象の口腔及び鼻腔障壁機能を保護するために適用することができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の上記組成物のいずれかを経口又は鼻腔投与することにより対象の微生物口腔及び/又は鼻腔感染症を治療、軽減及び予防するために適用することができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の上記組成物のいずれかを経口又は鼻腔投与することにより対象の空気アレルゲン誘発アレルギー及び/又は炎症を治療、軽減及び予防するために適用することができる。
【0178】
本発明は更に、空気アレルゲン誘発アレルギー及び/若しくは炎症又は微生物口腔若しくは鼻腔感染症を治療するための薬物の製造のための上記組成物のいずれかの使用の形態で明確に表現されることができる。
【0179】
更に別の観点からは、本発明の粘膜接着性組成物は、機能的組織移植片の生体工学に利用することができる。組成物の生体適合性及び物理的、化学的、及び生物学的特性のため、本発明の組成物は、組織及びより複雑な臓器の再生に物理的支持を提供するため、及び特定部位への細胞の集合を支援するために使用することができるマトリックス又は注射用ハイドロゲルの形態の普遍的な「万能」材料として働くことができる。本発明の組成物が追加の材料、活性物質及び薬物を組み込む適応性により、組成物のこの種類の応用に特に魅力的な候補となる。
【0180】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物から作製されたマトリックスは更に、細胞集合及び機能に生化学的及び組織分布的指示を提供する活性物質、薬物、増殖因子、ホルモン、酵素、核酸、オリゴ及び他の薬剤を含むことができる。
【0181】
いくつかの実施形態では、このようなマトリックスは更に、必要とされる適応症に応じて、様々な種類及び起源の被包された細胞を含むことができる。具体的な例は、様々な起源の幹細胞であり、これは、適切なトリガーがあると、適用部位に特定の細胞が集合し、発生し、分化することができる。
【0182】
言い換えれば、本発明の組成物は、機械的支持を提供し、神経再生又は心筋再生に関して細胞運命を誘導して梗塞心臓、障害脊髄、神経変性脳を修復することにより障害組織の構造的及び機能的回復を支援するために使用することができる。
【0183】
神経修復又は再生のツールとみなした場合、本発明の組成物は更に、補助装置を備えることができ、神経学的外科手技に組み込むことができる。
【0184】
本文で現れるあらゆる「約」という用語は、明記された値及び/又は範囲から最大±10%の偏差、より具体的にはそれから最大±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%又は±10%の偏差を意味する。
【実施例
【0185】
本明細書に記載のものと類似する又は等価な任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができる。本発明のいくつかの実施形態を、それぞれの図面を参照して例として今から記載する。
【0186】
材料及び方法
細胞
MRC-5ヒト正常肺線維芽細胞(ATCC CCL-171)を、10%FBS、2mML-グルタミン、1%ペニシリンーストレプトマイシン(Biological Industries)を含むEMEM培地で培養した。
【0187】
MDCKイヌ正常腎細胞(ATCC NBL-2)を、1%FBS、2mML-グルタミン、1%ペニシリンーストレプトマイシン(Biological Industries)を含むEMEM培地で培養した。
【0188】
A549ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(ATCC CCL-185)を、10%FBS、2mML-グルタミン、1%ペニシリンーストレプトマイシン(Biological Industries)を含むEMEM培地で培養した。
【0189】
Vero E6アフリカミドリザル腎細胞(ATCC CRL-1586)を、5%FBS、2mML-グルタミン、1%ペニシリンーストレプトマイシン(Biological Industries)を含むEMEM培地で培養した。
【0190】
ウイルス
ヒトコロナウイルス229Eをそれぞれの培地に1:15で希釈し、培養MRC-5細胞に導入した(感染用量2μL/ウェル)。
【0191】
インフルエンザウイルスH1N1をそれぞれの培地に1:10で希釈し、MDCK細胞に導入した(感染用量3μL/ウェル)。
【0192】
SARS-CoC-2オミクロン変異体(系統B.1.1.529.BA.1)を培地に1:10で希釈し、Vero E6細胞に導入した(感染用量30μL/ウェル)。
【0193】
アレルゲン
組換えヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)イエダニ(dust mite)アレルゲンDer p1(6個のHis C-末端タグを含有する20~320アミノ酸配列、総Mw=34.5kDa、pI=5.6)をアッセイ培地に希釈し、A549細胞に導入した(最終濃度50μg/ml)。
【0194】
組換えコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farina)Der f1 (C 末端に6個のHis を融合した1~320アミノ酸配列、総Mw=36kDa、pI=5.88)をアッセイ培地に希釈し、A549細胞に導入した(最終濃度25μg/ml)。
【0195】
組換えイネ科群(Gramineous group)花粉アレルゲンPhl p1(SF9で産生されるグリコシル化ポリペプチド鎖、計算分子量=29kDa、N末端の10xHisタグと共に発現され、クロマトグラフィー法により精製された)をアッセイ培地に希釈し、A549細胞に導入した(最終濃度25μg/ml)。
【0196】
組換えセイヨウシデ(Carpinus betulus)花粉アレルゲンCar b1アイソフォーム(大腸菌によって産生される非グリコシル化ポリペプチド鎖、計算分子量=18kDa、N末端の10xHisタグと共に発現され、クロマトグラフィー法により精製された)をアッセイ培地に希釈し、A549細胞に導入した(最終濃度15μg/ml、30μg/ml及び60μg/ml)。
【0197】
前処理及び処理手順
1.細胞を96ウェルプレートの培地に蒔き(1x10細胞/ウェル)、37°C、5%COで16~24時間付着させた。
2.30μLの試験項目(表1に列挙した)を細胞に添加し、37°C、5%COで30分間インキュベートした。
【0198】
【0199】
3.細胞を60~140μLのアッセイ培地及び30μLの試験ウイルス又は10μLの活性化アレルゲンと5mML-システインの存在下15分間氷上でプレインキュベートした。
4.細胞を試験ウイルス又はアレルゲンと共に37°C、5%COで72時間インキュベートし、洗浄し、同じ条件で更に72時間インキュベートした。
5.インキュベーション期間の最後に、細胞をそれぞれのアッセイプロトコルのとおりに処理した。
【0200】
XTTに基づく細胞増殖アッセイ
1.反応溶液を、0.1mLの活性化溶液及び5mLのXTT試薬(Cell Proliferation Kit, Biological Industries)から製造業者のプロトコルのとおりに調製した。
2.細胞を洗浄し、新鮮な培地に50μLのXTT試薬を添加した。
3.450nmのODを測定し、結果をビヒクル処理細胞に対して正規化し(OD=0.5~1.5)、620nmの非特異的ODを減算した(細胞生存率%)。
【0201】
ELISAアッセイによるIL-8検出
1.インキュベーション期間の最後に、アッセイ培地を回収し、IL-8 ELISAアッセイ用に保存した(-20°C)。
2.製造業者の説明書のとおりに25μLアリコートの上清を試験した。
【0202】
実施例1:いくつかの動物細胞株の細胞毒性研究
本発明の組成物の細胞毒性を様々なインビトロ細胞モデルで調べた(MRC-5、MDCK、A549及びVero細胞)。細胞を、様々な架橋度に一致する(#26部分、#21完全、#16架橋なし)、様々な比率のアルギン酸/カラギーナン/CaClを含む組成物(表2)で処理し、未処理の細胞(UT)の細胞生存率と比較した。
【0203】
【0204】
毒性結果を図1A~1Dに示す(各群で平均±SE)。全体的に見て、調べた全ての種類の細胞で、組成物は細胞毒性を示さない又は最小限の細胞毒性しか示さず(細胞生存率%で5%未満の減少)、CaCl架橋度の有意な影響はなかった。
【0205】
実施例2:組成物のコロナウイルスに対する保護効果
様々なコロナウイルス株(229E及びオミクロン系統B.1.1.529.BA.1)の伝播及び感染に対する本発明の組成物の粘膜保護効果を、インビトロ細胞モデル(それぞれMRC-5及びVero細胞)で調べた。229Eモデルでは、ウイルスに感染した細胞を、様々な濃度のアルギン酸/カラギーナン/CaCl(#25、#26、#27部分及び#4、#5、#15、#16架橋なし)及び様々な濃度のカラギーナン(#16、#26高、#4、#15、#25低及び#5、#27カラギーナンなし)を含む組成物で処理した(表3を参照する)。オミクロンモデルでは、ウイルスに感染した細胞を、部分的に架橋された及び非架橋組成物(それぞれ#26及び#16)の段階希釈液(0.2~1)で処理した。処理した細胞を、未感染かつ未処理の細胞(UT)及びウイルスに感染した細胞(UT+ウイルス)と比較した。
【0206】
【0207】
229E及びオミクロンモデルの結果を、それぞれ図2A~2B及び図3に示し(各群で平均±SE)、研究グループ(Tukey HSD)の対応する統計解析を、それぞれ表4~5に示す。
【0208】
【0209】
【0210】
229Eモデルでは、部分的に架橋されたアルギン酸-カラギーナンの組合せを含む組成物(#25、#26)は、非架橋ポリマーを含む組成物(#4、#15、#16)又はカラギーナンを含まない組成物(#5、#27)より著しい抗ウイルス粘膜保護効果を有していた。低濃度及び高濃度のカラギーナンを含む組成物(#25対#26)は、類似した効果を有していた。
【0211】
SARS-CoV-2オミクロンモデルでは、部分的に架橋されたポリマーを含む組成物の効果は濃度依存的ではなく、より低濃度の試験組成物と共に依然として有意なままだった(#26x0.2対#26x1)。更に、低濃度であっても、部分的に架橋された組成物は、非架橋ポリマーを含む組成物より効果的だった(#26x0.2対#16x0.2)。
【0212】
全体的に見て、部分的に架橋されたアルギン酸-カラギーナンポリマーを含む組成物は、現在蔓延しているオミクロン変異体を含む、いくつかのコロナウイルス株に対して有意な抗ウイルス粘膜保護効果を有することが示された。
【0213】
実施例3:組成物のインフルエンザウイルスに対する保護効果
組成物のヒトインフルエンザウイルス(H1N1)に対する抗ウイルス粘膜保護効果をインビトロ細胞モデルで更に調べた。MDCK細胞を同一の組成物で処理した(表3)。細胞生存率を上記のように評価した。結果を図4A~4Bに示し(各群で平均±SE)、研究グループ(Tukey HSD)の対応する統計解析を、表6に示す。
【0214】
【0215】
結果から、部分的に架橋されたポリマーの組合せを含む組成物(#25、#26)は、非架橋又は単一ポリマーを含む組成物(#4、#5、#15、#16、#27)と比較して、H1N1ウイルスに対して著しい抗ウイルス粘膜保護効果を有していたことが示される。より一般的には、結果から、これらの組成物の抗ウイルス粘膜保護効果は、コロナウイルスに限定されず、これらの組成物は、インフルエンザ、及び潜在的に他の呼吸器系ウイルスに対しても同様に保護的であることができることが示唆される。
【0216】
組成物の抗ウイルス粘膜保護効果を、架橋度に関して更に調べた。そのために、H1N1に感染したMDCK細胞を、アルギン酸-カラギーナンの組合せ(#26)及び、様々な架橋度に対応する、様々な濃度のCaCl(0.0001~0.02%)を含む組成物で処理した。結果を図5に示し(各群で平均±SE)、対応する統計解析(Tukey HSD)を表7に示す。
【0217】
【0218】
結果から、高濃度のCaCl(#26 0.005%~0.02%CaCl)を含む組成物は、低濃度のCaClを含む組成物(#26 0.001%~0.0001%CaCl)又はCaClを含まない組成物(#16)と比較して著しい抗ウイルス粘膜保護効果を有していたことが示される。全体的に見て、結果から、2個のポリマーの部分的架橋度が所望の抗ウイルス粘膜保護効果に寄与することが示唆される。
【0219】
実施例4:組成物のアレルゲンに対する保護効果
一般的なアレルゲン及びアレルゲン誘発炎症の存在に関する組成物の粘膜保護効果を、それぞれインビトロ細胞モデル(イエダニ(house dust mite)アレルゲンDer p1及びDer f1並びに花粉アレルゲンPhl p1及びCar b1)及び炎症の分子マーカーとしてインターロイキン(IL-8)を使用して、更に調べた。試験組成物を表8に列挙する。
【0220】
【0221】
A549細胞を様々な濃度のアルギン酸/カラギーナン/CaCl(#25、#26部分的及び#4、#5、#15、#16架橋なし)及び様々な濃度のラムダ(#16、#26高、#4、#15、#25低及び#5カラギーナンなし)又はイオタカラギーナン(#3)を含む組成物で、2つの濃度の試験組成物を使用して処理し(x1又はx0.5)、処理及び未処理(UT)の細胞並びにアレルゲンに曝露した細胞(UT+A)と比較した。結果を図6に示し、対応する統計解析(Tukey HSD)を表9に示す。
【0222】
【0223】
結果から、部分的に架橋されたポリマーの組合せを含む組成物(#25、#26)は、非架橋又は単一ポリマーを含む組成物(#4、#5、#15、#16、#27)と比較して、Der p1アレルゲンに対して著しい粘膜保護抗炎症効果を有していたことが示される。これらの違いの程度は驚くべきであり、アルギン酸/カラギーナン/CaCl部分的に架橋された組合せは、抗アレルギー粘膜保護に関する相乗効果を有してもよいことが示唆された。
【0224】
結果から更に、試験した効果の濃度依存性及び特異性が示され、高濃度の組成物の下では、低濃度の同じ組成物と比較してIL-8発現が高いことが明らかになった(x1対x0.5)。
【0225】
アレルゲン曝露モデルを使用して追加のアレルゲンを更に調べた(イエダニ(dust mite)アレルゲンDer f1並びに花粉アレルゲンPhl p1及びCar b1)。Der f1及びPhl p1アレルゲンは、部分的に架橋されたポリマーを含む組成物(#26)又は非架橋ポリマーを含む組成物(#16)のいずれかで処理したA549細胞で試験し、処理された及び未処理の細胞(UT)並びにアレルゲンに曝露した細胞(UT+A)と比較した。Car b1アレルゲンを、様々なCar b1濃度(15μg/ml、30μg/ml、60μg/ml)を使用して、同じモデルで試験した。結果を図7A~7B及び図8に示し(各群で平均±SE)、対応する統計解析(Tukey HSD)を表10~12に示す。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
結果から、組成物の抗炎症粘膜保護効果は、特定のアレルゲン又はある種類のアレルゲンに限定されないが、いろいろな種類の抗原に広く適用可能であり、その例はいくつかのイエダニ(dust mite)及び花粉抗原であることが示される。全ての試験した抗原について、部分的に架橋されたポリマーを含む組成物は、非架橋ポリマーを含む組成物より効果的だった(#26対#16)。
【0230】
全体的に見て、両方の種類のモデル、ウイルス感染及びアレルゲン曝露の本研究では、部分的に架橋されたポリマーの組合せを含む組成物が堅牢で効果的な抗ウイルス及び抗炎症粘膜保護効果を与える驚くべき能力を挙げている。
【0231】
実施例5:噴霧可能な形態及び耐久性薄膜への変形可能性
組成物の物理的特性及び特に室温での薄膜形成能力も調べ、粘度計(MRC、pedal No.2、60RPM、室温)により長期間(21日間)、非架橋ポリマーを含む組成物(#16)及び部分的に架橋されたポリマーを含む組成物(#26)(1:1で希釈)の粘度を測定した。結果を図9に示す。
【0232】
結果から、両方の種類の組成物が試験期間にわたり室温で持続的な又は一定の粘度を有した一方、部分的に架橋された組成物は低い粘度を有し(最大20%)、より良好な噴霧しやすさ、被覆範囲及び広がりやすく、均一で連続した薄膜への変形可能性が示唆された。部分的に架橋された組成物の粘度が低いというこの驚くべき物理的特性により、目詰まりの危険がない最適な噴霧しやすさ及び被覆範囲の結果として、これらの組成物は局所、特に鼻腔投与に特に有利となる。
【0233】
単一ポリマー(#4、#5、#27)及び部分的に架橋されたポリマーの組合せ(#25、#26)又は非架橋ポリマーの組合せ(#15)を含む組成物をレオメータ(NETZSCH Kinexus Pro, Malvern, discs 21,61mm,室温)により様々なせん断速度(0.1、1、10s-1)で試験することを含む、室温で様々なせん断力下で粘度を測定して、形成された薄膜の耐久性及び信頼性を更に調べた。結果を図10に示す。
【0234】
結果から、部分的に架橋されたポリマーの組合せを含む組成物(#25、#26)の粘度は、同じ条件下で粘度が劇的に変動した他の組成物と比較すると、せん断力に対して比較的耐性があった(最大約25%の偏差)ことが示される。この研究から、部分的に架橋された組成物の有利な物理的特性及び信頼性があり耐久性がある連続した薄膜を室温で形成する能力が更に証明された。
【0235】
全体的に見て、これらの研究から、室温で長期間にわたる比較的一定又は持続的な粘度によって明らかにされる、部分的に架橋された組成物のいくつかの驚くべき有利な特性が明らかになり、この粘度はまた非架橋及び他の組成物の粘度より低く(少なくとも20%)、更に様々なせん断力に対して耐性があった(約25%の範囲内)。優れた粘度というこの驚くべき有利な特性は、これらの組成物が噴霧可能で、均一で、連続的かつ信頼性のある薄膜を形成する能力(又は薄膜への変形可能性)に転換され、そしてこの粘度はこれらの組成物の劇的な粘膜保護効果の原因となる。
【0236】
実施例6:吸入及び鼻用製品の開発
現在の努力は、吸入及び鼻用製品の開発に焦点を合わせている。図11では、追加の任意のポリマー、架橋剤及び保存料の組み合わせを含む、本発明で開示された組成物の更なる実施形態の概略図を提供する。更なる実施形態には、粒子状物質の形態の組成物が含まれ、粒子又は液滴は、鼻腔及び吸入適用に最適な特定のサイズ範囲である(例えば10μmより大きい)。この種類の組成物は、FDA及びEMEAの鼻用及び吸入製品の特定の要件のとおりに現在試験中である。
【0237】
特定の実施形態
本発明による組成物の態様では、以下を意味する。
いくつかの実施形態では、組成物は、上皮粘膜へ送達するために適用することができる。
【0238】
いくつかの実施形態では、上皮粘膜は、口腔及び/又は鼻腔粘膜であることができる。
【0239】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマー及び少なくとも1つの正電荷を帯びたイオンによって部分的に架橋された少なくとも1つの疎水性又は親水性ポリマーを含み、この粘膜との接触時にこの組成物は連続した薄膜に変形可能である。
【0240】
いくつかの実施形態では、組成物は、様々なせん断力下で基本的に持続的な粘度を有することができる。
【0241】
いくつかの実施形態では、組成物は、室温で約0.1~10s-1のせん断速度で測定して、約100~1000mPa*sec-1の粘度を有することができる。
【0242】
いくつかの実施形態では、組成物は、微粒子又はナノ粒子を含むことができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマー及びこの少なくとも1つの疎水性又は親水性ポリマーは、合成、半合成及び/又は改質天然ポリマーであることができる。
【0244】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマー及びこの少なくとも1つの疎水性又は親水性ポリマーは、植物、動物及び/又は微生物起源から得られた天然ポリマーであることができる。
【0245】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、ガラクタン、ウルバン、フカン、フコイダン、ヘパリン、硫酸化グルコサミン、硫酸化キトサン、キチン及び/又はコンドロイチン及び硫酸化デキストラン、又はこれらの組合せから選択されることができる。
【0246】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーは、少なくとも1つのカラギーナン又はそれらの組合せであることができる。
【0247】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つのカラギーナンは、イオタカラギーナン、カッパカラギーナン及び/又はラムダカラギーナンから選択されることができる。
【0248】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの疎水性又は親水性ポリマーは、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサン(polydioxanoes)、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ酸無水物、ポリ酢酸(polyacetates)、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノ炭酸(polyaminocarbonate)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、これらの混合物及び共重合体から選択されることができる。
【0249】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの疎水性又は親水性ポリマーは、組成物は、L-及びD-乳酸のステレオポリマー、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸との共重合体、セバシン酸共重合体、カプロラクトンの共重合体、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコール共重合体、ポリウレタン及びポリ(乳酸)の共重合体、ポリウレタン及びポリ(乳酸)の共重合体、α-アミノ酸の共重合体、α-アミノ酸とカプロン酸との共重合体、グルタミン酸α-ベンジルとポリエチレングリコールとの共重合体、コハク酸とポリ(グリコール)との共重合体、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシアルカノエート、ラクチド/グリコリド共重合体、ポリ酸無水物及びこれらの組合せから選択されることができる。
【0250】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの親水性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンゴム、トラガカントゴム、グアーゴム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メタクリル酸メチル共重合体、カルボキシビニル共重合体、デンプン、ゼラチン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びこれらの組合せから選択される天然又は合成親水性ポリマーであることができる。
【0251】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの親水性ポリマーは、多糖又はタンパク質である天然ポリマーであることができる。
【0252】
いくつかの実施形態では、この多糖は、デキストラン、アルギン酸、キトサン、アガロース及び/又はプルランから選択されることができる。
【0253】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、レクチン、レグミン及び/又はビシリン.から選択されることができる。
【0254】
いくつかの実施形態では、この多糖は、アルギン酸又はアルギン酸塩であることができる。
【0255】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの正電荷を帯びたイオンは、2価カチオンであることができる。
【0256】
いくつかの実施形態では、この2価カチオンは、Ba2+、Be2+、Ca2+、Co2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Fe2+及び/又はZn2+から選択されることができる。
【0257】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの硫酸化多糖ポリマーはカラギーナンであることができ、この少なくとも1つの親水性ポリマーは、Ca2+によって部分的に架橋されたアルギン酸であることができる。
【0258】
いくつかの実施形態では、このカラギーナンは、約0.005%~約1%の範囲の濃度であることができ、このアルギン酸は、約0.1%~約3%の範囲の濃度であることができ、このCa2+は、約0.0001%~約1%(w/w)の範囲の濃度であることができる。
【0259】
いくつかの実施形態では、このカラギーナンは、約0.1%~約0.3%の範囲の濃度であることができ、このアルギン酸は、約1%~約3%の範囲の濃度であることができ、このCa2+は、約0.0001%~約0.05%(w/w)の範囲の濃度であることができる。
【0260】
いくつかの実施形態では、このカラギーナンは、約0.2%~約0.3%の範囲の濃度であることができ、このアルギン酸は、約2.0%~約2.9%の範囲の濃度であることができ、このCa2+は、約0.0001%~約0.02%(w/w)の範囲の濃度であることができる。
【0261】
いくつかの実施形態では、組成物は更に、溶媒、緩衝液、賦形剤、アジュバント、透過促進剤、可塑剤、増粘剤、レオロジー改質剤、アルコール、増量剤、保存料、着色料、色素、甘味料、香料及び/若しくは臭気剤、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0262】
いくつかの実施形態では、組成物は更に、少なくとも1つの追加の治療薬を含む。
【0263】
いくつかの実施形態では、組成物は、治療有効量の上記の組成物のいずれか1つ及び薬学的に許容される緩衝液、担体又は賦形剤を含む医薬組成物であることができる。
【0264】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、任意選択で粒子又は液滴形態で吸入に適合することができる。
【0265】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、任意選択でスプレー及び/又はゲルの形態で経口及び/又は鼻腔投与に適合することができる。
【0266】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬を更に含むことができる。
【0267】
いくつかの実施形態では、組成物は、口腔及び/又は鼻腔粘膜障壁機能不全に関連する障害を予防又は治療するための少なくとも1つの追加の治療薬を更に含むことができる。
【0268】
いくつかの実施形態では、組成物は、口腔及び鼻腔粘膜障壁機能を保護するために使用することができる。
【0269】
いくつかの実施形態では、組成物は、微生物口腔及び/又は鼻腔感染症を治療、軽減及び/又は予防するために使用することができる。
【0270】
いくつかの実施形態では、微生物口腔及び/又は鼻腔感染症は、ウイルス及び/又は細菌感染症であることができる。
【0271】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの抗生物質及び/又は抗ウイルス薬を更に含むことができる。
【0272】
いくつかの実施形態では、抗ウイルス薬は、抗ウイルスワクチンであることができる。
【0273】
いくつかの実施形態では、組成物は、空気アレルゲン誘発アレルギー及び/又は炎症の治療、軽減及び/又は予防に使用することができる。
【0274】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの抗アレルギー及び/又は抗炎症剤を更に含むことができる。
【0275】
いくつかの実施形態では、組成物は、組織の再生に及び/又は組織移植片の生体工学に使用することができ、これは、以下を意味する。
いくつかの実施形態では、組織は神経又は心臓組織である。
【0276】
キットの態様では、以下を意味する。
いくつかの実施形態では、キットは、上記の組成物又は医薬組成物のいずれか1つ、及び口腔若しくは鼻腔送達又は吸入のための装置、及び使用説明書を備えることができる。
【0277】
薬物送達システムの態様では、以下を意味する。
いくつかの実施形態では、薬物送達システムは、上記の組成物のいずれか1つ及び少なくとも1つの追加の治療薬を含むことができる。
【0278】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの治療薬は、口腔及び/又は鼻腔粘膜障壁機能不全に関連する障害又は状態を予防又は治療するための薬剤であることができる。
【0279】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの治療薬は、他の種類の臨床的障害又は臨床的若しくは無症状状態を予防又は治療するための薬剤であることができる。
【0280】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの治療薬は、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、神経遮断剤、鎮痛剤、ホルモン、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、抗凝固剤、β遮断薬、利尿剤、抗高血圧剤、抗アテローム動脈硬化症剤、抗糖尿病剤、抗喘息剤、うっ血除去薬及び/又は風邪薬.から選択されることができる。
【0281】
口腔又は鼻腔送達のための方法の態様では、以下を意味する。
いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の上記の組成物のいずれか1つ又は薬物送達システムのいずれかを経口及び/又は鼻腔投与することを含むことができる。
【0282】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの追加の治療薬を同時投与することを更に含む。
【0283】
いくつかの実施形態では、方法は、口腔及び鼻腔粘膜障壁機能を保護するために適用することができる。
【0284】
いくつかの実施形態では、方法は、微生物口腔及び/又は鼻腔感染症を治療、軽減及び予防するために適用することができる。
【0285】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの抗生物質及び/又は抗ウイルス薬を同時投与することを更に含むことができ、この投与することは、経口、経腸、非経口、又は経鼻経路である。
【0286】
いくつかの実施形態では、方法は、空気アレルゲン誘発アレルギー及び/又は炎症を予防、軽減又は治療するために適用することができる。
【0287】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの抗アレルギー及び/又は抗炎症剤を同時投与することを更に含むことができ、この投与することは、経口、経腸、非経口、又は経鼻経路である。
【0288】
いくつかの実施形態では、方法は、組織の再生に及び/又は組織移植片の生体工学に適用することができる。
【0289】
いくつかの実施形態では、方法は、外科手技を更に含むことができる。
【0290】
使用の態様では、以下を意味する。
いくつかの実施形態では、上記の組成物は、空気アレルゲン誘発アレルギー又は炎症を予防、軽減又は治療するための薬物を製造するために使用することができる。
【0291】
いくつかの実施形態では、薬物は、微生物口腔及び/又は鼻腔感染症を予防、軽減又は治療するためであることができる。
【0292】
いくつかの実施形態では、薬物は、全身性障害を治療するためであることができる。
【0293】
ANNEX A
FDAによる薬物カテゴリーの総目録
非麻薬性鎮痛剤及び麻薬性鎮痛剤を含む鎮痛剤
制酸薬
抗不安薬
抗不整脈薬
抗菌薬
天然起源、合成、広域抗生物質を含む抗生物質
動脈血栓症又は静脈血栓症用の抗凝固薬及び血栓溶解薬
抗痙攣薬
気分を高揚させる抗うつ薬、三環系、モノアミン酸化酵素阻害薬、及びSSRIを含む抗うつ薬
止痢製剤及び腸の筋肉の収縮速度を落とす薬剤を含む止痢薬
制吐薬
毛髪、皮膚、爪、粘膜、に影響を及ぼす感染症を含む抗真菌薬
抗ヒスタミン薬
利尿剤、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬を含む降圧薬
抗炎症剤
抗悪性腫瘍薬
抗精神病薬も強力な精神安定薬
解熱薬
ウイルス感染症に対する治療及び一時的保護を含む抗ウイルス薬
バルビツール酸(睡眠薬を参照する)
β遮断薬
気管支拡張薬
風邪を伴う疼痛(aches)、疼痛(pain)及び発熱に関連する風邪薬
免疫抑制作用、悪性腫瘍、又は欠乏症の文脈における副腎皮質ステロイド
麻酔性及び非麻酔性抑制薬を含む咳止め薬
抗悪性腫瘍薬及び免疫抑制薬としての細胞傷害性薬物
うっ血除去薬
利尿剤
去痰薬
合成等価物及び天然ホルモン抽出物を含むホルモン
血糖降下薬(経口)
免疫抑制薬
緩下薬
筋痙攣を軽減するもの及び緩和な精神安定剤を含む筋弛緩薬
鎮静薬
月経障害及び閉経期障害、経口避妊薬用の、並びに女性及び男性の癌を治療するための性ホルモン(女性)
下垂体機能低下又は精巣の障害における男性ホルモン欠乏のために、同様に癌を治療するために使用されるもの、及びタンパク質同化ステロイドを含む性ホルモン(男性)
睡眠薬
強力な及び緩和な精神安定剤を含む精神安定剤
ビタミン
【0294】
ANNEX B
FDAによる疾患/状態の範囲のリスト
嗜癖
アルコール又は薬物依存症の患者のアルコール及び/又は薬物からの離脱の維持
新生児禁断症候群(NAS)
禁煙
アレルギー
I型/II型遺伝性血管性浮腫
鎮痛/麻酔/抗炎症
麻酔
不安緩解
熱を下げる
疼痛
慢性
悪性腫瘍に関連する突出痛
軽度
中程度
術後
重度
神経筋遮断の逆転
鎮静
集中治療状況における最初に挿管され、人工呼吸器を装着した小児患者
迅速導入及び通常の気管内挿管を促進するための骨格筋弛緩
循環器疾患
急性冠疾患
先天性心疾患
うっ血性心不全
全身性左室収縮不全による心不全
拡張型心筋症(DCM)及び症候性慢性心不全
高血圧
全身
術後高血圧
肺高血圧症
原発性/二次性
手術後
レイノー現象
頻脈性不整脈
皮膚科
円形脱毛症
アフタ性潰瘍
カンジダ症(皮膚、中咽頭)
皮膚症(ステロイド応答性皮膚症)
皮膚炎(アトピー性皮膚炎)
尋常性魚鱗癬
特発性蕁麻疹(慢性)
軽度から中程度の尋常性乾癬
伝染性軟属腫
趾爪の爪真菌症
口腔粘膜炎
Pediculosis humanis capitis(アタマジラミ及びそれらの卵子)
重度の不応性結節性ざ瘡
皮膚感染症及び皮膚組織感染症
白癬
頭部
下腿

内分泌
末端肥大症(Acromegalic gigantism)
骨密度(BMD)
神経性食欲不振症患者のBMD
骨形成不全症患者のBMD
続発性無月経を伴う初経後の若年成人のBMD(BMD in postmenarcheal adolescents with secondary amenorrhea)
中枢性思春期早発症(CPP)
一次及び続発性性腺機能低下の少年の思春期遅発症
糖尿病
1型
2型
小児AIDS患者の成長障害
脳下垂体の成長ホルモン分泌損傷
女性化乳房
ホモ接合性家族性高コレステロール血症(HoFH)
高コレステロール血症(ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症)
副甲状腺機能亢進(副甲状腺機能亢進に続発する腎不全)
血液透析での患者の低カルシウム血症管理
マキューン・オルブライト症候群
肥満
全身
視床下部
骨形成不全症(OI)
テトラヒドロビオプテリン(BH4-)応答性フェニルケトン尿症(PKU)
精巣中毒症
胃腸病学
制吐
催吐性化学療法と関連する悪心及び嘔吐の治療及び予防
術後悪心及び嘔吐の予防
クロストリジウム・ディフィシル関連下痢症(CDAD)
便秘(一般)
クローン病
下痢(急性)
びらん性食道炎
胃食道逆流症(GERD)
過敏性腸症候群(IBS)
IBS-D
腎症シスチン症
短腸症候群(SBS)
潰瘍性大腸炎(UC)
潰瘍
血液学/凝固
深部静脈血栓(DVT)
慢性血液透析を受けている患者の鉄欠乏症
輸血依存貧血による鉄過剰症(慢性)
鎌状赤血球症
血小板血症
血小板減少症
血栓塞栓症
免疫調節薬
免疫抑制
腎移植後の臓器拒絶反応の防止
感染症(ウイルス性)
サイトメガロウイルス(CMV)
B型肝炎ウイルス(HBV)
慢性
C型肝炎ウイルス(HCV)
慢性
単純ヘルペスウイルス(HSV)
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症
曝露された新生児のHIV感染の予防
HIV感染の出生時感染
インフルエンザA/B
HIV感染の出生時感染
感冒及びインフルエンザに関連する症状
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)
COVID-19(SARS-CoV-2)
感染症(非ウイルス)
急性腎盂腎炎
アスペルギルス症(侵襲性)
カンジダ症
脳脊髄液(CSF)シャント感染症
市中肺炎(CAP)
併発腹腔内感染症(cIAI)
併発UTI
急性腎盂腎炎
真菌症(侵襲性)
関連する熱及び好中球減少症
ヘリコバクター・ピロリ感染症(H. pylori)
マラリア
髄膜炎(細菌性)
カビ感染症(珍しいカビ)
中耳炎(OM)(再発性)/OM治療失敗
肺炎(菌血症)
抵抗性感染又は第一選択抗生物質に無応答の感染症
皮膚及び皮膚構造感染症
結核
神経学
先天性及び非先天性神経学的状態
てんかん
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
ADHDの患者の不眠症
ドラベ症候群に関連する難治性てんかん発作
片頭痛
多発性硬化症(MS)
MSの再発型
ナルコレプシー
ナルコレプシーの脱力発作
神経芽細胞腫
高リスク抵抗性又は再発型神経芽細胞腫
神経筋障害
てんかん発作
全般
レノックス・ガストー症候群(LGS)
部分
二次的全般発作を伴う又は伴わない
痙縮管理
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)(OSAの過剰な眠気)
トゥレット症候群
トゥレット障害の患者のADHD
腫瘍学
同種骨髄移植
化学療法毒性保護
慢性移植片対宿主病(GVHD)
CNS悪性腫瘍及び固形腫瘍
骨の巨細胞腫及び骨肉腫
血液腫瘍
中枢神経系リンパ腫
低悪性度リンパ腫
高悪性度リンパ腫
再発性、進行性又は難治性脳腫瘍
白血病
急性リンパ性白血病
急性骨髄性白血病
CNS白血病
混合性線状急性白血病(Mixed linear acute leukemia)
フィラデルフィア陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病
ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫
未分化大細胞型リンパ腫
成熟B細胞NHL
自家造血幹細胞移植に適格の小児悪性腫瘍患者の造血幹細胞動員
メラノーマ
骨髄異形成症候群
神経芽細胞腫
骨肉腫
小児悪性腫瘍
難治性/再発性悪性腫瘍
RAS/RAF/MEKシグナル伝達経路の活性化による進行型再発型/難治性悪性固形腫瘍
BRAF V600活性化変異を含有する切除不能又は転移メラノーマ性青年期患者の治療における再発型又は難治性のBRAF V600活性化変異を含有する固形腫瘍
Erb-B1又はErb-B2経路調節不全の再発型又は難治性腫瘍
横紋筋肉腫及び非横紋筋肉腫軟組織肉腫
眼科
結膜炎
アレルギー性
細菌性
新生児
眼圧
白内障手術後の術後炎症
未熟児網膜症(ROP)
ぶどう膜炎
精神科
思春期統合失調症
注意欠陥多動障害(ADHD)
自閉症及び自閉症スペクトラム障害
中心的社会性障害症候群(Core social impairment symptoms)
双極性障害(双極性障害に関連する躁病)
うつ/大うつ病性障害(MDD)
全般不安障害(GAD)
強迫性障害(OCD)
パニック障害
アルツハイマー病及びパーキンソン病

アレルギー性鼻炎
喘息
気管支肺異形成症
気管支痙攣(治療及び予防)
閉塞性気道疾患の患者における気管支痙攣の治療及び予防
嚢胞性線維症
腎疾患
慢性腎臓病(CKD)による喘息
末期腎不全
慢性腎臓病(CKD)による高リン血症
低ナトリウム血症
リウマチ学
家族性地中海熱(FMF)
若年性特発性関節炎(JIA)/若年性関節リウマチ(JRA)
多関節型若年性関節リウマチ
線維筋痛症の管理
泌尿器科
排尿筋反射亢進
神経学的状態における排尿筋過活動
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】