(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】エタノールからモータ燃料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C10G 3/00 20060101AFI20240829BHJP
C07C 31/10 20060101ALI20240829BHJP
C07C 1/24 20060101ALI20240829BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20240829BHJP
C07C 2/10 20060101ALI20240829BHJP
C07C 45/00 20060101ALI20240829BHJP
C07C 49/04 20060101ALI20240829BHJP
C07C 49/08 20060101ALI20240829BHJP
C07C 29/145 20060101ALI20240829BHJP
C07C 31/125 20060101ALI20240829BHJP
C07C 45/50 20060101ALI20240829BHJP
C07C 47/02 20060101ALI20240829BHJP
C07C 29/32 20060101ALI20240829BHJP
C07C 5/03 20060101ALI20240829BHJP
C07C 41/06 20060101ALI20240829BHJP
C07C 43/04 20060101ALI20240829BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240829BHJP
C07C 15/00 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C10G3/00 B
C07C31/10
C07C1/24
C07C11/02
C07C2/10
C07C45/00
C07C49/04 A
C07C49/08 A
C07C29/145
C07C31/125
C07C45/50
C07C47/02
C07C29/32
C07C5/03
C07C41/06
C07C43/04 A
C07B61/00 300
C07C15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537291
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-28
(86)【国際出願番号】 SE2022050676
(87)【国際公開番号】W WO2023033692
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524075906
【氏名又は名称】スウェディッシュ バイオフューエルズ アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ゴロウブコフ,イゴール
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4H129
【Fターム(参考)】
4H006BC10
4H006BC11
4H006BD33
4H006BD51
4H039CA19
4H039CA29
4H039CA60
4H039CL19
4H129AA01
4H129BA10
4H129BB04
4H129BC14
4H129CA14
4H129DA13
4H129KA02
4H129KA04
4H129KA08
4H129KA10
4H129KC03X
4H129KC09X
4H129KC16X
4H129KD06X
4H129KD09X
4H129KD14X
4H129KD28X
4H129KD30X
4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】
モータ燃料、より具体的にはガソリン、灯油、およびディーゼルをエタノールから製造する方法が開示されている。エタノールは、主に植物由来の供給原料から好適に得られる。さらに、本方法を使用して、本発明のモータ燃料合成からの中間生成物および副生成物、例えばアルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、オレフィン、パラフィン、および芳香族化合物を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリン、灯油およびディーゼルから選択されるモータ燃料をエタノールから製造するための方法であって、前記方法が以下の相互接続された工程、すなわち、
工程1.1 エタノールと水との混合物を、
イソプロパノールおよびC
5アルコール;
アセトアルデヒド;
C
1-C
4パラフィンとC
2-C
4オレフィンとの混合物;
二酸化炭素と水素との混合物;
に変換する工程、
工程1.2 工程1.1で得られた二酸化炭素と水素との混合物、追加の水素、およびC
1-C
4パラフィンの混合物を合成ガスに変換する工程、
工程1.3 エタノール、および工程1.1から得られたC
5アルコールを含むC
3-C
8アルコールを、
エチレンおよびプロピレンを含むC
2-C
8オレフィン
に変換する工程、
工程1.4 テロマー化反応を使用して、工程1.1からの未反応エタノール、工程1.1で得られたイソプロパノール、工程1.3で得られたエチレンの混合物を、第二級ブタノールおよび第三級C
5-C
8アルコールに変換する工程であって、第三級C
5およびC
7アルコールが前記イソプロパノールから得られ、第三級C
6およびC
8アルコールが前記エタノールから得られ、前記得られた第二級ブタノールが工程1.3に導かれる、工程、
工程1.5 工程1.4で得られた前記第三級C
5-C
8アルコールを脱水によってC
5-C
8オレフィンに変換する工程、
工程1.6 工程1.5で得られた前記C
5-C
8オレフィンの第1の部分をオリゴマー化によってC
10-C
24オレフィンに変換する工程、
工程1.7 工程1.6で得られた前記C
10-C
24オレフィンを、工程1.1で得られた水素を用いた水素化によってC
10-C
24パラフィンに変換する工程、
工程1.8 工程1.2で得られた前記合成ガス、工程1.3で得られたエチレン、工程1.3で得られたプロピレン、および工程1.1で得られた前記アセトアルデヒドを、ヒドロホルミル化およびアルドール縮合によってC
3-C
4アルデヒドとC
5-C
8アルドールとの混合物に変換し、C
3-C
4アルデヒドとC
5-C
8アルドールとの前記混合物をその後水素化してC
3-C
8アルコールを得、このアルコールを工程1.3に導いてC
3-C
8オレフィンを得る工程であって、前記アセトアルデヒドがC
5アルコールを生成し、工程1.3からの前記エチレンがC
3およびC
6アルコールを生成し、工程1.3からの前記プロピレンがC
4およびC
8アルコールを生成し、工程1.3からの前記エチレンおよび前記プロピレンがC
7アルコールを生成する、工程、
工程1.9 工程1.3からの前記C
2-C
8オレフィンをオリゴマー化によってC
6-C
24オレフィンに変換する工程、
工程1.10 工程1.9で得られた前記C
6-C
24オレフィン、および水素を、水素化によってC
6-C
24パラフィンに変換する工程、
工程1.11 工程1.9からの未反応C
2-C
5オレフィン、ならびに工程1.1で得られたC
2-C
4オレフィンとC
1-C
4パラフィンとの前記混合物を、芳香族化によってC
7-C
12芳香族炭化水素、水素、およびC
1-C
4パラフィンの混合物に変換する工程であって、生成された前記水素の第1の部分が工程1.10に導かれ、生成された前記水素の残りの第2の部分および前記C
1-C
4パラフィン混合物が工程1.2に導かれる、工程、
工程1.12 工程1.5で得られたC
5-C
8オレフィンの前記混合物の残りの第2の部分および工程1.3からのC
2-C
8アルコールの一部を、C
7-C
16エーテルに変換する工程、および
工程1.13 工程1.7で得られた前記C
10-C
24パラフィンおよび工程1.10で得られた前記C
6-C
24パラフィンを、モータ燃料のC
6-C
10ガソリン、C
11-C
18灯油およびC
19-C
24ディーゼル留分に変換し、工程1.11で得られた前記C
7-C
12芳香族炭化水素を、モータ燃料のC
7-C
8ガソリンおよびC
9-C
12灯油留分に変換し、工程1.12で得られた前記C
7-C
16エーテルを、モータ燃料のC
7-C
10ガソリンおよびC
11-C
16ディーゼル留分に変換し、さらにその選択された留分をガソリン、灯油およびディーゼルから選択されるモータ燃料に混合する工程
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.1において、前記混合物の全体積の25~35%以内の含水量を有するエタノールと水との混合物を、0.5~1.5MPaの圧力および500~515℃の温度で、以下の金属酸化物:ZnO 60~63質量%、CeO
2 1~6質量%、MgO 12~18質量%;およびAl
2O
3 13~23質量%(割合は金属酸化物に関して計算)からなる不均一触媒と接触させ、エタノールと水の前記混合物が、0.5~0.9h
-1の空間速度で前記触媒に供給され、それによってアセトンが生成され;前記得られたアセトンが、前記反応混合物から単離され、エタノールと水の前記混合物から得られた水素によって、モル比1:1のCuOとCr
2O
3からなる触媒の存在下、100~150℃の温度および0.5~0.9MPaの圧力で水素化され、それによって前記イソプロパノールが得られる、方法。
【請求項3】
請求項2に記載のエタノールからモータ燃料を製造する方法であって、工程1.4において、前記イソプロパノールが、ジtertアミルペルオキシドの存在下、圧力P=1.0~5.0MPaおよび温度100~130℃で前記エチレンと反応し、それによって第三級C
5およびC
7アルコールに変換される、方法。
【請求項4】
請求項2に記載のエタノールからモータ燃料を製造する方法であって、工程1.4において、工程1.1からの前記未反応エタノールが、ジ-tert-ブチルペルオキシドまたはジ-tert-アミルペルオキシドの存在下、圧力P=1.0~5.0MPaおよび温度100~130℃で前記エチレンと反応してsec-ブタノールが得られ、次いでこれが前記エチレンと反応し、前記第三級C
6およびC
8アルコールに変換される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.8において、前記エチレンまたはプロピレンが、水溶性Rh触媒の存在下、前記水相に対する金属の濃度30ppm~50ppmで、温度70~90℃および圧力P=1.0~5.0MPaで、プロパナールまたはn-ブタナールおよびイソブタナールに前記ヒドロホルミル化で変換され、その後、工程1.1で得られたプロパナール、n-ブタナールおよびアセトアルデヒドの混合物が、3.5~7.0%Znで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含む不均一触媒、または3.5~5.0%Znおよび0.1~1.5%Ceで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含む粒状触媒の存在下、交差アルドール縮合によってC
3-C
4アルデヒドとC
5-C
8アルドールの混合物に変換され、その後、C
3-C
4アルデヒドとC
5-C
8アルドールの前記混合物が、モル比1:1:1のNiO、CuO、およびCr
2O
3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化されて、C
3-C
8アルコールの前記混合物が得られる、方法。
【請求項6】
請求項5に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.8において、トリフェニルホスフィン-スルホン酸ナトリウム塩、すなわち、トリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩からトリフェニルホスフィン-3,3’、3”-トリスルホン酸三ナトリウム塩が、前記水溶性触媒を得るための前記エチレンまたはプロピレンの前記ヒドロホルミル化において、金属Rhに対して重量比(10~30):1で配位子として使用される、方法。
【請求項7】
請求項6に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.8において、反応速度およびイソブタナールの収率を増加させるために、合成ガスによるプロピレンの前記ヒドロホルミル化が、請求項6に従って調製された水溶性Rh触媒の存在下で行われ、C
2-C
3アルコールが、体積比H
2O:(C
2-C
3)=(0.95-0.65):(0.05-0.35)で前記触媒に添加され、一方、前記反応媒体中で得られたブタナールとイソブタナールの比が、(n-С
4Н
8О):(iso-С
4Н
8О)=(2~3):1の範囲内である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.8において、前記エチレンまたはプロピレンが、水溶性Co触媒の存在下、前記ヒドロホルミル化反応において、前記水相に対するCo金属の濃度0.1~1.0%で、温度120~140℃および圧力P=2.0~5.0MPaで、プロパナール、2-メチルペンテナールおよび2-メチルペンタナールに、またはn-ブタナール、2-エチルヘキセナール、2-エチルヘキサナールおよびイソブタナールに変換され、その後、С
3-С
4アルデヒドおよびС
6-С
8アルドールの前記混合物が、モル比1:1:1のNiO、CuOおよびCr
2O
3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化されて、C
3-C
8アルコールの前記混合物が得られる、方法。
【請求項9】
請求項8に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.8において、トリフェニルホスフィン-スルホン酸ナトリウム塩、すなわち、トリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩からトリフェニルホスフィン-3,3’、3”-トリスルホン酸三ナトリウム塩が、前記水溶性Co触媒を得るためのエチレンまたはプロピレンの前記ヒドロホルミル化において、金属Coに対して重量比(1~30):1で配位子として使用される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.8において、反応速度およびイソブタナールの収率を増加させるために、プロピレンの前記ヒドロホルミル化において、C
2-C
3アルコールが、体積比H
2O:(C
2-C
3)=(0.95~0.5):(0.05~0.5)で前記触媒に添加され、前記反応媒体中で得られたブタナールとイソブタナールの比が、(n-C
4H
8O):(iso-C
4H
8O)=(2~3):1の範囲内である、方法。
【請求項11】
請求項1に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.9において、前記С
2-С
8オレフィンが、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含む不均一触媒、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含む不均一触媒の存在下、温度250~350℃および圧力P=4.5~5.0MPaでオリゴマー化されて、前記C
6-C
24が得られ、未反応C
2-C
5オレフィンが、前記C
6-C
24オレフィンからの精留によって分離され、工程1.11に導かれ、
工程1.10において、С
6-С
24オレフィンの水素化が、モル比1:1:1のNiO、CuOおよびCr
2O
3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで行われて、С
6-С
24パラフィンが得られ、
工程1.13において、前記C
6-C
24パラフィンが精留されて、モータ燃料のC
6-C
10パラフィンガソリン留分、C
11-C
18パラフィン灯油留分、およびC
19-C
24パラフィンディーゼル留分が単離される、方法。
【請求項12】
請求項11に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.11において、前記未反応C
2-C
5オレフィンが、3.5~7.0%Znで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する不均一触媒の存在下、温度350~450℃および圧力P=0.5~2.0MPaで、C
2-C
4オレフィンとC
1-C
4パラフィンとの混合物中で一緒に芳香族化されて、芳香族C
7-C
12化合物が生成され、
工程1.13において、前記芳香族C
7-C
12化合物が精留されて、モータ燃料のC
7-C
8芳香族化合物ガソリン留分およびС
9-С
12芳香族化合物灯油留分が単離される、方法。
【請求項13】
請求項1に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.6において、前記C
5-C
8オレフィンが、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、好ましくはAmberlite 15を触媒として使用して、温度70~120℃および圧力P=1.0~2.0MPaでオリゴマー化され、
工程1.7において、前記C
10-C
24オレフィンが、モル比1:1:1のNiO、CuOおよびCr
2O
3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化されて、C
10-C
24パラフィンの混合物が得られ、
工程1.13において、前記C
10-C
24パラフィンが精留されて、モータ燃料の前記C
11-C
18パラフィン灯油留分および前記C
19-C
24パラフィンディーゼル留分が単離され、残りのC
10パラフィンが、工程1.13において前記C
6-C
24パラフィンの精留によって得られた、モータ燃料の前記C
6-C
10パラフィンガソリン留分と混合される、方法。
【請求項14】
請求項13に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.12において、前記エーテル化が、触媒として陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、好ましくはAmberlite 15を使用して、温度70~120℃および圧力P=1.5~2.0MPaで、С
5-С
8オレフィンとС
2-С
8アルコールとの混合物に対して行われて、前記C
7-C
16エーテルが得られ、
工程1.13において、得られた前記C
7-C
16エーテルが精留されて、ガソリンを製造するためのC
7-C
9エーテル留分と、ディーゼルを製造するためのC
10-C
16エーテル留分が単離される、方法。
【請求項15】
請求項1に記載のエタノールからモータ燃料を製造するための方法であって、工程1.13において、現在のJet A-1規格の要件を完全に満たす灯油を得るために、工程1.10から得られた前記С
6-С
24パラフィン混合物から、C
11-C
18パラフィンが単離され、工程1.7で得られたС
10-С
24パラフィンの前記混合物から、С
11-С
18パラフィンが単離され、工程1.11で得られた前記C
7-C
12芳香族炭化水素混合物から、芳香族С
9-С
12炭化水素が単離され、前記単離されたC
11-C
18パラフィンおよび芳香族С
9-С
12炭化水素が、芳香族C
9-C
12炭化水素の濃度が8~25体積%の範囲にあり、前記得られた灯油が少なくとも100の異なる炭化水素、好ましくは150の異なる炭化水素を含み、最小30mmの煙点、および最大マイナス80℃の氷点を有するように混合される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に植物由来の原料から得られたエタノールからモータ燃料、より詳細にはガソリン、灯油およびディーゼルを製造するための方法に関する。さらに、本発明のモータ燃料合成からの中間生成物および副生成物、すなわち、主に植物由来の供給原料から得られるアルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、オレフィン、パラフィンおよび芳香族化合物は、塗料またはポリマーを製造するための化学産業においてだけでなく、医薬品産業において、または化粧品の製造のためにも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
一方では地球の石油およびガスの備蓄の大幅な減少をもたらし、他方では環境の悪化に関する社会の懸念を引き起こすモータ燃料の消費の急速な増加は、代替モータ燃料の探索を刺激する。大気への二酸化炭素排出量の削減に関する現代産業が直面する課題は、既存の方法を改善し、かつ再生可能な供給原料からモータ燃料を製造するための新しい方法を創出するための研究を刺激する。現在、代替モータ燃料の製造のための最も魅力的な原材料はバイオマスであり、これは絶えず大気に出てくる二酸化炭素から直接生成される。近年、バイオマスをモータ燃料に加工する方法、とりわけ生体由来の原材料から灯油を製造する方法に関して、かなりの数の研究が行われている。
【0003】
米国特許第8193402号明細書、米国特許第8373012号明細書および米国特許第8487149号明細書は、発酵によって、植物バイオマスから単離された炭水化物を個々のC2-C6アルコールおよびC2-C6アルコールの混合物の両方に変換する微生物を開示している。得られたアルコールを次に脱水して対応するオレフィンにする。個々のオレフィンおよび混合物の両方として得られたC2-C6オレフィンをオリゴマー化して、C6-C21オレフィンを得る。次いで、得られたC6-C21オレフィンを水素化して、1または少数の飽和C6-C21アルカンを含有する生成物を得る。
【0004】
国際公開第2018071905号明細書および米国特許出願公開第2020010767号は、ディーゼル燃料および/またはジェット燃料を含む輸送用燃料への低級オレフィン、例えばC2-C8オレフィンのオリゴマー化のための方法および材料を開示している。いくつかの実施形態では、タングステンジルコニウム触媒を使用してオリゴマー化を行う。
【0005】
米国特許第10633320号明細書は、粗および/または精製されたフーゼル油混合物を、混合酸化物金属またはゼオライト触媒によってより高い価値の再生可能化学物質に変換するためのプロセスを提案している。この特許は、様々な混合金属酸化物触媒、金属ドープゼオライトまたは非金属ドープゼオライト、および/または金属酸化物を介して、粗および/または精製されたフーゼル油の気化流を導き、より高い価値の生成物を得る方法を開示している。これらの触媒を使用して生成される再生可能化学物質には、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、イソアミレン、およびイソプレンが含まれる。
【0006】
米国特許出願公開第2011245542号明細書は、酸素化炭化水素からの液体燃料の合成を開示している。酸素含有炭化水素を、ガソリン、ジェット燃料またはディーゼル燃料などの液体燃料として使用される炭化水素、ケトンおよびアルコール、ならびに工業用化学物質に変換するためのプロセスおよび反応器システムが提供される。この方法は、縮合による、アルコール、ケトン、アルデヒド、フラン、カルボン酸、ジオール、トリオールおよび/または他のポリオールなどのモノ酸素化炭化水素のC4+炭化水素、アルコールおよび/またはケトンへの変換を含む。酸化炭化水素は任意の供給源に由来し得るが、好ましいものはバイオマスに由来するものである。特許の教示は、Li、Na、K、Cs、B、Rb、Mg、Ca、Sr、Si、Ba、Al、Zn、Ce、La、Y、Sc、Y、Zr、Ti、ヒドロタルサイト、リン酸塩、塩基処理アルミノシリケートゼオライト、アルミン酸亜鉛、ベース樹脂、ベース窒化物、合金またはそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含有する塩基性縮合触媒の存在下で、約80℃~500℃の範囲の縮合温度および少なくとも0.1atmの縮合圧力で、気相中の酸素化物と水素との触媒的相互作用が存在して、C4+化合物が得られるという方法において異なり、C4+化合物は、C4+アルコール、C4+ケトン、C4+アルカン、C4+アルケン、C5+シクロアルカン、C5+シクロアルケン、アリール、縮合アリール、およびそれらの混合物からなる群から選択されるメンバーを含む。
【0007】
さらに、米国特許出願公開第2012198760号明細書および米国特許第9228134号明細書は、バイオマスから留出物燃料を生成するための方法およびシステムを開示している。その明細書に開示される発明は、不均一触媒を使用してバイオマス由来原料をC8+炭化水素に変換するための方法、反応器システムおよび触媒を提供する。生成物流を分離し、化学産業で使用するために、またはクリーン燃料として、または航空およびディーゼル燃料用の混合成分として、または潤滑剤および/または液体燃料用の重油としてさらに処理することができる。
【0008】
米国特許第9771533号明細書および米国特許第9932531号明細書は、エチレン供給原料を炭化水素燃料に変換するためのシステムおよびプロセスを開示している。ガソリン、ジェット燃料、およびディーゼル燃料を含む代替燃料の製造に適した開鎖および閉鎖燃料範囲炭化水素の選択された比率を含む燃料および燃料混合物を製造するためのシステム、プロセス、および触媒が開示されている。燃料範囲の炭化水素は、エチレンおよびエタノールを含有する供給原料から生成することができる。
【0009】
米国特許出願公開第2020165176号明細書は、単一の反応器でエタノールを1-ブテンおよび2-ブテンに変換する方法を開示している。この文書は、エタノールを含有する供給原料からブテンなどの需要のある化学物質を生成するための単純化されたプロセスを記載している。一組の実施形態では、これは、気相エタノール供給物を、金属酸化物支持体上に少なくとも5%の遷移金属分散液を有する酸性金属酸化物触媒上に通過させる一工程で達成される。供給混合物中のエタノール含有量は、供給物の10%~100%の範囲であり得、それが食品に関連しない場合、供給物エタノールは水を含有し得る。エタノールを含有する供給原料からブテンを一段階で生成するための方法が開示されている。この方法は、ブテンの直接形成のための水素担体の存在下、温度325℃、圧力7バールおよび流量0.23h-1で、30%以上の遷移金属Agの分散を有する4重量%Ag/4重量%ZrO2/SiO2-SBA-16の触媒上に、気相中のエタノールを含有する供給原料を通過させる段階を含み、エタノールの13%以上の選択性を有し、Agおよび担体の弱酸性材料の比較的弱い水素化能力により、それを変化させずに維持することができる。
【0010】
米国特許出願公開第2013144094号明細書、米国特許出願公開第2013219778号明細書、および米国特許出願公開第2013237728号明細書は、バイオマス由来の酸素化物をより長い鎖を有する炭化水素に直接変換する方法を開示している。より長鎖の炭化水素は、より高い含有量のナフテンを特徴とし、これは留出物範囲の燃料、より具体的にはジェットおよびディーゼル範囲の燃料に非常に有用である。ナフテンは、バイオマス由来炭化水素がジェットおよびディーゼル製品の仕様を満たすのを助け、一方で低温流動特性を実際に助ける。実施形態の1つは、バイオ燃料としてブレンドすることができるモノアルコールへのグリコールの選択的変換を提供する水素化処理プロセスを記載する。NiMoおよびCoMo触媒は反応において活性であり、反応条件はモノアルコールの選択性にも影響を及ぼし得る。バイオマス由来の酸素化物供給原料は、ガソリン、ジェット燃料およびディーゼル燃料の炭化水素を含む様々な燃料に変換される。加水分解、脱水、縮合、オリゴマー化、および水素化を含む一般的な方法が提案されている。
【0011】
米国特許出願公開第2015376511号明細書および米国特許出願公開第2016108323号明細書は、セルロースおよびヘミセルロースから誘導されるアルコール、例えば、ペンタンジオールおよびヒドロキシメチルテトラヒドロフラン(これはテトラヒドロフルフリルアルコールとしても知られる)からジェット燃料炭化水素を生成するための方法を提供する。アルコールは、より長い鎖の有機分子が不均一アルコール縮合触媒を使用して形成されるゲルベ合成を使用してスプライシングまたは二量体化される。アルコールの1つ以上の官能基を含有する分子をより大きな分子に変換する方法も開示されている。メタノール、エタノール、プロパノールおよびヘキサノールなどのアルコール、ならびにプロピレングリコールおよびブタンジオールなどのジオール/グリコールを、高温および高圧で水素の存在下で貴金属または固体酸触媒などの担持金属触媒に供給して、炭化水素生成物と酸素化物生成物との混合物を得る。
【0012】
米国特許第8049048号明細書は、再生可能エンジン燃料を開示している。この開示は、完全にバイオマス源から誘導された再生可能エンジン燃料を提供する。実施形態の1つは、1以上の低炭素エーテル、1以上のフラン、ペントサン誘導体、1以上の芳香族炭化水素、多糖類から誘導可能な1以上のC4-C10直鎖アルカンおよび1以上のバイオオイルから構成される完全に再生可能なモータ燃料を開示する。また、燃料は、トリエタノールアミンを含んでいてもよい。このような低オクタンの再生可能燃料は、例えば、自動車燃料、100LL航空燃料、およびタービンエンジンに利用することができる。これらの完全に再生可能なエタノール燃料は、広範囲のオクタン価およびエネルギーを有することができ、100LL航空燃料(AvGasとして知られている)、ならびに高オクタン、ロケット、ディーゼルおよびガスタービン燃料に取って代わるために効果的に使用することができる。別の実施形態では、イソペンタンおよびメシチレンを含有する合成高オクタン航空燃料、およびバイオマスからそれを生成するプロセスが提供されている。
【0013】
カナダ特許第2800057号明細書および米国特許第8852296号明細書は、再生可能エンジン燃料およびその製造方法を開示している。バイオマス源から得られる非石油高オクタン燃料およびその製造方法が開示されている。この製造方法は、バイオマス原料を糖に還元すること、微生物またはそれらの変異原を用いて糖を発酵させてエタノールまたは酢酸を生成すること、酢酸またはエタノールをアセトンに変換すること、およびアセトンをエンジン燃料の主成分であるメシチレンおよびイソペンタンに変換することを含む。アセトンの三量化は、ニオブ、鉄およびマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む触媒の存在下で行うことができる。エタノールは、酸化亜鉛または酸化カルシウムの触媒の存在下での脱水反応でメシチレンに変換することができ、未反応エタノールおよび水は、蒸留によりメシチレンから分離することができる。エタノールをベースとするこれらの燃料は再生可能であり、広範囲のオクタン価およびエネルギーを有するように配合することができ、100LL航空燃料(AvGasとして知られている)、ならびに高オクタン、ロケット、ディーゼル、タービンエンジン燃料、ならびに2サイクル火花点火エンジン燃料を置き換えるために効果的に使用することができる。エタノールは、酸化亜鉛または酸化カルシウム触媒の存在下での脱水反応でメシチレンに変換することができ、未反応エタノールおよび水は、蒸留によりメシチレンから分離することができる。バイオマスに基づくこれらのエタノール燃料は、完全に再生可能であり、広範囲のオクタン価およびエネルギーを有することができ、100LL航空燃料(AvGasとして知られている)、ならびに高オクタン、ロケット、ディーゼル、ガスタービン燃料、およびまた二行程火花点火エンジン用の燃料を置換するために効果的に使用することができる。
【0014】
米国特許第9447347号明細書は、水素化分解縮合によるバイオ燃料の製造を教示している。開示された方法は、炭水化物を提供すること、炭水化物を水素化分解触媒の存在下で水素と直接反応させて、ポリオールを含む反応生成物を生成すること、次に反応生成物の少なくとも一部を処理して燃料ブレンドを形成することを含む。
【0015】
米国特許出願公開第2012156742号明細書は、バイオマスからバイオ燃料を生成するプロセスを教示している。この文献は、バイオマスを水性媒体と接触させて抽出されたバイオマスを形成すること、抽出されたバイオマスから水性液体の少なくとも一部を分離し、それによって可溶性炭水化物を含む水性液体流を提供すること、水性液流を、硫黄化合物および窒素化合物を除去するのに有効な精製基質と接触させ、それにより、未処理水性液流に基づいて未処理水性液供給物の硫黄含有量の35%未満および窒素含有量の35%未満を有する処理炭水化物流を生成すること、次いで処理炭水化物流を水性相改質触媒と接触させて、複数の酸素化中間体を形成すること、および酸素化中間体の少なくとも一部を処理して液体燃料を形成することによって、バイオマスからバイオ燃料を生成する方法を教示している。
【0016】
米国特許第9862655号明細書は、ジェット範囲炭化水素を生成するための方法およびシステムを開示している。ジェット範囲炭化水素を生成するための方法およびシステムが開示される。例示的な実施形態において、ジェット範囲炭化水素を生成するためのプロセスは、C4オレフィン炭化水素の第1の流れと、C5-C8オレフィン炭化水素の第2の流れとを組み合わせて、C4-C8炭化水素の第3の流れを生成する工程と、C4-C8オレフィン炭化水素の第3の流れをオリゴマー化して、C4-C20オレフィン炭化水素の第4の流れを生成する工程と、C4-C20オレフィン炭化水素の第4の流れからC5-C8炭化水素を分離して、C5-C8オレフィン炭化水素の第2の流れおよびオレフィン炭化水素С9-С20の第5の流れを生成する工程とを含む。この方法は、C9-C20オレフィン炭化水素の第5の流れを水素化して、ジェット燃料範囲のC9-C20パラフィン系炭化水素の第6の流れを生成する工程をさらに含む。
【0017】
米国特許出願公開第2016312131号明細書、米国特許出願公開第2016312134号明細書は、ジェット範囲炭化水素を生成するためのプロセスを提供する。ジェット燃料に適した炭化水素を生成するための開示は、C3-C8オレフィンを含む再生可能オレフィン供給原料を、ゼオライト触媒を含むオリゴマー化反応器に通して、オリゴマー化流出物を生成すること、オリゴマー化流出物を少なくとも軽質流と重質オレフィン流とに分離することを含む。重質オレフィン流の少なくとも第1の部分は、再生可能オレフィン供給原料を希釈するためにオリゴマー化反応器に再循環される。重質オレフィン流の一部を水素化および分離して、ジェット燃料に適した炭化水素生成物を得ることができる。ジェット範囲炭化水素を生成するための方法およびシステムも開示されている。例示的な実施形態では、ジェット範囲炭化水素を生成する方法は、C4オレフィン炭化水素を含有する第1の流れと、C5-C8オレフィン炭化水素を含有する第2の流れとを組み合わせて、C4-C8炭化水素を含有する第3の流れを生成する工程を含む。C4-C8オレフィン炭化水素を含有する第3の流れをオリゴマー化する工程は、C4-C20オレフィン炭化水素を含有する第4の流れを生成する。C4-C20オレフィン炭化水素を含有する第4の流れから分離されたC5-C8炭化水素を第2の流れに送り、オレフィン炭化水素C9-C20を含有する第5の流れを得る。この方法は、C9-C20オレフィン炭化水素を含有する第5の流れを水素化して、ジェット燃料範囲内のC9-C20パラフィン炭化水素を含有する第6の流れを得る工程をさらに含む。
【0018】
米国特許出願公開第2010146843号明細書および米国特許出願公開第2011126448号明細書は、統合バイオ燃料生産のためのプロセス、プラント、およびバイオ燃料を開示している。この発明は、ブタノール、バイオディーゼル、および糖製品などを用いた統合バイオ燃料生産のためのプロセス、プラント、およびバイオ燃料に関する。統合プロセスは、供給原料からヘキソースを除去して、リグノセルロース材料を形成する工程を含む。このプロセスはまた、ヘキソースをブタノールおよび/またはバイオディーゼル燃料に変換する工程、ならびにリグノセルロース材料を解重合してペントースおよび残留物を形成する工程を含む。このプロセスはまた、ペントースをブタノールおよび/またはバイオディーゼル材料に変換する工程を含む。このプロセスはまた、ペントースをバイオガソリンおよび/またはバイオディーゼル燃料に変換する工程を含む。
【0019】
国際公開第2014154799号は、中間留出物炭化水素組成物の製造を開示している。エチレンから中間留出物炭化水素組成物を調製するためのプロセスが特許請求されており、このプロセスは、(a)支持されたニッケルオリゴマー化触媒を含むオリゴマー化反応ゾーンにエチレン組成物を供給してオリゴマー化生成物Aを形成する工程であって、オリゴマー化反応が30~300℃の範囲の温度および少なくとも10バールの圧力で操作される、工程と、(b)軽質生成物流B、中間留出物生成物流Cおよび重質生成物流Dをオリゴマー化生成物Aから分離する工程であって、軽質生成物流Bが、C2-C8モノオレフィン沸点範囲で沸騰するオリゴマー化生成物Aの留分を含み、中間留出物生成物流Cが、軽質生成物流Bの沸点範囲を超え、かつ重質生成物流Dの沸点範囲を下回り沸騰するオリゴマー化生成物Aの留分を含み、重質生成物流Dが、C22モノオレフィン沸点範囲を超えて沸騰するオリゴマー化生成物Aの留分を含む、工程と、(c)軽質生成物流Bの一部をプロセスの工程(a)のオリゴマー化反応ゾーンに再循環させる工程と、(d)重質生成物流Dおよび軽質生成物流Bの一部をオレフィンメタセシス反応ゾーンに供給して、メタセシス生成物流Eを生成する工程と、(e)中間留出物生成物Fをメタセシス生成物流Eから分離する工程と、(f)中間留出物生成物流Cを水素化する工程であって、中間留出物炭化水素組成物が、水素化中間留出物生成物流Cの少なくとも一部および中間留出物生成物Fの少なくとも一部を含む、工程とを含む。
【0020】
欧州特許第2285972号明細書は、燃料を含む有用な生成物を得るために、電子ビームの照射によってバイオマスを処理する方法を教示している。電子ビーム照射に曝露された植物バイオマス、動物バイオマスおよび都市廃棄物バイオマスを処理して、有用な生成物を生成する。セルロースおよびリグノセルロース材料、ならびにデンプンまたは糖を含有する材料は、特許請求されるバイオマス処理方法における供給原料として使用することができる。照射されたバイオマスは、発酵によってエタノールおよびブタノールを生成するために使用される。
【0021】
国際公開第2019084518号および米国特許出願公開第2019233751号明細書は、ASTM6866-18によって決定されるような100%生物起源の炭素含有量を有するセルロース系エタノールを調製する方法を教示しており、この方法は、粉砕されたトウモロコシ穂軸を電子ビーム放射で処理することと、照射された粉砕されたトウモロコシ穂軸を糖化して糖を生成することとを含む。この方法はまた、微生物を用いて糖を発酵させることを含む。この開示は、ASTM D2699によって決定されるような約87を超えるリサーチオクタン価を有するセルロース系バイオマス由来の未ブレンドガソリンを記載する。同時に、未ブレンドガソリンが、セルロース系バイオマスから得られたエタノールの触媒処理の結果として得られることを示す。さらに、約25%の芳香族炭化水素、約2.5%のアルケン、約41%のアルカン、および約8.5%の酸素化化合物(wt./wt.)を含む、セルロース系バイオマス由来のジェット燃料が開示されている。
【0022】
米国特許出願公開第2012271081号明細書は、ヘテロ原子有機化合物からC10+炭化水素を製造する方法を開示している。この発明は、単独でまたは組み合わせて、酸素、硫黄およびハロゲンから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むヘテロ原子有機化合物からC10+炭化水素を製造する方法に関する。少なくとも1つのヘテロ原子を含有する有機原材料から留出物を生成する方法は、出発有機化合物をオレフィンに変換する第1の工程を含む。変換の第2の工程において、オレフィンは、少なくとも0.5%(重量基準)の酸素含有化合物の存在下でオリゴマー化される。オリゴマー化中の酸素化物の存在により、このプロセスは留出物の収率を改善することを可能にする。
【0023】
さらに、米国特許出願公開第2012271085号明細書は、アルコール縮合を含む、炭化水素供給物から留出物を生成する方法を教示している。この発明は、C3-C10オレフィンをC10+分子を含有する留出物にオリゴマー化する方法に関する。この開示によれば、少なくとも2個の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルコールの存在下でのC3-C10オレフィンのオリゴマー化は、C10+炭化水素の生成をもたらす。
【0024】
米国特許第9790444号明細書は、燃料を製造する方法を開示している。この開示は、概して燃料の製造に関し、より具体的には、燃料中の成分としての使用に適した炭化水素ケトンへのアルコールの触媒変換に関する。より具体的には、この開示は、イソプロパノール+ブタノール+エタノール(IBE)またはアセトン+ブタノール+エタノール(ABE)混合物の、燃料としての使用に適したケトンへの触媒変換に関する。ABEまたはIBEのブレンドは、バイオマスまたは糖の発酵によって得ることができる。炭化水素ケトンの混合物を生成するための方法は、アセトンおよび少なくとも2つ以上の第一級アルコールを触媒および場合により塩基と接触させて、炭化水素ケトンの混合物を得ることを含み、触媒は、(i)1つ以上の金属、および(ii)ハイドロタルサイト(HT)、酸化ランタン(La2O3)、二酸化チタン(TiO2)、もしくは酸化マグネシウム(MgO)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0025】
米国特許第9914672号明細書は、アルコールを留出物燃料に変換する方法を教示している。アルコールおよびアルコールの混合物からジェット燃料および他の重質燃料を製造する方法が開示されている。このプロセスは、反応ゾーンにおいて、少なくとも1つのC2-C11アルコールを、アルコールの同時脱水によるオレフィンの形成、オレフィンの異性化による内部オレフィンの形成、および脱水によるその場での生成されたオレフィンのオリゴマー化によるモノ-オレフィン炭化水素を含む排出物の形成のための活性を有する固体触媒と接触させることを含み得る。好ましくは、アルコール供給物は、ブレンドせずにジェット燃料として直接使用することができる分岐炭化水素の混合物の生成を可能にする、C2-C7アルコールまたはC4およびC6アルコールなどのアルコールの混合物である。ジェット燃料および他の重質燃料の製造のための開示された方法は、(i)反応ゾーンにおいて、少なくとも1つの第二級アルコールを含む、C2-C11の2つ以上のアルコールの混合物を、アルコールを脱水してオレフィンおよび水を生成する活性を有する固体触媒と接触させること、(ii)脱水反応からその場で得られたオレフィンのオリゴマー化、および(iii)得られたオレフィンオリゴマーおよびオレフィンを異性化して内部オレフィンを得て、モノオレフィン炭化水素を得ることを含む。さらに、C2-C11アルコールは、バイオマス発酵または合成ガスへのバイオマスガス化とそれに続く改変フィッシャートロプシュ合成によって得られることが教示されている。
【0026】
米国特許第9688590号明細書は、イソブタノールからのジェット燃料および他の重質燃料の製造を教示している。
【0027】
米国特許第8329970号明細書は、生体由来の材料の脱酸素のための方法を教示している。この開示は、バイオ燃料として、またはガス、ガソリン、ディーゼル燃料および航空燃料などのバイオ燃料のための原料または成分、ならびに溶媒をブレンドするのに適した直鎖および分枝炭化水素を生成するための、生体由来の材料の脱酸素のための方法、特にバイオマス由来の有機化合物からの一酸化炭素による酸素の除去に関する。この方法は、ルテニウム、マンガン、ロジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、モリブデン、銅、亜鉛、パラジウム、白金およびコバルトからなる群から選択される金属を含む触媒の存在下、水の存在下、150~350℃の温度のアルカリ性条件下および0.1~150バールの圧力下で、供給原料を一酸化炭素と接触させて炭化水素を生成することを含む。
【0028】
国際公開第2020093127号は、再生可能なイソパラフィン化合物を製造するためのプロセス、および再生可能なイソパラフィン化合物の使用を教示している。特許請求された発明は、高いオクタン価を有する再生可能なイソパラフィン化合物を製造するためのプロセスに関し、再生可能な原材料から得られる初期C5アルコール量とメタノールとの間のゲルベ反応により、分岐した再生可能なC6アルコールを生成する工程、分岐した再生可能C6アルコールのC6オレフィンへの脱水、および再生可能なイソパラフィンへのC6オレフィンの水素化を含む。組成中に再生可能な天然由来の少なくとも50%の炭素を含む、高オクタン価を有する再生可能なイソパラフィン化合物、および一般的なガソリンおよび航空ガソリンなどの特別な高性能ガソリンにおける再生可能なパラフィンの使用も記載されている。
【0029】
上記の開示の他に、以下に言及される文献は、特許請求される発明に関連性を有する。
【0030】
エチレンおよびプロピレンを含む軽質オレフィンのヒドロホルミル化を扱ういくつかの特許開示がある。
【0031】
英国特許第1086100号明細書は、オレフィンのヒドロホルミル化によってアルデヒドを製造する方法を教示しており、エチレンまたはプロピレンを、コバルトを含有する触媒の存在下、20MPaを超えない圧力および135℃の温度で、一酸化炭素と水素との混合物、および不活性ガスと反応させる。反応器内のガスの総量中の水素含有量は30~45mol%であり、不活性ガスは5~15mol%である。不活性ガスとしては、メタン、エタンまたは窒素を用いることができる。開示されたヒドロホルミル化プロセスでは、酢酸コバルト、酸化コバルト、ナフテン酸コバルト、ギ酸コバルト、コバルトカルボニルまたはヒドロカルボニル、オレイン酸コバルトおよび炭酸コバルトなどの標準的なコバルト含有ヒドロホルミル化触媒を使用することができる。
【0032】
特開2006160746号は、合成段階へのアルデヒドの添加を特徴とするヒドロホルミル化の方法を開示している。触媒に未修飾コバルト錯体を使用するヒドロホルミル化の実施、ならびに供給原料中のアルデヒドの存在は、0.5~20mol%の範囲で標的生成物の形成の選択性を増加させる。この方法は、7~25個の炭素原子を有するオレフィンのヒドロホルミル化に関する。
【0033】
中国特許第1168129号明細書は、全炭化水素含有量に基づき27.5~75重量%のエチレンおよび80重量%以下のオレフィン総含有量を含有する流れを含む炭化水素流のヒドロホルミル化を提供する方法を開示している。その後ロジウム含有触媒の存在下でこれを合成ガスと接触させ、ヒドロホルミル化生成物を回収する。触媒は、背圧制御を有する連続ガス供給システムを備えた500mlオートクレーブ中で調製された。テトラグライム201g、トリフェニルホスフィン15.6gおよびロジウム0.70mgが窒素下で混合された。触媒溶液を窒素下でオートクレーブに移し、オートクレーブを窒素でパージした後、ガス流が表1に示されるようにボイラに導入された。次いで、圧力が1000kPa(絶対圧力)に設定され、背圧制御がオンにされ、その後オートクレーブおよびその内容物が100℃まで加熱された。触媒含有量85ppmで、ヒドロホルミル化反応におけるオレフィンの変換率は65%に達した。
【0034】
中国特許第101768062号明細書は、ロジウムホスフィンに基づく水溶性錯体を使用するヒドロホルミル化プロセスを教示している。このプロセスは静的混合反応器内で行われ、プロパナールとブタナールの同時形成を含む。この発明は連続プロセスであり、触媒水溶液はポンプによって再循環され、静的混合反応器内の触媒水溶液の空間速度は0.2~1.2m/sである。循環タンク内での反応液の滞留時間は10~20秒である。供給混合物中のオレフィン対水素ガスおよび一酸化炭素のモル比は、1:(1.0~1.1):(1.0~1.1)である。ヒドロホルミル化の反応圧力は1.4MPa~2.5MPaであり、反応温度は70~110℃である。ヒドロホルミル化は強い発熱反応であるため、反応器からの熱除去が期待される。特許請求されているヒドロホルミル化法によるオレフィン変換度は96.2%であり、選択性は95%である。
【0035】
中国特許第102115433号明細書は、ロジウムトリフェニルホスフィンである触媒上でプロパナールを合成する方法を開示している。この触媒では、ロジウム濃度が100ppm、トリフェニルホスフィン濃度が2.0%であった。プロパナールの合成は、1.5MPaの圧力および80℃の温度で行われた。プロパナールの収率は99.6%に達した。
【0036】
ロシア特許第2354642号明細書は、ロジウム、ポリホスファイト配位子およびリンを含有する促進配位子を含有する触媒系の存在下でオレフィンがヒドロホルミル化されることを特徴とする、C2-C20オレフィンのヒドロホルミル化の方法を教示している。ポリホスファイト配位子および促進配位子の一般式が示されている。
【0037】
ロシア特許第2561171号明細書は、C3-C4オレフィンの連続的な二段階ヒドロホルミル化の方法、およびC4-C5アルデヒドを製造するためのプロセスユニットを開示している。オレフィンのヒドロホルミル化は、ロジウム錯体、有機リン配位子、生成物アルデヒド、および重質副生成物を含有する再循環触媒溶液を使用して行われる。
【0038】
さらに、ロシア特許第2585285号明細書は、ホスファイト配位子を有するロジウム錯体を含有する再循環触媒溶液からの重生成物のナノ濾過分離を使用したC2-C8オレフィンの連続ヒドロホルミル化の方法を教示している。開示された方法は、アルデヒドの重縮合生成物を除去する場合、触媒活性ロジウム錯体および有機リン配位子の損失を低減することを可能にする。
【0039】
また、ロシア特許第2602239号明細書は、C7-C10アルコールへのC6-C9オレフィンのヒドロホルミル化の方法を教示している。C6-C9オレフィンのヒドロホルミル化は、濃度0.15~0.40重量%のコバルト化合物、および1~1.2の範囲のコバルトに対するモル比でトリフェニルホスフィンである有機リン配位子からなる触媒系を使用する。アルコールは、170~190℃の温度および5~10MPaの合成ガス圧力で生成される。C6-C9オレフィンの変換率は最大99%であり、C7-C10アルコールの収率は少なくとも90%である。
【0040】
ロシア特許第2051734号明細書は、酸化亜鉛ZnO 96.5~97.9%および酸化セリウムCeO2 2.1~3.42%を含有する触媒を使用して、エタノールをアセトンおよび二酸化炭素に変換するための触媒を開示している。
【0041】
ロシア特許第0002619951号明細書は、プロピオンアルデヒド生成のための二段階法を教示している。この方法は、有機金属フレームワーク構造によって支持された金属コバルトを含有する触媒の存在下での合成ガスへの二酸化炭素水素化の段階を含む。ヒドロホルミル化のための触媒として、担体に担持された金属ロジウムが使用された。このプロセスは、二段式フロースルー反応器内で、20~40atmの圧力で、反応器の上段に配置され、500℃の温度に加熱されたコバルトを含有する触媒の固定層を、500~1000h-1のガス供給の体積流量でH2およびCO2の原材料混合物と接触させることによって行われた。その後、500~520℃の温度に加熱された、CO+H2+CO2の混合物を含む得られた反応ガスが、棚間空間に供給された冷エチレンと混合された。CO:H2:C2H4=1:(1-2):1の比の得られたガス混合物が、そこに配置されたロジウム含有触媒との相互作用のために170~230℃の温度で反応器の下側棚に供給された。提案された方法は、標的生成物形成の選択性を最大58.1%まで、収率を最大20.1%まで増加させ、温室効果ガスCO2の利用を確実にする。
【0042】
バイオマスをアルコールに加工する最大規模で最も工業的に開発された方法は、現在エタノール製造のプロセスであることに留意されたい。
【0043】
現在、エタノールは、個別に、およびオクタン価を増加させるためにエーテルの形態で、ガソリンに使用されている。しかしながら、ガソリン中のエタノールのより広範な使用は、関連する基準によって規制される酸素含有量制限によって制限される。
【0044】
同時に、エタノールならびにC3-C5アルコールは、生合成によって得られ、酸素を含まないモータ燃料に加工され得ることが知られている。参照例「Conversions of mixtures of C2-C8 olefins to jet fuel and/or diesel fuel in high yield from bio-based alcohols」国際公開第2018071905号、米国特許出願公開第2020010767号明細書。この方法は、バイオマスから抽出された炭水化物の発酵によって得られたC2-C5アルコールを処理することによるC8-C16パラフィンの製造からなる。このようにして得られたパラフィンは、モータ燃料を製造するために使用することができる。この方法は、モータ燃料の成分として使用することができる炭化水素を得る可能性を実証する。さらに、この方法は、モータ燃料の製造においてバイオマスから得られたC2-C5アルコールを使用する必要性を直接示している。また、この文献は、高級オレフィンC12-C16を得るためにC2-C8オレフィンのオリゴマー化を用いることを提案している。また、この文献は、C8-C16パラフィンを得るためにC8-C16オレフィンの水素化を用いることを提案している。
【0045】
本発明の目的
本発明が解決しようとする課題は以下の通りである。
【0046】
エチルアルコールをC3-C8アルコールを含む高級アルコールに変換する方法の開発、
C3-C8アルコール、一次分枝アルコールの生成方法の開発、
C4-C8分岐アルデヒドの収率を増加させるという目標を含む、C2-C3オレフィンのヒドロホルミル化技術の改善、
直鎖分子含有量が5%以下であり、芳香族および環状化合物を含まない、高級分岐オレフィンの留分の生成をもたらす、高級オレフィンへの低級オレフィンオリゴマー化のための技術の開発、
各種化合物の数が50個以上、好ましくは100個を超え、直鎖分子の含有量が5%を超えず、芳香族および環状化合物を含まないC6-C24分岐パラフィンの生成方法の開発、
分岐構造のC7-C16エーテルを生成する方法の開発、
RONオクタン価が少なくとも95であり、芳香族化合物を含まないガソリンの製造方法および組成物の開発、
芳香族化合物を含まない、一次分枝構造の灯油炭化水素留分の生成方法および組成物の開発、
主に分枝構造の炭化水素留分を含有し、8~25体積%の範囲の芳香族化合物含有量を有する灯油の製造方法および組成物の開発、
芳香族化合物を含有しないディーゼルおよびディーゼル組成物の製造方法の開発、
生体由来の原材料を使用してガソリン、灯油およびディーゼルを製造するための技術の開発。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】米国特許第8193402号明細書
【特許文献2】米国特許第8373012号明細書
【特許文献3】米国特許第8487149号明細書
【特許文献4】国際公開第2018071905号
【特許文献5】米国特許出願公開第2020010767号明細書
【特許文献6】米国特許第10633320号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2011245542号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2012198760号明細書
【特許文献9】米国特許第9228134号明細書
【特許文献10】米国特許第9771533号明細書
【特許文献11】米国特許第9932531号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2020165176号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2013144094号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2013219778号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2013237728号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2015376511号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2016108323号明細書
【特許文献18】米国特許第8049048号明細書
【特許文献19】カナダ特許第2800057号明細書
【特許文献20】米国特許第8852296号明細書
【特許文献21】米国特許第9447347号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2012156742号明細書
【特許文献23】米国特許第9862655号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2016312131号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2016312134号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2010146843号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2011126448号明細書
【特許文献28】国際公開第2014154799号
【特許文献29】欧州特許第2285972号明細書
【特許文献30】国際公開第2019084518号
【特許文献31】米国特許出願公開第2019233751号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2012271081号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第2012271085号明細書
【特許文献34】米国特許第9790444号明細書
【特許文献35】米国特許第9914672号明細書
【特許文献36】米国特許第9688590号明細書
【特許文献37】米国特許第8329970号明細書
【特許文献38】国際公開第2020093127号
【特許文献39】英国特許第1086100号明細書
【特許文献40】特開2006160746号
【特許文献41】中国特許第1168129号明細書
【特許文献42】中国特許第101768062号明細書
【特許文献43】中国特許第102115433号明細書
【特許文献44】ロシア特許第2354642号明細書
【特許文献45】ロシア特許第2561171号明細書
【特許文献46】ロシア特許第2585285号明細書
【特許文献47】ロシア特許第2602239号明細書
【特許文献48】ロシア特許第2051734号明細書
【特許文献49】ロシア特許第0002619951号明細書
【特許文献50】国際公開第2018071905号
【特許文献51】米国特許出願公開第2020010767号明細書
【発明の概要】
【0048】
上記目的のうちの1つ以上を達成するために、ガソリン、灯油およびディーゼルから選択されるモータ燃料をエタノールから製造するための以下の方法が提供され、この方法は、以下の相互接続された工程を含む。
【0049】
工程1.1 エタノールと水との混合物を、イソプロパノールおよびC5アルコール;アセトアルデヒド;C1-C4パラフィンとC2-C4オレフィンとの混合物;二酸化炭素と水素との混合物に変換する工程、
工程1.2 工程1.1で得られた二酸化炭素と水素との混合物、追加の水素、およびC1-C4パラフィンの混合物を合成ガスに変換する工程、
工程1.3 エタノール、および工程1.1から得られたC5アルコールを含むC3-C8アルコールを、エチレンおよびプロピレンを含むC2-C8オレフィンに変換する工程、
工程1.4 テロマー化反応を使用して、工程1.1からの未反応エタノール、工程1.1で得られたイソプロパノール、工程1.3で得られたエチレンの混合物を、第二級ブタノールおよび第三級C5-C8アルコールに変換する工程であって、第三級C5およびC7アルコールがイソプロパノールから得られ、第三級C6およびC8アルコールがエタノールから得られ、得られた第二級ブタノールが工程1.3に導かれる、工程、
工程1.5 工程1.4で得られたC5-C8第三級アルコールを脱水によってC5-C8オレフィンに変換する工程、
工程1.6 工程1.5で得られたC5-C8オレフィンの第1の部分をオリゴマー化によってC10-C24オレフィンに変換する工程、
工程1.7 工程1.6で得られたC10-C24オレフィンを、工程1.1で得られた水素を用いた水素化によってC10-C24パラフィンに変換する工程、
工程1.8 工程1.2で得られた合成ガス、工程1.3で得られたエチレン、工程1.3で得られたプロピレン、および工程1.1で得られたアセトアルデヒドを、ヒドロホルミル化およびアルドール縮合によってC3-C4アルデヒドとC5-C8アルドールとの混合物に変換し、このC3-C4アルデヒドとC5-C8アルドールとの混合物をその後水素化してC3-C8アルコールを得、このアルコールを工程1.3に導いてC3-C8オレフィンを得る工程であって、アセトアルデヒドがC5アルコールを生成し、工程1.3からのエチレンがC3およびC6アルコールを生成し、工程1.3からのプロピレンがC4およびC8アルコールを生成し、工程1.3からのエチレンおよびプロピレンがC7アルコールを生成する、工程、
工程1.9 工程1.3からのC2-C8オレフィンをオリゴマー化によってC6-C24オレフィンに変換する工程、
工程1.10 工程1.9で得られたC6-C24オレフィン、および水素を、水素化によってC6-C24パラフィンに変換する工程、
工程1.11 工程1.9からの未反応C2-C5オレフィン、ならびに工程1.1で得られたC2-C4オレフィンとC1-C4パラフィンとの混合物を、芳香族化によってC7-C12芳香族炭化水素、水素、およびC1-C4パラフィンの混合物に変換する工程であって、生成された水素の第1の部分が工程1.10に導かれ、生成された水素の残りの第2の部分およびC1-C4パラフィン混合物が工程1.2に導かれる、工程、
工程1.12 工程1.5で得られたC5-C8オレフィンの混合物の残りの第2の部分および工程1.3からのC2-C8アルコールの一部を、C7-C16エーテルに変換する工程、および
工程1.13 工程1.7で得られたC10-C24パラフィンおよび工程1.10で得られたC6-C24パラフィンを、モータ燃料のC6-C10ガソリン、C11-C18灯油およびC19-C24ディーゼル留分に変換し、工程1.11で得られたC7-C12芳香族炭化水素を、モータ燃料のC7-C8ガソリンおよびC9-C12灯油留分に変換し、工程1.12で得られたC7-C16エーテルを、モータ燃料のC7-C10ガソリンおよびC11-C16ディーゼル留分に変換し、さらにその選択された留分をガソリン、灯油およびディーゼルから選択されるモータ燃料に混合する工程。
【0050】
エタノールからモータ燃料を製造するための方法は、本発明者によって開発されており、エタノールをモータ燃料に変換する技術的プロセスは、以下のように実行される。
【0051】
エタノールは、2つの異なる経路によってC3-C8アルコールに変換される。
【0052】
経路の1つでは、500~515℃のエタノールと水との混合物を、以下の金属酸化物からなる不均一触媒と接触させ:ZnO 60~63質量%、CeO2 1~6質量%、MgO 12~18質量%、Al2O3 13~23質量%(割合は金属酸化物に関して計算)、主に水およびアセトン、ならびにアセトアルデヒドおよびジエチルケトンで構成される液体反応媒体を生じる。さらに、主に二酸化炭素および水素、ならびにC2-C4オレフィンおよびC1-C4パラフィンで構成されるガス状反応媒体が得られる。次いで、アセトンおよびジエチルケトンを水素化して、イソプロパノールおよび3ペンタノールアルコールを得る。次いで、アセトアルデヒドをプロパナールとのアルドール縮合に使用して、2-メチルブテナールを得、これを水素化して2メチルブチルアルコールにする。C2-C4オレフィンとC1-C4パラフィンとの混合物は、芳香族化合物を得るための芳香族化のプロセスで使用される。二酸化炭素および水素は、CuまたはNi触媒の存在下で合成ガスに変換される。
【0053】
その後、ジトレタミルペルオキシドの存在下でのエタノールおよびイソプロパノールは、エチレンと相互作用してsec-ブタノールならびに第三級C5-C8アルコールを形成する。
【0054】
別の経路では、ガンマAl2O3触媒の存在下でエタノールまたはプロパノールを脱水することによって得られたエチレンまたはプロピレンを、二酸化炭素および水素から生成された合成ガスによってヒドロホルミル化することによって、C3-C8アルコールが得られる。エチレンまたはプロピレンのヒドロホルミル化は、水溶性ロジウム触媒を使用して不均一反応媒体中で行われる。この場合、水相中のロジウムの濃度は、30~50ppmである。トリフェニルホスフィン-スルホン酸ナトリウム塩、すなわち、トリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩からトリフェニルホスフィン-3,3’、3”-トリスルホン酸三ナトリウム塩を配位子として使用する。プロピオンまたはブチルアルデヒドを得るプロセスは、45~90℃の温度および1.0~3.0MPaの圧力で行う。得られたアセトアルデヒド、プロピオンおよびn-ブチルアルデヒドを、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含有する不均一粒状触媒の存在下、100~150℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で交差アルドール縮合によって処理する。次いで、得られたアルデヒドとC3-C8アルドールとの混合物を水素化して、C3-C8アルコールを得る。
【0055】
また、二酸化炭素と水素から生成した合成ガスによるエタノールやプロパノールの脱水で得られるエチレンやプロピレンのヒドロホルミル化は、水溶性コバルト触媒を用いた不均一系反応媒体中で行うことができることがわかった。コバルト触媒を使用する場合、水相中の金属の濃度は0.1%~1.0%である。この場合、トリフェニルホスフィン-スルホン酸ナトリウム塩、すなわち、トリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩からトリフェニルホスフィン-3,3’、3”-トリスルホン酸三ナトリウム塩を配位子として使用する。エチレンまたはプロピレンのヒドロホルミル化は、120~145℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で行う。プロピオンまたはブチルアルデヒドの形成に加えて、アルデヒドの縮合が反応媒体中で起こり、2-メチルペンテナールまたは2-エチルヘキセナールを生じることが実証された。得られたアルデヒドおよびアルドール混合物の水素化により、C3-C8アルコール混合物を生成する。
【0056】
第一級および第二級C2-C8アルコールの脱水によって得られたC2-C8オレフィンを、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含む不均一触媒の存在下、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5を含む不均一触媒の存在下、250~350℃の温度および2.0~5.0MPaの圧力でオリゴマー化して、C6-C24オレフィンを得る。オリゴマー化反応からの未反応C2-C5オレフィンは、350~450℃の温度および0.5~5.0MPaの圧力で、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含む不均一触媒の存在下で、芳香族C7-C12化合物を生成するための原材料として使用される。
【0057】
第三級C5-C8アルコールの脱水によって得られたC5-C8オレフィンを、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、例えばAmberlite15である不均一触媒の存在下、70~120℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力でオリゴマー化して、C10-C24オレフィンを得る。オリゴマー化反応からの未反応C5-C8オレフィンならびに第一級および第二級C5-C8アルコールの比例部分は、例えば陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite15の存在下、70~120℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で、C7-C16エーテルを生成するための原料物質として使用される。
【0058】
C6-C24およびC10-C24オレフィンを、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3を含有する不均一触媒の存在下、150~200℃の温度および4.5~5.0MPaの圧力で水素化して、C6-C24およびC10-C24パラフィンを得る。その後、C6-C24およびC10-C24パラフィンを精留に導き、C6-C10ガソリン、C11-C18灯油およびC19-C24ディーゼル留分を得る。C6-C10パラフィンの単離されたガソリン留分をC7-C10エーテルおよび/またはC7-C8芳香族炭化水素とブレンドして、現在の規格EN228に適合するが、少なくとも100のRONオクタン価および少なくとも93のMONを有するガソリンを得る。分離されたC11-C18パラフィンの灯油留分をC9-C12芳香族炭化水素とブレンドして、Jet A-1の現在の基準に適合する灯油を得る。C19-C24パラフィンの単離されたディーゼル留分をC1-C16エーテルとブレンドして、現在の基準に適合するディーゼル燃料を得る。
【0059】
エタノールからモータ燃料を製造するために開発された方法、ならびにエタノールを変換するための技術的プロセスの提案された概略図は、環境に優しい灯油、ならびにガソリンおよびディーゼルの工業生産を確立することを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明のプロセスのブロックスキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、エタノールをモータ燃料、特に灯油に変換するために開発された本発明のスキームを示す。
【0062】
灯油および他のモータ燃料の本発明の製造に使用される供給原料はエタノールである。モータ燃料製造のための本発明の方法の好ましいエタノールは、木材または人間および人間の活動からの廃棄物から製造される。エタノールをモータ燃料に変換するために本発明者らによって提案された方法の経済効率を高めるために、エタノールの生成において得られた二酸化炭素およびメタンと共に、フーゼル油を追加の原材料として使用することができる。また、本発明によれば、エタノールをモータ燃料に変換する本発明の方法のためのエネルギー源として、環境に優しい原料および植物バイオマスの廃棄物から得られた電気を使用することが推奨される。
【0063】
従来技術では、アセトンをエチルアルコールから高収率、すなわち理論収率の95%で得ることができることが知られている。蒸気と混合したエチルアルコールの蒸気を、54%の鉄および酸化クロム、8%の酸化銅および38%の炭酸カルシウムを含有する触媒を通して400~425℃に導く。全反応は、以下の式によって記述される。
【0064】
2С2H5OH+H2O触媒、t°→CH3-CO-CH3+CO2↑+4H2↑
上記の先行技術の参考文献の1つであるロシア特許第2051734号明細書に開示されているように、アセトンは、ZnO、96.5~97.9%およびCeO2、2.1~3.42%からなる触媒の存在下での反応のほぼ唯一の液体生成物である。
【0065】
本発明のモータ燃料の製造方法の工程1.1において、エタノールの水溶液を、500~515℃の温度および0.9~1.1MPaの圧力で、特別に設計された触媒の存在下で、アセトン、アセトアルデヒド、ジエチルケトンおよびC3-C5アルコールの混合物に変換する。触媒の組成は、ZnO、60~63質量%;CeO2、1~6質量%;MgO 12~18質量%;Al2O3、13~23質量%である。さらに、エタノールの一部は、これらの条件下で、二酸化炭素、水素およびC2-C4オレフィンとC1-C4パラフィンとの混合物に変換される。
【0066】
使用される触媒の存在下でのエタノールの上記生成物の混合物への変換は予想外であり、灯油に使用することができる炭化水素の生成の新しい可能性を開く。
【0067】
本発明の方法の好ましい実施形態では、その含有量が混合物の全体積の25%~35%であるエタノールと水との混合物は、0.5~1.5MPaの圧力および500~515℃の温度で、以下の金属酸化物:ZnO 60~63質量%、CeO2 1~6質量%、MgO 12~18質量%、Al2O3 13~23質量%の金属酸化物(割合は金属酸化物に関して計算)からなる不均一触媒と接触し、エタノールと水との混合物は、1時間当たり触媒1リットル当たり0.5~0.9リットルの速度で触媒に供給される。このプロセスで得られたアセトンおよびジエチルケトンを反応混合物から単離し、モル比1:1の酸化物CuOおよびCr2O3を含有する触媒の存在下、100~150℃の温度および0.5~0.9MPaの圧力で水素によって水素化し、これはエタノールと水との混合物からも得られる。これにより、イソプロパノールおよび3-ペンタノールが得られる。C3-C5アルコールの混合物を、触媒であるガンマAl2O3の存在下での脱水によって、対応するオレフィンを生成するために使用する。反応媒体から単離されたイソプロパノールを使用して、第三級アルコールC5-C7およびC7+を得る。さらに、以下の金属酸化物:ZnO 60~63質量%、CeO2 1~6質量%、MgO 12~18質量%、Al2O3 13~23質量%(割合は金属酸化物に関して計算)からなる触媒を接触させ、エタノールと水との混合物を用いてアセトアルデヒドを生成し、これを反応媒体から単離し、プロパナールとのアルドール縮合に使用して2-メチルブテナールを得る。次いで、2-メチルブテナールを水素化して、2-メチルブタノールを得る。本発明の方法にとって特に重要なのは、以下の金属酸化物:ZnO 60~63質量%、CeO2 1~6質量%、MgO 12~18質量%、Al2O3 13~23質量%(割合は金属酸化物に関して計算)からなる触媒と接触すると、エタノールと水との混合物が二酸化炭素と水素に変換される可能性である。本発明の方法の工程1.2において、この二酸化炭素と水素は、Al2O3によって支持された5~10%のCuを含有する触媒の存在下、温度550~600℃および圧力P=1.0~5.0MPaで水および一酸化炭素に変換されるか、またはモル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3を含有する触媒を使用して、温度900~1000℃および圧力P=0.1~0.5MPaで一酸化炭素と水素との混合物に変換される。一酸化炭素と水素は、合成ガスを生成するために本発明の方法の工程1.2で使用される。
【0068】
エタノールの脱水は、350~450℃および圧力0.5~3.5MPaで、連続流通反応器内でガンマAl2O3触媒の存在下で、本発明のオレフィン生成方法の工程1.3で行われる。
【0069】
脱水反応器内でエチレンおよび水が形成される。脱水反応器からの反応混合物は精留塔に入り、そこでエチレンが得られた水から分離する。水は、アセトン生成のプロセスにおけるエタノール水溶液の生成に向けられる。
【0070】
エタノールの脱水によって得られたエチレンは、テロマー化の反応を実施するための本発明のプロセスの工程1.4、またはヒドロホルミル化の反応を実施するための本発明のプロセスの工程1.8に関する。
【0071】
n-プロパノールまたはイソプロパノールの脱水によって得られるプロピレンは、ヒドロホルミル化の反応を行うための本発明の方法の工程1.8に導かれる。本発明のモータ燃料の製造方法で得られたC3-C8アルコールは、本発明の方法の工程1.3において、触媒としてガンマAl2O3を使用することによって同様の方法で対応するオレフィンC3-C8に加工される。本発明の方法の工程1.3で得られたC2-C8オレフィンは、本発明の方法の工程1.9に送られて、C6-C24オレフィンへのオリゴマー化の反応を行う。
【0072】
本発明の方法の工程1.3でのエタノールの脱水から得られたエチレンのヒドロホルミル化は、ロジウムまたはコバルト触媒のいずれかの存在下で本発明の方法の工程1.8で行われる。エチレンヒドロホルミル化のプロセスは、水溶性触媒を使用して不均一反応媒体中で行われる。ロジウム触媒を用いる場合、液相に対する金属の濃度は30~50ppmである。この場合、トリフェニルホスフィン-スルホン酸ナトリウム塩、すなわち、金属ロジウムに対する比30:1のトリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩からトリフェニルホスフィン-3,3’、3”-トリスルホン酸三ナトリウム塩を配位子として使用する。このプロセスは、45~90℃の温度および1.0~3.0MPaの圧力で撹拌装置を用いて反応器内で行われる。原料ガスC2H4:CO:H2=(1~1.1):1:1のモル比は、流量計によって維持される。
【0073】
本発明の方法の好ましい実施形態では、触媒損失を低減するために、エチレンヒドロホルミル化のプロセスで得られた有機相を、高効率の遠心分離機を使用して、溶解したRh触媒作用を含む水相から分離する。
【0074】
得られた反応塊は、高効率の遠心分離機に入り、そこで、未反応エチレン、一酸化炭素および水素を含有する気相、主にプロパナールを含有する液体有機相、および水溶性ロジウム触媒を含有する液体水相の3相に分離する。気相および液体水相は、計量装置によってヒドロホルミル化反応器に戻される。
【0075】
主にプロパナールからなる液体有機相は、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を充填した反応器に導かれ、そこでプロパナールは100~150℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で2-メチル-ペンテナールに変換される。
【0076】
主に2-メチル-ペンテナールならびにプロパナールを含有する液体有機相は、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3を含む粒状触媒を充填した反応器に送られ、そこで2-メチル-ペンテナールおよびプロパナールは、150~200℃の温度および4.5~5.0MPaの圧力で2-メチル-ペンタノールおよびプロパノールに変換される。
【0077】
さらに、ヒドロホルミル化によって得られたプロパナールは、アセトンへのエタノール変換のための本発明の方法によって得られたアセトアルデヒドと混合され、2-メチル-ブテナールを生成するために使用される。このために、モル比1:1のアセトアルデヒドとプロパナールとの混合物を、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を充填した反応器に導き、そこで原料アルデヒドの混合物を100~150℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で2-メチル-ブテナールに変換する。2-メチル-ブテナールを含有する反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる粒状触媒で充填された反応器に導き、そこで2-メチル-ブテナールを100~200℃の温度および5.0~9.0MPaの圧力で2-メチル-ブタノールに変換する。
【0078】
本発明の方法の工程1.3で得られた、ロジウム触媒の存在下でのn-プロパノールまたはイソプロパノールの脱水によるプロピレンのヒドロホルミル化は、好ましくは以下のように行われる。プロパナールの水素化により得られたプロパノール、またはアセトンの水素化により得られたイソプロパノールを脱水する。プロピルアルコールの脱水は、不均一ガンマAl2O3触媒を用いて、350~450℃の温度および0.1~1.0MPaの圧力で行う。プロピルまたはイソプロピルアルコールの脱水によって得られたプロピレンは、水から分離され、ヒドロホルミル化に送られる。
【0079】
プロピレンのヒドロホルミル化は、水溶性ロジウム触媒を使用して不均一反応媒体中で行われる。ロジウム触媒をプロピレンのヒドロホルミル化に使用する場合、液相に対する金属濃度は30~50ppmである。この場合、トリフェニルホスフィン-スルホン酸ナトリウム塩、すなわち、金属ロジウムとの比30:1のトリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩からトリフェニルホスフィン-3,3’、3”-トリスルホン酸三ナトリウム塩を配位子として使用する。このプロセスは、70~90℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で撹拌装置を用いて反応器内で行われる。原料ガスのモル比C3H6:CO:H2=(1~1.1):1:1は、流量計によって維持される。
【0080】
プロピレンヒドロホルミル化反応の速度を増加させ、イソブタナールの収率を増加させるために、C2-C3アルコールをH2O:(C2-C3)=(0.95-0.65):(0.05-0.35)の体積比で水溶性Rh触媒に添加する。
【0081】
さらに、触媒損失を低減するために、プロピレンのヒドロホルミル化で得られた有機相を、高効率の遠心分離機を使用して、溶解したRh触媒を含む水相から分離する。
【0082】
得られた反応塊を高効率遠心分離機に導き、反応塊を(i)未反応プロピレン、一酸化炭素および水素を含有する気相、(ii)主にブタナールを含有する液体有機相、および(iii)水溶性ロジウム触媒を含有する液体水相の3相に分離する。気相および液体水相は、計量装置によってヒドロホルミル化反応器に戻される。
【0083】
n-ブタナールとイソブタナールを重量比(2~3):1で含有する液体有機相を、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を充填した反応器に移し、そこで100~150℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力でブタナールを2-エチル-ヘキセナールに変換する。
【0084】
主に2-エチル-ヘキセナールならびにイソブタナールを含有する液体有機相は、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる粒状触媒で充填された反応器に送られ、そこで、100~200℃の温度および5~10MPaの圧力で、2-エチル-ヘキセナールおよびイソブタナールは2-エチルヘキサノールおよびイソブタノールに変換される。
【0085】
さらに、本発明の方法は、好ましい実施形態では、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する不均一触媒、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒の存在下で、n-ブタナール、アセトアルデヒドおよびプロパナールの交差アルドール縮合によってC5-C8アルコールを得ることを提供する。次いで、得られた2-メチル-ブテナール、2-メチル-ペンテナール、2-メチル-ヘキセナールおよび2-エチル-ヘキセナールを、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる不均一系触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化して、2-メチル-ブタノール、2-メチル-ペンタノール、2-メチルヘキサノールおよび2-エチル-ヘキサノールを得る。
【0086】
水溶性コバルト触媒を低級C2-C3オレフィンのヒドロホルミル化に使用できるという事実は予想外であった。コバルト触媒を使用する場合、液相に対する金属の濃度は0.1%~1.0%である。トリフェニルホスフィン-スルホン酸ナトリウム塩、すなわち、金属コバルトに対する比(1~30):1のトリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩からトリフェニルホスフィン-3,3’、3”-トリスルホン酸三ナトリウム塩を配位子として使用する。エチレンのヒドロホルミル化は、撹拌装置を備えた反応器内で、120~140℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で行う。原料ガスのモル比:C2H4:CO:H2は、1:1:1~1:1.5:2.5であり、流量計によって維持される。
【0087】
触媒損失を低減するために、エチレンのヒドロホルミル化中に形成された有機相は、高効率の遠心分離機を使用して、Co触媒が溶解している水相から分離させる。得られた反応塊を高効率遠心分離機に移し、未反応エチレン、一酸化炭素および水素を含む気相、主にプロパナール、2-メチルペンテナールおよび2-メチルペンタナールを含む液体有機相、ならびに水溶性コバルト触媒を含む液体水相の3相に分離させる。気相および液体水相は、計量装置によってヒドロホルミル化反応器に戻される。2-メチルペンテナールおよび2-メチルペンタナールがヒドロホルミル化工程で直接得られたという事実は予想外であった。
【0088】
主にプロパナールならびに2-メチルペンテナールおよび2-メチルペンタナールを含有する液体有機相を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3を含有する粒状触媒が充填された反応器に移し、そこで150~200℃の温度および4.5~5.0MPaの圧力で、アルデヒドの混合物を対応するアルコールの混合物、すなわちn-プロパノールおよび2-メチルペンタノールに変換する。
【0089】
プロピレンのヒドロホルミル化は、135~140℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で撹拌装置を用いて反応器内で行われる。供給ガスC3H6:CO:H2のモル比は、1:1:1~1:1.5:2.5であり、流量計によって維持される。プロピレンヒドロホルミル化の反応速度を増加させ、イソブタナールの収率を増加させるために、C2-C3アルコールをH2O:(C2-C3)=(0.95-0.5):(0.05-0.5)の体積比で水溶性コバルト触媒に添加する。触媒損失を低減するために、プロピレンのヒドロホルミル化中に形成された有機相を、高効率の遠心分離機を使用して、Co触媒が溶解している水相から分離させる。得られた反応塊を高効率遠心分離機に移し、未反応プロピレン、一酸化炭素および水素を含む気相、n-ブタナール、イソブタナール、2-エチルヘキセナールおよび2-エチルヘキサナールを含む液体有機相ならびに対応するアルコールの一部、ならびに水溶性コバルト触媒を含む液体水相の3相に分離させる。気相および液体水相は、計量装置によってヒドロホルミル化反応器に戻される。2-エチルヘキセナールおよび2-エチルヘキサナールならびにブチルアルコールおよび2-エチルヘキサノールがヒドロホルミル化工程で直接得られたという事実は予想外であった。
【0090】
n-ブタナールとイソブタナールを(2~3):1の質量比で含有する液体有機相、ならびに2-エチルヘキセナールおよび2-エチルヘキサナールから、精留によりn-ブタナールとイソブタナールとの混合物を分離する。
【0091】
n-ブタナールとイソブタナールとの混合物を、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を充填した反応器に導き、そこで、100~150℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で、n-ブタナールを2-エチルヘキセナールに変換する。
【0092】
次いで、このようにして得られたアルデヒドを、イソブタナール、2-エチルヘキセナールおよび2-エチルヘキサナールを含有する一般的な混合物に合わせる。このアルデヒドの混合物は、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる粒状触媒で充填された反応器に送られ、そこで150~200℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で、イソブタナール、2-エチルヘキセナールおよび2-エチルヘキサナールは、対応するアルコールの混合物、すなわちイソブタノールおよび2-エチルヘキサノールに変換される。
【0093】
さらに、好ましい実施形態では、本発明の方法は、以下のようにC3-C6アルコールを得ることを提供する。C5アルコール、すなわち:2-メチルブタノールを得るために、合成ガスによるエチレンヒドロホルミル化の反応中に、温度120~140℃および圧力P=2.0~5.0MPa、モル比(C2H4:CO:H2):(C2H4O)=1:0.5で、気体供給物と共にアセトアルデヒドを水溶性Co触媒に供給する。これにより、プロパナール、2-メチルペンテナールおよび2-メチルペンタナール、ならびにアセトアルデヒドとプロパナールとの交差アルドール縮合により形成される2-メチルブテナールが得られる。次いで、得られたプロパナールとアルドールC5-C6との混合物を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化して、2-メチルブタノールを含有するC3-C6アルコールの混合物を得る。
【0094】
同様にして、C7アルコール、すなわち2-メチルヘキサノールおよび2-エチルペンタノールを得るために、合成ガスによるプロピレンヒドロホルミル化の反応中に、温度135~140℃および圧力P=2、0~5.0MPa、モル比(C3H6:CO:H2):(C3H6O)=1:(0.5~1)で、水溶性Co触媒に気体供給物と共にプロパナールを供給する。これにより、イソブタナール、2-メチルペンテナール、2-メチルペンタナール、2-エチルヘキセナール、および2-エチルヘキサナール、ならびに2-メチルヘキセナールおよび2-エチルペンテナールが得られ、これらはn-ブタナールとプロパナールとの交差アルドール縮合により形成される。次いで、得られたイソブタナールとアルドールC6-C8との混合物を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化して、とりわけ2-メチルヘキサノールおよび2-エチルペンタノールを含有する、C4-C8アルコールの混合物を得る。
【0095】
エチレンおよびプロピレンのヒドロホルミル化は、本発明の技術によって得られる合成ガスを使用する。合成ガスの生成には、本発明の方法の工程1.1でエタノールをアセトンに変換する間に得られた二酸化炭素および水素を使用する。合成ガスの生成プロセスは、2つの方法で行われる。第1の方法では、モル比がCO2:H2=1:1の二酸化炭素と水素との混合物を、550~600℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で、Al2O3によって支持された5~10% Cuの粒状触媒で充填された反応器に供給する。このようにして得られた一酸化炭素は、冷却され、水から単離され、本発明の方法の工程1.8に導かれ、ヒドロホルミル化反応器に導かれる。一酸化炭素と同時に、CO:H2=1:1のモル比で水素をヒドロホルミル化反応器に供給する。
【0096】
第2の方法では、モル比がCO2:H2=1:(2-3)の二酸化炭素と水素との混合物を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる粒状触媒で充填した反応器に、950~1000℃の温度および0.1~0.5MPaの圧力で供給する。このようにして得られた一酸化炭素と水素との混合物を冷却し、水、二酸化炭素およびメタンから単離し、次いで、組成の調整のために合成ガス収集タンクに移す。一酸化炭素と水素との混合物と同時に、合成ガス収集タンクに水素を供給して、CO:H2=1:1のモル比に調整する。合成ガス収集タンクから、一酸化炭素と水素との混合物を、圧力3.0~5.0MPaの圧縮機によって本発明の方法の工程1.8でヒドロホルミル化反応器に導く。
【0097】
本発明のプロセスによって合成されたC2-C8アルコールは、個別におよび混合物としての両方でモータ燃料に変換することができる。C2-C8アルコールを高級パラフィンに変換するための主な経路は、C2-C8オレフィンのオリゴマー化に基づいており、これは次に、対応するアルコールの脱水によって得られる。
【0098】
本発明によれば、ZnおよびCeで改質されたゼオライト、すなわち、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含有するゼオライト含有触媒、または3.5~5.5%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5を含有するゼオライト含有触媒を、C2-C8オレフィンオリゴマー化のための触媒として使用することが推奨される。また、ZnおよびCeによって改質されたゼオライトを、C2-C8オレフィンのオリゴマー化のための触媒として使用することが推奨される。
【0099】
本発明のモータ燃料の製造方法は、エタノールから合成されたC3-C5アルコールを含む第一級および第二級C2-C5アルコールの混合物を供給原料として使用することを提供する。このために、第一級および第二級C2-C5アルコールを、350~450℃の温度および0.5~3.5MPaの圧力下、連続流通反応器内で触媒ガンマAl2O3を使用して脱水して、C2-C5オレフィンを得る。次いで、このようにして得られたC2-C5オレフィンを、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する不均一粒状触媒、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された95%以上のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒の存在下、温度250~350℃および圧力P=2.5~5.0MPaでオリゴマー化する。
【0100】
オリゴマー化のプロセスで形成されたC6-C20オレフィンを、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化して、C6-C20パラフィンの混合物を得る。これは、具体的には、モータ燃料のガソリンおよび灯油留分の単離に適している。
【0101】
3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含むゼオライト含有触媒、または3.5~5.5%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5を含むゼオライト含有触媒の存在下での個々のオレフィンのオリゴマー化は、Amberlite 15が使用されるプロセスとは著しく異なる。例えば、3.5~7.0%のZn触媒によって改質された少なくとも93%のZSM-5を含む触媒が、プロピルアルコールから得られるプロピレンのオリゴマー化に使用される場合、C6H12、C7H14、C8H16、C9H18、C10H20などからC24H48までの範囲のオレフィンが得られる。得られたオリゴマー化生成物の水素化は、対応するパラフィンの生成をもたらす。
【0102】
本発明の方法の工程1.3で得られた第一級および第二級C2-C8アルコールの混合物は、脱水のために送られて、不飽和C2-C8炭化水素の対応する混合物が得られる。次に、不飽和C2-C8炭化水素は、本発明の方法の工程1.9において、高度不飽和C6-C24炭化水素を得るためのオリゴマー化プロセスまたはC7-C12芳香族炭化水素を得るための芳香族化プロセスのための供給原料として使用される。さらに、本発明の方法の工程1.3からの第一級および第二級C2-C8アルコールの混合物を本発明の方法の工程1.12に供給して、C7-C16エーテルを得る。
【0103】
第一級および第二級C2-C8アルコールを、350~450℃の温度および0.5~3.5MPaの圧力で、連続流通反応器中、不均一触媒ガンマAl2O3の存在下で脱水する。
【0104】
脱水反応器内で不飽和C2-C8炭化水素と水が形成される。反応器からの反応混合物を分離機に供給して、形成された水から不飽和C2-C8炭化水素を分離する。水は利用のために送られ、不飽和C2-C8炭化水素はさらなる処理のために収集タンクに収集される。次いで、収集タンクからの不飽和C2-C8炭化水素の混合物は、オリゴマー化の段階に導かれる。
【0105】
本発明の方法の工程3で、対応するC2-C8アルコールの脱水によって得られた不飽和C2-C8炭化水素は、本発明の方法の工程9でオリゴマー化反応器に導かれる。不飽和炭化水素のオリゴマー化は、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含む不均一ゼオライト含有触媒、または3.5~5.5%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5を含むゼオライト含有触媒の存在下、250~350℃の温度および2.0~5.0MPaの圧力で行われる。
【0106】
実験室試験に続いて、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含む選択された不均一ゼオライト含有触媒、または3.5~5.5%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5を含むゼオライト含有触媒が、第一級および第二級C2-C8アルコールから得られたC2-C8オレフィンのオリゴマー化において最も活性であることが分かった。オリゴマー化の過程で、不飽和C2-C8炭化水素は、C6-C24不飽和炭化水素に変換される。
【0107】
次いで、不飽和C6-C24炭化水素を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒の存在下、150~200℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で水素化して、C6-C24パラフィンの混合物を得る。本発明の方法の工程1.9で得られるC6-C24パラフィンは、本発明の方法の工程1.13で、モータ燃料、主に灯油、ならびにガソリンおよびディーゼルを製造するための供給原料である。
【0108】
本発明の方法によって得られた灯油は、いくつかの特有の特性を有することに留意されたい。本発明者によって行われた研究は、質量分析を含み、プロピレンのみから得られた灯油の組成が150を超える異なるC8-C16異性体を含有し、直鎖炭化水素含有量が5.0質量%未満であることを実証している。プロピレンのみから得られるこのような灯油は、マイナス85℃の温度で凍結せず、また30ミリメートルを超える煙点を有する。
【0109】
工程1.9で未反応の不飽和C2-C5炭化水素は、C7-C12芳香族化合物を得るための芳香族化のプロセスにおいて本発明の方法の工程1.11で供給原料として使用される。
【0110】
不飽和C6-C24炭化水素の精留によって得られた不飽和C2-C5炭化水素は、芳香族化反応器に向けて本発明の方法の工程1.11に供給される。さらに、本発明の方法の工程1.1で得られたオレフィンとパラフィンC1-C4の混合物は、工程1.11で原料反応混合物に供給される。不飽和C2-C5炭化水素の芳香族化は、連続流通反応器内で3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含む不均一ゼオライト含有触媒の存在下、350~450℃の温度および0.5~2.0MPaの圧力で行われる。実験室試験により、選択された触媒が第一級C4-C5オレフィンの芳香族化において最も活性であることが確認された。芳香族化のプロセスにおいて、不飽和C2-C5炭化水素は芳香族C7-C12炭化水素に変換される。
【0111】
工程1.11のC7-C12芳香族炭化水素は、モータ燃料の製造のための本発明の方法の工程1.13に送られる。さらに、不飽和炭化水素C2-C5の芳香族化のプロセスで、ガス状生成物の混合物が生成される。水素およびC1-C4パラフィンで構成されたガス状生成物のこの混合物は、液相から分離され、合成ガスを生成するための本発明の方法の工程1.2に送られる。
【0112】
本発明者によって開発されたモータ燃料へのエタノール変換のさらに別の方法は、第二級および第三級アルコールC3-C8を生成するためのテロマー化の反応を使用することである。このプロセスの主な原料物質は、エタノールと、エタノールから得られるイソプロパノールまたはsec-ブタノールなどの第二級アルコールである。エタノールおよびイソプロパノールは、本発明の方法の工程1.1からテロマー化のために工程1.4に供給される。さらに、このプロセスは、本発明の方法の工程1.3でエタノールの脱水によって得られたエチレンを原材料として使用する。
【0113】
テロマー化の反応に使用される触媒は、tert-ブチルまたはtert-アミルアルコールを含む第三級アルコールの過酸化物である。触媒の比、すなわち、tert-ブチルまたはtert-アミルアルコールペルオキシド対エタノールまたは第二級アルコール(質量基準)は、tert-ブチルまたはtert-アミルペルオキシド(1~2)質量%対エタノールまたは第二級アルコール(98~99)%である。
【0114】
このプロセスは、tert-ブチルまたはtert-アミルアルコールペルオキシドとエタノールまたはイソプロパノールとの液体混合物またはこれらのアルコールの混合物を、気体エチレンの圧力P=1.0~5.0MPaの下、100~130℃の温度で撹拌しながら行われる。これらの条件下で、イソプロパノールは第三級C5-C9アルコールに変換され、エタノールはsec-ブタノールおよび第三級アルコールC6-C10に変換される。このプロセスにおけるエタノールの第三級アルコールへの変換は予想外であった。
【0115】
得られた第三級C5-C8アルコールを、精留によって反応混合物から単離する。精留のプロセスでは、個々の第三級アルコールまたは第三級アルコール留分を単離する。第三級C5-C8アルコールの収率は、反応した原料アルコールに関して98%超に達し、初期アルコールの変換率は60%超であった。得られた第三級C8+アルコールの収率は2質量%を超えなかった。テロマー化からの未反応の原料アルコールは精留段階で分離し、テロマー化プロセスに戻したか、またはエーテルの製造プロセスで使用した。得られたC8+第三級アルコールは、ガソリンまたはディーゼルの製造における酸素含有添加剤として使用することができる。
【0116】
上記のプロセスで得られた第三級C5-C8アルコールの混合物は、脱水のために本発明の方法の工程1.5に送られて、不飽和C5-C8炭化水素の対応する混合物を得る。第三級C5-C8アルコールの脱水は、原料C5-C8アルコールの少なくとも99%のC5-C8オレフィンの収率に達するまで、新しいまたは再生された不均一触媒ガンマAl2O3の存在下、100~150℃の温度および0.5~1.5MPaの圧力で行う。次いで、温度を350~450℃に上げ、第一級および/または第二級アルコールC2-C8を脱水し、このプロセスを、同じ触媒の存在下、450℃を超えない温度で、原料の第一級および/または第二級C2-C8アルコールの99%以上のC2-C8オレフィンの収率に達するまで続ける。
【0117】
第一級および/または第二級C2-C8アルコールの脱水が完了すると、触媒が再生される。
【0118】
脱水反応器内でC5-C8不飽和炭化水素と水が得られる。反応器からの反応混合物は、得られた水から不飽和C5-C8炭化水素の混合物を分離するための分離機に導かれる。水は利用のために送られ、不飽和C5-C8炭化水素はさらなる処理のために収集タンクに収集される。さらに、収集タンクからの不飽和C5-C8炭化水素の混合物は、オリゴマー化のための本発明の方法の工程1.6に導かれる。
【0119】
本発明者は、C3-C8オレフィンのオリゴマー化のための触媒として、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、例えばAmberlite 15を使用することを推奨する。本発明者が行った研究により、オリゴマー化のプロセスにおける触媒としてAmberlite 15を使用すると、二量体、三量体などの形態の原料オレフィンの縮合によって高度不飽和化合物が得られることが確認された。すなわち、初期不飽和化合物の倍数の分子量を有する高級オレフィンが現れる。例えば、陽イオン交換体Amberlite 15の存在下でのプロピレンのオリゴマー化は、C24H48までのオレフィンC6H12、C9H18、C12H24などを生じる。得られたオリゴマー化生成物の水素化により、対応するパラフィンが得られる。
【0120】
同時に、対応するアルコールから得られる少なくとも2つのオレフィン、すなわちプロピレンおよびイソブチレンの混合物と共に、オリゴマー化の段階でAmberlite 15を使用すると、高級オレフィンの混合物が得られる。高級オレフィンの混合物の水素化により、C6H14、C7H16、C8H18、C9H20、C10H22などからC24H50までの範囲の高級パラフィンの混合物が得られる。
【0121】
さらに、第三級アルコールC5-C8の脱水によって工程1.5で得られた不飽和C5-C8炭化水素は、不飽和炭化水素C10-C24を得るためのオリゴマー化の反応における原材料として、本発明の方法の工程1.6で使用される。
【0122】
不飽和炭化水素C5-C8のオリゴマー化は、触媒である陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、例えばAmberlite 15の存在下、連続流通反応器中、70~120℃の温度および1~2MPaの圧力で行われる。不飽和C5-C8炭化水素のオリゴマー化により、高度不飽和炭化水素C10-C24の混合物が得られる。
【0123】
次いで、本発明の方法の工程1.6の不飽和C10-C24炭化水素を、工程1.7において、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒の存在下、150~200℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で水素化して、C10-C24パラフィンの混合物を得る。
【0124】
工程1.7で得られたC10-C24パラフィンは、本発明の方法の工程1.13において、モータ燃料、第一に灯油、ならびにガソリンおよびディーゼル燃料の製造のための原料物質である。これらの炭化水素の等構造により、固有の特性を有する灯油およびディーゼル、ならびに少なくとも95 RONおよび91 MONのオクタン価を有する芳香族化合物を含まないガソリンが得られる。本発明者によって行われた研究は、クロマト質量分光法を含み、tertアミルアルコールから得られた灯油の組成が60を超える異なるC10-C15異性体を含有し、直鎖炭化水素が存在しないことを実証している。tertアミルアルコールから得られるこの灯油は、マイナス85℃の温度で凍結せず、また30mmを超える煙点を有する。
【0125】
本発明のモータ燃料の製造方法は、エタノールに基づいて合成された第三級C5-C8アルコールを供給原料として使用することを提供する。この目的のために、C5-C6オレフィンは、第三級アルコールC5-C8の脱水によって得られた工程1.5のC5-C8オレフィンの混合物からの精留によって単離され、触媒である陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、例えばAmberlite 15の存在下、温度70~120℃および圧力P=1.5~2.0MPaで本発明の方法の工程1.6でオリゴマー化される。
【0126】
オリゴマー化のプロセスで得られたC10-C18オレフィンを、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化して、C10-C18パラフィンの混合物を得、これはほぼ完全にモータ燃料の灯油留分である。
【0127】
さらに、第三級C5-C8アルコールの脱水によって得られたC5-C8オレフィンの混合物から単離されたC7-C8オレフィンは、触媒として、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、例えばAmberlite 15を使用することによって、温度70~120℃および圧力P=1.5~2.0MPaでオリゴマー化される。
【0128】
オリゴマー化の結果として得られたC14-C24オレフィンを、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる不均一触媒の存在下、温度150~200℃および圧力P=4.5~5.0MPaで水素化して、С14-С24パラフィンを得る。その後、精留によってこの炭化水素混合物からモータ燃料の灯油およびディーゼル留分が単離される。
【0129】
エタノールからモータ燃料を製造するための本発明の方法は、ガソリンおよびディーゼル組成物に使用される場合に組成物の品質を著しく改善する酸素含有添加剤を製造および使用することを可能にする。ガソリンおよびディーゼルの特性を改善するために使用するために本明細書で提案される主な酸素含有添加剤はエーテルである。
【0130】
本発明のモータ燃料製造方法によって得られた第一級または第二級C2-C8アルコールを使用することによってこれらのエーテルを得ることが提案されている。さらに、第三級アルコールC5-C8の脱水によって得られる不飽和C5-C8炭化水素を、これらのエーテルを生成するために使用することができる。
【0131】
エーテルを生成するプロセスは、本発明の方法の工程1.12において、触媒である陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、例えばAmberlite 15の存在下、連続流通反応器中、50~100℃の温度および0.5~1.5MPaの圧力で実施される。工程1.12に供給される本発明の方法の工程1.3のC2-C8第一級および第二級アルコールは、工程1.12に供給される本発明の方法の工程1.5のC5-C8オレフィンと相互作用して、C7-C16エーテルの混合物を生じる。C7-C16エーテルの混合物は、本発明のモータ燃料の製造方法の工程1.13に導かれる。
【0132】
モータ燃料へのエタノール変換のための本発明の方法の詳細な説明において上述したように、本発明の技術は、主に分岐炭化水素からなるC6-C24範囲のパラフィンの混合物を得ることを提供する。これらのパラフィン混合物は、精留によって留分C6-C10、C11-C18、およびC19-C24に分離され、ガソリン、灯油およびディーゼルの製造に適している。さらに、エタノールから芳香族化合物を生成するための本発明の技術は、C7-C12範囲の芳香族炭化水素の混合物を得ることを提供する。芳香族炭化水素のこれらの混合物は、精留によって留分C7-C8およびC9-C12に分離され、ガソリンおよび灯油を製造するのに適している。C6-C10パラフィンのガソリン留分をC7-C8芳香族炭化水素のガソリン留分と混合することにより、EN228規格の全ての要件を満たすガソリンを得ることができる。C11-C18パラフィンの灯油留分を芳香族C9-C12炭化水素の灯油留分と混合することにより、Jet A-1規格の全ての要件を満たす灯油を得ることができる。
【0133】
同時に、エタノールからエーテルを生成するための本発明の技術は、C7-C16範囲のエーテルの混合物を得ることを提供する。C7-C16エーテルのこれらの混合物は、精留によって留分C7-C10およびC11-C16に分離され、ガソリンおよびディーゼルの製造に適している。C6-C10パラフィンのガソリン留分をC7-C10エーテルのガソリン留分と混合することにより、EN228規格の要件を満たし、芳香族化合物を含まず、オクタン価RONが少なくとも100、MONが少なくとも93のガソリンを得ることができる。C19-C24パラフィンのディーゼル留分をC11-C16エーテルのディーゼル留分と混合することにより、EN590規格の要件を満たし、芳香族炭化水素を完全に含まないディーゼルを得ることができる。
【0134】
エタノールをモータ燃料に変換するための本発明の方法の工程1.8、1.9および1.10で第一級および第二級C2-C8アルコールから得られたC6-C24パラフィン、ならびに本発明の方法の工程1.5、1.6および1.7で第三級C5-C8アルコールから得られたС10-С24パラフィンを精留のために工程1.13に供給して、モータ燃料のС6-С10ガソリン、С11-С18灯油およびС19-С24ディーゼル留分を得る。さらに、本発明の方法の工程1.3、1.9および1.11で第一級および第二級C2-C5アルコールから得られた芳香族C7-C12炭化水素は、精留のために工程1.13に供給されて、モータ燃料のC7-C8ガソリンおよびC9-C12灯油留分を生じる。C7-C8芳香族炭化水素は、EN228規格の全ての要件を満たすガソリンを製造するために使用される。C9-C12芳香族炭化水素は、Jet A-1規格の全ての要件を満たす灯油を製造するために使用される。
【0135】
また、第一級および第二級C2-C8アルコールから工程1.3、1.4、1.5および1.12で得られたC7-C16エーテル、ならびに第三級C5-C8アルコールから得られたC5-C8オレフィンは、精留のために工程1.13に供給され、C7-C10エーテルの混合物およびC11-C16エーテルの混合物に分離する。C7-C10エーテルは高品質ガソリンを製造するために使用され、C11-C16エーテルは高品質ディーゼルを製造するために使用される。
【0136】
本発明のプロセスで得られたエーテルをガソリンの組成物に使用することにより、芳香族化合物をガソリンの組成物から除外し、環境に対するガソリン燃焼生成物の有害な影響を低減することができる。現在の基準によれば、体積で最大22%のエーテルがガソリン中で許容される。しかしながら、酸素含有量制限を遵守する必要があり、これは様々な基準について、2.7重量%または3.2重量%を超えることはできない。
【0137】
20体積%以下のエーテル含量を有する本発明によって得られるガソリンの組成物は、酸素含有量についての上記の要件に違反することなく、少なくとも100のRON評価および少なくとも93のMONを達成することを提供する。
【0138】
エタノールから合成されたC6-C24パラフィンからモータ燃料を得るための本発明の方法の際立った特徴は、既存のEN228規格の要件を完全に満たすガソリンを得るために、C6-C24パラフィンの混合物から単離されたC6-C10パラフィン留分を、エタノールから合成されたC7-C16エーテルの混合物から単離されたC7-C10エーテルの留分、および/またはエタノールからも合成されるC7-C16芳香族炭化水素の混合物から単離されたC7-C8芳香族炭化水素の留分と混合することである。混合に必要なC7-C16エーテルは、第一級または第二級C2-C8アルコールと第三級C5-C8アルコールから得られたC5-C8オレフィンとのエーテル化によって得られる。
【0139】
エステル化プロセスは、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、例えばAmberlite 15である触媒の存在下、温度70~120℃および圧力P=1.5~2.0MPaで行われる。C7-C16エーテルの生成には、第三級C5-C8アルコールから得られる第一級または第二級C2-C8アルコール、およびC5-C8オレフィンが使用され、C7-C16エーテルの生成のための全ての原材料はエタノールから得られる。
【0140】
本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、エタノールから合成されたC6-C24パラフィンからモータ燃料を得るために、既存のEN590規格の全ての要件を満たすディーゼル燃料を製造するために、C6-C24パラフィンの混合物から単離されたC19-C24パラフィン留分を、C7-C16エーテルの混合物から単離されたC11-C16エーテルの留分と混合し、このC7-C16エーテルもエタノールから合成される。混合に必要なC7-C16エーテルは、第一級または第二級C2-C8アルコールと第三級C5-C8アルコールから得られたC5-C8オレフィンとのエーテル化によって得られる。
【0141】
エステル化は、触媒である陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂、例えばAmberlite 15の存在下、温度70~120℃および圧力P=1.5~2.0MPaで行われる。C7-C16エーテルの生成には、第三級C5-C8アルコールから得られる第一級または第二級C2-C8アルコール、およびC5-C8オレフィンが使用され、C7-C16エーテルの生成のための全ての原材料はエタノールから得られる。
【0142】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、既存の標準Jet A-1の全ての要件を満たす灯油をC6-C24パラフィンから(工程1.3、1.8、1.9および1.10で第一級および第二級アルコールC2-C8から得られる)、C10-C24パラフィンから(工程1.4、1.5、1.6および1.7で第三級C5-C8アルコールから得られる)、および芳香族C7-C12炭化水素から(工程1.3、1.9および1.11で第一級および第二級C2-C5アルコールから得られる)得るために、工程1.10で得られ、工程1.13でC6-C24パラフィンの混合物から単離された灯油組成物に必要なC11-C18パラフィン、工程1.7で得られ、工程1.13でC10-C24パラフィンの混合物から単離されたC11-C18パラフィン、および工程1.11で得られ、芳香族C7-C12炭化水素の混合物から単離された芳香族C9-C12炭化水素を、芳香族C9-C12化合物の濃度が8~25体積%の範囲内になるように混合し、一方、得られた灯油組成物は、少なくとも100種の異なる炭化水素、好ましくは150種の異なる炭化水素、最小30mmの煙点および最大マイナス80℃の氷点を有する。
【0143】
本発明のモータ燃料の製造方法は、かなりの量の水を含有するエタノールだけでなく、大量のフーゼル油を含有するエタノールも使用することに留意されたい。また、本発明のモータ燃料へのエタノール変換方法は、エタノールの生成中に得られた二酸化炭素およびメタンを追加の原材料として使用することができる。
【0144】
さらに、本発明の方法は、モータ燃料製造産業のみに限定されない。エタノールを、アルデヒド、ケトン、アルコール(第一級、第二級および第三級)、オレフィンを含有するC3-C8、ならびにオレフィンおよび分岐パラフィンを含有するC6-C24に変換するための本発明の方法は、化学および化粧品産業において要求され得る。
【0145】
モータ燃料を製造するための本発明の方法の実施は、以下の実施例によって実証される。
【0146】
[実施例1]エタノールの高級アルコールと炭化水素との混合物への変換、ならびに合成ガスへの変換。
【0147】
エタノールを高級アルコールと炭化水素との混合物ならびに合成ガスに変換するプロセスは、適切な不均一触媒を充填した反応器のカスケードで実施した。プロセスの第1の工程において、エタノールの水溶液を1リットル容量の連続流通反応器に供給し、そこに触媒を入れた。触媒は、以下の金属酸化物からなる:ZnO 60~63質量%;CeO2 1~6質量%;MgO 12~18質量%;Al2O3 13~23質量%(割合は金属酸化物として計算)。プロセスの技術的パラメータは、以下の範囲内で変化した:温度500~515℃、圧力0.9~1.1MPa、水中のエタノール濃度59~63重量%、触媒1リットル当たり水中のエタノール溶液0.45~0.77kg。エタノールと水との相互作用の結果として得られたガス状反応塊をプロセスの工程1.2に導き、液体反応塊をプロセスの工程1.3に導いた。
【0148】
水素、二酸化炭素、飽和C1-C4および不飽和C2-C4炭化水素の混合物であるガス状反応塊をプロセスの工程1.2に供給した。このガス状反応塊を、3.5~7.0%のZn触媒で改質された少なくとも93%のZSM-5を含む不均一ゼオライト含有触媒を充填した1リットル容量の連続流通反応器に導いた。プロセスの技術的パラメータは、以下の限界内で変化した:温度350~450℃、圧力0.5~1.0MPa。これらの条件下で、ガス状反応塊に含まれるC2-C4オレフィンを芳香族化合物に変換し、得られたガス混合物を吸収体に導いて二酸化炭素を抽出した。95%を超える水素含有量を有する、二酸化炭素を含まないガス混合物を、プロセスの工程1.3に導いた。
【0149】
プロセスの工程1.3において、プロセスの工程1.1で得られた液体反応塊からアセトアルデヒドを単離した。その後、残りの液体反応塊を有機相と水相とに分離した。未反応エタノールを含む水相をプロセスに戻して、エタノール水溶液を生成する。C3およびC5ケトンならびにC3およびC5アルコールの混合物である有機相を、水素化工程に導いた。これを行うために、エタノール変換の酸素含有生成物の混合物を、モル比1:1の酸化物CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた1リットルの連続流通反応器に供給した。プロセスの技術的パラメータは、以下の限界内で変化した:温度100~150℃、圧力0.5~0.9MPa。このプロセスの第2の工程で得られたガス混合物を、エタノール変換の液体酸素含有生成物の混合物と共に、1:1のモル比の酸化物CuOおよびCr2O3で構成された触媒を入れた反応器に供給した。これらの条件下で、液体有機混合物に含まれるC3およびC5ケトンを、対応するC3およびC5アルコールに変換した。モル比1:1の酸化物CuOおよびCr2O3で構成された触媒の存在下で得られたガス混合物から、水素化によって残留不飽和化合物を除去した。このガス混合物は、合成ガス生成のための優れた原材料である。表1は、エタノールと水との混合物をアルコール、芳香族炭化水素の混合物に変換し、さらに合成ガスに変換するための、記載された技術的プロセスに従って行われたいくつかの実験の結果を示す。
【0150】
表1.以下の金属酸化物、すなわち、ZnO 60~63質量%;CeO
2 1~6質量%;MgO 12~18質量%;Al
2O
3 23~13質量%(割合は金属酸化物として計算)からなる触媒の存在下での、エタノールと水との混合物の変換に関する実験の結果
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0151】
注*):最終生成物の収率は、変換に従って水と反応したエタノールに含まれる炭素に関して計算する。
【0152】
[実施例2]銅およびニッケル触媒の存在下での合成ガス発生。
【0153】
本発明の技術に基づいて得られた合成ガスは、本発明のエチレンおよびプロピレンのヒドロホルミル化のプロセスで使用される。
【0154】
合成ガスの生成には、エタノールからアセトンへの変換で得られた二酸化炭素および水素が用いられる。二酸化炭素は、アセトアルデヒド蒸留のプロセスにおいて液体反応塊からが留去される。また、二酸化炭素は、水素精製時に得られた吸収溶液から抽出され、アセトンおよび他の酸素含有化合物の水素化の段階に供給される。水素化の段階から出るガス混合物は、90%を超える水素を含有し、本発明の技術による合成ガスの生成のための優れた原材料である。このようにして得られた合成ガスは、エチレンおよびプロピレンのヒドロホルミル化のプロセスで使用される。
【0155】
本発明の技術による合成ガスの生成は、2つの方法によって行われる。
【0156】
第1の方法では、CO2:H2=1:(1.1~1.5)のモル比の二酸化炭素と90%水素との混合物とを、550~600℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で、Al2O3上に担持された5~10% Cuの粒状触媒で充填された流通式反応器に供給する。このプロセスで得られた一酸化炭素を冷却し、水およびC1-C4パラフィンの混合物から単離する。水を含まない一酸化炭素、およびC1-C4パラフィンの混合物を、ヒドロホルミル化反応器に導く。一酸化炭素と同時に、CO:H2=1:1のモル比で水素をヒドロホルミル化反応器に供給する。
【0157】
第2の方法では、CO2:H2=1:(2-3)のモル比の二酸化炭素と水素を、1:1:1のモル比の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる粒状触媒で充填した流通式反応器に、950~1000℃の温度および0.1~0.5MPaの圧力で供給する。このプロセスで得られた一酸化炭素と水素との混合物を冷却し、水、二酸化炭素、メタンから単離した後、合成ガス収集容器に送って組成を調整する。一酸化炭素と水素との混合物と同時に、合成ガス収集容器に水素を供給して、CO:H2=1:1のモル比に調整する。合成ガス収集容器から、CO:H2=1:1のモル比の一酸化炭素と水素との混合物を、3.0~5.0MPaの圧力で圧縮機によってヒドロホルミル化反応器に送る。
【0158】
[実施例3]ジtert-アミルペルオキシドの取得。
【0159】
激しく撹拌しながら、70%硫酸水溶液にtert-アミルアルコールを添加し、H2SO4:(CH3)2C(OH)CH2CH3=1:1のモル比で0~5℃の温度に冷却する。tert-アミルアルコールの全量を添加した後、得られた反応塊を0~5℃の温度で10~15分間撹拌する。
【0160】
次いで、得られた硫酸tert-アミルに27%過酸化水素水溶液を、0~5℃の温度で、激しく撹拌しながら、硫酸tert-アミルに対する過酸化水素のモル比:(CH3)2C(HSO4)CH2CH3:H2O2=1:0.5で添加する。27%過酸化水素を全量添加した後、反応混合物を5~20℃の温度で60分間さらに撹拌する。
【0161】
撹拌が終了した後、反応塊を2つの層に分割する。形成されたジ-tert-アミルペルオキシドを含有する上層を酸性水層から分離し、10%炭酸カリウム水溶液によって撹拌下で洗浄し、次いで、水によってpH7にする。酸およびアルカリから中性反応まで洗浄した粗ジ-tert-アミルペルオキシドを10~15mmHgの圧力で真空下で蒸留して、40~45℃で沸騰する留分を収集する。蒸留後のジtert-アミルペルオキシドの収率は65%以上である。
【0162】
[実施例4]イソプロパノールへのエチレンのラジカル付加。
【0163】
タイプ「PARR」の鋼製オートクレーブである2000ml容量の反応器に、470mlのイソプロピルアルコール(369g、6.15モル)および4gのジ-tert-アミルペルオキシドを入れた。反応器を5atmで窒素によって3回、5atmでエチレンによって2回パージした。パージ後、反応器に12~15リットルのエチレンを供給し、内部温度を130~135℃に上昇させた。エチレンの吸収はこの温度で始まる。エチレンが吸収されている間、追加量のエチレンを毎分0.1~0.2リットルの速度で供給して、システム内の圧力を12~14atmに維持した。約30~32リットルのエチレンが反応4時間の間に吸収された。次いで、反応器を冷却し、さらに4gのジ-tert-アミルペルオキシドを添加した。エチレンを供給してシステム内の圧力を12~14atmに維持しながら、オートクレーブを130~135℃に再加熱した。4時間の反応の間に、さらに20~22リットルのエチレンが吸収された。反応器を冷却した後、4gのジ-tert-アミルペルオキシドを再び添加し、実験を繰り返した。実験全体で84リットル(105g)のエチレンが消費され、600ml(480g)の生成物が得られた。
【0164】
テロマー化反応でこのようにして得られた600mlのアルコール混合物を蒸留に供した。大気圧および80~90℃の温度で蒸留した後、250mlのイソプロピルアルコールを得た。その後の蒸留により、100~250℃で沸騰する340mlの第三級アルコール、およびより高い温度で沸騰する10mlの第三級アルコールが得られ、これらは底部に残った。反応したイソプロピルアルコール、エチレンおよびtert-アミルペルオキシドから得られた第三級アルコールの収率は99%超であった。
【0165】
第三級C5-C7アルコールの収率は約80%であり、第三級C9-C11アルコールの収率は約17.1%であった。GLC分析によると、以下が得られた:tert-アミルアルコール57.4%;tert-ヘプチルアルコール22.6%;tert-ノニルアルコール11.4%、tert-ウンデシルアルコール5.7%およびtert-C11+アルコール2.9%。イソプロピルアルコールの変換率は約50%に達した。これらの実験は、より重いテロメアの形成を回避するためにエチレンの「欠損」を用いて行った。
【0166】
[実施例5]エチルアルコールへのエチレンのラジカル付加。
【0167】
エチルアルコール408ml(322g、7.0モル)およびジtert-アミルペルオキシド45ml(37g、0.21モル)を、タイプ「PARR」の鋼製オートクレーブである2000ml容量の反応器に入れた。反応器を5atmで窒素によって3回、5atmでエチレンによって2回パージした。次いで、反応器に12リットル(0.5モル)のエチレンを供給し、内部温度を130~135℃に上昇させた。この温度で、エチレンの吸収が始まる。エチレンが130~135℃で吸収されている間、追加量のエチレンを毎分0.1~0.3リットルの速度で供給して、システム内の圧力を12~14atmに維持した。反応8時間の間に、約95リットル(119g、4.25モル)のエチレンが吸収された。次いで、反応器を冷却し、反応混合物を取り出し、蒸留に移した。上記実験を2回繰り返した。合計で、エチルアルコール1224ml(966g、21モル)およびジtert-アミルペルオキシド135ml(111g、0.64モル)を消費してテロマー化の反応を行い、エチレン285リットル(356g、12.71モル)が吸収された。
【0168】
合計で1793ml(1433g)のアルコール混合物を得た。
【0169】
テロマー化反応の結果得られた1793mlのアルコールの混合物を蒸留した。大気圧および80℃の温度での蒸留により、776ml(612g、13.3モル)のエチルアルコールが生じた。大気圧および98℃の温度でのさらなる蒸留により、450ml(364g、4.95モル)のsec-ブチルアルコールが生じた。さらに大気圧で蒸留すると、102~180℃の間で沸騰する528ml(425g)の第三級C5-C8アルコール、およびより高温で沸騰する30ml(25g)の第三級アルコールがさらに得られ、これらは底部に残った。
【0170】
反応したエチルアルコール、エチレンおよびジ-tert-アミルペルオキシドから得られた第二級ブチルアルコールおよび第三級アルコールの収率は99%を超えた。第二級ブチルアルコールの収率は44.3%であった。第三級C5-C8アルコールの収率は51.8%であり、第三級C10-C12アルコールの収率は約3.0%であった。エチルアルコール変換率は約37%であった。
【0171】
[実施例6]ロジウム触媒の存在下でのエチレンのヒドロホルミル化。
【0172】
エチレンのヒドロホルミル化のプロセスは、水溶性ロジウム触媒を使用して不均一反応媒体中で行われる。
【0173】
ロジウム触媒の存在下でのエチレンのヒドロホルミル化中、水相に対する金属の濃度は30~50ppmである。トリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩を、金属ロジウムに対して30:1の比で配位子として使用する。
【0174】
プロピオンアルデヒドを得るプロセスは、45~90℃の温度および1.0~2.5MPaの圧力で行われる。原料ガスС2H4:СО:H2=(0.9~1):1:1の比は、流量計によって維持される。得られた反応塊を、高効率の分離機に導き、そこで、未反応エチレン、一酸化炭素および水素を含有する気相、主にプロパナールを含有する液体有機相、および水溶性ロジウム触媒を含有する液体水相の3相に分離させる。気相および液体水相は、計量装置によってヒドロホルミル化反応器に戻される。
【0175】
触媒の水溶液を、高効率撹拌装置を備えた2000ml容量の反応器に入れた。次いで、触媒を以下のように活性化した。合成ガスを比CO:H2=1:1で反応器に供給しながら、触媒溶液を1.0MPaの圧力に達するまで撹拌し、その後、加熱をオンに切り替え、温度を60~70℃に上げた。触媒溶液をこの温度で1時間撹拌した。触媒活性化が完了すると、反応温度および圧力限界制御の自動モードを計器パネルでオンにし、反応器への反応ガスの供給が終了する。反応混合物が触媒動作の臨界温度に加熱されるのを防ぐために、反応器には、過剰な熱を除去するための冷却器が装備されている。冷媒として水が用いられる。反応器へのガス供給ラインに設置された流量計でエチレン、一酸化炭素、水素のガス供給速度を設定し、その後、反応器へのガス供給をオンにした。反応器内の液体反応塊が必要な体積に達した後、ポンプをオンにして、過剰な反応塊を分離機に連続的に圧送した。分離機で、気相と液相とを分離し、液相を、プロピオンアルデヒドを含有する有機相と、溶解した触媒を含有する水相とに分離した。
【0176】
ヒドロホルミル化のプロセスの最適温度は、1.0~2.5MPaの圧力で45~90℃である。温度が45℃未満に低下すると、標的アルデヒドの収率の有意な低下が全ての実験で観察された。90℃を超える温度上昇では、変換率の低下も観察されたが、有意性は低かった。実験は、1.0~2.5MPaの圧力範囲で行った。なお、全ての実験は、本発明者が開発した触媒の1つの同じサンプルを用いて行った。研究中、触媒は反応生成物から繰り返し分離し、プロセスに戻した。その全寿命は9000時間を超えた。触媒は、エチレンヒドロホルミル化に関する実験において高い選択性を示した。最適な技術パラメータでの反応ガスの変換率は99.0%を超え、アルデヒドの選択性は99.5%を超えた。
【0177】
[実施例7]プロパナールのアルドール縮合、ならびにプロピルおよび2-メチルペンチルアルコールの取得。
【0178】
ロジウム触媒の存在下での合成ガスによるエチレンのヒドロホルミル化で得られたプロパナールを、100~150℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を入れた1リットルの流通式反応器に供給した。これらの条件は、プロパナールのアルドール縮合をもたらし、2-メチルペンテナールおよびプロパナール縮合のC6+生成物が得られる。アルドール縮合のプロセスで得られた反応塊を水素化のために流通式反応器に供給し、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3を含有する触媒を入れた。アルドール縮合プロセスの反応塊と同時に、90~130℃の温度および4.0~5.0MPaの圧力で、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えたこの反応器に、水素も供給する。
【0179】
水素化により、2-メチルペンテナールならびに未反応のプロパナールおよび得られたC6+縮合生成物は、それぞれ2-メチルペンタノール、プロピルアルコールおよびC6+アルコールに変換される。
【0180】
アルドール縮合のプロセスにおけるプロパナールから2-メチルペンテナールへの変換率は、少なくとも50%であった。プロパナール、2-メチルペンテナール、およびプロパナール縮合のC6+生成物の混合物の水素化における対応するアルコール、プロピル、2-メチルペンチル、およびC6+アルコールの総収率は、99%を超えた。
【0181】
[実施例8]コバルト触媒を用いたエチレンのヒドロホルミル化。
【0182】
エチレンのヒドロホルミル化は、水溶性コバルト触媒の存在下で不均一反応媒体中で行われる。
【0183】
コバルト触媒の存在下でのエチレンのヒドロホルミル化中、水相に対する金属の濃度は0.1~0.15%である。トリフェニルホスフィン-3,3’、3”-トリスルホン酸三ナトリウム塩は、配位子として金属コバルトに対して10:1の重量比で使用される。
【0184】
プロピオンアルデヒドを得るプロセスは、120~140℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で行われる。原料ガスС2H4:СО:H2=(0.9~1):1:1の比は、流量計によって維持される。得られた反応塊は、高効率分離機に導かれて、未反応のエチレン、一酸化炭素および水素を含有する気相、化学変換の結果得られた生成物であるプロパナール、2-メチルペンテナール、2-メチルペンタナールおよびプロパナール縮合のC6+生成物を含有する液体有機相、ならびに水溶性コバルト触媒を含有する液体水相の3相に分離する。液体水相は、計量ポンプによってヒドロホルミル化反応器に戻される。気相は、合成ガス生成の段階に導かれる。
【0185】
分離機からの液体有機相は、反応生成物であるプロパナール、2-メチルペンテナール、2-メチルペンタナールおよびプロパナール縮合のC6+生成物、ならびにこの有機相に溶解した水を単離するための精留塔に導かれる。
【0186】
精留塔で単離した有機生成物を水素化に送り、対応するアルコールを得た。精留塔で水を単離し、有機物に溶解し、塔の底部に蓄積し、ポンプによって定期的にヒドロホルミル化反応器に圧送する。
【0187】
触媒の水溶液を、高効率撹拌装置を備えた2000ml反応器に入れた。次いで、触媒を活性化した。活性化は以下のように行った。触媒溶液を撹拌しながら、2.0MPaの圧力に達するまで、合成ガスをCO:H2=1:1の比で反応器に供給した。次いで、加熱をオンにし、温度を120~130℃に上げた。触媒溶液をこの温度で2時間撹拌した。触媒活性化が完了すると、反応温度および圧力限界制御の自動モードを計器パネルでオンにし、反応器への反応ガスの供給が終了する。反応混合物を触媒動作の臨界温度に加熱することを防ぐために、反応器には、過剰な熱を除去するための冷却器が装備されている。冷媒として水が用いられる。反応器へのガス供給ラインに設置された流量計でエチレン、一酸化炭素、水素のガス供給速度を設定し、その後、反応器へのガス供給をオンにした。反応器内の液体反応塊が必要な体積に達した後、ポンプをオンにして、過剰な反応塊を分離機に連続的に圧送した。分離機は、気相と液相を分離すると共に、液相をプロパナール;2-メチルペンテナール;2-メチルペンタナールおよびプロパナール縮合のC6+生成物を含む有機相と、触媒が溶解した水とに分離した。
【0188】
ヒドロホルミル化プロセスの最適温度は120~130℃である。120℃未満の温度低下は、全ての実験において標的生成物の収率の有意な低下をもたらす。130℃を超える温度の上昇はまた、変換率の低下をもたらすが、それほど重要ではない。実験は、3.0~5.0MPaの圧力範囲で行った。全ての実験は、本発明の触媒の1つの同じサンプルで実施されたことに留意されたい。研究中、触媒は反応生成物から繰り返し単離し、プロセスに戻した。その全寿命は1200時間を超えた。触媒は、エチレンヒドロホルミル化に関する実験において高い選択性を示した。最適な技術パラメータでの反応ガスの変換率は98.0%より高く、プロパナールの選択性は99.0%に達し、プロパナルアルドール縮合の生成物全体、すなわち2-メチルペンテナール、2-メチルペンタナールおよびC6+プロパナール縮合の生成物の選択性は50%に達した。
【0189】
[実施例9]プロピル、2-メチルペンチルおよびC6+アルコールの取得。
【0190】
コバルト触媒の存在下での合成ガスによるエチレンのヒドロホルミル化で得られたプロパナール、2-メチルペンテナール、2-メチルペンタナール、およびC6+プロパナール縮合の生成物を、150~200℃の温度および4.0~5.0MPaの圧力で、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる粒状触媒を入れた1リットル反応器内の連続流に供給した。プロパナール、2-メチルペンテナール、2-メチルペンタナールおよびプロパナール縮合のC6+生成物と同時に、水素も反応器に供給する。水素化により、プロパナール、2-メチルペンテナール、2-メチルペンタナール、およびC6+プロパナール縮合生成物は、それぞれプロピル、2-メチルペンチル、およびC6+アルコールに変換される。プロパナール、2-メチルペンテナール、2-メチルペンタナール、およびC6+プロパナール縮合生成物の混合物の水素化のプロセスにおける対応するアルコール:プロパノール、2-メチル-ペンタノール、およびC6+アルコールの総収率は99%を超えた。
【0191】
[実施例10]コバルト触媒の存在下でのプロピレンのヒドロホルミル化。
【0192】
プロピレンヒドロホルミル化のプロセスは、水溶性コバルト触媒を使用して不均一反応媒体中で行われる。コバルト触媒の存在下でのプロピレンのヒドロホルミル化中、水相に対する金属の濃度は0.25~0.5質量%である。トリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム塩は、金属コバルトに対して7:1の重量比で配位子として使用される。プロピレンヒドロホルミル化の速度を増加させるために、ならびにイソブタナールの収率を増加させるために、エタノールをH2O:C2H5OH=(0.75~0.65):(0.25~0.35)の体積比で水溶性コバルト触媒に添加する。
【0193】
酪酸アルデヒドを得るプロセスは、135~140℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で行われる。原料ガスС3H6:СО:Н2=(0.9:1):1:1の比は、流量計によって維持される。得られた反応塊は、高効率の分離機に導かれ、気相、有機液相および水液相の3相に分離する。未反応のプロピレン、一酸化炭素および水素を含む気相は、合成ガス生成の段階に送られる。
【0194】
化学変換により得られたブタナール、イソブタナール、2-エチルヘキセナール、2-エチルヘキサナールおよびブタナール縮合のC8+生成物を含む液有機相を、分離機から精留塔に移す。精留塔は、以下の反応生成物:ブタナール、イソブタナール、2-エチルヘキセナール、2-エチルヘキサナール、ブタナール縮合のC8+生成物、およびこの有機相に溶解した水を分離するために使用される。
【0195】
水溶性コバルト触媒を含む液体水相は、計量ポンプによってヒドロホルミル化反応器に戻される。
【0196】
精留によって単離された有機生成物を水素化に送って、対応するアルコールを得た。蒸留塔によって水を単離し、有機物に溶解し、塔の底部に蓄積し、ポンプによって定期的にヒドロホルミル化反応器に供給した。
【0197】
実験は以下のように行った。触媒の水溶液を、統合された非常に効率的な撹拌装置を備えた2000mlの反応器に入れた。次いで触媒を活性化し、それは以下のように行った。合成ガスを比CO:H2=1:1で反応器に供給しながら、触媒溶液を2.0MPaの圧力に達するまで撹拌し、その後、加熱をオンにし、温度を140℃に上げた。触媒溶液をこの温度で2時間撹拌した。触媒活性化が完了すると、反応温度および圧力限界の自動制御モードを計器パネルでオンにし、反応器への反応ガスの供給が終了した。反応混合物を触媒動作の臨界温度に加熱することを防ぐために、反応器には、過剰な熱を除去するための冷却器が装備されている。冷媒として水が用いられる。反応器へのガス供給ラインに設置した流量計でプロピレン、一酸化炭素、水素のガス供給速度を設定し、ガス供給をオンにした。反応器内の液体反応塊が必要な体積に達した後、ポンプをオンにして、過剰な反応塊を分離機に連続的に圧送した。分離機は、気相と液相とを分離すると共に、液相を、ブタナール、イソブタナール、2-エチルヘキセナール、2-エチルヘキサナールおよび2-エチルヘキサナール縮合のС8+生成物を含む有機相と、溶解した触媒を含む水相とに分離した。実験全体の間に反応塊中に形成されたブタナールとイソブタナールの比は、比(n-C4H8O):(iso-C4H8O)=(2~3):1の範囲内であったことに留意されたい。
【0198】
ヒドロホルミル化プロセスの最適温度は138~140℃である。実験は、3.0~5.0MPaの圧力範囲で行った。全ての実験は、開発された触媒の1つの同じサンプルを使用することによって行ったことに留意されたい。本発明者が行った研究の過程で、触媒は反応生成物から繰り返し分離し、プロセスに戻した。その全寿命は240時間を超えた。触媒は、プロピレンのヒドロホルミル化に関する実験において高い選択性を示した。最適な技術パラメータでの反応ガスの変換率は98.0%を超え、酪酸アルデヒドの選択性は99.0%に達した。さらに、n-ブタナールアルドール縮合の生成物:2-エチルヘキセナール、2-エチルヘキサナール、および2-エチルヘキサナール縮合のC8+生成物の全体に対する選択性は60%を超えた。
【0199】
[実施例11]ブチル、イソブチルおよび2-エチルヘキシルアルコールの取得。
【0200】
コバルト触媒の存在下、合成ガスによるプロピレンのヒドロホルミル化で得られたブタナール、イソブタナール、2-エチルヘキセナールおよび2-エチルヘキサナールを、精留により反応混合物から単離した。このようにして得られた酸素含有生成物の混合物を、90~130℃の温度および4.0~5.0MPaの圧力で、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3を含有する粒状触媒を入れた1リットルの流通式反応器に供給した。ブタナール、イソブタナール、2-エチルヘキセナールおよび2-エチルヘキサナールと同時に、水素も反応器に供給した。水素化の過程で、ブタナール、イソブタナール、2-エチルヘキセナールおよび2-エチルヘキサナールは、それぞれブチル、イソブチルおよび2-エチルヘキシルアルコールに変換される。対応するアルコール、すなわちブチル、イソブチル、および2-エチルヘキシルアルコールの総収率は99%を超えた。
【0201】
[実施例12]プロピルアルコールから灯油を得る。
【0202】
プロピルアルコールを、350~400℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力でガンマAl2O3触媒と接触させて脱水する。得られたプロピレン(C3H6)を水から分離し、250~350℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒、または3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を備えた連続流通反応器に導く。これらの条件により、プロピレンがオリゴマー化し、C6-C24オレフィンが得られる未反応のプロピレンは、オリゴマー化プロセスの反応塊から蒸留によって分離し、プロセスに戻す。原料プロピレンを含まない反応塊は、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる粒状触媒を備えた連続流通反応器に水素化のために導かれる。オリゴマー化の生成物と同時に、120~150℃および4.0~5.0MPaの圧力で水素を水素化に供給する。水素化のプロセスにより、オリゴマー化の段階で得られた不飽和C6-C24化合物をC6-C24パラフィンに変換することができる。水素化の段階で得られた反応塊は、灯油ならびにガソリンおよびディーゼル留分への分離のために精留に供される。
【0203】
表2は、芳香族化合物を含まない灯油留分の主な特性を示す。
【0204】
表2.実施例12のジェット燃料特性
【表2-1】
【表2-2】
【0205】
クロマトグラフィー質量分析を使用して本発明者によって行われた研究は、プロピレンのみから得られた灯油の組成物が160を超える異なるC8-C16異性体を含有し、それらの4.7重量%が直鎖炭化水素であることを実証している。
【0206】
[実施例13]イソブチルアルコールから灯油を得る。
【0207】
プロピレンのヒドロホルミル化、および得られたイソブチルアルデヒドのその後の水素化によって得られたイソブチルアルコールを、350~400℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力でガンマAl2O3触媒と接触させて脱水する。得られたイソブチレン(C4H8)を水から分離し、250~350℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で、3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のゼオライトZSM-5を含有する造粒触媒を備えた連続流通反応器に供給する。これらの条件により、イソブチレンがオリゴマー化し、C8-C20オレフィンが得られる。未反応のイソブチレンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料イソブチレンを含まない反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuO、およびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器に水素化のために供給する。オリゴマー化によって得られたオレフィンと同時に、水素を120~150℃の温度および4.0~5.0MPaの圧力で水素化反応器に供給する。水素化によって、オリゴマー化の段階で得られた不飽和C8-C20化合物が、C8-C20パラフィンに変換される。水素化の段階で得られた反応塊は、灯油ならびにガソリンおよびディーゼル留分への分離のための精留に導かれる。
【0208】
[実施例14]tert-アミルアルコールから灯油を得る。
【0209】
tert-アミルアルコール(2-メチル-2-ブタノール)を、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力でガンマAl2O3触媒と接触させて脱水する。得られたペンテン(C5H10)を水から分離し、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を触媒として備えた連続流通反応器に供給する。これらの条件により、ペンテンがオリゴマー化し、C10-C20オレフィンが得られる。未反応のペンテンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料ペンテンを含まない反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuO、およびCr2O3で構成される触媒を備えた連続流通反応器に水素化のために供給する。オリゴマー化生成物と同時に、温度120~150℃、圧力4.0~5.0MPaで水素を水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られた不飽和C10-C20化合物は、水素化されてC10-C20パラフィンになる。オリゴマー化ペンテンに関して、C10-C20パラフィンの収率は98%を超える。次いで、水素化の段階で得られた反応塊を、精留によって、芳香族化合物を含まない灯油ならびにガソリンおよびディーゼル留分に分離する。C10-C20パラフィンの等構造により、固有の特性を示す灯油およびディーゼル、ならびに少なくとも95のオクタン価RONおよび少なくとも91のオクタン価MONを有するガソリンの製造することができる。クロマトグラフィー質量分析を使用した研究の結果は、tert-アミルアルコールから得られた灯油が45の異なるC10-C15異性体を含有し、直鎖炭化水素を含まないことを実証している。tert-アミルアルコールから得られた灯油は、マイナス85℃で凍結せず、33ミリメートルの煙点を有する。
【0210】
[実施例15]2-メチル-1-ペンタノールから灯油を得る。
【0211】
2-メチルペンチルアルコールを、350~450℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。アルコールの脱水によって得られたヘキセン(C6H12)を水から分離し、250~350℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で、3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する触媒を備えた連続流通反応器に供給する。C12-C24オレフィンを生じる原料ヘキセンのオリゴマー化は、上述の触媒の存在下、指定されたプロセスパラメータで行う。未反応ヘキセンを反応混合物から留去し、プロセスに戻す。原料ヘキセンを含まない反応塊は、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器に水素化のために導かれる。C12-C24オレフィンと同時に、温度120~150℃、圧力4.0~5.0MPaで水素を水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られたC12-C24オレフィンは、C12-C24パラフィンに変換される。オリゴマー化ヘキセンに関して、C12-C24パラフィンの収率は98%を超える。水素化の段階で得られた反応塊は精留に導かれ、そこで灯油留分とディーゼル留分に分離する。
【0212】
[実施例16]tertヘキシルアルコールから灯油を得る。
【0213】
tertヘキシルアルコール(3-メチル-3-ペンタノール)を、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。得られたヘキセン(C6H12)を水から分離し、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を触媒として備えた連続流通反応器に供給する。C12-C18オレフィンを生じる原料ヘキセンのオリゴマー化は、指定されたプロセスパラメータで、触媒として陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15の存在下で行われる。未反応のヘキセンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料ヘキセンを含まない反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器に水素化のために供給する。C12-C18オレフィンと同時に、水素を120~150℃の温度および4.0~5.0MPaの圧力で水素化反応器に供給する。オリゴマー化の段階で得られたC12-C18オレフィンは、C12-C18パラフィンに水素化される。このようにして得られたC12-C18パラフィンの混合物は、芳香族化合物を含まない灯油留分である。オリゴマー化ヘキセンに関して、C12-C18パラフィンの収率は98%を超える。クロマトグラフィー質量分析を使用して行った研究の結果は、tert-ヘキシルアルコールから得られた灯油が48の異なるC12-C18異性体を含有し、直鎖炭化水素を含まないことを実証している。
【0214】
[実施例17]3-エチル-3-ペンタノールから灯油を得る。
【0215】
3-エチル-3-ペンタノールを、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。得られたヘプテン(C7H14)を水から分離し、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を触媒として備えた連続流通反応器に供給する。原料ヘプテンのオリゴマー化は、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15触媒の存在下で特定のプロセスパラメータで行い、C14-C21オレフィンを生成する。未反応のヘプテンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料ヘプテンを含まない反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器内に水素化のために供給する。C14-C21オレフィンと同時に、水素を120~150℃の温度および4.0~5.0MPaの圧力で水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られたC14-C21オレフィンは、C14-C21パラフィンに水素化される。水素化の段階で得られた反応塊は精留に導かれ、芳香族化合物を含まない灯油留分とディーゼル留分に分離する。オリゴマー化ヘプテンに関して、C14-C21パラフィンの収率は98%を超える。クロマトグラフィー質量分析を使用して行った研究の結果は、tert-ヘキシルアルコールから得られた灯油が48の異なるC12-C18異性体を含有し、直鎖炭化水素を含まないことを実証している。
【0216】
[実施例18]tert-ヘプチルアルコールから灯油を得る。
【0217】
2-メチル-ヘキサノール-2(ジメチルブチルカルビノール)を、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。得られたヘプテン(C7H14)を水から分離し、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で、触媒である陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を備えた連続流通反応器に供給する。これらの条件により、ヘプテンがオリゴマー化し、C14-C21オレフィンが得られる。未反応のヘプテンを、オリゴマー化のプロセスによって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料ヘプテンを含まない反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器内に水素化のために供給する。オリゴマー化生成物、すなわちC14-C21オレフィンと同時に、温度120~150℃、圧力4.0~5.0MPaで水素を水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られたC14-C21オレフィンは、C14-C21パラフィンに変換される。水素化の段階で得られた反応塊は精留に導かれ、芳香族化合物を含まない灯油留分とディーゼル留分に分離する。オリゴマー化ヘプテンに関して、C14-C21パラフィンの収率は95%を超える。クロマトグラフィー質量分析を使用して行った研究の結果は、tert-ヘプチルアルコールから得られた灯油が28の異なるC14-C18異性体を含有し、直鎖炭化水素を含まないことを実証している。
【0218】
[実施例19]2-エチル-ヘキシルアルコールから灯油を得る。
【0219】
2-エチル-ヘキシルアルコール(2-エチル-ヘキサノール-1)を、350~400℃の温度および0.5~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水して、オクテンを得る。オクテン(C8H16)を水から分離し、150~200℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で、3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を備えた連続流通反応器に供給する。これらの条件により、オクテンがオリゴマー化し、C16-C24オレフィンが得られる。未反応のオクテンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料オクテンを含まない反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器に水素化のために供給する。C16-C24オレフィンと同時に、水素を250~350℃の温度および4.0~5.0MPaの圧力で水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られたC16-C24オレフィンは、C16-C24パラフィンに水素化される。オリゴマー化オクテンに関して、C16-C24パラフィンの収率は95%を超える。次いで、水素化の段階で得られた反応塊を精留によって灯油留分とディーゼル留分に分離する。これらの留分中の芳香族化合物含有量は5.0質量%を超えない。
【0220】
[実施例20]tert-アミルアルコールおよびtert-ヘキシルアルコールの混合物から灯油を得る。
【0221】
モル比1:1のtert-アミルアルコールとtert-ヘキシルアルコールとの混合物を、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。得られたオレフィンの混合物(C5H10+C6H12)を水から分離し、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を触媒として備えた連続流通反応器に供給する。これらの条件により、ペンテンおよびヘキセンがオリゴマー化し、C10-C24オレフィンが得られる。未反応のペンテンおよびヘキセンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料ペンテンおよびヘキセンを含まない反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器に水素化のために供給する。オリゴマー化の生成物と同時に、温度120~150℃、圧力4.0~5.0MPaで水素を水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られた不飽和C10-C24化合物は、水素化されてC10-C24パラフィンになる。その後、水素化の段階で得られた反応塊を、精留によって、芳香族化合物を含まない灯油ならびにガソリンおよびディーゼル留分に分離する。
【0222】
オリゴマー化ペンテンおよびヘキセンに関して、C10-C24パラフィンの収率は99%を超える。クロマトグラフィー質量分析を使用して行った研究の結果は、tert-アミルおよびtert-ヘキシルアルコールから得られた灯油が78の異なるC10-C20異性体を含有し、直鎖炭化水素を含まないことを実証している。
【0223】
[実施例21]tert-アミルアルコール、tert-ヘキシルアルコールおよびtert-ヘプチルアルコールの混合物から灯油を得る。
【0224】
モル比1:1:1のtert-アミルアルコールおよびtert-ヘキシルアルコールおよびtert-ヘプチルアルコールの混合物を、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。得られたオレフィンの混合物(C5H10+C6H12+C7H14)を水から分離し、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を触媒として備えた連続流通反応器に供給する。これらの条件により、ペンテン、ヘキセンおよびヘプテンがオリゴマー化し、C10-C24オレフィンが得られる。未反応のペンテン、ヘキセンおよびヘプテンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料ペンテン、ヘキセンおよびヘプテンを含まない反応塊は、モル比1:1:1のNiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器に水素化のために導かれる。オリゴマー化の生成物と同時に、温度120~150℃、圧力4.0~5.0MPaで水素を水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られた不飽和C10-C24化合物は、水素化されてC10-C24パラフィンになる。その後、水素化の段階で得られた反応塊を、精留によって、芳香族化合物を含まないC11-C18灯油およびC19-C24ディーゼル留分に分離する。オリゴマー化C5-C7オレフィンに関して、C10-C24パラフィンの収率は99%を超える。クロマトグラフィー質量分析を使用して行った研究の結果は、tert-アミル、tert-ヘキシル、およびtert-ヘプチルアルコールから得られた灯油が101の異なるC10-C20異性体を含有し、直鎖炭化水素を含まないことを実証している。
【0225】
[実施例22]プロピルおよび2-メチルペンチルアルコールの混合物から灯油を得る。
【0226】
モル比(1.0~1.5):1のプロピルおよび2-メチルペンチルアルコールの混合物を、350~450℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。得られたオレフィンの混合物(C3H6+C6H12)を水から分離し、250~350℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で、3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を備えた連続流通反応器に供給する。これらの条件により、プロピレンおよびヘキセンがオリゴマー化し、C6-C24オレフィンが得られる未反応のプロピレンおよびヘキセンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料プロピレンおよびヘキセンを含まない反応塊を、モル比1:1:1のNiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器内に水素化のために供給する。オリゴマー化生成物と同時に、温度120~150℃、圧力4.0~5.0MPaで水素を水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られた不飽和C6-C24化合物は、水素化されてC6-C24パラフィンになる。次いで、水素化の段階で得られた反応塊を、精留によってC11-C18灯油、ならびにC6-C10ガソリンおよびC19-C24ディーゼル留分に分離し、芳香族化合物含有量は5.0質量%以下である。
【0227】
[実施例23]プロピル、イソブチル、2-メチルペンチルおよび2-エチルヘキシルアルコールの混合物から灯油を得る。
【0228】
モル比(1.0~1.5):1:1:(1.0~1.5)のプロピル、イソブチル、2-メチルペンチルおよび2-エチルヘキシルアルコールの混合物を、350~450℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。得られたオレフィンの混合物(C3H6+C4H8+C6H12+C8H16)を水から分離し、250~350℃の温度および3.0~5.0MPaの圧力で、3.5~5.0%のZnおよび0.1~1.5%のCeで改質された少なくとも95%のZSM-5ゼオライトを含有する粒状触媒を備えた連続流通反応器に導く。これらの条件により、プロピレン、イソブチレン、イソヘキセンおよびイソオクテンがオリゴマー化し、C6-C24オレフィンが得られる。未反応のプロピレンおよびイソブチレンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料プロピレンおよびイソブチレンを含まない反応塊を、モル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を備えた連続流通反応器内に水素化のために供給する。オリゴマー化生成物と同時に、温度120~200℃、圧力4.0~5.0MPaで水素を水素化反応器に供給する。オリゴマー化段階で得られた不飽和C6-C24化合物は、水素化されてC6-C24パラフィンになる。このC6-C24パラフィンは、精留によってC11-C18灯油、C6-C10ガソリンおよびC19-C24ディーゼル留分に分離する。表3、表4、および表5は、本発明のプロセスによって得られ、かつ5質量%以下の芳香族化合物含有量を有する、炭化水素留分の特性を示す。オリゴマー化C3-C8オレフィンに関して、C6-C24パラフィンの収率は99%を超える。
【0229】
クロマトグラフィー質量分析を使用して行った研究の結果は、プロピル、イソブチル、2-メチルペンチルおよび2-エチルヘキシルアルコールから得られた灯油が、134種の異なるC8-C18異性体を含有し、それらの4.2質量%が直鎖炭化水素であることを実証している。
【0230】
【0231】
表4.実施例23のJetの特性
【表4-1】
【表4-2】
【0232】
表5.実施例23のディーゼルの特性
【表5-1】
【表5-2】
【0233】
[実施例24]tert-アミルアルコールおよびエチルアルコールからtertアミルエチルエーテルを得る。
【0234】
本発明の技術に基づいて生成されたtert-アミルアルコール(2-メチル-2-ブタノール)を、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で触媒ガンマAl2O3と接触させて脱水する。得られたペンテン(C5H10)を水から分離し、エチルアルコール(C2H5OH)とモル比1:(1.1~1.5)で混合し、触媒として陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を備えた連続流通反応器に、50~100℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で供給する。触媒の量は、触媒1.0リットル当たり、エチルアルコール中のペンテン溶液0.5~1.0リットルであり、エチルアルコール中のペンテン溶液と、触媒としての陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15との接触時間は、30~60分である。エーテル化の段階で得られた反応塊を精留に導き、そこでエチルアルコールをエチルtert-アミルエーテルから分離する。ペンテンからエチルtert-アミルエーテルへの変換率は99%を超える。未反応のエチルアルコールは、ペンテンと混合する段階のプロセスに戻す。tert-アミルエチルエーテルを用いて、芳香族を含まない標準ガソリンを得る。
【0235】
[実施例25]エーテルを含有する標準ガソリンを得る。
【0236】
芳香族化合物を含まない標準ガソリンを得るために、本発明の技術に基づいて生成されたパラフィンのガソリン留分、および前の実施例の方法によって生成されたtertアミルエチルエーテルを使用した。C3-C10炭化水素を含有するパラフィンのガソリン留分を、関連する規格によって規定されるガソリン中の酸素含有量の限界に違反しない任意の体積比で、tertアミルエチルエーテルと混合する。本発明の技術によって製造されるガソリンには、C3-C10パラフィンとの最終混合物中15~22体積%のtertアミルエチルエーテルの濃度が好ましい。表6は、芳香族化合物を含まないガソリンの主な特性を示す。本発明の技術に基づいて生成されたパラフィンおよびtertアミルエチルエーテルのガソリン留分から調製されたガソリンは、高いオクタン価を特徴とする。実施例23に示すように、20.0体積%のtertアミルエチルエーテルおよび80.0体積%のガソリン留分の含有量は、オクタン価RON=100.9 MON=93.8を提供する。このようなガソリンの酸素含有量は3.0重量%未満である。
【0237】
【0238】
[実施例26]第三級C5-C6アルコールおよびエタノールからエーテルを得る。
【0239】
テロマー化によって得られた第三級C5-C8アルコールの混合物を、第三級C5-C6アルコールの単離のために精留に送った。次いで、C5-C6第三級アルコールを脱水して、対応するC5-C6オレフィンを得た。得られたC5-C6オレフィンを冷却し、50~100℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を触媒として備えた連続流通反応器に供給した。C5-C6オレフィンと共に、エチルアルコールをモル比(C5H10+C6H12):C2H5OH=1:(1.0~1.1)で反応器に供給した。エチルアルコール中のC5-C6オレフィン溶液と、触媒としての陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15との接触時間は、30~60分である。エーテル化の段階で得られた反応塊を、未反応のエチルアルコールをtertアミルエチルおよびtertヘキシルエチルエーテルから分離するための精留に送る。C5-C6オレフィンのエチルtertアミルおよびエチルtertヘキシルエーテルへの変換率は99%を超える。エーテル化反応で未反応のエチルアルコールは、C5-C6オレフィンと混合する段階のプロセスに戻す。エチルtertアミルおよびエチルtertヘキシルエーテルは、少なくとも100のオクタン価を有するガソリンを製造するために使用される。
【0240】
[実施例27]オクタン価が少なくとも100であり、酸素含有量が2.7質量%以下であるガソリンを得る。
【0241】
少なくとも100のオクタン価および2.7質量%以下の酸素含有量を有するガソリンを製造するためには、本発明の技術によって得られたパラフィンのC3-C10ガソリン留分、ならびに先の実施例に記載したように得られたtertアミルエチルおよびtertヘキシルエチルエーテルを使用する必要がある。さらに、少なくとも100のオクタン価および2.7重量%以下の酸素含有量を有するガソリンを製造するためには、本発明の技術によって得られたC7-C9芳香族化合物を使用する必要がある。C3-C10炭化水素を含有するパラフィンのガソリン留分を、関連規格EN228によって規定されているガソリン中の酸素含有量の制限に違反しない任意の体積比で、tertアミルエチルおよびtertヘキシルエチルエーテルと混合する。少なくとも100のオクタン価を有するガソリンの好ましい体積濃度は、C3-C10パラフィンおよびC7-C9芳香族を含む最終組成物中15~25%のtertアミルエチルおよびtertヘキシルエチルエーテルである。
【0242】
表7は、オクタン価が少なくとも100であり、酸素含有量が2.7質量%以下であるガソリンの主な特性を示す。
【0243】
【0244】
[実施例28]第三級C7-C8アルコールおよびn-ブチルアルコールからのエーテルの取得
テロマー化によって得られた第三級C5-C8アルコールの混合物を精留のために送り、第三級C7-C8アルコールを単離した。次いで、第三級アルコールを脱水して、対応するC7-C8オレフィンを得た。このようにして得られたC7-C8オレフィンを冷却し、50~100℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で連続流通反応器に供給し、陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15を触媒として入れた。C7-C8オレフィンと共に、本発明の技術によって得られたn-ブチルアルコールをモル比(C7H14+C8H16):C4H9OH=1:(1.0~1.1)で反応器に供給した。n-ブチルアルコール中のC7-C8オレフィン溶液と、触媒としての陽イオン交換体の形態のイオン交換樹脂Amberlite 15との接触時間は、30~60分である。エーテル化プロセスで得られた反応塊を精留に導き、n-ブチルアルコールをtert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテルから分離した。C7-C8オレフィンのtert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテルへの変換率は99%を超える。エーテル化反応ブチルアルコール中の未反応物は、精留塔での精留によって分離し、C7-C8オレフィンと混合する段階のプロセスに戻す。tert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテルを使用して、酸素化炭化水素を含有するディーゼル油を製造する。
【0245】
[実施例29]酸素化炭化水素を含有する標準ディーゼル燃料の製造
酸素含有炭化水素を含む標準ディーゼル燃料を製造するためには、本発明の技術によって生成したC19-C24パラフィンのディーゼル留分を使用することが必要である。さらに、tert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテルを、このディーゼル燃料の酸素含有炭化水素として使用するものとする。tert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテルを生成する方法は、前の実施例に記載されている。C19-C24炭化水素を含有するパラフィンのディーゼル留分を、ディーゼル燃料の関連規格の要件に違反しない任意の比で、tert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテルと混合した。本発明の技術によって製造されるディーゼル燃料の好ましい濃度は、C19-C24パラフィンとの最終混合物中tert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテルの合計の5%~15%(体積基準)である。表8は、C19-C24パラフィンとの最終混合物の10体積%の量のtert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテルの混合物を含むディーゼル燃料の主な特性を示す。
【0246】
表8.実施例29のディーゼルの特性
【表8-1】
【表8-2】
【0247】
[実施例30]第三級С7-С8アルコールおよび2-エチルヘキシルアルコールからエーテルを生成する。
【0248】
テロマー化によって得られた第三級C5-C8アルコールの混合物を精留のために送り、第三級C7-C8アルコールを単離した。次いで、単離したアルコールを脱水して、対応するC7-C8オレフィンを得た。得られたC7-C8オレフィンを冷却し、50~100℃の温度および0.5~1.0MPaの圧力で連続流通反応器に供給し、イオン交換樹脂、この場合は陽イオン交換体Amberlite 15である触媒を入れた。C7-C8オレフィンと共に、本発明の技術によって得られた2-エチルヘキシルアルコールをモル比(C7H14+C8H16):C8H17OH=1:(1.1~1.5)で反応器に供給した。C7-C8オレフィンの2-エチルヘキシルアルコール溶液と、イオン交換樹脂である触媒、この場合は陽イオン交換体との接触時間は、45~60分である。エーテル化の段階で得られた反応塊を精留に導き、得られたtert-ヘプチル2-エチルヘキシルおよびtert-オクチル2-エチルヘキシルエーテルから、2-エチルヘキシルアルコールを分離した。C7-C8オレフィンのtert-ヘプチル2-エチルヘキシルおよびtert-オクチル2-エチルヘキシルエーテルへの変換率は90%を超える。2-エチルヘキシルアルコールと未反応C7-C8オレフィンとの混合物を精留塔で単離し、エーテル化段階のプロセスに戻した。tert-ヘプチル2-エチルヘキシルおよびtert-オクチル2-エチルヘキシルエーテルは、20体積%以上の量の酸素含有炭化水素を組成物中に含むディーゼル燃料を製造するために使用される。
【0249】
[実施例31]20体積%以上の量の酸素含有炭化水素を組成物中に含む、ディーゼル燃料の製造。
【0250】
20体積%以上の量の酸素含有炭化水素を組成物中に含むディーゼル燃料を製造するためには、本発明の技術によって得られたC19-C24パラフィン留分を使用する必要がある。さらに、このディーゼル燃料を製造するために、tert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテル、ならびにtert-ヘプチル2-エチルヘキシルおよびtert-オクチル2-エチルヘキシルエーテルを使用する必要がある。これらのエーテルを生成する方法は、実施例28および実施例30に記載されている。
【0251】
C19-C24炭化水素を含有するパラフィン留分を、tert-ヘプチルブチルおよびtert-オクチルブチルエーテル、ならびにtert-ヘプチル2-エチルヘキシルおよびtert-オクチル2-エチルヘキシルエーテルと混合した。混合は、得られた炭化水素混合物の特性をディーゼルモータ燃料の現在の基準の要件に適合させるように実施した。本発明の技術によって製造され、これらのエーテルを含むディーゼル燃料の好ましい濃度は、C19-C24パラフィンとの最終混合物中の全エーテルの合計の10~20%(体積基準)である。表9は、20体積%以上の酸素含有炭化水素を含有するディーゼル燃料の主な特性を示す。
【0252】
表9.実施例31のディーゼル燃料の特性
【表9-1】
【表9-2】
【0253】
[実施例32]現在の規格Jet A1の全ての要件を完全に遵守して、エタノールから100%の生物学的灯油を得る。
【0254】
モル比1:1:1:1のtert-アミル、tert-ヘキシル、tert-ヘプチルおよびtert-オクチルアルコールの混合物を、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力でガンマAl2O3触媒と接触させて脱水する。得られたオレフィンの混合物(C5H10+C6H12+C7H14+C8H16)を水から分離し、100~150℃の温度および1.0~2.0MPaの圧力で連続流通反応器に供給し、イオン交換樹脂、この場合は陽イオン交換体Amberlite 15である触媒を入れる。これらの条件下で、ペンテン、ヘキセン、ヘプテンおよびオクテンをオリゴマー化してC10-C24オレフィンを得る。未反応のペンテン、ヘキセン、ヘプテンおよびオクテンを、オリゴマー化によって得られた反応塊から留去し、プロセスに戻す。原料ペンテン、ヘキセン、ヘプテンおよびオクテンを含まない反応塊を、連続流通反応器に水素化のために導き、そこにモル比1:1:1の酸化物NiO、CuOおよびCr2O3からなる触媒を入れる。オリゴマー化生成物と共に、120~150℃の温度および4.0~5.0MPaの圧力で水素化反応器に水素を供給する。水素化の過程で、オリゴマー化段階で得られた不飽和C10-C24化合物は、C10-C24パラフィンに変換される。水素化の段階で得られた反応塊は精留に導かれ、そこで芳香族化合物を含まない灯油留分とディーゼル留分に分離する。
【0255】
対応するC2-C5アルコールの脱水段階で得られた不飽和C2-C5炭化水素を、芳香族化反応器に供給する。不飽和炭化水素の芳香族化は、350~450℃の温度および0.5~2.0MPaの圧力で、3.5~7.0%のZnで改質された少なくとも93%のZSM-5を含む本発明の不均一ゼオライト含有触媒の存在下、連続運転反応器中で行われる。芳香族化の過程で、不飽和C2-C5炭化水素は芳香族化合物C7-C12に変換される。芳香族化の段階で得られた反応塊は、水素およびC1-C4パラフィンの混合物であるガス状生成物から単離され、精留に導かれ、そこで2つの留分:C7-C8芳香族炭化水素およびC9-C12芳香族炭化水素に分離される。C7-C8芳香族炭化水素はガソリンを製造するために使用され、C9-C12芳香族炭化水素は灯油を製造するために使用される。C10-C24パラフィンから単離されたC11-C18灯油パラフィン留分は、灯油の最終組成物中の芳香族炭化水素の濃度が8~25体積%の範囲にあるように、芳香族化合物と混合される。表10は、現在の標準的なJet A1の全ての要件を完全に遵守している、エタノールから製造された100%生物学的灯油の主な特性を示す。
【0256】
表10.実施例32のJetの特性
【表10-1】
【表10-2】
【国際調査報告】