(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】白血球特異的細胞透過性分子
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20240829BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240829BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240829BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240829BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240829BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240829BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20240829BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240829BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240829BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240829BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240829BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240829BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240829BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240829BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K14/00
A61P29/00
A61K38/10
A61K38/16
A61P37/06
A61P17/00
A61P37/08
A61P37/02
A61P31/12
A61P31/22
A61P31/14
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P3/10
A61P1/04
A61P11/06
A61P9/10 101
A61P3/06
A61P1/16
A61P27/02
A61P9/10
A61P11/02
A61P17/06
A61P17/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537298
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022075348
(87)【国際公開番号】W WO2023028486
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524071148
【氏名又は名称】アミトルクス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス、バーナン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンダ、マシュー エイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA18
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4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
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4C084ZC352
4C084ZC521
4C084ZC522
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA71
4H045EA22
(57)【要約】
本明細書には、白血球-ターゲティング分子、白血球-ターゲティング分子および任意の薬剤を含む医薬組成物、ならびにそれらを使用する方法が開示される。いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、式:X1X2AAX3AX4X5X17AX6X7X8AX9X10A(P)nX11X12(X13)nを有するペプチド、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、X1、X2、X11、およびX12は、それぞれ独立して、リジン、アルギニン、またはオルニチンであり、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10は、それぞれ独立して、バリン、ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンであり、X13はチロシンであり、X17はプラリンまたはアラニンであり、そして、nは0または1である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
X
1、X
2、X
11、およびX
12は、それぞれ独立して、リジン、アルギニン、またはオルニチンであり、
X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、およびX
10は、それぞれ独立して、バリン、ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンであり、
X
13はチロシンであり、
X
17はプロリンまたはアラニンであり、および、
nは0または1である、
白血球-ターゲティング分子。
【請求項2】
X
3およびX
6はバリンである、請求項1に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項3】
X
4、X
5、X
7、X
8、X
9、およびX
10は、それぞれ独立して、ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンである、請求項1または2に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項4】
前記ペプチドは、式:
【化2】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項5】
前記ペプチドは少なくとも1つのオルニチン、イソロイシン、またはノルロイシンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項6】
前記ペプチドは、KKAAVALLPAVLLALLAKK(配列番号5)、RRAAVALLPAVLLALLARR(配列番号6)、RRAAVALLPAVLLALLARK(配列番号7)、RKAAVALLPAVLLALLARKY(配列番号8)、AAVALLPAVLLALLAPCVQRKRQKLMPC(配列番号9)、AAVALLPAVLLALLAPVQRKRQKLMP(配列番号13)、KKAAVALLPAVLLALLAPKK(配列番号39)、RRAAVALLPAVLLALLAPRR(配列番号40)、RRAAVALLPAVLLALLAPRK(配列番号41)、またはRKAAVALLPAVLLALLAPRKY(配列番号42)から選択される式を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項7】
C末端にCVQRKRQKLMPC(配列番号38)のアミノ酸配列をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項8】
前記ペプチドは、式:
【化3】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項9】
前記ペプチドはシステイン残基において環化されている、請求項7または8に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項10】
前記ペプチドは直鎖状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項11】
前記ペプチドは、1つまたは2つのC末端リジンをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項12】
前記ペプチドはN末端リジンをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項13】
前記ペプチドは、前記N末端リジンとX
1との間に配置されたアルギニン残基をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項14】
前記化合物は少なくとも1つのヨウ素の放射性同位体を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項15】
前記少なくとも1つのヨウ素の放射性同位体は、独立して、
123I、
124I、
125I、または
131Iから選択される、請求項14に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項16】
前記ペプチドは少なくとも1つのD-アミノ酸を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項17】
前記白血球は、好酸球、好塩基球、好中球、または単球である、請求項1~16のいずれか一項に記載の白血球-ターゲティング分子。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の前記白血球-ターゲティング分子を含む、組成物。
【請求項19】
前記組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含む医薬組成物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~17のいずれかに記載の白血球-ターゲティング分子または請求項18もしくは19に記載の組成物を対象に投与することを含む、白血球、CD34
+幹細胞、またはその両方への活性薬剤の送達を必要とする対象における白血球、CD34
+幹細胞、またはその両方に活性薬剤を送達する方法。
【請求項21】
前記白血球は、好酸球、好塩基球、好中球、または単球である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象における疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~17のいずれかに記載の白血球-ターゲティング分子または請求項18もしくは19に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記疾患は炎症性疾患である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患は自己免疫疾患である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患は皮膚障害である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記皮膚障害は、アトピー性皮膚炎、乾癬、酒さ、またはざ瘡である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記皮膚障害はアトピー性皮膚炎である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患は慢性皮膚狼瘡または全身性エリテマトーデスである、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患はウイルス疾患である、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患は、帯状疱疹、単純ヘルペス1型もしくは2型、または重症急性呼吸器ウイルス2型(SARS-CoV-2)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、または1型糖尿病である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記炎症性腸疾患はクローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患は、アテローム性動脈硬化症、非アルコール性脂肪性肝炎、または高コレステロール血症である、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、結膜炎、ぶどう膜炎、または慢性副鼻腔炎である、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記白血球-ターゲティング分子または組成物は、局所的に、経口的に、または注射によって投与される、請求項22~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
局所投与は、局所クリーム、放出制御局所パッチ、点眼薬、および点鼻スプレーを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1~17のいずれかに記載の白血球-ターゲティング分子または請求項18もしくは19に記載の組成物を対象に投与することを含む、異常なサイトカインシグナル伝達の減少を必要とする対象における異常なサイトカインシグナル伝達を減少させる方法。
【請求項38】
前記活性医薬成分は、赤血球よりも白血球、CD34
+幹細胞、またはその両方に優先的に送達される、請求項20~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記白血球は、好酸球、好塩基球、好中球、または単球である、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月23日に出願された米国仮特許出願63/236,187号および2022年5月12日に出願された米国仮特許出願63/341,253号の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
特許請求の範囲に記載された発明は、白血球-ターゲティング分子およびそれを含む医薬組成物に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、白血球-ターゲティング分子、ならびに白血球-ターゲティング分子および任意の薬剤を含む組成物が開示されている。
【0004】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、式:
【化1】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含む白血球-ターゲティング分子が提供され、式中、X
1、X
2、X
11、およびX
12は、それぞれ独立して、リジン、アルギニン、またはオルニチンであり、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、およびX
10は、それぞれ独立して、バリン、ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンであり、X
13はチロシンであり、X
17はプロリンまたはアラニンであり、そしてnは0または1である。いくつかの実施形態では、X
3およびX
6はバリンである。いくつかの実施形態では、X
4、X
5、X
7、X
8、X
9、およびX
10は、それぞれ独立して、ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンである。
【0005】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、式:
【化2】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0006】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、少なくとも1つのオルニチン、イソロイシン、またはノルロイシンを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、ペプチドのC末端およびN末端の一方または両方に追加の1~5個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、追加のアミノ酸は塩基性アミノ酸である。
【0008】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、KKAAVALLPAVLLALLAKK(配列番号5)、RRAAVALLPAVLLALLARR(配列番号6)、RRAAVALLPAVLLALLARK(配列番号7)、RKAAVALLPAVLLALLARKY(配列番号8)、AAVALLPAVLLALLAPCVQRKRQKLMPC(配列番号9)、AAVALLPAVLLALLAPVQRKRQKLMP(配列番号13)、KKAAVALLPAVLLALLAPKK(配列番号39)、RRAAVALLPAVLLALLAPRR(配列番号40)、RRAAVALLPAVLLALLAPRK(配列番号41)、またはRKAAVALLPAVLLALLAPRKY(配列番号42)から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、カルボキシ末端にアミノ酸配列CVQRKRQKLMPC(配列番号38)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、式:
【化3】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0010】
いくつかの実施形態では、化合物は少なくとも1つのヨウ素の放射性同位体を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドはヨウ素化されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのヨウ素の放射性同位体は、独立して、123I、124I、125I、もしくは131Iから独立して選択されるか、またはペプチドは、123I、124I、125Iもしくは131Iでヨウ素化される。
【0011】
いくつかの実施形態では、ペプチドは少なくとも1つのD-アミノ酸を含む。
【0012】
また、本明細書に開示される化合物を含む組成物も本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物である。
【0013】
また、本明細書では、本明細書に開示される白血球-ターゲティング分子または組成物を投与することを含む、それを必要とする対象における白血球、CD34+幹細胞、またはその両方に活性薬剤を送達する方法も開示される。いくつかの実施形態では、白血球は、好酸球、好塩基球、好中球、または単球である。
【0014】
また、本明細書では、治療有効量の本明細書に開示される白血球-ターゲティング分子または組成物を投与することを含む、対象における疾患を治療する方法も開示される。いくつかの実施形態では、疾患は炎症性疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は自己免疫疾患である。
【0015】
いくつかの実施形態では、疾患は皮膚障害である。いくつかの実施形態では、皮膚障害は、アトピー性皮膚炎、乾癬、酒さ、またはざ瘡である。いくつかの実施形態では、皮膚障害はアトピー性皮膚炎である。
【0016】
いくつかの実施形態では、疾患は慢性皮膚狼瘡または全身性エリテマトーデスである。いくつかの実施形態では、疾患はウイルス疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は、帯状疱疹、単純ヘルペス1型もしくは2型、または重症急性呼吸器ウイルス2型(SARS-CoV-2)である。
【0017】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、または1型糖尿病である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患はクローン病または潰瘍性大腸炎である。
【0018】
いくつかの実施形態では、疾患はアテローム性動脈硬化症、非アルコール性脂肪性肝炎、または高コレステロール血症である。いくつかの実施形態では、疾患は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、結膜炎、ぶどう膜炎、または慢性副鼻腔炎である。
【0019】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子または組成物は、局所的に、経口的に、または注射によって投与される。いくつかの実施形態では、局所投与は、局所クリーム、放出制御局所パッチ、点眼薬、および点鼻スプレーを含む。
【0020】
また、本明細書では、本明細書に開示される白血球-ターゲティング分子または組成物を投与することを含む、それを必要とする対象における異常なサイトカインシグナル伝達を低減させる方法も開示される。いくつかの実施形態では、活性医薬成分は、赤血球よりも白血球、CD34+幹細胞、またはその両方に優先的に送達される。いくつかの実施形態では、白血球は、好酸球、好塩基球、好中球、または単球である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1A-Bは、雄アルビノラットに5mg/kgのターゲット用量で[
3H]-AMTX-100を単回皮下(
図1A)および静脈内(
図1B)投与した後の放射能濃度(μg当量/mLとして表す)の比較を示す。血漿とは、赤血球が除去された全血を指す。
【
図1B】
図1A-Bは、雄アルビノラットに5mg/kgのターゲット用量で[
3H]-AMTX-100を単回皮下(
図1A)および静脈内(
図1B)投与した後の放射能濃度(μg当量/mLとして表す)の比較を示す。血漿とは、赤血球が除去された全血を指す。
【
図2】
図2は、静脈内、皮下、気管内、十二指腸内、食道、または局所(皮膚)経路による投与後の血漿中の(
3H)-AMTX-100の血漿レベルを示す。D-アミノ酸を使用した十二指腸内投与を除き、すべての研究では(3H)-AMTX-100のL-アミノ酸型を使用する。
【
図3A】
図3A-Bは、マウス白血球におけるAMTX-100-FITC蛍光強度中央値を2つのスケールで示す。
図3Aは、好酸球の強度を提供するために0~6,000のスケールで強度を示す。
【
図3B】
図3A-Bは、マウス白血球におけるAMTX-100-FITC蛍光強度中央値を2つのスケールで示す。
図3Bは、他の白血球集団の強度を提供するために0~3,000のスケールで強度を示す。
【
図4A】
図4A-Bは、ヒト白血球におけるAMTX-100-FITC蛍光強度の中央値を2つのスケールで示す。
図4Aは、好酸球の強度を提供するために0~300,000のスケールで強度を示す。
【
図4B】
図4A-Bは、ヒト白血球におけるAMTX-100-FITC蛍光強度の中央値を2つのスケールで示す。
図4Bは、他の白血球集団の強度を提供するために0~10,000のスケールで強度を示す。
【
図5A】
図5A-Bは、5mg/kgの用量での[
3H]-AMTX-100の単回静脈内投与後の2時間後(
図5A)および12時間後(
図5B)のラット組織における放射能分布を示す。
【
図5B】
図5A-Bは、5mg/kgの用量での[
3H]-AMTX-100の単回静脈内投与後の2時間後(
図5A)および12時間後(
図5B)のラット組織における放射能分布を示す。
【
図6】
図6は、雄アルビノラットに5mg/kgのターゲット用量で[
3H]-AMTX-100を単回局所投与した後の放射能濃度(ng当量/mLとして表す)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
AMTX-100は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2001/37821に開示されているような小ペプチドである。これは、細胞透過性アミノ末端(シグナル配列疎水性領域またはSSHRと呼ばれることもある)を備えた、自然界には見られないキメラである。SSHRはカルボキシ末端でストレス応答転写因子(SRTF)に結合し、AMTX-100を生成する。SRTFには、インポーチンα/インポーチンβ核輸送体複合体への結合を可能にするNF-κB由来の核局在化配列(NLS)が含まれる。アミノ末端には、転写因子を促進する炭水化物および脂質の代謝に見られるNLSも含まれる。SSHRを備えた分子は細胞に透過できるが、SSHRを削除すると細胞透過が無効になる。言い換えれば、NF-κB配列だけでは細胞に透過することができない。AMTX-100には3つの重要な特性:1)細胞透過、2)核輸送体による炎症経路に関与するSPTFの調節、3)核輸送体による代謝経路に関与する大型転写因子の調節、がある。これにより、NLSを備えた完全に機能する転写因子と、AMTX-100に含まれる同様のNLSとの間の競合が生じる。この競合は、転写を開始するために核内に輸送される転写因子の量を調節する。
【0023】
AMTX-100の輸送体は、インポーチン-αであり、インポーチン-αはインポーチン-βと複合体を形成する(それぞれImpα5およびImpβ1)。Impα5は、多くのSRTFのNLSのためのドッキング部位を持ち、核膜の通過を可能にする機能要素であるImpβ1上のドッキング部位を認識するアダプタータンパク質である。Impα5とImpβ1の間の相互作用により、Impα5に結合したSRTFが核孔を通って輸送されることが可能になる。
【0024】
Impβ1は、Impα5に結合したSRTFの結合および輸送に加えて、第2の機能を有する。Impβ1は、SRTFのNLSとは異なる、脂質(SREBP)および炭水化物(ChREBP)の代謝に必要なTFのNLSも認識する。Impβ1は、アダプタータンパク質なしでこれらのTFを核に輸送できる。
【0025】
炎症誘発性となるように活性化され、SRTFを産生する細胞も、増殖しその機能(サイトカイン、ケモカインおよび成長因子の産生)を実行するためにエネルギーおよび脂質を必要とする。したがって、AMTX-100配列は、自然な方法でSRTF、ChRFBP、およびSREBPのNLS結合ドメインを競合的に調節でき、炎症と代謝における2つの重要なチェックポイントでTFドッキング部位のためのおとりとして機能する。
【0026】
AMTX-100のアミノ末端は、線維芽細胞成長因子(FGF)-4リーダー配列に由来し、これにより、FGF-4がプロセシングのために小胞体に侵入し、細胞からのFGF-4の押し出しが可能になると考えられていた。細胞外のFGF-4はさまざまなFGF受容体(1~4)に無差別に結合し、ヘパリンによって促進される。FGF-4がその細胞表面受容体に結合すると、細胞内にシグナル伝達を引き起こすチロシンキナーゼカスケードが引き起こされる。
【0027】
当初、AMTX-100上のSSHRは、受容体、エネルギー、またはエンドサイトーシスなしで細胞に侵入できると考えられていた。しかし、本発明者らの研究では、インポーチンα/インポーチンβ複合体およびアミノ酸置換により得られたインポーチンβの二重ヌルノックアウトを有し、かつFITC分子を含むAMTX-100関連ペプチド(FITC-SMTX-100)をヒト血液とインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。このFITC結合した、AMTX-100関連ペプチドは、白血球(leukocyte)(白血球(white blood cell)[WBC])にのみ侵入し、赤血球(RBC)には侵入しない;細胞特異性の最初の兆候,と考えられる。マウスで行われた薬物動態(PK)研究では、感度2ng/mlのLC-MSを使用して、RBCおよびWBCが除去された血漿中のAMTX-100を検出することはできなかった。したがって、これは、AMTX-100がWBC内を移動して他の細胞に伝達されるか、白血球との相互作用の副産物を通じて間接的に他の細胞に影響を与えることができることを示唆した。
【0028】
AMTX-100の腹腔内注射は、肺、肝臓、敗血症、およびメタボリックシンドローム誘発性炎症の多くの動物モデルにおいて有効性を示している(AMTX-100および炎症に関して開示するものはすべてについて参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2001/037821号、国際公開第2013/052813号、国際公開第2018/232383号、および国際公開第2020/056250号を参照)。腹膜領域には白血球が存在することが知られている。ほとんどの白血球は血液やリンパ液中で移動するが、一部の白血球は特定の組織に固定されている。
【0029】
薬物動態学/生体内分布研究は、ラットにおいて放射性形態のAMTX-100([3H]-AMTX-100)を用いて実施された。血液中のAMTX-100のT1/2は45~51時間であり、放射線はWBCに分配された。[3H]-AMTX-100は、免疫細胞が存在し、通過することが知られている臓器(脾臓、肺、肝臓、リンパ節、腎臓、副腎、骨髄、膵臓、小腸など)に局在していた。驚くべきことに、心臓および他の筋肉細胞における放射能の局在化の欠如はなかった。これは、AMTX-100がすべての臓器や細胞に侵入するわけではないことを示唆しており、公開されている情報に反している。
【0030】
免疫細胞を有する器官には放射能の濃度が存在すると思われるため、ヒト血液を用いて一連のフローサイトメトリー実験を開始した。最初にすべての細胞をFITC-AMTX-100で染色し、次に造血細胞をRBC、顆粒球、単球、Bリンパ球およびTリンパ球、ならびにNK細胞の広いカテゴリーに分離する免疫型判定試薬とともにインキュベートした。RBCの二重染色は見られず、FITC-AMTX-100とインキュベートしたヒト血液で観察されたことを裏付けている。対照的に、顆粒球および単球のサブセットは二重染色されていることが確認され、試験した白血球マーカー内に特異性があることが示された。CD34+造血幹細胞の小さなサブセットも二重染色された。繰り返しになるが、無差別な細胞透過性リーダー配列であると「されている」ペプチドにとって、非常に予想外の発見であった。
【0031】
線維芽細胞成長因子は、生物の四肢形成および細胞増殖の発達において非常に重要な分子であり、よく研究されている。細胞透過性および細胞に対する特異性を示しているFGFリーダー配列に関する文献、特にFGF-4のこれらの性質は報告されていない。すべてのFGFにリーダー配列があるわけではない。本発明者らは、FGF-4リーダー配列に対するこの特異性の発見は、重要な免疫細胞をターゲットとするための高度に特異的な結合またはカプセル化薬物送達ビヒクルとして重要な医学的および産業的用途を有することを認識した。
【0032】
ペプチド、タンパク質、小分子薬剤、RNA、DNA、および放射性同位体と結合するFGF-4のリーダー配列の非天然型も本明細書に開示される。FGF-4リーダー配列に見られるように、独自の生物学的活性と細胞特異性を有する可能性のあるリーダー配列を備えた追加のFGFがある。
【0033】
(組成物)
本明細書では、白血球(white blood cell)(WBC、白血球(leukocyte))およびCD34+幹細胞をターゲットとすることができる分子と、治療用、診断用、または予防用の薬剤とを含む組成物が開示される。白血球は骨髄で作られ、血液およびリンパ組織に存在する血球の一種であり、体の免疫システムの一部である。それらは体が感染症や他の病気と戦うのに役立つ。白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))の種類には、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、およびリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)がある。
【0034】
いくつかの実施形態では、組成物は、白血球-ターゲティング分子などの本明細書に提供される化合物、および治療薬、診断薬、または予防薬などの薬剤を含み、化合物および薬剤は共有結合していても非共有結合していてもよい。本明細書に開示される組成物は、薬剤を細胞の細胞質または核に送達するよう調整することができる。本明細書に開示される組成物は、タンパク質またはペプチド薬剤に融合された白血球-ターゲティング分子を含むこともできる。
【0035】
本明細書に開示される白血球-ターゲティング分子は、線維芽細胞増殖因子配列(FGFシグナル配列、あるいはシグナル配列疎水性領域またはSSHRとも呼ばれる)由来の細胞透過性アミノ末端を含む。いくつかの実施形態では、FGFシグナル配列は、カルボキシ末端でストレス応答転写因子(SRTF)核局在化配列(NLS)に連結される。いくつかの実施形態では、SRTFは、インポーチンα/インポーチンβ核輸送体複合体への結合を可能にするNF-κB由来のNLSを含む。アミノ末端は、転写因子を促進する炭水化物および脂質の代謝に見られるNLSも含む。いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、ペプチド、核酸、または放射性同位体薬剤に結合した細胞透過性アミノ末端を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、例えば配列番号1の下線を引いたFGF配列に基づく、線維芽細胞増殖因子(FGF)シグナル配列に由来する。表1に示すように、FGF4シグナル配列の変異体も特許請求の範囲に記載の組成物において有用である。いくつかの実施形態において、白血球-ターゲティング分子配列は、インポーチンβ活性をノックアウトするための修飾を含む。いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子配列はインポーチンβ活性を維持する。
【0037】
【0038】
【0039】
いくつかの実施形態では、表1のペプチドは直鎖状である。いくつかの実施形態では、配列番号9、10、12、14、および37は、システイン残基で任意に環化されている。いくつかの実施形態では、配列は環化されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、
【化5】
またはその塩である。
【0041】
いくつかの実施形態では、薬剤は、ペプチド、タンパク質、核酸、小分子、重金属、造影剤、または放射性薬剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含むが、これらに限定されない酵素である。いくつかの実施形態では、重金属は、コロイド金またはガドリニウムを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、放射性薬剤は、3H-、14C-、125I-、18F-、または131I-を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、造影剤は放射性薬剤または蛍光標識である。いくつかの実施形態では、蛍光標識は、フルオレセイン、ローダミン、もしくは緑色蛍光タンパク質、またはそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子および薬剤はミセルまたはリポソームにカプセル化される。いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、ミセルまたはリポソームの表面上で白血球との相互作用に利用できるように、ミセルまたはリポソームに組み込まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、好酸球、好塩基球、好中球、および単球を特異的にターゲットとする。いくつかの実施形態では、白血球-ターゲティング分子は、Tリンパ球、Bリンパ球、またはNK細胞をターゲットとしない。
【0044】
本明細書に開示される組成物は、二重特異性ターゲティングを可能にするために白血球-ターゲティング分子を抗体と結合させることを任意に含むことができる。これらの抗体結合分子は、開示された白血球-ターゲティング分子によって白血球をターゲットとし、第二の特異性は抗体を介したターゲティングとなるであろう。これらの二重特異性分子は、抗体の特異性に応じて、腫瘍の発生に関与するシグナル伝達経路を妨害し、免疫細胞をターゲット組織にリダイレクトまたはリクルートする。
【0045】
(使用方法)
本明細書に開示される組成物は、白血球に対する診断薬、治療薬、および予防薬のターゲティングに有用である。いくつかの実施形態では、白血球は、自己免疫疾患、炎症性疾患、もしくは神経変性疾患の治療を必要とする対象、または異常なサイトカイン産生の減少を必要とする対象をターゲットとする。
【0046】
本明細書に開示されるように、炎症性疾患は、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アルツハイマー病、抗リン脂質抗体症候群(APS)、例えば、単関節炎、少関節炎、または変形性関節症のような多発性関節炎などの関節炎、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、敗血症性関節炎、脊椎関節症、痛風、偽痛風、スチル病、喘息、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、1型糖尿病(IDDM)、子宮内膜症、例えば過敏性腸疾患、またはクローン病もしくは潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患などの胃腸障害、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、間質性膀胱炎、例えば円板状エリテマトーデス、薬剤性エリテマトーデス、ループス腎炎、新生児ループス、亜急性皮膚エリテマトーデス、または全身性エリテマトーデスなどのループス、モルフェア、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、例えば皮膚筋炎、封入体筋炎、または多発性筋炎などのミオパチー、筋炎、ナルコレプシー、ニューロミオトニア、パーキンソン病、尋常性天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、再発性散在性脳脊髄炎、リウマチ熱、強皮症、シェーグレン症候群、例えば皮膚炎、湿疹、うっ滞性静電気皮膚炎、アトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎、乾癬、酒さまたは強皮症などの皮膚障害、腱鞘炎、ぶどう膜炎、例えばバージャー病などの血管炎、脳血管炎、チャーグ・ストラウス動脈炎、クリオグロブリン血症、本態性クリオグロブリン血症性血管炎、巨細胞性動脈炎、ゴルファー血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、過敏性血管炎、川崎病、顕微鏡的多発動脈炎/多発血管炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、リウマチ性血管炎、高安動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、円形脱毛症、または白斑を含む疾患または障害であるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患または炎症性疾患は皮膚障害である。いくつかの実施形態では、皮膚障害は乾癬である。いくつかの実施形態では、皮膚障害はアトピー性皮膚炎である。いくつかの実施形態では、皮膚障害は、本明細書に開示される化合物、組成物、または白血球-ターゲティング分子の局所投与により治療される。
【0048】
本明細書に開示されるように、神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、視神経炎、脳卒中、CNS外傷、筋萎縮性側索硬化症、神経障害、神経系低酸素症、CNS毒性、認知症、網膜症、ハンチントン病、シヌクレイノパチー、てんかん、自閉症、および加齢関連性CNS変性を含む疾患または障害であるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、神経変性疾患はアルツハイマー病である。
【0049】
いくつかの実施形態では、異常なサイトカイン産生はサイトカイン放出症候群(CRS)である。CRSは、INF-γ、IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-8、GM-CSF、M-CSF、TNF-αなどの炎症誘発性サイトカインの異常な過剰産生であり、高濃度の全身循環サイトカインを引き起こす。本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、炎症誘発性サイトカインの産生を減少させることができる。
【0050】
本明細書に開示される組成物の投与は、白血球細胞またはCD34+幹細胞への組成物の取り込みをもたらす任意の適切な手段によるものであってもよい。組成物は、任意の適切なキャリア物質中に任意の適切な量で含まれてもよく、一般に、組成物の総重量の1~95重量%の量で存在する。組成物は、局所投与または全身投与(例えば、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、または腹腔内)に適した剤形で提供されてもよい。医薬組成物は、従来の製薬慣行に従って製剤化されてもよい(例えば、(Gennaro,A.R.ed.(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,Md.;Swarbrick,J. and Boylan,J.C.eds.(1988-1999)Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,Marcel Dekker,New Yorkを参照)。
【0051】
本明細書に記載の組成物は、注射、点滴、局所適用、もしくは剤形、製剤での移植(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内など)によって、または従来の非毒性の薬学的に許容されるキャリアおよびアジュバントを含む適切な送達デバイスまたはインプラントを介して、非経口的に投与されてもよい。一実施形態では、本明細書に記載の組成物は浸透圧ポンプを介して投与される。組成物は、舌下の形態で、または胃腸ペプチダーゼから組成物を保護するコーティングを施して経口投与されてもよい。このような組成物の製剤および調製は、医薬製剤の当業者にはよく知られている。製剤は前述のGennaroに記載されている。
【0052】
非経口使用のための組成物は、単位剤形(例えば、単回用量アンプル)で、または数回の用量を含み、適切な防腐剤が添加され得るバイアルで提供されてもよい。組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、点滴装置、または移植用送達装置の形態であってもよく、または使用前に水または別の適切なビヒクルで再構成される乾燥粉末として提供されてもよい。炎症を治療または予防する活性薬剤とは別に、例えば、組成物は、非経口的に許容される適切なキャリアおよび/または賦形剤を含んでもよい。活性治療薬は、制御放出のためにマイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに組み込まれてもよい。さらに、組成物は、懸濁化剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、等張化剤、および/または分散剤を含んでもよい。
【0053】
上に示したように、本明細書に記載の医薬組成物は、無菌注射に適した形態であってもよい。このような組成物を調製するには、適切な活性治療薬を非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解または懸濁する。使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒としては、水、適量の塩酸を添加して適切なpHに調整した水、水酸化ナトリウムまたは適切な緩衝液、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液もしくはブドウ糖溶液が挙げられる。水性製剤はまた、1つ以上の防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、エチルまたはn-プロピル)を含有してもよい。化合物の1つが水にほとんど溶けないか、わずかしか溶けない場合には、溶解促進剤または可溶化剤を添加することができる、または溶媒に10~60%w/wのプロピレングリコールなどを含有してもよい。
【0054】
ミクロスフェアおよび/またはマイクロカプセルの調製に使用する材料は、例えば、ポリガラクチン、ポリ-(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)、およびポリ(乳酸)などの生分解性/生侵食性ポリマーである。放出制御非経口製剤を製剤化するときに使用できる生体適合性キャリアは、炭水化物(例えば、デキストラン)、タンパク質(例えば、アルブミン)、リポタンパク質、または抗体である。インプラントに使用する材料は、非生分解性(例えば、ポリジメチルシロキサン)または生分解性(例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)もしくはポリ(オルトエステル)、またはそれらの組み合わせ)であり得る。
【0055】
経口使用のための製剤には、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合した活性成分を含有する錠剤が含まれる。このような製剤は当業者に知られている。賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、砂糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム);造粒剤および崩壊剤(例えば、微結晶セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、またはアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール);および潤滑剤、流動促進剤、ならびに癒着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、またはタルク)であってもよい。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、香味料、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などであり得る。
【0056】
錠剤はコーティングされていなくてもよく、あるいは任意に胃腸管内での崩壊および吸収を遅らせ、それにより長期間にわたる持続的な作用を提供するために公知の技術によってコーティングされていてもよい。コーティングは、(例えば、制御放出製剤を達成するために)所定のパターンで活性成分(例えば、薬物)を放出するように適合されてもよいし、胃を通過するまで活性成分を放出しないように適合されてもよい(腸溶性コーティング)。コーティングは、糖コーティング、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルピロリドンをベースとする)、または腸溶性コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、シェラック、および/またはエチルセルロースをベースとする)であってもよい。さらに、例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用してもよい。
【0057】
固体錠剤組成物は、組成物を望ましくない化学変化(例えば、治療活性物質の放出前の化学分解)から保護するように適合されたコーティングを含んでもよい。コーティングは、前述のSwarbrick J.およびBoylan,J.C.に記載されているのと同様の方法で固体剤形上に適用され得る。2つ以上の化合物を錠剤中で一緒に混合してもよく、または分割してもよい。一例では、第2の活性治療薬の相当部分が第1の活性治療薬の放出前に放出されるように、第1の活性治療薬が錠剤の内側に含まれ、第2の活性治療薬が外側に含まれる。例えば、炎症のレベルを低下させる治療上の組み合わせは、本明細書に記載の組成物、方法、およびキットにおいて有用であることが確認されている。
【0058】
経口使用のための製剤は、かみ砕ける錠剤として、または活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、乳糖、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリン)と混合されたハードゼラチンカプセルとして、もしくは活性成分が水または油媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油と混合されたソフトゼラチンカプセルとして提供されてもよい。粉末および顆粒は、錠剤およびカプセルの下で前述した成分を使用して、例えばミキサー、流動床装置または噴霧乾燥装置を使用する従来の方法で調製されてもよい。
【0059】
本明細書に記載の組成物は、吸入、局所適用、および硝子体内注射用に製剤化することもできる。組み合わせは有利な相乗効果が期待される。局所製剤には、クリームまたは軟膏、および本明細書に開示される組成物を皮膚を通して送達する制御放出パッチが含まれる。
【0060】
本明細書に記載の治療方法は、一般に、治療有効量の本明細書に記載の組成物を、哺乳類を含む、それを必要とする対象(例えば、動物)に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は非ヒト哺乳類である。このような治療は、それを必要とする対象に適切に投与されるであろう。「それを必要とする」対象の決定は、診断検査による客観的または主観的な決定、または対象または医療提供者の意見によって行うことができる。
【0061】
(実施例)
(実施例1)AMTX-100の薬物動態/生体内分布
製剤分析
製剤中の[3H]-AMTX-100の放射化学的純度は、用量投与の前後に放射化学的検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して評価された。これは、用量製剤のアリコート50μLをHPLCシステムに注入することによって実行された。
【0062】
放射能濃度および均一性のチェックを、直接定量的放射化学分析によって用量投与の前後に各製剤に対して実施した。
【0063】
製剤投与
用量投与前に各ラットの体重を測定し、投与される個々の用量は、体重、ターゲット用量体積、および用量製剤の放射性濃度に基づいて計算された。
【0064】
投与は、翼状針、チューブおよび注射器を用いて達成された。製剤を尾静脈に直接投与した。用量体積(2.5mL/kg)を使用して、5mg/kgの用量レベル、および100μCi/kg(フェーズ1)および500μCi/kg(フェーズ2)の放射性線量レベルを達成した。用量製剤は、投薬手順全体を通して継続的に撹拌された。
【0065】
体積基準の投与
フェーズ1およびフェーズ2では、過剰分を含む適切な体積の用量製剤を各用量の用量器具に取り込んだ。可能であれば、各動物に新しい用量器具を使用した。閉じ込められた空気と過剰な製剤は排出され、適切な体積が注入された用量器具が残された。用量が投与され、受け取った放射性線量は、分配された用量の体積と用量製剤の計算された放射性濃度によって計算された。
【0066】
[3H]-NSP標識
研究の主要段階では、テストタンパク質を調製し、N-スクシンイミジル-[2,3-3H]-プロピオネート([3H]-NSP)で放射性標識し、下記のように精製した。
【0067】
1.6mLの[3H]-NSP溶液の3つのアリコートを適切なバイアルに分注した。溶媒を周囲温度で窒素ガスの穏やかな気流下で蒸発させた。十分な溶媒が蒸発したら、3つのアリコートを1つのバイアルにまとめ、残りの溶媒を乾固するまで蒸発させた。タンパク質と標識試薬が完全に混合することを保証するために、バイアル内の残渣を、穏やかにボルテックス混合することにより、0.6mLの1mg/mL AMTX-100中に再懸濁した。溶液を周囲温度で約1時間放置した。
【0068】
次に、[3H]-NSP-タンパク質溶液を逆相クロマトグラフィー技術によって精製し、得られた溶液を凍結し、凍結乾燥機を使用して凍結乾燥した。得られた物質を2mLのエタノール:水(50:50)に溶解し、用量調製のための製剤化まで約-20℃で保存した。
【0069】
精製後、逆相HPLCおよび定量的放射化学分析(QRA)を用いて、[3H]-標識試験タンパク質の放射化学的純度および比活性を測定した。
【0070】
AMTX-100を放射標識するための方法の開発中に、15%過酸化水素と1:1でインキュベーションを行う場合と行わない場合の、AMTX-100および[3H]-AMTX-100のLC-RAD-MS/MSによる追加分析(5分)も、全長ペプチドの標識を確認するために実行された。
【0071】
放射性標識タンパク質の比活性は、希釈サンプルの秤量アリコートの液体シンチレーションカウンティング(LSC)に従って計算された。比活性はμCi/mgタンパク質として決定した。
【0072】
製剤
研究の目的を満たすのに十分な放射能濃度を達成するために、各放射性標識検査項目の必要量を、対応する非標識検査項目と必要に応じて組み合わせた。用量溶液は、総用量体積5mg/kgを投与することを目的として、pH7.4のPBS緩衝液で調製された(2.5mL/kg、100μCi/kg-フェーズ1および2.5mL/kg、500μCi/kg-フェーズ2)。
【0073】
定量的全身オートラジオグラフィー(QWBA)
冷凍死骸をQWBAに供した。切片は、30~40個の組織を含むようにラット体の最大5つの異なるレベルで提示された(十分な放射能の存在を条件として)。
【0074】
凍結乾燥した全身オートラジオグラフィー切片を蛍光体蓄積イメージングプレートに曝露し、暗所で周囲温度で7日間インキュベートした。既知量の放射能(nCi/g)を含む校正済みオートラジオグラフィー血液標準が各曝露に含まれていた。
【0075】
組織および[3H]-血液標準(Pharmaron UK Ltd.で調製および検証された)における放射能の分布は、Fuji FLA-5100蛍光画像分析システムならびに関連するTina(バージョン2.09)およびSeeScan(バージョン2.0)ソフトウェアを使用して決定および定量化された。各曝露について、オートラジオグラフィー血液標準からのデータを使用してSeeScanで標準曲線を作成し、そこから放射能の組織濃度(μg当量/g)を決定した。
【0076】
使用した各曝露プレートの代表的なバックグラウンド放射能測定も行った。特定の各組織の測定数は、その組織の出現レベルの数によって決定された。したがって、複数のレベルに出現する大きな組織(例えば、肝臓)については複数の測定が実行され、小さな組織(例えば、甲状腺)については1つの測定値のみが得られた。正確な定量の限界は、目に見える最低の[3H]-血液標準であると考えられた。
【0077】
分析に先立って、サンプルは約-20℃(死骸)または周囲温度(凍結乾燥後の切片)で保管された。分析後、死骸の残骸は処分されるまで約-20℃で保管され、切片は周囲温度で保管された。
【0078】
フェーズ1:血漿中の総放射能
【0079】
8匹の雄のSprague Dawleyラットにそれぞれ[3H]-AMTX-100を単回IV投与し、イソフルオラン麻酔下で心臓穿刺により1匹のラットから全血の最終サンプル(それぞれ約5~10mL)を次の時点:投与後10分、20分、40分、1時間、2時間、4時間、8時間および12時間後に採取した。
【0080】
動物を、心臓穿刺による放血により屠殺し、最終採血後、ヘキサン/ドライアイス混合物(約-70℃)中で死骸を即座に瞬間凍結した。各死骸は約-20℃で保管され、QWBAによる分析が保留された。
【0081】
全血を、抗凝固剤としてK2-EDTAを含むチューブに採取した。採取後、全血および白血球(WBC)濃度の分析のために全血のアリコート(約4mL)を保持した。残りの全血サンプルは血漿に処理された。血漿サンプルは白血球が除去されていなかった。
【0082】
フェーズ2:放射能の組織分布
【0083】
[3H]-AMTX-100をそれぞれ単回静脈内投与した後、全血採取および分析に供した8匹の雄のSprague Dawleyラットから得た3匹の死骸を、以下の各時点:投与後10分後、2時間後、12時間後にQWBA分析のために選択した。
【0084】
各死骸は、回収直後にヘキサン/ドライアイス混合物に浸漬することによって瞬間凍結し、次いで、QWBAによる分析までの間、約-20℃で保管した。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
5mg/kgのターゲット用量での[
3H]-AMTX-100の単回静脈内投与後のラットにおける放射能の分布を、
図5A(2時間)および
図5B(12時間)ならびに表5に示す。5mg/kgのターゲット用量での[
3H]-AMTX-100の単回局所投与後のラットにおける放射能の分布を
図6に示す。
【0089】
【0090】
(実施例2)複数の投与経路後のAMTX-100の血漿出現のタイムライン
AMTX-100をリジン残基で3Hで放射性標識し、7つの異なる経路(静脈内、皮下、局所[皮膚]、気管内、十二指腸内、食道、および経口)により単回用量でSprague-Dawleyラットに注射した。ラットは、a)血液サンプルを心臓穿刺により薬物動態(PK)のために採取し、b)ラットを凍結し、QWBAおよび/またはマイクロオートラジオグラフィーならびに組織学のために切片化し、c)凍結切片を作成し、凍結乾燥し、蛍光体蓄積イメージングプレートに曝露し、画像内の組織放射能を組織:血液比として定量化することにより、最大120時間までのさまざまな時点で評価された。
【0091】
全てのPK研究について、以下の定義が使用された:WB=全血;血漿=赤血球が除去された全血;WBCD=白血球が除去された全血であって、全血はPallアクロディスクフィルター(効率約60%)を通過する;WBC=Pallアクロディスクフィルターに結合し、洗い流される細胞。
【0092】
[3H]-AMTX-100は、すべての投与経路毎に血流に入り、PKは、いくつかの経路毎にペプチドでは予期されない非常に長い血漿中滞留時間を示す(Sub-Q>672時間または28日)。[3H]-AMTX-100の具体的なターゲットは、RBCではなくWBCである。[3H]-AMTX-100のL-アミノ酸型による食道投与は分解に耐性があり、十二指腸投与はD-アミノ酸型であった。本発明者らは、ペプチドが受容体を介して非常に迅速にWBCに侵入することで、細胞外酵素から白血球を保護していると仮説を立てている。血漿中の無傷の[3H]-AMTX-100の放射能の残留性は、[3H]-AMTX-100の単回投与後120時間超であっても1μg当量/mlで比較的一定のままであり、また、WBCが集まる組織には大量の[3H]-AMTX-100が存在するが、心筋組織や骨格筋組織には存在しない。WBCでは生物学的影響が非常に長期間持続すると予想される。
【0093】
[3H]-AMTX-100は、IV投与後のペプチドの半減期(T1/2)が非常に長い(25~51時間)。
【0094】
(実施例3)フローサイトメトリー研究
マウス
マウス全血(n=4 C57BI/6マウス)からの白血球をプールし、[FITC]-AMTX-100で37℃で5分間処理した。結果は、[FITC]-AMTX-100が好酸球、好中球、単球を標的とするが、リンパ球はターゲットにしないことを示している(
図3A-B)。
【0095】
ヒト
ヒト全血(WB)を複数の正常ドナーから入手し、生体外(ex vivo)での反復実験においてμg/mL量の[FITC]-AMTX-100とともにインキュベートした。
【0096】
蛍光色素で標識されたモノクローナル抗体のパネルを使用して、古典的単球、非古典的単球、好中球、好塩基球、好酸球、およびTリンパ球およびBリンパ球ならびにNK細胞を含む[FITC]-AMTX-100透過WB細胞を表現型的に同定した(
図4A-B)。古典的な単球は、CD14細胞表面受容体(CD14++ CD16-単球)の高レベルの発現によって特徴付けられる。非古典的単球は、CD14の低レベル発現とCD16受容体の追加の共発現を示す(CD14+CD16++単球)。
【0097】
RBCは、[FITC]-AMTX-100によって透過されなかったため除外され、蛍光はWBC白血球(leukocyte)集団に存在すると決定され、これは、さまざまな分析方法から推定されるWBのWBC集団中に[3H]-AMTX-100を発見したPK研究と一致する。
【0098】
ヒトWBを用いたフローサイトメトリー研究につながったラットにおけるPK/生体内分布研究で見られた特異性は、AMTX-100が白血球(leukocyte)(古典的および非古典的単球、好中球、好塩基球および好酸球)上に特異的に見出される受容体を介して作用するという仮説を裏付けるものである(
図4A-B)。
【0099】
(実施例4)標識ペプチドによるRAW 264.7細胞の染色
FITC標識ペプチド(配列番号17~20、22、および24~26)は、表1に示すように、アミノ末端でリジン、アミノ末端で追加されたアルギニン、およびカルボキシ末端で追加されたリジンに結合したFITC基を有するSSHR領域(または異なるバージョン)を含むように構築された。
【化6】
【0100】
これらのペプチドを使用して、RAW 264.7細胞の蛍光標識を行った(表6)。
【0101】
【0102】
以前の研究(米国特許第11,026,992号明細書)は、配列AAVLPVLLAL(配列番号27)を有する膜転位モチーフ(MTM)を含むペプチドを開示している。表6の結果は、プロリンをアラニンに変更しても結合活性が変わらないため、従来技術の配列のプロリンはRAW 264.7細胞への結合に必要ではないことを示している。
【0103】
(実施例5)軽度から中等度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者における局所適用されたAMTX-100CFの安全性および忍容性
アトピー性皮膚炎(AD)は、通常乳児期早期に始まるが、相当数の成人も罹患する、湿疹形態を伴う原因不明の慢性再発性掻痒性炎症性皮膚疾患である。米国の成人におけるADの有病率は、5歳、9歳、15歳の小児ではそれぞれ7.3%および15%、15.1%ならびに14.5%である。大多数の患者にとって、この病気は成人期までに治癒するが、罹患人口の10~30%では治癒しない。患者のより少ない割合は、成人になってから症状を発症する。ADは、多くの場合、血清免疫グロブリンE(IgE)レベルの上昇を伴うI型アレルギーの個人歴または家族歴と関連しており、ヤヌスキナーゼシグナルトランスデューサーおよび転写活性化因子(JAK-STAT)シグナル伝達経路を介してシグナルを伝達する、インターロイキン4(IL-4)、IL-13、IL-22、IL-31、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、および胸腺間質リンパ球新生因子(TSLP)などの炎症誘発性メディエーターと関連している。ADは通常、そう痒症、乾皮症、苔癬化、および湿疹性病変を伴う。擦過傷や痂皮形成が共通であり、結節性痒疹様の病変を示す患者もいる。治療の中心は保湿(ぬるめのお風呂に頻繁に入る、ワセリンやアクアフォアの使用など)と局所ステロイドの併用である。より重篤な場合には、免疫調節剤(例:タクロリムスやピメクロリムス)、生物学的製剤(例:デュピルマブやオマリズマブ)、局所ホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害薬(例:クリサボロール)、プロバイオティクス、光線療法などの他の治療選択肢も使用される。これらの治療法の多くは高価であり、慢性的に使用するとさまざまな副作用があると考えられている。したがって、ADを有する患者は、疾患の長期管理に効果的で安全な新しい治療選択肢を必要としている。
【0104】
いくつかの非臨床安全性研究がAMTX-100CFを用いてその毒性学的プロファイルを評価するために実施された(Liu XY,J Biol Chem 275:16774-8,2000;Liu DLX,J Biol Chem 279:19239-46,2004;Veach RA,et al.J Biol Chem 279:11425-31,2004)。この初のヒトにおける非盲検、用量漸増型、フェーズI臨床試験では、軽度から中等度のADを有する成人患者における探索的有効性エンドポイントを評価するとともに、局所適用されたAMTX-100CFの忍容性と安全性を判断することが目的であった。
【0105】
(方法)
研究デザイン
AMTX100-AD-01研究(NCT04313400)は適応型フェーズI/II臨床試験として設計された。研究のフェーズI部分のみを以下に説明する。フェーズI研究は、軽度から中等度のADを有する成人を対象としたAMTX-100CFの安全性、忍容性、有効性を評価する6週間の多施設、非盲検、用量漸増臨床試験であった。研究には、最長21日間のスクリーニング期間、7日間の治療期間、および14日間の経過観察(follow-up)期間が含まれていた。中央治験審査委員会(IRB)は、患者の登録前に、研究プロトコル、インフォームドコンセントフォーム、研究施設、募集資料を承認した。この臨床試験は、医薬品規制調和国際会議(ICH)のガイドライン、適用される規制、およびヘルシンキ宣言に従って実施された。患者には、スクリーニングおよび研究関連手順の開始前に、書面によるインフォームドコンセントが提供された。
【0106】
臨床試験手順
26人の患者が、AMTX-100CF 1.1%の適用を段階的に増加させることにより、5つのコホート用量レベル(ADに罹患した体表面積[BSA]当たり)に順次登録された。登録患者は、ベースライン来院から開始して7日間、1日2回AMTX-100CFを受けるように割り当てられた。
【0107】
AMTX-100CFの適用量は、研究者によって評価され、プロトコルの指示に従って、ADに罹患したBSAのパーセンテージに依存した(400cm2当たり約1gのクリーム)。研究治療の初回投与は、訓練を受けた施設スタッフによるベースライン来院中に研究クリニックで局所的に投与された。対象は、局所使用の適切な量、割り当てられた用量の測定方法、患者日記に研究治療コンプライアンスを記録する方法を含む投与技術について訓練を受けた。他のすべての用量は対象が自宅で自己投与した。対象は、7日間の治療期間中に病変が臨床的にクリアになったかどうかに関係なく、すべてのAD病変(頭皮、顔、目、まぶた、首、手、手のひら、足、鼠径部、生殖器、または腋窩を除く)にAMTX-100CF局所クリームを7日間連続(合計14回塗布)適用する必要があった。レスキュー療法は、ADに対して開始される局所的または全身的な免疫調節治療として定義され、研究者の裁量でいつでも行うことができる。レスキュー療法を実施する場合、対象は分析目的で治療失敗とみなされる。
【0108】
コホート(用量レベル)の漸増(ADに関与するより高いBSAを有する患者を登録するため)の決定は、以前のコホートの安全性データを検討した後、安全性評価委員会(SAC)によって行われた。用量制限毒性(DLT)が観察された場合、研究データ安全性モニタリング委員会(DSMC)はデータの独立した検討を行い、次のコホートへの用量漸増に関する最終勧告を行う必要があった。
【0109】
安全性パラメータ
主要な安全性結果の測定は、DLTの評価によってAMTX-100CF(1.1%)の最大耐用量(MTD)(治療されたBSAの最大割合による)を決定することであった。その他の安全性結果の測定は、追跡調査期間中に治験薬を1回以上投与されたすべての患者における治療中に発生した有害事象(TEAE)、実験室測定における臨床的に重大な変化とシフト、およびバイタルサインであった。TEAEは、AMTX-100CFの使用開始後に始まった、または重症度が悪化した有害事象(AE)として定義された。特に記載がない限り、提示されたすべてのAEは治療中に発生したものであった。
【0110】
有効性パラメータ
有効性結果の測定は、7日目(治療終了)および21日目(追跡終了)での治療されたBSAパーセンテージのベースラインからの変化、およびvIGA-AD(商標)のベースラインからの変化を含んだ。
【0111】
統計分析
統計分析は、研究治療を受ける対象として定義される安全性集団に対して実施された。統計分析は、Windowsバージョン9.4版SAS(登録商標)を使用して実行された。連続変数について記述統計(n、平均、標準偏差、中央値、最小値、最大値)が計算された。カテゴリー変数の頻度とパーセンテージが表示された。
【0112】
(結果)
合計26人の対象が、AMTX-100CF 1.1%を受けるために研究のパート1(フェーズI)に登録された。すべての対象は治療の全過程を終了し、コホート1、2、および3の各対象5人、コホート4の対象4人、およびコホート5の対象7人で追跡調査を行った(表7)。対象のベースライン人口統計と疾患の特徴を表8に示す。
【0113】
【0114】
登録された26人の対象のうち、14人(54%)が男性であった。平均年齢は48.7歳で、範囲は20~75歳であった。安全性は、26人の対象全員の治療中に発生した有害事象(TEAE)を評価することによって査定された。AEは、MedDRA辞書(バージョン23.1)に従って、器官別大分類(SOC)および基本語(PT)によって分類された。
【0115】
【0116】
安全性の結果
26人の対象のうち8人がTEAEを経験した。報告された最も頻繁なTEAE用語は頭痛(ほとんどが軽度)であり、5人の対象が経験した。中等度の重症度を有する3つのAE(ウイルス性上気道感染症および尿路感染症、頭痛)が3人の対象で報告された。研究中に登録された患者のいずれについても、実験室測定およびバイタルサインに重大な変化やシフトは検出されなかった。
【0117】
研究治療適用部位の反応は、ベースライン(投与前、投与後)、治療終了時、および追跡来院時に評価された、乾燥、紅斑/皮膚刺激、灼熱感/スティンギング、びらん/潰瘍形成、浮腫/腫れ、かゆみ、治療領域の痛み、痂皮形成、水疱形成/膿疱形成、剥離/鱗屑および出血を含む、局所的な研究治療の適用に潜在的に関連する症状として定義された。適用部位反応と同様の症状は、治験薬の最初の適用前に、(AD病変の性質により)AD病変に存在していたが、治験薬投与後の治験中にほとんど改善または解消された。ベースライン試験後の治療適用部位の反応(灼熱感/スティンギング、乾燥およびかゆみ)は、26人中4人(15.5%)の対象で発生した。これらの対象全員の反応は軽度から中等度であり、対象のうち3人では研究中に改善した。治療来院の最後に軽度のかゆみを経験した対象は1人だけであったが、経過観察中もかゆみは続いた。
【0118】
どのTEAEも研究治療に関連するとみなされなかった。すべてのAEが解決された。この研究では治験薬の中止につながるAEはなく、SAEや死亡も報告されなかった。
【0119】
より高い用量レベルへのコホート(用量レベル)の漸増(より多量のAMTX-100CF 1.1%で治療されるより高いBSAに基づく)の決定は、用量制限毒性(DLT)が存在しないことに基づいた。どのコホートでもDLTは発生しなかったため、用量漸増は最後のコホート(コホート5)まで安全に継続された。対象に割り当てられたAMTX-100CFの1日最大量は、(治療可能なBSAが48~70%の)最も高いコホートで60g/日であった。
【0120】
有効性の結果
ベースラインと比較して、ADに罹患したBSAの平均パーセンテージは、7日目の来院時(治療終了、全コホート)および追跡来院時(コホート4および5のみ)でそれぞれ37.5%および37.9%減少した(表4)。ベースラインと比較した7日目のコホート毎の減少は、46.7%(コホート1)、44.3%(コホート2)、43.3%(コホート3)、38.1%(コホート4)、および21.7%(コホート5)であった。
【0121】
ADに罹患したBSAは、追跡来院時にコホート1~3について評価されなかった。ベースラインと比較した追跡訪問時のコホート4および5の減少は42.1%(コホート4)および35.1%(コホート5)であった。
【0122】
研究コホート全体で、アトピー性皮膚炎に対する検証済み治験責任医師による包括的評価(vIGA-AD(商標))スコアは、AMTX-100CF介入後に改善した。ベースラインでは、11人(42.3%)および15人(57.7%)の対象がグレード2(軽度)およびグレード3(中等度)のvIGAスコアであった。
【0123】
7日目(治療終了)までに、3人の対象(11.5%)はグレード0(クリア)スコアであり、10人の対象(38.5%)はグレード1(ほぼクリア)スコアであり、5人の被験者(19.2%)はグレード2(軽度)スコアであり、8人の対象(30.8%)はグレード3(中等度)スコアであった。
【0124】
21日目(追跡)来院時、4人の対象(15.4%)はグレード0(クリア)スコアを達成し、10人の対象(38.5%)はグレード1(ほぼクリア)スコアであり、7人の対象(26.9%)はグレード2(軽度)スコアであり、5人の対象(19.2%)はグレード3(中等度)スコアであった(表9)。
【0125】
【0126】
(結論)
現在承認されている局所療法であるコルチコステロイドおよびカルシニューリン阻害剤は、軽度から中等度のADの改善に有効であることが示されているが、これらの薬剤の長期使用は、線条、副腎抑制のリスク増加、グルココルチコイドの長期使用による遅い直線的成長などの安全上のリスクを伴う可能性がある。
【0127】
本明細書には、炎症の主要なメディエーターの阻害を含む、ADを治療するための新しいアプローチが開示される。Impα/β複合体またはImpβへのAMTX-100の競合的結合は、炎症におけるSRTFおよびメタボリックシンドロームにおけるChREBPもしくはSHREBPの核内移行の減少をもたらし、その結果、炎症性サイトカイン/ケモカインの産生または脂質代謝産物それぞれの減少をもたらす。AMTX-100は、炎症反応を抑制し、関連する症状を軽減する優れた可能性を持っている。
【0128】
この研究中、AMTX-100CF 1.1%局所クリームは一般に忍容性が良好であった。最も頻繁に報告されたTEAEは軽度から中等度の頭痛で、対象26人中5人に発生し、特定のコホートには関連していなかった。いずれも投薬後に解消され、研究治療とは無関係であると考えられた。重篤な有害事象(SAE)はなかった。研究治療の中止につながる有害事象は発生せず、死亡も発生しなかった。研究のどのコホートでもDLTは発生しなかった。研究治療は、ADに関与するBSAの量が最も多かったコホート5(48~70%)の対象者に、最大60グラム/日で投与された。
【0129】
有効性に関して、AMTX-100CF 1.1%局所クリームは、すべてのコホートにおいて疾患の重症度および強度を改善し、AD病変に罹患した面積も減少した。
【0130】
(実施例6)AMTX-100へのメトトレキサートの複合体化
図7に示すように、メトトレキサートをAMTX-100に結合させた。
【0131】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約(about)」によって修飾されるものとして理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「約(about)」および「およそ(approximately)」は、10~15%以内、好ましくは5~10%以内を意味する。したがって、別段の指示がない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは近似値であり、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定するものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示す数値は可能な限り正確に報告されている。ただし、どの数値にも、それぞれのテスト測定で見つかった標準偏差に必然的に起因する特定の誤差が本質的に含まれている。
【0132】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)で使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および類似の指示対象は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内にあるそれぞれの個別の値を個別に参照する簡略的な方法として機能することを単に意図している。本明細書に別段の指示がない限り、それぞれの個別の値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意および全ての実施例、または例示的な文言(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く理解することを目的としており、別途特許請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0133】
本明細書に開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、制限として解釈されるべきではない。各グループの要素は、個別に、またはグループの他の要素もしくは本明細書に記載の他の要素と任意に組み合わせて、参照および特許請求することができる。グループの1以上の要素は、利便性および/または特許性の理由から、グループに含まれたり、グループから削除されたりする可能性があることが予想される。そのような包含または削除が行われた場合、本明細書は、変更されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用された全てのマーカッシュグループの書面による記述を満たすものである。
【0134】
本発明を実施するため発明者らが知る最良の形態を含めて、本発明の特定の実施形態を本明細書に記載する。もちろん、これらの説明された実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適宜採用することを予期しており、本発明が本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用される法律によって認められる、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変および等価物を包含するものである。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、あらゆる可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0135】
本明細書に開示される特定の実施形態は、特許請求の範囲において、から成る(consisting of)、または、から本質的に成る(consisting essentially of)という文言を用いてさらに限定され得る。特許請求の範囲で使用される場合、出願されたものであるか、補正によって追加されたものであるかにかかわらず、移行句「から成る(consisting of)」は、特許請求の範囲で特定されていない如何なる要素、ステップ、または成分も除外する。移行句「から本質的に成る(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を特定の材料またはステップ、および基本的および新規な特性(複数可)に実質的に影響を与えないものに限定する。そのように特許請求された本発明の実施形態は、本明細書において本質的にまたは明確に記載され、実施可能にされる。
【0136】
さらに、本明細書全体を通じて、特許および印刷出版物に対して多数の参照がなされた。上記で引用した参考文献および印刷出版物のそれぞれは、その全体が参照により個別に本明細書に組み込まれている。
【0137】
最後に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を例証するものであることを理解されたい。採用され得る他の改変は本発明の範囲内である。このように、限定ではなく例として、本発明の代替構成を本明細書の教示に従って利用してもよい。したがって、本発明は、図示され説明されたものに正確に限定されるものではない。
【0138】
(付記)
(付記1)
式:
【化7】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
X
1、X
2、X
11、およびX
12は、それぞれ独立して、リジン、アルギニン、またはオルニチンであり、
X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、およびX
10は、それぞれ独立して、バリン、ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンであり、
X
13はチロシンであり、
X
17はプロリンまたはアラニンであり、および、
nは0または1である、
白血球-ターゲティング分子。
【0139】
(付記2)
X3およびX6はバリンである、付記1に記載の白血球-ターゲティング分子。
【0140】
(付記3)
X4、X5、X7、X8、X9、およびX10は、それぞれ独立して、ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンである、付記1または2に記載の白血球-ターゲティング分子。
【0141】
(付記4)
前記ペプチドは、式:
【化8】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩である、付記1に記載の白血球-ターゲティング分子。
【0142】
(付記5)
前記ペプチドは少なくとも1つのオルニチン、イソロイシン、またはノルロイシンを含む、付記1~4のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0143】
(付記6)
前記ペプチドは、KKAAVALLPAVLLALLAKK(配列番号5)、RRAAVALLPAVLLALLARR(配列番号6)、RRAAVALLPAVLLALLARK(配列番号7)、RKAAVALLPAVLLALLARKY(配列番号8)、AAVALLPAVLLALLAPCVQRKRQKLMPC(配列番号9)、AAVALLPAVLLALLAPVQRKRQKLMP(配列番号13)、KKAAVALLPAVLLALLAPKK(配列番号39)、RRAAVALLPAVLLALLAPRR(配列番号40)、RRAAVALLPAVLLALLAPRK(配列番号41)、またはRKAAVALLPAVLLALLAPRKY(配列番号42)から選択される式を有する、付記1~5のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0144】
(付記7)
C末端にCVQRKRQKLMPC(配列番号38)のアミノ酸配列をさらに含む、付記1~6のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0145】
(付記8)
前記ペプチドは、式:
【化9】
を有するペプチドまたはその薬学的に許容される塩である、付記1に記載の白血球-ターゲティング分子。
【0146】
(付記9)
前記ペプチドはシステイン残基において環化されている、付記7または8に記載の白血球-ターゲティング分子。
【0147】
(付記10)
前記ペプチドは直鎖状である、付記1~8のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0148】
(付記11)
前記ペプチドは、1つまたは2つのC末端リジンをさらに含む、付記1~10のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0149】
(付記12)
前記ペプチドはN末端リジンをさらに含む、付記1~11のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0150】
(付記13)
前記ペプチドは、前記N末端リジンとX1との間に配置されたアルギニン残基をさらに含む、付記1~12のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0151】
(付記14)
前記化合物は少なくとも1つのヨウ素の放射性同位体を含む、付記1~13のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0152】
(付記15)
前記少なくとも1つのヨウ素の放射性同位体は、独立して、123I、124I、125I、または131Iから選択される、付記14に記載の白血球-ターゲティング分子。
【0153】
(付記16)
前記ペプチドは少なくとも1つのD-アミノ酸を含む、付記1~15のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0154】
(付記17)
前記白血球は、好酸球、好塩基球、好中球、または単球である、付記1~16のいずれか1つに記載の白血球-ターゲティング分子。
【0155】
(付記18)
付記1~17のいずれかに記載の前記白血球-ターゲティング分子を含む、組成物。
【0156】
(付記19)
前記組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含む医薬組成物である、付記18に記載の組成物。
【0157】
(付記20)
付記1~17のいずれかに記載の白血球-ターゲティング分子または付記18もしくは19に記載の組成物を対象に投与することを含む、白血球、CD34+幹細胞、またはその両方への活性薬剤の送達を必要とする対象における白血球、CD34+幹細胞、またはその両方に活性薬剤を送達する方法。
【0158】
(付記21)
前記白血球は、好酸球、好塩基球、好中球、または単球である、付記20に記載の方法。
【0159】
(付記22)
対象における疾患を治療する方法であって、治療有効量の付記1~17のいずれかに記載の白血球-ターゲティング分子または付記18もしくは19に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【0160】
(付記23)
前記疾患は炎症性疾患である、付記22に記載の方法。
【0161】
(付記24)
前記疾患は自己免疫疾患である、付記22に記載の方法。
【0162】
(付記25)
前記疾患は皮膚障害である、付記22に記載の方法。
【0163】
(付記26)
前記皮膚障害は、アトピー性皮膚炎、乾癬、酒さ、またはざ瘡である、付記25に記載の方法。
【0164】
(付記27)
前記皮膚障害はアトピー性皮膚炎である、付記26に記載の方法。
【0165】
(付記28)
前記疾患は慢性皮膚狼瘡または全身性エリテマトーデスである、付記22に記載の方法。
【0166】
(付記29)
前記疾患はウイルス疾患である、付記22に記載の方法。
【0167】
(付記30)
前記疾患は、帯状疱疹、単純ヘルペス1型もしくは2型、または重症急性呼吸器ウイルス2型(SARS-CoV-2)である、付記29に記載の方法。
【0168】
(付記31)
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、または1型糖尿病である、付記24に記載の方法。
【0169】
(付記32)
前記炎症性腸疾患はクローン病または潰瘍性大腸炎である、付記31に記載の方法。
【0170】
(付記33)
前記疾患は、アテローム性動脈硬化症、非アルコール性脂肪性肝炎、または高コレステロール血症である、付記22に記載の方法。
【0171】
(付記34)
前記疾患は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、結膜炎、ぶどう膜炎、または慢性副鼻腔炎である、付記22に記載の方法。
【0172】
(付記35)
前記白血球-ターゲティング分子または組成物は、局所的に、経口的に、または注射によって投与される、付記22~34のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
(付記36)
局所投与は、局所クリーム、放出制御局所パッチ、点眼薬、および点鼻スプレーを含む、付記35に記載の方法。
【0174】
(付記37)
付記1~17のいずれかに記載の白血球-ターゲティング分子または付記18もしくは19に記載の組成物を対象に投与することを含む、異常なサイトカインシグナル伝達の減少を必要とする対象における異常なサイトカインシグナル伝達を減少させる方法。
【0175】
(付記38)
前記活性医薬成分は、赤血球よりも白血球、CD34+幹細胞、またはその両方に優先的に送達される、付記20~37のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
(付記39)
前記白血球は、好酸球、好塩基球、好中球、または単球である、付記38に記載の方法。
【配列表】
【国際調査報告】