(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】衣料用リサイクル・ナイロン
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240829BHJP
D01F 6/60 20060101ALI20240829BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240829BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08L77/00
D01F6/60 341C
D01F6/60 351B
C08K5/17
C08K3/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537303
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022075490
(87)【国際公開番号】W WO2023028573
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524073197
【氏名又は名称】ジョギカルマス,ガンガダール
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョギカルマス,ガンガダール
【テーマコード(参考)】
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4J002CD01X
4J002CD18X
4J002CD20X
4J002CL01W
4J002CL03W
4J002CL09X
4J002DD047
4J002EF026
4J002EF056
4J002EN016
4J002EN026
4J002EN036
4J002EN046
4J002FD146
4J002FD14X
4J002FD207
4J002GK00
4J002GK01
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB39
4L035JJ04
4L035JJ06
4L035KK05
(57)【要約】
ナイロン6及び/又はナイロン66に比べて結晶化度が低下したポリマー材料が提供される。この結晶化度の低下は、ポリマー材料の水素結合ネットワークの破壊によって引き起こされる。これから製造された繊維及びファブリックも提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の、ナイロン、ナイロン様ポリマー、ナイロン系ポリマー;及び
1つ以上の、結合性化合物及び/又は水素結合破壊種
を含むポリマー組成物であって、
該ポリマー組成物は、ナイロンポリマーよりも少なくとも5%低い結晶化度を有し、前記1つ以上の結合性化合物及び/又は水素結合破壊種が0.1~35重量%の濃度で存在する、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ナイロンポリマーがナイロン6又はナイロン66である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
結晶化度がナイロンより少なくとも10%低い、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の結合性化合物が、前記1つ以上のポリマーに共有結合している、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の結合性化合物が、前記1つ以上のポリマーに共有結合していない、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記結合性化合物が、短鎖ポリアミドであり、当該短鎖ポリアミドの1つ以上の末端が、アルデヒド、エポキシド、酸塩化物、アミン、アルコール、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの官能基を有するように末端修飾されている、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記結合性化合物が、ポリアミド、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、プロピルアミン、短鎖及び長鎖脂肪酸、脂肪族酸、及び脂肪酸から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記脂肪族アミンが、エチレンジアミン(1,2-ジアミノエタン)及びその縮合体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記脂肪族エポキシドが、エポキシ化ポリイソプレン、反応性天然ゴム(エポキシ系)、及びエポキシ化ポリブタジエンである、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記水素結合破壊種が塩である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記塩がGaCl
3である、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のポリマー材料を含む繊維。
【請求項13】
請求項12に記載の複数の繊維を含むファブリック。
【請求項14】
結合性化合物及び/又は水素結合破壊種を含まない1つ以上の異なる繊維をさらに含む、請求項13に記載のファブリック。
【請求項15】
前記1つ以上の異なる繊維がナイロン6及び/又はナイロン66を含む、請求項14に記載のファブリック。
【請求項16】
ファブリックが、織物、かぎ針編み、ニット、フェルト、又はスパンである、請求項13に記載のファブリック。
【請求項17】
ファブリックが織物である、請求項16に記載のファブリック。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年8月26日に出願された米国仮出願第63/237,502号に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に包含される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、独自の特性を有する溶融紡糸繊維(メルトスパンファイバー)を製造するための組成物、物品、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現代のテキスタイルは合成繊維及び天然繊維で作られている。天然繊維は快適性と通気性を提供し、合成繊維は耐久性を提供する。現代のテキスタイルは、天然繊維と合成繊維のブレンドで作られることが多い。このようなブレンドで作られる多くの衣料品は、使用されるブレンドでは不可能な特性をもたらすために、他の素材も必要とする。このような複数素材を使用することで、衣料品の寿命が尽きてもリサイクルすることが難しくなる。理想的なファブリックや衣料品は、そのすべての構成部分が単一の素材で作られているものである。残念ながら、これらの繊維の製造に使用される材料の化学的性質の限界のために、可能な機械的性質はしばしば制限される。例えば、綿は繊維表面に凹凸があり、親水性の官能基があるため、モイスチャーウィッキング性(吸湿発散性)及び通気性を有する。ナイロンは鎖間の水素結合によって極めて高い耐久性と耐摩耗性を実現し、ポリエステル(PET)は硬いブロックと柔らかいブロックを含む骨格化学の性質によって色堅牢性と強度を実現する。現代の衣料品には、ファブリックをより快適にするのに役立つ伸縮性も必要である。多くの場合、このような特性を可能にする唯一の繊維は、スパンデックスやエラスタン(elastane)として知られるポリウレタン繊維である。これらの繊維は溶液ベースの紡糸工程で作られることが多いが、それ自体が環境にやさしくなく、多くの場合、ファブリックはリサイクル不可能になる。スパンデックスをベースにしたファブリックは、しばしば埋立地行きとなる。エラスタンの使用により、使用後のファブリックは埋立地に送られることになり、新しいファブリックを製造するための新しい繊維を作るために化石燃料の使用が必要とされるため、環境に大きな影響を与えている。
【0004】
しかしながら、必要とされているのは、単一の素材で作られた衣料品であり、ファブリックの寿命が終わったときに、衣料品全体を一つの流れでリサイクルできるようにすることである。このような素材は、さまざまなアパレル用途に合わせて調整できる特性の範囲を実現するために、強繊維、弾性繊維、及びその組み合わせを作ることができる必要がある。
【0005】
熱可塑性を有する理想的なエラストマーは、2つの望ましい特性を有する:1つは弾性セグメントで、縮合ポリマー(ナイロン、PET)の結晶化可能な長いセグメントと結合している。結晶化可能なセグメントは(そのサイズが小さいため)小さな結晶を形成し、物理的架橋として機能する。これらの物理的架橋は溶融可能であるため、リサイクル可能な熱可塑性エラストマーを作ることができる。このようなエラストマーは市場に数多く存在する。これらのポリマーを作るには、重合設備と専門知識への投資が必要である。ナイロンベースのエラストマーは、ポリエーテル・セグメントが、ゴム-ナイロン結晶架橋として機能する他の例である。このような選択肢は数多く市場に出回っている(例えばArkemaのPEBAXポリマー)。
【0006】
これらのポリマーは非常に高価であり、加工時に注意が必要であり、リサイクル可能性は一定のサイクル数に制限されている。このようなエラストマーは耐久性に欠け、堅牢な機械的特性を必要とする物品の形成には向いていない。
【0007】
このようなポリマーのもう一つの欠点は、これらのポリマーが複数のモノマーで作られているという事実である。この事実は、解重合してモノマーを分離し、再びポリマーを再構築することをほとんど不可能にしている。このようなポリマーは、一度使用されると埋立地に向かうことになる。
【開示の概要】
【0008】
第一の実施形態では、組成物が提供される。組成物は、1つ以上のポリマーと、第一のポリマーと相互作用し(例えば、反応する、又は他の方法で共有結合的又は非共有結合的に(例えば、静電的に及び/又は水素結合により及び/又は同様のものを介して))、第一のポリマーの特性を改変(例えば、変更)する1つ以上の結合性化合物(associative compound)とを含む。ポリマーと1つ以上の結合性化合物は、繊維を形成してもよく、その後、ファブリックを形成してもよい。結合性化合物は、1つ以上のポリマーと結合(会合)するので、結合性化合物と呼ばれる。様々な実施形態において、結合は共有結合性(例えば、結合)である。
【0009】
第二の実施形態では、ファブリックが提供される。このファブリックは、反応物質と組み合わせたポリマーで作られた複数の繊維を有する。いくつかの実施形態では、このファブリックは織物であってもよい。このようなファブリック又は繊維は、第一のポリマーに添加される反応物質の選択又は量によって機械的特性の点で調整可能である。
【0010】
結合性化合物は、一種類のポリマーと溶融ブレンドすることができる。例えば、そのようなポリマーは、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、及びそれらの組み合わせであってもよい。様々な例において、ポリマーは、少なくとも5,000Da、しかし1,000,000Da未満のMn及び/又はMwを有する。種々の例において、ポリマーは、10,000Da~100,000Da(その間のすべての0.1Da値及び範囲を含む)のMn及び/又はMwを有する。種々の実施形態において、ポリマーは、1.5以上の相対粘度を有する。例えば、ポリマーは、ポリオレフィン、ポリスチレン、他のそのようなポリマー、及びそれらの他の組み合わせ(繊維を形成する能力を有する)であってもよい。結合性化合物を含むこのような繊維は、第一の繊維と呼ばれる。
【0011】
ファブリックは、2つの異なるタイプの繊維で作ることができる。異なるタイプの繊維は、異なる繊維セットと呼ぶことができる(すなわち、第一の繊維は、第一の繊維セットからの繊維を説明する)。他の実施形態では、第一の繊維及び第二の繊維は、二成分繊維を形成することもできる。ファブリックは、織る、かぎ針編みする、編む、フェルト化する、スピニング、又はそれらの任意の組み合わせによって形成され得る。
【0012】
本明細書に記載される溶融可能な結合性化合物は、物品又は最終製品のポリマーマトリックスに固定されてもよく、及び、その中に安定かつ均一に分散される。基は、共有結合性又は非共有結合性の相互作用を介してポリマーに「固定(anchor)」されてもよい。例えば、結合性化合物(例えば、エポキシド、カルボン酸、又は無水物を有する化合物など)は、ポリマーと共有結合的に反応してもよい(ポリマーに結合性化合物を固定するために)。結合性化合物をポリマーマトリックスに固定することで、得られる物品(繊維等)の機械的特性を変えることができる。結合性化合物が溶融し、混合し、混合中にポリマーマトリックスと一体化することが可能である限り、反応物質分子は運ばれてマトリックス内に分配されることができる。すなわち、様々な実施形態において、結合性化合物は相分離せず、混合及び溶融後にポリマーと1つの均一な相を形成する。
【0013】
いくつかの実施形態において、反応物質は、ポリマーマトリックス中に添加される前に、共有結合、静電結合、水素結合、又はファンデルワールス相互作用のいずれかを介してポリマー分子に付着する。他の実施形態では、反応物質は、ポリマー物品の加工(例えば、プロファイルエクストルージョン、成形、熱成形、ファイバーエクストルージョン、ブロー成形など)の間にポリマーと反応又は結合してもよい。これらの実施形態において、反応物質とポリマーの両方が、最終物品へのポリマーの加工中に別々に添加されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1は、溶解物から形成される応力方向(繊維軸)のシシ-ケバブ構造形成を示す。
【0015】
図2は、ポリマー溶解物由来の繊維における結晶子形成を示す。(A) は非晶質構造を示し、(B) は配向構造を示し、(C) は非配向結晶構造を示し、(D) は配向結晶構造を示す。
【0016】
図3は、ナイロンにおける結晶領域と非晶質領域との境界の近景である。「D」は重水素を示す。
【開示の詳細な説明】
【0017】
特許請求される主題を特定の実施形態の観点から説明するが、本明細書に規定される利点及び特徴のすべてを提供しない実施形態を含む他の実施形態も、本開示の範囲内である。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な構造的、論理的、プロセスステップ的、及び電子的変更を行うことができる。従って、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0018】
本発明は、添付の実施例(これらはすべて本開示の一部を構成する)との関連で、以下の説明を参照することにより、より容易に理解され得る。本発明が、本明細書中に記載された及び/又は示された特定の製品、方法、条件又はパラメータに限定されないこと、及び本明細書中で使用される専門用語は、例示としてのみ特定の実施形態を記載するためのものであり、特許請求の範囲の発明を限定することを意図するものではないことが理解される。同様に、特に別段の記載がない限り、可能性のあるメカニズム又は作用機序又は改善理由に関する記載は、例示のみを意図するものであり、本明細書における発明は、そのような示唆されたメカニズム又は作用機序又は改善理由の正確さ又は不正確さによって拘束されるものではない。本明細書を通じて、記載は、組成物並びに組成物の製造方法及び使用方法を指すことが認識される。すなわち、本開示が、システムもしくは装置、又はシステムもしくは装置を製造もしくは使用する方法に関連する特徴又は実施形態を記載及び/又は請求する場合、このような記載及び/又は請求が、これらの特徴又は実施形態を、これらの各状況(すなわち、システム、装置、及び使用方法)の実施形態まで拡張することを意図していることが理解される。
【0019】
本開示において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数を含み、特定の数値への言及は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、少なくともその特定の値を含む。従って、例えば、「ある材料(単数)」への言及は、当業者に既知のそのような材料及びその等価物などの少なくとも1つへの言及である。
【0020】
ある値が「約」という記述子を用いて近似値として表される場合、特定の値は別の実施形態を形成することが理解される。一般に、「約」という用語の使用は、開示された主題によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈で解釈されるべきである。当業者は、これを日常の事柄として解釈することができる。場合によっては、特定の値に使用される有効桁数が、「約」という言葉の範囲を決定する一つの非限定的な方法となることもある。他の場合には、一連の値で使用される漸次的変化を使用して、各値について「約」という用語が有効な意図されている範囲を決定することができる。存在する場合、すべての範囲は包括的であり、組み合わせ可能である。すなわち、範囲として述べられた値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。
【0021】
一般に、ある範囲が示された場合、その範囲のすべての組み合わせが開示される。例えば1~4は、1~4だけでなく、1~2、1~3、2~3、2~4、3~4をも含む。
【0022】
本明細書において、明確化のために、別個の実施形態の文脈で説明されている本開示の特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。すなわち、明らかに両立しないか、又は明確に除外されない限り、個々の実施形態は、他の任意の実施形態(単数又は複数)と組み合わせ可能であるとみなされ、そのような組み合わせは、別の実施形態であるとみなされる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別個に、又は任意のサブコンビネーションにおいて提供することもできる。最後に、実施形態は、一連のステップの一部又はより一般的な構造の一部として説明されてもよいが、前記各ステップは、他のものと組み合わせることができる、それ自体で独立した実施形態とみなされてもよい。
【0023】
リストが提示される場合、別段の記載がない限り、そのリストの個々の要素、及びそのリストのすべての組み合わせは、別個の実施形態であると理解される。例えば、「A、B、又はC」として提示された実施形態のリストは、「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B、又はC」という実施形態を含むと解釈される。
【0024】
本明細書において使用される場合、特に断らない限り、「基」という用語は、一価(すなわち、他の化学種と共有結合し得る末端を1つ有する)、二価、又は多価(すなわち、他の化学種と共有結合し得る末端を2つ以上有する)である化学的実体を指す。基の例示には以下のものが含まれる:
【化1】
【0025】
本明細書において使用される場合、特に断らない限り、「アルキル」という用語は、分岐又は非分岐の飽和炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、アルキル基は、その間のすべての整数の炭素数及び炭素数の範囲(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、又はC12)を含む、C1~C12基であり得る。アルキル基は、無置換でも、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、例えば、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、-I)、脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、アリール基、アルコキシド基、カルボキシレート基、カルボン酸、エーテル基などの種々の置換基、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で使用される場合、特に断らない限り、用語「脂肪族」は、任意に1つ以上の不飽和度を含む分岐又は非分岐炭化水素基を指す。不飽和度は、アリール基及び環状脂肪族基から生じ得るが、これらに限定されない。例えば、脂肪族基/部分は、その間のすべての整数の炭素数及び炭素数の範囲を含む、C1~C30脂肪族基(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、又はC30)である。脂肪族基は、無置換であっても、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、例えば、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、-I)、脂肪族基(例えば、アルキル基など)、ハロゲン化脂肪族基(例えば、トリフルオロメチル基)、アリール基、ハロゲン化アリール基、置換アミン基、カルボン酸基、保護アルコール基、エーテル基、エステル基、チオエーテル基、チオエステル基、置換カルバメート基、置換アミド基、エポキシドとの間に(エポキシドとの結合の間に)長いアルキル鎖をもつアルケン等の置換基など、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
ナイロンやPETのようなエンジニアリング・ポリマーは、溶融状態から冷却されると結晶となることができる高度に規則的な直鎖状分子である。隣接する鎖間に水素結合が存在するため、強靭なポリマーとなる。この特性は、耐久性や高いテナシティ(tenacity)には有利であるが、伸張下での物品の伸びや回復を妨げる。ここでの技術的課題は、ナイロンやポリエステルの分子に弾性を導入して、このようなポリマーで作られたバルク物品に伸長/回復特性を持たせることである。本開示は、得られるエラストマーの硬度が前駆体ポリマーよりも低くなるように結晶形成が破壊(妨害)されたエラストマーを提供し、伸長と回復性の低下の問題を克服する。
【0028】
一態様において、本開示は、繊維であり得る組成物を提供する。組成物は、1種以上のポリマー及び1種以上の結合性化合物を含む。結合性化合物は、例えば、ナイロン及びPETなどのポリマー上で利用可能な官能基に相補的な単一又は複数の官能基を有する化学構造として定義することができる。
【0029】
本開示は、1種以上のポリマーと1種以上の結合性化合物とを含むポリマー材料又はポリマー組成物である。また、それから作られた繊維も提供する。しかしながら、組成物は、繊維以外の物品に使用されてもよい。例えば、組成物は、押出、繊維溶融紡糸、又は射出成形によって形成される物品に使用することができる。特定の理論に拘束されることを意図しないが、反応は、溶融中に起こり得る。水素結合及び/又は静電気による会合が、溶融中に及び溶融物からのポリマーの冷却中に起こり得る。
【0030】
本開示は、弾性回復を有するポリマー材料及び組成物(例えば、ナイロン糸)を提供する。本開示の材料は、ショア硬度スケール(Shore hardness scale)を介して測定されている。得られた材料は、未改変ポリマーよりも低いショア硬度レベルを有する。硬度及び弾性は、ポリマー繊維(例えば、ナイロン糸)の結晶構造を破壊することによって影響を受ける。
【0031】
様々な実施形態において、ポリマー材料は複数のドメインを含んでいてもよい。各ドメインは、結晶性、非晶質(アモルファス)、半結晶性、非配向結晶性、又は配向結晶性であってもよい。
【0032】
ポリマーの例としては、ナイロン、ナイロン系ポリマー(nylon-based polymer)、ナイロン様ポリマー(nylon-like polymer)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET系ポリマー(PET-based polymer)、PET様ポリマー(PET-like polymer)が挙げられる。例えば、ポリマーは、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン12、又はナイロン66であってもよい。種々の実施形態において、ナイロンは、オリゴアミン、低分子量ナイロン、他のポリアミド(CO基とNH基との間の炭素原子間隔が異なる)のブレンドである。様々な実施形態において、ポリマーはナイロンポリマーの側鎖である1つ以上のペンダント官能基を有していてもよい。ペンダント官能基は、例えば、アミン、酸、チオール、アルコール、エステル、アジド、又はアルキンなどの反応性基を有していてもよい。例えば、結合性化合物が反応性基に官能化(機能化)されるように、ペンダント官能基の1つ又は複数に化学的処理を施してもよい。例えば、アシル化ケミストリー、クリックケミストリーなどを介して、ペンダント官能基に結合性化合物がコンジュゲートされてもよい。他の適切な化学反応は当技術分野で知られており、本開示によって企図される。
【0033】
他の様々な実施形態において、ポリマーは、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、及びそれらの組み合わせであり得る。様々な例において、ポリマーは、少なくとも5,000Da、しかし1,000,000Da未満のMn及び/又はMwを有する。種々の例において、ポリマーは、その間のすべての0.1Da値及び範囲を含む、10,000Da~100,000DaのMn及び/又はMwを有する。種々の実施形態において、ポリマーは1.5以上の相対粘度を有する。
【0034】
様々な結合性化合物を使用することができる。例えば、無水物、カルボン酸、又は酸塩化物を有する化合物が挙げられ、結合性化合物は、単官能性であっても又は二官能性であってもよい(例えば、前述の官能基を1つ又は複数有する)。あるいは、結合性化合物は、短鎖エポキシド又は他の脂肪族エポキシドであってもよい。短鎖エポキシドの例としては、Erisys GE-23(ジプロピレングリコールをベースとするジグリシジルエーテル);Erisys GE-24(ポリプロピレングリコールをベースとするジグリシジルエーテル);Erisys GE35及びGE35H(ヒマシ油をベースとするトリグリシジルエーテル(GE-35Hは、GE-35よりも係数(modulus)が低い));Erisys GE-36(プロポキシル化グリセリンをベースとするトリグリシジルエーテル);及びErisys GS-120(ダイマー酸をベースとするジグリシジルエステル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
分子間結合は、容易に伸ばすことができない高度に詰まった鎖を作る。本開示は、ポリマー(例えばナイロン)に共有結合していない部位を導入することにより、水素結合ネットワークが破壊されたポリマーを提供する。例えば、短鎖ポリアミド(オリゴマー)又は複数のアミンを含む分子を相互作用性基として使用することができ、ポリマーと接触させてポリマー(例えばナイロン)の水素結合と競合させる。このような破壊は、結晶化度を低下させ(
図1参照)、鎖の移動と緩和を可能にする。水素結合破壊剤(例えば、結合性化合物)の構造(architecture)の量を変化させることで、配向と結晶化度の量が異なる糸を得ることができ、得られるテナシティ(tenacity)/伸長(elongation)/ストレッチ性(stretch)/回復性(recovery)を評価することができる。例えば、結晶化量を減少させれば、得られるポリマーと結合性化合物材料の伸長能力が増加する。
【0036】
様々な実施形態において、追加のアプローチは、ソフトセグメントポリマーを用いて結晶構造を破壊することである。様々な例において、官能基のエンドキャップを有するソフトセグメントがポリマーと混合され、これらはポリマー(例えば、ナイロン)と結合(会合)することができる。エンドキャップの官能基は、例えば、アルデヒド、エポキシド、酸塩化物、アミン(例えば、第一級アミン又は第二級アミン)、アルコール、又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、一方の末端基は第一級アミンであり、他方の末端基はアルデヒド)であってもよい。ソフトセグメントの端部の官能基は、結晶構造を破壊する不安定な(labile)物理的架橋を可能にするが、伸縮の適用中に分子をクッションし、弾性変形と回復をもたらす。様々な例において、ソフトセグメントは、ナイロン、ナイロン系ポリマー、ナイロン様ポリマー、PET、PET系ポリマー、PET様ポリマーであり、ソフトセグメントは、本明細書に記載のエンドキャップで修飾されている。
【0037】
本開示はさらに、ポリマーと反応して伸縮後の弾性回復を可能にすることができる散在性エラストマー成分を提供する。例えば、これらの成分の非限定的な例としては、エポキシ化ポリイソプレン、反応性天然ゴム(エポキシ系)、及びエポキシ化ポリブタジエンが挙げられる。
【0038】
種々の実施形態において、言及した結合性化合物は、エラストマー成分を含み、これはナイロン上に存在する官能基と反応し得る反応性基を有する脂肪族であってもよい。このような分子の融点は約-50℃から400℃の範囲である。次いで、このような結合性化合物をナイロンやポリエステルなどのポリマーと溶融混合することができる。
【0039】
一例では、使用される結合性化合物は、エポキシ化イソプレンなどのエポキシ化エラストマーである。
【0040】
結合性化合物は、ナイロン分子間の水素結合を破壊し、それによって物品をより柔軟にする。単独で、又はエラストマー反応物質と組み合わせて使用される。例えば、ポリアミドの短鎖オリゴマー、脂肪族アミン(例えば、ジエチルアミン、プロピルアミン)、短鎖及び長鎖脂肪酸アミン(例えば、オクタデシルアミン)、酸(例えば、オクタン酸などの脂肪族酸)、脂肪酸(例えば、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、パルミチン酸など)などが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族アミンは、ジアミンであってもよい。
【0041】
様々な実施形態において、結合性化合物は、骨格を(共有結合的又は非共有結合的に)架橋する反応性基を一分子あたり1つより多く有し、その結果、エラストマー材料が得られるが、リサイクルが困難である。競合的な反応種によって、反応性エラストマー成分に対する骨格の反応性を制御することができる。競合的反応種の例としては、本明細書に記載のエポキシベースの結合性化合物(本明細書に記載の短鎖エポキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。分子の拡散及び移動性はそのサイズに関係するので、より小さな反応性分子は、より大きな反応性分子がそうする前に、例えば骨格上の共有結合を介してアンカー基に移動し結合する能力を有する。小さな反応性分子は、5kDa未満のMn及び/又はMwを有し得る。様々な例において、質量は200Da~2000Daであり、これには、その間のすべての0.1Da値及び範囲が含まれる。
【0042】
一実施形態では、PA6はごく少量のエポキシ化ポリイソプレン(天然ゴム)と混合される。一緒に混合すると、エラストマー化合物を形成するが、この化合物は架橋されており、リサイクルできない。混合は機械的せん断混合でもよい。しかし、同じ成分を、0.1~15重量%(その間のすべての0.1%の値及び範囲(例えば5~15重量%)を含む)の量のモノ官能性エポキシ分子(例えばオクタデシル-エポキシ)又はアミン末端をキャップしたC18と混合すると、小さい分子はナイロンの末端基に又はエラストマー上のエポキシ基に結合し、架橋形成の可能性を低下させる。量は化合物の質量によって変わり得る。例えば、大きな化合物はより少なくてもよいが、小さな化合物はより多くを必要とする。特定の理論に拘束されることを意図しないが、結晶構造が破壊されるため、得られる材料はリサイクル可能な特性を示すと考えられる。
【0043】
ポリマーに対する結合性化合物の比率を変えることで、反応性の競合を利用することができる。
【0044】
さまざまな量の弾性を有する結合性化合物の混合物を添加することで、得られる化合物の全体的なエラストマー性を制御することができる。例えば、短鎖エポキシドと長鎖エポキシドを混合すると、ナイロン上のアミン基に対して競合反応を起こし得る。反応混合物に短鎖のエポキシドが多ければ、ナイロンの修飾は短鎖によるものとなり、得られる化合物の性質はあまりエラストマー的ではない。しかし、反応混合物中に長鎖のエポキシドが多ければその逆となる。長鎖エポキシドがナイロンと反応する確率が高くなり、よりエラストマー性の高い構成物ができる。
【0045】
他のカテゴリーの結合性化合物として、結晶性ポリマーの水素結合形成を妨害できる分子が挙げられる。これらは脂肪族アミンをベースとするスペーサー分子であり得る。例えば、エチレンジアミン(1,2-ジアミノエタン)及びその縮合体、ジ-エチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミン、HMDA(ヘキサメチレンジアミン)、又はこれらの組み合わせを使用することができる。
【0046】
さらに、ナイロンの水素結合を破壊するために、GaCl3のような塩を使用することもできる。様々な例において、塩はアミド結合のCO結合と錯形成するカチオンを有する。
【0047】
別の例では、結合性化合物と、水素結合を破壊する他の種との組み合わせが使用される。例として、結合性化合物及び他の種は、種々の重量比(例えば、1対4。これには、1対4だけでなく、1対2、1対3、2対3、2対4及び3対4も含まれる)又は種々のパーセンテージで使用され、ここで、反応性化合物は、0.1~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)、及び0.1~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)である。
【0048】
エポキシ化イソプレンなどの例を含む1種以上の結合性化合物は、0.5%から35%までの(その間の0.1%までのすべての範囲及び値を含む)さまざまな重量比でナイロン6及び66と溶融混合されることができる。エポキシ化イソプレンの重量比は、5重量%~25重量%、5重量%~20重量%、好ましくは5重量%~15重量%とすることができる。ナイロンの種類に関して述べたが、エラストマー化合物(単数又は複数)は、0.1~35重量%(例えば、0.5重量%~35重量%)(その間の0.1%までのすべての範囲及び値を含む)の様々な比率で溶融混合することができ、別の材料(例えば、ナイロン6及び/又はナイロン66)が残りの重量比率を構成する。
【0049】
第二の態様において、本開示はファブリックを提供する。このファブリックは、1種以上のポリマーと1種以上の結合性化合物とを含む複数の繊維を有する。様々な実施形態において、ファブリックは、織る、かぎ針編みする、編む、フェルト化する、紡ぐ(スピニング)、又はそれらの任意の組み合わせによって形成され得る。様々な実施形態において、ファブリックは織物である。
【0050】
ファブリックは2つの異なるタイプの繊維で作ることができる。異なるタイプの繊維は、異なる繊維セットと呼ぶことができる(すなわち、第一の繊維は、第一の繊維セットからの繊維を指す)。例えば、反応性組成物を含むことができる第一の繊維は、ナイロン6であってもよく、第二の繊維は反応性組成物を含まないナイロン6であってもよい。他の様々な例では、第一の繊維はナイロンを反応物質又は結合性化合物と予め反応させているが、第二の繊維は反応させていない。また、第一の繊維と第二の繊維は同じであってもよい。例えば、第一及び第二の繊維はナイロンであってもよい。ナイロン6及びナイロン66が使用され得るが、他のナイロンが利用されてもよい。一例として、第一の繊維はファブリックの0.1~25重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、第二の繊維はファブリックの75~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、ファブリックの全重量%は100%である。別の例では、第一の繊維はファブリックの0.1~10重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲含む)を占め、第二の繊維はファブリックの90~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲含む)を占め、ファブリックの全重量%は100%である。
【0051】
特定の実施形態において、第一の繊維は第二の繊維に螺旋状に巻かれていてもよい。第一の繊維は、第二の繊維と同じ方向又は直交する方向に織られてもよい。他の実施形態では、第一の繊維及び第二の繊維は、二成分繊維を形成することもできる。一例では、第一の繊維は、二成分繊維の0.1~25重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、第二の繊維は、二成分繊維の75~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、二成分繊維の全重量%は100%である。別の例では、第一の繊維は、二成分繊維の0.1~10重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、第二の繊維は、二成分繊維の90~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)であり、二成分繊維の全重量%は100%である。特定の理論に拘束されることを意図しないが、巻繊維(wound fibers)は撚繊維(twisted fibers)よりも強度が低いと考えられる。螺旋状に巻かれた繊維は内部繊維を保護するが、撚繊維では両方の繊維が摩耗にさらされる。
【0052】
一例として、以下の反応物質ペア間の共有結合等の、異なるタイプの反応性化学が利用される:エポキシド-アミン、エポキシド-無水物、無水物-ヒドロキシル、無水物-アミン、アミン-イソシアネート、ヒドロキシル-イソシアネート、又はイソシアネート-無水物。可能な反応ペアの追加の例としては、酸塩化物-アミン、エポキシ-フェノール、エポキシ-カルボン酸、アレーン-無水物、アルデヒド-アミン、ケトン-アミン、エステル-アミン、及びアルキルハライド-アミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
一態様は、製織方法である。複数の第一の繊維と複数の第二の繊維(第二のポリマーの)が提供され、織られて組織を形成する。第一の繊維のポリマーは、反応性化合物(反応物質)の使用により、第二のものよりも弾性を有するように構成される。第一の繊維と第二の繊維は織られてファブリックを形成する。一例では、第一の繊維はファブリックの0.1~25重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、第二の繊維はファブリックの75~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、ファブリックの全重量%は100%である。別の例では、第一の繊維はファブリックの0.1~10重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、第二の繊維はファブリックの90~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、ファブリックの総重量%は100%である。
【0054】
第一の繊維は第二の繊維に螺旋状に巻かれていてもよい。第一の繊維は、第二の繊維と同じ方向又は直交する方向に織られていてもよい。また、第一の繊維と第二の繊維は二成分繊維を形成することもできる。一例では、第一の繊維は、二成分繊維の0.1~25重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、第二の繊維は、二成分繊維の75~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、二成分繊維の全重量%は100%である。別の例では、第一の繊維は、二成分繊維の0.1~10重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)を占め、第二の繊維は、二成分繊維の90~99.9重量%(その間のすべての0.1%値及び範囲を含む)であり、二成分繊維の全重量%は100%である。
【0055】
いくつかの実施形態では、結合性化合物は、ポリマーマトリックスへの添加前の別の段階で、共有結合性相互作用、静電相互作用、又はファンデルワールス相互作用のいずれかを介してナイロン分子に結合(付着)される。このようにして、より多くの結合性化合物をナイロン分子に添加することができる(もし加工中にナイロンのポリマーマトリックスに添加すると、ポリマーの塊全体を架橋し得るため、ポリマーで物品を形成する機会が減少する)。他の実施形態では、反応物質をポリマー物品に添加する処理中に、結合性化合物をアンカーに反応又は結合させることができる。これらの実施形態では、結合性化合物又は結合性化合物が結合したナイロンの両方を、ポリマーを最終物品に加工する間に別々に添加してもよい。
【0056】
結合性化合物は、ポリマー物品の化学的環境に合わせることができる。例えば、結合性化合物は、ポリマーマトリックスの化学構造と実質的に類似した化学構造を有してもよく、及び/又はポリマーと親和性(compatible)であってもよい。結合性化合物はポリマーとは別個のものであってもよい(これにより最終製品を容易にリサイクルすることができる)。
【0057】
以下の記述は、本開示の様々な実施形態を提供する。
記述1
1つ以上のポリマー(例えば、1つ以上のナイロン、ナイロン様ポリマー、ナイロン系ポリマー、PET、PET系ポリマー、PET様ポリマー、又はそれらの組み合わせ);及び1つ以上の結合性化合物及び/又は水素結合破壊種を含むポリマー組成物であって、当該ポリマー組成物は、ナイロンポリマーよりも少なくとも5%低い結晶化度(例えば、少なくとも10%低い、少なくとも15%低い、少なくとも20%低い、少なくとも25%低い、少なくとも30%低い、少なくとも35%低い、少なくとも40%低い、又は少なくとも50%低い)を有し、1つ以上の結合性化合物及び/又は水素結合破壊種は、0.1~35重量%の濃度で存在する。
記述2
ナイロンポリマーがナイロン6又はナイロン66である、記述1に記載のポリマー組成物。
記述3
結晶化度がナイロンより少なくとも10%低い、記述1又は2のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
記述4
1つ又は複数の結合性化合物が、1つ又は複数のポリマーに共有結合している、先行する記述のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
記述5
1つ又は複数の結合性化合物が、1つ又は複数のポリマーに共有結合していない、記述1~3のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
記述6
結合性化合物が、短鎖ポリアミドの1つ以上の末端が、アルデヒド、エポキシド、酸塩化物、アミン、アルコール、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの官能基を有するように末端修飾された短鎖ポリアミドである、記述1に記載のポリマー組成物。
記述7
結合性化合物が、ポリアミド、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、プロピルアミン、短鎖及び長鎖脂肪酸、脂肪族酸(aliphatic acid)、及び脂肪酸(fatty acid)から選択される、先行する記述のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
記述8
脂肪族アミンが、エチレンジアミン(1,2-ジアミノエタン)及びその縮合体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミン、HMDA、及びそれらの組み合わせから選択される、記述7に記載のポリマー組成物。
記述9
脂肪族エポキシドが、エポキシ化ポリイソプレン、反応性天然ゴム(エポキシ系;エポキシベース)、エポキシ化ポリブタジエン、ジプロピレングリコールに基づくジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールに基づくジグリシジルエーテル、ヒマシ油(Castor Oil)に基づくトリグリシジルエーテル、プロポキシ化(propoxylated)グリセリンに基づくトリグリシジルエーテル、及びダイマー酸に基づくジグリシジルエステルである、記述7に記載のポリマー組成物。
記述10
水素結合破壊種が、塩(例えば、アミド結合のCO結合と錯形成するカチオンが存在する塩)である、先行する記述のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
記述11
前記塩がGaCl3である、記述10に記載のポリマー組成物。
記述12
先行する記述のいずれか1つに記載のポリマー材料を含む繊維。
記述13
記述12に記載の複数の繊維を含むファブリック(布地)。
記述14
結合性化合物及び/又は水素結合破壊種を含まない1つ又は複数の異なる繊維をさらに含む、記述13に記載のファブリック。
記載15
1つ以上の異なる繊維が、ナイロン6及び/又はナイロン66を含む、記述14に記載のファブリック。
記述16
ファブリックが、織物、かぎ針編み、ニット、フェルト、又はスパン(spun)である、記述13に記載のファブリック。
記述17
ファブリックが織物である、記述16に記載のファブリック。
【0058】
本開示から他の側面も導き出すことができる。
【実施例】
【0059】
以下の例は、本開示の材料のストレッチ率と回収率を示している。
【0060】
得られた材料の結晶化度は、示差走査熱量測定、X線回折、及び他のこのような測定法を用いて測定することができる。間接的な測定には、弾性率(破断伸び)の増加、引張係数(tensile modulus)の低下(エラストマーに典型的)、衝撃強度の改善(アイゾット衝撃試験などの試験を用いて測定)が含まれ得る。表1に示すデータは、ASTM D2594によって得られたものである。
【0061】
表1.改質ナイロン糸とバージンナイロン糸を用いて製造したニットのストレッチ性能
【0062】
本開示は、1つ又は複数の特定の実施形態及び/又は例を参照して説明されてきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及び/又は例が可能であることが理解される。
【国際調査報告】