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▶ バーサニス バイオ、インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P27/02
A61P3/06
A61P19/10
A61P13/12
A61P25/20
A61P5/24
A61P19/02
A61P1/00
A61P35/00
A61P9/12
A61P9/04
A61P9/00
A61P1/16 105
A61K38/16
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537306
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022075545
(87)【国際公開番号】W WO2023028606
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/238,068
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/301,012
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/333,351
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524072754
【氏名又は名称】バーサニス バイオ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】クリックスタイン,ロイド バール
(72)【発明者】
【氏名】マカチェク,マティアス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084MA17
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA05
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA37
4C084ZA42
4C084ZA66
4C084ZA70
4C084ZA77
4C084ZA81
4C084ZA96
4C084ZA97
4C084ZB26
4C084ZC03
4C084ZC21
4C084ZC33
4C084ZC35
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB42
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、肥満を含む、代謝障害の治療のための、ActRII経路剤、例えば、ActRII受容体抗体、およびGLP-1アゴニストの併用使用に関する。本明細書に提供されるように、併用治療は、脂肪量を低減し、除脂肪量を維持または増加させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ActRII受容体抗体およびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストを、治療が必要とする対象に投与することを含む、前記対象における代謝障害を治療する方法。
【請求項2】
前記代謝障害が、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、抗精神病薬関連肥満、グルココルチコイド誘発性肥満、頭蓋咽頭腫に関連する視床下部肥満、プラダー・ウィリー症候群、および肥満に関連する単一遺伝性障害からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肥満に関連する単一遺伝性障害が、バルデ・ビードル症候群、またはADCY3、ALMS1、ARL6、BBS1、BBS2、BBS4、BBS5、BBS7、BBS9、BBS10、BBS12、BDNF、CCDC28B、CEP290、CREBBP、EP300、GNAS、IER3IP1、MC3R、MKKS、MKS1、MRAP2、NTRK2、PCSK1、PHF6、POMC、SH2B1、SIM1、TMEM67、TRIM32、TTC8およびVPS13Bを含む遺伝子の一つまたは複数における変異から生じる肥満の一つである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記糖尿病が、I型糖尿病またはII型糖尿病である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記治療が、肥満に関連する併存疾患に有用であり、前記状態が、耐糖能障害、前糖尿病、インスリン抵抗性、高トリグリセリド、過体重に関連する身体的障害、骨粗鬆症、腎疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、性ホルモン障害、内分泌性生殖障害、変形性関節炎、胃腸の癌、異常脂質血症、高血圧、心不全、冠動脈心疾患、脳卒中、および/または胆石の群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、ボディ・マス・インデックス(BMI)30以上を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、BMI27以上を有し、一つまたは複数の肥満に関連する併存疾患を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、過体重である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、18歳以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、45歳以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、0~17歳の小児である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記治療が、前記対象における体重を低下させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記治療が、前記対象における脂肪量を低下させる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療が、前記対象における除脂肪量を増加させる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療が、前記対象における脂肪量を低減し、除脂肪量を増加させる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療が、前記対象における脂肪量を低減し、除脂肪量を維持する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記治療が、前記対象における中心性肥満を低下させる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記治療が、前記対象における血糖コントロールを改善する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記治療が、前記ActRII受容体抗体および/または前記グルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストの安全性、有効性、および/または忍容性を改善する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療の前記有効性が、以下の、体重、生体インピーダンス法(BIA)、二重X線吸収測定法(DXA)、腹囲、BMIの減少、ウエスト・ヒップ比、ウエスト・身長比、血液脂質特性、レプチン、アディポネクチン、およびアジプシンレベル、尿バイオマーカー、ヘモグロビンA1c(HgbA1c)レベル、筋力を示す手の筋力測定、グルコースレベル、インスリンレベル、簡易身体能力バッテリー(SPPB)、クオリティ・オブ・ライフに対する体重の影響(CTについてのIWQoL-Lite)評価、簡易フォーム(36)健康調査(SF-36)評価、恒常性モデル評価2(HOMA2)、ならびにアクティグラフィーを介した身体活動モニタリングのうちの少なくとも一つによって測定される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、配列番号1~6のアミノ酸配列を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、配列番号7のアミノ酸配列、もしくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含み、および/または配列番号8のアミノ酸配列、もしくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、配列番号9のアミノ酸配列、もしくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含み、および/または配列番号10のアミノ酸配列、もしくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、ActRIIAおよびActRIIBに特異的である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記GLP-1アゴニストが、抗体、小分子、ペプチド、またはアプタマーである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記GLP-1アゴニストが、エキセナチド、徐放性エキセナチド、デュラグルチド、リラグルチド、リキシセナチド、セマグルチド、チルゼパチド、コタデュチド、ノイグルチド、オキシントモジュリン、レタトルチド、アルビグルチド、ベイナグルチドおよびPEG-ロキセナチド、ペムビデュチド、ならびにダヌグリプロンからなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記GLP-1アゴニストが、二重GLP-1アゴニストおよびGIPアゴニストである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記GLP-1アゴニストが、二重GLP-1アゴニストおよびGCGアゴニストである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記GLP-1アゴニストが、GIP/GLP-1/グルカゴン受容体のトリアゴニストである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ActRII受容体抗体が、約3mg/kg~約50mg/kgの用量で投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ActRII受容体抗体が、約10mg/kg~約30mg/kgの用量で投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ActRII受容体抗体が、約10mg/kgの用量で投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ActRII受容体抗体が、約30mg/kgの用量で投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ActRII受容体抗体が、一週間に一回、約200mg~約400mgの用量で投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ActRII受容体抗体が、一週間に一回、約300mgの用量で投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ActRII受容体抗体投与が、前記ActRII受容体抗体および前記GLP-1アゴニストの投与の前、0日目または0週目にActRII受容体抗体の少なくとも1回の負荷用量の投与を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ActRII受容体抗体の前記負荷用量が、約10mg/kg~約30mg/kgの用量で投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ActRII受容体抗体が、少なくとも一日一回、少なくとも一週間に一回、少なくとも一週間に二回、少なくとも一週間に三回、少なくとも2週間に一回、少なくとも4週間に一回、少なくとも6週間に一回、または少なくとも12週間に一回投与される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ActRII受容体抗体が、0週目に、約4週目に、およびその後少なくとも12週間に一回投与される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記GLP-1アゴニストが、毎週、約0.005mg~約3.0mgの用量で投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記GLP-1アゴニスト用量が、以下のレジメン、約0.2mg~約3.0mg、約0.1~約1.0mg、約0.25mg~約2.4mg、および約0.25mg~約0.5mgに従い、毎週徐々に増加する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記GLP-1アゴニスト用量が、約0週目~約4週目に約0.25mgの用量で、および5週目以降に約0.5mgの用量で毎週投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記GLP-1アゴニスト用量が、約0週目~約4週目に約0.25mgの用量で、約5週目~約8週目に約0.5mgの用量で、約8週目~約12週目に約1.0mgの用量で、約12週目~約15週目に約1.7mgの用量で、約16週目~約20週目に約2.4mgの用量で、および約20週目以降約2.4mgの用量で毎週投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記GLP-1アゴニスト用量が、約5.0mg、約10mg、または約15mgの用量で毎週投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ActRII受容体抗体および/またはGLP-1アゴニストが、静脈内投与される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記ActRII受容体抗体および/またはGLP-1アゴニストが、皮下投与される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ActRII受容体抗体が、前記GLP-1アゴニストの前に投与される、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ActRII受容体抗体が、前記GLP-1アゴニストの前記投与の少なくとも12週間前、少なくとも10週間前、少なくとも8週間前、少なくとも6週間前、少なくとも4週間前、少なくとも2週間前、少なくとも1週間前、少なくとも1日前、または少なくとも1時間前に投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記GLP-1アゴニストが、前記ActRII受容体抗体の前に投与される、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記GLP-1アゴニストが、前記ActRII受容体抗体の少なくとも2週間前、少なくとも1週間前、少なくとも5日間前、少なくとも4日間前、少なくとも2日間前、少なくとも1日前、少なくとも6時間前、または少なくとも1時間前に投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ActRII受容体抗体および前記GLP-1アゴニストが、同時投与される、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象がヒトである、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストを含む、組み合わせ。
【請求項54】
前記ActRII受容体抗体が、配列番号1~6のアミノ酸配列を含む、請求項53に記載の組み合わせ。
【請求項55】
前記ActRII受容体抗体が、配列番号7のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項53に記載の組み合わせ。
【請求項56】
前記ActRII受容体抗体が、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、配列番号10のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項53に記載の組み合わせ。
【請求項57】
前記ActRII受容体抗体が、EUナンバリングスキームに従い、ヒトIgG1 Fcドメインと比べて、259I、252Y、307Q、308F、428L、434H、434F、434Y、434A、434M、および434Sからなる群から選択される改変を有するヒトIgG1 Fcドメインを含む、請求項53に記載の組み合わせ。
【請求項58】
前記ActRII受容体抗体が、EUナンバリングスキームに従い、ヒトIgG1 Fcドメインと比べて、M428Lおよび/またはN434Sから選択される改変を有するヒトIgG1 Fcドメインを含む、請求項53に記載の組み合わせ。
【請求項59】
前記抗体が、ActRIIAおよびActRIIBに特異的である、請求項54~58のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項60】
前記GLP-1アゴニストが、エキセナチド、徐放性エキセナチド、デュラグルチド、リラグルチド、リキシセナチド、セマグルチド、チルゼパチド、コタデュチド、ノイグルチド、オキシントモジュリン、レタトルチド、アルビグルチド、ベイナグルチドおよびPEG-ロキセナチド、ペムビデュチド、ならびにダヌグリプロンからなる群から選択される、請求項53~59のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項61】
前記GLP-1アゴニストが、二重GLP-1アゴニストおよびGIPアゴニスト、二重GLP-1アゴニストおよびGCGアゴニスト、またはGIP/GLP-1/グルカゴン受容体のトリアゴニストである、請求項53~60のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項62】
請求項53~61のいずれか一項に記載の組み合わせおよび薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年8月27日に出願された米国仮特許出願第63/238,068号、2022年1月19日に出願された第63/301,012号、および2022年4月21日に出願された第63/333,351号に関する優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
配列表の参照による組み込み
電子配列表(VRNS_009_03WO_SeqList_ST26.xml、サイズ:10,557バイト、作成日:2022年8月25日)の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
代謝および脂肪蓄積の調節には複雑な生物学的フィードバックシステムが関与しているため、肥満などの代謝障害の治療は、依然としてとらえどころがない。今日まで、代謝機能不全の調節に有効な薬物は、しばしばいくつかの副作用を呈し、これは患者集団、特に、長期治療を必要とする肥満患者集団におけるそれらの有用性を制限する。したがって、肥満を含む代謝障害を治療するための追加の組成物および方法に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、代謝障害の治療のためのActRII経路剤、例えば、ActRII受容体アンタゴニスト、例えば、ActRII受容体抗体、およびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストの二重投与に関する。ActRII経路抗体およびGLP-1アゴニストを含む本開示の併用治療は、脂肪量を低減し、除脂肪量を維持または増加させることが見出された。本明細書に提供される併用療法は、脂肪量を低減させること、除脂肪量を増加させること、血糖コントロールを改善することによって代謝機能不全を改善することができ、また対象におけるこれらの薬剤の一方または両方の忍容性および/または有効性を改善することもできる。
【0005】
それを必要とする対象にActRII受容体抗体およびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストを投与することを含む、対象における代謝障害を治療する方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、代謝障害は、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、抗精神病薬関連肥満、グルココルチコイド誘発性肥満、頭蓋咽頭腫に関連する視床下部肥満、プラダー・ウィリー症候群、および肥満に関連する単一遺伝性障害からなる群から選択される。一部の実施形態では、糖尿病は、I型糖尿病またはII型糖尿病である。
【0006】
一部の実施形態では、肥満に関連する単一遺伝性障害は、バルデ・ビードル症候群、またはADCY3、ALMS1、ARL6、BBS1、BBS2、BBS4、BBS5、BBS7、BBS9、BBS10、BBS12、BDNF、CCDC28B、CEP290、CREBBP、EP300、GNAS、IER3IP1、MC3R、MKKS、MKS1、MRAP2、NTRK2、PCSK1、PHF6、POMC、SH2B1、SIM1、TMEM67、TRIM32、TTC8およびVPS13Bを含む遺伝子の一つまたは複数における変異から生じる肥満の一つである。
【0007】
一部の実施形態では、治療は、肥満に関連する併存疾患に有用であり、状態は、耐糖能障害、前糖尿病、インスリン抵抗性、高トリグリセリド、過体重に関連する身体的障害、骨粗鬆症、腎疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、性ホルモン障害、内分泌性生殖障害、変形性関節炎、胃腸の癌、異常脂質血症、高血圧、心不全、冠動脈心疾患、脳卒中、および/または胆石の群から選択される。
【0008】
一部の実施形態では、対象は、ボディ・マス・インデックス(BMI)30以上を有する。一部の実施形態では、対象は、BMI27以上を有し、一つまたは複数の肥満に関連する併存疾患を有する。一部の実施形態では、対象は、過体重である。一部の実施形態では、対象は、18歳以上である。一部の実施形態では、対象は、45歳以上である。一部の実施形態では、対象は、0~17歳の小児である。
【0009】
一部の実施形態では、治療は、対象における体重を低下させる。一部の実施形態では、治療は、対象における脂肪量を低下させる。一部の実施形態では、治療は、対象における除脂肪量を増加させる。一部の実施形態では、治療は、対象における脂肪量を低減し、除脂肪量を増加させる。一部の実施形態では、治療は、対象における脂肪量を低減し、除脂肪量を維持する。一部の実施形態では、治療は、対象における中心性肥満を低下させる。一部の実施形態では、治療は、対象における血糖コントロールを改善する。
【0010】
一部の実施形態では、治療は、ActRII受容体抗体および/またはグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストの安全性、有効性、および/または忍容性を改善する。
【0011】
一部の実施形態では、治療の有効性は、以下の、体重、生体インピーダンス法(BIA)、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)、腹囲、BMIの減少、ウエスト・ヒップ比、ウエスト・身長比、血液脂質特性、レプチン、アディポネクチン、およびアジプシンレベル、尿バイオマーカー、ヘモグロビンA1c(HgbA1c)レベル、筋力を示す手の筋力測定、グルコースレベル、インスリンレベル、簡易身体能力バッテリー(SPPB)、クオリティ・オブ・ライフに対する体重の影響(CTについてのIWQoL-Lite)評価、簡易フォーム(36)健康調査(SF-36)評価、恒常性モデル評価2(HOMA2)、ならびにアクティグラフィーを介した身体活動モニタリングうちの少なくとも一つによって測定される。
【0012】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号1~6のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、配列番号10のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。
【0013】
一部の実施形態では、抗体は、ActRIIAおよびActRIIBに特異的である。
【0014】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、抗体、小分子、ペプチド、またはアプタマーである。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、エキセナチド、徐放性エキセナチド、デュラグルチド、リラグルチド、リキシセナチド、セマグルチド、チルゼパチド、コタデュチド、ノイグルチド、オキシントモジュリン(例えば、マズドチド)、レタトルチド、アルビグルチド、ベイナグルチドおよびPEG-ロキセナチド、ペムビデュチド、ならびにダヌグリプロンからなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、二重GLP-1アゴニストおよびGIPアゴニストである。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、二重GLP-1アゴニストおよびGCGアゴニストである。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、GIP/GLP-1/グルカゴン受容体のトリアゴニストである。
【0016】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約3mg/kg~約50mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約10mg/kg~約30mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約10mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約30mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約200mg~約400mgの用量で一週間に一回投与される。
【0017】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約300mgの用量で一週間に一回投与される。
【0018】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体投与は、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの投与の前、0日目または0週目でのActRII受容体抗体の少なくとも一回の負荷用量の投与を含む。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体の負荷用量は、約10mg/kg~約30mg/kgの用量で投与される。
【0019】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、少なくとも一日一回、少なくとも一週間に一回、少なくとも一週間に二回、少なくとも一週間に三回、少なくとも2週間に一回、少なくとも4週間に一回、少なくとも6週間に一回、または少なくとも12週間に一回投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、0週目に、約4週目に、およびその後少なくとも12週間に一回投与される。
【0020】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、約0.005mg~約3.0mgの用量で毎週投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト用量は、以下のレジメン、約0.2mg~約3.0mg、約0.1~約1.0mg、約0.25mg~約2.4mg、および約0.25mg~約0.5mgに従い、毎週徐々に増加する。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト用量は、約0週目~約4週目に約0.25mgの用量で毎週投与され、その後5週目に約0.5mgの用量で投与される。
【0021】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト用量は、約0週目~約4週目に約0.25mgの用量で、約5週目~約8週目に約0.5mgの用量で、約8週目~約12週目に約1.0mgの用量で、約12週目~約15週目に約1.7mgの用量で、約16週目~約20週目に約2.4mgの用量で、および約20週目以降約2.4mgの用量で毎週投与される。
【0022】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト用量は、約5.0mg、約10mg、または約15mgの用量で毎週投与される。
【0023】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体および/またはGLP-1アゴニストは、静脈内投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体および/またはGLP-1アゴニストは、皮下投与される。
【0024】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、GLP-1アゴニストの前に投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、GLP-1アゴニストの投与の少なくとも12週間前、少なくとも10週間前、少なくとも8週間前、少なくとも6週間前、少なくとも4週間前、少なくとも2週間前、少なくとも1週間前、少なくとも1日前、または少なくとも1時間前に投与される。
【0025】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、ActRII受容体抗体の前に投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、ActRII受容体抗体の少なくとも2週間前、少なくとも1週間前、少なくとも5日間前、少なくとも4日間前、少なくとも2日間前、少なくとも1日前、少なくとも6時間前、または少なくとも1時間前に投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストは、同時投与される。
【0026】
ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストを含む組み合わせもまた、本明細書に提供される。
【0027】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、配列番号1~6のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、配列番号7のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、配列番号10のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。
【0028】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、EUナンバリングスキームに従い、ヒトIgG1 Fcドメインと比べて259I、252Y、307Q、308F、428L、434H、434F、434Y、434A、434M、および434Sからなる群から選択される改変を有するヒトIgG1 Fcドメインを含む。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、EUナンバリングスキームに従い、ヒトIgG1 Fcドメインと比べてM428Lおよび/またはN434Sから選択される改変を有するヒトIgG1 Fcドメインを含む。
【0029】
ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの組み合わせ、ならびに薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物も本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、例示的なActRII受容体抗体であるビマグルマブ、およびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストであるセマグルチドの、組み合わせまたは単独で与えられた場合の脂肪減少に対する効果を比較するために設計された臨床試験の概略図である。概略図は、週=0での負荷用量を含む。
【0031】
図2図2は、食餌誘発性肥満マウスにおけるActRII受容体抗体およびGLP1アゴニストの効果の前臨床試験の概要である。
【0032】
図3図3は、食餌誘発性肥満マウスにおけるGLP1アゴニストであるセマグルチドおよびActRII受容体抗体、単独および組み合わせでの、循環アクチビンAの効果の棒グラフである。
【0033】
図4A図4A~4Cは、食餌誘発性肥満マウスにおける、GLP1アゴニストであるセマグルチドおよびActRII受容体抗体の、単独および組み合わせでの、MRIによって測定された脂肪量、試験終了時に死後に測定された鼠径部脂肪重量、および循環レプチンレベルに対する効果の棒グラフである。
図4B】同上。
図4C】同上。
【0034】
図5図5は、GLP1アゴニストであるセマグルチドおよびActRII受容体抗体の、単独および組み合わせでの、試験終了時の死後腓腹筋を計量することによって評価された、食餌誘発性肥満マウスにおける除脂肪筋肉量に対する効果の棒グラフである。
【0035】
図6図6は、食餌誘発性肥満マウスの鼠径部脂肪における、GLP1アゴニストであるセマグルチドとActRII受容体抗体の組み合わせに応答した、RNAseqによって評価されたmRNA転写レベルの変化の図である。
【0036】
図7図7は、食餌誘発性肥満マウスにおける、より良好な食物摂取を誘導するための、両方のチルゼパチド群における11日目のチルゼパチドの用量の変化を伴う、経時的な、GLP1アゴニストであるセマグルチド、チルゼパチド、およびリラグルチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、体重に対する効果の線プロットである。
【0037】
図8図8は、食餌誘発性肥満マウスにおける、GLP1アゴニストであるセマグルチド、チルゼパチド、およびリラグルチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、MRIによって測定された経時的な体脂肪に対する効果の線プロットである。
【0038】
図9図9は、食餌誘発性肥満マウスにおける、GLP1アゴニストであるセマグルチド、チルゼパチド、およびリラグルチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、試験終了時に収集された腎周囲の脂肪の重量に対する効果の棒グラフである。
【0039】
図10図10は、食餌誘発性肥満マウスにおける、GLP1アゴニストであるセマグルチド、チルゼパチド、およびリラグルチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、食物摂取に対する経時的な効果の線プロットである。
【0040】
図11図11は、食餌誘発性肥満マウスにおける、GLP1アゴニストであるセマグルチド、チルゼパチド、およびリラグルチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、除脂肪量に対する経時的な効果の線プロットである。
【0041】
図12A図12Aは、食餌誘発性肥満マウスの定量的オープンフィールド試験における、GLP1アゴニストであるセマグルチド、チルゼパチド、およびリラグルチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、移動距離に対する効果の線プロットである。
【0042】
図12B図12Bは、食餌誘発性肥満マウスの定量的オープンフィールド試験における、GLP1アゴニストであるセマグルチド、チルゼパチド、およびリラグルチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、速度に対する効果の線プロットである。
【0043】
図13図13は、食餌誘発性肥満マウスにおける、GLP1アゴニストであるチルゼパチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、脂肪量に対する効果の線プロットである。
【0044】
図14図14は、食餌誘発性肥満マウスにおける、GLP1アゴニストであるチルゼパチドの、単独およびActRII受容体抗体との組み合わせでの、除脂肪量に対する効果の線プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示の組成物および方法は、肥満を含む代謝障害の治療に使用するためのActRII経路剤、例えば、ActRII受容体アンタゴニスト、例えば、ActRII受容体抗体、およびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストを含む組み合わせを提供する。本明細書に提供されるように、組み合わせは、脂肪量を有意に低減し、除脂肪量を維持または増加させる。
【0046】
ActRII受容体アンタゴニストとGLP-1アゴニストの両方は、ヒト対象において、1年で20%超の脂肪量の有意な減少を引き起こす。しかしながら、単独で投与されたActRII受容体アンタゴニストはまた、除脂肪量を増加させるが、単独で投与されたGLP-1アゴニストは、除脂肪量を減少するという不利益な効果をもたらす。
【0047】
本開示は、ActRII受容体アンタゴニストおよびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストの組み合わせが、脂肪量の有意かつ相乗的な低減をもたらした一方で、同時に除脂肪量を維持または増加させるという驚くべき効果を示す。
【0048】
I.定義
本明細書で別段定義されない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。概して、本明細書に記載される化学、分子生物学、細胞生物学、免疫学、薬理学、およびタンパク質化学に関連して使用される命名法、ならびにその技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。
【0049】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「and」、および「the」は、文脈が別途明確に指さない限り、複数の参照物を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「剤」への言及は、そのような候補の一つまたは混合物を指し、「方法」への言及は、当業者に公知の同等の工程および方法への言及等を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「およそ」または「約」という用語は、対象の一つまたは複数の値に適用される場合、記載される基準値と大きさが類似しており、および/または類似の範囲内である値を指す。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り、記載された基準値のいずれかの方向(より大きいか、またはそれより小さい)に10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下(そのような数が、可能な値の100%を超える場合を除く)以内にある値の範囲を指す。
【0051】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に示さない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在する値、およびその記載された範囲の任意の他の記載された値または介在する値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、記載された範囲の中で特に除外された制限を条件として、独立してより小さい範囲に含まれることも本開示に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。用語はまた、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、または標識構成要素とのコンジュゲートを含むように修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「同一性」および「同一」という用語は、二つの配列の比較に言及する場合、BLASTアルゴリズムまたは当技術分野で公知の他のアライメントアルゴリズムによって生成されるアライメントなどの参照配列に対する本明細書に提供される配列のアライメントにおける正確な一致残基の割合を指す。同一性は、本明細書に提供される完全長配列および完全長参照配列のアライメントに基づいて計算されてもよい。同一性はまた、参照配列が本明細書に提供される配列よりも長い場合、本明細書に提供される配列および参照配列の部分的アライメントに基づいて計算されてもよい。同一性はまた、参照配列が本明細書に提供される配列よりも短い場合、本明細書に提供される配列および参照配列の部分的アライメントに基づいて計算されてもよい。したがって、二つの配列を整列させるとき、前述のように、クエリー配列は、二つの配列のアライメントにおいて、対象配列中の残基の少なくともx%(端数は切り捨てられる)が、クエリー配列中の対応する残基との正確な一致として整列される場合、対象配列と少なくともx%の同一性を共有し、ここで、分子は、正確な一致の数であり、分母は、クエリー配列の長さである。一部の実施形態では、分母は、代替的に、クエリー配列の長さから二つ以上の不一致残基の任意のギャップを引いたものであってもよい。対象配列が、可変位置(例えば、Xで示される残基)を有する場合、クエリー配列中の任意の残基へのアライメントは、一致としてカウントされる。
【0054】
「治療」、「治療すること」などの用語は、一般的に、治療剤を用いて所望の薬理的および/または生理的効果を得ることを意味するように本明細書で使用される。効果は、疾患またはその症状を完全または部分的に予防するという点で予防であってもよく、例えば、疾患もしくはその症状が対象において生じる可能性を低減してもよく、および/または症状を完全もしくは部分的に低下させるという点で治療であってもよく、または疾患および/もしくは疾患に起因する副作用に対する部分的または完全な治癒であってもよい。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物における疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患が発症しやすいが、まだ発症していると診断されていない対象において疾患が発生するのを予防すること、(b)疾患の発症もしくは発生を阻害または遅延させること、または(c)疾患を緩和すること、例えば、疾患もしくは疾患に関連する症状の退縮を引き起こすことを含む。治療剤は、疾患の発症前、発症中または発症後に投与されてもよい。治療が患者の望ましくない臨床症状を安定化または低下させる、進行中の疾患の治療は、特に興味深い場合がある。一部の実施形態では、治療は、罹患組織における機能の完全な喪失の前に行われる。一部の実施形態では、対象療法は、疾患の症候性段階の間に投与され、一部の実施形態では、疾患の症候性段階の後に投与される。
【0055】
「負荷用量」という用語は、本明細書に提供される併用療法に加えて投与される治療剤の一つまたは複数の用量を指す。本明細書で使用される場合、「負荷用量」は、併用療法の一部であるActRII受容体抗体の用量と同じ濃度、より低い濃度、またはより高い濃度であるActRII受容体抗体の一つまたは複数の用量を指し得る。
【0056】
「個体」、「対象」および「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、治療または療法が望ましい任意の対象を指す。対象は、哺乳動物対象であってもよい。哺乳動物対象としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、(例えば、ラット、マウス)、ウサギ類(例えば、ウサギ)、有蹄動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギなど)などが挙げられる。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、非ヒト霊長類、例えば、カニクイザルである。一部の実施形態では、対象は、コンパニオンアニマル(例えば、ネコ、イヌ)である。
【0057】
本明細書で使用される場合、代謝障害は、肥満、糖尿病(I型およびII型)、メタボリックシンドローム、抗精神病薬関連肥満、グルココルチコイド誘発性肥満、頭蓋咽頭腫に関連する視床下部肥満、ならびに単一遺伝性障害関連肥満を含むが、これらに限定されない、哺乳動物の代謝の調節不全に影響を及ぼす障害を指す。ヒトにおける肥満に関連する単一遺伝性障害には、バルデ・ビードル症候群、ならびに以下の遺伝子ADCY3、ALMS1、ARL6、BBS1、BBS2、BBS4、BBS5、BBS7、BBS9、BBS10、BBS12、BDNF、CCDC28B、CEP290、CREBBP、EP300、GNAS、IER3IP1、MC3R、MKKS、MKS1、MRAP2、NTRK2、PCSK1、PHF6、POMC、SH2B1、SIM1、TMEM67、TRIM32、TTC8およびVPS13B、またはその組み合わせのうちの一つまたは複数の変異から生じる障害が含まれ得るが、これらに限定されない。代謝障害はまた、複雑な遺伝子障害、例えば、プラダー・ウィリー症候群と関連し得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、ボディ・マス・インデックスまたは「BMI」は、キログラム(kg)の重量を平方メートル(m)の高さで割ったものとして計算され、小数点第一位は切り捨てられる。本明細書で使用される場合、成人のヒトにおける「肥満」は、30kg/m以上のBMIとして定義される。ヒトの青年期の「肥満」は、2000のCDC成長チャートの年齢および性別特異的な95パーセンタイル以上のBMIとして定義される。「過体重」という用語は、25以上かつ30以下のBMIとして定義される。
【0059】
「肥満に関連する併存疾患」、「肥満関連状態」および「肥満関連障害」は、互換的に使用され得、対象の肥満に依存した健康状態を指す。一部の実施形態では、肥満に関連する併存疾患または状態は、対象の死亡リスクを増加させる。肥満に関連する併存疾患には、高い血圧(高血圧)、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高レベルのトリグリセリド(異常脂質血症)、2型糖尿病、冠動脈心疾患、脳卒中、胆嚢疾患、変形性関節炎、睡眠時無呼吸、呼吸の問題、癌、胃食道逆流症、重篤なCOVID-19、全死亡率、低いクオリティ・オブ・ライフ、臨床的うつ病、不安、および他の精神障害などの精神病、ならびに身体の痛みおよび身体機能に伴う困難が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
「除脂肪量」は、対象の総体重から脂肪量を引き、対象の骨質量を引いたものとして定義される。除脂肪量および脂肪量は、例えば、生体インピーダンス法(BIA)、磁気共鳴画像法(MRI)または二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)によって測定されてもよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、特定の抗原と免疫学的に反応性である免疫グロブリン分子への言及を含み、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を含む。用語は、ヒト化抗体、キメラ抗体、例えば、ヒト定常領域を有するマウス可変領域、およびコンジュゲートされた抗体を含む。「抗体」という用語はまた、抗原結合能を保持する断片(例えば、Fab’、F(ab’)、Fab、一本鎖で一緒に連結されたVH配列およびVL配列を含有する一本鎖可変断片(scFv)、一本鎖抗体断片(scAb)を含む、抗体の抗原結合形態を含む。断片結晶化可能領域(Fc)はまた、前述の抗原結合断片のいずれかに連結されてもよい。抗体という用語はまた、二価または二特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディを含む。
【0062】
II.ActRII経路モジュレーター
ActRII受容体抗体
アクチビン受容体II B(ActRIIB)は、ミオスタチン、アクチビン、および骨形成タンパク質(BMP)の受容体である。ミオスタチンとこの受容体との間の相互作用は、Smad依存性経路を介した骨格筋分化の阻害を制御する。ミオスタチンがActRIIBに結合することを阻害または防止することによって、例えば、ActRII受容体抗体を介して、骨格筋の形成を誘導することができると考えられている。アクチビン受容体II A(ActRIIA)の調節はまた、筋肉成長の調節にも役割を果たす(Morvan et al.2017)。
【0063】
ActRIIAおよびActRIIBに結合する例示的なActRII受容体抗体は、ヒト臨床試験において、除脂肪筋肉量を増加させるだけでなく、脂肪量を減少し、血糖コントロールを改善することも示された(国際公開第2010125003A1号、国際公開第2018116201A1号、その内容は、その全体が組み込まれる、およびHeymsfield et al.2021;4(1):e2033457,JAMA)。一部の実施形態では使用され得る例示的なActRII受容体抗体には、国際公開第2010125003A1号に記載される、単離され、構造的に特徴付けられた、ヒト組み換え抗体が含まれる。
【0064】
一部の実施形態では、本開示の例示的な抗体は、ビマグルマブ(BYM338)の配列を含む。以下の表は、ビマグルマブについての関連するCDR、VH、VL、HC、およびLCアミノ酸配列を示す。
【表1】
【0065】
一部の実施形態では、本開示の例示的なActRII受容体抗体は、配列番号1(CDRH1)、配列番号2(CDRH2)、および配列番号3(CDRH3)のCDRアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。
【0066】
一部の実施形態では、本開示の例示的なActRII受容体抗体は、配列番号4(CDRL1)、配列番号5(CDRL2)、および配列番号6(CDRL3)のCDRアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0067】
一部の実施形態では、本開示の例示的なActRII受容体抗体は、配列番号1(CDRH1)、配列番号2(CDRH2)、および配列番号3(CDRH3)のCDRアミノ酸配列を含む可変重鎖を含み、配列番号4(CDRL1)、配列番号5(CDRL2)、および配列番号6(CDRL3)のCDRアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0068】
一部の実施形態では、本開示の例示的なActRII受容体抗体は、配列番号7のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%,97%、98%、もしくは99%の配列同一性のアミノ酸配列を含む可変重鎖、および/あるいは配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%,97%、98%、もしくは99%の配列同一性のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0069】
一部の実施形態では、本開示の例示的なActRII受容体抗体は、配列番号9のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%,97%、98%、もしくは99%の配列同一性のアミノ酸配列を含む重鎖、および/あるいは配列番号10のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%,97%、98%、もしくは99%の配列同一性のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0070】
一部の実施形態では、本開示のActRII受容体抗体は、Fcドメイン、例えば、ヒトIgG1 Fcドメイン、ヒトIgG2 Fcドメイン、ヒトIgG3、Fcドメイン、またはヒトIgG4 Fcドメインを有する。一部の実施形態では、Fcドメインは、野生型である。一部の実施形態では、Fcドメインは、修飾され、例えば、血清半減期を増加させるように修飾される。一部の実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインであり、血清半減期を増加させるように改変される。一部の実施形態では、血清半減期を増加させる改変は、EUナンバリングスキームに従い、ヒトIgG1 Fcドメインと比べて259I、252Y、307Q、308F、428L、434H、434F、434Y、434A、434M、および434Sのうちの一つまたは複数を含む。一部の実施形態では、改変は、EUナンバリングスキームに従い、ヒトIgG1 Fcドメインと比べて259I/434S、308F/434S、308F/428L/434S、259I/308F/434S、307Q/308F/434S、250I/308F/434S、および308F1319L/434Sのうちの一つまたは複数を含む。
【0071】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、100nM以下、10nM以下、1nM以下のKDでActRIIBに結合する。好ましくは、ActRII受容体抗体は、100pM以下(すなわち、100pM、50pM、10pM、1pM以下)の親和性でActRIIBに結合する。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、10~20pMの親和性でActRIIBに結合する。
【0072】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、ActRIIAよりも5倍高い、より好ましくは、10倍高い、さらにより好ましくは、50倍高い、さらにより好ましくは、100倍高い親和性でActRIIBに結合する。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、100pM以上(すなわち、250pM、500pM、1nM、5nM以上)の親和性でActRIIAに結合する。
【0073】
他のActRII経路剤
他の実施形態では、本明細書に記載される併用療法は、ActrRII受容体リガンドに結合し、例えば、ミオスタチンまたはアクチビンに直接結合する薬剤を含む。かかる薬剤としては、ミオスタチン阻害剤(例えば、ミオスタチン抗体、もしくはミオスタチン小分子アンタゴニスト)、アクチビン阻害剤(例えば、アクチビン抗体、もしくはアクチビン小分子アンタゴニスト)、またはFcで任意選択的にさらに安定化された「リガンドシンク」として作用し得るActRIIBもしくはActRIIAの可溶性細胞外部分が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、一部の実施形態では、GLP-1アゴニストと組み合わせたActrII経路剤(ActRII受容体抗体以外)を必要とする対象に投与することを含む本開示の代謝障害を治療する方法が、本明細書に提供され、薬剤は、ミオスタチン阻害剤、アクチビン阻害剤、またはActRII受容体の可溶性部分からなる群から選択される。
【0074】
一部の実施形態では、ActRII経路剤(ActRII受容体抗体以外)とGLP-1アゴニストの両方の投与は、有益な効果を示し、GLP-1アゴニストを用いた治療の一部として投与されるActRII経路剤(ActRII受容体抗体以外)は、GLP-1アゴニスト単独と比較して、効果を見るために必要なGLP-1アゴニストの投与量を減少し、および/またはGLP-1アゴニストの治療効果を増加させる。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストが、ActRII経路剤単独の投与と比較して、効果を見るために必要なActRII経路剤(ActRII受容体抗体以外)の投与量を減少し、および/またはActRII経路剤の治療効果を増加させる、有益な効果が示される。一部の実施形態では、有益な効果は、ActRII経路剤またはGLP-1剤単独と比較して、組み合わせの安全性の増加である。一部の実施形態では、有益な効果は、ActRII経路剤またはGLP-1剤単独と比較して、組み合わせの有効性の増加である。一部の実施形態では、有益な効果は、ActRII経路剤またはGLP-1剤単独と比較して、忍容性の増加である。
【0075】
III.GLP-1アゴニスト
グルカゴン様ペプチド-1受容体は、ホルモングルカゴン様ペプチド1(GLP-1)の結合時にインスリン分泌を刺激する膵ベータ細胞受容体である。GLP-1は、インクレチンホルモンの一種であり、そのすべては、血糖に応答してインスリン放出を制御する。GLP-1アゴニストは、GLP-1ペプチドの作用を模倣し、結合時にGLP-1受容体を活性化し、インスリン分泌を刺激する。
【0076】
しかしながら、GLP-1アゴニストは、有効な用量で有意な副作用および忍容性の問題を呈する。GLP-1アゴニストはまた、治療中に対象の除脂肪量を減少することが示されている。GLP-1アゴニスト(例えば、セマグルチド)についての注意および用心としては、甲状腺C細胞腫瘍、急性膵炎、急性胆嚢疾患、低血糖、急性腎損傷、重篤な有害胃腸反応、過敏症、例えば、アナフィラキシー反応および血管性浮腫、2型糖尿病対象における合併症である糖尿病性網膜症、心拍数増加、ならびに自殺行為および自殺願望が含まれるが、これらに限定されない。GLP-1アゴニスト(例えば、セマグルチド)で治療された対象の少なくとも5%で報告された有害反応には、吐き気、下痢、嘔吐、便秘、腹部痛、頭痛、疲労、消化不良、めまい、腹部膨満、蕁麻疹、2型糖尿病を有する患者における低血糖、鼓腸、胃腸炎、および胃食道逆流症が含まれる。したがって、GLP-1アゴニストを用いた最適化された投与量および治療に対するニーズがある。
【0077】
本明細書に提供されるように、本開示のGLP-1アゴニストは、ペプチド、抗体、小分子、またはアプタマーであり得る。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、エキセナチド、徐放性エキセナチド、デュラグルチド、リラグルチド、リキシセナチド、セマグルチド、チルゼパチド、コタデュチド、ノイグルチド、コタデュチド、オキシントモジュリン、もしくはペムビデュチドを含むが、これらに限定されない、ペプチドまたはペプチドアナログである。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、小分子非ペプチドアゴニスト、例えば、ダヌグリプロンである。
【0078】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、GLP-1受容体に加えて、第二の受容体に結合し、活性化または不活性化する二重アゴニストであり、第二の受容体は、グルコース依存性インスリン分泌刺激(GIP)受容体またはグルカゴン(GCG)受容体である。GLP-1受容体とGIP受容体の両方に結合する例示的な二重作用性GLP-1アゴニストは、チルゼパチドである。GLP-1受容体とGCG受容体の両方に結合する例示的な二重作用性GLP-1アゴニストは、コタデュチド、ノイグルチド、およびオキシントモジュリンであり、ActRII受容体抗体と組み合わせて使用される可能性のある治療剤として本開示に含まれる。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストはまた、GIPアンタゴニストである。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストはまた、GCGアンタゴニストである。
【0079】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、GIP/GLP-1/グルカゴン受容体のトリアゴニスト、例えば、GGGトリアゴニスト、例えば、LY343794である。
【0080】
IV.併用療法
本明細書で企図される併用療法、または「組み合わせ」は、ActRII受容体抗体(または他のActRII経路剤)とGLP-1アゴニストとの同時投与を含み、ActRII受容体抗体(または他のActRII経路剤)は、GLP-1アゴニストの前、後、または同時に投与されてもよい。こうした併用療法は、ActRII受容体抗体(または他のActRII経路薬剤)の開始負荷用量をさらに含み得る。例示的な実施形態では、同時投与は、配列番号1~6ならびに/または配列番号7および8のアミノ酸配列(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列)を含むActRII受容体抗体を投与することを含む。さらなる例示的な実施形態では、同時投与は、配列番号1~6ならびに/または配列番号7および8の配列(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列)を含むActRII受容体抗体、ならびにGLP-1アゴニストであるセマグルチド、チルゼパチド、またはリラグルチドのいずれかを投与することを含む。
【0081】
ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストを含む本開示の併用療法は、任意の経路を介して投与されてもよい。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体および/またはGLP-1アゴニストは、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、直腸内、または眼内送達される。例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体は、静脈内(IV)および/または皮下投与され、GLP-1アゴニストは、皮下投与される。
【0082】
併用療法におけるActRII受容体抗体の投与量およびタイミング
本明細書で企図される併用療法では、一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、対象の体重当たり約3mg/kg~対象の体重当たり約50mg/kgの用量で、それを必要とする対象に投与される。
【0083】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、対象の体重当たり約3mg/kg~対象の体重当たり約50mg/kgの用量で、対象に静脈内投与される。
【0084】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、それを必要とする対象に、約3mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約4mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約5mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約6mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約7mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約8mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約9mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約10mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約11mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約12mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約13mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約14mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約15mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約16mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約17mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約18mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約19mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約20mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約21mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約22mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約23mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約24mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約25mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約26mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約27mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約28mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約29mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約30mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約31mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約32mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約33mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約34mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約35mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約36mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約37mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約38mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約39mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約40mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約41mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約42mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約43mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約44mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約45mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約46mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約47mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約48mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約49mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約50mg/kgの用量で投与される。
【0085】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、それを必要とする対象に10mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、それを必要とする対象に30mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、それを必要とする対象に10mg/kgの用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、それを必要とする対象に30mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0086】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、それを必要とする対象に二回、三回、四回、または五回以上投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に一回、一週間に二回、一週間に三回、二週間に一回、四週間に一回、六週間に一回、12週間に一回、または15週間に一回の投与レジメンで投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一年の四分の一毎に投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、12週毎に約10mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、12週毎に30mg/kgの用量で投与される。
【0087】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、12週毎に約10mg/kgの用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、12週毎に30mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0088】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、週に一回、二回、三回以上、約100~約600mgの投与レジメンで投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、週に一回、二回、三回以上、または2週間に一回、約200~約400mg、例えば、約300mgの投与レジメンで投与される。
【0089】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約200~約400mgの投与レジメンで皮下投与される。例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体は、約300mgの用量で皮下投与される。
【0090】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約200mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に一回、約200mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に二回、約200mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に三回、約200mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2週間毎に約200mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約200mgの用量で皮下投与される。
【0091】
例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体は、約300mgの用量で投与される。例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に一回、約300mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に二回、約300mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に三回、約300mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2週間毎に約300mgの用量で投与される。例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体は、約300mgの用量で皮下投与される。例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に一回、約300mgの用量で皮下投与される。
【0092】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約400mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に一回、約400mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に二回、約400mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に三回、約400mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2週間毎に約400mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に一回、約400mgの用量で皮下投与される。
【0093】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、600mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に一回、一週間に二回、または一週間に三回、または2週間毎に、600mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約600mgの用量で皮下投与される。
【0094】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、二回、三回または四回、約600mg~約3000mg、例えば、約1000mgの投与レジメンで投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、約600~約3000mgの投与レジメンで皮下投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、二回、三回または四回、約600mg~約3000mgの投与レジメンで皮下投与される。
【0095】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、750mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、750mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、900mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、900mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、1050mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、1050mgの用量で投与される。
【0096】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、1200mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、1200mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、1350mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、1350mgの用量で投与される。
【0097】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、1500mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、1500mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、1650mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、1650mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、1800mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、1800mgの用量で投与される。
【0098】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、1950mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、1950mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2100mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、2100mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2250mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、2250mgの用量で投与される。
【0099】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2400mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、2400mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2550mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、2550mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2700mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、2700mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、2850mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、2850mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、3000mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、月に一回、3000mgの用量で投与される。
【0100】
負荷用量
一部の実施形態では、併用療法に加えてActRII受容体抗体の負荷用量の投与は、併用療法の結果を改善し得る。理論に束縛されるものではないが、負荷用量の投与は、経時的に対象の血清中のActRII受容体抗体のレベルを維持し、併用療法をさらに最適化することができると考えられる。したがって、一部の実施形態では、ActRII受容体抗体の負荷用量が、投与される。
【0101】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体の一つまたは複数の負荷用量は、併用療法の開始前、0日目または0週目に、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体の一つまたは複数の負荷用量は、併用療法が投与される1日前、約2日前、約3日前、約4日前、約5日前、約6日前、約1週間前、約2週間前、約3週間前、約4週間前、約5週間前、約6週間前、約7週間前、約8週間前、約9週間前、約10週間前、約11週間前、または約12週間前に提供される。例示的な実施形態では、負荷用量は、併用療法の開始の約4週間前に投与される。
【0102】
一部の実施形態では、一つまたは複数の負荷用量の第二の投与は、併用療法の投与の約6ヶ月後、約8ヶ月後、約10ヶ月後、約12ヶ月後、約14ヶ月後、約16ヶ月後、約18ヶ月後、約20ヶ月後、または約24ヶ月後に行われる。一部の実施形態では、一つまたは複数の負荷用量は、併用療法に加えて周期的にまたは定期的に投与される。例示的な実施形態では、負荷用量は、併用療法の開始の約4週間前に最初に投与され、その約一年後に投与される。
【0103】
一部の実施形態では、対象は、一つまたは複数の負荷用量、続いて併用療法を投与され、次いで、治療の第二ラウンド、例えば、一つまたは複数の負荷用量の第二の投与、続いて反復併用療法を投与され、同様に、治療は、さらに一つまたは複数の負荷用量の第三のセット、続いて併用療法の第三ラウンドなどを含み得る。
【0104】
一部の実施形態では、負荷用量は、併用療法で投与されたActRII受容体抗体の用量と同じ濃度、より低い濃度、またはより高い濃度のActRII受容体抗体の用量である。したがって、負荷用量は、対象の体重当たり約3mg/kg~対象の体重当たり約50mg/kgであってもよく、その間のすべての量であってもよい。一部の実施形態では、負荷用量は、対象の体重当たり約3mg/kg~対象の体重当たり約50mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0105】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体の負荷用量は、それを必要とする対象に、約3mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約4mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約5mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約6mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約7mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約8mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約9mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約10mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約11mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約12mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約13mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約14mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約15mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約16mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約17mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約18mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約19mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約20mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約21mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約22mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約23mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約24mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約25mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約26mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約27mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約28mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約29mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約30mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約31mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約32mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約33mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約34mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約35mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約36mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約37mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約38mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約39mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約40mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約41mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約42mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約43mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約44mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約45mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約46mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約47mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約48mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約49mg/kgの用量で、一部の実施形態では、約50mg/kgの用量で投与される。
【0106】
例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体負荷用量は、対象の体重当たり約10mg/kgである。他の例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体負荷用量は、対象の体重当たり約30mg/kgである。一部の実施形態では、対象の体重当たり約10mg/kgのActRII受容体負荷用量は、皮下投与される。一部の実施形態では、対象の体重当たり約10mg/kgのActRII受容体負荷用量は、静脈内投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体の負荷用量は、対象の体重当たり約30mg/kgであり、静脈内投与される。
【0107】
一部の例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体の負荷用量は、投与当たり約200~400mgである。一部の例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体の負荷用量は、投与当たり約300mgである。一部の例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体の負荷用量は、投与当たり約200~400mgであり、皮下投与される。
【0108】
併用療法におけるGLP-1アゴニストの投与量およびタイミング
本明細書で企図される併用療法の一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、約0.005mg~約3.0mgの用量、例えば、約0.005mg、約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、または約3.0mgの用量で投与される。例示的な実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、約0.005mg~約3.0mgの用量で皮下投与される。
【0109】
併用療法の他の実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、毎週約1~約20mgの用量、例えば、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、または約20mgの用量で投与される。例示的な実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、約5mg、約10mg、または約15mgの用量で皮下投与される。
【0110】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、以下のレジメン、例えば、約0.2mg~約3.0mg、約0.1~約1.0mg、約0.25mg~約2.4mg、または約0.25mg~約0.5mgのうちの一つに従い徐々に増加する。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、0.5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、1.0mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、1.7mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、2.4mgの用量で投与される。
【0111】
一部の例示的な実施形態では、GLP-1アゴニストは、徐々に増加し、皮下投与される。
【0112】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、一週間に一回、0.5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、一週間に一回、1.0mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、それを必要とする対象に、一週間に一回、1.7mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、一週間に一回、2.4mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、約0週目~約4週目に約0.25mgの用量で毎週投与され、5週目以降に約0.5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト用量は、約0週目~約4週目に約0.25mgの用量で、約5週目~約8週目に約0.5mgの用量で、約8週目~約12週目に約1.0mgの用量で、約12週目~約15週目に約1.7mgの用量で、約16週目~約20週目に約2.4mgの用量で毎週、および約20週目以降に約2.4mgの用量で毎週投与される。
【0113】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、一週間に一回、5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、一週間に一回、10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、一週間に一回、15mgの用量で投与される。
【0114】
併用療法-例示的な投与レジメン
一部の例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用療法は、0週目に投与されるActRII受容体抗体の負荷用量、続いて負荷用量の4週間後、その後治療過程の間12週間毎に静脈内投与される約30mg/kgの用量のActRII受容体抗体、および毎週皮下投与されるGLP-1アゴニストを含む。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、毎週、約2.4mgの用量または約15mgの用量で投与される。一部の例示的な実施形態では、併用療法のGLP-1アゴニスト、例えば、セマグルチドは、毎週、約2.4mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、セマグルチドは、毎週、約0.5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、セマグルチドは、毎週、約1.0mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、セマグルチドは、毎週、約2mgの用量で投与される。他の好ましい実施形態では、併用療法のGLP-1アゴニスト、例えば、チルゼパチドは、毎週、約15mgの用量で投与される。他の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、チルゼパチドは、毎週、約5mgの用量で投与される。他の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、チルゼパチドは、毎週、約10mgの用量で投与される。
【0115】
他の例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用療法は、一週間に一回、一週間に二回、または二週間に一回、約300mgの用量で皮下投与されるActRII受容体抗体、および毎週、皮下投与されるGLP-1アゴニストを含む。一部の例示的な実施形態では、GLP-1アゴニストは、毎週、約2.4mgの用量または約15mgの用量で投与される。一部の例示的な実施形態では、併用療法のGLP-1アゴニスト、例えば、セマグルチドは、毎週、約2.4mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、セマグルチドは、毎週、約0.5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、セマグルチドは、毎週、約1.0mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、セマグルチドは、毎週、約2mgの用量で投与される。他の例示的な実施形態では、併用療法のGLP-1アゴニスト、例えば、チルゼパチドは、毎週、約15mgの用量で投与される。他の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、チルゼパチドは、毎週、約5mgの用量で投与される。他の実施形態では、GLP-1アゴニスト、例えば、チルゼパチドは、毎週、約10mgの用量で投与される。
【0116】
併用療法-タイミング
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、GLP-1アゴニストの投与の少なくとも12週間前、少なくとも10週間前、少なくとも8週間前、少なくとも6週間前、少なくとも4週間前、少なくとも2週間前、少なくとも1週間前、少なくとも1日前、または少なくとも1時間前に投与される。ActRII受容体抗体投与レジメンは、負荷用量の投与によってさらに先行されてもよい。
【0117】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、抗体の少なくとも2週間前、少なくとも1週間前、少なくとも5日間前、少なくとも4日間前、少なくとも3日間前、少なくとも2日間前、少なくとも1日前、少なくとも6時間前、または少なくとも1時間前に投与される。
【0118】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、12週間毎に約10mg/kgの用量で、任意選択的に2回以上の用量で投与され、GLP-1アゴニストは、毎週約0.5mg~2.4mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体は、一週間に一回、約300mgの用量で、2回以上の用量で投与され、GLP-1アゴニストは、毎週約0.5mg~2.4mgの用量で投与される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストの投与は、ActRII受容体抗体の最初の投与前に始まる。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストの投与は、ActRII受容体抗体の最初の投与後に始まる。ActRII受容体抗体投与レジメンは、負荷用量の投与によってさらに先行されてもよい。
【0119】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストは、同時投与される、すなわち、同時に投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストは、同時製剤化され、単回注射で同時に同時投与される。ActRII受容体抗体投与レジメンは、負荷用量の投与によってさらに先行されてもよい。
【0120】
対象および治療
本明細書に記載されるように、併用療法は、それを必要とする対象における代謝障害の治療に有用である。本開示の代謝障害としては、肥満(例えば、グルココルチコイド誘発性肥満)、糖尿病(I型またはII型糖尿病)、メタボリックシンドローム、プラダー・ウィリー症候群、および肥大型リポジストロフィーが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、代謝障害は、配列番号1~6ならびに/もしくは配列番号7および8の配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むActRII受容体抗体、ならびにセマグルチド、チルゼパチド、およびリラグルチドから選択されるGLP-1アゴニストで治療される。
【0121】
一部の実施形態では、本明細書に記載される併用治療を必要とする対象は、過体重である対象である。一部の実施形態では、本明細書に記載される併用治療を必要とする対象は、BMI30以上を有する対象を含む。一部の実施形態では、治療を必要とする対象は、肥満に関連する併存疾患を有するBMI27以上を有する対象を含む。
【0122】
一部の実施形態では、治療を必要とする対象は、血糖コントロールを欠く。
【0123】
対象は、若年を含む任意の年齢であり得る。一部の実施形態では、対象は、20歳超、30歳超、40歳超、45歳超、50歳超、60歳超、または80歳超である。例示的な実施形態では、対象は、45歳以上である。一部の実施形態では、対象は、18歳以上である。
【0124】
例示的な実施形態では、ActRII受容体抗体は、GLP-1アゴニストを用いた治療プログラムの一部として投与される。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体とGLP-1アゴニストの両方の投与は、一つまたは複数の代謝障害、例えば、肥満および肥満関連状態を治療する。一部の実施形態では、肥満関連状態は、耐糖能障害、前糖尿病、インスリン抵抗性、高トリグリセリド、過体重に関連する身体的障害、骨粗鬆症、腎疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、性ホルモン障害、内分泌性生殖障害、変形性関節炎、胃腸の癌、異常脂質血症、高血圧、心不全、冠動脈心疾患、脳卒中、胃食道逆流症および/または胆石のうちの一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0125】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体とGLP-1アゴニストの両方の投与は、血糖コントロールを改善し、および/またはII型糖尿病を治療する。
【0126】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体とGLP-1アゴニストの両方の投与は、有益な効果を示し、GLP-1アゴニストを用いた治療の一部として投与されるActRII受容体抗体は、GLP-1アゴニスト単独と比較して、効果を見るために必要なGLP-1アゴニストの投与量を減少し、および/またはGLP-1アゴニストの治療効果を増加させる。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストが、ActRII受容体抗体単独の投与と比較して、効果を見るために必要なActRII受容体抗体の投与量を減少し、および/またはActRII受容体抗体の治療効果を増加させる、有益な効果が示される。一部の実施形態では、有益な効果は、ActRII受容体抗体またはGLP-1剤単独のいずれかと比較して、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの組み合わせの安全性の増加である。一部の実施形態では、有益な効果は、ActRII受容体抗体またはGLP-1剤単独のいずれかと比較して、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの組み合わせの有効性の増加である。
【0127】
一部の実施形態では、薬剤の安全性および/または忍容性の増加は、有害反応、副作用、注意および用心の数、または禁忌の数のリスクが100%、90%、80%、75%、50%、または25%低いことによって決定される。一部の実施形態では、GLP-1アゴニストの患者または医師によって報告された副作用のレベルは、GLP-1アゴニストが、GLP-1アゴニスト単独と比較して、ActRII受容体抗体を用いた治療の一部として投与される場合、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍低減される。一部の実施形態では、有益な効果は、ActRII受容体抗体またはGLP-1剤単独のいずれかと比較して、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの組み合わせの有効性の増加である。
【0128】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、相加的な治療効果を示し、両方の薬剤の投与は、治療の有効性を増加させる。
【0129】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、相乗的な治療効果を示し、両方の薬剤の投与は、個別の各薬剤の効果の合計より有効性を増加させる。
【0130】
本明細書に提供されるように、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象における脂肪量を低下させる。一部の実施形態では、治療は、対象における脂肪量を(治療前と比較して)、治療期間にわたり、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%低下させる。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、相加的または相乗的な様式で脂肪量を低下させる。
【0131】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象における除脂肪量を増加させる。一部の実施形態では、治療は、対象における除脂肪量を、治療期間にわたり、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、または少なくとも50%低下させる。一部の実施形態では、併用治療は、GLP-1アゴニスト単独での治療より高い程度まで、脂肪量を増加させ、除脂肪量を減少する。
【0132】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象における脂肪量を低減し、除脂肪量を増加させる。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、相加的または相乗的な様式で脂肪量を低減し、除脂肪量を増加させる。一部の実施形態では、治療は、対象における脂肪量を、治療期間にわたり、少なくとも5%(例えば、5%~50%)低減し、除脂肪量を少なくとも5%(例えば、5%~50%)増加させる。
【0133】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象における除脂肪量を維持する。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、相加的または相乗的な様式で対象における脂肪量を低減し、除脂肪量を維持する。一部の実施形態では、併用治療は、治療期間にわたり、対象における脂肪量を少なくとも5%(例えば、5%~50%)低減し、除脂肪量を維持する。
【0134】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象における体重を低下させる。一部の実施形態では、治療は、治療期間にわたり、対象における体重を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低下させる。一部の実施形態では、併用治療は、いずれか単独での治療と比較してより高い程度まで体重を低下させる。
【0135】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象のBMIを低下させる。一部の実施形態では、治療は、治療期間にわたり、対象におけるBMIを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低下させる。一部の実施形態では、併用治療は、いずれか単独での治療と比較してより高い程度までBMIを低下させる。
【0136】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、相乗的な様式で体重を低下させる。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象の中心性肥満を低下させる。一部の実施形態では、治療は、治療期間にわたり、対象における中心性肥満を少なくとも5%(例えば、5%~50%)低下させる。一部の実施形態では、併用治療は、いずれか単独での治療と比較してより高い程度まで中心性肥満を低下させる。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、相乗的な様式で中心性肥満を低下させる。
【0137】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象における腹囲を低下させる。米国疾病管理予防センター(CDC)によると、米国の女性の平均腹囲は38.7インチであり、男性の平均腹囲は、40.2インチである。一部の実施形態では、腹囲は、治療期間にわたり、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少し得る。
【0138】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療に応答した脂肪量は、BIAおよび/またはDXAを用いて測定される。
【0139】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、対象における血糖コントロールを改善する。一部の実施形態では、併用治療は、いずれか単独での治療と比較してより高い程度まで血糖コントロールを改善する。一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療は、相乗的な様式で血糖コントロールを改善する。
【0140】
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの併用治療に応答した血糖コントロールは、グルコースおよびインスリンレベルによって測定され、HOMA2モデルが適用される(www.dtu.ox.ac.uk/homacalculator/)。
【0141】
一部の実施形態では、対象における組み合わせ効果の有効性の増加は、いずれかの治療単独と比較して、以下の測定、体重、除脂肪量および/もしくは脂肪量の生体インピーダンス法(BIA)、ウエスト・ヒップ比、ウエスト・身長比、除脂肪量および/もしくは脂肪量の二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)、腹囲、BMIの減少、血液脂質特性、レプチン、アディポネクチン、およびアジプシンレベル、IL-8および/もしくはIL-6レベル、尿バイオマーカー、ヘモグロビンA1c(HgbA1c)レベル、筋力を示す手の筋力測定、グルコースレベル、インスリンレベル、簡易身体能力バッテリー(SPPB)、クオリティ・オブ・ライフに対する体重の影響(CTについてのIWQoL-Lite)評価、簡易フォーム(36)健康調査(SF-36)評価、恒常性モデル評価2(HOMA2)、ならびにアクティグラフィーを介した身体活動モニタリングのうちの少なくとも一つにおける少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍の改善によって決定される。
【0142】
V.医薬の組み合わせ
一部の実施形態では、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストは、医薬組成物中で組み合わされる。例示的な実施形態では、組成物は、配列番号1~6ならびに/または配列番号7および8の配列(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列)を含むActRII受容体抗体、ならびにGLP-1アゴニストセマグルチドを含む。他の例示的な実施形態では、組成物は、配列番号1~6ならびに/または配列番号7および8の配列(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列)を含むActRII受容体抗体、ならびにGLP-1アゴニストであるチルゼパチドを含む。
【0143】
一部の実施形態では、組成物は、賦形剤、または担体、例えば、水性担体を含む。様々な水性担体、例えば、緩衝生理食塩水を使用することができる。組成物は、pHおよび緩衝剤、毒性対向剤、例えば、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸一ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩酸、水酸化ナトリウム、L-ヒスチジン、L-ヒスチジンクロリド、および乳酸ナトリウムなどの生理学的条件に近似するために必要なものとして、薬学的に許容可能な補助物質を含有してもよい。これらの製剤中の活性剤の濃度は変動し得、選択された特定の投与様式および患者のニーズに従って、流体体積、粘度、および体重に基づいて選択される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(15th ed.,1980)and Goodman&Gillman,The Pharmacological Basis of Therapeutics(Hardman et al.,eds.,1996))。組成物は、トレハロース、スクロース、または他の糖およびポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80または他の乳化剤もしくは安定剤を含むが、これらに限定されない、薬理的に活性な薬剤または複数の薬剤の安定性および活性に寄与するものなどの薬学的に許容可能な補助物質を含有してもよい。
【実施例
【0144】
実施例1:過体重または肥満の成人におけるビマグルマブとセマグルチドの安全性および有効性の比較
無作為化プラセボ対照試験を、過体重または肥満である45歳以上の成人におけるビマグルマブの安全性および有効性を、非盲検セマグルチドの安全性および有効性と比較するように設計した。試験の目的は、肥満であるか、または少なくとも一つの肥満に関連する併存疾患を有する過体重である45歳以上の成人において、組み合わせまたは単独で投与した場合の、脂肪減少に対するビマグルマブおよびセマグルチドの効果を比較することである。
【0145】
主目的
ビマグルマブとセマグルチドの組み合わせが、0週目から24週目のベースラインからの胴囲(cm)の変化によって測定した脂肪量喪失に関して、単独で投与したいずれかの療法よりも優れているかどうかを評価すること。試験は、28週目、48週目、68週目、または72週目まで延長してもよい。
副次的目的
I.組み合わせで投与したとき、および単独療法として投与したときのビマグルマブおよびセマグルチドの安全性および忍容性を評価すること。
II.DXAによって測定した、0週目から24週目のベースラインからの除脂肪量の変化(kgおよび変化の%)に関して、単独で投与した各療法と比較して、ビマグルマブとセマグルチドの組み合わせの効果を評価すること。
III.ビマグルマブとセマグルチドの組み合わせが、0週目から24週目のベースラインからのハンドダイナモメトリーによって測定した筋力の変化に関して、単独で投与したいずれかの療法よりも優れているかどうかを評価すること。
IV.DXAによって測定した、0週目から24週目のベースラインからの脂肪量の変化(kgおよび変化の%)に関して、単独で投与した各療法と比較して、ビマグルマブとセマグルチドの組み合わせの効果を評価すること。
V.各治療群の生体インピーダンス法(BIA)によって測定した、体重(kg)および体組成の0週目から24週目のベースラインからの変化を評価すること。
VI.0週目から24週目(%)でベースラインから≧5%の体重減少を経験している各治療群の参加者の割合を評価すること。
VII.各治療群について、収縮期および拡張期血圧(mmHg)の0週目から24週目のベースラインからの変化を評価すること。
VIII.各治療群について、HbA1CおよびHOMA2の0週目から24週目のベースラインからの変化を評価すること。
IX.24週目から36週目までの上記のすべての客観的な主要評価項目および副次的評価項目の変化を決定すること。
X.参加者の健康状態(SF-36)における0週目から24週目のベースラインからの変化を評価すること。
XI.参加者のクオリティ・オブ・ライフ(CTについてのIWQoL-Lite)における0週目から24週目のベースラインからの変化を評価すること。
【0146】
有効性評価項目
脂肪量喪失に関するビマグルマブとセマグルチドの組み合わせの有効性を決定するために、以下のマーカー、腹囲、血圧、DXAによる脂肪量、DXAによる除脂肪量、体重、BMI、脂質、HgbA1cレベル、グルコースレベル、インスリンレベル、簡易身体能力バッテリー(SPPB)、アクティグラフィーを介した身体活動モニタリング、探索尿バイオマーカー、脂肪組織バイオマーカーとしてのレプチン、アディポネクチン、アジプシン、IL-18、およびIL-6、ならびに薬力学的(PD)バイオマーカーとしてのアクチビンAを評価する。
【0147】
安全性評価項目
治療の安全性を決定するために、臨床的に決定した有害事象(AE)をモニターする。これらは、治療上緊急を要する有害事象(TEAE)および重篤な有害事象(SAE)を含むが、これらに限定されない。さらに、心拍数(bpm)、アミラーゼ(U/L)、リパーゼ(U/L)、アルカリホスファターゼALP(U/L)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼAST(U/L)、およびアラニンアミノトランスフェラーゼALT(U/L)を含む、0週目から24週目までの患者の健康マーカーのベースラインからの変化をモニターする。
【0148】
試験設計
本試験は、無作為化、部分盲検、およびプラセボ対照であり、9群、多施設設計である。参加者を、以下の治療群のうちの一つに無作為化する:
a)ビマグルマブ30mg/kg
b)ビマグルマブプラセボ
c)低用量セマグルチド(0.5mg/1.0mg)+ビマグルマブ30mg/kg
d)高用量セマグルチド(2.4mg)+ビマグルマブ30mg/kg
e)低用量セマグルチド(0.5mg/1.0mg)+ビマグルマブプラセボ
f)高用量セマグルチド(2.4mg)+ビマグルマブプラセボ
g)ビマグルマブ10mg/kg
h)低用量セマグルチド(0.5mg/1.0mg)+ビマグルマブ10mg/kg
i)高用量セマグルチド(2.4mg)+ビマグルマブ10mg/kg
【0149】
ビマグルチドおよびビマグルマブのプラセボ治療は、盲検のままにし、セマグルチド治療は非盲検である。本試験は、適格性を評価するためのスクリーニング来院、続いて24週目の追跡調査まで治療期間中6週間毎の来院および電話連絡からなる。試験終了時の来院は、36週目に行う。
【0150】
治験薬、投与量および投与様式
試験デザインに上述したように、ビマグルマブを、静脈内(IV)注入により各用量10mg/kgまたは30mg/kgのいずれかの用量で、合計2回の投与を12週間毎に行う。24週間の曝露期間および主要評価項目の評価の根拠は、この期間によって、二つのビマグルマブ用量および二つのセマグルチド用量の、互いおよびプラセボに対する差次的効果を観察する時間が得られることである。
【0151】
毎週のセマグルチドの皮下注射
セマグルチドの用量を、高用量群に対するラベル説明書に従って、毎週0.25mgから毎週2.4mgに、または低用量群に対して毎週0.25mgから0.5mgに徐々に増加させる。セマグルチドについての対照群は、無治療群であり、皮下注射しない。
【0152】
参照療法、投与量および投与様式
ビマグルマブプラセボは、水(D5W)中5%のデキストロースを含み、0週目に一回目、12週目に二回目の、2回の投与でIV注入により投与する。
【0153】
試験期間
試験は、4週間のスクリーニング期間、24週間の治療期間、および12週間の追跡期間を含む、最大40週間の期間である。
選択基準
1.試験関連の評価を行う前に、書面によるインフォームドコンセントを取得しなければならない。
2.男性≧18歳、女性≧40歳。
3.一つまたは複数の肥満関連併存疾患を伴うBMI≧30またはBMI≧27。
4.スクリーニングの三か月以内に安定した体重(±3kg)を有する。
5.体重を失うための食餌の不調を少なくとも1回自己報告している
6.治験責任医師と十分にコミュニケーションを取り、試験の要件を遵守し、試験期間中の食事および活動プログラムを遵守することができる。
除外基準
1.モノクローナル抗体療法に対する重度の反応の既往
2.登録時または登録の30日以内もしくは5半減期以内のいずれか長い方、または現地の規制に基づく治験参加の他の制限により必要とされる場合、他の治験薬を使用すること。
3.OzempicまたはWegovyにおけるセマグルチドまたは賦形剤のいずれかに対する以前の重篤な過敏症反応。
4.患者の体重>150kg
5.運動のための定期的なウォーキングを妨げる、臨床的に有意な状態、例えば、心血管系疾患、肺疾患または変形性関節炎の既往。
6.一日500カロリーの不足、高タンパク質食の禁忌。
7.妊娠または授乳中の女性。
8.生理的に妊娠する可能性のあるすべての女性と定義する、妊娠の可能性のある女性、ただし、投与中およびビマグルマブ最終投与後6ヶ月間は、有効性の高い避妊法を使用していること。
効果の高い避妊法は、以下を含む。
i.全禁欲。定期的な禁欲(例えば、カレンダー法、排卵法、対症療法、排卵後法)および禁断症状は、許容可能な避妊法ではない。
ii.試験治療開始の少なくとも6週間前の、女性不妊手術(子宮摘出術を伴う、または伴わない外科的両側卵巣摘出術)または卵管結紮術。卵巣摘出術単独の場合、追跡調査ホルモンレベル評価によって女性の生殖状態を確認した場合のみ。
iii.男性不妊手術(スクリーニングの少なくとも6か月前)。本試験の女性参加者については、パイプカットした男性パートナーがその参加者の唯一のパートナーでなければならない。
iv.以下の方法(a+bまたはa+cまたはb+c)のうちのいずれか二つの組み合わせ:
a)経口、注射もしくは移植によるホルモン避妊法または同等の有効性(失敗率<1%)を有する他の形態のホルモン避妊法、例えば、ホルモン膣リングまたは経皮ホルモン避妊法。
b)子宮内避妊具または子宮内避妊器具。
c)バリア避妊法、例えば、殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/膣座薬を用いたコンドームまたは閉塞性キャップ(ダイアフラムもしくは子宮頸管/卵管キャップ)。
【0154】
経口避妊薬を使用する場合、女性は、試験治療を受ける前の少なくとも3ヶ月間同じピルを安定的に服用していなければならない。
【0155】
適切な臨床プロファイル(例えば、年齢が適切であること、血管運動症状の既往)を有する12ヶ月間の天然(自然)無月経を有するか、または少なくとも六週間前に外科的両側卵巣摘出術(子宮摘出術を伴うか、もしくは伴わない)または卵管結紮術を受けている場合、女性は、閉経後であり、妊娠の可能性がないとみなされる。卵巣摘出単独手術の場合、追跡調査ホルモンレベル評価によって女性の生殖状態を確認した場合のみ、その女性は妊娠の可能性がないとみなす。
9.局所療法で治療した非黒色腫皮膚癌、注意深い観察で管理した前立腺癌、または局所切除のみで治療した乳癌もしくは子宮頸癌を除き、局所再発または転移の証拠があるかどうかにかかわらず、過去五年以内に治療または未治療のいずれかの器官系の悪性腫瘍の既往。
10.甲状腺髄様癌の個人歴もしくは家族歴、または2型多内分泌腫瘍症候群を有する患者の病歴。
11.悪液質または筋萎縮を引き起こすことが知られている癌以外の疾患、リポジストロフィーに関連するGI吸収不全疾患を引き起こすことが知られている疾患。
12.糖尿病の診断および任意の抗糖尿病薬の現在の使用。
たとえ、メトホルミンまたはSGLT2阻害剤などの抗糖尿病薬で管理している場合でも、メタボリックシンドロームは除外しない。
13.制御不能な甲状腺機能低下症。ホルモン補充療法で治療した甲状腺機能低下症患者は、スクリーニング来院前の少なくとも6週間、安定用量でなければならない。
14.有意な精神障害、臨床的に明らかな末梢血管疾患もしくは障害、または有効性評価のいずれかに影響を与え得る全身障害(例えば、糖尿病性神経障害、慢性疲労性症候群、統合失調症、双極性障害、重度のうつ病、間欠性跛行)。
15.ニューヨーク心臓協会のクラスIIIおよびIVに分類される既知の心不全または慢性的な低血圧(収縮期血圧<100mmHg)の既往。
16.スクリーニング時の収縮期血圧>180もしくは<90mmHg、または拡張期血圧>100もしくは<50mmHg、または悪性高血圧。
17.医学的または装置療法にもかかわらず、安静時の制御不能な心室応答(平均心拍数>100拍/分[bpm])、または医学的もしくは装置療法にもかかわらず、自発的もしくは誘発性の持続性心室頻拍(心拍数>100bpm、30秒間)の任意の履歴、または再蘇生した心停止の任意の履歴もしくは自動内部心筋拍動器-除細動器の存在を含む、臨床的に有意な異常を示すECG。
18.スクリーニング来院の180日以内に不安定狭心症、心筋梗塞、冠動脈バイパス術、または経皮的冠動脈介入(血管形成術もしくはステント留置など)の既往歴。
19.スクリーニング時または反復評価時のベースラインで、男性についてはQT延長症候群またはQTcF>450ミリ秒(Fridericia補正)および女性についてはQTcF>470ミリ秒。
20.有意な血液凝固障害、75,000/mm未満の血小板数、11.0g/dL未満のヘモグロビン。
21.SGOT(AST)、SGPT(ALT)、アルカリホスファターゼ、または血清ビリルビン(ジルベール病を除く)などの異常な肝機能検査によって示される肝疾患または肝損傷。治験責任医師は、以下の基準に従わなければならない:
単一のトランスアミナーゼは、正常上限(ULN)の3倍を超えてはいけない。3×ULNまで上昇した単一パラメータは、可能な限り速やかに再チェックし、すべての場合において、少なくとも無作為化の前に再チェックして、検査室でのエラーを除外すべきである。
合計ビリルビン濃度が1.5×ULNを超えて増加する場合、合計ビリルビンは、直接的および間接的に反応するビリルビンに区別するべきである。いずれの場合でも、血清ビリルビンは、1.6mg/dL(27μmol/L)の値を超えてはならない。
22.重度の急性または慢性肝疾患(補償もしくは非補償)、既知の胆嚢または胆管疾患、急性または慢性膵炎、急性腎不全または慢性腎不全のステージ3または悪化の既往または存在。
23.B型肝炎またはHIVの既往。A型肝炎またはC型肝炎の治療が成功した既往は除外しない。
24.抗アンドロゲン(黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストなど)、抗エストロゲン(タモキシフェンなど)などを含む、筋肉量に悪影響を与えることが知られている任意の処方薬の使用。閉経後の女性における低用量エストロゲン補充療法は許容可能であり、男性における5-アルファ還元酵素阻害剤は許容可能である。
25.末梢静脈アクセスの欠如。
26.初回投与前の八週間以内に400mL以上の血液の寄付もしくは喪失、または現地の規制により必要な場合にはそれ以上、または初回投与前の14日以内の血漿提供(>250mL)。
27.スクリーニング来院前の30日以内の、治験責任医師の意見において下肢機能または試験に参加する患者の能力に影響を及ぼす急性疾患。
28.一日一パックより多いたばこの喫煙。
29.週二回より多い大麻の使用。
30.過去30日間での5日以上の各々で、同じ時間に5回以上のアルコール飲料の飲酒。
【0156】
実施例2:過体重または肥満の成人におけるビマグルマブとセマグルチドの安全性および有効性の比較
過体重または肥満の45歳以上の成人において、ビマグルマブの安全性および有効性を非盲検セマグルチドと比較するための、実施例1に記載の試験を、本明細書に記載する通り変更することができる。実施例2とは異なり、この投与パラダイムは、負荷用量の投与を含む。
【0157】
副次的目的
実施例1に記載した副次的目的をここで組み込み、追加の副次的目的は、以下を含む。
XII.0週目から24週目のベースラインからの生体インピーダンスの変化(オーム変化率)を使用して単独で投与した各療法と比較して、ビマグルマブとセマグルチドの組み合わせの効果を評価すること。
XIII.24週目から36週目までのすべての主要および副次的目的の変化を決定すること。
【0158】
有効性評価項目
実施例1に記載した有効性評価項目をここで組み込み、追加の有効性評価項目は、脂質レベル(総コレステロール(TC)、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、およびトリグリセリド(TG))、尿ミクロアルブミンレベル、クオリティ・オブ・ライフに対する体重の影響(CTについてのIWQoL-Lite)評価、ならびに簡易フォーム(36)健康調査(SF-36)評価。
【0159】
試験設計
本試験は、治療段階の間の4週間毎の来院および電話を含む。
【0160】
治験薬、投与量および投与様式
ビマグルマブを、0週目(負荷用量)、4週目、および16週目に静脈内(IV)注入によりそれぞれ10mg/kg(低用量)または30mg/kg(高用量)の用量で投与する。この投与レジメンは、12週間毎であり、4週目の投与レジメンの開始前の0週目の負荷用量を含む。
【0161】
毎週のセマグルチドの皮下注射
実施例1に記載した通り、セマグルチドの用量を、高用量群に対するラベル説明書に従って、毎週0.25mgから毎週2.4mgに、または低用量群に対して毎週0.25mgから0.5mgに徐々に増加させる。
【0162】
低用量群についてのセマグルチドの用量漸増は、以下の通り、0週目から4週目まで0.25mg、その後0.5mgであってもよい。
【0163】
高用量群についてのセマグルチドの用量漸増は、以下の通り、0週目~4週目まで毎週0.25mgの用量で、5週目~8週目まで毎週0.5mgの用量で、8週目~12週目まで毎週1.0mgの用量で、12週目~15週目まで毎週1.7mgの用量で、16週目~20週目まで毎週2.4mgの用量で、20週目~24週目まで毎週2.4mgの用量である。0.5mg以上の毎週の用量に耐えることができない患者は、先行するより低い用量まで低下し得る。
【0164】
除外基準
実施例1に記載した除外基準をここで組み込み、研究参加者の追加の除外基準は、家族性高トリグリセリド血症の既往または500mg/dl(5.65mmol/L)超の空腹時トリグリセリドの既往を含む。
【0165】
実施例3:肥満マウスにおける脂肪量および除脂肪量に対するActRII受容体抗体およびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)の併用療法の効果:開始試験
過体重および肥満患者では、ActRII受容体抗体ビマグルマブおよびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)セマグルチドはそれぞれ、およそ1年間にわたって20%超の体脂肪減少を誘発することが示された。しかし、ビマグルチドは、筋肉量の4~8%の増加を引き起こし、セマグルチドは、除脂肪量の喪失を引き起こした。マウス実験を、脂肪減少に関するビマグルマブおよびセマグルチドの組み合わせの有効性を決定し、ビマグルマブが、セマグルチド療法に伴う除脂肪量喪失をどの程度、減弱し得るかを決定するように設計した。本開示は、ActRII受容体抗体であるビマグルマブおよびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)であるセマグルチドの併用治療が、肥満マウスにおいて、除脂肪量も増加させながら、ActRII受容体抗体単独よりも高い程度まで脂肪量を低減したという驚くべき結果を記載する。
【0166】
方法
5~6週齢のC57Bl/6Jマウスに、60%脂肪食を14週間与え、肥満マウスモデルとして、投与開始時に49グラムの平均体重に達した。改変3×3因子設計を利用し、マウス群(群当たりn=8)に、0.3mg/kgもしくは20mg/kgのビマグルマブ、CDD866、腹腔内(i.p.)、および/または5μg/kgもしくは40μg/kgのセマグルチドを毎日皮下(s.c.)投与した。高脂肪食を治療期間を通して継続し、食物摂取量および体重を週に二回モニタリングした。臨床所見、MRIによる体組成、および身体活動を、週一回評価した。
【0167】
結果
セマグルチド単独またはCDD866と共に治療したマウスは、2週間までにベースライン以上に回復した食物摂取量の初期減少を有し、その時点で、いずれの動物においても懸念の臨床的観察はなかった。実際に、高用量の両薬物を投与された動物は、ビヒクル単独群よりも活動的である傾向があった。20mg/kgのCDD866単独の用量を投与されたマウスでは、除脂肪量は13%増加した。40μg/kgのセマグルチド用量と組み合わせた同じ20mg/kgのCDD866の用量について、除脂肪量は、セマグルチド40μg/kg単独での除脂肪量減少4%と比較して、5%増加した。2週間の治療後の脂肪量は、20mg/kgの用量のCDD866では8%、40μg/kg用量のセマグルチド単独については16%減少した。特に、40μg/kgのセマグルチドと組み合わせて20mg/kgのCDD866を投与されたマウスにおいて、脂肪量は31%減少した。一緒に投与した場合、ビマグルマブおよびセマグルチドは、肥満マウスにおける脂肪減少に関して少なくとも相加的な有効性を有し、同時に除脂肪量の増加をもたらす。
【0168】
実施例4:ActRII受容体抗体CDD866およびグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)セマグルチドの組み合わせの薬物動態効果
セマグルチド薬物動態(PK)に対するCDD866の効果、ならびにCDD866 PKに対するセマグルチドの効果を決定するための試験を設計した。特に、CDD866およびセマグルチドの各々は、AUCによって評価される、他方の全体的な曝露に最小限の効果を示した。
方法
食餌誘発性肥満(DIO)マウスの専用コホートを使用した。血液試料採取を5つの時点で行い、一つの時点で3匹のマウスを用いた。表1は、40μg/kgの用量で投与したセマグルチドPKに対する、20mg/kgの用量で投与したCDD866の効果を示す。
【表2】
【0169】
表2は、以下で、20mg/kgの用量で投与したCDD866 PKに対する、40μg/kgの用量で投与したセマグルチドの効果を示す。
【表3】

【0170】
実施例5:マウスにおける脂肪量および除脂肪量に対するActRII受容体抗体、CDD866、およびGLP-1アゴニストであるセマグルチドの併用治療の効果:継続試験
本開示は、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの組み合わせが、脂肪量を相乗的に低減し、一方で除脂肪量も維持または増加させるという驚くべき結果を提供する。
【0171】
実施例3に上記したように、マウス実験を、脂肪減少に関してActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの組み合わせの有効性を決定し、ActRII受容体抗体が、GLP-1アゴニスト治療に伴う除脂肪量喪失をどの程度減弱させ得るかを決定するために設計した。以下の表3に示すように、ActRII受容体抗体CDD866およびGLP-1アゴニストであるセマグルチドの組み合わせは、対照と比較して、DIOマウスにおいて相乗的に脂肪量を低減し、除脂肪量を増加させた。
【表4】
【0172】
図2の試験概要に記載するように、ActRII受容体抗体およびGLP-1アゴニストの組み合わせの有効性測定は、3週間の治療中のDIOマウスにおける食物消費量、体重、臨床バイオマーカー、MRI、および身体活性レベルを含んでいた。
【0173】
ActRII受容体抗体の薬力学(PD)を、セマグルチドの存在下で評価した。図3に示す通り、血中の循環アクチビンAレベルのCDD866調節に対するGLP-1アゴニストであるセマグルチドの効果はほとんどなかった。これらの結果は、GLP-1アゴニストが、ActRII受容体抗体機能に干渉しないことを示す。
【0174】
特に、DIOマウスに投与したセマグルチドと組み合わせたCDD866は、鼠径部脂肪量およびレプチンレベルに対する少なくとも相加的な効果、ならびに脂肪量喪失に対する相乗的な効果を示した(図4A~4C、表3)。さらに、セマグルチドと組み合わせたCDD866は、セマグルチド単独の除脂肪量筋喪失を逆転させた(図5)。これらの結果は、CDD866およびGLP-1アゴニストであるセマグルチドの組み合わせが、脂肪量喪失の相乗的な低減の両方を提供し、GLP-1アゴニスト単独によって示される除脂肪量の低減に対抗する役割も果たすことを示す。
【0175】
鼠径部脂肪組織RNA転写のRNAseqも行った。RNAseq転写結果を図6に示し、脂質動員シグナル伝達を介した脂肪細胞内の脂肪量の低減と一致する。RNAseq実験のためのRNAライブラリは、試料当たり約4400万~7300万リードを含有し、CDD866およびセマグルチドの組み合わせに応答して転写レベルにおける最大の変化を有する20個の遺伝子を、図6に示す。これらの結果は、CDD866およびセマグルチドの組み合わせが、脂質動員を活性化し、脂肪組織における新しい脂質貯蔵を減少させることを示す。
【0176】
実施例6:マウスにおける脂肪量および除脂肪量に対するActRII受容体抗体、CDD866、および追加のGLP-1アゴニストの併用治療の効果
他のGLP-1アゴニストが、ActRII受容体アンタゴニストと相乗的に脂肪量を低減するように同様に機能することができるかどうかを決定するために、GLP-1セマグルチド、リラグルチド、およびチルゼパチドを、CDD866と組み合わせて試験した。ActRII受容体アンタゴニストCDD866およびGLP-1アゴニストであるチルゼパチドの組み合わせは、対照と比較して、除脂肪量をさらに増加させながら、セマグルチドのそれと比較して脂肪量喪失のさらなるより大きな相乗的な低減をもたらした。
【0177】
方法
DIOマウスに、セマグルチド(40μg/kg、一日一回)、リラグルチド(40μg/kg、一日二回)、または皮下のチルゼパチド(一日一回、45μg/kg、および11日以降、一日一回、22.5μg)と組み合わせた、毎週の、20mg/kgの腹腔内(i.p.)のビマグルマブマウス化バージョンであるCDD866を投与した。本試験においてGLP-1アゴニストを、用量漸増しなかった。チルゼパチド用量は、11日目に22.5μg/kgに下げ、食物摂取量の観察した低下を中等度にした。
【0178】
結果
ActRII受容体抗体CDD866の3つの異なるGLP-1アゴニストであるセマグルチド、リラグルチド、およびチルゼパチドの各々の組み合わせは、全て、CDD866またはGLP-1アゴニスト単独のいずれかよりも大きな体重の減少をもたらした(図7)。各GLP-1アゴニストとの組み合わせは、MRI(図8)、または腎鏡検査で測定した腎周囲の脂肪の計量によって測定した体脂肪(図9)の少なくとも相加的な減少をもたらした。以下の表4は、ActRII受容体アンタゴニストCDD866およびGLP-1アゴニストであるチルゼパチドの組み合わせが、対照と比較して、除脂肪量をさらに増加させながら、脂肪量喪失の有意に相乗的な低減をもたらしたことを示す。
【表5】

【0179】
図13および14は、脂肪量喪失ならびに除脂肪量維持および/または増加に対するCDD866およびチルゼパチドの組み合わせの有意な効果を示す。
【0180】
CDD866およびGLP-1アゴニストの各々の組み合わせはまた、食物摂取量を有意に低減し、これは、脂肪減少と関連する(図10)。除脂肪量の増加は、カロリー摂取量を限定したときに最小であると予想したが、GLP-1アゴニストの各々と組み合わせたCDD866は、GLP-1アゴニスト単独と比較して除脂肪量損失の低減を示した(図11)。実際に、GLP-1アゴニストの各々と組み合わせたCDD866で治療したマウスはまた、より長いオープンフィールド距離およびより速い移動速度を示した(図12Aおよび12B)。全体として、脂肪量喪失および除脂肪量喪失の減少は、マウスにおいてより多くの活動と相関した。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
【配列表】
2024532619000001.xml
【国際調査報告】