(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-06
(54)【発明の名称】水素を生産するためのプロセス及びシステム
(51)【国際特許分類】
F01K 23/10 20060101AFI20240830BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240830BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240830BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240830BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20240830BHJP
F01K 25/10 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F01K23/10 A
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/08 304
C25B9/67
F01K25/10 C
F01K23/10 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024512976
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 AU2022050157
(87)【国際公開番号】W WO2023023691
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524067738
【氏名又は名称】ヴォルト パワー グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バナー,ティム
【テーマコード(参考)】
3G081
4K021
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BA12
3G081BB04
3G081BC07
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC02
4K021CA12
4K021DC03
(57)【要約】
水素(50)を生産するためのプロセス(100)は、原動機(22)を動作させるステップであって、原動機(22)を動作させることにより、排気ガス(27)を生産するステップと、廃熱-電力システム(70)によって、排気ガス(27)から熱を回収して、電気(80)を生産するステップと;水の電気分解を行うために電気(80)を使用して、水素(50)及び酸素(68)を生産するステップと、を含む。廃熱-電力システムは、蒸気複合サイクル動作の欠点を回避するために、有利にはORC電力生成システム(70)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を生産するためのプロセスであって、前記プロセスが、
原動機によって駆動される圧縮機を作動させ、前記原動機の作動により排気ガスを生産するステップと;
廃熱-電力システムによって、前記排気ガスから熱を回収して、電気を生産するステップと;
前記電気を使用して水の電気分解を行い、水素及び酸素を生産するステップと;を含み、
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システム、超臨界CO
2電力生成システム、及びカリーナ電力生成システムからなる群から選択される、前記プロセス。
【請求項2】
水素を生産するためのシステムであって、前記システムが、
原動機によって駆動される圧縮機であって、前記原動機の作動により、排気ガスが提供される前記圧縮機と;
前記排気ガスから熱を回収して、電気を生産するための廃熱-電力システムと;
前記廃熱-電力システムから電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と、を備え、
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システム、超臨界CO
2電力生成システム、及びカリーナ電力生成システムからなる群から選択される、前記システム。
【請求項3】
水素を生産するためのシステムであって、前記システムが、
原動機によって駆動される発電機であって、前記原動機の作動により排気ガスが提供される、前記発電機と;
前記排気ガスから熱を回収して、電気を生産するための廃熱-電力システムと;
前記廃熱-電力システムから電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と、を備え、
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)発電システム、超臨界CO
2発電システム、及びカリーナ発電システムからなる群から選択される、前記システム。
【請求項4】
前記廃熱-電力システムが、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システムである、請求項1に記載のプロセス、または請求項2もしくは3に記載のシステム。
【請求項5】
前記原動機が開放サイクルガスタービンである、請求項1もしくは4に記載のプロセス、または請求項2~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記廃熱-電力システムにより、原動機排気ガスと電力生成システムの作動流体との間の直接的な熱伝達が可能になる、請求項1、4もしくは5のいずれか1項に記載のプロセス、または請求項2~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記廃熱-電力システムの一部を形成する廃熱回収ユニット(WHRU)により、排気ガスと第1の熱流体、好ましくはサーマルオイルとの間の熱交換が可能になる、請求項1、4もしくは5のいずれか1項に記載のプロセス、または請求項2~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記廃熱-電力システムが、前記第1の熱流体と第2の熱流体との間で熱を交換するための熱交換システムを備える、請求項7に記載のプロセスまたはシステム。
【請求項9】
前記ORC電力生成システム用の前記第2の熱流体または作動流体が、シクロペンタン、n-ペンタン、イソ-ペンタン、n-ブタン、イソブタン、冷媒、他の有機分子及びシロキサン、好ましくはシクロペンタンからなる群から選択される、請求項4に従属する、請求項8に記載のプロセスまたはシステム。
【請求項10】
前記ORC電力生成システム用の前記作動流体が、空冷凝縮器で凝縮される、請求項9に記載のプロセスまたはシステム。
【請求項11】
前記WHRUが、前記原動機からの排気ガスを輸送するための排気スタック内に設置される、請求項7~10のいずれか1項に記載のプロセスまたはシステム。
【請求項12】
前記WHRUが、前記原動機からの排気ガスを輸送するための排気スタックと並列に設置される、請求項6~11のいずれか1項に記載のプロセスまたはシステム。
【請求項13】
前記WHRUへの前記排気ガス入口が、前記原動機から排気ガスを輸送するための垂直に延在する排気スタック内に位置する前記WHRUの底部に設けられる、請求項11または12に記載のプロセスまたはシステム。
【請求項14】
電気分解のための水が、任意により濾過及び逆浸透による前処理に供され、電気分解装置へ送達するために、総溶解固体を減少させ、脱塩水を提供する、請求項1または4~13のいずれか1項に記載のプロセス、または請求項2~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記脱塩水は、前記電気分解装置へ送達するために加熱され、水を加熱するための熱源は、前記WHRUへ送達する前に、前記原動機からの排気ガスまたは任意により、前記電力生成システムから戻る前記第1の熱流体からなる群から選択される、請求項14に記載のプロセスまたはシステム。
【請求項16】
パイプラインシステムであって、前記パイプラインシステムが、
流体を流体生産位置から流体使用位置に輸送するためのパイプラインと;
前記パイプラインを通して流体を輸送するための圧縮機ステーションであって、原動機によって駆動される圧縮機を備え、前記原動機の作動により排気ガスが提供される、前記圧縮機ステーションと;
前記排気ガスから熱を回収して、電気を生産するための廃熱-電力システムと;
前記廃熱-電力システムから電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と;
水素を前記パイプラインに送達させるための水素送達システムと、を備え、
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システム、超臨界CO
2電力生成システム、及びカリーナ電力生成システムからなる群から選択される、前記パイプラインシステム。
【請求項17】
前記水素送達システムにより、前記流体と混合される前記パイプラインへの水素の送達が可能になり、前記パイプラインへの前記水素の送達は、任意により注入による、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記原動機が、燃料として前記パイプラインからのガスを利用するガスタービンである、請求項16または17に記載のシステム。
【請求項19】
水素を生産するためのシステムであって、前記システムが、
原動機であって、前記原動機の作動により排気ガスが提供される、前記原動機と;
前記排気ガスから熱を回収して、電気を生産するための廃熱-電力システムと;
前記廃熱-電力システムから電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と;
高純度水素生成物を別々に貯蔵し、分配するための水素圧縮、貯蔵及び分配システムと、を備え、
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)発電システム、超臨界CO
2発電システム、及びカリーナ発電システムからなる群から選択される、前記システム。
【請求項20】
前記原動機が、圧縮機または発電機を駆動する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記圧縮機が、パイプラインを通して流体を輸送する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記電気分解装置が、前記廃熱-電力システムと共配置される、請求項2~21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記電気分解装置が、前記廃熱-電力システム以外の別の位置に配置される、請求項2~22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記電気分解装置には、前記廃熱-電力システムから電気が部分的に供給される、請求項2~23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記電気分解装置には、前記廃熱-電力システムからベースロード電気が供給され、断続的電気源が、再生可能供給源から供給される、請求項2~24のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を生産するためのプロセス及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術に関する以下の説明は、本発明の理解を容易にすることのみを目的としている。この説明は、参照されるいかなる材料も本明細書の優先日時点で、一般常識の部分であること、またはそうであったことの認知または承認ではない。
【0003】
ガスパイプライン圧縮機ステーションは、名前が示唆するように、典型的には、ガス生産位置から延在するガスパイプラインを通して、従来はガス処理後に二酸化炭素などの汚染物質を除去し、例えば工業目的または電気グリッドを供給するための電気を生産するための使用など、ガス使用位置までガスを輸送するための圧縮機(複数可)を含む。ガスパイプラインには、複数のガス圧縮機ステーションが、典型的に必要とされ、これは、例えば、西オーストラリアにおいてDampierからBunburyまで延在するDampier Bunburyパイプライン(DBP)など、かなりの距離を延在し得る。
【0004】
ガス圧縮機は、原動機によって駆動される。開放サイクルガスタービンは、一般に、電気ユーザから遠い遠隔位置に高頻度で配置されるガスパイプライン圧縮機ステーションの原動機として使用される。これは、西オーストラリアのパイプライン・ネットワークに特に当てはまり、ガス圧縮機ステーションの多くは、潜在的な電気ユーザから非常に遠く、従来の廃熱-電力プロジェクトは、実現不可能であり、これは、特に、電気グリッド・インフラストラクチャへの接続及び供給が、著しい追加コストとなる可能性が高いためである。
【0005】
同様に、開放サイクルガスタービン及びガスエンジンは、水へのアクセスがなく、かつ操作員が従来の廃熱-電力プロジェクトを実現させることができない遠隔位置において、電力生成のために一般的に使用される。
【0006】
天然ガスを供給し利用するパイプライン及び電力ステーションの操作員は、それらの操作を部分的に脱炭素化する手段として、水素ブレンドを検討した。脱炭素化に寄与する水素については、CO2を発生させることなく、生産する必要がある。このような生産方法は、二酸化炭素回収・貯留(CCS)を用いて、メタンから生産される「ブルー水素」と、エネルギー入力としてゼロエミッション電気を用いて電気分解によって生産される「グリーン水素」とを含む。
【0007】
ブルー水素生産方法は、現在、CCS技術の開発状態によって限定されており、いくつかの高プロファイルCCSプロジェクトは、著しい技術的課題を経験している。
【0008】
グリーン水素生産では、典型的には、風力タービン及びソーラーPV設備など、断続的な再生可能エネルギー源を利用する。今日の技術では可能であるが、グリーン水素は、部分的には、再生可能エネルギー投入コストと、断続的エネルギー源が、関連する水素電気分解装置(複数可)の部分的な利用しか達成できないことから、比較的高価である。
【0009】
電気分解装置の利用程度は、再生可能エネルギー投入の能力利用率によって制限され、陸上の風力発電地帯の能力利用率が、40%を超える一方で、ソーラーPV設備の能力利用率は、30%を超える(より典型的には、25%を超える)。さらに、風力タービン及びソーラーPVのコストは、過去の10年間において著しく低下したが、特に、それらの均等化発電原価(LCOE)が伝統的に適切な割引率で評価される場合には、それらの電力源は、依然として比較的高価である。これに加えて、バッテリー技術における開発にもかかわらず、再生可能エネルギーは、風源及びソーラー源が「常時」のエネルギー源ではないことから、依然として、断続性の問題にさらされている。
【0010】
水素を生産する方法に関わらず、その輸送において、周知の問題が存在する。液化水素(LH2)への圧縮及び冷却のプロセス、またはアンモニアもしくは有機溶媒としての水素の捕捉のプロセスは、すべて、エネルギーの非効率性及びコストを包含する。
【0011】
本発明の目的は、廃熱回収から生産されたエネルギーの使用を介して、水素を生産するためのプロセス及びシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0012】
この目的を考慮して、本発明は、第1の態様において、水素を生産するためのプロセスを提供し、本プロセスは、
原動機によって駆動される圧縮機を作動させ、原動機の作動により排気ガスを生産するステップと;
廃熱-電力システムによって、排気ガスから熱を回収して、電気を生産するステップと;
電気を使用して水の電気分解を行い、水素及び酸素を生産するステップと;を含む。
【0013】
第2の態様では、本発明は、水素を生産するためのシステムを提供し、本システムは、
原動機によって駆動される圧縮機であって、原動機の作動により、排気ガスが提供される圧縮機と;
排気ガスから熱を回収して、電気を生産するための廃熱-電力システムと;
廃熱-電力システムから電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と、を備える。
【0014】
第3の態様では、本発明は、水素を生産するためのシステムを提供し、本システムは、
原動機によって駆動される発電機であって、原動機の作動により、排気ガスが提供される、発電機と;
排気ガスから熱を回収して、電気を生産するための廃熱-電力システムと;
廃熱-電力システムから電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と、を備える。
【0015】
好ましくは、原動機は、OCGTとしても知られる開放サイクルガスタービンである。開放サイクルガスタービンによって生産される高温排気ガスは、有利には連続的に、回収され、かつゼロエミッション電気に変換され得る廃熱の貴重な供給源に相当する。しかし、レシプロエンジンなど、排気ガスを生産する他の原動機も、好ましくはないが、使用され得る。
【0016】
廃熱-電力システムでは、熱を機械エネルギーまたは作用に変換する好適な電力生成システムを通して排気ガス熱を電気に変換し、次いで、それらの機械エネルギーまたは作用は、典型的には発電機に連結されたタービンにおいて電気に変換される。好ましくは、廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システムを含む。これは、達成される熱効率のために日常的に選択されてきた、廃熱回収のための蒸気複合サイクルのデフォルト技術から逸脱することを表している。しかしながら、蒸気複合サイクルの動作特性は、この技術を遠隔電力生成に好適なものでなくする。これは、特に、中央及び北部オーストラリアの採鉱領域などの遠隔位置及び乾燥位置に対して当てはまり、蒸気複合サイクルシステムの水分損失及び水分平衡要件は、顕著な制約として作用する。別の制約は、蒸気複合サイクルに関連する高レベルの保守活動と、遠隔位置で進行中の保守を行うための要員に関する要件である。
【0017】
ORC電力生成システムの代わりに、これらに限定されないが、超臨界CO2サイクルシステム及びカリーナサイクルシステムなどの代替的電力生成システムを使用してもよい。蒸気複合サイクル電力生成システムは、熱効率及び低コスト作動流体の採用に関して、その著しい工業的な望みにもかかわらず、本明細書で提供される理由により回避される。これらのシステムは、蒸気複合サイクル電力生成システムに関連するゼロから最小の水分損失を有する閉ループシステムであると予想される。
【0018】
電力生成システムでは、原動機排気ガスと発電システムの作動流体との間の直接的な熱伝達が可能になり得る。代替として、好ましくは、廃熱-電力システムの一部を形成する廃熱回収ユニット(WHRU)では、好都合に、排気ガスと第1の熱流体、好ましくはサーマルオイルとの間の熱交換が可能になり、ここで、ORC作動流体との直接的な熱交換は、過剰な温度及びORC作動流体の可燃性により、実用的には可能ではない。シェルアンドチューブタイプ熱交換器が好ましく、そのような熱交換器のチューブは、熱伝達面積を増加させるためにフィンが付けられる。フィン付き設計では、熱伝達面積を増加させることによって、WHRUの体積を最小化させる。次いで、第1の熱流体と第2の熱流体との間で熱交換を行うために、さらなる熱交換器または熱交換器のセットを好都合に含む熱交換システムが提供される。
【0019】
好都合には、好ましいORC電力生成システムのための第2の熱流体または作動流体は、シクロペンタンであるが、代替物(限定するものではないが、n-ペンタン、イソ-ペンタン、n-ブタン、イソブタン、冷媒、他の有機分子及びシロキサンなど)がORC電力生成システムに利用可能であり、または実際には本開示の範囲内の電力生成システムの範囲である。シクロペンタン、及び他の潜在的な候補作動流体の範囲の場合、これらは可燃性であり、典型的には高温排気ガスからの廃熱を捕捉するためにWHRUにおいて直接使用できないことは理解されるであろう。さらに、ORC電力生成システムの代替物が使用される場合、代替作動流体(超臨界CO2など)が選択され得ることが理解されるであろう。
【0020】
第1の熱流体は、好都合には、サーマルオイルである。サーマルオイルの使用は、腐食、水分損失、圧力管理及び蒸気複合サイクル動作にとって一般的な、平衡を伴う問題を回避する。
【0021】
特に上述の理由から好ましいとおり、ORC電力生成システムが廃熱-電力に対して採用される場合、単一のタービンを含み得るが、発電量(power generation duty)は、複数のタービン、望ましくは2つのタービンに分割され得る。ORCタービンは、(少なくとも電気分解のための電気を提供するために)発電機を駆動することが好ましい。複数のORCタービンが使用される場合、個々の発電機が各タービンに対して提供されてもよく、または2つのタービンが共通の発電機を駆動してもよい。複数のORCタービンが使用される場合、タービンは、望ましくは、共通の予熱器の蒸発器、過熱器(必要に応じて)、凝縮器及び循環ポンプに加えて、すべての関連する配管弁及び器具からなる共通のプロセスシステムを共有する。ORCシステムは、望ましくは、回収熱交換器を含み、複数のORCタービンが使用される場合、各ORCタービンは、好ましくは、共通の凝縮器の上流に位置する、それ自体の専用の回収熱交換器内に排出する。
【0022】
ORC電力生成システムの第2の熱流体は、他の冷却剤または冷媒が使用され得るが、空冷または水冷凝縮器のいずれかによって、膨張後に凝縮され得る(使用不能な熱を除去するために)。空冷は、供給が少ない可能性のある水を必要としないため、好ましくあり得る。しかし、冷却水が、貫流冷却剤(once-through coolant)として、または蒸発冷却塔もしくはハイブリッド空気/水冷却器のための補給水(top-up water)として使用するために利用可能である場合、水冷が好ましい場合がある。
【0023】
WHRUは、例えば、原動機から大気に排気ガスを輸送するための既存の排気スタックと一体形成されることによって、内部に設置されてもよい。あるいは、WHRUは、既存の排気スタックと並列に設置されてもよい。WHRUを排気スタックに並列に設置することにより、WHRUが排気ガスから熱を受け取ることができない場合に、既存の排気スタックを大気への直接排気ガス経路として維持することができる。WHRUが既存の排気スタックと一体形成される場合、WHRUは、WHRUが排気ガスからの熱を受け入れることができない場合に、望ましくは、排気スタック内の排気ガスの方向を変えることなく、排気ガスを大気に排出するための直接の経路が可能になる内部バイパスを含むことが望ましい。いずれの場合も、WHRUへの排気ガス入口は、好ましくは、WHRUの底部に設けられる。WHRUは、好都合には、垂直に延在するスタック内に配置される。
【0024】
廃熱-電力システム、好ましくはORC電力生成システムから生産される電気は、電気分解を可能にするために電気分解装置に供給されるが、任意の過剰な電力は、他の目的のために使用することができる。電気分解装置は、廃熱-電力システムと共配置され得る。あるいは、電気分解装置は、別の場所、有利には、水素燃料補給場所などの水素使用場所に配置されてもよく、電気は、電気伝達システムを介して供給される。電気分解装置には、廃熱-電力システムから電気が完全にまたは部分的に供給され得る。水の電気分解は、これらに限定されないが、プロトン交換膜(PEM)、アルカリ電気分解及び固体酸化物電気分解など、種々の代替技術を介して、水素及び酸素を生産する。電気分解装置は、電気分解ステップのみに専用であることが望ましい。
【0025】
水は、例えば、濾過及び逆浸透による前処理に供され、電気分解装置へ送達するために、総溶解固体を減少させ、脱塩水を提供する必要がある。電気分解は、より高い温度において、より効率的であり得るため、脱塩水は、電気分解装置へ送達するために加熱され得る。より高い温度において、最も効率的に作動する電気分解、例えば、固体酸化物またはアルカリ電気分解の場合、水を加熱するための熱は、WHRUへ送達する前に、例えば、直接排気ガスから、または例えば、電力生成システムから戻るような第1の熱流体からなど、システム内の好都合な熱源から供給されてもよい。
【0026】
第4の態様では、本発明は、パイプラインシステムを提供し、本パイプラインシステムは、
天然ガスなどの流体を流体生産位置から流体使用位置に輸送するためのパイプラインと;
パイプラインを通して流体を輸送するための圧縮機ステーションであって、原動機によって駆動される圧縮機を備え、原動機の作動により排気ガスが提供される、圧縮機ステーションと;
排気ガスから熱を回収して、電気を生産するための廃熱-電力システムと;
廃熱-電力システムから電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と;
水素をパイプラインに送達させるための水素送達システムと、を備える。
【0027】
有利には、水素送達システムでは、パイプラインへ水素を送達することで、流体との混合が可能になる。パイプラインへの水素の送達は、注入によるものであり得る。水素と流体との混合が企図される場合、流体は、流体が水素と混合される場合に物理的または化学的な危険を引き起こさないという点で、水素と適合性である必要がある。好都合には、流体は、天然ガスであるが、他の流体を除外するものでない。水素の量は、パイプラインを通って輸送される流体の容積と比較して相対的に小さい。
【0028】
ガスタービンまたはガス燃料エンジンが好ましい原動機は、燃料としてパイプラインからのガスを利用し得る。
【0029】
第5の態様では、本発明は、水素を生産するためのシステムを提供し、本システムは、
好ましくは圧縮機または発電機のいずれかを駆動する原動機であって、原動機の作動により、排気ガスが提供される、原動機と;
排気ガスから熱を回収して、電気を生産するための廃熱-電力システムと;
廃熱-電力システムから電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と;
高純度水素生成物を別々に貯蔵し、分配するための水素圧縮、貯蔵及び分配システムと、を備える。
【0030】
水素圧縮、貯蔵及び分配システムでは、生産された水素を、高純度水素用途、例えば、大型車両、航空機、産業設備または採鉱設備などの設備のためのゼロエミッション燃料などにおいて使用するための別個の生成物として貯蔵及び分配することが可能になる。これにより、ディーゼル及び他の燃料コストを実質的に削減するための大いなる可能性をもたらす脱炭素化燃料のソリューションを可能とする。
【0031】
水素を生産するための提唱されたシステムは、原動機、特にガスタービン、及び他のサブシステムが同時に設置される「グリーンフィールド」設置、またはシステムが既存の圧縮機ステーションもしくは既存の電力生成設備での既存の原動機に後付けされる「ブラウンフィールド」のいずれかとすることができる。
【0032】
他の利点の中でも、本発明による水素を生産するためのプロセス及びシステムは、有利には、連続ベースで費用効果の高いゼロエミッション水素を生成することによって、水の可用性が制限されているところを含む、遠隔設備によって生産される廃熱を生産的に利用する方法を、パイプライン及び電力ステーション操作員に提供する。以下の少なくとも3つの顕著な利点が存在する。すなわち1)低コストのベースロードゼロエミッション電気であり、水素生産コストが削減される;2)電気分解装置の利用を最大化させ、さらに水素コストが削減される;また、3)水素生成設備に好都合に隣接するパイプラインまたは貯蔵及び分配システムへ水素を送達し、これにより、とりわけ、長距離輸送のための追加の高圧圧縮、液化または化学的変換の必要性が回避され、それによって、関連コスト、エネルギー及び安全性の問題がなくなる。
【0033】
本発明の水素を生産するためのプロセス及びシステムのさらなる特徴は、そのいくつかの非限定的な実施形態に関する以下の説明においてより十分に説明される。この説明は、本発明を例示する目的のみに含まれている。これは、上述のような本発明の広範な概要、開示または説明を制限するものとして理解されるべきではない。説明は添付図面を参照して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施形態による、水素を生産するためのプロセス及びシステムのプロセスフロー図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態による、水素を生産するためのプロセス及びシステムのプロセスフロー図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態による、水素を生産するためのプロセス及びシステムのプロセスフロー図である。
【
図3a】本発明の第3の実施形態による、水素を生産するためのプロセス及びシステムのプロセスフロー図である。
【
図4】
図1、2及び3のプロセス及びシステムに含まれる廃熱-電力システムのプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を参照すると、パイプライン10を通してパイプライン部10Aからパイプライン部10Bに天然ガスを輸送するための圧縮機20を備える圧縮機ステーション120において、水素を生産するためのシステム及びプロセス100が概略的に示されており、パイプライン10は、天然ガス生産位置から、ガス精製プロセスにおける二酸化炭素などの汚染物質を除去するための天然ガスプロセス処理後に、天然ガス使用位置(例えば、天然ガスの工業用ユーザ(例えば、アンモニアを生産する)に供給する)に、またはグリッドに電気を供給する発電機に天然ガスを輸送する。圧縮機ステーション120は、外部の電気グリッドに接続することなく、乾燥した「オフ・グリッド」の遠隔位置に配置され、従って、オンサイト型電源を備える必要がある。複数の圧縮機ステーション120は、パイプライン10の長さに沿って配置され、これは、例えば1500kmを超えるかなりの距離に延在し得ることが理解されるであろう。プロセス100が適用され得るパイプライン10の例は、Dampier Bunburyパイプラインである。プロセス及びシステム100は、パイプライン10に沿って、圧縮機ステーション120のうちの1つ以上において、実施することができる。
【0036】
圧縮機20は、圧縮機ステーション120において、またはその近傍において、パイプライン10のパイプライン部10Aから抽出された天然ガス25の形態の燃料が供給される開放サイクルガスタービン22によって駆動される。好適なガスタービンの例としては、GE PGT25+(約30MW電力定格)及びSolar Mars 100(約10MW)ガスタービンを備え、Solar Mars 100は、ガス圧縮機ステーションにおいて、一般的に使用される。
【0037】
天然ガス25は、ガスタービン22の運転中に、空気26と共にタービン燃焼器内で燃焼され(電気分解装置60によって生産された酸素68は、酸化剤としてまたは空気25の酸素富化のために使用され得る)、約500℃の温度で排気ガス27を生産する。通常、排気ガス27は、貴重な高グレードの廃熱供給源の有用性を失いながら、垂直方向に延在する排気スタック35を通して、大気に単に排気させる。プロセス及びシステム100では、この価値を取り込むことで、重要な機会コストの回避が可能になる。
【0038】
圧縮機ステーション120が乾燥した遠隔位置に配置されているので、蒸気タービン複合サイクルは、廃熱-電力システムとして好適でなく、これは、蒸気複合サイクルシステムが、上述したそれらの工業的に認識された利点にもかかわらず、上述したように保守及び操作が集中的であることがその理由である。さらに、圧縮機ステーション120のガスタービン22は、蒸気タービン複合サイクルの一般的な用途であるユーティリティスケールガスタービンよりもはるかに小さい。
【0039】
排気ガス27は、フィン付きチューブを有するシェルアンドチューブタイプ熱交換器である熱交換器32を備える廃熱回収ユニット(WHRU)30に向けられる。排気ガス27は、シェル側(高温)を流れ、熱伝達媒体42は、チューブ側(低温)を流れる。
【0040】
WHRU30は、圧縮機ステーション120の垂直方向に延在する排気スタック35内に形成された一体設計のものである。図示されていないが、内部バイパスが設けられ、これにより、排気ガス27のための大気への直接の経路が可能になる。切換え弁構造30aは、排気ガス27を導くために、WHRU30の底部に設けられ、これにより、熱交換器32において熱交換するか、または大気に排気させ、ここでは、熱伝達媒体42は、熱を受け入れることができない。
【0041】
図示の実施形態では、切換え弁構造30aは、排気ガス27の流れを、ORC電力生成システム70から戻る低温サーマルオイル42との向流熱交換のために熱交換器32を通過するように導き、これは、特に、その保守要件が低く、かつ操作員の介入なく、確実に作動し、運転中のガスタービン22からの廃熱の形態で、ほぼ連続的な熱源と連結した場合に、ベースロード電力を提供する能力を有することにより、この実施形態では望ましく、好ましい。いくつかの実施形態では、ORC電力生成システム70は、他のタイプの電力生成システムと置き換えることができることを理解されたい。例えば、超臨界CO2サイクルシステムまたはカリーナサイクルシステムは、蒸気複合サイクルシステム、及びとりわけ、水分平衡の問題を回避する。
【0042】
好都合には、熱伝達媒体は、サーマルオイル42である。サーマルオイルは、流れ40の必要な操作温度において、高い安定性及び低い蒸気圧を有する。サーマルオイルは、水/蒸気システムと比較して、熱回収システムの保守要件が低いこと及び設計圧力が低いことにより、好ましい。
【0043】
サーマルオイル42の流れは、典型的には遠心式ユニットであるポンプ95によって駆動される。サーマルオイル流量は、排気ガス27と熱オイル42との間の所望のレベルの熱伝達を達成するように制御され得る。この目的のために、フィードバック制御ループが、高温サーマルオイル40の温度と流量との間に提供され得る。膨張容器90は、ポンプの上流に位置し、熱膨張に適応する容積を提供する。
【0044】
図示の実施形態では、低温サーマルオイル42は、ORC電力生成システム70の作動流体ではない。したがって、プロセス100では、排気ガス27からの直接廃熱回収を伴わず、むしろ、サーマルオイル42を使用する間接交換を使用し、ここでは、加熱されたサーマルオイル40としてORC電力生成システム70に戻ったときに、
図2に示されるように、ORC作動流体77とさらに熱を交換する。いくつかの実施形態では、第1または中間サーマルオイル40、42を使用せずに、排気ガス27からORC作動流体への直接廃熱回収を採用してもよい。
【0045】
排気ガス27とサーマルオイル42との間の熱交換後に、冷却排気ガス36は、WHRU30を出て、大気に流れる。
【0046】
排気ガス27によって加熱された高温サーマルオイル40は、ORC電力生成システム70に熱を運び、ここで、熱は、第2の熱流体77、本実施形態では好都合にはシクロペンタンである、ORC作動流体に伝達される。低温サーマルオイル42は、ORC電力生成システム70からWHRU熱交換器32まで、膨張容器90及びポンプ95を備える戻りラインを通って流れる。ORC電力生成システム70の設計及び動作は、以下でさらに説明する。この実施形態では、シクロペンタンが作動流体として使用されるが、作動流体は、排気ガス27の温度プロファイルに適合するように選択される。シクロペンタンは、この目的に有用であるが、炭化水素及び非炭化水素などの他の有機作動流体代替物が利用可能である。限定するものではないが、シクロペンタンに対する好適な代替的ORC作動流体は、n-ペンタン、イソ-ペンタン、n-ブタン、イソブタン、冷媒及びシロキサンからなる群から選択され得る。
【0047】
ここでは、
図4を参照して、ORC電力生成システム70について説明する。ORC電力生成システム70は、加熱された第1の熱流体40内の排気ガス27から回収された廃熱を、電気分解装置60に電力供給するための電気に変換する閉ループ熱力学プロセスを組み入れる。
【0048】
ORC作動流体77は、熱力学プロセス(すなわち、有機ランキンサイクル)及びORC電力生成システム70の様々な段階を通して、一連の相、温度及び容積の変化を受ける。ORC電力生成システム70は、直列に、予熱器76、蒸発器71、発電機79を駆動するためのタービン72、回収熱交換器73、及び凝縮器74を備える。タービン72は、必要に応じて、シクロペンタンライン78によって迂回されてもよい。
【0049】
この実施形態では、予熱器76は、シェル側を流れるサーマルオイル402と、チューブを通って流れるシクロペンタン77cとを有するシェルアンドチューブタイプ熱交換器である。予熱器76の機能は、回収熱交換器73から液相中の高圧シクロペンタン77cを受け取り、選択された操作圧力において、シクロペンタン温度をその沸点まで上昇させることである。
【0050】
この実施形態では、蒸発器71は、液体シクロペンタン77aに浸漬させた管束を有するケトル型ボイラーである。
【0051】
回収熱交換器73は、シェル側に低圧シクロペンタン蒸気77b、及びチューブを通って流れる高圧シクロペンタン蒸気77dを有するシェルアンドチューブタイプ熱交換器である。
【0052】
ここでは、凝縮器74は、空冷式であり、これは乾燥した位置での保水性に望ましいが、水冷式または別の冷媒によって冷却されてもよいことは理解されるであろう。空冷凝縮器(ACC)74の実施形態において、シクロペンタンは、フィン付きチューブの外側を通って流れる空気と共に、ACC74の複数の管束を通って流れる。ACC74は、互いに並列に配置された複数の同一のモジュールからなってもよい。管束上の空気流は、ファンによって駆動される。回収熱交換器73からのシクロペンタン蒸気は、ACCの全長にわたって延在する入口ヘッダ74a(図示せず)によって、ACCモジュール間に分配される。入口ヘッダ74aは、シクロペンタン蒸気を複数の管束に分配するマニホールドとして機能する。各管束は、ACCファンから空冷凝縮器74の遠い側に流れ、ここで、凝縮された液体シクロペンタンが出口ヘッダ74bに収集される。出口ヘッダ74b内の液体シクロペンタンの収集は、供給ポンプ75のための吸引ヘッドを提供する。
【0053】
ORC電力生成システム70は、以下のように作動する。
(1)液相77a中の高圧の飽和シクロペンタンは、蒸発器71に流れ、ここで、熱がサーマルオイル40からシクロペンタンに交換され、シクロペンタンを蒸発させて、ライン77中に高圧の高温蒸気が生産される。冷却されたサーマルオイル402は、予熱器76を介して、低温サーマルオイル42としてWHRU30の熱交換器32に戻る。いくつかの実施形態では、過熱器(図示せず)を蒸発器71の下流に含めて、ライン77のシクロペンタン蒸気の温度をさらに上昇させてもよい。
(2)高圧高温シクロペンタン蒸気77は、膨張タービン72に流れ、ここでは、膨張して低圧になり、タービン72内で回転運動を生成し、発電機79を駆動し、電気分解装置60で使用される電気的電力を生成する。シクロペンタン作動流体77bは、低圧の過熱蒸気77bとしてタービン72を出る。
(3)低圧の過熱シクロペンタン蒸気77bは、回収熱交換器73に流れ、ここで、ACC74内の蒸気の凝縮の前に過熱が除去される。回収熱交換器73は、高圧シクロペンタン液77cとして予熱器76に入る前に、低圧シクロペンタン77bから高圧シクロペンタン液77dに過熱を移行させる節約装置である。
(4)回収熱交換器73からの低圧低温蒸気78eは、凝縮器74に流れ、ここで蒸気がさらに冷却され、凝縮されて液相になり、空気が凝縮プロセスのためのヒートシンクを提供する。シクロペンタンは、低圧液体シクロペンタン77fとして空冷凝縮器74を出る。
(5)低圧低温液体シクロペンタン77fは、ポンプ75に流れ、ここで、その圧力は、ORCサイクル高圧まで上昇され、これにより、高圧低温液体シクロペンタン77dとして、回収熱交換器73に送達されるようになる。
(6)高圧低温シクロペンタン液体77dは、回収熱交換器73に流れ、ここで、熱は、タービン72の排気から流れる中温シクロペンタン蒸気77bから液体シクロペンタンに伝達される。回収熱交換器73内で加熱された高圧中温液体77cは、予熱器76に流れる。
(7)高圧中温液体77cが予熱器76に流入し、ここで、蒸発器71を出たサーマルオイル402との熱交換により、作動圧力において、温度を沸点まで上昇させる。次いで、高圧飽和液体シクロペンタンが蒸発器71に流れ、サイクルが完了する。
【0054】
熱プロセス段階(1)~(7)のサイクルは、WHRU30がORC電力生成システム70と連結されて、電力を生成する限り継続する。パイプライン10は、典型的には連続的に作動し、同様に、圧縮機20も、典型的には廃熱回収ユニット30に必要とされるように、パイプライン10を通して精製天然ガスを輸送するために連続的に作動させる必要があることが理解されるであろう。したがって、発電機79は、ベースロード電力を用いて、かつ太陽または風力の認識された断続的な問題なく、水素50の生産を可能にするために、電気分解装置60に連続的に電気80を供給することができるが、実施形態では、そのような電源は、電気分解装置60に電力を供給するために、ORC電力生成システム70によって生産された電力と組み合わせて使用することができる。
【0055】
ORC電力生成システム70は、電気分解装置が典型的にはDC電気で作動する場合に、交流(AC)電気を生成することが理解されるであろう。整流器(図示せず)を使用して、発電機79からのAC電気出力をDC電気80に変換する。
【0056】
電気分解装置60における水の電気分解は、それぞれの電極が電気分解以外の機能を果たさず、プロセス100において使用され得るいくつかの好適な技術によって達成され得る。そのような好適な電気分解技術としては、プロトン交換膜(PEM)、アルカリ電気分解及び固体酸化物電気分解が挙げられる。いくつかの実施形態では、最も経済的な電気分解装置の型、例えば、アルカリ電気分解が好ましい。電気分解装置60は、例えば、約3000kPa(g)の圧力で作動させ得る。
【0057】
水素50は、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システム70によって、排気ガス27から回収された廃熱から生成した電気80によって電力供給される電気分解装置60のカソード67における水62の電気分解によって生産される。上述の理由から、電気80が連続的に生成されるので、その結果、水素50の生産コストは、太陽及び風の電力などの断続的に利用可能な再生可能資源から生成される電気から生産される水素よりも低い。
【0058】
電気分解装置60で生産される水素50は、高い純度を有し、99.998%(モル基準で)の高い純度を有し、酸素及び窒素含有量は、それぞれ、例えば、2ppm及び12ppmである。
【0059】
水素50は、天然ガスと混合するために、パイプライン10のパイプライン部10Aに制御された割合で捕捉され、送達される。パイプライン10への水素50の送達は、望ましくは注入による。電気分解装置60の圧力が3000kPa(g)であり、圧縮機20の上流のパイプライン10の動作圧力(吸引圧力)が3000kPa(g)未満である場合、圧縮を必要とすることなく、水素をパイプライン10に直接注入することができる。しかしながら、吸引圧力が3000kPa(g)より高い場合、または水素50の圧力と圧縮機の吸引圧力との間に不十分な圧力差がある場合、水素50をパイプライン10に注入するのに必要な圧力を達成するために、水素ブースター圧縮機(図示せず)が電気分解装置60の下流に必要とされ得る。生産される水素50の量は、パイプライン10によって輸送される天然ガスの量と比較して、非常に少ないことが予想される。したがって、結果として生じる水素-天然ガスブレンドは、パイプライン10及び圧縮機ステーション120の設計上の公差内に十分に収まることが予想される。
【0060】
代替的にまたは追加的に、場合によっては、水素50は、ガスタービン22への燃料ガス流25と混合されて現場で消費され、これにより、圧縮機ステーション120において、天然ガス燃料消費を相殺することができる。
【0061】
酸素はまた、電気分解装置60のアノード66において生産され、アノード区画は、好適な膜65によってカソード67区画から分離され、この酸素は、3000kPa(g)、電気分解装置60の圧力において貯蔵され得、及び/または要求が存在する場合、圧縮機ステーション120の部位から排出され得る。酸素68は、ガスタービン22燃焼器用の酸化剤として使用することもでき、酸素流68Aとして貯蔵または排出(
図2~3a)に導かれるか、または環境への影響を伴わずに大気に直接排気される68(
図1)。
【0062】
水62は、電気分解のために脱塩されるべきであり、この実施形態では、電気分解装置60に送達する前に、(おそらく汽水または塩水源からの)総溶解固体を減少させるために、濾過及び逆浸透9(図示せず)によって前処理される。電気分解プロセスは、高温でより効率的であり得る。この場合、熱は、プロセス100において、他の場所、好ましくはORC電力生成システム70から戻る冷温サーマルオイル42を供給源とし得、この熱は、電気分解装置60に送達する前に脱塩水を予熱するために任意により使用される。水62を加熱するためのさらなる代替熱源は、排気ガス27である。
【0063】
次に
図2を参照すると、プロセス100について上述した原理に従って生産された水素50を圧縮機51によってさらに圧縮し得、水素燃料取り出し53を含む貯蔵容器52に貯蔵して、高純度用途、例えば大型車両、工業設備もしくは採鉱設備または航空機におけるゼロエミッション燃料に使用するための水素を供給することができるプロセス150が示されている。
【0064】
ここで
図3及び3aを参照すると、図示されているプロセス200及び250のそれぞれの開放ガスサイクルタービン722及び822の形態の原動機は、ストリーム310を圧縮して高圧ストリーム320にする圧縮機720(
図3)を駆動するか;または、発電機830(
図3a)を駆動する。これらの状況では、生産された水素(
図1及び
図2を参照して上述したのと同じ原理に従う水素生産プロセス)は、パイプラインのガス流と混合することができず、水素50は、圧縮機51によって圧縮され、水素燃料取り出し53を備えた貯蔵容器52に貯蔵されて、高純度用途、例えば、大型車両、工業設備もしくは採鉱設備または航空機におけるゼロエミッション燃料に使用するための水素を供給する。これは、これらの用途で現在使用されているディーゼル燃料及び他の燃料に対する実質的な節約となる。
【0065】
高温排気ガス27を生産する原動機ガスタービン22とORC電力生成システム70との組み合わせでは、断続的な太陽及び風の発電に代わる高価値のゼロエミッションをもたらす。25年のプロジェクト寿命にわたって8%の割引率を用いて計算した場合、電気生産コストは、匹敵するPVソーラーオプションよりも低いエネルギーの均等化発電原価(LCOE)を有することが予想される。これは、主に、太陽及び風の供給源の希薄な性質と比較して、廃熱供給源の比較的高いエネルギー密度によるものである。
【0066】
他の利点の中でも、本発明による水素を生産するためのプロセス及びシステムは、費用効果の高いゼロエミッション水素50を生成することによって、遠隔圧縮機ステーションまたは電力ステーション120によって生産される廃熱を生産的に利用する方法を、パイプライン、電力ステーション及び圧縮機の操作員に可能にする。以下の少なくとも3つの顕著な利点が存在する。すなわち1)低コストのベースロードゼロエミッション電気であり、水素製造コストが削減される;2)電気分解装置の利用を最大化させ、さらに水素製造コストが削減される;また、3)水素を比較的低い圧力で生成している水素生成設備に好都合に隣接するパイプラインまたは貯蔵設備へ水素を送達し、これにより、とりわけ、長距離輸送のための高圧圧縮、液化または化学的変換の必要性が回避され、それによって、関連コスト、エネルギー及び安全性の問題がなくなる。
【0067】
さらに、本発明の実施形態のシステムは、有利には、廃熱回収を利用し得、電気分解及び燃料として使用する水素の生産に使用する電気(原動機の動作条件に応じてベースロードになる可能性がある)を生産し、これにより、風力及び太陽エネルギーなどの再生可能資源から得られる電気を使用して生産される水素よりも低コストで、ディーゼルなどの代替燃料の消費が減少するが、もし利用可能であれば、そのような供給源から得られる電気は、電気分解用の断続的電源として利用され得る。断続的電力に対するベースロードの割合は、経済的効率など、所望の効率を達成するように選択され得る。一例として、廃熱-電力システムでは、電力要件の20%を提供することができ、電力の断続的供給源では、電力要件の80%を提供することができる。
【0068】
本発明の実施形態のシステムは、ガス圧縮機ステーションにおける廃熱回収に限定されず、実施形態は、一般に開放サイクルガスタービンなど、高温排気ガスからの廃熱回収に有利に関連し得る。電気供給はまた、典型的には、断続的及びグリッド安定性の問題を受ける風及び太陽エネルギーに基づく生産を介するよりも、潜在的にはベースロードにおいて、より不変である。
【0069】
本明細書に記載の水素を生産するためのプロセス及びシステムに対する変更及び変形は、本開示を読んだ当業者にとっては明らかであり得る。それらのような修正及び変形は、本発明の範囲内であるとみなされる。例えば、記載されている水素を生産するためのプロセス及びシステムは、ガス圧縮機ステーション以外の場所で使用されてもよい。
【0070】
本明細書全体を通して、文脈で別段の要求がない限り、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、指定された整数または整数のグループを含むことを意味するが、任意の他の整数または整数のグループを除外することを意味するものではないと理解されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を生産するためのシステムであって、前記システムが、
原動機によって駆動される発電機であって、前記原動機の作動により排気ガスが提供される、前記発電機と;
前記排気ガスから熱を回収して、ベースロード電気を生産するための廃熱-電力システムと;
前記廃熱-電力システムから前記ベースロード電気が供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と;を備え、
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システム、超臨界CO
2電力生成システム、及びカリーナ電力生成システムからなる群から選択される、前記システム。
【請求項2】
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システムである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記原動機が開放サイクルガスタービンである、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記廃熱-電力システムにより、原動機排気ガスと電力生成システムの作動流体との間の直接的な熱伝達が可能になる、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記廃熱-電力システムの一部を形成する廃熱回収ユニット(WHRU)により、排気ガスと第1の熱流体、好ましくはサーマルオイルとの間の熱交換が可能になる、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記廃熱-電力システムが、前記第1の熱流体と第2の熱流体との間で熱を交換するための熱交換システムを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ORC電力生成システム用の前記第2の熱流体または作動流体が、シクロペンタン、n-ペンタン、イソ-ペンタン、n-ブタン、イソブタン、冷媒、他の有機分子及びシロキサン、好ましくはシクロペンタンからなる群から選択される、請求項2~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ORC電力生成システム用の前記作動流体が、空冷凝縮器で凝縮される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記WHRUが、前記原動機からの排気ガスを輸送するための排気スタック内に設置される、請求項5~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記WHRUが、前記原動機からの排気ガスを輸送するための排気スタックと並列に設置される、請求項4~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記WHRUへの前記排気ガス入口が、前記原動機から排気ガスを輸送するための垂直に延在する排気スタック内に位置する前記WHRUの底部に設けられる、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
電気分解のための水が、任意により濾過及び逆浸透による前処理に供され、電気分解装置へ送達するために、総溶解固体を減少させ、脱塩水を提供する、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気分解装置が、アルカリ電気分解装置である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
パイプラインシステムであって、前記パイプラインシステムが、
流体を流体生産位置から流体使用位置に輸送するためのパイプラインと;
前記パイプラインを通して流体を輸送するための圧縮機ステーションであって、原動機によって駆動される圧縮機を備え、前記原動機の作動により前記圧縮機を駆動する電気及び排気ガスが提供される、前記圧縮機ステーションと;
前記排気ガスから熱を回収して、ベースロード電気を生産するための廃熱-電力システムと;
前記廃熱-電力システムに接続され、前記原動機の作動中に前記廃熱-電力システムから前記ベースロード電気が連続的に供給され、水を電気分解して高純度水素生成物及び酸素を生産する電気分解装置と;
水素を少なくとも前記パイプラインに選択された圧力で送達させるための水素圧縮及び送達システムと、を備え、
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)電力生成システム、超臨界CO
2電力生成システム、及びカリーナ電力生成システムからなる群から選択される、前記パイプラインシステム。
【請求項15】
前記水素送達システムにより、前記流体と混合される前記パイプラインへの水素の送達が可能になり、前記パイプラインへの前記水素の送達は、任意により注入による、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記原動機が、燃料として前記パイプラインからのガスを利用するガスタービンである、請求項14または17に記載のシステム。
【請求項17】
水素を生産するためのシステムであって、前記システムが、
原動機であって、前記原動機の作動により排気ガスが提供される、前記原動機と;
前記排気ガスから熱を回収して、ベースロード電気を生産するための廃熱-電力システムと;
前記原動機の作動中に前記廃熱-電力システムから前記ベースロード電気が連続的に供給され、水を電気分解して水素及び酸素を生産する電気分解装置と;
高純度水素生成物を別々に貯蔵し、分配するための水素圧縮、貯蔵及び分配システムと、を備え、
前記廃熱-電力システムは、有機ランキンサイクル(ORC)発電システム、超臨界CO
2発電システム、及びカリーナ発電システムからなる群から選択される、前記システム。
【請求項18】
前記原動機が、圧縮機または発電機を駆動する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記圧縮機が、パイプラインを通して流体を輸送する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記電気分解装置が、前記廃熱-電力システムと地理的に共配置される、請求項1~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記電気分解装置が、前記廃熱-電力システム以外の別の地理的位置に配置される、請求項1~13または20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記電気分解装置には、前記廃熱-電力システムから電気が部分的に供給される、請求項1~13、20または21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記電気分解装置には、前記廃熱-電力システムからベースロード電気が供給され、断続的電気源が、再生可能供給源から供給される、請求項1~13または20~22のいずれか1項に記載のシステム。
【国際調査報告】