(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-09
(54)【発明の名称】手術創を照明するための照明装置
(51)【国際特許分類】
A61B 90/30 20160101AFI20240902BHJP
【FI】
A61B90/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516820
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2022075824
(87)【国際公開番号】W WO2023041732
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021124083.2
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524099256
【氏名又は名称】ドクター マッハ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ザックマン ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ミューレンブロック アンドレ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】コーズ ペーター
(72)【発明者】
【氏名】フォックス エイドリアン ウルス
(57)【要約】
本発明は、創開口部(26)及び深さ延長方向(X)を有する手術創(24)を照明するための照明装置(10)に関し、照明装置(10)は、創開口部(26)の位置及び深さ延長方向(X)に関する情報を入力するための制御装置と、主放射方向(30)に光を放射し、それぞれが少なくとも1つの光源を有する複数の点灯装置(12)と、を備え、点灯装置(12)の少なくとも1つは、照明される領域(28)が創開口部(26)と少なくとも部分的に重なるように光を放射し、それぞれの点灯装置(12)の主放射方向(30)と、手術創(24)の深さ延長方向(X)と、はそれぞれ互いの間に、所定の角度値を超えない値の角度を成す。創開口部(26)と少なくとも部分的に重なる照明される領域(28)を有し、それぞれの主放射方向が手術創の深さ延長方向に対して所定の角度値を超えない、少なくともそれらの点灯装置(12)は、アレイを形成する。点灯装置(12)は、アレイにおいて実質的に不変の位置に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(20)の身体の表面に創開口部(26)を有し、前記患者(20)の体内へ深さ延長方向に延在する手術創(24)を照明するための照明装置(10)であって、
前記照明装置(10)は、空間座標系における前記創開口部(26)の位置及び前記深さ延長方向(X)についての情報を入力するための手段を有する制御装置を備え、
前記照明装置(10)は、それぞれが主放射方向(30)に光を放射するように構成され、それぞれが少なくとも1つの光源を有する、複数の点灯装置(12)を備え、
前記点灯装置(12)の少なくとも1つは、当該少なくとも1つの点灯装置(12)により照明される領域(28)が、前記創開口部(26)と少なくとも部分的に重なるように、光を放射するように構成され、
前記創開口部(26)と少なくとも部分的に重なる照明される領域(28)を有するそれぞれの前記点灯装置(12)の前記主放射方向(30)と、前記手術創(24)の前記深さ延長方向(X)と、はそれぞれ互いの間に、あらかじめ定められた角度値を超えない角度を成し、
前記創開口部(26)と少なくとも部分的に重なる照明される領域(28)を有し、対応する前記主放射方向(30)が、前記手術創(24)の前記深さ延長方向(X)に対してあらかじめ定められた角度値を超えない、少なくともそれらの前記点灯装置(12)は、アレイ(14)を形成し、
前記点灯装置(12)は、前記アレイにおいて、空間座標系に関して実質的に不変の位置に配置される、照明装置(10)。
【請求項2】
前記制御装置は、前記創開口部(26)と少なくとも部分的に重なる照明される領域(28)を有する前記照明装置(10)のそれらの前記点灯装置(12)のみを制御するように構成され、
前記点灯装置(12)は、それらの対応する前記主放射方向(30)と、前記手術創の前記深さ延長方向(X)と、の間の角度であって、前記あらかじめ定められた角度値を超えない角度を、互いの間に成す、
ことを特徴とする、請求項1に記載の照明装置(10)。
【請求項3】
前記照明装置(10)は、前記照明装置(10)が取り付けられる、又は前記照明装置(10)が一体化される空気調節天井の空気の流れを可能にするように構成される通気路を備える、
ことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の照明装置(10)。
【請求項4】
前記点灯装置(12)は、異なるスペクトルの光を放射する光源を有し、当該光源により放射される光を混合することによって調整可能なスペクトル域で光を放射するように構成される、
ことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の照明装置(10)。
【請求項5】
前記点灯装置(12)、及び/又は前記点灯装置(12)の個別の光源は、それらの光束で設定され得る、
ことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の照明装置(10)。
【請求項6】
前記点灯装置(12)は、光の焦点を合わせる、並びに/若しくは光を散乱させる、並びに/若しくは光を屈折させるように構成され、及び/又は光をスペクトル的に変化させるように構成される、リフレクタ、及び/又は光学レンズ、及び/又は光学変換メディアを有する、
ことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の照明装置(10)。
【請求項7】
前記照明装置(10)は、前記少なくとも1つの点灯装置(12)の前記主放射方向(30)と、前記手術創(24)の前記深さ延長方向(X)と、の間の角度を調整するように構成される調整装置を備える、
ことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の照明装置(10)。
【請求項8】
前記調整装置は、前記少なくとも1つの点灯装置(12)の前記主放射方向(30)に位置する範囲を検出するように構成されるカメラ(16)と、前記カメラ(16)により検出される範囲に基づいて、前記手術創(24)を決定するように構成される決定ユニットと、を有し、
前記調整装置は、前記少なくとも1つの点灯装置(12)の前記主放射方向と、前記手術創(24)の前記深さ延長方向(X)と、の間の角度を、特に自動的に、変更するように、特に減少させるように構成される、
ことを特徴とする、先行する請求項に記載の照明装置(10)。
【請求項9】
前記調整装置は、前記照明装置のユーザが実施するジェスチャを検出するように構成されるカメラ(16)と、前記ジェスチャをあらかじめ定められた操作コマンドに割り当てるように構成される決定ユニットと、を有し、又はそれらに接続され、
前記調整装置は、前記操作コマンドに基づいて、前記調整装置に関連する前記点灯装置(12)の対応する前記主放射方向(30)のアライメントを調整するように構成される、
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載の照明装置(10)。
【請求項10】
前記調整装置は、患者に対して実施される手術に関連する手術データを受信するように構成されるデータインタフェースを有し、又はそれに接続され、
前記調整装置は、前記手術データに基づいて、前記調整装置に関連する前記点灯装置(12)の対応する前記主放射方向(30)のアライメントを調整するように構成される、
ことを特徴とする、請求項7~9のいずれかに記載の照明装置(10)。
【請求項11】
手術創(24)を照明するための方法であって、
照明装置(10)、特に、それぞれが主放射方向(30)に光を放射するように構成される複数の点灯装置(12)を備える、請求項1~10のいずれかに記載の照明装置(10)を設けるステップであって、前記点灯装置(12)の少なくともいくつかは、前記点灯装置(12)が空間座標系に関して実質的に不変の位置に配置されるアレイを形成するステップと、
患者(20)の身体の表面に創開口部(26)を有する前記手術創(24)の空間座標系における位置についての情報を入力するステップと、
前記患者(20)の体内への前記手術創(24)の深さ延長方向(X)を決定するステップと、
前記照明装置(10)の少なくとも1つの前記点灯装置(12)を決定するステップであって、前記点灯装置(12)は、当該少なくとも1つの点灯装置(12)により照明される領域が、前記創開口部(26)と少なくとも部分的に重なるように、光を放射するように構成され、前記主放射方向(30)は、前記手術創(24)の前記深さ延長方向(X)に対して、あらかじめ定められた角度値を超えない角度を成すステップと、
このようにして決定された前記点灯装置(12)を、前記手術創(24)を照明するために動作させるステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの点灯装置(12)の前記主放射方向(30)と、前記手術創(24)の前記深さ延長方向(X)と、の間の角度を、対応する前記点灯装置(12)を回動させることによって設定すること、を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの点灯装置(12)の光束、及び/又は放射スペクトルを変更すること、を更に含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの点灯装置(12)の前記主放射方向(30)に位置する範囲を、カメラ(16)により検出することと、
前記カメラ(16)により検出された範囲に基づいて、空間座標系における前記手術創(24)の位置についての情報を決定することと、
前記少なくとも1つの点灯装置(12)の前記主放射方向(30)と、前記手術創(24)の前記深さ延長方向(X)と、の間の角度を、特に自動的に、設定し、特に減少させることと、
を更に含む、請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
データインタフェースであって、前記データインタフェースを介してデータが前記照明装置(10)に伝えられる前記データインタフェースを設けることと、
手術データであって、前記手術データに基づいて前記少なくとも1つの点灯装置(12)の対応する前記主放射方向(30)のアライメントを調整するために、前記データインタフェースを介して、前記手術データに基づいて、空間座標系における前記手術創(24)の位置の基本予測が、特に手術前に可能である、前記手術データを入力することと、
を更に含む、請求項11~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、患者の身体の表面に創開口部を有し、患者の体内へ深さ延長方向に延在する手術創を照明するための照明装置に関する。
【0002】
現在の適用においては、「部位(Situs)」とも呼ばれる手術創の理想的な照明は、外科医が手動で照明器具を調整することによって実現される。一方では、これは照明器具に複雑な機構を必要とし、他方では、照明器具のそれぞれの再調整のために、外科医は彼らの実施している動作を中断しなければならない。このことは、手術時間を延長し、ひいては患者にとって更なる負担となる。
【0003】
それゆえに、本発明の目的は、簡単な方法で調整可能であり、手術中に変化する状況に合わせて、特に自動的に、適応可能な照明装置を提供することである。
【0004】
この目的は、手術創を照明するための照明装置によって達成される。照明装置は、空間座標系における創開口部の位置及び深さ延長方向についての情報を入力するための手段を有する制御装置を備える。照明装置は、それぞれが主放射方向に光を放射するように構成され、それぞれが少なくとも1つの光源を有する、複数の点灯装置を備える。点灯装置の少なくとも1つは、当該少なくとも1つの点灯装置によって照明される領域が、創開口部と少なくとも部分的に重なるように、光を放射するように構成される。創開口部と少なくとも部分的に重なる照明される領域を有するそれぞれの点灯装置の主放射方向と、手術創の深さ延長方向と、はそれぞれ互いの間に、あらかじめ定められた角度値を超えない角度を成す。創開口部と少なくとも部分的に重なる照明される領域を有し、そのそれぞれの主放射方向が、手術創の深さ延長方向に対してあらかじめ定められた角度値を超えない、少なくともそれらの点灯装置は、アレイを形成する。点灯装置は、アレイにおいて、空間座標系に関して実質的に不変の位置に配置される。
【0005】
このようにして、複数の点灯装置により放射される光が、対応する部位と一致することが実現され得る。その結果、照明装置を用いるその部位の照度は、単一の点灯装置と比較して増加され得、またその光は、狭く深い手術創の底まで到達し得るように方向付けられ、邪魔になる影を同時に回避して十分に高い照度をもたらす。特に、その部位の均一な照明がそれゆえに実現され得る。
【0006】
現時点で既に述べられてきたはずであるが、「放射される光」という用語は、点灯装置の設計に応じて、点灯装置により直接放射される光、又は、特に点灯装置により直接放射される光と組み合わせた、点灯装置と関連するリフレクタから直接反射された光に関連し得る。
【0007】
主放射方向は、対応する点灯装置の光円錐の中心軸上に配置されてもよい。当然のことながら、対応する中心軸を、光が円錐状に放射されない対応する点灯装置により放射される光の中に配置することも考えられ得る。好ましくは、対応する点灯装置により放射される、又は対応する点灯装置と関連するリフレクタにより反射される光線に平行な断面の中心が互いに接続され、対応する中心軸が形成され得る。
【0008】
対応する主放射方向と手術創の深さ延長方向との間の角度は、手術創の深さ延長方向及び対応する点灯装置の中心を含む面における、対応する主放射方向の投影と手術創の深さ延長方向との間に形成されてもよいであろう。対応する主放射方向と手術創の深さ延長方向との間の対応する角度値は、それゆえにまた、主放射方向と深さ延長方向とが交差しない、つまり、互いに関してねじれの位置にある場合にも形成され得る。
【0009】
角度のあらかじめ定められた範囲は、有利には、0°から75°、特に0°から60°、特に好ましくは0°から45°であり得る。
【0010】
点灯装置は、少なくとも1つのLED、及び/又は少なくとも1つのレーザ光源を備えてもよい。それらの発熱が少ないことから、手術室内の環境が損なわれない、又はわずかに損なわれるだけであるため、そのような光源が好まれる。
【0011】
有利には、制御装置は、創開口部と少なくとも部分的に重なる領域を有する、照明装置のそれらの点灯装置のみを制御するように構成されてもよい。点灯装置は、それらの対応する主放射方向と、手術創の深さ延長方向と、の間の相互角度を成し、その角度の値は、あらかじめ定められた角度値を超えない。それゆえに、手術創の深さ延長における強度の低下を防止するために、対応する主放射方向があらかじめ定められた角度値を超える点灯装置が、部位の照明に寄与しないことが回避され得る。
【0012】
本発明の展開において、照明装置は、照明装置が取り付けられる、又は照明装置が一体化される空気調節天井の空気の流れを可能とするように構成される通気路を備えてもよい。このようにして、照明装置は、手術領域に通常広がる層流の空気の流れを損なうことなく、手術室に設置され得る。
【0013】
有利には、点灯装置は、異なるスペクトルの光を放射する光源を備えてもよく、当該光源により放射される光を混合することによって調整可能なスペクトル域で光を放射するように構成されてもよい。実施される手術に応じて、手術照明のスペクトル域を、例えば、やや青みがかった、又はやや赤みがかった照明に適応させることが望ましいであろう。さらに、可視スペクトル域の照明の代替として、又はこれに追加して、例えば紫外線及び/又は赤外線スペクトル域などの非可視スペクトル域で、部位の照明を有効にすることが考えられてもよい。
【0014】
さらに、点灯装置、及び/又は点灯装置の個別の光源は、それらの光束で調整可能であってもよい。例えば、個別の点灯装置は、例えば外科医の活動において障害となり得る、部位の外側の強反射する範囲、及びそれゆえに眩しい範囲の照明を低減するために、それにより調光され得る。
【0015】
点灯装置は、光の焦点を合わせる、並びに/若しくは光を散乱させる、並びに/若しくは光を屈折させるように構成され、及び/又は光をスペクトル的に変化させるように構成される、リフレクタ、及び/又は光学レンズ、及び/又は光学変換メディアを備えてもよい。リフレクタ、及び/又は光学レンズは、対応する光源に対して、特にピエゾ駆動を用いて変位可能、及び/又は回動可能であり得る。ピエゾ駆動は、サブミリ領域の変位に特に適しており、その結果、例えば最小の焦点でさえ設定され得る。
【0016】
さらに、照明装置は、少なくとも1つの点灯装置の主放射方向と、手術創の深さ延長方向と、の間の角度を設定するように構成される調整装置を備えてもよい。照明装置の調整装置は、そのハンドル上の従来の手術用ランプの手動検出、及び手術創に対するその設定をシミュレートし得る。この目的のために、調整装置は、制御装置に接続されてもよい。
【0017】
この目的のために、調整装置は、少なくとも1つの点灯装置の主放射方向に位置する範囲を検出するように構成されるカメラと、決定ユニットと、を備えてもよく、又はそれらに接続されてもよい。決定ユニットは、カメラにより検出される範囲に基づいて、手術創を決定するように構成される。調整装置は、少なくとも1つの点灯装置の主放射方向と、手術創の深さ延長方向と、の間の角度を、特に自動的に、変更するように、特に減少させるように構成される。例えば、手術創を十分に照明するために、選択された点灯装置のみが動作されなければならないそのような多数の点灯装置を備える照明装置が用いられる場合に、調整装置はまた、例えば、選択された点灯装置の個別の主放射方向の束の中心軸、又は優先軸上に位置し得る、選択された点灯装置の共通主放射方向と、手術創の深さ延長方向と、の間の角度を最小にするために、照明装置の全ての使用可能な点灯装置から、点灯装置を自動的に選択し得る。例えば、患者が移動されるとき、手術創を最適に照明する照明装置のそれらの点灯装置は、それゆえに、自動的に再選択され得る。
【0018】
さらに、調整装置は、照明装置のユーザが実施するジェスチャを検出するように構成されるカメラと、ジェスチャをあらかじめ定められた操作コマンドに割り当てるように構成される決定ユニットと、を備えてもよく、又はそれらに接続されてもよい。調整装置は、操作コマンドを受けて、調整装置に関連する点灯装置の対応する主放射方向のアライメントを設定するように構成される。例えば、外科医は、指で空中に線を描くことができ、それにより、照明装置は、前述されたように、選択された点灯装置の個別の主放射方向又は共通主放射方向を、この線と同軸に又は平行に整列させる。代替的に又は追加的に、調整装置は、例えば外科医による音声指令を用いる音声入力を介して制御可能であってもよい。
【0019】
調整装置はまた、患者に対して実施される手術に関連する手術データを受信するように構成されるデータインタフェースを備えてもよく、又はそれに接続されてもよい。調整装置は、手術データに基づいて、調整装置に関連する点灯装置からの対応する主放射方向のアライメントを調整するように構成される。手術データは、手術中に部位の深さ延長がどの方向に作り出されるか、例えば、それ自体を、及び/又は対応するデータベースとの関連を示し得る。照明装置は、これに基づいて、手術が進行してさえも部位の照明に依然として適切である、部位を照明するためのそれらの点灯装置を、手術の開始前に既に選択し得る。それゆえに、部位を照明するための照明装置の点灯装置の選択が、例えば、影の形成の変化によって外科医に悪影響を与える形で、手術中に変更されることが回避され得る。
【0020】
例えば、調整装置は、ベースに接続されるピン状部分を有する入力装置を備えてもよい。ピン状部分の長手方向軸の角度は、ベースに対して変更可能である。調整装置は、ピン状部分のベースに対する角度に基づいて、調整装置と関連する長手方向軸の対応する主放射方向のアライメントを調整するように構成されてもよい。入力装置は、無線で、有線で、又は関節構造をも介して、調整装置と接続されてもよい。
【0021】
調整装置は、ベースに対するピン状部分の角度に基づいて、調整装置と関連する点灯装置の対応する主放射方向のアライメントを個別に設定するように構成されてもよいし、あるいは、ベースに対するピン状部分の角度の相対的な角度変化を、調整装置と関連する点灯装置の対応する主放射方向と、手術創の深さ延長方向と、の間のあらゆる角度に伝達するように構成されてもよい。外科医が所望する対応する点灯装置を選択するために、入力装置は、例えば、照明装置上の点灯装置の配列に、完全に又は減少された形で対応するキーパッドを追加的に備えてもよい。
【0022】
調整装置は、長手方向軸を有するピン状部分と、空間における入力装置のピン状部分の長手方向軸の位置及び方向を検出し、それを調整装置に出力するように構成される検出ユニットと、を有する入力装置を備えることが可能である。調整装置は、空間における入力装置のピン状部分の長手方向軸の検出された位置及び方向に基づいて、調整装置と関連する点灯装置の対応する主放射方向のアライメントを調整するように構成されてもよい。入力装置は、ベースに接続され得るか、又はそれによって空間において自由に位置決め可能であり得る。
【0023】
入力装置は、入力装置のピン状部分の遠位端から手術創までの距離を測定し、それを調整装置に出力するように構成される距離計を備えてもよい。調整装置は、測定された距離に基づいて、調整装置と関連する点灯装置の焦点を設定するように構成されてもよい。入力装置を、部位から離す、又は部位に接近させることにより、照明装置は、選択された点灯装置により放射される光の焦点をぼかす、又は焦点を合わせるように促され得る。
【0024】
検出ユニットは、位置センサ、特にジャイロスコープを備えてもよい。特に、位置センサは、入力装置の位置及び/又は方向を検出する働きをしてもよい。位置センサは、入力装置のピン状部分に配置されてもよい。
【0025】
本発明の展開において、検出ユニットは、ナビゲーション装置にとって既知の入力装置のジオメトリを認識し、空間における位置及び方向を、既知のジオメトリと関連して入力装置に割り当てるように構成されるナビゲーション装置を備えてもよい。例えば、検出ユニットは、例えば赤外領域で光を放射し、入力装置から反射された光を受信するように設計されてもよい。入力装置により反射され、検出ユニットにより検出される光に対する、入力装置の長手方向軸の既知の関係に起因して、検出ユニット及び/又は調整装置は、三次元空間における入力装置の長手方向軸を決定し得、点灯装置の共通主放射方向又は対応する主放射方向を整列させるための対応するコマンドを、上記点灯装置に関連する駆動部に出力し得る。
【0026】
入力装置の既知のジオメトリは、その位置が、入力装置のピン状部分と永続的に接続される、又は接続され得る、パッシブ又はアクティブマーカによって形成されてもよい。特に、パッシブマーカは、入射角に従って入射光を反射する再帰性反射マーカとして設計され得る。対照的に、アクティブマーカは、例えば、LEDを用いて独力で光を放射する。
【0027】
さらに、照明装置は、少なくとも1つのカメラ、特に手術創の照度を検出する輝度カメラ(Leuchtdichtenkamera)と、手術創の照度が一定のままであるように、カメラにより検出される手術創の照度を減少又は増加させるように、照明装置を切り替える追跡ユニットと、を備えてもよい。本発明による照明装置は、それゆえに、いくつかの点灯装置の、それらの手術創へのビーム経路において遮光が生じるとき(又は遮光物が取り除かれるとき)でさえ、手術創のあらかじめ定められた照度を実質的に一定に保持することができるであろう。
【0028】
追跡ユニットは、少なくとも部分的に創開口部と重なる照明される領域を有する点灯装置の光束を増加させてもよい。つまり、遮光が生じる前に既に手術創を照明していた、遮光による影響を受けない点灯装置であって、選択され、動作される点灯装置の光束は、現在は増加された光束で部位を照明し、その結果、手術創の照度は、遮光が生じる前の照度と実質的に一致する。遮光による影響を受ける点灯装置は、それらから生じる影を減少させるために、それらの光束もまた減少され得る。
【0029】
追加的に又は代替的に、追跡ユニットは、それらの主放射方向が、あらかじめ定められた範囲の外側で手術創の深さ延長方向に対して角度を成す、照明装置の更なる点灯装置を動作させ得る。これは、この場合において、手術創を照明するために使用されていた点灯装置の遮光が生じるのに先立って、手術創を照明するために使用されていなかった点灯装置が接続されることを意味する。手術創を照明するために動作される更なる点灯装置の選択は、例えば、その主放射方向の、手術創の深さ延長方向との角度に基づいて優先され得る。概して、手術創の深さ延長方向に対するそれらの角度が、あらかじめ定められた範囲の外側であったとしても、更なる点灯装置を動作させ、その後十分に照明されていない部位に作用することが、外科医には好まれる。
【0030】
更なる点灯装置を動作させるとき、追跡ユニットは、それらの主放射方向と手術創の深さ延長方向との間で最小角度を有する、それらの点灯装置から開始し得る。それゆえに、手術創の良好な深さ照明が継続して実現され得ることが保証され得る。
【0031】
さらに、追跡ユニットは、照明装置のアレイとは別に配置される、点灯装置を有する更なるアレイを動作させ得る。特に、更なるアレイの点灯装置が延在する面は、前述したアレイの点灯装置が延在する面と角度を成して配置され得る。例えば、点灯装置の遮光の種類に応じて、更なるアレイは、遮光を引き起こす物体が、対応する点灯装置と手術創との間の光の経路にもはや存在しないように動作されることができ、その結果、上記の物体は、いわば、更なるアレイの点灯装置によって「照明され」得る。
【0032】
追跡ユニットは、点灯装置の少なくとも1つの光円錐に有利に焦点を合わせ得る。手術創の照度は、これが必要な場合に、対応する光円錐に焦点を合わせることによっても増加され得る。
【0033】
本発明の展開において、照明装置は、手術創の照度を検出する複数のカメラを備えてもよい。複数のカメラは、それらの視軸が、手術創上で、互いにあらかじめ定められた角度を形成するように配置され、それは、手術創上の第1カメラの視野の覆いを第2カメラで補完するのに適している。それにより、手術創の照度の自動的な追跡又は適応は、たとえ手術創の照度を検出するカメラの1つが手術創を自由に見ることができないとしても、実現され得ることが保証され得る。
【0034】
照明装置は、手術創からの照明装置の距離を測定する距離測定装置を更に備えてもよく、照明装置は、距離測定に基づいて、対応する点灯装置の焦点を手術創に合わせる。このようにして、照明装置は、手術台の昇降などの手術状況の変化に自動的に反応し得、手術創の一定の照明を確実にし得る。
【0035】
さらに、手術創と重なる、対応する点灯装置の照明される領域の割合が、照明される全領域に対して最大にされるまで、照明装置は点灯装置の自動焦点調整を実施し得る。特に、その強い反射のために可能であれば強く照明されるべきでないドレープが通常配置される、部位の周辺を照明する点灯領域の範囲が、それゆえに削減され得る。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、照明装置は、少なくとも手術創を検出する複数のカメラを備え、且つ組合せユニット(Kombinationseinheit)を備えてもよい。複数のカメラにより捕捉される手術創及び手術環境全体の視点は、三次元モデルを形成するために、組合せユニットによって組み合わされる。三次元モデルに基づいて、照明装置は、照明装置と手術創との間に配置される障害物によって、光が手術創に到達することを少なくとも部分的に妨げられる、少なくとも1つの点灯装置の主放射方向を特定し得、及び/又は、照明装置と手術創との間に配置される障害物に関わらず、光が手術創に到達する、少なくとも1つの点灯装置の主放射方向を特定する。三次元モデルを用いることによって、前述したような遮光を引き起こす物体の位置及び/又は大きさは、空間において明確に決定されることができ、その結果、前述したように、物体を「照明する」ために、点灯装置、及び該当する場合には照明装置で実施される適応が、特定され得る。
【0037】
三次元モデル及び少なくとも1つの特定された主放射方向に基づいて、照明装置は、特に、手術創の照度を増加又は減少させるために、少なくとも1つの点灯装置を動作させるか、動作を停止させるか、を変更し得る。特に、少なくとも1つの点灯装置のビーム経路に侵入する物体が遮光を引き起こし、それゆえに、創の照明強度の減少を引き起こす場合に、これらの遮光に関与する点灯装置は、その強度が減少され得るか、又は動作を停止され得、現在動作する残りの点灯装置の少なくとも1つは、その強度が増加され得るか、及び/又は少なくとも1つの更なる点灯装置が動作され得る。
【0038】
照明装置は、また、手術創の上方を移動する物体を検出する、距離測定装置、及び/又はカメラも備えることができ、照明装置における変更は、検出された物体による手術創の遮光を最少にするために、検出された物体に基づいて実施され得る。遮光を引き起こす移動する物体と、照明装置の適応と、の間の直接的な相関が、それゆえに作り出され得る。結果として、照明装置の正確で迅速な反応への適応のために必要とされる労力が、軽減され得る。
【0039】
第3の態様において、本発明は、手術創を照明するための方法に関し、本方法は、
照明装置、特に、それぞれが主放射方向に光を放射するように構成される複数の点灯装置を備える本発明による照明装置、を設けるステップであって、点灯装置の少なくともいくつかは、点灯装置が空間座標系に関して実質的に不変の位置に配置されるアレイを形成するステップと、
患者の身体の表面に創開口部を有する手術創の空間座標系における位置についての情報を入力するステップと、
患者の体内への創の深さ延長方向を決定するステップと、
照明装置の少なくとも1つの点灯装置を決定するステップであって、点灯装置は、当該少なくとも1つの点灯装置により照明される領域が、創開口部と少なくとも部分的に重なるように光を放射するように構成され、その主放射方向は、手術創の深さ延長方向に対して、あらかじめ定められた角度値を超えない角度を成すステップと、
このようにして決定された点灯装置を、手術創を照明するために動作させるステップと、
を含む。
【0040】
本発明による装置のために記載された全ての特徴、効果、及び利点は、本発明による方法にも適用され、逆もまた同様であることは、ここで既に指摘されるべきである。
【0041】
本方法は、
少なくとも1つの点灯装置の主放射方向と、手術創の深さ延長方向と、の間の角度を、対応する点灯装置を回動させることによって設定すること、
を更に含んでもよい。本装置に関して示したように、このことは、例えば調整装置を用いてなされ得る。
【0042】
本方法は、点灯装置のうちの少なくとも1つの光束、及び/又は放射スペクトルを変更することを含んでもよい。このようにして、照明強度が、現在の手術状況に適応され得る。点灯装置の強度制御が、主放射方向と深さ延長方向との間のあらかじめ定められた角度値に応じて実施されることもまた、考えられ得る。
【0043】
本発明による方法はまた、特に、
少なくとも1つの点灯装置の主放射方向に位置する範囲を、カメラにより検出することと、
カメラにより捕捉された範囲に基づいて、空間座標系における手術創の位置についての情報を決定することと、
少なくとも1つの点灯装置の主放射方向と、手術創の深さ延長方向と、の間の角度を、特に自動的に、設定し、特に減少させることと、
を含んでもよい。
【0044】
有利には、本発明による方法はまた、
データインタフェースであって、当該データインタフェースを介してデータが照明装置に伝えられるデータインタフェースを設けることと、
手術データであって、当該手術データに基づいて少なくとも1つの点灯装置の対応する主放射方向のアライメントを調整するために、データインタフェースを介して、当該手術データに基づいて、空間座標系における手術創の位置の基本予測が、特に手術前に可能である、手術データを入力することと、
を含んでもよい。
【0045】
本発明は、添付図面を参照する実施形態によって、以下に一層詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】手術状況の斜視図を示し、手術創が、本発明による照明装置によって照明される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1において、本発明による照明装置は、概して、参照符号10で示される。照明装置10は、ここで、共にアレイ14を形成する複数の点灯装置12、及びカメラ16を備える。
図1に示されるアレイ14において、個別の点灯装置12は、25個の点灯装置12の正方形の配置において、互いに等間隔で配置され、その結果、例えば、手術室の空気調節天井からの空気は、個別の点灯装置12の間を通過し得る。点灯装置12のそれぞれは、例えば少なくとも1つのLEDの形の、少なくとも1つの光源(
図1において詳細な図示なし)を備える。しかしながら、点灯装置12の一般的な配置は、例えば、異なる数、及び/又は、楕円形若しくは長方形の他の配置の点灯装置12もまた可能であるように、
図1に示される変形例に限定されない。
【0048】
点灯装置12のそれぞれの光源は、特に関連するリフレクタと組み合わせて、点灯装置12のホルダ18に対して回動可能に取り付けられ、対応する点灯装置12は、ホルダ18を介して手術室の天井に接続される。ホルダ18に対する光源の回動を制御するために、特に、制御装置に接続され、関連する光源をホルダ18に対して変位させるように構成される、少なくとも1つの電気モータが設けられてもよい。
【0049】
患者20もまた、
図1に見られ得る。患者20に対して実施される手術の観点から、患者は、ドレープ22で覆われ、治療される患者22の身体上の部位(「手術創」とも呼ばれる)24は、開放されたままである。手術創24は、患者22の皮膚に創開口部26を有し、患者22の体内に及ぶ、創溝に沿った深さ延長方向Xを有する。
【0050】
外科医が適切に患者を治療するために、手術創24は、十分に照明されなければならない。この目的のために、点灯装置12は、対応する点灯装置12によって照明される領域28(
図2参照)が、創開口部26と少なくとも部分的に重なるように動作され、調整される。主放射方向30が、それぞれの点灯装置12に割り当てられ得る。
図2を参照すると、対応する主放射方向30は、ここで、光源から創開口部26へ円錐状に延在する光円錐32の中心軸であり得ることが見られ得る。本発明によれば、対応する調整をして、創開口部26と少なくとも部分的に重なる照明される領域28を有し、その対応する主放射方向30が、手術創24の深さ延長方向Xに対して、好ましくは0°から45°の間にあるあらかじめ定められた角度値を超えない、そのような点灯装置12のみが、手術創24を照明するために選択される。
図2において、主放射方向30と手術創24の深さ延長方向Xとの間のそのような角度は、一例としてαで示される。それにより、手術創24が、その全体の深さでも良好に照明されることが確実にされ得る。
【0051】
例えば、全ての対応する光円錐の和の中心軸に沿って延在する共通主放射方向はまた、手術創24を照明するために動作される点灯装置12に割り当てられ得る。調整装置(図示なし)を介して、共通主放射方向、及び/又は対応する主放射方向30は、変化する手術状況に照明を適応させるように変更され得る。例えば、点灯装置12のビーム経路は、例えば創開口部26に焦点が合わせられ得る。そのような適応の過程で、点灯装置12もまた、動作が停止され得、若しくはそれらの光束が変更され得、及び/又はこれまで使用されていなかった点灯装置12が動作され得る。ドレープ22から発せられ得る反射を防止するために、点灯装置12は、可能であるならば、ドレープ22が照明されないように設定され得る。
【0052】
カメラ16は、ここに示される実施形態においては、中央の点灯装置12のすぐ近傍に位置しているが、照明装置10の外側の範囲にも配置され得、複数の点灯装置12の下方の範囲を監視するように構成される。
【0053】
カメラ16は、ここで、手術創24の範囲を検出し、その結果として照明される範囲が自動的に決定され得ると共に、外科医のジェスチャを認識し、それにより制御装置及び調整装置を介して点灯装置12の方向を変更し、また照明装置10と手術創24との間に位置する物体も検出し、それにより、いずれの、又はどちらの点灯装置12が、それらの光束を変更されるかを決定すると共に、手術創24の照度の変化を決定するように構成される。その結果、手術創24の照度は、可能な限り一定のままである。
【0054】
深さ延長方向X及び点灯装置12の主放射方向30の双方は、空間座標系X,Y,Zにおいて、座標又はベクトルで割り当てられ得る。その結果、例えば、主放射方向30と深さ延長方向Xとの間の角度は、投影面とは無関係に決定され得る。
【0055】
アレイ14を形成する点灯装置12は、それらが互いに対して不変である位置に配置されるように手術室の天井に取り付けられるが、それらの方向(対応する光円錐のアライメント)は可変である。
【0056】
本発明による照明装置10は、それゆえに、あらゆる手術状況に良好に適応することを可能にし、照明装置10が手術室の天井から実質的に突出していないため、患者の上方のごく周辺は、外科医又は他の手術用機器によって一層良好に利用され得る。
【国際調査報告】