(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】高強靱性を有する建築用の熱間圧延されたH字型鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240903BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20240903BHJP
C21D 8/00 20060101ALI20240903BHJP
C21C 7/04 20060101ALI20240903BHJP
C21C 7/06 20060101ALI20240903BHJP
C21C 7/10 20060101ALI20240903BHJP
B21B 1/088 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
C22C38/00 301A
C22C38/60
C21D8/00 B
C21C7/04 B
C21C7/06
C21C7/10 A
B21B1/088
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574852
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2022133957
(87)【国際公開番号】W WO2024016543
(87)【国際公開日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】202210851313.2
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520449079
【氏名又は名称】山東鋼鉄股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG IRON AND STEEL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ,ペイリン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヂェンヂュン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ペイ
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェンヂェン
(72)【発明者】
【氏名】マー,ズオツァン
(72)【発明者】
【氏名】コン,リンクン
(72)【発明者】
【氏名】リー,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ホンイン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ドン
【テーマコード(参考)】
4E002
4K013
4K032
【Fターム(参考)】
4E002AC03
4K013AA09
4K013BA08
4K013BA14
4K013CE01
4K013CE05
4K013EA16
4K013EA18
4K013EA19
4K013EA20
4K013EA25
4K013EA26
4K013EA28
4K013EA32
4K013FA01
4K013FA02
4K013FA06
4K032AA01
4K032AA04
4K032AA08
4K032AA11
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA21
4K032AA23
4K032AA26
4K032AA27
4K032AA28
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA36
4K032AA38
4K032AA40
4K032BA00
4K032CA03
4K032CB01
4K032CB02
4K032CC03
4K032CD00
(57)【要約】
本発明は、鉄鋼製錬の技術及び圧延成形の技術分野に属し、具体的に、高強靱性を有する建築用の熱間圧延されたH字型鋼及びその製造方法に関する。前記熱間圧延されたH字型鋼の化学成分は、重量パーセント(wt%)で、C:0.06~0.10、Si:≦0.25、Mn:0.8~1.30、P≦0.015、S≦0.008、Cu:0.15~0.25、Cr:0.25~0.60、Ni:0.10~0.19、V:0.01~0.03、Al:0.01~0.03、RE:0.009~0.019、As+Sn+Zn+Pb+Ca+Mg≦0.035、N≦0.008、T.[O]≦0.002であり、残りがFe及び不可避的な不純物である。本発明は、建築構造用鋼の重量軽減を実現するとともに、良好な耐食性能、Z方向性能、耐低温靱性などの総合性能を有し、現在のプレハブ建築構造用鋼のエンジニアリングニーズを完全に満足する。
【選択図】
図1(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強靱性を有する建築用の熱間圧延されたH字型鋼であって、
前記熱間圧延されたH字型鋼の化学成分は、重量パーセントで、C:0.06~0.10%、Si:≦0.25%、Mn:0.8~1.30%、P≦0.015%、S≦0.008%、Cu:0.15~0.25%、Cr:0.25~0.60%、Ni:0.10~0.19%、V:0.01~0.03%、Al:0.01~0.03%、RE:0.009~0.019%、As+Sn+Zn+Pb+Ca+Mg≦0.035%、N≦0.008%、T.[O]≦0.002%であり、残りがFe及び不可避的な不純物である、ことを特徴とする熱間圧延されたH字型鋼。
【請求項2】
前記熱間圧延されたH字型鋼は、降伏比が≦0.8、降伏強度が≧420MPa、引張強度が≧520MPa、伸び率が≧19%、-20℃における縦方向の衝撃エネルギーが≧50J、断面収縮率がいずれも≧60%である、ことを特徴とする請求項1に記載された熱間圧延されたH字型鋼。
【請求項3】
高強靱性を有する建築用の熱間圧延H字型鋼の製造方法であって、
ステップ(1)の製錬工程と、ステップ(2)の圧延工程と、ステップ(3)の仕上げ工程と、を含み、
前記ステップ(1)の製錬工程において、
転炉製錬と、
LF精錬の終了時に溶鋼の温度を1600~1620℃に制御し、RH精錬の環流時間を15分よりも大きくし、製錬サイクルを40~50分間に制御するLF+RH精錬と、及び、
連続鋳造と、を順次に含み、
前記ステップ(2)の圧延工程において、
加熱段階及び均熱段階の温度を1250~1300℃に制御し、加熱時間を90~120分にし、次に炉から取り出して圧延する加熱と、及び、
仕上圧延の最終圧延温度を800℃~850℃に制御し、低温炉で一斉にゆっくりと冷却して矯正する制御圧延及び制御冷却とを順次に含み、
前記圧延工程において、冷却装置によりウェブプレート及びフランジを個別に冷却し、圧延の最終パスで開始する、ことを特徴とする熱間圧延されたH字型鋼の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(1)において、転炉製錬におけるヒ素及びスズの含有量がいずれも0.008%よりも小さく、転炉内の仕上スラグの塩基度が2.1~3.9範囲にあってスラグ止めと溶鋼排出とを用い、溶鋼排出過程においてアルミニウム・マンガン・鉄による脱酸素と合金化とを用いる、ことを特徴とする請求項3に記載された製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(1)におけるLF精錬において、カルシウムワイヤを供給する前にREを加え、ソフトブロー時間を20分間以上にし、精錬サイクルを30分間以上にし、
RH精錬における純脱気時間を5分間よりも大きくし、処理が終了した後、1炉毎に200~250mのカルシウムアルミニウムワイヤを供給し、ソフトブロー時間を10分間以上にし、
全過程にわたって保護鋳込を行い、中間容器を被覆剤で炭化籾殻と合わせて被覆し、中間容器から結晶器までは浸漬ノズルを用いてアルゴンシール保護を用い、結晶器の液面が包晶鋼保護スラグを用い、重量パーセントで、包晶鋼保護スラグの成分が25%≦SiO≦35%、35%≦CaO≦45%、1.90%≦MgO≦3.00%、3.00%≦Al2O3≦4.00%である、ことを特徴とする請求項3に記載された製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(1)における連続鋳造過程は、完全保護鋳込プロセスを用い、中間容器がストッパー容器を用いて溶鋼を鋳込み、異形連鋳スラブの引抜き速度を1.0~1.2m/minにし、過熱度を20~30℃に制御する、ことを特徴とする請求項3に記載された製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(2)は、粗圧延工程を更に含み、形状を主とする孔型圧延を実現し、粗圧延の最終パスの温度が1150~1050℃の間にあり、累積変形率が40%~60%であり、圧延パスが9パスよりも小さく、
仕上圧延工程において、仕上圧延過程で性能を制御しながら圧延し、圧延パスを7パスよりも小さくし、低温炉における冷却レールを400℃以上の温度に維持し、製品を低温炉で一斉にゆっくりと冷却し、製品の温度が200~300℃まで降下するとレベラーに入れて矯正する、ことを特徴とする請求項3に記載された製造方法。
【請求項8】
冷却された後に、上下フランジの同じ箇所での温度差が10℃以内に縮小し、ウェブプレートの上下表面では5℃以内に縮小し、H字型鋼のフランジ及びウェブプレートのZ方向引張の断面収縮率の誤差を5%以下に制御する、ことを特徴とする請求項3に記載された製造方法。
【請求項9】
請求項3における冷却に使用される総合性能を向上させるための冷却装置であって、
前記冷却装置が仕上圧延機の後方に取り付けられ、該冷却装置は間隔を置いて配置される複数の冷却液配管と、間隔を置いて配置される複数の冷空気配管とを備え、
前記冷却液配管は、フランジを冷却するためのものであり、熱間圧延H字型鋼の下フランジの下方に設置され、ウェブプレートに平行する第1フランジ配管と、第1フランジ配管に垂直であってそれに連通する2組の第2フランジ配管とを備え、各組の第2フランジ配管に1つのフランジがそれぞれ対応し、
前記各組の第2フランジ配管は平行する2つの下フランジ配管を備え、前記下フランジ配管の下フランジに対向する面にはフランジを冷却するための複数のノズルが設置され、H字型鋼の下フランジがいずれも平行する2つの下フランジ配管の間に置かれ、
前記冷空気配管は、ウェブプレートを冷却するためのものであり、凸型を呈し、下フランジとウェブプレートとの間に設置され、ウェブプレートに平行してそれに近接する冷空気配管にはウェブプレートを冷却するための複数のノズルが設置される、ことを特徴とする総合性能を向上させるための冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2022年07月20日に出願した中国特許出願第202210851313.2号に基づく優先権を主張し、この中国特許出願の全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、鉄鋼製錬技術、圧延成形技術の分野に属し、具体的に、高強靱性を有する建築用熱間圧延されたH字型鋼(H section steel)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国内の建築工事の品質に対する要件が徐々に高まるにつれて、建築構造用鋼の発展に対してより高い要件が求められている。特に、プレハブ建築物の面では、国は、続々と政策を打ち出して、大いに普及させている。プレハブ建築物は、耐震性能が良く、それ自身の重さが軽く、施工速度が速く、工業化の程度が高く、プレキャスト部材のプレハブ率が高いといった技術的優位を有し、鋼構造の使用が天然の組立利点を満足し、施工工期が従来の工期に比べてより大きな利点を有し、組立式鋼構造におけるプレキャスト部材が鋼材である場合が多く、環境に優しい建築材料に属し、リサイクル及び再利用の面でコンクリートよりも比較にならないほど、環境に優しく、環境保護上の利点を有する。国内のプレハブ建築物の占有率が国外の先進国よりも大幅に低い。従って、適用、経済、安全、エコロジー、美観の要件に応じて、建築方式の革新を推進して、組立式コンクリート建築物及び鋼構造建築物を大いに発展させて、新築された建築物におけるプレハブ建築物の比率を絶えず向上させて、鋼構造建築物の防火、防食などの性能及び技術的措置を整備して、熱間圧延されたH字型鋼、耐候性鋼及び耐火鋼の応用を広げて、鋼構造建築物の基幹技術及び関連産業の全面的発展を推進している。
【0003】
熱間圧延されたH字型鋼は、建築構造用の主な材料として、異なる稼働状況においてその力学的性能及び耐食性能、耐火性能、構造安定性能などに対してより高い要件を求めている。そのうち、耐ラメラテア性能は、重要な指標となることにより、建築構造用鋼の安全性及び構造安定性を確保する。耐ラメラテア鋼はZ方向鋼とも称され、主に鋼板の厚さ方向の引張試験における断面収縮率Zを用いて耐ラメラテア性能を評価する。厚さが15mmを超える鋼材の場合、構造部材には板厚方向に沿う張力又は疲労応力が発生すれば、一般的にいずれもZ方向の耐ラメラテア性能を検査する必要がある。一般的な建築構造用の形鋼の場合、フランジのZ方向性能指標のみを必要とし、ウェブプレートに対してもZ方向性能指標を提案する場合がより少ない。従って、プレハブ建築物及び高層建築物用の鋼のニーズを満足するために、総合的な耐ラメラテア性能に優れた重要な標識即ちフランジ及びウェブプレートのZ性能は要件を同時に満足し、難度が厚さの増加につれて高くなる。
【0004】
特許出願CN113564480Aにおいて、Z方向性能を有する重厚な熱間圧延されたH字型鋼及びその生産方法が開示されており、前記熱間圧延されたH字型鋼は、C、Si、Mn、Nb、Ti、N、B、Alsの化学成分を含み、残りは鉄及び不可避的な不純物であり、前記生産方法は、溶銑前処理→転炉製錬→アルゴンガス吹込精錬→RH→ビームブランクの完全保護鋳込→スタッキング徐冷→圧延→圧延後空冷等のステップを含み、該発明は、合理的な成分の混合比及びプロセスの制御により、分塊圧延+ユニバーサル圧延+圧延後空冷プロセスを用いて、相転移+析出+細粒の組み合わせ強化の方式を利用して、第2方向粒子の析出数を制御して、得られた圧延後の粒状ベイナイトの含有量が10~20%の間にあり、フランジの厚さが80mm以下である大型の熱間圧延H字型鋼は優れた強靱性及びZ方向性能を有するようにし、Z方向性能が65~80%である。該発明は、ベイナイト組織により強化を実現するが、ベイナイトが冷却速度に関わるため、安定して均一なベイナイト組織を得る制御難度が高いとともに、ベイナイト鋼に明らかな降伏現象がない。
【0005】
特許CN103334051Bにおいて、Z方向性能を有する建築用の熱間圧延されたH字型鋼及びその生産方法が開示されている。該発明は、製錬プロセス及び圧延プロセスを最適化して、製品品質の制御手段及び製品の生産過程の制御を厳しくすることにより、優れたZ方向性能及び力学的性能を有する鋼種を得る。H字型鋼に含まれる化学成分は重量パーセントで、C:0.06%~0.18%、Si:0.10%~0.25%、Mn:0.90%~1.60%、0.10%以下のV、0.060%以下のNb、0.030%以下のTi、並びに残りの鉄及び不可避的な不純物である。
【0006】
特許第CN102418037B号には耐ラメラテア性能を有する熱間圧延H字型鋼及びその生産方法が提供されている。本発明に係るH字型鋼の製造方法は、Alによる脱酸素を用いずに、溶鋼排出過程において溶鋼にSiを加えることにより溶鋼中のSiを溶鋼の総重量の0.10%~0.15%に調整してシリコンキルド鋼の脱酸素を行い、次に溶鋼に予定量のTi及びZrのうちの少なくとも1つを加え、鋼種に必要な含有量のSiが精錬時に追加されてもよい。該発明に係る熱間圧延されたH字型鋼は耐ラメラテア性能を有し、一定の厚さ方向におけるZ方向性能に対する要件を満足することができる。
【0007】
上記従来技術において、簡単なマイクロアロイ化は、鋳片の表面品質の向上に不利であり、靱性の向上が大きく制約されるとともに、過剰な炭素含有量に起因して溶接欠陥をもたらして、圧延機の負荷が大きくなることを引き起こしやすく、圧延部材の湾曲及びヘッドずれ、寸法が制御されにくく、装置に対する要件が高いため、H字型鋼の総合性能及び完成品の寸法合格率が比較的低い。
【0008】
現在、型鋼の生産において、冷却制御は、常に性能の均一に影響する深刻な問題である。特に、厚い規格の製品の場合、フランジ及びウェブプレートの厚さ寸法の差が比較的大きく、単一冷却モードを用いることは最終性能への影響が比較的大きいとともに、Z方向性能の均一性に影響することとなり、差が比較的大きいことをもたらして、構造の安全性に影響してしまう。コストと効率とを両立させる上で、この難題をどのように解決するかは、常に業界内の難題の1つである。超高速冷却装置を用いる企業もあるが、投資が比較的大きいとともに、ニーズがある単一の製品品種にとって経済性の面で適切でない。従って、全体に渡ってZ方向性能に対するニーズがある建築構造用鋼製品の場合、性能に対する要件を満足するために特別な冷却装置を設計する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プレハブ建築構造用鋼のニーズを満足するために、本発明は、上記ニーズに対して冷却システムを特別に設計する。降伏強度が420MPaグレードに達する高強靱性を有する耐ラメラテア性能に優れた建築構造用の熱間圧延されたH字型鋼及びその製造方法を提供する。この型鋼製品は、プレハブ建築構造工学分野における使用に適し、そのウェブプレート及びフランジがいずれも比較的高いZ方向性能を有し、いずれもZ35レベルを超えている。フランジ及びウェブプレートでの良好なZ方向性能を実現するために、鋼の成分と合わせて設計し、圧延過程の設計にフランジ及びウェブプレートの温度均一性の制御装置を追加し、-20℃の低温条件下で良好な衝撃靭性を実現し、優れた耐食性能及び溶接性能、低降伏比などの特徴を有し、一般的な地区及び寒冷地区でのプレハブ建築構造などの鋼建築分野における熱間圧延されたH字型鋼材料の応用ニーズを満足する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するために、本発明の技術案は、以下の具体的な要件を有する。
【0011】
本発明は、420MPaグレードの建築用の熱間圧延H字型鋼を提供し、前記H字型鋼は、重量パーセント(wt%)で以下の化学組成を有する。その化学成分は、C:0.06~0.10、Si:≦0.25、Mn:0.8~1.30、P≦0.015、S≦0.008、Cu:0.15~0.25、Cr:0.25~0.60、Ni:0.10~0.19、V:0.01~0.03、Al:0.01~0.03、RE:0.009~0.019、As+Sn+Zn+Pb+Ca+Mg≦0.035であり、残りがFe及び不可避的な不純物である。製錬過程において、鋼中のガスを重量パーセントでN≦0.008、T.[O]≦0.002に制御する。
【0012】
降伏比を低減するために、低炭素成分の設計を基にバナジウム窒素合金の単一のマイクロアロイ化の設計のみを用いるとともに、その含有量を厳しく制御し、沈殿強化の降伏強度に対する影響を軽減し、最終的に前記H字型鋼の降伏比が≦0.8となる。低温靱性を向上させて介在物の数及び寸法を厳しく制御するために、RE元素を加えて介在物の改質を行う上で、他の残留元素の含有量をAs+Sn+Zn+Pb+Ca+Mg≦0.035に制御することが好ましい。
【0013】
本発明に記載された優れた総合的な耐ラメラテア性能(Z方向性能)を有する420MPaグレードの鋼構造用の建築用H字型鋼に各化学元素を加える場合に果たす役割が以下のとおりである。
【0014】
炭素(C):420MPaグレードの強度の要件に応じて、低炭素成分の設計は、建築構造用鋼が一定の耐低温性能を有するように確保することができるとともに、一定のパーライト組織を生成して降伏比を改善するように確保し、建築構造用鋼の使用ニーズに合う。耐食元素を加えた後、低炭素含有量の場合に比べてウィドマンシュテッテンなどの異常な組織を生成することを回避することができる。ビームブランクの場合、横方向及び縦方向のウェブプレート上のクラックを制御しやすいため、組織性能及び製錬コストを考慮して、本発明の炭素の含有量を0.06%~0.10%に制御する。
【0015】
シリコン(Si):適量のSiが強度の向上に寄与し、Siの含有量が過剰であると、ベイナイトなどの組織を生成しやすく、再加熱過程に大量のFe2SiO4を生成することによる表面品質に対する影響を回避するために、Siの含有量の上限を0.25%以下、好ましくは0.25%以下、より好ましくは0.20%以下として設定する。
【0016】
マンガン(Mn):マンガンは、オーステナイトの安定元素であり、鋼の焼入性を著しく向上させるとともに、固溶強化の形式で鋼の強度を向上させることができるが、過剰であると偏析が発生しやすく、異なる箇所での相違が比較的大きい。厚い規格の建築構造用の型鋼の異なる箇所の組織に相違があり、従って、強度を確保するとともに、焼入性を制限して大量の異常な組織を生成することを回避するために、Mnの含有量の上限を1.30%として設定することが好ましい。様々な要素をまとめて、本発明のH字型鋼中のMnの含有量を0.8~1.30%範囲内に制御し、420MPaグレードの強度を得るために、VN合金の添加量に基づいて、区間を1.0~1.20%の範囲内にすることが好ましい。
【0017】
リン(P):高いリン含有量により耐食性能を向上させやすいが、リン元素が過剰であると、脆化粒界で耐低温性能を悪化させやすく、従って、リンを低く制御すればするほど、効果が良くなり、低温靱性を向上させ、Pを0.015%以下に制御する。
硫黄(S):硫黄元素が過剰であると、比較的多いMnSなどの硫化物を生成しやすく、複雑な断面の型鋼の異なる箇所に大量の長手形状のMnS介在物を生成し、低温靱性を低下させるとともに、耐食性能の向上に不利であり、断面収縮率に影響し、即ち鋼の耐ラメラテア性能に影響し、従って、Sを≦0.008%に厳しく制御する。
銅(Cu):銅は、鋼材の耐食性能を向上させる基本元素であり、Cuは鋼の陽極鈍化(anodic passivation)を促進することにより、鋼の腐食速度を低減することができ、耐食鋼のよく使用される元素の1つとされる。それは錆層中に富化すると、錆層の保護性能を大幅に改善することができ、錆層中のCuの富化効果を実現するために、Cuが0.20%以上であるように求めている。しかしながら、Cuの含有量が過剰であると、建築構造用の型鋼の溶接性能に不利であり、しかも銅脆化現象も発生しやすい。異形連鋳スラブを用いて耐ラメラテア性能を有する型鋼を生産する過程において、脚部の隅部に銅の富化によるクラックが発生しやすく、鋳片の表面品質に深刻な影響を与えて、鋼の塑性が低くなることをもたらし、プレハブ建築構造の型鋼の耐食性能に対する要件を満足する上で、本発明のCuの含有量を0.15~0.25%に制御する。
【0018】
ニッケル(Ni):ニッケルは、固溶強化により鋼材の強度を向上させ、低温靱性を向上させる有効元素でもあり、それと同時に、連続鋳造過程における鋼の高温塑性を向上させて、鋳片の表面欠陥の発生を低減することができる。Niは、オーステナイト領域を拡大して焼入性を向上させる役割を果たす一方、パーライトラメラを微細化してパーライトを微細化して、細粒強化作用を果たすことができる。Cuの含有量の制御比率と合わせて、本発明の鋼は、Niの含有量を0.10~0.19%範囲内に制御する。
【0019】
クロム(Cr):クロムは焼入性を向上させて焼き戻し安定性を向上させて鋼の強度の向上に寄与する元素であるとともに、鋼材の耐食性能の向上に寄与する元素でもある。それはCu、Ni元素と組み合わせて使用される場合、鋼の耐食性能を著しく向上させることができる。Cの含有量が比較的低い場合、適量のCrを加えることにより鋼の硬度及び強度を向上させることができ、型鋼の耐食性能を向上させることもできる。過剰に加えると、材料の靱性、溶接性能及びガス切断性能を低下させてしまう。組織制御の面で、Cr元素が多すぎると、鋼の組織遷移に影響して、ベイナイトなどの異常な組織を生成してしまう。強度及び耐食性能の向上の面を考慮して、本発明はその含有量をCr:0.25~0.60%に制御する。
【0020】
バナジウム(V):バナジウムは、マイクロアロイ化鋼の最もよく使用される最も有効な強化元素の1つである。バナジウムの役割は、VN、V(CN)を形成することにより鋼の組織及び性能に影響することであり、それは主にオーステナイト粒界のフェライト中に沈殿析出して、フェライト結晶粒を微細化することにより、材料の強度及び低温靱性を向上させる。沈殿強化の降伏強度に対する影響がより大きいとともに、強度を向上させることを考慮して、Vを0.01~0.03%で加える。
【0021】
希土類:希土類は、鋼質を浄化し、変質して介在し、孔食及び粒間腐食を減少させる。鋼中の固溶希土類は鋼マトリックスの分極抵抗及び自己腐食電位を向上させて、鋼マトリックスの耐食性の向上に寄与し、錆層の組織構造を変えて、接着性が高く且つ緻密で耐食性が高い錆層を形成し、高強度耐候性鋼の耐食性を向上させる。RE希土類元素をMnSなどの介在物の改質ニーズに応じて適量に加えることを考慮して、選択範囲をRE:0.009~0.019%にし、RE希土類元素は複合添加元素の1つであり、経済性及びコストパフォーマンスなどの要素を考慮して、本願は主にランタン及びセリウム系元素を主とし、球状介在物の役割を果たす。
【0022】
アルミニウム(Al):Alは、低温鋼製造過程において強脱酸素元素として加えて使用される。鋼中の酸素の含有量をできる限り低くして介在物の含有量を低減し、且つ脱酸素後に余分なアルミニウムが更に鋼中の窒素元素とAlN析出物を形成できるように確保するために、加熱及び熱間圧延過程においてオーステナイト結晶粒を微細化する。従って、脱酸素元素及び細粒強化元素として、アルミニウムの含有量を0.01~0.03%範囲内に制御する。
【0023】
As、Sn、Zn、Pb、Ca、Mg:これらは鋼中の残留元素として低温衝撃靭性に対する影響が比較的大きいとともに、表面品質にも大きく影響する。従って、鋼中の完全に除去できない元素として、それらの含有量をできる限り減少させるべきである。生産実践、設備能力及びコスト制御を考慮して、残留元素の総量をAs+Sn+Zn+Pb+Ca+Mg≦0.035範囲内に制御する。
【0024】
窒素(N):Nの含有量が過剰であると、鋳片の品質欠陥を引き起こしやすく、それと同時に、VNの合金化効果を確保すべきであり、従って、本発明は、窒素の含有量が0.008%以下であるように求めている。
【0025】
酸素(O):大きな粒子の酸化物介在物を形成して鋼の靱性及び塑性を悪化させることを回避するために、本発明では、全酸素含有量がT.[O]≦0.0020%であることが必要である。
【0026】
本発明のH字型鋼製品は、総合的な力学的性能が良好であり、降伏強度が≧420MPa、引張強度が≧520MPa、伸び率が≧19%、-20℃における縦方向の衝撃エネルギーが≧50Jであり、低温条件の地区での建築構造に使用されることに適する。ウェブプレート及びフランジはZ方向性能が良好であり、断面収縮率がいずれも≧60%である。
【0027】
上記の異なる地区での建築構造に応用されることに適し、優れた耐ラメラテア性能を有する熱間圧延されたH字型鋼の製造方法は、主に、溶銑前処理→転炉製錬→LF精錬→RH精錬→鋼片表面欠陥の整理→異形連鋳スラブの鋳込→鋼片のウォーキング式加熱炉による再加熱→高圧水による脱スケール→温度制御圧延+制御冷却→低温矯正→定寸での切断→収集及び積上げなどのステップを含む。
【0028】
溶銑や鋼屑を転炉+精錬炉(LF+RH装置)で製錬、精錬及び連続鋳造プロセスにて異形連鋳スラブを得て、表面を欠陥検出及び洗浄をしてから圧延成形工程に入る。まず、ウォーキング式加熱炉に鋼片を入れて再加熱して適切な寸法のオーステナイト組織を得て、粗圧延及び仕上圧延後に圧延成形し、圧延過程において制御圧延及び冷却する。なお、仕上圧延の最終パスで正確に温度制御し、開発された特別な冷却装置(冷却装置については
図2を参照)によりH字型鋼の上下脚及びフランジの上下両側の温度がほぼ一致する要件を満足するようにし、均一な組織条件下でのフランジ及びウェブプレートのZ方向性能の適合性が確保され、プレハブ建築構造に本製品を採用した場合の構造の安定性及び安全性が確保される。
【0029】
圧延過程における制御圧延及び冷却の主なプロセスは、加熱温度を1250~1300℃に制御し、寸法によって異なる粗圧延の最終パスの温度を1150~1050℃の間にし、累積変形率を40%~60%にし、残りを仕上圧延段階において完了するということである。粗圧延した後に3つのフレームによる仕上圧延を行い、仕上圧延の最終圧延温度を800℃~850℃の間に正確に制御して、オーステナイト組織をパーライト及びフェライトに完全に遷移させ、細粒制御圧延を実現する。H字型鋼の上下脚のフランジ及びウェブプレートの上下両側にいずれも30~50℃の温度差があるため、仕上圧延の最後パスで圧延機から取り出してから冷却制御し、設計された冷却装置を利用して下脚及びウェブプレートにノズルで噴水して正確に制御冷却し、検出温度差に基づいて対応する水流量制御を行う。冷却後に上下脚のフランジの同じ箇所での温度差が10℃以内に縮小して、ウェブプレートの上下表面で5℃以内に縮小することが実現され、それによりH字型鋼の上下脚フランジ及びウェブプレート全体のZ方向性能がほぼ一致することが確保される。仕上圧延後に圧延部材が搬送ローラテーブルを通過し、環境温度によって保温カバーを用いて冷却速度の制御を行い、異なる季節の環境温度が大幅に変動して最終性能に影響することを回避する。仕上圧延機から取り出してから低温炉で自然冷却し、製品の温度が100℃以下に降下した後にレベラーに入れて矯正する。圧延材完成品の規格はフランジの厚さ範囲が15~50mmである。H字型鋼のフランジ箇所及びウェブプレートの中間箇所でサンプリングして力学的性能の検出を行う。上記プロセスにて生産されたH字型鋼のフランジ及びウェブプレートのZ方向引張の断面収縮率の誤差が5%以下に制御される。
【0030】
好ましくは、本発明に係る420MPaグレードの耐ラメラテア性能に優れたプレハブ建築用の熱間圧延H字型鋼及びその製造方法並びに具体的なプロセス制御は具体的に下記2つの工程を含む。
【0031】
1 製錬工程
(1)転炉製錬
転炉を基本操作に基づいて制御し、主な工程は、高炉内の溶銑中の硫黄やヒ素などの残留元素の含有量を厳しく制御して溶銑の品質を好適に処理し、ヒ素及びスズをいずれも0.008%よりも小さくすることと、転炉内の仕上スラグの塩基度を2.1~3.9範囲にしてスラグ止め及び溶鋼排出を用い、溶鋼排出過程においてアルミニウム・マンガン・鉄による脱酸素及び合金化を用いることと、を含む。溶鋼排出過程において数回に分けて脱酸素剤、フェロシリコン、金属マンガン、バナジウム窒素合金、ニオブ鉄合金、ニッケルプレートなどを加えて、最終的な転炉成分を内部統制目標の要件に合わせる。
【0032】
(2)精錬におけるLF+RHの二重制御
精錬過程において、LF+RHの二重制御によりガス及び介在物を制御する。LFは炭化カルシウム、シリコン・カルシウム・バリウム、アルミニウム粒子を用いてスラグ調整を行い、ステーションから搬出する前に上部スラグを白色のスラグ又は黄白色のスラグにすべきである。ステーションに搬入して最初のサンプルを取ってから酸素の定量を[O]≦20ppmに制御し、カルシウムワイヤを供給する前にREを加え、全過程にわたってプロセス要件に応じて窒素底吹きを行い、ソフトブロー時間を20分間以上にし、精錬サイクルを30分間以上にし、LF精錬の終了時に溶鋼の温度を1600~1620℃に制御し、溶鋼の温度を上昇させることによりRH処理時での溶鋼の温度降下を相殺し、RH処理時に「アルミニウムを加えて化学熱を発生させる方法で温度上昇させる」ことは禁じられる。
【0033】
RH精錬では、下記の処理モードを用い、環流時間を15分間よりも大きくし、純脱気時間を5分間よりも大きくし、処理が終了した後、1炉毎に200~250mのカルシウムアルミニウムワイヤを供給し、ソフトブロー時間を10分間以上にし、RH製錬サイクルを40~50分間に制御する。
【0034】
全過程にわたる保護鋳込とは、取鍋から中間容器までは保護スリーブを用いてアルゴンシール保護を行い、中間容器が被覆剤で炭化籾殻と合わせて被覆され、中間容器から結晶器までは浸漬ノズルを用いてアルゴンシール保護を用い、結晶器の液面が包晶鋼保護スラグを用い、好ましくは、重量パーセントで、包晶鋼保護スラグの成分が25%≦SiO≦35%、35%≦CaO≦45%、1.90%≦MgO≦3.00%、3.00%≦Al2O3≦4.00%であることを意味する。
【0035】
(3)連続鋳造
連続鋳造過程において完全保護鋳込プロセスを用い、大きな取鍋の保護スリーブを利用し、シールリングの制御を追加し、中間容器がストッパー容器を用いて溶鋼を鋳込み、効率を向上させるために、異形連鋳スラブの引抜き速度を1.0~1.2m/minにし、過熱度を20℃~30℃以下に制御することにより保護スリーブが塞がれることを防止することができ、製錬された溶鋼をニアネットシェイプ型断面ビームブランクの3つの寸法規格に鋳込み、合金量が比較的多いので、表面にクラックが生じることを回避するために、ビームブランクを鋳込成形した後に保温穴又は砂穴で又は保温フェルトにより徐冷処理を行う。
【0036】
2 圧延工程
(1)加熱
素材を加熱炉内でオーステナイト化して均一に加熱し、加熱及び均熱段階の温度を1250~1300℃に制御し、加熱時間を90~120分にし、次に炉から取り出して圧延する。加熱は高温短時間加熱を用い、オーステナイトを均一化及び微細化するように制御する。
【0037】
(2)制御圧延及び制御冷却
大型の生産ラインにおいて制御圧延/制御冷却プロセスを用いる。粗圧延工程は形状を主とする孔型圧延を実現し、圧延パスを9パスよりも小さくし、仕上圧延工程は性能制御圧延を行い、圧延パスを7パスよりも小さくする。仕上圧延の最終圧延温度を800℃~850℃に制御する。低温炉における冷却レールを400℃以上の温度に維持し、製品を低温炉で一斉にゆっくりと冷却し、冷却速度が速すぎて最終性能に影響することを防止する。製品の温度が200~300℃まで降下するとレベラーに入れて矯正して、表面の一次スケールの完全性を確保する。
【0038】
本発明は、総合性能を向上させるための冷却装置を提供し、圧延過程において専門に設計した冷却装置によりウェブプレート及びフランジの総合的な冷却を行い、冷却装置が仕上圧延機の後方に取り付けられ、冷却装置は間隔を置いて配置される複数の冷却液配管1と、間隔を置いて配置される複数の冷空気配管2とを備え、前記冷却液配管1は、フランジを冷却するためのものであり、熱間圧延H字型鋼の下フランジ6の下方に設置され、ウェブプレートに平行する第1フランジ配管4と、第1フランジ配管4に垂直であってそれに連通する2組の第2フランジ配管とを備え、各組の第2フランジ配管に1つのフランジがそれぞれ対応し、前記各組の第2フランジ配管は平行する2つの下フランジ配管5を備え、前記下フランジ配管5の下フランジ6に対向する面にはフランジを冷却するための複数のノズル3が設置され、H字型鋼の下フランジ6がいずれも平行する2つの下フランジ配管5の間に置かれ、前記冷空気配管2は、ウェブプレートを冷却するためのものであり、凸型を呈し、下フランジ6とウェブプレート8との間に設置され、ウェブプレート8に平行してそれに近接する冷空気配管にはウェブプレート8を冷却するための複数のノズル3が設置される。冷空気配管の形状は下フランジとウェブプレートとが形成した形状にフィットする。冷却速度はウェブプレート及びフランジの厚さによって制御され得る(
図1参照)。該冷却装置は仕上圧延機の後方に取り付けられ、圧延の最終パスで開始し、取り付けられたフランジ及びウェブプレートを個別に冷却する。
図1では、符号1の冷却液配管はフランジを冷却するためのものであり、フランジの厚さが大きいため、冷却速度によって冷却水又は他の冷却媒質で冷却する必要がある。冷却液の流量の大きさは上フランジ7及び下フランジ6のオンラインでの温度測定装置により温度差の測定を行った後にノズル3により調節される。ウェブプレートの厚さがフランジよりも薄いため、冷却空気を用いればニーズを満足することができる。符号2の冷空気配管はウェブプレートを冷却するためのものであり、ウェブプレートの上下箇所での温度差が比較的小さいため、必要に応じてノズル3における冷却空気の流量を適切に調節して冷却を実現する。上記装置によって、上下脚のフランジの温度差が5~10℃の範囲内にあり、ウェブプレートの温度差が3~6℃の範囲内にあることを満足している。これにより、組織の均一性が確保され、建築構造用の型鋼のウェブプレート及びフランジのZ方向性能が向上する。上記装置をバナジウムマイクロアロイ化の設計と組み合わせて、最終的な熱間圧延H字型鋼の性能に対する要件を実現するとともに、ウェブプレート及びフランジのZ方向性能がいずれも比較的高いレベルに達するように確保することができる。
【0039】
(3)仕上げ工程
製品をラインオフした後に表面及び寸法の仕上げ処理を行い、材料の性能が正当且つ正確であるように確保するために、仕上げ工程において試料をサンプリングして製品の性能を分析する。
【発明の効果】
【0040】
従来技術に比べて、本発明の利点は以下のとおりである。
【0041】
(1)低炭素+微量VN合金化+RE成分設計を用い、他の合金化よりも簡単且つ効率的であり、鋳片欠陥の発生率を低減し、(2)溶鋼の低残留元素及び不純物元素の制御を用い、鋼の塑性及び低温靱性の向上に寄与し、(3)一定量のRE元素を加え、鋼中の介在物が細かいため、フランジ及びウェブプレートの耐ラメラテア性能を同時に向上させることに寄与し、(4)ビームブランクの片側鋳込制御技術によりAl脱酸素プロセスを実現し、溶鋼の清浄度を向上させるとともに、保護スリーブが鋳込過程で塞がれる問題を回避する。(5)設計された専用の噴水装置によりウェブプレートフランジの均一冷却プロセスを実現し、ウェブプレートフランジ全体組織の均一性の向上を実現し、耐ラメラテア性能を同時に制御及び向上し、H字型鋼の総合的な強靱性能を全体的に向上させる。(6)上記プロセスにて製造されたH字型鋼の降伏強度が420MPa以上のレベルに達し、建築構造用鋼の重量軽減を実現するとともに、良好な耐食性能、Z方向性能、耐低温靱性などの総合性能を有し、現在のプレハブ建築構造用鋼のエンジニアリングニーズを完全に満足する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1(a)】本発明に係るH字型鋼の生産用の冷却設備の平面構造図である。
【
図1(b)】本発明に係るH字型鋼の生産用の冷却設備の立体構造図である。
【
図2(a)】本発明の実施例1において得られたH字型鋼の上脚のミクロ組織図である。
【
図2(b)】本発明の実施例1において得られたH字型鋼の下脚のミクロ組織図である。
【
図2(c)】本発明の実施例1において得られたH字型鋼のフランジのミクロ組織図である。
【
図3(a)】本発明の実施例6において得られたH字型鋼の上脚のミクロ組織図である。
【
図3(b)】本発明の実施例6において得られたH字型鋼の下脚のミクロ組織図である。
【
図3(c)】本発明の実施例6において得られたH字型鋼のフランジのミクロ組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、具体的な実施例によって本発明を更に説明する。
【0044】
以下に本発明を詳しく説明する。
表1は本発明の各実施例及び比較例の化学成分リストであり、表2は本発明の各実施例及び比較例の主なプロセスパラメータリストであり、表3は本発明の各実施例及び比較例の性能検出リストである。
【0045】
本発明の各実施例は、いずれも下記のステップに従って製造する。
【0046】
ステップ(1)において、好ましくは、低リン、低硫黄及び低残留元素の溶銑を炉に入れた後に転炉内で製錬してから、LF+RHの二重制御により成分及び介在物の制御を行い、LF精錬の終了時に溶鋼の温度を1600~1620℃に制御し、溶鋼の温度を上昇させることによりRH処理時での溶鋼の温度降下を相殺し、RH処理時に「アルミニウムを加えて化学熱を発生させる方法で温度上昇させる」ことは禁じられ、RH精錬は本処理モードを用い、環流時間を15分間よりも大きくし、純脱気時間を5分間よりも大きくし、処理が終了した後、1炉毎に200~250mのカルシウムアルミニウムワイヤを供給し、ソフトブロー時間を10分間以上にし、RH製錬サイクルを40~50分間に制御する。
【0047】
最終的にビームブランクに連続鋳造し、フランジの厚さの相違に応じて3つの素材タイプに分けられる。溶銑中の残留元素をAs+Sn+Zn+Pb+Ca+Mg≦0.035に厳しく制御し、鋳込過程において鋳込過熱度を20℃よりも小さく制御し、1.0~1.18m/minの引抜き速度からいずれか1つの数値を一定の引抜き速度として選択し、矯正温度を850℃以上にする。
【0048】
ステップ(2)の圧延工程において、素材を加熱炉内で再加熱して温度を1250~1300℃に制御し、加熱時間を90~120分にし、次に炉から取り出して圧延する。制御圧延/制御冷却プロセスを用いる。BD粗圧延工程における圧延パスを9パスよりも小さくし、仕上圧延TM過程における圧延パスを7パスよりも小さくする。仕上圧延の最終圧延温度を800℃~850℃に制御する。低温炉における冷却レールを400℃以上の温度に維持し、製品を低温炉で一斉にゆっくりと15分間以上冷却する。製品の温度が200~300℃まで降下するとレベラーに入れて矯正する。
【0049】
ステップ(3)の仕上げ工程において、製品をラインオフした後に表面及び寸法の仕上げ処理を行い、仕上げ工程において試料をサンプリングして製品の性能を分析する。
【0050】
【0051】
精錬の主なプロセスパラメータは表2を参照する。
【0052】
【0053】
連続鋳造過程の具体的なプロセスパラメータは表3を参照する。
【0054】
【0055】
表4は本発明の各実施例及び比較例の主なプロセスパラメータリストである。
【0056】
【0057】
表5は本発明の各実施例及び比較例の性能検出リストである。
【0058】
【0059】
試作された製品をサンプリングして性能検査を行い、力学的性能に使用される試料のサンプリング位置がH字型鋼のフランジのエッジ部からコア部までの1/3にあり、ウェブプレートのサンプリング位置が中間箇所にあり、参照標準がBS EN ISO 377-1997「力学的性能試験試料のサンプリング位置及び製造」であり、降伏強度、引張強度、伸び率の試験方法の参照標準がISO 6892-1-2009「金属材料 室温引張試験方法≫であり、衝撃エネルギー試験方法の参照標準がISO 148-1≪金属材料のシャルピー衝撃試験」であり、その結果を表5に示す。比較によって、本特許に関わる製造方法により生産されたH字型鋼のフランジ及びウェブプレートのZ方向性能は、いずれも現在の特許製品における製品よりも優れていることが発見されている。
【0060】
本発明の詳しく説明しない内容は、いずれも本分野の一般的な技術知識を用いてもよい。
【0061】
最後に説明すべきことは、以上の実施例は本発明の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを制限するものではない。実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者であれば理解されるように、本発明の技術案を修正又は等価置換したものは、いずれも本発明の技術案の主旨及び範囲から逸脱することがなく、それらはいずれも本発明の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0062】
1 冷却液配管
2 冷空気配管
3 ノズル
4 第1フランジ配管
5 下フランジ配管
6 下フランジ
7 上フランジ
8 ウェブプレート
【国際調査報告】